法制審議会 民法(遺言関係)部会 第4回会議 議事録 第1 日 時  令和6年7月30日(火) 自 午後1時30分                      至 午後5時24分 第2 場 所  法務省地下1階 大会議室 第3 議 題  1 参考人ヒアリング等         2 遺言制度の見直しにおける論点の検討⑵及び⑶ 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○大村部会長 それでは、予定した時刻になりましたので、法制審議会民法(遺言関係)部会の第4回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席を頂きまして誠にありがとうございます。   まず、前回の部会後、委員の交代がございましたので、お知らせを致します。松井委員に替わりまして内野委員が新たに就任されました。内野委員、簡単な自己紹介をお願いいたします。 (委員の自己紹介につき省略) ○大村部会長 よろしくお願い申し上げます。   それでは、本日の審議に入ります前に配布資料と、それから本日の進行についての説明を事務当局の方からお願いいたします。 ○齊藤幹事 では、御説明いたします。配布資料として、まず部会資料4「遺言制度の見直しにおける論点の検討(3)」、それから参考資料4-1「デジタル技術に関するヒアリングに係るヒアリング事項」、参考資料4-2「デジタルタッチペンを用いたサイン検証技術について」、これらがございます。これらのうちの参考資料4-1、2につきましては本日前半のヒアリングにおいて、それから部会資料につきましては本日後半の御審議の中で、それぞれ事務局から御説明を致します。また、併せて参考人から御提供いただいた資料を配布させていただいております。こちらについては前半のヒアリングにおいて参考人の皆様から御紹介を頂きたいと思っております。また、席上のタブレットには委員等名簿及び議事次第を格納しております。   続きまして、本日の進行でございますが、参考人のヒアリングとして6名の方々に御出席をお願いしております。御紹介いたしますと、三菱UFJ信託銀行から4名の方にお越しいただいており、順にMUFG相続研究所所長の入江誠様、同研究所首席研究員の小谷亨一様、三菱UFJ信託銀行フロンティア事業開発部ヘルスケア事業室開発G Senior Managerの一之瀬拓様、同行フロンティア事業開発部事業開発室インキュベーションG Product Managerの宍倉孝亮様でいらっしゃいます。また、日本電気株式会社から合わせてお2人の方にお越しを頂いており、日本電気株式会社バイオメトリクス・ビジョンAI統括部シニアプロフェッショナルの横田治樹様、同社バイオメトリクス・ビジョンAI統括部プロフェッショナルの今橋晃一様です。二つの会社におかれましては、今回の事務局から用意した疑問に関しまして、情報共有しながら共同して作業を頂いたと承知をしております。   では、進行ですが、ヒアリングに先立ち事務局から参考資料4-1に基づきヒアリング事項について簡単に御説明させていただいた後、本題ということで、参考人から御提供いただいた資料について御紹介を頂きます。御提供いただいた資料は大部となっておりますが、3部構成でございまして、最初にその1と2、資料でいいますと25ページまでについて、おおむね45分程度で御紹介を頂き、一旦そこで参考人の皆様に対する質疑と、その応答の時間を設けたいと考えております。その後、再び参考人の方々から資料の3、26ページ以降について10分程度で御紹介を頂き、同様に質疑応答の時間を設けると、こういう進行を予定しております。さらに、そこに付け加えて、事務局から参考資料の4-2に基づき、デジタルタッチペン関係でございますけれども、5分程度で御説明させていただき、その後にこれに関しての質疑応答の時間を設けることを予定しております。ここまででおおむね2時間程度と見込んではおりますが、時間の配分は目安とお考えいただければと思います。   参考人ヒアリング等の実施後は、休憩を挟み、前回からの続きとして、前回配布いたしました部会資料3に基づき、遺言制度の見直しにおける論点の検討(2)のうち特別の方式に関する部分について、その後は、今回の配布資料である部会資料4に基づき、同じく論点の検討(3)について御審議を頂くことを、時間の許す範囲で予定をしております。 ○大村部会長 ありがとうございました。   それでは、本日の審議に入りたいと思います。ただいま事務当局から御説明がありましたように、まず参考人ヒアリングを行います。   本日は入江参考人、小谷参考人、一之瀬参考人、宍倉参考人、横田参考人及び今橋参考人におかれましては大変お忙しい中、詳細な資料も御準備を頂きました上でこの部会にお越しいただきまして、誠にありがとうございます。参考人の皆様からデジタル技術に関する御意見を伺い、今後のこの部会での検討にいかしてまいりたいと考えておりますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。   それでは、まず事務当局の方から参考資料4-1について御説明を頂き、それに続きまして、参考人の皆様からヒアリング資料の1と2の部分の御説明をお願いするということにしたいと思います。 ○大野関係官 事務局から参考資料4-1について御説明いたします。参考資料4-1は、デジタル技術に関するヒアリングに係るヒアリング事項を整理した資料でございます。   デジタル技術を活用した新たな遺言の方式において、どのようなデジタル技術を活用することが考えられるかにつき、これまで委員、幹事の皆様から様々な御意見を頂戴するとともに御議論いただいていたところでございます。それらを踏まえて本日は、遺言の本文に相当する部分の在り方及び真意性・真正性を担保等するための方式の在り方に関し、活用の可否が問題となるデジタル技術について、大きく分けて四つの項目に分類される事項につき、参考人の皆様から御紹介を頂きたいと存じます。   項目の一つ目は、電子署名についてです。電子署名につきましては、具体的な使いやすさ、有効期限への対処、複数の者が一つの文書ファイルに電子署名することの可否、ウェブ会議に際して複数の者が一つの文書ファイルに電子署名することの可否、動画ファイルに電子署名することの可否などについて、参考人の皆様から御紹介いただきたいと存じます。   項目の二つ目は、本人が入力することを必要とした場合におけるデジタル技術の活用についてです。このうちデジタルタッチペンにつきましては、部会資料2において、遺言の本文に相当する部分の在り方に関する例としてデジタルタッチペンの活用について記載しておりました。この点につきましては、事務局において特に知見を有する民間事業者から聞き取った内容をまとめて記載した参考資料4-2を作成しております。そこで、参考人の皆様からの資料の御紹介と質疑を終えた後に御説明差し上げる予定です。項目の二つ目との関係では、本人が入力したことを確認することができるその他のデジタル技術の有無につきまして、参考人の皆様から御紹介を頂きたいと存じます。   項目の三つ目は、本人が入力することを必要としないとした場合におけるデジタル技術の活用についてです。文書ファイルと動画ファイルとを結び付けることの可否、動画ファイルを活用したその他の遺言の在り方、生体認証技術の種類とその識別精度及び実用性、顔貌認証技術等を利用した具体的な遺言の在り方、録音・録画や生体認証のほかに考えられるデジタル技術の有無などについて御紹介を頂きたいと存じます。   項目の四つ目は、改変防止のためのブロックチェーン技術等の活用についてです。ブロックチェーン技術を遺言者が直接利用する在り方の有無、公的機関又は民間事業者が保管を行う場合の技術の活用の在り方、通知や検索の可否等、改変防止措置として考えられるその他の仕組みの在り方等について御紹介を頂きたいと存じます。   最後に、四つの項目につきましてはQ1からQ4までの番号を付しており、この番号は作成いただいたヒアリング資料の右上のQ1からQ4の記載と対応しております。委員、幹事の皆様におかれましては、どの項目と関連する御紹介であるかを把握する際などに適宜役立てていただければ幸いです。   なお、作成いただいたヒアリング資料のうちの3は、民間事業者を活用し各種デジタル技術を実装した場合の遺言の作成の在り方の一つの例としてお示しいただくものと承知しております。現段階において、デジタル技術を活用した新たな遺言の方式につき具体的な在り方の方向性が定まっているものではなく、この例には現時点では実現が難しいアイデア等も含まれているかと存じますが、御議論いただく際の参考になるかと考えております。   それでは、参考人の皆様、よろしくお願いいたします。 ○大村部会長 ありがとうございます。   それでは、参考人の皆さん、資料に基づいて御説明をお願いいたします。 ○入江参考人 三菱UFJ信託銀行MUFG相続研究所の入江でございます。本日はこのような機会を頂きまして、誠にありがとうございます。   私どもからは、デジタル技術を活用した新しい遺言制度、説明の中では便宜的にデジタル遺言という言葉で呼ばせていただきますけれども、この新しい制度の中で活用が想定されるデジタル技術の内容、それと具体的な活用のイメージの御説明をさせていただきたいと思います。先ほどもありましたけれども、本日は私ども三菱UFJ信託銀行と日本電気株式会社の2社が共同して御説明をしたいと思います。資料はお手元、御覧いただける状態でございますでしょうか。資料の説明に入る前に、3点ほどお話ししたいと思います。   まず1点目ですけれども、デジタル遺言の制度内容の詳細ですとか法的な要件というのはまだ未確定でございますので、今回の資料作成に当たりましては一定の考え方ですとか前提を置いております。この考え方につきましては、資料の中で御説明をしたいと思います。   2点目は、前提に含まれますけれども、デジタル遺言の主な利用者といたしましては、今回は日常的にパソコンやスマホを使っている方を想定しております。例えば、税金の確定申告の電子申告などを自ら行うような方を想定しております。   3点目といたしましては、先ほどもございましたが、資料は2社で共同して作成しておりますけれども、ページごとに作成者が分かれております。各ページの右下に作成者の所属する会社のロゴを掲載しておりまして、ページごとに説明者が交代するという形で御説明させていただきたいと思いますので、御了承いただきたいと思います。それでは、資料に沿って御説明を致します。   まず、2ページの目次を御覧ください。目次に記載してありますとおり、三つのパートに分かれております。まず、一つ目の遺言制度の現状とデジタル技術の整理につきましては私、入江から御説明いたします。二つ目のデジタル技術の御説明につきましては、弊社と日本電気の2社から御説明させていただきまして、三つ目の民間事業者を活用する場合のデジタル遺言実装案につきましては、弊社の宍倉の方から御説明をさせていただきます。   次に、4ページまでお進みください。こちらは、はじめにということで、資料作成に当たっての基本的な考え方を記載しております。上の(1)から(3)までは部会資料からの抜粋でございますので、説明の方は割愛をさせていただきます。この三つを受けまして(4)ということで、まず、現行の自筆証書遺言の要件のうち財産目録以外の全文等の自書要件、これを外しまして、単純にワープロで作成可能にした場合に、真意性・真正性の担保という観点からどのようなデジタル技術の活用が考えられるかというのが(4)でございます。それと(5)、本来真意性・真正性の担保という観点からは、海外の多くの制度で用いられていますように、証人の立会いを要件とするといったことも考えられますけれども、今回につきましては、(3)のところにありますように、利便性・簡便性とのバランスの観点から、証人の立会いですとか、あるいは公的機関に出向いての手続というのは要しないという方法を想定しております。   続きまして、5ページにお進みください。5ページから7ページでは、現行の制度とデジタル技術を活用した場合の比較を記載しております。5ページの表1-1と表1-2、これが現行制度について簡単に整理をしたものになります。なお、公正証書遺言につきましては今回、比較対象とはしておりませんけれども、理由といたしましては、今回のデジタル遺言では自筆証書遺言と同程度の信頼性が前提となっているということから、今回は比較の対象とはしておりません。また、表1-1と表1-2の両方に利用者負担という欄があって、少し分かりにくくて申し訳ございませんが、ここは当初、表1-1の方はイメージといたしまして簡便性ということを念頭に置いていたのですけれども、同じような意味でございますので、表現を統一したというもので、特段明確な区分があるわけではございません。   このページは、御覧いただいているとおりかと思いますけれども、ポイントといたしましては、自筆証書遺言書保管制度を利用した場合、それと秘密証書遺言、この場合の保管場所の設置あるいは第三者の介在というところが、これらの制度の真意性・真正性、そして熟慮性の担保の補強、あるいは改ざん等のリスクの削減、検認の不要化などにつながっている、言わばトレードオフの関係にあるということがポイントかと考えております。   続きまして、6ページにお進みください。こちらの表2ですけれども、これは部会でも議論に挙がっていたデジタル技術、これらを単体で活用した場合の真意性等の状況を整理したものでございます。例えば、ワープロ活用のところですけれども、ワープロ活用を可能とした場合には、こちらは真意性・真正性・熟慮性というのは一旦全て検証不可というふうな整理をさせていただいております。それを受けまして、この各単体技術に電子署名という方法と生体認証のデジタル技術を組み合わせた場合にどうなるかということで、複合①として記載をしております。この表3-1と次の7ページの表3-2に分けて記載しておりますけれども、これは先ほどの5ページの現行制度の表1-1と表1-2に対応する形になっております。   結論といたしましては、表3-1のとおり、電子署名と、更に生体認証を組み合わせることで、例えばワープロ活用の場合であっても真正性は担保できると私どもとしては考えたということでございます。この具体的なイメージというのは、三つ目のパートで具体的に御説明をさせていただきたいと思います。   なお、冒頭でデジタル遺言の利用者として、パソコンやスマートフォンの操作を行える人を想定していると申し上げましたけれども、これは今回想定しているケースでは、遺言者の方御自身が電子署名であるとか生体認証を行うとする、こうなるとある程度機器に慣れ親しんだ方というのが想定されるかなと考えた次第でございます。   ただ、一方で真意性・熟慮性につきましては、これらの技術を組み合わせても、やはり担保するということはなかなか難しいという整理をしております。ここは真意性・熟慮性が担保できなくてもよいということを申し上げているわけではなくて、現行の自筆証書遺言と同様に遺言者単独で作成できる方法というのを前提とすると、どうしても真意性・熟慮性の観点からは限界があるということと御認識を頂ければと思います。したがいまして、ここは制度設計上の話になりますけれども、証人を要件とするということも考えられますし、あるいは遺言者のニーズに合わせる形で、民間の創意工夫で対応していくということも方向性としてはあろうかと思います。   続きまして、7ページになります。こちらの表3-2ですけれども、同じく電子署名と生体認証を組み合わせた場合、複合①の場合の改ざん等のリスク、あるいは利用者負担などを記載しております。資料にございますとおり、改ざん等のリスクはやはり残る、さらに、例えば保管方法が遺言者の自宅のご自分のパソコンのような場合には、これは、例えば電磁的記録特有のリスクですね、データの破損であるとか、パソコンを初期化してしまったときの滅失等もあるのかなと思います。   そこでということで、表4に記載をしておりますのが、公的機関等での保管も組み合わせた場合にどうなるかということでございます。これは現行の自筆証書遺言書保管制度を利用した場合と同様に、改ざん等のリスクというのは削減をできる。また、仮に相続人等への通知機能を更に付与した保管制度になるとすれば、これは検認も不要になるのではないかと考えて記載をしております。   なお、保管場所に出向かずに自宅のパソコン等で保管を申請するという形を想定する場合には、やはり保管する時点での電子署名、生体認証というのが必要になってくるのかなと考えております。   簡単ではございますが、私のパートは以上になりますので、続けて二つ目のパートを、まず宍倉の方から御説明させていただきたいと思います。 ○宍倉参考人 三菱UFJ信託銀行の宍倉と申します。よろしくお願いいたします。2章のデジタル技術の御説明に関しまして、今、入江の方から申し上げた電子署名、生体認証に加えて、今まで部会の中で取り上げられていらっしゃったデジタル技術についても少し内容を御説明できればと思います。ここからは、私と日本電気様の方で少し分担して御説明をできればと思います。   まず、9ページを御参照ください。電子署名についてというスライドタイトルでございます。一応、概念的なものからお伝えを致します。左側に捺印の世界と書かせていただいたものがございます。こちらは公正証書遺言における署名までの流れのところで少し参考にしたものなのですけれども、実印の場合は、市役所等で印鑑登録がされて、その印鑑が誰のものであるかということが役所に登録をされていると、登録されたものを公証役場の方に持ち込んで遺言書に署名をすると、こういう流れかと理解しております。   これが電子署名の世界になったときというものが、公開鍵と秘密鍵という概念に分かれてくるのですけれども、まず、実印を印鑑登録するように、公開鍵というものを認証局というところに登録します。この作業を行うことによって、公開鍵が誰の鍵であるかということが認証局側で記録されるというものです。次に、公開鍵と対になる秘密鍵というものがございます。秘密鍵というのは基本的に電子署名に用いる鍵というもので、他人に渡してはいけないものと理解いただければと思います。その秘密鍵を用いて電子署名をファイルに対して付与します。そして、付与したファイルを見てほしい人に対して、ファイルと一緒に認証局に登録をした公開鍵というものが連携できるような形、これは、どこどこに登録しています、アップロードしていますというファイルのパスみたいなところをお教えするものでも構いませんし、直接公開鍵を相手方に渡しても、それはどちらでも構わないというものです。相手方は、その電子署名済みのファイルと公開鍵というものを二つ手元に置いた状態で、公開鍵を用いて電子署名済みのファイルを復号するという作業を行います。ここで公開鍵が違っていたりすると、電子署名を正しく検証できないというような状態になります。正しく復号できると、この公開鍵は電子署名した人と同じ人が送ってきている、改ざんもないということが確認できる、これがざっくりと電子署名というようなものになっております。   かつ、ここまでだと、誰の署名かは除いておいて、取りあえず電子署名されたファイルというものが改ざんされていないということまでが分かるというもので、そこから併せて認証局に、この公開鍵は誰のですか、有効ですかということを最後、問合せをすることによって、正しく誰々が電子署名をしたファイルである、そして、それは改ざんされていないということが確認できるようなものとなっております。   ページをおめくりください。10ページとなります。この電子署名をどうやって使うかというところを御説明させていただきます。例えば、全部自分で鍵ごと用意して署名をするというところが最初、10ページに記載をさせていただいたものです。やれなくはないというところではあるのですけれども、フリーソフトみたいなもので、誰もが自由に使えてお金も掛からないようなソフトというものが世の中には幾つかあるのですけれども、そういったものを手元に用意して、いわゆるコマンドを叩いて鍵を生成して、生成した秘密鍵で電子署名をするというようなコマンドも更に叩いてという、なかなか一般的にはやりづらいような世界観の中で、やれなくはない、知見がある方であればできるというのがこの全て手動で対応という10ページの内容となっております。   次に、11ページを御参照ください。電子署名について、使い方②マイナンバーカードの活用というものを御説明させていただきます。10ページでは、鍵ごと自分で用意をする、コマンドを叩いてというような御説明をさせていただいたのですけれども、マイナンバーカードのICチップがあると思います。この中にはあらかじめ電子署名用の秘密鍵と公開鍵というものが格納されておりまして、署名鍵を自分で用意する必要がないという特徴がございます。このマイナンバーカードの秘密鍵を使って電子署名を使うというところをこの11ページに記載させていただいております。   また、公開鍵の登録の話を先ほどさせていただきました。マイナンバーカードに入っている公開鍵は、J-LISと呼ばれるところにあらかじめもう作成の段階で誰々の公開鍵ですというところが登録されているというところがございまして、鍵の生成と併せて、この認証局というところへの誰のものですという登録が必要ないというところが一つ、使い易さになるかなと思っております。   流れを御説明させていただきます。まず、手元にマイナンバーカードを用意いたします。先ほど御説明差し上げたとおり、このICチップの中には秘密鍵と公開鍵のペアが既に用意されております。電子署名に必要なソフトを検索すると、例えば法務省様が推奨されているようなものもあったりすると思うのですけれども、それを手元に用意いただいて、マイナンバーカードを読み込ませて電子署名をすると。その後、相手方に、先ほど御説明差し上げたように、公開鍵を併せてお渡しすることによって、相手方がこの文書が変更されていないかどうかの確認ができます。   ただし、このマイナンバーカードの電子署名を検証する際、誰のものかという部分に関しては、現在マイナンバーカードの電子署名が誰のものかという問合せができる者については、法律でこの人たちしか駄目という指定がございます。認定プラットフォーマーであったり、団体署名検証者といわれるような、例えば日本司法書士会連合会等しか署名検証が許されていないので、そのいずれかのサービスを組み込んだものでやっていく必要があるというところがございます。