法制審議会 担保法制部会 第49回会議 議事録 第1 日 時  令和6年11月5日(火) 自 午後1時30分                      至 午後4時17分 第2 場 所  東京地方検察庁総務部教養課会議室1531号室 第3 議 題  担保法制の見直しに関する要綱案のたたき台3 担保法制の見直しに関する要綱案のとりまとめに向けた検討⒂ 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○道垣内部会長 予定した時刻になりましたので、法制審議会担保法制部会の第49回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。   本日は委員の山本さん、幹事の加藤さん、家原さん、南さんが御欠席と伺っております。また、委員の大西さん、倉部さんが途中から出席されると、福田さんが途中から退席されると伺っております。また、本日は参考人として公益社団法人リース事業協会から山田周一さんと加藤建治さんにも御出席いただいております。   まず、配布資料の説明をしていただきます。事務当局からお願いいたします。 ○笹井幹事 本日もよろしくお願いいたします。事前に部会資料48「担保法制の見直しに関する要綱案のとりまとめに向けた検討(15)」をお送りさせていただきました。後ほど審議の中で事務当局から御説明いたします。また、リース事業協会から資料の提出がありましたので、これを委員等提出資料49-1としております。後ほど提出者の方々から御説明を頂く予定です。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   それでは、審議に入りたいと思います。本日の審議の順序といたしましては、部会資料48の議論を先に行いまして、その後、部会資料46の前回からの積み残しの部分について議論を行いたいと思います。   それでは、まず部会資料48「担保法制の見直しに関する要綱案のとりまとめに向けた検討(15)」について議論を行います。事務当局から部会資料の説明をお願いいたします。 ○伊賀関係官 関係官の伊賀でございます。私の方から、部会資料48の「動産利用権を目的とする債権譲渡担保契約についての特則」について御説明いたします。   実行時における動産利用権の価額についての推定規定を除外したということを除きまして、部会資料40から実質的な変更はございません。従前より御説明しておりますとおり、ファイナンス・リース契約を定義し、それに適用される規律を定めるというものではなく、現行法の下でも、ファイナンス・リース契約と呼ばれるものの中に、動産利用権を設定した上でこれに譲渡担保権を設定するという類型が現に存在しているという認識に基づいて、このような契約類型のうち牽連性のある金銭債務のみを担保するものについて対抗要件不要の規定等を定めるというものでございます。   また、先ほど申し上げましたとおり、本文の規律は、動産利用権を目的とした譲渡担保権と性質決定される契約が現行の実務においても存在しているという認識に基づくものであり、本文の規律を設けることによって、対抗要件として確定日付ある証書による通知、承諾等を受ける必要がないということを明確に説明することができるようになるほかは、現行の実務を変更するものではないと考えております。会計に対する影響という点におきましても、動産利用権を目的とする譲渡担保権という類型が現行法上既に存在しているとしますと、これにどのような会計基準を適用するかは現行法上も既に存在している問題であり、本文の規律を設けることによって新たな問題が生ずるものではないと考えております。   以上の点について、確認的な趣旨で説明欄に記載しているところでございます。私からの説明は以上となります。よろしくお願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。この論点につきまして、リース事業協会から委員等提出資料49-1というものが提出されておりますので、御提出された参考人におかれましては、その内容を簡潔に御説明願います。 ○山田参考人 先ほど御紹介いただきましたリース事業協会の山田でございます。簡単に御挨拶ということですが、まずは、昨年2月と12月の部会に引き続いて、業界団体としてこのような発言の機会を設けさせていただいたことに感謝を申し上げます。   ただ、我々の不安、懸念が払拭されないまま、今回も引き続き、第1、動産利用権を目的とする譲渡担保契約についての特則という形で要綱案を盛り込むことが御提案されているということに対して正直、危機感を覚えております。以前の会議で申し上げたことも踏まえていただいて、今回の資料、説明の書きぶりを見直されているものと理解しているのですが、肝腎の規律そのものに実質的な変更がある訳ではございません。項番1の「動産利用権を債権譲渡担保契約の目的とする場合において、当該債権譲渡担保契約が動産利用権の設定に係る対価の支払い債務のみを担保するためにされたものであるとき」、これが非常に曖昧というか、具体的にどのようなケースを指すのかが判然としないというか、新設される規律の適用範囲が不明確であることに変わりがないという理解でございます。基本的にこれから御説明差し上げることは従来説明していることと特に大きく変わるところではございませんけれども、資料49-1、こちらの説明について、事務局の加藤の方から御説明させていただこうと思います。よろしくお願いいたします。 ○加藤参考人 リース事業協会の加藤でございます。簡潔にということでございますので、配布した資料についてポイントを説明させていただきたいと存じます。   協会の説明資料の1ページ目でございますが、先ほど法務省から示されました部会資料の3ページの23行目に、ファイナンス・リース契約が担保権として認定された場合に本文の規律を適用ということで説明されておりますが、弊会の説明資料、法務省提案の真ん中辺りでございますが、認定の有無によって取引の性質が変わるものではなく、これまでの議論を踏まえますと、リース取引の適用を念頭にした提案であるということで、全てのリース取引に適用されるものと理解しているところでございます。   次に、2ページ目でございます。リース取引を法制化しても現行のリース取引の取扱いが変わるものではないという御説明をされているところでございますが、リース会社にヒアリングしたところ、1点目としては、どのような事実がある場合に担保取引ではないという性質決定がされるのかが不明確であるといったことですとか、信用リスク管理に影響を与える法制度は、リース取引に適用されないことが明らかでない限り、適用されることを前提にすることは当然のことであると、3点目としては、これまでの担保法制部会の審議の経緯から見て、あらゆるリース取引が担保法制の対象となると考えることが自然であり、本日の説明もそうですが、法務省の説明に納得感が全くないというのが3点目です。最後、4点目、現行のリース取引の取扱いが変わるものではないという説明は、取引実務で一切保障されないという評価でございます。したがって、あらゆるリース取引に担保法制が適用されると保守的に考えることになります。これは、ヒアリングをしたリース会社だけではなく、リース業界としての認識でございます。   次に、3ページ目でございまして、資料に記載のとおり、既に読まれていると思いますので簡潔に行きますが、現状よりも大幅な債権カットが予想され、リース会社がユーザーの与信判断を慎重に行うことによりまして、中小企業など信用状況が低い顧客とのリース取引が困難となり、中小企業のリースによる設備導入の道を断つということにつながるということと、中小企業は経営環境が非常に厳しい状況にございますが、リース料の値上げといったことも想定されるところでございます。これ以外にも、リース商品、リース取引の選択肢が狭まるという問題も生じるところでございます。   最後のページ、中小企業の会計制度への影響ということでございますが、部会の当初より弊会として会計制度への影響を懸念について、この部会でもお伝えをしているところでございますが、企業は私法上の取引に基づいて日々会計処理と税務処理を行っているということでございまして、その私法上の取引をベースに税制、中小企業の会計制度が構築されているというところでございます。リース取引について動産利用権を目的とする債権譲渡担保契約として認定された場合に規定が適用されるという御説明をされているところでございますが、動産利用権の設定契約と動産利用権を目的とする債権譲渡担保契約で構成されるという法律上の考え方が示されることによって、中小企業の賃貸借処理の妥当性について議論が生じる可能性があるということでございます。   また、中小企業の会計処理への影響が生ずるとはいえないように思われるという説明をされているところでございますが、私法上の取引に基づいて会計処理と税務処理が行われているという実態を踏まえた上で、法務省、この提案に賛成される部会の委員、幹事全員が、我が国の全ての関係当事者に対して、そのような議論は一切生じないということを確実に保障することができるのか、極めて疑問であると言わざるを得ません。   説明は以上となります。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと思います。よろしくお願いします。 ○山崎委員 ありがとうございます。今のリース事業協会の説明を受けて、発言させていただきます。   昨年の部会でも申し上げましたとおり、ファイナンス・リースは中小企業が設備投資を行う際の重要な手段として浸透していて、多くの中小企業が経営の状況に合わせ、金融機関の融資と組み合わせて設備投資資金として活用しております。このような現状において、リース取引の法制化によって、先ほどリース事業協会より御説明のあった信用収縮とリース料の値上げやリース商品、取引の選択肢が狭まる可能性があることは、大きな問題であると思います。また、中小企業会計制度変更の可能性も見逃すわけにはいきません。これらのことにより中小企業の経営に悪影響が生じることを考えると、この懸念が払拭されない限りリース取引の法制化に関しては反対せざるを得ません。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○鮫島幹事 中小企業庁も、当然中小企業の経営、特に資金繰りだとか財務基盤に影響が生じない形の御検討をこれまでもるるお願いしてきたところでございますが、先ほどリース協会の実務若しくは生の声を踏まえた説明であるとか、今の山崎委員からの御発言を踏まえますと、このリース取引の法制化、原案のままですと、資金繰りであるとか財務基盤、リース料の高騰等を通じて、それが与える影響について中小企業を含めた経済からの懸念がなかなか払拭できている状況ではないと言わざるを得ないと思っておりまして、そうであれば、やはり実務の懸念を踏まえると、今の状況では法制化には反対せざるを得ないと考えてございます。やはり中小企業の成長であるとか、その発展に影響することがない、それが非常に大切でございますので、そこは十分に注視しながら経産省中小企業庁としても適切に対応していくということでございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○河原幹事 ありがとうございます。経済産業省産業資金課長をしております河原と申します。よろしくお願いいたします。ただいま御発言のあった部分に関して、私からも申し上げます。   経済産業省としましては、リースというものは特に資金力が乏しい中小企業などにとって、設備投資の重要な手段になっていると認識しております。このため、これまでの部会でも、これら事業者の声を踏まえた上で、実務への影響が生じることがないように慎重な御議論をお願いしてきたということでございます。現在、御案内のとおり政府は設備投資の推進を方針として掲げてございまして、先ほどのリース事業協会の御説明、また山崎委員からの話、また中小企業庁の話などを踏まえますと、今般の法制化というものは中小企業に与える影響についての懸念を必ずしも払拭できないと思っておりまして、日本企業の設備投資全体に水を差すことになりかねないと危惧をしております。こういった点を踏まえますと、私ども経済産業省としましては、今般の法制化については反対と申し上げざるを得ないというところでございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかに御意見、御発言はございませんでしょうか。 ○大澤委員 ありがとうございます。大澤でございます。まず、委員等提出資料49-1について拝見をいたしました。2ページ目ですかね、現状と法務省提案の整理ということで、現状というのが書いてございますが、こちらに①として、ユーザーが民事再生、会社更生手続に入った場合、リース会社の残リース料金が全額支払われる事案が半数程度(民事再生の場合には3割程度は共益債権扱い)とありますけれども、まず、これがそもそもどういうソースで出てきたものかというのがよく分からないというのがございますのと、そもそも民事再生なり会社更生に入ったときに、フルペイアウトのファイナンス・リースが譲渡担保として扱われるということは、判例等も十分ございますので、実務上もその例に倣っていると理解をしております。そういった意味で、この全額支払われる事案が半数とか、あるいは3割とかいうのは、事案のファイナンス・リースの中身を見て、管財人なり申立て代理人なり監督人なりが、それがいわゆるフルペイアウトなのかどうなのかと、いろいろなことを考えた上で財産価値の限度で別除権協定を結ぶというやり方をしているのが通例ですので、こういった3割とか半数というような形で結果としての数字だけでは意味がないのではないかと考えております。   現状、今申し上げたとおり、譲渡担保として扱われるべきフルペイアウトのファイナンス・リースというのがございます中で、今回の部会資料の法務省提案を拝見しても、特段それとそごするものではないと私は考えておりまして、そういった意味で、実務上の取扱い、倒産手続における実行の局面、あるいはそういった倒産手続における局面において、従前のフルペイアウトあるいは譲渡担保としての協定が結ばれる中身が変更されるものではないと理解をしておりますので、こういった49の方を見る限りにおいて、私としてはこの動産利用権の制度化というものに賛成をすると考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかにございませんでしょうか。 ○井上委員 ありがとうございます。私も今回の事務局の提案に賛成いたします。今回の提案は、リース取引のうち、現在判例法理によってリース料債権を被担保債権とする動産利用権の担保とされる取引について、リース料債権と動産価値との牽連性があることに鑑みて、確定日付ある通知又は承諾なしに第三者対抗を認めるというルールと、それと併せて動産譲渡担保権の実行規定を一部準用するというルールであって、担保取引とされるリースなのか、そうでないリースなのかについての現在の線引きを動かすルールが提案されているわけではございませんので、非常に穏当なものであって妥当だと思います。   個人的には元々、リース取引のうち、必ずしもフルペイアウトに限らず、金銭支払義務が確定的であってリース物件の使用との対価性がないものについては、それをもって金銭債務を担保する動産利用権担保であると推定する規定を置く方がいいと考えておりましたが、そのような推定規定を置かないとしても、ここでの議論などを通じて、あるいは既に積み重ねられている判例法理を通じて、一定の範囲の取引が担保と扱われることは共通認識となりつつありますので、その意味では、少なくとも何の明文もない現在に比べれば、より明確化されるという方向ではないかと思っております。   今回御提出いただいたリース事業協会からの資料の右下の2ページでヒアリングの結果を先ほど御紹介いただきましたけれども、どのような事実がある場合に担保取引でないという性質決定がされるのか不明確であるということですが、むしろ現在が明確なのかという意味で言えば、現在およそ何の明文もないのです。現在極めて明確であれば、逆にその明確な担保取引の範囲をルール化すればいいわけですけれども、今回、そこは今のまま、特に定めを置かず、担保とされた場合の効果を定めるということですので、どういう場合に性質決定されるのか不明確であるというのは今回の御提案に対する批判にはなっていないのだろうと思います。むしろ、繰り返しになりますが、判例法理以外に何もない現在に比べれば、効果についてだけでも定めを置くことで一歩前進という意味では、明確化に資するのであって、私自身は今回の御提案に賛成したいと思います。 ○道垣内部会長 ほかにございませんでしょうか。 ○藤澤幹事 ありがとうございます。藤澤です。私も今回御提出くださった資料について少しお伺いしたい点があって、発言させていただきました。   今、井上先生が御指摘されていた点ですけれども、頂いた資料の2ページ目に、どのような事実がある場合に担保取引ではないという性質決定がされるのか不明確であると書かれていますけれども、現在の判例法下では「明確である」とお考えなのかどうかというところを伺ってみたいと思いました。そして、仮に現在明確ではないとすれば、それにもかかわらず楽観的に与信をしているのに、法制化されたら急に悲観的になって、中小企業への融資を取りやめたいと思われるのはどうしてなのかというのを少し教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○道垣内部会長 何かリース事業協会の方でございますか。 ○山田参考人 我々が反対している理由として会計、税務等への影響ということがあるのですが、ここでは今の先生方からの御質問に加藤と両名で手分けをして御説明申し上げたいと思います。判例法理ということで、大澤先生と井上先生からお話がございましたけれども、確かに下級審の中で、その担保目的が利用権の債権譲渡担保のように評している判例があるのは承知しております。最高裁においても、金融取引として、その性格に言及されていることも承知しております。ただ、これら判例はいずれもフルペイアウトのファイナンス・リースを対象としたものであります。今回の規律において、そこの繋がりがさっぱり分かりません。確かに説明では、ファイナンス・リースのことを一生懸命書かれているのですが、正直、この規律からどうしてファイナンス・リースと読めるのか非常に不思議であり、どのような取引がこの規律の対象になり得るのか、その境界が分からないのではないかというのが我々の問題意識です。 ○加藤参考人 協会の加藤です。まず大澤先生の、ソースはどこかという点で行きますと、昨年の9月にも経産省さんを通じて御提出した資料にも盛り込んでありましたが、リース事業協会の会員会社に対して調査をした結果ということでございまして、必ずしも全てが別除権扱いされているものではなく、共益債権として取り扱われている事例もあるという、これは事実ということでお伝えをいたします。   山田と説明が重複しますが、リース会社の不安としては、担保取引として扱われることによって、先ほどから御説明しています実務への影響ですとか、会計制度、税制度への影響が生じるということでして、リース取引について担保取引ということで認定するということを説明されたとしても、すべてのリース契約に適用されると保守的に考えるというところでございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかにございませんでしょうか。   山田さんの発言について1点だけ伺いたいのですが、そうすると動産利用権を目的とする債権譲渡担保契約と書かないで、フルペイアウトリースについては、と書けばいいということですか。 ○山田参考人 それは、先ほども申し上げておりますけれども、これは我々の提案ではないですし、税制ですとか会計制度に与える影響というのは、これは依然として残りますので、「いいですか」という問い掛けにはお答えのしようがございません。 ○加藤参考人 フルペイアウトリースと規定された場合、会計制度、税制度への影響がより顕在化するということになります。 ○道垣内部会長 なるほど、分かりました。   ほかにございませんでしょうか。 ○松下委員 松下です。私も今回の部会資料48の提案に賛成するものです。本日提出いただいた49-1の先ほど来言及のある2ページの三つ目のポツで、これまでの担保法制部会の審議の経緯から見て、あらゆるリース取引が担保法制の対象となると考えることが自然だという記述があるのですけれども、私の資料の読み方が悪いのかもしれませんが、むしろ現在の判例法理で担保取引とされるものだけを対象にしているのであって、あらゆるリース取引と考えるのが自然だというのがどこ辺りを指しておられるのかというのはよく分からなかったです。   それから、今言及のありました昨年の9月19日に経産省経由で出していただいたファイナンス・リース法制化の影響という文書では、こういう法制化をされると、月額リース料が最大5割アップするという記述が1ページにございました。今回の資料では特にそういう言及がなかったのですが、先ほどの大澤先生の話とも関係しますけれども、どういう検証可能な数字でこういう数字をはじいておられるのかがよく分からなかったというのが、私が49-1を拝読した印象とか感想です。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○加藤参考人 加藤です。まず、松下先生の最初の質問ですが、山田が冒頭申し上げましたとおり、動産利用権をということしか書かれていないので、少し言葉は細かいところは省きますが、昨年の12月に御説明したとおり、全てのリース取引が掛かるのではないかと理解をしているところでございます。それが1点目です。2点目は、本日お配りした資料の3ページ目でございまして、仮にリース料を値上げするとした場合の試算ということで改めて精査をした数字でございまして、リース会社6社の試算によりますと、2割アップということでございまして、それぞれ残価をどうするのか、あと利回りですが、これは投資、リース会社はリース物件を買って、そこから収益を得るということなので、回収リスクが高まると当然利回りに反映するということでございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかに。 ○松下委員 すみません、2点目の話なのですが、そうすると、最大5割上がるという説明は撤回されると理解してよろしいですか。 ○加藤参考人 撤回というか、改めて精査をしたのが本日の資料でございます。 ○松下委員 ありがとうございました。 ○阪口幹事 第37回会議でも同様のことを申し上げましたけれども、委員等提出資料37-1では、民事再生80件のデータを基に、ファイナンス・リースが法制化されるとリース料が2割以上値上げになると書かれていましたが、我が国の民事再生の件数、会社更生の件数を考えたら、統計上、そんなことになるはずがないということは、明らかだと思います。今回は19%アップと書かれていますけれども、これもあり得ない話です。   また、例えば今回これが立法されたら、残価付きリースは行わないというC社という匿名の会社が書かれているけれども、本当にそうお考えなのであれば、名前を出して、本当にそのような意思決定をされるのか、はっきりしていただきたいと思います。名前を出して、もう残価リースをしないことを経営方針として決める会社が本当にあるのかどうか、そこをまず明確にしないままこのような形で資料を出されても、説得力が全くない。委員等提出資料37-1には納得感がないと書かれていますけれども、この資料こそ、正に納得感がありません。   先ほどから何度もほかの委員、幹事から指摘されていますけれども、現在の判例法理は、フルペイアウトだけに限定してリースを別除権扱いしますなどという法理が明確になっているわけでも何でもないのに、今回の提案が規定された途端に急に信用収縮が起きるという言い分が全く論理的でない。これらの理由から、反対される方は反対のための反対としかおっしゃっていないのではないか。もっと言うと、現在の判例法理を否定したいが、そのようにはっきり言えないから提案に反対しているだけなのではないのかという疑いすら生じると思います。したがって、部会資料48の規律を立法化することに賛成ということを申し上げたいと思います。   導入そのものに関しては、以上です。 ○加藤参考人 阪口先生の最初の御発言については、これはリース事業協会として責任を持って提出した資料でございますので、C社というのは匿名ではありますが、これはリース事業協会としての意見ということで受け止めていただければと存じます。 ○道垣内部会長 それでは、続けて阪口さん、お願いします。 ○阪口幹事 導入を前提にした技術的な点の質問で申し訳ないですけれども、動産利用権を目的とする担保として帰属清算及び処分清算による実行等の規定を準用するとあるので、処分清算があり得るのかということを確認させてください。抽象的にはあり得るのでしょうけれども、ここで書かれている処分清算は動産利用権を処分清算するということなのか、それとも動産そのものを売却した場合を指しているのか、ということから確認したいと思います。   一番シンプルに考えたら、動産利用権そのものを処分清算する場合ですよね。ただ、それは実務的に考えにくいので、あるとすればリース会社が物を第三者に処分する場合だと思うのです。しかし、それが処分清算といえるのか。一旦自らに帰属させて100%になった所有権を売っていると考えたら帰属清算になりますよね。そうすると、帰属清算と処分清算でルールが違う局面があるとすれば、今申し上げた、第三者へ所有権移転した場合を帰属清算と捉えるのか、処分清算と捉えるのか、その辺の実際上の清算方法について、具体的にお考えがあるのかどうか教えていただきたいということです。 ○笹井幹事 確かに御指摘のように、実務的に考え得るかというと、利用権の部分だけを対象とする処分清算というのは非常に考えにくいと思います。ただ、理屈の上だけで考えますと、動産の利用権だけを処分するということも全く考えられないわけではないので、準用の対象から法律上除外するということまでは考えておりません。そのため、このように書かせていただきました。   確かに今、阪口幹事の御指摘がありましたように、実際に考えられるとすると、利用権部分を含めた物全体を第三者に処分する方がありそうだと思います。これを、担保権者であるリース業者が譲渡担保権者として動産利用権の処分清算をするとともに、残されていた利用権の負担付きの所有権を所有者として同じ相手に譲渡して、結果的にその処分先において、混同によって消滅するというように考えるのか、それとも一旦、帰属清算という形をとって、自分のところで混同によって消滅させ、全体を処分すると見るのかは、十分に考えていたわけではありませんが、理屈の上では両方あり得るのかなと思います。実務的にどちらがやりやすいのかとか、当事者の意思としてどちらとして考えるべきなのかというところは最終的には事案の判断なのかなと思います。 ○道垣内部会長 よろしいですか。 ○阪口幹事 今のところは、最終的には事実認定の問題かも分かりませんし、もしかしたら担保権者がどちらの通知を送ったかで決まるのかも分かりません。つまり、帰属清算という通知を送れば帰属清算で、処分清算という通知を送れば処分清算なのかも分かりません。   ただ、その背景の問題意識として、解除ルートと実行ルートという二本立てがあるのかないのかという問題があり、かつ、私自身はファイナンス・リースに関しては、帰属清算というのは結局解除とイコールなのだから、それはもう一本だと考えていて、さらに、動産利用権そのものの処分清算はほとんど考えられないから、結局はファイナンス・リースの解除イコール実行になるのだろうと思っています。そういう、実行なのか解除なのかという議論も含めて、今の問題意識を出させていただいたということです。 ○道垣内部会長 ほかに御意見、御発言はございませんでしょうか。   リース事業協会だけでなく経産省、中小企業庁、さらには委員の山崎さんの方からも反対の御発言を頂きました。他方で何人かの委員の方から、この形でやるのがいいのではないかという意見を頂きまして、確定した案がここで今まとまっていると考えるべき状況ではないと思いますけれども、更に藤澤さんから手が挙がっておりますので、藤澤さん、お願いいたします。 ○藤澤幹事 ありがとうございます。藤澤です、度々申し訳ありません。もう一つ伺ってみたい点として、会計への影響というところがございます。リース会計については、本当に勉強不足で恥ずかしいのですけれども、近年大きく状況が動いているものと理解しております。ASBJがリースの新会計基準を発表して、今後はファイナンス・リースもオペリースもどちらも使用権を資産計上するというような形になって、リースについては借主がその使用権を持っていて、それが資産だというふうな会計の見方も有力になってきていると思うのですけれども、そちらの考え方が中小企業のリース会計に影響を与えるというようなことはないのでしょうか。それが認められているにもかかわらず、法律の面でそれと同じような改正の動きがあることがおかしいというのはなぜなのか、むしろ法律と会計とが不整合である方が分かりづらいのではないかというような疑問を持っているのですけれども、それについても教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○加藤参考人 リース事業協会の加藤です。藤澤先生、御質問ありがとうございます。今、藤澤先生からお話があったのは国際会計基準、グローバルな会計ルールの中で2016年に使用権といったものを借手側が全てのリースをバランスシートに計上するというルールができて、それが我が国においても導入されたということなのですが、一番重要な点というのは、それは飽くまで上場企業がグローバルなルールにのっとって資金調達をされる会社さんの会計ルールなので、適用されるのは基本的に上場企業です。中小企業については別途、中小企業会計要領という会計基準があったりしますけれども、そこの発想というのは国際基準、社団と中小企業の方にグローバルルールを適用する必要がないし、非常に複雑怪奇なので、どちらかというと先ほど私が御説明した司法上の取引をベースに、中小企業の会計要領であったり税法基準に沿って会計処理を行う、これについては何ら今後も将来に向けても変わらないということでございます。 ○道垣内部会長 よろしゅうございますか。 ○藤澤幹事 ありがとうございます。私が質問したのは、グローバルルールを適用すべきか否かということではなく、使用権が資産であるという見方がむしろ日本の判例法理と近くて、むしろ現在のリース会計と判例との関係の方が複雑怪奇なのではないかと感じたということなのですけれども、それについてはいかがでしょうか。 ○加藤参考人 今、藤澤先生の御疑問なのですが、まず、哲学的に考えてしまうと、グローバルな会計基準というのは負債の方から入ってきて、リース負債というのがあるので、それに見合う勘定がないので、所有権資産、これは取って作ったような資産なので、今回の利用権を債権譲渡するという考え方とひっくり返ってしまっているので、元々整合していないです、というのがまず1点です。2点目が、そういったグローバルに合わせるとどうなるかというのは4ページ目にお示しをしましたとおり、中小企業にとって非常に複雑な会計処理といったことを招き、更に言うと費用面で不利になっていくと、そういうことでございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   ほかに御意見、御発言等はございませんでしょうか。   先ほど申しましたように、今回のこの部会で意見がぴたっと皆一致しているわけではございませんので、ここで別に多数決をとって何か決めようというわけでもございませんし、まだ未確定というべきだろうと思いますけれども、今後早いうちに最終的な成案を作っていかなければなりませんので、現時点の段階で、御意見の分布等を確認するという意味もございますので、賛否の結論だけでも結構でございますので、積極的に御発言いただければと思います。   何回も扱っておりますので、何回か発言をされた方もいらっしゃるので、無理にとは申しませんが、それでは、今日の時点ではこの辺りの御発言でということでよろしゅうございますか。どうもありがとうございました。   リース事業協会のお二人におかれましては、お忙しい中、御足労いただきましてありがとうございました。では、部会資料48についての議論はここで終えたいと思いますので、山田さん、加藤さんにおきましては御退席いただければと思います。本当にありがとうございました。どうもいろいろ御教示いただきまして、ありがとうございます。   私が感想を述べるのもどうかと思いますけれども、仮にこれが立法化されないということになりましても、リースについて動産利用権を目的とする債権譲渡担保であると性質決定をするという可能性自体は否定できないわけであるとともに、そうしたときに債権譲渡担保の対抗要件をとっていなければ突然効力がなくなるのかということになりますと、それもなかなかドラスティックな話であって、そうだったら利用権を目的とする債権譲渡担保だと性質決定をされても、購入代金債権の担保であるというふうな形で、ほかのそういった動産譲渡担保や所有権留保の規定が準用されて、対抗要件が要らないとか、いろいろな解釈論をしなければいけないということになるのではないかと思います。だから、こういうふうにして立法した方がすっきりするのはすっきりするのだと思いますけれども、なお、仮に立法がされないということになりましても、どういうふうに処理をするのかということにつきましては皆さんのコンセンサスをとるように努力を今後もしていかなければならないと思います。感想だけで恐縮でございますけれども。   それでは、次に部会資料46の前回からの積み残し部分の議論を行いたいと思います。まず、部会資料46の第11、債権譲渡担保権の実行から第15、動産譲渡担保権の実行のための裁判手続までというのと、もう1個、第18の1、質権者による債権の取立て等及び第19、民事執行法の見直しというところについて議論を行いたいと思います。少し飛び飛びですが、事務当局から部会資料の説明をお願いいたします。 ○工藤関係官 それでは、第11から第15まで、第18の1、第19について御説明いたします。   第12「集合債権譲渡担保権の実行」の1においては、集合債権譲渡担保権者の実行着手後に生じた債権に対する集合債権譲渡担保権の効力につきまして、従前の部会での御議論を踏まえると、少なくとも現時点においてはこれを制約する規定を設けることは困難であると考えられたため、本文においてはこの点に関する新たな提案をしておりません。   第13「その他の財産を目的とする譲渡担保権の実行」では、集合債権譲渡担保権の実行に係る規定を準用の対象から除外する修正をしています。   第14「強制執行等の特例」の1では、物上保証人又は第三取得者が譲渡担保動産を占有している場合にも民事執行法上の動産競売開始許可制度を利用することができることを明確化する規律を新たに御提案しています。   第15「動産譲渡担保権の実行のための裁判手続」では、2(4)及び3(4)において、実行のための引渡命令が取り消された場合や無剰余以外の事由によって差押えが取り消された場合についても、その申立てをしたことを証する文書等を提出しなかったものとみなすこととしています。また、3及び4において、動産譲渡担保権者等に対抗できる占有権原を有する債務者に対しても引渡命令を発令することができることを明確化する修正をしています。8(2)においては、記録事項証明書を提出すべき者は、その提出に代えて、裁判所が当該記録事項証明書に記載されるべき事項を検索するために必要な情報を提供することができることとし、この場合には記録事項証明書の提出を不要とする規律を御提案しています。   以上について御議論いただければと思います。私からの説明は以上です。 ○道垣内部会長 これは18は含まれないのですか。すみません、18の1とか、そのうちのごく一部ということになって、少し分かりにくくなっておりますけれども、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと存じます。 ○日比野委員 ありがとうございます。第13のその他の財産権を目的とする譲渡担保権の実行で、その性質に反しない限り第11の規定を準用するとされているところに関しての確認です。具体的には、第13で準用されている、第11で更に準用している第9、動産譲渡担保権の実行のところのいわゆる2週間ルールというか、通知の日から2週間の経過または引渡しで被担保債権消滅の効果が生じるというルールが、その他財産権を目的とする譲渡担保権の実行でどのように準用されるか、あるいは準用されないのかということの確認です。   その他の財産権の中には有価証券も入ってくるものと理解しています。