法制審議会 民法(成年後見等関係)部会 第16回会議 議事録 第1 日 時  令和7年3月11日(火)自 午後1時31分                     至 午後5時58分 第2 場 所  法務省20階 第1会議室 第3 議 題  1 法定後見制度に関する検討事項その他(2)         2 任意後見制度における監督に関する検討事項         3 任意後見制度と法定後見制度との関係         4 任意後見制度に関するその他の検討 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山野目部会長 お待たせを致しました。法制審議会民法(成年後見等関係)部会の第16回会議を始めます。   御多忙の中、御出席を賜りまして誠にありがとうございます。   本日は、沖野委員、小林幹事、杉山幹事及び羽野幹事が御欠席でいらっしゃいます。佐久間委員及び久保委員は若干遅れて御参加でいらっしゃいます。   本日の審議に入ります前に、配布資料の説明や若干の進行上の御案内を事務当局から差し上げます。 ○木田関係官 配布資料について御説明いたします。本日は、新たな部会資料として部会資料12を配布しております。資料の内容については、後ほどの御審議の中で事務当局から御説明差し上げます。 ○波多野幹事 事務的な御連絡を若干させていただければと思います。本日3月11日は、東日本大震災が発生した日でございます。14時46分頃に、調査審議を中断いただくことになろうかと思います。事務的な御連絡は以上でございます。 ○山野目部会長 それでは、本日の審議に入ります。   本日は部会資料12の第1について御審議をお願いするところから始めることにいたします。部会資料12の第1の部分について、事務当局から資料の説明を差し上げます。 ○山田関係官 部会資料12の1ページ以下、「第1 法定後見制度に関する検討事項その他(2)」について御説明いたします。   まず、1ページからの1では、成年被後見人と時効の完成猶予について記載しています。事理弁識能力を欠く常況にある者につき、保護者に一定の法律行為について権限が生ずる仕組みを設けるものとする場合には、その仕組みの本人について成年被後見人と時効の完成猶予の規律を維持し、他方で事理弁識能力を欠く常況にある者につきそのような固有の保護の仕組みを設けないものとする場合には、成年被後見人と時効の完成猶予の規律を設けないものとする考え方が考えられます。この点について御議論いただきたいと思います。   また、3ページからの2では、委任の終了事由について記載しています。この点については、次の二つの考え方があり得ると思われます。一つ目は、事理弁識能力を欠く常況にある者につき固有の保護の仕組みを設けるものとする場合には、その仕組みの本人について委任の終了事由の規律を維持するものとし、他方でそのような固有の仕組みを設けないものとする場合には、委任の終了事由の規律を設けないものとするという考え方です。二つ目は、事理弁識能力を欠く常況にある者につき固有の保護の仕組みを設けるものとする場合及びそのような固有の保護の仕組みを設けないものとする場合いずれについても、委任の終了事由の規律を設けないものとする考え方です。これらの考え方について御議論いただきたいと思いますが、特に、事理弁識能力を欠く常況にある者について固有の保護の仕組みを設けるものとする場合における委任の終了事由の規律について御議論いただきたいと思います。 ○山野目部会長 ただいま御説明を差し上げた部分について、御意見を伺います。いかがでしょうか。 ○小澤委員 ありがとうございます。まず、成年被後見人と時効の完成猶予及び委任の終了事由のいずれも、部会資料のとおり整理をすることでよいと思っています。その上で、特定の法律行為について保護者に権限を付与する仕組みのみ設けるものとすることが適当だと考えておりますので、時効の完成猶予については、成年被後見人に対する時効の完成猶予の規律を設けない、削除するものとする考え方に賛同しています。   なお、事理弁識能力を欠く常況にある者について、保護者に現行のような包括的な権限ではなく一定の法律行為について権限が生ずる仕組みを設けて、成年被後見人に対する時効の完成猶予の規律を維持することとする場合には、その前提として、保護者に権限が付与される一定の法律行為の中に、時効一般に関して必要な手続を行う権限が含まれている必要があると考えています。   また、委任の終了事由については、部会資料記載のいずれの場合でも、委任の終了事由の規律を設けない、削除するものとする(2)の考え方が望ましいと考えています。 ○野村幹事 ありがとうございます。時効の完成猶予について意見を述べたいと思います。   時効の完成猶予について、事理弁識能力を欠く常況にある者について、保護者に一定の法律行為について権限が生ずる仕組みを設けるものとする場合には、本人について時効の完成猶予の規律を維持するものとして、特定の法律行為について保護者に権限を付与する仕組みのみ設けるものとする場合には、その規律を設けないとするとの整理で、中間試案に向けた取りまとめを行うことに賛成いたします。   リーガルサポートとしては、特定の法律行為について保護者に権限を付与する仕組みのみを設けるとの立場を採ってはいますが、一方で私たちは後見実務を行っておりますので、事理弁識能力を欠く常況にある者については保護が必要なのではないかという意見もあります。リーガルサポート内部の検討において、前回議論した相手方の催告権や今回の時効の完成猶予などの個々の論点を検討する際にはそういった意見が強くなって、調整をするために何らかの措置が採れないかとの意見を述べてまいりましたが、部会資料で御指摘いただいたとおり、制度化するのは難しいと思いますので、部会資料の整理のとおり取りまとめいただくことに異論はございません。 ○佐保委員 ありがとうございます。まず、1の成年被後見人と時効の完成猶予でございます。事理弁識能力を欠く常況にある者に対して、保護者に一定の法律行為について権限が生ずる仕組みを設けるのか、あるいは特定の法律行為について保護者に権限を付与する仕組みにするのか、その前提によって規律を維持するのか削除するのか異なるとのことですが、当然、前者では維持するものとされておりますが、果たして後者の場合は削除という結論でよいのか、懸念が残ります。特定の法律行為について保護者に権限を付与する仕組みのみを設けるものとする場合でも、保護者がいなくなった場合など、その特定の法律行為について時効の完成猶予など何らかの保護を設ける必要はないのか、問題はないのか、他の委員の方の御意見もあれば伺いたいと思います。   続きまして、2の委任の終了事由につきましてですが、事理弁識能力を欠く常況にある者について保護の仕組みを設けないものとする場合はもちろん、設ける場合でも、委任を一律に終了させることは問題があるように思われます。委任の解除をしない限り委任が終了しないとすれば、終了するまでの間に受任者が行った事務の処理による結果について委任者が不利益を引き受けざるを得ないという問題は、規律を維持する場合も、委任が終了するまで起こり得るのではないかと考えております。 ○佐久間委員 まず1点目について、今、佐保委員がおっしゃったことに感覚的には賛成なのですけれども、つまり、特定の行為についてのみ保護者に権限を与えるということになったとしても、現状後見の対象となっている方については今後もこの手の保護が要るのではないかとは思っていますけれども、規律を置くことが難しいというのは、やはりそう言わざるを得ないのではないかと。   現在の規定は、158条でしたっけ、その背後に二つ考え方があると思っておりまして、一つは、本人に時効の完成を阻止する行為を法的に期待することができないということ、もう一つは、その代わりに本人のためにその行為をする権限を安定的に有する者があるということです。それら二つの前提があるところ、たまたまその法定代理人が欠けているというときには、この規定を発動しましょうということになっていると思います。   そういたしますと、まず特定行為についてのみということになりますと、事理弁識能力を欠く常況にある人だけを取り出すということが難しゅうございますし、取り出したといたしましても、特定行為について何でも選んでどうぞという立て付けになる以上は、安定的に本人に代わって時効の完成を阻止する行為をすることができる者というのはいないということになってしまいますので、もうやむを得ないと思います。やむを得ないというのは、そこがやはりおかしいということになれば、何らかの、類型の立て方はいろいろだと思いますけれども、類型化を思考する必要があるのだろうと思っております。これが1についてです。   1の2については、これまでの方とまた違う意見になるのですけれども、まず説明において、5ページの11行目以下に「なお」書があり、7ページの34行目以下に「もっとも」で始まる段落があるのですが、そのいずれも、前段の説明はそれほどでもないのですけれども、最終的には解任にのみ焦点が当てられた記載になっているのです。しかし、解任に焦点を当てる前に、御説明の中でも、そもそもそんな話になる前に代理人の行為をコントロールすることについての期待可能性が問題とされていると思います。その代理人の行為をコントロールすることについての期待可能性に関して言いますと、これまで発言された方の認識は多分、次のようなことだと思うのです。任意代理の本人の場合は、委任でも一緒なのですけれども、ただ、代理の方が問題が大きいと思いますので、代理で少しお話しさせていただきますが、任意代理の本人の場合は本人が代理人の行為のコントロールを自らすべきであると。法定代理の場合はそのようなことを期待することができないけれども、任意代理人の場合は自らコントロールすべきだということから、委任の終了事由でなくなったとしても、制限行為能力者に何があっても、仕方がないよねという御発言だったと思うのです。   理屈は確かにそうともいえるのですけれども、現実を考えますと、これは資料の6ページの31行目以下のイにも関係するところですけれども、任意代理の本人や委任者が常時、受任者、代理人の行為をモニタリングすることができるか、それをすべきだといえるかといいますと、会社の取締役とかだったらそうなのかなとも思いますが、任意代理というのはものすごく幅広に使われるものですので、本人が代理人がどんなことをしているかというのを常にチェックし続けないと、不利益な行為が代理人の能力のために引き起こされた場合に、全部あなたの責任ですよ、引き受けなさいよというのでは、代理という制度が極めて使いにくくなると思います。   選任の際には、皆さん御存じのとおり、欠格事由から被後見人なんかが除かれたわけですが、それは選任のときは、ピンポイントでその時点でその人の能力を判断すればいいわけでありまして、そういうことが現実にあるかどうか、どのくらいあるかどうかは置きましても、成年被後見人になっているのです、そのことは分かっているのです、でも代理人にしますというのだったら、それはもう好き勝手にしろと言えますけれども、そうでない人を選任した後に、あるとき自分の知らない状況で、知らないときに、後見かどうか分かりませんが、その人が開始の審判を受けた、あなたはそれを見落としたのだから仕方がないですよねというのは、なかなか現実には私は言えないのではないかと思います。したがいまして、現行法の規定について、後見開始の審判を受けたことを委任の当然終了事由にしているというのは不当であるとお考えになる方も多いかもしれませんけれども、そこには理由はあると私は思っています。   その点を御考慮いただいて、あともう1点、この議論の前回に申し上げたことですけれども、代理権は消滅するということにしておきませんと、代理人の相手方になる者がその状況を悪用することだって考えられる。その場合に代理権濫用の法理でうまく処理するということも、代理人の方には悪意というか、濫用の目的はないかもしれないので、難しい。そういったことも考えると、ある種の審判を受けた人については代理権が当然消滅するのだという規律には、これまた実質的にはですけれども、実質的には大きな意味があると思っています。   ただ、特定行為についてのみの保護者しか選任しないということになったら、この規定の維持が難しいというのも事実だと思いますので、そのようなことを踏まえて議論をすべきであると。議論だけでなくて、中間試案の段階でも、そういった問題があるのではないかという指摘を盛り込んでいただけると有り難いということでございます。 ○根本幹事 私からは、委任についての点について申し上げます。包括類型が仮に残った場合でも、653条から後見開始という事由は削除するべきという立場を採っていますので、その理由を三つ申し上げるとともに、削除説と仮に呼びますが、削除説以外に折衷説も考えられると思っていますので、その点も申し上げた上で、類似の問題として信託法56条についても若干申し上げておきたいと思います。   まず、包括類型が残っても後見開始を削除するべきだと考えている理由は三つございまして、一つは御本人の社会参画の促進という点です。この点は、後見に関する欠格事由が措置法によって多くの関連法令で削除されてきたという経過もあるということ、先般成立された認知症基本法とも整合する考え方ではないかと思っているということが一つです。   二つ目は、委任以外でも取引の相手方との関係で後見開始が本来的に問題になる場面というのはあるはずで、委任の関係だけが特別に扱われるということではないのではないかと思います。受任者が意思能力を欠くときに委任の効果が委任者に及ぶ不利益というのは、委任関係上の問題ということだと思うのですが、委任関係を終了させるか否かは、本来的に委任者と受任者の信頼関係が破綻しているか否かであって、委任関係における個別判断の問題なのではないかと思っています。651条の信頼関係破綻の法理との対比で、653条は人的信頼関係の当事者の属性が変質した点に着目されていると言われていますので、後見開始という事情が当事者の変質といっていいのか、また一律に変質するものなのか、個別の事情や個別の信頼関係の変質と捉えるべきではないかと考えているということになります。   立法経過から見ても、当事者の変質事由として元々禁治産が挙げられていて、それが平成11年改正で、当時は後見制度というのは財産管理が中心というところもあって、維持されたということだと思いますが、今回の改正時においても維持されるかというのは別の問題だろうと思います。   実質的に見ても、委任者には任意の解除権がありますし、実効性があるかという問題はあるかもしれませんが、受任者は自らが委任事務を遂行できなくなった時点で、委任者に対して報告ないし善管注意義務に基づく通知義務があると解されるのだろうと思いますので、これらの規律の中で対応していくべきだと思います。   部会資料にもありますが、結局終了するとしたところで、655条で第三者との関係では、取引の相手方に通知しなければ結果的に委任者は保護されるわけではありません。12回のときだったと思いますが、佐久間先生からの御指摘もあった、意思無能力だけれども後見開始の審判をされていないという方もいるわけです。その方には653条の適用は当然ないので、そことのバランスということもあると思っています。   三つ目は、すみません、長くなります。会社法との関係ですけれども、会社法において令和元年の改正で取締役の欠格事由から削除されたことで、会社法の世界だけで見ると、株主が引き続きその方を取締役として選任するかどうか、若しくは取締役相互の監視義務の範ちゅうの中で、御本人に引き続き取締役を務めていただくことが適切かどうかを判断すればよいというように、少なくとも中小の同族会社において個別に取締役の適格性を判断する枠組みを会社法は採用されたものだと考えています。   それにもかかわらず、民法でこの委任の終了事由というふうに残していることによって、結果的に現行では後見開始によって一度会社と本人との間の役員に関する委任関係が終了し、そのために再度株主総会で取締役として選任するという手続を、令和元年の改正の会社法の世界の中だけでは欠格事由としないとしたにもかかわらず、民法の規定によって再度株主総会の審査を経なさいという機会が強制されるという結果になっていると理解をしています。そうすると、仮に今回の民法の改正の議論の中で委任の規定にこれを残すということになれば、会社法の改正のときに民法に委ねられていた議論をここでするということになるので、株主総会による再度のチェックを求めるということを民法として改めて発信するということになるのではないかと思っていて、そうではなくて委任の規定から削除しますということになるのであれば、中小の同族会社において会社法が元々予定してている株主総会とか取締役相互の監視義務の範ちゅうの問題として捉えるという姿になるのだろうと思っていますので、これらの点から、包括的な類型が仮に残るとしても、この規定は削除するべきだと思っています。   その上で、この削除説について、特に中間試案との関係で、信託法56条ただし書を参考にして、若しくは653条の死亡の規定については、死後事務委任契約においては委任規定と解するという最判が出ているということもありますので、後見開始の事由を任意規定化させるという考え方も、つまり任意規定として契約で特約を認めるという扱いにして、終了事由にしないという折衷案も考えられると思っています。12回のときに部会長もおっしゃっておられた準委任との関係ですが、これは法律行為か事実行為かの違いということだと思いますので、委任者が受任者を確認することができるということで、委任と同様に扱っていいのではないかと思っています。   最後に、信託法56条を参考にということを先ほど申し上げた関係で、信託法56条の受託者の任務終了事由についても一応言及はしておきます。こちらは保佐開始も含まれていますので、包括類型を残すか残さないかに関係なく、後見制度が見直されるということで、類型が少なくとも3類型ではなくなるのであれば、少なくとも保佐部分の削除を含めた56条の改正というのは検討することが必要になるのだと思います。ただ、後見開始の部分については任意規定で、現行の信託法56条においても別段の定めができるということにされていますので、これは委任の653条とは異なって、包括類型が残ったとしても、削除するまでの対応はしなくても、別段の定めが認められるということをもって、現行法の信託法56条については維持するということは、あり得ると思っています。 ○佐久間委員 今の根本幹事のおっしゃったことについて2点、申し上げておきたいことがあります。   一つは、私が前回発言した、意思無能力の人は云々ということなのですけれども、意思無能力の人が受任者、代理人であるけれども、後見開始の審判を受けていないというときは、その人が法律行為をした場合、その行為は無効ですので、本人はそれで保護されるのですね。後見開始の審判がされた場合は、必ずしも個々の時点で意思無能力でなくても、効力が非常に不安定になるし、本人の保護、委任者の保護を考えて、一律に終了するということにしているということですので、意思無能力の人だって含まれるのだからというのは理由にならないと思います。   もう一つ、会社法関係で、これは余り記憶が定かではないのですが、私の記憶している限りでは、取締役の欠格事由から成年被後見人等をなくすというところは会社法の部会で納得いただいたと思いますけれども、その際に同時に出たのは、では現に選任されている人が後見開始の審判を受けたらどうなのだということです。そのときに、それは現行法どおりですからという説明をして、ならいいか、ということになったと思います。議事録を御確認いただければと思いますが。だから、根本幹事の御認識は違うのではないかということで、事務局がきちんと調べられるとは思いましたけれども、根本幹事の認識がもしそのまま説明に載るとまずいかなと思ったので。僕の記憶違いだったら、ごめんなさい、あらかじめ謝っておきますけれども、そうではないかということを申し上げます。 ○竹内(裕)委員 私の方も委任の方について述べさせていただきます。会内で検討したときに、中にはこれは当然終了事由ということに理由があるのだと、佐久間委員と同じ意見であった弁護士もおりました。ただ、私の方は先ほど根本幹事がおっしゃった、包括類型があったとしても削除というのもあり得るのではないかとは感じるところがございまして、根本幹事の方が信託法56条1項のことを引き合いに出されたというところもありますし、あと、代理人がコントロールできなくて何をやるか分からないというのが、ほかにどういう場合があるのかなと思ったときに、自己契約とか双方代理のときもこれはリスクがあるということで、同じようなところがあるのではないかと。その場合、債務の履行とか、本人があらかじめ許諾した行為については、これはよいという規定ぶりが108条だと思うのですが、となると、あらかじめ事前に何らかの合意があれば、当然終了にする必要はないのではないかと思ったところでもあります。確か一読か二読か、すみません、記憶が定かでありませんが、部会長が事務管理の管理者に行為能力は必要かというのは、今後学会でというようなお話があったと思うのですが、そこについても行為能力までは不要説、必要説、117条類推説等々ありまして、そういった理論、事務管理ですから、もちろん違うのですけれども、そういった必ずしも行為能力が必要ではないというような場面があるのだとしたら、ここの委任についても、そのような法理を考えることによって根本幹事の意見を支持することもできるのではないかと考えた次第です。 ○山下幹事 私は、佐久間委員と同じですが、基本的に委任の終了事由であるという規律は維持しないといけないと考えております。その理由は別の観点なのですが、受任者が仮に誤った行為をしたせいで委任者に損害が出た場合、委任者から受任者に損害賠償請求などの責任追及が行われる可能性があるという点です。こうした場合に、受任者が行為能力が欠けているからということで常に免責になるかというと、そのようには恐らくならないはずで、何らかの形で善管注意義務違反等が認められた場合には、債務不履行責任により、委任者の損害を受任者が負担することになります。そうしたリスクを考えますと、契約を一旦終了させた上で、委任者が受任者の債務不履行については受任者に責任追及をしないことを明確にしているような場合に、改めて受任者として委任契約を結び直すということをしなければ、判断能力が不十分な受任者の保護に欠けるということにならざるを得ないと考えています。   根本幹事がおっしゃった信託法の件ですが、信託法は更に問題があって、信託法の場合は受託者が自らの法律行為として信託事務にかかる法律行為をしますので、当然に受託者が自分で責任を負うことになっています。そうすると本人からの責任追及とかいう以前の問題として、受託者自身が自ら行為した責任を負わされるという法律構造になっていますので、やはり受託者の保護という観点から、一回信託関係を終了させないわけにはいかないというのが私の意見でございます。 ○山野目部会長 ありがとうございます。議論の鮮度があるうちに、会社法の関係のことについて一言申し上げます。弁護士会の先生方にお願いでございまして、弁護士会の方で今この部会のために御議論いただいている先生方の御議論を引き続き深めていただくとともに、会社法の実務の方を熱心にしておられる弁護士の先生方がここの規律の変更の問題についてどういう受け止めをするかということについて、既にいろいろ意見を聴いた上でここでお述べいただいているかもしれないですけれども、なお引き続き、そういう意見交換を弁護士会の内部でしていただければ有り難いと感じます。   佐久間委員からお話がありましたけれども、先般の会社法の規律を改正する際に、民法の方から、民法の方からという言い方は、たまたまそのときに会社法の先生方や会社法に造詣の深い実務家の皆さんと議論した者が、全くたまたまですけれども、佐久間委員と私でございまして、私ども二人から、取締役の欠格事由になるという規律はやめにしていただきたいということを強く要望しましたけれども、終任事由にしてくださいということを積極的に求めた経緯はございません。