法制審議会 民法(成年後見等関係)部会 第13回会議 議事録 第1 日 時  令和7年1月14日(火)自 午後1時30分                     至 午後5時58分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  1 任意後見制度と法定後見制度との関係について         2 任意後見制度に関するその他の検討事項について         3 その他の検討事項について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山野目部会長 法制審議会民法(成年後見等関係)部会の第13回会議を始めます。   本日も御多用の中、御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。   本日は、上山委員に加えて家原幹事、小林幹事及び杉山幹事が欠席でいらっしゃいます。また、羽野幹事が会議の中ほどから参加され、中座の御予定もおありだと伺っております。   本日の審議に入るに先立ちまして、審議で使用いたします資料の配布状況について事務当局から案内を差し上げます。 ○木田関係官 本日は新たな部会資料の配布はなく、既に配布しております部会資料9を使用いたします。資料の内容については、後ほどの御審議の中で事務当局から御説明差し上げます。 ○山野目部会長 案内を差し上げましたように、新しい部会資料の配布はございません。前回、部会資料9の途中まで進んだところでした。本日は部会資料9の34ページからの第4のところから後について審議をお願いしてまいります。   事務当局から第4の部分についての説明を差し上げます。 ○木田関係官 部会資料9の34ページ以下、「第4 任意後見制度と法定後見制度との関係」について御説明いたします。   一読目の審議では、任意後見制度と法定後見制度との併存を認めることを支持する意見が出された一方で、権限が重複した場合の効果などについては様々な考え方が示されたところです。そこで、35ページ以下の2において、任意後見制度と法定後見制度との併存の可否及び併存の在り方について、36ページ以下の3において、権限の重複の可否及び権限が重複した場合の効果について、37ページ以下の4において、併存した場合の監督の在り方について、考え方を整理しております。これらの点を踏まえて御議論を頂ければと考えております。 ○山野目部会長 説明を差し上げました第4の部分について、御意見を頂きます。いかがでしょうか。 ○小澤委員 ありがとうございます。任意後見制度と法定後見制度との併存の可否と在り方については、第7回部会で意見を申し上げましたとおり、任意後見契約の代理権などが不足し、代理権などを追加する契約ができないことで、新たに任意後見契約をし直さなければならないことや、既に契約を締結し直す能力が不十分となっていて、法定後見を申し立てた場合に任意後見契約が終了となること、代理権などが将来的に不足しないように契約締結時により包括的な代理権を設定する傾向にあることなどの任意後見制度利用における問題点を改善することができるのではないかと考えておりますので、任意後見制度が法定後見制度に優先するとの考え方を維持した上で、任意後見制度と法定後見制度との併存を認めることに賛成をします。   権限の重複については、基本的には任意後見人が成年後見人等に選ばれ、不足する代理権を追完するという運用がよいと考えておりますので、その場合は権限の重複について問題にはならないと思いますが、仮に特段の事情があって任意後見人と成年後見人等とが別の人となる場合には、家庭裁判所において任意後見人の代理権とは抵触しないように必要性を考慮して成年後見人等の代理権を付与いただければ、あえて権限の重複に関して新たな規律を設けなくてもよいようにも考えられます。ただし、実務の現場で代理権の重複が問題となる懸念もあると考えられますので、権限の重複について規律を設ける場合には、本人の意思を尊重する観点から、任意後見人の代理権を優先させる規律とすることが適当だと考えています。   併存した場合の監督の在り方については、任意後見と法定後見それぞれの制度において監督を行うことになるものと考えますが、特に任意後見で不足する代理権を追完するために任意後見人を成年後見人等に選任した場合は、任意後見監督人と家庭裁判所とで監督機関が分かれて監督することとなり、監督機関ごとの監督の範囲等が複雑になりますので、任意後見監督人を成年後見監督人等にも選任するなど、報告や監督が複雑にならないように運用上の工夫が必要になるのではないかと考えております。 ○野村幹事 任意後見は一般的に本人と受任者との信頼関係に基づくものであって、後見人の業務を受任者が可能な限り行うということが本人の希望であると考えられます。何をしてもらうのかではなくて、誰にしてもらうのかが本人にとっては重要な場合が多いと思われます。そこで、法定後見との併存よりも、代理権の追加を行えることを原則とすべきと考えます。ただ、実務では併存のニーズもありますので、任意後見を尊重しつつ法定後見と併存させる柔軟な制度設計が必要と考えます。例えば、同意権、取消権の行使が必要な場合など、本人の権利擁護を図るために任意後見と法定後見を併存させるニーズはあると思います。また、その他のケースとしましては、実務上、会社経営者が自分の会社の議決権の行使の権限のみを顧問弁護士等に付与している任意後見において、他の保護が必要になった場合なども考えられます。   併存した場合の権限の重複については、そもそも任意後見のみでは本人の権利擁護を図れない場合に法定後見を利用すると考えますので、権限の重複をさせないような工夫、ひいては登記上の工夫についても必要と思います。本人の権利擁護のためにはチーム支援が重要となりますので、任意後見と法定後見が併存して権利が重複する場合は、チームにおいて調整することも考えられます。また、任意後見監督人を法定後見の後見人に選任するとか、任意後見監督人を法定後見の監督人に選任するなどの柔軟な監督人の在り方を検討すべきと考えます。 ○佐保委員 ありがとうございます。本人の自己決定を尊重した任意後見制度を優先した上で、事理弁識能力を欠く常況にある場合に併存を認めるという考え方でよいのではないかと考えます。不適切な任意後見人を排除することへの配慮も必要だとは思うものの、飽くまでも限定的な取扱いとするべきではないかと考えます。   権限の重複については、新たに法定後見制度が開始される際に、家庭裁判所において重複が生じないように代理権を付与するなど、整理する必要があると考えております。なお、この場合も、できる限り本人の意思を尊重した上で代理権の付与を行うことが望ましいと考えます。   併存した場合の監督の在り方については、任意後見人と法定後見人で共通した監督人でなければ、併存した際に生じる問題の把握が難しいと思われます。そのため、新たに法定後見制度が開始される際に、任意後見監督人の継続も念頭に入れながら、改めて成年後見監督人を選任するという方向性でよいのではないかと考えます。 ○佐久間委員 今まで御発言なさった方と基本的に同じなので、余り言う必要はないのかなと思いますけれども、少しほかの考え方について申し上げておきたいと思います。反対の考え方に関して、あらかじめ申し上げたいと思います。   まず、35ページに、33行目からですかね、不適切な任意後見排除の配慮も必要だから、場合によっては現行法のように任意後見契約を終了させて法定後見のみを開始させることも考えるべきであるという意見が前回どうもあったようでありますけれども、これは「現行法のように」とあるとおり、現在可能であって、これを封じる必要は今後もないと思います。ここで問題となるのはプラスアルファを認めるかどうかであって、この考え方があるからといってプラスアルファの制度設計を封じるということにはならないのではないかと思っています。   その上で、両制度の併存を認めるかということについては、本人に同意能力がある限りは、これは本人の選択に任せればよいと思います。今まで御発言なさった方が任意後見の方が優先だと繰り返しおっしゃって、それはそうだと思うのですけれども、本人が任意後見を結局やめて、なお判断能力がある場合ですけれども、法定後見に一本化したいというときに、任意後見は場合によってはコスト高の問題もありますから、それを封じる必要はないのではないかということを、今までの方がそういうふうな考え方を採られているということではないかもしませんけれども、念のため申しておきたいと思います。   権限の重複については、これは本来的に法定後見を後から足す場合に避けるべきことなのだろうと私は思います。なぜならば、権限を重複させるということはある種、本人意思の無視になるおそれが強いと思うからです。任意後見人にしてもらいたいという事務について、ほかの人に法定で権利を与えてしまうということになりますと、結局そのほかの人が先に行為をしてしまいますと、本人の意思と異なる、あるいは本人の意思に基づかない権限行使になってしまいますので、これは本来的に避けるべきだと思います。ただ、本来的に避けるべきだといっても、明確性が欠ける場合がどうしても出てくるので、重なることを全て避けられるというわけではない、その場合には単独行使の原則が妥当するということを、これは条文にするかどうかはともかくとして、明確にしておくことがよいと思います。そうしておかないと、20行目以下に書かれているような、取引の実際においてどちらが権限を持っているかはっきりしないので取引に応じませんなんていうことを誘発しかねないので、そのように考えています。   もう1点、法定後見優先の考え方はおよそあり得ないのではないかと思っているので、その点を申し上げておきたいと思います。そもそもが、法定後見の開始について必要性を判断して開始するというようなことが、これはおおよそコンセンサスになっていると思うのですが、その必要性がある、ないというところを判断する際に、任意後見で対応することだってあり得るのではないかということを前に申し上げたところです。そういたしますと、任意後見で対応可能かどうかを判断するという枠組みを法定後見において採りながら、任意後見だけでは足りないということになったときに、いきなり全部法定後見というのは、これは論理的にはあり得ないというか、論理ではないかもしれない、思想的にあり得ないと思いますので、併存は認めるというか、法定後見を開始する必要があるとしても、任意後見を活かせるところは当然活かすということにならざるを得ないのではないかと思っているところです。 ○小出委員 ありがとうございます。今までの発言と重なる部分があるのですけれども、一読目で発言させていただきましたとおり、実務の現場では任意後見人と成年後見人ないしは任意後見人同士で権限の重複が発生する場合には、当然任意後見人と後見人間での意見の相違が発生しまして混乱することも想定されるものと考えております。   前回の部会では、複数人の権限者がいる場合でも支援チーム内で調整を行った上で対応されているというふうな御発言もあったと思っておりまして、そういった場合ではトラブルが顕在化することはないと思うのですけれども、問題となるのは、権限者同士の対立があって、その調整がなされない場合と考えております。例えば、任意後見人Aが実行した取引を後見人Bが復元するように求められるといった事例が発生した場合に、金融機関としては両方の代理人の申出にもとづき取引をすればよいのかもしれないが、本人のために適切な取引がなされているかどうかに疑念が生じ得ると考えております。また、両方の代理人から「もう片方の代理人の言うことは聞くな」というような主張がなされる場合も考えられますけれども、その場合、実務の現場では板挟みになり、リスクを取って任意後見人A・後見人Bの双方の合意の取引にしか応じないといったことも考えられるが、その場合も取引ができないことで本人が困ることはないか、取引権限を有することが代理権目録から明らかな者からの要請を拒絶することができるのか、という問題に直面、実務現場としては非常に困った事態に陥ると考えられます。たとえ、銀行の約款などで取引の相手は1人と定めていても、そういった権限者間のトラブルが発生している場合においては、そこがなかなか、法律には両方とも権限を認めているではないかというような主張がされるということも想定はされると思っております。このため、部会資料36ページの28行から33行目に記載のとおり、新たに法定後見制度の開始の審判を家庭裁判所において行う際は、任意後見人、法定後見人間で権限の重複が発生しないように代理権付与を頂くことが望ましいと考えております。   また、上記を前提に代理権目録上重複が生じないようにしていただいた場合でも、予期せぬ重複により上記のような任意後見人、法定後見人間でトラブルが発生した際に、金融機関等の取引の相手方がその紛争解決を相談することができる機関・支援を設けていただく必要もあるものと考えております。 ○山野目部会長 小出委員にお声掛けをします。お話の途中に聴取不能の部分が、恐らく通信障害によってだと思われますけれども、若干ございました。後で議事録を調製するに当たりまして、お手元の発言のメモの提供をお願いすることがあるかもしれません。また、ここに御参加の委員、幹事にお声掛けをしますけれども、小出委員が今御発言でおっしゃろうとしたこと、大体の趣旨は理解することができるように感じますけれども、細部が分からないということであれば、小出委員の発言について何か論評の御発言をお持ちの方のために所要の工夫をいたしますから、お申出を頂きたいと望みます。   そのことを御案内した上で続けます。いかがでしょうか。 ○佐久間委員 小出委員がおっしゃる方向は分かったように思うのですが、結論については、一部聞き取れたところの36ページの24行目ぐらいの、法定後見が開始する場合には権限重複をなるべく起こさないようにすべきだというのは分かったのですが、それよりももっと本当は踏み込んで、複数の後見人、法定後見人複数でもいいし、任意後見人複数でもいいし、任意後見人と法定後見人でもいいのですけれども、複数の権限者がいた場合には取引には基本的には応じにくいとおっしゃったのか、そこを少し、今の段階でのお考えをはっきり伺えればと思います。 ○山野目部会長 小出委員、今、佐久間委員の方から御質疑があった点は、声は届いていたでしょうか。 ○小出委員 聞こえております。先ほどは音声不良等で大変失礼いたしました。   権限の重複があった場合には取引に応じられないかというふうな御質問であったかと思いますけれども、そこまでを申し上げたわけではなくて、とはいえ、一方で重複が発生し、相反する意見が出た場合には、どちらからも言うことを聞くなと言われると、両方の言うことを聞くと、結論、そういった場合には両方ともの取引に応じることができないというような形になりますので、トラブルが発生する事例として想定される一例として申し上げたということでございます。 ○山野目部会長 佐久間委員、お続けになることがあれば。 ○佐久間委員 はい、あります。私が、例えば銀行取引で妻を代理人にする旨を届け出たといたしまして、妻がしたことについて、私はそうは考えていないということを後から銀行に言った場合に、銀行としては、やはりそういうことが起こるから、代理人届というのは基本的には受けにくいのだとお考えなのかどうかということを聞きたいです。というのは、ここの場面は、飽くまでこれは私の考えですけれども、権限を持っている人が複数いたとしても、それぞれが単独で有効に行為ができるということを大前提として制度を組んではどうかという話だと思っております。そうだとすると、権限者が複数いる場面というのはここだけではなくて、一杯あるはずで、会社、企業が取引するときなんかだってそうだと思います。そのような場合に何らかのトラブルに巻き込まれたくないというふうなことをもし仮におっしゃらないのだとしたら、ここでなぜそういうことをわざわざ、ある種、牽制球のようなことをおっしゃるのかということを聞きたいと思います。 ○山野目部会長 小出委員、お続けいただくようお願いしてよろしいでしょうか。 ○小出委員 ありがとうございます。ここは、すみません、多少私の意見もあろうかと思いますけれども、先ほど佐久間委員がおっしゃっていただいたとおり、本人の方が意思能力が健在で奥様に代理権を付与していただいている場合については、御本人様が意思能力を持たれているという状態かなと思いますし、企業におきましては、法人としてガバナンスが利いた中で、取引の代理権者が複数あるというような状況で取引をするかなと考えているのですけれども、つまり、今回のような事例の場合においては、御本人の方が基本的には意思能力がなく、そういった中で、調整弁を持っている方がどなたか監督人以外の形でいらっしゃって、最終的に御本人の利益に基づいて取引をまとめていただけるということであれば、よいのではないかと思うのですけれども、先ほど私が申し上げたような、想定した事例におきましては、コントロールが利かないといいますか、調整弁を利かせる御本人でしたり監督人が不在の状態で、全く相反する意見を言われてしまった場合には、先生がおっしゃったとおり、権限を有しているのだから淡々と取引をすればいいのではないかということかもしれませんけれども、そういった場合に、両方の話を聞くなということになりますと、身動きが取引の相手方としてはとれなくなってしまう状況が出てくるということなのではないかと考えております。   すみません、少し的を射ていない回答かもしれませんけれども、以上でございます。 ○佐久間委員 おっしゃることは事実としてはよく分かるなと思うのですけれども、例えば会社でだって、任意代理の場合だって、意見の対立が内部で起こっていた場合には、対外的な取引において相手の言うことは聞くなというようなことは、やはりあり得ると思います。ここでも権限を有している人が複数、飽くまで出現したということが前提ですけれども、出現した場合には、その権限のある人はその権限に基づいて行為をすることができるということにするわけですから、銀行に限らずかもしれません、取引相手としては、それは2人の権限者がほぼ同時にとか、あるいは相次いで異なることを言ってきているのだったら、どちらの言うことを聞いていいか分からないからペンディングにするということにしたって、特段恐らく法的に非難されるような事態にはならないと思いますし、そのような事態でなければ粛々と応じればいいし、応じるべきだという、そういう含みで多分この制度は考えていこうということだと思うのです。   何度も申し訳ないですが、なぜこれを繰り返し言うかというと、実務が動かないような制度にはすべきでないということを何度か私はほかの局面のことですけれども申し上げてきたと思います。ここでも、仮に事実として権限者が複数出てくることがあった場合に実務は動きませんよと言われるのであれば、やはり考え込まなければいけないと思うのです。思うのですけれども、今の局面で小出委員がおっしゃったようなことで実務が動かないのではないかというふうなことを言われるのは、私には余り適切には思えないので、実務に携わっていないので間違っているかもしれませんが、そこのところはかなり制度を組む前提として大事なことではないかと思うので、もうここでやめますけれども、私の意見だということで繰り返し発言をさせていただきました。 ○山野目部会長 小出委員に今もう一度声掛けをして、おっしゃることがあれば伺いますし、それを踏まえて、私から少し金融機関の方で考えを深めていただきたいというお願いも差し上げようと思っておりますから、まず小出委員の方から何かおありでしたら、お願いします。 ○小出委員 佐久間委員のおっしゃるところは分かりましたので、追加的に申し上げることはこの場ではございません。ありがとうございます。 ○山野目部会長 ありがとうございます。今、御検討いただけるという含みに近いことをお述べくださったと感じますけれども、引き続き全国銀行協会始め金融機関の皆さんで、今話題になったことを御検討いただければ有り難いと望みます。ここのところは理論面と実務面といいますか実際面とで、両方それぞれどうなのだろうということで課題の整理をしていただくとよろしいのではないかと感じます。理論面の方の整理が当面の法制の建付けを考えていく上では必要なものでありまして、佐久間委員から問題提起を頂いたことをお考えいただくことがよろしいであろうと思います。   考えてみますれば、小出委員は今、本人には意思能力がある場面を佐久間委員は例に挙げられましたねというお話であったですけれども、その例そのものはそうかもしれないとして、佐久間委員がおっしゃったように、理論的にだけ考えると、いろいろなところに類似の局面というものがあるはずでありまして、例えば一般社団法人に複数の理事がいるときに、それぞれの理事は、理事会設置一般社団法人等で代表理事を決めている場合は格別、そうでないときには、全ての理事が各自代表の権限を持っていますから、ばらばらに金融機関の窓口を訪れ、うちの法人のためにこれをしてくれと求めたときには、その訪れてきた一人一人が言っていることというものは、各自代表ですから、いずれも適法でフルサイズの権限行使であると理論的には整理されるわけでありまして、余り法人や会社について窓口でそういうことが起こらなくて、どうしても高齢化社会を迎えて、ここが深刻であるということで小出委員が先ほどからおっしゃっていると思いますけれども、そうは申しましても、理論的にはやはり会社とか法人なんかで同じ局面が想起されて、それらの場面ではそれとして恐らく金融機関に御対応いただいていると想像しますが、あくまで理論面のみ申せば、ここの高齢者のところでのみどうなのかということで特に取り出す仕方でおっしゃられると、また少し法制を組み立てていくに当たって上手に整理ができないということになりますから、一遍、理論面は今のような観点から、また、そうはいっても現実に窓口で対応しようとしたときに、こういうことは困りますということも、恐らく金融機関の現場の声を吸収しておっしゃらなければいけない課題があると思いますから、それらもお届けいただきたいと望みます。   小出委員からは前回、この話題を議論した際に、証券取引や預貯金の取引などに係る複雑な事態が生ずるから金融機関としては心配していますというお話も頂いていて、そういう具体例を挙げていただくと、それはそれとして、なるほど心配ですねという気持ちにもなりますけれども、しかし、何となく心配だから理論の整理はいいではないかということにはなりませんから、また引き続きお近くの皆さんで御検討いただき、意見が形成されたところをお届けいただければ有り難いと望みます。どうもありがとうございました。   引き続き伺います。 ○遠藤幹事 今の部会長の整理との関係ではおそらく実際面の話になるのではないかと思いますが、任意後見と法定後見が併存することを前提とした場合に、家庭裁判所において任意後見と法定後見の権限が重複しないように整理すべきであるという御意見を幾つか頂きました。   例えば、任意後見契約である程度包括的な代理権を親族である任意後見人に付与しているものの遺産分割の権限は定められていない場合に、遺産分割について法定後見が申し立てられたようなときは、ここまでの御議論を前提とすれば併存は認められることになると思われます。そして、現行制度の代理行為目録を前提としますと、遺産分割の場合にはそれに関連する一切の事項について代理権を付与することになります。これは代理権をどの程度個別具体的に付与するかという問題とも関連するのかもしれませんが、今申し上げたような関連するあるいは付随する一切の事項というように代理権を定めた場合には、遺産分割の結果生じた金銭の振込等の局面において、預貯金の入出金については任意後見と重複する場面が生じ得ると思っております。こういった場合においても、なお任意後見が優先することになりますと、法定後見の事務を全うするのが困難になりますので、こういった場合も想定して、権限が重複した場合の優劣を議論していただけると有り難いと思っております。 ○山野目部会長 遠藤幹事の問題提起を承りました。ごもっともなお話であると感じます。   今の点でもよろしいですし、ほかの点でもどうぞ。 ○青木委員 まず、個別代理権の付与ということが法定後見で中心になるとなれば、柔軟に併存させるということができるということになり、これまでですと任意後見か法定後見かという二者択一の選択しかなかったものが、本人さんのニーズに応じて柔軟に対応できるという意味で、併存を基本としていくということが大事ではないかと思います。   併存が想定されるのは、概ね三つの類型だと思っております。一つは同意権・取消権について、任意後見ではそもそも権限が設定できないものについて併存させる場合、次に、任意後見契約では代理権設定がなかったものについて改めて付与の必要が出た場合。三つ目は、既に任意後見契約において代理権設定があるのだけれども、任意後見人の能力や適性の問題から法定後見の方がいいという場合。大きく分けるとこの3類型であると思っていまして、いずれの場合も併存を認めるべきだと思いますが、併存させる場合においては、法定後見の利用をする判断から見て、必要性の判断において、先ほど佐久間委員がおっしゃったような、任意後見では無理なのかというところをしっかりと吟味をしていただいた上で、法定後見の必要性を検討するということであれば、基本的には混乱なく、権限の競合を避けるということでの認定ができていくのではないかと思います。   ただ、3つ目の場合のように、任意後見人の能力や適性がないために、任意後見でも代理権はあるのに法定後見の必要性があるとして併存させた場合には、権限が競合してしまいますから、その重複行使を避けるために、任意後見契約のその代理権を停止させる措置を裁判所においてできるようにするということを、現行制度ではできないわけですが、任意後見そのものを終わらせるということはできても、任意後見の一部の代理権を停止させるということはできないわけですが、そういうことができるような制度にすることが重要ではないかと思っています。更に言いますと、代理権の停止までする必要はなくて、形式的には権限が競合しているがそれでも構わない場合ということもあると思いますので、そこは裁判所の裁量で停止させるかどうかを判断をしていただくということでいいのではないかと思っています。   さきほどから議論がありました、複数の代理人が権限が重複している場合については、現在の制度でも、法定後見の複数後見で、権限分掌しないで職務を行う例が実務であります。そこで特に大きな混乱は起きていないと思いますが、中にはごく一部ですが、親族後見人と法律専門職後見人が複数後見になっていて、方針が違って、それぞれ同じ預貯金について、ああでもないこうでもないと処理方針が異なるということで混乱をすることがあります。そういう場合、後見人から裁判所に権限分掌の申立てをして、権限を分掌してもらうことによって、円滑な処理をできるようにすることもしております。今回任意後見と法定後見が併存する、そして権限が競合する場合も認めるとすれば、場合によっては、任意後見側の権限を停止させることによって、できるだけ混乱を防ぐということが可能になるのではないかとも思っています。 ○山野目部会長 青木委員に一つお尋ねでありまして、任意後見人の権限を一部、一時的に停止させるというアイデアがあり得て、その仕事を裁判所にお願いしてみたらどうかというお話だったと考えますけれども、法定後見の場合の分掌は、元々法定後見の監督が家庭裁判所の仕事でありまして、そのことは自然にそうなのだろうと感じますが、任意後見のときに、任意後見人を直接に家庭裁判所は監督してこなかったし、これからも恐らく任意後見の制度の趣旨から言えば、余り裁判所がダイレクトに出てくることに対しては、裁判所としても、してくださいと求められて少し戸惑うような場面はあるだろうとも想像しますけれども、それは裁判所に限った話なのですか、それとも、任意後見監督人に何かしてもらおうとかというアイデアもあり得るものでしょうか。 ○青木委員 現行の任意後見監督人を必須とする枠組みの中では、今、部会長がおっしゃったような、裁判所が法定後見人を併存して選任するにあたって、任意後見人にある同様の権限をどうしようかということにつき監督人の意見を求め、監督人の判断で停止させる、あるいは監督人の意見を踏まえた上で裁判所が停止させるという、いずれの在り方もあり得るのではないかと思っています。 ○山野目部会長 ありがとうございます。いずれがするにしても、任意後見人から完全に代理権を奪ってしまったりするという発想ではないだけれども、しばらく任意後見人は控えていて動きを止めていてもらえますかというような、何と言ったらいいでしょうか、一種の指示を発するようなことが青木委員の発想の背景にあるかもしれません。従前の法制の例でいうと、検察庁法12条のように、この仕事をこちらの検察とこちらの検察とどちらもすることが考えられるだけれども、上級庁から、あるいは検事総長から、これはこちらで取り扱うことにして、そちらは待っていてくれませんかという指示をするというようなアイデアの発想が盛り込まれている法制の例もありますから、そういったようなものを参考にしていろいろ考えていこうというのに近いことをおっしゃったと聞きました。ありがとうございます。 ○根本幹事 6点申し上げたいと思います。まず一つは併存についてです。併存自体は認められると思っていますけれども、ただ、いかなる場合に併存が認められるのかという点については、この後お話しする任意後見法10条の趣旨とも関係して、先ほど野村幹事からもありましたけれども、任意後見人に追加で代理権を付与するということでは足りない、補えない場合に限るなど併存させる場合の要件は明確に決めるべきではないかと思います。具体的には、発効している任意後見人が追加で付与される代理権、若しくは青木委員からもありましたが、今持っている代理権をその任意後見人が行使することが不適切だと思われる、例えばその追加する部分を今の任意後見人が行使するのが適切ではないとか、若しくは今あるものを今の任意後見人が行使するのが適切でないというような場合に限定されるべきではないかとは考えています。   2点目に、10条の趣旨ですけれども、併存が認められていくということになりますと、現行法の任意後見優先の原則が、個々の代理権ごとに優先関係を判断するということになるのかと思っておりまして先ほど佐久間委員からあったような、本人の同意なり意向を反映させながら優先関係を個々に裁判所に判断していただくということになるのかと思っています。   3点目として、併存が認められるということになるのであれば、任意後見と法定後見が統一的に人単位で登記されるということになりませんと、誰がどういった権限を持っているのかというのが分からなくなりますし、取引の相手方も非常に混乱されますので、統一的な登記にしていただく必要があると考えています。   4点目が権限の競合についてです。青木委員からありましたけれども、重複の場面について、佐久間委員がおっしゃっておられるように、単独行使であるということにはもちろんなるのだと思いますが、そうであるとしても、全ての案件ではありませんけれども、重複が不適切というような場面というのもあると思いますので、付与で調整できるのか、若しくは場合によっては代理権の一時停止という措置も必要になるのかということは、監督人なり裁判所なりで御判断を頂く必要があると思います。   その関係で、任意後見の監督人が例えば法定後見人を兼ねる、若しくは法定後でも監督人が付くようであれば、任意後見監督人と法定後見監督人を同じ人が担当するなど、併存する上で監督人という存在は兼任していく工夫も運用上必要になると思います。   最後に、小出委員と佐久間委員のやり取りを伺っていて思いましたけれども、権限者が複数いたとしても、実務上取引者を届出時に限定させるという取扱いをされるケースもあります。法人と個人で大きく違うと私は実務上感じているのは、法人印については、これは法人で管理をされているということになるわけですが、個人で複数権限者がいるという場合には、印鑑文化がどうなるかにもよるかもしれませんけれども、判子を保管している人がそれぞれ別々に存在するということになりますので、取引者をどのように実務上限定するのか、若しくは届出印というものの取扱いをどのように整理をしていくのかということもあると思いました。 ○山野目部会長 多岐にわたる御意見を頂きました。   引き続き伺います。いかがでしょうか。 ○山城幹事 これに先立つ三人の委員、幹事の先生方からの御発言に関わることについて、発言いたします。私も併存を認めることには賛成なのですけれども、権限の重複ですとか、あるいは監督をどう考えるかは、想定される事例がどのようなものかに関わるだろうと感じております。   前提といたしまして、仮に法定後見について継続的な代理権授与を例外的な取扱いとし、必要な事項に限って代理権を与えることになるといたしましても、任意後見では、遠藤幹事から御指摘がありましたとおり、継続的に代理権を授与することがあり得ますので、代理権の範囲に属する事柄について、重ねて法定後見を開始するか否かという問題が生じるだろうと思います。根本幹事から御発言がありましたとおり、その辺りは任意後見法10条の1項と、あるいは4条の1項2号と関わるかと理解しております。   任意後見法の10条1項につきましては、どういう場合に本人の利益のために特に必要があると認めるかが問題となります。任意後見に重ねて法定後見を開始する必要があるか否かを考える際にも同様の問題が生じますが、そこでは、既に任意後見人に権限が与えられていれば任意後見を優先させるべきなのか、それとも権限が授与されていても法定後見人を選任すべき場合があり得るのかが問われるかと思います。この点について、私は、適切に権限を行使されていないとか、任意後見人の適性が異なるとでも申しましょうか、当初の任意後見人ではない人に対応させたほうがよいニーズが新たに生じたときには、任意後見契約に基づいて継続的に代理権が与えられている事項についても、なお法定後見人を選任することがあってよいと考えます。   その種の問題への対応として、法定後見を開始するのではなく、任意後見契約を修正するという対応、つまり権限を追加するといった議論がありましたけれども、契約の修正を家庭裁判所が果たしてすることができるのかについては、理論的な検討が必要であろうと感じます。これまでの議論は任意後見人がしかるべく任務を行っている場合を想定したものであろうと思いますけれども、私は、その場合であっても、家庭裁判所が主導するのであれば、法定後見人の選任という対応に一本化する方がすっきりすると考えています。   それから、監督につきましては、任意後見と法定後見では任務の与え方がかなり異なるものとなる可能性があることを踏まえましても、それぞれの任務についてそれぞれの監督が行われるという形が原則とならざるを得ないのではないかと感じます。監督というのは、任務について行われるものだからです。もちろん既に任意後見が発効していて、その監督人が法定後見の方も監督することが適切だという場合はあるでしょうが、その場合には法定後見について監督人を選任する際に任意後見監督人と同一の者を選任すればよいのであって、両者は同一であることが原則だというわけではないと考えます。 ○山野目部会長 御意見を頂きました。   引き続き伺います。いかがでしょうか。   御意見のおありの方はおられませんか。おられなければ先に進んでもよろしいですけれども、後でもまた御案内しますが、次回から三読に入って、その後は中間試案に進んでいかなければなりませんから、少し跳躍台を高くしておく必要があります。本日、併存そのものないし併存の場面での職務の分担とか監督について、委員、幹事にかなり深められた御議論を頂いてきたところではありますけれども、いろいろ問題点が浮き彫りになってきている半面、まだ委員、幹事がそれぞれどういう考えでいらっしゃるかという点を確かめ切っていないようなところも残っている感覚がございます。   一つ二つ具体的な局面を挙げて、何かお考えがあったらば承っておきたいと思います。大学の演習授業みたいな場面設定を一つ二つお出しして、恐縮ですけれども、一つ目は遠藤幹事のおっしゃった局面でありまして、任意後見人は預貯金のことをお願いします、と望まれて引き受けていた任意後見人であると、遺産分割のことは権限になかったから、法定後見人が選任されて遺産分割のことを担ったとしましょう。ただし、遠藤幹事がおっしゃったように、代理権目録には遺産分割のこと、それに付随することと今までも記してきたし、これからも記すでしょうから、そうすると遺産分割が終わった後に若干お金の処理みたいな事務が必要になる場面は、その側面から見れば法定後見人の付随事務で権限の中の事項になりますし、しかし任意後見人は、預貯金のことは私の権限ですよという状態になっているわけですから、このような場面の権限の積極的抵触をどう考えるかという問いは、委員、幹事がお考えのことを少し、もし何かお考えがあったら承っておきたいと考えます。   それから、もう一つ異なる局面を挙げますと、恐らく今までの任意後見の実務というものは、既に現行法で全部又は一部を委任する契約が任意後見契約ですと書いてあっても、現実にはほとんどの任意後見契約が、公正証書を作成するときに網羅的、包括的な諸事項を委任しているでしょうから、今後も割と、今般大きな法律改正を行ったとしても、一気に実務での公正証書の作り方の感覚みたいなものが、一部の事務という進め方も大いにあるねというふうには意識が変わっていかないような気もします。そうなったときに、任意後見人は全部の権限があります、そのことについては法定後見は発動できませんと決めてしまうと、ほとんど法定後見が発動できる場面は、もう原理的に重複が起こることになりますから、有り得ないことにもなりそうです。その局面を、先ほど山城幹事は、しかしそういう場面であっても場合によっては法定後見を始めるということがあったってよくて、もちろんそれは慎重に判断すべきだけれども、考えていきましょうというお話をなさっていて、それと、その前に何人かの委員、幹事がおっしゃった、でも任意後見は大切であって、そちらが優先ですという思想といいますか原理は捨ててはいけませんというお話も、それももっともな話でありまして、そこを今改めようということにはならないと考えますけれども、この辺の考え方の整理というものはどういうふうにしたらいいかといったようなことについても、もし委員、幹事からお考えがあったら承っておきたいと考えます。   どの点でも結構ですけれども、少しそれは発言を残しておこうというお話があれば、頂戴いたします。いかがでしょうか。 ○佐久間委員 今、部会長がおっしゃった2点について私の意見を申し上げますと、まず権限の抵触は、これは先ほども申しましたけれども、避けようと思っても避けられないことはある、そのときは単独行使が各自できるということを原則、特に規定を設けなければ、そうなるはずなので、それを原則とし、トラブルがそれでも事実として起こるということになれば、先ほど青木委員ですかね、おっしゃった事実としての工夫に委ねるということがよろしいのではないかと思っています。   それから、任意後見の場合に全部委任が実情であるということを前提に、法定後見をどういう場合に発動するか、発動の余地があるかということですが、一つには、既に何人かがおっしゃいましたけれども、本人の事理弁識能力が失われているという場合に、同意権、取消権による保護が必要だということがありますよね。また、本人の意思能力、事理弁識能力がまだ欠ける常況にあるといえないときは、結局のところ本人が請求するか、本人の同意によって権限が法定後見において与えられるということになりますので、その本人の意思の確認さえきちんとできるならば、全部委任が任意後見においてされているとしても、当該この行為について、この事務についてという請求があった場合に、法定後見の開始要件としての必要性も満たされるということであれば、特段悩む必要はないのかなと思っています。   ただ、どこで申し上げようかと思っていたのですが、本人は事理弁識能力を欠く常況にはないといっても、やはり他人からの影響を非常に受けやすい状態にあることは否定できないと思うのです。そうすると、権限を握っているということは本人の財産についてアプローチしやすいということなので、親族間などを典型に、その権限の取り合いみたいなことが起こるおそれは、これはどうしても残るのではないかと。そうすると、既に全部委任がされているところ、別の親族の請求によって、本人の同意は後でされるにしても、個別の事柄、事務について法定後見の申立てがされたらどうするとか、慎重に判断すべき場合があるかなと、そういうふうには思っています。 ○山野目部会長 よく分かりました。 ○根本幹事 私からも2点です。佐久間委員とほとんど結果は同じと思うのですが、一つは部会長が演習として出された問いについて、法定後見で遺産分割をやるという場面は、法定後見人が権限を単独行使する範囲、遺産分割の受領に関しての預貯金取引について、若しくはその後の何らか遺産分割に関する債務の支払い等についても単独行使ができるということが明確になっていれば、よいのではないかと思っています。   先ほど青木委員の整理にもありましたけれども、権限が重複するということが想定される場面において、任意後見人と法定後見人が積極的に能動的に権限を行使することで支障がある場面と、お互いが見合ってしまって、これは自分の仕事ではないということで、消極的になって権限行使されずに御本人に不利益が生じてしまう場面と、その両方があるのだと思うのです。一時停止が必要になる場面というのは両方が積極的に行使をする場面ということになると思いますが、先ほどの部会長の演習の題材の前提は、法定後見人は家裁の監督も厳しく受けますから、当然その受領やその後の報告も含めて本来は法定後見人が行うということになるので、法定後見人が積極的に権限行使をしない、サボタージュする場面ではないのかなと思いました。ただ、先ほど申し上げたように、任意後見人と法定後見人、両方ともに自分がやるとなってしまっている場面は、法定後見人が優先をするという整理が必要になると思います。法定後見の開始や、法定後見の代理権付与を家庭裁判所で御判断いただいているという前提になると思っています。   2点目は、任意後見の終了事由とも関係すると思っていますし、10条の内容をどのように構成していくのかということとも関係するのかと思いますけれども、任意後見自体を終了させる場面というのは大きく二つあるかと思っています。一つは任意後見人自身が非常に不適切であるという場合です。先ほど佐久間委員からもありましたけれども、例えば囲い込み事案で、同居の方や親族の方が任意後見人としても囲い込んでしまって、ほかの親族と一切会わせないということが起きている事例もあります。実際に法定後見開始の審判と任意後見監督人選任の審判がほぼ時を同じくして申し立てられ、二つの事件が併合されて審理をされると、その中で10条の優先関係が判断されるという紛争事例は非常に増えています。これは相続の前哨戦として任意後見が使われてしまっている事例だと実務上捉えていますので、佐久間委員がおっしゃられたように、果たして親族が任意後見人として適切な事務が行えるのか、特に身上保護面において行えるのかということは、非常に課題があると思っています。場合によっては任意後見契約を終了させる、そうではなくて完全に法定後見に移行するということも裁判所の判断としてはあり得ると思っています。   もう一つの任意後見を終了させる、特に全体を終了させるというのは、任意後見で付与されている代理権が限定的な場面というのも今後は出てくるのだと思いますので、任意後見契約の代理権行使だけでは不十分で、ほかの権限行使をその任意後見人が行うのではなくて、別の人が行う方が適切だと裁判所が代理権の内容との関係で判断されるという場合も、任意後見自体を終了させて法定後見に移行させる御判断はあり得ると思っています。 ○山野目部会長 よく分かりました。ありがとうございます。 ○山城幹事 部会長からご整理いただきました2点目について御発言申し上げます。   恐らくこういうことだろうと思っておりますのは、任意後見の基本的な効果は代理権の授与ですが、任意後見契約が締結されている場合には、任意後見人がいる結果、本人が自分自身でできることが拡大されており、その代理権の範囲に属する事項については法定後見を開始する必要性がないと判断されるのではないでしょうか。これは補充性と申し上げてもよいかと思います。そうだとしますと、任意後見がうまく機能しないときは、本人が自分自身でアレンジした方法によっては対応することができないわけですから、法定後見を開始する必要性があると判断してよい。両者の関係は、このように整理することができるのではないかと感じました。   その上で、任意後見があるから法定後見を開始する必要性がない判断すべき場面については、先ほどの発言のくり返しになりますが、既に任意後見受任者または任意後見人に権限が与えられている以上、当該事項については法定後見を開始する必要性はないと直ちに考えるべきではなく、事務処理の状況に照らしてそれが十分に機能していないと見るべき状況においては、たとえ既に権限が与えられている者がいるとしても、これと重複する権限をもつ法定後見人が選任されてよいのではないかと思います。 ○山野目部会長 御意見を頂きました。 ○沖野委員 ありがとうございます。各自の考え方を述べよという設問だと思いましたので、少し考えているところを申し上げたいと思います。   最初の、任意後見人に預貯金管理が任されているところ、遺産分割の必要が生じて、それについて法定後見人が選任されると、しかし遺産分割には、例えば現物の分割だけれどもお金で調整というようなことがセットになってくる可能性がありますので、かつ遺産分割というのは分割協議をして終わりではなくて、分割の実現まで、例えば不動産であれば登記だとか、あるいはお金で調整というときには一定の金額をもらって、それでこういう分割にするとか、逆に支払うことでこれをもらうとか、そういうことも含めて分割協議というのが行われると思いますので、それを実現するためには金銭の受領、そして、そのまま現金で持っておくということは考えられませんので、預金にする、新たに口座を作るのか、既存のものに入金してもらうのか、あるいは支払いのために、これも原資が必要ですので、やはり預貯金から出金して支払うと、それによって現物も来るとか、そういうようなことが考えられるのかと思いました。そうしますと最後の段階の、入出金だとか預貯金管理ということが重なってくるので、任意後見人が元々持っている権能との重複が出てくるけれども、どう考えるかという、それが第1の設問ではないかと考えました。   そこでなのですけれども、併存を認めるかということについては、併存というのは、両方がともにある人について存在するということを認めるかという点だと思いますけれども、それは認めるしかあり得ないのではないか、と考えております。もちろん同意権、取消権ということが、任意後見をいかしながら法定後見しかできないという場合がありますし、代理権の追加は、それはどちらでやるのかということだと思いますけれども、ですので、今の意味での併存ということであれば、当然併存ということになるかと思います。   併存の場合に、さらには権限なり権能の重複を認めるかという話がもう一つ、次にあるのだと思いますけれども、今のような形で言うと、預貯金のところで、やはり一見したところ重複があるということは出てくると思われますので、それも一定範囲では認めざるを得ないのではないかと思います。そうしますと競合も生じるので、そのときの関係をどう考えるかということだと思いますが、これに対しまして、全くの単純併存で、単独行使なので、早い者でやればいいという、次の人が別のことを言えば、今度はそれに対応するということでいいのか、あるいは一定の優先を付けるのかということで、任意後見優先、法定後見優先という話がされていると思います。   