法制審議会 会社法制 (株式・株主総会等関係)部会 第3回会議 議事録 第1 日 時  令和7年6月25日(水)    自 午後 1時29分                         至 午後 5時46分 第2 場 所  法務省法務総合研究所3階 第1教室 第3 議 題  株主総会の在り方に関する規律の見直しに関する論点の検討(1) 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○神作部会長 予定した時刻が参りましたので、ただいまから法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会の第3回会議を開会いたします。   本日も皆様御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。   本日もウェブ会議の方式を併用して議事を進めることといたします。初めに、事務局当局からウェブ会議に関する注意事項の御案内を差し上げます。 ○宇野幹事 事務当局より御説明を差し上げます。ウェブ会議を通じて御参加されている皆様につきましては、御発言される際を除き、マイク機能をオフにしていただきますよう御協力をお願いいたします。御質問がある場合や審議において御発言される場合は、画面に表示されている手を挙げる機能をお使いください。指名がされましたら、マイクをオンにして御発言ください。御発言が終わりましたら、マイクをオフにし、また画面の挙手ボタンを再度して、挙手を下げていただきますようお願いいたします。   なお、御発言の際は、お名前をおっしゃってから御発言されるようお願いいたします。会議室にお集まりの皆様におかれましても、ウェブ会議の方法で出席されている皆様にはこちらの会議室の様子が伝わりにくいため、お名前をおっしゃってからの御発言に御協力いただきますようよろしくお願いいたします。 ○神作部会長 御説明どうもありがとうございました。   本日の会議の出欠状況について申し上げます。本日は冨田委員が御欠席と伺っております。   次に、本日の審議に入る前に、事務当局から配付資料の御説明を頂きます。よろしくお願いします。 ○宇野幹事 配付資料について御確認いただきたいと思います。   まず、部会資料3「株主総会の在り方に関する規律の見直しに関する論点の検討(1)」がございます。こちらにつきましては、後ほど審議の中で事務当局から御説明をさせていただきます。   また、参考資料5「「実質株主確認制度整備に向けた実務者検討会」第1回会合で共有された法制度に関する主な論点」がございます。こちらにつきましても、後ほど事務当局から御説明をさせていただきます。   次に、参考資料6「株主総会の在り方に関する論点について」及び参考資料7「産業競争力強化法に基づく場所の定めのない株主総会制度概要説明資料」は、経済産業省の中西幹事から御提出があったものでございます。参考資料6につきましては、後ほど中西幹事に御説明を頂きます。   次に、参考資料8「経団連株主総会資料の書面交付請求制度に関する実態調査結果概要」は、仁分委員から御提出があったものでございます。この資料につきましては、後ほど仁分委員に御説明を頂きます。   最後に、参考資料9「書面交付請求・電子投票に関する現状認識」、これは藤井委員から御提出があったものでございます。この資料につきましては、後ほど藤井委員に御説明を頂きます。   配付資料の御紹介は以上でございます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。   それでは早速、本日の審議に入りたいと存じます。   まずは、事務当局から部会資料3と参考資料5についての御説明をお願いいたします。 ○宇野幹事 部会資料3と参考資料5について御説明を致します。   まず、部会資料3は、法務大臣の諮問事項に掲げられた三つの大きなテーマのうちの二つ目、株主総会の在り方に関する規律の見直しに関する論点の検討を行うものでございます。なお、株主総会の在り方に関する規律の見直しについては論点が多岐にわたりますことから、今回はその検討の(1)という形としておりまして、次回も(2)という形で株主総会の在り方に関する規律の見直しに関する論点の検討を引き続き行う予定でございます。   まず、1ページ目の第1では、バーチャル株主総会及びバーチャル社債権者集会を検討事項として掲げております。1ページ目はバーチャル株主総会に関する規律を会社法に設けることについての総論的な問題提起をさせていただきまして、2ページ目以降に各論的な検討事項を記載しております。   2ページ目以降の各論についての検討の手順としては、まず、バーチャルオンリー株主総会に関する規律としてどのようなものを設けるべきかということを検討し、その上でハイブリッド出席型バーチャル株主総会やハイブリッド参加型バーチャル株主総会についても併せて規律することが望ましい事項は何かという順番で、検討事項ということとしております。その上で、社債権者集会につきましても、株主総会との相違点を考慮しつつ、バーチャル株主総会に関する規律と同様の規律を設けるかについて検討するという手順としております。   また、バーチャルオンリー株主総会につきましては、産業競争力強化法において、一定の場合にバーチャルオンリー株主総会を実施することができる旨の会社法の特例が既に定められておりますために、バーチャルオンリー株主総会に関する規律を検討するに当たっては、産競法を適宜参考にするということが考えられるところ、産競法に基づくバーチャルオンリー株主総会の制度説明資料ということで、先ほど申し上げた参考資料7を経済産業省から御提出いただきましたので、こちらも併せて御参照いただければと思います。   部会資料に戻りまして、2ページ目以下の1、バーチャルオンリー株主総会の実施要件では、バーチャルオンリー株主総会を実施するための要件として、産競法の規定も参考にしつつ、定款の定めを必要とするのか、通信の方法を用いて株主総会を実施するに当たって、株主総会の議事を適正かつ確実に行うために必要な措置として一定の事項を求めるか、いわゆるデジタルデバイドの株主の利益を保護するための措置として一定の事項を求めるかなどの問題提起をしております。   少し進みまして、6ページ目以下の2、バーチャルオンリー株主総会を実施する際の手続等では、まず産競法の規定を参考に、招集の決定事項や招集の通知事項について記載をしております。また、第1回会議でも御指摘がございましたとおり、バーチャルオンリー株主総会においては不適正な議事進行がされたことを株主が認識できないおそれがあることなどを踏まえて、株式会社に対して通信履歴や通信内容に関する記録の作成保存義務を課すということについて、どのように考えるかという問題提起もしております。   9ページ目以下の3、株主総会の決議の取消しの訴えの特則では、通信障害が生じた場合に関していわゆるセーフハーバールールを設けることについて、どのように考えるかという問題提起をしております。セーフハーバールールの具体的な内容としては、例えば、通信障害により株主総会の決議の方法が法令又は定款に違反した場合には、株式会社の故意又は重大な過失によって当該が生じたときに限り、株主総会の決議取消事由となる旨の規律を設けることが考えられます。もっともその検討に当たっては、セーフハーバールールを適用することが妥当ではないと考えられる場合をどのように適用対象外とするかについても問題となります。この点につきましては、第1回会議でも考え方の整理をするべきであるとの御指摘があったことを踏まえまして、資料の末尾に一定の場面を類型化した上で解釈の検討、整理を試みたものを付けさせていただいております。   さらに、12ページ目以下の6の規律の適用対象となる株式会社の範囲及び株主総会の類型では、バーチャルオンリー株主総会に関する規律をハイブリッド出席型バーチャル株主総会やハイブリッド参加型バーチャル総会にも適用するかについて問題提起をしておりまして、13ページ目以下の7、バーチャル社債権者集会では、社債権者集会についてもバーチャル株主総会に関する規律と同様の規律を設けることについてどのように考えるかとの問題提起をさせていただいております。   次に、16ページ目、第2では、実質株主確認制度の創設を検討事項として掲げております。こちらにつきましては、第1回会議において、まずは新たに創設する制度の趣旨を明確にする必要があるとの御意見を頂いたことも踏まえて、17ページ目から18ページ目に掛けて、議論のたたき台として三つの制度趣旨を記載しております。   一つ目は、株式会社と株主との間の建設的な対話の促進でございまして、株主との対話の重要性が増している一方で、実質株主を特定できないことが建設的な対話の支障となっているとの指摘があることを踏まえたものでございます。   二つ目が、経営判断における重要な判断材料の収集による株主の共同の利益の保護でございます。第1回会議におきまして、支配権争いの場面では実質株主を確認する要請が強いという御意見を複数頂いたことを出発点としまして、特に支配権争いの場面においては、買収候補者自身の素性であるとか、買収候補者以外の名義株主の背後にいる実質株主の構成、より具体的には、どのような実質株主がどの程度の数の議決権に係る指図権を有しているかという情報が、株式会社が株主の共同の利益に資する経営判断を行う上で重要な判断材料となり得るのではないか、更に進んで、必ずしも支配権争いの場面に限られずに、株式会社が実質株主の情報を知ることは、株式会社による充実した判断材料に基づく企業価値の向上に資する経営判断を促し、もって株主共同の利益を保護するといえるのではないかという考え方でございます。   三つ目は、株式会社の支配に関する重要な情報の把握及び開示でございます。これは、実質株主は議決権の行使について指図を行うということを通じて株式会社に対して影響力を及ぼす存在でございますことから、議決権割合などにより一定の閾値を設けるとしても、実質株主に関する情報は株式会社において把握され、かつ株主に対して開示されるべきであるという考え方でございます。   その上で、18ページ目以下では制度の基本的な枠組みということで、まずは各案共通の基本的な枠組みを(1)で書かせていただいた上で、その実効性を確保するための規律について、今申し上げた三つの制度趣旨ごとにA案からC案までの規律案を(2)で提示させていただいております。   (1)の各案共通の基本的な枠組みとしては、上場会社に限られない株式会社が、名義株主に対して、株式に係る議決権の行使について指図を行うことができる権限を有する者の有無、また、そのような者が存在する場合には、その者の氏名又は名称、住所及び連絡先と、その者が権限を有する議決権数の情報を提供するよう請求することができるという規律としています。また、名義株主の背後に複数の指図権者が存在する場合には、指図権者の連鎖を順次遡ることによりまして実質株主を確認する仕組みとしております。他方で、制度の適用対象となる株式会社の範囲、実質株主の意義、株式会社が請求することができる実質株主に関する情報の範囲、株式会社が実質株主を確認する仕組みといった各論点について、この規律案とは異なる考え方もあり得るところでございますので、それらの点も含めて、制度の基本的な枠組みについて御審議いただければ幸いでございます。   次に、(2)の制度の実効性を確保するための規律につきまして、まずA案では、株式会社と株主との間の建設的な対話の促進という制度趣旨を前提としまして、情報の提供をせず、又は虚偽の情報を提供した者を過料の制裁の対象ということにしています。もちろん、これについては過料では制裁としての実効性に欠けるという指摘もあるところでございます。   次に、B案は、経営判断における重要な判断材料の収集による株主の共同の利益という保護される利益の重要性に対して、実質株主確認制度により株主側が負う義務が、基本的には既に把握している内容を回答するものであるということを踏まえまして、このような重要な情報の提供に応じない株主による株式会社に対する影響力を制限することも許容されるのではないかとの考え方に基づき、議決権の停止の対象ということにしています。このような考え方が採り得るものかどうか、また、議決権を停止するために実体的あるいは手続的要件を更に加える必要があるかどうかについても御審議いただければと思います。   さらに、C案では、株式会社の支配に関する重要な情報の把握及び開示という制度趣旨を前提としまして、指図権を有する議決権の数が一定割合以上となった実質株主を特定実質株主と定義することにしまして、特定実質株主はその素性を会社に通知する義務を負うという立て付けとしております。その上で、株式会社の支配に関する重要な情報は、株式会社だけでなく他の株主にとっても重要な情報である一方で、先ほどと同様、実質株主確認制度により特定実質株主が負う義務は、基本的には容易に把握できる内容を回答するものであるということを踏まえまして、B案と同様に、情報の提供を怠った特定実質株主が権限を有する議決権について議決権の停止の対象ということとしております。こちらについても、このような考え方が採り得るものかどうか、また、実体的又は手続的な要件を加える必要があるかどうかについても御意見を頂ければと思います。   