改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会 (第15回) 第1 日 時  令和6年10月3日(木)      自 午後3時00分                           至 午後5時18分 第2 場 所  東京保護観察所会議室(1階) 第3 議 題  取調べの録音・録画制度等 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○中野参事官 ただ今から「改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会」の第15回会議を開催します。   皆様、御多用中のところ、御出席くださり誠にありがとうございます。本日は前回会議に引き続き、第2段階の協議として、「取調べの録音・録画制度」に関する意見交換を行うこととします。   本日から新たに平出裁判官と中山課長に新たに構成員に就任いただきました。この際、一言御挨拶を頂ければと思います。 ○平出構成員 東京地方裁判所の平出喜一と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○中山構成員 警察庁刑事企画課長の中山でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○中野参事官 ありがとうございます。   事務当局から本日の配布資料について確認をさせていただきます。本日は、事務当局において作成したものとして配布資料42をお配りしています。これは、「被疑者以外の者に対する取調べについて、取調べの録音・録画義務の対象とすべきか」という論点に関する資料です。配布資料の内容については、後ほど、この論点について御協議いただく際に御説明します。   それでは、議事に入ります。  前回会議においては、配布資料41の論点整理案の三つ目、「逮捕又は勾留されていない被疑者に対する取調べについて、取調べの録音・録画義務の対象とすべきか」について協議をいただきましたが、この点について、更に御意見等はありますか。 ○河津構成員 事務当局から御説明いただいたとおり、本日配布資料42として、「刑事訴訟法321条1項2号後段の規定の適用状況」の資料を御用意いただきました。これは以前から御提供をお願いしていたところ、今年4月1日から7月31日までの4か月間の統計を取っていただいたものであり、感謝申し上げたいと思います。   同様の方法で、検察における在宅被疑者の取調べの録音・録画の実施状況についても、統計資料を御提供いただけないでしょうか。特別部会の取りまとめにおいても、「検察等における実務上の運用としての録音・録画の実施状況」も検討の対象として、「客観的なデータに基づき、幅広い観点から分析・評価を行うことが重要である」とされていることも踏まえて、再度御検討いただきたいと思います。日本弁護士連合会は、検察は在宅被疑者の取調べの録音・録画をほとんど全く実施していないと認識しており、その一方で、参院選大規模買収事件において明らかになったように、被疑者は供述調書の内容を否認する供述をしているにもかかわらず、これを糊塗する形で一部録音・録画が行われている事例があると把握しております。検察における在宅被疑者の取調べのうち、録音・録画が実施された件数、一部録音・録画が行われた件数等の「客観的なデータ」は、幅広い観点から分析・評価を行う上で必要不可欠ではないでしょうか。  取調べの件数が多いことは承知しておりますが、検察以上に件数の多い警察については、第3回会議の松田構成員提出資料で明らかにしていただいておりますので、検察においても統計調査を実施することを御検討いただきたいと存じます。 ○中野参事官 事務当局からお答え申し上げます。事務当局としては、これまで、配布資料10において、供述の任意性が争われた事件のうち公判請求時又は略式命令の請求時に被疑者が勾留されていなかったものに係る取調べの録音・録画の実施件数等をお示しさせていただきました。また、配布資料12-1においては、供述の任意性の立証がなされていないことを理由として供述調書等の証拠調べ請求が却下された事例について、供述の任意性に関する判断の要旨を、公判請求時又は略式命令の請求時の身柄区分を明らかにしてお示しをさせていただきました。事務当局としては、取調べの録音・録画制度に係る検討課題を整理する御議論の前提として、お示しできる資料はお示しさせていただきました。   在宅被疑者の取調べにおける録音・録画の実施状況についての御意見を頂きましたが、検察当局においては、この報告を求めていないと承知しており、事務当局においてその件数を把握できませんから、この資料を提供することはできないことを御理解いただければと存じます。   その他、御意見はいかがでしょうか。 ○宮崎構成員 前回会議においての御意見を踏まえての発言となります。前回会議において、在宅被疑者の取調べを録音・録画制度の対象とする場合、その対象事件を現行の録音・録画制度の対象とされている検察官独自捜査事件や裁判員裁判対象事件とすることもあり得るのではないかとの御提案があったかと思います。  一部に検察官独自捜査事件における在宅被疑者の取調べの在り方について問題が指摘されている事案があることは否定するものではありませんので、そのことは検察に身を置く者として真摯に受け止めなければならないと考えていますが、取調べの録音・録画制度の在り方を検討するに当たっては、これまでも申し上げてきたように、全体の状況を見渡して議論する必要があると考えています。   まず、検察官独自捜査事件の多くは、検察官に対して告訴・告発がされた事件であるところ、その中には、およそ犯罪の嫌疑が認められない事案や、およそ犯罪が成立しない事案なども多く含まれており、その結果として、大半は不起訴となっています。例えば、検察統計年報によると、令和5年の検察官に対する告訴・告発事件の総数は4,664件であり、そのうち4,061件が不起訴処分となっているところ、不起訴処分のうち嫌疑不十分、嫌疑なし、罪とならずを理由とするものが3,887件とされており、告訴・告発事件の約83%を占めています。  また、検察官独自捜査事件については、配布資料13によれば、少なくとも令和元年6月1日から令和4年8月31日までの約3年間では、飽くまで令和4年10月24日までに判決が確定したものに限られますが、供述の任意性が争われた事件、取調べの違法・不当を理由として供述の信用性が争われた事件は、在宅も含めて1件もないとされています。これは、全ての取調べが適正になされていることまでを裏付けているものではありませんが、少なくとも統計上は、任意性、信用性が争われた供述調書が証拠として採用された事案がないことを示しており、少なくとも、在宅被疑者の取調べにおいて、不適正な方法によって獲得された疑いのある自白調書が裁判所による争いのある事実の認定に用いられ、誤判の危険を生じさせているような問題が生じているものではないことはいえるのではないかと思います。  その上で、逮捕又は勾留されていない被疑者は、取調べ受忍義務を負わず、取調室からいつでも退去でき、退去後、直ちに弁護人とも相談ができることも考慮すると、制度として、検察官独自捜査事件の在宅被疑者の取調べを一律に録音・録画の対象としなければならない必要性まではないと考えます。   他方、検察官独自捜査事件で取り扱われることがしばしばある財政経済事件、汚職事件等は、一般に、事案が大規模かつ複雑で、多数の関係者が存在し、様々な経緯や背景があるのが通常であります。そのような事件について、事案の全容を解明し、刑事責任の有無・程度を明らかにした上で、刑事責任を負うべき者を適正に処罰するためには、とりわけ、捜査の初期段階において、まずは、在宅の被疑者を含む多数の関係者から、必要に応じて関係資料の提出を受けつつ、幅広い事項について網羅的に説明を求め、十分な情報を収集した上で、犯罪性の有無、被疑事実や適用罰条の選定、立件すべき被疑者の範囲等について適切に判断することが必要不可欠であり、こうした観点から、在宅被疑者の取調べや参考人の取調べは、捜査実務上極めて重要な役割を果たしています。   一方で、このような事件の全容が判明していない捜査の初期段階における取調べは、情報収集としての側面もあり、広範囲にわたって網羅的な聴取を行い、最終的に立件されない他の犯罪や不祥事、場合によっては醜聞等を含め、様々な事実関係や、関係者の人柄、言動、人間関係等についても説明を求める必要があり、その結果、赤裸々な実態が語られることもあることから、仮に録音・録画を義務付けた場合、相手方において、供述した内容が即時に記録化され、証拠開示等を通じて後に関係者に知られることへの懸念から、十分な供述ができなくなるのは自明のことではないかと思われます。そして、そうなれば、検察官は、捜査の初期段階で必要な情報を把握できず、適切な捜査方針を策定することができなくなる結果、この種事件の捜査・訴追が著しく困難となることからすれば、取調べの録音・録画を義務付けることによる弊害の程度は重大であると言わざるを得ません。   このように、検察官独自捜査事件については、在宅被疑者の取調べについて一律に録音・録画を義務付ける必要性があるとまではいえない一方で、録音・録画を義務付けた場合には、取調べや捜査の機能に重大な支障をもたらすおそれが大きいと考えられることから、在宅被疑者の取調べについて、録音・録画制度の対象とするのは適当ではないと考えます。   次に、裁判員裁判対象事件について見ますと、そもそも裁判員裁判対象事件は殺人や放火といった重大事件であり、被疑者が逮捕・勾留されることなく、在宅のまま終局処分される事件は極めて少ないと考えられ、そのような事件は、不起訴処分になることがほとんどだと思われます。このような事件については、取調べの適正が問題となるような事態が生じるとはなかなか想定し難く、在宅被疑者の取調べの録音・録画を一律に義務付けなければならない必要性が乏しいと考えます。   一方、裁判員裁判対象事件のうち、逮捕が見込まれる事件の取調べや被疑者に任意同行を求めて行う取調べについては、任意段階での取調べの状況が公判で争われる場合があり得るため、録音・録画制度の対象とする必要があるとの意見もあるかもしれません。もっとも、この点については、法制審議会・新時代の刑事司法制度特別部会でも議論がされましたが、被疑者を逮捕するか否かは、在宅での取調べの際の被疑者の供述内容も踏まえて取調べの後に判断されるものであり、逮捕が見込まれる事件の範囲を一義的に画することはできない、任意同行を求めて行う取調べと在宅取調べ一般とを区別して、前者についてのみ録音・録画制度の対象とするのは法制技術的にも難しいといった指摘がなされ、採用されなかったところであります。  また、身柄拘束前の取調べの状況は身柄拘束後の取調べに反映されるため、現行制度のように身柄拘束後の取調べについて録音・録画を義務付けておけば、身柄拘束前の在宅での被疑者取調べの適正確保も図られると考えます。   以上のことから、裁判員裁判対象事件についても、在宅被疑者の取調べを録音・録画制度の対象とするのは適当ではないと考えます。 ○河津構成員 不適正な取調べは、それ自体を防止する必要があるのであって、公判で供述調書の証拠能力が争われなければよいというものではないことは以前から申し上げているとおりです。前回も申し上げましたが、取調べを録音・録画することなく不適正な取調べがあったのかどうかを的確に認定することはできず、現に取調べの監督は有効に機能していないと申し上げざるを得ません。   村木事件では、不適正な取調べを通じて客観的事実に反する供述をした関係者のうち、公判においてもその供述を維持した者については、公判供述の信用性が問題となりました。プレサンス事件でも、特別公務員暴行陵虐罪の陵虐行為に該当すると判断された取調べによって変更された供述が公判でも維持されたため、公判供述の信用性が問題となっています。在宅事件について取調べの録音・録画がなければ、捜査段階で捜査機関の働き掛けを受けて供述が変遷した事実自体が公判廷に現れないこととなり、その結果、刑事裁判の事実認定を誤らせる危険は極めて大きいと申し上げざるを得ません。そして、これまで幾つもの具体的な事例を挙げてまいりましたが、在宅被疑者の取調べにおいて捜査機関の心証に合致する供述を強要したり、不起訴や強制処分を示唆するなどして誘導したりする取調べは頻繁に行われています。それを防止するためには録音・録画を義務付ける必要があると考えます。   これも前回も申し上げましたが、取調べの録音・録画を取調官の裁量に委ねることによって不適正な取調べを防止することはできません。それは、ドライブレコーダーや防犯カメラのスイッチを監視対象者に委ねることによって設置の目的を達することができないのと同じではないでしょうか。