法制審議会 民法(成年後見等関係)部会 第15回会議 議事録 第1 日 時  令和7年2月25日(火)自 午後1時30分                     至 午後5時24分 第2 場 所  法務省7階 共用会議室6・7 第3 議 題  1 保護者に関する検討事項         2 法定後見制度に関する検討事項その他(1) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山野目部会長 法制審議会民法(成年後見等関係)部会の第15回会議を始めます。   本日も御多用の中、御出席を賜りまして誠にありがとうございます。   本日は、久保野委員、櫻田委員、佐保委員、家原幹事、小林幹事及び杉山幹事が御欠席です。   本日の審議に入ります前に、配布資料の説明を事務当局から差し上げます。 ○山田関係官 配布資料について御説明いたします。本日、新たな部会資料として部会資料11を準備し、お送りしています。資料の内容につきましては、後ほどの御審議の中で事務当局から御説明差し上げます。 ○山野目部会長 審議に入ります。本日は部会資料11を取り扱います。   初めに、部会資料11の「第1 保護者に関する検討事項」のうちの「1 保護者の解任(交代)」について御審議をお願いいたします。この部分について、事務当局から資料の説明を差し上げます。 ○山田関係官 部会資料11の1ページから、第1の1、保護者の解任について御説明いたします。保護者について、現行の解任事由がない場合であってもその職を解く規律を新たに設けることとするかに関しては、現行の規律を維持する考え方のほかに、新たに規律を設けるものとして、その要件について複数の考え方が示されているように思われます。この要件を考えるに当たっては、保護者が自発的に辞任しないときに、それでもなお辞めさせる、すなわち解任する必要があるのはどのような場合かについて検討することが有益と思われます。そのような観点から、1ページからの1では、現行法の規律及び現行法の制度に対する指摘を整理しています。また、3ページからの2では、保護者に現行の解任事由がない場合であってもその職を解くべきときの要件について整理しています。この点については、保護者が自発的に辞任しない場合でもなお解任する必要があるのはどのようなときかといった点も踏まえて御議論いただきたいと考えています。そして、6ページからの3では、手続等について整理しています。申立権者の範囲や家庭裁判所が審判する際の資料について御議論いただきたいと考えています。 ○山野目部会長 説明を差し上げた部分につきまして、御意見をお聞かせくださるようにお願いします。 ○小澤委員 ありがとうございます。保護者が本人の状況に応じて交代することができるように、新たな規律を設けることで中間試案に向けて取りまとめをすることに賛同を致します。その上で、部会資料の1ページに示された(2)保護者と本人との間に不和が生じた場合や、本人の利益のために特に必要がある場合については、保護者の職を解いて交代できることとする考え方をとることが適当であると考えています。保護者の職を解く具体的な仕組みとしては、本人の利益のため特に必要があると認めるときなどの新たな解任事由を設けて、この事由による解任の場合は欠格事由とはならず、飽くまで当該事件についてのみ保護者としての任を解くように規定することが適当と考えています。また、現行の解任事由である、その他その任務に適しない事由については、欠格事由とはせず、家庭裁判所の判断によって、当該事件についてのみ保護者としての任を解くことを認めるように規定を改めることも引き続き検討する事項とすべきだと考えています。   このように規律を見直すことで、現在の実務において、現行法上の解任事由には当たらないために、家庭裁判所が保護者を交代させるのが適当と判断した場合でも、保護者に辞任を勧告したり、別の保護者を追加選任して権限を分掌した上で辞任につなげていったりしている事案がありますが、そのような場合においてもスムーズに保護者の交代につなげていけるのではないかと考えています。   また、部会資料の3ページのイに、家庭裁判所に寄せられている、親族の希望に沿うように財産を使わないといった不満の具体例が挙げられて、これらの事情が新たな解任事由に該当する事案であることを念頭に置くのかという指摘がされていますが、これらの事情のみをもって新たな解任事由に該当すると考えるべきではなく、飽くまで本人の利益のために特に必要がある場合などに、家庭裁判所が総合的に判断して解任すべきかどうかを判断すべきと考えています。   なお、新たな解任事由についての審判の申立権者は、現行の解任に係る規定と同様に、裁判所の職権による解任も併せて規定されるのであれば、現行の解任審判の申立権者と同様の後見監督人、被後見人若しくはその親族、若しくは検察官でいいのではないかと考えています。 ○野村幹事 ありがとうございます。保護者の交代は、保護者とチームの支援方針の違いが明確になっている場合や、本人や他の支援者とのコミュニケーション不足などで苦情となった場合などに、本人や他の支援者、家庭裁判所等から辞任を求められても辞任しようとしない場合にニーズがあります。このようなケースでは、当該事件のみ保護者の交代ができればよく、現行の解任のように欠格事由とする必要はないと思われます。   保護者とチームの支援方針の違いが明確になっている場合の例としては、チームとしては本人が現在の住居で生活を継続するという方針であるのに、保護者が施設入所を検討するなどの例があります。他の支援者とのコミュニケーション不足については、リーガルサポートでは各支部で受け付けた苦情を類型別に集計していますが、説明・配慮・コミュニケーション不足といった苦情類型の件数が最も多く、また、態度といった苦情類型もあります。例えば、保護者が上から目線の態度をとって、本人や他の支援者とのコミュニケーション不足により、チーム内での関係がうまくいかず、本人の支援に支障を来しているケースで、支部が間に入って辞任を促しても、なぜ自分が辞めなければならないのかと納得してもらえないことがあります。こういったケースは解任できないし、辞任もしてもらえない。このような場合に交代させることができると、本人の利益になると思われます。   交代の要件としては、「本人の利益のために特に必要があると認められるとき」という要件がいいのではないかと思われます。現在でも家庭裁判所から辞任を求められて辞任しているケースは結構ありますので、現場の感覚では、この要件でも家庭裁判所に御判断いただけるのではないかと感じているところです。保護者の地位にとどまる利益は事実上の利益であって、法的利益ではないと考えられますので、即時抗告の制度は不要であると考えます。   申立権者については、申立ての多発による混乱が生じないようにするため、解任の申立権者から大きく広げる必要はないと考えます。ただ、中核機関が法制化される場合は申立権者とするべきではないかという意見がありました。 ○竹内(裕)委員 ありがとうございます。交代については、4ページの25行目のウ以降で、安定的な運用のためには客観的かつ明確な要件が必要だと指摘はあるのですけれども、やはりある程度抽象的にして総合考慮をする、先ほど小澤委員からも御発言がありましたが、例えば、今の846条のその他任務に適しない事由があるときを少し発展させていってというようなやり方であるとか、あとは同じように、裁判所が選んだ人を解任するということで、刑事訴訟法の38条の3に国選弁護人の解任規定がありますが、そこでは、その他職務を継続させることが相当でないとき、そのような表現もありますので、そういった、ある程度総合考慮をできるような要件が適しているのではないかと考えています。   また、弁護士会の中で出た意見なのですけれども、6ページの23行目以降で、これは申立権者について記載されているのですが、申立権者は絞った方が濫用を抑制できるであろうという意見があり、様々意見があったところなのですが、資料をどうするかという問題はあるにしても、弁護士の中では、申立て制度にすると、濫用されてしまったり、逆に何もせず漫然と続いてしまうという懸念もあるので、例えば申立権ということではなく、職権によるということも検討されていいのではないかという意見や、第二読会でも出ていたかと思いますが、保護者の任期制で対応するという方策もあるのではないかという意見もございました。   最後、6ページの9行目のキで欠格事由について指摘されています。新たな交代の事由について欠格事由にしないということは、もちろんそうだとは思うのですけれども、そもそも民法847条2号の欠格事由自体がどこまで実際必要なのかというか、実効性があるのかということも私の方ではよく分からなくて、そのものを削除ということも検討の余地があるのではないのかと思った次第です。 ○佐久間委員 大きく分けて3点あります。   1点目は、多くの方が言われたこととよく似たことなのですけれども、ゴシックの1には(1)と(2)がありますけれども、(1)について、保護者に何らかの義務の違反が認められる場合を念頭に置いて、解任事由を広げると書いてあるのですけれども、現行の846条でしたか、「その他後見の任務に適しない事由」において義務違反がおよそ排除されているということではないと理解しておりますので、これは広げるのではなくて、むしろ明確にするという表現の方がいいのではないかと思いました。   (2)については、これはこれで賛成であります。ありますが、その上で、将来の欠格事由にするかどうかということに関しまして、ほかの方もおっしゃったことだと思いますが、三つに分ける必要が私はあると思っています。一つは、不正行為があった場合と著しい不行跡がある場合、二つ目が、それ以外の任務に適しない事由がある場合、三つ目が、それら以外に本人の利益のために特に必要がある場合です。この三つに分けた上で、弁護士会では欠格事由はもう全部やめようというお話があったということですけれども、私は一応、1番目のものについては、未来永劫かはともかく当面は欠格ということに、ある意味、意図的なというか悪性の高いものなので、欠格事由として残す方がいいのではないかと思っています。それ以外の任務に適しない事由は、端的に言うと能力不足の場合が多いと思うのですけれども、能力不足の場合を欠格事由とすると、いろいろな人が問題になり得るので、これは入れるべきではないという意味で、条文の上で号を三つに分けて、それで、1号の場合は云々というふうな定め方をするのが適当ではないかと思っております。これが1点目です。   2点目は、非常に細かいことで申し訳ないですけれども、3ページの4行目に、「動きが悪い」という表現があります。この「動きが悪い」が何のことがよく分からない。将来も説明としてそのまま残るかどうか分かりませんけれども、これが残るのは少しまずいのではないかと思いました。あるいは、「働きが悪い」なのかもしれませんが。2点目はそれだけのことです。   ごめんなさい、1点目に戻って、客観的、具体的な事由にすべきだということについては、竹内裕美委員がおっしゃったことに全面的に賛成だということを付け加えさせてください。   3点目は、申立権者のところなのですけれども、これも弁護士会で絞った方がいいのではないかというお話が出たということですが、私もその方向が一つ考えられていいのではないかと思っておりまして、843条2項は今、成年被後見人、本人と親族とその他の利害関係人となっておりますよね。二つ疑問がございまして、一つは親族というのは725条の親族のことなのですよね。しかしそれは広すぎるのではないかと思っていて、これを狭めるということを考えた方がいいのではないかと思っております。   二つめは、「その他の」という「の」がすごく気になっています。「の」と入っているので、成年被後見人は、まあそうなのだと思いますけれども、親族も一般的に利害関係人だという読み方をすることになると思うのですけれども、親族は言っては悪いけれども他人なので、審判について何らか法律上の利害関係があるというわけではないということから、この文言のままだと法律上の利害関係に限られないことになってしまうのではないか。これも広すぎるので、「利害関係人」を、少なくともこの審判をする、そして事務処理を誰がするかということについて、法律上の利害関係のある人を指す意味で私は使う方がいいのではないかということから、僅かな文言の修正になるのかもしれませんけれども、実質を検討した上で、「その他利害関係人」にするなど、申立権者を狭める方向で文言を考えた方がいいのではないかと思いました。   その上で、弁護士会で出たという、余り広げすぎるのはよくないという意見に賛同しつつ、他方で、身寄りがなくて本人が後見相当であるというときに、今のままでは対応できないかもしれない、この場合に限ってなのですけれども、市町村長がいいとも思わないし、検察官がいいとも思わないし、少し難しいのですけれども、何か知恵を絞る必要があるかなと思っています。 ○遠藤幹事 保護者の交代に関して、大きく3点ほど意見を申し上げたいと思います。   まず、小澤委員の御意見との関係ですが、本人の利益をどう考えるかについては、例えば本人との不和が生じた場合や本人の利益のために特に必要である場合に、保護者に裁量の逸脱・濫用がなくても解任できるという規律にすることになりますと、いずれも一定の合理性がある本人支援の方針の優劣を裁判所が検討するということになりますが、これは多分に価値判断を含む、言わば当不当の問題ということになり、また、御本人の意向もいろいろ左右されてくるといったこともあると思われます。こういったことを併せますと、本人の利益ということについて、そのような当不当の問題を前提として解任をするという規律になるのであれば、裁判所の判断として難しいところがあると思っております。   その上で、解任の要件をどう考えるかについては、部会資料には、現行法制定時からの議論として解任の要件が基本的に財産管理を念頭に置いて整理されてきた旨の記載がありますが、第二期基本計画などでは、後見人等がチームの一員として適切に本人を支援することができるよう、裁判所も解任権を背景とする監督を通じて必要な範囲で指導をするといったことが期待されており、裁判所も現行法を前提として、身上保護事務に対する在るべき監督の方向性について議論を進めているところでございます。このような後見監督の在り方に関する議論を前提とすると、財産管理事務に解任事由が認められない場合であっても、後見事務の遂行に当たって、意思の尊重や身上の配慮といった点に関する義務違反がある場合には、保護者の職を解く事由になり得ると考えております。   具体的には、先ほど委員、幹事からの御意見がございましたが、保護者が本人との関係構築や御本人の権利擁護のためのチームとの連携に当たって、本人の意思の尊重や身上への配慮を欠くと認められる場合には、それ自体をもって解任事由に該当し得るのではないかという議論がされているところでございます。家庭裁判所に寄せられる様々な不満の例、これは部会資料3ページ1行目以下にも挙げられておりますが、こういった事例の中にも、つぶさに見ていきますと、御本人の意思の尊重や身上への配慮を欠く場合が相当数あるのではないかとも考えらます。こういった、特に身上保護を念頭に置いた監督の在り方に関する裁判所の今の議論も踏まえて考えますと、解任事由の要件そのものについては現行の規律を維持するという考え方もあり得るのではないかと考えております。   最後に、解任の結果、直ちに欠格とするかどうかという点についてですが、解任に至る事情は個別の事案ごとに様々であると考えられることから、先ほど委員、幹事の御意見にもありましたとおり、解任したことを常に欠格事由とするものではなく、例えば多額の横領、これは不正行為の典型例でございますが、そういった場合など個別の事情を勘案して、およそ保護者としての適格性を欠くといえるような場合に限って欠格とするといったような規律を設けるということも相当ではないかと考えらます。 ○根本幹事 私からは5点申し上げたいと思います。1点目は、現状の実務の認識としまして、不正な行為については解任されているケースがあると理解をしていますけれども、著しい不行跡ないしその他その任務に適しない事由に該当するとして解任されるというケースはほとんどないのではないかと承知をしています。もし間違っていましたら、後で遠藤幹事から御指摘を頂ければと思いますが、その認識を前提といたしますと、いわゆる不正行為については、欠格事由かつ解任事由と考えるということが適当だと思いますけれども、例えば著しい不行跡ですとか、その他その任務に適しない事由については、欠格事由を伴わない解任事由と考えるというのが適当ではないかと思います。その他その任務に適しない事由に、更に本人の利益のために特に必要がある場合というのを加えていくという考え方もできるのではないかと思っています。   先ほど遠藤幹事から、解任事由とした上で、欠格事由とするかどうかの御判断をその都度されるという御提案もありましたけれども、現状は解任事由イコール欠格事由になってしまっているがゆえに、手続に慎重になり余程の事案でなければ審理に進まないということですとか、逆に欠格事由にもなっているから審問を必須とされているという手続的な負担もありますので、法律上、事由ごとに欠格事由に当たる解任事由なのか欠格事由に当たらない解任事由なのかということを分けることによって、審問を必須とするのか、審問するかどうかを裁判所で御判断いただいて手続的な負担を柔軟に設計することも可能になります。辞任を促される側にとっても、並列的な解任事由、つまり不正行為を自分はやっていないにもかかわらずなぜ解任されるのだという思いが、特に実際に不正がない場合には後見人側にもそういった意識が生まれますので、欠格事由に当たる解任事由と欠格事由に当たらない解任事由を分けるという意味は、辞任を促される場合でも効いてくるといった点にもあるのではないかと思っています。   それから、2点目です。本人の相性が悪いということについては、選任の問題であって、ここの場面の問題ではないと理解するべきではないかと思ってはいます。この点についてはパブコメ等で、どのように考えるのかということを問うてもいいのではないかと思っています。   それから3点目です。先ほどの遠藤幹事の御指摘にも関係しますが、裁判所は当不当を判断するということは難しいというのは、現状の実務でもそのように家裁実務は考えておられるという認識ですが、であるがゆえに、交代ですとか解任の場面というのは、多くの場合は不正な行為以外は当不当が実際のところやはり問題になるということだろうと思います。中核機関が法定化されるということを前提に考えますと、中核機関の意見を基本的には尊重して判断をしていただくということによって、家庭裁判所が当不当を判断することも可能になるのではないかと思っています。   そのこととの関係で、最後になりますが、部会資料7ページの資料の収集のところで、調査嘱託に応じない場面が想定されるのかということが書かれています。実際現状も、例えば申立て時などに医療機関等に家庭裁判所が調査嘱託を掛けても、親族間紛争があるようなケースでは、親族間紛争に医療機関が巻き込まれたくないということから、御本人の同意ないし身元引受人の同意がなければ調査嘱託には応じないという回答が実際にされているところではあります。家庭裁判所が先ほど申し上げた当不当を適切に判断するという意味でも、いわゆるクリアリングといわれるような、調査嘱託とは別の、回答義務を課すかどうかは、これは中核機関への負担の問題があるので、引き続き議論が必要だとは思っていますけれども、調査嘱託とは別のルートを手続上明確にし、親族間紛争があるような事案であればあるほど、中立的な機関に裁判所が意見を求め、回答していただくということが必要になると思います。現状の調査嘱託以外に手続規定を明確に設けることは必要なのではないかと思っております。 ○青木委員 まず、2ページ以降に書いていただいています具体的に必要とされる事情については、ここに書かれていることもありますし、加えまして、先ほどの最高裁判所のご意見とも関わりますが、ご本人さんの生活支援に関して、ご本人さん若しくは支援チームの方々と後見人との間で方向性が一致をしないと、そのことがひいては関係性の不全や信頼関係に支障が出て、結果として本人さんの生活や権利に不利益になっているというような事態も想定されるのではないかと思っております。中間取りまとめ案の中にはこうした場合についても具体的な事情としてお書きいただければと思っています。   なお、先ほどから何人かの方から裁判所から求めて辞任してもらうこともあるので、というご発言があるのですけれども、裁判所の立場としては、解任事由がないにもかかわらず辞任を求める、促すということは監督権の一環としては難しいということが基本的な見解のはずだと思いますので、裁判所から積極的に職を辞することを後見人に求めることができるのは、解任事由がある場合であろうと思いますので、解任事由がないにもかかわらず辞任を求めるということは実務でもされていないと考えます。したがって、やはり、辞任・選任という場合と、解任事由が明確にある場合とは別にもう一つ、解任事由まではないけれども辞任・選任によらずに交代をする場合、という三つの類型を明確に位置付ける必要があると考えています。   