右側が署名画面イメージと署名検証イメージです。御参考となります。   次のページ、12ページを御参照ください。民間でも契約書等を電子で作成するときに、よく電子署名事業者というものを使います。これはなぜかというと、署名のフローが自動化されていて、自分が次に何をすればいいのかということが分かりやすい設計となっているからというのが多分にあるかなと思われます。   使い方のところを御説明させていただきますと、認定事業者など民間の電子署名事業者と、月額幾ら、年間幾らみたいなサービス利用契約を結びます。そうすると大抵、電子署名事業者が鍵ごと用意をしてくれる、貸してくれるみたいな形になって、鍵の用意、管理みたいなことをサービスの中でやってくれる形で提供されているものが多いです。なので、そのサービスの中で鍵を借りて電子署名をやっていく。電子署名事業者の中には、外から持ち込んだ鍵を使ってもいいよというところもございますし、鍵を貸してくれるというところもございますし、そこは使い分けかなと考えております。   署名検証の流れは同じような形となっておりまして、公開鍵を取り込んで電子署名を検証して、変更の有無を確認する。電子署名事業者の中で、この公開鍵は誰々のですということがIDベースで登録をされていたりしますので、正しく誰の電子署名であって、それが改ざんされていないということがそのサービスの中で確認ができることとなっております。   実は弊社、三菱UFJ信託銀行でも電子契約の際にDocuSignというものを使わせていただいております。右側に画面イメージを振らせていただいておるのですけれども、DocuSign(一般認証)と書かせていただいております。DocuSignのサービスの暗号化のアルゴリズムが特定認証に当たるかどうかというところが確認できなかったので、一旦、一般認証と書かせていただいておりますけれども、その中でどういうふうにやっているかというと、双方署名の際に契約書と、あとは契約の意思を双方で確認した事前のメールのやり取りなんかを、エンベロープと呼ばれる封筒みたいなものを用意して、その中に2枚とも入れてしまい、それに対して契約当事者が電子署名をするというようなことをやっているものになっております。   私は一旦ここまでとさせていただいて、次に日本電気様、お願いします。 ○横田参考人 日本電気の横田から電子署名に関して技術的な補足の説明を差し上げます。   まず、過去の議論の中で、何点か電子署名に関して論点があったかと思いますけれども、まず、複数ファイルへの電子署名です。これは幾つか方法はあるかと思いますけれども、一つは、PDFに動画等の複数のファイルを埋め込んで電子署名を実施することが可能になっておりまして、この下に例として挙げておりますけれども、元の遺言のPDFに対して動画ファイルを添付して、そこに対して先ほどの電子署名を仕掛けるということが技術的には実現できる形になっております。また、前のページにありますとおり、複数のファイルを一つの封筒に入れて電子署名するような技術ですとかサービスも世の中には存在しているという形になっております。   それから、右の方に行きまして、複数人での電子署名ということですね。こちらは、一つのファイルに対して複数人で電子署名することが可能という形になっておりまして、先ほどの契約に関しましても、2者の契約の中で2人の管理者が連続して電子署名している形になっているかと思いますし、世の中的には複数人が電子署名するということは一般的に行われておりまして、イメージとしましては、ここに例として挙げてありますが、遺言のPDFに対して1人目が電子署名を行って、そのファイルを次の人に渡して、そこに対して2人目の人が電子署名を行うというふうな形になります。このファイルに関しましては、1人目の人ですとか2人目の人が電子署名したということを後から容易に検証することができますし、元のファイルが改ざんされていないということを確認することもできるというようなところが技術的に実現されている形になっております。   次のページに参りまして、14ページ、ファイルサイズの影響ということで、過去の議論の中で、動画の利用に関しましてどうなのかということがあったかと考えております。単純にファイルサイズにつきまして言いますと、一般的なワープロの文書と比べますと、ざっくり申し上げますと1,000倍以上のファイルサイズになるということがございます。ですので、左の部分ですね、電子署名プラス保管レスポンスへの影響ということで、電子署名そのものに関しましてはそれほど直接的な影響はございませんが、何かしらの保管のサービスのところに登録するというところに関しまして、スマートフォンなどからアップロードすると数分ぐらい掛かるというようなところで、保管のレスポンスに関して影響が出てくるという部分がございます。   右の方に行きまして、保管のコストということです。ここは典型的な例としまして、スマートフォンで録画した動画を保管した場合に費用がどうなるかということを概算としてお示ししているものになっておりますけれども、単純にハードディスクの保管費用だけで年間約1,400万円ぐらいの費用が掛かると、これは本当にストレージの部分だけになっておりますので、セキュリティ対策とかの周辺のシステムの運用とかを含めますと、年間数千万円の単位で恐らく掛かってくるであるということが推察されるということになっております。 ○宍倉参考人 三菱UFJ信託銀行の宍倉です。最後に少し補足をさせていただきます。   今、電子署名について私と日本電気様の方から御説明させていただいたのですけれども、これらについては技術的な観点からお話をさせていただいたものでございまして、電子署名法、公的個人認証法としてどう読めるかといった部分は検証しておりません。御承知おきください。よろしくお願いいたします。   続きまして、16ページを御参照ください。生体認証のところについて御説明をさせていただきます。冒頭、生体認証について入江の方から触れさせていただきました。生体認証の中でも、今までの御議論の中で挙げられました顔貌認証、指紋認証、音声認証、虹彩認証、静脈認証について、縦列五つのカテゴリーで比較をさせていただいております。  まず、今回デジタル遺言という幅広く国民の方々が使われることになる制度というものでございますので、一般的な国民の認知度、きちんと使えるかどうかという観点から、項目に入れさせていただいております。この観点から申し上げると、例えば顔貌認証であったり指紋認証というものは、スマートフォンのロック画面の解除で日常的に使われているものでございますので、比較的認知度もあるのではないかというところで、○という評価をさせていただいております。一方で、音声認証、虹彩認証について×とさせていただいております。これは声紋認証、声による認証のサービスが一般的にまず今、普及しているものではないというところと、あと虹彩認証については、高精度のものと精度が低いもの、両方ございます。精度が低いものに関して申し上げると、少し前にスマートフォンのロック解除なんかにも使われていたりはしたのですけれども、コンタクトレンズなんかでやり方次第で突破できてしまうということもありますので、例えばNASAのセキュリティとかで使われているような高精度の虹彩認証を念頭に置いて、今回こちらの列は記載をさせていただいております。それらの観点から申し上げると、高セキュリティエリアに限定された認証というところで一般的によく使われているものでもないのかなというところで、×とさせていただいております。一番右の静脈認証なのですけれども、実は銀行業界でもATMに静脈認証というものを付けているところがございます。なので、完全に使われていないかというよりは、一般にも少し使われているだろうというところで、△という評価をさせていただいております。   次、2列目、情報の取得難易度と書かせていただいております。ここでいう情報というのは何を指しているかというと、生体情報のことを指しております。顔貌、顔画像とか指紋のデータとかですね。その観点から申し上げると、顔貌のデータとかはスマートフォンのカメラとかで撮影ができよう、指紋もセンサーのところで取れようというところで、両方○とさせていただいております。音声についても、マイク機能が付いている端末であれば比較的取得が容易というところで、○とさせていただいております。高精度の虹彩認証、こちらについては専門機材の利用が必要というところで×、同じく静脈認証についても、静脈をスキャンできる専門機材が必要というところで、やれる場所が限られるという観点から、×とさせていただいております。   次に成り済ましリスク、3行目のところを御説明させていただきます。顔貌認証、こちらについてはかねてから議論の中にも挙がっておりましたディープフェイクの対策というものをとらずして、そのまま使ってよいというものではないかと思われますので、△とさせていただいております。指紋認証についても、3Dプリンターなんかで手袋みたいなものを使って再現できてしまうということもあり、ディープフェイクと同じ程度のリスクがあろうということで、△とさせていただいております。音声認証についても、生成AIで合成音声が取れるというところが、メディア等でもバラエティ番組で少し取扱いがあったりしますので、△とさせていただいております。対して、虹彩認証と静脈認証ですね、こちらについては極めて成り済ましが難しいというところもございますので、○という評価をさせていただいております。   次、4行目、今回我々がこの後御説明差し上げる3章を作るに当たって最も重視したところで、突合元情報の確からしさというものがございます。これは何を指しているかと申しますと、生体認証を掛けるときに元の正解となる情報って誰が確認して取った情報ですかというところを確からしさと表現しております。顔貌認証のところで申し上げると、例えばマイナンバーカードのICチップの中には顔写真データというものが付いております。これは券面に貼ってある顔写真のことではなくて、ICチップの中にデータとして保管されているものを指しております。ここに入っている顔写真データというものは、国が本人確認をした上で取得して、マイナンバーカードを作るときにICチップに埋め込んだものでございますので、これは突合元情報の確からしさとしてはかなり高いものであろうということで、○と評価をさせていただいております。次、指紋認証ですが、こちらは×とさせていただいております。まず、指紋を本人確認した上で取得するケースとはどういったものが考えられるかというと、例えば警察による容疑者の特定等、特定の条件下でしか余り行われていないのではないかというところで、×とさせていただいております。音声認証も同じです。警察は関係ないのですけれども、本人確認をした上で音声、その人の声を収録するということが果たしていつ行われるかと考えられると、これは×でないかと考えております。虹彩認証も同じです。静脈認証、こちらに関しては、銀行はキャッシュカードを発行するときに、キャッシュカードのICチップの中に静脈情報を、認証できるように埋め込むのですけれども、金融機関は犯収法上の本人確認を義務付けられておりますので、法律に則った本人確認をした上でキャッシュカードの発行をしております。なので、×とも言い切れないというところで、△という評価をさせていただいております。   最後、サービス提供者、幅広く使われるこのデジタル遺言というものを念頭に置くと、例えばどこか一社の特許技術を使わないと認証できないということがないように、汎用的なものである必要があるのではないかというところからこの評価をさせていただいております。顔貌認証、指紋認証についてはいろいろな事業者が既に参入しているというところもございまして、○と評価をさせていただきました。音声認証、虹彩認証、静脈認証につきましては、基本的には専門事業者が現在サービス提供されているというところもございますので、独占まで行かなくても寡占であろうというところで、△とさせていただいております。   次に日本電気様、お願いいたします。 ○今橋参考人 では、日本電気の今橋より、生体認証、特に顔貌認証について御説明いたします。   まず、17ページ目です。生体認証の信頼の大元となるトラストアンカーについて御説明いたします。マイナンバーカード、先ほども御説明がありましたが、その中に券面APですね、ICチップの中には顔写真のデータが格納されております。顔写真のデータは、マイナンバーカード交付時に地方公共団体が厳密な本人確認を実施しているというところで、確実に本人の情報であるということが公的に保証されているというところがポイントとなっております。   こちらを用いて実際に本人確認する場合は、マイナンバーカードの読み取り装置でカードの中のICチップから取り出した顔画像のデータと、あと今、目の前にいるカメラに映っている人を本人として撮影した顔画像、こちらを顔認証システムで1対1で比較照合することにより本人確認を行うということができますということで、この方式であると、事前に顔写真を撮影してデータベースに登録しておくような手間は不要となるというものとなります。   具体的に行われている本人確認の例として、右下に少し記載していますが、マイナ保険証ですね、こちらは昨今運用が始まっておりますが、病院とか薬局などにこういったマイナンバーカードを読み取る装置が、顔認証付きカードリーダーと呼ばれていますが、こちらが昨今設置されておりますが、ここにマイナンバーカードを入れますと、そこのカードリーダーで顔写真のデータを呼び出して、この装置にもカメラが付いておりまして、その目の前にいる人の顔と比較照合して本人確認を行うというシステムとなっておりまして、既に運用が始まっているというものとなっております。   では、続きまして18ページ目です。生体認証、顔貌認証の精度について御説明いたします。カメラで撮影した画像とマイナンバーカード内の画像を1対1で比較する場合、顔貌認証については、こういった1対1照合と1対N照合と、大きく二つ方式がございます。1対1の場合は、先ほど例で述べたとおり、カメラで撮影した画像とマイナンバーカード内の顔画像を1対1で比較します。一方、1対Nというのは、あらかじめ顔画像のデータを取得して、例えば企業であれば社員数万人の顔写真をあらかじめ取得してデータベースに登録しておきまして、今カメラに映った人が社員の誰であるかというのを1対Nで照合を行い、その中の社員の誰かであるということが判定できたらゲートを開けるというようなシステムとなっております。一般的には1対1より1対Nの方が技術的難易度が高くなっております。   弊社の中でウォークスルー顔認証ゲートというものが既に設置されておりまして、こちらで社員のデータを使って算出したエラー率の1対1照合と1対N照合の場合の例が下の表になっております。1対1照合の場合であれば、マスクをしていない通常の顔であればエラーは発生していないというような状況となります。マスクをするとやはり少しエラーが発生してしまい、本人でないと判定してしまうことが少し出てくるというところになります。一方、1対Nの場合ですと、エラー率というのはやはり1対1よりも上がってくるというところで、具体的にはこちらのような、NECの社員の場合となりますが、こちらが参考の例となっております。   続きまして、19ページ目を御覧ください。こちらは先ほど少し御説明した1対1照合と1対N照合の簡単な御説明となっております。マイナンバーカードのように、本人画像とカメラに映っている顔画像を比較対照する、分かっているという場合であれば、1対1照合を用います。1対1照合で他人を本人と間違って判断する場合を他人受入率、本人を間違って本人でないと判断してしまう場合を本人拒否率と呼んでおりまして、こちらが顔貌認証の精度を決める指標となっております。1対1はパスポートとか社員証とかID写真に関する本人確認の用途、1対Nは人物検索的なものとなって、企業内のゲートとかで使われるというようなものとなっております。あとは、今カメラに映っている人が誰であるかというのを検索するという用途で1対Nが用いられるということで、用途によって異なる手法を用いているということになります。今回の本人確認の用途であれば、1対1照合という方式になります。   続きまして、20ページ目、こちらは御参考ですが、実際、生体認証、顔貌認証を行う場合の本人拒否率と他人受入率との関係について御説明した図となっております。こちらは本人同士の写真を比べたものです。横軸が、左に行くと似ていない、右に行くと似ているというような形になっておりまして、縦軸が、写真同士を比べた場合、どれぐらいの数があったかというのが分布されているというものとなっております。本人同士を比較したものはこの右側の山となっておりまして、当然似ている方に山が偏ります。他人同士を比較した場合は当然左側に山が偏るということで、こういった分布を用いて、更に閾値を決めまして、閾値より高ければ本人であると、閾値より低ければ他人であると判定するのが一般的な顔認証システムとなっております。   この閾値の付近、オレンジ色の部分ですね、他人同士のペアの比較なのですけれども、本人であると判定してしまう場合が他人受入率、FARと呼ばれるものとなります。閾値より下の部分で本人のペアのスコアになっているものというのは、FRRということで、間違って本人を拒否してしまう率となっております。この閾値を高くすると厳密性が増しまして、他人受入率はどんどん低くなっていきますが、その代わり本人拒否率が高くなります。逆に閾値を下げていくと、他人受入率は上がってくるのですが、本人拒否率は下がってきて、利便性が増してくるというようなことになります。一般的に、この閾値を運用の用途によって高めにするか低めにするかというふうに設定しているというのが一般的な顔認証システムとなっております。   続きまして、21ページ目です。こちらは顔の経年劣化に伴う認証精度への影響について御説明した資料となっております。当社が米国政府機関でこの顔貌認証の試験を受けておりまして、そちらの受けた試験の結果がこちらに示してございます。下の表の一番右の列が12年前の写真との比較の結果です。こちらは1体N認証の場合となっておりまして、1対1年認証よりも少し厳しい例となっておりますが、当社の顔貌認証エンジンの場合、エラー率は12年前の写真と比較しても0.19%ということとなりまして、かなり低い値となっておりますので、当社のエンジンであればこの程度の低いエラー率で運用が可能となっております。マイナンバーカード自体、有効期限10年で、10年ごとに写真を撮り直すということを考えますと、実運用上問題ないと考えております。 ○横田参考人 日本電気の横田です。22ページに参りまして、過去の議論の中で挙がったと認識しておりますバックグラウンド認証に関しまして、御紹介をさせていただきます。   こちらは複数の生体認証や振る舞い認証などを組み合わせることで、利用者が能動的にログイン、いわゆる何かサービスを利用するときにログインというのをすると思うのですけれども、それを行わなくても常時、画面の裏側でずっと、例えば顔を撮影して認証を続ける技術となっております。ということで、例えば遺言作成途中での家族の別人への入れ替わりを防げるといったような効果が期待されると考えておりますけれども、一部の企業のみが提供している先端的な技術となっておりまして、必ずしも一般的に普及しているものではないとは考えておりますが、先ほどの入れ替わりを防ぐといった用途に関しましては有効な技術であると考えております。   仕組みに関しましては、左下の方に記載しておりますけれども、明示的なログイン操作をすることなく、生体認証と振る舞いというような、例えばスマートフォンを操作しているような動きですね、こういった情報を常時取得しまして、それを組み合わせて、本人が入れ替わっていないということを継続的に認証し続けるというような仕組みとなっております。また、生体情報はスマートフォンなどのデバイスの方に保存されていますので、運営側が個人情報となるような生体情報を管理する必要がないというような技術となっております。   右下の方に行きます。家族の成り済ましリスクということです。注意点としましては、このバックグラウンド認証そのものには身元確認を行うためのトラストアンカーは基本的に存在していないと認識しておりますので、ほかの、先ほどのマイナンバーカードに入っている顔認証などで身元確認を行った上で、この技術を組み合わせて利用するといったことによって、より、途中での入れ替わりといったものを防げるのではないかと考えております。   23ページに参りまして、少し技術的には替わりまして、Q4に対応するブロックチェーンの部分に関しまして説明させていただきます。こちらはブロックチェーン、ごく簡単に言いますと、改ざんを非常にしにくくなるようなデータベースの仕組みということになりますけれども、これをどういうふうに実現しているかということにつきまして、簡単にかいつまんで御説明をさせていただきます。   まず、一つ目の改ざんを防ぐ仕組みとしまして、データ構造になっております。こちらはハッシュチェーンと呼ばれるようなデータ構造をとっておりまして、そのデータを複数のノード、サーバという複数の運営者で管理することによって、仕組みとして改ざんを非常に困難にしているという仕組みになっております。運営者のモデルによって幾つかの形態が存在しております。   左下の方に行きまして、ブロックチェーンとはというところになりますけれども、まず、複数のデータをまとめたブロック単位でデータを管理し、ブロックを追加していくハッシュチェーンのデータ構造を持つ。これはどういうことかといいますと、何件かのデータをまとめたものを一つのブロックとして管理しまして、そのブロックをどんどんつなげていくというようなデータ構造をとっておりまして、それがブロックチェーンと呼ばれるゆえんになっております。   このブロックに対して、その次のブロックを追加するときに、この前のブロックのハッシュと呼ばれる暗号学的に計算したデータを次のブロックに含めるというような構造をとっております。それによって何が起こるかといいますと、どこか特定のブロックのデータを改ざんしようとしますと、そこにつながるブロック全てのハッシュを併せて改ざんしていかなければ、全体として整合性を持ったデータにならないというようなデータ構造をとっております。それによって、どこか部分的にデータを改ざんすることが非常に難しいということになります。