現実には、有価証券の現物を担保に取るという実務は昨今多くないのかなという気もしますし、また、社振法の適用対象となるものは社振法の規定に基づいて質権による担保取得が実務上されていると理解しておりまして、実際の適用場面は多くはないのかなという気もするのですけれども、現物あるいは社振法の適用対象とならないような券面のない有価証券について、譲渡担保の設定を受けたという場合、この2週間ルールの適用はどうなるのかということです。   問題意識としては、元々の2週間ルールの規定である第9の1のイでは、2週間の経過又は引渡しを受けたことが要件になっていると思います。ただ、現物の有価証券を担保取得する場合に、あるいはいわゆる電子化された有価証券の場合においても占有、観念的には、後者の場合は占有という言葉が不適切な場合もあるかと思うのですけれども、これが担保権者に移転していることが通常と思われます。譲渡担保の場合は、占有は設定者の方に通常あるだろうというコンセプトの下でこの2週間ルールの規律が置かれていると思うのですけれども、このような有価証券が譲渡担保の目的となった場合に、2週間ルールが適用されるのかされないのか、もっと言ってしまうと、適用される基礎がないのではという気がしまして、このあたりの整理がどうなるのかを確認したいということです。よろしくお願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。基礎がないというのは、債務者、設定者から占有を取り上げてということが観念しにくいからということですか。 ○日比野委員 そうですね、設定時において、もう占有が担保権者の方に移転していると考える類型になるのかなと。そうだとすると、第9では2週間経過又は占有の引渡しを受けたことで被担保債権消滅の効力が生じるとなっているので、そもそも引渡しをもう受けているとすると、そうなるのではないのかなということです。 ○笹井幹事 目的物がどうであるか、その目的物の占有をどう考えるかということをひとまず置いて、まず原則的なところで申しますと、第11の規定を準用することによって、更に動産譲渡担保権の実行が準用されますので、2週間ルール自体の適用はあるのだろうと考えております。それは元々、担保の目的財産が流出することによって事業の継続が困難になることを防ぐための様々な倒産法上の対応策が準備されており、そういったものを利用する機会を確保するというのがここでの目的であったことからすると、その他の財産についても、事業再生のために逸失を防止する必要性がある財産も含まれておりますので、第13においてこの第11を準用した結果として、2週間ルールというのが抽象的には適用されるのだろうと思っております。   ただ、実際に中止命令の対象になるためには中止命令の要件を満たすことが必要になり、事業継続にとって本当にそれが重要なのかが問題になりますので、結果的には中止命令は出ないということもあり得るのかもしれません。しかし抽象的には、中止命令等の適用のための2週間の猶予期間は一応確保されているということかと思います。   その上で、有価証券に関して、仮に2週間又は引渡しまでというルールが適用されたとすると、既に占有が移転しているとして直ちに終了すると扱われるかどうかというのが次の問題であると思います。ここは少し解釈が含まれることもあるのかもしれませんが、引渡しによって実行が終了するというルールは、基本的には動産に関するルールですので、動産についてであれば引渡しを受けることによって終了するということになるのだろうと思います。   その上で、紙の有価証券があった場合に、これを動産として扱うかどうかということなのですが、質権と同じように考えますと、有価証券を目的とする質権は、紙の有価証券がある場合も動産質ではなくて権利質として扱われているようですので、これとパラレルに考えていくと、紙の有価証券を目的とする譲渡担保権も動産譲渡担保権ではなく、その他の財産を目的とする譲渡担保権ということになるのだろうと思います。そうすると、第9の1(1)イの引渡しを受けたことというのは、一応動産に関するルールだということですので、引渡しによって終了するというルールは有価証券については適用の対象外になるのではないかと、現時点ではそのように整理ができるのではないかと思っております。 ○道垣内部会長 現時点の案の適用の関係につきましては、今御説明いただいたのですけれども、日比野さんの方から、そういうふうな形式的に見て占有が担保権者に移っているかどうかというところであるルールの要件を満たされていると考えるのかというレベルではなくて、有価証券の担保化に当たっては2週間という期間を置かない方がいい、ないしは置くべきでないという積極的な何か理由とかがございますでしょうか。お願いします。 ○日比野委員 ありがとうございます。有価証券の性質によって異なり得ることはあるかもしれませんが、有価証券を担保に取っているというのは、紙の現物が取りたいというわけではなくて、当然のことながらその価値を担保取得していることになるわけです。そうしますと、一般論として、有価証券によっては価格の変動がありますので、この2週間後に被担保債権消滅の効果が確定するという規律が現実の実行の場面では余り適切ではないのではないのかと考えているところです。それともう一つはそもそも論として、笹井様から先ほど民事再生法の31条の適用のお話があったかと思うのですけれども、倒産手続において、担保取得している有価証券を、現実的に中止命令の対象にして確保することが実際に必要になる場面がどのぐらいあるのかという実態論も考えると、端的に2週間のルールの適用がないと考えるのもありではないか。というか、むしろそちらの方が適切なのではないかと考えた次第です。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかに、今の点でも結構でございますし、ほかのところでも結構でございますので、ございませんでしょうか。 ○阪口幹事 ほかのところで申し訳ありません。第15の2の保全処分の関係で、2点確認したいと思います。   所有権留保については、担保権者には解除ルートと実行ルートという2本のやり方があると思います。実行ルートであれば清算義務があるし、解除ルートであれば値上がり益は売主が取ることができる。そのときに、保全処分を使った売主というのはもう解除ルートには行けないのかどうかということの確認です。つまり、実行ルートだったら第15の2の保全処分が使えて早期に引き揚げができるというメリットがあるわけですね。そして引き揚げができた場合、52ページの(3)で、保全処分の決定の告知の日から1か月以内に一定の書面を提出しないと決定が取り消されてしまいます。ここに書かれているア、イ、ウ、エというのは、言わば全部実行ルートの話なので、実行ルートで完結するのかなと思ったのだけれども、ただ、よく考えてみたら、その1か月の間に、いや、俺は解除の道に行くのだといって解除通知を送りましたということが考えられます。つまり、引き揚げてきたら案外商品の状態がよくて、値上り益があると思ったときに、いや、保全処分はもう取り消されてもいいよ、でも、売買契約を解除したのだから、俺のものだから、別に返さなくていいではないかと開き直るということです。昔、和議法で、保全処分の食い逃げといわれる事象がありましたけれども、同様に、早期に占有を確保しようとする段階では実行と言って保全処分を得つつ、後から、あれは解除だから値上がり益を確保したい、なんていうことが可能なのかどうか。多分できないと僕は思うのですけれども、できないという明確なルールがないとできるようにも思って、そこはできないとすべきなのではないかということの確認を1点、伺いたいということです。   もう一つは、これは前回の部会で発言した第10の4と5のベン図のところに関係する話です。集合譲渡担保権者が先に実行通知を送りました、そうするとここで一旦固定しますが、その後、保全処分の手続を踏んだら固定化はどのように考えるのか。一回実行通知を送った人が、第15の2の保全処分を使ったときには、それは第10の4のルールなのか、5のルールなのかという問題です。つまり、集合譲渡担保権者なのだけれども、一旦実行通知を先に送っているから固定した人ですねと、そうすると特定担保権者のように考えて5のルールを適用するのか、それとも、いや、元々あなたは集合だったでしょうと考えて4のルールで行くのかという、そういう疑問が日弁連で議論したときに出てきたので、その点も伺いたいと思っています。以上2点です。 ○笹井幹事 すみません、後半の4のルール、5のルールというのは、どの4と5をおっしゃっていますか。 ○阪口幹事 第10の4の集合動産譲渡担保権者による特定範囲に属する動産に対する差押え等は、43ページ、44ページのベン図の斜線部分になるわけですね、ところが集合動産譲渡担保権者以外の個別動産譲渡担保権者の実行だったら、第10の5のルール、46ページ、47ページのように左側に斜線が伸びた形になっていくわけですよね。そうすると、集合と言いつつ、一旦実行通知を送ると、その人はもう固定した、特定動産担保権者のように見るのか、それとも、いや、あなたは元々集合なのだから集合でしょうと考えるのかと、そういう疑問点です。 ○笹井幹事 まず、少し順番が前後しますが、二つ目の御質問からしますと、今のは、既に固定化が生じたというケースですね。固定化が生ずると、もう4、5も、どういう範囲で固定化が生ずるかという問題なので、一旦固定化が生じてしまうと、その後入ってくるものには担保権が生じていないという前提で処理がされるということだと思いますが、何か私の理解がおかしいでしょうか。 ○阪口幹事 すみません、阪口です。私の質問の仕方が悪かったのですけれども、43ページ以下に出てくるBさんが一旦実行通知を送ります、Bさんの固定化の範囲はもうそれでいいのですけれども、その後、Bさんがここでいう第15の2の(1)の保全処分を打ったときに、ほかの人にどういう影響が生じるかという質問です。そのBの実行が固定化後なので個別動産譲渡担保権者のように見て第10の5のルールを適用するのかどうか。もしかしたら私の前回の第10の4と5の理解が間違っているのかも分かりませんので、そこも含めて。 ○井上委員 Aにとってはということですよね。 ○阪口幹事 そうです。例えば、AならAとか、Cとか、場合によればDとか、一杯重なっているときの絵を考えたときにそのAならAの固定化の範囲です。 ○笹井幹事 具体的にどういうケースなのかというのをもう少し考えた方がいいと思いますので、一度検討させていただけますか。今の御指摘は、とにかく43ページにおいて、Bさんが保全処分をしたと。 ○阪口幹事 まず実行通知を送った、だから、Bにとっては固定したわけですね。そのBが固定したものについて、次に保全処分を打とうとしました。 ○笹井幹事 固定したそのものについてということですか。 ○阪口幹事 そうです。 ○笹井幹事 そのものについて引き渡せとか、あるいはこういうことをするなとかという保全処分をしたということで、固定化したものについて。 ○阪口幹事 はい。その保全処分がAさん、Cさん、Dさん、Eさんにどのような影響を与えるかということを考えたときに、第10の4のルールと第10の5のルールで変わってくるので、どちらで考えるべきかということです。 ○笹井幹事 直感的には、その場合はもう固定化しているので、A、Cには影響しないのではないかと思いますが、もう一度検討させていただけますでしょうか。 ○阪口幹事 第10の4と5については、前回以降、いろいろ具体例について図を書きながら検討してみたのですが、ただ、そもそも、遡って部会資料37-2の12ページから13ページにかけての議論で、特定動産を対象にしたのか区別がつきにくいから、結局、特定の個別動産を対象としたか否かにかかわらず固定化の範囲を決めようという議論がありました。そのこととの兼ね合いで、第10の4と5の区別というのがいいのかどうか、分からなくなってきたので、その一つの問題の具体化として、さきほどの例を伺ったということになります。 ○笹井幹事 ありがとうございます。問題の所在は分かりました。先ほど申し上げたように、一旦固定化したものについて、その後に保全があったとしても、基本的にはA、Cには影響しないと考えるべきではないかと思いますけれども、少し整理をして、またお答えしたいと思います。   