法制審議会 商法(船荷証券等関係)部会 第13回会議 議事録 第1 日 時  令和6年1月24日(水)自 午後1時29分                     至 午後3時00分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  船荷証券に関する規定等の見直しに関する要綱案のとりまとめに向けた検討(3) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○藤田部会長 それでは、予定した時刻になりましたので、法制審議会商法(船荷証券等関係)部会第13回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。   しばらく間が空いて、久しぶりになりましたけれども、本年もどうかよろしくお願いいたします。   本日は、上田委員、家原幹事、後藤幹事、松井幹事は御欠席と伺っております。猪俣委員、北澤委員、洲崎委員、竹内委員、松井委員、久保田幹事、竹林幹事はウェブで御参加と伺っております。   また、事務当局において、関係官の異動がありましたので、新たに御着任された方には簡単に自己紹介をお願いいたします。 (関係官の自己紹介につき省略) ○藤田部会長 どうぞよろしくお願いいたします。   それでは、開始いたします。   まず、前回に引き続き、本日はウェブ会議の方法も併用して議事を進めたいと思いますので、ウェブ会議に関する注意事項を事務当局に説明していただきます。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。前回までの部会と同様のお願いになりますが、念のため改めて御案内をさせていただきたいと存じます。   まず、ウェブ会議を通じて参加されている皆様につきましては、御発言される際を除き、マイク機能をオフにしていただきますよう御協力をお願い申し上げます。御質問がある場合や審議において御発言される場合は、画面に表示されている手を挙げる機能をお使いください。   なお、会議室での御参加、ウェブ会議での御参加を問わず、御発言の際にはお名前をおっしゃってから御発言されますようお願い申し上げます。ウェブ会議の方法で御出席されている方々には、こちらの会議室の様子が伝わりにくいため、会議室にお集まりの方々には特に御留意を頂ければと存じます。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   次に、本日の審議に入ります前に、配布資料の説明をしていただきます。事務当局からお願いいたします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。配布資料について御説明させていただきます。   今回配布させていただいている資料は、部会資料13「船荷証券に関する規定等の見直しに関する要綱案のとりまとめに向けた検討(3)」の1点でございます。後ほど審議の中で事務当局から説明をさせていただきます。   配布資料の説明は以上でございます。 ○藤田部会長 それでは、本日の審議に入りたいと思います。   まず、部会資料13について、事務当局から御説明をお願いいたします。 ○中村(謙)関係官 それでは、法務省の中村の方から、今回の部会資料の第1と第2について説明をさせていただきます。   第1は、いわゆる善意取得制度を定める民法520条の5に相当する規定についての再整理となります。本文では、第1項から第3項までの規定案を提示させていただいておりますが、直接民法520条の5に相当する部分を定める部分は、このうちの第2項でございまして、第1項と第3項の規定は電子船荷証券記録に特有のものとなっております。   まず、第1項についてでございますが、こちらについては基本的に中間試案時に議論したとおりでございまして、電子船荷証券記録は民法上の物ではなく、紙の船荷証券に係る返還請求権と同様の請求権が当然に発生するとは考え難いため、民法520条の5に相当する規定を置く前提といたしまして、電子船荷証券記録の支配の移転を自己に対してすることを求めることができる権利を別途認めることが必要であると考えたものとなります。   もっともこの第1項につきましても、中間試案とは若干内容を修正しております。   部会資料の2ページの(2)に書かせていただきましたとおり、中間試案の際には、支配の移転を求める権利の主体を、「何らかの事由により電子船荷証券記録(記名式であって電子裏書を禁止する旨の記録がされているものを除く。)の支配を失った者(当該電子船荷証券記録上の権利を適法に有する者に限る。)」としておりましたが、改めて考えますと、電子船荷証券記録を支配したことがなく、その支配を失っていないものの、電子船荷証券記録上の権利を有する者というのは、基本的に想定されないように思われ、そうであれば、条文上は端的に電子船荷証券記録上の権利を適法に有する者を主体とすることでも足りるのではないかと考えた次第でございます。   また、細かな表現上の調整は必要になるかもしれませんが、このように支配の移転請求権の主体の要件として、「支配を失った」という表現を外すことで、前回の部会で議論をさせていただいた強制執行の場面における差押債権者による支配の移転請求権に関しても、あえて別途の規定を設けることなく、ここに含めて整理するという選択肢も出てくるように考えております。   また、こちらは中間試案の取りまとめの際にも少し議案があったところかと思いますが、いわゆる電子裏書禁止型の電子船荷証券記録に関しては、第2項の善意取得制度の対象には含まれないこととなりますが、この第1項の支配の移転請求権との関係では、その対象に含めてもよいかと考え、その点についても中間試案から修正をさせていただいております。   次に、第2項でございますが、こちらは中間試案と同様であり、このような規律を設けることについても、特段の異論は見られなかったところと承知しております。   なお、御承知のとおり、紙の船荷証券における善意取得の規定の適用範囲につきましては諸説あるところでございまして、例えば制限行為能力者や無権代理人による処分の場合や、意思表示に瑕疵(かし)があったような場合にも適用されるのかどうかといった点については、解釈問題になっていると認識しておりまして、第2項の規律は、これらの問題について、立法を通じた明確化を図ろうと意図するものではなく、民法520条の5の規定と同様の文言とすることにより、紙の船荷証券と同様の解釈がされることを想定したものとなっております。   最後に、第3項でございますが、ここが今回の議論の中心になるものと考えております。   ここは、民法520条の5に相当する規定を設けた場合の効果を定めるものでございますが、本文に記載した甲案、乙案という対立軸というよりは、端的に申し上げれば、前回の部会でも議論させていただいた強制執行と善意取得の優先関係をどのように考えるか、そして、その帰結を条文にどう落とし込むかという問題と捉えていただいた方が分かりやすいように思われます。   前回の部会では、運送品の引渡しに係る債権の譲渡と、それに対する差押えの優先関係について、強制執行の観点から議論が行われたところでございます。その際には、支配の移転の日時と差押命令が第三債務者に送達された日時の先後によって決せられることになるということを前提に、差押えに劣後する債権譲渡の譲受人や、その者から更に電子船荷証券記録の支配の移転を受けた第三者との関係については、たとえそれらの者が善意無重過失であったとしても、一度強制執行が奏功した以上、その効果を覆すということは、強制執行手続の安定性を害することになるので、民法520条の5に相当する規定が適用されることによって、差押えが優先するという帰結が変更されることは望ましくないのではないかといった御意見でしたり、電子船荷証券記録については、差押債権者に電子船荷証券記録を確実に支配させる制度を構築することは困難であることなどを踏まえると、差押債権者が優先するという帰結となることが望ましいのではないかといった御意見もございまして、仮にそのような実質判断をする場合には、この甲案のような形で、民法520条の5に相当する規定を設けた場合の効果として、電子船荷証券記録上の権利を原始取得するのではなく、支配を失った者から支配をする者に対する債権譲渡を擬制するものとして、飽くまで両者の優劣は対抗関係として処理される、言い換えると、仮に債権譲渡の譲受人や、その者から電子船荷証券記録の支配の移転を受けた第三者が善意無重過失であった場合であっても、差押債権者との関係での優劣は、支配の移転の日時と差押命令が第三債務者に送達された日時の先後によって決せられることになると考えられます。   他方、前回の部会での我々事務当局からの説明は、若干強制執行の視点に偏ってしまっていた面もあるように思っておりまして、改めてこの善意取得制度の観点から、強制執行手続との優劣を考えてみますと、電子船荷証券記録の支配を譲り受けようとする者の立場からすると、必ずしもそれに先立つ差押えの事実を把握できるわけでないにもかかわらず、差押債権者に劣後する可能性があるのであれば、電子船荷証券記録の支配の移転を受けることに躊躇することになり、その流通性が害されるおそれがあるのではないか、また、紙の船荷証券における一般的な理解との整合性を考慮するのであれば、やはり善意取得制度は対抗関係ではなく、原始取得的な発想で考える方が現行法制と親和的なのではないか。