23ページ目以下では、その他の論点ということで、株主から株式会社に対して実質株主確認請求権を行使するよう求める権利を認めるかどうか、あるいは株式会社が把握した実質株主が株主権を直接行使することを認めるか、などの検討事項を掲げております。ここに記載しているもののほかにも検討すべき事項はあるように思われますので、今後の検討事項として重要な事項がございましたら、是非御指摘いただけますと幸いでございます。   あわせまして、ここで参考資料5についても御説明をさせていただければと思います。こちらは実質株主確認制度整備に向けた実務者検討会に関する資料でございます。この実務者検討会と申しますのは、実質株主確認制度の実現可能な実務運用や運用スキームの確立を目指して、株式会社、仲介機関、投資家などの実務関係者が一堂に会しまして、解決すべき課題や具体的対応などを検討することを目的として全国銀行協会を事務局として設置された検討会でございまして、我々法務省もオブザーバーとして参加させていただいております。   今月の11日に第1回の会合が開催されまして、関係する各団体から制度へのニーズ、懸念、論点についてプレゼンテーションや意見交換が行われました。その中には、制度の趣旨や目的を始めとして法制度に関わる御意見もございましたので、これらの御意見を御紹介するために、全国銀行協会で取りまとめていただいたものが参考資料5でございます。   部会資料3の方に戻らせていただきまして、24ページ目の第3では、株主総会のデジタル化に関するその他の検討事項ということで三つの検討事項を掲げております。   一つ目は、書面交付請求制度の見直しについてでございます。書面交付請求制度は、令和元年の会社法改正によりまして株主総会資料の電子提供制度を創設する際に、我が国においては依然として高齢者を中心にインターネットを利用することが困難である者がおり、そのようないわゆるデジタルデバイドの株主の利益に配慮するということを理由に設けられたものでございます。24ページ目以下では審議の御参考情報として、インターネットの利用状況に関するデータですとか書面交付請求の行使比率に関するデータを記載させていただいております。このようなデータですとか、令和元年以降、いわゆるコロナ禍を経て社会全体のデジタル化が進展したことなども踏まえまして、書面交付請求制度を見直すことについてどのように考えるかとの問題提起をさせていただいております。   二つ目が、26ページ目以下の書面による議決権の行使についての見直しでございます。会社法上、株主の数が1,000人以上である場合には書面による議決権行使を認めなければならないとされておりますけれども、第1回会議では、社会のデジタル化の進展も踏まえますと、電磁的方法による議決権の行使を原則的な取扱いとする制度に改めることを検討することも考えられる旨の御指摘があったところでございます。そこで、例えば書面又は電磁的方法のいずれかによる議決権の行使が可能となっていれば、株主が地域的に分散している会社においても株主が議決権を行使する機会が確保されていると考えて、株主の数が1,000人以上である場合には書面又は電磁的方法による議決権の行使を可能とすることを義務付ける、すなわち電磁的方法による議決権の行使を可能とすれば、書面による議決権の行使を可能とする必要はないとすることが考えられます。   一番最後、三つ目は、株主総会の招集の電磁的方法による通知についての見直しでございます。会社法上、株主総会の招集通知を原則として書面でしなければならない場合の例外ということで、株主の承諾を得た場合には書面による通知の発出に代えて電磁的方法により通知を発することができるものとされております。この点につきましても、第1回会議では、株主の個別の承諾を得ることは煩雑であり、特に株主が多い上場会社においては実務上その普及が進んでいないために、社会のデジタル化の進展も踏まえて、電磁的方法により招集の通知を発するため要件の見直しを検討するべきとの御指摘があったところでございます。   そして、その方法の一つとして、例えば、株主の同意がある場合には株主名簿記載事項に株主が利用する電子メールアドレスを追加することとし、同意があった株主に対しては当該電子メールアドレス宛てに招集の通知を発することができる仕組みが考えられないかとの御指摘がございましたために、そのような見直しを行うことについてどのように考えるかとの問題提起をさせていただいております。   少し長くなりましたが、部会資料3の御説明は以上でございます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。   続きまして、参考資料6について中西幹事から御説明をお願いいたします。 ○中西幹事 参考資料6について簡単に御説明をさせていただきます。株主総会の在り方に関する論点についてということで、三つほど掲げさせていただいております。   まず一つ目は、実質株主の確認制度についてでございます。先ほど法務省の事務局の方からお話しいただいた話と重複するところがありますが、御容赦いただければと思います。「稼ぐ力」の強化に向けては、自社の競争優位性を伴った成長戦略を構築し、事業ポートフォリオの組替えと成長投資等を通じて、成長戦略を実行していくことが重要となるということを1回目の会議でも申し上げさせていただきました。株主の声を適切に反映することで、自社の競争優位性を伴った成長戦略の構築やその実行を可能とする信頼関係が構築され、将来期待の醸成にも寄与すると考えられます。企業が株主とのエンゲージメントを行っていくためには、実質株主が誰であるかを把握することが重要と考えており、現に実質株主の情報を踏まえて実質株主に対して対話を申し入れて、実際に応じてもらうなど、実質株主の情報は株主との対話において活用されていると理解をしています。   他方、現行制度上、金商法上の大量保有報告制度や民間機関により実施されている実質株主判明調査は、企業の株主との対話への活用という目的に照らしますと、その情報の正確性などを含め、課題を指摘する御意見もあるところでございます。そこで、企業と株主との建設的な対話に資するよう、実務上の負担にも御配慮いただきながら、実効性を伴った制度の創設に向けた検討がなされることを御期待申し上げたいと思っております。   二つ目は、バーチャルオンリー株主総会でございます。企業と株主との対話の場として考えられてきた株主総会について、開催に多額の費用や人員が必要となり、非効率を御指摘する御意見もあるところでございます。株主総会をバーチャルのみで開催する場合、通常の株主総会に比べますと幾つかのメリットがあるとの御指摘があると理解しております。   一つ目は、物理的な会場の確保が不要となるため、運営コストの低減を図ることができる、二つ目に、感染症の拡大や天災地変が発生した場合も、相対的に容易に株主総会を開催することができる、また、文書での質問がなされるため、口頭による場合に比べて質問の趣旨が明確となり、株主とのコミュニケーションが円滑になる、このようなメリットがあるとの御指摘があると承知しております。   株主総会をどのような方法で開催するかは、株主との関係も含めて、各企業の選択に委ねられておりますけれども、株主総会のバーチャル化を志向する企業において使いやすい制度とする観点から、会社法上、バーチャルオンリー株主総会の開催を可能とするとともに、バーチャルオンリー株主総会の開催に際して課題となっている事項、具体的には、通信障害が発生した場合の株主総会決議取消しのリスクを懸念する御意見がある中で、これらについて、その解消に向けた方策や是非について検討がなされることを御期待申し上げます。   最後に、書面交付請求制度について、若干のデータを御紹介申し上げます。株主総会資料の書面交付請求がなされることによって、その対応に人的、金銭的なコストが発生し企業の負担となっているという御指摘もあります一方で、依然としてデジタルデバイドの株主の方も一定の割合で存在し、書面交付請求制度の見直しは時期尚早であるといった御意見もあるところでございます。   私どもが認識する限り、本審議会の第1回では、委員から書面交付請求を実施する株主の割合が提示されたところでございますが、書面交付請求を行っている株主であっても一定割合についてはデジタルデバイドではないことを示唆するものであると考えてございまして、例えば、証券会社Aにより提供されたデータを見ていただきますと、オンライントレードを可能とする契約、オンライントレード契約と略称してもよろしいかと思いますが、その契約締結している方は通常はインターネットが利用可能な環境にあり、デジタルデバイドの問題は生じないのではないかと考えるところ、2025年3月までに証券会社Aに対して書面交付請求を行った個人の方のうちオンライントレードを締結している方の割合は約82.4%ということでございまして、証券会社Bは少し数字は下がりますが、同じようなデータで47.4%ということでございます。これらのデータも含めまして、デジタルデバイドの株主の実情等を踏まえて、書面交付請求制度の見直しの是非について引き続き検討が行われることを御期待申し上げたいと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。   続きまして、参考資料8につきまして、仁分委員から御説明をお願いいたします。 ○仁分委員 経団連では今月中旬に、主要な会員企業50社を対象に書面交付請求制度に関する実態調査を実施し、23社から回答がございました。   まず、1ページ目、Q1ですけれども、書面交付請求を行った株主の人数及びその割合についての質問でございますけれども、1,000人以上9,999人以下と回答した企業が13社と最多でありました。他方で、10,000人を超える企業、それから逆に100人未満の企業もありました。割合につきましては2ページのとおり、多くの企業で1%未満にとどまっております。   続いて、Q2ですけれども、終了通知及び異議申述催告の実施有無についての質問でございますが、回答した23社全てが、いいえと回答しております。3ページのQ4は、その理由についての質問ですけれども、最も多かった回答としましては、「現時点では書面交付請求の件数が少なく、終了通知を実施する負担の方が大きいため」と、実務負担に関するものでありました。11社から同様の趣旨の回答がございました。ほかにも、「株主利益の保護のため」、それから「終了通知を実施しても異議申述が可能であり、終了通知の効果が読めないため」、「書面交付請求制度が始まって間もないため」など、株主との関係や制度の効果などを踏まえた対応の観点からの回答がございました。   4ページ、Q5の費用負担につきましては、追加の費用負担は生じていない、又は限定的であるとの回答もあった一方で、数百万円から1,000万円の追加費用が発生している企業もございました。   5ページのQ6の作業負担につきましては、書面交付請求を行った株主向けとそれ以外の株主向けに2種類の資料を作成する必要があるとの意見が8社からございました。また、株主への対応など一定程度の追加的な負担が生じているとの回答もありました。一方で、「証券代行機関に委託しているため、追加の負担はない」との回答が6社からありました。   6ページのQ7ですけれども、書面交付請求制度が残ったとしても書面交付請求の件数が少なくなれば、負担は相当程度軽減されるかという質問であります。回答としては、いいえの方が若干多くなっております。その理由としましては、書面交付請求制度が残る限り一定程度の追加的な作業が残る、現時点において書面交付請求株主の人数や書面交付請求対応の費用、作業負担が限定的であるためとの回答が多くございました。   最後に、7ページのQ8で、書面交付請求制度に関する意見を自由に記載いただいたところ、様々な意見が寄せられております。中でも、8ページの上から2番目と3番目の回答のように、電子提供措置事項記載書面の作成が不要になれば情報開示の自由度が向上する、早期のアクセス通知発送やウェブサイト上での充実した情報提供が可能になるとの意見もあり、書面交付請求制度の廃止は株主にとっても望ましい可能性がございます。   以上の結果を踏まえまして、書面交付請求制度の廃止を要望したいと思っております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。   続きまして、参考資料9につきまして、藤井委員から御説明をお願いいたします。 ○藤井委員 私からは参考資料9として、書面交付請求・電子投票に関する現状認識についてを提出させていただいております。こちらにつきましては、私ども証券代行機関として、上場企業全体の書面交付請求、電子投票の導入状況について把握ができる立場にございますことから、これらの現状認識についてお示しをし、本日の議論の参考になればと考えております。詳細につきましては、第3の株主総会のデジタル化のその他の検討事項における意見出しの際に御説明をさせていただきます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。   それでは、三つのセクションに分けて御議論を頂きたいと存じます。