法制審議会 民法(遺言関係)部会 第3回会議 議事録 第1 日 時  令和6年6月25日(火) 自 午後1時30分                      至 午後5時07分 第2 場 所  法務省共用会議室6・7 第3 議 題  遺言制度の見直しにおける論点の検討⑵ 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○大村部会長 それでは、予定した時刻になりましたので、法制審議会民法(遺言関係)部会の第3回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席を頂きまして誠にありがとうございます。   議事に先立ちまして、今回初めて出席される委員の方々に簡単な自己紹介をお願いしたいと思います。その場でお名前と所属等の自己紹介をお願いいたします。  (委員等の自己紹介につき省略) ○大村部会長 どうぞよろしくお願い申し上げます。   それでは、配布資料について御説明をしていただきたいと思います。事務当局の方からお願いいたします。 ○大野関係官 部会資料3「遺言制度の見直しにおける論点の検討(2)」がございます。こちらについては、後ほど審議の中で事務当局から御説明いたします。また、席上のタブレットには委員等名簿及び議事次第を格納しております。 ○大村部会長 ありがとうございました。   それでは、本日の審議に入りたいと思います。   本日は、ただいま御説明がありました部会資料3、「遺言制度の見直しにおける論点の検討(2)」というタイトルが付いておりますが、前回の論点の検討(1)に引き続きまして1周目の、一読の検討をしたいと思っております。   それでは、事務当局から、まずこの部会資料3の第1の1の部分についての御説明をお願いいたします。 ○戸取関係官 御説明させていただきます。部会資料3は、大きく分けて五つの内容で構成しております。まず第1では、部会資料2からの続きとして、デジタル技術を活用した新たな遺言の方式の在り方について、第2では、自筆証書遺言の方式要件の在り方について、第3では、秘密証書遺言の方式要件の在り方について、第4では、特別の方式の遺言の方式要件の在り方について、第5では、その他の論点について記載しております。   それでは、まず1ページの本文第1の1として、新たな遺言の方式の在り方における想定される利用者等について御説明いたします。一般に、現状下で遺言を作成しようとする者として①から⑤までの者が想定されるとの観点があるところ、ほかにも想定される利用者があるか否か、そのような観点を踏まえた上で、新たな遺言の方式について求められる条件や、想定される利用者に対応した新たな遺言の方式を複数設ける必要があるか否かなどについて御意見を頂ければと考えております。   なお、まずは原則的な方式の在り方を検討することが相当とも考えられることから、障害のある方でも遺言をすることができるといったいわゆるバリアフリーの観点からの特例については、本文や補足説明に記載しておりません。原則的な方式の在り方について一定程度方向性が定まってきた段階において、バリアフリーの観点も踏まえた特例的な方式の在り方についても検討を行うことが求められるのではないかと考えております。   補足説明として、1では、これまでの会議で頂戴した御指摘を踏まえると、新たな遺言の方式について検討を進めるため、その想定される利用者を分析することが有益であると考えられることから、参考資料2の第11章の分析を踏まえ、本文のように五つの類型に整理したことを記載しております。   なお、2ページ冒頭のなお以下のとおり、この分析では70歳以上を高齢者と位置付けて、それ以外とを区別した上で、かつデジタル機器等の操作に不慣れな者が比較的多いことを一応の前提としています。しかし、飽くまで便宜上の分類である上に、将来においても同様の状況かは明らかでなく、現時点での一定の観点を示すにすぎないものであることに御留意いただければと思います。   飽くまでそのような留保の上で、各類型について簡単に説明いたしますと、2ページの(1)の高齢者のうちアの専門家相談型では、遺言の作成を相談した専門家が勧める限りにおいてデジタル化された遺言を利用すると考えられること、イの独自作成型では、費用や手間が余り掛からない限りでデジタル化された遺言を利用することが考えられるものの、デジタル機器等の操作に不慣れな者が多いため、作成方法に関する支援等が必要と考えられることなどを記載しております。   3ページの(2)の中年者等の中で、アの終活型については、専門家に相談する場合とそうでない場合のいずれもあり得るところ、手間が掛からず遺言の真正性が担保されていると感じる制度であれば、デジタル化された遺言を利用することが考えられることなどを記載しています。   また、イのリスク管理型については、時間的な負担や事情の変化に応じて遺言内容を変更したいという希望を持つこともあり、簡便に作成、修正できることを重要視すると考えられ、デジタル化された遺言が手間の掛からないものであれば、利用する者が多いと考えられることなどを記載しております。   4ページの(3)の抽象的に作成を希望する者については、必ずしも差し迫った必要性がなくても、遺言を作成することの重要性を実感した際に遺言の作成に至ることは考えられるものの、実際に作成する段階になって複雑でよく分からないと考えた場合には、作成を断念することがあることがうかがわれ、作成方法の簡明さやアクセスのしやすい支援制度があれば、デジタル化された遺言をすることも考えられることを記載しております。   第1の1の説明は以上でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   ただいまの事務当局からの御説明あるいは資料につきまして、まず最初に何か質問があれば、お伺いしたいと思います。その上で御意見を頂戴したいと考えております。質問はいかがでしょうか。   よろしいでしょうか。それでは、また質問も交ぜてということで結構でございますので、ただいまの第1の1、デジタル技術を活用した新たな遺言の方式の在り方における想定される利用者等について、御意見を伺いたいと思います。どなたからでも結構ですので、御自由に発言をお願いいたします。 ○相原委員 相原でございます。想定される利用者を分けてくださっていることに関しては特段意見があるわけではありません。ただ、実務家の観点からは、遺言書を作成させたいという立場の人たちがそれなりにいて、その人たちの問題が非常に大きいと思っております。   2ページの専門家相談型のところで、2段落目ですか、この中で16行目辺り、特に財産が多くなく、遺言内容も単純であり、紛争可能性が低いにもかかわらず、自書をすることが困難であるために、これまでというのがあります。紛争可能性が低いにもかかわらずというところで、申し上げておきたいと思ったことがございます。これまで私は、介護する法定相続人、推定相続人とかから紛争が起こり得るということを申し上げてきましたが、紛争可能性がない、つまり推定相続人がいない場合、つまり、身寄りのない高齢者というのが非常に増加している現状において、一度遺言が有効に作成されたとなったときに、それが通常の民事上の紛争として顕在化するというのは想定されないことを指摘しておきたいと思います。刑事上の問題というのはまた別かと思いますが。これは、自筆証書遺言でも完全に偽造してしまえば同じことではあるのですが、とはいってもやはり、これは従前申し上げた法定相続人ではなくても、心理的なハードルの低さという意味では同じです。紛争可能性が低く、つまり推定相続人とかがいないケースで、遺言内容が単純で、財産が多いようなケースというのはこれからどんどん増えてくるわけで、その場合のことを考えるとそこも想定しておかないといけないのではないかと思いました。   それは全体を通して、遺言書作成の要件をできるだけ下げて利用しやすくする、簡便にして問題が起こったときに司法の場で事実認定の問題として考えましょうというのも理解しておりますが、それが紛争が顕在化しないとなると、意外と大変な問題がどうしても増加してくるのではないかということです。そこで、その視点をこれから先の議論の中で、実務家としては想定しておいてほしいと思いました。   特に、今日ですかね、NHKか何かのニュースで認知症の高齢者が独居しているかどうかを個別に電話を掛けて、それをリストにしているというような、そういう団体もいたりするようですので、周りにそういう親族がいないようなケースで、財産があって、どこそこの施設に、法人、個人に全部とかと一度書かれてしまうと、それをひっくり返すというのはなかなか厳しいのではないかという視点をやはり意識しておかないといけないと、そういう意味で申し上げさせていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございます。相原委員からは、相続人がいない等、紛争が顕在化しないという場合も想定して議論をする必要があるのではないかという御意見を頂戴しました。ありがとうございます。 ○隂山委員 隂山でございます。今般の分類を拝見いたしまして、デジタル技術を活用した新たな遺言の方式の在り方を検討するに際し、専門家相談型と整理されている類型の方々が新たな遺言を利用したいと思うことができる制度設計を考えていく必要性が高いのだろうと感じました。専門家として、現状の自筆証書遺言と比較し、利便性が高く、かつ信頼性も確保されるという制度であることを、専門家が自信を持って紹介できる制度となるのであれば、おのずと他の類型の方々にとっても有益な制度になるのではないかと考えております。   先ほど相原先生からも御指摘があった点で、重複する箇所がございますけれども、部会資料に記載のある想定される利用者のほかに分析をすることが考えられる層といたしましては、新たな方式の遺言によって財産を承継する者であったり、執行をする者、また手続を代理する者なども考えられるのではないかといった意見が内部で出ております。また、この独自作成型と分類されている中には、主体的に遺言を作成しようと考えている方もいれば、他者から遺言の必要性などを促されて遺言を作成しようかと考える、言わば受動的な独自作成型の方もいるのではないかとも思われます。このような分類や分析がどういった作用をするのか、現時点において定見を有しているわけではございませんけれども、検討しておく必要性があるのではないかと感じております。   また、想定される利用者とは少し異なる切り口とはなりますけれども、想定されるデジタル化について、新たな遺言の方式を検討するに当たりましては、その作成過程において、これをデジタルで完結する方向に寄せていくことも考えられる一方、保管窓口による本人確認や、法律専門職の関与によって適切な意思確認を行うといったアナログな要素を取り込んでいくことによって信頼性を確保していくことも考えられるのではないかと、この分類を拝見して感じたところでございます。いずれにしても、専門家として新たな制度をしっかりと案内できる、そのような制度設計をしていく必要性があるのだろうと感じた次第でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。専門家に相談するというパターンを中心に置いて、そこから考えていくのがよいのではないかという御発言と、それから、これは前の相原委員のお話にもありましたけれども、利用するというのではない形で遺言に関わる、財産を承継するとか、あるいは執行するとか、手続を代行する、そういう観点から見ることも必要であるというのが2点目でしたでしょうか。3点目が、デジタル完結だけではなくてアナログと組み合わせるということも考える必要があると、こういう御指摘だったかと思います。ありがとうございます。   ほかにはいかがでしょうか。 ○齊木委員 齊木でございますが、相原先生の御指摘をもう少し具体的に数字で申しあげると、今、東京都の高齢者の25%が相続人のいないお一人様です。あと10年すると4割近くなるという推定です。厚生労働省は、身寄りのない高齢者をどうするかという観点から、事業をいろいろやっております。やはりそこの中では相原先生が御指摘のように、身寄りのない高齢者がいろいろな人に食い物にされるのをどうやって防ぐかということが問題となっております。ですので、御指摘のように紛争可能性というのは、別の相続人が訴えるということだけを考えてはいけないのであって、そういった争う相続人がいない人の意思がねじ曲げられて食い物にされるようなことがないように仕組みを考えるということがとても重要で、その意味で真意性の確認というのを怠ってはならないと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。齊木委員からは具体的な数字を挙げていただいて、相続人がいないというのが現在25%、この先まだ増えるだろうと。 ○齊木委員 東京都内は20数%で、40%ぐらいになる予定です。 ○大村部会長 そのことを織り込んだ形で考えていく必要があるだろうという御指摘を頂きました。ありがとうございます。   そのほかはいかがでしょうか。 ○戸田委員 戸田でございます。今のお話も少し関連するのですけれども、遺言は年を取ってから作ろうとして、そうこうしているうちに遺言能力を失って、認知症になって書けなくなってしまうというようなケースがあり、今のようなお話の対策の一つとしては、なるべく早く遺言を作成するというのも一つ重要なことかなと思います。この類型で行きますと、比較的若い年齢層というのが3類型あるのですけれども、40代から60代の間に遺言を作成しようとすると、その後、資産変動がかなり大きかったりとか、相続関係が変わるとか、あるいは自社株なんかですと、誰に譲るかみたいなものがまた変わってくる可能性があるというようなことを考えると、なるべく簡単に修正できて、それも余りコストも掛からずできるというのは非常に重要なことなのではないかと思います。リスク管理型以外のほかの方についても、その点については重視する必要があるのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。早いうちに作成するということが重要ではないかというところからスタートして、そうなると、その後の資産変動等に対応するという必要が生ずる。遺言を書き直さなければいけないということで、それが簡単にできるということを考えていく必要があるのではないか、別の年齢層について御指摘を頂いたということかと思います。ありがとうございます。 ○谷口委員 谷口でございます。今の戸田委員の御発言の裏表かもしれませんけれども、私どもは執行する中で、やはりメンテナンスをしっかりして修正を繰り返すこと、できるだけ新しい意思を確認していくということが、実際にその遺言が執行される上でとても大事なことであると日々感じております。   この区分けのところでは、4ページの(3)の抽象的に作成を希望する者との関係で、少し私どもの実務的なところで情報、補足を申し上げたいと思います。差し迫っていないというのは、恐らく死亡が差し迫っていないという意味だろうと理解をしております。その中で、24行目から「信頼できる自筆証書遺言のひな型や、アクセスのしやすい遺言作成支援があれば、遺言を作成する可能性があると考えられる」という方々ですけれども、例えば、弊社では住宅ローンのお客様に遺言の有用性を御説明するサービスを提供しております。住宅ローンを契約するときには団体信用保険に入られる、要は死ぬことを考えられる、なおかつ残された方のローンがなくなるようにということで保険に入られるのですけれども、以前から議論はあったかもしれませんが、保険に入られるときに相続発生時の名義変更についても遺言でしっかりと残すことができるということ、遺言の有用性を理解していれば、遺言を作成されるということになります。そのときにひな型とかアクセスの支援があれば、作成されるということかと思います。今申し上げたサービスでも30歳代までで書かれる方が過半です。皆さん、今ここに書かれているようなイメージよりも圧倒的に若くても、自宅のようなきちんと有用性のある資産があって、それに気付かれた方、情報をもらった方が遺言をお書きになるという確率は、今一般的に日本で書かれている遺言作成の確率よりも高く利用されておりますので、やはり有用性を理解するということで、年齢に関係なくお使いになられるという可能性があると思われます。 ○大村部会長 ありがとうございます。戸田委員の御発言を受けられて、大まかに言って若年層で利用されるという例としてどういうことがあり得るのかということについて、具体例を挙げてお話を頂いたと理解をいたしました。   ほかにはいかがでしょうか。 ○小粥委員 小粥です。実務的なことではないのですけれども、今日の補足説明の中で作成方法に関する支援という言葉が何度か出てまいります。この言葉の意味をはっきりさせると同時に、それがなぜ必要であって、支援することでいいのか、あるいは国がそれをやるべきだということを前提に仮にしているのだとすると、ここで問題になっている対象者の中心的な属性は70歳以上の人間ということのようなので、そうだとすると普通の人であります。そのような人が行う法律行為について国が支援するということだとすると、どうしてそういうことを法制上やっていいのかということが問われることになると思うので、そのあたりの整理も必要ではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。作成方法の支援ということがこれまでにも話題になっているかと思いますけれども、そのことを根拠付ける必要があるのではないかという御指摘だったかと思います。今お話がありましたけれども、遺言は法律行為の一種ということで、他の法律行為と並びで考えたときにどういう説明、あるいは正当化になるのかということも考えておく必要があろう、こういった御発言だったかと思います。   そのほか、第1の1につきまして、いかがでしょうか。 ○倉持幹事 この想定される利用者の分析については、遺言の方式の全体像を考える意味で非常に有益だと考えております。その観点で、少し瑣末なところで恐縮なのですが、先ほどバリアフリーという典型でないところも今後入れていく予定だということでお聞きしましたけれども、典型的でないという意味では秘密証書、特別方式、成年被後見人という場合、もちろん数は少ないのですが存在するのは事実ですので、全体像を見る上では、このような方式を利用する、利用せざるを得ないという方についても、「その他」となると思うのですけれども、入れておく必要があるかと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございました。利用したい人ということで、典型的なというかマスの層を捉えているけれども、そうでない事例も織り込んだ形で議論する必要があるのではないかという御指摘を頂きました。   そのほかはいかがでしょうか。 ○中原幹事 私は石綿幹事と共に、引用していただいた調査研究報告書の執筆に携わりましたが、想定される利用者として挙げられている五つのものは、飽くまで有識者ヒアリング等を通じて現状で想定される典型的な利用者層を抽出したものにすぎません。したがって、この類型自体にこだわる必要は必ずしもないものと思います。ただ、いずれにせよ重要なのは、想定利用者の中にどういうばらつきがあって、遺言作成に当たって重視される点にどういうバリエーションがあるのかを把握する、そしてそれを最終的にデジタル技術を活用した方式の具体的な制度設計に落とし込むということなのではないかと思います。   前回、私は、利用者層を考えた上で複数の方式を考えてもよいのではないかということを申し上げましたけれども、想定利用者の類型に逐一対応した方式というよりは、差し当たりある程度高度なデジタル技術に対応できる層と、より簡易な技術でアナログな要素が部分的に入ってでも安心して作成できることを望む層という二つぐらいを想定するのがよいのかもしれないと思う次第です。 ○大村部会長 ありがとうございます。中原幹事からはこのヒアリングの背景について御説明を頂き、そして複数の選択肢ということを考えるときに、余り細かいということではなくて、大きく二つぐらいのものを考えていくような方向がよいのではないかという御意見を頂戴いたしました。   ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。 ○冨田委員 今、先生方からいろいろお話を伺ったので、あえて発言しなくてよいかなと思ったのですが、最初にこの提案を見たときに、表現方法について検討できるのではないかと思いましたので、発言をさせていただきたいと思います。   今回、デジタル技術を活用した新たな遺言の制度を検討する上で、利用者層を想定するということは大変有用だと考えております。今回事前の調査結果も見せていただいて、便宜上、利用者層を想定することだということは御説明も頂いたのですが、例えばデジタル機器の中でも、スマートフォンなどは高齢者も含めて様々普及している現状の中で、類型化をするときに高齢者や中年層といったような世代や年齢層で分類するのではなく、専門家に相談したい人であるとか独自で遺言を作成したい人といったような、制度の利用時の特徴を捉えた分類を行っていくことが適当ではないかと思いました。特に若年層の中には、重たい病気を抱えられた方が御家族のことを思って遺言を残されたいといったケースなども考えられるかと思いますので、年齢層を想定するのではない分類を検討していくことも必要ではないかと思いました。よろしくお願いいたします。 ○大村部会長 ありがとうございます。直前の中原幹事からは、インタビューに基づいて暫定的に整理したという御発言がありましたけれども、その整理に当たって、年齢層を重視するのではない形で整理する方がよいのではないかという御意見を頂戴いたしました。   ほかにはいかがでしょうか。   よろしいでしょうか。この第1の1は、調査をしていただいているということで、それに基づいて、想定される利用者の中でデジタル化と結び付くタイプの人々はどういう人々なのかということを暫定的に整理していただいたという性質のものであると受け止めております。細かい分類につきましては、いろいろ修正すべき点、改良すべき点もあるかと思いますけれども、分類自体がここでの目的というわけではないのだろうと思います。皆さんからは、こうした形で検討するということ自体は有益だろうという御意見を頂いたかと思います。その上で、年齢によらない方がいいという御発言はあったのですけれども、仮に括弧付きの高齢者層の状況というのと、括弧付きの若年者層の状況というのは、かなり違っているのではないかという御指摘があったかと思います。そうしたことを踏まえてこの先、御議論を頂ければと思います。それから、小粥委員からは原理的な御指摘もありましたけれども、それも併せてこの先で御検討を頂ければと思います。また後で事務当局から御紹介があるかもしれませんけれども、この先に外国法のヒアリングですとか、あるいはその関連技術についてのヒアリングといったものも予定されているかと思います。それらと併せて、どのような利用者が考えられるのかということについてもこの段階で一定の整理をしておこうということで、こうしたものが出てきたと受け止めております。ということで、やや総論的な議論ですけれども、第1の1につきましてはここまでにいたしまして、先に進ませていただきたいと思います。   次に、第1の2と3の部分について御検討いただきたいと思いますけれども、まず、その部分につきまして事務当局の方から御説明をお願いいたします。 ○戸取関係官 部会資料3の第1の2と3を説明させていただきます。5ページの本文2では、新たな遺言の方式における日付について記載しております。電磁的記録に係る遺言を作成する場合には、遺言者が記録した日のほか、デジタル機器によって自動的に記録された保存の日や、電子署名を講ずる方式とした場合には電子署名を講じた日が、また、保管制度の利用を義務付けた場合には保管を開始された日がそれぞれ生じ得るところ、いずれを方式要件としての日付とするかについてどのように考えるか、御意見を頂ければと考えております。なお、(注)ではプリントアウトした書面を原本とする場合について記載しております。   補足説明として、6ページの1では、現行の方式における日付の意義、機能について記載しており、その上で2では、新たな方式における具体的な方式の在り方ごとに、考え得る日付について一定の考え方や問題点を記載しております。具体的には、6ページ末尾では、現行の自筆証書遺言と同様に、遺言者本人が入力等を行う在り方について記載しています。これに対し7ページ冒頭では、デジタル技術を活用した遺言において、本人による入力とは別に記録される日付について複数の考え方を示しつつ、いずれも採用するにはハードルがあり得ることを記載しております。また、中ほどのなお以下の段落では、同一の日に複数の遺言が作成されるような場合を想定し、デジタル技術を活用した遺言においては時刻まで記録することも考えられる点を記載しております。   8ページの本文3(1)では、新たな遺言の方式における加除その他の変更について、遺言成立後、電子署名等によって改変防止措置がされることを前提として、内容を変更する場合には別途新たな遺言を作成することを要するものとし、特段の規律を設けないことも考えられるところ、この点についてどのように考えるか、御意見を頂ければと考えております。   また、本文3(2)では、撤回について、電磁的記録を原本とした場合には、コピーによって容易に同一の電磁的記録が複数生じ得ることなどを考慮し、規律を設ける必要性等について御意見を頂ければと考えております。なお、(注)では、書面を原本とした場合には、現行の一般的規律に服することが考えられることを記載しております。   補足説明として、8ページ下方において、現行の自筆証書遺言における加除その他の変更について紹介しています。その上で、これと比較すると、デジタル技術を活用した遺言のうち、例えばワープロソフト等を用いて入力する電磁的記録とした場合は、作成途中での変更は自筆の場合よりも簡単であり、また、改変防止措置がされ、完成した後に変更しても明確に区別することができることなどから、加除等に関する規律を設けない考え方などについて記載しております。   また、撤回については、9ページ下方において、撤回するとの遺言、抵触する遺言及び破棄という現行の三つの方法を紹介した上で、10ページにおいて、コピーによって同一の電磁的記録が複数生じ得る等のデジタル技術の特性に鑑み、撤回の判断が不可能又は著しく困難となり得ることから、三つの方法のうち、特に破棄について定める民法第1024条前段については、その適用を除外する規律を設けることなどを検討する必要があるとも考えられること、他方で、複数の電磁的記録が生じ得るとしても、遺言者が故意に遺言書を破棄したといえるかどうかは現行規定において対応できる事実認定の問題と捉え、特段の規律を設けないことも考えられる旨記載しております。   第1の2及び3に関する御説明は以上となります。 ○大村部会長 ありがとうございます。   ただいまの御説明について、まず質問があれば伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○倉持幹事 それでは、2点ほど質問させていただきます。まず1点目が加除変更の部分です。ここでは改変防止措置を前提として、加除等に関する規定を設けないということですが、これは前回の部会資料で方式としてアからオまでいろいろ示されていて、スキャン方式や、タッチペン方式なども挙げられていたかと思いますが、ここで規定を設けないというのは、飽くまでそれら全ての方式を前提としている話であるのか、それともスキャン方式、タッチペン方式は特に念頭になくて、それ以外についての改変防止措置を前提としたものとして、加除変更に関する規定を設けないという意味なのか。要するに、スキャン方式とタッチペン方式を念頭に置いているのかどうかということの御質問で、これは二つの方式がいいという意味ではなくて、これは余り賛成する意見がないので念頭に置いていませんということなのかどうか、確認をさせてください。   それから、もう1点が撤回のところです。現行法は全部撤回だけではなくて一部撤回もあるということですが、先ほどの加除変更との関係で、一部撤回を認めると、一部の修正を認めていると同様の効果があるので、理論上は一部撤回は認めないという規律もあり得るとは思います。しかし、現行法に基づき一部を撤回する遺言も現存していることもあるので、やはり現行法を踏襲して一部撤回はそのまま存置するという考えなのかをお聞きしたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。2点、まず御質問という形で御発言がありましたので、まず事務当局の方から、それについてお答えを頂ければと思います。 ○齊藤幹事 考えが及ぶ限りでお答えいたしますと、まず1点目の、前回いろいろな方式が例示されたものを全て念頭に置いて、スキャニングあるいはタッチペンというような方式も念頭に置いて、加除変更について規律を設けないという意味なのか、それとも、そこはもう排除してしまっているのかという御質問については、どちらかというと私どもの念頭にあったのは、それらも含めて規律を設けないということを一応考えてはおりました。というのは、電磁的記録に落とし込んで原本、これが遺言だとなる場合には、やはりある程度一定の加除変更防止、改変防止措置がされて完成ということになるかと思いますので、その点では余り変わりがなく、そうやって一回しっかりできたものがあるのだとすれば、それを作り直すよりは、同じ方法でまた別途作るという流れでいいのではないかということを念頭に置いておりました。   それから、2点目ですが、一部撤回については特段デジタルの方式を設けることによって、破棄による撤回というほどの大きな軋轢というか大きな問題は生じないとすれば、一部撤回はそれはそれであり得るということでよろしいのかなと一応考えてはおりました。 ○大村部会長 よろしいですか。 ○倉持幹事 ありがとうございます。 ○大村部会長 御意見があれば、また後で伺いたいと思います。   ほかに御質問はいかがでしょうか。   それでは、御意見を頂きたいと思います。デジタル技術を活用した新たな遺言の方式に関わる問題のうち、日付と加除その他の変更、撤回についてということになりますけれども、この部分について御意見を頂戴したいと思います。御自由に御発言を頂ければと思います。 ○隂山委員 隂山でございます。今般の新たな遺言の方式はまだ決まっているものではないという前提の下、テキストデータを遺言の本文とする考えを仮に採用し、かつ電子署名を求めるということにした場合に考えられる状況といたしましては、例えば令和6年6月25日とテキストでは入力されており、同日付の電子署名が付与されているケースや、同じく6月25日と入力されており、電子署名が付与された日にちは令和6年6月27日とされているケース、逆に、6月25日とテキスト上は入力されているけれども、電子署名が付与された日にちの記録としては6月23日とされているようなケース、様々考えられると感じております。紙と比較いたしまして、デジタルということになりましたら、テキストに表示されているデータと、メタデータとして記録されているデータにそごが生じてくるといった事態もあろうかと思いますけれども、そのような際の日付はどの時点と考えるのかという問題があるのではないかと感じました。   また、電子署名を付与した日時につきましては、補足説明に御記載いただいているとおり、端末の時刻に依拠するという性質を持ちますので、これも仮の話ではありますが、1年後の日付で電子署名を行うということも、可能なものがあります。例えば、マイナンバーカードによる電子署名につきまして、令和6年6月25日にテキストデータを入力し、署名付与の時刻、これを令和7年6月25日とすることも可能です。このような電子署名を付与した場合で、仮に、この遺言を書かれた方が令和6年12月31日にお亡くなりになったとすると、このデータをどのように取り扱うのかといった問題が生じ得るのではないかと感じました。この辺りは、遺言を保管するという制度を採った場合、問題が生じないとも考えられるところではございます。ただ、電子署名方式を採用した場合で、遺言の保管をするという仕組みを構築する際には、受付情報などの付加データが当該データに付与されると電子証明書が持つ改ざん検知機能が働くこともあるので、仕組みを考える上では念頭に入れておく必要があるかと思い、発言をさせていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございます。隂山委員からは、テキストデータ上の日付と電子署名の日付がずれるということについて、あり得るパターンを示していただき、その上で、日付が大きく離れなくても生じ得る問題なのだけれども、大きく離れたときに特に生じやすい問題というのもあり得るだろうという御指摘を頂いたかと思います。 ○齊木委員 今、隂山先生から御指摘いただいたように、この日付として考えられるのは、デジタルデータの本文に書いてあるもの、あるいは電子署名その他のものに付いてくるタイムスタンプというものを基準にする考え、それから、保存を義務付けた場合に保存の日とすることが一応考えられると思うのです。   実は前の二つ、本文あるいはタイムスタンプの方は、技術的にいろいろ改ざんの操作ができるものです。隂山先生御指摘のとおり、これは非常に簡単にできます。ということは、遺言というのは実は新しいものが優先するという規律になっておりますので、そこを事後的に勝手に書き換えられるような基準を採用してはまずいと思います。その意味で、私は保管機関への保存を義務付けて、そこの受付日時を記録して、それを基準とすべきであると、このように考えております。今、タイムスタンプを変えるためのフリーソフトとか有料ソフトが一杯出ておりますので、私も少し実験してみましたけれども、実に簡単にできますので、御留意いただきたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。隂山委員からも最後の方で、保管をするときの場合との関係について言及がありましたけれども、齊木委員の方からは、二つの日付と、それから保管をするということになったときに、もう一つ日付が生ずるということで、最初の二つの日付は必ずしも信用が置けず、簡単な改ざんができるということになると、信頼性のあるものを基準にするということになるのではないかという御意見を頂いたかと思います。   ほかはいかがでしょうか。 ○相原委員 私は技術的なところについては詳しい方ではないので、極めて抽象的なことしか考えられないのですが、全体の方式をどんなふうにしていくのか、保管との絡みとかも含めて、全体として考えなければならない事項かなと思います。特に日付に関しては、極めて重要なのですが、一方で技術的なところもあります。それから、(注1)を拝見しても、現時点の判例においても、事実認定でいろいろと判断されるところがあるのに対して、このデジタルという形で結構明確に出てくるとすれば、全体の方式をある程度見極めた段階で、安定性のある、それから客観性のあるという視点で決めていくという課題なのではないかという思いを持っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。ほかに御発言ありませんかと伺ったのですけれども、なかなか御発言が出にくいところがあるというのは、今の御発言と関わっているのかとも思います。どのような仕組みを作るかということとの関係でないと、議論しにくいところがあるのではないか、全体の議論が進む中でこちらの方も絞り込んでいくということになるのではないかという御指摘だったかと思います。   ほかにはいかがでしょうか。 ○中原幹事 私も今の相原先生の御意見に賛成ではあるのですけれども、ただ、日付というものについていろいろ考えてみると、何でこれが要求されているのかとか、よく分からない点が出てきて、正に部会資料の本文にあるように、「遺言制度における日付の意義及び機能との関係」で、あるいは補足説明の中で、自筆証書遺言に関する判例法理との関係も意識されていたと思いますけれども、それらとの関係で、一定の整理が必要になってくるのではないかと思いました。   その観点から、まず第1点としては、6ページの第1段落の①から③として挙げられているような事柄に照らした場合には、日付というのは、遺言が遺言として成立する、あとは遺言者死亡による効力発生を待つのみである、そのような状態に至った時点を意味すると考えられるのだと思います。自筆証書遺言に関する最高裁判例では、「真実遺言が成立した日」という表現を使っていますけれども、それもその意味であって、より具体的には、日付以外の方式要件が具備された時点、その時点の日付を記載する必要があって、そういう日付が記載されることで全方式要件が具備されるに至るということなのではないかと思います。そうすると、いかなる時点の日付の記載が必要かという問題は、日付以外の方式要件は何かということに本来的に依存するので、その決定が先決問題だということになると思います。   ただ、第2点目として、自筆証書遺言における日付とデジタル技術を活用した遺言における日付には相違がないのだろうかという点も気になるところです。自筆証書遺言の場合は、紙媒体に一元化される、全文の自書、財産目録の作成、署名・押印という各要素を集めて、それらがそろったことを確認して日付が記載されるというのが典型的なイメージであるのに対して、デジタル技術を活用した遺言は、むしろ段階を踏んで作成をされていく。もちろん具体的な制度設計次第ではあるのですけれども、デジタル機器による文字入力、電磁的記録としての保存、電子署名、さらにはその保管を義務付けるならば保管申請という一連の、ただ相互に区別されるステップで構成されていくのではないかと思います。そうすると、遺言者が入力した日付以降にも作業が控えているわけでありまして、一体どの時点で遺言が成立したと見るのかが必ずしも自明ではなくなってくるということなのではないかと思います。6ページから7ページにかけて様々な候補が技術的可能性とともに列挙されているのは、あるいはそういうような認識に基づいているのではないかとも想像するところであります。   自筆証書遺言に関していわれている、日付が全方式要件が具備された時点のものでなければいけないという、この考え方を仮に「原則」と呼ぶならば、デジタルの方式の場合には、私は作成者が記録した日付とするのが一番簡明だとは思うのですけれども、仮にそのようにした場合には、それ以降にも作成のステップが控えているわけでありまして、そういう「原則」からの逸脱がどうなのか、それをどういうふうに説明するのだろうかという問題が出てくるのではないかと思いました。   それから、第3点でありまして、今のこととも関連しますけれども、自筆証書遺言に関する判例法理は例外を拒絶するものではなくて、7ページの(注1)で挙げられている2件の判決のように、記載されるべき日付が記載されていなくても、一定の場合には当該遺言を無効としないというように救済の余地を残す、日付が一切記載されていないのならば駄目だけれども、記載された日付が記載されるべき日付と完全に一致しない場合には、当該遺言がなお有効とされることもあると、そういうものだと理解しています。8ページの1行目のところに、作成者が記録した日付とする場合には、これらの判例がそのまま妥当すると書かれていますけれども、仮に遺言者の入力した日付以降の過程における日付を方式要件とする場合には、デジタル機器やシステム等の不具合で正確な日付が記録されなかったという形で、似たような問題が出てくるのかなと思います。しかも、自筆証書遺言における日付が飽くまで遺言者により記載されるのと異なって、システム上、日付がデジタルの場合は当然に記録されて残るわけでありまして、日付が間違っていた場合に、遺言者に落ち度があったといえないことがほとんどであると思われます。