法制審議会 商法(船荷証券等関係)部会 第14回会議 議事録 第1 日 時  令和6年4月17日(水)自 午後1時29分                     至 午後4時18分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  船荷証券に関する規定等の見直しに関する要綱案のとりまとめに向けた検討(4) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○藤田部会長 それでは、予定した時刻になりましたので、法制審議会商法(船荷証券等関係)部会の第14回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。   本日は雨宮委員、山口委員、家原幹事、松井幹事が御欠席と伺っております。北澤委員、洲崎委員、竹内委員、松井委員、久保田幹事、小出幹事、新谷幹事、竹林幹事はウェブで参加されると伺っております。   また、委員が交代し、新たに太田委員が就任されましたので、報告させていただきます。また、小林様に新たに幹事として御就任いただくことを予定しておりますが、事務手続の都合等も踏まえ、本日は小林様には関係官の立場で調査審議に御参加いただくこととしております。   太田委員、小林関係官には簡単な自己紹介をお願いいたします。その場でお名前と御所属の御紹介をお願いいたします。 (委員等の自己紹介につき省略) ○藤田部会長 皆様、どうぞよろしくお願いいたします。   それでは、開始いたします。まず、前回に引き続き、本日はウェブ会議の方法を併用して議事を進めたいと思いますので、ウェブ会議に関する注意事項を事務当局に説明してもらいます。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。前回までの部会と同様のお願いとなりますが、念のため改めて御案内をさせていただければと思います。まず、ウェブ会議を通じて参加されている皆様におかれましては、御発言される際を除き、マイク機能をオフにしていただきますよう御協力をお願い申し上げます。御質問がある場合や、審議において御発言される場合には、画面に表示されている、手を挙げる機能をお使いいただければと思います。なお、会議室での御参加、ウェブ会議での御参加を問わず、御発言の際はお名前をおっしゃってから御発言されますようお願いいたします。ウェブ会議の方法で出席されている方々にはこちらの会議室の様子が伝わりにくいため、会議室にお集まりの方々におかれましては、特に御留意を頂ければと存じます。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   次に、本日の審議に入ります前に配布資料の説明をしていただきます。事務当局からお願いいたします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。配布資料につきまして御説明いたします。今回配布した資料は、部会資料14「船荷証券に関する規定等の見直しに関する要綱案のとりまとめに向けた検討(4)」の1点です。後ほど審議の中で事務当局から説明をさせていただきます。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   それでは、本日の審議に入りたいと思います。まず、部会資料14について事務当局から御説明をお願いいたします。 ○中村関係官 それでは、法務省の中村の方から今回の部会資料について説明をさせていただきます。   今回は大きく2部構成となっておりまして、第1は、船荷証券の占有、所持、所持人、交付等に相当する概念に関して再度の御審議をお願いするものとなっております。この論点につきましては、中間試案後に既に第11回の会議でも取り上げているところでございますが、今回の法律案の中で最も難しい問題の一つでもございまして、今の時点でもまだ内容が固まっていないところでございますため、改めて皆様の御意見を伺いたいと考えております。   まず、電子船荷証券記録としての効力を有する電磁的記録をどのように特定・識別すべきか、つまり、同一内容の電磁的記録が複数存在し、いずれの電磁的記録が電子船荷証券記録としての効力を有する電磁的記録かが分からなくなるような事態を法制上どのように防止するかという点になります。今回の部会資料の1ページ以下の補足説明の中で記述しておりますとおり、第11回の会議では、事務当局より、電子船荷証券記録について複製をすることができない措置がとられている場合と、そのような措置がとられていない場合を区別して、具体的な特定・識別の方法を区別する考え方も提案させていただいていたものの、このような考え方に対しては、複製をすることができないということの意味合いが不明瞭であり、かえって誤解を与えるおそれがあるのではないかといった御指摘や、電子船荷証券記録としての効力を有する電磁的記録を特定・識別する措置がとられている限りは、必ずしも両者を区別する必要性はないのではないかといった御意見も頂いたところでございます。   また、第11回の会議では、電子船荷証券記録を実際に利用するためには、その性質上、必然的に一定の仕様を備えたシステムが用いられるはずであり、そうしたシステムに依拠するアプローチも考えられるのではないかといった御意見も頂いたところでございます。そうした意見に見られますとおり、電子船荷証券記録がその機能を果たすためには、その機能を果たすために必要となるプログラムが組まれたソフトウエアや、それを利用するための電子計算機から成る複合的な情報処理システムの利用が観念されるところでございまして、このことは、恐らくどのような電子船荷証券記録であっても同じように思われるところでございます。   このように考えた場合、例えば2ページ目の一番下のところになりますが、電子船荷証券記録の作成及び管理のために用いられる情報処理システムにおいて、電子船荷証券記録としての効力を有する電磁的記録を識別することができる措置がとられていること、といった定めを置くことにより、客体となる電子船荷証券記録を特定するということも考えられるのではないかと思っているところでございます。   また、3ページ目の2番になりますが、船荷証券の占有、所持、所持人に相当する概念につきましても、第11回の会議において、同様にシステムに依拠するアプローチも考えられるのではないかといった御意見を頂いたところでございまして、既存のeB/Lのシステムを見ても、eB/Lの利用のためのシステムがいわゆる中央サーバーで管理するタイプであれ、ブロックチェーン技術を用いたものであれ、特定の者が有体物を所持するがごとく電磁的記録たるeB/Lを権限者として利用すること、例えばeB/Lとしての電磁的記録を閲覧すること、その記録をもって運送人に運送品の引渡しを請求すること、それらの地位を他者に移転することなどができる状態が当然に確保されていると考えられるところでございまして、そのような状態こそが有体物に対する事実上の支配状態としての所持に相当すると考えることもできるように思われるところでございます。   このように考えた場合、4ページ目の下の方の(5)に記載しましたとおり、例えば、電子船荷証券記録の支配を、電子船荷証券記録の作成及び管理のために用いられる情報処理システムにおいて、電子船荷証券記録上の権利を有する者として当該電子船荷証券記録を利用することができる状態といったような形で定義することも考えられるのではないかと思っている次第でございます。   さらに、5ページ目の3番、船荷証券の交付又は引渡しに相当する概念でございますが、こちらも今述べましたような形で、電子船荷証券記録の支配を定義するような場合、電子船荷証券記録の作成及び管理のために用いられるシステムにおいて、相手方のみが当該電子船荷証券記録の支配を有することとなる行為が、船荷証券の引渡し、交付に相当するものと考えることもできるのではないでしょうか。この場合、5ページの(2)の一番最後の段落に記載のように、例えば、電子船荷証券記録の作成及び管理のために用いられる情報処理システムにおいて、特定の者に対して当該特定の者のみが当該電子船荷証券記録の支配を有することとなる措置をとること、と定義することも考えられるのではないかと思います。   もっとも、このような定義の仕方に対しては、それでもまだ具体的な行為の内容が明瞭ではないといった指摘もあり得るところかと考えておりまして、このような指摘に対応するために、省令等を通じて一層の具体化を図るということも一案としては考えられるかと思っております。その場合にどういった具体化の仕方が考えられるのかという点につきましては、なかなか難しい問題ではございますが、電子船荷証券記録の支配を他者に移転しようとする際に、その移転を行おうとする者が実際にどういった行為をするのかといった点については、この電子船荷証券記録の利用のためのシステムの内容、より具体的に言えば、電子船荷証券記録としての効力を有する電磁的記録の保有管理方法として、いわゆる中央サーバー管理型が用いられているのか、それともブロックチェーン管理型が用いられているのか、このいずれかによって異なってくる面もあるように思っている次第でございます。   すなわち、電子船荷証券記録のシステムが中央サーバー管理型の場合には、電子船荷証券記録としての効力を有する電磁的記録はサービス・プロバイダーが管理する電子サーバー内で保管管理されることとなり、直接的には当該サービス・プロバイダーのみが当該電磁的記録の書換え等を行うことができる地位にあるといえます。そのため、この場合には電子船荷証券記録の提供、すなわち支配の移転を行おうとする者は、そのシステムの仕様や利用規約等に沿って、サービス・プロバイダーをして、その提供を受ける者のみが当該システム上、電子船荷証券記録の目的となる運送品に関する権利を有する者として、当該電子船荷証券記録の利用ができる状態にさせることが求められると考えられまして、例えば、特定の者のみが当該電子船荷証券記録の支配を有することとなる措置を当該情報システム提供者、サービス・プロバイダーにとらせる措置といったものを、支配の移転行為の具体化の内容として設けることも考えられるかと思っております。   他方、電子船荷証券記録の利用のためのシステムがブロックチェーン管理型の場合には、いわゆる分散台帳技術等が用いられますので、通常、電子船荷証券記録に係る取引履歴がサービス・プロバイダー等の特定の者の電子サーバーで一元的に管理されるのではなく、一定のプロセスを経て、ブロックチェーンネットワークに参加する者のそれぞれの電子サーバー等に記録、保存され、一連の取引履歴がハッシュ値という特殊な係数を用いてつなぐ形で管理されることになると考えております。また、ブロックチェーン技術の必須の要素ではないのかもしれませんが、ブロックチェーン管理型では通常、一連の取引履歴が暗号化技術を用いてつながった形で管理され、かつ、いわゆる秘密鍵を保有する者のみが新たな取引履歴の追加を行うことができる仕組みになっていると理解しております。   このブロックチェーン技術を直接定義した法律というのはいまだ存在しないように思われますため、このような特性をどのように法律に落とし込むのかという点はなかなか難しいところではございますが、こうした仕組みに着目するのであれば、電子船荷証券記録の利用のシステムがブロックチェーン管理型の場合には、7ページの7行目以降に記載したような、暗号化の措置をとった上で提供することを支配の移転、すなわち電子船荷証券記録の提供の具体化の内容として定めることも考えられるのではないでしょうか。かなり細かな話も多く、法制上の問題といえる部分も多分に含まれているところでございますが、こうした点につきまして皆様の御審議をお願いできればと考えております。   また、電子倉荷証券記録に関しても、これらの点について、もし電子船荷証券記録とは別の考慮が必要となる余地がある事項がございましたら、その点につきましても御意見を頂ければと考えております。   次に、8ページ以下の第2になります。こちらはやや細かな点も多くなっておりますが、電子船荷証券記録の類型及び譲渡等の方式に絡む点について、改めて御審議をお願いするものとなっております。   まず、1番となりますが、中間試案では電子船荷証券記録に関して、紙の船荷証券の指図証券型、記名式所持人払証券型、その他の記名証券型、無記名証券型の4類型に相当する類型があることを前提としつつ、電子船荷証券記録との関係で指図式、記名式といった用語を定義なく用いてきたところでございますが、仮にこれらの用語を何らかの定義を置いて用いることとした場合に、どういった内容が正確で正しいものなのかといった点について御意見を伺いたいと考えております。   次に、2番として、紙の船荷証券の裏書に相当する電子船荷証券記録の電子裏書について、例えば9ページの真ん中辺りに記載しましたとおり、電子船荷証券記録に船荷証券の裏書に記載すべき事項を記録し、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとることといった形で定義することも考えられるかどうか、また、こうした定義の仕方ではなくて、具体的に何を記録するのかといった記録事項を特定する形で電子裏書を定義するような場合には、中間試案では、電子船荷証券記録の支配を有する者がその支配を他の者に移転する場合において、法務省令で定める方法により、当該電子船荷証券記録の支配の移転をする者の氏名又は名称及び移転を受ける者の氏名又は名称を電子船荷証券記録に記録することという形で電子裏書の定義を試みておりましたが、こういった定義の仕方について問題がないかといった点につきまして、改めて御意見を伺いたいと考えております。   次に、3番となりますが、補足説明は10ページ以下になります。これまでの部会での議論のとおり、電子船荷証券記録そのものではなく電子船荷証券記録上の権利、すなわち運送品の引渡しに係る債権等を譲渡及び質権設定の対象として構成する場合には、電子船荷証券記録上の権利を譲渡するためには、電子船荷証券記録の支配の移転や電子裏書を要する旨の定めは、言わば債権譲渡の特則と位置付けられるものと理解しております。また、従前の部会でも議論があったとおり、明文で適用除外を設けるかどうかといった点は置くとしても、電子船荷証券記録上の権利の譲渡又は質権の設定に関して、支配の移転や電子裏書とは別に、民法第467条等の規定に基づく通知、承諾といった対抗要件の具備を求めることは想定しないということは、既に御確認いただいているところかと思います。   