そういった考え方もあり得るところかと思いまして、乙案のように、電子船荷証券記録を支配する者が、電子船荷証券記録上の権利を原始取得することと同様の法律関係を構築するものとして、一度強制執行が奏功した後であっても、善意取得の成立の余地を否定しないという考え方もあり得るところかと思います。   また、この乙案の考え方を採用した場合には、強制執行が余りに脆弱になるのではないかという批判もあり得るところかと思いますが、この点につきましても、そもそも紙の船荷証券の場合にも、差押債権者がその保管場所を把握しているとは限らず、債務者の協力がなければ事実上強制執行が奏功しないのが実情なように思われ、紙の船荷証券に関するそうした実情も踏まえますと、電子船荷証券記録が発行されている場合の強制執行が奏功しにくいという点においては、紙の船荷証券が交付されている場合と大きな差はなく、殊更問題にする必要はないという考え方も、またあり得るのではないかと思われるところでございます。   そうした観点も踏まえまして、今回は改めてこれらの点の政策判断について御審議を頂きたいと考えております。   なお、今回の部会資料では、対立軸を明らかにするという趣旨で、この第3項の中で、甲案、乙案と規律案を分けて記載しておりますが、仮に今、説明させていただいた乙案のような実質論を採る場合には、必ずしもこの本文で示した乙案のような規定を、独立した項として設ける必要まではなくて、例えば第2項の中に組み込むことも考えられるかと思いますし、第2項はそのままで、この第3項を設けないとする、すなわちあえてこのような規定を設けないような場合でも、恐らくは同じ結論になるのではないかと考えております。   以上が、第1についての説明となります。   続けて、部会資料の4ページ以下の「第2 運送人の免責についての整理」を説明させていただきます。   部会資料の4ページの下の方となりますが、中間試案のとおり、電子船荷証券記録の法制化に当たっても、この民法520条の10に相当する規定を設けることが検討されております。   この民法520条の10に関しては、紙の船荷証券に関して裁判例も乏しく、解釈に委ねられているところが多いように思われますが、電子船荷証券記録についても、基本的には紙の船荷証券と同様に解釈されることを想定しておりまして、これまでの部会におきましても、このような規定を設けることには特段の異論はなかったように認識しております。   電子船荷証券記録が法制化された場合におけるこの規定の適用の具体的な範囲などは、個別の事案によるところが大きく、基本的には事例ごとの司法判断に委ねられることになると認識しておりますが、飽くまで参考という趣旨で、今回、これまでの部会でも少しだけ話に出ておりました強制執行が絡む場面での運送人の免責について、若干の整理を試みております。具体的には、今回の部会資料の6ページから9ページにかけて、差押命令の送達と、差押債務者からの電子船荷証券記録の支配の移転が先後する場面を想定いたしまして、大きく差押命令の第三債務者への送達が先である場合と、差押命令の第三債務者への送達が後である場合に分けた上で、それぞれの場面における弁済免責の基本的な考え方について検討を試みております。   既に部会資料も御覧になっていただけているかと思いますので、細かな説明についてはここでは割愛させていただきますが、差押命令の第三債務者への送達が先であるケースにおいては、先ほど御説明申し上げました、この第1の善意取得に関して、甲案的な考え方を採るか、又は乙案的な考え方を採るかによっても考え方は分かれるものの、基本的にはこの運送人の善意無重過失の有無につきましては、この電子船荷証券記録を作成・管理するためのシステムにおいて、支配の移転のタイミングでしたり、強制執行の有無についての可視性がどの程度、又はどのように確保されているかによって左右される面が大きいのかなと考えております。   また、そのような認識可能性や可視性といったものを、電子船荷証券記録の法定要件とはしない以上は、そのような可視性のあるシステムを採用しなかったこと自体が、直接運送人の重過失を構成するとは考えられないのではないかと考えております。   以上、簡単ではございますが、第2の説明となります。 ○昔宮関係官 それでは、事務当局の昔宮から、第3と第4について御説明します。   まず、部会資料9ページからの「第3 電子船荷証券記録と船荷証券の転換」についてですけれども、これまで転換の要件、転換後の電子船荷証券記録又は船荷証券に記録・記載すべき事項、転換後の電子船荷証券記録又は船荷証券についての電子裏書又は裏書の連続等について検討がされてきたところですが、中間試案が取りまとめられた後の議論においては、転換後の電子船荷証券記録や船荷証券の発行又は交付を受けた者の氏名、名称をそれらに記録・記載すべき事項とすることが困難であるということを前提に、転換後の指図式の電子船荷証券記録又は指図証券型の船荷証券についての電子裏書、又は裏書の連続をどのように考えるのかについて、更なる検討がされてきました。   具体的には、中間試案が取りまとめられた後の議論においては、電子裏書又は裏書の連続は、飽くまでも電子船荷証券記録や船荷証券の記録・記載から形式的に判断されるべきものであり、転換がされた場合であっても同様で在るべきこと、転換後の電子船荷証券記録や船荷証券の発行・交付を受けた者の氏名又は名称を、それらに記録又は記載すべき事項とすることが困難であるとしても、それが任意に記録・記載された場合には、電子裏書や裏書の連続を形式的に判断することができるようにすべきであることなどが指摘されてきたところです。   そこで、中間試案においては、転換の規定により、電子船荷証券記録や船荷証券の発行・交付を受けた者は、電子裏書又は裏書の連続によりその権利を有したことを証明したものとみなすとの規律を設けることが提案されていたところですが、これを今回修正しまして、今回の部会資料に記載しましたように、端的に1項として、転換の規定により電子船荷証券記録又は船荷証券が発行又は交付された場合には、当該電子船荷証券記録又は当該船荷証券の発行又は交付を受けた者までの電子裏書又は裏書の連続があるものとみなすとした上で、2項として、転換の規定により発行又は交付された電子船荷証券記録又は船荷証券に当該電子船荷証券記録又は当該船荷証券の発行又は交付を受けた者としてその氏名又は名称が記録された者は、当該電子船荷証券記録又は当該船荷証券の発行又は交付を受けた者と推定するとしておりますが、このような修正につきまして御意見いただければと思います。   なお、2項の転換を受けた者の氏名又は名称の記録又は記載をする主体としては、運送人か転換を受けた者が考えられるところですが、電子船荷証券記録を作成及び管理するためのシステムが利用されている場合には、そのシステムによって自動的に記録や記載がされるといったことも想定されるところです。   いずれであっても、許容し得るものと考えられますし、転換を受けた者の氏名又は名称の記録をする主体を法律上の要件として定めてしまいますと、その記録をした者を証明しなければ、電子裏書や裏書の連続が認められないということになりかねず、そうすると、電子船荷証券記録や船荷証券の記録や記載から、形式的に裏書の連続を判断することができなくなってしまうおそれがあることから、その記録又は記載をする主体は定めないこととしております。その主体を定めないこととすると、権限のない者によって虚偽の記録や記載がされるおそれもあり得ることから、反証を許すために「みなす」ではなく、「推定する」こととしております。   また、中間試案が取りまとめられた後の議論においては、白地式裏書や白地式電子裏書を受けて、船荷証券あるいは電子船荷証券記録を所持・支配する者は、転換を受けることによって、その後に電子船荷証券記録や船荷証券を裏書しようとする場合には、自己の氏名や名称を明示的に記録・記載しなければならないことになるとの指摘もされていたところですが、転換を受ける義務はないことに照らすと、そのような不都合があるとしてもやむを得ないのではないかと考えられるところですが、この点についても御検討いただければと思います。   引き続き、第4についてですが、電子倉荷証券記録についても、これまで御説明してまいりました第1から第3までの検討が同様に当てはまるのではないかと考えておりますが、この点についても御議論いただければと思います。   事務当局からの説明は以上になります。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   今、事務当局から、部会資料13全体について御説明がありました。   まず、部会資料13の第1について、どなたからでも結構ですので、御意見等を頂ければと思います。どうかよろしくお願いします。   まず、小出幹事、お願いします。 ○小出幹事 小出でございます。御説明ありがとうございます。   まず、第1のところについて、2点コメントさせていただければと思います。質問かもしれませんけれども。   