法制審議会 担保法制部会 第50回会議 議事録 第1 日 時  令和6年12月18日(水) 自 午後1時29分                       至 午後5時54分 第2 場 所  東京地方検察庁刑事部会議室514号室 第3 議 題  担保法制の見直しに関する要綱案のたたき台4 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○道垣内部会長 予定した時刻になりましたので、法制審議会担保法制部会の第50回の会議を開会したいと思います。   本日は御多忙の中御出席いただきまして、誠にありがとうございます。   本日は委員の大西さん、片山さん、松下さん、幹事の家原さんが欠席と、沖野委員が途中退席、金澤委員も途中退席というふうに伺っておりますし、佐久間さんが途中で出席され、途中で退席されると。横山さんが途中で出席されると。青木幹事と河原幹事が途中出席及び途中退席ということで、藤澤さんが途中退席というふうに伺っております。   また、幹事の交替がありましたのでお知らせいたします。南幹事に代わりまして、不破幹事が新たに就任されました。一言御挨拶をお願いいたします。 (幹事の自己紹介のため省略) ○道垣内部会長 よろしくお願いいたします。   それでは、まず、配布資料の説明をしていただきます。事務当局からお願いいたします。 ○笹井幹事 事前に、部会資料49「担保法制の見直しに関する要綱案のたたき台4」をお送りさせていただきました。後ほど審議の中で事務当局から御説明いたします。 ○道垣内部会長 それでは、審議に入りたいと思います。   本日は部会資料49を、大きく二つに分けて、前半は実体法的な規律を議論し、後半は手続的な規律を議論したいと思います。   それではまず、部会資料49の「第1 定義」から「第8 適用除外」まで、また「第17 所有権留保契約」及び第18の2の「抵当権の効力の及ぶ範囲」について議論をいたします。また、「第24 動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の見直し」についても扱います。事務当局において、部会資料の説明をお願いいたします。 ○伊賀関係官 関係官の伊賀でございます。それでは、私の方から部会資料49の前半部分の実体法的な規律につきまして御説明いたします。   基本的に、前回からの修正点、あるいは前回の部会資料からの修正しなかった主な部分につきまして、御説明させていただければと思います。   まず、第2の9の根譲渡担保権に関する規律でございます。こちらは、8ページ以下に記載しております。こちらの(2)の被担保債権の範囲につきまして、前々回の部会におきましては、民法第398条の3第2項のような回り手形等を根譲渡担保権の被担保債権とすることを制限する趣旨の規定を設けないことについて、再検討すべきとの意見が出されたところです。もっとも、根譲渡担保権は、現状においても包括的に定めることができることから、要綱案のたたき台においても、これを踏まえた規定としているところでありまして、前回の部会資料と同様の理由となりますが、回り手形等のみを対象として被担保債権の範囲を制限する規定を設けるということは難しいものと考えております。また、回り手形に限らず、一般的に被担保債権の範囲を制限するということも考えられますが、根保証などとのバランスを考えると、根譲渡担保権についてのみ規定を設けるということも難しいように思われます。   具体的な事案におきましては、根譲渡担保権者が不当の債権の取得により、これを被担保債権とすることについては、信義則等一般条項により対応するなど、解釈に委ねざるを得ないと考えておりまして、その規律については、前回の案を維持することとしております。   次に、第2の9の(14)の元本確定事由につきましては、これは11ページでございますが、元本確定事由につきましては、第10の5の(1)において、一般の先取特権に基づく担保権の実行としての競売及び滞納処分による差押えがあった場合を、強制執行等と同様に扱い、不動産譲渡担保権の固定化が生じないこととする修正をしたことを踏まえまして、根譲渡担保権の元本確定事由としても、これらの自由を強制執行等と同様に扱うこととし、集合動産譲渡担保権である根譲渡担保権については、これらの事由によっては、根譲渡担保権の元本は確定しないこととするなどの修正をしております。   次に、動産譲渡担保契約に関する部分でございますが、13ページの第3の4の妨害の停止の請求等について御説明いたします。   この部分につきましては、妨害の停止の請求等をすることができる場合について、妨害されているときとしておりましたところを動産譲渡担保権設定者以外の者が妨害しているときとするなど、いずれも表現上の修正を行っております。なお、以前の部会においても議論された点ではありますが、動産譲渡担保権者は自身への引渡し請求については、抵当権に関する判例法理が妥当するものと考えられますが、この点を解釈に委ねられるものと考えております。   また、説明欄においては、集合動産譲渡担保権について、動産特定範囲から逸出して第三者が占有する場合についても、直ちに担保権の効力が及ばなくなるとは解すべきではないといった旨を記載しております。   14ページの第3の5、それから16ページの第3の11につきまして、まとめて御説明いたします。   まず、第3の11の牽連性のある金銭債務を担保する動産譲渡担保権の順位の特例におきましては、動産譲渡担保権設定者が企業価値担保権を設定している場合もあり得るところ、企業価値担保権が設定されている場合は、債務者の総財産に属した時点で担保権の効力が及ぶという点で、集合動産譲渡担保権と共通した問題があり得るということから、公示性の高い対抗要件を具備された担保権として、この企業価値担保権を第3の11のただし書の事由の一つとして挙げることとしております。   次に、部会におきましては、牽連性担保権について、被担保債権の発生と担保権の設定が同時にされた場合に限り優先権を付与することとすべきではないかとの意見が出されたところでございますが、この点につきましては、結論として、従前の規律を維持することとしております。その詳細は、第3の11の説明欄に記載しておりますが、従前の規律におきましても、第3の11のただし書において、牽連性担保権は他の公示性の高い対抗要件具備のされた担保権の設定等の後に引渡しがされた場合には、優先権は与えられないこととしておりまして、一定の時的限界を設けているところでございます。   これに対し、他の担保権者が現れる前であっても、常に被担保債権の発生と動産譲渡担保権の設定及び対抗要件具備を同時にしなければ、優先権は付与されないとの規律とすることも考えられないではありませんが、いまだ他の担保権者との具体的な利害関係が生じていない段階で、動産譲渡担保権の設定や対抗要件具備を同時にする必要があるというところまでする必要性については、疑問もあり得るところと考えております。そこで、第3の5及び第3の11の規律については、前回の案を維持することとしております。   第3の6の動産譲渡担保権の順位の変更は、後の登記の部分でまとめて御説明させていただきます。   23ページでございます。前回の要綱案たたき台において、第5の7として記載していた動産利用権を目的とする債権譲渡担保権の対抗要件の特例について御説明いたします。   この規律につきましては、前回の部会ではファイナンス・リース契約について、会計も含めた実務への影響が懸念されるとして、反対意見が複数出されたところでございます。これに対して、提案されていた規律は、ファイナンス・リース契約の法的性質を決定するものではなく、実務に対する影響があるとは考えにくいことから、規律を設けることについて賛成する意見も複数見られたところでございます。   もっとも、説明欄に記載しておりますとおり、これまで複数回議論してきたにもかかわらず、反対意見はむしろ広がっている状況にもありまして、部会におけるコンセンサス等を得られる見込みがないと考えられたことから、規律を設けないこととしたところでございます。   25ページの第7の4のその他の財産を目的とする譲渡担保契約に関する部分でございます。第7の4のその他の財産を目的とする譲渡担保契約の準用規定について御説明いたします。   その他の財産を目的とする譲渡担保契約については、従前、動産譲渡担保契約における果実の効力の規律を準用していたところですが、天然果実に関する規定となったことにより、準用対象から除外することといたしました。   また、集合債権譲渡担保契約に関する取立権限の規律につきましては、前々回の部会において、実行の規律について準用対象とすべきとの意見がございました。そこで、将来的な可能性も見据えまして、前提となる実態の規律である第6の1の規律も含めまして、その他の財産を目的とする譲渡担保契約について、準用の対象とすることといたしました。   なお、その他の財産を目的とする譲渡担保契約に関する規律が適用される財産の範囲につきまして、部会資料には記載していない点について、若干補足して御説明いたします。   譲渡担保契約の適用される財産につきましては、抵当権の目的とすることができる財産を除きまして、原則として動産、債権、その他の財産を対象とすることとしているところですが、一部の財産、具体的には特許法上の特許権等、特許法、実用新案法、意匠法及び商標法に基づく一部の権利は適用を除外する予定としております。これは、これらの権利が、権利の移転につき登録が攻略要件とされ、行政庁との関係でも、行政的な手続も含めて登録名義人が完全な権利を有するものとして扱われているなどの特徴を有しており、譲渡担保契約がされた場合の法律関係等についてはなお不明確な点があると考えられることから、引き続き解釈に委ねるのが相当と考えたことによるものでございます。   ページが飛びまして、55ページの第17の所有権留保契約について御説明いたします。   前回の要綱案たたき台におきましては、留保所有権について他の担保権と競合し得るということを前提に、動産譲渡担保契約に関する規定を準用することとしておりましたが、今回の部会資料においても、その基本的な規律に変更はございませんで、一部更に詳細な規律を設けることとしているものでございます。   57ページの18の2の抵当権の効力の及ぶ範囲について御説明いたします。   果実に対する抵当権の効力に関する民法371条につきましては、前回の要綱案たたき台では、民事執行法の規定を参考に法定果実と天然果実を明示する案を提案しておりましたが、部会ではこの点について、学説の状況も踏まえると、あえて果実の内容を明示する必要はないのではないかとの意見が出されたところでございます。今回の改正の主眼は、同条において、その後に生じたとの文言があることによる疑義を解消することにあるということにあり、果実の内容を明確化するという必要性については高いとまでは言えないということから、同条の改正については従前の案に戻すということとさせていただきました。 ○金﨑関係官 関係官の金﨑から、動産債権譲渡登記の関係を御説明申し上げます。   部会資料63ページの第24のところになります。   「2 譲渡担保権に関する登記制度の見直しの概要」について、64ページに細々とした修正をしております。このうち、(3)の競合担保登記目録制度に関しましては、前回部会において用語法が曖昧になっているとの御指摘を頂きましたので、整理をいたしました。具体的には、当事者が申請するのは譲渡担保権が競合する旨の登記であって、この申請に基づき、登記官が競合担保登記目録を作成するという形としております。その他の変更点は、いずれも形式修正になります。   また、65ページの説明部分の上から3行目のなお以下のところに、順位の変更の合意の登記に関する考え方を記載しております。こちらは部会資料15ページ以下の動産譲渡担保権の順位の変更についての説明においても、同趣旨の記載をしております。この内容・趣旨としましては、抵当権と異なり、動産債権譲渡登記においては、登記外で優先する譲渡担保権者が存在することがあり得るところ、その者が中間順位にいる場合の登記の可否について、従前曖昧となっていた面がありました。この点を改めて検討しますと、この場合の中間者も合意の主体になると考えられることから、中間者を利害関係人として順位変更の合意の登記をするのではなくて、中間者は合意の主体として動産債権譲渡登記を得た上で順位変更の合意の登記をする、言い換えますと、順位変更に係る譲渡担保権者は全て動産債権譲渡登記に登記されていなければならないと考えられますので、その旨を説明しております。   事務当局からの説明は以上になります。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   かなり広い範囲に及んでおりますけれども、どなたからでも結構でございますし、前からと言わなくても、いろいろなところへ飛んでも仕方がございませんので、様々なところにつきまして御意見を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。 ○阪口幹事 それでは、まず、部会資料第3の4、ページでいうと13ページから14ページのところについて、確認をしたいと思います。   まずは形式な話でいうと、13ページの下2行の「妨害されるおそれ」は「妨害するおそれ」なのかなと思います。   実質的な話としては、14ページの14行目、15行目にある括弧の中に書かれている対抗力が失われるものではないと解すべきであると思われるという記載についての確認です。   元々、特定範囲から逸出した動産について、どのように考えるのかという問題があり、担保権がなくなっている、担保権はあるけれども対抗力がなくなっている、担保権も対抗力も残っているという3つの考え方が、部会資料3の12ページとか部会資料13の13ページなどに記載されていました。また中間試案の補足説明も見直しましたけれども、24ページで、その段階でも特定の見解を前提にしていなかったように思います。今回ここで突然、対抗力も失われないと書かれているのが、対抗関係にある第三者が登場したときのことを念頭に書かれているとしたら、そういうふうに決まったでしょうかという疑問があります。また、仮にそうするんだったら、明文の規定が要るのではないでしょうか。だから、ここに書かれているのは、本当の意味の対抗力ではなくて、単に持ち出した人に対抗できるということを言おうとしているだけなのかどうか、この記載の趣旨の確認をしたいと思います。   まず1点、以上です。 ○道垣内部会長 事務局からお願いいたします。 ○笹井幹事 御指摘のところは、最終的には解釈に委ねられると思っておりまして、その部分については、特段今までの立場を変えたというわけではありません。ただ、今御紹介ありましたように、特定範囲から逸出すれば担保権もなくなるという考え方もあり得るとは思いますけれども、逸失したことで担保権がなくなってしまえば担保権に基づく妨害停止請求もできないはずなので、妨害停止請求などの規定があるということは、特定範囲から逸出しても担保権が失われるわけではないことが前提にはなっているのだろうということで、その点を注意的に書いております。   それに加えて、対抗力まで失われるかどうかは、今申し上げたように解釈に委ねられ、立場にもよるので、括弧の中に入れております。 ○道垣内部会長 しかし、阪口さんがおっしゃったのは、妨害停止の請求等については、妨害が起こったときに担保権がなくなるというのでは、そもそも停止とかそういうのができなくなってしまうので、それは存続するでしょう。だけれども、例えば、持ち出されているところを第三者によって差し押さえられたという場合について、別に譲渡担保権も対抗力も存続しているとして、差押え債権者に必ず勝ちますということになるのかというと、そのことについてはそれほど明らかになっていないというか、解釈の問題なのかもしれない。そういった状況を前提にすると、原案は、ちょっと書きすぎなのではないのということなのではないか、ということだと思うのです。そして、それはおっしゃるとおりのような気がしますけれどもね。   少し修文をしていただいた方がよろしいのではないかというふうに思いますが。   ほかにこの点につきまして、何かございますでしょうか。   それと、御指摘いただいたところは非常に重要な話で、書き間違えのご指摘ですが、それはそのとおりだと思います。よろしくお願いいたします。   ほかによろしゅうございますでしょうか。   それでは、別のところで結構でございますので、お願いいたします。阪口さん、お待たせしていたので、続けてどうぞ。 ○阪口幹事 では、次、第3の5、先ほど御説明あった牽連性ある担保権の同時性の問題です。   先ほど御説明いただいたのは、どちらかというと、第3の11の方の同時性であり、その御説明はなるほどというふうにも思いました。ただ、第3の5にも同じ問題があって、5のところで同時性を要求しなくていいんですかというのが、問題提起です。   具体的な例を考えますと、まず、売主AさんがBさんに機械なら機械を、分割払いで売りました。長期の分割弁済で、無担保で売ったんだけれども、その後でBの資力が気になって、譲渡担保を入れてもらうということはあり得ると思うんです。ただ、Aさんに譲渡担保を入れるまでに、BさんはCさんに占有改定でその機械を譲渡担保に供していて、その占有改定の後に、Aさんが戻す方向での譲渡担保を入れてもらいました。しかし、それも占有改定でした。こういう例を考えたときに、何もなかったら占有改定対占有改定なので、純粋に先後関係で決まる。つまり、AはCに負けるということになるんだと思います。   ただ、この5の(2)のルールがあるので、売主Aさんは、何もしなくても占有改定以外の方法で対抗要件を具備したことになるわけですよね。そうすると、占有改定劣後ルールによって、AさんがCさんに逆転勝ちをすることになります。   それがいいんだという考え方、売主を保護するんだという考え方は、十分あり得ると思います。また、Cさんというのは、占有改定で譲渡担保を得た人なんで、後から登記で譲渡担保を得た人には負ける、そういう意味で脆弱な地位にあるCさんなんで、その二つの合わせ技でAさん勝ちという結論も十分あり得るとは思うんです。あり得るとは思うけれども、本当にそういうことをここで意思決定しているんですかということの確認、皆さんの考え方を確認したい。   Aさんは売主だけれども一旦無担保で売った人なので、それを譲渡担保で戻すというのは、Cさんに対する譲渡担保と何か差があるんだろうかという気もするんです。そうすると、占有改定対占有改定だったら、後が負けるというのはある意味当たり前のような気がします。かつ、元々売主を保護するという規律を導入する理由は、いろいろな説明はありますけれども、例えば、18ページにも少し出てくるわけですけれども、やはり中心は、その人が財産を入れてくれた、その人を保護することによって財産を入れてくれるということの促進機能があるんだろうと思います。ただ、先ほどの例のAさんは無担保で売った人なので、ここで言う保護の必要性がかなり弱いような気もする。この辺りで、皆さんの感覚として、いや、それは売主保護だと割り切るんだということなのかどうかの確認をしたいと、こういうことです。 ○道垣内部会長 皆さんの意見ということですが、事務局の方からまず何かありましたらお願いいたします。 ○笹井幹事 5(2)は、結局第3の6、それから9から11までの規定の適用については、占有改定以外の方法で対抗要件を具備したとみなされるということなので、やはり11のお話をされているのではないかと思いました。結局、両方とも担保権設定を受けているということになって、それぞれの担保権同士の間で、どっちが優先するかが問題になる。その11に当たって、5の(2)が適用されるということになっております。   11については、御指摘の問題が確かにあって、占有改定が間に挟まっているときに、牽連性担保権が保護されるのか、保護されないのかは、この11の(1)とか(2)で、引渡しから占有改定によるものを除くかどうかによるのだと思います。今までこの点について議論をしたときには、この11のルールがあることによって、この担保権との関係がどうなるのかということを、もう少しかみ砕いて書いております。