もっとも御承知のとおり、民法においては債権譲渡の対抗要件を定める第467条以外にも債権譲渡に関する各種規定が置かれているところでございまして、この電子船荷証券記録上の権利を譲渡等の対象とするに当たっては、民法第467条以外の規定、特に民法第468条第1項と、相殺に関する規定としての第469条第1項、第2項の整理が問題になるものと考えております。最終的に法律の明文でどこまで規定すべきかといった点については、ひとえに法制上の問題によるところも大きいところでございますが、10ページ以下の(4)、(5)に記載させていただいたとおり、実質論としては民法第468条第1項、そして第469条第1項、第2項は、いずれも電子船荷証券記録との関係では適用させないということでよいか、この点について皆様の御意見を伺いたいと考えております。   最後に、今回の部会資料の12ページの4番でございますが、電子船荷証券記録上の権利を目的とした質権の設定についてでございます。中間試案においては、手形法第19条第1項本文の規定に相当する規定をあえて設ける必要はないと考え、電子船荷証券記録上の権利の譲渡と、それを目的とする質権の設定については、方式の区別を設けないとしておりましたが、改めてそのような整理で問題がないか確認させていただきたいと思っております。   以上が第2で御審議いただきたい中心事項となります。   また、これらの論点についても、電子倉荷証券記録に関して、電子船荷証券記録とは別の考慮が必要となる点がないかといった点についても御意見を伺えればと考えております。   以上、簡単ではございますが、事務当局からの部会資料の説明となります。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   今、事務当局から部会資料14について御説明がありました。まず、部会資料14の第1に関して、どなたからでも結構ですので、御意見、御質問等を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。 ○池山委員 池山でございます。発言の機会をいつも冒頭に与えていただいて、ありがとうございます。今回の問題はかなり理論的な問題ですので、実務の側からどの程度のことを申し上げるべきかという問題点はあるかと思いますけれども、やはり実務の側から見て、幾つか違和感がある点もありますし、実際、事前に相談をしたところ、私の推薦母体の団体の中でも結構いろいろな意見が出てきましたので、その紹介という意味も含めて、幾つか申し述べさせていただきます。   順番に申し上げますと、まず、1の特定・識別の問題に関する点について申し上げますと、今回の提案は要するに、電子船荷証券記録の要件の一つとして、中間試案の定義から変えて、電子船荷証券記録の作成及び管理のため用いられる情報処理システム(電子計算機及びプログラムの集合体であって、情報処理の業務を一体的に行うよう構成されたものをいう)において、電子船荷証券記録としての効力を有する電磁的記録を識別することができる措置をとられていることと、かなり長い定義になっている、そういうふうに変えてはどうかということだと理解をしております。   基本的な異論というのがあるわけではないのですけれども、一つは、ここで新たな定義の中で情報処理システムという言葉が出てきて、それをあえて括弧書きの中で、今読んだとおり定義をされておられます。電子計算機とプログラムの集合体であってうんぬんという、この定義というのが果たして技術的に適切なのかどうかというのはよく分からないねと、ここは反対という趣旨ではございませんけれども、技術的な見地からもう少し検証を頂くべきではないかという意見がございました。これは問題の指摘だけです。   それから、2の占有、所持又は所持人に関する概念というところですけれども、これも同様にこの支配の意味について、中間試案の定義から、より詳細な形で変更をするということだと思うのですけれども、これについても必ずしも大きな異論があるわけではないのですけれども、あえて言えば二つないし三つ、コメントがございます。   1点目は、この新たな定義からはかぎ括弧付きの〔排他的に〕という言葉が抜けております。問題意識としては、これは識別性の観点からの定義の変更だと思うのですけれども、従前の定義案では、排他的にというのを括弧付きで入れていて、そこを明文で入れるか入れないかということが議論になっていたと思います。中間試案でもそのような説明があったと思います。今回の定義の書換えの中でそれが落ちていると、だけれども、恐らく補足説明の中では、そこは要らないという積極的な御判断があったわけではないと思いますので、識別性の観点からの定義としてこれがいいかということとは別に、排他的という言葉を新たな定義のアイデア、4ページの下の方ですかね、例えばとおっしゃっているところに入れるかどうかというのは、別途御検討をお願いできればと思います。   それから、これは次の3以降とも関係するのですけれども、実際にある電子B/Lのかぎ括弧付きの日常用語としての「システム」のタイプとして、中央サーバー管理型、ブロックチェーン(分散台帳管理型)と分けて議論を進めていらっしゃる、そのこと自体には異論はないのですけれども、こういう技術の中身に入っていったときに、一つ指摘があったのは、ブロックチェーンと分散台帳というのはイコールではないというのはよくいわれていることでして、私も正直に告白するとはっきりとは分かっていないのですけれども、分散台帳型というのは上位概念で、ブロックチェーンというのはその一種だということがいわれていると、そうするとブロックチェーンではない分散台帳というのも何らかの形であるかもしれないと、その辺りは、やはり技術の専門家の目から見て検証に堪えるような分類でなければいけないというので、余りこの二つのタイプであればこうだというのを所与の前提にはすべきではないのかなと、飽くまでも議論を進めるに当たっての指針として使うのは悪くないのかなと思います。   正にそれに関連して、ここから先はもっと素人的かもしれませんけれども、この二つの差異として、中央サーバー管理型ではID情報やパスワード等をもってアクセスをすると、ブロックチェーン(分散台帳型)であればトークン技術等の暗号技術を用いると分けているのですけれども、実際、実務に出ている電子B/Lからすると、やはりサービス・プロバイダーというのは結局いて、ブロックチェーン技術を使った電子B/Lですといわれるものであっても、結局その業者さんと契約をして、IDとパスワードが要るというのは同じなのですよね。多分、技術の評価をするときの分類の次元が違うのだろうと思うのです。技術が分からない人間からすると、実務として使う人間からすると、どちらのタイプであってもサービス・プロバイダーと契約をするということは一緒で、そこのサービスを使うにはIDとパスワードが要りますということで、全く変わらないのです。そこから先の技術に差があるということなので、その観点からすると、中央サーバーのときだけID、パスワードということが出てくるというのは何か違和感があると、もう少し技術的な次元を分けた議論をする必要があるのではないかという指摘がございました。   それから、せっかくなので第1の方を全部申し上げますと、次の3です。支配の交付又は引渡しに相当する概念なのですけれども、ここが実は一番実質的な議論があったところでして、大きく二つに分かれます。一つ目は、交付又は引渡しに相当する概念というのを、支配の移転という表現ではなくて提供という言葉で言い換えていると、ここは先ほどの説明では省略されていて、ただ、この補足説明だと(注)の中で、そういうふうに変えると、これは専ら法制上の問題であるという指摘があったのですけれども、実はこれは実務の側からすると、かなりの違和感があるという気はします。   そもそも何で、支配の定義をこういうふうに変えたから、一定の状態というふうに変えたからといって、支配の移転では駄目で提供という言葉に変えなければいけないのか、法制上ということは日本の法体系上、不適切になるかということが、積極的な理由というのはよく分からないというのが一つと、もう一つは、やはり提供という言葉は、それはそれで法律の中で出てくる、弁済の提供とか、今回でいえばB/Lの引渡しの提供というのが中間試案の補足説明にもあります。一定の意味付けをもって使われている言葉で、恐らく一定の状態にする機会あるいは可能性を付与するというニュアンスで使われていて、実際に一定の状態になるということとは別なのだというニュアンスだと思うのですけれども、だから、紙のB/Lでいえば、正に占有を移転してもいいよと、移転する用意があるよと示すことであって、実際に占有を移転することとは違うと。   にもかかわらず、今の案だと文字どおり新たに定義し直された支配が移ること、正に移転とどうしても言ってしまいますけれども、移ることをもって提供といっていると、それは通常の提供という言葉の使い方とは違うよねと。特に、一つの具体例として出てきたのは、中間試案の中で、商法の第520条の9との関係でしょうか、船荷証券記録の引渡し又は引渡しの提供みたいなことが言及されている箇所があって、そこでいう船荷証券記録の引渡しというのは、実は占有の移転なのだとすると、更にそれを提供と言い換えてみると、船荷証券記録の引渡しの提供というのは、どんどん言い換えてみると、提供の提供みたいな形になって、概念として非常に混乱をするという指摘がありました。   今の点は別の言い方をすると、電子船荷証券記録の提供というと何となくもっともらしく聞こえるのですけれども、はしょって、記録の提供ではあるわけですよね、電磁的な。記録の提供というのは、やはりよく分からないと。これは印象論かもしれませんけれども、実務としては非常に混乱がある、混乱を生じかねない、違和感があるという指摘が複数ありました。多分、少し戻りますけれども、大本の理由は、そもそもそうやってわざわざ言い換えなければいけない理論的な理由がよく分からんというのがございます。それがこの3の大きな1点目です。   もう一つの点は、先ほどの定義の中身についてです。支配の移転若しくはその提供、この表現のだと提供の意味についても、5ページの方で一応の定義を御提案、示唆されつつも、不明確だから省令で具体化することも考えられるということで、6ページから7ページに掛けて、中央サーバー管理型あるいはブロックチェーン型に分けて、より詳細な定義というか、省令のイメージというのが示されております。   これを見ると、6ページにある中央サーバー管理型の場合の省令案というのは、ほとんど法律のイメージの表現と同じ、言い換えにすぎないのですけれども、やはりブロックチェーン(分散台帳管理型)の場合だけが非常に過度に技術的に細かくなっていて、逆に、ここまで書くことによって技術的中立性というのが保たれているのかよく分からないという指摘が複数ありました。先ほど申し上げたとおり、ブロックチェーンの場合でも、実務からするとやることは同じなのです。IDとパスワードを持ってアクセスをすると、そのことは同じです。   それと、そもそも論として、これで最後にしますけれども、逆に曖昧なところがあるとしても、あえて省令化する必要があるのかという気はいたします。法律のイメージそのものには、5ページの定義の案そのものには、実はそれほど違和感は出ていなくて、もうある種、それはそれで十分で、かえって省令を決めることによって、それ以外のものを排除することになってしまいますから、本当に、実際に出てくるものがいろいろなものがある中で、その省令で全てカバーされるのかと、省令だから技術の進展に応じて随時変えるのだという前提ではあるでしょうけれども、恐らく実務が先行するわけなので、その実務に省令変更が追い付かなかったときに、それまでの間はそれは電子B/Lと認めないみたいなことになり得るので、本当に必要なのだろうかという違和感はあります。一言で言うと、法律だけでもう、法律のこの案、そちらの方は実はそれほど違和感は出ていなくて、それで十分ではないかというような指摘がございました。   多数で恐縮ですけれども、第1については以上です。 ○藤田部会長 ありがとうございました。事務当局から御返答はございますか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。多数の御指摘を頂きまして、全てに今すぐお答えできるかどうかよく分からないですけれども、可能な限り私どもの考え方を申し述べさせていただければと思ってございます。   まず、1点目の御指摘で頂いた情報処理システムのところでございます。恐らく、こういう情報処理システムという概念を挟むということに対しては特段の御異論があるというわけではなく、こういった情報処理システムという定義付けをしてここに持ってくることが果たしていいのだろうかという御指摘だろうと思いますけれども、この辺りは多分に法制上の問題でございまして、これは他の法律において用例のあるものを拾ってきたものでございますので、こういった情報処理システムという言葉を法律上使っていこうということになると、逆に、なかなかこれとは違う言葉を使うのは難しいのかなと思っておりまして、中身を見ても、恐らくこれはそれほど厳しいものではなくて、多分今皆様の方で想定されているものであれば全て該当するだろうと思われるところでございますので、この辺りは多分に法制上の問題ということで御理解いただけますと、大変有り難いと思っているところでございます。   続きまして、支配のところで幾つか御指摘を頂いたところかと思っておりますが、まず一つ目が、排他性が抜けているのではないかという御指摘のところでございます。確かに、支配の中で排他性を直接入れるということを今回していないというのは、そのとおりでございますけれども、ただ、こういった支配について排他性が求められるというのは恐らく必要なことだろうと思っておりまして、その辺りは、ほかの定義規定との合わせ技で、事実上排他性が求められているという形で説明可能かなと思っておりますので、逆に言うと、あえて支配の中に排他性ということを入れる必要もないのかなと、こういった理解でございます。   一番分かりやすいところで言いますと、後ほど御説明させていただく提供のところ、支配の移転に相当する概念のところで、「特定の者に対して当該特定の者のみが」、という形で書かせていただいております。この提供という言葉がいいかどうかという問題はさて置き、これは電子船荷証券記録を発行する場合にも使うことを想定しておりますので、最初の段階から受け取った人だけが支配を持つということになりますから、このことをもって排他性というものは恐らく表現し切れているだろう、裏付けられているだろうということでございまして、逆に言うと、支配の定義の中に更に重ねて排他性を言う必要も、これができれば、ないのだろうと思われることと、またこれも法制上の問題になってしまうのですが、この支配の中で排他性というのを多分、書き込んでいくということが相当に困難だということもありますので、いずれにしても排他性というものを我々として不要として考えているのではなくて、違う方法でそれが実現できるというところでございました。   