法制審議会 民法(成年後見等関係)部会 第19回会議 議事録 第1 日 時  令和7年5月13日(火)自 午後1時15分                     至 午後5時56分 第2 場 所  東京地方検察庁 総務部教養課会議室302号室 第3 議 題  1 法定後見の開始の要件及び効果における現行法の法定後見制度の枠組み        2 民法第13条第1項各号        3 法定後見の開始の要件及び効果等        4 法定後見の終了        5 保護者に関する検討事項        6 法定後見制度に関するその他の検討事項        7 任意後見制度における監督に関する検討事項        8 任意後見制度と法定後見制度との関係        9 任意後見制度に関するその他の検討         10 その他 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山野目部会長 法制審議会民法(成年後見等関係)部会の第19回会議を始めます。   本日も御出席を頂きましてありがとうございます。   新しく参加することになる関係官がいらっしゃいますから、事務当局から紹介をお願いいたします。 ○波多野幹事 本日より古谷真良法務省民事局参事官が関係官として出席します。 ○山野目部会長 本日は、櫻田委員、家原幹事、小林幹事及び杉山幹事が欠席でいらっしゃいます。   本日の審議に入ります前に、配布資料の説明を事務当局から差し上げます。 ○小松原関係官 それでは、配布資料について御説明いたします。   本日は新たな部会資料として、部会資料15、16-1、16-2を配布しております。また、部会参考資料として9、10、11、12、13を配布しております。   部会資料16-1及び16-2につき、御審議に先立ち若干御説明申し上げます。部会資料16-1は、中間試案の本体部分、すなわち最終的にこの部会で中間試案として取りまとめの対象となる部分でございます。部会資料16-2は、部会資料16-1の本文、(注)、ゴシックの部分に、主に部会資料13及び部会資料14から変更した部分について説明を付したものです。部会資料16-2について、本文、(注)、ゴシック部分に下線を引いている箇所がございますが、この下線は基本的には部会資料13及び部会資料14の本文、(注)、ゴシック部分から変更した箇所に引いております。また、部会資料16の本文、(注)、ゴシック部分に甲案、乙案、丙案などと記載している箇所については、現行法の規律の乖離に沿って、現行法の規律に近いものから甲案、乙案、丙案としております。乙1案、乙2案と記載している箇所については、大きな考え方としては同じ考え方であるとして整理することができるものの、具体的な部分で規律が異なるものについて、乙1案、乙2案として記載しております。このほか、資料の内容については後ほどの御審議の中で事務当局から御説明申し上げます。   続きまして、参考資料9から13までについて簡単に御説明します。参考資料9、10は、現行の保佐開始又は補助開始の申立て時に家庭裁判所に提出する書式であり、裁判所のホームページで公開されているものです。参考資料11、12は、任意後見契約に関する法律第3条の規定による証書の様式に関する省令において、任意後見契約の公正証書を作成する場合に代理権を行う事務の範囲を記載することとされている様式です。参考資料13は、日本公証人連合会編集の「新版 証書の作成と文例 家族関係編」に掲載されている任意後見契約の公正証書の文例の一部です。日本公証人連合会より、本部会の参考資料として用いることについて御了解いただきましたので、参考資料として準備したものでございます。これらは、任意後見人と法定後見人とが併存する場合に権限が重複するのかの議論や、任意後見契約の一部解除、変更、一部の発効についての議論に際して具体的なイメージを持っていただくことを目的として御準備したものです。 ○山野目部会長 内容の審議に進みます。部会資料15の方から取り上げることにいたします。   まず、部会資料15の第1から審議をお願いいたします。この部分について事務当局から説明を差し上げます。 ○小松原関係官 部会資料15の「第1 法定後見の開始の要件及び効果における現行法の法定後見制度の枠組み」について御説明いたします。   第1では、法定後見の開始の要件及び効果における現行法の法定後見制度の枠組みについて取り上げており、これは現行法の規律を維持する考え方について更に検討を深めていただく趣旨で取り上げたものです。   2ページからの3では、現行の法定後見制度に関する見直しの検討の必要性の基礎となるニーズについて、これまでの部会で出された意見を整理しておりますが、ここに記載したもの以外にも、制度の見直しの検討をする基礎となるニーズを御議論いただければと存じます。   4ページからの4では、それらのニーズへの対応について整理しています。法定後見制度の枠組みを維持しつつ、所要の修正をする際の修正内容について御議論いただきたいと考えています。   7ページからの5では、ここまでの整理を踏まえ、現行の類型を維持しつつ所要の見直しをすることでは対応することができないことについて整理しています。現行の類型を維持する案を中間試案に提示することの適否及び、現行の類型を維持する案を提示しないこととするのであれば、現行の類型を維持することではニーズに対応することができない理由付けについて御議論いただきたいと考えています。 ○山野目部会長 説明を差し上げた部分について御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○小澤委員 ありがとうございます。細かい点で恐縮ですが、注記に所要の修正として、「事理弁識能力を欠く常況にある者が保佐、補助制度を利用する」という考え方について記載がされていますが、この考え方によって現行の規律を修正した結果、事理弁識能力を欠く常況にある者の「意思表示の受領能力」の論点において、甲案を採った場合に、現行の規律を維持するという整理ができなくなってしまうように思いましたので、この点を整理してから記載をするか、あるいは甲案の注記ではない形で記載した方がよいのではないかと考えました。   もう1点ですが、部会資料15の6ページ30行目に、甲案を採って現行の類型を維持する際に、「特定の法律行為について代理人を選任する仕組みを別途設けることとしても」、との考え方の記載がございますが、もし甲案を採った場合に行う所要の修正の中に含むと考えるのであれば、注記に入れた方が良いのではないかという意見を持っています。 ○野村幹事 ありがとうございます。ゴシックの本文の整理自体には異論はございませんが、甲案について詳しく記載するのであれば、障害者権利委員会の総括所見にあるような、人権や本人の意思尊重等の理念面において現行法が抱えている問題を甲案という小修正で解決できるのかを整理した方が、現行法の問題点と改正の必要性も明らかにすることができ、有意義だと感じます。   以上のようなそもそも論ではなく、部会資料に沿って考えますと、6ページ8行目以下の終了のニーズについては、類型と判断能力を切り離すことによって、判断能力によらずに補助を利用できるようにするという整理になっていますが、現行の類型は判断能力の程度によって決まるものであって、必要性とは別の要素であるため、類型を残したまま必要性の要件を導入することもできるはずで、そうすれば事理弁識能力を欠く常況でも補助類型を利用するという分かりにくい制度にしなくても、必要性が失われた法定後見を終了させることはできると考えられます。類型を設けて、その類型に該当する者に対して保護者を選任し、法定された一定の代理権を付与する規律は、その類型に該当する者についてはその代理権による保護が必要であることが前提になっています。事理弁識能力を欠く常況でも補助類型を利用できて、必要な代理権のみを付与することを可能とするのであれば、類型分けして法定された一定の代理権を付与する必要性がないことを認めることになるのではないでしょうか。 ○佐保委員 ありがとうございます。2ページから4ページに掛けての3の現行の法定後見制度に関する見直しの検討の必要性の基礎となるニーズについて、意見を述べさせていただきます。   現行法の規律を維持する考え方について更に議論を深めるべきとのことで、今回整理を頂いておりますが、2ページ以降の(2)の本人の立場からのニーズや、(3)の後見の類型の利用が多いことについては、おおむねこの間の意見を反映していると認識しております。強いて(3)に追加させていただくとすれば、第14回でも発言させていただきましたが、当事者団体からは、補助の審理期間が長いため、本人の緊急を要する保護でやむを得ず後見で申し立てる事例もあると聞いております。4のニーズへの対応として、見直しに当たっては、本人の緊急を要する保護は速やかに行えるよう、家庭裁判所の審理時間の短縮の方策も併せて検討していく必要があると考えております。   また、(1)で、ここでは本人の立場からのニーズ等との関係での制度見直しの必要性についての検討を深めることを念頭に置いていることから、障害者権利条約との関係や成年後見制度に係る理念との関係での制度改正の必要性については、という文言がございます。これを見て改めて、中間試案のたたき台に何も障害者権利条約について触れていないということに若干不自然さを感じております。というのも、法制審第199回会議で諮問された際の資料には、国内外の動向をも踏まえ成年後見制度の見直しに向けた検討を行うとした上で、障害者権利条約も参考として記載されており、この部会の第1回資料でも成年後見制度を取り巻く動向等として触れられております。広く意見を求めるパブリック・コメントにおいて、障害者権利条約に何も触れないのは逆に不自然ではないかと考えます。別途資料や背景などで説明されるのであれば問題はないと考えますが、この部会の趣旨を踏まえた意見を求めるならば、この総論にあるような書き方でも構わないので、何かしら触れるべきではないかと考えております。 ○山野目部会長 部会資料15を今、お諮りしているところです。障害者の権利に関する条約への論及がないとか薄いとかいうお話を複数頂いておりますけれども、書いておりません。部会資料15はそれを書くつもりはありませんでした。最終的に文書として調える際、つまり中間試案の補足説明において、これはしっかり書きます。それだけではなくて、成年後見制度利用促進基本計画との関係についてもしっかり書きます。これまでの経緯についても委細を尽くして書くことにいたしますけれども、本日はその場ではなくて、中間試案のたたき台において、最初から甲案と呼んで話がずっと続いているものについての論議が薄いではないかというお話がありましたから、そこの言わば補充審議をお願いするという扱いでございまして、野村幹事、佐保委員のおっしゃったことは痛いほど身に染みて感じているところでございますから、引き続き見守っていただきたいと望みます。 ○佐久間委員 まず、権利条約との関係は今、部会長がおっしゃったとおりで理解はしておりますけれども、権利条約と単純に抵触するのではないかと、そういう抽象的なレベルにとどまることはやめようというのがこの部会資料の基礎にある考え方だと思っています。そこで、例えばですけれども、本人の意思の尊重といったときに、現行制度を変えていくことでその要請を汲めないところはどこなのかということをはっきりさせることが目的ではないか、私はそう考えているということを、まず申し上げておきたいと思います。   その上で、先ほど佐保委員から御指摘のあった3ページの(3)のところについて、私は今までこのようないろいろな認識が示されたことは理解しており、そうなのかなと思ってはいましたけれども、改めてここで少し確認をしておきたいことがあります。それは、端的には31行目以下から、要するに後見類型の利用が圧倒的に多いということが指摘され、その理由が書かれているわけですけれども、私が大学でいろいろなことを聞いた、学生からではありません、同僚その他ですね、私が仕事をしているところで聞いてきたことの中には、後見類型が圧倒的に利用が多いのは、保佐、補助程度ではこの制度の利用をそもそもしようとしない人がすごく多いのだということでした。それは違うのかということを確かめたいと思います。   つまりは、保佐、補助程度では、そもそもこんな大掛かりな、たとえ補助で保護者の権限が絞られていても、裁判所まで行ってというようなことをやろうとはしない、しかも意思能力はあるわけですから。そういう人が多いのだということが本当にないのか。もしそれがあるとしたら、この制度改正をしたって、確かに現在の後見類型の利用は割合的には減ると思います。減るというのは、後見相当の方であっても後で申し上げるほかの類型の利用もできることにした場合ですけれども。それは、しかし飽くまで後見相当の方がこの制度を利用しているということに変わりはなくて、単に後見1類型しか今までは使えなかったのが、ほかの類型も使えることになればそちらに流れる、ということになるだけではないか。それに意味がないとは申しません。積極的にそれは支持したいと思いますけれども、後見の類型に偏っているのがいかにもよろしくないと書かれているわけですけれども、それが本当によろしくないことなのか。よろしくないとしてどこがよろしくないのかということを、私はそういうふうに聞いてきたということで、違うなら違うと教えていただければありがたいと思います。   それから、後見の利用に偏っていることについて、部会資料の説明には包括的な権限うんぬんというのは支援者が使いやすいからではないかというようなことが書かれていますが、これは、後見相当の方については法の立場からすると今は後見類型しか使えないのだから、支援者にとって使いやすい、使いにくいの話ではないのではないかと思っています。さらに、ここが一番実は聞きたいところなのですけれども、本当は後見類型に該当しなさそうな人でも後見の対象者とされていることがあるということがこの部会で何度も指摘され、本日の資料にも書かれています。そういうことは全くないなんていうことはないのだろうと思いますけれども、それほど多いのかということを確かめたいと思います。   本当に多いのだったら、それは利用者側だけではなくて家庭裁判所の判断にも問題があると。要するに法に反する審判をしてきたということなので、別に責めるつもりはありませんが、そのような審判をせざるを得なかったとすると、補助相当の人についてさすがにそんなことをするとは思わないので、保佐相当の人について後見の審判をしてきたということは一体なぜなのかということはっきりさせる必要があると思います。なぜなのかが分からないと、それを防げない、あるいは有効な対策を打てないということになりますので。これはレアケースで、言わば病理現象ですというのであればいいですけれども、そうでないのであれば、なぜそうなっているのかをはっきりさせる必要があると思います。もし、これはもう極めてレアなケースなのだということなら、そういうレアなケースというのはあらゆる制度において出てくることなので、これを殊更に取り上げて、だから問題だというのは議論をゆがめると思っています。これが総論についてです。   それから、各論的なことについてここから何点か申し上げたいのですが、まず6ページで、事理弁識能力を欠く常況にある方、今の後見相当の人について、保佐、補助の制度も利用可能にすることが考えられるのではないかと、私は考えています。考えているのですけれども、後で出てくることに関して言うと、保護者の同意を得れば自分で行為をすることができるとすることは、私は、事理弁識能力を欠く常況にある人については、基本的に意思無能力なのだから、それは認めてはいけないと思っています。後でも申し上げますけれども、同意を得て自ら行為をすることができる人というのは、飽くまでその制度の利用に同意することができる人に限るべきだと思っておりますので、その留保は要るということを申し上げておきたいと思います。   それから、先ほど野村幹事がおっしゃったことに関連するのですけれども、34行目から、これらの見直しが現行の3類型を基本的に維持することと整合的に説明することができるのかという問い掛けがあります。これについて、そもそもが基本的に維持することのそれこそ基本にある考え方は何なのかということをはっきりさせないと、矛盾するかどうか、あるいは整合しないかどうかというのは分からないと思います。私の理解は、現行の制度は判断能力の程度に応じて、過度な権利の制約をしないということにしようということから、後見、保佐、補助の三つに分類をしていると考えています。そうだとすると、能力別に保護を考えていくということは維持しよう、その上で、能力別に保護するにしても、過度なそれこそ意思の制約を更に避けるためにどのようにすればいいかということを各論で考えることは、基本的な考え方におよそもとるということにはならないのではないかと思っています。   先ほど野村幹事が、後見の対象者について保佐、補助を利用させるのはおかしいのではないかとおっしゃいました。けれども、今なぜ後見の対象者が保佐や補助を利用することができないかというと、事理弁識能力が不十分である人には著しく不十分な人も、事理弁識能力を欠く常況にある人も両方概念的には含まれているはずのところ、全部きっちり分けているからなのですね。でも、私は大きな問題はどこにあるかというと、そもそもがこの制度を利用するかしないかは自由に任されているわけですから、後見の対象者で申しますと、制度を利用しないという自由があるところ、利用するとなったらいきなり非常に強い制約を受ける、その利用の仕方しか認めないのだというところにあると捉えることができるのではないかと思います。制度利用をしないという自由があるのであれば、きつい制約のある制度が都合がいいから利用する、これは今も変わりがないとともに、そこまでは要らない、でも制度を利用しないというところまでも行きたくない、中間的なところが欲しいというのを止める理由は、私はないのではないかと思っています。   それは保佐の人についても同様です。ただ、保佐の人について13条1項のパッケージを外して取消し可能になる行為を選べますとなると、補助とどこが違うのだということになってくると思うのです。どこが違うのだということになり得るので、考え方としては2類型化ということがあり得るのではないかと思うとともに、先ほど申しました能力に応じた制限ということからすると、現在の補助の対象者について、今認められていない制限を今後認めるということは適当ではないということもいえると思うのです。そうだとすると、現在の保佐の対象者は13条1項のパッケージ全部について取消し可能、もちろん同意を得ないでした場合のことですけれども、取消し可能という包括的な類型を認め、現在の補助の対象者は今後もそれは認めないとすれば、3類型を維持することについて何ら矛盾はないのではないかと私は考えています。   今日この議論の場を設けていただいて大変有り難いと思ったのですけれども、権利条約の理念、考え方は尊重しなければいけない、それはそのとおりだと思っています。ただ、その尊重の仕方について、尊重しなければいけないから今の制度に関し細かく検討せずに、全部駄目だよねということで出発するのは、やはりよろしくないと思います。一つの考え方ですけれども、私のように見れば、現行法を前提としつつも相当程度要求されていることに対応する可能性はあるのではないかと思っております。今日このような機会を設けていただいたということは、恐らく中間試案にも残るということかなと思いますので、中間試案にも残り、パブリック・コメントを求めた上で、なお今後更に検討をする機会があれば有り難いと思っています。 ○山野目部会長 佐久間委員のお話の前半の方で幾つか、確かめ、また教えていただきたいというお言葉があった点につきまして、今日この会議の場で誰か、確かめ、教える立場にいる人があるとは思えませんけれども、しかし何らかそれを受けての御発言があるということであれば承りますし、それ以外の点でも、お諮りしている部会資料15についての御意見を引き続き伺っていきたいと考えます。いかがでしょうか。 ○青木委員 まず、2ページの3の見直しの必要性の基礎となるニーズですけれども、イで、広い範囲で取消権が設定されて、と書いていただいているのですけれども、やはり包括的代理権が付くことによって、本人がそれまで周りの支援者と共に自らやっていた行為まで全て後見人がすることになってしまい、それまでの日常的な生活における様々な行為が全て後見人の方で決める、ご本人は決められない、あるいはご本人には支援者から確認がされなくなるという事態が生じており、それが大きな不満、見直しのニーズとして出てきているところですので、取消権だけに焦点を当てて書かれているわけではないとは思いますが、イについては、代理権が広範であるということによる弊害ということが非常に大きいと思いますので、是非加えたいと思います。   次に、必要性を超えて包括的な代理権が与えられるために、つまり使う必要がない預貯金等も含めて全て管理してしまうために、そこから、平成24年に大きな問題となりました、親族を中心として専門職も含めた後見人の不正が生じ、それがその後、後見制度支援信託、支援預貯金などを作らないといけないような事態にもなっているという、そうした後見人の不正、濫用のおそれというのも、広範な代理権を付与していることに要因の一部があるということも大きな問題ではないかと思います。   それから、後見人が「本人を代表する」となってしまったために、民法上予定しているもの以外の社会生活上の様々なことについて、後見人がキーパーソンのように扱われてしまうということによって、それは後見人の担い手にとっても過大な負担でありますし、ご本人から見れば、過度に生活全般を後見人に管理されてしまうということにもつながるということになります。それについて後見人に広範な裁量があるとされるために、具体的な対応が、後見人の価値観によるものなのか本人の価値観によるものなのかということがはっきりしないまま、本人との間で問題が生じても、後見人の広範な裁量の中で是正、修正が図られないとことになり、結局、ご本人の意思が無視されてしまうことが起きてきているということだと思います。こういった状況を3ページのニーズの中に、更に付け加えていただく必要があるのではないかと思っています。   それから、後見の類型がどうなるのかという議論については、前提として、平成11年立法担当者が想定したときの判断能力のレベルと、実際に今の運用で、後見類型と認定されている人の判断能力のレベルが全く異なるので、そのことを前提にして議論をしないと議論が全く擦れ違うことを危惧しています。現在、後見類型が全体の7割ぐらいですが、その中には、平成11年の立法担当者が説明した「事理弁識能力に欠ける常況の者」には当たらない人がたくさん含まれているということが問題で、その皆さんに包括的代理権が付くので、先ほど私が申し上げたような本人の自己決定やニーズに反するような事態が生じるわけです。本人が一部できることがあったり、それまで周りの皆さんと一緒に決めながら普通に生活していたのに、後見が開始することによって、全てについての権限が第三者の後見人に移ってしまうということです。制度利用するのに、そんなことまで予定していなかったようなことが起きているということです。したがって、平成11年時点の立法担当者の説明する「事理弁識能力を欠く常況」を念頭に論理的、法制度的に説明や議論をされても、こうした見直しを求めるニーズに対する整理にはならないということを、もうこのことは「在り方研究会」の時からも何度も繰り返し申し上げていますけれども、共通認識とした上で、議論する必要があると思います。ですから、今後は、そういう方々は、後見類型とはされない制度として、引き続き適切な利用ができる層としていく必要があることになると思います。   一方、佐久間委員のご質問にあったような保佐、補助ぐらいのレベルでは、なお制度を使うには至らない人も多いのだという話については、そういう事態も現にあると思います。そうなるのは、類型に基づく利用のしにくさということもありますし、裁判所で選任されることまでしなくても生活に対応できるという面の両面があるとは思います。一方で、この間の成年後見制度利用促進基本計画以降の各地での取組が進むの中で、保佐の利用は相当数増えているのです。明らかに増えている。このことは、実際の本人の生活を見て、そのニーズをくみ上げる社会のシステム、中核機関と地域連携ネットワークの中で、権利擁護の支援チームができてくれば、保佐や補助の層の方について適切な利用の可能性は広がるのだということを示しています。今まではそうした層が申立てに至るところの社会福祉的な支援の手立てが十分でなかったために制度利用が十分でなかったということでもあると思います。今後は今回の法改正による成年後見制度の枠組みの変更とともに、利用促進基本計画で検討されている様々な社会資源の整備によって、従来利用していなかった人たちが利用するということが十分に期待されるという面もあると思いますので、そこは両面があると考えていただく必要があるだろうと思います。そのためにも、くれぐれも、現在7割が使っている後見類型の人は、平成11年当時の立法担当者の想定する「事理弁識能力を欠く常況にある者」でないということについて共通の認識をお願いしたいと思います。   このことは、裁判所の認定がどうしてそういうことになっているのか、その要因はいろいろあるとは思います。支援する側の支援のしやすさ、というのは当然ありますし、裁判所が厳格に認定する難しさというのもあると思いますけれども、そもそも現行の診断書の様式を見ていただいたら分かりますが、現行の成年後見用の診断書は、「支援を受けても契約の意味内容などを自ら理解し判断することができないとき」の項目に医師がチェックをした場合には、後見類型相当、とすることになっていまして、この「契約の意味内容を自ら理解し判断することができないとき」の「契約」というのは何かというと、「一般的には契約書を使う必要のあるような重要な財産行為のことをいう」と最高裁が作成した診断書作成の手引に書いてあるわけです。   