法制審議会 第202回会議 議事録 第1 日 時  令和7年3月28日(金)   自 午後3時00分                        至 午後3時23分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  (1)議題     刑事再審手続の在り方に関する諮問第129号について  (2)報告案件     なし 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○早渕司法法制課長 ただいまから、法制審議会第202回会議を開催いたします。   本日は、委員20名のうち、この会議場における出席委員15名、ウェブ会議システムによる出席委員3名、合計18名の委員に御出席をいただいておりますので、法制審議会令第7条に定められた定足数を満たしていることを御報告申し上げます。   本日は鈴木法務大臣が別の公務のため本審議会に出席できませんので、高村法務副大臣から、大臣の挨拶を代読いただきます。 ○高村法務副大臣 法務副大臣の高村正大です。鈴木大臣から挨拶文をお預かりしていますので、代読させていただきます。   会議の開催に当たり、一言御挨拶を申し上げます。   委員及び幹事の皆様方におかれましては、御多用中のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。   さて、本日御審議をお願いする議題は、「刑事再審手続の在り方に関する諮問第129号」についてでございます。   再審制度は、十分な手続保障と三審制の下で確定した有罪判決について、なお事実認定の不当などがあった場合に、これを是正するものであり、重要な意義を有しております。   この再審制度に関しては、近時、一部の再審請求事件について審理の長期化が指摘されたり、制度の在り方について様々な議論がなされるなど、国民の関心が高まっております。   同時に、再審制度の在り方を検討するに当たっては、再審請求事件の中には、請求が不適法であるものや主張自体失当とされるものなどが相当数存在するなどの実情も踏まえる必要があるとの指摘もなされているところであります。   そこで、このような近時の再審手続をめぐる諸事情に鑑み、同手続が非常救済手続として適切に機能することを確保する観点から、再審請求審における検察官の保管する裁判所不提出記録の弁護人による閲覧・謄写に関する規律、再審開始決定に対する不服申立てに関する規律、再審請求審における裁判官の除斥・忌避に関する規律、その他の刑事再審手続に関する規律の在り方について、御審議をお願いするものであります。   今回の諮問については、速やかに審議に着手していただきたいことから、本日、臨時の会議を開催することとしました。   御審議、御議論のほど、よろしくお願い申し上げます。   令和7年3月28日、法務大臣鈴木馨祐、代読であります。 ○早渕司法法制課長 高村法務副大臣は、公務のためここで退席させていただきます。   ここで、報道関係者が退出いたしますので、しばらくお待ちください。   まず、事務局から会議に当たっての留意事項をお伝えさせていただきます。   毎回でございますけれども、ウェブ会議システムにより御出席の委員の方におかれましては、御出席されていることを確認させていただくため、会議中は常にカメラをオンにしていただきますようお願いいたします。   また、本日の会議もタブレット端末による資料配布となっております。不具合等ございましたら、事務局までお申し付けいただきますようよろしくお願いいたします。   それでは、大村会長、よろしくお願いいたします。 ○大村会長 大村でございます。本日もよろしくお願い申し上げます。   審議に先立って、関係官の出席についてお諮りいたします。   今回の議題の内容に鑑みまして、中野刑事局参事官に関係官として審議に参加していただきたいと考えておりますけれども、よろしいでしょうか。   特に御異議もないようですので、中野刑事局参事官に関係官として審議に参加していただくことといたします。   それでは、本日の審議に入りたいと思います。   先ほどの法務大臣御挨拶にもありましたように、本日の議題であります「刑事再審手続の在り方に関する諮問第129号」について御審議をお願いしたいと存じます。   初めに、事務当局に諮問事項の朗読をお願いいたします。 ○中野参事官 刑事局参事官の中野でございます。   諮問事項を朗読させていただきます。   近時の刑事再審手続をめぐる諸事情に鑑み、同手続が非常救済手続として適切に機能することを確保する観点から、再審請求審における検察官の保管する裁判所不提出記録の弁護人による閲覧及び謄写に関する規律、再審開始決定に対する不服申立てに関する規律、再審請求審における裁判官の除斥及び忌避に関する規律、その他の刑事再審手続に関する規律の在り方について、御意見を賜りたい。   