続きまして、これは支配の定義の中と、後ほどの提供あるいは支配の移転に相当する部分にも関わるところかもしれませんが、この中央サーバー管理型とブロックチェーン型というものの一刀両断的な区分けが、果たしていいのだろうかというような観点からのコメントを幾つか頂いたかと思ってございます。私どもの方の理解としては、中央サーバー管理型とブロックチェーン型という分かりやすい形で一応、二者択一的な形でいっておりますけれども、法的な意味でいいますと、そういう中央サーバー管理型、システム提供者というしっかりした者がいるパターンといないパターン、恐らくその二つの類型だろうと思ってございまして、何か省令に書く場合も、ブロックチェーン型の場合、みたいな形で書くのではなくて、そういったシステム提供者というものがいる場合といない場合、こういう形で分けることを想定しております。   池山委員が言われたとおり、ブロックチェーンが使われているものの中でも、どちらかに分けろというと多分中央サーバー管理型になるだろうというものが多いのだろうというところは我々も承知しておりまして、飽くまでもシステム提供者という者がしっかりいて、中央サーバー管理型として位置付けられるのだろうけれども、そのシステム提供者の中での管理の方法としてブロックチェーンを使っているだけだと、こういったものであれば、恐らくここでいうところのカテゴリーとしては中央サーバー管理型に分類されるということになろうかと思いますので、IDとかパスワードで管理していくというのが恐らく一般的になるだろうと。ただ、このID、パスワードというので一緒くたにしていいのかという御指摘も頂いたかと思いますけれども、これも飽くまでも一例でしかなくて、我々で法律あるいは省令とかで書こうとするときに、別にID、パスワードで何かやってくれということではなくて、法令の中身としては、中央サーバー管理型の場合は、そのシステム提供者に何かをさせる、システム提供者に管理をさせる、こういう書きぶりにすることを想定しておりまして、システム提供者が何をするかというのは、恐らく典型的にはID、パスワードで管理するということになるのでしょうけれども、それ自体は何か法令に書き込むということではないのかなと思ってございます。   ブロックチェーン型というのは、おっしゃるとおりいろいろなパターンがあり得ると思いますし、今後技術的にそれ以外のものも出てくる可能性というのはあろうかと思いますので、そういったところについては今のところ、もし省令等で書こうと思うのであれば、部会資料でいうところの7ページで書かせていただいているところですけれども、こういったものが今後現れるかどうかというところは未知数ですし、更に別のものが出てくるというものはあり得ると思います。そういったときには、池山委員のお言葉の中にもありましたけれども、恐らく省令とかを改正するなり追加するなりして対応していくということになろうかと思っております。   大分話の方が交付なり引渡しに相当する概念のところに行ってしまっておりますけれども、そもそも法律の本体に書かれるであろう中身について余り御異論はなくて、具体化した場合の省令のところに違和感があるというお話だったかと思いますけれども、ここら辺りは法制上の問題として、どこまで具体的なものを書き込まないと我が国の法体系として認められないのかというところに関わってきている問題でして、一番抽象的なところだけで法制化できるのであれば、我々としても、それでよければそれでいいのかなと思っておりますけれども、なかなかそれが難しいという現状がございますので、何かしら明らかにしなければならないといったときに、今我々の方でこういったものを省令で書いたらいいかもしれませんねということを申し上げている中身を、やはり法律で書くというのはかなりハードルが上がってきますし、もし今後の技術の進展に伴って修正が必要だということになると、それこそいつになったらできるのだというようなお話になってしまいますから、そこのところは省令に委任して、省令で柔軟にできるようにするという形をとらざるを得ないのではないかと、こういった配慮の下でこのようにさせていただいているというところでございます。   少し前後してしまいますけれども、そもそも支配の移転という言葉を使わないで、提供という言葉にしたのはなぜかというところについても御質問いただいたかと思っておりますけれども、ここも一言で言ってしまうと法制上の問題というところに尽きてしまいまして、支配というのを結局、事実状態と捉えたときに、その移転というのが、やはりなかなか法制上しっくりこないというところがございます。占有の場合、占有の移転という言葉を法律で使うのかというと、恐らくそうではなくて、交付とかそういう言葉を使っているわけですから、そういったことと併せて考えると、支配の移転というのが、これはなかなか法制上受け入れられるか、られないかというようなところに尽きてしまって、何とかふさわしい言葉を見つけたいということで、やっているところでございます。   ここら辺りは本当に法制上の制約というのが多分にあるところで、どういう形でネーミングできるのかというところは今後も予断を許さないところではありますけれども、まずは中身の部分ですね、これをこういうふうに定義したいという中身の部分が皆様の御了解を頂けないということになると、難しいことになると思いますので、そこのところについて、しっかりとここで議論させていただければと思っているところでございます。   すみません、長々とお話ししてしまって、全ての御疑問に答えられたかどうか分かりませんが、差し当たっては以上でございます。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。池山委員、よろしいですか。 ○池山委員 池山でございます。せっかくなので、もう少し。まず、詳細な御説明ありがとうございました。今のお話を聞いた上で幾つかコメントをさせていただきますと、我々が危惧するのは、非常に大ざっぱな言い方をあえてすると、ストレートに言うと、法制審議会の部会で法制上の問題というのは余りマジックワードになるべきではないのかなという気はするのです。もちろん法制上の制約があるということは現に認識はしておりますし、それに対応する事務当局の御苦労というのももちろん理解をしているつもりですけれども、少なくともそれを言うことによって議論が止まってしまってはいけないだろうと思っております。   その観点から申し上げるとすると、私が先ほど申し上げた部分の多くの一つは、やはり技術的な記述を過度にすることによって、本当に技術的中立性が保たれることになるか分からないと、正直申し上げて、私も、それから現在私の推薦母体の中で議論している人間も、技術の専門家ではないのですけれども、もう少し、技術の専門家から見て本当にこの表現で技術的中立性を害するということがないのかという検証は、是非この法制審議会の正式の場か、あるいはそれ以外の場かは別にして、進めていただきたいと思ってはおります。   正にそれに関連するかもしれませんけれども、二つ目は、システム提供者がいる場合といない場合で考えているのだと、今ブロックチェーンといわれているものも実際は中央管理型であって、その中央管理型の中で使う技術がブロックチェーンであって、次元が違うのだと、そういうことではないかという整理がありました。そこは正直、正に技術的に分からないのです。ですが、少なくとも今の実務の感覚としては、システム提供者がいない電子B/Lというのはやはり想定はできないのです。これが将来変わるかも分かりませんけれども。結局この正式の場の議論でも出ているように、実務的には国際PIグループが承認した、正に業者、会社さんのシステムを利用することにして、そこと契約を結んで利用料を払って使うと、その中で、もう最近のものは多くはブロックチェーンだと現に言っている、だからブロックチェーンだと我々思っているわけですけれども、今の話だと、それもそういうシステム・プロバイダー、提供者がいて、そこと契約する限りは全部中央管理型ということになって、今、渡辺さんのおっしゃった、システム提供者がいない電子B/Lというのが正直、想像できないのです。将来的にはあるのかもしれないですけれども、一定のシステムが無償で、無償のOSが開放されるみたいに、もう誰でも使えるようなOSを入れて、何の契約もなく電子B/L技術を使えるような状態になっていれば、誰とも契約していませんということにはなるかもしれないですけれども、やはりこれは多分、皆さん新規ビジネスとして捉えているので、なかなかシステム提供者がいないものというのは、現状は誰も想定していないと思いますので、少し議論がかみ合っていない、若しくは事務当局の議論がすごく先に行きすぎているのかなという気はしています。   もう1個、最後です。最後の、提供かどうか、提供という言葉には違和感があるという点なのですけれども、こここそ、私は実務の観点から、余りきちんとこなれない形で違和感を持ちましたけれども、やはり法律用語ではあるので、是非、本当にここで提供という概念を使っていいのかということは、民法理論、商法理論の観点からも、学者の先生方にも御議論を頂きたいと。もう実務としての違和感は申し上げました。あと、もう1個言うとすると、占有の移転はないといっても、弁護士がすぐ思うのは、占有移転禁止の仮処分というよなと、やはり思うわけです。占有移転禁止の仮処分という法律用語は民事保全法にはないですけれども。だから、事実状態だから移転というのは使えないというのは、やはりぴんとこないなと、これも感想ですね。それを申し上げた上で、やはりこの提供という概念は、それ自体法概念なので、是非本当にやむを得ないのかというのは学者さんに議論していただきたいし、そこをやはり法制上の問題といって議論を止めてしまうというのはまずいのではないかと実務家の一人としては思います。 ○藤田部会長 事務当局から何かございますか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。1点だけコメントをさせていただければと思っておりますけれども、技術的中立性というところが大事だというのはおっしゃるとおりで、私どもとしては、だからこそこのブロックチェーン型というものを排斥しないということを考えております。おっしゃるとおり、恐らく今想定されているのは、ブロックチェーン技術を使おうと、基本的にはシステム提供者がいるということが多分、今、我々の目で見える世界はその範囲にとどまっているだろうとは思ってございます。   ただ、そうした場合に、システム提供者というものがしっかりいるものしか認めないということになってしまうと、それはそれで技術的中立性の観点から、むしろ問題になるだろうと思っておりますので、こういった支配の移転とかというものをある程度具体化していかなければならないと考えた場合は、まずもってシステム提供者がいる場合、その場合はシステム提供者に何かしてもらえばそれでいいと、そういうカテゴリーを一つ作っておき、それ以外のものをどうするのだと、それはやはり法律上、否定はしてはいけませんので、やはり何らかの規定は設けておかなければいけませんので、その際には、恐らく中央管理者がいないようなブロックチェーンみたいなものがあるかもしれないということを頭に置きつつ、そこで想定されるような手段というものを省令で書いておくということにすれば、技術的中立性というものが満たされる、むしろそれをしないとそれが満たされないということになってしまうのではないかということで、こういう形で御提案をさせていただいておりまして、事実上この規定が使われるということは相当先の未来なのかもしれませんし、それ以外の省令の手当てというものをしていかなければいけないということは今後あるかもしれませんが、いずれにしても技術的中立性というところが大事だというところの認識としては、私どもとしては池山委員の問題意識と特にずれているとは思ってございませんと、そういうことで取りあえずコメントを1点、させていただきました。 ○藤田部会長 ありがとうございました。この用語法が、まず誤解を生んでいるところもあって、今、ブロックチェーン(分散台帳管理型)といっているものは、ブロックチェーン技術を使っている電子船荷証券記録すべてではなくて、システム提供者が中央にいるかいないかということによる分類だということだとすると、現在後者に属するものというのは実務的には想定されないかもしれないけれども、潜在的な可能性がある以上、技術的中立性を確保するために法制上言及しておくものという位置付けだということですね。そういうものとして、それでも気になるかという議論をするということになるのだと思います。   なお、一つだけ情報提供として申し上げますと、かつて万国海法会(CMI)が作成した電子式船荷証券のための規則(CMI Rules for Electronic Bills of Lading)というものがあったのですが、現在批判的な声が多い一つの理由は、中央登録機関の存在を前提とした作りになっており、現在では技術的中立性を害するルールの作り方だとされていることは、付言しておきたいと思います。現在電子船荷証券が今あるかどうかはともかく、システム提供者の存在を前提とした作りにしてしまうと技術的な進歩との関係では批判されるおそれがあることは知っておいていいのではないかとは思います。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。1点、補足をさせていただければと思っております。先ほどの私の説明が少し誤解を招くところがあったかもしれないというところなのですけれども、システム提供者がいれば、常に電子船荷証券記録の提供でいうところの中央サーバー管理型に当たるかのような説明の仕方をしてしまいましたが、若干正確性を欠くところでございまして、ここのところがどういうふうにシステムを見ていくのかというのは非常に難しいところがあるのですけれども、例えば、システム提供者がいるのですけれども、ただ、実際の記録の管理はブロックチェーンでやっていて、その規約に入ってくる人たちで回しているブロックチェーンでやっているような場合ですと、システム提供者だけが記録を好き勝手に改変できるわけではありませんので、そういった場合は、恐らくブロックチェーン管理型に当たるだろうということを想定しております。