法制審議会 民法(成年後見等関係)部会 第4回会議 議事録 第1 日 時  令和6年7月2日(火)自 午後1時28分                    至 午後5時49分 第2 場 所  法務省第一会議室 第3 議 題  1 成年後見人等の交代等について         2 成年後見人等の職務等について         3 法定後見制度に関するその他の検討事項について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山野目部会長 定刻前でございますけれども、皆さんおそろいでいらっしゃいます。法制審議会民法(成年後見等関係)部会の第4回会議を始めます。   本日も御多忙の中を御出席いただきまして誠にありがとうございます。   本日は竹内努委員及び小林幹事が御欠席と伺っています。また、久保委員が会議の中ほどから御出席予定であり、また、佐保委員が途中で御退席予定と伺っております。   審議に入ります前に、配布資料の説明を事務当局から差し上げます。 ○木田関係官 本日は、新たに部会資料4を配布させていただいています。資料の内容につきましては、後ほどの御審議の中で事務当局から説明をさせていただく予定です。 ○山野目部会長 資料の案内を差し上げました。審議に入ります。   本日は、部会資料4の第1から御審議をお願いしたいと考えます。まず、部会資料の1ページ、第1、成年後見人等の交代等、辞任、解任を含む、この部分につきまして事務当局から資料の説明を差し上げます。 ○木田関係官 部会資料4、1ページからの第1、成年後見人等の交代等について御説明いたします。   現行法に成年後見人等の交代に関する規定は存在しません。この部会資料で交代という言葉は、成年後見人等がAという人からBという人に代わることを意味するものとして使用しておりますが、そのような意味での成年後見人等の交代は、成年後見人等の辞任又は解任と選任とを組み合わせることにより実現することになります。もっとも成年後見人等の解任については解任事由が限定されており、本人の状況の変化等に応じて柔軟な交代が実現されず、本人の利益が図られない場合がある旨の指摘等がされています。そこで、部会資料4の3ページからの3、検討では、このような御指摘等を踏まえつつ、御議論いただく際に考慮することが考えられる観点を記載しています。   1点目は、部会においてこれまで適切な時期に必要な範囲、期間で法定後見制度を利用することを可能にする見直しに関して議論がされていますが、仮にそのような見直しがされた場合においてもなお成年後見人等の交代のニーズが生ずるのはどのような場合かという点です。   また、2点目は、成年後見人等に現行法上の解任事由がない場合であってもその職を解くことについてニーズがあるとした場合、そのような仕組みを設けるか否か、仮に設けるとしたときの、その要件をどのように考えるかという点です。   そして、3点目は、具体的な場面において家庭裁判所が交代の要件について、どのような資料に基づいてどのような審査をすることが可能であるかという点です。   これらの観点も踏まえつつ御議論いただけますと幸いです。 ○山野目部会長 法定後見人等の交代の部分について説明を差し上げました。この部分について御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○小澤委員 ありがとうございます。成年後見人等が本人の状況に応じて交代することができる仕組みに賛同いたします。確かに必要性が失われた場合に後見制度の利用を終了できるようになれば、現在の成年後見人の交代に対するニーズも一部は満たされると思いますが、成年後見制度の利用を終了させることもできないケースも一定程度残ると思われます。そのようなニーズにこたえるためにも、成年後見人が円滑に交代できる制度は必要だと考えます。   具体的には、解任の審判とは別に、不在者財産管理人や相続財産清算人制度にある改任の審判の制度を、改任事由を検討した上で新たに設けることが分かりやすく、適当ではないかと考えています。一方で、現行の解任制度の中で解任事由などを見直すのであれば、例えば任意後見契約に関する法律第10条で規定されている、本人の利益のために特に必要があると認めるときのような事由を解任事由としても認め、成年後見人に不正や著しい不行跡等がなくても解任できるようにし、この事由による解任の場合には欠格事由とならないものとすることが適当ではないかと考えています。   なお、以上の改任の制度を創設する場合でも、解任事由を見直す場合でも、本人や親族などの意見だけではなく成年後見人の意見も十分に考慮することが必要だと考えています。 ○佐保委員 ありがとうございます。2ページの検討の必要性に記載されている、本人やその関係者が成年後見人に辞任を求めても、成年後見人が財産管理を適切に行っているとして辞任に応じないケースについては、本人の意思が尊重されているとはいえず、制度を利用しにくくしている一因でもあると考えます。したがって、包括的な権限を付与している場合に、現行の解任の事由がなくても、本人やその関係者の意思により成年後見人等の職を解く方向性には賛同いたします。ただし、そこにどのような要件を設けるべきかの議論に当たっては、本人や関係者が解任を希望しても第846条の解任事由に当てはまらないとの理由で解任となっていない事例を分析し、それを基に検討する必要があると考えます。 ○佐久間委員 今の解任のことについてなのですけれども、2点あります。一つは、本人が望んでいる、あるいは本人の世話をしている周りの人が辞めてもらうことを望んでいるという場合に、確かに本人の意思の尊重、あるいは意向かもしれません、意向の尊重という観点からすると、解任を認めることが適当にも思えるかもしれません。ただ、余り解任を容易に認めるということになりますと、結局のところ親族間の争いを助長するというおそれもあり、特に事理弁識能力に問題のある状況にある本人は、ごく身近にいる人の意向に左右されやすい面も、やはりないとは言い切れないと思いますので、本人あるいは身近な者の意向の尊重という観点を強調することは適当ではない面がある、適当でないとは言い切れませんけれども、そういった面があると感じます。   もう1点は、これは少し教えていただきたいということで、その後、場合によっては申し上げたいことがあるのですけれども、2ページの今私が申し上げたことの次の段落、28行目以下、特に30行目以下に括弧書きで、「指摘されている例として」とあるのが、解任を容易に認めるべき場合の主なものなのでしょうか。何が聞きたいかといいますと、辞めてもらいたいのだけれども辞めてくれないというときの、辞めてもらいたいのだけれどもというのは、働きぶりに不満があるというときに、その不満があるというレベルのことがあるときを念頭に置いているのか、それとも、例えば身上配慮義務などを比較的広く捉えた場合に、あるいは意思尊重義務もかもしれません、当該法律行為をするということについてではなくて、いろいろな法律行為をすべき状況にある成年後見人等については、ふだんから本人の意思を確認したり身上に配慮したりするべきであるということは考えられると思うのですが、そういった広い意味での義務には違反していると認められる場合が念頭に置かれているのでしょうか。意向の尊重は慎重にということを取りあえず申し上げた上で、その意向の尊重とは別のレベルで、このような指摘をされている人が、客観的にこれは辞めてもらいたいという事由があるというときの客観的な事由として念頭に置かれているのは、広い意味での義務違反に当たるものなのか、そうではないけれども働きぶりに気に食わないところがあるというレベルのことなのか、それを少し、お分かりでしたら教えていただきたいと思います。 ○波多野幹事 佐久間委員が御指摘いただきました点は、研究会の報告書等での結果を踏まえて記載をしたところでございまして、その中では例としてこういうことが書かれていたというところでございます。この場面を見ていた人たちがどういう評価をしているかというところは、必ずしも明確ではないところでございまして、多分一部には今おっしゃっていただいたような、意思尊重義務等に反しているという場面があるということも範囲に入っているのかと思いますが、必ずしもそれだけにとどまるのかどうかというのは、もう少し議論が必要なのかなと認識しているところでございます。 ○山野目部会長 佐久間委員からお尋ねになった後半の部分につきましては、部会資料作成の経過、意図は今、波多野幹事から御説明があったとおりです。委員、幹事の中から、ここの指摘に関連するような実質的な実態の紹介等を含むお話があるかもしれませんから、それを踏まえて、佐久間委員から更にお話があれば伺いたいと考えます。佐久間委員、差し当たりよろしいですか。 ○佐久間委員 結構です。よろしくお願いします。 ○星野委員 私は社会福祉士なので、身上保護に偏った発言になるかもしれませんが、今後成年後見人等に包括的な権限を付与するという考え方が改められた場合には、交代のニーズは余りないのではないかということが書かれておりますけれども、不動産売却であるとか遺産相続など一定のプロセスをした後に法律行為が終わるような代理権だけではなく、例えば社会福祉士が多く関わるような事例で申し上げますと、在宅を継続するのか施設入所をするのか、あるいは介護保険や様々な福祉サービスを利用していても、その契約を続けていくのか、別のサービスを利用するのか、そういうような面においては、すぐに解決ができずに一定期間、後見人等が本人に寄り添いながら支援するというのが通常の場合かと思っています。それは場合によっては年間単位になることもありますし、そういった場合において問題になってくるのが、本人の意思決定支援の在り方やチーム支援の観点で、後見人が交代することが本人にとってメリットではないかと言われることが現実にも今起こっております。   具体的な例として幾つか申し上げたいと思うのですが、例えば、本人の資産状況から様々な選択肢が考えられる場合において、経済的なところを考慮して、より費用が掛からない方法を検討する場合、それから、本人の意向や意思を尊重することによって、本人が経済的に可能である資産を活用するという方法を採る場合、いろいろな場合がありますけれども、そういったときに、今起こっている問題としては、本人の経済状況から考えればより負担が掛からない方法が妥当であるということを、もし後見人が判断するというような場合、それから、逆のパターンで、本人が在宅を希望しているのだから、お金がどれだけ掛かっても、あるいはサービスを提供する支援者側にリスクが生じるとしても、在宅を維持すべきだというような、そういうケースが考えられます。こういったときに現実では、本人の思いの変化とか環境の変化に寄り添う形で検討していくことが一般的に行われます。その寄り添いながらの支援というのが難しいときに、後見人等の交代を検討できないかという相談が今もあります。こういう場合は後見人に明らかな問題があるとか、そういうことではありませんが、支援チームとして対応していくときに、後見人が例えばより身近な市民に替わる方が適切ではないかとか、あるいは複数選任、追加選任をしていくことを検討する必要があるのではないか、そういうケースが現実にあります。逆に、非常に頑張って対応している後見人が、周りの支援者からなかなか理解が得られずに孤立しているというケースもございます。この場合は、本人とのコミュニケーションは良好にとれているにもかかわらず、関係者から後見人を替えてほしいというような相談が現実に今も入ってきております。   こういうことについて今後どのように検討していくかというところで考えますと、法律上の規定もそうなのですが、やはり審判を行う家庭裁判所にこういう情報がしっかりと届き、そして家庭裁判所がそういった地域の中核機関等の情報を得ながら判断できるような、そういう仕組みが必要になると考えます。中核機関の位置付けを明確にしていくということが一方で求められていると思います。そして、家庭裁判所がその情報を受け取ることができ、審理において参考にできるというような仕組みを作っていくことも必要かと思います。 ○青木委員 後見人の苦情として弁護士会等の専門職団体や中核機関等に苦情が寄せられる中で、新たな交代の制度を用いてほしいと思える事案というのは、解任事由には至らないけれども、本人の不利益あるいは本人の権利擁護に十分でないと思われるけれども、それについて様々な調整をしても、後見人が自分は辞めて他の後見人に代わりましょうと、辞任と選任申立ての手続きにのってくれないものです。本人及び関係する支援者の間では交代した方がいいと思っていても、当の後見人さんは納得をしていただけない、しかしながら裁判所が解任ができるかというと、「著しい不行跡」があるとまではいえないという事案であり、何らかの意味で後見職務が十分ではない、相当ではないとはいえるけれども、職務違反とまでいえるかという事案について交代の制度が求められていると思います。   具体的な例としては、例えば、お金は毎月しっかり届けてくれるけれども、その使い方について、本人や支援者はもっと余暇に使いたいと言っても余暇に使わせてくれないとか、本人の意向を踏まえた支援の相談のためにケース会議に出てほしいと言っても、時間がないので私の方で考えておきますと言って本人の意向をなかなか聴いてくれないとか、本人や支援者とのコミュニケーションがなかなかとれずに、支援者との間で情報の共有が図れないとか、そうした事情が積み重なった上で、このままではこの後見人とはやっていけないとなるのだけれども、それをもって解任事由ですかというとそこまでとは言えないような場合です。専門職団体では、そういう事案の相談があった場合には、いろいろ改善のための助言をしまして、それでも改善をしてくれない場合には、他の方に替わったらどうですかとサジェスチョンはするのですけれども、それでも私は後見人としてやることはやっていますので代わるつもりはありませんとなることがあります。そういうケースでは、現行制度では、本人も支援者も困ってしまう状況になる典型例ではないかと思っています。そういう事案について、本人の利益にならない、本人にとって後見人の職務が相当でない、ということを要件として、交代を認めるという道が必要ではないかと考えています。   私の意見としては、現行の解任事由は、やはり厳格な要件であるべきで、欠格事由ともリンクしていますので、明確な義務違反というものを認定をして不服申立て等の手続もとるということが適当であり、解任事由の現状を広げるというのは、余り適切ではないのではないかと思っています。また、辞任と選任の申立てには、後見人自身が納得していなければならないという限界がありますので、引き続き、辞任と選任の制度は十分に活用しながらも、その限界がある事案への手当てをしたいということになります。   現在の実務では、こうした事案への対応として、後見人を複数選任して、後任の後見人が適切に対応することによって何とかならないだろうかという方策とか、あるいは調査人や後見監督人を入れて、そこで何とか後見人に改善を求められないかという取組もされていますけれども、それには報酬が多くなり本人の負担になってしまう問題とか、あるいはそういう対応をとってもなお、当該後見人が全く態度を変えない場合もあって行き詰まってしまうこともあります。こういう状況から考えますと、やはり「交代」という、ネーミングはともかくとして、不相当な場合に裁判所の判断で後見人の同意なくとも交代できる制度が要るのではないかと考えているところです。   今後の制度改正で、付与される権限が個別になっていく中で、付与される権限の特質に合わせて後見人が選ばれるということになっていくことによって、こうした状況が減ることは期待できますし、有期の制度になることによって、期間更新したとしても後見人は別に選任するということも活用できると思いますが、先ほど星野委員も言ったように、継続的に見ないといけない事案というのは残ると思いますので、そういう場合には、交代の制度が要るのではないかと思っているところです。 ○野村幹事 後見人の交代は、本人や支援チームから辞めてほしいと思われているのに、辞任しようとしない専門職後見人を交代させるというニーズに基づくと思われますが、想定されるのは、例えば病院から退院後の生活について検討するために後見人が選任された場合に、介護サービスを利用して在宅で生活したいという本人の希望や支援チームの意見を聴かずに、後見人が施設入所手続を進めてしまうような場合です。こういった場合は後見人についての苦情が専門職団体や中核機関、裁判所に寄せられることになります。抽象的には本人の利益が害されるとか、チーム支援に支障が生じているということが要件なのかと思うのですが、具体的に要件にするのは難しいし、どのように認定するかは難しいと感じています。また、申立人を限定しないと、申立てが頻発して混乱を生じるおそれがあると思います。苦情処理対応の充実や後見人の追加選任、事務分掌、裁判所から後見人への指示などによって解決できる場合も多いのではないかと感じています。 ○河村委員 ありがとうございます。私はここに恐らく、消費者団体のメンバーですので、被後見人あるいはその家族というような人たちの代弁をするためにここにいると思っているわけなのですけれども、私の少ない経験から言っても、特に認知症高齢者の場合、どんなに判断能力、意思決定能力が衰えているように見えても、最後の最後まで感情というのは残ると科学的にいわれていますし、私の母の事例なんかを見ていましても、そのような認知症になってから亡くなるまでの生涯というのは、やはりその幸せを左右するのは、細かいお金の勘定はできないかもしれませんし、大事な決定はできないかもしれませんけれども、五感に基づく心地のいい、心としても体としても心地のいい生活というのが生涯送れるということが、もう本当にそれが幸せそのもの、その人の残りの生涯を支えるものだと思っています。そういう面から、この後見人は欠格であるとか、解任されるべき落ち度があるというわけではなくても、本人の意向というのを最大限に酌んで、やはりほかの人の方が自分が幸せに暮らせるというとおかしいですけれども、という本人の意向というものは最大限に酌み取れる制度というのが必要なのではないかと思います。いろいろ困難性があるということはそれぞれの委員の方からの御意見で納得できるところではありますけれども、私としてはそういう意見を持っております。 ○根本幹事 今まで先生方から御指摘があったところは、重複しますので省きますけれども、一つは、まずこの交代の場面で念頭に置かれるべきは、佐久間委員がおっしゃられるところの広い義務違反がある場合を交代の念頭に置くべきではないかと考えています。その際に、その要件は、御本人にどのような、どの程度の不利益が生じているのかどうかということに着目することになるのだろうと思います。   現行の辞任という制度や解任という制度があるにもかかわらず、新しくこの交代という制度を導入するべきという理由については、一つは、今まで各委員から御指摘があるように、御本人に不利益が生じる状態というのが継続してしまうことは、チーム支援が機能せず、身上保護面で本人に不利益が生じるということだけではなくて、その結果、円滑な事務遂行が行われず、支援者間若しくは後見人と支援者間の関係悪化に御本人が巻き込まれてしまって、必要な支援を受けるタイミングが遅れてしまうという御本人の不利益であるとか、または裁判所、中核機関、専門職団体、各リソースが関係性の悪化の対応に割かれることで、結果的に関係者が疲弊してしまって、本来注力されるべき本人支援が後退するというような状況になってしまいますので、社会政策上ないし社会経済上の観点からも望ましくないと考えています。   この問題を考える際に3点、注意すべき点があると思っていまして、一つは、いわゆる不利益が生じているかどうかという問題と相性のミスマッチという問題は、分けて考えるべきだと思っています。相性のミスマッチの問題は飽くまでも選任の問題であって、ここの議論とは少し性格を異にすると思っていますし、選任の在り方や選任の運用の問題と理解をしていますので、家庭裁判所がどのような候補者を適任者として選任するのかという問題と、交代の問題は、区別する必要があるのではないかとは思っています。   2点目は、包括類型の有無にかかわらず、ここは制度改正が検討されるべきであると考えていますし、仮に何らか有効期間が設けられるとしても、その有効期間経過時に人的な意味での交代という見直しが制度上図られるとしても、結局その3年、5年、7年、10年なのか分かりませんけれども、その間待たなければいけないということにはなってしまいますから、そこは交代という制度を設ける必要性というのは、包括類型でなくなったとしても、有期制になったとしても、やはり必要なのではないかと思っています。   3点目は、星野委員がおっしゃられた望ましいか、望ましくないかというところで要件立てをするというのは、私としてはなかなか難しいのではないかとは思っていますので、冒頭申し上げましたように、本人にどのような不利益がどの程度生じているのかということを念頭に置いた要件化というのが法制上図られるべきではないかと考えています。 ○山野目部会長 佐久間委員に御発言をお願いした後、向井幹事に御発言をお願いすることにします。 ○佐久間委員 ありがとうございます。いろいろな方のお話しを伺いまして、次に私の考えを述べさせていただこうと思います。まず、根本幹事がおっしゃった意味での義務違反での解任はあってもいいと思いました。ただ、義務違反といいましても厳しいものではないかと思いますので、何ら義務の違反がないにもかかわらず、気に食わないからという程度では駄目なのではないかという程度のことです。   その上で、私が思いましたのは、後見人の辞任に関しまして、正当な事由があるときは辞任することができるとされていますが、その正当な事由の中に、資料1ページもありますとおり、本人又はその親族との間に不和が生じた場合が想定されているわけです。今いろいろな方から伺ったケースは、不和という言葉には少し当たらないかもしれませんけれども、関係不全の一種だと思います。その関係不全がある程度以上に進んだときは、これを例えば不和という言葉で捉えるといたしますと、後見人から辞任はできるのに本人の側から解任はできないというのは、ある意味、バランスがとれていないように私には感じられます。そこで、もしかすると今はバランスがとれていないのかもしれないのだけれども、辞任が認められている以上、バランスをとればいいではないかということで、現行法に手掛かりを求めることができるのではないかと思っています。   ただ、そうなるとそこは現行法の「正当な事由」と同じく総合判断になりますので、資料で後に出てくる、家庭裁判所が判断しやすいように要件をきちんと立てるということは、これは難しいというか無理だということになります。そのことを申し上げた上で、今申し上げたことをあえて読もうと思えば、今846条にある「その他」に続く「後見の任務に適しない事由」の中に読み込めるのではないかと思います。ですから、「後見の任務に適しない事由」という文言のままでは少し読みにくいというのであれば、これを工夫するなどして、ひどい関係不全になったら、もうその人に後見人を務めてもらっても仕方がないということから辞任を認めるのであれば、任を解く方も認め、任を解けば直ちに、これは多分今もされているのだと思うのですけれども、次の後見人等を選ぶということで対応することがよろしいのではないかと思っています。その前提として、根本幹事もおっしゃいましたけれども、御本人の意向があるから替えましょうという、そこは少し踏み込みすぎと感じているということを前提に、そのように考えております。 ○向井幹事 まず、本日議論がされているのは、専ら後見事務の遂行との関係で、より適切な後見人に交代してもらいたいというような場合かと思っております。現状、実際に解任の申立てまでされるかどうかというのはさて置き、そのような希望を述べられる御本人、親族の方、支援者の方などはかなり多いというような状況です。実際にそういう方々のニーズに全て応えるとなると、後任者の給源の問題も出てきます。