実際、先ほども申し上げましたが、被疑者が供述調書の内容を否認しているのに、検察官がこれを糊塗する形で一部録音・録画を行った例が発覚しています。録音・録画を取調官の裁量に委ねることは、かえって供述の信用性の判断を誤らせるおそれがあり、弊害が大きいと考えます。 ○中野参事官 この論点については、差し当たりここまでとさせていただきたいと思います。   それでは、次に論点整理案の四つ目、「被疑者以外の者に対する取調べについて、取調べの録音・録画義務の対象とすべきか」について協議を行いたいと思います。  この論点の協議においては、まず、事務当局から配布資料の説明を行った上で、その後に意見交換を行うこととしたいと思います。   このような進め方とさせていただくことでよろしいでしょうか。              (一同異議なし)  そのようにさせていただきます。   まず、事務当局から配布資料42の内容について御説明します。   配布資料42は、検察官が刑事訴訟法第321条第1項第2号後段により検察官調書等の取調べ請求を行った事件について、その事件数や裁判所の判断状況等を整理したものです。この配布資料においては、表の下の「※1」に記載しているとおり、全国の地方裁判所及び簡易裁判所に係属した被告事件のうち、令和6年4月1日から同年7月31日までに判決があった事件を対象としています。   次に、水色で示している欄のうち、左から2番目の「刑事訴訟法321条1項2号後段により供述調書等の取調べが請求された事件数」と書かれた欄を御覧ください。この事件数については、「※2」に記載しているとおり、被告人単位で計上しています。また、供述調書のほかに、同号後段により録音・録画DVDが添付された報告書が請求された事件数も含んでいます。この欄の一番下の「合計」に記載しているとおり、対象期間中、検察官が同号後段により供述調書等の取調べ請求を行った事件数は19件でした。   次に、その右横にある、「刑事訴訟法321条1項2号後段により取調べ請求がなされた供述調書等に係る供述者及び供述調書等の数」と書かれた欄を御覧ください。この欄には、一番左に、同号後段により取調べ請求がなされた供述調書等に係る供述者及び供述調書等の数を記載した上で、それらに対する裁判所の判断状況について、「採用されたもの(一部採用されたものを含む。)」と、「請求が却下されたもの(一部却下されたものを含む。)」に分けて、それぞれ供述者及び供述調書等の数を記載しています。そして、そのうち「請求が却下されたもの(一部却下されたものを含む。)」については、「却下の理由」欄に、却下の理由ごとに供述者及び供述調書等の数を記載しています。なお、「※6」に記載しているとおり、一部採用、一部却下となったものについては、「採用されたもの(一部採用されたものを含む。)」と、「請求が却下されたもの(一部却下されたものを含む。)」に重複して計上しています。   また、「身体拘束」「録音・録画実施」と記載された欄には、「※7」に記載しているとおり、判決書等から、同号後段により取調べ請求がなされた供述調書等が作成された日の取調べにおける供述者の身柄拘束の有無及び録音・録画の実施の有無が判明するもののみ記載しています。   まず、「刑事訴訟法321条1項2号後段により取調べ請求がなされた供述調書等に係る供述者及び供述調書等の数」の欄の一番左の一番下に「合計」として記載しているとおり、対象期間中におけるその供述者の数は24名、供述調書等の数は32通でした。なお、5月1日から5月31日までの欄に記載しているとおり、当該期間中における供述者の数は12名、供述調書等の数は19通でしたが、「※3」に記載しているとおり、そのうち供述者2名、供述調書等4通は、録音・録画DVDが添付された報告書について同号後段により取調べ請求がなされ、採用されたものです。同様に、7月1日から7月31日までの欄に記載しているとおり、当該期間中における供述者の数は5名、供述調書等の数は5通でしたが、「※5」に記載しているとおり、そのうち供述者1名、供述調書等1通は、録音・録画DVDが添付された報告書について同号後段により取調べ請求がなされ、採用されたものです。また、6月1日から6月30日までの欄に記載しているとおり、当該期間中における供述者の数は3名、供述調書等の数は3通でしたが、「※4」に記載しているとおり、このほか、同号後段により取調べ請求がなされた後、不同意の意見が撤回されて同意されたことで採用されたものが1名/1通ありました。   次に、これらの取調べ請求に関する裁判所の判断状況について御説明します。同号後段により取調べ請求がなされた供述調書等のうち、「採用されたもの(一部採用されたものを含む。)」については、一番下に「合計」として記載しているとおり、供述者の数は14名、供述調書の数は21通であり、そのうち身体拘束の有無が判明するものはありませんでしたが、判明する限りで供述者4名、供述調書7通について録音・録画を実施していました。また、「請求が却下されたもの(一部却下されたものを含む。)」については、一番下に「合計」として記載しているとおり、供述者の数は13名、供述調書の数は14通であり、そのうち身体拘束及び録音・録画の実施の有無が判明するものはございませんでした。なお、7月1日から7月31日までの欄に記載しているとおり、当該期間中に、請求が却下された供述調書等に係る供述者の数は3名、供述調書等の数は3通でしたが、「※8」に記載されているとおり、そのうち1名/1通は相反性及び特信性なしとされたものであり、次に御説明する「却下の理由」との関係では、「相反性なし」と「特信性なし」に重複して計上しています。   次に、「却下の理由」について御説明します。一番下に「合計」として記載しているとおり、「必要性なし」として却下されたものが9名/10通、「相反性なし」として却下されたものが1名/1通、「特信性なし」として却下されたものが2名/2通、却下の理由が「不明」であるものが2名/2通でした。なお、請求が却下された供述調書等について、その採否に関し判決文等において取調べの状況に言及したものは見当たりませんでした。また、6月1日から6月30日までの欄に記載している「特信性なし」として請求が却下された1名/1通は、共犯者ではない参考人の供述調書ですが、判決文等において「特信性なし」とした理由への言及はありませんでした。7月1日から7月31日までの欄に記載された、「相反性なし」及び「特信性なし」として請求が却下された1名/1通は、被害者の供述調書であり、判決文等によれば、その理由について、「検察官が主張する被害者の検察官調書の記載と被害者の証言を比較しても、直ちには被害者が実質的に異なった証言をしたとは認め難いし、事件発生から3か月以上も経過し、被害者が証人として採用された後に作成された検察官調書の方が、被害者の証人尋問における証言よりも信用すべき特別の状況があったとは認められない(仮に被害者の証人尋問が行われた時点において、被害者の認知能力が相当程度低下していたことが認められるとしても、この1か月程度前に作成された検察官調書作成時点の被害者の認知能力との間に有意な差があったかは定かでない。)」とされています。   次に、一番右側にある「既済総数」と書かれた欄を御覧ください。この「既済総数」は、飽くまで御参考として記載したものです。「※9」に記載しているとおり、司法統計の月報(速報値)に基づき、各期間中の、全国の地方裁判所及び簡易裁判所における通常第一審事件及び略式事件の既済人員総数を記載しています。一番下に合計として記載しているとおり、4月1日から7月31日までの既済総数は7万2,908件でした。   配布資料42の御説明は以上です。   ただ今の配布資料及び御説明について、御質問等はありますか。 ○成瀬構成員 丁寧に御説明くださり、ありがとうございました。配布資料42について、1点質問させていただきたいと思います。   配布資料42によれば、刑事訴訟法第321条第1項第2号後段により採用された供述調書等のうち、録音・録画が実施されていると判明したものが合計4名/7通あったとされています。ただ、刑事訴訟法第321条第1項第2号後段が問題となる被告人以外の者の中には、共犯者、被害者、目撃者など様々な立場の者が含まれています。このうち、共犯者が自己の事件について取調べを受ける場合には、被疑者取調べの性格を持ちますので、録音・録画が実施されることもあると思います。他方、近時の捜査実務では、性犯罪事件を中心に、年少の被害者や目撃者に対して司法面接的手法を用いた取調べが行われ、その取調べ状況が録音・録画されていると承知しています。  そこで、配布資料42で録音・録画が実施されていると判明した4名が共犯者であったのか、それとも被害者や目撃者であったのかについて、もしお分かりになれば御教示いただけますと幸いです。 ○中野参事官 事務当局からお答え申し上げます。4月1日から4月30日までの欄に記載された録音・録画実施有りとしている1名/2通は、被告人が共犯者と共謀の上、被害者を監禁した事案に係る当該共犯者の供述調書2通です。裁判所は刑事訴訟法第321条第1項第2号後段により、これらの供述調書を採用しています。   続いて、5月1日から5月31日までの欄に記載された録音・録画実施有りとしている2名/4通は、被告人が被害者に対して強制わいせつ行為等に及んだ事案、また、別の被告人が別の被害者に対して暴行を加えた事案に係る各被害者のいわゆる司法面接を録音・録画したDVDが添付された報告書4通です。裁判所は刑事訴訟法第321条第1項第2号後段により、これらの報告書を採用しています。   続いて、7月1日から7月31日までの欄に記載された録音・録画実施有りとしている1名/1通は、監護者である被告人が被害者に対してわいせつ行為等に及んだ事案に係る当該被害者のいわゆる司法面接を録音・録画したDVDが添付された報告書1通です。裁判所は刑事訴訟法第321条第1項第2号後段により、この報告書を採用して、有罪判決を言い渡していると承知しています。 ○成瀬構成員 丁寧に御教示くださり、ありがとうございました。共犯者の取調べの録音・録画と被害者の司法面接の録音・録画の双方が含まれていることがよく理解できました。 ○足立構成員 基本的なことで恐縮なんですが、この請求が却下されたものと採用されたものの違いというのは、つまり証拠として採用するかしないかということだと思います。この却下の理由の中に「相反性がない」と「特信性がない」と「不明」というものがあって、必要性がないということもあるんですが、却下する前にこの供述調書というものを裁判官が御覧になるのかどうか、どのような手続を採られるのかどうか、基本的なことですが、平出構成員に伺えればと思います。 ○平出構成員 では、私の方から若干説明いたします。  一般的には、調書の請求前に当該調書の供述者に対する証人尋問が実施されていますので、その証人尋問において、証人が調書に録取された供述と相反する、もしくは実質的に異なった供述をしたのか、公判供述よりも調書に録取された供述の方を信用すべき特別の情況があるのか、という刑事訴訟法第321条第1項第2号後段の要件に係る事情が既に現れていることが多いと思います。この場合には、当該調書の内容を直接確認する必要はありませんので、証人尋問の結果自体から直ちに2号要件の存否を判断することができるわけです。   ただ、このような証人尋問を経てもなお、例えば、証人が調書に録取された供述と実質的に異なった供述をしたといえるか否かが明らかにならなかった場合には、この要件判断のために裁判所において調書の内容を直接確認する必要が認められることもあります。そのような場合においては、刑事訴訟規則に基づいた提示命令によって調書を提出させて、その内容を確認することもあり得ます。 ○足立構成員 実務上の運用がよく分かりました。ありがとうございます。 ○佐藤構成員 議論の前提を確認するという趣旨で、配布資料42の示す現状についてもう少し伺いたいことがございます。  この統計を拝見しますと、刑事訴訟法321条1項2号後段により供述調書等の取調べが請求された事件数は、4か月間で19件であり、さしあたり単純に3倍して1年分を見積もっても60件に満たない数字にとどまります。実務家の方から、いわゆる2号書面の出番が減っていると伺ったことはあったのですが、数字を見せていただき、正にそういう状況であることを確認することができました。   この検察官面前調書につきましては、裁判員裁判導入以降、裁判所がその証拠採用に謙抑的な姿勢を示すようになっている、検察官も調書に頼らずに公判廷の尋問で必要な証言を引き出すようにしている、ということが指摘されておりますが、ここでお伺いしたいのは、裁判員裁判以外の事件も含め、総体として2号後段書面の出番が減少したという認識で議論してよろしいか、という点です。