先ほど私の方で申し上げたのは、システム提供者の中でブロックチェーンを使って、要はシステム提供者が電磁的記録を自由にコントロールできるというような形でブロックチェーンを使っているような場合であれば、それは中央サーバー管理型に当たると、こういった整理でございますので、そういった意味では、要はシステム提供者だけが記録を管理できるという状態にあるかどうかと、そのような観点からの分類かなと思っておりますので、そこら辺の我々の説明が十分でなく、誤解と懸念を招いたところがあったかもしれませんが、そこの辺りはどこかで整理させていただくということはあり得るかなと思っているところでございます。 ○藤田部会長 補足をどうもありがとうございました。   続いて、ウェブから参加の新谷幹事から御発言の希望がありましたので、お願いいたします。 ○新谷幹事 新谷でございます。2点ございまして、一つは今、池山委員からも御指摘がありました、電子船荷証券記録を特定する場合の規定の方法、資料では2ページ目の一番最後の行ですね、ここで「電子船荷証券記録の作成及び管理のために用いられる情報処理システムにおいて、電子船荷証券記録として効力を有する電子的記録を識別することができる措置がとられていること」、という定めを置くということに関して、まずこれについて賛成という意見表明です。   この複製ができるかどうかというところについては、実はトレードワルツの中でも議論をしたことがあるのですけれども、やはり複製というのは非常に議論が分かれるところでして、当然ながらシステム上のものというのは複製しようと思えば、できることはできるわけなのです。一方で、ブロックチェーンのように裏できちんとそれが特定されているというようなものもあるわけなので、必ずしも複製とはいえないのではないかというような意見もあり、複製という点においては、なかなか意見がまとまらないわけです。一方で、この中にも出てきますけれども、「特定」という表現ですね、では特定だったらいいのかというと、特定も実は根源的には恐らく複製と同じ問題があって、特定しているものが何なのか、複数がもしできるのであれば、特定したところで意味がないという問題が出てきてしまうわけなのです。   そこで、今回新しく書いていただいた規定の方法で、「識別する」と、要は「特定」ではなくて「識別」という表現を用いることによって、この部分がかなりクリアになったのかなと思っています。識別ということであれば、正しいかどうかというのをきちんと認識しているということですので、要するにそのデータを複製したものとか、特定したものとかという議論とは別な次元で、きちんと識別をしているという言い方ができると、先ほど申し上げたような水掛け論が生じないで済むのかなと思ったということです。したがって、こういう規定方法は良いのではないかと思ったということです。   あと2点目ですけれども、先ほどの池山委員と渡辺幹事のお二人のやり取りを拝聴していたところで少し思ったのですが、ブロックチェーンといわゆる分散台帳型、これが同じものなのかというのは少しまた議論があるところですけれども、管理者がいるかいないかという観点で行くと、管理者がいないシステムということを想定すべきなのかどうかということに関しては、現状は確かに、幾らブロックチェーンだろうと分散台帳型だろうと、管理者がいないシステムというのは恐らくなくて、そうしたものが認められることも、今の状況だと当分はまだ考えられないということだと思うのです。   一方で、ここはまだまだ先の話にはなってきますけれども、例えば弊社、弊社というのはトレードワルツではなくて東京海上の方の話になりますけれども、いろいろなデジタル分野の研究をしている中で、将来的にいわゆる量子コンピューターの世界というのがいずれ来るだろうというようなことがいわれておりまして、量子コンピューターというのは、私も別に専門家ではないのですけれども、セキュリティだったりとか暗号化の分野というのでは、今とは格段に違う世界になってくるといわれていて、ブロックチェーンよりもはるかに堅牢な記録の方法になるだろうといわれているわけですので、将来的にそういうのも出てくる可能性があると考えるのであるとすると、管理者がいないシステムというのも将来的には出てくることは念頭に置いておくべき点なのではないかと思いました。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。事務当局から何か、よろしいですか。ないようでしたら、笹岡幹事、お願いします。 ○笹岡幹事 先ほどの提供のところで、御意見させていただければと思います。提供という概念を交付、引渡しに替わるものとして御提案されており、池山委員から違和感があるということがありました。これは恐らく、交付とか引渡しというのは単独で行うものではなくて、相手方がその物を占有意思を持って引き取っているという、相手方が存在するというところがあると思います。一方で提供という言葉は、やはり単独で行っているイメージが強くて、弁済提供のような形で、一方の行為だけで完結してしまうような意味内容を含んでいるので、その部分のずれがあるのではないかと思った次第です。   電子化の世界では、例えば電子記録債権は共同申請という形で、譲渡記録については一方行為だけではできないことになっていると思います。その辺りの意味をしっかり反映した言葉を採用されるといいのではないかと。対案はないのですが、例えば譲渡とか、あるいは交付という言葉を使ってしまって、電子の文脈で交付に新しい意味を付与するような形での書き方というのがあるのかなと思いました。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。事務当局から何かございますか。ないようでしたら、そのほかどなたからでもよろしくお願いします。 ○吉田委員 吉田です。私個人としての意見ではございませんが、日弁連の中でありました意見と質問を述べさせていただければと思います。  支配の概念について、完全に解釈に委ねるということは難しいということは理解いたしましたが、どこまでの明確化が必要になりそうなのかということについて質問がありました。その質問があった上で、厳密さを追求しすぎると、今回の支配の概念でも出てまいります利用という概念が不確定であるため具体的に当てはめが困難になるのではないかという意見がありました。 また、もう一点、支配の概念を定義付けることと、日本の法体系との整合性を図るというバランスの問題として、どこまで法体系との整合性を求めていく必要があるのか、あるいは、求めていく方針なのかという質問がありましたので、御教示いただければと思います。 ○藤田部会長 差し当たり事務当局からお願いいたします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御質問ありがとうございます。支配の概念をどの程度まで具体的に明らかにしないと、我が国の法体系上難しいかという御質問かと思いますけれども、その点について今この場で明確に、ここまで行ければ大丈夫で、この程度抽象化しても大丈夫ということは、具体的なラインについてここで明確な御回答をすることは正直なところ難しいというところでございますけれども、まずもって、この支配という言葉を使えるかどうかというところからして現状、問題があるというところですけれども、仮に使うということになったとしても、やはり何らかのその定義付けをしないと、なかなか法制上は難しいだろうと私どもの方としては考えておりまして、やはり裸のままで解釈に委ねてしまうということになると、その具体的な内容が法文になったときに明らかにならないというものは、やはりそれは立法としては難しいということになろうかと思います。ではどのレベルまで書き込んでいけば、その具体的な内容が分かるのかというのは、正にもう個別具体的な判断になろうかと思いますので、そこら辺りは我々としても引き続き検討させていただきますということしか申し上げられないというところでございます。   1点、利用という言葉について、それが不明確に逆になるのではないかという御指摘もありました。これまでの議論の中で、利用という言葉を正面から持ち出してきて、それがいいのか悪いのかという話は、この部会でも御議論があったかなという記憶なのですけれども、今回御提案させていただいている内容は、利用という言葉を裸で使っているわけではなくて、あるシステムというものを想定して、そのシステムにおいて利用できる状態、利用することができる状態としておりますので、そこら辺りの不明確さはある程度は解消できているのではないかということを、私どもとしては勝手ながら思っているというところでございます。   差し当たっての回答は以上でございます。 ○藤田部会長 よろしいでしょうか。「利用」という言葉も、ここは権利を有する者として記録を利用するという書き方になっているので、それをあわせて見ると、たとえば電子船荷証券記録の内容を見て、そこから積み荷情報を取ることができるような使い方というのは、ここでいう「利用」ではなくて、例えば、船荷証券所持人に相当する立場として権利行使するとか、誰かに譲渡するとか、権利を処分するとか、そういったことを指して「利用」といっているというように、利用という単語だけではなくて、周囲の使われている用語を併せて読むと、ある程度は外縁は特定できるのではないかという御趣旨ですね。ありがとうございました。 ○太田委員 みずほ銀行の太田でございます。本日より部会への参加の機会を賜り意見を申し上げますと、貿易与信における担保実務への考慮が必要と考えます。銀行実務において、お客様からの依頼により発行したL/Cは、ディスクレがない場合、つまり書類上条件が整っていれば銀行は決済を先行して行い輸入者のお客様に対しその見返りとして償還債務が発生します。附属書類及び附帯荷物については、当初お客様と交わした約定書の譲渡担保の規定により銀行に譲渡されている状態となります。中間試案での支配の移転、また本日検討の提供といった表現の定義を行うことにおいて、銀行の譲渡担保である附帯荷物は販売による資金化のため銀行は譲渡担保の状態を維持したまま附帯荷物をお客様に貸し渡すという概念が、明確に支配の移転又は提供に含まれることを示す必要があると考えております。 ○藤田部会長 貸し渡しのところでどういう疑念があるか、お教えいただけますか。これは飽くまで船荷証券の引渡しなんかに相当する概念として、電子的記録システム上、名義が変わって、その人がログインして利用できるようになれば、紙の船荷証券の引渡しと同じようなことが起きるというふうな作りになっているわけですけれども、貸し渡しとの関係で、あるいは譲渡担保の関係で、どこに疑念が生じる余地があるのか、少し具体的にお教えいただけないでしょうか。 ○太田委員 実務では、お客様からの貸し渡し依頼書に基づきB/Lを渡します。B/Lの所有はお客様となりますが、荷物は売却し資金化が行われるまでは銀行の譲渡担保として捉えています。 ○藤田部会長 電子的だとできなくなるのは、今されている実務のどこの部分でしょうか。 ○太田委員 貸し渡しの状態でありますが、B/Lの所有者は輸入者の方になるというところです。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。今、太田委員の方で御指摘いただいた、譲渡担保とか貸し渡しという言葉が出てきたかと思うのですけれども、私が今拝聴していて理解したところによると、基本的な法律構成としては、譲渡担保を受けるという理解でよろしいでしょうか、それとはまた別に、譲渡担保ではない貸し渡しみたいな概念みたいなものがおありなのでしょうか。まず、そこを確認させていただいてよろしゅうございましょうか。 ○太田委員 実務では、貸し渡しという状態が発生するが、B/Lはお客様が所持している。つまり電子船荷証券記録の支配の移転が生じている。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。ありがとうございました。基本的には譲渡担保を受けている状態だということと理解いたしましたけれども、譲渡担保ということであれば、それはそれで譲渡担保として支配の移転を受けている、提供を受けているという整理になろうかと思いますので、そういう形でこの規律の中に乗っかっていっていただくということになろうかと思っております。もし今日お分かりであれば、教えていただければと思っているのですけれども、紙の船荷証券の場合、実際銀行の方で譲渡担保を受けるときは、やはり通常の裏書を受けているという理解でよろしいのか、それとも事実上証券を持っているだけという状態なのか、もしそこを今、御認識されているところがあれば、御教示いただけますと有り難いと思っておりますが、いかがでございましょうか。 ○太田委員 海外より書類を受領し、L/C条件に一致していれば対外決済を行い、紙の船荷証券の白地裏書に対し銀行は裏書を行います。その後、お客様が裏書を行い荷物を受け取ることになります。譲渡担保を受けるときは、通常の裏書を受けていることになります。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。ありがとうございました。そうしますと、基本的には裏書譲渡を受けていくという形になろうかと思いますので、今私どもの方で考えている譲渡の流れの中で、支配の移転を受けたり、あるいは提供を受けたりという形で入っていっていただくということで、特段問題はないのかなという感じがしております。もしそこら辺りについて銀行実務の中で御疑問な点とかがあれば、また個別に御指摘とかを頂ければ、こちらの方で考えさせていただきたいと思ってございます。 ○藤田部会長 ありがとうございました。仮に紙でやっていることそのものができないとしても、それはシステムが許容していないからできないのか、法律上の問題なのかという区別も、あるいは必要なのかもしれませんけれども、どう考えたらよろしいでしょうか。 ○池山委員 池山でございます。今、太田委員がおっしゃった点は、実際に最終的にB/Lの提出を受けて貨物を引き渡す、運送人の実務にも関連することですので、一応申し上げますと、多分、問題の次元として、紙のB/Lとのアナロジーで申し上げますと、単純にB/Lの所持、占有が移るかどうか、どういうときに移るかという問題と、それから、その移る根拠となる実体法的な権利の移転若しくは設定がどういうものかという問題と、その権利に応じて裏書がどういう形でされるか、されないかという問題は、三つ分けて論じるべきだと思います。今、貸し渡しの実務についての話がありましたけれども、図らずも貸し渡しの申込みがあればB/Lを渡すとおっしゃっているのです、正に占有は移転しているのです。