かつ、この同じハッシュのチェーンを全く同じデータを複数の運営者で共有して管理するような運営形態となっておりまして、それによって、改ざんを行うとしますと、複数の運営者を同時に攻撃して改ざんしなければいけないというようなことで、二重に改ざんが難しくなるというような仕組みになっております。   右に行きまして、ブロックチェーンの種類です。ブロックチェーンには、誰がこのノード、サーバを運営しているかですとか、誰が書き込みを申請したり承認できるかによって、様々な運営形態が存在しております。一つ目は、パブリックチェーンと呼ばれる、不特定多数が誰でも参加者となり得て誰でも書き込めるようなチェーン、これはいわゆる暗号資産に用いられるBitcoinですとかEthereumと呼ばれるような暗号資産で広く使われているようなチェーンになっておりまして、個人を含めて誰でも参加者となれますので、例えばBitcoinの場合ですと、世界で1万5,000台ぐらいのサーバが運営されているといわれておりますし、Ethereumにおきましても数千台のサーバが世の中に運営されるというような仕組みになっております。   ただ、このサーバを運営するための仕組みとしまして、書き込みを申請するときに利用料が発生するというようなのが一般的に用いられていまして、これが時価で発生すると言っていますが、高い金額を申請した人から優先的に書き込まれるというような一種のオークション形式になっておりまして、例えば現在のEthereumの場合ですと、1回書き込もうとすると数百円から数千円の費用が掛かってくるということで、それほど気軽に使えるようなものではないというようなものになっているかと思います。   二つ目は、コンソーシアムチェーンと呼ばれる、複数の組織がコンソーシアムを組んでこのブロックチェーンのサーバを運営しているような形態になっています。この仕組みにおきましては一般に、書き込める人が限定されるということと、運営する費用につきましては、ノード、サーバを運営するコンソーシアム各社で運用費用が発生しますので、利用料は各社で合議して決めるというような設計次第というような運営形態となっております。 ○宍倉参考人 三菱UFJ信託銀行の宍倉です。24ページの御説明をさせていただきます。今、日本電気様の方から御説明いただいたブロックチェーンを、では今回のデジタル遺言にどう使えるかというところを弊社で考えたものをスライドにしております。   まず、ブロックチェーンの改ざん耐性の考え方というものが一つ、肝になるなと思っております。例えばパブリックチェーンの場合、どういうことかと申し上げますと、みんなが見ているところで悪さはできないよねという透明性というものが改ざん耐性の軸となっております。よって、みんなが見てはいけないものに使うことは余り適していないと考えられます。パブリックチェーンに一度載せた情報というのは基本的には消せません。この3要素から見るに、では遺言というファイルはこのパブリックチェーンに載せてもいいものなのかどうかと考えると、弊社としては載せない方がいいのではないかと考えております。   下の図にも起こしているのですけれども、誰でも検証者になれるので、監視者が多いです。一人一人の検証者は完璧でなくてもいいので、一人二人間違えても、ほか大多数、マジョリティが合っていれば大丈夫です。これがパブリックチェーン上の真正性というものです。チェックする人が多いので、検証の手間が当然掛かります。Bitcoinなんかですと、ファイルを1個載せるのにも10分ぐらい待ったりとか、そういうこともございます。先ほど日本電気様の方から御説明がありましたガス代というものも、検証する人が多ければ多いほど掛かってきます。混雑するというところも併せて、お金が掛かってきますというところがございます。   コンソーシアムチェーンの考え方で申し上げると、基本的には信頼できる人たちで監視をし合うという考え方がこのコンソーシアムチェーンの改ざん耐性となっております。なので、信頼的できる人たちにしか見せる必要がないので、デジタル遺言も載せようと思えば載せられるかなと考えております。中央管理者が存在するので、情報の削除や修正も、賛成多数が取れれば、やろうと思えばできるというような特性があります。検証者になれるのは、そのチェーンの中で承認された人だけ、限られた人たちだけです。ただし、例えば検証者が3人いたとしたときに、一人一人が検証者として信頼される必要がある。その他大勢のうちの1人ではなくて、3人しかいないうちの1人というように責任が結構重く発生してくるところがございます。チェックする人が少ないので、今申し上げたように一人一人の責任が重く、例えば3人同時に不正アクセスみたいなことを受けたりすると、その改ざんもなし得てしまうところがございます。基本的にはブロックチェーンを使わないところと問題としては同じなのかなと理解しております。   今申し上げた改ざん耐性の考え方、例えば、ブロックチェーン上にみんなが見てはいけないものを載せないというような考え方に基づいて、右側にデジタル遺言にブロックチェーンをどうしたら使えるかというところを考えてみたものを掲載しております。部会の資料でもスマートコントラクトというワードが出ておりましたので、こちらについて簡単に御説明させていただきます。イメージは自動販売機かなと思います。自動販売機は100円を入れると、例えば商品が出てくる、あらかじめ決められたプログラムに基づいて指定条件を満たすと何らかのものが出てきます。スマートコントラクトというのは基本的にはそういう考え方のものとなっております。   同じく部会資料の中に、改変防止措置を講じるとともに、相続開始前は遺言者のみがアクセスできて、相続開始後は関係相続人等が遺言に係る電磁的記録にアクセスすることはできないかというような文言がございました。では、これをどうしたらできるかというところも考えてみたのですけれども、例えば保管主体のところに、まず遺言者が遺言ファイルを保管し、ブロックチェーン上には基本的にはみんなが見てはいけないものは載せられないので、保管事業者が自社の内部犯による犯行を防止するために、例えば遺言ファイルのハッシュ値を外にあるパブリックチェーンに記録するというような使い方も考えられるかなと思われます。   例えば、相続開始後に関係相続人がアクセスできるようにしようとすると、J-LISから遺言者の死亡通知みたいなところを連携してもらって、保管サービス事業者側で通知を受けて、ファイルへのアクセス権を相続人に通知した上で付け替えるというようなところが考えられます。   いずれにしても、ブロックチェーン上でこの死亡通知から相続人への通知、アクセス権の変更みたいなことを管理しようとすると、下の方に書かせていただいたのですけれども、そもそもそのチェーンの中に個人を特定するIDみたいな識別子と、そのIDにひもづく遺言ファイルを特定するような情報を書かなければいけない、遺言ファイルがどこに保管されているかという情報を書かなければいけない、通知人の連絡先がどこであるかということも書かなければいけないということもあって、かなりハードルが高いのではないかと考えております。   今申し上げたところでまとめますと、遺言のハッシュ値を登録するだけの使い方ぐらいしか我々としては思いつかなかったこともありまして、基本的に保管事業者そのものに信頼性がある、内部統制の仕組みがあるということであれば、この仕組みをわざわざ使う必要もないのかなと考えているところです。   次のページ、25ページを御参照ください。今までの技術のところをまとめまして、3章につながる、どの技術であれば使えるかというものを表形式でまとめさせていただきました。改めて少し振り返りになりますが、このまとめに当たって検討の方向性としては、パソコン、スマートフォンを利用して、自筆でなくてもデジタル技術を活用することで真正性・真意性等を担保する新制度がどうしたら作れるか、この作れるというのは開発という意味です。次にペルソナですね、遺言者はどういった方を想定しているか、これは一般的なパソコン、スマートフォンの操作方法、使い方に慣れている人として、その前提で下表をまとめさせていただいております。   まず、電子署名です。想定される活用内容としましては、遺言として作成された電子ファイルに対して、公開鍵暗号方式、一般によく使われる電子署名を付与します。これによって遺言ファイルの改ざん検知ができるようになる。期待効果、課題(リスク)に関しましては、偽造変造対策に電子署名というものが有効であるというところ、ただしマイナンバーのパスワードが流出している場合、かつマイナンバーカードごと詐取されてしまった場合は、その成り済ましリスクというのは避けられないところです。   次、遺言者の利便性・手続、機材等の一般性です。作成時負担は大きくないと考えております。これは確定申告の電子申請のときにもよく使われていることもあり、このように書かせていただいております。   運営者(官民)の負担・コストについては、公開鍵登録時、認証局への登録手数料というものが普通の公開鍵暗号方式の電子署名だと発生するのですけれども、マイナンバーカード活用時には鍵の登録等は無料というところがございます。ただ、最後、署名が誰のものであるか等の検証は、認定プラットフォーマーのサービスの中でやったりするところもございますので、その事業者が指定している手数料を支払う必要があると考えております。   次に2列目、録音・録画です。使い方としましては、本人が遺言内容を読み上げているようなところを録音・録画をすることが考えられます。例えば、代筆された遺言を本人が了承する場面だけを録音・録画するというようなところもあり得るかなと考えております。期待効果、課題(リスク)につきましては、偽造変造対策に一定程度の効果はありつつも、こちらについてはやはりディープフェイクによる偽造リスクというところが存在するので、この対応も不可欠であろうと書かせていただいております。   遺言者の利便性・手続等のところですが、作成時負担は動画で撮影するだけですので、余り高くはないかなと思っております。一般性も高いかなと考えております。   運営者(官民)の負担・コストでは、データ量次第で、普通のドキュメントファイルに比べると保管負担というのは重くなると思っております。これはお金だけの問題ではなくて、例えば保管事業者に対してアップロードする際に掛かる時間であったり、手間など、そういったものも含んでおります。文字化及びその検証負担というものも考えられると思っております。例えば金融機関で相続手続をするというときに、録音・録画ファイルを持ってきて手続をするとなると、それだけで金融機関側の手続者はその録音・録画を最初から最後まで再生しなければならない、金融機関ですと再鑑文化でございますので、それを再鑑する人も最初から最後まで視聴しなければならないところもございます。あらかじめそういったものを文字化しておいていただかなければ、なかなか実務上厳しいというところで書かせていただいております。   次、3行目、生体認証(顔貌)と書かせていただきました。どういう使い方がされるかというところです。遺言の作成又は代筆された遺言を自分のものですと承認をするときに、端末の操作者が本人であることを担保と書かせていただきました。簡単に言うと、マイナンバーカードの電子署名を配偶者の方が使っていないということを確認するところで使えるのではないかというふうに書かせていただいております。期待効果、課題(リスク)につきましては、偽造対策あるいは成り済まし対策に一定の効果があると考えておりますが、ディープフェイクによる成り済ましリスクというものは動画同様、存在しますので、次のランダム挙動撮影のところで改めてこちらについては御説明をさせていただきます。   遺言者の利便性・手続等の列について、作成サービスのID、パスワード保管の負担を低減するような使い方、スマートフォンのロック解除みたいな使い方ができるのではないかというところを一つ挙げさせていただいておりました。   運営者の負担・コストというところです。例えば、デジタル遺言サービスを提供するときにこういったものを組み合わせるとなると、例えば日本電気様のような生体認証サービスの利用料が発生するというところが考えられます。   次の行、ランダム挙動撮影と、これは何を申しているかと申しますと、金融機関の口座開設のeKYCのときに、前を向いてください、下を向いてください、右目をつぶってくださいとか、ランダムに表示される画面上の指示に従って顔の表情あるいは目をつぶる、つぶらないを変えるとか、そういうようなランダム指示が来ます。そのような対応をすることによって、次の期待効果、課題(リスク)のところになるのですけれども、ディープフェイクを含む偽造対策に一定の効果があると現状言われております。そういう背景もあって対策に使われているところがございます。   遺言者の利便性・手続、機材等の一般性のところでも、作成時の負担は大きくないと、金融機関の口座の開設の手続等で一般に利用されているものなので、馴染みもあるでしょうと判断しております。   運営者の負担・コストですと、そもそも生体認証サービスの中でこういったものを組み込んでいる事業者様が多いので、その中に料金等を含めて包含されるイメージでおります。   次に、ブロックチェーンです。どういう使い方が考えられ得るかというところで申し上げると、先ほどの御説明のとおり、ファイルそのものではなくて、その周辺情報、例えばファイルのハッシュ値みたいなところをブロックチェーン上に保管することによって、信頼のない事業者とかが自社の内部統制を図る仕組みの一環として使うというところが考えられます。   期待効果、課題(リスク)のところですけれども、公的機関の保管がない場合でも一定の変造防止というものができ得ると書かせていただいております。ただ、赤字で書かせていただきましたとおり、飽くまでハッシュ値等に限ることが推奨されておりまして、個人情報が含まれるようなもの、遺言ファイルの中に個人に関わるような情報というものが入っている場合は、余り推奨されていないところがございます。   運営者の負担・コストですが、国、事業者がブロックチェーンに情報を書き込む際に発生するガス代というものが、先ほどの御説明のとおり、掛かってくると書いております。   最後、AIです。今まで特筆して御説明差し上げていないのですけれども、今やはり生成AIは便利です。どういう使い方があり得るか、PC、スマートフォンで遺言作成する際に、案文の作成とか端末の操作を、次にこれを入力してください、例えばこんなことを入れますというように、操作の誘導みたいな形で使い得ると考えられるかなと思っております。   利便性・手続、一般性ですが、AIというものが前面に出て単独で何かをするというよりは、それを組み込んだサービスとかアプリケーションを通して、こういったものがどれだけ広がるかというようなところと依存関係になるかなと考えております。   運営者の負担・コストですが、遺言者の手続負担の低減やITリテラシーを補う効果が期待されると書かせていただいております。操作のハウトゥーのような形で使っていくと、運営者が都度、問合せを受けて有人対応するというような手間が掛からなくなってくる、そういった業務効率化で使えるのではないかと考えております。   この中で赤字で書かせていただいた部分がノックアウト、あるいはこれを必ずしも使わなくていいのではないかというところで、これを除いた、電子署名、生体認証、ランダム挙動撮影、AIを使った、もし民間事業者がデジタル遺言を作るのであればというような仮定の下で考えたものが3章という形になります。2章についてはここまでとなります。 ○大村部会長 ありがとうございました。   それでは、ここまでの御説明につきまして御質問をお伺いしたいと思います。質問のある方は挙手をお願いいたしますが、その際に、発言に当たってお名前をおっしゃっていただければと思います。どなたからでも結構です。30分程度時間を取りたいと思います。 ○隂山委員 詳細な御説明ありがとうございます。隂山でございます。4点ほどお伺いいたします。   まず、電子署名一般の非改ざん性について御教示いただけたらと思います。現在の技術では、電子署名が付されたデジタルデータを改ざんした場合、改ざん検知機能によって、どこをどのように改ざんされたかが一目瞭然になるものと理解をしております。仮に本日時点で電子署名をしたデータをローカル環境に保管しておいて、30年後、50年後に当該データを確認した場合、当該データが改ざんされていないということを技術上担保することは可能かというのが、まず1点目でございます。   2点目といたしまして、11ページ目の送信者の図の中に、JPKI PDF SIGNERのロゴが見受けられます。行政手続などではプラグインソフトを活用することが推奨環境とされているものもございますけれども、JPKI PDF SIGNERを使用しても電子証明書の有効性検証等において特段問題は生じていないと理解をしてよいでしょうか。これは、登記手続の際に、あるソフトを用いてマイナンバーカードの電子署名を行った場合には、法務局において検証ができず、別のソフトを使った場合には有効性検証ができたというような事例も聞き及んでおりますので、有効性検証に当たっての技術的な課題などがありましたら、御教示いただけたらと考えています。   3点目といたしまして、12ページにある民間の電子署名事業者の活用についてです。12ページの図からは、民間の電子署名事業者がサービス利用者の本人確認を行い、サービス利用者本人の電子証明書を払い出す仕組みであると捉えておりますけれども、そのような理解でよろしいでしょうか。また、12ページの右側にはDocuSign(一般認証)とございます。ここでいう一般認証につきまして、もう少し補足をしていただくことができたら有り難いと思うとともに、電子署名の中にはいわゆる承認用署名と証明用署名があろうかと思いますけれども、この一般認証の場合には承認用署名と同様、複数人が電子署名を行うことができる仕組みであると理解をしてよろしいでしょうか。また、証明用署名が行われた後、そのデータに対して更に電子署名やタイムスタンプを重ね掛けすることが一般的に行われているかどうかといったことも教えていただけたらと思っております。   最後、4点目、13ページの動画ファイルの埋め込みに関しまして、PDFに動画ファイルを埋め込んで電子署名を実施するという図がございました。PDFに動画ファイルを埋め込むことは、一般の方が容易に無償で行うことができるかどうかという点と、動画を埋め込んだファイルは容量が大きくなるとも思われますが、動画のハッシュ値を確保しておいて、当該ハッシュ値を遺言の中にテキストデータとして残しておくことで、将来にわたって動画の同一性を担保するという措置はあり得るのかという点を御教示いただけたらと思います。   長くなりましたけれども、よろしくお願いいたします。 ○大村部会長 ありがとうございます。それでは、お願いいたします。 ○宍倉参考人 三菱UFJ信託銀行の宍倉です。1点目と2点目は私の方から、3点目と4点目は日本電気様の方から御回答いただければと思います。   1点目の非改ざん性のところですね、30年、40年たったときに、それがローカル環境で保存されていて問題がないかどうかというところ、ここについては電子署名に使われる暗号化アルゴリズムの、暗号化技術がどれだけ古くなってしまっているかに依存するかと思っております。現在、暗号化技術が10年、20年使えるのかというところで都度、IPAのような組織が、まだ使えるのか、もう使えないのか、といった内容を公表されていると思うのですけれども、これがいわゆる一昔前の技術で脆弱性が明らかであるみたいな内容ですと、ローカル環境のところでは何の手当てもされないまま、その古い技術で電子署名されたものが残り続けることになるので、ハッシュ値を変えないまま改ざんされるということが、暗号化技術が古くなれば、起こり得ると考えられます。   2点目のところですね、私が資料に載せたソフトウエアを使った場合、法務省様が推奨するソフトウエアではないけれども、検証のところでエラーが出るか、不都合がないかといった趣旨の御質問と理解を致しました。署名時点と検証時点に分けて考える必要があると思っております。署名時点では、電子署名自体をファイルに埋め込むだけですので、署名が上手くいくかいかないかのところでは問題はないと思うのですけれども、別の観点として、不正利用のリスクがあるかなと思っております。例えば、悪意ある第三者が提供したマイナンバーカードを使う電子署名ソフトですと、本人が意図しないようなファイル、契約書みたいなものに本人が意図しないまま電子署名を勝手にされてしまうというようなことが起きると思っておりますので、そういう観点からも、推奨ソフトを使われた方が安全だろうとは考えられます。一方で検証の観点で申し上げると、先ほど申し上げたような認定プラットフォーマー様のサービスと連動したものであるとか、団体署名検証者のサービスのような要件が必要になってきますので、特定のソフトウエアでしか正しく署名検証はできないかなと考えられます。 ○横田参考人 日本電気の横田から御回答します。先に4番目の方の質問に回答させていただきますが、まず、PDFに動画等のファイルを一般の利用者がフリーのツールで埋め込めるかということにつきましては、一般的なアドビのリーダーで埋め込めると考えております。   もう一つの論点としまして、動画のハッシュ等を代わりにPDFに記載することによって担保できるかということにつきましては、基本的に短期間においてはそれで十分なのですけれども、やはりファイルが別になっておりますので、先ほどのハッシュ技術の暗号の期限切れのリスクがございますので、やはり同じファイルに埋め込んで、署名を更新していくというような仕組みに乗っからないと、改ざんリスクとしては出てくるのかなと考えております。   3番目の質問をもう1回、お願いしてよろしいですか。 ○隂山委員 失礼いたしました。民間の電子署名事業者の活用の局面での御質問でした。図を拝見いたしますと、民間の電子署名事業者のサービス利用者について、利用する電子証明書は、サービス利用者本人の電子証明書を民間の電子署名事業者が払い出すといった仕組みになっているのか、あるいは事業者の署名鍵を使うことも考えられているのかという趣旨で御質問を差し上げました。また、一般認証と書かれているものにつきまして、これが電子署名の中でいう、いわゆる承認用署名に当たるのか、あるいは証明用署名に当たるのかといった質問でした。