法制審議会 民法(遺言関係)部会 第5回会議 議事録 第1 日 時  令和6年10月1日(火) 自 午後1時30分                      至 午後5時31分 第2 場 所  東京地方検察庁総務部教養課会議室302号室 第3 議 題  1 参考人ヒアリング         2 遺言制度の見直しにおける論点の更なる検討⑴ 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○大村部会長 それでは、予定した時刻になりましたので、法制審議会民法(遺言関係)部会の第5回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席を頂きまして誠にありがとうございます。   本日もウェブ会議の方法を併用して議事を進めたいと思いますので、ウェブ会議に関する注意事項を事務当局の方で御説明を頂きたいと思います。 ○戸取関係官 これまでの部会と同様のお願いとなりますけれども、念のため改めて御案内させていただきます。ウェブ会議を通じて参加されている皆様につきましては、ハウリングや雑音の混入を防ぐため、御発言される際を除きマイク機能をオフにしていただきますよう御協力をお願い申し上げます。御質問がある場合や審議において御発言される場合は、画面の下側に表示されている挙手ボタンを押してください。そして、御発言の際はマイク機能をオンにした上で、お名前をおっしゃってから発言されるようお願いいたします。なお、御発言が終わりましたらマイクをオフにし、画面の下側の挙手ボタンを再度押して、挙手を下げていただきますようお願いいたします。 ○大村部会長 ありがとうございました。   それでは、本日の審議に入ります前に配布資料と、それから本日の進行についての説明を事務当局の方からお願いいたします。 ○齊藤幹事 配布資料として部会資料5「遺言制度の見直しにおける論点の更なる検討(1)」をお配りしております。部会資料の内容につきましては、本日後半の審議の中で事務局から御説明をいたします。   また、配布資料として参考人の先生方から御提供いただいた資料が合計4点ございます。こちらについては、本日前半のヒアリングにおいてそれぞれの参考人の皆様から御紹介を頂きたいと思っております。また、席上のタブレットには委員等名簿及び議事次第を格納しております。   次に、本日の進行でございますが、まず、前回会議である第4回会議の終了後に、前回会議において出席を頂きました三菱UFJ信託銀行の宍倉参考人より、齊木委員から頂戴した御質問に対する回答について若干訂正をしたい旨の御連絡を頂戴しております。ですので、その訂正内容につきまして、代わりまして事務局から御説明を差し上げます。   次に、本日の本題の前半であります参考人ヒアリングとして、参考人3名の先生方に御参加をお願いしております。本日御説明を頂く順番に御紹介いたしますと、名古屋大学大学院法学研究科教授の金子敬明様、大阪大学大学院高等司法研究科教授の青竹美佳様、横浜国立大学大学院国際社会科学研究院講師の柳迫周平様です。   最初に、金子参考人からイギリスにおける遺言の方式について15分程度で御紹介を頂き、そこで一旦質疑応答の時間を設けます。次に、青竹参考人からドイツにおける遺言の方式について、最後に、柳迫参考人からフランスにおける遺言の方式について、それぞれ同様に御説明と質疑応答の時間とを設けたいと考えております。最後に、イギリス、ドイツ及びフランスにおける遺言の方式の全体につきまして、まとめて質疑応答の時間を設けるという進行を予定しております。   ここまででおおむね2時間前後のお時間を頂戴することを考えておりますが、時間の配分は目安でございますので、参考人及び委員、幹事の皆様におかれましては時間のみに縛られる必要はございませんので、資料の御紹介や御質問等を頂ければと考えております。   参考人ヒアリングを終了しました後は、休憩を挟み、部会資料5に基づき「遺言制度の見直しにおける論点の更なる検討(1)」について御審議を頂くことを予定しております。 ○大村部会長 ありがとうございました。   それでは、前回会議終了後に三菱UFJ信託銀行の宍倉参考人より頂戴をした訂正の内容につきまして、事務当局の方から御説明をお願いしたいと思います。 ○戸取関係官 前回の会議終了後に、参考人である三菱UFJ信託銀行の宍倉様より、齊木委員から頂戴した御質問に対する回答につきまして、訂正したい旨の御連絡を頂戴しました。事務当局におきまして訂正内容を聞き取っておりますので、本日の審議に先立って訂正内容を御説明いたします。   前回、齊木委員から、マイナンバーカードに格納された署名用電子証明書を用いた電子署名の措置を講じた場合、認証局に問い合わせなくとも、当該電子署名が誰の電子署名であるかを確認することができるのではないかとの御質問がございました。この点につきまして部会では、認証局に問い合わせなければ確認することはできないとお答えしましたが、正しくは齊木委員の御指摘のとおりでございました。   つまり、マイナンバーカードに格納された秘密鍵を用いた電子署名の措置を講じた際には、JPKIクライアントソフト等の電子署名用ソフトが電子署名の措置を講じたファイルに署名用電子証明書を添付します。この電子証明書には、公開鍵情報に加えて基本4情報、つまり氏名、住所、生年月日及び性別が含まれておりますので、認証局に対する問合せをせずとも、当該電子証明書内に含まれている基本4情報を確認することで、当該電子署名が誰の電子署名であるかを確認することが可能です。これに対し、電子署名の有効性検証については、ファイルに添付されている電子証明書が住所変更等により失効していないかといった情報を当該証明書の外で管理しているので、認証局に問い合わせなければ行うことはできないこととなります。   訂正内容の説明は以上でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。今御説明を頂いたような訂正をしたいということでございますので、そのようにさせていただきたいと思います。   それでは、本日の審議に入りたいと思います。先ほど事務当局の方から御説明がありましたように、まず前半で参考人のヒアリングを行いたいと考えております。本日、金子参考人、それから青竹参考人、柳迫参考人におかれましては、大変お忙しい中、詳細な資料を御準備いただきました上でこの部会に御参加を賜りまして、誠にありがとうございます。参考人の皆様から諸外国における遺言法制についてお話を伺い、今後のこの部会での検討にいかしてまいりたいと考えておりますので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。   それでは、まず金子参考人から御説明の方をお願い申し上げます。 ○金子参考人 名古屋大学で民法を担当しております金子と申します。本日はこのような貴重な機会を頂きまして誠にありがとうございます。早速イギリス、正確にはイングランド及びウェールズということになりますけれども、そちらにおける遺言の法制について御説明をしたいと思います。資料がお手元にあるかと思いますし、あと画面共有もされているかと思います。   それで、まず方式要件についてどのようになっているかといいますと、1837年に制定された法律が現在でも基本的には妥当しているということで、その法律の9条1項というところに規定がございます。日本と大きく異なるのは、自筆証書遺言のようなものはないということで、つまり証人なしに作るということはできないと、特別方式の場合はまた少し話は違いますけれども、特別方式はかなり局面が限定されていますので、したがって一般的には証人2人というのが必ず必要だということになっているという特徴がございます。   それで、9条1項に(a)から(d)まで要件があり、基本的には紙ですけれども、in writingという要件についてはコンピューターのファイルでもよいと解釈されております。それで、遺言者と証人2人が同じ場所にいるということが想定されていて、遺言者が署名すると、それは遺言に効力を与える趣旨のものであると見受けられると、その上で、証人がきちんとその遺言者が署名をしたのであるということを証する趣旨で、証人がそれぞれ署名をすると、これで完成するというやり方になっております。   それで、今、資料1ページ目の真ん中ぐらいですけれども、署名としては遺言に効力を与える意図を示すものであればよくて、だからイニシャルとか拇印であっても差し支えないということになっております。また、署名を遺言書のどこに書くかということも、かつては規定があったのですけれども、今ではどこでもよいということになっております。   それから、証人ですけれども、証人が2人必要だということになっております。それで、面前(presence)という言葉がありますけれども、面前としては、物理的に同じ場所にいるということだけではなくて、きちんと目で見ることができる、具体的には視覚を遮るものがないということですね、それが必要だということとされています。   委員の先生方からお聞きになりたいことの幾つかを事前にお聞きしていますけれども、証人に関する適格要件というのがあるかという御質問がありました。これについては特に欠格事由があるわけではなくて、ただ、証人になった人やその配偶者は当該遺言から利益を受けることはできないと、そういう制約があるということになっております。   それで、資料1ページ目の最後ぐらいですけれども、コロナのときに、人が集まれないということがありまして、そこで、見届けるという要件に関しましてビデオコンファレンスの方式でもよいということで規定が設けられています。これは期間限定になっていまして、2020年1月31日から2024年1月31日までに作成された遺言という限定が付いており、この期間の延長はしないということがもう決まっております。それで、一応このようなやり方もできるということになっていたのですけれども、実際には法律家の方では必ずしもこれを使ってやるということが積極的に推進されたわけではなく、事務弁護士にアンケートがされて、そのうちの回答者の14%ぐらいしかこれを使わなかったということがあります。従来のやり方からすると、少しイレギュラーだという意識が法律家の間にもあるようであります。   では、資料2ページ目の方に参ります。これも御質問の中に、遺言の効力が争われた場合における有効性判断のための手続の在り方、その際に証人が果たす役割、主張立証責任等というお尋ねがあったので、手続には十分明るくないのですけれども、少し試みに御紹介をいたします。   イギリスの相続制度の特徴としては、日本とは違いまして、相続開始と同時に相続人にいきなり遺産が帰属するということはないということがあります。まずは、資料では人格代表者という訳を充てておりますけれども、人格代表者に一旦帰属して、それで、清算という言い方がいいかどうかはともかくとして、その人がある程度債務をきちんと支払って、その人が、遺言に基づいて利益を受ける人や、あるいは遺言がない場合に法律上遺産を受けることになっている人に分配するという手続をして、それで移転を受けて初めて、遺言に基づいて利益を受ける人とか、遺言がない場合には法律上遺産を受けることになっている人のものになる、そういう仕組みになっております。   それで、普通は遺言があると、遺言執行者も指定されているわけですけれども、遺言執行者として指定されている人は、普通は事前に遺言執行者に指定したぞということは知らされています。そうすると、遺言書がきちんとあれば、その人がそれを裁判所に出して、資料ではこれを検認手続と書いておりますけれども、基本的には訴訟を伴わずにgrant of probateという検認状、これは裁判所の命令ですが、これが出されます。そうすると、その遺産を管理処分して遺言で利益を受ける人とかに分配するという権限が遺言執行者に与えられる、そのようになっているわけです。   多くの場合には訴訟を伴わずにこの検認状というものが出されるわけですけれども、ただ、方式違反で無効になる比率というのはどれぐらいあるのかという統計をいろいろ調べてみたのですけれども、なかなか評価が難しいところがあります。かつての調査で0.2%という数値が出ているものもありますけれども、実際には遺言書を出しても裁判所で検認状を得られないだろうと思われるときは、最初から出さないこともあります。もう50年ぐらい前の調査での0.2%という数値は、裁判所に出したけれども拒絶されたという場合の数値ですので、実際に方式違反で無効の遺言がどれぐらい作成されているのかという比率を出すのはなかなか難しいところがございます。   それで、普通は遺言が特に問題なさそうであるということであれば、半行政的な手続で自動的に検認状というものが出るということになりますけれども、そこに少し物言いを付けたいという場合があります。例えば、自分の方が新しい遺言を持っているとか、そういう場合です。そういう場合にどうなるかというと、資料にcaveatと書いてありましてなかなか訳しづらいのですけれども、とても大ざっぱに言うと、戸籍の不受理申出に近いかなと思います。つまり、そのまま進めては駄目だということを登録する、そうすると、これはコンピューターで登録されることになっていて、被相続人単位で手続が進行するので、これこれの被相続人についての検認手続に待ったを掛けるものを出すということができるということになっています。   その上で、手続を進めようとする側が、この資料でいうとPという者になりますけれども、Pが手続を進めようとしたところ、コンピューターにQが出したcaveatが登録されていましたら、そこでPとQが対立する手続が立つわけです。ここで、PがQにチャレンジしていったときに、Qの方で受けて立つかどうか決めるのですが、やはりやめようということで、Qがcaveatを引っ込める、あるいはPに応答しないということになれば、Pが進めていた手続がそのまままた進行するということになりますし、そうでなくて、Qがきちんと争おうということになれば、そこで初めて、資料にprobate claimと書いてありますけれども、probateに関する訴訟手続に進んでいきます。この場合は訴訟になるわけですけれども、訴訟になる事例は、訴訟費用の問題などもありまして、必ずしも多くありません。   それで、手続の在り方については私も十分詳しくはないわけですけれども、2ページ目の真ん中より少し下ぐらいに書いてあるところですけれども、基本的には通常の訴訟なのですが、通常の訴訟と少し違う点として、裁判所はこの遺言で検認状を出すことが正しいことかという視点を持つため、対立当事者が、例えば何か合意ができればもうそれでいいと考えるのか、そうでないのかという点について、そうでないと考えるという側面があるということのようでして、その意味で糾問的な性格がある、完全に両当事者において処分ができるものとは考えられていないというような記述が本にありましたので、一応御紹介をしておきたいと思います。   続きまして電子遺言の話に移りたいと思います。2ページ目の最後ぐらいですけれども、ローコミッションという、政府とは独立なのですけれども公的な、予算とかは政府の方から出ているというところがありまして、そこが法改正の検討プロジェクトを組むということがございます。2017年ぐらいに掛けて、先ほど申しましたように1837年にできた法律がそろそろ現代化が必要なのではないかということで、プロジェクトで遺言法の改正というのに取り組みまして、そこで試案が出て、その試案に対して意見を募集するということがありました。意見募集した後、最終報告書というのが出て、そこには条文の素案みたいなものが一緒に付いているのが普通なのですけれども、諸般の事情でほかのプロジェクトを優先させるということになったりして、少しもたついている間にCOVIDになってしまったという経緯がありました。COVIDの間に、先ほど申しました遠隔での見届けについて改正があったりしまして、電子遺言についてはもう1回少し考え直そうということになり、追加の試案というのが2023年に出ました。これは意見募集は終わっておりまして、現在は恐らくその意見を分析した上で、最終的にどういう案を出そうかということを検討中のようでして、来年の初頭には最終報告書が出る見込みのようであります。   電子遺言というものについては、3種類あります。α、β、γと書いてありまして、2ページから3ページに掛けてでございます。αは、準備段階で、例えばワードプロセッサーで文案を書いて、それをプリントアウトして、最初に御説明した署名とか見届けをすると、そういうやり方が、これも電子遺言として考えられるけれども、これは現状のイギリスの法制度で何の問題もなくできるということがございます。なので、イギリスで電子遺言として更に何か規定を考えるとすると、3ページ目の冒頭にございますβ、γという形のものになります。   βは、遺言の完成までを電子署名などを用いて電子的に行って、更にそれをプリントアウトして1通の原本にするというもので、これが電子的に完成された遺言という名前になっています。γは、更に進んで、遺言完成後の保管とか、先ほど申しました検認手続までを全部電子的に行うというものも考えられる、これを完全電子遺言と呼んでおりまして、このβとγについてどうするかということをローコミッションというところで検討しているということであります。   ただ、かなり冷淡な反応を受けているのかなという感じのところがありまして、2023年の追加試案に対する反応というのはまだ公表されていないのでよく分からないのですけれども、2017年段階の試案についての意見については、2023年の追加試案の中で、どういう反応があったということが多少触れられているのですが、電子遺言の需要はないという意見が半数程度あるというようなことが書いてあったりします。それでもあえてローコミッションは、これはいいチャンスなので、電子遺言について少し何か規定を設けておくということも考えていいだろうということで、今やっているというわけですけれども、かなり懐疑的に見られているというところは否めないのではないかと思われます。   それで、2023年の試案でどのような方針・提案がされているかということで、一応、5点に分けて3ページから4ページに掛けて書いてございます。1番目は、取引行為の場合の文書、特にディードという捺印証書と呼ばれるものがありますけれども、それと違うということをどうやら強調したいようです。ディードと呼ばれるものについては別のところで検討がされていて、そちらの方では、現状では取引の両当事者がサインをして、そのサインについてそれぞれ証人が要るという、そういう方式になっているのですが、電子署名を導入する際に、高度な電子署名であれば特に証人とかは要らないのではないかという検討がディードの方ではされているということがございまして、それとは遺言は少し違うのですよということを強調したいのではないかと見受けられます。   具体的には、取引行為と違って、遺言には1に書きましたような特徴があると、だから普通の取引上の文書とは少し性質が違うのだということが強調されているというのが一つ目の点であります。   それから、二つ目は立法の在り方として、最初に御紹介しました現行の遺言の方式要件の一個一個を電子版に置き換えるという法制度の在り方もあり得るわけですけれども、それは余りよくないとしておりまして、むしろそれらの方式要件が全体としてどういうことを確保しようとしているのかという、その機能面から考えていくべきだと、そういうことを言っております。   それで、機能面についての話が3番目のところになりますけれども、方式要件には四つぐらい機能があると。この四つの機能はアメリカの学者が分析しているところを基にしたものなのですが、証拠機能、注意喚起機能、キャナライズ機能というのは余りいい訳ではないかもしれませんが、具体的に後で御説明します。それから、保護機能という四つがあるとした上で、それぞれの機能を確保するためにどういう要件を立てればいいかということを検討しております。   1番目の証拠機能とは何かというと、3ページに書きましたとおり、当該遺言を作成したのは遺言者であり、それに書かれているのは遺言者の意思であるという証拠を提供する機能であるということで、この観点から考えると、署名要件については高度な適格電子署名という、現在では電子署名に3段階あるうちで一番高度だとされているものを用いるとしても、そこにあるパスワード等をほかの人がシェアしているという場合があり得るとか、生体認証が完全ではないということも考えると、それだけでは不十分であって、遺言完成時における遺言者のアイデンティティーの確認のための別の要件と組み合わせるということも考えるべきではないかとか、あるいは、目で見える形で書くという要件につきまして、紙だと可読性が長期に確保されますけれども、コンピューターのファイルですとそうとは限らず、媒体が劣化したりするということがあり得ますので、電子遺言については登録を要件とするということが考えられていいのではないかということを議論しています。   それから、2番目の注意喚起機能というのは、遺言を作成するのは重大な性質の行為だということについて遺言者の注意を向けさせるという機能ですが、これについては4ページ目の最初になりますけれども、証人2名以上による見届けという要件も、遺言作成のある種の儀式性ですね、非常に重々しい行為であるという点において、重要ではないかということを言っておりまして、ただ、証人という制度そのものを維持するのがいいというところまでは断言はしていません。