法制審議会 民法(成年後見等関係)部会 第12回会議 議事録 第1 日 時  令和6年12月24日(火)自 午後1時30分                      至 午後5時57分 第2 場 所  法務省地下1階大会議室 第3 議 題  1 成年後見人等の報酬         2 法定後見制度に関するその他の検討         3 法定後見制度を前提とする他制度に関する検討         4 任意後見制度における監督に関する検討事項 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山野目部会長 法制審議会民法(成年後見等関係)部会の第12回会議を始めます。   本日も御多用の中お集まりをくださいまして、誠にありがとうございます。   本日は、佐保委員、家原幹事、小林幹事及び杉山幹事が御欠席でいらっしゃいます。   事務当局から配布資料の説明を差し上げます。 ○山田関係官 配布資料について御説明いたします。   本日は、既に配布しています部会資料8に加え、新たに部会資料9を準備し、お送りしています。資料の内容については、後ほど御審議の中で事務当局から御説明差し上げます。 ○山野目部会長 審議に入ります。本日は、部会資料8の第3の3の部分が前回会議において残されておりましたところから、ここの審議からお願いしてまいります。   事務当局から、お話しした部分の説明をお願いいたします。 ○山田関係官 部会資料31ページからの第3の3、成年後見人等の報酬について御説明いたします。   部会では、成年後見人等に報酬請求権を認めることの是非について意見が述べられるとともに、成年後見人等に対する報酬の額について予測可能性を高めることが必要であるとの意見が述べられていました。また、現行法や関連する制度についての意見がありました。   まず、31ページの2では、現行法の規律について記載しています。また、32ページの3では、受任者の報酬等に関する規律について、33ページの4では、裁判所が定める報酬に関する他制度の規律について、34ページの5では、政令で具体的な額を定めている規律について、それぞれ整理しています。これらを踏まえて、成年後見人等による報酬請求、報酬額の算定の在り方について御議論いただきたいと考えています。 ○山野目部会長 ただいま説明を差し上げた部分について御意見を頂くほか、前回、部会資料8のその余の部分の審議が済んでおりますけれども、恐らくそれについての御意見で言い漏らしたことがおありの委員、幹事もいらっしゃるのではないかと想像いたします。その種類の発言でも結構でございます。それでは、いかがでしょうか。 ○小澤委員 成年後見人等に報酬請求の権利を認めるべきかどうかについては、部会資料にも記載されておりますとおり、報酬に権利性を認めますと、本人との関係が不安定になる場合も想定され、また、不服申立てによる弊害も考えられますので、あえて現行の規律を改める必要まではないと考えています。ただ、この点については報酬付与に係る家庭裁判所のこれまでの実務の運用や報酬額の算定が、報酬付与を申し立てる成年後見人などからおおむね妥当と評価されているからということが前提の意見でございます。報酬付与が裁判官の裁量によることを理由として、全国の家庭裁判所で報酬に対する考え方や運用にばらつきがあったり、また、報酬に関する大きな変更を行う際、当事者団体や専門職団体にあらかじめ意見を求めたり、丁寧に説明をすることなどがなされずに、現在の家庭裁判所の実務の運用に大きな変更がなされることなどがあれば、報酬を支払う側、受け取る側、双方にとって予測可能性を欠くこととなりますので、現行の規律を改めて、報酬に権利性を認めることも含めた検討が必要になるとも考えております。 ○上山委員 報酬に関する問題で最も重要なことは、具体化された報酬請求権を空手形にさせないことだと思っています。今の仕組みを前提に言えば、裁判所が御本人自身の資力の少なさに余り縛られずに、後見事務の質と量に主眼を置いて適正な報酬額を決定できる環境、例えば、公的な報酬助成の拡充などを更に行っていくことが肝要だと考えます。   個人的には、後見報酬の有償原則に転換してしまった方が、こうした民法外での整備を円滑に進めやすくなるのではないかと思ってはいますが、しかし、これは必要条件というわけではないので、有償原則への転換についてはこれ以上こだわる気がないことをまず申し上げておきたいと思います。   なお、現在の後見人の供給状況を見る限り、今後、地域によっては株式会社や合同会社のような営利法人の参入を真剣に検討する必要に迫られるようにも感じています。この意味でも、今回の法制審の課題である民法上の一般的な規制とは別に、第三者後見人の質の保証を目的とした何らかのルール作りが必要になると考えています。 ○野村幹事 部会資料8の報酬と、それから期間の設定について、リーガルサポートの意見を述べさせていただきます。   報酬につきましては、後見人等に報酬請求権、不服申立権を与える必要まではないという意見には変わりありません。ただ、それは後見人等が報酬付与の申立てをした際に、その後見事務に見合った報酬が付与されることが前提となっています。報酬額の予測可能性を高めるためには、報酬の算定根拠となる一定の基準を示すことが必要ですが、法令に詳細な算定基準を設けることは、後見事務の個別性、多様性から、かえって後見事務に見合った報酬が付与されなくなるのではないかと危惧いたします。   また、実務では報酬付与の審判が下りたにもかかわらず、監督人が後見人等から報酬を支払ってもらえない場合や、代理権が付与されていない保佐人、補助人が本人から報酬を支払ってもらえないという問題があり、適切な時機、必要な範囲、期間で利用できる制度となった場合、この問題は拡大するおそれがあります。特に、地方における後見人等の担い手不足は深刻であり、後見人等が報酬を受領できる仕組みの検討が必要と思われます。   続いて、期間の設定ですが、法定後見による保護の必要性があるかを確認する機会を制度的に確保する方法として、法定後見の開始に当たって期間を設けることに賛成いたします。制度の利用者にとっては、死ぬまで継続しなければならない制度であるということが利用をちゅうちょさせる原因にもなっています。開始時に期間を設定して、保護の必要性を判断する機会があることを明確にすることが、利用者にとっても安心して制度を利用できることになると思います。   本人の同意なく制度の利用を開始する場合には、最初の期間の設定を本人の同意がある場合と比して短い期間を設定して、厳格に判断するという方策も考えられます。また、特定の事務に関しての代理権が付与されているケースにおいて、期間満了前に事務が終了した場合は、裁判所が保護者に報告を求めて、保護の必要性がなくなったと判断すれば、取消しの審判の申立てを保護者に促すのが実務的には妥当と思われます。期間満了時には法定後見は終了とすることになりますが、保護の必要性のある本人の保護を図るため、更新や延長の仕組みが必要と思われます。 ○星野委員 今の意見と大きな違いはないのですが、やはり報酬を受け取ることができない状況というのは2種類あると思っています。本人に資産がない場合と、先ほど野村幹事が言われたような、本人から受け取ることが難しい状況にある場合、こちらのことについては民法の規律ではないと思いますが、やはり併せて検討されていかないと、現実的には問題になってくると思います。   それから、期間の話も今出ましたけれども、前回も出ました、期間を設定するのか見直しをするということを明確にするのかというところは、目的は同じだと思うのですが、やはり私もこれは本人の同意なく始まった場合は短めに見直しをする、そして報酬のところも、その期間の範囲の中で受領できる仕組みを整えるということを併せて検討する必要があるかと思います。 ○青木委員 報酬については、請求権という構成をとることまでは必要がないと思っておりますが、求められているニーズとしましては、やはりその報酬がどのような算出根拠に基づいてその額になったかの理由等については、本人からも、後見人等からも、透明性の確保や予測可能性という意味では重要だと思っています。その趣旨から、民法に定めることにはならないと思いますが、家裁の実務運用において、報酬付与の審判書において理由を示すことを規則等で定めて運用していただくことによって予測可能性や透明性が高まると考えておりまして、是非検討いただきたいと思っています。   また、個別の代理権の付与を中心とした制度になるとなりますと、法的な事務など専門性の高い事務が具体的に明らかになるような形式が増えると思っています。その場合に、現在厚労省の管轄において報酬助成制度の拡充を検討いただいており、それも非常に重要な課題ではありますけれども、一方で、法律事務に関する代理権について、本人の財産の中から支弁できないときの報酬助成制度というものは、法務省の管轄において、例えば法テラスの現在の総合法律支援法に基づく制度の中に、法改正によって報酬についての援助制度を設けるなど法律事務の専門性に対する報酬助成制度というものを、これも民法自体の改正ではありませんが、法務省全体の仕組みの中で検討いただくことも重要ではないかと思っています。 ○山野目部会長 青木委員が前半でおっしゃった報酬額算定の在り方に関する御提案は、報酬額の算定の根拠の手掛かりになるようなものを最高裁判所規則に盛り込むようなイメージが考えられるということをおっしゃったと聞きました。御紹介しますと、信託法54条は、2項で相当の額の報酬を受けると規定し、3項で額及び算定の根拠を示すという規定がございます。最高裁判所規則がその種類のことを定めるのに馴染むかどうかは、法制面の検討からも含めて、引き続き検討されてよいかもしれません。もしかすると法律事項かもしれませんから、いろいろな観点から引き続き検討されるとよいと感じます。 ○竹内(裕)委員 弁護士会から出た意見について御紹介いたしますと、今後、個別の行為について法定後見の類型が設けられるということであれば、報酬についても、今は1か月当たり幾らというようなことなのですけれども、個別事務について成果型報酬について支払いがなされる仕組みが適当ではないかということがあります。ただ、法令でもし詳細な定めを置くことが困難であれば、そこは何かガイドラインの作成によるべきではないかと、それで予測可能性を確保するということではどうかというような意見が出ております。   あとは、野村幹事がおっしゃったのですけれども、今後個別事務の代理権となりますと、通帳管理の代理権がありませんと、支払ってもらえない問題といいますか、報酬付与審判を得ても支払っていただけないということがございますので、そこは指摘をしておきたいということと、あとは報酬の助成制度なのですが、現行の助成制度も自治体によって差がありまして、直接保護者の口座に振り込んでいただけるところもあれば、そうはしていただけないところもある。ここで議論すべきことではないかもしれませんが、自治体によって差があるので、そこは今後整理をしていただきたいという意見も出ておりました。 ○遠藤幹事 報酬の関係で、委員・幹事の方から御指摘がありましたので、最高裁判所におけるこれまでの取組などを御紹介させていただければと思います。皆様御案内のとおりですが、報酬額の算定の在り方については、個別の裁判官の判断であることを大前提としつつ、昨年7月の成年後見制度の運用改善等に関するワーキング・グループにおいて、おおむね全国の家庭裁判所で共有されている考え方を御説明申し上げました。また、そのような考えも踏まえて書式の改訂も行いまして、来年の4月から運用を開始することにもなっております。さらに、今後、事例の積み重ねを待って、報酬付与決定額の平均等の過去の実績についてもお示しをすることも考えておるところでございます。これらを通じて、ある程度透明性といったようなものが確保できるよう、裁判所としても努めていきたいと考えているところでございます。報酬の在り方を考えるに当たっては、このような裁判所の取組も前提としていただければと考えております。 ○根本幹事 私からは2点です。   1点目は、報酬請求権のお話が出ていましたけれども、御本人との関係や親族との関係等を踏まえますと、報酬請求権に対して不服申立てが認められることは望ましくないと思っておりますので、報酬請求権化するということはイコール不服申立てを用意するということに理屈上なるのであれば、報酬請求権化ということについては消極と考えております。   それから、今、野村幹事や竹内裕美委員からもありましたけれども、終了時の受領の在り方ということについても、これまでは基本的にはその死亡で終了するということを前提とした報酬の受領の在り方ということだったわけですけれども、途中で終了するということになれば、御本人から頂戴するという形になるわけです。竹内裕美委員御指摘のとおり、預貯金取引についての代理権がない場合の受領の在り方というところも併せて問題になってくるかと思います。   例えば、現行の死後事務に関する3号の出金権限付与という仕組みがありますけれども、この仕組みを応用していくということも考えられるのではないか、つまり、終了した後見人が直接金融機関に行って出金が認められるような仕組みというのも併せて考えられるのではないかとは思っております。   ただ、当然御本人の預貯金から出金をするということになるわけですので、御本人とコミュニケーションがとれるのか、とれないのかというような事情も踏まえて、丁寧に考えていく必要があるのではないかとは思いますけれども、少なくとも報酬が決定をしていただいているにもかかわらず、専門職が回収できないというような事態は避ける仕組みというのは用意されるべきではないかと思います。 ○佐久間委員 この問題そのものについて自分の意見はないのですけれども、今何人かの方がおっしゃったことで気になることがありましたので、1点申し上げます。それは、受領の在り方について考える必要があるという考え方です。いろいろな後見というか保護の在り方が出てくることは承知しておりますけれども、その中で今、主に追求されているのは個別的な保護に重点を置こうということだと思います。これと通常の委任との違いというのは、結局のところ法定の制度か、そうでないかということだけだと思うのです。特に、相当個別化された事務を行った方というのは、一般の受任者とそれほど変わらないはずで、受任者についてその報酬の受け取り方について工夫しようなんていう考え方はないのではないかと私は思います。   そうすると、法定の制度なのだけれども、今までの発想を改めて、本人の総体財産の管理というようなことからは遠ざけようとしているにもかかわらず、発生した報酬債権について回収の万全を期そうなんていうのは、発想として何だかおかしいのではないかと。どんな報酬もきちんと支払われるのが当たり前だというのは分かっておりますけれども、ここだけそういう特別の仕組みが必要なのではないかというのには違和感を持ったということだけ申し上げておきたいと思います。 ○山野目部会長 ここで白熱するとは予想していなかったですけれども、今の議論の続きで御発言がおありの方は、どうぞ御遠慮なく。   根本幹事が受領の在り方は大事でしょう、と実務的な観点からおっしゃったことはごもっとも、それから佐久間委員が、しかし委任などと比べそれを論じますか、という不自然さをお感じになったところもごもっとも。考えてみますと、委任もそうですし、今度は別な参考例として申し上げますけれども、不在者の財産の管理とか所有者不明土地管理命令などについても、民法、家事事件手続法、非訟事件手続法に報酬の受け取り方の規定というものはないのでありまして、報酬のことは実務上大事ですし、根本幹事がおっしゃったように、これからますますそこはきちんとしなくてはいけないというお話は、そのとおりであると感じますけれども、法律に法文を起こして書く事項であろうかということは、引き続き委員、幹事においてお考えいただくことがよろしいのだろうと感じます。   今の点でも結構ですし、引き続き報酬のところについて伺います。 ○根本幹事 佐久間委員からの御指摘も、そのとおりだと思うところもありまして、コミュニケーションをきちんととって御本人からお支払いいただけるという場合は、すべからく強制的に回収するという仕組みを用意するべきだとは思っていません。   ただ、他方で、佐久間委員もおっしゃっておられましたけれども、報酬請求権で、何らかの御事情で御本人からお支払いいただけないとなった場合に、通常の訴訟や執行手続で行うのか、そうするとまた特代を立てるのかという話になるのかもしれませんけれども、その報酬を回収するためにまた別途手続をとることが適当であるのか、要件についてはいろいろとお考えはあるとは思いますが、先ほど申し上げたような、裁判所が一定の事由を認めたような場合には、金融機関に対して出金権限を認める制度の立て付けは、あってもよいのではないかと思っているというところです。飽くまでも預貯金の代理権がないものについて、すぐにそれで回収できるようにせよというところまで申し上げているつもりではありません。 ○山野目部会長 お話を理解しました。   引き続き伺います。 ○星野委員 これは社会福祉士会の中でも出ている意見なのですが、この場で議論することではないことは重々承知の上で発言しますが、この法定後見制度というのが、やはり本人が本当に理解して希望して使われているという実態ではない中で、報酬の話を事前にどこまでするかというのは結構悩ましいところがあります。本人の希望で委任して受任する方にお任せするので、報酬を支払うのは当然のこととしてそういう規律はないというのは、そのとおりなのだろうと思うのですが、法定後見においては、他の支援では対応できないことから制度の利用が必要になっているという認識で進めていくときに、報酬の負担ということをどこまで本人が理解できるところまで説明が尽くせているかというのは、これは相当困難であるケースの方が多いということになります。そうすると、結果的に報酬が受け取れないという事案があるのは事実であり、ではそれをどこで整理するかという、多分これは社会福祉の方というか、厚生労働省の方の利用支援事業もそうですし、別の仕組みとは思いますが、そういう実態がまずあるということは、事実としてあると思っています。   その場合、どういうふうに整理していくかというと、民法の中での規律ももちろんそうなのですが、もしここでいろいろなことが、請求権もそうですし、そういうことができてしまうと、今まで以上に利用したくない制度になるのは間違いないから、請求権を新たに設定するとか、今の現状を変える必要は私もないと思う反面、一方で報酬が受領できないという現実や状況について、報酬のことをどう理解していただくかというところは、別途しっかり検討する必要があると、そういう意見として先ほど私は発言しました。民法の中では難しいというのは重々承知でございます。 ○佐久間委員 ここで白熱させるつもりはないのですけれども、大本にある違和感をやはりもっとはっきり言った方がいいなと思ったので、そこだけ申し上げます。この部会でずっと続いてきている一つの論点として、取引の相手方をどう保護するか、保護が削減されてもいいか、よくないかということがあります。私は余り削減されたらよくないのではないかということをずっと申し上げてきたわけですけれども、ここで今問題となっている報酬の受取りについては、保護者が一種、取引相手方になっているわけですよね。この制度が全体として射程に含んでいる取引全般については、もう保護が余りなくてもしようがないですよねという態度をとりながら、関係者が自分の報酬を受け取るという場面では、いや、受け取れないかもしれないような不都合がいろいろあって、たとえば相手には能力が不足しているところがあって、なんていうことを言うと、それはちょっとな、というのが私の大本にある違和感です。   だから、議論するなとは言いませんけれども、この報酬を受け取る人も、ある種、広い意味での取引相手方の一人なのだという意識を持っていただいて、たとえば根本幹事がおっしゃった特別代理人を立てるかということについて、ほかの人が立てなければいけないのだったら、この場面でも立てなければいけないと私は思います。だから、もう少し保護者といえどもある種の場面では取引相手の一人になるのだということを意識していただいて、この場面もだし、ほかの取引相手についてどうするかということも考えていただく方がいいのではないかと私は思っています。 ○山野目部会長 二つ申し上げます。一つは、報酬の受領のところに論点があるということを多くの委員、幹事に御指摘いただいたことは貴重であったと感じます。民事の法制の側から言えば、今までは包括的な代理権を有している後見人が、しかも報酬の最終的な計算が必要になる場面がほとんど本人が死亡した場合であったという状況が今回大きく改まるかもしれませんから、その局面での預貯金の扱い方ということを考えなければいけないという課題がある、そのことが今の御議論で理解することができました。そのことは、事務当局においてもここの議論を見ていると思いますから、引き続き皆さんに議論を整理してお示ししていくことになるでしょう。   もう一つは、佐久間委員のおっしゃったことですが、取引の相手方のことを考えなくてよいというわけではありませんから、充実した集中審議というのかな、そこをじっくり考えましょうという機会はどうしてもとれないままここに至っておりまして、必ずしもそこを深掘りする議論になっていませんけれども、そのことは佐久間委員が度々注意喚起してくださるように、大事な課題であるということを当然認識しております。   引き続き、報酬についていかがでしょうか。   なければ久保委員、櫻田委員、花俣委員のお話を伺いたいと考えていますが、その前にいかがでしょうか。   よろしいですか。そうしましたら、この順番でお尋ねします。議論のあった報酬のところがお話の中心になるかもしれませんが、部会資料8全体について前回言い漏らされたようなお話があれば、それも承っておくことがよろしいと感じます。特に前回、櫻田委員が御欠席でいらっしゃいましたから、幅広にお話を頂くことを妨げません。 ○久保委員 毎度のことながら、よく理解はできていないのですけれども、報酬については一定の在り方を示していただく方が、使っていく者としては予測が比較的しやすいのかなと思いますので、そうだったら使うかしらというふうな感じに増えていく方向の、いい方向で働きがあったらいいなと思っております。   昨年度のワーキンググループのところでも少し考え方を示していただいたのですけれども、その考え方はよく分かったのですけれども、それで幾らぐらいか、みたいなところがよく分かっていないというところがあって、その辺のところはもう少し予測ができると有り難いかなと思います。   それと、滋賀の場合も、報酬の助成制度ですけれども、御本人の資産が50万円あれば出ないわけなのです。50万円というと、すぐなくなっていくのです。だから、その辺のところも少し、後見人をしていただいている方とか御本人に寄り添っていただいている方にとってはなかなか厳しいという話も聞いておりまして、都道府県によっていろいろ違うのだとは思いますけれども、もう少し緩やかであっていただきたいなということが何かお示しいただけたら有り難いという気持ちもあります。   それから、報酬の在り方、受取りの在り方ですけれども、利用していたのだったらお支払いするのは当然のことだと私は思いますので、その報酬の請求というのもきちんと整えていただいてもいいのかなとは思います。ただ、物を買って相手方が損をするとかしないとかということと、物だったら何も使っていなかったら返品できますけれども、でも、この成年後見というのはそういう物とは関係なくて、本当に本人に寄り添ってやっていただいていることですので、その辺については、やはり利用してきたからには何らかの形で寄り添っていただいた方にお支払いするのは当然のことだと思います。