法制審議会 民法(成年後見等関係)部会 第5回会議 議事録 第1 日 時  令和6年7月16日(火)自 午後1時28分                     至 午後4時20分 第2 場 所  法務省地下1階 大会議室 第3 議 題  参考人からの意見聴取 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山野目部会長 定刻よりやや早うございますけれども、皆さんおそろいでいらっしゃいます。法制審議会民法(成年後見等関係)部会の第5回会議を始めます。   本日も御多忙の中、御出席を頂きまして誠にありがとうございます。   出欠状況を御案内します。本日は久保野委員、佐保委員、馬渡委員、松井委員、家原幹事及び向井幹事が御欠席でいらっしゃいます。   続きまして、前回の部会会議の後、幹事等の交代がございました。事務当局から御案内を差し上げます。 ○波多野幹事 厚生労働省の人事異動に伴いまして、尾﨑美弥子幹事に替わりまして遠坂佳将厚生労働省老健局認知症総合戦略企画官兼地域づくり推進室長が幹事に就任されました。また、本日から厚生労働省の原田耕太関係官に替わりまして、新平紗恵子厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課課長補佐が、金融庁の高鍋峻輔関係官に替わりまして、峯川祐衣金融庁監督局総務課課長補佐が、それぞれ関係官として出席されていらっしゃいます。 ○山野目部会長 ただいま御紹介を差し上げたとおりでございますから、ここで遠坂幹事、新平関係官、峯川関係官におかれまして簡単な自己紹介をお願いしたいと考えます。  (幹事等の自己紹介につき省略) ○山野目部会長 どうぞよろしくお願いいたします。   本日の審議に進みます。配布資料と本日の進行についての説明を事務当局から差し上げます。 ○波多野幹事 本日はヒアリングのみを予定しておりまして、部会資料の配布はしておりません。   参考人から御提供いただきました資料を配布しているところでございまして、順に説明いたしますと、小幡参考人から「ヒヤリングに関する成年後見制度に関する提案意見」と題する資料を、藤田参考人から「成年後見制度の見直しの検討に向けて認知症の本人の立場からの期待と提案」と題する資料を、大塚参考人から「法制審議会民法(成年後見等関係)部会への意見書」と題する資料を、石渡参考人から「現行成年後見制度改正の方向性について」と題する資料を御提供いただいており、配布しているところでございます。   本日の進行でございますが、前回の最後に御説明しましたとおり、参考人4名の方に御出席をお願いしております。お話をお聞きする順に団体、お名前を申し上げますと、公益社団法人全国精神保健福祉会連合会事務局長、小幡恭弘様、一般社団法人日本認知症本人ワーキンググループ代表理事、藤田和子様、一般社団法人日本発達障害ネットワーク副理事長、大塚晃様、特定営利活動法人日本障害者協議会副代表、石渡和実様でございます。なお、小幡参考人と藤田参考人につきましてはウェブ参加でございます。   進行ですが、参考人ごとに御意見の聴取、質疑応答を繰り返すイメージで進行を予定しておりまして、参考人の方から20分程度で御意見を述べていただき、その後、その参考人に対して15分程度の質疑応答を行うということで進めていただければと存じます。   なお、各参考人は御自身以外の参考人のヒアリングにおいて、それを傍聴されるために在席されることも可能でございますが、御自身の意見陳述と質疑応答が終わりますと、適宜御退出されることも可能でございますので、この点は御了承いただければと思います。 ○山野目部会長 御案内を差し上げたところに従いまして、初めに公益社団法人全国精神保健福祉会連合会からお出ましいただく小幡参考人からのヒアリングを行います。   この際、私から一言、小幡参考人にお礼の御挨拶を申し上げます。本日、小幡参考人におかれましては大変お忙しい中、資料を調えてくださるなど事前の御用意も頂いた上で、この部会に御来臨を賜りまして、誠にありがとうございます。小幡参考人から忌憚のない御意見を伺い、今後のここでの検討にいかしてまいりたいと考えるものでありますから、何とぞよろしくお願い申し上げます。   質疑応答の機会につきましては、先ほど御案内を差し上げたとおりでございます。小幡参考人からの御意見を伺った後、小幡参考人に対する質疑応答の時間を設けることを考えております。それでは小幡参考人、どうぞよろしくお願いいたします。 ○小幡参考人 御紹介いただきました全国精神保健福祉会連合会、みんなねっと事務局長の小幡と申します。どうぞよろしくお願いいたします。   初めに、当会は精神障害者の家族会でもありますが、精神疾患障害者の御当事者の方たちからのヒアリングもあるかと思いますけれども、家族と当事者と両方の側面から意見できればと思っております。よろしくお願いいたします。   成年後見制度自体の精神障害者に対する権利保護というようなところについて、国連の勧告も出てきている中で、私たちとしては、そもそもこの制度の在り方がどうなのだろうという問いも必要だという立場もありつつ御審議いただいているところの運用をどういうふうに深めていったらいいのかという点で意見を述べられたらと思っております。よろしくお願いいたします。   現状の制度の問題点としては、次に掲げているようなものがあるのではないかと考えています。一つは、手続の煩雑さということです。これは、申立てに必要な書類を様々、診断書や情報シートなども含めてですが、そろえていくこともありますが、第三者後見のみを使うわけではなくて、家族が後見人を担うというような例も私たちの例では幾つかあったりします。そういったときのこの手続書類の煩雑さといいますか複雑さが、なかなか課題となっておりまして、こういうことであったら外部に頼んだ方がいいのではないかとなれば、まだいいのですけれども、そもそも後見自体の利用を諦めてしまうというようなことにも、事象としては数少ないかもしれませんが、発生してきているということもあります。手続をいかに簡略化する中で、必要な情報は付加、追加していくような方法で対応できないかというようなところが問題点としてあるのではないかと。そのことが、もし利用したいと思っていても利用しないという選択に行ってしまうのであれば、その行使を妨げてしまっていますので、そのことを暗に勧めないためにも、適正な運用ができるように手続を簡略化していただきたい。   一番重要だと思っているのは、二つ目の意思決定の尊重の不足というところです。ここにつきましては、仮に家族や第三者関係なく、成年後見人の方と当事者本人がやり取りをする中で、どこまで本人が持っている意思決定の機会が得られているのか、またそれが様々な運用の中で反映をされて、本人の実現したいことに近付いているのかというところについては、まだテキストベースであったり一般論のところでの権利擁護という視点の範ちゅうにとどまっていて、その人の生き様からどういうふうに見ていくのかというところでは弱いところがあるかと思っています。そういった意味では、本人が持っている生活の基盤というものが、どちらかというと財政基盤だけによらないところを今、どういうふうにしていくのかと、強化していくのかと御議論があるところだと思います。できるだけその人が選択し得ることを引き出す、聴き出すというところに重点を置いていただきたいと思っているところです。   三つ目に、成年後見の場合に、3類型いろいろあるかと思いますけれども、その中で後見人に対する監督というものが今登場してきていますが、そもそも後見人自体が本来の業務を全うできていれば、監督そのもの自体は要らなかったのではないかと。ただし、やはり運用の中で多岐にわたる問題が発生してきていることもあって、監督制度というか、監督という位置付けが重要になってきていると。ますますこの後、想像していくに、監督人が担うべきチェックポイントなんかも含めて、多岐に増えていくのではないかと思っています。   そうすると、どうしても本来、執行する後見人自体が、意図するか意図しないかは別として、不正や、又は権利侵害ということに踏み込んでいるということになかなか気が付かなかったり、また、監督が仮に見過ごしてしまうような事例があったときには、それは余計に野放しになってしまうのではないかという危険はないのかということを思っているところです。監督人の体制を強化していただくということについては望むところもありますけれども、そもそもの後見人自身の現場での力量を高めるということに監督体制がどういうふうに呼応していくのかというところを、もう少し具体化していく必要があるのではないかと思っているところです。   四つ目に、自立支援の欠如、これは先ほどの意思決定の尊重というところと深く結び付いているところでもありますけれども、一人一人の障害当事者、また家族が一緒に生活をしている場面などを含めると、その管理と保護という点がどうしても目立ってしまいます。先ほど言ったように、一人の生き様として見ていくための自立支援をどういうふうにしていくのかという点について十分議論いただくには、一後見人や後見人と監督人のやり取りだけではなくて、できれば何人かの、複数の方と意見交流をしていくことも必要ではないかと思っています。   今の点などを含めて、改正の必要性としては、何はともあれ一人一人のアドボカシーが適正に守られ、発展していくという点で改正されるべきであると考えております。精神障害者自らが意思尊重されているということを実感できる、本人が実感できる、そして、成年後見制度を使うことによって安心し生活できる環境を整えているのだなというような思いに関係者を含め、至ることが必要かと思います。そのために私たちとしては、話の中にも述べてきていますけれども、改正の方向性として、次のことについて御検討いただきたいなと思っています。   一つ目は、手続の簡素化と迅速化です。時間を要してしまうと、例えば精神疾患の症状等によって、この制度を利用しようと思っていたのに、なかなか時間を経てしまうことにより考えが変わってしまうなんていうこともありますし、書類についても全部がそろうまでというふうになっていると、なかなかそれがそろうまでの期間、苦労すると、また、家族と同居している場合も、かなり家族も高齢だったりするというようなこともありますので、迅速な対応がどこまでできるのかと。御本人が症状を抱えながらでも申請ができるような状況にしてもらえないだろうかと。不備というか、足りない点については申請後、補っていけるような方法を構築していただけないかと。そういった意味では、全員でありませんけれども、一部にオンライン申請などをしていくなんていうことも視野に入れていく必要はあるかと思いますが、現状そういったものが登場すると、そういうオンライン申請に偏重ぎみになって、従来のアナログな申請がかえってしにくくなるとかいうこともあります。簡素化ということと、IT機器なんかも使った中でやっていくということが、親和性もあることもあるかと思いますが、オンラインであろうがアナログであろうが、迅速な手続ができるような工夫をしていただきたいなと思っています。   二つ目は、意思決定支援の強化です。後見人がいろいろ苦労し、被後見人の情報をどういうふうに集めていくのか、またその当事者(被後見人)の方の生活背景を捉えるには、人が介在することが多いと思います。家族がいる人、いない人、支援者がいる人、いない人、様々なパターンがあるかと思います。いずれにしても、一番強調したいのは、被後見人が自ら指名する、指定できるパーソナルアシスタントを立てて、被後見人自身ができるときは別ですけれども、自身でそれがかなわないときには、パーソナルアシスタントがその対応をできるようにしていただけないかと思っています。   家族が同居している場合でも、家族ではなく自分の信頼を置ける人にやってほしいという場合もあるでしょうし、長らく福祉関係職とやり取りをしている中でも、自分の思いを体現するには、そうしたパーソナルアシスタントがいた方が、今までの経緯に引っ張られることなく表現できるという立場の人たちがいらっしゃいます。パーソナルアシスタント制度のような枠組みや基準を作るとなると大変かと思いますが、被後見人が指名する人が本人をサポートしながら手続をするということについて、それが第三者であった場合でも認めてもらえるような方策はないかと考えているところです。   三つ目に、後見人の選定のプロセスの見直しです。家裁申立てをして決まってくるまでに希望があれば、この人というような提案の仕方や、名前を付けたりということは申請時にあるのは知っておりますけれども、なかなかそういう特定の人が定まらないのだけれども、私にはこういう感じの人がいいとか、こういうタイプの人とだったらやり取りしやすいという思いもあります。