法制審議会 民法(成年後見等関係)部会 第17回会議 議事録 第1 日 時  令和7年4月8日(火)自 午後1時30分                    至 午後6時03分 第2 場 所  東京地方検察庁総務部教養課会議室1502号室 第3 議 題  1 法定後見の開始の要件及び効果等         2 法定後見の終了         3 保護者に関する検討事項 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山野目部会長 法制審議会民法(成年後見等関係)部会の第17回会議を始めます。   本日も御多用の中、御出席を賜りまして誠にありがとうございます。   前回会議の後、委員、幹事の交代がございました。事務当局から紹介を差し上げます。 ○波多野幹事 前回会議の後に委員等の交代がございましたので報告します。小出委員が退任されまして、後任として佐野由佳委員が就任されました。鈴木委員が退任されまして、後任として下澤良太委員が就任されました。櫻庭幹事が退任されまして、望月千広幹事が就任されました。また、関係官についてですが、本日より関係省庁から清水俊貴関係官、石井奈沙関係官、若山道博関係官が出席されます。さらに、事務当局側ですが小松原茉利民事局付及び柿部泰宏民事局付が関係官として出席いたします。 ○山野目部会長 御紹介を差し上げました新しく御参加の皆様のうち、本日御出席の方々から簡単な自己紹介を頂きます。 (委員等の自己紹介につき省略) ○山野目部会長 本日は櫻田委員、小林幹事、杉山幹事及び山下幹事が御欠席と伺っています。また、火宮幹事が中座予定でいらっしゃいます。   本日の審議に入ります前に、配布資料の説明を事務当局から差し上げます。 ○波多野幹事 配布資料について御説明いたします。   部会資料13並びに参考資料7及び参考資料8を配布しておりまして、さらに、青木委員から提出いただきました委員提出資料を配布しております。部会資料13につきましては、後ほど御審議の中で事務当局から御説明いたします。   参考資料7は、第二期成年後見制度利用促進基本計画でして、参考資料8は、第2期成年後見制度利用促進基本計画に係る中間検証報告書です。第1回会議で使用いたしました部会資料1において、成年後見制度を取り巻く動向等として、第2期成年後見制度利用促進基本計画において成年後見制度の見直しに向けた検討を行うものとされているという旨を記載しておりますが、第二期成年後見制度利用促進基本計画そのものを配布しておりませんでしたので、改めて配布するものでございます。   また、参考資料8の第二期成年後見制度利用促進基本計画に係る中間検証報告書は、令和7年3月、成年後見制度利用促進専門家会議において取りまとめられたものでございます。成年後見制度の見直しに向けた検討との関係では、中間検証報告書の5ページに、法制審議会民法(成年後見等関係)部会において、国内外の動向も踏まえつつ成年後見制度の見直しに関する調査審議が行われているところであり、法務省においてはその調査審議の結果を基に、最高裁判所や関係省庁とも連携しつつ所要の対応を行う必要がある、調査審議に当たって、法務省及び厚生労働省においては障害の有無に関わらず尊厳のある本人らしい生活の継続や、本人の地域社会への参加等のノーマライゼーションの理念が十分に考慮された調査審議が行われるよう、第二期計画の内容や専門家会議におけるこれまでの議論等についても適切に情報提供に努める必要があるとされております。このような記載を踏まえまして、本部会の御議論の参考としていただくために、本日、参考資料7及び8を配布した次第でございます。本部会において、この内容について御議論をお願いするという趣旨ではないところでございます。 ○山野目部会長 参考資料7及び8について委員、幹事の皆さんに御紹介を差し上げました。この部会で取り扱っている課題との関連におきまして、地域社会福祉の今後の在り方の検討ということが重要な意味を持っております。その観点から委員、幹事の皆さんにおかれて御関心を向けていただきたいという趣旨でお配りを致しました。地域社会福祉に関しましては、これと併せて先般、地域共生社会の在り方検討会議の第9回会議が2025年3月27日に催されまして、参考資料7及び8で差し上げた情勢や当部会における審議の様子もにらみながら、地域社会福祉の今後の在り方についての熱心な討議が行われているところでございますから、併せて御紹介し、委員、幹事の皆さんにおかれても御関心を向けていただきたいと存じますし、何かお尋ねがおありであります際は随時にお寄せくださるようお願いいたします。   部会資料13の審議に入ります。   初めに、部会資料13の第1から審議をお願いいたします。この部分につきまして事務当局から説明を差し上げます。 ○山田関係官 部会資料13の2ページから、「第1 法定後見の開始の要件及び効果等」について御説明いたします。   まず、2ページの1では、法定後見の開始の要件及び効果について整理しています。(1)では、法定後見制度の枠組み等について記載しております。甲案は、基本的には現行法の3類型の規律を維持しつつ所要の見直しをするとの内容です。これに対して、乙1案及び乙2案は、現行法の規律を見直すとの内容です。具体的には、乙1案は特定の事項ごとの保護の必要性に基づき保護者に権限を付与する制度のみを設けることとするものであり、乙2案は、事理弁識能力が不十分である者を対象とする特定の事項ごとの保護の必要性に基づき保護者に権限を付与する制度に加えて、事理弁識能力を欠く常況にある者を対象とする一定の法定された保護を開始する制度を設けることとするものです。また、4ページの(2)では、法定後見に係る審判をするための要件としての本人の同意等について記載しています。さらに、5ページの(3)では、申立権者について現行法の規律による申立権者以外について記載しております。   そして、25ページの2では、取消権者及び追認について整理しています。 ○山野目部会長 ただいま説明を差し上げた部分につきまして御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○小澤委員 ありがとうございます。まず、第1ですが、これらについては論点として部会資料記載のとおり取りまとめることで基本的に御異論はありません。それを前提に、何点か意見を述べさせていただきたいと思います。   第1の1(1)の法定後見制度の枠組み、事理弁識能力の考慮の方法並びに保護開始の審判の方式及び効果の乙2案についてですが、イの④の代理権の範囲として記載されたa、b、cについては、部会資料16ページに記載があるとおり、なぜ基本的な代理権の範囲が現在の民法13条1項各号の法律行為であるのかを含めて、その理由を更に検討し、説明をする必要があるのではないかと思いました。また、cの意思表示の受領については包括的な代理に含めることについても、その必要性についての説明があった方がよいかと思いました。民法上の何らかの法的効果に係る意思表示の受領に限定されるのか、第三者からの一般的な意思表示や通知のようなものも含まれるのか、本人の取引の相手方にとっては関心が高いところだと考えるからです。また、bの③によって取り消すことができる旨の審判がされた法律行為との記載ぶりについては、本人にとってaの代理権以外に必要な代理権は多くあるようにも思われます。特に身上保護面に関するものや公的な手続関係に関するものが実務の現場では多くあると思います。必ずしも追加的取消権との裏表で代理権を付与するということではなく、aのほかに必要な特定の代理権を付与することが可能であること、ということを明確にした方が分かりやすいのではないかと考えました。   次に、第1の1(2)の法定後見に係る審判をするための要件としての本人の同意等の乙案についてですが、乙1案、乙2案ともに記載がある本人の同意を要する例外規定として、本人の身体又は財産に対する急迫の危害を免れさせるために当該審判をする必要がある場合との記載については、飽くまでも本人が同意をすることができない、すなわち有効な同意をする能力があるとはいえない場合に更に限定すべきではないかと考えています。この点については現行の保佐、補助類型における代理権付与の仕組みとは大きく変わることになると考えられるため、慎重な検討が必要であると考えていますので、先ほど述べた案も中間試案に載せていただくのがよいのではないかという意見を持っています。   最後に、第1の2の取消権者及び追認の乙案についてですが、(1)取消権者の記載にある(注)の考え方は、本人の自己決定の尊重の視点から重要な考え方であると思いますので、(注)ではなく一つの案として記載していただければなという意見を持っています。 ○野村幹事 ありがとうございます。法定後見の開始の要件及び効果の効果の改正案の提示の枠組みについては異論はございませんが、説明の部分について、意見を述べさせていただきます。   まず、新しい成年後見制度の理念についても部会で議論しましたので、説明に記載すると分かりやすいのではないかと思います。   それから、10ページの「ウ 法定後見以外の支援等があること」の説明ですが、上から8行目の法定後見でない方法の例示の一つとして、日常生活自立支援事業も重要な支援手段の一つですので、記載した方がよいのではないかと思います。   続いて、12ページから13ページの取消権の見直しの検討の必要性についての説明ですが、「現時点においてこれらの仕組みを完全に廃止することは相当ではないと考えられる」のところに、「部会でも取消権を完全に廃止すべきであるとの意見はなかった」との記載を追加してはどうかと思います。取消権については、自己決定権の制約であり廃止すべきであるとの指摘もあり、注目される部分だと思いますので、部会での議論状況について補足するという趣旨の意見です。   それから、24ページの申立権者の「(3)本人と法律上の利害関係を有する者」の説明ですが、契約の解除や損害賠償の請求などの法律行為等を行う場面が挙げられていますが、入院費や施設利用料などを請求する場面を挙げると実務上のニーズが伝わりやすいのではないかと思います。   最後に、25ページの2の取消権及び追認については、(1)の取消権者について、先ほど小澤委員からも御指摘がありましたが、乙案の本文は乙1案、(注)は乙2案と提示していただくのがよいのではないかと思います。乙1案は保護者が取消権を有するとの案であり、乙2案は本人のみが取消権を有するとの案ですので、分けて提示した方が分かりやすいのではないかと考えております。 ○佐保委員 まず、全体を通じてですが、中間試案の取りまとめに向けた議論のためのたたき台をここまで分かりやすくまとめていただいたことに事務局に感謝を申し上げたいと思います。その上で、全体を通じて1点申し上げたいと思います。   項目ごとに甲案、乙案として分けて御提案いただいておりますが、初めて見る方にとっては甲案と乙案は通しの提案と勘違いしかねないので、中間試案では、それぞれ項目ごとの提案だと分かりやすいように、2ページにある(前注)などに入れていただくと、より分かりやすくなるのではないかと考えております。   それから、第1の1でございます。2ページでございますが、たたき台に、本人の意思を尊重する観点から、事理弁識能力が不十分である者を対象として、「特定の法律行為をする能力が不十分であることを考慮して必要があるとき」は、当該特定の法律行為については保護者による保護の審判ができる枠組みを入れていただいたことに感謝を申し上げたいと思います。保護開始の審判の方式については、例えば、乙1案の4行目最後の方から、「若しくは」とありますが、こうしたところは今回詰めた方がいいのか、あるいはパブリック・コメントに委ねるのかは、事務局のお考えをお聞きした上で、ほかの委員の先生方の意見も聞いて、考えたいと思います。事理弁識能力を欠く常況にある者への対応については、この項目に限らず、様々な御意見があるものとして、パブリック・コメントの御意見を踏まえた上で、また議論できたらと考えております。   保護者に同意権を付与する場合は、4ページの(後注)にある規律は、本人の意思の尊重と保護の観点から必要だと考えます。(2)の本人の同意は当然必要でございますが、ただし書は本人の保護の観点から必要だと考えます。利害関係人については、今回の改正は本人の意思尊重と保護のバランスの中で検討すべきと考えておりますが、こちらにつきましても他の委員の先生方の意見をお聞きしたいと思っております。   それから、最後に25ページの2の取消権者及び追認でございます。取消権については、本人の意思を尊重する観点から見直す必要があると考えております。その方策については、実務の面や他との整合性の観点からどのように在るべきか、これにつきましても他の先生の意見も聞いて考えていきたいと思っております。   以上です。ありがとうございます。 ○火宮幹事 すみません、事実関係だけ申し上げますと、先ほど野村幹事から日常生活自立支援事業も例示した方がいいのではないかという御意見を頂きましたけれども、日常生活自立支援事業は飽くまでも補助事業、予算事業といった性質のものでして、例えば介護保険制度などのように法定化されているものとは異なっているという性格であることも踏まえて御検討いただく必要があると考えます。あとは、中間試案にそういった性質の事項を掲載することが適切かどうかという事務局の御判断にはなろうかと思いますが、一応事実関係として、日常生活自立支援事業は、言わば予算事業であるという点は御理解いただければと思います。 ○山野目部会長 中間試案のゴシックの部分に、何か説明なしに法制上の存在になっていない概念、今の火宮幹事の言葉を用いると予算事業が卒然と出てくることは、中間試案という文書の作り方から述べると、少し工夫が要る側面があるかもしれません。それは火宮幹事のおっしゃるとおりです。半面、野村幹事がおっしゃったように、日常生活自立支援事業のようなものが現実に動いているということが読み手にわかって、それとの関連を意識して広く各方面に意見を書いてほしいという要望も、そのとおりであると感じられますから、ゴシックでどこまでを表現し、補足説明で何を書いて伝えるかということを改めて事務当局において整理するという扱いにいたします。ありがとうございます。 ○波多野幹事 冒頭に御説明した方がよかったのかもしれないと思う点を説明させていただければと思います。佐保委員から御指摘がありました、このゴシック部分で幾つか亀甲括弧を使っている部分がございます。本資料のゴシック部分は、これまでの部会での御議論を踏まえて、事務当局でできるだけ案として整理をさせていただいたものでございますが、なかなか書き切れない、書くのに少し迷うような部分もありまして、そこは亀甲括弧に入れて少し留保を付けるような形で、議論のたたき台として記載させていただいております。   その意味では、中間試案として国民のみなさまに御意見を聴くときには、できるだけ亀甲括弧のない方が恐らく意見は聴きやすいのではないかとは考えておりますので、できるだけ亀甲括弧を取っていきたいとは思っておりまして、本日も入れてこの後何度か御議論いただく際に、できるだけ亀甲括弧を取っていくような方向で議論をお願いしたいと思いますし、事務当局においても引き続き検討して提案をさせていただきたいと思っているというところでございます。   また、この部会で取りまとめていただくのは、ゴシックの部分を国民にどう提示するかという部分でして、中間試案の本体であるゴシック部分が、この部会において合意をして取りまとめていただくという対象になっております。中間試案には補足説明ということで、我々民事局参事官室の責任において説明を出すということになっております。説明部分はこの部会での取りまとめの対象にはなっていないというものでございます。もっとも、何もないところから我々が書くということではなく、これまでの部会資料において説明していることなどをベースに書くことになります。そのイメージを持っていただくために、本部会資料の説明の部分は補足説明に近いようなイメージのものを記載させていただいておりますが、ここについても、こんなふうに書いた方がいいのではないかという御指摘を頂ければ、頂いたところを踏まえつつ、反映できる範囲について適切に反映したいと考えているところでございますので、その点についても御意見いただければと考えているところでございます。 ○山野目部会長 ゴシックの部分と補足説明の趣旨や役割分担について、波多野幹事から確認のお話がありました。これを踏まえて委員、幹事におかれて、引き続き御意見をお出しいただきたいと望みます。 ○佐久間委員 12点あります。もっとも、私はこの見解がいいと思うということを申し上げるつもりはなくて、すべて書きぶり等で、こうするべきではないかということを申し上げます。   まず、甲案と乙案の区別あるいは並べ方についてなのですけれども、1のところでは乙1、乙2とあるわけですけれども、甲案とは大きく異なる立場なのだということでは乙1と乙2はひとくくりだとは思いますが、乙1と乙2の中身はかなり違うので、そうしてくれということではありませんが、私は甲、乙、丙なのかなと思いました。そうでなくてもいいのですけれども、乙1、乙2とするのはどういう考え方に基づいてなのかということは、今日説明してくれということはありませんが、一貫して使い分けるべきではないかと思っています。   それから、並べ方なのですけれども、これは現在の案がどうかということもあるのですが、例えば甲、乙、丙とするときに、それぞれの案を甲、乙、丙とするのかを、一貫した基準に基づいて定めることが望ましいのではないかと思います。飽くまで一例ですけれども、現行法からの近さ、遠さ、現行法から近いものから甲、次が乙、次が丙とすることがよいように思います。飽くまで改正ですので、現行法はこうだ、一番近いものとしてこういう考え方があるけれども、そこにはこういう問題があって、そうだとすると次にこういう案があり、と並べることが好ましいのではないかと思いました。これが1点目です。   次に、甲案についてなのですけれども、全体として甲案に対する説明というか対応が薄い、あるいは、何と言ったらいいのか、ほかの案と比べると、これは採れないよねという感じがすごく出ているような感じがしています。1のところではないですけれども、甲案を採る場合の言及が全くないものがあるのです。例えば48ページ、49ページ辺りでは、乙1、乙2のどちらかということを前提にしかゴシック部分も書かれていない。それは余り好ましくないように思います。もしそうするのであれば、むしろ甲案はやめておいて、現行法からするとこういう考え方もあるのだけれども、様々これこれこういう問題があるので、この部会としては中間試案では提案しないというふうに、むしろいっそのこと、する方がよいと思います。ただ、むしろそのようにする方がいいというのは、私がそのように考えるということではなくて、甲案に対する第1での分析が余りにも足りないというか、この部会で議論していないからだと思うのですけれども、甲案でどこが駄目なのかということがほとんど書いていないと思うのです。理念的には少しどうかとか、多分私が見たところでは、14ページの20行目から、制度の硬直性による利用のしにくさを改めるためにということが書いてある、これだけだと思うのです。   でも、これだけでは、ゴシックの(注)に書いてあることで、その制度の硬直性に由来する利用のしにくさは改善できる余地があるということになるはずなので、多分全然足りないのではないかと思うのです。それは、基本的に甲案のような考え方は多分採らないよねということを前提にこれまで議論が進んできていることに起因していて、むしろ甲案については、いまから中間試案を確定するまでの時間を考えて、どこまでできるか分かりませんけれども、いろいろな柔軟化を図ってもここがそもそも駄目なのだということを議論して整理する必要があるのではないかと思っています。では私に何か考えがあるかというと、余りなくて、現行法の手直しでも一定の要請にはこたえられるのではないかという気もしています。そこで、甲案についてはこのまま出すのでは問題があるのではないかということだけ、申し上げておきたいと思います。   3番目に、乙1案なのですけれども、これは先ほど話が出た亀甲の意味とも関係するのですけれども、2行目で、「特定の法律行為をする能力が不十分であることなどを考慮して必要があるとき」で終わっているのがいいのかということと、その後の「当該特定の法律行為について」の部分について、この「当該」というのは亀甲部分があって初めて意味を持つことなので、いっそのこと、今日の時点では亀甲の部分は地の文だとして読むということを前提に、意見を出せばいいということにしていただけたらなと思います。   それから、4点目は、これは乙1と乙2に共通してなのですけれども、現在の補助相当の人について、今の提案では、現在よりも広い範囲で行為能力が制限される可能性があるのですね。現在は13条1項に列挙された行為の一部であるところ、書きようによっては全部ということもできますし、それ以外の行為についても現在の補助相当の人に関して行為能力の制限を掛けることができる。ところが、今のところ何もそこに対応がない。11ページから12ページのエのところに少しそれに近いことが書いてあると思うのですけれども、これはそのような判断もあっていいと思いますけれども、本当にそれでいいのかということは明確に意識して中間試案を作り、パブリック・コメントを問うべきところではないかと思っています。   それから、5点目は乙2についてでして、先ほど小澤委員がおっしゃったa、b、cのところです。この案は多分、私の意見を取り入れてくださったのだと思うのですが、私は、a、b、cに加えて、保存行為も入れるべきだと思っています。前にもその理由も付けて申し上げたところでありまして、もし保存行為についても代理権を与えることがおよそ駄目なのだったら仕方がないのですけれども、それもあり得るとしたら、(注)のところでもいいので、保存行為も含める見解があるというようなことを付け加えていただければと思います。   ちなみに保存行為と本人に対する意思表示の受領について保護者に代理権を与えるというのは、成年後見の制度は確かに本人の意思の尊重という理念があるのはそのとおりなのだけれども、取引安全の保護や本人保護について、パターナリスティックな本人の保護ですね、その理念も欠かすことはできないので、その観点から必要なものとして出てくるのではないか、そして本人の私的自治、自己決定への制約についても、例えば意思表示の受領や保存行為においてはそれほど深刻な問題にならないのではないか、ということを前に申し上げたところで、そういったことが理由になるかなと思っています。   それから、先ほどの小澤委員の御意見がよく分からなかったのですが、bについて、場合によってはこれは加えなくてもよいという御意見だったのだとすると、それはよろしくないと思います。というのは、③の取り消すことができる旨の審判がされた法律行為について、本人は結局、基本的には意思無能力なわけですから、自ら行為することができないので、誰かに代理権を与えないと、およそその行為は本人のためにされないということになってしまうからです。その観点から、aも同じだと思うのですけれども、必要だと思います。加えて、今の保佐人についてあるような、13条、このa、b、c、あるいは保存行為以外の行為についての代理権をプラスアルファで与えることは、排除する必要がないので、そういうこともあり得ると述べておく必要があるのではないかと思います。これが(1)関係です。   次に(2)に関しまして、先ほども話題に出たただし書についてです。乙1案にも乙2案にもあるのですけれども、これがどういう意味なのかということなのですけれども、ただし書をセットで必ず提案するのか、ただし書もセットとすることができるということで提案するのかで、大分意味合いが違ってくると思うのです。現在の書きぶりだと、恐らくただし書をセットで提案するということだと思うのですけれども、そうだとすると、先ほどどなたかもおっしゃったと思いますが、私は少なくとも注記で、ただし書は付けないという考え方もあるということを含めるべきだと思います。それは今までもこの部会で出てきた意見であったと思います。   それから、次、7点目なのですが、申立権者のところです。アで任意後見監督人であった者が挙げられています。確かに一定の場面ではそうであろうと思うのですが、例えば、任意後見監督人自身が辞任したとか解任されたというときには、これは入ってこないはずなので、今の形で挙げるのはどうか、場面を限定して挙げる必要があるのではないかと思います。それから、利害関係人について乙案が挙がっていますけれども、これは私の誤解かもしれませんが、一般的に請求権者に加えるという考え方はあったでしょうか。