だから、ここでいう提供なり支配の移転が電子的であっても行われると、そこはもう話は終わっているのだと思います。   その上で、貸し渡しにおける実体法的な権利関係がどういうものなのかと、売買におけるような所有権の移転なのか譲渡担保なのかという点については、確かに一般的には譲渡担保という説明がされることが多いと私も認識はしていますが、ほかの解釈論もあり得るかもしれず、最低限言えることは、ここではむしろその話には立ち入るべきではないと、電子B/Lになるからといって、その銀行と輸入者との権利義務関係の議論が影響を受けるべきではないのだと思っています。   それから最後、裏書について言えば、今おっしゃったとおり、まず銀行は裏書をして渡すのだとおっしゃっていましたけれども、ひょっとしたら銀行さんの実務では、白地裏書を受けた状態で右から左に貸し渡しに応じるという実務もあってもおかしくないかもしれない。銀行さんによっては、一応自分が裏書するとおっしゃるかもしれない。それから、B/Lでは見たことはないのですけれども、質入裏書的なことを明記した裏書というのもひょっとしたらあり得るかもしれない。それはその銀行さんの考え方によることでして、それも概念的には紙ではいろいろなバリエーションがある。銀行さんが輸入者さんとの関係でそれを選べる。そのことは電子B/Lの場合でも同じように選べるようなものでなければいけないという整理でおります。 ○藤田部会長 ありがとうございました。差し当たりよろしいですか。 ○小出幹事 小出でございます。ありがとうございます。少し戻るかもしれないのですけれども、2点申し上げます。   まず、1点目なのですが、新谷幹事と同じところなのですけれども、電子船荷証券記録の特定・識別というところについては、2ページから3ページにあるように、システムにおいて効力を有する電子的記録を識別できる措置がとられていることというのは妥当な定義なのではないかということを、私も意見として申し上げさせていただきます。   ただ、これは確認ではありますけれども、冒頭のところに「電子船荷証券記録の作成及び管理のために用いられる情報処理システムにおいて」、という言葉が書かれていて、これは情報処理システム「によって」ではなくて、「において」であるというのは、この情報処理システムの中でこの識別等の措置がとられているという趣旨ではなくて、つまり、具体的に識別するための手法は何でもよくて、飽くまでも情報処理システム上の電子的記録のうちどれが効力を有するものであるのかが分かっていればよいという理解でよいのでしょうか。何を言いたいかといいますと、識別するための手法は、技術的中立で、システム外の手法によってなされていても構わないということが前提になっているという理解でよろしいでしょうかということです。そうであれば、それは妥当な方向ではないかということでございます。   2点目なのですけれども、これも先ほど既に御議論がありましたところですが、4ページの支配というところについて大変御検討いただきまして、情報処理システムにおいて、これも「おいて」ですけれども、その権利を有する者として当該電子船荷証券記録を利用することができる状態ということとされております。先ほど藤田部会長からも、「利用することができる」というのは、このシステムの中において処分や管理などといったことができる状態ということで、「利用することができる」かどうかは全体を見て判断されるというような御発言があったところだと思いますが、私もそういう理解自体には賛成なのですけれども、利用という言葉には曖昧さがあり、これについて定義を置かなくてもよいのでしょうかということです。   つまり、「支配」については定義がなければいけないと、元々私は「支配」の定義はなくてもいいのではないかと思っていたのですけれども、やはり法制上、定義がなければいけないということだったと思うのですが、「利用」というものについては定義がなく、解釈に委ねるということでも問題ないということです。そうであれば「支配」についても同じように定義がなくてもいいような気もするのですけれども、その点について確認させていただければということです。   といいますのは、記録を「利用」するというのはいろいろな使われ方があるような気がしているからで、例えば、第三者が単に記録を見るというだけでも「利用」かもしれませんし、もちろんここでは権利を有する者としての利用ということですから、その意味では処分とかそういったことが想定されているのだという感じはしますけれども、ただ、はっきり定義されているわけではないと思いますので、ここの部分について解釈でよろしいのかということについて教えていただければと思います。 ○藤田部会長 一部質問もありましたので、事務当局からお願いいたします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。コメント、御質問いただきましてありがとうございます。   まず1点目の識別のところでございますが、ここは御指摘いただいたとおりでありまして、このシステムによって識別という、何か特定の方法で識別ということではなくて、システムにおいて何らかの方法で分かればいいよねというような趣旨でございますので、何かその識別の方法を縛ろうというものではないというところでございます。   2点目の、利用についての定義は要らないのかというところでございます。まず、私どもの方として今考えているところですが、これが今後法制上、必ずしも通るとは限らないというところはお含みおきいただきたいのですけれども、まず、利用というのはある程度一般用語としては通じるだろうと。支配と比べると利用というのは、何かを利用するというのは一般的な言葉としては、それなりにイメージは元々つくところだろうと思います。ただ、我々法律を専門にやっている者からすると、逆に言うと、その利用というのが具体的にどういうところなのかというのがむしろ分かりにくいところが出てくるかもしれませんが、そこら辺りについては、先ほど部会長からもコメントを頂きましたとおり、「電子船荷証券記録上の権利を有する者」としてというところで、ある程度、利用というものの外縁が画されているのかなと思っておりますので、そういった形である程度クリアできるのかなというところでございます。   それに対して、電磁的記録の支配というのは、それはさすがに裸で使うと何をいっているか分からないという形になってしまうのかなというところがありますので、そういったものの定義付けは必要だけれども、利用については、こういう使い方であれば恐らく大丈夫ではないかというのが今の私どもの考え方でございます。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。小出幹事、よろしいですか。 ○小出幹事 ありがとうございます。2点目について、もう少しお伺いさせていただきます。   私も、趣旨として理解できますし、結論的にはこういった書き方がよいのかと思います。思うのですけれども、「利用」という言葉について、やはりいろいろな意味合いがあって、権利を有する者として利用するということですと、事実状態というか、例えばハッキングをしたような人で適法な権利を有していないのだけれども事実上その電子船荷証券記録を利用できる状態にあるという人というのは、ここでの支配を有する者に含まれるということになるわけでしょうか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。今の私どもの考え方としては、そういうものも当たってしまうだろうと思っております。ハッキングとかをして、自分が権利者としてこの記録にアクセスしていろいろなことができてしまうという状態は、基本的に起きないものと考えておりますが、万万が一生じてしまえば、それは紙の証券が盗まれてしまったのと同じような状態であろうと思いますので、そういったものももし観念されるとすれば、これに当たってきてしまうという形として整理されるかなと思ってございます。 ○藤田部会長 ありがとうございます。 ○小出幹事 ありがとうございます。そうしますと、いわゆる占有と同様に、この場合については、支配を得るに至った適法性あるいは正当性というものはここでは問われない概念であるということで、この利用という言葉を使われているということですね。分かりました。ありがとうございます。 ○藤田部会長 権利を有する者として利用するというのは、本当に権利者であるかどうかということを問題にしているのではなくて、あたかも権利者であるかのような形で利用できる人であればこの定義は満たすと読んでいるということになりますが、このようにかなり注意して読まないと、いろいろ疑義が生じるのは確かです。それでも一応何とか意味は通じるだろうというのが今の事務局の御返答なのだと思いますが、この辺りもし御意見等があれば、頂ければと思います。 ○洲崎委員 洲崎でございます。発言をお許しいただきありがとうございます。2点伺いたいのですけれども、1点目は、本日最初に池山委員と事務当局のやり取りであった、電子船荷証券記録の提供という言葉についてです。私は最初に資料を読んだときは、わざわざ支配の移転ではなくて提供という言葉を使われているのは、紙の証券であれば、その所持人の交付する、引き渡すという行為だけで移転させられるけれども、電子船荷証券記録の場合は、システムが定めた仕様に従って移転させなければならないので、譲渡人がやっている行為は移転そのものというよりは、その人の行為とシステムの仕様を併せて結果として移転になるので、提供という言葉を使われたのかなと勝手に思ったのですが、先ほどの御説明では、どうもそういうわけではなく、法制上の問題であるからということだったように思いますが、そうなのかどうかを確認したいというのが1点でございます。   それから、もう1点は支配の移転の定義についてですが、第11回部会のときには確か、少し簡略化して言いますと、証券記録の支配を移転する措置であって、証券記録の支配を移転した者が当該証券記録の支配を失うもの、という定義であったものが、今回は、証券記録の支配の移転の相手方のみが支配を有することになるもの、これが支配の移転に当たるという定義になって、ここはやはり少し違った表現になっています。この意味についても、私は資料を読んだときには、紙の証券と同じ世界をイメージしてもらう、つまり、紙の証券の場合は証券と権利が結合しており、紙は一つしかないので二重譲渡があり得ない世界ですね、ここは動産の譲渡とか指名債権の譲渡とは違うので、紙の場合と同じことなのですよということを示すために、支配の移転を受けた相手方のみが支配をすることになると、こういう表現を加えられたのかなと、これも勝手に推測したのですが、しかし、先ほどの池山委員とのやり取りを伺っていると、どうも支配の定義のところで排他的という表現をなくした代わりに、それを補うものとして、支配の移転の相手方のみが支配を有することになるという表現を用いられたのかなとも読めたのですが、そういう理解でいいのかということについてお教えいただければと思います。 ○藤田部会長 事務当局からお願いいたします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御質問いただきましてありがとうございます。   まず、提供という言葉を考え始めたきっかけといたしましては、我々の中では基本的には、やはり法制上の問題が一番大きいかなというところが検討の動機というか、きっかけというところであることは間違いがないことかなと思ってございます。やはり支配という事実状態ということになりますので、その移転というのがどうしてもなかなかしっくりこないだろうというところから始まり、そうしましたら電磁的記録というものに対しては法令上どういう言葉が使われているのだろうかというところをいろいろ洗いざらい調べてみたところ、やはり提供という言葉が一般的には一番多いというところがあって、この提供というのを一つの足がかりにして、こういう言葉を取りあえず使ってみて、その定義付けを何とかやるという形で、この法制を何とか実現できないかと思ったところでございまして、我々の検討の経過という意味では、そういったところでございます。   ただ、実際もしこの提供という言葉を使うということになった場合の意味付けについては、いろいろな整理ができるだろうと思っております。私どもが今申し上げた、その検討のきっかけというか、時系列的な流れだけが全ての説明ではないと思ってございますので、洲崎委員が言われたようなことも、もし提供を使うということになれば、その根拠の一つにすることができるかもしれないと今思ったところでございます。   それから、支配の移転の表現ぶりを変えたところにつきましても、従前、渡した者が失うみたいなものを入れ込んだような定義をしていたところは、そのとおりかなと思ってございます。これをなぜ削ったかというところでございますけれども、これも私どもの検討の経過としては、何とか排他性というものをどこかで作らなければいけないのかなというところは常に頭の中にあって、この支配の移転あるいは提供という中で、その相手方だけが支配を有することになるということを付けられれば、支配の中で排他性みたいなことを無理やり作らなくても、何とか我々のやりたいことは達成できるのかなという流れで考えたという経緯はございます。   ただ、実際こうやって出来上がったものを見てみますと、やはりこういう形で特定の者のみが支配を有するというのは、洲崎委員がおっしゃるように、正に紙の船荷証券でいうところの交付というものにより近い表現になったかなと思う部分もございますので、これも先ほどと同じで、私どもがどういうきっかけでこういう変更を検討したかという問題と、出来上がったものに対してどのような意味付けをするのかというところについては、いろいろな根拠を付けていくということはできるかなと思った次第でございます。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。洲崎委員、よろしいでしょうか。 ○洲崎委員 はい、どうもありがとうございます。 ○藤田部会長 そのほか、どの点でも御意見等はございますでしょうか。 ○池山委員 再度、池山でございます。今のいろいろな御議論を聞いた上で、補足的なことを二つ申し上げます。   まず、支配の定義についてなのですけれども、少し元に戻りますと、実は中間試案の前の段階では、私どもは支配の定義は要らないのではないかという意見を申し上げていて、最終的にそれは無理だという前提でこの議論になっているということは理解をしているつもりです。