まずは部会資料3の「第1 バーチャル株主総会及びバーチャル社債権者集会」に関して意見交換をしていただきます。どなたからでも結構でございますので、御意見のある方は挙手をお願いいたします。御意見がございましたら是非御発言ください。 ○北村委員 それでは、部会資料3で述べられている点について、幾つかコメントをさせていただきたいと思います。   第一に、バーチャルオンリー株主総会は、対面式すなわちリアルの株主総会はやらないということですから、これについては定款の定めは必要なのだろうと思います。現在も実施が可能とされているハイブリッド型については定款の定めは不要ですが、これは対面式があるからという整理だと思います。災害やパンデミックの場合に備えるため定款の定めは不要とすべきというお話が出てきましたけれども、それであれば平時に定款の定めを置いておくべきではないかと思います。部会資料、参考資料にもありましたように、現在、産業競争力強化法上の場所の定めのない株主総会ができるようにする定款の定めを設けている会社は、場所の定めのない株主総会を実施している会社よりもかなり多くなっています。この定款の定めは、定めたからといってバーチャルオンリー株主総会を実施しなければならないわけではなくて、することができるというものですから、平時において定款を変更しておくことで対応するというのがいいのではないかと思います。   第二に、株主総会の議事を適正かつ確実に行うために必要な措置について、4ページにあります通信障害の対策を実施要件とするということですが、これはバーチャルオンリー株主総会の招集手続という位置付けになっているようです。そうすると、この対策を講じていないと決議取消事由になってしまいます。これについては、対策を講じていなくても実際に通信障害が生じなければ、そこで決議取消事由があるとするのは不適切だと思います。これは裁量棄却で対応するというよりも、通信障害が生じなければ、そもそも決議取消事由にならないという一種のセーフハーバーを設けておく必要があると考えます。   4ページ3の即時性、双方向性について、定める方がいいのか、定めなくても同じではないのかという議論が述べられているわけですが、私はこれは定める方がいいのではないかと思っています。つまり、これを定めることによって、リアルと全く同じ即時性、双方向性までは要求されないわけですけれども、とても即時性があるとはいえないような議事運営がされることを防止するという意味はあるのではないでしょうか。   続いて、デジタルデバイドの対応についてですが、書面投票を認めるだけで対応になっているのかということについて議論があるということです。私もかつては、これだけで対応になっているとすることには疑問があったわけですけれども、いまは書面投票を認めるだけでよいのではないかと思うようになりました。デジタルデバイドの株主は、誰かに助けてもらってパソコンの前にいることができるのですよね。リアル会場だったら助けてもらう人を一緒に入場させるわけにいかないのですけれども、バーチャルオンリーだったら株主でない誰かに助けてもらうことはできます。パソコンの向こうに誰がいるか会社は把握できないということもありますし、株主としても、こういう時代ですから、自分の権利を行使するためにはやはり自分の方である程度の努力をしていただく必要があるのではないかとは思っています。したがって、書面投票を認めるだけでデジタルデバイドの対応になると考えてよいと思っております。   通信履歴等の作成、保存義務を定めることについては賛成ですけれども、これを作成・保存していないことと決議取消事由とは別の問題だと思いますので、作成、保存がなかったから決議取消事由になるというのは適切ではないと思っております。   次に、株主総会決議取消しの訴えの特則でございます。通信障害が会社の故意重過失によらない限り決議取消事由にはならないという規定を設けることは賛成でございますが、9ページ2行目の、通信障害により株主総会の決議の方法が法令又は定款に違反した場合というのは何を意味しているのかということを少し詰めておく必要があろうかと思います。例えば、通信障害によって株主が議決権を行使できなかった結果、定足数を満たさない状況になったとか、あるいは決議の結果に影響が出たというのは、会社法第309条1項から4項の違反ということになると思うのですけれども、通信障害によってそのような法令違反が生じたとしても、それは決議取消事由にならないとするのは適切ではありません。これは通信障害とは別の決議取消事由ではないかと思います。   つまり、ここでいう通信障害により決議方法が法令、定款に違反した場合として考えられるのは、一部の株主が議事に参加できなかったことのほか、一部の株主が議決権を行使できなかったけれども定足数や決議要件は満たした場合をいうのであって、その場合は株主の一部が質問権を行使できなかった、あるいは議決権を行使できなかったわけですから、法令違反には当たるけれども、それはセーフハーバーが定められることによって治癒できます。しかし、定足数を満たさないとか決議要件を満たさないということはまた別問題ではないかと思っています。   延期、続行につきましては、産業競争力強化法と同じ規制を設けることに賛成でございます。確かに規定がなくてもこういうことは可能なのだという解釈が示されているところでありますが、ただ、恐らく多数説は、延期、続行については株主総会決議が必要と解しており、その上で、延会、継続会の日時場所の決定を取締役に一任することはできるとされていると思います。しかし、延期、続行の決定自体を議長に一任することまでは現在の学説は認めていないと思われますので、明文規定を設けることに賛成します。   11ページのその他の規律で、株主がリアル株主総会を招集せよという請求をできるかということについては、株主にそのような開催請求権を認めるべきではないと思います。株主にそのような権利を認めますと、11ページにあるように、結局会場を用意しておかなければいけないというような弊害が生じます。   12ページの規律の適用対象については、上場会社だけではなくて閉鎖的な会社についてもニーズがあると思いますので、全ての株式会社を対象にすべきだと考えております。   ハイブリッド出席型の株主総会について、一定の規律を認めるべきかどうかについて、ハイブリッドの場合はリアルの株主総会に出席する権利が保障されていますから、①の実質要件は不要と思いますけれども、招集に関する決定事項の①以外は規律しておいた方がいいのではないかと思います。決議取消事由の特則も、ハイブリッドにも同じように適用されるものとする方がいいと思います。それ以外の規律は不要かなと思っています。ハイブリッド型は現行法でもできるとことになっていますので、新しい規律をたくさん設ける必要はないと考えます。   最後に、社債権者集会についてですが、バーチャルオンリー型の社債権者集会を認める方向に賛成します。株主総会と違いますから、定款の定めではないのですけれども、社債の募集事項としてバーチャルオンリーの社債権者集会を開催することができると定めておくことが適切です。これを定めると、バーチャルオンリー社債権者集会が開催可能であることが社債の種類ということになり、同じ会社が発行する社債でも社債権者集会は社債の種類ごとに組織されますから、バーチャルオンリーの社債権者集会とそうではない社債権者集会が存在する、こういうことでよろしいかと思います。   不認可の特則についても、一定のセーフハーバーを定めることに賛成ですけれども、これについても株主総会の場合と同じく詰めなければならない点があると思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○久保田委員 北村委員の御発言と重複するところもあると思いますけれども、発言させていただきます。   まず、定款の定めについてですけれども、これは株主総会参考書類等の電子提供制度の実施についてさえ定款の定めを要求していますので、そのこととの均衡からは、バーチャルオンリー株主総会の実施についても定款の定めを要求した方がいいのではないかと思います。また、上場会社、非上場会社を問わず、バーチャルオンリー株主総会の実施について、株主の権利が不当に制約されるのではないかという懸念を抱く株主も少なからず存在していると思います。このことはバーチャルオンリー株主総会の実施に水を差しかねないものですので、そうした株主の懸念を払拭する、あるいはバーチャルオンリー株主総会が濫用される危険を減じるという意味でも、定款の定めを要求することによって、定款変更のための株主総会において、バーチャルオンリー総会をどのような場合に利用するのか、また、濫用的な議事運営を避けるためにどのような措置を講じるのかといったことについて取締役が説明し、株主の理解を得る機会を設けるというのが望ましいように思います。   さらに、定款の定めを要求する場合は、定款の定めに基づいてバーチャルオンリー株主総会を実施したものの、その後、株主総会の取消事由に該当するほどではないけれども株主の不信感を買うような議事運営をした会社があったような場合は、株主はバーチャルオンリー株主総会に係る定款の定めを廃止する旨の定款変更を提案することによって対抗することも可能になりますし、そうした対抗の可能性があることは不公正な議事運営が行われることの防止にも役立つと考えられますので、その意味でも定款の定めを要求するのがよいのではないかと思います。また、このことが健全な実務の障害にならないというのは、北村委員がおっしゃったとおりではないかと思います。   通信障害対策を講じることについては、確かにセーフハーバールールとして設けるということもあり得るとは思うのですけれども、私は実施要件として位置付けることでもよいのではないかという気がしています。すなわち、株主総会において通信障害が生ぜず問題なく議事が進行した場合も通信障害対策をとっていないことが株主総会決議の取消事由に当たるというのは、若干気持ち悪さはあるのですけれども、結局は裁量棄却の対象になると思います。また、通信障害対策を講じていなかったことが判明するのは、通常は実際に通信障害が生じた場合であると思いますので、株主総会において通信障害が生じなかった場合に通信障害対策をとっていないことを理由にして株主が決議取消訴訟を提起するといったことも考えにくいと思います。そうであれば、通信障害対策を講じることを実施要件と位置付けることについては素直な規定ぶりだと思いますし、実質的な問題もないため、それでよいのではないかという気がしています。   また、即時性、双方向性の確保についても、これは北村委員と同じように、規定を置いた方が株主の不必要な懸念を払拭し、バーチャルオンリー株主総会を利用しやすくすることにつながるため、できれば規定を置いた方がよいのではないかと思います。この点について資料では、即時性、双方向性の確保に関する規定を設けることで合理的な理由のあるタイムラグも許容されないことになりかねないといった懸念が記載されていますが、個人的にはそういうことは余り懸念しなくてよいのではないかと思います。釈迦に説法ですけれども、例えば株主平等原則についてさえ、一般に合理的な理由による相当程度の不平等取扱いであれば株主平等原則違反にならないという解釈が一般にとられています。このような例はほかにも少なからず見られるところですので、即時性、双方向性の確保に関する規定についても、合理的な理由のある相当程度のタイムラグであれば許されてよいという解釈は一般に受け入れられやすいものではないかと思います。ただし、仮にということですが、それでも健全な実務の障害になりかねないという懸念があるのであれば、例えば、「合理的に必要と判断される範囲内において相互にかつ即時に提供することができる通信の方法を使用すること」といった規定文言など、まずは規定文言の工夫を検討していただいて、それでも適切な文言がなければ、そのときに改めて検討するということでよいのではないかと思います。   次いで、デジタルデバイドの株主の利益を確保するための措置についてです。書面投票を認めることのみでこの要件を満たすとすることの当否について、これは北村委員もおっしゃったように悩ましい問題ですけれども、書面投票が認められる場合は、少なくとも議決権行使については問題がなく、デジタルデバイドの株主にとって最も重要な利益は確保されていると評価できると思いますので、この要件を満たすとしてよいのではないかと私は思っています。   この点について、そのように議決権行使の機会を確保することでは足りないという見方があり得ることは承知していますけれども、実際上これ以上の措置を要求するとバーチャルオンリー株主総会の健全な利用を阻害することになりかねない、そうなるとほかの多くの株主に少なくない不利益が生じることにもなりかねないという懸念があります。さらに、ここは異論があり得るところかもしれませんけれども、個人的には、そのように他の株主に少なくない不利益を生じさせてまで、デジタルデバイドの株主につき議決権行使の機会を与えること以上の利益を確保すべきであるという考え方には、そうした利益にどのような実質的な価値があるのか若干疑問を感じているということもありますので、少し違和感を抱いています。   