やや提案に具体性が欠けているところも見受けられますけれども、要するに、先ほど申しましたように、取引文書の場合、ディードの場合には、適格な電子署名があれば、それで本人が書いたことが分かるのだから、それ以上特に証人とかは要らないのではないかという議論がありますけれども、そういう議論に対して抵抗を示したいということのようで、やはり何か追加的な要件が要るのではないかということが言われています。   それから3番目の、先ほどキャナライズ機能と申しましたものですけれども、これは一定の方式があることによって標準的な型に文書が誘導されると、そういう機能のことをキャナライズ機能と呼んでいますけれども、これについては電子遺言でも問題なく満たされるだろうということを言っております。   それから、最後に保護機能として、遺言者を詐欺や強迫から守る機能というのが方式要件にあるのではないかという議論がされていまして、これについてもやはり適格電子署名というのがありさえすればもうそれでよいという考え方を採るべきではない、見届けるという要件も保護機能の点で大きな役割を果たしているのではないかということが言われています。   以上が三つ目でして、あと二つありますが、四つ目については、技術的に中立なルールを設けるべきという立場から、特徴や機能性を決めるべきであって、特定の技術に依存した要件を設けるべきではないのではないかということを言っています。   それから、最後の五つ目のビデオ遺言についてですけれども、これは先ほどの四つの機能という観点からすると、どれも満たさないのではないかと。例えば、ディープフェイクという技術が2017年から2023年の間に大分発展したということがありますけれども、そのようなことにも言及がありまして、ビデオ遺言については有効な遺言として認めるべきではないだろうということを提案しています。   それで、以上をまとめた形で、4ページの一番最後に、電子署名以上にどういう追加的な要件ということがあり得るかということで、こういうことがあり得るかもしれないという書き方になっておりまして、単なるブレインストーミング的アイデアにすぎないと思いますけれども、そこに書いたようなことが追加的な要件として考えられるのではないかということが言われております。   以上が2023年の追加試案についての内容の御紹介ということになります。   では、以上でイギリスの遺言制度についての御紹介を終わりにいたします。御清聴ありがとうございました。 ○大村部会長 どうもありがとうございました。   それでは、今の金子参考人の御説明について御質問を伺いたいと思います。御質問のある方は挙手をお願いいたします。 ○相原委員 どうもありがとうございました。相原と申します。4点ほどお伺いさせていただきたいと思っています。   今、先生からイングランドとウェールズを中心としたイギリスの遺言制度についての御紹介であると伺いました。イギリス自体の遺言書の作成の割合について、先生が御存じの範囲で、利用が日本より多いのか、少ないのか、教えていただきたい。イギリスは7,000万人弱ぐらいの人口で、70万人ぐらいが1年間の死亡者数かなと想定したときに、大体どのぐらい遺言書を作っているのかというのを知りたいと思った次第です。   2点目が、証人のことなのですが、先ほど利益を受けることができない、いわゆる利益を受けることが証人の欠格事由となるということだと思うのですけれども、この場合の利益について、いわゆる直接的な利益だけが想定されているのか、それとももう少し広い範囲なのか、何かもしお知りになっていることがあれば教えていただきたい。少し具体的に言いますと、例えば日本の場合だと、施設に遺贈をしたいといったときに当該施設の職員が証人になれるのだろうかとかいう質問です。   3点目が、先ほど電子遺言についての想定の問題の中で、三つ、α、β、γ等と御紹介があった後のところに、需要があるとしても、電子的に完成させることの不便さや費用を上回るとは思えないという回答があったというところですが、この適格性の厳格な電子署名というのは、イギリスでも不便であるし、それなりの費用を要するというものなのでしょうか。そういう理解が一般的なのでしょうか。それが3点目です。   それから、元に戻って、最後は確認なのですが、電子遺言のαの場合、現行法でも問題なく可能、つまりプリントアウトしたものに署名して完成させるという、これが現行法でも問題なく可能という場合は、当然これは証人を必要とするという前提で、問題なく可能という理解でよろしいのか、確認でございます。   以上です。お願いいたします。 ○大村部会長 ありがとうございます。4問ありましたので、それぞれコンパクトにお願いいたします。 ○金子参考人 まず、最後の4点目ですけれども、これは御指摘のとおりで、もちろん証人は要るということです。   それから、1番目の統計ですね、遺言の作成割合ですけれども、これは報告書の方には少し書きましたけれども、死亡者の4割程度は無遺言で死亡すると推測されていると言われています。年間で20から25万人ぐらいが無遺言であると推測されているということです。   それから、2番目の御質問ですけれども、証人は欠格ではないのですね。きちんと証人要件を満たしていて有効な遺言なのだけれども、その遺言で財産の処分を受けるということができないと、そういう趣旨になります。   それから、3番目の適格電子署名ということですけれども、これについては資料の方ですと3ページの真ん中辺りの1というところに少し、最後の方に書きましたけれども、これは少なくとも2017年の段階ではほとんど普及していないということがありまして、ビジネスの方だったらまた話は別だと思うのですけれども、個人が遺言を書くためだけに、例えばこれを取得するということは余り考えられないのではないかと、そういう受け止めがされているということでございます。 ○相原委員 ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございました。   ほかにはいかがでしょうか。 ○隂山委員 隂山でございます。ありがとうございました。2点ほどお伺いをさせていただきます。   1点目ですけれども、「追加的要件のアイデアのまとめ」といたしまして、「現行の見届けの要件が果たしている機能がどのようにすれば電子遺言の場合でも果たされるかを再考する」といった御示唆がございますけれども、具体的な議論状況がお分かりでしたら御教示いただきたいという点と、2点目といたしまして、イギリスでは署名したものをPDFやJPEGにして電子メールで送信するというマーキュリーサイン方式というものがあると伺いました。資料3ページのβで御記載を頂いている電子署名というものは、日本のマイナンバーカードによる電子署名のようなイメージなのか、それともマーキュリーサイン方式をイメージすればよろしいか、この2点をお伺いさせていただきます。 ○金子参考人 御質問ありがとうございます。まず、1番目の御質問ですが、こちらは、先ほど少し具体性に欠くと申し上げましたが、適格電子署名さえあればいいのだという議論に歯止めを掛けたいという意欲はよく分かるのですけれども、ではどういうことをすればいいのかということについては余り具体的なことは書いていないと、残念ながらそういう状況になります。2025年の最終報告書でもう少し具体的なアイデアが出てくるのかもしれませんけれども、まだ現状では分からないということです。   それから、2番目の御質問のマーキュリーサイン方式というのは、私も十分には承知はしていないのですけれども、私が理解するところでは、取引文書において、もちろん一堂に会して署名できればいいのですけれども、それを両者が別々のところにいるという場合にどうするかという話だと理解しておりまして、だから、それは別に電子署名ではなくて普通の署名であっても、同じ問題は生じるということになるかと思います。   遺言の場合は、誰か相手がいるというものではありませんので、マイナンバーカードの電子署名というのを私は十分承知はしていないのですけれども、今日最初の御説明から伺ったところから推測するに、そちらの方をイメージすればよろしいのではないかと。要するに、電子署名者が何か秘密鍵を持っていて、それは自分でないと使えないと、そのセキュリティが非常に高度になっているという、すごく大ざっぱな言い方で恐縮ですけれども、そういうものをイメージしていただければいいのではないかと存じます。 ○大村部会長 よろしいですか。 ○隂山委員 ありがとうございます。 ○大村部会長 ほかにはいかがでしょうか。 ○齊木委員 イングランドの現行の方式での自筆証書遺言で証人2人必要なわけですが、実情としてどういう方が証人になっているのかということをもし御存じであれば、教えていただきたいというのが1点です。   それから、2点目ですけれども、先生の御説明を頂きましたところによると、遺言はとにかくどんな利益を得ても有効であって、ただ、その利益を受け取ることができないのだという御説明になっているのですけれども、そうすると、先ほどの相原先生の御説明の老人ホームの職員が証人となった場合に老人ホームに寄附させるというのは、老人ホームは利益を受け取れないという理解でよろしいのでしょうか。それから、例えば証人が受遺者の息子の場合、息子は直接利益を受けないのですけれども、これは、おやじの方は受け取れるという理解でよろしいのでしょうか。つまり、利益の解釈というのは随分違うと思うのですが、そこをお分かりになれば教えていただきたいと存じます。よろしくお願いします。 ○金子参考人 ありがとうございます。まず一つ目の、証人2人がどういう人かというのは、よく分からないですけれども、事例とかを見ると、例えば病院に入院していて、そこの看護師さんが証人になるとか、そういうこともあるようです。一般論はなかなか難しいのですけれども、友人という場合も結構あるのではないかとは思います。すみません、非常に不確かなお答えで申し訳ございません。   それから、二つ目も必ずしも十分にお答えができないのですけれども、証人か証人の配偶者は利益を受けることができないということになっているというのは、資料の1ページに書きましたことですけれども、例えば事実婚だったらどうなのかとか、あるいはもう少し広く、家族だったらどうなのかということについては検討は必要であろうということは認識されていて、2017年の意見募集の際には、意見を聴く項目の一つとして、その範囲をどう考えるべきかということが検討の対象の一つになっていたということはございます。結局老人ホームの話には余りお答えができておりませんで、誠に申し訳ございません。 ○齊木委員 ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   ほかにはいかがでしょうか。 ○戸田委員 戸田と申します。ありがとうございます。証人の果たしている機能は、署名を見届けるということを証しているにすぎないのでしょうか。 ○金子参考人 最低限の機能としては、そういうことになるかと思いますけれども、例えば、今日の資料ですと3ページから4ページ目になりますけれども、特に4ページですかね、4ページの最初の、証人がいることで、ある種のセレモニーの雰囲気を出すという面もありますし、あるいは詐欺や強迫から守るという機能というのもあるのではないかということがローコミッションの方では議論がされているということで、だから御指摘の点は、最低限の機能としてはそれは必要だということになりますけれども、それ以上のものもあると受け止められているかなと思います。 ○戸田委員 承知しました。内容を見て強迫によって書かれたことを推測するといったことは証人はやらないということでよろしいでしょうか。 ○金子参考人 御質問ありがとうございます。その点は、証人が遺言の実質的な内容を見ることもあり得ると思いますけれども、一般的にはそこまでは期待されていないということのようでして、だから、その文書に遺言者が署名したということを見届けるというのが証人の最低限の機能ということになります。その点では保護機能というのが、証人がいるということでは必ずしも果たされないのではないかという議論ももちろん存在するという次第です。 ○戸田委員 承知しました。ありがとうございます。 ○大村部会長 そのほか、いかがでしょうか。 ○谷口委員 ありがとうございます。谷口でございます。資料の2ページの一番下にある電子遺言のα、β、γのうち、αについてお伺いしたいです。イギリスのスタートアップ企業が既に多くのシェアを持っているというピッチの資料を見たことがあるのですけれども、このαのウエートというか、使われ度合いというのはどのぐらいか分かりますでしょうか。教えていただければ有り難いです。 ○金子参考人 御質問ありがとうございます。そこは分からないです。申し訳ございません。 ○谷口委員 すみません、ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   ほかにはいかがでしょうか。 ○小粥委員 小粥です。一つだけ、このときの証人というのは、宣誓とかはするのでしょうか。 ○金子参考人 宣誓というのは。 ○小粥委員 裁判所だと、証言するときはやりますけれども、遺言を作成するときに、自分はきちんと見て、正しく見届けるのだというようなことを、宣誓のようなことはあるのでしょうか。 ○金子参考人 宣誓というのは口頭で何か。 ○小粥委員 そうですね、例えば、全然違う例ですけれども、フランスで弁護士見習いが弁護士会に入るときにやったりする宣誓をイメージしておりました。法廷の外でもあると思うのですけれども。つまり、自分が自分の約束を守ることを示す形としての宣誓が一般的にあるのかどうかということです。 ○金子参考人 御質問ありがとうございます。そこは多分ないだろうと思います。十分に準備された遺言においては、ある種定型の文言というのを入れるということがあって、それがある種の、きちんと見ましたということの裏付けとして書かれるということはありますけれども、ただ、遺言作成とは別に何か宣誓をするという手続があるようには私には見受けられませんでした。 ○小粥委員 すみません、ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほか、よろしいでしょうか。 ○齊木委員 1点お伺いするのを忘れたのですが、この会議では遺言書の保管制度も問題になっておるのですが、イギリスでは保管制度の有無、あるいは保管制度の利用状況はどうなっておりますでしょうか。 ○金子参考人 御質問ありがとうございます。こちらは報告書の方には書かせていただいたかと思いますけれども、裁判所で保管するという制度がありまして、書留郵便で送るということです。かつては余り使われていなかったけれども、最近では以前よりも使われるようになっているとか、そういう評価がされているようであります。あと、法律家の下で遺言を作成するという場合もありますけれども、その場合には事務所の方で保管をすることもあるようです。 ○大村部会長 よろしいでしょうか。   ほかにいかがでしょうか。   それでは、金子参考人についての御質問はここまでということにさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。   なお、金子参考人におかれましては、ドイツ、フランスについてお話を伺った後で、全体についての質問をお受けしたいと思っておりますので、もうしばらくの間、席におとどまりいただければと思います。   それでは、続きまして青竹参考人に御説明をお願いしたいと思います。   青竹参考人、よろしくお願いいたします。 ○青竹参考人 ドイツの遺言の方式について、簡単ではございますが、御報告させていただきます。大阪大学の青竹と申します。どうぞよろしくお願いいたします。   ドイツでは、市役所など様々なところでかなり手続のデジタル化、オンライン化がされていますが、遺言についてはなぜかまだデジタル化、オンライン化が進められておらず、立法の動きも具体的には、まだありません。ですから、ドイツの遺言の方式の紹介というのは、日本での遺言のデジタル化の議論に直接には大きな意義を持たないかと存じます。ですけれども、日本のデジタル化、オンライン化について法改正が行われる際に、遺言の真意性を確保するために新たな証人の立会い等の仕組みを検討するなど、関連する規定も修正を図る必要があると伺っております。証人については現行ドイツ法にも規定があります。この点では、ドイツ法の参照にも意義がないわけではないと考えておりますので、ドイツ法の証人の規定についても簡単に御紹介させていただきたいと思います。   遺言の方式の概要については、ドイツ民法と日本民法とでは大枠で遺言の方式が似ているといえます。ドイツ民法には普通方式と特別方式の遺言が規定されています。そして、普通遺言としては、自筆証書による自筆遺言、これは日本でいう自筆証書遺言に対応し、それから公正証書による公的遺言、これは日本でいう公正証書遺言に対応していますけれども、普通方式として2種の遺言が規定されています。また、特別方式として、遺言者が事故や病気その他の理由により普通方式の遺言の作成ができない場合のための遺言が設けられています。これには、市長の面前での危急時遺言、3人の証人の面前での危急時遺言、そして海上の危急時遺言の3種になっています。これらも大枠では日本民法の死亡危急者遺言、船舶遭難者遺言、伝染病隔離者遺言、在船者遺言に対応しているといえるかと思います。   次に、遺言書の保管についてですが、自筆証書による自筆遺言については、基本的には本人が保管するということにはなるのですけれども、被相続人が請求する場合には、区裁判所の下で特別の公的保管の下に置くことができるようになっています。常に保管されるわけではなくて、本人が請求するときにだけ保管されるという仕組みは、日本の自筆証書遺言の保管制度に似ているわけですけれども、日本では法務局の保管所に保管されるのに対して、ドイツでは裁判所が保管するようになっています。他方、公的遺言ですけれども、こちらは必ず区裁判所の下で特別の法的保管に置かれることになっています。日本の公正証書遺言が公証役場に保管されているのとは異なりますけれども、必ず保管されるという点では共通しています。   なお、保管につきまして、報告書で174ページ、180ページに説明させていただいていることを補足しますと、遺言者が死亡して相続が開始したときに保管した遺言書が発見されないということを回避するために、遺言が相続において確実に考慮されるための仕組みが設けられています。公的遺言は、必ず連邦公証人会議所が管理する登録簿に登録されるようになっていまして、そして遺言者が死亡した場合に、会議所は死亡届を受けた身分登録局から死亡を知らされ、遺言書の保管者と管轄の遺産裁判所に通知することになっています。そして、自筆遺言についても、自身で保管している場合は発見されないおそれは回避できませんけれども、これが公的保管に置かれているという場合には、公的遺言と同様に身分登録局、保管する裁判所と遺産裁判所の連携によって、相続において遺言者が死亡したときに遺言が確実に考慮されるための仕組みというものが設けられているのが特徴的です。   次に、普通方式の遺言である自筆証書についての内容を少し御紹介いたします。方式について、ドイツ民法2147条によりますと、自筆遺言の要件は、被相続人が意思表示を自書し、それに署名、日付、記載した場所を示すことであるとされます。日本民法が全文自書、日付、署名、押印とされているのに比べますと、ドイツでの書類作成の慣習に倣いまして、押印は不要とされ、代わりに記載した場所を示すことが要件になっています。そして、自書につきましては、被相続人が遺言の全体部分を自書しなければならないとされています。判例や学説によりますと、意思表示の真正性を確保し、偽造を回避するために、自書は遺言者の筆跡の特徴が現れ、筆跡鑑定によりその真正性を確認し得るものでなければならないとされています。したがって、パソコン等を使った遺言書の作成は自書とは認められていません。現行日本法の状況と全く同じといえます。そして、自書されていない部分について遺言は無効となります。さらに、ドイツでは遺言の目録についても自書である必要があるとされ、日本のように目録について自筆証書遺言の自筆の例外を認める規定はありません。   これに対して、署名については、報告書173ページに示しておりますが、氏と名を含むことを原則としながら、被相続人自身が作成したこと、真意に基づく意思表示であることが確認されるのであれば、略称や氏と名の一方による署名や、家族関係を示すのみの署名、例えば、君たちの父などの署名でも有効とされますが、こちらも日本の判例と大体同じ状況であると確認することができます。   普通方式の遺言である公的遺言について、こちらは日本でいう公正証書遺言になりますが、ドイツ民法2132条及び証書作成法6条から35条によりますと、方式については、被相続人が最終意思を公証人に表示する、又は文書が最終意思を含むことを表示して文書を公証人に引き渡すことが要件となっています。公的遺言の場合は、当然ですけれども、被相続人の自書は要件とされておりません。詳しい方式については、民法ではなく証書作成法という特別法に規定されています。   そして、証人については日本法と違いがありまして、先ほど金子先生に御報告いただいたイングランド法とも大きく異なっているといえます。公的遺言では、当事者が請求する場合にのみ証人の立会いが義務付けられるということになっています。日本では、証人2人の立会いが公正証書遺言が有効となるための要件とされていますので、この点はドイツ法の特徴であるといえるかと存じます。さらに、ドイツでは証人の立会いが義務付けられる、つまり、当事者が証人の立会いを請求しているという場合であっても、これは努力義務にすぎないとされ、請求されたにもかかわらず証人を欠いた遺言が作成された場合、この遺言書が無効となるものではないとされています。