実務経験をお持ちの構成員の方にご教示を頂ければ有り難いと思います。 ○河津構成員 私個人としては、例えば20年前と比較すると、2号書面の請求件数が減っているという実感はございます。ただ、弁護人としての問題意識を申し上げると、証人テストを通じて公判で調書の再現が行われているのではないかと警戒することが増えております。先ほど申し上げたとおり、調書の証拠能力が争われることが少なくなったからよいというものではなく、そもそも取調べを通じて本人の記憶と異なる供述が作られ、それが刑事裁判の事実認定を誤らせてしまうことこそが問題であると認識しています。それを防止するためには、証人の供述が初期供述から一貫したものであるのかどうか、それとも取調べにおいて捜査機関の働き掛けを受けて変遷しているのかを確認できることが重要であって、そのためにも取調べの録音・録画が必要であると考えています。   先ほど例に挙げたプレサンス事件も、取調べの中で供述が変遷し、変遷後の供述が公判に現れていますが、弁護人が開示を受けた録音・録画の記録媒体を検討して、供述が変遷していること、そこで特別公務員暴行陵虐罪における陵虐行為と後に判断されるような働き掛けがあったことを発見して、その事実が公判廷に顕出されたという経緯がありました。 ○宮崎構成員 佐藤構成員の御質問に対して的確に答える答えを持ち合わせているわけではないのですが、配布資料42で「必要性なし」で却下されているものが大半だということからも分かるように、裁判所が、裁判員裁判かそうでないかを問わず、供述調書そのものを採用しない傾向になっているのではないかと思いますし、それが請求にも影響している可能性はあると思います。 ○平出構成員 私も統計的なことは分かりませんので確かなことは申し上げられないのですが、先ほど河津構成員からあったとおり、20年前と比較すると請求自体も減っているような気がいたしますし、その結果として採用する場合も数としては恐らくは減っているのではないかという実感がございます。その原因が裁判所なのか、それ以外のことも含めてなのかという点は、何とも言えないところではあります。 ○藤井構成員 被疑者以外の者に対する取調べとなると、犯罪被害者も含んでの議論になると思いますが、先ほど成瀬構成員が御指摘になったように、年少の被害者に対して一回的に司法面接で取り調べて、その過程を録音・録画し、その結果、当該被害者の公判供述等の負担が軽減される余地もあるとすれば、そのような被害者の取調べを録音・録画することを積極的に容認すべきケースもあるのではないかと思います。   ただ、被害者の取調べを全て義務的に録音・録画するとなると、その供述の様子が後日、被告人その他の第三者の目に触れるというだけで、被害者の自由な供述を非常に萎縮させる面は極めて大きいのではないかと思います。当該被害者が被害申告を差し控えることにすらつながりかねないと強く懸念されます。  また、被告人と面識のない通り魔的な犯行であっても、犯罪被害者等の取調べの様子が被告人によって閲覧され、被害者の容ぼう等が被告人の目に触れることは、被害者のプライバシー保護の観点からも極めて問題ではないかと考えます。   実際上も、被疑者・被告人の取調べについては供述の任意性が問題となりやすいでしょうが、犯罪被害者を含む参考人の取調べについて、被疑者・被告人と同程度に録音・録画の必要性があるともいえないのではないかと思います。  ですので、参考人に関して、その取調べを録音・録画するかについては、検察官の適切な裁量に委ねることとして、犯罪被害者を含むおよそ全ての参考人取調べの全過程の録音・録画を義務付けるという趣旨であれば、そういった御意見にはちょっと反対であります。 ○河津構成員 私は、被疑者以外の者、いわゆる参考人についても取調べの録音・録画義務の対象とすべきと考えます。今年6月14日の日本弁護士連合会定期総会決議も、全ての被疑者及び参考人の取調べについて全過程の録音・録画を義務付ける法改正をすることを求めております。   参考人には、後に被疑者とされる人物のように犯罪への関与が疑われている人物のほか、目撃者、被害者など様々な立場の人物があり得ますが、いずれの立場の人物についても、供述が正確に記録されることは有益であると思われます。このうち犯罪への関与が疑われている人物については、捜査機関の判断によっては被疑者としても取り調べられ得る者であり、録音・録画の必要性は被疑者と変わらず、被疑者取調べの録音・録画義務の潜脱を防止する必要もあります。   他方で、先ほど藤井構成員が御指摘になったとおり、特に被害者の中に、録音・録画されたくないという心情を持つ方がいることは理解することができます。ただ、現行法は、「被疑者が記録を拒んだことその他の被疑者の言動により、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるとき」という除外事由を設けており、参考人についても同様の除外事由を設けることによって対処することが適切であると考えます。私も被害者の代理人を務めることがありますが、録音・録画をするか否かは取調官の裁量に委ねるよりも、被害者の意思に委ねる方が適切であると考えます。   取調べを受ける人物の心情への配慮について更に申し上げると、これは参考人に限らないことですが、容ぼうを撮影されたくないという心情には配慮すべきであると思います。取調べを受ける者が希望するときは、容ぼうを撮影せずに録音のみを行うものとすることも検討すべきではないでしょうか。特に被害者である参考人については、容ぼうを撮影されたくないと希望する割合は高いと考えられるところ、そのような心情に配慮しつつ供述を正確に記録するために、録音のみを行うことが適切な場合は多いと思われます。 ○足立構成員 今の河津構成員の御意見と重複するので、私からもちょっと御意見申し上げます。私も、検察官による参考人の取調べについても原則として録音・録画の対象とするように検討すべきだと考えています。   2009年の郵便不正事件では、皆さん御存じだと思いますが、元厚生労働次官の村木厚子さんの共犯とされた3人、それから、参考人として任意の事情聴取を受けた厚労省職員10人のうち半数が、村木さんが関与したとする虚偽の供述調書に署名しています。現状では、参考人の取調べの可視化は検察官の事情に応じて一部にとどまっていると見られていて、参考人本人が取調べで隠し録音するといったようなことがない限り不適正な取調べが発覚しない構造になっています。また、取調べ件数やその時間といったデータに乏しくて、参考人の取調べで何が行われているのか、その実態はよく分かっていません。   取調室では、被疑者であろうと参考人であろうと、取調官と取調べを受ける人との立場に大きな心理的な格差があって、取調べを受ける人には、仮にやましいことがなくても、圧迫感や威圧感を強く感じるものだと聞いています。そこで、参考人の取調べについて在宅事件の被疑者同様に録音・録画が導入されるとしたら、取調べの実態が裁判を通じて国民の目に届いて適正化、それから不当な取調べの抑止が図れるのではないかと考えています。それに加えて、録音・録画制度の運用実態が更に可視化されて、検証や更なる制度改善も可能になるのではないかと考えています。   もっとも、先ほどから議論にあるように、参考人の中には事件の被害者、目撃者、被疑者の家族、共犯者、鑑定人といった様々な人がいると思います。中には性犯罪の事件関係者など、特にプライバシー上配慮すべき、それが不可欠なケースも考えられると思います。そのようなケースでは、現行法の除外事由、例外事由を参考にして、本人の意思、それから犯罪の性質に照らして録音・録画を行わないといった対応が考えられるのではないかと思っています。 ○宮崎構成員 被疑者以外の者、いわゆる参考人の取調べについて録音・録画を義務付けるべきか否かについて、検察官の立場から意見を申し上げます。   取調べの録音・録画制度の導入に先立って開催された法制審議会・新時代の刑事司法制度特別部会においても、参考人の取調べを録音・録画制度の対象とすべきか否かについて議論がなされ、積極的な意見が示された一方で、参考人の多くは犯罪とは関わりの乏しい一般人であり、その中には事件の捜査に関わりたくないと考えている方々も少なくないのが実情であるところ、そのような方々の取調べまで録音・録画を義務付けることとすれば、捜査協力を得ることが難しくなり、事案の解明や適正な処罰の実現に支障を来すおそれがある、参考人には様々な立場の者がおり、様々な場所で取調べが行われていることから、一律に録音・録画を義務付ける必要性、相当性は乏しいといった意見が示され、そうした議論を踏まえ、参考人の取調べは録音・録画制度の対象とされなかったものと承知しています。   その上で、私としては、参考人の取調べについて録音・録画制度の対象とした場合、捜査上の弊害が極めて大きい上、参考人の取調べについては、その適正が問題とされる事例は極めて少なく、録音・録画制度の対象とする必要性、合理性が乏しいことなどから、参考人の取調べについて録音・録画を義務付けるべきではないと考えます。   そのうち、まず、参考人の取調べについて録音・録画制度の対象とする必要性、合理性が乏しいことについて意見を申し上げます。参考人には様々な立場の者がいるところ、典型的には、捜査機関に対して自ら被害を申告した者や、犯行現場に偶然居合わせて犯行を目撃するなどした第三者、被疑者を職務質問した警察官などであると思われ、一般に、そういった立場にある参考人の取調べの適正が問題になることは相当に少ないのではないかと考えられます。  また、いわゆる共犯者に関しては、逮捕・勾留中の取調べについては、検察の運用において幅広く録音・録画を行っていますし、在宅での取調べについても、いつでも取調室から退出して弁護人から助言を受けることができ、実際に取調べの適正が問題とされることが少ないことは既に述べたかと思います。   さらに、参考人の取調べの状況が争われるのは、主として、公判において捜査段階の供述と相反する内容の証言がされて、刑事訴訟法第321条第1項第2号後段による供述調書の取調べ請求がなされる場合であると思われるところ、私の経験上も、そもそも同号後段による供述調書の取調べ請求がなされたり、参考人の取調べの状況が争われたりするといった事態が生じること自体が、今日の実務上、極めて少ないという認識です。   配布資料42によれば、令和6年4月1日から同年7月31日までの全国の地方裁判所及び簡易裁判所における通常第一審事件及び略式事件の既済人員総数は7万2,908件である一方、その期間中に刑事訴訟法第321条第1項第2号後段により供述調書等の取調べが請求された事件数は19件にとどまっており、同号後段による供述調書の取調べ請求がなされること自体極めて少ないという先ほどの私の認識は、この配布資料42によっても裏付けられているのではないかと思います。   なお、公判において捜査段階と相反する内容の証言がなされた場合、検察官としては、立証に万全を期す観点から、同号後段による供述調書の取調べ請求をする場合があるものの、同号後段による供述調書の取調べ請求は、検察官立証の終盤でなされることが多いこともあり、それまでの証拠関係を把握した裁判官から必要性がないと判断されることもまま見られます。配布資料42において、請求を却下された供述調書等のうち、却下理由として「必要性なし」が大半を占めているのは、こうした理由もその一因となっているのではないかと考えられます。   その上で、配布資料42に関する事務当局の説明によれば、「特信性なし」とされた事例のうち、6月1日から6月30日までの欄に記載された1名/1通については、その理由についての言及がなく、残りの7月1日から7月31日までの欄に記載された1名/1通についても、取調べ状況への言及はなく、また、少なくともこの調査期間内において取調べ請求が却下された供述調書等について、判決文等において取調べの適正が問題とされた事例はなかったというものであり、これらのことは、参考人の取調べの状況が問題となること自体が極めて少ないことを端的に示しているのではないかと思います。   以上のことから、参考人の取調べを一律に録音・録画制度の対象とすることは、必要性に乏しいと考えられます。   また、捜査の過程においては、事実関係を解明するため、多数の者から参考人として事情を聴くことが必要となります。例えば、殺人事件が発生したような場合、捜査機関は、事件発生前後に被害者と関わりを持った人物、被害者の親族・知人、犯行現場付近の住民等から幅広く事情を聴取した上、目撃者等の事件と関わりがあると特定された方々について、更に詳細な聴取を行い、犯人検挙後も、その供述内容等を踏まえて、更に目撃者等の聴取を行ったり、被害者の親族・知人等の聴取を行ったりしています。   