ですから、根本幹事のお話を伺っていると、民法の方の議論があるから再度の株主総会を開かなければいけないことになって迷惑だという口調ですが、そのおっしゃり方は民法の側から見ると迷惑でありまして、たまたまこの部会で私と佐久間委員が果たしている役割とは別に、その場の現場にいた者としてお伝えするものでありまして、経緯はそういうことであって、あのときの会社法の専門家の皆さんの雰囲気はどちらかというと、取締役の欠格事由を外すことは、やむを得ないとしても、終任事由になるのであれば容認可能ですというふうな雰囲気がどちらかというと趨勢であったろうと直感的には感じられる部分が大きく、それは佐久間委員の御記憶と、私のそのときの見ていた観察と同じでございます。   引き続き弁護士会の先生方も、先ほどお願いしたように、会社法の実務に造詣の深い皆さんと御議論を続けていただきたいと望みますし、事務当局の方も当時の議事録をきちんと見直した上で、民事局の中の会社法をつかさどっているグループとも意見交換をして、ここのところについて会社法の実務に混乱が起きないような規律の変更の検討を引き続き進めていきたいと考えておりますから、御協力方お願い申し上げます。   引き続き御意見を伺います。いかがでしょうか。 ○山城幹事 先ほど来議論になっております点と、別の小さな点について、併せて2点御発言申し上げたいと思います。   1点目は、取り分け653条3号についてですけれども、この規定ができた当初の認識としては、当事者の意思を推測して、受任者が後見開始の審判を受けたことを委任の終了事由として特に明記したものであって、反対の定めを妨げるわけではないと、そのような形で起草過程の議論が進んでいたのではなかったかと記憶しております。今回の議論では、どちらを原則にするのかが問われており、両様の考え方があり得るかと思います。   その上で、部会資料では7ページの7行目になりますけれども、仮に終了事由とはしないことになりますと、いずれかの当事者からの解除を待って委任の終了を規律しなければならないという点、これはそのとおりであろうと思います。しかし、例えば受任者について保護を開始する旨の審判がされたことを委任の終了事由とするということを委任契約の中で定めておくことは、恐らく禁じられないのではないかとも思います。そうすると、適時に解除権を行使しなければならないという負担が生じるという、部会資料の中で憂慮されているような事態に常になるかというと、そうではないのではないかと感じます。   なお、消費者契約法の8条の3に、局面は違いますけれども、これに関連する規律がございます。そこでも、受任者について後見開始等の審判がされた場面を念頭に置く限りでは、契約が一方的に解消されることもあり得るという前提での規律がされているのではないかと理解しています。以上が1点目です。   2点目は小さな点でありますけれども、部会資料全体のこの項目の書き方につきましては、現行法の653条3号を前提として、受任者について後見開始の審判がされたという場面を当然に想定して記述がされていると理解しております。しかし、委任者について後見開始の審判がされた場合をどうするかという問題もあり、少数説だとは思いますけれども、それも含めて委任の終了原因とすべきであるという議論もあるところかと承知しております。資料の示し方としましては、例えば8ページ3行目の小括の部分ですけれども、受任者が後見開始の審判を受けたことを委任の終了事由とするといった書き方にしておく方が、その種の学説があることとの関係で紛れがないのではないかという印象を持ちました。 ○佐久間委員 任意規定化とか、ただし書を付けるとかという御意見が出たので、それについて申し上げておきたいのですが、山下幹事がおっしゃったことにも関連します。   確かに委任については655条がございますけれども、代理権の方について111条では、2号のことだったら、それは655条が掛かってきますけれども、1項2号にはこれは掛かってこないのですね。そのことをまず申し上げた上で、任意規定化すると恐らく、特に今、山城幹事がおっしゃった、終了事由には原則なっていないのだけれども当事者の契約で終了事由にすることができるということになると、原則を曲げる合意をした場合に、それを簡単に第三者に主張することができるかというと、なかなか難しいのではないか、何らかの保護規定が要るのではないかという話になってき得るのではないかと思うのです。   ただ、653条と111条の違いは、111条の規定によらない、つまり代理権のない受任者だと、受任者自身に第一義的には法律行為の効果は帰属するわけですね。それに対して代理の場合は、当然のことながら本人に直接効果が帰属し、保護の対象が違ってくるわけです。山下幹事がおっしゃった、信託は尚更問題だというのは、後見開始の審判を受けた人の保護が問題だという発想なので、653条についても同じ問題はあるのですけれども、それとは別に、111条は本人の保護を直接図っているという規定なので、111条のことを言っているのは僕だけのような気がするのですけれども、ここは是非とも分けて、今後653条がどうなろうとも、議論をしていただきたいと思います。   それと、111条も併せて削除しましょうとなるとしたら、法定代理人についての特別な規定は絶対残さないと、私はいけないと思います。任意代理の場合は、本人がモニタリングしろというのであってもいいかもしれないけれども、法定代理の場合、それはさすがに酷にすぎるというか、あり得ないと思いますので、111条1項2号を法定代理人については維持するといったことまで含めて検討する必要があると思っています。 ○山野目部会長 今の部会資料におきまして、委任の終了事由と併せて代理の方の規定との関連でも注意する記述は若干置いておりますけれども、本日に至るまで佐久間委員からは繰り返し御注意を頂いたところでありますから、今後、委任の規定、それから代理人の規定、それぞれに不足のない目配りをしながら部会資料を作成し、中間試案の策定に向かっていきたいと考えます。ありがとうございます。   引き続き伺います。 ○上山委員 委任とそれから時効について、1点ずつお話ししたいと思います。どちらの意見も煮え切らない感じですので、発言しようかどうか迷っていたのですけれども。   まず、委任の終了事由についてですが、委任者と受任者に生ずる受任者の判断能力低下に伴うリスクというのは、実際には現行法が規定している後見開始の審判の前よりも、もっと早い段階の方がこのリスクは高いのだろうと思うのです。簡単に言うと補助とか保佐が開始されるレベルの判断能力である場合の方が、委任の本旨に沿わないような形で任意代理権の行使がされるリスクが大きい気がするのです。もしそうであるならば、山下幹事や佐久間委員のロジックを推していくと、もう少し手前の段階で委任関係を仕切り直す、欠格事由というよりは、一旦両者の関係を仕切り直すという形で見直しの機会を与えるという議論が出てくるようにも思います。そうして、この理解を前提にすると、特定の法律行為についてだけ権限を与えるという形にした場合にも、欠格事由という形式ではないわけですが、なお現行類似の見直しの規定というのを残す余地があり得るように感じました。   時効のところも、同じような煮え切らない発言で恐縮なのですけれども、基本的には現行の158条1項の規定ないしその趣旨の規定を、一元論と二類型論のどちらの構成を採ったとしても、残すことが好ましいのではないかと考えています。部会資料にも指摘されていますし、先ほど佐久間委員が的確に整理されたように、確かに特定の法律行為の権限のみを与えるという考え方を採った場合に、この158条1項の規定を残すというのが立法技術的に難しいことは、そのとおりだと思うのです。しかし、158条1項という規定は文理解釈的にその文言だけをみると、その射程がきわめて狭いわけですけれども、実際には部会資料で御紹介いただいている最高裁平成26年判決による類推適用がそうですし、あるいはこれに先立って、債権法改正前の話ですが、当時の724条の不法行為の損害賠償の長期期間制限について、158条の法意に照らしという形で724条後段の効果を生じないとした、最高裁平成10年判決などもあったわけです。このように、時効を援用する時効援用権者側の予測可能性の利益と、時効の完成を阻止する行動をとることが困難な判断能力不十分者側の利益を調整するための一種の足掛かりとなる規定としての意義を考えると、158条1項の実質的な射程は意外に広くなる可能性があるように思います。もちろん両者の最終的な利害調整は権利濫用法理で行うことができるわけですが、しかし、いきなり一般条項である権利濫用を用いるのではなくて、何らかこういう両者の利益を調整する足掛かりとなるような規定というのを残しておくことには、立法的に一定の意味があるのではないかと感じたということでございます。ごめんなさい、長くなりました。 ○青木委員 委任の件ですけれども、委任者と受任者と取引の相手方の三者の利害状況は、当然終了による場合と委任者による解除の場合で、それほど違ってくるのかについて疑問に思っているところがあります。   まず、取引の相手方との関係では、当然終了であろうが解除であろうが、受任者が後見制度開始したにもかかわらず第三者に対し受任者が委任事務を行った場合、いずれの場合も取引の相手方としては保護される、当然終了の場合でも表見代理の法理によって保護されるのではないかと思いまして、その意味では委任者はいずれにしても受任者の委任事務による不利益を被るという点で変わらないのではないかと思っているところです。委任者と受任者の関係でも、当然終了したにもかかわらず勝手に受任者として振る舞った場合も、まだ委任者から解除していないときに善管注意義務違反になるような行為をしたときも、いずれも受任者の責任として損害賠償の対象になるのではないかと思います。結局のところ、受任者に成年後見制度利用があった場合に、委任者が積極的に解除するか、当然終了とするかという委任を終了させる方式だけ違いが生じるということになるのではないかと思っているのですがいかがでしょうか。   これが正しいとすればですけれども、やはり委任というのは基本的には委任者が受任者をコントロールすることを想定した制度ですので、委任者がコントロールする、受任者が成年後見制度を利用したら解除するかどうかを検討する、というところに負担が生じることはやむを得ないのではないかと思っています。利害状況が同じであれば、当然終了にしなくても、同じことになるのではないかと思っておりまして、そこについて皆さんの御意見を頂ければと思っています。   それから、次に、中間取りまとめをする関係で、表現として気になる点を2点申し上げたいのですけれども、7ページの9行目に、さらにはというところで、現行法よりも消極的になるのではないかという記載があるのですけれども、後見に相当する可能性のある人に対して、新規に事務を委任するというようなことがそもそもあるのだろうかという場面がなかなか想定できなくて、これに消極的になるというのはさらになかなか想定できないということで、こういった利益衡量をここに載せることが適当なのかと疑問に感じました。   同じことなのですけれども、7ページの22行目からですが、意思表示の受領能力もないような場合に、受任者として委任者に効力の生じるような事務処理を行うという事案ということが実際に想定できるのだろうかと、先ほど上山委員も言われたように、もう少しいろいろな意思表示ができる方が委任者にこういう不利益を生じさせることはあると思いますけれども、解除の意思表示も受領できないような場合に委任者に不利益なことをするということは想定しにくいのではないかと思っていまして、この二つについては、このまま具体的な場面として御紹介するのが適当だろうかという疑問を持っていますということを申し上げたいと思います。 ○佐久間委員 今の青木委員のご発言に全面的に反論することになってしまうのですけれども、まず1点目は、委任が終了した、それで対抗できないというのだったら、おっしゃるとおりだと思うのですけれども、委任が終了しなかったら受任者の行為は有効なものとして行われることになってしまうわけですよね。そうすると、有効な行為なので、まず代理でない委任ですと、受任者に全面的に効果が生ずる、意思無能力だという証明ができたらそれでいいですけれども、そうでない場合は、解除をしていないわけですから、およそその効果を免れる余地がないということになります。代理の場合ですと尚更、本人が直接ですね、もちろん解除しました、対抗できませんという話は出てきますけれども、私がずっと申し上げているのはその話ではなくて、解除しない限りは代理権も受任者の権利も有効なままで、その人がした行為は意思無能力でなければ有効に生ずるということが原則となり、その有効な行為によって、間接の委任の場合には受任者本人、直接代理の場合だったら、本人が大きな不利益を被るということになるので、大した違いではないとはいえないと私は思います。終了していない以上は、効果が全部生じるということが原則になるので。それが1点です。   それから、7ページについてですけれども、僕が言うのがいいのかどうかよく分からないけれども、最初の方だけ申し上げますが、これは一旦後見開始の審判を受けた人、その人について後見が終了した後にもう1回委任するのかという話では多分なくて、委任をした後、その受任者が後見開始の審判をあるとき受けました、それでも委任は終了しませんということになると、そこをずっときちんとモニタリングしておいて即時に解除しないと、委任者は自分に不利益がやってくるということになる。そうなると、なかなか、高齢者なんかが典型かもしれません、その人に対して委任することがちゅうちょされるようになるのではないか、そういうことを言っているのだと思います。だから、1点目に申し上げたことや、私が653条関係、あるいは111条関係で大分違うのではないですかと申し上げたことと同じことが、ここには書いてあるということだと理解しています。 ○山野目部会長 部会資料の解説をしていただきまして、ありがとうございます。青木委員、何かおありですか。 ○青木委員 解約しない限りは有効だというのはおっしゃるとおりですけれども、終了した後でも受任者が本人を無視して行為をしてしまえば効果は帰属すると、表見法理等によってということにおいては、変わらないのではないかという点については、いかがですか。 ○佐久間委員 それは、取引先とかが決まっていれば、そこへ通知をするのが普通だということが、普通というか、そのぐらいはしなさいというのが前提だと。 ○青木委員 通知は誰がするのでしょうか。 ○佐久間委員 それは、元委任していた人ではないでしょうか。 ○青木委員 委任者ですね。 ○佐久間委員 はい、本人だと思います。 ○青木委員 ということは、通知ができるということは、委任者は解除もできる状態。 ○佐久間委員 その状態になっていればそうですが、それ以前に行為が行われていたときに対応のしようがないということです、私が気にしているのは。 ○青木委員 当然終了であれば委任者から通知をするか、そうでなければ委任者から解除をするか、いずれも委任者の行為がどうしても要るということではないでしょうか。 ○佐久間委員 その場面は一緒かもしれません。 ○青木委員 通知をするか、解除をするかの本人の行為がどうしても要るということでは。 ○佐久間委員 相手が、この人は後見開始の審判を受けたということを知っている、相手は知っている。委任者本人は知らない。このときに行われた行為が有効になって、相手は得をするおそれがあるという、そこが問題だと申し上げています。 ○山野目部会長 今のところ、おおすじ御議論は、問題の在りかが整理されたというふうに伺いましたけれども、よろしいですか。   ほかにいかがでしょうか。 ○青木委員 もう1点、すみません。後者の9行目以下の点ですけれども、私が申し上げた、将来的にこの人は高齢者だから5年後、10年後にそうなるかもしれないとして委任を躊躇するというようなことがあるのかというのも思いますし、もちろん目の前で少ししんどそうだなという人にわざわざ委任をするかもしれないという両面があると思っていまして、後者は考えにくいですし、前者は、だからといって消極的になるだろうかと思っています。 ○佐久間委員 委任全般にどのぐらいあるかはしれませんけれども、取締役なんかだったら、それこそ、あるのではないでしょうか。高齢の方について、先ほどの会社法の部会での議論で強烈に印象に残っているのですけれども、この人にお引き取りいただきたいのだけれども、創業者なんかだったらなかなか言い出せないのだよねというような話が出て、こういう規定というか、欠格事由とか委任の終了とかの規定があると、ある意味助かるのですよ、続けなくていいからという、その種の話が出ていました。その手のものは、例えば私が誰かに委任するということだと、余りないかもしれませんけれども、ビジネスに近くなればなるほど多いのではないかと思います。 ○山野目部会長 今の後ろの方は事実の予測の問題であり、両方の予測が語られました。それこそ中間試案で問い掛けをしましょうか。ですから今、2種類のことのやり取りを佐久間委員と青木佳史委員の間でしていただいて、解除の意思表示によって終了させるときと、当然終了にさせるときとの二つを比較した法理論的な整理の部分が前半でやり合っていただいたところで、いわば、第一次川中島の戦いみたいでしたけれども、後ろの方の第二次の方の川中島の戦いは、これは事実の予測の問題で、そういう人には頼まないと見るか、いやいや頼むことはあるのではないですかというところは、これは論理で結着の付く問題ではありませんから、パブリック・コメントで多方面の御意見を伺うことにいたしましょうか。   ほかに、今お尋ねしているところについて御発言はおありでしょうか。 ○加毛幹事 時効の完成猶予について、中間試案の資料作成に向けた発言をしようと考えていたのですが、その前提として申し上げたいことがございます。「特定の法律行為について保護者に権限を付与する仕組みのみを設けるものとする」という立場を支持されている委員・幹事の先生方は、時効の完成猶予に関する民法158条1項を削除してしまってよいとお考えなのでしょうか。小澤委員は規定を削除することで構わないとおっしゃいましたが、佐保委員が問題提起されたように、規定の削除により、現在、成年被後見人に与えられている保護の水準を切り下げてしまうことに問題がないのかについて、実質論としてしっかりと検討しておく必要があると考えます。   私自身は、上山先生のお考えと同様で、民法158条1項が類推適用も含めて一定の適用場面を有することから、仮に「特定の法律行為について保護者に権限を付与する仕組みのみを設けるものとする」という立場が採用されたとしても、民法158条1項を改正するなどして、規定を残すべきではないかと考えています。ここでの問題の根幹は、権利者による権利行使を期待できるのかという点にあるのであり、権利行使の期待可能性に欠ける場合に時効による権利の消滅を認めることは、これまでの最高裁判例の展開に鑑みても、慎重に考えるべきと思います。   その上で、資料3ページにつきまして、中間試案に向けて資料を作成される際には、本日の様々な御意見を踏まえて、修正されるのだろうと思います。ただ、現在の7行目の「しかし」から始まる段落は、揚げ足取りのような書き方になっているように感じられ、あまり説得的でないように思われます。もう少し「特定の法律行為について保護者に権限を付与する仕組みのみを設けるものとする」という立場に内在的な論旨の展開が必要なのではないでしょうか。   具体的には、「特定の法律行為について保護者に権限を付与する仕組みのみを設ける」という立場に対して、「その他の場面において、事理弁識能力を欠く常況にある者についての規律を設けることは制度として一貫しないようにも思われる」との批判が向けられているわけですが、「特定の法律行為について保護者に権限を付与する仕組みのみを設ける」という立場に立つのだとすれば、「事理弁識能力を欠く常況にある者についての規律を設ける」のではなく、行為能力の制限の対象となる「特定の法律行為」との関係で、権利行使を期待できない場合について、時効の完成猶予に関する規律を設けるという考え方があり得るように思います。そのような考え方に基づいて、いかなる規律を設けることが考えられるのかについて検討を行うべきではないでしょうか。   そのような検討をした結果として、佐久間委員がおっしゃったように、法制執務上、条文化が難しいという結論になるのかもしれません。しかし、十分な検討をしたうえでの規定の削除という結論と、現在の3ページの説明とでは、議論の質が異なるだろうと思います。中間試案の資料作成に向けては、本日の議論を整理したうえで、十分な検討をしていただきたいと思います。   もう一点申し上げたいのが、民法158条2項についてです。同項も成年後見にかかわる規定であり、こちらについても、改正の要否を検討する必要がないだろうかと思います。民法158条2項に基づき、成年被後見人が成年後見人に対して権利を有している場合に、その権利について時効の完成が猶予される根拠については、保佐や補助に関しては同様の規定が存在しないこととの関係で理解する必要があるわけですが、仮に今回の改正で、法定後見制度を大きく変更するのであれば、民法158条2項についても、その規律内容が望ましいものであるのかという点を含めて検討する必要があるのではないかと思います。   中間試案の資料作成との関係で申しますと、民法158条1項の改正について検討しておきながら、2項については一切言及がないとすると、本部会では、2項については改正が不要であると考えているとの誤解を与えるような気がいたします。民法158条2項についても、何らかの形で改正の要否について検討しておくとよいように思われます。   ありがとうございました。 ○山野目部会長 加毛幹事から158条の1項と2項について、それぞれ御意見をおっしゃっていただいたうちの、後ろの方の2項についてお話を頂いた点は、中間試案において何らかの記述をすることが相当であると思われますから、たたき台の審議の際に文書を用意して、改めてお諮りをすることにいたします。   前半の方でおっしゃっていただいた1項の方についての本日の論議の回顧でございますが、加毛幹事からきれいに整理していただいたとおりでありまして、特定の法律行為について代理権を有するという類型の下では、時効の完成猶予の158条1項の規律は廃止してもよいだろうという小澤委員の御意見があり、実質論として心配が残りますとおっしゃったのが佐保委員の御意見をいただき、佐久間委員は心配が残るけれども立法技術的にそこの克服は難しいとおっしゃっていただき、これらそれぞれの御意見を整理した上で、次回の段階に進むことになります。   上山委員が判例も含めて整理していただいたとおり、158条を手掛かりとして、時効が完成しにくい、あるいは時効に基づく権利主張を阻むべきであるという制定法外の判例形成が見られたということも忘れてはいけないと同時に、立法技術的に難しいというところがどうしても克服できないとあるとすれば、正に判例がそうでありますけれども、旧優生保護法が憲法に適合しないという判断と共に、それに係る国家賠償請求を是認する際の最高裁判所の態度は、もう158条とか160条とかという個別の規定に密着して議論を建てるということでなく、時効やそれに類するものの効果を主張することが権利濫用であるというふうな、もう少しサイズの広い法理で対処したものでありまして、最終的にはもしかしたら、それほど起こる事案ではないということと法制的な難しさということをにらみながら、合理的な解決ができない事案については時効の効果を主張することについての権利濫用法理の発動を期待するというような議論の落ち着き方があり得るかもしれません。しかし、最初からそこに投げてしまうという姿勢も、議論の進め方としては丁寧さに欠ける部分がございまして、そういうふうに考えますと、中間試案のたたき台についての御議論の際にまたここの点についてお諮りをしますけれども、ここについて単純な廃止のみをする解決が心配ですとおっしゃった委員、幹事は取り分け、何かここを克服するための方策についてアイデアのようなものを御示唆いただければ、そういうものを中間試案ないしはその補足説明に工夫をして反映させ、その後の一般の議論を促していくということが可能になりますから、引き続きお知恵を頂戴することができれば有り難いと感じます。 ○波多野幹事 青木委員から指摘があった、7ページ目の意思表示の受領能力に係る記載をしている部分についてです。ここの記載の趣旨は、現行の規律でありますと、事理弁識能力を欠く常況と裁判所に認定されて後見の開始が始まりますと、委任は一旦終わりますというルールになっておりますので、解除の意思表示を委任者が受任者に対してする、受任者がその意思表示を受け取るという場面は出てこないのですけれども、もしこの規律をなくして解除することで委任契約を終わらせていくのだとすると、解除の意思表示をしなければいけませんので、それをどうやって受け取るのでしょうかという問題がまた別個出てくるのではないでしょうかという趣旨で書いているものでございまして、受任者が意思表示の受領能力がない状況で行為をするかどうかという趣旨で記載したものではないということを御説明させていただきます。 ○山田関係官 委任の関係についてお聞きしたいことがあります。4ページの18行目で、委任については、委任者が受任者に対して、委任者又は第三者の事務の処理を委託する契約と整理しています。事理弁識能力を欠く常況にある者について固有の保護の仕組みを設ける場合であっても委任の終了事由の規律を削除するものとするというお考えに立たれる方にお聞きしたいことがあります。根本幹事から、障害者の社会参画という観点で委任の終了事由の規律を削除すべきだという御意見があったかと思います。この点に関し、このような委任契約の趣旨との関係でどのように整理されているかというところをお聞きしてもよろしいでしょうか。 ○山野目部会長 根本幹事、御意見がおありでしたらお願いします。 ○根本幹事 障害のある方だけではなくて、高齢者の方もという前提ですが、基本的には個別の判断ということだろうと思っていますので、651条の中に含めて考えていくという整理をするのか、若しくは、先ほどの加毛幹事からの御発言にも関係するのかもしれませんが、何らか後見開始という事由ではない、個別性を見て今日先生方が御議論いただいているようなところを勘案するものをここでも入れていくのかということではないかと思っております。 ○山野目部会長 よろしいですか。   ほかにいかがでしょうか。 ○山城幹事 先ほど158条の1項について御議論がありましたので、一言だけ発言をお許しください。   上山委員からの先ほどの御発言は、158条1項について二つの側面を指摘されていたと理解しています。一つは、結論として一定の規定が必要ではないかというお話でしたけれども、もう一つは、158条1項が想定する場面がかなり狭くて、現行法上も余り適用されることがないという御認識であったかと思います。つまり、後見開始の審判はされているのだけれども後見人がいないという状況がどれほど生じるのかということです。   これに対して、特定の事項に限ってのみ代理権を与えるという仕組みを考えてみますと、158条1項は保佐と補助を除く形で規定されているわけですから、そうした仕組みは同項が想定するものではないのだろうと思います。それにもかかわらず一定の規律を設けるという判断は、恐らく現在の158条1項が想定しているよりも広いものを、判例の展開を言わば先取りするような形で立法化するという含みを持った提案になるのではないかと思います。その意味では、後見というよりは時効法の改正にわたる話ではないかという印象を持ったところでございました。 ○山野目部会長 実は20年の時効というものが本当に国民を幸福にしているかという疑惑がなきにしもあらずであり、本当は一回どこかできちんとしなければいけないですけれども、少なくともここで諮問されている事項ではないでしょうね。ですから、さきほど申上げたサイズ感のような観点をよく考えながら、次回以降の部会資料を用意してまいりたいと考えます。   ほかになければ、久保委員、櫻田委員、花俣委員から特に何か御注意があれば頂きますけれども、よろしいですか。   ありがとうございます。それでは、先に進みます。   次は、部会資料12の8ページから後、第2の1の部分についての審議をお願いいたします。この部分について事務当局から説明をお願いします。 ○木田関係官 部会資料12の8ページ以下、第2の「1 任意後見人の事務の監督の在り方」について御説明いたします。   任意後見人の事務の監督の在り方に関しては、監督の主体及び監督の具体的内容について現行法の規律を維持する考え方のほかに、任意後見監督人以外の者による監督を認める考え方や、任意後見監督人が監督する場合であっても柔軟な監督を認める考え方も示されているところです。監督の主体については、任意後見監督人を選任せずに家庭裁判所が直接任意後見人を監督することも認める考え方や、任意後見人が専門職である場合には任意後見監督人を選任せずに任意後見契約の発効を認め、専門職がその所属する団体による監督を受けるとの考え方が示されていると思われます。   特に、任意後見人が専門職である場合の考え方については、その具体的な規律の内容についても御議論いただきたいと考えております。また、柔軟な監督を認める考え方については、柔軟な監督の具体的な内容を明確にしておく必要があると思われます。そして、家庭裁判所による間接的な監督の在り方や、本人が希望した任意後見監督人を裁判所が選任することになるのかなど、任意後見監督人の選任の在り方についても御議論いただきたいと考えております。 ○山野目部会長 説明を差し上げた部分について御意見を頂きます。 ○小澤委員 ありがとうございます。任意後見人の事務の監督の在り方について、部会資料での整理を踏まえて、改めてこれまでの私の発言趣旨を整理しましたところ、現行法の規律を見直す考え方の中の、任意後見監督人による監督を必須としない考え方については、任意後見監督人を選任するかどうかを家庭裁判所の判断によるものとして、家庭裁判所が本人が契約の中でどのような監督方法を希望したかなどの事情を踏まえて、家庭裁判所が直接の監督を行う方法や、一定の公的認証を受けた機関に監督を行わせる方法など、任意後見人の事務の監督自体は必須としつつも、任意後見監督人による監督以外の方法による監督も認めるような仕組みにすることが、柔軟な監督というふうに整理するのがよいのではないかと考えました。また、民事法制の中で規定するのが適当なのか、社会福祉法制など他の法制の中で規定することが適当なのかは、更に検討が必要だと思いますが、一定の公的認証を受けた機関に監督を行わせるという場合には、その監督機関の責任の範囲を限定し、故意重過失がない場合は免責されるとの規定を置くなどする必要もあると考えています。   また、任意後見監督人の選任を必須としつつも柔軟な監督を認める考え方についても改めて整理をしたところ、やはり任意後見監督人を選任した場合の規律については、任意後見人や任意後見監督人の属性などによって善管注意義務を規定するのではなく、現在の規律を維持することが適当ではないかと考えました。その上で、先ほど述べたとおり、任意後見人の事務の監督自体は必須としつつも、本人が任意後見監督人による監督以外の方法による監督も含めた様々な監督方法を選択できるようにして、柔軟な監督という在り方とすることが適当ではないかと考えました。 ○野村幹事 リーガルサポートの意見としては、基本的には本人保護のための監督機能は重要ですが、任意後見制度が私人間の契約によることに鑑みて、国の機関である家庭裁判所の関与を最小限にとどめる現在の仕組みを大きく変えることは適切ではないと考えます。ただ、事案によっては現行の仕組みが重すぎると考えられるケースも散見されて、そのことが制度の利用が広がらない一つの要因ではないかと考えています。今までも述べてきたのですが、本人の資産や状況、任意後見受任者の能力や経験、任意後見人に付与された代理権の三つを踏まえて、監督の在り方に選択肢を持たせることを検討すべきではないかと考えます。すなわち、重い監督、軽い監督といったことになります。   例えば、御親族が任意後見受任者の場合は、財産管理や意思決定支援の場面で基本的な制度理解が不足している場合があります。法定後見監督人で経験していることですが、御親族には後見制度になじんでもらう期間が必要となるため、就任当初は重い監督、すなわち監督人の手厚いフォローが重要になると考えます。一方、専門職に監督人が付される事案では、専門職が所属する団体を監督人に選任する方法もあると思われます。例を挙げますと、リーガルサポートでは業務マニュアルや研修によって任意後見業務についても会員間で知識を共有していますので、監督人による監督は主に不正防止の観点からの軽い監督になると考えます。ここでいう軽い監督というのは、緩い監督という意味ではなくて、ポイントを押さえた有効かつ効率的な監督という意味です。   以上述べましたのは、任意後見人が専門職である場合に任意後見監督人の選任を不要とするという考え方ではありません。任意後見制度の特質上、監督人の選択においても本人の意向も尊重しつつ、家庭裁判所が適切な監督人を選任する仕組みを今回の改正では取り入れていただきたいという考えです。   なお、体制整備の問題になりますが、任意後見制度の広がりを視野に入れて、任意後見監督人を受任する法人の存在も重要となると思われます。委任者が希望する監督法人を選択できるとした場合は、その情報開示や、また適正な法人であることを担保するための国の認証制度等も今後の検討課題になると考えます。 ○山野目部会長 ありがとうございました。   あと30秒弱で2時46分を迎えます。ここで調査審議を中断いたします。           (休     憩) ○山野目部会長 調査審議を続けます。   根本幹事、お待たせしました。 ○根本幹事 私から3点申し上げます。まず一つは、部会資料10ページの31行目の①の考え方を支持するということを前提に申し上げますけれども、任意後見が私的自治の尊重とのバランスを図ったということですとか、若しくは公的な監督付きの任意代理であるということは、その指摘自体は正しいのだと思いますけれども、他方でそのことが家庭裁判所が直接監督を行う仕組みをとることの妨げになるのかというと、理論的にそうではないのだろうと考えています。それは、そもそもこの任意後見制度が導入されるに当たって、例えば、持続的代理権といわれるものが意思無能力になった後も継続するかや、監督の程度の違いというのは、諸外国の法制を見ても、それぞれ各国異なると理解をしていますし、そういったところと比べても、日本は比較的強い監督を現状では残しているということなのだろうと理解をしています。   その意味で、いわゆる支援型という側面では手厚い監督が必要な場面というのももちろんあろうかと思いますが、そうではない監督若しくは事後的な監督等々も本来であればあるはずで、今回の法改正の中でその監督の柔軟性をどこまで認めていくのかという問題はもちろんあるとは思います。場合によっては将来、家庭裁判所が監督機関としての機能を何らかほかの機関に譲っていくという可能性も、当然あり得るわけで、公的監督付き任意代理であるがゆえに家庭裁判所による直接監督は整合しないのだということは、理論的にもおかしいと思っていますし、それを言うことによって思考を停止させるということは望ましくないと思っているということが1点です。   2点目は、とはいえ家庭裁判所が過重な負担を負うということは非常に困難な側面があるということも、私なりに理解はしているところではあります。例えば、部会資料にもありますが、案件を選ぶようにしていただく、若しくは、当初は監督人を選任するのだけれども、途中で監督人を選任しなくてもよいとするなど、家庭裁判所自身に負担との関係での判断を委ねていくという意味での柔軟性を持たせるということはできるのだろうと思います。併せて部会資料でも、12ページの1行目の、柔軟ないし簡易な監督の具体的な内容は何であるのかということになるわけですが、少なくとも私が承知をしている家庭裁判所において非常に重い負担になっているのは、身上保護の部分についての監督若しくは身上保護に関する御本人ないし支援者等からのいろいろな御意見というものを全て家庭裁判所が受け止めなければいけない状態になっているということが非常に負担を増している一つの要因ではないかと思うところもあります。柔軟ないし簡易な監督というのは、前回申し上げたかもしれませんが、いわゆる監査監督といわれるような、財産目録と収支報告だけを見ると、監督回数についても、例えば年1回程度とした上で、身上保護に関して何らか介入の必要が生じた場合ですとか、若しくは何らかの利益相反とか急迫の事情があった場合にだけ監督人を臨時で投入していくという監督権限の発動ということが、一つの想定としては言えるのではないかと思っております。 ○佐久間委員 結論的には、現行の規律の維持と、場合によって裁判所による法定後見の場合と同程度の直接監督というのはあってもいいのかなと思うのですけれども、3点、今後の説明のために申し上げておきたいことがあります。資料が間違っているということではありません。   一つは、9ページの26行目以下に、現行法の規律の趣旨について、家庭裁判所が直接の選任権のない任意後見人の直接的監督をするのは困難であるという記述がございます。これは、この会議の場でもそういう御発言があったのは承知しておりますけれども、私はこの記述を残すのが本当に適当だろうかと思っています。なぜかというと、任意後見監督人だって任意後見人について直接の選任権を持っていないにもかかわらず、直接の監督をしているわけですよね。もし選任権のない人を直接監督するのは難しいのだ、それはそうだよねとなってしまいますと、能力的に言うと、こう言っていいと思いますが、家裁を超える一般の人というのはいないのではないかと思うので、これをこのまま残すと、結局任意後見ってその程度の監督なのだよねというふうな受け止め方をされかねないのではないかと思います。ですので、これを残すのは適切ではないと思っています。   他方、しかし、今、根本幹事がおっしゃったことにも関係するのですけれども、36行目にある、裁判所の人的、物的資源の観点から、重い監督とするとか直接の監督は適当でないというのは、そのとおりだと思います。今後ますますそうなるのだろうと。後見制度の潜在的利用対象者というのでしょうか、これは増えていくことが考えられる一方、家庭裁判所あるいは裁判所の人的、物的資源が増えることは少し想定し難いので、このことをもうはっきりと正面から受け止めて制度設計すべきだというようなことも、僕が言ったということでも構わないので、入れていただく方がいいのではないかと思っています。   実際にそのようなことは考えられていないのかもしれませんけれども、法定後見を非常に軽いものにしようということの一つの論拠としては、裁判所の人的、物的資源の制約の中で持続可能な制度とするということがあるのではないかと思っていて、そんなことを最終的に、立法ができた後に、こういう理由ですということまでは必要がないかもしれませんが、中間試案の段階では、そういうこともやはり考慮しなければいけませんよねということは問い掛けてというか、そういう意見もあったでもいいので、示していただく方がいいのではないかと思います。それが1点です。   2点目は、10ページの4行目以下に、これはよく分からないので、文章の整理が必要なのではないですかということなのですが、「親族等が任意後見人になることが多いことから、法定後見よりも任意後見の方が報告の頻度などが多いなど手厚い監督が行われている」というのがよく分かりません。これが何らかの誤りでいないなら、法定後見だって保護者を本人の親族にすればいいだけだと思えてしまいますし。でも、それではまずいよねということで、全面的にまずいかはともかく、まずい面もあるよねということで、専門職が法定の後見人になることが増えてきたという状況があるので、もし説明で残されるのであれば、これで本当にいいのかを御検討ください。僕は、保護者と監督人との距離の近さ、家庭裁判所に行くよりは、専門家であっても弁護士等の方が気楽になのか、よく分かりませんが、迅速に相談もできるから、ということなのかなと思いましたが、この引用されている発言の趣旨がよく分かりませんでしたというのが2点目です。   3点目、これも説明に関してなのですが、一つは、家庭裁判所が直接監督する仕組みは私的自治の尊重と相容れないというのは、そうとはいえないのではないかというのは根本幹事がおっしゃったのに同感だということです。その上で、家庭裁判所が直接の監督に当たるということはあり得るのではないかと思いますが、それは法定後見の場合と同程度でよくて、11ページの2行目にあるような頻度を高めるということは不要というか、先ほど申し上げた観点、人的、物的資源の観点から、そんなことは多分できないだろうと思います。そこで、家庭裁判所の直接の監督ということを考えるとしても、法定後見と同程度とするのがせいぜいだろうと思っています。   ただ、今までの方の御発言で、専門職が特に任意後見人である場合などには簡易な監督で云々というのがありましたけれども、その振り分けは案外大変なのではないかという気がして、もし家庭裁判所で考えてくださいとなると、その判断で結構面倒な状況になるから、言うは易し行うは難しかなと思っています。   少しここでの問題からずれるのですけれども、1点だけ申し上げたいのは、家庭裁判所の人的、物的資源のことを考えてということに関してなのですが、今後、任意後見が法定後見に優先する度合いをもっと強めていくのはどうかと思っています。一言で言うと、任意後見で対応可能なものは全部任意後見で対応してもらうことにする、法定後見は任意後見が使えないときに限る、ということです。どういうときかというと、同意、取消しの保護が要るときと、事理弁識能力を欠く常況にある人で任意後見契約を結べない人だけが法定後見を使える、そのほかの人は全部任意後見でやってくださいということも、制度としてはあるのではないかと私は思っています。   そのためには任意後見契約の制度を、変更を容易にするなどして、使いやすいものにしなければなりません。けれども、そうすることで家庭裁判所の監督は、現状どおりを基本として間接的な監督とすると、負担も減りますし、また、何よりも本人の意思の尊重に資する制度は何ですかと、任意後見と法定後見のどちらですかといったら、明らかに任意後見だと思いますので、そのような制度の趣旨から、本人が決められることは全部本人の意思で決めてもらう、契約でやってもらうということも考えられていいのではないかと。最終的に通らんだろうな、と思いながら言っているのですけれども、中間試案の段階ではそういう考え方も出たというのを、もし盛り込んでいただけたら有り難いと思っています。 ○山野目部会長 根本幹事と佐久間委員のお二人のお話を伺って、裁判所としては歓迎してよいか反論すべきか、難しい考えどころの御発言を頂いたと受け止めます。佐久間委員が最後におっしゃった任意後見原型観とでもいうべきお話は、通らんだろうというお話よりは、むしろ成年後見制度の改編の基本的理念はそのとおりであると感じます。多くの人が多分そのように考えているであろうとも想像いたしますが、実体法制としてどういうふうにそれを表現していくかを引き続き探っていく課題があって、むしろしかるべきことをおっしゃっていただいたと聞きました。   佐保委員、お手をお挙げになったでしょうか。 ○佐保委員 見逃さずに見ていただきまして、ありがとうございます。任意後見人の事務の監督の観点からも、監督の主体及び監督の具体的内容については現行法の維持でよいのではないかと考えております。任意後見人が専門職でも第三者の監督は必要であると考えておりますが、私も少し現実的になりますが、11ページ3行目辺りに記載があるとおり、家庭裁判所が直接的に監督を行うことは、体制的に考えると難しいのではないかと考えております。 ○遠藤幹事 裁判所の関係で幾つか御発言を頂いたところでありますので、これらの点について発言させていただきます。   まず、佐久間委員から、部会資料10ページの4行目以下の「親族などが任意後見人になることが多いことから、法定後見よりも任意後見の方が報告の頻度などが多いなど手厚い監督が行われている」ことについて言及がありました。これについては任意後見が発効した場合、任意後見監督人において監督を行いますが、親族の方に限らず、任意後見人の場合には、選任のプロセスに裁判所が関わっていませんので、その方が後見事務を適切に遂行しているかについては、小まめに見なければいけないために報告の機会が多くなっている、例えば、専門職であれば年1回ないし2回であるところが、親族であれば年4回であるなどの形で手厚い監督を行っている、ということを実情として御紹介できるのではないかと思います。監督の方法については監督人の裁量によるところもありますので、監督人において、当該任意後見人となった方の言わば資質を見極めて判断をしているという実情があるのかと思っております。   また、根本幹事から、家裁の負担を和らげるという観点から様々な御提案を頂きました。これを法律で規律するのか、それとも裁判所の運用において行うのかという問題もあるとは思っておりますが、いずれであっても、例えば、どの段階で後見監督人の監督を外せばよいかといったことを始めとして、裁判所は様々な判断を求められるだろうと思っております。発言の御趣旨としての御配慮は有り難いと思ったところなのですが、頂いた内容を踏まえて考えますと、裁判所の監督の負担が軽減されるという方向になるかについては慎重な検討が必要なのではないかと思っております。   むしろ、今回の部会の序盤で議論に出ておりましたように、任意後見契約においては裁判所による公的な監督は間接的でよいということもあるとするならば、むしろ裁判所による監督ではなく、一定の公共的な性格を有する機関による監督についても、よりクローズアップして検討されてもよいのではないかと思っており、中間試案に向けてそういった点をクローズアップして検討していただくこともあり得ると思います。一定の公共性を有する機関による監督がなされる場合には、基本的には当該監督を尊重することになり、裁判所には最終的な解任をするかどうかの判断権はなお残るものの、解任以外の部分についての多くは一定の公共性に関する認証を受けた機関にお任せをするといった方向での議論もあってよろしいのではないかと思った次第であります。 ○山城幹事 任意後見が一種の契約であり、受任者と委任者のほかに監督人がいて、直接か間接かにかかわらず家庭裁判所も関与するという仕組みを想定しての発言ですけれども、法定後見の改正の方向性として、事項を限定して代理権を与えることができるという制度設計を採用するといたしますと、現行法の制定に向けての議論において、任意後見の導入に反対する見解が、通常の委任契約を締結した上で、後見事務を受任者の監督に限定して法定後見人に選任すれば足りるのではないかと指摘していたことが思い出されてよいのではないかと思います。   例えば、本人が施設に入所していて、それに関する事務を行うために法定後見を開始するということが新しい制度設計の下であり得るとすると、財産管理を委任したのだけれどもその履行の管理に不安があるので、受任者を監督してもらうために法定後見を利用するといったこともできるのではないかと思います。それは、第三者が委任事務の履行を監督し、さらに裁判所も関与するという仕組みですから、任意後見に類することが法定後見の枠内でもできることになりそうです。現行法の制定過程では、委任契約の管理だけに事務を限定することが法定後見制度の枠内ではできないということを一つの根拠として、やはり任意後見が必要だという議論がされたのではないかと思いますが、この点の前提が変わりますと、法定後見に対する任意後見の独自性をどこに見いだすかという問題が生じそうです。仮にどちらの仕組みでも同じことができるのだとしますと、任意後見の場合にも法定後見と同じような態様で家庭裁判所が関与することはあってよいのではないかとも思われます。こうした点については、資料に記載するかとは別として、背後では考えておかないのではないかと感じました。   その上で、任意後見は、元々は公的機関の監督を伴う任意代理という呼ばれ方をしていたかと思いますけれども、その公的機関が家庭裁判所であることに必然性はないのだろうと思います。