しかし、第三者後見人を選出していくときには、本人との相性といいますかマッチングについて、最終決定するまで分からないということになっているのが現状だと思います。できれば仮決定みたいな形で一度、面接なり接触をとっていただいて、どうしてもこの方では私にはなじめないなという場合には候補を切り替えることができることにもつながるプロセスを得ることができないかなと思っています。そういった意味では、被後見人からより具体の、生活実態把握うんぬんということだけではなくて、被後見人が後見人とやり取りするときの選択、どの方にするかというようなマッチングのための意見聴取を義務付けることはできないかどうか、御検討いただければと思っているところです。   四つ目は、監督体制の強化になります。監督人が後見人を見ていくというところ、裁判所の書記官が足りない中で、監督人がかなりカバーすることも多いかと思いますけれども、監督人がいちいちの後見人さんの業務の内容をどこまで見て、また、見抜いていくのかというところについては、かなり経験値によって各々違ってくるかと思います。できれば監督人同士の情報共有もしていただきながら、定期的な監査を、後見人と監督人がやるだけではなくて、後見人同士や監督人同士やるような体制も作っていく。その中で、監督機関の様々な活動を保障する方法をとっていただきたいと思います。監督人も多分業務時間が有限だと思いますので、何を優先してやるかという協議が必要かと思いますが、定期的にその内容の見直しもしていってほしいと思います。   五つ目、自立支援プログラムの充実です。生活をしていく中で、いろいろな障害の疾患の状態像があるので、これというモデルはなかなか示しにくいですけれども、様々な自分自身の生活を築くためのプログラムのサービスについても後見人が熟知して、その具体的な研修や、その人のスキルアップをしていくということについて、伴走するような形で進めてほしいと思います。そのためには、やはりチェック項目群ではなくて、一つ一つの事例について様々な場面で共有したり、ほかの解釈を見聞したりする機会が後見人にはどうしても必要になってくると思います。ほかの方の事例について、裁判所を通してはなかなか難しいと思いますが、職能団体の後見人は研修の機会もあるかと思うのですけれども、そうでない人たちも同じような場を提供していただければと思っています。   同じようなことをるる繰り返して言ってきましたけれども、私たちが進めていくには、やはり成年後見は誰のためにあるのかというときに、本人のためにあるというところを考えると、どうしても成年後見を利用することによる方がかえってその制約を受けてしまうということがこれまではありました。なので、今後はそこの部分を払拭して、よりよい制度実現のために、是非障害者権利委員会の総括所見なんかの視点も盛り込む中で、矛盾する点もあるかもしれませんけれども、是非本人の自立のために成年後見制度の法改正を含めた取決めをしていっていただきたいと思っております。   簡単ですが、以上で最初の発言は終わりたいと思います。 ○山野目部会長 小幡参考人におかれましては、どうもありがとうございました。   これから委員、幹事からのお尋ねをもらうことにいたします。委員、幹事におかれては、ただいまの小幡参考人のお話にお尋ねがある際には発言の希望をお出しください。いかがでしょうか。 ○野村幹事 本日はありがとうございました。先ほど御指摘があった、後見人の力量を高めるとともに適切な支援が可能となるように、後見人への支援も重要であると専門職団体として考えております。   今のお話で、3点質問させていただきます。1点目は、御提案の改正の方向性の手続の簡略化についてなのですが、必要書類の簡略化とありますが、具体的にはどういった書類の簡略化を一番進めてほしいと想定されていらっしゃるのでしょうか。これが1点目です。   次に、意思決定支援の強化ですが、現状でも後見人は「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」に基づいて意思決定支援に取り組んではおりますが、現状の仕組みに特に不足しているとお考えの点はどういった部分でしょうか。また、御提案いただいたパーソナルアシスタントの活用についても、もう少し具体的に教えていただければと思います。   三つ目の、最後の質問になりますけれども、後見人選任の透明化と適正化について、本人の意思や希望を尊重しつつ、想定される事務の専門性に見合う候補者を適合させるためには、どのような対応をすればよいとお考えでしょうか。また、その選任プロセスを監督する第三者機関というのは、どういった機関を想定されていらっしゃるのでしょうか。   以上、3点になります。よろしくお願いいたします。 ○小幡参考人 ありがとうございます。手続の簡略化のところについては一定程度、障害手帳をお持ちの場合には、診断書だとか財産目録とか、そういったものについて申請後の対応でも済むようにできないかと考えているところがあります。何がというよりは、いろいろな書類をそろえていかなければならない、だけれども、僕は障害手帳も持っていて診断ももらっているのにというときに、また改めてそれに類する書類を集めるということについて、かなり手を煩わせてしまったということをお聞きしているところではあります。今のところは明確には、把握できていないのですけれども、よろしくお願いいたします。   意思決定については、これはかなり議論いただいて、バージョンアップもしてきているところだと思うのです。けれども、やはり面接や、いろいろやり取りをする中では、面接回数を重ねてきているわけでもないので、その人に対して自分の言いたいことがしっかり伝わっているのかどうかとか、逆に、聴いている後見人の方も、この意図で合っているのかどうかというところの確認作業が、どうすればフォローできるかなと思っているところです。その際にパーソナルアシスタントのような、日頃その当事者の方と生活やいろいろな営みを重ねてきている人が、客観的にそのことのフォローができるのではないかと思っているところです。制度的なものでいうと、札幌市さんが行っていたりしますけれども、そこまでの精度が高いという意味ではなく、日々の生活の中で、当事者の方の支柱になっているという方を指名しても、多くの場合、家族でない方だったりすると、なかなか立会いが認められないというようなこともありますので、お友達だったりする場合もあるかと思うので、そういう人をパーソナルアシスタントとして位置付けて活用できないかというようなところを想定してのお話でした。   選任の透明性のところについては、それはやり方がなかなか現実的には難しいなと思うですが、第1、第2、第3候補者ぐらいまで家裁の方で選定をし、その3名の方と、例えばそれぞれ面接をしてみて、この人の方がいいかなというような選択ができないだろうかというイメージを持っているところです。正直、その選定の過程の透明化というのはいろいろな弊害もあって難しいだろうし、本人たちがそこが分かったからといって適正な人を選べるかというと、分からないところもあるのですけれども、実際にこの方が後見人候補ですよということで2人、3人の顔を見る中でどなたかを選ぶという方が、決められた1人が充てられるよりは、回避できるのではないかというようなイメージがあります。 ○山野目部会長 野村幹事、いかがですか。 ○野村幹事 ありがとうございます。最後の質問の、選任プロセスを監督する第三者機関は、どういった機関を想定されているかという質問に対するお答えをお願いいたします。 ○小幡参考人 正直、家裁の中で裁判官や書記官の人たちが、これまで最終決定をするというところでやっているかと思います。そこの内容について、裁判所の司法の中なので、なじまないことだとは思うのですけれども、司法外の人たちが、その決定プロセスが果たして妥当だったのかどうかという振り返りをするような機会というのは持てないものかどうかということです。特定の今、既存のこの組織でこう充てればいいというところまで、イメージは持てておりません。裁判所が選定し、後見が始まったけれども、結局本人がなじまず交代してほしいということがあったときに、その過程がどうだったのかという評価をする場がどこにあるのか、第三者評価みたいなものがあった方が理解しやすくなるというようなイメージでした。 ○野村幹事 ありがとうございました。 ○山野目部会長 続きまして、小澤委員、お願いします。 ○小澤委員 ありがとうございます。大変貴重なお話、ありがとうございました。2点教えていただければと思います。   4.1について、申立て手続の簡素化と迅速化を図ることが必要との御意見が記載をされていますけれども、一方で、成年後見人制度は本人の法的な能力を制限する制度でありますので、その利用は必要性、補充性を吟味して慎重に判断すべきという考えがあると承知しています。慎重な判断を行うことと手続の簡素化、迅速化とのバランスをとる必要があるのだと思っていますが、この点について何かお考えがあればお聞かせいただきたいというのが1点と、2点目は、パーソナルアシスタントというのを私、不勉強で接したことがないものですから、どのような制度で、広く利用されているのかという点について教えていただければと思います。 ○小幡参考人 ありがとうございます。一つ、申請の簡素化というのは、後見人が開始される可能性と、あなたはやはりこれはその領域に達していなくて、利用しなくても十分やっていく方法がありますよねということの判断も含めてできるように、申請については比較的簡易にできると、受けた後にそのことの適正性を判断していくということの方が、事前にいろいろクリアしなければいけない条件を、書類も含めて整えていくというよりは、いいのではないかと考えたところです。なので、簡素化する分、新たな判断するための材料や時間を要するということは生じるのかもしれませんけれども、先ほど言った、本来は成年後見制度を使ってもいいだろうと思っていた人たちが煩雑さゆえに諦めてしまうというところを防止するには、簡素化でまず申請をした上で、その後どういうような評価をしていくのかというような見方をしたらいいのではないかと考えたということが一つあります。   パーソナルアシスタントについては、これはまだ日本の中でも制度的に運用されているところはほぼ、少ないので、福祉制度的な位置付けで見るとなかなかイメージしにくいかと思いますけれども、福祉行政の、例えば縦割りになっているものを横串につなげていかないと人の生活が支えられないということがあって、サービスがないところは、またそこは抜け落ちるということがあるかと思うのですけれども、パーソナルアシスタントの場合は、押しなべてその人が必要としているところに、福祉サービスの領域も含めてですけれども、手助けをしてくれる人がいつも固定でいて、1人だったり複数の場合もあると思いますが、かゆいところに手が届くようなところでサポートしてもらうというようなことになります。制度や機関を通さずに、個人がパーソナルアシスタントを通じて自分の必要なサービスを受けるというようなイメージで活用するということなのですけれども、お分かりになりますでしょうか。 ○山野目部会長 小澤委員、よろしゅうございますか。 ○小澤委員 ありがとうございます。 ○山野目部会長 ありがとうございました。   続きまして、星野委員、お願いします。 ○星野委員 御報告どうもありがとうございました。私から1点だけ御意見を更に伺いたいと思うところは、2.4のところで自立支援の欠如というお話がございました。管理と保護に重点が置かれている、そこの部分というのは、現行の例えば取消権というものがございますけれども、この辺りのところについて何かお考え、御意見がおありでしたら、お聞かせいただきたいと思います。 ○小幡参考人 障害像や疾患の状態、またその人の生活の状況によっても大分違うと思います。また3類型の中でも変わってくるところがあるかと思います。自立について、どうしても評価をするときに周りからの視点に陥りやすい。支援者や家族、また周りの人たちから見る自立ということと、御本人が描いている自立というところのギャップが生じたときに、誰がその手立てをとるのか。どうしても周りや支援や後見人の方がそのことを考えることになってしまうと、結局ギャップが最終的には埋まらないのではないかという。取消権は、もうそのこと自体をなくすという、ある意味極端なところで、全部はやらなくても、ここの部分だけということについても、十分に協議をしていくことが必要かと思っています。