以上でございます。 ○大村会長 ありがとうございます。   続きまして、この諮問の内容、諮問に至る経緯及びその理由につきまして、事務当局から御説明をお願いいたします。 ○森本幹事 刑事局長の森本でございます。どうぞよろしくお願いいたします。   諮問第129号につきまして、諮問に至りました経緯及び諮問の趣旨等について御説明いたします。   再審制度は、十分な手続保障と三審制の下で確定した有罪判決について、なお事実認定の不当などがあった場合に、これを是正するものであり、重要な意義を有しております。   この再審制度については、先ほどの大臣挨拶にもございましたが、近時、一部の再審請求事件について審理の長期化が指摘されたり、法改正を求める意見が示され、制度の在り方について様々な議論がなされるなど、国民の関心が高まっております。   他方で、再審請求事件については、請求が不適法であるものや主張自体失当とされるものなどが相当数存在する一方で、本格的な審理が必要となる事件はごく一部であり、再審制度の在り方を検討するに当たっては、こうした実情も十分踏まえる必要があるとの指摘もなされているところです。   そこで、このような近時の再審手続をめぐる諸事情に鑑み、再審手続に関する規律の在り方について御意見を賜りたく、今回の諮問に至ったものであります。   次に、諮問の趣旨等を御説明いたします。   配布資料の刑1を御覧ください。   先ほど説明のあったものと同じものですが、今回の諮問は、先ほど申し上げたような近時の再審手続をめぐる諸事情に鑑み、同手続が非常救済手続として適切に機能することを確保する観点から、再審請求審における検察官の保管する裁判所不提出記録の弁護人による閲覧及び謄写に関する規律、再審開始決定に対する不服申立てに関する規律、再審請求審における裁判官の除斥及び忌避に関する規律その他の刑事再審手続に関する規律の在り方について御審議をお願いするものです。   諮問文におきましては、近時の再審手続をめぐる議論の状況を踏まえ、御審議いただきたい項目として三つの項目を例示しておりますが、もとより御審議いただきたい事項をこれらに限定する趣旨ではなく、これらを含め、再審手続全般にわたって規律の在り方について御審議いただき、改正を要する項目については、その要綱をお示しいただきたいと考えております。   冒頭に申し上げましたとおり、再審制度は、十分な手続保障と三審制の下で確定した有罪判決について、なお事実認定の不当などがあった場合に、これを是正するものであり、その規律の在り方については、確定判決による法的安定性の要請と個々の事件における是正の必要性の双方を考慮しつつ、様々な観点から慎重かつ丁寧に検討する必要があると考えられますが、この問題については国民の関心も高いことから、十分に御審議の上、できる限り速やかに御意見を賜りますよう、よろしくお願いいたします。 ○大村会長 ありがとうございました。   続きまして、配布資料につきまして、事務当局から御説明お願いいたします。 ○中野参事官 配布資料でございますが、番号刑1は、先ほど朗読いたしました諮問第129号でございます。   配布資料としては以上でございます。 ○大村会長 ありがとうございました。   それでは、ただいま御説明のありました諮問第129号につきまして、まず、御質問がございましたら承りたいと思います。どなたからでも結構ですので、お願いいたします。   御質問は特にないということでよろしいでしょうか。   それでは、続いて、御意見がございましたら承りたいと思います。   芳野委員、どうぞ。 ○芳野委員 ありがとうございます。連合の芳野でございます。   連合は、国民にも分かりやすい刑事司法制度の実現に向けて、手続の透明性や現行制度の運用の適正化など、更なる改革を押し進めることを求めてまいりました。今回の再審制度に関しては、国民の関心も極めて高く、方向性を早期に示す必要があるとともに、そのことを反映した国会の動きにも十分な留意をお願いしたいと存じます。   なお、部会の審議に当たっては、証拠開示の制度化と人権保護の立場から議論が深まるよう、冤罪被害の関係者や一般市民の感覚を持った委員の参画を検討いただきたいと存じます。   以上でございます。 ○大村会長 ありがとうございます。御意見として承りたいと存じます。   それでは、石原委員、どうぞ。 ○石原委員 どうもありがとうございます。   この1年の間に、皆さん御承知のとおり袴田事件、そして福井女子中学生殺人事件の再審手続が開始され、袴田事件は昨年の9月26日に無罪判決がなされ、10月9日に上訴権放棄による判決が確定いたしました。