それで、少し整理をしておく必要があると思いましたのは、併存するということを前提にその間でいずれかが優先するかというときに、今の問題の設定は、併存のときには任意後見は既にあるという前提で、その後、法定後見をどうするかと、こういう局面を考えるのだということで、まず理解しております。そうしたときに、既に任意後見はある中で、ここに法定後見を開始させるのかという話です。この段階では、これも既に御指摘が様々ありますし、ここは一貫しているのではないかと思いますけれども、それは任意後見優先といいますか、任意後見があって、本人がそれを継続したいという意向を持っている限り、本人が終了させたいと思っているならば、それを酌み取る必要があると思いますけれども、その存在を前提としつつ、したがって、今ある任意後見、あるいはそれを、もし代理権追加などが認められるならば、任意後見を極力機能させるという形での対応が想定され、それでは不足なのかというのが、法定後見を開始するときの判断になるという話になると思います。任意後見による対応可能性を踏まえて、結局、法定後見が必要なのかどうかの判断になるわけです。任意後見のほうで代理権の追加などが可能になり、それで十分対応できるなら任意後見のほうでやりましょうということで、その意味で、任意後見優先というのが基本的な考え方であり、そのような場合にもやはり法定後見ということにはならないという前提だと思います。   今の設例の場合は、預貯金管理はあるのだけれども、遺産分割はそもそも権限に入っていないので、任意後見人の権限に加えますかという話が一つあって、少しそれでは適切でないという判断があるという前提だと思うのです。その場合も、任意後見人の権限を加える制度設計ができるかということが一つありますけれども、その制度設計ができるならば加えますかという話になりますが、例えば、ここはかなり専門的な知識が要るので今の任意後見人では難しいですねと、したがって、ここはそもそも遺産分割という権限を追加しますかということと、それを今の任意後見人では足りないのですか、同じ人にお願いするわけにはいかないのですかという問題と、それをどの資格でお願いするかという問題があって、任意後見人という形でお願いするのがいいのか、法定後見人という形でお願いするのがいいのかという、三つぐらいの選択肢があるのだと思います。同じ人に続けてお願いするのか、続けてお願いするけれども、任意後見ではなく法定後見にここはした方がいいという話があるのかどうかということで、かつ設例は、まず任意後見の追加ではやらないと、同じ人には頼まない、別の人にして法定後見にして、遺産分割プラスそれに必要な一切の権限の中には預貯金というのが入ってきますと、設例はそういう場面ではないかと思いました。   ですから、この段階では結局、新たに選任される法定後見人にこの関係はさせるのが適切であるという判断をした上で、一見したところの権限重複という場面に入っていますので、私はむしろ、任意後見では足りないということで、あえて法定後見人にこの個別の権限を与えるという判断がされている以上は、基本的にその関係については、基本的な考え方は法定後見優先ではないかと思うのです。だから、この場合も遺産分割に関わる金銭の受領と入金や、それから金銭の支払いと出金というのは、遺産分割関係に正に関わる履行そのものですので、そこも金銭の受領と支払いだけだ、債務の弁済だけだ、みたいにならずに、やはり法定後見人にしっかりやってもらうというのが適切ではないかと思いますので、その場合には法定後見人にむしろさせるのが望ましいという判断で法定後見開始しているわけですから、そちらが優先というのが本来ではないかと。   ただ、そうしたときに、法定後見人がきちんとやらないので、例えば支払いの履行を求められたけれども法定後見人は対応せず、任意後見人のところにその話が来たときに、任意後見人が支払っていいですかといった話も出てくると思います。そのときには、遺産分割に選任された法定後見人がきちんとやらないということの監督をどうするかという問題ではないかとは思いました。そのときに更に、任意後見人が、例えば金銭を受領してよいですかとか、あるいは遺産分割で調整金を払わなければいけないのだけれども、出金していいですかというのは、それが義務になっているならば支払ってもいいし、受領してもいいしという意味では、任意後見人の方で対応するということもできるし、また実質的にも適切だと思われます。権限という点でも、任意後見人の権限はなお剥奪はされていないので可能と、そういう説明になってくるのではないかというのが設問1についての考え方になるのではないかと、私はそういうふうに考えております。   それから、同じように考えますと、任意後見の方が非常に広い形で設定がされている、全部とかですね、しかしながら、その全部を前提として今、法定後見を開始すべきかどうかということが問題になっているわけなので、そこには全部でお願いして大丈夫かという問題があって、やはりそれでは適切ではなくて、そちらの権限は限定した上で法定後見をするべきだと、別の人にお願いすべきだという判断は、やはりそこで法定後見の開始のところでされているのではないかと思います。そのように法定後見を認めることは可能で、あとはその後、そのような判断を実現するためにいかに明確化を図るかという問題ではないかと思いまして、任意後見の方で全部と書いてあるけれども、一定のこれこれの事務というのはこの人にお願いするのは適切ではなくて、法定後見を発動させるべきだということであれば、これを先ほど来の権限停止にするのか、あるいは指示という形にするのかという話で、調整を図っていくということになるのではなかろうかと考えました。 ○山野目部会長 よく分かりました。ありがとうございます。   第4のところについて、ほかにいかがでしょうか。 ○佐久間委員 今の沖野委員の御発言に1点だけ、特に前段の方について、法定後見での開始の必要性を判断すれば、そこである種、決着が付いているのではないかということについて、それは理論的にはそうだと思うのですけれども、登記にそれをうまく反映できるのかということ、この範囲が重複しているのですということが分かるようにできるのかということを、私は疑問に思っておりまして、したがって権限の重複というのは認めざるを得ないのかなと思っているということだけ少し申し上げます。その上で、第4関係、ほかのことでもいいですか、併存のことで。   今は、任意後見が開始している場合に法定後見の開始を認めるか、現在の任意後見契約法の10条関連でどうかというお話だったと思うのですが、法定後見について、特に個別化を志向するということになると、ほかの事務について更に加えたいというときに、任意後見契約で対応するという選択肢も認められるのではないかと思うのです。そうすると、今日の段階ではまだありませんけれども、中間試案に向けて、法定後見が開始している場合に、本人に契約締結能力があるという前提で、任意後見契約の締結は可能かというか、効力を生じさせる意味で、即時発効でももちろんいいのですけれども、そういう論点も拾った方がいいのではないかと思いました。 ○山野目部会長 分かりました。   第4の部分について、ほかにいかがでしょうか。   それでは、第5に進んでよろしいですか。久保委員、櫻田委員、花俣委員のお話は、任意後見全体が一区切り付いたときにお声掛けしようと考えております。   第4の部分は、ほかによろしいですか。 ○山城幹事 先ほどの沖野委員の御発言に対する質問という形になってしまいますが、任意後見人が既にいる場合であっても、法定後見人に重複する権限を与えるという判断がされたときは、その事項については法定後見人の権限を優先させるという調整が図られたとみるべきであるというお話であったかと理解いたしました。これは代理権相互の調整だから、そのようなことができるということなのでしょうか。例えば本人の状況が改善したため、本人自らが法律行為をしようというときには、仮に法定代理人が選任されていたとしても、それだけでは行為能力は制限されませんから、本人の法律行為は有効になるのだろうと思うのですが、任意後見人は、法定後見人が選任された後にはその種の行為をすることはできないことになるでしょうか。法定後見人に代理権が授与されたことの効果として、他に権限を有する者との間での権限の調整が、能力や代理権の制限のような法理を介在させずにできるのかが気になりまして、御発言申し上げました。 ○山野目部会長 承りました。ありがとうございます。 ○沖野委員 ありがとうございます。実は佐久間委員の御指摘に対して元々手を挙げたつもりだったのですけれども、山城幹事の御指摘も重なるところがあるのかなと思いましたので、釈明をさせていただきたいと思います。   一つは、代理人間の権限の重複があるというときにどうするかということで、私の方で申し上げましたのは、そもそも法定後見を開始するか、個別のこの権限を重複した形でも与えるのかという部分ですけれども、一定重複するのだけれども、任意後見では十分ではないという判断をして法定後見が開始するということからすると、基本的には法定後見優先というのがむしろ考え方の基本ではないかということを申し上げました。その際に、では任意後見の方が代理権限を失うのかというと、それは失わないので、失わせるならば失わせるための手当てをしなければならないだろうと、一時停止なのか、実際には失わないけれどもやめてくださいねという指示なのかということが必要になってくるのではないかと申し上げたつもりでした。   そうでなければ、先ほどの遺産分割の例でも結局、金銭を受領して入金するとか、あるいは出金をして支払う、振込をするとかということを、任意後見人の方で、そのような遺産分割協議になったのであればということで、されるということは封じられないだろうと、そういうことを考えておりました。   もちろんこの場合は代理人間の調整ですけれども、山城幹事が御指摘になった本人が登場する場面、これは本人の意思は最優先というのが一番基本にあるところですし、それから、少し余計なことを言いますと、先ほど重複するときにどうですかというときに、本人と代理人がいるときに、それぞれ権限行使しているというときにどうですかということなのですけれども、代理人は飽くまで本人の意向に沿ってやっていて、本人の権限が前提というか、本人の能力があって本人が行使できるという前提であれば、最終的に決定するのはやはり本人ではないかというのが基本で、しかし本人では十分ではないときにどうするかという問題はまた別途あるというのが、むしろ代理人にとっては基本になるのではないかと思っておりました。   それで何らかのレスポンスになっているのかどうか分かりませんけれども、取りあえず補足というか釈明というか、させていただきました。 ○山野目部会長 今の沖野委員の御発言も踏まえて、何か重ねての御発言があれば承って、それを留めますし、特段御発言の希望がなければ先に進みますけれども、いかがでしょうか。よろしいですか。   それでは、部会資料のその次の部分、部会資料9の第5の部分について事務当局から説明を差し上げます。 ○木田関係官 部会資料9の37ページ以下、第5の「1 予備的な任意後見受任者の定め等(任意後見契約の登記に関する規律等)」について御説明いたします。   一読目の議論で、予備的な任意後見受任者の定めを設けることを支持する意見が見られたことを踏まえて、主に予備的な任意後見受任者を定めることを認めた場合に、予備的な任意後見受任者を規定した任意後見契約がいつからどのような法的構成で効力を生ずるか、先行する任意後見契約について任意後見監督人が選任されていたときに、後行の任意後見契約に引き継がれるのか、及び後見登記に関する記載について御議論いただきたいと考えています。 ○山野目部会長 ただいま御説明を差し上げた部分について御意見を頂きます。いかがでしょうか。 ○小澤委員 ありがとうございます。まず、現在の実務で複数の任意後見受任者と委任者との間で任意後見契約を締結している事例について、御報告をさせていただければと思います。   我々司法書士は個人で任意後見を受任していることが多いため、委任者と受任者の世代が比較的近くて、受任者が委任者よりも先に死亡してしまうなどすると、せっかく締結した任意後見契約が終了してしまうことが起こり得ます。そこで、複数の司法書士などが任意後見受任者となって契約を締結することがあります。そして、契約上は複数の任意後見受任者それぞれが独立した代理権を行使できることとしていますが、内部的に主たる担当と予備的な担当といった取決めをして、後見事務を行っています。   なお、この任意後見契約は、例えば委任者を甲とし、複数の任意後見受任者をそれぞれ乙、丙とした三面契約により一つの公正証書で契約を締結し、当事者間では実質的には一つの契約として取り扱っているものの、現行法の下では飽くまで受任者ごとの複数の契約という取扱いとなって、登記も単に複数の任意後見契約を締結しているということで別々に登記されることとなっていますので、契約の実態に即した形での登記は現行法ではできないというところだと理解しています。このように、実際に複数の任意後見受任者によって将来に備えた契約を行っているケースがありますので、予備的な受任者の定めを設けることには賛成をします。   また、後見登記の記載については、第9回部会でも発言をしましたとおり、一覧性がある分かりやすい記載方法にすべきと考えていますので、予備的な受任者についても任意後見契約の当事者として、契約を締結した時点で一覧性を持たせた分かりやすい記載方法で登記をしておくべきと考えます。 ○山野目部会長 ありがとうございます。きちんと御案内申し上げていませんでした。ただいま事務当局からは、第5の任意後見制度に関するその他の検討のうちの1の部分のみ御案内を差し上げました、予備的な任意後見受任者の定め等というところについてお尋ねをするものであります。ここについて今、小澤委員から頂いたのと同じように引き続き御意見を承っていきます。引き続き、いかがでしょうか。 ○野村幹事 ありがとうございます。任意後見は、契約締結から効力発生、終了するまで長期にわたるため、任意後見受任者の事情で後見事務が行えないリスクに備えるために、現在でも、先ほど小澤委員の御発言にもありましたが、複数の任意後見契約を締結して、既に任意後見契約を締結している場合でも追加で契約を締結して、当事者間で主たる受任者を決めることは実務的には行われています。しかし、この複数の契約の順位や関係というのは第三者から見て明らかではありません。予備的な任意後見受任者の定めを設ける旨の契約が法的に認められるということは、委任者の意思を尊重することからも必要と考えます。   先行する契約について監督人が選任されていたときに、その監督人が後行の契約に引き継がれるかという点については、先行の任意後見における監督人が引き続き選任されることは、実務上の実際の運用としては考えられるとは思うのですが、後任の任意後見任人と監督人との間の欠格事由ですとか、先行の後見人が親族で後行の後見人が専門職である等その受任者の特性が異なるなど、監督人を再検討する必要も想定されるため、そのまま承継されることについては慎重意見です。予備的な定めの発効条件が成就した場合に裁判所が判断する、そういった手続が必要であると考えます。   そして、現在は登記上、予備的受任については明記されていませんが、公示できるような登記の見直しも必要と考えます。登記事項に予備的受任の定めがある旨、対象となる契約について契約番号を記載するなどの公示が考えられます。公示の時期については、委任者の任意後見の契約の状況が明確に分かるよう、予備的受任の契約がなされた時点で公示するべきと考えます。 ○佐保委員 ありがとうございます。順位を付けて任意後見契約が行えるようにすることは、本人の意思を尊重する観点からも必要であると考えます。同じ任意後見契約の中で順位を付けるのであれば、任意後見監督人も職務を継続するという整理でよいのではないかと考えます。   なお、任意後見監督人が後順位の後見人によっては欠格事由があるかないかは、最初の任意後見監督人を選任する際に確認できるのではないかと考えます。そうであれば、後順位の後見人へ移行する場合は、任意後見監督人は解任となり、改めて任意後見監督人を選任すると整理すれば問題ないのではないかと考えます。   登記については、今の任意後見人が誰なのか明らかにすることが重要であり、予備的な任意後見受任者が任意後見人に選任された段階で登記をし直すのであれば、予備的な段階で登記をする意味は余りないのではないかと考えます。 ○根本幹事 予備的なニーズについては、小澤委員から御指摘があったとおりだと思っておりまして、基本的には監督人自体は連続性を認めて引き継がれるようにする、御本人に対しては原則、同じ者が監督人を務めていくということが望ましいと思います。他方で予備的な契約がある場合に、その予備的な者も含めていずれも欠格事由に抵触しない監督人を選任するということを法制化することは難しいのではないかと思いますので、実質上の取扱いということになるのではないかとは考えております。   予備的な場面もそうですが、追加で任意後見契約を締結するというような場面も念頭に置きますと、監督人選任時点では追加で足される契約のことまで全て想定するということは、これは理屈上無理ですので、監督人の欠格事由に抵触することが追加等で行われたということになるのであれば、そこは交代をしていただくという対応にせざるを得ないのと思います。   あわせて、登記について、繰り返しになりますが、本人単位で一元的に管理をするということがいろいろな観点から求められることだと思います。予算上の問題等もあるかと思いますが、本人単位で登記が行われていくということをしっかりと管理するということで御検討いただきたいと思っています。 ○山野目部会長 根本幹事にお尋ねをしてお教えいただきたいことがございまして、どういうふうに申し上げればよろしいのでしょうか、世の中にはサイトウさんとかタカギさんとかがいます。サイトウのサイの字とか、タカギのタカという字とかが複数の種類のある字であって、人単位とおっしゃっても、この人とこの人は同じ人であるかという問題を解決しないと、人単位の登記というものは机の上で考えているほど簡単には出来上がらないものです。今、予算上のこともあるとおっしゃいましたけれども、予算はもちろん、それが本当に公益上の要請が強くて必要であるということが裏付けられれば、それはこちら側にいる事務当局の人たちに頑張っていただいて予算の折衝をしてもらうことになりますが、話のもっと手前のところで、人単位の登記ということを根本幹事は今日、2回おっしゃったところ、そこは、ここの部会の議論の進行を聞きながら、事務当局も一所懸命様々な想定を描いて考えていくだろうとは期待しますけれども、引き続き少し一緒に悩んでいただきたいというお願いも添えておいた上で、何か今お考えがあったら承っておきます。 ○根本幹事 例えば現行法上も、登記されていない事項証明書については、人単位で発効されているものだと承知をしておりますので、本籍、住所、生年月日等の要素で特定をされていると承知をしています。人単位というのは十分可能なのではないかとイメージしております。 ○山野目部会長 そちらは、ないということの証明ですから、ひとまず可能ですけれども、この人とこの人は同じ人であるから同じ登記にまとめましょうという扱いは、もう1ランク上のことをしないといけません。引き続き事務当局の方も悩んでいきますけれども、根本幹事にも一緒にお悩みいただきたいと望みます。   引き続き御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○青木委員 この予備的な任意後見受任者を設定しておくという契約のニーズは高く、私も60歳になりますが、この間68歳の方から任意後見契約の依頼を受けましたが、先生とたいして歳が変わらないけれども大丈夫ですかねと言われます。任意後見契約の内容とか代理権の内容については、これで行きましょうねというのははっきりしますし、任意後見人は私にお願いしたいとなりますが、それまで健康でいてくださいねとなり不安が残るので、どうしても予備的な受任者を、同じ契約内容についてもう少し若い弁護士になっておいて欲しいというのは切実です。現行では別々の契約を二つ結んだだけで、あとは本人さんが、私が先に亡くなったらもう一人の人にという選択を本人のコントロールに任せるというのでは、ご本人にすると不安があるということですので、予備的な受任者を定める契約が一体として一つの契約の中で表示され、登記されるということが必要であると思っています。   私としては、任意後見契約としては一つの契約で、それを予備的な受任者を含めた三者による契約だと考えて、契約の内容としては同一の契約であるけれども、それを受任する者だけにつき予備的な順位が明確に付く、委任者の方で選択するのではなく順位を付けると、そういう制度がこのニーズに合わせるにはよかろうと思います。ただ複数の契約を同時にしておくことにしますと、どちらを先に発効させることもできるということに論理的にはなってしまいますので、青木に任せたかったのに、若い弁護士が勝手になるということを防ぐという、発効には原則本人の同意が要りますから、そんなことにはならないとは思いますけれども、そういう契約ができる制度へのニーズをかなえるべきではないかと思います。   契約を一つのものにできるのであれば、その契約を監督するということで、任意後見監督人も引き続き同一契約内容で、任意後見受任者が交代しても監督を継続するということも整理としてはしやすいのではないかと思います。 ○山野目部会長 私も青木委員には長く健康でいていただきたいと望みます。どうもありがとうございます。 ○竹内(裕)委員 青木委員が今おっしゃったことと同じようなことでして、議論の前提として、この予備的後見受任者の定める契約というのが誰と誰との間で契約するのかということを気になっていまして、二者契約で予備的な方を定めておくものなのか、あるいは三者契約なのかによっても、これは違うなと思いまして、三者であればいいのですけれども、二者で勝手に予備的な方のお名前だけ載っているという状態だと、この予備的な方が実際になるという場面が生じた場合に、新しくなられる方と御本人との契約というのはいつ発生するのかということが少し気になりました。ただ、今、青木委員の三者契約ということであれば、それはなくなるのかなと思ったり、ただ、それだとしても、その予備的な方が就任する場合、その時点で実際に就任する意思があるのかどうかというところが気になるなと思いまして、遺言でも執行者を定めるのですけれども、定めた方がその時点で嫌だと言って就職を承諾しない場合もありますよね、だから、その時点において果たして契約が有効に本人と予備的な方の間で成立するのかというところは、少し気になると思った次第です。 ○山野目部会長 今の青木委員、竹内裕美委員の意見の積み重ねで、法的構成を少し考えていかなければいけなくて、予備的な人というものは単に名前を掲げているだけなのか、任意後見契約の当事者になっていて、しかもそれは当初からなのかといったようなことについて、引き続き検討していくことにしましょう。 ○佐久間委員 契約については、どちらもあり得るなと思っておりました。気になっていましたのは、ニーズが現在あるというのはよく分かったのですけれども、実際上新たな仕組みを作ることでどこがよくなるのかということに今ひとつまだ分からないところがあります。一つは、例えば契約が一つになると、公正証書が一本でいいので費用が安くなるとか、そういうことがあるのか、ないのかということと、あと、予備的な受任者を設けたとして、今、竹内裕美委員がおっしゃいましたけれども、その人が就任するときがやがて来るわけですよね。