そこで、繰り返しになりますけれども、デジタルデバイドの株主のことも確かに重要なのですけれども、バーチャルオンリー株主総会の健全な利用を阻害しないという観点も軽視すべきではない、そのため書面による議決権行使を認めるという措置をとることのみをもってデジタルデバイドの株主の利益を確保するための措置としての要件を満たすとしてよいのではないかと考えています。   以上のことは、非上場会社の場合であっても基本的に同じではないかと考えている次第です。   次いで、バーチャルオンリー株主総会を実施する際の手続については、資料に提案されている内容に異存ございません。また、通信記録等の保存義務に違反した場合の効果についても、これは株主総会の議事録と同じ扱いでよい、決議取消事由にならないとすることでよいのではないかと思います。   他方で、通信記録等の保存義務を課す場合における、その閲覧謄写についてですけれども、これは、できれば、やはり株主の閲覧謄写の可能性というのを認めた方がベターなのではないかと思っています。ただし、その必要性の程度は株主総会の議事録の場合と同程度であるとまではいえませんし、プライバシーの問題もありますので、例えば、何かの一定の条件、裁判所の許可を得るなどの一定の条件を前提として閲覧謄写を認めるということができるのであれば、それがベターなのではないかと考えています。   株主総会の決議の取消しの特則についてですけれども、これは私は資料に記載されている考え方に異存がございません。資料に記載されている整理というのは素直な整理かなと思っていまして、それでよいのではないかと考えています。こうした提案が実現した場合における決議方法の著しく不公正というものの内容は、恐らくこれまで論じられてきたものとはかなりイメージが違うものになると思います。正直、そのことについては若干違和感がないわけではないのですが、他方で会社の故意重過失によらない通信障害が生じた場合であっても、それによって株主総会の決議に影響が及ぶ場合、あるいは株主の権利侵害が著しい場合は株主総会決議の効力を問題にする余地を残そうと、こういう考え方を資料は採っているわけですけれども、こういう考え方を採る場合は、現実問題として、少なくとも私はこの方法しか思い付かなかったということになります。そうであれば、今回の提案のように例外的に株主総会の決議を問題にする場合を全て決議方法の著しい不公正又は決議の不存在として処理するというのは、現実に採り得る選択肢の中でベターなものではないかと考えている次第です。   また、資料の別紙に記載されていますようなセーフハーバールールに関する解釈の検討、整理の内容にも基本的に異存はありません。ただし、強いて言えばということですけれども、ここでの整理というのは、これこれの場合は基本的に決議方法の不公正又は決議不存在には該当しない、又は該当し得るとの考え方の当否が問題となるという書き方になっています。現段階では飽くまで整理ということですので、これでよいと思うのですけれども、今後はこうした考え方の当否、それ自体についても、もう少しこの部会で詰めて検討するという方が、当事者にとっての予測可能性の確保に資するため望ましいのではないかと考えています。   株主総会の延期、続行については、これは北村委員がおっしゃったように、ここで書かれているような規律を設ける方が、法的な明確さが確保されるという意味で実務に対して親切だと思いますので、規律を設けることに賛成いたします。   その他の規律については、先ほど申し上げたことと同様の理由から、デジタルデバイドの株主の利益に対する配慮については実施要件を適切に定めることで十分であり、場所の定めのある株主総会の開催請求権を認めることまでは必要ないと思います。   規律の適用対象となる株式会社の範囲については、非上場会社にもバーチャル株主総会を実施するニーズは小さくないと思いますので、非上場会社を含めて全ての株式会社を対象とすることでよいのではないかと思います。なお、非上場会社の場合において、取り分けデジタルデバイドの株主が存在するときは、バーチャルオンリー株主総会が濫用される懸念もないではないのですが、先ほど言及しましたように、デジタルデバイドの株主の利益を確保するための措置というのが講じられている限りは、その懸念は大きくないでしょうし、また、それでも不公正な議事運営がされた場合は、それこそ伝統的な意味での決議方法の著しい不公正に当たりますので、決議取消訴訟を提起するということで対応すればよいのではないかと思います。   規律の適用対象となる株主総会の類型については、これは北村委員と同じ意見であります。ハイブリッド出席型バーチャル株主総会については、バーチャルオンリー株主総会の場合と同様の規律、ただし、定款の定めとかデジタルデバイドの株主の利益を確保するための措置を始めとする一定の規律は要らないと思いますけれども、それ以外の規律はあった方がいいのではないか、取り分けセーフハーバールールはあった方がいいのではないかと思います。   バーチャル社債権者集会についてですけれども、仮にバーチャルオンリー株主総会の場合は定款の定めが必要であるとしますと、そのこととの均衡から、バーチャルオンリー社債権者集会についても社債の募集事項に定めるということが素直かと思います。そして、それが実務の障害になるということも、やはり余り想定し難いのではないかと思います。   社債権者集会の決議の不認可の特則に関する規律については、これは会社法制研究会で恐らく豊田委員が発言されたことだと思うのですけれども、社債権者集会は会社が申請すると、そのため会社の言い分が認められやすく、会社の言い分のみが通ってしまうということが懸念されるという問題提起がされまして、確かにそういう懸念はあり得るかなと思った次第です。ただし、招集者は通常、裁判所に対し社債権者集会の決議の認可の申立てをするに当たっては、議事録に加えて社債権者集会の議事における通信記録、通信内容の記載、記録をした書面、電磁的記録も提出することになるのではないかと思います。仮にそうであれば、裁判所にきちんと通信記録、通信内容の提出を求めていただいた上でそのチェックをしていただければ、会社の言い分のみが通ってしまうという懸念は余り心配しなくてよいのではないか、そうであれば、むしろセーフハーバールールを設けることのメリットの方が大きいのではないかと考えています。   少し長くなりましたが、以上です。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○仁分委員 バーチャル株主総会は、従来のリアル開催の株主総会と比較したときに、株主側の利益としまして、遠隔地の株主が手軽に出席できるようになる、1人の株主が複数の株主総会に同時に参加できるようになるといった点がございます。また、バーチャルオンリー株主総会では、会社側の利点としまして、自然災害やパンデミックなどにより多数の参加者が対面で集まることが困難な状況においても株主総会を開催することができる、会場費、音響機材等の設備費、警備員や誘導員等の人件費や委託費等が不要となるため開催費用を大幅に削減できる、働き方改革やリモートワークが浸透する中、株主総会の運営スタッフの業務負荷を軽減できるなどの点が挙げられます。今般の会社法改正におきまして、開催要件を緩和した上で会社法本体に規定を設けることにより、企業がバーチャルオンリー株主総会をより円滑に開催できる環境が整備されることを期待しております。   その際、リアル出席とオンライン出席にはそれぞれ株主の出席方法の特徴に違いがございますので、異なる取扱いを認めるべきであると考えます。この点は、特に動議の提出や質問の機会の保障など、株主の権利と関係しますので、後ほど申し上げます。   バーチャルオンリー株主総会の実施要件につきましては、部会資料3、2ページに記載されているとおり、産競法の規律を参考として検討を進めることに異存はございません。産競法に基づくバーチャルオンリー株主総会は、既に一定の開催実績があり、会社法における規律を策定する際の参考とすることは適切であると思います。   また、会社法における制度設計に関しまして、経済産業大臣及び法務大臣の確認を要件としない方向性に賛同いたします。ただし、実施要件を会社法や法務省令で詳細に定めてしまいますと、企業としては決議取消しのリスクを懸念してバーチャルオンリー株主総会の実施を躊躇してしまいます。また、デジタル技術が日々進化を遂げる中で、会社法や法務省令の規定が技術の進歩に追い付かなくなる事態も想定されます。企業が柔軟にバーチャルオンリー株主総会を開催できるように、実施要件の規定は最小限にとどめていただきたく存じます。   定款の定めにつきましては、不要とすべきであると考えております。このような制度設計にすることで、バーチャルオンリー株主総会を開催するに当たりまして、事前にリアルで株主総会を開催して定款を変更する必要がなくなるため、自然災害やパンデミックなどの緊急時にも迅速かつ柔軟な対応が可能となります。また、近年、インターネットやスマートフォン等の普及により、デジタルデバイドの問題が小さくなりつつあります。株主の利益を確保するための措置によってデジタルデバイドの株主の利益が一定程度保護されることも踏まえれば、定款の定めを要件とする必要性は低いと考えられます。   通信障害対策を実施要件とすべきかというところでございますが、実施要件とすることは適切ではなく、例えばセーフハーバールールの適用要件などとすべきであると考えます。実施要件として位置付けますと、通信障害が発生せず全ての株主が無事に議決権を行使できた場合でも、通信障害対策を講じていなかったことのみを理由に決議取消事由となってしまいますので、法的安定性の面で懸念がございます。   なお、4ページ14から15行目に、「通信障害が生じた場合の代替手段として複数の回線やWi-Fi、電話回線等を用意することなどが考えられる」との記載がございます。これはあくまでも企業側の通信環境の話であり、株主側の通信環境の確保を企業に義務付ける趣旨ではないことは、次回以降の資料で明確にしていただけますと幸いでございます。   それから、即時性、双方向性の確保につきましては、実施要件として規定すべきではないと考えております。資料で提案されているような要件が設けられた場合、即時性や双方向性がかなり厳格に求められ、合理的な理由のあるタイムラグも許容されないことになりかねないと懸念いたします。また、産競法に基づくバーチャルオンリー株主総会においても即時性や双方向性は要件とされておりません。   デジタルデバイドの株主の利益を確保するための措置につきましては、2ページの本文(3)の①から④までのいずれかの措置を要件とすることに異存はございません。③の書面による議決権の行使につきましても、それのみでデジタルデバイドの株主の利益を確保するための措置としての要件を満たすものとすべきであると考えております。   招集の決定事項及び招集通知の記載事項につきまして、6ページ23から24行目に、「株主総会の議事における情報の送受信に用いる通信の方法(通信障害が生じた場合に代替する通信の方法を含む。)」とございますが、このうち括弧書きの通信障害が生じた場合に代替する通信の方法につきましては、具体的にどのような事項を定め招集通知に記載すればよいか、今後明確にしていただきたいと思います。通信障害対策としては、例えば、サーバーを地理的に分散させることなどが考えられますが、その場合に、そのことを招集通知に記載すべきかは検討が必要だと考えます。   通信記録等の保存につきましては、実務に過度な負担が掛からないよう、保存すべき情報の範囲も保存期間も必要最小限にとどめていただきたいと考えております。特に保存期間につきましては、7ページ1行目に、「例えば、10年間」との記載がございますけれども、株主総会決議取消しの訴えが提起されたときの証拠資料とするために保存するのであれば、その提訴期間に合わせて3か月で十分であると考えられます。   また、8ページの11から14行目に通信記録等の保存を実施要件と位置付ける案が記載されておりますが、これには反対いたします。仮に実施要件と位置付けますと、通信障害対策のときと同様に、株主総会の議事運営に問題がなかったとしても、通信記録等の保存に失敗しただけで決議取消事由となってしまいますので、法的安定性の面で懸念がございます。   それから、通信記録等について株主の閲覧謄写請求を認めるべきではないかという御意見がありましたけれども、その必要はないと考えております。もし認められると、会社としては膨大な情報の開示が必要になり、過度な負担が掛かると懸念しております。   その他の手続等に関しましてですけれども、バーチャルオンリー株主総会におきましては、出席者による動議や質問を何らかの形で制限することを認めるべきであると考えております。バーチャル株主総会では、株主がどこからでも手軽に株主総会に出席できるのみならず、一度に複数の企業の株主総会に出席することも可能であります。また、株主自身の顔が他の出席者に表示されることもないため、動議や質問を提出する際の心理的ハードルも低くなります。そのため、議事運営を妨害するなどの不当な目的による動議や質問が増えることを懸念しております。   株主総会の決議の取消しの訴えの特則、セーフハーバールールを設けることには賛成いたします。