一般法上の委任契約との関係での任意後見契約の特徴は、当事者を監督する者がいる点にあるのだとしましても、それを家庭裁判所とすることが原理的に求められているわけではないだろうと思いますので、より広い公的機関が監督に関与するという在り方も十分にあり得ると感じております。 ○星野委員 ありがとうございます。大分前に戻ってしまうかもしれませんけれども、ただ、この後出てくる法定後見との関係というところにも触れると思っておりますが、今の山城幹事の発言とも重なるところですが、そもそも社会福祉士の場合、任意後見契約を結んでいる数はそれほど多くはないのですが、監督人がなかなか選任されない、発効まで行かない多くの理由は、本人の能力がまだそこまで衰えていないとか、あるいは監督人に対する報酬を負担することを本人がなかなか納得しないとか、そういうようなことが多いです。そういうことを考えますと、監督は必須ではあるけれども、監督人の選任ということ以外の、やはりこれまで出た意見と同じですが監督なのか支援なのかといういろいろな対応の在り方が検討される必要があるとすごく感じているところです。   そのときに、先ほど根本幹事から簡易な監督というご発言がありましたが、簡易というのは緩いという意味ではなくて内容によるということだと思うのですけれども、財産関係についての監督と、それから身上保護についての難しさみたいなのがありましたけれども、福祉関係者からすると、逆に財産上のところの監督というところが生じてきたときには、やはりしっかりと監督機関なり監督人なりに報告をするという形が必要なのではないかと考えます。つまり、専門職の中でも、専門性の違いによってどこに難しさを感じるかというところが違うということは、一つ意見として発言しておきたいと思います。   これまで出たことと同様に社会福祉士会でも確かに定期報告を受けて、まだ発効していない段階も報告は受けておりますし、任意後見を契約する前の事前相談というものも受ける仕組みは作っています。ですから、どこまでの監督が必要かというところを家庭裁判所なり、今後新たにできるか分からないのですが、公的な機関なりと情報をやり取りできる仕組みが必要だと感じています。例えば、専門職団体の中の報告と助言、いわゆる報告を受けて助言をするという段階で済む場合と、それが監督というものかもしれませんが、しっかりと家庭裁判所なり公的な別の機関なりが監督をすべきであるというところを判断していくための、そういうやり取りができるような仕組みは必要なのかなと感じています。 ○山野目部会長 身上保護事務と財産管理事務を分けて監督に濃淡を付けるのは、根本幹事と逆に、というよりは、同じことをおっしゃったのですね。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。   部会資料12の12ページから第2の2(1)についての審議をお願いすることにし、この部分についての事務局からの説明を差し上げます。 ○木田関係官 部会資料12の12ページ以下、第2の2「(1)任意後見人の事務の監督を開始する要件」について御説明いたします。   現行法では、任意後見人の事務の監督を開始する要件として、任意後見契約が登記されていること及び本人の事理弁識能力が不十分な状況にあることなどが規定されております。この点については、任意後見制度の趣旨を踏まえつつ、現行法の事務の監督の開始に関する要件において見直す必要があるとすると、どのような点において見直しのニーズがあるのかについて御議論いただきたいと考えております。 ○山野目部会長 ただいまの部分について御意見を承ります。いかがでしょうか。2(1)です。 ○小澤委員 ありがとうございます。任意後見人の事務の監督を開始する要件については、先ほど意見をしたような監督人の選任を必須としない仕組みとする場合、任意後見契約の発効については、例えば、任意後見契約に基づく事務の開始の審判というような仕組みとし、任意後見人の事務の監督を開始する要件ではなく、任意後見人が事務を開始する要件と整理した上で、その要件としては、必要性の考慮は不要とし、任意後見契約が登記されていること及び本人の事理弁識能力が不十分な常況であることを要件とする現行法の規律を維持することが適当と考えています。  ○根本幹事 開始の要件のところについては、繰り返しになりますが、監督人を必ず置くということではないということを前提とした、先ほどの遠藤幹事からの話もありましたが、運用上どうなっていくかはともかくとしても、監督人の選任を開始とひもづけるということではなくするということは、少なくとも今回の改正において非常に重要な点だと思っています。   その上で、必要性の点について1点問題提起を申し上げたいのですが、13ページにあります保護の必要性について、資料の考え方に私としても異論はないところなのですが、いわゆる事務の必要性という点を全く考慮しなくてよいのかというところは少し疑問を持っております。特定の代理権のみを目的とした任意後見というものも今後は存在してくるのだろうと思っておりまして、特に開始の場面というよりは終了の場面では、その特定の代理権の目的が果たされているのであれば、それは任意後見契約は終了するのだろうと思うのです。終了でそのように考えるのだとすると、特定の代理権のみを目的とした任意後見を始めるときにも、果たしてその事務、申立ての動機ということなのかもしれませんけれども、開始のところでも事実上は見るという審査をされるということはあり得るのではないかと思っております。   開始のところで必ず開始要件として加えるべきかというところまでは、迷うところもあるのですが、少なくとも終了事由においては事務の必要性の喪失を書かないと、何もしないのになぜか任意後見がずっと続いているという状況が生じるのは、好ましくないのだろうと思います。終了事由との関係で、事務の必要性をどう見ていくのかということの視点が必要ではないかと、13ページを拝見していて思いました。 ○佐保委員 ありがとうございます。任意後見人の事務の監督を開始する要件については、複雑化と関係者の負担を避ける観点からも、現行法の規律を維持する方向でよいのではないかと考えます。ただし、本人の判断能力が低下し意思表示が困難な場合は、従前の本人の意思を尊重するための方策の検討は必要と考えています。任意後見監督人の選任申立てがきちんと行われ、任意後見が開始されるように、周知を図っていくことが重要だと考えております。   私からは以上です。ありがとうございます。 ○山野目部会長 ほかにいかがでしょうか。   小澤委員からは、任意後見監督人選任の審判ではなくて、事務開始の審判というふうに概念を整理しようというお話がありました。また、佐保委員からただいま本人の意思の確認が重要だというお話を頂きました。根本幹事から頂いたお話は、伺っているとなるほど、例を挙げますと、遺産分割に出なければいけなくなったときには代わりに行ってねという事項を特定して任意後見契約を結んでいたときに、誰も死んでいないのに判断能力が不十分になったというだけで任意後見の事務開始というのは変でしょう、とおっしゃられると、確かにそんな気もします。議論をどういうふうに進めたらよいか分かりませんけれども、考え込まなければいけない課題があるということを理解します。   それから、お話に出ていませんけれども、重度の身体障害のある方が任意後見制度を用いることができる方向で道を開くべきかどうかという問題についても、本日段階で何か御意見があったら承っておきたいと考えます。山城幹事が別の場面でおっしゃいましたけれども、任意代理と任意後見の概念整理が必要であるということを特に意識させる局面は、この重度の身体障害の方の利用可能性の問題でありまして、軽々に判断してよいことではありませんけれども、議論は重ねていかなければなりません。   今申し上げたような点いずれでも結構ですけれども、何か言い忘れたことがありましたら承りますけれども、いかがでしょうか。   よろしいですか。   それでは、ここで休憩といたします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開いたします。   続きまして、部会資料12の12ページから後、第2の2(2)について審議をお願いいたします。この部分について資料の説明を差し上げます。 ○木田関係官 部会資料12の12ページ以下、第2の2「(2)適切な時機に任意後見の監督を開始するための方策」について御説明いたします。   この点については、主に任意後見受任者に法律の規定によって任意後見人の事務の監督を開始するための裁判手続の申立義務を課すことの適否、仮に任意後見受任者に申立義務を課す場合の申立義務が生ずる要件及び義務違反の効果、任意後見監督人の選任の申立権者について御議論いただきたいと考えております。 ○山野目部会長 説明を差し上げた部分の御意見を承ります。 ○小澤委員 ありがとうございます。適切な時機に任意後見人の事務の監督を開始するための方策については、部会資料のとおり整理をすることでよいのではないかと考えております。   その上で、以前の部会でも述べましたが、現行法の規律を維持して、任意後見受任者に自身の事務の監督を開始するための裁判手続の申立てを義務付ける規律は設けないものとすることが適切であると考えています。現在の公証役場の任意後見契約の雛形にも、委任者の判断能力が不十分となったときには家庭裁判所に対して任意後見監督人選任申立てをする旨の規定が入っており、この公証役場の実務を維持すれば十分ではないかと考えております。   また、任意後見監督人の選任申立権者について、市長村長などの公的機関を選任の申立権者とする考え方を今後の取りまとめの中に残しておくことには賛成をしています。 ○野村幹事 申立ての義務化については、法律の規定によって任意後見受任者に申立義務を課することには消極意見ですが、親族が任意後見受任者である場合に任意後見監督人の選任の申立てをすべきことの認識が十分ではないこともあって、ガイドラインやモデル契約書によって適切に任意後見契約が発効するようにする取組は必要と思います。   申立権者ですが、公的機関による申立てについては、申立手続に不慣れな場合などのやむを得ない事情をどのように限定するか、公的機関をどこにするかなどの課題はあるものの、検討してもよいのではないかと考えています。 ○青木委員 まず、任意後見監督人選任申立ての義務化については、義務化の規定を置くべきだと従前から考えていますけれども、具体的な想定するゾーンについてよく考えるべきというふうに今回の部会資料も書いていただいています。そこにも触れていただいていますが、やはり監督人選任の必要性を感じずに、悪意があるわけではないけれども申立てをしない、主に親族が任意後見受任者となるような場合について、申立てを促す効果という意味での義務化ということが重要であると考えています。それについては周知をすることによって図るべきであるということが意見としても出ていますけれども、先般法務省が監督人選任申立てに関して委任者や受任者にアンケートなどを取っていただいた結果からも、監督人が付くことや監督人報酬が発生することなどを懸念して申立てをしないということもありますので、周知だけでは十分ではないと思っています。   また、任意後見契約は年間1万件ぐらいは契約が成立しているにもかかわらず、年間1,000件弱の監督人選任申立てしかないという状況がずっと続いているということの中には、もちろんまだ判断能力が低下していないので申し立てないというものも相当含まれているとはいえ、本来は申立ての時機が来ているにもかかわらず申立てをされていないという件数が相当数あるということがいえると思います。それについていかにして申立てを促進させるかということを検討しないといけないと思っております。その観点からは、周知だけでは不十分であって、次の対策として義務化をし、この義務違反についての効果ということについては特に不利益を課すものではないとしても、申立てを促すという効果としての義務化ということが必要なのではないかと思われます。   なお、資料12には、親族の任意後見受任者を中心に考えると、一つには、そもそも任意後見契約の受任を控えるのではないかという懸念が示されていますが、元々公証役場で契約をするときには、この制度は申立てをして監督人が付いて仕事が始まる制度ですということは説明を受けて契約をするものでありますから、監督人選任申立てが義務化になったことによって受任を控えるということにはならないと考えられます。また一方で、早く申立てをしすぎる弊害があるのではないかという記載についても、医師の診断書に基づく判断能力の不十分さは申立てに必要ですし、加えて本人の同意というのが原則として発効の要件になる以上、早く申立てをしすぎるという弊害は診断書と本人の同意によって是正されるものでありまして、そのことを理由にして申立ての義務化を控える事情にはならないのではないかと考えています。   申立てを義務化する場合の要件については、本人さんの判断能力の不十分さと、本人さんの同意していること若しくは不同意がないこと、代理権目録にある事務をする必要性が出てきたこと、が義務化の要件となると考えています。   それから、委任者が指定する第三者を申立権者にすることにつきましては、少なくとも任意後見契約の中で第三者を指名した場合に、その者を申立権者に含めるということについては積極的に考えていいのではないかと思います。本来は本人若しくは受任者が申立てをすればいいことだとは思いますけれども、やはりそういったことができない事情の中で、第三者が本人さんの様子を見ることのできる近しい方で、その方に申立てを委ねるということは、本人さんの意思としてはありえることで、その意思は十分に尊重されるべきものだと思います。こうしても、任意後見契約を締結した公正証書において指定されていることを確認ができますから、申立てられた裁判所としても、その方が申立権者であるかを確認することについては不都合がなかろうとも思っています。 ○竹内(裕)委員 ありがとうございます。私自身は義務化というのはなかなか積極的には考えられなくて、事理弁識能力が不十分ということを誰が認定できるのかということと、義務違反の効果、ここがなかなか悩ましいというところではあります。ただ、今意見を申し上げたかったところは、部会資料の15ページの23行目、4行目のところで、法定後見の活用というところを記載がされているのですけれども、確かここは第二読のところでも、法定後見と任意後見との併存を認めればという議論が結構なされていたように思いますので、その併存を認めるという議論もここに関係するのだということを書いていただいた方が読み手には分かりやすいのではないかと感じました。 ○佐久間委員 基本的にはこの資料の立場に賛成なのですけれども、受任者に開始の審判の申立てを義務付けることについては、資料の16ページの3行目から11行目に書いてあることが、そのとおりなのではないかと思います、一つは。   二つ目には、任意後見というのは私の理解では、本人の意思を最大限尊重しようとするための制度であると思いますので、そうすると意思能力や事理弁識能力、やというのは、どちらか分からないけれどもということなのですが、その能力がある限りは、本人の請求によるのが本当は一番望ましくて、そうでなかったとしても、事前に本人の同意を得て他の請求権者が請求するということが在るべき姿なのではないかと思っています。そうすると、受任者に求められるのは自分で判断して請求をするということではなくて、本人がこれは保護が必要だなと思われる状態になったら、それを本人に理解してもらって、本人に請求や、事前の同意でもいいですが、請求するけれどもいいですかということで、それを促す、その努力義務みたいなものの方が、制度の趣旨からして適切なのではないかと思っています。本人の意思を最大限尊重することが制度趣旨なのだからということからいたしますと、青木先生がおっしゃった場面では、契約で定められている人は別にしまして、請求権者をほかに拡大するということについても同じ問題点があると思っています。   ただ、本人に保護開始の必要性を理解させて請求を促すなどの努力義務を課すことは考えられると申し上げはしたのですけれども、義務だとすると、結局受任者の事務というのは受任者になった時点から始まるということになりますよね。そうすると、法的には別にそういうふうにしてもいいのですけれども、現状どうなっているのか僕は知らないので、今もそうですということなら、よろしいのですが、受任者に積極的な仕事を求める、モニタリングにしても積極な仕事だと思いますが、そうなると、受任者の属性とか契約内容次第では報酬が要ることにならないのかなと。そのことを考慮しないと駄目なのではないかと思います。この場面では皆さん、もしかしたら親族が受任者になるということをほぼ専ら考えておられるのかもしれませんけれども、でも、ほかの場面では専門職が受任者になった場合は監督をどうする、こうするという話も出てきていることですから、ひょっとして報酬が要ることになるのではないか、そうだとすると、どんな形でも義務を課すというのは好ましくない面があるのではないかと思いました。   もう1点、つまらぬことなのですが、14ページの5行目に、任意後見について監督を開始するために本人の同意が要件とされているとだけ書かれているのですけれども、例外がありますよね。本人の事理弁識能力次第で。だから、つまらぬことで申し訳ないですけれども、原則としてという言葉を入れた方がいいのではないかなと。最後は全くつまらないことで申し訳ありません。 ○山野目部会長 原則として、を入れましょう。余後効の反対概念と何と呼ぶことが宜しいでしょうか、契約が終わった後も薄い法律関係が続いていくのではなく、契約が始まる前に薄い義務が生じているという事態を考えようという議論をしていますけれども、薄くても報酬の問題があるでしょう、というお問い掛けが佐久間委員からありました。 ○根本幹事 現状の実務の御紹介ということかもしれませんけれども、専門職が任意後見契約を締結して、将来型の場合には、今の文例の条項上も、支援者等からきちんと情報収集をするということが受任者の義務と定められているとともに、別途任意後見契約将来型とは別に、名称はいろいろあるのかもしれませんが、いわゆる御本人を見守るための契約というものを別に締結をするということが非常に多く行われていると思います。そこにおいては頻度等に応じた形での、任意後見が開始された後とは違った費用体系で、何らか専門職の場合には報酬が発生しているということが一般的ではなかろうかとは思いますので、いわゆる義務化するということとの関係で見ますと、何か費用が発生するというのは、別の委任契約なりで手当てをされているということを前提に御検討いただいてよいのではないかと思っております。 ○山野目部会長 御話はいわゆる移行型の場合ですか。準委任契約が任意後見契約の締結と同時に結ばれている場合を想定しておっしゃいましたね。 ○根本幹事 いや、移行型は文字どおり財産管理委任契約ですので、そこは財産管理委任契約に基づく報酬ということだと思いますけれども、将来型でいつ発効されたらいいのかご本人のご様子を適時に把握するために、いわゆる見守り契約という名称がいいのか分かりませんが、例えば、メールですとかそういうやり取りで御様子をお伺いするということがあります。メールや電話であれば無料でやるという先生もおられると思いますが、直接お会いしたり訪問したりして御様子をお伺いする、確認させていただくということであれば、1回の訪問につきという報酬体系をとっておられることが実務では多いと理解をしています。 ○山野目部会長 よくわかりました。   引き続き伺います。いかがでしょうか。 ○上山委員 今の整理で全ての問題が解決したのか、よく分からなくて、確かに任意後見契約とは別に専門職が別途見守り契約を結んで、それについて報酬も定めておくという実務の実情があることは私も承知しています。しかし、今の問題は、その見守り契約がない場合についても、そもそも任意後見契約本体の効果として一定の義務が生じ、その義務の履行に対する労力について何らかの報酬の手当てが必要となるのではないかという趣旨の議論だった気がするので、見守り契約でやっているのだからいいですよということでは必ずしも十分な回答にならないのではないかと思うのですが。 ○山野目部会長 上山委員がおっしゃったことを異なる表現で述べると、根本幹事の論理で行けば、全ての任意後見契約が論理的に見守り契約を前置することが前提になっていて、そこの報酬の問題という課題は常に付いて回るということになりそうであるという御心配でしょうかね。 ○根本幹事 当然前置だとは思っていませんし、ただ、報酬を頂くということは、そこで何らかやはり、委任ですら法的には原則無償ですので、何らか御本人との合意がなければ報酬は発生しないということになるのだろうとは思います。上山先生からの御意見のところにお答えするとすると、見守り契約を結んでいないという場合は、報酬は発生しないという中で、その義務を負っていただくということにはなるのだろうと思います。 ○山野目部会長 これは少し議論を整理し、恐らく意見は対照的に、今見ても明らかに分かれていますから、中間試案で示すということになりましょうかね。今の問題について引き続き御意見を伺います。いかがでしょうか。 ○山城幹事 議論の本筋から少し外れる点ではありますけれども、先ほど佐久間委員からも言及がありましたが、部会資料17ページ22行目に、努力義務という形で義務の性質を明示する箇所がございます。しかし、これについては努力義務だと決めてしまうのではなく、一定の行為義務が課されることとして、その性質については引き続き議論するという形で御整理いただく方がよいのではないでしょうか。民法に努力義務を書き込むのかという問題もあるかもしれませんし、努力義務だとすると、法的なサンクションはないということになりそうですが、それでよいのかという点も含めて、引き続き検討した方がよいのではないかと感じた次第です。 ○山野目部会長 分かりました。   ほかにいかがでしょうか。 ○青木委員 現行法でも専門職の多くは、任意後見契約の中で任意後見受任者としての申立てを義務化する条項を作っていまして、そのこともありまして、先ほどのような見守り契約を別に結んでいようがなかろうが、委任者の状況の把握を定期的に行うということをその申立ての義務との関係で行っていると思います。その方策として定期的に面談をするとか、それによって費用発生するほどの負担がある場合には、見守り契約を別に結ぶこともあるでしょうけれども、将来型の任意後見契約だけを締結して、その中に申立義務化を条項の中に入れている場合には、負担にならない程度として、定期的に電話やその他で連絡を取って本人さんの状況を確認することはしておりまして、その場合には特に報酬を頂いていないということもありますから、申立ての義務化となった場合には、そういったことが任意後見契約の発効の前提となる前置義務みたいなことになるだろうとは思いますが、それを前提にして受任をしていただくということになるのかなとは思っています。 ○山野目部会長 青木委員に確認のお尋ねを差し上げます。任意後見受任者は任意後見監督人の選任を申し立てなければならないという文言イメージになる提案を御意見としておっしゃっていると理解してよろしいですか。 ○青木委員 はい。 ○山野目部会長 恐らく山城幹事が先ほどおっしゃった観点は、そういうふうにかちっと、という表現がよいかどうか分かりませんが、かちっと書くよりは、本人の心身の状況等を観察して任意後見監督人の選任申立ての要否等について適切な判断を行う事務をしなければならないといったような規律を設けるということもあり得ます、というお話であったと考えますし、いずれもアイデアとしてはあり得ますから、幾つかのものを並べて提示していく扱いで、いけないということはないと感じますけれども。いけないですか、青木委員。 ○青木委員 いけないことではないと思います。今の御示唆も頂きまして、法定後見の議論の方でも、身上配慮義務の中に、支援者との連携に関することも盛り込んではどうかという議論もありましたが、当然、任意後見の方でも、身上配慮義務の内容として連携に関する義務というのも出てくるでしょうし、それとの関連で、本人さんの状況を十分に把握して監督選任申立ての適否を考えるということもその中に入れていくということも一つのアイデアとしては十分あり得るなことであると今日お伺いしていて思いました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。 ○竹内(裕)委員 今までの先生方の議論、いずれもそうだなと思うところなのですけれども、義務とか事務とかいうこととは別に、申立てするときがすごく煩雑で、それで少しおっくうになっているみたいな実情があるのだったら、そこの申立てを簡略にするとか、もう少し分かりやすいものにする、周知をしてあげるとか、そういった実務上の配慮もやはりここでは必要になってくるかなと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。大事な観点を今御指摘いただきました。   申立てをする者の範囲についても、若干御意見は頂いていますけれども、更に何かあれば承ります。いかがでしょうか。市町村長等が申し立てることの適否など、もし何か更にありますれば、承っておきます。   特によろしいでしょうか。   そうしましたら、ここで任意後見に関する第2の部分についてお尋ねしてきたところが一応終局いたしましたから、久保委員、櫻田委員、花俣委員に順次お声掛けを致します。   久保委員、お願いします。 ○久保委員 おります。ありがとうございます。今ずっとお話を伺っていまして、本人支援との、あらゆる点から見て守り抜くというのは、どの形態であってもなかなか難しいことだなということを感じておりました。   それと、任意後見を中心にして、そのようになった場合にも、任意後見をしていて、基本は任意後見であるけれども、その後後見に移行していくということの、スムーズに行くのかなということも少し考えていまして、それは今、皆さんが任意後見であっても申立てをしないというのは、今申し立てたら今の制度でしょうとみんな言うのです。今の制度であったら少し嫌だなと、新しい制度ができたらそれに変わっているのということを皆さんが心配しておられるのです。新しい制度に期待しているのです、みんな。ですけれども、今申し立てたら今までの制度のままでずっと行かないと駄目なのではないかという心配をしているのです。それで、新しい制度が出てきたら、今申し立てても新しい制度に変われるのであれば考えようかな、みたいなことを皆さんがおっしゃっているというのが何人もおられるというのがあります。そこら辺のところがはっきりしないので、少し様子を見ているみたいなところが、よく聞けるお話です。   そして、基本的に専門職であってもどなたであっても、監督人が付く場合に、後見人にも費用を支払い、監督人にも費用を支払うというのは、本人には少し難しいと思います。本当に、前にも申し上げたように、基礎年金は生保よりも安いわけです。6万5,000円ぐらいしかないわけですね、2級年金の方がたくさんおられますけれども、6万5,000円ぐらいしかなくて、働いて工賃をもらっても1万円前後ぐらいというのがたくさんあるのです。全国平均はもう少し上がりますけれども、それはたくさん出しておられるところがあるので平均は上がりますけれども、でも、ほとんどのところが1万円前後ぐらいのところがとても多いわけです。ですから、やっていられないから、成年後見には入らないというのが今までもあったのですけれども、これからも後見人に払い、監督人にも払うというのであれば、やはり使わないのではないかというような感じを受けています。   それから、どういう形がいいのかというのは私なんかの頭では全然分からないのですけれども、福祉の側が成年後見制度の担い手になるということが期待するところなのですけれども、そこになかなか手が出てこない、一歩足が出てこないというようなことも少し感じますので、入所施設を始めとする福祉の事業所が何らかの形の研修を積んで、そして親族の後見人の後見事務の確認をしたり、お手伝いをするというようなことでも少しは、親族後見だけで任しておくよりかはましになるのではないかなと。親もだんだん年を重ねますから、やれていたことがやれなくなってくるという時期がだんだん近付いてきますので、その辺のところ、もうそろそろということも、周りにいる福祉関係者が、子供が通っているところの職員の方が見ていただいて、そして後見事務のことも相談に乗ってあげてというようなこともしていただくと、私たち親としては少し助かるなと思いますし、安心できるなとも思っています。   任意後見の義務化についてですけれども、このことは義務がいいのかどうかというのは私も分からないのですけれども、基本的に本人が承知しているということが大前提にあると思いますので、そこが一番重要なことだろうと思っています。契約を前提とした見守りのような内容であっても費用が発生するのであれば、やはり本人にとっては同じことだろうなということも感じております。   現行の仕組みと新しい仕組みと、新しい方に移行できるかというのは、もう本当にたくさんの方から聞かれることですので、その辺のところも私自身は答えられないでいますので、それはどうしたらいいのかなということも思いながら、お話を聞かせていただきました。 ○山野目部会長 久保委員から幾つか、大事な点ばかり御指摘を頂きました。お話を頂いた機会に2点、御案内を差し上げておくことにいたします。一つは、おっしゃった年金の額も引き合いに出しながら、報酬の問題が、取り分けダブルの報酬の負担には耐えていけないとおっしゃっていただいた点は、よく理解することができます。簡易な監督であるとか柔軟な監督であるとかということを委員、幹事が熱心に議論したことの背景には、報酬のことだけ考えてされた議論ではありませんけれども、当然のことながら本人の報酬の負担の問題ということが重要な観点の一つとして意識されたからこそ、あのような議論があったものでありまして、その議論を続けていくつもりであります。   それからもう1点、この機会に久保委員を含め委員、幹事に御案内を差し上げておくことでありますけれども、成年後見制度が大きく改まるかもしれないということが、ここに至って社会に広くアナウンスされて、認識されてきて、大きな注目を受けるようになってきています。そのこと自体は、今後パブリック・コメントが予定されていることも考えますと、喜ばしいことでありまして、引き続き社会の各方面に関心を抱いていただきたいと考えますとともに、久保委員がおっしゃられたように、変わっていくならば今何をすればよいですかということについて、多くの人たちが戸惑いを感ずるという心配も、また、その状況があるということも自然に理解することができます。   それで、この機会に御案内を差し上げておきますけれども、法制審議会の事務として、諮問された事項について、新しい制度をどう考えるかということを要綱という名前の答えの文書をもって答申にし、法務大臣に応えることが仕事でありまして、その制度を適用していくときの時間的な経過に即してどういう細かなルールを設けるかということは、部会で案を決定するという筋合いにはなっておりません。これが建前ではありますけれども、しかしながら、今回はこの改革の持っている性質や社会的な関心度が高いという側面を考えますと、要綱には盛り込みませんけれども、随時の意見交換が部会でされていて、多くの人たちが先行きについて見通しを共有したり、意見を述べたりして法務省事務当局の参考にするといったようなことはあってよいというか、有益であろうと考えます。今、久保委員から実情を御紹介いただいたということを事務当局においても認識しておりますから、どういうふうなお願いする調査審議の工夫が考えられるかということをまた考えてまいりたいと存じます。どうもありがとうございました。 ○櫻田委員 ありがとうございます。私の方が途中参加ということもあって、全てのお話を聞けていないのもありますし、少し的外れな意見を申し上げたら大変申し訳ありませんが、私の意見として述べさせていただきます。   任意後見制度については、やはり精神障害を持っている方も利用されている方もいらっしゃるとは思うのですけれども、多分この後の議題のお話にも重なってくることだとは思うのですけれども、任意後見を使っていましたと、なのですけれども、判断能力が落ちてきて、やはり自分はそれを使っているのが不安だから法定後見にしたいとかというところで、切り換えがうまくできるのかというのを心配される方も多分中にはいらっしゃると思いますので、そこをやはり、今後の議論にも重なってきますし、これからもまた、更に議論していくことかもしれないのですけれども、うまく切り換えができるようなところになっていくといいのかなというのが、まず一つ思ったところです。   余り難しい言葉、ことを整理するのが少し苦手なので、今日はうまく言葉にできていない部分もあるのですけれども、やはり制度全体、法定後見、任意後見を見たときに、共通していることとしまして、御本人が希望されて使っていることが大前提だと思いますので、御本人にとってよりよい制度、そして使いやすい制度、そして御本人のために、やはり御本人を助けてもらえるような制度設計で行っていただけると、私としては大変有り難いかなというのは、ずっと共通してお伝えしていることではあると思いますが、やはり今までの議論をお聞きしている中で、更にその気持ちは強まってきたかなというところではあります。   私自身も将来的に、もしかしたら後見制度とかを使うかもしれないですし、任意後見も使うことになるかもしれないので、将来的にどうなるかは分からないのですが、やはり自分が使うかもしれないという立場になったときに、自分が将来的に使って、この制度を使ってよかったなという制度にしていく必要があるのかなというのは、すごく感じている次第です。   先ほど費用の件もありましたけれども、やはり精神障害をお持ちの方も、御家族と一緒に暮らしていたら、例えば御家族の支援があって生活できている方もいらっしゃるとは思うのですけれども、一方でやはりそういう方たちばかりではなくて、生活保護を受けながら制度を利用される方というのも多分、今後更に増えてくるのではないかとは予測されます。なので、自分の土台の生活がある上にプラスアルファで後見の費用が掛かってくるとなってきますと、生活自体がままならなくなるということはそれほどないとは思うのですけれども、やはり自分の生活を心配して、少し心配な部分はあるのだけれども、自分の生活を守りたいから制度は使いませんという方も多分一定数いらっしゃると思うので、そのことに関しても多分、今後更に議論していく必要があるのかなというところは少し思ったところにはなります。   すみません、本当にまとまっていなくて申し訳ないのですが、以上になります。 ○山野目部会長 ありがとうございます。櫻田委員のお話をヒントにして申せば、御覧いただいているように、成年後見制度の改革は、恐らく大づかみの方向としては、制度全体を柔らかな構造のものに改めていこうというふうに進んでいると感じます。後見人や後見監督人が、ある時期にはたくさんの仕事をしてもらわなければいけないけれども、ある時期には本人の状況を見ながら、それほどたくさんのことをするということがかえって本人の利益にならないというか、本人の意思にも反するというような局面があって、そこを見究めて随時にしていこう、そういう仕組みにしようという方向で議論が進んでいると理解することができます。今までの民法の仕組みはどちらかというと、そこのところがかちっと決まってしまっているようなイメージを持たせがちだったきらいがあります。御示唆の方向で議論を進めてまいろうと考えますから、引き続き見守っていただきたいとお願いいたします。ありがとうございます。 ○花俣委員 今、お二方からの御意見と、変わりはないと思いつつ、今のところ先生方の御議論を聞いていますと、私としては、法定後見制度の見直しと任意後見制度そのものとが今後どういうふうに関連していくのかという理解が十分でないのが率直な感想です。   それともう一つは、久保先生からお話のあった費用の部分、これは育成会さんだけではなくて高齢者、高齢世帯についても同じようなことが言えるかと思っています。任意後見契約を結んで、発効した後に監督人さんの費用もまた発生してくるというところでは、最初の任意後見契約を結んだ方が御親族でない場合、専門職に頼んだときに、更に監督人が付くということについては、同じような感想を持っております。   先ほど佐久間先生から、本人の意思の尊重を最優先にするのであれば、できる限り任意後見から入っていった方がいいのではないかという御意見もあったかと思います。一方で今、高齢者全般、特に認知症高齢者の身寄り問題というのが別のところで大きく課題とされています。育成会さんの場合はお子様ということになりますが、認知症高齢者の場合は当事者が単身独居がどんどん増えることを考えると、これもなかなか、任意後見を入口にすることさえハードルが高いのかという気もしております。   いずれにしてもこれから、自分の意思でどなたを後見人にできるのかというところが任意後見制度の一番のメリットと認識しておりましたので、そういう意味では広くこれを利用する方が増えるのは好ましいと思います。先ほど言いましたように、法定後見制度の見直しとどんなふうに関わっていくのかというのをしっかりと見ていきたいと思っております。 ○山野目部会長 花俣委員に御尽力いただいているとおり、ここで検討している成年後見制度の改革と併行して、地域社会福祉の見直し、前進の方策の検討も今進められているところであります。どうしてもこの会議室で議論していると、後見という言葉ばかり飛び交いますけれども、あわせてもう一つ大きなイシューとして、福祉の場面での制度改革の努力というものに今正に花俣委員御自身にも携わっていただいているところでありますから、そういうものが出そろった段階で、それぞれのメニューの分担関係が改めて明瞭になるように、一回そのおさらいをしてみなければいけないということも、今のお話で感じました。どうもありがとうございます。   先に進みます。部会資料12の19ページからの第3の部分、任意後見制度と法定後見制度との関係についてお諮りを致します。この部分について、事務当局から資料の説明を差し上げます。 ○木田関係官 部会資料12の19ページ以下、「第3 任意後見制度と法定後見制度との関係」について御説明いたします。   部会では、任意後見制度と法定後見制度との併存を認めるべきとの意見や、仮に任意後見制度と法定後見制度との併存を認めるとしても、両者の権限の抵触及び重複がない仕組みとすべきとの意見が出されました。そこで、20ページ以下の2において、任意後見制度と法定後見制度との併存の可否について、22ページ以下の3において、任意後見人と成年後見人等との権限の重複及び権限の優劣について、24ページ以下の4において、任意後見人と成年後見人等とが併存した場合の監督の在り方について、考え方を整理していますので、これらの点について御議論いただきたいと考えております。   なお、任意後見制度と法定後見制度との併存の可否に関しては、法定後見制度の利用が先行しているときに、後から任意後見契約を発効させて併存するケースも許容するのかについても御議論いただきたいと考えています。 ○山野目部会長 ただいま説明を差し上げた部分について御意見を頂きます。 ○小澤委員 ありがとうございます。任意後見制度と法定後見制度との関係についても、この部会資料のとおり整理することでよいのではないかと考えています。任意後見制度と法定後見制度の併存は、基本的には任意後見契約では権限が不足している点を法定後見で補充できるようにするものだと考えておりますので、権限重複が問題になる場面は限られると思っています。権限が重複する場面がもちろん全くないわけではないでしょうけれども、そのような場合を想定して新たな規律を設けることまでは必要がないのではないかと考えていますので、このような場合には取引の相手方の保護なども考慮し、代理制度一般の考え方を前提として、任意後見人、法定後見人、後見監督人の間で調整により解決するという運用上の取扱いで解決することが適当だと考えています。また、任意後見制度と法定後見制度が併存した場合の監督についても、部会資料24ページ20行目以下に記載されているとおり、運用上の工夫で十分対応可能だと考えています。 ○小出委員 ありがとうございます。前回の部会の際に、当協会の方から22ページの権限重複の場合の権限の調整について御発言させていただきまして、部会長の方から、具体例を踏まえた上で、権限重複に係る問題点について理論面、実務面の整理と、整理を踏まえた形での意見について宿題を頂戴している認識でありますので、この場をお借りして、検討結果について御報告をさせていただければと考えております。   まず、簡単に結論のところを申し上げさせていただきますと、権限重複を法律上認めないとする規律までは不要と考えております。ただし、これまで申し上げさせていただいたとおり、実務上権限重複でトラブルが発生した場合には、やはりその対応のところは大変というところがございますので、運用ベースで不要な重複については避けていただきたいというところと、トラブル発生時については、先ほどありましたような運用上の工夫等で対処できるようにお願いをしたいというところでございます。   少しこの後、詳しく検討のところを御説明させていただきますと、まず、どういった場面で問題になるかというところで、金融機関での取引の事例を挙げますと、被後見人の預金全額を原資として後見人Aと任意後見人Bから異なる先への振込の申出が同時にあって、両方の申出を実行するには原資が不足する場合等が考えられます。もう少し具体的に申し上げますと、預貯金管理全般について代理権がある後見人Aと、介護施設への事務全般、支払等も含めて代理権を保有する任意後見人Bが存在しまして、Aからは株式会社○○への支払のため、Bからは介護施設費用を肩代わりした、例えば親族への振込申出があって、同時に申出を受けたものの、両方を実行するには原資が不足するケースにはどうすればいいかというようなトラブルが発生しうるという声がありました。   理論面での整理では、取引の相手方の責任に関して、まずA、Bどちらと取引すべきかという点については、取引の相手方としては両名とも権限者であるので、A、Bどちらと取引しても、取引の相手方の銀行は原則、免責されると考えております。ただし、個別具体的な事情によっては金融機関が免責されないケースもあり得ると考えていまして、例えば、後見人Aが金融機関へ代理人として届出済みでありますが、任意後見人Bは届出未済である場合において、金融機関が合理的な理由なくあえて任意後見人Bの振込取引を受け付け、後見人Aの取引ができないことにより何かしらの損害が発生した場合等が考えられます。   次に、金融機関が両方の振込の取引の申出を受け付けしないことにつきましては、ここは特段の事情がある場合を除きまして、本人の委任事務を実行する代理人側の合意形成ができていないことを踏まえ、受け付けないことについては一定の妥当性があると考えておりますし、仮に代理人等から金融機関の債務不履行の責任を問う訴訟があった場合でも、金融機関が債務不履行に至った原因は代理人側のところにあると考えられますので、債務不履行の責任に問われる可能性は低いのではないか、という意見がありました。   では、実務面も問題ないのかという点は、理論上、先ほど申し上げたとおり、取引の相手方としてはどちらと取引しても免責される可能性が高いとはいえ、金融機関側の立場で、預金者本人にとって後見人A、任意後見人Bのどちらの申出を優先すべきか判断が付かないことや、代理人間の紛争に巻き込まれたくないということもありますので、どちらの申出も受け付けないという金融機関が一定数存在すると考えております。   また、どちらの申出も受け付けないことについても、最終的に免責される可能性が高いとしても、代理人双方との応対負担でしたり、仮に訴訟に至った場合については、訴訟対応コスト等、トラブル対応に伴う人的コストが発生する見込みもありますので、金融機関においては各行の運用の中で、複数権限者が存在する場合には、例えば後見人の届出は1人に絞っていただく等であらかじめトラブルを回避しようとするケースも考えられ、実際に現在もそのように運用している銀行もあるものと考えております。   以上を踏まえまして、冒頭申し上げたとおりなのですけれども、後見人、任意後見人は、それぞれ理論的には単独で権利行使が可能ということと、双方から異なる申出を受けた場合に、どちらを受け付け、又はどちらも受け付けしなかった場合でも、相手方としては免責される可能性が高いことから、後見人と任意後見人の併存を認める場合において権限重複を認めないとする民法上の規律までは必要ないと考えております。   一方で、代理人間で意見の相違が発生し、本来優先すべきだった取引が履行されない、又は取引の相手方に取引に応じてもらえないといった場合には、そういった事態は預金者本人にとっても望ましい事態とは考えられず、また、取引の相手方の立場でも、そういった争いのところで人的コストが発生するなど、権限重複によるトラブルは回避すべき事態ではありますので、運用ベースの要望でありますけれども、家庭裁判所の権限付与等の場面で、不要の権限重複は発生しないようにしていただきたいという点を要望させていただきます。   また、保護の必要性の観点からも、後見人、任意後見人に権限重複があり、万一トラブルが発生した場合においては、家庭裁判所や監督人に相談すれば解決に導いてくれることになれば、円滑な対応の一助になると考えておりますので、部会資料や前回の部会等で御発言がありましたとおり、任意後見監督人が成年後見人等も兼任する運用や、任意後見監督人が成年後見監督人も兼任するなどの工夫により、共通の監督機能が働くことなどが必要だと考えております。   すみません、少しお時間長くなってしまったのですが、以上でございます。 ○山野目部会長 詳しい御検討を頂きました。小出委員始め全国銀行協会の皆様におかれては、労をとっていただきまして誠にありがとうございました。御礼申し上げます。   引き続き御意見を頂きます。 ○根本幹事 私からは3点申し上げます。まず、併存そのものがどのような場合に制限できるかというと、それはなかなか難しいのだろうとは思います。端的に申し上げれば、部会資料21ページの18行目でしょうか。仮に任意後見で追加できる、変更できるとしても、最終的に任意後見と法定後見のどちらを利用するかは本人の選択に委ねられているというのは、本質を突いた御指摘だろうとは思います。   他方で、3点目の指摘で申し上げますが、権限の調整が必要な場面というのは必ずありますので、家庭裁判所が仮に調整すると考える場合でも、何らか根拠規定がなければ調整はできないということになってしまいますので、その点については3点目のところで詳しく申し上げたいと思います。   2点目の指摘としては、今回の部会資料の中で、最終的に現行法の10条の特に必要と認められるときという任意後見優先の原則の規律がどのような規律に変わっていくのかということが明らかにされていないように、私が読む限りでは思っております。この10条の規律をどのように考えるのかということが今後、中間試案に向けては非常に重要になってくると思っています。   その関係で、現状の実務の中で非常に問題になっていると私自身が感じているのは、部会資料22ページの11行目のカのところなどにも関係するのだと思いますが、現在の実務において、法定後見が申し立てられる、特に、例えば保佐開始の審判が申し立てられ、調査官調査等を含め審判、代理権付与がされるまでは数か月掛かるということは審理期間としてあるわけです。その間に任意後見契約を結び、任意後見契約即効型として任意後見監督人選任審判の申立てをされるという事例が少なからずあります。これは裁判例の東京高裁や各高裁若しくは各家裁のレベルでも、判例集を見ていただければ出てきます。任意後見後行型ないし潜脱的な任意後見と呼ぶとして、実際に裁判上で認定されているケースもあれば、そうでないケースもありますけれども、法定後見の申立てを妨害する、若しくは阻害する目的でされている任意後見であるので法定後見を優先すると判断されている事例も実際にあるぐらいです。この10条との関係をどう整理していくのか、若しくは先後関係をどう整理していくのかというときに当たって、潜脱的かどうかを認定していくというのも困難かと思うところもありまして、時的な基準として任意後見は契約日で、法定後見については申立日を基準に任意後見との先後関係を判断していくという考え方を採っていけば、申立て後に即効型で任意後見契約を結んで、法定後見を汚い表現になりますが、潰しに掛かるようなことというのは防げるのではないかと思います。