法制審議会 民法(遺言関係)部会 第10回会議 議事録 第1 日 時  令和7年6月3日(火) 自 午後1時28分                     至 午後4時50分 第2 場 所  法務省第1会議室(20階) 第3 議 題  遺言制度の見直しに関する中間試案のたたき台 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○大村部会長 定刻よりも2分前なのですけれども、御出席の予定の方は皆さんそろったということですので、開始したいと思います。   法制審議会民法(遺言関係)部会の第10回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席を頂きまして誠にありがとうございます。   まず、前回の部会以後の人事異動の関係で委員等に異動が生じておりますので、御紹介をさせていただきます。複数の方がおられます。小池あゆみ委員、それから萩原秀紀委員、日比野俊介委員、原健太関係官、小川貴裕関係官、工藤智関係官、6人の方になります。これら6人の方が今回から出席されるということになりましたので、順番に簡単な自己紹介をお願いしたいと思います。 (委員等の自己紹介につき省略) ○大村部会長 それでは、続きまして本日の審議に入ります前に、配布資料と本日の進行につきましての説明を事務当局の方からお願いいたします。 ○小川関係官 本日の配布資料として、部会資料10「遺言制度の見直しに関する中間試案のたたき台」がございます。また、席上のタブレットには委員等名簿、議事次第を格納しております。   資料については以上となります。 ○大村部会長 ありがとうございます。それでは、本日の審議に入りたいと思います。   部会資料10は「遺言制度の見直しに関する中間試案のたたき台」という表題が付いておりますけれども、前回までの中間試案の取りまとめに向けた議論のためのたたき台という表題から一歩進んで、提案されているものと理解をしております。この資料自体はかなり厚いものになっておりますけれども、事務当局から部会資料9からの変更点を中心に説明していただきたいと思いますので、どういう内容で中間試案をまとめるのかという観点から御議論を頂けますと幸いに存じます。   では、まず「普通方式におけるデジタル技術を活用した新たな遺言の方式の在り方」について、御議論を頂きたいと思います。事務当局から部会資料10の第1の部分の説明をお願いいたします。 ○小川関係官 第1から御説明をさせていただきます。   まず、資料の位置付けですけれども、部会資料10については中間試案の取りまとめに向けまして、「遺言制度の見直しに関する中間試案のたたき台」という表題で資料を準備させていただいているところです。なお、ゴシック体の部分が中間試案の本体に相当するものとして記載させていただいており、取りまとめに当たりましては、このゴシック体の部分の規律について御意見を頂戴するという形になろうかと思います。また、今回の部会資料ではゴシック体の各項目についての説明を記載させていただいているところです。   それでは、第1の1の部分から御説明をいたします。1ページですけれども、まず、柱書きの部分になります。これまで甲案、乙案、丙案の3案を併記し、これらの案の一つ又は複数の規律を設けるものとするという前提で御議論を頂いておりました。本部会資料では、中間試案としてパブリック・コメントに付すに当たって部会としての方向性を示すという観点から、これまでの御議論を踏まえた方向付けというものを試みております。すなわち、デジタル技術を用いた遺言の方式を創設するという観点から、甲案及び乙案を創設するということを中心としつつ、これらのほかに丙案も採用することの要否も引き続き検討するという方向性を提案させていただいておりますので、この点について御意見を頂戴できますと幸いです。   次に、前回資料からの変更点ですけれども、甲案については、これまで御議論を頂いておりました証人の立会いと録音・録画による記録を要件とする案、これを甲1案としておりますけれども、この案に加えまして、証人の立会いを不要としつつこれに相当する措置を講ずることを要件とする案、これを甲2案として記載しております。甲2案は、これまでの部会で証人の立会いを求めることによる負担があるのではないかといった御指摘があったことを踏まえまして、提案させていただいているものになります。甲2案は前回の部会資料9の第1の1の(後注)について検討を更に進めたものということになります。   順に御説明をいたします。甲1案ですけれども、こちらは前回の部会資料9からの変更点を中心に御説明します。まず、①に関してですが、前回資料では遺言に係る電磁的記録に記載すべき事項として、立ち会うこととなる証人を特定するために証人の氏名及び住所を記録するものとしておりましたけれども、証人の特定のために必要な情報というのは氏名及び住所に限られないということから、証人の氏名その他証人を特定するに足りる事項を記録するよう記載ぶりを修正しております。その中身については通常、氏名、住所に加え生年月日、職業によって特定するといったことが考えられるかと思います。   次に、2ページの(注6)を御覧ください。前回資料では、遺言に係る電磁的記録と録音・録画の電磁的記録を結合するということを要件として記載しておりましたが、これは事後的に両者の関連性を明らかにすることといった趣旨で設けられておりますので、必ずしも一つのファイルに結合するということを要するものではなくて、一体のものとすれば足り、そういった内容を法文上規律する必要があるかという点についても検討する必要があると考えられましたので、引き続き検討するという旨を(注6)で記載しております。   次に、甲2案です。証人の立会いを不要とするということを前提に、証人の立会いによって担保されていたものを、これに相当する措置によって担保するということができるかという観点から規律を検討しています。まず、①についてです。甲1案と同様、パソコンやスマートフォンによって文字情報を入力した電磁的記録を遺言の本体としております。証人が立ち会わないということを踏まえまして、遺言者が当該電磁的記録が改変されているかどうかを確認することができる措置その他の当該電磁的記録が遺言者の作成に係るものであることを確実に示すことができる措置が必要であるとしています。(注2)に記載させていただいておりますとおり、この措置は遺言者の電子署名を想定しているということになります。   次に、②ですけれども、甲1案において証人の面前で行うこととされている遺言の全文、日付及び氏名の口述を甲2案でも行うこととしております。それを録音するということを要件にしております。これは、遺言者が①の遺言の全文等を口述することによって、遺言が遺言者の真意に基づき作成されたものであること等を担保しようとする趣旨ですけれども、これを事後的に確認することができるように録音を要するものとしております。   なお、録画を同時に行う方法について、録音のみを要件とする考え方と、録音に加え録画も要件とする考え方の両方があり得るということを示すために、ブラケットを付しております。口述によって遺言の真意性を担保するという観点からは、録音により遺言者が口述したこと、読み上げたことが音声によって明らかとなれば足り、録音のみ記録するということを要件とすることも考えられることから、録音のみを要件とする考え方と、録音に加え録画も要件とする考え方を併記しているものになります。   そして、③です。遺言者以外の者が遺言者になりすまして②の口述をしないようにする措置、さらに、遺言者が遺言者以外の者が関与しない状況の下で口述をしたことを担保する措置をとることを要件としております。この要件に関しては、証人が関与しないため、専ら技術的な措置によって確保することになるということを想定しております。その具体的な内容については、3ページの(注4)に記載しておりますが、これまでの部会でも御指摘のあったとおり、一般の遺言者が自分自身でこのような措置をとるということは通常、困難であると考えられますので、民間事業者によってそういった技術を用いたサービスが提供され、遺言者がそれを用いて②の口述をするということを念頭に置いております。   (注4)の技術的な措置については、これまでの部会でもヒアリングを実施してまいったところでして、事務当局において、実体法上求められる水準を満たす技術的措置があるのか、それを前提とした制度を構築することができるのかという点については、引き続き調査、検討してまいりたいと思っているところですけれども、実体法上のルールとして最低限どの程度の措置を求めるべきなのかという点について御意見を頂戴できればと思います。   また、(注6)についてです。デジタル技術については急速な進展が見込まれることを踏まえまして、③の規律の細目は主務省令に委任することが相当と考えられますので、その旨を記載しております。   そうしますと、遺言者は主務省令において定められた基準を備えた民間事業者のサービス等を利用して口述をしてもらうということになりますけれども、β案に書かせていただいておりますとおり、どのサービスが基準に適合するかを事前に認定しておくという考え方と、α案のようにそういった認定等の仕組みを設けないという考え方の両方があり得るということから、これらを併記しております。   β案を採用した場合には、遺言者は認定を受けたサービスを選択して遺言することで方式要件を満たした遺言をしやすくなりますけれども、当然のことながら認定制度の仕組みについて更に検討する必要がありますので、この点について引き続き検討するということになろうかと思います。   甲1案及び甲2案に関する説明は以上となります。説明者を交代させていただきます。 ○戸取関係官 続きまして、乙案について前回資料からの変更点を御説明いたします。   ②について、遺言者の本人確認の在り方を整理して修正したほか、③について、遺言者が電磁的記録に記録された遺言の全文を口授することを記載しております。前回の資料では(注)の一つとして記載していましたが、遺言者が遺言の全文を口授すること、すなわち全文を読み上げることにより真意性の担保等が図られると考え、方式要件とするものです。もっとも、全文を口授することは負担が大きく手続が円滑に進まない場合が生じ得るとも考えられること、公的機関の職員とのやり取りにより真意性の担保等を図ることも考えられることから、(注3)では、遺言の全文を口授する代わりに自己の遺言である旨の宣誓を行うものとする考え方も記載しております。丙案については、乙案と同様の趣旨で変更しております。   次に、36ページの第1の2では保管制度の在り方について、40ページの3では日付について記載しており、それぞれ表現を若干修正しておりますが、実質的な内容に変更はございません。   44ページの第1の4では、加除その他の変更、撤回について記載しております。(1)の加除その他の変更については、実質的な内容に変更はありません。(2)の撤回について、柱書きにおいて、新たな方式による遺言に関し、分かりやすさという観点から、民法第1024条前段以外は現行法の撤回に関する規律が及ぶ旨を新たに記載しております。この点はこれまでも前提としていたところであり、記載の実質的な内容に変更はありません。   その上で、アの遺言を保管制度の対象としない場合において、民法第1024条前段の適用を認め、遺言に係る電磁的記録の破棄による撤回を認めるB案に関し、(注2)を新たに記載しております。遺言に係る電磁的記録の場合、どのような行為が破棄に当たるかが必ずしも明確ではないこと、同一の遺言に係る電磁的記録が複数ある場合にその一部を破棄したことをもって撤回の意思が擬制されると整理することが相当か否かが問題となり得ることを踏まえ、故意に破棄したと認められる場合を明確にするために特別の規律を設けることについて検討の必要があるのではないかという問題意識によるものでございます。そのような規律を設けることの必要性の有無や、規律を定める場合の具体的な内容等について御意見を頂ければと存じます。   また、イの遺言が保管制度に基づき保管される場合に関しては、そのうち保管の申請の撤回をした場合には遺言を撤回したものとみなすものとするC案について、裁判所から照会があった場合等に対応できるよう、撤回をしたときでも遺言に係る情報は消去しないものとすることと修正しております。   部会資料10の第1についての御説明は以上となります。 ○大村部会長 ありがとうございました。先ほど冒頭で申し上げましたけれども、今回の資料は前回の部会資料9から変更をしたというものになりますけれども、その変更点についてを中心に御説明を頂いたものと理解をしております。   前回と大きく違う点は、甲案に甲2案というのが付け加わっているという点かと思いますけれども、前回の部会で、デジタル技術を使ってもう少し何か簡便な手続を考えることができないかということで皆様の御意見を頂戴したわけです。その際に、現在あるものをベースとして、その一部分をデジタル技術によって代替できないかといった御発言もあったところから、甲案を甲1案として、これの一部をデジタルで代替する案として甲2案が出てきたと理解をしております。   この第1の部分について御意見を伺いたいと思いますが、今の御説明の中で、最初の甲案から丙案までの各案の位置付けというのをどうするのか、従来と少し違う整理になっておりますので、そこについて御意見を頂きたいというお話もありました。また、今回、甲2案というものが加わったということは直前に申し上げたとおりなのですけれども、これについては、特に本文の③で求められている、遺言者以外の者が関与しない状況において遺言者以外の者が口授をすることができないようにする措置ということで、技術的な措置については事務当局において引き続き検討するということだったのですけれども、実質においてどのような措置が求められるのかということについて、御意見を頂ければというお話もありました。最後に、三つ目の問題として撤回の話がありますけれども、これについても御意見を頂きたいということがありました。そのほかにも論点はあろうかと思いますけれども、今の3点を含めまして、変更点を中心に御意見を頂戴できればと思っております。   なお、今回の補足説明は今回の資料を理解するための補足説明ということでございまして、中間試案の補足説明自体は別途、次回以降に事務当局の方で準備されるものと理解をしておりますので、本日は具体的な提案部分になるゴシックの部分を中心に御意見を賜ればと思います。どなたからでも結構ですので、御意見のある方は挙手をお願いいたします。 ○隂山委員 ありがとうございます。隂山でございます。デジタル技術を活用した新たな遺言の方式の在り方につきまして、甲案から丙案までのそれぞれの考え方に対し、今回新たに出てきている甲1案及び甲2案を中心に意見を述べさせていただきます。   まず、甲1案につきまして、将来的な紛争が生じた際に証人から事情を聴くといったことが考えられるところ、証人を特定するに足りる事項という記載となっており、部会資料9と比較しても、より適切な表現であると捉えております。懸念事項といたしましては、前回部会でも少し発言いたしましたが、遺言の内容が記録されている電磁的記録や録音・録画データに対して改ざん防止を担保する措置が講じられていない点がございます。この点、(注2)で、①に規定する電磁的記録に電子署名を付すことも考えられるとされており、少なくともこのような措置は必要になるのではないかと考えています。   今回の発言対象ではないかもしれませんが、7ページで電子証明書の失効事由の中に国外転出と記載されております。この点、マイナンバーカードの署名用電子証明書に関しましては令和6年5月27日より継続利用が可能となっておりますので、パブリック・コメントに付す段階においては表現を検討する必要があるように感じました。   また、甲1案ですけれども、基本的に遺言者本人や証人等が遺言を保管することになると思われるところ、作成した遺言が発見されないリスクを抱えており、これをどのように解消していくかが検討課題になるのではないかと考えています。   次に、甲2案ですけれども、①の遺言者の作成に係るものであることを確実に示す措置がどのような措置であるか、検討する必要があるように考えています。法令上、同様の表現として、地方自治法や商業登記法、官報の発行に関する法律などで見られますが、それぞれ使用されている電子証明書は法務局が発行するものであったり、民間事業者が発行するものなどといった違いがございます。(注2)で電子署名を想定しているとありますので、どのような電子署名を付与するのかについても慎重な検討が必要であると考えています。   また、甲2案の②のブラケットで、録画を同時に行う方法とあり、現状、検討段階だとは理解しておりますけれども、録音のみの場合には、数秒から数十秒程度の音声データがあれば相当の一致率の音声を生成することが可能であると理解をしております。そのため、少しでもリスクを低減させるためには、録音に加え録画も用意しておいた方が妥当であるように考えております。   ③で、遺言者以外の者が関与しない状況の下という要件が掲げられており、この説明として、(注4)では生体認証や振る舞い認証等が挙げられています。ただ、(注4)の措置は、遺言者以外の者が関与しない状況を担保するための措置というより、遺言者本人が関与していることを示すための措置であるようにも思われます。この点は23ページ30行目辺りからの説明でも同様の考えが示されているように捉えております。そのため、遺言者以外の者が関与しない状況を担保する措置の説明として(注4)が適当であるかについては、更に検討が必要ではないかと感じています。   (注5)で、更なる改変防止措置をとることの要否についての言及がございます。24ページの(注)では、電子証明書の有効期間を目安に、有効期間経過前に改めて電子署名を付すという考えが示されておりますけれども、電子署名は法律上の取扱いとして意思表示を表すものであるところ、改めて電子署名が付された場合の遺言の成立日をどのように考えるかといった点も議論の対象になるのではないかと感じました。暗号方式の危殆化を防ぐという観点から、民間事業者が一定期間保管するということであれば、アーカイブタイムスタンプなどを活用することも検討の余地があるのではないかと考えています。   なお、25ページで電磁的記録のハッシュ値のみを保管するという考えが示されておりますが、仮に電子署名やタイムスタンプを重ねて付した場合には、電磁的記録に記録された本文等は一切変更されていなくてもハッシュ値が変わることになるため、重ねて電子署名やタイムスタンプ等の措置をとる際には検討する必要があろうかと考えています。   (注6)でα案とβ案が示されており、α案の場合、遺言者が民間事業者のサービスを利用する時点や、裁判所において遺言の有効性の判断をしなければならない場面において、当該サービスが技術水準を満たしているのかどうかを判断しなければならず、不測の事態が生じることも考えられます。そのため、甲2案であるならばβ案による方が安定した運用になると思われます。もっとも御説明にもあったとおり、β案によった場合には、認定するための技術の基準の適合性判断や、そもそもの基準の策定に相当の検討が求められるように考えています。   26ページ目の27行目から、民間事業者における保存についても言及がございます。この点は、御説明にあるとおり事業の継続性や永続性の観点から検討が必要であるとともに、第3回部会でも述べさせていただきましたけれども、民間事業者の活用という場合にはコンソーシアム型のブロックチェーンなどについても再度検討が必要ではなかろうかと考えています。あわせて、前回部会での倉持先生の御指摘のとおり、他の法令等との関係性の整理も必要になってくるのではないかと考えています。   乙案につきましては、電子署名を付すことについて本文で意見を聴いてはどうかという第7回部会での発言を②で記載してくださっているものと捉えており、感謝いたします。公的機関での保管であれば利用者も安心感が増すのではないかと捉えています。   丙案につきまして、内容を読めば分かることではございますが、公的機関がプリントアウト等をしたという表現の場合、あたかも公的機関がプリントアウトすると捉えられかねないところがございますので、プリントアウト等をした遺言書を公的機関が保管するといった書きぶりの方が誤読が生じないようにも感じました。また、この先の議論にはなりますが、自筆証書遺言の方式要件の在り方との関係で、丙案による保管と自筆証書遺言の保管制度の違いが分かりづらくなるようにも思われます。この点はパブリック・コメントを踏まえて更に検討する必要があると考えています。 ○大村部会長 ありがとうございます。隂山委員からは、この資料の順番に従って甲、乙、丙について御意見を頂きました。幾つかにまとめさせていただきますけれども、一つは、幾つかの案を通じて出てくる電子署名の在り方について、電子署名のないところは、例えば甲1案については、これもあった方がいいのではないかということ、あるところについては、どういう電子署名を求めるのか、あるいはそれに伴う問題として成立日の問題などをどう処理するのかといった、そういう派生的な問題があるのではないかという御指摘を頂きました。それから2番目に、ブラケットが付いていて選択肢になっている部分ですね、録音なのか録音・録画なのかという点については、録画も加えた方が確かではないかと、それからα、βというのがあるけれども、これもβの方が確かなのではないかという御意見を頂戴しました。3番目に、甲2案の③の遺言者以外の者が関与しない状況の下においてという要件について、(注4)の説明が付いているけれども、これがこの部分の説明として適切なのかという問題提起を頂いたかと思います。そのほか、より一般的な問題提起という形で、甲案の遺言が発見されないリスクをどうするかとか、あるいは民間事業者の保管の場合の対応措置をどうするかとか、あるいは丙案の表現、説明ぶりをどうするかとかといった御指摘を頂いたと理解をしております。ありがとうございました。   ほかはいかがでしょうか。 ○萩原委員 萩原でございます。甲案に関しましての考え、今回初めて私、参加させていただきますので、率直なところも含めて申し上げさせていただきたいと思っております。   隂山委員のおっしゃる線とかなり一致していると思っておりますけれども、まず甲1案、この証人の要件でございますが、甲1案と甲2案は結局、甲2案は証人の立会いを不要とするものですが、私は証人の立会いというのは極めて重要ではないかと思っております。結局、後々紛争、いろいろな形の家族の争いがあるわけですので、それが後日、裁判手続で問題になったときに、録音・録画されている本人が読み上げている状況だけではなく、やはりその状況をすぐそばで確認したという証人、真意性の担保としてはそういう方々の意見が非常に重要になると考えております。ですから、基本、甲1案をベースに考えるべきではないかと私は思っています。   それで、御本人の読み上げる状況に関して証人がどういう役割を果たすかというところで、なかなか難しいところですけれども、それこそ弁護士、司法書士、そういった専門的な知識のある、そういう方々が確認をし、そして実際に真意かどうかの質問までするような、そのやり取りがあるような、それが一番望ましいわけですが、なかなかそういうわけにもいかないのであろうと。ただ、いずれにしましても証人がすべきことについての定めについては、可能な限り単純なものにと、確かに一般の方々にどこまで求めるのかは難しいですけれども、ただ、やはり私ども公正証書遺言で読み上げをして、そして本人に確認している際に、これはこういうことでしょうかというふうに少し違った質問も含めて入れる場合に、そこで、これはこういうことですという、そういう真意が分かるような場合もありますし、そこはちょっとと答えられる方もおられるわけで、言ってみればそういう問い掛けができるような、そういう措置を証人がされる、それによって真意性は担保されていくのではないかと、こう思うものですから、そういう意味で証人の方は必要ですし、その証人の役割というのを広く、事案にもよるかと思いますので、それは認める方向でよろしいのではないかと思っております。   甲2案、これが証人を入れない場合の、その場合の懸念というのは、もう先ほど隂山先生がおっしゃったとおりでありますけれども、私も甲2案の③ですね、そして(注4)、これが民間事業者のサービスを活用することによって、どういうふうにすればここにありますような、遺言者以外の者が口述をすることができないようにする措置をとる、遺言者以外の者は関与しない状況の下においてという、これをどこまで保証できるのかと。録音・録画によって、遺言者自身が話をしている、あるいは撮影されることによって間違いなくこの方は遺言者である、これが分かるとは思いますが、その周りの、周囲からの働き掛けがないということが、この証人のいない状況で分かる、そういうデジタル技術、これが今一つ理解できませんので、この辺りはやはり少し慎重な御議論を頂くことが必要ではないかと思っております。   乙案、丙案に関しては、また今後の更なる議論があると思いますが、取りあえず私からは、甲案に関しまして率直な思っているところを言わせていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございます。萩原委員からは、甲案について御意見を頂戴いたしました。甲1案がベースであるべきだという御意見で、その理由として、証人の立会いというものが非常に重要である、甲1案を認めた場合には、証人にできる範囲で広い役割を担わせることが望ましいという御意見と伺いました。これに対して甲2案は、先ほども御指摘がありましたが、③の要件のうち遺言者以外の者が関与しない状況というものをいかにして確保するのか。前提として、関与しない状況が必要だというお考えだと理解をしましたが、その上で、これを確保するということが技術的に可能なのかというところがなお問題なのではないかという御指摘を頂いたと受け止めました。ありがとうございます。   挙手されている方が複数おられたと思いますが、倉持幹事、石綿幹事、それからオンラインで冨田委員、その順番で伺いたいと思います。 ○倉持幹事 ありがとうございます。基本的に従前の甲1案と乙案の方式を創設することを中心としつつという部分はよろしいかと思いますし、あと、丙案についても乙案の並びではないかということもあるので、乙案が許容されるのであれば丙案も十分あり得るという位置付けになるのかなと思っております。   甲2案については、今御意見を幾つか頂いたとおりで、やはり③の遺言者以外の者が関与しない状況とあるのに対して、隂山委員からも御指摘がありましたとおり、(注4)だと、これは本人確認を示していて、少し言葉としても整合していないのではないかという問題もあります。あと、萩原委員から御指摘があったとおり、遺言者以外の者が関与しない状況を担保するアプリというのは私も想定できなくて、遺言者以外の者が関与しないという場合に、その作成の空間にいないということだけではなくて、事実上影響を及ぼしているかどうかということもやはり想起せざるを得なくて、そういう他人の関与が一切なくて、遺言者本人が全く自分の発想の下に作ったということを担保できるというふうに誤解を受けるような言葉でもあるような気もします。実際の遺言において家族の意向とかそういうのを全く無視して、俺が全部決めるのだという遺言がどれだけあるのかということもありますし、今回の部会資料にある遺言者以外の者が関与しない状況というのは少し言いすぎのような気もします。ここで言いたいのは多分、真意性を確保したいという趣旨かと思いますが、ここは少し表現を改めないと、パブリック・コメントに付したときもかなり誤解を生むのではないかと思っております。   それから、甲2案の関連でα案とβ案ということですけれども、ここでいうところの主務省、主務大臣が法務省、法務大臣であるのか、それともデジタル庁であるのかによって、この制度のイメージが大分変わってくるかと思います。前回申し上げたとおり、やはりこれがアプリを使っての非弁行為になるようなことがないかということも弁護士会としては少し関心があるところでありますし、どのような官庁がチェックするのかというところにも関心があるところでございます。最後のところは少し質問も兼ねていて、要するに主務省、主務大臣とはどこを指すのですかという質問にもなります。 ○大村部会長 ありがとうございます。倉持幹事の御意見は、基本的には前回までの旧甲案、今回のものでいうと甲1案ということになりますけれども、プラス乙案、プラス丙案ということで、前回までの基本的な線でよろしいのではないか、こういう御意見だと理解をしました。その上で、甲2案の③について先ほどから問題になっているところについて、表現に注意する必要があるのではないかという御注意を頂いたと理解をいたしました。   おっしゃっていたことの確認なのですけれども、この③というのは、②の記録をするに当たって、その口述をするということで、この口述をしているという状況を録音ないし録画するという場面で、遺言者以外の者が関与しないことを確保するということなので、遺言作成時のことは切り離されているのではないかと思っております。ですが、ただ、表現は全体として影響を排除するような措置をとるのかと受け止められるようなところがありますので、そこに留意する必要があるという御趣旨として受け止めさせていただきます。そういうことでよろしいですか。 ○倉持幹事 はい、結構です。確かに②の記録をするに当たってはということですけれども、要するに同時空間ではなくて、その前後においての影響というのもやはり解釈によっては含まれるのではないかという趣旨で申し上げた次第です。 ○大村部会長 ありがとうございます。それから、α、βの点については、主務大臣による認定をするということになったときに、これがどこになるのかということで大分イメージが違うのではないかと。これは質問も兼ねてということでしたので、事務当局の方から何かあれば、お答えを頂きたいと思います。 ○齊藤幹事 今御指摘いただいた主務大臣について今、必ずしも絞り込みができているわけではございませんが、やはり民事上の重要な意思表示を行うための制度、仕組みの担保という意味では、法務省が外れることはないのかなという気もいたしますし、他方でデジタル技術の活用、この水準としてどのようなものがあるのかの知見と、その中身の確認という意味ではデジタル庁が関与するということも、今後の調整次第ではありますが、可能性としてはあり得るのかなというのが現状でございます。 ○大村部会長 よろしいですか。 ○倉持幹事 ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○石綿幹事 石綿です。甲2案と丙案についてコメントさせていただければと思います。   甲2案は、従前から出ている③についてですが、遺言者以外の者が関与しないということの意味を明確にする必要がないかという点です。第一に、関与が何なのか、その場にいないということだけなのか、関与が何を意味しているかを明確にしていただけるとよいのかなということです。第二に、その場にいないということであったとしても、それを確認・保証する方法があるのか。例えば、最初に部屋を映してくださいと言って周りに誰もいないことを確認するということが考えられますが、その後、カメラの反対側に人が現れることも考えられると思うので、その場にいないということをどうやって保証するのかという問題が生ずるかと思います。そうすると、三つ目のコメントですが、べき論としては関与しない方が望ましいということかもしれませんが、要件として書き込んでいくべきなのかという問題もあるのかなと考えました。これが甲2案についてです。   丙案についてですが、プリントアウト等した遺言書ということで、主たるものとしてはパソコンで打ったものをプリントアウトするということだと思うのですが、35ページのなおから始まる2段落目などを読みますと、場合によっては自筆で書いたものも丙案に含まれるということを念頭に置いていらっしゃるのではないかとも思います。プリントアウト等した遺言書というのがどのようなものを意味しているのか、究極、有体物に何らかの文字情報があれば全て丙案の対象になるのか、やはり何か元々の入力はデジタルであることが前提とされていて、自書されたようなものというのは違うのかといった辺りの整理をしていただけるとよいかなと思います。従前は気になっていなかったのですが、多分今回追加していただいた35ページのなお書のところを読むと、自分で書いた、ないし他人が書いたものや、そのように手書きで書いたものをコピーしたものも対象になり得るようにも読める気がいたしましたので、コメントさせていただきます。 ○大村部会長 ありがとうございます。甲2案の③の部分についてと、丙案についてということで、甲2案の③については、技術的に可能なのかということ、解釈の余地があるということ、要件としてはなかなか書きにくいのではないかといった御指摘を頂きました。それから、丙案についてはプリントアウト等と書いてあるけれども、等というのがどこまでなのかという範囲の問題があるということで、これは御質問というよりも検討していただきたいということだと受け止めました。   そして、次がオンラインで冨田委員、そして裁判所、それから柿本委員という順番で伺おうと思います。 ○冨田委員 ありがとうございます。連合の冨田でございます。私からは意見を1点と要望を2点申し上げます。   まず意見でありますが、これまでも申し上げてきましたように、デジタル技術を活用して遺言を簡便に作成できる方式を設けるという出発点に照らし合わせると、丙案の方式も創設すべきと考えます。その上で、繰り返しになりますが、保管や口述を要件とするのは遺言者の負担が大きく、誰もが使いやすいものとは言いづらいのではないかと感じております。真意性、真正性を確保しつつも、もう少しだけでも要件を緩やかにできないか、検討をお願いしたいと思います。   それから資料の作り込みについて2点、要望を申し上げたいと思います。この資料全体を拝見させていただいて、この後パブリック・コメントに付していくということを考えると、非常に分厚くて難解で分かりにくいというのが読んでみての感想です。これまでも事務局の皆さんには、各案の対比表を作成してもらうなど工夫を凝らしていただいたところでありましたので、実際にパブリック・コメントに付す資料については、関連資料まで含めて、一般の方が読んで平易に理解できるものとなるよう工夫をお願いしたいと思います。   その点で申し上げますと、第1の1では、普通の方式におけるデジタル技術を活用した新たな遺言の方式の在り方が表題なのですが、具体的な案を見ると、保管を要件とする方式と保管を前提としない方式という形で、保管の有無が前面に出ていることに少し違和感を感じています。議論の中心にある、どのようなデジタル技術を活用して遺言を作っていくのかが分かる案の示し方ができないか、引き続き御検討をお願いしたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。冨田委員から、内容については要件をもう少しだけ緩和できないかという御要望を頂戴したものと理解しました。