その中では、占有改定によって対抗要件を具備したほかの担保権者が現れたとしても、牽連性担保権者は占有改定によって、他の担保権者に優先することができるということを御説明をしておりまして、これまでは、一応、その説明を前提にしてこれまで議論がされてきたのではないかというふうには思っております。   なぜそういう規律内容にしたのかというのは、大分遡っての部会資料33などで再三出てきた話ですけれども、阪口幹事からも御指摘ありましたように、占有改定については他の担保権に劣後させるというルールが採用されているということもあって、元々、占有改定はその限度でしか保護されておりません。この趣旨からして、この牽連性ルールとの関係でも劣後させるということでよいのではないかというような御説明を部会資料の中でしていたということだったと思います。   牽連性優先ルール全体については、集合物との先後関係に限定すべきではないかとか、いろいろな議論はあったのですけれども、17ページの11の(1)、(2)の「占有改定によるものを除く」という部分に関しては、これまでは部会の中でそれほど異論がなかったのかなというふうに思いまして、この部分については一応共有されているのではないかというのが、事務当局の認識ではありましたけれども、また改めて問題提起がございましたので、御議論いただければというふうに思っております。 ○道垣内部会長 別に阪口さんに賛成するわけではなく、また、反対するわけでもないんですが、阪口さんは、時的な限界を入れることによってバランスを取ろうとされていて、それが外れるということになったら、そのときにずっと、かなり前に占有改定によって譲渡担保に取られているのに、大分たって牽連性のある金銭債務のみを担保する譲渡担保権が設定されたといったときに、突然占有改定だけでその人が勝つようになるというのはおかしいのではないかということで、時的限界がないということになると、ここがやはり注目されるのではないかという御意見なんだと思うんですね。   だから、新しく提起されたというか、一貫した主張なのではないかと私は思うんですが、何か皆さんの御意見はございますでしょうか。 ○井上委員 ありがとうございます。もう既に先ほど阪口幹事から、両方の立場のよって立つところを御説明いただいたので、基本的にそれに尽きるかなとは思っていますが、少しだけ補足になるかもしれないと思って発言しますが、これは結局、先ほどの例で言えば、売主Aさんは、目的物を売ったときに所有権を留保するとか譲渡担保権を取るとかしたからこそ延べ払いにしてあげたんだという点を重視して、あるいは着目して、そういう言わば条件で担保を取ったのであれば保護すべき点が多いけれども、一たび無担保で売って目的物を手放して、引渡しまで完了してしまったら、そこから先は、ほかの債権者と変わらないではないかという考え方だと思います。それは一つの考え方です。   ただ、もう一つの考え方として、先ほど阪口幹事がおっしゃった、そうはいっても売主は売主であって他の債権者とは異なるという点に付け加えるとすれば、やはり残代金がまだ残っている売主は、目的物との関係では、まだ完全に手が離れたと見るべきではなく、例えば、動産売買の先取特権などの点で、およそ目的物と関係のない債権者が新たに担保を取ることに比べれば、なお残代金を回収することについて一歩深い利害を目的物に持っていると考えると、事後的に残代金の回収に不安を感じて譲渡担保を取るときの引渡方法が仮に占有改定であっても、その前に担保を取っていた人が占有改定でしか引渡しを受けていない場合には、なお、先ほどの例で言えばCさんは、ひっくり返しを覚悟すべきという態度決定を今回したのですから、Aさんを保護するという考え方もあると思い、私自身は、事務局が一貫して提案されている整理について、それほど違和感を感じずにおりました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○阿部幹事 私は、むしろ逆なのですけれども、元々、先ほど道垣内会長が言われていたとおり、同時性というものを要求すべきではないか、信用売買で売ったその時に担保を取っているということが必要なのではないかということを申し上げておりました。しかし、それは必要ないという説明が、資料の18ページの31行目以下でされておりまして、それ自体には納得するのですけれども、そうだとすれば、牽連性担保権の設定前に、先に引渡しを受けた人が現れたときには、それが占有改定によるものであれ、資料18ページの31行目以下の説明、すなわち、牽連性担保権設定時に存在しない担保権者にはまだ何らの利害関係や期待が生じているわけではない、という説明はもう当てはまらないのではないか、と思いました。「占有改定によるものを除く」という部分は、同時交換性との近さということをいうときに、邪魔になってくるのではないかと思いました。 ○道垣内部会長 そうすると、占有改定以外の方法で引渡しがあったものとみなすというのを削ったとしたときに、牽連性のある金銭債務のみを担保とする動産譲渡担保権が、それこそ占有改定によって設定された後に、その動産について、動産譲渡登記の方法によって譲渡担保権を取得した人は、その売主債権者に勝つというふうにすべきであるという御主張も含まれていますか。   時的に、先にそういうふうに別の債権者が出たという例を阪口さんは出されたわけだけれども、後に出た人であっても、もし仮に登記の方が勝つというのならば、後に出た人でも登記をすれば、売主債権者にも優越すると思うんだけれども、それはどうお考えなのでしょうか。 ○阿部幹事 ちょっと今、シチュエーションがよく分からなかったんですけれども、先に売主が担保を占有改定で…… ○道垣内部会長 売主が担保をしないで引き渡しました。しかし、あっ、やはりまずいなと思って譲渡担保権を取得しました。しかし、それについては占有改定しかやっておりません。買主の元にそれが、物理的な占有があるわけですので、買主に対する他の債権者が当該動産について譲渡担保権を取得しました。そして、登記によって対抗要件を具備しました。そうすると、登記対占有改定というルールを考えると、後で設定を受けた他の債権者の方が勝つということになりそうなんだけれども、そういう主張も含まれていますかという話。 ○阿部幹事 そこまでは必ずしも含んでいなかったのですが、同時交換と同じようなものだけを保護すべきというふうに考えれば、そういう場合も同時交換性がないので売主が劣後して構わないという方向になるかなとは思います。   ただ、資料18ページの説明は、それはそれで受け止めてもいいかなというふうに思いましたので、第三者が出てくるまでに売主が占有改定で対抗要件を備えたというのであれば、購入代金担保権者として特例を適用する、という扱いでも構わないかなとは思います。 ○道垣内部会長 それか、占有改定以外の方法によって引渡しがあったものとみなすというのではなくて、そのルールが適用されるのが、他の者が当該動産について利害関係とか、そういうふうな譲渡担保とかそういうものを取得する以前であるということが要件になるということですね。 ○阿部幹事 そういうことです。 ○道垣内部会長 分かりました。 ○水津幹事 現在の提案は、道垣内部会長の例でいうと、買主に動産を引き渡した売主が代金債権のみを担保するためその買主から譲渡担保権の設定を受けたときは、5(2)によって占有改定以外の方法による引渡しがあったものとみなされるため、その売主は、占有改定の方法による引渡しすら受けていなくても、その後にその動産について譲渡担保権の設定を受け、動産譲渡登記を備えた者に対抗・優先することができるという内容になっているかと思います。つまり、現在の提案によれば、その売主は、占有改定の方法による引渡しを受けることも必要ないようです。 ○道垣内部会長 そうですね、すみません。ごめんなさい。 ○笹井幹事 やはり今、御議論伺っていまして、5(2)の話と11の話が出てきていますけれども、議論の対象になっていますのは、やはり担保権同士の優先劣後関係をどう考えるかということですので、基本的に11の時的限界である(1)から(4)までをどういうふうに考えるかということなのかなと思いました。   この11のルールは、5と組み合わさって牽連性のある担保権を優先させるというルールになっているのですけれども、ここでの意味というのは、これまで御説明してきましたように、一つは、牽連性担保権が占有改定で対抗要件を具備していた場合には、その後に登記、あるいはその他の占有改定以外の対抗要件を具備されても優先するという意味で、占有改定劣後ルールの例外になっています。二つ目は、対抗要件を先に具備した集合動産譲渡担保権があっても、牽連性のある限度では勝てるという加入時ルールをここでは採っていること、三つ目が今御指摘のあった、ほかの担保権が占有改定によって対抗要件を具備していても、自分が占有改定をすることで勝てるという、この三つがここでの優先性の具体的な中身だということになっています。   一つ目と二つ目については、6月に一度御議論いただきまして、異論もあったところではありますけれども、基本的には維持していくというご意見が多かったのではないかと思っています。この5(2)は、牽連性担保権を集合動産譲渡担保権に優先させるために必要なものですので、仮に修正するとしても、5の(2)は最終的には維持しないといけないだろうと思います。   その上で、今御議論になっているのは、三つ目のルールで、占有改定で対抗要件を具備した第三者が現れた場合に、その後は牽連性担保権を優遇するルールがなくなってしまうのか、それとも、占有改定は弱い対抗要件なので、その後に牽連性のある担保権者が対抗要件を具備した場合には逆転して牽連性担保権が優先するという、この三つ目の優遇ルールをどうするかということが、実際的に問題になっているのかなと思いました。   仮にそうであるとすると、これまでは余り御異論なかったのかなというふうに思っていたのですが、ここを見直そうということであるとすると、11の(1)、(2)の中の「占有改定によるものを除く」という括弧書きの部分を削るのか、そのまま残しておくのかということだと思います。実質は、第三者が占有改定によって担保権を具備した場合に、牽連性担保権について占有改定で対抗要件を具備することによって覆すことができるかどうかということに尽きているかと思いますので、その点について、もし実質をこうすべきだという御議論があれば、その点を承りたいと思います。 ○道垣内部会長 いかがでしょうか。   最初、阪口さんがおっしゃり、井上さんがおっしゃり、事務局、笹井さんがまとめてくださったように、被担保債権が当該目的物と牽連性があるというのと、実際にこのルールでその人が前の権利者を覆すというのは、前の権利者が占有改定によって譲渡担保権を取得しているという場合に限られるところ、その人は、実は後から出てきた人が登記を備えると負けるという程度の優先的な権利確保しかできていないのだから、そういうときに、登記と占有改定のどちらをどういうふうに重んじるかという問題の強さと、あと被担保債権が代金債権であるというものの強さというものをどういうふうに考えるのかという問題あるわけですが、被担保債権が代金債権であるということによって生じる強さも、その占有改定でしか権利を取得していない人を乗り越えるだけの正当化根拠を持っているのではないかというのが、一つの考え方だと思うんですね。   それについて、今強い御異論があるかということがポイントかなと思いますが、いかがでしょうか。もちろん、御異論は頂いたわけですが、ほかの方、いかがでしょうか。   ここで方向だけは出したいんですけれども。   もちろん、最終的な次回に向けての整理におきまして検討を積み重ねて、もう一回その説明も含めてきちっと書くというのはそうなんですけれども、今回の担保法制部会における譲渡担保権の仕組みというのが、いわゆる対抗要件を先に備えたら勝ちますという制度設計ではなくて、対抗要件を備えるという方法も幾つかあるところ、順位というのは、それとはまた一つの別のルールとして考えられるということですね。これは、この間日本登記法学会というところで、そんな理屈はあり得ないと生熊長幸先生に批判されたんですが、私はあり得ると思っていますし、京都大学の和田勝行さんも、そういうのもありうる、抵当権の順位について、対抗力の問題だけで書いているのではなくて、順位は登記の先後で決まるという条文があるということ自体が、ある一定の対抗要件が先にと、だから勝つんだというルールとは、ある種別のルールというものが存在し得るということを示しているのではないかということをおっしゃったわけです。そして、そういうふうな形で全体としては出来上がっているんだと思うんですね。   そのような中ですので、対抗要件が先だから、必ず負けるというふうにする必要はないんだと思うのですが、ポリシーの問題としていかんというふうにお考えになるかどうか。 ○笹井幹事 ちょっと補足をしますと、先ほど私が申し上げたことに一部誤りがあり、17ページの11の(1)、(2)の「(占有改定によるものを除く。)」という部分を削ったとしても、5の(2)が生き残っていると、占有改定劣後ルールによって、少なくとも牽連性のある金銭債権のみを担保する譲渡担保権は優先することになりますので、ここを削るだけでは、今おっしゃった御指摘は技術的にも達成できないということになりそうです。   今の書き方はいろいろなバランスの上に成り立っている書き方ですので、一部を変えると、いろいろ変えなければいけないということにはなろうかと思います。 ○道垣内部会長 いかがでしょうか。   もちろん、次回に向けて更に検討を事務局においてしていただくとともに、皆さんからも、この会議の場以外でもいろいろ御意見いただきたいと思うのですけれども、差し当たっては、現在の原案を変更しなければならないというほどのポリシー上の問題点は存在しないということなのかなと思うんですが、まとめとしていかがでしょうか。   では、少し検討していただくというふうな含みも残しまして、ちょっと先に進ませていただければと思います。理論的には、ポリシー的には両方あり得る見解だろうと思います。   ほかに何かございますでしょうか。   青木さん、お願いいたします。 ○青木(則)幹事 牽連性担保権について違う点の確認をさせていただければと思います。11の方の牽連性担保権は、対抗要件として占有改定劣後ルールに服する引渡しを要するということであったかと思いますけれども、これは、牽連性の限度での優先についても同じなのでしょうか。   つまり、登記をしていなければ、先行する集合動産譲渡担保が登記をしている場合には、牽連性の範囲でも優先できないという理解でよろしいでしょうか。 ○笹井幹事 ケースとしては、ほかの第三者が登記を具備していたということですか。 ○青木(則)幹事 はい。例えば、一番の集合動産譲渡担保権者が登記を具備していて、その後に出てくる牽連性担保権者、これが11の方の一般の方で、それで、そっちが占有改定劣後ルールにもかかわらず、取りあえず占有改定でしか対抗要件を具備していなかったというときに、先発の人に対する優先があるとすると、11のところの特殊なルールとしての競合する他の動産譲渡担保権者等に優先する者というふうになると思いますけれども、ここのところも占有改定劣後ルールがカバーしているという理解でよろしいでしょうかという、そういう質問です。 ○笹井幹事 集合動産譲渡担保権者が先に登記を具備し、かつ、そこに加入した物については、牽連性担保権は、その後の占有改定では勝てないということにはなります。   ただ、ここの今回の17ページの説明のところにも書いたかもしれませんけれども、ここは同時である場合には、集合動産への加入と、牽連性担保権の対抗要件としての引渡しが同時である場合には11のルールが適用されるので、同時であれば占有改定でも勝てると、そういうことになっています。 ○道垣内部会長 いかがですか。 ○青木(則)幹事 前提の部分の確認だけでしたので、どうもありがとうございます。 ○道垣内部会長 ほかにございませんでしょうか。よろしゅうございますの。   はい、お願いします。 ○青木(則)幹事 これも単なる確認になるのかと思いますがもう1点お願いいたします。牽連性の定義については、御議論があったところだと思いますが、結局5の(1)のアの代金債務というのは、個々の動産の代金債務ということで、そういう御趣旨ということでよろしいんですよねという質問です。つまり、拡大された所有権留保のような残債務全体と在庫全体の代金債務みたいなものについては、含まないという御趣旨だということでよろしいでしょうか。 ○笹井幹事 基本的には、ある動産について、当該動産についての代金債務というのが、ここで言うところの牽連性のある金銭債務だということになります。ただ、全く幅がないかといいますと、これも平成30年判決でありましたように、1か月などある程度幅のある期間単位で売買契約をまとめて、その代金額全体を一定期日に支払うというような取引については、その1か月分の全体と、その全体についての代金債務との間に牽連性があるという、そういうことはあり得ると思いますが、ベースは今申し上げたように、一つ一つの物というのが出発点になると思います。 ○青木(則)幹事 ありがとうございます。これまでの御議論どおりだと思います。そういうことを説明にお書きになるといいような、どうでしょうか。どうもありがとうございます、確認です。 ○道垣内部会長 ほかに御発言ございませんでしょうか。 ○沖野委員 大変申し訳ありません。そして、私、ちょっと中座をしていたもので、議論を理解しないままかもしれませんが、青木先生から1点目の御質問があった占有改定劣後ルールというものと、牽連性ある担保権の優先ルールとの関係なんですが、先ほどの御説明ですと、まず、譲渡担保を登記で取っていて、その後、売買代金を融資するという形で譲渡担保で、現実には占有改定で備えたというときには、最初の譲渡担保が優先するという御説明でしたでしょうか。   すみません。私自身は、牽連性があるものは、合意によって占有改定以外の方法で引渡しがあったというふうにみなされるので、占有改定劣後ルールは働かず、11によって優先するのではないかと、かつ、集合動産譲渡担保、先行しているのですが、集合動産の場合と個別動産の場合とがあって、個別動産について先に譲渡担保で登記をしているということはちょっと考えにくいような気もしたんですけれども、集合債権で最初に登記を取っていて、それから代金融資で譲渡担保で初めて入ってくるというときは、その代金融資の方が優先するというふうに理解していたんですが、そのような説明だったでしょうか、違う説明だったんでしょうか。すみません、自分の理解のためだけみたいな話ですが。 ○道垣内部会長 違うと思いますが。 ○沖野委員 違うんですか。 ○笹井幹事 私の理解では、売主ではなくて、ほかの人のための集合動産譲渡担保があって、その後に買主が売主から物を購入して、それについて占有改定を受けたというようなケースを想定しておりました。 ○沖野委員 分かりました。今の話であれば、もう既に譲渡担保が付いていたものを買ってくるという、そういう場面での説明だったということですね。 ○笹井幹事 売主、買主、第三者がいて、買主がまず第三者のために、例えば自分の在庫とかに集合動産譲渡担保権を設定し、その集合動産譲渡担保権には登記が具備されていて、そこに売主から買ったものを入れたと。その後に、余り考えにくいかもしれませんが、その後に11の担保権を設定して、占有改定を受けたというケースかなと思いました。   確かに、これが、第3の5が適用されるような、牽連性のある金銭債務のみを担保するものであれば、5(2)によって占有改定以外の方法で引渡しを受けたというふうにみなされることになりますが、いずれにしましても、11の(1)から(4)までより後に対抗要件が具備された場合には、11の本文の適用はないので原則に戻ることになり、原則に戻ったとすると、結局占有改定以外同士であれば先後関係になるので、元々の集合動産譲渡担保権の方が勝つということかなと思います。 ○沖野委員 11の(2)ということでしょうか。 ○笹井幹事 集合動産譲渡担保権との関係では(2)があるので…… ○沖野委員 それが妥当するということですね。分かりました。失礼しました。同時のことを考えていたので、異時の場合ということだと理解しました。