そうなりますと、平成11年の立法担当者の想定したような「「日常生活上も自分で買物もできないような人」かどうかを診断書で聞かれれば、それを評価するでしょうけれども、現行の診断書はご紹介しましたようにそういうことにはなっていないのです。以前に、遠藤委員から、裁判所は合目的的に認定しているというお話もありましたけれども、今の診断書の仕組み自体が、平成11年当時に厳格に解していたような「事理弁識能力を欠く常況」を認定するものにはなっていないということも大きな要因だと思いますので、そうしたことも含めて総合的に検討する必要があるのではないかと思います。   それから、4ページ以降にニーズへの対応方策について分析検討をしていただいているのですけれども、ここの記述における最大の問題は、見直しの問題とされている本人のニーズというのが、先ほどから申し上げているように、社会的な生活上の具体的なニーズのことであるにもかかわらず、ここでの記述になると、急に法論理的なニーズになっていまして、判断能力が十分でない、あるいは欠ける人は、生活上は様々な契約をしないといけないので、契約するニーズがずっとありますよね、という、法論理的なニーズにすり替わってしまっているので、全く議論がかみ合っていないと思われます。   5ページ以降で、実際の生活上のニーズについて少し検討しているようにも見えるのですけれども、これを無権代理と断定して書いてありますけれども、必ずしもそうではなくて、ご本人さんがご本人の意思に基づいて他人に事実上の依頼をしたり、親御さんやその他の家族や福祉の支援者に代行、手続上の代行をしてもらっていることで生活が十分に成り立っているということもありまして、それをあえて無権代理という必要もなく、判断能力がある段階で任せて、その後判断能力が低下してからも任せて続けているという状況もあるわけですから、無権代理と断言する整理というのも少し行きすぎかなとも思います。ここは本人の具体的な生活上のニーズがどうで、それとの関係でどのような支援があれば対応できるかどうかという整理をしていただかないと、その前に書かれているニーズに基づく見直しの要請とかみ合わない議論になってしまっています。結局、法論理的なニーズがあればニーズはあるでしょう、そうなると終わらせるニーズは多くないのではないか、という無意味な記載に読めるということです。これはこれまでもう何度も繰り返し議論したはずなのですが、また元に戻っているのではないかと危惧することになります。   最後に、6ページ以降のニーズへの対応ですけれども、野村幹事もおっしゃったように、判断能力の類型的に認定し、その判断能力の程度に伴って効果を設定するという今の制度は、類型ごとに別の制度にすることに意味があるとしてそうなっていると思いますが、にもかかわらず、それを弾力的にするために、類型は別だけれども他の類型の制度を使うことができるようにするということは、結局のところ、ご本人さんの実際の必要性を具体的に考慮して、必要な場面に必要な権限を付与しましょうということなので、類型を設定することに意味がない、ということを言っているのと同じなのではないかと思います。   とにかく具体的な生活上のニーズがあって制度を利用したいのに、判断能力の程度によって自動的に三つの類型に分類されて、自動的にそれに対する効果が設定をされているということが使いにくいのであると、そんな効果を伴うのであれば使いたくはないけれども、私の場合は、後見相当だから後見類型の効果しかないとなっている弊害を解消しようというのが今回の見直しの目的で、それを解消するためには、やはり具体的な必要性というのを制度の利用要件の根幹に据えることによってしか果たされないと思います。3類型の下でも、補助や保佐を使えるようにするというのは論理的な説明ができないと思われますし、終わらせることができる制度との関係でも、判断能力の程度によってのみ権限付与の効果が発生しているにもかかわらず、判断能力の程度に変更がないにもかかわらず終了させる、ということを説明することも難しいと思います。それは有期の期限を切ったところで同じだと思いますので、現行制度の限界として明確に書いていただく必要があるのではないかと思っています。 ○山野目部会長 星野委員のお話を伺った後、遠藤幹事に御発言いただきます。 ○星野委員 ありがとうございます。私は類型をなぜ維持することが問題かというところの、少し事例をお話しさせていただきたいと思います。ただ、これは非常にたくさん行われているわけではなくて、先ほど少ない事例に対してここまで議論をするのかというお話がありましたけれども、ただ、1例でもそういうことがもしあるのであれば、それはやはり問題と認識するべきだということ、また決して1例ではないので、お話ししたいと思います。逆に言えば、これからお話しするような運用が行われているのであれば、法改正の議論は必要ないともいえるかもしれません。しかし、このような運用がレアだからこそ問題だということで、話したいと思います。これは、審判を出す家庭裁判所や診断書を書く医師、医療機関を決して批判しているものではないということを御承知おきいただきたいと思います。これは厚生労働省第11回(令和3年10月)成年後見制度利用促進専門家会議で、「申立てにあたって本人の類型を丁寧に検討した事例」として書面で私が提出している事例です。   その方は、保佐開始という申立てがなされようとしていました。しかし、私がその方の受任候補者として御本人とお会いしたときに、どう考えても保佐相当とは考えられない、それは御本人が制度を利用したいという意思を明確に表出しており、補助類型ではないだろうかと思われたわけです。なぜ保佐として申立てをしようとしているか。正に今ありました医師の診断書が、保佐相当と思われるところにチェックがありました。家庭裁判所には本人情報シートの提出もされて、内容に乖離が見られました。そのため、補助開始の審判を求める申立てを行い、家庭裁判所による本人調査も終わり、家庭裁判所からはもし類型を補助で維持するのであれば、補助相当のところにチェックがされた診断書を別の医師に書き直してもらってくださいと言われました。それはあり得ないと思いましたので、今でいう中核機関ですね、その方たちと医師の方に会いに行きまして、説明しましたところ、医師は、自分の理解としては、この制度はやはりたくさん保護を受けられる方がいいだろうという理解が実はあったと、そして、診断書は本人が初診のときの一番状態が重いときの、精神の方だったのですが、その状態像で書いてしまっていた。確かに今経過している状況を見れば補助相当なのだろうとよく理解できるので、自分の方で、なぜそのような変更をするかという理由書も付けて、補助相当という診断書を書き直してくださったという事例がありました。こういうことというのは少なからず行われているように思う反面、やはりなかなか行われていないと思います。というのは、後見や保佐の方が本人の保護を厚くできるという、よかれと思ってという周りの方の理解、間違った理解というのもあったと思います。   それで、何が言いたいかというと、このように類型を選んで申立てをしなければならないということの使いづらさ、その類型が何になるかによって本人の制限されることが、類型を分けることによって申立時に決まってしまう、これが最も使いづらいことなのだということから、私はこの法改正の議論が始まったと認識しています。ですから、そのような事例は多くないのではないかということではなく、また、このように運用で対応できるのであれば変えなくてもいいではないか、ではないと思っています。この運用というのは、私は本当にそのときの巡り合わせで、それこそこの事例における医師もそうですし裁判所もそうですけれども、どのような考え方の関係者が関わったのかによって、結論が変わってしまう、いわゆる属人的な扱いに委ねることになってしまいかねないのです。運用改善ではなくて、やはり法的な根拠としてきちんと、類型という選び方ではなくてというところが議論されてきたと私もずっと考えておりましたので、少し発言をさせていただきました。 ○遠藤幹事 先ほどの佐久間委員からのお尋ねやその点について青木委員あるいは星野委員から御発言のあった裁判所の運用に関わるところについて、お話ができればと思っております。   裁判所としては、後見等の制度の適切な運用を志向して、これまで実務を積み重ねてきたものと認識しているところでございまして、先ほどお話の出ました診断書の様式などについても、そのような観点から、運用の改善という文脈の中で策定をするなどしてきたところと理解をしております。その上で、裁判所としては申立てを受けてその要件を判断するというのが、司法機関たる裁判所の役割であるということからいたしますと、これも先ほど青木委員あるいは星野委員の方からも御意見がございましたが、証拠方法として診断書が出てまいりまして、その診断書の記載が後見相当とされており、その要件を満たしているということになれば、それは後見を開始しているというのが実情ではないかと思っているところです。要するに、診断書などで保佐相当であるいった診断をされている方についてまで、あえて裁判所で恣意的に後見に誘導するような実務運用があるとは承知をしていないというところでございまして、むしろ後見開始の申立てでありましても、その診断書が保佐相当ということであれば、趣旨を変えて保佐の申立てをしたらどうですかといったような対応をしているのが裁判所の一般的な運用ではないかと認識をしておりますので、見直しの議論をするに当たっては、そういった実際の運用があるということも前提に御議論を頂ければと考えております。   裁判所からは以上です。 ○佐久間委員 教えていただいてありがとうございます。私が発言させていただいた後、青木委員、星野委員に御発言いただいたところについて、もう一度同じことを言うことになるのですけれども、発言させてください。   お二人は恐らく、現在の後見、保佐、補助の類型を前提に、後見相当の人は後見の対象、保佐相当の人は保佐の対象、補助相当の人は補助の対象になると、今後もその発想でお考えになっているのではないかという気がしました。私は、まだそれは決まっていることありません、決まっていることでありませんが、後見相当の人であっても補助、保佐、今の制度と同じような3類型を維持する場合の話ですよ、補助または保佐を選択してその制度の利用を可能にすることがこの議論の肝だと思っています。そうすると矛盾するではないかと言われるけれども、私は全く矛盾するとは思っていません。法定後見制度というのはどういうものかというと、事理弁識能力が不十分な人が使える制度であると。これがすべての人に共通の大枠で、その中で、単に不十分にとどまる人は今の補助制度しか利用できない。今の保佐程度の人については、そのほかに、今の保佐相当の保護も利用できる。現在の後見相当の人は現在の後見と同じ枠組みが用意されていれば、ほかにそれを利用することもできる、しなくてもよい。   このようになれば、星野委員がおっしゃったような、診断書がどう見てもというようなことが出てきたとしても、診断書を書き換えずとも、補助相当の制度の利用でいいのだったら、補助の枠組みでこの代理権だけ下さいというのを裁判所に請求すれば、その利用ができる。補助の制度は本人が同意できないと利用できないということにはなるかもしれませんけれども、その場合は同意能力さえあればそれを使えるということになる。およそ事理弁識能力の程度に従って利用することができる制度をばっちり分けるところにお二人がおっしゃった問題はあるのであって、事理弁識能力が不十分ということで全部括ってしまって、その中の不十分にとどまる人は一部の制度しか使えません、著しく不十分の人は加えて別の制度も使えますというようなことにすれば、その観点だけですが、ほかのところに問題がないとは言いませんけれども、何らそこの問題はないのではないかと思っています。そこだけは是非とも御理解いただきたいので、もう1回発言させていただきました。 ○青木委員 佐久間委員の今の最後のご発言に質問させていただきますが、そうすると、選べるのであれば、最初から判断能力不十分と認定した上で、本人さんのニーズに合わせて制度を選ぶということでは、なぜ、いけないのでしょうか。そうする制度が乙1案なのですけれども、それではなぜいけないのでしょうか。 ○佐久間委員 現在の補助相当の人が過剰な制約を受ける可能性だって排除できないからです。つまり、現在の13条1項の要同意事項がありますよね。それ以外の事項について、例えば現在の補助相当の人がこれを取消し可能にしてくださいというふうに、もし乙1案だったら、それが出てきた場合に排除できないことになる。あるいは13条1項に列挙された事項全部について、この人について同意を得ずにしたら取消し可能にしてくださいというのが出てきた場合も同じで、過剰な制約を避けるためです。事理弁識能力が単に不十分な人は、過剰な制約を受けないように、今の制度のままにする。著しく不十分な人は、今より制約を少なくすることはできるし、今と同じ程度の制約は場合によっては掛けられる。後見相当の人も同じです。そのことを申し上げています。   あと、保佐相当の人について、本人に同意能力があるにもかかわらず、本人の同意がなくても一定の状況のときには行為能力の制限が掛けられる、という案も出ていますよね。それも私は駄目だと思っているけれども、いろいろなところと関連しての案にはどうしてもなってしまうのですけれども、私が考えているのは、類型を分けることによって過剰な制約をむしろ避けられる。今の制約は過剰だ、後見相当の人にとっても過剰だとお考えの人は、その過剰な類型を使わなくたっていいとすることで何で駄目なのかなと、正直なところ、私はそう思っています。 ○山野目部会長 佐久間委員の最初の御発言の後ろの方で、現在の制度の下で広い意味での成年後見制度を使おうと考えた人が裁判所に行って、一旦、事理弁識能力を欠く常況にあると認められる判断になってしまうと、現行法の後見しか使えない状況になる、そうすると、これらの制度を全く使わないか、後見という重い制度の方に行けと強いられるか、二つしかないところに現在の制度の大きな問題点があります、とおっしゃっていただいて、そこは多分、皆さんそう思っているのではないでしょうか。そこから出発し、現在の3類型、三つという数にこだわるかどうかはともかくとして、現行法のそこの一番大きなところを改めましょうと佐久間委員がおっしゃって、それを考えていくときの一つの方向として、中間試案のたたき台が掲げる甲案というものはあり得ないものではありませんということを何度かの発言で佐久間委員がおっしゃって、聞いていた青木委員が、それをしようとすると、それって乙1案なのですよねとおっしゃって、それもそうであると思います。ですから、恐らくどこに改革の動機になっている課題があるかということについての認識は、ただいまの佐久間委員、青木佳史委員および星野委員の意見交換によって一層明らかになりました。これを事務当局の方で改めて整理し、現在、部会資料15という形で提示しているものを、やがて中間試案とその補足説明の中に溶け込ませていくという扱いをすることへ向け、今日また一歩前進したと聞きました。どうもありがとうございます。   あわせて、遠藤幹事から先ほど頂いた御発言が大事なものでしたから、議事録にも遠藤幹事のお話をとどめておきとともに、遠藤幹事にも裁判所の方に御理解をお願いしておきたいことがありまして、何度か本日の会議においても、平成11年当時の事理弁識能力を欠く常況、したがって後見相当といったようなものの立案、立法の趣旨と現在の状況が異なっています、という話が出て、そのことがパブリック・コメントで意見を書く人たちに明瞭に伝わっていないと議論が錯綜するでしょうという指摘が度々なされているところでありまして、これは恐らくそのとおりです。裁判所の方で当然そういう御理解でおっしゃっていると思いますけれども、現在の運用が違うね、というふうな言い方をすると、裁判所が違法な裁判をしているのではないか、裁判所はけしからんというふうな話をしているのではないのですけれども、何かそういうふうな話になっていってしまいそうな気配が漂うところがなきにしもあらずという御心配があるかもしれません。でも、決してそうではないということも、ただいまの遠藤幹事の御発言や、それに先立っての各委員のお話でも、節々に裁判所を非難するつもりではないというお話をしていただいたところから、明らかであろうと考えます。   平成11年のときの事理弁識能力を欠く常況とはこういう人ですというところは確かに記録に残っていて、明確に伝わってきていますし、部会資料などにおいてもるる採録して御紹介しているところであります。それは言わば民法のテキスト、法文に書かれている法の趣旨として今日まで変わっていません。フランスでかつて民法学者にジャン・カルボニエ(Jean CARBONNIER)という人がいまして、テキストに書かれている法律ももちろん研究対象として大事であるけれども、その半面、生きている法律というものがあって、テキストに書かれている法律でない点で「法でないもの(non-droit)」であるかもしれないが、時々の生きている法律を認識しながら、立法に参画する人や法律学に携わる人はきちんとその研究を重ねなければいけないということを強調したことがありました。正にそのとおりです。生きている法として見たときの今の日本の成年後見制度というものは、平成11年法のテキストの中身とは同じでない。それは別に裁判所が違法な判断をしたとか運用をしているという話ではなくて、社会全体が様々な、一個一個はもっともな背景があって、ここに来ているものであろうと考えます。裁判所がその一角を占めていたことも間違いないかもしれませんけれども、医療機関や福祉の関係者の動きなどが総合された結果として、生きている法がそのようになっているわけでありまして、それを我々は率直に、別に振り返って誰かの責任だとかそういう話ではなくて、現在の日本社会はそうですねという認識の下に、今後もっと分かりやすい民法のテキストにしていくにはどうしたらいいでしょうかということを考えていく、その最中で、そこのところが同じではないねという点は今後も部会資料や中間試案の補足説明などで記すことがあると思いますけれども、再々申し上げれば、別に裁判所のことを非難しているわけではありません。運用という言葉を用いるから、ひょっとしたら悪いのであって、成年後見制度の現在の実態が異なる。実態というものはいろいろな人の動きの総合で出来上がっているものですから、誰かの責任を問うているのではなくて、現状はこうですと、それを受け止めて新しい民法のテキストを作っていくのにはどうしたらいいでしょうかというお話でありましょう。遠藤幹事もそういう御理解の下に先ほど裁判所の運用を御紹介してくださったものでありましょうし、それをなさってくださって、ありがとうございました。   部会資料15の前半の部分についての御議論をお願いしておりますけれども、ほかにおありでしょうか。   よろしいですか。それでは、続けます。部会資料15の第2の部分について、事務当局から説明を差し上げます。 ○小松原関係官 部会資料15の8ページからの第2について御説明いたします。   第2は、民法第13条第1項各号の見直しの要否及び具体的な見直しの内容について、どのように考えるかを論点とし、第2の1(1)では、現行法の規律を整理しています。11ページからの(2)では、現行法の規定の経緯を整理し、民法第13条第1項各号が重要な財産上の行為に該当する行為を選定しているものであることと、その趣旨を記載しております。(3)では、見直しの観点を整理しており、現在の社会において具体的にどのような行為が重要な財産上の行為に該当するものとするかについて御議論いただきたいと考えております。 ○山野目部会長 御説明を差し上げた部分について意見を承ります。 ○小澤委員 ありがとうございます。民法13条1項各号については、各号の内容について文言も含め一定の見直しは必要だと考えておりますけれども、本人にとって多大な影響がある重要な財産の処分などを中心として同意権や取消権を付与するという現行法の方向性は妥当だと考えています。   ただ、部会資料16の4ページで、法定後見の枠組みの乙2案の保護Bの在り方で示されている、民法13条1項各号を保護者に付与する基本代理権の規律としても位置付けるのであれば、民法13条1項各号の内容に対する考え方は変わってくるものと思っています。実務では、取消権として必要な権限と、代理権として必要な権限は異なるものと考えていますので、したがいまして現行法の規律は「事理弁識能力を欠く常況にある者」についての代理権として通常必要な権限として十分であるとはいえませんので、民法第13条1項各号を代理権の規律としての位置付けも含めて整理をして、検討することが必要だとは考えております。 ○野村幹事 ありがとうございます。現行の3類型を維持する甲案であれば、身上保護については、代理権であれば保護者が対応する意味もありますが、取消権(同意権)を行使する機会や必要性はほぼありませんので、財産管理を中心にした民法13条1項の規律については基本的に妥当だと考えています。ただし、第1号や第7号についてまで取消権(同意権)を付与するのが適切かどうかは検討する必要があると思います。リーガルサポートとしては、法定後見は必要性に応じて個別代理権等を付与する制度、いわゆる乙1案が適切だと考えていますので、そもそもこの13条の規定は不要だと考えています。   また、現行のように取消権(同意権)の規律としての位置付けであれば、財産管理中心の現在の内容でいいと思いますが、今、小澤委員からも御発言がありましたように、資料16-2の4ページの記載のように、この条文を乙2案の保護Bの代理権の規律として考えるのであれば、身上保護に関する権限も必要になると思いますし、現在も解釈上は対象とされているかもしれませんが、福祉サービス契約や福祉施設の入所、入院契約なども対象となることを明記した方がいいと思います。遷延性意識障害のような厳密な意味で事理弁識能力を欠く常況にある方の場合、基本的代理権として必要なのは、現在の13条1項のような借財や不動産の処分、訴訟、相続手続等の権限よりも、入所、入院契約やその費用の支払いであって、現在の13条1項は必要な代理権を表現できていないと思います。 ○根本幹事 野村幹事からの御指摘と重なるところもありますが、部会資料の12ページの5行目以降のところで御指摘がありますように、重要な財産上の行為ということについての中身が何であるのかということを明確にさせる形で規定をするか、若しくは要綱説明の中で相当丁寧に記載をするということが必要だろうと思います。   元々この13条1項というのは取消権を前提とした規定ということになるわけですが、これを代理権でも使っていくということになりますと、当然、取引の相手方も含めて、果たして取引の相手方が代理権があるものとして取り扱ってくださるかどうかという問題になってくるのだろうと思います。   具体的に申し上げれば、今回、部会の参考資料として現状の代理行為目録を添付していただいていますが、部会参考資料9を見ていただいたときに、例えば1(1)不動産関係というところは、不動産とあるので、まだよいのかもしれませんし、(2)預貯金と金融関係というところについても、預貯金の払出しについては(2)①、これは1号に当たるということで、いいのかもしれませんが、(2)に書かれている預貯金の払出し以外の取引というのが、果たしてこの重要な財産上の行為に全て該当するという解釈になるのか、一般的には、重要な財産上の行為というのは、個々人の財産状況や資産状況によっても変わってくるという解釈もあり得るわけで、このまま代理権付与で転用されたときに、今の代理行為目録の(2)の①や②というものが、(3)の保険もそうかもしれませんが、含まれるのか含まれないのかということが明確にならないと、実務としては耐えられないということになるのではないかと思っております。 ○佐久間委員 今までの方が皆おっしゃっているので、飽くまで確認ですが、第2の13条第1項各号というのは、先ほどの乙2案でも用いることがあるという前提でよろしいのですよね。そうすると、まず限定は難しいだろうと思うということを申し上げた上で、乙2案を採った場合に代理権に転用されてというお話があったことについて、1点申し上げたのですけれども、現在の乙2案というのは、包括的に本人は自ら行為をすることはできないという後見類型について改めて、13条1項各号に列挙された行為については、自ら行為をしたときは保護者の同意を得ていたとしても取消し可能にするという案なのですね。つまり、本人は行為できないという前提なのです。本人が行為できないことについて代理権を持つ人を用意しておかないと、本人のためにその行為をする人は誰もいないということになり、乙2案の後見相当の類型が残った場合、13条1項各号に掲げる行為について、その人は法的に確定的に有効にする余地は全くありませんということになってしまう。だから、そこについては代理権を与えなければならないという話なのです。   もしかして今まで御発言になったお三人は、同意を得て本人ができるということをお考えになっているのかもしれません。それだったら代理権は必ずしも要らないことになるかもしれませんが、意思無能力の人について、他人の同意を得て行為をすれば問題ないかというと、そこはやはり大問題だと思います。乙2案に転用するとかうんぬんという話ではなくて、乙2案は、まず本人の行為が許されないというか、法的にやはり確定的に有効にはできないということを維持すること、そこについては賛否があるのは分かりますけれども、それを前提としているので、その場合は、代理権を与えないことにはおよそ立ち行かない案だということを御理解いただきたいと思います。   