私は、そもそもが特定の行為についてのみ代理、同意の対象とするというような法制になった場合には、例えば意思表示の受領の場面などに、相手方に対して、利害関係人に対して一定の対抗措置というか、自己の権利を守るための制度を用意すべきだという観点から意見は申し上げましたけれども、それを超えて利害関係人に法定後見開始の審判の請求を一般的に認めるという考え方が、あったのかもしれませんけれども、私は余りなかったのかなと思うので、乙案として挙げるのは適当ではないような気がしています。もう一つあって、親族の範囲を絞らなくていいかという話はなかったですかね。どなたかから出たような気がするのですが。現代社会において四親等まで認めるのか、というような話です。そういったことも含めて、申立権者については、ア、イという形で挙げるのも悪くはないのかもしれませんけれども、その範囲を見直すことの要否という形でまとめて、「例えば」として利害関係人などに触れることにする方が、余り決め打ち感がなくていいのかなという感じがいたしました。ゴシック部分については、以上です。   それから、次に補足説明の書き方に関することなのですけれども、6ページに「現行法の規律及び見直しの検討の必要性」という項目があって、地の文では全部、補助、保佐、後見の順に説明が並んでいるのですね。だけれども、条文は当然のことながら後見、保佐、補助の順で出てきているわけで、条文の並びと説明の記述が対応していないと思うのです。確かにここでの議論を前提といたしますと、現行の補助に近い制度がこれからの中心に据えられていくべきですねという、非常に大まかなものかもしれないけれども、コンセンサスがあるので、その観点からすると補助の制度が一番最初に来るというのも分からないではないのですが、現行法というのは飽くまで後見、保佐、補助の順に条文が並んでいるところから分かるとおり、基本的にその順で制度を組み立てているといえるはずなので、現行法の説明のところは後見、保佐、補助の順にした方が、私はいいのではないかと思っています。   それから、次に9ページでして、9ページのイの「法定後見による保護の具体的必要性」のところは、次のウの書きぶりと比べると、イの具体的必要性を要件とすることを確たるものとして提案するように読めるように思います。ウではいろいろ、こういうことも考えられる、ああいうことも考えられるとあるのだけれども。イの具体的必要性を要件とする提案を確たるものとしてするのだとすると、これでいいのですけれども、ただ、そこまで本当に強く踏み込んでいいのかどうかには疑問もないわけではありません。具体的必要性を要件とするということになると、程度は分かりませんが、一定の証明をしないと審判をもらえないということになりかねないという感じがしますので。審判をするに当たっての重要な考慮要素になるということは、まあよろしいのだと思うのですけれども、これがいかにも要件であるというような形で提示されるのはいかがなものか、あるいはそう受け取られるのはいかがなものかという気がいたしました。   それから、9ページの同じ話のところで、下から4行目なのですが、ここがよく分からなくて、「本人が特定の法律行為を自ら又は第三者によってすることができず」というのは、これは代理人を通してすることができないということなのかどうかと、ここの表現は、細かい話ですけれども、大事なところだと思うので、少し申し上げたいのですが、補助の対象者あるいは保佐の対象者については、法的には自ら法律行為をすることができる場面が非常に多いはずで、「することができず」と書いてしまうと、事理弁識能力を欠く常況にある人か、そうではないのだけれども当該行為について意思無能力と判断されるような人でないとこの制度の対象にならないと読めるおそれがあるので、ここは少し慎重に考えた方がいいのではないかと思います。それから、それと同じことなのですが、「当該法律行為をする法定代理人が必要であること」としてしまいますと、任意代理人を選任できる場合とか、任意後見人を選任できる場合は入ってこないとも読めるので、表現を考える必要があると思います。こうしたらいいという表現を本当は申し上げられたらいいなと思ったのですけれども、すぐには思い付かなかったので、ここは慎重に表現した方がいいのではないかということだけ申し上げたいと思います。   次に、15ページのところです。乙1案について、15ページの4行目かな、「前記の各点を踏まえ、民法、手続上の」うんぬんで、「基本的に維持する必要はないと考えるものである」という点なのですが、これはそのとおりなのだと思うのですけれども、ここがすごく大事な点だと思うのです。具体的にどのような条文なのか、後で出てくるのですけれども、ここでも条文だけでもいいので引用しておいていただいた方が分かりやすいのではないか、考えやすいのではないかと思います。   それと、それにも関連するのですけれども、乙1案についても甲案と同じように問題点の指摘が全くないのです。実は乙2案についてだけ、こういう問題点があるということが今、説明では書かれています。しかし、乙1案についても、人によって考え方が違うというのはそのとおり、分かっていますけれども、様々な問題点の指摘があったはずです。例えば、事理弁識能力を欠く者の取扱いについて一般的にどうなのか、本人保護に欠けるところはないのか、取引安全に欠けるところはないのか、大丈夫なのかということですとか、手続の繰り返しが場合によっては必要になって、そうすると本人の周りに必ずしも十分サポートしてくれる人がいない場合にそのような繰り返しで対応できるのか、というようなことも出てきていたはずだと思います。そういった点は乙1案に対する、問題点なのか懸念点なのか、それは分かりませんが、補足説明のところで含めておく必要があるのではないかと思います。   最後が、25ページにあるゴシック2の取消権者、追認権者の乙案についてです。ここが、先ほども申しましたけれども、現在の保佐、補助相当の本人を想定しているということのような気がしますので、事理弁識能力を欠く常況にある者についてもう少しきちんと整理した方がいいのではないかということと、特に気になりましたのが、括弧書きで「法定後見制度の保護者を除く。」とあるところです。乙案についてはそれでもまだ、「取消権を付与する旨の審判を受けた保護者」が取消権者に含まれているので、保護者は取消権を付与する旨の審判を受ければ取り消せるということになるのかもしれませんけれども、先ほど申し上げた事理弁識能力を欠く常況にある者のための類型を設ける場合は、そこは代理権を与えるということになる可能性もあると思うので、この括弧書きでいいのだろうかともいます。また、特に丙案につきましては、今の丙案のままだと事理弁識能力を欠く常況にある人は事実上取り消すことができないことになりかねないのではないでしょうか。そうではないのかな。本人又はその代理人で法定後見制度の保護者を除くということになると、代理人はできない、承継人は相続人ということですから、それはありうるけれども、本人が生きている間は取り消せないということになるので、丙案はおよそ成り立たないのではないかと。このような案は今まで出ていなかったのではないかという気がします。   繰り返しになる面もありますが、括弧書きの代理人から「法定後見制度の保護者を除く。」というのは、そもそもどうして取消しのところだけ代理は駄目だ、代理権の行使は認めないということなのか、理屈としても成り立たないと思います。保護者に取消しのための代理権を与えるか与えないかというのは審判によって様々だと思いますが、代理権を与える旨の審判がされた場合には、その人もここの代理人に入ってくるという理解の方が素直ではないかと思いました。   長くなりましてすみません。以上です。 ○山野目部会長 発言の希望をいただいている上山委員にお願いする前に、佐久間委員から多岐にわたって御指摘いただいた点に関連して、今この段階で御発言を希望なさる向きがあれば承っておきますけれども、いかがでしょうか。   差し当たりよろしいですか。後ろの方でも、佐久間委員から御指摘いただいたところは繰り返し顧みて委員、幹事に御発言いただきたいと望みます。 ○上山委員 ありがとうございます。2点だけ申し上げたいと思います。   まず、3ページの乙2案ですけれども、イの事理弁識能力を欠く常況にある者の取扱いについて、現在の記述では、介入の範囲について拡張する方向での個別化というのはあり得るように読めるのですが、逆に介入範囲を縮減する方向での可能性というのは全くあり得ないのかというところが一つ疑問として残りました。恐らく趣旨としては、事理弁識能力を欠く常況にある者については、あらゆるケースについて、ご提示の範囲内の介入が取消権、代理権の双方についてすべて必要な介入であるという趣旨での整理かと思うわけですけれども、これまでの議論の中で、具体的な必要性に応じた個別化を図るという方向が様々な場面で考えられてきている中で、ケースによっては事理弁識能力を欠く常況にある者の能力制限の範囲についても縮減する可能性というのを残せないのかというのが1点、感じたところでございます。   もう1点は、質問に近いのですが、2ページの乙1案のただし書のかかり方の範囲について確認したいと思います。日用品の購入その他日常生活に関する行為についての制限は、現行法を前提にすると、同意権、取消権の範囲だけに係ると思うのですが、部会資料の書き方ですと、文章が分かれているので、さらっと読むと前半の代理権についても日用品の購入等についての代理権の付与はないと読めるような気がいたしました。この点、記述の整理がもしかしたら必要なのかなと思ってのお尋ねです。 ○山野目部会長 最後にお尋ねいただいた部分について、波多野幹事からお願いします。 ○波多野幹事 お尋ねいただいた点につきましては、意図としては今おっしゃっていただいたように、要同意事項ないしは取消しの対象の部分についてかけようと思っておりましたが、これを読むと、上山委員からおっしゃっていただいたように、代理のところまでかかってしまうように読めると思います。少し記述の整序が必要であると思っております。   さらに、先ほど1点目に頂いたところとの関係で、事務当局で補足をさせていただきますと、4ページ目の審判相互の関係の(注)で、事理弁識能力を欠く常況の方について、イの類型だけではなくてアの類型も使えるとするのかどうかとの議論とも関係するのかなと思っておりまして、両方とも使えますとするのか、上山委員がおっしゃっていただいたように、イの類型を使った上で減縮していくという方向で整理をするのかというところは、いくつかの方法があるのかなと考えていたところでございました。 ○山野目部会長 引き続き御発言を頂きます。 ○竹内(裕)委員 それでは、ページ順に申し上げたいと思います。まず1点目ですが、3ページのところで関係するのですけれども、開始審判をするかどうかという開始審判の位置付けが、初めて読まれる方にはよく分からない、議論の前提が分からない。特に、乙1案が開始審判は要らないとするラベリングであるとか、その辺りの理由を書いた方が分かりやすいのではないのかなと思ったところです。   続いて4ページですが、乙2案ですけれども、ここで(注)のところですね、行でいくと4行目、民法13条第1項各号に掲げる行為については見直す必要があるとお書きいただいています。それはそうだと思うのですけれども、13条1項だけ見た場合、事理弁識能力を欠く常況にある方のイメージが、13条では重すぎるのではないかと思うところがあります。事理弁識能力を欠く常況にある方が果たしてする行為なのかと懸念するところがありますので、どういう方向でこの13条1項に掲げる行為を見直すのか、見直す方向性についても書いた方がよろしいのではないのかなと思いました。   さらに、申立権者、5ページのところですけれども、ここには利害関係人ということで、イに書いてあるのですが、補足説明のところには法律上のと限定してあります。私は、先ほど佐久間委員がおっしゃったように、決め打ちするよりは、請求権者の検討という議論の立て方の方がよいのではないかと思いました。   続いて、15ページまで飛びまして、先ほど佐久間委員もおっしゃったところなのですが、私もこれを読んだときに、15ページの4行目、5行目、6行目辺り、その仕組みというのが読んでいる人にはきっとよく分からない、恐らく、次のたたき台(2)のところでは出てくるのですけれども、ここにも条文は書いた方がよいということと、基本的に維持する必要はないと考えるものである、とまで書き切ってしまって果たしてよかったのかと少し懸念を持ったところです。   また、同じ15ページの10行目から14行目でしょうか、ここは乙1案について、代理権を付与する審判と同意を付与する審判のことしか書いていないのですけれども、取消権付与の審判のことが後で出てきます。つまり、同意権だけあって取消権がない保護者というのを想定しているのだという考え方が後に出てくるのですが、ここでも若干触れておかないと混乱が生じるのではないのかなと思ったところでした。   あと、21ページの行数でいきますと31行目から33行目のところで一つの考え方が示されています。法的に有効な同意をする能力があるといえない場合について、申立ての内容が相当であると認められることを要件とする、とあるのですが、これも考え方の一つとして重要ではないのかと思われます。となると、この申立ての内容が相当、この相当の具体的意味内容というのをもう少し書き加えた方が分かりやすいのではないのかと思ったところです。   最後に、27ページですけれども、先ほども触れましたが、11行目からのイ、乙案についての説明ですが同意権のみの保護者を設けるという議論の前提が余りはっきり書いていないので、少し分かりにくい記載になっているのではないかと思われたところです。 ○星野委員 ありがとうございます。ます、2ページのゴシックの(前注)のところに、保護者とか保護の用語の説明がなされています。4行目のところですね。また、本資料では、保護者や保護、先ほどの取消権のところでも保護者ということが出てくるのですが、ここの説明が実務を担っている福祉関係者が見たときに少し分かりにくいので、もし可能であれば、例えば、これがこういう意図でよければなのですが、現行の法定代理人といわれている後見人、保佐人、補助人として考えられる職務とかそういったことについて保護者や保護との用語を用いているのであれば、そのような説明があった方が、初めて読んだときには分かりやすいと思います。というのは、その後出てくる保護者というのは、現行でいうところの法定代理人のことを言っていると思うのですが、現在後見人等を受任している自分たちが保護者という認識を感じられない場合があると思いますので、少しそういう説明が(前注)であってもいいのかなというのが一つ目です。   それから、2点目なのですが、4ページの24行目、本人の同意のところが出てくるわけですが、後見に係る審判をするための要件としての本人の同意等で、それぞれ案が出てくる、そして説明もその後出てくるのですが、同意のところが、これはもしかしたら部会の中で十分議論が煮詰まっていなかったのかもしれないのですが、どこまでの同意というものを考えているのか。開始の審判についての同意といいますけれども、例えばその中には、第三者である他者が自分の権限を代わって代理をすること、取消しをすること、それはもちろん同意ということがあるのですが、この後議論で出てくる報酬について、報酬を支払うことも含めた同意となってくると非常に現実には難しいところがあると考えます。前にも発言したのですが、どこまでの同意というところをいっているのか、説明のところであった方が、この後の報酬のところの考え方にもつながってくるところなので発言しておきたいと思いました。   それから続けて、最後になります。5ページのところ、今も議論に出ていました申立権者、請求権者のところですが、私たちは議論をずっとしてきたので分かるのですが、初めて読んだ人は、現行認められている申立権者に加えてという意味だと思うのですが、そこの説明があった方がいいと思うのと、今までの佐久間委員や竹内裕美委員からもあったように、決め打ちの提案の仕方というよりは、そういう追加とか見直しとかというところからの提案の方がいいのではないかと思いました。 ○青木委員 まず、2ページの第1の1(1)からになります。甲案につきまして、先ほどの佐久間委員の意見と論点としてはかみ合うかもしれませんが、(注)を書いていただいていますが、これを見れば、こういう方向で見直すという案が部会で出ていたというふうに見えるのです。甲案という現行法を維持することを一つの案として残していただくのは、中間試案の性質上やむを得ないと思いますけれども、(注)に書かれている所要の修正というのはこの部会で議論されたことはほとんどなく、それについての当否についても議論されていません。そのため、この所要の修正案が部会の中でも提案されているかのように読める記載は、説明部分も含めてそうなのですけれども、このまま残していいのかと疑問に思う、というのが1点になります。   続きまして、乙1案ですけれども、26行目と27行目にかけてですけれども、「事理弁識能力が不十分である者を対象として」という表現がありますが、乙1案を支持する意見の中では、「事理弁識能力」という抽象的、属人的な能力ではなく、当該法律行為との関係での能力として捉えるという意見を出しておりますので、ここの記載がこのままでいいかということがあります。例えば、対象となる事項との関係でいわゆる判断能力、ここで「判断能力」というのは具体的な法律行為との関係における利害得失を含めたことを理解する能力となると思いますけれども、そういう整理をする必要があるのではないかと思います。ここはいずれにしても、事理弁識能力という言葉と、それから今私が申し上げたような対象ごとの利害得失を理解する能力としての「判断能力」を別々の用語として考えるかどうかということにも関わりますので、そこを更に検討する必要があるのではないかということを指摘いたします。   それから、乙2案についてですけれども、少し先ほどからも発言もあるところでありますけれども、乙2案を提案される必要性が具体的に分かるように、特定の代理権ごとの設定ではなくて、類型的に一定の代理権を付与する必要があるというところの事情などをもう少し理由としてお書きいただくことによって、乙1案との違いということを明確にしていただく必要があるのではないかと考えます。説明部分にそのことが十分には書かれていないのではないかを感じたということになります。それから、一般的には、預貯金の代理権とか介護・福祉サービスや医療契約の代理権が、いわゆる「事理弁識能力を欠く常況の方」については多く求められることになるわけですけれども、これが13条1項所定の事項に入るものなのかどうかということも、一般の方から見ると大きな関心事になると思いますが、そこも理解できる説明が必要ではないかと思いました。   続きまして、第1の1(2)の4ページからになります。ここにつきましては、乙1案につきまして、本日お配りしていただきました私の方のペーパーの4番を見ていただきたいと思っております。2ページになります。乙1案を提案した立場は、本人の請求や同意があることを代理権、同意権付与の要件とすることを原則とした上で、本人に同意する能力がない場合については、必要性を高度なものとして代理権、同意権等を付与するという考え方になると考えております。加えまして、私の意見になりますが、代理権と同意権や取消権では、求められる必要性の程度が異なるべきだという意見ということになります。ところが、資料13記載の乙1案というのは、同意能力がある場合も含めて、急迫の危害を免れさせるための場合には同意権や代理権を付与できるという案としてまとめられていまして、私の考えている案ではないものです。そこで、本日私が提出した資料の2ページの下にある乙1案の整理案と記載しましたとおりの記載が提案を具体的に表現したものになりますので、そのように乙1案を中間試案では御紹介いただきたいと思っています。また、高度の必要性の部分についても、「急迫の危害」ということは適当ではなく、同意権については「重大な影響」とか代理権については「著しい不利益」ということが相当と考えていますので、そのようにしていただきたいと思います。もし資料13の4ページに書いてあるような乙1案のような御意見も別にあるのかもしれませんので、もし、そういう意見がのであれば、更に案の数が増えてしまいますけれども、別々に整理をしていただくということになると考えています。以上がゴシック部分についてのことになります。   それから、説明文について是非記載をお願いしたいと思いますのが、5ページ以降でありまして、いわゆる制度の硬直性による見直しということは記載を頂いているのですけれども、障害者権利条約12条の要請からの見直しということも今回の見直しの重要な動機、要因となっておりますので、障害者権利条約に関する要請というものも概要のところから記載いただく必要があるのではないかと思います。加えまして、障害者権利条約に関する記載が8ページの7行目以降にありますけれども、ここは総括所見だけを御紹介いただいていますが、権利条約の12条そのものの要請、それから一般的意見において行為能力が保障されるべきだとされていることも含めて記載いただき、それを受けての今回の見直しの検討であるという条約の要請の趣旨を詳しく書いていただくこと、そして、世界各国が条約の要請に基づいて様々な改正をしてきている国際的な動向というのも御説明いただく必要があるのではないかと考えています。   それから、6ページの28行目から成年後見類型の「事理弁識を欠く常況」に関する立法担当者の御説明を書いていただいているのですけれども、実際の25年間の運用はこのとおりになっていなくて、相当広い範囲の判断能力の方について「事理弁識を欠く常況」として認定され運用がされているということが問題の大きな要因の一つでもありまして、乙2案が、現行の運用を前提とするのではなくて、より厳格な形で「事理弁識能力を欠く常況」を認定することを前提に議論しているということも、このままの説明だとなかなか国民には分からないと思うのです。説明文では、「事理弁識能力を欠く常況」という言葉だけで今後説明や整理されていますが、そういう意味で言いますと、「事理弁識能力を欠く常況」ということの運用の現状をきちんと説明していただいて、それが問題点の一つであるということも分かるように、この6ページのあたりの記述において御説明が要るのではないかと思います。   それから、7ページに行きますと、イから問題点が指摘されていますが、この問題点の指摘の前の方がいいのか後がいいのかというのはありますけれども、第1回(4月9日)の部会では、資料1の中に基本理念についての記載を頂きまして、理念の議論をしたと思います。理念の議論が論点の制度の構築に影響を与えていると思いますので、ここはインクルージョンとか「自律の保障」といった考え方をどう考えるのかということについて、それを採用するかどうかはともかくとしても、そのことも含めて制度の改正に影響するのではないかという意見が出ているということを記載いただいて、パブリック・コメントでもそのことに関する御意見を頂くべきだと思います。   それから、7ページの真ん中ぐらいに、第2期基本計画以降のことを書いていただいていますけれども、第2期基本計画の大きな観点は、「基本的な考え方」として、高齢者・障害者の権利擁護の支援というのが幅広いものであって、本人中心の施策の全体であって、その中で重要な手段としての成年後見制度であるということ、一方で、総合的な権利擁護支援策の充実というのが重要で、その二本柱で今後の権利擁護支援を進めていくのだということを位置付けた上で、したがってそのような支援策全体の要請から成年後見の見直しが求められるのだということを、第二期基本計画は閣議決定をされた考え方ですので、そのことをしっかりと国民に分かるように御説明いただく必要があるのではないかと思います。  続きまして、これは言葉の問題なのですけれども、9ページの36行目以降は同意権の必要性を御説明いただいてはいるのですけれども、10ページに行ったところの記載が、必要があるから必要だというふうに言っているだけと受け取られることを懸念をしていまして、本人が将来行う可能性のある法律行為について、これを取り消す者がいるという必要があるというだけでは必要性の表現としては不十分だと思います。判断能力の不十分さ等の要因によって、本人に不利益な影響を及ぼす取引をする危険性があるというような、将来の危険性があるということを必要性の具体的な中身として記載していただくべきではないかと思います。   それから、補充性の説明を10ページの6行目から書いていただいていますけれども、なぜ補充性の要件が出てきているのかということについて言いますと、権利の制約の側面があり、できるだけ必要な範囲にとどめるということから、この補充性の要件というのが出てきているのだということを、権利条約の要請とか、あるいは成年後見制度というのは一側面においては権利制約性がある制度なのだということを書いていただいた上で、補充性の要請はここから来るのですよということを示していただく必要があると思います。   