今の点は、私の誤解であったことが分かりました。すみません。   その他の点でもよろしいでしょうか。その他の点は、今ではない方がいいですね。 ○道垣内部会長 いや、その他の点でいいですよ。   青木さん、その他の点、それとも今の点ですか。   では、青木さんに先にお願いします。 ○青木(則)幹事 今の話ですが、集合動産譲渡担保の設定があり、その後に売主から信用買いをするというときに、集合動産に加入する前に設定していた担保権があって、占有改定の方法で対抗要件を具備しているという事案があるとすると、このときにはどちらが勝つことになるのでしょうか。 ○笹井幹事 売主、買主、第三者がいて、買主が第三者のために集合動産譲渡担保人が設定されており、それは登記が具備されているということですね。そこに、売主から物を買って、加入させる前に自分が引渡しを受けたという、そういうケースだと理解してよろしいでしょうか。 ○青木(則)幹事 引渡しの前です。引き渡してしまう、特定場所に引き渡してしまうと加入になるんだと思うんですが。 ○道垣内部会長 売主が引渡しを受けるという意味でおっしゃったのですね。 ○青木(則)幹事 はい、そうです。そうなります。 ○笹井幹事 牽連性担保権について、加入の前に占有改定により引渡しを受けたということであれば、牽連性担保権の方が勝つことになります。   ここは、対抗要件具備時説の考え方を修正して、加入時ルールをここでは適用しようというのがこの(2)の趣旨ですので、加入より前に牽連性担保権の方が引渡しを受けていた場合には、そちらの方が勝つということになります。 ○青木(則)幹事 5の(2)のルールがそっちに及ぶということなんですね。   反対はしませんが、個人的にはちょっと問題かなと思っているところもございます。2番手の牽連性担保権者が集合動産譲渡担保の形で担保を取っている場合も同じ話になるのではないかという気がいたしますので、何かそこの部分で、集合動産譲渡担保同士の競合であるにもかかわらず登記の先後による順位に番狂わせが生じるような話になってしまわないかということを、懸念していたことがあるものですから、確認させていただいたという次第です。 ○道垣内部会長 ちょっと今、私、青木さんがおっしゃったことが分からなかったんだけれども。 ○青木(則)幹事 2番手の人が集合動産譲渡担保を取っている場合でも、11の方の一般的な牽連性担保権になる場合があるのではないかというイメージを持っておりまして、例えば、全体については牽連性がないけれども、売ったものについて、あるいは売却代金債権についての与信部分については牽連性を持つということであれば、2番手の人は集合動産譲渡担保権者であっても牽連性担保権を主張できるはずですよね。そうすると、その人が集合動産譲渡担保権者なんだけれども、占有改定の方法でしか対抗要件を具備しておらず、でも、「いいや、どうせこの与信の資金は代金に使われるんだから問題ないや」というふうに思ってている、そういうふうな取引実態が出てこないかという、そういうような心配をしている次第なんですけれども。 ○笹井幹事 集合動産所有権留保みたいなことですか。 ○青木(則)幹事 例えば、やはり拡大された所有権留保に近いようなものをイメージしているんだと思いますけれども、集合動産譲渡担保としても構成しようとすればできる気がいたしまして。 ○笹井幹事 そうですね。今おっしゃった事案だと、売主以外の第三者のための集合動産譲渡担保権が先行していて、対抗要件も具備されているので、牽連性担保権が優先するには設定した上で同時に引渡しまで受けないと勝てないということではありますけれども、同時であれば、占有改定で勝ててしまうのが問題ではないかということですか。 ○青木(則)幹事 後発でも、先行する集合動産譲渡担保の与信がその商品の購入に使われずに、後発の集合動産譲渡担保の与信額が目的物の購入代金に充てられたことが証明できれば、その場合、同じようなことになるのではないかと思ったのですが、それは違いますでしょうか。すみません、何か…… ○道垣内部会長 今のシチュエーションよく分かんないんですが、集合動産譲渡担保権が設定されて、集合動産譲渡担保権者が登記によって対抗要件を備えているというふうなときに、所有権留保売買はできるわけですよね。そうすると、所有権留保売主は勝つんですよね。それを、あえて後発の売主が同じ倉庫について集合動産譲渡担保権を取得して、私が入れた物については集合動産譲渡担保権が設定されることにちょうどなりますよねというふうに言うという話だろうと思うんですが、それも、当該動産と被担保債権との間に牽連関係があるときだけ、その売主が勝つということならば、所有権留保をするということに比較したメリットはないのではないですか。 ○青木(則)幹事 すみません。前提としまして、私見では、狭義の牽連性担保権であっても本来は公示をするべきだという発想があるものですから、この場合も公示がいらないことになるのかみたいな、そういう問題意識からの懸念だと思います。この問題意識は、多分、皆さんと共有できていないと思いますので、個人的な意見ということで結構かと思います。 ○道垣内部会長 なるほど、その部分を動かすということになればということですよね。その部分を動かすという御見解ならば、その部分のこととしてお話を頂ければよろしいかと思います。 ○道垣内部会長 それでは、青木さん、その所有権留保の対抗要件について、何か御発言ありますか。 ○青木(則)幹事 いや、もうそれは、これまでの御議論で。 ○道垣内部会長 では、ちょっと実行のところに飛ぶ前に、まだもう少し、その前の辺りでということで、何か御意見ございませんでしょうか。     阿部さん、お願いします。 ○阿部幹事 すみません、今回の資料に始まった問題ではないのですけれども、今回の部会資料の20ページの第4の3の(1)の表現について、御質問申し上げたいと思いました。   大学の授業でこの部会での議論を紹介したりするときに、今回の第4の3の(1)に相当する提案も紹介したのですけれども、どうも表現から内容を読み取るのが非常に難しいように思いました。   取り分け苦心したのは、ただし書のところでして、「集合動産譲渡担保権設定者が集合動産譲渡担保権者を害することを知ってしたときは、処分の効力を生じない」と書いてあります。一時期、部会資料37−1では、「処分は、その効力を生じない」と書いてあって、要するに、処分は無効だという感じにも読めたのですけれども、そもそも、通常の譲渡担保権設定者は、その有する権利を第三者に移転することができる、ということになっていて、このただし書もそれを否定する趣旨ではないと思うんですね。そうすると、要するに、ただし書の「処分の効力」という言葉が言っているのは、担保権が消えるということ、処分された目的物について担保が及ばなくなるということを意味していて、ただし書は、担保が及ばなくなるわけではない、担保が及び続けるのだ、ということを言いたいのだと思ったんですよね。 そうだとすると、もう少し正面からこれを書けないだろうかと思いました。そもそも、3の(1)の本文で「処分をすることができる」としか書かれていないところに問題があるように思いまして、要するに、処分をするとどうなるのかということを書き込んだ方がよいのではないかと思いました。具体的に言うと、譲渡担保権の設定者が特定範囲所属動産の処分をしたときには、集合動産譲渡担保権が当該動産に及ばなくなると、その上で、そのただし書として、設定者が担保権者を害することを知って処分したときは、その限りでない、というふうに、処分したときにどうなるのかということを具体的に書き込んだ方が分かりやすいのではないかと思いました。   これは、今回に始まったことではなく、また、専ら表現の問題だと思いますけれども、私の意見として申し上げたいと思いました。 ○道垣内部会長 ちょっとお待ちください。何かあります、御意見。 ○笹井幹事 そうですね。内容的には、恐らく私たちと阿部先生との間で理解がずれているということはなくて、ここで言っているのは、担保権の負担のないものとして処分するということができないということです。例えば、取引行為による場合には、担保権のないものとして譲渡したりすることができますし、事実行為として廃棄しても、担保権者に対する義務違反にはならないという趣旨で書いておりました。   ただし書の方では、ただ、通常の営業の範囲を超えるケースですけれども、そういう場合には、担保権の負担のないものとしての処分としては効力を生じないということを意味しておりましたので、実質としては特段ずれてはいないのかなと思います。処分の効力がおよそゼロなのか、それともいわゆる設定者留保権を移転するという限度では効力を生ずるのかというのは、それぞれ個別の契約の解釈といいますか、どの範囲で意思の合致があったのかというところにもよってくるのかなと思います。   ちょっと表現については、どういう表現がよいのかというのは、また少し考えてみたいと思います。   実質は多分そごはないのではないかというふうに思いますので、その点を申し上げました。 ○道垣内部会長 阿部さんのおっしゃっていることよく分かりますが、他の法律の条文との関係というのもありますので、その辺りも考えて、少し分かりやすくすることは可能かというのを、今の御発言を基にもう少し考えていただければと思います。   それでは、沖野さん、お願いします。 ○沖野委員 すみません。23ページについて一言だけ申し上げておきたいと思います。   追加されなかったのは、とても残念だと思いますし、これに対して出されている団体のご意見に理由があるのかということについては、よく分からないというか、余り理由がないように思っております。もっとも、法律構成自体が、利用権の担保だというふうにした場合も、利用権という債権を担保目的で譲渡しているというものなのかどうかというのは、ちょっと分からないなと思っておりますけれども、規定としては、本来設けるべきではなかろうかと思っておりますので、残念だということだけ申し上げたいと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○井上委員 私も続けて23ページから24ページにかけてですが、私としては、ファイナンス・リースと呼ばれる取引が、リース料債権を被担保債権とする利用権の担保取引であることを前提として、リース取引に関する予測可能性を高めるために、元の提案どおり対抗要件の特則などのルールを置く方がよいのではないかと考えておりましたし、現在もそう考えております。   ただ、今回、この部会での議論を通じて、いわゆるファイナンス・リース、すなわち動産利用権の設定と金銭の支払が約束され、その約束が、賃貸借と違って、動産を利用してもしなくても金銭の支払義務には影響がない、あるいは、目的物が滅失してもなお支払をしなければいけないという内容になっており、他方で、金銭の支払を怠ったら動産利用権が取り上げられるという内容になっていれば、それは担保という言葉に言及していなくても、正に利用権を担保に取って金銭の支払を確保していると認定できることが、ここでの議論を通じて相当程度明らかになったように思っております。加えて、必ずしもフルペイアウトでなくても、そういった取引は利用権担保取引と評価されることについても、おおむね明らかになったのではないかと考えております。その上で、リース会社を保護する追加的な明文規定が見送られることになった点については、残念ながら不明確さが残ってしまうと思いますけれども、しかし、その基となる法的評価、すなわちファイナンス・リース契約と呼ばれる取引が動産利用権担保取引であるという法的性質についての見通しは、格段によくなったと考えておりまして、その意味で、部会での議論が今後の担保法制及び金融実務によい影響を及ぼすことを、期待したいと思っております。 ○道垣内部会長 ほかに。今までの範囲、実体的効力が中心のところですけれども、御意見等ございますでしょうか。   よろしゅうございますか。必ずしも全部が全部に皆さんの御意見を完全に取り入れられたというわけではないのかもしれませんけれども、このような形で取りまとめさせていただくということでよろしゅうございますでしょうか。   ありがとうございます。   それでは、どうしましょう。時間が中途半端になりますが、説明だけしていただきましょうか、まず。 ○笹井幹事 少し説明をさせていただきたいと思います。恐らくいろいろ議論はあるところはあるだろうと思いますので。 ○道垣内部会長 分かりました。   それでは、部会資料49の「第9 動産譲渡担保権の実行」から「第16 破産手続等における譲渡担保権の取扱い」までと、第18の1「質権者による債権の取立て等」及び「第19 民事執行法の見直し」から「第23 会社法の見直し」についてまで議論を行うんですが、ちょっともうすぐ3時になりますので、差し当たっては、まず事務当局から部会資料の説明をお願いいたします。 ○遠藤関係官 関係官の遠藤です。   それでは、第9から第16まで、第18の1及び第19から第23までのうち、従前の部会資料からの変更部分を中心に御説明したいと思います。   まず、26ページ、第9の1(1)のウにつきまして、従前は、担保権の実行手続の中止命令等を個別の根拠規定を引用して掲げていましたが、現行の他の類似箇所の記載ぶりに合わせて、包括的に規定する形に修正をしております。   次に、34ページ、第10の5(1)につきまして、従前は一般の先取特権に基づく担保権の実行としての競売及び滞納処分による差押えを固定化事由としておりましたが、これらはむしろ一般債権者による強制執行と近い性質を有するものと考えられることから、これらを固定化事由から除外するなどの修正をしております。   次に、35ページ、第10の6につきまして、組入額を決定するための基準を、被担保債権額とするか、目的財産の価値とするかという点について、目的物の価値のうち、一般債権者がその形成に寄与した部分を一般債権への弁済に充てるという観点から、目的財産の価値を基準とする考え方を採用することといたしました。その上で、金融実務への影響に対する懸念が示されてきたということを踏まえまして、最も優先する担保権に限っては、回収額が元本を下回らないようにしております。   また、組入請求権についての特定の債権者に優先権を与えるという考え方については、ここでの組入請求権の趣旨やこの組入請求権を差押禁止財産とするということには課題もあることなどを踏まえまして、本文においては取り上げておりません。   次に、第13の2につきまして、前回の部会での御指摘を踏まえまして、取引所の相場その他の市場の相場がある商品について、私的実行の際に2週間の猶予期間を設けるとすれば、価値変動リスクを譲渡担保権者が負担しなければならず、その利益が害されるおそれがあるということなどから、その他の財産のうち、このような商品を目的とする譲渡担保権の実行については、猶予期間に係る規定の適用を除外することといたしました。   以上について御議論いただければと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   まだ2時50分なんですが、あとが全部まとまっておりますので、これを議論し始めますと、かなり時間が必要になるというふうに思われます。そこで、ちょっと早くて恐縮なんですけれども、3時5分まで一旦ここで休憩を取らせていただいて、その後再開したいと思います。よろしくお願いいたします。           (休     憩) ○道垣内部会長 それでは、15時5分になりましたので、休憩を終了いたしまして、部会の審議に戻りたいと思います。   先ほど、事務局の方から部会資料49の第9から第16、第18の1、第19、第23について御説明を頂きましたが、その点につきまして議論を行いたいと思います。これらの点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等をお願いいたします。   沖野さんが実行のところについてということでございますので、沖野さん、お願いします。 ○沖野委員 申し訳ありません。ちょっと進行を全く把握しておらず、大変申し訳ありませんでした。簡単なことで、中身がどうかだけの確認ですので、すみません。   56ページの第17「所有権留保契約」の3について、この(1)、(2)の意味だけを確認させていただきたいんです。これって、もう先ほど出たんでしょうか。すみません、ちょっといなかったもので。 ○道垣内部会長 どうぞ。 ○沖野委員 よろしいですか、すみません。   (1)ですけれども、債権譲渡担保権に関する規定を準用の対象から除外したというのはよく分かります。けれども、元々(1)は、動産譲渡担保契約に係る部分に限るという限定がありましたので、準用規定から除かなくても、元々除かれていると思います。動産譲渡担保契約に係る部分に限るという限定に加えて、債権の部分はさらに抜いておこうというのには、何か意味があるんでしょうか。ただ、形の上で、それはもう最初からそもそも適用されないのだけれども、そのことをより明らかにしておこうという意味だと理解してよろしいのかというのが確認です。   それから、(2)が、第3、12の規定は、これこれについて準用するとなっています。(1)において既に留保所有権について準用されているのですけれども、(2)の意味は、一種の読み替えということになるんでしょうか。それとも、(1)で第3、12の規定について留保所有権の準用されるときには、これとは違って、留保所有権というような場合になるとか、譲渡担保留保所有権というような形になると、そういう想定なんでしょうか。(2)が置かれた意味について確認させていただければというのが、第17の3についてです。 ○道垣内部会長 では、お願いします。 ○笹井幹事 1点目は、形式的なところですけれども、念のためといいますか、確かに元々は、解釈上、債権に関するものというのは除外されるかもしれませんが、そこを明確にするために、動産譲渡担保権に係る部分に限定したということです。   二つ目は、おっしゃるように、譲渡担保権に関する規定で、元々この第3の12は譲渡担保権を譲渡担保権の目的にした場合になりますので、それをそのまま留保所有権に準用すると、どの部分が留保所有権に読み替えられることになるのかというのが分かりにくい。留保所有権を留保所有権の目的にした場合というふうに読み替えられるのか、何がどういうふうに読み替えられるのかが分からないので、ここでは、留保所有権という担保権を譲渡担保権の目的にする場合であるということを明確にするために、こういう書き方をしたということです。 ○沖野委員 ありがとうございます。 ○道垣内部会長 よろしゅうございますか。 ○沖野委員 はい、意味を確認したいだけですので、結構です。 ○道垣内部会長 では、すみません。続けて実行のところもお願いします。 ○沖野委員 申し訳ありません。これは、どこかで明らかにしておいてもらえばいいのかなと思ったからなのですけれども、26ページの第9で、この2週間の期間経過に関して、「又は目的物である動産の引渡しを受けたこと」という、いずれかの時期ということになっておりまして、その引渡しが何を指すのかということです。   と申しますのは、譲渡担保権者は、譲渡担保権自体について対抗要件を備えるために、既に引渡しを受けているという法律構成にはなっていると思いますので、それとは別に、さらに別個に、この後、引渡しを受けるということなのかと思われるのですけれども、それについて法文上限定しなくていいかということが一つです。そのほか、それは、例えば、既に譲渡担保権者が占有改定以外の方法で引渡しなり占有を取得しているときには、現実に手元にあるとか、あるいは第三者保管になっているというような場合がありますが、これはもう引渡しは受けているということで、従って、又は以下は働かないということでいいのか、第三者保管の場合はまた別なのか、です。この引渡しというのがどういうものが入るのかというのを、確認しておく必要がある、あるいはどこかで明らかになっているといいのではないかと思いましたので、確認をさせていただければと思います。 ○笹井幹事 ありがとうございます。典型的に念頭に置かれておりましたのは、この部会でも議論されてきたところですけれども、担保権者が占有改定でありますとか、あるいは登記のように、現実には手元に持っていないのだけれども引渡しを受けたということになっていて、対抗要件を具備していると。