ですが、何で要らないのではないかということを申し上げたかという基本に立ち戻って考えると、実際の電子船荷証券記録のシステムだと、間違いなくそのシステムの中で、つまり、今はシステム提供者がいるという前提に暗黙裏に立ってしまっていますけれども、立った上で、そのシステムの中ではポゼッサーとかホールダーという言葉を通じて、あるいはコントロールという言葉を通じて、個別のシステムが少なくともある場合、今はそれが圧倒的に多いわけですが、その中では、支配する者というのはそのシステムの中で既に定義されてしまっていると、だから要らないのではないのということを申し上げたわけです。法制的にそれが要らないかどうかは別にして、事実としてはそれはあると。将来そういうシステム提供者がいないようなものを想定すれば、正にそこも法令の側で、この人が支配をする者だと特定しなければいけないというのは分かるのです。   でも、今の観察から言えることは、やはり実務の側からすると、法令上いかなる定義をするにしても、現にシステムがあって、そのシステムに基づく規約のようなものがあって、そこで支配をする者というのが定義付けられていたときに、それを排斥するようなものであってはならないのだろうと。それは、もっと考えると、支配の定義が強行規定なのか任意規定なのかみたいな、少しあさっての議論をしてしまうのかもしれないですけれども、その点は別にして、やはり実務の側からすると、その定義を考えることによって、実務上電子B/Lの支配者とみんなが思っている人を、いや、あなたは実は違いますと言われるようなことにはならないと、そういう定義の仕方をうまく考えていただけないかなというのを一つ思いました。それが大きな一つです。   それから、もう一つの補足的な点は、提供という点には違和感がありますというのをさんざん申し上げて、でも、いろいろな難しい面があるのだという御指摘があったので、それはそれで、私どもも更に検討したいと思うのですけれども、先ほど申し上げそびれたことの一つとして、この提供という言葉を使わざるを得ないとして、英語で何なのかという話があって、これはオファーなのかプロバイドなのかという指摘がありました。実はその英語を使うともう少しすっきりしていて、決してオファーではなくてプロバイドだと思うのです。だけれども、日本語の提供だとオファー的なニュアンスが出てしまうので違和感があるのかなと、逆に、先ほど落としてしまいましたけれども、改めて感じられて、そういう議論があったというのは一応、御紹介するに値するかなと思った次第です。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。事務当局から何かございますか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御指摘いただきましてありがとうございます。   まず一つ目の、実際その支配をする人というのは、システムで多分おのずと明らかになるだろうというところでございます。そこは正におっしゃるとおりだと思っておりまして、実際に走っていくであろうシステムの中で、この人が支配をする人だと定められる人と、ここでいう定義がずれるということはよくないだろうと思っておりますので、とはいえ、どんなシステムであっても、きっとこういう人を権利者としての支配者だというふうにいう要素があるだろうと思いますので、その要素の一番核となる部分を何とか抽象的に抜き出すとしたら恐らくこうなるのではないかという形で、今回提案をさせていただいているところでございまして、逆に言うと、これに矛盾するような人をシステム上、支配者とすることなんて本当にあるのですかというと、何となく私の中で余り思い付かないという意味で、そういった必要最小限の要素は何とか抽出できているのかなと思います。逆に、これを何も抽出しないという話になってしまうと、もうそれはシステム提供者に全部任せますということになりますので、そういう法制を目指すと、やはりそのシステム提供者については国の監督をしていけ、みたいな話になってしまいますので、そちらの道はどうしても採れないなということにはなろうかと思っているところでございます。 ○藤田部会長 よろしいでしょうか。現在のシステムに依拠した定義というのは、正に池山委員の最初に言われたことをできるだけ取り込む方向での提案なのだと思って伺っていました。 ○北澤委員 北澤でございます。国際私法の分野から少しコメントをさせていただきたいと思います。   先ほどの電磁的記録の特定・識別の部分、2ページのところですが、このような特定・識別をするという、事務局案の方向性は、国際私法の分野で議論をする際に、むしろ非常に参考になる話だと思っております。最近、分散台帳を用いた権利のトークン化の場合についての準拠法決定ルールをどうするかという問題意識の論文が公表されるようになっています。この電子船荷証券記録もその対象でして、電子船荷証券記録について複数の複製がある場合には従来の国際私法学説が採ってきた証券所在地法主義に立つと、準拠法決定が困難になってしまいます。   そのため、電子船荷証券記録につきましては、従来とは別の準拠法決定ルールを模索すべきなのではないかということで、船荷証券に表章されている権利の準拠法によるべきだと考える方もいます。その場合、その権利を表章している媒体が中央管理サーバー上の電子データであろうと、紙であろうと、分散型台帳であろうと準拠法は同じなので、技術的な中立性という観点からも肯定的に評価しうるとされています。   そのほか、中央サーバー管理型のような場合ですと、従来の証券所在地を見直して、サーバーの所在地を連結点とする考え方が今後出てくる可能性もあると思いますし、また、先ほどブロックチェーン(分散台帳)管理型というお話がありましたが、技術的なところは自分では余り把握できていないのですが、許可制の分散台帳と非許可制のものと、いろいろあるようでございまして、それに応じて異なる準拠法決定ルールによらせる方もいます。   ここでの議論を踏まえ、将来的に電子船荷証券記録に関する実質法が整備されれば、国際私法の議論にも当然影響があると思います。従来の証券所在地に代わる連結点として、システム管理者の所在地や電子船荷証券を支配している者が存在する地というのも選択肢としてはあり得ると思うのですが、そうした場合に、支配という概念の定義について、この部会でもそうですが、実質法レベルで詰めていただいていることは、国際私法で今後議論をしていく際に重要な点でもありますので、今回お示しいただいた特定・識別のところもそうですし、電子船荷証券記録の支配概念の部分でお書きいただいていることについてはかなりポジティブに受け止めています。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。事務当局から何かございますか。御指摘のところまで意識してこの文案を作られたとは思えないですが、結果的には現在提案されているものは、将来あり得べき国際私法のルールの発展にとって少なくとも害をなすような方向ではないという意味で支持できるという御意見だったと思います。ありがとうございます。   そのほかどの点でも、御意見等はございますでしょうか。   もしないようでしたら、第1についての検討はこの辺りまでにして、午後3時30分から後半部分を再開することにさせていただければと思います。では、一旦休憩とさせていただきます。           (休     憩) ○藤田部会長 時間ですので、再開したいと思います。   休憩前に部会資料14の第1について御議論させていただきましたので、部会資料14の第2の部分について御意見いただければと思います。どうかよろしくお願いいたします。 ○池山委員 池山でございます。あえて申し上げれば、余りいつも冒頭に発言するのが好ましいのかどうかというのはあるかと思いますけれども、議論の火付け役と思いまして、かつ、意見がないわけではないので、それを申し上げるのは責務ですので、毎回冒頭で大変申し訳ございませんが、発言の機会を頂き、ありがとうございます。これも、1、2、3などと分かれておりますので、順次申し上げます。   まず、1に関してなのですけれども、読ませていただいた印象は、残念ながら中間試案前の議論に戻っているかなという気がしております。と申しますのは、一番最初の方の議論として、日本法上、船荷証券の類型に、有価証券一般の類型に準じて4類型あるということ自体は理論的には否定できないだろうと、だから、そういう整理を理論的にすることについて反対はしなかったということは確かですけれども、他方で、少なくとも従前は誰も見たことも聞いたこともない記名式所持人払証券型電子船荷証券なるものを明示的に認知するというのは、ある種、必要以上のメッセージを与えることになるので好ましくない、あるいは違和感がありますということをかなり申し上げた記憶がございます。その結果として中間試案においては、理論的にはよく考えると4類型あるという前提ではあるのだけれども、少なくとも明文上、そういう電子B/Lがあるということをわざわざ書かないということになって、それなら違和感もないし、理論的にもすっきりできるし、いいかなという整理をしておりました。そうしたところ、結局、電磁的記録の場合はこの指図式などの定義がはっきりしないではないかということから、また議論が元に戻っていると。4類型をはっきりさせるということのきっかけが、そういう指図式とか記名式とかの定義が必要だからだというのはどうにも、理由とその出てくる結論に違和感があるなと思っております。   実質的なことを申し上げますと、ここでは電磁的になると指図式の意味というのが不明確だから、何らかの定義を与えなければいけないのではないかという問題意識に立っておりますけれども、これまた実務の感覚からすると、みんな分かっていると。法文に明記はされていなくても、紙のB/Lの場合に指図式というのがどういうものかというのは、要するに、トゥーオーダーと書けば指図式だということは皆分かっているわけです。実は電子化されたとしても、そういうトゥーオーダーという記載はみんなするわけです。なぜかというと、これは先ほどのシステム提供者がいる、いないという議論と若干関係するかもしれませんけれども、仮に提供者がいないものだとしても、基本的な発想は紙の船荷証券における権利義務関係を電子的な記録のやり取りによって代替する、英語でいうレプリケートとする、そういう発想でみんなが利用すると、そのことは絶対動かないわけなので、紙でいえばトゥーオーダーに当たるような記載が電子の世界でも絶対されるはずで、その意味については紙におけるそれと同じだということは実務の側は誰も疑わないのではないかと思うのです。なので、紙においては、正にここに書いてあるとおり、法令上定義なくして用例として使われてきたというのであれば、電子であるからといって定義を考えなければいけないということは、少なくとも実務のニーズとしては、ないということは申し上げていいのかなと思っております。それが1についてです。   それから、2の電子裏書の関係ですけれども、ここで記載されている点の主たる論点ではないですけれども、これも従前私どもが申し上げていたのは、電子裏書、あるいは作成の場合もそうですけれども、電子署名を極めて緩やかな要件の下で定義はした上で、電子署名を要求するということについて、一応反対ですということを中間試案の段階で申し上げたという経緯はございます。残念ながら、今の段階ではそれに大きな賛同を得られていなくて、中間試案の段階でもA案、B案というような形で採用されるには至っていないという客観的な事実は認識しているつもりですけれども、まだ、本当に電子署名について不要ですというふうに意見を修正していいかどうかという点については、私の推薦母体の中でも意見集約ができていない状態ですので、そこは一応、今日の議論とは関係しませんけれども、留保させていただくということだけは申し上げて、その上で、今日のここで議論されていることについての意見を申し上げますと、ここに書いてある問題意識というのは、特にいわゆる記名裏書に相当する裏書を念頭に置いた上で、裏書人の氏名・名称の記録というのが明示的に要るのかどうかという論点と、それから、裏書文句的なものが要らないような定義になっているけれども、そこはなくていいのかと、その二つに分かれるのかなという気がしております。   このうち前者については、運送人プラス電子船荷証券記録の後主たる所持人の立場からしても、裏書の連続の有無の判断というのが絶対必要なので、その裏書の有無の判断との関係では、どのような裏書の方式であれ、裏書人の氏名・名称の記載、記録というのは何らかの形で必要なのだろうと。能動的な行為であることを要するかどうかというのは別の論点ですけれども、紙であれば券面上、電子的記録でいえば記録上、裏書人が誰かというのが分かる形になっていなければいけない、そうしないと連続の有無が判断できないという意味では、必須なのかなと思っておりまして、なので、中間試案の中でそれを記録事項とされていたことには違和感はございませんでしたし、今も違和感はございません。   それから、裏書文句の方についていうと、ここは単純に、また実務のことを持ち出すと、便宜的かもしれませんけれども、記名式の場合だと、プリーズ・デリバー・トゥー誰それという言葉が入るわけで、そのプリーズ・デリバー・トゥーというのは、正に裏書文句に相当するものですよね。言葉としては誰それに引き渡してくださいだから、裏書という文句ではないのですけれども、意味としては裏書文句に相当すると。他方で白地式の場合は、正にぽんとスタンプが押してあるだけなので、裏書文句に相当するものはないと。   だけれども、恐らく電子の場合は、白地式にしろ記名式にしろ、裏書に相当する記録事項に当たるのかどうかというのは分かるはずで、裏書に相当する記録であるということが当該電磁的記録の体裁上分かるのであれば、文字どおりの裏書文句的なものは、今までもなかったし、それを付けろと言われると、電子化することによって余計な負担が出てくるということかなと思います。別の言い方をすると、裏書だということが何らかの形で、裏書人の意思表示だということが何らかの形で分かれば、それでいいのであって、裏書文句という表現が必要だということではないだろうと思っております。   それから、次が3なのですけれども、3の民法の適用との関係に関する諸論点でございます。ここは、まず冒頭に一つだけ質問がございまして、冒頭のところで、電子船荷証券記録上の権利すなわち運送品の引渡しに係る債権等を対象として規律するうんぬんとあります。この電子船荷証券記録上の権利を言い換えたところの、引渡しに係る債権等の等とは何だろうという質問がありました。