そういった意味では、パーソナルアシスタントなのか、もう少し違った視点のことが持ち込まれた上で、自立支援という本人が願っている部分の実現に向けて取組を強化してほしいと思います。少し曖昧な答えで申し訳ございません。 ○山野目部会長 星野委員、よろしゅうございますか。   ありがとうございました。   引き続きお尋ねがあれば承ります。いかがでしょうか。   よろしいでしょうか。オンラインの委員、幹事におかれても、お尋ねの希望はありませんか。   ありがとうございました。小幡参考人におかれましては質疑応答にも御協力を頂きまして、誠にありがとうございました。どうぞお疲れの残りませんように、くれぐれもお体をお大事になさってくださるように念じます。どうもありがとうございました。 ○小幡参考人 貴重な機会をありがとうございました。 ○山野目部会長 ありがとうございました。   休憩にいたします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開いたします。   続きまして、一般社団法人日本認知症本人ワーキンググループ代表理事でいらっしゃる藤田参考人のヒアリングを行います。   この際、私から一言、藤田参考人に御礼の御挨拶を申し上げます。本日、藤田参考人におかれましては大変お忙しい中、資料を整えてくださり事前の御用意も頂いた上で、この部会に御来臨を頂きました。誠にありがとうございます。藤田参考人から忌憚のない御意見を伺い、今後の当部会の検討にいかしてまいりたいと考えます。何とぞよろしくお願い申し上げます。   質疑応答の機会につきましては、先ほど御案内申し上げましたとおり、藤田参考人の御意見を伺った後、藤田参考人に対する質疑応答の時間を設けることを考えております。   それでは、藤田参考人、どうぞよろしくお願いいたします。 ○藤田参考人 皆さん、こんにちは。日本認知症本人ワーキンググループの代表理事をしております藤田和子です。私は45歳のときにアルツハイマー病と診断されまして、それ以来17年間、いろいろ体調を整えたり、いろいろな工夫をしたり、そうしながら本人としての発信を続けてきました。今日は少し体調を万全に整えることができず、うまく伝えられるか不安に感じてはおりますけれども、提出しております資料を基にお話ししたいと思います。どうぞよろしくお願いします。   まず、私たちが活動してきて感じているのですけれども、この20年近くの間に認知症に関する医療、介護、福祉、地域社会の在り方が大きく進展していっています。何よりも、認知症になってからも希望を持って暮らしていける本人が全国各地にたくさん増えてきています。そして、認知症が進行していても、意思表明や自己決定をし続けるという挑戦をしている本人もいます。   この動きを更に進化させていくために、令和6年1月から共生社会の実現を推進するための認知症基本法が施行され、全ての認知症の本人が基本的人権を有する個人として日常生活及び社会生活を営むことができることを社会全体で本格的に目指す時代となりました。こうした現状を踏まえて、成年後見制度のよりよい改善が図られることを期待して、認知症を実際に経験している本人の立場から、特に重要と考えられる以下5点を提案させていただきます。   一つ目、成年後見制度全体について、認知症に関する先入観やスティグマを払拭し、新しい認知症観に基づいて、認知症の本人が真に権利利益を守りながら自分らしく暮らし続けるための制度となるよう、見直しを図っていただきたいということです。本人の権利利益の保護は重要ですが、現行の成年後見制度では支援者側の観点や医学的観点に重きが置かれているため、保護の名の下に本人の意向や自分らしい暮らしの継続がないがしろにされ、本人が失望し、生きる力を急速に落としてしまうという残念なことが起きています。これまで長年にわたり成年後見制度を構築されてこられたことには最大限の敬意を表しつつ、より多様なライフスタイルを持った人たちが認知症になっていくという今後を見据えて、今の段階だからこそ、新しい認知症観に立って制度の見直しを進めていただくことを期待したいです。新しい認知症観とは、『全ての認知症の人が基本的人権を有する個人であり、認知症になってからも一人一人が個性と能力を発揮しながら希望を持って自分らしく地域の中で共に暮らしていくことができる』というものです。   二つ目、成年後見制度の全ての運用関係者が新しい認知症観を実感的に理解し、本人の状態にかかわらず本人の意向が十分に尊重され、本人が自分らしい暮らしを継続できる支援を継続的に図っていただきたいということです。基本法では、認知症の知識のみではなく、認知症の人の理解を深めるという非常に重要な点が明示されました。成年後見制度の運用関係者こそ、認知症の知識レベルの理解にとどまらず、新しい認知症観に根差して本人についての実感的理解を深めていってほしいです。そのためには、成年後見制度の運用関係者が、希望大使や各地域で自分らしく暮らしている本人たちと出会い、語り合い、学び合う機会を継続的に作ってほしいです。そうした場としては、認知症施策により全自治体で進められている認知症の本人ミーティングやピアサポート、本人の社会参加活動の場などがあり、成年後見制度の運用関係者がそれらの場に出向いて本人たちの声を聴き、姿に触れ、語り合う機会を持っていただきたいです。地域で本人を支える関係者との連携協働の具体的きっかけにもなると思います。   三つ目、認知症の発症前後の早い段階から、成年後見制度を自分事として学べる資材や地域で共に学び備えられる機会を作り、成年後見制度の利用を自分の意向で判断できる本人たちを増やしてほしいということです。成年後見制度に関する普及PR用資材はあるようですが、法制度の仕組みや運用についてが主であり、本人や住民から見ると、自分らしい暮らしを続けられるために本当に役に立つのか、どんなメリットやデメリットがあるのか、ぴんと来る内容のものが見当たりません。認知症の本人にとってメリットとデメリットが分かりやすいものを本人参画で作ってほしいです。成年後見の内容がある程度分かったとしても、そのための個別具体的な相談や、利用を実際に後押ししてくれる信頼できる人に出会えないと、利用に踏み出せません。身近な地域で成年後見制度を気軽に学び合い、利用に具体的に備えていけるような機会を増やしてほしいです。診断を早期に受ける人や独り暮らしの認知症の人が急増しています。任意後見制度を自らの意思で利用開始、継続できれば、その後の法定後見の適切な利用も含めて、本人の意向に基づく、より効果的な利用につながっていくと思います。   四つ目です。成年後見制度を利用している本人が、意向に沿って自分らしく暮らし続けるために制度を利用できているか、本人と共に地域で話し合える機会を作るとともに、異議がある場合には、本人及び本人をふだんからよく知る人たちなどにより異議申立てができて、それを真摯に受け止めて改善してもらえる仕組みを作ってほしいということです。関係者らが本人にとって必要な権利擁護とみなした場面も、他方で結果として本人の意思決定を阻害し、その権利侵害とも思えるようなことが起きています。   例えば、独居で暮らす認知症高齢者の生活上の安全を確保するために、ケアマネジャーが後見人の了承を得たので本人には説明する必要はないとして、本人に何も告げず施設入所を進めている。なぜ本人に説明しないのかと尋ねると、説明しても本人には分からないし、判断能力がない、そのために後見人がいるのだとのこと。個々のケースについての判断は難しいですが、この場合、そのプロセスにおいて、認知症になっても希望を持って日常生活を過ごせる社会を目指すことを踏まえた適切、的確な利用であるのか疑問を感じます。判断能力が不十分ということについて、実態に即して、より丁寧な検討が必要と思います。   成年後見制度に関わる関係者の多くは、法律や手続に詳しくても、新しい認知症観を持てていなかったり、利用する認知症の本人自身を理解しないまま法定後見制度の利用や手続を進めてしまう場合も見られていて、窮状を訴える本人や支援者も少なくありません。上記のような実例が、本人はもとより地域の人たちが成年後見制度の利用をちゅうちょする一因にもなっていると思います。成年後見制度を利用する場合のほとんどは、介護保険サービスや地域支援を受けている場合が多く、成年後見制度の導入時や利用後は、本人と共に成年後見制度関係者と福祉サービスなどの関係者が、本人が本音を伝えられる環境の下で共に話し合う機会を継続的に作り、制度の導入や利用継続が本人のためになっているか、共に確認することを徹底していただきたいです。異議申立てがしにくい、申立てをしても受け入れてもらえないという声も届いています。異議があった場合、現在の制度運用のルールを前提に仕方がないとされずに、本人や支援関係者が声を上げられ、それを真摯に受け止めて改善につなげてもらえるよう、仕組みがあってほしいです。   五つ目です。成年後見制度に関する討議などに私たち認知症の本人自身が継続的に参画させていただきたいということです。今回この会議で提案を述べさせていただく機会を頂けたことは非常に有り難く、感謝しております。今回は限られた時間だったので、細かいことには触れ切れておりません。成年後見制度が本来目指すものに、よりよくなっていくためには、より実質的、具体的なことについて私たち本人の声を継続的に聴いていただきたいと切に願っております。私たち認知症の本人は、書類を読み込み、理解し、言いたい意見や思いをまとめ、伝えることに時間が掛かりますが、単発ではなく、今後も引き続き意見を述べる機会を頂きましたら、全国の本人、仲間の声を集めて、よりよい制度となるよう力を尽くしてまいりたいと思います。ありがとうございました。 ○山野目部会長 藤田参考人におかれましては、どうもありがとうございました。   それでは、委員、幹事の皆さんからの質疑を頂きます。御発言の希望のある方はお申出をください。 ○小澤委員 ありがとうございます。大変貴重なお話をありがとうございます。一つ教えてください。   新しい認知症観に立つと、認知症となってからも御本人は意思表明や自己決定ができるという、当然そういう考え方だと思いますが、この考え方を制度に取り入れるとしたら、意思決定支援を重視するということになると思いますので、法定後見制度は必要なときに必要な支援だけをする制度であるべきというお考えになるということでよろしいでしょうかというのが、質問です。 ○藤田参考人 はい、そうですね、よく認知症の人は自分で判断できないとか、そういう意思がないとか、そういうふうに極端に、ゼロになってしまうというような考え方を持った方たちも多くいらっしゃって、本人に聴くということもなく、結局本人は意思決定することができない人たちだからということで、本当に本人がこうしたいという、後見者を選ぶということをすっ飛ばしてというか、そこをなしに法定の方に持って行くということとか、私たち本人は、むらがあるというか、調子のいいときには割とうまく判断できたりする場合もあるし、ひどく混乱とか不安に落ちているときには判断がしにくいというようなこともあるので、一度のヒアリングというか、そういう一度の話で、この人はできないと決め付けるのではないというふうにしていただきたいです。そうしたら、かなり長い間、任意後見制度で行ける、法定後見制度でなくて行けると考えられるので、そこをよく見極めて、決め付けないで、本人の意思をしっかり聴いてほしいと思います。 ○小澤委員 ありがとうございます。 ○山野目部会長 引き続き質疑応答の御希望をお尋ねします。   根本幹事、お願いします。 ○根本幹事 今日は貴重なお話を頂いてありがとうございます。二つ質問がありますので、まず一つさせていただいてからお答えいただいて、もう一つお尋ねさせていただきたいと思います。   資料の3ページの上から三つ目の丸のところで、異議申立てがしにくい、申立てをしても受け入れてもらえないというお声が届いていますということをお話しいただいています。どなたに対して、どのような内容について、この申立てなり異議というものがあって、それが受け入れてもらえないというお声なのか、具体的にもしお話しいただけるものがございましたら、お願いいたします。 ○山野目部会長 藤田参考人、今の点はいかがでしょうか。 ○藤田参考人 どなたに対してというのは、先ほどのような事例に関しては、弁護士や司法書士の方たちに関してです。本人自身やその本人をよく知り、サポートしてくださる方も一緒に異議申立てをしても、判断能力がないという見方で引っ掛かってしまって、その意向がなかなか伝わらなかったと聞いています。