そして、証人の意義について、遺言能力や最終意思が明確ではない場合に証拠を示す役割を果たすものであると説明されています。   次に、証人の欠格事由につきまして、証書作成法26条によりますと、以下の者は証人になることができないとされています。一つ目に、証書作成に自ら関与している者、つまり証書作成の当事者であり遺言者自身である場合には証人になることはできず、また、関与している本人ではなくても、当事者に代理されている者、これは法定代理、任意代理の場合も含むとされていますけれども、形式的には本人ではないけれども実質的には本人といえるということで、証人になることができません。また、公証される意思表示の受益者、公証人の配偶者、又は生活パートナーシップ関係にある者、公証人と直系血族関係にある、あるいはあった者、公証人と継続的な雇用関係にある者、未成年者、そして精神障害者・知的障害者、十分に聞いたり話したり見たりすることができない者に加えて、ドイツ語が堪能ではない者、十分にできない者は証人になることができないと規定されています。日本の公正証書遺言の証人の欠格事由とある程度重なるところもありますけれども、ドイツ法の欠格事由の方が若干範囲が広く、後で被相続人の意思の真意性が問題になったときに、証人が証拠を示すという役割を果たすことになりますので、精神障害者・知的障害者、聴覚障害、言語障害、知覚障害のある人も除外され、ドイツ語が堪能ではない人も証人欠格とされるというところに特徴があるといえます。   そして、その証人の立会いがどの程度要求されるかについてですけれども、証人は一部だけではなく、公的遺言の作成の全過程、つまり遺言書の読み上げ、書面の承認、そして最後の段階である署名に物理的及び意識的に参加していなければならないとされています。準備段階には証人は参加することは必要ではないですけれども、作成の全過程に参加していなければ証人の立会いとはみなされない、認められないということです。そして、電話やビデオ会議による参加では不十分であるとされています。   ところで、公的遺言の証書作成についての規定を含む証書作成法ですけれども、2021年に改正されています。これは会社法の手続のデジタル化を図る目的での改正で、オンライン及びデジタル書類による公証手続についての規定が新設されています。会社の設立等のデジタル化、オンライン化については緊急性が認められると説明されておりますが、それ以外の行為についてはこの新しい規定は適用されないということになっています。したがいまして、公正証書による公的遺言については、オンライン及びデジタル書類による公証は認められていませんので、日本法の方がこの面では進んでいるということができるかと存じます。   次に、特別の方式の方ですけれども、細かいですけれども、ドイツ民法2249条、2250条、2251条に規定されています。市長の面前での危急時遺言の要件は、公証人の面前で遺言書を作成する前に遺言者が死亡するおそれがある場合に、証人2人の立会いの下で、市町村長の調書により遺言書を作成することです。次に、3人の証人の面前での危急時遺言の要件ですけれども、遺言者が隔絶された場所にいる場合又は市町村長の調書によることができないほど死の危険が差し迫っている場合に、今度は3人の証人の面前で口頭で意思表示をすること、そして、遺言の内容を記載した調書を作成することになります。最後の海上の危急時遺言の要件は、航海中のドイツ船内において、3人の証人の面前で口頭で意思表示の方式で遺言をすることで、最後に調書を作成するということになります。海上の危急時遺言については、特別な危険を要件とすることなく遺言を作成することができます。   そして、特別方式の遺言における証人の意義についてですけれども、これは公的遺言における証人の意義と違います。公的遺言では、証人は遺言を有効とする要件ではなく、当事者の請求があるときに証人を加えることが義務付けられ、それも義務付けられていても、証人を欠く遺言がされても遺言が無効になるものではなく、証人が遺言の真正性の証拠の役割を果たすと御説明しました。それに対して特別方式の遺言では、証人は遺言作成の要件となっていますので、証人を欠く遺言は無効となります。証人は、遺言者による遺言であることを理解し、遺言者の意思表示を正確に再現する責任を負うと説明されています。   次に、証人の欠格事由について、ドイツ民法で証書作成法が準用されていまして、市長の面前での危急時遺言については、市長の配偶者、市長と生活パートナーシップ関係にある者、市長と継続的な雇用関係にある者、そして未成年者、精神障害者・知的障害者、十分に聞いたり話したり見たりすることができない者、文字を書くことができない者、ドイツ語が堪能でない者、遺言により利益を受ける者、遺言執行者に示されている者、これらの者は証人になることができないということになっています。そして、3人の証人の面前での危急時遺言及び海上の危急時遺言の証人の欠格事由については、未成年者、精神障害者・知的障害者等は証人になることができないと規定されています。   次に、証人の立会いですけれども、証人は遺言書作成のやはり全過程に対面で参加していなければならず、3人の証人の場合には、3人全員が遺言書作成の全過程に同時に立ち会わなければならないこととされています。   最後に、遺言の有効性判断の手続について、現在でもドイツで遺言無効を争う事例は少なくなく、判例もかなり多く公表されています。ドイツでは、遺言の有効性判断は遺産裁判所と通常裁判所で扱われます。遺産裁判所では、遺産事件と分割事件が、非訟事件として扱われますけれども、遺産事件の中で、遺言について確かに相続権があるということを示す相続証書の交付を求める手続があります。ここで遺言の存否が判断されますが、相続証書の交付のためには、遺言に基づいて相続証書の交付を申し立てる者が、相続権の根拠となる遺言のあることを示し、自己の相続権の根拠となる文書を提出しなければならないということになっています。遺産裁判所が事実を確認した上で相続証書を交付することになります。ここで、ドイツの家事事件手続法によりますと、遺産裁判所は申立てを理由付けるのに必要な事実の存在が確認されたと判断した場合にのみ相続証書を交付することができると規定されています。これによりますと、遺言書の存在の確認自体がここでは重要で、遺言の有効性については訴訟事件となり、ここでは踏み込んだ判断は行われないとみられます。   他方、通常裁判所の訴訟手続において遺言の効力が争われた場合には、遺言により利益を得ようとする者が遺言の有効性について立証責任を負うこととされています。ここで、先ほど見ましたように、公的遺言による証人の証拠としての意義が重要になることを確認することができます。これに対して特別の方式の遺言では、証人は遺言の有効要件ですので、証拠として特別の役割を果たすことはないと説明されています。   そして、事前に御質問いただいた点について、できる範囲でお答えしたいと思います。1点目に、報告書に、ドイツでも遺言のデジタル化についての法改正というのが学説で幾つか主張されているとお示ししましたけれども、現在どうなっていますかという御質問を頂きました。今のところ、知っている範囲では、デジタル遺言を立法化すべきという目立った主張は見られませんし、法改正の具体的な動きもございません。先ほど少し御紹介しました2021年の証書作成法で証書作成手続のデジタル化が図られたときに、ほかの行為はどうするかということが少し話題になりましたが、会社の設立については差し迫ってデジタル化、オンライン化手続が必要ということでデジタル化が図られましたけれども、裏を返してみますと、遺言の公証手続のデジタル化は、必要かもしれませんけれども緊急ではないという認識のようです。   もう一つ、ドイツと、あとフランスもそのようですけれども、余りデジタル遺言に対して積極的ではない、イングランドに比べても更に消極的なのではないかということが確認されますが、その実質的な理由は何かという御質問を頂きましたので、私自身もその理由について不思議に思うところがありまして、ドイツの法学者に質問してみましたところ、二つの点が指摘されていました。   一つ目は、ドイツ法では遺言の法的な確実性が重視されているということがあるのではないか、デジタル遺言書作成のオンライン手続で誤りや偽造の可能性が高まるということが、デジタル化が進まない理由になっているのではないかということが指摘されました。   二つ目は、ドイツでは遺言のデジタル化というのが不要だと捉えられているわけではないですけれども、現段階では優先事項ではないのではないかということでした。デジタル化に強い反対があるというまでではなく、ただ、導入することが差し迫って要求されているわけではないと御回答いただきました。遺言書のデジタル化について、すぐにではないとしても、将来的にはドイツでも検討される可能性が十分あると考えております。   ごく簡単な報告になりまして恐縮ですけれども、御清聴ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございました。   それでは、ただいまの青竹参考人の御説明について御質問をお伺いいたします。御質問のある方は挙手をお願いいたします。 ○相原委員 2点質問させてください。   公的遺言について、当事者が請求する場合には証人の立会いが義務付けられるとあるわけですが、その上の方式のところで、被相続人が最終意思を公証人に表示する等と書かれています。この場合の被相続人というのと、その下の証人の当事者というのは、イコールという理解でよろしいのでしょうか。つまり、被相続人が請求する場合には証人の立会いが義務付けられるということなのですが、当事者で被相続人以外が出てくることがあるのかどうか、それが1点です。教えてください。   それから、2点目が、もしかしてこれは先生の報告書に御記載とかあるのかもしれないので恐縮ですが、自筆遺言と、それからこの公的遺言等々の利用率とか、そういうことについてお分かりになったら教えてください。 ○青竹参考人 大変ありがとうございました。2点頂いて、1点目の当事者というのは、先生のおっしゃるように被相続人、遺言者のことを意味すると私自身も考えております。被相続人と当事者がイコールであるとなっているかと思います。   そして、2点目ですけれども、自筆、公的遺言の方の利用率は分かりませんけれども、公的遺言も自筆遺言も含めまして、ドイツバンクの遺言調査報告書というのが2018年にありまして、遺言書を既に作成していた割合、年齢別に簡単なものが出ております。報告書の185ページになりますけれども、それによりますと、65歳以上の人は58%の人が遺言書を既に作成していたというデータがございますので、これは日本に比べるとかなり高いとはいえるかと思います。日本については何%ぐらいというのは、そういったアンケート調査を見たことがないのですけれども、相続法制の比較研究で浦野先生がドイツと日本の比較をされていた調査の仕方によりますと、日本は10%くらいとされていたかと思います。 ○相原委員 ありがとうございました。1点、当事者が請求する場合、先ほどの、被相続人が請求する場合、証人の立会いが義務付けられる場合の証人というのは、公証人という方がいらっしゃるのですよね。それで、被相続人が先ほどの欠格事由がない人を証人として公証人のところに連れていくという、そういうイメージでよろしいのでしょうか。 ○青竹参考人 重要な点を御指摘していただいて、ありがとうございます。遺言者が、証人を付けてくださいと請求しますと、公証人が証人を選んで立ち会わせる義務を負うと、こういうふうになっております。 ○相原委員 なるほど、ありがとうございました。 ○大村部会長 ほかにはいかがでございましょうか。 ○隂山委員 隂山でございます。特別方式の遺言の証人の意義について、お伺いさせていただきます。パワーポイントの9枚目のスライドによりますと、証人は遺言者の意思表示を正確に再現する責任を負うとございまして、これが遺言書作成の要件であるとされております。ワードの4ページ目では、証拠としての特別の役割を果たすことはないという御記載がありますけれども、こちらは特別方式の遺言については、証人が遺言者の真意性・真正性などを確実に正確に再現する、そこで責任を負っており、それが有効要件に入っているため、あえて特別に証拠としての役割を果たすものではなく、特別方式の遺言作成の有効要件の中に包含されているというような理解でよろしいでしょうか。 ○青竹参考人 はい、私も同じように理解しております。それに対して公的遺言の場合は、証人がなくても有効に遺言をすることができますので、更に証人があるということになると、遺言の有効、無効を争われたときに、証拠としての役割を果たすと捉えられているようです。 ○大村部会長 ありがとうございます。   ほかにはいかがでしょうか。 ○倉持幹事 御説明ありがとうございます。ドイツ民法2247条の全文自書、目録も自書という基本的な規律はいつ頃できたもので、どれぐらい変わっていないものなのかというのを教えていただけますでしょうか。例えば、日本の民法だと明治期に作られた古いものだということですけれども、それがドイツではどうなっているのかというのを、分かる範囲で教えていただけないでしょうか。 ○青竹参考人 私の誤解でなければ、日本と同じぐらい古い、民法典の成立のときからこのようになっていたのではないかとは考えています。100年以上の規定になると理解しております。 ○大村部会長 よろしいでしょうか。ありがとうございます。   そのほかはいかがでしょうか。   よろしいでしょうか。ありがとうございます。   それでは、青竹参考人、ありがとうございました。青竹参考人におかれましても、大変恐縮ですが、最後に全体の質問の時間を設けたいと思いますので、少々御在席のままでおとどまりいただければと思います。 ○青竹参考人 はい、分かりました。 ○大村部会長 それでは、最後になりますが、お待たせしております柳迫参考人に御説明をお願いいたします。 ○柳迫参考人 横浜国立大学の柳迫と申します。本日このような機会を頂き、ありがとうございます。私の方からはフランスに関して、現時点での遺言制度の概要について、特に方式面の方に焦点を当てながらお話をさせていただいた上で、デジタル化の状況について後半の方で簡単に説明させていただきます。もっとも、ドイツと同じように、全体としてはフランスに関してもそれほど遺言のデジタル化というものが進んでいるという状況ではありませんので、この部会における議論にフランスのお話がどれだけ役に立つのかということは私自身もよく分からないところがあるのですけれども、取りあえず制度の概要と状況をお話しさせていただければと思います。   まず、フランスにおける遺言について、一言だけ説明させていただきますと、フランスにおいての遺言は、表示者の一方的な意思表示により成立する法律行為、日本法でいうところの単独行為の一種だとされていまして、また、一定の厳格な方式に服する要式行為であると位置付けられておりますので、方式違反の遺言に関しては無効として扱われますというふうな規定も民法典に定められているところであります。   では、フランスにおいてどんな方式が遺言の方式として用意されているのかといいますと、大別しますと日本法と同じく、普通の方式の遺言と、特定の例外的な状況の下でのみ利用できる特別方式の遺言の2種類に大別することができるのかと思います。普通の方式の遺言として、まず民法典に規定されているものが、基本的に日本法と対応する形なのですが、3種類ありまして、自筆遺言と公証遺言、それから秘密遺言になります。それから、民法典に規定があるわけではない、この後説明させていただきますけれども、1994年にフランスが国際遺言の方式についての統一法に関する条約を批准したことによって、フランスの国内法のレベルでも導入された新たな方式として、国際遺言と呼ばれるものがあります。   これに対して、特別方式の遺言としては、軍人遺言、伝染病隔離者遺言、離島にある者の遺言、船員遺言、国外遺言というものが存在します。本日は、お送りしました資料にも示してあるとおり、基本的には普通方式の遺言を中心にお話はさせていただくのですが、特別方式の遺言に関して一言だけ付け加えておきますと、これは公証遺言を作成したいのだけれども公証人を利用できないような場合に備えて、公証人に代わる特定の法律に定められた者の立会いで遺言を認めるもので、特別の方式を利用しなければならないような状況が過ぎ去ってから6か月過ぎると効力は失うものと規定されております。   ただ、フランスの教科書でもよく書かれることではあるのですが、そもそもが例外的な状況での利用を想定した方式ですので、この特別方式による遺言の作成というのは、フランスにおいてもやはりほとんどないとは言われておりまして、教科書類を見てみましても、ごく簡単に解説をするか、あるいは教科書類によっては全く説明がないというレベルに位置付けられているような存在でございます。   続けてお話をさせていただきますけれども、スライドでいうと2枚目になりますけれども、普通方式の各方式について説明する前に、全ての方式に共通する要件を簡単にお話しさせていただきます。報告書では、スライドで挙げた2点以外にも、共同遺言の禁止とか遺言事項の限定というものについても説明はしたのですが、本日は2点に限ってお話をさせていただければと思います。   まず一つ目としては、この後、各方式の説明でもお分かりいただけるかと思うのですが、筆記方法については方式によって異なるところではあるのですが、まず、筆記されたものでなければならない、別の言い方をすると、書かれたものでなければならないということが言われております。この原則から出てくることは何かというと、口述のみによる遺言は許されませんよということが教科書レベルでも一般的に書かれております。この結果として、現行法では録音や録画のみによる遺言は許されませんということが言われております。なぜここで、遺言は書かれたものでなければならないのかというのは、幾つかの観点から説明されたりするのですけれども、大きく分けると二つあるのかなと思います。   一つが、筆記という行為によって遺言者本人の熟慮を促進できたり、それが真意の確保に資するだろうというような観点から説明するものと、もう一つは、やはり口頭のみ、口述のみだと、遺言の内容を明確な形で保全することができないということから、遺言者の最終意思を明確な形で残しておくという意味では、筆記されたもので残しておく必要があるだろうということから、筆記されたものということが課されているわけでございます。   もう一つ、撤回についても、フランスでも日本法と同様に、基本的には遺言の効力発生まで遺言は自由に撤回できますが、一定の方式に従って撤回しなければなりませんよとなっています。撤回の方法については、ここに挙げているとおりなのですけれども、撤回遺言を作成するか、あるいは遺言を撤回する旨を申述した公証証書を作成する、あるいは前遺言と両立しない内容を含む後の遺言を作成する、それから、遺贈に関して言うと、遺贈目的物の譲渡が民法典上、明文で挙げられています。それから、専ら自筆遺言を念頭として、さらに、民法典に明文に書かれているわけではないのですが、判例によって、遺言書の破棄に関しても撤回の方法として認められていると一般的には説明されております。   ここまでが、少し駆け足ですが、共通する要件としてお話しさせていただきました。   続きまして、自筆遺言の方式について説明させていただきますと、これが民法典の970条に規定されておりまして、まず全文手書きで、さらに、遺言の作成日付を手書きで記載し、最後に、遺言の条項の末尾に署名をする、これを全部遺言者が自ら行うことで作成するというふうにされております。その結果として、ワープロソフト、パソコンなどを用いて自筆遺言を作成することはできないとされます。そういった意味では、日本法における自筆証書遺言とかなり近くて、これはドイツにおける青竹参考人の説明とも重なるところですが、日本法と違って、目録に関する特則みたいなものもないというところになっております。   それから、自筆遺言の要件との関連で少し指摘しておくべき点を2点ほど挙げておきます。一つは、簡単な判例の紹介ではあるのですけれども、破毀院の民事第1部の2009年6月17日の判決というものがありまして、これはどういうものなのかということなのですけれども、パーキンソン病であった遺言者が自筆遺言を作成した、本文、日付、署名、全部手書きで作成、そうした意味ではその要件は満たしているのですけれども、パーキンソン病なので手が非常に震えて、手書きの文字を書くのは非常に困難ということなので、手書きでは作ったのだけれども、恐らく解読が困難だろうということで、その理解を助けるために、タイプライターでその内容をほぼ全て書き写したものを添付した場合において、これは自書要件との関係で問題ないのかということが争われた事案がありまして、これに関して基本的効力は妨げられないと判断したのですけれども、その中で、遺言自体は、タイプライターで書き写したものが添付されていたとしても、飽くまで手書きで書かれた文書のみから構成されるとした上で、別にその解読を助けるために手書きの文書をタイプ等で書き写したものを添付しても、無効にはならないよという判断を示したものでございます。   それから、もう1点としては、先ほどの方式に従って書いているのだけれども、ひな型を書き写したりしたような場合に関しても自書要件を満たすのかというようなことが議論になります。