まず1点目なんですが、①のところについて、「電子船荷証券記録上の権利を有する者は」と主語を換えるという御提案かと思います。   ちょっとよく分からないというか、私が理解していないだけかもしれないんですけれども、電子船荷証券記録上の権利を有する者というのは、実質上は有価証券の移転を受けるのと同じように記録の支配の移転を受けることが必要であるというようなことなんかを考えると、そのどちらが先なのかというのが明確に定まっていないような感じもしたのですけれども、そうであるとするならば、元々の表現の方が、より正確なような気もしたんですが、私の理解がもし間違っていれば御指摘いただければと思います。つまり、わざわざこう書き換える必要があるのだろうかということです。   ちょっと違う点で、2点目なんですけれども、③について、甲案、乙案を出していただきました。私は個人的には乙案、しかも最後に御説明にありましたように、あえて書かなくても、解釈に委ねて乙案の形で解釈するというのが望ましいかと思っております。強制執行との関係について、執行側の立場に立てばというのはよく分かるのですけれども、紙の船荷証券の場合と殊更に違ったような効果を与える必要はないように思われ、やはり電子船荷証券との機能的同等という考え方から考えると、乙案という形が機能的同等を表しているのではないかと思っておりますが、この点ももし理解の誤りがありましたら御指摘いただければと思います。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   事務当局から何かございますか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御指摘ありがとうございました。   一つ目に御意見を頂いた点ですけれども、こちらの方は、我々としても特に強いこだわりがあって書き直そうと思っているわけでは必ずしもないんですけれども、ただ、いずれにしても、この①の規律というのは、紙の船荷証券にはない規律ということになろうかと思いますので、これをどういう形で書くのがいいのかというところが一つ議論になるのかなと思っております。   従前の中間試案では、紙の船荷証券で言えば占有を失った、電子船荷証券記録で言えば支配を失った者と書いていたんですが、ただ、他方で結局括弧書きを入れて、権利を適法に有する者に限るという形にしておりまして、やはり占有との対比で言えば本権ですかね、そういうものが重要なのではないかと。こういったような御意見もあったのかなと思われましたものですから、であれば、端的にこういった本権、すなわち、電子船荷証券記録上の権利、これを有する者にするというのが、端的なのかなと思い、一度提案をさせていただいたところではあるんですけれども、また、皆様の御意見を促いながら元に戻すということも十分あり得るとは思っております。   いずれにしても、どのような事案が考えられるかというと、例えば支配を奪われてしまったような場合とかであれば、基本的には電子船荷証券記録上の権利というのは、奪われた人のところに残っているということにはなろうかと思いますので、奪った人に対して戻せということは言えるのかなと思います。ただ、それは、前回までの表現でも同じですし、今回の表現でも恐らく同じだろうとは思っておりますけれども、この機会に単純な方向で整理するということが考えられませんかねというような御提案ということでございますので、皆様の御意見を頂ければ幸いに思っているところでございます。 ○藤田部会長 よろしいですか。次に池山委員お願いいたします。 ○池山委員 池山でございます。   今回の議論は、極めて理論的な点に関する議論でして、実務家の私がどこまで言うべきかということもありますし、実際勘違い等もしているかもしれないのですけれども、やはり議論に参加させていただく上では、こういう理解で正しいのでしょうかという質問の趣旨の発言はさせていただいてもよいのかなと思っております。   その上でなんですけれども、まず、今回の、少なくとも1項、2項については、従前の中間試案の内容、ひいては紙B/L、あるいはもっと言えば有価証券、一般における善意取得が認められる範囲について、実質的な修正を加える趣旨ではないんだと理解しております。それはそれで異論はないんですけれども、より分かりやすい表現をするために、表現を変えたと。   そこで、小出幹事が指摘されたことに比べると、もっと形式的なところなんですけれども、従前の表現だと、括弧で限定するときに、当該電子船荷証券記録上の権利を適法に有する者を限ると書いていて、今回その括弧でなくて、本文に出した結果として、適法にという形容詞が抜けているんですよね。私は、これは、そこに実質的な意味が込められているわけではなくて、慣例的に船荷証券あるいは有価証券の議論をするときに、権利を適法に有するという表現を従前はしていたけれども、今回はあえてそれに従わなかっただけで、実質変更をする趣旨ではないだろうと思っております。まず、その理解でよろしいのでしょうかというのが1点です。   それから、2点目の質問として、補足説明の最後の方に書いてあることですけれども、強制執行との関係で、強制執行の議論における丙案的な規律を実現するために、電子船荷証券記録上の権利を行使することができる者と書いたり、あるいはそういう、その場合の債権者を含むという括弧書きを設ける案と、これも一案であるという指摘、補足説明があります。もしこれらのいずれかを採用するとなった場合に、強制執行の議論における丙案というのは、明示的には書かないということになるんでしょうか。それはそれで別個必要なんでしょうか。そこはよく分からないなと思っております。   元々これは今日の主題ではありませんけれども、関連する論点として、前回の議論で、強制執行の可能性について明示的な立法をするのは、できればやめてほしいという趣旨での発言を私はるるしていて、ただ、執行禁止、差押禁止財産というわけでもないから、それは難しいのではないでしょうかという整理であったと理解をしているんですよね。そのような観点からすると、ある意味この善意取得の条項に入れ込む形で、事実上強制執行の丙案における規律というのが入り込むというのであれば、一つのうまいやり方なのかなと思っています。   ただ、これは単純な勘違いで、やはり丙案的なものを入れるのであれば、それはそれで別個明示することは必要だというのかなとも思っていて、そこがよく分からないので、単純に教えていただきたいと思っております。   それから、最後、3点目です。   3点目は、あえて言えば、このむしろ1項の書きぶりに戻るんですけれども、今回の書きぶりにせよ、前回の書きぶりにせよ、実質としては電子船荷証券記録上の権利を有する者は、支配移転請求権を有すると。そういう規律が明示的でないと駄目だということ。そこは、一般論としてはそうだと思うんですけれども、実務側からとして時々考えるのは、記名式の船荷証券で、これは譲渡禁止の場合もそうでない場合もありますけれども、まだ荷送人・シッパーの下に船荷証券がある場合というのを想定すると、実際は、運送契約上はシッパー、売買契約上は輸出者・売主は代金の支払があるまで、事実上はその船荷証券の占有、あるいは電子B/Lであれば、その支配を留保することによって、事実上代金との同時履行的な関係を実現したいということがあり得るわけです。   他方で、そのシッパーに留保されているときの記名式船荷証券の権利者は誰なんだということを考えたときに、実は私の理解では、一般的な解釈は、記名式船荷証券の最初の権利者というのは荷受人なのではないかと。荷受人が最初の権利者で、そこから裏書禁止でなければ譲渡がされていくと、そういう整理だと。   そうだとすると、その留保しているシッパーが占有を奪われた、あるいは支配を奪われたときに、どうなるんだろうかということを考えるんです。シッパー、コンサイニーの間の売買契約上の問題というのではなくて、売買契約上の関係もあって、シッパーが留保しているときに、単純に誰かに盗取された、あるいは詐欺的に支配を奪われたというときに、それはそれでシッパーは、その人に対して支配を返還するという権利があり得るんだろうと。   私は、この点については特段異論はないんだろうと思うんですけれども、この条文の文言からどうしても抜けてしまうかもしれないと。結論的には、問題としている状況が違うので、あえてその点も踏まえた明文規定まで置いてくださいという趣旨では全くないのですけれども、今のような考え方、明文上は出てこないけれども、そういう場合は、やはり全くの無権利者との関係では留保しているシッパーも、権利者ではないかもしれないけれども、移転請求権はあるんですよねと、そういう解釈に違和感がありますかということについて質問したいということです。   ちょっと三つめは若干脱線ぎみかもしれませんけれども、関連する論点なので、せっかくなので教えてください。 ○藤田部会長 それでは、事務当局から御返答お願いいたします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御質問、御意見いただきましてありがとうございます。   