本人のみでなく、その本人をよく知る支援者よりも、結局、弁護士さんだったりとか、そういう専門の方とかの声の方が大きくなるという、そういうことなのかなと思っていました。 ○根本幹事 ありがとうございます。いわゆる弁護士を含めた専門職後見人に対して御意見をお伝えいただいても、なかなかそれが通らないといいますか、声が届いていないと感じていらっしゃるということでよろしいでしょうか。 ○藤田参考人 そういう内容の皆さんからの声だったと思います。 ○山野目部会長 根本幹事、続けてください。 ○根本幹事 ありがとうございます。今日御指摘いただいている点は、全般的に専門職団体としては改善していかなければいけない点であると感じております。   質問、二つ目です。先ほども任意後見制度のお話がございました。任意後見制度を利用継続していきたいということの御趣旨で御意見を頂いたかと思いますけれども、その際に、今の監督人が付される、専門職が監督人として任意後見人を監督していくという、この点について何か御意見や、おっしゃられたいことはございませんでしょうか。 ○藤田参考人 すみません、私の中で任意後見人の人が、その監督人が付いてというところが、余り理解よくできていなかったのですけれども、逆に教えていただきたいのですけれども、後見人が付いていても、その後見人に対して監督人が付くということですか。 ○根本幹事 今の任意後見制度を前提にしますと、任意後見人が代理権限を持つためには、監督人が選任されて、必ず監督人が付くという制度になっておりますので、今日お話しいただいたことを踏まえますと、専門職の法定後見人に対して皆さんが感じておられることというのが、任意後見制度の場合には、任意後見監督人に対して向けられる御指摘ではないかと感じましたので、その点について教えていただければと思った次第です。 ○藤田参考人 そこら辺の詳しい、監督人なのか、後見人なのかというところの声が、少し具体的に上がってきていなかったように思うので、そもそも本人にとって、そういう後見人という方がおられて、その方を頼っている際に、更に監督人が付いてということが余り理解できていない可能性もあるかなと思うのですよね。私はまだ後見人を付けていないのですけれども、どういう制度なのかということを、先ほどの提案にもあったのですけれども、もっと元気なうちからいろいろ知っておかないと、やはり制度自体が私自身も把握できていないなと今思っているので、分かりやすいものを広めていくというか、お答えになっていないかもしれませんけれども、分かりにくい制度な感じがします、今聞いただけでも。だから、一体、では誰を頼りにするのだというところが、うろうろとしますね、このお話を聞くだけで。私の意思決定をするのに一番権限を持っているのは誰なのだろうと少し思ってしまったりしました、逆に。 ○根本幹事 ありがとうございます。 ○山野目部会長 藤田参考人に一言御案内を差し上げます。任意後見という制度は、人によって使った経験がある方がいたり、そういうものに全く触れていなかったり、様々です。この後、藤田参考人が活動しておられるワーキンググループの中で、何か任意後見という言葉に関して御意見が出てきた際には、どういうふうなルートでお伝えいただくのでも結構ですから、私どもの方にその時点でよろしいですから御意見を頂戴したいと考えます。ただいまの根本幹事がお尋ねしたのはそういうお話でしたから、また何かお気付きのことがあれば、教えくださるようにお願いいたします。 ○藤田参考人 分かりました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   引き続き委員、幹事からのお尋ねを頂きます。   野村幹事、お願いします。 ○野村幹事 本日はありがとうございました。私たちは専門職団体なのですが、今日の藤田参考人のお話を伺って、後見人が新しい認知症観を実質的に理解して、認知症になってからも一人一人が個性と能力を発揮しながら、希望を持って自分らしく地域の中で暮らしていくことができるように、意思決定支援を徹底することの大切さを改めて感じました。ありがとうございます。   1点質問させていただきます。頂いた資料の1ページの真ん中に、保護の名の下に、本人の意向や自分らしい暮らしの継続がないがしろにされ、本人が失望し、生きる力を急速に落としてしまう残念なことが起きていますという記載がございますが、お書きのとおり、保護の名の下に本人の意思決定やその支援がないがしろにされてしまってはいけないことは言うまでもないのですが、逆にどういった場合に保護という形での後見人等の支援があったらいいなとお考えでしょうか。よろしくお願いいたします。 ○藤田参考人 どういった形、暮らしに関して何か自分の利益がそがれているという、だまされたりとか、そういうこともあると思うし、自分の財産がなくなるということもあるかもしれないし、そういうことがないように一緒に見守ってくださる、その保護みたいなことがあるといいなと思うのですけれども、結局後見人となった方とのコミュニケーションというか人間関係、信頼関係というものが構築されていないと、そこが私たちの意思、権利、そういうものを守ってくださっていると感じられないということが起きる可能性があるので、やはり、制度で私たち、付いている人と付かれている人みたいな、そういう関係性ではないもの、何か一緒にいろいろ、常にと言ったらおかしいですけれども、よくやり取りがあって、本人とコミュニケーションをとって信頼関係をとってくだされば、いろいろなことで守られているなと感じると思います。お答えになっていないかもしれないですけれども。 ○野村幹事 ありがとうございました。 ○山野目部会長 ありがとうございました。   続きまして、星野委員からお尋ねがあります。 ○星野委員 今日はありがとうございます。おっしゃられること全て、本当にそのとおりと思いながら聞いていました。特に2ページのところで下の方に書かれている事例、ケアマネジャーさんの例ですね、本当にこういうことって起こっているな、なんて思って聞いていました。   そこで、その下に書かれている、判断能力が不十分ということについて、実態に即してより丁寧な検討が必要と書いてくださっていますが、現行法では医師の診断書というもの、いわゆる医学的な判断が大きな要素になっているのですが、一方で本人情報シートという本人の日常生活を書くようなシートも使われてきております。本人の状況について慎重な判断、実態に合った丁寧な検討ができるために、本人情報シートというものもあることはあるのですが、何か藤田さんの方で、更にこういうものがあるといろいろな参考になるのではないかということがもしあれば、教えていただければと思います。 ○藤田参考人 私も自分が使っていないので、どんなふうにされるのか具体的に分かっていなくて、その本人情報シートというのは誰が書かれるのですかね。 ○星野委員 本人情報シートは、基本的には本人に関わっている福祉の関係者、ソーシャルワーカーとか、相談を受ける人が書くことが想定されていると思います。 ○藤田参考人 そうですか。そこを、本人情報シートだから、福祉の専門職の人だけではなくて、本人と一緒に書くというようなことはなされているのかなと思ったので、第三者が判断して生活のことをこうだと決め付けるのではなくって、本人と一緒に考えるというか、その情報シート、書く人が本人のことをよく知らないのであれば、よく関わっている人と本人とを交えてどうですかとするとか、本人も必ず交えて情報シートを埋めていくというふうにしてほしいなと思います。 ○星野委員 本当にすばらしいご意見だと思います。ありがとうございます。 ○山野目部会長 ありがとうございました。   引き続き伺います。いかがでしょうか。   よろしいでしょうか。特に御質疑がないようにお見受けします。   それでは、藤田参考人におかれましては、質疑応答にも御協力を賜りまして誠にありがとうございました。忌憚のない御意見を頂戴し、私どもの今後の部会における審議において大変に参考になるお話を頂きました。どうぞお疲れの残りませんよう念じます。どうもありがとうございます。 ○藤田参考人 ありがとうございました。失礼いたします。 ○山野目部会長 失礼します。   それでは、休憩にいたします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開いたします。   続きまして、一般社団法人日本発達障害ネットワーク副理事長でいらっしゃる大塚参考人のヒアリングを行います。   この際一言、私から大塚参考人に御礼の御挨拶を申し上げます。本日、大塚参考人におかれましては大変お忙しい中、資料を調えてくださるなど事前の御用意も頂いた上、この部会に御来臨を頂きました。誠にありがとうございます。大塚参考人から忌憚のない御意見を伺い、今後の当部会における検討にいかしてまいります。どうぞよろしくお願い申し上げます。   質疑応答の機会につきましては、今までと同様でございまして、大塚参考人の御意見を伺った後、大塚参考人に対する質疑応答の時間を設けることといたします。   それでは、大塚参考人、どうぞよろしくお願いいたします。 ○大塚参考人 一般社団法人日本発達障害ネットワークの大塚と申します。どうぞよろしくお願いします。今般、法制審議会の民法(成年後見等関係)部会において発表の機会を頂いて、ありがとうございます。感謝申し上げます。   私たちのネットワークは、発達障害の方のための家族の権利と利益の擁護者として、理解啓発、調査研究、政策提言を行っております。発達障害の方の自立と社会参加の推進に向けて活動を行っている全国組織です。今回の民法の見直しに当たっての検討に当たりましては、発達障害の方の特性が十分理解されて、その権利が擁護され、法的に適切な対応がなされるよう、幾つかの視点から意見を述べさせていただきます。   現行の成年後見制度の課題あるいは改正の必要性、方向性を検討するということに際しましては、2点考え方があります。一つ目は、言葉が適切かどうか分からないですけれども、エビデンスあるいは根拠に基づいた検討が必要かと思っています。例えば、任意後見制度というものが、本人の意思尊重の観点から好ましい形態であるといわれておりましたけれども、その利用というのが必ずしも十分ではなかったと。これはなぜそうなっているのか、私はこの分野の研究者ではないのでよく分かりませんが、制度設計に際しては十分機能するということであったかもしれませんけれども、それがなされなかった、その理由も含めて検討していくことが必要かと思っています。   また、後見、保佐、補助という類型においても、なぜ後見に偏ったのか、これについてもバランスよく活用されているとは言えず、後見のケースが多かったということだったということです。その人にとって、一般的には補助、保佐という類型が適切であると思われるけれども、後見に偏ったというような見解もありますので、是非今後の制度設計に際しましては、そういうことを根拠に基づいて検討して対応していただきたいと思います。   二つ目は、成年後見制度は2000年から開始されたということで、私はこの間のことを、いろいろな課題はあるとはいえ、評価するものであります。評価とともに、この間の様々なケースを通した豊かな蓄積があると思います。例えば、成年後見制度における診断書作成の手引であるとか、本人情報シートの作成、本人情報シートのバージョンアップという話も出ていましたけれども、そういう改革というか、修正を加えながらよりよきものにしてきた事があります。あるいは後見ガイドラインの作成や活用というのもそうかもしれません。こういうものの蓄積があるということを評価し、そういうものも今後活用しながら、あるいはバージョンアップさせながら制度設計に臨んでいただきたいと思っています。   皆様のお手元のレジュメにおいて、私は五つの項目というものを掲げました。それについてお話しさせていただきます。   1番目は、本人を中心とした柔軟な制度にと、非常に曖昧な言葉ではあるのですけれども、本人中心という意味は、本人主体あるいは利用者主体ということで、本人自身が権利の主体であること、あるいは決定の主体ということであります。自分のことは自分で決める、あるいは誰とどこで生活するかを自分で選択する、自分で自分の生活をコントロールするという言葉で言い表されているものだと思っています。本人の保護をどう考えるは重要です。保護はもう必要ないということかもしれませんけれども、人によっては必要である場合もあります。あるいは、本人の保護と自立という、この兼ね合い、バランスというものが非常に重要だと思っておりますので、本人の自立の観点からは、正に本人中心ということで進んでいっていただきたいと思っています。