次に、本人の相性による交代を認めるかにつきましては、相性ということだけですと、いろいろな相性、好みということがありますけれども、以前にも他の委員からのご意見がありましたように、選任の段階で本人の意向、意思に、従うというわけではないですけれども、できるだけ尊重しようということがありましたので、その裏返しといいますか、ここの交代の場面においても、本人の意思ということは十分に尊重されるべきだとは思います。ただ、これも選任の段階と同様に、それに従うということではなく、本人の意思をその他の事情等を反映した上で、交代するような不利益性につながっているかどうかという観点で考慮するという位置付けがいいのではないかという意見として、中間とりまとめではご紹介を頂ければと思っております。   次に、最高裁判所から、さきほど、違法性に基づく解任事由について、今後は身上保護や意思決定支援も含めたものに監督の範囲が充実することによって、そこで解任事由になるものも広がるのではないかという趣旨のご発言がありましたけれども、明らかな財産上の不正等のように明確な客観的な基準があるものに比べ、身上保護や意思決定支援のように、当不当、適正・不適正というものに幅が認められるものについて、それが明らかな権限濫用、逸脱というところにまで至ることを認めることはなかなか難しいということは今後も同じであると考えています。したがって、現行の解任制度の中に、身上保護や意思決定支援も含めて考えるということにしても、実際には裁判所が解任の判断には至らないということになると思います。一方で、今ここで議論されていますのは、そういった明確な権限濫用、逸脱には当たらないけれども、本人の不利益になるものについては、交代ということが必要なのではないかということですので、現行の解任事由の中に幅広く、財産管理面以外の違法性も含めて検討すればいいのではないか、という最高裁のご意見では難しいと考えられます。   一方で、財産上の不正等についての解任を欠格事由と結び付けて全ての事案において後見人をできなくするという現行の制度は、二読目でも言いましたけれども大きな有用性がありますので、先ほど佐久間委員からご発言いただいたように、欠格事由をきちんと類型化した上で、法律上、欠格事由に該当するものとしないものは分けて考えるという制度の方が、予測可能性があり、解任申立てをされた後見人にとっても防御を含めた対応可能ということにもつながりますので、裁判所が欠格事由に当たるかどうかを個別に判断するという制度ではない方がいいと考えております。   最後に、申立権者ですけれども、利害関係人も含めるということは幅広すぎると考えられますし、親族間紛争や虐待事案などが典型ですが、本来交代する理由がないにもかかわらず、様々な関係者による交代の申立ての濫用等の危険もあると思いますので、私は申立権者は限定すべきだと思います。本来は四親等内親族では広すぎるとは思っております。ただ、どの程度の限定を加えるかはなかなか難しいということもありますので、利害関係人は含めず、申立権者と同様とするしかないのかと考えております。   また、ここでも、終了(取消)の申立ての時にも申し上げたことですけれども、市町村長における交代の申立権というのが、福祉三法との関係で盛り込むことを是非検討いただきたいと思っています。市町村長申立てをした事案において、選任された後見人が首長申立てをした趣旨にそった事務をしないような事案についての苦情が中核機関等にで上がってきております。そういった場合に、先ほど佐久間委員からも話がありましたが、本人が交代の申立てをすることがなかなか難しいという場合になりますから、やはり市町村長が交代の申立てをできる権限を置いておきませんと、市町村長申立てが期待していた適切な事務ができない事案につき申立て側が対応ができないという事態では困りますので、是非福祉三法での対応をご検討いただきたいと考えているところであります。 ○星野委員 今まで出た意見とほとんど同じなのですが、実務上のところで、今、なかなか解任要件にまで至らないところでの辞任の促しも難しいということについては、今まで出た意見のとおりだと思っています。私も実際経験した案件では、追加選任をするという形をとり、そして、事務分掌を行って追加選任をされた者のみに権限を与えることで、従前の者は権限がなくなった形で残ることになるので何もできなくなり、結果的に辞任につながったというものでした。家裁からの強い辞任要請がなくても、事実上何もできなくなっている中で辞任するとったケースを、追加選任された立場として経験があります。やはり裁判所が積極的に辞任を促すことが難しいというのは今、青木委員が言われたとおりだと思います。ですが、このような実態においては結果的に、その残っていた期間に、何もやっていない後見人が報酬付与の審判を求めてくると、何もやっていないにも関わらず本人が報酬を負担しなければならなくなるという問題があるので、現状のやり方では本人にとってうまくないので、今回の1(2)のような仕組みが必要だと思っています。   悩ましいところが3ページのイの部分だと思います。2ページのアは今の解任事由に近い理由になってくるのですが、イのところをどう判断するかというところで、先ほど裁判所の方からも、身上保護であるとか意思決定支援のところ、チーム支援というところをこれから監督の対象としてしっかりと見ていくというお話がありました。この部分のところを、例えば、これは858条の今ある身上配慮義務の具体的な中身が何もないというところで、今後、具体的な身上配慮義務というところと照らしたときに、新しい意味での改任、交代を促すのかというところの判断を考えるということも一つあるかと思っています。   それから、申立権のところについては、今までの話もありましたとおり、イメージとしては割と職権に近いイメージがあり、そしてさらに、利害関係者というよりは客観的な立場で判断されるということで言うと、今までも意見が出ました市町村長による申立てであるとか、それから、情報が中核機関の方に集まってくることが今後予想されますので、中核機関で集められたいろいろな情報を家庭裁判所の方が受け取るという仕組みがしっかりないと、家庭裁判所だけで判断する、特にイの部分については難しいのかなと感じています。 ○河村委員 ありがとうございます。短く私の意見を述べさせていただきます。本人の利益のために特に認められるときには交代できるという規律を新たに設けるということに、たくさんの委員の方がおっしゃった意見ですけれども、そこに賛成いたします。短く理由を述べるとすれば、今の規定のままでもその規定を読み込むことができるというようなお話もありましたけれども、そういう今の規律、規定の下で交代がしにくいということが正に指摘されているということだと思いますので、より柔軟で使いやすい制度にするためにも、ここのところは交代の理由を広げて定めておいていただけるというのは、とても大事なことではないかと思っております。 ○小出委員 ありがとうございます。まず保護者の交代に関して、これまでより幅広く認めることに関しては、成年後見制度の利用促進の観点から望ましいことと考えております。その上で、部会資料の記載外ではありますが、これまで発言させていただいたとおり、交代に伴う善意の取引の相手方の保護に関して、どのような場面で具体的な保護を頂きたいか、背景等も含めて簡単に発言させていただければと思います。   御存知のとおり、金融機関での取引に関しては、日常・継続的に御利用いただいておりまして、後見人等の代理権の保有者の方には代理人用のキャッシュカード等も交付するケースもあり、その場合はATMでのお取引等も可能です。今後、交代に関して幅広く認められていくということに関しては、先ほど申し上げたとおり、望ましいと考えておりますけれども、一方で、保護者の交代に伴い、旧保護者の代理権自体は消滅していますけれども、御本人、旧保護者のいずれからも同届出がなされていないために、旧保護者が代理権者を騙って取引を行うといったトラブルも想定し得ると考えております。   特に、金融機関の取引等、日常・継続的に代理権者が取引されるケースにおいては、後見利用開始時には登記簿等で代理権の存在を確認するものの、実務上、後見人の変更登記がされても、即時に取引の相手方が認知することは困難です。まして、代理人用のキャッシュカード等を交付している場合には、ATMでの取引は人手を介さないため、金融機関が登記簿等の提示を求めるということも難しく、預金者の御本人から届出を頂いて初めて交代が分かるという状況です。   こういった実情を踏まえまして、保護者の交代に関して、本人から取引の相手方へ保護者交代の届出を頂くというのが双方にとって負担の少ないやり方だと考えておりますし、そのため、交代に伴い本人から取引の相手方へ届出がない限りについては、取引の相手方は善意であるとして、旧保護者によって行われた代理行為について保護されることを明確化していただきたいと考えております。   また、本件については交代の場面だけではなくて終了の場面も同様と考えておりまして、後見の期間の問題もありますけれども、やはり終了の場面においては被後見人のおかれた状況、医学的な状況の変化等も含めて、しっかり関係者間で確認をした上で終了していくということが、御本人にとっても安心ではないかと思いますし、そういったプロセスも踏まえて、取引の相手方としても終了の届出を頂けるようになっていくと有り難いと考えております。 ○佐久間委員 この見出しが「保護者の解任(交代)」となっているのですけれども、辞任の方は何も考えなくてもいいのかということが気になりました。もしかしたら私が完全に誤解していたのかもしれませんけれども、844条は、「正当な事由があるとき」は、家庭裁判所の許可を得て辞任できると。この「正当な事由」というのは私は相当厳しいものなのかなと思っておりました。そう思っていたために、結局のところ本人も後見人も、「もうこれは少しなぁ」という状況になっているときでも、「少しなぁ」という程度の状況では解任はできないし辞任もできないということで、不自由なのかなと思っていたのです。   ただ、今日いろいろな方の御発言によると、家庭裁判所が促して辞任していることがあるということのようなので、なのであれば、「正当な事由」はこのままでいいのかもしれませんけれども、その事由に当てはまり得る場合をもう少し、解説でもいいし、ここでのコンセンサスでもいいですけれども、広いのですよということを明らかにしておいた方がいいのではないかと思いました。そうすることによって、悩ましい場面ではなるべく、それこそ自発的辞任を促す、それでも駄目なときに、何か理由があれば解任に行く、そういう立て付けの方が好ましいかなと思いました。 ○青木委員 先ほど発言を1点漏らしましたので、追加で発言いたします。5ページのエのところに、交代に伴って次の交代すべき後任についてもセットで提出する、この人に代わってほしいということも含めての申立てであるようにも思われると書いていただいていますが、確かにそういう場合もあると思いますけれども、中には選任されている方が適切ではないということで、誰に代わっていいか後任の方を推薦できるわけではないけれども、とにかく現状を改善したいということで交代の申立てをするというニーズは非常に多くあります。   例えば、今ですと、弁護士会とか専門職団体が推薦した方については、専門職団体の方で後見人になった人に話をして、何とか辞任をしてもらうということまでは行きますけれども、その後任については、また裁判所からそれぞれの団体に推薦依頼をしてもらって、誰かそれに代わる人を推薦するということにしております。必ず、後任の推薦とセットということにされますとかえって申立てをしにくくなることもございまして、交代を申立てるについてはセットではなく、あくまでも誰か他の人に交代してほしいということだけで申立てができるようにしていただきたいと思いますし、それによっても、裁判所の方は、各推薦団体に後任の推薦を依頼して選任することが可能ですので、そういう趣旨で検討していただければと思います。 ○波多野幹事 今、青木委員から御指摘あったところでございまして、ここは本部会資料を作成するに当たって、今まで交代とかという言葉を見出しで使ってきたのですけれども、現行法の条文の建付けにすると、解任の規定と絡めて整理を進めていくことが分かりやすいのかなと思いつつも、ニーズとしては交代をしたいというニーズとして我々としては受け止めてきたところです。交代というのは違う人に替わるということですから、誰も後ろに候補者がいないのに辞めてほしいという場面とは違うものだと認識をしていたところでございました。そうしますと、後ろに人がいるので、今の人が辞めてもすぐ誰か保護者がいて、保護を開始するということが確保されているという状況で、替わってもらいましょうということと、後ろに誰もいないのに一旦保護者をなくしてしまいましょうとなると、場面が全然違うのではないかと思っておりまして、先ほど佐久間委員から御指摘あった辞任のところも、若干それが影響しているのかなという気もしていまして、辞任の要件というのは、後ろの人がいなくなることを前提にしている、一般的な辞任ですので、正当な事由という言葉で規定されていますが、感覚的なものかもしれませんが、後任の候補があるときの正当事由の判断と、後任がいないときの判断とは、もしかすると違うかもしれないというところはあるのかなとも思ってはいるところでございまして、ここは、後ろに人がいなくても、この新しい解任事由というものを認めるとなると、大分場面が変わってくるような気もいたしまして、ここは部会の先生方がどういう場面を想定してこの新しい規律を考えるのかというところは、もう少し御意見をいただいた方がいいのかなと思った次第でございます。 ○根本幹事 まず、佐久間委員の先ほどの御指摘との関係で行きますと、実務上の感覚としましては、単に後見人がやみくもに辞めたいということを言っている、後見人自身の一方的な事情ということでない限りは、裁判所の運用としては実際、辞任を認めていただいているケースがほとんどではないかと承知をしております。正当な事由というより、裁判所が相当と認めるときは辞任が認められるという方が、今の実務感覚と法制上の文言としては一致するのかなとは思います。   それから、波多野幹事から御指摘がありました点です。後任者が決まっているか決まっていないかは区別されていないと思います。例えば辞任の申立てと選任の申立てが同時になされ、選任の申立てには必ずしも候補者がいない状態で選任の申立てがされるというケースもありますので、特定の人物としての後任者がいるかいないかというところでは区別をされていないように承知をしています。もちろんそういったケースのときに、候補者がいませんので、それぞれの専門職団体で果たして推薦回答ができるのかというところで、実務の現場として家庭裁判所との間での調整というのはいろいろ苦慮する場面というのはもちろんございますけれども、後任者がいるかいないかというのは、特定の方が結局候補者として挙がっているか挙がっていないかということになりますし、裁判所はどなたを選ぶかは、飽くまでも職権で専権事項とされていますので、必ずしも特定の人物がいなくても、想定されている場面ということではないかとは思います。 ○星野委員 私も、今の辞任のところは、今、根本幹事がおっしゃったのと同じなのですが、自らがもう辞めたいというときは割と、かなり裁判所としては辞任を認めることが、私も実務上、多いと思っています。ただ、今ここで問題になっているのは、後見人自身は辞めないと言うけれども、チームから見ると交代した方がいいのではないかということについて今議論しているというところで言うと、そこが正当な理由というところは、かなり家庭裁判所は厳密に、解任に当たるような要件がない限り辞任を促すことはできないと言われているのが実務上の感覚、私もそのように思います。   それと、交代の相手、後ろの人がいるかどうかのところは、これも今の議論と同じで、特に専門職の場合は、辞任をするときは必ず、特に社会福祉士会は、相談をすることをどの県でも求めていて、つまり、いきなり辞めてしまうのではなくて、後任をどうするかというところを、例えば同じ職種がいいのか別の職種がいいのかも含めて、相談できる体制を持つところが増えてきています。ですので、交代の要員がいる場合もありますし、それがつかない場合もあるのですが、それは今、根本幹事がおっしゃったとおりで、交代の人がいるかいないかというところが問題になるというよりも、やはり辞任という判断をどう家庭裁判所に伝えるかというか、そこが大きな問題かなと考えています。つまり、権限を持っている保護者が、自らの勝手な主観的な判断で辞めるということも適切ではないと思いますし、次にどんな人がいることを想定した上でそういうふうに話しているのか。そういうことが想定できないような緊急事態もございます。急に倒れてしまって続けられなくなってしまって、辞任、交代の選任手続を職能団体の方で支援するということも実際はあります。ですので、どちらを想定しているかというところは余り大きな問題ではないように認識していたというところが意見です。 ○遠藤幹事 裁判所における後見人の辞任についての運用に関するお話がありましたので、御説明申し上げたいと思います。現行法では、辞任は正当な事由がなければ認められないとされておりますけれども、裁判所の実務運用における一般的な考え方として申し上げれば、この正当な事由については、例えば後見人と御本人や御本人の周囲のチームの方との関係がよくないといったようなことをきっかけとして、後見事務の遂行に支障を来していていると考えられるような場合も想定しております。また、このような場合には、後見事務の遂行が難しいということになるところ、これを突き詰めていけば、後見人にはその事務の遂行に当たって裁量の逸脱・濫用が認められ、その任に適さないということにつながってまいりますので、そのような場合には、解任権を背景とする裁判所の一つの作用として、辞任を促すといったようなことが実務上あるものと承知をしております。   そのように辞任について考えますと、先ほど波多野幹事から御指摘があった、後任者がいる場合といない場合とで、一般的には、この点に関する判断を違えているものではないのだろうと考えております。ただ、その上で、後任者を準備するかどうかという点については、裁判所としましても、後任の候補者を立てていただくことは非常に良いことなのではないかとも考えております。特に、解任申立ての理由が意思尊重や身上配慮の義務に違反するような場合には、本人の保護の隙間ができるだけ生じないようにする必要があるということもありますので、解任を申し立てる際に、申立人において、御本人の状況に照らして適任と考える方を後任の候補者として立てていただくことによって、後任者が付くまでの期間を不相当に長く取ることなくスムーズな交代につなげることができ、有用ではないかと考えられるところです。 ○山野目部会長 佐久間委員のお話を伺った後、だんだんにここの論点の締めくくりに向かおうと考えています。 ○佐久間委員 今、遠藤幹事が教えてくださったことを前提にすると、辞任についてもやはりもう少し広げて、緩やかに認めるようにした方がいいと思いました。それが一つです。   それと2点目は、波多野幹事が先ほどお問い掛けくださったことなのですけれども、不正行為があるとか著しい不行跡があるというときは、後任が決まっていなくたって、それはもう解任をすべきだし、正当な事由についても、遠藤さんが例として挙げられた、もう後見事務が前におよそ進まないのだというときだと、後任が決まっていなくても辞任を認めるべきだと思います。ただ、もし辞任について「相当な理由があるとき」などのように認める事由を広げた場合は、その「相当な理由」の認定の中で、そして解任のときには「本人の利益のために特に必要がある」などとする場合も、この「特に必要がある」というところの中で、後任が決まっていないのに辞める、やめさせるというのはそれに当たらないという形で、要件の中に組み入れて判断できる場合がかなり多いのではないかと私は思いました。   ですから、必要的に後任者を推薦しろというのは適当ではないと思います。例えば不正行為のときだったらそんなことは要らないのでという意味で。ただ、辞任とか解任を認めてほしければ、候補者をきちんと立てておくことが望みどおりの審判が出ることにつながるという、そういう整理はできないのかなと思いました。 ○山野目部会長 遠藤幹事に次の機会に向けて御検討のお願いでございまして、著しく不公正な行為があったことを事由とする解任の場合には欠格事由にするということを考えつつ、現行の法制を余り大きく改める必要がないという見方もあり得るという御意見を承って、よく理解することができましたとともに、ある解任の裁判が欠格事由を構成するかどうかがどの時点で分かるかということが明確になるような仕方で意見を調えていただいて、次の機会にまた御披瀝を頂ければ有り難いと考えます。   それから、小出委員にお願いですが、次回に向け、お話しになったお悩みは理解しましたけれども、民法112条や同法478条が設けているような、現在の一般法理の下で手当てが及ばないような局面がどういうところなであるかということを、具体的にもう少し考え込んで、明らかになっていくというふうに進めばよろしいと考えますから、また御教示を頂きたいと考えます。   それから、本日、保護者の解任、交代について御議論いただいて、多岐にわたる御意見を頂戴し、大体、委員、幹事がお考えいただいているところを理解しました。