そして令和5年で申し上げると、年間の刑法犯の認知件数は70万件を超えているほか、交通事故のうち被害者や目撃者の存在が想定される人身事故の発生件数は30万件を超えており、その他の特別法犯も含めると、更に多くの事件が発生しています。このように一つの事件でも多数の参考人取調べを行っており、年間で100万件を超える事件・事故が発生していることから、参考人取調べの総数は極めて膨大な数に上ると考えられることからすれば、参考人の取調べを一律に録音・録画制度の対象とする合理性も乏しいものと考えます。   次に、参考人の取調べを録音・録画制度の対象とした場合、捜査上の弊害が大きいことについて意見を申し上げます。  参考人の大半は、ふだん犯罪とは関わりを持たない方々であり、その中でも、被害者は、突然事件に巻き込まれて被害を受けた方々であって、捜査機関に対して被害状況を供述するだけでも相当な精神的苦痛を感じていると考えられるところ、捜査機関に対する供述の状況が映像や音声で即時に記録化されることとなれば、そういった映像・音声が長期間残り続け、被疑者等の事件関係者に知られ得ることへの不安・懸念等による更なる精神的苦痛を与えることとなりかねません。そして、その結果、被害者が被害状況等について十分な供述をすることができなくなったり、場合によっては被害申告自体をためらわせたりすることにもなりかねないと思います。   また、事件の目撃者等の、偶然事件と関わりを持つこととなった方々は、事件の捜査に関わりを持ちたくないと考えているのが通常であり、捜査機関としては、捜査の必要性、重要性を真摯に説明して、何とか捜査協力を得ている場合も多いというのが実情です。  そのため、参考人の取調べを行う際にも録音・録画を義務付けることとした場合、捜査機関に対する供述の状況が映像・音声で即時に記録化され、それが長期間残り続けて被疑者等の事件関係者に知られ得ることに対しての不安・懸念等から、捜査協力を得ることが更に困難となることが深刻に懸念されます。   このように、参考人の取調べについて録音・録画制度の対象とした場合、被害者や目撃者等の協力を得ることが困難となり、事案の解明、適正な処罰の実現に支障が生じるおそれが大きく、その弊害は極めて深刻であると考えます。これは、映像を撮らず音声のみの場合でも同様だと考えます。   また、参考人の取調べは、相手の都合に合わせて、検察庁や警察署以外の場所、例えば参考人方や会社の会議室、大学の研究室などで実施する場合もあるところ、そのような取調べについても録音・録画制度の対象とする場合、そもそも録音・録画機器を設置するための十分なスペースが確保できるのかといった問題や、録音・録画を実施した場所によっては、例えば参考人方の室内の様子が録画されるなどプライバシーを侵害しかねないといった問題、録音・録画機器の運搬・設置等や録音・録画を実施した後の記録の管理等に係る事務的な負担が生じるといった問題もあると考えます。   以上のとおり、参考人の取調べについて録音・録画制度の対象とすべき必要性、合理性に乏しく、他方で、録音・録画制度の対象とした場合の弊害が大きいことなどからすれば、参考人の取調べは録音・録画制度の対象とすべきでないものと考えます。   なお、配布資料6-1の依命通知にもあるとおり、現在、検察においては、公判請求が見込まれる事件であって被害者・参考人の供述が立証の中核となることが見込まれるなどの個々の事情により、被害者・参考人の取調べを録音・録画することが必要であると考えられる事件の当該被害者・参考人を取り調べる場合について、録音・録画を実施することとしています。配布資料7のとおり、例えば、令和2年度及び令和3年度における被害者・参考人の取調べの録音・録画を実施した件数は約3,000件となっています。私としては、検察としてこの方針が後退することはないものと理解しています。   それから、先ほど、参考人が拒絶した場合は録音・録画を義務付けないなどの除外事由を設けるという御提案がありましたが、そうしたこととした場合、その取調べの冒頭において、参考人が録音・録画に同意するか否かを確認する必要が生じます。しかし、先ほど申し上げたとおり、被害者は突然事件に巻き込まれて被害を受けた方々であり、捜査機関に対して被害状況を供述するだけでも相当な精神的苦痛を感じていると考えられます。また、事件の目撃者等の偶然事件と関わりを持つこととなった方々は、事件の捜査に関わりを持ちたくないと考えているのが通常であり、何とか捜査協力を得ている場合も多いのが実情です。それにもかかわらず、信頼関係も構築されていない取調べの冒頭の段階で、録音・録画に同意するか否かを確認すること自体、被害者や目撃者といった参考人に不快感、不信感等を与え、捜査協力をためらわせることとなりかねないと思います。   また、参考人が拒絶した場合は録音・録画を義務付けないこととした場合、検察官は、公判廷において参考人が録音・録画を拒絶したことを明確に立証できなければ、当該参考人の取調べが違法であったと評価されることとなりかねません。そこで、捜査機関としては、事後的に参考人の取調べが違法であると評価されることを避けるために、参考人の拒絶の意思が明確になるまで取調べの冒頭の段階から録音・録画を実施し、参考人が拒絶する場面を客観的に証拠化するといった対応が必要となります。しかし、その場合、全ての事件において、参考人の拒絶の意思が明確になるまで取調べを録音・録画する必要が生じ、拒絶する以前の取調べが同意なく録音・録画されることで参考人に不快感、不信感等を与えることとなり、それ以降の取調べにおいて協力を拒否されることともなりかねません。このように、除外事由を設けることとした場合であっても、その弊害は大きく、妥当でないと考えます。 ○成瀬構成員 ここまで示された各構成員の御意見を踏まえ、私の意見を申し上げたいと思います。  まず、被疑者以外の者のうち、共犯者については、その者自身に犯罪の嫌疑がかけられているという意味において、被疑者としての地位も併有しておりますので、これまで議論してきた身柄拘束中の被疑者又は在宅被疑者の取調べの録音・録画の問題として検討すれば足りるように思われます。   他方、被害者や目撃者などの取調べも幅広く録音・録画すべきという御提案については、藤井構成員や宮崎構成員が示唆されたように、ここまでの議論と質が異なる点に留意する必要があると思います。  そもそも、被疑者取調べの録音・録画に関する議論は、捜査機関が犯罪の嫌疑のある者に対して取調べを行う場合には、被疑者の責任を追及しようと熱心になるあまり、違法・不当な取調べが行われやすいということを前提としていました。被疑者取調べにはこのような危険性が類型的に認められるからこそ、その取調べを録音・録画して、公判で供述の任意性・信用性が争われる場合に備えるとともに、取調べの適正を確保する必要があると考えられてきたのです。   これに対して、捜査機関が被害者や目撃者の取調べを行う場合には、それらの者の責任を追及しようとするわけではありませんから、違法・不当な取調べはそもそも生じにくいと思われます。よって、被害者や目撃者の取調べを録音・録画するとすれば、先ほど河津構成員がおっしゃったように、それらの者の取調べ時における供述内容や供述経過を正確に記録し、後の公判における立証、反証に役立てることが目的になろうかと思いますが、それは被疑者取調べを録音・録画する目的とは異なるものです。   本協議会の議論は、先に述べた被疑者取調べの危険性に対処するため、平成28年刑事訴訟法改正により被疑者取調べを対象とする録音・録画制度が導入されたことを踏まえ、それをどこまで拡大すべきかという問題意識の下で行われていますので、ここに異質の議論を持ち込むことはあまり適切でないように思われます。よって、被害者や目撃者等の取調べの録音・録画の在り方については、ここまで示された各構成員の意見も活かしつつ、本協議会とは別の場で議論する方が望ましいと考えています。 ○中山構成員 警察捜査の観点を踏まえてお話しさせていただきます。   取調べの録音・録画については、供述の任意性の立証等に資する一方で、供述を得にくくなる側面があるほか、一定の人的・物的負担が生じることとなるところ、参考人については任意に取調べに応じており、供述拒否権を告げる必要がない状況であること、参考人の警察捜査段階における供述は原則として公判では証拠とならず、当該参考人の公判での証言が証拠となるものであることから、供述の任意性の立証等の観点からは、その必要性が認められないと考えられます。一方で、参考人の取調べの回数は膨大であり、また、先ほど宮崎構成員からもございましたが、取調べは取調室以外の場所で行われることも多いこと、供述を録音・録画することにより参考人から協力を得られにくくなることもあることなど、弊害が大きいところです。すなわち、参考人の取調べの録音・録画を一律に実施することは、必要性が認められず、かつ弊害が余りにも大きく、現実的ではないと考えています。警察活動の中で取り扱う参考人への取調べは、被疑者とは異なり、相手方も聴取の態様も様々でありまして、どのような取調べが録音・録画の対象となるかについても不明確ではないかと考えているところです。 ○河津構成員 成瀬構成員の御提案についてお尋ねしたいのですが、参考人取調べの録音・録画については本協議会とは別の場で議論する方が望ましいという御提案でした。その前に、参考人のうち共犯者については被疑者取調べの問題として検討すれば足りるとおっしゃったかと存じますが、実務上は共犯者に当たる人物が参考人として取り調べられることがあります。その部分の取扱いについてはどのようにお考えなのでしょうか。 ○成瀬構成員 理論的には、捜査機関がその者に対して嫌疑を抱いた時点で、共犯者または被疑者として取り扱うべきですから、そういう者については、当然、本協議会における議論の対象になると考えています。そもそも、捜査機関が、本来、共犯者または被疑者として取り扱うべき者を参考人として取り調べることは許されないのであって、御指摘の問題は、取調べの録音・録画義務の対象範囲に関する議論とは次元を異にするのではないでしょうか。 ○河津構成員 当協議会で議論すべきかどうかとの関係では、どちらということに。 ○成瀬構成員 繰り返しになりますが、私は、捜査機関が嫌疑を抱いている者は全て共犯者または被疑者として取り扱い、これまでの議論の延長線上で、取調べの録音・録画を義務付けるべきか否かを検討する必要があると考えています。よって、河津構成員がおっしゃる、本来は共犯者として取り扱うべき者を捜査機関がわざと参考人として取り調べた場合は、本来は共犯者なのですから、当然、議論の対象に含まれることになります。 ○河津構成員 ありがとうございます。御提案の趣旨は理解できました。   各構成員の御意見を踏まえて、参考人取調べの録音・録画の必要性について補足して申し上げたいと思います。先ほど成瀬構成員から、参考人取調べについては録音・録画の目的が異なるのではないかという趣旨の御指摘がありました。ただ、私は参考人取調べを録音・録画する目的についても被疑者取調べと共通するところが小さくないと考えます。  取調べの録音・録画によって防止することを目的としている不適正な取調べには、取調べを受ける人物の権利を侵害するという側面と、供述の内容が捜査機関の心証に沿うよう変更させられることによって刑事裁判の事実認定を誤らせるという側面とがあります。前者の側面については、発生する頻度が被疑者取調べとは異なるとしても、例えば被害者に対して配慮を欠いた言動がなされる事案は存在します。したがって、取調べを正確に記録することによって不適正な言動を予防するとともに、不適切な言動の存否や内容を事後的に検証し、適切な措置を採ることができるようにする意義はあると考えられます。後者の側面については、目撃者や被害者の権利を侵害するような言動はなくとも、捜査機関の心証に沿うように供述を誘導するような取調べが行われることはあります。したがって、やはり正確に取調べを記録することによって供述の誘導等を予防し、供述を誘導するような言動の存否を事後的に検証して適切な措置を採ることができるようにする意義はあると考えられます。   さらに、公判において供述の信用性を的確に判断し適正な事実認定をするという観点からも、初期供述を正確に記録する意義は大きいと考えられます。取調べ自体は適正であったとしても、公判供述が事件直後の初期供述と明白に矛盾するような場合、公判供述は記憶違いであったり虚偽であったりする可能性があります。そのような場合、正確に記録された初期供述が存在すれば、弾劾証拠として提示されることによって供述の信用性が適切に判断され得ることとなります。逆に言えば、正確に記録された初期供述が存在しない場合、刑事裁判の事実認定を誤らせる危険は大きいことになります。このように、参考人についても取調べを録音・録画する有益性、必要性はあると考えます。   