一つ目の御質問の方なのですが、一旦保全処分を得た上で、やはり解除するということなのですが、今、阪口幹事からも御指摘がありましたように、基本的には1か月以内に私的実行をする必要があるというルール以外に、解除権を失わせるというルールはありませんので、基本的には、一旦保全処分をしたからといってその後の解除権を制約するというのは、条文上は難しいと感じました。もちろん一般的な信義則などはあるのかもしれませんけれども、条文上その解釈論として解除権を否定するというのは、解釈的には難しいのではないかとは、今御質問を受けたところですけれども、考えております。 ○工藤関係官 保全処分のうち特に執行官保管の保全処分については、執行官が保管していることになりますので、担保権者側がどうやって執行官からその物の引渡しを受けるかというのが問題となってくるのではないかと思います。そのときに、例えば実行のための引渡命令を使って債務名義を取って引渡しを受けるというのが恐らく一番一般的な方法になるのではないかなと。何も持たないで行っても執行官から引渡しを受けるのは難しいのではないかと思いますので、何か債務名義を持って行くことが必要になるのではないかと思います。今お話しいただいた解除の場合ですと、解除してしまうと実行のための引渡命令も使えないことになるかと思いますので、そうすると訴訟を起こさなければいけないのかといった話になって、逆に時間が掛かってしまうといったところもあるかと思いますので、そういった意味で、解除というルートには問題点も出てくるのではないかとは思います。 ○阪口幹事 阪口ですけれども、第15の2の保全処分は、実務的には恐らく執行官保管でとどまるのではなくて、債権者の手元にまで引っ張ってくる保全処分の方が中心的に活用されるのではないのかと思います。もちろん動産にもよりますし事案にもよりますから、一概には言えませんけれども、どちらかというと実務的にはそちらの方に妙味があると思っています。なので、引き揚げてきてしまったもの、手元に来てしまったものというかな、それがあるときに急に、やはり解除という法律構成を採ることができるかどうか。執行官保管であれば確かにそこで止まっているからそのような問題は生じないのかもしれませんが、そういう問題意識です。 ○道垣内部会長 問題意識は多分伝わっているのだと思うのですけれども、笹井さんがおっしゃっているのは、一般論として解除事由が存在するときに、解除ができなくなるという効力をその保全処分に認めるというのは難しいのではないかという話だったと思うのですが、しかしながら、阪口さんはその質問をされるときに、認められないと思うのですがとおっしゃったのですね。つまり、阪口さんのお考えとしては、それはやはり実行に入って保全処分までして、それで占有を保全処分の内容として取得をするということをしたならば、もうそのルートで行きなさいと考えるべきではないかということなのだろうと思うのですが、そうなりますと、それをまた実現しようとして、かつ、笹井さんがおっしゃるような、ルールがないとそれは止められないよねということになると、ルールを書くべきだという話になって、保全処分をやったらもう駄目よとか書くことになるのだと思うのですが、そのようなことをお考えなのかどうなのか、阪口さん、いかがですか。 ○阪口幹事 もし書かないと駄目だとしたら、書いた方がいいのかなと思います。元々ルートが2本あって、片方は清算義務がある、片方は清算義務なし、その代わり清算義務がある方は保全処分で早期に引き揚げることができるという、言わばプラスマイナス両方あって、その中で片方の道を選んでおいて、後から、もう一方というのは、それはおかしいのではないかと思います。 ○笹井幹事 そこはもう実質論になってくるとは思いますが、そこまでその弊害か大きいかというと、解除をすれば清算義務はないわけですけれども、基本的には所有権留保とか、そういう継続的なものではないものを想定しますと、受け取ったものも返さないといけないということになってきますので、もちろんその物の価値が上がっている間は、最初売ったときよりももっと上がっているということであれば、解除をとった方が有利だということになるのですけれども、しかし、それはある意味、債務不履行解除一般にある問題だと思います。保全処分が使えたというところがやはり不当ではないかということでしょうか。 ○阪口幹事 実行だと言って裁判所を使うことまでしておいて、という感覚でしょうか。一時期、自動車は中古車の相場が非常に上がって、売買したときよりも価格が上がっていたことがありました。そのときに、車なんて引き揚げてみないと事故車なのかどうかとか状況はよく分からないから、多分価値は低いだろうと思って、所有権留保に基づく保全処分で引き揚げてみたら、実は非常にいい状態で、これなら多分高く売れるという事態があり得ました。そのときに、解除ルートなら本訴を起こさなければいけないわけで、その道を選ばずに、実行ルートだから保全処分という、簡単な道を選んで裁判所まで利用しておきながら、引き揚げた途端に、やはり解除だというのは、それは少し違うのではないかという価値判断です。 ○道垣内部会長 これは小さい問題ではあるのかもしれませんが、書くとなったら書くわけですので、少しほかの方の御意見があればお伺いしておきたいのです。解釈論として笹井さんがおっしゃったところに賛成しなくても、書かなくてもいいのではないかというのもあるのかもしれませんし、賛成でそれで構わないと、賛成でも結論としては阪口さんがおっしゃっているようなことだから書いた方がいいと、いろいろな選択肢があろうかと思いますが、特に御発言はございませんでしょうか。   それでは、事務局も含めまして、少し実質的なところを検討するということにさせていただければと思います。   もう一つの質問としての4と5の関係の話なのですが、これについては、もう少し具体例を基に検討しますとおっしゃったのですが、かわいそうな突っ込みを入れて申し訳ないですけれども、それは今日のお休み後ということ、それともまた今度ということ。また今度がだんだん減ってきているので。 ○笹井幹事 そうですね、難しい問題ですが、元々かなり複雑なルールになっているところに、更に書き込むのが適当かという問題はあろうかと思います。固定化事由が重複して発生した場合にどうなっていくのかというところまで、実務的にどこまで頻繁に起こるのか。確かに通知を送ってみたら、その後、通知を契機として担保価値の毀損行為が行われる可能性もありますので、それが重複されるということは非常にレアなケースとはいえないのではないかという気もしますけれども、どこまで様々なケースを想定しておくのか、もう解釈に委ねるのかというところは、幾つかの選択肢があるのかなと思いました。   解釈に委ねる場合、もちろん解釈論として一定の方向性が部会の中でコンセンサスが得られれば、部会としてはそう考えているということになるのかもしれませんが、解釈に委ねるのであれば、その方向性を余り明確にしておかないということもあり得るのかと思いますので、少しその辺も含めて、これ以上更に書き込んでいくという必要性がどこまであるのかという気もしておりますけれども、その辺も含めて考えてみたいと思います。 ○道垣内部会長 今日中には無理かもしれませんが、また御検討いただきまして、その過程におきまして、阪口さんを始めとして何人かの方に御相談を申し上げたり御意見を伺ったりすることがあろうかと思いますので、よろしくお願いいたします。   お待たせいたしました。青木哲さん、ずっと手を挙げていただいていたのですが。 ○青木(哲)幹事 幹事の青木哲です。ありがとうございます。部会資料の50ページの第14、強制執行等の特例の(2)のところです。物上保証人又は第三取得者が目的動産を占有している場合については、御提案に異存はありません。   反対に、物上保証人や第三取得者が生じているが、所有者ではない被担保債権の債務者が占有しているという場合について、質問をさせていただきたいと思います。この場合に 被担保債権の債務者の占有する場所に所在する動産に対して競売の開始を認めることになり、所有者から見ると第三者が占有しているということになりますが、裁判所の許可決定の送達については、占有している被担保債権の債務者とともに、手続上の当事者となるべき所有者である物上保証人や第三取得者に対しても、執行抗告の機会を与えるべく、送達がなされるべきではないかと思います。   御提案では、民事執行法190条第3項の債務者を債務者等、すなわち債務者又は当該動産の所有者に読み替えるという御提案で、その御提案の趣旨には反しないように思いますが、今のような理解、この場合に債務者及び手続上の所有者に送達すると考えてよいのかについて、教えていただければと思います。 ○工藤関係官 動産の所有者が執行債務者としての立場に立つけれども、被担保債権の債務者がその動産を占有している場合の送達の関係について問題提起を頂いたものと理解しましたので、一度御指摘の点は検討させていただければと思います。 ○道垣内部会長 それでは、よろしくお願いいたします。   ほかにございませんでしょうか。 ○片山委員 48ページの第12の集合債権譲渡担保の実行というところですが、その前の11の債権譲渡担保の実行のところとの関係で、取立てをどういうタイミングでできるかという点を確認できればと存じます。個別の債権譲渡担保ですと、弁済期が到来して不履行になったら、直ちに取立てができるということですが、集合債権譲渡担保の場合についても、取立てに関しては、通知を設定者にしなくても、直ちに取り立てることができるという前提で理解してよいのかどうかという点です。固定化の規定においては、帰属清算通知があって固定化をしますということかと思いますが、他方、集合債権譲渡担保に関しましては、合意によって設定者に取立権がずっと付与されているというケースもあるわけですから、その場合に、実行として取立てをするときにどういう要件になるのかというのが、分からなくなってしまいました。直ちにもう通知も何もしないで取立てをするということでいいのか、再度確認できればと思いました。よろしくお願いいたします。 ○笹井幹事 集合債権譲渡担保につきましても、譲渡担保権者が直接の取立てをするに当たっては、債務不履行が生じていることが必要ですけれども、それ以上に何か通知をしないといけないという規律はございませんので、債務不履行があれば直接の取立てをすることができることになります。ただ、設定者に対して取立権限が与えられている場合に、その取立権限を失わせるためには、48ページの第12の1の通知が必要になってくるということでして、その通知をしなければ、両方ともに取立権限があるという状態になります。ですので、譲渡担保権者としては、自分が独占的に取り立てたい場合にはこの通知を行うということになっております。 ○片山委員 どうもありがとうございました。そうしますと、11ページの個別の債権譲渡担保に関する取立てというこの規定は、集合債権等担保にも適用になっているということですね、恐らく。 ○笹井幹事 そうですね、そのように御理解いただければと思います。 ○片山委員 分かりました、どうもありがとうございました。 ○道垣内部会長 ほかに。 ○井上委員 ありがとうございます。単なる確認になるかもしれませんし、後の倒産手続の方がむしろどちらかというと関心があるのですが、その前提問題なのかと思うので確認したいのですけれども、今の48ページから49ページのところ、集合債権譲渡担保権の実行における通知の効果として、設定者の取立権限を奪うと書かれていますが、集合動産譲渡担保についての第10の3ですか、39ページの末尾にあるような通知の撤回については、集合債権譲渡担保については何ら書かれていません。これは、集合動産と違って、その後に担保権が及ばなくなるという効果はなく、単純に取立権限が動くだけなので、第10の3のような再流動化のルールを設けなくても、当然に遡った形での通知の撤回は可能だという理解でよろしいのでしょうか、ということを質問したいと思います。 ○工藤関係官 今御指摘いただいた通知の撤回について、なぜ集合債権譲渡担保権のところで書いていないかというところですけれども、取立権限の付与につきましては、第6の1のところで、設定者が取り立てることができる旨の定めがあるときは、設定者は取立てをすることができるということにしておりまして、合意をしたときには設定者に取立権限があるという規律にしております。   