そうだとすると、確かに根本幹事がおっしゃった、限界がよく分からなくて相手方が慎重になるということはあり得るとは思いますけれども、逆に言うと、これは大した行為ではないからな、というときに問題になるわけですよね。そうすると、実は乙2案の問題は、意思能力を欠く人が、大した行為ではなくて現在の13条1項各号に該当しないものについて、本人は意思能力を欠いているからできない、代理権もひょっとしたら与えられていない、私が先ほど申し上げた、何もできない状態が残るではないかというところに本当はある、乙2案の欠点だと思っています。 ○根本幹事 念のために申し上げますと、今、佐久間委員から御指摘があった点は、その前提で重要な財産の点は申し上げているということになります。正に今、佐久間委員がおっしゃられたように、例えば、取引の相手方からすると、預金残高がこれしかないのだから、これは重要な財産のこれに当たらないのだとか、そういう話になってしまうと、代理権付与がされている範囲というのが結局取引の相手方の判断によって左右されてしまうということにもなりかねないということになるのだと思います。必要な場面において代理権付与をしていくということとの関係で、明確にさせるということが必要だと思っております。 ○佐久間委員 今のお話については、乙2案だけではなくて乙1案だって、ある行為について、それは入っているか、入っていないかの問題は出てくると思うのです。その場合には本人側はどう対応すべきかと、私が先ほどこれは欠点だと思っていますと申し上げたところも同じなのですけれども、特定の個人の代理権を付加的に与える手続が設けられないわけではないので、そこが心配だというのだったら、付加的代理権をいっぱい与えておいて、実際上包括代理と変わりませんということまで排除されているわけではないから、それでできるのではないかと思っています。だから、繰り返しになりますけれども、相手が、それはあなたに代理権があるかどうか分からないので取引できませんと言ってきたら、取引してもらいたければ代理権付与を裁判所に求めればいい。というか、それをせざるを得ないのが個別化するということの意味だと思っています。 ○波多野幹事 佐久間委員から御指摘いただいたところと多分重なると思うのですが、ここで御議論をお願いしたいのは、本人が保護者の同意を得てすべき行為をどう規律しますか、リストとしますかということです。その結果、乙2案というのは、本人が一人で確定的に法律行為をするとの規律としない以上、誰かが代わりにするのだよね、だからそこの部分は代理権がありますよねというのをセットにしましょうという上で、さらに、前回御指摘いただきましたその他にも個別に代理権を付与できるようにすべきであるというところを今回、部会資料16では書き込んでおりますので、恐らく代理権の不十分さはそちらで対応することになるのかなというイメージを持っていました。したがいまして、ここではどういう行為について保護者の同意が要るのですか、それをリストにどう書きましょうかというのをここの主たるテーマとして御議論いただきたいと思っていたところでございました。 ○上山委員 今までの議論と少し違う観点になるかと思うのですけれども、現行の13条1項各号の行為の選択基準について、部会資料では梅先生の文献なども引きつつ、基本財産の減少や喪失を来すおそれのある行為、すなわち重要な財産上の行為であると整理されていて、これは確かに一つの重要な基準だと私も思います。ただ、現状の各号を見ると、必ずしも全てがこの基準によって選択されているとは言い切れないのではないかと思われる部分もあるように感じられます。例えばですけれども、7号で贈与の申込みの拒絶を同意を要する行為としているのは、逆にいえば、負担のない単純贈与の承諾には同意を不要としているわけですが、ここでは、未成年者に関する民法5条ただし書きの趣旨と同様に、もっと単純に本人の不利益にならない行為という視点の方が重視されているような気もするのです。   もう一つ、その行為が重要であるかどうかという判断に当たっては、ある一定の法律行為が質的な観点から一般的に重要であると類型的に評価できるものと、ある程度量的な視点というものを組み込まないと評価しがたいものとがあるように思います。先ほど出た議論で言うと、本人の財産状況などをも加味した上で相対的に評価しないと、必ずしも重要であるとは言い切れない行為類型、言葉を変えると重要性の判断に量的な基準を加味することが必要ではないかと思われるものがあるように思います。借財というのは一つ、その可能性があるし、元本の領収や利用というのも、もしかしたらそういう量的な視点というのが入る可能性があるのかなと感じます。   こうした主観的な重要性に係る量的な評価基準としては、民法9条ただし書きの日常生活に関する行為への該当性の判断が最低限の調整機能を果たしているとは思うのですけれども、それだけで量的な部分を評価してよいかというのは、まだもう少し議論の余地があるのかなと感じました。 ○山野目部会長 ここのところは今、上山委員に御発言いただいたようなことを議論していただきたいものです。その前に佐久間委員と根本幹事の間で熱く御議論いただいたことは、波多野幹事から整理してもらったように、この後の部会資料16の、特に保護Aと保護Bの関係のところで議論してもらう事柄であって、いささか早いです。その前に、そもそも保護A、保護Bを議論しないと13条1項のリストがどのような役割を果たすかが決まらないから、議論しにくいことは確かですけれども、そのことを留保した上で、このリスト自体を一回、一つ一つどんなものでしょうねというところを見ていきましょうという声かけがこの部会資料15の段階です。今、上山委員に御議論いただいたような類いのお話をほかにも頂ければ、ここで頂いておきたいというお願いになりますけれども、引き続きいかがでしょうか。 ○青木委員 同意を得て行為を行わせたい、場合によっては取消しをできるようにして保護したいというものとしては、これは後見制度の利用が低所得者にも広がった事情が大きいと思いますが、携帯電話の契約とか、スマホなどでの電子的な日常的な金銭決済取引手段が、生活保護や年金だけで生活している人にとってみると、大きな影響を生活に及ぼしてしまうと。そういったものについても、取引限度額の制限とか、場合によっては利用自体を止められるかなどの金銭管理をしていかないと本人の生活が破綻することもあると。生活保護費をもらって、5日もしないうちに一ヶ月分のお金がなくなって、あとの25日は全くお金がないということを何とかしたいということがあります。携帯電話も特殊詐欺に利用されたりして、勧誘されて、三台、四台と携帯電話の契約させられてしまうのだけれども、本人の日常生活とは関係ないわけですけれども、そういった契約を制限したいということになりますと、必ずしも行為の金額とか、それから従来の行為の種類だけでは、こうしたニーズとは合致しないので、特に13条1項3号の重要な財産に関する規定のところは、考え直す必要があるのではないかということを実務では感じています。 ○根本幹事 部会長の御指摘のところで申し上げますと上山委員からもありましたけれども、まずは9条ただし書の範囲というものが何であるのかということのコンセンサスをある程度得る必要があるだろうと思います。その上で、重要な財産上の行為と、9条ただし書の行為と、その中間的なものがあるのかないのかという、理論的ないし観念的な議論なのかもしれませんけれども、整理をしていかないと、なかなか議論がかみ合わなくなるのかなとは思っておりますので、まずは9条ただし書の範囲ということについて、この部会の中でのコンセンサスというのをある程度諮る必要があるのではないかと思っております。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   そうしましたら、今部会資料15の第2で御議論いただいたことのリズムについて参考までに御案内をしておきますけれども、今後、中間試案の中身については更に御相談を重ねていくとして、恐らく中間試案の段階では13条1項のリストを次のように見違えるように見直すとかというようなものを書き出すということは余り適切でない、というか、それは時間的にもかなり苦しいもので、拙速にしない方がよいと考えますから、中間試案においては、13条1項というものは必ずしも今のままではなくて今後見直しをしていくということが想定されています、ということを既に断っているゴシックを入れており、それからそれほど変わらない見映えで一般の意見を聴いていくという仕方で進めると思います。そもそも、お話ししたように13条1項のリストがどのような役割を果たすかというところが、パブリック・コメントを経てもう少し案を絞っていかないと確定しませんから、そこのところが見えてきた段階でもう1回、13条1項のリストの問題を皆さん方に秋にお諮りしていくことになります。そういう観点から言うと、まだ時間的には余裕がありますから、委員、幹事におかれて引き続きお悩みいただきたいと望みます。   既に本日御議論いただいた点と重なりますけれども、そうしたことの検討を続けていただく参考として3点ほど申し上げておきますと、一つ目は、明治に制定して以来ほとんど文言が変わっておりませんから、何分にも現代に合わないような感性の言語が用いられていたりして、現代化の必要がもしかしたらあるかもしれないという課題があります。大修繕をすることとありますけれども、どう考えても被保佐人が屋根の上に上がって自分で金槌を振るうことについて保佐人の同意が必要であるという話ではなく、大修繕に関する契約を締結することであると理解されていますが、しかし死後事務のところには、後に作られた民法の法文ですけれども、埋葬に関する契約を締結することとなっていて、あちらの方は後見人が埋葬するとは書いていないですね。墓の穴を掘る作業を後見人がするというのではなくて、それを委託する契約を締結するという趣旨であり、文言を統一するならば、こちらも大修繕に関する契約を締結すると書かなくてはいけないはずで、現代の法制執務を踏まえた上での文言の洗練化を含む現代化が必要です。   第二に、現代の生活の状況を見極めた上で、規定の細密度を高める必要がある部分があるかもしれません。本日話題にしていただいた点で言うと、借財とか、取り分け預貯金の取引ですね、これらを9条ただし書の概念との関係で整理した上で、代理権の文脈での議論であるか同意権の文脈における議論であるかにもよりますけれども、どのくらいの限度までのことを考えているかといったようなことについて、もう少し読んだ人に分かるような細密度を高めた規律にできるならば、そうした方がよいでしょう。   第三に、明治以来変わっていないことと関係しますが、3点目、作られたときの立法の趣旨は、これは濃厚に財産の管理であって、更にもっと言えば財産の維持、もっとずばり言えば家産の維持の気配が濃厚な規定でしたね。これは今日、準禁治産者の規定でしょうというイメージで見ますけれども、実は虎に翼の世界なのですよね。妻が夫の同意を得ないとすることができない行為のリストとしての役割を負っていて、この裏側で、妻が同意を得ないとできないとされたことについては夫に包括的な代理権がありました。その規定の時代に、夫婦を中心とする、要するにその家の財産を維持していくためには、こういうことは妻が勝手にしてはいけない、という文脈で挙がっているリストでありまして、それに比べ現代社会においては、そういう家の財産を維持するというよりも、本人の人生をアレンジしていくためにどういう行為について同意が求められますかというようなことを見ていかなくてはいけなくて、ここの見方が変わるだけでも、同じ重要なという言葉が使われていても、重要の意味は全く変わってきますし、さらには、青木委員がおっしゃった携帯電話の締結というようなものを視野に含め、現代生活における本人の暮らしのしやすさであるとか、それから、身上保護の事柄はここでは直接扱わないことが相当でしょうというお話がもっともであるとしても、身上行為に関連するような行政手続ですね、要介護認定の申請、更新であるとか、障害福祉サービスの受給申請であるとか、そういうことは家産の維持とは関係ないですけれども、現代に生きる人々にとってはすごく重要であって、そういうものについての同意、代理の規律の在り方をどう考えますかというようなことについても、全くここに手掛かりがなくてもいいかというようなことまで視野を広げて、一旦検討してみた方がよいかもしれません。それはお話ししたようなリズムで検討していくことになると思われますから、委員、幹事におかれて引き続き悩んでいただければ有り難いと感じます。   部会資料15についての御議論を頂いたところで、波多野幹事から先ほどのお話のほかに何かおありですか。よろしいですか。   久保委員、花俣委員にお声掛けをしますけれども、久保委員から何かおありだったらお話しをください。 ○久保委員 ありがとうございます。今の皆さんの御議論が私が思っているのとマッチしているのかどうかというのは、よく分からないのですけれども、私個人は、後見になってしまったというのは、医師の診断書も保佐とかになっていたけれども、裁判所がどうせ後見になるのだから後見にしておきなさいといって後見にさせられてしまったというのを2件ほど聞いています。そういう事案も今までにあったということが一つです。   もう一つは、類型をどうしていくのかというのが、私たちの中でも少し意見も分かれていまして、重度の人は後見を申請すれば、そのまま後見でずっと行くのだろうという想定は分かるけれども、そうでない人は、補助とか保佐とかというよりも、スポット利用でいいのではないのというような意見が多いです。もっと言えば、後見に値するぐらいの障害程度の方でも、どこで区切るのかと線引きするのが難しいので、そういう意味では、後見ですねと言われた人でも、やはりスポット利用に切り替えますというふうに選択ができるようにしてほしいというのが私たちの中で議論をしているところです。そして、スポット利用の対象になった場合に、特定代理人とかそういう人たちも、制度を創設していただいて、そしてきちんと裁判所で適切な人を選んでいただくということをしていただくと少し安心かなというようなことが、私たちの中の議論として、今皆さんがお話しになっているところでは、そんな意見が出ております。 ○山野目部会長 久保委員からかなりライブ感のあるお話をたくさん頂きました。追ってまた、久保委員にお世話を頂いている団体におかれても、まとまった形で意見書を頂戴するチャンスもあるかもしれません。引き続き御覧いただければ有り難いと存じます。ありがとうございます。   花俣委員、お願いします。 ○花俣委員 前半の部分は久保委員のお話を、なるほどと思って聞かせていただきました。先生方のお話はかなり複雑で、後見で申立てしようとしたものが、星野委員がおっしゃったような事案はレアケースではないかと思い、そんなことが可能になるのかどうかもよく理解できていないというのが正直なところです。   それからもう一つ、後半の議論に関しては、明治以降変更されていない条文があり、それについて検討をされるということかと理解いたしました。気になるところが一般の市民からするとたくさんあるような気もいたしておりますので、こういったことは改正のときにできる限り皆さんのお知恵を拝借しつつ、変えられるべきものは変えていただけると有り難いと思って議論を伺っていました。 ○山野目部会長 花俣委員、ありがとうございます。引き続き御意見を頂きたいと望みます。ありがとうございます。   部会資料15について御議論を頂きました。   それでは、部会資料15の後、引き続いての審議に進むということにいたします。   続きまして、部会資料16の第1から第4までの審議をお願いいたします。部会資料16-1と部会資料16-2のゴシック部分が同じ内容のものになっております。便宜上、説明が付されている部会資料16-2を用いて事務当局からの説明を差し上げることにいたします。 ○小松原関係官 部会資料16-2の(前注)及び第1から第4について、御説明いたします。   まず、1ページからの(前注)では、部会資料16-1及び16-2で用いている精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況等の用語について整理しています。   2ページからの第1では、法定後見の開始の要件及び効果、法定後見の規律に係る取消権及び追認について整理しています。   また、19ページからの第2では、法定後見の開始の審判又は保護者に権限を付与する旨の個別の審判の取消し、法定後見に係る期間について整理しています。   次に、24ページからの第3、保護者に関する検討事項では、保護者の選任、保護者の解任、保護者の職務及び義務、死後事務、保護者の報酬、保護者の事務の監督について整理しています。   41ページからの第4では、法定後見制度に関するその他の検討事項として9項目整理しています。 ○山野目部会長 部会資料16-2を用いて第1から第4までの説明を差し上げました。御案内を差し上げているように、16-1と16-2はゴシックの部分は同じであります。加えて、これから委員、幹事から御意見を頂いてまいります。御意見は御随意におっしゃりたい仕方でおっしゃっていただきたいという御案内を差し上げますとともに、パブリック・コメントをしていくときに、一般から見て、まず注目して意見を各方面から出してもらうものは、16-1のゴシックで案内しているところであります。この部会で夏前に御決定の手続を頂く対象も、この16-1に掲げているゴシックの部分でございます。そういうことでありますから、皆さんの出していただく御意見は、本日の御発言も御随意になさっていただいてよろしいですけれども、国民一般から見て、ゴシックのところを法制審議会は一体どういう議論をしてどういうふうに変わってきたのだというところが見えるような仕方での審議をしなければいけませんから、そこについて何かを改めてくださいという意見は、この場で御発言を頂くことが有り難いです。   それに対して、16-2の方の説明の部分は、ここの事務当局の説明に、もしかしたらこういうのも加えてくださいとか、ここの説明は誤解があるから異なる表現にした方がいいでしょうとかいうような話をここでしていただくことも妨げませんけれども、それは必ずしも審議会の議事録として可視的になっているということは強い要請ではありませんから、別な様々な機会に事務当局に対して、あそこの表現をもう少しこういうふうにするのはどうでしょうねというような意見を出していただいてよろしいものであり、大体そんな振り合いになっているということをイメージしながら、あとはいつものように委員、幹事の御意見を承ることにいたします。いかがでしょうか。 ○小澤委員 そうしますと、1点だけ。部会資料16-2の34ページの第3の4「本人の死亡後の成年後見人の権限(死後事務)等」についてですが、乙1案を採る場合は、「本人の死亡後の保護者の権限の規律を設けない(規律を削除する)ものとする。」とされておりまして、その注記として、「保護者に本人の死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結の権限を有する(ただし家庭裁判所の許可を得なければならないものとする。)旨の規律を設けるものとするとの考え方があると。」記載されております。   この点、以前の部会で検討した部会資料13では、乙案として「事理弁識能力を欠く常況にある者について保護の仕組みを設ける場合及び事理弁識能力を欠く常況にある者について保護の仕組みを設けない場合のいずれの場合であっても、保護者が本人の死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結の権限を有する(ただし、家庭裁判所の許可を得なければならないものとする。)旨の規律を設けるものとする。」という整理がされておりましたし、以前の部会でも特に異論があった点ではなかったと思いますので、この死後事務については実務の現場で大変関心が高く、改正要望の声が多い部分ですので、注記ではなく、部会資料13のように案の一つとして整理いただきたいという意見を持っています。 ○佐久間委員 何点かあります。全部ゴシックのところです。まず、2ページの乙1案につきまして、先ほども申し上げたことなのですけれども、乙1案では今のところ、事理弁識能力を欠く人というのか、同意をすることができない人なのか、それはどちらか分かりませんが、同意をすることができない人も、13条1項のリストにある行為について、保護者の同意を得て自らすることができるということになっているのだろうと思います。   ゴシックそのものが本当にそれでいいのかということを申し上げたいのですけれども、手続において、同意できないかどうかは相当慎重に探ると思うのですが、慎重に探ってもこの人から同意を得ることはできないなという人について、日常のそれなりに重要な行為を一私人の同意を得て自らするということで本当にいいのか。そもそも意思無能力による無効という制度をなくさない限り、その場合に、同意を得てしたので取り消すことができませんということになったとしても、結局意思無能力による無効が認められることになり得て、そうすると、相手方としてはやはり本人が自らする行為に応じることは難しいということになるのではないかと思います。   加えて、乙1案では、当該本人がどういう判断能力の状況にある人なのかということは外からは全く分からないという状況になりますので、本人と13条1項に該当する行為をした場合に、保護者の同意を得ていたとしても、仮に本人が意思能力のない人だったら無効になってしまう、そのおそれがどのぐらいあるかが分からない状況で行為しなければいけないとなると、相手方は非常に慎重に振る舞うようになるのではないか。つまりは、今の保佐相当とか補助相当の人であっても、場合によっては慎重に、この人と取引するのをやめようということになってしまうのではないかというようなことが危惧される。ですので、乙1案を支持される方がこれで行くというのであれば、私は反対だということにとどまりますけれども、せめて注記で、事理弁識能力を欠くなのか、同意能力を欠くなのか、きっと同意なのでしょうね、手続の話だから。同意をすることができない人については、13条1項の行為について保護者の同意を得て自らするということは認めない。つまりは、同意を得てする行為は本人の同意能力がある場合に限るべきだという意見があった、ということにしていただきたいと思います。   単なる希望なので、それを入れるのはもちろん事務局の裁量ですけれども、私は、前回も今日も申し上げましたけれども、乙2案を採りつつ、事理弁識能力を欠く常況にある人についても、特定の行為についてのみ保護者に権限を付与することを排除しないというか、当然できると思っています。けれども、それは、まさか保護者の同意を得て行為をすれば取消し不可能になる、そういう仕組みにすることまで入っていると思わずに申し上げておりました。前回多分、代理の例で申し上げたと思うのですけれども、どの案を採るにしてもそのように考えるということが1点目でございます。   2点目は、これは前からあったのかどうかが知りたいのですけれども、16-2の5ページの下にある乙案本人に拒否権を与えますと、そういう考え方ですよね。この案は前からそれなりに出ていたのか、余り私は意識に留まっていなかったので、今回からなのかということで発言します。私の意識に留まっていなかっただけなら申し訳ない、前からあったのだったら余計なことを言うことになりますけれども、明確に出てきたのは今回からだと考えて意見を申し上げたいのですが、これは私的自治の後退になり、今回の改正の基本前提と相入れないおそれがあるのではないかと思います。つまり、本人が拒否権を発動しない限りは、他人がした手続によって全部進んでしまうということですから、本人に拒否権を行使する機会はもちろん保障されるのでしょうけれども、それで本当に十分なのかということには、制度改正全体の基本理念、基本方針からして、やや違和感があります。また、事理弁識能力を欠く常況の人もこれでいいのかというのもありまして、異議を出すことはその人にも事実としてはできるのだと思いますけれども、その異議自体が意思無能力を理由に無効であるというおそれが相当ある、そのようなことが予想される仕組みを法的に組み込むことに問題はないのかということを強く思っています。ですから、ごめんなさい、今までにあった案でしたら本当に謝っておきますけれども、今回初めてだということだとすると、乙案は私は適当ではない、もしこういう御意見があるのでしたら、せいぜい注記にとどめる方がいいのではないかと思っています。それから、乙案に限らず丁案の、例えば6ページにあるイなどでも考え方としては同じですので、同じことになるかなと思っています。   それから、少し飛びまして15ページに参りまして、法定後見の規律に関する取消権及び追認権なのですが、10行目冒頭に、甲案を採る場合は次の甲案によるというのは、基本的にはそうなのだろうと思うのですけれども、論理的には保佐とか補助について、3類型を維持しても、かつての準禁治産者の保護者と同様に、当然には取消権を持たないという規律は、それはあり得るし、場合によっては私は望ましいのではないかと思っておりますので、甲案、今までのとおりだというのはそれは当然あり得るとは思うのですけれども、そこは変えるというのも含めていただければなと思います。   それから、続いて16ページの(後注)のところです。