これによって通信障害による決議取消しのリスクが低減され、会社がバーチャルオンリー株主総会を柔軟に開催できることが期待されます。なお、特則の具体的な内容を検討するに当たりまして、事前に議決権を行使していた株主がバーチャル株主総会のシステムにアクセスしたからといって、直ちに事前の議決権行使の効力を失わせる必要はない点を明確にする必要もあると考えます。その上で、セーフハーバールールを設けたとしても、別紙の事例④や事例⑦のように、定足数を満たし、かつ決議に影響を及ぼさなかった場合や、事例⑤のように、一部の株主が動議又は質問を提出することができなかったにすぎない場合に、決議方法不公正又は決議不存在に該当する可能性があることは相当でないと考えられます。なお、事例⑦のように事前の議決権行使により議案の可決が判明しているようなケースに関しては、別途、「事前の議決権の行使によって株主総会の決議があったものとみなす制度」の創設も検討されているところでありまして、当該制度の創設も是非実現していただきたいと考えてはおりますが、それとは別に、セーフハーバールールとしても決議が有効になるような方策を御検討いただきたく存じます。   それから、ハイブリット出席型の株主総会に関しましては、現行の会社法の下でも特段の支障がなく開催が可能ですので、会社法に新たな規定を設ける必要はないと考えます。むしろ会社法や法務省令で株主総会の議事を適正かつ確実に行うために必要な措置や招集の決定事項及び招集の通知事項、通信記録の保存等に関する規定を設けることにより、会社にとっては規制強化となり、既にハイブリッド出席型を実施している会社を含め、柔軟な運営が妨げられるのではないかと懸念しております。   それから、バーチャル社債権者集会に関しましてですけれども、バーチャルオンリー社債権者集会の開催を認めることに賛成いたします。バーチャルオンリー開催が可能となれば、必要なときに社債権者集会を機動的かつ効率的に開催し、社債権者が円滑な意思決定を行うことが可能となります。それにより社債権者の保護が強化され、社債市場の活性化、ひいては会社の資金調達手段の多様化にもつながると期待されます。また、社債権者集会の決議は株主総会の決議と異なり、裁判所の認可を受けて初めて効力が生じますので、社債権者集会では株主総会と同等か、それ以上に柔軟な対応が認められてもよいと考えます。   バーチャルオンリー社債権者集会の実施要件につきましては、募集事項に定めがなくとも招集権者がバーチャルオンリー開催を選択できるようにすべきであると考えます。募集事項の定めを要件としますと、改正の時点で既に発行されている社債についてはバーチャルオンリー開催を選択できないため、例えば、発行体の財務状況が悪化して複数の銘柄の社債について社債権者集会の開催が必要となったときに、銘柄によってリアル開催かバーチャル開催かが異なることになり、実務上の支障が生じます。他方、社債権者集会の決議には裁判所の認可が必要でありますので、招集権者が開催方法を自由に選べるとしても社債権者の利益が不当に害されるおそれはございません。   手続的な話でございますけれども、通信履歴及び通信内容の保存期間につきましては、14ページ6行目に、「例えば、10年間」との記載がございますが、バーチャルオンリー株主総会と同様、保存期間については必要最小限にとどめていただきたいと考えております。特に、バーチャルオンリー社債権者集会につきましては、裁判所が社債権者集会の決議を認可する時点での要件の充足性が検証されておりますので、長期間保存する意義は小さいと考えられます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○松中幹事 まず、私はデジタルデバイドへの対応について申し上げたいと思います。これはバーチャルオンリー総会のみならず、第3の1の書面交付請求権の扱い、それから2の書面投票の義務付けをどうするかというところにも関係するところかと思います。   それで、様々なアレンジがあり得るとは思うのですが、これら全体として一貫した考えに基づいた処理をしなければいけないと思っております。その上で、私自身は会社法ではデジタルデバイドへの配慮を強行法的に求めるのは、もうやめてもいいのではないかと考えております。   第1に、株主は類型的に弱者として扱われる存在ではありません。むしろ情報収集であるとか、その処理を合理的に行える存在であると我々は一応、本当にそうかはともかく、そういう前提で考えているわけです。その際に、現代でインターネットへのアクセスをどちらかというとあえて拒む人たちがそこに当たるのかというと、それは相当疑わしい、つまりノイズを増やす必要はないのではないかという発想です。   さらに、現状を見ましてもインターネット利用率に加えて各種情報、議決権行使、バーチャル総会への参加のいずれも、とても容易にできるようになっております。今日もちょうど朝、参加型のものに参加してきたわけですが、スマートフォンの数タップで行けるわけです。このように、スマートフォンのように誰でも持っていると言えるようなもので、かつ追加のアプリケーションが不要、それを数タップでアクセスできる、こういうものであれば、その程度の努力は株主に求めてもよいのではないかと考えています。それをいとう株主のために、会社ひいてはほかの株主がコストを負担したいのであれば、もちろんそれは否定する必要はないわけですけれども、その負担を強制する必要はないのではないかと考えています。   このように考えますと、第1の1(3)の措置は何もなくてもよいというのが私の個人的な意見なのですが、もう少し現実的なものを考えても、例えば④の措置、ほかの措置をとらないということですね、これは株主全員の同意ではなく、例えば定款で定めるという、これはコストを負担する側の株主が望むのであれば負担してもいいのだけれども、そうしないのであればもう一切配慮しませんよという選択肢も認めてもよいのではないかと考えております。   少し違う点に入りますと、バーチャルオンリー総会ですが、延会とか継続会だけをバーチャルオンリーにするというようなことも可能であってもよいのではないかと思っております。さらに、実施要件について申し上げますと、実施要件は幾つか想定されているものがあるわけですけれども、基本的な考え方として、株主総会という会議を成り立たせるために必要なものに限定するという考え方が一つあろうかと思います。この観点から言うと、双方向性なんかはあってもおかしくないと思うのですが、記録の保存であるとか通信障害対策というのは、別になくても会議としては成り立つわけですから、これは入れないという考え方も成り立とうかと思います。それに対して、例えば問題が起きるリスクを低める措置を入れて、それがないこと自体を取消事由だと考えるのであれば、これらも入ってくるということになろうかと思います。私は現時点では前者の、会議として成り立たせるために必要なものに限定していくという方が一応望ましいのではないかと考えております。   そして、記録については保存させるのはもちろん、何らかの形で株主によるアクセスは必要かと思います。これは実施要件とはしないというのを一応の前提として考えているのですが、そうであっても株主によるアクセスは必要ではないかと思っています。書面投票や電子投票と同じ発想に基づくものです。さらに、生じる可能性は低いのだけれども絶対に生じないと言えないような様々な問題を著しい不公正として決議取消しの中で処理するという方法をとるのであれば、やはり証拠へのアクセスというのも確保しておかなければ意味がないものになってしまうと思っております。   続いて、少しまた別の点でありますが、6ページの2③の書面投票・電子投票との関係についてです。別にここに提案されていることに反対するつもりはないですが、もし電子投票・書面投票がバーチャルオンリーの総会における議決権行使よりも優先されるという扱いを認めるのであれば、これはリアルの総会との差が現状で考えていることと出てくることになるかと思います。別にそれがおかしいと思わないですけれども、いずれも同じように、もしこうするのだったら、リアルの総会でもそういうことができた方がいいのではないかと思っております。   最後に、社債権者集会ですが、私自身、これは悩ましいところですが、募集事項に定めることは求めなくてもよいのではないかと思っております。決議の認可の中で、社債権者集会への参加状況も踏まえて不公正かどうかを考慮していけばよいのではないかと思います。これは、取り分け社債権者集会の定足数を満たす、参加者を集めるということの大変さを考慮したら、こうした配慮があってもいいのではないかということです。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○田中委員 これまでの御意見に重複するところが多いですが、幾つかの論点について私の考えをお話ししたいと思います。   まず、初めのバーチャルオンリー株主総会の実施要件に関してですが、定款の定めを要件として、上場会社、非上場会社を問わず認めるのがよいと思います。非上場会社でも、遠隔に株主がいるような場合などにバーチャルオンリー総会を開催できるようにすることは、非常にメリットがあると考えます。その反面、バーチャルオンリー株主総会については、議事が経営陣、執行側の都合のよいように進められるのではないかと懸念している投資家、株主が少なからずいるという印象を持っておりまして、会社が当然にバーチャルオンリー株主総会を開催できるようにすることが株主の意向にかなうとは限らず、株主自身の判断を求めるべきであると考えております。したがって、定款で定めることを必須にすべきであると考えます。   それから、総会の議事を適正かつ確実に行うために必要な措置として提案されている(2)の①から③の措置を定めることはよいと思いますけれども、これ自体は、これをとらなくてもそのこと自体が決議取消事由とするまでのことはないと思います。上場会社では既にこれらの要件が何を意味していて、どういうことをすれば満たされるかは比較的明らかかもしれませんが、非上場を含めて全ての株式会社にバーチャルオンリー総会の開催を認めた場合に、場合によってはそれらの要件のいずれかが満たされず、しかし特段の問題もなく議事が行われて総会が終了することも多々あるのではないかと思っています。そのような場合に、これらの要件がテクニカルに満たされなかったことを理由に決議取消しを認めることは、必ずしも公正ではないこともあると思っております。これらの措置をとることは、通信障害が起きた場合の決議取消しを制限するセーフハーバールールの適用のための要件にするということでいいのではないかと思っています。   それから、(3)のデジタルデバイドのある株主の利益の確保措置に関しては、基本的には、書面投票、又は書面投票に代えて電磁的方法による議決権行使でもいいのですが、そうした事前の議決権行使の道を確保しておけば、それで株主の利益を確保したことになると考えてもいいのではないかと思います。現在のデジタルの普及状況から考えますと、実会場による出席と比較したときに、デジタルによる出席が極端に困難になるとも考えませんので、それほどまでに株主に審議参加の利益をどうしても保障しなければならないということではないと考えております。   それから、決議の取消事由に関するセーフハーバーですが、何らかのセーフハーバーを求めることには賛成します。かつ、これはバーチャルオンリー株主総会だけでなくて、ハイブリッド出席型のバーチャル総会にも、こうしたセーフハーバールールを設けるべきだと思います。ただし、その場合には、今回、別紙としていろいろな場合をシミュレーションしていただきましたが、結論的には、瑕疵が決議の効力に影響しないということをセーフハーバー適用の要件にするのがよいのではないかと思います。   例えば、ハイブリッド出席型のバーチャル総会で、決議のときに通信が完全に遮断されて、バーチャル参加の株主は一切議決権行使できなかったとしても、ハイブリッドですから実会場では決議が行われます。そうすると、やはり決議の存在・不存在に関する普通の考え方によれば、決議は存在するということになるのではないかと思います。そのような場合に、バーチャル参加の株主が議決権を行使していれば決議の結果が変わり得るというときまで、セーフハーバールールの適用により、瑕疵は決議の効力に影響しないということで本当にいいのかということがあると思います。実務上も、確かにバーチャル総会の決議取消しリスクということは言われていますけれども、やはりそうしたことは、事前の議決権行使によって決議の結果が決まっているような場合に、通信障害が起きたというだけで決議取消しになっては困るので、そのような場合にセーフハーバーを作ってほしいというニーズがあるのだろうと思います。通信障害のために株主の一部が議決権を行使できなくなり、そのため瑕疵が決議の結果に影響が及ぶような場合まで、会社に悪意又は重過失がないからといって決議の効力に影響しないというところまで認めてほしいというニーズではないと思います。またもし仮に、そのようなことまで認めてほしいというニーズがあるとしても、それは法律上は応え難いものではないかと思っております。