そういう場合に遺言を無効としてよいのか、そういうことが生じないような技術的な選択をするというのが部会資料の方向性なのかなと思われますし、そもそも規定の問題ではなくて解釈問題なのかもしれませんけれども、いずれにせよ遺言の有効・無効というのが方式要件の第一義的な帰結のはずですので、この問題には一応留意すべきなのかなと思いました。   それから、先ほど齊木先生の御意見などを伺っていて思ったのは、仮に保管の日付が遺言成立の日付なのだといった場合には、もはや日付は方式要件としないで、判断、成立の前後が問題となるというような場合には、それはその問題の中で解決するというようなことというのが考えられないのだろうかというようなことも少し思いました。   それから、加除変更、撤回の件なのですけれども、特段の規律を設けないということでいいのではないかとは思うのですが、その場合、法律の専門家でない人は、遺言の内容を改めたい場合にどうすればいいのか。多分現行の遺言の仕組みでもよく知られていないと思うのですけれども、利用者に誤解が生じないような、周知のための施策、これも遺言作成支援の一環なのだと思いますが、そういうものも必要になるのではないかと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。中原幹事から大きく2点、一つ目は日付の意義ということについて、どの日付にするかということは最終的に後で考えるとして、いかにこれを考えるかということについては、決定の前に考えておくべき事柄があるのではないかということで、三つの点を挙げて御意見を頂戴したと思います。それとの関連で、保管をするということになったときには日付というものの性質というのが変わってくるのではないかといった御指摘もあったかと思います。あとは、加除変更について新しいルールを設けるとすると、利用者にそれが分かりやすいようにすることが必要ではないかという御指摘を頂戴いたしました。 ○冨田委員 今、いろいろな先生方もおっしゃっていましたけれども、デジタル技術を活用した新しい方式を考える上では、複数の方式を設けるという結論も十分あり得ると思いますが、私どもとしては、中でもワープロで作った文書を印刷した書面に署名する方式というのが、自筆証書遺言における全文自書の負担を軽減するという課題意識に対応する、これが大変有力な選択肢になるのではないかと考えています。仮にこの方式を前提としますと、日付については印刷した書面に記載されている日をもって方式要件とすることができますし、一つの電磁的記録に様々な日付が付く問題も生じにくいのではないかと思われます。また、印刷した署名に本人が自書をすれば、真正性もある程度担保できるのではないかと考えます。   なお、ワープロ入力をすることを考えると、内容を考えながら内容の修正や、印刷をして確認をするといったことが簡単にできますので、同じ日付で自書の署名の入った内容の異なる遺言が複数存在する可能性も高まるのではないかと考えられます。この点については、8ページ目の14で、現行の制度でも同一日付の遺言が複数存在するケースは極めてまれとされておりますけれども、この問題に対する規律は設けないままでよいかということについては考えておく必要もあるのではないかと思いますので、意見として申し上げます。 ○大村部会長 ありがとうございます。冨田委員からは、ワープロの書面プラス署名というのがよいのではないかということを前提にして、それだと複数の日付という問題が生じないだろうというお話がありました。あわせて、これは今の場合に限りませんけれども、容易に遺言が作れるということになると、同一日というのがこれまでよりも出てくるだろうから、それに対する対応策というのが必要なのではないかという御指摘を頂戴いたしました。   ほかにはいかがでしょうか。 ○戸田委員 質問なのですけれども、私も齊木先生がおっしゃるように、保管制度を設けると日付の問題とか破棄の問題、こういったものが非常にシンプルになるので、それがベターというかベストではないかと思っています。現状の自筆証書遺言書保管制度で、日付のことを言いますと、やはり書かれた日付が最終日付ということになっていると思うのですけれども、これがもし争いになったときに、保管した日付がそれより後で、その中間にあったものというのはどのような扱いになるのでしょうか。本人の意思でもって法律行為を行ったのは、届け出た、保管制度を申請して受理を受けたときが最終になると思うのですけれども、その中間にあった場合にはどうなるのかというのをお聞きしたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。現行法の下で生ずる問題について御質問を頂きましたけれども、もし何かあれば可能な範囲でお願いします。 ○齊藤幹事 齊藤でございます。御質問に答えられるか分かりませんが、今ある保管制度は、私の理解では保管所、つまり法務局に持参する前に一旦もう完成されている、あるいは保管官の助言等によりそこで直したりして完成するということなので、保管の申請あるいは受理、そして保管が開始されることは、サービスというか付加された作用だということだと思います。なので、保管された自筆証書遺言でも、その日付というのは、やはり記載されている、本人が記載した日付という整理になるのかなと思っております。 ○大村部会長 よろしいでしょうか。 ○戸田委員 ありがとうございます。 ○石綿幹事 幹事の石綿でございます。加除変更について、大きく1点、細かく2点指摘させていただければと思います。   先ほど冨田委員からプリントアウト方式の御指摘がありましたが、プリントアウトしたものを本体とすることを考えた場合に、加除訂正の規律を設けなくてよいのかということを、一つの疑問として持っているということでございます。資料では、保管を義務付けるのであれば、その後の改変の可能性はないとおっしゃっていて、それ自体はそうだと思います。しかし、例えば(注2)にあるような、作成段階で加除訂正をする、プリントアウトした後、1か所間違いを発見し、もう一度作り直して印刷すればいいけれども、面倒くさいからと手書きで訂正するというようなことまで認めないのかということについては、プリントアウト方式を考えていく場合であれば、そこはやはり検討した方がいいのかなと思いました。大事な文書なので、そういう適当なことはしない方がほとんどだという前提に立つのか、やはりそういう需要もあるのかということは考えた方がいいのだろうと思いました。   関連して考えていて、よく分からなくなったのは、プリントアウト方式の遺言をもし認める場合、加除訂正という形ではなくて、例えば一定の文章が自書で追加されるというようなこともあるのではないかと思います。そうなったときに、プリントアウトした文書に、併せて遺言の本文に当たるようなものが自書で書かれていたようなときに、その遺言書というのを法的にどう評価していくのかという問題も生じそうな気がしておりまして、プリントアウト方式を導入するときの位置付けというのをある程度しっかりした方がよいのではないかと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。ワープロで打ったものをプリントアウトというような方式を考えたとき、加除に関わる問題を2点御指摘いただいたかと思います。加除訂正は考えない、最初から直してプリントアウトするということで本当によいのかというのが一つと、それから、自筆で追加されているという場合に、それをどのように扱うのかということを考える必要があるのではないかという御指摘だったかと思います。 ○柿本委員 デジタル技術を十分に活用できない一市民といたしましては、自筆証書遺言における全文自書の負担を軽減するためには、やはり冨田委員と同じ意見でございまして、まず第1段階は、自筆ではなく、ワープロなどで作りましたものに署名し、日付を入れて遺言とするというのが一番取り組みやすいのではないかと考えます。   遺言を身近なものにするためには、遺言の作成支援ですとか、アクセスしやすい支援制度の確立などが、どの場面においても非常に重要になるのではないかとも考えます。 ○大村部会長 ありがとうございます。2点御意見頂戴いたしました。1点目は、先ほどの冨田委員の御発言のような、ワープロプリントアウトプラス署名というのが一つ考えられるやり方ではないかということ、もう一つは、作成支援ということをやはり考える必要があるのではないかという御発言だったかと思います。   ほかにはいかがでしょうか。 ○齊木委員 加除訂正について1点、発言したいと思います。結局、プリントアウトしたものは紙ベースですから別ですが、デジタル記録、電磁的記録を原本とするという類型について考えますと、やはり私は破棄とかではなくて残していくということが、遺言の紛争を考えると、重要だと思っています。最高裁の平成9年11月13日というのがありまして、これは1回目の遺言があって、2回目の遺言でそれを撤回して新たな遺言をして、3回目の遺言で2回目の遺言を撤回したのです。1回目の遺言が復活するかという論点で、復活し得るという最高裁の判断でした。そうすると、やはりこの遺言というのは物理的破棄ではなくて、電磁的記録は残していくということがとても重要だと思っています。かつ、遺言無効が争われたときに、遺言内容の変遷というのは実は裁判官としてはとても興味のあるところです。ですので、これを残していくことが必要だと思っています。   あと、デジタル関係の法令として、行政機関個人情報保護法などが立法されております。これは、違法に収集した個人情報でも実は破棄はしないという立法になっています。利用停止ということになっています。実は公正証書遺言についても同じことが問題となっていて、私どもも破棄はしないと、利用停止にするという考え方です。つまり、遺言無効の判決が仮に確定しても、利用停止にはすると、けれども破棄はしないと。というのは、破棄という制度を一旦入れると、管理している誰かがうっかり抹消するという事故が生ずるという、やはり人間なのでそういうことがあり得ます。そこで、やはり方向としては、新しいもので更新していく、新しいものが優先するというルールさえ作っておけば、それでいいのではないかと私は考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。加除訂正について、破棄ではなくて、記録は残しておく方がよいのではないかということで、実質的な理由としては、内容の変遷がたどれるということと事故の可能性を防ぐということ、それから、形式的なというか体系的な理由としては、他の法令との整合性ということを御指摘いただいたと思います。   ほかにはいかがでしょうか。 ○内海幹事 内海です。実質的にはほかの先生方が既に御発言されたところと大きく重なってくることだと思うのですが、加除の点と日付の点、1点ずつ申し上げたいと思います。まず、今日の御説明の中に、規定を設けないというような立場が基本線として表れていたかと思うのですけれども、現在の自筆証書遺言についての第968条第3項をそのまま削除したとしたときに、どういうルールがそこに存在することになるのかというのがよく分からないということがあります。狙いとしては、作成途中のものはきれいな形で整えていただいて、他方で一旦フィックスしたものは、もうその後はいじらないということだと思うのですけれども、では実際問題、第968条第3項がなかったときに、二重線が引いてあって別の文字が書いてあるとか、吹き出しが入って、ここはやはり考え直した、みたいなことが書いてあるとか、脚注が使ってあるとか、そういういろいろなものが出てきたときに、何が元の本文で何が加除なのかということを認定するということが困難になる場合もあるかもしれません。標準的なフォーマットのようなものに則って綺麗に書かれているものだけを想定するということでよいのか、というような辺りのことが少し気になりました。狙いとするところはよく理解できるのですけれども、条文に落とし込むときに何も書かずに済むのかというのはなお疑問があるかもしれない、というのが加除等に関するところです。   日付のことは、これは多くの先生がおっしゃったことと一致すると思うのですけれども、日付でもって何かの優先関係とか要件の適否なんかを判断するときにという問題と、方式としての日付というものをどう考えるかという問題は、余り一対一対応はしないというところがあるのかと思いまして、現在の保管制度の話でも実際問題、保管された日よりも後の日付が自筆証書遺言の中に書かれていたときにどうするのかであるとか、あるいはプリントアウトなんかを緩やかに認めていくと、プリントアウトされたものに書かれている日付とプリンターの使用履歴みたいなものを照らし合わせるとどうにも合わないとか、そういった問題が出てくる可能性があるということかと思います。そういうとき、何が優先するかということを決めておけばいいというような割り切りであるとか、あるいは何も決めておかなくても、経験則で何をもって最終的に有効に成立したかということの最終時点を判断すれば足りるとか、いろいろな立場はあり得ると思うのですけれども、方式要件としての日付というものにどれぐらい機能を期待するかということが、日付をどのように入れなければ、微調整の余地があるのかもしれませんが、基本的には有効な遺言として認めないという方式要件としての日付のあり方をどのように考えるかということとの関係で、重要になるかなと思います。機能がどんどんこぼれ落ちていって何も残らないということとなると、先ほど中原先生がおっしゃった、もう日付なんて要らないではないかというところまで行き着き得るとは思うのですけれども、果たしてそういうものなのかということも含めて、従来の自筆証書遺言においては、紙に書かれた日付以外の手掛かりというのは乏しいという前提で、方式と実質的な成立時点、あるいはその判断基準というものが余り掛け離れることはなかろうという世界観でやってきたものが、だんだん技術を使うとそうではないのではないかという手掛かり、実質的な意味での作成時期を知るための材料が増えていき得るという中で、どのように日付ないしその成立日時というものを判断していくことが望ましいかと、そういう話なのだろうと受け止めまして、だからどうすればいいということではないのですけれども、そういう感想を持ちましたということで、申し上げたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。内海幹事からは加除と、それから日付について御意見を頂きましたが、加除の方は、ルールを単純になくすとして、その後の適用というか運用がどうなるかということについて、様々な場合が生じ得るので、それを想定しておく必要があるのではないかという御意見だったのかと思いました。それから日付の方は、いろいろな日付が分かるというようなことになったときに、遺言書に付いている日付の機能として、何が残るのかということとの見合いで、方式要件として維持するのかどうかということを考えることになるのだろうという御指摘だったかと思いました。ありがとうございます。   ほかにはいかがでしょうか。 ○小池委員 少し細かい話なのですけれども、破棄という形ではなくて記録をそのまま残していく形というのは、先ほど齊木先生からお話がありましたけれども、バージョン1で事項1、2を書いて、バージョン2で全く新しいものとして事項2だけ残したときに、現行法であると事項1はそのまま残りますよね、抵触していないから。というのがあるので、これについての回答がどうかということではなくて、デジタルでバージョン2を作ったときには、多分、バージョン1は全くなしにして2を作っているはずなのに、そうなっていない可能性が出てくるので、少し注意が必要かなと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。残すということの意味をどのように考えるのかということなのだろうと思って、伺っておりました。本当に壊してしまうということなのかということを齊木委員は先ほどおっしゃったのではないかと思いますけれども、どちらもあるのだということになると、今、小池委員がおっしゃったような、現在もあるような解釈問題が出るということになる、そういうことかと思って伺っておりました。 ○木村幹事 京都大学の木村です。2点指摘、質問させていただきたいと思います。   まず1点目が日付のところでして、先生方の御議論を聞いていると、何のために日付が必要なのかという点について理論的に検討されなければいけないところ、先ほど中原先生が御指摘されていたように、令和3年の最高裁判決だと全ての方式を満たした日となっていると思います。そして、その実質的な意義としては、遺言者の最終的な意思が示された日というのがその中核を占めているように考えられることから、最終意思が示された日という意味で日付を確定するということも考えられるところ、全ての方式を満たした日というのは、そういった最終意思として客観的に見て効力を認めるべき遺言が成立した日であるとの趣旨として捉えることができると思います。となれば、やはり遺言としての効力を認めるべきものとしてふさわしいもの、あるいはそれが確証できる日付となると、その日付自体がやはり明確に判断できる必要があると思われます。   この点を踏まえつつ、新たな電磁的記録による場合を考えますと、この場合には、頻繁に書き直されるような可能性もあるということ、あるいは様々なデジタル上の問題から日付が正確な日付とずれてしまうというおそれがあるのであれば、今般の自筆証書遺言などで想定されているような日付の意義と比べて、より一層、明確に日付として判断できるという点を重視する必要があると思われます。とすれば、保管した日を日付として見るとの考え方も十分あり得るのではないかと思いました。このような理解によれば、結局保管をしなければ方式要件を満たさないということになりそうですので、部会資料7ページの10行目に書いているように、保管そのものが方式の要件として位置付けられるとの見方として、新しいデジタル方式の場合には保管そのものが方式要件なのだという形で設計するということも、あり得る一つの可能性として十分考えられるのではないかと思った次第です。これが1点目です。   2点目は、若干質問も入っているのですけれども、撤回に何が当たり得るのかという点につきまして、齊木先生などから、破棄とか撤回ではなく何を記録として残していくのかという観点が重要であるという御説明を興味深く拝聴したところです。この点につきまして、部会資料9ページの35行目などから書かれているところなのですが、電磁的記録を遺言の原本とする場合とあります。この点に関連して、10ページの(注1)のところの記述にも関わるところですが、これまで自筆証書遺言や公正証書遺言では、原本とされるものが当然一つに確定されると考えておりましたところ、今回の新しい方式の場合においても、同じく、原本というものが存在する、こういったものが原本であるというところから議論がスタートしているのでしょうか。部会資料9ページ以下のところを見ると、結局いろいろなところにデータの記録のコピーが残ってしまっているので、原本が破棄されたとかそういった問題は問うことができないという趣旨に読めるため、原本は何か、ということは特段重視されていないようにも考えられます。この点につきまして、原本というものがどういったものなのかということについて定義をするとか、規定を設けるということは考えておられるのかということを教えていただきたいと思います。   これとの関係では、これまでは、自筆証書遺言で遺言書を破棄する行為が撤回とみなされるのは、原本そのものに当たるものを破棄したから撤回とみなされるとなっていたのですけれども、例えばデジタル、電磁的記録になれば、その原本に当たり得る電磁的記録そのものをパソコン上のごみ箱に入れなくても、コピーされた別のデータをごみ箱に入れたら、それは破棄に当たる、あるいは撤回とみなされる行為だとする解釈があり得るのか、との点も気になりましたので、質問させていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございます。木村幹事から、1点目は日付についてで、日付について複数の捉え方があるということをおっしゃった上で、デジタル化をするということになると、いずれにしても明確さがより求められるようになる、そうすると、保管ということをそこに持ち込んで、保管の日を考えるというのがよいのではないか、しかし、そうなるとそれはもはや方式ではないということになりはしまいかという考え方の流れをお示しいただきました。それから、もう一つは撤回について、破棄による撤回というのを念頭に置いて考えたときに、紙ならば紙の原本を破棄するということになるけれども、デジタルの場合にそれと同様に考えることができるのかできないのかということについて、これは御質問という形で頂いたのかと思いますので、何かありましたらお願いいたします。 ○齊藤幹事 齊藤でございます。正に御指摘いただきましたとおり、電磁的記録をもって原本とするという書き方は、これまでも御説明してきたところで、それは別途紙である必要がない、電磁的記録のやり取りで、例えば手続も進められるのだというようなことを主眼に述べていたように思います。他方で、そういった意味での電磁的記録というのは紙の手書きの物体とは異なりコピーし得ると、かつ、コピーされたものと元々あった電磁的記録には質的な相違がないという世界観なのかなと思っておりまして、そういう意味では唯一の原本という世界観をもう離れてしまうようなことになってしまうのではないかということを考えておりました。   これは齊木委員に、正しい考え方なのかどうかも、コメントがあれば頂きたいと思いますが、公正証書はこの度、令和8年までには施行されるであろう公正証書は、原則として、もう紙では作らず電磁的記録を原本とすると承知をしています。この場合もコピーはし得るのですけれども、恐らくそういう議論をする必要もないし、しても余り実益がないというか、それは、公正証書に関しては公証役場に一つ、これが原本ですということが組織的に保管、保存されているからなのかなという気がしてまいりました。そういう意味では、個人で遺言者が勝手に作れる唯一の原本である電磁的記録というのは、やはり唯一であることを担保しようがないのかなという気もしたというところです。 ○木村幹事 イメージされている内容が分かりました。ありがとうございます。 ○大村部会長 齊木委員、何かあればどうぞ。 ○齊木委員 今、齊藤幹事から御指摘いただきましたように、公正証書は原本が電磁的記録になるので、実はコピーされると同じものになってしまうのです。ですから、我々は保管されているものが原本だという仕切りです。全く同じものを実は正本として出して、後ろに正本証明を付けるのですが、今までは2通目以上を求めるときには数通付与という制度があるのですけれども、もう勝手に謄写、コピーできるので、数通付与の規定なんかを設けても無駄なのではないかという議論に実はなっています。債務名義の奥書なんていうのも無駄ではないかと思っています。裁判所作成の債務名義については、新しい民事訴訟のIT化では債務名義の奥書を全部やめて、この債務名義についてはいつこういう執行がされましたということは、裁判所の事件管理システムに全て保存されていくということでコントロールしようとしているわけです。だから、正本とかそういうものの通数を絞って何かコントロールしようという考えは、もう無理だという考えで動いているのだろうと認識しております。 ○大村部会長 ありがとうございます。齊藤幹事からも齊木委員からも、基本的には同じ方向の御意見ないしお考えを御披露いただいたと理解をしております。   そのほかには、いかがでしょうか。   よろしいでしょうか。それでは、第1の2、それから3につきましては、一方でもう少し具体的な制度の絞り込みができないと、どこに着地するかということは議論しにくいのではないかという御指摘があり、これに賛成する御意見も多かったように思います。他方で、日付や加除というものの意味について考えておくということがこの先の議論のために有益であるということで、その意義についての御発言もあったところです。もう一つ、保管というものをどう位置付けるかということによってかなりイメージが違ってくるといったことについても複数の御発言がありましたので、こうした点を踏まえまして、この次の機会に重ねて議論をしていただきたいと思いました。   ということで、この2と3につきましては引き取らせていただきまして、次に第1の4に進みたいと思います。第1の4の部分につきまして、まず事務当局の方から御説明をお願いいたします。 ○戸取関係官 第1の4について御説明いたします。11ページの本文4では、保管制度の要否等として、まず(1)では、保管制度を設ける必要があるかどうか、仮に保管制度を設ける場合には、保管の主体は民間事業者等と公的機関が考えられるところ、民間事業者等については業務の適正性、継続性を確保する仕組み等が必要となることなどに留意すべきと考えられる旨記載しております。(2)では、保管を義務付けるか否かについて、唯一の原本の存在を確保することや遺言の完成を担保すること、電子署名の有効期限の問題を解決することができることなどの観点や、また、これらの考え方とは別の方向から、保管の申請手続に際して本人確認手続を行うことにより真正性の担保等を図ることができるとの観点から、義務付けるという考え方があり得るところでございます。他方で、保管を義務付けると手続的負担が大きくなるなどの観点から、義務付けるべきではないという指摘もあるところ、どのように考えるか、御意見を頂ければと考えております。なお、(注)では、保管を義務付けるものの、保管を欠いても遺言の効力には直ちには影響しないとする考え方を記載しております。(3)では、通知及び検索の仕組みを設けることの相当性について、(4)では、改変防止のための手当て等がされることを前提として、家裁における検認を不要とすることの相当性について御意見を頂ければと考えております。   補足説明として、12ページの1(1)では、新たな遺言の方式について保管制度を設けることの要否等を検討するに当たって、その前提として、現行の自筆証書遺言書保管制度において、どのような手続を行うことによってどのようなことが実現されているのかを御紹介しております。その上で、12ページ末尾以下の(2)では、遺言者が希望する場合には保管制度を利用することができるとする意見が部会でも多数見られたこと、13ページの(3)では、民間事業者等や公的機関が保管する場合の問題点等を記載しております。   13ページ下方からの2では、保管を義務付けるべきと考える場合の二つの異なる観点からの根拠、任意とすべきと考える場合の根拠とをそれぞれ記載しているほか、検討に当たっては、保管以外の要件とも関連し、利便性、簡便性の確保と真意性・真正性の担保等とのバランス、自筆証書遺言書保管制度における保管との兼ね合い等が問題になると思われる旨記載しております。   14ページ下方の3では、遺言を実現する観点から、通知及び検索の仕組みを設ける必要があると考えられることについて、15ページの4では、改変防止等に関する仕組みが設けられることを前提として家裁における検認を不要とすることが考えられることについて、それぞれ記載しております。   第1の4に関する御説明は以上となります。 ○大村部会長 ありがとうございました。   ただいまの事務当局の説明につきまして、まず御質問があれば伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○小池委員 まず前提の確認ですけれども、保管制度に撤回制限を付けるというのが令和3年の改正のときの議論で、要は自筆証書遺言について最終版であることを明確にするという議論はここでは取りあえずしない、ここのテーマでは今はしないということでいいのかというのが確認の一つと、もう一つは、11ページの下から4行目に手続的負担うんぬんというのが出てくるのですけれども、その1行上に、保管申請手続に際しての本人確認手続の真正性の担保等を図ることができるというのが書いてあって、確か前回か前々回のときに、マイナカードを見ているだけではないかというような話があって、要は真正性の担保というときに、余りこれを強調して法務局での保管のところで負荷を掛けると、法務局の方の負担が大変になって、もたないという話はないのかというのを少し確認したいということです。 ○大村部会長 ありがとうございます。2点御質問がありましたけれども、何かお答えあればお願いいたします。 ○齊藤幹事 1点目、保管との兼ね合いで、撤回制限に関するような議論が今回はあり得るのかどうかという御質問と承りました。11ページのゴシック4、保管制度の要否の上の(注5)に関連の記載があるかなと思っておりますが、少し御説明をしますと、私どもの現在把握している範囲では、民法・不動産登記法部会における調査審議の際に、公正証書遺言や法務局で保管している遺言について、それぞれの撤回は当該方式によって行わなければならないとする提案がされたと。けれども、それはそれで撤回の方式を限定すべきではないというような指摘、撤回が困難になるような状況も生じ得るというような御指摘もあって、採用されなかったということを、ここは情報提供という意味で、記載をしております。   その上で、今回の部会では、撤回の制限等に関しては現時点では項目を特段設けておりません。そういった方向性が特に必要だろうというような御議論は余りこれまでは承っていないような気がいたします。ただ、だからといって論点から排除されるということではないかなと思っております。仮にその議論をすれば、また同じように、撤回の方法を制限することは適切かという御議論を頂くのかなということを想像しております。   それから、2点目、手続的負担という言葉の意味合いについて、法務局に余り多くを期待すると負荷が重すぎるのではないかというような可能性についての御質問と思います。この点に関しては正に、まず、法制上も法務局では基本的には実質審査は行わないというのが、登記の世界であれ遺言書の保管の世界であれ、原則的な考え方かと思いますので、審査といって、本人確認ということはするけれども、今ある在り方を考えるとすれば、それ以上に、しっかりよく考えましたかと、あるいは中身の実質的な真意の確認というようなことは難しいのかなと思っております。そういう意味で、役所の負担という意味でも、やはり余り実質的審査に立ち入るというのは難しいのかなと思っております。 ○小池委員 そこまでの実質ということではなくて、本人が、これが私の遺言ですというところだけチェックできればいいと思っているのですけれども、それもマイナカードで顔写真で見てチェックしているだけではないかと言われたらどうなのかなとは思うのですが、そういう意味では真正性の担保も難しいですかねということなのですけれども。 ○齊藤幹事 真正性の担保というのは、これは保管制度において行われている本人確認が正に真正性の担保なのかどうかは、また少し議論の余地があるのかもしれませんが、やはり保管制度では方式違背がないことを確認して預かるという仕組みになっているので、そして方式違背でないということの中には、御本人が自分で書きましたねということも含まれているのかなという理解は可能かなと思いまして、そういう意味では本人確認という範囲であれば、別に大きな負担とまではいえないのかなという気もいたします。 ○小池委員 分かりました。ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございます。小池委員、また御意見があれば、後でお伺いしたいと思います。   ほかに御質問はいかがでしょうか。 ○相原委員 相原でございます。保管制度の義務付けの要否というのが非常に重要になってこようかと思っています。そのことを考える前提として、14ページの(2)のところについて少し質問させてください。   保管を義務付けるものの、それを欠いたとしても遺言の効力には直ちには影響を及ぼさないとする考え方で具体例が記載された後で、後半部分に、保管がされていない場合に遺言の効力を生ずるためには裁判所による承認の裁判を要するなど、保管とは別の手続を必要とするものなどの考え方があると紹介されています。最初から保管を義務付けはしないで、原則有効であるということで、効力に影響がないという場合と、裁判所による承認の裁判、つまり、遺言書に基づく権利主張をする人が、検認というよりももっと重い、本来的な承認の裁判を主張立証しなければいけない、それができるという余地を残す場合を検討するという理解でよろしいでしょうか。よろしくお願いいたします。 ○齊藤幹事 14ページ(2)の部分は、正に大体そのような考え方を御紹介したつもりです。第1文は、基本的には義務付けるということで、義務付けるということは、それを欠いていれば原則は無効なのだけれども、他の要件等を満たしていて何らか認定ができる場合には救う余地を残すというような、抽象的な意味合いのものが第1文です。それに対して第2文は、正におっしゃられたとおりに別途の手続を設けると、ただ、それはそれでまた負担が重たくなるのではないかという御意見はあり得るかと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございました。   ほかには御質問、いかがでしょうか。   よろしいでしょうか。それでは、部会資料3の第1、デジタル技術を活用した新たな遺言の方式の在り方の最後の部分になりますけれども、4の保管制度の要否等ということで、これまでにも様々な御意見を頂いたところでありますが、改めてまとめて御意見を頂戴したいと思います。どなたからでも結構ですので、お願いいたします。 ○隂山委員 隂山でございます。まず、保管制度の要否につきまして内部で検討したところ、積極的な意見が多くございました。保管制度を設けた場合、遺言が作成されているか否かの検索などもシステムの作り込みによっては容易になるのではないか、公正証書遺言であったり、法務局に保管された自筆証書遺言、そして今般検討している新たな方式の遺言について、横断的な検索をすることもできるのではないかと考えられます。また、通知などの機能の拡充を行うことによって、被相続人や相続人が必要としていないライフラインであったり、各種契約などを早急に止めていくことも考えられ、死亡相続手続のデジタル化の基盤整備の一環になるのではないかとも考えられます。   保管先につきまして、公的機関が保管することによって利用者の安心感につながるのではないかと考えています。他方で民間事業者などによる保管を検討する場合には、資料にもあるとおり、継続性、永続性の観点から、参考資料でお示しを頂いておりましたけれども、遺言制度のデジタル化に関する調査研究ヒアリング事項の御回答、こちらに示されておりましたコンソーシアム型のブロックチェーンを活用することが考えられるのではないかと感じております。民間事業者による保管を検討する場合は、どのような事業者であれば保管の適格性があると認められるのか、また、コンソーシアム型を採用した場合に、ノードの参加者をどのように決めていくのかといった課題があるように思われます。   もう1点、保管の義務付けの点で、既に何点か御指摘を頂いている箇所でございますけれども、現行の自筆証書遺言の保管について、これが任意であることから、慎重に検討する必要があるとも思われますが、内部的な議論といたしましては、手書きなどの負担が軽減されるということなどを鑑みても、保管を義務付ける方向性について大きな異論はございませんでした。   (注)の保管を義務付けるが保管を欠いても遺言の効力には直ちに影響しないという場合、ここで少し確認をさせていただきたい点がございまして、どの段階で当該遺言が有効に要件を満たしたと考えることができるのかといった問題が出てくるのではないかと考えております。例えば電子署名方式を採用した場合で、遺言者が令和6年6月25日に電子署名を付与して、令和6年7月1日にこの遺言が保管されたというケース、こういった場合に、これは令和6年7月1日に遺言としての要件を満たしたと考えるのか、それとも、遺言の効力には直ちに影響しないという考え方からは、少なくとも令和6年6月25日には遺言としての要件自体は満たしていると考えなければ、遺言の効力の発生の基礎を欠くのではないかということも考えられます。矛盾する内容が記載された新たな方式の遺言があって、一つは保管されておらず、もう一つは保管されているというようなケースにつきましては、遺言の要件を満たした日の考え方によって結論が大きく異なることもあるのではないかという点から、慎重に検討する必要があるのではないかと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。3点御発言があったかと思います。一つは、一般的な御意見で、これは積極的に考えているということで、検索や通知と結び付けることによってよりよい制度になるのではないかということだったと思います。それから、保管先については公的機関と民間があるけれども、民間のときに生ずる問題にどう対応するかということについての御意見、最後が、義務付けについて特に異論はなかったけれども、効力に直ちには影響しないと考えるとするのならば、どこで有効な遺言が成立するのかということについて考えておく必要があるということだったかと思います。   ほかはいかがでしょうか。 ○齊木委員 結論だけ、意見の結論を申しあげると、保管制度を設けて保管を義務付けた上で、これを効力発生要件とすべきであると考えております。保管機関としては、やはり法務局が相当であると、ある程度の基盤がありますから、と考えております。保管の対象は、保管可能な電磁的記録の種類ですが、PDFデータとすべきであると考えております。PDFデータは、ワードでも左側の方をクリックすればPDFに変換できるようになっておりますので、簡単にできると思います。それから、保管機関による審査対象は本人確認と外形的な事項の確認にとどめるべきで、それ以上に真意性や遺言能力を審査対象とすることは困難であろうと考えております。   それから、横断的な通知検索の仕組みを作ることは国民の皆さんにとって有益ですが、そのためには法律を作る必要があると考えています。というのは、行政機関による個人情報のマッチングについては、実は批判する方が結構一杯いるのですね。憲法違反であるとか、個人情報のコントロール権の観点から問題であるというような、訴訟でかつてそういう主張がされた例もあるので、ここは疑義が生じないように、きちんとマッチングできるように立法した方がいいと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。齊木委員は積極論ということで、義務付けをした上で効力発生の要件とするということで、保管先は法務局、保管対象はPDFということだったかと思います。あとは、法務局では本人確認とプラスアルファ、外形的な事項を審査するということと、通知検索はよいとは思うけれども、法律が必要だろうという御意見でした。ありがとうございます。   そのほか、いかがでしょうか。 ○宮本幹事 意見というより質問が入っているのですけれども、ここで論じている保管というときに、デジタル遺言の方式をどのようにするかで保管の仕方が変わってくるかもしれないと思っていて、完全デジタルの方式を採るときには全てオンラインで手続をして、保管もオンラインでしてもらうし、本人確認もオンラインでしてもらうことが考えられると思います。他方で先ほどのワープロ方式、ワープロで作成してプリントアウトするという方式を念頭に置くときには、恐らくプリントアウトして署名ぐらいはするでしょうから、現行の保管制度の延長として、本人が持って行って保管してもらうということが想定されるのだと思います。また、その中間的な方法もあるかもしれず、例えばデータを作成して法務局に送信し、別途本人が法務局に出向いて本人確認をしてもらったときに成立するのだという方法もあるかもしれません。