そのときには就任をすれば登記を変えなければいけないはずなので、それ以前に予備的な受任者であることを記録する意味がもう一つよく分からないのです。記録してあったとしても、変えなければいけないから、そうすると必ず裁判所の関与というのが必要なのだと思うのです。任意後見監督人についても、欠格事由がないかどうかの確認はやはり不可欠だし、任意後見法5条の欠格事由に該当しなくても、例えば利益相反の状況にある人だったらほぼ、事実として選任されないのではないかと思うのですが、その確認も必要なので、結局のところ契約を先にしておきます、そうすると後に本人が事理弁識能力を欠く常況になったとしても、契約はすでに有効にされているから、追加ではなく、その当初の契約、元々結んでいた契約によって対応できますというところは分かるのですけれども、それ以上に何かメリットがあるのかなということがよく分かりません。   メリットがないからやめろということではないのですけれども、いずれにせよ、繰り返しますけれども、交代というか、予備的な人が実際に受任者になるときには裁判所の関与は不可欠なので、どの点が期待されるのかがよく分かりませんので、できればどなたかに教えていただければと存じます。   ○山野目部会長 今、佐久間委員から半ばお尋ねのような意見をお出しいただいたことについて、お考えがあれば承りたいことに加えて、私からも少し委員、幹事の御意見を伺っておきたい事項がございます。   予備的な任意後見受任者といわれているものを何らか制度化するかどうかはともかくとして、そのようなことについて実務上の不便があるからアイデアとして考えていきましょうという需要があることは理解しました。実際の需要があることは受け止めますけれども、それでは良いアイデアであるからこれを法文にして制度化しましょうということで法文を描き始めると、ものすごく勇気が要ります。少し皆さんのお考えのところを教えていただきたいですけれども、予備的とおっしゃいますが、何人予備的に書いてよいですか、それは無制限ですか。つまり、何人許されるかというのは、横に広がる場合と縦に広がる場合がありますけれども、Aを任意後見受任者にしておきますけれども、Bを予備的にしておきます、だけれどもBも駄目になったときにはCにします、Dにしますと、1次、2次、3次、4次とN次まで無限にすることができますかというお話の方向が一つと、それから、Aが駄目になったとき、B又はCになりますと選択的に横に広げていくという扱いもできますかということも気になって、特に歯止めがなくできます、しかもそれを登記に記録かできるようにしていただきたいですという仰せを頂戴すると、実際の需要があることは理解しますけれども、それは法文に書いたときに本当に書き切れるだろうかということは、だんだんたじろぎますね。さらに、予備的なものを掲げて公正証書なり契約にしておいたときに、その予備的な方が先につまずいたときはどうなるかとかいうふうな問題も解決のイメージをお聞きしておく必要があって、幾ら青木委員が60歳になられたといったって長く御存命でいらっしゃる確率が高く、その後ろに予備的に定められている方の方が先に亡くなることだって、世の中、年齢の順番に世を去っていくとは限りませんから、そうなったときにはどうなりますかということも考えておかなければなりません。よく遺言で、この人に継がせると言っているけれども、その人の方が先に死んでしまうみたいなことという事態は、遺言の実務でも常に悩みとしてあるわけで、しかし、別に遺言の場合にはそれ自体は登記しませんから、それほど複雑な問題は起きなくて、遺言解釈の問題として処理すればよろしいですけれども、こちらは今まで伺っていると、解釈の問題で済ませるという話を超えて制度化するという御要望を頂戴しており、それはなかなか、法文を書き起こそうという気持ちになると、いろいろなところで筆が止まってしまう部分がありますけれども、この時点で、佐久間委員がおっしゃったことも含めて、お考えがあったら伺っておいて、また少し引き続き考えてみようと思いますけれども、いかがでしょうか。 ○根本幹事 佐久間委員からの問いで、実務上起きていることとしまして、予備的な存在について、公正証書とは別に、主位的な受任者、予備的な受任者、御本人との三者契約で別の覚書なりを締結するというのが行われていることです。なぜかというと、登記事項で予備的なものがない、であるがゆえに、公正証書の中で予備的ということを記載することはできませんということになりますので、契約している契約書の公正証書とは別に、存在が公正証書上何らかレファレンスが掛からない状態で、別の三者契約が存在しているということになります。   このことで混乱を生じやすいのは、部会長が言われたどう法文化するかが難しいということとも関係するのですが現行法では主位的な受任者では駄目で、予備的な受任者がいつ登場したらいいのかということを、三者契約でしか定めることもできません。覚書だけでの対応になっていますので、予備的な受任者がいつ登場するのが適切なのかということを法制化して決めることによって、整理がされるのではないかということに、メリットがあるのではないかと考えています。   部会長の問いの部分は非常に難しいので、これは引き続き考えなければいけないと思っていますが、第2順位ではなくて第3順位ぐらいまでということが一つ念頭に置かれるのではないかとは思っておりまして、それはなぜかと申しますと、これは必ずしもその発想が適切かは分かりませんが、例えば信託法90条なども、別に順位を決めている規定ではありませんけれども、概ね3世代ぐらい先が限界ということに事実上なるのだろうと考えていますので、信託法では20年という枠で見ているわけですが、長くても3世代ぐらいまでということではないかとは思っています。実際、お孫さんも受任者になることを考えたとしても、4世代まで下りる必要はさすがにないのではないかとは思っていますので、第3順位ぐらいというのが一つ穏当なところではないかと思っています。 ○山野目部会長 御意見を承りました。   引き続き、星野委員どうぞ。 ○星野委員 これは法律の方々から見ると視点が少し違うかもしれないのですが、今の議論を聞いていますと、結局のところ任意後見契約を締結したいという委任者が、人が替わってもそれを継続して実行してほしいという意思だとすると、予備的な人を定めるという考え方もあるのですけれども、今のようなことを盛り込んだ形で任意後見契約を締結するということはできないのだろうかという、単純な発想かもしれませんが、そのように感じます。というのは、そこで予備的な方が第2、第3順位であったとしても、本当にそのときどうなっているかの先が見えないわけなので、そういう契約した方がもし仮に先に倒れてしまったときに、この中身を引き続き実行できる方を選びたいのだというような意思を残すというようなやり方はできないのかなと、少し単純な発想かもしれませんが、感じました。 ○山野目部会長 御意見の趣旨はよく理解することができます。   ほかにいかがでしょうか。 ○青木委員 予備的な任意後見受任者を契約することの実際の必要としては、ご本人さんがしっかりしておられれば、主位的な人が亡くなったりした場合に、予備的な人に依頼して発効させるということを本人さんが分かるので、二つの契約が併存していても本人がコントロールできることもあると思いますけれども、任意後見契約は結んでいるけれども、その後発効するまでにしばらく期間が空く「将来型」の場合に、ご本人さんが判断能力が低下してご自身ではそうした積極的な対応や選択ができなくなったときに、家族や支援者が、この人は任意後見契約しているらしいけれども誰が受任者なのだろうかとかいうことを確認するには、任意後見契約書や登記事項を確認して、何がしかの対応をすることになりますが、そこに順位をつけて予備的な受任者がいるということになれば、主位的な人が欠けた場合に予備的な人に連絡をすればいいということが分かりますが、単純に併存しただけであれば、そこら辺のことが分からないということになりますので、そういった意味での必要性があるというのは、実務上の必要性があると思いますし、本人からしても、そのようにして必ず主位的な人がいない場合には予備的な人に行くということ設定されていることで、安心感を持てることも本人の意思の実現という意味でも重要だと思います。   先ほどの予備的に何人まで決められるかという問題につきましては、現時点での意見としては、任意後見契約というのは、やはり受任者を信認して、この人だから任せるということが強い要素の契約だと思いますので、予備的な受任者についても本人さんからの信認が不可欠だと思っています。そういう意味で言いますと、予備的な受任者は1人だけに制限をして、何人もの予備的な人をつけることまでする必要はないと思います。それでもその方々が先にお亡くなりになったときは、不運な場合として法定後見に頼らざるを得ないということで割り切るのではないでしょうか。遺言でも、予備的な遺言執行者を定めてもいずれも先に亡くなることがありますので、それは制度上の限界だと割り切っていいのではないかと思っています。 ○山野目部会長 御意見を頂きました。   今の点、ほかにいかがでしょうか。 ○青木委員 予備的な受任者が任意後見人になる場合の要件は、ある程度明確である必要があると思っていますが、これについては、本人さんが主位的な人でなくて予備的な人がいいというような選択を認めることではなくて、あくまでも主位的な人が死亡するとか、病気その他によって職務ができない等の限定した場合に、予備的な人が就任することができるということを定めていただいて、任意後見契約書の中にもそのことを定めるということが必要ではないかということも考えています。 ○山野目部会長 承りました。   ほかにいかがでしょうか。   今日のところはよろしいでしょうか。もう少しここを深掘りする事項はあるだろうと感じますけれども、今日検討しなければならない観点はたくさんおっしゃっていただきましたから、これをまた整理して先に進めるということでよろしいですか。   ありがとうございます。それでは、続けます。第5の任意後見のその他の部分のその次でありますけれども、任意後見人の代理権の段階的発効の部分について、事務当局から説明を差し上げます。 ○木田関係官 部会資料9の39ページ以下、第5の「2 任意後見人の代理権の段階的発効等」について御説明いたします。   任意後見人の代理権の段階的発効等では、一部の事務の委任、代理権の付与を段階的に発効させることや、委任されていなかった事務を追加すること等について御議論いただきたいと存じます。一部の事務の委任、代理権の付与を段階的に発効させることについては、その可否や、仮にこれを認める場合には、その要件についても御議論いただきたいと存じます。また、委任されなかった事務を追加することについては、本人に契約締結することができる判断能力が不十分な状態にあった場合に、追加を認めるかについても御議論いただきたいと考えております。 ○山野目部会長 段階的発効の点について、御意見を承ります。 ○小澤委員 ありがとうございます。任意後見人の代理権の段階的発効については、現状より柔軟な制度になるという点では特段反対するものではありませんが、一方で任意後見契約の内容が複雑で更に分かりにくいものになってしまうではないのかという懸念はあります。また、今のところは我々の団体の中でも任意後見の段階的発効を積極的に求める意見を耳にすることは余りありませんし、任意後見人の代理権の不足については、任意後見と法定後見を併存させて、任意後見人を法定後見人にも選任して、必要な代理権を付与して追完することが適切ではないかと考えますが、もしそのような制度を分かりやすい形で導入することができるのであれば、確かに現状より任意後見制度が使いやすいものとなるとは思っています。 ○根本幹事 議論の前提として、部会資料に明確に位置付けがないのですが、そもそも任意後見の開始要件をどうするのかということをきちんと議論しなければいけないと思っています。まずその点について意見を申し上げてから、段階的発効と代理権の追加について申し上げたいと思います。任意後見監督人選任を開始要件とするということを見直すということにはなると思っておりまして、前回の部会の議論にもありましたが、監督人の存在を必須としないということであれば、監督人選任は開始要件ではなくなると思いますし、仮に監督の存在が必須であるとしても、この後議論する段階的発効ということを考慮すると、監督人の選任とは切り離した開始要件の検討が必要になるのではないかと思っています。   具体的にどのように考えるかという話になりますけれども、開始要件のファクターとしては、まずは、任意後見ですので原則、御本人が同意をされているということになりますし、発効する代理権についての医学的な知見ということになろうかと思います。   必要性については、代理権を付与するということは事前に信任されて任意後見契約を作成されているというのが法定後見と異なる点ということになりますので、個別の代理権について発効させるということについての御本人の同意さえあれば、必要性要件はその限りでは不要になると思います。法定後見の中で議論がありました同意能力、開始するということについての意思能力ということだと思いますけれども、それを仮に同意能力と呼ぶとすれば、同意能力がある中で御本人が拒否をされているということであれば、これは任意後見はスタートできないという帰結になるのだろうと思います。   他方で、同意がない場合でも任意後見をスタートさせる、そのぐらい御本人の判断能力が低下されているということはあり得るわけですから、同意能力がない場合には、法定後見とここも異なって、事務の必要性という点だけを確認する必要があるかはともかく、任意後見契約を締結されていることからして、補充性や若しくは保護の必要性は、開始要件としては必要ないという整理をされることになると思っています。元々同意能力がない状態になったら任意後見をお願いしたいというのが、任意後見契約の内容ということになりますので、能力低下の状態に御本人がなっていらっしゃるということが医学的な知見の観点から明らかになれば、契約を発効させるというのが御本人の御意思と理解できるのではないかと考えています。   開始要件を仮にそのように構成するとした場合に、更に追加や段階的発効をどのように考えるかということになるのだと思いますけれども、まず段階的な発効については、段階的に発効させる、その都度、発効させたい代理権についての同意ですとか、医学的な知見を確認するということになると思いますけれども、ただ、実際上は医学的知見は新しい資料の提出まで必要ない、従前の資料を援用してよいということはあり得ると思います。段階的発効において実際上確認されるのは、御本人同意若しくは、前回の代理権の発効から時間がたっておられたり、御本人の判断能力が更に低下されているということであれば、そこは医学的知見を求めてもよいということになるのではないかと思っています。   最後に、3点目ですが、追加の場面について、先ほど沖野委員からの整理にもありましたけれども、まず任意後見契約を残して、そこに何か代理権を追加するということが果たしてそもそも理屈上できるのかという問題はあるかと思いますが、他方で、あらかじめ契約で御本人が希望されている、若しくは許容されているということであれば、これはある種の段階的発効といえるのかもしれませんし、事実上の追加は認めてよいということになるかと思います。ただ、そのときに留意が必要なのは、現行制度で既に任意後見契約を締結されていて未発効の方について、今申し上げたような議論は今までありませんので、手当てというか配慮というのは、十分に必要になるとは思っています。   あとは、ほかの先生方の御意見もあると思いますけれども、法定後見でしか追加できないという整理でよいのか、任意後見契約を締結されていて、およそ追加ということを何らか、先ほど申し上げた契約などで希望されている、許容されているということが明らかでいない場合は、一律に法定後見でしか追加できないということでよいのか、今ある任意後見をいかしつつ、その任意後見人に追加で不足している代理権を付与していただくということがあってもよいのではないかと思っています。   なぜそのような考え方を持っているかと申しますと、現行も、網羅的だと考えられている代理権目録をもってしても、取引の相手方や手続の裁判所との関係で、ある事項が欠けているので作成済の任意後見契約の代理権目録では駄目ですと言われてしまう場面があるというケースが少なからずあります。例えば、訴訟行為なのか非訟なのか調停なのかによって、持つべき代理権の内容が違うので、訴訟行為とだけ書いてある代理権目録では非訟や調停手続の代理を任意後見ではできないと裁判所で御判断されているケースなども報告を受けていますので、そのような形式的な修正や変更が必要な場合でも、全て法定後見でしか追加ができないというのは不合理ではないかと考えているところです。 ○佐保委員 ありがとうございます。非常に事務が煩雑になるかもしれませんが、本人の意思をできる限り尊重するためには、段階的な発効を認めるべきではないかと考えます。また、代理権の追加については、飽くまでも本人の意思を尊重した上で、家庭裁判所の判断によって限定的な取扱いとして考えるべきではないかと考えます。どの段階でどの代理権を発効させるかの判断については、現行の法定後見の類型なども参考に、ある程度整理しておく必要があると考えます。また、契約の在り方については、一つの任意後見契約が成立している中で効力が段階的に生じていくという整理でよいのではないかと考えます。代理権目録や登記事項などは明確になっている方が利用しやすいと思います。複雑な制度になるかもしれませんが、本人が判断できなくなった後に事務が追加されるよりも、判断能力があるうちに本人で段階的な発効を決める方が、利用する当事者は安心して契約できるのではないかと考えます。もちろん本人の意思で事務を追加することはできるようにするべきと考えます。 ○遠藤幹事 任意後見契約における代理権の追加等に関して、実際に家庭裁判所において審査を行う局面を想定して意見を述べます。任意後見制度が私的自治や自己決定の尊重を基礎としていることに照らしますと、本人の判断能力が低下している場合に、その本人以外の任意後見人が申立てをすることが想定されます。裁判所としては、その申立人が適切に本人の意思や意向を反映できているのか、あるいは裁判所において本人の意思や意向に沿っているのかという観点からの審査をすることが求められるようにも思われますが、実際の認定としては非常に困難を伴うのではないかと思われます。代理権の追加や代理権の範囲の変更の必要が生じた場合には、何人かの委員・幹事からの御意見もありましたが、法定後見による方がより直裁でありますし、より御本人の利益にかなう部分もあるのではないかと考えております。 ○小出委員 ありがとうございます。任意後見契約で段階的な発効を認める場合に関してですけれども、部会資料のところに、どの代理権が発効しているのかが代理権目録や登記事項などから明確になっている必要があるとの記載がありますが、取引の相手方としましては、第三者から任意後見人等について客観的に代理権の付与状況を確認できる必要がありますので、本記載に賛同いたします。   また、基本的に今のところは代理権の範囲を拡大させていく議論だと認識していますけれども、万一事務を段階的に減少させていくというようなものがある場合には、後見人交代と同様、取引の相手方としましては実務上、変更登記がされたとしても即時に認知することは困難と考えておりますので、善意の取引の相手方は届出がない限りは保護されるということを明確化していただければと考えております。   42ページ目以降の事務の追加や変更に関しても、客観的に明確化していただきたいということに関しては同様と考えております。 ○佐久間委員 まず、段階的発効に関しては、本人が事理弁識能力をその後に、契約締結後あるいは発効後、欠く常況に至る場合に備えてならばあり得るのだろうと思いますが、本人の事理弁識能力がなおあると認められる状況であれば、追加、変更で対応することで十分ではないかと思います。今申し上げました、この状況では段階的発効を考えられるのではないかという場合も、何人かの方がおっしゃいましたけれども、要件の設定がものすごく難しいと思うので、その場合はしようがないなということで、段階的発効をあえて認める必要はないのではないかと思います。   よく分からなかったのですけれども、根本幹事は監督人の選任を開始要件とすることを見直すのだとおっしゃったと思うのですが、私は見直す必要はないと思っており、少し前提が違うのかなということを申し上げておきたいと思います。   それから、遠藤幹事からは、このような場合に追加、変更は難しい、法定後見をというふうなお話がありましたけれども、追加、変更はまず契約についてするのであって、裁判所にいきなり追加、変更してくださいと持っていくのではないと私は理解しています。そうでないと、本人と元の後見受任者との間でした契約を裁判所という第三者が勝手に変えるということになってしまいますから、それは適当ではなくて、両当事者の間で契約を変更することができるようにする。それを、登記も変えなければいけませんから、必ず裁判所に持っていって、形式手続で別にいいと思うのですけれども、裁判所が変更を認めるということにして、登記を変えるということをすればよいのであって、裁判所に何か非常に困難な判断を求めることには、私はならないのではないかと思っています。   今のことに含意されていますけれども、本人の関与しない新たな権限の追加、変更というのは、任意後見に関してはあり得ないと私は思っておりまして、42ページのイのところで書かれている、本人が同意をすることが困難な場合は任意後見監督人が代わって追加を可能とすることが検討できるのではないかという点については、検討はできると思いますけれども、反対です。それはもう任意後見とは違うのだろうと。   ただ、一つよく分からないなと思うのは、任意後見契約の変更について誰かに委任するというようなことがある、例えば任意後見監督人に委任するというようなことがされていたらどうなのかというのは、よく分かりません。イレギュラーだからそんなことを認めなくていいと思っているのですけれども、そこは分からないということを申し上げておいた上で、それを除いては、飽くまで本人が元受任者、今の任意後見人との間で契約を変更し、それは公正証書ですべきだと私は思っていますけれども、それを裁判所が認めることによって、認めるというか、裁判所で何か形式かもしれませんが審査することによって、登記を職権で変える、こういう流れを想定しており、それをすれば段階的発効は無理には要らないのではないかと思っています。 ○根本幹事 佐久間委員からの御指摘との関係で2点申し上げたいと思います。まず、現行法上、御本人に契約締結能力がある状態で代理権を追加しようと思うと、新しい任意後見契約をもう一本締結することになっております。それが迂遠ではないかということで、追加の議論があるという側面ももちろんあるのですが、もう一つの理由として、発効済みの任意後見契約の代理権に、先ほど申し上げたような何か不足があったというような場合に、一切追加ができないことで不都合が生じています。結局現行法ですと、全て任意後見をやめた上で法定後見に移行させなければならないということになりますので、改正法で併存できる場合がどういう場合かという議論ともあいまって、問題を整理する必要があると思っています。   もう一つは、佐久間委員がよく分からなくなっていらっしゃるとおっしゃられていた、監督人に委任をして代理権の追加ができるかどうかについては、現行法上はそれができると理解をされていると承知をしていますけれども、後で出てくる代理締結の議論とも関係するところではないかとは思っていますので、監督人が代理締結できるのかという観点からも検討しなければいけないと思っております。 ○青木委員 段階的発効につきましては、ご本人さんが、例えば不動産の管理とか難しい金融資産の管理はもう自分では難しいけれども、日常的な金銭の管理とか、あるいは福祉サービスや医療を受ける関係では自分でまだ判断できるし、自らやりたいというような場合がありまして、その場合に一部の代理権だけ発効できるということになりますので、柔軟な発効を促すという意味でも、段階的発効ができるとすることにはご本人の立場からして大きなメリットがあると思っています。   したがいまして、契約発効の要件である本人の同意の対象を、(任意後見監督人選任による)発効をするかしないかという点に限るのではなく、契約で設定した代理権それぞれについて、現時点で発効させるか、まだ発効させないかということの同意を確認して、その確認に基づいて発効させるということにし、登記上は、既に登記されている代理権目録のうち発効した代理権と発効していない代理権を区別する登記ができることして、取引の相手方に対しても明瞭に区別できるようにすべきと考えています。   一方で、追加の代理権の付与につきましては、契約発効後の事態を念頭に置きますけれども、ご本人さんがそれについて理解する判断能力がある場合に限定をして、自分が信認している任意後見人に対して、必要となった新しい代理権を追加したいという意思が表明される場合には、任意後見監督人の承諾等に基づいて追加をするという、形式としては契約の変更になると思いますけれども、それを認めるということが、本人の意思にかなうのではないかと思っております。ご本人がそういうことを理解、判断することが難しくなってしまったときには、代理権の追加は難しく、法定後見を利用して、併存させるということの整理ではないかと思っております。 ○野村幹事 ありがとうございます。まず、段階的発効なのですけれども、任意後見においても、本人に必要な代理権だけを発効させて、不要になれば取り消すなどの柔軟な制度を検討する余地はありますが、選択肢が増えることで仕組みが複雑になってしまうことも否めませんし、金融機関などの取引の相手方に明確に示す記載方法の工夫ですとか、受任者の約7割を占める親族間での契約への配慮も必要となると思います。当初の契約時点では必要な範囲で任意後見契約を締結して、必要に応じて代理権の追加で対応する方がよいのではないかと思われます。   この代理権の追加ですが、先ほども申し上げましたが、任意後見というのは一般的に本人と受任者の信頼関係に基づくものであって、後見人の業務を受任者が可能な限り行うということが本人の希望であると考えられます。本人の支援に必要な代理権の追加を可能とすることは、本人が希望する受任者が支援を継続して行うことにつながりますので、本人の希望を尊重した支援を行うため、代理権を追加する方策を検討すべきだと考えます。   任意後見契約が発効した後においても、本人に契約を締結できる判断能力があるのであれば、委任されていなかった事務を追加することを可能にすべきでありますし、また、その能力が失われている場合においては、任意後見契約締結時に監督人の同意による代理権の追加を可能とする代理権を代理権目録で定めて、家庭裁判所の審判によって必要な代理権を付与するなどの手続を行うことも認めてよいのではないかと考えます。その際の報酬については、現状でも本人の生活状況又は健康状況の変化その他、現行の報酬額を不相当とする特段の事情が発生した場合は、契約当事者双方の協議によって、また、本人が意思を表示できない場合は監督人との合意によって変更可能であるという条項を入れることがありますので、これは同様に考えればよいのではないかと思います。 ○山城幹事 権限の追加について2点ほど、少し外れるところもありますがお話し申し上げます。   1点目は、既に佐久間委員から御指摘があった点と同じなのですけれども、私も権限の追加を家庭裁判所の権能に属するとみることについては、否定的に理解する方がよいのではないかと感じております。これはある種の事情変更による契約の改定を認めることになるのだろうと思いますけれども、そのような法理をどう扱うべきか自体が大きな問題ですし、家事事件手続の法的性質論について十分に承知していないところもございますけれども、当事者が締結した契約の内容を改定することが家庭裁判所の権限に属するかは、訴訟と非訟との関係などとも関わって議論があり得るのではないかと想像します。その点についても慎重に検討する必要があるのではないかと感じています。これが1点です。   もう1点ですけれども、これも佐久間委員から御指摘がありましたとおり、当事者間の合意によって権限を追加することは妨げられないのではないかと、私も思います。それが契約の修正という法的性質を有する行為であり、これを認めることのメリットが改めて任意後見契約を締結することなく従前の契約を維持することができる点にあるといたしますと、少し話が外れるのですが、任意後見人の交代も当事者間の合意ですることができるのかという問題が生じるのではないかと思います。   合意による任意後見人の交代の可能性という問題は、そのこと自体としても気に掛かったのですが、先ほどの予備的選任の問題にも一定の影響を及ぼすのではないかと思うのです。つまり、交代を合意することができるのだとすれば、その合意に条件を付けることもできそうですけれども、現在の任意後見人が欠けたときという条件を約定すれば、予備的選任ができるということになるのではないかと思います。二つの論点が論理必然的に関わるわけではないのですけれども、整理の余地がある問題ではないかと感じました。 ○山野目部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   委員、幹事からたくさんのことをおっしゃっていただいたお陰で明らかになってきたことの一つとして、今、段階的発効ということでお諮りしていますけれども、それと隣り合った問題として、一旦締結した任意後見契約をどのような要件、手順で変更することができるかという課題があって、段階的発効とは別に検討した方がよろしいのでしょうね。一旦締結した任意後見契約が、後でそこに盛り込まれている後見人の権限を増やしたり減らしたり、増やしたりという理由が一番多いかもしれないけれども、場合によっては減らしたりという扱いも含め、変更することができるということ自体については、恐らくそういうことを絶対いけないとする必要はないというお話になっていくと思いますし、特段の議論がなければ、山城幹事が二度にわたる御発言で強調なさったように、それに家庭裁判所が関与するという仕組みは特別の理屈立てをしないと成り立たないお話で、変更するお話であれば、今の任意後見契約の締結の方式を変更しない限り、公証人に関与してもらって、変更された内容を踏まえて公証人から嘱託があれば登記上反映されるということになりますから、公証人が関与しますけれども、裁判所が関与するということは、少なくとも契約変更の段階では想定ができないと一旦整理することができ、その変更の要件をどういうふうな要件で考えますかということは、また別立てで、論点としては別ですよということを部会資料などにおいても可視化して議論をお願いしていった方がよろしいと感じます。   それとは別に、今お諮りしている当の事項は段階的発効でありまして、これは当初の任意後見契約の中で、甲と乙という二つの代理権に係る事務があって、甲の方は比較的早期から動いていくということがイメージされるけれども、乙は段階がもう少し遅れて、代理権として任意後見人が行使することができるようになりますというふうな時間的な落差を設けておきましょうということが、再び強調しますけれども、最初の任意後見契約の中で定められていたというふうな場面を想定して、そういう制度を入れますか、入れませんかというお話になってまいります。   委員、幹事からたくさんの御意見を伺って、だんだん分かってきましたけれども、まだ少しよく分からない点は、今の話の、遅れて乙の代理権が動き始めるときに、どういう要件で動き出すかがまだ少し、お話しになっている人ごとに少しイメージが異なっているような気がして、何か客観的な要件が、こういうふうになったら乙が動き始めると最初の任意後見契約に書いてあって、その客観的事実が充足されればオートマチックに動き出すということを考えるか、それとも、動き出す時点で本人の同意、確認のようなことが必要だということを強調し、あるいは誰か他人が確認するか、だとすると誰が確認するか、それから、その点に関連しますけれども、いずれにしても遅れて乙が発効する段階で裁判所が関与する場面があるか、ないか。甲の方の先行する代理権が動き出していますから、既に任意後見監督人を選任するところで裁判所が関与しており、後から行く乙が発効するときには、普通に考えれば任意後見監督人は同じ人がそのまま職務を続けることになりますから、その場面で裁判所が任意後見監督人を選任するということは考えられません。   今のような点を明らかにしていった上で、何人かの方が、登記上もどの代理権が、甲が動いているけれども乙が動いていないということが分かるようにするということが必要ですとおっしゃってくださったから、それは、今の登記制度はそうなっていませんから、そのような制度を設けよという意味であると受け止めるとして、乙が動き出すときに、その登記は誰が嘱託又は申請するかという点もよく分からなくて、それは乙が動き出す要件、手順の問題と密接に関連させて決めていくことになるとみます。そういったことを考えていかなければいけないと感じられて、だんだん気が遠くなる思いになってきました。御要請があれば引き続き整理していきますけれども、今の段階で、そういった点について自分はこういうイメージを抱いていますというお話があれば、頂いた上でお話を進めていくということにします。   あわせて、それとともにだんだん私が心配になってきた点は、佐保委員の御発言の中に2回、事務が複雑になりますがというお話を頂いていたことです。佐保委員のお話は、事務が複雑になりますが、と断った上で、どんどん複雑になっていく話をその後されましたけれども、我々が現場で動かしていくわけではありません。これが福祉の現場で、皆さん御理解いただいていますね、と述べて円滑に動いていく姿というものを確保ができるかという見通しは、私はすごく心配のような気もして、星野委員が予備的後見受任者のときに心配なさったのと似た構図、性質のことというものは、こちらの方でもというか、どちらが深刻か分かりませんけれども、ありそうであるという気がして、そういう点も、法律の先生方は皆さん聡明だから、どんどん議論すればするほど聡明な内容のものになってくるものですけれども、話を精緻にすればいいだけではないということも感ずるものですから、そういうことも意識していただいた上で、何か全体として今日この段階で承っておくことがあれば、御意見を自由に承りますけれども、いかがでしょうか。 ○根本幹事 部会長のお話を伺っていて、2点申し上げておきたいと思います。一つは、段階的発効が認められるとして、段階的な発効を認めるかどうかは、家庭裁判所が判断をされるべきではないかと考えています。   理由は二つありまして、一つは、監督人が関与をするということにはなるわけですけれども、通常、監督人の業務を考えたときに、監督の範囲というのは代理権の範囲と連動しますので、代理権の範囲が変わったということであれば、監督人は当然、家裁に報告をするということにはなろうかと思います。あとは登記との関係で、仮に家裁ではなくて監督人がその登記を申請するということも選択肢としてはあるかもしれませんが、今の実務上、登記されるまでの期間は一定期間どうしても掛かってしまうため、時間的に登記が間に合わないような場合には審判書と確定証明書をもって実務上手続をしているというのが実情です。審判書の存在は必要だと思っていますので、家庭裁判所に担っていただくというのが妥当ではないかと思っています。   もう一つは、確かに議論が複雑になっているというのは自覚をしているところではあるのですが、他方で今の任意後見制度の利用促進という観点から考えた場合に、代理権を柔軟に出し入れできる仕組みということが用意されなければ、今回の改正によって任意後見の活用が増えていくという未来は見えにくいのではないかと個人的に思っています。柔軟になるということはイコール複雑になるということかもしれませんが、できるだけ柔軟にしつつ複雑性をより緩和できる方策を考えなければいけないのではないかと思いました。 ○山野目部会長 前者の関連で一つ確認ですけれども、そうすると、登記は裁判所書記官が嘱託することになりますね。 ○根本幹事 はい。 ○山野目部会長 分かりました。   ほかにいかがでしょうか。 ○佐久間委員 今、根本幹事がおっしゃった最後の、権限の出し入れは柔軟にした方がいいというのは同感ですけれども、それは段階的発効によるのではなくて、追加、変更によることの方が望ましいと思います。   その上で、先ほど私は、追加、変更、要するに契約の変更ですね、は当事者の間でし、公正証書でやり、裁判所に持っていってと申し上げたところ、部会長は公証人から直接登記をとおっしゃいました。細かい話なのですけれども、私の念頭にありましたのは、特に追加の場面なのですけれども、権限が追加されますと任意後見監督人の職務も変わるので、任意後見監督人が、契約の締結の段階というか変更の段階で関与するのであればいいのですけれども、関わり方が変わり、そのまま職務継続できるかとか、報酬をどうするかということは、どこかで判断しなければいけないのではないか、それは裁判所で、と思ったということだけ加えておきたいと思います。 ○山野目部会長 よく分かりました。 ○青木委員 段階的発効につきましては、最初に契約を発効させる段階で、どの代理権を発効させるのかにつき本人の同意を確認して判断するのは裁判所であると同時に、その後、発効させる代理権を追加する場合にも、本人の意思を確認して権限を追加するのもやはり裁判所ではないかと思います。権限の付与とか権限の抹消については、任意後見監督人にその責務を負わせるというのは違うのではないかと思います。権限のプラス、マイナスは裁判所の職務として整理を頂くことになるのではないかと思います。   なお、段階的発効は制度が複雑になるといわれますが、登記上、発効するものと発効しないものということを分けて登記できるようになれば、法定後見においても、個別に代理権を設定し、その後追加の代理権が設定されるということと局面においても同じだと思いますので、今よりは複雑になるのはそうでありますけれども、十分にワークできる制度ではないかと考えているということになります。 ○星野委員 先ほど福祉の現場の人がこの複雑な議論の内容をどこまで理解できるかというところから、少し発言しておこうと思いまして、手を挙げました。   任意後見契約という今の制度を十分に説明できているかというところも、なかなか広がっていかない大きな原因だと思っていて、厚生労働省の方の利用促進専門家会議においても、任意後見契約というのが契約自体は伸びているとしてもなかなか発効されていない、監督人選任にはつながっていないというところが課題として指摘されています。そもそも任意後見を進めるということがなかなか現場レベルで十分、福祉関係者の中でできておらず、法定後見の状況になるのを待っているといいますか、制度の説明はするのだけれども、例えば報酬の問題であるとか、監督人の選任で報酬が更に掛かるとか、「使いたくない」と思わせるような説明になってしまっている。   ですから、任意後見契約というのが本人が本当に使いたいと思って使える状況になっていないということが問題であり、周りの関係者が必要に迫られて任意後見契約を使いませんかというような話になってしまっている実態が多いと感じています。専門職や第三者が契約する割合は少ないと思いますが、本人が主体的に契約をしている場合は少ないのかなと思うと、やはり私はここはもう少し分かりやすい、つなげる人たちが説明しやすいものにする必要があると考えます。一度契約したことを変更することができるようになること、今は変更できないということが一番大きなネックになっている。時間と経費を掛けても変更が難しい、できない、もう1回やり直さなくてはいけないから、そこに契約するということに対してちゅうちょが起こる。これをもう少し気軽に、出し入れという言葉が出ていましたけれども、それを利用者目線で考えたときには、やはり変更が可能になるというような仕組みが私は求められているかなというところを、少し発言はしておきたいなと思いました。 ○竹内(裕)委員 私も星野委員の意見に賛成です。最初に段階的発効できますと言われて、では全部書きますみたいな、だけれども、その要件が本人の意思で段階的に発効するのですと言われたときに、全部書いた上で、更に自分が決めなければいけないことがあるのだというときの御本人の精神的負担と、いつでも変更できるのだから今必要なものを決めましょう、また変更できるのですよと言われたときの御本人の気持ち的な負担を考えると、私自身は後者の方が、やはり御本人の心理的な負担も小さい、より実効性が結局はあるのではないのかと思いますので、その点で、星野委員の意見に非常に共感を覚えた次第です。 ○野村幹事 ありがとうございます。私も星野委員、竹内裕美委員の御意見に賛成なのですが、現在変更ができないことから、契約締結時に広範な代理権を定めることが一般的に行われていまして、その結果として契約が重装備なものにならざるを得ない、それが制度利用のハードルを上げているのではないかと思います。最初に必要な権限を付与する契約を結んで、段階的発効というよりも代理権の追加で対応するのがいいのではないかと思います。 ○山野目部会長 大体今日のところは、本当に盛りだくさんの観点を御提示いただきましたから、これらを整理し、また次の機会において検討をお願いすることでよろしいでしょうか。   それでは、実は任意後見はまだ終わっていなくて、続けますけれども、かなり密度の高い御議論をしていただいたところでありますから、ここで休憩を設けることにします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開します。   任意後見の残余の部分につきましてまとめてお諮りをすることとし、この部分について、まず事務当局から資料の説明を差し上げます。 ○木田関係官 部会資料9の42ページからの「3 その他」について御説明いたします。   42ページからのその他では、1、複数選任の任意後見人の分掌等、2、任意後見契約の方式、3、任意後見受任者の事務所所在地及び職務上の氏名の登記、4、終了事由、5、代理による任意後見契約の締結について御議論を頂きたいと存じます。なお、これらに限らず、これまで取り上げた事項のほかに必要な検討事項があれば、御議論いただきたいと存じます。 ○山野目部会長 説明を差し上げました。ただいまの説明の最後にありましたとおり、その他として幾つかの既に部会で話題になったものを部会資料に掲げておりますけれども、その他でございますから、そこに議論を絞るというつもりではございませんで、そのほかにお気付きの点も、むしろこの段階でおっしゃっていただくことが望まれるものでありまして、その他も含めてよろしくお願いいたします。御意見を頂きます。 ○小澤委員 ありがとうございます。3点ございます。   1番目が複数選任の任意後見人の分掌等でございますが、複数選任の任意後見人の権限や分掌について、委託者との契約と任意後見人間で分掌の取決めをすることで、複数の任意後見人の権限が重複しないように契約を締結することもできるところ、あえて委任者がそのような契約を締結したということと思われますので、そのようなケースまで捉えて特に新たな規定を設ける必要はないものと考えます。もし複数の任意後見人間の権限の抵触などの問題が発生するのであれば、原則どおり任意後見監督人による監督により調整をし、その監督に従わないのであれば、任意後見監督人から一方の任意後見人の解任申立てを行うことも可能だと考えられますので、現在の制度でも十分対応できるのではないかと考えております。   2番目は、方式ですが、任意後見契約は本人の生活にとって重大な影響を及ぼす契約であり、現行の公正証書によるという様式は維持すべきであると考えます。   最後に3点目が、任意後見受任者の事務所所在地及び職務上の氏名の登記でございますが、これも繰り返しになりますが、専門職である任意後見契約受任者にとっては自宅住所や戸籍性が第三者に知られてしまう可能性があることに大きな抵抗感があることについては、御理解を頂ければと思います。 ○山野目部会長 御意見を頂きました。 ○野村幹事 ありがとうございます。私も3点申し上げます。   まず、権限分掌ですが、委任者が権限分掌を希望する場合は認めてもよいと考えます。この場合、契約内容を明確にするため、一つの任意後見契約で受任者が権限を有する代理権を明示する形の登記を行えることが望ましいと考えます。契約には分掌する旨を定めるほか、契約発効時に家庭裁判所の審判で定めを行うことに同意すると定め、申立てによって、委任者にとっての必要性を考慮した上で、家庭裁判所による権限の共同行使や分掌を定めることを可能にするということも検討すべきと考えます。   2点目の方式ですが、任意後見契約の締結に公証人が関与することを維持すべきと考えますが、公正証書作成のデジタル化など将来の動向も踏まえつつ、将来的には見直すことも検討すべきと考えます。   三つ目の終了事由ですが、終了事由は、任意後見制度は本人の選択により利用されるものであって、また、監督人選任後においても正当事由によって解除ができることを考えると、特定事務の終了を終了事由とすることのニーズはそれほど高くはないのではないかと考えます。委任者自らによる判断が困難になった場合の備えとして制度を利用することを選択していますので、むしろ特定事務以外の支援が必要になった際の委任事務の追加や、法定後見との併存の必要性という視点に立った検討が必要であると考えます。以上のことからも、本事項については慎重意見です。 ○根本幹事 終了事由と代理締結と、その他検討事項について申し上げたいと思います。   まず、終了事由についてですけれども、現行法上は正当事由ということが終了事由になっており、その内容としては、事務を行うことが困難となっているですとか、信頼関係が損なわれているということが具体的には挙げられているということになるわけですけれども、一つは、併存が今後、法定後見との関係で認められていくということとの関係でも、任意後見人の職務内容が不適切であると判断した場合に、それも終了事由に明確に含めていく、つまり、現行法では正当事由の中で、信頼関係が損なわれていることに含まれているという理解になっていますけれども、独立した終了事由として明確化させていくということが必要ではないかと思っています。また、野村幹事からは、必要性については必ずしも終了事由にすることはないのではないかという御意見でしたが、追加や変更などで行われた代理権も含めて、付与されている代理権の事務の必要性が全て終了しているということになるのであれば、終了事由ということになるのだろうと思います。理論上、終了事由にしないと、結局代理権は何も行使するものはないのに任意後見契約だけがずっと漠然と続いていくという状態を容認するのかどうかということになるのではないかと思っています。   終了事由との関係では、本人の同意という点について、法定後見と同様に継続要件ではないと考えられると思っていますし、仮に新しい制度に任意後見がなっていくとしても、終了自体を最終的に家裁の許可とするということは維持されるべきだろうとは思っています。あわせて、これは法制上の問題ではありませんが、新しい任意後見制度になるのであれば、任意後見制度が終了して、必ず今は法定後見へ移行することがある種前提になっていますけれども、そうではなくなると、法定後見への移行が必ずしも前提となるわけではないということはきちんと確認をしておく必要があると思っています。   