なお、瑕疵が決議の結果に影響を及ぼすかどうかということは、現行法の下でも、裁量棄却(会社法第831条第2項)のときに判断されますし、また、取締役会決議に瑕疵があるときに決議が無効となるかという問題でも判断されていることであり、諸般の事情に基づき、裁判所が影響の有無を判断することであります。通信障害が決議の結果に影響を及ぼさないことをセーフハーバーの要件にすることにより、通信障害が起きても決議の効力に影響を及ぼさなくてよいと考えられる場合に決議が取り消されなくなるという、望ましい結果を達成できると考えております。   それから、社債権者集会に関してもバーチャルオンリーを認めていいと考えております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○藤井委員 私どもバーチャル株主総会の支援というのを日頃行っておりまして、具体的にはプラットフォームの提供とか、運営のサポートとか、こういったところになるのですけれども、この立場から現状の実務を踏まえて、発言をさせていただければと考えております。   まず、総論といたしまして、他の委員からもございましたけれども、産業競争力強化法の規律を参考としつつ、両大臣の確認を不要とするというような制度の創設ということには賛同させていただければと考えております。   次に、実施要件につきましては、皆様からもありますとおり、定款の定め、通信障害対策、あと即時性、双方向性の確保について意見を述べさせていただければと思います。まず、定款の定めについてでございますけれども、産競法という特別法において認められている現状においては、定款の定めというのは必要なのかなと感じているところではあるのですけれども、これを会社法に規律する場合には、先ほど北村委員からも平時のうちに定めておけばいいのではないかという御意見もあったところではあるのですけれども、やはり天災といった非常事態に速やかにバーチャルの株主総会の開催を可能とすべく、不要とすべきと考えております。また、定款の定めを必要とするということは、場所の定めのある株主総会が原則で、場所の定めのない株主総会が例外といったような価値判断のようにも少し感じているところではございますので、株主利益の保護という観点で必要という考えも十分理解はしているところではありますけれども、こういったところからも、定款の定め自体を不要としてもいいのかなと考えております。   次に、通信障害対策に関する措置を求めることの是非についてでございます。事務当局御提案の対策の用意というのは必要と考えておりますし、現状私どもが提供しているものについても、同様の対策というのは提供しているところではございますけれども、これもほかの委員からもありましたとおり、実施要件としてしまいますと、対策を講じなかったことのみをもって決議取消事由に該当することというのは、安定的な実務運営の観点では問題があると考えておりますので、セーフハーバールールに適用することが相当ではないかと考えております。   次に、即時性、双方向性の確保についてでございます。こちらにつきましては、少数かつハイブリッド型での実務ということではあるのですけれども、広く一般に配信すべきではないような事象が起きたとき、例えばなのですけれども、個人情報や人権侵害に関するような発言がなされた場合に備えて、飽くまで会社側に不都合な発言をカットしたいという意図ではなく、一定のタイムラグをもって配信をするような企業というのも現実にあると聞いております。例えば、こういったことが合理的な理由のあるタイムラグとみなされるかどうかといったところは、非常に気になっているところでございまして、今回、実施要件としての規定の有無によって解釈が分かれるという形になると、少し実務運営上も支障が出てくるのかなと考えております。   次に、バーチャルオンリー株主総会を実施する際の手続についての論点については、通信記録の保存義務と閲覧の対象について発言をさせていただければと思います。当社が提供するシステムではということではございますけれども、通信記録につきましては、株主の入退室時間といった視聴情報、あと議決権行使状況、質問や動議、拍手の送信ログというのは保有しておりまして、企業サイドでも確認ができるような形にしております。仁分委員同様、過度な要件というのは避けるべきかとは考えておりますけれども、一定の記録というのは保持しておくべきなのかなと考えております。   ただ、一方で私どもが提供しているようなシステムというのはある程度重厚なシステムを構えているのかなと考えておりまして、適用の対象となる株式会社の類型というのは議論があるところではあるのかもしれませんが、仮に非上場会社まで認めた場合には、例えば、今やっているようなTeamsとかZoomとか、こういったオンラインツールを使った株主総会の開催というのも想定されるところでございますので、これらを想定した検討というのは必要と考えております。   また、資料上、事務当局御提案の通信記録の要件のうち、③の通信障害の状況に関する記録というのはどういったものかというのも気になっているところではございます。当社のシステムにおきましては、例えば通信障害が生じた場合、その時点でログインをしていた株主の情報というのは把握することはできるのですけれども、例えば、通信障害の間にログインを試みた株主の情報は把握することができないという状況でございます。どのような要件を具備する必要があるかは、更に詳細な検討が必要なのかなと考えております。   閲覧につきましては、先ほども意見があったところではございますけれども、リアル総会でも、どの株主が何時何分に来場して何時に退場したかといったところのデータも株主総会議事録の記載事項ではなく、当然ながら閲覧対象にもなっていないというところから、ここは閲覧対象にする必要はないのかなと考えております。   その他、資料3から7の論点につきましては、3のセーフハーバールールと5のリアル総会の開催請求権につきまして発言をさせていただければと思います。セーフハーバールールにつきましては、ほかの委員からもございましたとおり、これ自体を設けることには賛成でございます。ただし、仁分委員からも先ほどございましたとおり、事例の中にも、決議に影響を及ぼさなかった場合にあっても決議方法不公正又は決議不存在に該当する可能性というのが残ることは、やはり実務運営上支障があるとは考えております。また、ここのセーフハーバールールのところで、私どもは企業からの委託を受けてバーチャル株主総会の運営等をしているのですけれども、故意又は特に過失による通信障害というのがどのようなものかというのは、なかなか事例を挙げるということは難しいとは承知しているのですけれども、整理をしていただきたいかなと考えているところでございます。   最後に、リアル株主総会の開催請求権についてでございますけれども、こちらもほかの委員からございましたとおり、これを認めると結局のところ人や場所を確保するような必要が出てきますので、企業サイドとしては負担が掛かってしまうということで、ここは認めるべきではないのかなと考えております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○豊田委員 第1回の会議におきまして、バーチャルオンリーの株主総会につきましては議長のコントロールがしやすく、不公正な議事運営がなされやすいというような発言を私の方からさせていただきましたが、方向性としては、バーチャル株主総会は遠方からも参加がしやすいといった、株主にとってのメリットもあると思いますので、適切な制度導入について議論していくべきものと考えております。   ただ、やはり、特にプロキシーファイトが行われているような争いのある株主総会につきましては、実際に会場を設ける株主総会とすることを請求できるとすることも考えた方がいいのではないかと思っております。ただし、この点、実務上、確かに急に株主総会の会場を用意するということが困難であるということもございますため、一定の期間の延期を認めるといったような手当てが必要になる可能性があると思います。   また、即時性、双方向性についてですけれども、双方向性につきましては、バーチャル総会の議論では株主と役員のみの通信が前提となっているように思われますが、そうであるとすると、会場の開催とバーチャルオンリー総会というのはかなり異なることになっていると思います。この点、争いのない株主総会におきましても、一定程度、会場での開催に近付ける方法というのを考えた方がよいのではないかと考えております。例えば、議長が動議を受け付けなくても他の株主には分からないといったことをなくし、適切な運営を確保するためには、総会検査役の確認を必要とする、若しくは株主がテキストで質問や動議を打ち込んだ場合に、内容が他の株主に分からなくても、質問や動議の数についてはシステム上、他の株主に明らかになるようにして、多くの質問が来ているにもかかわらず、そうでないかのような運営をすることを防ぐような措置も考えられると思います。   次に、セーフハーバールールにつきましては、それを定めること自体には賛成しております。考え方の方向性といたしまして、インターネットを使うためには、故意又は重過失によらない通信障害については全て手当てしようという発想ではなく、インターネットを使うことによる障害が実質的に大きくないにもかかわらず取消しの訴えの可能性が出て裁量棄却に頼らなければいけないのは酷であるという観点から、一定程度それを手当てするという発想の方がよいのではないかと考えております。   その意味では、先ほどの田中委員の御発言のとおりと思いますし、定足数を満たさなかったり結論に影響が出る場合には、セーフハーバールールではなく別途検討すべきだということだと思います。そのようにしても、特に上場企業では事前に議決権行使がなされますので、実際に難しいシチュエーションになるような場合はそれほど多くないと思っております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○行岡幹事 私からは大きく3点コメントを申し上げたいと思います。   1点目は、バーチャルオンリー株主総会における通信記録等の保存に関する点です。この点について部会資料の原案は、株主の閲覧謄写請求権を認めないという前提であると理解しておりました。これに対し、本日の議論では、久保田委員及び松中幹事から、株主に閲覧謄写請求権を認めるべきであるという方向での御発言があったと理解しております。私も、株主にこれらの情報に対するアクセスを一定程度認めることが制度の趣旨にかなうと思う一方で、久保田委員が御指摘のとおり、プライバシーへの配慮も必要であるとも思います。どのような要件の下で閲覧謄写を認めるべきかについて、現時点で具体的な提案があるわけではないのですが、決議の瑕疵については訴訟で争われることが多いと思われますので、民事訴訟法上の文書提出命令による対応では不十分なのかという点も含めて、検討する必要があると思います。   2点目は、セーフハーバーに関するコメントです。部会資料の29ページ以下で、定足数を満たさない場合についてもセーフハーバーの問題として位置付けられて議論されています。ここで、定足数を満たさない場合というのは、恐らく次のような場合だと思います。すなわち、会社の故意重過失によらずに通信障害が発生し、株主総会の当日、株主が議決権を行使できない状態となった結果、事前の書面投票や電子投票を合わせてもなお定足数に届かなかった、それにもかかわらず、議長が当該決議が成立したと宣言した、という場合です。仮にこのような場合が想定されているのだとすると、これは、先ほど北村委員がおっしゃったように、そのような状況で可決を宣言することは会社法第309条違反であり、そもそもセーフハーバーの問題として位置付けて論じるべきものではないのではないかと思います。単なる議論の整理の問題にすぎないかもしれませんけれども、整理の仕方に疑問を持ちましたため、コメントさせていただきました。   3点目は、バーチャルオンリー社債権者集会についてです。この点は実務のニーズもあると理解しておりますので、このような規律を設けることには賛成です。この点について、各論的にいくつか申し上げます。   まず、募集事項の定めを要するかという問題につきましては、方向性として大きくは、募集事項の定めによらず常にバーチャルオンリー社債権者集会が開催できるという規律と、募集事項における選択に委ねるという規律のどちらがよいのかという話になるかと思います。この点、私は実務のニーズを把握していないのですけれども、もし私募債などでバーチャルオンリー社債権者集会をあらかじめ排除しておきたいというニーズがあるのであれば、あるいはそのようなニーズがあるという可能性を否定できないのであれば、一律にバーチャルオンリー社債権者集会が開催できるという規律よりも、募集事項における選択に委ねるという規律の方が、選択の余地を認めるという意味で妥当ではないかと思います。社債に関しては発行手続において専門家が関与することが通常想定され、必要な事項は募集事項で定めるということが期待できると思いますので、募集事項で定めることとしても実務的に困ることは余りないのではないかと考えます。   