証明用署名の場合、使用するソフトによっては複数人での電子署名が難しくなるようなケースもあるのではないかと考えましたので、図で示されている一般認証のケースにおいては複数人が電子署名を重ね掛けすることができるかどうかという趣旨で御質問差し上げた次第です。 ○宍倉参考人 三菱UFJ信託銀行の宍倉です。大変失礼いたしました。複数人署名の部分を除いて、私の方から少し回答できればと思います。   まず、前段のサービス利用者本人の電子署名を払い出す仕組みであるかどうかというところは、御認識に相違ないかなと思っております。説明の中でも申し上げましたけれども、払い出すのもありますし、電子署名事業者以外のところでですね、利用者自身が持っている証明書を取り込むという方法も考えられ得るので、どちらも対応できるかなと考えております。   一般認証のところですが、電子署名法上、確か認定業務のほかに特定認証と一般認証というカテゴリーがあったかと、おぼろげながら記憶しております。認定のところはデジタル庁様を始めとした幾つかの指定業者、APPENDIXの方にも付けさせていただいているのですけれども、APPENDIXの33ページの左側のところですね、特定認証業務のうち認定されているものというのはこの数だけであると認識しております。認定されていない特定認証業務と一般認証業務を分ける部分は、確か電子署名に係る技術要件があったかなと考えております。特定認証のところでは、その電子署名に係る技術を一つの評価軸として、特に本人性が重視されるものというような主旨で書かれていたかなと思っております。   私が今回、DocuSignのところに一般認証と記載をさせていただいた意図は、DocuSignの中で使われている暗号化技術がこの特定認証業務に該当する基準のものを使っているかどうかが確認できなかったので、一旦、一般認証と書かせていただきました。もしかすると、こちらは特定認証である可能性もあります。申し訳ございません。 ○横田参考人 日本電気の横田から、サービスを利用したときの複数人の電子署名に関しまして、補足いたします。   こちらは正直なところ、サービスの実装によるというか、各社のサービスによって違うのかなと考えておりますけれども、各個人の鍵というか証明書を利用して署名するというようなサービスもあると考えておりますし、代理人というか、サービスの事業者が代わりに署名するというサービスも存在しているというように認識しておりますけれども、いずれの場合も複製人における署名というのは現在、世の中的に広く使われているものと認識しております。 ○大村部会長 隂山委員、よろしいですか。 ○隂山委員 ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほか、いかがでしょうか。 ○齊木委員 齊木でございます。私の方から、複数人での電子署名について、電子公正証書の開発の過程で知り得た情報、それから電子定款のシステムに関わる情報から申し上げたいと思います。   今まで行政で使われている電子署名というのは、PDF電子署名とXML電子署名があります。PDF電子署名というのは、定款認証の場合は、本人が定款に署名するときはPDF署名が行われています。これは、ただし、今までは一つの文書にPDF電子署名ができるのは1人です。XML署名というのは、公証人が定款認証するときに使っております。行政文書も元々XML署名だったのですが、ここ数年、デジタル庁がPDF電子署名を用いるように勧めています。その違いはどこにあるかというと、PDF電子署名というのはファイル自体に電子証明書を埋め込むわけです。XML電子署名というのはファイル自体には電子証明書を埋め込まず、外付けで電子証明書を付けるという点です。どこに違いが出てくるかというと、ファイル自体に埋め込むと、埋め込んで電子署名したときに、その証明書部分も併せてハッシュ値を記録することになります。そうすると、ある人が電子署名した後に別な人が電子署名すると、最初の電子署名から見ると、後ろの人の電子署名をすることによってファイルのハッシュ値が変更されてしまいます。ですから、黙っていると最初の電子署名が改ざんされたと、そういう扱いになります。外付けの場合は、電子署名が幾つくっつけても改ざんとなりません。本体の文書だけがクレジット値という形で改ざん防止の数値が記録されて保存されるので、電子署名が加わってもその数値に変更はなく、改ざんという表示にはならないということになっています。そういったわけで、公証人は電子定款の場合は、本人がPDF電子署名したものに外付けでXMLの認証文GPKIの電子証明書を付けているわけです。それで改ざんにならないからです。   今、行政的に問題となっているのは、共同申請をPDF電子署名でできないかということです。これは、今までのハッシュ値によって改ざんかどうかを判断するということになれば、1人目の人の後に2人目が電子署名すると、改ざんという扱いになってしまうわけです。そこで、デジタル庁が、河野大臣が各行政庁に、行政における電子申請は、共同申請の場合はXML電子署名を採用するようにという通知をしたわけです。それで、実は法務省の登記供託オンラインはもうXML署名でするように改修されています。残念ながら公証人の定款のシステムは、私どもは余りお金がないものですから、遅れておって、今年度やるような予定になっております。   今頂いた13ページの図だと、そういった知識を前提とすると、PDF電子署名が複数、同じ書面にできるという前提になっております。正直言うと、埋め込むこと自体は技術的にもちろんできるわけです。ただ、埋め込むので、最初のやつが改ざんと表示されないかどうかというのが次の問題です。ここも技術的にできないのかどうかは、実は私は正直言って、分かりませんが、電子公正証書を開発するときにデジ庁とかマイナンバーの部局に、遺言者と公証人が同じファイルに電子署名できないかということを問い合わせたのですが、それは駄目だという回答です。これが駄目だというのが、技術的に有効性確認ができないという意味なのか、それは政策のポリシーとして許さないという趣旨なのかはよく分からないのですが、駄目だという前提になっております。そのために、電子公正証書の開発では、公証人だけが最終の電子署名をするということになっています。あとはタッチペンによる電子サインというふうになっています。同じようなことは、実は民間の電子署名業者のホームページをつぶさに見ていくと、電子署名の証明書としてマイナンバーカードだけ除いている業者が非常に多いのですね。これは恐らくデジタル庁のそういう方針、あるいは総務省の方針があるために、マイナンバーカードだけ除いている可能性があると思います。   あと、署名の仕方にもよるわけでして、電子署名法2条の電子署名というのは、偽造の防止の措置を署名と同時にやっているものだけが電子署名法の電子署名という扱いになっているのですが、実はハッシュ値のアルゴリズムを今、SHA256を使っているのですけれども、それを使わずに、ハッシュ値を記録しさえしなければ、電子証明書の情報を埋め込むことは技術的に簡単なのですね。   ただ、それが電子署名法の署名に当たるかが問題でして、電子署名業者は総務省にどういう質疑応答しているかというと、これも調べたのですけれども、当事者が契約で電子署名しますね、あれは電子署名法の署名でなくても、最後の立会人としての業者が電子署名法上の電子署名、つまり改ざん防止措置をすれば、全体の署名が電子署名法上の署名となると理解してよいかという問いをしているのです。これは1年か2年交渉して、それを認めたのです。ということは、逆に言うと、電子署名法上の電子署名は、最後の立会い業者だけがしていると私は理解しています。   ですので、複数でPDF電子署名をできるかという技術的な問題と別に、マイナンバーカードについての政府のポリシーがどうかというのを別に考察する必要があると、このように考えています。   それから、ついでに、先ほどの隂山先生の1番目の問題、一旦改ざん措置をしておけば何年でも大丈夫かという話については、実例として、もう駄目なのですね。実は今、ハッシュ値を記録するというやつは、最初はSHA-1だったのですが、これはアメリカの安全保障省が開発したやつなのですけれども、これが約10年後に中国の学者によって破られたのです。今、電子署名を皆さんがすると、きちんとデータを見ると、SHA-1とSHA-2の両方の数値を見ることができます。現在は、SHA-2の256というのを一般的に用いているというふうに認識しております。ですから、アルゴリズムは常に古くなるものだという理解で制度設計をしないと駄目で、民間のパソコンに長期間にわたって置いておいて安全だという発想は全くないと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。御質問は、特にいいですか。 ○齊木委員 質問は、ですから、結局複数の電子署名ができるといったのは、総務省やデジタル庁のポリシーを確認された上ではなくて、単なる純粋技術上の観点から御説明いただいたのではないかと理解しているのですが、それでよろしいでしょうかということです。 ○大村部会長 その点だけお願いします。 ○宍倉参考人 三菱UFJ信託銀行の宍倉です。プレゼンテーションの際にも申し上げましたけれども、電子署名法その他、公的個人認証法との適合性等は今回、検証はしておりませんので、当然、委員のおっしゃったようなポリシーのところもデジタル庁側に確認できておりません。技術ベースでのお話をさせていただきますと、先に署名した人の検証が単独でできるか、日本電気様、御説明できますか。 ○横田参考人 日本電気の横田から説明します。1人目の署名が終わったファイルを2人目の人が署名したらハッシュが変わるというのは、正におっしゃるとおりなのですが、PDFの仕様上は、変更履歴を付けて全体に対して再度署名するというような、変更履歴を追加していくようなファイルの構造になっておりますので、最終版をデータとしてのぞいたときに、各人が変更を行った履歴も含めて全部確認できますので、大元のファイルが改ざんされていないことも確認できますし、各署名者の署名を確認することもできるというような形になっています。飽くまで技術的なことを申し上げていますので、どういうふうに判断されているかというのは確かに確認が必要な部分はあるかと思います。   続きまして、時間切れというか、ハッシュの技術の危殆化といわれるような時間に関する問題につきましては、全くそれもおっしゃるとおりでございまして、どんどんハッシュのアルゴリズムが更新されてきますので、新しいアルゴリズムでアーカイブタイムスタンプと呼ばれる、時刻を含めた署名を追加していくということが技術的にできます。署名を追加していく人はファイルを預かっている人ということになるかと思いますけれども、ファイルを預かっている人がどんどん署名を追加していくことによって、署名が期限切れになる前に更新していくことができるというのは技術的には可能になっていると考えております。ですので、数十年間運用していくことを想定しますと、当然そのような管理している遺言ファイルに対して継続的にアーカイブのスタンプを更新していくということは、運用として発生すると考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○相原委員 3点ほど教えていただければと思います。1点目は、これは参考人の方が知っておられたら回答してください。今回の検討は、前提として税務申告において電子申告をしている方等を想定しての御検討であると伺いました。最後の方の説明でも、ある程度のスキルがある方というお話だったと思うのですけれども、現時点で電子申告している方の割合ってどのぐらいかというのは御存じですか。立法事実の関係にもなるかなと思ったので。もしお知りでなければ、また後で法務省の方から教えていただければと思っております。   2点目が、生体認証の顔貌のところで、成り済ましリスクでディープフェイクの対策が必要であるということをおっしゃったかと思います。後半の方にも少しおっしゃってくださったような気はするのですが、具体的な対策としてどういうことが想定されるのか、それについて今もしお考えがありましたら、教えていただきたいと思いました。   それとの関係なのですが、3点目、12年間の経過を経て、それほど認証が難しくはなかったというような、確かそういうお話が、21ページですか、エラー率のところのお話があったかと思うのです。ただ、12年間といっても年代によって大分違うのかなと思います。私なんかは高齢者の問題とかをやっていたので、70歳の人が82歳までで途中で大きな病気をされたりとか、70歳ぐらいで第1段階で作られて、そして、ある程度時を経て20年後とか、そこでもう1回遺言を変更しようとか言う場合の精度に関心があります。例えば60、70歳ぐらいでこういうのを使っていた人の顔貌の認証のところの、12年間というのは大丈夫、エラー率は低いということだというお話ですけれども、かなり精度は高いと理解してよろしいのでしょうか。 ○大村部会長 それでは、お願いいたします。 ○入江参考人 1点目につきましては、入江の方から。すみません、ただ、正確な御回答ではなくて、不確かなのですけれども、まず、確定申告をしている方の中のおおむね、6割程度は電子申告をされているということで、ここは政府がある程度イメージしている数字に近付いてきているという感触というか、認識でございます。少し正確でないので、申し訳ございません。1点目は以上です。 ○宍倉参考人 2点目なのですけれども、ディープフェイク対策の一例として、25ページにランダム挙動撮影というものを盛り込ませていただきました。リアルタイムで指定される画像の生成をその場で作って、ディープフェイクでこのランダム挙動撮影を突破するということは難易度が高いものとなっておりますので、対策の中で普及しているものということで、ここに一例として記載をさせていただきましたが、もう少しコストを掛けるといろいろな対策方法があるかと思いますので、3点目の御質問と併せて、日本電気様の方からお願いできますでしょうか。 ○今橋参考人 日本電気の今橋です。ディープフェイク対策、成り済まし対策として、今、認証される方に対して、右を向いたり左を向いたりとかという指示を出して、見るというものと、さらに、機器を使って、例えば顔の凹凸を計測できるような、ステレオカメラ的なものですね、そういった装置を用いて顔の凹凸を見るということで、ディープフェイクで画像を生成する場合、当然そこは画面という平面に映されるものになりますので、そういった顔の凹凸を見るとか、あと、そもそもディープフェイクを見破るAI技術というのも開発は進んでおりまして、ほかにも特殊な近赤外線のカメラを使うとか、いろいろな方式が考えられていますので、その中でコストとか普及度とかに見合ったものを採用するのが良いのかなと考えております。   あと、3点目の経年変化の件です。こちらは大人であると一般的には余り顔は変わっていかないということもありまして、おおむね成人、15歳とか、成人以降であれば、それほど顔は変化していかないのですが、マイナンバーカードは10年ごとに一応更新されますので、その10年間という期間で、大人であれば問題ないと考えています。ただ、例えばけがをされたり、顔が大きく変わってしまったりすると、やはりその場合は顔写真を撮り直していただいた方がよいということになります。   あとは逆に若年層ですね、こちらは実はすぐ顔が変わるということがありまして、なるべく短期間で顔を撮り直していただいた方が認証にはいいということです。今回、遺言書ということで若年層は関係ないと思いますが、顔認証が苦手なのはどちらかというと若年層ですね、顔がどんどんお子さんは変わっていきますので、そこが少し苦手な部分になります。 ○大村部会長 ありがとうございます。   あともう1問ぐらい、時間がありますが。 ○齊木委員 すみません、齊木でございます。先ほどお尋ねするのを忘れたのですが、私どもも実は公正証書の証拠としての動画の保存ということも少し検討したのです。そのときに問題になったのは動画の保存期間なのです。PDFは実はアドビ社が開発して以来、もう40数年にわたる保存実績があって、4、50年は絶対大丈夫という保証があったのですけれども、動画はファイル形式によって大分違うと聞いておりまして、一番長いPNGファイルでも10年程度しかもたないのではないかというような話も聞いたのですけれども、要するに遺言で使うとすると長期保存できないと問題なので、この動画の保存可能期間、これについては現時点ではどういう情報があるのかというのを1点。   それからもう1点は、動画の場合、成り済まし、ディープフェイクというのは、素材としての画像を用意して、それから作り出すというものを想定されているのですけれども、もっと単純な動画の偽造というのがあり得て、例えば、遺言の1条が長男Aにどこかの土地をやると、2条で二男Bにどこかの土地をやると、3条で長女に何をやるとかと3項目やっているうち、画像を1項目だけ飛ばしてしまうということは可能なのですよね。例えば、長男が二男を気に入らないから、二男の分だけ削除してくっつけてしまうということはあり得て、それは残っている部分だけは全く成り済ましでない偽造なのですよ。そういうものを検知できるのかということを少しお尋ねしたいと思います。よろしくお願いします。 ○横田参考人 日本電気、横田です。まず、動画のファイル形式の寿命ということですね。ファイル形式に関してはおっしゃるとおり、どんどんより圧縮の効率がいいものとか画質がいいものが開発されていますので、どんどんファイルの形式が変わっているのですけれども、では昔のものが再生できなくなるかというと、別にそこは昔のファイル形式を再生するアルゴリズムのプログラムが残っていればいいので、それを残している限りは、参照に関しては問題ないと考えています。   もう一つは、切り抜きの問題ですね。切り抜きに関しては、これもおっしゃるとおりなのですが、ですので、何かしら丸ごとをPDFに埋め込む、若しくは複数のファイルを束ねるエンベロープのようなものを使ってラップするようなサービスで、全体に対して署名するというようなものを打つことによって、途中だけ切り抜かれていれば当然、検証が一致しませんので、防げるのかなと考えております。 ○大村部会長 よろしいですか。ありがとうございます。   もしよろしければ、この程度にしたいのですが。特に御発言があれば御質問を伺いたいと思いますけれども、いかがでしょうか。   よろしいでしょうか。それでは、続きましてヒアリング資料の3、26ページ以下ということになりますけれども、この部分につきまして参考人の方から御説明お願いいたします。 ○宍倉参考人 三菱UFJ信託銀行の宍倉です。3章について御説明をさせていただきます。今回、三菱UFJ信託銀行がこれを作るとか、ほかの事業者の個社を指してこれを作るというわけではなくて、仮にこういったデジタル遺言というものに民間事業者が携わらせていただく場合は、こういうサービスが考えられるのではないかと、こちらを作成させていただきました。   27ページを御参照ください。今回、手続全体の流れ、作成から保管までというところを、いわゆるユースケースフローと呼ばれるもので作らせていただいたものになります。遺言者の動作が一番左の列で、次に遺言作成アプリとあります、これがお客様に実際に触っていただくアプリケーションで、その下に顧客操作と事業者の動きというボックスを設けておりますが、顧客操作がお客様がタッチする画面、事業者側の動きはお客様が見えないところでどんな動作をするか、その横に同じようなカテゴリーで、生体認証事業者と遺言保管者(官又は民)というところを設けさせていただいております。   流れを通しでまず御説明をさせていただきます。事前準備として、遺言作成アプリをダウンロードしていただいて、その中でユーザー情報入力とか本人確認をやって、IDの発行をやっていただくというところが最初のステップになってまいります。自分のアカウントができた段階で、そのアプリケーションにログイン認証してもらって、デジタル遺言の作成が始まるところが最初の動きになっております。   厳密に申し上げると、デジタル遺言の作成の開始の手前の認証までのところは、右側に吹き出しコメントを付けさせていただいているのですけれども、遺言の方式要件ではなくて、方式を遵守した遺言作成の前提となるような本人確認、トラストアンカーを確認した上での身元確認と当人認証のプロセスと書かせていただいております。その遺言作成アプリのアカウントは正しく本人のものですよねということを、例えば金融機関であれば犯収法上の本人確認の下、本人確認書類、マイナンバーカードや免許証を確認した上で発行するという、正しくその確認プロセスを踏みましょうという内容を書かせていただいております。   そこでデジタル遺言の作成が終わった後、青で囲った電子署名の手前の生体認証プロセスに入ってまいります。ここでマイナンバーカードの呼び出しをお客様の画面に表示させると、それを受けてお客様はマイナンバーカードを読み込ませ、裏側では、例えば日本電気様のような生体認証事業者側に生体認証機能呼び出しの発注みたいなことを掛けて、マイナンバーカードを読み込ませて取得した画像データを生体認証事業者側に取り込んでもらい、先ほど申し上げたようなランダム挙動撮影、成り済まし対策として、上向いて、下向いて、右目つぶって、みたいな顔を撮影し、それを生体認証事業者側で先に取り込んだマイナンバーカードのICチップにある顔写真と、今撮った顔画像を突合させて生体認証を掛ける、ここが青いところまでの流れになっております。   そこで、その端末を操作している人が正しくマイナンバーカードの持ち主である、遺言者本人であるということを確認した上で、次に電子署名のステップに入ってまいります。電子署名のステップが緑で囲わせていただいたところです。同じく、お客様の操作画面のところに電子署名画面というものを表示して、今度、生体認証ではなくて電子署名のためにマイナンバーカードを読み込ませてもらって、マイナンバーカードの署名用パスワードを入力してもらって、署名用電子証明書が有効かどうかというのを確認した上で署名をして、最後に、それを保管に回すというような流れとなっております。   フローだけですとイメージがつきづらいところがございますので、赤、青、緑に分けて、それぞれ別の資料を設けさせていただいております。次のページ、28ページを御参照ください。こちらが赤枠内の操作画面イメージというところで作成をさせていただきました。   ①番が、本人がアプリの利用登録を実施してログインをする、この中でeKYCのようなことをやって本人確認した上で、アカウントを発行して、属性情報も入れてもらう。   ②番が、各事業者の工夫の領域かなと考えております。なので、こちらは弊社が考えた一例という形になるのですけれども、アプリの指示に従って遺言作成に必要な情報を入力、例えばチャット形式で、名前を入れてくださいとか、相続人の方の名前を入れてくださいというような、都度指示を出して、それに対して一問一答で答えていくみたいな使い方も考えられるかなと考えております。この設問の作り込み次第で、きちんと考えているかどうか、熟慮性というものを一定程度確保するような設問設計も考えられます。あるいは設問の作り方次第では、遺言者の認知能力、遺言能力、長谷川式の点数のスコアリングみたいなこともAIを使って一定程度できる余地も出てくるのかなと考えております。どこまでやるかは御相談かと思われます。   ③番です。遺言文案を自動生成、ノウハウを持った組織がチェックと書かせていただいております。例えば士業様、あるいは信託銀行等が、既にある一定の実務ノウハウ、技術に基づいて、このAI等を通して取得されたお客様の遺言に係る情報から文案を自動生成したとして、その自動生成された文案が手続に使えるのかどうかというところを有効性診断のような形でチェックを掛けて、いい加減なデジタル遺言の乱立を牽制するというようなことも考えられるかと思います。   ④番です。チェック結果を本人に還元して、電子署名フローへと書かせていただいております。チェック結果の内容が遺言案をそのまま手続に使うのはかなり難しいのではないかという場合には、例えば士業等の専門家に相談をするというフローを設けてもいいのかなと考えております。ある程度形式的な要件が一通り満たされていて、そこまでする必要がないということであれば、手続に進む、電子署名フローに進むということも考え得るというところで書かせていただいております。   次のページ、29ページにお進みください。生体認証の操作イメージです。ここは電子署名をする人が、正しく配偶者ではなくて本人であることを確認するための生体認証です。マイナンバーカードの持ち主が操作していることを確認するために、ICチップをスマートフォンに読ませ、その後、ディープフェイク対策で、上を向いてください、右を向いてください、といったランダム挙動撮影を行い、その画像を生体認証事業者に照合してもらって、お客様に照合結果の画面を開示いたします。生体認証が終わった後に、また配偶者の方に端末を変えてしまうと、それも問題なので、一定程度本人による操作を担保するために、タイムアウトの設定を設けてもいいのかなと考えております。   正しく今端末を操作している人が本人であるということを確認した段階で、これは工夫次第だと思うのですけれども、この遺言への思いを入力してください、20文字とか20秒動画でも何でも結構だと思うのですけれども、遺言本体に関わらない部分で、その真意性を補強するような形での工夫があってもいいのかなと考え書かせていただきました。   電子署名をすることの意味というものを改めて遺言者本人に理解をしてもらった上で、電子署名フローの方に進んでまいります。次、30ページを御参照ください。今度はマイナンバーカードのICチップの署名鍵を同じく読み取りますと。署名用電子証明書のパスワードを入力して、J-LISの認定プラットフォーマー、あるいは団体署名検証者であれば電子証明書が有効かどうかということが確認できますので、お客様に対してその判定結果を返してあげます。失効しているのであれば更新してください、失効していないのであれば正常に実行されましたというような内容を表示します。   最後、保管ですが、自分のローカル環境で保存するのはデメリットも多いかと思うのですけれども、現時点では選択肢としては排除しない形で書かせていただいております。例えば、ダウンロードして自分の端末等にも保管をする、あるいは既存の保管制度のように、法務局のサーバにアップロードするというような場合は、その動線を設けてあげることによって、本人が電子署名をした遺言ファイルをそのまま法務局のサーバにアップロードするというような流れが考えられ得るかなと考えております。   3章の説明は以上となります。 ○大村部会長 ありがとうございます。   今の部分につきましては、一つのイメージを提示していただくということで、御説明も簡略にしていただいております。御質問の方も10分程度で、短い御質問を出していただけると有り難いと思います。どなたからでも結構ですので、お名前をおっしゃった上で御発言を頂ければと思います。 ○齊木委員 1点確認ですけれども、この遺言作成時のチャットがございますよね、いろいろ質問してお答えになると、このチャットはもちろんメールのように、LINEのやり取りのように書くわけで、本人が入力しているかどうかはどうやって確認するのでしょうか。 ○宍倉参考人 現時点で、本人が入力するしないというところが決まっていないので、一旦代筆も可というイメージで書いてはおりますが、本人性を厳密に問うていくということであれば、第2章で日本電気様の方から御説明があったバックグラウンド認証のような考え方を使うというのも一つ、手かなと考えております。例えば、遺言作成の手前の段階でマイナンバーカードの顔写真情報と自分の顔情報を突合して、操作者が本人であることを確認する、マイナンバーカードから取得した顔写真データをそのまま生体認証事業者側が持っておいて、それをチャットの中で40秒とか60秒とかの間隔でバックグラウンドで生体認証を掛けるというようなことも、作り方次第では、あり得るかなと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほか、いかがでしょうか。 ○戸田委員 戸田でございます。冒頭に入江所長から、真意性あるいは熟慮性といったものの担保の仕方を比較表で御説明いただいたのですけれども、現状の自筆証書遺言のレベルで行きますと、必ずしも出来上がった遺言書が、例えば強迫の環境下で作られたものであるとか、あるいは最近ですとAIとかロボットアームを使って本人の筆跡、筆圧で手書き文書を作成できるみたいなものがありますけれども、そういったものを使っていないといったことは何ら証明できないわけですね。今日御説明いただいたような例で行くと、そういったところのチェックをいろいろ掛けることができるということになってくると。さらに、少し御説明がありましたけれども、遺言能力の判断を問診的に掛けていくといったことで、現在の自筆証書遺言レベルの真意性、熟慮性の担保以上のものを実現しているのではないかと思ったのですけれども、これはそういう理解でよろしいでしょうか。 ○入江参考人 入江の方から御回答いたします。ありがとうございます。御指摘のように、技術の組合せによっては、今の自筆証書遺言よりもそういった真意性の確認ができるようにすることは、まず、できるという認識はございます。それで、そこに対してどこまでやるかというところが、正に操作の簡便性であるとか利便性、それと、この制度自体をどう作っていくのか、例えば法的要件の中でどこまで確保するかとなると、制度運営上のコストの問題とかが掛かってくるかなと思いますけれども、いずれにしましてもデジタル技術の活用によってはそういったことも可能になる。ただ、一方で、先ほどからお話がありますディープフェイクであるとか、それを破ろうとする技術の方も併せて進歩というのか、高度化するということはあります。そこはそういう、技術的には可能だと思っていますけれども、どこまでの制度とするのかというところは議論が必要なところかなというふうな認識をしております。 ○戸田委員 ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほか、いかがでしょうか。 ○内海幹事 幹事の内海です。作成サービスのようなところで真意性を担保するという考え方は有益だとは思うのですけれども、作成の場面の中でQ&Aなんかをしていくということ自体は、それはいいことだとして、後にそういうものの利用の記録とか、そのQ&Aがどういうふうに行われたかであるとか、あるいは最終的に保管されている遺言書とその作成セッションとの間の結び付きというか対応関係、このセッションで作られたのがこの遺言であるということをどうやって保証というか、証明するのかというようなところについて、何か見通しというかイメージみたいなものが、そのセッションの記録自体は遺言書ではなくサービスの方に残るのではないかという気もするのですけれども、そういったことで、そこの接続というのを安定的に担保できるかについて、見通しがございましたら、教えていただければと思います。 ○宍倉参考人 作成時のいわゆる周辺データみたいなものが、ファイルが完成した後どこに残っているかというと、御認識のとおり、この場合でいうと遺言作成アプリ側の事業者のデータベースに記録されることになると思います。例えば、生体認証した時刻、次に電子署名した時刻みたいな話であったりとか、チャット形式で、例えば設問に対して応答しているような記録というのも、すべからく遺言作成アプリ側に残っていくことになると思います。あとは、生体認証事業者の判定結果において、OK、NGだけではない、もっとその他の詳細な情報、ぎりぎりOKだったとか完全にOKだったとか、いろいろあると思うのですけれども、それらは生体認証事業者側のサーバに残ってくる話かなと思っております。例えば、それがもめごとになった場合に、裁判所から記録を出せという場合には、そういう事業者側からの取得をお願いすることになろうかと考えられます。 ○入江参考人 一つだけ補足させていただきますと、今最後にありましたけれども、遺言を作成するときのデータであるとか情報というのは、遺言者の方の個人情報に属するものがほとんどでございますので、正に裁判になって証拠として提出する必要性が出たというときには活用することが当然想定されますけれども、この取扱いについては正にこのサービスを設計する上でのポイント、要は遺言者の個人情報という観点からポイントになってくるということだけ補足させていただきます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほか、質問いかがでしょうか。 ○小粥委員 小粥と申します。今日はありがとうございました。2-1-2、10ページから12ページのところで、電子署名を自分で作る場合と、それから2-1-3、2-1-4は電子署名について既存のものを利用するという2パターンのご紹介をいただいたと思います。それで、左側の絵の水色の部分などを見ますと、電子署名として既存のものを利用する場合は、文書が変更されていないことも確認できるというふうに2-1-3、2-1-4も説明されています。よく分からないのは、電子署名を自分で作る場合と既存のを利用する場合で、どうしてこういう違いが出るのかということです。もしかしたら違う条件があらかじめ黙示でセットされているのでしょうか。その辺がよく分からなくて。直近で御説明いただいたモデル事業案のところでは、この変更されていないことの確認のところは言及がなかったようにも思うのです。少しその辺りについて、私は全然基礎知識がないものですから、分かりやすく教えていただければ幸いでございます。よろしくお願いいたします。 ○宍倉参考人 電子署名の仕組み自体では、公開鍵と呼ばれるもので暗号化が復号できるかどうかが真正性の肝です。復号できれば改ざんされていません、復号できなかったら多分改ざんされています。なので、これは2-1-2、2-1-3、2-1-4、共通しているものです。大きな違いとしては、その署名が誰のものであるかが公にみんなが見に行ける、あるいは条件を満たした上で見に行けるところに、きちんと本人確認をした上で残っているかが重要だと思っております。   これは2-1-1の9ページのところの右側に書かせていただいているのですけれども、暗号化が解けたからそのファイルは真正だけれども、そもそも電子署名した人が違う可能性もあります。成り済まして送っている可能性もあります。そうしたときに、送られた公開鍵が誰のものですかというのを、その情報を知っている人に聞きに行く必要があって、それが、例えば10ページのものだと、自分で勝手に作ったものだから誰も本人確認をしていないし、その公開鍵は自分以外に自分が持っているものだということを知らないものですから、送られた人はその電子署名の真正性は分かるけれども、あなたの署名ですかということが分かりません。11ページ目は、その誰のですかというものがきちんとマイナンバーカードを作るときに確認がされて、指定された条件を満たす事業者であればその確認を取りに行くことができます。12ページのところは議論が少し戻ってしまうのですけれども、いわゆる署名事業者は、ユーザー登録をする、お金をもらう関係で、どこの誰かをきちんと確認した上でやっている。署名事業者のサービスの中で、この鍵は誰に貸していますよ、みたいなところが記録されていますので、その署名検証するときに、併せて、誰の署名で、改ざんされていないということが確認できるようになる。2-1-3と2-1-4は余り差がないように見えると思うのですけれども、実際それほど差はないです。ただ、署名のプロセスが自動化されているので、お客さんにとって使いやすいというだけかなと思っております。 ○大村部会長 小粥委員、よろしいですか。 ○小粥委員 取りあえずは、結構です。 ○大村部会長 ありがとうございます。   齊木委員、短くお願いします。 ○齊木委員 遺言の場合には、本人は亡くなっています。では、本人の電子署名であることをいつ確認するかということですけれども、マイナンバーカードって死亡届が出たら失効すると思うのです。そうすると、遺言を作ってすぐに預けて、その受け取ったところで確認しないと、死んだ後に有効性確認しようと思っても駄目なのではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。 ○宍倉参考人 そうですね、署名検証したときに、失効されているという情報は分かります。その人のものですということも分かっていると思いますので、誰々の電子署名ですということまでは分かりますが、それは既に失効していますということが事後的に分かるのかなと思います。それをどこまで有効性の観点から満たしたとするかどうかは、法律の話になってしまうかと思うのですけれども、技術的には死亡後でも誰の署名かまでは分かると思います。 ○齊木委員 それは、要するに公開鍵が誰のかというのは、実は認証局に問い合わせなくても、埋め込んだ段階でアドビリーダーで見れば分かるのですよね。それと同じレベルで分かるという意味合いのことですね、認証局の有効性確認は経ないで分かる情報は分かると、こういうことですね。 ○宍倉参考人 マイナンバーカードの場合は埋め込みはされてないと思います。マイナンバーカードの電子証明書自体に誰のという情報は入ってなかったかと思いますので、J-LISに問い合わせる必要があったかと思います。 ○大村部会長 齊木委員、いいですか。 ○齊木委員 確かに。いつからか基本4情報を消したのですよね、前は載っていたのですけれども。分かりました、結構です。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そろそろよろしいでしょうか。何か特にあれば伺いますけれども、いかがでしょうか。   ありがとうございます。それでは、参考人の方々への質問はこの辺りまでということにさせていただきます。参考人の皆様におかれましては、本日は本当にありがとうございました。もう少しだけ御席におとどまりいただければと思います。   続きまして、事務当局の方から参考資料4-2についての御説明をお願いいたします。 ○大野関係官 参考資料4-2は、デジタルタッチペンを用いたサイン検証技術を開発・提供している民間事業者から、同社の製品の仕組みやサイン検証技術に関して事務局が聞き取った内容をまとめたものでございます。   1ページの1では、同社が提供しているハードウェア及びソフトウェアについて記載しております。同社では、ハードウェアである液晶ペンタブレット、ソフトウェアである電子サイン用パッケージアプリケーション、そして、資料中ではSDKと略しておりますアプリケーションを作成するための素材であるソフトウェアディベロップメントキットを提供しているとのことです。液晶ペンタブレットは、専用のペンで操作することができる外付けのディスプレイであり、その構造は(注1)のイメージ図のとおりです。液晶パネルの下に内蔵されたタッチセンサー及びセンサーユニットによりペン先端の動きを取得しており、ペン先端以外のものには反応しない構造となっております。ペン先端のディスプレイ上の動きは、線ではなく点の集合として記録されます。サンプリングレート、すなわち1秒間当たりに記録される点の数が多いことにより滑らかな曲線が表現され、綺麗な文字を書くことができます。そして、1ページ末尾の(3)のとおり、アプリケーションによってペンスピード、筆圧及びペンの座標位置などの各種情報も併せて記録されるとのことです。   2ページの2では、デジタルタッチペンを用いたサイン検証について記載しております。今回事務局がお話を伺った民間事業者では、サイン検証、つまり、あるサインと参照先サインとを比較して、その一致・不一致を判断することができるSDKを提供しているとのことです。このSDKを用いたアプリケーションでは、幾何学的形状、局所的形状、平均スピード、加速度、筆圧、サイズという六つの特徴点によりサイン同士を比較検証し、その結果をゼロから1までのスコアで判定することができます、スコアが低いほど一致しない点が多いことを示しており、各特徴点において低いスコアとなる例を2ページ下部の(注)の表で記載しております。個人のサインはその都度ばらつきがあり、常に幾つかの違いがあることが通常であるため、1、すなわち一致と判定されることは少なく、どの程度のスコアであれば同一人によるサインと判定してよいかの閾値をユーザー側が設定する必要があります。   なお、単なる画像形式で保存されたサインや紙からスキャンしたサインについては、筆圧やスピード等の情報が含まれておらず、検証を行うことは可能ではあるものの、エラー率が高くなってしまうため、推奨されていません。また、令和6年7月時点において、このサイン検証技術を採用している国内企業はないものの、現在一部の企業において試験的な運用を行っているとのことでございます。   参考資料4-2についての御説明は以上です。 ○大村部会長 ありがとうございます。ただいまの事務当局の参考資料4-2についての御説明につきまして、質問があれば伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。   特にございませんでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、この参考資料4-2についてもここまでということにさせていただきます。   今の4-2まで含めまして、ここまでで前半のセッション終了ということになります。参考人ヒアリングは、これで終了ということにさせていただきます。   入江参考人、小谷参考人、一ノ瀬参考人、宍倉参考人、横田参考人及び今橋参考人におかれましては、当部会の調査審議に御協力を頂きまして大変ありがとうございます。どうぞ御退席をください。   前半のヒアリングはこれで終了ということになりますので、ここで10分間休憩を致しまして、15時55分から再開をしたいと思います。休憩を致します。           (休     憩) ○大村部会長 それでは、審議を再開したいと思います。   ここからは、部会資料3の第4についての検討に入りたいと思います。部会資料3の第4、前回積み残しになっていた部分でございます。まず、事務当局において部会資料のこの部分の説明をお願いいたします。 ○大野関係官 部会資料3の20ページ以下の本文第4、特別の方式の遺言の方式要件の在り方について御説明いたします。   本文1では、まずは現行の特別の方式を一旦前提として、これにデジタル技術を活用した新たな遺言の方式を追加することの要否について、検討の方向性につき御意見を頂ければと考えております。   本文2では、現行規定についての検討の在り方として、どのような場面で特別の方式を認めるか、及びどのような方式が適切かという観点があり得るところ、このような観点を踏まえつつ、規定を存置すること、基本的には存置しつつ現代の状況に合わせ一部修正すること、廃止することなどが考えられるところ、検討の方向性につき御意見を頂ければと考えております。   なお、(注)では、現行規定を存置する場合、特別の方式の遺言の加除その他の変更の際の押印要件については、自筆証書遺言の規定が準用されていることから、自筆証書遺言における加除その他の変更の際の押印要件の在り方を踏まえて検討する必要があると考えられる旨記載しております。   本文3では、デジタル技術を活用した新たな方式を設ける場合の検討の在り方として、普通の方式についての検討状況等を踏まえつつ、確認手続といった作成後の手続も踏まえた真意性・真正性の担保等の在り方などにつき、遺言者がその最終意思を表明するのに適した安定性のある方式を定める必要性に留意しながら検討する必要があると考えられるところ、その検討の方向性について御意見を頂ければと考えております。   21ページから22ページの補足説明1では、特別の方式の立法経緯や趣旨について記載しております。明治31年民法において危急時遺言が設けられた趣旨は、遺言者に疾病や傷病等の事由により死亡の危急が迫っている場合には、自筆証書遺言をすることができず、また、公正証書遺言や秘密証書遺言をする暇がないことが多いことから、例外として口授又は口頭方式の遺言の効力を認めることにあるとされています。また、隔絶地遺言が設けられた趣旨は、遺言者が隔絶地にいる場合には遺言書の作成に公証人の関与を求めることができず、公正証書遺言をすることができないことから、一定の信用性を有する者の立会いの下に公正証書遺言に代わる遺言書の作成を認めることにあるとされています。これらのうち、特に死亡危急時遺言や船舶遭難者遺言が設けられるに至った経緯については、(注1)から(注3)までに更に若干詳しく記載しております。   22ページ末尾からの補足説明2では、(1)から(4)までにおいて、現行の4類型の方式要件について記載しており、25ページの(5)において、これらの方式要件のうちの主要な要素を表にまとめております。