まず、一つ目の御指摘ですけれども、適法にというところが従前の中間試案ではあったけれども、今回の提案にはないというところに、何か実質的な意味合いがあるのかという御質問かと思いますが、基本的には実質的に何かを変えようというつもりはございませんので、そこの点は表現ぶりの違いかなと思っております。   今回の①というのは、どちらかというと、民法の財産権的な発想で言うと、所有権に基づく返還請求権的な発想というところから説明するということを考えているところでございますので、であれば、あえて適法にと書く方がむしろ不自然なのかなというぐらいの考えでございまして、何か実質を変えようというものではございません。   続きまして、2点目ですけれども、部会資料で申しますと、3ページの上の方のところです。   強制執行でいうところの丙案みたいなものを盛り込む趣旨なのかどうか、あるいは改めて強制執行の規律において丙案を取るとしたら、別途規定を設けるのかどうかと、こういうような御質問かと思いますけれども、仮に部会資料3ページの上の方に書いてあるような書きぶりにすることができれば、もうここの中に含まれるということもあり得るのではないかという思いで、ここは書かせていただいております。   ですので、そういったやり方がもしうまくできるとするならば、池山委員がおっしゃられたような強制執行に関する規律を、余り大々的には書かずに実現するということが、ひょっとしたらできるかもしれないというところでありますが、ただ、この辺りは、多分に法制的な問題でございます。ここでそうすべきというような御意見を頂いたとしても、実際に法案を作っていったときに、なかなかそういう書き方が難しいということは十分にあり得るお話だとは思いますので、そこら辺りは最終的には実際に案文を作り始めたときにどうなるかというところかなとは思ってございます。   事務当局としてこの資料を作ったときの意図としては、強制執行でいうところの丙案的なものも含めて書くということが、ひょっとしたらできるかもしれないぐらいの思いでございます。   続きまして、最後の御指摘です。   3点目の御指摘でございますが、ここは拝聴していてなるほどなと思ったところでございますので、ここは改めて考えなければいけないなと思った次第でございます。   実際、御指摘いただきました記名式船荷証券の荷送人のケースです。荷送人がこの支配を奪われたときに、それを戻せということができないのはよくないというところは、多分余り異論がないところかなと思ってございますので、そうした場合、今回の①のような書きぶりで、そこがきちんと拾えているのかどうかということを考えますと、確かに疑義が生じるかもしれないなと思ったところですので、ちょっとそこは考えなければいけないなと思ってございます。   ただ、この問題は、従前の中間試案の書きぶりでも生じていた問題かもしれませんので、今回の書きぶりにしたからというよりは、従前のものであっても同じ問題があったのだろうと思いますので、そこのところがしっかりと説明できるような方法というのを考えていく必要があるかなと改めて思った次第でございます。大変重要な御指摘を頂いたと思っております。ありがとうございました。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。 ○池山委員 最後の3点目なんですけれども、ありがとうございます。   今、申し上げた論点というか、問題は、従前の中間試案にも実はあった問題だということは、私も全然異論はなくて、そのとおりだと思っていまして、ただ、今回、正に指摘させていただいたのは、ある種、1項を非常にすっきりした分かりやすい書き方をされたことによって、あれっと気付いてしまったというのが正直なところです。   ただ、他方で私としては、繰り返しますけれども、この立法の趣旨・目的というのがありますので、今の点をカバーするために、どこまで条文を触るべきか。あるいはそれは解釈で委ねることができるのではないかという辺りは、更に御検討いただければということで、強いこだわりがあるわけではございません。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   そのほか、どの点でも御意見等があればお願いいたします。 ○池山委員 どなたもなければ、甲案、乙案の点についてでございます。   この点については、正に理論的なものなので、実務家の代表である私がどうこう申し上げるというよりは、正に理論的な見地からの諸委員、諸先生方の検討を待ちたいと思っているのですが、それを申し上げた上で、やはり理解が正しいかという確認的な質問はさせていただきたいと思っております。   端的に言うと、原始取得である限りは、伝統的な考え方どおりである限りは、結局その人の権利というのは当然保護されるわけなので、単純に対抗関係にはならないと。だから、差押債権者としては後から善意取得者に負けてしまうことがあり得ると、そういうことですよね。   その関係で言うと、1点、補足説明に関する今日の最初の説明にもあった、もし善意取得が生じて、強制執行の方の効力が後から覆るということになると、流通を妨げるおそれがあるのではないかという趣旨の御指摘があったかと思うんですけれども、何が言いたいかというと、善意取得にしても、強制執行にしても、実際上ほとんどない事案なので、かなり観念的なというか、極めて高度に理論的な議論をしているなという印象は受けておりますということだけは、申し上げてもいいのかなと思っております。ちょっと煮え切らない表現で恐縮ですけれども、以上です。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   質問も含まれていたと思いますので、もし何かございましたら、事務当局から御返答お願いします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御質問いただいた点についての御理解はそのとおりかなと思っております。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   池山委員の感触は、結局甲案、乙案で若干差押債権者か善意取得者、括弧付きの善意取得が適用された場合に交付されるものとの関係で、どちらが勝つか、結論が差が出る可能性はあるけれども、どちらが勝っても大勢に影響があるような話ではないというふうに理解してよろしいでしょうか。つまりどちらを採ったら実務的に困る、船荷証券の流通に障害が出るという話ではないという意見とお伺いしてよろしいですか。 ○池山委員 ありがとうございます。池山でございます。そのように整理していただいて、逆にありがとうございます。   私は、あえては前回ひょっとしたら申し上げたのではないかと記憶しているのは、運送人の立場からすると、一方で強制執行と債権譲渡の間の優劣について分からないかもしれないから、非常に困難な立場に追い込まれるかもしれないのに、さらにそれが、場合によっては善意取得で、また優先関係というのでしょうか、どちらに応じるべきかというのが変わってくるとなると、もう実務としては非常に難しすぎて付いていけないと、ざっくばらんな言い方をすると。そういう趣旨のことは申し上げた記憶があります。   ただ、それは、多分今回の問題意識からすると、むしろ免責要件の話の中で整理すべきことであって、理論的な先後関係という意味からすると、それはこの甲案、乙案のどれを学者の先生方が理論的に採るかによって、論理的に導かれるものであって、それはしようがないであろうと。我々からすると、免責の要件の方が重要なのかなと今となっては思っております。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   そのほか、どの点でも御意見ございますでしょうか。取り分け甲案、乙案の辺り、感触を頂ければと思います。特に、実務的にいずれかの解決が困るということがあれば、是非お伺いしたいと思います。 ○洲崎委員 ただいまの部会長からの、何か困ることがあるかという御質問に対する答えということではなくて、特に第1に関する意見ですけれども、よろしいでしょうか。 ○藤田部会長 結構です。理論的な観点でももちろん結構ですので、御意見をお願いいたします。 ○洲崎委員 第1は、先ほどの事務当局からの御説明にもありましたように、善意取得に関する問題を扱ってはいますけれども、実質的には前回部会で議論された強制執行の規律をどうするかという問題を扱っているのかなと理解しております。   前回部会では、電子船荷証券についても、強制執行を行うことができるようにするはどうすればいいかという観点から、規定案が作られていたと思いますが、電子船荷証券に対する強制執行の問題というのは、恐らくはこの部会が始まった当初からずっと懸案事項になっていて、なかなかいい解決案が見付からないということで、事務当局でも大変苦労されてきたと思います。前回提示された案は、恐らくそのような中で、ようやく実際にも機能し得る解決策として出されてきたのかなという印象があって、そうであったために、恐らく大きな反対もなかったんだろうと理解しております。   私自身も、電子船荷証券についての強制執行を実行できるようにするためには、前回提案されたように、現在の権利者から差押債権者への移転と、現在の権利者から譲受人への移転、これを対抗問題として捉えて、差押命令と譲渡の先後関係で決着させるというのは、これはなかなか巧みなアイデアであったと思いますし、実際これしかないのかなという感じで受け取っておりました。   