より適切な後見人への交代ということについては適切に要件立てをしなければならないと思うのですけれども、仮に改任という手続にする場合であっても、実際には後見人の法的な地位をその意に反して奪うということになりますので、安定的な運用につながるためには、客観的かつ明確な要件が必要ではないかと考えております。   先ほど、後見人として望ましいか望ましくないかというような話もありましたけれども、どちらが後見人として望ましいかというような判断は現実的にはなかなか難しいと思いますし、本人にとって利益か不利益かというような話もありましたけれども、現実的には利益、不利益というのもかなり評価、判断を伴うような事柄でありまして、どちらの方が本人にとって利益になるかということについては、見る人や持っている思想等によって違うというような部分もあり、かなり多義的なところもございます。やはり客観的かつ明確な要件にならないと、問題となる場面でうまく機能しないのではないかと考えております。 ○上山委員 一つは意見で、一つは質問をさせていただければと思います。   一つ目の意見ですけれども、当事者間の関係不全によって現行の解任を適用していくという考え方に仮に立つ場合には、やはり欠格事由の問題をクリアしないとまずかろうと思いました。関係不全というのは個別事案に関しての適正というのが問題になるのに対して、現状、是非はともかく100件を超える案件を受けている法人などもおりますので、1件の関係不和あるいは関係不全によって、その100件全部が終了するというようなことは好ましくないと思いますので、この点は改めて欠格事由についての問題を議論する必要があるかなと感じました。   もう一つは、不勉強で申し訳ないのですが、1点また実務について教えていただければと思います。改任の方の手続を考えていく上で、現在の補助人や、あるいは代理権を持っている保佐人が、現行法の下で辞任あるいは解任によって交代する場合に、その補助人などの権限というのは自動的に引き継がれる形なのか、それとも、改めてその権限付与の審判というのをやり直すのかというのを少し教えていただければと思います。お願いいたします。 ○山野目部会長 上山委員から今お教えいただきたいというお話があった部分は、お教えする人はいないと思われますから、むしろ今、御意見が何かおありだったらおっしゃっていただきたいと望みますし、引き続きその点が論点として忘れてはいけないよ、という御注意であったとすれば、それを承っておくということになりましょうけれども。 ○上山委員 仮に権限を個別に設定すると考えていった場合に、補助人なら補助人という抽象的な法的地位にその権限が結び付いているのか、それとも現行だと、その補助人を選任するときに別途、代理権付与の審判手続をすると思うのですけれども、その特定の補助人との関係に結び付いているのかというのがよく分からなかったもので、例えば、ある補助人が解任された場合に、手続を新規にやり直す、新しい補助人に選任し直す場合には、改めて権限についても同じ内容の同じ代理権について審判をやり直すのか、それとも代理権はそのまま単純に引き継いで、人が入れ替わるだけなのか。もし人が入れ替わるだけだとすると、改任というのも同じような仕組みになるのかなと思ったので、その辺りを教えていただければと思います。 ○星野委員 今の件ですが、体験上の話となりますが私は解任の引継ぎをしたことはないのですが、辞任の引継ぎを保佐で何件か経験しております。その場合は改めて代理権についての確認というのはないです。そのまま引き継いで替わるということ、私の経験ではということです。 ○青木委員 弁護士会では、解任もしくは辞任と選任の後任の候補者を多数推薦をしていますけれども、いずれも、代理権、同意権等は所与の前提のまま何ら変更なく、保佐人もしくは補助人だけが変更されるというのが実務でございます。 ○山野目部会長 上山委員から問題提起があった事項があるからこそ、部会資料におきましては、主に包括的な代理権が与えられている局面について交代の需要があるでしょうねという整理をして御議論をお願いした経緯があります。本日の御議論は、そのような部会資料の問題提起も受け止めた議論がされるとともに、星野委員からは、個別性の高い代理権付与の場合であっても交代の必要を考えなければいけない局面があるという指摘がありましたから、その側面を実態も見ながら引き続き検討することになりますけれども、その際に引き続き、今、上山委員から御注意があった点について忘れないように検討を進めるということにいたします。 ○根本幹事 手続において、家庭裁判所がこの件に関して事実調査をする点で、二つだけ申し上げておきたいのですが、一つは、在り方研究会の議論の中でもありましたけれども、現行の調査嘱託という手法だけでは、やはりなかなか家庭裁判所としては難しいのではないかと思いますので、諸外国にあるようなクリアリングのような、後見に特化した中核機関や自治体等に照会を掛けるということを手続法の中で規定するということが検討されてよいのではないかと思っています。現行の、例えば調査人という仕組みを使うということもあり得ますが、その際にも結局、費用負担が御本人の負担になってしまうところで躊躇されているという側面がありますので、この点についても配慮した検討が今後なされるべきと思っております。 ○久保野委員 ありがとうございます。根本幹事や佐久間委員がおっしゃったような実質の内容で考えていくということに賛成なのですけれども、その場合に846条の文言に著しい不行跡と入っていることを見直すことなども考えてよいと思います。この表現は、親権喪失の平成23年改正前の条文に入っていたと思うのですけれども、そのことからまた推し及ぼして考えましたときに、834条の2の親権停止の審判の要件などが参考になり得るのではないかと思います。 ○小澤委員 4ページの9行目のイの、誰のどのような利益を考慮する必要があるのかについては、本人の後見人により適切に権利擁護が図られる利益であって、その他の者の利益を考慮する必要はないと考えています。   また、11行目の成年後見人等の意思に反してその職を解くことが許容される理由の整理が必要という点については、後見人等の地位にとどまる利益は事実上の利益であって法的利益ではないと考えていますが、後述の後見人等の報酬についての権利性を仮に認めるとすると、その報酬請求権との関係で、それを奪う理由が必要になるとも考えられると思っています。ただ、その理由付けについては、既に行った後見事務の対価としての報酬請求に権利性が認められるとしても、将来の報酬をもちろん補償するものではないというもので十分ではないかと考えています。   この新たな解任や見直し後の解任を実効的なものとするためには、職権で行うことができることのほか、申立権限者を中核機関等の福祉関係者にも認めるといった申立権者の拡大も検討事項になるのではないかと考えています。一方で、この規定を利用した後見人等の交代の申立てが乱発される懸念もあるので、後見人等の地位が不安定となる危惧もあることから、慎重な検討が必要だと考えています。 ○山野目部会長 御意見を頂きました。   それでは、花俣委員と櫻田委員の御意見を伺います。 ○花俣委員 ありがとうございます。私ども、なかなか右か左かというはっきりした意見を申し上げられないのですけれども、どの御意見も大事な検討課題であろうかということを感じております。   ただ1点、希望というか願いというか、できれば可能な限り、本人の意思の尊重が優先されることを望みます。もちろんその場合でも、チーム支援等の周りの方たちの意見の尊重というのも併せて求められますが、意思能力に課題があろうとなかろうと、優柔不断な性格の人はいるわけであって、周りに左右されるという方はおられると思います。認知症になったからといって意思能力にすぐに問題ありと捉えられるのはいかがなものかと思います。特に昨今、認知症基本法も制定されて、そういった古い認知症観から、新しい認知症観として、認知症の人は即何も分からない、何もできない人ではないという、そういう理解を促す流れもございますので、できれば可能な限り本人の意思を優先するスタンスで考えていただけると有り難いと感じています。 ○櫻田委員 ありがとうございます。私も花俣委員と同様な意見でして、制度を利用されている御本人の意思を本当に優先的に尊重していただきたいとは思っております。本当に精神障害の場合は、その症状によっても、そのときによって結構判断能力にばらつきがあったりするので、そこだけを切り取って見ていただくのではなくて、本当に総合的に判断をしていただいて、トータルでこの人には交代が必要だから今手続をしましょうとか、そういうところも見ていただけたらいいなと思っております。今まで皆さんの御意見を伺っている中でも、様々な御意見があったとは思いますけれども、やはり一番大事なのは利用している御本人がどう思っているかだと思いますので、そこを尊重していただけたらと思っております。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   成年後見人の交代について熱心な御議論を頂いてきました。ほかに御意見、御発言がありますれば承ります。 ○竹内(裕)委員 先ほど、要件立てが明確なものが必要と御意見も出ておりましたが、また久保野委員から条文についての御指摘もありました。私も要件立て、何がいいのだろうと考えたときに、遺言執行者の任務を怠ったときその他正当な事由であるとか、あるいは破産管財人については、管理及び処分を適切に行っていないときその他重要な事由があるときというような要件立てがしてありますので、そういった他の制度の要件立てを参考に、解任事由というものでしょうか、それを考えていくことが一つ、手掛かりになるのかなと思いました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   成年後見人の交代について熱心な御議論を頂いてまいりました。本日の論議を振り返りまして、5点御案内を差し上げます。   1点目は、現行法の不正行為や著しい不行跡にとどまらないで、本人の心身の状態や財産の状況、それに係る従前の経過、さらに本人のために必要と認められる後見の事務の種類、性質に係る従前の経過及び状況の変化等に鑑みて、現在の後見人が任に適さないと認められる事情がある場合においては、どのように概念を呼ぶかはともかくとして、成年後見人を交代させる制度を考えてみる可能性があるということについて、多くの委員、幹事から、そのような論点の認識を踏まえた論議を続けていきたいという方向での御議論があったと感じます。これが1点目です。この方向で次の機会に向けて、更に検討を深めるようお願いするための部会資料を用意してまいります。   2点目でありますけれども、このような検討を進めていく際において、局面によっては必ずしも不正行為に当たるようなものがないにもかかわらず、成年後見人等の意思に反して任が解かれるような事態が生じ得る、その可能性が出てまいります。その際に、現在は解任の審判に対して、家事事件手続法123条1項4号の規定によって、成年後見人が即時抗告をすることができるという仕組みになっておりますけれども、抗告の利益に関して今後どうするかということについて、次の機会に向けて、委員、幹事におかれても検討いただければ有り難いと感じます。   3点目でございますが、現行の847条2号は、家庭裁判所で免ぜられた成年後見人等は後見人等になることができないと定めているところでありまして、このいわゆる欠格事由の規律を今後の新しく見直される交代の局面においてどのように及ぼすか、また及ぼさないかということについて論議を深める必要があると感じられます。   4点目でございますけれども、いわゆる交代の審判を裁判所に申し立てる者、その資格をどの範囲の人に認めるかということについて、現在の解任の審判の申立人として規定されている範囲と同じでよいかということについても、交代の事由を見定めることと並行して、改めて検討されなければいけないと感じられます。   5点目でございますけれども、この交代を望む申立てを裁判所に対してする際に、単に今いる人が適さないということ及びその根拠となる事由を示すことでよいか、新しい後見人として具体的にこの方が考えられますという後任者に関する意見を添えて申立てをするということまで望まれる、それをしなければいけないという仕組みにするかどうかということについても、次回の検討に向けて委員、幹事の間で御検討いただければ有り難いと感じます。喩え話を申し上げますと、日本の憲法は内閣総理大臣をはじめ内閣を交代させるのに、衆議院が単純な普通の議決手続で不信任の決議を可決すれば、衆議院が解散されない限り内閣は交代させられることになりますが、ドイツ連邦共和国の基本法の仕組みのように、次の首相はこの人になることが考えられますということを示した上で首相は交代してくださいということを求める仕組みを採っているところもございます。あれと似たようなアイデア、発想のことというものを、ここで考えている解任についてどういうふうに考えていったらよいかということについても、最終的に規律を整えていくに当たっては考えなければいけないと感じられるところでございます。   本日の委員、幹事の御議論を踏まえて、更に論議を深めていただくための部会資料を次の機会に向けて用意することといたしますから、引き続き御検討いただければ有り難いと考えます。   先に進みます。成年後見人等の職務及び義務について検討をお願いすることとし、部会資料4の第2、成年後見人等の職務等のうち1番、成年後見人等の職務及び義務について御審議をお願いいたします。この部分について事務当局から説明を差し上げます。 ○木田関係官 部会資料4、5ページからの第2の1、成年後見人等の職務及び義務について御説明いたします。   現行法では、成年後見人等はその事務を行うに当たり、本人の意思の尊重及び身上配慮の義務を負っているとされています。そして、この事務とは法律行為を指すものであり、基本的には事実行為は含まないとされています。また、成年後見人等は一定の財産の管理に関する義務を負っています。このような職務及び義務に関する規律について、法定後見制度の要件や効果の見直しをすることとした場合に、それに伴い見直す点があるかということについて御議論をお願いしたいと存じます。なお、義務の内容を検討していただくに当たりましては、義務違反となる具体的状況や義務違反の効果を踏まえつつ御議論いただけますと幸いです。 ○山野目部会長 1番の職務、義務のところについて説明を差し上げました。この部分について御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○小澤委員 ありがとうございます。成年後見人が身上配慮や本人の意思の尊重、財産管理に関する義務を負うことに異論はございません。ただ、適切な時期に必要な範囲、期間で制度を利用することを可能とした場合の成年後見人などの義務については、付与がされた代理権等の範囲で一定の義務を負う旨の規律を導入するなどの方法によって、本人に必要な範囲で個別的に付与される権限と切り離して、広範で曖昧な義務を成年後見人等に負わせることがないよう留意した内容の規律を設ける必要があるのではないかと考えています。   財産管理上の義務に関しては、前回部会でも発言をさせていただきましたとおり、成年後見人に財産管理に関する代理権が付与されていないケースでも、財産調査の権限を付与するなどの方法によって、成年後見人が就任した際に本人の収支状況や財産状況を正確に把握できるような制度を設ける必要があると考えています。したがいまして、成年後見人に財産管理に関する代理権等の権限を付与するかについては、必要性に応じて個別の権限として付与する場合であっても、事案によってはその必要性を判断するために包括的に財産調査を行う権限を付与する制度が必要だと考えています。 ○野村幹事 今の小澤委員のおっしゃったことに関連しまして、実務の観点から2点、問題提起したいと思います。   具体的な法律行為についての取消権又は代理権を付与された後見人の義務は、与えられた権限の範囲内に限定されるかということについてなのですが、現行の保佐、補助類型では、保佐人、補助人は付与された代理権の範囲で財産管理権もあり、その範囲で善管注意義務を負うと解されています。他方で、代理権が付与されていない保佐人や補助人にも後見開始や補助開始又は保佐開始の申立ての権限があって、それは権限があるというだけではなくて、適切な時期に申立てをしなければ何らかの義務違反に問われる可能性は全くないともいえないと思われますが、この点についてどう考えればいいかというのが1点です。   2点目は、財産管理上の義務について、例えば1,000万円の定期預金1口の管理、処分等の代理権しか付与されていない保佐人は、代理権、財産管理権を付与されていない他の財産については現状、財産目録の作成も求められていません。しかし、権限を付与されている1,000万円の定期預金の管理、処分等を適切に行うためには、他の財産の状況を把握している必要があります。他の財産の状況が分からなければ、権限を付与されている財産の適切な管理、処分はできないと感じています。この点についてどのように考えるかということが2点目です。 ○根本幹事 私の方からは、そもそもの職務ないし義務の内容のところについて1点申し上げたいと思います。   今回の改正において御本人の意思を優先するないし意思決定支援を重視していくということを改正理念に置く場合には、何らかその点をこの義務規定との関係においても反映させるということが望ましいのではないかと考えています。ただ、意思決定支援を義務化するということではなくて、御本人の意思を優先するべきだという点をいかにこの義務規定に置いていくのかということになろうかと思っていますけれども、ただ、違反状況というところで言えば、結果責任ではなくて、基本的にはそのプロセスを問題にするという内容にするべきではないかと思っております。その義務や負担が後見人にとって過大とならないようにするためには、その判断過程を審査して、効果は善管注意義務違反という形で整理をしていくということが一つ考えられるのではないかと思っております。 ○星野委員 今の根本幹事の意見と私も全く同意でして、今回この見直しが始まっている大きな目的の一つとしては、いわゆる858条の身上配慮義務の解釈が、後見人の成り手であったり、あるいは成り手というだけではなくて、対象となる被後見人等の状況によって様々異なっているという現状が問題になっていることかと思います。それで、異なるのは致し方ないのですが、今お話があったとおり、意思決定支援にどう向き合うかということが問われているところを規定する必要があるというのがまず1点目です。様々なガイドラインが出ており、これは後見人だけが行うものではなくて、意思決定支援というのは関わるチーム、支援者、全ての人が行う、それぞれの立場で向き合っていく必要がありますので、後見人だけが遵守するということではなく、意思決定支援というものが浸透して、そういったことを共有しながら行うという、まず前提が求められていると思っています。   2点目ですが、今の義務違反のところなのですが、結果責任ではなくプロセス重視というところを、これが民法の中でどのように規定できるかは難しいと考えますが、専門家会議等でも後見人等の免責という話も出ておりました。意思決定支援を尽くした結果、責任を問われるということについての免責というところを考えていく必要があると思っています。結果として本人にとっての不利益、客観的に見て不利益ではないかとか、リスクが大きいのではないかということが起こったとしても、プロセスをしっかりと踏まえているというところで免責されるという規定も必要ではないかと思っています。逆に言えば、結果がよかったから問題ない、今正に行われている多くの事案はそういう傾向が私は強いのではないかと思うのですが、プロセスを踏まずに、第三者的に見て、客観的に見て、結果がよければいいという考え方を改めることが、この民法改正の中での議論でとても大事なことではないのかと思っております。 ○山野目部会長 根本幹事と星野委員からお話を頂きました。   引き続きほかの委員、幹事の御意見を伺ってまいります。   根本幹事と星野委員のお2人は、お話を伺っていると、現行の858条に不満なのでしょうか。どのように規律文言を変更すればよいものでしょうか。ここは法制審議会でありますから、民法をはじめとする民事法制の規律文言の変更のための審議を進めていく必要があるということを、根本幹事、星野委員に限らず、全ての委員、幹事において当然御承知おきいただいているところでありまして、その問題意識を踏まえて引き続き御意見を承ってまいりたいと考えます。いかがでしょうか。 ○佐久間委員 私の意見ということではないのですが、根本幹事と星野委員のお話を伺っていて私がイメージしたのは、858条について、「事務を行うに当たっては」、成年被後見人だとして、「成年被後見人の意思の決定を支援し、その決定された意思を尊重し」と、いうふうな感じになるのかなとは思いました。ただ、意思の決定の支援をし、というふうな文言を仮に入れたとして、それが尽くされたかどうかというのは一体、プロセス重視といっても、どういうふうにして分かるのかな、結果でしか出てこないのではないかな、という感じは受けました。単に印象だけですが、申し訳ないです。 ○山野目部会長 御意見というか、感想を承りました。 ○青木委員 まず、個別の代理権になったときの義務がどうなるかという観点について、先にお話しします。今回、個別の代理権の付与を中心にすることになれば、身上配慮義務も本人意思の尊重も、いずれも付与された代理権等との関係でどう尽くすかという問題であって、包括的に、あるいは、属人的に、本人の生活全般を見渡さないといけないという義務が当然に生じるものではないという整理が重要ではないかと思っています。もちろん実際の具体的な職務としては、現在、チーム支援というのが非常に重要視されていますので、本人をめぐる支援者の皆さんと連携をしたり情報共有をしたりということは必要であり、それは身上配慮義務の一環だと位置付けられると思いますけれども、それも飽くまでも付与された権限との関係で、適切にそれを行使するために必要な連携や情報共有をするという位置付けになるのではないかと思っています。   なお、身上配慮義務の関係なのですけれども、成年後見制度利用促進法では「身上保護」という言葉を使っておりまして、それ以来、様々な場面で「身上保護」という言葉が流通をするようになっていますが、この点について、用語を統一するのかどうかということも検討した方がいいのではないかとは思っているところです。   次に、本人意思の尊重の関係ですけれども、「在り方研究会」報告書記載の四つの問題点の一つとして、自己の意思に反してでも後見人が代理、代行ができるという点を何とかしなければいけないという問題提起にこたえるためには、今の858条の本人意思尊重義務は、このままでは十分ではないと思っています。これは、身上配慮義務とともに善管注意義務の敷衍だと位置づけられていまして、それは結局は後見人の広範な裁量の中で判断されることとなりますので、裁判所としても、その義務履行状況について評価判断することも難しいという状況にあります。やはり「自律の保障」として、本人の意思決定支援を尽くした上で意思決定されたものに従う、それでも意思決定が難しいときに代理、代行による保護を図るというこの理念や観点を今回しっかり明確にするという意味で、本人の意思決定をしっかり支援をして、その表明された意思には原則として従う、という内容の義務規定を盛り込む必要があるのではないかと思っています。   「自律の保障」の内実は二つあると思いまして、一つは代理権付与の必要性を判断する段階で、本当に自ら意思決定することができないのかどうかという、付与の段階で、当該項目について意思決定支援により自ら意思決定できないのかということを必要性の考慮の中で検討するというところで検討されるのが一つ。もう一つは、代理権等が付与された後の段階でも、その代理権等の行使に当たっては本人の意思、本人の意向、本人の推定的意思や本人の主観的な利益というものを十分に考慮した上で代理権の行使をしなければいけないということです。意思決定支援自体は、後見人だけがするわけではないわけですから、意思決定支援の経過に後見人も参加した上で、そこで確認できる本人の意向や推定的意思をしっかりと反映して代理権行使をしなければならないという規定を設けることがいいのではないかと思っています。   