終了事由について、もう1点は、任意後見人が欠けても、例えば予備的な制度が認められる、若しくはほかの任意後見契約があるのであれば、それは終了するわけではない、任意後見自体が終了するわけではないということも、終了事由との関係では整理しておく必要があるかなと思っています。   次に、代理締結ですけれども、代理締結が具体的に問題になる場面というのは、おおむね三つの場面が想定されると思っています。一つは、災害などで公証人が現地に赴くことが長期間困難になっているというケースで、代理締結が利用されている場面があると報告を受けております。ただ、この場面でも、公証人の先生方によって対応が異なるのかもしれませんけれども、御本人の任意後見契約を締結する意思と、代理で締結させる委任の意思という、この二つの意思がきちんと明確になっているということを実務上は求めていると伺っています。仮に代理締結を認める場合でも、この二つの要件をきちんと法制化するということが必要なのではないかと考えています。   代理締結が問題となるもう一つの場面は、障害のあるお子さんが未成年のうちに親権者が親権に基づいて任意後見契約を代理締結するという場面ですけれども、もちろん特別代理人を立てる等の手続上の措置が必要であるということは言うまでもありませんが、その前提として、障害があるお子さんの親権者であっても、その親権の範囲というのは飽くまでもそのお子さんが18歳になるまでの間に本来的には限られるはずですから、将来その先まで親権の範囲でカバーするということが適切なのかという議論もあろうかと思いますし、あわせて、任意後見契約の制度趣旨から考えて、御本人が任意後見の契約意思がない中で、法定代理権で任意後見契約を締結できるのかということについては、違和感を強く覚えるところであります。御本人の任意後見契約の締結意思と委任の意思という、この二つを要件化することによって、未成年の段階で任意後見契約を法定代理で締結するということは難しくなると考えております。   3点目は、先ほどの前半の議論にも出ましたけれども、任意後見監督人が代理締結できるということが現行の実務上行われているということになります。なぜそういったことが行われているかといえば、段階的な発効が現状は認められていない、かつ、御本人が任意後見契約の締結能力がある状態であれば、追加でも変更でもしていただいたらいいと思ってますけれども、任意後見契約の締結ができなくなった後でも、代理権を追加したいというニーズとしてあり、実現させる手段として、監督人が代理締結できるという手法が利用されているということになります。   価値判断として、そのような場合は法定後見でしか対応できないと考えるということもあろうかと思いますが、御本人さんのニーズとして、代理権の追加や変更ということをしたいという意思があらかじめ示されている場合でも、認めないのかということになろうかと思います。先ほど議論がありました段階的発効を認めていただけるのであれば、監督人が代理締結する必要というのもおのずと失われていくことになると、そこはパラレルの関係になるのではないかと思っているということになります。   最後に、その他のところですけれども、これはもう少し先の議論だということは十分承知をしているのですが、法定後見以上に、任意後見は新制度に移行していくという場面で、特に発効前の契約について、今ある契約が法改正後にどういった形でその変更を促していくのか、若しくは変更する必要がないという機会を、任意後見契約を既に締結している方で発効前の方について、改正後の新しいメニューのベネフィットをきちんと受けていただける措置は十分に検討される必要があると考えています。 ○佐保委員 ありがとうございます。私からは、1の複数選任の任意後見人の分掌等と、3について発言をさせていただきます。   利用者によっては複数選任する場合もあると考えます。その場合は、本人の意思を明確にするためにも、共同行使なのか分掌なのか分かるようにすることが後々のトラブル防止にもなるのではないかと考えます。利用促進につなげるためにも、ある程度分掌方法や契約について整理するべきであると考えます。   それから、3についてですが、専門職であっても自宅住所などの個人情報は取扱いに注意をするべきであると考えます。また、専門職である任意後見受任者であっても、事務所所在地が自宅住所の場合もあろうかと思います。そのため、交付する登記事項証明書には連絡先のようなものの記載で十分ではないかと考えます。 ○佐久間委員 何点か分かりませんが、順に申し上げます。まず、任意後見契約の方式については、現状維持しか少なくとも今はないのかなと思っています。それから、登記については今、佐保委員がおっしゃったように、登記事項証明書において連絡先の記載ということにするのが、職務上の方だけではなくて、一般的にそうするのが適当だと思っています。   次、終了事由なのですけれども、何点かありまして、一つは、任意後見について期間制限を全く検討しなくていいのかということを疑問に思っています。どういうことかといいますと、確かにこれは本人の意思に基づく制度ではありますけれども、本人の意思に基づいて始まった後、現状は任意解除が契約発効後は制限されているわけでありまして、そうだとすると結局、本人の意思にかかわらず他人が常に法律関係に、本人が提携した契約によるものではあっても、介入してくるということになりますから、法定後見において強制的な要素を考慮して期間制限を設ける、あるいは見直しの機会を設けるべきだということであれば、積極的にそうしましょうという提案ではないのですけれども、任意後見についてもその見直しの機会などを期間によって定めることが必要かどうかを、少なくとも検討しなければいけないのではないかと思っています。   その定め方については、いろいろあると思います。飽くまで例えばということで、こうしましょうということではないのですけれども、一定の期間が経過したら基本的には自由に解除の請求ができるとすることもあれば、段階的発効とか予備的な受任者の選任が多分それを前提としていると思うのですが、一定の事由、たとえば契約に定めた事由があれば、その事由の発生により当該契約は終了する、終了のためには裁判所に結局行かなければいけませんけれども、終了させる自由を認めるというようなことも含めて検討が必要なのではないかと思っています。これが終了関係です。   それから、5の代理による任意後見契約の締結については、おおむね根本幹事がおっしゃったのと同じ意見です。特に、親権者が未成年の子について任意後見契約を代理で締結するということは、根本幹事もおっしゃいましたけれども、親権というのは初めから期間制限のあるものであって、親権の消滅後についてもなお代理権を行使するのと同じことになってしまいますから、そもそも適当ではないと思います。それと同じことが、仮に任意後見契約や、あるいは法定後見でも一緒だと思いますけれども、期間制限を定めた場合に、代理人が自己の職務が終了した後のことについて、任意後見契約の締結いう形で介入していくというのは適当ではないと思っています。ただ、そうなのですけれども、では規定を設けるかというと、どんな規定を設けるのだろうかという想像が付かないので、そこは結局解釈に委ねるということになるのではないかと思っております。 ○常岡委員 恐れ入ります。今の最後の点ですけれども、親権者による任意後見契約の代理締結について、お二人の委員がおっしゃったことはもっともな理屈であると考えています。それと同時に、親権というのは親の義務でもあって、むしろ最近では、親の権利というよりも義務という面が強調されています。親権者は、子の利益のために、子の監護及び教育のために必要なことを行う義務があり、これは824条の財産管理についても同じです。単に包括的な法定代理権があるというだけではなくて、子供の財産管理について適切に行う義務が親権者にはあるという位置付けです。ですので、反対に、子供のことは未成年の間は親権者が対応するけれども、成年になった後は法定後見にお任せでいいのだと、裁判所に全部やってもらいましょうという姿勢で、果たして親権の構造としていいのかどうかということは、少し気になっているところです。   そこと関係するのですけれども、本人の意思を、任意後見の場合でも、またほかの場面でも、重視するということは非常に大事です。ただ、本人が十分な意思表示ができない状況、事理弁識能力を欠く常況にあるときに、次の段階として、いきなり裁判所に行っていいのか、法定後見に行っていいのか、それともその間に、例えば直系血族である親とかそういうものを挟む余地はもう考えなくてもいいのかというところが、民法の家族法の立場としては非常に気になるところではあります。   全部社会法化してしまうということで成年後見制度も未成年後見制度も行くというのであれば、それは一つの考え方ですけれども、それは少しまだ時期として早いのではないか。もちろん身寄りのない方とか、もう親が亡くなったら障害のお子さんでほかに親族がいないとか、そんないろいろなケースもあるかと思いますけれども、ただ、基本としてやはりまず本人の意思、そして次に裁判所等に代表される公的な介入という間に、ワンクッションというか本人の意思の次の段階として、この場合であれば一般的には少なくとも直系血族である親の意思というものをそこに置く余地や必要は全くないのか。ここの親の意思というのは、親自身が自分個人の好きにするということではなくて、身上監護を含む法定の権限である親権に基づき子供のために監護教育を行う義務を遂行するというレベルの意思の延長であるということは間違いなく、その点については少し慎重な議論が要るように思っております。   それと、任意後見契約を公証人の公正証書で作ることには私も賛成です。多くの場合、御本人が意思能力や事理弁識能力を失った後で発効するとすると、どのような内容の契約をしたかということを後で確認できるようにする、その点でも必要だと思います。また、そういう意味でも、未成年者のために父母が任意後見契約をしたときに、その内容がやはり公正証書で明確になっているということは、一つの、意思の内容の確保として意味を持ってくるように思っております。 ○山城幹事 常岡委員が御指摘になった点につきまして、私自身は根本幹事と佐久間委員がお話しになったことに共感する部分がございまして、考えるところを補足させていただきたいと思います。   824条は、親権を行う者は子の財産を管理すると定めていますけれども、親権を行う者という以上、818条との関係で、これは成年に達しない子の財産を管理する旨を定めたものだと読まざるを得ないだろうと思います。そうすると、成年に達した後の財産管理を目的とする任意後見契約を締結することは、やはり親権からは正当化することが難しいのではないかと私は感じます。   ただ、そうだといたしましても、常岡委員が御指摘になったような需要があって、それに対応する必要があるということであれば、規定の仕方としては、親権者あるいは親権者であった者に対して、代理権を与えるのではなく、本人のために任意後見契約を締結する権限を法定すべきではないかと思います。民法839条1項に似たような規定になるのかもしれません。   もっとも、任意後見契約は自身の財産の管理を任意後見人に委ねるという契約であって、その種の行為を本人以外の者がすることができるのかという問題は、やはり残るだろうと思います。これが一身専属性の問題であるのか、自分自身で十分な判断をすることが困難な状況においては、その者を支援する人を選任する役割は裁判所以外の者が担うことはできないのだという理由によるものなのかはともかくとして、任意後見に関する従前の理解との関係は問われるであろうと感じます。 ○常岡委員 今、山城幹事から御指摘がありましたけれども、私自身、最初の方の会議でユース・トランジションについての整理が要るということを申し上げたように思います。特に障害のあるお子さんについては、親権者ないしは未成年後見人による監護から、成年になった後の手当てというのが現行法には確かにございません。その位置付けを親権者の権限から派生的なものと考えるのか、そういう解釈が可能でまた理解が可能なのかということと併せて、制度的にはやはりトランジションの規定を、もしも可能であれば新設するということも必要ではないかと思っております。補足になりますけれども、以上です。 ○根本幹事 先生方の御議論を伺っていて、代理締結の問題について2つ思うところがございます。一つは佐久間委員から、法制化することが必要なのかというところの問いがございましたが、これについて一つは、現行の公証人の先生方の実務として、法令で禁止されていないことをどこまで公証人の判断の中で制約を設けていけるのかということについて、非常に深い悩みを公証人もお持ちと伺っていますので、法制化はきちんとするべきではないかということです。もう一つは、現行法の立法担当解説の中で、できるということをうかがわせる記載があることの関係でも、明確にするべきではないかと思っているということになります。   それから、常岡委員や山城幹事の御議論で、現行の実務上の状況として3点ほど申し上げておきたいと思っています。まず一つは、軽度の方であれば、障害がおありになっても、任意後見契約の締結能力がおありになれば、任意後見を御利用いただいている方はいらっしゃると承知をしています。2点目は、このニーズがどこから来ているかというと、現行の法定後見の運用の中で、親御さんが後見人に選ばれにくいのではないかという問題意識から来ているものであると承知をしています。家庭裁判所からの御説明にもありましたけれども、親権者、特に障害がある方が御本人であるケースにおいて、親権者であった方、親御さんが選任をされるのかという運用上の選任の問題との関係性もあるのではないかと思っています。   実際、常岡委員が問題意識でおっしゃられたことは、後見制度を利用しない親御さんや親権者であった方が、お子さんのいろいろな手続きをされているということは事実上あるわけでして、それを法制化や制度化するところまで必要なのかということではないかと思います。 ○山野目部会長 未成年者を将来の任意後見契約の本人として想定する任意後見契約を親権者が代理人として提携することの是非をめぐって、発言された順番で言うと、根本幹事、佐久間委員、山城幹事がおっしゃっていただいたことは、誠にごもっともな観点が多くて、よく理解することができ、任意後見契約についてこれから行われる改革をにらんだ上で、どのような新しいポジションを得ていくべきかということを考えると、ますますもってごもっともなことであると痛感する側面があります。ありますと同時に、そのお三方の先生を中心にして申し向けますと、常岡委員がお述べになったことの観点の重みというものは、もう少し時間を掛け、少しゆっくり噛みしめ味わって、それに向かっていかなくてはいけない側面がありそうな気もしますから、これは性急に議論を進めない方がよいとも感じます。   二つのことを申し上げますけれども、一つは、現時点においてこれまで、取り分け知的障害のお子さんをお持ちのお母様、お父様にとっては、未成年の時期が終わって成年に達する時期をにらんで、任意後見契約を親権者として締結されるということを現になさってこられている事例があり、それが一つの実態の一部になってきたような部分もあります。確かに今後、法定後見の制度が変わっていきますから、制度環境が全く同じではありませんが、従来積み重ねてきたところのものを変更をお願いするということになる、そこについては勇気が要る話でありまして、必要なことであれば勇気を持ってすることですけれども、十分な検討が要るのだと考えます。   それから、もう一つは一万円札のお札の人の話になりますけれども、我が国が、常岡委員がおっしゃった家族関係の社会化というものが本格的に始まる前の時点で言えば、自分の子供が貧しくて暮らしていけるだろうかとか、体が具合が悪くて大丈夫だろうかということを慮った親は、どこか引き取ってくれるところがあるなら引き取ってほしいということを考え、その処置を、社会化なんていうことが期待ができなかった近代化の途上にあった日本において、いろいろ苦労をしたにちがいがありません。渋沢栄一は養育院というものを開設して、そういう子供を引き取ってあげるという活動をし、言わば個人的、家族的な処置から社会化へ向けての先鞭を作ってくれたという側面があると同時に、社会化の歩みは楽観ができるのでもないし単純でもなく、今に至っています。  養子の仕組みはと申せば、とりわけ代諾養子縁組のような制度は、その機能、実態、役割について評価が難しい側面がありますし、理論的にみても、養親子関係のような将来にわたって親子の関係を形作るものを法定代理人がすることができるという仕組みになっているところを睨むと、正面からその適否や根拠付けを考えないで、こちらの後見の話のみ、成長した後の話だから締結ができないでしょうという説明で法制的に押し切ることができるかという観点は、それはやはり少し後から見たときに、歴史的にきちんと深めた検討として考察を遂げていますかということは、批判される余地がある問題でありまして、そこのところについて、ここにいる委員、幹事がもう少し十分な、いろいろな観点から見て説明が得られるような考察を準備していくということが、いましばらくその努力をされてよいものではないかということを感じます。   この代理締結の点でも結構ですし、ほかの点についても御意見を承りたいと考えます。引き続き、いかがでしょうか。 ○遠藤幹事 先ほど、障害を持つお子さんについて、親族後見人の選任が十分になされていないのではないかという趣旨の御指摘があったように認識をしております。家庭裁判所の後見人選任の実情を申し上げますと、親族が後見人候補者として挙げられている場合には、基本的には親族を後見人として選任している事案が多いというのは、これまで統計資料等で御紹介をしておりますので、情報提供させていただきます。   また、任意後見全般について、今後、三読に向けた裁判所としての要望として、1点、申し上げます。本日の任意後見に関する御議論を伺っていても、例えば、代理権の追加や権限の分掌等に関して裁判所の関与を期待するお声を多く頂いたように認識をしております。他方で、任意後見の制度は私的自治及び自己決定の尊重の観点から、必要最小限の公的な関与とする前提であると理解をしておりまして、裁判所としても、これまでそのような観点から意見を申し上げて参りました。   今後の議論におかれては、是非ともそのような法制度の趣旨を踏まえて、裁判所が関与することの許容性、つまり裁判所が関与することがどうして許されるのかという観点からも御議論を頂けると、裁判所としてもより考えを深めることができるのではないかと思っております。 ○山野目部会長 遠藤幹事にお詫び方々御案内申し上げます。休憩前に任意後見の様々な論点を議論したときにも、今ちょうど白熱した議論が続いている途上ですから、ややもすればよく整理されないまま、ここは裁判所の御判断を頂いてとか、どういう手続でどういう基準で判断を頂くかがさっぱり分からないまま無造作に、思い付きのままと言ったら少し乱暴ですけれども、裁判所が出てきてしまっているような議論になっておりますけれども、議論のプロセスゆえ、お許しいただきたいと望みます。これからだんだん整理していって、おっしゃったような、任意後見制度全般と裁判所がどう向き合うかということも、改めてその視座を整えた上で、検討を深めていって、最後にそこを、全体として大丈夫だねという見直しをしていきたいと考えていますし、その際には遠藤幹事からも引き続き御意見をおっしゃっていただいてお助けを頂きたいと望みます。どうもありがとうございます。 ○久保野委員 ありがとうございます。先ほどの論点に戻りますけれども、つまり障害を持つ未成年の子についての親権者、あるいは元親権者であった者の関与については、難しい問題なので、直ちに意見を申し上げられるわけではないのですが、先般の改正において817条の12の位置付けについて、正に子の養育や親の子に対する責務についての家族の関係と社会の関与の在り方について、両極といいますか、ある程度の議論があったことですとか、あるいは普通養子縁組の代諾養子縁組については、立法論としては制約していく方向での議論も強いといったことも考えながら、これから今回の立法で改正をする際の方向性ということを慎重に見極めなければならないのだろうと考えております。   すみません、視点だけの提示で申し訳ございませんけれども、以上、指摘だけさせていただきます。 ○山野目部会長 いえ、視点だけとおっしゃいますけれども、大切な視点の念押しを頂きました。どうもありがとうございます。   引き続き承ります。いかがでしょうか。 ○常岡委員 これはすごく乱暴な意見かもしれませんけれども、子供が未成年の間は親権者には包括的な法定代理権があって、824条で保障されているのだということですけれども、その効果自体は決して子供が成年者になったら失われるわけではないという点は同じであるとみることもできるのではないか。例えば、子供名義の土地を親が子供のために子供が未成年の間に売却することは、原則としては全く妨げられておらず、その売買契約の効果は子供が成人しようと、もちろん維持されるわけです。   もちろんそれと、この任意後見契約というのは継続的な契約であるという点は大きく違っていて、知的障害のあるお子さんが成年に達した後、未成年の間に親が締結した任意後見契約に拘束されていいのかという問題はあると思います。ただ、任意後見契約自体は、現行法でも、任意後見監督人が選任された後でも、もちろん終了というか、解除が可能なものですから、それに永続的に拘束されるというものでは決してありません。成年に達した段階で、もしもお子さんが判断能力を回復したり、いろいろな状況が変われば、それはそこでやめることができるものなので、そういう意味でも、この問題についてはやはり少し包括的な検討が必要ではないかと考えております。 ○佐久間委員 繰り返しますけれども、僕は法改正の必要はないのではないかと思っているということを取りあえず申し上げた上で、ただ、今の常岡委員のおっしゃったことには異論があります。土地の売買契約をするときに、例えば17歳の子が持っている土地を発効時期を19歳とか20歳と定めた上で、要するに何か条件とか期限を設けた上で、現在すぐに発効するわけではないという契約を結んだ場合に、それが問題ない代理権行使とされるかというと、そこは異論の余地があるのではないかと思います。任意後見の場合も結局、成年に達してからのことを初めてやるわけですよね。先ほど申し上げたように、既に自己の権限、義務だって一緒だと思いますが、自己の権限、義務がなくなった後のことについて専ら定めるというところに問題があるのではないかと思っているわけです。   ただ、飽くまでそれはやはり理屈であって、社会の実情に照らしてそれでオーケーですかと言われると、それは構いませんよねと言い切ることがなかなか難しいことから、部会長がおっしゃるとおり詰めていく方が望ましいとは思いますけれども、なかなか割り切れるものではないのではないかということです。ただ、それでも言っておきたいのは、44ページの19行目にある任意後見制度の立案担当者の説明には、私にとってはおよそ承服し難い面がある、これだけは言っておきたくて、その上で、恐らく将来的には慎重な運用というのでしょうか、この説明があるからオーケーですよねという考え方ではなく、様々な状況に照らして慎重に運用するということが望ましい姿なのではないかと思っています。 ○山野目部会長 佐久間委員において、理論面と実情という言葉をおっしゃいましたが、実1点ずつお教えいただきたく、理論面からお尋ねすると、未成年者が所有している土地とか建物があるときに、賃貸者契約を親権者が締結して、成年に達した後も、特に契約を結ばなければ、普通借地権とか期限の定めのない賃貸借に原則としてなると思われますから、通常に考えれば継続的契約として不動産賃貸者契約が成年に達した後も続いていって、成年に達した賃貸人が、自分は嫌だから解除するということは、多分その契約の拘束力に照らして、言えないという理解が普通の考え方でしょう。