先ほど宮崎構成員から、参考人取調べについて録音・録画する弊害についての御指摘がありましたが、それは除外事由を適切に設定し、場合によっては録音のみを行うことによって十分対処が可能であると思います。場合によっては、特に被害者については、録音・録画を拒むことができることや容ぼうを撮影しないことが可能であることを教示すれば足りるのではないでしょうか。 ○足立構成員 先ほど宮崎構成員から御紹介がありましたけれども、配布資料7の7ページに被害者・参考人の、これは録音・録画が行われた件数だと理解していますが、録音・録画していない参考人の、例えば、取調べの件数のような統計データというものは存在するのでしょうか。 ○中野参事官 事務当局からお答え申し上げますと、検察官において参考人の取調べを行ったもののうち、録音・録画をしていないものの件数は、把握していません。 ○足立構成員 例えば、現行法で身柄事件の録音・録画が義務付けられている、今の制度に乗った類型の事件についても、参考人の取調べの件数は把握はされていないということになるわけですね。例えば、検察官の独自捜査事件、裁判員裁判対象事件など。 ○中野参事官 検察官独自捜査事件と裁判員制度対象事件について、検察官において参考人の取調べを行った場合に、その取調べが録音・録画されていない件数は、事務当局として把握していません。 ○足立構成員 分かりました。 ○中野参事官 ほかに御意見がありませんようでしたら、この論点については、この程度とさせていただきたいと思います。   次に、論点整理案の五つ目、「その他」について協議を行いたいと思います。  この「その他」については、第11回会議において河津構成員から御提案いただいたように、まず、黙秘権行使と取調べについて協議を行い、次に、取調べへの弁護人立会いについて協議を行い、引き続いて、違法・不当な取調べと制裁の在り方について協議を行うこととしてはいかがかと思います。  そのような進め方とさせていただくことでよろしいでしょうか。              (一同異議なし)  まず、黙秘権行使と取調べについて、御意見がある方は挙手の上、御発言願います。 ○河津構成員 第11回会議で、第1段階の協議の結果として、録音・録画の下ですら不適正な取調べが行われていること、黙秘権を行使している被疑者に精神的苦痛を与える類型の不適正取調べが典型的なものとなっていることを踏まえ、そのような取調べをいかにして抑止するかという課題を挙げさせていただきました。   録音・録画の下で黙秘権を行使している被疑者に精神的苦痛を与える取調べについては、第2回会議で御報告した東京地検検察官の取調べの事例、第11回会議で言及した北海道警警察官の取調べの事例、今年7月18日に東京地裁が国家賠償請求の判決を言い渡した横浜地検検察官の取調べの事例が挙げられますが、これらの取調べはいずれも黙秘する被疑者を取調室に長時間留め置いて行われています。このうち北海道警警察官の取調べと横浜地検検察官の取調べについては、記録媒体が民事裁判で取り調べられ、インターネット上で視聴可能な状態になっていますが、沈黙する被疑者を取調室に留め置き続けて精神的苦痛を与える様子は異様であり、先進国の刑事手続としては考えられないものです。   憲法38条が監禁を手段として供述を強要することを許容していないことは明らかですが、これまで、供述しない意思を明らかにしている被疑者を取調べの場所に留め置くことのできる限界は明確にされてきませんでした。その結果として、長時間にわたり被疑者の人格権を侵害するような取調べが行われており、基準が不明確であることによって、取調べの監督も機能していないように思われます。   先月26日に静岡地裁で言い渡された袴田事件の再審無罪判決においても、「黙秘権を実質的に侵害し、虚偽自白を誘発するおそれの極めて高い状況下で肉体的・精神的苦痛を与えて供述を強制する非人道的な取調べ」が行われたと認定されています。そのような取調べは今日も繰り返されており、取調べの録音・録画の下ですらも行われていることが明らかになっているのですから、黙秘権の実質的な侵害を防止するために明確な基準を設ける必要性は大きいのではないでしょうか。取調べの録音・録画は、それだけでは黙秘権の実質的な侵害を防止できていませんが、黙秘権行使と留め置きの状況を客観的に記録することになりますから、留め置きの限界を明確にすることによって黙秘権の実質的な侵害を防止することに資すると考えられます。   では、どのような基準を設けるべきかという点について私の意見を申し上げますと、憲法及び刑訴法は供述をするかどうかを被疑者の意思に委ねているのですから、被疑者が供述をしない意思を明らかにしたときは、それ以降、被疑者を取調べの場所に留め置いて取調べを継続することはできないものとすべきと考えます。被疑者が個別の質問に対して供述をしないときは、他の質問をすることができますし、被疑者が一切供述しない意思であるのかどうかが明確でないときにその意思を確認することも、許容され得ると思われます。しかし、それを超えて、一切供述しないと意思を明らかにしている被疑者をその権利の放棄を要求するために取調べの場所に留め置き続けることは、黙秘権を実質的に侵害することになるのではないでしょうか。 ○宮崎構成員 河津構成員から御提案のあった、供述しない意思を明確にした被疑者の取調室への留め置きについての規制の在り方について意見を申し上げます。   個別の案件についてはコメントいたしませんが、黙秘権を侵害するような不適正な取調べがあってはならないことは当然のことであり、検察官としては、適正な取調べの実施の確保に向けて不断の努力を続けていかなければならないと考えています。もっとも、逮捕・勾留されている被疑者に取調べ拒否権を認めること、例えば、被疑者が黙秘の意思を明確にしたときには取調べを中止して、取調室に留め置いてはならないというような制度や運用とすることは、以下の理由から相当でないと考えます。   客観証拠の収集にどれだけ努めたとしても、犯行の核心部分については、罪を犯した者しか知り得ない場合が非常に多く、被疑者の取調べによってしか解明できない場合が多いと思います。例えば、密行的に行われる犯罪や組織的な犯罪においては、犯行状況や上位者の関与等を裏付ける客観証拠が残されていないのが通常である上、犯行の動機や目的は、罪を犯した者の内心に関わる事柄であり、客観証拠によって解明するには限界があります。そのため、こうした犯行の核心部分については、被疑者の取調べによってしか解明できない場合が多いのが実情であります。   なお、犯行の動機は罪体そのものではなく、また、犯行の目的も罪体そのものであるとは限らないものの、我が国の刑事手続においては、被告人が有罪である場合、犯情や一般情状に関する事柄についても、かなり詳細な事実認定がなされた上で量刑が判断されていることから、被疑者の取調べにより犯行の動機や目的等といった情状に関する事実も明らかにしておくことは、適正な科刑の実現にとって重要です。   また、検察官は、積極、消極を問わず、被疑者の取調べによって供述を得た上で、その裏付け捜査等を行い、当該供述が真実であるかどうかを十分吟味して、犯罪の成否も含めて事案の真相を明らかにするとともに、併せて被疑者の取調べにおいて、被疑者の反省状況等も見極めるなどした上で事件処理を行っています。被疑者の取調べを通じて、その性格や生活環境などを把握し、刑事処分よりは専門家による治療や福祉に委ねた方が再犯防止の観点からも適している場合には、保護観察所等と連携しつつ、より積極的に起訴猶予制度を活用して再犯防止につなげるなどしています。このように、起訴すべき者を適切に起訴し、適正な科刑を実現するのみでなく、不起訴とすべき者を適切に不起訴とするためにも、被疑者の取調べは重要です。   また、最高裁判例も、身体拘束中の被疑者に取調室への出頭、滞留の義務を認めることが直ちに黙秘権侵害を意味するものではない旨判示しており、実務上、黙秘の意思を表明した身柄拘束中の被疑者に対して翻意を促すことは当然に認められており、そうした結果、被疑者が対応を変えて事件に関する供述や弁解をする場合も少なくありません。  それにもかかわらず、黙秘する、供述しない意思を明確にしたことのみを理由として取調べを中止しなければならないとすれば、被疑者がそのような黙秘権行使を明らかにした場合には、それ以降、被疑者に翻意を促すための説得をしたり、被疑事実を裏付ける資料を示すなどして説明や弁解を求めたりすることも許されないこととなり、およそ被疑者から供述や弁解を得る余地がなくなります。そのような制度や運用は、先ほど申し上げた取調べの機能を大幅に減退させるものといえ、その影響は重大であります。   以上のことから、逮捕・勾留されている被疑者に取調べ拒否権を認めるような規制の在り方は相当ではなく、到底受け入れ難いものであると考えます。 ○中山構成員 被疑者の取調べにおいては、例えば、故意や目的といった犯罪の主観的要素や共犯関係における謀議の状況等を解明すること、真犯人のみが知り得る犯罪の全容を解明すること、供述によって新たな客観的証拠の発見に至ることなども多々あり、取調べは、事案の真相解明のために非常に重要な役割を果たしています。  もとより黙秘権は、被疑者に認められた重要な権利ではありますが、事案の真相を解明するため、取調官が被疑者に対して真実を話すよう情理を尽くして説得すること自体は、問題のないものと承知しています。被疑者が黙秘権を行使して黙秘した場合に取調べを終了することについては、取調べの真相解明機能に支障を生じるおそれがあることから、新たな制度を設けることは適当ではないと考えています。 ○河津構成員 憲法及び刑訴法は黙秘権を保障しているのですから、被疑者から捜査上必要な供述を得られないことも想定された事態なのであって、供述を得られなくなるから留め置きを規制すべきでないということにはならないのではないでしょうか。被疑者を取調べの場所に留め置いて権利の放棄を要求することができるとすると、被疑者が現実に権利を放棄するかどうかは被疑者の忍耐力に依存することになってしまいます。しかし、そのような被疑者の忍耐力次第で権利放棄を招くような取扱いをすることは、黙秘権保障の趣旨と整合しないように思われます。   宮崎構成員及び中山構成員の御意見は、一切供述しない意思を明らかにしている被疑者を無限定に留め置いて権利の放棄を要求することが許されるというものなのでしょうか。取調官は被疑者の黙秘権を尊重する義務を負っているはずですが、黙秘権を尊重することと被疑者を無限定に留め置いて権利の放棄を要求することとは、相容れないように思われます。 ○成瀬構成員 ここまでの河津構成員と宮崎構成員及び中山構成員の御発言に現れているように、この問題については弁護人と捜査機関の御意見が真っ向から対立していますので、本協議会における議論だけで共通理解を形成することは困難であると思われます。その点を確認した上で、黙秘権保障との関係で特に慎重な検討を要する身柄拘束中の被疑者の取調べに絞って、私の意見を申し上げます。   身柄拘束中の被疑者に対する出頭要求・取調べの権限と黙秘権との関係を考える上では、まず、刑事訴訟法第198条第1項ただし書の解釈が問題となります。従来、捜査機関側はこの条文を根拠にして、身柄拘束中の被疑者には取調べ受忍義務があると主張し、弁護人は、黙秘権保障の趣旨に照らして、取調べ受忍義務はおよそ認められないと反論してきました。  この点に関し、近時の学説においては、身柄拘束中の被疑者につき取調べ受忍義務とは区別された出頭・滞留義務を肯定する見解が有力に主張されています。この見解によれば、被疑者の身柄拘束期間には厳格な制限があり、捜査機関は、その限られた期間内に捜査を尽くして起訴・不起訴を決定しなければならないため、法が、被疑者の黙秘権を侵害しない範囲で、捜査機関側に一定の便宜を与えたのが出頭・滞留義務である、と説明されます。また、宮崎構成員が少し言及されたように、最高裁判例も、傍論ながら「身体の拘束を受けている被疑者に取調べのために出頭し、滞留する義務があると解することが、直ちに被疑者からその意思に反して供述することを拒否する自由を奪うことを意味するものでないことは明らかである」と判示しており、仮に刑事訴訟法第198条第1項ただし書の解釈として出頭・滞留義務を認めたとしても、直ちに憲法第38条第1項に違反するものではないと理解されています。   そこで、近時の有力説に従い、身柄拘束中の被疑者に出頭・滞留義務が認められるという前提で、黙秘権との関係を整理してみると、以下のようになると思われます。  身柄拘束中の被疑者については、その身柄を拘束した状態で起訴・不起訴の決定に向けた捜査を行うことのできる期間が制約されていることから、捜査機関において取調べに応じるよう説得する機会を確保するため、その求めに応じ、取調べの行われる場所に出頭し、合理的に必要とされる時間、そこに留まる義務が認められます。