解任の裁判に対して不服申立て、現在の手続でいいますと即時抗告を申し立てることができるかどうかについて、明確に言及なさった委員、幹事もおられましたが、そうでない御意見もありましたから、これは本日の御議論を整理させていただいた上で、中間試案のたたき台を検討する際に改めてそこを意識してお諮りしようと考えております。   特段なければ次の部分に進みますけれども、よろしいでしょうか。   それでは、続きまして部会資料11の7ページから後、2といたしまして「保護者の職務及び義務」、それからもう一つ、3といたしまして「本人の死亡後の成年後見人の権限(死後事務)等」、この二つの部分について審議をお願いいたします。事務当局から資料の説明を差し上げます。 ○山田関係官 部会資料11の7ページから、第1の2、保護者の職務及び義務、第1の3、本人の死亡後の成年後見人の権限等について御説明いたします。   まず、保護者の職務及び義務に関し、8ページからの1では、身上配慮義務等について整理しています。この点に関しては、基本的には現行の規律を維持するものとする考え方があり得るように思われますが、この点について御議論いただきたいと考えています。また、10ページからの2では、財産の調査及び目録の作成の義務等について整理しています。現行の財産の調査及び目録の作成の義務等の成年後見人の事務の中には、包括的な財産管理権があることを背景とするものがあります。この点について、法定後見の開始の要件においてどのような考え方を採ることとするかとの関係で、幾つかの考え方があり得ると思われます。この点について御議論いただきたいと思います。そして、14ページからの3では、保護者が本人の財産状況を正確に把握できるような仕組み等や、追加的に代理権の付与や同意を要する旨の審判の申立てをする義務の有無、医療の場面における同意について整理しています。これらの点についても御議論いただきたいと思います。   さらに、本人の死亡後の成年後見人の権限等に関し、16ページ以下で整理しています。この点に関する現行の規定は、成年後見人が本人の財産について包括的な管理権を有していることを前提としていますが、法定後見の開始の要件においてどのような考え方を採ることとするかとの関係で、この点について御議論いただきたいと考えています。 ○山野目部会長 御説明を差し上げた部分につきまして御意見を承ります。 ○小澤委員 ありがとうございます。まず、保護者が負う本人の意思の尊重や身上配慮に関する義務について、部会資料に示されたような形で中間試案に向けて取りまとめることに賛同します。   なお、保護者の本人の財産に関する調査義務や財産目録の調製義務については、現行の規律における保佐人や補助人による財産調査や財産目録の調製は、特定の行為に関する個別代理権の範囲内で作成することとすれば足りると考えられることから、現在の規律を維持するとの考え方に賛同をします。もし保護者の個別代理権の範囲を超えて本人の財産を包括的に調査する必要があると家庭裁判所が判断した場合には、保護者に本人の財産を調査するために必要な一切の事項について代理権を付与するか、家事事件手続法第124条の規定に基づいて調査権限を付与すればよいのではないかと考えます。   郵便物などの管理については、保護者の代理権が一定の範囲の個別代理権とする規律になったとしても、一定期間郵便物などを管理する必要がある事案はあると考えますので、本人の状況や必要性に応じて保護者が郵便物などを管理できるよう、引き続き検討すべき事項とする必要があると考えます。   次に、死後事務についてですが、部会資料16ページの(2)の考え方で中間試案に向けて取りまとめることが適当であると考えています。以前の部会でも述べましたとおり、少なくとも火葬、埋葬に関しては財産管理の権限とは余り関係がないものと考えていますので、代理権が包括的なものであるか個別的なものであるかでそれらの権限の有無を区別するのではなく、死亡届を行った保護者が、家庭裁判所の許可に基づき権限を得てとり行うことができるようにしていただきたいと考えますし、その場合には、保護者の事務として報酬付与の対象としていただきたいとも思います。   なお、現在の実務の場面では、死亡届を行った者に対して自治体から火葬許可証の交付を受けることから、死亡届義務者がおらず、やむを得ずに死亡届を行った保佐人や補助人が、そのまま火葬をとり行うというケースは多くあります。また、本人が急に亡くなってしまったようなケースにおいては、火葬、埋葬に当たって葬儀業者に支払うための預金の引出しが必要となることもありますし、本人の最後の入院費用などの支払いは、病院、入所施設等の関係者の成年後見制度に対する信頼確保の観点や、相続人などに損害をもたらすことのないよう、保存行為という観点からも必要だと考えます。したがいまして、死後事務のために必要な金銭を預金から出金することや債務の弁済に関する権限についても、保護者に付与できる仕組みとする必要があると考えています。 ○根本幹事 たくさんの点を申し上げると分かりづらくなりますので、まず最初に義務のところについてだけ申し上げます。まず、部会資料を拝見して感じたところなのですが、現行法の理解の前提といたしまして、身上配慮義務と意思尊重義務という二つの義務は異なる義務であると現行法の立法担当も考えていると思われます。といいますのは文言上も、かつということになっているということもありますが、それぞれの義務が設けられた立法事情も異なると承知をしていますし、身上配慮義務というのは客観的な事情についての配慮ということだと思いますが、本人の意思尊重義務というのは本人の主観に対する尊重ということにもなるかと思いますので、そういった観点から、まず二つの義務は違うということを前提としまして、858条の身上配慮義務は現状のままでもいいのかもしれませんが、意思尊重義務については、現行を維持するということでは足りないのではないかと考えています。   その理由といたしましては、まず一つは、858条の意思という文言が3条の2の意思という文言とは異なる内容であると理解をされているかと思いまして、部会資料にもありますが、ここには意思のみならず意向も含まれているということが今の858の理解だと思います。その上で、理念的に今回の改正の趣旨において、御本人の意思を優先するという、パラダイムシフトを理念上もしっかり示していくということが必要なのではないかと思っています。なぜかと申しますと、現行の858条の理解においても、善管注意義務の解釈の具体化であるとともに理念的な指導原理を示すものであるというのは、現行法の立法担当も指摘をされているところです。理念的に指導原理を示すものとして、現状の意思尊重義務というものでは足りないのではないかという問題意識に基づくものです。   このメッセージ性が弱いというところについて、具体的に不十分な事情を申し上げますと、例えば、858条の意思には意向が含まれていないというような解釈ないし、若しくは現行法の後見類型の方にはそのような意思がないのだということを前提として、最善の利益を重視するべきであるという立場に基づいて後見事務が行われていることによって、御本人や御家族、御親族からこの制度に対しての非常に強い不満が述べられているというのは、今回の立法改正の経過の一つとして示されているところでもあると思います。他方で意思優先原則をここで示した場合の法的効果や、若しくは現行の後見人に対して過重な義務を負担させることになるのではないかという指摘については、現行の858条においても善管注意義務の解釈の具体化、理念義務の一つとされていることは変わりませんので、例えばですけれども、全く本人の意向を無視することになれば、善管注意義務に違反するということになるのだと思います。法的効果については現行法と変わらないということであれば、ガイドラインなのか、若しくは過度に義務を課すことにならないようにするという条項の工夫をすることによって、先ほど申し上げた懸念は十分払拭できるのではないかと考えています。 ○佐久間委員 2について3点、3について1点申し上げます。   まず、2について、858条に関しては、私は現行の規律を維持することの方が望ましいと、今の根本幹事の御発言にもかかわらず、思います。確かにおっしゃることはよく分かり、「意思」というと、成年被後見人に「意思」があるのかというような意見も出てくるとは思います。ではこの「意思」の中身をたとえば「意向」とするかというと、「意向」なんていう、今まで法律の文言にも多分ないし、得体の知れないと言ってはおかしいかもしれませんが、よく分からないものを文言にすることは難しいので、この条文は理念をうたっているものだということが共通理解だと思いますので、その理解の下でこの規定の趣旨を十分酌み取って事務を遂行してくださいということでよろしいのではないかと、今のところ思っています。   2点目は、財産目録の調製に関してなのですけれども、これは小澤委員も維持した方がいいのではないかとおっしゃいました。私もそう思っております。たとえ保護者の権限を特定したといたしましても、本人に財産管理能力がなければ、誰かが事実上、本人の財産を管理することになるのだろうと思います。その誰かが特定の権限しか持たない人であるということも十分あり得る。そうであるところ、853条は、他人の財産を包括的に管理するような立場にある人がいる場合に、自分の財産とその他人の財産の混同を防ぐ、そして不正を防止するという趣旨だと言われていると思います。その趣旨は、法定の権限が広いか狭いかによって決まるものではなくて、法定の権限は狭いのだけれども実際上、事実上、他人の財産を包括的に管理している人がいたならば、何が起こったかが分かるようにしておくことが求められるのではないか。したがって、包括的な権限を法律上は維持しないとしても、今申し上げたような事情もあるし、あるいは将来順次いろいろな事務が行われていくことによって本人の総体財産に近いものが管理されるということもあり得るわけなので、一度も本人の財産の総体について明らかにしないままでよいというような法制は適当ではないと思っています。   ただ、仮に包括的な権限をやめるということになった場合に、いま申し上げたようなことを現行法のような形で定めるかというと、先ほどこれも小澤委員がおっしゃいましたけれども、家事事件手続法でしたっけ、にも裁判所が調査を命じることができるという規定がございますので、それを活かして、必要と認めるときにはこれを積極的に行うようにすればいいのではないかと思います。そうすると、これはテクニックの話ですけれども、家事事件手続法というよりは民法の中にそういうことを命ずることができるという条文を入れることも望ましいのかなと思っている次第です。これが2点目です。   3点目は、郵便物についてですけれども、郵便物は、当たり前のことですけれども、何が送られてくるか分からないわけですね。中には、特定の権限しか持たない代理人しかいなかったとしても、その権限事項に関わるものだってあり得るわけです。そうすると、開封権限がなかったら、自分の権限事項について重要な郵便物が来ているのに、分からないままということになってしまいます。そうであるところ、今の後見相当の方に関しては、本人による郵便物の処理というのは期待することができないので、特定の権限しか持たない保護者であっても、860条の3でしたっけ、のような規定はやはり必要なのではないかと思います。   ただ、個別の権限しかない人が場合によっては複数いるかもしれませんし、すべからくそのような権限を与える必要があるかというと、これは必ずしもそこまでかなと思うので、審判の中で権限事項の一つとして個別に開封権限を与えるということは考えてもいいのではないかと思いました。その権限を与えられた人は、ほかにも仮に保護者がいたといたしますと、自分が開封をした、自分の権限事項に関することではない、でも、知っている場合に限られますけれども、これは誰々の権限事項だなということになったらその人に通知するというような、そういう仕組みを整えることが望ましいのではないかと思いました。これが、包括的な権限を持つ保護者はいないということになった場合です。包括的な権限を有する保護者がいるという場合には、基本的に規定をそのまま存置すればよろしいのではないかと思っています。   4点だったかもしれません。もう1点、これとの関係でございまして、14ページ以下にある、終了後の配慮のための追加的な代理権付与の申立ての義務についてですけれども、義務をもし考えるとしたら、根拠がやはり要るということになると思うのです。特定の行為、今は例えば不動産の売却についてしか権限を与えられていない人が、その後、何があるかも分からないということで、その後の配慮を負う義務があるというのは、それ自体としてはその理由を、一般的に言うと、見いだし難いのではないかと思います。また、そんな義務まで課されるということになると、不動産売却だったら権限を得て就任してもいいけれども、そこまでの面倒は見られないという人だって出てくると思います。そこで、およそあり得ないということではないですけれども、ここも、その後の配慮をする義務のある人を設けたいのであれば、それを権限事項にして、審判でその権限を付与する、例えば、不動産の売却に加えて、本当にあるのだったらですけれども、終了後の本人の財産管理体制の整備に係る事項について代理権を与えるというふうにすることで対応したらどうかと思っています。これが2関係です。   3関係につきましても、今と同じようなことを申し上げることになるのですけれども、本人の死体の火葬や埋葬に関しては、小澤委員もおっしゃいましたけれども、生前の事柄についてどういう権限を持っているかということとは関係のない事項なので、これを誰かにしてもらいたい、させる必要があるということになると、やはりそのための権限を与えるのかなと思います。それは事前に、例えば、それこそ不動産売却についてしか権限を与えていないのだけれども、本人の状況を見て、こういうことがあったらあなたに頼みますということになるのだったら、そこで権限として与えておけばいいですし、包括的権限を与えられた保護者がいたといたしましても、現状は873条の2ですか、で当然の権限事項となっておりますけれども、別に切り離したって不都合はないと思いますので、包括的な権限の中に含めることも可能とし、他方で含めないでほかの人ということにすることだってあり得ると思いました。 ○山野目部会長 佐久間委員に2点確認ですけれども、恐らく根本幹事は意向という言葉を入れようとおっしゃったものではないだろうと思います。それから、もう1点はお尋ねですけれども、包括類型と呼ばれてきたものを仮に置くことになった場合において、個別に裁判所の許可を得るとかいうことではなく、死後事務の権限が付いてくるというか、随伴するというふうに建て付けることもあり得ると考えますけれども、委員のお考えはどの辺りにおありでしょうか。 ○佐久間委員 まず1点目は、「意向」という文言を入れろということでないというのは承知しておりますけれども、どこまでのことが入るのかということもよく分からないので、いじるのは怖いなと、そういうことでございます。2点目は、これは現状を変える必要があるのか、包括的な権限を維持する場合ですね、その人にしてもらう方が望ましいのかなとは思いますので、現状を維持することでもよろしいと思いますけれども、他方で、いや、そうではないのだと、ほかの人にやらせた方がいい状況だってあるのだということだとすると、切り離してもいいのではないかと、そういう考えです。 ○山野目部会長 理解を致しました。 ○上山委員 ありがとうございます。2の保護者の職務及び義務について、大きく2点申し上げたいと思います。   まず、身上配慮義務等の箇所で、意思決定支援に関する義務を新たに設けるべきかについて触れられていますので、この点について申し上げます。今回の部会資料では消極の方向が示されている印象を受けましたが、私としては意思決定支援の義務を保護者に課す方向での議論もあり得るのではないかと考えます。具体的には、2020年に公表された意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドラインの内容を保護者の義務として法制化するという考え方は、少なくとも検討の余地があるのではないかと感じます。ついでに申し上げれば、このガイドラインは既に4年ほど運用していますので、この問題を検討するに当たって、このガイドラインの運用の評価について少し見ておく必要があるのではないかと感じています。これが1点目です。   次に2点目ですが、医療同意の問題について発言いたします。医療同意については、ここ四半世紀に及ぶ後見実務上の難題であったことに加えて、事柄の性質上、広く国民の意見を問うべき課題であると思われますので、医療同意権を後見人に付与するという考え方を含めた形でパブリック・コメントにおいて意見を問うことが望ましいのではないかと考えます。これは私自身が今回の改正で医療同意権を法定後見人に付与しろと主張しているわけではなくて、少なくとも前回改正の時点からずっと議論されてきた話であるので、パブリック・コメントの問い掛けの中にこの問題を明確な形で入れることが望ましいのではないかという趣旨でございます。 ○遠藤幹事 今の御議論を聞いていて確認なのですけれども、保護者の財産調査の根拠の規定として家事事件手続法124条1項について指摘されている委員が複数いらっしゃったと思うのですが、裁判所の理解では、この規定は基本的には成年後見の事務の監督のための制度でありまして、後見人の財産調査のために用いるものではないと一般的には理解されていると認識しており、実際の運用においても、後見監督の必要があるときに発動される規定であると思っております。財産調査は代理権そのものではなく、代理権行使の準備行為として本人の財産に関する情報を取得するものでありますので、この点を明確にするという観点であれば、先ほども御意見がありましたが、実体法において、保護者には財産調査権限がある旨を規定していただくというのがよろしいのではないかと思います。 ○山野目部会長 遠藤幹事に差し当たりのお答えを差し上げます。124条そのものは御指摘のとおり、監督事務の適正な実施、達成のために設けられている仕組みであると理解しておりまして、それは御教示いただいたとおりであると考えます。その上で、言わば現行124条の規律を参考として、これからの個別代理権が主だった場合になってくるかもしれない後見事務の遂行の仕方に参考にしようというお話が進んでおります。そのような見地であるからこそ、恐らく佐久間委員がおっしゃったように、むしろ実体法の中に規定を配列したらどうかという御意見にもなっていくものであろうと考えられますから、遠藤幹事に御指摘いただいたことを受け止めているつもりであり、引き続き審議を見守っていただきたいと望みます。 ○野村幹事 ありがとうございます。まず、民法858条の規律については現行の規律を維持するのがよいのではないかと考えます。意思決定支援は後見事務の指針としてとても重要なものですけれども、明文の規定において意思決定支援という用語を用いて保護者に対して義務を新たに設けることについては、例えばその義務違反の要件や効果についても検討する必要があることから、時間を掛けて慎重に議論すべきであると考えます。   また、保護者が本人の財産状況を正確に把握できるような仕組みについてですが、特定の法律行為の代理権が付与された場合であっても、その代理権の内容によっては、就任時において本人の全体の財産状況を把握することが有用でありますが、一方で特定の財産管理の代理権を付与される事情によっては、その財産のみを把握することで十分な場合も考えられるため、必ずしも義務とする必要はないと思われます。特定の代理権を行使することを判断する際に、本人の全体の財産状況を知る必要性があると判断する場合には、そのときに財産調査権限を一時的に与えることとする仕組みも考えられると思います。先ほど小澤委員もおっしゃっていましたが、代理権の中に「全ての財産の調査権」を入れることなどが考えられます。それから、郵便物等の回送嘱託の申立てについては、この全ての財産の調査権がある者に対しては認めるニーズがあると思われます。   また、追加的に代理権の付与や同意を要する旨の審判の申立てをする義務については、消極に考えます。法定後見の終了に際しては、保護者が本人の財産管理体制の整備をする義務まではないと考えますので、そのための代理権の追加付与を申し立てる義務も必要ないと考えます。   また、医療の場合における同意ですが、保護者といえども、本人の意思が不明な状況で、本人に代理して医療行為等の要不要を表明する権限の付与は慎重に考えますが、チームの一員としてガイドラインのプロセスの中に入っていく必要はあると考えます。   最後に、死後事務ですけれども、何度か申し上げているのですが、現行の補助、保佐においても、本人の死体の火葬又は埋葬を求められて対応せざるを得ないことがあります。保護者としては、身寄りのない方については墓地、埋葬等に関する法律第9条による死亡地の市町村長に行っていただきたいところですが、地域によってはこの「死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき又は判明しないとき」との要件に該当するかの調査に3か月から4か月掛かることもあって、やむを得ず保護者が死体の火葬又は埋葬の対応をせざるを得ないという現状があります。