フランスにおいては、この後も少し関連する話に触れるのですが、自筆遺言を作成する場合においても、公証人のところに赴いて助言を受けながら作成するということがよくあるのですが、その場合に、公証人がひな形を作成してくれて、それを遺言者が自筆遺言の方式に従って書き写して、自筆遺言という形で作成するということが行われることが非常に多いと言われているのですが、そうした形で公証人がひな形を作成したり、あとは、近時ですとインターネット上で、質問事項に回答するとぽんと遺言の文例が、ひな形が出てくるようなインターネット上のサービスもあるわけなのですけれども、そうしたインターネット上で提供されている遺言の文例作成サービス、公証人実務からは結構批判されているようではあるのですが、こうした作成サービスで作成した書面をそのまま書き写して作成しても、遺言者自身が内容をきちんと理解した上で書き写しているのであれば、自筆遺言の自書要件とも反しないよと言われているところであります。   ここまでが自筆遺言の話なのですが、公証遺言について説明しますと、公証遺言は次のステップを経て作成されることになります。まず、立会いの要件に関して言いますと、二つのパターンがあります。一つは、公証人2名の立会いで作成するというものがあります。それからもう一つは、公証人1人に2人の証人の立会いで作成するという、どちらかのパターンで作成することがあります。続けて、遺言者による遺言内容の口授を行った上で、公証人によって遺言者の口述内容の書き取りを行います。ここでの書き取りは、別に手書きである必要はないとされておりますし、公証人自らやらなくてもいいよとはされております。その上で、公証人によって遺言者に対して、3番で行った筆記内容について読み聞かせることになります。5番目として、公証人は形式要件を遵守してこの証書が作成されたという旨を付記して、最後に遺言者、公証人、証人による署名をすることによって完成するというステップになっております。   先ほど自筆遺言のところでもお話しさせていただいたところなのですが、フランスにおいては自筆遺言を作るときも公証人の助言を受けることとの関係で、公証人の事務所に遺言者が行ったとしても、公証遺言の形式で作成することはそれほど多くないと言われていまして、先ほど言ったように、公証人の作成したひな形を書き写すという形で作成されることが一般的だと言われています。これはなぜかというと、教科書レベルの説明としては、公証人が職務上の責任追及を回避するためだという、回避したいからだということも言われていたりするところではあるのですけれども、結構この点に関しては学説上の批判はあるところで、実態としてはそういう説明がされることが多いかなと思います。   続きまして、公証人や証人の立会いがどのレベルまで必要なのか、私の方で調べられて分かった範囲でというところで、報告書で書けていなかったところを補足させていただくのですが、まず、遺言者による口授と公証人による種々の筆記の段階では、その立会いが必要だとされます。それから、遺言者による署名時も立会いが必要だということに関しても認められています。他方で、条文の文言上の表現だと、公証人による筆記内容の遺言者への読み聞かせの段階では立会い不要というような読み方も可能といえば可能なのですけれども、学説上ではここでも立会いが必要だという指摘が多いかなと理解しております。   それから、証人適格に関して、一般的な規定としては980条に規定がありまして、フランス語を理解する成年者で、署名ができ、私権を享有している者と書かれております。それから、欠格事由としましては、夫婦が同時に同一の遺言における証人となることはできないというような規定があったり、あるいは受遺者や、その4親等以内の親族、立ち会う公証人の研修生のほか、公証人及び遺言者の直系親族、3親等以内の傍系親族も、これは政令で定められているところですけれども、証人となることはできないというような定めもあったりします。   ここまでが公証遺言の話で、最後に秘密遺言に関して説明させていただきますけれども、基本的には余り使われない、ほぼ使われないと言われております。簡単に説明させていただきますと、まず、遺言書本文の作成と署名を行います。本文は手書きでなくてもいいですし、第三者に作成させてもいいとなっております。遺言内容が記載された用紙又はそれを入れた封筒を閉じて封印をしてくださいとなっています。封印をした遺言を、遺言者、公証人及び2名の証人の前に提出して、中身が自分の遺言であること、署名は自分でしてあること、それから、本文は誰が作成したのか、自分で作成したのか、第三者が作成したのか、それから、何で作成したか、つまり、手書きで書いたのかとか、あるいはワープロソフトとかを使って書いたのかということを申述してくださいとなっています。最後に公証人が、作成日や場所等を記載した上書き証書という提出を確認する調書を作成して、公証人、証人、遺言者が署名するという形になっております。   ここまでは民法典に規定されている普通方式の遺言の要件なのですけれども、最後に、国際遺言ということで、こちらも普通の方式の遺言として位置付けられるのが一般的かなと思います。利用はそれほど多くないのですが、国際というと渉外事案に限定されるような印象を受けられるかもしれませんが、これは渉外事案に限らず、純粋な国内の事案、内国の事案でも利用できる方式だとされております。1973年にユニドロワの方で採択して、フランスが批准した「国際遺言の方式についての統一法に関する条約」というものに附属する「国際遺言の方式についての統一法」によって規律されております。   それによれば、まず、国際遺言に関しても、やはり筆記というところが掛かっておりまして、筆記によって遺言を作成しなければなりませんということになります。筆記方法は手書きでもワードソフトでもよくて、第三者による作成でもいいとされております。続けて、遺言者が1人の公証人及び2人の証人の立会いの下、その文書が自分の遺言であること及び自らその内容を把握している旨を申述してくださいとされています。この段階で内容を公証人や証人に明らかにする必要は必ずしもないと言われております。公証人と証人立会いの下、遺言者が署名して、公証人及び証人も遺言者の立会いの下で署名して、最後に公証人が遺言の末尾に署名日を記すことによって完結するとなっております。   ここまでが方式なのですが、保管制度について説明させていただきますと、自筆遺言と公証遺言を念頭に説明させていただきますけれども、まず、公証遺言に関しては作成した公証人の事務所で保管されます。また、自筆遺言に関しても公証人に対して保管を依頼することが可能となっておりますし、それを推奨するとも言われております。   それから、保管制度とは少し違うのですが、遺言の登録制度というものとして、終意処分中央ファイルというものが用意されています。これがどのような制度かというと、遺言の内容自体を登録する、あるいは保管制度ではないのですが、誰の遺言がどこの公証人の事務所で保管されているのかというものを登録しておく制度として用意されております。公証遺言だけでなくて、公証人の下で保管されている自筆遺言や、秘密遺言に関しても公証人の下で保管することができるのですけれども、そうしたものを登録することが可能です。遺言者が亡くなった後であれば、誰でもインターネット上でこの終意処分中央ファイル上で、被相続人の遺言が登録されているのか照会が可能となっています。また、相続の清算を担う公証人は、この照会をしなければならないとも言われております。   ここまでは現状の概説となるのですが、続いて、デジタル化の動向を簡単に説明させていただければと思います。   冒頭でも申し上げましたとおり、遺言制度のデジタル化をめぐるフランス法の到達点としては、基本的にはそこまで進んでいるという状況ではありません。まず、先ほども触れた点ですが、録音・録画の方式は口述遺言禁止の原則との関係から、できないと一般的に理解されております。それから、例えば公証遺言では公証人や証人立会いという要件があるわけですが、例えばビデオ会議システムを利用した公証人や証人の立会いが許されるのかというのが、これはフランスでも、それほどいろいろ議論があるわけではないのですけれども、若干議論があるようでして、それによりますと、公証実務においてもビデオ会議システム自体は利用されているようなのですが、フランスの公証人の方に少しビデオ会議についての利用状況等をお伺いする機会があったので、少し聞いたり、あるいは実際に私が別件でフランスに行ったときに、公証人の事務所を少し訪問させていただいたことがあるのですが、そのときにお伺いしたところだと、遺言作成において活用は恐らく困難だろうというような指摘が、私の訪問させていただいた公証人の方からはあったところです。   それがなぜかといいますと、例えば今ここで使っているTeamsであるとかZoomのような一般的なビデオ会議システムは、公証人の公証実務上のビデオ会議システムではどうも利用できず、かなり高度なセキュリティが確保され、それが認証されたシステムを使わなければならないし、更に言うと、カメラやマイクのレベルに関しても一定の認証基準を満たした、セキュリティ基準を満たしたものしか使えなくて、昨年公証人の事務所に少しお伺いしたときに伺った段階だと、現行、フランス国内で1社しかそれが認証されていないというような状況があって、実際ビデオ会議システムに立ち会うといっても、証人の立会いとなると、証人に結局、公証役場に出向いてもらわないとできないのではないかというような指摘があったところでございます。   それから、電子文書によって遺言を作成できるのかという点に関してなのですけれども、まず、これも公証遺言と自筆遺言を念頭にお話しさせていただきますけれども、自筆遺言のように私署証書に関して、これは明文上、家族法、相続法に関するものは電子的な書面での作成が否定されておりますので、これはできないというような結論になります。他方で、公証人が作成する公正証書である公証遺言に関しては、必ずしも民法典の条文上は、電子文書の形、電子媒体で作成するということは否定されておりません。ただ、実務的には有効な電子署名の付与という課題に直面してしまって、現実的にはできないと言われております。   なぜかというと、公証遺言に関しては公証人2名の立会い、あるいは公証人1名に証人2人の立会いで作成するわけですけれども、公証人2名立会いの場合に関して、公証人2人が電子署名を付す必要があるわけなのですが、公証人が職務上用いる電子署名の方式が、技術上の理由から、現状では同一書面に複数名の電子署名を付与することができないという課題があって、公証人2人の立会いで電子媒体の形で作ることはできないという問題があるそうです。それから、1人の公証人と2人の証人立会いで作成する場合に関して、証人も電子署名を付与することになるわけですが、有効な電子署名の要件に関しては民法典にも規定があるのですが、そうした法的に有効と認められる電子署名を証人が保持していない、場合によっては遺言者も保持していないと言われることもありまして、そうした観点からも、実際上できないよねということが言われております。   最後に簡単に、デジタル化を進めるべきかということに関して議論があるのかということで、一つだけ、散発的な議論はぼちぼちなくはないのですけれども、まとまった議論としては、2021年の公証人大会における提案を挙げることができるかなと思いますので、最後に簡単に紹介させていただきます。   公証人大会において採択されたデジタル化に関わる提案としては、まず一つとしては、特別方式の遺言として、例外的な状況にある場合には、遺言はデジタル方式を含めたあらゆる方法によってできるというような規定を新設することの提案が採択されております。それからもう一つは、先ほど技術上の問題として説明したところとも関連するのですが、結局、公証人2人の立会いだと技術上の観点から公証人が有効な電子署名を付与できないという課題をクリアするという観点と、元々立会い要件に関しては少し厳しい、証人2人用意するのが大変だというような指摘は従来からあったようでして、そうした観点も踏まえて、公証遺言の作成において立会い要件の緩和というものも提案されていました。それは、1名の公証人の立会いのみで十分とするという改正をすることによって、証人をそろえる負担を軽くしたり、いわゆる電子署名をめぐる技術上の問題をクリアしようとする形で、こうした緩和が提案されていたところではあります。   ただ、その後、2021年から今2024年ですが、この提案が大きな立法的な動きに結び付いているのかというと、今のところ私の把握している範囲では、そういう状況ではないと思いますし、公証人大会では幾つか遺言のデジタル化とは関係しないような立法提案も採択されているわけなのですけれども、公証人大会の提案で採択の場合の賛成率が大体8割後半から、高いものだとほぼ100%に近いぐらいで賛成率があるのですが、この二つの提案に関しては特筆するべきぐらい賛成率が低くて、特別方式の遺言についてデジタル化を容認するというものに関しては64%程度の賛成率で、2021年公証人大会で採択された提案の中では最も賛成率が低かったという状況がありまして、2番目の立会い要件の緩和に関しても75%程度の賛成率で、賛成率の少なさでいうと下位の1位と2位という感じになっているというところでして、恐らくその点に関してもかなり、公証人の中でもそれほど一致してこの提案が受け入れられているというわけではないのかなと理解しております。   すみません、駆け足になりましたが、私の方からは以上でフランスの説明を終わらせていただければと思います。ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございました。   それでは、ただいまの柳迫参考人の御説明について、御質問をお伺いいたします。御質問のある方は挙手をお願いいたします。 ○齊木委員 ありがとうございました。フランスでは自筆証書遺言が90から95%を占めるけれども、自筆証書遺言のうち公証人がその文案、モデルを示して、それを自書するタイプのものが多いという御説明と伺ったのですけれども、全体の遺言に対する割合というのはどのぐらいなのか、大体お分かりになるでしょうかというのが1点目と、それは公証人による遺言書の保管とセットになっているという理解でよろしいでしょうか。この2点をお教えいただければ有り難く存じます。 ○柳迫参考人 ありがとうございます。まず1点目に関しては、割合がどれぐらいかというのは私自身も把握していなくて、公証人の下で助言を受けた上で作成する自筆遺言がどの程度の割合かということは、データが分からないところではあるのですけれども、2点目に関して言えば、自筆遺言の方式で作成する場合に関しては、保管はできるけれども、保管がマスト、必須にはなっていないと理解しております。すごく簡単な回答で申し訳ないですけれども、以上になります。 ○大村部会長 ありがとうございます。今のひな形という言葉なのですけれども、ひな形というのは何かあらかじめできているものを指しているような印象を持つのですけれども、口授を受けて、こんな形ではいかがかと個別に示すということなのかと思っておりますが、そこのところはいかがでしょうか。 ○柳迫参考人 元々用意されているというよりは、個別の意向、どういう遺言事項を残したいのかという意向を踏まえながら公証人の方で文例を作って、それを書き写すというふうな形だと理解しております。 ○大村部会長 そういう趣旨だということで理解をいたしました。 ○相原委員 御説明どうもありがとうございました。相原でございます。2点お伺いさせてください。   先ほどの、公証遺言ではなくて、公証人がひな形かどうかはともかく遺言書に書き写させることで、自筆遺言の方が多いということだったですけれども、その理由として、公証人の責任回避というようなこともおっしゃったかと思います。結局遺言書に関する無効とかの争いというのはそれなりにあるという認識でよろしいでしょうか。先ほどドイツのケースなんかでは、場合によってはそこそこあるとお伺いしたような気がするのですけれども、フランスの場合、公証遺言か自筆遺言かを問わず、無効を争われる傾向があるのかどうか、教えてください。   2点目が、保管制度のところで、遺言登録制度、これが公証人の事務所で保管される、自筆遺言も可能であるとのことでした。最後の方に、遺言者の死後、誰でもインターネット上で照会可能とあるのですけれども、誰でもというのは特段、相続人とか受遺者とかではなく、探そうと思ったら誰もできると、そういう理解でよろしいでしょうか。以上2点です。 ○柳迫参考人 1点目に関しては、遺言の効力を争われる事案に関しては、判例なんかを私も調査している過程で見掛けますし、教科書レベルでもそういった裁判例があるということは脚注とかで引かれていたりすることはあるわけなのですけれども、それが数量的に多いか多くないかと言われると、そこの点に関しては何とも答え難いかなというところがありまして、ないわけではないという回答になってしまうかなと思います。   それから、2点目が、保管制度に関して誰でも照会できるのかということでしたね。私も最初は、誰でも照会できるのかなと思って、自分で実際に照会できるサイトにアクセスしてみたのですけれども、被相続人が誰かが特定できていれば、何なら私が、例えばもしフランスに知り合いがいたら、照会しようと思ったらできるような構造にはなっておりました。ただ、照会料は掛かるわけなのですけれども。 ○相原委員 ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございます。最初の方のお答えの、公証人が責任を回避するという話ですが、責任を回避するということの中身について、何か分かれば。 ○齊木委員 中原先生が論文で御紹介されていたように思うので、中原先生に御説明いただいた方がいいのではないかと思います。 ○大村部会長 では、中原幹事。 ○中原幹事 4年前に公表した論文でありまして(中原太郎「フランスにおける遺言による財産承継の局面での公証人の役割」法学83巻4号〔2020年〕85頁以下、同「フランス法――遺言執行(者)の制度的前提」道垣内弘人編著『各国における遺言執行の理論と実態』〔トラスト未来フォーラム、2020年〕1頁以下)、必ずしも中身はよく覚えていませんが、当時、私自身も公証人の事務所で取材をいたしました。自筆証書遺言を公証人の指導の下で書かせるということについて、必ずしも柳迫先生が指摘されたような赤裸々なことを公証人が言っていたわけではなく、要するに、公証人がそれだけフランスの家族の事柄に、ホームロイヤーとして非常になじんでおり、遺言についても書く指導をするし、しかも、その遺言を保管してあげるという、これは法律上の仕組みではないけれども、すばらしい仕組みであるというアピールをしていたのですが、ただ、公証人がそれをなぜ好むのかと言われたら、責任を回避するという面も確かにあるのではないかと思います。つまり、フランスの公証人、ないし法律関係の専門家は一般にですけれども、非常に厳しい責任を負っている、それは社会的地位が高いことの裏返しでもある、職責上の義務ないし内部的な職業倫理的な義務という面でも、刑事責任の面でも、それから民事責任の面でも公証人の義務の程度は非常に高いと。民事責任に関しては、何かあったら直ちに責任を負わされるということになるかというと、責任保険がありますので、個人がすぐに負担を被るわけではないですけれども、しかし、職業上の大きな不利益を負うということはありますので、できるだけ回避というか、ほかの方法があるのであればそれを使うという方向に流れやすいのだと思います。実際、自筆証書遺言に関しては、遺言者本人よりも、公証人がやはり方式について一番詳しいわけですね。それで、公証人がきちんと指導するということなのであれば、どれだけ費用が違うかは分かりませんけれども、それが遺言しようとする人にもハッピーであるし、公証人にとってもハッピーであるというような事情があるのかなと思います。 ○大村部会長 急にお尋ねして申し訳ありませんでした。ありがとうございます。   ほかに柳迫参考人の発言について、御質問はいかがでしょうか。 ○隂山委員 隂山でございます。資料12枚目のスライドでは、公証人が職務上用いる電子署名の方式につきまして、複数名の署名を付与することができないということでしたけれども、これは法的効力が認められた電子署名について、技術的に複数の署名を掛けることが許容されていないという趣旨なのか、あるいは電子署名を付与する形式に起因して複数名が署名できないということになっているのかという点について、御教示いただけたらと思います。 ○柳迫参考人 前者の理解というのは、技術的なことから法的に要件が課されているというふうな趣旨の御質問ということでいいですか。 ○隂山委員 はい、法的効力が認められた電子署名として許容されているか、という趣旨で申し上げました。 ○柳迫参考人 まず、公証人のハードルというところで言ったのは、法的な要件というレベルというよりは、公証人はある意味、法的に有効なものとして認められる電子署名をみんな持っているのですけれども、その持っているものの技術的な問題から付けられないという説明がされています。それはもう本当にテクニカルな問題で、法的な問題ではないという理解と説明されております。 ○隂山委員 ありがとうございます。 ○大村部会長 ほかにはいかがでしょうか。 ○木村幹事 京都大学の木村です。今日は貴重な御報告をお伺いさせていただき、ありがとうございました。2点質問させていただきたいと思います。   まず、秘密遺言について御紹介がありましたけれども、フランスでも余り使われていないということでした。フランス法を研究されている日本の研究者も、従前より秘密遺言の問題点などを指摘していたと思いますけれども、改めて、フランスにおいても秘密遺言が余り使われていない理由についてお伺いできればと思います。   