実行段階になって、現実の引渡しを受けたというような場面では、ここの引渡しに該当して2週間経過することもなく実行が終了するというのが、最も典型的なケースとして念頭に置かれていたかと思います。   例えば帰属清算の通知をして、それ以上その物について別途請求することがなくなったという状態が、ここでいう引渡しなのだろうと思うのですが、そういう意味では、最初の対抗要件具備が占有改定ではなくて、現実に引渡しを受けているというようなケースではもう既に引渡しを受けているので、改めて引渡しを受けなくても、実行としては終了すると考えておりました。   これは、例えば、債務不履行前の段階で担保権者が現実の引渡しを受けているという場合もそうですし、また、実行のための引渡命令などの新しい裁判制度が設けられておりますので、私的実行のために引渡命令を活用した結果として現実の引渡しを受けたという場面も、ここでいうところの引渡しを受けたことに該当すると考えています。   問題がありますのは、占有改定によって実行を終了させるための引渡しがあったといえるのかというところです。最初の対抗要件具備が占有改定である場合に、対抗要件としての占有改定をもって、直ちに実行を終了させる引渡しを受けたことにはならないので、改めて引渡しを受ける必要があると思っておりますけれども、改めて占有改定を受けることが、ここでいうところの実行を終了させるための引渡しに当たるのか、当たらないのかというのは、ここでは、最終的には決め切っておりませんで、最終的には解釈に委ねるのかなというふうに思っています。   最初に申し上げましたように、典型的に考えておりましたのは、担保権者としてももうこれ以上実行行為としてその物について請求することはないというケースですので、改めて占有改定を受けるというのが、ここの引渡しを受けた典型的なケースではないというふうには思っています。しかし、例えば帰属清算で所有権は一旦自分が取得した上で、事業のために必要だから、今度は別途占有権限を設定してあげて賃貸するみたいな形で、元々の担保権設定者のために引き続き使わせてあげるというようなケースも、場合によっては全く想定できないわけではないのかなというふうに思いまして、そういった場面では占有改定を全体として排除するというのは、行き過ぎではないかというふうに思っております。   差し当たりは以上です。 ○道垣内部会長 どうぞ、沖野さん、続けて。 ○沖野委員 分かりました。現実の引渡しに限るとか、第三者保管の場合にどうかとかということを明らかにする方法があるのではないかと思いましたけれども、今のお話ですと、場面によって完全に一定の類型に限るということはできないという場面もありそうだということですので、その解釈を残す形で引渡しを受けたことという、このままになるのかなと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。ほかに。 ○阪口幹事 阪口です。   元々、ここの2週間ルールを巡る議論は、受戻しの機会を後ろ倒しにするかとか、いろいろな議論がある中で、最終的にこの形に落ち着いたんだと思います。   今のお話で、元々が占有改定若しくは登記で担保を取っていましたと。最後、では、実行だといわれて、改めて占有改定に債務者が応じたら、2週間ルールの適用がないとなると、元々考えていた民事再生なり何なりのチャンスを残すという趣旨からすると問題だと思います。それは応じたんだから仕方がないではないかと言われたら、そうかもしれませんけれども、それでも機会を残すべきだと思います。2週間ルールの適用対象外となるのは、典型的には、やはり現実の引渡しではないか。先ほど笹井さんがおっしゃった、占有改定で帰属清算して、そこからもう一遍貸すんだからいいではないかという考え方もあるかもしれませんけれども、そうなってしまうと、その財産を民事再生なり何なりで、別除権の対象として受け戻して確保するという機会はもう完全になくなって、純粋に借りるしかなくなってしまう。元々いろいろな議論の中で調整して、最終的に事前に2週間という期間を設けることになった趣旨からすると、占有改定は含まないと解釈すべきではないのかと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。ただ、これを作るときのポイントとしては、いろいろな場合があり得るというふうにして、引渡しと書いたままで、今阪口さんがおっしゃるようなシチュエーションにおいては、それは現実の引渡しでしょうと、では、それに限られるというふうに解釈しなければいけないでしょうというふうに考えることによって、つまり解釈によってその結論を導くのか、そもそもここを現実の引渡しという言葉にするのかという、二択ということがあるんだと思うんですが、阪口さんはどのようにお考えですか。 ○阪口幹事 私は、問題提起されるまで気が付きませんでしたけれども、現実の引渡しと書いた方がいいのではないかと思います。第三者倉庫に預けている場合もやはり、設定の段階で登記なのか指図による占有移転なのか分かりませんけれども、現実の引渡し以外の方法で対抗要件を具備していて、対象動産が第三者倉庫に入ったままの状態で、帰属清算完了になる事態は、同じように避けるべきだと思うので、結局現実の引渡ししか2週間ルールの適用対象外にならないのではないか。その意味では現実の引渡しのみであることをここに明記すべきではないかと思うんです。 ○山本委員 私も阪口幹事の御意見に賛成です。 ○大澤委員 ありがとうございます。   私も同様でして、第三者に元々預けたままで事業をしているわけですから、第三者に預けたままで事業をしていて、そのまま事業再生をするという観点からは、現実の引渡しに限るというのが普通の考え方かなと思って、議論を伺っておりました。 ○道垣内部会長 ほかに御意見等ございますでしょうか。   事務局から何か見解ございますか。 ○笹井幹事 そうですね。御議論伺っていまして、私も、原則的には、現実の引渡しを受けるというのが一番典型的なケースとして想定されているのだと理解をしていましたし、現実にそういう事案であるからこそ、2週間の経過を待つことなく実行が終了するというふうに評価してよいのではないかと思います。   ただ、やはりその後の、今申し上げたようなケースですとか、あるいは物の性質によっては、どうしてもどこかで保管しておかないといけないというようなものもあるような気もいたしまして、そのときに、現実の引渡しに限定し、ほかの可能性をなくしてしまうということにはややちゅうちょを覚えまして、場合によっては事案ごとの解釈かなというふうに思ってこういうふうにしております。なかなか解釈上の対応では難しくて、むしろ現実の引渡しだというふうに書くべきだということでしょうか。 ○阪口幹事 ここの問題は、どちらかというと、議論の余地がない方がいいと思うんです。また、解釈の余地を残す必要があるかというお話が今ありましたけれども、結局2週間待てばいいだけの話なので、その例外を何か考えなければいけない必要性は乏しい。つまり、2週間ルールは別にあって、2週間をショートカットする例外をどういうふうに設けるかの話にすぎないと思うんです。   確かに現実の引渡しまでいったら、もうそれはすることがないから待つ意味が誰にもないと、それは分かるんですけれども、それ以外に、解釈の余地を残す必要もないのではないのかなとも思うし、ここは法的手続が画一的に判断できるように、むしろ疑義がないようにするべきではないかと、私は思います。 ○日比野委員 ありがとうございます。   私としては、笹井幹事のご意見と同じように思っております。   占有改定は基本的にないであろうというところに異論があるわけではありません。ただ、動産にはいろいろなものがあり、保管形態もいろいろあるという中で、担保権者が物理的な移転を受けないといけない、それ以外にないと限定したときに、本当に困るケースが生じないのかというところに、少し躊躇を覚えるところがあります。例えば第三者が保管しているときに、以後は担保権者のために第三者が保管してくれると、したがって、担保権者が処分清算をすることとして、買主を見付けたときには、その動産を支障なく搬出することができる状態に置かれることになったときは、ここでいうところの引渡しという評価を受けてもよいのではないのかなと。そこを現実の引渡しに限定してしまうというのが、本当に実務で困ることがないのかというところについては、少し躊躇を覚えるように思いました。 ○道垣内部会長 ほかに御意見ございませんでしょうか。 ○井上委員 井上です。   私も余り意識的に考えたことはなかったんですけれども、今の御議論を伺っていて、占有改定は確かに除いてもいいと思いつつも、担保権者が持っている場合の簡易の引渡しは、これはこれでいいんですかね。現実の引渡しすら要らない場合であって、それ以上もうやりようがないので、そういう意味では、現実の引渡しと簡易の引渡しは、それで完了と考える。そうすると、結局、指図による占有移転の形で引渡しを受けることをどう評価するかということになるのではないかと思うんですけれども、第三者にもいろいろな形態があったりするし、動産にもいろいろなものがあったりするので、その中には、もうこれで完了ということがやはりあるのではないか。現実の引渡しをしたら、それでしまいなんだという議論があるとすれば、指図による占有移転もそういうカテゴリーに入ってくるような気もしました。   むしろ、その背後にある、2週間の間にいろいろな手立てを取ることを確保する必要性を強調するんだとすると、そもそも現実の引渡しも含めて常に2週間必要であることになるような気もするのですが、そこは、現実の引渡しがあったら諦めるということだとすると、簡易の引渡し、指図による占有移転も、そちら側に寄せて、何ていいますか、設定者のコントロールの下にあるままでは足りん、という線引きもあるのかなと思いました。 ○道垣内部会長 ほかに御意見ございませんでしょうか。 ○山本委員 今、御意見伺っていて、確かに指図による占有移転は含まれるということはあり得るかなと思いましたけれども、少なくとも占有改定は明示的に除くべきなのではないでしょうかね。 ○道垣内部会長 いや。そこでは、全体のコンセンサスが取れるのではないかというふうに思いながらも、「(占有改定を除く)」って書いたとき、それがそのまま条文になるわけではないんですけれども、その後の解釈にどのようなことを及ぼすのか。指図による占有移転はいいのかということになり、今、井上さんや日比野さんがおっしゃっているように、指図による占有移転でいい場合だってあるはずだろうとは思うけれど、事実として債務者がその影響下で外の倉庫に入れているというだけの状態で、全然変わっていないというふうなときは、指図による占有移転が占有改定に類するものであるとして除かれると言わなければいけない。その解釈論というか運用が、どのようなルール設定をすることによって、一番うまく達成できるのかということかなと思います。   もちろん、現実の占有とだけ書いて、指図の占有移転で必要な場合もあるかもしれませんが、それは2週間待てばいいではないかというふうに言えば、それはそのとおりであるとも言えるんですけれども、法制執務的といいますか、どう書くのが一番よいのか。皆さん、それほどには現実のところで皆さんの意見が割れているわけではないような気がいたしますので、どう書くのが一番いいのかというのは。   これ、事務局で「(占有改定を除く)」というふうに書いたと仮に仮定したときに、何か大きな支障が起きるというふうな感じがされますか。それとも、書くのはやはりまずいのではないかという感じがされますか。 ○笹井幹事 いえ。条文の形として、占有改定を除くと書くことによって何かまずいかというと、条文の書き方としてまずいということではないのではないかと思います。ただ、先ほど申し上げましたように、結果的に実行が終わった後も、引き続き設定者が占有するというようなケースがあり得なくもないのではないかということと、それも確かに2週間待てばいいではないかと言われれば、そのとおりかもしれませんが、一方で引渡しという別ルートを作ったことからすると、現実の引渡しを受けたのと同じように実行行為としてはもう終了したというふうに評価できる場合というのが、占有改定によってもあり得るのではないかというふうに思いましたので、先ほどは解釈に委ねるということも申し上げましたけれども、そこは、占有改定はおよそ駄目と、2週間待ちましょうということでコンセンサスが得られるのであれば、そういう書き方というのは、今直感的には駄目ではないのかなと思います。   ただ、そうすると、現実の引渡しと簡易の引渡しは、実際の占有が移転しているというか担保権者側にありますのでそれほど異論がないとして、あとは指図による占有移転の場合をどう考えるかで、特に指図による占有移転によって最初の対抗要件具備がされているというケースで、債務不履行あるいは帰属清算の通知などの後に改めて指図による占有移転があった場合に、終了させてもいいのではないかという御議論だったのかなというふうに思いますけれども、一方で、個々に占有改定だけは除外して、指図による占有移転というのはこの引渡しに当たり得るということだとすると、一番最初の譲渡担保権の対抗要件として指図による占有移転がされていた場合に、それは除かれるのか、それもここでいう引渡しを受けたのか、そういうところの解釈問題が今度は出てくるのではないかというふうには思います。 ○道垣内部会長 最後は本当にそうなのか、ちょっと分からないですけれども。 ○藤澤幹事 ありがとうございます、藤澤です。   今の議論についてなんですけれども、2週間の猶予期間があるにもかかわらず、動産の引渡しを受けた場合には例外となるのがなぜかというところに立ち返ると、その規定の明確化に資するのではないかと考えております。まず、債務者の側が任意に引き渡すことがあり得て、そういう場合には、事後的な期限の利益の放棄のようなものがあると捉えられますので、占有改定だろうが指図による占有移転だろうが、猶予期間がなくなってもいいというふうに考えられそうです。   もう一つが、むしろ債務者が何らかの隠匿行為とか毀損行為をする可能性があって、保全命令等が出て占有を奪われてしまっている場合です。これらの異なる2種類の場面が考えられるとしたら、引渡しを基準にするのではなくて、通知を受けた債務者の意思を基準にすることができるのではないでしょうか。期限の利益を放棄する場合には例外になるということです。それに加えて、保全命令等が出てしまった場合には例外となりますというふうに、引渡しではなくて、これらを規定する可能性はないのかなと思いました。 ○道垣内部会長 つまり、多分意思だけの問題として、皆さん、現実の引渡しを要求するにせよ、指図に占有移転を要求するにせよ、考えていらっしゃって、設定者、債務者の影響下といいますか、そういうのから脱しているというところをもって、実行のあるステージに達しているというふうに考えるんだろうと思うんですね。したがって、意思だけを基準にしてやるというのは、ちょっとこれ、話としてあり得ないというふうに申し上げているわけでは全然ないんですが、ちょっとここの流れとはかなり違う、異質な話だろうと思うんですけれども、いかがでしょうか。   今、笹井さんが最後におっしゃった、ここに占有改定を除くと書いてしまったら、一般の対抗要件具備のところでというふうにおっしゃった、に影響が及ぶというふうになりますか。 ○笹井幹事 影響が及ぶといいますか、最初の譲渡担保権が設定されて対抗要件を具備したときに、それ自体が指図による占有移転によって受けていると。つまり、設定者もどこか倉庫に預けていて、それを指図による占有移転という形で譲渡担保権者に対して引き渡した、そのことによって譲渡担保権の対抗要件を具備されたというケースで、それはもう既に、この「又は」以下の引渡しを受けたという要件を満たしているので、改めて引渡しを受けなくても、帰属清算の通知だけすれば、もう実行としては完了してしまうと考えてよいのか、それとも、それを改めてもう一回指図による占有移転というのが必要になってくるのか。どちらかというと、後者を前提にして今議論がされていたのではないかと感じました。また、それが集合動産譲渡担保ですと、恐らく対抗要件具備の段階では、対抗要件としての指図による占有移転というのがあったとしても、実際に物を出し入れする権限はまだ設定者に残っているので、それを完全に担保権者に移すというのが、恐らくここでいうところの引渡しに該当するのだと思います。   そこを実態を見て引渡しの有無を判断するのだとすると、やはりある程度解釈に委ねざるを得ないところがあり、もう占有改定と指図による占有移転というのはおよそ駄目ですということであれば、両方とも除くというのはあり得るのかなと思いました。 ○道垣内部会長 つまり、現実の引渡しのときには、譲渡担保の設定において、現実の引渡しによって対抗要件が具備された場合については、もう一回現実の引渡しをしろという議論はなさそうなのに対して、指図による占有移転の場合には、もう一回やれという、第三者所有倉庫にある場合を考えたりしますと、指図による占有移転で譲渡担保権の設定の対抗要件が具備されたといったときに、実行のためにもう一回指図による占有移転をしろという意見というのと、いや、もうそれは指図による占有移転しているから、現実の引渡しと同じようにもう一回もしなくていいんだという意見と、両方出てき得る可能性があるという話ですよね。だから、それらを全部含めて、アンブレラから外れているというか、設定者の影響下から外れていて手出しができなくなるというふうな状況を解釈によって導くためには、もう引渡しという文言にした方がいいのではないかというのが、今おっしゃった話だろうと思うのですが。   「(少なくとも占有改定は駄目)」とか書けないしね。だけど、みんなの意見はそういう感じでしょう、「(少なくとも占有改定は駄目)」って。 ○笹井幹事 その辺になると、解説マターにしておき、大体少なくとも占有改定が除かれることは解説で明らかにし、指図による占有移転は、何となく除かれる感じはしますが、法制審での議論のニュアンスを含めて解説で書くということはあり得るように思います。 ○道垣内部会長 引渡しという文言が法制的にどういうふうな言葉で全体として使われているかと、大きく関係すると思うんですね。つまり、現実の引渡しだけを示しているにもかかわらず、引渡しという言葉を用いている、あるいは、現実の引渡しに限るときに、現実の引渡しという言葉を用いている例というのがどれくらいあるのかというふうな、全体の法制的なこととも関係するのかもしれませんが、大体皆さんの方向性みたいなものが明らかになりまして、あとはやはり書く技術の問題、最終的に解説の説明というところで落としてコンセンサスを示していくのかというふうな、ちょっと技術的なことにつきまして、この部会の大勢を踏まえた上で、事務局に少し御検討いただくということにしたいと思うんですが、よろしゅうございますでしょうか。 ○阪口幹事 大勢がそうであれば、その方法あると思うんですけれども、現実の引渡しと書いたときのデメリットというか、不都合がどれだけあるのかが、ちょっと僕にはよく分からないんです。今出てきた、元々第三者倉庫に入っています、指図による占有移転は最初で行いました、かつ、1回目だけでは当然駄目なのでもう一回行ったというケースでも多分駄目なんでしょうと。笹井さんが先ほどおっしゃったのは、コントロールは完全に債権者側に来ている場合、担保権者側に来ている場合、本当にだから倉庫業者が、今後はあなたの指示でいつでも出しますよというふうに返事をしてくれた場合、そのケースで、しかし、今すぐやらないかんという必然性、どこまでありますかね。   確かにそれ、出せ言われたら出すと言うてるだけの話で、2週間待てない理由ほどの必然性はないように思うんです。かつ、今の一問一答や何やらでうまいこといくなら、それはいいけれども、結構微妙な問題ではないかという気はするんです。   なので、ここの2週間問題は、本当に倒産事件が発生して、そういうケースがどれだけあるかは分かりませんけれども、民事再生か何かでね。