取消権の行使についての意思尊重義務、28ページか何かにも同じようなのが出てくるのですけれども、これについて、ここの記されていること自体には異論は私は特にはありませんけれども、わざわざこれを出すというのは、取消権の行使も保護者の事務処理の一つだと思い、そうすると、八百何条か忘れたけれども、他の事務一般について本人の意思尊重等の義務があるという規定があるのに、わざわざここだけ、違う規律にするのだったら意味があると言いますが、そうだったらなぜ違う規律にするのかということが問題となるし、違う規律にしないのであれば、ゴシックにわざわざ2回出してというのはどうなのかなと。私は、規律が異ならないのであれば、注記みたいなので、ここにいう事務には取消権の行使も当然含まれるというような、そういう記載の方が、何か特別な規律を用意しようというのだったらいいですけれども、そうでなかったら誤解を生じなくて、よろしいのではないかと思っています。   それから、次が20ページでありまして、法定後見の終了についてなのですけれども、乙2案を採るときに関しまして、終了とすることができる場合がもう一つあるのではないかと思っています。それは、保護Bの審判について、事理弁識能力がなお不十分ではあるけれども欠く常況ではなくなったというときも取消し、終了の対象にする必要があるのではないかと思います。   そのときの終了の在り方としては二つあって、一つは、飽くまで事理弁識能力の不十分な状況は続いているので、保護Aに移行する、加えてBについては職権で取り消す。もう一つは、先ほど来ずっと言ってきたことなのですけれども、特定の保護を強制するものとする制度ではないという考え方からすると、事理弁識能力が不十分ではあるけれども欠く常況でなくなったら保護は要らないということだって認めていいと思いますので、これは請求に応じてということになりますけれども、単純に取り消すということもあっていいのではないかと考えています。制度が結構複雑になるとは思うのですけれども、今回の改正というのは今までと随分違って、きめ細やかにということをしないと実質的な意味がないのではないかと思うので、細かくなるかもしれないけれども、しようがないかなと思っています。   それから、次に、28ページからの財産目録の調査、作成についてです。目録の提出について39ページからあることとも関係しているのですけれども、目録の提出についてはそれでいいと思うものの、私が考えていたのは、今は、後見について853条があり、それを受けて854条で事務の開始に制約を掛けている規律があるわけですけれども、それを一元化、乙1案を採った場合でも、権限の積み重ねによっては非常に広範な権限を持つということがあり得て、そうすると保護者の財産と本人の財産の混交を避けるという現在の趣旨は妥当し得る場合があるのではないかということを基本的な問題意識として、853条を「できる」規定化することはどうかと思っていました。つまり、制度開始時点で裁判所が目録の作成、提出を、飽くまで「できる」規定としてですけれども、命じる。その場合、その提出がされるまでは854条の規律を発動させるということに、する意味がなおあるのではないかと思っているところです。ですから、原案とは違う考えだということは承知しておりますけれども、そのようなことの方が望ましいと考えています。   最後、ゴシックに直接書かれていないことなのですけれども、これを一つゴシックとして設けていただければと思うことがあります。それは、制度利用の終了の在り方を柔軟化するというのは、もうほぼコンセンサスになっていると思います。そうすると、特別に手続がなかったら、あるいは期限が来ていなかったら制度の利用が続いているときに、制度の利用が終わると、本人の状態は変わっていないということで、代理権はなお継続して存在するように相手方から見える状況が頻繁に起こり得ると思うのです。それを踏まえて、どうせよということではなくて、そのような制度の終了の在り方の変更に伴って、相手方を保護するための方策について、要るというのではなくて、要否をなお検討するとか、慎重に検討するのかもしれませんが、そこは分かりませんが、そのような注記をどこかでというか、終了のところに関連して設けていただけないでしょうか。112条の変更は実はすごく難しいと思っているので、中身のあることは申し上げられないのですけれども、やはり相手方保護のこともきちんと目を配っていますということを世間に示すために、その項目を入れていただければと思っています。   長くなりましてすみません。以上です。 ○山野目部会長 最も大きな問題は佐久間委員が最初におっしゃった事項ですね。本人が制度利用について同意を表明することができない状況にあると認められて、その余の要件をチェックして制度利用が始まったときに、なおその本人について、本人が行為をするという余地をどこまで認めていくか、そういうことがあり得るか、仮にあったとするとそれは意思無能力無効になってしまうものではないか、と、取り分け乙1案の方についていろいろお考えの委員、幹事の皆さんはどう考えますか、とおっしゃった事項は、少し御議論をお願いしておくことがよろしいと考えます。既にお手をお挙げなっている委員、幹事は当然そのことを御発言になると想像しています。   そのほか、佐久間委員からたくさんのお話を頂きました。同意ではなくて異議の申出があったときには、と、言わばそこのところをアクションを裏返して、というか逆転させる発想というものは、最初からあったかどうか分かりませんが、問題であるとおっしゃった点は、問題であるかどうかは今日、御意見があれば御意見を頂きたいと望みます。これは中間試案のたたき台の検討が始まったときに最初から入れていましたね。 ○佐久間委員 もしかしたらそうかなと思って。 ○山野目部会長 それはいいですけれども、ただし、その議論があってしかるべきでしょうという話はそうでしょう。   また、現行の3類型を余り大きく改めない、いわゆる甲案で行ったときに、同意権は有するけれども取消権を有しないというふうな組合せというものを新しく設け、現行法についての一つの手直しをするという方向がありそうであるから加えてくださいというお話は、それはもっともであると伺いました。   それから、取消権行使のときに限って本人の意思を尊重するという規定が特出しである姿が不格好に見えるというお話で、それは確かにそのとおりです。中間試案の文章は法制とは異なりますから、法制にするときには不用意にリマインドするような、論理内容が重複する規律は置かないというルールになっていますけれども、現在のところ858条の方もどうなるか分かりませんから、忘れないように半ば備忘録として、気付いたところは全部、本人の意思を尊重すると入れて、多分このまま中間試案も行くと思いますけれども、佐久間委員の御注意のことは、もちろん法制に行くプロセスのところにおいては忘れないようにしながら注意をするようにいたします。   次に、保護Bが終了するときに、保護Bの事理弁識能力を欠く常況ではなくなって、少なくともその常況ではない回復が認められましたねというときに、その後どうなりますかという際、なだらかに階段を下りていくみたいになるか、それともがたっと階段から外れるみたいになるかという点は、いろいろな在り方があって、本人の事理弁識能力の改善に応じて用いる仕組みを変えていくという規律も何か読み取れるようにしてほしいというお話は、伺っていてなるほどと感じました。   さらに、財産目録についての853条を、佐久間委員の言葉では、できる化規定にしてほしいという御要望で、中味はよく理解をすることができました。できる化規定と呼んでもいいですし、あるいは事案ごとに裁判所の対応の余地を設けておくと表現することもできるかもしれませんが、乙1案を採った場合でもその必要はあるのではないかという御心配は、なるほどと感じました。   終わりに、最後におっしゃった、保護者の代理権が終了するときに相手方の保護を考えなければいけないという1項目を立ててくださいというお話は重要な観点でありますから、検討することにいたします。民法112条を改正するといういきかたが大変であるという見立ては佐久間委員がおっしゃったとおりであって、そちらは距離の遠い話ですけれども、どちらかというと任意後見契約に関する法律に現在ある規律を参考にして何かする可能性を考え、その相手方の保護を考えるということは検討しなければいけないかもしれませんし、佐久間委員がおっしゃったとおり、中間試案の中にそこについての提案の具体像を書き込むことは困難であるかもしれませんが、忘れないように検討をしますよという注記はしておくことが適切であるかもしれませんから、そこを検討することにいたします。 ○根本幹事 ゴシックについて五つ申し上げます。佐久間委員が御指摘の点に関係して、まず一番最初に、いわゆる乙1案で3条の2との関係というところになるのだと思います。前提として、3条の2は乙1案を超えるということではないということになると思いますし、9条ただし書についても及ばないと、3条の2を超えるものではないということは、前提になっているのだろうと思います。説明の中で書いていただくということはあるかもしれませんが、それを超えて何か(注)やゴシックにその観点を入れるということではないのではないかと思ってはいます。現行法の3類型での解釈でもそのようになっているということだと思いますので、3条の2との関係については何かゴシック化されるということではないのではないかと思っているというのが一つです。   2点目が佐久間委員からありました16-2のページ数でいうと16ページの(後注)のところですけれども、ここは私がこのような記載をお願いをして、採用していただいたというところになるかと思っておりまして、前提として、佐久間委員がおっしゃるように、特別な規律を設けるということを念頭に置いて(後注)に落としていただいているということになりますので、特別な規律を前提とするということと、引き続き(後注)にはできれば残していただきたいと思っているということになります。   3点目が佐久間委員から最後に御指摘があった点で部会長からもありましたけれども、いわゆる本人側といわれるような、一つは能力が回復された場合の御本人ですとか、若しくは後見人、保護者が交代された場合の新しい保護者などが念頭に置かれるのだと思いますけれども、本人側に帰責性がある場合には取引の相手方は保護されるとの規律を設けるべきではないかということをゴシックなのか(注)なのか分かりませんが、御検討いただくということが必要ではないかと思っています。   その理由としては3点ありまして、一つは、112条が債権法改正で法定代理適用されなくなったということの時点では、途中で終われる後見制度を前提として議論されていたわけではないと思いますので、今回、途中で終われるようになるということとの関係で、取引の相手方が不利益を被ることがないように配慮するということは一般論として必要ではないかということがあります。2点目として、任意後見契約には依然として112条の適用がされると解されていると思っておりますし、任意後見の議論のところで、特に11条を改正するという議論は今まで出ていないと思います。そうしますと、任意後見の方については登記で対抗要件ということになると思いますが、元々法定後見と任意後見の取引の相手方の保護に関する規律のときには、法定後見の方では必ずしも任意後見と同じ規律にはしないということが任意後見11条の立法担当のおっしゃっていることだと思いますので、そういったことを踏まえた上で、更に任意後見の規定との関係でのバランスを図る必要があると思います。   理由の3点目は、事実上ということだと思いますけれども、御本人との関係で見ても、代理権付与が終了したということを後見人から通知をしてもらうということによって、取引の相手方が本人取引に戻る契機を与えるということになるのではないかと思いますし、終了した後見人の立場から見ても、自らが後見人となったことを就任時には通知をしているわけで、自らが通知した相手方に対して終了したことを同じように通知をするということは、これは仮に代理権付与状態が御本人に関する権利制限性があると理解するのであれば、その状態が解消されたということを後見人の終了時の職務の一つとして、通知をしていただくということを事実上求めていくということにもつながるのかなと考えています。   次が、佐久間委員の御指摘の点と関係ない点で、ゴシックの点で二つ申し上げます。一つは、7ページの申立権者のところについてです。甲案、乙案両方に新しく同じ(注)が二つ足されているということになりますけれども、少なくとも同じ(注)をここで二つ載せるというのは、パブコメの読み手からしても、甲案にせよ乙案にせよこれを考えるのかという少し誤った印象を与えてしまうのではないかということを懸念しますので、乙案に残されるということは見え方としても適切なのかとは思いますけれども、両方に載せるというのは少し違うのではないかということが1点です。そもそもこれを(注)に載せるということが適当なのかどうかというところについては、改めてこの部会の中でのほかの先生方の御議論も伺いたいと思っています。   元々任意後見の議論において公正証書による拡張という議論は十分尽くされていて、いろいろ御意見があったところだと思っていますけれども、説明のところにも書いてあったと思うのですが、任意後見で議論があったので法定後見にも跳ね返りますというのは余りに短絡的ではないかという印象を率直に持ってしまっておりまして、違和感を個人的には感じているところです。   現場の実務のところから行きますと、任意後見と違って法定後見の場合には市区町村長申立てがあります。市区町村長申立ての場合には、自治体は民法上記載されている申立権者が申立てしてくださらない、若しくは申立てする御意向がないということを事実上も含めてある程度確認をした上で市区町村長申立てをしているというのが今の実務の実態だと承知をしています。拡張されたり縮減されたりすると、それを全て市区町村長は確認をしなければいけないということになります。そうなってくると、任意後見の議論においては、特に公示の必要はないのではないかというような議論があったと思いますが、仮に法定後見でこれを導入するのであれば、公示をしていただかないと、市区町村長はまたそれを調査するということを課されて、また更に申立てが遅れるということにもつながりかねないというところに強い問題意識を持ちますので、(注)として残されるかどうかは事務局の御判断に委ねますが、少なくとも甲案の(注)からは削っていただく必要はあると思います。任意後見はともかく法定後見でこの(注)を残されるということについて、個人的には反対ということは明確に申し上げておきたいと思います。   最後になりますけれども、22ページの(後注)のところが乙1案、乙2案、いずれもあるかと思います。この考え方は、④ないし①の報告をしないことが保護者の解任事由となり得るものであることを前提としていると書いていただいているのですが、後で出てくる解任事由の議論の中で、その他任務に適しない事由をどういった解任事由に位置付けるのかというところが議論になっていて、恐らく(後注)で申し上げたいことというのは、解任事由となり得るという表現よりは、その他任務に適しない事由となり得るものであることを前提としているというのが正確なのではないかと思いますので、その他任務に適しない事由がどのように位置付けられるかが議論中であるということを踏まえますと、解任事由となり得ると表記していただくよりは、その他任務に適しない事由になり得ると表記していただいた方が誤解はないのではないかと思います。 ○佐保委員 ありがとうございます。幾つか気になる点を申し上げたいと思っております。   最初に、2ページの乙案の特定の法律行為に日用品の購入その他日常生活に関する行為を除くと追記していただいたことは、明確化する観点から、よいと考えております。一方で、5ページの本人以外の者の請求に本人の同意を必要とする場合のただし書で、本人がその意思を表示することができない場合と新たに追記されたことにより、何か限定されることはないのか、懸念を少し感じております。本人が意思を表示できる場合でも、客観的に見て本人の身体又は財産に重大な影響を与えるおそれや、本人の利益を著しく害することを本人が認識していないときに対応できるのか、危惧をしております。例えば、当事者団体から聞いた話では、兄弟が本人の財産を使い込んでいることに本人が危機感を持っていないケースもあったと聞いております。そうしたケースもこれで対応し得るのならば、問題はないかと思っております。   続いて、28ページの保護者の職務及び義務の(1)で本人の意思を把握することなどを明確化していただき、感謝を申し上げます。意思の用語について検討すべきとの御意見もございますが、使い分けの問題もあり、より複雑化することを危惧するため、意思のままでよいのではないかと考えております。   続いて、42ページ、本人の詐術の部分です。第1の1(1)において、いずれの案を採る場合であっても、基本的には現行法の規律を維持し、詐術の内容を明確化する考え方について引き続き検討することは、承知させていただきました。しかし、前回も申し上げましたが、本人が詐術を用いていると認識しているのか、その詐術の程度、不利益の評価など様々なケースが想定され、個別に判断できる余地を残す必要があるのではないかと考えております。そのため、明確化に当たっては限定列挙とならないように留意すべきではないかと考えております。   続いて、46ページ、成年被後見人と時効の完成猶予です。これまで、特定の法律行為について保護者に権限を付与する仕組みのみを設けるものとする場合でも、保護者がいなくなった場合など、その特定の法律行為について、時効の完成猶予など何らかの保護を設ける必要はないのか、問題はないのか、懸念がある旨の発言をさせていただき、それに対して様々な御意見を頂いた上で、今回のたたき台では、第1の1、19において、乙2案を採る場合は時効の完成猶予の規律を設けることとなったと承知をしております。依然、乙1案で設けないことには問題ないのか懸念は残るものの、中間試案に向けてまとめていく中で、議論の結果として受け止めさせていただきたいと思います。 ○上山委員 私も幾つかゴシックの部分、それからゴシックの記述の前提となっていると思われる部分について申し上げたいと思います。   まず1点目です。部会資料16-2を参照してページ数を申し上げたいと思いますが、6ページのところで、私はこの保護は受けたくないというふうにご本人が積極的に反対の意思を表示した場合について、その反対の意思の表示方法としては、異議がある旨の届出とされています。ここでの届出というのは、飽くまでも当該審判内において本人が何らかの形で届出をするということで、婚姻届不受理申出みたいに事前に届出をしておくというようなところまでは想定していないという理解で、そこはよろしいでしょうか。 ○波多野幹事 今おっしゃっていただいた届出というのは、やはり当該事件でそういう届出があるということを前提にと考えていたところでございました。 ○上山委員 分かりました。個別の審判手続内において、何らかの書式に基づいて届出をするということだと思うのですけれども、部会資料は、例えば乙2案の保護B、つまり事理弁識能力を欠く常況にある者のケースについても、こうした届出の手続をとり得るという前提でお書きになっていると思います。しかし、一般論としていえば、事理弁識能力を欠く常況にある方に対して一定の書式を充たした届出を行うことまでを求めるのはかなり難しいのではないかという気がします。この一方で、もう少し緩やかに、その審判手続の中で本人が単に反対の意向を表明するということはあり得ると思うのです。この異議の表明の有効性を意思能力との関係で、審判手続上、どのように評価すべきかという点はさて置くとして、例えば審判の過程の中で事理弁識能力を欠くご本人が口頭で保護の開始を拒絶する旨の発言をするようなことはあるのだろうと思うわけです。しかし、一般的な理解からすると、手続行為というのは単なる口頭等での意思の表明よりも少し抽象度が高い、平たく言うとハードルが高いものですので、この場面でこういう届出というある種かっちりした手続を要求するというのは、何となく違和感があります。   2点目は7ページの申立権者についてです。先ほど根本幹事が、法定後見についても任意後見で議論されたのと同じように公正証書によって申立権者を拡張し得ることを検討してはどうかとおっしゃっていました。私はこれを検討すること自体には特に反対いたしませんが、二つ疑問がありまして、この申立権者について、任意後見の仕組みにおける申立権者と法定後見における申立権者というのを同列に置いて議論していいかどうかというのは、余り検討されていない気がするので、検討の余地があるかなと。   もう一つは、もっと端的に、この仕組みにはあまりニーズがないのではないかということです。任意後見の場合は、任意後見契約を結ぶ段階で、少なくとも現行の規律ですと公正証書を作成しますので、その折に、ついでにこの人にも申立人になってほしいということをプラスで書き込んでおくというのは、十分にあり得る話だと思うのです。しかしながら、将来の法定後見の利用に備えて、その申立権者を公正証書の作成というコストを掛けてまで、わざわざ事前に指定しておくというのは、一般的なニーズとしてはないのではないかなという気がします。確かに、例えばドイツには、将来の法定後見の利用に備えて事前の指示を本人がしておける、世話に関する事前指示証書という仕組みがあります。しかし、これは、もし自分に法定後見が開始された場合には、例えばこの人を世話人にしてほしいとか、こういう代理権を与えてほしいとかといった、法定後見の具体的な中身に係ることを事前に指示できるというものでして、こうした書面を作成し、これを登録しておくことに一定のコストをかけるだけの大きなメリットがあるものです。これに対して、ここで想定されている仕組みは、単に法定後見の申立権者を拡張するというだけの話で、既存の市町村申立てでもカバーできる範囲かなと思いますので、わざわざ注書をしてパブコメに掛けるまでもないような気もするということです。   すみません、あと何点か。次に、16ページの取消権者についてです。私も不勉強なのがあるのですけれども、そもそも現行の120条が規定する取消権者の類型には少しわかりにくいところがあるように思います。まず、120条と122条を併せて読むと、現行法は取消権者イコール追認権者という形にしているので、120条で列挙されている取消権者というのは、本人のために取消権を行使させる意味があるだけではなくて、本人のために追認をすることもできる、そういう立場にある人ということになるのかなと思います。   前も申し上げたように、例えば特定承継人を120条1項が取消権者に含めていることについてどれだけ意味があるのか、私はよく分からないところがあります。さらに、今回の部会資料の整理ですと、任意代理人も120条の代理人で読んでいくという前提で資料をお作りになっているかと思うのですが、そういう読み方は解釈として当然成り立つのですけれども、少なくとも現行規定の取消権者の並べ方からすると、ここでいっている固有の取消権を持っている代理人というのは、親権者と成年後見人、つまり包括的代理権を持っている法定代理人だけを指しているという理解もできると思うのです。もちろん、任意代理人も取消権を代理行使できるのだけれども、それは120条が規定する代理人の中に任意代理人が含まれるから、つまり120条の効果として取消権を行使できるというわけではなくて、単に一般的な委任契約によって、本人が自己の取消権ないし追認権の行使に関する任意代理権を付与した結果として、任意代理人が本人の取消権を代理行使できるという、ある意味当然の話なのではないかと思いました。120条の理解については、こういう別の読み方もありえるので、例えば16ページの箇所の、その代理人の括弧書きの法定後見制度の保護者を除くという書きぶりだと、これは任意代理人に限定されそうな気がするのですが、それが現在の120条の一般的な解釈と整合的なのかどうか若干疑問があるということです。  それから、少し細かな話で恐縮ですが、34ページの死後事務のところで、乙2案を採った場合に、保護B、つまり事理弁識能力を欠く常況にある方についての保護の場合には、御提案では現行法と同じように、これは念頭に置かれているのは死体の火埋葬についてですね、死後事務に関する契約締結権限を認めるという形になっているのですが、これは多分、保存行為では説明し切れないような気が私はします。別のところにある時効の完成猶予については、以前から佐久間委員がおっしゃっているように、この類型に保存行為に関する代理権を付与すれば、その論理でストレートに読めると思うのですけれども、死体の火埋葬というのはかなり性格の違う話なので、必ずしも保存行為で読んでいくのは私は難しいような気がします。そうだとすると、何となく事理弁識能力を欠く人の保護なのだからざっくりこれも必要だよねという正当化はできるにしても、ここを正当化する理屈が少し弱いのではないかという印象が残ったということです。   ごめんなさい、長くなりました。以上です。 ○山野目部会長 最初におっしゃった、届出という言葉を用いることの適否は正直、余り考え込んで届出と使っているものでありませんから、おっしゃったように異議がある旨を表示した、でもよいし、そちらの方が分かりやすいかもしれません。法制的な精密化はこれから進めていきたいと考えます。   申立権者を拡張するかという問いをゴシックで含める扱いが評判が悪いですけれども、本日、委員、幹事の意見の分布を伺っておくとして、法定後見について申立権者の拡張は余りリアリティーがないという評価がほとんど皆さんの受け止めであるとすると、尋ねることに余り意義がないかもしれませんね。今日、意見分布の御様子を見て、ゴシックに引き続き含めるかどうかを改めて考えていこうと考えますから、何かあったら御意見をおっしゃってください。   追認権に波及する取消権者の見直しを任意代理の関係に留意し、現行法の解釈を含めて整理するところは、御注意を承りました。