2点目が、スライドの11ページにありましたところですけれども、電子文書の形式による遺言の作成について、自筆遺言等の私署証書に関しては、家族法、親族法に関するものは明文上で電子的な形での書面作成が否定されているとの御紹介があり、根拠条文として民法典の1175条を挙げていただいております。この点について、遺言や相続法に限られず、家族法も含めてということになっていますが、具体的に家族法における私署証書としてはどういったものが想定されているのかということと、なぜそういった家族法、相続法に関する私署証書については電子的な形の書面作成が否定されているのかという理由を教えていただければと思います。よろしくお願いします。 ○柳迫参考人 ありがとうございます。私の把握している範囲でという形でお答えになってしまうのですけれども、もし間違っていたら、もしおかしいと感じる委員、幹事の先生方がいらっしゃったら訂正していただければと思うのですけれども、秘密遺言が余り使われないというのは結局、フランスの教科書類なんかでも、何で使われないのかというと、やはりこれも多分、日本法と同じような説明をして、結局、自筆遺言と公証遺言のデメリットの組合せだよねというのが、これはフランスでも教科書でそういう記述を複数で見たことがありまして、自筆遺言の場合に関しては、もちろん公証人のアドバイスを受けて作ることもできるわけなのですけれども、自分だけでも法的な要件で作成することができますから、方式違反のリスクが残る、他方で公証遺言に関しては、公証人のところに行かなければいけないとか、その点が費用面も含めて負担だというところがあるけれども、秘密遺言に関しては、内容作成に関して直接専門家が関与するわけではないけれども、でも、最終的に完全に自分だけで完結できるわけではないので、そういったところがデメリットの組合せだというようなことが言われるのかなと思います。   それから、2点目に関してなのですけれども、家族法における私署証書の具体例は、私はすぐ出てこなくて申し訳ないのですが、もしどなたか出てくる方がいたら補足していただければ助かるかなというところと、もう1点の、後者の家族法とかそこの規定がなぜ1175条で除外されたのかということに関しては、この規定の基になった2004年の法律のときの議論を、私もここに来る前に少し時間の許す範囲で調べてみたのですけれども、ここで家族法とか相続法を外した理由としては、正直言って、余り細かい説明がなされていないところではあったのですけれども、議会における資料を見る限りだと、ここで挙げられた例外の行為に関しては、重大な行為であって、特に、表意者の保護を図る必要性が取り分け高い分野であるから、ここに関しては例外として位置付けたというような説明が議会における資料としては残っていたところでした。   そういった説明になっておりますが、家族法における私署証書の具体例が私にはぱっと出てこないのですが、もしすぐ出てくる方が、フランス法に詳しい先生ほかにいらっしゃるかもしれないので、あれば。 ○大村部会長 ありがとうございます。フランス民法典の1175条について、誰かもし補足の御発言を頂ければと思いますけれども。 ○石綿幹事 木村幹事の御質問は、家族法における私署証書ということですか。 ○木村幹事 スライドですと、電子的な方法による私署証書の除外対象として、家族法、相続法との記述があり、その点についてお伺いしたいということです。この点に関連して、先ほど金子先生の御紹介いただいたイングランドであれば、電子署名の検討にあたり、遺言の特徴として、取引行為とは異なり遺言には一方的な文書である点が考慮されているとの御説明がありました。この点と大雑把に比較すると、フランス法における電子的な方法による私署証書の扱いにおいては、遺言のほか、相続法のみならず、さらに家族法も含めて除外対象となっておりますところ、どのような私署証書が想定されており、それらについてどのような点が考慮されているのかが、気になりました。 ○石綿幹事 例えば、多分離婚のときに当事者が作成するもので、それを公証人に公証してもらうというのがあるのかと思います。 ○柳迫参考人 離婚に関しては、確か直近で改正があって除外規定ができて、そこはこの1175条の要件に掛からなくなったような記憶があります。すみません、私もうっすらとした記憶なのですけれども。 ○石綿幹事 しっかり確認しておらず、余計なことを、失礼しました。 ○大村部会長 今のお話では、当初は、例えば離婚に関する当事者の合意に関するものは含まれていたけれども、その後の特別法によって、少なくともそれは除かれたということでしょうか。では、ほかに何が残っているかという点が、なお、問題として残っているということでしょうね。 ○木村幹事 またお分かりになればということで。その上で、確認なのですけれども、この1175条自体は、柳迫先生の御説明においては、家族法、相続法に関する私署証書が除外されているという表現が用いられていたと思いますが、同条がそもそもどういう規定なのかということを、教えていただきたいと思います。家族法、相続法が除外されているというのは、原則がどのようなもので、どう除外されているのか、という点です。 ○柳迫参考人 まず前提として、その手前に1174条という規定がありまして、そこで、基本的に書面が要求される場面において電子的な方法で作成できるというような規定があって、他方で1175条で、前条の規定は家族法及び相続法に関する私署証書に関しては適用しないという規定があるという、条文の構造でそうなってます。 ○木村幹事 よく分かりました。ありがとうございました。 ○大村部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○中原幹事 第1点の秘密証書遺言が使われない理由について、先ほど発言したことのついでに申し上げておきますと、今まで何十年間かのキャリアの中で、秘密証書遺言を扱ったのはわずか1件であるというようなことを言っていた公証人がいました。これもまた、公証人がホームロイヤーであるということが非常に大きく関わっていて、つまり、何か遺言を残したいと思う人は公証人に相談しようと考えるのが普通の感覚である、地方か大都市かでまた違いがあると思いますけれども、それがフランスの伝統だと。そのときに、やはり、どの方式がよいか、公証人に聞くわけですね。依頼者はどういう形の遺言の方式があるかもよく分かっていないわけですが、どういう形で遺言すればいいかと、そのときに、一つは公証遺言というのがあると、しかし自筆証書遺言の方が簡易であるというような話をするわけですけれども、しかし、秘密証書遺言を勧めるということは絶対にしないのだと思います。   それはなぜかというと、その内容に公証人が関与することができないので、その遺言が内容的に無効であるという可能性がある。相談を受けた公証人としては、そこの無効のリスクがありますということを言ってまで秘密証書遺言を勧めるということはないし、依頼者も秘密証書遺言を選択するということがないという、そうした事情があって、秘密証書遺言がほとんど使われないのではないかと想像します。 ○大村部会長 どなたかが後で1175条の解説などをお調べいただいて、こんな例があるというのを教えていただけるとよろしいかと思います。   そのほか、柳迫参考人の御発言について、御質問いかがでしょうか。   よろしいでしょうか。   それでは、柳迫参考人、ありがとうございました。   最後になりますけれども、3人の参考人の方に御説明を頂きました。イギリス、ドイツ、フランス、この3か国の遺言法制に関わる質問がございましたら、この機会にお願いをいたしたいと思います。いかがでございましょうか。 ○倉持幹事 遺言の保管の際の保管機関が何を審査するのかという点についてお伺いしたいのですが、イギリスは裁判所、ドイツも裁判所、フランスは公証人が保管機関になるとお聞きしたのですが、そうだとすると多分、公証人はホームロイヤーという立場もあるので、形式面だけではなくて内容の真意性だったり、場合によっては遺言能力とか、そういう実質面にも踏み込むのだろうと推測されるのですが、他方でイギリスやドイツの裁判所が保管を受けるときに、全くノーチェックということも考えられなくて、少なくとも方式は審査します、ただ、その内容面の真意かどうか、実質面については審査しませんということなのかどうかを確認させて下さい。 ○大村部会長 ありがとうございます。それぞれの保管機関で保管の際に、どの程度までの審査をするのかという御質問だったかと思いますが、それぞれ順番にお答えを頂ければと思います。 ○金子参考人 イギリス法ですけれども、裁判所で保管する場合には、遺言書を入れた封筒に所定の書式を貼り付けて、それを封緘して、それで裁判所の保管担当のところに書留郵便で送るということなので、特に内容を審査しているということはないと思います。 ○大村部会長 そうすると、誰が送ったかも分からない。 ○金子参考人 その所定の書式の中に、誰がということを書きはしますけれども、遺言の内容自体は別に裁判所が見るということはないと。 ○大村部会長 それから、今、封筒に入れて送ったとおっしゃったのですが、その封筒を送る人が誰かということも分からない。 ○金子参考人 そうですね、ただ、遺言書を送った人のところに預かり証が送られて来ます。 ○大村部会長 分かりました。次がドイツということになりましょうか。青竹参考人、ドイツについてお願いいたします。 ○青竹参考人 自筆遺言について公的保管に置かれる場合、裁判所に保管されるというだけで、裁判所の方で実質面を審査するということはないようです。そして、公的遺言の方は公証人が必ず関与しますので、その時点で遺言能力だとか、様式面のチェックをし、その上で裁判所に保管しますので、裁判所の方で実質面について判断することはないと理解しております。ただ、名前であるとか、遺言書があるということについてはきちんと登録されるのは間違いないですけれども、内容について裁判所の方で確認するということはないと理解しております。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○柳迫参考人 フランスに関しては、さきの2か国と異なって公証人が保管するという形になります。公証遺言の場合、そもそも公証人自身が作成しているということから、別途保管でチェックというのは多分ないのかなと理解していますし、先ほども言ったように、公証人の助言を受けて、あるいは公証人が作成したひな形を書き写す形で自筆遺言を作成するという場合に関しても、恐らく公証人のアドバイスを受けながら作成することになると思いますので、保管の段階で何か別立てでチェックという問題は少し起こりにくいのかなというふうに、ごめんなさい、私の想像なのですけれども、理解しています。   それから、自筆証書の場合に関して、公証人のアドバイスを全く受けずに作成するという可能性も、もちろん法制上はあり得るわけですけれども、その場合に関しても、保管がマストではないところもありますので、そもそも公証人のアドバイスを仮に受けないで作成した遺言者、中原先生から御紹介も頂いたフランスの一般的な市民の状況からすると、仮にそういう遺言者がいたとしたときに、あえて自分で作るだけ作って、全くアドバイスを受けないで、保管だけ公証人に託すというのが実際にどれだけいるのかというのは、私もどうなのかなというところが若干引っ掛かるところではありますけれども、具体的に公証人の方でそうしたものを審査するということは、私の方で把握していないところであります。 ○大村部会長 ありがとうございました。   そのほかはいかがでしょうか。 ○相原委員 相原でございます。法理論とか法文の問題ではなくて、非常に素朴な質問で大変恐縮なのですが、せっかく3か国についてお詳しい先生がいらっしゃるので、お聞きしたいのですが、やはり作成率ですよね、自筆証書遺言であろうと公正証書遺言であろうと、やはり日本よりはドイツ、イギリス、フランスの作成率が高いというところなのですが、それが起因するところというのは、やはり法教育とかそういうところにあるのでしょうか。本当にごく素朴な質問で恐縮ですが、先生方の感触だけでも教えていただければと思いました。 ○大村部会長 なかなか難しいところがあるかもしれませんが、御感触をということですので、金子参考人からお願いします。 ○金子参考人 作成率につきましては先ほど申し上げたとおりですけれども、余り直接のお答えにはなりませんけれども、どのような点で現状の方式要件というのが人々が遺言することを妨げているのかという問題意識はあるようで、2017年の中間試案の方では、どういう要因があると思いますかということについての意見募集というのもされているというような状況で、現状でもまだ低いという意識がイギリスではあるのかなと受け止めました。 ○大村部会長 ありがとうございます。ドイツはいかがでしょうか。 ○青竹参考人 興味深い御質問を頂きまして、ありがとうございます。ドイツで特に遺言作成率が高いというわけではなく、日本が非常に低いのであると私の方では理解しておりまして、先ほど先生に御質問いただいて、きちんと答えられなかったのですけれども、報告書の185ページに浦野先生のデータの分析を脚注で紹介させていただいておりまして、日本は8%程度と分析されています。データの取り方はいろいろあるので、正確ではないと断られていますけれども、10%以下となっているのに対して、ドイツでは、ほかの国もそうなのでしょうけれども、ずっと高いと分析されていて、ドイツもフランスもイングランドもそうかもしれませんけれども、作成率が高いというよりも、日本が特に低いという状況です。日本では終活が傾向として広がっていますので、死後の財産について自分できちんと生前に決めておくという傾向が広がっていますので、少し増えてくるのかもしれません。今までほかの研究者の方が分析されている、お書きになったものを思い出してみますと、日本では余り死後のことを考えたくない傾向があるとか、そんなふうにお書きになっていたのを思い出すところですけれども、正確なところは申し訳ございませんが把握しておりません。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○柳迫参考人 私も具体的な回答をそれほど持ち合わせているわけではなくて、感覚的なものに関して、もしかしたらほかの先生方の方がフランス法を長年研究されて、お詳しいかなというところもあるのですけれども、私のところで把握しているものとして、参考になるかなという数字だけ少しお伝えさせていただきますと、先ほどの説明の中でも御紹介させていただきました遺言の登録制度に昨年2023年に新規登録された件数が、大体49万件というデータがあるのです。ただ、これ全部が遺言ではないので、49万件遺言があると読むことはできないのですけれども、2023年の内訳のデータが私の方ですぐに見付けられなかったのですけれども、中原先生がお書きになった論文の中で、2017年に現地調査したときの内訳のデータがあって、大体遺言がトータルで68%ぐらいと書いていたので、その内訳が変わっていないとすれば、昨年の遺言は、推計ですが33万5,000件ぐらいになるのかなというふうに、登録されていない自筆遺言とかもあり得るので、それが遺言の全数を反映していると読むことはできないわけなのですけれども、そうしたデータは一応あるというところになります。   すみません、この程度ですけれども、以上となります。 ○相原委員 すみません、どうもありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございました。   そのほかは御質問、いかがでございましょうか。   よろしいでしょうか。どうもありがとうございます。   それでは、3人の先生についてのヒアリングは以上とさせていただきたいと思います。   金子参考人、青竹参考人、そして柳迫参考人におかれましては、当部会の調査審議に御協力を頂きまして誠にありがとうございます。ヒアリングはここまでですので、ここで御退席を頂いて結構でございます。ありがとうございました。   部会の方は、ここで休憩を取らせていただきたいと思います。ただいま15時48分ですので、16時まで休憩して、16時に再開ということにさせていただきたいと思います。   休憩をいたします。           (休     憩) ○大村部会長 それでは、審議を再開いたします。   ここからは、残りの時間で部会資料5についての議論に入りたいと思います。まず、事務局の方において部会資料の御説明をお願いいたします。 ○戸取関係官 それでは、部会資料5について御説明いたします。   部会資料5は、1ページ冒頭の(前注)に記載しましたとおり、2巡目の議論のために、デジタル技術を活用した新たな遺言の方式の在り方等についての規律を提案するものですが、本日の前半部分で実施されたほか、次回の部会におきましても海外法制についての参考人ヒアリングが予定されておりますので、その結果を踏まえた上で更なる検討を行うことを予定しております。   本文第1では、デジタル技術を活用した新たな遺言の方式の在り方として、現時点で考えられる五つの案を記載しております。もっとも検討対象を必ずしもここで記載した案に現時点で限定する趣旨ではございません。そのため、ここで記載した案に限らず、新たな遺言の方式として考えられる案として、一つ又は複数設けることについて御意見を頂ければと存じます。   本文では、大きく甲案と乙案とに分けた上で、甲案では文字情報に係る電磁的記録を遺言とする方式を記載しております。甲1案では、録音・録画及び電子署名を、甲2案では、証人による立会い及び電子署名等を、甲3案では、保管申請時の遺言者の本人確認等を、それぞれ方式要件としております。さらに、甲1案と甲2案につきましては、遺言者本人による入力等を要するか否かでA案とB案に区分しており、遺言者本人による入力等を必要とする場合は甲1A案、甲2A案、遺言者本人による入力等を必要としない場合は甲1B案、甲2B案としております。なお、甲1案につきましては、録音・録画に係る電磁的記録を保管する場合のシステム負荷及びコストの観点から、現状では保管制度の対象とせず、自宅等で各自が保管することを前提としております。他方で甲2案については、15ページの本文第2の2に記載しておりますとおり、保管制度の利用を義務付けるか否かについては、いずれも考えられると記載しております。   これに対し、1ページ31行目以下の乙案では、プリントアウトした書面を遺言とする方式を記載しております。乙1案では、証人による立会い及び署名を、乙2案では、保管申請時の遺言者の本人確認等を、それぞれ方式要件としております。乙1案につきましては、遺言者本人による入力等を必要とする場合は乙1A案、遺言者本人による入力等を必要としない場合は乙1B案としております。   2ページ7行目以下の(後注)では、電磁的記録を遺言とする甲案について、独立した案としては記載しておりませんが、部会資料2において例示した方式のうち、なお検討対象となり得る方式について記載しております。すなわち、まず、顔貌認証等の生体認証技術を活用して本人確認等を行う方式とすることも考えられるところ、この場合には公的機関又は民間事業者において情報処理システムを構築する必要があることなどを記載しております。また、文字情報に係る電磁的記録について、遺言者本人による入力等を必要とし、デジタルタッチペン等のデジタル技術を活用することによりこれを担保しようとする方式や、遺言者が遺言を口述する状況を録音・録画した電磁的記録自体を遺言とする方式なども考えられると記載しております。   補足説明として、2ページの1では、これまでの御議論を踏まえ、部会資料2において例示した「本文に相当する部分の在り方」及び「真正性を担保するための方式の在り方」のうちで有力と考えられるものの組合せとして、本文に記載した五つの案を記載した理由等について記載しています。部会資料2における例示と部会資料5における各案との関係につきましては、この資料の末尾にある別紙を適宜御参照いただければと存じます。   なお、3ページ32行目以下では、部会資料2において例示していた、全文等を自書してスキャンする方式、音声入力及びフォーマット入力に係る方式、専用ブースでの作成に係る方式、ブロックチェーン技術を活用する方法について、本文及び(後注)に記載していない理由を記載しております。   4ページの2では、これまでの御議論を踏まえた検討の視点を記載しており、5ページ以下の各案についての補足説明では、これらの視点を踏まえた検討をしております。   4ページの2(1)では、デジタル技術の習熟度の違いや専門家への相談の希望の有無など、想定される複数の利用者層に応じて複数の案を選択し、役割分担を行うことなども考えられることを記載しております。   (2)では、意思の形成及び表示について独立自由を確保し、意思表示の瑕疵や他人の影響等を防止すること、意思表示を確定させること、軽率な作成を防止し慎重さを要求することといった点については、現行の自筆証書遺言との間で特に差異が生じ得るとも考えられることを記載しております。そのため、新たな遺言の方式において、これらの点をどの程度確保できているかを考慮することが考えられ、また、必要であれば、いずれかの案を基に更に要件の追加等を検討することも考えられると記載しております。   (3)では、方式の在り方次第で間接的に他人が偽造をしようとする考えが働きにくくなる意義があるとの観点や、相続人のいない高齢者が増加する社会状況の下では、利益を得ようとする他人からの影響を防止する仕組みが必要であるとの観点、また、遺言によって不利益を受ける者との関係では、遺言者本人がこのような遺言を残していたのであれば仕方がないと受け入れることができるような信頼性の確保が必要であるとの観点を挙げており、これらの観点に留意することが有益であると考えられると記載しております。   5ページ以下の3では、甲案について記載しております。甲案は、文字情報に係る電磁的記録を遺言とするものであり、作成の方法について、本文では、現時点で多く用いられることが想定されることからワープロソフト等と記載しているものの、作成されたものが文字情報であれば足り、デジタルタッチペン、音声変換ソフト等も排除しないことを前提としております。   (1)アでは、甲1案の意義等について記載しており、遺言者本人による入力を必要とするとの考え方に立ち、作成の全過程の状況を録音・録画した電磁的記録を作成する甲1A案と、他の手段によって真意性の担保等が図られれば本人による入力を要件とする必要はないとした上で、真意性の担保等を図るため遺言の全文等を読み上げる状況を録音・録画した電磁的記録を作成する甲1B案に区分しております。   イでは、甲1案の内容について記載しており、甲1案は、現行の自筆証書遺言と同様、遺言の存在及び内容を第三者に秘密にすることができ、証人等の関与や公的機関への出頭等の負担を要せず、遺言者が一人で作成できることが望ましいとの考え方等に沿うものと記載しております。   6ページに進みますと、この案は真正性の担保等を図るための手段として、電子署名に加えて録音・録画を要件とするものの、遺言を公的機関に提出するなどといった手続がないことから、第三者が電子署名の有効性検証を行う場面は想定されず、電子証明書の有効期間内であるか否かは遺言の効力自体には影響しないとの考え方を前提としております。   なお、秘密証書遺言においては、遺言者本人が遺言書を筆記していない場合には、筆者を通じて遺言の作成過程を明らかにするため、遺言者が公証人に対し、筆者の氏名及び住所を申述するものとされていることを踏まえると、甲1B案など遺言者本人による入力を必要としない場合には、入力者を明らかにすることも方式要件とすることが考えられます。   以上のほか、検認に関しては、保管を行わないため、家庭裁判所における検認手続を要するものとすることが考えられ、また、執行に関しては、補助手段としての録音・録画を法務局や金融機関等においてどのように扱い、そもそも電子署名の有効性検証を行わない遺言の方式要件の具備をどのように確認するかについて検討する必要があると考えられます。   6ページ末尾付近以下のウでは、検討の視点を踏まえた甲1案のメリット及びデメリットについて記載しており、例えば電子署名について、電子証明書の有効期間内にその有効性検証を行わないような利用の在り方があり得るのかとの問題があり、少なくとも電子証明書の有効期間経過後は、時間の経過とともに暗号アルゴリズムの危殆化が進むことが考えられると記載しております。   7ページの(2)アでは、甲2案の意義等について記載しており、証人が原則として作成の全過程に立ち会い、遺言者が実際に作成したことを承認した上で電子署名等を講ずるものとする甲2A案と、証人は、遺言が遺言者の意思に基づくことの限度で承認し、電子署名等を講ずるものとする甲2B案に区分しています。   8ページのイでは、甲2案の内容について説明しており、証人の立会いを要件とすることによって真意性の担保等を確保すべきとする考え方に沿うものと記載しております。証人については、必要な人数が問題となり、普通の方式の遺言であることを考慮すると2名を要するとすべきとも考えられる一方、公証人や立会人が遺言の作成に関与しないとすると、証人の人数を含めた証人の在り方について現行の方式を単純に参照することはできないのではないかとの指摘も考えられます。また、証人に遺言の内容が開示されるか否かを含め、証人によって何を担保すべきと考えるかによって、具体的な方式の在り方が異なると考えられます。また、保管制度を利用しないときは、甲1案と同様に、第三者による電子署名の有効性検証が行われる場面がないこととなると想定されます。   ウでは、検討の視点も踏まえての甲2案のメリット及びデメリットについて記載しております。   9ページの(3)では、甲3案について記載しております。保管申請に際して本人確認等を行う方式という性格上、遺言者本人による入力を必要とすることは考えにくいことから、甲1案及び甲2案とは異なり、下位区分としてのA案又はB案の区別は設けておりません。   イでは、甲3案の内容について記載しており、現行の自筆証書遺言書保管制度において保管申請時に遺言者の本人確認等が行われていることを踏まえ、保管申請時の本人確認等を行うことにより真正性等を担保する考え方に基づくものと記載しております。   10ページに進みますと、本人確認等という方式要件のみを備える目的で保管制度を利用することは想定しないとの観点からは、本人確認等の手続を済ませた後に、又は一旦保管がされた後に、保管の申請の撤回をすることは認めないことが考えられますが、その場合でも、新たな遺言をすることなどにより、遺言自体の撤回は妨げられないと考えられる旨を記載しております。   電子署名を講ずることの要否については、遺言に係る電磁的記録へ講ずる必要があるとする考え方と、保管申請時の本人確認等をもって足り、当該記録への電子署名は不要との考え方があり得ると記載しております。   申請手続については、遺言者の負担を軽減する観点から、出頭のほかオンラインにより申請することも可能とした上で、ウェブ会議の方法等により本人確認等を行うことを可能とすることも考えられますが、仮に法務局において保管制度を担当する場合に、本人確認に加えて、真意性の担保等のためにどの程度の審査が可能かについては、飽くまで外形的な範囲にとどまることを前提とした上で、更なる検討を要すると考えられます。   ウでは、検討の視点も踏まえての甲3案のメリット及びデメリットについて記載しております。   11ページ以下の4では、ワープロソフト等を利用して作成した電磁的記録をプリントアウトした書面に遺言者が署名を行う乙案について記載しております。乙案は、広く一般に利用されているデジタル機器の単純な操作によって遺言をすることができ、デジタル技術にそれほど習熟していない者でも簡便に遺言をすることができる考え方です。   なお、書面をもって遺言とする場合には、執行手続等をオンラインで完結して行うことに支障が生じるとも考えられることから、保管制度の利用を義務付けた上で、保管機関が遺言の内容を電磁的記録によって証明するものとすることも考えられると記載しております。また、自筆証書遺言の押印要件の扱いに関する議論を踏まえ、署名以外の要件についての更なる検討等も考えられる旨記載しております。   12ページの(1)では、証人の立会いを要件とする乙1案について記載しております。甲2案と同様、必要な証人の人数を含めた証人の在り方等について引き続き検討する必要があると考えられます。   12ページ末尾以下の(2)では、保管申請時に本人確認等をする乙2案について記載しております。プリントアウトした書面の保管申請であることから、ここでは出頭して申請手続を行うこととしております。デジタル技術の習熟度が高くなくとも、方式を理解していれば、専門家へ相談せずに作成することも可能と考えられますが、甲3案等と同様の問題もあるものと考えられます。   13ページの5では、本文の(後注)として、本文に記載した案ではないものの、なお検討を要すると考えられるものとして、生体認証技術を活用して本人確認を行うこと、また、そのためには公的機関又は民間事業者において情報処理システムを構築する必要があると考えられ、その場合には、併せて遺言の内容の入力をフォーマット上で行うようにすることも考えられるところ、その場合の問題点等も記載しております。また、そのほかに考えられる方式として、文字情報に係る電磁的記録について、遺言者本人による入力等を必要とし、デジタルタッチペン等のデジタル技術を活用することによりこれを担保しようとする方式や、遺言者が遺言を口述する状況を録音・録画した電磁的記録自体を遺言とする方式などを記載しておりますが、それぞれ考えられる問題点等を記載しております。   15ページの本文第2では、保管制度について記載しております。1では、公的機関による保管制度を設けるものとしておりますが、録音・録画した電磁的記録を作成する甲1案については現状では保管制度の対象としないこと、証人を要件としてプリントアウトした書面をもって遺言とする乙1案については希望する場合に利用可能とすること、保管申請時の本人確認等をする甲3案及び乙2案については本人確認等が方式要件となっていることを記載しております。   2では、証人を要件として電磁的記録をもって遺言とする甲2案を採用した場合において、保管制度の利用を義務付けず、希望する場合に利用可能なものとするC案と、保管制度の利用を義務付けるD案とが考えられるほか、(注)においては、保管制度の利用を義務付けるものの、これを欠いても遺言の効力には直ちには影響しないものとするとの考え方について記載しております。   3では、保管制度の具体的な規律として、現行の自筆証書遺言書保管制度を踏まえ、相続人等が相続開始後、自己が相続人等に当たる遺言が保管されているか否かを証する書面等の提供、当該遺言の閲覧、当該遺言に係る情報等を証明した書面等の提供を請求することができること、閲覧した場合又は遺言に係る情報等を証明した書面等を提供したときは、他の相続人等に対し、遺言を保管している旨を通知しなければならないこと、保管されている遺言については遺言書の検認の規定は適用しないことを記載しております。また、(注)では通知について、遺言者の死亡の事実を確認したときに、あらかじめ遺言者が指定した者に対し、遺言を保管している旨を通知することが考えられる旨記載しております。   補足説明の1では、これまでの御議論を踏まえた検討の方向性について記載しており、16ページの2では、保管制度を設けて、保管の主体を公的機関とすることとした上で、現時点では既に自筆証書遺言書保管制度の運用を開始している法務局が考えられる旨記載しております。3では、電磁的記録に係る遺言について、保管制度の利用を義務付けることの要否についての意見等を記載しております。4では、新たな方式の遺言の保管の規律について、遺言書保管法に関する規律を参照し、通知及び検索の仕組みを含めた内容を示しております。遺言者による保管の申請について、電磁的記録に係る遺言の場合は出頭又はオンライン等の方法での申請を、プリントアウトした遺言書の場合は出頭した上での申請を想定しております。   なお、新たな方式の遺言も含め、遺言の有無の検索を一元的に行うことができる仕組みが望ましいとの意見がございましたが、このような仕組みが実現可能かについては引き続き検討を要する旨記載しております。   部会資料5についての御説明は以上となります。 ○大村部会長 ありがとうございました。最初に御説明があったかと思いますし、(前注)のところにも書かれておりますけれども、本日に続きまして次回も外国法制についての参考人のヒアリングが予定されております。このヒアリングが終わりましてから、それを踏まえた上で、中間試案の取りまとめに向けて、資料には「二巡目の」と書いてありますが、二読の議論に入るということになろうかと思います。   ただ、ヒアリングが2回に分かれたこととの関係で、空き時間ができることになります。そこで、二読に入る前にもう少し詰めておいた方がいい点があるのではないかということで、論点の更なる検討という文書が作られた、このように理解をしております。本日のところは、資料の(1)ということで、第1で「デジタル技術を活用した新たな遺言の方式の在り方」、第2で「保管制度について」ということで、2項目が挙がっております。両者は密接に関連するということで、別紙の形で対応表もできておりますけれども、これらを御覧いただきながら御意見を頂戴したいと思っております。   まずは、今の事務当局の御説明について御質問があれば伺いまして、その後、時間の許す範囲で御意見を頂戴し、全部終わらない場合には、次回に引き続き御意見を頂戴したいと考えております。   ということで、最初に何か御質問というのがあれば、それを伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○倉持幹事 甲3案以外に甲1案、甲2案もあって、自己完結できる方式もできるだけ残した方がいいという意見もある反面、これで大丈夫なのかという意見もあったので、何点か御質問させていただきます。   まず、甲1案については、やはりフェイク動画の作成が容易ではないかという指摘がありまして、ただ、フェイク動画は電子署名で防止するのだという考え方に立つと、確かに全くの第三者の偽造というのは防止できるかもしれませんが、例えば同居する親族がマイナンバーカードを無断使用して電子署名を偽造し、フェイク動画を作るような、余りないかもしれませんが、仮にそのような事態があった場合には、それは防止できないということになってしまうのかというのが1点目です。   同じく、甲1案につきましては、恐らく検認の手続が必要で、その際の裁判所の検認調書には、恐らく録音・録画データを添付するという形になるのだとすると、例えば遺言執行のため銀行で払戻しを受ける場合に、銀行の担当者の方が動画のチェックまでしなくてはならなくなるとすると遺言執行に支障が生ずるのではないかいう指摘があったので、この検認調書をどのように考えているのかということが2点目です。   それから、甲2案に関しては、これも余りない例なのかもしれませんが、例えば単身独居の高齢者が消費者被害に遭うような場面、例えば業者の社員数名が証人となってデジタル遺言が作成されると。現行法だと本人の全文自書なので、被害を回避できるかもしれませんが、これがデジタル処理をするだけになると、そういう被害に遭う心配が残るという意見がございました。それは仮にそのような事態があったとしても、消費者保護制度だったり成年後見で対応するのだというお考えなのかどうかというのが3点目の質問です。お願いいたします。 ○大村部会長 ありがとうございます。甲1案、甲2案について、動画と証人というもののそれぞれについて、どのぐらい確かになるかということや、執行の便宜について御質問があったかと思いますが、何かお答えがあればお願いします。 ○齊藤幹事 御質問ありがとうございます。まず、甲1案に関してですが、フェイク動画をきちんと防止できるのかどうか、電子署名を冒用された場合には防げないのではないかという御質問と伺いました。この点は、ここに書いたとおりの案であれば、そういう抜け道が残ってくるのではないかということも御議論になると思いますし、そこも含めて一定程度の許容できる真正性・真意性の担保ができているのか、あるいは足りないのか、そこも含めて御議論いただくことになるのかなと思っております。   付け加えますと、仮に電子署名は事後に有効性検証ができないとしたら、付ける意味があるのかという逆の立場の御議論もあると思いますが、これに対しては、やはり何も電子署名を講じない動画を添付すると、やはり動画の偽造、変造という道が、尻抜けといいますか、より容易になってしまうので、それも逆に難しいのかなと。そういう隘路から、甲1案が一応、選択肢としては挙げてありますが、この立て付けで進められるかどうかも含め、御議論いただきたいと思っております。   それから、2点目、検認の手続をどう考えるのか、補助資料としての動画も仮に添付するのであれば、執行の手続にマイナスではないかと、こういう御質問と伺いました。この点につきましては、検認の手続、その結果作成される検証調書をどう立て付けていくか、これを現状どおりとするのか、あるいは、仮に動画を補助資料とした場合には、補助資料としての動画は検認手続の際に確認し、その結果、成果物として出来上がった検証調書だけで一応、執行手続としては足りるような立て付けをまた別途考えていくのか、そういうこともあり得るのかなということは内部で話題にはしていたところであり、おっしゃるとおり、動画がそのまま執行手続に出てくるというのはなかなかハードルが高いのかなというのは、御指摘のとおりかと思います。他方で、この点については委員の中から、録音・録画自体を遺言本体とするような案については、やはり執行の手続から消極だけれども、補助手段とするには、なおそれは選択肢としてはあり得るのではないかという御発言もあったところですので、補助手段とした上で、検認と執行にどう流し込んでいくのか、事務局の詰めが甘いところもありますが、そこも含めて御意見いただければと思っております。   それから、甲2案については、例えば業者の社員が2人、証人として加わって、電子署名を冒用されるような状況で高齢者の遺言が作成されるような状況というのも、やはり甲1案と同様に、抜け穴があり得るという御指摘はある一方で、他方で真意性・真正性の担保をどの程度図ればいいのかは、やはり現行の方式でも偽造、変造のリスクはあり得るので、程度問題として、やはり許容できる程度のものなのか、あるいはリスクが大きすぎるのか、御意見を頂ければと思っております。 ○大村部会長 今、倉持幹事からの御質問についてお答えを頂きましたが、ほかに何か御質問ということがあれば、頂きたいと思います。倉持幹事は、先ほどのお答えについて御意見もあろうかと思いますが、それはまた後で御披露いただければと思います。質問はいかがでしょうか。 ○齊木委員 7ページの15行目に、録音・録画の場合に心理的ハードルが高いと考えられると書いてあるのは、これは何か根拠があって書かれているのでしょうか。私は実務的にいろいろやっていて、こんな根拠は全くないのではないかと思っているのですけれども。 ○齊藤幹事 齊藤でございます。御質問ということであれば、何か明示の根拠としてお答えできるものはありませんので、そのような記載でいいのかどうかということも踏まえて検討を続けたいと思います。 ○大村部会長 そのほか、御質問はいかがでしょうか。 ○小池委員 小池です。初歩的な確認で、私の勘違いかもしれませんけれども、1ページの甲1案なのですが、遺言自体となる電磁的記録と、その作成過程を記録した電磁的記録の二つがあって、これは最後に書いてある電子署名によってひもづけがされているということなのか、それ以外の方法でひもづけされているのかということを確認したいので、お願いします。 ○齊藤幹事 齊藤でございます。今ある1ページの本文の甲1案は、二つはひもづけせずに、二つを一緒に保存しておいて、ただ、その動画の中身を見れば、遺言を読み上げている、あるいは遺言を作成している様子が入っているということで、中身を見ることによって一対一対応で分かるので、特段ひもづけはしないという体裁で本文を記載しております。この点に関しては、6ページの15行目以下に少し補足説明を記載しており、これまで部会資料2などでは、添付するとか一体化するという表現をしてまいりまして、ただ、その点については技術的には可能であると、他方で、技術的にハードルが上がるのであれば、必ず一体化する、ひもづけをするということまでを入れない可能性もあるのではないかということで、今回は後者の体裁で記載しておりますが、やはりきっちり一体化しないと、例えば動画が見つからないときは無効なのかとか、そういった別の問題を惹起するという御意見はあり得るのかなと思っております。 ○小池委員 ありがとうございました。 ○大村部会長 そのほか、質問はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは、先ほど申しましたように、第1、第2、関連する点がございますので、区別をしませんで、この部会資料5全般につきまして皆様の御意見を頂戴したいと思います。どなたからでも結構です。挙手をお願いいたします。 ○戸田委員 戸田でございます。録画の話なのですけれども、録画した生のデータを使うというのは、なかなか現実的には考えにくいのかなと思います。ディープフェイクによる偽造リスクもありますし、それから撮影についても、実際は何らかの録画の基準を作ることになると思うのですけれども、自撮りではその基準どおりに撮影されているかどうかという保証を取ることは難しいと思われますので、画像を撮る意味は余りないのではないかと思います。ただ、作成過程あるいは署名の過程を、画像を使って真意性の精度を上げるということは、やり方によってはできると思います。例えば、オンラインで遺言入力するような仕組みを作って、そこで動画を撮りながら、顔認証等の生体認証で本人であることのチェックを常時機械的に行って、振る舞いを検知して異常な行動がないかどうかといったものをチェックしながら作成するというようなことはできますので、そういった技術を使えば有効ではないかとは思います。それから、検証についても、動画を見ながら人間の目で何か不自然なところがないかというのをチェックするというのはなかなか難しくて、実際にやろうとすると、何らかの技術を使ってデータ解析を行って異常を検出するというようなことが、これからの世の中としては当然やられると思うのです。そういった機能を実装した遺言の作成ツールといったものを利用できるようにすれば、検証における問題はなくなるのではないかと思います。   証人についてなのですけれども、全過程を証人が立ち会うというのは非常に負担が大きいのかなと思います。デジタルのいいところは、一時的に作ったものを保存して、それを修正できるというところでございますので、一部作って、また次の日に作るとか、そういったことは当然やっていかれると思うのです。