それから、資料の作り方について、こちらは正に御要望であると理解をいたしました。80ページほどある資料が今できておりますので、なかなか一般の方々に御理解を頂くというのが難しいのではないかということで、できるだけ平易な資料を作っていただきたいと。これはパブリック・コメントのときには常に注意すべきことだろうと思いますが、これまでに作られたこともある対比表みたいなものも含めて、分かりやすくする工夫をしていただきたいという御要望でした。それから、表題についても中身と多少ずれているところがあるのではないかという御指摘もありました。   これは一番最初に小川関係官の方から御説明があったところでもありますけれども、今回の資料の補足説明は、これまでの議論の経緯に対応する形で説明が書かれております。また、表題等も、これまで皆さんが議論してきていて前提として了解しておられるということで、何が分かれ目になっているかを示すという形で付けられていると思いますので、最終的にパブリック・コメントに付す案を準備する際には、読者として一般の方々が御覧になるという観点からレビューをしていただいて、表現については気を付けていくようにしたいと、これは事務当局の方にもお願いをしたいと思います。ありがとうございました。 ○宇田川幹事 最高裁家庭局の宇田川でございます。本文のゴシック部分ではないのですけれども、家裁の検認手続に関するものでございまして、周辺の事情として誤解のないようにしていただくことが重要かと思いますので、コメントさせていただければと思います。   部会資料の28ページの(注2)、甲2案に係るものではありますけれども、甲1案にも同じように係ってくるものかと認識をしております。ここに、家庭裁判所の検認においても、提出された録音等の記載から、遺言者が遺言の要旨を朗読したか否かを検証すれば足りるという記載ございます。下から2行目の「そうすると」以下の部分でございます。ここについて2点、問題があるように考えておりますので、その点を申し上げます。   1点目ですけれども、遺言の要旨を朗読したか否かというのは、何をもって要旨とするかなど評価的な要素が入っている上、実質的に有効な口授がされたかどうかを判断するものであるように思われます。このような取扱いは、部会資料の27ページなどにおいて、検認は検認時における遺言書の状態を確認しその証拠を保全する、その現状を確定するということかと思いますけれども、そういうもので、形式的要件の充足の有無を判断するものではないと整理いただいているところとも整合せず、この整理を踏み出してしまっているように思われるところでございます。   2点目について申し上げます。新たな方式の遺言が創設された場合の検認の方法は、裁判実務において検討していく事項と考えられますけれども、現在の検認手続の実務においては、紙の遺言書になりますけれども、紙の遺言書などの写しを取って、添付の写しのとおりとして調書上明らかにする取扱いが一般的と認識しております。この取扱いからすれば、デジタル技術を活用した新たな方式の遺言書の検認に当たっては、裁判所が元のデータを複製して、それを紙と同じように調書に添付して記録することが想定され、それ以上に、録音等を再生してその内容を確認することや、遺言の全文あるいは要旨が朗読されたとの事実を確認することまでは想定されていないようにも考えられるところです。   このような問題がありますことから、検認の方法について記載した28ページの(注2)の「そうすると」以下の部分については、先ほど申し上げたように部会資料上の整理や現在の裁判実務と整合しない面もあるように思われますので、今後、補足説明を中間試案で作成する際には、その点について入れないということを御検討いただければ幸いでございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。宇田川幹事からは、甲案に係る検認について御意見を頂きました。二つありましたけれども、検認の役割ということについてと、それから検認の方法についてということで、誤解がないように特に説明を整えていただきたいという御要望として承りました。その際に御指摘があったことで興味深かったのは、要旨ということだとどこまでが要旨か分からないではないかという御指摘があって、これは検認にかかわらず、要件として要旨というものを使う場合には全体としてそういう問題をはらむことになるという御指摘でもあると受け止めさせていただきました。どうもありがとうございます。 ○柿本委員 柿本でございます。御説明ありがとうございました。私からは、要望が2点ございます。出発点は、簡便により多くの市民が遺言を残せるようにするために、デジタル技術の活用ということなのですけれど、デジタル技術が何を指すかというところが非常に曖昧だと思われます。   甲1案の④の録音・録画について、今や、AIによる生成技術の進歩により、あたかも本人がしゃべっているように見えて、実はそうではない可能性もでてきています。ですので、デジタル技術の急速な進展と、それからこの法律の施行ですね、そこがうまくリンクしていくように細心の注意を要するべきと考えます。   2点目は、β案についてでございますが、高齢者の身元保証サービスなどで問題も出てきており、民間事業者の認定制度については、確実な運用が求められると考えます。現在以上の2点であります。 ○大村部会長 ありがとうございます。柿本委員からは、技術も進歩しているけれども偽造技術の方も進歩しているということで、技術の進展と制度というもののギャップが生じないように注意をしていただきたいという御要望があったものと受け止めました。それから、甲2案の(注6)について御意見を頂いたと思いますが、それは一括して言うと、民間事業者が参入するのに対して一定の対応というものをしてもらわないと不安があるという御意見だったと承ってよろしいでしょうか。   そういうことで受け止めさせていただきます。ありがとうございます。 ○相原委員 相原です。先ほど石綿先生が聞かれたところを私も少し確認させてください。丙案でプリントアウト等とあるのですけれども、既に自筆証書遺言の保管制度があるわけです。人が書いた書面にサインして保管に持って行くことも、今後はあり得るという方向になるのでしょうか。   それからもう一つ、意見です。甲2案について意見を広く求める際に、遺言者以外の者が関与しない状況の下においてという文言で、みんな、それができるのならば創設すればいいねと考えるであろうと思われます。逆に弁護士等の立場からすると、このままの表現ぶりではなかなか内容、具体性が今一つ分かりにくいし、本当に法律の要件としてこれでいいのだろうかと思いました。   簡単ですが、以上です。 ○大村部会長 ありがとうございます。石綿幹事の意見と重なる御意見だったと思いますが、丙案については御質問という形でお述べになったので、事務当局の方で後でお答えを頂きたいと思います。甲2案の③については、問題になっている要件が技術的に確保できるのかという御質問が相次いでいるのですけれども、できると言われれば、それはそれでいいのかもしれないけれども、本当にできるのか。もしできないとしたら、こう書いてあるのはできないことを言っていることにならないか、そういう御意見だと承りました。ありがとうございます。丙案についての御質問の点について、もし何かありましたらお願いします。 ○齊藤幹事 丙案は元々は乙案とのパラレルな関係から、電磁的記録をもって遺言とするのであれば、それをプリントアウトしたものも保管の手続に乗せて遺言とすることができてはどうかという経緯かと考えております。そういう点で、プリントアウト等という記載になっているわけですが、他方で等の中に何が含まれるかと申しますと、積極的に何かプリントアウトが要件になっているわけでもないので、そういう意味では現状、文字情報として紙の上に表現されたものであれば含まれ得るということにもなり得るかと考えております。そうしますと自筆証書とのすみ分け、線引きはどうなるのだということが十分ありますので、そこは今日御指摘いただいたことも含め、整理が可能か、少し次回に向けて整理し、また委員の先生方の御意見を伺えればと思います。 ○大村部会長 差し当たりよろしいですか。ありがとうございます。   そのほか御意見はいかがでしょうか。 ○中原幹事 2点ありまして、まず丙案についてでありますけれども、丙案の内容自体が実は少しあやふやなところがあるのではないかということを、今御議論を聞いていて思いましたが、差し当たりプリントアウトの方式に限定しますと、ワープロソフトは何とか使うことができる、プリントアウトすることもできる、しかし電磁的記録のみを操作していくのには不安を覚えるという人は、高齢者を中心に一定程度いるように思われ、その点で丙案、より広くプリントアウト方式の遺言を考えるということには一定の価値があるのではないかと個人的にはまだ思っております。   丙案を甲案及び乙案よりも一段下げて位置付けるというのは、デジタル技術の活用の程度が低いという認識に基づくのではないかと思いますけれども、そういった観点から選別するという発想は今まで当部会の議論にはなかったし、むしろ様々な人々、様々なニーズを考慮するということが出発点であったと理解していますので、丙案自体を積極的に支持するかどうかはともかく、意見募集に当たってそのような階層付けをするということは、率直に言って疑問であります。意見募集に際して意見を誘導する必要はなく、フラットにニーズの多寡、現状の案への賛否等を問えばよいはずでありまして、甲、乙、丙は横並びで聴くべきではないかと思います。   甲2案についてですが、民間事業者によるサービスの提供を想定した遺言の方式について広く意見を聴いてみるということ自体は、抽象的には価値があることだと思います。ただ、甲2案の①から③の要件というのは、小川関係官からの御説明ですと、証人の立会いに相当する措置だという御説明がありましたし、それから大村部会長からも、今回甲1案として挙げられているものの中でデジタル化できるところを探していくというような発想だというような御説明もありましたけれども、ただ、卒然と眺めてみますと、口述の録音・録画の記録という部分は幾分具体的なのですけれども、そのほかは、当該電磁的記録が遺言者の作成に係るものであるだとか、遺言者以外の者が関与しないだとか、遺言者以外の者が口述をすることができないだとか、要するに、これは遺言の真正性及び真意性という基本的な要請を言い換えたものにすぎず、実質的には主務省令、さらには民間事業者によるサービスの開発に投げているもののようにも映ります。   もちろん技術的な事柄でありますので、法形式上はそうならざるを得ないと思いますが、我々の使命であるとか責任というのは、こういった方式が現時点において、さらには近い将来でもいいのかもしれませんけれども、現実に可能であるということをきちんと確認する、何年後、何十年後かに方式違背であるとして無効とされる、あるいは紛争を招くようなデジタルの遺言が次々と出てくるというような事態を生み出さないようにするということにあると思いますので、意見募集を経て甲2案を残すということになった場合には、再度必要なヒアリングを実施するなどして集中的、具体的な審議を行うべきであると思います。   既に複数の委員から御指摘があったように、甲2案は第三者による不当な影響の防止という点に本質的な弱さ、あるいは懸念があると思われますので、遺言者以外の者が関与しない状況を作り出すのが技術的にどの程度まで可能なのか、これは重要だと思いますが、さらに、これをどの程度まで、例えば自筆証書遺言との対比で、要求すべきなのかということを慎重に議論する必要があると思います。   それから、本文(注6)のα案のように、一応の要件定義だけ主務省令で定めて、あとは民間事業者のサービス開発に任せるというようなことでよいのか、それは余りに危険であって、少なくとも当面はβ案のように参入者のコントロールが必要ではないか。遺言が実際に無効になった場合には多分、民間事業者の責任の話が出てくると思うのですけれども、恐らく免責条項を入れるのだと思うのです。しかし、有効な遺言を作るというような本質的な債務というのですかね、そういうものについて免責を許してよいのだろうかとか、さらには、もう遺言者は死亡してしまっているので、当該事業者の責任を一体誰が追及することができるのだろうかとか、さらには、そもそも遺言の効力発生時に当該民間事業者がいなくなっているということもあり得るわけで、いろいろとよくないシナリオを想定して、対処すべきリスクがあるのかないのか、あるとすればどう対処すべきなのか。今回のα案とβ案の対置というのは、民間事業者のコントロールの話と遺言の執行の話が交錯していて、非常に分かりにくくなっていると思いますので、論点を列挙、整理して万全な議論をすべきではないかと思います。今回の甲2案の修正とか撤回を求めるものではなくて、今後の審議についての意見でございますけれども、念のため述べさせていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございます。中原幹事からは2点、御意見を頂戴いたしました。直前に問題になっておりました丙案についてなのですけれども、取りあえずプリントアウトに限ってということでしたけれども、これは一定の人々の間にはニーズがあるのではないかということでこれまで議論がされてきたので、甲、乙、丙について前回までは3案併記という形であったのを今変える必要はないのではないか、従前どおりの記載の仕方がよいのではないかという御意見として承りました。これは、事務当局の方から最初に御意見を伺いたいと問われた点についてのお答えということにもなろうかと思います。   それから甲2案については、こういうことで民間事業者の提供するデジタル技術を利用した案を作る、それ自体については結構であると考えるとして、要件の①から③が結局のところ、適切な要件を定めるということになってしまっていて、内実がないのではないかという御意見だったのではないかと思います。その上でということになりますけれども、仮に中間試案以後においてこの案を残して更に検討するということであるのだとすると、中身について法律に一定程度書き込めるような対応をするための審議を集中的に行う必要が生ずるのではないか、また、民間事業者の責任の問題についても考える必要があって、免責条項の効力などというものも果たして認めてよいのかといった問題も含めて検討すべき問題は多い、こういう御指摘だったかと思います。   中原幹事からは甲2案の難点について御指摘がありましたが、しかし撤回や修正を今ここでせよということではないということでした。先ほど、相原委員と石綿幹事からは、やはり甲2案はこのままでは問題があるといった御発言もありましたし、倉持幹事もそういうことだったのかもしれませんけれども、そうした方々の間で意見の方向性は同じなのかどうなのかというところも、後で必要に応じて伺いたいと思います。相原委員は、これではちょっとというような御発言だったと思うのですけれども、石綿幹事は、甲2案の③の要件をなくした方がいいのではないかということで、なくした状態の案でよいということだったのかどうか分からなかったのですが、後でその辺の評価も承れればと思います。   取りあえず戸田委員、それから萩原委員、そして内海幹事という順番で、更に御意見を頂戴したいと思います。 ○戸田委員 ありがとうございます。皆さんもおっしゃっているとおりなのですけれども、遺言者の真意の本質というのは、遺言執行を自分の思うとおりにやってほしいという、そこだと思うのですけれども、それを実際に実現しようと遺言書に書こうとすると、相当な専門知識がないと書けません。税法であるとか、それから、特に不動産の場合はいろいろな規制が各物件ごとにものすごくありますので、そういったものを全部調べ上げないとできない。そのときに他者の力を借りずに一人でできるかというと、なかなか難しいと思うのです。頼りにしている親族に調べさせるみたいなこともあり得るわけなので、他者の関与を排除するということ自体がどうなのかなと私も思います。ただ、不当な関与というのはやはり避けねばいけないと思います。例えば強迫的な行為の環境下、本人が不本意な状態で作成しているといったことについては排除しなければいけないので、そういったところを、甲1にしても甲2にしても、実現しなければいけないのではないかと思います。   特に、公正証書遺言のように公証役場の会議室に入ってやる話とは、証人がある甲1も全く違う状況でございます。このため、例えば、甲2と甲1で明らかに不当なものを避けるということをやろうとすると、何らかのチェックをする必要があります。そういう意味では、甲2案の(注4)で書かれているようなデジタル技術を使って事件性についての検出を行うといったようなことは実際に今、技術としてはございますので、そういったものを活用してチェックをするというのは有効ではないかと思います。   それから、2点目なのですけれども、甲2案の①で書かれているように、「遺言者が、電磁的記録に遺言の全文及び日付を記録し、当該電磁的記録が改変されているかどうかを確認することができる措置その他の当該電磁的記録が遺言者の作成に係るものであることを確実に示すことができる措置をとること」と書かれてあれば、技術的にこれをどうやって実装しようかとすると、当然電子署名は使いますし、それから、それを補強する意味でタイムスタンプも使うし、電子署名、タイムスタンプの定期的な更新も行うし、今こうやって話している間にも確実に量子コンピューターが実現される時代に近付きつつあるわけですから、それに対する対量子暗号のようなことも措置としては必要になってくると。