本人にその能力がないとなると、やはり補助制度みたいなものをしっかりと構築していただいて、そこからお金が出るという形をしていただけたら有り難いと思っております。 ○山野目部会長 久保委員が前半でおっしゃった、報酬についてもう少し分かりやすくしてほしいという御希望はごもっとものお話でありまして、御覧いただいていてお分かりのとおり、現在の民法の規定を全く触らないというところで終わってしまうということで諦めるというところまで、まだ本日行っているわけではありませんから、引き続き粘り強く審議を続けてまいりたいと考えます。ありがとうございます。 ○櫻田委員 私の方からも報酬のことについて意見を述べさせていただけたらと思うのですが、今、久保委員のおっしゃったことはすごく、私自身もうなずきながら、そうだよなと思って聞いておりました。確かに報酬の件に関しては、ほかの審議会とかでも結構話題になるところではあると思うのですけれども、本当に報酬について、やはり制度を使ったのだったらお支払いするというのは当然のことなので、私もその意見には賛同はしますし、そうは言いながらも、やはり実際、制度を使うのに大体このくらい掛かるよねというのが本当に指針というか、大体こんな感じでみたいなものがないと、やはり制度を利用する身としては、実際幾ら掛かって、もし自分の財産がなくなってしまったらどうするのだろう、みたいな不安もあったりはするので、やはりそういうモデルケースみたいなものが何か示していただけるのであれば、制度利用にもよりつながっていくのではないかとは考えております。   あと、先ほど期間のお話もありましたけれども、この会議の中でもずっと出ているところではあると思うのですけれども、やはり成年後見制度自体は、一回利用すると、もうずっと使うかもしれないし、そうではなくなるかもしれないしというのは今議論されているところではありますけれども、やはり一定期間というか期間を決めていただいた方が、制度を利用する身としても本当に、ではここの部分だけ使って、あとは自分で自分の生活をきちんと成り立たせることができるのだ、みたいなことができるようになると、より本当に制度利用も進むと思いますし、そこに伴って、ではこのパターンだったら報酬は幾らぐらいで、こういう使い方もできるよみたいな、本当に事例が何かできるといいのかなとは思っています。   本当に精神障害を持っている身としては、自分自身が症状とかの関係で判断能力が低下するということは十分にこれから考えられますので、そういったときにやはり制度がスムーズに利用できるような形でなっていけばいいかなと思っておりますので、その辺りも今後、審議を進めていっていただけると大変有り難いと思っております。 ○山野目部会長 前半でおっしゃった報酬の在り方は誠にごもっともなお話でありまして、何分にもこの報酬の課題というものは政府の方でもいろいろな部署が関係している課題でありまして、この部会で扱っているものが民事法制にどのようなルールを新しく用意するかというところに絞られますけれども、そのほかに厚生労働省の補助事業が用意されており、また、遠藤幹事から御紹介があったように、裁判所の方はこれまでの運用を踏まえて改めて様々な機会において整理を示してくださっている状況にあります。この部会としては、諮問された民事法制の在り方のところに専念して検討を続けますけれども、もう少し話の先が見えてきた段階で、政府の各部門において向き合っているこの報酬の問題についての取組について、横の連絡調整に努めるといったようなことも考えていかなければならないと感じます。後半の期間の点も御意見を承りました。どうもありがとうございます。 ○花俣委員 私も久保委員や櫻田委員とほぼ同様の意見です。通常は何かを利用すれば報酬を払うというのは、基本的に異議がないというところ。ただ、ずっと従前より申し上げていますように、予測可能性のところはやはり、できれば幾らぐらい掛かるのかは事前に知りたいという気持ちは変わらず持っております。そこは家裁の方でもいろいろ工夫をしてくださっているということなので、それを待ちたいと思います。   それから、各先生方からの御意見があったように、報酬が受け取れない専門職の方がおられる、そういう現実があるということは非常に大きな課題ではないかと思います。そこは福祉的な視点からも、報酬助成の仕組みを今一度検討して、きちんとした形に持っていってもらいたいと思います。昨今盛んに言われている独居高齢者、身寄りなき高齢者等の課題に関して、ここが非常に問われるとも思っています。   それから、親族に請求権を認めると関係がよろしくない、関係悪化が云々というお話がありましたが、今、親族の在り方も非常に多様になっていますので、一律に家族だから、親族だから、報酬はなくてもいいのではないか、あるいは請求するとややこしいのではないかという、その論点も少し違ってきているのではないかと感じています。実際介護が必要になったときに、同居家族がいない方が大勢おられますし、公的な制度だけで御本人の自立した生活が維持できるかといったら、ここも微妙なところです。国は介護保険創設時に無償労働として家族介護を最初から見込んでいたという経緯もありますので、そこに、家族や親族が後見人に選任された場合に全く無償というのも、さてどうなのかなという気が若干しております。そんなところでございます。 ○山野目部会長 ただいまの花俣委員のお話も含めて、報酬に関する現在の民法の規定というものは、そっけないですよね、裁判所が決めると一言書いてあるだけの規定で、今日ここでこれだけ込み入った難しい議論をしていただくくらい問題が拡がっているのに、簡略すぎる規定で引き受けて、これまでしてきたものでありますけれども、いろいろ考えていかなければならないだろうと感じます。令和6年法律第33号によって改正された離婚の際の財産分与の考慮要素を定めている768条3項という規定は、改正前はそっけなかったですけれども、改正されて今の文言になって、前よりはどういうことを考慮していくだろうかというところが見えるような規定になってきていると感じます。いろいろなものを可及的に可視化していこうという動きの課題の一つをここで扱っているとも感じます。引き続き、今日頂いた御意見を整理して次回以降の審議をお願いしていこうと考えます。   ありがとうございました。部会資料8の審議をここまでといたします。   続いて、厚い部会資料9の方に進みますから、どうぞよろしくお願いいたします。初めに、部会資料9の1ページから、第1の1から3までについての審議をお願いすることとし、この部分について事務当局から説明を差し上げます。 ○山田関係官 部会資料9、1ページ以下、「第1 法定後見制度に関するその他の検討」の前半の1ページから8ページまでの1から3までの部分について御説明いたします。   1ページからの「1 申立権者」では、申立権者の範囲について、任意後見監督人であった者や利害関係人を中心に御議論いただきたいと考えています。また、4ページからの「2 成年後見人等の選任」では、成年後見人等の選任に関する現行法の規律に関して、6ページからの「3 本人の死亡後の成年後見人の権限等」では、いわゆる死後事務に関する規律に関して、その見直しの必要性を含めて御議論いただきたいと考えています。 ○山野目部会長 説明を差し上げた部分について御意見を頂きます。いかがでしょうか。 ○小澤委員 部会資料第1の1から3について、まとめて意見を述べさせていただきます。   まず、第1の1の任意後見人死亡時及び任意後見人が解任された場合において、任意後見監督人であった者に法定後見の申立権限を与えることについては賛成します。   次に、第1の2の利害関係人に法定後見の申立権限を付与することについてですが、今回の民法の見直しの趣旨は、本人の意思尊重を含む権利擁護を促進するためのものだと理解しておりますので、その趣旨には沿わず、消極に考えています。仮に利害関係人に申立権限を付与しても、本人に関する情報が家庭裁判所に集まらずに、適切な代理権の設定や成年後見人等の選任が難しいのではないかと考えています。   また、私たちの検討の中で、法定後見制度を必要性に応じて個別代理権を付与する制度とするのであれば、利害関係人から法定後見の申立てを認め、利害関係のある事項のみについて必要な範囲で代理権を付与することとしてはどうかという意見もありましたが、利害関係人からの申立てに基づき付与される代理権は相当程度絞られることとなると思いますので、結局のところ成年後見人は相手方の訴訟を待って対応するほかなく、現行の特別代理人制度があれば十分ではないかと考えています。   ただし、既に法定後見制度を利用して成年後見人が選任されているものの、利害関係人との間に生じた法律関係について権限が付与されていないということで、当該利害関係人が法定後見制度を用いた対応を求めたい場合には、現行の民法843条の2項でも、成年後見人が欠けたときの後任の後見人選任請求は利害関係人にも認められていることや、本人の法定後見制度を利用するかどうかの自己決定権を奪うことにはならないことから、利害関係人に当該利害関係に係る代理権追加付与の申立権を認めていいのではないかと考えています。   次に、第1の2の成年後見人等の選任については、現在の規律は維持すべきであり、選任後に業務がなされる中で実際に不具合や不適当なところがあるのであれば、見直し後の解任制度において対応することが適当であると考えています。   最後に、第1の3の本人の死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結を許可する規律についてですが、現在の実務では、保佐人や補助人であった者は家庭裁判所からの許可の制度がないため、やむを得ず自己の責任において死後事務の対応をしております。家庭裁判所からの許可を得ることができれば、後に責任追及される可能性を減らすことができますので、死後事務を正当な権限に基づき行えるようにしていただきたいと考えています。この死後事務を行うことができる権限については、財産管理権とは余り関係がないものと考えますし、また、市区町村への死亡届については、後見類型のみならず保佐、補助においても代理権の内容にかかわらず届出人とされていますので、代理権が包括的なものであるか個別的なものであるかで権限を区別するのではなく、死亡届出を行った成年後見人等には火葬等の死後事務を行えるようにすることも考えられるのではないでしょうか。   また、実際に死後事務を行うためには、火葬などに必要な金銭を出金する必要がありますので、必要な金銭の預金からの出金の権限についても規定する必要があると考えています。もっとも現在、身寄りのない方の死後事務については、成年後見人等が選任されている場合にはやむを得ず成年後見人等が行っているケースが多くありますが、成年後見人等が火葬などについての事務を行うことを前提とはすべきではなく、自治体が墓地埋葬法第9条に基づき適切な対応をする体制を整備していくことが最も望ましいとは考えています。 ○野村幹事 今の部分について意見を述べたいと思います。まず、申立権者ですけれども、任意後見監督人であった者に法定後見の申立権を付与することには賛成です。任意後見監督人は任意後見人の死亡や解任を速やかに知ることができますし、また、監督業務を通じて本人の状態を把握していますので、法定後見の速やかな利用によって本人に対する支援を継続して、本人の保護を図れると思います。期間制限については、ニーズがどういったところにあるのか検討が必要と思われます。   利害関係人に申立権を与えるニーズとしては、実務では身寄りのない人が急性期で病院に入院して、その後、退院して施設等に移る際に入院費が支払われずに、病院側が迅速な後見申立てを求める場合などがあります。ただ、利害関係人は本人の状況を総合的には見ていませんし、必ずしも本人のために申立てを行うのではない場合もあり得ますので、適正な制度利用とならないおそれもあります。本人の権利制限を伴う後見制度の開始の申立権を利害関係人に与えることは消極的に考えています。まず市町村長申立てを充実させて、中核機関が法制化されましたら、中核機関も申立権者とすることにより対応できるのではないかと思われます。ただ、利害関係人の上申による裁判所の職権による開始については、検討の余地があると思います。   後見人等の選任についてですが、誰が後見人等になるか、本人にとってとても重要なことですので、その選任については本人の意思を尊重することが必要です。ただ、既に条文において本人の意見その他一切の事情を考慮しなければならないという文言がありますので、規定を改正するというよりも、一読目で申し上げたとおり、本人の意思をより尊重するように運用改善するので足りるのではないかと思います。家事事件手続法で、本人の陳述を聴かなければならないとされていますが、後見人候補者に一度も会わずに意見を述べるのは難しいと思われますので、選任前に本人と候補者との面談の機会を設けるなどの工夫が考えられると思います。   死後事務についてですが、実務上、本人に身寄りのない場合や相続人の協力が得られない場合などに後見人が死後事務を行うことがあります。現場では、補助や保佐の場合であっても対応を求められる場合があります。リーガルサポート内の議論では、類型が一元化された場合でも保護者に現行の後見人のような死後事務を行う権限を認めるべきという意見がある一方で、本人の生前よりも死後に広範な権限を持つのは相当ではないので、生前に有していた権限の範囲内に限定されるのではないかという意見もありました。身寄りのない人も増えていますので、後見人の死後事務で対応するよりも、身寄りのない人を社会や地域でどう支えるかの問題であって、公法上の規律で解決すべき問題ではないかという意見もありました。 ○上山委員 今までの御発言と重なる部分も多いのですが、それぞれについて簡単に意見を申し上げたいと思います。   まず、利害関係人への申立て付与についてですが、基本的には消極です。特に、専ら利害関係人の利益を図る目的で申立権が行使される場合を考えると、本人の権利擁護のための仕組みという制度の位置付けとの関係で、やはり違和感が残ると思います。加えて、仮に新制度の代理権付与についてテーラーメイド方式を原則化した場合には、申立ての中で代理権の範囲をある程度明確にしておく必要があると思いますが、例えば取引相手などに本人のニーズを踏まえた申立てを期待することは難しいと考えます。なお、仮に利害関係人の申立てを認める場合には、後見が適切な時点で終わることを確実に担保しておくことが、より重要な意味を持つことになるだろうとも思います。   それから、先ほど小澤委員が触れられていた、既に成年後見が開始されている段階で追加的に代理権を付与するという場面に限って、利害関係人に申立権を認めるというのは一考の余地はあるかなとは感じました。   2点目、成年後見人の選任についてですが、基本的に私は本人の意向を最大限尊重すべきだと考えておりますので、本人が望む成年後見人候補者を選任することが本人の福祉に反する場合を例外として、原則として御本人の意向に一定の重きを置く、あるいは一定の拘束力を認めるという考え方を引き続き検討してもよいと感じています。   最後に死後事務ですが、死後事務の拡張については、こちらも消極です。焦点となる身寄りのない方などについては、原則的には墓埋法、行旅法、生活保護法などの行政法によって対応すべきだと思います。現に身寄りのない方が亡くなられた場合の慰留金等の取扱いの手引も既に発出されていますので、この領域については民法改正による対応ではなくて、むしろ現行の手引の考え方をベースに、行政の法的権限の整理を関係法律の見直しも含めて、行っていくべきではないかと考えています。その上で、民法上はそれぞれの支援者に付与されている代理権の範囲内で、応急処分義務や事務管理法理での対応を考える形でよいのかなと考えています。 ○根本幹事 私からもそれぞれ3点について申し上げたいと思います。   まず、申立権者に利害関係人を含めるということについては、6つの理由から消極に考えております。1点目の理由としましては、ほかの先生方からもありましたけれども、やはり手続の実効性が、利害関係人を申立権者に含めたところで、達成されないのではないかということです。   2点目は、ほかの破産管財、破産申立て等と異なりまして、医療情報を含めた、若しくは生活のかなり細かい点も含めた、御本人のプライバシー情報が申立ての際の申立書の中に含まれているということになります。利害関係人が申立権者になることでプライバシー情報が不必要に知られることになります。   3点目は、取引の相手方、例えば利害関係人の典型例は銀行等ということになるのかもしれませんけれども、現在の銀行窓口などでの状況を見ますと、御本人が取引が難しいという場合に後見制度の申立てを金融機関の側から促されるということはあるわけですけれども、こういった場面で利害関係人が申立権者になっているということは、銀行が申立てができるではないかということが、窓口でやり取りがされることになり銀行が申立てることは現実的ではないと思います。   4点目は、横浜市からのヒアリングの際にヒアリングの内容であったかと記憶をしていますけれども、申立支援の現場で、チーム支援が非常に重視をされているということになりますので、チームの中に利害関係人が含まれた状態でチーム支援を行うということは、自治体の実務の中で難しいのではないかということです。   5点目は、先ほど上山委員からもありましたけれども、今回の法改正の理念に照らすと、利害関係人を含めるということは理念とそぐわないのではないかと思われますし、仮に本人同意があるということであれば、本人申立てをしていただければよいということにもなるわけです。   最後、6点目は、一読目の議論でも申し上げていますけれども、実際に今、利害関係人の方が訴訟提起等の対応をされているということで、代替手段としてそれで十分かというところは、御意見があるかもしれませんが、代替手段も一応用意はされているのではないかと思われるということになります。   あと、報酬の関係で、部会資料の中で予納金の制度が参考になるという御指摘もあるのですが、申立て時だけの報酬であれば予納金は考えられると思うのですけれども、後見の場合にはその後のラーニングの報酬も発生しますので、そこまで予納金で含めるというのはなかなか難しいのではないかと思いました。   次の後見人の選任のところですけれども、注意喚起という意味で申し上げたいと思っていますのは、開始の要件のところで、本人同意がある場合とない場合というような議論があったかと思います。事実上、御本人の意思を選任時に尊重するというのは大事な視点ではあるとは私も思うのですが、他方で、選任について本人同意が得られないことで結果的に制度の開始が、開始要件が充足しているにもかかわらず選任が進まないということによってスタートしないということは、避けなければいけないとも思います。開始要件との関係で、開始要件を満たしている場合に選任手続が滞ることがない工夫というのは必要かと思います。   私個人としては、どうしてもこの人は嫌ですという、特定の方のNGリストを申立ての運用などで入れていただければ、家庭裁判所でも考慮していただくということは可能ではないかと思っております。その意味するところは、例えば弁護士は嫌ですというような形の大きい括りで反対をされてしまうと、家庭裁判所の選任事務に非常に大きく影響するのではないかというところを懸念してのことでございますので、特定の人物のNGリストということになります。   最後に死後事務のところですけれども、上山委員の方などからも公法上の取扱いが原則であるという御指摘があり、その点は私もそのとおりだと思います。他方で死後事務の現場で今起きていることとしては、納骨や火葬の後の遺骨の管理ではないかと思っておりまして、墓埋法等ではカバーし切れていないというところかと思います。最終的に公法をどう改正をしていくのかという議論と同時並行の議論が必要だとは思っている一方で、死者の尊厳といいますか、生前の本人が御希望されていたことがある場合に、その御本人の意向や意思ないし死者の尊厳という観点から、後見制度の中で死後事務を行うということを義務化するということまでは必要ないと思っていますけれども、類型を問わず、権限があるということは、今の実務上は必要なことがあるのではないかと思っています。   法的構成のところは、民法の先生方のお知恵もお借りしながら、本来であれば後見制度終了後に、なぜ死後事務ができるのかというところも含めた確認的な議論は必要だと思っていますし、従前言われていた応急処分義務は義務になってしまうということとの関係がありますので、事務管理という整理でいいのかどうか、その事務管理の根拠までこの部会で確認をしておくということが必要ではないかと思っております。 ○佐久間委員 まず1点目の申立権者につきまして、任意後見監督人であった者が申立権者になる場面は有り得るとは思いますけれども、ほかの場合と違って、やはり限定的にすることも考える必要があるのではないかと思います。任意後見人が欠ける場合も様々でありまして、本人になお意思能力といいますか契約締結能力、それ自体があるというときには、本人に別の者を任意後見人にする任意後見契約をなお追求するか、法定後見に移行するか、あるいはそもそもそういう保護は要らないことにするか、本人の意思の尊重という観点からすると、まずそこが問われるべきところではないかと思います。したがって、本人のそのような判断能力の有無を問わずに、かつ終了後余りにも長い時間がたってからも、元任意後見監督人であったというだけで申立権を有するというのは適当ではないと思います。ではどこで線を引きますかというと、かなり難しいと思いますので、難しい問題があるのではないかということだけ今日の時点ではお話ししておきたいと思います。   それから、利害関係人について、最初にこの資料を読んだとき、誰がこんなことを言ったのかと考えたのですが、自分が言ったのだなと思いまして、それで少し申し上げたいのですけれども、これを申し上げた脈絡は、前に議論した時の議事録まで読んでいないので正確かどうか分かりませんけれども、取引相手方の保護が一定必要なのではないかという、先ほども少し申し上げた、その脈絡でこれを多分申し上げたと思うのです。私が申しましたのは、是非とも今まで御発言いただいた方に注目していただきたいのですが、3ページの2行目かな、きちんと部会資料で書いていただいて、飽くまで本人と法律上の利害関係を有する者だけを利害関係人とするということです。例として挙げたのは不動産賃貸借の、本人が賃貸人、相手方が賃借人で、修繕してもらえないとか何とかという継続的な関係があるときに、本人側に保護者に当たる人がいない、そして、特別代理人でいいではないかと言われたって、一回一回訴訟を起こさなければいけないなんていうのは不合理だろうというふうなことだったのではないかと思います。   現状も、例えば事理弁識能力を欠く常況にある方について、法律上の利害関係のある人が、強制的に全面的な代理権を有する者として後見人の選任を求めるということはできないのですけれども、私が考えていたのは、飽くまで本人と法律上の利害関係があるということで請求権者にするということなのだから、そこの限定は確かに難しい面はあるけれども、全面的なとか余分な保護者の権限を与えるというようなことまではこの人の請求によってはできないけれども、例えば賃貸借契約であれば、その賃貸借に係る権限を与えることについて請求することも考えてはどうかと。別にこれを強力に主張しようということではなくて、取引相手方の保護というのは、権限を個別的にしようと考えれば考えるほど、必要なのではないかということの一環として申し上げたところです。   