先後関係との関係では、規律する考え方というのは法制化されるべきではないかと思っています。   3点目は、併存が認められるとして、その権限の調整のところについて、今までの御発言の中では、調整を当事者間で行う、若しくは運用上というお話もありまして、それはそれでそういった場面もあるとは思うのですが、実際に調整できない場面や、運用では如何ともし難い場面というのも当然想定されるのだろうと思っています。   例えばは、現行法においても身上保護面でよく問題になる、例えば親族による囲い込みもそうですし、若しくは、施設入所されている方でも、身元引受人若しくは緊急連絡先になっている方が拒否すれば、それ以外の親族を会わせないということで紛争化しているケースというのは幾らでもあります。若しくは、任意後見人が、監督人が付くことについて非常に強い抵抗を示されるというケースもあって、そういう場面では家裁の現場では非常に苦慮されていると承知をしています。任意後見契約がある状態で法定後見が後からかぶさってくるというケースもそうですし、法定後見がある中で何らか任意後見契約が結ばれるというケースのどちらにおいても、全てがということではないので、権限調整できる規定を設けるということでいいとは思っていますが、権限調整しなければ本人保護が図られないとか、若しくは円滑な業務遂行が全くままならないという事案も、容易に想定できるので、権限の調整規定を入れずに併存を認めるということになれば、恐らく法定後見でかぶさっていく、その専門職の後見人は全く何も身動きがとれなくなるということは、これは避けなければいけないと思っています。   先ほど小出委員からもありましたが、金融機関によっては、例えば、そういった問題が起きている場合は受け付けないとか、若しくは片方の届出を優先させますということになると、結局権限は持っていても権限行使できなくて、御本人の権利擁護が図られないというケースも出てきますので、きちんと整理をすることが必要だと思います。特に任意後見の場合には、法定後見では、交代とか解任の議論がありますけれども、任意後見は交代ということは、新しい別の方と任意後見契約を本人結ばない限りは基本的にないのだろうと思います。解任まで行くというのは非常に難しいということにもなりますから、そういう意味でも権限調整規定が必要だということになります。   家庭裁判所が調整をするということについて、根拠規定が必要だということになると思いますので、特に任意後見人が不適切であるという場合に、解任まで至らないケースはありますので、例えば一部の代理権を停止させるというような考え方ですとか、若しくは場合によっては停止では足りないときは、一部解任という場面もあるのだろうと思いますので、それは部会資料23ページの24行目のイのところなのですけれども、根拠規定がなければ、逆に家裁はできないはずなので、根拠規定は設けるべきだと思います。根拠をどのように理論的に説明するのかについては、先ほど申し上げた御本人の保護ですとか、御本人の利益になるとか、文言はいろいろあると思いますが、という観点と、あとは円滑な事務遂行という観点から、必要性がある場合については制限を加えていくということは、これがないと本当に回らないと思いますので、切実にこれはお願いをしたいと思います。 ○山野目部会長 根本幹事が何回も回らないとおっしゃった権限調整規定について、御意見の趣旨を少し明らかにしておきたいと考えます。権限調整の規定とおっしゃるものは、将来に向けて権限の分掌の定めを含む取扱事務の指定をするという仕組みが望まれるというお話だと理解してよろしいでしょうか。 ○根本幹事 はい。 ○山野目部会長 それをするのは家庭裁判所であるという想定で今お話しいただいているという理解でよろしいでしょうか。 ○根本幹事 はい、それ以外の機関では難しいのではないかと思います。 ○山野目部会長 それから、既に行われた事務ないし権限行使について、遡ってそれを否定するという仕組みを御提案として含む趣旨ではないと受け止めてもよろしいでしょうか。 ○根本幹事 はい。 ○山野目部会長 了解しました。 ○佐保委員 本人の自己決定を尊重した任意後見制度を優先した上で、事理弁識能力を欠く常況にある場合は、必要に応じて併存を認めるという考え方でよいのではないかと考えております。権限の重複については、前回も申し上げましたが、家庭裁判所において重複が生じないように代理権を付与するなど、整理する必要があると考えております。しかし、それでも重複する場合は任意後見を優先させる方向性の方が、本人の意思尊重に沿っているのではないかと考えております。   併存した場合の監督の在り方については、任意後見人と法定後見人で共通した監督人でなければ、併存した際に生じる問題の把握が難しいのではないかと考えております。そのため、新たに法定後見制度が開始される際に、任意後見監督人の継続も念頭に入れながら、改めて成年後見監督人を選任するという方向性でよいと考えております。 ○佐久間委員 先ほど一度申し上げたことを繰り返すことになりますけれども、任意後見を基本とするというか、優先を徹底するという考え方について、こういう利点があると思うというのと、問題点があるということも自覚しておりますので、それを申し上げたいと思います。その上で、権限の併存についてお話を致します。   任意後見をとにかく優先するのだと、法定後見の開始は任意後見では対応できない場合にすべきなのだということを先ほど申し上げました。任意後見では対応できないのは、本人が事理弁識能力を欠く常況にあるときと、そうではないにしても保護者の同意、取消しはどういう構成になるか分かりませんが、同意を得ずにした行為についての取消し、この保護が必要なときに限るべきだと申した次第です。   そのようにすることには次のメリットがあると思っています。一つは、先ほど申しましたけれども、本人意思の尊重のより一層の重視という制度改正の趣旨にかなうということです。本人は任意後見契約を有効に締結することができる立場にあるわけですから、そのようにすることが望ましい。国連勧告にも相当程度これはこたえるものになると思いますし、この会議でも、今回は当然、相当程度踏み込んだ改正がされることになると思いますけれども、更に将来一層のという御意見もあったと思いますが、それに対する大きな一歩になるのではないかと思っている次第です。それから2番目には、保護者を自ら選びたいというニーズにこれはこたえることができる。3番目に、裁判所の人的、物的資源の制約にも配慮したものになる。これらがメリットです。   ただ、問題点は既に先ほどの御指摘で久保委員、花俣委員からあったと思いますが、一つは費用がかさむ。これは、今のままだったら明らかだと思います。ただ、費用がかさむということに関しては、部会長がおっしゃったことですが、監督の在り方に対する工夫が考えられる。もう一つ、これを言うとなという感じはあるのですけれども、裁判所に多くを期待できない現状と将来の見通しがあるとすると、どこかで誰かが費用は負担しなければいけないわけで、受益者負担という考え方はあり得るのではないか。それで必要なところには国の補助に期待するといったことが考えられるのではないか。でも、ここは大きなポイントだということは自覚しております。   もう一つは、独居の方などを典型に、受任者を見付けることは困難ということもあると思っています。ただ、法定後見でも結局誰かが保護者を見つけてくることになるわけですから、社会を変えるという意味では、そのような方についてこの人を任意後見人とすることが考えられますよ、というような紹介システムのようなものの構築をこの際目指すと。繰り返しますけれども、なかなか全部通るとは思っていないのですけれども、一応意見として出そうということで、そのようなことも社会の方向として目指していくことが望ましいのではないかと思っています。   問題点としてもう一つ、資料に21ページの12行目から、本人が法定後見の利用を希望しているのに、それを拒むのは困難とありますけれども、それは現行法の発想に立っているからであって、そこを変えていきましょうと。法定後見を希望したって、それはあなたは使わなくていい人なのですということ、そういう言い方をすると厳しく聞こえるかもしれませんが、自分の意思を尊重するほかの制度の利用をまずは考えましょうね、というふうにしていこうということなので、これは大きな障害にはならないのではないかと私は思っています。   仮にそのような形で任意後見で保護が開始したという場合に、しかし、例えば保護者の同意、取消しによる保護が必要になった、あるいは本人が事理弁識能力を欠く常況になってしまった、任意後見の変更では対応できないということは出てき得る。このときは法定後見との併存は当然、私のような考え方でも、起こり得ることになります。そのときは、本人又は保護者ですかね、事理弁識能力を欠く常況になった人については任意後見人が、任意後見プラス法定後見にするのか、費用のことを考えると、法定後見一元化、任意後見では対応できないので、任意後見一元化はあり得ない、法定後見一元化についてはあり得るということから、それは本人側の選択を許すということにするのが適当ではないかと。両方併存させますという選択を本人側がしたということになると、権限の重複は場面によって避けられないことになりますけれども、それはやむを得ない。なるべくその場合には法定後見の方で任意後見との重なりを少なくするような努力がされるということに期待する、ということになるかと思っています。   これは飽くまで私がこのように考えるという立場に立ったときでありますけれども、そうでない、現行の制度を前提としていく場合でありましても、完全な一元化というのはやはり好ましくない、一元化しようと思ったら法定後見に一元化するしかないということになりますので、本人が費用負担も含めて任意後見を残してもいいと考えているところでは任意後見を残すと。法定後見を開始して、権限の重複が避けられないにしても、なるべく避けるという努力をしつつ、任意後見も残していくということにするのが適当だと私は思っています。   最後に、家庭裁判所による任意後見人の権限行使の停止についてですけれども、この停止ということでどういう仕組みが考えられているのかはよく分かりませんけれども、もし本人側から何らのアクションもないのに、本人側というか本人が、事理弁識能力がある場合は特にそうですが、本人の請求とか同意に基づく請求とかがないにもかかわらず、誰かが何かを言ったことによって家庭裁判所が権限行使を停止するというのは、任意後見人に濫用的な振舞いがみられるとしても、それは少しどうかなと思います。   どうかなと思うということから、では任意後見人に濫用的な振舞いがある場合だったらどうするのかということについては、先ほど根本幹事がおっしゃった一部解除のようなものとか、全体として解任というのはあり得るし、もうこの権限は要りませんというときには一部解除を認めていくということがあっていいのではないかと思います。後での話になるので、今ここでは申し上げませんけれども、解除についてもう少し柔軟にできるようにしてはどうかということも考えておりますので、それも含めて、一部解除で対応するというのはどうかと思っています。   すみません、長くなりました。 ○山野目部会長 いえ、頂きました。 ○野村幹事 権限の重複についての意見を述べたいと思います。先ほど小出委員や佐保委員もおっしゃっていたのですが、両方の制度を利用する場合には、代理権の重複がないようにするのを原則にしていただきたいと思いますが、場合によっては重複するということもあり得ると思われます。例えば、財産管理がうまくできていない親族について、その財産管理について専門職の法定後見人が選任されるということもあり得ます。法定後見人が関与して整理する中で、財産管理を親族が行うことに特段問題がない状況になったと見られると、その時点で法定後見は終了することになるという使い方はできると思います。任意後見の代理権がある場合には、保護の必要性がないことがほとんどなので、その部分について法定後見を利用するということは原則ないと思われますが、先ほど述べたようなケースは重複もあり得ると思いますし、また、結果的に発生する事務手続等について重複するということは起こり得ると思います。そのような場合は、複数後見が選任されているケースと同様に、双方で調整して権限を行使するということになると思われます。 ○上山委員 一つ、佐久間委員へ質問と、もう一つ、事務局に対するお尋ねになるかもしれません。   先ほどの任意後見優先の佐久間委員のお考えについて、私は基本的に実は賛成でして、理念的にはその方向を追求していくことが望ましいだろうと考えています。その上でのあえてのお尋ねになるのですが、佐久間委員が提示された制度設計の場合に、例えば、任意後見契約をまだ結んでいない御本人が、認知症のために判断能力が一定程度低下されたあとで、法定後見の利用を申し立てたときに、あなたの判断能力の状態ではまだ任意後見契約が締結できるはずだから、法定後見利用の必要性がありませんねということで、その申立てを却下する形まで踏み込むことを想定されているのかというのを、まずお尋ねしたいと思います。 ○佐久間委員 私のように考えるならば、それは申立てを却下するしかないということになります。ただ前提として、上山委員も当然そのようにお考えになっていると思いますけれども、本人がいきなり家庭裁判所にぽんと申立てを持って行くということは考えられないので、どこかで最初に相談、調整が行われる。その場面でサポートされている方々が、いや、あなたの能力だったらまだ事理弁識能力を欠くわけではない、取消しも要らないのだったら、これは任意後見になりますよというふうに、事態としては普通流れていくだろうということを考えています。 ○上山委員 分かりました。基本的にお考えの方向に賛成だということを前提にした上で、二つ憂慮していることがありまして、まず一つが、そもそも即効型については現状、先ほど根本幹事の御発言にあったように、かなりゆがんだ使われ方をしている場面もなくはないということがあります。このため、任意後見契約の締結についてのサポートを考えた場合に、現在の公正証書作成という仕組みだけで十分に本人の真意を反映したものとすることを保障できるのかというところが少し心配だなと。   もう一つは、杞憂かもしれませんけれども、あなたはまだ任意後見契約ができるのでという形で却下をするということは結局、任意後見契約ないし任意代理の利用を事実上強制するような形になりはしないかという気が若干しまして、それは任意後見契約の本来の基盤である契約自由原則との考え方に照らして、若干その整合性について説明が要るのかなと感じるという点です。これがまず、佐久間委員に対するお尋ねです。   すみません、もう1点、今の点とも関連するのですが、22ページの正に法定後見先行型について、私は基本的にはこの法定後見先行型についても併存の余地を認めてよいと考えているのですが、ただ、ここで想定されている法定後見先行型というのが、先ほどの、既に法定後見が開始されているのだけれども、即効型の形で新たに任意後見契約を結ぶというケースも含んでいるのか、それとも、既に任意後見契約が登記されている状態で、いったん法定後見が開始された後に、今度は任意後見契約上の代理権が必要になったのでこれを事後的に発効させるというケースだけを想定しているのかということを、整理する必要が少しあるかなと感じました。余り細かく場合分けするとかえって混乱するかもしれないのですが、今申し上げたように、現在の即効型の使われ方を考えると、少し場面を分けて検討する余地もあるのかなと感じたということでございます。 ○山野目部会長 事務当局から何かあれば、お願いします。 ○波多野幹事 波多野でございます。22ページのカで書いているところの趣旨は、これまでの御議論の中では恐らく、任意後見が先行していて法定後見をその補完的に使うことを想定して併存を認めますかということが主に議論されていたところかなとは思うのですけれども、新しい制度の法定後見が柔軟になることも視野に入れつつ、それが先に走っている場合もあるのかもしれませんし、法定後見が先にある場面で任意後見が後から来るというときにどういうふうに考えるのかということも、少し整理をする必要もあるのではないかという問題意識の下、部会での議論を頂いて、必要に応じて整理をさせていただくのかなと考えたところでございます。 ○上山委員 よく分かりました。ありがとうございます。 ○青木委員 前回でも御発言したように、部会資料を作るに当たって、併存となる場面というのを、先ほどの佐久間先生のお話も含めて整理を頂いて示していただきたいと思います。1つ目は、同意権・取消権付与のように、そもそも任意後見では設定できない権限を設定することが必要な場面、2つ目は、任意後見契約の代理権目録の中には含まれていないので追加で代理を設定することが必要な場面、ただそれは任意後見の代理権追加でするのか、法定後見の方で権限付与するのかという場面、3つ目は、既に任意後見契約において代理権があるけれども、権限が重複することをやむなしとして法定後見の利用が必要な場面、この3つに分けていただいて議論すると、思考的には非常に分かりやすくなるのではないかと思っています。   その中で、3つ目の権限の重複がやむを得ない場合として併存させる場合についても、できるだけやはり権限が重複しない方がいいということは既にお話しのとおりで、私もそう思いますので、法定後見の権限付与をすることにした家裁の判断から見れば、法定後見の保護の必要性の吟味の中で、既にある任意後見契約の代理権と重複してでも法定後見で権限設定をしないといけないかという検討をするわけですが、その結果、それが必要で代理権付与が可となった場合は、任意後見人の代理権に委ねるだけではうまくいかない何かの理由が任意後見側の代理権にあるということだと思います。それは任意後見人の対応、資質が具合が悪い、あるいは任意後見人がその権限について期待される職務ができないとか、そういうものがある場合ですので、その場合には、法定後見の代理権付与を認めた裁判所としては、権限の重複を避けて、任意後見人のその代理権を停止することが素直だと思っています。そして、重複させるべき事情が解消され、任意後見人に代理権行使をしてもらえるようになった際には、任意後見優先の原則に基づいて、法定後見は取消して、任意後見人の代理権停止をやめて復活させるということではないかと思っています。   その際の任意後見人の代理権停止の手法なのですけれども、今回の資料にまとめていただいていることとは別に、私が前回申し上げたのは、現行の法定後見で不正事案への対応のときに、後見人等の職務執行の停止と、職務代行者の選任をすることが家裁によってできることになっていまして、この場面は不正対応ではありませんけれども、任意後見人の職務が適正ではないので法定後見による代理権付与の必要性があると判断したのですから、それに基づいて任意後見人の当該代理権を職務執行停止をすることとし、この場合には職務代行者を定めるわけではないですけれども、その分、法定後見で代理権を付与するということができるのではないかと思いますし、そのことによって金融機関側も明瞭に権限を持つ者が分かるようにできるのではないかと思います。   この場合は、何らかの事情で任意後見人に権限行使をさせることに問題があるということで法定後見の代理権付与の必要性を認めているので、任意後見人に代理権限を付与したという本人の本来の意思を否定することになりますけれども、それは否定をしてでも法定後見による保護をする必要性があると裁判所が判断した場合ですので、やむを得ない措置であるという整理ができると考えていますので、そういう整理をした記載を中間とりまとめの説明ではしていただけないかなと思っているところです。   それから、部会資料12の23ページで、遺産分割のときにお金を使う必要もあるから権限重複することがあるという例を出していただいているのですけれども、遺産分割の権限があるからといって、本人さんの預貯金等の出入金の権限が当然に含まれるということにはならないと思いますので、例示として書かれるのが適切な事例なのかどうかとは思います。遺産分割の協議とともに本人の不動産なり預貯金を動かす必要があるのであれば、それについての代理権を別に付けていただくということになれば重複しますが、遺産分割の権限があるからといって、任意後見人の金銭管理、預貯金の代理権と当然には重複しないのではないかと思いますし、それは福祉サービスの契約と福祉サービスの利用料を払うための預貯金の権限というのも同様だと思いますから、そこを意識して区別して代理権の設定をする実務をしていただくことによって、できるだけ権限の重複を避けるということにもつながるのではないかと思っています。 ○根本幹事 佐久間先生から御提案がありました任意後見優先というところの枠組みについて、一つ思考の整理という観点で法定後見側から見た点と、あとは地域福祉から見た懸念点というのを申し上げておきたいと思います。思考の整理という観点で申し上げますと、法定後見の側から見ますと、いわゆる補充性の要件ということになるのだろうと思います。法定後見の議論において、少なくとも今までは保護の必要性の一要素として補充性を見るという議論であったかと思いますけれども、任意後見契約できるということによって補充性の原則の適用により直ちに却下をするということになりますと、これは保護の必要性の一要素と見るのではなくて、補充性を一つの独立した要件として見るということに論理上なるのではないかと思うところもありまして、そこの整理が必要になるということです。あわせて、裁判所の実務をイメージしたときに、申立てがあったときに、この方は任意後見契約の締結能力があるのか、ないのかということを補充性要件との関係では必ず審査しなければいけないというところにまで至るのか、だとすると現行法、今の実務においても、任意後見契約の締結能力が問題になって裁判になるというケースは幾つかあるわけですけれども、その判断を毎回家裁が行うということが実務上耐えられるのかという観点でも検討が必要なのではないかと思ったというのが一つです。   もう一つは、地域福祉との影響ですけれども、二つあると思っていまして、一つは市区町村長申立てがかなり後退してしまうのではないかということを少し懸念をしました。この方は任意後見できるかもしれないのだから、首長申立ではなくて任意後見をまず判断してくださいということを、自治体が事前にそこまで判断するということを結果的には求めるということになり、地域福祉にとってはかなり重い負担になるのではないかということが懸念されるということです。あとは、佐久間委員が問題点ないしデメリットではないかとおっしゃられていた点とも関係しますが、今地域福祉の現場で任意後見契約がなかなか進まない一つの理由は、任意後見契約というのは御本人とその受任者との間の私的なものであると、そこに公共性を帯びている機関、公的機関が関与するというのは少しためらわれるということが、地域福祉の中で任意後見が進まない一つの要因になっているのではないかとは思いますので、その辺りをどう整理していくのかということも考えなければいけないのではないかと感じました。 ○竹内(裕)委員 この併存の問題については、どのような権限付与されるのかというところにもよって大分変わってくるのかなと思っていまして、それが広い権限であるのか、特定されているのか、それぞれ任意と法定でどのくらいの権限なのかというところでも関わってくるので、一概にはなかなか言えないところがあるなと思っているのが1点です。   あとは、任意後見が先行して法定後見が後行、法定後見が先行して任意後見が後行である場合も、こういう場合もあるのではないかと思ったのが、基本、任意後見は元々信頼関係のある方にお願いしているというところなのですが、法定後見をその後、付けたというような場合であって、もしかしたらそこですごくいい出会いがあってというか、この法定後見人になられた方がすごく自分は好みであるとか、非常に相性がいいというようなことも場合によっては生じるのではないのかと、さらに、元々任意後見人が不適切であるような場合であるとか、やはり併存したけれども任意後見人の方が自分はいいのだと思うような、そういったいろいろなパターンがあるように思いまして、なので、やはり御本人の希望というか、一番生活しやすいようなやり方で、任意後見から法定後見に一本化とか、法定後見から任意後見に一本化とか、あるいは併存とか、その辺りをやりやすくなるような制度設計ができるといいなと思いました。   