よって、捜査機関は、身柄拘束中の被疑者が黙秘権を行使したからといって、直ちに働きかけをやめる必要はなく、合理的な時間の範囲内で取調べに応じるよう説得することができます。   もっとも、有力説が述べる出頭・滞留義務は、被疑者に対する黙秘権保障の趣旨が実質的に損なわれない限りにおいて認められるものであり、取調べ受忍義務を認めるものではありませんので、捜査機関が黙秘している被疑者を説得しようとする場合には、特に慎重な対応が求められます。すなわち、捜査機関による説得には、説得を継続することが許される時間、説得の際に取り得る方法、説得の頻度・回数などについて、被疑者の黙秘権の実質的保障という観点から限界があると考えられます。   このように、身柄拘束中の被疑者に対する出頭要求・取調べの権限は、黙秘権保障の趣旨に基づく制約を伴った、複雑な内容となっています。それゆえ、取調官が行った説得行為が黙秘権保障の趣旨を実質的に損なわない範囲であったか否かは、個別事案ごとに判断せざるを得ませんので、これ以上のルールの具体化は困難であると考えています。 ○佐藤構成員 ただいま成瀬構成員から刑事訴訟法第198条第1項ただし書の解釈論も含めた詳細な御説明がありましたので繰り返しになる部分もあるかもしれませんが、私からも意見を述べたいと思います。   出頭滞留の義務を認めることによって密室で取調官と向き合い、供述するようひたすら説得を受け続けなければならないとすれば、自らの意思を貫いて黙秘し続けることが困難となる、こうした義務付けはそもそも黙秘権の保障と相容れないというのが、恐らく学説の多数による理解であろうと思います。  これに対して、現行法では身体拘束中の被疑者に対する取調べが認められる一方、身体拘束には厳格な期間の制限が設定されていることから、時間的制約の中で起訴・不起訴の判断をすることができるようにするため、取調べの際に、法が特に出頭滞留の義務を認めて、被疑者から供述を得る機会を確保することとした、というのが、現在、出頭滞留の義務を認める立場からの、一つの有力な説明であろうと思います。   この立場によれば、取調べの際に、被疑者は取調室に出頭することを義務付けられ、その間、留置場に戻ることはできないとされるわけですけれども、出頭滞留の義務を認めたからといって、被疑者の身体拘束期間が満了するまでいつでも何時間でも取調べを行うことが許されるかというと、そうではなく、黙秘権保障の観点からの制約がかかることが前提となっていること、出頭滞留の「義務」という言葉が用いられますが、その義務が、黙秘権保障の趣旨が実質的に損なわれない限り、という留保を伴っていることには十分留意する必要があると思います。   その上で、この黙秘権保障との関係では、まず、取調室に出頭した被疑者に対して取調官から供述するよう説得が始まったからといって、直ちに被疑者が供述をせざるを得なくなるわけではなく、黙秘権の侵害が生じるとすれば、一定の説得が行われた後の段階ということになるのではないかと思われます。  また、被疑者が供述を拒否する意思を明らかにした場合には、それ以降取調べを継続することはできないという御意見が先ほど述べられました。黙秘権保障を担保するためそこで線引きをするというのも一つの立場だと思いますが、この場合についても、被疑者が供述をせざるを得なくなるのがどの段階からか、具体的に考えますと、供述を拒否する意思を明らかにした後においても、取調官がその翻意を求めて一定の説得を行うことを認める余地はあるのではないかというのが私の理解です。   ただ、繰り返しになりますが、取調官による説得にも黙秘権保障の観点からくる限界があり、これ以上説得が続けば黙秘の意思を維持又は表明することができなくなるという段階を超えて取調べを継続することはもとより許されません。この説得の限界については、場面は異なるものの、公判における被告人質問の際に、被疑者と同じく黙秘権の保障を受ける被告人に対し、その陳述を求めるための説得として働きかけが許される限度はどれぐらいかということは、検討の手がかりになるかもしれませんし、供述を拒否する意思が表明された場合、その意思が強固であれば、翻意を求めていつまでも説得を継続することは、もはや目的を達成する見込みがない活動であるともいえ、その合理性が問われることにもなるでしょう。  なお、こうした考慮から一旦取調べを中止することになったとしても、その後、被疑者において黙秘権の行使が可能な状態にあるならば、取調べを再開することが許されるものと考えます。   以上、雑駁ながら、被疑者に対して出頭滞留の義務を課した状態で行われる取調べに関し、私の意見を申し上げました。黙秘権保障の観点から、説得の限界について、その時間や回数、頻度などを一義的に導くことは困難ですが、取調べの状況が録音録画された事案では、今後も裁判所がその内容を確認した上で取調べの適否を判断することが可能ですので、その判断をも手がかりとしながら関係者の認識を擦り合わせ、適法な取調べの外延を画定していく必要があると考えております。 ○河津構成員 成瀬構成員と佐藤構成員から丁寧な御解説を頂き、ありがとうございました。成瀬構成員と佐藤構成員は、被疑者が黙秘権を行使した場合、取調官は一定の説得をすることが許されるというお立場であると理解しましたが、仮に説得に応じず供述しない意思が改めて表示された場合、そこで供述しない権利の行使を受け入れるほかないのではないかと考えます。   一義的な基準を設けることが難しいという御指摘ですが、事案によって幅のある基準になるとしても、基準を設けることが全くできないということではないと私は思います。これまで実務上基準を定める努力を怠ってきたことが、被疑者を長時間留め置いて人格権を侵害するような取調べが繰り返され、取調べの監督も有効に機能していない現状を生んでいるのではないでしょうか。 ○中野参事官 ほかによろしいでしょうか。ないようでしたら、次に、取調べへの弁護人立会いの論点について御意見がありましたら、挙手の上、御発言をお願いします。 ○河津構成員 取調べにおける弁護人の立会いを保障すべきことについて、日本政府は国連の委員会から繰り返し勧告を受けています。自由権規約委員会は2008年10月、日本政府の第5回定期報告に関する総括所見において、真実を明らかにするよう被疑者を説得するという取調べの機能を阻害するとの理由で取調べにおける弁護人の立会いが認められていないことについて懸念を表明し、全ての被疑者に弁護人が取調べに立ち会う権利を保障すべきであると勧告しました。また、2014年7月、日本政府の第6回定期報告に関する総括所見においても、弁護人が取調べに立ち会うことを保障するよう日本政府に求めています。拷問禁止委員会も2013年5月、日本政府の第2回定期報告に関する総括所見において、全ての取調べにおいて弁護人の立会いが義務付けられていないことにつき深刻な懸念を表明しています。昨年、2023年8月11日には、イギリスの裁判所で日本政府による被疑者の身柄引渡し要請を棄却する判決が言い渡されています。判決は、日本が弁護人を取調べそのものから完全に排除していることは人権条約違反の明白な危険性を生じさせているとし、日本が国際的に認められた最低基準を提供するという保障を提供しない理由が分からないと指摘しています。   日本国憲法は弁護人の援助を受ける権利を保障しています。被疑者にとって最も援助を必要とするのは取調べの場面であり、被疑者が弁護人の立会いを求めるのは極めて正当なことです。そして、被疑者には供述を拒む権利も保障されているのですから、弁護人の取調べへの立会いを条件として供述することも、本来できるのが当然なのではないでしょうか。   第1巡目の協議を通じて、録音・録画の下でも不適正な取調べが繰り返されていることが明らかになり、取調べの録音・録画で足りないところが確認されました。弁護人が取調べに立ち会うことは、不適正な取調べをその場で抑止するとともに、被疑者が適切に権利行使をすることを可能にするものです。取調べを国際的に認められた最低基準と憲法に適合したものとするために、弁護人を取調べから排除する実務運用は直ちに改められるべきです。弁護人を取調べから排除する実務運用は現行法の下でも改められるべきですが、そのような実務運用が長年にわたり定着している実態を踏まえ、日本弁護士連合会は、刑事訴訟法上、「検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者又は弁護人の申出を受けたときは、弁護人を取調べ及び弁解の機会に立ち会わせなければならない」旨を規定することを求めております。 ○成瀬構成員 河津構成員は、取調べへの弁護人の立会いを被疑者又は弁護人の権利として刑事訴訟法上に規定すべきであるという日本弁護士連合会の御意見を紹介してくださいましたが、現行刑訴法には取調べへの弁護人の立会いを禁止する規定はありませんので、まず、現在の実務運用を確認させていただきたいと思います。   宮崎構成員と中山構成員に伺いたいのですが、現在の実務において、捜査機関が取調べを行うに際し、被疑者又は弁護人から取調べへの弁護人の立会いを求める旨の申出があった場合、検察・警察はどのように対応しておられるのでしょうか。 ○宮崎構成員 検察官による被疑者取調べに弁護人の立会いを認めるかどうかは、取調べを行う検察官において、その必要性に加え、取調べの機能を損なうおそれ、関係者の名誉及びプライバシーや捜査の秘密が害されるおそれ等を考慮し、個々の事案に応じて適切に判断すべきものと理解しています。 ○中山構成員 先ほど御指摘がありましたとおり、刑事訴訟法には禁ずる規定はないものと承知していますが、これに加えて、犯罪捜査規範第180条第2項には、取調べを行うに当たって弁護人その他、適当と認められる者を立ち会わせたときは、その供述調書に立会人の署名、押印を求めなければならないと規定されており、弁護人等が取調べに立ち会う場合もあることが制度上は想定されています。   ただ、そもそもこの犯罪捜査規範の弁護人というのは、飽くまで適当と認められる者の例示であるところ、この適当と認められる者というのは、例えば、児童を取り調べる場合の親など、その者がいなければ取調べを受ける者が適切に話をすることができないと考えられるような関係にある者をいい、単に弁護人に選任されたというだけでは適当と認められる者とはいえないと考えています。  そうしたことから、警察庁においては、全国警察における斉一性を確保する観点から、警察署に対して弁護人等から立会いの申出等があった場合には、警察署独自で判断させることなく、警察本部への報告を求め、警察本部も含め組織的に対応するよう都道府県警察を指導してきたところです。 ○成瀬構成員 中山構成員にもう少し伺いたいのですが、警察本部で組織的に対応するとして、結局、立会いの申出に対してはどのように判断されるのでしょうか。 ○中山構成員 取調べに与える支障の観点と、必要性の観点とを検討することになろうかと思います。 ○成瀬構成員 宮崎構成員も中山構成員も、弁護人の立会いが取調べの機能を損なうおそれという弊害に言及されたのですが、その内実について、もう少し敷衍していただくことは可能でしょうか。 ○宮崎構成員 私の方から申し上げます。被疑者取調べの弁護人立会いについての意見は、後ほど申し上げようと思いましたが、弊害について先に申し上げますと、権利として被疑者取調べへの弁護人の立会いを認めることとした場合、例えば、弁護人が取調べに介入して取調官の質問を遮ったり、取調べの最中に被疑者に対して個々の質問に黙秘するよう助言したりするといったことが想定され、必要な説得、質問を通じて、被疑者からありのままの供述を得ることはおよそ期待できなくなります。さらに、暴力団犯罪や企業による会社ぐるみの犯罪など組織的な犯罪では、組織が弁護人を派遣するケースが少なくないところ、そのような弁護人が取調べに立ち会うこと自体が、被疑者が組織に監視されていると考えるなどして、組織のことを供述することを差し控えさせる心理的なプレッシャーを被疑者に与えることとなります。   取調べへの弁護人の立会いにより、取調べの機能が大幅に減退することは明らかであり、その影響は取調べの録音・録画よりもはるかに重大であると考えています。  また、迅速な事件処理や十分な捜査の遂行が困難になるとも考えますが、この点は、また後ほどお話ししたいと思います。 ○成瀬構成員 丁寧に御教示くださり、ありがとうございました。検察・警察ともに、取調べへの弁護人の立会いを一律に禁止しているのではなく、取調官が、個別の事案ごとに、立会いを認める必要性と、取調べの機能を損なうおそれなどの弊害を比較衡量しながら判断していることがよく分かりました。   今度は、事務当局と中山構成員にお伺いしたいのですが、これまで検察官や警察官が取調べへの弁護人の立会いを認めた件数や、その具体的事例等に関する情報をお持ちでしょうか。 ○中野参事官 まず、事務当局から御説明申し上げます。検察官による被疑者取調べにおける弁護人立会いの実施状況については、法務省としては把握していません。 ○中山構成員 警察庁においては、都道府県警察における取調べへの弁護人等の立会いについて統計を取ってございませんので、その件数や内容は把握をしていないところです。 ○成瀬構成員 分かりました。では、ここまでお答えいただいた内容を踏まえつつ、私の意見を申し上げます。   まず、統計資料がなく、現在の実務運用の詳細も分からない状況において、取調べへの弁護人の立会いを被疑者又は弁護人の権利として認めることの当否について議論することは、非常に困難であると思います。  もっとも、録音・録画が実施されている状況下において不適正な取調べが行われた事例が複数確認されていますので、河津構成員が、被疑者取調べのより一層の適正化を図る観点から、録音・録画制度の適用拡大に加えて、取調べへの弁護人の立会いを求める御意見を示されたことは十分に理解できるところです。   先ほどの宮崎構成員、中山構成員の御回答によれば、現状においても、取調官の判断によって取調べへの弁護人の立会いを認めることは可能とのことでした。そうであれば、先ほどの河津構成員の御意見も踏まえ、取調べのより一層の適正化を図る観点から、あり得る弊害にも十分に留意しつつ、もう少し積極的に弁護人の立会いを認めていくことも考えられるのではないでしょうか。   先ほど、宮崎構成員は、弁護人の立会いが取調べの真相解明機能を損なうという弊害は録音・録画よりもはるかに重大であるとおっしゃいましたが、現状では、取調べへの弁護人の立会いが実際に行われた具体的事例などを伺うことができていませんので、抽象的な議論に終始している印象があります。今後、捜査機関において適切な事案や場面を選んだ上で、取調べへの弁護人の立会いを試行し、本当に宮崎構成員や中山構成員がおっしゃるような弊害があるのか、また、その弊害は除外事由や条件等を設定することによって乗り越えることが可能であるのかなどについて検証していく必要があるように思われます。  このように取調べへの弁護人の立会いを限られた範囲で試行する提案について、宮崎構成員と中山構成員はどのようにお考えでしょうか。 ○中野参事官 後ほど述べられるとの御意見も含めて述べられる方がよろしければ、この機会に述べられても差し支えないかと思いますが、まずは宮崎構成員からよろしいでしょうか。 ○宮崎構成員 被疑者取調べへの弁護人の立会いの義務付けについて、併せてこの機会に意見を申し上げたいと思います。  法制審議会・新時代の刑事司法制度特別部会においても、被疑者取調べへの弁護人立会いを被疑者又は弁護人の権利として認めるべきか否かについて議論されており、積極的な意見が示された一方で、取調べという供述証拠の収集の在り方を根本的に変質させて、その機能を大幅に減退させるおそれがある、どのような事情であれ弁護人が立ち会わない限り取調べを行うことができないこととなるおそれがあるといった意見が示され、そうした議論を踏まえて、被疑者取調べへの弁護人の立会いを権利として認めることとはされなかったものと承知しています。   その上で、私としては、被疑者取調べへの弁護人立会いを被疑者又は弁護人の権利として認めることについては、取調べの機能が大幅に減退するとともに、迅速な事件処理や十分な捜査の遂行が困難となる上、被疑者取調べの適正確保や弁護人による援助は他の手段によっても図ることができることなどから、相当でないと考えます。   先ほども申し上げましたが、我が国の刑事司法において、被疑者の取調べは、事案の真相を解明し、適正な処罰・処分を実現する上で、必要不可欠な役割を果たしています。しかし、権利として被疑者取調べへの弁護人の立会いを認めることとした場合、先ほど申し上げたように、取調べの機能が大幅に減退することは明らかであり、その影響は取調べの録音・録画よりもはるかに重大であります。  また、迅速な事件処理や十分な捜査の遂行が困難となると考えられます。捜査においては、被疑者の取調べとそれを踏まえた捜査を繰り返す必要があるところ、権利として被疑者取調べへの弁護人の立会いを認めることとした場合、弁護人が取調べに立ち会えないときは取調べを行うこと自体が不可能となりかねず、迅速な事件処理を行うことが困難となります。とりわけ、身柄事件においては厳格な時間制限が定められているため、取調べの都度、弁護人の立会いを要することとなれば、取調べを含む十分な捜査を遂げることが困難となります。一つの事件でも被疑者の取調べを複数回行うことが一般的であり、殺人事件等の重大事件では更に取調べの回数は増えるところ、検察庁での終局処理人員総数は70万件を超えています。他方で、令和5年4月時点での弁護士数は4万5,000人弱、そのうち国選弁護人契約弁護士数は3万2,000人弱とされており、弁護人が速やかに取調べに立ち会うことができる体制が構築されているとは言い難いです。   権利として被疑者取調べへの弁護人の立会いを認めることに肯定的な意見は、取調べの適正を確保するとともに、弁護人から被疑者への助言等を可能にすることを意図しているものと思われます。しかし、取調べの適正確保という観点については、裁判員裁判対象事件及び検察官独自捜査事件における身柄拘束中の被疑者の取調べについて、刑事訴訟法上、録音・録画することが義務付けられており、検察では制度対象以外の事件を含め、身柄事件のほぼ全件で被疑者取調べの録音・録画を実施している上、そのほかにも、これまで申し上げているとおり、検察では取調べの適正を確保するため、弁護人等から被疑者の取調べに関して申入れがなされた場合の調査等、最高検察庁による監察、日常業務における決裁官による部下検察官への指導、検察官を対象とした研修といった様々な方策を講じています。   また、現行制度においても、在宅事件の被疑者は取調べ受忍義務を負わず、退去の自由を有しており、退去後直ちに弁護人と相談できること、検察及び警察においては、取調べ中、逮捕・勾留中の被疑者から弁護人と接見したい旨の申出があった場合には、直ちに弁護人に連絡し、可能な限り早期に接見の機会を付与するなどしていることから、弁護人から被疑者への助言の機会も十分確保されているといえます。   このような現行制度・運用の下でも、一部に検察官による取調べの在り方について問題が指摘されている事案があることは事実であり、そのことは真摯に受け止めなければならないと考えています。もっとも、これまで繰り返し申し上げているとおり、取調べの運用全体を見渡したときに、決して不適正な取調べがまん延しているわけではないというのが私自身の経験に基づく認識であります。その上で、事案の真相解明と刑罰法令の適正な適用実現という刑事手続の目的が全うされるよう、取調べの録音・録画制度を含む取調べの適正の確保方策や、弁護人による援助を受ける権利等が構築され、実際に機能もしていると考えており、これらのほかに取調べへの弁護人立会いを権利として認めるまでの必要はないものと考えています。   以上のことから、弁護人立会いを被疑者又は弁護人の権利として認めることは相当でないと考えています。  仮にその導入を検討するのであれば、取調べの機能が大幅に減退し、十分な捜査の遂行が困難となることから、それを補うべく、取調べに代わる客観的な証拠収集方法として、例えば、大規模な通信・会話傍受、おとり捜査の活用などの導入も検討しなければならないと考えます。   また、一般論として、現在は、捜査機関が客観証拠の収集と並行し被疑者の取調べにより供述を得ることで、効率的に事実関係を解明して適正かつ迅速に事件処理することが可能となっているところ、このような取調べの機能が大幅に減退すれば、その前提が大きく変わると考えられることから、限られた人的資源の中で大量の刑事事件の捜査・公判を迅速に進めるためには、米国等で導入されているアレインメント制度、自己負罪型司法取引などの導入も併せて検討しなければならないと考えられます。  もっとも、これらの制度を導入したとしても、犯行の核心部分を解明するなどといった取調べの機能を完全に補うことは困難である上、被害者をはじめとする国民の理解が得られるのか疑問の余地があり、検討すべき課題も多いと考えられます。   その上で、成瀬構成員からの御提案に関してですが、取調べへの弁護人立会いに関し、試行を開始することについては、試行の趣旨や目的は何なのか、弁護人立会いを試行することによる弊害についてどのように考えるのかなど、検討すべき課題が様々あるように思います。 ○中山構成員 先ほど申し上げましたとおり、弁護人の立会いについては制度上は禁じられていないことから、新たな制度を設ける必要性は低いと考えているところです。   その上で、成瀬構成員からの御提案、御質問ですが、一つ一つの事件においてそれぞれに被害者がおり、事件の真相解明を図り、その解決に結び付けるという任を負っている立場から申し上げれば、何らかのメルクマールを示しながら試行していくといったようなことは、正にその弊害があった場合のことを考えると、なかなか慎重に考えざるを得ないと思っています。申し上げたとおり、立会いの求めがあったときには、個別の事案ごとに、組織的に判断がなされていくべきであり、そのような指導をしているところです。 ○成瀬構成員 丁寧に御説明いただき、ありがとうございました。  宮崎構成員から、取調べへの弁護人の立会いを試行する趣旨についてお尋ねがありました。この点については、先ほどの発言の中でも申し上げましたが、録音・録画が実施されている状況下でも不適正な取調べが行われた事例が現に複数存在しており、被疑者取調べのより一層の適正化を図る観点からは、取調べへの弁護人の立会いという新たな方策を検討してみる価値があるのではないかというのが私の提案の趣旨です。   それから、個別事案の真相解明が妨げられるおそれを懸念して、取調べへの弁護人の立会いの試行になかなか踏み切れないという中山構成員の御意見は理解できますし、私自身も個別事案の真相解明が最も重要であると考えております。ただ、そのことを前提としても、現状においては、捜査機関側で弁護人の立会いを認める事案や場面を選べるのですから、取調べへの弁護人の立会いを限定的に試行することは不可能ではないと思います。   被疑者取調べの録音・録画については、検察・警察による試行を経て、その有効性や弊害が具体的に明らかとなり、その検証結果も踏まえて、最終的に制度化がなされました。この経験を踏まえますと、取調べへの弁護人の立会いについても、まずは捜査機関が限られた範囲で試行をし、取調べの適正を担保する上での有効性や取調べの真相解明機能を害する程度などについて、具体的に検証することが必要だと考えます。その検証結果があって初めて、取調べへの弁護人の立会いを被疑者又は弁護人の権利として認めることの当否について議論できるようになると考えるからです。  検察・警察におかれましては、是非、前向きな対応を御検討いただければ幸いです。 ○足立構成員 私からも一言意見というか、感想めいた意見を申し上げたいと思います。前回の協議会以降、検察の取調べをめぐって象徴的な司法判断が示されました。大阪高裁が8月、業務上横領事件で検事による違法な取調べを指摘して、担当検事を特別公務員暴行陵虐罪に問う刑事裁判を開く決定をしました。大阪のプレサンスコーポレーションの元社長が付審判請求を申し立てていた事件です。検察官は元社長の部下の取調べの際に机を叩いて、「検察なめんなよ」とか「あなたはプレサンスの評判をおとしめた大罪人だ」などと発言して、その結果、元部長は社長の関与を認めたとされています。大阪高裁はその付審判決定で、威圧的、侮辱的な言動を続けていて不当だと指摘もしてあります。検察官が付審判決定を受けて刑事裁判で被告になるのは初めてのことだそうです。前回の第14回協議会でも申し上げましたが、取調べの録音・録画映像は、不適正な取調べを公にさらし出して、その有用性が高いといえることは間違いないと考えています。同時に、今回の付審判決定では、録音・録画されていると知っていながら、カメラの前で検察官が被疑者らに暴言を吐いたり、威圧的な態度をとったりしている現実を伝えるものでした。同様に、威圧的、侮辱的な取調べをめぐっては複数の国家賠償請求訴訟も起きており、問題の根深さを表しているといえると思います。   これまでの協議会でも申し上げてきたように、私は検察官による取調べの可視化の対象範囲を、原則として全ての身柄事件、それから在宅事件の被疑者、参考人に広げることは必要だし、現行制度の除外事由を援用して柔軟に活用すれば可能ではないかとも考えています。