なったときに、そこの議論の余地はできるだけ減らしておきたいという気はするので、そこまで指図による、解釈の余地を残すニーズが高くないんであれば、思い切って現実の引渡しというふうに書いていただいた方がいいのではないのかなというふうに、私は思いました。 ○藤澤幹事 ありがとうございます、藤澤です。   今の阪口先生の御意見についてなんですけれども、例えば、倉庫費用がすごく高い冷蔵倉庫に目的物を預けている場合に、どちらが預け主なのかによって、その倉庫費用の負担が変わってきたりすることはないでしょうか。 ○道垣内部会長 であると、どうなるんですか。 ○藤澤幹事 失礼いたしました。   もしあるとすると、債務者側も指図による占有移転で占有を移転してしまえば、その倉庫代金の負担を担保権者に負ってもらうことが早い段階で可能になるメリットがあると考えました。 ○道垣内部会長 阪口さん、何かありますか。 ○阪口幹事 おっしゃっていただいたのは、契約書の書換えというか、保管契約の書換えをして、債権者側が契約の当事者だということまでするケースが一番典型的だと思いますけれども、そこまでやれば、確かに2週間分の保管料は債権者負担になりますから、その意味では、債務者にメリットがあることになります。ただ、そのためにそこまで条文の中に入れますかというのが、僕の感覚ですね。言うたら、2週間分の保管料の話なので。 ○道垣内部会長 今、阪口さんの方から、2週間という期間もあるんだから、あえて微妙な指図による占有移転というものが含まれてもおかしくない場合があるのではないかということまで考えなくても、素直に現実の引渡しと書けばいいのではないかという意見が出されたわけですが、その辺りについて、皆さんのお考えはいかがでしょうか。   もちろん、先ほども私申しましたように、日本の法制度において、引渡しって書かれているときに、現実の引渡しだけを指しているという場合というのがどれだけあるのかとか、あるいは現実の引渡しというのを書いている、それに限られるというふうに書くというのがどれくらいあるのかというふうな問題とも絡んできておりますので、現実の法文の作成におきましては、なかなかそう簡単には決することができないところがあろうかと思うんですけれども、ルールの意識として、現実の引渡しに限るというふうに書くのがルールとしては正しいのではないかというのも、一つの見識だろうとは思いますけれども。   山本さんはそういうお考え方ですか。 ○山本委員 基本的には、それはそれでいいのではないかと思っています。 ○井上委員 それほど結論は違わないと思うんです。ただ、くどいようですけれども、現実の引渡しは、それまで債務者が現実に占有している状況で、現実に引き渡した場合が想定されていますが、譲渡担保の中には、最初から債権者が現実の引渡しを受けていて、それで最終的に実行に至ったときは、これは簡易の引渡しだから、それで足り、現実の引渡しに限る必要はないと思うのです。   その上で、残りの二つのうち、占有改定は異論がないところなので、違いがあるのは指図による占有移転だけだと思うのですが、そこについて、先ほどは、担保設定当初に、担保権者が指図による占有移転で対抗要件を備えている場合を典型的に想定しつつ、実行の際に占有者との契約を変える場合を念頭に置いて、それはもう現実の引渡しと等価ではないかと思っておりました。   契約の書換えをするのが典型ですけれども、それは結局何を意味するかというと、設定者が自由に引き出せなくなり、担保権者のみが自由に引き出せるようになるという関係が、占有者というか預かっている人との関係で成立する場合であって、これって、ある意味現実の引渡しに極めて近いと思うのです。現実に引き渡せというときに、自分の会社の敷地に持ってくることだけを意味することってあんまりなくて、指定した保管場所にデリバリーしてもらうのも現実の引渡しだと思うのですが、それがたまたま、設定者がそれまでに預けていた同じ倉庫との間で、契約を書き換える形で自分の支配下に置くのは、感覚的には非常に現実の引渡しに近い気がして、そういう場合を逆に排除することに抵抗があるということなんです。   なので、解釈に委ねるとそこら辺が曖昧になるとすると、なかなか書き方が難しいんですけれども、私のイメージは、現実の引渡しと簡易の引渡しと、それから指図による占有移転の一部ということになり、それは何を意味しているかというと、債務者が手を出せなくなる場合ということです。そこが書けるのであれば、書き切った方がいいと思うんですが、書けないとすると、やはり一定程度解釈の余地が残るのかなという印象を持ちました。 ○日比野委員 よろしいですか、ありがとうございます。   井上先生の意見に基本的に同じでして、また、結局ずっと同じことを言っているのかもしれませんが、動産というのは、物もバラエティーに富んでいますので、その処分の方法、保管の方法というのは、実際にその現場で困らないということが大切なのではないかと思っています。   そうすると、阪口先生がおっしゃったように、2週間待ったらよいではないかというものもある一方で、それが待てない目的物もあるのではないか、あるいは、大型のファイナンスであれば、保管をしている第三者とあらかじめ契約で何らかのアレンジメントをしておく仕組みを作ることも考えられると思います。そのような可能性がある中で、伝統的な概念である現実の引渡しという言葉に限定して、それ以外は駄目とするよりは、阪口先生は解釈の余地をできるだけ狭めた方がいいのではないかというのがご指摘なのは重々承知の上なのですが、逆に、そこまで厳密に余地をなくすということが本当に結果的にいいのかというところは、私としては少し違う意見ということになります。 ○山本委員 もう時間がかなりたっているので、それほどは申しませんが、もし井上委員のようなことが問題があったら、それは何か現実の引渡しの方を解釈することで、現実の引渡しと実質的には同視できるみたいな解釈の余地は残るかもしれないというぐらいのところでいいのではないかなと思います。   この法律は、かなり引渡しについて、私の印象では厳密に書いている法律のような感じがして、幾つかのところには「(占有改定を除く)」というふうに明文で書いているんですよね。その中で単に引渡しって書くことが幾ら、一問一答というのは触れない方がいいのかもしれませんが、そこで書いたとしても、それが本当にどうなのかという気はしないでもありませんので、これ以上は申しませんけれども、よく御検討いただければということです。 ○大塚関係官 ありがとうございます。調査員の大塚です。   少し細かい点の確認をさせていただきたいんですけれども、井上委員は、通知前に現実の引渡しをしていれば、簡易の引渡しによってこの引渡しがなされるということをおっしゃっていましたが、笹井幹事の説明では、何か通知前に現実の引渡しをしていれば、簡易の引渡しも必要ないというようなことを前提とされていたように感じました。   お二人の御見解はそれでよろしいでしょうか。そして、その場合、いずれの立場を取るべきなのかということを検討しておく必要があるかと思います。 ○笹井幹事 その点は、今若干のそごが井上先生との間にあるなと思いながら聞いていたのですけれども、実は、この26ページのイは、「又は」の後ろに、いつ引渡しを受けたのかということは何も書いておりませんで、譲渡担保権の対抗要件として現実の引渡しを受けたときには、「又は」というのは、それによって満たされているのではないかというふうに思っておりまして、改めての簡易な引渡しまでは要らないのかなというふうに思っておりました。私の理解としては、そういうことになります。   もちろん、井上委員のような理解というのは、もしかするとより今までの議論に忠実なのかもしれず、もしかすると、むしろ実行行為の一環として引渡しを受けたことというのを「又は」の後ろで表現できれば、よりよいのかもしれません。例えば、これこれの時点以後にこれこれの引渡しを受けたことみたいに書ければ、より明確になるのかもしれませんけれども、その始点をどの時点に取るのかが問題になります。例えば、帰属清算の意思通知をしたときみたいなことが一つの時点としては考え得るわけですけれども、しかし、場合によってはその前に実行のための引渡しを受けているということもあり得るかもしれませんので、始点の選択の仕方というのが難しいこともありまして、今はむしろ何の時的な限界もなく、引渡しを受けたことということで書いております。そうだとすると、現実の引渡しを最初の段階で受けて、債務不履行とか何かが生ずる実行の段階に始まる前に、現実の引渡しを受けて実際に担保権者の手元に物があるということであれば、その後に改めて簡易の引渡しを受けなくても、イの「又は」以降の要件が満たされているということを、資料の中では表現しようとしていたつもりです。 ○道垣内部会長 ちょっと待って。今議論しているところ、私が根本的に勘違いしているのかもしれないんだけれども、第9の1の(1)のイ及び第9の2の(1)のイについて話をしているんですよね、多分。 ○笹井幹事 はい。 ○道垣内部会長 でも、それって、「当該帰属清算の通知をした動産譲渡担保権者が」とか、「処分清算譲渡をした譲渡担保権者が」と書いてあるんで、これ、最初に出たからといって、その修飾語は満たさなくないですか。   僕はこれ、時的に完全に後ろだと思っていたんだけれども。 ○井上委員 道垣内部会長がおっしゃった「当該帰属清算の通知をした」という点は、何人か譲渡担保権者がいるときに、この人、というだけの意味で、時的な前後関係を問わないということなのかなと思いましたので、私は、笹井さんの説明を聞いて、なるほどと思って聞いておりました。   最初の引渡しもここに含めて、そもそも簡易の引渡しすら要らないという方が、確かによいのかなと思い直したというのは、設定者が抵抗して簡易の引渡しをしようとしないときの手立てがなくなってしまうので、すなわち、引渡命令は自分の手元に目的物があるときには出ないと思うので、そうすると、確かに簡易の引渡しを改めて求めるのは、要らないことなのかなと思い直しました。   むしろ逆に、この「当該帰属清算の通知をした」という、今回履歴が付いているところの表現によって、その解釈がうまくいかなくなるのであれば、そこの表現を変えて、笹井さんの御説明が通るようにした方がいいと思いました。 ○道垣内部会長 僕は、当該状況においてどのような結論が妥当かということについて、異論を述べているわけではなくて、日本語としてはそうはならないでしょうというのが、私の思うところなんだけれども。   井上さんのように読むのは、とてもアクロバティックだと思いますよ。つまり、たくさんいたときに、処分清算譲渡をした人のことを指しているんですというのは、それは、授業ではとても説明できないです。した人だよ、した人が受け取ったらって書いてあるじゃないの、と思うけれども。   新たな問題が生じてしまったような気もするけれども、しかしそうなったときには、この引渡しは、逆に言うと現実の引渡しだけなんですよね。 ○笹井幹事 おっしゃるとおりです。ですので、簡易の引渡しは…… ○道垣内部会長 いわんや占有改定で引渡しを受けていることが、それは、設定時に引渡しを受けているから、引渡しを受けたことになるんだと言ってしまったら、もうこれはむちゃくちゃになってしまうので。   そうすると、少なくとも若干の修文は必要な気はするけれども。 ○大塚関係官 調査員の大塚です。   今のすごく細かい点ですが、設定時にも簡易の引渡しを受けて譲渡担保権を設定していた場合には、設定時にも現実に引き渡していないので、簡易の引渡しを含める必要は一応あるのかなとは思います。それが1点目。   2点目、先ほど多分笹井幹事の議論の中で出てきたとおり、指図による占有移転がこの引渡しに含められるとするためには、通知後にそれを行う必要があるということになります。そうすると、現実の引渡しによる場合と指図による占有移転による場合とで、いつ引渡しがある必要があるかというのが変わってくるという点も、法文上明確にすることが望ましいのかなと思いました。 ○道垣内部会長 2週間待てばいいではないかという阪口さんの御意見はあるものの、ほかの方がおっしゃっているところで、結局債務者、設定者の影響下から脱すればいいではないかというふうなことは、比較的一致しているのかもしれないんですけれども、阪口さんのことを駄目だと言っているわけではなくて。しかし、そうであっても、どう書くかは意外に難しいということかな。 ○沖野委員 内実がどこまで固まったのかということがはっきりしない中で恐縮ですけれども、先ほど山本和彦先生がおっしゃった、第三者の元にある場合も、実質的に問題になるのは現実の占有があったのと同視していいような場合であるとして、現実の占有の場合に限るということの方を解釈で導くということで、おおむねコンセンサスが得られるようであれば、例えば、当該帰属清算の通知をした動産譲渡担保権者が、譲渡担保動産を現に所持し、又は民法182条1項の引渡しを受けたこととか、そういうような表現はあり得るかと思います。アイデアということです。 ○道垣内部会長 現実の引渡しという言葉自体は、インパクトのすごく強い言葉ですので、そこの解釈で、この指図による占有移転は現実の引渡しと同じだというのは、ちょっと本当にそんなことが可能なのかなという感じはしないではないんですが、その前に、まず、引渡し概念のところで、言葉遣いを括弧内にしたり、いろいろ考えたり、あるいは解釈の余地があるようにしたりするということはともかく、指図による占有移転も含めて、それでも2週間待てばいいではないかと。   基本的には現実の引渡しだけにして、2週間待つことを基本としようという、阪口さんのお考えだと思うんですけれども、それについて、井上さん、日比野さんの方からは異論も出ているんですが、それについては、結局、多数派はどっちですかね。 ○大澤委員 元々2週間ルールがかなり限定的なものとして、最後のラストリゾート的なものとして扱われているというのもございますので、その意味で、いろいろなそういった細かい事情があるのは、私も今の御議論を聞いていてなるほどと思う部分ございましたけれども、2週間待てばいいのではの方に、すみません、どういうふうにこれが議事録に残るかよく分かりませんけれども、2週間ルールの方が本則であり、そちらによって動いていくべきではないかと考える方が、この限定的な実行のアローアンス概念のところではよろしいのではないかなと考えている次第です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○阿部幹事 今の問いに正面から答えるものではないのですけれども、本来、譲渡担保における実行の完了は、帰属清算の場合はその清算の完了をもって実行完了とされていたところ、今回、2週間が経過すれば、清算が完了していなくても実行が完了したものになるということになっているということがありますので、そこから更に、設定者が何もしなくても、設定の時点で引き渡していれば、帰属清算の通知で直ちに実行が完了してしまうという話になってしまっていいのか、やはり疑問があります。ですので、先ほどの、簡易の引渡しが要らないのかとかいう話に関しても、簡易の引渡しをしていれば、受戻しが可能な期間としての2週間を設定者が放棄しているといえると思うんですけれども、何もしていないにもかかわらず、設定時にしたことでもってその2週間を放棄したものとみなされるというのは、設定者の利益を守るための2週間をぞんざいに扱っていないだろうか、という印象を受けております。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。ただ、流出を認めるということを前提とした場合の質権とのバランスというのがあるかもしれませんけれどもね。ほかにいかがでしょうか。 ○笹井幹事 その後に占有改定するということでは、必ずしもここで言うところの引渡しに当たらないのではないかということについて、おおむね議論の一致があったのかなと思います。   今日御議論いただいたところを、最終的にうまく条文上表現できるのかという問題は、なお課題としてはあると思いますけれども、おおむね、細かいところでいうと、もしかすると実質についてなお一致しない部分というのはあるのかもしれませんが、大体、こういう場合にはいいのではないか、あるいはこういう場合では不十分ではないかというところは、ある程度共通認識としてあるのかなというふうに思いますので、それをうまく表現するように努めてはみたいと思います。   その上で、最終的には、もう解釈に委ねられる部分というのはあるのかもしれませんが、その点については、ちょっと御容赦いただければというふうに思っております。 ○道垣内部会長 その修文に当たって、ちょっといろいろ皆さんの御意見を伺うということもあろうかと思いますが、皆さんの御意見自体は非常に、それぞれ説得力のあるお話だと思いますので、何とか取り入れる形で修文を図っていきたいと思います。   そして、かつ、私の個人的な意見としては、「処分清算譲渡をした」というのは、どう考えても時的にそれが先行しているだろうという日本語の問題については、折れるつもりがないといいますか、許さないぞという感じがありますけれども、今の皆さんの御意見を無にするつもりはさらさらありませんので、ちょっと御協力を頂いて最終的な文章にしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。   ほかの点はございますでしょうか。 ○日比野委員 ほかに移っていいでしょうか。 ○道垣内部会長 はい。 ○日比野委員 では、すみません、発言させていただきます。   まず、38ページの第13の2で、相場のある財産には2週間のルールを適用しないという、このルールを御検討いただいたことについては、前回発言した者として、感謝申し上げたいと思います。   実際には、相場がないものであったとしても、実質的に担保権者がその支配をしている物に2週間ルールが適用される意味はあるのかという点は、議論としてはあるかと思うものの、今回追加いただいたこの第13の2で、実務上課題となり得るケースのかなりの部分がカバーできるのではないかと思います。どうもありがとうございました。   次が、35ページ、第10の6の超過分の金銭の組入れ義務についてです。私どもの立場としては、被担保債権額基準をずっと主張してきたところでして、今回目的財産価格基準を採用したということは、私どもの立場からすると残念なことではあるのですが、これは法務省の一つの判断ということかと思いますので、この点についてはやむを得ないものと考えています。   しかしながら、以下、組入率の点と利息が含まれないという、この2点について意見を述べさせていただきたいと思います。   (1)のアで、評価額に10分の9を乗じた額として、要するに、組入率が10%とされている点については、10%とする根拠がかなり乏しいのではないかと感じています。もう少し端的に言いますと、少し高すぎるのではないかということです。   この規律の制度趣旨は、部会資料にも書いていだいているとおり、集合財産の価値は、一般債権者の寄与によって維持増大している側面があるから、とのことですので、必ずしも同一の趣旨ではないのですが、担保権者が取得する価値の一部を一般債権者の弁済に充てるという部分では共通するものとして、いわゆる別除権協定による組入れという実務があると理解しています。   この別除権協定の組入れ率というのは、恐らく実務的には3%から5%程度と理解していまして、10%までは通常ないものと認識しています。また、別除権協定の場合には、換価に当たって管財人の方に負担をかけることが相応にありまして、その手間も考慮して、交渉事ではありますが、このような水準に落ち着いているのが実務だと理解しています。   これに対して、この規律による組入れ義務は、被担保債権の消滅から1年を経過しないうちに倒産手続が開始されることによって発生するものになりますので、それが10%というのは過大ではないかと考えている、ということです。   さらに続けてもう1点、利息が含まれないという点について述べさせていただきます。   最先順位の元本のみを確保するというご提案を頂いているわけですが、最先順位の元本について確保するという点については感謝申し上げたいと思います。しかし、その利息についてなのですが、融資をする側としては、当然ながら利息は全て利益ということではなく、与信管理費用や物件費、人件費なども含めた、業務を遂行するためのコストも全てここから回収することになります。