22ページの(1)の死亡危急時遺言においては、遺言者が証人のうち1人に遺言の趣旨を口授する必要があり、口授を受けた者がこれを筆記し、遺言者及び他の証人に読み聞かせ又は閲覧させ、各証人が筆記の正確なことを承認した後、これに署名押印することが必要です。   これに対し、24ページの(2)の船舶遭難者遺言においては、遺言者が口頭で遺言をし、証人が遺言の趣旨を筆記し、これに署名押印すればよく、遺言の趣旨を筆記した書面を遺言者に読み聞かせ又は閲覧させる必要がない点で、口授とは異なることとされています。なお、船舶遭難者遺言については、航空機遭難の場合にも類推適用され、同一の方式による遺言をすることができるとの解釈が有力です。   (3)の一般隔絶地遺言においては、警察官1人及び証人1人以上の立会いによる遺言書の作成と、遺言関係者の署名押印があることが必要とされています。(4)の在船者遺言については、船長又は事務員1人及び証人2人以上の立会いによる遺言書の作成と、遺言関係者の署名押印があることが必要とされています。   いずれの特別の方式の遺言においても、遺言者が普通の方式によって遺言することができるようになったときから6か月間生存するときは、その効力を生じないとされています。この、遺言者が普通の方式によって遺言をすることができるようになったときが各特別の方式の遺言において具体的にどのようなときを意味しているかについては、23ページの(注)に記載しております。   以上を前提として、25ページの補足説明の3では、本文1に関し、デジタル技術を活用した新たな方式を追加することの要否についての検討の方向性として、利用件数が少ないことなどを踏まえた新たな方式を設けないとする方向性や、特別の方式の遺言こそデジタル技術の活用になじむのではないかといった指摘を踏まえた新たな方式を追加する方向性を記載しております。これらの検討の方向性について御意見を頂ければと存じます。   補足説明の4では、本文2に関し、現行規定についての検討の在り方に関して、特別の方式の遺言を認める場面の設定が妥当か否か、また、その場面においてどのような方式とするのが相当かといった観点から記載をしております。   まず、26ページの(2)特別の方式の遺言を認める場面の設定については、現時点でも合理性があるとの考え方や、現代の状況に合致していないとの考え方のいずれもあり得ると思われるところ、仮に死亡危急時遺言や船舶遭難者遺言を廃止した場合には、危急時に置かれた者が遺言を作成できないこととなり、遺言の自由を妨げるのではないかとの指摘や、仮にデジタル技術を活用した方式を設けたとしても、緊急時において常にデジタル技術を活用した方式を利用可能な状況にあるとは限らないとの指摘も考えられます。また、隔絶地遺言については、公正証書に係る一連の手続のデジタル化を前提に、遺言書の作成に公証人の関与を求めることができず公正証書遺言をすることができない場合とはどのような場合かを検討する必要があると考えられます。このような指摘等も踏まえて、特別の方式の遺言を認める場面の設定についてどのように考えるかにつき、御意見を頂ければと存じます。   続いて、27ページの(3)特別の方式の遺言を認める場面における方式の在り方については、現行規定を踏まえつつ、場面設定に応じた方式を検討することが相当と考えられると記載しております。特に、死亡危急時遺言や船舶遭難者遺言については、遺言者が遺言書を承認した痕跡が残らず、真意性の確保がかなり後退しており、現行規定は廃止すべきとの指摘もあるところです。このような指摘を踏まえ、方式要件の在り方についてどのように考えるか、御意見を頂ければと存じます。   27ページ(4)では、遺言の確認について記載しております。裁判実務における確認に当たり、家庭裁判所が得るべき心証の程度は、いわゆる確信の程度に及ぶ必要はなく、当該遺言が一応遺言者の真意にかなうと判断される程度の緩和された心証で足りるものと解されており、真意性の確保はかなり後退しているとの指摘もあることから、現行規定についての検討に際しては、確認手続の在り方についても併せて検討することも考えられるところ、検討の方向性について御意見を頂ければと存じます。   28ページの補足説明の5では、本文3に関し、デジタル技術を活用した新たな方式を設ける場合の検討の在り方については、場面設定及び方式要件の在り方、普通の方式におけるデジタル技術を活用した新たな遺言の方式についての検討内容、確認の手続の在り方と併せて、どのような真意性・真正性の担保等の在り方が考えられるかを検討する必要があると考えられることを記載しております。   また、様々な危急時の場面において、どこまでを遺言者の最終意思としての法律行為として認めるのかにつき様々な判断があり得るのではないかとの指摘や、非常時において方式は必ずしも重要ではなく、遺言者の真意を何らかの形で後から確認することができれば、それを尊重するという考え方に傾く可能性があることを示唆する指摘もあるところです。   以上を踏まえて、デジタル技術を活用した新たな方式を設ける場合の検討の方向性についてどのように考えるか、御意見を頂ければと存じます。   部会資料3の第4についての御説明は以上です。 ○大村部会長 ありがとうございました。   ただいまの御説明につきまして、まず、何か質問があればお願いを致します。 ○齊木委員 1点だけお尋ねしたいのですけれども、25ページの3の14、15行目で、スマートフォン等を利用しつつデジタル技術を活用することで、現行の特別方式と同程度の真意性・真正性の担保ができるのではないかという問題提起を頂戴しておりますが、ここでのデジタル技術を活用するというのは、具体的な中身は何を考えておられるのかを教えていただければ有り難く存じます。 ○大村部会長 お願いいたします。 ○齊藤幹事 法務省でございます。ここの記載については、正に御議論いただきながら具体化をする必要があると思っておりますが、これまで頂いてきた御意見の中では、やはり、まずデバイスとして一番身近なものはスマートフォンであろうと、その上、では御本人がやった遺言であるということを簡便に残せるのは、やはり音声付きの動画の撮影ということが話題には上っていたかなと思います。ただ、それをしっかりした安定的な制度に仕上げることができるのかどうかという点は議論の余地があるのかなと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   ほかに御質問はございませんでしょうか。   それでは、御質問も含めて、御自由に御意見を述べていただきたいと思います。どなたでも結構ですので、お願いを致します。 ○中原幹事 検討の方向性についてということなので、抽象的なことを申し上げます。特別の方式の遺言について、現行の方式をどうするかという問題と、それから、デジタル技術を活用した新たな方式を設けるかどうかという問題とがありますけれども、まず、現行の方式については、部会資料3の26から27ページでも指摘されているように、ニーズが低下しているとはいえ全くないわけではないので、本文の2で二つ目に挙げられた、現行規定を存置しつつ現代の状況に合わせて一部修正するという方向性が穏当なのではないかと思います。   ただ、検討に際しては必ずしも現行規定の四つの条文の方式、つまり死亡危急時遺言、船舶遭難者遺言、一般隔絶地遺言、在船者遺言という、これらにこだわる必要はなくて、むしろ重要なのは、危急時遺言と隔絶地遺言という2大類型による枠付けだと思います。それぞれについて現代化、合理化を図るという、そういう緩やかなスタンスをとるのがよいように思います。   私が理解する限りでは、危急時遺言の類型は、普通方式では遺言そのものをすることが困難であるという状況を前提に、普通方式に代わる方式を用意するものであるのに対して、隔絶地遺言の類型は、普通方式の一部に困難がある、すなわち自筆証書遺言ならやろうと思えばできるのだけれども、公正証書遺言をすることが不可能であるという状況を前提に、公正証書遺言に代わる方式を用意するものであって、二つの類型は趣旨や意味合いが大きく異なると思います。したがって、具体的な検討に当たっても、危急時遺言と隔絶地遺言とを明確に分けて、それぞれ現代化、合理化を図る必要性や、具体的にどのようにするかを考えていくべきではないかと思います。   このことはデジタル技術を活用した新たな方式の検討においても当てはまるものと思います。危急時遺言に相当するものについては、例えば電子署名とか生体認証とかが普通方式では要求されるということになった場合に、危急時ではそれらを履践しなくても遺言として認めてあげてもよいのではないかということが問題になる。例えば、現行規定では証人が複数立ち会うことなどによって不十分ながらも果たされている本人確認であるとか真意であることの確認を、デジタルの手段でどこまで要求するかというようなことが問題になるのではないかと思います。   それに対して、隔絶地遺言に相当するもの、これについては現行規定の隔絶地遺言が飽くまで公正証書遺言の代替として一般的に理解されているのだと思いますが、そのことからすると、問いを立てるとすれば、既にデジタル化が実現されている公正証書遺言作成の手続における公証人の役割を公証人でない者が代替するということができるかというような話になりそうです。しかし、私自身はそれが必要かつ可能な状況というのは余り想定できない。隔絶地遺言に関しては、隔絶地だから特別なデジタルの方式を用意しなければいけないというようなことは余りないのではないかというような印象を持っています。いずれにしても現行の方式をどうするかという問題、それからデジタル技術を活用した新たな方式を設けるかという問題、これらを区別した上で、それぞれについて現行規定に必ずしも拘束されることなく、危急時遺言と隔絶地遺言という、その二つの類型に分けて整理して考えていくのがよろしいのではないかと思います。   当たり前のことを申し上げているような気もいたしますけれども、部会資料では様々なことが五月雨式に指摘されているというような印象も受けましたので、発言させていただいた次第です。 ○大村部会長 ありがとうございます。中原幹事からは、大きく2点だったかと思います。一つは、大きな括りとして危急時と、それから隔絶地とを対比して、現行方式についても新方式についても考える必要があるのではないかということ、それからもう一つ、現行方式についてはニーズはないわけではないので、一部修正してとどめるというような方向なのではないかと、こういった御意見だったかと思います。 ○冨田委員 連合の冨田でございます。私も今の中原幹事と同じ意見でございまして、特別の方式は認めていく方向で、現代的な見直しを加えてはどうかと思ってございます。先ほど事務局の方は、例えば飛行機の事故などが船舶と同じように類推されるのではないかという御説明もあったかと思いますが、今日的な危急時や遭難としては、それ以外にも大規模自然災害であるとか国際紛争などの問題も起こり得ると考えられます。そうした場合の特別な方式の規定がどのように類推適用されていくのかということについて、現時点では明らかになっておりませんので、そうしたことも念頭に置きながら、今日的な状況に対処できるようなアップデートをする方向で見直していく必要があると思います。また、必要に応じて、デジタルを活用していくというのも一つの方法かと思いますので、御検討をお願いしたいと存じます。 ○大村部会長 ありがとうございます。冨田委員からは、今日的、現代的な状況を踏まえた形で修正を加えていく必要があるのではないかということで、災害の問題ですとか、あるいは戦災の問題などを念頭に置くということも必要だという御意見を頂戴いたしました。   ほかにはいかがでしょうか。 ○小粥委員 小粥です。申し上げたいことは、既存の遺言の方式について改めるのか、それとも維持した上で何かを加えるのかということについてです。私のすごく抽象的な感覚は、今あるものを変えるということには慎重である必要があるのではないかということでして、それはなぜかと申しますと、ここで議論の対象になっている遺言というのは、じっくり時間を掛けて今の遺言のルールを確認した上で遺言ができるというような状況で行われる遺言ではないので、そうだとすると、それが急に変わったりすると、今までのやり方で船員達は知っていたけれども、改正を知らなかったなんていうことになると、やはりそれは困るのでありまして、そうだとすると、基本線として既存のものは残して、それで足すというようなことであればいいかと思いますし、もし仮に既存のものを現代化して改めるのだとしても、そうだとすると経過措置を非常に慎重な形で定めるとかそういった工夫が、普通の遺言が行われる状況とは法へのアクセスという点で大分違いがあるので、考えることがその点であるのではないかということを申します。 ○大村部会長 ありがとうございます。資料自体が新方式を加えるかということと現行方式をどうするかという二本立てで作られておりますけれども、現行方式をどうするかという点については慎重に考える必要がある、基本的にはいじらない方がよいのではないか、いじるとすると経過措置等を入念に考える必要がある、こういった御指摘を頂きました。   ほかにはいかがでしょうか。 ○柿本委員 柿本でございます。私も小粥先生と全く同じ意見でございまして、基本的には存置しつつ現代の状況に合わせるということで、一部修正を考えていくのがよいのではないかと考えております。その際、その一部修正の中に、いろいろな方法が考えられるようですけれども、デジタル技術を活用するということを考えてもよいのではないかと考えます。 ○大村部会長 ありがとうございます。柿本委員からも、一部修正を考えるというときに、現行方式は基本的には維持しつつ、デジタル技術を使った新方式を加えるという方向がよいのではないか、小粥委員の意見に基本的に賛成だという御意見を頂戴いたしました。   そのほかにはいかがでしょうか。 ○倉持幹事 倉持です。弁護士会でもこの特別方式について議論はしているのですが、基本的な方向性としては、中原先生がおっしゃったとおり、現行法を前提として、それを現代化する方向でということでいいのかなと思います。   現代化の方向とは別の視点で少し指摘があったのが、死亡危急時遺言の要件です。これが今、証人3名によるという要件になっていますけれども、実務家的な見方からすると、その2名が3名になったからといって、いわゆる口裏合わせ、実際に遺言者が言っていなかったことをあたかも証人が言ってしまうリスクというのは、それほど変わらないのではないかという指摘もあり、こういう危急時だからこそ、例えばですけれども、録音・録画をむしろ要件にしてもいいのではないかという意見もありました。ただ仮に録音・録画を要件にすると、録音・録画していないと遺言が無効ということになってしまうので、それは行きすぎだということであれば、3名のうちの1人の証人の資格を医師と限定するなど、第三者的な視点を入れないと、やはり口裏合わせのリスクというのは死亡危急時遺言についてはそれなりに存在するのではないかという指摘があったので、御紹介します。 ○大村部会長 ありがとうございます。基本的には現行方式については、現在の制度をベースにしつつ修正するという方向に賛成であるということで、具体的には証人の問題について御意見を頂戴いたしました。 ○隂山委員 隂山でございます。既に御意見として挙げられておりますけれども、現行方式につきましては、これを存置する方向で検討しつつ、また、デジタル技術を活用した方式となりますと、一般的な規律である新たな遺言の方式、こちらがある程度固まってから、更にそれを緩和していくような方向性を検討する必要性があるのではないかとも感じております。   先ほどの録音・録画の件ですけれども、実際に死亡危急時遺言を取り扱った司法書士から、補足説明の29ページ27行目などにもあるとおり、後日の紛争を防止するために、口授や筆記、読み聞かせの様子等を録画して対応したというような報告もありましたので、念のためこちらを共有させていただきます。 ○大村部会長 ありがとうございます。隂山委員からも、現行は存置してデジタル技術を使ったものを考えると、基本的な方向について賛成の意見を述べられた上で、ただ、議論の仕方として、普通方式に相当するものを検討してからでないと、なかなか特別の方式の方も詰まっていかないだろうという御指摘がありました。これは、資料の中でもそのようなことが書かれていたかと思います。それから、前の倉持幹事の御発言があった録音・録画についてのデータというか経験というか、それを御披露いただきました。ありがとうございます。 ○宮本幹事 宮本です。検討の方向性としましては、中原先生に御説明いただいたことに賛同いたします。その上で、特別方式遺言については、普通方式では何ができないか、どのような場面で普通方式のうちのどれができないかが重要ですので、先ほど隂山委員からも御指摘がありましたけれども、普通方式の新たな方式などを整理した上で検討するのが適当かと思います。   もう一点、遺言の自由を確保するために現行の方式を存置するべきだというお考えも理解できるのですけれども、現行の方式には27ページの(3)に示されているような問題がある、つまり、遺言者の権利が害されるような方式になっているという指摘もありますので、遺言者の自由、権利を守るためにも修正をするという考え方もあるのかなと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。宮本幹事からは、基本的なスタンスは中原幹事の御意見に賛成ということで、加えて二つお話があったかと思います。一つは、特別の方式について考えるときには、普通の方式でできない部分はどこなのかということを考える必要があるという御指摘と、それから、現行の制度については遺言者の権利を守るという観点から問題の部分があるので、そこはやはり修正する必要があるのではないかという御意見を頂戴いたしました。   ほかにはいかがでしょうか。   よろしいですか。ほかに御発言がなければ。それでは、今日のところは基本的な方向としては中原幹事がおっしゃったような形で、現行方式については一部を修正するという方向で考えていく、ただ、その際には慎重にやるべきだという御意見と、不都合があるところは直した方がいいという御意見があったと受け止めました。それから、デジタルを用いた新しい方式につきましては、普通方式の方の状況も見ながら、更に議論を詰めておく必要があるという御意見であったと受け止めておきたいと思います。さらに、現代的な状況ということで、私たちの時代の状況でも災害とか戦災といったものまで含めて考える必要があるという御指摘も頂戴いたしました。   それでは、前回資料の部会資料3の第4につきましては、このぐらいにさせていただきまして、続きまして、部会資料4についての検討に入らせていただきたいと思います。   では、事務当局の方から、まずこの資料についての御説明をお願いいたします。 ○戸取関係官 部会資料4について御説明いたします。部会資料4は、1ページ冒頭の(前注)に記載しましたとおり、これまでの御議論を踏まえて、遺言の本文に相当する部分の在り方、真正性を担保するための方式の在り方及び保管制度の要否等という主要な三つの論点につきまして、更に御議論いただくため、それぞれ部会資料2及び3に補充する目的の下、現時点での整理を試みたものでございます。その際、本文に相当する部分の在り方と真正性を担保するための方式の在り方につきましては、一つの本文にまとめております。  部会資料4は、部会資料2及び3の対応する部分を差し替える趣旨ではございません。そのため、部会資料2及び3の該当部分を適宜御参照いただきながら御意見を頂ければと存じます。   本文第1では、本文及び真意性・真正性担保等の在り方について記載しております。遺言の本文に相当する部分につき遺言者本人による入力等を必要とするか否かについては、真意性・真正性の担保等としてどの程度を要すべきと考えるかなどにより考え方が分かれ得るところでございます。そのため、本文第1は、「1 遺言者本人による入力等を必要とする方式」と、「2 遺言者本人による入力等を必要としない方式」とに分けた上で、真正性を担保するための方式の在り方等も併せ、様々な在り方を例示しております。   具体的には、本文の1では、本文に相当する部分について、文字情報とした電磁的記録、録音・録画及びプリントアウトした書面の3通りが考えられることから、これらを(1)から(3)までとし、さらに(1)については、本文による入力等を担保するために考えられる方式としてアからエまでを記載しております。なお、電磁的記録を原本とする(1)及び(2)については、改変防止のために電子署名を講ずることが考えられるため、その点を(2)の下の(注)に記載しております。また、本文の2では、本文に相当する部分について、文字情報とした電磁的記録、プリントアウトした書面の2通りが主に考えられることから、それぞれ(1)及び(2)とし、さらに(1)については電子署名を講ずるのみとするア、さらに補助的な資料を添付等するイ、証人の立会いを要するウ、保管を要するエを例示しております。   補足説明として、2ページの1(1)では、自筆証書遺言の場合は全文自書要件により、公正証書遺言の場合は口授要件により、それぞれ遺言者本人が本文に相当する部分を自ら記載又は口授することが求められているところ、新たな遺言の方式においても遺言者本人が本文を入力等することが求められるかどうかが問題になるとの指摘があったことを記載しております。   その上で、22行目以下では、遺言者本人による入力等を求めるべき、他人による入力を許容すべきとのそれぞれの方向性の意見を記載しております。この点につきましては、新たな遺言の方式において、意思の形成及び表示に他人の影響等が及ぶことを防止すること、意思表示を確定させること及び熟慮を促すこと等をどの程度重視すべきかなどによって考え方が異なり得るものと考えられる旨記載しております。   3ページ、3行目以下の(2)では、部会資料2の本文については、遺言者本人が入力することを確保する方式と、他人が入力したものについて遺言者本人が承認する方式とが混在しているのではないかとの趣旨の御意見があったことなどを踏まえて、今回の本文の整理をしたことを記載しております。   