埋葬の概念について保存行為の概念で理解し切れるかということについても、御注意を承りました。 ○久保野委員 ありがとうございます。2点ございます。   1点目は、21ページ以下の法定後見に係る期間についてのところでございます。あらかじめおわびですが、13の資料の記載を十分にはそしゃくせずに、誤解があるかもしれませんけれども、気付いたところをお話しさせていただきます。   この論点につきましては、23ページの11行目にございますとおり、乙1と乙2は何らかの期間を想定して定期的な見直しをするという点で同じだということで、並べて対比されているわけなのですけれども、乙1と乙2がどのような考え方の違いを背景として、どこが対立するものなのかということがもう少し分かりやすく整理されると、パブリック・コメントなどで応答しやすいのではないかと感じているところです。といいますのは、乙1と乙2は論点が二つ含まれているようにも思われまして、一つ目が期間の定め方として、個々の事例に即して裁判所が適切な期間を定めるという方法と、法定の一定の固定の期間を定めておくということがまず含まれており、もう一つは、論点の二つ目として、それぞれの期間が満了するときの扱いですとか効果という点が入っているのだと思います。   それで、恐らく当初の案では一方では消滅するということとして考え、他方では報告させる義務ということで対比されていたのかなと思うのですけれども、現在の案では乙1の方でも報告をする義務が含まれるようになっていて、その対比が少し相対化されたのかなと思います。現状では、消滅するのが原則という考え方なのか、ですとか、報告というのは何を目的に何を報告するのかですとか、報告させた内容をどう考慮してどう検討するために何を報告するのかといったような観点が入っているかと思いますので、私自身がこういう対比ですよねという形で整理できていないのですけれども、それらがもう少し明確に対比されると有り難いと思いました。   なお、論点1と論点2がどのくらい論理的につながるのかということも、今のところ私自身は整理しできていないのですが、論理的なつながりの程度に応じて、セットで対比させるのか、別々に分けて対比させるのかというようなところも検討してもよいのかなと思いました。以上が1点目です。   もう1点は、14ページの先ほどの申立権者の拡張についての論点なのですけれども、先ほど根本幹事の御意見を伺いまして、確かに拡張すると市町村長申立ての実務に負の望ましくない影響を与えるおそれがあるというのは、なるほどと思って伺ったのですけれども、他方で、問い掛けてみるという意味では問い掛けてみてよい問いなのではないかという感想を持っています。   といいますのは、ここで問題の背景となっている一つの問題意識として、四親等内の親族というのが現在の家族や社会の状況を考えると現実的ではないのではないかということがございまして、ある個人が保護を要するかもしれない状態になっているということに、誰が気付いて、裁判所に申し立てるという程度の限りでのことではありますが、誰が動き出すかということがこの申立権者のルールでありますところ、家族をめぐる社会の状況が変わっているときに、市町村長という公の方法もあるとしても、個人が指定しておくという選択肢を設けることに価値があるのかないのかといったことが問われているのだと思います。抽象的な理念的な問題ともいえますけれども、法定後見の申立てに限らない射程を持ち得るような問題かなとも思います。より広い射程を持つ問題であるので、法定後見制度の検討の中に入れておくというのは不適当との考え方もあるかもしれませんが、しかし落としてよいとまで言えるかにはちゅうちょを覚えるということで、発言をさせていただきました。 ○山野目部会長 法定後見の期間に関する乙1案と乙2案が作られた経過や、現在打ち出している姿の趣旨は、久保野委員に御理解いただいたとおりであります。その上で、ただでさえ全体について読み手に負担感を与える中間試案になっていきそうでありますから、なるべく分かりやすく説明していくということが重要でありますから、ただいまの御注意を受け止めることにします。家庭裁判所への報告と期間の設定が論理的につながっているかということに関して考え込みますと、論理的にはつながっていないでしょう。ただし、家庭裁判所と対話をしながら終了に向けて進んでいくというリアリティーを考えると、そのことのコンビネーションを考えた方が物事を受け止めて考える各方面にとって便宜があるだろうということで、こういう案にしていますけれども、それにしたとしても、整理をした上で趣旨を明瞭に説明せよという御注意はごもっともなお話であると感じました。後ろの点は、先ほどの私の声掛けに対して久保野委員の受け止めをおっしゃってくださいましたから、承知いたしました。ありがとうございます。 ○青木委員 16-2のページ数で示していきたいと思います。1ページの(前注1)なのですけれども、是非とも「保護者」という言葉を使わずにパブリック・コメントには出していただきたいと思っております。「保護者」という言葉は他の制度との関係でのマイナスイメージが強いことがありまして、「支援人」ということでも結構だと思いますし、弁護士会の中でアイデアを出す中では、一元化すると補助に近い制度になることもあって、「補助人」というのもあるのではないかとか、あるいは、保佐人ではなくて「補佐人」というのもあるのではないかとか、他に使われている用語との混同のおそれもあるので「特定代理人」はどうかとか、「特定代理人」とすると同意権も付与される部分が表現できないではないかとか、これといって決め手になるものがありませんが、幾つかの案を出しつつあります。いずれにしても、制度が、乙1、乙2とかの枠組みが決まらないと、それを体現する言葉というのも決めにくいということもあると思いますので、パブリック・コメントの段階では、「支援人」を使っていただいて、支援人というのもかなり今までとはイメージが違う言葉でありますが、イメージが変わるというメッセージを含めて「支援人」を使っていただいくことも考えられるのではないかと思っております。いずれにしても「保護者」という言葉以外の言葉を是非お使いいただきたいと思っております。   続きまして、3ページの(注3)の佐久間委員からお話のあったところですけれども、乙1を採るについて、やはり本人の同意能力がない場合には、本人の同意によらずに権限を付与するということを想定していますが、その場合に、同意能力がないレベルの方というのは、例えば売買とか金銭管理などについての意思能力がある場合というのはなかなか難しいのではないかと思っておりますことから、本人の同意能力がなくても権限を付与せざるを得ないときには、同意権及び取消権ではなくて、取消権のみの付与とすることにならざるをえないのではないかと、今考えているということになります。   次に、4ページで、乙2案においても選択できるという案を(注1)として出していただいているのですけれども、なぜご本人さんが「事理弁識を欠く常況」の場合に、本人以外の請求権者が選択できるのだろうかというところが、その根拠は何かというようなことがわかりません。つまり必要性に基づいて設定するとは言い切れない「保護B」との関係で、それを採らずに、必要性に基づき設定する「保護A」を採るということが、本人以外の者の判断によって選択できるという根拠については、よく分からないところがありまして、これについては(注)を落としてほしいという意見ではなくて、そういう(注1)の考え方が、法制度上も成立し得るのですよということの説明を、補足説明書の中に記載いただきたいと考えているということになります。   それから、5ページで、乙1案に関する本人の同意として甲案というものを書いていただいていますけれども、これまでお話ししてきたところでは、同意権については「本人の生命、身体、財産又は生活に重大な影響を与えるおそれがある」という必要性で、ここに①で書いていただいたとおりだと思いますが、代理権の方につきましては、本人の生命、身体、財産、生活等に著しい不利益がある場合、と申し上げていたとものでして、表現の方を御検討いただければと思っています。   それから、6ページの冒頭の、先ほどからご意見が出ている「異議がある旨の申出」という点なのですけれども、資料13を見ますと、この段階では、本人が反対の意思を表示していないこととか、本人の意思に反することが明らかでないことという要件、表現を(注)としていただいているのですけれども、それ以上のものはなく、「異議がある旨の申出」はなかったと思っています。私は、資料13の議論では、本人の同意というのが認定しにくい場合もあることから、「本人の意思に反することが明らかでないこと」といった表現というのはあり得るのではないか思っていたのですが、「異議がある旨の申出」となると非常に積極的な本人からの行為となりまして、これを一つの提案としていただくのであるとすると、その具体的な手続として、誰がいつどのようにして、異議の申出が言えることになるのかということが分かる形で仕組みを説明していただかないと、国民としてもなかなか賛否を評価できないと思いますので、ここの説明はなお工夫が要るのではないかと思います。   続きまして、20ページの終了のところの乙2案について、バリエーションを①から③で説明いただいているのですけれども、乙2案について、いわゆる「保護B」場合には、必要性がなくなったからとして終了できるのか、それとも、必要性がなくなったとして終了できるのは「保護A」の場合だけなのかということが、②と③のゴシック体の表現からだけでは分かりにくいかと思っています。乙2案においても、保護Aも保護Bも両方とも必要性がなくなったときには終了できるという意見なのか、あるいはそうではないのかということが分かるように、していただきたいと思いますし、もし「事理弁識能力に欠ける常況」の場合にも必要性がなくなったから終了できるという案だとすると、なぜ開始時においては必要性を判断していないのに終了時には必要性に基づいて終了できるということになるのかも、ご説明をいただきたいと思っているところです。   それから、次は26ページの解任のところなのですけれども、今回、解任事由が欠格事由に結び付くかどうかのところを、現行の不正な行為と不行跡以外に、その他の保護の任務に適しない事由」とで、欠格事由とのリンクを分けていただいているのです。そういう選択肢は必要だと思いますので、そのこと自体は結構だと思いますが、それを分けたときに、「その他の保護の任務に適しない事由」があるときの場合にも欠格事由にならない、新しく設ける本人の利益のために特に必要がある場合も欠格事由にならないということになった場合ですが、その二つの要件を比べて、前者は保護者に何らかの義務違反がある場合、つまり不正や不行跡ではないけれども何らかの義務違反がある場合であって、一方、本人の利益のために特に必要がある場合というのは、義務違反があるとはいえないけれども本人の利益のためにやはり交代した方がいいということだというふうに違いがあるのですよという説明を、これを読んだだけでは分からないかもしれないので、補足説明には分かるようにしていただけたらなと思ったところです。   それから、35ページの(後注)で、判断能力の程度によらず全般的に死後の事務処理について規定を設けるべきだという案を載せていただいていますけれども、ここの説明の方では、生前の権限との関連性が十分に整理できるのかという御指摘も頂いていますが、例えば生前に金銭管理をしていれば最終的な弁済期が来ている債務の弁済は関連性があるとか、賃貸物件の契約の権限を有している方であれば、最後の家賃の支払いとか明渡しについては関連性があるというように、生前に付与されていた権限との関連性というのは、裁判所も十分に判断し得るのではないかということを申し上げているということです。   それから、火葬・埋葬の契約についての関連性ということは、生前に付与された権限との関係でぴったり説明できるものはないとは思いますけれども、やはり火葬・埋葬は亡くなった後速やかに行うということが埋葬法等で義務付けられている関係で、相続人に委ねることができないときに、保存行為的なものとしてできると位置付けていただければ、特に事理弁識能力が欠ける常況かどうかに問わず、必要性に基づき設定をしてもいいのではないかと考えているところになります。 ○山野目部会長 支援人というのは多分、国語辞典を引いても出てこない言葉で、なかなか苦しいという印象を抱きますが、都合が悪いという点は精神保健福祉法の関係ですか。 ○青木委員 はい、精神保健福祉法の「保護者制度」というのが非常に強いマイナスイメージとしてありまして、「保護者制度」の廃止というのを数年前にようやく果たされましたが、そのイメージが強いです。ちなみに「保護者」の用例を法令で検索しますと、児童の関係法令にはたくさん保護者という言葉がありまして、それは主に親権者を指すわけですけれども、それ以外にも医療関係の法令には保護者がありますけれども、福祉関係では保護者というのは生活保護に一部残っている程度でありまして、福祉の世界では、保護者というのはかつてのパターナリズムの強いマイナスイメージというのもありまして、新しい後見制度が「保護者」という用語で代弁されるイメージは、本論と関係ないところですが、どうかなというところがあります。 ○山野目部会長 厳しく見ると、条約との関係でも少し問題があるかもしれません。ですから、私は自分の講演などではサポーターと呼ぶことにしていて、少しおしゃれをするときはソムリエとしたりしていますが、でも、中間試案は片仮名はやめなくてはいけなくて、少し悩ましいですが、今日は青木委員に、青木委員個人の御発言というよりは弁護士会の先生方が悩み、いろいろ言葉のリストを並べた上で意見をお持ちいただいていますから、そのような御労苦にはきちんと向き合っていかなければいけません。今日に限りませんけれども、委員、幹事で何か提案がありますならば、引き続き伺ってまいります。 ○佐久間委員 発言するつもりはなかったのですが、先ほどの支援人の話は、後見人等とか補助人等とかというふうになるべく使って、もちろん注記した上でですけれども、今後どう変わるか分からないけれども現行制度で使われている、後見人にするのか補助人にするか、保佐人はないと思うのですけれども、そうするのも一つの手なのではないかと思いました。これは単なる感想です。   それから、手を挙げたときは考えていなかったのですけれども、青木委員が4ページの(注1)について、何でこれは可能なのだとおっしゃっいましたが、何で可能なのだとここで言うのだったら、そもそもが類型を一元化したって、何で勝手にほかの人が権限を選べるのだという話になるので、それはここだけで問題になることではないと思っております。   それから次に、ここからは私が言うことなのかどうか分からないのですが、私が誤解しているのかなと思ったので発言するのですけれども、16ページの上山委員がおっしゃった取消権者のところで、「法定後見制度の保護者を除く。」とある点について、これは、私の理解では、法定後見のところでは代理は使わないというか、取消権の付与で対応するということなのではないかと思います。そうすると、前回もっといろいろなところに「法定後見制度の保護者を除く。」とされていたのですけれども、今回の案では、専らその取消しを認める人については特別な審判をすることが前提となっているという理解だと思うので、そうすると、ここの「代理人」は任意代理人のことで、取消しの代理権を与えられた人は当然取消しをすることができていいはずだと思われますので、これはこれでいいのではないかと思いました。間違っていたら、少し考えなければいけないので、私は少し違う考えを持っていました、これでいいと思っていましたということを、ゴシックなので、申し上げておきたいと思います。   それから、最後に34ページにある死後事務のことについて、これも上山委員がおっしゃった、乙2案を採るときに注記は保存行為ではカバーできないのではないかということについてです。この注記は保存行為でカバーしようというものでは多分ないというか、乙2案を言っているのはほとんど私だけですけれども、私は、死後事務については、死体の火葬埋葬を除くものは保存行為概念で、全面的にではないけれどもおおよそカバーできるから、維持でいいのではないか、それに対して死体の火葬埋葬は別の話だけれども、そこは権限として与えるというのだったら、別途与えるということがあるのではないかと前に申し上げました。本日の資料では、それを酌んでいただいているのではないかと自分では理解していました。そうでないのだったら、今申し上げたような理解をしてくださいということとともに、この注記は乙2案にだけあるわけではなくて、甲案にも乙1案にも同じ注記があります。これは、死体の火葬埋葬が今は通常の債務の弁済等とセットになっているところを分けて考える見解というか立場があることを、各所に注記を置くことによって示していただいているのではないかと理解しており、それだったらいいなと思っています。   他方で、保存行為でカバーできるかどうかで考えるということだとすると、それは無理があると思います。青木委員の御発言でも保存行為としてうんぬんとおっしゃいましたけれども、その理屈は別に無理に保存行為として立てる必要はなくて、死後事務の中で死体の埋葬等は一定の特別の配慮というか制度が必要だということで、別枠で規定を設ける、設けないという話にした方が、私は、繰り返しですけれども、いいと思っています。 ○山野目部会長 佐久間委員のお話に関連することでもいいですし、ほかの点でも結構ですが、引き続き御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○野村幹事 ありがとうございます。まず、先ほどから議論になっております公正証書によって法定後見の申立権者を指定するという件なのですが、先ほど根本幹事がおっしゃったように、やはり市町村長申立てがございますし、上山委員がおっしゃったように、ニーズも実務上余りないと思います。リーガルサポートとしては、任意後見についてはこういった規律を設けることは必要だと思いますけれども、法定後見に関して規律を設けるべきだという意見は今のところ出ておりません。   続きまして、28ページですが、ゴシック部分についての意見なのですが、保護者に関する検討事項の保護者の職務及び義務の(1)の本人の意思の尊重及び身上の配慮について、リーガルサポート内でも検討したのですけれども、(注)のところですが、意思に代わる適切な表現として、真意や希望といった表現の方が現場では分かりやすいのではないかという意見がありました。   それから、続いてその下の(2)の財産の調査及び目録の作成等のア、イ、それから(3)の郵便物等の管理において、乙2案の保護Aについての記述がなくて、一読して分かりづらいと感じましたので、説明を書き加えてはいかがでしょうか。   それから、続いて41ページになりますが、相手方の催告権の1①のところですが、事理弁識能力が回復しないまま行為能力者となった場合の催告の効果については、現行法が想定しない場面でありますので、部会でも意見が分かれておりましたし、(注)を設けて、そのことについて触れた方がいいのではないかという意見がありました。その上で前回の部会資料14の説明文を読めば、何が問題になっているのかが分かりやすくなると思います。   それから、43ページの意思表示の受領能力のところなのですけれども、この意思表示を受領する権限を有する者を選任する仕組みについては、現行法にはない新しい考え方を提起するものですから、どのような場面で利用される制度なのかの説明を、可能であれば冒頭に入れた方がよいと思います。制度終了後に意思表示の受領が問題になる場面や、制度利用前に利害関係人が意思表示をする場面などが問題になることを示せば、この制度の必要性を判断することが容易になると思います。その場合は(注)の記載は不要になるのではないかと思います。 ○星野委員 ありがとうございます。1点だけ、話題になっている支援人のところです。1ページのところなのですが、福祉関係者で支援という言葉を聞くと、少しやはりイメージが違ってしまうかなと。例えば、日常生活自立支援事業で生活支援員という役割があり、支援という言葉が福祉の領域では多様に使われている中では少し紛らわしく、中間試案の中身に入りにくくなってしまうことを心配いたします。ただ、保護者という言葉はやはり避けてほしいという気持ちはあるので、今までの意見も聞いていて、補助人等というのが個人的にはいいなと思いながら聞いていました。まだ社会福祉士会の中で十分議論はできていないのですが、支援人というのは逆に少し分かりづらくなる可能性があるかなと思いましたので、発言しました。 ○山野目部会長 先ほどの佐久間委員の御提案と少し通ずるところがあるお話です。 ○青木委員 申立権者を公正証書で指定できるかの話なのですけれども、部会の最初のころの議論の際に、たしか竹内裕美委員から御発言があった、同性婚とか事実婚の場合に申立人の含めることはどうかということがありました。その方々は本人にとって本来は一番身近な人になるので、制度利用が必要になったパートナーのために申立てしたいのに、できないということを解決すべきではないかと。申立権者の四親等内親族にこうした場合も含むという解釈をする方策もあるわけですけれども、そうした「親族」の解釈までにはまだまだ距離が遠いと考えますと、当面の対策としては、自ら指定をしておくことができることは一つの方策ではないかという意味では国民の意見を伺う意義があるのではないかと思います。更に広げますと、最近は身寄りのない方々が友人同士で終末期を一緒に暮らしながら生活していきましょうということが増えているようですが、そうした終末を一緒に暮らす中で判断能力が低下したときに、任意後見契約をしていなかったので法定後見の利用をするとなったときに、ニーズはあるのではないかということも考えられます。そこで、パブリック・コメントで聴く価値はあるのではないかと思います。ただ、こういう趣旨で、注にして聞いているのだよということを説明に示していただくことがあれば、任意後見の申立て権者の第三者指定とは、全く違う発想なので、違いが分かるようにして説明していただくのであれば、ありかなと思います。 ○山野目部会長 そこの注記は二つのセンテンスがあって、今のところまだ補足説明を作る前の段階ですから、委員、幹事の皆さんが御議論の今までの経過をよく知っていますね、という前提で文書を作っており、それほど丁寧な説明を添えていないですけれども、(注)全体で申立権者の見直しであるところは間違いないですけれども、異なる考え方がいろいろそこに缶詰めのように、あるいは福袋のように突っ込まれている側面があって、最初のセンテンスの四親等内の親族を狭くするという話は、余り付き合いのなかった疎遠な親戚が申し立ててきたりして宜しくない場面があるという話が実際に部会ではありましたから、それを受け止め、もしかしたら狭くしますか、という考え方を書いています。それから後半は、これはここで誰かが強く意見をおっしゃったというよりは、任意後見のところでこれと同じ格好の話が出ていますから、あれとの見合いで掲げています。ただし、上山委員がおっしゃったように、法定後見だけ狙い撃ちにして、僕が必要になったときには法定後見はあなたが申し立ててねと、わざわざそのことをピンポイントで公正証書を作る人って、需要がないと上山委員がおっしゃいましたけれども、見方によってはコミカルでもあって、そんなことをする人はいないでしょう。それをするならば多分、任意後見契約を結ぶと想像されます。   ただし、恐らく今日この後に御議論を頂く任意後見のところで、もう少し中間試案に向けての議論を進めていきますけれども、私が難しい状況になったら任意後見はこの人が申し立ててください、と、それから、うまくいかないときは法定後見で行ってもよいです、そのときにやはりあなたにお願いします、というふうに、いろいろ将来のそのときの自分をアレンジするときのことをたくさん書いている中に法定後見のことを1行付け加えること、それは法が予定していないから無効ですかと尋ねられると、いや、そこまでしなくてもいいではないですかという見方もあるかもしれません。そうしたことを考え、ここは法定後見の場所ですから、そこを取り出して書くと、こういう書き方になります。今私が述べているような説明を書かないで、いきなりこれだけ出すと、そんなことをする人はいないということになってしまいますけれども、少しこの後の任意後見の今日の御議論を振り返った上で全体を見直して、あらためて事務当局の方で検討することにします。 ○根本幹事 先ほどからの上山委員とか部会長の御意見を伺っていて思ったのは、併存するということが前提になりますので、そうすると、今まではそういうことはなかったのかもしれませんが、欠けたことによる任意後見であった者ということだけになっていますが任意後見人とか任意後見受任者というのを申立権者に、入れるということにすれば、先ほど部会長がおっしゃられたようなケースにも対応できますし、青木委員が言われたような新しいいろいろな形態の方々も、法定後見に備えて申立権を付与するというよりも、任意後見の促進という意味からも、任意後見をお考えいただくということをしていただいた上で、更に法定後見が必要だと、任意後見受任者になっている方がされるというのは十分あり得るのかなと思いましたので、乙案を直していただいた上で、なお検討いただくというのではいかがでしょうか。 ○山野目部会長 よく分かりました。   ほかに、この範囲でいかがでしょうか。よろしいですか。   波多野幹事から何かお尋ねがあれば承ります。 ○波多野幹事 先ほど佐保委員から少し御指摘いただきました5ページの本人が同意能力があるのだけれども、自分から積極的に言わない、虐待を受けているけれども黙っている、行為をしないというときの話でございまして、事務当局の理解としては、前回、本人が同意能力あるけれども、本人以外の申立権者が法定後見を使おうと申立てをしても、本人が同意しないときは、もうこれは法定後見を始めませんということでいいのでしょうかという点について、基本的にはその方向で行きましょうという御了解があったものと理解したものですから、今回のただし書はもう本人が同意することができない場合に限ったというところでございます。   ゴシックをもし修正するのであれば、そこの整理が要るのかなと思っているところでございまして、他方で、説明部分でそういうものも含めてこういう議論の経過があったことを説明するのは可能かなとは思っておりますが、ゴシックをどう直すかという観点から、そこについて少し御意見といいましょうか、コンセンサスを頂ければ助かるなと思った次第でございます。 ○山野目部会長 佐保委員にお尋ねです。先ほど私が聞いていたときに、ゴシックを直せと佐保委員はおっしゃったのではなくて、これを読んで、そういうことは気にはなるけれども、とおっしゃったと理解しました。その理解でよいですか。 ○佐保委員 そういうことです。 ○山野目部会長 そうすればここは、そういうことでありましょう。 ○波多野幹事 これも今日の御議論を踏まえて、このような整理でいいのかなと思ってはいるところの確認でございますが、冒頭2ページから3ページ目の乙1案の、いわゆる要同意事項の定めの審判をするのか、取消しの審判をするのかという点に関する本文と(注3)についての整理ですが、今日の御議論ですと、要同意事項の定めの審判をすることについての同意をすることができない本人に場合には取消しの審判をし、同意をすることができる本人については要同意事項の定めの審判をするという規律でゴシックを整理することにしたいと思っておりまして、それでよろしいでしょうか。承知しました。 ○山野目部会長 今、波多野幹事がおっしゃった内容で、佐久間委員の見方と青木佳史委員の見方が一致したと私も理解しましたけれども、ここは大事なところですから、文章を次回に向けて改めたものを出しますから、それを読んで改めて御議論いただいた方がいいですね。ここのところは、保護Aと保護B、それから大きくは乙1案、乙2案の全体的な設計に関わることですから、きちんと丁寧にやりましょう。 ○波多野幹事 同意のところの関係では6ページ、7ページの(後注)として、いろいろな組合せの提案をさせていただいたところではあるのですけれども、今日の御議論では、なかなかここの組合せを前向きに押していただける方の御意見がなかったような気もいたしますと、ここまで書く必要はないのかなという気もいたしますので、次回に向けて、ここは記載を落としていくようにしたいと思っているというところを発言させていただいた次第でございます。 ○山野目部会長 今のところも改めて整えたものをお出ししますから、次回御検討ください。 ○青木幹事 ありがとうございます。16-2ですと51ページ、第4の7のところになりますが、23行目に(注)を付けていただきまして、前回申し上げた意見を反映していただいたものと思いますが、訴訟能力を欠く者は訴訟行為をすることができないというのですと、訴訟能力の定義を示しているだけのようにも見えますので、意思能力を欠く者の訴訟行為が無効である旨を示していただいた方がよいかなと思います。 ○山野目部会長 どうもありがとうございました。トートロジーになっていると感じます。御指摘を頂きましてありがとうございます。 ○河村委員 ありがとうございます。少し文章の読み方を教えてほしいのですが、16-2でいうと28ページの保護者の職務及び責務のところの(1)なのですけれども、17行目から24行目までの文章が続いているわけですけれども、19行目から20行目に、本人の意思を尊重するに当たってはというところに続く数行は、意思を尊重するに当たっては、情報提供することとか、意思を把握するように努めるというような、前回でしたか、御意見が出て、足していただいたところが続いているわけなのですけれども、23行目を、そこを飛ばして読むと、意思を尊重するに当たっては、意思を尊重しなければならないと読めます。何が意味が足されているのかが分からなかったのですが、私が読み取り方を間違っているなら、それも含めて教えていただければと思います。 ○波多野幹事 河村委員から御指摘いただきましたところは、これまでの部会の御意見を踏まえてこちらの方で若干継ぎはぎをした関係で、こうなってしまった部分もあるのかもしれないと思っております。少なくとも部会で、保護者が取消権を行使するに当たって本人の意思を尊重しなければならないことを明確にした方がいいのではないかという御指摘を頂きましたことを、ゴシックの形で何とか表記できないかということで書いたものでございますが、本日、佐久間委員からも少し重複感ということについても御指摘いただいたところでございますので、書きぶりをどうするかは少し検討させていただきたいと思います。分かりやすくするならば、多分(注)に落とすのだと思いますが、それについては根本幹事が先ほど本文に残すべきとの話もされていたところも踏まえて検討させていただければと思います。 ○河村委員 私は、重複しているから落とした方がいいという意味ではなくて、多分何か書き足すといいますか、その意味合いをよりサポートするような言葉があれば、重複感がなくなるのではと思っています。つまり、(注)にするというよりは、何かサポートする言葉を上に乗せてほしいという気持ちから申し上げているということをお伝えいたします。 ○山野目部会長 ありがとうございます。どういう文章に調えるかということは、中間試案の段階で一度考え込みますし、それから、それとは区別した上で、もしここをこの方向で進めるときには、法制上の表現もその段階で工夫していくことになりますが、当面、中間試案の段階で読み手に伝えたいことは、大きく分けると二つですね。一つは、意思を尊重しなければなりませんと、現行の858条に既に書いてありますけれども、引き続き意思は尊重しなければなりませんよ。もう一つは、ただし意思を尊重しなければならないと言われただけでは読み手に深く具体的には伝わらない部分があって、これまでの運用もいろいろ伝わらなかったために問題がありました。意思を尊重するというところをもう少し丁寧に目に見えるような仕方で書くと、19行目から24行目までになります、という2点が読み手に分かるようなことを狙って設けている文です。今、河村委員がお読みになって、何回か行ったり来たりして読まれたと想像しますけれども、少し読み手に負担がありましたということをお伝えいただきました。伝えたいことの中味は今述べたことであって、多分、委員、幹事も皆さんそうお考えになっていると考え、それを受け止めて事務当局の方で文章を作っていますから、その総意を受け止め、また少し文章の改良に努めていくことにします。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○山田関係官 佐久間委員、根本幹事から御指摘いただいた制度の終了の在り方と相手方の保護の要否との関係について、次回の部会を資料を作成するに当たって、少しお聞きしたいことがあります。主に根本幹事の御発言に関する質問ですが、相手方の保護との関係で、本人の帰責性を踏まえて相手方の保護を図ることができるのではないかというところがありました。制度を終了する場合や後見人がその職を離れた場合の相手方の保護との関係ですが、本人の判断能力が回復しないにもかかわらず必要性の観点から終了するといったときに、本人の帰責性というところをどういうふうに考えればよいのかというところについて教えていただきたいと思います。   関連して、先ほど後見人が職を離れたときに取引の相手方に通知するという義務を課すことができるのではないかというご発言もありました。その後見人の行為の懈怠に関し、本人に効果を帰属させる正当化の根拠というところをどういうふうに考えればよいのかという点について教えていただきたいと思います。  また、成年後見人や保佐人、補助人は、その有する権限について、登記事項証明書で証明することができると思います。相手方はそれを求めれば、自分が対応している成年後見人等がどういった権限を持っているか分かるような気もするのですが、そのような方法ではどういった場面で難しいところがあるのかというところについて、もしあれば、教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○根本幹事 理論的に正確なことは佐久間委員に委ねますが、一つは、能力が回復していない御本人に帰責性はないと思いますので、能力回復している御本人ですというのが、申し上げたところだと思っています。能力回復していない本人の場合に本人に帰責性があるということは、そもそも観念できないということではないかと考えています。   もう一つは、例えば交代の場面で、旧後見人さんがいて新後見人さんがいますという場合は、それは新後見人さんに何らか帰責性を求めても、本人側の帰責性という整理ができるのではないかという、その2点で申し上げたつもりです。本人が回復されていないということであれば、そこは特にこの規律が及ぶ場面ではないという整理でよいのではないかと思っているというのが一つ目です。 ○山田関係官 2点目は、後見人の職務懈怠がなぜ本人に帰責されるのかというところで、今おっしゃったところかと思いますので、ありがとうございます。 ○根本幹事 登記事項の点については、そもそも法定後見登記の場合には利害関係人しか取得ができないと元々バランスが図られているということもあると思いますし、現行の任意後見の11条の方では登記で対抗という規定ぶりになっていて、立法担当は平成11年改正解説の484ページで、任意後見の代理権の消滅については登記を対抗要件にするとしたのに対して、成年後見の場合には登記を対抗要件としていないという理由が二つ書かれていて、一つは任意後見の場合は本人の契約による授権によって発生するというところがありますけれども、法定後見はそうではなく取引の安全と本人保護の観点からのバランスを考慮したということが平成11年当時も言われているということだと思います。理屈は別に今回の改正後においても変わらないのではないかということだと理解をしております。 ○山田関係官 ありがとうございました。 ○山野目部会長 よろしいですか。   ほかにいかがでしょうか。   そうしましたら、休憩の後に花俣委員、久保委員にこの順番で、法定後見の審議の一区切りを迎えての受け止めをお尋ねすることにいたします。   休憩をお願いいたします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開を致します。   続きまして、部会資料16の第5以降の審議をお願いすることとなりますが、その前に、休憩前に法定後見についてのひとわたりの御審議を頂いたところを踏まえて、花俣委員、次いで久保委員にお声掛けをすることにいたします。 ○花俣委員 ありがとうございます。私の方からは、そもそもこういった議論の大前提となる法律の条文についての知見を有しておりませんので、特段の意見を申し述べることはなかなか難しいところではあります。これまでの先生方の議論を拝聴して、ようやく新しい制度の姿が見え始めてきたという思いでおります。正に数学の公式を知らずして解を得よと言われているような気がしておりますので、先生方には、正しい公式にのっとって見事な解が得られる、そういう結果に導いていただくことに大きく期待を致しているところでございます。 ○山野目部会長 だんだん数学の計算問題みたいな中間試案になってきて、これからパブリック・コメントをするに当たって、広くおられる読み手の皆さんに負担をお掛けするものになっているということを自覚するところではありますけれども、ほかに方策がありませんから、なるべく補足説明も分かりやすくするように事務当局が務めると予想しますし、しかし、それでも足りないですから、更にいろいろな仕方で一般に分かってもらえるような工夫を重ねていきたいと考えております。どうもありがとうございます。 ○花俣委員 よろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 よろしくお願いします。 ○久保委員 ありがとうございます。私どもは本当に今、花俣委員がおっしゃったように、専門的なことは全く分からない素人の集団でございますので、今から申し上げるのが今の議論に合っているのかどうかということすら分からないのですけれども、いろいろと法定後見とかを使ったり、やめたりというようなことを考えたときに、使うときに最初は、今までの法定後見と同じように、親族とか市長とかいうところから申立てされて始まるのかなとは思っているのですけれども、スポット利用という言い方はしないでくださいと言われているので、あれなのですけれども、スポット利用の2回目以降の開始というのは、権限の特定代理人みたいなものが付いておられたら、その方も含めて、その方とか親族とか市長とかの申立てで開始されていくのかなと少し考えています。   終わるときなのですけれども、それは後見人になっている方から、後見活動を多分これで終了していいと思いますというような終了届みたいな感じのことを裁判所に出していただくことで、御本人の当然、意思を確認し、周りの一緒にこの人の最善の利益みたいなものを考えていただいた上での、後見人からそういう終了の届出みたいなものを出していただくので終わるということの繰り返しをするのかなというような感覚でおりますので、それが今の議論に合っているのかどうかというのは分からないですし、また、もう終わりますと言ったところで、相手方がおられた場合にどういう不利益があるのかということもよく分からないままに、使う側だけのことを私たちは考えていますので、そういう意味では、今申し上げたような簡単なといいますか、簡易な方法で進められていけばいいなというような意見を、こうなればいいよねというような話をしているというところでございます。 ○山野目部会長 開始のところと終了について今、久保委員から、いずれもそれぞれについて大事なことをおっしゃってくださったと感じます。それを受け止めて検討を進めていきます。開始のところに関して述べますと、本人に当たるとされる人の人生が長く続く場合には、久保委員がおっしゃったように、始めたものが終わって、終わってしばらくたったらまた始めて、それを終わるというふうなことが繰り返されることというものは、大いに予想されるところです。再度の利用をする際に、前に利用したときに保護者の役割を務めた人と連絡を取れるときに、その方がどう見ていたかとか、今その人とどういう接点があるかといったようなことを情報として把握した上で始めることができるような仕組みになっていくとよいでしょう。それは民法の規律の工夫でも重ねていきますし、これから地域社会福祉においていろいろ新しい試みがされていく中で、それとうまく組み合わせられるようなことを、制度改革が実施されるまで考え込んでいくことを期待します。   終了する際、休憩前の審議の際に久保野委員から御意見をお出しいただいて意見交換をした事項に関係しますけれども、期間の問題を考える際に、その期間を機械的に何年たったらもう終わってしまうというふうなイメージで考えず、あそこで議論した乙1案と乙2案とでは少し発想が異なる部分がありますけれども、いずれにしても家庭裁判所とのコミュニケーションを報告という仕方でとりながら、しかし期間の満了あるいは必要性の消滅などによって終了させていくということが今考えられていて、その方向で一般の意見を聴くというところに向かっています。久保委員から、簡易な方法で開始、終了ができるとよいというお話を頂いたことは、ごもっともであるとともに、狙っているものは、簡易と言ってもいいですけれども、どちらかというと柔軟に、柔らかに始まって柔らかに終わるような仕組みが、民法だけでできない部分もありますけれども、地域社会福祉と協力しながら、できるようになっていけばよいと考えます。   預貯金の取引についても、いわゆる後見が続いている間は保護者がしてきた部分を、終了させたときにどれだけ地域社会福祉に円滑に、今で言えば日常生活自立支援事業ですけれども、つないでいくことができるかといったようなことを、社会福祉の事業の新しい姿を想定しながら、またその組合せを考えていくということであろうと考えますから、引き続き御意見を頂きたいと望みます。どうもありがとうございます。   部会資料16の続きの第5から後の部分についての審議をお願いしてまいります。   部会資料16の第5から第8まで、部会資料16-2のページで申しますと57ページから後の部分についての審議に進みます。申し上げた部分について、事務当局から説明を差し上げます。 ○柿部関係官 部会資料16-2の第5から第8について御説明いたします。   部会資料16-2の57ページからは、第5として、任意後見制度における監督に関する検討事項について、60ページからは、第6として、任意後見制度と法定後見制度との関係について、64ページからは、第7といたしまして、任意後見制度に関するその他の検討を整理しております。また、70ページからは、第8として、その他の事項について整理しており、70ページから77ページまでが成年後見制度に関する家事審判の手続についての検討等を整理しております。   なお、部会資料16-2の72ページの12行目から32行目に掛けて、いわゆる乙2案を採った場合における精神の状況に関する鑑定及び意見の聴取についての規律、これを整理しておりますが、保護者に代理権を付与する旨の審判をする際の規律に関する記載が不足してございます。本日の御議論も踏まえまして、改めて整理をしたいと考えてございます。   最後に、77ページの最終行から、身体障害により意思疎通が著しく困難である者についての整理をしております。 ○山野目部会長 説明を差し上げた部分について一括して御意見を頂きます。 ○小澤委員 ありがとうございます。私から1点だけ、任意後見の監督の在り方についてでございます。   まず、任意後見制度は、改めて申し上げるまでもないのかもしれませんけれども、本人の意思によって将来の判断能力低下に備えるという重要な制度でありまして、今後において利用の増加が予想され、また、利用の増加を促していくことが普及推進の見地から望まれているということと承知をしています。現行制度においては、誰にどのような事務を依頼するかは本人の意思に基づき定められることになりますけれども、任意後見監督人の選任については裁判所の専権に委ねられており、また報酬額についても本人の意思が及ばない仕組みとなっております。このような制度設計が本人の納得をなかなか得難いと、そういう状況が任意後見制度の利用をちゅうちょさせる一因となっていると理解をしています。一方で、本人の判断能力が低下した際の適切な監督というのは不可欠でありまして、保護の視点も重要と承知しておりまして、これまでの本部会での議論の中で、少なくとも現段階において、任意後見人に対する監督の仕組みを全く設けないということは相当ではないということについては意見が一致しているところと思っています。   こうした課題と前回までの御議論を踏まえて、本人の意思を尊重しつつ必要な保護を確保する仕組みとして、たとえば、行政の認可や認証などによって一定の資格付けを受けた法人又は個人を育成し、その中から本人が監督人候補を選択、指定できる制度を整備することを提案させていただきたいと思います。その上で、本人が指定した法人又は個人は、本人の権利が脅かされる重大な危険又は本人の保護に重大な支障があると認められるといった特段の事情がない限りにおいて、原則としてそのまま任意後見監督人として選任されるものとしてはいかがかと考えています。   また、監督人の報酬につきましても、本人と監督人との間の契約によって自由に定めることができる仕組みとし、費用面でも本人の選択と納得を重視する構成とすべきというふうな意見を持っています。法制上は、例えば任意後見契約に関する法律の第7条1項1号、2号について、資格付けを受けた者を選任する場合の特例を設け、監督の方法の細目を別途法令に委任して定めることも考えられるかと思っています。また、これに関連して同条2項から4項の規律についても必要な見直しを行うことが適当ではないかと考えています。監督の実施に当たっては、全件について詳細な報告を求めるのではなく、概要報告を基本とし、特に重要な事案について重点的に報告する方式とすることで、機動的かつ効率的な監督の報告の在り方を目指すことが適当と考えています。   なお、この構想自体は、本人が自ら任意後見契約を締結した場合にふさわしい監督体制として御提案をするものですけれども、その制度的枠組みをいかして、法定後見における後見監督人などの監督事務の在り方についても、その制度趣旨に反しない範囲で参考とされるものではないかという意見を持っています。   いずれにしましても、この論点につきましては引き続き検討を続けていくことを前提に、パブリック・コメントにおいても広く意見を聴くために、今回の御提案を本文に加えていただくか、あるいは資料57ページの甲案、乙案にそれぞれ注記を付して、例えば甲案について、「任意後見監督人の任意後見人の事務の監督及び責任の範囲について、引き続き、検討するものとする。」と記載し、乙案についても、「家庭裁判所が任意後見監督人を直接監督する場合は、家庭裁判所の負担も踏まえて、監督の内容や方法について、引き続き、検討するものとする。」などの記載を加えていただくのがよいのかなと考えております。もちろん当連合会においても、今回提案したものだけではなく、これまでの部会で提案させていただきました監督方法も含め、任意後見に対する監督はどのような制度が望ましいのかについて引き続き検討を重ねてまいりたいと考えております。 ○根本幹事 ゴシックにしていただきたい点が全部で8個ございますので、順番に申し上げていくことにいたします。まず58ページのところになりますけれども、先ほど久保委員からあった御指摘とも関係するのですが、申立権者の拡大というところで現状(注1)、(注2)と付けていただいていますが、これに加えて、例えば併存するという観点からは、法定後見人が申立権者になるということもあり得るのだと思いますし、任意後見においても、限られた代理権で任意後見を始めて一旦終了した後に、もう一度時期を置いて任意後見をされるということもあるのかもしれませんので、そこまで広げるかということはあるかもしれませんが、任意後見人、任意後見受任者、若しくは任意後見監督人であった者というように、過去の任意後見に関わっていた方が監督を開始するための申立権者になるということも可能性としてはあり得るのかなと思いました。拡大の余地があるというところをゴシックにしていただいたらどうかと思っています。   2点目は、資料60ページになりますが、併存するということについて、乙案の(注)になっている部分を乙2案としてゴシックにしていただいてはどうかと思っておりまして、具体的には、代理権の一部について任務の遂行が困難であること、その他一部について任意後見人としての適格性を欠くなど、その他任務に適しない事由があるとき、任意後見契約の代理権の効力を一部停止することができるとの規律を設けるということを乙2案として御記載いただいてはどうかと思っています。   併存の場面で、かつ権限重複を規律する必要がある典型場面として考えられるものとして、任意後見契約の代理権が網羅的になっているものの、任意後見人がその事務を行うには一部不適当な代理権行使の事務があるというような場合ですとか、親族間紛争があって、同居親族との間で任意後見契約を結ばれていて、別居親族が法定後見開始の審判を申し立てるというような場合などが、この併存し、かつ権限重複を規律する典型場面ではないかと思われます。これらの場面は、いずれも権限が重複することによって相互の権限の調整を図るということは期待できず、任意後見契約に基づく一部の代理権の効力を一部停止するということを命ずる審判を行うことで、二つの制度の業務の円滑な遂行を図ることができるのではないかと思われます。   なお、任意後見契約において任意後見契約が複数あって権限重複するという場面と何が違うのかということが、御質問があったように記憶をしておりますけれども、任意後見契約であれば、それは契約条項で、例えば単独行使とするとか共同行使とするというような定めや調整条項を設けるということが行われているのが一般的な取扱いだと思いますけれども、法定後見については、任意後見契約に基づく契約上の拘束力は当然及びませんので、権限調整に関する規律が必要になると考えているということになります。   次が、63ページのゴシックになりますけれども、任意後見契約が存在する場合に法定後見制度を開始する要件で、現状は乙案しか書かれていないのですが、ここに乙2案をゴシック化していただくということを提案したいと思っています。それは、先ほど申し上げた60ページのところで乙2案を設けるということとのリンクを図るということになりますけれども、ゴシックの内容としては、併存の可否において先ほどのところで乙2案を採る場合には、同様の権限調整の規律をこの場面でも設けるということになると思います。具体的には、任意後見契約が先に存在しているという場合には現行の規律を維持しつつ、権限調整の場面がなおあるということを記載していただくということだと思いますし、法定後見の申立てが先に存在しているという場合には、現行の規律は削除するものの、なお権限調整の場面があるということを記載していただくということになるのではないかと思います。   3点目が、64ページのところの第7の1(3)です。段階的発効についてです。段階的発効についても乙案を記載していただきたいと思っておりまして、具体的には、本人の請求又は同意の範囲に限って任意後見人の事務に対する監督を開始することができるとの規律を設けるということをゴシックにしていただいたらどうかと思っています。