その賃貸者契約は代理で締結することは構わないでしょうか、これがお尋ねの1点です。   それからもう一つは、実情面も考えなくてはいけないとおっしゃっていただいたことをヒントにして申し上げれば、確かに任意後見人に誰がなってお世話を頂くかというのはアパートの賃貸借とは異なるでしょうと、それはかなり本人の有り様に関わることですというふうな観点があれば、そこは考え込まなくてはいけないですけれども、もしそれであれば、親権者が代理で締結していた任意後見契約について、成年に達した後の本人がかなり広範な解除権を行使することができる、という進め方がありうるかもしれません。解除権の一般的な規律自体が拡げられるときには、もうそこに任せてもいいかもしれないですし、ある年齢に達するまではフリーな解除権を行使し、自分は、親があの人を任意後見人にしていたけれども嫌ですという意思表明が、本人の判断能力がそういう表明ができる状態が担保できればの話が前提になりますけれども、そういう工夫を組み合わせるとかということも考えられると思われますが、そうなると、佐久間委員が繰り返し、立法の必要はないとおっしゃったところについて、その種類のことというものは多分、法文に書き表さなくてはいけなくなるでしょうし、アイデアとしてはそういうこともあるかもしれませんから、これらの点についてどう考えるか、2点について、参考までにお考えがあったらお教えいただきたいと望みます。 ○佐久間委員 継続的契約については、代理権がある時点で発効するものであって、したがって、その契約を締結すること自体については何ら妨げられないと思います。問題は成年に達した後、拘束力を持った形で効力が継続していくことだと思うのです。しかし、これは代理権の行使に当然伴う結果として甘受せざるを得ないと思うのです。その上で、しかしそれは本来余り、私の考えでは好ましいことではないので、代理権の不適切な行使に場合によっては当たり得る。どういう場合かというと、本人の成年に達した後の財産処分の自由を拘束することを狙って、仮にですけれども、そのような賃貸借をしたのであれば、代理権の濫用だと私は思い、そうすると、代理権の濫用の規定によって、結果的には相手方が恐らく善意であるので、あるいは無過失であるので、効力は否定できないことになりますけれども、一応そういうルートが用意されているのだと思っています。   これに対して、繰り返し申し上げておりますけれども、今問題となっているのは、飽くまで自己の権限が消滅した後について介入していくということなので、代理権行使を結局、その時点ではできないのだけれども、先にやっておけば、効力を初めて発生させるのが後であったら、そのときに初めて契約を締結するのと同じ結果が実現できるということで、そこは異なるのではないかと思っています。   同じ整理をすれば、代理権の濫用ですという言い方は可能なのだと思いますけれども、この場合の濫用は、本人を拘束するためになんていう考え方は通常、親御さんにはないと思われますので、一般的な代理権濫用とは異なるけれども、代理権付与の趣旨、親権付与の趣旨に反する行使であるということに変わりはないのではないかと、私自身は思っております。   これが1点目で、2点目は、仮に親権者による任意後見契約の代理締結を認めるとなった上で、部会長がおっしゃったとおり一定期間経過後までは任意解除できるというのであれば、意思能力のある人についてはそれで対応できると思いますけれども、意思能力のない未成年者については対応できない。そして、意思能力のある未成年者であった者に関して言うと、そもそもからして、わざわざそれこそ親権者に介入を許す必要性の度合いが極めて低いと思いますので、そのような定めはあり得るとは思いますけれども、余り好ましくはないのではないかと思います。   私が実情も考えなければいけないと申し上げたのは、これは正に法律論では全くないのですけれども、今問題としているような状況にある方の中において、親御さんにおいて、真摯にお子さんの将来のことを考え、このようにするのが適当である、このようにしたいというようなことを思っていらっしゃる方がいて、それを現に実現されている方がおられるわけですよね。それは今後も同じなのだとすると、法的には理屈の上では私は駄目だと思いますけれども、それを一概に駄目だということで済むのかというと、済ませても理屈の上ではいいけれども、現に社会に受け入れられるような解決になるだろうかということを慮っているということでございます。 ○山野目部会長 御意見、そしてお悩みを受け止めて理解を致しました。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○沖野委員 元々の任意後見の制度自身が、法定後見に比べて本人の意思で自分の思った形で制度を設計できるということを、しかもあらかじめの計画を担保しようという制度だと理解しておりまして、それが本人に意思能力があるということであれば、親権者が同意権という形で対応してもらうことが十分可能だと思われますので、むしろ意思能力がないという段階に、しかし本人のためにこれがいいという決定を親権者が将来にわたってするということをどう見るかということですけれども、それは結局、本人よりも親権者の意思で決定できるということを制度化するということになりかねないのですが、それがいいかです。ただ、本人が意思能力がないというときに、本人の意向なども確認しつつ、それを一番よく分かっているし、それまで権限を持っていて本人のために活動してきた人の意見を尊重するというものとして、次につなげるということはあり得るように思います。   ただ、そうしたときには、単純に今の任意後見契約を代理締結するというのでいいのかというのは、なお気になりまして、例えばですけれども、また裁判所の権限に係りますが、家庭裁判所の許可をもってとか、何か、正に常岡委員がおっしゃったトランジションということですけれども、そのための制度をここだけは用意するということが更に考えられるのではないかと思いました。   ただ、その前提として、なぜ法定後見ではいけないかということをやはり明らかにするのでないとその設計や検討には行けないのではないかと思います。法定後見は運用が非常に厳格であって意向が確認できないからですということであれば、むしろ裁判所からは先ほどのように、申請があればむしろ認めていますということであり、その実態やその認識が違うのではないかと。あるいは裁判所に行くのは非常にハードルが高く負担が重くて、もっと前の段階で公証人のところレベルで手当てをしておきたいという実務的なハードルというか、実際上のハードルというか、そういうことだとすると、更にそれをどう見るかということがあり、本人の意向の確認だとかそういうものをする必要があって、それはあるいは任意後見監督人の選任の際なのかもしれませんが、その前にやはり契約段階でチェックをする必要があるのではないかと、そういう制度を作るということは考えられるのではないか、それは日本の現在の状況等を勘案した特別なハイブリッド的な制度として用意するということはあり得るのではないかと思いました。ただ、前提として、法定後見でなぜいけないのかというところをやはり明らかにしておかないと、なかなか制度としての正当化というのも組みにくいのではないかと思いました。 ○山野目部会長 アイデアの御提供も含めて、重要な御意見を頂きました。ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   根本幹事に一つ確かめておきたいことのお尋ねがあります。代理締結が実際に需要を感じさせる場面を整理していただいて有り難かったとともに、もう一つその延長でお尋ねですけれども、法定後見が代理権の事項などを限定した上で必要性を見極めて行われて、それが終了するときに、終了すると、その後は本人に対しては法定後見はなくなって、地域の福祉のところに戻しますという感じになりますが、そのときに、もしかしたら任意後見人が脇に付いていてくれると安心だねというようなことが、チームとか本人とのコミュニケーションで話が出たときに、ではこの後は法定後見は終わるけれども任意後見人にお願いして続けていきましょうというような場面というものは、これからはかえって、法定後見の制度が改革されるとすると、出てきそうな気がします。そのときに、成年後見人が代理して、もちろん本人の意思を尊重して任意後見契約を結ぶという行き方と、しかし、本人にもちろん判断能力があればですけれども、本人の意思決定を支援してあげて、本人が自ら任意後見契約を結ぶ、それを成年後見人が言わば最後の仕事としてサポートしてあげるといったような行き方も考えられるところであって、そういうような場面について今何かお考えがあったら承っておきたいと望みますけれども、いかがですか。 ○根本幹事 法定後見が終了した後に任意後見契約を締結するということ自体は、これは一般論としてあり得るところだとは考えていますし、当然、例えば不動産取引等の非常に重い代理権が法定後見で付与されていて、それが終了した後に、それよりも軽い代理権の内容について御本人が任意後見契約を締結されるということは、全く理論上も問題がないことだと思っています。   問題は、法定後見人が更に任意後見契約を代理締結できるのかという問題になるのだろうと思っていまして、先ほど佐久間委員からは、任意後見監督人が代理締結することも認められない、それは法定代理であっても同じであろうというお話の中で、親権者や成年後見という法定代理の中で違いを設けるのかということにもなろうかと思っていまして、消極に考えています。   結局、任意後見契約を締結できる御本人の契約締結意思と委任意思を仮に代理権締結の要件とするとしても、そもそも法定後見の代理権の範ちゅうの話ではないのだろうと思います。仮に、御本人が自分で任意後見契約を締結する場合や、若しくは手続上代わりに代理締結することはあり得るかと思いますが、それを担う代理人が法定後見人かというと、そうではないのだろうとは思います。たまたま同じ、法定後見だった人が代理締結する代理権を個別に御本人から付与していただくということは、もちろんあり得るとは思います。 ○山野目部会長 御意見をよく理解することができます。ありがとうございました。   ほかになければ、久保委員、櫻田委員、花俣委員にお声掛けしようと考えますが、よろしいですか。   それでは、久保委員、お願いします。任意後見全般でお気付きのことを仰せください。 ○久保委員 すみません。たくさんの御意見があったので、どう話していいのかなと思っているのですけれども、仕組みとして任意後見とか法定後見、中核機関、地域連携    チームがあったりで、一体誰がどう本人の権利をしっかり見守ってくださるのかなというのが、何かごちゃごちゃになってきて、分からなくなっていますが、今お話があったように、予備的な後見人についてですけれども、私たちも育成会の中で成年後見センターみたいなものをやっているところもあります。そこはやはり、親が運営していますから一人では見ていけないようになるわけですね、年齢が上ですから。だから、みんなで議論しながら一人の人を見ていこうということで、限られてはいますけれども、何人かの人の後見を受け持っているというのがあるのですけれども、利用者にしては安心なのですね、一人だけではなくて、何かあったときでもこの人がやってくださるということが分かっていると、とても安心できますので、そういう意味で多分ニーズがたくさんあるのだろうなと思います。その気持ちはよく分かるなと思うのですけれども、利用者の立場から、本人の立場から見ますと、いきなり最初の主であった任意後見人さんが入院されたとか何かアクシデントがあってできないとなったときに、従の方がはじめましてと来られても、本人がまた一からになるというふうに思いますので、複数で予備的な人も含めてやっていただくときに、一部、従の方も少し関わっていただいていると、本人としては知っている人というので安心できるなとも思いますし、その後のバトンタッチされた後もスムーズかなとも思いますので、その仕組みをどういうふうに作ったらいいかとか、法律的なことはよく分からないのですけれども、利用者の立場から言いますと、一部その主でない従の人も最初から少し関わっておいていただくと安心かなと、本人も理解できるなとは思います。   それから、事務を段階的に発効するという部分ですけれども、知的障害の場合は割と早くからこういう制度を利用しないと駄目ですので、任意後見を使うということは、ほぼ軽度の方からスタートするのかなと思います。軽度の方であっても、年齢とともにできなくなっていくことが増えていきますので、そういう意味では、最初は何もかもやってほしくはないけれども、できなくなってきたら、そのときこれをプラスしてほしい、次はこれもプラスしてほしいという、そういうものは出てくるだろうなと思いますので、本人にしてほしいことをまず聴いていただいて、本人の意思、気持ちを聴いて、その代理権ということを考えていただけたら有り難いなと思っています。最初に本人に分かりやすく、どんなことをしてほしいということを聴いていただいて、そして、自分がこういうことをできなくなったときにお願いしたいか、そういうことも本人に分かるように聴いていただいたら有り難いなと思っています。それで、将来的にこんなときになったらするということも、事前に少し幾つか聴いておいていただくと、段階的に変更したり追加したりという、そのときがスムーズかなとも思いますし、ほかに聴いていなかったこともあるかも分かりませんけれども、そろそろこういうことも聴いておいた方がいいかなというようなことも、事前に少し本人に意思を聴いておいていただく、そのつもりで本人もその方に託していくということができやすいのかなと思っています。   それから、今議論されていました未成年の親の任意後見ですけれども、基本的に未成年で親権があるのに、私は何で任意後見をするのかなと、必要ないのになとは育成会の中で話をしていました。それが引き続き代理権を施行していくという事例もなくはないです。しておられる方が何人かおられます。それは私は、少し今私たちが目指しているものと違うなと思うのですね。この私たちの制度って、基本的に今議論しているのは、基本的にいつも本人がどう思っているのか、本人がどうしたいのかということを確認しながらやっていきましょうねという話をしているので、親であってもやはり成人になった後、本人の意思をきちんと確認をして、何らかの手続を踏んでもらうという形をした方が、私はいいのではないかなとは思っています。 ○山野目部会長 久保委員におかれて、それぞれの論点についておっしゃっていただいたこと、よく分かりました。今日の議論を顧みて、一つ一つ参考になる点ばかりです。ありがとうございます。お大事になさってください。 ○櫻田委員 ありがとうございます。今までの議論をお伺いしてきた中で、いろいろ頭の中で考えていたことはあるのですけれども、うまく言葉にできるかどうか分からないですが、少し発言をさせていただきます。   久保委員もおっしゃっておりましたけれども、複数選任の任意後見人の件についてなのですけれども、やはり私自身もすごく必要だと思っておりまして、主で関わってくださる方がもちろんいるというのは、もうあるとは思うのですけれども、一方で本当にほかの従の方も関わっていただいて、複数人で協力をして一人の人を支えていっていただきたいというのはすごく思っているところではあるので、そうしていただきたいというのはあるのですけれども、一方でやはり主の人とばかり関わっているだけでは、先ほどの久保委員のお話でもありましたけれども、何かあったときに、本当にそのほかの従の方たちが何ができるかという、いきなり言われたときに何ができるかというと、なかなかすぐ動くことが難しいと思うので、従の方もある程度やはり主の方と一緒に関わっていただいて、何かあったときにすぐ引き継ぎがうまくできたりとか、うまくサポートが継続できるように、そういうふうになっていっていただきたいなとは、今のお話を聞いていても思ったところなので、すごくうなずきながら聞いていたところです。   あとは、終了事由のところに関しましては、精神障害を持たれた方は比較的、本当に必要がなくなったらもう、ではやめようかというパターンも結構あったりするのかなと想像ではあるのですけれども、思うので、そういったときに、この資料の中にも書かれていますけれども、周りの支援者の人たちが、必要ないからやめようねではなくて、本当に御本人が、自分がこういうことを手伝ってほしくてこう使ったのだけれども、それが解決したから、自分としては今は必要ないので、取りあえず止めておきますみたいな感じで、多分そういうふうな使い方をする方も多いのではないかなと思いますので、そういったときにやはり周りの、任意後見人さんだけではなく、関わっている方たち全体で見ていただいて、御本人の希望というのですか、御本人がこうしたいのでというところをサポートしていただければいいのかなと思いますので、何かそういうふうな流れになっていくといいのかなと少し思った次第です。   すみません、余りうまく言葉にはできませんでしたけれども、以上になります。 ○山野目部会長 それぞれの御意見をよく理解することができました。ありがとうございます。 ○花俣委員 ありがとうございます。今日は更に難しい話がずっと続いていて、なかなか頭の中の整理が付いていないのですが、法律に照らし合わせつつ、様々な場面を想定した上で、実に細かいところまでの議論が進められた、重ねられたと思いました。このような丁寧な議論が積み重ねられていることに、制度を利用する側として心から感謝を申し上げたいと感じた次第です。   任意後見人と成年後見人が併存することに関しても、権限の重複といった課題だけにとどまることなく、本来、任意後見受任者というのは、この制度であらかじめ自分自身が決めておけるという利点があったわけです。そこを大事にしていただきつつ、任意後見制度についても、法定後見と併せて、何がしかの改正というか、そういうものが必要になってくるのだろうとは思いますが、今日の議論では、行きつ戻りつ、戻りつ行きつで、任意後見人をあらかじめ決めておけるのがメリットだと、そこだけは大事にしていただきたいと思います。   それから、これもどうなのかなと思った点について、山野目部会長から先ほどお話が出た、従来は任意後見から法定後見に移行していくというイメージに関してです。今の法定後見の議論の中で、終了したり、スポット利用というようなことが考えられているのであれば、いわゆる任意後見から法定後見へという一方通行ではなくて、双方向のものというのは何かイメージできないのかと思いました。先ほどのご意見のように、法定後見を外れるけれど、地域の福祉に戻る。社会福祉に戻るのだけれども、その中に任意後見人さんがいてくれるとどうだろうかみたいな、そのイメージは理解しやすいところです。別の議論の場においても、法定後見を外れた後のセーフティネット、権利擁護支援のネットワークの話は重ねられてはいます。けれども、今一つ先行きがしっかり見えていないところもあり、併せて検討していただけると有り難いと感じました。   ○山野目部会長 ありがとうございます。最後におっしゃっていただいた点は、私からの呼び掛けで根本幹事が現在段階で望み得る最も丁寧な説明、整理をしてくれましたから、恐らくこれを記録にとどめ、新制度実施後に、また福祉の局面においてもスキームを確立させていく工夫が重ねられていく、重ねられていかなければならないものでありましょう。その課題を確認していただきました。ありがとうございます。   議事を続けます。部会資料9の一番最後の部分、これまで御検討をお願いしている事項以外のその他のところについて、全体のその他になりますけれども、「第6 その他」の部分について、まとめて事務当局から説明を差し上げます。 ○山田関係官 部会資料9、45ページからの「第6 その他」について御説明いたします。   まず、45ページの1では、成年後見制度に関する家事審判手続の規律について記載しています。この点については一読目に引き続き御議論いただきたいと考えています。   また、52ページの2では、重度の身体障害により意思疎通が著しく困難である者の法定後見制度の利用や、任意後見制度の利用に関して記載しています。ここでは、重度の身体障害により意思疎通が著しく困難である者の成年後見制度の利用に関して、民事法制において規律を設けることが適当であるか否か、また、規律を設けることとする場合には、その内容について御議論いただきたいと考えています。   そして、53ページの3、その他では、二読目に取り上げた事項のほかに取り上げておくべき検討事項がありましたら、御意見を頂きたいと考えております。 ○山野目部会長 家事事件手続の問題と、重度の身体障害者の問題についてお諮りしているほか、ただいま説明で最後に御案内申し上げましたように、次回以降、三読目に入るに当たって、今まで注意が向けられていなかった論点だけれども重視しているものがありますというものも遠慮なく御指摘いただきますように望みます。   それでは、今御説明を差し上げた部分について御意見を頂きます。いかがでしょうか。 ○小澤委員 ありがとうございます。まず、1の家事審判の手続についての検討ですが、1の法定後見制度に関する家事審判の手続に関しては、法定後見制度に関する鑑定及び意見の聴取などについて、見直し後の法定後見制度においても、判断能力が不十分な状態にある方が利用する制度とし、取り分け本人の同意を得られない場合や、本人の意向に反して法定後見を開始する際には、診断書による医師の意見聴取や鑑定を行う現在の規律を維持すべきと考えます。本人等の陳述の聴取については、開始及び終了の際のいずれも、可能な限り本人などの陳述を聴取する現在の規律を維持すべきと考えます。法定後見事務の監督、事実の調査及び証拠調べ、保全処分については、大きな変更は必要ないのではないかと考えていますので、現在の規律を維持すべきと考えます。   そして、重度な身体障害により意思疎通が著しく困難である者ですが、以前にも発言させていただきましたとおり、法定後見制度はなるべく抑制的に利用すべきものだと考えていますので、重度の身体障害の方については、通常の委任契約や任意後見制度など、本人の意思をより重視した制度を利用すべきだと考えます。委任契約を利用する場合には、判断能力が不十分な状況になるまでの間は自身で受任者を監督するのが原則になりますが、重度の身体障害が原因で受任者を自ら十分監督することが困難である場合であっても任意代理しか利用できないとするのは酷だとも考えますので、当事者の方々の中で具体的なニーズがあるのであれば、重度な身体障害があることに加えて自ら監督することができないときといった一定程度限定した要件を任意後見監督選任の要件に加えて、任意後見制度を利用できるようにすることも考えられるのではないかという意見を持っています。 ○加毛幹事 53ページの「3 その他」として、法定後見の登記制度について検討の必要があるように思われるところを申し上げたいと思います。   この部会においてこれまで議論してきたように、法定後見制度の活用を促進するために、行為能力の制限の判断に関して個別的な必要性を重視する形で法改正をするのであれば、改正後の実務では、ある法律行為に関して「行為能力の制限がない」ことを証明する方法が、これまで以上に重要になるのではないかと思います。この点は、前回検討した民法21条に関連して、制限行為能力者による事後的な法律行為の取消しのリスクについて、取引相手方が事前に対応する手段にかかわります。   例えば、ある人が幾つかの法律行為に関して行為能力の制限を受けている場合に、それ以外の法律行為、すなわち行為能力の制限を受けていない法律行為を行うという事例を想定します。この場合、取引の相手方としては、問題となる当該法律行為について行為能力の制限がないことを証明する書面を交付するよう求めることが考えられます。