そのようなことから、ここを是非とも申し上げたいのですけれども、何人かの方から、チーム支援がこれからは大事になるのだからとか、これは本人の権利擁護の制度なのだからとおっしゃる、それはそのとおりだと思いますが、それは理念の一つであって、この制度の理念の一つには取引安全の保護、取引相手方の保護だって含まれているわけで、私が申し上げたこの局面は、本人の権利擁護ではなくて、本人が相手方の権利を害している状況があるときに相手方について何か対応手段を与える必要がないか、それを考えるべきではないかということです。   繰り返しますが、これを最後まで追求しようなんていうことは、無理だろうと思っているので、多分ありませんけれども、問題点としてはあるのではないかということは、今もある程度確信を持っているというか、私の中では問題点があると思っていますので、そこだけは強調しておきたいと思います。そのようなことから、繰り返しますが、最後までこれを入れるべきだとこだわることは多分ないと思うのですけれども、ある時点まで、この論点はあるのだということを示すために、こういう意見もあるということは私としては主張しておきたいと思います。これが1点目です。   次に、成年後見人等の選任について、不服申立てに関して申し上げたいのですけれども、これはどうでしたっけという確認にもなるのですけれども、ある権限の付与を請求したのだけれども、裁判所の判断で必要がないということで認められないということが起こり得るとして、今までの議論では起こり得るのだろうと思うのですが、そこで不服申立ては想定されていたのでしたっけということでして、私はされていなかったのではないかと思います。そうすると、権限については不服申立てはできないのだけれども、人については不服申立できるという制度でいいのか。駄目だということを言いたいわけではなくて、ここについて不服申立てを認めるなら、権限についても一応認めることがあり得るのかなと。私は不服申立てを認めることが適当だと思っているわけではないので、ここは問題点の指摘だけです。   この不服申立てが必要だと余り強く思わない理由は、一つには一応、成年後見人の交代も比較的容易にしてはどうかという話が多分あったと思うのですけれども、そこが容易になれば、最初の人にそこまで強くこだわる必要はないのではないかと思いますので、不服申立てはそこまで積極的にできるとしなくてもいいのではないかと思うことと、ここからはまた、詰めなければいけないのではないかということに戻るのですけれども、不服申立てをできる制度にしたとして、先ほどどなたかおっしゃった、この人は嫌ですということだけを言わせるのか、別のこの人にしてくださいというところまで認めるのか、それも考えなければいけないし、あと、この不服申立権者を誰にするかということも考えないといけないのではないかと思います。申立権者については、本人はそうなのでしょうけれども、開始の審判を請求した人も入ってくるのかどうか。入ってくるとすると、本人が真意に基づいて嫌だと言って不服申立てしているのだったらいいけれども、親族間の争いで気に入った人を据えるための武器として使われるおそれもあるので、少し怖い仕組みだなと。そういう面もある仕組みだなと思っています。これが2点目です。   3点目の死後事務は、これは小澤委員がおっしゃったことだと思うのですが、現在の873条の2は財産の保存に関する定めと本人の死体の火葬、埋葬が大きく分けて定められていて、死体の火葬、埋葬について言うと、これは別に生前財産の管理をしていた人にさせる必然性はないのではないかと思っているのです。少しまた先ほどの別の方に戻りますけれども、財産の保存に関する部分について言うと、これは生前に保存の権限がない者が死後については突然権限を持つというのはおかしなことだと思いますし、また、財産目録が作成されてもいないのに、総体財産についての保存というのは少し考えられないのではないかとも。だから、これは財産目録の作成とリンクするのではないですか、ということです。   それから、特定の行為についてしか権限を持たない人が死後もその行為をすることができるというのは、相続人の権限との関係で非常に問題が大きいのではないかと思うので、財産の保存に係る部分については、現在の873条の2は、仮に今の後見類型に当たる類型がなくなるのだとしたら、維持は難しいのではないかと思います。   それに対しまして、また戻りまして、死体の火葬、埋葬については、先ほども申しましたけれども、生前に財産の管理権を持っていたかどうかということと全然リンクさせる必要のある問題ではないので、これについてはいっそのこと、この後見の制度から切り離して、それとして誰にどういう場合に権限を与えることが必要か、適当か、これを考えた方がいいのではないかと思います。   結果的に成年後見制度における保護者であった人になることもあるかもしれませんけれども、その場合、相続人が対応しないということだと思いますから、相続人が対応しないときに、何らか手続を経てこの人という、全然関係ない人でもいいし、チーム支援が行われているときに、その支援を行っている方のどなたかということだってあり得ていいのかなと思います。繰り返しますが、これは後見の制度とは別に考える方が適当ではないかと思います。 ○山野目部会長 利害関係人による申立てについてのみ申し上げます。不在者の財産の管理の場合には、利害関係人が申立権者になっているということは皆さん御案内のとおりです。あそこの利害関係人は、単なる事実上の利害関係では駄目でありまして、法律上の利害関係を有する者でなければいけないと解釈されています。ですから、不在者が持っている不動産を買いたいという希望を持っているのみでは申立てをすることができず、もう少し法律関係が具体化した状態で、法律上の利害関係があるという判断に達するときに申立てが認められるという解釈、運用がされてきました。私は当然、利害関係人を申立権者に加えるのをやめようと複数の委員、幹事がおっしゃった意見は、法律上の利害関係を有する利害関係人の意味で議論していらっしゃると受け止めていましたけれども、もし異なるならば、それはまた議論を続けていただきたいと望みます。   ただし、二つ申し上げますと、仮に法律上の利害関係に限定するとしても、利害関係人という一言を入れて、申立権者の今のリストに追加するという考え方を導入することには大きなためらいがあるという意見もいただいていて、それはごもっともな部分があると感じます。   しかし、もう一つ申し上げますと、本人の側から考えたときにそういう意見はごもっともでありますけれども、本人と取引をした相手方の法律状態を整えるという需要も、これまた民事法制上は顧みられなければならない観点でありまして、佐久間委員は一貫してそのことをおっしゃっています。遠慮なさって、最後まで通すつもりはないとおっしゃるのですけれども、しかしこれはやはり、今のところで出していただいている御議論は、チーム支援等があるからいいとかという、あの議論では多分、取引の相手方の法律状況を整えるという佐久間委員が心配しておられる観点に対しては十分に応え切っておりませんから、この後も議論は続けていかなければならない論点であると感じます。   今、部会資料第1の1から3まで御議論いただきましたけれども、ほかに御意見が残っていましたらば承ります。 ○星野委員 私は1点だけ、3の死後事務のところだけ発言したいと思います。   こちらについて、これまでにも出ていたとおりで、今いわゆる円滑化法873条の2項で後見類型、後見人だった者が裁判所の許可を得て一定程度できるということなのですが、これは現実に私の周りというか、社会福祉士だけではないと思うのですけれども、実際にこれが本当に必要になるケースというのは、やはり先々、相続人から問題を指摘されたりですとか、相続人の意向が割れている場合とかありますけれども、身寄りがない方などを多く受けている場合には、余りこの法律を使うことはなく、いわゆる応急処分という範囲の中で家庭裁判所の方に報告をすることで、できている実態がございます。保佐、補助についても、ここに書かれているように、応急処分、事務管理というところで、全くできないということではないです。   一番問題だと思っているのは、成年後見制度を使っていると、亡くなった後のことまで後見人等がやって当たり前という感覚が非常に強くて、そこのところを今回の改正の中では、私はやはり整理する必要があると思います。結果的に後見人等、あるいは保佐人、補助人が応急処分という範囲の中でやっている実態がありますから、結果的にそれをやることは否定はされないと思いますけれども、極端な例を言うと、身寄りがなくて死後事務に対応する人がいないから、成年後見制度の申立てを考えているのだという事例もないわけではないです。ですから、ここはここでしっかり、そうではないということを、上山委員も言われていましたけれども、やはりほかの法律の公法の中でしっかりと規定をするべきで、火葬、埋葬の後の納骨のところは、東京家庭裁判所はそこも含めた裁判所としての判断を示してくださっているケースがありますが、これは全国一律ではありませんし、そういう運用がされていない裁判所の方が多いわけですから、そこのところも含めて検討しなくてはいけないと思います。   何よりも、死後のことというのは、後見制度を使っている方以上に、使っていない多くの方が今社会的課題として指摘されておりますから、後見制度を使っていることでそれが対応できるというような間違った認識というのがございますので、私はこの円滑化法といわれる873条は全体的に見直すべきだと思います。 ○常岡委員 私も死後事務に関してですが、成年後見制度を使っている方であれ、そうでない方であれ、遺体とか遺骨については法的には動産ということになります。その動産の所有権が誰にあるかということについては、学説、判例が分かれ必ずしも明確ではありませんけれども、今主流の考え方は897条の祭祀財産に類するもの、897条を類推して、祭祀の主宰者にその所有権が帰属するという考え方がかなり有力かと思います。そういったときに、埋葬まで行かず、火葬の段階までは873条の2で家裁の許可があって、相続人の意向に反しなければ可能かもしれませんけれども、その後の遺骨とか、それから遺体の埋葬をするかどうかということについては、法定相続人とは離れた897条というルールとの間の民法上の兼ね合い、整合性をやはり少し考えておく必要があると思っています。現在のところ、そこをどの程度意識されて実務の方で処理されているのかというところも、もしも分かればお伺いしたいところですけれども、少しそこの整合性は必要だと考えています。 ○竹内(裕)委員 まず、1の利害関係人のところは、弁護士会の中で申立権者に利害関係人をという意見も出ていたところなのですが、一読のときは。その後、医学的な情報を集めることができるのかとか、どこまで情報を収集できるのかということで、やはり申立権者というのは難しいところがあるという意見が出ました。ただ、その理由としては、その後、特別代理人類似の実体法上の制度を設けてはどうかという意見があったので、そちらの方がいいのではないかということでした。元々、申立権者に利害関係人をと考えていた場面では、意思表示の受領能力をやはり一番問題にしており、つまりは取引の安全なのですけれども、そこが何ともならないので、申立権者に入れないといけないのではないか、そういう問題意識だったのです。ただ、その後、特別代理人類似の制度というのもあり得るのではないかという議論が出てきたので、そちらの方がいいのかもしれないと、今回、弁護士会で議論したときには意見がありました。   ただ、特別代理人類似の制度ということを考えたときも、実体法上の特別代理人というと、誰が一体この判断をするのか、どういう要件で判断できるのか、特別代理人類似の制度といっても、医学的な資料を疎明しなければならないのだったら結局同じなのではないか、だったら何が違うのだというような悩みも出てきたところでして、結論は出ておりませんが、そういったような議論状況であったことを御紹介いたします。   あと、死後事務のところは星野委員がおっしゃってくださったとおりなのですが、弁護士も、誰かがやらないといけない状況に置かれますので、実際にやっています。だけれども、それがやって当たり前みたいに、義務にはしないでいただきたい、そこは明確にしてほしいということがあります。そうすると応急処分とか事務管理というところになるという意見もある一方で、逆に、民法952条の相続財産清算人の立場、そういう立場を務めることも弁護士にはございますが、その立場から見ますと、亡くなった後の出金の状況を審査しなければいけないです。そうすると、何か根拠があれば、それでよいということになるのですが、余りにもグレーゾーンで法的に整合性が取れていないところがあると、そこにも引っ掛かりが生じるのではないのかというような意見もありましたので、一つ御指摘させていただきます。 ○山野目部会長 竹内裕美委員に悩んでいただきましたから、申し添えますと、佐久間委員がおっしゃったような利害関係人の申立ての局面のイメージで行くとして、極めて限られた事項について、限られた期間のうちにそのミッションを終了するということになるでしょうから、特別代理人といわれているものと実質が近づきます。今までは部会資料などをお出しするときに離れた場所にお示しして議論をお願いしてきたような側面もあって議論が熟さないところがありますけれども、今日多くの委員、幹事にこの観点をおっしゃっていただきましたから、引き続き審議していくことになると見通します。ありがとうございます。   ほかにこの部分についておありでしょうか。 ○山下幹事 利害関係人の話が続いておりますので、この点だけ1点お話をさせていただきたいのですが、私はやはり申立権者に利害関係人を入れるかどうかということについては、必ずしも入れなくてもいいかなと思うのです。もっとも、佐久間委員がおっしゃったような例に関して、行政の窓口などに連絡をする機関というのがあるという前提がないと、恐らく放置されたままになってしまうという可能性が高いとおもいます。厚生労働省の管轄だと思いますので、こちらでは取り上げるべきではないのだと思いますが、申立権者に市町村長が入っていて、行政の窓口がきちんと機能するという前提であれば、利害関係人を含める必要性は必ずしもないのかなというふうな意見を持っております。   また先ほど根本幹事は銀行の預金の例を出されたのですが、私が少しこの例との管理で気になったのは、証券取引などで既に行われていて損が出ているものについて、解約をしないと損失が拡大するというような場合などについても、恐らく証券会社の販売員などがどこかに連絡をして止めてあげた方がいいと善意で考えたとして、後見の申立ては多分しないと思うのです。なので、そういったケースも考えますと、取引相手方からの善意に基づく申立てなども含めて行政などの窓口が一貫して対応した方が、むしろ適切でもありますし、いろいろなルートがあって混乱するというような問題が生じにくいのかなと考えております。 ○青木委員 申立人のところでの利害関係人ですけれども、2ページで整理していただいている他の制度は、基本的には本人以外の様々な利益確保の要請から利用される制度だと思います。また、未成年後見人や成年後見人の選任も、それぞれはしかるべき申立人により一旦は開始された後に、後見人等が欠けた場合の手当てに限ってのことです。一方で、新規での申立てに利害関係人を加えるということについては、やはりここに上げられた他の制度とは趣旨が全く違うという、あくまでも本人の必要性を認定して利用を開始するという制度としては、無理があるのではないかと思います。制度利用を本人の必要性だけで見るのか、他の必要性も勘案するのかという論点に関係するとは思いますけれども、これまで本制度の開始にあたっての必要性は、本人にとっての必要性として議論してきたと思いますので、その観点から無理であると思います。また、皆さんから種々述べられています実際の申立てをした後の要件審理の難しさというのも大きな実務的障害だと思います。   また、本人に必要があって、かつ利害関係人にとっても必要があるという、佐久間委員の御指摘のような事例について言いますと、利害関係人としては、やはり本人の必要性というものを中核機関や相談機関を通じて検討いただく、場合によっては市町村長申立ての検討につなぐことによって実現していくべきであって、その相談体制の充実によって取引の相手方の利益は確保する観点もあるのかと思いました。もちろん本人にとっての必要性がなければ市町村長申立て等はできませんので、専ら相手方だけに利益がある場合には、それだけでは解決できないということは承知をした上での意見ということになります。   次に、後見人の選任ですけれども、ここで考慮いただきたいことは、今、申立てにあたって本人や申立人があげた候補者は選任されないものだという誤った認識が広まっておりまして、裁判所としてはそういう運用はしていませんけれども、ただ申立手続の中では、必ずしも希望された候補者が後見人等に選ばれるわけではなく、裁判所が異なる人を選ぶことになっても異議はありませんという書面に署名をしていただいたりしている実務があります。そういう中で言いますと、原則として本人や申立人の希望が十分に考慮されるのだ、ただ例外的に考慮できない場合もあるのだということを法文上明確にする必要があると思っています。そういう意味では、現行の本人の意見を考慮するという程度の条文ではなくて、本人の意向、意思を尊重するというぐらいの書きぶりにした上で、なおそうでない場合もあり得るというふうに、原則と例外的なものを書き分けるということが求められているのではないかと思います。   最後の死後の事務処理ですけれども、これまでの皆様のご意見はいずれももっともだとは思いますが、この論点はもう少し社会政策的にも考える必要があるのではないかと思っています。現在の死後の事務処理のニーズというのは、これまで議論されています、「火葬、埋葬」だけのことではなくて、死後の直後の病院や施設の支払い、それから動産の撤去や廃棄、入所契約や賃貸借契約の解約と住居の明渡しとや施設の明渡し等の種々のことを相続人として担う人がいないために、それを後見人や保佐人、補助人が事務管理を含めてやらざるをえないという社会実態があります。それについては本来はご指摘のあったように公的な機関等で全て賄うべきだということはもちろん求められているところであり、それについて検討・模索が始まっていますけれども、成年後見制度が改正される頃にそうした公的な制度が整っているとまでな見越せない中で、やはり後見制度においても、そういった身寄りのない人の死後の事務処理のニーズを受け止めることができる制度にしておくと、全てを後見制度で担うという意味では全くありませんが、できることにしておくということは考える必要があると思っています。将来的に死後の事務処理を後見制度で担う必要がなくなれば、廃止をすることでいいとは思いますが、今回の改正で全部別の制度に任せて考えなくていいかというと、やはり社会のニーズとの対応の関係で困ると思っています。   ただ、その場合の権限の付与の在り方についての私の意見としては、佐久間委員のご意見と近いところで、生前に付与されている権限が、死後の事務処理について、例えば、先ほど言った最後の利用料支払いとか住居明渡しとか、場合によったら埋葬とか、に関連するようなものがあった場合に限定して付与するということになるとは思っております。 ○山野目部会長 青木委員がおっしゃった、成年後見人等の選任に関する現在の法文が少し物足りないというお話は、そのとおりであると感じます。本人の意思をできる限り尊重するという書きぶりであれば、あり得ないことはありません。児童福祉法24条の30が用いている文言でありまして、これはこの種の局面で法制上用いられているものとしてあり得る表現だろうと感じます。ただし、本人の意思をできる限り尊重するということは、考えてみると今般の改革の全般がそうであって、あらゆるところにたくさん本人の意思をできる限り尊重すると書くわけにもまいりませんから、ここぞというところに書いて、全体の法文の案を作ってみて、また整理をするという作業になっていくであろうとも思われます。御意見いただいてありがとうございました。   遠藤幹事のお話を伺いますけれども、議事を進めようと考えておりますから、御発言の希望がある際には皆さん、簡潔におっしゃってください。 ○遠藤幹事 選任について、御本人の意思の尊重に関する御発言がありましたので、裁判所として考えていることを述べさせていただきたいと思います。   まず、保護者の選任は裁判官の判断事項でありますが、一般論としては、見直し後の制度の下でも、御本人の意向はもちろん、代理権等が付与される具体的な法律行為を適切に遂行する能力の有無などを含め、御本人及び保護者となる方の客観的事情や両者の関係等の諸般の事情を踏まえた上での判断をすることになるのだろうと思います。このような判断の中では、福祉・行政における支援の枠組みの中で御本人の意向も十分に踏まえた上でなされた受任者調整の結果も重視されているところでありまして、受任者調整の結果をきちんと踏まえて判断をすることによって、正に先ほどの部会長の御指摘のような、本人の意思をきちんと尊重するような形での選任に結び付けることが、適切な事務の在り方ではないかと考えられているということを御理解いただければと思います。 ○山野目部会長 御意見を頂きました。ありがとうございます。   先に進めます。続きまして、部会資料9の8ページからになります。第1の4及び5について、事務当局から資料の説明を差し上げます。 ○山田関係官 部会資料9、8ページ以下、「4 制限行為能力者の相手方の催告権」及び「5 制限行為能力者の詐術」について御説明いたします。   まず、8ページからの「4 制限行為能力者の相手方の催告権」についてです。この規律は、本人の利益と取引の安全との調整を図るために、制限行為能力者の取消し可能な行為について、その相手方に法律関係を早期に確定させるための手段を認めるものです。この規律について前回に引き続き御議論いただきたいと思いますが、その際には10ページの(3)に記載した点を中心に御議論いただきたいと考えています。   また、11ページからの「5 制限行為能力者の詐術」についてです。この規律は、取引の相手方を保護するために設けられたものです。本人等が必要な取引を不相当に制限されないことを含め、取引相手方の保護の在り方について検討する観点から、取消権による保護が認められる成年被後見人等の詐術に関する規律の見直しの要否について御議論いただきたいと考えています。 ○山野目部会長 説明を差し上げた部分について御意見を伺います。いかがでしょうか。 ○小澤委員 制限能力者の相手方の催告権については、同意権、取消権が付与されている行為を成年後見人の同意なく本人が行った場合には、後見人による追認又は取消しがされるまでは必要性は失われないので、終了することはできず、仮に必要性が失われていないのに後見が終了したのであれば、そもそも必要性が消失したという要件を欠いた終了ということになって、終了の審判が取り消されることになると考えておりますので、制度の利用が必要性の消失により終了ができる制度となったとしても、現行の催告権との規律の違いは生じないのではないかと考えております。   制限行為能力者の詐術について、相手方を信頼させて取引した場合には、本人の保護の要請と取引安全のバランスを考慮して、取り消すことはできないという現行の規律は維持すべきと考えています。 ○加毛幹事 まず、「4 制限行為能力者の相手方の催告権」につきまして、最初に、これまでの部会の審議の内容から外れるかもしれませんが、民法20条1項、2項及び4項の規律内容について申し上げたいと思います。民法20条1項及び2項は、催告を受けた者が確答を発しないことの効果を追認擬制とするのに対して、4項は、不確答の効果を取消擬制とするという違いがあります。これは1項及び2項の場合には、催告を受けた者が取消し又は追認を単独で行うことができるのに対して、4項の場合には、被保佐人や行為能力が制限された被補助人が単独では有効に追認をできないことが根拠とされます。   もっとも、このような効果の違いが合理的であるのかには疑問もあるところです。