任意後見の開始要件というのは、今までの部会の議論の整理の中においても、本人の判断能力の低下と本人の請求又は同意という二つから構成されると任意後見については考えられていると思いますので、本人の請求又は同意について、その範囲を限って、本人の請求又は同意をすることができると規律をすることで、それが結果的に一部発効を可能とするという具体的な開始要件とできるのではないかと思います。飽くまでもこれはできる規定ですので、御本人が同意することができない場合ですとか、家庭裁判所が一部の範囲のみについて事務の開始を監督するというのが相当でないと判断された場合には、一部に限らず監督開始をさせるということもできるということになるのではないかと思います。   あわせて、一部が発効するということは残部の代理権があるということになりますので、その残部についての監督開始の申立ては別途認めるということになりますが、その場合には緩和された手続、例えば医学的な知見などは従前の資料を援用するですとか、本人の同意についても監督人による確認など簡易な方法による手続ということを併せて規律するということになるのではないかと思います。   4点目が、同じく64ページになります。代理権目録の追加(変更)のところについてです。これについても、代理権目録の事務の追加について次の規律を設けることを、乙案としてゴシックにしていただければと思います。一つは、発効前については公正証書による契約の変更による代理権目録の追加を認める、追加(変更)ということをゴシックにしていただければと思いますし、発効後については①として、任意後見契約においてあらかじめ本人が代理権目録の変更を承諾する旨の定めがある場合に限って、任意後見人と任意後見監督人の合意及び家庭裁判所による許可に基づく変更ができるという規律を設ける。②として、特段の事情がある場合に限って家庭裁判所の職権による代理権目録の変更許可をすることができるとの規律を設けてはどうかと思っています。   理由としては、発効前については御承知のとおり現行法では新たな代理権目録を追加しようと思った場合には、新たな後見契約を締結するという方法にしかならないわけですが、これを既存の任意後見契約の変更を公正証書で対応できるようにするべきだという考えに基づくものですし、発効後の変更については、説明が長くなりますので、今までの部会で発言したところをベースにということになるかなと思っているということになります。   5点目が同じく64ページの第7の1(2)の一部解除のところになります。一部解除についても、ここはゴシックにしていただきたいと思っている内容は、発効前については、公正証書による契約の変更を認めるという規律だと思いますし、発効後については、家庭裁判所が任意後見人の事務の監督を一部除外する旨の許可をすることができるという規律を設けるということによって、この一部解除の規律が可能になると考えています。   6点目は、予備的な受任者になります。65ページのところになりますけれども、予備的受任者に関する具体的な規律として、乙案を御記載いただいていますが、これを具体化させるという観点で、乙案を修正いただくのか乙2案にするのかはお任せいたしますが、任意後見人が欠けたとき、あらかじめ本人、任意後見受任者、予備的任意後見受任者の三者の合意がある場合には、当初の任意後見契約の任意後見人たる地位を予備的任意後見受任者が承継することができるとの規律を設けてはどうかということになります。これは、あらかじめ公正証書で三者合意をしているということを要件として、任意後見人が欠けることになった場合に、予備的受任者が就任を承諾した場合に、元の任意後見契約の任意後見人の地位を予備的受任者が承継するという構成にしてはどうかということになります。   7点目が68ページの2のところになりますけれども、任意後見契約においても任意後見契約の終了原因というものを定めてはどうかということを御提案したいと思っています。その理由としましては、一つは、今申し上げた予備的受任者において、任意後見人が欠けたときというのはどのような場面なのかということが問題になるのだと思いますし、もう一つ、一部解除で、例えば家庭裁判所が許可をするというような場面においても、そもそも終了原因が何であるのかということが明らかでなければ、判断というのは難しいということになると思います。   あわせて、法定後見の議論においても、特定の代理権の事務が終了しているかどうかという点については取引の相手方等を含めた影響が生じることを考慮して、終了の審判が議論されていると思いますので、任意後見においても、死亡を除いた終了原因が生じているということを監督終了の審判で、監督事務の終了時というのを明確にするべきではないかという発想に立ったものです。信託法などにおいても同様に、通常の契約においても信託契約においても終了原因を定められている例もありますので、それを参考にするということだと思います。   終了原因として考えられるものとしては、九つぐらいあるかと思っていまして、一つは任意後見人が辞任したとき、ただし予備的受任者が地位承継すれば除くということだと思いますし、2点目としては、任意後見人が解任されたとき、これも予備的受任者が地位承継すれば除くということだと思います。   それから、本人又は任意後見人の死亡又は破産の開始決定ということになるかと思いまして、これも予備的受任者が地位承継すれば除くということだと思います。この③については、既存の文例などにおいても一般的に規定されているものになりますので、それは契約上書いていただいてもいいですし、法令上も明確にしておくということだと思います。   それから、④として、本人の判断能力が回復したときで、⑤としては、合意解除又は一方的な解除で、これは発効前の規律というものと、⑥としては発効後の規律ということだと思います。発効後の規律については、現状は正当事由ということになっていますが、任意後見契約が相互の信頼関係に基づくものであるということを重視すれば、正当事由まで厳しく求めずとも、辞任することが相当でない場合を除き、家庭裁判所の許可により辞任を認めて信任関係の破綻をもう少し重視してもよいのではないかと思います。   7点目としては、任意後見契約の目的を達成したとき、目的達成の具体的なイメージとしましては、例えば、特定の代理権の任意後見事務の遂行が終了した場合ですとか、若しくは任意後見制度の本旨から見て任意後見契約の目的が達成されたとして終了させるべき場合というのが、信託法165条1項などが参照されるのだと思いますけれども、目的達成というのを入れています。   8点目としては、任意後見契約において定めた事由が発生したときです。これは、例えば期間の定めを契約の中で設けている場合ですとか、任意後見人に法定後見の開始があったとい場合、これは委任の終了事由をどのように取り扱うかによってもリンクする話だとは思います。例えば、任意後見人が士業者であった場合には、その士業を廃業したというような場合ですとか、あとは高齢者等終身サポート事業者などを念頭に置きますと、受任者との間で別途締結している死後事務委任契約が解約されたというような場合など、契約で定めた場合においては、その事由が発生したときというのも終了事由にしてよいと思われます。   今申し上げた有効期間との関係で申し上げますと、有効期間については部会資料の中でも言及はありますけれども、部会資料の記載ですと、法定後見で有効期間を設ける場合には任意後見においても有効期間を設けるということはあり得るということで書かれている視点のものだと思うのですが、そのこととは別に、任意代理でありますので、契約の中で当事者の合意に基づいて有効期間を設けるということは否定されないという視点の議論が別にあるということは分かりやすく整理をしていただいた方がいいかと思っています。強制的に見直しの機会を付与するというのは法定後見だからであって、任意後見では、当事者が契約で定めた場合のみ有効期間を設ければよいのではないかということになるのではないかと思っています。   九つ目としては、予備的受任者が就任の承諾をしないときということで、予備的受任者の要件は任意後見人が欠けたときで、かつ、その予備的受任者が就任を承諾されないということになれば、そこで終了するということも規律できるのかなと思いますので、これらの終了事由というのを規律してはどうかということをゴシックにしていただいたらどうかと思っています。   最後が、これは今まで部会資料に載っていないのですけれども、現行6条の義務の規定については、既に法定後見の方でも意思尊重義務というものを今日、部会資料にしていただいているような改正が検討されていますので、当然、任意後見法の6条についても、それと標準を合わせた改正をするということはゴシックにしていただく必要があるのではないかと思っております。   すみません、長くなりました。以上です。 ○佐保委員 64ページ(3)の任意後見契約の一部の発効でございます。一部の発効について項目を分けていただき、大変見やすくなったと感じております。確かに制度が過度に複雑化することは利用しづらいとの意見もあると思いますが、前回も申し上げたとおり、自分が適切に判断できるうちに任意後見契約を行い、段階的に発効させた方がよいとの意見もございます。そのため、委託事務の追加に加えて段階的な発効を認める規律も必要だと考えております。引き続き検討をお願いしたいと考えております。 ○野村幹事 ありがとうございます。57ページの監督の在り方ですけれども、任意後見人の事務の監督の在り方については、前回の部会でも述べたところですが、甲案については注記で、本人の資産や状況に応じて監督の範囲を限定したり、故意重過失がない場合には免責される規律を設けるなど、監督の在り方について引き続き検討すべきとの考えがある旨の記載を入れていただければと思います。法務省の調査にあるとおり、監督の在り方については任意後見制度の課題の一つでもあって、また、実務においても大きな課題であります。そのため、注記に残して更に議論を深めることが、利用しやすい任意後見制度にするために必要と感じております。   続いて、58ページの申立権者ですが、リーガルサポート内でも検討したのですが、この申立権者については、(注1)の注記を本文に記載していただくことを提案します。適切な時機に後見監督人選任の申立てがなされていないことは、法務省の調査でも大きな問題点として捉えられていますので、そういった点も踏まえて、本文に記載すべきではないでしょうか。申立て件数が増えることにつながると思います。   最後に、64ページですが、任意後見契約の内容を本人以外が変更することの部分ですけれども、任意後見契約は委任者、つまり本人が受任者との信頼関係に基づいて締結するものであって、本人にとっては何を委任するかというより、むしろ誰に委任するかということが重要であると考えます。なので、仮に本人が契約変更の判断が困難な状態であったとしても可能な限り受任者が業務を行える方策という観点から、(注)に、契約締結時の公正証書で本人が変更することに同意する旨を定めている場合は、任意後見契約の内容を本人以外が変更するという考えを残していただいた上で、国民の意見を聴いていただくことが必要だと思います。   法定後見の併存が認められる場合は、これを併用することで対応できるという考え方もできますが、後見人の選任は裁判所の審判によるので、本人にとっては自らの希望をどこまで反映してもらえるのかという不安が生じてしまう面もあると思います。運用の問題ということになりますが、本人の希望を可能な限り確認して、本人と任意後見人との関係、代理権の内容等を勘案して、特に問題がないという場合には、任意後見人を法定後見人に選任するという扱いがなされることも考えてよいのではないかと思います。 ○上山委員 私からは1点だけ発言したいと思います。センシティブな話で恐縮なのですが、今回、法定後見のところで30ページの(注2)という形で医療同意の問題について言及していただいたことを、まず感謝申し上げます。   その上で、この医療同意権の任意後見の枠内での付与についても、法定後見の箇所と同じような形で構わないので、任意後見契約のところにも入れていただけると非常にありがたいです。以前も申し上げたかもしれませんが、私は今回の改正で法定後見人に正面から医療同意権を付与するというのは現実的ではないかなと考えている一方で、任意後見契約の中で医療同意権を付与することは、ある程度検討の余地があるのではないかと感じています。なので、法定後見のところに入れていただいたのであれば、任意後見のところにも同じように言及してもらえるとうれしいなというのがあります。   その理由は幾つかあるのですけれども、一つは、今回任意後見契約に関してここで議論されている改正の論点について、私は基本的に賛成なのですけれども、これから任意後見契約をもっと使ってほしいというふうにメッセージとして打ち出すときに、割とここでの議論というのは玄人向けの議論が多い印象が強くて、一般の人に対して訴求力のある改正の議論というのが、改正の目玉というと言いすぎかもしれませんけれども、分かりやすいメッセージになるような論点がやや少ないのではないかと感じています。最終的な賛否はともかくとして、少なくとも任意後見の中に医療代理人としての機能を正面から入れるというのは、よくも悪くもだと思うのですが、かなりインパクトのある議論ではないかと感じていまして、それが1点ということになります。   次に、これも既に申し上げたことの繰り返しになりますけれども、医療代理人的なシステムを仮に日本で取り入れないとすると、判断能力不十分者、正確に言うと医療行為についての同意能力を欠く人について何らかの医療行為を提供していくときに、それを、例えば人生会議のようなスキームで全てやっていくというのは、なかなか社会的なコストとして難しいのではないかという気がします。延命治療の停止のような極めて一身専属性の高い決定、そもそも他人が代諾すること自体が困難なものについては、人生会議的なコストを掛けてやるべきだと私も思いますけれども、もう少し一般的な医療行為については医療代理人の権限として立て付けるというのはあり得る話ではないのかなと思います。   実際、英米法圏などのように、日本風にいうと財産管理任意後見人の仕組みと、医療同意などを対象とする身上監護ないし身上保護任意後見人の仕組みの双方を、それぞれ別の仕組みとして置いているようなところもありますので、医療同意に関する事前指示の仕組みというのは法制度としておよそあり得ない話ではないと思います。したがいまして、繰り返しになりますが、(注)のような形で、そういう意見もあったということを言及していただけると大変うれしいということでございます。 ○佐久間委員 形式について、1点だけなのですけれども、例えば、58ページの2(2)のところは、アもイも本文がなくて、いきなり注記なのです。そのようなことが非常に多く見られるのですけれども、飽くまで例えばですが、申立権者、請求権者のところでは、本文として「申立権者の範囲を変更することの要否につき引き続き」、慎重にと入れるかどうかはその項目によって違うのですが、「検討する。」とかという程度のことを入れてから、注記していただく方がいいのではないかと思います。というのは、今のままでは、何だか任意後見に関する検討は非常に中途段階にとどまっているとも見えないわけではないので、必ず本文を何らかの形で入れていただいて進めていただくのがいいのではないかと思います。 ○山野目部会長 レイアウトをおっしゃったとおりに改良した方がいいですね。その方が格好がよいです。ありがとうございます。   引き続き伺います。いかがでしょうか。 ○星野委員 今、上山委員からあった医療に関することについては、本人の意思に基づく任意後見契約だからこそというところについては、今回の中間試案で国民に意見を求めることについて、私も同意ということを少し発言しておきたいと思います。   それから、もう1点は家事手続法の方なのですけれども、72ページのところです。開始、取消しの審判のところの医師の意見を聴かなければと書かれているところです。説明資料の方に、前回も発言しましたが、本人情報シートについても触れていただいているところで、有り難いと思っております。ただ、この中で甲案というのは現行法の規律を維持する案ですけれども、乙案の中では、これまでの議論の中でも出てきました医療的なものを前提としながらも、本人の環境であるとか本人への支援の在り方とか、そういったところが現に裁判所の方で作られている本人情報シートというシートが医師の診断書を補助するものとしてかなり広く使われておりまして、このパブリック・コメントを求めるときにこの部分についてゴシックの方に入れていただきたいという意見です。そのことの検討、それを、注書で書いていただいているとおりなのですけれども、72ページの10行目のところ、引き続き検討するものとすると書いていただいているところなのですけれども、といいますのが、本人情報シートがスタートしたときに、かなり福祉関係者の中ではいろいろな意見が出て、これがここまで広まるとか使われるということは当初想定できないほどのいろいろな意見を私も聞いていました。本人情報シートを作成することは業務外のことではないか、作成にかかる費用負担はどう考えればいいのだとか、そういった意見も一杯あった中で、ここまで当たり前に使われてきているというところを考えますと、そのことが現実としてあることを、説明で書かれているとおり、根拠としてはまだ、これは社会福祉の方で逆にしっかり法的根拠については議論しなくてはいけないところもあるのですが、現にここまで使われてきているものなので、是非ゴシックの中に入れてほしいという意見を発言したいと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   根本幹事、少しお待ちください。遠隔で御発言の希望が、お出しいただいた順番で、遠藤幹事、次に佐野委員の順番でお尋ねをします。 ○遠藤幹事 私からは、任意後見の契約の一部の発効の関係で1点、家事手続の関係で1点、意見を述べさせていただければと思います。   任意後見契約の一部の発効の関係でございますが、部会資料にも書いてあるとおりでございまして、制度が複雑になって利用しにくくなってはいけないということと思っております。これは裁判所の視点から見ましても、例えば任意後見契約において事項ごとの発効の要件などが定められていたといたしましても、御本人の判断能力が低下して段階的発効の意味内容の理解が困難となった後に、御本人以外の第三者が当該事項の発効を求めるような場合というのが想定されるという御議論だったと思いますが、裁判所がその契約の要件該当性や必要性などを判断するということになった場合、任意後見が本質的には契約から出発としているということに鑑みますと、御本人の意向を確認できない中でそのような判断を行うということは、それ自体困難が伴うというところもありますし、そのような段階的な発効が度々必要になるということになりますと、家庭裁判所の事務遂行という観点でも相当の負担が生じ得るのではないかと考えているところでございます。   任意後見契約の段階的発効については、今後も議論がされるという記載になっておりますので、その議論の際には、任意後見制度の趣旨を損なわず、かつその判断の明確さも担保できるような簡明な制度設計がなし得るのかという観点からも、御議論を頂ければと考えております。これは、本日の議論の中の、例えば発効後の代理行為目録の追加といったところにつきましても、御本人の意思を離れて裁判所が何をどこまでできるのかといった点については、今述べたところと同様の問題があると考えております。   もう1点は、家事事件手続の関係でございます。72ページの34行目以下の(2)のところでございます。市区町村等に対して意見を求めることができる旨の規律を設けるとの考え方について、引き続き検討するものとすると注書をしていただいております。この注書をしていただいていることについては全く異存ございませんし、今後議論が続くということで注書ということについても異存はないところでございますが、この点の検討に当たっては、まずもって、今議論をされております法定後見の開始、終了や保護者の選任、解任といった各場面において、裁判所が判断を求められる要件及びその判断に当たって必要となる情報や資料の内容がどういったものになるのかというのが先決問題になると理解をしております。   その上で、裁判所として必要になるかもしれないと今考えている情報がどんなものかということだけ、念のため確認をしておきたいと思いますが、例えば、保護者の解任の場面において、保護者としての事務遂行に裁量の逸脱、濫用がないにもかかわらず、本人にとってよりよい支援を行う者がいる場合には解任し得るといった規律がされる場合には、司法機関である裁判所にはそのような支援の当不当といった問題を判断するだけの福祉的な知見に乏しいということになりますので、比較の対象となっている支援の内容のいずれが御本人の利益に資するのかといった点について、中立性を有する公的な機関による意見を聴取した上で判断をするのが望ましいと思っているところでございます。これは一例でございまして、要件の定められ方によっては各場面において必要となる情報は様々ということになろうかと思いますが、裁判所としては、こういった情報を中立的、客観的な機関から得られる手法につき、どのように制度的に担保していくかという観点で、今後の御議論をさせていただければと思っているところでございます。 ○山野目部会長 2点、それぞれ承りました。 ○佐野委員 私からは1点申し上げさせていただきます。60ページの第6、任意後見制度と法定後見制度の関係の1番、任意後見制度と法定後見制度との併存の可否等の部分で、60ページの27から29行目の注記の部分に関してです。28行目に、任意後見人と成年後見人との権限の調整に関する規律を設けるべきと記載いただいていますが、こちらに具体的に、権限の重複を認めないための調整といった形で、権限の重複という言葉に関して明記いただけると有り難いと考えております。 ○山野目部会長 御希望を承りました。ありがとうございます。 ○根本幹事 星野委員や遠藤幹事からの御発言とも関係するところになりますが、72ページの御指摘があったところについて、次のようなゴシックにしてはどうかということを提案するものになります。   現行の家事事件手続法119条3項に次のような規律を設けるということを提案します。家庭裁判所は保護開始の必要性若しくは保護者の交代と終了における必要性喪失などについて、本人の生活状況、社会資源その他本人の生活環境を聴取するため、これらの事情を知っている者、その他市区町村長及び中核機関の長に対して意見を聴くことができるというゴシックにしていただいてはどうかと思っています。   星野委員からもありましたけれども、本人情報シートを手続法上位置付けるという点と、あとはクリアリングを調査嘱託よりも広く行えるようにするという意味で、現行の119条2項においては、精神の状況について医学的知見については医師の意見を聴かなければならないと規定をしていますので、この規定に加えて今回、後見の開始においては医学的な知見だけではなくて、開始の必要性を要件化するということになりますので、開始の必要性を要件化することに対応して、一つはその事情を知る者や自治体、若しくは中核機関は法定化された場合ということになりますけれども、その長に対して意見を聴くことができるという、できる規定にするということだと思います。必須ではありませんので、誰に聴くかというようなところも含めて、ここは家庭裁判所の裁量で御判断できるということになろうかと考えています。   それから、本人情報シートについても、先ほど星野委員からありましたけれども、現行は医師の診断の参考資料と位置付けられていますけれども、改正後においては、それにとどまるものではなくて、いわゆる必要性判断若しくは交代ですとか終了における判断においても必要な情報ということになると思いますので、規律が必要になると考えています。   なお、できる規定ですので、聴く相手が例えば市区町村長とか中核機関の長以外の福祉関係者の、福祉関係者をどう規定するのかという外縁が非常に難しいということは部会資料の中にも書かれていますが、できる規定なので、外縁が多少不明確でも、民訴の証人は誰でもよいとされていて、実際に証人を採用するかどうかは裁判所が御判断されているということの関係などから見ても、家庭裁判所が誰に聴きたいかということを、家庭裁判所が御判断されればよいのではないかと思っているということになります。   あわせて、クリアリングという意味で規定を設けることは、単にそれを調査嘱託に加えて明確化させるということの意味にしかならないのかもしれませんが、現行の調査嘱託は主に金融機関や医療機関に対して裁判所が行っているということになろうかと思いますので、性質が違うという意味で、明確化させるということが必要ではないかと考えています。 ○福田関係官 先ほどの遠藤幹事や根本幹事の御発言とも関係いたしますが、部会資料16-2の72ページ34行目以降にあります、いずれの案を採る場合であっても家庭裁判所は市町村に対して意見を求めることができるとの(注)に関連して、2点発言させていただきます。   まず1点目は、地域共生社会の在り方検討会議における福祉側の検討状況についてです。昨年8月に開催された第3回会議では、成年後見制度の見直しを見据えて福祉側にどういう対応が求められるのかについて構成員に御議論いただくべく、参考人の方々をお呼びして意見聴取を行ってございます。参考人の一人としてお越しいただいた大学教授の先生からは、地域社会福祉と民事法制との一体的な改革という要請と題され、見直し後の成年後見制度において後見の開始やその終了を判断する際には、家庭裁判所は法定された機関を通じて地域福祉の支援体制を確認し、十分な支援が見込まれるかどうかを検討しなければならず、その求意見の対象としては地域社会福祉の機関が想定されるとのお話を頂いてございます。