保管というときに、資料を作っていただいた際にどのようなことを想定されていたのか、何かあれば教えていただけますと有り難く思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。御質問ということになるかと思いますけれども、何を保管するかということによってやり方が違うのではないかという御質問だったかと思いますが、よろしくお願いします。 ○齊藤幹事 齊藤でございます。宮本幹事がおっしゃられたようなパターンは、今3パターンぐらいおっしゃられましたが、いずれも十分あり得る選択肢かなと感じております。今回の本文では、保管として具体的にどんな在り方になるのかということを、更にもっと細かく現実的なものにしていかなければいけない反面、まだ新たな方式の前半、選択肢が複数ある状況ですので、実際のところ今回の保管の本文ではそこまで細かいところまで書き切れていないようなところです。   ただ、保管についての方向性を今回伺ったことを前提に、二読では、今おっしゃられたような、例えば電磁的記録で全部完結するような場合にはどんな保管の在り方が考えられるとか、プリントアウト方式の場合にはどんな保管の在り方が考えられるとか、そして本人の出頭が必要なのかどうか、本人出頭が負担ならばウェブ会議を介在させるのかどうかとか、そこを具体化させるのは今後必要になるかと思っております。 ○宮本幹事 分かりました。ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。   そのほか、御発言はいかがでしょうか。 ○谷口委員 今の宮本先生のお話、是非しっかりと議論をさせていただきたいと、今日は別にしてということで、理解いたしました。保管や通知について賛成かという意味では、是非やっていただきたいという意見です。   財産処分権をしっかりと実現するという意味では、遺言は執行されなければいけないということを何度も申し上げておりますけれども、例えばいろいろなアンケートでも、自筆証書遺言を書いている人の方が公正証書遺言よりも実は多いかもしれないけれども、検認されるものや保管されている件数が圧倒的に少ないことから推測すると、恐らくそれは執行されていない自筆証書遺言が多いのだろうと思います。これは、保管制度をすることによって担保できるのではないかと考えており、デジタル遺言についてこの保管を必須にするという方が、より執行が完了するということに近付くものになるのではないかと考えております。   保管制度を是非という意見と、それから、通知についてですけれども、この15ページ1行目の「遺言者が死亡した場合に一定の者に遺言が保管されている事実を通知する仕組み」というところで、「一定の者」の中に遺言執行者には必ず通知が行くように、逆に言えば、相続人に行くのに遺言執行者に行かないというのは勘弁していただきたいということを御意見として申し上げたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。保管制度を是非実現してほしいということでしたけれども、義務付けとおっしゃったのですね。 ○谷口委員 はい、そういう趣旨です。 ○大村部会長 それから、通知について、その通知の行き先として遺言執行者を入れてほしいという御要望だったかと思います。 ○戸田委員 多分実現する時期によってやり方が変わってくるのかなという気がしまして、例えば、来年度の通常国会で民法を改正して即実施だ、みたいなことをするのであれば、プリントアウトしてそこに署名して、今と同じ仕組みを使って保管をするというやり方になろうかと思います。それでも十分利便性は向上するのではないかと思うのですけれども、将来的にはオンラインでもってどこからでも登録できて、しかも容易に修正ができて、あるいは、柿本様からは少し御批判がございましたけれども、希望する方については登記情報と連結したような形で正確な記載を自動的にできるようなところまで持って行ければ、非常に利便性が高まるし、若くして書こうというような動機付けにもなろうかと思います。なので、今回の結論としてどこまで持って行くかというのは、どの時点を想定するかによって大分変わってくるのかなという、そんな印象を持ちました。 ○大村部会長 ありがとうございます。複数の選択肢があり得るという御発言が出ているわけですけれども、どれを選ぶかというのは時期の問題というのも関連するのではないかという御指摘だったかと思います。   ほかにはいかがでしょうか。 ○冨田委員 冨田でございます。ありがとうございます。先ほど宮本幹事がおっしゃったことを私も全く同感に思っておりまして、恐らく採るべき手法によって保管の必要性というのは変わってくるのではないかと思います。ただ、そのときにやはり前提に置いておかなければならないのが、現行の方式に対して手続的負担が増えるやり方を第一義に選択するというのはないのだろうと思っておりますので、その意味からすると、保管の義務付けということは、ここは慎重に考えるべきではないかと思ってございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。複数の選択肢のどれを採るかということとの関連で、現行のものよりも負担が増えるというのには疑問を感じるという観点から、義務付けについては慎重な検討が必要だという御意見を頂戴いたしました。 ○水口委員 前回申し上げたところと重複して恐縮なのですけれども、先ほど谷口委員から執行者側ということで御発言があったと思いますが、私ども執行を受ける側の金融機関といたしましては、やはりいつどのように作成されたか分からないデジタル遺言を、どのように提出を受けて、しかもその内容を確認するのかというような実務を考え合わせますと、できれば公的な機関で保管を義務付けるというようなことが、やはり実務的には必須なのかなとは思っております。   あと、加えてですけれども、検索について今回、言及があったかと思いますが、そもそも遺言の有無というのは、執行を受ける側の金融機関としては独自に検索のしようがなく、厳密には確認が不可能という前提で実務が成り立っておりまして、具体的には相続人に対して、他に遺言がないことを確認することで民法478条の保護が期待できるという実務になっております。引き続き紙のアナログな遺言制度というのも並存するということですので、今の実務の前提はあえて崩すことはないと思っていまして、そういう意味で、この検索というのは、相続人だとか承継人とかといった方が検索できるというのは、それはもちろん然るべきだとは思うのですけれども、金融機関側も何か検索ができるというようなことは必ずしも必要ではないと、むしろ金融機関側で遺言の執行を受け預金を払戻すに際して、デジタル遺言についてのみ検索が事実上義務付けられてしまうような、そんな実務は少し避けたいという思いはございます。   ですので、例えばマイナンバーと紐付けることによって、少なくともデジタル遺言に関しては、先ほどの議論があったような、加除や撤回ができることはもちろんいいと思うのですけれども、複数は作成できないような仕組みとするということでいいのではないかと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。基本的には公的機関への保管を義務付けるというのが望ましいのではないか、特に執行の観点からということでおっしゃっていただいたかと思います。それとの関係で検索について、検索システムはいいけれども、金融機関に検索の義務があるというような形ではない形にするべきだという御意見を頂戴いたしました。 ○相原委員 保管制度に関しては、他の弁護士に意見を聞きましたところ、保管制度を創設するということに関しては前向きな意見がかなり聞かれました。そして、義務付けについてもその方向性だと思うのですが、また最終的な皆の合意があるわけではありませんので、意見紹介です。それから、やり方なのですが、物理的にアナログに遺言者が保管場所に出頭しなければいけないかどうかというところに関しては、デジタルでここまで来ているのだから、ウェブで対応できるウェブでの申請としなければ、余り簡便性とか利便性とかということに関しては後退するのではないかと、ウェブを使って法務局が中心となった公的機関で対応するという方向というのが現時点での考え方としては妥当ではないかという意見がありました。   ただ一方で、このデジタルの問題の報告書とか拝見したりしている中で、外国の法制度等を拝見したときに、あれだけITが進んでいるにもかかわらず、証人が必要とされている法制度が少なくないとの情報をいただきました。また、証人もウェブでの証人ということももちろんあるでしょうけれども、第三者に証人として関わってもらうということが多くの国で採用されていることを考えると、そこの考え方の基本には何があるのかというところは押さえなければいけないのではないかという意見もございました。   保管で法務局でウェブで出来てしまうということに関しては、最初に申し上げたとおり、当事者が本当に簡便になし得て、また、それから本人が確認されることに公的な係員と関わるとか、そういうことに関しては必要であるという意見がありました。もちろん、それだけで本当にいいのかどうかというのは慎重に考えながら、ただ、方向性としてはそうなるのではないかという意見がありましたので、御紹介させていただきます。   倉持先生、足りないところがあったらお願いします。 ○倉持幹事 今のお話の補足ですと、保管を義務付けるかどうかについて弁護士からもいろいろな意見がございまして、真意性確保という観点では義務付けた方がいいのは間違いないのだけれども、制度設計しても利用されないと結局意味がないのではないかということで、その保管制度の中身、どれだけ利便性が確保された保管制度なのかというところに尽きると思いますので、今回はまだ方向性が定まっていないということで保管制度の具体的内容を示されておりませんが、できるだけ早く制度の中身の議論をして頂ければと思っております。   そのほか、意見が2点ほどありますが、まず、保管を義務付けない場合に、裁判所の承認の裁判を要するという考え方についてです。これはおそらく今までの遺言の検認とは違って、特別方式のところで出てくる遺言の確認に近い制度を想定されているのではないかと思います。つまり、裁判所が事後的に本人の真意に基づく遺言かどうかを改めて審理するという制度かと思いますが、特別方式の説明にあるとおり、この遺言の確認の審理というのは残念ながら形骸化しているとあります。なぜなら、やはり事後的に検証することがなかなか難しいからということだと思いますので、こういう裁判の制度を設けるというのは理論上あり得るとしても、実際上機能するのかどうかについてはかなり疑問です。これは本筋ではありませんが、今、家裁の負担増ということも言われている中で、なかなか現実的にも難しいのかなと思います。   最後に、新たな方式についての意見ではないのですが、現行の自筆証書遺言書保管制度における通知制度についてですけれども、現行法の通知制度というのは遺言書保管法に規定がなく、法務省令にも規定がなく、準則というのを見て初めて出てくる制度ということですが、この通知制度は、検認を省略するもの、つまり検認により相続人に遺言の存在を知らしめるということに代わって通知をする、要するに法律で設けられている検認というものを義務付けないという効果があるので、やはりこの通知の制度というのは法律上規定がないとおかしいのではないかと思うので、これを機会に元の遺言書保管法についても、通知制度を法律上の制度として設けるという意味での改正をしていただきたいと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。相原委員と倉持幹事から続けて御発言を頂きましたけれども、義務付けということをどう考えるかということと、デジタル化をどこまで貫徹するのかと、二つのところで考え方が分かれ得るという御指摘があったのだろうと思います。相原委員からは、外国では証人を要求するという立法例がほとんどなので、どうしてそういうことが求められているかということを検討する必要があるだろうという御指摘、それから倉持幹事からは、承認はうまく機能するのだろうかという御指摘と、最後に通知の問題、これは齊木委員もおっしゃった点ですけれども、法律上の処理が必要ではないかという御指摘があったと理解をいたしました。   ほかにはいかがでしょうか。 ○石綿幹事 石綿です。細かく3点申し述べたいと思います。   保管ですが、私はどちらかというと義務付けの方向性で検討すべきではないかと考えております。繰り返し述べているように、偽造等の可能性が従前の自筆証書遺言より高まるということで、真意性の担保、真正性の担保というところから、義務付けを検討した方がよいのではないかと思います。手続の負担が高まるというふうな御指摘もありましたが、他方で自書しなくてよいという意味で手続は軽減している面もあるので、トータルで見てどうかという考え方で検討していくということも必要かなと思います。これが1点目です。   2点目が、先ほど小池委員が示唆されていたように思いますが、保管の際に何を確認するかということで、例えば秘密証書遺言の970条1項3号であるような、本人の遺言であるということを申し述べるという程度のことは、可能であれば何らかの形で対応できると好ましいのではないかと思っております。それが2点目です。   3点目が14ページの(2)ですかね、仮に保管を義務付けた場合に、それを欠いた場合どうするのかということで、裁判所の承認というのは、先ほど倉持幹事から形骸化するのではないかと言われました。それはそうかもしれないと思いつつ、理論的に考えたときに、保管がなかったときに裁判所がその効力発生に関与し得るという担保があるというのは、ある程度のところまで検討していくというのは有意義かなと思っております。   また、そこで前段の方に書かれている、他の方式要件等によれば本人の意思に基づいて遺言が作成されると認められるときに、裁判所を関与させないで遺言の効力を認めるという余地まで認めるのかというところが大きな分かれ目になりそうに思います。デジタルの方式を満たしているというだけではなくて、それに何か加わって、例えば何らかの、証人2名の関与があるとか、そのようなものを付与したような形であれば効力を認めるみたいな、オプションのようなものを認め得るのかというのはあるのかと思います。保管を義務付けた場合に、保管がされていない遺言が効力を生じるために、裁判所の関与を必須とするのか、あるいはそれ以外の要件を何か設けるのかというところが今後の検討課題かなと思っています。 ○大村部会長 ありがとうございます。石綿幹事は義務付けという方向で考えるべきだ、負担についてはトータルで判断すべきだということと、しかし保管していない場合の救済ということはやはり考えて、そのときに裁判所の関与を必須とするのかしないのかということも考える必要があるということを一つ、大きくおっしゃいました。あとは、確認対象をどの範囲にするかという御指摘を頂いたかと思います。   ほかに御発言はございますでしょうか。 ○齊藤幹事 齊藤でございます。倉持幹事から先ほど御指摘があった現行の保管制度における通知の在り方について若干補足をいたしますと、12ページの28行目の黒ポツに現行の通知の在り方について3行ほど御紹介をしております。細かい話ではございますけれども、このうちの前半、相続人等が遺言書の閲覧等をした場合には、他の相続人等に対して、それがトリガーとなって通知が行く仕組み、こちらについては法律に基づいて行っているということになります。それに対して、「また」以降の、保管官が死亡事実を把握した上での通知、こちらは現状、法律事項ではなくて準則に基づいて行われているということなので、一応二つあり得るということを御紹介いたします。   それからもう1点が、齊木委員の御発言との関係で、通知の仕組みに関しては立法が必要ではないかとおっしゃられたのは、恐らくこれは公証役場と法務局との情報の一元化というか、相互にリンクさせるような形での検索等は、法定事項にする必要がある上に反対派も強いので非常にハードルが高いのではないかと、こういう御示唆だと承りました。 ○大村部会長 ありがとうございます。法律に定める必要があるのではないかということについて、中身を分節化して説明をしていただいたと理解をいたしました。   最高裁、手が挙がっているように思いますが、どなたが御発言になりますでしょうか。 ○宇田川幹事 最高裁家庭局の宇田川でございます。裁判所による承認の裁判の話について幾つか御指摘を頂いたので、少しこちらで今、指摘したいことを申し上げたいと思います。   現行法での家裁による確認ということで、死亡危急時遺言とか船舶遭難者遺言の関係で、その確認の手続が行われていますけれども、それらの遺言については基本的に証人の立会いなどが必要ということで、実際の審理に当たっても、その証人の方から審問で陳述を聴取するとか、調査官によって調査を行うというようなことを行って、要件の確認などが適切に運用されていると認識しておりますけれども、今回のデジタル遺言というときに、今の御議論の中では、証人が立ち会うとか、その証人が併せて確認するというところまでは特に議論が及んでいないようなところでございまして、そういったところで承認の裁判というのが具体的にどういうことを確認してどういう手続を行うのかと、どういうことを主に判断するのかというようなところがまだ全然分からないところでございまして、その中で、単に真意かどうかというようなときに、本人が作成しましたと述べればそれで足りるというようなことで終わると、形骸化というような御指摘もありましたけれども、そういったことでよしとするような制度であれば、余り意味もないところでございまして、そこに裁判所を関与させる意味がどこにあるのかということは御議論をお願いできればと、また、どのような審理判断を求めるのかということについても併せて、そういったことを検討する際には御議論いただければと考えるところでございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。話題になっている裁判所の承認ということについて、一体何を確認することになるのかと、裁判所が関与するということの意義を何に見いだすのかということについて、更に御検討願いたいという御要望を頂きました。   そのほかはいかがでしょうか。 ○内海幹事 内海です。私も、保管制度をしっかり作って義務付けるというのが、現時点ではアクチュアリティーの一番高いやり方ではないかということは、非常に共感しているところなのですけれども、本当にそれがいいことなのかどうかというのは若干不安というか心残りみたいなものがあって、それはやはり、私法上の単独行為みたいなものについて、国が受け取るかどうかみたいなところで有効か無効か決まるというか、そういうことというのが本当にいいことなのかどうかというのは、少しどうなのかなという思いがないではないということがあります。ただ、それは従前の自筆証書遺言のようなやり方があるので、それに加えてこういうこともできるようになりますという、新しく付け加わった新たな選択肢という面で、その利用可能性として、しかしこれは保管とセットですよという限度ではあり得るのかなという気もしておりますが、中長期的に見てこういう制度設計がすごく望ましいのかと言われると、少し自信はないなという思いがないではありません。   もう一つ、保管を完全には義務付けないといいますか、保管しないものも有効にするというときに、裁判所が判断するというのは、理論的にはそうするしかないかなとも思うのですが、そこにアクチュアリティーを求めるのはなかなか大変かなと思います。  一つの分水嶺としては、保管はしたくない、預けたくない人に対して、あとは保管するだけというものをプリントアウトして、それに署名などを加えたものが自筆証書遺言、あるいは新しいデジタル遺言として有効と扱っていいと考えるかどうかということがあるのかなという感じがします。