そのためにどういうところの手当てが必要なのかなと思いますと、場合によって不適切な後見人、任意も法定もそうなのですけれども、が解消できるように、先ほど一部解除、解除をやりやすくというお話も出ていましたが、解任のところとか解除とか終了要件のところを充実させていくことがそこに関係してくるのではないかと感じました。 ○山野目部会長 人の出会いは様々ですから、柔軟に対応ができるような仕組みにしていかなければなりませんね。ありがとうございます。 ○佐久間委員 いろいろ御意見いただきましてありがとうございます。今思っているところを申し上げます。   まず、即効型に対する濫用の危険ということは、それはあると思います。あると思いますけれども、他方で、根本幹事もおっしゃってくださいましたけれども、任意後見を優先するということを考える場合には、法定後見が開始していても任意後見で対応できるならば、補充性の要件が満たされないということで法定後見を見合わせるということだってあり得るのではないかということに表れているとおり、飽くまでやはり即効型で変なことがあるというのは病理現象であることは間違いないと思うので、病理現象に対する対応をきちんとできるようにするということを考えつつ、任意後見優先ということにしていけばいいのではないかと思っています。   2点目でおっしゃってくださった、任意後見の強制は契約自由の原則に反するのではないかということですけれども、いや、任意後見をするかしないかはある意味、自由であって、法定後見を使う自由などというものは本来ないともいえる、私の立場からでは。そういえることなので、契約自由の原則に反するということはないのではないかと思っています。   それから、根本幹事がおっしゃってくださった補充性の概念が変わるというのは、それはそのとおりでありまして、任意後見を優先していきましょうということであって、法定後見について、これはずっと前から言っているのですけれども、任意後見で対応できるところは法定後見の必要がないと認めていくことは可能なのではないか。補充性の中で、どういう制度で対応できたら補充性の要件が満たされないことになるのかというと、任意後見をそこに一つ加えるべきだとずっと主張してきていることがそこに表れています。   自治体についての対応ができないのではないか、市区町村長ですね、これはそのとおりだと思います。そのとおりだと思うというのは、特に身寄りのない方について、先ほど申し上げたとおり、その人についての対応を万全にできるかと言われると、今の仕組みでは難しい。どちらかというと、市区町村長に頼らなければいけないようなことにならない社会を作る方向を目指しましょうということでありまして、そこが対応できるとは思っていません。 ○山野目部会長 社会福祉法を改正して、中核機関に当たるものの法制化に向けての努力が重ねられていくでしょうが、社会福祉法の法文を改めたからといって、中核機関の機動的で極めて果敢な活動が、究極の日本の福祉社会では実現すべきであるとしても、法律が改正されると、全国の中核機関がそういう活発な活動をして、場合によっては自分で任意後見人の候補者を探してきて本人と協議をするというようなところまで行くでしょうか、その日が21世紀の日本にいつかやってくるとよいですけれども、最初からそうはいかないですから、民事法制の方がある順番を余り硬直に決めてしまうような仕組みになっていなくて、福祉の発展を見守ることができるような制度というか、規律内容にしておくということも、工夫ができる範囲で考えていかなければいけないかもしれません。ありがとうございます。 ○波多野幹事 1点御説明と、1点御質問になるかもしれませんが、1点、青木委員から頂いた23ページの遺産分割の事例ですけれども、私の理解では、遺産分割についての代理権が与えられた方が遺産分割協議の中でいわゆる代償分割のような場面に出くわしたときには、お金を払わないと物を確保できないという場面もあるのではないかというような例が挙げられたのかなと思いまして、そうすると、遺産分割の代理権がある以上は、その代償を払う部分についてまで権限があるという前提で、重複する場面があるのではないかという例を挙げていただいていたのかなと理解をしていたところでございました。そういう理解の下、部会資料を作成したというものでございます。   もう1点は、23ページの下の辺りで、恐らく一部解除、一部停止だと思いますが、御本人のために一部停止した方がいい場面があるということの御指摘ですが、その場合に要件をどう考えるかというところが今日の御意見では多分、まだ出ていないように思います。解任の要件では多分重いということも御指摘があったようには思いますが、解任の要件では重いけれども、ほかの何も要件なしに裁判所に丸投げして、停止してくださいというわけにはいかないと思います。この要件をどのようにお考えか、もし現時点で何かございましたら、御指摘、御意見を頂ければ有り難いと思います。 ○山野目部会長 どなたへのお声掛けと限っておりませんから、御意見のある方はどうぞ。 ○青木委員 前半の遺産分割の事例なのですけれども、代償金の支払というところまでは当然遺産分割の権限の中ですけれども、代償金の支払をするために本人さんの預貯金の出入金の権限を持つということは、また別ではないかという趣旨で発言させていただきました。   それから、後半ですけれども、私は、権限の執行停止の要件というのは、元々の法定後見の代理権付与の必要性の中で検討されているという理解をしています。預貯金の出入金などの管理の代理権は、すでに任意後見人が持っているのだけれども、本人さんのための適切な金銭管理ができていないので、その部分については法定後見で別の者に同じ代理権を付与し、金銭管理ができる権限を付与する必要性があると判断さられた場合には、任意後見人側の同じ権限がそのまま残っていたのでは本人のための適切な金銭管理ができないという状況なので、執行停止するということだと、金銭管理について例えればそういうことです。権限を重複させてでも法定後見の必要性が認められるかという判断理由によって、執行停止をしないといけない場合と、執行停止をしなくても重複させたまま調整でできる場合とがあると考えるということで、発言をしています。 ○波多野幹事 そうすると、そのときの法定後見の必要性というのは、どのような要件で判断することになるのでしょうか。 ○青木委員 任意後見人が効力発生した段階で、まずは本人さんが自ら金銭管理ができなくて任意後見契約発効による保護の必要性があって、任意後見人が金銭管理をする必要があるということがまずありまして、加えて、既に発効している任意後見人による金銭管理では本人さんのための適切な金銭管理ができていない、したがって法定後見による金銭管理の代理権限を別の者に付与する必要があるということになると思います。 ○波多野幹事 任意後見人は適切な事務ができていないという前提で、今の場面設定がされているということで理解すればよろしいですね。 ○青木委員 私が重複がやむを得ないと思っているものは、そういうものになるのではないかと。どちらがやってもいいような場合に、あえて重複するという場面というのは、法定後見側から言うと、ないのではないかという理解に基づいています。 ○遠藤幹事 波多野幹事からお尋ねを頂いた点にも少し関連して発言致します。  まず、遺産分割の例について言えば、おそらく、法定後見の決定の趣旨をどのように考えるかということにもよるのかと思います。現行制度では、多くの場合、遺産分割に関する諸手続及びそれに関連する一切の事項といった形で代理権付与がされていると承知しておりますが、そういった関連あるいは付随する行為の限度において法定後見と任意後見との権限が重複する部分については、各自行使としなければ、本来目的としている代理権が達成できないことになりますので、各自行使と整理をしておく方がよいと思われます。   他方、青木委員から御指摘があったように真正面から権限が重複するような場合についての認識は、青木委員の御発言とかなり近い感覚を持っております。現行制度においても、先行する任意後見があって法定後見が後から申し立てられた場合は、本人の利益のため特に必要があると認めるときに当たるかどうかの判断の中で、先行する任意後見人の事務に不適正な点があるかどうかや任意後見人が不適任であるかどうかを審査しているというのが、実際の実務なのではないかと考えております。そうなりますと、見直し後も、法定後見が後から申し立てられた場合に、任意後見よりも法定後見を優先する場合というのは、結局のところ先行する任意後見人には何らかの意味においてその事務遂行が不適正であり、任意後見人として不適任というべき事情があるということになるようにも思われ、そういった方に残りの事務をお願いすることが適当かという問題が生じるように思われます。   こういった実務の実際を踏まえますと、先ほど来、併存する場合の調整規定についての御議論があるのですが、併存した場合の調整が必要な場面として、具体的にどういったものが想定されていくのかについて、もう少し整理をしていただくのがよいのではないかと思った次第であります。 ○根本幹事 波多野幹事からの御質問のところに私なりにお答えします。まず、現行法として8条解任のうち任務に適しない事由、9条のところは辞任許可で正当事由で、この実際の中身というのは、事実上困難とか信頼関係という要素だと思います。10条のところの、本人の利益のために特に必要があるというところは、今、遠藤幹事からもありましたが、不適切事由というのを飽くまでも独立させていなくて、基本的な今の10条の審判の判断においては一要素と見ていると思っていまして、ここが権限重複の場面において、私は不十分だと思っていますので、具体的には8条の任務に適しない事由、9条の正当事由に含まれている事由プラス、10条の本人の利益のために特に必要があると、かつ、この不適切事由というものを10条の文言から更に独立させて規定して権限重複の要件としてはどうでしょうか。 ○佐久間委員 波多野幹事から、一部解除はどうやっているのだというのも御質問にありましたかね。私は一部解除を考えたらどうかと申しましたので、私の考えている要件は、まず、本人の請求又は本人の同意に基づく請求権者の請求があった上で、今、根本幹事からも御紹介があった条文の8条の、一部の権限だけですので、著しい不行跡とか不正な行為は普通なくて、当該権限についての任務に適しない事由か、9条2項の正当な事由にそれを読み込むということになると思っています。想定しておりましたのは、法定後見についても解任事由をある程度柔軟化していったらどうかということがあったと思うのですが、それを当該権限限りで見て、同じように考えて、文言としては、「任務に適しない」、「正当な事由」、それによる一部解除ということを認めていってはどうかということを私は考えていました。 ○竹内(裕)委員 私も一部解除はあるなと思っており、要件立てをするとしたら、不適切事由ばかり、そこまで限定をする必要はないのではないかと思っていて、根本幹事がおっしゃった不適切事由と、あとは本人の利益、本人側から見た場合の解除要件、ここが一つ落としどころなのではないかと考えます。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。久保委員、櫻田委員、花俣委員、この後の任意後見の後続の議論と併せてお声掛けをしてもよろしいと考えていますけれども、この時点で何か特段おありだったら、お話を承ります。いかがでしょうか。   よろしいですか。それでは先に進みます。   続きまして、部会資料12の24ページからの第4の部分についての審議に進みます。事務当局から説明を差し上げます。 ○木田関係官 部会資料12の24ページ以下、「第4 任意後見制度に関するその他の検討」について御説明いたします。   まず、24ページからの「任意後見契約の方式、解除及び追加(変更)、予備的な任意後見受任者」について御説明いたします。任意後見契約の方式については、公正証書によってしなければならないとの現行法の規律を維持することが考えられます。また、任意後見契約の一部解除及び発効並びに委託事務の追加変更については、二読目まで御議論いただいた、一部の事務の委任、代理権の付与を段階的に発効させることや、委任されなかった事務を追加することなどについて御議論いただきたいと考えております。また、予備的な任意後見受任者については、予備的な任意後見受任者の定めを可能とする新たな規律を設ける必要があるのか、仮に新たな規律を設ける場合には、予備的な任意後見受任者の定めの発効要件及び後見登記に関する規律についても御議論いただきたいと考えています。なお、部会資料では例として、二読目の議論の中で部会で出された三つの事例を挙げておりますが、この三つの事例のみに限定するものではございません。   また、33ページからのその他では、1、任意後見受任者(任意後見人)が数人ある場合の分掌等、2、任意後見受任者の事務所所在地及び職務上の氏名の登記、3、終了事由、4、法定代理人による任意後見契約の締結について御議論いただきたいと考えております。 ○山野目部会長 御説明を差し上げた第4の部分について、一括してお尋ねします。 ○小澤委員 ありがとうございます。任意後見契約の方式、任意後見契約の一部の解除及び発効並びに委託事務の追加、予備的な任意後見受任者のいずれも、部会資料のとおり整理をすることでよいと考えています。   なお、部会資料の25ページの33行目に公正証書の作成のオンライン化についての記載がございますが、オンライン化により公正証書作成の負担がどのように軽減されるのか、もう少し詳しく記載した方がいいようにも思いました。   予備的な任意後見受任者については、部会資料31ページ35行目以降に、予備的受任者の定めを必要とする場面の記載がありますが、我々が予備的受任者の定めに関する規律や登記が必要であると考えているのは、例えば、主たる委任者との契約が終了してしまった場合に、現行の規律では、予備的受任者の契約を発効するために改めて任意後見監督人選任申立ての手続を行わなければならず、その手続、費用負担や保護に間断が生じてしまうことへの危惧によるものですので、予備的受任者を定めておくことが制度化できれば、現行のような迂遠な方法によらず、任意後見事務が円滑に進み、任意後見の利用促進も図れるのではないかと考えていますので、その点を踏まえての御検討をお願いできればと考えています。   任意後見制度に関するその他の事項については、いずれも部会資料のとおりの整理をすることでよいと考えています。任意後見契約の有効期間については、任意後見制度は本人が望んで利用するものであるため、特に有効期間を設ける必要はないと考えています。また、任意後見契約の終了事由については、予備的な任意後見受任者を定める契約を締結する際に、1個の契約と考えた場合に、主たる任意後見受任者が死亡したときに任意後見契約が終了してしまうことは考えられるのかもしれませんが、民法第653条は任意規定だと理解していますので、任意後見契約の中で、受任者の一部が死亡しても契約が終了しない旨の特約を付すことで対応可能であり、現行の規律を見直すことまでは必要ないものと考えています。   なお、部会資料12の35ページの19行目以下の記述について、予備的受任者を定める契約を一つの契約で行った場合に、主たる任意後見人の受任者が死亡した際に、その一つの契約全体が終了してしまわないように、現行法の委任の終了原因との関係で整理する必要があるということを、もう少し詳しく記載した方がいいようにも思いました。 ○根本幹事 任意後見の今回の改正において、監督を柔軟にするという点とともに、代理権の変更についても柔軟にするという点も非常に重要な点だと思いますので、少し詳しく申し上げたいと思います。変更の場面を私としては五つの場面に整理ができると思っております。   まず一つ目は、発効前です。発効前は、現行法では新たな任意後見契約を結ばなければ代理権目録を変更できないということになっていますが、非常に柔軟性を欠いていると思いますので、同じ任意後見人で代理権目録の内容だけを変更するということであれば、既存の契約の変更という概念を明確に設けて、もう一本任意後見契約を結ぶということでなくするということは必要だろうと思います。   それから、二つ目の場面としては、発効後です。発効後において、まず、御本人に任意後見の契約締結能力があるということなのであれば、公証人の関与の下に変更可能にする。その際に、仮に監督人がいれば監督人、若しくは家庭裁判所が直接監督するということであれば、家裁の許可になるのか、法制上の文言の検討が必要だと思っていますが、そういった形で変更を可能にすることができると思います。   ここから先が問題だと思いますけれども、部会資料の29ページの17行目で、任意後見人と任意後見監督人との合意によって変更するという現行実務上行われていることについて、これを合意した当事者以外の者が変更できるのかというところにも関係すると思うのですが、要件として、一つは、御本人に同意能力はあり、かつ事前に、現行法でいうところの新たな任意後見契約を締結する代理権か、別の条項なのかはともかく、事前に追加を御本人が許容しているということが契約上若しくは代理権目録上明らかであれば、これは変更可能にしてよいと思います。その際に公証人の関与というのは必要になると思いますので、本人に同意能力があるかどうかは公証人の先生に確認をしていただくということだと思いますけれども、監督人としては、自分で契約して即発効させるということになりますので、その点については家庭裁判所に報告をするというようなことが必要になると思っています。   三つ目のパターンは、同意能力を欠いているということになれば、原則法定後見との併存として、足りない代理権を法定後見で補うということが原則だと思いますが、形式的若しくは軽微な修正や変更に関してだけは、変更可能にしていただくということが必要だと思っています。なぜかといいますと、現行の実務上、任意後見の代理権目録が網羅的であると思っていたとしても、例えばですけれども、訴訟行為とだけ記載されている代理権目録では、非訟や調停手続においては、家裁の現場において、任意後見では駄目で、法定後見にしてくださいという判断がされているという報告もあります。例えば、携帯等についての通信に関する契約ですとかクレジットに関する信販取引などにおいても、定期的な支出という内容の代理権だけでは足りなくて、特定の契約を個別に明示をされることを取引の相手方から求められているというケースがあり、そのような場合には結局、任意後見はいかされず、法定後見に移行しているという現状があります。任意後見をできるだけ尊重していくという観点からは、裁判所から見て形式的若しくは軽微であるという御判断があるのであれば、公証人も関与することなく職権で修正を認めていただく、その職権発動を求める申立てを入れていくことによって、登記も嘱託登記で出せるということだと思いますので、そのような変更を認めて柔軟性が増すのではないかと思っています。   加えて、段階的な発効についてのニーズですけれども今申し上げた軽微な修正等も含めて変更を認めていただけるということなのであれば、ニーズは少し狭まってくるかもしれませんが、その上でも、段階的発効をなぜ御本人たちが求めておられるかといいますと、例えば不動産の管理だけはお願いしたい、だけれども預貯金は自分でまだ管理したいというような場合に、一括してしか発効できないということになると、まだ発効させないと言われてしまうということがあります。   部会資料の中でも、発効させた上で実際に行使しないということで、御本人と任意後見人との間の調整で済むという考え方もあるのかもしれませんが、任意後見契約を実際に締結されている方の中には、任意後見人を信頼されていないという意味ではなくて、やはり必要なものだけをお願いしたいといった御意向というのは強く働いておられると感じています。柔軟な変更を認めていただいた上でも、更に段階的な発効ということは必要ではないかと思っています。   段階的発効を認めると非常に制度が複雑になって、分かりにくくなるというところはありますので、どこまで特定の行為に関して個別に発効させていくのかというところを、例えばですけれども、ある程度グルーピングしていくというようなことで、複雑性を緩和していくという方法もあるのではないかと考えています。 ○野村幹事 ありがとうございます。まず、委任されていなかった事務を追加する変更についてなのですが、二読目でも申し上げましたとおり、任意後見は一般的に本人と受任者との信頼関係に基づくものであって、後見人の業務を受任者が可能な限り行うことが本人の希望と考えられますので、本人の支援に必要な代理権の追加を可能とする方策を検討するべきと考えます。任意後見契約が発効した後においても、本人に契約を締結する能力があるのであれば、委任されていなかった事務を追加することを可能とするべきですし、また、その能力が失われている場合においては、任意後見契約締結時に監督人の同意による代理権の追加を可能とする代理権をあらかじめ目録で定めている場合は、家庭裁判所によって必要な代理権を付与する等の手続を行うことを認めてもよいのではないかと考えます。   任意後見契約の一部の合意解除につきましては、契約の性質上、その締結から契約発効に至る期間が長期にわたるものが多いことから、その過程で委任者の考えが変わることもありますし、また、法定後見との併用が可能となった場合、重複が生じた場合に、その部分を解除して双方の権限を整理するということも今後あり得ると考えられますので、検討してよいと考えます。ただし、そのようにする場合は、現行法では解除は公証人の認証を受けた書面によって行って、登記申請を行うものとされていますが、一部解除した契約は継続していることから、その書面は公正証書によって作成し、嘱託登記を行うことにするべきと考えます。また、契約発効後においても、代理権を追加する変更と同様に、委任者に契約を解除する能力がある場合は、一部解除を認めてもよいと考えられますし、その能力が失われている場合は、任意後見契約締結時に監督人の同意による代理権の一部解除を可能とする代理権を定めている場合に、家庭裁判所により一部解除を認めるということがよいと考えます。   続いて、予備的な受任者ですが、現在でも、任意後見は契約の締結から効力発生、終了まで長期にわたりますので、任意後見受任者の事情で後見事務が行われない場合に備えて複数の任意後見契約を締結すること、また、委任者と受任者との間で主たる受任者を決めておく旨の合意がされています。これを法律上規定する必要性については、特に委任者において、複数の契約が自ら希望し定めたとおりに発効することを手続的に担保できるというメリットがあると考えられます。また、このような定めは契約時に同時に行う場合もありますし、追加で行う場合もあります。契約の個数ということでは、一つの契約としたときには、先の契約を一旦解除して、予備的受任者の定めの合意のある契約を締結するということになると考えられますが、追加で契約を行うことも実務上一定数あることを考えますと、両者の契約は別個のものと考えて、追加で契約する場合は先の契約を予備的受任者の定めのある契約として変更して、その旨を登記することがよいのではないかと考えています。   契約を別個とする場合には、双方の後見登記において対象となる契約について契約番号を記載するなどの公示を行って、名寄せ的な管理を行えるようにする必要があると考えています。そして、公示によって、契約発効時に双方の契約の存在を家庭裁判所が認識するとともに、仮に先の契約が受任者の死亡等によって終了した場合に、現在選任されている監督人が引き続き後行の契約の監督人に選任されることを原則としつつ、個別の事情も勘案した手続が速やかに進むことが期待できると思われます。   