催告をする相手方は、多くの場合、法律行為が取消原因なく有効に確定することを望んでいるものと思います。それにもかかわらず、法律行為をした当事者である被保佐人や被補助人に対して催告をすると、自らが望んでいない取消擬制という効果が生じる可能性があります。他方、相手方が取消擬制という効果をあえて狙って被保佐人や被補助人に対して催告を行うことも考えられますが、これのことは、法律行為の取消権を有しない相手方に、法律行為の効力の否定する可能性を認めることになります。民法20条4項の規律するルールが果たして望ましいものであるのかについて、議論の余地があるように思われます。   以上をまず申し上げた上で、資料の9ページにつきまして、先ほどの小澤委員の御発言にかかわるのですが、6行目から具体例として、「動産の取引」が挙げられています。ここでは、特定の動産に関する法律行為について同意権を付与する審判がされたものの、本人が保護者の同意を得ることなく動産の全部又は一部を売却し、その後、もはや具体的な保護の必要性はないと判断されて審判が取り消される場合が想定されているのだろうと思います。この場合において、仮に「本人が、適切な時機に必要な範囲、期間で法定後見制度を利用することを可能とする」という制度の見直しをするのであれば、審判を取り消す際の具体的な必要性の判断においては、それまでの間に保護者と本人が対象となる動産に関していかなる法律行為をしたのか、対象となる動産が現在どのような状況にあるのかなどを検討する必要があるものと考えられます。そうだとすると、取消しの審判の可否を判断する過程において、本人が保護者の同意なしに動産の全部又は一部を売却していたことが判明するという事態がそれなりに生じるのではないかと思います。そしてこの場合には、その時点で保護者が追認又は取消しを行うという対応をとることになるものと考えられます。前述した制度の見直しをするのであれば、審判の取消しに際して、以上のような形で、保護の必要性の消滅を適切に判断することが求められるように思います。   このことは、先ほどの小澤委員の御発言と重なるところがあろうかと思います。もっとも、このような制度を設計したとしても、審判の取消しの判断において、本人が同意を得ないで法律行為をしたことを見落としてしまう可能性は残されると考えます。その場合に、取消しの審判が無効であるとまでいえるのかには疑問があります。手続の安定性の観点からして、審判の効力を覆すことには慎重であるべきと思います。この点では、小澤委員のお考えと意見を異にすることになります。   そのことを前提として、9ページ24行目の「他方で」から始まる段落では、「民法20条第1項の規律をそのまま及ぼすのではなく、何らかの措置が必要ではないかとの意見」、32行目の「さらに」から始まる段落では、「本人が有する取消権を行使するか否かを判断することができる者の選任を求めることも考えられる」との意見が紹介されています。これらの考え方は、審判の取消し後も、本人が自ら単独で有効に追認の判断ができない場合があるとの理解を前提とするものであるのだろうと思います。   しかし、そのような理解による場合には、民法124条1項が定める追認の要件との関係をどのように考えるのかが問題となります。追認の要件も変更しない限りは、これらの考え方を採用するのは難しいだろうと思います。以上が「4」に関する意見となります。   続きまして、「5 制限行為能力者の詐術」についてです。最初に、この部会の審議内容から離れてしまうかもしれませんが、民法21条の「詐術」という概念について、ひと言申し上げたいと思います。民法21条の立案過程では、制限行為能力者の行為態様の悪性が強いため、制限行為能力者に不法行為責任の成立を認めるだけでは足りず、取消権の剥奪までが必要である場合を念頭に置いて「詐術」という概念が採用されました。しかし、部会資料6や本日の資料13ページ以下の説明にある通り、昭和以降の学説では、民法21条について取引安全の保護という理念が重視されるようになり、制限行為能力者が相手方の誤信を惹起させる意思をもって相手方の誤信を惹起させれば、「詐術」と呼べるほどの悪性の強い行為がなくとも、21条が適用されるという考え方が通説となり、これと歩調を合わせる最上級審判例も登場することになりました。そのような通説・判例の立場を前提とするのであれば、「詐術」という概念を見直す必要があるのではないかと思います。   そのことを申し上げた上で、民法21条については、法定成年後見制度の現在の在り方や実務運用を大きく見直し、例えば、補助類型の利用を拡張し、原則的な形態とするという佐久間委員の御見解や、3類型を廃止して、行為能力の制限を個別的な必要性に応じて判断するという青木委員の御見解を採用する場合には、いずれにせよ、個別的な行為能力の制限が現在よりも増加することになりますので、取引相手方の対応をどのように考えるのかについて部会として見通しを持っておく必要があるだろうと思います。   もっとも、この点に関しては、まず、実態がよく分からないということを申し上げなければなりません。制限行為能力者による事後的な法律行為の取消しという取引上のリスクをどの程度重要なものとして評価するのかが、議論の前提になるものと思います。そのリスクが、一定の類型の取引においては無視できる程度に小さいものであるとすれば、当該類型の取引については、取消権の剥奪という民法21条の制裁を課す必要性は低いことになります。この場合には、民法21条の適用範囲を制限するという考え方もあり得るだろうと思います。もっともその場合でも、法律行為が取り消されることはあるので、取消しによって生じた損害については、不法行為に基づく損害賠償請求の可能性を別とすれば、取引相手方が負担することになります。そのことは、行為能力の制限という制度がある以上、やむを得ないものであると理解せざるを得ないのではないかと考えます。   このような考え方を一定の範囲で採用することができるのかがまず問題となるように思われます。この点については、やはり経済界の意見が重要であり、この部会には金融業界から小出委員が参加されていますが、金融業界のみならず他の業界においても、行為能力の制限による事後的な法律行為の取消しという取引上のリスクがどのように評価されているのかを明らかにすることが重要であると考えられます。  その上で、制限行為能力者による事後的な法律行為の取消しのリスクは取引上無視できないものであると評価されるのであれば、当該リスクに対応する手段を取引相手方に付与する必要があることになります。そのような対応手段には、事前の手段と事後の手段があります。そして、取引相手方にとって有効なのは、そもそも取消しの可能性がある法律行為を回避するという事前の対応手段であると考えられます。例えば、取引相手方が事業者である場合には、不自然な取引を検知するシステムの構築などを通じて、行為能力を制限された者との取引を見つけ出して対処できる場合もあるかもしれません。また、法制度による対応としては、事業者が行為能力の制限の可能性がある者と取引をしようとする場合に、その者に問題となる取引に関する行為能力の制限がないことの証明を求めることが考えられます。後見登記等に関する法律では、後見登記等ファイルに記録がないことを証明した書面の交付が認められており、事後的な法律行為の取消しによる損害が大きい類型の取引については、当該取引に関する行為能力の制限がないことの証明書の提示を求めるという事前の対応が考えられます。  行為能力の制限を個別的なものとし、法定後見制度の活用を図るのであれば、行為能力の制限がないことを証明する方法も、これまで以上に重要になるように思われます。例えば、いくつかの法律行為に関して行為能力の制限を受けている者が、行為能力の制限がない法律行為を行う場合に、当該法律行為について行為能力の制限がないことを証明する書面の交付を求めることが可能であるのかが問題となるように思います。行為能力が制限されている法律行為を列挙するような形で証明書を発行することは可能であると考えられますが、本人のプライバシー保護の観点から、そのような証明書を広く取引で利用できるのかについて疑問もあります。また、そもそもこの種の証明書の提示を取引の際に求めることが差別に当たるといった議論があるのだとしますと、事前の対応をとることが難しいことになります。これらの点が、取引相手方による事前の対応という点では実務上重要な問題になるのではないかと思います。   以上のような事前の対応をまず検討した上で、それでは対処できない場合のために、事後的な対応方法として、民法21条が問題となります。同条を、取引相手方の信頼を保護する制度であると理解しますと、取引相手方が、問題となる法律行為の当時において本人の行為能力の制限について、どこまでの調査を行うべきであったのかが、その信頼が法的保護に値するものであるのか否かを判断する上で重要なポイントになるものと思います。そしてその判断に際しては、直前に申し上げた、事前の対応手段をとる可能性がどの程度あったのかということが、制限行為能力者の要保護性の程度とともに重要な判断要素になるように思われます。   以上は、取引相手方の保護の在り方について網羅的に検討するものではありませんが、例えば今申し上げたような諸点について、部会としてどのような考え方をとるのかを検討することには意義があるように思います。   なお、最後に民法21条について一言付け加えますと、同条は、未成年者の取引について実務上既に様々な問題が指摘されています。例えば、未成年者がインターネット取引などで成年者に成りすまして取引を行うという問題が存在します。民法21条を改正する際には、未成年者に対する波及効果についても併せて検討する必要があると思います。   すみません、長くなりましたが、以上です。 ○山野目部会長 加毛幹事におかれては、網羅的な検討をしてくださって誠にありがとうございます。催告権の方についておっしゃった、124条との関係に注意しなければならないという御指摘などは、これから新しく注意をしてまいりたいと考えます。詐術の方について、詐術という概念あるいは用語そのものを見直すということも視野に含めなければならないというお話もごもっともでありまして、御指摘のあったとおり経済界の意見等の動向にも注意をしながら、ここの21条の新しい在り方も考えてまいります。加毛幹事におかれては、この詐術という概念を見直す際の、ではどういうものが考えられるかといったようなことについても、部会の審議を見ながら、またアイデアを練っていただいて、適時に御提供いただければ有り難いと望みます。加毛幹事、どうもありがとうございました。   引き続き御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○佐久間委員 2点、意見を申し上げます。その両方につきまして、今回どうするかということを話題にする規定の合理性をそもそも考えた方がいいのではないかという加毛幹事の御意見は、そのとおりだと思います。ただ、いずれについてもおよそあり得ない規定というわけではないと思いますので、これからの意見は現在の規定を前提に、どうかということを発言いたします。   山田関係官からの御説明で、10ページの(3)に即してというふうなお話がありましたので、それに沿って申し上げますけれども、まず1点目が、これは小澤委員、加毛幹事ともにおっしゃった、法定後見の必要がまだ浮動的状態なのに、なくなるということがあるのか、終了することがあるのかということです。これは加毛幹事がおっしゃったとおりかなと思いました。いろいろ調べてみて、まだ浮動状態だと分かった場合に、それを終了するのは好ましくないとはいえるとは思いますが、好ましくないとまではいえても、様々な必要性に鑑みて、裁判所が終了させるのが適当だと判断したなら、それは仕方がないのかなということと、必ずしも審理の過程で浮動状態である、その法律関係が残っているということが分からない場合もあるでしょうから、望ましくはないにしても、追認又は取消しがされないまま法定後見が終了する場合はあり得るということを前提に考えるべきだと思います。   その場合に、2点目の現在の20条1項とは別の規律を設ける必要があるかということですけれども、これは、審判が取り消された場合には、意思能力さえあれば全ての行為を有効にすることができるという状態になるわけですから、加毛幹事がおっしゃった124条1項の要件が満たされるのかについて、それは意思能力さえあれば満たされるということに、その状況になるということなので、追認も一人ですることが当然できる。そうすると、20条1項の現在の規定を前提にする限りは、確答を発しなければ追認したものとみなされるとならざるを得ないし、それでいいというか、それ以外の規律を設けると、何だか全体として変なことになるのではないかと思っています。   それから、3点目の判断能力を欠く状況にある者についてどうかというのは、これはそもそも催告をする相手方からすると、本人がどういう事理弁識能力、あるいは意思能力の状態にあるかということは分からないはずなので、相手方から見て分からない事情で催告の効力を分けることは、あってはならないと思います。ですので、結局のところ何ら手当てをしなければ、判断能力を欠く常況にある、すなわち意思能力を基本的に欠いているだろうその人に催告を届けても、98条の2によって対抗できない状態になるので、という問題は残りますけれども、その問題が残るということを除いては、そういう区別を何らか法的にすることは難しいのではないかと思っています。これが1つ目です。   それから、制限行為能力者の詐術についてですけれども、加毛幹事はこの問題は深刻かどうかを考えてみる必要があるとおっしゃったのですけれども、深刻かどうかというのはどの点を捉えるのか分かりませんが、事例としてそれほど多くないというようなことは容易に想像できると思うのですけれども、事例としてそれほど多くないからといってなくしていいかというと、私は、ほかの場面でも同じようなことはあるのですけれども、ここでもそれは違うのではないかと思っています。   例えばどんな場合に起こり得るかというと、私の知っている例では、証明書は確かに、登記事項証明書でしたっけ、なんかは出てきた、行為能力の制限が掛かっていることは分かる、誰々の同意を得なければいけない、その誰々について替え玉を立ててきたというのが一つの典型例だと思います。書類を偽造するというのは、あり得るのかもしれないけれども相当難しいとは思いますが、替え玉の事例は結構見るというか、裁判例などでも見るところです。今後はないかと言われると、それはあり得るのだろうと思います。どのぐらいあるかと言われると、それほど多くないかもしれませんけれども、そういうことがあった場合に、制限行為能力者について、これは加毛幹事もおっしゃったことに関連するのですけれども、相手方について善意者保護規定がないのですね、この場合に。その善意者保護規定がないことに対する受皿的な規定というのか、相手方に対する保障的な役割を果たしているのが21条の規定だと思います。ですので、詐術という文言を見直す、相手方の主観的要件について何らか考えるというようなことはあり得るとは思いますけれども、一定の場合に、ほかに善意者保護規定がないということから、相手方を保護するという規定は今後も必要なのではないかと私は思っています。   そのことを前提に、変わらず本人が制限行為能力者であると、誰かの同意に服するというような場合を典型に、その場合は現行の規定で、今前段で申し上げたことを含んだ上で、問題ないと思っています。今までは、被保佐人だった人が典型ですけれども、制限行為能力者だった人が今後は制限行為能力者でなくなるというときは、これはもう取消しの問題にはならないわけですので、この規定の適用場面はほとんどなくなるのだと思います。   考え得るとしたら、実はその行為の当時意思無能力でしたというときに、論理的にはあり得るのかと思いますけれども、詐術をするような人が意思無能力というのは、理屈の上ではあるのかもしれないけれども、現実には少し考えられないかなと私は思います。ですので、仮に意思無能力だとしても、その場合は信義則による主張制限だって掛けられるので、ということから結論としては、この制度について見直しがどのようにされようとも、この規定はこのままでいいのではないかと。ただし、詐術という文言をどうするかとか、相手方の主観的要件をどうするかということは、未成年者の場合も含めて考えたらいいとは思います。   それとの関係で、少しだけ。資料に出てきているので申し上げておきたいのですけれども、私はこの問題よりは、13ページの7行目にある民法第112条をどうするかということの方が、というと少し表現が適当でないかもしれませんが、ものすごく大事なのではないかと思っています。また別のところで申し上げますけれども。 ○山野目部会長 佐久間委員に一つお教えいただきたく存じます。善意者保護の規定を考えるべきであるという、それを明示する規定を考えるべきであるという御意見はごもっともであると聞きました。単なる善意者でしょうか、それとも調査義務が入って、ということでしょうか、そこを少し今のところの考えをお教えください。 ○佐久間委員 調査義務というのがどういうことをお考えか分かりませんが、表見代理のところでも調査、確認すべきであるというような考え方がよく出てまいりますよね。そのレベルでもっての調査義務だとすると、それは善意の前提で必要だとなることはあり得ると思っています。ただ、法文に調査して云々というようにすることは、山野目部会長がそのようなことをお考えになっているかどうか分かりませんけれども、そこまではどうかなと思っています。 ○山野目部会長 表見代理のところも御案内のとおり調査という言葉は出てこなくて、善意無過失という要件の切り方ですが、こちらも大体同じような按配であるとイメージしてよろしいですか。 ○佐久間委員 そこはやはり、行為の態様、今でいう詐術の態様とかにもよるとは思うのですけれども、信頼とか善意とすることもあれば、正当な理由をもって信じたというふうなことにすることもあり得る。ここは本人保護がやはり強調されるべき場面だとは思っておりますので、単なる善意とか、あるいは知らなかったからいいということにはならなくて、正当な理由でというのがあってもいいのかなと思っています。 ○山野目部会長 そうですね、詐術の方をどう見直すかによっても、それとの一種、バランスというのでしょうか、相手方の要件の絞り方というものも、バルブの絞り方がいろいろあるでしょうとから、そこは最終的に少し両にらみで考えていくというお話になります。御意見の趣はよく理解することができました。   引き続き承ります。いかがでしょうか。 ○山下幹事 まず、催告権の方に関しましては、佐久間委員と全く同様の意見で、むしろ未成年者等でも成年になった後であれば当然、追認ができるわけで、能力者になった後にやはり追認が本人だけでできないとか、そこに制限を掛けるという正当性は恐らくないのだろうと思いますし、むしろ自己決定権を尊重し、本人の自己責任の下で本人が生活をするというのが今般の改正の基本理念である以上は、本人に一定の責任が掛かるのはやむを得ないのではないかと考えております。   もう1点、詐術の点に関しましてですが、詐術という言葉がいいのかどうかは分かりませんが、ただ、こちらも本人が取引のときに自分は能力者であるということを告げて取引をしたというのは、結局本人はその取引について取消権の利益を享受しなくてよいという自己決定をしているわけですよね。そのときに、本人について取消権が行使できないというのは、むしろ自己決定権を尊重するという観点からすると、あり得る規律であって、維持をするべきであろうと思います。   他方で、では、本人がこの取引は取り消されなくていいのだと取引時に言えばすべて取消不可能になるのがいいのかというと、そうではなくて、相手方が行為能力の制限があると分かっているのに、本人が取り消さなくていいと言ったら取り消されなくなるというのでは、何の意味もない制度になってしまうでしょう。そうすると本人が、自分は十分能力があるのだということを相手方に虚偽の形で告げて、かつ相手方がそれを正当に信じたというような意味で、やはり詐術に近いような状況を要求するということが必要なのかなとは思っております。基本的には現在の規律を維持するような方向でよいのではないかと考えております。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○野村幹事 ありがとうございます。まず、相手方の催告権ですが、必要な範囲、期間で利用できるように制度を改正した場合、例えば不動産売却についてなど特定の事務に限定して保護者に同意権等の権限が与えられることが想定されますので、保護者が追認等をせずに制度の利用をする場合は実際には余りないと思われますし、現行法の規律で支障はないのではないかという意見もありました。一方で、それでは本人の保護に欠ける場合があるので、例えば部会資料9ページの動産の取引等のケースですが、再度の制度利用をするまで本人に何らかの保護、例えば時効の完成猶予に類似した保護を図るべきなのではないかという意見もあって、この点についてはリーガルサポート内でも意見が分かれています。   一方、詐術につきましては、制度を改正した場合でも、本人が詐術を用いた場合の取引相手方の保護の必要性は現行制度と変わらないと思いますので、21条の規律を維持すべきという意見です。 ○竹内(裕)委員 弁護士会の中で議論したときに出てきた意見として、結論として20条はこのままで、21条は詐術の用語を考えると、解釈で対応するという意見が出ておりました。ただ、20条の方で、先ほどどなたかおっしゃったのですが、自己決定を尊重して、本人が後見終了を選択する以上は、この20条1項の規律が及ぶことはやむなし、よって変更はしない、ただし、法定後見人はその際、法定後見を終えるとこういうリスクがあるよというところを御本人に説明することで手当てはする必要があるだろうという指摘がありましたので、述べさせていただきます。 ○山野目部会長 頂きました。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますか。   それではここで、随分濃密な御議論を頂きましたから、休憩といたします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開いたします。   続きまして、部会資料9の14ページからになります。第2の1から3までについての審議をお願いすることとし、事務当局から説明を差し上げます。 ○山田関係官 部会資料9の14ページ以下、「第2 法定後見制度を前提とする他制度に関する検討」について御説明いたします。ここでは現行の法定後見制度を前提とした他制度の規律との関係で御議論いただきたいと考えています。この点については、14ページから18ページまでの1から3までの部分と、19ページから25ページまでの4から8までの部分とに分けて御議論いただきたいと考えております。まずは前半の1から3までについて御説明いたします。   14ページからの2では、意思表示の受領能力の規律について、16ページからの3では、成年被後見人と時効の完成猶予の規律について、それぞれ記載しています。これらの規律に関し、判断能力を欠く常況にある者について適切な時機に必要な範囲、期間で法定後見制度を利用することを可能とするなどの制度の見直しをすることとの関係を中心に御議論いただきたいと考えています。 ○山野目部会長 御意見を頂きます。いかがでしょうか。 ○小澤委員 意思表示の受領能力については、意思表示の受領が必要な事情が分からずに、法定後見制度の利用の必要性がないとして制度の利用が終了してしまうということも起こり得ると考えますが、現行制度においても、法定後見制度の利用が必要な状況ではあるけれども法定後見制度を利用していない人は多く存在していると思いますので、現行の規律の中で、そのような方々と同様の取扱いでよいのではないかと考えています。   