そういったものはこの文章から容易にはじき出されるというか、そういった現状の技術というのを使うことになろうかと思いますので、甲2案の①の文章としてはこれで十分ではないかと思います。また、これは甲案のみならず、同じこの要件で書かれていれば、乙案についても適用できる話ではないかと思います。   それから、乙案について、少し細かな話になるのですけれども、主として署名用電子証明書を使って本人確認を行うのであれば、(注3)で書かれているような宣誓を行うことについては電子署名を打つこと、それを、出頭しているのであれば出頭先の職員が目視で確認しているという状況下、ウェブ会議であれば画像を通じて職員が確認する状況下で、例えばあんちょことかそういったものを見ないで電子署名を打てていれば、これは本人の意思を反映したものであるということは明らかになります。このため、電子証明書を使った本人の意思確認を行うことで事足りるのではないかと思います。   それから、聴覚障害をお持ちの方などに対しては画像に表示させて本文を確認するというようなことを書かれているわけですけれども、それと同等であるのであれば、障害をお持ちでない方についても同じ方式をとれば足りるのではないかと思います。口述でもって見ず知らずの方に自分のプライバシーを全部さらけ出して聞かせるというのは、非常に精神的な負担にもなりますので、そういったことを回避するのであれば、画像を見せる、あるいは視覚障害をお持ちの方については読み上げソフトでヘッドホンを使って聞かせるというような方式で十分ではないかと思います。   現在の自筆証書遺言書保管制度についても、実際には遺言書保管官の方がその内容をチェックされているわけですけれども、あれ自体も遺言をする者からすると少し気持ちが悪いとか、余り見られたくないというようなところもございますので、そういったところに配慮するのであれば、こういった方式でもって対応するというのが妥当ではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。戸田委員からは、甲案と乙案について御意見を頂戴いたしましたが、甲2案の①はこれでよろしいのではないかという御意見だったかと思います。それから、③の先ほどから問題になっているところなのですけれども、他者の関与を排除するということは、遺言は他者の影響を受けているでしょうという前提でおっしゃっていたかと思いますが、不当な関与は排除するということでよいのではないかというお話だったかと思います。これは、先ほど少し申しましたように、どの場面での話かということを切り分けて考える必要もあろうかと思いますが、不当な影響は排除する必要はあるけれども、そういう限定を掛けるべきではないかというような御意見として伺いました。それから、乙案については、おっしゃっているのは、口述という要件というのが少し重すぎるのではないかということで、それに代替するようなものを考えるべきではないかということだったでしょうか。 ○戸田委員 代替案が書かれているので、これを汎用的に使えるのではないかと思います。 ○大村部会長 分かりました。 ○萩原委員 先ほど甲案について申し上げましたので、乙案、丙案について申し上げます。この点、戸田委員のお話と大分違う話になるかと思いますが、まず、乙案でございますけれども、これは何が一番よろしいかというと、やはり公的機関に電磁的記録の保管を委ねると、ですからその後は非常に安全であるということ。公的機関に出頭あるいはオンラインで遺言書保管官なりの前で遺言の全文を読み上げること。率直なところ、電磁的記録で書類を作った後、また電子署名をしたという場合でも、それは本当にその人自身が行ったかどうかということは、外形上は分からないわけですね。ですから、それに代わるものとして、遺言書保管官、公的機関の職員の前で全文を読み上げる、ここら辺は何としてもやっていただく必要はあるのかなと考えております。   といいますのは、特に4ページの(注3)で書かれているとおり、全文を口授する方法に代えて宣誓を行うと、これは私の遺言ですと。これは率直なところ、こういうふうに言えと言われて、言われた人なら誰でもできることでありまして、内容が本当に分かっているのかどうかも分からない。少なくとも、分かっているのかどうかというところの問題はありますけれども、内容を自分で語るという、それに比べればまるで違うところだと思いますので、これは最低、保管官の前での読み上げは必要だろうと思っております。   先ほど少し証人のところでも出たのですけれども、この公的機関の遺言書保管官なりがどの程度のことをやられるのか。例えば、提出された電磁的記録、これが形式的要件が整っているか、これをチェックすると、これは従前どおりということになりますけれども、それで、面前で全文を読み上げると。読み上げたその状況で周りに誰もいないと、特に不自然ではないということで、それですんなり終わる例はありますけれども、例えば高齢の方の中には全文の読み上げが必ずしも、あるいはうまくできない場合もおありになろうと思います。また、途中から読み上げられなくなるような、そういう場合もあると思いますが、そういう場合は、やはりこれはその時点における電磁的記録の保管は断るということになるのか、それから、全文読み上げの状況において何か、特に本人の状況に、精神状態とか、そこまで踏み込めるのかどうかという問題なのです。そういう場合に、遺言書保管官というのはどこまでのところができるのかと。先ほどの証人のときも少しお話ししましたけれども、もしも常識的な範囲でこれは問題があると判断できた場合に、その時点における保管をお断りするような、そういう権限までこの遺言書保管官の方に与えるような、それを考えられるか、これはまた少し法務当局のお考えにもよろうかと思いますけれども、そこは少し、真意性とかそういう問題を確認する上では、お話を少し伺って、また皆さんの御意見を伺ってみたいと思うところでございます。   そういう意味で、乙案と丙案を行う場合はそういう手続は必要なのかなと。甲案は証人立会いの下の録音・録画、そして乙案は公的機関の前での内容の読み上げと。先ほどのに付け加えますと、内容の全文読みはともかく、要旨を読み上げるので足りるかどうかというところですけれども、それではその要旨の読み上げというのはどこまでなのかと、先ほども御指摘があったと思いますけれども、その判断を保管官がするのかどうか、要旨の読み上げがあったから、これで保管は大丈夫だと、こういうような判断ができるのかどうか、そういう問題もあると思います。   そういう意味で、甲案と乙案の2本、これは考えようによっては、証人を立てる場合と、あるいは証人が無理であれば公的機関、基本は法務局になるかと思いますが、そこへ出頭して全文をお話しするという、そういう明確性があって、しかも今までの自筆証書遺言にそういう選択肢が増えると、デジタル技術を使った選択肢、丙案も含めてということかもしれませんけれども、これはかなり国民にとってはやりやすくなるのかなと。   更にそれをどこまで緩めるかという、現時点でそこまで緩める必要はないのではないかとは私は思っています。なぜならば、遺言を作成する場合に、作成したときに遺言者の方に感想を聴くのですね、これで安心しましたと、こういうふうに言うのが、何が安心するかと、これで後々、私が死んだ後、争いが起こらない、心に残っていた一つの気になるところがこれで少しなくなったと。本当にそうかどうかの問題はまだありますけれども、ただ、そう思うことが大事なわけです。   ですから、先ほど甲2案でもありましたけれども、デジタル技術で最新技術を使ってこうすればという、これを使えば大丈夫であるというような安心感を持てるようなものができるのであればともかく、そこら辺がなかなか、議論されている段階では、例えば弁護士、司法書士、そういったいろいろな方々が相談を受けて、こういう形で遺言を作ったらどうですかと、そういう勧め方はなかなか危なくてできないのではないかと思いますので、そういう意味で、是非明確な、要するに一般の方が見て分かる明確なデジタル技術を利用した遺言の方式、これが複数提示されると、これが大事だと思っております。すみません、最後は少し感想めいたことまで。 ○大村部会長 ありがとうございます。先ほど甲案について御意見いただいたということで、乙案及び丙案ということで、主として乙案を念頭に置いて御意見を頂戴したかと思います。公的機関に保管するというのが安全さ、確実さという点からよろしいであろうということで、その際には保管官の前で全文口述が是非必要だと。周りに誰もいない、そして、不自然なところがないというときにそれを受理する、こういうふうなことになるのではないかということで、そう考えると、保管官がどこまでのことをできるかという点について検討することが非常に大きな課題になる、こういう御意見だったかと思います。最後に御意見を頂いたのではないかと思いますが、甲1案とそれから乙案ないし乙案プラス丙案という二つの選択肢を用意するということで、国民の需要に当面こたえることができるのではないか。甲2案のようなものが確実な形でできるのならば、それはいいかもしれないけれども、慎重に対応すべきではないかという方向の御意見かと思って伺いました。ありがとうございます。 ○内海幹事 内海です。ありがとうございます。重複がなるべくないように2点ほど申し上げたいと思います。一つは、主に甲2案、それから甲1案にも関わってくるところなのですけれども、甲2案で申しますと2ページの①に(注1)が付いているということの持つ暗黙のメッセージみたいなものがあるかどうかということなのですが、(注1)は遺言者の指示を受けた者が記録することが許容される前提であるということで、本人が打ち込んだかどうかという検証は不可能なので、ここはもうこういう前提で行こうという、これ自体は一つの立場なのですが、(注2)は電子署名を想定するということになっておりまして、(注1)のメッセージが電子署名に係っているか係っていないかというのが、少し微妙なところがある気がいたしました。   補足説明の18ページから19ページの辺りまで電子署名法への言及がありまして、こちらは推定を受けるためには本人による電子署名だという言い方になっております。本人による電子署名とは何かとか、そもそも本人による押印とは何かということ自体も、厳密には議論の余地がありそうなところではあるのですけれども、少なくともメッセージ性として、電子署名は本人がするものだという前提を置くか、ここも諦めて②や③の補助手段というか、そちらの方に期待していくのか。考え方には選択肢があるところだと思いますけれども、その辺のメッセージ性をできるだけクリアにした状態で意見を問うた方がよいのではないかというのが1点目でございます。   2点目は、少し前に裁判所の方から、主に検認に係る懸念事項が示されたところかと思います。懸念というか課題があるということについては共感するのですけれども、それがどういう課題なのかということについて、もう少し共有を図った方がいいかなと思いました。幾つかポイントがあったように記憶しておりますけれども、一つは、検認とはどういう手続なのかということから、そういうことまでするものではないと整理されてきたのではないかという御指摘があったかと思います。これは、一方では、例えば確認に名前を変えて、確認の要件を民法に書けば解決する問題なのかどうかという問題かと思いますが、他方では、仮にそうできたとしても、そのような負担には現実的に耐えられませんという問題でもあり得るというところで、そういう問題としても受け止める必要があるかもしれません。さらに言いますと、最後に記録の問題もあったと思いますが、家事事件手続の方も記録の電子化が予定されているかと思いますので、動画や電磁的記録としての遺言の電磁的な写しを記録としてキープするということ自体は、少なくとも将来的には、理屈上は不可能ではないような気がします。一方でこれも容量の問題ですとか、そもそも動画ファイルなんかを添付できるような設計にする予定がないとか、そういった事情もあるのかもしれませんので、記録をどうするかについて課題があることは共感した上で、それがより具体的にどういう課題なのかということを、これは事務局というより裁判所の方にお尋ねした方がよろしいのかもしれませんけれども、可能であれば、どういう意味で課題があるのかということの共有を図った上で、解決可能かどうかということを議論した方がよいのではないかと思います。以上です。 ○大村部会長 ありがとうございます。最後におっしゃった記録の点は、後で何かあれば補足していただくということで、その余の点について少し整理をさせていただきたいと思います。2点おっしゃっていて、1点目は甲2の①ですが、遺言者が遺言をするということが一体いかなることなのかということに関わることをおっしゃっていたのだろうと思います。電子署名を付すということが(注2)で言われているのだけれども、電子署名を付すということで、それは本人が署名をしたという前提に立っていいのか、それともそこ自体に問題があるのかといったところから議論する必要がある、こういうことをおっしゃったのかと思いますが。 ○内海幹事 電子署名、押印が必要なのか印影でいいのかという議論に無理やりなぞらえれば、そうなるかと思うのですが、記録としての電子署名が残っているということだけでここは十分と考えるのか、本人が電子署名措置を講じたということを一応の要件として考えているのかということを、一応明確にできないかという。 ○大村部会長 分かりました。そういう御趣旨で、補足説明の中でそれに対応するところもあるかと思うのですけれども、より明確にするということが必要なのではないかというのが一つと、それから、先ほど裁判所からもお話があった検認に関する御懸念について、検認というものの範囲内でできることというのが仮に限られているとして、検認でできないのならば新しい手続を作るということはどうなのか、それでもできないということがあるのかということを検討する必要がある、こういう御指摘だったかと伺いました。ありがとうございます。   ほかには。 ○日比野委員 日比野でございます。まず1点目、第1の1の書き出しで、甲案及び乙案の方式を創設することを中心としつつという記載になっているところです。これは両方創設するということを念頭に置いた形で中間試案を出すという意向の記載だと理解いたしました。執行を受ける金融機関の立場としては、従前より乙案を支持するというお話をさせていただいているところではあるのですが、中間試案ということですので、この点については甲案も含めて幅広い選択肢を出して意見を募るということに特に反対するものではございません。   ただ、先ほども少し関連するお話が出たかと思いますが、試案を示す形としては甲、乙、丙と併記すれば足りるのではないかと思います。この中心としつつということがどのぐらいの含意をするのかがやや不明確ではあるのですけれども、創設することを前提で意見を募れば、出てくる意見が変わってくるという可能性はあろうかと思いますので、この点は単純併記ということでもよいのではないかと思った次第です。   あと2点目で、甲2案の(注7)です。ここには遺言執行を受ける金融機関、法務局等における方式要件の充足性についての言及がございますが、甲1案の(注7)では、そのような記載は現状ないかと思います。もっとも録音・録画を記録するという点に関しては、甲1案でも、執行を受ける立場の金融機関、法務局の側でこの確認に問題が生じることは同じようにあるかと思いますので、この注書きの記載とそれぞれの箇所の平仄や、その解説については御配慮をお願いしたいと思います。   3点目として、検認についてです。同じく甲2案の(注7)のところで、方式要件の充足性を判断することができるか否か等について引き続き検討すると書いていただいておりまして、これは是非お願いしたいと思います。執行を受ける金融機関の立場としますと、録音・録画を確認するという実務は非常に難しいということで、検認調書等の裁判所で確認された書面が提出されて、その書類の記載事項につき、特にその有効性に疑義を生じる内容がなければ要件を満たしたものとして取り扱うことができるということが、必要になると思っております。   ただ、これも今し方複数お話が出ましたとおり、ここまでやっていただくということは、もちろん電磁的記録を確認するという実務はこれまでないわけですけれども、現状の家庭裁判所における遺言書の検認の実務を見ても、かなり乖離があるようにも思われます。他方で、本当に今申し上げたことを実現するということになると、家庭裁判所の運用にかなり依拠するところが出てくると思いますので、この辺りを、正に引き続き検討すると書かれているとおり、慎重に検討を頂きたいということになります。 ○大村部会長 ありがとうございました。3点、御指摘ないし御意見を頂きました。最初のお話は、甲、乙、丙、この記載の在り方についてという論点ですけれども、御意見としては乙案がいいという御意見である、しかし中間試案に当たっては甲、乙、丙をフラットに聴くという、先ほど中原幹事がおっしゃっていましたけれども、そういうことでいいのではないかという御意見だったかと思います。それから、甲2の(注7)に相当するものを甲1の方についても平仄の合う形で書き込んでおくということが必要なのではないかという御指摘もあったかと思います。最後に、検認については、先ほどから問題になっておりますけれども、慎重な検討が必要であろうという御意見として承りました。 ○木村幹事 木村です。1点ありまして、先ほど中原幹事の御発言においては、甲2案について、これまでの方式の中でどのような意味で、取り分け自筆証書遺言との関係でどのように捉えるのかという観点が示されていたように思います。