そうなると、そこに全部立ち会っていくのか、というような話になってまいりますので、イギリスの方式であったような、主要な部分となる署名のところだけ立ち会うといったような形でも十分ではないかと思います。   それから、電子署名が冒用される可能性もあるのではないかというような御指摘があったのですけれども、通常、今のマイナンバーカードを使った本人認証においては、口座開設等でやるのは、電子署名とICチップに入っている顔画像を使って生体認証を行って、なおかつ利用者に対して所定の動作を行ってもらい、要は写真を貼り付けたのではなくて、本人がきちんとその目の前で操作しているというようなことを検証しながら口座開設のチェックを行っていくと、そういったことは既にシステムとして出来上がっていて、多く利用されているところでございますので、そういったものを使えば、暗証番号だけを冒用されて使うというようなことは防止できるのではないかと思います。   それから、少し飛びまして、保管についてなのですけれども、やはり自宅で保管というのはなかなか考えにくいかなと思っております。デジタルデータはクラウド等を使って世界中に散在しているわけでしてどこにあるか分かりませんし、それから、本人が廃棄したと認識しているようなスマホの中にデータが入っているケースもあり、そういったものは後々容易に復活させることが十分可能です。そういったものを含めて、どこに置いてもいいよというような話になると、非常に法的安定性が崩れるのかなと思います。   そうしますと、いずれにしてもデジタルデータをどこかに保管しなければいけないので、「公的機関に保存する」をクリックすればそこに入る、というような形にしておけば、それで十分機能するのではないかと思います。先ほどの画像のデータにつきましても、画像から異常を検出して検証した結果であれば、それほどデータ量は多くないわけですから、公的機関でもその保存というのは可能だと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。戸田委員からは、選択肢として出ている録画と証人のそれぞれについて御意見を頂戴し、その上で保管についての御意見を頂いたと理解をいたしました。録画については、何でもいいというわけにはいかないだろうということで、一定の技術的な裏付けというか、制約を掛けるということが必要だろう。証人についても、一部のプロセスに限って証人が必要だということで、かつ、その証人の確かさを確保するような技術があるのではないか。こうしたことをおっしゃっていたかと思います。保管は、これもどこに置いてもいいということではなくて、公的機関に保管するということで、公的機関に簡便に保管できるようなシステムを考えるべきではないかという御意見だと伺いました。   ほかにはいかがでしょうか。 ○冨田委員 冨田でございます。今回の資料を拝見いたしまして、これまでの議論を踏まえて具体的な対応案が示されておりますので、まずは事務局の御尽力に敬意を表したいと存じます。その上で、示された案を、今回の議論の目的である、デジタル技術を活用して遺言を簡便に作成できる新たな方式を設けること、このことと照らし合わせると、どの案も真意性・真正性を確保する方策を突き詰めた結果、複雑になったり実行が難しくなってしまったりして、当初の目的からやや離れてしまったという印象が否めません。もちろん信頼性ある方式が必須であることは理解しておりますが、もう少し簡便な選択肢も示せないかと考えております。   例えば、乙2案ですが、これは保管を義務付けた上で公的機関への出頭手続を要するとしておりますが、この出頭に加えて、例えば内容証明郵便などでの送付を可能にする、また、甲3案については、補足説明にあるとおり、保管についてはウェブ会議などを併用することでオンラインでの送付を可能にする、こうしたことが検討に値するのではないかと考えてございます。これらの方法でもなお検討すべき点は残りますが、国民が使いやすいと思える方式を選択肢に追加する観点から、この点について御検討を頂きたいと存じます。 ○大村部会長 ありがとうございます。冨田委員からは、全体として確実さを確保するために複雑、難しい制度になっているのではないかという御印象が披露され、その上で、具体的には乙2案や甲3案をベースに、これを改善するという方向はいかがかという御意見を頂戴したと受け止めました。 ○齊木委員 私は、従前から御説明申し上げているように、遺言の場合にはまず、真正性を確保する、それから、本人の真意であること、周りからの不当な影響を受けて遺言をしていないことを確保すること、それから、作った遺言が後に偽造されないこと、この3点が重要であると考えております。   その観点からは、まず、電子署名をするということを考えております。電子署名は、少なくともその場ではハッシュ値が記録されますので、偽造を防止できます。ただ、電子署名で有効性を確保しようとすると作成後間もなく、つまり生きているうちに保管機関、公的な機関によって有効性を確認してもらう必要があります。死んでからではマイナンバーカードの電子署名は無効になってしまうので、有効性確認ができません。だから、電子署名で真正性、あるいは偽造されないこと、そういったことを確保しようと思う場合には、生きている間に公的機関で確認してもらう必要があり、そのためには保管を義務付ける必要があると考えております。   プラス、実は証人もあった方がいいと申しますのは、やはり実務的に見ますと、遺言というのは財産を多くもらう、あるいは欲しい子供が親に遺言を作ってねと言うことが非常に多いのです。そうすると、本文はそういった財産を欲しい人が作って、おじいちゃん、おばあちゃん、署名してねというパターンが実は非常に想定されるところです、実務的な経験からすると。そうすると、それを防ぐためには、その財産をもらう息子とおじいちゃんだけで遺言を作らせるような環境にするのは非常によくなくて、やはり証人2名を必要とすべきであろうと思っています。確か今日、イギリスではプリントアウトしたもの、ワープロでプリントしたものでもオーケーなのだけれども、やはり証人2名が必要というのは、そういうところに理由があると考えております。やはり我が国で遺言制度を見直すのはいいですけれども、諸外国に例のない危ない制度を作るのは駄目だと思っています。   それで、保管機関への出頭又は申請についても、やはり第三者がそれができるようなシステムだとまずいと思います。内容証明郵便は誰が出したのか分からないので、本人が出したかどうか分からないわけです。だから、それでは少し制度としてはまずいし、オンラインでも本人であることを確認できるような、例えばマイナンバーカードを使って銀行と同じようにeKYCを活用できるシステムができれば、それでやるべきで、とにかく出頭あるいは本人の申請であることを確実に担保できるような制度であってほしいと、このように考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。齊木委員からは、真正性・真意性あるいは偽造に対する堅固さというか確実性が重要な要素だということで、御提案を3点おっしゃっていたかと思います。まず、電子署名を要求するならば、有効性の確認との関係で保管の義務付けが一緒になるべきである。それから2番目に、重ねて証人というものがやはりあった方がよいだろう。そして3番目に、保管申請は本人が行うということを確保する、本人出頭でないということであれば、確実に本人だということをチェックできるオンライン上のシステムを整備する必要がある。こういう御意見だったと理解をいたしました。   ほかにはいかがでしょうか。 ○隂山委員 隂山でございます。甲案について意見を述べさせていただきます。   まず、甲1案については、録音・録画データ自体に電子署名を付すといった御説明がありましたけれども、PDFなどに電子署名を埋め込む形ではなく、録音・録画データ自体に電子署名を付すことが一般的に容易に行うことができるのかという点は検討しなければならないと感じております。また、甲1案の場合には公的機関等への保管がないということが前提となっておりますので、デジタル技術を活用したにもかかわらず相続人が遺言を発見することができないということも想定されますし、また、ローカル環境で保存されたデータにつきましては、有識者ヒアリングにおいて、長期的な将来を見据えますと、同一性を技術的に担保することが難しいのではないかという御示唆がありました。あわせまして、録音・録画データの確認の必要性などを考えますと、実務上の混乱が生じるのではないかとも考えております。   次に、甲2案ですけれども、証人がどのような役割を果たす必要があるのかという点の議論を更に深めて行う必要性があるのではないかと感じております。補足説明でも、証人が紛争発生前に死亡しており供述証拠が得られない可能性が指摘されておりますけれども、そうしましたら、証人に対して遺言作成時点において、より詳細な報告書などを求める必要性が出てくるのではないかということであったり、あるいは証人を複数とすることも考えられます。この場合、現在の自筆証書遺言と比較して負担が大きくなるということも考えられるとともに、公正証書遺言とのすみ分けについても議論が必要ではなかろうかと感じております。   なお、この甲2案の書きぶりとしまして、補足説明でもございますけれども、遺言者は電子署名を行うということが前提であり、証人につきましては電子署名以外の方法も考えられるという御説明であったかと思いますので、「遺言書の電子署名及び証人の電子署名等」といった表現の方が、誤解が生じないと考えました。   最後に、甲3案ですけれども、遺言作成者の負担であったり、デジタルで作成された遺言の真正性、あるいは遺言者本人であることの確認等を考えますと、バランスがとれていると捉えております。1点、質問でございますけれども、ここで本人確認等と「等」の文字が付されておりますが、これはどのようなことを想定されておられるのかという点をお伺いしたいと思います。本人確認ガイドラインの改訂に向けた有識者会議などにおきましても、身元確認と当人認証によって本人確認を行うこととされているように理解をしておりますが、それ以外の要素の確認を行うことが想定されているかどうかという点を御教示いただけたらと思います。   また、意見といたしまして、甲3案本文におきましては遺言者の電子署名が求められておりませんけれども、この点は、保管申請をすることによって遺言者の真意や遺言の真正性を確認することができるという視点であると理解をいたしました。もっとも、遺言作成者の真意性を補強するという観点であったり、相続手続においては作成者による電子署名が求められているものもあることから、遺言者による電子署名がなされていることが好ましいのではないかと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。陰山委員からは、甲の1、2、3案について、それぞれ御指摘と御意見があったと理解をいたしました。甲1案については、録音・録画についての電子署名の取扱いについての御意見がありましたけれども、保管なしということでよいのだろうかということや、実務上の混乱が生ずるのではないかということで、どちらかと言うとネガティブな御意見だったのかと思いました。それから、甲2案については、証人のやるべき事柄について、報告書等を含めて更に考えることがあるといったことをおっしゃっておられ、甲3案については、これがバランスがよいのではないかということで、比較的好意的な御評価だったのではないかと思っております。ただ、甲2案、甲3案については、今、太字になっているところの表現ぶりについて、もう少し検討すべきところがあるのではないかという御指摘もありました。最後、本人確認等の「等」の中身についての御質問があったと理解を致しました。質問のところをお願いします。 ○齊藤幹事 齊藤でございます。関連する部分は、補足説明で申しますと10ページの27行目、「なお」から始まる段落でございます。ここで記載しましたのは、仮に法務局において保管制度を担当するということになった場合にはどういった審査の在り方が可能か、これは検討を要するという記載をしております。一方で、本人確認のみであるとすると、真正性としてはよいとしても、真意性の担保あるいは熟慮を促す契機、こういったものが十分に実現できているのかどうかという観点から、ネガティブな考え方もあり得るのかと思います。他方で、法務局においては公証役場とは異なり形式的、外形的な審査に長じた組織ですので、そういった意味で、実質的な真意性の担保というような営みができるのかどうかという逆のハードルもあるのかなと思います。そういったところで、現時点で本人確認等という記載をしましたのは、本人確認のみでよいのか、それ以外にもあり得るのか、何が可能なのかという問題点があるという意味で「等」ということを記載したつもりでございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。 ○柿本委員 主婦連合会の柿本でございます。御説明ありがとうございました。遺言の重要な観点であります熟慮の促進、真意性の確保、最終意思の確認ということがデジタル化によってどのように進んでいくかというところを私どもは大事にしたいと考えております。デジタル化により市民の遺言作成時の負担の軽減という観点から考えますと、提案いただいた案ではデジタル化によって、証人、電子署名、保管など、解決しなければならない技術的な問題が現時点では多いのではないかと考えます。 ○大村部会長 ありがとうございます。柿本委員からは、現在の案はなかなか負担が重いということで、技術的な問題などについて、何ができるかということを更に検討していく必要がある、まだ検討が十分とはいえないという御感触を漏らされたと受け止めましたが、そういうことでよろしいでしょうか。 ○柿本委員 はい、結構でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○沖野委員 沖野です。詳細に説明もしていただいて、いろいろな観点が出されており、今後の検討のための素材というのが出ていると思うのですけれども、他方で、既に御指摘のあった、甲1案、甲2案についての補助資料としての録音・録画や、あるいは甲2案の証人というものがどのくらい目的を達成できるようになっているのかということについての懸念というのも示されたと思います。   録音・録画について言えば、デジタル化の進展、特に生成系のAIとかそういうものがどんどん進むことによって、非常に容易に偽の録音や録画ができるというようなことになっているというのは、恐らく大丈夫なのかという懸念を生じさせることで、それに対してどう対応しているのかと、これも御指摘があったように、電子署名というのが最後、鍵になって、その部分に対応しているということだけれども、そういう懸念があるということと、その懸念に対してどういう対応をしているかということも出していただいた方が、より検討の素材としてはいいのではないかと思います。もっとも、既に説明の量がかなり多くなっているので、埋没していくというおそれもあるのですが、ただ、元々これによってどのくらいのことが達成できると考えられているのかということの説明があると、いいのではないかと思いました。   それから、証人については、結局その証人によって、正に本人がそのような意思を持って作成したのだということをある程度検証するということなのですが、そのためには証人の質といいますか、言わば中立的な第三者が証人になった上で、しかも証人として何をすべきかを自覚しているというようなことが必要になってくると思われます。遺言についての証人というのは、現在の制度でもあるのですけれども、どのくらいなじみがあるか、普及しているかということを考えると、婚姻の届出にサインすればいいのでしょうみたいな感じだと、大分ニュアンスが違ってくるということがあって、遺言における証人というのは、普及している法制度においてそれに依拠するのと、今回新たに正面から設けるというのでは、大分運用においても注意するべきことが違ってくるのかなと思います。   それから、録音・録画についても、証人についてもそうなのですが、一体どの範囲のところを事後的に検証できるとか、あるいは少なくともその段階である程度信頼できるような別資料を付けるということになるのか。作成の全過程、あるいは御本人自身が作成する場合もあればそうではない場合もあるけれども、その全過程ということだと、先ほどお話しになったような、1週間ぐらい掛けて毎日少しずつとかいうようなのを証人でどうやってやるのだという問題もありますけれども、その現実性の問題のほか、そこが曖昧だと、思わぬ落とし穴というか、わなになるというか、イングランドなどで証人について同時性あるいは面前の要件をうっかり満たさなくて事後的に無効になってしまうとか、証人要件についての見直しというのも議論があると思いますけれども、どの範囲で検証できるようになっていなくてはいけなくて、その要件を満たさないと遺言全体が無効になってしまうとかいうことだとすると、非常に技術的な落とし穴がある。それがないように、きちんとできる必要があるところを、専門家ということになると、今度はまたそのハードルが高いし、家族だと実は非常に、直接受益者ではないにしても結構関連しているとか、そういう問題があったり、あと、先ほど御指摘のあった特定の事業者の、実質的な受益者になるようなところの業者の社員の方が入っているとか、そういうようなものをどういうふうにして防止できるのか、それとも、そこはもうできないということで、ある程度そのリスクはあるけれども、それでも相対的にこちらがいいのだということにするのかという、懸念されるリスクですとか落とし穴ですとかそういうことも、どの段階でどの程度で書くのかというのはあるのですが、少し明らかにしておいた方がいいのではないかと思ったところです。   それから、少し別の話ですが、今、直前に本人確認等という、「等」とは何かという問題がありまして、ここでも、例えば8ページの29行目などは、証人の講ずる措置として、電子署名のみに必ずしも限られないとも考えられることから、電子署名等としていると記載されていまして、ほかにも方法があるのだということが分かるのですけれども、「等」とは何かという疑問もまた生じさせるので、証人の場合にどういったものがあるのか、もし例があるなら書いていただくといいかもしれないと思うし、例がないなら、ほかにもあるかもしれないので検討するということで、そういう趣旨だということでよろしいのですけれども、記載について少し検討していただくとよろしいかなと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。沖野委員から2点御指摘を頂きまして、この2点は根底のところではつながった御指摘だったのではないかと思って伺いました。1点目は、前から話題になっている録音・録画、それから証人ということについて、懸念とか運用上の注意事項というのがあるだろうということで、それを具体化した形で議論をすることが必要なのではないかという御指摘だったのではないかと思います。柿本委員から、真正性とか真意性というけれども、それがどれくらい確保できるかということが分かりにくいという御指摘がありましたけれども、それを別の観点から表現すると、今、沖野委員がおっしゃったような問題点をもう少し明確にする必要があるのではないかという話に通じてくるかと思って伺っておりました。   それからもう1点は、本人確認等ということなのですけれども、「等」は便利な言葉であるのですが、この場面では、先ほど御説明もあったように、本人確認というのを出発点にして、プラスアルファというものがあるかもしれないという趣旨で使われているということだろうと思います。そのときの、あるかもしれないプラスアルファの中身を、表現としては本人確認等でいいのかもしれないけれども、それが何であるかということを明示できるのならば明示し、差し当たりは特に想定していないのならば、ほかにもあるかもしれませんといった形で議論した方がよいのではないか。こうした議論の具体度を上げていくということが必要なのではないかという御指摘として理解をいたしました。そういう受け止め方でよろしかったでしょうか。 ○沖野委員 結構です。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○水口委員 水口でございます。少し繰り返しになる部分が含まれており恐縮ですが、甲1案に関して、執行を受ける金融機関として申し上げますと、やはり保管制度の対象外となって、6ページの27行目にあるとおり、検認を必須とするとしても、第三者のチェックが入るタイミングが相続発生後になるということで、電子署名の有効性が確認できないので、執行の際に金融機関として何を確認するのかといったときに、“電子署名らしきもの”が施されていることを確認することになると思うのですが、そのことにどれだけ意義があるのかということと、“電子署名らしきもの”の偽造リスクも、やはりあり得るのではないかとも思いました。また、先ほども議論がありましたけれども、同じパラグラフにあるとおり、検認と執行との制度設計の問題なのかもしれませんが、補助手段とはいえ法的に要件とされる録音・録画の内容を一切確認しないというのが許容されるのであれば別ですが、やはり民法478条の観点からそこの議論が免れないということであれば、録音・録画なりを確認して、かつ、その記録化のためにそれを保存するということになりますと、そういった対応は実務上は厳しいというのが正直なところです。   