それから、補充性の関係の説明の部分で、10ページの9行目にあります行政等による支援の中に、具体的に日常生活自立支援事業等のことを例示として書いていただく方が補足説明ですので、イメージが湧いていいのではないかと思っています。一方で、8行目にあります「委託」というものが具体的にどのような支援策を意味するのか想定が難しいので、より具体的な御説明が必要かなと考えます。   それから、補充性の説明につきまして、14行目以下の段落で、補充性の要件に対する消極的な御意見を書いておられますが、こういう御意見があったことはもちろん事実ですけれども、一方で、権利条約の趣旨から言うと、今後はできるだけ必要最小限の利用に留めるということから、消極的要件も含めて審査をするということが諸外国では実践されていることですから、日本ではそういった発想は全くないかのような書きぶり、そもそも消極的要件として捉えること自体が問題であるかのようなまとめ方をされますと、今回の改正では消極的要件までにはしないということで共通認識だとは思うのですけれども、将来的には、更に補充性の要件を消極的要件として、それに相応しい行政の評価機関の設置も含めて検討する余地を閉じてしまうような表現になっていることは問題ではないかと思っていまして、ここは補充性の要件ということのプラス、マイナスの両面をしっかり書いていただく必要があるのではないかと思います。   続きまして、12ページの20行目ですが、ここは何かといいますと、できるだけ廃止をすると書いていただいているのですね。ここは、障害者権利条約の総括所見では廃止という方向だと思いますので、もう少し、障害者権利条約では廃止ということなのだけれども、いろいろなことを考慮した結果、今回は廃止までは行かないのですよという受け止めと、それに対する部会としての悩みということが分かるような記載にしていただく必要があるのではないかと考えています。   そういう意味で見ますと、その後の28行目以降の記載で、被害を回復することを可能とする仕組みが意味があると考えられると断言をした記載になっていますが、一方では、消費者契約法とか民法90条その他の様々な制度がしっかりと整っていくことによって、この制度を使わなくても被害回復ができるという方向性、指向性というのも考えなくてはいけないのだという将来の再度の法整備に向けた意見もあるということを、しっかりと記述していただく必要があると思っています。   続きまして14ページの9行目なのですけれども、ここは先ほど申し上げましたとおり、甲案に立ったときの所要の修正の是非はほとんどされていませんので、この部会として提案のあった議論なのかどうかについて、疑問であり、誤解を生じるおそれがあるのではないかと思っています。   それから、15ページの冒頭で、包括的代理権の弊害を書いていただいていますけれども、いわゆる不正事案等が包括的代理権の権限濫用で起きているということも、包括的代理権を残すことが適当ではないという意見として出されていることも書きいただく必要があると思います。   それから、これは佐久間委員の御意見と相互関係もあるかなと思っているのですけれども、16ページの9行目から乙2案の趣旨を書いていただいているのですけれども、ここはもう少し具体的に、手続負担のコストとか、その後の3行目とかは、もう少し具体的な場面とか理解ができるような形の記載がいいのかとも思いますし、一方で乙1案の場合はそれをどう考えているかというのを相互に出し合えるような理由が記載いただけると、国民の意見の判断にも役に立つのではないかと考えています。   それから、17ページの4行目なのですけれども、乙2案ですけれども、「事理弁識能力を欠く常況」の認定をするということなのですが、先ほど申し上げました非常に幅広い認定になっているという実務運用がありますので、そのことを前提とした記載にしていただかないと、文字どおりの立法担当者の説明による「事理弁識能力を欠く常況」の程度の前提で議論だけが受け止められる懸念があるのではないかということを思っておりまして、そこも含めた記載の検討が要るのではないかと思いました。   それから、乙2案においても、期間を定めるとか、あるいは動機をもって終了させられるという御意見を書いていただいているのですけれども、その辺りが余り詳しくこれまで議論されたことがないと思いますので、乙2案であってもなお期間が定められるのかとか、動機をもって終了させるということができるかについても、法制度としての根拠を含めもう少し詳しい御説明が要るのではないかと考えました。   それから、18ページの1行目に「精神上の障害」の記載の段落がありますけれども、ここにつきましては、ドイツの世話法なども例示をしまして、病気、障害等により判断能力が不十分な者という案もあるのではないかという意見を部会でも議論したと思いますので、慎重な検討というよりは、いろいろな考え方があるという観点でまとめる必要があるのではないかと思われます。 ○遠藤幹事 私の方からは大きく2点だけ、意見を述べさせていただきたいと思います。   まず1点目は、直近の青木委員からの発言と関連するところでございますが、事理弁識能力を欠く常況にある者というものをどう捉えるかという点についてでございます。今回は(前注)で、用語を見直す可能性があると御指摘いただいたほか、部会資料の6ページの28行目以下では、事理弁識能力を欠く常況にある者について具体例を挙げていただいておりまして、そこに挙げられている御本人について、これが事理弁識能力を欠く常況にあるという点については異論がないところと考えております。他方で現在の裁判実務では、事理弁識能力を欠く常況にある方については、現行法における後見制度が、御本人の保護を重視し、後見人に包括代理権を付与するものであることとの関係で、その方の判断能力に照らして包括的支援が必要かという言わば目的論的な視点も含めた解釈、運用がなされているものと理解をしておりまして、その結果として、この具体例のような方々のみならず、もう少し幅のある認定をしているように思われるというのは、以前もお話ししたとおりです。   この点については、第14回の部会における議論においても、事理弁識能力を欠く常況にある方の具体的なイメージを共有すべきであるといったような御議論があったかと思われますが、御本人の意思や自己決定を尊重するべきという今般の見直しの趣旨からいたしますと、この事理弁識能力を欠く常況という点につきましては、先ほどどなたかから御意見があったところかもしれませんが、このような見直しの趣旨を適切に反映するという観点から、御本人の意思決定に対する強い介入を正当化する根拠として改めて捉え直した上で、そのような強い介入が必要かつ相当な方を専ら対象としていることが明確になるよう、必要に応じて事理弁識能力を欠く常況という用語自体も見直すことなども検討されるべきではないかという点を記載することが相当と考えられるところでございます。   今回の中間試案をパブリック・コメントに付すに当たりましても、この定義の対象となる方の外縁をどう捉えるかといったことは大きな問題になってくるのではないかと思われるところでありますので、今回のたたき台におきましても、今申し上げたように、事理弁識能力を欠く常況につきましては、単に用語を見直すという記載にとどまるのではなく、今申し上げたような形で、今般の改正の趣旨に照らしてその対象が明確になるような形でその用語などを見直すことについても検討するといったことを(前注)あるいはこの6ページに敷衍して記載いただくことが考えられるところでございます。   もう1点は、同意のところについてです。これはごく簡単に申し上げます。先ほど何名かの委員、幹事の方から、部会資料の4ページから5ページの乙1案、乙2案の(注)については重要であるので、本文に格上げするべきではないかという御指摘がありまして、裁判所としても同じように考えているところでございます。その際に、これは補足説明を書くに当たっての御提案という位置付けになると思いますが、こういった(注)に記載されているような定義を用いることに関するこれまでの御議論の中では、むしろ御本人の同意を法定後見による権利制約の正当化根拠と捉えるのであれば、必ずしも積極的かつ明確な同意がある場合だけではなく、御本人の明示の意思に反しない場合も含むというのが今般の法改正の趣旨である御本人の意思や自己決定の尊重という観点からも相当ではないかと、こういった意見もあったところではないかと記憶しております。   特に、今回のたたき台の例えば20ページの35行目から21ページ2行目にかけて事理弁識能力を欠く常況にある方の中でも同意能力を観念できる場合があるという考え方が御紹介されておりますが、実務上もこういった考えが妥当する御本人は少なくないと考えているところでございまして、こういった御本人については、その事理弁識能力の程度に照らして、同意意思があってもその表明が困難な場合も少なくないという実際上の問題もございます。そういたしますと、御本人の意思を尊重するという今回の改正法の目的からは、こういった方も含めて同意意思についてできるだけ幅広く捉えられるような形で実体法を規律するのが相当と考えられるという観点で、ここの補足説明を記載していただければと思います。 ○山城幹事 ゴシック部分について3点と、説明の部分について1点、お話し申し上げたいことがございます。   ゴシックの点は、上山委員、遠藤幹事、佐久間委員から既に御指摘があった点と重なるのですが、1点目は、資料2ページの乙1案のところ、あるいは3ページの乙2案の③のところのただし書について上山委員から御指摘があった点です。乙1案について、代理権の授与との関係ではただし書が当てはまらないという点は、私も同感です。それとともに、同意権や取消権についても、例えば現行法の13条2項との関係でこのような記載が必要だという考え方はあると思うのですが、日用品の購入等の日常生活に関する行為については、恐らく必要性がないので取消権や同意権の対象とならないと説明されるのではないかとも思います。この点をただし書の形式で表現しますと、必要性は肯定されるけれどもその場合は除くという趣旨に読まれそうな感じもいたしますが、そういう理解でよいのか、それとも、そもそもこの種の行為については必要性が肯定されないのだとすれば、ゴシック部分で明示することはせず、説明でその旨を示すという形にすることも考えられるのではないかと感じます。以上が1点目です。   2点目は、先ほど遠藤幹事から御指摘がございましたけれども、資料4ページないし5ページにあります、法定後見に係る審判をするための要件としての本人の同意等に関する乙1案と乙2案のそれぞれ注記の部分です。この点につきましては、そのような提案がされる意義としましては、本人が制度利用を拒否しているときには本人の意思に反して法定後見の開始等をすることができないという点が重要であると考えております。したがって、注記でも、資料19ページに書かれているように、本人の意思に反して法定後見による保護が開始されることを防止するための方策としてこの提案がされていることを示していただく方がよいかと思います。   確かに、本人に同意能力がないため、有効な拒否があるとはいえない場合には、23ページ7行目ですとか、あるいは乙2案の(注)に書かれておりますとおり、15ページ以下に示されているような取扱いになるのだろうと思います。しかし、それは飽くまで副次的な帰結であって、拒否をしている場合には法定後見等を開始すべきではないというところに提案の力点があると理解すべきではないかと考えます。その意味では、23ページ15行目以下につきましても、事理弁識能力を欠く常況にある者であっても法的に有効な同意をすることができる場合があるという点よりは、本人が法的に有効な同意をすることができる場合において、それを拒絶しているときには制度利用の可否を慎重に検討するという点が重要であろうと考えております。これが2点目です。   3点目は25ページの取消権者及び追認に関する点ですが、佐久間委員から御指摘がありましたとおり、乙案の注記は、恐らく丙案を採用したときに、それでも代理権を与えることによって本人が有する取消権を保護者が行使をすることができる場合があるという形で整理をする方が適切なのではないかと感じます。乙案に関しましては、取消権自体は一定の場合には保護者に与えることができますので、それと併せて(注)に書かれているような取扱いを認めることに大きな意義はないのではないかと思います。丙案のような提案を採ったときにこそ、注記の考え方が生きてくるのではないかと私も感じました。以上の3点が、ゴシックになっている点についてのご発言です。   最後に、説明の部分に関しましては、20ページ17行目から、本人の法的に有効な同意をする能力について、法定後見による保護を開始することによる法的効果を理解することができる能力という説明があります。しかし、法定後見自体は本人の効果意思に基づいて効果を発生させるものではありませんから、定式化の仕方としては、ここまでの認識を求められているわけではないのではないかと思います。   その上で、それ以下の部分では、同意能力は、同意という行為に関する意思能力の問題だと整理されています。私自身も、第10回会議でそのような発言をしたことがございますけれども、改めて考えてみますと、現行法上の同意の法的性質が余りはっきりしないと思い至りました。現行法制定時には、本人の陳述聴取の機会に同意を確認するという取扱いが恐らく想定されていたかと思うのですけれども、それが実体法上の意思表示と位置付けられていたわけではないようにも思われます。したがって、私自身の前言を翻す形になりますけれども、余り断定的にはお書きにならない方がよいのかもしれないと感じます。ただ、そうであったとしても意思能力に準じて取り扱うことは十分に合理的であろうとは思います。 ○根本幹事 私からは6点申し上げます。   まず1点目は、先ほどの上山委員と波多野幹事のやり取りとも関係するかと思いますけれども、16ページのオのところの記載というのは、先ほどの上山委員と波多野幹事とのやり取りの点がここに書かれているという理解だといたしますと、前提となる立場が乙2案の先生方からすると、この点は立場が分かれるところなのかなとは思っておりますので、(注)にするなど、引き上げていただくということをお考えいただいていいのではないかと思います。あわせて、先ほど遠藤幹事からもあり、一つ目の御指摘とも関係しますが、常況を欠くというものが何であるのかという実務との乖離の点も含めて、非常に重要な点だと思いますので、ここは(注)に書いていただくということがよろしいのではないかと思います。   2点目ですけれども、今までそれぞれの先生方から2ページないし3ページのところの日用品の購入等に関してのただし書の御指摘がありました。これは説明のところでよいかとは思っていますが、一つは、恐らく今までの議論の経過を考慮しますと、3条の2を超えないということを前提とされているのかどうかというところは少し気になるところではあります。また、この日用品の購入その他日常生活に関する行為の範囲についても、引き続き、今までこの部会の中で議論がし尽くされていないと思うところもあり、その範囲が何であるのかというところは、日常金銭管理や、若しくはそれに関する預貯金取引との関係でも非常に重要な点になってくると思いますので、結論を書いていただくというよりは、中間試案の後、引き続きこの部会で議論するべきテーマではないかと個人的には思うところもありまして、説明で、引き続き議論が必要であるという御記載をいただけないかと思っているということになります。   3点目なのですけれども、9ページの10行目、11行目に関してです。これは事実認識の問題なのですが、今の資料ですと、現行の法定後見制度、特に後見の制度及び保佐の制度が具体的な保護の必要性について判断をすることなく、と書いていただいていますが、少なくとも保佐について、現行の立法担当の319ページを見ますと、保佐の代理権付与の必要性について、個別具体的な事案において保佐人が被保佐人に代わって特定の法律行為をすることを認めるべき保護の必要性が認められることが実体的要件であるという記載がありますので、保佐を括弧書きでここに入れているということがいいのかどうか御検討いただきたいと思っています。   4点目は、同じく9ページのイのところに関係します。法定後見における保護の具体的必要性をここに書いていただいているのですけれども、今までの部会の議論の中でも、保護の必要性という観点と併せて、事務の必要性という観点からの必要性を捉えるという議論があり、私の資料を読んでの理解ですが、特定の法律行為という文言に事務の必要性という意味も含まれているという前提でお書きになられていると思うのですが、そのことが明示的に書かれていませんので、今までの議論をフォローアップしていただいている方からすると、一言書いていただいてもいいのではないかと思ったところです。あわせて、特定の法律行為という特定の中身がどのようなイメージであるのか、つまり現行法の保佐の代理権目録の程度の特定性ということでよいのかどうかというところも非常に御関心が強いところかなと思いましたので、この特定の法律行為の中に二つの意味合いが含まれているということは、どこかに御記載いただいてもいいのではないかと思いました。   5点目ですけれども、これは11ページに関係するところだと思います。パブコメとの関係でという観点で申し上げますけれども、いわゆる事理弁識能力をどのように判断するのかというところについては、医学的な知見だけではなくて日常生活の状況等も勘案するという議論は今までもずっとあったかと思っています。この点は説明の中で、今後手続的にどういう形にしていくのかということが引き続きの検討課題になるというような形で御記載をいただいてもいいのではないかなと思ったというところになります。   最後6点目ですけれども、27ページの関係になります。取消権のところで、付与についてはここで御記載を頂いていて、行使については今までの部会の中でも、内部的な問題であるということで意見を申し上げていたところになります。飽くまでも行使においては、行使上の要件ではなくて内部的な関係であって、職務上の義務として捉えてはどうかということを申し上げています。ここのパートに書くべき内容ではない、つまり、義務というのは義務のところで書くべきだというのは、そのような理解でいいかとは思っているのですけれども、リンクを張っていただけるような、ここは義務のところで続きの行使における問題が議論されているのだということは何らか分かるようにしていただいた方が、読み手として分かりやすいのではないかと思った次第です。 ○山野目部会長 6点頂きました。ほかにいかがでしょうか。   そうしましたらば、ここまでで委員、幹事からお話しいただいたところを踏まえて、多岐にわたる観点から改めて整理をする必要があることが明らかになりましたから、その作業を事務当局において進めることにいたします。   私の方から4点ほど委員、幹事にお声掛けをして、今後の整理のために確かめておきたい事項がございます。一問一答のような形で問い掛けないし確認のお声掛けを差し上げます。1点目は、乙2案を前提に考えます際に、広範に代理権や取消権を与えるという仕組みを用いる場面があり得るということを乙2案に含めてございます。事理弁識能力を欠く常況にあるという、客観的に、といいますか医学的な判断がされると、この広範に代理権、取消権が働く扱いに、言わば自動的に行くということになるか、必ずしもそうはならなくて、必要性であるとか本人の意見、意向などを考慮し、それを用いることもあれば、そうではなく乙1案で考えているような仕組みを用いるにとどまるという可能性があり得るかということについて、今まで余り意識して議論をしてこなくて、散発的にはお話があったかもしれませんけれども、必ずしも明瞭ではなかったと感じます。この点について何か御発言があれば承っておきますけれども、いかがでしょうか。 ○竹内(裕)委員 今、部会長が御指摘いただいた点、この部会資料を読んでいたときに、乙1案と乙2案というのは実はかなり近付いていくものではないのかなという印象を受けまして、そういったような提案もあってもよいのではないかと思ったところがございました。 ○山野目部会長 かなり近付くという御話は、必要性や本人の意見などを考慮し、この広範な仕組みを用いる場合もあるし、用いない場合もあるという取扱いを採れば、乙2案を採ったとしても乙1案にかなり実質が近付くものではないかという趣旨のことをおっしゃったと理解してよろしいですか。 ○竹内(裕)委員 はい、そうです。 ○山野目部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○佐久間委員 乙2案をはっきり主張したのは私なので、どう考えているかを申し上げます。私は乙1案のような考え方を別に否定するつもりはなくて、例えばですけれども、相続土地の国庫帰属を請求するというときに、事理弁識能力を欠く常況にある人が1人いる、このときに乙2案のように広範な権限付与しかできないというのは、これは不合理だと私は思います。そこで、そのような場合も含めると、乙1案のような特定の行為について、事理弁識能力を欠く常況にあるからといって排除する必要はないと思っています。   その上で、飽くまでそうだとすると、判断の在り方としては、やはり本人側からどういう権限付与を求めるということが出てくるのが出発点になって、包括的な権限付与を求めるという請求が出てこないにもかかわらず職権で乙2案のような考え方を採るということは、私は考えていません。本人側から包括的な権限の付与ということが請求で出てきた場合は、これは全体の制度の立て付けとの関係で、ほかの場面で何らかの形で必要性というのを考慮するというのであれば、乙2案のような包括的な権限の付与についても、やはりその必要性は同じレベルで考えるべきだと思っています。   加えて、ただ、1点だけ申し上げたいのは、先ほど遠藤幹事から、現在の運用で事理弁識能力を欠く常況というだけではない、やや広がっているということの御説明の中で、包括的な権限付与が望ましいかどうかという観点から判断しているという、確か御説明があったと思います。そのような場面では、本人の方から請求が出てきているということであれば、今後も引き続き包括的な権限、ただ、その包括の内容がやや狭まるかもしれませんけれども、そのような運用を維持することが適当であると考えています。 ○山野目部会長 お二人の委員の御発言でかなり明瞭になりました。ありがとうございます。 ○上山委員 私自身は元々乙2案が提示しているような2類型の考え方を原則的に支持はしているのですが、内容的にかなり違う部分がありまして、部会長からの問い掛けに答える形でお答え申し上げますと、先ほども少し触れました関係になりますが、事理弁識能力を欠く常況にある者についても個別的な権限付与の可能性を認めるべきだ、基本的にはその事案において必要最小限の範囲の権限と能力制限にするべきだという発想をとっていますので、その点、現在の資料の乙2案の整理の仕方と違う点であるというところだけ申し上げておきたいと思います。 ○山野目部会長 2点目に参ります。申立権者のお話をします。利害関係人を加えるかどうかという問題提起を中間試案に入れようと考えておりますけれども、利害関係人が申立権者になる場合は、一般的に利害関係人もあり得るというお話をお考えになっておられる委員、幹事がおられるかどうか、そうではなくて、利害関係人が申立権者になることがあり得るとしても、それは法令によって要件が限定的に定められた場合に限ったお話だという御意見を委員、幹事の皆さんがお持ちでいらっしゃるか、ここを少し確認しますけれども、一般的に利害関係人を申立権者と考えるべきだというお考えの方はおられますか。 ○竹内(裕)委員 今の部会長の問いに対してですが、私自身も例えば債権者が無限定に申立権者になるとまでの意見ではないですが、一般的な利害関係人を考えたとき、身寄りのない方の場合、現行の申立権者で申し立てをしてくれる人が果たしているのだろうかということを考えたり、ご本人を支援されている方や親しい方、そういった方による申立ての可能性をここで閉じてしまっていいのかと、そのようなことも考えます。それで決め打ち、法律上の利害関係人ということで問うのではなく、請求権者の検討として、広く国民に問うてもいいのではないかと思います。すみません、部会長の視点からは少しずれてしまったかもしれませんが、以上です。 ○山野目部会長 分かりました。   ほかに今の点、いかがでしょうか。   それでは、今の御要請を踏まえて、また整理を致します。   