ただ、その一方で、これまで基本的には有価証券法的な規律で考えてきた電子船荷証券について、強制執行の局面でだけ二重譲渡もあり得る指名債権的な規律をするというのは、その体系的整合性という観点からは自然さに欠けるといいますか、アクロバティックといいますか、人為的といいますか、そういう印象も拭えなかったところでもございます。   それともう一つ、前回の部会では、電子船荷証券についての強制執行の規律が実効的であるためには、ある電子船荷証券に対して強制執行をされたとすると、それがいつされたのかということが、システム上表示されるものでないと、差押債権者が突如として現れて、電子船荷証券を横取りしていく、そういうリスクがあるので、そうなってしまうと、誰も安心して電子船荷証券を取得できないし、運送人も、その記録の支配を有する者に対して安心して運送品を引き渡せなくなってしまうだろう、その差押えと譲渡のどちらが勝つのか分かるようにするには、差押えの事実やその時期がシステム上表示される必要があるだろうということも議論になっていたと思います。   そして、もし前回案のような法律が作られたならば、電子船荷証券のシステム運営者も、差押えの事実とその時期が画面に表示されるような、そういうシステムを構築してくれるのではないかという、そういう希望的観測も、私は申し上げたように思います。   しかしながら、翻って考えてみますと、差押えと譲渡の時期の先後で決着を付けるという、仮にそういう法律が作られると、差押えの事実や時期が、その画面上に表れるようなシステムというものが、事実上必須になってしまうのではないかとも思われます。そういうシステムでないと、流通の安全を害されるし、運送人も困ってしまうだろうと。   しかし、そのようなシステムを作り上げることが本当に可能なのかどうかということは、現時点では分かりませんし、それに、強制執行を可能にするために、そのようなシステムの構築を法律によって事実上強制してしまうことが可能なのかどうなのかということを考えても、これまで我々は、システムの構築については、MLETRで要求されているところを越えて、それ以上の要求をするというようなことについては、非常に謙抑的というか、慎重にやってきたように思います。   紙の船荷証券の世界でも、先ほど池山委員から御指摘があったように、その差押えがどの程度、またどんなふうに行われているのかよく分からないところで、電子の世界でも差押えができるようにするために、そのシステムに対して相当ハードルが高い要求をするというのは、政策論としては必ずしも適切とは言えないのかなという、そういう感じがいたしております。   もちろん強制執行できるに越したことはないと思うのですが、そのために、実務に対してかなり厳しい要求をしなければいけないということになるのだとすると、そこはもう一歩退くという、そういう戦略もあり得るのだろうと思います。   それと、かりに乙案を採った場合ですけれども、乙案だと、差押債権者が常に善意取得者に負けてしまうことになるのかというと、そこは恐らくシステム次第というところもあって、システムの運営者が差押えの事実が表示されるようなシステムを作ってくれて、譲受人が電子船荷証券を取得する時点で、その権利がもう差し押さえられているということが画面上分かるのであれば、それを知って取得すれば、悪意重過失があるとして善意取得が認められなくなるでしょうから、結論として差押債権者の方が勝つということもあるのだろうと思います。   ですから、乙案を採ったからといって、差押債権者が常に敗北すると決まったわけではありませんし、実務的な落としどころとしては、甲案というのは十分にあり得るのではないかということを、今回の部会資料を読ませていただいて感じた次第でございます。 ○藤田部会長 今、最後に、甲案もあり得ると言われたかと思いますが、乙案のことですね。 ○洲崎委員 すみません、乙案です。間違いです。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   理論的整合性からも、実務的な事実論としても、乙案というのは採ることができるという御趣旨の御意見だったと思います。   前回、強制執行との関係で、強制執行がなされた後、仮に電子船荷証券記録を取得した人と差押債権者の間を対抗関係と捉えるという前提で丙案というものを提示して、一応それなりに賛同があったように思えるところ、丙案を実現するために、改めて善意取得の規定を書いてみると、善意取得の規定としては、今までないような特殊な規律を含むものにならざるを得ないことが分かり、いろいろな意味で前回の結論は本当にそれでよかったんだろうかという疑問がでてきたことが、今回、前回の議論と必ずしも両立しないような提案を選択肢として載せている理由だと思います。そして、お話を伺っておりますと、理論的にも、また実質論としても、前回の結論を見直した方がいいのではないかという感触が、今のところ多いように思いますけれども、その他の委員の方々のご感触はいかがでしょうか。   前回、一度はある程度支持を得たものをひっくり返すとすれば、やや慎重に検討したいと思いますけれども、いかがでしょうか。 ○笹岡幹事 ありがとうございます。前回は、過渡的な立法としては仕方ないのではないかという形で賛同させていただきました。今回、乙案のようなものが示されましたが、実質的にはこちらに賛成しておりまして、また、法制的にこれが可能であるならば、そのような立法の方向で進めていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。 ○藤田部会長 ありがとうございます。   そのほか、どの点でも。   事務当局からお願いいたします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。いろいろ御指摘いただきましてありがとうございました。   正に我々の方も、前回、ある程度御賛同いただいたかなと思っていたところなんですが、この善意取得制度というものを改めて考えたときに、本当にこれでいいんだろうかというところでもって、改めて御議論を頂いているというところでございます。   今までのところですと、乙案というもの、原始取得ということの方がいいのではないかという御指摘を頂いているところでございますけれども、もしこの乙案的な考え方でいく場合、強制執行をどうしていくかというところなんですけれども、前回の御提案をさせていただいたような、差押債権者が支配の移転を求めることができるという規律自体は、それはそれで維持しつつ、ただ、なかなかそれがうまく実現することができないかもしれないし、うまくいくかもしれないというところであると思いますので、そこの辺の実効性を担保するために、対抗関係にしておけばよかったのではないかというような話を前回させていただいたんですが、そこの対抗関係にしておくというところが、ちょっと乙案を採ると抜け落ちてしまうというところになろうかと思っておりまして、乙案を採ったからといって、何もしないというのではなくて、やはり支配の移転請求権自体は、それは残していくということを想定しているというところは、ちょっと補足として申し上げておきたいと思っております。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   そのほか、どの点でも御意見等ございますでしょうか。 ○山口委員 山口でございます。私、前回の期日のときはお休みさせていただいたわけなんですが、今回新たに御提案を拝見いたしまして、対抗関係という考え方をとるということは、やや差押えと善意取得の関係からいうと、やはり難しいと考えます。それから、この電子的船荷証券の場合は、移転の関係の期間が、日だけではなくて、時間単位、あるいは秒単位まで明確に分かるわけですが、差押えの場合、現状の送達、これはまだ民事訴訟法の変更によって変わるかもしれませんのですが、現状の送達からいくと、正式には日しか分かりません。ただ、当日の午前なのか午後なのか、それは我々送達を受ける立場にあると、午後の、午前のどこかで受けたか、午後のどこかで受けたか。あるいはその会社のシステムで時間が手書きで分かるとか、そのレベルになりますので、本当の先後というのは分かりにくいだろうと思いますので、そこで決められる対抗関係というのは、ちょっとやや難があると思っておりました。   今回の場合は、それを善意取得という、また元に戻すような形になりますので、それの方がやはり整合性が高いのかなと思っておりまして、池山委員がおっしゃったように、そちらの方が実務としては受け入れやすいだろうと考えております。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   よろしいでしょうか。   事務当局からお願いします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。いろいろ御指摘いただきまして、ありがとうございます。   