損害賠償請求権とかそういう転化したものであろうという気はするのですけれども、事務当局として等というものについてどういうものをお考えなのかというのは一応お聞きしたいと思っています。   それと、それに関して、これは法制上の問題かもしれませんけれども、実際の立法の中で、電子船荷証券記録上の権利という形で法文の文章が作られるところと、確か強制執行のところだったと思いますけれども、その引渡しに係る債権、あるいは債権等という表現が使われるところとあったように記憶をして、その二つがイコールなのだったら、どちらかに統一しなくていいのかと、それは意味があるのかというのも、これも意見というよりは質問かもしれませんけれども、ございます。ここは余り本題とは関係ない用語法に関するところです。   その上で中身に入っていくと、恐らくこれは大きく三つに分かれていて、(2)が第467、第364条、それから(3)と(4)が一まとまりで、(3)が総論ですかね、(4)が第468条で、(5)が第469条との関係と、そういうふうに理解しているのですけれども、まず(2)の民法第467条、第364条との関係についていうと、やはり我々は紙のB/Lとの対比で考えるのですけれども、紙のB/Lの場合には、一方で有価証券ですから、第520条の2以下の規定がある反面、第467条は適用を除外するなどということは書いていないわけですよね、有価証券において。恐らく、理屈上は指図債権である場合は、裏書譲渡が有効要件でもあり、かつ対抗要件でもあるという前提で、第467条の適用は排除されると解釈しているのだろうと後付けで思うわけですが、いずれにしろ明文は書いていないと。そういう中で、電子になるとわざわざ明文の規定を置かなければいけないという必然性がよく分からないのです。紙の場合に書いていないのに、電子だったら必要だというのがよく分からないという気がします。それは第468条についても同じ質問があります。   更に見ると、第467条と第468条で補足説明でもニュアンスが違っていて、第467条に関する(2)については、適用除外を定める規定を設けることが考えられると、かなり前向きで、第468条側については、明文を設けるのかどうかは法制上の問題だと、微妙にニュアンスが違っているのですけれども、そこは一貫しないものを感じるというのは、これも感想です。   一番最後が(5)です。ここは実は実質的な意見があるところでして、問題状況としては同じなのですけれども、紙のB/Lの場合にこの第469条の規定の適用があるかどうかというのは、幸か不幸か実務上余り問題になっていないので、はっきりしないのですけれども、正面切って問われると、紙のB/Lの場合に第469条の適用がないといえるかどうかというのは、運送人側からすると、当然適用はあると言いたくなると、でも、第467条の規定が適用ないのだったら適用ないのだという考えもあり得るところでして、いずれにしろ議論が十分あり得るところなのだと思います。実際ここに書いてあるとおり、適用されるかどうかについて必ずしも明らかではないと法務省も書いてくださっていると。   ところが、電子になると明文化することが不可欠だというのが、また違和感があるので、ここもやはり同じように解釈に委ねるということは何でできないのだろうかと。別にここを空白にしたからといって第469条が適用あるというわけでもないし、ないというわけでもない。それは有価証券ではない債権ではあるけれども、やはり第520条の2以下の有価証券の規定に準じた規定が置かれるところの特殊な債権なので、明文化しないと第469条が当然適用されることになってしまって、それはそれで避ける必要があるという問題ではないか、飽くまで紙のB/Lと同じように解釈に委ねるということはやはり許されるのかなと思っています。この辺りは、ほかの論点であったところの、やはり元々の実務の要望としては電子化をするための立法であるにもかかわらず、それ以上に必要以上に踏み込むということはできるだけ避けていただけると有り難いという問題意識の表れの一つです。   すみません、長くなりましたが、以上です。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。一部質問も含まれておりましたので、事務当局から返答をお願いいたします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。多岐にわたってコメントを頂きましてありがとうございます。できる限り、事務当局の回答を少し補足して説明できるところは補足させていただければと思ってございます。   まず、1点目に御指摘いただきました各類型の定義うんぬんというところでございますけれども、ここら辺りは我々も是が非でも明らかにしたいと思っているわけではございませんで、できるだけ、指図式とかそういったような言葉で代替できるのであればそうしたいという思いはあるところでございます。ただ、やはり紙の船荷証券とできるだけイコールということではあるのですけれども、紙の船荷証券の規律が、ここで議論している中でも、必ずしも十分ではない部分がたくさんあるというところでもって、できるだけ明らかにしないような法文を考えていきたいというところはあるものの、やはり新しいものを作る以上、どこまでそれが許されるのかというところは、我々としても結構ぎりぎりの選択を迫られているという状況にございますので、もし明確化が必要になってしまうということであれば、改めて検討させていただければなという、今後どうなるか少し不透明なところではあるのですけれども、若干ここは頭出し的なところもあったかなというところでございます。   ただ、今、池山委員から御指摘いただいた、結局この電子化の取組というのは、紙の船荷証券というものが既にある中で、それを電子化するということに尽きるのであって、実務サイドとしてそこをはっきりするニーズはないというところは、我々としてもそれなりに使える理由付けにもなるのかなとは思ってございますので、そういったところも含めて今後引き続き検討させていただき、定義付けがもし必要だということになってしまいましたら、また御相談させていただければと思っているところでございます。   それから、2点目の裏書の点については、署名のところはまた引き続きというところかと思っているところではございますけれども、やはり紙との平仄を考えると、署名に代わる何かしらのものというのが全くないというのは、恐らく法制上は難しいかなと思っているところで、ただ、ここでいう電子署名というのを一応想定していますけれども、余り重いものとすることは想定しておらず、そこら辺りは中間試案の補足説明でも書かせていただいたとおりかなと思っておりますので、その方向で引き続き御議論いただけると有り難いと思っているところでございます。   それから、次は部会資料でいいますところの10ページの3(1)のところにある、運送品引渡しに係る債権等の等は何を意味するのかというところですけれども、ここはもう池山委員の方で自らおっしゃっていただいたとおり、あり得るとしたら、転化した損害賠償請求権みたいなものというのが一応あり得るなとは思っているところでございますけれども、ただ、余りメジャーなものではございませんので、等でくくっているというところです。ほかの制度のところで似たような、電子船荷証券記録上の権利みたいな言葉については、どこかで統一とかを考えていかなければいけないかなとは思っております。もし統一できずにあえて違う言葉を使うとしたら、それはなぜなのかといったところも説明できるような形でやっていかなければいけないとは思っておりますので、そこは宿題として受け止めたというところでございます。   あとは、民法の債権譲渡の規律の関係で、適用除外を明確に置くか置かないか、みたいなところでございますが、すみません、第467条と第468条、第469条で書きぶりが少し変わっているというところは御指摘のとおりなのですけれども、第467条も必ずしも明確に除外規定を設けることだけが唯一の道ではないと思っておりまして、ここも何も設けずに、解釈でそうなるということも十分あり得るかなと思ってございますので、そういった意味では特に何か第467条だけ特別に除外規定を設けて、あとは書かないという選択肢だけを考えているわけではなくて、同列に扱ってもいいのかなと思っているところでございます。   この問題につきましては、必ずしも我々としても除外規定がマストだとは思っておりませんので、基本的に除外される、適用されないだろうということであったとしても、法文の作りとしては除外規定は置かないという道もあり得るとは思っておりますが、ただ、いずれにしても、この適用関係についてここで結論が出る、出ないにかかわらず、一度御議論はさせていただく必要はあるのかなということで、問題提起をさせていただいたというところでございます。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。池山委員、よろしいですか。 ○池山委員 池山でございます。詳細な御回答ありがとうございます。恐らく、今の点からすると、実質的な議論をする必要があるとすると、第469条の適用については議論の余地があると我々は思っているのですけれども、議論の大勢がどうなるかは分からないですけれども、そのことだけは申し上げた方がいいのかなと。多分、明文でやはり適用除外とはっきり入れるということになれば、本当にそれを受け入れざるを得ないのかどうかということを、紙のB/Lとの関係も、逆に絶対、紙のB/Lの解釈にフィードバックしますので、そこへの影響も踏まえながら、私個人というよりは、私の推薦母体の団体の中でも更に議論させていただく必要があるかなと思っております。 ○藤田部会長 ありがとうございました。 ○笹岡幹事 今の点なのですが、私は商法の第760条の規定によって解決しているのではないかと思っておりまして、今般の提案でも第760条に相当する規定を設けるということですので、この辺りを整理していただくことでよろしいのかなという気がしています。結論があるわけではないのですが、この部分との調整という形で御検討いただければと思います。お願いいたします。 ○藤田部会長 ありがとうございました。   不実記載の規定と民法第520条の6の人的抗弁の対抗に関する有価証券に関する一般規定と、債権譲渡の対抗要件や抗弁の対抗に関する規定の適用関係の整理は、かなり重層的かつ複雑で、しかも相殺については抗弁の中でも特別な規定が債権譲渡については置かれていることが話を難しくしています。恐らく実務的には適用を考えたことのない規定だはと思うのですけれども、あえて言えば、運賃請求権が残っているような場合に損害賠償債務と相殺できるかというようなことが論理的には問題になるのかもしれません。余り結論もはっきりしないとすれば、現状に対して中立的にするためにはどうするのが一番適切な規定の仕方なのかというのが恐らく池山委員の感想ということになるのでしょうか。 ○池山委員 池山でございます。ありがとうございます。正直に申し上げると、今みたいな問題提起というか意見を申し上げるのは、実務の側が不勉強なだけなのかもしれませんけれども、元々中間試案前の段階で、正にこの第760条に相当する規定も含めて、必要な紙の船荷証券において適用がある規定で、電子船荷証券においてもその適用の在り方を考えなければいけないものについては網羅的に検討されて、中間試案の後ろの方で、書きぶりについては議論があったり、一部について異論を唱えたりしておりますけれども、少なくとも基本的には全部議論はされていたというのが私の理解なので、ここで中間試案前に出ていなかった民法の第467条、第468条、第469条との関係というのも議論しなければいけないということ自体が正直、違和感があるというと少し反対かもしれませんけれども、虚を突かれているというのが正直なところです。第467条と第468条については、ここに書いてあるとおり、実際は商法の別の規定でカバーされる、あるいは民法第520条の2以下でカバーされているから問題ないのだろうと思うのですけれども、第469条だけは、新たに生まれると、本当に適用がないと言い切っていいのかというのは、まず紙のB/Lの問題として、一から考えなければいけないと思っているのです。   今、笹岡幹事のおっしゃったのは、この第469条との関係でも第760条で処理されるということなのか、というのがよく分からないのですけれども。 ○笹岡幹事 恐らく、例えばプリペイドと書いてあって、でも未払債権が残っているような場面というのが想定されるのではないかと。そうすると、証券所持人との関係では未払があるということを運送人が主張できるのかという論点として出てくるのかなと思います。実務上どう対応されているか分かりませんけれども、少なくとも第760条を適用すれば、証券上にプリペイドと書いてある以上は、証券所持人との関係では既払だというふうに扱われるのではないかというところです。 ○池山委員 池山ございます。そのこと自体には異論はないのですが、第760条に相当する規定というのは中間試案のどこかにあるはずで、第469条が想定する状況というのは、それで全部カバーされるのかというのがよく分からないということなのですけれども。 ○笹岡幹事 分からないので、ただ、この文脈で第760条に言及しないとなると少し違和感があるので、そこはまた調整の上で新しい提案をしていただきたいなというところです。こちらも引き取って考えます。 ○池山委員 分かりました。すみません、余り私だけが発言するのもあれなので。そういう議論があったということは一応申し上げて、こちらでも御指摘等を踏まえて、更に考えさせていただきたいと思います。 ○藤田部会長 ありがとうございました。逆に、フレイト・プリペイドというよりむしろ、フレイト・コレクトと書いてあるときにどういう状態が起きるのか、第469条の要件を満たさないと相殺できないのかが、より重要な問題のような気もしますので、その辺りを含めて実務的にも検討していただければと思います。 ○池山委員 はい。 ○藤田部会長 そのほか、どの点でも、御意見等はございますでしょうか。 ○猪俣委員 三菱倉庫の猪俣でございます。倉庫約款上、倉荷証券は寄託者の要請により倉庫業者が発券するということになっておりますので、無記名型証券というのは少し難しいのではないかと思っております。常に寄託者というものがいて、裏書によって名義が替わって渡っていっても、誰か彼かが保管料を支払っていただく必要が出てきます。その際、我々は寄託者とその方を呼んでおりまして、どの方の貨物を預かっているのかというより所になりますので、倉荷証券においては無記名という考え方は少し難しいのかなと思います。 ○藤田部会長 ありがとうございました。事務当局から何かございますか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。