この場合の具体的な義務違反の効果については、一つはどうやって義務違反を認定するかという点については、現在の運用の中で、例えば居住用不動産の売却許可の申立てのときに、本人にどんな意思決定支援や意思確認をした上で売却することとしたかを裁判所に資料を出す工夫をしている例があります。このように、代行決定にあたって本人の意思をどのように勘案したかをレポートするというような運用によって義務履行状況を判断していくというのが一つあるのではないかと思っています。   そして義務違反の効果としては、本人との関係では、職務違反となり、今後後見人を継続をするかどうかというところにはつながってくると思います。ただ、対外的に、その義務違反が、具体的な代理権行使の法律効果にまで及ぶこととするのは難しいと思っており、本人と後見人との関係での職務違反が問われるところにとどまると考えています。 ○竹内(裕)委員 ありがとうございます。今、青木委員や星野委員がおっしゃった理念については賛同するところです。ただ、条文の858条を変える必要があるかどうかについては、弁護士の中にも、これは行為規範として維持ということでよいのではないかという意見もあるところです。というのは、理由としては、この部会でもなかなか、本人の御意思というのが変わり得る、変化があるというようなところで、そういったものを明文化するのはどうかというところが1点。また、先ほど意思決定支援というのはチームで行っていくということは、それは私もそうだと思います。ここで後見人の義務というところにその意思決定支援義務とまで置いてしまうと、後見人だけがその義務を負うかのような、そのような見掛けといいますか、にもなり得るのではないかというところが懸念されまして、この条文についてはこのまま維持という考えもあるということを御紹介したくて発言いたしました。 ○根本幹事 先ほど、現行の858条の意思尊重義務に不満なのかというお尋ねを頂きましたので、私なりの答えを申し上げます。先ほど青木委員からもありましたけれども、今の意思尊重義務というのは結局、後見人の裁量の部分について、言わば裸の比較衡量がされていると捉えています。例えば、全く意思決定支援をしないとか、若しくは御本人の意思の確認に対して明白な事実誤認があるですとか、そういった裁量の部分を何らか規律する、本人意思を優先するということを裁量の中で規律していくということが考えられるのではないかと思っております。行政法ですとか、若しくは会社法等における裁量判断の判断過程の審査についての考え方を何らか転用ないし応用できないかということを考えているということになります。   先ほど竹内裕美委員からありました、御本人の意思が変わり得るというところは、確かにそのとおりなのではありますけれども、だからこそ結果責任ではなくて判断過程の審査ということになるのではないかと考えております。 ○山野目部会長 弁護士会の先生方にお願いですけれども、様々な御議論が会内におありのようですから、是非ここで活発な御意見を御開陳いただくとともに、会内においても御議論を深めていただきたいと、御労苦の多い作業であるとは想像いたしますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。 ○野村幹事 意思決定支援について意見を述べさせていただきます。意思決定支援については、実務に定着しているとはいえない状況です。この意思決定支援を実務に定着させるためには、少なくとも意思決定支援を後見の事務の指針として、例えば858条など明文上位置付ける必要があると思われます。しかし、意思決定支援はチーム支援ですので、地域の実情によって、その意思決定支援がどの程度可能か変わってくるため、後見人の義務とまでしてよいかどうかは検討が必要と考えています。 ○佐久間委員 最初に、自分で元々言おうと思っていたのと違うことを申し上げますけれども、チーム支援というのを何度も聞くのですが、それは理想的には全ての事例においてそのようになればいいとは思うのですけれども、現実を見て、全ての後見等の対象者がチーム支援を受けられるとは限らないので、チーム支援を前提とした議論というのは普遍性がないのではないかということを申し上げておきたいと思います。   その上で、保護の在り方が代理の場合と同意を与えるという場合とでは、やはり大分違うのかなと思っています。代理は代理人に任せるというのが本来の姿であり、本人の明確な意思に反することはもちろんできないというか、すべきでないということにはなっておりますけれども、任せるのだというところをもし取っ払うのであれば、それなりの理屈がやはり要ると思います。全然理屈がないとは思っておりませんで、任意代理の場合は本人がいつでも自らその代理人に指図等をすることができる状況にある、したがって、そのような指図が飛んでこない限りは委ねられた裁量を、善管注意義務に従ってですけれども、行使すればよいというのに対し、成年被後見人等の場合は、そこが少し私は悩ましいなと思うのですけれども、意思を尊重するというなら本人が指図を出せよ、と言ってもいいのかなと思わないわけではないのですけれども、取りあえずそこは置いておいて、本人は保護の対象者でもあるという観点からいたしますと、本人の指示待ちというのはよくありません、任意代理とは違うのです、という理屈立てで、まずは本人の意思または意向を、決定支援をしてなのかどうかは分かりませんが、積極的に問えと、そういう行為規範を立てるということはあり得るのかなとは思います。   ただ、では858条の文言を変えなければいけないのかというと、意思を尊重する前提としては意思が分かっていないといけないのであり、それは先ほどの話ですけれども、消極的に待っているだけでは意思は分からないはずなのであるから、意思尊重義務の前提として意思を確認するというのですかね、意向かもしれませんが、それを確認する義務というものがここに含まれています、という整理で問題はないのではないかという気が私はします。すみません、繰り返しになりますけれども、現実の意思を尊重するのが当たり前なのだというのが、代理の観点から行くとそうではないはずだということを、まずは申し上げた上で、今のように意見として申し上げます。   これに対して同意の場合は、本人から既にアプローチが当然あるわけですので、これは同意を与える、与えないに関しましては明確に、こういうことをしたいという本人の意思は表明されているはずなので、それを拒む理由、否定する理由があるのかということをきちんと判断すればいいのだと思います。同意の場合は858条で特に問題にされていないと思いますが、代理の場合は858条にいうような意思尊重は当たり前のことではないのだ、ということを少し発言させていただきます。 ○青木委員 代理についてですけれども、任意代理だったとしても、我々弁護士であれば依頼者の意に反してやれば、依頼者との関係でいえば損害賠償の対象になるわけであり、委任者との関係では、やはり本人の意思をしっかり聴いて確認し、委任の趣旨に従って委任事務をしなくてはいけないというものであり、やはり本人の意思を代理権の行使にあたり十分に考慮するというのは重要な義務規範になると考えています。さきほど佐久間委員がおっしゃったことは、対外的には、本人の意思を聴こうが聴くまいが任せられているのだから法律効果は有効になる、という点ではそうだと思いますけれども、対内的には違うのではないか。そのことについて、今回ここで自己決定の尊重義務として議論していると思っております。   それから、同意権・取消権につきましては、前回の部会において、本人が行使する場合、本人の同意を得て第三者が行使する場合、ということについて議論がありましたけれども、そこの議論に対応する義務になると思っていまして、同意権、特に取消権の行使に当たって本人の意思を尊重する義務というのは、第三者が取消権行使するについては、原則として本人の同意をもって行うということをもう少し詰めた検討をすることで、本人の意思を反映していくということにつながると思っています。 ○上山委員 佐久間委員の話とも関連する点を2点と、別の点を2点、お話しさせていただきたいと思います。   まず、本人の意思あるいは意向の拘束性という点に関してですけれども、現行の仕組みでも、保佐や補助のような本人の同意をベースに権限が設定されている場面については、任意代理に近い取扱いができる可能性があり得るのかなと思います。逆に、成年後見類型の場面にどこまで本人の意思あるいは意向の拘束力を認めるのかというのは、佐久間委員の御指摘のように、議論の余地があるだろうと感じました。   それから、意思決定支援との関係で、これも佐久間委員の御発言と関連するのですけれども、私は、権限の行使に際して推定的意思を含む本人の意思を確認しなければならないという趣旨の明文の規定を置く方がベターではないかと感じています。確かに現行の858条の本人意思尊重義務の中で、本人の意向ないし意思の確認まで解釈論として読み込めるというのはそのとおりだと思うのですけれども、現在の実務上、必ずしもそういう行動がとられていないという側面があるようですので、念を押す形にとどまるのかもしれませんが、私はこの点は明確にした方がよいのではないかと考えています。   3点目、仮に権限の出し入れをできるという仕組みを一部でも導入する場合に、後見人がその権限の出し入れの必要性を認識した場合には、そのための手続について申立てを義務付ける規定を、これも同じような趣旨から、導入してもよいように感じました。これも現在の善管注意義務や、あるいは身上配慮義務の解釈論としても、一定範囲で義務があると解釈することはできるとは思うのですけれども、この点も現在の実務を拝見している限り、必ずしも機動的に権限の変更等が申し立てられているとは感じられないような場面もあるかと思っておりますので、ここも明確にすることを検討してもよいのではないかと思います。   最後、4点目ですけれども、ここでお話しするのは適当でないかもしれませんが、いずれかの機会に医療同意権などの身上保護に関する決定権限の位置付けについて、改めて議論する機会を設けていただきたいと感じています。 ○小澤委員 ありがとうございます。本人意思尊重義務についてですが、成年後見人は本人の意思を尊重するように心掛けることは当然重要だと考えておりますが、本人の置かれている状況によって、本人の意思を最優先にはできないこともあると思っています。本人の意思尊重義務は訓示的な義務として、この義務に違反したとしても本人や相続人からの損害賠償の対象にはならないような規定にする必要があると考えています。 ○山下幹事 ありがとうございます。私は意思尊重義務や身上配慮の義務について、少なくとも同趣旨の規定を置くべきだと思いますが、先ほどの論点でありました後見人の交代等との関係で、もしこうした義務の違反を交代の要件とするのであれば、とくに意思尊重義務については具体的な行為指針のようなものが入るということが望ましいのではないかという気がいたします。   そういう意味では、意思尊重義務の具体的内容として、意向の尊重、あるいは意向の確認等をするべきだという考え方も一つあり得るかなと思います。さらにもう一つの考え方として、先ほどのチーム支援とも関係しますが、後見人が本人の意向確認について周囲の他の支援者の意見を聴かずに行動しているというような場合に、もちろん最終的には本人の意思尊重義務違反という評価になることが多いのでしょうけれども、それ以前に、独自の義務違反として捉えるというのもあり得るかなとも考えております。意思尊重や身上配慮とは別に、他の支援者との協力義務のようなものを置くということになるのかもしれません。意思や意向を確認するということの延長として、そういう考え方もあり得るかなと考えた次第です。 ○沖野委員 ありがとうございます。少し思っているところを述べたいのですけれども、現在のこの規定についてです。説明をしていただいたところでは、また規定の位置なども考えますと、法律行為についての一定の権限行使の指針として書かれているということなのですけれども、ここで書かれている意思を尊重するとか、あるいはその生活等の状況について配慮するというのは、もっと一般性を持った職務遂行の基準ではないだろうかと思っております。   取り分け今回、意思尊重というか、意思決定について従前以上に御本人の意思というものの重みというのをもっと正面から捉えるべきだということを考えたとき、意思尊重という考え方は非常に高次の後見人が職務を遂行していくための指針ではないのか、あるいは基本ではないのかという気がしまして、そうしたときに現行法のように、これこれの事務を行うに当たってはという、その妥当する事務が一定程度限定されたような形で書かれているというのが果たして適切なのだろうかと少し感じております。むしろ、その職務を遂行するに当たってはとか、その権限を行使するに当たってはとか、もっと一般的な形で基本的な考え方として出した方がよくはないのだろうかということです。   そうしたときに、規定の位置が858条でいいのか、それとも後見人の事務の冒頭に、その事務を行うに当たっての基本理念というような形で出した方がよくはないだろうかと、これが持つ位置付けというのをそういうものとして考えるべきではないのだろうかということです。   そうしたときに、意思の尊重ということと、意思確認という話なのですけれども、また、意思の尊重のためには意思を確認しなければいけないということですが、意思尊重というのがやはり最も大事ではないかと思います。意思尊重で十分かという問題はあるかと思いますが。そうだとすると、現行法のような意思を尊重し、かつ何々とした上で、意思尊重のために何をしなければいけないかということとして、例えば2項などで、相当な方法でその意思を確認しなければならないとか、確認するよう努めなければならないとか、そういったもう少し具体的な行動規範があって、どういう方法であれば望ましいのかということの中に様々な方法があるというようなことが考えられるのではないかと思ったところです。   それから、3点目なのですけれども、これも非常に大胆かもしれないのですが、今までのお話は、意思確認をするかというようなことについては、飽くまで内部関係で適切に本人との関係で、言わば委任事務処理的な部分が義務として履行されたかということであり、対外的な権限には全く関わらないということでした。取引の安定ということから考えても、それから、特に代理権の範囲などが非常に個別化されていくとなりますと、限定された、そもそも代理権の範囲としてここまでだということにもなっておりますので、それでいいのではないかという感じもするのですが、他方で重大な善管注意義務違反といわれるような話ですとか、明らかに本人の意思に反するような形で行使されているという場合は、例えば本人の取消権、誰が取消権を行使するかというような問題はあるのですが、そういう形で対外的に反映するという効果というのはおよそあり得ないのだろうかということも気にはなっております。   ただ、元々重大な善管注意義務違反で行為の効力に影響するかというのは、それ自体非常に難しいし、それは善管注意義務では無理ではないかということも言われておりますので、その場合には、そもそも権限の範囲というのが家庭裁判所によって明確に決められていくとすれば、もう取引の相手方はそれに準拠してよいということになるように思われるのですけれども、相手方が知っているような場合はどうかとか、相手方としても分かったはずだというような場合はどうかなども少し気になっておりまして、効果についてそういうような余地がないのかということが気になっております。   それから、意思の問題については、一方で本人の利益の問題というのがあり、それが対立するというような場面というのを考えることが出てくるのか、出てこないのか、あるいはそういった考慮を更に入れてくるという話が出てくるのかというのも少し気になっております。最後の点は具体的な法文的な発想があるわけではないですけれども、本人の意思尊重について少し関係するように思ったものですから、申し上げました。 ○山野目部会長 3点ないし4点にわたって御意見を頂きました。ありがとうございます。   今、義務と職務について御意見をお尋ねしています。義務について活発な御意見を頂いてきたところでありますけれども、今後検討を深めていくに当たっては職務の方についても御議論を頂く必要があるということも御案内をしておきます。引き続き御意見を承ります。 ○山城幹事 先ほど来議論になっております点と、今、山野目部会長から御案内のありました職務の点について、発言させていただければと思います。   一つは、今まで議論があった点の繰り返しかもしれませんが、858条については、後見の事務を行うに当たって一定の義務が課されるという構造になっていますので、事務が何かが先決の問題になっているのだろうと理解致します。そのことを踏まえて考えますと、意思決定支援を後見人の義務の内容として定めるとすると、意思決定支援は後見事務に関わる限りで求められるという、ともするとかなり射程が限られた規定になってしまうように感じました。この点は、沖野委員から御指摘があった858条の要請自体をどういう射程のものとして捉えていくのが適切かという問題とも関わるかもしれません。意思決定支援自体は後見事務以外の場面でも行われるべきものでしょうが、射程の区切られた規定が設けられることで、後見人の職務が明確になる反面、意思決定支援が行われるべき場面が限られているという印象を与えてしまうのではないかという懸念を抱きました。それが一つです。   その上で、858条ではなくてむしろ859条に関わる点ですけれども、法律行為の内容自体が身上保護に関わるものをどう扱うべきかについて、医療同意を例として上山委員から御発言がございました。これに関わって、859条は、財産に関する法律行為のみを挙示して代表権を定めるという文言になっていますけれども、これが果たして本当に後見人の職務の規定の仕方として適切なのか、つまり、この規定だけ見ると、財産管理に関する法律行為の権限しかないようにも見えますが、それでよいのかという点は、858条と併せて検討すべき点かと思います。   最後に、858条の内容につきましては、先ほど申し上げたことと少し前後しますが、本人の意思を尊重しなければならないということを明示するために、858条は現在の文言のままでよいという考え方もあり得ると考える一方で、既に御指摘がありましたとおり、後見人がどのような行為をすべきかを明示することも一つの方向性かとは考えます。その際、他の分野で論じられることとの兼ね合いで申しますと、後見人等から本人に対して適切な情報を提供するというように、意思決定をするに当たって有益であることを本人によく説明をした上で、その意思を酌むように努めるというように、既存の法理を使って内容を具体化していくことも考えるべき点ではないかと感じました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。職務の方についての御意見もお出しいただきたいと引き続き望みます。今、山城幹事からも若干お話がありました。   ほかの委員、幹事の御意見を伺います。 ○星野委員 すみません、何度も申し訳ないです。職務というところについての意思決定支援の考え方というところがあるのですが、皆様がおっしゃるとおり、これは後見人だけがやるものではもちろんなく、むしろ後見人であるからこそ難しい場面も多いので、この部分については、やはり社会福祉法なのか、それ以外のところでもいいのですが、後見人ではない方々についても意思決定支援を行うということについての、やはり何らかの規定が必要なのではないかと考えます。それがあった上で、後見人も権限を持ってはいるけれども、当然ながら意思決定支援に向き合うのだと、そして、その具体的な中身は今言われた内容で私もいいなと思いながら聞いていたのですが、ですから、御本人と向き合うということだけではなくて、意思決定支援を考えて、そこの環境をきちんと作るとか、いわゆる後見事務のガイドラインに書かれているような内容のことに取り組んでいるのかどうかというところをしっかりと見られるようにしていく必要があると思います。   チームについて、少し発言させてください。支援チームが話題になっています。ですが、もちろんチームというのはものすごく大勢の人数がいるわけではなくて、また意思決定の場面によってチーム構成は変わります。そして、チームというのは、3人以上いればチームというふうに研修などで伝えさせていただいています、御家族や身近な方も含めて。ですから、後見人が一人でやらないというところがやはり重要なので、このチームというところの捉え方も、できればここで共有できればなと思いました。 ○山野目部会長 星野委員は、たくさんの大事なことをおっしゃいました。具体的に申し上げると、一つは、本人を囲むチームが福祉の基本的な在り方として大切ですという点、これは恐らく異論のないところであろうと思います。それからもう一つは、チームであれ個々に向き合うのであれ、本人の意思を確かめて尊重していかなければならない、この領域の福祉の現場の最も根底とされるべき考え方ですと、それもそのとおりであります。  これらのいずれも大事なことが、内容として大事なことですけれども、民法に大事なことを全部書くことには困難があります。つまり、チームで一所懸命しましょうということを民法に書くことはできませんし、それから、福祉の現場の皆さんが皆、意思決定を支援してするべきですよという点も民法には書けません。民法は、成年後見人がどのようなアクションをすべきか、その振舞いの仕方を規律するということに専念します。しかし、星野委員がおっしゃったことは、広く民法を取り囲む法制全体の整備の中で民法の規律の在り方も考えていかなければいけないということを気付かせてくれたという大切な側面がありますから、御注意を引き続き踏まえて検討していくことになります。   引き続き委員、幹事の御意見を伺います。いかがでしょうか。 ○根本幹事 職務の点に関しまして、2点申し上げます。職務の範囲を考えるということは、代理権の範囲の定まり方における議論とパラレルの関係にあると思っています。つまり、代理権の範囲の議論にもありましたけれども、例えば預貯金の処分、管理といったときにどの範囲の行為までがその代理権の範疇になっているのかという議論がありました。これは同じように職務の範囲はどこなのかということに関わってくるということになろうかと思いますので、代理権の範囲ということをどのように定めていくのかということとパラレルになるということが1点です。   それは同時に、後見人の責任論という問題に跳ね返ってくる議論でもあろうかと思います。冒頭で野村幹事からも御指摘がありましたけれども、一つは申立権があるということとの関係性に配慮、考慮しなければいけないということもありますし、もう一つは、これも野村幹事も御指摘をされていましたけれども、例えば財産管理上の職務を何らか負うという場合に、ではその代理権限外、若しくは職務外についての御本人に関する情報をどこまで収集、調査するということが必要になるのかということとも関係してくるのだろうと思います。   ここは財産管理権の内容によって、その代理権の範囲の中だけのことを考えればよいのか、野村幹事がおっしゃっておられたように、例えば入所を判断する場合に、入所後の御本人の収支が赤字になるときに、御本人の資産状況も考慮した上で判断をしていくということは当然あり得るところですので調査だけの権限を付与するのか、調査だけの権限が付与されたときに、その責任の範囲はどうなるのかということを考慮しなければいけないと思います。   もう1点は、報酬算定若しくは裁判所の報告内容とも非常にリンクをしてくるという話になります。現行法上も飽くまでも財産管理上の義務は、特に保佐や補助の類型で、付与された代理権の範囲でのみ責任を負うと考えられてはいるものの、実際の報告実務においては、御本人に協力を頂くなどして、代理権限外の情報についても裁判所から報告を求められる、若しくは報告をしているという実務の現状もあります。報告実務ないし報酬算定の在り方とも含めて関係してくるということに、配慮が必要ということになろうかと思っております。 ○青木委員 先ほど、追加的な代理権や同意権の付与について申立てをすることを後見人の義務にすることも考えられるのではないかというご意見がありましたが、そうなりますと、個別に付与された代理権の範囲で職務をしている者が、本人にとってどのような代理権の付与が必要か等を全般的に、生活全般を十分に配慮し情報を集約して検討することをしないと義務違反に問われるおそれがあるとなりますと、後見人の職務としては過大な要求となり、難しい立場に追い込まれる可能性もあると思います。   もともと全般的にチーム支援がしっかりできているケースについては、適切な情報が集まってきて、申立ての必要性も十分に判断できる事案もあるとは思いますが、そうでないものもありますし、逆に親族紛争等があるなど利害対立がある事案では、本来は必要がない権限の付与まで申立てをしろと一部の家族等に求められて、それをしなかったから義務違反だと言われる可能性もあると思われます。やはり後見人からの追加付与の申立ては、権限であるということにとどめていただかないと、実務上難しいことになるのではないかということを申し上げておきます。 ○山野目部会長 成年後見人の義務及び職務について御議論を頂いてまいりました。義務に関して委員、幹事の御意見を承ってきたところを踏まえますと、現行の858条について、いろいろな整理の仕方はあるであろうと感じますけれども、恐らく二つの観点から問題が指摘されなければならないであろうと感じられます。   一つは、要するに後見の事務を行うに当たりこれこれの義務を負うという表現が採られているものでありますけれども、この後見の事務を行うに当たり、という文言が、一方では狭すぎるのではないかという見立てができますし、半面において、かなり抽象的な文言になっていて規律として十分に機能しないのではないかという批判もあり得るところでありまして、今後、成年後見人の権限が一言で言えば個別性、詳細性を高めていく方向で改正が行われていくということを想定いたしますと、ここの何々に当たりのところの文言について、改めてそのような見直しを踏まえた新しい規律の在り方を考える必要があるように感じられます。   もう一つは、現行の規定で本人の意思を尊重し、という文言になっておりまして、この意思を尊重するということから、現在、福祉の現場等において行われている意思決定支援を読み込むことは論理として不可能ではないと考えられますとともに、しかし、それでなお実態としては不徹底な側面があることから、その観点において何らかの規律文言の改良が必要かもしれないという御指摘がありました。取り分け、少なくとも意思を尊重するというからには、本人の意思ないし意向を確認するということは手順として法制上も明確にされてよいではないかという複数の御意見があったところです。これらの指摘を踏まえて、引き続き検討を深めていくことをお願いしてまいりたいと考えます。   もう一つ御議論をお願いした職務に関しては、今後、成年後見人の権限が個別化されていくという傾向になっていくかもしれないということを見据えて、それはそれとして受け止めるとしても、その成年後見人が本人の財産、生活の状況を把握するに際しての権限の行使に関しては、与えられた個別の権限の範囲に厳密に限定されるということでは、事務の遂行に当たって支障が生ずる側面が大きいのではないかという危惧の御指摘がありました。現行の家事事件手続法124条1項には、適当な者に調査をさせ又は臨時に財産を管理させるという仕組みがございますけれども、こういったものをヒントにして、成年後見人が与えられた権限の外郭に位置する事項についても、少なくとも調査をするような局面を許容しなければいけないという観点から、規律の見直しをしなければならないという課題があるかもしれません。   あわせて、この検討をしていくに当たっては、今後、地域社会福祉において体制が整備されていく中のいわゆる緑の機関、支援・監督機関とどのような連携を図っていくかということについても、最終的には見通しが得られることが望ましいと感じられるところでございます。   義務及び職務について御議論を頂きました。先に進みます。   部会資料4の8ページから後、2番といたしまして、成年後見人等の監督について部会資料で問題提起を差し上げています。この部分について事務当局から説明を差し上げます。 ○木田関係官 部会資料4、8ページからの第2の2、成年後見人等の監督について御説明いたします。   現行法では、家庭裁判所が直接に又は成年後見監督人等を介して間接に、成年後見人等を監督することとされており、その方法として、例えば成年後見人等に対して適時に報告を求めることがあります。このような成年後見人等の監督に関し、例えば、適切な時期に必要な範囲、期間で法定後見制度を利用することを可能とするなどの制度の見直しをすることとする場合に、それに伴って監督に関する規律を見直す必要があるかについて御議論をお願いしたいと存じます。なお、監督について検討していただくに当たりましては、主に監督の主体、監督の具体的内容の観点を踏まえつつ御議論いただけますと幸いです。 ○山野目部会長 成年後見人に対する監督について御議論をお願いいたします。いかがでしょうか。 ○小澤委員 ありがとうございます。監督を行う主体について、監督権は後見人等の選任、解任と結び付いてこそ効果を発揮するものであると考えますので、引き続き家庭裁判所が担うことが適切だと考えています。ただ、家庭裁判所以外でも監督事務の経験を経たことのある個人若しくは一定の体制を整えている法人や団体などについては、成年後見監督人等を担う機関とすることができるのではないかとも考えます。具体的には、一定の組織、体制などを有する法人を成年後見監督人に選任する、若しくはそういった組織、体制等を有する法人の事実上の監督を活用するといった方法が考えられると思っています。なお、我々司法書士は家庭裁判所への定期報告とは別に、リーガルサポートへの基本的には半年に一度、業務報告を行い、リーガルサポートが会員の業務報告を精査するということを行っています。   監督の具体的な内容については、現在の在り方が原則になると思いますが、適切な時期に必要な範囲、期間で制度利用をすることを可能とした場合の監督は、その限定された目的、権限行使に対してのみとすべきであることに留意が必要だと考えています。また、付与された権限の数や内容、本人の生活状況や財産の多寡など、事案に応じて監督の内容に軽重があってもよいと考えています。 ○星野委員 監督の主体をどうする、どこに置くかというところの前に、やはり具体的な内容についてというところで、少し意見を述べたいと思います。現在は、はっきり申し上げれば財産管理のところに偏った監督になっていると言わざるを得ないかと思っております。我々社会福祉士の場合は、一定程度の財産を管理している場合は自動的に監督人が選任されるという仕組みをとっている家庭裁判所が多いと思います。この辺りについては、職能団体でも報告を受けておりますし、そして、何か問題があったときに家庭裁判所と速やかに連携をとることで監督人選任につながるということもございますので、高額財産を管理しているという理由だけで監督人が選任されるということは今後見直していく必要はあるのではないかと思っています。さらに、今後は、今までの議論にもありましたように、後見人の職務が身上保護、意思決定支援のところに重きが置かれていくと考えられております。来年度から報告書の書式も新しくなるということも伺っております。そういうところで監督人が必要なのかどうかというところが、より判断が求められてくるのかなと思っております。   現行のところをもう一つ御報告すると、市民後見人が選任されるケースが増えている中では、監督人という立場だけではなくて、専門職が一緒に複数選任されて、そして専門職がいずれ辞任をしていくという、要は後見人が自立するといいますか、自分自身で実務が行えるようになっていく、そういう監督というものも今後もっと求められてくると思いますので、そういうことを考えますと、主体としては、もちろん家庭裁判所が基本ではありますけれども、いろいろな後見実務を担ってきた団体や個人も含めて、監督ができる体制というのが求められてくるかと考えております。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   成年後見人に対する監督の御議論を引き続きお願いしますけれども、イメージとして、今までのような非常に包括的な権限を持っている成年後見人が今後もいるとは思いますけれども、現状は制度の建前として常にそういう姿であるわけであって、それに対する監督の在り方がこれまでいろいろ課題があって、今後こういうふうにしていきましょうという御議論は、もちろんしていただかなければいけませんが、それとともに、これからは成年後見人になる人に、あなたにこの事務、この権限を差し上げますから、これをしてくださいということで動き始まった、その成年後見人を監督するという局面も目立ってくるわけでありまして、こちらの方もどうぞ視野に含めていただいた上で、新しい成年後見人の監督の在り方をどういうふうにしていったらいいかということについてお悩みいただければ有り難いです。御意見、御発言を承ります。 ○根本幹事 監督のところにつきましては、一つは監督人の監督範囲と家裁の監督範囲が同じであるのかどうかということを、まず確認する必要があると思っているのが1点です。2点目として、山野目部会長からもありましたけれども、家裁にせよ監督人にせよ、代理権の範囲ないしは職務の範囲が監督の対象というのが原則になるのだと思いますけれども、他方で一般的な指導、助言、監督というような義務というのは、どうしても残らざるを得ない部分というのはあるのだろうと思います。この一般的な義務との関係で、監督人や家庭裁判所に対しての報告の範囲というのをどのように定めていくのか、その報告実務が非常に重要になってくると思っています。監督人にせよ家庭裁判所にせよ、その情報を知ってしまえば、そこは一般的な監督義務の範ちゅうで責任を問われ得るという関係になってきますので、この点について十分な配慮が必要であると思っております。 ○佐久間委員 まず、私はそもそも包括的な権限は残した方がいいと思っているということを、繰り返しになりますが申し上げた上で、ただ、今、一般的に多分主流となっているような個別性を追求するということにした場合、一つは教えていただきたいということですが、現在の補助の類型において、ここで問題意識として記されているような監督の強化の必要性というのがどの程度あると受け止められているのか、ということを知りたく存じます。   というのは、今の補助の類型の該当者ではない、たとえば今の後見の該当者が補助と同じような形で制度を利用することになるということを見越して、この論は出てきているのだと思うのですけれども、仮に包括的な部分が残ったとしても、その包括的な権限を与えるという制度を利用しないときに、この人の判断能力はこのぐらいですよというようなことをわざわざ認定して、だけれどもその判断能力にかかわらず個別的な代理権を与えるのですよとなった場合に、能力の不十分な程度が一定以上の人については包括的な、あるいはかなり強化された監督を、今の後見に相当するような監督をするということはあり得ると思うのですけれども、そのようなことをしない場合には、現在の補助において、質問と言ったのですが、監督を強化すべきだということが必ずしも言われていないのだとすると、どうして制度を補助と同じように仕組んでいこうというときに監督を強化すべきだとなるのか、あるいはそもそも実効性あるそのような仕組みがとれるのか、ということを疑問に思いました。   その上で更に、個別的な代理を多くしていきましょうとなると、事後的な報告が中心となる家庭裁判所による監督というのは、余り意味がないというと言いすぎかもしれませんけれども、結局不適切な代理権行使が行われた後に不適切でしたねということになって、あとは損害賠償の問題になるのか知りませんが、そのような事後的措置では多分、余り十分な権限の適正行使につながらないのではないか、と思います。むしろ権限行使のところで、今の監督人にはありませんけれども、監督人の同意を得て代理せよとか、そういう権限行使の場面に介入していけるような監督者というのでしょうか、それが求められてくるのではないかと感じました。   それも含めて、できれば御本人の意向を尊重しながら事務を遂行しよう、法律行為などがされていくようにしようということだとすると、繰り返しますが、家庭裁判所による監督というのはそれにこたえられるものにはならないので、できる限り監督人を選んで関与させるということの方が望ましいと思いますが、報酬も必要になりますし、ほかの方もおっしゃったかもしれませんが、適任者を選ぶこともなかなか難しいということから、現実的かどうかは分からないところがあるとは思いますが、今幾つか申し上げた理由でなるべく、家庭裁判所の監督が要らないということではありませんが、それはもう最終的なチェックであって、行為が行われる事前の関与、あるいは行われた直後の関与、これがあるようにすることが望ましいのではないかと思っています。 ○山野目部会長 佐久間委員から多岐にわたる御意見を頂き、その中にお尋ねに当たる部分も含まれていて、現在の補助人に係る事務に関して、監督に関し何か認識しておられるような実態があれば、お教えいただきたいというお話が含まれていました。その点も含めて、しかしその点に限る必要もありませんから、広く引き続き委員、幹事の御発言を頂いていきます。いかがでしょうか。 ○竹内(裕)委員 ありがとうございます。2点ありまして、まず監督人というところに関しては財産管理の部分は選任とか解任、それと表裏一体になっている報酬決定が家裁にある以上、主体は家裁ではないかとは考えるのですが、ただ、身上監護の面においては家裁がどこまで機能できるのかというところはありまして、身上監護の面については経験を積んだ法人等が監督機関になり得ることもあるのではないかとは考えています。   また、議論をした方がいいのかなと思ったところは、今後権限を出し入れしていくに当たって、権限を増やす、拡張する場面において、例えば後見人等が拡張の申立て、権限の付与の申立てをしないとき、この監督者、裁判所とか、あるいは後見監督人等となると思うのですが、その監督者が、これは代理権を増やしてください、拡張してくださいと促す監督義務が、例えばこの851条の後見監督人の職務のところに入ってくるのかどうかというところも、今後詰めていった方がいいのかなと思っています。 ○野村幹事 適切な時機に必要な範囲、期間で制度を利用することを可能とする場合には、後見人に与えた具体的な権限の範囲内に監督は限定されるのが原則かと思いますが、先ほど権限の外郭というお話がありましたけれども、後見人に与えられる具体的な権限の範囲よりも広く善管注意義務を負うとなれば、家庭裁判所の監督もその範囲に及ぶと整理できるのではないかと思います。最終的な監督権限は家庭裁判所にあるけれども、監督人として様々な団体を活用するということはあり得ると思います。例えば、リーガルサポートでは一定の場合にリーガルサポート自体が法人後見監督を行っている地域があります。本人の状況や管理財産、後見人の能力や資質によって、どのような監督が必要かは変わってくると思います。 ○山野目部会長 野村幹事が一つ前の論点で預金の例を挙げてお話しになって、根本幹事にも引用していただいて話題になった局面に象徴されるものでありますけれども、まず、成年後見人の職務が明示に与えられた、その事項に厳格に限定されることは一応そうだとしても、その外郭といいますか隣接している事項についても調査の権限などが及ぶと仮に考えるとすると、その及ぶ部分も成年後見人の職務でありますから、その職務に対して裁判所が監督しようとすれば、監督の根拠があるというふうに話がつながってくるものでありましょうし、一つ前の話題との関連で、野村幹事がそのことを明らかにしてくださったというふうに聞きました。ありがとうございます。   引き続きお話を伺います。 ○根本幹事 先ほどの佐久間委員からの補助における御指摘についてのところなのですけれども、これは現行の実務において、報告義務があるというわけではないですが、他方で家庭裁判所からは、補助の代理権が付与されていない、例えば預貯金の代理権が付与されていないとしても、補助人が把握しているのであれば、把握できた範囲で報告をしてくださいという形で報告を求められることがあります。ここは報告義務がある、若しくは報告を求める根拠が法令上あるのかというところとは別に、御本人から任意に開示なり提示、通帳の提出等を受けて、それを含めて報告をするという報告実務は現実にはあります。先ほど山野目部会長からもありましたように、責任や範囲は限定はされているといっても、結局周辺領域というところを、裁判所としても、若しくは補助人としても、把握した方が望ましいと考えるケースはあるのだろうと思います。監督の範囲がどこまで及ぶのかという点を法令上明確にしたとしても、現実としてとどまることができるのかどうかというところは、考慮しなければいけないことにはなるのだろうと思います。 ○山野目部会長 職務の話も監督の話も、今、野村幹事と根本幹事もおっしゃっていただいたように、広がりをどこまで考えますかという問題があって、厳密に与えられた権限のところにとどまらないで、もう少し広がりを考えてその職務や監督を見ていかなければいけないかもしれませんねという話があります。それとは別な次元の問題として、佐久間委員におっしゃっていただいた時間の流れのコントロールの問題があることでしょう。比較的単発で成年後見人の権限が与えられるということになってきますと、定期報告であるとか、あるいは事後に行われることを当たり前としている報告がそれほど意味を持つか、あるいはそれのみに依存することでよいか、むしろその権限を行使する前の段階に着目し、この前の段階という事前コントロールみたいな発想についてどう考えますかということを佐久間委員がおっしゃっていただいたところが時の流れのコントロールの問題になりますけれども、そちらの方についても、なるほど考えていかなければならない課題だろうと考えますから、意見がおありの方はおっしゃっていただきたいと望みます。いかがでしょうか。 ○根本幹事 私ばかりで恐縮なのですが、現行法でも居住用不動産の処分許可というのはあるわけでして、この範囲を広げるのか、広げないのかという議論をすることもできるのだろうと思います。実務の側からは、居住用不動産の処分等は、非常に重要な手続になりますので、裁判所の事前の許可というのは必要だと私も思っています。これは改正後においても変わらないところだと思っていますけれども、他方で迅速な業務遂行として代理権の行使が求められる場面も多々ありますので、この居住用不動産の処分許可のような枠組みで処分許可の範囲をどこまで広げるべきなのか、別の許可の枠組みなのかという観点でも議論されていくことなのかなと思いました。 ○山野目部会長 恐らく佐久間委員がおっしゃったことは、推測で申し上げるよりは佐久間委員にお尋ねした方がいいかもしれませんけれども、居住用不動産の許可の規定の対象範囲を広げるというような、たくさん許可を受けなければいけないようにしますよという姿と、現在のように主に事後の定期報告が中心ですよというものの中間のところが、もしかしたらあるかもしれないねというお話だったかもしれません。つまり、許可までは要らないけれども、例えば居住用でない不動産の売却の権限を与えられていますと、これから実際に売買契約を締結するために、ほとんど契約条件は煮詰まっていて、相手方も決まり、もうあとは契約書にサインして成約するだけの状況になっていますから、そのように進めるということを事前に裁判所の方にも御案内しておきますといったような、当事者の一種、行為規範として望まれるところですけれども、そういう案内を受けた裁判所は、何か気が付いた場合には対応するかもしれませんといったような姿が、これからはもしかしたらあり得るかもしれないというお話も含んでいたかと想像します。もとより、それが今まで余り経験のない、蓄積のない領域になってきますから、関係者や裁判所から見て滑らかに進むことであろうかということは、なお慎重に検討する必要があるかもしれません。   今の点でも結構ですし、ほかの点についても御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○竹内(裕)委員 今、部会長がおっしゃった点で、実務的には許可を要することではなくても、こういうふうにしたいのですけれども御意見があればお願いしますということを、裁判所と割と密に連絡を取っていて、裁判所もそのとおりでいいですとかいうコメントを頂くようなことは実際、事実上はやられているかなというところです。 ○山野目部会長 ありがとうございます。 ○星野委員 今のご発言にプラスして、許可までは必要ないけれどもということで、恐らく多くの家庭裁判所が今行っているのは、遺産分割協議などを行う前に事前に報告をしてくださいというのが東京などでは行われておりますので、そういうものが、連絡票を使いながら家裁とやり取りしていることが蓄積されてきているのではないかと思います。 ○青木委員 今の家庭裁判所の監督は、基本的に包括的代理権のある後見類型をベースにしているために、保佐も補助も全て基本的には同じような報告をさせ、同じような監督をするということになっていると思います。これが今後、個別代理権の付与を中心に運用するようになった場合には、裁判所の監督の在り方も、柔軟に、事前に許可ないしは報告をさせるものについてはそうするとか、あるいは報告期間を、これは早めに短期間で報告させるとか、これはルーティンの1年に一度でいいとするなど、柔軟性を持たせた監督ということが必要ではないかと思います。いずれにせよ、裁判所が定期的な報告を事案毎に指定をすることによって、後見人には職務の適正化を図ろうという効果があるものでして、職務の適正化の上で重要なものになると思います。かつては2年、3年に一度の報告や報告をするかどうかを後見人の自主的判断に委ねていた時代がありますが、現在は基本的に1年に一度の定期報告をする運用になって、相当程度、職務の適正化が図られています。監督に在り方については、現行規定において、裁判所が柔軟にできる枠組みの規定になっていますので、今後の具体的な監督の在り方は、この枠組みの中で、新たな代理権の付与の在り方によって運用していくことができるものと思います。   それから、監督の主体の問題については、どうしても費用の負担の問題がありまして、家庭裁判所以外のどのような機関が監督をするにしても、その費用負担ということを本人の負担にすることでは、利用をしにくくするということにつながるというのが最大の懸念だと思います。監督の主体を変えるということになれば、やはりその費用負担を本人以外でどう確保するかということとセットで議論をしなければ、利用の促進にはつながらないし、必要な時機に適切に利用する制度にもつながらないのではないかと考えています。   それからもう1点、近時、利用促進の体制整備との関係で、市町村や中核機関が行うのは助言、支援です、裁判所が行うのは監督ですといって、その役割分担の線を引こうとする議論がされていまして、そのこと自体は連携の上で大事なのですけれども、ややもすると、裁判所はあくまで違法監督、職務の適法性について監督するのが役割であり、後見人への助言や指導というところについての役割を限定し、それは市町村や中核機関の役割としようということになっているかなという心配があります。実際には、親族後見人等については、助言、指導によって適正な後見人としての職務をするということが重要な局面というのはありまして、そこについては裁判所の役割に期待すべきことも大きく、やはり裁判所の監督の内容というものを、もう少し、適正な後見の職務に対する助言、指導も含めて考えていくという位置付けが必要で、それは、もちろん条文にどう書くかということには直接つながらないのかもしれませんが、監督の在り方という意味では重要な点ではないかと思っています。 ○山野目部会長 青木委員が最後におっしゃった、裁判所が監督をする、行政は支援ないし助言をする、その言わば中間のようなものというものが、むしろ親族後見人から見ると一番役に立つし、望まれているもので、客観的に見ても運用の円滑をもたらすと思いますし、それは恐らくこれから、なかなか夏前には難しいかもしれませんけれども、社会福祉法制の整備の構想を固めていく中で、いわゆる緑の機関と呼んできたものが、狭い意味の監督でもないし単純な支援でもない、その言わば両方をにらんだような役割を果たしていく、正に名称も今まで支援・監督機関と呼んできたものでありますから、そこをどういうふうにデッサンを描いていくのかということを明らかにしていく中で、その段階でのこちらの民事法制の検討と両にらみで、また検討を深めていくということになるであろうと思います。大切な観点をおっしゃってくださいました。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○常岡委員 後見監督人の職務ですけれども、民法の立場としては、もちろん事後的な事務の監督の報告とかそういうことも含んではいますが、ただ、その前段階として、例えば利益相反行為で、被後見人の代わりに行為をする立場であるとか、あるいは急迫の事情がある場合に必要な行為をするということも後見監督人の職務としています。そういう役目をそもそも民法は成年後見監督人について予定していて、同じ条文は保佐と補助の場合にも準用されています。そういうことを考えたときに、その職務は決して家庭裁判所のパラレルではなくて、もっと積極的に関わっていく、事前の段階から後見職務に不正や不適切なことがないように、ということを本来予定していたと思うのです。実際にそれらの活動を成年後見監督人がどの程度しているかは、私は寡聞にして分かりませんけれども、民法の立場としてはそういうものとして位置付けているのであって、そこはやはりそのような民法の発想自体は尊重すべきところがあるのではないかと考えています。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   ほかに成年後見人に対する監督について、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは、本日、成年後見人の監督についても御議論を頂きました。途中でガイドを差し上げましたけれども、監督がどこまで及ぶかという広がりの問題、それから監督の具体的な態様として事後的報告、定期報告といったようなものが主流を占めてきた従来の経過は経過として踏まえつつ、今後は事前のコントロールとでもいうべき論点があるのではないかという新しい問題提起、時の流れの観点からの問題提起も頂戴したところであります。これらを整理して、更に次の機会に議論をお願いすることにいたします。   部会資料4の成年後見人に対する監督、2番のところまでの審議をお願いいたしました。   ここで休憩をお願いいたします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開いたします。   続きまして、部会資料4の10ページから後、3といたしまして、成年後見人等の報酬について御審議をお願いいたします。この部分について事務当局から資料の説明を差し上げます。 ○木田関係官 部会資料4、10ページからの第2の3、成年後見人等の報酬について御説明いたします。   現行法では、家庭裁判所は成年後見人等に対し、成年後見人及び本人の資力その他の事情によって、本人の財産の中から相当の報酬を与えることができるとされています。現行法の仕組みに対しては、成年後見人等の報酬の決定について可能な限り予測可能性の高い制度にすべきといった意見や、成年後見人等に報酬請求権を認めた規定がないことは、成年後見人等の多数が専門職で報酬の付与を受けている現在の実態と合っていない旨の指摘があります。このような指摘を踏まえまして、部会資料11ページ以下の3、検討に記載している成年後見人等による報酬請求、報酬額の算定の在り方などについて御議論をお願いしたいと存じます。 ○山野目部会長 ただいま説明を差し上げました成年後見人等の報酬に関して御意見を頂きます。いかがでしょうか。 ○小澤委員 ありがとうございます。成年後見人等に報酬請求の権利を認めるべきかについては、現行制度において特段の不都合は生じていないと感じていますので、あえて現行の規律を改める必要はないと考えています。ただ、この点については報酬付与に係る家庭裁判所のこれまでの実務の運用が、報酬付与を申し立てる成年後見人等からおおむね妥当と評価されているからということが前提での意見ですので、現在の家庭裁判所の実務の運用に今後大きな変更がなされることがあるのであれば、現行の規律を改めることも含んだ議論が必要になると考えています。また、報酬額の算定の在り方については、確かに予測可能性を高めるという視点も大事かとは考えますが、一方で予測可能性を高めるためには、ある程度の金額が広く一般の市民の方にもイメージできることが必要であるところ、今後は後見制度がより多様な形態になることも考えますと、具体的な報酬基準を民法上に設けることは困難であるというふうな意見を持っています。 ○佐保委員 ありがとうございます。11ページの27行、28行に記載のとおり、約8割の成年後見人等が親族以外であることを踏まえれば、現在よりも報酬決定の予測可能性を高めることには賛同いたします。その上で、後見終了まで成年後見人の業務量にかかわらず一定額の報酬を支払い続けることは、必ずしも被後見人の利益に資するとは言い切れないため、以前の部会でのテーマでもある、後見の開始、終了の要件や、その際の本人同意の在り方、期間の設定なども踏まえて総合的に検討すべきではないかと考えます。   なお、前回も申し上げましたが、報酬等の負担軽減については、そのニーズを十分に調査、把握した上で支援の在り方を検討すべきと考えます。 ○上山委員 3点申し上げます。まず1点目ですが、資料の11ページに記載されています現行法の規律の前提とされている、公益性があるから無報酬だという考え方、そういう図式には個人的に疑問を感じます。公益的な仕事だからただ働きでいいということには多分ならなくて、公益性があるということは、例えばその報酬の原資をどこに求めるかという議論にはつながるかもしれませんが、繰り返しますが、公益性があるから直ちに無報酬でよいという前提には疑問を感じます。   これとも関連しますが、基本的には私は有償制原則へむしろ転換するという考え方もあり得るのではないかと感じています。資料の方にあります、現在既に新規選任の8割が専門職又は法人という報酬を前提にした主体であるということもありますし、それだけではなくて、親族後見人のシャドーワークについて、全てを親族間の扶養の問題として吸収し切れないのではないかというか、むしろ考え方としては、単純に吸収してしまってはいけないのではないかという感覚を持っておりまして、この点からもむしろ、仕事の内容によるかもしれませんが、有償制を原則とする方が好ましいような気がしています。   他方で透明性との観点で言うと、小澤委員が指摘されていたように、多分報酬算定の詳細なルールを民法典の中で規律するというのはなかなか技術的にも難しかろうと思いますので、民法典の中では現在の無償原則から有償原則へ転換する趣旨の規定を置いて、具体的な算定基準については省令になるのか、報酬に関する単行法になるか分かりませんが、民法の外で詳細な規律を置くという考え方があり得るのではないかと感じています。 ○佐久間委員 私は今の上山委員とは少し違う考え方でして、まず、現在の無報酬の根拠は、資料11ページ21行目に書かれているような公益的な意味が強いから無報酬なのだ、ということではないのではないかと思っています。委任の受任者は無報酬ですし、事務管理は当たり前ですけれども、信託の受託者だって無報酬ですので、他人の事務を処理する者についての私法の原則は無報酬なのだと思います。その根拠は何かと言われると、恐らく沿革と言うしかなかろうとは思うのですけれども、無報酬だと。その上で、例えば、商法512条の適用がある範囲では、それで何ら問題なく処理されて、委任とか信託の場合だと商法512条でうまくいくということが多かろうと思うのですが、この後見の場面は商人が事務をされるわけではないので、そうもいきません。けれども、類推適用みたいなのがあるのですという共通の理解があってもいいかとは思うので、それでうまくいっているのかなと。現在の民法862条には、家庭裁判所が報酬を与えることができると書かれているので、商法512条とは違う書き方ではありますけれども、実質上問題がないようにされているのではないかと思っています。そのようなことから、原則は無報酬であるべきであるところ、ただ、その原則の適用場面が実は例外よりも随分少ないという、そんなことは多分いくらでも法律の適用においてはあるはずなので、そのような考え方でいいのではないかと思っています。   その上で、その報酬の与え方について、12ページの13行目かな、一定の法定後見の事務をすれば一定額の報酬請求権が発生する、というのは、分かりやすさの点というか、予測可能性を高めるという上では極めてよい考え方だと思うのですけれども、その一定の事務というのが何を指すのかということが千差万別であり、よく収用委員会とかそんなので鑑定を依頼したら算定表があるという、そういう基準を作れるのであればいいですけれども、この場合にはそんなものは絶対作れないので、この考え方は難しいのではないかと思います。そうすると、予測可能性はそれほど高くないということは言わざるを得ませんけれども、862条のようにし、でも件数が積み上がっていったらこんな場合はこのぐらいという相場というのが出てくるのではないかと思うので、それがある程度必要なところに公表されるような仕組みが、法律の世界ではありませんけれども、できればいいのではないかと思っています。 ○山野目部会長 若干の論点の整理を差し上げます。報酬のところについては、二つの大きな論点があります。報酬請求権というものを法制上どういうふうに位置付けていくかというお話が一つ、それから、そのことともちろん関わりがありますが、報酬の額の可視化、透明性の向上という論点がございます。ただいま上山委員と佐久間委員との間で意見の応酬に当たるようなやり取りがあったかもしれなくて、佐久間委員は上山委員と意見を異にし、というふうに話をしておられました。それほど異なりますかね。   若干の整理ですけれども、実は上山委員の方から有償制原則を導入すべきだとおっしゃっていただいて、それは一つの意見としては理解ができますが、現行の862条の規定文言を変えないと有償原則の方に移行できないかというところは、もう少し検討の必要があるかもしれません。半面、佐久間委員の方も、無報酬とされるべき場合が広汎に拡がっているとおっしゃっているわけではなくて、弁護士や司法書士、社会福祉士のような商人ではない事業者についても、商人の報酬請求権を定めている規定の趣旨を推及することができるという理解が成り立つならば、それを踏まえた運用がされているというのが現在の運用実態の理解ではありませんかとおっしゃっているものであって、その限りでは、かなり規定の在り方も、あるいは運用の実態についての理解も、それほど隔たってはいないものではないでしょうか。   更にその話を続けると、親族が後見人になっている場合についてどう考えるかということについては、佐久間委員の方から明示に何も今おっしゃらなかったし、上山委員の方からは、親族だからといってい無償であるというのが当たり前であるという考え方は、これから改えていきましょうという積極的な御意見の提言がありました。これは恐らく、引取扶養の一つの特殊な形態みたいに理解して、だから報酬は要らない、みたいにやってきたところが、それでは捉え切れないでしょうという方向に考え方の転換をしていくということは十分にあり得て、これも現在の862条の規定文言の下で十分にあり得ることであろうと思います。ですから、それほど険しい意見の対立があるのではなくて、もう少し委員、幹事の御意見を聴いてみたいとも感じます。   それから、報酬の額の可視化につきましては、佐久間委員がおっしゃるように、確かにカチッとした計算式みたいなものを用意するということは難しいかもしれませんけれども、最高裁判所事務総局の御努力の積み重ねというものがここのところ行われてきておりまして、もちろん報酬審判は個々の裁判官が独立して判断を行う職権行使の対象であることから、一概に体系化、定数化することができる話ではありませんけれども、実態を把握するための観点から、大体こういう事務についてはこういう金額ですといったようなものの目安になるような資料というものは数次にわたって作成、提示されています。それは今、実態を把握している統計資料として扱われているものでありますけれども、しかし、そういうものを、例えばイメージとしては民事執行法施行令が給与の差押えの場面において、その金額について具体的な数値を政令への委任を受けて定めている例とか、民事再生法の委任を受けた政令において、給与所得者等再生の場面に関し、地域によって金額が異なるような問題を処理するときに別表を設けている例があって、法制上そういうふうな数値を掲げた別表の例というものもないものではありませんから、そういうものにチャレンジしてみるということもあるかもしれません、という趣旨のことが上山委員のおっしゃったことであろうと受け止めますから、そのような観点からの法制の可能性というのも、必ずしも難度の低いことであるとは感じませんけれども、まだ部会の時間が残されている中で、チャレンジしていってよい課題であるかもしれません。   これくらいのガイドを差し上げた上で、引き続き委員、幹事の御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○青木委員 一つは、現在の規定に関係して、先ほどの公益性との関係もありますが、公益性を原則無償とするという発想があるからかどうかは分かりませんが、専門職後見人が行う専門性のある事務に関する報酬の評価が非常に低いということがあります。たとえば、法律事務について、弁護士が委任を受けて行っている場合の報酬規定に比べますと、裁判所の算定が非常に低いという実情は、もしかすると、公益性は原則無償ところから来るのかもしれないと考えています。現行の条文の報酬算定の考慮事項の中に明示はされていませんが、今後、付与された代理権等の事務の専門性に応じて、的確な報酬の評価を行う趣旨の文言を入れていただくことによって、専門性の評価がしっかりしていただけるのではないかという期待があります。これは、今後の担い手確保にとって非常に重要なことでして、とくに、日本は、専門職個人が第三者後見人の担い手としての割合の高いこともありまして、持続可能な担い手の育成という点で、専門性のある事務についての考慮を追加するということは重要ではないかと考えています。   続きまして、報酬決定の透明性との関係では、裁判所のご努力によって過去の報酬額のデータを適宜公表していただけるという取組も始まっているのが一つでありますが、これから個別代理権の付与が中心になってくると、それだけはなかなか十分に予測可能とはいえないかもしれません。その場合の工夫として、現行法を変える必要はないと思っているのですけれども、例えば、報酬決定の審判において、報酬の算定した根拠、理由を記載いただく、今回の報酬はなぜ30万円としたのかという理由について可能な範囲で記載いただく、今は報酬決定の審判書には理由は全く書かれていないのですけれども、理由を書いていただくことによって、それが間接的には、透明性につながっていったり、予測可能性につながるのではないかというふうに思います。一方で、報酬を請求権にしたからといって、報酬に関する様々な期待やニーズにこたえられるような仕組みになるかというと、それは必ずしも直結しないと思いますので、請求権かどうかというところで対応するということにはならない、とも考えているところです。 ○根本幹事 青木委員の意見に補足を致しますけれども、仮に請求権ということを検討する場合には、御本人や御親族と専門職との間の関係性が難しくなるという場面も想定されるところですし、請求権化されることによって不服申立てがされ、その審査が行われるということのデメリットなども慎重に考慮するべきではないかと考えております。   もう1点は、法制審の所管事項ではないということを承知の上で申し上げるところですけれども、先ほどから公益性ですとか無報酬という話題が出ています。厚生労働省の所管になりますけれども、利用支援事業をしっかり拡充、拡大していただきたいということは、この場で申し上げることではないかもしれませんが、付け加えさせていただければと思っております。 ○星野委員 報酬の申立権については、実態と合っていないという感覚は確かにありますが、そうはいっても今、親族も申立てしているケースが多いと思われます。東京の場合は親族自体が申立てできるような、そういうフローも見せてくださっています。市民後見人も報酬を申し立てるということが東京では比較的多くなされていますので、申立権がなかったとしても、今かなり運用的には申立てができる状況になっているのかなとは思います。逆に、申立権ができたことで今、根本幹事からもお話がありましたように、報酬額に対する不服申立てのようなものが行われることで裁判所の事務が非常に煩雑になってしまうのではないかというようなことは、確かに懸念としてあると思います。   それから、報酬額の算定についてです。特に東京家庭裁判所などでは、大体月額幾らということをもう公表をしているわけです。逆にそれが独り歩きをしていて、後見制度を利用すると年額幾ら、一生涯で幾ら掛かるということが固定的に周知されていることの弊害を感じているところもあります。これは個別によって異なってくるのが実情ですから、この公表をするというところのメリット、デメリットというのはあるのかなと、それを民法にどこまで規定するかというところは、民法外なのかなという気はします。   なお、先ほども発言しましたけれども、定期報告や報酬付与申立ての事情説明書という書式が今後新しくなるというところを考えますと、今まで以上に付加的な報酬というのが、いわゆる財産が増えたことだけではなくて、身上保護や意思決定支援への取組といったところで付加的な報酬を求める人、専門職が増えてくると考えられます。それに対して家庭裁判所がどこまでどうこたえていくのかという問題はありますが、そうなってくると、その報酬額がずっと続くわけではないけれども、必要なときだけということにはなることが想定されますけれども、それだけ報酬を負担するということの理解が、利用する人、本人側にどれだけ理解ができるのかなというところを少し心配に思っております。   そういうところで言いますと、利用支援事業の話も今出たのですが、ここで発言すべきではないということは重々承知している上であえて発言しますが、社会福祉士会としては、やはりこの後見制度の利用がかなり社会保障としての考え方に近付いているということをいろいろな場面で発言させていただいており、今の民法上に規定されている本人の資産から報酬を受け取るというところ、これはもう見直すことは難しいことは重々承知ではありますが、どこから負担すべきなのか、あるいは本人がどれだけ負担すべきなのか。こういった議論はここではなくて厚生労働省なのかもしれませんが、そういったところで並行して議論されていく必要はあるだろうということは発言させていただきたかったです。 ○山野目部会長 本人の資産から、ではなくて、本人の財産から、です。本人の財産に対して厚生労働省の予算で国庫からの補助があって、そして本人の財産から報酬が支払われるという法的構成になっています。そこを資産と読んでしまうから話が混乱してきて、全部本人に負担させる血も涙もない社会保障である、と話がおかしな方向に進んでしまいます。資産ではなくて財産であるという文言をよく踏まえた上で、法的構成を理解して議論を続けていただけると大変有り難いです。   ここで、第2のところをずっと幾つかの論点を御議論いただいてきたところを顧みて、櫻田委員、花俣委員、久保委員の順番で御発言を頂き、それから河村委員に御発言をお願いすることにいたします。 ○櫻田委員 ありがとうございます。今までの皆さんの御意見を伺っているところで、少し難しい話も出てきている中で、本当に感想めいた話にはなってしまうのですが、職務のところで少し出てきた話ではあるかと思うのですが、御本人の意思決定とか意思決定支援の話が出てきたかと思うのですけれども、確かにそれをどこまでやっていくかというのは非常に難しいのだろうなというのを、すごく今回の議論をお伺いしていて感じたところです。本当に御本人の意思は尊重したいというところはあるのだろうとは思いながらも、ただ、御本人の意思が客観的に見て御本人の生活とかに影響が出てしまうのではないかというところを考えると、やはり周りの後見人さんたちからも、なかなか御本人の意思を尊重しにくい部分もあるのではないかというところは、ふと頭をよぎったところになります。   なので、そう考えると、意思を尊重するとは言いながらも、なかなかそれが難しい、判断も難しいですし、尊重したいのだけれども、なかなかそれができないというところにつながってくるのかなというのはすごく感じたところなので、それは今後の議論にはなってくるかと思うのですが、私たち当事者としては、意思を尊重していただきたいというところは声を大にして言いたいところではあるのですけれども、一方でやはりそういう現実もあるのだというところを私たちも理解をしながら、やはり議論を深めていくところなのかなというところは思った次第です。 ○山野目部会長 それぞれ御指摘いただいたところを承りました。ありがとうございます。 ○花俣委員 報酬のところについて感想みたいなものなのですけれども、これはいつも例え話で申し上げているのですが、メニューに時価と書いてあるおすし屋さんにはなかなか怖くて入れない。利用する側としては、やはり報酬がどのぐらい掛かるのかということが前提になって、これが利用できるか、できないか、あるいはしたいか、したくないかということを判断するのではないかと、我々は単純にそう思うわけです。現行の規律が妥当なのかとか、あるいは大体の額が分かるようなイメージが必要ではないかと思います。あるいは親族のシャドーワークについてはいずれもそうだなと思いながらお伺いしていました。その大前提として、やはり支払い能力、つまり財産の有無というのも非常に大きなファクターになっているのかなと思います。そこでは、先ほどもこの場で指摘することではないかもしれないとおっしゃったような、利用支援事業であるとか、あるいは日自についても併せて検討していく必要があると思っています。やはり払える人は使えて、払えない人は使えないということでは困るわけなので、その辺りが気になるところと、ある程度予測可能性の報酬というのは必要な視点ではないかと思っています。 ○山野目部会長 補助の事業について複数の委員、幹事から御指摘があったということは関係当局に伝えることにいたします。ありがとうございます。 ○久保委員 今の運用ですけれども、本人の財産に応じて個別の報酬を設定する方式になっていますけれども、それが障害者の基礎年金が収入の大半を占めているのが障害者の実態ですので、そういう観点から行きますと、本人にとっては負担が重いけれども専門職にとっては報酬が安いというような金銭的な設定になりがちになっているのではないかと思っていまして、必要なときにはやはりきちんとお支払いすべきだという思いはありますけれども、本人の財産がそれほどない方にとっては、やはり成年後見制度の利用支援事業みたいなものをきちんと使いやすいようにしていただくことが必要かなと思いますし、そういうふうにしていくのですよというのが明確になっていると、みんなが少し安心して使えるのかなと思いますし、市町村も、ではそれをやらないと駄目なのだと思って予算が立てやすいかなというような気持ちを持っています。   それから、親御さんが亡くなったりして身寄りのない御本人にとっては、その後、ほぼ一生涯に近い状態で後見制度をお使いになる方も出てくるのではないかと思います。そういう方にとっては、一生涯で全部でどのくらい払わないと駄目なのかというようなことを少し計算して、何百万円になるのではないかという話も私たちの中で話し合っているような状態ですので、何百万円というのは少しつらいよねというような話も出ていますので、その辺のところもまた少し検討していただけたら有り難いと思っています。   