この点に関連して先ほど仁分委員から、改正の時点で既に発行されている社債についてもバーチャルオンリー社債権者集会の規律を適用できるようにするために、募集事項の定めを要しないとすべきだという趣旨の御発言があったかと思います。しかし、仮に募集事項の定めを要しないという規律を採用するとしても、改正の時点で既に発行されている社債について、法改正があったから当然に新しい規律が適用されるという結論に直結するわけではないと思います。これは法改正に伴う経過措置の問題として議論して規定すべきことであって、募集事項の定めを要するかどうかとは区別して論じるべきだと思います。   最後に、社債権者集会関連で、部会資料の16ページで、社債株式振替法86条のいわゆる86条証明書についての電子化について言及されていますけれども、この点は、仮にバーチャルオンリー社債権者集会の制度が実現しても、この86条証明書が紙媒体であることを要するということであれば、全体を一貫して電子化することができないという意味で実務の障害になると思いますので、この点の提案に私は賛成の意見を申し上げたいと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○森委員 私は少し違った視点から意見を述べさせていただきたいと思っております。   バーチャル株主総会の規律を考えるに当たって、前提として考えるべきことが2点あると思っておりまして、1点目は具体的な状況やニーズを想定して議論をする必要があるのではないかということです。例えば、バーチャル株主総会が今後一般的に行われるようになった場合に、事前に書面による議決権行使を行っている株主であっても、株主総会の様子を覗いてみたいとか、社長が話す様子を見てみたいということで、短時間オンライン接続する方も出てくると思うのですけれども、そういった株主について、一瞬でもオンライン接続した場合に出席扱いにするのか、事前の書面の議決権行使の効力を失わせるのかといった論点があります。そういった意味で、オンライン上で株主の意思をどうやって酌み取っていくのかという論点があると考えております。   また、バーチャル株主総会において多数の株主がオンライン参加するようになった場合に、質疑応答ですとか動議の部分について議長の議事整理権で対応し切れるのかという問題もありますし、荒らしが起こった場合にどうなるのかというような問題もあって、場合によっては収拾が付かなくなるリスクもあります。さらに、株主総会は1時間以上続く場合が多いので、1時間以上にわたって通信障害が起こらないかどうかという非常に緊張感を持った対応が必要になります。このように、デジタル空間において株主の意思をどのように酌み取り、かつ、どのようにデジタル空間を制御していくかということを考えた場合に、特に多数の株主を有する上場会社において、バーチャルオンリーの株主総会を志向する会社がどれぐらいあるのだろうかという点が論点としてあるだろうと考えております。   2つ目に指摘したい点として、バーチャル株主総会の規律を考えるに当たっては、そもそもその前提として、株主総会がどう在るべきなのかという論点をまず議論した上で、バーチャル株主総会の在り方を議論した方がいいのではないかと考えております。例えば、私が所属する会社では株主が100万人以上いますけれども、株主総会に来るのは大体1,000人程度です。すなわち99.9%の株主は総会に来ません。平均的な上場会社は株主が5,000人から1万人ぐらいのところが多いのではないかと思いますけれども、平均的な株主総会の出席者というのは六、七十人程度ではないかと思います。   これは私の感覚なので、できれば事務局の方で実態的に株主総会への出席状況がどうなっているかというデータをもう一度確認して、次回にでも提示いただけないかなと思っておりますけれども、いずれにせよ現状そういった株主総会の状況があり、かつ、政策保有株が減少していく中で、NISAも普及していて、個人株主数が増えてきている状況において、政府の方針である貯蓄から投資へということも踏まえて考えますと、投資単位の引下げも要請されている中で、今後も株主総数というのはどんどん増加していくことが想定されます。そういった状況において、9割以上の株主が参加しない株主総会というのが本来どう在るべきであって、それをバーチャルでやる場合はどう在るべきなのかという発想を持って議論をした方がいいのではないかというのが私の問題意識になっております。これまでも論点として言われていましたけれども、株主総会の場において、事前の株主議決権行使の参考書類ですとか事業報告書と異なるような説明ができないという前提だとすると、株主総会における説明義務をどのように考えるのかということも含めて、議論をしっかりしていく必要があるだろうと考えております。   実務のことを更に申し上げますと、上場会社の場合、1%にも満たない株主しか参加しない株主総会が多いわけなのですが、その株主総会に向けて膨大な量の想定問答ですとか、決議取消事由が発生しないように念入りな準備をしてということが各社で行われておりまして、かなりの会社では4月から6月における経営の最優先事項の一つが株主総会対応になっており、ビジネスよりもむしろ優先されている場合すらあります。そういったことが本当に適切なのかということも議論としてありますので、少し次回の議論につながるような話なので、先走っている感じはしますけれども、個人的には上場会社の株主総会では書面による議決権行使によって決議の成立に十分足りるような議決権の投票が終わっている場合は、総会の冒頭で決議の成否を報告するですとか、若しくは冒頭で決議を取って、それで株主総会を終了する、若しくは休止するというような扱いを認めていくべきだと思っているのですけれども、仮にそういった規律が導入できるのであれば、通信障害のリスクですとか議事運営に関するリスクを大幅にミティゲイトできると思いますので、バーチャルオンリーの株主総会を導入しようというような会社も増えると思います。この論点というのは結局バーチャルオンリー総会導入に関する規律の論点にもつながっていると思っておりまして、例えば定款変更を要件とするかどうかというところにつきましては、現状、議決権行使助言会社はバーチャルオンリーの導入を反対しているのが一般的だと認識しておりますので、定款変更を要求した途端に非常にハードルが高いことになると思うのですけれども、仮に株主総会の運営について先ほど申し上げましたような規律が導入できたとすると、冒頭で決議が終わってしまうわけなので、バーチャルオンリーに反対する理由もなくなってくると思うので、その論点も解消できると思いますし、いろいろ、セーフハーバールールもそれでいいのではないかという議論にもなる方向になっていくと思いますので、そういった株主総会の在り方の議論も連携して、バーチャルオンリーについて議論をした方がいいのではないかというのが私の意見でございます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○青委員 バーチャルオンリー株主総会については、遠隔地から株主総会に参加しやすくするということや、株主の利便性を高めるということで、バーチャルを活用して総会をより開催しやすくし、よりよい運営をしていくということで意義があると思いますので、全体の方向感には賛成です。   その上で、株主の使い勝手と総会の合理的な運営のバランスを考えながら、安定的な総会の運営が確保できるよう具体的なスキームを考えていくことが重要ではないかと思います。   もっとも、海外投資家の中には実出席を重視するという方々もいらっしゃると聞いてはございますので、そういった方々の不満を解消するとして、定款の定めを求めることも一つの手かもしれませんが、そうした声があることを踏まえて最終的な方向性を決めていくことが適当ではないかと思います。   通信障害対策につきましては、一定の措置を設けることは当然重要だと思いますけれども、総会の安定的な運営という観点からは、決議取消しの訴えの特則という形で対応していく方が適当ではないかと思います。   即時性・双方向性につきましては、非常に難しいところだと思いますが、何ら要件を定めないとするよりは、即時性・双方向性としてどういったものが真に確保されるべきであるのかを考えた上で、最低限の規律を設ける方が、かえって株主と会社との間の考えのギャップを解消できる側面があり得ると思われ、より安定的で、株主と会社の双方にとって納得のしやすい仕組みになるように思います。   総会運営の恣意性の排除については、十分に検討する余地があると思います。仮に株主が運営記録を閲覧できるとしても、単純に記録全てを閲覧できるとするより、運営の恣意性を防ぐ観点から本当に必要な範囲にとどめるような形で対応していくということが有用だと思います。   デジタルデバイドの株主保護につきましても、どこまで保護すべきかを考えるに当たり、最低限のアクセス手段は確保されるよう、書面の議決権行使を求めることは十分考えられるかと思うところです。ただ、招集通知の送付や議決権の行使、総会資料の書面交付請求等にも共通しますが、できる限り最低限のアクセス手段を確保する場合であっても、かなり企業側の負担を求めることになってしまいますので、そういった負担をできるだけ軽減できるよう、コストについては株主側に一定程度負担してもらうといったことを許容してもらいながら、最低限の権利が確保できるような仕組みを考えていくのも一つの方策ではないかと思います。   それから、株主総会の類型のところでございますけれども、ハイブリッドの出席型に関しましては、内容によっては一定の規律を設けた方がかえって総会の安定的運営ということにつながる部分はあるかと思います。個々の条項によりますけれども、必要な定めは置いておいた方が、企業にとっても安定的に開催しやすくなるのではないかとは思います。   最後でございますけれども、海外の投資家の中には、バーチャルオンリー株主総会にすると、リアルの株主総会に比べて実質株主が一定の手続の下に参加することが難しくなるのではないかといった懸念を持っている声を聞きはしましたので、それが事実であれば必要に応じて整理が必要かと思われるところでございます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○内田委員 私は、重複もあるので、短めに述べさせていただきます。まず、バーチャルオンリー総会を推進している立場として、現状は余り進んでないと言えまして、それは一つは、先ほど御指摘があったように、米国の大手議決権助言会社が基本的に反対の立場をとっているということであります。コロナ下の特例措置として認めるけれど、基本的に慎重なスタンスであるということです。理由は、株主権利の侵害とか濫用とか、そういった公正な権利が守られていないのではないかといった懸念があり、実例というのはまだそれほど出てきていないと思いますが、一定の株主はそこから連想して、そうした印象とか刷り込みのような懸念を抱いているというのが実態だと思います。制度設計においては、やはり定款の定めを要求するというのは必要だと思います。   あと、実施要件の中で即時性、双方向性の確保というところが議題に上がっていたと思いますが、これについては、バーチャルであればそこは相当程度許容度を持って、余り厳しく求めないという考えは持っています。北村委員がおっしゃっていたように、即時性、双方向性を定めた方が実際には運用しやすくなるという点もあると思いますので、ここはそういう意味で、厳しく規定するというよりは、少し緩めにという内容になるかもしれませんが、そういうことも必要だと思います。   それから、記録、閲覧については、是非ともそういった権利を保障してもらいたいと思います。それが難しいのであれば、先ほど豊田委員がおっしゃっていたように、検査員制度というような形で設けて、総会が公正に運営されたこと、要するに何か隠れたところで重大な不正が行われていないということさえ確認できれば良いという部分もありますので、そういった配慮も必要かと思います。   ハイブリット型も定めるかというところですが、ハイブリッド型もバーチャルオンリー型も、やはり一律に同じような形で規定した方がいいのではないかと思います。実際は、リアル、ハイブリッド、バーチャルオンリーというのは運営の仕方というのは相当違ってくるのだと思いますが、ハイブリッドとリアルを区別するというのが現時点では余り得策ではないと思います。バーチャルオンリーがいい制度であるとするならば、浸透を阻害するということになりますし、比較対象としてハイブリッドが選ばれるような状況というのはやはり避けるべきではないかと思います。基本的には一緒だと考えて、バーチャルオンリーとハイブリッドを同じ形で規定するということが重要ではないかと思っています。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。 ○矢野幹事 まず、第1の論点につきましては、全体的な導入の方針については賛成いたしますし、基本的な方向については全会社、会社の種類を問わず導入する方向で進めるべきいうように考えています。ただ、それに当たってもう少し詰めておかないといけないところがあるのかなとは感じていますので、その点を順次お話しさせていただきたいと思います。