このような観点を踏まえて甲1案をみてみますと、甲1案は、事後の紛争が生じないように、証人というものも立てて、真意性、真正性の確認について十分な担保がされているという点に配慮されており、その意味において、甲1案は、これまでの自筆証書遺言よりも、公正証書遺言に近いような形の位置付けとしても見ることができるようにも思われるわけです。   これに対して、甲2案についてはそのような証人がないということになっています。また、①の要件において、本人自身が作成する必要がないということなどが前提とされている点を踏まえると、甲2案については、従来の自筆証書遺言などに比べて、真意性、真正性の担保というものが相対的に欠けていると見ることもできそうです。   他方で、自筆証書遺言においては、本人が書いているということを踏まえて真意性、真正性の担保が十分であるという前提がとられてきたわけですけれども、当然、遺言を自筆する段階で親族などの第三者が周りにいるとかいないとか、そういうことを客観的に保証する仕組みまでは存在しておらず、他人の関与というものがあった上で本人が書いている状況を完全に否定することはできません。しかしながら少なくとも、自書要件というものが、本人が書いているということが真意性、真正性が保証されているということが重要な意味を持っていたのだと思います。それに比べると、繰り返しになりますが、甲2案においては、①の要件などを踏まえて真意性、真正性をどのように確保するのかという点が問題となりうるところ、おそらく様々な可能性を検討された結果、③の要件を組み込むことで、遺言者以外の者が関与しない状況を確保することができると想定されているのだと考えられます。   しかしながら、先ほども述べたように、自筆証書遺言の場合であったとしても、他人の関与、作成状況など自体は十分に明らかではないということも踏まえると、③の要件という形で、遺言者以外の者が関与しない状況という要件の位置付けをどこまで重要視するのかというのは、なお議論の余地があると思われます。これは別の言い方をすれば、少なくとも遺言者以外の者が口授することができない、遺言者のみが口授できているという手続的要件があれば、それをもって、真意性、真正性をある程度確保できるという形で評価することも可能であるとも考えられそうです。   その上で1点、質問がございます。甲2案の要件については、当然、遺言者のみが口述するという形になっているため、甲1案などとは異なり、電磁的記録の内容が口述の内容にどこまで合致しているか、符合しているかということ自体を要件として組み込むことができないのだと思います。となれば、実際のケースで電磁的記録の文面の内容と遺言者が口述した内容がずれていたような場合、遺言そのものが無効になると解釈してよいのかという点について、教えてもらえればと思います。   結局そのようになってしまうと、運用の時点で、例えば、電磁的記録として作成された際には土地甲とされていたところ、遺言者が土地乙と口述していた場合、遺言が無効になってしまうということになれば、③の要件で意図された真意性、真正性というものの担保以前に、手続的要件としても遺言そのものの在り方において不安定性をもたらす要件なのではないかと思ったので、この点、現在法務省の方がどのようにお考えなのかということを教えてもらえればと思います。   これとの関係で、仮に乙案のところでも、遺言者が公的機関に出頭したときに遺言の全文を口授することとなっているわけですが、この場合において、公的機関の受付担当者が、口授の際に、提出された文面の内容と違いますよ、ぐらいの指摘は形式的審査の中で可能であるのかという点も併せてお伺いできればと思います。よろしくお願いします。 ○大村部会長 ありがとうございます。木村幹事からは、甲1案と甲2案を対比されて、甲1案は自筆証書遺言よりもある意味では安全な方向に向かおうとしていると、これに対して甲2案は、それと比べると真意性、真正性の点で不足するところがあるのではないかというような御指摘がありました。その上で、③の要件に関するお話が二つあって、一つは遺言者以外の者が関与しない状況においてという要件についてなのですけれども、ここのところについては結局どういう御趣旨のことをおっしゃったのですか。 ○木村幹事 まず、自筆証書遺言の場合と比べると、自筆証書遺言の場合も作成状況自体は必ずしも明らかではないので、遺言者以外の者が関与しない状況というものを相対的にどの程度、この③の要件を重視するのかという点が、なお議論されなければならない、ということを述べさせていただきました。この点、少なくとも遺言者が口述しているということを踏まえれば、その点で真意性、真正性がある程度は担保できるとも考えられないか、ということです。 ○大村部会長 分かりました。口述しているというときに、その口述によって真正性を担保するという考え方がベースにあるのだろうと思いますけれども、先ほどから、例えば萩原委員がおっしゃっているように、それは他者の関与がない下で口述をしているということが前提になっているのではないか、それを組み込むための要件としてこれが書かれているということで、最初から問題になっていますけれども、およそ関与を排除するということができるのかというと、それはできないし、自筆証書の場合にもそんなことまではしていないという問題があるので、その辺りの切り分けという問題があるのかと思って伺っておりました。その話と、その次の口述ないし口授したことと書かれているものが不一致の場合にどうするかという問題は、連動していないと考えていいですか。 ○木村幹事 一応全く別の質問であるわけですが、仮に、少なくとも遺言者が口述したということが真意性、真正性の担保のために手続的要件として非常に大きな意味を持つと思うわけですけれども、そのことを前提とすれば、さらにそれに続く次の問題として、口述の内容と電磁的記録の文面の内容が不一致だったときにどうなってしまうのかという問題がより際立ってくるのではないかということです。 ○大村部会長 分かりました。より際立ってくるのではないかとおっしゃったのだけれども、問題としては、それは先ほどおっしゃったように乙案の場合にもある問題ということで、一般的に合致しないというときにどのように対応するということが想定されているのかということで、より広がった形で御質問ということであったので、もし何かあればお答えいただくということかと思います。 ○齊藤幹事 ありがとうございます。今回甲1案、甲2案において、乙案でもそうですが、全体的に通底する要件として、作成自体というよりは作成した後の本人による口述をもって担保するという方向性があるということを感じております。その上で、仮にそういう方向性をとった場合に、木村幹事から頂いたような御質問が出てき得るのかなと考えました。   それについては、基本的には文面に一致していなければいけないとかということがはっきり出ているわけではないですが、やはり甲1案にしても甲2案にしても、遺言の全文の口述ということを記載しているのは、基本的には全文と同じものを口述するということがやはり含意されているのだろうと思いますので、これが仮に残されている電磁的記録と、それから実際に行った口述とで内容に大きなそごがあれば、やはり方式としては満たさないという評価につながり得るのかなということを考えておりました。ただ、厳密に一言一句ということかどうかは、これは評価にわたる問題なので、十分救われる余地はあるのかということは考えてはおりました。それでもなお不安定性を招来するのかどうかということを含め、引き続き検討したいとは思っております。   取りあえず以上です。 ○大村部会長 ありがとうございます。取りあえず、今のようなお答えということで進ませていただきたいと思います。 ○木村幹事 すみません、1点いいですか。少なくとも甲1案は③の要件において、証人が口述の内容と符合することを承認した後ということになっているので、その段階で両者の不一致にかかる判断ができるのですけれども、甲2案の場合ですと、作成された電磁的記録と口述された内容に相違がないかを確認するための手続的要件が事前に組み込まれていないので、事後的な紛争がより起こりやすいのかなと少し危惧しております。すみません、あらためて説明させていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございました。不一致というのがあったときに事前に補正するということができるかということについて、甲1案は一番それが保証されている、乙案は保管担当者がどのぐらいのことができるかということに掛かっているけれども、ある程度のことはできるかもしれない、これに対して甲2案は何もできないだろうと、こういうグラデーションになっているという御指摘として承りました。ありがとうございました。 ○小池(泰)委員 2ページの甲2案の②のところで、これは質問とかではなくて、いきなり遺言の全文となっているのですけれども、①で遺言者が作成した電磁的記録に記載された遺言をいっているということですよね。だから、甲1案だと②のところで①の電磁的記録、記録されている全部を読めと書いてあるので、甲2案でも①と②がきちんとつながるように②を記載した方がよいと思います。   これも確認なのですけれども、甲1案と甲2案というのは、電磁的記録を作成して、それを口述させて、その口述させているところも電磁的記録で残すという基本的な構造になっていて、甲2案の方は①で電磁的記録の作成のところもコントロールすると、真実性と真意性を担保するためのコントロールを入れると。甲1案にそれがないというのは、甲1案にそれがあってもいいなとは思ったのですけれども、ないのは、甲1案の②のところで、その記録が自分の遺言だと言わせているから、甲2案の①みたいなものは要らんと、そういうことでよろしいのかと。これは解釈の問題なので、別に決め付ける必要はないのだと思うのですけれども、電磁的記録の作成と、その口述と、口述している状況の電磁的記録という三つのところで、関与するポイントが甲1案と甲2案で少しずれていて、それをどういうふうに説明されているのかというのが気になったので、今の確認ということになります。 ○大村部会長 ありがとうございます。2点、一つ目は修文の問題で、甲2案の②の部分を正確に記載した方がいいのではないかという御指摘だったかと思います。二つ目は、甲1案と甲2案とでチェックのポイントというのが一致しているのか、違うということならばどう違うと考えているのか、こういう御質問だったのだと思いますが、どうぞ、お願いします。 ○齊藤幹事 まず、甲2案の①の4行目、措置に関しましては、(注2)に記載しているとおり、主に電子署名が想定されているということでございます。甲2案に関しましては、電子署名を本文中に取り込んでお示ししていると。それに対して甲1案では、(注2)のところで電子署名を付するものとすることも考えられるということで、甲1案では少なくとも本文中では電子署名を必須の要件として格上げまではしておらず、プラスの要件としてオンする必要があるかどうかを(注2)で記載しているということでございます。   甲1案においてそのようになっているのは、甲1案の本文②において、証人二人の立会いの下で口述するという立て付けがとられていて、他人の関与があるため、まず、電子署名までも標準として乗せてはいないということで、証人の立会いの下で真意性・真正性を担保するということで、甲1と甲2の違いが出ている。繰り返しになりますが、甲2案の場合には証人等がおらず本人のみで作成するということですので、①部分で電子署名を講ずるとともに、③部分で本人以外の者がやったものではないということを技術的に更に担保すると、そういう立て付けになっていることが違いなのかなと理解しておりますが、いかがでしょうか。 ○大村部会長 小池委員、今の説明でいかがですか。 ○小池(泰)委員 何となく違うような気がしないでもないですけれども、余りそこを別に議論しても、それほど実りがあると思えないので。   1点だけ確認、いいですかね、甲2案の②で、「遺言者が口述し」は、これは遺言者本人以外あり得ない、記録も遺言者という理解でいいのですよね。そうでなけなければ、ほかは大体(注)が付いていて、遺言者以外、遺言者の指示の下にやるのはオーケーだということが出ていますけれども、甲2案の②のところは、(注3)もそういうのではないので、これは口述並びで、記録も本人でないと駄目と。   いや、個人的には、記録を本人がするのが厳しい人もいるような気が少ししないではないので、緩める余地はないのかとは思っていますが、確認として、本人が記録をするということなのかということを確認させてください。 ○齊藤幹事 小池委員の御質問は、甲2案の②の3行目の記録という理解でよろしいでしょうか。 ○小池(泰)委員 はい、そうです。 ○齊藤幹事 ありがとうございます。そこに関して、必ず本人がということを限定を付してまで表現はしておらず、どちらがいいのかも、少し検討を要するかなということを感じた次第です。つまり、甲2案の①にも記録という文字があって、これは文字情報を記録するということの記録です。それに対して、甲2案の②の記録というのは録音又は録音・録画、それを記録するということなので、二つの記録という営みのうち前者、テキストを打ち込む記録に関しては(注1)で本人以外の者もあり得るということを記載しつつ、補足説明で、なお、やはり本人によって行うことを求めるのかどうか検討の余地があるのではないかということを記載しております。   それに対して、②の録音又は録音・録画そのものについて、これも本人自身がやる必要があるのかどうかは現状は表現できておりません。逆に言いますと、きちんと録音又は録音・録画がしっかり残っているのであれば、それは口述という営みを記録化するということですので、文章自体を打ち込む記録に比べると、本人自身がやるということを求める必要性も高くないのかなという気もいたしました。   少しお答えになっていませんが、以上です。 ○小池(泰)委員 多分、そうすると③の書きぶりとかで少し注意しないと、何となく誤解を生みそうな気はしましたけれども。それだけです。 ○大村部会長 ありがとうございます。今の最後の御発言は、②と③と、少し抵触することになるのではないかという含みかなと思って伺いました。それから、①については先ほど、隂山委員だったか、甲1の方も電子署名を要求した方がいいのではないかという御意見がありましたので、もしそうだとすると、また全体のチェックポイントが変わってくるのかと思って伺いました。 ○小川関係官 先ほどの小池委員の御指摘の点について補足させていただきますけれども、③で第三者による不当な関与がないということを担保すべきというふうな形で書いておりますので、②の録音等の記録については、撮影をする真横に他人がいて良いのかという問題は多分生じるのだろうと思っています。②の文言に沿って申しますと、遺言者が口述をする主体なっておりますけれども、アプリ等のサービスを提供するということが前提になっておりますので、アプリに向かって話し掛けるという行為をもって、誰が記録をしていると評価するのかという問題なのかなとも理解をしておりましたので、そういう意味で、記録をするというのをどのように捉えるかという問題なのかなとも理解しました。いずれにせよ、詳細はこれからも検討したいと思っております。 ○大村部会長 石綿幹事、手が挙がったけれども、関連ならば今伺いますが。 ○石綿幹事 関連した質問だったのですが、今の小川関係官の御説明で解決しましたので、大丈夫です。 ○大村部会長 よろしいですか。それでは、今のようなことで先に進ませていただきます。   裁判所にお待ちいただいていますけれども、宇田川幹事ですか、続けてどうぞ。 ○宇田川幹事 最高裁家庭局、宇田川でございます。ありがとうございます。先ほど内海幹事、日比野委員から検認手続の関係で御指摘を頂いて、慎重に議論していく必要があるというところを部会長にも確認していただいたところですけれども、先ほど申し上げた趣旨で、いろいろ課題を整理する必要があるのではないかという内海先生の御指摘に対してですけれども、先ほど申し上げたところは、やはり検認手続については部会資料上も証拠保全の手続というところで、そういった理論的な面で、再生して全文あるいは要旨が朗読されたことの事実確認をするということについては、その理論上の整理を超えているのではないかということであるとか、その理論を前提とした現在の実務との整合性について懸念があるのではないかと指摘したところでございます。そういう意味で、何か裁判所の方から今の時点で、業務の負担であるとか、システム化において問題があるのではないかというところを申し上げているというものではございません。   あと、それであれば検認手続ではなくて新たな審判手続の創設というところの話にも及んだところでございますけれども、日比野委員からも、金融機関側としても執行する場面においてそのような、できるだけ裁判所で何かしらの確認があった方がよいとも少し受け取れるような御発言を頂いたところでございますけれども、裁判所としても今、そもそも相続人の間に紛争が生じていない段階においてそのような審判を創設する必要性というのがどこまであるのかということが整理されていないように思われるところでございまして、それから整理すべきことかもしれませんけれども、そのような必要性があるのかどうかということを慎重に検討する必要があると思います。   具体的には、この審判、家事審判でございますので既判力はありません。方式の遵守について別途訴訟で争うことが可能であるということになります。今の紙の遺言書、自筆証書遺言についても、そのように遺言の無効確認訴訟などの訴訟が提起されているところでございます。そうすると、このような既判力がなく、また、家事審判が出ても訴訟で争われるというような、そういう状態になるということが分かっている上で、あえてこのような審判を更に設ける必要があるのかどうかというところが問題になるかなと思っております。   