従来はどうしても保護の観点が強すぎたという意味では、今回の法制度の改革においては、本人の主体を重要視するということをしていただきたいと思っています。   従来の制度が本人と、例えば後見人という限られた関係の中で成り立っていたものでありましたけれども、今後は本人を真ん中に置いて司法、福祉、医療、介護、あるいは親族も入るかもしれません、もちろん本人も入ります、そのようなメンバーが本人を真ん中に置いてチームとして支援していくという形が必要ではないかと思います。この意味で、本人中心というキーワードで書かせていただきました。例えば、権利擁護支援チーム、あるいは今は意思決定支援チームとも呼んでいる場合もありますが、チームで支援していくということが一つの求められるべき形かということであります。こういう観点からいくと、このチームが機能するための制度設計を成年後見制度に組み込むということ、そういう観点が必要になるかと思います。   柔軟な制度ということでありますけれども、成年後見制度の課題として出されているもので。例えば、一度利用が始まると利用をやめることができないとか、本人の意思が反映されづらい、後見人などの交代が容易でない等々への課題があると思っています。柔軟な制度というのは、こういう課題が解決されるような、これは法制度そのものか運用か、あるいは両方に係るものかもしれませんけれども、柔軟な制度の下でこういう課題が解決されるのではないかと考えております。例えば、利用者のニーズに柔軟にこたえていくということは、必要な人が、必要なとき、必要な内容について、必要な期間、利用すると、こういう柔軟な制度設計はできないでしょうか。柔軟な後見人等の交代、選任に本人の参加という観点も入れながら、是非、これについては取り組んでいっていただきたいと思います。   また、本人と後見人などの意見が対立してしまう際には、どうしても従来は後見人の意見が強く尊重されがちだった点が課題として指摘されています。成年後見制度の性質上、個々の事案に対しては、家庭裁判所が独立して職権を行使することとなりますが、その際、本人の意見が反映されるということが重要だと思っています。後見人あるいは監督人、あるいは家庭裁判所という仕組みの中で、本人の後見制度を使う中において生じるさまざまな課題について解決していくものだと思っています。しかし、もしそういうことが困難であれば、この三者以外の、独立した第三者機関が必要であると考えています。これは法律によって規定するかどうか分かりませんけれども、具体的には多分中核機関に期待されるものでしょう。場合によれば、その機能が発揮されるよう中核機関の作り直しが必要かもしれませんけれども、そういうものが私は必要であると思っています。   特に、アメリカ合衆国におけるProtection & Advocacy(権利保護・擁護機関)であるとか、あるいはイギリスにおけるIMCA(独立意思代理人)とか、そういう独立した第三者機関によって本人の権利擁護が地域において擁護される、そんな支援の仕組やシステムが必要になっていると思っています。   成年後見制度の担い手の確保も、これも大きな課題です。ただ、今言ったような成年後見制度が、必要な人が必要なとき必要な内容において必要な期間、小さな成年後見制度というイメージですけれども、真に必要な当事者の利用に限られるということであれば、担い手の確保の考え方も変わるかと思っております。簡単な金銭管理などは、地域におけるほかの制度、例えば日常生活自立支援事業などにおける権利擁護の仕組みの中で対応できるかもしれません。これは、正に必要性と補充性という、今回の在り方の検討の中にも出てきている課題ですが、これをどのように考えるかということです。   2番目は、障害の社会モデルに基づく制度設計をということであります。その際、障害者権利条約が求める社会モデルをどのように考えるかが重要であると思っています。権利条約の前文には、障害が発展する概念であることを認めて、また、障害が機能障害を有する者とこれらの者に対する態度及び環境による障壁との間の相互作用、それによって生じているといっております。障害を本人の機能障害と環境との相互作用であると捉えるべきだという考え方には、賛同できるものであります。障害者観を変えていくということになりますが、医学モデル、個人モデルとも呼んでいますが、それよりは環境モデル、あるいは社会モデルで捉えるということには、賛同するものであります。   これを今回の成年後見制度の改正の中において当てはめると、例えば現行の本人の心身機能に基づく医学的診断というもの、これだけではなく、環境を含めた社会的なもののアセスメントの必要性というものを提起していると思っております。また、成年後見制度で使われる言葉の中に、事理弁別能力というものがあるかと考えています。ある意味で従来の医学的モデルによる診断、こういう把握方法の再考、もう一度捉え直すことが必要であることが提起されていると思っています。   意思決定支援に関しても、決定の能力よりも、環境の設定をどれだけ構築できるかということです。本人の課題というよりは、環境の整備、環境をよくしていくことが重要になります。意思決定支援というのは、まさに社会的な環境整備だと思っておりますので、その整備の必要性を提起しているものだと考えています。   また、権利条約第12条の課題があります。法的能力によって障害者が差別されることを禁止することであるとか、代行的な意思決定の仕組みを廃止して、本人が法的能力を行使できる支援付き意思決定支援に転向することです。廃止という言葉をどう捉えるか分かりません。非常に厳しい言葉です。団体の会員の中には、不安や、これによってどうなってしまうのかということを心配する意見もあります。そういう意味では、廃止というよりは、もちろん廃止ということも考えられ得ることかもしれませんけれども、私はその際には、成年後見制度に代わる新たな法制度の仕組み、私たち団体や当事者の方が安心できるような法律による制度が提起されて初めて安心するものだと考えております。その意味で、むしろ現行の成年後見制度をどのように良いものにしていくかということが、ある意味で現実的かと思っています。もちろん、意思決定支援法のような、そういうものの法整備に進むということも必要かと思っています。それは、長い将来の目標かもしれませんが。   意思決定支援に関しては、意思決定の形成に過程においては、障害分野の場合には、福祉施設の職員や事業所の職員、相談支援専門員、友人、医療関係者、親族、本人を取り囲む親しい人が行うのだということになっていますが、この人たちの協働作業を可能とする本人を中心とした支援チームによる支援体制の構築なしにはあり得ないと思っています。   意思決定支援というのは非常に多義的であります。いろいろな分野の意思決定支援ガイドラインがあります。あるいはそれ実践のための研修であるとか、いろいろ進んでいると思っています。しかし、やはり個別性が高く、最終的にはそれぞれの本人に適合して作られた、非常に実践的なものの中から生じる行為であります。ガイドラインで書かれていたとしても、個々の異なりというものを考慮に入れることが必要だと思っています。そのような本人の意思決定支援ができるまでは相当な時間がかかると思っておりますので、それまでには様々な意思決定支援の試みをしていくことが必要かと思っています。   3番目は、最小制約に焦点を当てた制度の見直しということであります。現行の成年後見制度が本人の保護の観点から、後見人に広範な権限を与えていると。保護という観点、先ほども言いましたけれども、全くこれをなくしていいのかということは、自信がありません。保護という観点、ただ、従来の保護ということとは異なる、その意味内容が変わった保護かもしれませんけれども、必要な場合があるのと思っています。このような保護が必要な場合にも、自律の観点からも、保護は最小にするということです。   障害者権利条約のことがあります。条約は、本人の意思決定能力の評価に基づいて障害者の法的能力の制限を許容しているということに懸念を示しています。意思決定支援を代行する制度の廃止を勧告していますが、これについては不安を覚えます。もちろん意思決定支援に全く賛成するもので、とことん突き詰めていっていただきたいと思いますけれども、やはり最後に残る部分、あるいは内容があるのではないかということがあります。理想的な意思決定支援のシステム、あるいは支援方法というものが確立されるまでは、やはり従来の制度が必要かなと思っています。ただ、従来の制度といっても、かなり意思決定支援で重点に置いた、内容としては異なるものだとは思っております。   必要性や補充性の考慮ということが不可欠であるということがありました。具体的には有期の後見や単発の契約手続に限った後見等も可能にするような制度の改革が必要だと思っていますけれども、逆の立場から言えば、成年後見制度が必要なければ使わない、あるいは他の制度で補完できれば、ほかの制度を優先させるような制度設計が必要かと思っております。このような制度設計のためには、今までの後見制度で蓄積された事例のエビデンスに基づいて行っていくことが重要です。是非、検討をお願いしたいと思っています。   今後の成年後見制度を考える際には、障害者本人の意向ないし意見への関心、これを持ち続けるということが重要だと思っております。後見人としては、これまで以上に日頃から本人とコミュニケーションを密にして、本人の意思及び選好を把握するようを努めるべきであると考えています。あるいは、一見すると不合理な決定であっても、選択しようとする場合は、直ちに本人の利益にならないと結論付けるのではなく、まずは様々な選択肢を用意して、本人が検討した上で自己決定できるよう、本人の周りを取り囲む支援者と共に意思決定支援を尽くすことが重要であると考えております。   あるいは、本人が意思決定を行うためには、本人が過去に表明した意思や家族、福祉関係者等、周囲の支援者等からの情報を総合的に考慮して、現在の意思を推測せざるを得ない場合もあるかもしれません。その意味では、言葉は適切ではないかもしれませんけれども、集団的に、誰か一人が決定するということではなく、関わる者が集まって最善の支援をしていくということになるかもしれません。そのようなチームをいかに作るかということが重要です。   それでも本人の意思がどこにあるのかを推測が困難だということであれば、最後の手段として残る部分があるかもしれません。後見人による、あるいは他者による決定という領域があるのかもしれません。ただ、そのような代理代行決定においても、権限行使が許されるのは最小制約、制約が最も少ない範囲に限られるということ、これに基づいて行われるべきだと思っております。   4番目に、成年後見人に対する報酬助成の課題があると思っています。成年後見人に対する報酬の支払いが挙げられますけれども、報酬の支払いが成年後見制度を利用しない一つの理由になっているという指摘もあります。本人や親族の観点から言えば、成年後見制度の申立てを行い、希望に反して専門職後見人が選任され、想定していない報酬の支払いを余儀なくされるということを懸念する状況があります。そういう意味では、報酬助成というものをどのように考えるかということがあります。必要な人に必要な期間、必要な内容に応じて後見等が選任される、そういうような仕組み作りということが、不必要な報酬を防ぐ意味でも、ますます重要になってくると思っております。   もちろん、成年後見制度の担い手を確保して持続可能な制度とするためにも、正当な報酬を付与するということは、重要なことであると考えています。そのために、まず、報酬額の算定においては透明性を高めて、後見人及び利用者双方の納得感を高めていただきたいと思っております。成年後見人に対する報酬というものをユーザーとしての私たちもきちんと支払っていくということが重要ということかもしれません。ただ、この報酬というものを、もちろん払えないという、本人の持っているお金ということの中から、なかなか払うことが困難な場合ということも多々ありますので、そういう場合については、きちんと現行のさまざまな制度の中において補填していただきたいとは思っております。そういう意味では、報酬助成をどのように考えていくかということも重要であると思っています。   現行の成年後見制度利用支援事業は、障害者総合支援法の中では市町村事業の補助金の枠を出ていません。積極的に取り組む市町村と消極的な市町村とが存在するということになっています。市町村ごとの格差が否定できません。成年後見制度が必要な人に行き渡るよう、個別給付とするべきだと考えています。   