3点目のお問い掛けですけれども、取り消すことができる行為というものが定められた際に、取消権の実際の行使を誰の権限とするかという問題につきまして、本人にのみ取消権を与えるという案を考えましょうという考え方は、一つの方向としてシンプルな形のものであり、案としてあり得ますということを一般に問うことがよろしいだろうと考えます。現在お示ししている文書もそのようなものになっています。ただし、本人が事理弁識能力を欠く常況にある、あるいは意思無能力の状態が続いているような場面において、本人にのみ取消権を与えるという仕組みをシンプルに採用するのみにいたしますと、およそその行為は取り消されないということになってしまうという問題が起きます。その問題が起こるということを意識してどのような対処を講ずるかということについて、考えられるものを文章に整理して、改めてその案に付随する仕方でゴシックないし補足説明で次回の機会に敷衍して皆様にお諮りし、また検討をお願いしようと考えておりますけれども、これでよろしいでしょうか。   最後、4点目のお問い掛けですけれども、急迫の危害といいますか、あるいは重大な危害といいますか、文言はこれから検討しますけれども、それが生ずるおそれがある際に、本人の同意を必ずしも必要的な要件とせずに手続を開始することができる可能性について、今回の中間試案のたたき台の文章に入れておりますけれども、しかし、その急迫ないし重大な危害というお話が出てくるのは、本人が事理弁識能力を欠く常況にあるとか、あるいは同意をすることができる、同意の能力がない状況にあるとかいうときに限ったお話であるという前提で提案していく考えが皆さんの考えでしたね、というお話もありましたから、皆さん、そのように考えているという理解でよろしいでしょうか。言い換えますと、本人に同意表明の力がある状態で、本人が拒絶しているのだけれども、あなたが拒絶しているのはおかしいのであって、急迫の被害がありえますから手続を始めますという進め方というものはもう考えないということで、ここにおられる皆さんの意見が一致していると受け止めて、整理を進めてよろしいでしょうか。   ありがとうございます。今の4点のみしか明らかでないということではなくて、ほかにも多岐にわたる御議論があったとおり、いろいろこれから整理しなければいけない点がございます。波多野幹事から何かおありでしたら、お願いします。 ○波多野幹事 事理弁識能力を欠く常況にある者の例として、6ページに立案担当者の具体例を出したところでございまして、ここについていろいろ御意見いただいたのは承知しているのですが、実際に何を想定すればいいのかという部分についての御意見を頂けていないような気がいたしまして、我々としては、この立案担当者の例を挙げさせていただいて、事理弁識能力を欠く常況にある者という言葉を使うときにはこのような人を対象とするという理解でどうでしょうかということを一つの案として今回、説明としては提示をさせていただいたつもりではいたのですが、これではない方を対象にすべきであるという御指摘なのか、そこが頂いた御指摘の中で少し分からなかったので、そこを少し明確にいただければ非常に助かるところでございます。 ○山野目部会長 今のお問い掛けについて御発言があれば、承っておきます。 ○青木委員 私は乙1案を支持しているので、「事理弁識能力を欠く常況」について認定する必要はないのですけれども、申し上げたかったのは、H11立法時にはここに書いてあることを当時考えていたというのはそうなのですけれども、先ほど裁判所からもお話があったように、現実の実務運用ではそうはなっていないので、国民の皆さんは「事理弁識を欠く常況」という言葉で、現在、後見相当とされている方々の状態像の人たちのこととして、受け止めるということになるので、念には念を置いて、そこはそういうことではありませんよと、あくまでも立法担当者が考えている、こういう限定的なものを想定してここでは使っていますし、今後も使いますというようなことの、何か説明が必要なのではないかということを申し上げたかったということになります。 ○山野目部会長 それはよく分かりました。   ほかにいかがでしょうか。波多野幹事、よろしいですか。 ○波多野幹事 ありがとうございます。 ○山野目部会長 それでは、第1の1のところについて御議論いただきました。第1の2のところに進みます。この部分について事務当局から説明を差し上げます。 ○山田関係官 部会資料13の28ページから、「第2 法定後見の終了」について御説明いたします。   まず、28ページの1では、法定後見の開始の審判又は保護者に権限を付与する旨の個別の審判取消しについて整理しています。乙1案、乙2案は、2ページから4ページまでに記載の第1の1(1)に記載の乙1案、乙2案にそれぞれ対応するものです。   また、34ページの2では、法定後見に関わる期間について整理しています。 ○山野目部会長 ただいま説明を差し上げた部分について御意見を承ります。 ○小澤委員 ありがとうございます。まず、第2の1、法定後見の開始の審判又は保護者に権限を付与する旨の(個別の)審判の取消しですが、論点として部会資料記載のとおり取りまとめることに基本的に御異論はありません。   その上で、乙1案、乙2案の(注2)に記載がある取消し審判に当たって、本人の同意がなければならないものとする考え方は重要であると考えますので、乙案の説明の中などで、取消し審判に当たって本人の意向を十分配慮することを記載していただければという意見を持っています。   次に、第2の2、法定後見に係る期間についてですが、部会資料の説明箇所などと読み比べますと、甲案、乙案、丙案とするのではなく、丙案を乙案の中に取り込んで、乙案を三つに分けるような形にした方が分かりやすいのではないかとも感じました。また、丙案については、ゴシックで記載された部分だけを見ると、保護者からの報告がないと当然に保護が終了してしまうようにも見えますので、説明箇所で説明されている内容が十分に案に反映されていないようにも感じましたので、その点、整理が必要なのかなというふうに意見を持っています。 ○野村幹事 29ページの(注1)について、保護開始の審判の取消しではなくて保護を終了する旨の審判をすべきという考え方がある旨の記載がありますが、終了という言葉が出てきた背景を少し書き込んだ方が分かりやすいと思います。部会では、期間を設ける場合について、審判の取消しよりも終了の審判の方がなじむのではないかという意見が出ていたため、このような(注)が入ったと思います。31ページの説明を読むと分かるようにはなっていますけれども、一読して分かるように、(注1)の「とするのではなく」の後に、「例えば法定後見に期間を設ける見直しをする場合においては」というような記述を追加するのはいかがでしょうか。   2点目ですが、34ページ目の法定後見の期間について、この期間を設けることについては、積極的に反対する委員の方はいらっしゃらなかったと思いますが、その定め方については多様な意見が出ていて、民法に規定するときも実際に運用するときも難しい点が多いと思います。そこで、もう少し部会の中で出た期間を設けるメリットや課題についても記載して、期間を設けるとしても、その制度設計には幅を設ける余地があることが伝わるような内容にしてはどうかと思います。必要性がなくなれば法定後見は終了してほしいと考える人もいれば、長く伴走してくれる支援者を望んで、期間が来たら当然終了するのは困るという人もいるはずなので、期間についての内容がどちらの人にも不安を与えないような内容にした方がよいと思います。   ほかには、例えば、部会では期間の長さについて、煩雑さを回避するため一律にする方がよいという意見がある一方で、本人の状況や事務の内容を踏まえて個別に定めるという意見があったと思いますが、その辺りを(注)で追記してはどうかと思います。36ページ目以降の説明を読むと分かるようにはなっておりますが、一読して分かるように(注)に書き込んだ方がよいのではないかと考えます。 ○佐保委員 ありがとうございます。まず、審判の取消しにつきましては、第1の1(1)と連動するものと考えておりますが、29ページの(注2)にあります本人以外の者の請求の場合は、本当に事理弁識能力が回復したのか、保護の必要性はないのか、悪用されてはいないかなど、客観的に確認する要素の一つとして、本人の同意がなければならないものとする必要があるのではないかと考えます。本人の取消しの場合でも、28ページにある、家庭裁判所が保護の「必要性がなくなった場合」をきちんと確認できるようにする必要があるのではないかと考えます。   それから、34ページの2、法定後見に係る期間でございますが、期間については様々な意見があった中で、甲、乙、丙でパブリック・コメントを掛ける方向性に異論はございませんが、乙案について、期間を裁判所の裁量に全て委ねるのではなく、分かりやすさの観点から、また、定期的に本人の判断能力や状況報告だけでなく客観的に把握できる仕組みとして、ある程度目安として上限などが必要ではないかと考えます。 ○青木委員 28ページの第2の1の部分ですけれども、(注2)で書いていただいています、取消の審判をするには本人の同意がなければならないとする考え方については、一方で本人が取消しをしたいというだけでは取消しはならずに、必要性を鑑みるという記載との関係がありますので、その両面からの検討が必要だということを説明で書いていただく必要があるのではないかと思われます。   次に、乙2案を例にとって申し上げますけれども、例えば29ページの乙2案のように、書き方の問題としてですが、「第1の1(1)の乙2案の1①の審判を取り消さなければならない」と書かれますと、法文上の表現はそういう形式になるのかもしれませんが、一般の国民の皆さんが中間試案を読んで、一体どの審判ことを言っているのかが分かりにくいことこの上ないと思います。ここはもう少し工夫いただき、ここの部分だけを見て、どの審判を取り消すことになるかが分かるようにしていただく必要があるのではないかと思います。   それから、第2の2の期間について移りますが、ここにつきましては、本日私が提出しました資料の5番、3ページを御覧いただきたいと思います。有効期間を定めるという乙案につきましては、保護の必要性が継続しているのに期間の到来によって当然に終了してしまうことの不都合、懸念ということが示されていることがありますので、この有効期間を定めるという案においても、期間終了時における更新等の有無の確認ということをセットで手続として必要なのではないかということが重要だと思います。もちろんそういう手続は要らないという御意見もあるかもしれませんので、その場合には乙案が2種類に分かれるということになると思います。丙案の方では、そうした手当てをすること自体をゴシックの中で書いていただいていることの対比から言いましても、乙案においても、その手当てを(注)書きではなくて乙案の本体として記載いただく必要があるのではないかということで、対案を考えました。   それが私提出の資料の3ページの真ん中以下に書いてありまして、①から③までは資料13のとおりでありまして、加えて④として、期間満了前の一定期間までに、必要性の要件といいますか、要件の存在及び更新の有無の確認をするという規律を入れて、(注3)で、それがない場合については職権で暫定的に延長した上で、その有無の調査を職務代行者若しくは裁判所の調査によって確認すると、この(注)のところはいろいろな御意見があると思いますので、(注3)は(注3)という位置付けでよろしいかと思っていますけれども、④の方は①、②、③とセットではないかと考えておりまして、このように一つの案として提案をお願いできないかということになります。   それから、丙案なのですけれども、丙案については乙案と違って(注)がないことになっているのですけれども、丙案においても、乙案に記載いただいている(注1)とか(注2)という考え方はあるのではないかと思いますので、指摘させていただきたいと思います。   それから、先ほども期間を設ける必要性等について説明をすべき、という御指摘がありましたけれども、第2の2の説明部分で、35ページの25行目から説明を頂いていると思いますけれども、ここではやはり権利条約の第12条4項において定期的な司法審査をすることと、できるだけ短期間の適用とするという要請があって、このことからも基期間を定めた司法審査による制度的な保障ということが求められるということを記載いただく必要があるのではないかと思います。実質的にみても、個別の取消し申立てに委ねるだけでは漫然と制度を継続するという実態が想定されるので、期間設定によって定期的に審査をする必要があるということもお書きいただくことによって、期間の設定の意味ということが理解いただけるのではないかと思われます。   それから、36ページの3行目に、期間を設けることに関する否定的な御意見として、3行目に「様々な隘路」と記載いただいているのですが、読んだ方はこの具体的な中身を知りたいと思われるのではないかと思いまして、具体的な隘路についても御記載いただく必要があるのではないかと思います。   それから、36ページの28行目以降に、裁判所が暫定的に期間を延長するべきかどうかの議論の中で、家庭裁判所の定期監督の中でうんぬんというお話を書いていただいているのですけれども、部会での議論としては、この定期監督のときに確認できるのではないかという意見というのはこの文脈で出てきたものではなくて、期間を定めて、必要性の要件だけを定期審査するということではなくて、普段の年一回の定期監督の中で必要性の要件についても審査できるのではないですかという議論であったと思われます。そのことと、この暫定的な期間延長の話というのをリンクして議論はしていないと思われますので、ここは書き直す必要があるということになります。   最後に、37ページの34行目に丙案の議論として、存続期間を定めるものとしと御説明いただいているのですけれども、丙案は存続期間を定めるという考えではないのではないかという疑問が残ったということと、同じことが38ページの14行目にも、「期間の満了を法定後見の終了事由とし」と書いてありまして、これも乙案からはそうなるけれども、丙案では必ずしもそうならないのではないかと考えましたので、御検討いただければと思います。 ○山野目部会長 青木委員におかれては、部分的には提案の内容を委員、幹事に向け、書面の提出をださり、より可視性を高める仕方で意見を伝えてくださる努力をいただき、有り難いことでございます。御礼を申し上げた上で、私は青木委員のペーパーに不思議な事象というか謎を発見しました。五つ項目が並んでいますが、部会資料の並び方と、この五つの並び方が異なりすけれども、これは謎ですね。   引き続き伺います。いかがでしょうか。 ○佐久間委員 青木委員が今おっしゃったことと一つは同じなのですが、丙案についてです。乙案と丙案の違いは、乙案は期間を設け、そこで一旦終了するということを前提に、善後措置、例えば保護者がきちんと対応しないときの善後措置を考えましょうというのに対し、丙案は、一定期間で終了することにするのではなくて、報告の機会を設けさせて、そこで終わることもあるようにしましょうという考え方だと思うのです。   そうだとすると、まずゴシックの①の、これは青木委員が説明のところに関しておっしゃったことなのですが、「法定後見の開始から法定の期間が満了する前の」というのではなくて、これは単純に「法定後見の開始から一定期間が経過する前に」とすることが丙案の考え方だと思っています。というか、私は丙案がよいと思っているので、そういう考え方ですというべきかもしれません。   加えて、②につきまして、これは小澤委員がおっしゃったことかもしれないのですが、②のゴシック部分と丙案の考え方、あるいはその説明が対応していないのではないかと思います。丙案は、積極的に必要がないと認められたら取消し又は終了をすればいいという考え方であって、その必要性がなお存在すると認めたら継続するとか更新するというのではないので。この②は、今申し上げたとおり、まず一定期間内に報告を求める、報告がないときは、青木委員が乙案についての④で赤字でお示してくださったような、裁判所からの働き掛けによって報告を受けるようにし、必要がないと認めたら取消しの審判あるいは終了の審判ができる、そういうことが丙案の考え方ではないかと思っています。   その上で、これは丙案と直接関係ないのですけれども、保護者が適切に対応しないときは、保護全体が終わるというのはおかしいですけれども、その保護者による保護を継続することもまた適当かどうかということが問題となるので、解任事由として考慮する余地はあるというようなことを考えることがよいのではないかと思いました。   それから、説明に関して、38ページの14行目以下、一つは終了のことで青木委員がおっしゃったことなのですが、それに続いて、保護者が請求をするということ、「保護者の請求により」と15行目に書いていますよね。これは本人の請求でも別にいいと思われるので、本人又は保護者、あるいはほかにもいるかもしれませんけれども、というような形にする方がよい、少なくとも保護者に限る必要はないのではないかと思います。 ○根本幹事 私からは3点申し上げます。1点目は、今の佐久間委員からの御指摘を補足するような形でと思っています。35ページの丙案の②のところで、私も個人的には丙案ですので、その上で、佐久間委員からありましたように、解任をさせるというところもゴシックに入れるべきではないかというのは、私もそのとおりだと思います。ただ、その際に、ここで解任と書いたときに、後で解任のパートを読むと交代という意味も含まれているのだと分かるわけですが、ここで解任といきなり出ると、強いメッセージが逆に出てきてしまいますので、括弧で交代とお書きいただいいてということを補足として申し上げます。   それから、戻りまして29ページの(注1)や、若しくは説明の31ページの4行目の保護の必要性なのですけれども、ここが、例えば29ページの(注1)のところの文言で、保護の開始という言い方をされていて、若しくは保護を終了するという記載をしていただいて、この保護の意味が、制度的な保護という意味で使っていらっしゃるのか、それとも文字どおり保護の必要性という意味の保護なのかというところが、(注1)のところと31ページの4行目の保護の必要性が消滅したというところで、非常に分かりづらくなっていると感じておりまして、仮に終了の審判と呼ぶ場合には、31ページの4行目の②のところは、事務の必要性が消滅した場合も含まれるというお立場もおありになったように思っていましたので、ここをどう整理するのかは大変難しいところではあるのかもしれませんが、事務の必要性が消滅した、喪失したというときに、終了の審判をするのかしないのかという論点なのかもしれませんけれども、保護という文言の記載との関係でも非常に分かりづらくなっていると感じています。   3点目は、32ページの1行目から5行目のところですけれども、現行法においてそのように考えられているかどうかというところはさて置き、今回の改正との関係では終わらない後見を終わらせるという観点で考えているということになりますので、特に補充性との関係で、仮に市区町村長申立てについては市区町村の意見を終了の場面でも聴いていくスキームを一つ念頭に置くのだとすると、その議論の延長で更に終了の申立権を付与するのかという観点からも検討するべきという視点になるのではないかと思っております。記載自体を直すというより、この記載に加えて今申し上げた観点を加えていただけないかと思っています。 ○竹内(裕)委員 29ページの乙2案の②、16行目からですが、恐らくここの乙2案は、最初の乙2案を前提としてお書きになっていると思うのですが、今まで何人かの委員が御指摘されましたが、一番最初のページの乙2案には代理権を付与する旨の審判というのがはっきり書いていないのです。他方、29ページの乙2案のところには、代理権を付与する審判とはっきり書いてございまして、その齟齬といいますか、ずれは修正をしてもいいのではないかと考えました。 ○山城幹事 先ほど青木委員と佐久間委員から御発言があった点、具体的に申しますと38ページの丙案に関する記述についてです。私もやはり期間の満了を法定後見の終了事由とするという辺りは丙案の考え方と整合しないと感じます。憶測を重ねるような形になって恐縮なのですけれども、この提案は、期間が経過したときであっても、期間の経過自体を終了事由とするのではなくて、期間が経過した時点において、審判の取消しに関する28ページ記載のルールに従って必要性や事理弁識能力を判断した上で、保護を継続する理由がないときには終了に導いていくという、そういう内容ではなかったかと理解しております。   そう考えますと、結局、期間経過のタイミングで審判の取消しに関する規定を発動させればよく、終了に関する規律としてはこの提案は無意味ではないかという疑問が生じそうですが、1ですと請求権者の申立てが必要であるのに対して、ここでは裁判所が職権を発動して終了させることができるというような形にすると、丙案が独自の意味を持つのではないかと感じました。   つまり、丙案は、期間が経過すれば当然に保護が終了するとはしない。しかし、そうすると、保護者が適時に報告をしないときは、保護者からも本人からも取消しの請求がされず、必要な限度を超えていたずらに保護が継続するおそれがある。そこで、期間が経過したときは裁判所が職権を発動して終了の判断をすることができる。丙案の趣旨はそのようなところに帰着するのではないかとも感じました。そうすることで、期間が満了しても当然に保護は終了しないのだけれども、長期にわたって保護が継続する事態は防ぐことができるのではないかと思った次第です。 ○山野目部会長 委員、幹事に丙案をめぐり、このようにお話を盛り上げていただくことがかないますと、当然、裁判所から一言をいただけると期待します。 ○遠藤幹事 丙案の関係でございます。基本的に青木委員ないし佐久間委員ほかがおっしゃっている方向性と、これから申し上げようとしていることは大きくは変わらないのではないかと思っております。   その上で、裁判所の視点から若干申し上げますと、今般の見直しによって法定後見が特定の法律行為を対象として保護の必要性を判断するものとなるのであれば、裁判所の監督も、これまでどおりの適正な事務の遂行の点と同時に、法定後見による保護の必要性の存否を対象とするものになっていくのではないかと考えられるところであります。   そのような裁判所の監督の在り方を前提とするならば、むしろ、期間を定期的な見直しの機会を確保するものと位置付けた上で、特定の期間が到来する一定程度前の時点で、保護者に法定後見による保護の必要性の存否、具体的には法定後見の更新の申立て又は法定後見の終了報告、これは終了の見通しを報告するということになると思いますが、これを義務付けることが考えられます。その上で、裁判所はその申立てなどを受けて、法定後見による保護の必要性の消滅の有無を審査するということも考えられるところです。   この場合、保護者が今申し上げたような終了報告ないし更新の申立てをして、管理計算などが終了するまでは法定後見は終了しないと整理するとともに、先ほどこれは佐久間委員から御指摘があったところですが、保護者がこれらの申立義務を怠った場合には、後ほどの解任をどう規律するかという議論の内容によると思いますが、保護者としての義務に違背したものとして解任され得るというような形で併せて整理をするのであれば、法定後見が突然終わるとか、あるいは終了できない状況に陥るといったような事態は回避できるのではないかと考えております。   なお、このような形で法定後見による保護に関する定期的な見直しの機会を確保するものとして期間を位置付けるのであれば、定めるべき期間としては比較的短期間として、そのような審査を行う機会を定期的に設けるのが望ましいのではないかと考えているところでございます。 ○山野目部会長 よく分かりました。 ○佐野委員 まず、資料34ページの法定後見の期間に関してのところについてですが、乙案、丙案、どちらかという観点では、銀行の立場としては丙案の方が対応できる可能性が高いと考えております。   その上で、今まで御発言いただいた先生方にも触れていただいておりますが、丙案の②の記載に関して、今、①に記載のある報告の有無や内容に応じて裁判所の判断のみによって終わらせることができるようにも読むことができるような内容になっていると考えております。38ページの13行目以降に記載いただいております説明のところで、保護者の請求により法定後見開始の審判の取消しにて終了させることができるとの記載がありますので、本来こちらの意味合いでの丙案だと理解しておりましたので、こちらの記載ぶりについて、裁判所が判断するに当たっては保護者による請求が必要という意味合いをゴシック体の部分に加えていただく方がよいかと考えております。   