なお、12行目以下では、他人による改変防止のための在り方として、部会資料2では電子署名、保管制度、ブロックチェーン技術の三つの方策を掲げておりましたが、保管制度を設けるか否かについては本文第2において扱うこととし、また、ブロックチェーン技術を用いることについては、その必要性や有用性が十分には具体化していないことから、本文第1においては電子署名によって対応することを例示している旨記載しております。   2では、遺言者本人による入力等を必要とする方式について記載しております。(1)アの全文等を自書した書面をスキャンする方式については、スキャンする過程で偽造、変造が行われるリスクが生じる問題点や、作成時の負担があること、4ページのイのデジタル技術の活用によって遺言者本人が入力したことが確認可能な在り方により作成する方式については、遺言者本人が入力したことを確認することができる技術の精度の程度が問題となるほか、現時点で又は将来において、一般に広く利用可能なものか必ずしも明らかでないことなどを記載しております。ウの証人による立会いの方式については、証人が遺言の作成開始から終了まで立ち会い、電子署名を講じ、事後に遺言の効力が争われた場合には、遺言者本人による作成過程を供述することが考えられる旨を記載しております。エの公的施設において遺言者が作成する様子を録音・録画する方式については、対応する態勢を整える必要があり、また、遺言者本人が出頭しなければならない点や、利用可能な曜日・時間帯が限定される点等が負担となるものと考えられます。   4ページ下方の(2)では、遺言者本人による口述を録音・録画する方式について、特別の方式の遺言の場面はともかく、遺言の本文に相当する部分について録音・録画した電磁的記録とする方式が望ましいとの積極的な意見はなかった旨記載しております。また、5ページの(3)では、ワープロ入力したものをプリントアウトする方式について記載しております。   3では、遺言者本人による入力等を必要としない方式について記載しております。この方式の場合、意思の形成及び表示に他人の影響等が及ぶことを防止すること、意思表示を確定させること、熟慮を促すことなどを別の手段によって担保することが求められると考えられます。   なお、秘密証書遺言におきましては、筆者の氏名及び住所を申述するものとされていることを踏まえ、この方式においても入力者を明らかにすることを方式要件とすることも考えられると記載しておりますが、入力者の意味するところも問題となり得ると考えられます。   (1)では、文字情報の電磁的記録として、アの電子署名を講ずる方式では本人確認手段として十分ではないとも考えられることから、イでは、補助資料として録音・録画又は生体認証技術を利用する方式を併用する方式について記載しております。この場合、本文と録音・録画が結び付き、撮影された場面で作成されたものが遺言であることを担保する必要があると考えられ、この点については、遺言者が文字情報とされた遺言本文を読み上げ、その様子を録音・録画することが考えられます。また、生体認証技術を利用する方式については、生体情報を何らかの機関で保管するとの点については、プライバシー等の観点から受け入れられないのではないかとの指摘があり、現状、登録情報が存在する顔貌を用いた認証を利用する制度を構築することが考えられますが、その際には認証主体や認証の在り方を考える必要があると考えられる旨記載しております。ウの遺言者による遺言の作成に証人が立会う方式については、これまでの会議では肯定的な意見と否定的な意見がございましたが、仮に証人が立ち会うこととすると、その方法については、求められる真正性の担保等の程度との関係について検討する必要があると考えられる旨記載しております。エの保管申請手続に際して本人確認を行う方式については、遺言者本人が保管の申請をするということであれば真意性の担保まで図ると考えることができるとする指摘もあるなど、保管制度を真正性の担保等を図る手段として用いるべきとする意見が複数あった一方で、保管手続を必要的とすると手間や負担を要することとなり、遺言者にとって利用しやすい手続ではなくなるという観点から、消極的な意見もあった旨を記載しております。   7ページの本文第2では、保管制度の在り方について記載しております。1では、保管の主体として、保管の主体を公的機関とすることを中心に検討を進めつつ、民間事業者等とすることも現時点では排除せず検討を進めることについてどのように考えるか、御意見を頂きたいと考えております。   2では、保管の義務付けの要否として、保管を義務付ける考え方の根拠、義務付けるのは相当でないと考える考え方の根拠をそれぞれ記載しておりますが、これらの観点を踏まえ、保管を義務付けるか否かについて引き続き検討することについてどのように考えるか、御意見を頂きたいと考えております。また、本文2の(注)では、保管を義務付けるものの、保管を欠いても遺言の効力には直ちには影響しないとする考え方を記載しております。   補足説明の1では、これまでの御議論として、保管制度を設けることに異論はなかったこと、保管の主体について公的機関とすべきとの意見が多く、積極的に民間事業者等とすべきとする意見は見られなかったことなどを記載しております。2では、保管の主体として、遺言書という極めて重要な個人情報を含む文書を保管する機関には高度の信頼性が要求される上、利便性の観点から、全国に存在する公的機関として法務局等が考えられる旨記載しております。   8ページの3では、保管の義務付けの要否について記載しております。(1)では、保管を義務付けるべきとの考え方の根拠について、①として、デジタル技術の特性から生じる問題に対処する観点と、②として、真正性の担保等の観点とに整理しております。このうち②の観点については、まずは本文第1による対応の可否が問題となり、仮に本文第1の方式の在り方によって対応が可能な場合に、それでもなお①の観点から保管を義務付けた上で、保管を欠く場合には無効とする効果を伴わせることが相当かどうかについて引き続き検討する必要があると考えられる旨記載しております。   9ページの(2)では、本文2の(注)について、保管とは別の手続として、裁判所による承認の裁判を要するとすると、その裁判において審理判断を行うための手掛かりとなり得る方式要求が必要であるとの指摘や、そもそも裁判所が関与する意義をどの点に求めるか等の指摘があったところであり、この点については、その他の方式要件も踏まえ、裁判所の承認の判断ないしこれに代わる遺言の効力発生要件の必要性、ひいてはこの考え方そのものの妥当性等について、引き続き検討することが考えられる旨記載しております。   部会資料4についての御説明は以上となります。 ○大村部会長 ありがとうございました。部会資料4について御説明いただきましたが、最初の見出しにありますように、遺言制度の見直しにおける論点の検討(3)ということで、同(1)及び(2)の補充という位置付けの資料になっております。同(1)及び同(2)では、一通りの論点につきまして皆様に御議論いただきましたけれども、1周目の議論を終えて2周目に入る前に一度振り返って、主要な点について改めて皆様に補充的な議論をしていただいた方がよいのではないかという趣旨で、資料が準備されたものと理解をしております。中身は、第1のデジタル技術を活用した新たな遺言の方式の在り方と、それから第2の保管制度の在り方という二つに分かれておりますけれども、関連するところもございますので、後で御議論に当たってはまとめて御議論を頂きたいと思っております。   それに先立ちまして、部会資料4に関する御質問があれば、まずそれを伺いたいと思います。何か御質問はございますでしょうか。 ○小池委員 九州大学の小池です。質問なのですけれども、部会資料4の2ページの上の方の(1)にアとイとウとエがあるのですけれども、このイとウで、イでいうと補助資料としての録音・録画又は生体認証技術を添付等した上でという語句があって、これが何を意味しているのか分からなかったのです。というのは、このイというのは遺言者本人が入力しないケースなので、誰かさんがワープロ入力はしましたと、最後に遺言者本人が電子署名をすると。アの場合は遺言者本人が電子署名するだけなので、それだと少し弱いから何かを足したというのがイとウなのですけれども、これを足したことによって何がどう変わったのかというのが分からなかったので、電子署名のところを補強しているとは思えないのですよ。これはむしろ本人が入力をするというところについて、本人が入力しているところを生体認証とかで同時でバックグラウンドでやるとかいう話だったら、補強していることになると思うのだけれども、そうではないですよね。第三者が入力しているのを生体認証技術でバックグラウンドで取っていたとしても、余り意味がないような気がするので、イとウでアに対して何を補強したのかが私はよく分からなかったので、もし現段階で御説明があれば、少しお願いしたいということです。 ○齊藤幹事 齊藤でございます。確かに2ページの本文(1)のイとウに関しましては、どちらかというとその中身、記載された内容は、2の本人による入力を必要としない方式よりは、むしろ本人による入力等を必要とする方式により親和的なような記載かもしれないというのは、御指摘のとおりかなという気がいたします。他方で、このような記載をまず試みた経緯としましては、やはり本人による入力を必要としない方式については、御本人の真意に基づいてされたことを何らか補強する必要があるのではないかという御議論があったのかなという、それを踏まえた記載でございます。   その上で具体的に申し上げますと、例えばイにつきましては、出来上がった電磁的記録については誰が入力したかは問わないと、ただ、出来上がったものを、これが自分のものに間違いありませんということを述べた上で、場合によっては一部読み上げるとか、全部を読み上げるとか、こういったものを録音・録画する、又は、生体認証技術については今日の前半で話題に上りましたので、これを添付という表現がいいのかどうかは少し疑問はありますけれども、その生体情報での確認も経ているということで、御本人が間違いないと、これが自分のものであるということを記録に残すための要件かなという発想でございます。その意味で、電子署名だけだと、マイナンバーカードだけでは同居の親族等が冒用してしまうおそれがあるということがあり得るので、生体認証技術ということを記載したつもりでございます。ウにつきましても、何かしら御本人の自分のものに間違いないということを証人が証するという形ですので、そういう発想で記載したつもりでございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○小池委員 分かりました。要は公正証書遺言でいうところの、読み聞かせに対して本人が承認をするという、その承認という手続についてこれを掛けるということですね。分かりました。 ○大村部会長 ほかに何か御質問があれば伺いますが、よろしいでしょうか。   それでは、御質問も含めて御意見を頂戴したいと思います。第1、第2という区別をせずにと先ほど申し上げました。また、本日参考人のヒアリングがございましたけれども、これについての御意見というのもあろうかと思いますので、そうしたものも含めて御自由に発言を頂ければと思います。どなたからでも結構ですので、よろしくお願いを致します。 ○戸田委員 戸田でございます。今の御質問ももっともだと思うのですけれども、技術的にどういう形で実現しようかと考えると、やはり今ある技術で最高のものをてんこ盛りにすると思うのです。今日の説明もそうだったと思います。ただ、現在の自筆証書遺言と同レベルでいいということであれば、特に反証が出てこない限り自書、捺印でもって真意性・熟慮性を担保するといった性質のものならば、それと同等レベルで民法上はいいのではないかと思います。   今日説明がなかったような、ディープフェイクに対する対抗策も実際にはもう一部できているものがありまして、そういったものがあると分かると、全部盛り込みたくなるのは当然で、そうすると切りがないような気がいたしますので、現状レベルの最低基準が満たされていればいいのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。基本的な考え方として、余り重くする必要はないのではないか、民法上の方式の要件としては自筆証書並びということで考えて、それ以外の部分はサービス等によるような形で、あり得るのではないかという御意見ということですね。ありがとうございます。 ○齊木委員 自筆証書遺言並びで考える場合に、要するに自筆証書遺言というのは手書きをするわけで、自分の頭に入れないと文字が書けないという構造になっています。だから、デジタル遺言の場合も、遺言者の本人の頭に入ってから出力したということをどう担保するかということが必要になります。第三者が作ったものに後でマイナンバーカードで電子署名をすることは、同居の家族なら幾らでもできるもので、それで推定できるとすると、自筆証書と同等の担保は全くないと思います。ですので、とにかく方法はいろいろあるのかもしれません、先ほど技術的にいろいろな説明がございましたけれども、とにかく一旦本人の頭に入って、本人の気持ちとして出たものがそこにあるものになっているという、その確認をできる手段を保障する必要があると、このように考えています。ですので、ここで非常に単純化された幾つかの方法を書いているのですが、今日御案内の方法とは随分違っていて、今日御案内のすごく複雑な方法だと、担保されているなという感じはしますけれども、今のワープロで打って出た電磁的記録を電子署名されていればオッケーだ、では極めて危ないと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。齊木委員も、ベースとしては自筆証書並びであると考えるとしても、自筆証書並びの中身として、手書きということが持っている機能、本人の頭の中に一度通っているというのと実質的に同等のものをどのように確保するか、そういう観点から考えるべきだという御指摘だったかと思います。   ほかにはいかがでしょうか。 ○隂山委員 隂山でございます。本人の入力等を必要とする方式などにつきまして、本人による入力等に関してどの程度の厳格性が求められるのかという点については、引き続き議論が必要であろうかと考えています。本日参考人ヒアリングで御紹介いただきましたバックグラウンド認証によりますと、トラストアンカーについての課題はありつつも、認証された者が継続して関与していることが技術的には証明できるとのことでした。もっとも、ワープロ等を利用してテキストデータを作成するような場合に、一部でもコピー・アンド・ペーストがあったようなケースや、生成AIなどを補助的に活用したようなケースが、本人による入力等と評価することができるのかという点についても考慮が要るのではないかと感じました。ただ、デジタル技術の活用という側面から見ますと、利便性を十分に享受することができるといった視点での検討も必要ではないかとも感じており、この点が非常に難しいと考えております。   御提案にある録音・録画したデータを遺言とするケースにつきましても、それ自体を遺言とするのであれば、本人が入力等を行ったと評価できると考えておりますが、仮にこれをテキストデータにしていくという措置が入る場合に、音声認識ソフトなどを活用してテキスト化したケースにおいては本人が入力等を行ったと評価できるのかといった問題が出てくるのではないかとも感じました。   また、証人を関与させる方式というものもございますけれども、証人が関与した際に、その証人にどのような情報の提供を求めていくのかということも検討が必要だと感じております。補足説明では、事後的に紛争が生じた場合に証人が遺言書作成過程を供述するといった例が示されておりますが、場合によっては証人が先にお亡くなりになっているということもございますので、紛争を予防するために事前に充実した情報を提供しておく必要性などについても検討していく必要性があるのではないかと感じました。 ○大村部会長 ありがとうございます。隂山委員からは、現在試みに整理されている選択肢について、立ち入って考える必要があるところがあるのではないかという御指摘を頂いたと思います。一つは、録画・録音のテキスト化ということも含めて、本人の入力というものが必要だとして、本人の入力だといえるのはどこまでなのか、本人の入力であるかないかではなくて、程度の問題というのがあるので、どこで線を引くのかということを考える必要がある。それから、証人を介在させるということなのだけれども、この証人に対してどのような情報を、どの段階でということもあるかもしれませんが、求めるのかということも考える必要がある、この2点を具体的に御指摘いただいたかと思います。ありがとうございます。   ほかにはいかがでしょうか。 ○冨田委員 冨田でございます。すみません、少し質問になるかもしれないのですが、確認をさせていただきたいと思うのですけれども、1ページ目の第1の(3)、32行目に、プリントアウトした書面とする方式の中では、本文を全文及び日付を入力し、プリントアウトした書面を作成するに当たっては、証人が必要であると記載がされています。自筆で全て書く場合には証人の立会いは必要ないかと思うのですが、なぜワープロで打って自署するという方式においては最初から最後まで証人が必要という整理になったのか、改めて御説明を頂けると有り難いと思います。   私は以前から、自筆証書遺言における全文自書の負担を軽減するという観点から、この方式が有力ではないかと申し上げておりました。それに証人が必要ということの整理が付け加わるとなると、むしろ負担が大きくなるのではないかと思いましたので、改めて御説明いただけると有り難いと思います。よろしくお願いします。 ○齊藤幹事 齊藤でございます。御質問ありがとうございます。1ページの1(3)ですが、ここは今ある自筆証書遺言との兼ね合いで申しますと、今ある自筆証書遺言は手書きが要件ですので筆跡が残るということで、その筆跡はそれ以外の御本人の筆跡との比較対照が可能ということで、そのことで事後的に紛争になった場合には、御本人自身が作成したものかどうかを確認しようとするよすがというか、手段があるということかと思います。   それに対して、今回の資料では、少し考え方は極端かなという気もいたしましたものの、他方で論理的に考えるというか、単純に考えると、今言った手書きで全文を書くという部分をワープロ入力に置き換えるということですと、活字しか残らないと、末尾の署名はあるとしても、本文については活字しか残らないということですので、これを御本人が入力したかどうかの担保を取りようがないと、そうすると単純に考えれば、そこに始終証人が立ち会っているということによる担保ということが一案としてはあり得るかなと、そういう趣旨で例示として記載した、こういうつもりですが、お答えになっていますでしょうか。 ○大村部会長 齊藤幹事、今のは第1の1(3)で、ここは遺言者本人による入力等を必要とする方式という仕分けになっているので、そういうことになりますけれども、冨田さんが御質問されたような別の方式は、第1の2(2)、プリントアウトした書面とする方式というところに記載されているという理解でいいですか。 ○齊藤幹事 一応、このプリントアウトした書面とする方式については、何も更にプラスアルファの要件を付けなければ、2ページの(2)にあるように、御本人が入力したかどうかの確認の手段がなくても、選択肢としてあり得るという意味で、2ページの(2)を記載しています。それに対して、1ページの(3)につきましては、やはりジャンルとして本人による入力を必要とする方式という位置付けで作成したつもりですので、そこで、繰り返しですが、1ページの(3)については証人が必要になってくると、それに対して2ページの(2)の方では、そういった証人等のプラスアルファの要件がくっついていないと、こういう整理をしたつもりでございます。 ○大村部会長 今のお答えでよろしいでしょうか。 ○冨田委員 お答えありがとうございます。本人による入力が必要か必要でないかで要件が変わってくる整理だと私みたいに遺言に詳しくない者が見たときに、少し分かりにくいかなという感想を持ちました。あともう1点、御説明いただいた中で、自署だけでは本人確認できないという御説明だったように思うのですが、それはこの遺言の世界だけではなく契約の世界とかでも自署して、サインをしてというのが契約の世界の中では通っているようなケースもあるのですが、これは遺言の世界においては、それが本人とは確認できないという、そういった理解になっているということでよろしかったでしょうか。 ○齊藤幹事 齊藤でございます。通常の契約書、末尾の署名を御本人がしたかどうかというお話と、自筆証書遺言において全文を御本人が書いたかどうかというお話とは、やはり若干場面が違うのかなという理解で整理をしております。つまり、末尾の署名については御本人が書いたのでしょうということで、これは契約書だろうが自筆証書遺言だろうが共通なのですが、自筆証書遺言に関しては、重要な意思表示であり、しっかり真意が表されていること、齊木委員のお言葉を借りれば、御本人が理解をした上でそれを表出することのような必要性も含めて、末尾の署名のみならず全文について自書が要求されていると、これが自筆証書遺言かなという理解でおりました。 ○大村部会長 よろしいでしょうか。ありがとうございます。   そのほか、御意見はございますでしょうか。 ○相原委員 相原でございます。今の点なのですが、これは従前、同じことを何回も申し上げてしまっておりますので、簡単にだけ申し上げますが、プリントアウトする前の入力を御本人がしているところを証人が見ているとか、1(3)ですか、それがそういうことを前提とした文案になっていると。ただ、おっしゃるように、要件なのか、それがそうでないことの立証とかそういう問題なのかという、そこは多分、観念的に考えなければいけないところはあろうかと思いますので、少し理解しにくいところはあったのかなと、聞いていて思いました。   その関係で申し上げますと、本人がプリントアウトするだけ、入力を必要としないということで、一応分類として、2(2)でプリントアウトした書面とする方式と一応分類されていると、これだけであれば私は、非常に危険であり、不十分であるから、遺言とすることは不適切であると思います。   ただ、これもずっと意見を言ってきました保管制度との関連になったときにどう考えるかということは、また別の問題です。