乙案の方がいいのではないかという御意見が多いのかなと思っているところでございますが、その場合、どうしても一つ考えなければいけないのは、強制執行した場合に、なかなかそれが有力な執行手続にならないかもしれないというところをどう考えるのかというところが、一つ悩ましいポイントかなと思っております。   それはそれで、もう仕方がないというのが一つの割り切りかなとも思ってございまして、そういった意味で、部会資料の4ページのところにも少し書かせていただいておりますけれども、結局のところ、紙の船荷証券との比較なんだろうと思っておりまして、紙の船荷証券の場合も、結局証券を捜し出してきて、それを押さえないことにはどうにもならないというのが現行法の規律でございます。それが、実際どれぐらい試みて、どれぐらいうまくいっていないのかというのは、結局事例がほとんどないのでよく分からないところではあるんですけれども、やはりそこの難しさというのは一定程度あるのかなとは思われるところ、電子にした途端、強制執行がすごくやりやすくなるというのも、これまた少しおかしな話なのかもしれず、今回、移転請求権は認めるものの、乙案的なものになりますと、強制執行の実効性という意味では、余り強いものにはならないことにはなるんですが、紙の船荷証券と比較したときには、そう大差はないという評価がもし可能であるとするならば、乙案を採ることの許容性というのも出てこようかと思って、このような書き方をさせていただいておるんですが、この点についての御感触なりをもし頂けますと、大変有り難いなと思っているところでございます。 ○藤田部会長 主として実務の感触を伺いたいということになるのでしょうか。小出幹事、お願いします。 ○小出幹事 すみません。実務ではないのですが、実務ではないからこその、今更の前提についての質問なのかもしれないんですが、紙の船荷証券の場合については、強制執行があれば紙が差し押さえられるということになって、基本的にそれ以降、善意取得というのは生じなくなるわけですよね。   ですので、逆に言うと、善意取得が起きた後に、強制執行しようとしても、それは善意取得によって所有権も移転しているので、これはやはり強制執行は空振りになるわけですよね。その意味では、強制執行というのは、善意取得の前であれば、非常に大きな意義があって、もちろん、今、渡辺幹事がおっしゃったように、そもそも紙が見付かるかという別の問題はあるものの、善意取得との関係で考えれば、きちんと紙が見付かれば、強制執行はきちんと効力があると。   これが電子の場合であったとしても、同じなのではないかと私は思っていて、結局まだ手元にあるというか、支配が元々の人のところにあるうちは、強制執行がなされて、まあそれをどのように執行するのかという問題なのかもしれませんが、それで支配が移れば、それ以降善意取得は生じないわけですし、善意取得が生じてしまった後であれば、やはり同様に紙の場合と同じことであって、執行が空振りになるというのはしようがないであろうとなりますと、ちょっと違いがよく分からなくて、その意味でも乙案で何が問題なのかというのが私の質問です。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御指摘ありがとうございました。   我々の方で悩んでいたのは、結局紙の証券ですと、執行官がいて、もし見付かればそのまま押さえられる。電子の場合ですと、移転請求権というものは付けるけれども、なかなかそれを強制的に最終的に差押債権者に移すということが、多分なかなか難しくて、間接強制とか考えられるかもしれませんけれども、直接的な方法がなかなか難しい。   紙の場合は、どれぐらい実効性があるかはともかくとして、直接強制的なものがある。ところが電子の場合にはないというところで、何か差異を設けなければいけないのではないかなというのが、議論の出発点ではあったんですが、そこも程度問題という評価ができるのであれば、もう善意取得制度はこのままというか、従前のとおりという形で、十分説明が付けられるのかなと考えている次第でございます。ありがとうございました。 ○小出幹事 ありがとうございます。すみません、今、御説明いただいたとおりだと私も理解をしていたんです。   そう考えると、これは、電子船荷証券固有の問題ではなく、おおよそ電子データというか、いわゆるデジタル資産といいますか、そういったもの一般に共通する話のように思われ、ここで固有の特別な立法をするということは、たしかにこれをもってデジタル資産全体に対する考え方を示すのだということもあり得るとは思うんですが、ここの場だけで解決できるような問題ではないような感じもしておりまして、その意味でも解釈あるいは実務に委ねるのが望ましいのかなと、現時点では思っております。ありがとうございます。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   そのほか、どの点でも御意見等ございますでしょうか。 ○山口委員 委員の山口でございます。この差押え後の善意取得の兼ね合いでは、ちょっと論点が違うのかもしれませんのですが、今までの紙の船荷証券の場合は、3通がされておるのが一般的だったわけです。   仮に1通差押さえたとしても、あと2通は転々流出する可能性はやはりあったわけで、ほかの2通については、善意取得はやはり生じるおそれもあっただろうと思います。   そういう意味では、今のこの乙案というのは、その旧来の、紙の船荷証券の実務からいっても、それほど大きくずれていないのかなと感じる次第です。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   紙の船荷証券だと、強制執行は実効力があるという、そもそもの発想そのものが、いろいろな観点から実はそうでもなかったという感触も示されてきているとすれば、乙案を採ったとして、事態が非常におかしくなるとか、差押禁止財産を作り出すことにつながるといったような、そういう評価にはならないだろうという感触でしょうか。 ○山口委員 現在のシステムとそれほど大きく変わらないのではないかということです。たまたま3通一緒に押さえられればいいわけですけれども、そうとも限らないのではないかということです。 ○藤田部会長 ありがとうございました。事務当局から、お願いします。 ○渡辺幹事 度々すみません。渡辺でございます。   船荷証券を前提に、今のところ乙案でいいのではないかということかと思っているんですけれども、倉荷証券の場合も同じということでいいのかどうかというところも、もし何か違った御議論があれば伺っておきたいなとは思っているところでございます。すみません。 ○藤田部会長 倉荷証券について、よろしいでしょうか。   倉荷証券についても同様の規律を設けるという提案は第4のところにあるのですが、特に第1の論点として議論された点について、船荷証券と倉荷証券、差がないと考えてよろしいでしょうか。差があるとすると、なぜそうなるかという説明が必要になりますが、ニーズ等で倉荷証券特有のものというのはあるのでしょうか。   第1の論点について、相当御議論いただきましたけれども、方向性はかなりはっきり出ましたので、この辺りでよろしいでしょうか。特に何か御意見がないようでしたら、差し当たりは倉荷証券も同じような規律で考えるという方向で、取りあえず進めさせていただければと思いますが、よろしいでしょうか。   なお、1点だけ確認させていただきたいんですが、第1の①の書き方について若干議論があって、池山委員から若干懸念といいますか、疑問が提起された荷送人の扱いです。こういう理解でよろしいでしょうか。すなわち仮に紙の船荷証券について荷送人が取り戻せるのであれば、それと同じような結論になるように、電子船荷証券記録についても解釈することを前提にした提案であると受け取って、紙の場合と違った結論にならないようにするという、そういうまとめでよろしいでしょうか。 ○池山委員 はい、結構です。 ○藤田部会長 では、そういう前提で①は提案されているという理解で進めさせていただければと思います。   もしこれ以上、特に第1について議論がないようでしたら、第2に移りたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。   それでは、第2について、何か御意見等ございますでしょうか。   乙案を前提とすると、善意取得できなかったような人に履行してしまったような場合の扱いなどが問題となるということになるわけですが、ここで書かれている提案でいいかどうか、御意見いただければと思います。 ○池山委員 すみません、再度、池山でございます。   私の推薦団体の立場からすると、補足説明の6ページの真ん中から少し下辺りに書いてある、なお、電子船荷証券記録の支配の移転の時期等が容易に分かる仕様となっているシステムが利用されることが望ましいところではあるが、そのようなシステムを利用することを有効要件とすることは相当でないと考えられるから、そのようなシステムを利用しなかったことをもって運送人に重大な過失等があるとは言い難いものと考えられるという補足説明をしていただいております。この点、大変有り難く思っておりますということを、一応申し上げたいと思います。   先ほどの洲崎委員の御意見からしますと、このように単純に言い切っていいのかというのは、御議論があるところなのかもしれないですけれども、実際上、電子船荷証券のシステムというのは、日本法を前提に、日本国内だけで使われる閉じられたシステムではないので、外国発の、外国法準拠のシステムが今でも多々使われていると。