また、成年後見制度が権利擁護を必要としている多くの人にとって、障害福祉サービスと同様に権利と捉えれば、全ての人に個別給付として支給されるべきであると考えております。ただ、この財政事情が非常に厳しい折において、これを全て公のお金として出すということは少し考えづらい、自己負担というものも考えるべきだとは思っています。   第5番目は、地域における総合的な権利擁護支援システムの構築ということであります。第二期基本計画では、地域共生社会の実現という目的に向かって、本人を中心にした支援活動における競争基盤になる考え方として、権利擁護支援を位置付けた上で、権利擁護支援の地域連携ネットワークの一層の充実など、そういう取組を進めるとされております。特に、持続可能な権利擁護支援モデル事業を通じて実例把握、実践事例の把握や分析、検討が進められております。令和4年度は10自治体が実施して、令和5年度は実施自治体35自治体に拡大しています。是非早急な全国展開をお願いしたいと思っています。   今後の成年後見制度は、このような地域における総合的な権利擁護支援のシステムの構築の中で、その機能が果たされるべきだと考えています。その意味で、福祉と司法の連携はますます重要になってきます。日常生活支援事業がより拡大すれば、大きな仕掛けの成年後見制度の役割は、今のものとは異なる姿になるかもしれません。あるいは日常生活支援事業を利用していく中での限界が見えたときには、成年後見制度へのスムーズな移行が行われる、相互に活用し合える、そういう仕組みが考えられないかと思っています。   被後見人や要支援者の金銭管理サービスを担うのは、やはり金融や生保などの民間事業者、日常生活を援助するのは当事者団体や市民後見人、それから、それらの業務が適正になされているかを監督支援するのは中核機関としての地域の権利擁護センターなどの役割分担が重要です。地域におけるそれぞれの役割分担があって、初めて成年後見制度も機能するのではないかと思っています。協働し機能する地域の権利擁護支援システムの構築に、是非、取り組んでいただきたいと思っております。   成年後見制度の利用が、より普通のことになることを願っています。今後ますます、超高齢化社会が進みますので、成年後見制度がよりよき姿となり、必要な人が使いたくなる制度になっていっていただきたいと思っております。そういう意味では、成年後見制度を含めた地域における総合的な権利擁護支援システムが、全ての国民に安心や希望を与えるものであり、そういう可能性を秘めていると思っております。是非、成年後見制度の検討ということに際しましては、そういう希望を持って取り組んでいただきたいと思います。  以上です。ありがとうございました。 ○山野目部会長 大塚参考人からお話を頂きました。大塚参考人のお話について、委員、幹事のお尋ねを頂きます。御希望のある方はお申し出ください。いかがでしょうか。   小澤委員、お願いします。 ○小澤委員 ありがとうございます。大変貴重なお話をありがとうございました。   1点、教えていただければと思います。発達障害のある方について、具体的に成年後見制度の利用が必要と思われるのはどういった場面が多いとお考えになっているか、教えていただければと思います。 ○大塚参考人 ありがとうございます。発達障害ということだけではなく、障害全般かもしれませんけれども、例えば、もちろん発達障害の方も含めてなのですけれども、御本人を取り巻く支援者、特に親族の支援であるとか、あるいは福祉サービス提供者など様々な権利擁護支援システムもできていて、そういう取り巻く支援者たちが関わっている状況の中においては、それほど必要でないのかもしれません。本人の意見・意思であるとか、あるいはその利害を代弁するような人がいたり、仕組みがあれば、そういうものに任せるべきかと思います。   ただ、そのような状況にはないような人たちがいらっしゃる状況があります。それから、様々な形の権利の侵害ということがあるかもしれません。虐待は一つの例ですけれども、経済的虐待とかということも含めて、本人自身が自分自身で自分の権利を擁護することが困難で、自分の権利侵害に気づいていない場合も含めて、地域で孤立しているような場面、そういうものについては成年後見制度を始めとした、成年後見制度だけではないと思いますが、成年後見制度を始めとした様々な権利擁護支援チームが関わるということが御本人の、地域における豊かな安心した生活になるのではないかと考えております。 ○山野目部会長 今、大塚参考人がおっしゃった様々な権利侵害というのは、具体的にお話を頂くとすると、どういう場面でどういうふうに困ったというお話ですか。例を一つ挙げていただくと。 ○大塚参考人 なかなか言葉にするのは困難なのですけれども、例えば、親族による御本人に対する経済的な虐待であるとかということも含めての権利侵害があります。当事者団体としては、家族による権利侵害については言いづらことですけれども、ないわけではなく、障害者本人の立場に立てば、きちんと対応しなければならない、非常に重要な課題かと思っております。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   引き続き質疑の希望をお出しください。いかがでしょうか。   野村幹事、お願いします。 ○野村幹事 本日はありがとうございました。大塚参考人におかれましては、成年後見制度は必要な範囲、期間で利用すべきだというようなお考えかと伺ったのですけれども、その一方で、私たち後見人が事務を行うに当たっては、本人の意思や選好を最大限尊重する必要がありますので、そのためには後見人が本人の意思や選好を理解することが重要かと思います。この後見人に与えられる時間が一定期間に限られるようになった場合に、後見人はどのような方法、手段で発達障害の御本人に対する理解を深めればいいとお考えでしょうか。 ○大塚参考人 ありがとうございます。一つは、発達障害の方も含めて障害のある方が人生を通じて、いろいろなライフステージはあるかもしれませんけれども、個人というよりは一貫した様々な人たちの継続的な支援によって、その人の地域生活が安心するものになると考えています。それは非常に個別性が高いということで、ある人においては就労というものが非常に重要なテーマになるということがあるかもしれませんけれども、ただ、今回の場合は権利擁護ということの観点から行くと、なかなか権利の擁護というのが自分自身で行うことは困難、できるわけではありますけれども、困難な場合があると。そういう方たちについて、それぞれのライフステージにおいて一貫してその人の権利を守っていく、私は成年後見制度も一つのそういう形として表れているものだと、そういうものだと思っています。   そうなると、どのようにその人のライフステージに応じて、どのような人が関わりながら、あるいは協働し合いながら、私は意思決定支援チームとか権利擁護支援チームとかということを申しました。本人の意思や選好を理解することについても、そういうような協働の仕組みの中で明らかにされ共有されていくことが重要かと思っています。そのためには支援チーム、その仕組みというものをきちんと作っていくということが、当事者あるいは家族の団体としては非常に望んでいるということであります。 ○野村幹事 ありがとうございました。 ○山野目部会長 引き続き伺います。いかがでしょうか。   星野委員、お願いします。 ○星野委員 大塚参考人、ありがとうございます。これは少し質問としては答えにくい質問かもしれないと思いながらお尋ねしますが、大塚参考人の方で、独立した第三者機関ということで、例示として中核機関とおっしゃられたと思うのです。今、民法改正の議論をしているところである中で、大塚さんがおっしゃられた様々な地域の中のシステムというものが出来上がっていないと、それは大変なことになるのではというようなことも少し聞こえてきた、つまり、成年後見制度の利用が終わった後に、それでもきちんとした法的な枠組みというのがないと、ということをおっしゃられたと思うのですが、これは質問なのか私の意見か分からないのですが、民法改正が具体的に現実となったときに、どういう社会というものをイメージしていらっしゃるか、今お話はあったのですけれども、できればもう少しその辺りを御示唆というか、御意見を述べていただけると非常に有り難いなと思いながら聞いておりました。 ○大塚参考人 ありがとうございます。そうですね、地域における今、総合的な権利擁護支援システムの構築というものを作られつつあるとは思っております。その中で、もちろん成年後見制度に関しては、家庭裁判所もそうですし、あるいは皆さん支援者も、それぞれの立場ということによって協力し合いながら支援していくという形態、本人を真ん中に置いて支援する形態というのが重要になっているのだと思います。   その中で少々不安なのは、当事者とか、あるいは家族という立場からですが、やはり権限を持った、例えば、ある意味の調整であるとか介入であるとか、そういうある程度の力を持った調整機関の必要性というのをつくづく感じます。特に虐待はそうなのかもしれません、虐待防止も含めて。なかなか児童相談所ということだけの中においてはできないような事柄があると。そういう意味では、第三者による権限を持った、必要であればアドバイスしたり、介入したり、相談に乗ったりということがあって初めて豊かなもの、あるいはいろいろなものをつなぐ支援ができていくのかなと思っております。そういう意味では中核機関がそういうものになっていく必要性を強く感じています。 ○山野目部会長 星野委員、よろしゅうございますか。   あわせて私から一言、大塚参考人にお願いがございます。今の星野委員の質問に関連してで、この席ではなくても、後でアイデアを得られたときにお伝えいただくことでよろしいという趣旨のお願いでございますけれども、中核機関が今、現実に担っている働きのうち、どの部分を法令上明確にしてほしいというお考えなのかということについて、大塚参考人や大塚参考人の団体でお考えになることが出たときには、お伝えをください。社会福祉法を改正して、市町村には中核機関を置くものとするという法文は、恐らく書くことができません。なぜかというと、厚生労働省は今まで中核機関というのは、各市町村において無理のない範囲で、それぞれの地域の実情に合った仕方で育ててきてくださいと声を掛けて進めてきました。そうやって声を掛けてきたものを突然、市町村には必ず置かなければいけないという仕方で法律の条文にすることは、施策の不意打ちに近い展開になりますから、これはなし難いところです。   半面、しかし何かそれに当たるものについての法制上の存在が明確になっていないと、裁判所が意見を求めることができると法文に書くときにも、意見を求める相手の存在が明示されなければなりませんし、それから、中核機関に当たる者が適法に個人情報を扱う際にも、個人情報の保護に関する法律の建付けを考慮しますと、法令上明確な存在になっている必要があります。   そうすると、考えられる姿は、中核機関が現に担っていくし、今後更に期待される機能のどこかを法制上明確にしていくという道しか考えられないことになるものでありまして、そこを、実態にも合っているし、法制上も成り立つ仕方の姿を発見することができるかということが、単に社会福祉法の改正問題だけではなくて、ここでの検討にとっても喫緊の重要性を持ってくると考えられるところですから、引き続きアイデアを頂戴することができれば有り難いと感じます。 ○大塚参考人 はい。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   引き続き委員、幹事のお尋ねを頂きます。いかがでしょうか。   よろしゅうございますか。   沖野委員、お願いします。 ○沖野委員 ありがとうございます。詳細な御報告をくださいまして、ありがとうございました。   個別の点を1点だけ教えていただきたいのですけれども、民法の成年後見制度の発動に関しまして、現在の事理弁識能力に着目した基準、あるいは医学的モデルの再考は必須であるという御指摘がございました。その際に、環境を含めたアセスメントが重要なのだという御指摘を頂きまして、このイメージについてもう少し教えていただければと思ったところです。御報告の中では必要性、補充性ということに何度か言及されましたので、あるいは事理弁識能力に加えてというか、それは維持しつつ、必要性や補充性ということを入れることで、そのための環境というのを入れてくるというイメージでいらっしゃるのか、それとも、この事理弁識能力を基準とするということに対しての懐疑ということも出されましたので、何かその部分を違う基準に置き換えるとか、あるいはもう少し総体的な能力を問うとか、そういうようなことをイメージしておられるのかどうか、もし何かこの点について、このようなイメージであるということがありましたら、教えていただければと思ったところです。 ○大塚参考人 ありがとうございます。事理弁識能力は、現行においては医師の診断によって端的に表されているものだと認識しています。それのみならず、御本人の今の状態・状況を社会的状況という環境も含めて考えて、本人を多面的に捉えるということが重要であると考えています。私は、医学的診断書が必要でないということではなくて、これは今後も一つ本人を捉えることに機能する一つのものであると考えています。それだけではなくて、本人の環境、本人との相互作用によって今の本人の状況というものが立ち表れているということであれば、両方を加味したようなものが、その後の後見制度の利用においても、両方のアセスメントに基づく本人の成年後見制度の利用の内容になるべきであると思っています。両方のアセスメントにより、後見制度の適切な期間が明らかになるものだと考えています。そういうものが、後見制度の判断に活かされるべきであると思っております。多様な本人の状況というものを理解して、適切な支援は初めて成り立つと考えております。 ○山野目部会長 沖野委員、いかがでしょうか。 ○沖野委員 ありがとうございました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   引き続き委員、幹事の御質疑を頂きます。いかがでしょうか。   よろしゅうございますか。   それでは、大塚参考人におかれましては質疑応答にも御協力を頂きまして誠にありがとうございました。引き続き当部会の審議において意見をお尋ねすることがあるかもしれません。どうぞよろしくお願いいたします。   ここで中規模の休憩を設けますから、よろしくお願いします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開いたします。   続きまして、特定非営利活動法人日本障害者協議会副代表でいらっしゃる石渡参考人のヒアリングを行います。   この際、私から一言、石渡参考人に御礼の御挨拶を申し上げます。本日、石渡参考人におかれましては大変お忙しい中、資料を整えてくださり事前の御用意を頂いた上で、この部会にお運びを頂きました。誠にありがとうございます。石渡参考人から忌憚のない御意見を伺い、当部会における今後の検討にいかしてまいります。何とぞよろしくお願い申し上げます。   質疑応答の機会につきましては、今までと同様でございます。石渡参考人の御意見を伺った後、石渡参考人に対する質疑応答の時間を設けることといたします。   それでは石渡参考人、どうぞよろしくお願いいたします。 ○石渡参考人 石渡です。貴重な場を頂き感謝申し上げます。私は日本障害者協議会、略してJDと申しますが、この副代表をしております。   日本障害者協議会は1981年の国際障害者年の前の年、1980年に、関係する当事者団体、支援者団体などが緩やかなつながりを持って日本の社会を変えていこうということでスタートしました。初代の代表には、厚生事務次官などもされた太宰博邦先生が就いてくださいました。多いときは130団体ほどが加盟していましたが、今は70団体ほどになっています。今日もいろいろ話が出ている障害者権利条約をどう日本で実現していくかというようなところが今の大きなテーマになっています。   それでは、パワーポイントの資料を作ってきましたので、それに基づいてお話をさせていただきます。   前回2021年にヒアリングがあったとき、私どもの団体としては、まだ十分に成年後見制度について議論をしていませんでしたが、大きな考え方としてはこんなことかなということで3点ほど挙げています。この包括的な権利擁護制度というのは、先ほど大塚参考人のお話にもありましたし、第2期の計画で手のひらの図で示している権利擁護支援、地域共生社会の実現という辺りのイメージで、この包括的な権利擁護制度というところを考えています。2点目の、やはり条約の12条から成年後見制度が、大きく動いているわけですけれども、この意思決定支援が大きなテーマとなってきています。そして3番目にある成年後見制度の利用というのが、市民としての権利を剝奪しかねない、やはりこういう捉え方は今も障害団体ではかなり強いと認識をしております。   次のスライドに行きますけれども、今まで知的障害とか精神障害関係の団体の方は、ここの委員にもなっていらっしゃるし、いろいろなところで御意見を聴いていらっしゃると思うのですが、身体障害の関連の団体に意見というのを聴いたことがありません。新しい成年後見制度の在り方というところでは、判断能力に支障はなくても、身体障害というところから何かニーズがあるかという議論もされているとお聞きしていますので、身体障害関係の方に、急いでですけれども、アンケートをしてみました。どの団体も、団体としての議論をしているわけではなく、この方に聴いたら何か答えていただけるかなという特定の個人に質問したというところです。でも、やはりその団体を代表した回答が頂けたなと感じています。   6人の方から回答を頂きました。Aさんは筋ジス団体の家族という立場です。Bさんは筋萎縮性側索硬化症ALSの家族、Cさんが脳性麻痺御本人、Dさんは難病と書いてありまして、難病団体に所属していますが、御自身は難病ではなくて慢性疾患だということを確認しました。Eさんが高次脳の御家族、Fさんは頸髄損傷御本人という6人の方です。   成年後見制度について、こちらでの議論などがまだ御存じないという方も多いので、その次のスライドに今、成年後見制度がどのような改正の方向にあるか、どんな議論がされているかということを、ジュリストの特集(No.1596)ですとか、先月号の育成会の「手をつなぐ」(No.820)で又村事務局長がとても分かりやすくまとめてくださっていましたので、又村事務局長のお言葉なども借りて、6点ほどで御紹介をしました。多分こんな整理で間違ってはいないかなと思ってはいるのですけれども、何かお気付きでしたらば御指摘を頂けたらと思います。障害当事者の視点に立って改正が進んでいるということを理解していただいた上で、次のスライドですけれども、いろいろなアンケートの質問項目を作ってみました。   まず、所属している団体に成年後見制度の利用が必要だという方がいらっしゃるでしょうかという質問では、脳性麻痺のCさんは、「いない」と明言されていますが、①の「いる」とALS、高次脳、頸損の団体の方がおっしゃっていて、「分からない」という回答もあります。やはり身障関係の団体の方にとって成年後見制度がそれほど身近ではない、と思われます。しかし、この後の回答を見ていくと、高次脳機能障害の方々にとっては非常に切実な問題だと認識していらっしゃると思います。高次脳の方というのは身体障害の支援がまず優先されるので、余り自分たちが精神障害でもあるというふうなところで動いてはいらっしゃらないかなとは思うのですけれども、やはり認知能力のいろいろな課題なども含めて、高次脳の方は成年後見制度かなり視野に入れていると思います。   次のスライドのQ2ですけれども、この選択肢は、毎年最高裁が出している成年後見関係事件の概況という、あの選択肢などを参考に作らせていただきました。まず、制度利用の目的ということですけれども、「預貯金の管理・解約」「遺産相続」など財産管理的なところというのは成年後見制度でなくては、というような認識をしていらっしゃる方が多いと思いました。   「その他」は自由記述なのですけれども、書いていただいた方の記述はそっくりそのまま御紹介をしています。Bさん、ALSの家族の方ですが、やはりALSの方の場合は、それなりに判断能力はしっかりしていらっしゃるので、意思決定はできるけれども、決定した意思の表明というところがいろいろな難しさがあるということです。Bさんは、この後の設問でもこのことが繰り返し出てきます。意思決定支援というと、まず意思の形成、それから意思決定、意思の表出・表明といった段階があるという見解もあります。この表出が困難というところに関しては、言語障害がある脳性麻痺の方たちなども指摘をされていて、やはりコミュニケーションとの関係が、こういう大きな決定をしなくてはいけない場面では重要になってくるということが指摘されています。   次のQ3ですけれども、後見人として頼みたい人がいるかとお聴きしたときに、「きょうだい」という答えが多くあります。それと、NPOとかの「法人後見」を望んでいる方と、「市民後見人」をという方も多くて、やはり親亡き後の、親に代わって何かあったら頼れる人ということで後見人の存在を考えている、だから、自分と同年代のきょうだいとか、地域で親しい関係になっている市民後見人とか、社協などの法人後見などへの期待というのが大きいということを感じました。   4番目に任意後見の利用というのを聴いているのですけれども、やはり任意後見については情報がないかと思います。こちらとしても十分な提供ができなかった反省も含めて、やはりこれから任意後見をどう広げていくかというのも大きな課題だと思います。   5番目の質問として、成年後見制度について何か考えがあればということで自由記述をお願いしました。Bさん、ALSの御家族の方ですけれども、やはり進行して厳しい状況になってくるし、認知症のリスクというのもほかの障害よりも高いのではないか、と心配されています。その辺りはまだ医学的な知見は出ていないとは思うのですけれども、ご心配されていて、成年後見制度の利用を考えていきたいということです。Bさんは成年後見制度についてもたくさん情報をお持ちで、ALSの方には任意後見がむしろふさわしいのかともおっしゃっています。   次のページに行って、Cさん、脳性麻痺の方ですが、やはり後見人等の権限が大きすぎて、本人の意思に反して制約されることが多いのではないかと、かなり批判的な思いを持っていらっしゃると感じました。特に精神障害で医療保護入院をされた方などからも、後見人の役割についていろいろ批判をお聞きします。障害関係の方は、制約が大きいというところにとても敏感に反応していらっしゃる感じがします。   高次脳の家族であるEさんは、交通事故とかプールに飛び込んでなどで、若いときに障害を持った方の長い人生をどう支えるかというところに注目されています。やはり親亡き後、親に代わっての支援をしてくれる中心的なキーパーソンということで、後見人に期待をされているようです。しかし、今の制度の中ではその期待にこたえ切れない、身上保護的なところを確実に本人の思いに沿って支えてくれるという後見人の活動では、まだまだないという認識をお持ちのようです。   それから、障害関係の方は、先ほどの大塚参考人の御意見にもありましたけれども、後見報酬が非常に負担であるという認識を持っていらっしゃる方は多いようです。今この報酬とか所得保障の在り方についても、年金についての改革が検討される中で、障害年金の改正等も議論がされていることにも注目をされています。やはり後見報酬というのが非常に負担で、これを払う必然性というか意味があるのか、といったところは根本的な課題という捉え方をされている方が多いと思います。   それから、Fさん、頸髄損傷のご本人ですが、必要なときだけで利用中止できるという柔軟な制度を求めていらっしゃいます。それから、禁治産の時代からスタートしている成年後見制度の根幹にある取消権など本人の意思が否定されてしまうことを課題と感じ、後見報酬についても指摘されています。後見報酬の支援制度もありますが、原則として障害がある方で収入に制約があるというような場合は公的な負担の制度があるべきだということです。Fさんは、マイナンバーカードの取得と成年後見とでトラブルがあったことも指摘しています。私はマイナンバーカードと後見制度が前提という話は聞いたことがなかったのですが、こういう声が上がっているのは、そういう指摘をどこかの自治体でされたのかと思います。   成年後見制度に限らず、障害者の支援についてということを最後に聴いてみました。ALSの方の場合、非常に進行が速くて障害が重度化することもあり、先ほどの、意思決定はできてもその決定した意思をどう表明するかというところで、表明を支援するような環境を整えることを指摘されています。コミュニケーション支援について、ALSの方、それから脳性麻痺の方も言語障害がおありの方がたくさんいらっしゃるので、コミュニケーション支援を求めています。視覚障害とか聴覚障害の方にもアンケートをお願いしたのですが、お忙しいらしくて回答がなかったのですが、やはりコミュニケーション支援の重要性は考えていらっしゃると思います。   