第12の1の集合債権譲渡担保権の実行のところにつきましても、一度この通知をして設定者の取立権限がなくなったという場合でありましても、もう1回担保権者と設定者が合意をすることによって設定者に取立権限を付与することはできるだろうと思っておりまして、そうだとすれば、あえて通知の撤回という規律を設ける必要もないのではないかということで、特に通知の撤回という規律は置いていなかったということになります。 ○井上委員 ありがとうございました。それは、実行通知をした後、取立権限の再度付与までの間は取立権限がないことになるのですか、それとも遡って取立権限があることになるのでしょうか。 ○笹井幹事 それは具体的には、間違えて取り立ててしまったときの処理がどうなるかということになるでしょうか。 ○井上委員 そうですね、付与した後の取立権限しかないということはない、合意なのだから、それまでの回収金も利用してよいと、そういう趣旨で取り扱うことについて、それを撤回と呼ばなくても再度付与と呼べばよいと、そういう御説明と伺ってよいかという確認です。 ○笹井幹事 はい、再度付与で全部説明するということになると、譲渡担保権者が再度付与によってどこまでの取立権限を付与したのかということが問題なのだろうと思います。まだ取り立てられていなかった部分について取立権限を付与することは可能ですので、問題になるとすると、本来なかったはずの期間中に設定者が取り立ててしまったという場合の処理をどうするかということだと思うのですが、そこに関して言うと、取立権の付与ということなのか、あるいは一旦取り立ててしまった取立金、今設定者の手元にあるはずのものをどう処理するかという問題ですが、そこについても合意に委ねられるということではないかと思います。 ○井上委員 ありがとうございます。 ○道垣内部会長 ほかにございませんでしょうか。   だんだん煮詰まってまいりますと、こういった場合にどうなるのかという解釈論みたいなものが出てまいりまして、それを考えると結構分からない場合等があったりするので、なるべく詰めておく必要があろうかとは思いますけれども、どうしても解釈の余地が残ってしまうというところはあるのかもしれません。   差し当たって、次のところに移ってよろしゅうございますでしょうか。日比野さんから出たお話も含めまして、少しそれは再度検討をするということにさせていただければと思いますけれども、部会資料46の第16の方に移りたいと思います。破産手続等における譲渡担保権の取扱いというところです。事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。 ○淺野関係官 それでは、第16について御説明いたします。   57ページの「2 担保権実行手続中止命令」については、譲渡担保権の実行を禁止する命令が発せられた場合に、譲渡担保権者は譲渡担保権を実行することにより被担保債権の消滅時効の完成猶予を図ることができなくなることから、時効の完成猶予の規定を追加しております。   61ページの「3 担保権実行手続取消命令」について、会社更生法に基づき更生手続開始の申立てを棄却する決定に対して即時抗告がされた場合にも、中止命令と同様、取消命令の発令を認める必要があると考えられることから、(2)キの規定を追記しております。続きまして、67ページの「9 破産手続開始決定等後の集合債権譲渡担保権の効力」の(4)について、3点の追記を行っております。まず、「被担保債権が消滅したとき」という文言について、元々被担保債権の一部のみが消滅した場合を含む趣旨でしたが、その点を明確化するために、「の全部又は一部」という文言を追記しております。また、この(4)に基づいて償還の対象となるのは、飽くまで消滅した被担保債権の額を限度とすると考えられるところ、この点を明確化するために括弧書きを追記しております。さらに、(4)に基づいて償還が行われる場合には、集合債権譲渡担保権者は実質的にはその金額分の被担保債権の回収ができなかったこととなりますので、その金額分の被担保債権を復活させる必要があると考えられるところ、この点を明確化するために後段を追記しております。   以上について御議論いただければと存じます。私からは以上です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   これらの点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと存じます。 ○阪口幹事 阪口です。67ページの開始決定後の効力、集合動産と集合債権の部分について意見を述べたいと思います。元々私は当然固定説に反対して、枠固定説の意見を持っていました。第44回会議や第45回会議で、そういう意見を申し上げたけれども、今回も当然固定をご提案されているので、仮にこうなったときの実際の流れを確認したいと思います。   まず、集合動産担保と集合債権担保が設定されている債務者の民事再生を申立てするとしますと、まず申立て時に動産についても債権についても禁止命令を得ようとするだろうと思います。それで禁止命令を取っているので実行はされません、物は売っていいし債権も取り立てていいと、こうなるわけですね。ところが開始決定が出るとどうなるか。今回のご提案で行きますと、動産は固定するし、債権も固定というか何というか、そういう事態が起きる。しかし、動産については、そこで改めて取消命令を得ればみなし実行通知の効果が消えて再流動化するわけですね。ところが債権の方については、67ページ9(1)の効果は取消命令で取り消されるものではないので、そのままの状態ですと。そうすると、お互い大変なわけですけれども、担保権者との別除権協定が申立てから開始決定までにできれば、それはみんなハッピーなのだと思うのです。   しかし、今現在、東京地裁であれば申立てから開始決定まで1週間程度ですか、地方に行っても2週間とか3週間とかと思いますけれども、その短い期間にそこまで別除権者ときちんと合意ができるということは現実にはなかなか難しいわけですね。特に金融機関は決裁に結構時間が掛かることが多いので、それほど簡単には別除権協定ができない。そうすると、ある程度話が進んでいても、開始決定で一旦固定という事態はなかなか避けられないわけです。お互い合理的で速やかに動く人がいる、若しくはあらかじめ申立て前から話が進んでいるということであれば、できるのかも分かりませんけれども、民事再生で集合動産担保、集合債権担保があったときに、そこまで話ができているケースはそう多くはないでしょうから、現在の運用で1週間とか10日とか短い期間で開始決定が出るのであれば、固定の問題が生じ、かつ、前に申し上げたけれども、取消命令が得られるまでに、供託の関係があって若干時間が掛かるとか、債権だったらそもそも入りがなく出だけがある状態で本当に禁止命令が得られるのかとか、そういう問題があるので、非常に再生債務者は困るということなのです。   だから、当然固定を導入するのであれば、動産に関して言うと、まず金融機関にお願いしたいのは、完全な別除権協定ができなくても、開始決定後、売ることを黙認するという事態が一定程度必要なのだろうと思うのです。もちろんその代わり、その売ったお金をプールしておくなどの措置は実際上しなければいけないでしょうけれども、取消命令や別除権協定ができるまでの間、開始決定が出たのだから、あなたはそれ売ったら、もう横領ですよなんていう、そんな杓子定規なことを言わずに、法律上はまだ別除権協定ができていないし、取消命令も出ていないから、本当は売ってはいけないのだけれども、現在、稟議を上げている最中だから、お金さえプールしてくれるのだったら売ってもらっていいですよとか、そういう少しファジーな運用をしてもらわないと、今回の規定を導入すると、やはりそこは大変なことになるだろうと思うのが一点です。   また、今度これは裁判所に対する要望です。開始決定の運用は裁判所でいろいろ違うのですけれども、東京地裁は非常に画一的に短い期間で開始しているわけです。そこはもう少し柔軟にやってもらわないと、いろいろ困る事態が起きると思うのです。裁判所によってはもう少し柔軟な庁もあるし、そもそももっと時間を掛けている庁もあるので、事案次第だと思いますけれども、画一的に1週間ですという運用をされると、再生債務者はこれまた困るのではないかと。   要するに今回の当然固定説というのは法律上は明確かもしれないけれども、実務上は劇薬だと思うのです。だから劇薬な分だけ、実務においては、金融機関なり裁判所なりでもう少し幅を持った運用をしてもらわないと困るというのが私の意見です。できれば本当は枠固定がいいと思いますけれども、というおまけも付けて申し上げたいと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。事務局から、何か御意見等ございますか。   ほかにございませんでしょうか。   よろしいですか。先ほどの阪口さんのお話も含めまして、なお検討しなければいけないことがあるかもしれませんが、もうここまでは絶対終わったというふうにする必要もないと思いますので、休憩後にもう一度、戻っていただいても構いませんので、この時点で休憩を15分間、3時30分まで取りたいと思います。3時30分まで休憩ということにさせていただければと思います。           (休     憩) ○道垣内部会長 それでは、時刻が参りましたので再開したいと思います。   先ほどは破産の話の途中で打ち切ったみたいな形になっておりますので、特にこの先にさっさと進まなければならないというわけではなくて、破産のところも含めまして、関係あるところで御意見を頂けなかったところについて、若干御意見を頂ければと思います。いかがでしょうか。 ○沖野委員 申し訳ございません、端的に破産のところではなくてよろしいでしょうか。 ○道垣内部会長 遡っていただいて結構でございます。 ○沖野委員 申し訳ございません。かつ、既に御指摘が出たのかなとも思うのですけれども、その他の財産の実行の関係で、50ページですけれども、今回、先回の資料から、集合債権譲渡担保権の実行に係る規定を準用の対象として挙げていたのだけれども、これはなかなか想定できないということで、第12の1の集合債権譲渡担保権の実行に係る規定については準用の対象から除外することとしていると書かれています。   それで、これがそれで果たしていいのだろうかということでして、今回、定義の中から、例えば電子記録債権を抜くということをされています。ですので、電子記録債権などはこの債権ではないという扱いで、その他の財産ということになるかと思います。それから、投資信託の受益権なども、これは結局、最終的に金銭を取得するという、金銭債権のところが大事だと思うのですけれども、こういうものもその他の財産ということになります。今後どういうものが出てくるかよく分からないですけれども、デジタル化されていくということになりますと、デジタル化された資産のようなものが考えられます。これは私は全く分かりませんけれども、ステーブルコインのような通貨と連動したものなども考えられて、これらについては事業の中身で発生して消えていって、また発生するということが考えられるもののようにも思うのですけれども、そうしたときに予定はないということで削ってしまっていいのかどうか、残した方がいいのではないかと考えましたものですから、御検討いただければと思います。 ○道垣内部会長 現時点で事務局からございますか。 ○工藤関係官 今御指摘いただいた、その他の財産を目的とする譲渡担保権の実行のところで集合債権譲渡担保を今回準用の対象から除外したところですけれども、説明として記載していたとおり、その他の財産を目的とする譲渡担保権についてはそういった類型のものは想定し難いのではないかということが理由なのですが、例えば株式の譲渡担保とかですと、設定者が将来取得する株式について譲渡担保契約についての対抗要件を今具備するというようなことは難しいのではないか、その他の財産一般につきましても、将来取得するものについて対抗要件を今具備するというのはなかなか難しいのではないかというところもございまして、そのことも考えると、やはり集合債権譲渡担保のようなものは想定されないのではないかと思っていたのですけれども、今頂いた御指摘は、将来のものについて今対抗要件を具備できるという制度は、今後創設される可能性があるかもしれないので、準用の対象としておくべきではないかという御趣旨になりますでしょうか。 ○沖野委員 はい、そのような可能性というのは残した方がいいのではないかということです。 ○工藤関係官 御趣旨はよく分かりましたので、一度検討させていただければと思います。 ○道垣内部会長 検討はしていただくのですが、今お話がございましたように、対抗要件が具備されている譲渡担保についての実行の話であるということなので、対抗要件が具備されるというものに関して考える形になっているということは押さえておいた方がよろしいかと思います。そして、沖野さんがおっしゃった話というのは、現在それが存在しないとしても、ステーブルコインなどについて、そういうことがあったときにどう考えるのかという問題が生じるので、受皿としては現在の時点で削るほどのことはないのではないかということだろうと思いますので、御検討いただければと思います。   ほかにございませんでしょうか。   お手が挙がっておりませんが、沖野さん、もうほかにはよろしゅうございますか。 ○沖野委員 少しややこしい話なので、自分でももう一度整理してからお話ししたいと思います。 ○道垣内部会長 分かりました。   それでは、現在、第16の破産手続等における譲渡担保権の取扱いについての議論を行っているわけですが、この点についてはもうよろしゅうございますか。   それでは、またお気付きになった点がございましたら遡っていただいても結構でございますので、議事としては先に進めさせていただければと思います。   部会資料46の第20、民事再生法の見直しから、第23、会社法の見直しまでについて、事務当局から説明をお願いいたします。 ○笹井幹事 第20に入る前に、休憩前に阪口幹事から御質問のありました第10の4と5の適用関係についてです。   阪口幹事の御質問は、まず、集合動産譲渡担保権者が実行通知をしたことによって第10の4の規定によって一部固定化が生じ、その後に、その固定化した動産に含まれる動産の全部又は一部について保全処分を行ったときに、言わば個別動産譲渡担保権がたくさんある状態であると捉えて5が適用されて、46ページの図のように、集合動産譲渡担保権Aに対して影響があるのかどうかという御質問だったかと思います。   確かに今のゴシック部分では、御指摘の問題について明確な文言上の解決が与えられているわけではないと思います。ただ、実質的に考えますと、固定化したとはいえ、元々集合動産譲渡担保権だったということがあり、かつまた一旦それが固定化している中で、更なる固定化をさせる必要もありませんので、結論的に言うと、4の規定によって一番最初の実行通知によって固定化が生じ、その後にそこに含まれるものについて保全処分が行われたとしても、他の集合動産譲渡担保権者に対して影響は生じないと考えるのではないかと思います。   ただ、休憩前にも申し上げましたけれども、それをどこまでゴシックに記載する必要があるのか、むしろその点は解釈でも対応できるのではないかという感じもいたしますので、もしどうしてもそれは書くべきだという御意見があれば、また別ですけれども、結論的には解釈で対応する方がよろしいのではないかと考えてはおります。 ○阪口幹事 阪口です。その部分に関して、解釈だということは異存ありません。ただ、そうやって考えていくと、第10の4と5の規律を分けることの合理性というのが、やはりもう一遍問われるのかなとも思っていまして、ここは、先ほども少し申し上げた部会資料37-2やその前の第38回会議にも少し議論があって、4と5は本当に区別すべきかという問題なのかなと思っているところです。 ○笹井幹事 4と5の内容を統一するとすれば、5に合わせていくということになるのかもしれませんけれども、そうすると、譲渡担保権者が思った以上に固定化の範囲が広がってしまうという問題が、やはりあるように思います。そうすると4と5で一応分けておく合理性はあるのではないかというふうに考えておりますけれども、今日の御指摘もありましたので、また少し考えてみたいとは思います。 ○阪口幹事 もう少し言うと、5のルールで、これも前に議論があったところですけれども、個別動産担保の場合に場所単位という概念が本当になじんでいるのかという気がします。一般債権者による差押えの場合は、場所単位主義というのは民事執行法規則99条で当てはまるのですけれども、個別動産担保権に基づく手続のときに、その場所という概念にどこまで意味があるのかという問題に帰着するのかなと思います。これは一度議論があったところだと思いますけれども、やはりこう分けてみると、本当にそこに合理性があるのかという気もして、5のルールを4のルールの方に収れんさせることも考えられないのかなという気持ちではあります。 ○道垣内部会長 この辺りのところにつきましては、この図の分かりやすさの問題も含めまして、前回からいろいろ議論があったところでございまして、阪口さんがおっしゃったことも、内容が変だというよりも、どういうふうにしてきれいなルールとして、分かりやすいルールとしてまとめるのかということとも密接に関係していると思いますので、最終的な文章化につきましては、なお更に検討していただく、あるいは説明の方法についても、なお検討していただくということにさせていただければと思います。その際、同一ルールにするのかといった話につきましても視野に収めながら、考慮に入れながら、御検討いただければと思います。   ほかにございますでしょうか。   ごめんなさい、それで、遡りましたが、先ほど申し上げましたように、次に第20から23の民事再生法の見直しから会社法の見直しまでについて議論の場を移したいと思いますので、その点についての御説明をお願いいたします。 ○淺野関係官 それでは、第20から第23までについて御説明いたします。   73ページの「第20 民事再生法の見直し」については、先ほどの第16の2とおおむね同様ですが、債権を目的とする質権の実行を禁止する命令が発せられた場合に、質権者は質権の実行をすることによる消滅時効の完成猶予を図ることができなくなることから、時効の完成猶予の規定を追加しております。   また、第21、第22及び第23におきましても、同様の理由から同様の規定を追加しております。   以上について御議論いただければと存じます。私からは以上です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、この点につきまして御意見がございましたら、お願いいたします。   この部分は、前回もさほど御異論はなかったと認識しておりますとともに、時効についての付加というのは念のために必要なことだろうと思いますので、特に御異論がなければ別のところに移りたいと思いますが、よろしゅうございますか。   ありがとうございました。それでは、次に部会資料46の第24、動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の見直しについて、議論を行いたいと思います。事務当局から部会資料の説明をお願いいたします。 ○遠藤関係官 それでは、第24について御説明をいたします。   80ページの2(3)について、競合する譲渡担保権を記録するために新設する目録制度の名称を「競合担保登記目録」といたしました。そのほかは実質的な変更はございません。   なお、根譲渡担保権の全部譲渡又は一部譲渡による譲渡担保権の移転の登記の申請について、譲渡人の承諾を求めないこととしています。これは、譲渡担保権設定者が目的物について有する権利の真正譲渡をすれば、登記上の譲渡人と実体法上承諾すべき根譲渡担保権設定者が異なることとなりますが、このような事情の有無は登記官が審査することはできないことから、譲渡人の承諾を求めることは適切ではないと考えられるためです。   以上について御議論いただければと思います。私からの説明は以上です。 ○道垣内部会長 この点につきまして、御自由に御議論いただければと思います。いかがでしょうか。 ○伊見委員 伊見でございます。24の2(3)競合する譲渡担保権を記録する競合担保登記目録制度についてで、ページでいうと80ページの2行目のイのところなのですけれども、従前申出となっていたものを申請と修正されていますが、ここには何か実質的な意味合いがあるかどうか教えていただければと思います。   二つ目としまして、同じところで競合担保登記目録の作成を申請することができるという書きぶりになっておりますけれども、これは競合担保である旨の申請をして、登記官が目録を作成するという流れかなというイメージをしておりましたので、作成の申請という書きぶりに少し引っ掛かりを感じました。何かここに意味があるようであれば、教えていただければと思います。   最後は、これは記載の問題だと思いますが、その次の行のウから始まるところの、上記イの申出、これは申請ということで御修正いただくことでよろしいかと思いますので、念のためコメントさせていただきました。 ○道垣内部会長 事務局から何かございますでしょうか。 ○笹井幹事 一つ目の御質問ですけれども、元々「申出」になっておりましたのは、この競合担保登記目録をどういうものとして位置付けるのか、登記制度、登記の一種と位置付けるのか、登記とは異なるものとして位置付けるのかということについて、法的な性質自体の整理がまだできておらず、「申出」としておりましたけれども、そこは「登記」として位置付けるという整理でよろしいのではないかと考えるに至ったところから、ほかの登記と合わせて、「申請」ということにしたものでございます。ウの「申出」は元の記載が残っておりますので、こちらを「申請」と修正する必要があると思います。ありがとうございました。   作成の申請については、目録という形式で登記がされるということを踏まえてこのような表現をしたもので、必ずしもここに何か大きな意味があるというわけではないと御理解いただければと思います。 ○伊見委員 ありがとうございます。 ○道垣内部会長 言葉遣いも精緻化していかなければならない時期になっていると思いますので、よろしくお願いいたします。   ほかにございませんでしょうか。今説明をくださった以上には大きな変更はありませんので、これで御異論がなければこういう方向で検討していきたいと思います。それで、一応このたたき台3の最後まで行ったのですけれども、御承知のように、だんだん予定されている残り時間というのは短くなってきております。そうしたときの議事日程の調整の問題もありますので、論点がある場合には、頭出しだけでも早い段階でお願いできればと存じます。沖野さん、まとまっていないとおっしゃいましたが、まとまっていなくても結構でございますので、お願いできればと思います。 ○沖野委員 ありがとうございます。それではということなのですが、少し気になっておりましたのが、集合債権譲渡担保権の実行という点についてです。現在は48ページにおきまして、取立権のところが具体的な規律が置かれております。ここでは、実行段階において既に存在しているものだけではなくて、将来分にわたっても設定者は取立権を持たず、担保権者が持つということになり、この後については、元々が特定範囲も債権の発生原因や始期とか終期で特定されておりますので、そういうもので発生すると、どんどん将来の債権は発生していき、それについては全て担保権者が取り立て、そして、恐らく被担保債権にそのまま充当していくということなので、結局将来にわたって被担保債権が完全に消滅するまで実行が掛かるというのが第12の1の示す実行であろうと考えられます。   そうだとしますと、これは取立てのところだけ書いているのですけれども、帰属清算ですとか処分清算もそうなりますので、全て将来にわたって実行が掛かるというのが集合債権譲渡担保権の実行であるということになると思われます。そうしたときに、最後どこで終わったのかというようなことを考えなくていいのかということと、もう一つは、一部実行というのが可能なのかどうかということです。一部だけ帰属させるとか、一部だけ譲渡するとか、さらには、余り考えにくいのですけれども、今あるものだけ実行を掛けて、あとはそのまま取らせるというようなことがあり得るのか、あり得ないのか、そういったことは全くないという想定でいいのか、もしあり得るとするとどうなるのかということを考えておく必要はないのかというのが疑問点ということになります。 ○道垣内部会長 差し当たって、何かございますか、それとも次回までの検討対象にしますか。 ○笹井幹事 そうですね、少し考えてみないといけないかもしれませんが、直感的なところを申し上げますと、実行が取立てによって行われる場合のメカニズムは御指摘のとおりで、取立てという形での実行が行われて、それを被担保債権に充当していくということになるのだと思います。目的である債権が複数あるので、順次取り立てていって、被担保債権が全て満足を得たときに終わるということになるのだと思います。   この部分について一部実行することができるかどうかというお尋ねについてです。一部実行については集合動産譲渡担保については規定を設けており、集合債権については設けておりませんけれども、これは、集合動産については重複して取れないという性質があるものですから、分割の仕方について一定の規律を設けているのに対し、債権の場合はそういう性質がないので規定を設けなかったものです。ただ、これは集合債権について一部実行ができないということではなくて、むしろ自由に一部実行、自分の必要な部分だけを実行していくということができると理解をしております。   そうすると、次に、48ページの第12の1の取立権限の喪失部分を一部分に限定することができるかどうかが問題になってきますけれども、これは事前に十分検討していたわけではないのですが、きちんと特定がされていれば一部分についてだけ取立権限を喪失させるということもできる、そういう通知も有効だと考えてよいのではないかと思います。   次に、帰属清算、処分清算についてですが、今、沖野委員からは、帰属清算も取立てと同じように、取立てが終わるまで実行手続が続いていくという御指摘だったのですが、ここはもしかすると考え方が分かれ得るところなのかもしれませんが、転付命令があった場合と同様に、債権を譲渡担保権者に帰属させる、あるいは第三者に債権を譲渡するということによって、取立て行為自体はその後行われるのだけれども、実行の対象となる債権の経済的な価値を担保権者が取得し、これによって被担保債権が満足される、もしその評価額が被担保債権額を上回る場合には清算金の支払義務が発生するということになるのではないかと考えておりました。   したがいまして、金銭債権の評価額が誤っていれば、転付命令と同じだとすると、第三債務者の無資力リスク等を担保権者が負担することになり、それが評価額の方に反映されてくるということではあろうかと思いますけれども、将来的に現実に幾ら回収することができるのかは回収して初めて確定するので、そもそもそういう担保権実行を担保権者が選択するかどうかという問題はあるかもしれませんけれども、例えば処分清算を考えれば、担保権者は第三者から債権譲渡の対価を受け取って、その対価で満足を受け、それが被担保債権額を上回った場合には精算金を支払うということになりますし、帰属清算においても、処分がされないというだけで、担保権者はその評価額をもって被担保債権は満足を受けて、それで実行としては終了するということになるのではないかと思います。 ○道垣内部会長 検討していけば、転付命令的に、帰属清算方式をとったときに、評価額よりもたくさん取得できたら清算しなければいけないのかということですね。それが正しい評価だったら、その評価額で帰属するわけであり、動産でも何でも、その評価額が、その後高騰しようが下落しようが、その時点における評価額として正しければ、それでいいわけだから、別にたくさん取れたからといって清算しなくていいし、少なくしか取れなくても、それ以上は取れないというだけなのではないですか。 ○笹井幹事 私が申し上げたのは、そういうつもりでして、ただ、その時点での評価額が被担保債権を上回ったときには、もちろん清算金が発生するということです。あと、私が転付命令的にと申し上げましたが、これは券面額で消滅するということではなくて、その評価額において消滅するという趣旨です。 ○沖野委員 ありがとうございます。そうだとしますと、恐らく帰属清算、処分清算については、評価額を出すためには終期がいつかということをやはり言う必要はあるのではないか、それとも終期不特定で、更に評価額ということなのかもしれませんけれども、そこがどういう形に、これから発生していく分についてどうなるのかということが、どのくらい現実にそういうものがあるのかというのはあるのですが、少し気になったということと、それから、取立てについても一部実行するということが本当にあるのかという感じではあるのですけれども、あえてそうしたいのであれば妨げないということで、それはもう最初の実行通知といったらいいのでしょうか、そこで特定することで、取立権についても、それを超える部分についてはそのまま設定者が持つ形で、ただ担保は及んでいて、実行するのはそこまでだというようなことが担保権者の選択で可能となると今伺いまして、そういうことを含意しているということかなと思いました。そのように今の御説明を理解したということです。   将来にわたっても取り立てていくときに、恐らく現実には、どれを取り立てて被担保債権がどれだけ減っていったかということは通知がされるのだと思うのですけれども、完了したときには通知するとかそういうような話は、一般的な期待される行動としてそうなるのだということでよろしいのか、特に何か規定を置く必要があるのかというのが少し気になったことではあります。いつ終わるのかということだと思うのですけれども。 ○笹井幹事 まず、一つ目の問題については、元々集合債権譲渡担保においては何らかの形で、つまり個別の債権、どの債権が譲渡担保の目的になっているのかということを特定しておかなければいけませんので、そこでその終期、例えば「令和6年何月何日から令和8年何月何日までに発生する債権」みたいな形で特定されていることが多いのではないかと思います。当然のことでありますけれども、担保権が及んでいる債権についてしか実行できませんので、そこで特定されていることが多いのではないかと思います。   確かに、「A社とB社との間でこれこれの基本契約に基づいて発生する債権全部」みたいな形で、終期を定めないこともあり得るかもしれませんので、そういう場合について終期をどうするのか、あるいは帰属清算、そういったもので帰属清算が本当に使われるのかという問題もなおあるかと思いますが、帰属清算をするときにどう評価するかという問題は確かにあるのかなと今、御質問を受けて思いました。ここは、ただ、理屈として言えば、やはり将来、将来発生する債権の現在価値はその発生時期が先になるほど小さくなっていくので、どこかでその全体としての価値を評価せざるを得ないのかなと思います。処分清算においても、その処分先との間で、その評価を踏まえて譲渡がされるのだろうと思いました。   一部の取立て方式における一部の処理についてですけれども、これも十分によく考えていたわけではありませんけれども、通知において取立権限の喪失を一部分に限定するとすれば、恐らく一部分のみで被担保債権を全て回収できると担保権者が判断した場合かなと思います。そうだとすると、残された部分については引き続き設定者が取立権限を有し、しかし、期待に反して取立権限を喪失させた部分だけでは被担保債権全額に足りなかったということになれば、また追加的に取立権限を失わせるなどをして、譲渡担保権者が自ら取り立てていくということになるのではないかと考えます。   最後の部分は、十分に御質問の趣旨が理解できなかったかもしれませんが、取立てが終わったときの通知については特段今、規定がないのに対し、処分清算、帰属清算については、先ほど申し上げたような形で終わるとすると、帰属清算の通知等によって設定者に必要な情報が与えられることになります。取立てについては、仮に全部取立権限が失われたということになると、一旦譲渡担保権者に全ての取立権限が集中するということになりますが、被担保債権の回収が終われば、それは担保権が消滅したということで、精算金があれば精算金を支払う、まだ取り立てていない譲渡担保債権があるということであれば、担保権の負担がなくなる結果として設定者にその取立権限が戻ってくることになりますので、法律で規定するのか運用に委ねるのかというところはあるかもしれませんが、その辺のコミュニケーションは担保権者と設定者の間で、いずれにしても行われることになるのではないかと思いました。取立権限の喪失が一部にとどまる場合でも、そこは基本的に同じなのかなと思います。 ○道垣内部会長 譲渡担保のこの制度において、被担保債権が弁済されることによってその担保が消滅したときにどうするのかという話は、例えば、抵当権ですと実体的に消滅して、あとは登記手続の問題として行うわけですね。それは実体的に消滅しているのだから何らかの手続をするということなのでしょう。これに対して、動産債権譲渡登記も用いていないという場合に、戻し譲渡みたいなものをするのかというと、それは多分、実行によって終わった、2年分取っていたところを1年半分取ったところで被担保債権が回収できて、あと半年分はそもそも譲渡担保権者が取らなくてよいということになって戻されますよといったときに、戻し譲渡の何かの手続が行われるのかというと、被担保債権が別個に弁済されたときと同じ話になるので、少し難しいのかなという感じはします。ただ気持ちとして、分からないと嫌だよねという気持ちはよく分かるのだけれども、理屈上はただ単に効力が消滅するということなのだろうとは思いますけれども。 ○阪口幹事 今の部会長の御発言に関係して、例えば100万円の債務を担保するために300万円の債権を譲渡しました、実行されました、債権者が取り立てました、100万円回収したので、ではもう担保の役目は終わったねというときに、ほったらかしでいいかというのは、私は、設定者の方から、元担保権者といえばいいか旧担保権者といえばいいか、に対して債権譲渡通知のようなものを送れという請求ができるのではないかと思っていたのです。不動産登記でいえば抹消登記請求に類するものです。そうしないと、第三債務者はいつまでも担保権者が権利者と思い続ける可能性があり、今回は担保債権を超えても回収できることが明確になっている中で、いつまでもそちらにさえ払えばいいというふうに見えてしまわないかという危惧です。私は、確定日付ある通知で戻せ、みたいなものを求めることができると思っていたのですけれども、そうではないのでしょうか。 ○道垣内部会長 今、阪口さんがおっしゃったのと、私が申し上げているのとは実は矛盾していなくて、設定者がそういうことを求める権利があるかという問題と、譲渡担保権者の義務として、終わった瞬間に何らかの通知を出さなければならないのかというのは、また別問題だろうと思うのです。確かに第三債務者に分からないままで譲渡担保権者に払われてしまったら、後の処理が面倒だ、だから、もう終わりましたよという通知をきちんと出すように請求するというのは、抵当権の抹消登記請求と同じように、あるのではないかというのは、そのとおりだと思うのですけれども、終わったときの手続としてそれを法定化して、第三債務者に対して、もう終わったから関係ありませんよということをいうふうにするのかというと、それはいろいろなところに跳ねてくる問題であって、そう簡単ではないかなということを申し上げただけです。もちろん、それでもそうすべきだという意見はあるのかもしれません。   ほかにございませんでしょうか。   というわけで、今のところも終わったわけではなくて、次回とかのために更に事務局を中心にして検討していただくために問題を出していただいたわけでございまして、だんだん先送り、先送りとしていてはなかなか済まないことがございますので、ここの点は是非検討しろという問題につきまして、現在まだ指摘されていない問題点等がございましたら、今日この場でも結構でございますし、メール等、この部会の外であっても構いませんので、是非お伝えいただければと思います。   ほかにございませんでしたら、本日の議論はこの程度にさせていただきたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。   ありがとうございました。次回の議事日程等につきまして、事務当局から説明をしていただきます。 ○笹井幹事 本日もありがとうございました。個別論点を前回、今回と取り扱っていただき、また、部会資料46のたたき台3を2回で御審議いただきましたので、個別論点としてはこれで終了ということになります。次回は前回及び今回の審議を踏まえた新しい資料として、たたき台4をお送りしようと思います。 ○道垣内部会長 では、皆さん、だんだん年末になりますけれども、次回もよろしくお願いいたします。本日はどうもありがとうございました。 -了- - 29 -