御指摘ありがとうございました。実際、倉荷証券、船荷証券も同じかもしれませんけれども、基本的には寄託者の請求で発行するというものになっているというのはおっしゃるとおりで、そういった実務の慣行からいたしますと、無記名というものが採用されることはほとんどないだろうという御指摘だろうと思っております。ただ、他方で法律が無記名を禁じているかというと、恐らくそうでもないのかなと、あえて無記名証券を発行するということも多分、制度上は禁止はされないのかなというふうには、条文上の立て付けとしてはそう読めますので、そういったところを踏まえて、無記名のバージョンも一応規律としては作っておく必要があるのかなというのがこれまでの御議論だったかなとは思いますが、ただ、事実上実務的なニーズはほとんどないというところは、船荷証券でいうところの4類型全てそういえるのですかというところと恐らく同じ御議論なのかなと思っているところでございます。 ○池山委員 池山でございます。私が倉荷証券との関係で発言するのは問題があるかもしれませんけれども、船荷証券との関係性ということで申し上げますと、船荷証券であっても一方で荷送人の要請があるから発行するという意味では同じで、だからこそ通常は発行の要求者であるところの荷送人の記載がない、あるいは倉庫証券であれば要求者である寄託者の記載がないというのは考え難いというのは確かで、だけれども概念的にはあり得るというのはおっしゃるとおりだと思います。ただ、船荷証券以上に倉荷証券の方がより無記名式を想定し難いという、実は差はあるかと思っております。というのは、船荷証券の場合は運送という役務に対する証券なので、言ってみればその対価というのは、場合によっては確定しないこともありますけれども、概念的にはA地点からB地点までの運送で100円ですと元々決め得ると、それで無記名のものを発行して、コレクトであれば誰であれ100円をもってこの証券を持ってきたときに渡すというので、理念的にはあるのですけれども、倉荷証券についてお聞きするのは、倉荷証券は保管期間というのがある種、インデフィニットなので、無記名だと、要するに1年100円と決まっていても、誰にその保管料を請求できるのか全く分からないというのがあって、より無記名は出しにくいのだろうと。別の言い方をすると、役務の性質の差に応じた対価の発生の仕方、そこに表象される権利に係る対価の発生の仕方があって、実際上どちらも理念的にはあり得るけれども実務的にはないといっても、全く同じではないのかなというのは、御参考になるかどうか分かりませんけれども、一実務者の認識として一応申し上げます。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。実務的に無記名式の電子倉荷証券記録を発行するニーズもなければ実態もないということは非常によく理解できました。それを反映してそもそも類型として法律的にそれをあえて省くかどうかというのがここでの議論だと思います。事務局は、差し当たりはそうしない、別に無記名式の電子倉荷証券記録の規定を置いたとしても発行義務が課されるわけではないので、発行されないのだったら発行されないだけで、それでいいのではないかという感触なのですけれども、やはり規定があったら弊害はあるのですかね。使われないような証券が条文上載っていること自身が望ましくない影響があるということは、それはありますでしょうか。 ○猪俣委員 まれに法律を盾に取って、これに書いてあるではないかというお客様もいらっしゃるので、書いていない方が業者としては有り難いです。実務的には無記名で求められても、発行ができないのでお断りはしますけれども、まれにですけれども、法律に書いてあることを要求されることがございますので。 ○藤田部会長 ありがとうございました。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。実務の現状をお教えいただきましてありがとうございます。確かに余計な、余り実務上使われないものが法制化されることによるデメリットの一例としてお伺いいたしましたけれども、今の紙の倉荷証券もある意味、無記名で発行すること自体が禁止はされていませんので、ただ、それは事実上使われていないということであれば、状況としては電子版で無記名というものが類型としてあったとしても、同じことなのかなという気はしております。ここはひとえに、これまでの部会での御議論でもさんざんあったかと思いますけれども、この類型については、電子版については違った類型を考えましょうということを試みた時期もあったかと思います。ただ、それをすると結局、電子と紙でやっていることが違うではないかということで、今の国際的な立法の流れと少し違った形になってしまうというところの御議論があって、結局、事実上使われていないものであったとしても、紙で理論上認められている類型のものであれば、電子版についても一応捕捉はしておかないと、なかなか国際的な潮流に合った立法とはいえないかもしれませんねというところで、こういう流れになっていたかなと思っているところでございます。 ○藤田部会長 ありがとうございました。 ○太田委員 御参考ですが、銀行の担保実務における倉荷証券についてお話ししますと、お客様が倉庫会社に寄託をする場合において、荷物保管の期間は、倉荷証券への裏書を請求し、銀行がその倉荷証券を所有するということになります。この場合、記名でないと困ることになります。 ○藤田部会長 ありがとうございました。もちろん実務を変えようという趣旨でこういう類型を挙げているわけではないのですが、池山委員や猪俣委員の懸念されるところがあるとすれば、現在は倉荷証券とか船荷証券のところに四つの類型が載っているわけではなくて、民法まで遡ればそれが発行できるということが分かるけれども、4つの類型が余り明示的になっていないところ、電子化されると、船荷証券や倉荷証券の類型として4類型が商法で明示されるというのが少し違和感があるということなのだと思います。それがどのぐらい実質的な障害になるかということを実務的にも検証していただければと思います。   よろしいでしょうか。ほかにも。 ○小林関係官 小林でございます。冒頭の池山委員の御発言の中で、電子裏書における電子署名の要否というようなコメントを頂いたところでございますので、簡単に少し技術的、実務的なところから意見を述べさせていただきます。   この電子署名といいますと一般的に考えると、第三者的な認定認証事業者のような業者がいて、その人たちが本人確認をして、秘密鍵と公開鍵のようなシステムを使って本人確認をするというようなイメージを想定されるところではございますけれども、少なくとも中央サーバー管理型のシステムにおいては、実際に裏書をするに当たっても当然、ログインみたいなものをするわけで、ID、パスワードを入れてやると、そこに一定の認証の機会、なりすましを防止する機会が与えられていると思いますので、あえてその裏書をするときにおいて第三者的な機関を入れて電子署名という、ある種重厚な仕組みを設けることはトゥーマッチではないかと考えてはございます。先ほど渡辺幹事のお話の中でも、それほど重厚なものを求めるつもりはないですと、これまでの議論においてもそういった発言、整理がございましたので、そこは特段変わるものではないと思いますけれども、仮にこの第三者的なものまで求めるというような形になりますと、実際に利用される皆様方の選択肢を狭めてしまうような可能性というのもあって、そういう法制はやはりよくないかなという気はいたしますので、先ほど渡辺幹事の御発言があったとおりかと思いますけれども、ある種、電子署名を入れるにしても、余り重厚ではないもので引き続き検討していただけると有り難いと考えてございます。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。よろしいでしょうか。これまでの議論でも、きちんとID、パスワードでログインして、そのシステム上、権利を移転するという、裏書といいますか、電子船荷証券記録を移転させるという手続をとったら、そこには電子裏費が含まれていると考えてよいのだというふうな方向での、そういう理解での整理をしていたのですが、条文上それがそう読めるかというのが恐らく池山委員の懸念なのだと思いますけれども、理解としては、実態としてはそういうものを意図しているということはよろしいでしょうか。何か補足的なコメント等はございますでしょうか。   よろしいでしょうか。そのほか、いろいろ新しい論点が出てきて、池山委員も御指摘されましたけれども、ある意味先祖返りしたような感がある部分もないわけではないのですけれども、どうでしょう、取り分け類型の定義の辺りは若干、従来言っていた議論から、後退したというのは表現がよくないのかもしれませんけれども、元々の発想に近いような定義になっているような気もするのですけれども。 ○池山委員 念のために申し上げると、4類型を維持するという実質については、私あるいは私の推薦母体は最終的には賛成をしているという理解でございます。それは一つには、正に日本の法制上そうだからということもありますけれども、プラスして、理論的にはやはりそれはあり得るだろうと、実は。特に無記名式については、先ほどの倉荷証券における議論と少し違うかもしれませんけれども、現に世の中で回っている電子B/Lのシステムの中には、実際デモンストレーションを受けたりすると、無記名式も使えるようになっているシステムがあると。その心は、ある種便宜的なのですけれども、便宜的というか、忸怩たるものはありますけれども、海運の世界というのは英国法の考え方というのが圧倒的影響力を持っていて、英国法で無記名式というのは現にあるといわれていると、だから業者さんも無記名式を一応準備したのだというようなことを聞いたことはあります。   それから、より違和感があると申し上げて例示として出したのは、記名式持参人払式の方なのですけれども、これも確か議事録の中で、探せばあると思いますけれども、一方では将来的には本当はそれに近いものが出てくるかもしれないと、あるいはそういうメニューを準備するシステムも出てくるかもしれないと、だから積極的にもうそれは禁止だというと、あれ?と言われそうですけれども、逆に反対なわけです。ただ、他方で明示的に書くというのは、反対というよりは違和感があるという言い方が、そこは確か一貫していると思っていて、現実にそういうものが今までない以上は、そういうものを法的に認知されて、先ほどの猪俣委員の発言ではございませんけれども、そういうのを出してくれと言われると、端的に実務は非常に、少なくとも短期的には混乱するだろうと、だから、余りそういうのを明示的に認知するような形に今回の電子化のためにはしないでくださいという、それ以上でもそれ以下でもないと。   なので、中間試案の作りというのは、本当に事務当局が御苦労されて、すごくよくできていると、今更ながら感謝申し上げているというのが正直なところで、それを元に戻すのに、指図式という概念がはっきりしないからというので議論をまた開けてしまうというのは、ある種残念だと。先ほど申し上げたとおり、指図式という言葉自体について、実務の側は誰も疑問を持っていないと、電子B/Lでもそれはそう書くのだからという、それだけの話なのだけれども、というのが正直な感想です。すみません、結局同じことを言っているかもしれませんが、念のため、誤解が生じないように補足させていただきました。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。何かございますでしょうか。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。池山委員におかれましてはこれまでの御議論を総括していただいて、誠にありがとうございます。これまでの御議論で、実務側からの御要望というのは私どもも十分理解をした上で、中間試案の書きぶりというのはそういった意味で、ある意味、我々としては苦心の策であり、そこについて十分御理解を頂いて御賛同いただいたことについては本当に心から感謝申し上げたいと思っているところでございます。   ただ、実際に我々の思いとは別に、本当にあれで法文として作って持っていけるかという現実的な作業に入ってまいりますと、また別の指摘というのも現にあるところでございますので、ある意味、あの中間試案というのは本当に綱渡りのような表現ぶりだったかなと思いますので、何か一つ二つ難しい要素が入ってきてしまうと、なかなかあのままではうまくいかないという可能性が現に現実化しつつある状況かなというところでございまして、決して我々としてもこれまでの御議論であるとか御要望というのを忘れたであるとか、無視しようと思っているところではなく、そういった形になってしまうのは決して本意ではないところではあるのですけれども、いざ法文にしていくということを進めていこうとする際には、やはりそこの辺りの明確化というのが今後、テーマになってしまうかもしれないということで、先ほども少し申し上げましたけれども、頭出し的な意味で少し御議論をさせていただいたというところで、そういった意味で、少し先祖返りのような話になってしまったのは誠に申し訳ないと思っているところでございます。 ○藤田部会長 どうもありがとうございました。   そのほか、どの点でも、御意見等はございますでしょうか。   よろしいでしょうか。ほかに御意見がないようでしたら、本日の審議はこの程度にさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。   それでは、ここまでにさせていただきます。   次の議事日程等について、事務当局から御説明をお願いいたします。 ○渡辺幹事 渡辺でございます。本日も充実した御議論を頂きまして誠にありがとうございました。   次回の第15回部会は、令和6年6月19日水曜日、午後1時30分から午後5時30分まで、場所は法務省20階の第1会議室を予定してございます。7月以降の部会の日程につきましては現在、内部で調整中でございますので、決まり次第また御連絡をさせていただきたいと存じますので、今しばらくお待ちいただければ幸いでございます。   また、次回取り扱う内容につきましては、本日までの議論の状況を踏まえ、事務当局において検討させていただきたいと思ってございます。 ○藤田部会長 ありがとうございます。   それでは、法制審議会商法(船荷証券等関係)部会第14回会議を閉会させていただきます。   本日は熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。 -了-