現状でも、自筆証書遺言、通常の紙の場面で、具体的にはそれが自筆なのかどうかという方式要件というのもあるのですけれども、それについて特に何かそういった手続はないところで、専ら訴訟の場で扱われているというところでございます。そうすると、このデジタル方式を活用した普通方式の遺言と今の紙の自筆証書遺言との差異も、どこまであるのか、別意の取扱いをするまでの話なのか、飽くまでも本人かどうかというところの確認というのは程度問題とも考えられるところでございます。   今、裁判所の方で遺言の確認の審判というのがあるのは特別の方式の審判でございまして、それは実際に本人の真意かどうかというところがなかなか確認できない中で、方式要件が具体的に定められていて、その方式要件が満たされているかどうかということも確認するというところで、確認対象が明確になっているところでございます。これは、こういった特別の方式の場合と、やはり通常の普通方式の場合というのを考えたときに、普通方式の場合というのは、そもそも争いがない場合も多い中で、このような確認の手続を相続人に一律に負わせることにもなりかねないところでございまして、そういった相続人の負担についても含めて考慮していく必要があるのではないかと思っておりまして、改めて慎重な議論が必要であるかなと思います。   乙案の保管制度を利用した場合には、こういった問題も出てこないというところでございまして、これは最終的な採否に係るところですけれども、そういったことも含めて総合的に検討していく必要があるように思われるところです。   すみません、長くなりましたけれども以上です。 ○大村部会長 ありがとうございました。先ほど出た、検認に代わる新しい手続というのを設けるということも検討すべきなのではないかといった御指摘について、新しい手続を創設することに伴う問題点を御指摘いただき、慎重な検討が必要なのではないかという御意見を頂いたと理解をいたしました。   そのほか、いかがでございましょうか。 ○谷口委員 信託協会の谷口です。2点ございます。まずは金融機関としてでございます。甲、乙、丙の中で、従前から公的機関が保管する乙案が金融機関としては望ましいということだと考えております。甲案については、皆様が意見をいろいろ言っていただいたとおり、今の書かれている状態の中ではなかなか、遺言の発見の遅れだとか、それから我々金融機関の確認負荷の増大、若しくは法的に、我々でもクレームの増大というところについての懸念をもう少し明確にクリアしていただかなければならないかなと思っているということが1点でございます。   2点目は、4ページの乙案の③で、当該申出を相当と認めるときにはウェブ会議の方法によってできると書かれていて、31ページに、公正証書遺言の場合よりも広くウェブ会議の方法によってと、ここはゴシックではないですけれども、書かれているということで、この辺りが、今まで甲案でいろいろと議論されている深さと比べて、ここが、どちらかというと今、公正証書の手続のデジタル化のところに収れんしているだけかなと、議論がまだ浅いのではないかなと思われ、もう少しここについても議論をした方がよいのではないかという意見でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。2点御意見いただきまして、1点目は、どの案がいいかということについてで、乙案が基本的には望ましいのではないかと、甲案は様々な紛争というかクレームというか、そういうものが避け難い面があるのではないかという御指摘を頂きました。それから、2点目は乙案について、ウェブで処理する場合の具体的な対応について、甲案の検討に比べて乙案はそこが弱いのではないかと、もう少しそこを詰めてやるべきではないかと御指摘を頂いたと受け止めました。   ほかにはいかがでしょうか。 ○小粥委員 委員の小粥です。非常に細かいところで恐縮ですが、甲1案の(注2)と(注3)の関係についてです。(注3)で、例えば遺言の全文に代えて遺言の趣旨を口述するということにした場合に、元になっている電磁的記録と実際の口述内容とがずれるわけですけれども、そうすると最終的に遺言とされる電磁的記録の同一性確認が少し難しい可能性が出てくると思います。なので、要旨を口述するという形だとすると、(注2)のように電磁的記録で最初に固めておかないといけないような気もしてくるのです。それで、電磁的記録で固めるのであれば、もしかしたら口述で要旨だけということもあるのかもしれないような気もするのですが、いずれにせよ要旨ということですと、元々の一次的に作成した電磁的記録と実際に確認していることの同一性ということに不安が生じるということがあるのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。要旨の問題は先ほどから何回か問題になっていますけれども、やはり何を要旨とするかというのはかなり難しい問題があるのではないかと思います。それについて、電磁的記録の方を固定しておくのであれば、多少その問題についての負担は減るのではないかという御指摘を頂いたと理解をいたしました。   ほかにはいかがでしょうか。 ○倉持幹事 ありがとうございます。先ほど申し上げた甲2案以外のところなのですが、まず4ページの乙案の③で口授という言葉が出てきて、甲案だと口述と出てきて、これが少し違和感があります。やはり口授となると公正証書遺言における口授を想起してしまいがちで、その場合の口授というのは一般用語の口授よりも少し広く解されているのが実務上の扱いと思います。実際はこれは読み上げ、口述を意味するということであれば、ここはあえて口授ではなくて口述の方がよろしいのではないでしょうかというのが1点です。   それから、あと2点あるのですが、36ページの保管制度に関連して、その説明文の38ページ以下で、要するに一元化の問題なのですが、保管されている自筆証書遺言と新たな遺言とは一元できるけれども、公正証書遺言とは一元が難しいとありますが、それはやむを得ないとしても、これは保管制度の内容に関わるものでもあるので、本文の(注)でも結構ですので、こういうものですよというのを本文の方にも記載していただいた方がいいのではないかと思いました。   それからもう1点は、加除変更、撤回の部分なのですけれども、撤回で甲案を採用した場合の、これはA案を仮に採る場合なのですが、やはり自分がした法律行為を後で取り消せないというのは、例えば公証役場に預けた、法務局に預けたという場合は物理的にできないからしようがないよねと分かると思うのですが、そうではなくて取り消せない、撤回できないというのは、やはり作った人にとっては不意打ちというか、ある意味、これはデジタルだからしようがないにしても、A案を採る場合はかなり独自のものという印象を受けます。そのため、このA案を採る場合には、遺言者に対する周知だとか、あと、先ほど申し上げたα案、β案、特にβ案を作る場合には、アプリ上でしっかりそういう表示をすることが認定要件になるだとか、このA案については若干ほかと性質が違うかなと感じたものですから、その辺を少し(注)にでも入れておいた方がいいのかなと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。3点御指摘いただきましたが、乙の③のところの言葉遣い、口授というのをやめてしまった方がいいのではないかという御指摘と、それから保管について、一元化に関する問題は本文の(注)に掲げた方がいいのではないかという御指摘、それから3点目は、撤回については、A案は撤回できないということになるので、撤回できないということにするのならば、それを周知するということが必要なのではないか、こうした御指摘がありました。周知はいろいろなところで、こんな形では駄目ですよといったことが新たにでてくるのだとすると、かなりはっきりとした形で、かつ広くそれを知っていただくという形でやらないと、適法な遺言ができたと思っていたらできていなかったというようなことになってしまうので、注意をするところかと思って伺っておりました。 ○相原委員 最後に簡単に。乙案のところでの、ウェブ会議の方法によって上記の口授をさせることができるというところ、ここはもうかねてから何回も申し上げてきたところで、これをパブコメ等で意見を聴くことはデジタル化との関連では必要だろうと思っています。その上で、(注3)にもあるのですけれども、結局オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンですか、これはあなたが書きましたか、はいと言うだけでいいのかどうかというのは、非常に高齢者との関係で問題だと思います。はいと言いなさいと言われたり、若しくは本人自体も別に強制されなくても、とにかくはいと言ってしまう方が非常に多いわけなのです。間違ったことを言いたくないと思っている方がやはり非常に多いです。そういう趣旨からして、宣誓を行うということをきちんと分かっているのであれば、当然これでいい話に見えるのですけれども、単に、間違いありません、はい、だけというのでは非常にリスクはあるということだけ最後に申し上げたいと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。ウェブについて、もう少し立ち入って検討する必要があるのではないか、意思確認の仕方について工夫を要するところもあるのではないかという御指摘を頂きました。 ○冨田委員 冨田です。手短に確認だけさせていただければと思います。乙案と丙案両方とも同じような記載だと思うのですが、両方とも②番で、遺言者が公的機関に対して、乙の場合ではオンラインで、丙の場合では出頭又は郵送の方法と書いてあります。その上で、両方とも③番が、申請するときには公的機関に出頭しなければならないと書いてあるのですけれども、ここのところの解釈が、例えば丙案で郵送で送り、相当の理由があると本人が申し出ればウェブ会議での申請ができて、結果として、公的機関に赴かなくても遺言作成を完結できると読んでいいのかというところです。乙案も同じことだと思うのですが、確認させてください。よろしくお願いします。 ○大村部会長 では、お願いいたします。 ○齊藤幹事 その点は御理解のとおりでいいと考えております。つまり、出頭を要せずに作成する場面をしっかり用意するということで、乙案の場合にはオンラインプラスウェブ、丙案の場合には郵送プラスウェブということで、その道が確保されているというイメージでおります。 ○大村部会長 ありがとうございました。   そのほか、いかがでしょうか。 ○隂山委員 保管制度や日付につきまして、少し発言をさせていただきます。先ほど戸田委員からも御発言がありましたが、作成された遺言に基づいて適切な相続手続を執行していくことは非常に重要であると考えておりまして、通知制度や横断的な検索等が非常に重要になってくると考えております。この度の御提案におきましても、保管された遺言について通知制度や検索、これらが充実した記載となっておりますので、この形で意見を求めることにつきまして賛成をしております。   先ほどの甲2案につき、御説明において民間事業者が一定期間保管するということも書かれておりますが、民間事業者が一定期間保管することになった場合に、公的機関における保管ではないことから、遺言の有無等についての検索の一元化というものが困難になるのではないかと考えています。この点は、民間事業者が一定期間保管することになった場合に、課題はあるものとは承知しておりますが、適切な連携などを行うことによって、法務局で保管している自筆証書遺言であったり、また乙案や丙案によって保管されている遺言との一元的な検索といった仕組みについても検討していく必要性があるのではないかと考えております。   日付について、甲1案や乙案、丙案の遺言につきましては、御記載の内容に賛成しております。これに対しまして、甲2案につき、戸田委員から御発言がありました、タイムスタンプの活用も考えられるように思われます。例えば民間事業者が一定期間保管するようなケースでは、遺言者による日付の記録というよりも、時刻認証事業者が提供するタイムスタンプを付すことも視野に入れることができるのではないかと考えています。これは、遺言作成者本人がタイムスタンプを付すのではなく、民間事業者のサービスの枠組みの中でタイムスタンプが付される仕組みになると思われるところ、遺言作成者にとって過度な負担にはならないとも考えられますし、電磁的記録の改ざん防止という観点からも検討に値するのではないかと考えています。   先ほども少し述べさせていただきました、甲2案の(注5)で、更なる改変防止措置をとるという観点が示されておりますが、民間事業者が一定期間保管する場合、民間事業者において電子証明書が失効する前にアーカイブタイムスタンプを付す等の措置を講じることによって、暗号方式の危殆化を防止することができるようにも思われます。 ○大村部会長 ありがとうございました。民間の機関が関与する場合の関連問題について2点あって、1点は、民間保管の場合に検索の方でできるだけ一元化を図るような工夫をしてほしいという御要望、それから2点目は日付の問題について、タイムスタンプで対応できるのではないかという御意見だったかと思います。   ほかにはいかがでしょうか。   戸田委員まで伺って、少し長くなったので休憩して、さらに何かあれば、再開後に伺いたいと思います。 ○戸田委員 要旨の件で少し気になったのですけれども、例えば要旨とは何かと言われたら、例えば、争いのないように公平に分割したいとか、あるいは長男の嫁には世話になったので、少し長男に色を付けたいみたいな、そんな要旨かなと思うのです。ところが、実際に知識が十分でない中で遺言を作成すると、例えば、土地を南北に分割したときに、素人考えだと南の方が日当たりがいいから、長男に色を付けてやろうみたいな話にしても、実際にはそこに日影規制なんかが入っていたりすると、南の方は建蔽率が上がらないので資産価値が低いとかですね、そうなってくると書いている内容と趣旨と合わないのではないか、みたいなことも実際に出てくると思うのです。そういったものは、例えばAIを使えばたちどころにチェックもできますので、チェックできたときにそういったものを無効にしてしまっていいのかというのは、少し気になったところであります。趣旨と遺言本文が内容的に合っていないからといって、そういったものが無効になるのかということですね。 ○大村部会長 おっしゃっているのは、内容的に合っているかどうかということの判断について、厳密な判断をしなくてもいのではないかと、そういう方向の御意見ですか。 ○戸田委員 萩原委員もおっしゃったように、納得解が重要で、最適解とか現実解よりも納得解が重要だというような考えに立つのであれば、別に要旨と合っていなくても何も問題ないと思うのですけれども。 ○大村部会長 要旨と合っていなくてもとおっしゃるのは。 ○戸田委員 本人の真意の趣旨とですね。遺言に書きたかった趣旨と遺言に書かれている内容とが合致していなくても、本人が納得していれば、いいのではないかということにはなると思うのです。ただ、そうではなくて、本人が言っている要旨を実現しようとすると、この内容ではできませんよ、みたいなことが明らかになったときに、それはどうするのというようなことです。 ○大村部会長 出発点は、デジタルの記録に残っているものが遺言だという前提に立っていると思うのです。ですから、これが遺言の内容であるということで、本人がこれを遺言として残したのかどうかというのを確認するために、これを読んでもらう。全文読んでもらうということが負担であるとすると、要旨でよいのではないかということが今問題になっているかと思いますが、では要旨ということで、どこまでのことを言っていれば、その元になっている遺言の全文に当たることを言ったと評価できるかということが問題になっていると思うのです。そうすると、要旨で言ったことが本人の意図だという前提は、ここではとられていないということなのではないかと思うのですが。 ○戸田委員 要約という。 ○大村部会長 要約というか、何というのでしょうか、飽くまでも記録に残っているものが遺言であって、それが適正に作成されているかどうかを確認するために行われていることなので、要旨の方で示されているものが本人の意思だという前提には立てないのではないかと思います。その上で、しかし、おっしゃっているのは厳密なチェックというのは要らなくて、ある程度までのところが一致すればいいのではないかというようなことを、中身についておっしゃっていたと思いますが、例えば、先ほど少し話題になりましたけれども、てにをはのところで少し言い間違っていても、それは実質には影響を及ぼさないといったことは一定程度まではできるかもしれない、しかし要旨と書いてしまうと、ではどこまでが要旨ですかという判断が難しくなってしまうということが問題となっているのかと思いますけれども、御趣旨は、厳密に一致しているということまで要求するのはどうかという形で受け止めさせていただいてよろしいでしょうか。ありがとうございます。   では、ここで少し休憩させていただきまして、今15時53分ですので、16時5分再開ということにさせていただきたいと思います。休憩いたします。           (休     憩) ○大村部会長 それでは、時間になりましたので再開したいと思います。   部会資料10の第1の部分について御意見を頂いてまいりましたけれども、更に追加の発言がありましたら伺いたいと思いますけれども、何か特にありましたら御発言いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○谷口委員 信託協会の谷口です。