民法第158条の時効の完成猶予については、制度を改正して類型を見直すのであれば、成年後見人の部分については削除せざるを得ないと考えています。なお、そのような状況で特別の代理人を置く必要性が生じた場合には、特別代理人の選任を可能とする規律を設けてもよいのではないかという意見もありました。 ○野村幹事 後見の終了後の取引の相手方による意思表示の受領が問題となるケースでは、再度制度を利用するか、訴訟の提起により対応することとなると思われます。余り実務上問題となるケースはないのではないかと思いますし、本人保護の観点からはやむを得ないと思われます。現行法の規律に加えて何らかの措置を講ずることに反対するわけではありませんが、例えば、意思表示の受領のための特別代理人を設けたとしても、受領したらその後何らかの法律行為が必要となるでしょうし、結局は再度の制度利用が必要になると思われます。   続いて、時効の完成猶予ですけれども、制度の見直しによって、本人が判断能力を欠く常況にあっても法定後見が終了して法定代理人が存在しないことや、法定代理人が存在するときでも、その代理人に時効に関する代理権がないことが想定されます。この点、前者の場合には、再度の制度利用の際には時効の完成猶予も認めることになると思われますし、後者の場合には、時効に関する代理権が追加で付与された場合は、時効の完成猶予を認めるということになると思います。 ○佐久間委員 まず、総説のところに関連して1点申し上げたいのですけれども、今回取り上げられている問題以外についても、見直しの必要はないかどうかを検討しなければならない規定は民法の内外に多数あることを認識しておくことが大事だと思います。その多数ある規定について、考えていませんというわけにはいかないので、答えを示す必要があるわけです。その答えをしますことは、できないというつもりはありませんけれども、非常に困難を伴うことだと思います。そうだからこそ、今日この後このことをずっと申し上げるつもりはありませんけれど、もう一度だけ念を押して申し上げておきたいのは、現在の後見に相当する類型を存置することにはその点でも意義があるということです。この観点からいたしますと、今までも申し上げておりませんし、今の時点でそれがいいとまでは申しませんけれども、現在の保佐相当の類型についてもなくすということで本当にいいのかどうかは、この他の規定の適用についてどうするかという観点からは、やはりきちんと考慮した方がいいと思っているということだけ申し上げておきます。   特に、今後の審議の話ですけれども、中間試案でこういう考え方がありますということを世に問うときには、私も2類型しかまだ申し上げておりませんけれども、1類型にするか2類型にするか、どちらかだけですということで本当にいいのか、3類型を残す場合には問題点はもちろんあるけれども、こういう考え方もあり得る、というように世に問うことを我々はしなければいけない、責任として考える必要はあるのではないかと思っています。繰り返しますが、保佐に相当する類型を残しましょうという提案を今するものではありませんけれども、考える必要があるのではないかということを申し上げています。   意思表示の受領能力に関しましては、まず、現在の98条の2は、改正批判ではありませんが、平成29年の民法改正において、意思無能力者の規定をぽんと入れてしまった、その後の手当てをしていないということが非常に問題だと思っています。そのような手当ては要らないという考え方ももちろんあると思うのですけれども、意思無能力が継続している状態の人を相手としていることになる取引の相手方、先ほどの賃貸借の借主のような場合、対応できる制度が民法にないというのが大問題だと思っています。ただ、この問題について今すぐに答えを何か申し上げられる状態にないので、仮に今後、包括的な権限付与、代理権ですかね、意思能力を欠いている人について、事理弁識能力を欠く状況にある人について、現在の後見類型のようなものをなくすということになったとすると、この規定は、意思無能力状態が継続している人を除いては、やはり意味はなくなるのではないかと思っています。   そうなってしまうと思うので、16ページ5行目以下にある、これは私が前回申し上げた考え方だと思うのですが、この考え方をなお維持すべきだと思っています。取り分け、これも前回も申し上げましたけれども、意思表示を受領するための特別の代理人が選任される仕組みを設けて、相手方の関与はそこで終わりですけれども、前回確か部会長が補ってくださったと思うのですけれども、特別の代理人が選ばれたら、その特別の代理人が、本人にとってどうするのが適当か、何もしないで流すということも含めて、それを考えさせるというか判断させる、そういう仕組みを設けることが大事なのではないかと思っています。その上で、意思無能力状態が継続している人かどうかが相手方から分かるかというのが大問題なのですけれども、そういう人かなとなった場合は、同じような仕組みを設けるということもあってもいいというか、考えるべきなのではないかと思っています。   それから、時効の完成猶予につきましても、仮に1類型というか、後見に相当する類型を設けないということになったとしたら、この規定、158条を働かせるというのは難しいのではないかと思います。あるとしたら、それこそ意思無能力が継続する者一般にこの規定の考え方を拡張する、つまりは、資料でいうと17ページの22行目以下に紹介されている最高裁の平成26年判決の留保を取っ払って、適用することにするということは、論理にはあり得るのかもしれません。しかし、そうなると時効を援用しようとする者の利益を著しく害するおそれが出てくるので、適当ではないように思います。そのために、後見相当類型をやめるということになるとすると、この規定が適用される場面はないということから、なければ削除ということになるのでしょうか、そうすることが適当ではないかと思っています。 ○山野目部会長 御意見を頂きました。   引き続きお願いします。どうでしょうか。   佐久間委員の御発言は一つのトーンで貫かれていて、いろいろな問題があるから、だから包括類型というものを軽々になくすわけにはまいりません、ということを説得力ある仕方で明快にお示ししていただいたと感じますし、それについて御議論のある方は、どうぞまたお出しいただければと考えます。 ○竹内(裕)委員 ここは弁護士会の全体の意見ということではありませんけれども、議論したときに、98条の2なのですけれども、もし後見類型をなくした場合、意思能力を有しなかったときと未成年者のみになるわけですが、この場合、取引の相手方も困る。それもそうですし、これはその意思表示をもって相手方に対抗することができないという条文なので、受け手からは受領したと認めることはできるとなると、成年被後見人という言葉が外れることによって、逆にいわゆる悪徳業者ほど、本人に意思能力あると言わせることにより、本人の保護に欠けるという場面も出てくるのではないか、それは非常に心配だという議論が出ました。時効のところもそうなのですけれども、弁護士会の全体ではございませんが、やはり類型というものは残すべき、特に後見は必要なのではないかという意見も出ていたところです。 ○上山委員 私自身も基本的に2類型の考え方を支持しているので、現在の後見相当の類型を残すとすると、この類型で98条の2のところと158条のところは対応する形になるのかなと思っています。ただし、二類型の考え方を採って、今の後見相当の人を対象にする類型を残すけれども、現在の包括的な代理権や取消権のような包括的な権限は与えないという考え方に立っていますので、この点だけは先ほどの佐久間委員のお考えと違っているということを申し上げておきたいと思います。   もう1点、委任の終了事由のところもお話し申し上げてよろしかったですかね、22ページの。 ○山野目部会長 委任の終了事由はまだですね。 ○上山委員 すみません。では、ここで終わります。 ○山野目部会長 恐れ入ります。   引き続き、1から3までで伺っていますけれども、いかがでしょうか。 ○青木委員 先ほど小澤委員からもご意見がありましたように、この場面、もちろん意思表示の受領について何らかの手当が必要という点は、そうだと思いますけれども、現在の実務では、訴訟等の手続により対応しております。取引の相手方からすると、そういう現行の対応では難しく、意思表示の受領それ自体についての法定代理人がないと困るのだという要請があるのか疑問に思っているところであります。もちろん成年後見制度と離れて、意思表示の受領について、意思無能力の方全般を対象とした制度を設けることについて否定するものではありません。ただ、いずれにしても、意思表示を受領させるだけで法律関係が終わるわけではなく、その次の手段をとるということになりますから、それには、民訴法上の特別代理人の選任であったり、本人の側からの申立てによる成年後見制度の利用ということになるわけです。したがって、意思表示の受領自体について制度を設けるということが、実務的に必要かというところについては、疑問を持っているということになります。 ○山野目部会長 続きまして、根本幹事のお話を伺います。 ○根本幹事 意思表示の受領については、理論的に制度が必要であるということに反対ではありませんが、どういう制度がいいのかというところについてもう少し議論をするということになるのかなとは思います。従前から申し上げているとおり、特別代理人を入れるとしても、結局その後特別代理人は何をするのかというところまで考えた制度設計にしていただかないといけないのではないかというところは変わらないところです。   それから、2点目の、佐久間委員から御指摘がありました、今回の仮に包括的な類型を廃止するとなった場合の内外への影響というものは、もちろん多分にあるというところは理解をしておりますし、部会で議論できている点だけでは不十分だというところもあるかもしれませんが、そこは、だから包括的な類型を残すというのではなくて、問題点をしっかり洗い出して、議論をした上で、それでもやはり乗り越えられないハードルがあるのかないのか詰めた議論をするというのが、私を含めた部会の責任ということではないかとは思っております。 ○山野目部会長 その詰めた議論をどういうふうにするかが宿題ですけれども、御意見を承りました。   引き続き伺います。 ○沖野委員 意思表示の受領能力について申し上げたいと思います。気になっておりますのは、ここでの受領能力がどういう局面を問題にしているかということで、一般的に意思表示を新たに受領するという話であるのか、しかしここで特にこういう場合に問題になるとされているのは、売買契約をしたけれども、その後、実は債務不履行であるとか、あるいは売主の責任が追及されるような事態がかなり後になって判明したと、したがって、取引自体はきちんとした債務の履行がされて完了ということまで実は完了していなかったと、そういう場面が一つ中心的なものであるように思われます。   それが専らここで問題となる場面なのかどうかということがありまして、全く本当に新規に受領だけが問題となるという場合もあるかもしれませんけれども、既になされていた取引について、言わばその関係が潜在化していたところが再び顕在化するということであるならば、元の終了について、一定期間は言わば潜在化するというか、その債務の履行に関する意思表示というのは、なお元の代理人が受領ができるというのが一つの選択肢だと思われます。それを支える考え方としては、元々の取引を代理したということですから、最もよく分かっているだろうという想定です。しかしながら、かなり年数がたつとそれも変わってくるということであれば、一定の期間の限定を掛けて、そのような一種の潜在化というようなこと、あるいは防御的に、受領に関しては一定期間はなくならないとか、そのような考え方もできるようには思いました。しかしながら、個別の事項について終われば、それでもう終了させるということを非常に強く見ているときに、潜在化といいますか、潜在化しているから顕在化しないわけなのですけれども、とはいっても残るというようなことをどう考えるか、どう評価するかという問題はあろうかと思います。   ですので、全く関係のない事項について受領するということであれば、もう全然違いますし、それから、一定期間が経っていて、これはその関連、あるいはそれの一連の行為の中だと見られないようなものについては、新たに手当てをせざるを得ないのだろうと思います。ただ、このときの手当てが特別の代理人なのかというのは、先ほどの事項についても御指摘がありましたけれども、例えば、特別の代理人の選任を申し立てられるということだとすると、なぜこの個別のこの法定後見の下での受領能力が十分ではないということを補完するような代理というのが認められないのだろうかという、ここの両者が一体どういう関係なのか、あくまで手続を進める話であれば、手続法上の概念ということで整理をするのだと思うのですけれども、非常に分かりにくい形になるのではないかと思っております。 ○山野目部会長 売買取引なら売買取引があった後しばらくの間、代金減額請求とか契約解除の意思表示があるかもしれない期間、眠っている成年後見人の権限みたいなものを考えるというアイデアを今、沖野委員に語っていただいております。どうぞお続けください。 ○沖野委員 そのような申入れだとかがあったら家庭裁判所に報告をするとか、あるいは一定の年数が相当の年数になるならば、毎年そういうのがないということだけは報告をするとか、そのようなこともセットには考えられるかなと思いました。 ○山野目部会長 どのくらいの年数それが続くかにもよるのですが、弁護士や司法書士が成年後見人をしたときに、その人についてそういうことがあるかもしれないという点を、言わば本格的な後見事務は終わったけれども、忘れないようにしておこうという心理状態を継続させて、ノミナルな報酬は若干頂くのですかね、完全に忘れてしまったという状態にはできないわけですから、いろいろなことを引き続き沖野委員のアイデアを育てるのに考えていくということになるかもしれません。どうもアイデアを下さってありがとうございます。 ○加毛幹事 まず、「1 総説」に関連して、佐久間委員がおっしゃった、パブリック・コメントに向けてどのような資料を準備するのかにつきまして、私も、佐久間委員と同様に、現行法の3類型を維持しつつ必要な改正を行うという改正案が中間試案に含まれていた方が良いと考えます。現在の3類型の在り方に対して様々な問題があるのは確かですが、法制度の改正においては、現在の法制度を前提として、いかなる改正の可能性があるのかを示すのが適当であるように思います。現在の法定後見制度について指摘されている問題のいくつかについては、後見類型の厳格的な運用と補助類型の拡張的な運用によって対応できるところもあるように思われます。   このことを申し上げる背景として、この部会に参加している人たちや興味を持って議論をフォローしている人たちには、様々な問題意識が共有されているように思いますが、それ以外の人たちについてはどうか、先ほどの発言に多少関わりますが、とくに経済界はどうかということが気になります。大幅な法定後見制度の改正が経済取引に与える影響がどの程度のものであるのかについて、経済界からの反応を考えるうえでも、3類型の修正案という選択肢は残しておいた方がよいのではないかと思います。パブリック・コメントにおいても3類型の修正案に対して批判が強いということであれば、安心して大幅な制度改正に向けた議論を続けていくことができるように思います。   次に、「2 意思表示の受領能力」につきまして、16ページの12行目に、「民法98条の2の意思表示の受領能力の規律は、被保佐人や被補助人に対する意思表示は有効にし得るとされており、その背景には、被保佐人や被補助人は意思表示を受けた上でそれに対して適切に対応することが期待されているのではないかとの意見があった」ことが指摘されています。ここでいう「適切に対応する」ことの意味は、被保佐人や被補助人は、自らが行為能力の制限を受ける法律行為に関して意思表示を受領した場合、保佐人や補助人にそのことを伝えるなどして、保佐人や補助人に対応を促すことが期待されているということなのだろうと思います。被保佐人や被補助人は、自らが行為能力を制限される法律行為に関して意思表示を受領したとしても、自分では対応することができないからです。   そのことを申し上げた上で、15ページの記述につきまして、先ほど沖野委員が指摘されたところに関わりますが、現行制度は、後見開始の審判が取り消された場合、爾後、行為能力を回復した者は意思表示を有効に受領できることを前提としていると考えられます。しかし、行為能力を回復した者による意思表示の受領が有効であるとしても、その者が受領した意思表示に関して適切に対処できるのかが問題になるのだろうと思います。   沖野委員の御提案は、取り消された後見開始の審判の予後効のような形で成年後見人の権限が残っており、事後的な問題が生じた場合に、かつての成年後見人が対応することが想定されているのではないかと思われます。そのような制度が実現できるのであれば、それでよいのかもしれませんけれども、そうでない場合には、新たに何らかの審判をすることが必要になるはずでして、受領した意思表示に関して迅速な対応が求められるような場合に、適時に審判をするという仕組みを構築できるのか、気になるところです。   同じ話は意思無能力にも妥当するところであり、まず、既にご指摘があった通り、特別代理人としてどのような人が選任されるのかが問題となります。また、誰が選任を申し立てることができるのかについて、意思表示をしようとする側が申立てをすることができるのかも気になるところです。ただ、本人の利益を適切に保護できるような者を特別代理人に選任しなければならないのだとすると、そのような者に関する情報をいったい誰が持っているのかが問題となります。   さらに、特別代理人が選任されたとして、その役割が意思表示を受領することに留まるのか、必要な場合には新たな後見開始の審判を申し立てることを前提として、つなぎの役割として特別代理人に求めるのか、あるいは、意思表示の受領をした特別代理人が本人のために適切な対応をとることまで特別代理人の職務に含まれるのかということが、制度の新設を検討する上では重要なポイントになるものと思います。例えば、特別代理人の役割が意思表示の受領にとどまるのだとすると、その意思表示について対応が求められる場合に、本人の利益保護をどのように実現するのかが問題となります。 ○山野目部会長 加毛幹事が1の総説の観点でおっしゃったことについてのみ申し上げます。本日、会議の最後の段階で、波多野幹事から今後の部会の運営の方向についても若干のお話がもらえるだろうと期待していますけれども、お陰さまをもちまして、この部会における調査審議が非常に重要な段階に向かいつつあります。既に本日も何回かお言葉に出ておりましたように、中間試案を作成し、それをパブリック・コメントに付するという手順が一つの大きな節目になります。その中味をどういうふうなものにするかは、その段階でまたこの部会での熟議に基づいて決めていくことでありますから、前のめりのことを申し上げることはできませんけれども、ただし、普通に考えて現行法の姿というものは改正提案の一つのモデルになることは間違いないところでありまして、例えば、現行の3類型の中で批判が強い点を改めた上で、それでしていこうというゆきかたも十分に一つの案になり得るものであろうと思います。それについて委員、幹事から、絶対もうそういうものは外すべきだという強い御意見が多数の方から寄せられれば話は別ですけれども、例えば現行の3類型を維持しながら、事理弁識能力を回復しない限り取り消すことができないといったような、終わることができないという硬直性の点などを取り除いた改定を加えて今後していくことはどうですかという、考えられるなかで最も現行法からの乖離が少ない提案を一つの案として、若しくは注記として入れるという姿は考えられて全然おかしくないものであります。それはお話ししたように、また中間試案を検討する段階で委員、幹事にお諮りしたいと考えております。   引き続き御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○山下幹事 受領能力の方に関してですが、やはり一番の問題は、意思無能力の場合について、相手方等から意思表示があったときに受領がされないという点ではないかと思うのですが、恐らくこの改正で必要性や補充性の要件を入れていった場合に、後見制度を一回も使わずに意思無能力状態になる方というのはいるはずで、そうなりますと、意思無能力の人がいる場合に、意思表示をしようと思うのだけれどもどうにもならないという場合の対応についても、民法だけで対応し切れるのかという問題点も考えておく必要があるかなと思います。中核機関等の行政の窓口にまず連絡をした上で、しかるべき施設等で、代理権限等で受領能力が必要だということになれば、市町村の申立てにつないでいただくとか、そういう形をとるということも考えられるのかなと思いまして、何でもかんでも行政に投げていいわけではないとは思いますが、やはり成年後見の中でだけ手当てをすればいいという問題ではないような気がいたしまして、発言をさせていただきました。 ○山野目部会長 ここでしている議論を見ていて、厚生労働省の方で新たに制度化していくことになるかもしれない中核機関にどういう役割が、例えば部会の審議において期待されているのかという観点は、リスト・アップしているであろうと想像し、期待しますから、それを考えてもらって、ただし、検討したけれども現在の中核機関の建て付けや今後の見通しを考えると無理ですという当面の結論もあり得るわけでありまして、そこは最終的に整理をしていただくということになるでしょう。 ○上山委員 実は今の山下幹事の御発言とかなりかぶるのですけれども、先ほど来少し出ています、仮に実体法上の特別代理人的な仕組みを後見制度とは別に新たに作るとした場合には、その特別代理人の役割というのは、飽くまでもその後の後見人の選任等につなぐなどの役割にまずとどめることとして、そして、このつなぎの役割を担う機関としては、正に先ほど山下幹事がおっしゃった中核機関の充実を図る方向性というのが、既存の仕組みを前提にした場合に、あり得る考え方なのではないかと感じました。 ○根本幹事 加毛幹事と山下幹事の御議論を伺っていて思ったのですが、ここの問題は、飽くまでも意思表示の受領というところだけの問題のはずだと思うのです。ここで特代を入れますということになると、結局、特代を入れる必要があるのかどうかということを裁判所が判断する上では、当然、御本人の判断能力の低下等があるのかというような点を見ざるを得ず、そうすると、裁判所が調査嘱託を掛けるのか、若しくは医療機関等に照会を掛けるのかということが実際のところ現状行われているというようなことも踏まえますと、むしろ特代という誰か代わりの人を入れるということにどれほど意味があるのか、若しくは取引の相手方のために入れる制度ということであれば、取引の相手方が果たしてそのような手続負担を負ってまで意思表示の受領を求めるという場面がどういう場面であるのかということは、具体的に検討しないといけないのではないかと思っています。   その上で、仮に意思表示の受領だけが問題になるのであれば、現状は、例えば内容証明郵便などが届けば、山下幹事が言われたように、ケアマネや地域包括が、在宅の方が多いと思いますけれども、区役所等に御相談をされて、本人申立てなのか、若しくは親族申立てなのか、首長なのかを含めて後見制度の利用を検討されていくというのが現状の実務だと思います。   取引の相手方との関係でそれでは不十分だということなのであれば、例え裁判所等に意思表示の受領について懸念がある人ということで申立てをしていただいて、公示で通知を出すということであれば、通知の受領能力というのは問題にならないのだと思います。