続きまして、終了事由ですが、任意後見契約の有効期間ですけれども、契約発効前については、期間満了時において契約発効の必要性について定期的な見直しをする機会とすることも考えられますので、有効期間を定めるという考え方は検討できるかと思われます。契約発効後については、任意後見契約は委任者自らによる判断が困難になった場合の備えとして制度を利用することを選択していますので、この点は法定後見と異なる点であると考えられます。したがって、その契約発効後においては有効期間の定めがないものとするべきだと考えます。   最後になりますが、法定代理人による任意後見契約の締結についてですが、知的障害の方などにおける親権者や、未成年後見人として子の任意後見契約を代理して契約するというニーズはあると思われますけれども、任意後見制度の趣旨からすると、慎重に検討する必要があると思われます。   この趣旨としては、任意後見契約は本人に意思能力あることを前提に、本人が望む代理権に関して契約することでありますので、委任は、もちろん親権者を含む法定代理人であっても、代理による契約は、本人の意思尊重にそぐわないとも考えられます。 ○竹内(裕)委員 まず、結論というか私の意見としては、当事者に十分に合意をする能力があって、当事者同士が合意しているのであれば、任意後見契約の変更という制度を認めるというのは、それはよいのではないかと思っています。そこに関連して、今、段階的発効と予備的受任者の定めと、並べて別個に書いてあるのですけれども、第13回会議で山城幹事がおっしゃっていた御意見がとても気になっていまして、段階的発効は権限の追加というか権限の変更であり、予備的受任者の定めは条件付交代だったり、条件付の契約上の地位の承継のような捉え方をすれば、契約の変更という一つの制度によって、この二つの予備的受任者であるとか段階的発効を解決することができるのではないかと感じているところです。 ○佐保委員 ありがとうございます。まず、第4の1からですが、任意後見契約の方式については、デジタル化で負担軽減も行われるとのことなので、公正証書による現行法の規律を維持する方向性でよいのではないかと考えます。   任意後見契約の解除及び追加については、広範囲の代理権を付与する合意をしておき、必要な範囲で段階的な発効ができるようにするということは、本人の意思尊重の観点はもちろん、安心して任意後見契約を締結できるメリットもあるのではないかと考えます。また、任意後見契約締結後に必要な代理権の追加や縮減を可能とした柔軟な制度とすることも、本人の意思尊重の観点からも、また任意契約利用促進の観点からも、重要だと考えております。   予備的な任意後見受任者について、順位を付けて任意後見契約が行えるようにすることは、本人の意思を尊重する観点からも必要であると考えます。登記は、今の任意後見人が誰なのか明らかにすることが重要であり、予備的な任意後見受任者が任意後見人に選任された段階で登記をし直すのであれば、予備的な段階で登記する必要は余りないと考えております。複数の任意後見受任者を定める場面として、配偶者と子供を任意後見受任者にするケースが考えられます。しかし、配偶者が高齢化していく中で、配偶者自身が後順位の子供に任意後見受任者をしてほしいというケースも想定され、柔軟に対応できる制度とする必要があると考えます。   第4の2、その他ですが、現行法において任意後見契約で複数の任意後見人が選任されている場合、権限の分掌の定めをすることも、一つの権限を複数の任意後見人で共同行使する定めをすることも可能であるならば、現行法の規律を維持する方向でもよいのではないかと考えます。   最後に、登記事項証明書については、第三者に広く知られないように任意後見受任者の事務所所在地及び職務上の氏名を記載せず、連絡先の記載だけで十分だと考えております。 ○根本幹事 その他の関係で、3点申し上げたいと思います。まず、終了事由との関係です。有効期間については、ご本人が有効期間を設けたいという方がおられるのであれば、それは妨げられないのではないかと思っているということと、それから終了事由について、先ほど開始のところで申し上げましたけれども、特定の代理権だけの任意後見契約において事務の必要性がなくなったという場合には、何らか終了事由の定めが必要になるとは思っています。   あわせて、ここは終了事由なのか一部解除なのか等にもよるとは思いますけれども、いわゆる任意後見人の職務内容が不適切であるという場合に、先ほどの権限重複の場面とも関係しますが、解任に至らない事由において、先ほどのところで行きますと、権限が重複した場合の規律としての一部停止か、若しくは一部解除ということを申し上げましたので、先ほど申し上げた現行法でいう8条、9条、10条及び、10条から不適切な事務を独立させるという議論は終了事由のところでも妥当すると思っていますので、一部解除との関係で、終了事由としても議論するべきであると思っています。   最後に、代理締結のところです。これは前回詳しく申し上げていますので、余り多くは申し上げませんが、部会資料で行きますと36ページの(2)アの、任意後見契約を締結する意思と委任の意思がある場合に限定するべきであるというのが私の立場ということになります。その上で(3)小括のアのところで、解釈に委ねることが考えられるように思われると書かれていますが、解釈に委ねると、結局のところ現行で取り扱われている扱いと何ら変わらないという結論になるのではないかと思っておりまして、その理由は一つは、公証人の先生方の実務として、違法でないものは最終的に拒めないというのが公証人の先生方のお考えだと承知をしていますので、何らか法制化しない限りは、結局のところ個々の公証人の先生方の御判断ということになり、今行われている議論の中で問題になっている事象というのは結局続いてしまうということになるのではないかと強く懸念するということが一つです。もう一つは、平成11年改正のときの立法担当者が明文で、できますと書いておられますので、今回の改正の中で、解釈でそうではないというだけで、果たしてそれでよいのかというところも強く懸念するところではあります。   最後に、部会資料の36ページのイの2段落目、31行目で、基本的には法定代理権では親権であろうと法定後見であろうと、任意後見契約を代理締結するということは認められないということに、そこは統一的に整理されるべきだとは思っております。 ○佐久間委員 2点申し上げます。1点目は登記に関してでして、一つは、34ページの26行目からある受任者の登記についてなのですけれども、これって、任意後見受任者の登記だけでいいのですかね。法定後見人とか保佐人とか、全部同じなのではないかと思うので、項目としてこれでいいのかというのが1点です。   もう一つは、これは私も発言しましたし、部会長が最初におっしゃったのですけれども、専門職だけなのかということです。それはおかしいのではないかと思うので、登記は事務所あるいは住所と本名というのですかね、が載っているけれども、連絡が付けばいいという発想で、登記事項証明書を別に専門職に限らず工夫する、もしするのだったら、そうすべきなのではないかと思います。それが1点です。   2点目は期間に関してでして、これも一度申し上げたと思うのですけれども、まず、任意後見において発効後解除不自由というのは、余り問題ないと皆さんおっしゃるのですけれども、これは過去の自分の意思に拘束されているわけでありまして、行為能力の制限を受けていない人がした委任については、自ら契約で拘束していたら別ですけれども、解除自由で、どうぞとなっているわけですよね。任意後見を開始したからといっておよそ違う立て付けにするのですというのは、行為能力の制限を受けていない人となるべく同じにしようということとは大きくは異なるということを一つ申し上げたいとともに、特に事理弁識能力がまだあるというか、意思能力がそれなりにあるという人については、完全な解除自由はなかなか難しいのかもしれませんけれども、少なくとも法定後見の方で当該法定後見の利用をやめるという自由が認められる程度には、任意後見についてもその利用をやめるという自由を与えないと、およそバランスがとれないと思います。そのバランスがとれないという観点からも、例えば期間の制限もあり得ていいはずです。ただ、この期間の制限は、一律終わりですというよりは、ここからは解除自由ですという形になるのかもしれません。いずれにせよ、とにかく法定後見とのバランスはよく考えなければいけないと思うということを、繰り返しですけれども申し上げておきたいと思います。 ○山野目部会長 だんだん具体的に見えてきた段階で、法定後見と任意後見、両方の一覧表にするような仕方で、不ぞろいがないように工夫していかなければいけないと感じます。御注意を受け止めました。 ○青木委員 代理権の一部発効につきましては、要件や手続のことについての御発言がありませんでしたので、そこだけ発言いたします。その前にまず、一部発効を可能とすることは、本当に、根本委員も言われましたように、任意後見契約の発効をできるだけしやすくするという意味では重要な制度になると思っています。その上で、一部発効の要件は、これまでの任意後見契約の発効と基本的には全て一緒だと思いますが、一部の代理権だけ発効するということについては、本人の指示や本人の意思によって、本人が選択した代理権についてのみ発効させるということになると思います。本人の意思の尊重という観点からも、これでいいのではないかと思っています。   後見登記の方策も、既に任意後見契約締結時に後見登記されている代理権目録について、発効済みの代理権と未発効の代理権というのを二つに分けるということができれば、取引の相手方との関係でも明瞭になるかと思っています。   予備的受任者につきましては、資料12の中で、いろいろな方法で現行制度でも何とか対応できているのではないかという御指摘を頂いていますが、やはり契約をする利用者本人の立場に立ちますと、第一の受任者はこの人、第二の受任者はこの人として、いずれにしても私が託した事務が委託したい順番でいずれかにはやってもらえるということが、任意後見契約書上も後見登記上も明瞭であるということが利用の促進につながるという観点が大事です。現行でできる工夫もあるかもしれませんが、それをより明瞭な形で一つの公正証書、一つの後見登記の中で示すことができるように改正をするということが必要だということが、検討の論点ではないかと思っています。   最後に、任意後見受任者の事務所所在地と職務上氏名の問題についてですが、これまで弁護士会としては法整備をしていただいて対応していただきたいという発言をこの部会においてしてきたところです。今後、任意後見契約が親族だけではなくて第三者が任意後見受任者となることを促進していくためには、担い手の確保という観点からも、この問題は重要な課題であると思います。ただ、この間もこの部会の議論と並行して、日弁連の内部でも検討を重ねてまいりましたけれども、法定後見の現在の運用状況や専門職以外の後見人の連絡先をどうするかということも含めて併せて考えていくとなりますと、任意後見制度だけについて具体的な法制度化ということを今すぐ検討するというのはなかなか難しいところがあると考えるに至っております。運用改善の方策も含めて様々な側面から総合的に検討するということが必要で、今回の夏の中間とりまとめに向けた法制度化の提案というのが難しいのではないかと考えております。そこで、今回は法改正の課題として直ちに挙げるのではなくて、運用改善も含めた総合的な関係各所との検討を更に進める必要があるのではないかということで、今回の法改正を進めることについては見合わせたいと考えております。 ○山野目部会長 御意見を頂きました。   常岡委員は先ほどお手を挙げになりましたか。なさっていない。失礼しました。 ○常岡委員 挙げていませんが、もしよかったら発言してもよろしいでしょうか。 ○山野目部会長 では常岡委員、お願いします。 ○常岡委員 恐れ入ります。最後のところの、少し繰り返しになるのはよくないかなと思うのですけれども、親御さんの亡き後の対応ということで、任意後見契約の活用ということですけれども、私もやはり解釈に任せておくのはどうかという気はしています。   成年後見制度の改正ですが、基本は民法の改正が中心になると考えています。もちろんそれと付随してというか、こちらも重要なのですけれども、社会保障関係の法改正とか行政的な対応とかはもちろん必要なのですが、一応中心は民法の条文の改正と考えるとしたときに、家族というものをどのように位置付けるかということ、特に親子を民法の中でどう位置付けるかということとの関係を、やはりベースとしては考えておく必要があって、親権の効果についても、もちろん成人すれば親権という効果は発生しなくなるのですけれども、ただ、親子の関係にあるということや、家族であるという関係性を一つの基軸にして民法というのはできている部分があると考えています。もちろん財産法の部分は取引関係が中心ですけれども、民法の後半の親族、相続は、家ではなくて家族ということですが、それを構成する親子とか夫婦を軸にした規定ぶりになっているのです。そういうような規定ぶりをしているものと全く切り離してしまって、この任意後見契約であれ、成年後見制度であれ、そういうものを考えていくことでは、少しどうかなという気は、まだしているところです。   親御さんが亡くなった後の障害のあるお子さんの成人後の対応ということについては、やはり法律上明確にしておくべきではないか、もちろんほかの先生方のお考えもあるのはよく分かっていますし、議論は必要なのですけれども、ただ、そこに親子関係による効果というか、親子のつながりと民法との関係というような点を全く切り離してしまって、成年後見制度としてどう在るべきかということで割り切って議論してしまっていいのかというところについては、まだ少し引っ掛かりを持っているということです。ありがとうございます。 ○山野目部会長 どうもありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○星野委員 1点だけ、28ページの10行目のところ、段階的に発効させるか追加するかというところの表記が、これらの意見はのところですけれども、二者択一のように見えてしまうので、これはやはり御本人が選べるというか、どういうやり方がいいかが選べるようなものという意見として説明されるといいかなと思いましたのと、あと地域福祉のところの関係で言いますと、私が今、いくつかの中核機関に関わっている中で、意外とこの任意後見については、身寄りのない方に対して積極的にいろいろ進めようとしている地域も増えてきています。そこで是非お考えいただきたいのが、やはり分かりやすく伝わることです。ですから、例えば、現状では追加もできますよと書かれているのですが、それを意外と知らない人は多いですし、追加をすることでどれだけの手間が掛かるか、費用も掛かるのかとか、その辺りの情報がやはり必要ですし、それをまた法改正の中で変えていくということであれば、何度も出ていますが、こういうやり方があるのだというところをパブリック・コメントで中間試案として意見を求めるときにも、分かりやすい表記を心がけていくということが大事かなと思っています。 ○山野目部会長 運用の段階になってから、様々に当事者が滑らかに動くことができるような工夫を重ねていくことはもちろんでありますけれども、まずは法文を体系的に分かりやすいものとして書いてあげるということが極めて重要であります。社会福祉の現場に複雑な条文、概念使用を突き付けることになると現場が混乱します。この任意後見契約の変更、一部の解除、予備的な任意後見受任者といったようなものは、部会でこれまでこういう言葉で議論されてきましたから、その経過を踏まえて言葉を示しておりますけれども、最終的に法文にするときには体系的に分かりやすいものに調えて出していかなければならないということが強く感じられます。   私が成年後見制度の改革についていろいろなところでスピーチなどをしますと、様々な反応が寄せられますけれども、共通に幾つか指摘されることのうちの一つとして、分かりやすい制度にしてください、よろしくお願いします、と皆さんおっしゃいます。今日、竹内裕美委員から1の(2)と(3)に挙がっている問題を総覧しながら、山城幹事がおっしゃったような概念整理をヒントにして、きれいに調えていくことが必要ですという御示唆も頂いたところでありますから、そのような努力を重ねていかなければなりません。 ○上山委員 部会資料にないことですし、中間試案に載せてほしいということではなくて、議事録に留めていただければという趣旨で1点だけ発言いたします。   法定後見のところでも医療同意の問題について申し上げましたけれども、少なくとも特に任意後見については、任意後見人の機能の中に医療代理人としての機能を明確に読み取れるような形での改正を検討することが、個人的には本来望ましかったのではないかと今でも思っております。法定後見に係る部会資料の中でACP、アドバンス・ケア・プランニングによって対応することができるという趣旨の御説明はあったかと思うのですけれども、日本のACPは基本的に判断能力がまだ十分にある段階からの事前準備を想定してきたものですし、さらにいえば、元々は終末期医療を念頭に作られてきたという経緯もあります。このため、成年後見人等をACPのアクターに組み込むこと自体は望ましいこととはいえ、それだけで今後の医療現場が十分に対応できるかには疑問があります。御本人に当該医療に対する同意能力、判断能力がない事案であることが飽くまで前提であるとはいえ、あれだけ重い手続をごく一般的な治療を含む全ての医療行為についてまで、乗せ切れるかというと、それはそれでなかなか難しいのではないかというところもあります。したがいまして、成年の患者を対象とする、親族も含む第三者による医療同意についての法的規制の在り方については、今回どうするということでないとしても、依然として我が国で検討されるべききわめて重要な課題ではないかと考えています。 ○山野目部会長 審議会のどこで議論をお願いするかということもにらみながら検討しなければいけない事項ですから、上山委員に見抜いていただいたとおりに、ここでの中間試案に即今おっしゃったことを載せる扱いが適当かどうかということは慎重に考えなければいけませんけれども、これも正におっしゃっていただいたとおり、ここで今、上山委員にそういう御発言を頂いたということが記録に残りますから、制度全体として適切な部署で対応を引き続き考えていかなければなりません。ありがとうございます。 ○波多野幹事 任意後見契約の変更という概念についての御意見をいただいておりまして、その中には恐らく幾つかの場面がありましたが、一つは、委任者と受任者との合意で変更するという場面の設定もあったように思います。そのときの手続ですけれども、任意後見契約をするときと同じように、公正証書でやるということを前提に御発言されているのかどうか、他に御指摘のあった手間との関係もありますので、イメージがあれば教えていただければと思います。 ○根本幹事 私としては、公正証書であるべきだとは思っております。任意後見契約締結能力ですとか、契約意思を確認していただくことも必要ですし、手続的にも誰が登記を出すのだという問題もあると思っていますので、公正証書であろうと思っております。 ○山野目部会長 承りました。それでは、花俣委員、櫻田委員、久保委員に、この順番でお声掛けを致します。   花俣委員、任意後見の後ろの方の議論の全般を見渡して、お感じになったところをお話しください。 ○花俣委員 議論の内容であるとか、あるいは個々の先生方の御意見について、私の方から何かいうことはとても無理ではありますが、この任意後見関連の議論の中では、本人の意思の尊重であるとか、飽くまでも当事者の意思をという言葉がたくさん出てきました。一方これまでの議論では事理弁識能力を欠く常況といった文言が多く聞かれていました。その違いだけでも、恐らく任意後見制度というのは本当は私たちにとって優先される方向が望ましいのではないかと感じています。もちろん法定後見制度の改正の議論は大事なのですが、併せてこちらの議論も丁寧にしていただけると大変有り難いと感じながらお聞きいたしました。 ○山野目部会長 よく分かりました。ありがとうございます。 ○櫻田委員 ありがとうございます。私も花俣委員と全く同意見ではありまして、本当に、本人の意思という言葉が結構いろいろなところで聞かれるところではあるのですけれども、やはりそれが一番ベースになっているところだからこそ、今、各委員からの御発言の中に多く聞かれたのではないかというところは、すごく今感じた次第です。私は本当に当事者という立場で、先ほどもお伝えしたとおり、自分が行く行くは制度を使うかもしれないという立場なので、自分がそういう立場になったときには、やはり私自身の思いを聴いていただいて、その思いを酌んでいただいて、私のやりたいことを手伝ってほしいなというところは、すごく意見としてというか、そういう気持ちを持っておりますので、それに対して専門職の方ですとか自分の家族とかが寄り添って手伝ってくださるということがすごく有り難いことだというところは身に染みておりますので、やはりそういうような制度になっていくような、今、御意見が多かったのではないかと感じた次第です。   すみません、感想みたいになってしまいましたが、以上になります。 ○山野目部会長 よく分かりました。ありがとうございます。 ○久保委員 ありがとうございます。私もよく分かっていないので、意見というのは特にはないのですけれども、全体的な感覚として、みんなが任意後見からまず入って、みんながそれを使えたらいいのになということを感じています。今、その任意後見も随分といろいろ考えていただいているので、そんな感じを受けているという感じをしますけれども、ただ、いろいろ考えていただいて、私たちのことを十分考えていただいているからこそ、柔軟で使いやすくしようとしていただいているのはよく分かるのですけれども、柔軟であるがゆえに複雑ということを感じておりまして、複雑であるからこそ利用者に本当に分かりやすく丁寧に説明をしていただく、そして、利用者同士ででもそのことをよく理解できるように、研修ができるみたいなことがあったら、みんなにきちんと行き渡るようになるのではないかとも思いますし、みんなものすごくこの成年後見の見直しは本当に、先ほど申し上げたように、期待もしていますし、どうなるのだろうと思って見ているというのが、本当にたくさんの方がそう思っていますので、是非そうした形で、私たち自身で研修もして、こうなるのだね、みんな使おうねというふうになればいいなと思って、少し聞かせていただいたらとても複雑だなという印象がありますので、そこが整理されて分かりやすくなればいいなと思っているところです。 ○山野目部会長 久保委員に見抜いていただいたとおり、柔軟にしようとして複雑になっていく一方です。このまま放っていけば相当複雑なものになってしまいます。柔軟にするという旨を動かさないようにしながら、どれくらい体系的に明快な整理をした法文にすることができるか、これから後の部会の我々の力、努力に掛かっていることです。今励ましていただいたものと受け止めました。どうもありがとうございます。   特段の御発言がなければ、部会資料10についての審議を了するという扱いにいたしますけれども、よろしいでしょうか。   ありがとうございます。次回の議事日程等に関して、波多野幹事から説明をお願いいたします。 ○波多野幹事 本日も遅くまで長時間にわたって御審議いただきまして、ありがとうございます。   次回の議事日程について御説明いたします。次回は、日時ですが令和7年4月8日火曜日、午後1時30分から午後5時30分までです。場所が東京地方検察庁総務部教養課会議室1531号室です。   次回は、中間試案のたたき台の前半、後半のうち、前半について部会資料を準備したいと思っていまして、それで御議論をお願いしたいと考えております。 ○山野目部会長 御案内を差し上げたように、中間試案のたたき台の審議を次回から始めますから、委員、幹事におかれては御尽力方どうぞよろしくお願い申し上げます。   皆さんの方から特段何かおありでしょうか。   よろしいですか。お疲れさまでした。   これをもちまして法制審議会民法(成年後見等関係)部会の第16回会議を散会といたします。どうもありがとうございました。 -了-