もしそういうものが認められるなら、保管に行くまでに自分に何かあったら不安だったような人は、先にプリントアウトして、こうしておけば、その時点で取りあえず有効な遺言ができて、しかしこれは電磁的記録なりデジタル遺言を保管するという方が安心ですよと、そういう選択肢を用意できることになりそうです。ただこれで認めていいかというのは自筆証書遺言に課されてきた要件をどの程度まで緩め得るかという議論と関係しますし、逆に、そういう選択肢は一度紙にしなければいけないというものなので、それで、デジタル・ペーパレスで遺言したいが、保管はしたくないという人のニーズに十分応えた、あるいは保管、預けに行くというようなことのハードルが高いというような人のニーズに応えたといえるかということも、もう少し考える必要があるかと思います。なので、保管が嫌なら紙で残せというのも乱暴な面があるのかもしれないのですが、とはいえ、亡くなった方のパソコンを引っかき回して出てきたファイルについて遺言としての有効性を判断してもらうということは、一律に無効とできないならそうするしかないのかもしれませんが、そこでの判断に多くの期待をするというのは難しいのではないか、とは思ってしまいます。 ○大村部会長 ありがとうございます。内海幹事は、保管を義務付けるというのは現実性が高いだろうということを前提としつつ、しかし保管を遺言の効力と結び付けて本当にいいのだろうかという根本的な留保と、それから、承認というのが実際上機能しにくいのだとすると、他の選択肢を考える必要があるのではないかということをおっしゃっていたかと思います。そこには、国家機関に遺言を保管するということを無条件でよいと誰もが考えるだろうかという疑念があって、それを望まない人たちがいたときにどうするかということも考えておくことが必要なのではないかという御意見が含まれているように感じました。 ○内海幹事 一点追加しますと、保管のときに一定の面談みたいなものが必要で、それをオンラインでするとかということになると、アポイントを取るとか、そういうことも必要になってきて、予約がなかなか入らないというようなことがあると、待てる人と待てない人というのも出てくるかもしれません。そういったところを、これはもう少し具体的な制度設計との絡みだと思いますけれども、遺言は一応完成したけど、保管にたどり着く前に何かあるという可能性については考えておく必要があるかもしれません。 ○大村部会長 ありがとうございます。負担の問題ということと関わる御指摘なのかと思って伺いました。   ほかにいかがでしょうか。 ○齊木委員 この方式を考える場合に、軽い方式で認めれば遺言がそのまま有効になるという誤解をして議論してはならないと思っております。具体的に現行法で真意性の確認が一番軽いといわれている秘密証書遺言の裁判例を調べると、判決は12件あります。事案としては9例です。9例中6例が無効です。有効になった3例はどうだったのかというと、東京地裁の平成20年8月26日判決は、事情を聞き取って筆者となったのは弁護士です。かつ、医者の意見書も付いています。大阪高裁の19年3月16日判決は、筆者が司法書士です。かつ医者の意見書も付いています。東京地裁の平成18年3月24日でも、筆者は弁護士です。これらの人が裁判で有効性を証言してくれているのです。方式を軽くしたから有効になるということではなくて、そういう証人となる人がいなければ遺言は勝ち抜けないという実態を、もう少し考えて方式を考えるべきだと私は思っております。   海外において、ほとんど全ての国でデジタル遺言は証人を要件としております。証人が具体的にどんなことをしているのかということについて御紹介した方がいいと思うのですけれども、アメリカの電子遺言書法と、私が入手できたのはワシントン州の法律ですけれども、証人はアフデイビットという宣誓供述書で証明するのですが、その対象事項は、遺言者が自発的に電子遺言書に署名しました、又は別の個人に作って署名するように指示しました。2番目は、遺言者は18歳以上です。3番目は、遺言者は健全な精神を持っていました、サウンドマインドでしたと、遺言能力に当たるものです。4番目が、束縛、コンストレイントや不当な影響、アンデューインフルエンスはありませんでしたと、これらが法律で様式として決まっているのです。それらが記載された宣誓供述書に2名の証人が署名するわけです。そうなると、後から争われると、先ほど最高裁からの御指摘がありましたように、どうやって審理するのだという話になりましたけれども、裁判所は証人2名を呼ぶのです。それで有効性が維持されるという仕組みになっているのです。だから、争われた場合にどうやって遺言の有効性を維持できるのだということを視野に入れて方式を議論しなければ、簡単に作れればいいのだというだけだと、その方式の遺言は無効なものの山になるだけだと私は思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。証人についても情報を御提供いただきましたけれども、基本的なお考えは、今ここで出ている保管に代わる代替的な方式を考えるときに、代替的な方式であるからといって手続が軽減されるというわけではないのだということをしっかり押さえる必要があるということですね。 ○齊木委員 そうですね。アメリカの場合には、確か報告書にもありましたけれども、セルフプルービングなエレクトロニックウイルの場合には、2名の今言ったようなアフデイビットが必要であるというふうになっていると、大概思います。 ○大村部会長 分かりました。ありがとうございます。 ○内海幹事 念のため申し上げますと、方式を厳しくするということには特に全く反対する意図はありませんで、どちらかというと、証人というのは市民社会の側から出てくるものだと思うのですけれども、それを保管、あるいは法務局が形式面を審査するというようなことでもって代替するというプロジェクトが、やむを得ないかもしれないけれども、すごくいいことなのかというのは少し不安があるかもしれないということが言いたかったに止まります。 ○大村部会長 補足の御意見を頂きました。ありがとうございます。   ほかにはいかがでしょうか。 ○中原幹事 先ほど来、保管の義務付けということで議論がされていまして、私もそれが最大の問題だと思います。私は保管が義務付けられて、それが方式要件として位置付けられるのであれば、確かに簡明であるので、そういう方向に向かうのが理想なのだろうと思いつつ、自筆証書遺言では保管が要求されていないという中で、なぜデジタル技術を用いた遺言についてはそれが要求されるのかということについて、なお腑に落ちないところがあるというところです。なので、最終的に反対だという立場を貫きたいというよりは、何とかして説得的な根拠が見出されないかなと、そういう気持ちなのです。   二つのレベルの問題があると思っていて、一つは保管を要求する実質的根拠で、自筆証書遺言との対比でデジタルの遺言はリスクが高い、それゆえに保管によってそのリスクの部分を補うということなのだろうと思います。そのリスクが何であって、それらはどのような重要性を有していて、保管によってどう補われるのかということが現状なお未整理であると感じられますので、そこをしっかりさせる必要があるのだと思います。先ほど、偽造のリスクが高まると御指摘があったと思うのですけれども、それはデジタルの具体的な方式を考えて、その上でまだ偽造のリスクが残っているとなった上で保管だというのだったら、説得力があるのだろうと思うところです。   あともう一つは、保管を義務付けるということが理論的にどう位置付けられるのか、保管をほかの事柄と一緒の方式要件として位置付けるということなのか、それともそれとは別の何らかの特殊な考慮に基づく手続要件として位置付けるということなのか、後者であるとすればそれがどういう内容のものなのかということです。民法の教科書を見ていると、遺言は要式行為であると、その方式というのは真意性・真正性の担保のために要求されているのだという説明がされるわけなのですけれども、どうもデジタルの場合の保管に関する議論では、その真意性・真正性の担保には限定されない要素が指摘されているような、あるいは懸念されているような気がします。紛争予防の要請であるとか、あるいは死後の遺言の発見の要請だとか、そういうのがどうして遺言の有効・無効ということにつながるのかということについて、保管を義務付けるという場合には説明が必要になってくるはずでありますので、あり得る考え方を整理していった方がよいのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。義務付けを行うのならば、実質的な根拠あるいは理論的な根拠について更なる検討というのが必要であろうということで、実質的な根拠については、リスクが高くなるからというのだけれども、その中身を整理する必要があるのではないかということ、理論的な根拠について言うと、方式なのか別なものなのか、方式としては随分重いものが保管に担わされているのではないか、そうした御指摘があったのではないかと思って伺いました。   ほかにはいかがでしょうか。   よろしいでしょうか。それでは、この第1の4についても御意見を頂戴いたしましたが、大きな方向として、保管制度を作るということについて反対の御意見はなかったと受け止めております。義務付けについて賛成の御意見もたくさんございましたけれども、しかし義務付けも幅があって、保管しなかったときにどうするのかというところをどう考えるのかという点について複数の御意見があったかと思います。また、義務付けそのものについても更に考えるべきだといった御発言も出ておりました。さらに、ウェブでどのくらいやるのか、アナログの要素を残すのか残さないのかといったことについては複数の考慮要素があるだろうという御指摘がありました。そうしたことをこの先、更に考えなければいけないと思いますけれども、保管というものを一つの大きな選択肢として、この先も考えていくということなのかと思って伺いました。   ということで、今15時48分ですが、第1については御意見を頂戴いたしましたので、16時まで休憩いたしまして、残りの時間で資料の残りの部分につき、行けるところまで行きたいと思います。休憩をいたします。           (休     憩) ○大村部会長 それでは、再開したいと思います。   引き続きまして、部会資料3の第2についての検討に入りたいと思います。事務当局の方から、まず部会資料の御説明をお願いいたします。 ○戸取関係官 それでは、第2について御説明いたします。15ページを御覧ください。15ページ下方の本文第2では、自筆証書遺言の方式要件の在り方について記載しております。このうち1では、押印要件を見直すことについてどのように考えるか、御意見を頂ければと考えております。(注1)では、現行規定と同様押印を求めるものとしつつ、押印を欠いたとしても、本人の意思に基づいて遺言が作成されたものと認められるときなど、一定の場合には遺言の効力には影響しないものとする考え方について記載しております。また、(注2)では、財産目録にする押印や加除変更に際しての押印の在り方については、全文等にする押印と同様の方向性を検討すべきとも考えられる旨記載しております。   2では、自書を要しない範囲を財産目録のほかにも拡大することについて御意見を頂ければと考えております。   補足説明として、16ページから17ページにかけての1(1)及び(2)では、法制審議会民法(相続関係)部会で押印要件の見直しが検討された後、いわゆるコロナ禍において行政手続や民間の商慣行等において押印の見直しが図られ、遺言の方式においても領事方式遺言や公正証書遺言で一部押印が不要とされたことなどを踏まえ、押印要件を廃止する見直しをすることが考えられること、他方で、押印は依然として下書きと完成品とを区別する機能を果たしているとも考えられ、押印要件を維持すべきとも考えられること、文書の作成が完結されていることを担保するための押印に代わる新たな方式要件を設けることなどが考えられる旨記載しております。また、17ページ下方の(3)では、本文の(注1)に記載した、押印が欠けている場合の法的効果として、直ちには無効としない考え方などについて記載しております。   18ページの2では、平成30年民法改正により自筆証書遺言の方式要件が緩和され、財産目録については自書を要しないこととされましたが、自筆証書遺言を作成しようとする際の負担感を考慮し、自書を要しない範囲を更に拡大することが問題となり得る旨記載しております。もっともこの点につきましては、自書の要件が真意性・真正性等を担保しており、更なる方式要件の緩和によって偽造、変造のおそれなどが増大すること、遺言作成者の負担に対してはデジタル技術を活用した新たな遺言の方式を設けることによって対応することが考えられる旨記載しております。   なお、遺言の本文等をワープロソフト等により入力し、それをプリントアウトした書面を原本とする方式につきましては、自書を要しない範囲の拡大と捉えることもできますが、デジタル技術を活用した新たな遺言の方式の一つとして位置付けて御議論いただければと考えております。   第2についての御説明は以上となります。 ○大村部会長 ありがとうございました。   ただいまの事務当局からの説明につきまして、まず御質問があれば伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。   よろしいでしょうか。それでは、第2の自筆証書遺言の方式の要件の在り方の部分につきまして、御意見を頂戴したいと思います。どなたからでも結構ですので、御発言を頂ければと思います。 ○隂山委員 隂山でございます。まず、第2の1、2の検討の順序なのですけれども、今の資料の作り込みといたしましては、押印要件を検討した上で自書を要しない範囲についての検討というような順序に見受けられるところでございますけれども、内部で議論をしましたところ、この自書を要しない範囲がどこまでになるのか、例えば本文全てについて自書を要しないとし、日付や氏名のみの自書を求める場合と、自書を要しない範囲をさほど拡大しないというような場合では、押印の必要性を検討するに当たって結論に差が出るのではないかとも思われます。そこで、自書を要しない範囲について検討した上で、押印要件についても検討していくという順序の方がよいのではないかとも考えております。   加えまして、押印要件の第2の1の(注1)ですけれども、押印を欠いたとしても一定の場合には遺言の効力には影響しないという考えを採った場合に、登記手続の依頼を受けた司法書士であったり、また預金の払戻しを求められた金融機関などでは、場合によって実務上の混乱が生じる可能性があるのではないかとも思われます。   登記を申請する際には、自筆証書遺言を登記原因証明情報として添付しておりますけれども、それには検認調書を添付した上で登記申請を行うこととなっております。仮に、今後、押印がないケースで登記申請の依頼があった場合に、この遺言の有効性を形式的に見てよいのか、一定程度実質的に確認をしていく必要性があるのかという点での実務上の混乱が生じる可能性があるといった意見があった旨を御紹介させていただきます。 ○大村部会長 ありがとうございます。2点御意見を頂きました。1点目は検討の順序に関する御意見でしたが、押印要件と自書を要しない範囲が二つ並んで出ておりますけれども、相互に関連するということは確かだと思いますので、関連付けて御議論を頂ければと思います。それから、押印を欠いた場合の扱いということで、有効性はどうなるのかということについて、実務的な混乱が生ずる可能性があるのではないかという御指摘を頂きました。ありがとうございます。   そのほか、いかがでしょうか。 ○相原委員 相原でございます。プリントアウトしたものに対する署名をするという場合について、それはデジタル様式を用いた方式の検討の中で検討するという御説明を頂きましたので、私もそういう理解で、そちらの方での十分なことが可能かどうかというのをきちんと議論していただきたいと思っております。他の委員の方から、プリントアウトしたものに対する自書というのが非常に簡便で、いいのではないかという御意見がありましたが、実務家の観点からは、何らの担保なく、プリントアウトしたものに名前を書くだけというのは、非常に危ないことです。自筆証書遺言の緩和ということに関して、一見魅力的に見えるかもしれませんけれども、高齢者の問題を扱っている者からすると、非常にリスクが高いということを御指摘させていただかざるを得ない、これは少ししつこいようですが、念のため申し上げました。したがいまして、先ほどの御説明のとおり進めていただきたいということでございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。プリントアウトしたものに署名をしたものをどう扱うかということで、扱う場所は複数あり得るわけですけれども、デジタルの方から議論をするというのがよろしいのではないかということで、資料の議論の仕方に賛成するという御意見だったかと思います。   ほかにはいかがでございましょうか。   御発言はございませんでしょうか。これだけを取り出して議論するのは、あるいは難しいということかもしれませんけれども、現段階での御感触を多少示していただけるとこの先の検討に資するのではないかと思いますので、暫定的な御意見で結構かと思いますので、何かありましたらお願いいたします。 ○齊木委員 余りこれといったこだわりはないのですけれども、押印要件について見れば、自筆証書遺言の場合、一部訂正するときにどうするのかなと思うと、2本線を引いて、今までだったら訂正判を押すというやり方ですけれども、押印廃止になったら、判を押して訂正するというのはなしになってしまうのかなと思って、それって遺言者にとって便利なのかなと。遺言者のためになる改革なら、それは考えるにしても、そういうことを考えた場合には、やはり押印要件、今までどおり残しておいた方が意外と便利なのではないだろうかという程度のことは、思います。   それと、自書を要しない範囲なのですけれども、私はやはり権利義務に関わる部分は自書が必要で、考えられるとすると、遺言執行者の権利義務の条項というのがあるのです。これは実は、こういう権限がありますと書いていなくても、法令できちんとあるので、何とかなるのだけれども、書いてある例も結構多くて、そういうところはあるいは自書を要しない範囲として、定型的な文言、例えば、将来的に民間業者が遺言書のフォームを提供することがあり得ると思うのですけれども、そういうところで遺言執行者のところは定型フォームで提供して、あとの本体、誰に何をやるというところは手書きしてもらうというのはありなのかなと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。2点御意見を頂きました。一つ目は、訂正のことを考えると、押印はあった方が便利なのではないか、先ほども訂正の話が出て、全部プリントアウトし直すのかといった話がありましたけれども、何か訂正できる方がよいだろう、そのためには押印があった方がいいのではないかという御意見が一つと、それからもう一つ、自書を要しない範囲に関しては、権利義務の分配に関わるところは、やはり自書を要するのではないか、それ以外のところで、例えば遺言執行者についてなどは定型化することが考えられるのではないか、仕分けて考える必要があるのではないかという御指摘として伺いました。   ほかにはいかがでございましょうか。 ○水口委員 些細なことかもしれませんが、15ページ目の1の(注1)の、例えば、他の方式要件等によれば本人の意思に基づいて遺言が作成されたものと認められるときなど一定の場合には、という部分なのですけれども、補足説明の17ページの30行目からこの(注1)に関する補足説明があり、18ページの6行目の(注)のところで、裁判所の認定又は家事審判所の審判とありますが、要は一定の場合というのが、この18ページ目の注書のような裁判所による裁判だとか、そういったものであればいいのですけれども、一定の場合というのが何か解釈に委ねられるような事態というのは、執行を受ける側の立場としては避けていただければなと、ある程度やはり客観的に定まるような要件としていただければなとは思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。