それは、本協議会の配布資料4-1、4-2にある「改正刑訴法可決時の衆参法務委員会の附帯決議」にあるように、逮捕又は勾留されている被疑者以外の者の取調べに関しても取調べ等の録音・録画を人的・物的負担、関係者のプライバシー等にも留意しつつ、できる限り行うように努めるという趣旨に照らして、当然のことだと考えています。   その一方で、可視化しても防げない不当な取調べにどういう手だてを講じるかということは、非常に重いテーマだと考えています。取調べでの弁護人の立会いを導入するという河津構成員の御意見について、不当な取調べをその場で阻止できるという観点では有用性が高いようにも考えています。間違いが起こりにくい仕組みを検察官のモラルや教育、研修に委ねても限界があると思います。システムとして改善していくことを基本に据えるべきだと考えています。   ただ、先ほどから宮崎構成員と中山構成員がおっしゃっているように、弁護人の立会いについて捜査に及ぼす影響が把握できたとは到底いえない状況だと思っていて、現状では、制度として一律に義務付けることに困難が伴うものかもしれないと考えています。そこで、例えば、先ほど成瀬構成員もおっしゃっていたのですが、検察官や警察官が可能な範囲での取調べで運用を試みてみて、きちんとデータを取って、立会いを認めるべきかどうか、どのような立会いだったら実現可能なのか、その場合の効果と弊害を検証した上で、次のプロセスを検討すべきだというふうに私は考えています。 ○河津構成員 先ほど、弁護人の立会いに関する実情についての統計資料がないという御指摘がありました。統計資料ではありませんが、日本弁護士連合会の取調べ立会い実現委員会が事例の収集に努めており、2023年以降、弁護人の立会いが実現したのは僅か1件、警察における在宅被疑者の取調べの事例であるとの報告を受けております。運用によって弁護人を取調べから排除しているのが実情であると認識しておりますが、このような運用の背景には、先ほどの論点、黙秘権を行使した被疑者の留め置きが無限定になっていることがあります。被疑者が供述をしない意思を明らかにしても無限定に取調べが続けられることから、被疑者が弁護人の立会いを条件として供述をすることを選択する余地がなく、捜査機関としても、弁護人を立ち会わせて取調べを行い、供述を得ることを選択する機会がないのだろうと思います。   弁護人の立会いについて、先ほど各構成員から様々な御意見がありましたが、弁護人が取調べに立ち会うことは、不適正な取調べを防止することにはなっても、適正な取調べを妨げることにはなりません。弁護人の助言により黙秘権を行使することによって捜査機関が期待する供述が得られないことがあるとしても、それは正当な権利の行使であって、適正な取調べを妨げるものと評価されるべきではありません。そもそも、従来の弁護人の立会いのない取調べによって事案の真相の解明が果たされていたという見解は、実証的根拠を欠くものです。むしろ明らかになっているのは、弁護人の立会いのない取調べにおいて虚偽の供述が強要され、えん罪が作り出されてきたという事実です。   そもそも被疑者には黙秘権が保障されており、供述が得られない事態は想定されているのですから、そのことは弁護人を取調べから排除することを正当化する理由にはならないのではないでしょうか。弁護人の援助を受ける権利や黙秘権は憲法上の権利であり、取調べはそれらの権利を侵害しない範囲で機能すべきものですから、日本独自の取調べの機能を観念して、それを理由に弁護人の援助を受ける権利や黙秘権を制約することは許されないと思われます。   改正刑訴法は、「度重なるえん罪事件への反省を踏まえて重ねられた議論に基づく」ものであるにもかかわらず、通信傍受の合理化、対象犯罪の拡大、合意制度や刑事免責制度の創設など、取調べ以外の証拠収集手段を拡充しました。さらに、社会のIT化により、捜査機関は様々なデジタル証拠を収集することもできるようになっています。刑事手続のIT化に伴って、電磁的記録提供命令制度の創設や通信傍受の対象犯罪の更なる拡大もされようとしており、諸外国より証拠収集手段が限定されているというかつての議論は、今日では妥当しないものと思われます。   そもそも改正刑訴法は、取調べへの過度の依存を見直すことを目的としたものでした。にもかかわらず不適正な取調べが繰り返されており、取調べへの過度の依存は改まっていないのですから、当初の目的を達成するためにも、弁護人を取調べから排除する実務運用を改めることが必要だと考えます。 ○中野参事官 予定していた時刻が過ぎていますので、本日はここまでとさせていただきたいと思います。   次回は、この点を引き続き御協議いただきたいと思っています。  次回以降の協議の進め方ですが、事務当局において検討させていただき、期日間において皆様にお諮りすることとしたいと考えています。現時点で御意見等ありますか。 ○成瀬構成員 次回以降の進め方について、提案をさせていただきたいと思います。   第1段階で議論したテーマは、取調べの録音・録画制度以外にも多数存在しているところ、その論点整理のために協議会の貴重な時間を費やすことは合理的とはいえません。よって、論点整理は期日間に行い、次回の協議会では、本日やり残した論点を議論した後、すぐに次のテーマの実質的な議論を行うべきであると考えます。  そのため、期日間において、事務当局に録音・録画制度以外のテーマの論点整理案を示していただき、構成員の皆様の御意見を踏まえて事務当局が更に整理をし、次回の協議会までに論点整理の最終案を仕上げるという手順を考えてみたのですが、いかがでしょうか。   他の構成員の皆様の御意見を伺えれば幸いです。 ○足立構成員 今の成瀬構成員の御意見には特段異論はないんですけれども、私から1点、これまでさんざん意見が闘わされてきたのは承知していますが、この録音・録画の論点について、当事者からのヒアリングというのが行われないまま来ているということなので、改めてちょっと検討することはできないのかなと考えています。1巡目の議論の際に、さんざんこれについては議論がなされていて、当時の一部構成員からは、特定事件の情報を共有することに消極的な意見があったということは承知しています。ただ、やはり被疑者とか、被告人として過去にカメラ付きの取調べを受けた国民、あるいは録音・録画がないまま不当な取調べの被害に遭った国民から、取調室という密室で捜査官と向き合った体験や心理的な影響、それから現行の仕組みに対する意見を聴くということは意義が大きいのではないかと考えています。それは、一般市民の被疑者・被告人から見た刑事司法という、これまでこの協議会ではなかった、プロの専門家の方々の中にはない視点に立って取調べ現場の実態を知ることにもなる上に、ヒアリングの対象者の方が関与した事件以外にも共通する、現行制度を考える上でのヒントを含むものになるのではないかと考えているので、再度、御検討いただければというふうに考えています。 ○河津構成員 私も今の足立構成員の御意見に賛成いたします。令和6年9月11日付でプレサンス事件で無罪が確定した山岸忍さんから、各構成員にお送りしたという文書が私の下にも届きました。プレサンス事件については、御承知のとおり、検察官の取調べにおける言動が特別公務員暴行陵虐罪の陵虐行為に該当するという判断が示されていましたが、令和6年8月8日、大阪高等裁判所が付審判決定をしています。山岸さんは文書の中で、当協議会においてプレサンス事件の検証を行うことを求めています。   また、今年6月11日の参議院法務委員会では、当協議会に関する質疑が行われ、元法務大臣である森まさこ議員が、村木厚子さんの名前を挙げて、一般国民からヒアリングをすべきではないかとの質問をし、小泉法務大臣が、ヒアリングは必要だと答弁しています。   当協議会でヒアリングを行うことについては、私も第1回会議以降求めてきましたし、足立構成員の前任の小林構成員も求めておられました。その度に、個別事件に踏み込むことへの反対意見も述べられてきましたが、反対には正当な理由がないのではないでしょうか。そもそも改正刑訴法が村木厚子さんの事件という個別事件を契機としたものであることは疑いがありません。改正刑訴法は、村木厚子さんの事件に取調べ及び供述調書への過度の依存という我が国刑事司法の抱える問題点が表れているという認識の下に、これを正そうとしたものです。プレサンス事件は、取調べにおいて、検察官が陵虐の行為を手段として供述を変更させ、客観的事実に反する証言をさせて山岸さんを有罪に陥れようとしたものであって、村木さんの事件と共通するところが多くあります。大規模な制度改正が行われたにもかかわらず同じ過ちが繰り返されているのであり、その原因を究明することは、改正刑訴法のどこが不十分であったのかを分析、評価する上で必要性が大きいと思われます。 ○中野参事官 事務当局から御説明します。御指摘のいわゆるプレサンス事件については、現在、付審判の事案が係属中です。これについて行政機関である法務省において開催しているこの協議会が立ち入って検証することは、裁判所の判断に影響を与えることにもなりかねないと思われます。  また、法務大臣の答弁について言及がありました。この点については、今年8月2日の大臣の記者会見において、大臣が、この法務委員会での答弁は、一般国民の声も取り入れる必要があるという考えを述べたものであり、その上で、一般の方の声を議論に取り入れる観点から刑事手続の専門家以外の方にも御参加いただいている、いずれにせよ、ヒアリングについてもこの協議会で決めていただくものだという趣旨の発言をしています。   その上で、ヒアリングについては、先ほど、河津構成員、足立構成員から御指摘がありましたが、他方で、特定の一事案についてヒアリングを行い、御意見を賜るというものでもありますので、この協議会の目的である制度全体の検討課題を整理するのに資するのかどうかという観点から疑問が呈されておりまして、現時点で、ヒアリングを行うか否かについて、意見の一致を見ていないと事務当局としては認識しています。   この点について、何か御意見はありますか。 ○成瀬構成員 今、河津構成員が言及されたプレサンス事件については、これまでも本協議会において度々言及されており、私自身も強い関心を持って注視してきました。本事件に関する判決や決定には、全て目を通しております。今回、当該事件の捜査を担当した検察官が録音・録画下で行った取調べを理由に刑事裁判にかけられることになったのは非常に深刻な事態であり、検察には重く受け止めていただく必要があります。   ただ、事務当局からも御指摘がありましたように、当該検察官に対する事件はこれから刑事裁判が始まるという段階で、正に現在進行中ですので、本協議会において、立ち入った検証や関係者のヒアリング等を行うことは適切でないと考えます。本協議会としては、このような事件が発生していることも念頭に置きながら、取調べの適正を確保するための方策について真摯に検討を続けていくことが重要であると思います。 ○中野参事官 様々な御意見を頂きましたので、期日間において調整させていただきたいと思います。 ○足立構成員 では、もう1点、進行に関わるところなんですけれども、先日、静岡県の一家4人殺人事件の再審判決があり、再審制度に対する社会の関心が非常に高まっています。一方で録音・録画以外にも様々な多岐にわたる論点があり、順番通りに行くと、もしかしたら再審制度は後の方になってしまうかもしれないんですが、そういった社会的影響、それから再審制度に対する国民の関心の向け方を考えると、後の方にある再審制度を前倒しにして、この録音・録画ともう一本の柱とも位置付けられる再審制度についての議論を前倒しすることも検討していただければと思います。 ○中野参事官 いずれにいたしましても、期日間において調整させていただきたいと思います。   よろしいでしょうか。              (一同異議なし)   本日の議事はこれにて終了いたしました。次回の会議の日程の詳細は追ってお知らせします。次回会議において構成員の皆様から資料の提出や御説明を頂く時間を設ける場合には、事前に御送付いただく必要がありますので、併せて提出の期限についても御連絡します。その場合の資料について、事務当局において確認をさせていただき必要に応じてどのような形で御提出いただくかなどについて御相談させていただくことは、これまでと同様です。   本日の会議における御発言の中には、職務上取り扱われた事例に関するものなどもありましたので、御発言内容を改めて確認させていただくとともに、御発言なさった方の御意向を改めて確認の上、非公開とすべき部分がある場合には、該当部分を非公開とさせていただきたいと思います。議事録の記載方法等については、その方との調整もありますので、事務当局に御一任いただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。              (一同異議なし)   それでは、本日はこれにて閉会とします。どうもありがとうございました。 -了-