当たり前ですが、100の元本を貸し付けて、その100の元本が全額回収できたとしても、それだけであればプラスマイナスゼロとなるだけで、金融機関としては赤字ということにならざるを得ません。そうすると、融資をする際には、元本だけではなく、利息も回収できることを前提として、個々の与信判断をしていくということになるのですが、このとき、集合動産、集合債権譲渡担保は、利息については実際の回収額によっては、実行後1年以内は組入れのために持っていかれる可能性がある制度だということになりますと、集合動産、集合債権譲渡担保は非常に使い方の難しい担保権だという印象、評価になり、各金融機関において、集合動産、集合債権譲渡担保を回収の手段として積極的に位置付けることが難しくなってしまうことを、非常に危惧しています。   せっかく長い時間をかけていただいて、この譲渡担保制度というのを使いやすいものにして利用を促進しようという形で議論をしてきたものと思いますので、その利用の促進に当たって、マイナス要因となってしまうようなことは極力避けたいと思いまして、そのような観点から、元本だけでなく利息についても確保する対象に置いていただきたいと考えている次第です。   すみません、少し長くなって恐縮ですが、利息を加えたら、現実的にどれだけの額になり、それによって、一般債権者の保護が本当に毀損するのかということについても、少し考えを述べたいと思います。  倒産手続が開始したときに、未収利息が現実的にどの程度残っているのかを考えると、まず、平時において延滞が発生して解消できないという場合、通常は、元本返済が困難な結果、元利金が延滞するということですので、金融機関としては、事業の状況を検証して、延滞が解消できる範囲での元金返済のリスケジュールをして、延滞の解消を図ることになります。したがって、このような交渉の結果、平時における未収利息は解消することになると思います。   このような交渉は、実際には延滞3か月ぐらいが一つのめどという感覚でして、このような交渉を経ても再建の見込みがない、すなわち、いわゆるリスケジュールをしても事業の改善が見込めないということになれば、残念ながら、期限の利益の喪失、あるいは期限の延長をせず延滞ということになりますが、そうなれば、その後に発生するのは遅延損害金ですので、利息は期限の利益の喪失または期限到来後は発生しないことになります。   また、もう一つあり得る展開として、債務者が準則型私的整理を利用することもあると思いますが、この場合は、元金の支払を停止して利息は支払うというのが、ほぼ確立した実務運用だと理解していますので、この場合も未収利息が積み上がるということは通常ありません。このようなプロセスを経ても未収利息が発生するのは、再建の合意ができなかったという場合だと思いますが、そのようなケースだと、これも残念なことでありますけれども、法的倒産手続に入ることが通常ですので、やはり未収利息が長期にわたって積み上がる状況には、通常ならないと理解しています。   そうすると、仮に元本100、利率3%としますと、未収利息が積み上がる期間は、3か月から長くて6か月くらい。そうすると、元本100に対して、多くて1.5くらいというのが、大まかなイメージと考えられます。   利息を含めるとした場合、その額はこれくらいであるというイメージを前提にして、利息も確保するという制度設計にすることによって、担保制度としての使いやすさが確保され、利用の促進を期待できると考えれば、制度設計全体としては、その方がメリットを得られるのではないかと考えている次第でます。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。ほかに御意見はございますでしょうか。 ○村上委員 ありがとうございます。今の第10の6と第11の2に関連しまして申し上げます。   まず、労働債権を始めとする一般債権者の保護のための方策につきまして、部会の先生方はもちろんですけれども、事務局の皆様におかれましても、丁寧に検討いただいたことには感謝申し上げたいと思います。   今回御提案いただいた組入額の算定基準として、目的財産の価値を採用いただいた点は、新たな仕組みの趣旨に沿うものと考えております。具体的に組入れ義務が生じるのは、最大でも目的財産の評価額の10%ということで、先ほど過大ではないかとありましたけれども、そこにとどまるというところでございまして、さらに元本割れのケースについては機能しないということもございます。そういったところでは、十分かと言われれば十分ではないだろうと考えています。ただ、不十分な点が残されているとはいいましても、今回、集合動産また集合債権譲渡担保の実行におきまして、労働債権などの一般債権者の保護のための新たな規律を設けていただくということ自体の意義は、小さくないと考えております。   先ほど日比野委員から御意見がありましたが、事業活動のためには資金は必要でありまして、そのための融資を受けるためには、やはり様々な担保権が活用される必要性は理解をしております。ただ、融資を受けた事業がうまくいかなくなった場合に、担保権者がほとんど総取りしてしまって、労働債権への弁済原資が足りなくなることについて、バランスを取っていただきたいということを、この間ずっと申し上げてきたところでございます。そうした観点からは、今回の御提案はバランスをとられたというものではないかと、私としては理解をしているところでございます。   その上で、倒産財団に組入れた後の問題といたしまして、租税債権や管財人報酬等との優先関係が問題になるというところで、労働債権の特別な先取特権の創設についても御提案いただきましたが、様々議論があって、今回たたき台の中には反映されなかったということは、私としては大変残念に考えております。ただ、この間も、複数の先生方から御指摘ありましたとおり、労働債権の優先性については、倒産法制において議論いただきたいと考えております。   労働債権には、一般先取特権があるとはいいましても、租税債権や担保債権などより優先される順位が低いということから、実際には確保できないという場合もございまして、この点については、この場でも申し上げてきたところでございます。破産法改正から約20年を経過しているということも踏まえまして、法務省におかれても、今後倒産法制の見直しを行う場を設けていただくことを、改めてお願いしたいと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○内野(嘉)委員 内野でございます。地方銀行の立場から、少し意見をさせていただければと思います。   先ほど日比野さんの方からお話もあったとおりですが、これまで債権額を基準とする案を、金融界としては、金融の実務の観点から支持をしていたのですが、今回のたたき台では物の価値基準ということになったということについて残念であるというところでございます。ただ、法務省様におかれましては、いろいろと御検討された結果ということであると思いますので、最終的には、このたたき台で着地するということで、やむを得ないと思います。あともう一つ、最先順位の担保権者に対する配慮がされたということについては、歓迎するところでございます。   さらに2点ほどございまして、まず、組入率についての10%というところについては、高いのではないかと考えるところであります。先ほど日比野さんからもあったとおり、別除権協定では、これはいろいろな意見があるということは承知しておるのですが、この10%という数字ではない、もう少し低い水準というのが一般的ではないのかというところでございます。   それからもう1点は、今回元本のみということなのですが、これも繰り返しになりますが、融資をする前提として、利息の回収も含めて融資の回収であるということが、銀行実務において一般的であるということからしますと、利息も含めた保護ということが、本来あるべき姿ではないかと考えますので、元本だけではない、利息の部分も保護されるべきではないかと考えます。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。ほかに御意見はございますでしょうか。 ○池邉関係官 厚生労働省の池邉でございます。本日、幹事の尾田が欠席しておりますので、その代理として、部会資料49の第10の6、それから第12の2について発言をいたします。   これまで繰り返し述べているところではございますけれども、労働債権は労働者、その家族の生活の糧でありまして、その保護は大変重要な課題と考えております。このような観点から、厚生労働省といたしましては、労働債権者を含む一般債権者の保護に実効ある仕組みを実現することが望ましいと考えておりましたところ、今回の事務局からの提案は、集合財産譲渡担保権に限るものではございますけれども、譲渡担保権者の権利を制限することにより、倒産時において労働債権者を含む一般債権者の保護を図ろうとするものでありまして、労働債権の保護にとって有益なものと受け止めております。   厚生労働省といたしましては、引き続き労働基準監督官による賃金不払の是正指導ですとか、未払賃金立替払制度の円滑な運営により、今回の一般債権者保護の仕組みの制度化とあいまって、労働者の保護に万全を期してまいりたいと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。ほかに御意見はございますでしょうか。 ○阪口幹事 この第10の6と第12の2について、複数のことを申し上げたいと思います。   目的財産基準にするということは、もう前提に議論させてもらうということにしますけれども、まず、目的財産基準にした場合には、この最先という概念が、元本保証の関係で重要になってくると思います。今までも議論が何度かあったんで、その確認も含めますけれども、まずそこでいう最先というのは、1人の債権者が複数の担保権を持っているときに、担保権単位で、つまり1個目という意味でいいかどうかというのを、まず確認したい。つまり、人単位ではなくて、担保権単位というかな、この確認です。また、同順位の1番担保権者が複数いるときには、それは合算になるのかということの確認です。   さらに、1番担保権者の被担保債権の残高が、ほかの担保権の実行等の中でぐっと減ってきたというときには、どう考えるのかということの確認ですけれども、まず、利息損害金を含めて完済されたら、2番の人が上がって最先ということになるのか、また、実務的には、実行の局面では、元本に先に充当することが多いですから、金融機関は。元本充当して、元本はゼロだけれども利息損害金は残っているというときには、そのときは、ここの元本はゼロと見るのか。このように、幾つかケースが考えられると思うんですが、最先という概念をどういうふうにお考えなのかを、教えていただきたい。   それから、6の(5)、担保請求、相当の担保を請求することができるというところについて、以前、第45回会議で、破産開始決定後の破産管財人は請求できないんですかと質問させていだいて、そのときには笹井さんの方から、元々考えていませんでしたけれども、ちょっと考えてみますというお話がありました。その後出てきた部会資料47は、担保請求の議論をしていなかったもんだから、最終的には、今の部会資料49が私の質問に対する回答になるんですけれども、この部会資料49では、結局管財人は書かれていない。設定者が開始決定前までできることが、開始した途端に管財人がもう何も言えなくなるというのは、そういう制度はあり得なくはないとは思うけれども、何でかなというところをお教えいただきたい。   それから次に、次元が違う話になって申し訳ないんですけれども、第12の2の説明で、100分の90の計算の仕方が載っていて、これは、累積型を念頭に置いている計算なんです。しかし、これだと、実はほとんどのケースで組入れが発生しないことになってしまう。実務的に組入れがおよそあり得ないとまで言ってもいいぐらいになってしまうと思うんです。   というのは、破産なり倒産なりのケースで、債務不履行から開始決定までの間には、特に破産が一番典型的ですけれども、かなり期間があることが多い。ここの例は、1年前に300万の債権があって、1年間の間に500万しか発生しない、月商40万の会社で、最初は300万ということは、サイトが8か月近くということで、どんな会社やというふうになるんですけれども、現実には、期間中の発生金額はもっと大きいわけです。そうすると、100分の90を計算したときに、担保権者がそこまで回収するということは、まずほとんど考えられないわけです。そうすると、せっかく目的財産基準で制度を作った意味がなくなってしまう。目的財産基準にすること自身の是非はあるかもしれませんけれども、目的財産基準にしたというのは、少しでも組入れの機会を発生させるためにこの制度を取ったんだと思うので、そうだとしたら、第12の2の説明に書かれている計算式は、全く実態に合わない、むしろ、こう書かれたら制度が死んでしまいます。実務的な集合債権譲渡というのはほとんどスクリーンショット型で、特に倒産局面で問題になるのはそうです。そうすると、そのベースとなるのは、スクリーンショットで100分の90ではないんですかという疑問です。   取りあえず、この第10の6と第12の2に関して、私の疑問点は以上です。 ○道垣内部会長 阪口さんの方から御質問にわたる部分がたくさんあったと思いますが、事務局からいかがでしょうか。 ○笹井幹事 いろいろ御意見を頂きましたので、それぞれについて発言したいと思います。   まず、元々担保制度を作るときに、一般債権との関係をどういうふうに調整するのかは非常に難しい問題であり、これまでも様々な法制度、法改正に当たって、いろいろな調整が試みられてきたところだと思います。また、この部会における議論におきましても、一方で担保制度を整備していくと同時に、一般債権者との関係をどういうふうにバランスを取っていくのかということについては、しっかり検討しないといけないということが、度々確認されてきたかと思います。それにつきまして、我々としても、できる限りの知恵をつぎ込んで、回数も割き、先生方にもお時間を頂いて議論をしてきたところです。   もちろん、様々な御不満がそれぞれの立場からあるということは十分に理解をしておりまして、一般債権者のサイドから見れば、その割合についても、また最先順位の元本保証についても、その結果として実効性が低くなるのではないかという考え方、御不満があることと思います。逆に、債権者サイドから見れば、やはり10%が大きすぎるのではないか、また利息も下回らないように工夫をすべきではないかという、そういう御意見があることは、それぞれのお立場からすれば、当然に出てくる反応だろうということは十分に理解をしているつもりです。   10%の根拠が薄弱ではないかということについては、確かに論理的に10分の9というのがなぜ出てくるのかということを説明するというのは非常に難しいということは、私たちも認識しております。   その上で、確かに、これも御指摘ありましたように、いろいろな管財人が換価に協力した場合における組入れ義務の制度というのが、シチュエーションとして対比できるほど類似しているのかどうかというのは疑問もありますけれども、別除権者が把握している換価価値の中から財団に組み入れるという1点に限ってみれば類似しているという部分は多分あるのだろうと思います。その点で見たときに、この組入れの割合については、文献によっては5%から10%程度というふうな記載もありまして、そういったところも参照いたしました。もっともこの文献によっても、一番高いところを取っているわけで、管財人が協力をしたという結果として換価価値も上がっているという中ですら、そういう割合であるにも関わらず、今回10%にしているというのは、非常に高すぎるのではないかという御指摘は、理由があるものであると思います。   ただ、ここであえて10%にしましたのは、一つには、一般債権者の寄与によって担保価値が維持されているという、比較対象としての違いというのがありますが、それに加えて、最先順位の者の元本については優先権を制約しないこととしましたので、組入割合と元本保証とのバランス上、通常言われている組入割合よりは、少し高めのものを取ったということがございます。   もう1点、その利息について今、日比野委員、また内野委員の方からもございましたように、利息というのは、必ずしも別に銀行が儲けているわけではないのだと、利息は金融業を行っていく上でのコストですとか、人件費等も含めてコストとして徴収しているわけですので、そこはやはり保証の対象に入れるべきではないかというのは、この点についても、御指摘は十分に理解できるものであるというふうに考えております。   ただ、様々な利害調整の中で、どこまでを提案していくのかを考えたときに、この1点だけが理由になっているというわけではありませんけれども、利息というのは、債権者側から見れば、基本的にはそれぞれの期間ごとに弁済期が到来するものでもあるということもあり、担保権の実行が行われるまでに徴収しておくということも一応は可能な場面、つまり、債権者サイドにおいて、そこの優先弁済権が制約されないような手立てを打っていくということも、一つには可能だということも考えて、現時点においてはこういう提案をしているというところです。   もちろん、申し上げましたように、論理的にこの10分の9、あるいは利息まで保証するのか、あるいは元本にとどめるのかというところは、制度設計に当たっても、あるいはこの制度をどういう趣旨から説明していくかということにもよってくるのかもしれませんけれども、いずれにしても、制度趣旨をどう理解するにしても、制度設計に当たってどのようにバランスを取るのかということは、様々な選択肢をいろいろなファクターの中で選択していくということだろうというふうに思いますので、もちろんこの提案が唯一、ただ一つの正解であるというふうに考えているわけではありません。   ただ、この論点について、ずっと長い間議論がそれぞれの立場から示され、別除権者、担保権者と一般債権者との間でどのようにバランスを取るのかということについて、長く議論が尽くされてきたところかと思います。もちろん、長く議論を続けていけばみんなが合意するということはなくて、どこかで一定の一つの具体的な御提案を示して、それを踏まえて、御承諾いただけるかどうかということを、どこかで決めざるを得ないのかなというふうに思っております。   私どもとしましては、ここまで回数を重ねており、また、法制審でのほかの部分の進捗状況等も考えると、そろそろ結論を出すべきタイミングになっているところかと思います。それぞれ御不満あることは重々承知はしているところではありますけれども、成案を得るという観点から、私どもとしては、ぎりぎりの提案として、今日、この部会資料49においてお示ししているところですので、立場は十分分かるところではあるのですけれども、成案を得るという観点に向けて御理解を頂ければというふうに思っております。   以上が、まず最初のこの割合と利息をどうするかということ、また全体の前提としての物の価値基準について、事務当局として考えているところを申し上げました。   続きまして、村上委員からは、倒産手続をどういうふうにするのか、倒産手続について検討する場も設けてほしいという御指摘がございました。私どもは担保法制部会の事務当局として今ここにいるということですので、私に与えられたミッション以外の部分について何を申し上げられるのかといいますと、そこにはおのずから限界があるということは御理解いただければというふうに思っております。   ただ、担保法制部会において、この組入請求権について、一定の債権者に対して、先取特権などの形で優先権を与えるのかどうかという議論をしていく中で、部会の中では、ここでの優先権を与えるということではなくて、むしろ倒産手続における各債権の優先劣後関係として正面から議論すべきであるという御意見が、複数の委員、幹事から述べられたというふうに認識をしております。そのこと自体は、もちろん私どもとして重く受け止める必要があるというふうに思っております。   倒産法制全体を見たときに、労働債権者を含めた各債権者にどういうふうに、適正かつ公平な弁済を実現していくのか、その在り方を検討するに当たりましては、現行法の運用の中でどういう問題点が生じているのか、そういったところをしっかり踏まえていくことが必要になってくるのだろうと思います。