水口委員の御意見、御指摘は、先ほどの隂山委員と同方向ですね、押印を欠いた場合の取扱いについて判断の余地が残るようである、それは実務に支障を来すのではないかということかと思って伺いました。ありがとうございます。   そのほかはいかがでしょうか。 ○小池委員 別にこういう意見もあったというぐらいでいいのですけれども、判子は全面廃止でいいというのが私の考えで、先ほど齊木先生からは、訂正のときどうすればいいのかみたいな御意見がありましたけれども、変更箇所を示して署名して、大体署名プラス押印という形にはなっているはずなので、別に判子はなくたって大丈夫ではないかと私は思いますという意見です。 ○大村部会長 ありがとうございます。小池委員からは、押印廃止でやっていけるのではないかという御意見をいただきました。 ○倉持幹事 押印要件につきましては、やはり押印があった方がいいという意見は弁護士の中でも一部あるにはあるとは思うのですけれども、ただ、(注)で原則として押印を求めるけれども押印を欠いたとしてもとありますが、逆に押印要件をなくした場合でも、押印しても無効にはなりませんよということでも(注)を示していただきたいと思います。要するに、押印については、してはいけないということはなくて、一般の契約でもそうですけれども、通常は押印もあるわけで、ただ、それは方式ではなくて証拠の一つという位置付けになっていますので、押印については証拠の一つとして位置付けるという整理でいいのかなと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。押印を欠いた場合にはどうなるのかということについて御意見が出ていますけれども、押印を欠いても有効である、しかし押印があれば、それは証拠の一つになるという整理でよいのではないかという御意見だったかと思います。   ほかにはいかがでしょうか。 ○隂山委員 隂山でございます。先ほど御説明の中で、プリントアウト方式についてはデジタル技術を活用した新たな遺言の方式の在り方の一つとして、これを前提に御議論をというお話がございましたけれども、内部の議論の中で、自筆証書遺言における自書を要しない範囲、これがどのようになってくるのか、また、プリントアウト方式がどういう形式になってくるのかという点で、どうしても重なり合う部分が出てくるのではないか、自筆証書遺言の緩和というような位置付けも十分に考えられるのではないかというような意見があったということを御報告をさせていただきます。 ○大村部会長 ありがとうございます。先ほどから出ておりますプリントアウトプラス署名の扱いということで、いろいろ御意見はあり得るところであり、ここでももちろん議論は可能なのですけれども、主たる議論の場としては別の場でということで、しかし、そのときに自書を不要とする範囲の問題と関連付けて御議論いただくということはもちろん可能なのだろうと思いますので、御意見として伺っておきたいと思います。   ほかにはいかがでしょうか。 ○中原幹事 今までの先生方の御意見の繰り返しですけれども、押印要件に関しては、私も廃止してよいのではないかと思っています。押印要件独自の意義があるとすれば、それは完成品と下書きを区別する、完成担保ということですけれども、押印要件を廃止したら廃止したで、署名要件がそれに代わるものとして認識されていくのではないかというような気がしておりますので、なくしてもよいのではないかと考えています。   それから、自書を要しない範囲に関しまして、これも事務局資料の御提案に賛成で、全文自書のところが問題なのかなと思いますが、デジタル技術を活用した方式としてプリントアウト方式というのを議論するという、その方向性でよいのではないか、それによって、要は自筆証書遺言だという枠組みから来る制約がなくなって、プリントアウト方式でどういうふうに真意性・真正性を担保していくか、例えば証人を付けるという海外の法制度はどうなのかとかいうような、より自由な議論ができるようになると思いますので、その方向性でよいのではないかと考えています。 ○大村部会長 ありがとうございます。中原幹事からは、押印廃止に賛成するということで、先ほど小池委員から出ましたけれども、署名がそれに代替することになるのではないかという御意見、それから、自書を要しない範囲については現在の議論の場所で議論をすればいいのではないかという御意見をいただきました。   ほかにはいかがでしょうか。   よろしいでしょうか。今のところ押印はなかなか難しくて、賛否両論あるというところかと思って伺いました。それから、自書を要する範囲についても御意見、複数のものを頂いておりますので、この点については現在の時点では異なる方向の御意見があると受け止めさせていただきまして、また後で更に御議論を頂きたいと思います。   ということで、更に進みたいと思いますが、続きまして部会資料の第3の3の部分に移りたいと思います。まず、この部分につきまして事務当局の方から御説明をお願いいたします。 ○戸取関係官 第3について御説明いたします。18ページの本文第3では、秘密証書遺言の方式要件の在り方について記載しております。現行規定を見直す必要があるかどうか、秘密証書遺言に相当するデジタル技術を活用した新たな方式を検討する必要があるかどうかなどについて御意見を頂ければと考えております。本文の(注1)及び(注2)では、秘密証書遺言における押印要件について、自筆証書遺言における押印要件の在り方等を踏まえて検討する必要があると考えられる旨記載しております。   補足説明として、19ページの1では、現行規定の概要を記載しております。2では、デジタル技術を活用する在り方について若干記載しておりますが、そもそも秘密証書遺言の作成件数が少数にとどまっていることや、遺言の内容を秘密にすることに対する需要はそれほど大きいものではないとも考えられることからすれば、現行規定を見直す必要性は高いとはいえず、デジタル技術を活用した秘密証書遺言に相当する新たな方式の遺言を別途検討する必要性も高いとはいえないとも考えられる旨記載しております。   第3についての御説明は以上となります。 ○大村部会長 ありがとうございました。まず、御質問があれば頂きたいと思いますが、いかがでしょうか。   よろしいでしょうか。それでは、秘密証書遺言の方式要件の在り方について御意見を伺いたいと思います。御自由に御発言を頂ければと思います。 ○倉持幹事 瑣末な点ではあるのですが、20ページ辺りに、秘密証書の押印要件については自筆証書におけるそれの在り方を踏まえて検討すると、要するに横並びにする必要があるのではないかということで、更にその下に領事方式についても書かれていて、これについては証書への押印、それから封印は、現行法では必要とされているとあります。自筆証書、更に秘密証書について押印要件を不要とする方向で議論が行われる場合には、この領事方式の証書の押印要件についても検討対象になると考えていいのか、これは検討対象外ということなのか、質問も兼ねてお聞きしたいと思います。 ○大村部会長 御質問ということで、お願いします。 ○齊藤幹事 齊藤でございます。特段、そこは対象外ですということはございませんので、押印全般に関わる問題かなと思います。 ○大村部会長 ほかにはいかがでしょうか。   特に今の段階で御発言はございませんでしょうか。自筆証書の方を議論して、というところもあるのかもしれませんが。 ○宮本幹事 自筆証書遺言と同じようにと書かれているのですけれども、異なることもあり得るのかと思います。自筆証書遺言の方は自分で書くということですけれども、秘密証書遺言の方は公証人が関与していますし、証人もいますので、公正証書遺言のデジタル化も踏まえると、むしろこちらは本人の押印要件を廃止するということも考えられるのかなと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。自筆証書並びでなくて、こちらを押印廃止の対象とするということも考えられるかもしれないという御指摘を頂きました。   ほかにはいかがでしょうか。   特に御発言がないようですけれども、事務当局から、何か聞いておきたいことがあれば。 ○齊藤幹事 齊藤でございます。せっかくですので1点だけ、もしこの段階で御意見があればということを伺いたいと思います。先ほど新たな方式の検討の中での御発言の中で、方式を考える上では、争われた場合にどうやって有効性を判断することができるかを考えなければいけないのではないかという視点の御発言があったように伺いました。それは、自筆証書あるいは秘密証書において押印をどうするかというときにも少し関係してくるかなと何となく個人的に思ったので、見当違いかもしれないので、なければないでよろしいのですが、御質問させてください。   というのは、自筆証書におきましては押印、印影が紙の上からなくなるということだと、手書きの紙が証拠として残ると。あるいは秘密証書でいうと、自筆である必要もない。代筆する場合には、その方の名前は特定されていなければならないけれども、御本人の自筆である必要性はないと。そうすると、やはり残されたものを単に見た場合に、少しヒントというか情報が減りすぎてしまって、認定しづらくなるのかなというような危惧もないではないかなという気はします。   というのは、例えば裁判実務で私が承知している中では、自筆かどうか、御本人の手書きかどうかという点と、それから別に朱色の印影がある場合と、両方ある中でどちらを手掛かりに事実認定していくかというと、手書きかどうかを対照資料と比較して頑張って悩むよりも、まずは印影を取っ掛かりにすると認定がしやすかったり、その印影がほかのどの文書に使われているかとか、その情報も増えたりするというところが、後で紛争になった場合の紛争解決の取っ掛かりになるような面もあったのかなという気もしております。ということで、自筆証書あるいは秘密証書において押印は廃止でいいのかどうかというときに、そういう観点から何か気にする必要があるのかないのかということが、もしお考えがあれば、御教示いただければ有り難いです。 ○大村部会長 ありがとうございます。自筆、秘密、両方を含めて、押印廃止をするというときに、今のような御懸念についてはどうかということですね。いかがでしょう、何か御意見、御示唆がありましたら頂きたいと思いますが。 ○齊木委員 大した意見ではございませんけれども、おっしゃるように、まず自筆証書遺言について見ると、印鑑といっても実印であれば、よく印鑑登録証明書と一緒に実印を押して遺言が封に入っていることがあり、そうなった場合には今、齊藤幹事がおっしゃったように、二重の推定を使って認められやすいということはいえると思います。ただ、印鑑といっても三文判の印鑑だと、余り証明力は上がっていかないのかなと思っております。   それから、秘密証書については余り、先ほど申し上げたように、有効になるにはかなりのハードルがあるので、印鑑の有無ぐらいで有効にできるのかどうか少し怪しいところもあるので、よく分からないところかなと思っています。 ○大村部会長 ありがとうございます。齊藤幹事からの御質問に対しては、それは実印であるかどうかということによって違うのだろうというお答えで、秘密証書については全体としてハードルが高いと考えるべきだという御指摘だったかと思います。   ほかに何か御意見があれば頂きたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○相原委員 私の経験からしても、押印といいますか、最後に赤いのが押してあるということで完結するというのを経験していますので、今おっしゃるのは非常によく分かる話です。ただ、今回の検討をするに当たって、時代が変わり、手書きで自分の名前を書くことも減りというようなことがいろいろ御指摘されています。私も含めてですけれども、ITを使ったりということが普通なので、そして、判子を持っている人自体が少なくなると言われてしまうと、これからの流れの中で押印が不要と言われても、そうかもというのが本当に感覚的なものであります。   確かに、自筆証書遺言といっても、メモ的にというか、下書きで書いているのとそうではないのとを押印で区別しないと不安だというのは弁護士は多いですし、現状では、一般的にそうだと思いますが、これから先のことを見据えてデジタルを考えているときに、押印ありきというのはもう遅いでしょうと言われたら、そうかなということです。回答として歯切れが悪く適切ではないかもしれない発言となりますけれども、未来を見据えたときに、だんだん使われなくなっていくものを想定して、それを要件にするということはしない、もう外すのだというのは、決めの問題かという気がします。   ただ、最後に、やはりきちんと遺言の意思が表れているかどうか、どの部分まで自書にすべきかどうかという問題は出てくるでしょうけれども、それの全体を判断し、もし紛争になったときには司法に判断していただくしかなく、そこは件数を重ねるしかないかという印象でございます。   すみません、意見としては、揺れ動いていますが、以上です。 ○大村部会長 ありがとうございます。これまでの経験に基づいて考えるということと、この先どうするのかと考えるというので、少し違うところがあるのではないかという御感触をお示しいただいたと思います。   そのほかはいかがでしょうか。 ○内海幹事 内海です。先ほど二重の推定という言葉がありまして、自筆証書遺言にとって二重の推定がどういう意味を持つのかというのは、よく分からないところもあるのですけれども、ただ一般論として、やはり印鑑の管理が重要だという世界観の中で多くの日本人は生きてきて、そのことが押印という事実から推認できるものを豊かにしているという面があったということは否定しにくいところがあると思います。それがなくなったときにどういうことが起きていくのかというのはよく分からないところがあるというのは共感するところがあります。   サインの方で代替できるかというところも、一般論としては、諸外国の方はサインを重視しているので、人にまねされにくいような形をきちんと、練習するのかどうか分かりませんけれども、持っているというようなことに対して、日本人はサインといっても適当に名前を書いているだけという場合も一般社会では多いのではないかという気がします。ただ、自筆証書遺言においては、やはり今後も全文を自書するということであれば、必ずしも名前のサインだけに余り重きを置くということでもないのかなという感じもいたします。また一方で、今後の社会がどうなっていくかということを考えたときに、今まで印影があるということから推認できたようなことが今後、押印が要求される場面が減っていくとしてもなお推認をし続けられるかといわれると、ここだけ押印要件があるから、普段は判子などほとんど押したこともないという人が、急にコンビニに行って認印を買ってくるというような世界になるとしますと、余り、名前の付いた印影があるということから多くを、例えば押印したからには慎重に考えたんだろう、などと推し量ることも徐々に難しくなっていくのかなという気もいたします。逆に、押印要件を一定の場所で存置するということによって、今後も判子の管理はしっかりとした方がいいですよという社会が維持されていきやすいという面ももしかしたらあるかもしれませんけれども、そのことにプラスの意味がどれぐらいあるのかもよく分かりません。未来の社会がどういう社会になっているかということによって、押印要件の意義も押印があることがもたらすメッセージの質と量も変わってくるのだろうということは言えると思うのですが、だから今どういう判断をすべきなのかと言われると難しいというか、余り信頼度の高くない将来予測に基づかざるを得ない面があるように思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。内海幹事も基本的には、この先がどうなるかということを私たちがどう考えるかということによって判断するということにならざるを得ないという方向の御意見を頂いたのかと思います。なかなか難しいところで、どの時点でどういう観点で見るのかということによって、齊藤幹事の立てられた問いに対するお答えも違ってくるということかと思って伺いました。   ほかにはいかがでしょうか。   よろしいでしょうか。では、この秘密証書の問題も含めて、押印に関わる問題を更に検討していくということにさせていただきたいと思います。   この後、第4、第5が残っているのですけれども、時間の関係等も考えまして、第4は少し資料が長いので、第5の方を先にさせていただきたいと思います。まず、第5の部分につきまして事務当局の方から御説明を頂ければと思います。 ○戸取関係官 御説明いたします。29ページを御参照ください。29ページの本文第5では、その他の論点について記載しております。すなわち、遺言の方式の問題ではございませんが、遺言者の最終意思を実現するという遺言の方式と共通する観点から、遺言能力、遺言事項として記載された内容の明確性及び成年被後見人が行う遺言について法制上何らかの手当てが可能かについて、また、そのほかにも検討すべき課題があれば、御意見を頂ければと考えております。   なお、遺言能力という言葉は、民法上は15歳以上の者が遺言をすることができるという意味で用いられておりますが、ここで御検討いただきたいと考えているのはもう一つの意味、すなわち高齢者等に見られることがある認知機能の低下との関係で、遺言の法律効果を弁識するために必要な判断能力という意味の遺言能力でございます。   補足説明として、1では、実務上遺言能力の有無が争われる事案が多く、紛争を防止する観点から遺言能力を担保する手当てなどがあれば望ましいという指摘について、遺言能力を担保する的確なデジタル技術も現時点では見当たらないことなどからすれば、遺言能力についても確認することとされている公正証書遺言とのすみ分けなどの問題として考えることが相当とも思われることなどを記載しております。   29ページ末尾から30ページにかけての2では、自筆証書遺言の場合、不明確な記載など、遺言の趣旨が判然としないために無効と判断され、遺言が実現されないことがあるため、それを防止する必要があるとの指摘について、第2回会議では、方式要件の問題として考えるのではなく、一定の措置をとることによって遺言の書き方が分からない利用者に対応することも考えられるとの御指摘も頂いたところでございまして、作成支援の問題として整理することが考えられる旨記載しております。   3では、成年被後見人が遺言をするには医師2人以上の立会いが必要なところ、実務上それを求めるのは困難であるとの指摘について、成年被後見人は事理弁識能力を欠く常況にあるために後見開始の審判を受けた者であって、遺言をするときに事理弁識能力を回復しているか否かの判断については慎重な検討が求められているとも考えられることからすると、医師2人以上の立会いを要することもやむを得ないとも考えられること、この点については現在、民法(成年後見等関係)部会において成年後見制度の見直しに関する調査審議が行われており、その議論にも目配りする必要があると考えられる旨記載しております。   以上のような考え方の方向性について御意見を頂ければと存じます。第5についての御説明は以上となります。 ○大村部会長 ありがとうございます。   まず、御説明についての御質問があれば伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○戸田委員 齊木先生に質問させていただいた方がいいのかなと思ったのですけれども、公正証書遺言を作るときに、本人の意思能力の確認というのはどういう方法でおやりになっているのでしょうか。 ○齊木委員 御説明いたしますと、まず依頼が来ますが、それは本人が来ることもありますけれども、本人以外の、実は実務的に多いのは士業者か、子供から依頼が来ることが実に多いのです。そうなると、本人以外の方の場合は、御本人の年齢を確認して、高齢だと、判断能力は大丈夫ですかと、認知症の薬、アリセプトとかそういうものを飲んでいませんかというような御質問をさせていただきます。軽い認知症であるというようなこともあるのですけれども、その場合に大丈夫ですかということで、後で争われることを考えたら、御家族だったら、今のうちに長谷川式検査の数値、介護認定その他、アリセプトを飲ませるときには必ず診断をするのですけれども、その数値が分かったら教えてくださいと言っております。実はその数値が、過去の膨大な裁判例を分析すると、20以上だとほぼ有効なのです。1桁だと全部無効です。10台だとケース・バイ・ケースなのです。10台の場合は、これが遺言内容が単純であるかとか、いろいろな要素を総合的に考慮して決めるので、そこいら辺りの情報がありますかということを聞きます。1桁だと言ったらもう諦めてくださいとお話をします。大体銀行さんなんかはどう見たってみんな20台以上ばかりのしっかりした人なのですけれども、10台辺りの数値の嘱託人の事例が弁護士さんや司法書士さんの腕で決まる分野でして、遺言内容を単純で分かりやすいものにしたり、いろいろな工夫を凝らしてやるということになります。今まで、弁護士さんや司法書士さんによっては、先ほど言ったように、医師に立ち会ってもらって、そこで証明書を書いてもらったことが何回かあります。1回行って少し危うかったら、先生、これは少し危うくないですかと言って、2回目行くときに医師に立ち会ってもらった例もあります。   そういうことで、何とか遺言能力の判断はしていますけれども、でも、やはり裁判官をやっていた経験から言うと、公証人の手に入る資料というのは非常に限られているのです。診療録が全部手に入るわけでもないので、その限られた中で遺言能力を判断することになります。そこで、やはり私どもは口述ができるかどうかという辺りを軸に判断しているのが実情だと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。戸田委員、よろしいですか。ありがとうございます。   ほかに御質問ありますか。   よろしいでしょうか。それでは、第5のその他の部分について御意見を頂きたいと思います。1、2、3とありまして、今の遺言能力の話と成年被後見人が行う遺言、多少関係いたしますが、それと別に、2の遺言事項としての記載された内容の明確性という項目もございます。あるいは、その他ということなので、ここに挙がっていないものについて御意見を頂くということもあろうかと思いますので、どれからでも結構ですので、御発言があれば自由にお願いをしたいと思います。いかがでしょうか。 ○戸田委員 今の齊木先生の御説明は大変よく分かったのですけれども、一つ、成年被後見人の場合に医師の立会いを必要としているということなのですけれども、実際に成年後見制度を利用する率は今、対象者が1100万人位いる中で1割にも満たない状況になっていまして、実際には遺言能力を持っていない方がものすごく多いわけです。そういう中で安全な遺言を作成するのであれば、成年後見制度を利用しているか、していないかにかかわらず、チェックした方がベターではないかとは思います。   一つ、デジタル的な手法が現状ではないというようなお話があったのですけれども、規制改革推進会議の方では、介護認定の判定をするのに、医師の診断書を書く上でも、判定員を集めてくるのも非常に負荷が掛かっていて、ものすごい時間を要しているので、そこを何とかデジタル化できないかというようなことで検討を開始して、今回の実行計画にも少しその点を盛り込んでいるのですけれども、今後やはりそういった技術を開発していかないと、なかなかもう人手もいなくなってくるし、安定した社会を築けないのではないかということがございまして、今後この分野については技術的には期待が持てるところではないかとは思います。そういったものに加えて、先ほど齊木先生がおっしゃったように、長谷川式認知症スケールであるとかMMSE(ミニ・メンタルステート試験)とか、QA方式でやるようなことであれば、補助的にAIを使うということも可能ではございますので、そういったいろいろなデジタルの組合せを活用しながら、この問題については対応していった方がいいのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。どのくらい判断力があるかという判定方式について、デジタル的な手法がこの先、有望かもしれない、活用できるのではないかという御意見を頂戴いたしました。ありがとうございます。   ほかにはいかがでしょうか。 ○相原委員 今の成年被後見人が行う遺言のところで、少し意見を申し上げさせていただきます。この点、私が従前から申しあげるのとは真逆のような意見なのですが、高齢者というよりは知的障害者、精神障害者の方が、成年後見が開始した案件で遺言を作るというのが非常に困難であったというケースがあります。主治医の方は、被後見人である知的障害者の本人が2人お姉さんがいるうちの1人にあげたいと思っていることをはっきり認めてくれているのだけれども、もう1人の医師を連れてくるのが大変だったのです。やはりもう1人の法定相続人の方からの訴訟になる可能性があると。継続的に診ている医師でない方に証人になっていただく、分かっていただくのにやはり時間が掛かり、簡単ではなかったということです。成年後見が開始している以上は医師が2人必要だと原則的に言われるのはそのとおりなのですけれども、そのケースは、ずっと自分がためてきたお小遣いを自分の好きなお姉さんにあげたいというような方で、はっきりした意思を持っているし、御本人の資産としても全然おかしくない話なのですけれども、後見が開始されていることから、遺言書を作るのにものすごく労力と時間が掛かるというようなことがありましたので御報告いたします。   最終的には、最後に書かれています成年後見等の民法の別の部会における検討に委ねる話かなとは思いますが、高齢者などの判断能力の後退を利用されてしまう人のリスクを回避すべき場合と、それから、同じ被後見人でも判断能力、遺言能力、先ほど長谷川式で何点か分からないですけれども、お一人の医師からは確実に遺言の意思に問題ないと言われ、周りの福祉関係者もそのように認識できているケースとかが同じでよいのか、真に必要な人が残したい遺言書が作成できるような方向に検討されるべきであると思いましたので、個人的な意見ですが、申し上げさせていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございます。医師2名が必要という要件がよい方向に働く場合も、もちろんあるけれども、しかしそれが障害になる場合もある。ここで私たちが議論している問題の少なからぬものについて、今おっしゃったような面があるということなのではないかと思って伺っておりました。両面を考慮に入れて検討するということをせざるを得ないと思いますけれども、最後におっしゃったように、別の部会で成年後見制度の全体の中で検討も進んでいることですので、事務当局の方からもありましたけれども、そちらの動きを見ながら私たちとしてもどうするかということを検討する、こんなことなのかと思って伺っておりました。   ほかにはいかがでしょうか。 ○木村幹事 瑣末な質問になるかもしれないのですが、2の遺言事項として記載された内容の明確性のところで、ホームページなどで遺言事項の分類などを示すことによって、遺言の書き方が分からない利用者に対応することも考えられるというような指摘などが説明されているところです。この点、冒頭のところで小粥先生が、そもそも作成支援という形をどのような形でとるのか自体、問題であると御指摘がされていて、それはもっともな御指摘だと思ったところです。   今回の新しいデジタル方式のパターンに関する説明では、およそ全文をワープロで作成した電磁的記録を捉える見方や、それをプリントアウトした紙媒体を捉える見方などが示されています。先ほど石綿先生が少し加除のところで指摘された内容にもかかわるかもしれませんが、例えば、ウェブで調べたら遺言の作成例が出てきたので、それをプリントアウトして、甲と書いてあるところを全部自分の名前に自筆で書き直して自分で署名したようなものについて、つまりデジタル上のデータを自筆で書き直したような、そんなハイブリッドみたいなものは、今回の議論の対象範囲に含まれますでしょうか。石綿先生がさきほど指摘された、プリントアウトしたものの「てにをは」を直したというような場合と、プリントアウトしたものの内容を自筆で書き直した場合とは、どこまで違うのか、後者の遺言について法的効力はどう考えるべきか、という点はこれまで余り議論にはなっていないように思えましたので。 ○大村部会長 ありがとうございます。ここで議論するのがいいかどうかは分からないのですが、遺言事項として記載された内容の明確性という項目との関連で出てきた御疑問ということなのだろうと思いますので、それが今回の議論の対象外なのかということについては、事務当局の方からお答えを頂いて、あとはここで議論するか、あるいは別のところで議論するかということにしたいと思いますが。 ○齊藤幹事 齊藤でございます。新たな方式のワープロ入力、プリントアウト方式に関連する論点というような位置付けかなと理解をいたしました。その上で、直感的に申しあげることでお許しいただけるのであれば、例えば文例をプリントアウトして、甲、乙とか、そういう人の名前部分だけを自分の手で書いて直すような方式というのは、恐らくこれまで議論している、例示として挙げているどの方式にもはまらないということは、やはりそれは許容できないのではないかなということを個人的には思っておりました。つまり、それは文例をそのまま流用するということも問題かもしれませんし、あるいは第三者が外形を作出する容易さ、リスクという点でも割と問題が大きいような気がしますし、そういう意味で、方式として、例示ではありますけれども、これまで御議論に提供していたメニューの中にはどれにもはまらないので、少し今の例は難しいのではないかというのが直感でございます。 ○木村幹事 ありがとうございます。すみません、瑣末な質問で。どこまでプリントアウトしたものの加除などが手書きで許されるのかという問題からすると、その延長線上にある問題として捉えることができるかとも思いましたので。 ○齊藤幹事 よろしいですか、重ねて。プリントアウトを一旦し終わったものを少し手書きで直すという点は今度、新しい方式のうちの加除訂正のところで、そういうのはもう駄目とお断りするポリシーにするのか、あるいはいかす余地を考えていくのか、そこはまた別途、議論の余地があるかなという気はいたします。 ○木村幹事 ありがとうございました。 ○石綿幹事 幹事の石綿です。今の木村幹事の発言に関連してということなのですが、木村先生の案は、何かある文例を訂正するというものだったと思うのですが、例えばイギリスなどではそういうものがあると聞いていますが、遺言キットがあって、括弧書きになっていて、財産を与える相手のところが括弧で、財産も括弧で、そこに埋めていくみたいなものというのも、プリントアウト方式を認めると、可能なのか可能ではないのかというのは議論した方がよいのではないかと思います。先ほど少し加除訂正のときにお話ししましたが、いわゆるワープロ入力したものと手書きが混在しているものを認めるかどうかというところは今の発言とも関連するようにも思いまして、どこかでしっかり議論はした方がいいのだろうと思っております。当然、完全にフォーマットしたもののデジタルバージョンみたいなのも出てくると思うのですが、少なくともプリントアウト方式についてどうするのかというのは議論が必要だろうと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。今のような例についてどうするのかということも議論の対象にはなり得ると思います。先ほどの木村幹事の御質問との関係で、齊藤幹事のお答えから分かることは、そうしたものは今回、想定外というわけではなくて、想定はされているけれども取り上げられていないというのは、事務当局の作った案の中では、そこまでは認められないのではないかという判断が含まれているということなのだろうと伺いました。その上で、しかしもう少し緩めていいのではないかといったお考えは、例えば石綿幹事が先ほどおっしゃった、ワープロでプリントアウトしたものを自筆で多少修正する、その多少修正するというところから、空欄にしておいてそこを手書きで埋めるみたいなものはどうかといったところまで行くということはあり得ないわけではない。事務当局の原案は、そういうものはよくないのではないかということではあるけれども、皆さんの方で、そういうことも検討すべきであるし、考えられるのではないかということであれば、その場所で御議論を頂くということでいいのかと思っていますけれども、それはそういうことですね。 ○齊藤幹事 はい。 ○大村部会長 ということで、先ほど石綿幹事がおっしゃったような議論の場所で、もう一度改めて御意見を出していただければと思います。木村幹事、それでよろしいでしょうか。ありがとうございます。   そのほか、第5につきまして、いかがでしょうか。 ○小池委員 973条でも判子の問題があるので、成年後見の方にある程度委ねるにしても、この条文で医者の判子を要求しているところは、ここで判断をするというふうにした方がいいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。押印の部分についてはここで取り上げた方がいいのではないかという御意見として承りました。   ほかにはいかがでしょうか。 ○齊藤幹事 1点よろしいでしょうか。成年被後見人の遺言、973条に関してでございます。資料にお書きしましたとおり、関連して民法(成年後見等関係)部会で後見制度の見直しについて議論がされているということには目配りが必要かなということはお書きしたとおりです。他方で、そちらでの議論に全く委ねるということの整理かどうかというのは、これもまた調整を要することで、今日正確な方向性をお話しできないのは恐縮ですが、少なくとも条文の位置付けとしては遺言の方式の中にありますし、遺言を行うというのは成年後見制度全体の在り方の中では部分的な論点でもあるということもございますので、こちらで今日、お考えの方向性があれば、もし頂ければ、それは参考にさせていただきたいと思いますし、引き続き二読目においては、もう少し整理をした形で役割分担とか影響関係を御説明したいと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。連携して対応する必要があるというのはそうなのだろうと思いますけれども、こちらでやらないとかということではないということで、何か意見があれば頂きたいということかと思います。何かもしございましたら。 ○相原委員 すみません、自分自身でも真逆なことを言っている部分があるかもしれないと感じはするのですが、要は、ほかの部会の成年後見部会で議論されていることでしょうけれども、いわゆる日本の成年後見が開始してしまうと、その権限がかなり、ほとんどもう成年後見人が代理人として実質行為をし、今回、遺言はできるけれどもこれだけの要件になっているということだと思うのです。なので、本当に対象者がどういう状況かで大分違うはずなので、守らなければいけないという視点もものすごく重要で、それは最初から私がここで申し上げていることなのですけれども、一方で一度被後見人になってしまったらこれだけのハードルが上がってしまうということが、一律的に本当にいいのかということに関しては、先ほどの知的障害者の方のケースとか、足し算とか記憶というのはすぐはできないかもしれないのですけれども、方向性の気持ちの意思とか、そういうことが割と周りの人に、それこそ事実認定の問題としてほとんど問題なくできそうなケースにもかかわらず、もう1人医師が必要であるというようなことになってしまったときに、負担感が被後見人さんに大きい場合もあるのではないかと思ったので、従前から発言させていただいた次第です。   なので、対象が、かなりもう認知症が進んでいらっしゃる高齢者という想定と、まだ若い中高年の精神障害、知的障害を持っておられる、こうしたいという意思が、どこに住みたいとか、誰に上げたいとかということが表現できるタイプの人とで一律になってしまうことに対する問題を申し上げたかったということでございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。相原委員の先ほどの御発言を敷衍する形で、更に御発言を頂いたと理解をいたしました。   ほかに何か、今の点につきましてありましたら、伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。   よろしいでしょうか。それでは、今の御意見を伺って、また次の機会に、ここについてはもう少し立ち入った形で議論をするということにしたいと思います。   そのほか、第5の部分について御発言はありますでしょうか。よろしいでしょうか。   あと第4が残ったのですけれども、残り30分弱になりましたので、途中で終わるということになろうかと思います。今日のところは第4を飛ばして、第1から第3までと第5を議論したということにさせていただき、第4は次回に送らせていただきたいと思います。   そこで、次回の議事日程等について事務当局の方から御説明を頂ければと思います。 ○齊藤幹事 本日も長時間にわたり熱心に御議論いただき、誠にありがとうございました。次回の日程は7月30日火曜日、午後1時30分から午後5時30分まで、場所は法務省地下1階の大会議室でございます。   次回は、まずデジタル技術に関するヒアリングということで、デジタル技術を扱う業者とヒアリングの内容について今、調整を進めているところですので、次回の前半はヒアリングを行いたいと考えております。そして、時間のある範囲で本日積み残しになった論点について御議論を頂くということを想定しております。また、時間の関係で更に議論ができそうであれば、一読で深堀りが足りなかったところは更に御意見を頂く機会を1、2回頂戴しながら、その後、二読につなげていくというようなことを想定しております。   中期的に申し上げますと、夏を挟みまして10月1日と10月29日、ここで第5回、第6回を予定しております。こちらでは、それぞれ第5回の前半、第6回の恐らく後半部分になると思いますが、外国法制について研究者の方に時間の調整を頂くことができそうですので、ヒアリングを行いたいと思っております。その際には、これまでに頂いている御疑問も事務当局の方からお伝えをしながら御説明を頂くとともに、質疑を行うということを想定しております。1回で済めばスマートだったかと思いますが、御対応いただく先生の御都合上、10月1日と10月29日とそれぞれで半分ずつ、外国法制のヒアリングということを考えております。   進行としては以上でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。ただいま説明がございましたけれども、この先の3回は、一方でヒアリングを行うとともに、他方、本日の積み残しについて御意見を頂いた上で、一回り目、一読の言わばまとめとして、更に御意見を頂きたいところについて御意見を頂いておく、こういうことで進めさせていただきたいと思っております。ということで、次回7月30日1時30分からということで、お願いを申し上げます。   それでは、これで法制審議会民法(遺言関係)部会の第3回会議を閉会させていただきます。   本日も熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。閉会をいたします。 -了-