なお、その場合になるのですけれども、取引の相手方となる銀行としては、終了されたという事実を認識する方法が、旧保護者による銀行への法定後見の終了の届出であるとか連絡になると考えております。旧保護者による銀行への終了の届出とか連絡がなく、銀行が終了の事実を認識していない場合については、旧保護者との取引を受け付けしたとしても免責はされるものと理解しております。   こちらに係る免責の考え方については、第15回、2月25日の会議にて山野目部会長から、民法第112条や478条に絡めた具体的に御意見をもらいたいとして宿題を頂いている部分かと存じ上げますので、こちらは整理の上、次回の4月15日、第18回のところで回答させていただきたいと考えております。   もう1点について、28ページの法定後見の取消しに関するところにも少し触れさせていただきます。乙1案、乙2案ともに、②に記載いただいております必要がなくなった場合というところについて、こちらには、事理弁識能力が回復した場合だけでなく、事理弁識能力が不十分なままだけれども、法定後見制度を利用するときに保護の必要性が認められた事項、遺産分割協議とか不動産売買とかだと想定しているのですけれども、こちらが終了した場合というものも含まれると理解しております。こちらの場合については、事理弁識能力が不十分なままの方、すなわち意思無能力の方について、本人が御自身で取引を行うであるとか、日常生活自立支援事業によるサポートが付いた状態で取引をするということが有り得てくるかなと考えております。   こちらの前者の本人取引を行うに当たりまして、取引の相手方である銀行としましては、現行の補助類型に当たるような方のように意思能力がある場合については、銀行の店舗に来店されても問題なく取引ができると考えているのですが、現行の後見類型の相当の方のように事理弁識能力を欠く常況の方と取引を行った場合には、この取引が無効となるというリスクを抱えることになるので、少し取引に慎重になってしまうことが考えられると思っております。こちらの後者の福祉等のいずれかのサポートが付いた状態で取引を行うということに当たっては、このサポートを行う方といった地位がどのような方なのかというところも気にする観点にはなってくると思っております。   少し前置きが長くなりましたが、いわゆる終われる後見制度が導入されて、終了したときに、保護の必要性が認められた事案というものが終了したけれども福祉等のサポートを得られない事理弁識能力が低いままの方の財産を保護するといった観点や、取引の有効性、安定性を担保するという観点から、中間試案の段階では、法定後見の終了の要件として、判断能力の程度の考慮というものを独立した要件として設定する案というのも載せるべきかと考えております。 ○山野目部会長 ありがとうございます。次回に向けて検討をお願いしている事項も、どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○星野委員 ありがとうございます。34ページの期間のところで、一言申し上げたいと思います。ここのところの議論は、正に35ページで説明というところで書かれている24行目、見直しの検討の必要性で書かれている内容を議論してきたと思っています。すなわち、本人の状況の変化による必要性の変動を定期的に確認する機会を制度的に確保する方法として、期間の設定ということだったと思います。ですので、今までの議論も踏まえて、期間を設けるか設けないかという論点ではなくて、期間を設けたとしても設けなかったとしても、どのように本人の状況の変化を見直すことを法的に規定できるかというところが論点だったと思いますので、甲案について、期間は設けないものとするという書きぶりだけでは不十分で、期間は設けないとしても見直しの機会をどのように捉えるか、説明のところには書いてあるのですけれども、もし甲案を示すのであれば、そのような補足が必要ではないかと思います。更に言えば、2番の法定後見に係る期間というタイトルだけではなくて、法定後見に係る期間の設定及び見直しの在り方のようなものにしないと、読んだときに分かりづらいかなと感じますし、今の議論が伝わらないかなと思いましたので、御検討いただきたいと思います。   それで、もう一つだけ、ここで言っていいか分からなかったのですが、このような終了できる、終わることができることを制度として作っていくというところはとても重要なところだと思うのですが、本人の状況の変化、今、各委員・幹事の方からもあったように、判断能力の回復だけではなくて必要性、補充性というところからも、いわゆる社会的な状況からも見るというところで言いますと、申立てのときにどんな状況であったかというとても大事な根拠として今、本人情報シートが使われていると思いますが、この本人情報シートの位置付けというものを、民法なのか家事事件手続法なのか分かりませんけれども、法的根拠に基づくものである必要があるという議論があった、あるいはそういう提案があったというところは説明の中に入れていただけると有り難いなと思います。 ○山野目部会長 2点頂きました。   それでは、第2の部分について、波多野幹事からお話をください。 ○波多野幹事 いろいろ御指摘いただいたところを踏まえて再度整理を進めたいと思います。その上で、青木委員から頂いた修正案の関係の基本的な考え方を整理させていただきたいなと思っておりまして、頂いた修正案ですと、青木委員のお考えでも、一定の期間経過前に保護者は報告しなければならない、報告がなければ裁判所は暫定的に保護を続けるみたいなことができるというようなルールということなのかなと思ったのですけれども、そうしますと、実体法上の終了させることの意味は一体どんな場面で発生するのか、いわゆる乙案と丙案のコンセプトの違いが少し分かりにくくなってきたなという気もいたしまして、余り違いがないのかもしれないというような気もいたします。少しそこの確認をさせていただければと思った次第でございます。 ○青木委員 ありがとうございます。乙と丙の違いというのは、必要性の継続について、保護者若しくは本人から積極的に事情や資料を提出をさせた上で裁判所が判断するということを原則にするか、どちらかというと職権で事情や資料を調査をした上で、必要性がなくなったものだけを終わらせることとするか、という違いではないかなと思っております。   ただ、私の資料の3ページに記載した修正案の④でいっているところは、例えば、更新はしませんという報告でもいいと思っていまして、更新しませんであれば、裁判所としては「更新しないのですね、では期間が到来したので満了です」という確認の手続も④の中には含まれていると思いますが、そういったことも何も意見が示されず必要なのかどうなのかの事情が全く分からないという場合には、(注3)にありますように、事情を確認するために暫定的に期間を延長するということを考えていますので、(注)の3点は例外的な事象であって、④のところで、必要がなければ当然終了するし、必要がある場合には更新の申立てをすると、ただ、それについて保護者若しくは本人だけに委ねるということではなくて、裁判所が一定期間までに、更新するのかしないのか、その理由は何かということをきちんと提出させるという規律にすべきだと、そういう意見になります。 ○波多野幹事 少し確認をさせていただければと思いますが、丙案も報告をされて、続けてほしいという更新的な報告なのか、もう要りませんという報告なのかがされて、それを踏まえて裁判所が判断するというのが、本日の先生方から御意見いただいた方向かと認識しておりますが、そうしますと、違いが出るのは、取り消すという審判があるか、乙案ですと何もなく終わるか、そこに違いが出るだけということになるのでしょうか。 ○青木委員 原則的には、最終的な結論としては、そうなると思います。あとは、更新したい本人や保護者から積極的に主張するのかどうかのところが少し違ってくると思っています。 ○波多野幹事 ありがとうございます。 ○久保委員 ありがとうございます。いろいろお話があって、私たちにとってはとても難しいなと思いつつも、利用しなければならない利用者の立場ですので、ずっとお話を聞かせていただいていましたけれども、今ほど直近でお話があった期間の満了ですけれども、期間はやはり一定設けていただいて、そして、その期間がもうすぐ終わりますよ、みたいなことは、はがきか何かで来ると、忘れていた人が思い出すのではないかなということを前にも申し上げましたけれども、そんなことを考えておりまして、もしそれでも報告等がなかった場合は、裁判所が必要かどうかというのを職権で調べていただいて、もう必要ないのではないですかというようなことをまた通知していただくというようなことがあるといいなと思っています。親が後見になった場合に、専門職と違って、それほどきっちりできない親もたくさんいますので、そういう意味では、終了の報告をしなさいとか、終了の見通しをしなさいとかいうのも多分すっ飛ばしてしまう人が結構いるのではないかなと、親でありながら思いますので、その辺のところを、少し申し訳ないですけれども、丁寧に、忘れていませんかみたいなことを言っていただけたら有り難いなと思います。   それと、今は私は分かっていますけれども、最初に保護者という名前が出てきたときに、親の場合は私のことかしらと思ってしまうというのは、今まで親の場合は保護者と言われたら自分のことと思う習慣がありますので、保護者というのが私のことかしらと思ってしまう部分があるので、その辺のところが少し分かるように書いていただけたら有り難いなと思っています。 ○山野目部会長 久保委員から2点頂いたうちの、はがきですけれども、はがき代も最近高くなりましたが、はがきでそろそろ期間や定期報告のことがありますよ、という促しというものは、おっしゃるとおり望ましい運用であると感じます。それが、新しい制度になったときに運用の次元の工夫として行われるか、現在も場面によっては何々を催告するものとするといった規律をはっきり法令上設けている局面もございまして、どのような在り方がよいかという点はまた考えますけれども、しかし何らかの工夫が可能であることでしょう。   それから、後半でおっしゃった点が少し重くて、悩んでいますけれども、悩んでいるのみでは部会資料を作れませんから、仕方がなく保護者、保護という言葉を用いています。久保委員の今のお悩みは分かりましたが、学校の参観の保護者と勘違いされますといったみ御話はどちらかというと微笑ましい御話であるのに対し、もっと深刻なお話は、精神保健福祉法の改正論議であるとか、それへの批判的な評価をめぐっていろいろな議論がされるようなときに、この保護という言葉が、あるいは保護者という言葉がいいかといった議論も、久保委員も当然御存じでいらっしゃると思いますけれども、更に険しい議論がありまして、もちろんそのような意味でこの部会資料とか中間試案で用いようと考えているのではありませんけれども、読んだ人がそういうふうにイメージが拡散するようななりゆきは、滑らかなパブリック・コメントにならない要素として働きますから、余りなるべくそうした支障はない方がよいと感じます。とはいえ、代案がないものですから、今のところこういうふうになっていて、代案が出なければ最後までこうなってしまうかもしれません。久保委員に限りませんが、委員、幹事におかれて、何か今の点についても、形式的なことかもしれませんけれども大事なことですから、一緒に悩んでいただきたいと望みます。久保委員、ありがとうございます。 ○花俣委員 ありがとうございます。全くの素人ということで、テクニカルな議論にはなかなか付いていくのは難しいところです。ただ、より柔軟な制度になるために、それぞれ先生方が熱心に御議論いただいて、こうした中間試案ができてきたということは、一歩も二歩も前進したと、大変感謝申し上げております。   その上で、やはり事理弁識能力という用語についての議論は大変関心を持って聞かせていただきました。こういう用語とその概念自体がもう一度検討されるということも、私たちにとっては大変有り難いと思っています。様態が必ずしも一定ではなく刻々と変化する認知症の方にとって、事理弁識能力という用語そのものが持つ意味というのは、我々の一般的な社会通念、あるいは権利意識というところから、やはりそぐわないと感じています。また、こういった用語が再検討され、これに代わる、もう少し身近に感じ取れる具体的な用語に変わることを期待しております。ありがとうございました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。おっしゃった点につきまして、当然そのことも悩んでいる途上であって、また花俣委員にもお知恵を頂きたいと望みます。様々な法令がどういう表現を用いているかということなども調査しているところでありますので、折に触れて御助言を頂ければ有り難いと存じます。   それでは、部会資料13の第1及び第2の部分について熱心な御討議を頂きました。   休憩いたします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開します。   部会資料13の第3の部分の審議に進みます。初めに、第3の1及び2について事務局から資料の説明を差し上げます。 ○山田関係官 部会資料13、39ページ以下の第3の「1 保護者の選任」、第3の「2 保護者の解任(交代)等」について御説明いたします。   まず、39ページの第3の1では、保護者の選任について整理しています。また、41ページの2では保護者の解任(交代)等に関して、解任事由、欠格事由についてそれぞれ整理しています。   ○山野目部会長 説明を差し上げた部分について御意見を頂きます。 ○小澤委員 ありがとうございます。第3の2の保護者の解任(交代)等については、案のまとめ方としまして、今の(1)解任事由と(2)欠格事由をそれぞれ分けて案とするのではなくて、二つの論点をまとめた形で、甲1案、甲2案、乙1案、乙2案というふうな形で整理した方が分かりやすいのかなと思っています。   例えば、甲1案として現行どおり、甲2案として、現行の解任事由のうち不正な行為及び著しい不行跡による解任については欠格事由とするものとし、その他の事由、新たに設ける解任事由も含む、による解任については欠格事由としないものとする。乙1案として、本人の利益のために特に必要がある場合を念頭に置いて新たに解任事由を規定するけれども、欠格事由とはしない、そして乙2案として、本人の利益のために特に必要がある場合を念頭に置いて新たに解任事由を規定するけれども、欠格事由とはせず、かつ現行の解任事由のうち、その他の事由による解任については欠格事由としないものとするといったような形も考えられるのかなと思いました。 ○野村幹事 保護者の解任(交代)等ですが、47ページの13行目の甲2案や48ページの5行目の乙2案で示されている「その他その任務に適しない事由」については欠格事由としないという考え方について、一読してその明確な理由が分かりづらいと感じましたので、少し説明を加えてもよいのではないかと思いました。   それから、43ページの23行目「保護者に専門職が選任されているが、本人の状況の変化等により専門職よりも本人の生活圏内の身近な人の方が本人にとって適切な保護をすることができるときは」の部分ですが、ここは一読して分かりづらいと感じましたので、本人の状況の変化等の前に、「専門職の専門性が必要な事務が終了するなど」といった文言を追加すると、より分かりやすいのではないかと思います。 ○上山委員 ありがとうございます。私からは39ページの1、保護者の選任について、一つだけ申し上げたいと思います。その前にまず、先ほど山野目部会長から保護者の言い換えについてありましたので、私は単純に法定の支援者とか、単に支援者という呼び方があり得るのではないかと感じています。こだわりは全くありませんが、お尋ねがあったので、一言申し上げます。   保護者の選任について現行の規律を維持するものとするという御提案ですが、私は今回、青木委員の方から出されました、現行条文の規律を基本的に前提としつつ、本人の意見を文言として前の方へ持って行くという提案は考え得るのではないかと感じました。   現在に至るまでの国際的な議論を拝見している限り、具体的な支援の内容だけではなくて、誰に支援を受けたいのかということについてできる限り本人が決められるようにする、少なくとも誰が支援者になるのかということについて可能な限り本人の意向を反映させるというのが国際的な議論の大きな流れではないかと感じています。もっとも、これまでの審議会の中では、裁判所が本人の意見に拘束されるというところまで行くとなかなか難しいのではないかという議論が出ていましたので、仮にそこまではできないとしても、少なくとも今のような趣旨を踏まえて、青木委員御提案のような文言の修正ということで、本人の意向をここでも従来よりも強く尊重するのだというのを打ち出すというのが一つの考え方ではないかと感じました。 ○青木委員 保護者の選任に関する39ページですけれども、本日提出をしました私の提出資料の1ページの最初に提案をさせていただきました。今、上山委員から御紹介いただいたとおりでありますけれども、やはり御本人さんの意見ができるだけ尊重されるということは、現在の運用でもそう取り組んでいるということが説明書きに書いていただいてはいますが、実務運用では、やはり御本人さんの希望や申立人の希望があっても必ずしもその人が選任されるとは限らないという認識の方が広く知れわたっておりますので、今回やはりその点をしっかりと本人の意見を重く位置付けていただくという意味で、本人の意見というものを第一に持ってくるというのではどうかという意見になります。   ここでは、本人の意見の順番を変えるだけでは、一切の事情を考慮するという意味では同じではないかということもあるかもしれません。例えば、「本人の意見を尊重し」というように修正すべきという意見もあるかなと思っていますが、一方で「尊重し」とすると、考慮事由の一つとなることとの関係はどうなるかという議論もあるのかなということから、今回の提案としては、「本人の意見」というのを第一に出すという考え方でどうかということです。提案の趣旨としては、本人の意見が裁判所の考慮事由の中でも十分に位置付けを持っていただけるための書きぶりの見直しということで、提案させていただいたことになります。   次に、解任のところですけれども、まずゴシック体の提案としましては、これまでいわゆる「改任」という言葉などを使いまして、従来の解任事由とは別の枠組みを設けるという議論をしていたかと思いますので、現行の解任事由を変えていく、修正していくという方向の議論とは別に、第3の類型を設置するということもあるのではないかと思いますが、この点、ゴシックのところでは甲案と乙案だけになっているという点について、この整理でいいのかなと思っているというところです。   それから、説明の中で、44ページの24行目になりますけれども、少し記載が抽象的なのです。「本人において保護されるべき利益は多分に価値判断を含むもので」の意味する内容をもう少し具体的に分かるような記載にしていただく必要があるのではないかと思いました。   それから、47ページの17行目から、欠格事由を全体的になくする方向での意見というものをまとめていただいているのですけれども、こういう御意見があることは前提でいいとは思いますけれども、それでは一方で、横領事案等があった場合に、他に担当している後見事案との関係で担当を継続させていいのかとか、一定の期間が過ぎたら過去に不正をした者が再度選任されるようになってもいいのかという意見を部会で出させていただいていますので、そういった意見があることも記載いただく必要があると思います。   また、22行目から、裁判所が欠格事由を踏まえて適任者を選任すると記載いただいているのですけれども、ここは、もし欠格事由にしない場合のことだと思うので、「欠格事由とされている事情も踏まえて」という記載が誤記ではないかというのが1点です。その上で、ここがもし「解任された事情も踏まえて適任者を選任する」という趣旨だとしますと、解任された家庭裁判所が、別の家庭裁判所であるような場合や、解任したときからかなり時間が経過して次の事案を選任をする場合もありえることを考えると、果たして「解任された事情」を裁判所が具体的に把握して、欠格事由になっていないにもかかわらず、それを考慮して選任するといった対応ができるのかということに疑問を感じますので、この説明はいかがなものかと思います。 ○山城幹事 2点御発言申し上げたいことがございます。1点目は、先ほど上山委員と青木委員からも御発言があった点ですけれども、保護者の選任については、私もやはり本人の意思が尊重されるという趣旨が現行規定よりも明確になる提案があってもよいのではないかと感じます。そのように考える理由につきましては、既に両委員から御説明があったことと共に、次のような懸念も感じました。資料40ページには、現行規定においても本人の意見を確認する機会があるのだから、本人の意思は尊重されているという説明がありますけれども、このように考慮事情として取り上げるだけで意思の尊重が十全に行われていることになるのだとすれば、他の場面、例えば保護の開始について本人の同意を問題とするといった議論がされている場面でも同様に考えられることにならないでしょうか。この点は議論の力の入れ方がややアンバランスに感じられますので、本人の意思を尊重するという考慮をさらに明確にした提案があってよいのではないのかと感じます。これが1点です。   もう1点、保護の開始に対する本人の同意について議論がありましたけれども、誰が保護者に選任されるかを度外視して本人が同意を与えるということは、なかなか難しいのではないのかと想像します。私は実情に通じていませんので、これは想像でしかないのですが、仮にそうだといたしますと、保護の開始について本人の同意を問題とするならば、保護者の選任についても本人の意思を第一に考えるという趣旨が、条文の体裁として前面に出てよいのではないかと感じます。具体的には、青木委員の御提案のほか、本人の意思を尊重するという独立の項をまず設けた上で、後続する項で他の考慮要素を列挙するというようなことも、体裁としてはあり得るのかもしれないと感じました。 ○星野委員 解任、交代のところ、すなわち2について発言したいと思います。今までも出ていたように、改任という概念の説明が必要ではないかと思います。例えばですが、欠格事由としないものとすると書かれているものというのが、いわゆる任を解くではなくて改の方なのかなと議論の中で理解していたのですが、そういう提示ができないかと思います。というのは、実務に携わっている福祉関係者、あるいは後見制度を説明する福祉の相談を受けている方たちの、やはり解任という言葉のイメージがすでにかなり強烈にできていて、この説明がすっと入るかなというところでは、改めて別の整理をして提示するということも意見が出やすいのではないかと思いました。 ○波多野幹事 今、解任、交代のところで御指摘いただきました別の類型ないしは改任との指摘でございますが、前提としましては、以前の部会で私の方から委員、幹事のみなさまにお問い掛けをした、いわゆるAをBに替えるというものなのか、そうではないのかということについては、そうでもない場合、すなわち、Aを辞めさせるだけ、というケースも考えているということでありました。そうしますと、恐らく法制上は改任ではないのだと思います。また、単に結局辞めさせるということだとしますと、民法の規律の書き方としては、解任以外の方法はなかなか書きにくく、他の書き方で書くとかえって誤解を生むような気がいたしまして、前回ぐらいから資料としては解任で整理をさせていただいているというところでございます。したがいまして、ここを違う何か書き方をするというのはなかなか直感的には困難ではないかという気がしていまして、単に辞めさせるとは違う仕組みであるということであれば御提案として承って、また整理を考えたいと思いますが、やはり辞めさせる仕組みであるということでありますと、整理としては解任になるのではないかと思っているところでございます。なお、引き続き先生方で御議論いただいて、違う整理ないしは違う言葉ということであれば、我々でも検討させていただいて、また整理を引き続き試みたいと思っております。 ○山野目部会長 今、波多野幹事がお話しになったとおりでありまして、委員、幹事の皆さんの御理解を頂いた上で、更に中間試案での言葉の選択などでも工夫していかなければいけないこととして、改任という議論を委員、幹事にしていただいたところは、良かったでしょう。欠格事由にならないような、不正行為がないようなものについても、どうしても話合いというか協議のレベルでうまくいかないとき、意に反して任から去っていただくという場面は要りますねと、これは従来と発想が異なるから、改任という言葉で仮に呼びましょうかという話を進めました。