それで、難しい面はあるのだろうと思いますけれども、先ほどの花俣委員のお話のように、大まかでもいいので、このくらいの報酬のイメージですよ、みたいなものがあると、少し予測ができて、ではそのぐらいだったら行けるかなというので利用する人が増えてくるかなと、親が残した資産がある方ですと、そのぐらいだったら行けるかなというのが見えてくると、利用する人も増えてくるのではないかというような気もしています。   私たちの中では、やはり一番心配なのが、金銭的に応援してあげられる親がいなくなった後、本人の権利を守ってくださる後見制度のようなものをどう使っていけるのかということがとても大事なことであって、本人にとってはとても必要なことだとは思いますけれども、使い続けられるのかというところがとても不安なのです。その辺ところが少し明確になってくると、行けるかなというような人も多分出てくると思いますので、少しまたその辺のところを考えていただけたら有り難いと思います。 ○山野目部会長 久保委員が第1回会議でお話しになったとおり、仮に2万円という数字でお話をすると、本人、家族の側から見て不幸な数字であるし、全く異なる方向から専門職で後見人になる方々から見ても納得し難い数字であって、誰にとっても不幸な数字であるという実情は改めてかみしめて検討を進めなければいけないと、今のお話を伺っても感じます。それと同時に、恐らくその2万円なら2万円という数字で語られてきたものが、今までの後見事務の在り方を前提に蓄積されてきた運用の一端を象徴して示しているものだと理解しますけれども、これから後見事務の在り方が様相を変えていく部分があるとすると、それを前提にして、ふさわしい後見報酬の可視化ということをまた考えていかなければいけないですし、そこにもお付き合いを頂きたいとお願いいたします。ありがとうございます。   河村委員、大変お待たせいたしました。恐れ入ります、どうぞ御発言ください。 ○河村委員 すみません、意見というより質問でございまして、そんなことには答えられないと言われてしまうかもしれませんけれども、二つありまして、今の報酬のところで教えていただきたいです。皆さんの御意見のスタンスは私なりに理解して受け止めて、今のところ明確な意見を申し上げることができないのですが、10ページの現行法の規律のところに、相当の報酬を与えることができるとされているとなっているわけですよね。見直すかもしれないというお話の中に、報酬を受け取ることができることとするという言葉があって、この二つの言葉、もしそういうふうに変わるとした場合、ニュアンス的には私なりに分かる気もするのですが、理念としてどういう変化があるのですか、どういう違いがあるのですかということを教えていただきたいというのが1点です。専門家の方からは、これはそんな対立的な言葉遣いではないと言われてしまうのかもしれませんが。   あともう1点なのですけれども、大体の額とか可視化の話が出ていまして、大体の額が何か明文化というか、何か文書になっていた方がいいのではないかということが出ていますが、それを仮に採用するときには、今10ページにある、本人の資力その他の事情によってという観点を削除してしまうということとセットなのでしょうかという、質問は2点でございます。 ○山野目部会長 河村委員からお尋ねいただいた2点とも、これからこの部会で検討していく事柄そのものでありますから、どなたかが答弁に立つという立場にないですけれども、今、簡単に現在理解されているところを、部会資料を提示している側を代表して波多野幹事に少し説明してもらいます。誤解のないように御案内しますと、これから説明を差し上げることで決めるということを申し上げるものではなく、河村委員におっしゃっていただいたことを正にこれから検討していきます。河村委員におかれても、今に限りませんけれども、御意見を抱いた際には御開陳いただきたいと望みます。 ○波多野幹事 河村委員から御質問いただいた点について部会資料を作成した趣旨を御説明しますと、1点目は、恐らく請求権があるということにしたときにどういうことになるのかということかと思いますが、まずは、先ほどからポリシーとしては御議論いただいているところで、無償が原則であって有償がその例外だという位置付けをするか、有償で報酬をもらえるというのが原則であってもらうかどうかは後見人の判断で放棄するなら請求しないことになるのかなということかと思いますが、法制的な規定としては、恐らく請求権があるとなりますと、裁判所に対しては申立権があって裁判所は申立てに応答する義務があるということになり、通常は、不服申立てとセットになっているというのが、ほかの報酬に関する申立ての規律となっているのかなと思っているところでございまして、その点の御議論をお願いしたいと考えていたところで、先ほどから御議論いただいているのかなと思っているところでございます。   報酬について大体の額を示すということについては、恐らく運用上示すという御意見があることが考えられると思いますが、そうだとしても今の規定ぶり、本人の資力その他の事情によってということを必ずしも削除するということとセットであるとの御意見であるとまでは、部会資料を作成した段階では思っておりませんでして、更に言うと、削除するというよりは、もう少し書き込むということも選択肢としてあるのかどうかについて御議論があるのかなと思っていたところでございます。 ○山野目部会長 河村委員に今、差し当たりの説明を差し上げ、また、河村委員においても引き続きお考えいただきたいというお願いを差し上げたところですけれども、河村委員におかれては、いかがでしょうか。 ○河村委員 御説明ありがとうございました。また改めて、固まったときに意見を申し上げます。 ○山野目部会長 ありがとうございます。 ○野村幹事 後見人に申立権や報酬請求権、不服申立権を与える必要まではないというのは皆さんと同じ意見です。また、報酬の算定根拠となる一定の基準を示すこととか、専門職後見人がその専門職固有の事務を行ったときの報酬についても一定の基準を示すことが、報酬額の予測可能性を高めると思います。最後に強調したいのは、実務では報酬付与の審判が下りたにもかかわらず監督人が後見人から報酬を支払ってもらえない場合や、代理権が付与されていない保佐人、補助人で本人から報酬を支払ってもらっていない場合があり、担い手の確保の観点から問題となっているということです。 ○山野目部会長 御意見を頂きありがとうございました。   報酬について、ほかにいかがでしょうか。 ○山城幹事 少し議論の流れから離れてしまうかもしれませんし、いかほど実現可能な話なのかも心もとないのですけれども、議論を整理するためには、報酬の問題と負担の問題を切り離して考えるべきではないかと感じております。   つまり、理屈を申しますと、報酬の額は、後見人がどれだけの事務をしたかに応じて決まるべきである一方で、それをどこまで本人が負担するかは、本人の資力を考慮しつつ決めなければならないということではなかろうかと思います。難しい事務を処理したときは、報酬として支払われる額はあくまでも事務の内容に見合った形で算定するけれども、本人がそれを全て負担することができないときは一定の助成をするという整理をすることも考えられるのではないかと思いますので、申し添えさせていただきます。 ○山野目部会長 ありがとうございます。承りました。   ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。 ○沖野委員 申し訳ございません、少し技術的な点なのですけれども、この報酬というのは今、どこから取るかという問題がありましたけれども、そもそも役務提供に対して一定の報酬を得られることを原則とするのかどうかという問題と、もう一つの、特に他人の財産ということで、しかも自分の管理下にある財産であるということも、現行法では特にある状態ですので、そうすると典型的な利益相反ということになります。適切な報酬がどこから与えられるかという、どこからそのための財産を取るのかによって少し規律の性格や捉え方が変わってくる面があるのかなと思っております。   それから、報酬請求権に関して、11ページの30行目から32行目に整理はしていただいているのですけれども、報酬請求権という形で実体的な権利を持つか、払ってもらえるという権利を持つかということと、それ自体は飽くまで家庭裁判所の裁量判断で、実体的な権利があるわけではないのだけれども、その発動のイニシアチブを持つ、それが申立権だとするとそれがあるかということは、一応別の問題ではないかと思われます。実体的な報酬請求としては必ずしもあるかどうか分からないのだけれども、家庭裁判所の裁量で認める申立て自体はイニシアチブ発動はできるということはあり得るのではないかと思いました。ただ、申立権だけだとしたとしても、先ほど言われたような不服申立て等の問題があって、不服申立ては認めないということができるのかどうかということにもなりますが、そういった問題があることはわかりましたけれども、報酬請求権といわれる場合に、この2つが完全に連動するのかどうかというのが気になりました。   それから、12ページの5行目に、報酬の受領の方法の問題ということがありますけれども、これは確かに報酬を、しかも自身の管理下にある財産からということになると、取り分けそういうことになりますけれども、例えば費用ですとかそういったものについて、報酬という形ではない名目というか実質で、本人の財産から一定の金銭なりを受けるということは、ほかでもあると思われますので、報酬の場合だけが特別なことになるのかどうか、もちろんそのチェックは重要だとは思いますけれども、報酬を認めるとこの点が新たに問題になってくると言えるのだろうかということは非常に気になりました。   それから、一般的に言うと、実体的な報酬請求権については、他の様々な立場で同様の事務処理をする場合との平仄は考える必要があり、その理由が付くかということは、やはり考えた方がいいのだろうと思っております。信託の受託者について言えば、むしろ専門家であれば報酬を取るのが原則だけれども、信託行為に明確に書くことによる透明性の確保を重視したというような事情もあり、それぞれに理由があると思いますので、一律に語れるかも注意をする必要があると思います。 ○山野目部会長 民法の様々な規定において、本人の財産から報酬を与えることになるというルールが置かれております。ただいま沖野委員から何点か御注意いただいたところを踏まえ、従来の法制上の類似箇所も見渡した上で改めて整理して、次の機会に審議をお願いするということにいたします。   報酬についての議論をここまでといたしまして、したがいまして、部会資料4の第2の部分についての審議をここまでといたします。   引き続き、部会資料4の第3の部分に進みます。第3の部分のうち、まず1、申立権者、2、成年後見人等の選任、加えて3、本人の死亡後の成年後見人の権限、いわゆる死後事務等に関して、ここまでに関して御審議をお願いしたいと考えます。今お話しした部分について、事務当局から資料の説明を差し上げます。 ○木田関係官 部会資料4、12ページからの第3、法定後見制度に関するその他の検討のうち、1、申立権者から3、本人の死亡後の成年後見人の権限(死後事務)までについて御説明いたします。   まず、12ページからの1、申立権者では、法定後見開始の審判の申立権者の規律について見直しをする必要性について御議論いただきたいと存じます。部会資料では、任意後見人死亡時の任意後見監督人について取り上げておりますが、これに限らず、そのほかにも申立権者の規律の見直しをする必要性について御議論いただきたいと存じます。   次に、14ページからの2、成年後見人等の選任では、成年後見人等の選任に関する規律の見直しをする必要性について御議論いただきたいと存じます。   また、14ページからの3、本人の死亡後の成年後見人の権限(いわゆる死後事務等)では、現行の制度は、成年後見人が本人の財産について包括的な管理権を有していることを前提に、成年後見人に限って一定の死後事務を行う権限を認めていますが、法定後見制度の見直しに関する議論を踏まえ、死後事務に関する規律に関して見直しの必要性について御議論いただきたいと存じます。 ○山野目部会長 ただいま説明を差し上げた部分について御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○小澤委員 ありがとうございます。まず、申立権者のところですが、部会資料4の13ページにある任意後見人死亡時において、任意後見監督人であった者に法定後見の申立権限を与えることについて賛成します。また、任意後見人の死亡だけではなく、任意後見人が解任された場合も同様に、監督人であった者に申立権限を与えるのが適当と考えています。なお、適切な時期に必要な範囲、期間で制度利用することを可能とした場合、再度制度利用の必要性が生じても、申立人が容易には見付からないことも考えられます。そのような場合に、成年後見人であった者に申立権限があれば、再度の利用が円滑に進むのではないかと考えます。   次に、成年後見人の選任についてですが、後見人の選任について、関係者が後見人の人選に不満を持つケースがあることは承知していますが、そのような不満の中には関係者が自身に都合のよい後見人の選任を求めているケースも少なくないと考えておりますので、後見人の選任は裁判官の専権事項であり、不服申立てができない現在の規律は維持すべきと考えています。その上で、選任後に業務がなされる中で実際に不具合や不適当なところがあるのであれば、見直し後の解任ないし改任制度において対応することが適当ではないかと考えています。   最後に、死後事務のところですが、現行制度における死後事務の規律については、包括的な財産管理権を有していることを理由に、後見類型に限って保存行為、債務の弁済を許可する規律を置いている点について、理にかなっているとは考えますが、一方で本人の死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結を許可する規律については、財産管理権とは余り関係がないと考えています。成年後見人が、身寄りがなかったり親族などの関わりが希薄な本人の死亡に直面して最も苦慮することが、この本人の火葬であります。それは、時間的猶予がない中で行う必要があって、また、後見業務でないからという理由で看過することが許容されない社会的な要請があります。したがいまして、少なくともこの点については見直していただきたいと考えています。現に死亡届は保佐人や補助人も出せるのであり、火葬について後見人と保佐人、補助人とを区別する必要もないのではないでしょうか。後見人を不必要なトラブルから守るために、死後事務の権限を根拠付ける規定が必要だと考えています。   ただ、死後事務を成年後見人の義務とまでしてしまうと、その費用を誰がどのように支弁するかといった問題が発生しますので、飽くまで必要がある場合に死後事務ができるというものが適切だと考えますし、実際に死後事務を行うためには火葬等に必要な金銭を出金する必要があり、預貯金の管理権限が必要になると考えております。 ○根本幹事 まずは申立権者のところだけ意見を申し上げますけれども、一つは、小澤委員からもありましたが、任意後見監督人であった者を申立権者に加えるということは、現行実務上もはざまの問題になってしまっておりますので必要です。今後法定後見制度が有期制、期間制に変わるに伴って、恐らく任意後見制度もそのような形で平仄を合わせていくということになろうかと思いますので、法定後見制度がセーフティーネットの性格を持っているということからしますと、任意後見人の死亡、解任に限らず、任意後見監督人であった者をすべからく申立権者としていくということは必要なのではないかと思っております。ただ、法定後見制度と任意後見制度の併存等をどのように考えるかということは今後、任意後見のパートで議論されることかと思いますので、留意が必要だということは申し上げておきたいと思います。   それからもう一つは、これは民法の所管ではなくなりますが、部会資料にも記載がございますので言及をしておければと思っていますが、現行の老人福祉法等で、現在は市区村長のみが申立権者となっていますが、今後、社会福祉法制の在り方の議論の推移にもよりますけれども、中核機関がこの申立権者に加わるということが検討されるべきではないかとは考えております。 ○佐久間委員 任意後見監督人を任意後見人死亡時の法定後見の申立権者にするということ自体には異論はありませんけれども、ほかの場合と違いまして、これはある意味では任意後見契約の予後効みたいなものだと思いますので、いつまでもということでいいのかということが気になります。ですから、この規定を設けるときには一定の期間制限を設ける必要があるのではないか、細かいことで申し訳ありませんけれども、取りあえず賛成だということを申し上げた上で、その点が必要なのではないかと思います。 ○山野目部会長 細かいことを述べていただいて有り難いです。 ○星野委員 まず、申立権者については、この検討については異論はないですが、今後、使った方が一旦終了して、また再度必要性が生じるというような、初回ではない方の申立ての手続というところも併せて議論する必要があるかと思っています。そういったところから考えれば、2回目と言っていいのか、何回目かの、また必要になって申立てをする場合に、申立てをできる人が、例えば中核機関等の関係者というところも想定していいのかなと感じています。   それから、成年後見人の選任についてのところの、後見人選任の審判の不服申立てのところについてですが、確かに現状は後見人が誰になったかについての不服申立てはできませんが、今までの議論の中では、開始をするということはどういう権限を付けるのか、本人の同意の下にですよね、そして、それを誰が担うのか、そこも含めた審判ということで考えますと、その後見人の選任に対する不服申立てということが検討される必要はあるのではないかという意見です。   それから、最後に死後事務のところは、これは小澤委員もおっしゃられていましたけれども、私も全般的な見直しが必要だと考えます。現実に現場の中においては、保佐人、補助人であったとしても応急処分、事務管理という範ちゅうで同じようなことをやらざるを得ない、そしてそれは裁判所にも報告をしながら、行っております。ですから、後見人だけというところの見直しもそうなのですが、そもそもいわゆる円滑化法といわれる法律がどこまで必要なのかということも、少し実は考えています。というのは、今出てきている身寄りのない方の問題、死後の御遺体をどうするかとか、納骨をどうするかというのは社会問題になっています。成年後見を使っている方は後見人という財産管理をしていた者がいたことによって、円滑化法を根拠としてやっている、あるいは保佐人、補助人が応急処分としてやっている、そういう実態があることで、後見制度を使っていることでそれができると思われているところもあります。ただ、本来それは義務ではなくてやっている部分がございますので、もう少し広い範囲でこれも、死後事務というのはどうあるべきかというのは社会的な問題として、これは民法の改正だけではなくて、大きな問題として、関わる所管庁にも議論を進めていただく必要があるのではないかと思います。 ○竹内(裕)委員 では、まず第3の1についての意見なのですけれども、まず、死亡時の任意後見監督人については、これは賛成するものです。   他方、成年後見開始の審判の申立権者についてなのですが、今後必要なときに必要な場面で必要な期間での後見制度となっていった場合に、ここは現在、利害関係人の申立権はないのですけれども、今後の部会資料第4の議論にも関わるところではないかと思うのですが、利害関係人の後見開始申立権を認めるというところは議論していく必要があるのかなと感じております。   それに当たって条文上も、843条ですと、欠けたときの申立権者、あとは複数選任されるときの申立権者には利害関係人と明記されていまして、あとは、場面が違うと言われてしまうかもしれませんが、未成年後見に関しても利害関係人、これは申立権者に入っていると、そういったところも気にしながら、利害関係人の申立権というのを考えていってもいいのではないかと考えている次第です。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   成年後見人の選任や死後事務についても引き続き御意見を承りますけれども、今差し当たり比較的多く御意見を頂いた申立権者のところについて一言申しますと、現行の成年後見制度における申立権者のルールは、飽くまでも成年後見制度というものが何のために、誰のために用いられますかということを考えたときに、それは本人の福利ということを実現するために用いますという趣旨の確認を踏まえて、それに適合するように申立権者の範囲が定められていると理解することができます。   現在の7条が定めている申立権者の範囲は、禁治産の制度によって発足した明治以来の制度において大きくは変わっていません。それはなぜなのかと申しますと、明治この方の日本社会において、本人の幸福のために成年後見制度を使うといったときに、本人の状況を一番よく知っている人は、もちろん本人でありますけれども、本人に加えて、本人の周囲の身内の人たちでしょうと考えられるところから、四親等内の親族に当たる者などが挙げられてきたと理解されるところでございます。   しかしながら、我が国社会の有様が、身内の人たちによって本人が囲まれ、守られているという親族共同体によって支えられてきた伝統的な様相が大きく異なってきて、そのような共同体の絆が失われ、そして身寄りのない人が増えてくるという現代的な社会の様相になったことを踏まえ、むしろ本人のことをよく知っていて、あるいはよく調べることができて、本人のために後見制度を用いるトリガーを引く者が、親族などもあっていいと同時に、公の機関が更に関与していくべきではないですかという観点から、老人福祉法その他の類似の法制の積み上げがありますし、本日既に複数の委員、幹事から、社会福祉法制上法制化が望まれる中核機関にも申立権を与えてはどうかという発想が提示されるのは、そういうふうな文脈において位置付けることができます。これらの議論はいずれにしても、しかし時代の変化に即応しながら、飽くまでも本人のためにということを考えて、成年後見制度を動かすときの申立権者の範囲をどう考えますかという点に踏みとどまっているという点では一貫しております。   細かな技術的論点として、既に本日、任意後見人が欠けた場合の任意後見監督人に申立権を認めますかという論点については多くの委員、幹事から賛同の御意見を頂きましたから、佐久間委員に御注意いただいた点も含めて、法制化の適切な在り方を今後考えていくことになります。   そこまでは確認でありますのに対し、実は部会資料において、任意後見監督人をどうするかというようなテクニカルな論点の問題提起にとどめておりますけれども、本当はもう一つ問題提起をしなければいけない事柄があって、それを部会資料に明確にもっと見出しを付けて出しておくべきだったかもしれませんが、勇気の要る事柄であります。それは何であるかというと、民法を見渡して、典型的なものが不在者の財産の管理ですけれども、利害関係人が申立人に入っています。こちらの後見の7条にはそれが入っていません。それは、7条を書いた明治の起草者である先輩たちが書き忘れたのではなく、きちんとそこを考えて書き入れているわけでありまして、利害関係人というのは大方、取引の相手方ですから、取引の相手方が自分の都合で、この人は後見の下に置かれるべきだということをするという振合いは適切なことであるとは考えられないという思想によって支えられていたものだろうと想像します。   そのような状況の確認の一方で、今般、成年後見制度の大幅な見直しが現在論議されている方向で進んでいくということになりますと、局面によっては取引の相手方が、この人に後見人が付いてもらわないといろいろなことが進まなくて困るという幾つかの場面が出てきそうな予感がいたします。そのような状況を踏まえ、申立権者に利害関係人を含めますかという問題提起をするべきところでしたけれども、なかなかに覚悟を擁する論点であり、部会資料ではしていません。   そして、今、竹内裕美委員からの御発言でパンドラの箱が開きました。