これは希望なのですけれども、36ページの保管制度の在り方の(3)のところです。ここに、死亡時に通知することについて記載があると思うのですけれども、遺言執行者になることが多い立場として申し上げますが、ここに遺言執行者という言葉の明記がないことについて、御本人が指定すれば、それは行くと思うのですけれども、指定し漏れたとかいったときに、遺言執行者に通知が来ないということが、例えば相続登記とかも含めて、相続時の手続に、相続人さんが先に全部知って、遺言執行者が知らずに遅れるということが起こることを避けたいと思うので、遺言執行者という言葉も追加することができないものでしょうか、という希望でございます。   それから、もう一つは意見として、44ページの⑵の撤回の中のイのC案のところで、保管制度があるときに、情報は撤回したときにも消去しないと、これはこれでよいと思っているのですけれども、消去されない、自分が死んだ後、これが誰に見られてしまうのかということについては、この制度を利用する者からすると、死んだ後に全員に見られるのは困るよねと、自分の気持ちがこう変わったというのがばれるのは嫌だよねということだと思いますので、そういう担保があるというか、そういうことが知らされるべきではないかと。裁判のときのみ使うとか、そういったことが担保されることを法文にする必要があるかどうかは別にして、使う者の立場としてはそういうものが必要だと考えます。 ○大村部会長 ありがとうございます。谷口委員から2点御指摘いただきましたが、一つは保管制度について、通知の対象として遺言者が指定した者ということになっているところ、遺言執行者は通常は指定されるということになると思われるものの、指定漏れということがあるので、遺言執行者もここに挙げるということが考えられないか検討いただきたいという御希望として伺いました。それから、撤回のC案について、消去しないというのはそれでいいけれども、消去しない情報がどうなるのかということについて、後の情報管理について何か利用者に分かるという手立てをしてほしいといった御意見として承りました。ありがとうございます。   そのほか、いかがでしょうか。 ○戸田委員 戸田でございます。4ページの乙案の②のところで、オンラインの方式により保管申請をするとあるのですけれども、このオンラインという意味が、遠方からのオンラインということでお書きになっているのか、あるいはオンライン端末を使って電子署名を使って本人確認をするのかというのがはっきりしないので、これを少しはっきりさせた方がいいのではないかと思います。確認する際に遺言保管官の面前で行うかどうかによっても真正性のレベルが変わってまいりますので、そういったところの手続についても分かりやすく書いていただいた方がいいのではないかと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。乙案の②のオンラインというのが何を意味しているのかというのを明確にするとともに、どういう手続を踏めばいいのかということが分かりやすい形で書いてほしいという御要望として承りました。   ほかはいかがでしょうか。   よろしいでしょうか。それでは、この第1の部分については御意見を承ったということにさせていただきたいと思います。従前の案では甲案、それから乙案、丙案と3案がございまして、本日、旧甲案であるところの甲1案と、それから乙案、丙案、これらについては細部について御指摘、御意見はありましたけれども、全体としてこの方向でよいのではないかという御感触であると理解をいたしました。その上でこれら、甲、乙、丙というのをどのように書くのかということについては、これは従前は甲、乙、丙はフラットに書かれていたので、その方がよいのではないかという御意見も複数頂きましたので、ここにつきましては御意見を踏まえて事務当局の方で再度御検討を頂くということかと思っております。   新たに前回の議論を踏まえて付け加えました甲2案については、様々な御意見を頂戴いたしました。特に、甲2案の不備な点について御指摘を頂き、この案について消極的な御意見も複数あったと理解をしております。ただ、中間試案でこれについても意見を聴くということについては、反対だという明示的な御意見は必ずしもなかったとも受け止めておりますので、甲2案を最終的にどうするかは別にして、これを改善した形で中間試案に載せて、パブリック・コメントで御意見を頂くことができるのかどうかという点については、今日の御意見をふまえて事務当局で更に御検討を頂くということかと思って承りました。ここまでについてはこのように整理をさせていただきたいと思います。   そこで、残った時間でその他の点について御意見を頂きたいと思いますが、部会資料10の第2及び第3の部分、これらは併せて御審議を頂きたいと思います。まず、事務当局の方からこの部分についての御説明をお願いいたします。 ○大野関係官 51ページからの「第2 自筆証書遺言の方式要件の在り方」について、前回の部会資料からの変更点を中心に御説明いたします。   本文2の押印要件について、従前丙案として記載していた案を(後注)に記載し、本文自体は、押印を要しないものとする甲案と、引き続き押印を要するものとする乙案の2案としています。これは、55ページの補足説明以下に記載しておりますとおり、(後注)の案については検討を要する課題がいまだ多いと考えられることを踏まえたものです。   57ページからの「第3 秘密証書遺言の方式要件の在り方」の本文2(2)の遺言者及び証人の押印要件についても、自筆証書遺言の押印要件の場合と同様、従前丙案として記載していた案を(後注)に記載しております。   その他については、第2及び第3いずれも従前から実質的な内容に変更はございません。   部会資料10の第2及び第3についての御説明は以上です。 ○大村部会長 ありがとうございます。従前からこの部分については、押印要件をどうするのかということについて、案をどう書くのかという点をめぐって様々な御意見を頂戴していたところでございます。今回、中間的な案というのは(後注)にまとめるということで、本文は2案に整理するという御提案がされているということで、この点について特に御意見を頂ければと思います。いかがでしょうか。 ○隂山委員 隂山でございます。中間試案として現在の御提案の内容とすることに異論はございません。(後注)ですが、押印と自筆証書遺言書保管制度の利用とを選択的な方式要件とする考え方については、何点か論点が出てきそうであると考えておりますので、少し述べさせていただきます。   まず、原則として押印は必要であるものの、自筆証書遺言書保管制度を利用する場合には押印が不要となるという整理の下、遺言書保管官は押印されていない自筆証書遺言を保管することとなるのか、保管先となる公的機関、行政機関、遺言書保管官においてどの程度の判断が求められるのかにも関わってくるように感じております。押印がないものが持ち込まれた際に、保管については、保管をしなければならないとするのか、保管することができるとするのかといった点も論点になるのではないかと考えています。   また、一般的に、現行の自筆証書遺言は、デジタル技術を活用した新たな遺言の方式で提案されている丙案の要件を満たすことになると思われるところ、保管先が法務局となった場合で、かつ、デジタル技術を活用した新たな遺言の方式における丙案が創設された場合には、丙案の遺言として保管されることになるのか、それとも自筆証書遺言として保管されることとなるのか、また、押印されていない自筆証書遺言が保管された後、当該保管が撤回された場合にはその遺言の効力はどうなるのかといった論点がありそうに感じております。本来的には形式違背として無効となり得る押印されていない遺言を保管した場合、これが有効な自筆証書遺言に転じるということになりますと、意に沿わない遺言と捉える相続人から公的機関が損害賠償請求を受ける可能性などもありそうに感じましたので、この点は丁寧な議論が必要であると捉えています。 ○大村部会長 ありがとうございます。今回のこの案の整理については賛成していただけるということで、この後の検討課題をお示ししていただいたと理解をいたしました。押印がないものが保管所に持ち込まれたときにどうするのかということで、保管官の権限ですとか、これを自筆証書として扱うのかどうなのかといったような問題について整理が必要であるといった御指摘を頂戴いたしました。ありがとうございます。   ほかにはいかがでしょうか。 ○萩原委員 萩原でございます。こちらの自筆証書遺言の押印要件、そしてもう一つの、秘密証書遺言の(後注)の部分について申し上げますけれども、ここに裁判所が当事者がその意思に基づき遺言をしたと認める場合という記載がございます。これが法定する要件として例示的に挙げられてございます。ただ、これは後で紛争になって、そして裁判所が結果的にそれは意思に基づき遺言したと認めると、そういうふうな後々の問題でありまして、要件としては、やはり裁判所がそういうふうに遺言したと認める、そういう特殊な手続をどこかに事前に入れるのならばともかく、そうでなければ、結果的に意思に基づき遺言したと裁判所が認めたかどうかという、これは俗にいう要件にはならないのではないかと思いますので、この記述は削除した方がよろしいのではないかと思っております。   取りあえずこの点は以上です。 ○大村部会長 ありがとうございます。やはり(後注)についての御意見を頂戴いたしましたが、この整理をベースにしてという御意見と承りましたけれども、その後に例示として、(後注)の中に二つありますが、そのうちの一つ目の、裁判所が、遺言者がその意思に基づき遺言をしたと認める場合というのは要件としては書けないのではないかということで、削除した方がよろしいのではないかという御意見を頂戴いたしました。こう書いてあると、確かにこんなものは書けないよという感じがするのですが、議論の経緯としては、従来も裁判所が事後的に救済しているものはあった、仮に押印を残してもこれからもそういうものはあり得るし、押印というものの重要性が下がっているということを考えると、そういうことがあるのだということが分かる方がいいのではないかと、こういう御意見があったということで、こんな形で残っているということかと思いますが、しかしやはり無理ではないかという御意見として承りました。ありがとうございます。   ほかはいかがでしょうか。 ○内海幹事 内海です。52ページの甲案の(注2)なのですけれども、民事訴訟法228条4項への言及が、自筆を要求する範囲などをかなり限定的にしていくかもしれないというシナリオの下では、真意性の推定を押印に持たせるということに意味があるかもしれなかったような気もするのですけれども、自書を要しない範囲の拡大はしないという前提では、署名は必ずあるということかなと思いまして、そうすると真正性の推定は署名の方で果たされそうな気もいたしますので、押印の方で真正性の推定がなされ得るという言及が注レベルで残っていることの意味は、やや不明確になってきたのかなという気もいたします。いろいろ考えていけば、そういう話が関係はしてくるのでしょうけれども、注であっても中間試案本体の中に残すような話ではなくなってきているのではないかという気がいたしました。補足説明の方でも、完成担保機能との関係は言及がありますけれども、もう真正性の推定との言及は落ちているので、やや誤解を招くようなものになっているのかなという気もしますので、特に必要がなければ、ここでは言及しなくてもいいのかなと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。(注2)も要らないのではないかといった御指摘、御意見だったかと思います。なかなかこれは難しいところで、先ほどの(後注)についても申し上げましたけれども、(後注)の方は、押印が要るとしても、欠けていても大丈夫な場合もあるということをどこかに書いておきたい、要らないとしても、あることにはそれなりの意味があるという御意見もあるので、それも書いておきたいというバランスの中で、こういうことになっているということなのですけれども、しかし突き詰めて考えると、先ほどの御意見もありますけれども、どちらかに整理されてしまうということになるのではないか、そういった御意見だったかと思いますが、そういう御意見もあるということを踏まえて、少しまた説明の仕方で対応できるのかどうか、これを残すかどうかということを含めて検討していただくということかと思っております。   ほかはいかがでしょうか。   よろしいでしょうか。そうすると、甲案、乙案という形で整理をするということについては、おおむね皆さんこの前提でよろしいということであって、あとはこの(注)の部分をどこまで整理するかということについて御意見を頂戴いたしましたので、頂いた御意見を踏まえて再度御検討を頂くということで引き取らせていただきたいと思います。   それでは、次の部分ですけれども、部会資料10の第4の部分ということになります。第4の部分は61ページ以下の「特別の方式の遺言の方式要件の在り方」というところですが、この部分について御検討、御審議を頂きたいと思います。まずは事務当局の方から御説明をお願いいたします。 ○大野関係官 61ページからの第4では、特別の方式の遺言の方式要件の在り方について検討しており、1では、作成することができる場面の規律について、66ページからの2では、作成方法の規律について、それぞれ検討の方向性を記載しています。第4につきましては部会資料9からの大きな変更はございませんので、部会資料9から加筆した箇所等を中心に御説明いたします。   まず、61ページからの本文の「1 作成することができる場面の規律」については、61ページから始まる(注1)と62ページの(注2)に加筆しています。これまでの部会においては、船舶遭難者遺言の方式によって遺言を作成することができる場面として、航空機遭難や天災その他避けることのできない事変が含まれることを明らかにすることについて、おおむね反対の意見はございませんでした。もっとも船舶遭難者遺言は、船舶遭難中の者は死亡危急時遺言の方式すら履践することができない場合が多いと想定されることを踏まえて、死亡危急時遺言よりも更に緩和された方式として設けられたものでございます。作成することができる場面について、およそ生命の危険性のない軽微な災害や暴動等についてまで含まれるべきではないとも考えられます。   そのため、船舶遭難者遺言を作成することができる場面を限定する趣旨で、本文の(注1)では、天災その他避けることのできない事変については、死亡の危急に迫ったこととの因果関係を必要とすることも考えられる旨を記載しております。このような考え方については、64ページの10行目以下の補足説明において、現行の船舶遭難者遺言は船舶遭難と死亡の危急に迫ったこととの因果関係を要件としていないこととの関係をどのように整理するかについて、検討が必要である旨を記載しております。このような考え方については、その当否や、因果関係を要件とすること以外に場面を限定する在り方が考えられるかも含めて御議論いただければと思います。   また、これまでの部会において、船舶遭難者遺言の方式で遺言を作成することができる場面に山岳遭難を含めることについて御提案がありました。この御提案につきましては、本文(注2)において、条文上は明記しないものの、天災その他避けることのできない事変と評価できる態様であるかを個別に認定するものと整理することが考えられるところ、そのような考え方について引き続き検討するものとする旨を新たに記載しております。この点については、64ページの22行目以下の補足説明及び36行目以下の(注)に関連の記載をしております。山岳遭難については、令和5年における年間発生件数が3,126件と少なくないものの、その態様は道迷い、滑落、転倒、病気、疲労、転落、悪天候、野生動物襲撃、落石、雪崩、落雷、有毒ガスなど様々なものがあることから、これらを一律に特別の方式による遺言を作成する場面に当たる、又は当たらないと整理することはしないとの考え方があり得るのではないかとも考えられます。このような考え方についても御議論を頂ければと思います。   続いて66ページからの本文「2 作成方法の規律」につきましては、66ページ32行目の(注5)において、特別の方式におけるデジタル技術を活用した新たな遺言の方式においても、現行の特別の方式と同様、遺言者が普通の方式によって遺言をすることができるようになったときから6か月間生存するときはその効力を生じないものとする旨加筆しております。この点はこれまでも前提としていたところであり、実質的な変更はございません。   また、船舶遭難者遺言については、これまでの部会において証人の立会いを不要とする方式を検討すべきとの御意見もあったことから、本文(注6)において、デジタル技術を活用した新たな方式の在り方について引き続き検討する必要がある旨を新たに記載しております。この点についての補足説明は72ページ32行目以下に記載しております。すなわち、船舶遭難者遺言や死亡危急時遺言においては証人を確保することが困難な場合も想定されるものの、現時点において広く社会に普及されているデジタル機器には電磁的記録の作成者が誰であるかを明らかにする機能や電磁的記録の改変防止機能が搭載されているとは限らないため、証人の立会いを不要とした場合には真意性、真正性を担保する手段に乏しく、容易に偽造変造が可能となる可能性があることから、遺言自体は容易に作成できたとしても、その内容を実現することが困難となり、かえって利用しにくい遺言となる可能性が否定できないことなどを記載しております。   