ここでの議論はしやすかったですね。ただし、それと、もう少しオフィシャルなドキュメントにしていくときに、改任という発想はすごくよく分かるねという、そのレベルで用いれた言葉を、そのまま法律概念に近付けていく段階で使うことがふさわしいかとか、可能かとかいうことになってくると、なかなか難しい問題が出てきます。法制的に述べると、もしかするとやはり改任といってきたものも解任かもしれないですし、それから、波多野幹事がお話しになったように、取り分け、この後この人になりますというところが必ず決まっているときは改任というものも法律概念としてはありそうな気がしますけれども、そうではなく、取りあえずその任を離れていただきましょうということになると、それは少し改任では説明がしにくいですねというお話が残るかもしれません。ここの辺りの言葉遣いの整え方は非常に悩ましいということも、少し委員、幹事に一緒に悩んでいただいた上で、またより良い中間試案のワーディングを考えていくということにいたしましょう。   1及び2の部分について、ほかにいかがでしょうか。   よろしいですか。それでは、部会資料のその先ですけれども、3から6の部分について一括してお諮りをします。事務当局から説明をお願いいたします。 ○山田関係官 部会資料13の48ページ以下の第3の3から第3の6までについて御説明いたします。   まず、48ページからの第3の3では、保護者の職務及び義務について整理しています。本人の意思の尊重及び身上の配慮や財産の調査及び目録の作成等、成年後見人の郵便物等の管理、成年被後見人の居住用不動産の処分についての許可などについて記載しています。   また、62ページからの第3の4では、本人の死亡後の成年後見人の権限(死後事務)等について整理しています。   さらに、66ページからの第3の5では、保護者の報酬について、69ページからの第3の6では、保護者の事務の監督について、それぞれ整理しています。 ○山野目部会長 説明を差し上げた部分について御意見を頂きます。 ○小澤委員 このような整理をすることに基本的に異論はございませんが、2点意見を述べさせていただきます。   部会資料49ページに記載がある(注1)については、3(2)の財産の調査及び目録の作成等に関する記載かと思いますが、この(注1)の考え方については、後見業務の実務において重要な考え方であると思いますので、新たな規律とする案として記載をしていただければなという意見を持っています。   2点目は、第3の3(3)の成年後見人による郵便物等の管理については、規律を設けない案のみが示されていますが、その前提として、郵便物の管理について、この郵便物の管理という個別の代理権として付与することができると考えられるかどうかも検討をしていただいて、説明に加えることができればよいのではないかという意見を持っています。 ○佐保委員 48ページの3、保護者の職務及び義務でございますが、たたき台の方向性に異論はありませんが、(1)の本人の意思の尊重及び身上の配慮について、現状として担保されていないのであれば、注書きにあるような明確化も検討が必要ではないかと考えます。 ○山城幹事 48ページの保護者の職務及び義務という点についてです。こちらも青木委員から同旨の指摘といたしまして、本人意思尊重義務という形で、チーム支援における意思決定支援等々に関して民法の中でも一定の位置付けをしてはどうかという御提案があり、また第15回会議では、858条との関係で定式をもう少し具体的に示した方がよいというお話が部会長からあったところと記憶しております。   それで、少し考えてまいりまして、趣旨といたしましては、52ページ21行目以下にございますけれども、本人等に適切な情報を提供するように努めるといったことを義務内容として明示することを考えてはどうかと思います。   まず、「成年後見人は、本人に対して、その心身の状態を考慮して適切な方法により後見事務の処理の状況を報告し、その方針について協議する」といった規定を本人との関係で設けるとともに、「成年後見人は、本人を支援する者(成年後見人が複数ある場合においては、他の後見人を含む。)があるときは、この者に対して、適切な時期に後見事務の処理の状況を報告し、その方針について協議する」といった定めを支援者相互について設けるということです。本人を支援する者というのは、チーム支援に関わる人を想定していますが、この点を含め、全般的に文言についての工夫は必要かと思います。こうして、チーム支援に携わる人や他の後見人に対しても事務の処理状況を知らせて協議するという規律を作ることで、チーム支援それ自体を義務付けることなく、情報の共有までは民法の問題として手当てするということもあり得るかと考えた次第です。 ○佐久間委員 まず、今の本人の意思の尊重及び身上の配慮についてですけれども、青木委員から御提案があり、その案に賛成、同じように考えればいいのではないかと思っています。対し、山城幹事からはチーム支援のことも考えて、チームの、あるいは支援者に向けての説明もうんぬんというお話があったかと思いますが、それには私は反対です。   そもそもが支援者の外縁がはっきりしないということと、それに関連するのですけれども、本人以外の者に対して情報提供した方が望ましい場合があるというのはそのとおりだと思いますけれども、周りにいる人が必ずしも本人のことを考える人ばかりではないかもしれないということ、本人がいろいろな人からの助言を得て、後で申し上げることですが、意思を決定するということはあっていいけれども、そこはやはり最後は本人が取捨選択をすべきところだと思うので、情報提供をもし保護者がすべきだということになると、そこは本人を対象とするということに限る方が私はいいと思います。これは、前回の部会長の御発言を受けて、山城幹事が今日初めておっしゃったことなので、そのお考えについて賛否を申し上げました。   その上で、「意思」という文言が現行の民法858条で使われていて、青木委員も山城幹事も、恐らく意思というのをそのまま使われたと思うのですけれども、ここは意思でいいのかという話があったと思うのです。青木委員の御提案では「意向を含む。」と書いてあるのですけれども、今までの多くの方の御発言を伺っていると、ここは意思ではなくて「真意」なのではないかと私は思いました。つまり、法的な効果を持つ内心の考えではなくて、法的に尊重されてよいのだけれども法的効果に直結するものではないという内心の状態のことではないかと。民法93条には、民法93条と同じ意味だと申し上げるつもりはないのですけれども、法的な効果には直結しないのだけれども、結局法律上、場合によってはある種、尊重されるべきものとして「真意」という文言が使われています。民法858条にいう「意思」についても、本人が本当に考えていることというぐらいの意味で割と捉えられているのではないかと思うので、ここは事理弁識能力を欠く、つまり意思能力のない、つまりというか多くの場合、意思能力のない人も含めて、でも本当に望んでいること、本当に考えていることというのはあるのでしょうねということで、真意という言葉に変えることがあってもいいのではないかと思っています。最終的に「意思」をそのまま使うことになったって別段支障はないのですけれども、意思という言葉では酌み尽くせないところがあるのを、真意とすることで少しはましになるのではないかということで、申し上げた次第です。   次に、財産の調査及び目録の作成についてなのですが、これは次の財産の管理及び代表のところもそうだし、成年後見人による郵便物等の管理のところもそうなのですが、今日冒頭で申し上げたことで、第1の1で甲案を採る場合は、これらはそのまま存置するということになると思うので、甲案を第1の1で残すのであれば、そこに対する言及は必要なのではないかと思います。   それはそれとして、今の御提案というかゴシックを前提として、財産の調査、先ほど小澤委員がおっしゃった49ページの(注1)にも関係するのですけれども、私は、類型を一本化する場合であっても、時には本人の財産の状況の調査あるいは財産目録の作成がされるべき場合を残していいのではないかという意見を持っておりました。それを酌んで、恐らく(注1)は作っていただいたのだと思うのですけれども、(注1)は、保護者がこれを申し出て、裁判所の許可を得てと読めるのですけれども、私が考えていたのは、本人のかなり重要な財産を管理することになる代理権を得てというときには、財産の総体をやはり把握できるように制度的にしておくべきだということでして、民法の規定として、裁判所が調査、作成を命ずるということの方がいい、そういう可能性を残した方がいいのではないかという趣旨でした。それは不要だと、そこまで踏み込めないというのであれば、もちろん最後に残らないことになるのですけれども、もし注記するのであれば、その意見を入れていただけると有り難いと思います。   それから、次に説明のところに参りまして、50ページと51ページに、本人の意思ないし意向を尊重するというときに、「表明された本人の意向」、「本人の表明した意思、意向」と、「表明」という言葉がわざわざ付してあるのですけれども、これは要るのかということです。先ほどの真意にも関わるのですけれども、本人が表明していなくったって、推測にしかならないでしょうけれども、これが真意だよねというものを探れ、あるいは意思でもいいですが、それを探れ、そして、まあこうなのだろうと考えられるに至った場合はそれを尊重せよ、ということなのではないかと私は思っていたものですから、この表明されたとか、表明したという言葉を付すことが適当かを御検討いただけたらと思っています。   それから、これは細かい話になるのですけれども、青木委員がお出しになった意見に関連してなのですが、少し戻ってしまいますが、本人の意思の尊重及び身上の配慮のところで、ゴシックの案は48ページで「保護者は、」の後に括弧付きで「〔その事務〕を行うに当たって」とされているのに対し、青木委員の御意見では、「本人の生活、療養看護及び財産の管理にする事務を行うに当たって」とされているのですね。これは、事理弁識能力を欠く常況にある者、つまり今の後見相当の類型を残す場合は、その類型については今の後見人の義務と同じでいいと思うのですけれども、そういう区別をなくすということになると、今、保佐とか補助については、保佐とか補助の「事務を行うに当たって」となっているのと同じように、やはり合わせる必要があると思います。細かい話でテクニカルなことなのですけれども、そこも類型によって表現が変わってくるということは、説明でもいいと思うのですけれども、明らかにしておう方がいいのではないかと感じています。   あと1点ありまして、最後、57ページのところで、郵便物の管理について要る、要らないの話がされているのですけれども、(3)のところでは、事理弁識能力を欠く常況にある者自身による郵便物等の適切な管理を期待することができないため、財産管理が損なわれるおそれがあるということもあるので、必ずしもその類型化にかかわらず、郵便物等の管理について今と同様の仕組みを設ける場合があってもいいのではないかと書かれており、類型を分けなくても事理弁識能力を欠く常況にある人というのは存在し続けるわけで、その人について、今読み上げました57ページの14行目以下のおそれがあるというのも変わらないと思うのです。その上で、しかし58ページのイのところでは、現行の保佐類型の人に関してそんなことを考える必要がないのだから、今後は、もし類型を分けなかったら、慎重に検討する必要があるよねと、そういう書きぶりになっています。けれども、それは少し論点がずれているのではないかと思います。今の保佐類型の人について郵便物の管理の仕組みを拡張することは、それは要らないのかもしれないけれども、現在の後見相当の人について引き続き、そこだけ結局、切り出してになってしまうのだと思いますが、その仕組みを存置するという必要はないのかということを考えなければいけないのではないかと思っており、私はその必要はあるのではないかと思っているので、そこを類型を分けないとなると、どういうふうにして切り出していくかが問題になる、ということではないかと思っています。 ○山野目部会長 佐久間委員が子細に部会資料を検討していただいたところ、一つ一つよく分かりました。佐久間委員の今御発言いただいた刹那に、二つほど佐久間委員に御相談を差し上げておきたいと考えます。いずれも初めの方におっしゃったことに関連する2点ですけれども、1点目は、山城幹事が問題提起したチーム支援のことです。佐久間委員がおっしゃるとおり、支援者、括弧これこれの者をいう、という人々に対して情報を提供しなければならず、その意見を尊重しなければいけないみたいな法文を書くというのは成り立ち難い、これは御指摘のとおりです。それとともに、山城幹事がおっしゃろうとした、チーム支援が何らかの仕方で読み取れるような規律の在り方をなお追求してみましょうという観点から申せば、必ずしもそういう硬いチーム支援を民法に書き込むという出方ばかりではなくて、工夫の仕方によって、今日、福祉の現場においては常識になっているチーム支援という概念を、民法の規律が全くそれと無関係であるような印象を与える姿もよろしくないし、佐久間委員が御心配になったように、深くコミットすることもできないですけれども、何かこのチーム支援という契機をうかがわせて、それが働いているときには、まあそこをうまく進めていくということも配慮のうちに入れてくださいねというような示唆、およそその程度を書くという発想ですけれども、そのくらいの文言表現で何か工夫ができないかということを、引き続き少しお知恵を頂きたいと感じます。   それからもう1点は、858条の意思が、意思でしょうか、場合によっては真意かもしれないとおっしゃっていただいたところは、全くそのとおりでありまして、通常の法律行為概念でいう意思とは異なるものでありますとともに、真意という言葉が、佐久間委員も御指摘になったように、93条のような場所以外でなかなか用例がないものですから、現行法の意思でもなく、そしてもしかしたら真意でもないとすると何があるかという辺りが悩ましいです。ここも本日ではなくてもよろしいですけれども、お知恵は引き続き頂きたいと思うところでありまして、今この場面で佐久間委員から何かお教えいただくことはありますか。 ○佐久間委員 いや、私は「意思」は余り好ましくないということをまず思っていて、そこで「真意」はどうかなということです。ほかの表現でいうと、「意見」でも別にいいのかもしれないと。どこの条文でしたっけ、何か「意見の尊重」という文言がありましたよね。そこで、意見でもいいのかもしれないと思っています。 ○山野目部会長 福祉の現場で見ていると、有り体に述べれば、意見とか意思とかという立派なものである場合もありますけれども、あえて漢字に直すとすると選好ですよね。佐久間委員御指摘のとおり、表明しないですよ。本人が内心じっと思っているものであって、みんなで支援者が一所懸命聴いてみると、本当は何とかが不満だったの、と口にして、それもほとんどは民法上の法律行為とは余り関係がなく、いや、自分はこれこれのこういう暮らしはしたくないということについての、しかし本人なりの強い好みの表明ですね、そこをよく見てあげないといけないよという方向の議論を今、委員、幹事からしていただいていると受け止めます。そのワーディングをどうしたらよいか、引き続き悩ましいところだと感じます。ありがとうございます。 ○上山委員 ありがとうございます。まず、今の話に関して若干敷衍いたしますと、山野目部会長におっしゃっていただいたとおり、障害者権利委員会による障害者権利条約の解釈の中では本人の意思と選好を尊重するという表現が、より正確に言うと意思と選好の最善の解釈という言い方を使っていますので、選好というワーディングが日本の民法典の規律としてなじむかは考慮を要すると思いますが、私としては一考の余地があるのかなと感じました。   それから、先ほど佐久間委員から既に御指摘があって、今、部会長の方からもご指摘がありましたけれども、50ページの22行目の本人意思尊重のところの記述ですが、これは必ずしも表明された本人の意思だけではなくて、恐らく部会資料を作られたときには、意思決定支援の趣旨をいかそうということでこの表現を用いられたのだろうと思っておりまして、それはそれで非常によいことかなと思ったのですが、その反面、ここで尊重されるべき意思の中には、恐らく推定的意思と一般に呼ばれるものも入るかなと思いますので、少なくとも表明された意思だけに限定されないということは伝わるようにしていただいた方が、要らぬ誤解を招かないのではないかと感じました。   もう1点だけ、すみません、62ページの死後の事務についてなのですけれども、死後の事務の甲案は、今回の資料の第1の1の甲案には当てはまる、つまり現行の規律を原則として維持するという考え方には当てはまると思います。しかしながら、その反面、第1の1の乙2案を前提とした場合には、必ずしもここでいっている4の甲案とはストレートにつながらないような気がいたします。後ろの方の甲案についての説明を拝読いたしますと、基本的には現行法のように包括的な代理権ないし包括的な管理権がある場合に死後事務について正当化が図られるのだという理解かなと思いますので、そうだとすると、事理弁識能力を欠く常況にある者について保護の仕組みを仮に別枠で設けた場合であっても、乙2案に限らず、この類型について必ずしも包括的代理権ないし包括的管理権の付与までを当然に想定しているわけではないと思いますので、若干説明が必要なのかなと感じました。 ○山野目部会長 上山委員、どうもありがとうございました。 ○根本幹事 858条の点について、何点か補足と意見を申し上げたいと思います。   文言の内容としましては、青木委員提出資料のとおりと私も提案としては考えておりますけれども、提案をさせていただいている背景には、今まで先生方の議論にもありましたように、意思決定支援のプロセスを何らか法制化するべきだということと併せて、法制上許容される文言は何なのかということを検討したというところになります。   参考になるかどうか分かりませんけれども、保険業法の294条のところで、保険契約の内容その他保険契約者等に参考となるべき情報の提供を行わなければならないとして、監督官庁が付いている業法で文言が使われているということから、情報の提供という文言は法制上も問題はないのではないかというところが一つです。もう一つは、同じく保険業法の294条の2になりますけれども、顧客の意向の把握ということで、顧客の意向を把握し、という文言もここでも使われています。その上で、顧客の意向と当該保険契約の内容が合致していることを顧客が確認する機会の提供を行わなければならないとなっていますけれども、意向を把握するというところも業法上の文言として使われているということなども踏まえて、今回の文言の提案をさせていただいているということになります。   その上で、先生方から今御議論がありました、現行の858条においての意思も意向を含んでいるという理解を前提に、ここは米印を付けさせていただいているというところになりますけれども、今、先生方から御議論がありました、ここの文言を何がいいのかということは引き続き検討しなければいけないという説明書きをしていただくというのも、一つの提案のされ方かとは思っております。   それから、チーム支援の点については、先ほどの山城幹事や佐久間委員若しくは部会長のやり取りとも関係するのかもしれませんが、例えば、障害者総合支援法の42条においては、市町村を含めた関係機関との緊密な連携として、その連携先を特定されていると規定になっています。858条の改正の提案を考える上で、佐久間委員からの御指摘にもありましたように、特に虐待事案などで必ずしも本人との関係が望ましくない関係者の方に悪用されないようにするという観点も含めて考えますと、まだ知恵が絞り切れていないというのが提案の背景にあるというところは、申し上げておきたいと思います。   最後ですけれども、先ほど取消権のところでも申し上げましたが、取消権の付与に当たっては、今の資料のとおりの整理だと思っていますけれども、取消権の行使に当たっては、取消権の本人の権利侵害性という性質に着目をしますと、内部的な関係とはいえ、何らか通常の善管注意義務に加重した義務というものを保護者に課すべきであるというのが今までの部会での議論というところになります。その観点で申し上げますと、取消権行使においては、本人の意思若しくは、意向を、特に把握するように努めるという文言で、特にというところと、場面を取消権行使においてはと限定して加重していただくというところも、併せて御提案できればと思っております。858条とは別の規律ということで、2項になるのか、どこに文言を置くのがいいのかというところはあるとは思いますが、御提案申し上げておきます。 ○常岡委員 今の保護者の義務のところで、858条ですけれども、部会資料の50ページの26行目以下で、現行法の規定では善管注意義務の内容を敷衍したものであって、それを明確にし、具体化したものであるという位置付けが示されています。ただ、今、各委員からのいろいろな御意見にもありましたように、今回の改正では身上配慮義務自体についてもより具体的な細かい本人の意思ないし選好、意向を尊重した方向でという話になっています。ですので、善管注意義務はもちろん委任の規定644条を準用して、そのまま置いておいてよいと思うのですけれども、それに加えて858条を念頭に置いたときに、諸外国の例だと、このようなケースでは、フィデューシャリーであると、受認者としての義務を負うものであるというような立法例があったりします。そういうようなものを考えると、そもそも改正後のこの保護者の義務としては、一種の忠実義務であるとか慎重義務であるとか、そういったものをベースにしていくということを、善管注意義務とは別にもう一つ立てるということもあり得るかなと思います。それを基にして858条を支えていくという、そういう扱いにしていくと、文言としては民法の範囲で言葉を選ばないといけないと思いますけれども、そこにもしも慎重に行動する義務であるとか、あるいは本人に対して忠実に行動する義務のようなことを入れていくことができれば、かなり現在我々が目指しているところに沿ったような規定になるかなという気はいたしました。   それと関連して、保護者という言葉の話が出たので、これについてですけれども、安易に外国語のものを持ってくるということではよくないかとも思いますが、例えば受認者という表現もあり得るのかなという気がいたしました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。この保護者に代わる言葉につきましては、先ほど上山委員からは法定の支援者ないし支援者という御提案を頂いたし、今、常岡委員からは受認者、委任の規定の受任者ではなくて、認という字の方の受認者ですね、という発想もあり得るというお話を頂いて、頂いたお話を参考にしながら、悩ましい点ですから、引き続き事務当局も悩んでまいりますけれども、ここは委員、幹事全般におかれましても、中間試案の見映えにも少し関わることですから、何かお知恵があったら随時にお出しいただきたいと望みます。常岡委員からもう1点頂いた点、忠実義務の御提案の点も留意を致します。   引き続き御意見を頂きます。 ○青木委員 48ページの3のゴシック体の部分について、まず申し上げますと、既に引用いただいています本日提出の私の資料の2番に書きました提案となります。若干補足をしますと、本人の意思を「把握する」という言葉を使うこととしましたのは、保険業法に限らず、法令の中の使い方として、ただ確認するよりも、何らかの調査をした上で御本人の意思を知ろうとすると、そういう積極的な義務者の行為も想定しているような使い方がされていますので、それに倣って、確認という言葉よりも「把握」が相当ではないかということを考えました。   それから、現在は「本人の意思を尊重し」になっているのを、「十分に尊重」にした方がより強まるという趣旨で、「十分に」を入れてみましたけれども、ここについては、十分に尊重しという法令の用法が他にもありますけれども、それが尊重しよりもより強める方向での用法として正しいのであれば、「十分に尊重し」とすることが適当ではないかという意味で提案させていただいたということを補足をしておきます。   それから、次に、同じゴシックの中の郵便物の回送につきましては、必ずしも御本人さんの事理弁識能力が欠ける場合以外にも必要性はあると考えておりまして、その場合には、やはり通信の秘密との関係がありますので、付与された権限の行使のために必要であるとか、それ以外の郵便物は開封をしないで本人に返却をするとか、あるいは本人の同意が得られる場合には本人の同意、若しくは意に反しない場合というような要件を付けることによって、通信の秘密の制約をできるだけ少なくするという観点で法制化をしていただくことができないだろうかという意味で、49ページの(注)は、具体的な対案として検討いただけないだろうかというのを意見として述べておきたいと思います。   