あとは、保管制度のところと少し関係するのですけれども、保管制度の代替で検認という議論が出てきていまして、保管制度と検認とで、それぞれの役割だとか意義というのはもちろん違いはあるとは思うのですが、専ら要件の第三者のチェックという観点から考えますと、実際問題として、検認というのは相続発生後、つまり遺言を作成してから相応の期間を経てから行われる一方で、保管制度というのは遺言を作成してからそう間を置かず行われることが想定されますので、どうしても検認の方が遺言作成から時間が経ちがちな分、いろいろなことの確認において困難を伴うリスクだとか、不備が判明するリスクが相対的に高まると思いますので、やはりチェックを行うタイミングは早い方が法的に安定的ではないかとも思いますし、不備があった場合に、本人が存命であれば不備の治癒が可能だとも思います。保管制度であれ検認であれ、第三者のチェックという負担を遺言を残す本人が負担するのか、あるいは遺言を残される次の世代の方に負担させるのかというと、遺言者としては自らがその負担をした上で法的安定性を高めるということを望むのでは、といった考え方もあるのではないかと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。水口委員から2点、つながる形で御意見を頂戴いたしました。1点目は甲1案についてで、甲1案は今まで否定的、消極的な意見も出ていたように思いますけれども、水口委員も、保管制度と結び付かないものであって、偽造の可能性等も残るというものであり、実務的にはやはり困難が大きいということだったかと思います。2点目は保管制度について、検認との対比も含めて保管制度のメリットが大きいのではないかということをおっしゃっていただいたのではないかと思っております。時期の問題とか負担者の問題を示されて、保管制度の意義をおっしゃったと理解をいたしました。 ○相原委員 相原でございます。今の水口委員の御発言、個人的に同じような感想を持ったところがございました。録音・録画につきましては、皆さん重ねておっしゃっていますとおり、後の検証の仕方等に関しては、かなり負担が大きいのではないかという意見を私も聞いております。   それから、検認についての質問なのですけれども、今の検認は自筆証書遺言の、いわゆる紙ベースのものを裁判所に持ち込んで、封印してあるものは相続人のいる前で裁判官が開封するという形になっているのですけれども、封印ではないもの、若しくは甲1案だとすれば、検認の手続は同じことを想定しているのかどうか、デジタルということはあり得るのか、いわゆる民事訴訟のIT化との関連もありますが、そういうこともあり得るのか、その関係で録音・録画みたいなものがどういうふうに検認の対象になるのか、ならないのか、もしそこでお考えになっていることがあったら教えていただきたいと思いました。   それとの関係ですが、やはり保管ということの方が私も魅力的と考えています。ただ、そこで確認するのが何かということについては、これからまだ検討が必要であろうとは思います。今後パブコメ等々で皆さんの御意見を伺うとすれば、日弁連の委員会では、否定的意見が多いのは外しつつ、できるだけ選択肢を設定して聴いてもらいたいという意見がありましたので、御紹介しておきたいと思いました。   それから、先ほど水口委員がおっしゃったように、やはり遺言者ができるだけ簡便にという意見も先ほどから出てきて、できるだけ作りやすいというのが一見魅力的ではあるのですが、実務家の観点からすると、自分が作りたいというよりも、これを作ってもらいたいという人の話の方が多いのですよね。そうなったときに簡略化、簡便化してしまうと、そちらの方がやはり誘惑的といいますか、非常に怖いというのが、私の個人的な経験からは主張しておきたいところです。なので、やはり作る人は、先ほど御紹介があったほかの国のケースでは、証人をつかったり、公正証書遺言のレベルでも相当数の人が遺言書を作っているとすれば、その必要性を個別にやって試みたうえで、デジタルでも作り得るということを可能にしてもらいたいなと思うのです。つまり、余りにも簡単にするということに関しては危惧を覚えざるを得ないのです。したがって、電子署名プラス証人なのか保管なのか、またその合わせ技というのが必要ではないかと個人的には思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。相原委員からは3点ないし4点の御意見があったように思いますが、具体的な意見と一般的な御意見とに分けてまとめさせていただきたいと思います。具体的には、やはり甲1案については、後でその真正性をチェックする負担が大きいのではないかということで、消極的な御意見だったのではないかと思います。これとの関係で検認についての御質問がありましたけれども、後でお答えを頂くということにします。やはり保管ということをベースにした方がよいということで、保管の際に、では、何を更に乗せていくのかということは要検討というのが個別的な御意見だったかと思います。   それで、一般的な御意見として、順序が逆になりますが、一つは考え方として、簡便さということに伴うリスクというものは、やはり軽視しない方がいいといった御発言があったのではないかと思います。今日のヒアリングでは、たまたまデジタル化に比較的消極的な三つの国が並んだということになりましたけれども、それらの国では簡便さということは聞かれなかったということもありまして、そういう御意見の御披露になったということかと思います。   最後ですけれども、中間試案の取りまとめに向けて、今、議論しているわけなのですけれども、少し御指摘があったところですが、どのくらいの選択肢を残すのかということを、皆さん、今のうちから少し念頭に置いていただけるとよいかと思います。一方で、幾つかの可能性があるということで選択肢を示すことが望ましいだろうと思いますが、他方で、たくさんあるとよく分からないという問題もありまして、その辺のバランスをとって、実際上御意見を頂けるような形で中間試案を取りまとめる必要があるのではないかと感じております。選択肢ということについて御意見を頂きましたので、この機会にそのように申し上げたいと思います。 ○齊藤幹事 相原委員からの御質問に可能な範囲でお答えをいたします。甲1案に関して、検認があり得るということが記載されているけれども、それは現行のものと同じか、違うのか、デジタル化されるということがあるのかと、こういった御質問と承りました。資料の作成の中で検討の及んだ範囲で申し上げれば、基本的には検認とあれば現行の検認を念頭に置いて記載しているということです。そうなると、やはり遺言の方式が遵守されているかどうかを審理するわけではなくて、残された遺言の性状を確認して、それを五感の作用によって検証し、これを調書に残すということになるかと思います。そして、その調書が執行の手続において用いられるということになるのかなと思っております。   他方で、先ほど申し上げたように、執行の段階でも録音・録画をいちいち開いてずっと見なければいけないのかというお話もあるとすれば、例えば、検認の段階で録音・録画についてはきちんと、こうこうされていたみたいなところが調書として残されればそれで足りるとか、そういったことはあり得るのかもしれないということは考えておりました。他方で、デジタル化されたことによって何か大きく変わるのかということは、余り想定が及んでおりません。ですので、もし何か手当てをするとすれば、別途、検認の特則みたいなものを検討する必要があるのかもしれません。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○宇田川幹事 最高裁家庭局第一課長の宇田川でございます。裁判所の検認の手続の関係が出たので、蛇足的なところではございますけれども、少し申し上げた方がよいかなと思っております。   今、実際に実務で多いのは、やはり自筆証書遺言で封緘されたものが多いというようなところも聞いておりまして、検認の手続は、そういったものについて、裁判所で開封をして、その現状等、性状等を確認していくというところが多いのかなとも聞いているところでございます。もちろん、今の検認でも封緘されたものに限られないものもあるのだとは思いますけれども、そういう封緘されたものが多いというところなのではないかと思われるところで、デジタル化されたデータのものを検認の手続で性状を確認するといっても、結局そこに作成時からどのような改変が加えられたかというようなことも分からないですし、電子署名についても、単に裁判所としては、電子署名らしきものがあるということを確認する程度のことしかできません。検認の手続は、有効、無効を審査する手続ではなく、先ほど第三者のチェックというような役割も述べられていましたけれども、飽くまでもそういった手続であるというところを御認識いただく必要があるのかなと改めて思ったところでございます。   また、検認について、先ほど、どなたかからも、遺言作成者とその相続人のどちらに手続上の負担を負わせるかという話もありましたけれども、この検認手続自体も、やはり家裁に申立てをしてもらった上で、相続人全員に対して家裁が期日の通知をして、申立人そのほかの相続人の立会いの下で、紙の文書であればその現物を一緒に裁判官の方で確認をするところに立ち会っていただくというようなことになっておりまして、それなりに負担があるというところも御認識いただいた上で、御議論いただいた方がいいのかなと思っております。   そういった意味で、裁判所としても、御議論を聞いていて、余り政策のところで申し上げるところではないのかもしれませんけれども、保管制度を利用するのが、やはり真正性の担保というようなところとか、その後の改変のリスクを防止するというような観点、それから負担という観点でも、メリットがあるのではないかともお聞きしていたところでございます。   雑駁ではございますけれども、以上でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。裁判所の方から検認について補足を頂いたと受け止めました。その上で、検認でできることや検認の負担ということを考えると、保管制度というものが望ましい選択肢、あり得る選択肢として上がってくるのではないかという御意見だったかと思います。 ○齊木委員 沖野先生から、証人についての具体像が見えないというお話があったので、お話ししたいと思いますが、既に公正証書遺言では証人2名が必要という現状で、現在の我が国の遺言では圧倒的な数が公正証書遺言です。つまり、圧倒的な遺言について証人がいるという実態があります。では、その証人はどういう人たちがなっているかと申しますと、士業者、弁護士さん、司法書士さん、行政書士さん、税理士さん、それから専門家であられる銀行の職員の皆さん、それから最近では終活専門の一般社団法人、NPOといった辺りの方々です。こういった方々が証人となります。ですので、証人に業者の社員が付いたらどうなるのかというお話がありましたが、先ほどの諸外国の例でもあるように、その遺言から利益を受けるような証人の場合には遺言の効力を認めない、あるいはその効力を否認するという規定を設けておけばいいわけで、そういうことにはならないと思いますし、既に多くの公正証書遺言で使われている証人がそのまま証人となるという理解でよいと思います。   それから、証人の在り方ですけれども、遺言ができるまでには実は長い経過がありますけれども、その全経過に立ち会っている証人はもちろんいません。公正証書遺言でも、いろいろ文案のやり取りを御本人が何回も来られてやりますけれども、そのときは証人はいません。最後に、できた文案について最終意思はこれですかという最終の場面で確認するだけです。そして、署名するのを確認するだけです。だから、長い過程に証人が立ち会うのはかなわんとおっしゃるのは、それは少し前提事実、認識が違うと思います。ですので、証人を必要とする場合には、現状の圧倒的多数の案件で行われている証人がそのまま移行すると思っていただければよろしいのではないかと考えます。   あと、電子署名が非常に大変だと、確かに文字に起こすと、デジタル遺言で電子署名を活用したりすると、ものすごく大変のように思えるのですが、今言ったような実態で、私が想定いたしていますのは、4士業と銀行さんとNPOか一般社団法人の人たちが来て、パソコンを持って習熟している人が来て、読み上げてみんなで確認したらパスワードを入れてもらうということをやりますので、御本人の負担としては実際、自分の希望を言って事前に打ち合わせるということと、当日はパスワードを入れているということだけの負担です。ですので、それができないようだと、実はパスワードを他人に入力してもらうということになるので、余計怪しい遺言になってしまうので、そのぐらいはしていただく必要があります。この間の参考人からの聞き取りでもありましたように、今、確定申告では7割が電子申告で、7割の国民の方が電子署名をして電子申告しているわけです。ですので、新たなデジタル遺言制度は、私は7割の国民の方を対象にする制度で十分ではないかと思っています。この割合は年代が進んでいくごとに、今は7割でも8割、9割と増えていくことは間違いないので、現時点で7割の方が使える制度で十分ではないかと、このように考えています。 ○大村部会長 ありがとうございます。齊木委員からは、証人の現在の状況ということについて御説明を頂きました。2名の証人の内実と、どういう形で関与されているのかということについてのお話がありました。また、電子署名についての御意見も頂戴いたしました。証人がずっと立ち会うのかということについては、先ほど戸田委員から御意見があったのですけれども、戸田委員がおっしゃった、ずっと立ち会うというのは、本人が入力を続けていることを証人によって確保するということになると、ずっと見ている必要があるのではないかという話だったかと思います。そうすると、証人をどこで使うのかということで、想定されている場面が少し違っているように思いました。 ○齊木委員 実は甲2案にはA案とB案でしたか、あって、B案は第三者に入力させてもいいという案なのですけれども、それというのは、要するに文案の入力、作ってきてもらうのは別な人でもいいということなのですよ、そして最終場面で読み上げて確認するということでして、本人が目の前に全文を入力していくというようなことは誰も考えていないのではないかと私は思っていますけれども。 ○大村部会長 おっしゃるとおりで、どちらの選択肢を念頭に置いて考えるかによって、証人がやるべきことが違ってきます。そういうことなのではないかと思います。戸田委員もそういう御理解に立って先ほど発言されたものと理解をしております。   ほかにはいかがでしょうか。 ○沖野委員 時間を取って大変申し訳ありません。今、現在の公証人の下での公正証書での遺言の実態や証人の在り方について教えていただいて、大変よく分かりました。ただ、問題は公証人の関与がないときに同じようにできるかということなので、同じようにするならば、それをどう確保するかだし、違ってくるならば問題が出てこないかという観点からお考えいただくとよいのかなと思っております。そういう趣旨だとは思いましたけれども、念のために申し上げました。 ○大村部会長 その点は重要なところなのではないかと思います。齊木委員は、最後に暗証番号を入れるだけなのだとおっしゃったのですけれども、そういう状況をセットしておけば、最後に暗証番号を入れるだけなのですが、そうでないと、自分でやらなければいけないということになる。ただ、電子申告の話をされていましたけれども、自分でやれるという人も相当増えてきているというので、そういう人を念頭に置けばいいのではないかというお話も、二段構えの形で、あったのではないかと承っております。   ほかにはいかがでしょうか。 ○倉持幹事 まず、保管制度等について選択肢として残すべきだと思っていますし、これは甲3案だけではなく、プリントアウト方式の乙2案もそうだと思うのですけれども、その観点で、もう少し簡略化した方がいいのではないかという御指摘もあったので、それに付言して何点か述べさせていただきたいのですが、まず簡単なところとして、乙2案の出頭は要件ではなくて郵送でいいのではないかという御意見がありましたけれども、プリントアウト方式だから出頭ということには必ずしもならなくて、プリントアウト方式を郵送してウェブ会議で本人確認するということで出頭の負担を軽減するということも可能だと思いますので、そのような方式も検討していただきたいと思います。   それから、保管プラスアルファの要件をという御意見もありましたが、利便性を図るという意味では保管のみということでいいのではないかと思います。プラスアルファの理由として、保管機関は本人確認はできるけれども真意性のチェックはできないのではないかという御指摘がされていますが、部会資料5の10頁に本人が実際に保管申請手続を行ったという事実関係という説明がありますけれども、保管申請を行ったということは、やはり本人の真意である可能性がかなり高いのではないかと思われます。仮に自筆証書遺言と同等の真意性だとすると、自筆証書遺言でも筆跡が残るだけですので、それが本人の意思かどうかというのは必ずしも担保されるものではなく、例えば横に誰かがいて、このとおり書きなさいと言われて自書した自筆証書遺言かもしれませんが全文自筆しているものなのでその人の真意である可能性が高いであろうというレベルですので、それとの比較では、自ら保管申請を行ったという事実行為が、それで真意性として十分かどうかというのは御議論があるところかと思いますけれども、自筆証書遺言と比べてそれほど劣るものではないのではないかと思っております。   それから、部会資料5では申請行為と保管を分けているようですが、これは非常に分かりづらいと思いました。要するに、これは申請したけれども保管しなかったとか、保管を途中で取り下げた場合にどうするのだということを視野に入れていると思いますが、そこまで視野に入れなくても、そういう場合は要件を満たさないということで、シンプルに保管を要件とするということでいいのではないかと思いました。   それから最後に、義務付けという言葉が出てきて、これは少し違和感があります。従前の伝統的な自筆証書遺言は残すという前提で議論をしていると思いますので、保管したくないという方は従前の自筆証書遺言を使えばいいだけで、必ずしも保管を義務付けられるものではないということで、言い回しの問題かもしれませんが、ここは中間試案の際に誤解なきよう表現していただきたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。保管制度を軽減するというか、あるいはシンプルなものにするという方向の御意見で、具体的に4点おっしゃったかと思います。最後の義務付けは多分、おっしゃったように言葉の問題であって、現在の自筆証書遺言の保管も義務付けるということは想定されていませんので、そこは誤解がないような表現にしてもらえばよいのかと思います。   その他については、乙2案は先ほど出たように、出頭という要件は不要なのではないか、それから、保管プラスアルファと言っているのだけれども、アルファがなくても自筆証書遺言と同等と考えることはできはしまいか、ここは御異論もあるところかもしれませんけれども、そういう御意見でした。それから、申請と保管とを分ける必要はないのではないか、これは、申請と保管を分けるという考え方があり得るので、それについて資料の中で検討されたということだろうと思いますけれども、そこまではやる必要はないのではないかという御意見として承りました。   ほかにもまだ御意見があろうかと思いますが、今日はここまでにしたいと思います。   次回この問題についてもう少し御意見を頂いた上で、それから、今日の資料には(1)という番号が付いていますが、残る問題について準備される(2)の方に進みたいと思います。ということで、今日は(1)がまだ終わっていないということで、次回に継続して検討したいと思います。   本日は、この程度にさせていただきまして、次回の議事日程等につき事務局の方から御説明をしていただきたいと思います。 ○齊藤幹事 本日も御多忙の中、熱心に御議論いただきありがとうございました。   次回の日程は10月29日火曜日、午後1時30分から午後5時30分まで、場所は赤れんが棟1階の法務総合研究所第6教室となっております。建物が赤れんがになりますので、よろしくお願いします。   次回は、会議の後半の時間帯に海外法制に関するヒアリングの続きを実施する予定であり、具体的にはアメリカとカナダに関する研究者の方からのお話を伺う方向で調整をしております。また、次回の前半につきましては、本日積み残しになった部会資料5について御議論いただくとともに、それから、自筆証書遺言の方式要件、あるいは特別方式の遺言の方式要件について、中間試案のたたき台に至る前の追加の資料を準備したいと考えております。併せて申し上げますと、新たな方式については、日付ですとか、加除その他の変更ですとか、それから撤回の関係、つまり細かい論点もございますが、ここは本体と結び付いているので、少し状況を見て、場合によっては中間試案のたたき台のようなところで具体的に御提案、御議論いただくということがあり得るかと考えております。 ○大村部会長 外国法関係のヒアリングが後半、それから今日の残りと次の資料についての御議論が前半ということで、次回はお願いをしたいと思います。それから、場所が赤れんが棟の方になるということですので、お間違いのないようにお願いをしたいと思います。   それでは、本日はここまでということにしたいと思います。法制審議会民法(遺言関係)部会の第5回会議を閉会させていただきます。   本日も熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。閉会をいたします。 -了-