それで意思表示の受領を擬制することで、取引の相手方はよいのだと思いますし、御本人保護の観点から言えば、裁判所から何か通知が来れば、介護制度を利用していない方はともかく、そうでなければ、先ほど申し上げたような形で支援機関につながっていくというのが通常かと思います。郵便の受領すらままならない方ということであれば、それはまた別途対応を考えていただくしかないということで整理をすることができるのではないかとは伺っていて思いました。飽くまでもここは意思表示の受領の問題だというところに限定して考えるべきではないかと伺っていて思います。 ○佐久間委員 僕が間違っているのかもしれませんが、確かに98条の2は意思表示の受領能力に関する規定ではありますけれども、意思表示に準ずる効力のある通知はこの規定の類推適用なのですかね、があるのではないでしょうか。だから、単純なお知らせだったら、根本幹事がおっしゃったとおりかもしれませんが、法的意味のある通知はこの規定が類推適用されるので、少し今の最後の御発言のところは違和感があるということだけ発言したいと思います。 ○山野目部会長 二つ申し上げて、事務当局においてこの後の今日の議論を踏まえて整理を致します。   一つは、98条の2の規定は今、佐久間委員が御指摘になったように、意思表示に関する規定ですけれども、講学上、少なくとも意思の通知には性質に反しない限り準用されると申しますか、類推解釈がされるということが一般に認められておりますし、観念の通知やそのほかのものについても、そのものそれぞれによりますけれども、同様の思考が及んでいくであろうと考えます。そうであるからこそ、少し前の論点のときに佐久間委員が、20条の催告をしたときに相手方に届いていなければいけないという話になっていて、それを98条の2で考える擬律は適用ではなく、催告は意思の通知ですから、それに類推したという議論を、そのような思考を前提におっしゃっていたものと理解します。ですから、この観点は引き続き、少し理論的な面を含めて整理をすることにいたします。   それから、相手方ある意思表示は、相手方に到達しないと効力が生じませんから、そのことから来る悩みがこの論点の一つの発端を形成していると感じます。ただし、到達は、一般に言われていることですけれども、受け手側の了知を必要としませんから、届いていればよいものですけれども、ただし、言わば民法総則の教科書に書いてあるみたいな話とは別に、受け取る側の実質的な利益保護のことを考えると、ここで御議論いただいたようなことをもう少し考察を深めていかなければなりませんから、そこの理論ないし概念の整理、あと実質的な利益状況の検討を、また事務当局において整理をすることにいたします。   先に進んでよろしいでしょうか。 ○星野委員 最後に言うべきなのかもしれないのですけれども、今の3類型を維持しながらの改正点を示すという選択肢もあるという話があったので、一言発言したいと思います。   現状の問題として、後見類型が非常に多く使われているけれども、今ここで想定されている後見のイメージとは相当掛け離れた使われ方をしていると実務的に感じています。類型を一つにしろとか二つにしろとか、そういうことを言っているのではないのですが、今の現状の後見という類型が、今話されているような状態の方ではない方もいらっしゃる問題点を少し指摘をしておきたいのと、だからこそ改正点というところで言えば、これまでも議論されたような、開始の要件であるとか、期間を設定するとか、見直しがなされるとか、要は終わらないとか広すぎるというところが、類型は維持されながらもそこをきちんと見直すというところは改めて確認しておきたいというところで、発言させていただきたいのと、それから、実態とすごくずれた使われ方をしているところがやはり是正されるような提案をしないといけないというところも、少しあえて発言しました。 ○山野目部会長 頂きました。先に進みます。   部会資料9の19ページから後、部会資料9の第2の4から8までについての審議をお願いいたします。事務当局から資料の説明を差し上げます。 ○山田関係官 部会資料9の19ページ以下、4から8までについて御説明いたします。   まず、19ページからの4では、成年被後見人の訴訟能力等の規律について、20ページからの5では、手続法上の特別代理人の規律について、また、21ページからの6では、人事訴訟における訴訟能力等の規律について、それぞれ記載しています。法定後見制度の見直しに関連して、これらの手続法における規律の見直しの必要性についてどのように考えるかについて御議論いただきたいと考えています。   また、22ページからの7では、委任の終了事由の規律について、24ページからの8では、成年被後見人の遺言の規律について、それぞれ記載しています。これらについても法定後見制度見直しに関連して、その見直しの必要についてどのように考えるかについて御議論いただきたいと考えています。 ○山野目部会長 御案内を差し上げた4から8までについてお尋ねを致します。いかがでしょうか。 ○小澤委員 成年被後見人の訴訟能力等についても、訴訟が提起されるような事情が分からずに、法定後見制度利用の必要性がないとして制度の利用が終了してしまうことも起こり得ると考えますが、現行制度においても、実質的には法定後見制度の利用が必要な状況ではあるけれども成年後見制度を利用していない方は多く存在していると思いますので、現行の規律の中で、そのような方々と同様の取扱いでよいのではないかと考えております。   人事訴訟における訴訟能力等や委任の終了、成年被後見人の遺言についても、制度を改正して類型を見直すのであれば、それに対応するための見直しは必要になると考えています。 ○野村幹事 訴訟能力と手続上の特別代理人のところについて意見を述べさせていただきます。   本人が適切な時機に必要な範囲、期間で法定後見制度を利用することを可能とする場合は、制度利用しているからといって一律に訴訟無能力であるとはならないですけれども、現行の規律で保護を受けている者は継続して保護を受けられるように所要の手当てをすべきだと思います。 ○佐久間委員 今後1類型にするということを前提に発言を致しますけれども、まず訴訟能力のところは、1類型にするのだから、成年被後見人についての規定の部分は削除することになるのだと思います。ただ、その場合に、現在の後見相当の方だと意思無能力者に関する規律に結局従うことになると思いますから、民事訴訟法に口を出していいのかどうかわかりませんが、民事訴訟法35条1項を現状、事実として意思無能力者に適用しているのだとすると、それを明示していただくことが望ましいと思っています。   次に、22ページの委任のところに飛ぶのですが、委任の終了事由のところも、1類型化するとなると、後見、保佐関係の規律は当然削除するということになると思います。意思無能力が続いているのだけれども、結局のところ後見開始の審判はされていないという人だって当然いるわけで、その人に関してはこの653条の規定の適用はないわけですから、それと同じ状態になるということで、割り切るというとおかしいですけれども、そうならざるを得ないと思います。つまりは、当該受任者がした行為は意思能力があるなら有効、なければ受任者としての行為であっても無効になりますから、無効だということなのだと思います。   ただ、653条でもそうなのかもしれませんが、前にも一度申し上げたと思うのですけれども、同じ趣旨の規定は111条1項2号にもあるわけですね。111条1項2号の方は代理権のことでありまして、同じような考え方になるともいえるのですが、111条、代理の場合には、当該代理人、653条だと受任者ですけれども、その行為の効果は一次的には委任者というかその本人に生ずることになりますので、本人の利益が著しく害されることがあり得ると思うのです。   どういうことかといいますと、例えば、現状ですと後見の開始があったならば代理権が消滅いたしますので、その人のした行為は無権代理ということになって、本人が保護されるわけです。行為の相手、代理の相手方が後見開始の審判を受けている人だということを知りながら行為をしたという場合に、無権代理であり、かつ相手方は悪意、過失がある場合でもいいのですけれども、表見代理の保護もないということで、本人は保護されるわけです。ところが、111条1項2号も削除ということになると、今申し上げたような規定の適用関係ではなくなるということでありますので、相手方が、この場合は後見ではないですが、今の後見相当のような方について代理人に取り入ってというか、うまくその状況を利用して、有権代理にすることができてしまう。これはよくないのではないかと私は思いますので、111条1項2号の問題もここで併せて考慮することが必要だと思います。ですから、受任者の利益、受任者の都合ということだけではなく、やはり委任者の利益もきちんと図ることを考えるべきなのだけれども、なかなかそれは653条や111条1項2号の工夫では難しいのかなと思っています。   それから、111条1項2号に関して念のため申し添えておきますと、これは法定代理についても一応適用がありますから、法定代理の本人の保護にも関わってきている。委任だったら委任者が目を光らせておけばいいよねという言い方もできると思いますけれども、111条1項2号はそうでない場合も含まれているということを申し添えたいと思います。   それから、成年被後見人の遺言も対象ですよね。 ○山野目部会長 対象です。 ○佐久間委員 成年被後見人の遺言についても申し上げたいと思います。1類型化するとなると、962条のような規定は、第5条はともかくとして、第9条、第13条、第17条の規定はというのは、何かその1類型化したその規定は、というふうに多分なって、それで維持することになるのだろうと思います。その上で973条は、後見相当の類型がないわけですから、適用の余地はないので削除することになると思うのですけれども、ただ、事理弁識能力を欠く常況にある、そういうおそれのある人について何らか規定を設ける必要がないかということは、一応考えておいた方がいいかなと思います。   そのようには思うのですけれども、今の973条のような規定を、後見の開始の審判は受けていないけれども今の後見類型に相当する能力の人だという場合に用いるとしましても、結局のところ意思能力の証明手段にしかならないので、そのような証明手段のための規定をわざわざ民法に置くかというと、それには何か違和感があります。ですので、現在この規定があり、意思能力というか遺言能力ですかね、の観点から無効になるおそれがある場合に、973条のような手続を経れば有効な遺言が可能になりますということは、この規定を削除してもかつてそうでしたという事実は残るので、遺言をしようと思うならそのことを参照してくださいというふうなことで済ませることになるのかなと思っています。   このようにいろいろな規定を単純に削除することでいいのかなと思うのですけれども、ここに挙がっていない遺言関係で、966条はどうするのだということを疑問に思いました。ここには未成年の後見人も入っていますけれども、成年被後見人について、特に後見の計算終了前にうんぬんという規律は今後も要るのではないかなと。だけれども、保佐、補助にまで広げるかというと、それもなぁと思いますので、1類型化するときに、アイデアはないのですけれども、これは本人保護の観点から、つまりは不当な影響を後見人から受けて遺言してしまうというおそれがあるからという、そこの趣旨は、無視することはできないと思います。ですので、966条は実質何らか残すような工夫が要る、どういう工夫があるかは今のところ分かりませんが、1類型化するにしても、要ると思っています。 ○根本幹事 訴訟能力については、類型がなくなるのであれば、特にその該当規定は削除ということでよいかと思っていますが、他方で人事訴訟のところについては、現行法も訴訟担当ということで非常に強い権限が付される立場に後見人は置かれるわけですけれども、御本人が離婚することが望ましいかどうかということをそもそも後見人が判断できるということ自体が、果たしてそれでよいのかという観点から、ここは再検討が必要なのではないかと思っています。   それから、委任の終了事由については、類型が残らないのであれば削除でよいということについては佐久間委員と同じ意見なのですが、他方で類型が残るとなった場合でも、果たしてこの委任の終了事由に後見開始というものを残すべきかどうかについては、類型が残る場合には再度議論が必要だと思っています。それは、委任契約を終了させるかどうかは結局、委任者と受任者、特に今回の場合であれば委任者ということになると思いますが、個別に判断をしていただいたらよいのではないかとは思いますし、委任契約だけ何か特別にそういう取扱いをするということではないのではないかと思います。あわせて、いわゆる認知症の方を含めた障害がある方もそうですけれども、社会参加というような観点からも、一律にここを終了事由とするということには消極です。   あわせて、会社法の問題ですが、一読目のときにも申し上げていますけれども、類型が残らなくて規定が削除されるということであれば、今の会社法の想定は、委任の終了事由にはなっているので、例えば、取締役が後見開始を受けた場合には、そこで改めて株主総会等で、その取締役を引き続き取締役として選任するかどうか強制的に株主総会で判断せよということになりますし、それを商業登記にも登記せよと強制されるような形になってしまっているので、これについては先ほどと同じように、株主ですとか、若しくはほかの取締役が個別に判断をしていけばよいと考えています類型が残らなければ、現行の会社法で予定されている株主総会でもう一度判断するところではなくなるということで会社法に飛び火しますので、会社法の先生方がよろしいかどうかということはあると思います。類型を残すとした場合でも、同様にやはり委任の終了事由から後見開始というのを削除するということを議論する場合には、同じように会社法への飛び火の議論というところは確認をしておく必要があるのではないかと思っています。   遺言のところについてですけれども、これは佐久間委員が今言われたように、現状も後見開始していても、御親族の方から、御本人が遺言を作ることはできないのでしょうかということをお尋ねいただくこともないわけではなく、その場合には、規定があるので、医師2名以上が遺言を書けますとおっしゃるのは無理でしょうから、諦めていただくしかないのではないでしょうかということを助言申し上げるということがあります。この規定がなくなった場合に、佐久間委員がおっしゃるように、意思能力、いわゆる遺言能力というところを個別に判断するという世界で、果たして親族間紛争ですとか相続紛争という観点から考えた場合に、それでよいのかというところはあると思います。その際に、意思能力の証明の事実上の規定として効果が残るという考え方もあろうかと思いますが、それで足りるのかというところはありますので、遺言能力のところを事前にどこまで判断できるのかという問題はあるのですが、何らかやはり規定は少し考えた方がいいのではないかとは思います。先ほどおっしゃっておられた不当な影響の部分については、これは後見人は、裁判所から選ばれた中立的な立場も法的にはありますし、例えば親族間相盗例が適用されないということもありますので、不当な影響の部分の規定については、何らか残すということを考えていくべきではないかと思います。保佐や補助であっても同じように考えることができるのか、できないのかということを含めた視点で議論するべきではないかと思います。 ○上山委員 私からも、仮に一元化をするとした場合を前提にしてお話を致しますが、一つは委任の終了事由についてですが、飽くまでも委任契約に基づく任意代理を想定してお話を致しますが、現在、民法102条との関係で、委任契約の当初の時点から受任者が制限行為能力者であるということのリスクは委任者のリスクに帰する形になっているかと思います。これを前提に考えた場合に、委任者側には民法651条の任意解除権があること、受任者の判断能力低下による解除は651条2項ただし書のやむを得ない事由に当たると解することできることなどを考え合わせると、制度の設計として、委任契約後の受任者の判断能力低下についても委任者のリスクとして整理し直すこともできるように思いますので、そうであるとすれば、現行の民法653条1項3号を削除するというのも一つの考え方として、立法論としてはあり得るかなと感じました。これが一つです。   もう1点は、佐久間委員と先ほど根本幹事も指摘された966条については、この規定の趣旨をいかす形の規定を何らか、一元化するにせよ、他の類型化を採るにせよ、残す必要があると私も感じています。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   この後、若干の委員、幹事の御発言を伺った後で、法定後見に関する議論がここで区切りを迎えますから、花俣委員、櫻田委員、久保委員にこの順番で、この段階でお感じになっていることをお尋ねします。法律用語ばかりずっと続いていて、少し難しいお尋ねになるかもしれませんけれども、お気付きのことを何なりとおっしゃってください。 ○小出委員 当協会の方からは、成年被後見人の方の遺言について申し上げたいと考えております。一読目のところでも御発言させていただきましたけれども、金融機関においては現状、提示された遺言につきまして、遺言者の意思能力の観点から有効性に疑義があるとして相続人、受遺者間のトラブルに巻き込まれるようなことがあるというところでございまして、今回こちらに提示されている民法973条に基づく立会い等を取りやめた場合には、そのような現在の後見相当の方の遺言について事後的に争いとなるケースが増加する懸念があるものとして考えております。したがいまして、現在の後見相当の方に関しては、民法973条に基づく立会いが行われるようにするなど、類型にかかわらず、今までどおり一定の要件を付すような対応をお願いしたいと考えております、というところです。   加えて、先ほど佐久間委員からも御発言がございましたし、前回の部会において、佐久間委員や上山委員の方から2類型論について御提示いただきましたけれども、もしこの2類型論に再編いただくというようなことに結果的になった場合には、事理弁識能力を欠く常況にある方という類型が残りますので、こういった制度利用者の方の意思能力の状況を加味したような規定についても引き続き適用が可能となるというふうに、先ほども議論がありましたが、当協会としても考えておりますということでございます。 ○久保野委員 御迷惑をお掛けしました。同じ意見なので、簡単にということだけです。973条につきまして、この規定について、何らかの規定を考えることによって、遺言能力について、なるべく紛争を防ぐ形で遺言をできる方策を探るということについては、積極的に検討だけはすることが適当なのではないかと思います。その意見に賛成ですということです。 ○常岡委員 2点、離婚と、それから遺言について申し上げたいと思います。   まず、離婚ですけれども、人事訴訟における当事者の適格ということについて、現在ですと人事訴訟において、成年後見の審判を受けている方は成年後見人が本人に代わってという形で直接、人事訴訟の当事者になります。特に離婚訴訟の場合には、これは代理になじまない訴訟であると考えられていて、調停でも代理人さんが来て離婚の調停をしますけれども、成立のときには必ず本人が出席することが要求されています。特に、精神病離婚を求められる方について、資料でも昭和33年の判例が挙がっていますけれども、精神病離婚の場合に、成年後見人が本人のために訴え、また訴えられるといった場合、特に訴えられる被告になる側の立場ということを考えたときに、なぜ被後見人のために成年後見人が被告になれるかというと、この33年の判例でも言及されていますけれども、精神病になって事理弁識能力を欠く常況にある方について、常置の機関として、精神病に掛かった方の病気療養看護等含めて、それから、子の親権や財産分与についても含めて、離婚訴訟で判断していくことができるのは、そのような常置の機関である後見人であるからということが言われています。   この部会での議論で、もしも今後、成年後見制度の改正で2類型を残すのであれば、後見類型に該当する方については現在と同じように、離婚に関する人事訴訟、すなわち離婚訴訟について従来と同様に、後見人を被告として訴えを起こすことができるでしょうけれども、仮に1類型とした場合には、特別代理人では離婚訴訟の場合には対応ができないということは考えておく必要があると思います。その場合、本人のために総合的な判断ができるような立場の者を別途、訴訟法上設けるのかどうか、現在の後見制度における成年後見人とまた別の形でそういうものを設けることが離婚訴訟の場合に限って可能なのかどうかということは、検討の余地があるように思っております。   ただ、精神病離婚自体はもう規定が削除になりますので、婚姻を継続し難い重大な事由の中で考慮されていきますし、その場合に今後裁判所がどういうふうに判断されるかは少し見通しを立てないといけないと思いますけれども、精神病ということを理由にせずに、婚姻関係が破綻して回復の見込みがないということで一律に考慮していくといったことで統一するのであれば、もはや従来のような精神病離婚を前提とした離婚訴訟を考える必要はなくなっていくので、その場合には、本人の意思能力の問題はありますが、代理人を立てるという形での構成はできるかもしれません。ただ、それがそこまで進むのかどうかというのは、今後、精神病を原因とした婚姻関係の破綻という離婚訴訟がどうなるのかを見極めないといけないので、現時点で余り軽々に、人事訴訟についても1類型で問題がないということは必ずしも言い切れないということには注意が必要だと思っております。   それを申し上げるのは、離婚というのは相手方、精神病とか事理弁識能力を失っていない申立人つまり原告になる方、その原告をその婚姻から解き放つという目的がありますので、その利益を決して小さく考えるべきではない。現在、破綻主義の考え方で離婚が認められる方向にある以上、より一層、その点は注視しておく必要があると思っています。それが1点です。   それから、遺言についてですけれども、973条は、先ほどいろいろ御意見が出ましたように、証明のために明治民法のときから置かれた規定という経緯はあります。なぜこれが民法に必要かという点も、民法ではなくて手続法の問題である、証明だからということはあるかもしれませんが、ただ、遺言というのは日本で余り使われていないから、それほど大事だと思われていないかもしれませんけれども、意思自治の、私的自治の原則のもとで最後の意思を表現する場面なので、遺言者の終意を重視するということは民法の基本的姿勢として、やはりこれもないがしろには、余り軽々にはできないのではないかと考えています。   事理弁識能力を欠いた方が意思無能力で遺言をしてしまったことが問題となる、でも、962条が、遺言において9条、13条、17条を適用しないとしているのは、仮に事理弁識能力を欠く常況にあって、意思無能力の状態であるとされた方であっても、そうではない状況にある日があるということが前提とされていて、だからそうではないときにはきちんと法律行為ができるのだということが前提なので、962条が遺言について置かれています。たとえ成年後見の審判を受けていても、意思無能力でないときにはその人の終意、最後の意思については、どうあってもやはり尊重すべきである、そういうことで、962条により、遺言は取消しの対象にならないし、それから973条で証明責任を確保すると、そういう構造になっています。ですから、その点も含めて、部分的にカットすればいいということではなくて、遺言そのもの、本人の最終の意思をどう考えるかという、実はそういうものが背景にあるということも踏まえた上で検討していくことが必要なのではないかと考えております。   