死刑事件としては35年ぶり、5件目の無罪判決でした。また、福井女子中学生殺人事件は、判決言渡し期日が今年の7月18日に指定され、無罪判決がなされる可能性が高いと言われています。   冤罪は最大の人権侵害の一つで、場合によっては無辜の人の生命を奪うということにもなりかねません。万一冤罪があったときは、早期に被害回復をしなければならず、その唯一の救済手段が再審手続であります。しかし、再審手続にはこれまで長い歳月を要しており、袴田事件においては、無罪判決を得るまで事件から58年、再審請求から43年が、福井の事件では、再審開始決定までに事件から38年、再審請求から20年余の長い時が経過しております。   このような不正義を正すためには、速やかに再審手続に関する規律を改正する必要があります。今回、法務大臣から再審手続に関する規律について諮問がなされたことは評価いたしますけれども、他方、いささか遅きに失するのではないかという気持ちを持たざるを得ないところであります。   これまで日弁連では、個別の再審事件を支援しながら、再審手続について早期に法整備する必要があることを訴えてきました。平成23年6月から同26年7月まで開催された当法制審議会の新時代の刑事司法制度特別部会においても、再審請求審における証拠開示の在り方については議論に上がりました。そして、平成28年5月24日に成立した刑事訴訟法等の一部を改正する法律第54号では、その附則第9条第3項において、政府は、この法律の公布後、必要に応じ、速やかに、再審請求審における証拠の開示、起訴状等における被害者の氏名の秘匿に係る措置、証人等の刑事手続外における保護に係る措置等について検討を行うものとすると規定されております。   これを受けて、平成29年から法務省、検察庁、最高裁及び日弁連の4者で協議を開始し、18回の幹事会と1回の協議会で意見交換を行ってまいりましたが、令和4年1月の幹事会を最後に、結論が出ないまま、現在は自然消滅状態にあります。   今回の諮問事項の再審請求審における証拠開示に関する規律、それから再審開始決定に対する不服申立てに関する規律、再審請求審における裁判官の除斥及び忌避に関する規律及びその他再審手続に関する規律に関する各在り方についての論点については、上記の4者の間においてはこれまで十分に意見交換がなされ、意見の相違はあっても問題点の共有はもうなされていると理解をしております。本諮問においても、部会を設置することになると思われますが、再審手続が冤罪被害者救済手続である以上、冤罪被害者本人及びその家族等関係者からも委員を選任していただき、そして、部会においては、冤罪被害者等の関係者の方や弁護人等からヒアリングを行い、被害の深刻さや再審手続の実情等の実態を把握した上で、スピード感を持って調査審議をお進めいただき、冤罪被害者の速やかな救済のために、早期に要綱をお示しいただくように強く要望をいたします。   以上でございます。 ○大村会長 ありがとうございます。御意見として承りたいと存じます。   ほかに御発言、富所委員、どうぞ。 ○富所委員 一言述べさせていただきます。   再審制度をめぐりましては、今もお話がありましたように、袴田事件は再審無罪になるまで58年を要しました。福井の事件では、服役を終えた被告人の再審開始決定が出ましたが、逮捕時21歳だった被告人は、既に59歳になっています。これほど時間がかかるケースというのは、再審請求事件全体からすると一部かもしれませんけれども、これだけをもってしても極めて重大な問題であり、長期化を防ぐための制度を整える必要があると思います。   立法技術については専門家の方々にお任せしたいと思いますが、ここでは、私の問題意識を2、3述べさせていただきたいと思います。   先ほども申し上げたとおり再審制度の見直しは急務だと思いますが、日本は三審制を採っていますので、本来はこの中で十分審理を尽くすというのがあるべき姿だと思います。制度改革によって再審制度を単に「使いやすいものにする」ということになると、三審制を揺るがしかねない面もあるので、この点には十分な留意が必要だと思います。   その上で、現行の制度面には、諮問にもありましたように、大きく分けて二つの課題があると認識しています。   一つは証拠開示の問題です。再審では、これまで検察官が保管する証拠がなかなか開示されず、審理の遅れや真相解明の妨げになってきたと指摘されています。訴訟指揮を行う裁判所はもちろん、公益の代表者である検察官の姿勢も問われるところだと思っています。ただ、証拠開示の問題は、通常の裁判では既に制度が改正され、ルールが明確化されています。今、再審の長期化が問題となっているのは改正前の古い事件が大半です。