この要件を緩やかにしない限り、こうした状況は続くと思われます。現状では保護者が対応することが多いことから、制度の見直し後も本人の死体の火葬又は埋葬に関する契約を締結できる旨の規律を設けて権限を明確にしてほしいという意見がリーガルサポート内では強いですが、本来的には墓地、埋葬等に関する法律によって解決すべき問題であると思われます。 ○青木委員 保護者の職務と義務については、中間取りまとめの見え方としても、やはり「本人の意思の尊重」については、身上配慮義務とは別の項を起こしていただいて、具体的な整理と議論の争点を明確にしていただく必要があると思います。第二期計画でも、また今回の見直しに課せられた検討課題の中でも、ご本人の意思を無視して、あるいはご本人の意思に反して、広範な代理権の中で権限行使をする後見人でいいのか、ということが主要な課題の一つとして提起されているところです。その宿題についてどう考えるかという意味では、しっかりと国民にその論点を示していただくということが重要であろうと思っております。   その上で、意思決定支援を義務にするかという議論と、ご本人の意思が表明されているときに、あるいはご本人の意思をしっかり確認をした上で、後見人等がどのように権限行使をするべきかという点が、少し混同して議論されているようににも思われます。今ここで議論すべきは、ご本人の意思が表明されている場合、あるいは本人の意思をしっかり確認をした上で、代理権なりその他の権限を行使するという点をどう義務化するかという話であって、その前提として、意思決定支援という取組が後見人だけではないチーム支援の中で全般的に進められるものであると、そういう関係を整理した上でのお話ではないかと思っています。   そして、本人の意思が表明されている場合は本人さんの意思を確認しそれに従うところについては、やはり権限行使の前提となる義務として明確に掲げるということによって、善管注意義務の中に埋没しないようにする、これまでは保護と自己決定とのバランスの中で、あとは後見人の広範な裁量に任せますねということで、裁判所も支援者も全くそれに対して異議を言えないという状態から、一歩進めて本人の意思の尊重原則に脱却するということに大きな意義があると考えています。ここについて、現行でいい、何も変えないということであれば、今回の改正に対する主要な課題の一つについて何の答えも出さないということにもなるのではないかと危惧しますし、障害者権利条約の総括所見の示す懸念との関係でも重要ではないかと思っております。   それから、それとは別に、身上配慮義務の内実についてですけれども、これは条文を変えるところまでに至るかどうかは別ですけれども、現在この身上配慮義務の中で一番、裁判所も含めて重視しているのが、チーム支援ということになります。それをもう少し具体的に言えば、後見人が単独でその職務を遂行するのではなく、本人を支援している他の支援者と共に情報や状況の確認等の連携をとりつつ適正な職務を行うこと、ということになると思いますけれども、これを現行の858条の規定の中に読み込むことも可能かもしれませんが、平成11年改正の段階では意識されなかった内実ですので、少なくともコンメンタール等ではそういったチーム支援ということを新しい身上配慮義務の内実となるものとして考えていただくということが必要ですし、できれば858条の身上配慮義務の明文としても、そういった支援者間での連携、関係者との情報や方針の共有的なことが含まれれば、なおいいのではないかと考えているところです。   次に、財産の目録の調製につきましては、も、ご本人の全体の財産を調べたり収支状況を確認するすべ、権限を持たない場合に、その義務を課されたとしても、実際には、目録を作って提出することは困難でありますし、権限がないところについてまで財産の調査をする義務を負うということも難しいものでありますので、やはり付与された権限の対応として、監督においてどのような資料を提出させるべきかということを、裁判所の監督の一環として、個別に考えていただくということに尽きるのではないかと思っています。   郵便物の転送のニーズとしては、二つありまして、一つは、ご本人さんの財産や生活の状況が不明な中で職務に付いて、財産状況や生活状況を把握する調査のために郵便物の転送が必要になる場合です。もう一つは、ご本人さんに自己の郵便物を管理する能力がなく、着いた郵便を次々と捨ててしまう、どこかに紛失してしまうという場合がありますが、その場合に、ご本人さんに代わって郵便物を管理するニーズという場合があります。この二通りのことに対応するために郵便物の転送をしたいというニーズがあります。   このうち、前者につきましては、代理権付与された段階は財産状況がよく分からないので、預貯金管理の代理権を付けましょう、保険契約の代理権を付けましょう、有価証券取引の代理権を付けましょう、福祉サービス契約に関する代理権を付けましょうというように、複数の特定の代理権が付くことになると思いますが、その付与された代理権との関係のある郵便物については転送していただき開示をすることができることにし、権限と関係のない郵便物についてはそれはできないということですが、郵便局に権限の有無で区別して転送はしていただけませんので、ご本人の郵便物は全て転送はされるけれども開披して中を見られるものは権限の範囲内のものに制限するというような形で、郵便物の転送が許可されると望ましいと思います。もちろんそういう調査の必要性があるのは長くても1年以内だと思われますので、1年に限定して転送許可ができるとよかろうと思っています。このニーズは後見人であろうが、従来の保佐人、補助人であろうが、ご本人の判断能力の程度によって異なるものではないと思います。   一方で、後者の場合については、たしかにご本人さんに代わって郵便物の管理をするために転送したいというニーズはやまやまなのですが、実際には、それを根拠として具体的に郵便物の転送を可能とする権限に結びつけることなかなか厳しかろうと思っております。したがって、そこは、転送によるのではなく、できるだけ送付先の変更、銀行や市役所その他に送付先の変更をすることによって、大事な郵便物は直接権限を持っている者に送付されるようにするという対応をするしかないのかと考えているところです。   郵便物の転送の論点は、今回三読目で初めて出てきた論点でもありますので、何らかのニーズがあることを前提に、許可できる権限として何が可能かということを意見交換いただければと思っております。   それから、財産の調査に関する14ページの記載ですけれども、やはり特定の代理権を付与された者に関しての調査ができるようにはしたいと思っていまして、それが代理権の付与だけで、この代理権があるので、それに関する調査一切というような代理権付与の仕方をすることによって対応可能なものも十分にあると思いますけれども、取引の相手方からすると、付与されている特定の権限から、この方がどこまでの調査権限を持っているかがある程度具体的に明示されないといけないということもあると思います。そこで、特定の代理権に付随する調査権ということでいいのか、中には、個別・具体的に調査が必要な事項について、それについての明示的な調査権という権限を付与すべきなのか、のところは、取引の相手方の要請等も踏まえて検討する必要があるのではないかと思っているところです。   それから、追加的代理権の申立てを義務化するかというのについては、これまでも義務ではなくて権限にすぎないと申し上げていましたし、終了に当たって必要な代理権の付与も含めて、あくまでも義務にはならず権限であるとして整理いただかないと、過度に、全般的な本人に関する生活状況を把握するという義務につながってしまいますので、やはり義務とすることには消極として考える意見が多くの実務家から意見がだされていることが分かるように整理していただければと思っています。   最後に、死後の事務処理ですけれども、事務の類型としては、三つに分かれると思います。保存行為と債務の支払いと、葬儀、埋葬に関することがあると思います。いずれについても、現行の規定では、包括的代理権を前提に論理的に整理していただいていると思いますが、実際のニーズとしては、こうした3つの類型の事務は、判断能力の程度にかかわらず、ご本人さんに身寄りがない問題や死亡直後に法定相続人が出てこないことによって生じる問題になります。よって、ここは今後の判断能力による類型がどのようになるかということとは別に、死亡したご本人の個別の事情に基づいて、権限を付与するという考え方が適切ではないかと思います。その場合には、保存行為を認めることにつながるような代理権が生前に付いていたかどうか、同じように債務の支払いを認めることにつながる代理権が生前に付いていたかどうか、あるいは死亡届を含めて死後に相続人が対応できないために埋葬等をする必要があるかどうかという、それぞれの必要性に応じて、死後に裁判所が権限を許可するという仕組みがいいのではないかと思います。   また、火葬・埋葬については、墓地埋葬法の今後の改正・整備によって公的に対応すべきではないかというご意見もあるのですけれども、どうしても公的対処としては火葬はできますけれども葬儀等がなかなか難しいところです。現在、亡くなる時まで自分らしく亡くなりたいというのが終活として大きなニーズになっていまして、そうしたご本人の希望や意向を反映した終末期の死後の対応をどうするかということも含めて、権利擁護の支援として含めて対応することが必要ではないか、自分らしく死ぬということを考えることは生きている間の権利の支援の一環ではないかという認識が広まっているということから考えますと、墓地埋葬法で賄える部分と、やはりご本人さんのその人らしい亡くなり方という点で、後見人やその他の社会福祉の仕組みなどで適切な葬儀ができるための仕組みも必要であると思っています。 ○根本幹事 まず、意思尊重義務との関係は、青木委員からの御指摘にもありましたけれども、先ほど申し上げたところを補足しますと、意思決定支援というのは飽くまでも方法というか手段ですので、それ自体を義務化するということではなくて、現行の意思尊重義務を意思優先の原則が明確になるようにするという趣旨で申し上げたものです。   それから、2点目の財産調査の関係ですけれども、委員、幹事の中からは、いわゆる全ての項目についての調査権というような御提案もありましたが、私の実務感覚としましては、例えば、どこかの金融機関に口座があるかないかというのをローラー作戦のように全てを調べていくというのは、なかなか困難な事案もありますので、もちろん必要に応じてということかもしれませんが、過度な負担にはならないように網羅的にするという点では、注意が必要であるとは思います。証券や保険の場合には年1回程度通知が来るケースが多いと思いますが、特に預貯金等については郵便物等が何も来ない何もお知らせがないというケースもありますので、そういった場合には後から発覚するということもございます。新しく網羅的に調査権を付与するということになってしまうと、善管注意義務違反に問われてしまうのではないかという懸念も生じますので、慎重に考えたいとは思います。現行の代理権の範囲の中で調査をするということが銀行実務との関係でも現実的ではないかとは思っております。   それから、3点目が追加で付与する場合ですけれども、これも二読目や一読目でもありましたが、特定の法律行為について代理権を付与していくという仕組みをとっていくとなった場合には、その代理権の範囲でしか責任を負わないということになりますので、14ページの(2)にあるような義務化するということではないのだろうと思います。   他方で、包括的な権限を付与する必要はないという議論との関係で見ますと、追加の付与という場面の手続の迅速性ですとか、若しくは本人同意の確認の仕方の運用上の問題になるかもしれませんが、手続上の工夫ということが議論されるべきではないかと思いますし、15ページの10行目にあります他方でからの3行については、これは終了の場面での議論かと思いますので、終了の場面での整理ということになると思います。   最後に、死後事務に関しまして5点申し上げたいと思います。元々円滑化法は議員立法でしたので、相続法との関係の整理というのはこの部会で改めて議論が必要ではないかと考えております。その観点で、死後事務と法定代理との関係で見ますと、本来、死後事務は社会通念上、祭祀承継者、相続人、死後事務受任者を含む祭祀の主宰者に帰属するものであるはずです。死者の代理権というものを観念しない限りは、代理の問題ということではないということを前提に考えますと、火葬等に関する契約を締結する権限ですとか、若しくはその費用を支払う権限ということは、民法の理解の前提で言えば、祭祀承継者、祭祀の主宰者、喪主が負担するべき費用だと思います。これらの者が不存在というような場合に、この相続財産に関する費用を支払う権限ということで整理することはできないかと思いますし、相続人がいないということでしたら、相続財産清算人の支払権限の先行行為という形で議論を整理することはできないかと思っております。   その上で、法律上の権限をここで付与するという正当化根拠についてですけれども、今まで委員から御指摘がありました実務上の必要性のみならず、墓埋法は飽くまでも公衆衛生上の目的で定められた法律ということになります。先ほど青木委員からもありましたが、葬儀等については、本人の生前の意思ですとか死者の尊厳という、公衆衛生上の目的とは別の目的と構成するということによって、法律上の権限を付与する正当化根拠を考えられるのではないかと思っています。   その上で、円滑化法は包括代理で権限を付与すると整理をしていますけれども、委員の御指摘の中には、生前の代理権と関係をリンクさせないという御意見もありましたが、生前の代理権と何もリンクをさせないということになりますと、このためだけに後見制度を利用するということも理論上可能になってしまうのではないかと思いますので、何らかの生前の代理権との関係はリンクさせる必要があるのではないかと思います。その観点では、日常金銭管理ないし預貯金の取引という権限がありませんと、そもそも支払権限がないということになってしまいますし、あとは医療、介護、施設の契約など身上保護に関する何らかの代理権も有しているということが、死後事務の権限を付与する正当化根拠との関係ではふさわしいのではないかと思います。   最後に、これは改正される場合の留意点だと思いますが、円滑化法の立法担当解説でも確認をされていますけれども、現行の事務管理で行うということ自体は否定されないということは、これは今回の改正でも改めて要綱の中では確認されるべきだと思っています。応急処分義務については後見人の義務となってしまうので、適当ではないとは思いますけれども、今回新たに改正される場合には、法律上の権限が義務ではないということを確認するとともに、事務管理と並列的な位置付けにあるということも改めて確認されるべきだと思っております。 ○竹内(裕)委員 私からは3項目、簡単に述べたいと思います。   一つ目が財産の調査に関することです。ここについては、包括的な権限を持っておられる方、その類型がある場合には現行法維持という考えを持っていますが、他方、包括的権限ではなくて特定の権限という方に対しては、調査義務というのは余りよくはないというのは、野村幹事や青木委員と同じ意見でございます。ただ、本人の全体像を把握しないとうまく適切に与えられた権限を行使できないということは実際にあります。例えば、プラスの財産を調べることもそうですが、マイナスの財産について信用情報を照会するようなことも必要になってくる場合もあります。ただ、調査義務はよろしくないとして、逆に調査権限を与えるということになってしまいますと、権限と義務は裏腹の関係にありますので、むしろ調査権限というよりは、先ほどの家事手続法の124条で裁判所に職権発動を促していただいて、調査を依頼されたからやれるのですという形にするとか、あと、しつこいかもしれませんが、民法上でということであれば、現行の863条の2項も、後見の事務の監督という項目ではあるのですけれども、この条文は必要な処分を命じるというように家事手続法の124条と重なるような規定ぶりになっておりますので、何か調査を依頼されたのでやれるのだという立て付けにしてはどうかというところでございます。   2点目、死後事務なのですけれども、ここについては弁護士の中には消極的、懸念している意見も複数ございました。必要性はあるのだけれども、明記をすることで義務のように捉えられてしまうのではないか、本来はこれは後見人、保護者の義務には当たらないというところで、現行法以上に範囲を広げることに対して懸念を示す意見もあり、むしろ義務ではないことを明確にしてほしいという意見もあったところです。ただ、もし新しい制度になった場合、考えてみますと、今はほとんどお亡くなりになるまでお付き合いをしているのですけれども、終わるべき後見、制度を終わらせるということだと、果たして死後事務が必要になってくるところは、もちろん身元不明の方などはいらっしゃるのですが、現行よりも様相が変わってくるということもあるのかなと思いました。   3点目、最後ですが、郵便物管理です。必要性については既にいろいろな委員が述べられたところだと思います。ただ、弁護士の中で議論したときに、この郵便物管理については、破産法81条を入れるときにも、信書の秘密を侵すということで、憲法違反だとかいうような議論が結構あったという意見を述べている弁護士もおりまして、必要性はあるのだけれども、どう考えたらいいのかというのは依然悩んでいるところです。 ○星野委員 ありがとうございます。まず、858条の身上配慮義務については、この法律だけでは、解釈がそれぞれ異なっていることで後見人の事務内容に非常に差が出ていることが問題提起されたことも大きな要因としてこの民法改正の議論になっていますから、私はここについては現行法だけでは不十分だという意見を持っています。   意思の尊重については、ただ、民法の中で規定することは難しいというのは今までの議論の中で感じてきたところなので、ここについて、例えば社会福祉法、そういったところでも意思決定支援の義務化というのは、後見人だけに限らずに本人に関わる全ての支援者が持つべきというような意見も出ておりますので、そことの兼ね合いというところもあるかと思います。   それから、身上配慮義務については後見人等が権限行使をすることの根拠にもなりますので、今までも議論に出ていたように、チーム支援になっているのか、後見人が独断でしているのではないかというところを、民法上でどこまで明記できるかは分かりませんが、ここの書きぶりというのは、今までのように個人の解釈によって異なる事務にならないような書きぶりというのは必要ではないかと思っています。   それから、財産調査権については、ここは簡単に申し上げたいのですが、代理権が限定的に付いている現行の保佐、補助においては財産管理についての調査はその範囲に止められている。ほかの親族が管理していたり、本人自身が自ら管理しているという場合も相当ありますので、東京家庭裁判所ではそのような状態にある場合は実際の管理者の協力が得られれば目録に記載してくださいということなので、もし今後、類型というものがなくなって、後見相当と今いわれている方も部分的な代理権になるのであれば、そのような考え方でいいのではないかという意見です。   それから、郵便物の嘱託については、佐久間委員がおっしゃられた、あと青木委員もおっしゃっていましたが、その方の与えられている権限に付随する形で代理権を与えるということができるのであれば、それが望ましいように思います。今の郵便物の嘱託というのは、期限も限定的ですし、必要な事務が半年では終わらない場合もあると思います。それと、補助、保佐類型の方であっても権限の範囲の中で必要となることがあります。それから、一方ではこの円滑化法の郵便物嘱託の問題は、必要以上の情報を得てしまうというところがあって、後見人が関与することが適切ではない信書の取扱いにも触れますので、これは限定的にする。ここについては、郵便物なので、郵政省の理解のもと、郵便局における郵便物の取扱いを代理権目録の中で対応していただけるかということになるかなと思っています。例えば、金融機関の代理権についても登記事項証明に記載されていることから手続を行うわけです。それから行政手続については、行政から送られる郵便物の変更手続も登記事項証明書に基づいて、その代理権があるかどうかで、そこに関わる医療保険や介護保険、あるいは生活保護等の郵便物の送付先を変えていただけますので、そういうような仕組みというふうにイメージしています。   死後事務なのですけれども、これは野村幹事も言われていましたけれども、後見制度以外の社会全体としての問題だと思います。身寄りのない方の死後事務をどうするか。墓地埋葬法というのは古い法律であって、今までの意見もあったように、現状の社会情勢と合っていませんから、こういったものの改正というのも本来必要になってくるのかなと思います。その中で、例えば戸籍法が改正されて死亡届を後見人等が出せるようになったように、義務ではないけれども、今まで関わってきた範囲の中で、やる人の中に成年後見人であった者が入る、そういうような形も考えられるのではないかと思います。   