そうすると、これは元々、潜在的に大きな問題としてあった事柄である上に、明示の問題提起を弁護士会から頂戴しましたから、知らんふりはできないものでありまして、これはもう我々は覚悟をして、この問題について何らかの見通しが得られるような議論を、もちろん今日結論が出る話ではありませんけれども、重ねていかなければならないという状況に置かれました。状況の確認を差し上げます。   引き続き、申立権者に加えて成年後見人の選任や死後事務について御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○野村幹事 申立権者について発言させていただきます。任意後見監督人だった者に法定後見申立権を付与すべきかどうかについては、皆さんと同じように賛成です。任意後見監督人は、任意後見人の死亡を速やかに知ることができますし、また、監督業務を通じて本人の状況を把握し得る立場にあります。監督人であった者に法定後見の申立権を認めると、法定後見の速やかな利用によって本人に対する支援を継続することができますし、このことは本人の意思にも即していると思います。   それから、法定後見の申立てですが、本人の意思に基づく制度利用を原則とすべきと考えるので、本人申立てを中心として、市町村長申立てを充実させるとともに、先ほどから御意見がありましたけれども、中核機関が法制化されたら、中核機関も申立権者にすべきと思われます。また、利害関係人の上申による裁判所の職権による開始も検討の余地があると思います。四親等内の親族についてもリーガルサポート内で議論したのですが、余り本人のことをよく知らない親族を申立権者にすることに合理性があるのかは疑問であるという意見も出ましたが、現在のままでもいいという意見もありました。   それから、適切な時機に必要な範囲、期間で法定後見制度を利用することを可能とするように見直しがされた場合には、期間の経過によって制度の利用が終了することが予想されますので、その場合、再度利用するときには、元成年後見人であった者も申立てを認めるべきだと思われます。 ○根本幹事 弁護士会がパンドラの箱を開けたという御発言をいただいたので、申し上げるのですが、私個人としては、取引の相手方を申立権者に含めるということについては非常に強い違和感を覚えるものであります。取引の相手方の保護については、この後議論される催告や、これまで議論があった同意の在り方、若しくは今後議論されるかもしれませんが、公示方法等の手段によるべきだと思っております。実際に申立権を取引の相手方に認めるということになっても、初回の議論でもありますが、何らか御本人の個別の行為の判断能力に関しての医学的知見というのは必ず必要になるということになろうかと思いますので、そのような情報を取引の相手方が得るということは実務的にかなり実効性が乏しいと思われます。取引の相手方に御本人の医療情報を取得するための何らかの手段を与えるということになってしまうと、医療情報の入手ということになり、御本人のプライバシーへの侵害が非常に大きい問題ということもはらみますので、かなり慎重に考えるべきだと思っています。   実際に取引の相手方の保護が現場でどのように図られているかということを申し上げれば、一つは、訴訟提起がされれば、特別代理人等を地方裁判所が選任する必要と考えれば、法定後見制度を利用するまでもなく特代で対応できるということもございます。あとは実際に御本人の利益保護との関係で、取引の相手方からの請求書類等がある場合には、多くの場合は福祉関係者が御本人の支援に当たっているケースが多いですから、その福祉関係者の判断を介して、市区町村長申立ての要否も含めて、判断されるということになっているのだと思います。   違和感を強く覚える一番の理由は、部会長もおっしゃられましたけれども、この制度が誰のための制度であるのかというところから考えれば、先ほど申し上げたような、申立権者に含めなくても取引の相手方を保護するという方策をしっかり検討するということで足りるのではないかと考えています。 ○山野目部会長 根本幹事の御意見は承りましたけれども、ここも弁護士会の先生方で議論を深めてくださいね。第2回会議で佐久間委員から話題提供いただいた土地収用の場面は、私も、起業者が成年後見の申立てをすることができるようにしてほしいという土地収用関係者の意見が開陳される場面を経験しました。その際は本人のための制度であって土地の収用がされて公共事業がうまくいくために成年後見制度があるものではありませんとお話しましたけれども、なお論議は続けなければいけないことでしょう。 ○佐久間委員 収用のことは置いておきまして、利害関係人を申立権者に加えることは、私は考えるべきだと思います。広く認めるかどうかはともかくとして、根本幹事もおっしゃいましたけれども、催告の場面ですね、この後の4の催告もそうですけれども、例えば契約を解除する前提としての催告なんかも含めて、この後の議論ですけれども、今のままでは非常に困るというか、悩ましい状況が出てくるのではないかと思います。相手方からしますと、根本幹事はうまく工夫してとおっしゃいましたけれども、どう工夫すれば自己の法的主張ができるのかということが見えないと言っていいような状況がどうも出てくるのではないかと、私は心配しています。資料では後の催告のところで出てくることなので、余りここでしゃべるべきではないかもしれませんが、その場面では本人側に選任を促してというようなことが書いてありますけれども、本人側が応じなかったら、もうそれまでとなってしまいますので、やはり場面を限定することにはなるかもしれませんが、正当な利益を有する利害関係人は申立権者に加えるべきではないかと思っています。   その上で、2点加えて申し上げようと思うのですが、先ほども御紹介があったかもしれませんが、未成年後見人については利害関係人が入っておりますよね。そうすると、今後、成年後見の場合も利害関係人を含めるというのはおよそあり得ない話ではないだろうということが一つです。つぎに、利害関係人の範囲は必ずしも明確になりませんけれども、根本幹事が危惧されているような申立てがあった場合には、そこは家庭裁判所のきちんとした判断で開始の審判をしないということが期待できるし、期待すべきだと思います。こういったことから、今日何か決まるわけではないとは承知しておりますけれども、利害関係人を含めるということは今後、前向きに検討すべきではないかと私は思っています。 ○沖野委員 ありがとうございます。利害関係人としてどういう者を想定するのかということについてなのですけれども、これから取引をしたいけれども、相手方が十分な判断力があるだろうかというところを注意したいというのは、それぞれの取引の話ではないかと思われるのですけれども、利害関係人としてあるとするとこういうことなのかなと思いましたのは、既に預金取引があって、預金の払出し等に判断力の点で懸念が出ていると、こういう場合には通常は親族の方などがいらっしゃるので、その方々に、成年後見などがあるので、そちらを使って御本人の権限というのを補完して来てくださいというふうに事実上、金融機関等は話されているのではないかと思います。同じような話は保険金の受取人などにもあると思うのですが、そういったときに親族がいらっしゃらないとか、先ほどですと結局、社会福祉関係の機関が最後は控えているので、今関与されていなくても、そういったところに発動すればいいということになるように思われるのですけれども、例えばそういった御本人の権利行使のために、相手方としてはむしろ弁済をするような話のところで、それを補完してほしいのだけれども、親族でも何でもないので申立てもできないと、そういった場面をどうするかということは考える必要があるのではないかと思っております。   ただ、それらの場合に申立権を認めますと、適切に申立権を行使することが期待されるというような話が出たり、また、先ほど教えていただいた、申立てをして本人の判断力というものについて一定の証明などしていくための情報が十分に取れるのかとか、あるいは申立権を与えるということになると、それを取るための地位というか立場というか、それを認めることになって、個人情報を得るなどのそういった問題が出ないかというようなことも懸案として出てくるのではないかが気になりました。 ○山野目部会長 沖野委員におかれては、ここの部会の席とは全く異なる場面ですけれども、所有者不明土地管理命令の制度を立案するときにも大変にお世話になりました。あの折にも申立権者に利害関係人を含めましょうという話になって、規定はそのようになりましたけれども、その際にも沖野委員を始め委員、幹事に御議論いただいて、単に土地を取得したいというだけでは利害関係があるということにはならないという理解が広く共有されていたと記憶いたします。   ですから、沖野委員御指摘のとおり、ここも単に本人と取引をしたいという願望を持っているというだけで自分は利害関係があるということにはならない、そういう議論には多分なっていかないのだろうと思われます。そうすると場面は絞られてきて、沖野委員が御指摘になったように、既に何らかの継続的な取引の関係の渦中に置かれている当事者であるとか、あるいは佐久間委員がおっしゃった場面は、恐らく契約解除の意思表示とか様々な通知、観念の通知、意思の通知などをしようとするけれども、相手が本人であって十分な判断をして受け止めてくれるかが分からないというような場面であって、このように利害関係が具体的な姿を見せた場面において、適切な法制上の要件化を得た上でするとすれば、あり得るという話になるであろうと思いますけれども、そこの絞り方は、そもそもこういう考え方を採ることがいいかということからして検討の上、更に要件を精査していかなければならないという問題がありますから、引き続き御教示を頂ければ有り難いと感じます。どうもありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○青木委員 今の論点は、後ほど出てくる意思表示の受領のところで議論した方がいいかと思っていますので、その他の点について意見を申し上げます。   後見人等の選任につきまして、本人の意向をどの程度反映するか、というのがここの問題意識になりますけれども、現行の条文でも、本人の意見その他一切の事情を考慮し、となっております。そういう意味では、本人の意向を反映する手掛かりになるとは思いますけれども、現在の実務では、裁判所では、申立てをしたときに、候補者の希望は伺うけれども、この方になるとは限らないことを了解します、という趣旨のことを誓約書でサインをさせて申立て手続きを進める実務になっていまして、このこともあって、市民の一般的な受け止めとしては、自分が希望する人にはならないと思っている方が多く、それが申立てをちゅうちょする一つの要因になっています。したがいまして、もちろん本人の意向だけでは決められないことはある、代理権や同意権の性質によっては、本人や申立人が候補者として希望する人ではない方が適任だという裁判所の判断はあるものの、もう少し、本人の意向というものを十分に反映させるような規定上の手掛かりというものを条文上に置くことを検討する必要があるのではないかと考えています。   最高裁に以前お伺いしたところでは、実際には、本人ないし申立人が希望した候補者のうち相当程度は、そのまま選任されているので、希望した候補者が選任されないことは例外的なものにはなっているようですけれども、そうした運用の実際と、利用者側の受け止めと、条文の規定とが合致してはいないところを、今回見直す必要があるのではないか、具体的にどう見直するかについて引き続き考えたいと思っております。   それから、死後の事務処理につきましては、相続人が適切に死後事務の対応ができない事案が多数増えている中で、これは身寄りのない方の問題として現在重要な政策課題にもなっていますが、これは必ずしも成年後見人、保佐人、補助人がこれをカバーするということではない、もう少し社会福祉制度として身寄りのない方の死亡時の対応をどうしていくかの中で考えるべき問題だとは思っています。今そういう議論が始まろうとしています。ただ一方で、速やかに全国の地域に整備されるという状況でない中で、今回の改正以降も相当期間にわたっては、やはり代理権の付与をされていた方々に死後の事務処理を担ってほしいというニーズというのは残ると思っていまして、そこについて今回の改正で何の手当てもせずに、そこは民法の外でやってほしいということにはならないのではないかと思っております。一方で、現行制度の死後の事務処理は、成年後見類型のみについて、包括的代理権の一環として整理されていますが、今後は、従来の保佐、補助も含めて、制度利用の全ての対象者を念頭に、死後の事務処理が、一定の範囲で認められるというのがいいと思っております。   これにつきましては、生前に、死後の事務処理の代理権みたいなものを付与するという在り方は、果たして論理的にも可能なのかという点の検討も要ると思いますし、それよりは、死亡した時点で付与されている代理権の性質によっては、一定の死後の事務処理の事務を行う権限を申立てにより認めることができるというような、死亡の時点で、必要性を改めて判断するという整理の方がふさわしいのではないかと思っているところです。 ○山野目部会長 成年後見人の選任に関しては今、青木委員からヒントを頂きましたことに加えて、山城幹事が最近発表になった御論稿(早稲田法学99巻3号)の中で、後見人に誰がなるかということを事前指定ができるという外国法制例の紹介も頂いています。これは指定ですから、もう希望ではなく、その人で決めるということになりますが、そういったものも参考にしながら、選任の在り方はどういうふうに考えたらいいかということをなお検討していく必要があることでしょう。その選任との関係でも、本人情報シートをどのように活用するかといったようなことが、運用を超えて法制上ももう少し明確にしていかなければならないという課題もあるかもしれません。   死後の事務については多くの委員、幹事から、民法に限られた話ではなくて、行旅不明の人あるいは身寄りのない人が人生の終わりを迎えた局面に立ち会った市町村や、成年後見人も含まれますが、その他の関係者がどのような役割分担をするかという隣接法制の検討と総合して考えなければいけないという御指摘も頂いたところであります。半面、民法との関係で申せば、青木委員から、成年後見人が有している権限の性質やその種類などと関連付け、死後の事務の在り方をどう考えるかということも観点としては欠かしてはならないという御注意も頂きました。これらの点を踏まえて、次回に向けて検討を続けていくことになるであろうと考えます。   催告権のお話も済ませておきたいと考えますけれども、1番、2番、3番の範囲で、そのほかに御発言はおありでしょうか。 ○山城幹事 843条4項に挙げられている事情の中でも、本人の意見に一定の重みを与えるべきだということが、今後の一つの方向性かと推測しております。そこで、部会長から御紹介いただきましたけれども、後見人となるべき者を本人が事前に指定するという制度設計も一つの可能性として検討に値するかと感じております。例えば公正証書を作成して事前指定を行い、後見人選任の段階では原則としてそれを尊重するけれども、指定された者が適任でないときには他の者を選ぶことができるようにしておくというような扱いをするということです。   もう1点ございまして、交代に関わるのですけれども、交代に関する規律は、選任に関する規律と整合性がなければならないのではないかと感じます。こういうまとめ方が適切か分かりませんけれども、先ほどの議論では、交代の必要が生じる場合として、事務の遂行自体が著しい不行跡等に当たるわけではないけれども適切にされていない場面と、当初に後見人として選任した者について、課題が解決された結果、その者を後見人とするにあたって考慮した事情が当てはまらなくなってしまって、別の人を選ぶ方がよいと考えられるに至ったというような場面が想定されていたかと思います。特に後者のようなケースですと、交代と選任とは同様の基準で考えざるを得ないのではないかと思います。そのような意味で、両者の間に整合性が保たれるように検討する必要があると感じました。 ○野村幹事 後見人等の選任について意見を述べたいと思います。   後見人等の選任については、本人の意思を尊重することが必要ですが、既に条文において本人の意見その他一切の事情を考慮しなければならないという文言がありますので、規定を改正するというよりも、本人の意思を尊重するような運用とすべきと思います。現在の実務では、家庭裁判所から専門職団体に後見人の推薦依頼が来て、専門職団体が名簿から後見人候補者を推薦して、選任前に本人と後見人候補者とが会わないで後見人が選任されてしまうことがあって、ミスマッチが起こって苦情の原因になる場合があります。中核機関においてマッチングを行って、選任前に本人と後見人候補者とが面談して、本人の意思を確認した上で申立てを行うのが理想ですけれども、中核機関でマッチングを行わない場合でも、家庭裁判所の調査官調査などで選任前に本人と後見人候補者とが面談して本人の意思を確認するなど、そういった運用の改善によって、現在の制度への不満は一定程度解消されるものではないかと思います。   続いて、死後事務ですが、死後事務のうち本人の死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結、その他相続財産の保存に必要な行為については、実務上、現在の補助人や保佐人の場合であっても、本人が亡くなった場合には対応を求められています。今後、身寄りのない人の増加に伴って、この死後事務の必要性はより高まることが予想されるので、現行制度の見直しが必要と思います。 ○根本幹事 3点申し上げます。   まず、申立権者に取引の相手方を加える点については、先ほどの私の意見に補足で、もう数点申し上げておくべきかと思います。現行法上も改正後においても、本人申立てというものはできるわけですから、取引の相手方として何らか制度の必要があるということであれば、まずは御本人を説得するということは一つあり得るところだと思います。この点は、今回の改正が本人意思を尊重するという形での改正趣旨になるわけですから、本人の意向に反してでも取引の相手方の利益のためにこの制度を利用するということを、そもそも今回の改正の中で入れるということが、改正趣旨、改正理念とそぐうのかという観点も検討が必要かと思います。また、これは代理権付与や同意権・取消権付与において本人同意を原則とするかどうかという議論とも関係しますが、仮にここで本人同意を原則とするのだと考えていくのだとすればなおのこと、申立てをしたところで結局本人同意がなくて制度利用ができない、制度が開始されないということであれば、そもそも申立権者に取引の相手方を含めるという実効性がどこまであるのかという点についても配慮することが必要なのではないかと思います。さらに、最終的には費用負担をするのは、先ほどの議論とも関係しますが、御本人ということになるわけですから、取引の相手方の利益のために本人にそういった報酬負担を強いるのかという観点からも議論が必要なのではないかと思っています。報酬全てを予納させるわけにはいきません。   選任のところについては、青木委員の意見と同様なのですが、補足をするとすれば、現行の家事事件手続法118条においても、手続規定の特則として、意見聴取のほかに本人の意向を酌むということは現行法においても予定をされているところだとは思います。ただ、山城幹事から御提案があったような指名権、指定権というところまで行くと、これは従前から議論があった、親族という存在は両方の側面がある、よい側面とそうではない側面があるというところもありますので御本人に誰を選任するかについての拒否を家事事件手続法の中で含めることにとどめるぐらいが望ましいのではないかと思います。積極的に指名するというところの手前の、拒否をするというところまでは手続規定の中で含めるということはあり得るのではないかと思いますので、不服申立てというところまでは、現行と同じように不要なのではないかと考えています。   最後に、死後事務のところですけれども、これも終わらない後見のトリガーにならないようにするということで、例えば預貯金の管理処分代理権があるのであれば、その付随行為として死後事務を認めるということはあり得るのではないかと思います。改正後においても、現行の事務管理等の考え方というのは否定されないということは、確認されておくべきだと思います。 ○山野目部会長 発言の順序を少し調整させてください。加毛幹事が午後5時半に退席されます。この後、皆さんで催告権の議論をお願いしますけれども、加毛幹事から、催告権について表明しておきたい御意見があると伺っております。加毛幹事のお話を伺った後で、竹内裕美委員、佐久間委員、上山委員から御発言を頂いて、3番までおしまいにし、その後、4番の催告権の話に進むことにいたします。 ○加毛幹事 ご迷惑をおかけして大変申し訳ありません。「第3」の「4」について、三点申し上げたいことがございます。   第一に、資料の記述内容を確認したいことがあります。17ページの一番上の段落において、新しい制度の下で生じ得る事態の想定が示されているところ、3行目から5行目にかけて、「一定の法律行為を目的として成年後見人等が選任され、当該法律行為について成年後見人等の同意を得なければならないとされたにもかかわらず」という記述があります。この記述は、成年後見に関して言えば、現行法とは異なる前提に基づいた説明であると思います。現行法では、成年被後見人は、成年後見人の同意を得たとしても法律行為をすることができないという前提がとられています。そして、ここで書かれているような制度の前提を変更することは、現在までの部会審議において合意が得られているわけではないということを確認したいと思いました。   第二に、17ページの21行目以下のイにおいて、保佐との対比において、新しい制度の下で現在の制度と異なる状況が生じるのではないかが検討されているのですが、これはあえて比較対象として保佐を選ばれたのでしょうか。現行法の下でも、ここで書かれている問題は、補助について、既に存在しているように思われます。民法18条3項は、同意権付与の審判と代理権付与の審判の全てを取り消す場合には、家庭裁判所は、補助開始の審判を取り消さなければならないと定めています。そうしますと、17ページにおいて問題とされる状況は、現行法の下でも生じ得るのではないかと思われます。そして、そのことについて現在の実務上、問題が指摘されていないのだとすれば、ここで想定される新しい制度の下で、このような形で問題提起をする必要があるのか疑問に思った次第です。誤解があるかもしれませんので、この点に関して、もう少しご説明をいただきたいと思いました。   第三に、第二の点と密接にかかわるのですが、17ページにおいて懸念されている問題が本当に生じるのだろうかという疑問があります。新しい制度の下で、同意権の付与の必要性を個別的に判断して行うことになるのだとすると、行為能力を制限する審判を取り消す際には、同意権者の職務が果たされたか否かが審査されることになるのだと思います。そうだとすると、審判が取り消される以上は、同意権付与の対象となる法律行為が終了したであるとか、もはや法律行為への同意が不要になったであるとか、そのような事情があることが前提となるのではないでしょうか。本人が同意なしに問題の法律行為を行った場合については、本人が法律行為をしたことが明らかになり、同意権者が当該法律行為の追認又は取消しをしたことを前提として、審判の取消しの可否が判断されることになるのではないかと考えられます。そして、以上の点は、現行法の下でも、補助について同様の状況があるのではないかとは思われます。そうすると、17ページの最後の5行で書かれているのとは異なり、「成年後見人等による追認又は取消しがされるまでの間は、法定後見による保護の必要性が失われていないとして法定後見が終了しないと考える」必要はないことになります。3点目は意見ということになります。   なお、大変恐縮なのですが、「第3」の「5」についても発言をしたいことがあります。「法定後見制度に関し、これまで取り上げられた事項のほかに必要な検討事項」として、第1に、以前の部会でも申し上げましたが、民法21条の制限行為能力者の詐術について、検討すべきように思います。