それが場合によっては、当該システムの準拠法は外国法であっても、何らかの形で日本法が準拠法となるという局面は、否定はできないと思っております。なので、最低限何らかの形で日本法が適用されるときに、外国発のシステムがそういう仕様になっていなかったということをもって重過失だと言われると、やはりそれは非常に困るので、このように解釈していただけるというのは、理論面はともかく実務面としては大変有り難いし、実際、電子船荷証券のシステムを更に普及していく上で、非常に重要なことであると思っております。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   そのほかに、どの点でも御意見等ございましたら頂ければと思います。   免責の方は、このような規律の仕方で、基本的にはおおむね実現可能なものと考えてよろしいでしょうか。システムの選択については、支配の移転の時期等分かる仕組みがないからといって、そのことで直ちに重大な過失があるなどとはされないということはこの場では確認された。もちろん条文でそのように明示的に書くことはできませんけれども、そういう理解を前提に提案しているという前提で、このぐらいの規律を置くことで基本的にうまく回るものと考えてよろしいでしょうか。 ○池山委員 念のため申し上げますと、前回、私がいろいろ発言したことも、少なくとも一つの要因になって、このように大変精緻な検討をしていただいたことに、改めて感謝をしております。   たしか部会長から、いろいろな場合分けをして、どういう場合なら免責が認められる余地があるのかということについて、実務側でも少し検討してみて、何か提案があれば、というような御発言があったことは記憶しております。   一応、その後私どもの推薦母体の内部でも、若干検討はしてみたんですけれども、基本的にはやはり事例ごとの司法判断なので、こういう場合なら免責、こういう場合なら免責にならないというのを分かりやすくするのは難しいだろうということを議論しておりました。   ただ、奇しくも、正に唯一出てきたのは、やはりどういうシステムを使うかということを自体をもって、重過失だ、あるいは過失だという議論をされると、それは困るのではないかと。日本の国内だけのシステムであれば、立法の側から一定のメッセージを出して、システムの設計者もそれに合わせたものを作っていきなさいということは言えるだろうけれども、やはり日本国内で閉じたシステムではないので、いろいろなシステムが使われるということは想定せざるを得ないだろうということは議論をしていたところです。   その意味では、ここに書いていただいたことは、端的に言うと我が意を得たりといいますか、大変本当に、繰り返しですけれども、有り難いと思っております。でも逆に、確かにここに書かれているとおり、システム上確認できるのに、確認しなかったと。それは確かにチョンボだよねと言われたらしようがないのかなというのは、そうだろうと思います。   最後の部分は私個人の意見ですけれども、そうだろうと思います。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   この辺りも、システムの普及の仕方にもよるのかもしれませんね。支配の移転の時期等が確認できるようなシステムが世の中の99%になったときに、あえてそうではないシステムを自発的に選択たとすれば、一切過失としては考慮しないとまで言えるかどうかは、時代によって変わってくることもあり得るのかもしれません。ただ当面は、取りあえずは確認できることが必須の要件で、そうではないシステムを選択すれば直ちに免責はうけられないという発想では制度は作っていないという整理だということでしょうね。 ○池山委員 異論はございません。そこは幸い司法判断の問題でもあると思いますし。 ○藤田部会長 そのほか、どの点でも、よろしいでしょうか。   では、事務当局からお願いいたします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。ありがとうございました。   今回は、前回の御議論を踏まえまして、免責についての考え方ですね。ここは具体的な規律というわけではなくて、本来的にはここでのテーマとして果たしてふさわしいのかという問題はあったのかもしれませんが、一応、制度ができた暁にはどういう形でこの免責制度が運用されていくのかということを、やはりここで議論をしておくということは重要な意味があるのかなという思いで出させていただきました。   今、書かせていただいた整理で、余り大きな御異論はないのかなと認識した次第でございますけれども、こういう整理を前提にしたとすれば、前回も少し御議論があったかもしれませんけれども、何か特別な供託制度を作ったりとか、競売制度を作ったりとか、なかなかそちらの方は、前回の御議論ですとワークはしないということですので、むしろ免責の問題として整理するという方向の方がいいのではないかという思いでこれを書かせていただいたわけですけれども、こういった整理を前提に、前回の御議論を踏まえまして、何か特別な制度を設けることはしないという方向性でよろしゅうございましょうかというところを、改めて確認させていただけますと幸いでございます。 ○藤田部会長 よろしいですか。   今の点についても、おおむね賛意が得られたと考えてよろしいでしょうか。   もう一つ、倉荷証券との関係でも同じ、免責についても同じ考え方ということでよろしいでしょうか。この第4の論点ではあるんですけれども、せっかくこの点について議論したところですので、免責について議論したところですので。   これも、倉荷証券については別の扱いをする理由もないとすると、特に異論がないようでしたら、差し当たり同じような規律を適用するという形で進めさせていただければと思いますが、よろしいでしょうか。   どうもありがとうございました。   それでは、若干ペースが速いのですけれども、第3の論点です。   これ、全然今までの話とは違った話ですけれども、転換の場合の処理について、今回の御提案について、御意見、御質問等ございましたらお願いいたします。   取り分け10ページの4の辺りに書かれていることは、従来示された懸念に対して、もうそれは仕方ないという一種の割り切りを示されていることになりますが、この辺りについてもこれでよいかということを御意見いただければと思います。 ○洲崎委員 洲崎でございます。4に書かれていることを、以前に発言したのは私だったと思うのですが、私自身は、懸念を申し上げたというよりは、こうなりそうですけれどもそれでいいのですよねという確認をしたつもりでおりました。正に一番最後のところに書いてあるように、別に転換を受ける義務はなくて、自分の名前を出したくなければ、転換せずに電子のままにしておけばいいのだから、問題はないですよねと、そういうつもりで一応確認のために申し上げたことにすぎませんし、この4のような整理について、特に何か問題があると思っているわけではございませんので、念のため申し上げておきたいと思います。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。 ○池山委員 すみません、何回も。池山でございます。この第3については、非常に端的に申し上げますと、中間試案から実質的な内容を変えるものではないという理解でおります。それでよろしいでしょうかと、そう読めているんですけれども、それでよいでしょうかというのを、せっかくなので念のため確認させていただければなというのが1点です。   それと、どうせ発言するとすると、もう1点なんですけれども、やはりこういうふうに理論的にすっきり書かれると、運送人の側から見ると、いかなる人からの転換を認めるかが非常に重要だというのを非常に感じます。   というのは、中間試案の段階で、転換を求めることができる、運送人の合意を得てという前提であるにしても、転換を求めることができる人について、適法な権利者であるというA案と、それから、裏書の連続等により権利を証明する者又は裏書前の荷送人というB案というのが、二つ一応両論併記になっていて、私どもとか日弁連さんはB案だったんだけれども、A案を支持する意見も一応あったと思います。   そのA案かB案かについての議論というのは、その後、必ずしも明示的にはされていないかもしれませんけれども、このようにすっきり書かれると、やはり運送人の同意を得た上で転換請求ができる人というのはB案、要は形式的資格者であると整理するのが、より一貫するのではないかという思いを強くしております。2点目は感想です。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   事務当局からお願いしたいと思います。2点目は今回の提案に含まれているということはないのですけれども、今回の一連の整理を前提とした場合どうなるかという趣旨の御質問だと承りました。よろしくお願いします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御指摘と御意見、御質問ありがとうございました。   