したがって、ここの整理としては、これのみでは了解し難いけれど、その後、保管制度がどんな形で用いられるか、これもまた、持って行くのか、送信するのか、誰かが何か証人となる等、そういう点があるかが、また問題になろうかと思いますけれども、そこは複数の方法があり得るのかなと考えております。   それから、(1)の証人のところですが、これも従前から出ておりますが、証人が一体何を、どういう関係のことまでやるのかということは、次回以降の海外の法制度の御説明等々を承りながら、是非考えていきたいと思っています。そこが重くなってしまうと、自筆証書遺言を簡略化しようとしているのが、そうではなくなるではないですかというような御指摘は十分あろうかと思うのですが、ただ、公証役場に行かずに、自筆でできない場合に、適切な証人がいたとすれば考えられるというのであれば、選択肢が増えるという趣旨では、考えてもいいのではないかと個人的には思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。二つ御意見をおっしゃったかと思います。一つはその前、冨田委員の御発言との関連で問題になっていた、プリントアウトした書面というものについて、第1の1の部分と2の部分で挙げられているが、2については、このままでは反対だけれども、保管制度と絡める形であれば、それは議論の対象になり得るといった御意見、それから、証人については、先ほどもこれも御発言がありましたけれども、証人にどのぐらいのことを求めるのかによって制度の重さが違ってくる。相原委員としては、多少重くなるとしても、新しい制度を一つ足すということなので、それはあり得る選択かもしれないと、こういう御意見だと承りました。   ほかにはいかがでしょうか。 ○倉持幹事 先ほどの本人による入力等を必要とするかどうかということですが、こういう問い掛けに対しては多分、必要とするという考えが多くて、ここは表現の問題として、必要とするかどうかではなくて、これは有効要件とするかどうかの問題だと思います。要するに、入力を有効要件とすると、後日、遺言を執行する段階で、遺言によって利益を受けようとする側が、本人が入力したことを証拠によって証明しなくてはいけないが、それはデジタル化した場合にかなり困難になるのではないかという問題です。仮にそれを有効要件とするのであれば、第1の1の(1)から(3)までのような方式をとらざるを得ないという考えだと思うので、ここは必要とするかどうかというテーマではなくて、やはり有効要件とするかどうかのテーマで、それは法律上、その有効性が争われた場合にその立証責任の問題が生ずるというところから来ているのだという説明を加えられると良いと思いました。   それから、第1の2(1)イで、録音・録画と生体認証技術が並列的に規定をされているのですが、録音・録画で何を録音・録画するかによると思うのですが、例えば遺言内容を読み上げているだとか、入力しているだとか、そういうことを録音・録画するのであれば、それは本人確認以上に真意性の担保にもなり得ます。他方で生体認証というのは、本人確認の材料にはなるけれども、やはり真意性の裏付けには余りならないのではないかということで、この二つは似ているようであるけれども、少し違うものではないかという印象を持っております。   それに関連して、保管制度ですけれども、保管制度を設けた場合には、この公的機関において本人確認を行う方式とありますが、先ほどのヒアリングでもありましたし、それ以前に意見を述べられた方もいらっしゃると思うのですが、やはり真意性の確認の手段にもなると思うので、やはりこの保管制度というのは本人確認及び真意性の確認の手段として位置付けるのがよろしいのではないかと思っております。   最後に、2(2)のプリントアウトした書面とする方式ですけれども、私もこれは積極的に進めていいとは思う反面、署名だけですと、やはり第三者が作ったものに単にサインさせられただとか、そういうリスクもあり得るし、事後的にそれが本人の意思かどうかの確認がやはり署名だけだと十分ではないので、プリントアウトした書面を保管機関において保管する方式ということであれば良いと思います。要するに、2(2)は、プリントアウトした書面に遺言者本人が氏名を自署する方式とありますが、プリントアウトした書面を公的機関において保管する方式ということであれば、それは一つあり得るのかなと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。倉持幹事の御意見は、大きく分けて2点に整理できたかと思います。一つは、第1で挙げられているものについて、少し立ち入って整理する必要があるのではないかということをおっしゃっていただいたのだと思います。第1の1(3)のプリントアウトした書面とする方式、これは相原委員もおっしゃっていたけれども、要件とするということと、証明の問題というものの関係を整理した方がいいのではないかといった御指摘だったかと思います。それから、2(1)イに出てくる録音・録画と生体認証とが並列だけれども、果たす役割が違うのではないかと、実はこれは先ほどこのことが話題になったとき、小池委員から質問が出たときに齊藤幹事がお答えになって、齊藤幹事のお答えの中でもこの二つの位置付けが違っていたので、そういうことがあるのではないかという御指摘だと思いました。それから、大きな2点目は保管制度との関係で、保管制度が果たす機能というのを積極的に評価された上で、2(2)のプリントアウトした書面というのをこれと結び付けることは考えられるのではないかと、こういう御意見として承りました。   ほかにいかがでしょうか。 ○齊木委員 保管制度について少し述べたいと思いますが、保管制度の諸外国の立法がありますけれども、真意性を担保している制度というのは皆無だと思います。法務局という性質上、やはり作成の真正とかを確認する役所です。ですので、そこで真意性も確認すればいいではないかという議論は、少し法務局という本来的な機関の性質とかこれまでの仕事、それから諸外国の保管制度の立法例、そういったものと対比しても少し無理があると私は考えております。ですので、真意性の確保は飽くまでも保管制度ではなく、やはり方式によって担保されるべきだと考えております。   方式によって担保する場合には、やはり単にプリントアウトした書面に署名すればいいというのは、少し無理がある。というのは、実際に裁判で争われるときに大体、本人の署名かどうかも争われるのです。そうした場合に、実は現在の自筆証書遺言だと、本人が書いたかどうかは、その文章の中の10文字、20文字を対比して判断しているのです。それでも筆跡鑑定の正確性は十分でないと言っているのに、4文字とか名前だけになったら、絶望的だと思われます。ですので、それで本人が書いたものであることが争われたら、立証する手段がほとんどないということになると思います。だから、それはほとんど無効の山を築くことになるので、やはり重いという御意見はあるかもしれないですけれども、証人を付けて、本人の頭の中から出てきて、本人と会話して、そういうのをしたいのだということを聞き取ったという中身を、証人の方が後から法廷で証言できるようにしておくことこそが、有効な遺言を築くために必要だと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。保管制度がどこまでの役割を果たし得るかということについて、真意性の確保までは無理であろうという御意見で、それに基づいて、では真意性についてはどうするかというと、やはり証人によるという方向を考えるべきなのではないかという御意見として承りました。   ほかにはいかがでしょうか。 ○谷口委員 保管制度について、今、問題になる、トラブルになるということについての議論が中心になっていますが、無視される、執行されない遺言の方がもっと多いと思います。この点は、保管制度があることによって大分効果が出ると私自身は思っておりますので、まず保管制度があることを前提に議論すると、もう少しいろいろな包括された議論が出されるのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。保管制度について、例えば執行との関係などでメリットがあるので、そうしたことも含めて保管制度について議論する必要があるという御意見として承りました。   ほかにはいかがでしょうか。 ○戸田委員 戸田でございます。質問なのですけれども、証人はどういう機能を持っているのかと。先ほど隂山先生がおっしゃったように、証人は争われたときには亡くなっている可能性もあるわけでして、証言されない可能性もあるということだとすればAI等、記録するようなもので代替し得る、した方がいいようなものなのかどうか、そういった証人の機能として具備する要件みたいなものがもし分かっていれば、教えていただきたいと思います。 ○齊藤幹事 齊藤でございます。これで十分かどうかは、また検討の余地があるかと思いますが、本日の部会資料4で申し上げますと、4ページの26行目の辺りに(注)がございます。一番よく用いられている公正証書遺言において証人がいかなる役割を果たしているかについて御紹介したつもりでして、少なくとも既存の公正証書においてはこのような役割を果たしており、かつ、事後に紛争になった場合には証人として法廷で供述を得ることもあり得るということかと思います。新たな方式において証人を取り入れる立て付けを採るとすれば、そのときにその証人に何を求めるのかは、また別途、既存のものを踏まえて検討する必要があるということかと思います。ただ、証人が先に亡くなられる可能性とかそういったものについては、AIとかとは異なり、証人である以上、どんなケースでもやむを得ない、あり得ることという理解でおります。 ○大村部会長 ありがとうございます。証人の取扱い、それから保管制度としてどんなものを作るのかということにつきましては、現行法の下での私たちの経験もあるわけですが、遺言をデジタル化するということになった場合、諸外国でどうなっているのか、これは齊木委員からも、また外国の例もというお話がありましたけれども、次回以降のヒアリングの際に参考人の方々のお話を聞いた上で、皆様から質問等を出していただければと思います。   ほかにはいかがでしょうか。 ○隂山委員 隂山でございます。保管につきまして、参考人ヒアリングの際にもお伺いをさせていただきましたが、例えば電子署名方式を活用した場合においても、30年、50年後を見据えたとき、ローカル環境にデータが保管されているケースにつきましては、脆弱化の観点から、当該データが真正なものであることの担保は技術的に難しいだろうという御指摘があったことを踏まえますと、長期間真正性を確保していくという観点からは、保管制度があった方が好ましいと考えております。   また、先ほど谷口委員からもございましたけれども、遺言を残された方の最終意思を適切に反映するためには、遺言が適切に発見されるということが非常に重要だと考えております。平成29年度に法務省が実施されました、「我が国における自筆証書による遺言に係る遺言書の作成・保管等に関するニーズ調査・分析業務」では、年代によってぶれはございますけれども、自筆証書遺言や公正証書遺言作成の経験に関し、全体として見ると自筆証書遺言の作成が3.7%、公正証書遺言の作成が3.1%ということでございました。これに対しまして、以前配布を頂きました参考資料1では、平成30年の遺言公正証書の作成件数が約11万件、遺言書の検認件数が約1万7,000件となっております。遺言の効力発生時期に関しては資料がなく、推測の域を出ませんが、自筆証書遺言や公正証書遺言は同数程度作成されているにもかかわらず、検認件数が公正証書遺言と比して5分の1程度になっているということは、自筆証書遺言が相続人に発見されていないなどの様々な事情があるのではないかとも考えております。今般の新しい遺言制度を検討するに当たりましては、相続人に対して遺言の存在を明確にする手法も非常に重要ではないかと考えております。その意味でも保管制度につきましては意義が大きいのではないかと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございました。保管制度については様々な機能が期待されているわけですけれども、遺言の存在というのを確認するという観点からも意義があるのではないかという御発言だったかと思います。   ほかにはいかがでしょうか。 ○内海幹事 内海です。なかなか悩ましいと思っておるのですけれども、作成というものを、例えば要件としてしまいながら、しかしワープロ入力ということになっていき、音声認識とか生成AIが補助的にとかというものを全くは排除しないのだというようなことになっていくと、「作成した」という要件が規範化していくというか、評価的なものになっていくということがある程度避けられないような未来というのが想定されて、それが悪いことかどうかというのも分からないのですけれども、遺言が有効とされるか無効とされるかというのがかなり、裁判になってどう判断されるかの予測が難しくなる方向性になりやすい面があるかと思います。他方で、方式を特定することには、あまりそうならないようにする機能もあるのだということになると、余り抽象度の高い、あるいは認定の難しい要件というものを作るということはどうなのか、ということになってきそうです。しかし、今想定されている中で事実として確認しやすい方式というものは、署名若しくは電子署名というのと、もしそれで足りないとすれば保管ということになるのかなという気はするのですけれども、署名、電子署名だけでは足りず、しかし保管そのものに多くを期待するのは難しいということになると、ではどうすればいいのかというのは、改めて悩ましいと思っております。作成というものを実質的に理解して回顧的な認定・判断に委ねるところが大きくなるような方向性になったときに、先ほど齊木委員がおっしゃった無効の山になるのか有効な山になるのかというのも少し読み切れないというようなところもあるかなと思いますが、やはり、ただ難しいと言っても意味はないかもしれませんけれども、改めて少し立ち止まって考えるべきところがあるかなと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。先ほど、本人の入力というのには幅があるのではないかという御意見も出ていたかと思いますけれども、本人が作成するということを1かゼロかでない考え方で考えていくと、作成したといえるかいえないかは、規範化するのではないかと内海幹事はおっしゃいましたが、そうしたことになっていくであろう。そうすると、結局裁判で争ってみて、有効に転ぶのか無効に転ぶのか分からないということになるけれども、それは方式というものが元々持っていたメリットというものを失わせることになるのではないか。余り融通の利かない明確な方式がいいのか、非常に緩いけれども、しかし後で裁判で問題になるような幅のある方式を考えるのか、ここにジレンマがあるのではないかという御指摘だったかと思います。その幅の中でどういう選択肢、あるいはどういう制度を組んでいくのかということを考える必要があるという問題提起を頂いたと理解を致しました。 ○内海幹事 綺麗に整理していただいてありがとうございます。私は作成という言葉を使って今、意見を申し上げたかと思いますけれども、入力と表現した方が正しいと思いますので、入力というふうに理解していただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○水口委員 水口でございます。本日の参考人からのヒアリング資料にあった内容も含めて、2点申し上げたいと思います。   まず一つ目、遺言の方式の在り方の遺言者本人による入力等の「入力」というところです。例えば部会資料4第1の1の(1)イには、「入力するなど」とあり、ウには「ワープロソフト等」という記載があります。また、本日のヒアリング資料にあったアプリの例では、アプリの指示に従って遺言作成に必要な情報を入力することが想定されていたと思います。要は「遺言者本人による入力」といった場合に、何をどこまで入力するのか、遺言書の一言一句を全部入力するということではなくて、チャットボットのような作成補助をするようなツールが出てくる可能性を考えると、「遺言者本人による入力」という場合に、何をどこまで本人が入力することを要するのかというところをもう少し議論する必要があると思いました。   あともう一つは、本日のヒアリング資料の3章では、仮に保管の寸前のところまでを民間事業者がやるとすればという仮定のもとと理解していますが、その前提で、保管の寸前までの生体認証や電子署名のところまでは民間の方でやり、その後、保管機関に委ねるということになっていました。遺言の執行を受ける金融機関としては保管制度はマストだと思っていますが、仮にこの保管の寸前のところまでを民間がやるとすると、保管制度の保管官が、果たして適切な生体認証がなされたのかとか、適切な電子署名がなされたのかというのを確認するということが結構難しいのではないかと思っていまして、そうしますと、保管制度は本当に保管だけを行うのか、その手前の生体認証だとか電子署名の部分も含めて行うのかみたいな、そういうことも議論が必要ではないかと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。水口委員からは、今日のヒアリングも踏まえた御意見、御指摘を頂戴したかと思います。一つは、直前にも入力ということが問題になっておりましたけれども、そのときの入力の対象が、遺言に書かれる文章そのものなのか、あるいはそれ以前の情報を入力すればいいということなのか、そうしたことも考える必要があるだろうという御指摘だったかと思います。それからもう一つは、ヒアリングの中で仮の一つのサンプルとしてお示ししていただいたものは、保管の段階とそれ以前の段階というところで切れる、そういう区分けになっていたと思うけれども、この接合というか、そこの部分がうまくいくのだろうか、もしうまくいかないということになると、保管の方にその前の段階を組み込んだような制度を考えることもあり得るのではないか。そうすると、齊木委員がおっしゃっていた、従来の保管というのとは少し違うものを別途考えるというようなことになってくるのかと思いますけれども、そうしたことを水口委員は示唆されたのかと思いました。何か御意見ありますか、どうぞ。 ○齊木委員 私の方で申し上げたのは、本人確認と作成の真正は法務局の分野ですよということを申し上げました。今回のデジタル遺言で電子署名するとなると、その電子署名の有効性確認は、実は私は法務局でやるべきだと、既に認証局に接続するシステムを法務局は持っているわけです。今の登記のオンライン申請は全部電子署名、有効性確認しているわけです。現状で電子署名できるスキルもあります。   あとは本人の成り済ましかどうかについては、電子申請の場合に本人の顔貌での認証システムを今、恐らくデジタル庁が開発していると思います、行政全般の申請に共通のものを。そうすると、登記供託オンラインシステムもそれを乗っけることになりますので、あそこの項目に遺言書保管を乗せて、顔貌認証なんかでマイナンバーカードによる申請を受け取って、その後、電子署名の有効性確認をすると、これが予定されるところではないかと考えています。ですので、水口さんの御心配の部分は、作成業者も法務局も両方やる部分が重なる部分が出てくるということだろうと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。今の齊木委員のお話はこのデジタル化の中で、現段階での、あるいは遺言書保管法で作られた当初の段階での保管制度から発展した方向に、保管制度は動くということが考えられるので、そうしたことも含めて保管制度を考えると、それは可能なのではないか。こういう方向の御意見と承りました。   ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   部会資料4につきまして御意見を頂いてまいりました。第1と第2に分かれておりますけれども、第1の部分につきましては、ここでされている整理の中身について、更に立ち入って検討すべき点があるのではないかという具体的な指摘を幾つかしていただいたと考えております。   それから、第2の保管制度については、保管制度というものにどれだけのものを担わせるのかということにつきましては、皆さんの間に多少差があったと思いますけれども、保管制度を使うべきではないとか、要らないという御議論はなかったと理解をしておりますので、保管制度に割り当てる、保管制度の中で可能なものというのは何なのかということをこの先検討していくということかと今日の時点では受け止めさせていただきたいと思います。   更に御意見もあろうかと思いますけれども、本日の部会資料4についての議論としては、この辺りでということにさせていただきたいと思います。   次回の議事日程等につきまして、事務当局の方から御説明を頂きたいと思います。 ○齊藤幹事 本日も熱心に御議論を頂き、ありがとうございました。   次回の日程等について御説明を致します。次回は10月1日火曜日、午後1時30分から午後5時30分まで、場所は、恐縮ですが調整中ですので、追って御連絡を差し上げるということにさせていただきます。   次回と次々回は、海外法制に関するヒアリングを実施しつつ、並行して二読に着手したいと考えております。具体的には、次回にイギリス、フランス、ドイツについて3人の研究者の方に御紹介を頂く、これを前半にして、その後、二読に入ると。それから、次々回は、これは時間の都合で後半にアメリカ、カナダについてのヒアリングを行うということで、前半に御議論を頂くという方向で調整をしております。これまでの御議論、あと今日の部会資料4も踏まえまして、また更に二読について資料を準備してまいりたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。次回、次々回と外国法制についてのヒアリングをするのと併せて、議論の方も継続していくということかと思います。次回、10月1日ということになっておりますけれども、10月1日は言わば9月分ということで、すみませんが、10月は1日のほか月の後半にもう一度お願いできればと思っております。   ということで、本日の法制審議会民法(遺言関係)部会、第4回の審議はこれで終了、閉会とさせていただきたいと思います。   本日は熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。閉会いたします。 -了-