次に、説明文の方ですけれども、50ページの19行目から、意思決定支援に関する重要さを書いていただいていますけれども、やはりここでは権利条約が12条3項で意思決定支援をまずは優先的にするというパラダイム転換の要請のことや、最高裁も中心とした意思決定支援ワーキング・グループにおいて「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」が既に作られており、その実践等が広められているというようなこともこの見直しを求める背景事情にありますので、それも記載を頂いた上で、これを受けた見直しの議論をしているのだということが、国民への説明としても必要なのではないかと思われます。   それとの関係もありまして、52ページの1行目からは、意思決定支援ということを民法で書くことが難しいという事情をいろいろ書いていただいていまして、ここに書いてあること自体はそうかもしれませんが、一方で、先ほど言いましたように、後見実務のガイドラインとか、それから民法以外では「意思決定の支援に配慮し」という文言をいれた法規が多数あったりしていることも踏まえますと、日本の法制の中でも「意思決定支援」ということが位置付けられてきているということを踏まえた上で、ただ、説明文に書かれているような事情も踏まえて、「意思決定支援」という言葉そのものを民法の中に取り入れるのは難しいのではないかという記載にしていただかないとならないと思います。これだけを読みますと、意思決定支援についてのこれまでの取組みについて、最高裁を含めて取り組んでいるのに、それをどう考えているのだろうかという違和感を国民に与えるものになるのではないかということを懸念しております。   それから、死後の事務については、火葬・埋葬に関する許可の権限についてだけ書いて頂いていると思うのですけれども、現行規定にあります特定財産の保存や相続財産に属する弁済期の到来した債務の支払というのは、これは事理弁識能力を欠く常況の者か否かを問わず、亡くなった際に相続人に委ねることができず対応する必要性があると思っています。そして、限られた特定の権限を付与されている者についても、その権限との関係性を持ったものについてのみ裁判所が許可することによって制度化できるのではないかと思っておりまして、そういった考え方を御紹介をしていただくことが可能なのではないかと思っています。   なお、火葬・埋葬につきましては、この部会でも、墓地埋葬法、行旅法、生活保護法等による公的な対応ですべきではないかという御意見も出ているところですけれども、この3月にまとまりました厚労省が委託した調査研究報告書(行旅病人及行旅死亡人取扱法、墓地、埋葬等に関する法律及び生活保護法に基づく火葬等関連事務を行った場合等の遺骨・遺体の取扱いに関する調査研究事業報告書(株式会社日本総合研究所 令和7(2025)年3月)によりますと、全国的に非常に取扱いに格差があり、それは地域の火葬・埋葬に関する風習等によっても変わるものであって、一律の制度化というのがすぐには困難であるというまとめががされていることも踏まえて考えますと、今後、公的な対応を更に強めるべきというのはそのとおりであるとしても、後見実務においても死後の事務処理について一定の対応をすることができるようにしておくことは、今回の改正においてもなお必要ではないかかと感じているところです。   最後に、報酬の点、第3の5についてですけれども、これにつきましては本日提出の私の資料の方で新たな提案をさせていただいています。この提案は、予測可能性に資するための提案ではありませんが、今後、担い手の持続的確保というのが非常に重要な課題になってくる中で、報酬の検討の中で、事務の内容や性質や専門性というのをしっかり考慮した上で判断をしていくのだということを明示的に法文に出していただいた上で、最高裁もこの4月からの運用の中で御検討いただいていることでもありますが、それを法制化としても打ち出していただきたいということです。一方で、後見人の資産に基づいて報酬を算定するという考慮は現在の実務では行っていないのではないかと思いますので、この際、削除でもいいのではないかという提案です。   それから、報酬決定の審判書に、算定の理由を書くことが難しいということを説明文には書いていただいているのですけれども、具体的に詳細な理由を書くことは確かに難しいとは思いますけれども、例えば考慮した事由を幾つか書いていただく、あるいはその中で基本報酬と付加報酬と加算報酬というのがそれぞれどういう割合で算定されたのかという割合を示すなどしていただきますと、予測可能性にも資するものにもなりますし、記載可能なのではないかと思います。そこで一定の範囲での理由の記載ということはなお模索していただきたいと思っており、そういう意見が出ていることを説明文には紹介いただけないかと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   御案内が不足していたかもしれませんけれども、部会資料13の最後までのところを今、御意見をお尋ねしております。報酬とか監督についても御意見がおありの際には、積極的におっしゃっていただきたいと望みます。引き続き伺います。 ○根本幹事 報酬の点について、今の青木委員の御意見の補足と、新しい提案を一つ申し上げておきたいと思います。   補足の点は、先ほど青木委員からありました報酬の規定について、後見人の資力は削除するべきではないかという提案をさせていただいていますが、これについて補足を致します。元々平成11年の改正時には、いわゆる文言は変わっていないということになるわけですが、例示列挙であっていろいろな事情を読み込むことが可能であるので、特に禁治産制度の時点からの規定ぶりを改める必要はないという説明が立法担当からはされているところです。しかしながら、禁治産のときには配偶者の方が第1順位となっているということとの関係で、扶養義務等々も考慮した上で、後見人の資力というのもそのまま残ったということかと思いますが、先ほど青木委員からもありましたけれども、現在の後見制度においてはそのような順位があるわけでもありませんし、考慮されているという実態があるわけでもありませんので、今般の改正でここは削除するべきではないかと考えているということになります。   それから、もう1点は、これは部会の中で議論があったところですので、ゴシックや(注)の段階ではないということを承知の上で、説明の中に入れていただきたいという点になりますが、報酬についての確保の規定を設けるかどうかという議論の点です。これは私の記憶であれば、佐久間委員からは反対の御意見を頂いていたところでもありましたので、説明の中で書いていただくというものにとどまると思っていますけれども、その上で説明の中で記載をしていただきたいと思っている内容としましては、任意代理の場合には民法648条1項で、報酬を定めるということができるわけですけれども、法定代理の場合には御本人との間で報酬や費用の支払について合意をするというものではありませんので、この相違に基づいて、規定を検討するということができるのではないかと思っています。   その上で具体的には、費用の前払請求である民法649条が現状、法定代理では準用されていませんので、準用を検討するということと併せて、死後事務に関する民法873条の2の3号許可と同様に一定の要件、つまり、裁判所の報酬付与決定が出ていることが前提になりますけれども、例えば、本人がいろいろな事情でその支払に応じていただけない一定の場合には、報酬等を預貯金から払戻しを受ける許可審判を創設するということが、意見としてはあってよいのではないかと思っております。   あわせて、これは運用上の問題だと思いますけれども、特定の法律行為が、例えば破産の申立て代理ですとか、後見事務の内容が予定をされているものということであれば、それは予納金制度を設けていくということもあり得るところだと思いますし、あわせて、例えば遺産分割や交通事故などの損害賠償などを事務として行った場合には、現在の家庭裁判所の運用上は、後見人の預かり口を活用するということではなく、御本人の口座を活用せよということになっていますけれども、一定の場合には、預り金口などを活用するということも運用上、変更を認めていただくということもあり得るのではないかと思っておりますので、そういった議論があって、中間試案等でパブコメで、制度を設けるということ自体の是非というのを国民の皆さんに問うていただくということが必要ではないかと思っております。 ○河村委員 ありがとうございます。48ページの3(1)の本人の意思の尊重及び心情の配慮のところですけれども、青木委員がお出しになった資料の御意見のこの箇所のところに賛成いたします。実は前の議論のときには確認という言葉が資料の中にあったので、その言葉を私は取り上げて、少し違うのだけれどもこういう意味のことをと申し上げたのですが、今日正に把握という言葉で、把握に努めるというふうに入れて欲しいと私も申し上げようと思っていたので、これに賛成いたします。そういうふうに書けば、把握するために日頃から本人とコミュニケーションを密にしなければいけないとか、そうやって御本人の価値観とか好みのようなものを理解するように努めるということが、背景というか行間に読み取れる気がいたします。コミュニケーションの問題などは、現場ではやはり問題になっているということを現場にいらっしゃる方たち、この会議の中でもおっしゃっていたので、このような改正という提案が中間試案の中で、パブコメを書くときに選択肢として書かれているということを望みます。   それから、少し質問なのですけれども、私は法律の専門家ではないので教えていただきたいのですが、佐久間委員や部会長が、意思のところを真意という言葉にすればと、そういう考え方もある、そういう選択肢もあるとおっしゃったと思うのですが、教えていただきたいのですが、真意という言葉に変えるということは、意思という言葉で表されるよりも、御本人が表したものを、もっと広く取れると、これは意思という言葉では難しいけれども、大きく拾うことができるという意味でおっしゃっているようにも私は感じたのですが、そこで教えていただきたいのですが、例えば、真意と変えたときに、尊重しというところに係るのですけれども、尊重の度合いに何か影響しますでしょうか。というのは、真意は分かったけれども、法律的な行為としてはこちらの方がいいよねと、代理する人が判断するとか、つまり参考程度にとるということも含まれるのかどうか、そのニュアンスが私は分からないので教えていただきたいと思います。何で真意と変えた方がいいのか、つまり、固い法律的な意味にならなくていいよねとおっしゃっているのか、それとも尊重するという方に係る場合もあるのか。つまり、一番いい場合は、真意のようなものでも、本当に努めて読み取った、把握した上で、それを法律的な意味でも意思の形に変えてあげるのが保護者の方の仕事だというふうに、私は一番いい場合はとっているのですけれども、そうではなくて、真意とした場合には参考程度にする場合もあるということがニュアンスとしては含まれているのかどうか教えていただきたいと思います。伝わったかどうか分からないのですが。 ○山野目部会長 河村委員が前半で御意見でおっしゃっていただいたことは受け止めました。ありがとうございます。後半でお尋ねいただいたところは、真意という言葉を推している委員が私ではありませんから、佐久間委員に御発言をお願いいたします。 ○佐久間委員 私は「真意」は一例だと申し上げたとは思います。「意思」は好ましくないと申し上げました。「意思」という概念は、法律効果の基礎になる本人の内心の考えということを通常は意味していると思います。そうであるために、事理弁識能力を欠く方は多くの場合意思無能力であるという言い方をするときに表れているように、事理弁識力を欠く人、あるいは現在では後見類型の対象者には、法的なものとして認めることのできる「意思」というのは、ないというと少しあれだけれども、認め難いという受け取り方がされてきたのではないかと思います。そのような受け取り方を前提とすると、「意思」という法的効果に直結するとまで言うとあれかもしれないけれども、かなり近いことになる内心の動きを使うことは好ましくないと思ったからです。   「真意」という言葉、「意見」でもいいと申し上げました。「選好」も別に悪くはないけれども、「選好」というのは難しい言葉だなというふうな気が私はしたので、余りそれこそ好みではないのですけれども。「意思」以外の文言の場合、意思よりも本人の考えを軽視することができるのかというと、それはそうではないと私は思います。むしろ「意思」という言葉が使ってあったとしても結局、最終的に契約などをする場合の意思決定をするのは代理人だったら代理人ということになるので、「意思」という言葉を使おうが、「真意」という言葉を使おうが、「意見」であろうが、「選好」であろうが、尊重されるべき度合いは私は変わらないという考えで意見を申し上げました。 ○山野目部会長 河村委員の感想をお尋ねする前に、私の方から、本日は演技ではなくてドキュメンタリーの描写を致します。施設に訪ねて行ったときに私の目の前で繰り広げられた光景です。施設で暮らしているおばあちゃんが面会の室に来て、施設の長が立ち会って、そこに支援者がやってきて、最近の様子はどうと尋ねます。それで、食べ物とかお食事とかに満足しているかと聴くと、満足しているとかしていないとかという答えがはきはきとすぐ反応で戻ってこなくて、黙ってしまいます。サポーターが優しく、しかし何度も、何、考えることがあったら、何を思っているの、言って御覧と言ったら、やっと、おやつに出てくるおまんじゅうが、私はこしあんの方が好きなのだけれども、いつも粒あんなの、ということが悲しいという話をするわけです。それでサポーターが施設の長に、こしあんは出せないかと問うたら、いや、うちの施設では粒あんをまとめて仕入れるルートがあって、それだと安く買えますが、おばあちゃんにこしあんを食べさせてあげたいけれども、そうするとおばあちゃんのお小遣いから出してもらわなくてはいけなくてねという話です。それでサポーターが、では、お小遣いの範囲でできるかどうか、今度少し街に一緒に出て、お菓子屋さんに行ってみましょうかという話になり、そうしてくれると有り難いと言って、その場はおばあちゃんが最後はにっこり笑いました。民法の概念でいう意思というものを一番堅く捉えると、お菓子屋さんに行って、このおまんじゅう、と、こしあんを指さして、これの売買契約の申込みをする。これが意思なのですね。だけれども、施設で展開されている光景はそこよりもはるかに手前の段階であって、私はこしあんが食べたいという好みと、それが施設で実現していないけれど、そのことは自分の今の生活にとっては結構かけがえのないことであると思っているということが、まず口に出してもらうまでに時間がかかります。それを一所懸命聴き取った経過は、青木委員の意見書にある把握ですね。聴き取っているものも、真意でもいいですけれども、やはり上山委員におっしゃっていただいたように、障害者権利条約にいう選好ですよ。佐久間委員がおっしゃったように、法令概念として選好はなじまないと感じますから、考えるとすると、やはりいろいろ悩んだ末に、青木委員がおっしゃっている意見になるかもしれませんけれども、ただし、そのレベルのものは、民法の概念でいう法律行為の意思ではないとして、でも、だからどうでもいいでしょうというわけにいかなくて、今までの成年後見人の中には、そういうことはどうでもいいでしょうと扱ってきた人もいるし、いや、やはり意思決定支援の一環だよねということをよく分かっていて、私の目の前にいたサポーターのように、成年後見人ではないですけれども、それに準ずる役割を果たしていて、一所懸命それをしている場面がそこで展開されていましたから、する人もありますが、これからはやはり一所懸命する態度が原則ですという規律が、規定を置くとすると、今858条が置かれている場所や、その前後のどこかで分かるといいだろうなということで今、委員、幹事に御議論を頂いてきたものであります。真意とか意見に変えたからといって参考程度で聞いておきましょうというふうにならないという点は、佐久間委員がお答えいただいたとおりです。河村委員、お話をお続けください。 ○河村委員 よく分かりました。でも、真意という言葉がいいと言っているわけではないとも最初おっしゃったので、資料としてどういう形になるのかがよく分からないのですが、意思と書くと条件が厳しいから、かえって酌み取ってもらえない可能性があるということをおっしゃっているという理解でよろしいですか。 ○山野目部会長 いろいろな見方や批評があり得ると思いますけれども、今のままの意思でも広い意味での本人の好き好みまで含むという理解もあり得るとして、けれども、必ずしもそう受け止めてもらえなくて、物を買うとか売るとか担保に入れるとかいうものしか意識しないというふうに受け取られるおそれもあります。今までの実態を見ると、現にそういうふうに受け取られるような感覚で成年後見人の事務が行われてきた事例がありますから、これからはそういうところが福祉の現場でもっと明瞭に読み取れるような工夫がありませんかという議論をしてきたところであろうと考えます。お続けください。 ○河村委員 ありがとうございます。今の時点での私の意見は、意思という言葉を残した上で、例えば列挙するとか、そういうのがいいのかなと思いました。意思というのは、努めて把握しようとしなければ、ないように見えていたけれども、努めて把握しようとしてみたら、あったという場合も私はあると思っているので。今いろいろと教えていただいたみたいに、意思という言葉にいろいろな意味を含むような形をとるか、あるいは列挙するか、そういうのがいいのではないかと思いました。それが私の今日の時点での意見となります。   以上です。ありがとうございました。 ○山野目部会長 ありがとうございました。河村委員がおっしゃりたいことの総意というか本旨は受け止めているつもりですから、本日委員、幹事から頂いた多岐の意見と併せて、改めて事務当局で受け止めるということに致します。河村委員から問題提起していただきましてありがとうございました。 ○遠藤幹事 大きく2点ございます。   まず、858条の関係でございます。今、河村委員からの御指摘がありました点につき、現在の後見実務の実情ということで申し上げれば、今、部会長から御指摘のあったような点も含め、御本人の意思を的確に酌み取って、御本人が御本人らしい生活をできるようにサポートしていこうというのは、これは第二期計画でもうたわれているところであると思っていまして、現在の後見実務もそのような方向を目指して進んでいるところでございますので、今回この858条の文言を変えようというのは、そういったことを確認的、宣言的にどうするかと、こういう位置付けになるのかなと思っているというところです。   その上で、御本人の選好なども含めて考えるという意味で、意向という表現もあり得るのではないかというのは思っていたところではあるのですけれども、その点については、更に少し知恵を絞っていきたいと思っております。他方で、もう一点、今回の青木委員の御提案の前段の方で、本人に対し必要な情報提供を行いというのがありまして、これについて、先ほどの根本幹事のお話も含めて考えると、保険業法その他の業法から引用した用例ではないかとも思われましたが、そこでいうところの情報提供というのは、業者と個人との間の情報の偏在があることを前提として、情報を持っている方がきちんと他方に情報を提供しなければいけないということを意図したものとも思われるところです。意思決定支援が重要であることは論をまたないわけですが、意思決定支援の内実として非常に重要なのは、やはり御本人と密にコミュニケーションをとり、その中で御本人の来歴なども含めながらその意向をしっかり把握していくという営みではないかと思われますところ、必ずしもこの情報提供というような言葉でくくってしまうのが、今営んでいることを忠実に表しているのかということについては、もう少し慎重に考えてもいいのかなと思いました。裁判所としても更に考えていきたいと思います。これが1点目です。   もう1点目の報酬の方でございまして、青木委員の御提案で本日、専門性というのを特出しして条文に明記するという御提案がありましたが、これはもう青木委員を含めて皆様、言わずもがなのことだとは思いますが、裁判所における報酬算定に当たりまして、後見事務の遂行の難易を考えるに当たっては、当然その専門性というのは考慮をしているわけでございまして、そういった意味で、それに加えてこの専門性というのを特出しするというのは、やや重複感があるのかなというようなところもありましたので、もしこれを何らか一つ大きな項目として設けるのであれば、そういったような意見もあったということを付記していただけると有り難いのかなと思った次第です。 ○山野目部会長 遠藤幹事から2点おっしゃっていただいたところ、大変よく分かりました。ありがとうございます。 ○青木委員 858条の「必要な情報提供を行い」の部分ですけれども、先ほど申し上げました意思決定支援のガイドラインにおいても、意思決定支援の具体的な手法として、御本人さんは自ら情報を取捨選択すること自体に支援が必要、困難な方があると、したがって、決めてもらう前に御本人さんに分かる形でその事柄に関して判断するために必要な情報を提供するところから関わっていきましょうと、その上で御本人さんの能力に応じて様々な形で意思を表明してもらい、それを把握するようにしましょうと、こういう一連の流れが意思決定支援で、そういうことを後見人も他の支援者と一緒にやりましょうと、ガイドラインで示されていることを踏まえて、今回の提案で「必要な情報提供を行い」としているものでありまして、けして保険業法だけを参照した提案ではありません。 ○野村幹事 ありがとうございます。本人の意思の尊重及び身上の配慮のところなのですけれども、リーガルサポートとしては今まで現行法の規律を維持する方向で意見を述べてきましたが、委員の皆様の御意見をお伺いしまして、やはり本人の意思又は意向を確認しなければならないことが明確になるように改めることによって、これらの事務が保護者に求められているということが広く周知されると考えますので、この(注)に書かれていることは乙案として記載して、広く国民の意見を聴くのがいいのではないかと考えました。リーガルサポートの方でも引き続き考えていきたいと思います。   54ページ目の8行目のなのですけれども、「(イ)事理弁識能力を欠く常況にある者についての保護の仕組みを設けない場合」には、財産の調整及び目録の作成等の規律を設けないとの記載がありますが、この記載だけで終わってしまうと少し説明が足りないと思いますので、49ページの29行目の(注1)の必要に応じて家庭裁判所の許可を得た上でその権限の範囲内で財産の調査をすることができるとする、リーガルサポートではこれは裁判所の許可を得た上でというよりも、全ての財産の調査権という代理権を付与するという意見を述べておりましたけれども、そういった考え方についても説明を加えていただければと思います。 ○竹内(裕)委員 先ほど遠藤幹事がおっしゃった点です。青木委員もおっしゃってくださったのですが、青木委員御提案の必要な情報提供を行うという部分は、業法ということでも、情報の偏在ということでもありません。この条文提案は弁護士会でも検討したのですが、検討した第1案では、本人に対し意思決定に必要な情報提供を行いとされていました。当然、本人とコミュニケーションをしていくという趣旨からです。ただ、意思決定に必要なという表現を入れてしまうと、意思決定とは何かということについて議論が生じてしまうのではないかという配慮から、その表現を削ったゆえ、こういう案になったということを釈明をしたいのが1点です。   もう1点ですけれども、先ほど上山委員から支援者という言葉、常岡委員からは受認者という言葉が出てきました。今後、新しい制度において後見、保佐、補助とかいう用語を変えるのだとしたら、今ある用語で使えそうなものを探すという作業とは別に、本来の制度趣旨に合うような新しい言葉を使うということも考えてみてもいいのではないかと思った次第です。笑われるかもしれませんが、かつて福沢諭吉などは、今では法律上当たり前の表現になっているものを、その当時、漢字を組み合せて新しく作ったのですから、そういうような工夫もあってもいいのではないかと感じたところです。 ○山城幹事 2点ほど御発言申し上げたいと思います。1点目は、先ほどお話がありました、情報を提供するという文言をどう扱うかです。私は御趣旨においては青木委員の御提案に賛成で、情報提供という言葉を使うこと自体にも反対ではありません。