現在の後見登記制度の下では、保佐や補助の登記事項証明書に「同意行為目録」を添付して、そこで行為能力が制限される法律行為が列挙されるという扱いになっているものと思います。しかし、そのような登記事項証明書によれば、問題となっている法律行為以外の法律行為について、本人の行為能力が制限されていることが取引相手方に明らかになってしまします。そのことが本人のプライバシー保護の観点から望ましいのかに疑問があるところです。   この問題は、現在の制度の下でも補助類型などについて既に存在しているものであると思います。しかし、これまでは補助類型などがあまり利用されていなかったこともあり、この問題が深刻なものとして認識されなかったのではないかと思います。しかし、法制度の改正や法制度の運用の変更を通じて、個別の必要性を重視し、行為能力の制限を個別化することで、後見制度の利用を促進するのであれば、今申し上げたところが重要な問題として顕在化する可能性があるのではないでしょうか。   この点について見通しを持たずに行為能力の制限の個別化を促進する改正提案を行うことは、取引実務との関係で、やや無責任であるように思われ、法定後見の登記制度の在り方について議論を深める必要があるのではないかと考える次第です。 ○野村幹事 ありがとうございます。まず、家事審判の手続について2点申し上げます。   精神の状況に関する意見の聴取のところなのですが、これは任意後見の場合なのですけれども、任意後見監督人の選任は本人の同意が要件となっていますので、現在の規定のとおり、原則、医師の鑑定等の厳格な手続を要しないとする趣旨は妥当と考えます。具体的な添付書類については、医師の診断書はもちろんのこと、本人情報シートで審理を進めることができるものとしてもよいのではないかと考えます。本人情報シートを活用する場合は、作成者の資格や内容の客観性の確保が重要ですし、何らかの形で明確な法的根拠を与えることも考えられます。なお、任意後見制度の特質上、受任者を始めとする支援者との関係が確立していますので、それらの者から本人に関する詳細な情報提供を期待することができますし、本人情報シートに判断の根拠となる事項を盛り込むことは十分に可能であると考えます。   続いて2点目は、陳述の聴取ですが、これは法定後見の場合でも任意後見の場合でも、本人の心身の障害によって本人が陳述できない場合でも、本人の意思確認の重要性から、本人の意思を確認する方法を広く認め、例えば画像データ等の提示などで本人の何らかの意思表示を他者が陳述書として提出することなども一つの方法かと思います。   続いて、重度の身体障害により意思疎通が著しく困難である者ですが、法定後見の場合は、重度の身体障害について意思疎通が著しく困難である者を対象とすべきではないと思いますが、任意後見については検討の余地があると思います。任意後見の発効の契機が、本人が保護者の代理事務を監督することができない程度の判断能力の低下であることからしますと、本人以外の者が代理人を監督するという点に任意後見制度利用のニーズはあると思われます。判断能力の低下はなくても、身体的障害の程度によっては、法的文書の読解ですとか、他の選択肢の抽出ですとか、その比較が困難であったり、意思の形成は可能ですけれどもその表示が困難であることなどによって、代理人を監督することに困難な場合が想定されます。そういったケースでは任意後見制度を利用するニーズがあると考えられます。現行の任意後見の発効の判断能力の基準とされる補助類型と同程度で、代理人を監督することに困難があれば、公的な監督人を付ける必要性も考えられます。 ○青木委員 家事手続法につきましては、一読目でかなり個別の意見を申し上げましたので、繰り返すことはいたしませんが、大事な観点としまして、障害者権利条約の日本国に対する総括所見の中で、医学モデルだけに基づいた判断に基づくサービスの利用を廃止して、社会モデルに基づき、社会的・心理的な考慮要素に基づいたサービスへの転換を図るべきことが制度全般に求められていると思います。それとの関係で、家事手続法における裁判所が考慮すべき資料につきましても、現行制度では医学的な診断のものが主なものとなっていますが、ここに加えて、やはり社会モデル的な、つまり福祉的な資料として支援チーム等によって検討された資料というものを考慮することを定めるのか、あるいは考慮することができることにするということについて家事手続法の全般で、開始の段階から終了の段階まで考慮するということ、組み入れるということが必要ではないかと考えます。そういう観点から、各段階の手続の洗い出しということが重要であるということを一言申し上げておきたいと思います。   2点目は、重度の身体障害者に関する制度利用ですけれども、これまでの議論の中で、判断能力が不十分な人と、それから、意思は形成するけれどもその表示を外部にすることが難しい人を一緒にすることはいかがかという観点からの消極的な意見が出ていたと思います。ただ、意思表示に関する効果意思の形成と、それを外部に表示をする表示行為というのは、いずれも意思表示の一連の過程として捉えれば、いずれもそれについてご本人が単独ではできない場合に、何らかの支援を必要とするという点では同じことではないかと思います。   したがって、効果意思につきましては、意思決定支援という形で様々な支援をして、できるだけ効果意思を自ら形成できるようにしましょうという働きかけがあるのと同様に、表示行為につきましても、様々な機器の発達や工夫された手段によって、できるだけ効果意思を表示できるようにしようという支援があるという点でも、これは同じことだろうと思います。  にもかかわらず、効果意思が不十分な場合については代理権の付与を認めて、意思決定支援だけの制度にはせずに、代理による制度を残そうとしているわけですから、表示行為が難しい場合についても同じように、読み取るための支援をできるだけ努力はするとしても、それだけでは難しい場合に、本人さんがそれを望み、そういった代理が必要という場合には、表示行為に関する代理ということを認めることは、同じ地平で考えることが可能なのではないかと思っています。   ただし、こうした表示行為の代理を求めるニーズがどれほどあるかについてはなお、今後の中間取りまとめへの意見等を含めまして、当事者の皆さんから代理の制度を使いたいというニーズがあるかということを見極める必要はあると思っています。 ○小出委員 ありがとうございます。私の方からは2点申し上げさせていただきたいと思っております。1点目は、52ページの5行目以降にあります家事審判関係のところ、2点目がその他に関してでございます。   1点目ですけれども、部会資料やこれまで法制審で御要望させていただきましたとおり、預金通帳の喪失等により、家裁が申立人に対して残高証明書の提出を求める場合があり、申立て時は申立人に代理権の付与がなされていないので、金融機関としては原則開示不可ということになってしまっているという実情がございまして、その点、部会資料にも御記載いただいておりますけれども、申立て段階から銀行の残高証明書等が必要ということでございましたら、その必要性を認めた家庭裁判所の方から調査嘱託などで直接金融機関に御照会いただくことができないかということで、御検討をお願いしているものでございます。   こちらに関して、申立て段階からこういった残高証明書の発行が必要となる、今後もそういったものの必要性が想定されるのか、想定されるとしたら、今預金通帳等の喪失というところを想定していますけれども、ほかにどういった場面が必要となるのか、ないしは直接金融機関の方に家庭裁判所さんから御照会いただくことへの受け止めに関して、もしお話しできるところがあれば、最高裁判所の方から御感触を教えていただきたいというところが1点目の発言でございます。   続けまして2点目まで申し上げさせていただきまして、その他の議論の深掘りをお願いしたい論点というところでございます。こちらは二読目の部会資料8の第1のところに関わる部分で取り上げはあった部分なのですけれども、法定後見の終了に際しての考慮要素というところで、部会資料8の6ページから7ページに、日常生活に関する範囲での預貯金取引の今後の方策として、総合的な権利擁護支援等の枠組みの中で本人が支援を受けて行うことでしたり、本人による少額の取引行為について事後的な無効の主張により金融機関が二重払いを強いられる懸念を払拭すること等を挙げていただいております。   こちらは繰り返しになりますけれども、預貯金口座に関する取引のように、取引行為が反復継続的な取引を予定している場合は、取引継続がある限り保護の必要性がなくなることは考え方難いと考えられまして、このような場合であっても必要性が喪失したと考えられるのは、代理権などを伴った法定後見以外の支援により法定代理の機能が補完できる場合と考えております。三読目に向けましては、この挙げていただいた総合的な権利擁護支援等とは具体的にどのような支援を指しており、本人の法律行為の有効性は、その支援によりどのように担保されるのか、担保されないとしたら法定代理の機能を補完するということにはならないということだと思っておりますので、この点をもう少し深掘りした議論がお願いできないかと考えております。   また、本人による少額取引行為に関しての事後的な無効の主張に関する懸念の払拭というところで、こちらも御記載いただいて非常に有り難いところであるのですけれども、少額の定義に関して具体的にしていただけないかというような、なかなか難しいところはあると思うのですけれども、そういったところもあるというところと、少額取引行為は無効とならないということが法律上明記されないと、広い金融機関の懸念の払拭というところでは難しい部分もあると思っております。もちろん民法9条ただし書のところで、日常生活行為に関する行為が取消権の対象から除外されていることは認識しているのですけれども、一方で意思能力を有しない場合は法律行為は無効となるという記載もあるというところでございまして、この点、違って読めるところもありますので、日常的な預金取引の議論を進める点では、この点を明確にしていただく必要があると考えております。 ○山野目部会長 2点頂きました。1点目は、もし遠藤幹事の方から本日時点で何かありますれば、御発言いただければ有り難いです。 ○遠藤幹事 後見開始審判の申立てに当たって申立人が残高証明書を取得できないような場合にどのように対応するかということと受け止めております。確かに、現在、後見開始審判の申立てに当たって、本人の財産状況を確認する資料として残高証明書の取得をお願いするという例はあるのだろうと思っておりますが、基本的には、裁判所の総合的な判断のための資料という位置付けになりますので、残高証明書が取得できないという場合には、そのことを前提に判断を行っているというのが実情ではないかと思っております。   この点に関しては、見直し後の制度で個別の法律行為について代理権を付与するという方向で検討されていることからしますと、御本人の財産全体への財産管理権の付与を求めるものでは必ずしもなくなるとも思われますので、見直し後の制度においては、預貯金通帳の写しや残高証明書というのは、むしろ開始の審査に当たっては不要となる事案が多くなるのではないかと考えております。   その上で、三読に向けての意見を併せて申し上げます。  まず、前回の部会におきまして加毛幹事から、制限行為能力者の相手方の催告権について、本人が適切な時期に必要な範囲、期間で後見制度を利用するといった制度を設けるのであれば、審判を取り消す際の具体的な必要性の消滅の認定においては、それまでにどのような行為がその保護者と本人によってなされたのか、あるいは行為能力が制限される対象となる財産について現在どのような状況にあるのかということが判断された上でないと、必要性が消滅したか否かを判断することはできないのであって、法定後見の終了に当たってはそのような点を審査することが必要になるといった趣旨の御発言があったように理解をしております。この点に関して、家庭裁判所の現在の審査の在り方を御紹介し、三読に向けた議論の参考にしていただければと思っております。   現行制度においては、家庭裁判所は、同意権・取消権が問題となる保佐・補助類型を含めた法定後見の開始に当たり、付与されるべき権限を適切に行使し得るだけの適格性があることを審査した上で保護者を選任しているということを前提に、法定後見の保護者は法定後見事務の遂行に当たって広い裁量を有していると考えております。家庭裁判所における法定後見事務の監督も、このことを前提に、例えば保佐・補助類型では、原則として保佐人・補助人が一定の期間又は法定後見の終了までの間に同意権・取消権をどのように行使し、あるいはしなかったのかという点について報告を求めることを通じて、その裁量の逸脱・濫用の有無を審査しているというのが一般的であると承知しております。そして、このような手法による審査を通じ、加毛幹事の御指摘の点も含めて、保護者による必要かつ適当な権限行使を行われたか否かについても十分判断し得るものと考えております。   保佐人・補助人からの報告の結果、保佐人・補助人が本人の生活状況等に照らして明らかに不相当な法律行為について同意をするなど、その裁量の逸脱・濫用が疑われる事情が認められれば、家庭裁判所は更なる監督のために事実の調査を行うこととなるでしょうし、取消しの審判の際にそれが明らかとなれば、その点についての審査を終えるまでは補佐・補助を終了させることもできないと考えられますが、現在の実務においては、そのような裁量の逸脱・濫用が疑われる事情が認められる場合というのはほとんど見当たらないものと承知しております。   見直し後の制度においても、裁判所が選任した保護者にはその付与された権限の範囲内で法定後見事務の遂行に当たって広い裁量が認められることは同様であると考えられます。そのため、見直し後の制度において保護者が同意権・取消権を付与された場合には、仮に、法定後見の終了時に、その対象となる行為をしたか否かについて確認することとなった場合においても、裁判所としては、現行制度におけるものと同様に、原則として保護者からの報告を基に、保護者の権限行使に裁量の逸脱・濫用が疑われる事情が認められるか否かを審査することをもって、法定後見の必要性の消滅を判断することは可能であると考えており、御本人の過度な権利制約を避けるという観点からも、このような方法が相当であると考えております。 ○山野目部会長 遠藤幹事のお話の前半について、小出委員に特にお声掛けはしませんけれども、何かおありでしたら、小出委員の方から御発言いただければと思います。   引き続き御意見を承ります。 ○河村委員 すみません、少し今日のところの全般的なことで感想めいたことですけれども、申し上げます。三読目に向けてということですので。私は現場の事務のことについてなど、余り知識がない立場でここにいますので、いろいろ皆さんの御意見をかみしめてから意を決して手を挙げると、いつも最後ぎりぎりになってしまって、申し訳ありません。私自身、消費者団体の者としてここにいるということは、このメンバーの中での役割のひとつは、今後判断力を段階的に失っていく可能性のある一般市民代表という面があると自覚しております。   それで今日、任意後見制度についてなのですけれども、花俣委員が先ほどおっしゃっていただいたことに全て賛同するのですけれども、任意後見制度は本人によって内容を決めることができるということが最大のキーポイントだと思っておりますので、きめ細やかで柔軟な利用、言い換えれば自分の意思をでき得る限り反映することが可能な制度として変わっていくということを期待しております。制度が複雑になることへの懸念についても今日出されましたけれども、その複雑さをフルに活用したいならば、すればいいし、複雑なところまで利用しないでシンプルに利用することも可能にするなどして、その複雑さへの懸念に対応していただけたらと思っております。 ○根本幹事 4点申し上げます。まず、手続的なところにつきまして、以前手続法の議論の中で青木幹事からも御指摘があったところですが、現行の鑑について、厳格な証明が予定されているところかと思いますが、現在の実務において、法令上は鑑定が原則とされているところ、例えば親族対立がある、御本人が制度利用に反対されている、そういった場合に限って実務上は鑑定が行われているということにはなっています。現行の法令の考え方と現場の手続実務に乖離がある点だと承知をしていますので、改正が必要ではないかとは思っております。直近の東京高裁の裁判例でも、個別の事案について2件続けて判断が示されているようなところもございますので、考慮する必要があると思っています。鑑定が得られない場合の対応について、例えばかかりつけ医に裁判所が照会をしても、同居親族の同意がないので開示しないという問題が発生している、特に虐待事案や紛争事案において顕著になっていますので、結果的に御本人の権利擁護が図られる制度であるこの制度が利用できないという状況が生じているというところへの配慮というのが必要ではないかと思っています。   2点目は、先ほどの青木委員の御発言とも関係しますが、本人情報シートを家事法上位置付けるのかどうかは検討されるべきだと思いますし、仮に位置付けるとすれば、開始時だけではなくて終了時においても求めていくということが考えられると思っています。   3点目は、48ページの家事法の62条に関係するところになりますけれども、今後中核機関が法定化されるということを見据えて、この家事法の62条の手続とは別に、特別な手続規定として、選任、交代、終了などの場面で家庭裁判所が中核機関にアクセスできるルートということを別途明文化するということは必要ではないかと思っています。   4点目は、小出委員の最後の御発言のその他に関係するところになりますけれども、金融機関の取引との関係で、無効主張に対する懸念の払拭という点についてです。もちろん小出委員御指摘のとおり、9条ただし書と3条の2との関係性を含めて、いかなる場合に本人に取引能力があるのかということを整理していくことはもちろん必要だとは思いますが、あわせて、例えば小口預金といわれる概念が定められるとすれば、そういった小口預金とそれ以外の大口を含めたその他の取引についての取引能力を民法上区別できるのかという観点での議論も必要かとは思います。あわせて、懸念の払拭の方法について、果たして取引約款で対応するということで足りるのか、足りないのかという観点からの議論も必要ではないかと考えております。 ○佐久間委員 2点あります。  一つは、重度の身体障害のある方についてでして、意思能力に問題がない、判断能力に問題がないという方について、表示の補助が必要だというのはそのとおりだと思いますけれども、その表示の補助が必要だからといって、意思決定まで当然に他人ができるという仕組みを利用させるというのは、適切ではないと思っています。ただ、その表示が十分にはできないということから、誰かに代理を委ねた、任意代理でいいのですけれども、任意代理だったときに、代理人の不正な行為についての監督ですかね、干渉がうまくできない、その事態に対応することについては何らか法的な補助があっていいのではないかというのは、そうかなと思います。   だとすると、では任意後見契約に盛り込めばいいのかというと、確かにどなたかがおっしゃった、監督能力において不十分だということを要件として発効させることはできるのかもしれません。しかし、ではその終了なんかについて判断能力に問題のある方と同じでいいのかというと、そこは違うのかなと。判断能力に問題のある方については、後のことを考えずに、任意に解除しますというのは、それは少しどうですかねとなると思いますけれども、監督が事実上困難だという方について、いや、もうそんな補助は要らない、サポートは要らないとなった場合は、任意解除を認めていいと思われますので、もし任意後見契約の仕組みを使うとしたら、仕組みについて丁寧な検討が要るのではないかと思っています。   もう1点は、その他のところで、特に法定後見について、取引継続中であっても仮に法定後見が終了することがあり得るのだといたしますと、継続的取引の善意の相手方を保護する仕組みが必要なのではないかと思います。都度、登記事項証明書を取れということは、事実上なかなか困難なので、取引継続中に、ある時点で実は権限が消滅しましたというときの保護が必要なのではないかと思います。それは民法112条1項、2項は要らないと思いますが、1項について、何らかこの場面に限った特則を設けることを、設けなければいけないかどうかはよく分かりませんけれども、検討する必要があると思います。   ○青木幹事 ありがとうございます。部会資料45ページの精神の状況に関する鑑定の要否についてです。先ほど根本幹事が御指摘いただいたところかと思います。この問題は、法定後見の開始の要件や効果がどのように改められるのかということにもよる問題だと思いますが、その上で、本人の同意や意向によらずに本人の行為能力の制限という効果が生ずる場合が残るのであれば、そのような場合については、本人の判断能力の状態が明らかであるときを除き、裁判所の選任する鑑定人による鑑定が必要であるという原則的な規律は維持すべきだと考えております。   ただ、根本幹事が御指摘いただいたように、親族が妨害しているとか、本人が拒否しているために鑑定ができないという状況については、考える必要があるかと思います。この場合については、一方で、正にそのような状況、対立的な状況にある場合にこそ鑑定という厳格な方法で示す必要があるということがあるのですが、他方で、鑑定ができないために本人に必要な保護が与えられないという問題がありまして、難しい問題だなと考えております。   差し当たりは以上です。 ○山野目部会長 どうもありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは、久保委員、櫻田委員、花俣委員、特に第6の部分におありだったら承りますけれども、無理にはお声掛けを致しません。どなたかおありでいらっしゃいますか。   よろしいですか。ありがとうございます。   ほかに委員、幹事で内容について御発言の御希望がおありの方はおられますか。   よろしいですか。それでは、部会資料9についての審議を了したという扱いにいたします。   次回以降の会議につきまして、波多野幹事から御案内を差し上げます。 ○波多野幹事 本日も長時間にわたって御審議賜りまして、ありがとうございました。   次回の議事日程について御説明いたします。次回の日程は、令和7年2月4日火曜日、午後1時30分から午後5時30分まで、場所は法務省地下1階大会議室でございます。   次回は新たに部会資料を準備いたしまして、法定後見制度の開始などに関する検討項目についての御議論を頂きたいと考えております。 ○山野目部会長 御案内を差し上げたとおりでございまして、次回第14回会議を含め、そこから始まって3回にわたって三読の審議をお願いすることになります。この三読の審議が終わりますと、中間試案へ向けての検討に進んでいくことになります。三読は、したがいまして、中間試案のたたき台の準備に向けての重要な作業をする機会ということになります。それに充てられる会が3回あるというか、3回にとどまるというか、どう申し上げたらよいか分かりませんけれども、そこで可能な限りの準備をした上で、その後に控える中間試案のたたき台、そして中間試案の作成というこの部会の一つのターニングポイントに向かっていきたいと考えておりますから、委員、幹事の引き続きの御協力方、お願い申し上げます。   御案内を差し上げた点を含め、この部会の運営につきまして何かお尋ねや御意見がありますれば委員、幹事から承ります。いかがでしょうか。   よろしゅうございますか。   それでは、これをもちまして民法(成年後見等関係)部会の第13回会議を散会といたします。どうもありがとうございました。 -了-