それから最後、上山委員が言われた医療行為の同意のところです。これについて国民に意見を求めていくというのは、それ自体には全然反対ではないです。ただ、一方で後見人の職務という形での問いになってしまいますと、現状の死後事務と同じように、そのために成年後見制度を使うという理解になってしまうおそれを個人的に今の段階で感じていますので、その打ち出し方というのには慎重な配慮が必要かと考えます。というのは現状、後見制度を使っている方以外でも、やはり医療行為の同意というのは社会的にも問題になっている中で、様々なガイドラインやACP、いろいろな考え方を活用しながら、医療機関と一緒に検討するという形がかなり現場では広がってきているのも事実ですので、そういったことも含めた打ち出し方が必要ではないかと思います。 ○波多野幹事 1点だけ、死後事務のところでいろいろ御議論いただいていたところかと思います。その中で青木委員、根本幹事から御指摘いただいている中に、いわゆる葬儀についての御言及があったように思うのですが、現行法の873条の2では、葬儀は恐らくは入っていないという理解だと思うのですけれども、葬儀について御言及いただいたのは、現行法でも入っていないものまで広げようと、そういう御趣旨で御発言されたのか、少し御発言の御趣旨を教えていただければと思います。 ○根本幹事 現行法は含まれていないという認識の下で、実務上は事務管理で葬儀等を行っているケースがあるということを前提にしています。 ○山野目部会長 その前提で、波多野幹事からのお尋ねは、現行法から対象を拡げてほしいという立法要請ですかということかと思います。 ○根本幹事 宗教上の問題なども関係しますので、法制上は非常に難しいと思っています。 ○青木委員 現行の規定ぶりを変更というところでの意見ではありません。これは微妙な話になりますが、実際には裁判所は葬儀費用も含めての支出を認めている実務運用がありまして、それは3号に基づいているのか、基づいていないのというのは、これも少しぎりぎり実務的にはそこも含めて見ていただいているという実情はあります。ただ、条文の文言としてあえて明記すべきということを申し上げているつもりではありません。 ○山野目部会長 波多野幹事、今日のところはよろしいですか。 ○波多野幹事 大丈夫です。ありがとうございます。 ○山田関係官 財産の調査及び目録の作成の義務等や、その中の成年後見人による郵便物等の管理に関してお聞きしたい点があります。事理弁識能力を欠く常況にある者について固有の保護の仕組みを設けない場合であったとしても、このような義務等を課すべき場合や、郵便物の管理等の仕組みを設ける必要がある場合があるのではないかとの御意見を確か佐久間委員、小澤委員から伺ったかと思います。仮に事理弁識能力を欠く常況にある者について固有の保護の仕組みを設けない場合において、このような義務等を課すべき場合や、郵便物の管理等の仕組みを設ける必要がある場合における本人の判断能力の状況というのはどのように考えればよいでしょうか。例えば、事理弁識能力を欠く常況にある者の類型を設けない場合には、開始の要件のときには事理弁識能力を欠く常況の認定はされていないところですが、実際に郵便物の管理等が問題となる場合や目録の作成義務等を課す場合には、その本人の状況というのはどういった場合が想定されるのか、もし御意見がありましたらお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。 ○佐久間委員 私は義務を課すということは申しておりません。権限を与えればいいと申し上げました、必要ならば。それは、事理弁識能力を欠く常況にある人だ、けれども、例えば不動産と預金に限っての権限しか保護者には一応与えない、積極的なものですね。そのことを前提に、しかし、飽くまで必要があればということですけれども、先ほど申し上げたことの繰り返しになりますが、まず財産調査に関して言うと、確かに今はその二つかもしれないけれども、実際上はほかの財産だって事実上の管理をしているかもしれないし、将来また何か別の行為について代理権が、その人でなくても別の人に付与されるかもしれない。だとすると、ある時点で、これは一度、今の財産は総体として、もちろん調査漏れはあるかもしれませんが、これだけだということを明らかにしておくことが、その後のその人か、別の管理人か、ほかの者かの不正をないかどうかを確かめるに当たっても、追跡しやすくなっていいのではないかという考えです。そのようなことから、では必要性をどのように判断するのだと言われるのは、そこは弱いところだなというのは理解しつつ、やはり裁判所に最後は判断してくださいとなるのですけれども、これだけの財産を持っている人について、ある程度重要な取引に関し権限付与するのだとなると、これはした方がいいよねというのを、ある程度は事案の集積によって一定の判断の安定性を確保できることを期待しつつ、民法に定めを設けて、監督のためというよりは、いろいろな総合的考慮のために財産調査の機会を設ける、ある人に権限を与える、してもらう、当然費用も払うと、そういうことを私は考えています。   郵便についても同じで、義務があるとは全く考えてはおりませんで、郵便物の管理について誰かがした方がいい、これも事理弁識能力を欠く常況にある人だけを基本的には考えており、その人について郵便物の管理を誰かがした方がいいと考えられたならば、これは別に不動産でも何でもいいのですけれども、権限を与えるのと並んで、そのための権限を与えればいいのではないかと。もしかしたら、郵便物の管理だけのために権限を与える審判をしたって、今のところそれでいいのだったら、それだって悪くはないのではないかと私は思っております。お答えになっていますでしょうか。 ○山野目部会長 ほかに御意見がなければ、私の方から858条について中間試案の作成に向けて委員、幹事の皆さんにお願いを差し上げた後で、休憩を御案内し、休憩後、第1の部分が終わりましたから、久保委員及び花俣委員にこの順番でお話をお伺いすることにいたします。   皆様にただいま検討をお願いした2の部分と3の部分について多岐にわたる御意見をお寄せいただきまして、ありがとうございました。いずれも重要な観点ですが、繰り返しません。1点のみ、858条について次に御議論をお願いする機会は、中間試案のたたき台の検討の場面になります。中間試案を社会に諮る段階を想像いたしますと、社会の極めて幅広い各方面の人たちがここの改正の動向に注目を置いています。人によっては、恐らく中間試案という文書が回ってきたときにここを真っ先に見る人もいるくらいでしょうし、決してそれはおかしなことではありません。中間試案が国民世論の意見の動向をなるべく的確に把握する機会になってほしいという見地から、委員、幹事の皆様には今一つの御努力をお願いしたいと考えます。それはつまり、現行法を改めないという意見が一方にあり、他方において意思決定支援を入れよという意見が一方にありますとのみ聞いたら、それはただ国民の分断をあおっているだけでありまして、それで様々それを読んだ人が思いのたけをぶつけてきたものを、事務当局はそれは集約してまとめますけれども、まとめたものから稔りあるものがその後の議論につながっていくような予感が余りいたしません。現行法の文言から出発し、どういうふうなことが考えられるか、さまざまな考え方がありうるところですが、意思決定支援をせよという文言を民法の法文として入れるということは想像しにくいです。それから、社会福祉法を参照せよ、というものもあそこに書こうとすると、それも書きにくいものです。それとは異なって、もう少し異なる工夫があるかもしれないということを委員、幹事の皆様に少し悩んでいただいて、次の論議の機会以降において、また意見交換を重ねていただきたいと望みます。   二つ三つ演技をしてみますか、私が。三つほどやってみますと、一つは、例えば、この意思尊重義務のところについて、意思をできる限り尊重するというふうなガイドを明らかにするというような行き方は、これまでの障害者法制の中にこれに類似する文言があります。それから二つ目は、本人に説明する試みをするというものは、意思決定支援の契機を感じさせる側面のあるアイデアであって、国民に問うとき、どうですかと尋ねていってもいいかもしれませんが、ただし、本人に説明する試みをするだけですと、それが本当に意思決定支援ですかという問題が実はあって、どうしてもそれというのは保護する側が、本人にとって最善の利益が得られるといいなあ、という保護者の側の思い入れが先走って、あなた、賢い方策はこれですよと説明します、という、保護者のほうがこう考える、という側面のみが、その文言ですと出てしまうかもしれません。それから三つ目、本人の意思を聴くよう努めるというようなのもあり得るだろうとは考えます。これは恐らく意思決定支援の考え方から言えば、傾聴することが大事であるという理念を忠実に表現する言葉遣いであろうと感じますけれども、しかし、これもこれだけですと、聴いた後どうするかという観点がはっきりしていない部分がありますから、そのように一長一短があるところを少し悩みながら、どういうふうな規律の仕方が最も良いいでしょうかというようなことを考え込んでいくことが望まれます。   皆さんの議論を伺っていて感ずることですが、言葉遣いが難しいですね。本人意思優先であるとか、いろいろおっしゃいますし、それはどれも誤っていないですけれども、そのまま法文にすると、それは少し聞いた人は難しいですね。というふうな気分になってしまいます。法律家の議論ってすごく難しい議論を用いるのでしょうというふうな誤解があります。けれども、一つ二つ御覧になってみればお分かりになると期待しますけれども、政府が国会に提出するときに法文を準備する際の法制審査を経て整えられた文章というものは、意外に分かりやすい文言表現が選ばれて法文が作られています。ここの御議論にあったような、学者が使うような難しい言葉ではなくて、平易な表現で意思決定支援の考え方が大事であるということが伝わるような言葉遣いの工夫に、中間試案そのものは法文作りではありませんけれども、そのような方向に向かっていく工夫が今のうちからあってもよいかもしれません。   でき上がった新しい858条は、法律の専門家にとどまらず、本人を支援する人、福祉に携わる人、そしてもちろん本人がこの法文を読みます。恐らく、ほかの細かな手続のようなことに関わる民法の規定を読まないとしても、858条は、福祉の現場でそれを読みながら話が進んでいくという役割を担っていくであろうと予想します。それらの人たちが見て、ああ、こういう考え方を大事にして進めていくのだね、ということが分かるような機能を民法の法文が一端において担うことができるようになれば、すばらしいのではないかと考えます。   同じようにして、858条には身上保護に関わる規律の意味が現行法にありまして、この部分も発展させていく必要があると考えますけれども、従来、必ずしも生活ないし生活の状況、療養看護、心身の状態に論及する部分が具体化されて伝えられていなかったきらいがあるもしれません。本人はもちろん本人を支援する人々に対して意見を述べる、医療や介護に携わっている人たちに対して意見を述べる、説明を求める、又はその人たちからの説明を受けるといったような役割は、決して堅い意味での義務ではないけれども、後見人の役割として自然なものですということが分かって伝わるような、何か工夫ができていけば、そこも含めて858条が現場で読まれる法文になっていくと期待します。私たちとして今一つの努力が必要かもしれません。   休憩をお願いした上で、再開後、久保委員、花俣委員の順番でお声掛けをして、お話を伺うことにいたします。休憩をお願いします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開いたします。   部会資料11について審議をお願いしているところでございますが、休憩前に第1の部分についての審議を了しました。この際、久保委員、続きまして花俣委員にお声掛けをして、御意見を頂戴することにいたします。 ○久保委員 なかなか難しい問題だなと思って話を聞いていました。本人の意思に沿ってというのが基本に、どの場合も必要になってくるのですけれども、その本人の意思が聴き取れなかったり、感じ取れなかったり、意思表示はしていても、本人がそのときに自分の本当の気持ちと違うことを言うときもありますので、そこは聴く側がとても難しいなというのは、親でありながら、我が子でもそんなことを感じているところですので、なかなか周りの方、第三者の方も含めて、保護をしていただく方の難しいところだなと思っておりますけれども、私がそこを、適当かどうか分かりませんけれども、本人にとって何が一番よいのか、本人にとっての最善の利益というのですかね、何が一番本人にとってよいのかというのを、一人の人ではなくてみんなで考えていただくということが必要なのではないかなと少し思っています。それでないと、なかなか一人で決めるのは責任も重いことだろうなということも感じています。それがどの部分にも関わってきていて、どうなのですかね、本人の死後のことというのは本人もよく分かっていない、知的障害の人なんかは多分よく分かっていないので、どうと聴かれても、もう一つ的確な答えといいますか、思いというのも余り返ってこないのではないかなというようなことを思いながら聞いていました。   ですから、やはり周りにいる者が、この人はどういう生活をしてきたので、多分こういう感じがいいのではないかということを何人かで話をして、チームで考えていただくということが必要ではないかと思っています。後見を使っていても、その後見人一人だけで決めるのは大変難しいだろうと思うので、そういう意味でも、本人の周りにおられる方といろいろ相談をしていただきながら、最終的には後見人が判断していただくということになると思いますけれども、何かそういうことを、今日議論になっているどの場面であっても、御本人がどう思っているのかということがベースになってくるかなと思いますので、そんなことを思いました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。御指摘のとおり、今日における医療や介護というものがチームによって行われて、チームの討議の中から、仮に本人が明瞭な意思を表明することが困難な場合において、可能な限りの進め方を探るということを中心に進めているということは今、久保委員からお話があり、そして青木佳史委員からも強調していただいたところであります。858条などにチーム支援という言葉そのものを書き込むということについては大きな困難がございますけれども、そういうふうな医療、介護の考え方が定着しつつあるということを何らかうかがうことができるようなメッセージを民法の方からも出していくことができるようになれば、久保委員がおっしゃったようなことに沿う所以ではないかと感じます。引き続き見守ってくださるようにお願いします。ありがとうございます。 ○花俣委員 前半の保護者に関する検討事項のところは、成年後見制度を使う側にとって、使いやすい制度にするために、こうした改正に向けての論点というのは大変重要であり期待をしているところです。具体的な法律論とか法文は、私どもには意見を申し述べることは難しいのですけれども、そんなような印象で議論を聞かせていただきました。   それから後半に関しては、非常に難しかったものですから、後日議事録をしっかりと確認したいと思いました。保護者の職務や義務化の、意思決定支援に関しては青木委員、あるいは星野委員からの御意見が非常に分かりやすく感じたところです。また、ここでの議論というのは実際に実務を行っておられる先生方、あるいは現場の課題やニーズに沿った様々な御意見を中心に進められるのが望ましいのではなかと思います。今の時点では皆さんの御意見を拝聴するのみで、特段の意見はなしとさせていただきます。 ○山野目部会長 ありがとうございます。花俣委員にあらかじめお詫びですが、この後に続く議論は前半以上に法律用語が飛び交うというか、ほとんど法律用語が飛び交っている議論になりますけれども、しかしそこでもやはり民法のテクニカルに見える規律の背景にある、本人の在り様をどのように調えていくかというお話が控えているということが、当たり前のことでありますから、また少しお付き合いいただければ有り難いです。どうもありがとうございます。   審議を先に進めることにいたします。部会資料11の20ページからございます「第2 法定後見制度に関する検討事項その他①」のところに進むことにいたしまして、まず「1 制限行為能力者の相手方の催告権」、それからもう一つ、「2 意思表示の受領能力」、この二つを取り上げて説明を差し上げることにいたします。これらの部分について事務当局から資料の説明を差し上げます。 ○山田関係官 部会資料11の20ページから、第2の1、制限行為能力者の相手方の催告権、第2の2、意思表示の受領能力について御説明いたします。   まず、20ページからの1では、制限行為能力者の相手方の催告権について整理しています。この規律については、現行法の規律を維持する考え方のほかに、事理弁識能力を回復しないまま保護者の同意を要する旨の審判が取り消された場合に関して、規律を修正するとの考え方が出されていると思われます。維持する考え方については、23ページからの(1)に、修正するとの考え方については24ページからの(2)に整理しています。また、これまでの部会において、同意をすることができる者にとどまる保護者は取消権を有しないとの考え方が出されています。見直し後の法定後見の制度において、民法第120条の取消権者に同意をすることができる者が含まれないこととする場合の民法第20条第2項及び第4項の規律について、25ページからの3で整理しています。   そして、26ページからの2では、意思表示の受領能力について整理しています。この規律については、現行法の規律を基本的には維持する考え方のほかに、事理弁識能力を欠く常況にある者については、その者のために意思表示を受領するための権限を有する者を選任する仕組みを設けるとの考えなどがあり得るように思われますので、この点について御議論いただきたいと考えています。 ○山野目部会長 説明を差し上げた部分について御意見を承ります。 ○小澤委員 ありがとうございます。制限能力者の相手方の催告権や意思表示の受領能力について、部会資料に示された形で中間試案に向けて取りまとめをすることには賛同しています。これらの点については私たち自身、実務上その論点が問題となる事例をほとんど経験していないので、そういった意味で議論の蓄積がないというのが正直なところであります。意思表示の受領能力については、成年後見制度を利用していないものの判断能力が不十分という方は一般的には多くいるのではないかと思いますし、法律行為の後しばらくして判断能力が不十分となってしまう方もいらっしゃると思いますので、そのような方と、過去に成年後見制度を利用していた方とを区別して検討する必要はないのではないかと考えていますが、どのような規律を置くとしても、余り複雑な制度とするのではなく、一般に分かりやすい規律とする必要があると考えています。 ○佐久間委員 1について3点、2について、30ページの3行目以下にあるもろもろの問い掛けについて、考えを申し述べます。   まず、1についてですけれども、一つ目は、23ページの7行目から、見直し後の規律では、事理弁識能力が回復しない場合でも法定後見が終了する、本人は行為能力の制限を受けない者となる、法律行為の相手方が催告を本人にして、確答を発しないときは追認したものとみなすという効果が生じることになる、それでよいかということがありますが。これについて、それはしようがない、本人が自ら判断することにしたのだという以上は当然の帰結だと思います。だから、逆に言うとというか、これが駄目なのだったらどうして駄目なのか、その駄目だということについて全体の考え方と整合するのかということをむしろはっきりさせて、中間試案では、駄目だという考え方はこうだということで提示する必要があると思います。しかし、私にはその理屈は思い付きませんというのが1点目です。   2点目は、24ページから25ページに掛けてある、事理弁識能力が回復しない状態で法定後見が終了したときに20条1項の規律を及ぼさないとする考え方についてです。これは、相手方からは法定後見が終了した理由なんていうのは分からないので、相手方から分からない事情で法律行為の効力を左右することになることから、およそ適当とはいえないのではないかと思います。ただ、本人が事理弁識能力を欠く常況にあるということは、おおむね意思無能力と考えてよかろうと思いますので、意思無能力状態がほぼ継続しているその人に催告の通知を送っても、通常、本人に対抗することはできない、結果、確答が発せられないまま一定の期間がたちましても催告の効力が生じていない以上、追認の効力は生じない。そのように考えていくと、規律修正の必要はないということになるのではないかと思います。   3点目は、20行目以下にある3、見直し後の120条の規律についてです。30行目以下に、同意をすることができる者にとどまる保護者は取り消すことができず、33行目ですか、追認をすることもできないとあります。これは、現行法の規定を論理的につなげると、確かにそうなります。