それと含めて、966条については、後見の類型をどのような形にするにしても、また、同じようにやはり事理弁識能力を欠く常況にあるのか、まだらであってもそのような状況にある場合かということは別途考慮するとしても、不当な干渉を受けずに遺言できるという自由を保障しておくということは、やはり民法の根幹に関わることだと考えていますので、その点も検討に入れていただければ有り難いと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   私の方から若干顧みてのお話を差し上げた上で、3人の委員にお声掛けを致します。   論点の番号で4番、5番、6番は、いずれも広い意味で訴訟に関わります。訴訟能力のところは、最終的に成年後見制度の基本的編成がどうなるかを見ないと、まだ考え方を整理することができない状況ですけれども、その限界の中で今日、必要な議論をしていただきました。   5番の民事訴訟法35条は、いずれにしても文言全体、規律全体を見直さざるを得ないと思われますから、これもしかし、検討の段階はもう少し先になってこないと新しい規律のイメージが作れないだろうと思います。   人事訴訟のところは、根本幹事、常岡委員に御注意いただいたところなどを忘れないようにして、人事訴訟法14条などの規律を中心に、所要の見直しをしていくということになるでしょう。   委任の終了事由について、委任の規定そのものについて成年後見制度の基本的編成を踏まえて見直さなければいけないと同時に、この問題は波及する領域が多くて、三つほど申し上げますけれども、一つは656条によって準委任契約という現代日本社会において幅広くその契約類型で受け止めていろいろなサービス提供が行われているであろう契約の法律関係に影響する可能性があります。それから、佐久間委員から御指摘いただいたように、代理法に影響を与える可能性があって、112条などとの関連で整合性のある解決を見いださなければなりません。3点目として、根本幹事から御指摘いただいたように、会社法の規律について、新しい制度編成を踏まえて、取締役の仕事が終任になる場合と終任にならない場合を整理していく必要が生ずるかもしれません。   それから、最後に項目として掲げております成年被後見人の遺言は、これ自体について、現在の民法の規定の医師2人というものをどうしていくかということを考え直さなければいけないことは確かありまして、本日様々な観点からの御議論を頂きました。少し佐久間委員と向き合ってお話しするかもしれないですけれども、医師が出てくる場面というものは、何か少し良いとお感じになりませんか。フランス民法の法文は弁護士とか執行官に当たる人とか、やたら人、人がみえるものですけれども、日本の民法は、お医者さんとか警察官がたまに出てくるとしても、人々の実在を感じさせない、人の姿がない無味乾燥な規定空間になっていて、何か少し寂しいとも映ります。なかば冗談を申上げましたけれども、その上で本論を考えますと、これ自体の規律の見直しを真面目にすることに加え、二つの方向で少し注意をしておく必要があって、一つは、ここでは事理弁識能力を欠く常況にある人の遺言のみ扱っていますけれども、超高齢化社会を迎えるに当たって、遺言をすることにいろいろな困難がある人という状況を捉え、体が動かない人なども視野に入れて、どういうふうにしたら遺言を作成しやすい環境にするかということを考えなければならないでしょう。現在、法制審議会の別な部会で審議していることの調査審議の様子であるとか、遺言書保管の制度やその運用との間で整合性ある議論をしておく必要があるとか、いろいろな課題がもう少し、遺言という主題についての視野を拡げたときには、あると感じます。   それから、もう一つ申し上げますと、佐久間委員に気付かせていただきましたけれども、後見人が不当な影響を与えるという局面は引き続き注意していきましょうというお話はごもっともで、そこに気付くと、実は遺言のところにとどまらず、第4編、第5編の中に、少しそういう観点から注意が必要な規定というものがよく探すとみられます。養子縁組の806条とか、あのようなものも含めて、少し今後どうなりますかということを考え込んでいかなければなりません。   これやそれやの法律論ばかりでありましたから、大変恐縮ですが、花俣委員からお声をお掛けします。 ○花俣委員 山野目部会長がおっしゃるとおり、本当に一読目にも増して難しいお話を、ここに座って聞かせていただきました。とてもではないですけれども意見を申し述べる立ち位置にはないと思っています。   ただ、現行制度においても様々な課題、あるいは問題などがたくさんあるわけで、そうした中でこの議論がスタートしたと認識しております。そもそもが国連の障害者権利条約から始まって、権利委員会から現行制度は権利侵害があるという指摘、勧告を受けているわけですから、その辺りを考えていくと、現行制度から新しい制度への見直しについては、それぞれのある意味、よさみたいなものを考慮しつつ、バランスよく議論が進められることを期待しながら、見守りながらと考えております。 ○山野目部会長 御注意、ごもっともなこととして受け止めました。ありがとうございます。 ○櫻田委員 私の方も議論を聞かせていただいた中で、結構頭がパンクしているような状態ではあるのですけれども、やはり花俣委員もおっしゃったとおり、本当に今の現行制度の中でもいろいろな課題があったりとかしている中で、皆さん御議論していただいているところではあって、障害を持つ当事者として、そして将来的に制度を利用するかもしれない者の一人としては、やはりすごく有り難いなとは思っています。   現行の制度のことも、本当にこの成年後見制度に関わらせていただいてからいろいろ知ったというところではあるのですけれども、まだまだその歴が浅い者からしても、やはり現行の制度というのは少し使いにくい部分も多々ありというところはあって、今回民法の改正というところもあったりはするとは思うのですけれども、やはりその中でも当事者として一番に望むところとしては、よりよい制度になっていってほしいというところがまず一番の願いであるということと、やはり自分たちが使いやすくて、そして将来的にもたくさんの人が使えるような制度であってほしいなというのはありますので、今後も議論を多分重ねていく中で、様々な課題とかいろいろな御議論があると思いますけれども、やはりそこの辺りをふと頭の中で少し考えていただきながら御議論いただけると幸いかなと思っています。 ○山野目部会長 承知いたしました。櫻田委員に御案内ですが、頭がいっぱいいっぱいになっているのはここにいる法律家の先生方も同じで、皆ヒートしていますけれども、頑張りますから、引き続きお付き合いください。ありがとうございます。 ○久保委員 本当に、少しなるほどと思って分かったかなと思ったら、また難しい言葉が出てきて分からなくなったりとか、そういうことの繰り返しをしてお話を聞かせていただいておりました。感想ではありますけれども、先ほど花俣委員や櫻田委員がおっしゃったように、問題が多い法律を見直す議論をしているわけですけれども、民法を変えるというのは本当に容易でないなという思いがしております。様々なことに影響していくということがあって、しかも、今私たちが見直そうという対象者の方も、様々な状況や環境の中におられる方にもできるだけ合うような形の民法の変更をしていこうということですので、本当にこれは苦難の議論だなとは思いますけれども、それでもこの議論というのは、障害のある人とか、認知症の方だとか、少し自分で自分のことをきちんと判断をしにくい人たちを守るための、どうしたらいいのかという議論をしているわけですので、心折れずに皆さんの議論に付いていきたいなと思っております。私たちはそれを利用する側の人間でございますので、皆さんに御議論いただいていることを感謝しますけれども、また、よくよく噛み砕いて考えてみると、少し違うなと思うようなところも折々に出てきたりもしますので、またそこは整理をして発言をしたいなとは思っております。 ○山野目部会長 民法を変えるということは大変な仕事であるというお言葉を頂き、図らずも落涙を致します。どうもありがとうございます。   審議を先に進めます。これからは部会資料9の25ページからの部分でございます第3について御審議をお願いします。事務当局からは、資料の説明は第3の部分全体をまとめて差し上げることにいたします。ただし、御議論は25ページからの1の部分、任意後見人の監督の在り方の部分と、29ページからの2として、適切な時機に任意後見人の監督を開始するための方策とに分けてお願いすることにいたします。   では、事務当局から説明を差し上げます。 ○木田関係官 部会資料9の25ページ以下、「第3 任意後見制度における監督に関する検討事項」について御説明いたします。この点については、25ページからの1と29ページからの2とに分けて御議論いただきたいと思います。   まず、25ページからの1では、任意後見人の監督の在り方について記載しています。この点については、主に監督の具体的内容と監督の主体について御議論いただきたいと考えております。   また、29ページからの2では、適切な時機に任意後見人の監督を開始するための方策について記載しています。この点については、主に任意後見受任者に法律の規定によって申立義務を課すことの適否、仮に任意後見受任者に申立義務を課す場合の申立義務が生ずる要件及び義務違反の効果、任意後見監督人の選任の申立権者について御議論いただきたいと考えております。   一読目に引き続き、本人の判断能力が低下しているにもかかわらず任意後見受任者が任意後見監督人の選任の申立てをしない事案において、任意後見監督人の選任の申立てを確保して、そのような任意後見受任者に任意後見人として活動してもらうことに対するニーズがあるのがどのような事案であるのかについても御知見を頂きたいと考えています。 ○山野目部会長 それでは、まず、御案内を差し上げましたとおり、25ページからの部分、「1 任意後見人の監督の在り方」、この部分についての御意見を頂きます。いかがでしょうか。 ○小澤委員 任意後見人に対しては監督が必要であると考えますが、任意後見にも様々な態様があるため、事案によって監督の態様が異なってもいいのではないかと考えています。現在の監督が重たい監督と評価されているのは、任意後見監督人が善管注意義務を負っているため、その責任を果たすために重たい監督を行わざるを得ないことが大きな原因になっていると思われますので、簡易な監督を実現するためには、事案に応じて監督人の責任を軽減する必要があるのではないでしょうか。   例えばですが、法務省などから認定を受けた機関が任意後見監督人に就任する場合には、責任の範囲を限定し、故意、重過失がない場合には免責されるなどとの規定を置くなどすれば、簡易な監督も実現できるのではないかと考えています。簡易な監督を利用したい場合には、任意後見契約により簡易な監督を希望する旨及び監督を行う機関の指定を行うこととすれば、本人の意思によって簡易な監督を選択したことになりますので、任意後見制度の趣旨にも合致した形で必要な監督を行えるのではないかと考えています。   また、監督人に本人の福祉などに関する個人情報の開示を受ける権限も併せて認めていただければ、より監督の実効性が高められると考えています。簡易な監督の実現のためには、少なくともこのような責任限定や権限は必要であり、その上でどういった形で簡易な監督を実現することができるのかを具体的に検討することができるのではないかと考えています。 ○野村幹事 まず、監督の内容のところなのですが、これは一読目でも意見を述べているところなのですが、本人の資産構成や状況、任意後見人の資質や経験によって事案を類型化して、監督人の事務をできる限り定型化することが可能なのではないかと思います。家裁が権限濫用時の任意後見人の解任を適切に行うための任意後見監督を基本としつつ、例えば、親族など後見業務に日頃なじんでいない人に対しては、期間限定で法定後見の支援型監督のような運用も考えられるかと思います。   次に、監督の主体ですが、この監督の主体については現状、多くは専門職である個人ですとか、数は多くないですが専門職で組成された法人ですとか、社会福祉協議会等も選任されていると聞いております。新たに考え得る主体としては、専門職が任意後見人である場合には、その専門職が所属する団体の監督の仕組みを活用するという方法も考えられます。家庭裁判所が監督人を選任する際には、基本的には本人の意向を尊重し、例外的に本人の資産構成や状況、任意後見人の資質や経験によっては、本人の意向以外の適切な監督人を選任することが望ましいと思われます。これらは現行法の運用でも可能な点もありますが、任意後見契約に関する法律に明記することが望ましいと思います。 ○青木委員 任意後見の監督の在り方は、一巡目の議論のときには最高裁から裁判所による直接監督についての疑問は示されましたが、大きなニーズとして、任意後見監督人の報酬の負担が、任意後見契約の締結するについての支障となり、かつ、任意後見監督人選任申立てを躊躇する事情にもなっているという事態を正面から受け止める必要があると思っています。一方で、この二十数年間の実務の中で、任意後見監督人による監督と法定後見人に対する裁判所による定期的な監督には、監督の内容には大きな差がないということが実務運用となってきていますので、ここは柔軟に、ご本人や任意後見受任者の状況によって、裁判所の判断で、適宜、裁判所の直接の監督によるか任意後見監督人の監督によるかということを選択ができるという柔軟な制度に見直しをするということが求められていると思います。   最高裁からは、裁判所が任意後見監督人の報酬を負担を肩代わりするのはいかがなものかとの意見でありますが、今後、身寄りのない方が増える中で、自身の将来に備えたいが任意後見人の報酬と任意後見監督人の報酬の両方の負担が難しい方についても適切に利用を促進するというためには、負担軽減の大きな方策として裁判所も正面から受け止めていただきたいと思います。また、裁判所の監督の在り方を柔軟に見直していくということは、専門職か、専門職ではないかという画一的な区別ではなく、任意後見受任者の事務や必要性、ご本人さんの特性等に応じて、適切な監督の在り方に変えていくことができるという柔軟なものにすべきだろうと思っております。   また、現状よりも様々な多様な担い手が任意後見監督人になれるかということについては、そうなっていく必要があると思いますが、現在は任意後見監督人を担える者は専門職以外は育成をされていない状況ですので、任意後見人監督人の担い手が幅広く育成された段階では、次の方策として、監督人報酬の負担を軽減する方向で広げるという方策もあり得ると思いますけれども、今回の改正においてそういった選択肢というのは、基盤整備としては難しいものがあると考えています。   任意後見監督人選任申立ての義務化につきましては、私は一貫して申し上げておりますけれども、やはり法的な義務として位置付けていただくことにより、監督義務に基づいて任意後見監督人の選任申立てが促進され、それによって本人のための任意後見人としての職務の適正化が図れるという事案が、親族が担い手となった場合を中心に相当数あると考えていますので、この義務違反に対する何らかの制裁はなくても、十分に義務化する意義があるものと考えています。   いわゆる悪徳の任意後見受任者の場合について、監督人選任申立てを義務化することにどれほどの意味があるかということについては、むしろ適切な申立てを怠り放置している事情をもって、法定後見に移行する方向で考える事情の一つ井になると思いますから、義務化により効果のある主なターゲットとしては、善意で選任申立てに至っていない任意後見受任者ということになるだろうと思います。 ○山野目部会長 青木委員は盛り沢山の御意見をおっしゃっていただきましたけれども、2のところの適切な時機における監督の開始は、また少し仕切り直してお尋ねしようと考えています。ありがとうございました。 ○佐久間委員 青木委員のおっしゃったこととおおむね重なるのですけれども、まず、裁判所による直接の監督というのはあり得るというか、体制が整うかどうかは知りませんが、あり得て、法定後見の場合の監督と同等の監督をするということはあっていいというか、そういうことができるのであれば、それは考えればいいのではないかと思います。   他方で、現在の任意後見監督人の制度を維持しつつ、その柔軟な監督というのは、言うのは簡単だけれども実現するのはめちゃめちゃ難しいのではないかと思います。というのは、事案に応じてとありますが、一体その事案を誰がどう判断するのかということが大きな疑問でして、かつ柔軟な監督というときの柔軟というのは、どこをどう柔軟にするのかというのが私にはおよそ想像が付かないです。結局のところ、27ページに要領よくまとめていただいている現行法の規定等という、これ以外には抽象的に言えば、ないのではないかと。その前提でも、このような枠組みをとることで、全体として任意後見人に対する牽制機能が働いている、個別に悪事が働かれることがあった場合にどうというのではなくて、そういうことを全体として抑制するというのが制度の一番の狙いだと思いますので、これ以外にないのではないかと思っています。   そのような監督、現行法の立て付けと同じようなことを、他の者というのですかね、がするといったって、どうなのかなと思っているというのが一つと、あと、取り分け専門職後見人の場合に、所属する団体による自律的な監督というのが現行法の監督と同じように行われるのだったらいいと思います。そうでなかったら、それは、専門職は尊敬していますけれども、専門職だからいいですよねとは、少し制度としてはしにくいのではないかと思っています。 ○山野目部会長 前回議論をお願いした機会において、簡易な監督、柔軟な監督ということを多くの方々がおっしゃっていただいて、それらの御意見は根拠があると受け止めました。それを踏まえて今日の部会資料をお出ししています。ただし、佐久間委員が少しそれに近いことをおっしゃいましたけれども、簡易な監督、柔軟な監督、いいよねと言っているだけですと、精神論であって民事法制にはなりません。そこを乗り越えていかないといけないし、そこがうまくいかないと結局、裁判所による直接の監督という、それはあながち否定しませんけれども、それしか出口がないという議論になり、いささか悲しいというか苦しいというか、というところがあります。 ○遠藤幹事 簡易な監督についてどこまでお話できるかはありますが、これまでの御意見を踏まえ、任意後見の監督の在り方については、これまでも再三申し上げておりますが、任意後見は私的自治の尊重の観点から公的な関与は最小限にすべきであるというのが法の趣旨でありますので、家庭裁判所が任意後見人の事務を直接監督するというのは、法の趣旨からなじまないというのが出発点であろうと思いますし、実際問題として、体制としてできるかも慎重に検討しなければならないと思っております。   また、現行の任意後見制度においては、裁判所による関与は任意後見監督人による監督を通じた間接的な監督によるものとされています。これについて、先ほど、青木委員からは、法定後見の監督と余り相違ないのではないかという御意見もありましたが、任意後見における任意後見監督人による監督というのは、法定後見における裁判所による年1回の定期監督と比べても、監督の回数なども含め、より充実した形で監督をしていただいていており、そのような任意後見監督人による監督を前提として裁判所は間接的な監督をすることで成り立っているところです。そうしますと、このような任意後見監督人による監督を裁判所による定期監督に代替できるのかについては慎重に考えなければならないのではないかと思います。裁判所が法定後見で行っているような監督でよいのだとの御意見もありましたが、法定後見の場合は、裁判所においては、まず、後見人を選任するという段階で後見人の適格性を判断しておりまして、そのことを前提に、年1回の定期監督という運用をしているというのが実態です。これに対して任意後見の場合には、裁判所による後見人の選任がございませんので、そのような任意後見人の事務の監督が裁判所による年1回の定期監督でよいのかについては、裁判所としては疑問に思うところもあります。是非そういった点も踏まえた御議論をしていただけると有り難いと思っております。 ○根本幹事 先ほどの佐久間委員や山野目部会長からの御質問にも関係するところかと思うのですけれども、監督の具体的な内容について、例えば財産目録や収支報告の財産管理を中心とした監督に、家庭裁判所による直接監督の場合には限定していくという監督の在り方というのもあろうかと思います。抽象的には、佐久間委員がおっしゃるように、27ページの3(1)にある、監督の対象事項を限定をしていくということが任意後見においてはあってもよいのではないかと思います。あわせて、任意後見も今後、代理権を段階的に発効させていく、若しくは追加的な付与を認めていくこととの関係でライトな任意後見、任意後見自体の代理権の内容が軽いものというのも出てくるのだろうと思います。   先ほど遠藤幹事のご発言との関係で、年1回の監督で足りる事案も任意後見の中では今後複数出てくると思いますので、今までの、特に御親族が任意後見人になっていらっしゃるような事案で、監督人がかなり支援的に手厚く監督しなければいけないという事案ももちろんあるわけですけれども、他方で限定された任意後見の代理権になってきたときに、年1回の監督で十分足りるというものも出てくるのだろうと思います。そこを踏まえて監督の多様性というものを考えていくということはできるのではないかと思っております。 ○山野目部会長 ライトな監督というふうに、英語にすると何か話が進むというものではありませんから、引き続き簡易な監督の深掘りを根本幹事にしていただきました。 ○竹内(裕)委員 私の意見は、簡易なとか柔軟なとは少しずれるかもしれませんし、報酬の問題も解決できないのかもしれません。だけれども、家族法の分野でも、何でもかんでも裁判所にということではなくなっているのかなと思っていて、そして、冒頭で小澤委員が、例えば法務省から認定した人が任意後見監督人にというお話も出ており思ったのですが、まず監督の主体というところで、例えばADRだと、法務省が認定した認証ADR等がありますので、悪質業者が入らないよう担保するなどして、そういった民間で任意後見監督人を担うというのは考えてもいいのではないかと思います。そして、公正証書で任意後見契約を締結いたしますので、御本人が誰を、どこを監督機関にするか、どういう監督をどういう回数でどういう内容でやるか、報酬の点も含めて、公正証書を作る段階で公証役場のチェックを受けると、そういうところで、監督制度、これが簡易や柔軟と直接結び付くものではないのですが、バラエティを増やすというところでは、何か方策の一つになればなと思いました。 ○山野目部会長 簡易、柔軟と呼ぶかどうかはともかくとして、前回の機会に御議論いただいたときから本日まで、各方面で委員、幹事において検討していただいた成果が本日の議論に現れ始めているということは確認しておかなければなりません。4点ほど申し上げます。   一つは、善管注意義務について冒頭に小澤委員がおっしゃいました。これからも善管注意義務がきちんと課せられる任意後見監督の場面は引き続き残ると思いますけれども、それと同時に類型としては、それを外す、故意又は重大な過失とおっしゃったでしょうか、そういうふうな注意義務でよいというふうなものというものが考えられてよいというアイデアがありました。   多分それと若干関係してまきすけれども、根本幹事から、監督事務の内容は限定されてよいという話があり、任意後見人の権限自体もきっとこれからは縮まるというか柔軟になっていくでしょうから、その監督も、包括的な目録を作らなくてはいけないというような話から始まるヘビーな監督でないようなものになっていく可能性を考えましょうというお話を頂きました。   