そのため、厚生労働省としましても、成年後見制度が見直されるとした場合には家庭裁判所から福祉関係機関に対して何らかの意見を求められることがあり得るという認識、想定の下、検討を続けているところです。   そして、本年3月に開催された第9回会議において、今後の成年後見制度の見直しの内容次第ではという留保付きではございますけれども、「市町村は、家庭裁判所から後見人等の選任・交代・終了の判断に当たって意見を求められた場合に、必要な範囲で、適時・適切に応答すること」という社会福祉法における対応方針を資料でお示ししており、その会議においては特段の反対がなかったことから、当面はこの方向で検討を続けていくことが見込まれております。   よって、先ほど最高裁の遠藤幹事から(注)について異存はない旨の御発言がございましたが、福祉側としても申し上げたような形で検討を進めているところでございますので、調査審議をいただくに当たって御参考いただければと存じます。   続いて2点目は、この(注)に書かれているとおり、今後、このような規律を設けるとの考え方について引き続き検討するとした場合の現状認識について申し上げます。補足説明に書かれてございますが、(注)の内容は、確かに法制上は現行の家事事件手続法第56条の規律の範ちゅうに過ぎず、新たな規律を設けたとしても確認的な規律にとどまるものと考えられます。他方、これもまた補足説明にあるとおり、照会された先が回答しないといった実務上の課題が指摘されていることや、家事事件手続法第56条の規律は飽くまでも家事事件手続における一般的な調査規定であることに鑑みると、先ほど根本幹事が御発言されていましたけれども、例えば、家事事件手続法第120条付近に意見の聴取といった形で新たな規律が設けられることに仮になったとすれば、今回の見直しにおいて、後見の開始や終了に際して家庭裁判所と地域福祉を担う市町村の間におけるやり取りが手続上想定されているという、司法・福祉間でのプロセスが法制上明確化されることになりますので、福祉関係者のみならず、成年後見制度に関わる様々な関係者にとってもより理解が深まると思われますし、ひいては社会に対するメッセージにもつながるのではないかと考えます。   余談ではありますが、福祉の世界でも現場の職員向けに研修等を行うことがございます。福祉関係者に対し、成年後見制度が見直されたことに伴って皆さんは家庭裁判所から調査を受けることになりました、といった説明をすることになるよりも、御本人の尊厳を守るために福祉的な知見が求められており、今般、新たに意見聴取に関する規律が設けられ、その規律に基づいて皆さんの意見を求められることがあります、といった説明ができる方が意見を聴かれる福祉関係者としても受け入れやすいでしょうし、また、家庭裁判所による意見照会の根拠規定がより具体的なものとなることで、課題と指摘されている実務の状況も変わってくるのではないかと考えます。   なお、今申し上げた内容は、(注)に記載されているように、いわゆるできる規定の形で規律が設けられるとした場合を仮定したものでございまして、市町村の回答が必須で家庭裁判所の裁判官の判断を拘束するような制度にすべきといった趣旨で申し上げたものではございません。また、照会を受けることとなる市町村の業務負担に鑑みると、私どもが地域共生社会の在り方検討会議において、必要な範囲で適時適切にと提示しておりますとおり、必要性が認められないにも関わらず家庭裁判所から市町村に対してむやみに意見照会がなされたり、照会を受ける市町村にとって過度な負担が生じたりするような制度とはすべきでないと考えます。加えて、家庭裁判所による意見照会の対象事項について市町村として関与や把握をしていないケースも少なからず想定されますことから、家庭裁判所からの照会に対して、市町村としては特段有意な情報は有していないといった回答となる場合も有り得るであろうことについても、念のため申し上げておきたいと思います。   以上です。ありがとうございます。 ○山野目部会長 福田関係官から大きく2点にわたってお話しいただいたことは、この部会における調査審議をする上で誠に重要かつ有益なことであると感じます。ありがとうございます。地域共生社会の在り方検討会議の皆さん、それを支えておられる事務当局の皆さんの現在の営みについて大きく期待しているところでございますから、引き続き福田関係官におかれて、そちらの方の会議に御尽力を頂ければ有り難いと思います。どうもありがとうございました。 ○青木委員 60ページの併存した場合の任意後見人の代理権限の一部停止の注意書きについて、若干補足してお話ししたいと思います。検討する場面としては、法定後見が先の場合と任意後見が先の場合の両方があり、それぞれ併存するということはあると思いますが、任意後見が先の場合には、法定後見を開始させる判断においては、代理権付与の必要性の検討を行っていて、すでにある任意後見人にその代理権行使は任せられないので必要性があるので併存させる、先に法定後見が開始させたときでも、任意後見人にその代理権を行使させることは駄目なので法定後見を終了させずに併存させるという判断をしていることになります。併存させなければ、本人の権利利益にならない、任意後見人の代理権行使に何らかの問題があるということを必要性の検討において評価しているということだと思います。その評価に基づき、任意後見人のその代理権の一部停止がなされるのであり、その要件というのは、法定後見を併存させる必要性がイコール一部停止の要件であると理解することが可能なのではないかと思っていまして、これとは別の一部停止をさせるための別の要件があるという整理をする必要はないと思っています。逆に言いますと、任意後見人を解任をしないといけないとか、契約を解除して終了させないといけないというほどの問題が任意後見人にあるときには、併存させることにはならないということだと考えますので、一部解除とか一部解任というは検討する必要がないのではないかと思っております。   もう1点は、家事事件手続法について1点だけです。保全処分について73ページのゴシックがありますが、ここにおける現実の見直しのニーズとしては、実際に保全処分をやってみて改善を頂きたいこととしましては、保全処分では、財産管理者に選任されることが多いわけですけれども、財産管理者になっても、預貯金の出金は現在は認められていません。しかし、例えば本案の審判が確定するまで1か月から2か月以上掛かることになったときに、少なくともライフラインの料金滞納だけは払いたいとか、現に利用している医療や福祉サービスの利用料だけ払わないと継続して提供してくれなくなる場合がありまして、こうした場合にはその使途に限定して出金ができるようにしていただくニーズは非常に高いところです。例えば、不在者財産管理人であれば、家裁に権限外行為許可をいただいて出金できたりするわけですけれども、同様のことを、保全処分の財産管理者についてもできるようにしていただきたいという問題意識が強くあります。見直し後は、本案の審理期間が少し長くなることも想定するとしますと、尚更、保全処分で当面の生活に不可欠な出金についてはできるようにならないだろうかということを考えていますということを提案したいと思っています。 ○山野目部会長 すぐに引き出さなければならないお金がどうしても必要である場面は今も起きているし、これから青木委員の御指摘のようにもう少し広がるかもしれなくて、それは本当に実務では立ち往生しかねなくて困った事態になりますが、ですから青木委員のお話は引き続き、中間試案にどう取り込むかも悩みますし、中味も悩んでいきますけれども、権限外許可のような発想というと、また権限外許可の審判とか保全処分をとらなくてはならず、それも引き続き考えますけれども、ある金額まで引き出せるようにするという制度も併行して検討してもいいかもしれませんね。相続人が民法909条の2の規定で法務省令で定める限度までは引き出すことができるとされている仕組みを参考にするとか、いろいろなことがあるかもしれませんし、電気、ガスが止まってしまうと困りますから、そうした課題も含め引き続き少し弁護士会の先生方にもお智恵を下されば有り難いと考えます。   ほかにいかがでしょうか。   そうしましたら、この後、今日お出しいただいた御意見に鑑み、小澤委員と上山委員に少し私との一問一答のお願いをして、意見の趣旨を確認しておきたい事項があります。その後、久保委員、花俣委員に、この順番でお声掛けをします。久保委員、花俣委員におかれて、そのタイミングでお声掛けをしますけれども、お二人の立場で少し任意後見への向き合い方は異なるかもしれません。久保委員のお立場から言えば、任意後見の制度がもっと使いやすくなってくれれば、今も現に悩みを抱えておられますから、様々意見として述べたいですということがあるかもしれず、それらはどうぞ御遠慮なくおっしゃってください。また、花俣委員におかれては、これまでどちらかというと高齢者が任意後見というものをあらかじめ用意しておきますという場面にはそれほど直面しませんでしたという受け止め方もおありかもしれませんけれども、だからこそ任意後見を未来の高齢者のために使っていくにはどうすればいいか、感じたことを率直にお話しいただくことで結構ですから、お話しいただければ今後の検討の役に立つと感じます。   その上で、まず小澤委員にお声掛けをしますけれども、先ほど任意後見の監督の在り方についてお話しいただいたところが、伺っていると何か重要なことをお話しいただいたようには感じます。前回ほぼ同一方向のことをおっしゃっておられたように記憶していて、それを更に趣旨を明瞭にして今日おっしゃっていただいたと基本は受け止めてよろしいですか。   ありがとうございます。それで、それを更に提案として温めていくに当たっては、任意後見の監督というのは一見すると相反する二つの要請がありますね。一方では本人の意思といいますか自治というものを尊重していかなくてはいけない、他方で、そうは言っても現実に監督が働く局面は本人の判断が困難になった段階でありますから、100パーセント本人が思ったとおりにというわけにはいかず、そこには当然、社会的な統御といいますか公的なコントロールが働かなければいけません。この二つの要請を調和させることが常にこの任意後見監督というものの宿命なのですけれども、そのことを狙って、先ほどお話しになったような、本人が選ぶといいますか指定しますけれども、選ぶ対象は公によって、政府によって、これこれの団体、法人、あるいは個人もおっしゃったでしょうか、の範囲の人ならば大丈夫ですから、この範囲から選んでくださいというふうな選択決定を促すような仕組みを設けることによって調和を図ると聞きましたけれども、これでよろしいですか。 ○小澤委員 はい。 ○山野目部会長 そうすると、現行法は、未成年後見人が遺言で指定したときには、もうあれで決まりなのですね、家庭裁判所の審判という契機がありませんけれども、あそこまで強い指定ではなく、家庭裁判所の裁判の場面はあるけれども、しかし家庭裁判所は特段の支障がない限りは本人がこの機関などというふうに選んでいたところを任意後見監督人に選任してもらうというような構想をおっしゃったと聞いてよろしいですか。 ○小澤委員 はい。 ○山野目部会長 理のある御話であるとお見受けしますけれども、要するに、任意後見監督人が誰になるかが本人から見て不満であるとか、報酬を取られてしまうという点が不満であるとかという課題も、報酬を払いたくないというよりは、むしろ本人や身の回りの人がよくあらかじめ相談していたスキームで報酬とか監督が扱われるならば納得して、その下で暮らしていきますというふうな観点がむしろ大事であって、人々から納得感を持って受け容れてもらおうというふうな意味合いで提案を考えてみたと受け止めてよろしいでしょうか。 ○小澤委員 はい。 ○山野目部会長 一問一答をして趣旨がよく分かりましたけれども、先ほど立派なことを一遍にたくさんおっしゃったように感じ、何か紙にして出していただいた方がはっきりと良いお話は伝わるだろうという気もしますから、余り御負担をお掛けするつもりはありませんけれども、御検討ください。分かりました。   それから、上山委員にお尋ねですけれども、医療における任意後見人の役割についてお話しいただいて、今、中間試案に載せていないことの気付きを提供くださいましたから、有り難いことです。上山委員のお話を伺っていると、どちらかというと法定後見に置く扱いも悪くはないというか反対ではないけれども、むしろ任意後見にこそこれを置くべきなのだというニュアンスまでお持ちかもしれないと感じて伺いましたけれども、この辺りはいかがですか。 ○上山委員 私は、現状では法定後見に置くのは難しいとむしろ思っておりまして、他方、任意後見については検討の余地が大きいのではないかと、そういう趣旨でございます。 ○山野目部会長 分かりました。現実の立案の作業とか社会的合意の形成に当たって、いわゆる医療同意という課題は医療関係者を含めたコンセンサスを得なければいけませんから、政治過程として大きな困難が前にあるということを上山委員が認識しておられるとおりですが、それは措くとして、言わば思想といいますか哲学の整理の問題として、法定後見のところで後見人が医療について役割を果たしますと言った際の法定後見の場合の保護者は、基本的には裁判所が選任しますから、自分が選んだ人ではない人に医療の進め方についての判断をしてもらうということになり、どちらかというと本人の最善の利益という哲学と親しむという側面があるのに対して、任意後見人にその役割を与えるゆきかたは、むしろ自分が判断できなくなってしまった事態を予想、想定し、本来大きな手術を受けるかどうかとかという問題は本人である私が決定することであるけれども、私ができなくなったときにあなたにお願いします、というふうな発想でしょうから、最善の利益というよりは、むしろ本人が本来固有に有している人格権の行使を代行をしている、委ねているというような方の発想といいますか、思想に親近性を有すると整理して伺っていましたけれども、この理解で大筋、誤ってはいませんか。 ○上山委員 はい、今の部会長の整理でよろしいかと思います。 ○山野目部会長 どうもありがとうございます。今後の議論において委員、幹事におかれて参考にしていただきたいと望みます。 ○波多野幹事 60ページの併存するときの権限の調整の停止とかの規律に関して(注)を置いているところでございまして、これをもう少し具体化した方がいいのではないかという御指摘を今日頂いたのかと思っております。具体化するに当たっては、やはり要件をどうするかというところの整理が必要なのではないかということを考えておりまして、そこを説明で書いていたところでございます。   先ほど青木委員からは、ここについて特段の要件は多分要らないと、そういう御趣旨の御発言を頂いたところでございますけれども、多分過去の部会では、やはりここは一部解除とか一部解任に近い場面になるのではないか、それに伴う停止なのではないかという御指摘も頂いていたと認識をしておりまして、ここは部会のメンバーの中でどういう御意見があるのかというところを少し明らかにしていただければ、次回以降、この(注)をどのように具体化していくかに当たって参考にさせていただきたいと思っているところでございます。 ○山野目部会長 今、波多野幹事からお声掛けの件について、御意見がおありの方のお話を伺います。 ○根本幹事 青木委員の御指摘もそのとおりではあるのですが、結局、法定後見の保護開始の必要性の要素がこの場面で何であるのかということが実質上は跳ね返っていくという御意見の趣旨だと私は捉えていまして、そのまま法制化できるかというと、難しいと思いますので、要件立てをしていくということはやはり必要だと思います。   その際に、青木委員からもありましたけれども、任意後見の規律の中で解任とか、若しくは辞任とか、定められている要件を再構成する必要があると思っています。それは一つは解任の場面で、次のグレードになるのが、例えば権限調整する場面で、あとは辞任とか一方的な解除に至る事由の場面と、最後は合意解除ということだと思いますけれども、現行法の解任とか辞任の正当事由と規定されているものを含めて再構成した上で、権限調整に該当する、要するに代理権の一部について停止をさせるということにふさわしい事由というのは何であるのかということを考えていくということだと思っていて、結果的に法定後見開始の際の保護の必要性の判断要素と重複してくるという整理になるのではないかと理解をしています。 ○山野目部会長 今、波多野幹事からお声掛けをした件、根本幹事のほかにお話がおありでしょうか。 ○青木委員 先ほどの私の意見が少し省略した説明になっていたかもしれませんが、任意後見と法定後見の併存が認められるということは、任意後見人も受任者としては適任だけれども、当該の重複する代理権の行使については適当でない場合ということになると思いますので、要件としては、法定後見と併存した場合であって、当該代理権について任意後見人に行使させることが適当でないとき、には一部停止するという要件になるのではないか、という意味で発言をしました。そして、任意後見人もしくは受任者自体に適格性がなく問題がある場合には、そもそも一部停止の問題ではなく、任意後見人の解任や契約の解除等による対応になるのではないかという趣旨の発言でありました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがですか。 ○上山委員 今の青木委員の御発言に関することなのですけれども、仮にその併存を認めて、かつ重複を許さないために一時停止という仕組みを入れるのだというスタンスで議論するのだとすると、必ずしもどちらかが不適任だというところまで確認する必要はなくて、相対比較としてこちらの方がベターなので、法定後見人なら法定後見人がベターなので、任意後見人の権限を一時停止するというレベルの整理の仕方もあり得るのかなと感じました。 ○根本幹事 上山委員のおっしゃられ方だと、併存の可否のところを規律するという話になってしまうかと思っていまして、そうではなくて、併存自体は基本的には認めるとした上で、更に権限が重複することで不都合が生じる場面に限定して権限を調整するという要件立てだと理解をしているので、どちらがふさわしいか分かりませんという段階では、権限調整する必要がないのであれば、二つの制度で選ばれた人が相互に権限調整していただいたらよいということだと思うのですが、それすらままならないような状況というのを権限調整が必要な場面として想定して、要件立てしていくということではないかとは思っています。 ○山野目部会長 頂きました。   今の関連は大体よろしいですか。波多野幹事、お続けください。 ○波多野幹事 そのほか、根本幹事からの幾つかの点で、乙2案と頂いたところがあったかのようにも思うのですが、お聞きしていると、別案なのか、今書いたものを膨らませるのか、少し御趣旨によっては違うかなという気もいたしますので、また改めてこちらは検討させていただきたいと思っております。 ○山野目部会長 そうしましたら、久保委員にお声掛けをします。 ○久保委員 ありがとうございます。任意後見を私たち知的障害者が利用するということは今、この議論を聞いていますと、もっと任意後見を使えるのになとは思うのですけれども、そういう融通の利く緩やかな新たな法律にしていただくということを、もっと分かりやすくPRをしていく必要があるなと今思っています。それと、今あります成年後見制度の利用者も、新たな制度ができたときに家庭裁判所に申し立てて変更ができるということをしてほしいという声がたくさん届いています。それからもう一つは、軽度の知的障害者も含めて後見類型として審判を受けているという、先ほども申し上げましたけれども、そういう不適切な運用もあるということも少し頭の隅に置いていただけたら有り難いなと思っています。   それからもう一つ、報酬なのですけれども、財産だけで測るのではなくて、ずっと終身使うという人とスポット利用をしていくということも分けて少し考えてもいいのかなと。ずっと使う人が同じ金額というのもどうかなという、負担感もありますし、また、ずっと見ていただくのにこの金額でいいのかという両方の面があると思います。その辺のところも分けて、少し考えていく必要があってもいいのかなと思っています。   最後ですけれども、これを言ったら少し議論がしにくいかなと思いますけれども、知的障害者としては長い期間を使いますので、人生の中でいろいろなことが起こってきます。そんな場合に、後見類型を使いますと法的能力の無能力と言われるわけですので、そこも否定をされてしまうと、本人の権利侵害みたいなことが出てくるのではないかというので、少し表記の仕方といいますか、どういうふうにすればいいのか分かりませんけれども、全部代理で人に決めていただくということでないとできない人たちではあるかもしれないけれども、一部やはり本人の意思というのもありますので、そういう意味では、少し書き方によっては権利侵害ではないのと言われる人も出てくるかもしれないなと思って、お話を聞かせていただいていました。 ○山野目部会長 久保委員、ありがとうございます。一方において、今日休憩前にお聞きになっておられたように、法定後見のところについて、これまで行為能力の制限と呼んできたものをこれからどうするかというのを正に検討をしていきます。そのことの帰すうと無関係に、といいますか、そのことの帰すうをにらみながらも、任意後見の場合は既に現行法において本人の行為能力を制限するものではありませんから、任せますから一時的か継続的かはともかく代理人としてしてくださいという点で、まことに景色の明るい制度であって、そちらの利用を促進したいから、そのための工夫も他方でしていきます。後半、その話を聞いていただきました。引き続きお智恵を貸していただければとお願いいたします。ありがとうございます。 ○花俣委員 多くの高齢者の未来に向けて、何を感じたかといいますと、正直なところ、あらかじめこの人に私の将来を託したいと決めておいて、そういう契約を結べるというところがメリットだということ以外のメリットが、この資料からはなかなか読み取れないというのが今日の私の受け止めでした。いずれにしても、先ほど山野目部会長が、納得感を持って受け止められるような、発信の仕方を工夫してくださるというお話もありました。正にそういう意味では、受け止める側にとって任意後見制度が何たるかというのがきちんとつかめるといいなと思っています。非常に的確な整理がなされたとおり、任意後見制度を利用したいと思える、発信がなされることを望みます。   それからもう1点、上山委員の医療同意に関する御意見についても部会長の方からきちんとした整理がされ私も非常に大きく心が動いた次第です。部会長のように上手に日本語を駆使できないのですが、飽くまでも信頼に基づいてこの人に委ねたいという、それが任意後見契約の動機であるとすれば、特に高齢者の場合は医療に関係することは、認知症等により意思の表出が難しくなってから、たくさん出てくるわけです。そのときに自分に代わって、この人にとあらかじめ決めておけるのであれば、そこを含めて、大きなメリットととして、こういうことができるのですよというメッセージ性が高いと受け止めました。法定後見を使うときの後見人さんにそこまで託すのは、ものすごくハードルが高いと思う反面、任意後見のメリットである、信頼の置けるこの人にならいう前提があるとするなら、これはありかなと感じた次第です。   これが将来の人に向けての希望のメッセージになるかどうかは定かではありませんが、そんなことを感じながらいろいろお話をお伺いした次第です。 ○山野目部会長 本日段階では定かでないという辛口の励ましを頂きましたから、今後に向けて、人々の未来を感ずる任意後見制度にしてまいりましょう。そのためには、いろいろ中味も大事ですけれども、読んで分かりやすい法律にすることも大事です。今の法律を読んで、よくないと思う点は、準用する旨の規定が入っていて、民法第何条の規定をこれこれの事柄については準用するなどとありますけれども、あれは民法の研究者が見ると、扱い慣れていますから、番号を見ただけで、この規定を準用するということはこういうことになると分かりますけれども、一般の方に、民法ってどこにありますか、これを準用するとどういう意味になりますか、という点を分かってくれと求めることは無理です。あれで分かりやすい制度だから使ってくれとしても困りますから、準用というものが法制的に楽なテクニックであるとしても、むしろ書き下して、読んでもらえるようにするとか、いろいろなことを少し法律の方も建付けを工夫していくことが、課題として引き続きあると感じます。お話を伺っていて、いろいろなことを考えさせられました。ありがとうございました。 ○花俣委員 ありがとうございました。 ○山野目部会長 ありがとうございました。   本日も委員、幹事の皆さんにおかれましては熱心な御議論を頂きまして、ありがとうございます。部会資料15に続きまして、部会資料16の全体にわたる調査審議を了したものとして扱います。   次回会議などにつきまして、事務当局からの案内として、波多野の幹事からお話を頂きます。 ○波多野幹事 次回の日程でございます。次回日程は、令和7年5月27日火曜日、午後1時15分から午後5時30分まで、場所は法務省20階、第1会議室でございます。次回は、前回及び今回にわたって御審議いただいた内容を踏まえまして、部会資料を修正したものを準備して、中間試案の取りまとめに向けて引き続き御議論をお願いしたいと考えております。 ○山野目部会長 次回の御案内等を差し上げました。   皆さんから何かおありでしょうか。よろしいですか。   それでは、これをもちまして法制審議会民法(成年後見等関係)部会の第19回会議を散会といたします。どうもありがとうございました。 -了-