取引相手方の保護が先ほどから話題になっていますけれども、民法が制限行為能力者の取引相手方の保護として用意するのが、相手方の催告権に関する20条と、制限行為能力者の詐術に関する21条です。21条については、「詐術」という概念の適否も含めて、取引相手方の保護の在り方に関して検討すべきように思います。   もう一つ、検討事項に含めるべきように思うのが、これも以前の部会で申し上げたところですが、民法124条2項2号の括弧書きにおいて、成年被後見人が追認権者から除外されていることです。これは、最初に申し上げました成年被後見人は成年後見人の同意を得たとしても有効に法律行為をすることができないという前提に立ったものであると理解しています。それゆえ、もし現行法の前提を維持するのであれば、改正の必要はないことになりますが、その前提を変更するのであれば、検討対象に含める必要があると考えます。この問題は、「第4」において検討課題として挙げられている98条の2とも関係しますので、それと併せて124条2項2号についても検討課題としてはどうかと考える次第です。   長くなりまして申し訳ございません。以上です。 ○山野目部会長 後で波多野幹事からしっかりした御案内を差し上げますけれども、加毛幹事からお話いただいた事項のうち、4の制限行為能力者の相手方の催告権に関してお話しいただいた3点目のうちの第1点は、お話のとおりでありまして、既に部会で決定したわけではありません。仮にこのような制度を入れるとするとどうなるかという想定の議論であります。2番目の保佐の点は、そこに例えばと記してありますとおり、保佐を一つの例として議論を想定しているにとどまります。これも御高察のとおりであります。3点目、補助において既に現行法制の下で類似又は本質を同じくする状況が生ずるのではないかという点は、そのとおりでありまして、そのことを加毛幹事からも御注意を頂きましたから、そこに注意を払った上で改めて後見制度全般を見直したときにどうなるであろうということを考えていかなければなりません。ただし、ひょっとすると御指摘いただいたところを踏まえていくと、余りここで大きく取り上げて議論していく事項ではないかもしれないということになりますし、いや、やはりこの際きちんと考えようという話になるかもしれませんし、そこは今頂いた御注意を踏まえて考えてまいるということになりましょう。   それから、5のその他についてお話しいただいたところは、御案内のとおり、こういう方向で見直しをしていくと、民法やそのほか、会社法、民事訴訟法、民事執行法などにおいて見直さなければいけないか、少なくとも検討が必要とされる事項を含む規定が散らばっております。今、加毛幹事からは言わば特出しで、21条と124条2項の御指摘を頂きました。繰り返しの御指摘を頂いているものであります。忘れないようにして検討してまいるということをお約束いたします。ありがとうございます。波多野幹事からお話しください。 ○波多野幹事 部会長からお話いただいたところで尽きているのかと思いますが、部会資料に保佐を取り出したというか例示させていただいたところにつきましては、現行の制度ですと保佐、いわゆる判断能力が著しく不十分な方につきましては、必要性がなくなれば終わるという状況にはならないのではないかと、補助につきましては、必要性がなくなれば終わるという状態は今でもあるというのはおっしゃるとおりかと思いますが、その点では、現行の保佐の対象となる方は、この場面において、今回見直しによって規律の状況が変わる可能性があるのかなと思いまして、そこについて御検討いただく必要があるのかなと思って、例示をしたという次第でございます。 ○山野目部会長 加毛幹事、ひとまずよろしゅうございますか。 ○加毛幹事 はい、ありがとうございます。発言の順番を変更していただき、ご迷惑をおかけしました。大変ありがとうございました。 ○山野目部会長 引き続きよろしくお願いいたします。ありがとうございました。   竹内裕美委員、お待たせいたしました。 ○竹内(裕)委員 では、手短に行きたいと思います。2点なのですけれども、まず選任の点、先ほど青木委員から運用と法規範のずれが生じているのではないかという御指摘がありまして、私も843条の4項を見たときに、成年被後見人の意見を考慮するとか、意見と書いてあるのですが、また、これについては家事事件手続法の120条にも意見の陳述とあるのですけれども、一体何に対するどういう意見なのかということが条文を読んでもよく分からなくて、その辺りをもう少し、843条4項のところで、先ほど意思尊重のところでも話が出てきたと思うのですけれども、きちんと成年被後見人に情報提供をするとか説明をするみたいな、そういう少し規定の工夫ぶりはあってもいいのかなと感じたところです。   2点目なのですけれども、これは利害関係人の申立権に関するところでありますが、この条文を見たときに、成年後見のパートに取引の安全という色も少しあるのかなと思われたのが、859条の2の第3項のところで、成年後見人が複数人あるときは、第三者の意思表示は1人で足りるというところが、これは取引の安全を考慮しているので、成年後見構成にもそういう部分はあるのかなと思ったところです。あと、利害関係人に認めた場合には、確かに報酬の問題があると思うのですが、破産などでも債権者破産などの場合は予納金を納付したりということもありますので、そういったこともヒントというか参考というか、になり得るのかなと感じたところです。 ○山野目部会長 なるほどと感じます。 ○佐久間委員 死後事務に関しまして拡張に積極的な御意見が多かったと思いますが、死後事務というのは飽くまで相続人のためにする事務になりますので、死亡した人、成年被後見人等を基準に考えていくことは、それは筋が違うのではないかということが1点です。   もう1点は、教えていただいたことで、同じようなことですが、保佐、補助において③の死体の火葬、埋葬について裁判所から求められることがあるということでしたが、例えば不動産の売却、管理について代理権を与えられている者がそんなところの面倒まで見なければいけないというのは、事実として求められて、しようがないなというのはまあ、あり得るかもしれませんが、それが法的な権限となり、かつ権限が与えられたら義務にも恐らく通常つながるので、そういう拡張は少しいかがなものかと思ったということです。 ○山野目部会長 青木委員が権限の性質を関連させて検討し、とおっしゃったところは、そのような意図でおっしゃったと想像しますから、今、珍しく2人の意見が一致していました。ありがとうございます。引き続き検討しましょう。 ○上山委員 1点だけ申し上げます。申立権者の検討に当たって、検察官申立ての機能についてもう少し考えてみてもよいのではないかと感じました。検察官申立ては本来、民法上のある種の受皿であると思うのですが、これが従来十全に機能してこなかったということで、老人福祉法などの行政法上の申立権が導入されてきたという経緯があろうかと思います。ただ、これをもう少しうまく機能させる工夫を考える余地はないのかなとも思っていまして、例えば、少し乱暴な議論になりますけれども、検察官が民法の中で代表している公益性というのは、本人の権利擁護だけに回収し切れない要素、例えば取引安全といった要素をここに読み込むといったことも検討する余地があるのではないかと感じました。 ○山野目部会長 検察官の問題を改めて考えましょうという御提言もごもっともなお話であると受け止めました。ありがとうございます。   引き続きまして、部会資料4の第3の4のところになります。制限行為能力者の相手方の催告権、加えて5、その他につきまして、事務当局から資料の説明を差し上げます。 ○木田関係官 部会資料4、15ページからの4、制限行為能力者の相手方の催告権について御説明いたします。   現行法では、成年後見人の行為や被保佐人及び被補助人が保佐人や補助人の同意を得なければならない行為について、同意を得なかったときは、成年被後見人側が取消しの意思表示をすれば取り消すことができ、相手方は、成年被後見人側の意思によって契約等の効力が有効になったり取り消されたりする不安定な状態に置かれることになり、単に相手方だけではなく一般の取引の安全も害されるということもできます。そこで、本人の利益と取引の安全との調整を図るために、このような行為について、その相手方に法律関係を早期に確定させるための手段として催告権の規律が設けられており、その詳細は16ページの1(2)に記載しています。   法定後見制度を見直すことにより、16ページから18ページまでに掛けて記載しておりますが、例えば、現行の保佐相当である判断能力が著しく不十分であると評価される本人が、判断能力が回復しない状況で法定後見が終了することを可能とする規律が設けられますと、保佐人は存在しないですが判断能力が回復しておらず、相手方から追認するかどうかの催告の意思表示を有効に受領し、期間内に確答しないと追認をしたものとみなされるという現行法の催告権に関する規律が想定していない状況が生じ得るようにも考えられます。これらを踏まえまして、制限行為能力者の相手方の催告権の規律の在り方について御議論いただきたいと存じます。   また、18ページの5、その他では、法定後見制度に関しこれまで取り上げた事項のほかに必要な検討事項について、どのように考えるか御議論いただきたいと存じます。 ○山野目部会長 本日、内容にわたる審議は、ただいま事務当局から資料の説明を差し上げたところまでになるであろうという見込みを持っています。おわびないしお願いがあります。杉山幹事と青木哲幹事におかれましては、訴訟能力や民事訴訟法35条についての御検討の準備も頂いてきていらっしゃるものであるかもしれません。拙速にやればできないことはないですけれども、しかし、今挙げた論点は、既に先生方の御案内のとおり念入りな検討が求められる事項でありますから、余り急がないで、次に部会資料4を扱う機会に委ねようと考えます。これらの論点について本日は先生方の御意見を承るところまで至りません。もちろんその手前のところにおいても御発言いただいてよろしいですけれども、本格的な御発言を頂くところまで達しませんから、引き続きよろしくお願いします、というおわび及びお願いを差し上げます。どうぞよろしくお願いします。   催告権及びその他について御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○小澤委員 ありがとうございます。まず、催告権のところですが、部会資料4の17ページの33行目に記載されているとおり、同意権、取消権が付与されている行為を成年後見人の同意なく本人が行った場合には、後見人による追認又は取消しがされるまでは必要性は失われないと考えますので、終了することはできないと考えています。必要性が失われていないのに後見が終了したのであれば、そもそも必要性が消失したという要件を欠いた終了ということになって、終了の審判が取り消されることになるのではないかと考えておりますので、したがいまして、現行の催告権との規律の違いは生じないのではないかという意見を持っています。   その他のところですが、1点だけ、第2回部会において法定後見の開始の検討を行いましたが、更に類型の見直しを検討項目とする必要があるのではないかと考えています。 ○山野目部会長 ありがとうございます。類型の見直しは、改めて議論をお願いすることにしましょう。ありがとうございます。 ○佐久間委員 まず、加毛幹事もおっしゃったし、小澤委員も今おっしゃったことなのですが、同意を本来得て契約すべきところ、同意を得ずに本人がしました、その後、そもそもが、9行目からのところなのですが、取消しか追認かが未定であるというときに、必要性がなくなったからとして審判が取り消されるということがどの程度あるのか、ということをまず疑問に思いました。加毛幹事がおっしゃったことかもしれませんが、それでも取り消されたということは、恐らく成年後見人等がその契約を認めるという形で関与したと考えることは可能なのかなと思いましたけれども。ですから、ここで想定されているような場面は出てこないのではないかと、思いました。ただ、仮に権限の存続期間を今後定めるということになりますと、その存続期間満了によって権限がなくなることになりますので、結局この問題は、違う場面かもしれませんけれども、出てくると思いました。   出てくるとして次に、20条の特に1項なのですけれども、行為能力者となった後にその人に催告した、確答がなかった、追認ですねという規定に関しまして、行為能力者のところで括弧書きで、「行為能力の制限を受けない者をいう。」とあるのですけれども、今はこの行為能力の制限を受けない者というのは判断能力を回復したということが前提となっており、その場合についてはこの規律を変える必要はないと思うのです。だけれども今後は、例えばですけれども、存続期間が満了しました、制限がなくなりました、行為能力の制限を受けない者になりました、この人については20条1項の規律を及ぼすことは適当ではないということになり、この二つを区別するようなことをしなければいけないのではないかと思います。更にそのときに、利害関係者を請求権者にするかという先ほどの話に戻るのですけれども、20条1項の規定をそのまま及ぼさないということだから、確答がなかったら取消しですね、というのも、あり得ることなのかもしれませんけれども、新たに当該追認、取消しに関し判断することができる者の選任を求めるということも、どのぐらいの人が利用するか分かりませんけれども、大きな取引だったらあり得るのかなということから、考えた方がいいのかなと思いました。   差し当たり、以上です。 ○根本幹事 今、佐久間委員からの御指摘を受けて、存続期間満了で終了してしまった場合に、それを仮に後見人側が知っていて終了させていれば、それは追認したと見られると思いますけれども、場合によっては知らずに終了してしまうというケースも考えられると思います。その場合に一律に追認したとみなされてしまうと、後見人の責任という観点においては非常に大きな懸念が生じると思いました。仮に、佐久間委員から御指摘のような事態が想定されるとして、その催告期間においては、例えば終了しても、その催告期間が経過するまでは何らかその制度の終了を猶予するような仕組みを考える方が、新たにまた制度の申立てや利用をするというのではなくて、何らかの猶予期間を設ける考え方はできないものかと思っています。 ○青木委員 先ほど、資料記載の想定事例について、こういう場合が生じ得るのかということで、こういう場合には必要性が残るので終了はしないのではないかというのはそのとおりだと思います。多くの場面では同意権、取消権の必要性が終了しないということで、ここで懸念するような事態にはならないのではないかと思われます。   ただ、中には、本人が後見人に全く無断で上手に契約をしてしまい、そういう取引がなされたことが後見人には分からずに取引をしてしまうということがないことはないと思います。資料の想定事例は不動産売買ですが、不動産についてそういうことが起きるというのはなかなか考えにくいことでありますが、それ以外の取引についてはあるかもしれないと思われます。そのときに、必要性がもうなくなったと思って利用終了したのに、そういう事態が終了後に発覚をしたという場合については、その時点において、まだ5年以内の取消権行使できる期間内であったとして、取消すことが本人の利益になるということであれば、その段階で、同意なき法律行為に関する取消権の行使に関する代理権付与の新たな申立てを、本人もしくはその他の申立権者がすることによって、対応することができるのではないかと考えています。   また、そもそも取引の相手方の催告ですけれども、そういった後見人に隠れて本人が取引をしたような場合には、そもそも同意権、取消権を付与されている者であるということを登記事項証明などの提出によって取引の相手方が知るところではないと思われますので、通常、取引の相手方から行われるのは、一般的な契約の履行を求める、代金を払え、等の請求が来るだけであると思われます。同意なき取引についての催告がなされることは考えにくいところです。その段階では、1か月等の催告期間での対応の必要はなくて、先ほど申し上げたような本人による取消権の行使や取消権行使についての代理権を付与することによって対応するということになるのではないかと考えました。 ○野村幹事 本人の判断能力の程度によっては、法定後見終了後の取引の相手方による本人への催告によって追認したものとみなされるとすると、本人の保護に欠ける場合があるのではないかと思います。そのような場合には、後見人等による追認又は取消しがされるまでの間は法定後見による保護の必要性を失わないとして、法定後見を終了させないとすべきであるし、また、仮にその法定後見が終了した場合は、再度の制度利用をするまで何らかの措置、例えば催告の効力が生じないなどの措置をとるべきなのではないかと考えます。 ○佐久間委員 制限行為能力者の詐術の規定について、加毛幹事が見直す必要があるのではないかとおっしゃいましたよね。あの中に、もしかすると同意を得る必要があるにもかかわらずその同意を得ずに行為をした、相手方との関係でもごまかしたというときに、詐術の概念が、これは相手方に対して詐術を用いたということではありますけれども、内部においてある意味、詐術を用いているというようなときにも拡張して、取消権を奪うということも、私はそれがいいとはまだ今日の段階では申しませんけれども、そういうことも考え得るということを加毛幹事はおっしゃったのかなと。もしそうだとすると、ここでの場面で、そもそもが取消権はありませんということも広がってくるので、加毛幹事の趣旨はよく分かりませんが、21条の拡張の検討をするとすれば、そこでもこれを考慮した方がいいのかなと思いました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   もう少し御意見のおありの方のお話を伺います。その後で、ここはまことに法技術的な論点の審議が続いておりますから、久保委員と花俣委員に強いての御発言はお願いしませんけれども、何かお感じになったことがあれば簡単におっしゃっていただくということはお願いしたいと考えておりまして、それは御随意になさっていただければと思います。そこに行くまでの間に御指摘を頂くことがなおおありでしたら、ほかの委員、幹事、いかがでしょうか。   よろしいですか。そうしましたら、本日はまず、20条の1項の、本人が行為能力者になった後という今の規律文言の表現を、今後の見直しの方向がどうなっていくかはまだ分かりませんけれども、それに即応して注意を払って見直しを考えていくべきであるという課題があるということが確認されました。加えて、20条の2項についてどう考えるかということについて、様々な状況を想定し、また幾つかの御提案を頂いたところであります。これらを整理することにいたします。さらに、20条と21条の規律を関連させて何か工夫をすることができないかという方面からの問題提起も頂きましたから、そこも本日の議事を整理し、次の機会において審議をお願いする際の部会資料として調えたいと考えます。   それでは、お尋ねをします。久保委員、何かおありでしたら、どうぞ。 ○久保委員 よく分からないので、少し質問なのですけれども、死後事務の部分ですけれども、後見人であれば死後事務もある程度してもらえるかなと思いますし、保佐とか補助の場合は例外的に善意でやっていただくところがあるのかなと思うのですけれども、私たちが求めている、選任したり解任や退任したりというような、出たり入ったりするというときに、そこが途切れた場合の死後事務というのは誰がしてくれるのかというのはよく分からないので、少し教えていただきたいなというのが一つです。   それから、催告なのですけれども、保佐人がいることを前提として契約をした相手方であれば、この人は保佐制度から出ますけれども契約を続けますかみたいな、そんなことを少し確認する必要があるのかなと、少しお話を聞いてて思ったのです。選任、解任で出たり入ったりする場合、後見制度を使わなくなった瞬間に、制限行為能力者ではない、判断能力のある人の扱いになってしまうので、催告対象になってしまう可能性があるので、少しそこが不安だなというような感想であります。 ○山野目部会長 前半でおっしゃったことは、その空白といいますか、誰もケアしない状態になるのではないかというおそれがあるからどうしましょうかという御議論が、まず、ここで論じている民法の範囲で、一応の議論を頂きました。あわせて、民法だけで対処する事柄ではないかもしれないという御指摘も多々いただいたところでありまして、お話をしたような行旅不明、身寄りのない人の終わりを迎えたときの問題全般の中で、また考えてみるべきであろうということが確認されたところです。   後半のところは正に御指摘のとおりで、それを具体的な法文との関連で、佐久間委員から、20条1項になりますけれども、このまま放っておいてはいけない、きちんと考えましょうという御注意がありましたから、もちろん忘れないようにして検討を続けていくことにいたします。ありがとうございます。   花俣委員、何かおありでしたらお願いします。 ○花俣委員 催告権というのですかね、ここは現行法の規律、つまり、これからもしかして民法が改正されるかもしれないという場合も考えると、それ以前の規律というのは、そもそも障害を有する人にとってはおよそ想定されない場面だなと思うので、そこについての議論というのはなかなか付いていけないなと思いながら聞いておりました。何の役にも立たない意見ですけれども。 ○山野目部会長 いえ、元々20条という民法の規律が、現場というか実態でそれほど頻繁に働きを見せているようなものではありません。実際上の頻度において話題になる度合いが高いということでもありません。ただし、法制の検討ですから、20条の法文をそのままにしておいて、ほかは変わったのにここは何も勉強しませんでしたというわけにいきません。法制審議会はこの種類の仕事がこれからもかなりありますから、お付き合いを頂ければ有り難いです。ありがとうございます。   本日は、部会資料4の第1から第3までの審議を終えたという扱いにいたします。したがいまして、第4の部分が残っておりますから、次回以降は、これから波多野幹事から説明がありますけれども、ヒアリングが予定される回などがありまして、それを挟んだ上で、また委員、幹事に本日のような議論をお願いする機会に、部会資料4の第4の部分の御議論をお願いするということにいたします。   ただいま申し上げた点も含めて、次回以降の議事日程について、波多野幹事から御案内を差し上げます。 ○波多野幹事 本日も長時間にわたって御審議賜りまして、ありがとうございました。次回以降の議事日程に関しまして御説明を致します。   次回は7月16日午後、及び次々回、9月2日午後の会議につきましては、関係団体へのヒアリング等の実施を予定しております。本日積み残しとなった部会資料4の第4以降に関しましては、9月10日の部会で御議論を御予定いただければと存じます。   次回の会議について改めて申し上げますと、7月16日火曜日午後1時30分から午後5時30分までを一応予定しておりますが、ヒアリングが終了次第、終わるということで考えております。場所は地下1階の大会議室でございます。ヒアリングでございますが、公益社団法人全国精神保健福祉会連合会の小幡様、一般社団法人日本認知症本人ワーキンググループの藤田様、一般社団法人日本発達障害ネットワークの大塚様、特定非営利活動法人日本障害者協議会の石渡様からお話をお伺いする予定にしておりまして、現時点での進行としましては、順番に、小幡様から20分お話をお聞きし、15分程度の質疑の時間を取り、一旦休憩を挟んで、また次に藤田様から20分程度話をお聞きし、15分程度の質疑応答の時間を取り、休憩を取るというのを繰り返していこうかなと考えているところでございます。 ○山野目部会長 ただいまヒアリングの議事日程等について御案内を差し上げたところも含めまして、この部会の今後の運営などにつきまして御意見やお尋ねがありますれば承ります。いかがでしょうか。よろしゅうございますか。   それでは、これをもちまして法制審議会民法(成年後見等関係)部会の第4回会議を散会といたします。   熱心な御議論を頂きましてどうもありがとうございました。 -了-