それから、高次脳のEさんは、やはり長い期間、それぞれのライフステージに応じた支援という長期的なスパンで成年後見制度も支援を考えてほしいとおっしゃっています。また、意思決定支援、自分らしく生きたいということをどのように支援するかについても触れられています。   現行制度の課題とこれからの方向性というところでは、今まで3人の参考人の方がおっしゃってくださったこととか、それから、今、審議会で検討していらっしゃる内容でかなり整理をしていただけたと思います。私の報告は、まだ非常に中途半端な雑駁な内容ですけれども、取りあえず問題提起をさせていただきました。これからいろいろな機会を作って、身体障害関係の方とも、他人事ではないという視点で議論を深められるような場を持っていきたいと思っています。   以上です。 ○山野目部会長 石渡参考人におかれましては、関係しておられる本人や家族の皆さんへの問合せ、アンケートなど、手順を踏んだ入念な御準備を頂き、その成果を披露いただきました。どうもありがとうございます。   ただいまから委員、幹事からのお尋ねがありますれば、それをしていただくということにいたします。御希望がありますればお申出をください。いかがでしょうか。   小澤委員、お願いします。 ○小澤委員 ありがとうございます。貴重な御報告をありがとうございました。1点だけ教えていただければと思います。   法定後見の利用についてなのですけれども、先ほどお話があったALSの患者の方のように、自己決定の判断能力はあるけれども自己決定の表明能力が減退されているというような方についても、法定後見は利用できるようになればよいというふうなお考えなのかどうかということを教えていただければと思います。 ○石渡参考人 多分、法定後見の利用というのは、財産管理的なこともあるし、先ほど大塚参考人もおっしゃっていましたけれども、虐待対応でも必要性が出てくるということは、皆さん認識していらっしゃるのではないかと思います。そういうときに、虐待で受けた痛みなどをどう的確に伝えていくかは、やはり支援の人が必要ですし、その辺りを法定後見という枠組みの中で確実に対応していただきたいということになります。身体障害の方の場合は、ほかの障害でも、決定はできるけれども、それをきちんと伝えるところのコミュニケーションの難しさにどんな支援が保障されるか、情報保障のさまざまな手段も活用して、成年後見人としての役割を果たしていただくというようなことが大事になっていくのかと思います。 ○小澤委員 ありがとうございます。 ○山野目部会長 引き続き伺います。いかがでしょうか。   野村幹事、お願いします。 ○野村幹事 本日はありがとうございました。1点質問させていただきます。御意見の中には、必要な範囲、期間で、いわゆるスポット的に後見制度を利用するという御意見もあったかと思うのですけれども、後見制度の利用が終了した場合、御本人の支援はどのようにされていくのか想定されていますでしょうか。よろしくお願いいたします。 ○石渡参考人 ありがとうございます。まだ具体的に考えていらっしゃるという方はそう多くはないかなと思います。成年後見制度というのが、自らの意思と反するようなことが最善の利益だと判断され、ご本人としては納得できないということを、やはり皆さん感じていらっしゃるのだと思うのです。それゆえに、本当に成年後見制度でなければ対応できないような場面だけ、スポット利用ということができたらと、皆さん、まだそれほど具体的に自分の生活に引き付けて考えているわけではないと思いますが、そういう基本的な考えは皆さんお持ちのようです。このスポット利用というところにはとても関心があって、でも、それ以外でいろいろな支援が必要になってくる、そこのところは、例えば障害だったら相談支援専門員、ケアマネジャーに当たるような方たちがしっかり自分の暮らしのキーパーソンとしてきちんと位置付いてほしいというようなお考えがおありかと思います。でも、まだ具体的な整理というところまではイメージできないのだけれども、必要なときだけのスポット利用というようなところにはとても共感をされる方が多いと感じています。   先ほどの親亡き後の親に代わるきょうだいが後見人に、といった声が出てくるところも踏まえて、やはりスポット利用でというのはあるけれども、一方で自分をしっかり、それこそライフステージをずっと踏まえて長期的に見守ってくれる存在というところで、後見人に期待をするというような思いもあるのだと思います。限られた回答だけで、障害がある方の暮らしぶりを考えながらの私の考えですので、適切かどうか少し不安もありますが、このように考えています。 ○野村幹事 ありがとうございました。 ○山野目部会長 石渡参考人に、今の野村幹事からお尋ねがあった件に関連して、お願いを添えて申し上げておくということにいたします。石渡参考人が関係しておられる団体や、障害者の御本人、御家族の意見を今後集めていかれる、聴いていくような機会がありますれば、という趣旨の御願でございます。今の石渡参考人のお話の中にも、限られた期間で利用するとか、必要があるときに限定して後見の制度を用いるということについて大きな関心を皆さんが抱かれているということは、ごもっともな背景があることでありまして、この部会においてもその方向での意見をおっしゃる委員、幹事が多くいます。ですから、それは有力な方向として検討していくことになるであろうと思いますし、そのこと自体は躊躇いたしません。   ただ、恐らく理念ないし方向としてそのことに正当性があるということを受け止めたとしても、実際にその場に立ってみて、例えば裁判官が、現に行われている後見開始の審判を取り消すという決定をする段になると、勇気が要ります。つまり、必要な事務がなくなりましたから取り消します、というふうに取り消してしまうと、その後、本人はどういうふうになっていくでろうか、後見を無理して続ける必要がない状況だということが、一方において確かにそうかもしれないけれども、世の中には残念ながら余りよろしくない事業者というものがたくさんおりまして、言葉巧みに本人に接近してきて、いろいろ身元を保証して身の回りを世話してあげますよとかいうことを述べて誘い、高額の報酬を得て、本人に対する経済的虐待に近いようなことをする事業者というものもいますから、裁判所が後見開始審判を取り消した後にそういう人が入り込んでくるチャンスを作ってあげるような民法改正にするわけには絶対にいきませんし、これから制度像を調えていけば、そこのところは大丈夫でしょうかということが必ず論点として出てきます。それを乗り越えなければ、ここでしようとしている議論はなし難いお話になってまいります。   この部会の委員、幹事も、そこのところがそういうふうにならないように一所懸命考えてまいりますけれども、石渡参考人の団体においても御関心が大きくていらっしゃるというお話ですから、また御検討いただいて、何かアイデアを得られたときにお教えを頂ければ有り難いと考えます。 ○石渡参考人 今日はありがとうございました。是非そういう視点を大事にしながら、また皆さんといろいろ考えていきたいと思います。ありがとうございます。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   星野委員、どうぞ。 ○星野委員 今日は貴重なアンケート調査の結果を御報告いただいて、ありがとうございます。非常に興味深く拝見しました。   といいますのは、ここでヒアリングに答えられた個人の方、6名の状況が載っていますけれども、私の経験上、社会福祉士が脳性麻痺の方の後見人になっている事例も少なくないのです。それから、私は難病の方の後見人に現在就任しています。その方が判断能力がないとはとても思えないのですが後見類型と判断されているのです、このような実態は数は少ないと思うのですが。それで、いろいろ考えてみますと、コミュニケーションの支援体制で触れられていますけれども、コミュニケーションの支援体制が整っていないことが、ほかの支援の方法がないというところでつながっているように私はやはり思えるのです。そうなると、これは石渡参考人のお考えでもいいのですが、どういう支援体制が本来求められるのか、それから、任意後見が本来は合致するのではないか、適用しやすいのではないかという御意見が出ていますね。正にそうなのだと思うのです。任意後見制度の改正というところも議論になってくると思うので、この辺りの、判断能力に課題があるのか、コミュニケーションの仕組み、システムの問題なのか、ここが私は結構重要なのかなと思います。現実にも今ここに載っていらっしゃるような方で後見制度を使っている方がいるということは少し指摘しておきたいなと思って、発言させていただきました。 ○石渡参考人 ありがとうございました。実際に後見制度をうまく使って納得できる生活をしていらっしゃるという方を、私も難病の方も脳性麻痺の方も存じ上げていますので、おっしゃるとおりだと思います。だから、本当にそういう御本人や家族が納得できる支援体制を築き上げるところまでに何が必要なのかについて、またいろいろ考えていかなくてはいけない、コミュニケーション支援というのもあると思いますし、あと、かなり重度で言葉がないと思えるような障害の方についても、意思決定支援、御本人の思いを尊重した寄り添う支援が実現できているという事例もあります。その辺りのところをどんなふうに整理していくのかは、障害分野の大きな課題だと思っていますので、また御協力いただければと思います。ありがとうございます。 ○山野目部会長 星野委員、よろしゅうございますか。ありがとうございます。   引き続き伺います。いかがでしょうか。   ほかには特段、委員、幹事の皆さんからおありではありませんか。ないようにお見受けします。   石渡参考人におかれましては、先ほども申し上げましたけれども、大変念入りな御準備の手順を踏んでいただいて、この場においでを頂きました。厚く御礼申し上げますとともに、今後ともこの部会における調査審議に御関心を持っていただき、折々に御意見をお寄せいただきたいというふうに併せてお願いいたします。どうもありがとうございました。 ○石渡参考人 ありがとうございました。 ○山野目部会長 本日予定した四人の方のヒアリングをここまでで了しました。   この際、事務当局、波多野幹事から今後のヒアリングなどの議事日程についての案内を差し上げます。 ○波多野幹事 今後のヒアリングの関係について、御説明させていただきたいと思います。   日程ですが、9月2日と10月8日、これはヒアリングのための部会の日程として調整をさせていただいております。その間の9月10日は、新たに部会資料を御提示して御議論いただくための部会の日程でございますのでよろしくお願いいたします。その上で、9月2日でございますが、前回御説明したとおり、4人の方に御説明をお願いしようかと思っておりまして、全国精神病者集団の桐原様、DPI日本会議様、内閣府障害者政策委員会前委員長の石川准様、日本知的障害者福祉協会様です。10月のヒアリングでございますが、現時点では、市区町村と社会福祉協議会、あとは施設を運営されている方から、市区町村は規模を変えて二つ、社協も規模を変えて二つ、認知症の施設の方と知的障害の施設の方に御説明いただければなと思って、今、調整をしているところでございます。   ヒアリングに関しましては以上でございます。 ○山野目部会長 今後進めようとしているヒアリングについて、ただいま御案内を差し上げました。何か御意見やお尋ねがあれば承ります。いかがでしょうか。   よろしゅうございますか。それでは、ただいま波多野幹事から案内、提案があった方向で、意見を述べていただく方との調整を引き続き進めた上で、ヒアリングの当日に向けて備えるということにいたします。   続きまして、今後の議事の議事日程等につきまして、引き続き波多野幹事から案内を差し上げます。 ○波多野幹事 次回の日程でございますが、日時は令和6年9月2日月曜日、時間は午後1時30分、場所につきましては、法務省大会議室を予定しております。   次回は、先ほど申し上げました4名の方からのヒアリングを予定しているところでございます。 ○山野目部会長 次回日程について説明を差し上げました。   その点も含めまして、この際委員、幹事の皆様からこの部会の運営に関して意見やお尋ねがありますれば承ります。いかがでしょうか。   よろしいでしょうか。   本日も審議に御協力を頂きまして誠にありがとうございました。これをもちまして法制審議会民法(成年後見等関係)部会の第5回会議を散会といたします。   どうもありがとうございました。 -了-