それに当たりましては、この部会で、先ほど申し上げたような問題意識も示されておりますので、そういった問題意識も踏まえて、立法事実といいますか、問題点を把握していくことが必要になってくるのだろうというふうに思っております。   今後どういうアプローチができるのかというところは、現時点で今、いついつまでにこういうことをするということをお約束できる状況ではもちろんありませんけれども、今後どういうアプローチが可能であるのかということについては、引き続き検討していきたいというふうに思っております。   それから、阪口幹事からは、様々な技術的な部分を含めて御質問を頂きました。   まず、最先順位ということについてですけれども、御指摘のように、別に担保権者単位で考えているわけではございませんで、これは担保権単位で考えていくことになると考えております。ですので、Aさんが第1順位の譲渡担保権を持っている。さらに、同じAさんがまた別の被担保債権ということになるのだろうというふうに思いますけれども、2番目の担保権を持っているというときには、これは1番の方だけが最先順位の担保権と扱われるということになります。逆に、複数の担保権が同順位で1番になっているということがあり得るわけですけれども、この点については、両方が1番であるということになるのだというふうに理解をしております。ただ、その分割り付けられるということではあります。   それから、次の御質問として、弁済等によって被担保債権額が減っていった場合にどうなるのかという御質問がございました。これは、実行をしたことによって回収した部分の額がどうであるかを6(1)の要件にしおりますので、実行時にどれだけのものがあったのかということが基準になっています。ですので、当初1番だった譲渡担保権者の被担保債権が全部なくなって、2番だった担保権者が最先順位になっているというときには、それは実行時の1番が誰かを考えていくことになります。その譲渡担保権者が、ほかの担保権を実行したり弁済を受けたりした場合には、法定充当によれば、費用、遅延損害金、利息、という順番で消滅していくことになりますけれども、実務的には元本に充当していく場合もあると聞いております。その場合は、実行になる前に元本が全部消滅して利息と遅延損害金しか残っていなかったので、それのみを被担保債権にして実行したというときには、これは、飽くまでも1番の人が持っていた元本が幾らかということが問題になりますので、元本保証は与えられないと理解しております。したがいまして、その10分の9の範囲で利息遅延損害金に対する弁済がされるということになると思います。   それから、その次が、管財人の担保請求だったでしょうか。第45回会議において、阪口幹事から同様の御質問を受けておりました。そのときは、なぜこの担保請求を設けたかというと、設定者は、倒産手続が開始する前の段階では組入れを請求できないからであり、倒産手続が開始されたときは、管財人は担保請求をするのではなくて、組入れを請求すればいいでしょうと。なので、担保請求については余り想定できませんというお答えを差し上げたかと思います。   そのこと自体は変わっていないのですけれども、ただ、何らかの事情があって、組入請求を直ちにはすることができないというとき、例えば、組入額をめぐって非常に争いがあるので、直ちに金銭を支払ってくださいという請求ができない、債務名義をもらうまでに、一定の期間が生ずるというときに、担保請求ができないのかと言われますと、設定者に与えられた担保請求権の管理処分権は管財人に移っているわけですので、結果的には管財人の方で担保請求することができるということになるのではないかと思います。   長くなりましたけれども、今までの御発言について、差し当たり私の方から以上です。 ○道垣内部会長 12の2のところの計算について。 ○笹井幹事 ああ、そうか。そうでした、失礼しました。   私が申し上げた事案が非現実的ではないかというのは、別に現実的な例を挙げようとしたわけではなくて、計算式を示そうとしたということですので、現実的でないというのはおっしゃるとおりかもしれません。そういう意味では、1年以上経過しているみたいなこと自体が非現実的であるということは重々認識をしておりまして、おっしゃるように、こういう事案で組入れが生じないのではないかと言われると、それはそのとおりかもしれません。ただ、それは、要するに、組入れをしなくても、設定者が自分で回収して、それを自分の財産の中に入れているから、元々担保権者が確保していた担保価値の一部分が、組入れという制度を使わなくても一般財団の方に入っている、その結果として組入れが生じないということになっているだけです。この制度が実現しようとしたことは、もう既に実現しているということなのだろうと思います。   というのが、まず1点なんですけれども、多くの場合、スクリーンショット型なのでというのも、そのこと自体はもちろん実質として理解をしておりますが、ただ、一方で、今議論してきた中では、集合債権譲渡担保については、基本的には、これは現行法でもある問題ですが、現それぞれの将来債権を含めた一本一本の債権が担保権の対象になっているのだということを基本的にはベースに置いて、そこは現行法における債権譲渡担保についての理解を前提にして、制度を設計してきたのだと思います。   もちろんその中で、合意の中で取引権限を与えるとかということによって、実質的にはスクリーンショット型を実現していくということは十分あり得ることですし、現実に、現行法においては、最高裁判例の理解を前提とすれば、個々の債権が、言わば累積的に担保目的の財産になっているのだけれども、しかし、現実の経済的な実施としては、このスクリーンショット型といいますか、ある一時点におけるその債権残高が、実質的には担保権者によって担保価値として把握されているということが実現されているということが、現在においても行われているわけです。同じように法的な構成としては、累積的な理解をしながら、現実には取立権限が付与されている場合に、その取り立てられた金銭をどうするかを規定することによって、スクリーンショット型の担保の取り方も可能にしているというのが、今の全体的な立場だと思います。   そうしたときに、ここでだけスクリーンショットを前提に規定を設けるのかといいますと、やはり理屈としては個々の債権が対象になっているという理解を前提に、やはり制度としては設計していくほかはないのかなというふうに思っておりまして、第12の2というのは、そういう理解の上で作られているというふうに思っています。   そのことと、今申し上げたように、設定者が取り立てているという部分があるのであれば、それは結果的には設定者が取り立てるということによって、組入れというルートを使わなくても、担保権が及んでいた債権の経済的な価値というのが設定者の財産の中に入っているので、そこで、その結果として、10分の9を越えないから組入れが生じないのではないかという御指摘だとすると、それは、組入れが元々やろうとしていた、担保価値の一部分は設定者の一般財産の中に入るという目的は、繰り返しになりますけれども、組入れというルートではなくて、別のルートによっても既に実現できているので、あえてそこで組入れが生じないではないかという批判は当たらないのではないかというふうには感じましたというのが一つ。   さらに言いますと、ここは計算の考え方を明らかにするために、やや不自然に、債務不履行が起こった後もずっと設定者が取り立てているという事例を書いていますので、確かにこういう事例になれば、組入れが生じないというのは御指摘のとおりだと思います。ただ、そこは実務的な運用の在り方の話かもしれませんけれども、債務不履行が起こって、担保権実行をしないといけない段階になれば、速やかな担保権実行が行われるということも期待することができるのではないかというふうに思っていまして、今のこの事例というのは、債務不履行があったのに、6か月でしたかね、設定者に取立てを委ねた結果として、担保価値の相当部分が設定者の一般財産の方に入っているという事案なので、それを前提にすれば、確かに10分の9を上回るということはないのかもしれませんけれども、現実に債務不履行があって、実行に直ちに着手し、かつ、設定者の取立権限をまず奪っておくということがされるのであれば、それは対象の中から一定の割合を超えて譲渡担保権者が回収していくというのは、それは十分起こり得ることではないかというふうに思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。ほかにございますでしょうか。 ○阪口幹事 今の笹井さんの御説明に関して、まず、集合債権に関して、設定者の方に入っているではないかというのは、そこはちょっと、まずそこの理解から多分違うんだと思うんです。つまり、集合債権譲渡担保のほとんどの事例というのは、貸している金額というのは、別に累積的なものに見合う金額を貸しているわけではなくて、最終的には実行時の残額を見ながら貸しているということにすぎませんので、仮に期間中発生した分を全部担保権者が取るとしたら、明らかに取りすぎになりますので、その分が入っているからいいではないかという問題ではないと思います。普通の集合債権譲渡担保の実態としてですね。形式的には、担保の対象は累積的だけれども、別にそんな累積的な回収をできるはずがないのに、その点を前提におっしゃったように思うので、ちょっとそこは違うのではないかというのが一つ。   次に、形式論として、債権譲渡担保というのは累積的なものだと言われたら、そのこと自体は分かるのですが、倒産では、当然固定の規律を入れるわけですよね。この組入れが問題になるのは倒産局面なので、累積的に考えなければいけないかというと、これはまた別ではないかと思います。   それから、三つ目として、説例が極端だということはもちろんそのとおりなんですけれども、そうでなくても、債務不履行後の期間中に発生した分を入れて100分の90を掛けるということとすると、普通の会社だったら組入れは発生しなくなります。一般的に、売掛金というのは大体二、三か月のサイトで回収しているのが多いので、ここでいう300万というのは、大体月商100万の会社で3か月分ということです。ところが、2か月、3か月債務不履行から期間が空いてしまうと、それだけでもう、100分の90のベースが5、600万円と大きくなりすぎて、その100分の90以上を回収することはあり得ないから、もう組入れが発生しなくなる。なので、先ほどの御説明も、ここの例が極端であることはそのとおりなんだけれども、では、実際起きる例を考えても、実務的に組入れが発生しなくなる。債務不履行、かつ、直ちに回収、直ちに破産なんていう例は殆どなく、一定期間が空きます。だから、せっかくここで目的財産基準説を採るのであれば、累積的な計算は違うのではないのかというのが、私の意見です。   あと別の話で、先ほど10%の話が出ましたた。これは大澤先生から補足いただいた方がいいと思いますけれども、組入れが3%、5%、10%というのは、不動産だけの話で、集合動産担保の組入れだったら2、30%が普通だと思います。50%って強気の管財人もいましたけれども、それはさすがに極端だとしても、2、30%を財団に組み入れてもらうのが実務的に普通でしょう。その2、30%との率との比較で、管財人が汗をかいていないのだから10%だと言われたら、そんなものだろうという感覚です。3%、5%というのは飽くまで不動産に限定した話で、動産は全く違いますということだけ、補足させてもらいます。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。ほかに。 ○大澤委員 こちらの組入れ義務そのものについては、今皆様からの御意見いろいろございました結果なので、私からこれ以上というのはございません。ただ、先ほどいろいろなところで出てきましたので、一応申し上げますと、3%から5%というのは、今、阪口先生がおっしゃられましたとおり、不動産に関するところでのほぼ定型的な財団組入金を示しております。動産については、管財人が売らないと、なかなか金融債権者では売れないというのがあるので、その財団組入率は相対的に上がっていきまして、それはもう、財団の売り方の難度に応じて10%から3割まで、いろいろなバージョンがあるということは、実務の慣行としてございますということだけは、申し上げておきます。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。ほかに。 ○井上委員 ありがとうございます。   先ほどの御説明に関わるところですけれども、今の35ページの最も優先する順位の担保権について、どのように評価するのかについて、ほかの担保権によって回収している場合や、ほかの弁済行為によって回収している場合は、回収後の残っている元本額をベースに、実行時の第1順位で判断するという御説明だったと思うんですけれども、実際上はそれほど間を空けて順次担保を実行することは余りないので、同じ債務者から不動産抵当権の設定を受け、集合動産譲渡担保を取り、集合債権譲渡担保を取り、ほかにも幾つか担保を取っていたところ、同じようなタイミングで実行をかけたときに、集合でない担保から回収したお金と、集合動産譲渡担保の処分代金から回収したお金を、どのようにどこに充当するのかは、これは、例えば、元々の契約上の合意があれば、それに従って決められるということが、一応議論の前提になっているということなのかをお尋ねしたいと思います。そうではなくて、ここは例えば按分のような形で考えることになるのかという問題意識です。   あともう1点、現在の債権譲渡担保について、阪口幹事がおっしゃったような実態があるというのは、そのとおりかなと思いますが、債権譲渡担保の法的性格は、集合物論とは違う形で展開されてきたことを前提に、先ほどの笹井さんの御説明があったと思うんですけれども、もしそうだとすると、少なくとも今回、設定者が倒産手続に入ったときにも、なお累積的に効力が及ぶような特段の合意がある場合、与信額も多くなることが想定されるわけですし、一般的に事業の継続に必要な金額が払い出される前提で、その上積み部分を継続的に担保権者への弁済に充当していくということなので、事例自体の具体的な数字が現実的かどうかはともかく、考え方としては、この38ページの考え方に沿ったものに思われます。ですから、仮に阪口幹事がおっしゃったような考え方、すなわち、集合債権についても集合動産と同様にスクリーンショット型の捉え方をするとしても、累積的に当初から仕組んでいる取引に関しては、ここの御説明と同じように考えてよいと思ったんですが、そこも確認していただきたいと思います。 ○笹井幹事 最初の御質問が、ベースとしては、先ほど申し上げたように、その実行時点で被担保債権がいくら残っているかということが出発点になり、かつ、私的実行ですので、これも複雑なケースを考えていけば、例えば、集合動産譲渡の場合に、少しずつ一部実行していくかとか、集合債権がすごく少額の多数の債権であった場合に、着手してから回収するのに時間が掛かり、その間に、ほかの担保権から回収したとか、そういう複雑な事案をどうしていくのかというのは、かなり細かい解釈論に委ねざるを得ないのかなと思っていました。   ただ、冒頭申し上げましたように、基本は実行時にどういう債権があるのかということだと思います。その中で、回収したものをどういうふうに分けて充当していくのかというのは、充当の関係は法定充当になり、合意充当とかの定めが元々契約上されている場合もあるかもしれませんけれども、それに従ってやっていくことになるのですが、実行に着手した時点の元本額があり、それが別の担保権の実行によって一部回収された場合に、着手時点の元本額を想定するのか、それともほかの担保権から回収した部分については控除するのかという解釈論になっていくのではないかと思われ、その点については、さすがにほかの担保権から回収したものについては、元本額から控除していくというような考え方に立つのが合理的なのではないかと考えていたところです。   もしかすると、もっと複雑なケースを想定しようと思えばできるような感じもいたしまして、全ての事案について明確に申し上げられるだけのものを持っておりませんけれども、今御指摘のあった部分について、私が現時点でお答えできるとすると、そういうことになろうかと思います。   次に、第12の2については、集合債権譲渡担保のうちの倒産手続開始後も累積的に及んでいくという合意がされた場合についてどういう処理をするのかというのは、確かに検討する必要があると思いました。   累積的なものも、倒産手続が開始されるまでは、基本的にはそうではないものと同じように考えてよいのではないかと思います。むしろ、倒産手続開始後の部分については、ここはもう既に一般債権者保護の手立てというものが十分図られているというか、事業を継続するために必要な費用に当たる部分を償還しなければならないという制度になっていますので、そこについて更に組入れが必要になるのかどうかということが問題になると思います。少なくとも、この倒産手続開始前の部分からの回収部分については、今申し上げた第12の2の考え方が妥当するのではないかというふうに思っています。   阪口幹事から更に御指摘を頂きましたけれども、ここはもう阪口幹事も御承知のとおりで、それを前提にして御議論されていたと思いますが、もちろん累積的に取っているといいましても、取ったもの全ての10分の9を問題にしようとしているわけではなくて、債務不履行があった後の問題です。債務不履行があって、担保権者としては、そこから直接取立てができる状態になったものの10分の9を超えて取り立てているかどうかということが問題になっているので、譲渡担保権者が実行フェーズに入っていけば、取立権限を設定者にそのまま残しておいてあるということは、あんまりないのではないかと思ったのですけれども、そこはそうでもないでしょうか。   かつ、その倒産手続によって固定化するまでが終期になっていて、集合債権譲渡担保が現にもう実行フェーズに入ったということになりますと、いろいろな売掛債権であるとか、そういったものの取立てが始まるということになると、かなり近接した時期に倒産手続が開始されることになるので、そういう意味では、ある意味、集合債権譲渡担保について債務不履行があり、実行が開始されたということになると、そこからなお事業がずっと継続して、ずっと債権が生み出し続けられるということの方が、むしろ乏しいのではないかというふうに思っていたのですが、もしその辺の認識に誤りがありましたら、また御発言いただければと思います。 ○阪口幹事 阪口です。   債務不履行の発生から、金融機関、担保権者が実際に実行に着手するまでの間に一定期間あります。先ほど申し上げた普通の会社であれば、売掛金の回収期間のサイトは2、3か月なので、そこで債務不履行後2、3か月期間が空いたら、ここでの債権額は倍になってしまいます。そうしたら、その100分の90は確実に実際の回収可能額を超えてしまう。売掛金の回収サイトが非常に長い債務者で、かつ、債務不履行から倒産に至るまでが短かったというケースであれば、この計算でも問題ないですけれども、それは極めてレアケースで、債務不履行後2か月経過しただけで、多分100分の90にはならないですよね。   債務不履行から実行までの時間は、少なくとも1か月やそこらは十分かかりますし、ちょっと実務に合わないというのが、正直な感覚ですけれども。 ○笹井幹事 場合によっては、その債権は取り立てて、設定者の財産になるわけですよね。設定者が取り立てていくということなら。 ○阪口幹事 その期間中はね。ただ、そこを着眼するのではなくて、貸している金額というか、本来スクリーンショットで計算した300万から前後プラマイ少しというところがベースなのに、その期間中、抽象的に取れたではないかということ自身を問題にすることが、何か全然違うと思います。そこはもう神学論争かも分かりませんけれども。 ○笹井幹事 はい。