でも、同意はできます、取消権はありませんという保護者を用意した場合、代理権があればもちろん取り消せますけれども、当たり前ですけれども、事前に同意をすれば、その法律行為は取り消せなくなりますよね。そうであれば、同意を得ずに本人が何か法律行為をしてしまいましたというときに、事後に追認をすることはできるかというと、これはできるのではないかと思います。というか、できるようにしないといけないと思います。事後に追認すれば、もうそれで、事前の同意はなかったのだけれども、事後の同意に当たるような追認をすれば、本人は取り消せないことになる。そう考える余地があるというよりは、そうすべきだと私は思います。そうだとすると、122条の方をむしろ改める必要があるのではないかと思っています。   そのことを前提として、そうだとすると相手方としては、保護者に同意権はあるけれども取消権はないというときですけれども、その保護者、同意権のある人に催告しても別に構わないですけれども、確答がなかったからといって何ら効力は生じないということになるのではないかと。そうすると、細かい法律の話ばかりになりますけれども、20条2項から保佐人、補助人を除いて、20条2項の催告の相手は法定代理人のみとするのではないかと思います。その場合に相手方はどうするかというと、本人に催告するほかない。どういう催告かというと、同意権のある、その人の同意を得て追認せよと催告をすることになるのだと思います。そうなると、結局そこで確答が返ってこなかったら、取消しが擬制されるということになります。   そうすると、そこで問題となってくるのが、26ページに飛びまして、9行目以下のなお書の、こういう考え方があるという点です。これは、現行制度では確かにそのとおりかなと思える面はあると思うのですけれども、今申し上げてきたように保佐人、補助人に固有の取消権はないということになりますと、相手方は宙ぶらりんの状態にいつまでも置かれることになるのですね。追認は望んだってしてもらえないかもしれませんけれども、追認してもらえないのだったら、もう取消しを確定させるという利益を得たいということはあると思います。ですから、むしろ今私が申し上げてきたような考え方を採れば、20条4項が積極的な意味を持つ、相手方が浮動状態をともかくも免れられるということで、積極的な意味を持つことになるのではないかと思っています。以上が1についてです。   次、2の意思表示の受領能力に関してですけれども、これは30ページにイでいろいろ、どうするのだということが問われていることに対して、中間試案に向けてこれを提案するのであればこんなことが考えられるということの一助としていただくために、私の考え方を申し上げておきたいと思います。まず選任の裁判の要件は、17行目以下に二つ考え方が挙げられていますが、私は受領者が事理弁識能力を欠く常況にあるというときに受領の代理権を持つ人を選任するということになるのではないかと思っています。誰が申立てをするのかというと、例えばの括弧書きで入れていただいているように利害関係人、法律上の利害関係を有する者だということになると思っています。   選任の要件は事理弁識能力を欠く常況にあるということで選任をすることになるのですけれども、申立てのときにそんなことがはっきり相手方に分かっているわけはないので、相手方はその常況にある見込みだということで申立てをするしかない。裁判所が判断をして、いや、その常況にはないということになると申立ては却下される。けれども、そのときには意思能力はそこそこ認められるのかなということになるはずで、意思表示を対抗できる確率が高まるのだと思うので、その点で意味がある。裁判所が事理弁識能力を欠く常況にあると判断したら、ここで提案しようとしていただいているというか、私がしてくれと言っていたところなのですけれども、代理人の選任の意味が実際上出てくると思っています。   それから、では意思表示を受領した後、その代理権を持っている人はどういう対応をするのだというと、これも括弧書きに記していただいているとおり、法定後見の申立て等について判断するということだと思います。ただ、その申立てをするということについてどの範囲でできるかということは考えなければいけなくて、基本となるのは、やはり当該意思表示に係る事項だと思います。その事項だけだったら特別代理人の選任とほとんど変わらないことになってしまうので、やや幅広には認めるということにしつつ、飽くまでその意思表示に係る事項ということになるのではないかと思います。   そして、最後の、ではどういう人を選任するのですかということですけれども、これは前に本人の保護者であった人でもいいですけれども、特段ここだけ別の考え方というか、ほかの場合の保護者の選任と別の考え方をする必要はないので、その申立てのときに事実上、この人にというようなことも含めて、最後は適任者は誰かを判断して裁判所が選任するということになるのではないかと思っています。   以上がここに書かれていることなのですけれども、もう1点考えなければいけないことがあると思っていまして、仮にこの受領の代理権を与えたとして、どの期間与えるかということをはっきりしておく必要があると思います。未来永劫というわけにはさすがにいかないので。継続的な行為に係る意思表示の受領だったら、その継続的な行為が継続すると考えられる期間を最長とすることになるでしょうけれども、必ずしも継続的な行為ではない場合には控え目な期間ということにするのかなと思います。前に別の場面で、保護者の権限の終期について必ず設けることには反対だと申し上げましたけれども、この制度を設けるとしたら、ここは期間を必ず設けないといけないのではないかと思っています。 ○加毛幹事 制限行為能力者の相手方の催告権について、中間試案に向けた資料作成の観点から、5点申し上げたいと思います。   第1に、21ページ10行目と11行目の間に民法20条3項への言及があってもよいのではないかと思います。20条3項は「特別の方式を要する行為については、前二項の期間内にその方式を具備した旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。」という規定です。ここでいう「特別の方式」の具体例として、民法起草時には、親族会の許可や未成年者である夫の法定代理人の同意などが挙げられていましたが、昭和22年の民法改正の結果として、現在ではこれらの制度は存在していません。そこで、現行法の下での具体例としては、例えば、民法864条本文に基づいて後見監督人が選任されており、後見人がその後見監督人の同意を得なければ一定の行為を行うことができない場合が挙げられています。そのような場合を表すのに「特別の方式」という文言が適切であるのかということも含めて、言及があると良いと思います。また、20条3項は「前二項」と規定するので、20条1項と2項の双方を受けた条文であることになりますが、主として20条2項との関係で問題となる条文であると理解されていますので、そのことを明らかにする改正も考えられるかもしれません。いずれにせよ、民法20条の改正を提言する際に、3項についてのみ言及がないというのも、おかしな感じがするので、以上を申し上げる次第です。   第2に、22ページ34行目から23ページ1行目及び24ページ19行目から24行目についてです。これは、先ほどの佐久間委員が「1」の2点目としておっしゃったところに関わるのですけれども、ここでは、行為能力を回復した本人が事理弁識能力を欠く常況にある場合には、取引相手方は有効に催告することができないと説明されていますが、有効に催告ができないことの当否に関する検討の必要性は指摘されていません。これに対して、23ページ13行目から14行目では、本人が事理弁識能力が著しく不十分である場合に関しては、民法20条1項の規律を適用することについて、「そのような規律でよいか検討を要するように思われる」と指摘されています。   先ほど佐久間委員は、本人が事理弁識能力を欠く常況にある場合について、それで結構とおっしゃったように思いますが、取引相手方が有効に催告できないということになりますと、取消権が時効消滅するまで、取引相手方は不安定な地位に置かれることになります。そのような不利益を取引相手方に課すことが正当化されるのかについて、議論の必要があると思います。そして、この点は、「2」における意思表示の受領能力に関する規律と併せて検討すべき問題であると考えられます。そこで、「1」においても、問題の関連性について言及しておくことで、議論の流れを把握しやすくなるように思います。   第3に、24ページ12行目から18行目につきまして、ここには論理の飛躍があるように思います。14行目に「仮にそうであるとすると」という接続の文言がありますが、その前の文章では、「適切に対応することの期待がある」とされているところ、ここで「適切に対応する」のは保護者である保佐人であると考えられます。被保佐人が保佐人に相談をする必要があるのは、自らが行為能力を制限された法律行為について催告を受けた場合であるわけでして、被保佐人から催告があったことの連絡を受けた保佐人は、被保佐人の利益を考慮して、追認又は取消しの判断を行うことになるのだろうと思います。これに対して、「仮にそうであるとすると」から始まる文章は、行為能力を回復した本人が自己の利益を擁護するために適切に追認又は取消しを行う場合を対象とするものです。既に行為能力を回復している以上、保護者というものは存在せず、誰か適切な者に相談することができる保証もない場合となります。そうすると、この二つの文章には論理の飛躍があると考えられますので、「仮にそうであるとすると」という文言でつなぐべきではないと考えられます。この点については、説明の仕方を見直す必要があるだろうと思います。   第4に、24ページ25行目から30行目の段落は、文章全体の流れから突出した印象を与えます。この段落は、民法20条1項後段の法的効果を追認擬制から取消擬制に改める可能性を検討しているのだと思いますが、そうだとすると、この部分の表題である「現行法の規律を維持する考え方」にそぐわない内容になっていると思われますので、書き方に工夫が必要であるように思いました。   最後に、26ページ5行目についてです。これは、佐久間委員が「1」の3点目としておっしゃったところに関わります。佐久間委員は、部会資料とは異なる考え方に立って、御意見をおっしゃいました。これに対して、仮に部会資料の立場を前提とした場合に、どうなるのかという観点から発言したいと思います。民法120条の取消権者から同意権者を除くという改正をした場合に、26ページ5行目では、民法20条第2項の「催告の相手方を法定代理人のみ」とすることが提案されています。ここでいう「法定代理人」として誰が想定されているのかについて、もう少し説明があると良いのではないかと思います。制限行為能力者には未成年者が含まれるので、未成年者の親権者は「法定代理人」に該当するのだと思いますが、そのほかに、行為能力を包括的に制限される類型を存置する場合の成年被後見人が法定代理人として想定されているのでしょうか。   他方、従前の審議では、家庭裁判所の審判によって、保護者に取消権を付与するという考え方も示されていたと思います。この場合の取消権を付与された保護者は、文言上「法定代理人」には該当しないように思われますが、取消権を付与された保護者には追認を認めるという考え方もあり得るように思います。そこで、そのような保護者に対する催告が考えられないのだろうかというについても、検討を要するように思います。 ○野村幹事 ありがとうございます。まず、催告権のところなのですけれども、二読目でも申し上げたとおり、特定の事務に限定して保護者に同意権等が与えられる制度を想定した場合、制度利用の終了に当たっては、必要性が消滅したか否かが検討されることになるため、保護者が追認等をせずに制度の利用が終了するという場面はあまり想定されないと思います。また、その場合の相手方の催告権ですが、第4回会議で青木委員が指摘されていましたが、相手方は成年後見制度を利用していたことも、それが終了したことも知らないことがほとんどだと思われますので、一般的な契約の履行が求められるのみで、催告権が行使される場面も想定しづらいかと思います。この点についてリーガルサポート内で意見が分かれていましたが、今回改めて議論し、現在の制度を大きく変更しなくても本人保護が大きく損なわれることはないと考えます。   意思表示の受領能力についてなのですけれども、こちらは二読目の主張と変わらず、必ずしも法改正で手当てしなくてもよいと考えます。制度の利用が終了した後、判断能力が不十分であっても、意思表示の受領能力があると想定すれば取引の相手方の混乱は生じないと思いますし、意思能力がない方というのも全く想定されないわけではないですが、何らかの対応をせざるを得ない意思表示が本人に対してなされたとすれば、やはり再度の制度の利用を検討する場面になるのではないかと思いますので、本人の意思表示の受領能力を問題にするよりも、いかに適切に再度の制度の利用につなげるかが重要になる場面ではないかと思います。この論点については、一般的に判断能力が不十分な人と、過去に成年後見制度を利用していて判断能力が不十分な人を区別する必要はなく、また、本人にとって過剰な介入になりかねないと危惧します。   また、意思表示の受領をする代理人を想定して、その代理人に意思表示の受領以外の代理権も与えるという案が出ていますが、現在でも、判断能力が不十分な方については意思表示の受領については地域包括支援センターの職員、ケアマネジャー、相談支援専門員、民生委員など、身近な支援者によるサポートで賄っている部分があって、今後活躍が期待される意思決定支援サポーター等まで含めれば、意思表示の受領をする代理人まで想定すべき場面は余りないのではないでしょうか。あったとしても、結局は意思表示の受領以外に何らかの法律行為が必要になるでしょうから、再度の成年後見制度を利用することで対応する場面だと思われます。それよりも、中核機関等がこれらの支援者の支援を円滑に行われるように、権利擁護支援の地域連携ネットワークを強化していくことで対応していくことが考えられます。 ○竹内(裕)委員 2点です。1点目が、制限行為能力者のところで、書き方というところなのですけれども、この資料を読んだときに、今までの議論で開始審判を別途設けるか、代理権付与審判とするのか、どうするかという議論があったと思いますが、この20条の制限行為能力者というのは、開始審判によるものなのか、開始審判がなくならない場合は制限行為能力者のままなのか、その辺りが読んでいて分かりにくい人もいるのではないのか、書き方を工夫した方がいいという意見がございました。   あと、意思表示の受領能力について、検討してもらった弁護士の中には余り積極的な意見はなかったのですが、ただ、例としてこういう場合は確かに困るというので挙がったのが、契約不適合責任の場合、不適合を知ってから1年以内に通知をすればよく、訴訟はその4年後であっても本来は大丈夫である。だけれども、こういった意思表示を受領してもらえるような制度がないと、不適合を知って直ちに訴訟を提起しなければならないという不都合だって確かにあるということで、一つそのような例もありましたので、述べさせていただきます。 ○山野目部会長 頂きました。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   御発言の御希望を頂くまでに佐久間委員にお尋ねをします。本人が恐らく意思能力がない状態だと見られるときに、その人に対して催告その他の意思表示、意思の通知その他これらに準ずるものをする必要が生じたときに、利害関係人が、佐久間委員が期限付きのものにしなければ駄目ですということを強調しておっしゃった、保護者の選任の申立てが認められてよいというお話でした。ごもっともなお話であると受け止めた上で、この機会にお教えいただきたい点は、そこでいっている利害関係人は、普通この種の利害関係人という概念を使うときの通例に従って、法律上の利害関係がある人であると理解してよろしゅうございますか。 ○佐久間委員 そのとおりです。今、竹内委員もおっしゃいましたし、資料にも例示されている、契約不適合のあった買主とか、不動産賃貸借で借主、貸主、どちらでもいいのですけれども、制限行為能力者というか、事理弁識能力を欠く常況にある人を相手にしている人、あるいは別に社会福祉施設でも構わないのだろうと思いますが、そのような自らその人に対して権利行使を具体的にすることができるという人を私は考えております。 ○山野目部会長 今、佐久間委員が複数の例を挙げられたところのように、既に何らかの法律関係が進行している過程において、どうしてもその延長で本人に対して意思表示をしたいけれども、有効に受け取ってもらえるか心配であるというときは、仰せのとおりでありましょう。意思表示をする必要が私はありますという需要一般を相手取って考え始めますと、私はあの人に対して契約の申込みをしたいですけれどもと、契約の申込みというのも一つの意思表示でありますから、それで利害関係に当たるということにされると、闇雲にどんな場合でも、ふと今思い付いたのですが契約の申込みをしたいですと言われると、利害関係人の該当性が認められるということになり、そうすると、随分ゆるゆるに拡がりそうであるという気持ちもいたしまして、そこは恐らく何か文言として縛るという、細かに絞るということはしないけれども、ほかのいろいろなところで用いられている利害関係人の概念運用と同じように、適切に絞って理解、運用されていくという理解になりますかね。 ○佐久間委員 そうだと思います。法律上の利害関係を有する者と書けばいいというのだったら、そう書けばいいと思いますけれども、余り見ないですね。 ○山野目部会長 見ないですね。利害関係人で、不在者の財産管理なんかのときにも、何となく取引をしたいですでは駄目でしょうというお話で理解されている、あれと同じように考えるということですね。 ○佐久間委員 そう考えております。 ○山野目部会長 分かりました。   引き続き、いかがでしょうか。 ○加毛幹事 25ページから26ページの記述につきまして、先ほど佐久間委員から問題提起がございましたが、中間試案に向けた資料作成の観点からは、追認の法的性質について考え方を整理する必要があるように思います。事務局の皆さんに対して、釈迦に説法であるわけですが、民法起草時には、追認は取消権の放棄であると説明されていました。その論理的な帰結として、追認権者が複数存在する場合、ある者が追認をしたとしても、他の追認権者が取消しをすることは妨げられないとされました。放棄できるのは自らの取消権だけであるからです。しかし、民法制定後の通説では、このような考え方は採られなくなり、追認は法律行為の有効性を確定する意思表示であると説明されることになりました。   このような説明を前提として問題となるのが、取消権の放棄と法律行為の有効性を確定する意思表示がいかなる関係に立つのかです。鳩山秀夫などの通説的見解によれば、追認は、法律行為を有効に確定させる行為であると同時に、取消権を放棄する行為でもあると説明されます。25ページ31行目の「追認とは、取消権者が取消権を放棄して、その行為を取り消さないと決めることである」という説明は、このような通説を踏まえた記述であると考えられます。   佐久間委員が指摘されたのは、取消しと追認の関係について改正をするのであれば、以上のような追認の法的性質に関する通説的理解を見直す必要があるのではないかということであると思います。学説上は、追認権と取消権とを区別し、法律行為の有効性を確定させる意思表示としての追認に、取消権の放棄が含まれないとする見解も存在したようです。そのことも踏まえて、追認の法的性質をどのように理解するのかという観点から議論を整理することが、中間試案の資料作成にとって有益なのではないかと思います。 ○山野目部会長 加毛幹事にお教えいただきたいこととして、今のお話で参りますと、起草時に取消権の放棄であると考えられており、そこを律儀に取消権の放棄という考え方を突き詰めていくと、おっしゃったように個別行使、個別処分というお話になっていきますけれども、恐らく現在はそういうふうに考えられていなくて、現在の理解はどちらかというと事後の同意権の行使という方に近いでしょうか。 ○加毛幹事 先ほどの佐久間委員の御説明も踏まえますと、追認を同意権の行使として説明することはあり得るだろうと思います。取消権に関する法改正を前提として、追認が取消権の放棄という性格を併有することを否定することになります。その場合は、同意権の行使とは、法律行為の有効性を確定させる行為と理解することになるのではないかと思います。なお、取消権の放棄という説明は、法定追認の法的性質の理解にも関わってくることにも言及しておきたいと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。 ○根本幹事 意思表示の受領との関係です。具体例というところで行きますと、一つは遺留分侵害額請求の受領については実務上指摘があると思ってはいます。その上でなのですが、部会資料30ページの19行目から20行目のところでも指摘がありますが、そのような認定をすることが可能であるのかというところについて、例えば訴訟における特別代理人の選任のときを考えてみますと、飽くまでも訴訟における特別代理人のときには、訴訟提起が何らか取引の相手方からありますから、何か請求権はあるのだなということは一定の疎明はあるということだとは思います。