補足説明の74ページの5行目以降では、証人の署名・押印についての記載を加筆しております。現行民法の死亡危急時遺言及び船舶遭難者遺言においては、証人全員の署名・押印が必要とされているところ、証人の署名・押印の機能は甲案、乙案、丙案における遺言作成過程の録音・録画や証人の氏名の記名や口述で代替できるものとも考えられることから、証人の署名・押印は不要としている旨、加筆しています。   最後に、死亡危急時遺言の丙案と船舶遭難者遺言の丙案の補足説明において、考えられる指摘事項や検討すべきと思われる事項を若干加筆しております。死亡危急時遺言の丙案については、78ページの3行目以下において、死亡の危急に迫った遺言者が必ずしも遺言の趣旨を整理して口授できるとは限らないと思われることから、遺言の趣旨を録音・録画した電磁的記録を再生して確認することは死亡の危急に迫った遺言者にとって負担が大きいと思われることや、遺言者が遺言の趣旨を録音・録画した電磁的記録を再生して確認している際に訂正したい点を発見した場合における訂正の在り方についても検討する必要がある旨、加筆しています。   また、船舶遭難者遺言の丙案については、79ページ19行目以下において、円滑な執行の確保の観点から、確認手続の際に録音・録画された電磁的記録の内容を文字起こした文書も併せて提出することとした場合には、実質的に甲案や乙案と異なるところはないため、甲案や乙案を新たに設けた場合には、あえて丙案を設ける必要性が乏しいとの指摘も考えられる旨を加筆しています。   このような考えられる指摘事項や検討すべきと思われる事項を踏まえつつ、丙案についても甲案及び乙案と並列して記載すべきか、又は(後注)に落とすことも考えられるかについて御議論いただければと思います。   部会資料10の第4についての御説明は以上です。 ○大村部会長 ありがとうございます。第4についてですが、1の作成することができる場面の規律という部分については(注1)、(注2)で加筆がされているということで、これらの点について御意見があれば伺いたいというお話と、そしてもう一つは、66ページ以下の作成方法の規律の方については、死亡危急時遺言、それから船舶遭難者遺言のそれぞれについて、現在は甲、乙、丙の3案の併記になっていますけれども、丙案の取扱いというのをどうすべきか、これを(後注)に落とすということも考えられるが、いかがかという点について、御意見をということだったかと思います。その他の点も含めて、御意見があれば是非頂戴したいと思います。御意見のある方は挙手をお願いいたします。 ○中原幹事 最初に指摘された問題、(注1)、(注2)辺りのところですけれども、船舶遭難者遺言について現状よりも文言を拡張するという際に、死亡の危急に迫ったこととの因果関係が必要なのかどうかという問題が提起されていますけれども、少し考えてみると、果たしてそういう問題なのだろうかというような疑問を感じました。前提として、民法976条の死亡危急時遺言というのは、死亡の危急に迫った者は通常の方式によることが困難なので、特別な遺言の方式を認めるというものであると。そして、民法979条の船舶遭難者遺言というのは、死亡危急時遺言の方式によることすらも困難な船舶遭難者には、更に緩和された遺言の方式を認めるということだと理解しておりまして、今回の部会資料もそうした理解に立っているものと思います。   そうすると、船舶遭難者遺言を拡張すると、同じ状況にある者に一般化するというような場合には、死亡の危急に迫っているという遺言者に関する要件と、死亡危急時遺言の方式によることすら困難であることという、遺言の状況に関する現行規定よりも一般化された要件とが定められるということになるはずであって、それ以上の事柄は問題になり得ないのではないかと思います。   今回の部会資料を見ると、軽微な災害や暴動等の場合を排除するために、死亡の危機に迫ったこととの因果関係の要否という問題が設定され得るとしているように読めるのですけれども、これは遺言者に関する要件と遺言の状況に関する要件を混同しているように思います。もちろん現実には船舶遭難のように両者の間に因果関係があるという場合が多いと思いますけれども、それは船舶遭難という同一の事実が二つの要件の認定に効いてくるというだけでありまして、論理的には両者は別個であって、その間の因果関係は要件とならないし、そうした限定は正当化されないように思います。当該の災害や妨害等によって死亡危急時遺言の方式によることすら困難であるか否かということが問題であり、それを問うことで排除されるべきものは排除されるのであって、当該の災害や妨害等によって生命の危険が生じるか否かというのは問題とならないように思います。   民法161条の天災その他避けることのできない事変という文言をこの文脈でも使うということが強調されています。そういう不可抗力に限定をすべきかどうかというのは一つの問題かもしれませんが、しかし161条の文言を使うということ自体はあり得ることだと思いますけれども、同条は、そういった事変のため裁判上の請求等の時効の完成猶予、更新のための手続をとることができないということを定めていて、そのような述語部分に当たるものが何かを確定するのが重要ではないかと思います。   これは山岳遭難に関してもいえるのでありまして、部会資料では天災その他避けることのできない事変と評価することができるかの問題であるというような整理がされていますが、これはややミスリーディングでありまして、厳密には今申し上げたような述語部分に当たるかどうか、素直に考えれば死亡危急時遺言の方式によることすら困難であるといえるかどうかの問題ではないかと思います。   結局、民法979条の文言を最終的にどのような形にするかということがこれから問題になっていくのだと思いますけれども、例えば、遺言をするに当たり、「天災その他避けることのできない事変のため第976条に規定する方式によることが困難な者であって死亡の危急に迫った者は・・」というような文言というのが割と素直な案として、素直すぎる案かもしれませんけれども、出てくるのではないかと思いました。   もちろん今申し上げたような文言だと困難性というような評価的な要件が入ってくるということで、好ましくないという意見が想定されると思いますけれども、文言を一般化した際には必然的に生じてくる話でありまして、そういった冒険をするのか、どうやったら冒険の度合いを低くすることができるのか、それともいっそ不十分なことを承知で安定性をとって現行規定にとどまるのかという問題なのではないかと思います。   あと、素直すぎる案と申し上げたのは、民法979条というのは、976条だけでなく978条とも関連していると言われていて、これを考慮した場合にどういった変化が生じ得るのかというのを考えていないからであります。例えば、979条の類推適用が専ら航空機遭難について指摘されてきたように思いますけれども、その背景には航空機なら978条のような状況を想定することができるという前提があったのか、なかったのか、仮にあったとすると、そのことをどう考えるかというような話もなくはないのかもしれないと思いました。   いずれにせよ最終的には、繰り返しになりますけれども、天災その他の避けることのできない事変というところよりは、そのためにどうなのかという述語部分が重要であって、その前提として979条の趣旨を詰めていく必要があるのだと思います。その上で、デジタル技術を活用したものだと更にどうなるかというような話が続いていくということになるわけでありまして、割と大変な作業なのかなと思いました。   これまでのこの部会での自分自身の発言との整合性は検証していないのですけれども、差し当たり部会資料の問題提起を受けて感じたことを述べさせていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございます。中原幹事がおっしゃっていることは、例えば因果関係という要件を加えるかというような形で捉えるのではなくて、新たに書き直される要件の中でその問題は対応されるということで、プラスアルファではないのではないかと、そういう形で受け止めていいですか。 ○中原幹事 979条の趣旨に関する部会資料なんかでとられているような考え方を推し進めると、因果関係という話は出てこないはずであって、むしろそこから導かれる一般化された要件、そちらの問題で解消されるのではないかと、そういう理解でした。 ○大村部会長 ありがとうございます。そういう形で問題を受け止めるべきではないかという御意見として承りました。   ほかにはいかがでしょうか。 ○冨田委員 私からは66ページ目の(注6)の記載について意見を申し上げさせていただきます。これまでの部会での発言を踏まえて(注6)を起こしていただいたのですが、この(注6)の内容を拝見すると、より簡便な規律を設けることの検討が必要としながらも、真意性、真正性の担保が図れるかが課題であり、補足の説明などでも、結果として誰も使わないのではないかといったような記載があって、相当慎重なニュアンスが感じられるところです。   今回の検討の背景は、通信や証人の確保が困難な状況で示された遺言者の意思をどれだけ救うことができるのかということだと思います。この点を重要視するのであれば、広く普及しているスマホなどであれば当然、デジタルで意思を記録するということもできますし、その点が結果としてデジタル技術の活用による利便性向上にもつながるかと思いますので、引き続き、簡便で実際に使える方式という視点を重視した検討をお願いしたいと存じます。 ○大村部会長 ありがとうございます。(注6)が加わっていますけれども、なおこれでは限定的なのではないかということで、使いやすい形のものを検討してほしいという御要望として承りました。   ほかにはいかがでしょうか。 ○谷口委員 信託協会の谷口です。67ページの死亡危急時遺言のところに絡めて、昨今の生成AIの動画作成のトレンドから、少し懸念の意見を申し上げたいと思います。   昨今も上場企業の決算発表も役員がAIアバターで発表すると、それはサンプルの本人の動画を撮ってしまえば、あとは何十分でもしゃべらせることができるというものが、それほど難易度が高くなく、時間も掛からずにできる状態に、今でさえなっているという状態だと思います。私自身の言葉も同様に動画にとかというのはすぐに無料でできるという状態に今ある中で、この死亡危急時遺言を20日以内に出すのは簡単にできるのではないかと、生成動画をですね、そのように思います。   そういった意味では、なかなか、病床にいる本人のサンプル動画を撮って、その後、生成動画を作るということが1人でできてしまうということで、本当に証人1人でこれをやるということを新たに作ることのリスクというのが大きいのではないかということを懸念いたします。一般の方のいろいろな方式の方で考えていることで足りるのではないかということを思います。   ちなみにこの生成AI動画で行くと、例えば一般の方式の話の甲案にもつながるのですけれども、スマホを乗っ取られてしまっていて、自分が作ったつもりの遺言動画を電子署名しようとする瞬間に、作ったものを違う動画に差し替えられると、電子署名上、差し替えられたものが本物として残るというような状況も、悪いことをしようとすれば作られる、それが公的な機関の関与なく電子署名として正式な遺言として残るというのが、甲案でも起こり得るのではないかと、そこら辺の防御策というのも考える必要があるのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。死亡危急時遺言について、証人1人の立会いでやるということについて慎重な対応が必要なのではないかと、そのお示しになった懸念というのは普通の方式による遺言の方に戻って、甲案の場合にも当てはまるといった御指摘があったかと思います。そういう御指摘として承りたいと思います。 ○宮本幹事 先ほど中原幹事から979条についての言及がありました。私からも追加で意見を述べさせていただきます。   中原幹事からは979条について、死亡危急者遺言さえ困難な状態であると整理してはどうかという御提案がございました。そのこと自体、大変よいことだと考えております。現行民法を見ますと、そもそも特別方式遺言が、普通方式さえできない場合に利用できるという要件を求めていません。特別方式遺言について、そもそも普通方式による遺言が困難であるという要件が必要だと整理した上で、979条について、更に死亡危急者遺言さえ困難な場合と整理できるのであれば、整理していくのが望ましいと思っています。   現行の、例えば976条、死亡危急者遺言についていえば、私たちは、死亡の危急に迫って自分で遺言書を書くことも難しく、かつ、公証人を呼ぶ時間もないような場合を想定しているような遺言の方式なのだと理解していますけれども、条文上では、自書能力がないということも公証人を呼ぶ時間がないということも求められておりません。それゆえ、仮に自書能力があったとしても、本条の方式要件を満たすのであれば、死亡危急者遺言として有効ですし、仮に公証人を呼ぶような時間があったとしても、方式要件を満たしていれば有効となるわけです。   特別方式遺言というのは、やはり普通方式による遺言ができない場合の特別の対応であることに鑑みると、実際に可能かどうかはともかくとして、整理ができるのであれば、普通方式遺言ができない場合にこれらのものが使えるのだと、そして船舶遭難者遺言は、死亡危急者遺言さえ困難な場合に使えるのだというような整理ができるのなら、検討していくべきなのかなと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。今おっしゃったのは、遺言の方式相互間で何が一般原則であって何が特則なのか、特則の中では何が一般で何が特則なのかという階層性というか補充性ということについて明文の規定を置けないだろうかと、こういうお話だったのだろうと思います。宮本幹事がおっしゃったように、私たちが授業で話すときには、普通方式での遺言ができないときにと教えているわけで、そういうふうに考えているわけですけれども、これを明文化するというのは、先ほど宮本幹事自身もおっしゃっていたように、技術的になかなか難しいところもあるのかもしれないので、今のような御指摘があったということを承って、少し考えていただくということかと思います。   何かあれば。特にいいですかね。   ほかにはいかがでしょうか。   よろしいでしょうか、特別の方式については、より簡便に作れるようにという御意見と、いや、慎重に構えるべきだという御意見、両方が出ていたかと思いますけれども、それらの御意見を踏まえた形で更に整理をお願いしたいと思います。   それでは、最後の話題ということになりますが、部会資料10の第5の部分について御議論を頂きたいと思います。第5は、80ページ以下のその他という部分になります。まず最初に、事務当局の方からこの部分についての御説明をお願いいたします。 ○戸取関係官 80ページからの第5では、その他の論点について記載しております。前回の会議での御議論を踏まえ、本文では、遺言能力について新たな規律を設けないものとする旨、民法第973条(成年被後見人の遺言)について、自筆証書遺言における押印要件の在り方のほか、成年後見制度の見直しにおける議論等を踏まえて検討する旨表現を修正し、それに併せて補足説明の記載を修正しましたが、従前から実質的な内容に変更はございません。   部会資料10の第5についての御説明は以上です。 ○大村部会長 ありがとうございます。第5の部分については、字句等の修正はありますけれども、実質的な変更はないという御説明でありました。この点につきまして、何か御意見がありましたら頂きたいと思います。いかがでしょうか。   よろしいでしょうか。では、第5については、これについて特に御異論はなかったと受け止めさせていただきたいと思います。   それでは、これで皆さんに一応御意見を伺ったということになりますけれども、何か追加の御発言がもしあれば。 ○中原幹事 形式的な点でありまして、今回の部会の資料で「遺言者の真正及び真意」という表現が複数見られました。気付いた範囲では、15ページ34行目と24ページ14行目にあります。遺言者の真意という表現はこれまでの部会資料にもありましたけれども、遺言者の真正という表現はなかったように思われますし、法的に正確な表現なのか疑問がないわけではないように思われますので、この点について確認していただきたいと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。御指摘の点について御確認を頂きたいと思います。   ほかにはいかがでしょうか。よろしいですか。   それでは、本日の審議はここまでということにさせていただきたいと思います。   次回の議事日程等について、事務当局の方から御説明をお願いいたします。 ○齊藤幹事 本日も御多忙の中、また、会場にいらっしゃった方におかれては悪天候の中、御足労いただき、熱心に御議論を頂き、ありがとうございました。   次回の日程ですが、7月15日火曜日午後1時30分から午後5時30分まで、場所は法務省地下1階の大会議室を予定しております。次回も引き続き中間試案の取りまとめに向け御議論いただければと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。次回7月15日午後1時30分からということで、御予定おきいただければと思います。   それでは、以上で法制審議会民法(遺言関係)部会の第10回会議を閉会させていただきます。   本日は熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。閉会いたします。 -了-