まず、1点目の中間試案を実質的に変えるものではありませんよねという御質問ですけれども、それは全くそのとおりでございます。   ただ、今回の部会資料の9ページ、第3の2の規律は、ここは新しい規律ということにはなりますので、中間試案と何か変わるものではなくて、それに付け加えて、この転換を受けた者というものが任意的記載事項として記載されれば、それはその人が転換を受けた者だということにして、裏書の連続の判断に資するというような規律を新たに設けたということで、これまでの議論を何か変えるものではなくて、付け加えるという趣旨のものでございます。あえて違いがあるとすれば、その程度ということでございます。   2点目、頂いた御指摘につきましては、ここら辺りの整理も含めて、最終的にまたお諮りして御議論して決めていくことだろうかなと思いますけれども、今、御指摘いただいたところは検討させていただきたいと思ってございます。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。 ○池山委員 ありがとうございました。了解いたしました。 ○藤田部会長 そのほか、どの点でも御意見等ございますでしょうか。   基本的にはこれまでこの場でしてきた議論が、より明示的に書かれたという以上のものではないのですけれども、転換権者については、表現の仕方は追って検討することになるのでしょうか。従来は、適法な権利者という表現を使っていたのでしたか。 ○池山委員 使っていません。 ○藤田部会長 もし今回、第1のところでそういう表現を取らなくなったのであれば、あるいは考え直す必要もあるかもしれませんが、その当たりは追ってまた議論させていただくことになると思います。 ○池山委員 すみません。今の発言の中で、適法な権利者とかいう言い方をしたのは、私なりにはしょった言い方をしていたので、正確な言い方はもちろんA案、B案がある中で、B案のような表現がより今回の規律ぶりと親和性があるだろうと感じておりますという、そういう趣旨です。 ○藤田部会長 はい、了解いたしました。   いずれにせよ、転換権者の正確な表現の仕方については、追って検討させていただくかもしれません。   そのほか、どの点でも御意見等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。   第3の点についても、倉荷証券に同じ規律を及ぼすという考え方でよろしいでしょうか。倉荷証券について、そもそも転換というのがあるかどうか実態としてよく分からないところではあるのですけれども、殊更に違う規律を導入する理屈も立ちにくいとすれば、差し当たりは特別に何か御意見がない限り、同じような規律を及ぼすということで進めさせていただいてよろしいでしょうか。 ○山口委員 山口でございます。倉荷証券については、特にイギリスのエレクトロニック・トレード・ドキュメンツ・アクトで、明示的に、この倉荷証券という表現ではないですけれども、それと類似のものであるウェアハウス・レシートを同時にこの電子的取引文書ということで取り上げており、それに船荷証券と同様の規定を適用しています。   それから、元々私の理解が間違っていなければ、MLETRにおいてもこういう有価証券的な証券を全体について適用されることを予定されておるということと、日本の今の商法からいくと、いわゆる有価証券としては船荷証券と倉荷証券の二つがある。こういうことから考えると、特に違和感がない限り、同等の規定をしていくべきだと思います。また、特に倉荷証券の場合はかなり国内で完結する可能性が高いわけで、外国のことを余り考えずに立法できる部分があるかと思いますので、場合によっては倉荷証券の方が、ひょっとしたら執行もやりやすい可能性もあります。特に倉荷証券について、別の規定を設けるとか、特に変えるという必要はなく、むしろ同じ方が、外国の立法、あるいはMLETR、それから日本における有価証券制ということを考えても、同じ方がよいのではないかと積極的に思っております。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。そのほかどの点でも御意見等ございますでしょうか。 ○笹岡幹事 倉荷証券についてですが、ちょっと私が先の議論を忘れているのかもしれませんが、商法608条の再交付に関する規律は、電子的な倉荷証券にも適用があるという理解でよろしいでしょうか。証券を喪失した場面の善意取得との関係では、もちろん公示催告・除権決定は使わないでしょうけれども、この再交付の規律があれば、真正権利者が優先するということになると思いますので、この辺りの結果は変わってくるのかなという気はします。 ○藤田部会長 再交付については、規定をどのように整理したのでしょうか。有価証券の中で倉荷証券だけあるという意味では、日本法の中でやや浮いた規定になっているのですけれども、電子になった場合は、もうみんな同じ扱いとして再交付というのはあえて規定しない形でそろえるということだったでしょうか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御質問ありがとうございました。   商法第608条の倉荷証券の再交付の規定については、ちょっと前になるんですけれども、部会でいいますと、第11回のときに議論の対象とさせていただいて、部会資料11なんですけれども、その14ページに書かせていただいていて、そのときの議論としては、電子倉荷証券記録については、特にこの規定は設けないということが考えられるのではないかというような提案をさせていただいておりまして、ここは結局のところ、電子倉荷証券記録の場合ですと、余り紛失とかそういうものが考えにくいということで、このような考え方を提案させていただいておりまして、特段の大きな御異論はなかったのかなというのが、これまでの議論の経過かなと思っているところではありますけれども、まだ本決まりというわけではございませんので、もし違った考え方があれば、また引き続き検討することはできるかと思っております。   この論点も、多分絶対に入れては駄目とか、絶対入れなければいけないという、余り切実な話からきているものではなかったかとは思いますので、どうしてもこうでなければいけないということでもないだろうと思っておりますので、また今後の議論の展開によっては違った見解、結論を採るということはあり得るかなとは思っておりますが、取りあえず現時点での状況だけ御紹介させていただきました。 ○藤田部会長 電子船荷証券記録の喪失を扱う条文として、除権決定のようなものを制度を導入することはしないし、再交付という規定も置かないというのが、現段階での検討状況ですね。   喪失の場合、何が何でも手当がないと困ると考えるのであれば、再交付がいいのか、それ以外のものになるのかといったことを検討することになるのでしょうけれども、差し当たりは特に規律は置かない形で揃えるのが現段階での提案で、それは先ほど山口委員の意見にも沿った状態になっているという状況です。   よろしいでしょうか。   本当に倉荷証券について、完全に同じ扱いにして全く困った状態が起きないかどうかということ自身は、実態に関わっておられる方々から慎重に検討していただき、御意見いただければと思います。   ただ、原則としては、山口委員の言われたとおり、理由はないのに殊更に変えるようなことはすべきではなく、そろっている方が積極的に望ましいには違いない。その前提で、本当に全く困ったことが起きないかを最後まで検討していただくという形にしていただければと思います。   差し当たり第3の論点については、倉荷証券については規律を殊更に変えるような論点ではないという理解で、差し当たり進めさせていただきます。   そのほか、第3について、特に御意見はないでしょうか。   もしないようでしたら、第4はもう既に、全て確認してしまいましたので、ここへ書かれたとおりの扱いで当面進めさせていただければと思います。   以上で、本日検討すべきアジェンダは全部尽くされてしまったのですけれども、この際、この全体について、今日扱った全体について、御意見等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。   もし特に御意見がないようでしたら、本日の議論はこの辺り、本日の審議はこの程度にさせていただきます。   では、次回の審議日程等について、事務当局から御説明をお願いいたします。 ○渡辺幹事 本日も様々な御意見、御議論いただきましてありがとうございました。   次回、第14回の部会は、令和6年3月27日水曜日、午後1時30分から午後5時30分まで、場所は法務省地下1階の法務省大会議室を予定してございます。令和6年4月以降の部会の日程につきましては、現在省内で調整中でございます。決まり次第また御連絡させていただきたいと存じますので、いましばらくお待ちいただければ幸いに存じます。   また、次回取り扱う内容につきましても、本日までの議論の状況を踏まえて、事務当局において検討させていただきたいと存じます。   事務当局からの説明は以上でございます。 ○藤田部会長 それでは、法制審議会商法(船荷証券等関係)部会の第13回会議を閉会させていただきます。   本日は熱心な御審議を賜りまして、ありがとうございました。 -了-