実際の特別代理人の選任の場面においては結局、事理弁識能力を欠く常況にあるかどうかということについて調査嘱託や、何らか医療機関に照会を掛けるなどの対応をとられるということになっていると思います。   そうなると、意思表示の受領という場面だけにおいて、しかもこれは管轄は家裁がやるということではないかと思いますけれども、実務上ワークするのかどうかということについて、家庭裁判所がどのようにお考えかということは確認はしなければいけないと思いますし、もう一つは、先ほどの部会長からの御指摘にも関係するところだと思うのですが、悪徳業者等がこの制度を濫用する、悪用するということがないようにするという観点では、仮にこの制度を導入するというときには、予納金ですとか特別代理人の報酬という問題が出てきますので、コストを掛けさせるというところも必要になるということを踏まえて、この制度を検討しなければいけないのではないかとは思います。 ○山野目部会長 念のため申し添えますと、佐久間委員は特別代理人を選任せよとおっしゃったものではなく、この場合も後見の一種であるとおっしゃっていると理解します。ただし、期限が付くとか特別な扱いがされるべきですということも注意深くおっしゃったというふうに聞きました。   根本幹事、お続けください。 ○根本幹事 質問なのですが、後見制度の中にこの制度を取り入れるということでしょうか。 ○山野目部会長 では、佐久間委員に確かめて、御発言をお願いしましょう。 ○佐久間委員 後見制度の中と考えておりました。ですから、申立権者がここは特別に申立権を、法律上の利害関係を有する人は意思表示の受領について持つ。その人が請求をして、選ばれる保護者は意思表示の受領についてのみ、もしそれだけだったらですね、権限を付与される。のみというのは、プラス、その選ばれた人は法定後見等の申立権者となる。だから、申立てのルートを別に作るという発想です。その結果、具体的に問題を処理する人が誰も選ばれないということは、それはあり得るのですけれども、意思表示自体は、あるいは催告の通知でもいいですけれども、到達しているということになりますので、その選ばれた代理人というか権限者、保護者が代理権を持っていて、到達しているということになるので、例えばですけれども、賃貸借で契約解除したいというときは、解除の意思表示は着きましたという、もちろん事前に、何か月分滞納なのでいつまでに払え、プラス解除の意思表示というときに、それは効力を生ずると、私はそういう発想でおります。 ○山野目部会長 根本幹事、お続けください。 ○根本幹事 分かりました。ありがとうございます。そうしますと、通常の代理権や同意権、取消権付与の申立権者とは別に、この制度のための申立権者だけを取引の相手方という形で設計をされるという理解になりますか。 ○佐久間委員 そうです。 ○山野目部会長 その上で、繰り返しますと、濫用のおそれがあるからどうしましょうかということを少し前に佐久間委員と私との間で御相談をして、それは利害関係人の概念を厳しく抑制的に運用していくという当然の前提が確認されるべきであるというお話になっていました。   その上で、根本幹事から今、裁判所はどう受け止めるかという御示唆がありましたが、しかし多分、裁判所は尋ねられても立法の結論を見守りますとおっしゃると予想します。 ○遠藤幹事 制度として、法定後見の一種としてこれを捉えて、家庭裁判所で受けるということになると、最終的には正に部会長がおっしゃるとおり立法の御判断ということになるのだろうとは思いますが、実際に制度を運用するに当たっては、おそらく、根本幹事御指摘のとおり、意思表示を受領するための意思能力がないことをどうやって確認をするのかという点について、なかなか難しい隘路があると思いました。また、法定後見の申立人にいわゆる利害関係人を含むかどうかという議論がこれまでもあったと思うのですが、その際には御本人の意思の尊重という観点から慎重に考えるべきだという御意見もあったように記憶しておりまして、そういったこととの関係で、この制度をどのように規律すべきかを今後も伺っていきたいと思ったところです。  ○山野目部会長 ありがとうございました。遠藤幹事に今、突然お声掛けをしましたけれども、図らずも適切に論点の在りかを整理していただきました。佐久間委員が御示唆、御提案になったものは、これまでの部会における論議と重ね合わせながら理解をしようとすると、こういうことであろうと考えます。恐らく、仮に後見といいますが、後見の手続一般においては、通常は利害関係人まで申立権者を拡げるということはしませんけれども、ただし、ここの意思表示の受領の局面に関する限りは、法律上のという限定を伴った厳格な運用のものとはいえ、利害関係人に申立ての可能性を認める、選任されるものは特別代理人ではなくて、保護者といいますか、一般的な規律における後見人とでも呼ぶべきものである、ただし、やはり濫用の危険をなくし、あるいは保護者となった者のミッションを明確にするという見地からも、期間を制限するということが必須でしょう、このようなことを佐久間委員は強調なさいました。   付け加えますと、報酬も本人の財産から支弁するという規律が、後見である以上はここでも働きますから、むやみに権限の上でも期間の上でも重いものにしたとき、そちらの面で本人に対して負担をかける結果になるということも、過度にそういう結果にならないように注意しなければいけませんから、そのようなアイデアはどうでしょうかということを、恐らく佐久間委員が強く積極的にというよりは、この状況を打開するための一つのアイデアということでおっしゃってくださったと受け止めます。   引き続き御議論をお願いします。 ○青木委員 催告の点なのですけれども、原則としては、何らかの理由で途中で制度利用が終わって、その後にご本人に対する催告があり、これに対して応答しなかったときには、追認ということでやむを得ないことであると思います。一つは、そもそも同意権・取消権を付与していることを分かっている取引の相手方は、取引をする際に、権限者による同意をもらってから取引に入るのでして、取引に入る段階で、同意権・取消権があることを知らない場合には、知らないまま取引をした後で、次に取引の相手方がご本人に請求をするとすれば、それは催告ではなくて、具体的な契約行為に基づく履行、お金を払ってくださいなどを求めてくるはずだと思いますので、この取消権の行使を催告をしてくるというケースはなかなか想定しがたいのであり、したがって、小澤委員からも経験がないというお話があったのは、弁護士の経験としても同様であります。そういうレアケースである中で、追認でもやむを得ないということではないかと判断をしているということになります。   ただ1点、例えば、ご本人さんが追認するか取り消すかの判断ができない能力であるにもかかわらず、途中で制度利用が終わった場合の保護の問題については、例えばですけれども、現在は1か月以上の催告となっていますけれども、これをある程度の期間を延ばしていただくことによって、例えば3か月以上等ですね、そうしておいて、ご本人の周りの支援者や親族が、それに関する対処のために、改めて、代理権等の付与の申立てをして成年後見制度を利用することで対処する、そういう時間的余裕を与えることによってカバーするということは考えられないかと思います。   次に、意思表示の受領能力の点については、これも繰り返し申し上げているのですけれども、中間取りまとめにおいては、意思表示の受領をするだけで取引の相手方と本人との間で解決する事態というのは少なくて、その後に必ず次の権利行使に伴う金銭請求や、明渡請求等が伴うものであるという状況説明を是非していただきたいと思います。一方で、解除の意思表示等、意思表示があるだけで終了する事案ということもないわけではないわけですけれども、そのときには98条の2が「対抗することができない」という規定になっているという、以前に加毛幹事からも御示唆を頂いた規定ぶりというのがあるので、意思表示が到達したことにしても相手方もご本人も特に困らない、双方それでいいというような場合には、この「対抗することができない」に基づいてうまく収まることになるのではないかとも思われ、意思表示の受領だけで解決する事案についても現行の規定で特に不都合はない。意思表示の受領だけでは解決しない、次の権利行使が必要な場合には、訴訟その他別の手続の中で、成年後見の選任も含めて考えればいい。このような利害状況といいますか、どのような事例、場面を想定して議論しているかが分かるようにして、中間取りまとめでは御提示いただきたいと思っています。 ○山野目部会長 青木委員に確認ですけれども、20条の現在の規律がどのように改められることになるか、その帰趨にかかわらず、もう少し本人の側の対応を丁寧に待ってあげるということをすべきではないかという観点からの御意見をおっしゃったと理解しました。この種の月数などの時間のリズムの問題といいますものは、現在の民事法制全体の趨勢の中では、かつて作られたものよりも短く改める傾向が強くて、それは現代社会がいろいろ忙しくなってきていることが背景にあるわけです。一月のものをもっと延ばして2か月、3か月にするという見直しは、説明を添えないと、法制的にどうしてそうするのですかという説明が求められますけれども、恐らく青木委員がおっしゃろうとしていることは、仮に制限行為能力者と呼びますけれども、そういう人たちの意思形成について、高齢化社会や障害者福祉ということを踏まえた現代社会は、もう少しその人たちに丁寧に対してあげるべきであるという理念が一方にあり、そのことを考えれば、相続の際の熟慮期間と同じくらいの期間にするということはあってもよいというふうな観点、感覚のことをおっしゃったと受け止めましたけれども、それでよろしゅうございますか。 ○青木委員 はい。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   引き続き御意見を伺います。 ○根本幹事 先ほどの部会長の御説明との関係なのですが、30ページの佐久間委員御提案の制度の際の意思表示の受領をする方の報酬も、後見の原則から言えば本人負担であると部会長はおっしゃられて、そうだと思うのですが、この制度を入れるという場合には、取引の相手方の申立ての方が御負担されるということを考えてもいいのではないかとは思っています。あと、仮にですけれども、選任された保護者が代理権の追加が必要だとなった場合は、従来の申立ての理屈で言えば申立権者が費用を負担するということになるのだと思いますが、代理権の追加付与等と同じようにそこは本人が負担するということと区別して整理しないといけないのではないかと思いました。 ○山野目部会長 もちろん審判手続の手続費用を申立人が負担するものですし、それから予納金のように仮に納めるものというのは、仮に納めるものですから手続のイニシアチブをとった者に差し当たって払ってもらいましょうということであるとしても、いわゆる後見報酬本体をほかの人が負担するという例は他にありませんね。ここはしかし例外が考えられていいでしょうということを今、根本幹事は意見としておっしゃったと聞きましたけれども、よろしいですか。 ○根本幹事 はい。 ○山野目部会長 民事訴訟法35条の特別代理人が選任されたときの報酬は、本人が負担するものでしょうか。 ○波多野幹事 私がお話するのが適当かどうか、必要であれば補足いただければと思いますけれども、民事訴訟法の特別代理人の報酬は原告側に予納していただくのが一般的かと思われますが、その予納金から特別代理人に支給した報酬も訴訟手続の費用に含まれて、最後に費用負担の裁判で負担者が決まっていくという認識です。例えば、訴訟費用は被告の負担とするとの裁判がされた場合には、被告に請求できるのでしょうけれども、現実に訴訟費用を回収できないケースでは、原告側が予納金として負担したまま終わることになるということなのではないかという気がいたします。 ○佐久間委員 またかと思われるかもしれませんが、20条の規律も、今話題にしていただいた受領能力のところも、確かに本人は保護されるべき立場にある人だということは間違いありませんけれども、20条の規定がなぜあるかというと、これは本人保護の問題ではなくて相手方保護の問題なのですね。だから、例えば3か月に延ばしていけないとは言いませんけれども、本人はこういう状況なのですということだけで3か月、あるいは別に半年でもいいのですけれども、延ばしますかというと、相手方は早く浮動状態を免れたいと考えているところで、しかもそれにはそれなりの理由がきちんとあるというか、法的にも酌んでいい事情があるというところだから、そこはやはり、青木委員がおっしゃったような御意見は中間試案に記載したらいいと思うのですけれども、しかしそれは飽くまで今までと違うことなのですよということははっきりしておかなければいけないと思います。   同じことなのですけれども、受領能力のところの費用の問題もそうなのですが、これは普通は、例えば不適合責任を追及したい、解除したい、あるいは賃料不払いのときに請求したいというときに、相手方の住所が分かっていて、そこに到達さえさせれば効力を生じさせられるところ、本人側の事情でそれが阻まれているわけですよね。確かに本人保護の必要はあるけれども、ここは本人の保護とか本人の意思の尊重の問題ではなくて、そういう権利を有している人がこの社会において権利を行使することが相手方の都合によって困難になっていると。これをどうするかという問題で、例えば、この制度を設けたというときですけれども、このときは本人保護が必要だからとか、それは相手の都合ですよねというのではなくて、一般的には権利行使ができるところを本人の都合によってできなくなっているのだから、予納金はそれは要ると思います、回収できないおそれがあるから。でも、最終的には本人のための事務をやるのだから、本人が費用負担することになるよねという、部会長がおっしゃったのが私は筋ではないかと思っています。 ○山野目部会長 ありがとうございます。 ○上山委員 今の佐久間委員の御発言とも関連するのですが、意思表示を受領するための権限を有する者を別途選任する仕組みの導入について、まず、基本的には賛成です。ただ、この法的な性格について、先ほど佐久間委員と山野目部会長とのやり取りの中で、これを後見の一種として位置付けるという御理解が示されたかと思うのですけれども、私は今の佐久間委員の考え方を前提にしても、これはむしろ意思表示全般に係る問題ですし、この規定が置かれるのは民法98条の2を補完するという趣旨もありますので、法定後見あるいは後見の一種というよりは、規定の位置付けも含めて、意思表示の特則的な仕組みとして整理する方が、全体的な説明として整合性が取りやすいのではないかと感じました。 ○山野目部会長 上山委員、どうもありがとうございました。お考えの方向も十分にあり得るところでありますから、これを中間試案でどういうふうに打ち出していくのがよろしいのか、改めて整理をすることにいたします。   引き続き御発言を承ります。   皆さんから特になければ、私、一つ悩ましいことがあるということを竹内裕美委員の御発言で気付きました。今お諮りしている制限行為能力者の相手方の催告権も、意思表示の受領能力も、それから後に話題にしていただく制限行為能力者の用いた詐術の話も、全部ひとまず本日の部会資料は、制限行為能力者のというふうに言い始めていて、現行法を前提とする議論としても、また言葉遣いとしても、法律家にとってはそれが便利だからそれを用いています。ただし、中間試案でこういう言葉遣いで打ち出すとすると、一般の方々がそれを読んで意見を出そうと考え、また理解しようと考えたときに、行為能力の制限とか制限行為能力者というラベルを貼られた人の存在というものが、もう残るという方向が当然の前提になっていますねという気持ち、あるいはイメージを抱くでしょうし、それから、仮にそういう方向で行くとしたときに、取消権を行使する人は誰ですかということについても、本人でない者がやみくもに代行決定で取消権を行使するということ自体が議論されてよいにもかかわらず、それは認められるのが当たり前という前提でこの中間試案が成り立っていて、そこについては説明がないままこの言葉が用いられるものですねという読み方をされたときに、少し私どもとして努力が足りないだろうかと感じざるを得ない側面が出てくるかもしれません。   今私が幾つか述べた論点は、それ自体はここでどちらにするか方向を決める議論をしたものではありませんけれども、決めていないとすれば、決めていないこと自体を、何か決まったというような印象を与える言葉遣いにすることも困りますから、困りますねと申し上げながら、しかし悩んでいる理由は、この言葉を用いないようにするとすごく不便です。けれども、どうしても法律家にとって便利だということと、国民から誤解を受けてもいいという弊害を天秤に掛けたときに、もう一汗かかなければいけないかもしれないということは感じました。少しその答えが出ないことから悩んでいるということを御案内をしておきます。   引き続き、もう少しここの論点について御発言を頂きます。いかがでしょうか。   大体御意見を承ったと考えてよろしいですか。 ○河村委員 部会長が858条についてどう考えるかということがとても重要というお話を聞いて、私なりに考えていたので、今日の意見として、コメントとして残しておきたいと思いました。意思の尊重ということなのですけれども、いろいろな資料とか御意見を聞いていても、また意思決定支援という言葉も出てきておりまして、これはとても重要だと私は思っております。意思決定支援を法律的に位置付けるかどうかは、現時点で意見を保留しますけれども、いずれにしても、決定できない人に決定できるようにさせてあげるというイメージだけが読み取れるのです。私は、多分以前も発言していたと思うのですけれども、意思を読み取る側の能力というのは全く考えないのかといつも思うのです。意思を読み取るスキルとか、読み取る能力とか、あるいは技術でもいいのです、そう考えたときに、意思というのは、決定できていない人から引き出してあげるのだということだけではなくて、読み取る側の読み取り能力とか読み取り努力という視点を、見直しの時点で入れた方がいいのではないかと思っています。そういう意味で資料を読みますと、「確認」という言葉が出てくるわけなのですけれども、確認というのは私の言っている意味では少し違うのですけれども、少なくともやはり、法律にどう書くかは別として、最大限の努力をして読み取るのだと、そうするべきであるということが盛り込まれた法律になったらいいと思います。あなたに意思はないのだねと決める前に、その人の意思を確認する努力とか、そこに何か使える技術があるなら技術とか、スキルとか、そういうものを駆使するべきだと私は思っています。法律の文章になかなかなじまないのかもしれませんけれども、その意見だけを残しておきたいと思いました。上手くまとまっていなくて失礼いたしました。 ○山野目部会長 河村委員がおっしゃってくださったような観点が大事であると考えますし、今そのことを明確に河村委員から確認していただきました。今のような意見を受け止めて、858条の新しい姿が、法制上の様々な困難や制約がありますから、思うように行かない部分がありますけれども、可能な限りの努力を委員、幹事の協力によって、していかなければならないと感じます。   今の河村委員からのお話であった御示唆も更に承った上で申し上げれば、意思決定支援を一処懸命しようというと、どうしても上手に決めてもらおうという感覚で物事を考えがちですけれども、状況によっては、本人は今は決めません、あるいは決められません、決めたくありませんと述べているときに、無理に決めよと求めていく態度も控えなければいけないという考えは十分にいつも意識している必要があります。そうはいっても法律事務の中には決めてもらわないと困る事項というものがありますから、いつもそういうふうには言えないですけれども、ともすればこの意思決定支援というものは本人を急かして決めさせるというふうに動きがちな部分もありますから、そういうことも気を付けよう、というふうな御示唆が今の河村委員のお話の中にも含まれていたと感じます。ありがとうございます。   ここで、一言申し添えますと、20条は何らかの形で見直しをしなければいけないと感じられます。そのとき、ここで検討していることの主題とは異なりますけれども、加毛幹事が幾つか御指摘になったうちの特別の方式という概念ですね、あれはやはり分かりにくいです。多分、一種の現代化の要請に応えるという観点から、今般の諮問の主題ではありませんけれども、あれはやはり親族会の関与がかつてあったというようなことが風景の後ろにあって、ある文言でありまして、そのとき携わった先達には申訳ないですけれども、昭和22年の改正というのはすごく慌しくて行われ、法制的に洗練されていない法文があちこち、今回の仕事をしていても、ぶつかります。そういうところを、経過をよく調べた上ですることは必要ですけれども、この機会に直すということは、国民に分かりやすい規律にしていくという観点からも大事ですし、その点を含めて加毛幹事から先ほど重要な御指摘を頂きました。   先に進めることにいたします。部会資料11の第2の3の部分でございます。仮にと申し上げますけれども、制限行為能力者が用いた詐術に関して資料を用意しております。この部分について事務当局から説明を差し上げます。 ○山田関係官 部会資料11の31ページからの第2の3、制限行為能力者の詐術について御説明いたします。   民法第21条は、制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができないと規定しています。部会では、法定後見制度の見直しとの関係で、制限行為能力者の詐術の規律について、現行法の規律を維持する考え方のほかに、現行法の規律を修正して制限行為能力者の行為時の態様と当該行為の相手方の主観とを総合的に考慮して、制限行為能力者の保護と取引の安全との調整をより図る規律を設けるとの考え方が出されているように思われますので、これらの点について御議論いただきたいと思います。   なお、議論に当たっては、見直し後の法定後見制度との関係で、制限行為能力者の詐術がどのような場面で問題となり得るかとの点も含めて御議論いただきたいと考えています。 ○山野目部会長 説明を差し上げた部分について御意見を承ります。 ○小澤委員 ありがとうございます。制限行為能力者の詐術についても、部会資料に示された形で中間試案に向けての取りまとめをすることに賛同をしています。この点についても、実務上はそういった事例をほとんど経験していないもので、議論の蓄積がないというのが正直なところですが、分かりやすい制度とする必要はあると考えています。その上で、詐術に当たるかどうかは詐術の態様や本人及び相手方の状況によって異なっていて、法的評価の問題だと考えますので、最終的には司法の判断によらざるを得ず、具体的な基準を設けて規律することはなかなか困難ではないかと思いますので、意見としては現行の規律を維持すべきだという意見を持っています。 ○野村幹事 ありがとうございます。詐術については、以前も現行の規律を維持することで差し支えないのではないかと意見を申し上げたところです。そもそも取消権自体が問題となるケース自体も全体の中では少ない中で、現行で規律されている詐術を用いた本人の保護と債権者保護のバランスを積極的に変えなければならないという状況ではないのではないかと考えております。リーガルサポートとしては、現行の規律を維持することでよいと考えております。 ○佐久間委員 結論としては現行のとおりでいいのではないかなと思っているのですけれども、資料に書かれていることに関して何点か申し上げたいことがあります。   まず、34ページの1行目から、本人に有効に同意をする能力があるような事案では、本人は単独で確定的に法律行為をする地位がある、だから本人の多分意思能力に問題はないよねというようなことが書かれていると思うのですけれども、これはそうとは限らないのではないかと私は思います。どういうことかといいますと、手続への同意能力と当該手続の対象となっている行為について意思能力というか、その利害得失を適切に判断する能力があるかというのは別問題で、同程度とはいえないからです。くどいようですけれども、不動産取引ですとか複雑な仕組みの金融取引については意思無能力のおそれがある。事理弁識能力を欠く常況にあるわけではないのだけれども、そのような取引については意思無能力のおそれがあって、保護者の同意を得てするということによってそのおそれをなくすのだと、そういう状況だってあると思うのです。もっと言うと、自分では少しこの取引はできそうにないなということは認識しているけれども、ほかの人の助けを得たらきちんとできるなと、そこも認識している、だから同意するということもあるので、この前提は少しまずいのではないかと思います。これが1点目です。   それから、今のままでいいのではないかという話につながるのですけれども、18行目からかな、相手方の不利益が取引全体、社会全体で些細かどうかということが書かれているのですけれども、それは問題の本質ではないのではないかと私は思います。事態としてそれほど起こることではないというのは、きっとそうだと思うのですけれども、でも最高裁、ではなくて大審院かもしれないけれども、判例まであるぐらいなので、やはり問題は起こり得て、問題が起こった場合に、あなたは不運でしたねと相手方に言うわけにはいかないから、些細だというまとめ方はよくないと思います。   ただ、この場合は詐術と限定していることに私はやはり理由はあると思っていて、本人は飽くまで判断能力に問題のある人なわけです。したがって、当該法律行為をするについて適切な判断ができるかというところも疑問がもちろんあるわけですが、加えて、判断能力に問題のない人に比べれば、他の行動も適切な判断をせずにしてしまうおそれがやはり高いといえるのではないかと。そうだとすると、余り厳しく、あなたは相手方の信頼を害するような行為をしましたねということで、不利益を簡単に課すということでは、制度の元々の発想と異なるというか、発想に相容れないということがあるのではないかと思います。そこで、相当程度の悪性があるときのみをこの取消権剥奪の対象にしている、それが詐術という言葉で表されているのではないかと思うのです。ただ、相当程度の悪性の判断というのは、結局相手方を誤信させる程度に関わってくる悪性なので、その相手方を誤信させるに足るというところで、相手方の信頼保護の面もここには含まれているのではないかと思っています。   その意味で、ゴシックのところに戻りますけれども、16行目からあるところなのですが、行為時の態様と当該行為の相手方の主観を総合的に考慮して制限行為能力者の保護と取引の安全との調整を、「より」については少し後で申しますが、図るというのは、実は現行法でも詐術という言葉でもってこれをやっているのではないかと思います。  その上で、現行法のままでいいではないかというのは、「より図る」というところまで踏み込むことは、今の段階では必要ないのではないかということです。ただ、詐術という言葉は、これはほかの文言に比べると分かりやすいのですかね。詐欺に近いから。でも詐欺ではない、詐術なのだというので、これがもう少しイメージが、それこそぱっと湧くような言葉に変えられたら、それはその方がいいかなと思っています。 ○山野目部会長 佐久間委員に確認でお教えいただきたい事項があります。専門家に向かってこういうふうに申すことが変ですけれども、御存じのとおり、詐術については最高裁判所の判例もありますし、判例が述べているところを見ると、比較的されてきた運用の中で、詐術という言葉は用いているとしても、沈黙それ自体も場合によっては詐術になるか、みたいな議論がされて、本人のそのときの振る舞いを割と総合的に見て判断していきますよという傾向も見受けられるところです。そういうものを受け止めて、詐術という言葉だけだとすると、そこがものすごくそういう総合的考慮みたいな運用とは異なる印象のものとなりますから、もう少し現在の運用が見て取れるような表現に直したらどうかという意見も一方ではありそうですけれども、ただし、一旦総合考慮という発想での文言に変えてしまうと、外延がかなり広がっていってしまうおそれもありますから、やはり規定の根本趣旨を忘れないようにしてもらうという見地からは、詐術ないしそれに代わる言葉を維持した上で、あとは裁判所の運用を期待するという方向がよいでしょうということを今おっしゃったように聞きましたけれども、そのような理解でよろしゅうございますか。 ○佐久間委員 そのとおりです。制限行為能力者の保護と取引の安全の調整を図っていることは間違いないのですけれども、このような形で、法制上許される形での定式化を図ったとすると、それこそ部会長がおっしゃった総合考慮ということになって、制限行為能力者は厚く保護されてよいはずだと、私は先ほど申し上げたつもりなのですが、そこが飛んでしまうおそれだってあるということと、かつての、判例は確かに形成されていますけれども、あれはおおむね浪費者の場合ですよね。違いましたかね。判断能力に問題が出たから浪費しているという人はいると思うのですけれども、そうではない純粋の浪費者について、純粋の浪費者がいるのかどうか知りませんが、少し自信がなくなってきたけれども、浪費癖のある人について形成された法理、判断が今の典型的な制限行為能力者に当てはまるのかどうかというのは、少しあやしいのではないかと思っています。 ○山野目部会長 よく分かりました。 ○加毛幹事 今のお話にも関わると思うのですが、35ページ11行目の括弧書きに、「例えば、制限行為能力者に何らかの行為態様が必要か、取引の相手方が信ずるのみでよいか、加えてその前提として何らかの調査義務を果たしたことが必要か」という記述があります。民法21条の適用を判断する際に、「詐術」という文言に関連して問題となった、制限行為能力者がいかなる行為をしたのかという要素と、相手方が行為能力の制限がないと信じたことという要素があるのだろうと思います。現在の条文上も、「行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いた」ことが要件とされているので、2つの要素が考慮されることが前提とされているものと考えられます。そのことを前提として、35ページ11行目の括弧書きにおいて、考慮要素が3つに区別して書かれているのは、恐らく、まず、詐術行為があり、それによって相手方の誤信が惹起されることを、二つ目の「取引の相手方が信ずる」という文言によって表現し、それとは区別される形で、三つ目の「その前提として何らかの調査義務を果たしたこと」が、取引相手方の過失を要件として盛り込む可能性を示唆する趣旨なのではないかと考えられます。このような区別は、詐術の悪性が低いために相手方が誤信しなかった場合を排除することと、詐術によって取引相手方が誤信に陥ったとしても、取引相手方の属性などを勘案して、そのような誤信が法的保護に値しない――取引相手方に過失がある――場合を排除することを識別するという意味で、法律の要件立てとして機能することが考えられます。また、本人がいかなる行為をしたのかという事情と、相手方の誤信が法的保護に値するかという事情を区別する形で、より分かりやすい要件立てにすることは、立法の方向性としてあり得るように思います。   中間試案の資料作成という観点からは、この括弧書きが何を意味するのか、特に、二つ目と三つ目の要素がいかなる関係に立つのかが分かりづらいように思われまして、もう少し説明があった方が良いと考えます。私が今申し上げたのは、この箇所に関する私の解釈であるわけですが、そのような理解が適切であるかの検討を含めて、記述の充実化をお願いできればと思います。   最後に、以上とは異なる話となりますが、民法21条は未成年者にも適用される規定であるので、同条の改正を検討するに際しては、未成年者の扱いをどうするのかについても忘れてはならないと思います。実務上も、インターネット取引において、未成年者が自らを成年者と偽って、親のクレジットカードを利用して取引をしたケースなどが問題となっていると理解しています。未成年者の扱いについても、中間試案の補足説明などで言及していただきたいと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。後ろの方で御指摘いただいた点は、取り分け注意しなければいけないことでありまして、20条も21条も、これは未成年後見や親権の場合にも適用可能性が抽象的、一般的にある規定でありますから、今ここで成年後見制度との関係で議論に熱中していますけれども、最終的に法制を立案する際には、そこを精密にきちんと仕分けなければいけないことはもちろん、加毛幹事から御注意があったように、中間試案の際にもどこかで読み手に、これは未成年後見のことは別だということを私たちも気付いているし、読み手においても意識していただきたいということの注意喚起は丁寧にしておいた方がよろしいであろうと感じます。ありがとうございました。   引き続き御意見を承ります。 ○山下幹事 ありがとうございます。改正しなくてもいいという御意見に私も基本的には賛成ですが、21条の文言との関係で、加毛幹事が述べた未成年者の場合の問題と関連して、少し意見を述べさせていただきます。未成年者の場合は、成年であるということを信じさせるために詐術を用いるというケースが一般的だと思うのですが、成年後見の場合の詐術の用い方というのは、同意を得ているという形の詐術の場合が多いのではないかという気がします。21条の「行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いた」という書き方をしている文言について、もう少し表現を工夫して、同意を得るために詐術を用いた場合も含むのだということを分かりやすくするような条文改正はあり得るかなという気がいたしました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。法文にする際にも、山下幹事から御注意いただいた点に当然留意しなければならないことはもとより、中間試案の段階でも読み手に分かりやすくする工夫が始められてよいと感じました。どうもありがとうございます。 ○加毛幹事 山下幹事がご指摘になった点については、部会資料33ページ12行目の括弧書きの説明でも言及されていると思いますが、行為能力が制限されていないと誤信させる詐術と、行為能力が制限されているのだけれども同意を得ていると誤信させる詐術とで、取引相手方の主観的要件が変わってくるのかが気になるところです。法律の条文のレベルで、要件を書き分けることは難しいのだろうと思います。ただ、類似の事例といえるか分かりませんけれども、例えば、会社の代表取締役の権限が制限されている場合に、取引相手方が権限の制限がないと信じていた場合と、権限の制限を知っているものの、取締役会会議の決議など適切な手続を踏んでいると信じていた場合とでは、相手方に要求される主観的要件が異なるものと考えられています。法律の条文化は難しいとしても、中間試案に向けて、山下幹事がおっしゃったところを明確にする形で資料を用意されるのであれば、相手方の主観的要件との関係についても併せて検討していただけると良いのではないかと思いました。 ○山野目部会長 加毛幹事の現在の御感触をお教えいただいておきたいと感じますけれども、御指摘のとおり法人法制の場合には、代表者の代表権限にそもそも内在する制限の有無に関わる相手方の主観的様態の要件と、その制限を解除するための手続がとられているかどうかということについての誤信に関わる主観的様態とが異なるルールというか、異なる要件内容で規律されているわけですけれども、あれと同じきめ細かさをこちらの方でもした方がよいという御発想までおありでしょうか。 ○加毛幹事 その点については、行為能力の制限を取引相手方がどの程度容易に事前に覚知できるのかという問題に関わるように思います。本日の資料では34ページの30行目以下で指摘されていますが、現在の後見登記制度を、行為能力の制限がないことを証明する手段として利用することが、取引実務においてどの程度期待できるのかという評価に関わるように思います。それゆえ、山野目部会長が示唆されたように、単純に法人の理事や会社の取締役の権限の制限と同列の議論が妥当するわけではないだろうと思います。 ○山野目部会長 どうもありがとうございます。 ○佐久間委員 実質の話ではなくて恐縮なのですけれども、山下幹事がおっしゃって加毛幹事がおっしゃったことは誠にもっともだと思っているのですけれども、今の21条が、同意を得るべきところを得たのだということを含んでいないかというと、20条は行為能力の制限を受けない者、行為能力者と書いていますけれども、同意を得たら多分、行為能力の制限を受けていないのだと思うのです。だから、行為能力者であるというところに、入っていることは入っていて、ただ、そこは法律家的に読まないと読めないからということを、何か慎重にというのか、別に今の民法をかばってあげる必要はないのですけれども、欠陥があるわけではなくて分かりにくいと、そういうことなのだということを資料作成のときには留意していただければと思います。 ○山野目部会長 今、教壇でそう説明していますよね。今年の民法総則の講義でもそう説明したでしょう、皆さん。 ○佐久間委員 法学部生にはそういう発想を持たせるべきだと思うのですけれども、パブリック・コメントの対象者にそういう発想を持たせる必要はないので。 ○山野目部会長 そうですね、論理的な過誤は現在の法文にないという説明が可能ですけれども、読み手にフレンドリーな法文には必ずしもなっていませんね。ありがとうございます。   引き続きいかがでしょうか。   そうしましたら、部会資料11の第2の部分が終わりましたから、今度は花俣委員、久保委員の順番にお声掛けをしますけれども、何でもお感じになったことを御随意にお話しいただくことで、もし何かお話があれば、頂戴したいと存じます。 ○花俣委員 ありがとうございます。いつも御配慮いただき、大変感謝しております。ただ、今の議論については、全く付いていけないというのが正直なところです。かなりテクニカルなお話で、一つ一つの法律用語を理解するだけでもいちいち検索しないと分からないという有様でした。先ほど河村委員より、意思決定のお話をされた点については私どもが常に感じているところであり、特に後半の議論のところの行為制限能力者、事理弁識能力の話になってくると過敏になってしまうというところがございます。法律上の用語ということで、ようやく少し耳慣れてはきましたけれども、大前提として、必ずしもそうした特別な人たちがいるという見方ではなく、いつ自分がそちら側に立つ人間になるか分からないという前提で、こういった議論を進めていただければ大変有り難いと思っています。   感想だけになります。以上です。 ○山野目部会長 河村委員のお話、良いお話でしたね。忘れないようにいたします。また、後半は小分けにすると催告権、受領能力、詐術という議論をいたしましたけれども、いずれも福祉の本人の身の回りにおられる立場から言うと縁遠い話でありまして、それは何人かの法律家の委員、幹事もおっしゃったように、めったに起こらない事柄を議論しています。しかし、民法というものの特性は、たとえ1年に一遍も起こらず、10年に一遍しか起こりませんよという事柄でも、論理的に起こり得るものについては、議論はしませんでしたというわけにはいかないものですから、それでお付き合いいただいています。ありがとうございます。 ○久保委員 ありがとうございました。本当に花俣さんと一緒で、もう一つよく分かっていないなと思いながらも、意図せず、本人自身も本当は意図していないのかもしれないと思うようなことがまま起こり得るということもありますので、その辺のところは全くないということは言えないので、きちんと議論が必要なのだとは思いますけれども、すごく詐術とかそういう言葉は、私らは普通に余り使わない言葉なので、えっと思うような言葉が後半はぽんぽん出てきたりして、何というのですかね、少し怖い話をしているなみたいな、日常の会話ではない感じの議論をされているなと思っていまして、もう少し易しい言葉はないのかしらと思ったりもしますけれども、それでも、軽度の人は意図している場合もあるかもしれませんし、中度、重度の人は意図せずあるということもないことはないと思いますので、その辺のところがまた悩ましいことだなということも思いながら聞かせていただきました。   感想でございますけれども、ありがとうございました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。詐術という言葉辺り、確かに自然に耳には入ってこない言葉でございます。それと向き合って、佐久間委員の御発言の節々で、この言葉は何とかならないかという思いと、また、しかしこの言葉が用いられていることの意味があるというお話があったりして、非常にみんなで考え込んでいるところであります。御覧いただいてありがとうございます。   それでは、本日皆様の御協力をもちまして部会資料11についての審議を了しました。   この後の会議日程等について、この後、波多野幹事から御案内を差し上げますけれども、それに先立ちまして私の方から委員、幹事に御案内、お声掛けがございます。   次回は三読の最後の回で、残された法定後見の論点と任意後見制度をお諮りしますけれども、その後に中間試案のたたき台の検討に進んでまいります。委員、幹事の引き続きの御協力方、お願い申し上げます。   波多野幹事から次回の会議についての御案内を差し上げます。 ○波多野幹事 本日も長時間にわたりまして御審議いただきまして、ありがとうございました。   次回の議事日程について御説明いたします。次回の日程は、令和7年3月11日火曜日、午後1時30分から午後5時30分まで、場所は法務省赤れんが棟の1階の法務総合研究所第6教室でございます。   次回は、新たに部会資料を準備いたしまして、先ほど部会長の御説明がありましたように、法定後見制度に関する検討事項その他が少し残っております。委任の終了事由にするかとか、事項の辺りが少し残っているかなと思っておりますし、あとは任意後見制度についての御議論というところをお願いしたいと思っているところでございます。 ○山野目部会長 波多野幹事及び私から差し上げた御案内を含めまして、この部会の運営等につきましてお尋ねや御意見があれば承ります。いかがでしょうか。   よろしゅうございますか。ありがとうございます。   これをもちまして民法(成年後見等関係)部会の第15回会議を散会といたします。どうもありがとうございました。 -了-