ただ、私の理解するところでは、やはりそれを全部取っちゃうと、その担保価値として把握されていたものを全部債権者が、もちろん被担保債権の額が上限にはなるわけですけれども、それを担保権者が持っていってしまうということがやはり問題だから、設定者の一般債権者のために一定の財産を残しておこうというのが、元々の発想だったことからすると、事業が継続され、そこで生み出された債権が債務不履行後も設定者によって回収されているのであれば、もちろん実務的な交渉とかがあったりして、直ちには着手できないのかもしれませんけれども、しかし、やろうと思えば、法律上は自分が直接取り立てられる、その債権が設定者によって取り立てられて、設定者の懐に入っているというケースで、更に組入れをするのはどうかというふうには思います。 ○阪口幹事 阪口です。   元々の制度の趣旨が、労働債権者その他の寄与によって形成された集合財産があって、そのうちの一定の部分は担保権者が取得すべきではないという考え方だとすれば、債務不履行後の期間を含めた10分の1ではなく、最後に残った部分の10分の1を残さなければいけない、と思うんです。だって、そこの部分にも、労働者なら労働者の寄与があるはずですから。そう計算しないと、元々の制度趣旨に合わないと思います。 ○笹井幹事 最後に残ったというのは。 ○阪口幹事 スクリーンショットで計算したものという意味です。100分の90を掛けるベースを、債務不履行時にあった既存債権額プラス期間中発生額にして計算すると、労働者等の寄与で10分の1はあるではないかという点がうまく反映しないということです。数字で言わないといけないのかもしれません。すみません。 ○笹井幹事 恐らくスクリーンショットにしようとしても、一方で担保権者は実際に継続的に、合間合間に発生したものから取っていっているところがあるわけですよね。ですので、それはやはり分母の中には入れておかないといけないはずだと思うのです。   そうするとやはり、実務的にこの出発点というか始点を債務不履行の時点にするというのが不適当であるとかということであれば、もちろん分かるのですけれども、例えば、倒産手続開始時点、あるいは申立ての時点で残高が幾らだったかをあんまり問題にしてもしようがないというか、その前に既に取っている部分もあるので、そこは多分、担保財産の総額の中には入れておかないといけないはずで、そうすると、倒産手続の開始申立て時点で残っているものに加えて、それまで回収してきた部分を足し合わせていかないといけませんから、どこまで遡るかという問題になってくる。ここの考え方は、結局法律上は実行に着手することができる時点というのは債務不履行時点なので、そこまで遡りましょうというものだといえます。それを全体の担保価値として把握した上で、しかし、それ全体について、それはいろいろな労働者とか一般債権者が寄与しているので、その全体の10分の1を財団の中に残しておきますかということを考えるときに、既に設定者がその前に自分で回収している分についてはもう入っているので、それも全部含めた上で、それが10分の9を超えているかどうかで判断することになるのではないでしょうかというのが、ここでの考え方です。 ○阪口幹事 例えば、始期を最初の実行時にすることは検討可能なんですか。 ○笹井幹事 理屈をどう付けるかという問題はもちろんあるのかもしれませんけれども、計算としてはあり得るのだろうというふうには思います。 ○阪口幹事 まだそれの方が実態に合います。一般的には、実行するときには一斉に実行しますから、最初の実行時であれば、まだ理解はできます。 ○笹井幹事 そこは、最終的に言うと、法律に書けるかどうかという問題はありますので、そこで言うところの実行の対象というのが何だったのかということが検討されることになるのかなというふうには思います。 ○道垣内部会長 ちょっとそれは、労働者がどういうふうに、労働者というか人々がどういうふうに貢献しているのかというのをどの時点から評価するのか、それ以上のものを設定者が取っていったときにどういうふうに考えるのかとか、いろいろな問題が絡んでいて、何か一方が正しいというわけでもないような気もするのですけれども。ほかに御意見はございますでしょうか。   今の集合債権譲渡担保のときの計算方法につきましては、なおちょっと事務局の方で、阪口さんやいろいろな方と詰めて考えていただくというふうにしたいと思います。なるべく公平になるように明確にするということが必要でしょうから、そういうふうにしていただければと思います。   その上で、日比野さん、内野さんの方から、利息が取れない、基本的に元本という形になっているというのが多少、多少といいますか困るという御意見を頂いたわけでございまして、これも、誠にごもっともな点もあろうかというふうに存じます。しかし、どこで折り合いを付けるのかという問題でございますので、そういう微妙な折り合いに現在はなっているというふうに思うんですけれども、なお事務当局におきまして若干の調整を、御意見を伺いながらしていっていただければというふうに思いますが、大体の方向としてはこういう方向でお認めいただければ、大変有り難く存じる次第なんですが。 ○井上委員 集合動産の評価のところで一言、よろしいですか。ありがとうございます。   今、ずっと集合債権の評価の対象となる範囲についての議論だったんですが、そうではなくて、35ページの集合動産の評価額に10分の9を乗じたというところで、そこでいう評価額として、ここで想定しているのは、事業を継続しながら回収されていく状況での評価額ということだと理解しているので、例えば集合動産譲渡担保を実行して固定化した個別動産を、ばらばらに売ったときの評価額というよりは、その事業、商流の中で販売することによって得られるであろう評価額をイメージすればよいと思ったのですが、そこは何か考え方が整理されているんでしょうか。 ○笹井幹事 集合動産の方ですよね。そうですね、集合動産については、これはもう、この組入れが問題になったときは、既にもう実行が終わっている段階ですので、そういう意味では、遡ってそれを評価していくということになるのだと思います。   基本的には、集合動産譲渡担保の実行の場面ですので、恐らく帰属清算なり処分清算なりがされている。その中で、処分清算だったら処分清算で、まとめて一括して売るというような実行がされるのではないかというふうに想定をしておりました。基本的にはその処分価格が、これも今までいろいろ議論があったところですけれども、評価額といっても、実際には普通に取引をして売った場合には、その売れた金額が評価額になるのだろうというふうに思いますので、その額がここでいうところの評価額になるというふうに思っておりました。 ○井上委員 ありがとうございます。そうすると、廉価譲渡したような場合も、廉価譲渡額ではなく評価額になるということと同じ意味合いで、在庫であれば、できる限りの販売努力をして、それまでの商流にできるだけ乗せる形で販売した価格で考えればよくて、逆に言うと、そういう販売ができない場合は、非常に廉価になることもあると、そういう理解でよろしいですか。 ○笹井幹事 はい。 ○井上委員 ありがとうございます。 ○道垣内部会長 ほかに、この問題につきまして御意見はございませんでしょうか。   今、笹井さんおっしゃったところですが、この問題の重要性というのは、この部会の共通認識であったところ、どこで折り合いをつけてバランスを取っていくかというのが非常に今、難しい問題としてずっと残っていたわけであります。それを、このような形であれば折り合いがつくのではないかというのを、事務局からぎりぎりの形で示していただいたのが、今回のことであるというわけでございまして、なお日比野さん、内野さんの方から問題が指摘され、さらには、阪口さんからもいろいろな問題が指摘されているわけですけれども。   ですから、その調整の余地というのはもちろんあるわけなんですけれども、一つ大きなコンセンサスとして頂きましたのが、担保目的物の評価額というのを基準にして考えるという点については、皆さんの御納得を頂いており、あとの細かいと言ったら大変失礼な話になりますけれども、幾つかの調整点が残っているということだろうと思います。ここでこれ以上議論するというのも難しいと思うんですけれども、あとは、事務局におきまして引き続き調整をしていただくということで、本日のところはお認めいただければと思います。方向としては、こういう方向でということでよろしゅうございますでしょうか。誠に御無理を、どの方にも御無理を申し上げることになっていて、大変恐縮ではございますけれども、更にもう少し詰めたいと思います。   ほかの点で御意見はございますでしょうか、この最後までのところでございますけれども。 ○山本委員 純粋に質問というか、今回、例えば、34ページのところで滞納処分とかが削除されて、これはそうかなというふうに思うんですけれども、もっと大本のあれとして、滞納処分において、この譲渡担保権者がどういうふうに取り扱われるかというような話は、国税徴収法上の問題なので、ここでは基本的には議論の対象にはなっておらず、それは財務省側なのかもしれませんが、その国税徴収法の改正で検討されていくと、そういう整理になっているという理解でよろしいんでしょうか。 ○笹井幹事 そこでおっしゃったのは、それによる固定化が生ずるかどうかということですか。 ○山本委員 はい、究極的にはそこに。仮に、国税徴収法でこの担保権者が配当を受ける債権者になったときに、その配当を受けたときに、その固定化が生じるのかということは、誰が考えるんだろうという疑問です。 ○笹井幹事 固定化という意味では、本来的には私たちが考えるということだろうと思います。ただ、今のところ、滞納処分において配当要求という制度そのものがあるわけではありませんので、取りあえず、滞納処分の中において何らかのアクションを起こして固定化させるということを、今のこの新法の中において実現しようというふうには、現時点においては考えておりません。 ○山本委員 私もよく滞納処分知りませんけれども、質権とか抵当権とか先取特権、留置権によって担保される債権は配当を受けられるというふうになっていて、登記等がないそれらの債権者は、債権現在額申立書というものを提出することによって配当を受けられるという構造になっているものと理解しているんですけれども、そういう、例えば、債権現在額申立書みたいなものを提出して配当を受けたとしても、固定化はしないということでいいんですか。 ○笹井幹事 そうですね。御指摘のとおり、ちょっと議事録でどこまで書けるかというのはあるのですけれども、御指摘のとおり、滞納処分においても配当を受けるということが全くないわけではありません。ですので、ここでお示しした考え方を貫徹しようとすると、そういう場面についても固定化をするということが、制度としては考えられると思います。   ただ、ちょっと非常に技術的に法制度を設計していくのがなかなか難しい、非常に複雑になりすぎるとか、実際そういうケースがどれだけあり得て、現実の必要性として、今ここで新法の中で取り込んでいく必要性があるのかということを考えた結果として、滞納処分についてまで、固定化をさせる必要性としては乏しいのかなというふうに思っておりまして、現時点においては、今固定化の制度、固定化事由の一つとしてそれを規定しようという考えを持っているわけではありません。 ○山本委員 分かりました。あんまりそういうことがないという実情を全然知らないので、あんまりそういうことはないということであれば、それはそれで結構です。 ○道垣内部会長 債務者の種類によるよね。 ○山本委員 そうですね、どの程度。 ○道垣内部会長 ほかの点はいかがでしょうか。 ○阪口幹事 すみません、私ばっかりで申し訳ないです。   まず、細かいことで言うと、38ページから39ページ、先ほどもちょっと日比野さんの話に出た「取引所の相場その他の市場の相場がある商品を目的とする」という文言についてです。これは破産法58条に使われている文言だと思うんです。破産法58条について、破産法改正当時の一問一答などを見ますと、旧破産法の規定よりも少し広げたということで、解説を読むと、その当時の中古車市場とかは当たらないとか書かれているんですけれども、少し広がっているんで、例えば、ここでいうとその他財産なんで、ゴルフ会員権市場なんかも当たる余地があるのではないのかなと思います。しかし、今回ここで特例を設けた趣旨からすると、ゴルフ会員権をわざわざ2週間ルールの対象外にする必要がない。この「取引所の相場その他の市場の相場がある商品を目的とする」という文言だけだと、何か想定したものとずれてこないのかなというふうな疑問点がありました。破産法58条の場合は、定期行為性というのも条文に入っているので、かなり狭くなるんですけれども、現在の「取引所の相場その他の市場の相場がある商品を目的とする」という表現だと少し広くないかなというふうに思ったのが1点です。   もう1点は全然違いまして、部会資料、第10の1とか4とか5、つまり集合の固定のところです。具体的に言うと、33ページに、個別動産担保を実行したときにも、再度実行禁止の要請が働くので、この範囲で固定すべきだということが書かれています。ただ、滞納処分であったり一般債権者の差押えであったり、それから集合担保権者自身の実行は4の方の規定になるので、個別動産担保権者の実行のときだけ、この5の(1)のアのルールというのかな、担保実行の差押えされた途端に、当該場所の範囲で全部固定化するという必要性が、ちょっとまだよく理解できません。集合動産譲渡担保による実行でも固定しない、一般債権者の実行でも固定しない、滞納処分でも固定しない、一般先取特権でも固定しないのに、個別動産担保だけこの固定の範囲をこの範囲にさせることの必要性を、ちょっと御説明いただけたらと思います。   以上、2点です。 ○笹井幹事 まず、1点目の取引所の相場とかがあるものについてです。   確かにゴルフ会員権をどうするかとか、限界事例というか、ぎりぎりのところで、こっちは入るのか入らないのかみたいな議論はあり得て、破産法58条の解釈も、場合によっては立法当初思われていたところとはちょっと違っているというところもあるかもしれないので、これで全く明確かと言われると、そういう問題はあるのかもしれませんが、しかし、それは既にその文言としてあるものなので、明確性という観点からは、こういう用例を持ってくるのがよいのではないかということで、今こういうふうに規定をしております。   広すぎるのではないか、あるいは元々想定しているものとは違ってくるものが出てくるのではないかというおそれは、確かに全くゼロではないのかなというふうには思いますけれども、一方で、どこで線を引くかということを考えたときに、やはり新しい何か概念を作るということになると非常に難しいということもあって、むしろ既に倒産局面といいますか、私法上ある概念を持ってきた方が、結果的には安定するのではないかということで考えたという次第です。   その際に、58条の1項の定期行為性も併せて要件にすればいいではないかということはあり得るのかもしれませんけれども、ここでいう定期行為性というのは、多分デリバティブのようなものを想定して、決済日が決まっていますと、その日までに決済しないといけないということだと思うのですけれども、ここでは単純に、例えば国債みたいなものとか株式とか、そういうものを念頭に置きながら、それは2週間ルールから除外しましょうということになっているわけですけれども、そういう、単純に株式を譲渡担保に取っていますというときに、定期行為性みたいなものが問題になっているかというと、そういうわけではないので、やはりここで定期行為性というのを持ってくると、ちょっと元々想定していたものとは、逆に狭まりすぎてしまうのではないかということで、こういう形しかないのかなというふうに思っているというところです。   それから、固定化のルールですね。ここも、ちょっと繰り返しになってくるかもしれませんが、やはり個別担保権というのは確かに、前回も個別担保権の実行については固定化事由にする必要はないのではないかという御指摘があったものというふうには記憶しております。ただ、固定化しないということになると、譲渡担保権者がそれに対して、その手続の中で配当要求していければ、それは自分の担保権に基づく優先便債権の行使があったということで固定化していくということになるのだけれども、配当要求せずにスルーする自由を与えようということになるのだと思います。   スルーしておけば、そのまま譲渡担保権というのは固定化もしないし、元本も確定しないで、担保権者と担保権設定者の間での取引がそれまでどおり進んでいくと。しかし、個別担保権の実行によって、ある一部分については担保権の対象から抜けていき、その担保権者がそこから優先弁済権を受けるだけで終わって、恐らくそこが余り大きければ別ですけれども、単に穴が空いたというところであれば、その設定者がその後も頑張って事業を継続する限りは、そこに新しいものが埋められて、全体としての担保価値が回復するという、こういうことになっていくのだろうと思います。   その結果として、ただ、何が起こるかというと、担保権者がどんどんほかの、例えば劣後する担保権者、劣後する特定担保権者かもしれませんけれども、その人が集合動産譲渡担保の目的である動産をぽこぽこ抜いていくのだけれども、そのたびに設定者が頑張ってそこを埋めていくから、全体として担保価値としては維持されるということが起こって、最終的に譲渡担保権者が全体として換価すれば、その回復した全体についての担保価値を譲渡担保権者が回収することができるということになります。   ただ、これは、もし同時に配当がされていれば、ぽこぽこ抜かれてほかの担保権者に行った部分も含めて、全体として集合物が持っていた価値が割り付けられることになる、その順位に従って配当されることになるはずだったのに、結果的に重複する部分から一部の特定債権者がぽこぽこ抜いていき、回復したところもあって、集合債権者が取っていくということになるので、悪いことを考えると、先順位の人と後順位の人とで示し合わせて、先に固定化が生じない範囲でどんどん換価していき、しかし、頑張って担保価値が回復されたところを待って、また別の担保権者が回収していくということによって、同じ倉庫の中だったら倉庫の中の動産の中から複数回にわたる回収が可能になってしまうので、同じ特定範囲の中から優先的な優先弁済権を担保権者が重複して行使できないようにするためには、個別担保権によっても全体として固定化させるしかないのではないかというふうに、今考えているということです。 ○阪口幹事 阪口ですけれども、一般債権者の差押えだったら、ぽこぽこ抜けていってもいいんですよね。 ○笹井幹事 一般債権者は別に、優先弁済権を持っているわけではなく、重複実行とかも本来的に制限されるところではないわけですよね。それは全体の中から、もちろん担保権者には劣後するという制約はあるものの、どこの財産から持っていってもいいわけです。この特定の財産からの優先弁済権の行使は1回に抑えましょうという考え方で全体を作っているということになります。 ○道垣内部会長 ございますか。 ○阪口幹事 いや、これ以上は結構です。 ○道垣内部会長 ポリシー的にはいろいろあろうかと思いますが。ほかに何かございませんでしょうか。   そろそろ要綱案を作成しなければならないという時期になっているわけですが、他方で、今の組入れの問題にせよ、100%全部細かい点が決まったというわけではございません。しかし、決めなければならないわけでございますので、今後事務局等が調整、皆さんの御意見を伺いながら調整をしていくという作業を積み重ねさせていただければと思います。したがって、皆さんにおかれましては、御協力いただければと思います。   本日のところではよろしゅうございますか。   それでは、時間もまいっておりますので、本日のところはこれで終了させていただければと思います。ありがとうございました。   次回の議事日程等につきまして、事務当局から説明をしていただきます。 ○笹井幹事 本日もありがとうございました。   次回の日程は、令和7年1月28日火曜日です。場所は、本省地下1階大会議室です。   本日の御議論の中で幾つかございましたので、それを踏まえて、最終的な要綱案をお示しすると。次回は、その御了承を賜れればというふうに考えております。 ○道垣内部会長 では、法制審議会担保法制部会の第50回会議を閉会にさせていただきます。   本日も熱心な御審議を賜りまして、ありがとうございました。また来年もよろしくお願いいたします。 -了-