ただ、もし用字に差し障りがあるのでしたら、例えば、報告や協議という言葉を使うのでもよいのではないかと思っています。法律用語辞典では、報告とは、事実、状況等を特定の人又は機関に知らせることというような用例があると説明されており、協議とは、問題となっている事項に関して相手方に対し必要な説明を十分に行い、相手方の意見を聴いた上で一定のことを行う場合に用いられる等と説明されています。いずれにしましても、ここでの御提案の趣旨が生きるような議論ができることが望ましく、そのために文言の工夫を図っていきたいと感じます。これが1点目でございます。   第2点は、チーム支援それ自体を民法に定めることはできないという点は承知しておりますけれども、チーム支援との関連性を示唆するような規定を設ける意義としては、後見人の義務を明らかにするという側面だけでなく、後見人が職務上知り得たことをチーム支援に携わるほかの方に共有することができるかという点も意識する必要があるだろうと思います。もし情報の共有ができるのだとすれば、そのことについては民法の中で明らかにしておく方が望ましいのではないかと感じる次第です。もっとも、例えば情報共有をする人の範囲などをどういう形で指示することができるかといった文言上の工夫については、さらに検討が必要かと思います。 ○山野目部会長 2点ともよく分かりました。ありがとうございます。 ○星野委員 私も858条について青木委員の提案されたことに全面的に賛同しているということで、今、山城幹事がおっしゃったチーム支援のところなのですが、本人の意思、意向を把握するように努め、確認ではなくて把握というところは多分保護者、今でいう後見人ですね、後見人が一人では当然できないことだと思います。つまり、これまで関わってきた関係者、本人に関わっていた方たち、あるいは本人がどのように意思決定に向き合ってきたのかということの情報がない限りできないので、何らかの形で関係機関、関係者というような言葉と一緒になって行うというようなことが、法律に文章として落し込めるかは分からないのですが、是非作っていただきたいというのが一つ目の意見です。   それから、2点目に死後事務のところです。本人の死亡後のところですね。ここについて何か大きな異論があるわけではないのですけれども、現状のところの説明として入れてほしいと思っていることがあります。東京家庭裁判所では様々な文献、「実践成年後見」の誌面でも死後事務について書かれていて、要はいわゆる円滑化法を使わなくても応急処分、事務管理の範疇として認めていることに触れておられます。それは認めているから後見人としてやるべき、ということではなくて、認められているので、やらざるを得ないときはやっているというのが現状だと思うのです。この提案を見て少し気になったのが、甲案、乙案、どちらにしても、今やっていること、できていることができなくなるようなことにならないようにしてほしいということです。つまり、申立ての許可がなければできないということになってしまうのも現状から考えると問題だと思いますし、逆に根拠がないのにやっているということも問題なので、規定も必要だと思っています。ですので、説明のところでもう少し現状のところも加えてほしいというところが2点目です。   あと、これは言うかどうか、ずっと最後まで迷っていたのですが、報酬のところです。これは今回の試案とか説明の中に入れてほしいという趣旨で発言しているのではありません。会議録が残るので発言させてくださいという意図で、発言します。   社会福祉士会の中でも、当然ながら報酬についていろいろな意見があって、過去にも発言していると思うのですけれども、やはり本人の財産からというところ、あるいはその負担の在り方というところについてはいろいろ意見が出ているところなのです。今回の法改正の中ではこの試案内容で私も同意はするところなのですが、意見の中に、先ほど冒頭のほうで発言しましたが、本人の同意というところが、本人が保護者に対して報酬を払うことまで含めて同意ができているかというと、なかなかそこは厳しいところが実際、実務上あると思います。支援をしてほしい、この人に関わってもらう、そのことには同意はする、でも、その1年後、2年後に報酬を払うということについて、金額も含めて同意ができているかというと、正直難しいし、そこが理解できているということであれば委任でいいわけですから、法定後見にはならないのかなと考えます。この後多分、久保委員、花俣委員の意見が聞けるとありがたいと思うのですが、報酬の負担の在り方というところについては、これまでも専門家会議等で当事者に近い委員の方々から意見は出ていますし、そこも先々整理しなければならない課題だという意見があったというのは発言しておきたいです。社会福祉士の中で多く意見として言われているのが、報酬を受け取れない理由というのは生活困窮や本人に資産がないからだけではないということ、本人や親族等の理解が十分得られない場合も少なからずあること、つまり資産の有無、多寡だけではない、いろいろな状況があるということは発言させていただきたく、申し上げました。   すみません、長くなりました。以上です。 ○佐久間委員 死後事務の話なのですけれども、最初に上山委員がおっしゃったことに多分関連するのですが、甲案ではなく、特に乙案で、あと青木委員がおっしゃったことにも関係するのですが、乙案にゴシックでなお書がありますよね。これはこのとおりでいいと思うのですけれども、ではどうして財産の保存とか債務の弁済は今のままでいいかというと、私の理解では、事理弁識能力を欠く常況にある者についての保護の仕組みを設ける場合、生前から保存行為に当たるものはできる、それが前提になっている、生前もできたので、相続財産についても、という話だったと思っているというか、私はそう提案したつもりです。   そうだとすると、随分最初の方に戻るのですけれども、事理弁識能力を欠く常況にある者についての保護の仕組みを設けるときの保護者の権限と、やはりここはリンクしているのだということにしないと駄目なのだと思うのです。その説明を入れる必要があると思っています。逆に、生前にその保存行為に関し権限を与えないのであるとすると、相続財産についてだけ権限を与えるというのはおかしな話になりますので、これが青木委員がおっしゃったことと、乙1であろうが乙2であろうが同じことになってしまうと、そこを申し上げておきたいと思います。 ○山野目部会長 4時間前に佐久間委員がおっしゃったことと今つながったのですよね。だから、亡きがらのことばかり言いますけれども、人が亡くなると、亡きがらももちろん大事ですけれども、年金事務所に連絡しなくてはいけないとか、介護保険証を何とかとかという、ああいうものがたくさんわっと出てきて、多分、後見人の仕事として、ある部分は事実上していると想像しますけれども、あれは何が根拠ですかと問われると、よく事務管理という概念を現場で濫用することになります。けれども、事務管理の概念の誤用でなく、きれいな説明に調えようとすると、今、佐久間委員がおっしゃった方向で概念整理をするゆきかたが一つの候補になってくるでしょうね。ありがとうございます。 ○福田関係官 少し話が戻って恐縮でございますけれども、先ほど御議論がありました意思決定支援に関連して、厚生労働省における検討状況について若干情報提供をさせていただければと思います。   こちらの法制審の成年後見制度の見直しに向けた検討と同時並行で、現在、当省に設置された地域共生社会の在り方検討会議において社会福祉法の見直しについて検討を行っているところでございます。地域共生社会の在り方検討会議では、昨年11月に当省から御紹介した総合的な権利擁護支援策の在り方ですとか、中核機関の法制化以外にも地域共生社会の在り方に関して幅広い点を取り上げており、3月に開催された第9回会議では、意思決定支援に関する議論も行われたところでございます。具体的には、「権利擁護支援等の観点から、福祉サービスの提供等に当たっては、意思決定支援への配慮の必要性を明確化することとしてはどうか。」ということを事務局から御提案差し上げてます。現時点で確たることを申し上げることができる状況にはありませんし、意思決定支援の手法に関する提案でもないのですけれども、福祉サービスの提供等に当たって意思決定支援に配慮することの必要性を明確化させることについて、福祉側で議論がなされているという点について、御参考までに情報提供させていただきます。   もう1点は、後見人は一人で対応しているわけではなくて、チームで支援しているというチーム支援に関する御議論に関連してでございます。地域共生社会の在り方検討会議では、個別事案に関する支援方針の検討などを行うための会議体を市町村が設置することができるようにして、その会議体の構成員には守秘義務を課すという規定を設けることについても検討してございますので、この点についても併せて情報提供させていただきます。ありがとうございました。 ○山野目部会長 福田関係官に御礼を申し上げますとともに、これからの部会の会議においてはますます、ですけれども、今のように適時に発言してくださると、まことにありがたいですね。そちらでしている検討が、今のようにお話しいただくと、だから直ちにどうだということはなくて、そうなのですねということを委員、幹事が認識しながら、こちらの審議も充実していきます。民事法制と地域社会福祉の一体的改革という理念は正にそういうことですから、今後ともただいまの福田関係官のような御紹介を歓迎します。何とぞよろしくお願い申し上げます。 ○波多野幹事 ありがとうございます。2点ほどあるのですけれども、1点は858条の関係で、いろいろと御意見を頂いたところかと思っておりまして、御意見をお聞きしておりますと(注)に書いているような記載を本文にするという形での御意見かなと思ったところです。   他方で、ここは文言の書きぶりの問題でございまして、なかなかこの場だけで決まらないもの、いわゆる最終的には法制的な問題として我々において所要の検討をしなければいけない問題でもありますので、ここに案を挙げてパブリック・コメントで皆さんに賛同を頂いたところで、なかなかそのまま行かない部分もあるのはあるのですが、提示する案としては、今の(注)を本文のようにして、本日御提案いただいた幾つかのお考えを整理する方向でいいのかなと思ったところです。他方で乙案的に示した方がいいという御指摘もあったようにも思いまして、御異論がなければ、甲案、乙案ではなく、(注)を本文にする方向で資料作成を頑張ってみたいと思います。   もう1点、こちらは、報酬の点に関する御質問ですが、青木委員から頂いた資料で、事務の内容及び性質、後見の専門性と、三つの要素を出していただいているのですけれども、内容と性質がどのように違うのかという部分と、専門性というのは一体どういうものだと専門性があるというふうにいうのかという、ここの外縁といいましょうか、この辺りはどんなイメージなのかを、今後検討するに当たって、教えていただければと思った次第でございます。 ○青木委員 ここで事務の内容と性質を分けて書いていますのは、内容というのはボリューム感といいますか、具体的な事務がどの程度の負担量ですることかというところが内容だと想定していまして、一方で性質というのは、例えば法律事務であるとか、それから福祉施設の選択であるとか、事務の質の問題があると思っていまして、それを性質で表したということです。専門性というのは、これは事務の性質ともリンクするものでありますが、これをあえて専門性と独立させましたのは、念頭に置いていますのは、日本では今、専門資格のある幾つかの専門職が8割方の担い手となっているということであり、それぞれの専門職の資格に相応しい専門性を発揮するために研修や登録や団体としての倫理などで研鑽をしており、その専門性を発揮しているということとをここで表現しているつもりで書いているということになります。ですから三つは別々のことを意味しており、事務については量と質のようなもの、専門性は、後見人の資質、資格に伴なうものとして別に置いたという趣旨で提案をしています。 ○波多野幹事 ありがとうございます。今の御指摘を踏まえまして少し整理を我々も試みたいと思いますが、そうしますと、専門性がやはり少し分かりにくいような気もいたしまして、性質なのか、内容かもしれませんが、行われた事務の性質か内容の中にそれが表れているような気もいたしますし、ここで専門性を取り出してしまいますと、今おっしゃっていただいた、どういう方が専門性があるということなのかというところの外縁がなかなか難しいような気もいたしまして、そこはなお引き続き御意見いただきながらやり取りをさせていただければと思います。次の整理に向けては、少しこちらの方で検討させていただくことになろうかと思います。ありがとうございます。 ○山野目部会長 波多野幹事が前者においてお問い掛けをしたところの858条の改正イメージを中間試案でどう問うかは、波多野幹事から御提案いただいた方向で事務当局で検討、改めて整理することでよろしいでしょうか。いろいろな工夫の仕方があると予想します。今、現行法を維持する、を甲案にしていますけれども、あれをやめにして、何か改めていくという方向をもう少し濃厚に出した上で、その文言については意思決定支援が読み取れるようにするような趣旨で、例えば次の①、②、③のような文言表現などをする考え方があるとか、そのほかの考え方も含めて引き続き検討するとかというふうに、少し幅を持たせた問い方をしておいた方が、国民各層からもいろいろな意見を出してもらえるでしょうし、それから事務当局の作業としても、波多野幹事がおっしゃったように、最終的に法律の文言を決めて国会に出したときに、国会で質疑を受けるのは皆さんではなくて、この前の方にいる人たちですから、その人たちが質疑で立ち往生するようなものを選ぶわけにいきません。それやこれ、中間試案でも丁寧に作り込み、先々の法律案の立案から提出審議までもにらんだ上で、それぞれをうまくするためにする方策を事務当局の方で悩んでまいりますから、引き続き御相談を差し上げてまいりたいと考えます。   私の方から4点ほど、また一問一答的に確認でお尋ねをします。一番重い問題は、医療侵襲に関する同意権というものを説明の文章の方に入れていて、ゴシックのところでは、審判によって医療侵襲の同意権を家庭裁判所から保護者がもらうということを、考え方としてあるが慎重に検討するという注記が入っています。慎重に検討するとして、議論はあったから出している、ということですけれども、恐らく民法のここだけの改正で、審判で医療侵襲の同意権をもらうという仕組みを入れるということの現実性は、相当に乏しいであろうと予想します。将来もしかしてそういうふうな制度を、後見の制度を離れて一般的に法制化するような場面で、成年後見制度の保護者にもその一部において役割を担ってもらいましょう、のような法制の可能性があり得ないとは申しませんけれども、当面のことは悩ましいです。この医療侵襲の同意権の問題をどういうふうに、中間試案を含め、そこから後に向けて諮っていくかということは、次回以降また御相談していきますけれども、重い問題です。   本来、厚生労働省が、身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定支援が困難な人への支援に関するガイドラインを取りまとめていて、ここでかなりの結論が得られています。政府の啓発不足で医療の現場、福祉の現場にこれが浸透していなくて、依然として医療側からは成年後見人に同意のサインを頂けますかというと、成年後見人が今の法律では駄目なのですよと答えて、押し問答がされる光景を耳にします。ガイドラインはそんなことは述べてなくて、成年後見人に説明をする、説明を受けた成年後見人は説明を受けた旨の文書にサインすることはあり得るという建て付けになっていて、これで現場が理解してくれれば動いていくはずですけれども、そうはなっていない押し問答が繰り返されていて、しばしば成年後見人の方が、今の法律では駄目ですと応じます。今の法律でなくてもきっと無理であって、それにもかかわらず、そのうち法律が変わるかもしれない、みたいな雰囲気の会話が今でも病院やクリニックで交わされるわけです。この閉塞状況について、何を我々は考えたかということは何か伝えたいとは考えますけれども、難しいところです。その関係もありますから、チーム支援のことが少しでも読み取れるくらいの文言は入れておいて、それで関係する制度環境の変化をにらんでいくという可能性もあるだろうということを申し上げているところであります。これも少し次回以降、御相談しておきたいと考えます。今日何かこの時点でこの点について特段の御発言があれば承りますけれども、よろしいですか。これが4点あるうち1点目です。   2点目は、現行859条の包括的な代理権を表現する、成年後見人は成年被後見人を代表するという、代表するという文言の規定が、3類型を維持する第1の1(1)の甲案を採らない限りは、乙1案を採っても乙2案を採っても、なくすという方向の提案を本日含めてございます。ここはこの方向で進めることでよろしいですね。   分かりました。そうすると、これは一つの大きな変化になっていく可能性があります。もちろん3類型を維持する甲案もあり得ますけれども、引き続き国民各層の意見を諮るための文書作りに努めてまいりたいと考えます。   3点目は、報酬のことでありますけれども、先ほど波多野幹事から青木委員にも確認のお問い掛けを差し上げましたが、実はこの部会での議論を始めたときには、報酬については場合によってはその金額がかなり分かるような一覧表みたいなものだって法令上備えることが考えられてよい、というような議論がされていた局面もございました。しかしながら論議が進んでいきますと、保護者の事務が非常に個別性を、今でもあるかもしれませんけれども、より増していく状況の中で、一覧表みたいなもので金額の料率計算ができるような規律の導入というものはかえって似つかわしくないといいますか、場合によっては弊害が出てくるものになって、そういう評価のものになってきているのではないかと感じます。そこで、現行法を維持することになりますかという提案を部会資料には盛り込んでいるところでありますけれども、青木委員からはまた具体的な提案を頂いたところでありますから、その幅の範囲で引き続き検討を重ねていこうと考えますけれども、この方向でよろしゅうございますか。これが3点目です。   それから、言葉遣いですけれども、現在既に中間試案のたたき台で出している文書で、成年被後見人、被保佐人、被補助人という被という字が付く表現はもうなくなっています。全部、本人で通していて、保護者と本人になっていて、保護者の方は、先ほどから御議論があるように、いろいろな御意見を頂戴しているところを今後また検討しますけれども、本人はずっとこのまま本人で行く扱いでよろしいですね。被という字は嫌な字ですよね、あれにしないで本人にして、少なくとも中間試案は進めるということにいたしましょう。   委員、幹事の皆さんにおかれては、多岐にわたる御議論を頂いてありがとうございました。 ○花俣委員 ありがとうございます。今日も大事なたくさんの議論を聞かせていただきました。これからも引き続き、落ちこぼれないように頑張って付いていきたいと思っています。どちらにしても人の人生の様々な場面で一人一人の思いを法律の条文として書き表すというのが非常に難しいということを改めて感じております。ちなみに、本人の意思の尊重のところは、昨年施行された、共生社会の実現を推進するための認知症基本法の中でもしっかりと謳われているところでもあります。   一つだけ申し上げますと、先ほどの郵便物の管理に関してですが、意思能力や事理弁識能力には全く関わりなく、しっかりとしたごく初期の認知症本人の中には、文字の読み書きが早々とできなくなる方もおられます。そういう方にとっては郵便物を読んだり確認したりすることは、誰かの力を借りないとできないという状況もあります。これからも引き続き先生方の御議論に期待していきたいと思います。今日は本当にありがとうございました。以上になります。 ○山野目部会長 お話よく分かりました。 ○久保委員 ありがとうございます。私の方も今日、全体を通してお話を伺って、思うところはいろいろとあるのですけれども、どう整理したらいいのかということ自体、自分が整理が付かないという部分がありまして、何と言えばいいのかなと思っておりますけれども、本人の意思の尊重の義務というのは、本人の意思決定を尊重するというのは、もう今、福祉のサービスの部分でもいろいろなところでそのことはうたわれておりまして、それが大事だというふうになっておりますけれども、私たち家族から見ると、まだまだだなというような部分もございますので、その辺のところを、私たち保護者といいますか家族の方もできるだけお手伝いができたらなと思いますし、私たち自身ももう少し今度の成年後見のことを勉強しながら、お手伝いできるようにしたいなということは、もういろいろなところで、そうだよねと言って話合いをしていますので、是非御指導を頂きたいと思っております。   それで、本人の意思の尊重は、親としても本人の意思を確認するというのはとても難しいことでありますので、是非周りの方たちと一緒にチームで、この人にとって何が一番いいのだろうかということを、一人で決めるのではなくて、いろいろな方と一緒に相談しながら決めていただけたら有り難いなと思いますし、その中に私たちも、他人ではあっても親の立ち位置の者も、加わらせていただけたら有り難いと思っています。そういう仕組みにこれからなっていくのだろうということで、大変期待をしているところでもあります。   報酬の部分ですけれども、報酬は一体幾らになるのよと、よく私も聞かれるのですけれども、それはそれぞれによって、また重要度が違うというのもありますし、頻繁に動いていただかなければならないというのもあれば、1、2回で済むということもあるでしょうから、一概には言えないということがあるのだよということは私も説明をしているのですけれども、大体でいいからどんなものというようなことまでも聞かれるわけです。ですから、今度また最高裁の方から考え方みたいなものを御説明を頂くということになっておりますので、その辺のところをしっかりと聞いて、私たち保護者の中で、そういう物の考え方で決めていくのだよということは確認をしながら、見守っていきたいなと思っておりますけれども、私自身は私たちの仲間にも言っているのですけれども、必要なときにはやはりきちんとお金を払おうねと、だけれども日常のところはできるだけ安価でやっていただかないと暮らしていけないからねと、そのことは私も議論の中で発言をしているから、そのことは皆さんよく分かっていただいているから、大丈夫だよというようなことは言っていますけれども、では果たして本当にやっていけるのかということを突っ込んで聞かれると、それはそれぞれの事案によって変わってきますから、よく分からないというのがありますけれども、皆さん大筋、きちんと払わないと駄目なときには払うということは理解をしてきていますので、大丈夫かなと思いながら、我が子が自分たちがいなくなって金銭的な支援もできなくなってもきちんと生きていけるというか、安心して生活していけるということを望んでいるのが根っこにある物の考え方、見えないけれども、ありますので、是非その辺のところもお酌み取りいただいて議論を進めていただき、まとめていただけたら有り難いなと思っております。 ○山野目部会長 久保委員の周りにおられる皆さんと、また私もお話ししたいと望んでおりますけれども、久保委員が周りの皆さんから、法制審議会で審議していて、一体報酬は幾らになるかというお問い掛けを頂いた際に恐らくなさっていただいているだろうと想像する御対応は、もちろんその問題にも審議会は関心を持っているけれども、もっと本質的なこととして、報酬が幾らになるかということよりも、報酬を払わなくてはいけない状態、期間がだらだら続くということの仕組みを抜本的に考え直そうとしていると、そこから議論していますよ、と、こうおっしゃっていただいているところでありましょう。 ○久保委員 はい、説明しています。 ○山野目部会長 なお一層、皆さんにお話しいただければ大変うれしいと考えます。引き続きお世話になりますけれども、よろしくお願いします。 ○久保委員 ありがとうございます。 ○山野目部会長 次回会議の日程等につきまして、波多野幹事から御案内を差し上げます。 ○波多野幹事 本日も長時間にわたって御審議賜り、ありがとうございました。   次回の議事日程について御説明いたします。次回日程は、令和7年4月15日午後1時15分から午後5時30分まででございまして、場所は法務省地下1階大会議室でございます。次回は、中間試案の取りまとめに向けた議論のたたき台の後半について御議論いただきたいと考えております。 ○山野目部会長 それでは、法制審議会民法(成年後見等関係)部会の17回会議を散会といたします。どうもありがとうございました。 -了-