3点目ですが、報酬に関して竹内裕美委員からお話を頂きました。報酬全体が法定後見を含めてどういう規律を民事法制に設けていくことができるかは、これから検討しなければいけませんすけれども、何らかの基準を並べて表現するような規定が民法や任意後見契約に関する法律に設けられる場合において、この柔軟、簡易といわれているものについては報酬はそれほど高くなくていいです、それは注意義務が軽減されたりするかもしれないことの裏返しでありまして、任意後見監督人が選任された瞬間に本人が報酬の負担が重くなるというふうになるとは限りませんというお話が、3点目として御指摘いただいたと思います。   それから、あともう1点引き続き考えていただきたいと思うことを付け加えますと、本人や任意後見人との利害関係を余り厳しく言わないような形態というか、そのような類型の任意後見監督もあってよいというふうな気もいたします。福祉の現場を見ていると、夫婦ともに認知症で、しかもそこにいる結構年齢の行ったお子さんが発達障害になっていますといった事例ですね、一つの家庭の中に輻輳して困難な問題がたくさんある事案というものは、自然に想像ができない方もおられるかもしれませんけれども、実は珍しくなくて、結構あります。そのようなときに、濫用性忌避事案だとか利益相反行為だとかという観点をうるさく言って、別々に任意後見監督人を設けるとかということを言っているよりは、一人の人が見るという方がいろいろな意味でうまくいく場面があるかもしれません。現在の法律は、843条4項の利害関係に注意せよ、という規定を単純に準用していますから、そこをもう少し読み取れるような法制上の措置を講ずるということがあるかもしれません。   ただ、しかしこういうことをしていくためには、青木委員や佐久間委員から御心配いただいたとおり、現在のところは果たしてそういうふうな柔軟といいますか、いろいろフリーに動く任意後見監督を信頼して任せられる人が専門職しかいません、というお話もそのとおりであって、そちらも気にしなければいけません。しかし、そこも現在いないからもう諦めましょうというよりは、考えてみますと、これから答申まで順調に行ったとしたって、新しい制度が実施されるまでに数年は要しますから、その間に育てていけばいい話でありまして、そこでは多分、法務行政のみではなくて社会福祉行政がここできちんと関連してくる必要があって、家庭裁判所の監督とは別に、しかるべき法人の活動をしていますかという観点から行政監督をします、その裏返しで、場合によっては公のお金を補助してあげますよというような、そういう取組をセットにしていって任意後見を担う機関を育てていくというような努力も、まだ諦めることは早いと感じます。   今日いろいろなアイデアを出していただきましたら、それぞれのアイデアをどこまで育てることができるかということは、これから先見てみないと分かりませんけれども、引き続きこの監督の在り方の議論をお願いしていきたいと考えます。   もう一つしていいですか、2のところ。先ほど説明を差し上げた2の適切な時機における監督の開始の論点につきまして、既に申立義務を中心に青木委員からは御意見を頂いていますが、ほかの皆さんは、ここはまだですと御案内していますから、この2のところについての御意見を頂いて、そこで本日は区切りといたします。 ○小澤委員 任意後見監督人選任の申立てについては、本人の判断能力が低下した場合にできるだけ速やかに申し立てる責務を明確にする必要はあると考えますが、単に申し立てることのみを法律上の義務とすることについては消極に考えています。その上で、ガイドライン、モデル契約書などによって、本人の判断能力が低下した場合に任意後見受任者が適切な措置をとることを義務付けるような方策も考えられるのではないでしょうか。任意後見監督人の選任申立権者について、市町村長などの公的機関に選任申立権を付与することにも基本的には賛成しています。 ○野村幹事 まず、申立義務のところなのですが、一読目でも申し上げましたが、法律の規定によって申立義務を設定することには消極意見です。今回部会資料にありました、合意によって申立義務を設定することについてですが、例えば診断のテストの数が一定以下になった場合と決めたとしても、その時点の本人の気持ちが変化して、契約の発効を望まないということも想定されます。判断能力低下時に本人の気持ちがゆらぐことは少なからずありますので、本人の真意を確認しつつ申立義務の有無を確認することについて、現場では判断が難しいことも起こり得るのではないかと思われますので、こちらも消極に考えます。本人の希望については、受任者を含むチームによる見守りの支援体制を構築することによってこれを実現させていくという方法が望ましいと考えております。   公的機関による申立てについてですが、監督人選任の申立てが必要と思われるケースにおいて、受任者等の申立権者が手続に不慣れであったり、制度趣旨の理解が不十分であるために申立てに進まない場合もありますので、公的機関が申立権を持つことは検討してもよいと思われます。ただし、前提として本人の意思が尊重されるべきであること、また、受任者等による申立てが行われることが優先されるものかと思いますので、公的機関が申立権を行使するやむを得ない事情がある場合など、抑制的であるべきと考えます。   なお、本人の希望によって公的機関や受任者の所属する団体などを申立権者に指定する三面契約を締結して、当該第三者に監督人の選任申立権を認めるということは検討してもよいのではないかと思います。さらに、申立てがなされないケースが経済的虐待の疑いなど、受任者の後見人としての適格性に欠けるところによると思われる場合には、法定後見によることが望ましいと思います。検察官については、私的自治尊重の観点から申立権者に含めることについては消極的に考えます。受任者が後見人としての適格性に欠けるなど、本人保護の必要性がある場合に、法定後見による申立てを行うという形で関与することが望ましいと考えております。 ○山城幹事 今し方、野村幹事から御発言があったところにも関わるのですけれども、合意によって申立義務を設定することの可否に関する部会資料の30ページの2(1)の記述につきましては、私は、当事者の合意によって一定の場合に申立てを義務付けること自体は否定することができないと考えます。問題の焦点は、むしろ31ページの(2)以下の、法律の規定によって申立義務を設定することの可否にあるではないかと感じましたので、この点について発言いたします。   前提を確認いたしますが、資料30ページの11行目以下に、任意後見監督人が選任されることによって任意後見人の職務が是正されるという記述がございます。しかし、監督人が選任されるまでは任意後見人は職務に就いていないはずですから、是正されるという表現は少し理解が難しいように思います。ここでの背景にある問題意識は、要するに、いわゆる移行型の場合に、監督人の選任に至らずに事務処理が継続されるのは望ましくないということでしょうか。その一方で、31ページの15行目から20行目にありますように、監督人の選任の申立てを義務付けることが本人の意思にかなうとは限らない、その点が問題だと考えられているのではないかと理解いたしました。そのような前提で考えますと、検討した方がよさそうな問題が二点くらいあると感じます。   一つは、監督人の選任の申立てをすることが本人の意思に沿うかどうかは、任意後見受任者に申立てを義務付けるかどうかという問題とは直接には関わらないのではないかということです。申立権が本人以外の人に与えられている以上、本人の意思に沿わない申立てがされること自体は避けられないからです。部会資料に書かれているような目的を達するためには、申立権者を本人に限定する必要があるのではないでしょうか。それをしないのであれば、本人の意思は、結局、監督人を選任するかどうかを判断する段階で、裁判所が確かめざるを得ないのではないではないかと思います。   その上で、本人以外の者にも申立権はあった方がよいとしますと、移行型を想定して考える限り、本人の意思を尊重するというのは、移行を希望しないということではないかと思います。しかし、任意後見契約を締結する場合には、本人は、自分自身で十分な判断をすることができなくなった状況を想定して、一定の監督を伴う事務処理を委託したいという意思を持っているはずであり、監督を開始する時期についても、自分自身では十分な判断をすることが困難になってしまう場合を想定するのではないかと思います。そのような想定のもとでは、本人としては、任意後見を発効させる必要が生じたけれども、自ら適切なタイミングで監督人の選任を申し立てることができない場合に備えて、受任者がその申立てをしてくれることも期待して任意後見契約を結ぶのではないでしょうか。もしそうであれば、デフォルトルールとしては、申立てに向けての努力を任意後見受任者に義務づけることがあってもよいと感じます。   もっとも、任意後見受任者が負うべき義務は、申立て以外の行為でもあり得るようには思います。例えば、任意後見を発効させる原因となるべき事由があるかどうかに留意する、そのような事由があると知ったときは本人に意思確認をする、本人の意思が分かったときは監督人選任の申立てをする等、様々な段階を想定することができるかと思います。どれほどの強度の義務を課すべきかは一つの問題であり、申立て以外の義務が課されるとすることもあり得るのではないかと考えました。以上が第一点です。   もう一つは、申立権者の拡大に関わりますが、一読でも議論があったかと思いますけれども、本人の意思を尊重して申立てに結び付けるという考え方と、申立権者の範囲を拡大するという考え方との間には、整合しにくい部分があるのではないかと感じます。この後に検討が予定されている問題とも関わりますが、申立権者を拡大することに代えて、任意後見と法定後見の併用を認めることとし、法定後見の申立権を有する者には法定後見の申立てを期待するということでも、対応はできるのではないかと感じます。   現行法上は、任意後見法10条1項により、任意後見契約が登記されている場合には、本人の利益のために特に必要があると認めるときでなければ法定後見開始の審判をすることができないこととなっています。しかし、法定後見について、事務の範囲を限定して代理権を与えることになるとしますと、現行規定のような形で重複に配慮する必要はなくなるのではないでしょうか。任意後見法10条1項に対応する規定の定め方としては、任意後見監督人が既に選任されている場合においては、特に必要がある場合に限って法定後見開始の審判等をすることができることとし、いまだ任意後見契約が発効していない場合については、法定後見との併存を認めた上で、特定の必要性に対応するためにピンポイントで法定後見の開始を認めるという考え方もあり得るのではないかと思います。 ○根本幹事 私からは2点です。一つは、野村幹事から御提案がありましたような、契約関係で申立権者を認めるという場合には、法令上の申立権者以外の申立権者というのが出てくるということになりますので、登記も含めて、客観的に誰が申立権者なのかということが対外的にも確認できるようにはしていただいた方がいいのではないかと思ったというのが一つです。   それから2点目は、今の山城幹事からの御指摘とも関係するのですけれども、現行の任意後見契約法第10条の本人の利益のために特に必要があると認められることについては、二つの観点で見直しが必要だと思っています。一つは、山城幹事からもありましたけれども、併存が認められるということになりますので、併存の場合は特にその優先関係というのはないということだと思いますし、現行の実務においても、法定後見開始の申立てをしてから審判が出るまでの間、一定期間時間が掛かるということがあるわけですが、その間に抜け道のように任意後見契約を締結して、それで任意後見を優先するのだという親族間紛争のツールにこの10条が使われてしまっているというところもあります。併存が認められる場合に、特に先ほど山城幹事からは発効時のお話しがありましたけれども、法定後見の申立てがあれば、それ以後の任意後見契約は法定後見と代理権が競合する限りにおいては基本的に排除されていくという整理もあっていいのではないかと思っています。   あとは、10条との関係でもう一つの点です。部会資料32ページの(3)イのところにも書いてはいただいているのですが、今の実務感覚から行きますと、経済的虐待若しくは囲い込みの事案で任意後見契約が結ばれているという場合に、10条がハードルになって法定後見の手続や申立てが進まないという現状もあります。そういった観点からも、10条の要件は見直しをしていただく必要があるのではないかと思っています。   申立義務があるのに申立てをしていないということは、一考慮要素でいいのかもしれませんが、それよりも、そういった受任者の方というのは、そのまま就任していただいても任意後見業務を適切に行っていただけるとは思われないケースが多々あります。もちろん本人同意とかとの関係で申立てをためらっておられるということであればいいかもしれませんが、そうでない事案が多いということは、留意していただきたいと思っています。 ○上山委員 申立権者の範囲についてだけ発言を致します。   申立権者の範囲の拡大について、私個人としては市町村長申立権の導入というのはあり得る考え方だと思っています。他方、任意後見制度を導入したときに、検察官申立てについて私的自治の尊重の観点から排除したという、この理由を重視するのであれば、同じく公的機関である市町村長申立てについても排除されるのかなとも思うので、この両者については、いずれも認めるか、いずれも否定するかという形での議論になるのかなと感じました。これが一つです。   もう一つ、今の点に関連するのですけれども、元々任意後見契約法の4条3項で、先ほども話が出ていますけれども、本人以外の者が請求する、申立てをする場合については、原則的には本人の同意があることというのが大前提になっていますので、要は私的自治の尊重との関係で特に問題になるのは、ただし書の、本人が意思を表示することができない場面に限定されるのかなとも思います。この辺りの規定についても、申立義務の範囲、それから申立権者の機能について、少し併せて考える必要があるのかなと感じました。 ○佐久間委員 まず、29ページのゴシックの部分で、30ページに掛けて、できるだけ早期に任意後見人の監督を開始することが望ましいとも考えられるという、その望ましいと考えられることについて、何人かの方がおっしゃったのと同じような話なのですけれども、この場合には、本人の自己決定、意思が尊重される制度であるところ、その本人の判断能力が不十分になったというだけでこのような早期の開始が望ましいと言っていいのかどうかが、まずもって疑問に思います。むしろ、本人の判断能力が欠ける状況になったという場合に基本的には限定して、開始するべきではないかと思っています。これが1点です。   それから、30ページの12行目の「是正され」というのは合っていますか。職務が開始されか何かではないかな。 ○山野目部会長 それは先ほど山城幹事も。 ○佐久間委員 言われましたか、ごめんなさい、では、いいです。   次に、申立義務なのですけれども、申立ての義務を課したところで、根本幹事などもおっしゃったと思うのですけれども、義務だから申し立てます、自分が職務を開始しますという人に任意後見人としての地位を得てもらって本人の保護に当たらせることがいいのかどうかを、少し疑問に思っています。義務付けたところで実効性が上がるのかなというのと、義務違反の効果について、後の方では、任意後見法10条の考慮要素の一つとして考えられるというのですけれども、その程度の効果だったら、別に申立義務を課さなくたって、いつまでも申立てがないから法定後見開始するということだってあり得るので、その程度でいいのではないかと思っています。   ただ、では現行法のように、任意後見契約というのは任意後見監督人が選ばれないと締結はされたけれどもおよそ効力がないということでいいかというと、少しよくないかなと思うところはあります。それは、任意後見受任者になった以上は本人の状況を把握する、それに努めるべきではないかと思いました。申立ての前段階として、努力義務でいいと思うのですけれども、言葉はともかくとして、本人の状況を把握することに努めなければならないとかというような、これはそのような義務を課す契約を本人と受任者との間でしなくても、法定の義務として課すことは、飽くまで訓示規定ですけれども、あり得るのではないかと思いました。   もう1点、申立権者の拡張について、これは適当ではないと私は思います。市町村長についても、それ以外の人についても。理由は、先ほど申し上げたのと同じことなのですけれども、この場合は本人や任意後見受任者を含む申立権者に申立てを促すことは誰にだってできて、本人の近くにいて世話を普段している人は、その申立てを促していけばいいのではないかと。それに誰も応じないということになると、その体制でそのまま契約の効力を生じさせることが適切かどうかということについて大いに疑問を持ちます。ワークする場合もあるでしょうけれども、多くの場合にうまくいかないのではないかと思いますので、申立権者を拡大する必要はないのではないかと私は思います。 ○山野目部会長 佐久間委員のお話を伺っていて気が付きましたけれども、任意後見の開始のときには、仮に現行法と同じ基準、ルールをとるとすると、事理弁識能力が不十分であるときに任意後見監督人の選任が申し立てられることになりますが、不十分かどうかは主に医学的な判断でするというのが今までの考え方でした。この場面は必要性とかそういう観点が要らないという前提の御議論であったですかね、今まで。そこもだんだん、もう少し考案を練って鮮明にしていこうという段階では、何かもやもやとしているけれどもいいですねとはいきませんから、次の機会に向けて、また各方面で御検討いただければ有り難いと感じます。   ほかにいかがでしょうか。 ○青木委員 先ほど少し先走って御発言して、すみませんでした。先ほどに加えてになるのですけれども、任意後見監督人選任申立ての義務となる場合の具体的な要件としては、やはり任意後見監督人の選任には本人の同意が原則として要件になりますので、本人の同意があり、判断能力が不十分になり、かつ代理権等の行使が必要になった場合には、義務化されるという要件になるのではないかと考えます。ただし、本人に同意能力がない場合で本人の同意が明らかでいない場合には、必要性があれば義務化されるという、そういう仕切りでいいのではなないかと考えているところです。   それから、申立権者につきましては、市町村長申立てが要請されそうな場合としては二つあると思っているのですけれども、一つは、何らかの形で本人以外の代理人が必要だと支援者が考えており、そうなれば介護契約もできてサービスも使えるのにと思うのに、任意後見契約を発効してくれないという場合に、任意後見受任者に申立てを促して契約を発効してもらいたい場合、もう1つは、任意後見契約は締結しているけれども、どうも受任者が適切に本人の財産管理等の支援をしているか疑わしいところがあり、きちんと監督人を付けないといけないのではないかと思った場合です。前者については市町村長が申立権者にならなくても、申立てするように任意後見受任者にすれば、通常のまっとうな受任者であれば申立てはされると思いますので、そこにあえて申立権を市町村長に与える必要まではないのかなと思います。後者については、仮に市町村長が申立権を行使して任意後見契約が発効したとしても、その適切に支援しているか疑わしい受任者による契約が発効されることになるだけですので、むしろそれが適切でない場合には市町村長申立てにより法定後見を付けるという方向に働くと思います。そうしてみると、いずれの場面においても、市町村長が任意後見監督人選任の申立権者になるということの必要性まではないように思えるというのが現段階での判断です。 ○山野目部会長 御意見を頂きました。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○星野委員 社会福祉士会の中で十分議論できていないのですが、今の議論を聞いていて、私もほぼ同じ感覚を持ちました。やはり任意後見と法定後見が併用できるというようなことになれば、本人ではない申立権者は法定後見の部分的な開始、必要な代理権などを求めるための申立てができることになるわけですので、前の在り方研究会の中では任意後見における市町村長申立ては必要ではないかと思っていたのですが、今の話を聞いていて、任意後見の申立権者に市町村長が入ることは余り必要がないのでは、と感じました。 ○山野目部会長 なおお近くの社会福祉士の皆さんとも御議論なさっていただければ有り難いです。   ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。   そうしましたら、議事の整理を致します。本日は部会資料9の第3の部分の御議論が終わりましたから、次回会議は部会資料9の第4の部分から御議論をお願いするということにいたします。   それでは、本日の内容にわたる議論はここまでといたします。   波多野幹事から次回会議の議事日程について案内をしてもらうほか、次回に限らずもう少し先の議事日程等についても、事務当局としてお考えのところがあれば承っておきたいと考えます。 ○波多野幹事 本日も長時間にわたりまして御審議賜りましてありがとうございました。   当面のスケジュールにつきましては、お手元にお配りしているところでございます。来年の7月まで、おおむね月に2回程度のペースで会議の開催をお願いしております。今後、三読目、中間試案の取りまとめに向けた御議論をお願いするというフェーズに移ってまいります。先生方の御議論の状況によりますけれども、事務当局としましては、来年の5月ないしは6月に中間試案の取りまとめという進行になった場合でも御迷惑を掛けないように、資料の作成に努めていきたいと考えているところでございます。以上が現時点における部会の開催スケジュールについての御説明でございます。   続いて、次回の議事日程について御説明を致します。次回日程は、令和7年1月14日火曜日の午後1時30分から午後5時30分まで、場所はこの大会議室でございます。 ○山野目部会長 中間試案の作成に向けて、この後、急ピッチで調査審議が進んでまいります。中間試案のたたき台を作る前駆段階である三読は3回しか会議日程が予定されておりませんから、中間試案の言わば前ぞろえといいますか、それに向けての整理の会議ということになります。その上で、中間試案とその補足説明について若干御案内を致しますと、これに携わっていただくことになる委員、幹事の皆さんのなかに、初めて御経験の方もいらっしゃるかもしれません。中間試案本体はしかるべき時期において、夏前を想定していますけれども、部会で御決定いただく文書としてお諮りをします。そこに向けて委員、幹事の議論をお願いしていかなければなりません。中間試案を御決定いただいた上で、それを踏まえて法務省事務当局において、その責任で、補足説明という文書を、かなりページ数の多い文書になりますけれども、作成してもらいます。これは、ここでの部会の審議をずっと見ていた法務省事務当局が、複数の案が出されている場合において、それぞれの案の背景にどのような考え方や議論があったかということを整理して説明してもらう文書になります。これらのところを当面の中間のゴールとして委員、幹事の御尽力をお願いしていくことになります。どうぞよろしくお願いいたします。   これをもちまして法制審議会民法(成年後見等関係)部会の第12回会議をお開きといたします。   次回は御案内差し上げた議事日程ですから、年をまたいでお会いすることになります。どうぞ皆様、よいお正月をお迎えになりますよう念じます。どうもありがとうございました。 -了-