現行の制度を援用することで、どこまで適切な証拠開示が担保できるのか、そのことをまず改めて検証し、それでもなお不十分だということであれば、更なる見直しに着手する必要があると考えます。   もう1点は、再審開始決定に対する不服申立ての仕組みです。再審開始決定が出た場合、即時抗告や特別抗告なしに直ちに再審公判に移行するという形にすれば、審理期間は短くなると考えられます。ただ、その場合、再審開始決定に法的な問題があると考えられる場合、そのまま放置していいのかという問題もありますし、また即時抗告や特別抗告を制限することになると、検察側だけでなく、再審を請求した当事者の権利も狭めることになりかねません。この点も十分な議論が必要だと思っております。   専門家の皆さんには、幅広い視点からよりよい仕組みを探っていただきたいと考えていますが、制度の改正にまた長時間を要するようだと、元も子もありませんので、スピード感を持って結論を出していただきたいと思っております。   私からは以上です。 ○大村会長 ありがとうございます、御意見として承ります。   ほかに御発言はいかがでございましょうか。御質問、御意見があればいただきたいと思いますが。   よろしいでしょうか。   ないようですので、ここで、諮問第129号の審議の進め方について、御意見があれば承りたいと思います。   佐伯委員、どうぞ。 ○佐伯委員 諮問第129号につきましては、専門的、技術的な事項が相当含まれていますので、通例に倣い、新たに部会を設置して調査審議していただき、その結果の報告を受けて、更に総会で審議することとしてはいかがかと思います。   以上です。 ○大村会長 ありがとうございます。   ただいま佐伯委員から部会設置等の御提案がございましたが、これにつきまして御意見はございませんでしょうか。   ほかに御意見ございませんでしょうか。   特に御異議もないようですので、諮問第129号につきましては、新たに部会を設けて調査審議をすることといたします。   次に、新たに設置する部会に属すべき総会委員、臨時委員及び幹事に関してですが、これらにつきましては、法務大臣において新たに臨時委員等を任命されることとなると思いますが、そのことも踏まえ、会長一任とさせていただきたいと思いますが、御異議はございませんでしょうか。   ありがとうございます。特に御異議もないようですので、今の点につきましては会長一任とさせていただきます。   次に、部会の名称でございますが、諮問事項との関連から、諮問129号につきましては、刑事法(再審関係)部会という名称にしたいと思いますが、いかがでございましょうか。   特に御異議もないようですので、そのように取り計らわせていただきたいと思います。   ほかに、部会における審議の進め方も含め、御意見はございませんでしょうか。   それでは、諮問第129号につきましては、刑事法(再審関係)部会で御審議をいただくこととし、部会の御審議に基づいて、総会において更に御審議を願うということにしたいと存じます。   これで本日の予定は終了となりますが、ほかにこの機会に御発言いただけることがございましたらお願いいたします。   ほかに御発言もないようですので、本日はこれで終了といたします。   本日の会議における議事録の公開方法につきましては、審議の内容等に鑑みて、会長の私といたしましては、議事録の発言者名を全て明らかにして公開するということにしたいと思いますが、いかがでしょうか。   ありがとうございます。それでは、本日の会議における議事録につきましては、議事録の発言者名を全て明らかにして公開をするということにいたします。   なお、本日の会議の内容につきましては、後日御発言をいただいた委員等の皆様に議事録案をメール等で送付させていただき、御発言の内容を確認いただいた上で、法務省のウェブサイトに公開したいと思います。   最後に、事務局から何か事務連絡等がございましたら、お願いいたします。 ○早渕司法法制課長 事務局でございます。   本日は、前回の総会から間がない中、またお集まりいただきましてありがとうございました。   次回の会議の開催予定についてでございますけれども、現在のところは通例どおり、今年の9月をめどに次回の会議をお持ちいただく予定でございます。具体的な日程につきましては、また御相談させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。   以上でございます。 ○大村会長 ありがとうございました。   それでは、これで本日の会議を終了いたします。   本日は、お忙しいところお集まりいただき、熱心な御議論をいただき、誠にありがとうございました。   閉会いたします。 -了-