ただ、論点が多岐にわたっていて、複数の論点にまたがる話もありますので、個別の論点ごとではない形になることは御容赦いただければと思います。   最初に、念のため確認をしておきたいのですけれども、今回、バーチャルオンリーと書いてありますが、そうするとウェブ会議を想定してしまうのですけれども、資料からは相互性と即時性というだけで映像の点は触れられていませんので、ここでいうバーチャル総会には映像のない方式、具体的には電話のみのものだとか、インターネット回線だけれども映像を投影しないもの、そういったものも含まれるという理解でよいのかということは一応確認しておきたいとは思います。   この前提でということにはなりますけれども、一定の範囲、例えば上場企業の場合は映像を含んだ形まで要求するとか、そういったこともあり得るのかなと思ってはいます。 ○神作部会長 ただ今頂いた御質問について事務局の方からお答えいただいて、それを踏まえて、また御発言を続けていただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○宇野幹事 資料を作成したときの前提としては、必ずしも映像が付いていなくても構わない、音声だけでもあり得るという前提ではございましたけれども、今の御指摘を含めて、例えば、一定の場合には映像が付いていなければいけないのかというところも含めて、御意見があれば頂ければと思います。よろしくお願いいたします。 ○矢野幹事 ありがとうございます。一定の場合には映像を義務付けるといったこともあり得るのかなと思ってはいます。ただ、この場合はセーフハーバールールを別途設ける必要があるという理解かとは思います。   その他の要件に関しましては、実は私、個人的に株主として最近、バーチャルオンリー総会に参加したことがありましたので、その点の経験も踏まえましてお話をさせていただければと思います。バーチャルオンリー総会のやり方はいろいろあるかとは思いますけれども、今までのリアルの総会は、会社と株主、みんな一堂に会して大きな部屋でやっていたわけですけれども、バーチャルオンリーの形で、いわゆるウェビナー方式でやるということになりますと、会社対1人の株主という部屋がたくさんあるという状況になっています。そのときに、そうした多数構造があるというのが本当に総会なのかというのは、少し素朴には気になっているところです。   具体的な状況で申し上げますと、大きな部屋で行うという場合には、他の株主が、誰が手を挙げているかとか、質問がなくなったから決議に移ったのか、質問があるけれども時間の問題から打ち切ったのかとか、そういったところがそれぞれの株主が互いに確認できるということになりますけれども、会社対1人の株主のバーチャルオンリー総会という形になりますと、そうしたものが確認できないということになります。私が参加した総会自体は平穏な総会で、特に問題はないというものではあったのですけれども、ただ見ているだけでも、やはりそういったところは気にはなりましたので、プロキシーファイトがある場合だとか、不祥事が発生している会社とか、そういったときにはかなり問題になるのかなとは思っています。   そうした点では、ウェビナー形式で本当にいいのかというのは少し考える必要があるとは思いますし、逆に、こうした場合がいいということでしたら、その株主総会の記録についてはきちんと取っておくという必要があるかと思います。また、その場、総会の場においては株主において確認することができませんから、やはり閲覧の対象にするということが必要かなと。逆に、閲覧できないということになりますと、株主としては決議取消訴訟をするしかないということになりますから、それを確認するための決議取消訴訟をするというような実務になってしまっても、かえって面倒だと思います。   少し話が変わりまして、株主がさほど多くない会社を想定して考えてみますと、バーチャルオンリー総会と出席型、参加型、従来の総会といった類型の境というのはかなり曖昧だと感じておりまして、今この提案の形でバーチャルオンリーかどうかのところで線を引くのが本当にいいのかというのは少々疑問があります。この法制審議会部会の会議も、全員ウェブで来たということになればバーチャルオンリーですし、1人でも来れば出席型で、全員来たら従来型と、そういった意味ではつながっているというところと同じなのではないかと思います。   その点では、1(3)のデジタルデバイド対応とも関係するということになりますけれども、例えばなのですけれども、バーチャルオンリー総会ですと、ただ、接続が難しい方は今までどおり本社にお越しくださいという場合とか、もう少し進めて、接続が難しい方は本社まで来ていいですよと、ただ、中継する会議室を用意していますと。あと、地方在住の方向けに、お住まいの最寄りの支店までいらっしゃっていただければ、3日前までに連絡をくれれば用意しますよといったような対応も、会社によっては可能なのかなと。こうした個別事由に寄り添った対応というのは法的にも許容されてよいとは考えます。   ただ、今の部会資料に基づいて考えますと、最初の例は、たまたま議長がいる同じ場所に株主がいて、同じ機材で接続をしていると考えればいいのですけれども、ただ、実施要件との関係では1(3)をクリアしていないということになりかねないので、駄目だということになるのかなと。ただ、株主総会会場は本社ですと、バーチャルで出席型でやりますとなると、オーケーだということになるのですけれども、ちょっとした書き方の違いで、いいか悪いかがこんなにすぱっと分かれるというのは少し疑問があると思っております。先ほど挙げた他の二つの例は駄目だということになるのかなと思います。   その点に関しましては、1(3)デジタルデバイド対応というか、ほかの論点も含むのかもしれませんけれども、例えばですけれども、直近5年間の出席者数平均の何分の1を下回らない場所を用意して、参加ができるような形をとるということで対応するというような形をとってもいいのかなと思ってはいます。   この関連したところで別の観点から申し上げますと、現状のリアル総会の実務では、委任状を持った株主が議長から見えやすいところに座っていて、その人が動議対応だとか、採決のときに対応しているというようなことはあるかと思いますけれども、バーチャルオンリー総会であっても、議長の近くにそうした株主がいてもいいのではないかと、そうすると、動議対応だとか採決対応とかも迅速に対応できますし、通信障害や災害時の対応もやりやすくなるのかなとは思います。ただ、それを可としますと、一部株主を優遇したとか不平等な取扱いをしたということになって決議取消事由になりかねないという問題が逆に気になってくるところでして、そうすると、一定程度同じ部屋に株主がいることを許容する余地があるとして、どういった場合に許容されるのかとか、人数制限や資格制限が可能なのかとか、そういったところを併せて考える必要があるのかなとは思いました。   総会関係は以上なのですが、社債権者集会に関して1点だけ申し上げたいと思います。セーフハーバールールについてのところです。現状の資料では、株主総会の場合と同じ規定を設けるということで記載がされておるのですけれども、株主総会の決議取消しの場合とは異なりまして、社債権者集会の認可は裁判所に認可してほしいという形で申請するもので、当事者の対立構造にはなっていません。ですので、本日の資料記載の故意又は重過失によって生じたときという形の要件だと、それを誰が明らかにするのかというのが曖昧で、なかなか実務上ワークしにくい、ただ、社債権者集会でこうした事例がどれだけ生じるのかという問題はあるのですけれども、ワークしにくいという問題があるかと思います。   逆に、こう書いてはあるのですけれども、会社側の方で事実上、故意又は重過失がないことの立証を求められるといったような実務になってしまうのか、逆に裁判所の方が動画を全部確認したりとか、故意・重過失があるかないか、影響があるかないかといったところを1個1個確認することになってしまうことになりますと、結局認可までの時間が掛かってしまうということで、実務上なかなかワークしなくなってしまいます。セーフハーバールール自体を設ける必要はあると思いますけれども、全く同じ条件ではなかなか難しいのかなと思っていますので、少し工夫が必要かと思っています。また、認可制度という形で、いつでも無効の主張ができるということになりますから、逆に記録の保存が短いとまずいということになりかねないので、本当に10年でも大丈夫かなというのは少々気にはなるところです。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○野崎幹事 私の方からはバーチャルオンリー株主総会につきまして、特にグローバル投資家の見方と、それからグローバルな実態に関するOECDの分析に触れる機会がございましたので、そちらについて少し言及させていただければと思います。   まず、バーチャルオンリー株主総会では、物理的な場所における株主総会への出席が認められなくなるということでございますので、株主の権利行使の態様を大きく変化させ、企業と投資家との対話の在り方にも変容をもたらし得るものでございます。こうした観点から、特に投資家サイドには様々な見方がございまして、先ほど久保田委員や田中委員からも、投資家、株主の懸念についてどう対応していくのかという御発言がございました。特にグローバル投資家につきましては、一見すると地理的制約がない形でアクセスできるということでサポーティブなのかと思われがちなのですけれども、実はそうでもなくて、実出席を重視しているというコメントが我々の方にも寄せられているというところでございました。   具体的には、例えば6月2日に金融庁で開催しましたスチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議におきまして、機関投資家の国際団体であるICGNの代表の方から御発言がございまして、特にバーチャルオンリー株主総会は世界中で広まりを見せつつあるが、株主総会は企業の説明責任にとって重要なメカニズムの一つであり、株主が対面で出席できないことは、議場において直接取締役や経営陣と自由に質疑をするという株主の権利を制限することにつながる、少数株主にとってはそのような権利は特に重要なものである、したがって株主総会の形態は対面又は対面とバーチャルのハイブリッドとすることが適当ということでございまして、バーチャルオンリー株主総会には慎重な意見というものが出されたというところでございます。   これとは別に、今年の4月にOECDがShareholder Meetings and Corporate Governance: Trends and Implicationsというレポートを公表してございまして、ここでもいろいろバーチャル株主総会に関する国際的な動きの紹介がなされてございます。統計のデータが、これはサンプルがバーチャルオンリー株主総会のプロバイダーであるブロードリッジとLUMIというところのデータなので、少し偏りがあるのですけれども、全世界の3,054社のサンプルですと、コロナ禍直後の2021年にはバーチャルオンリー株主総会というのがそこのサンプルでは90%近くだったということが、2023年には約40%に低下しているというところで、むしろ対面とハイブリッドの株主総会が増加傾向にあるということでございました。   国別でも分析について言及がございまして、特にコロナ禍後、オランダとかシンガポール、イギリスでは対面のみの株主総会に回帰しているという動きです。一方でオーストラリア、カナダ、米国ではバーチャルオンリーないしハイブリッドがほぼ大部分を占めているというところで、国別でも大分傾向が異なるというようなことが紹介されてございまして、こういった株主総会における株主権の行使とか株主の積極的な参画の在り方に関する考え方というのは、正に各国の規制の枠組みですとか企業プラクティス、インベストメント・カルチャー、そういったものによって様々であって、という状況が記載されております。結論があるわけではないですけれども、そのような状況で今、世界中がいろいろな検討をしているということなので、何か一つの方向が世界共通で志向されているということではないのかなと認識してございます。   あと、今回議論もございましたように、例えば通信障害の対応ですとか細かな運営方法の対応についても、ガイドラインがほとんどの国では整備されていなくて各国ばらばらであるというようなことも、グローバルを見ているOECDからの分析としてはあったということで、共有させていただければと思います。   なので、結論としましては、企業と投資家との間の建設的な目的を持った対話を促進する流れにバーチャルオンリー総会の今回の議論がしっかりと沿ったものとなるような形で、我々も今後も投資家の懸念をしっかり聴きながら、どのような対策が可能なのかも含めて、こちらの部会にインプットさせていただければと思ってございます。 ○神作部会長 大変貴重な情報をありがとうございました。   第1の論点につきまして、たくさんの方がまだ御発言を希望されておりますので、ここで15分休憩を入れさせていただいて、休憩後に再開したいと思います。              (休     憩) ○神作部会長 それでは、皆さんおそろいでございますので、後半に入りたいと思います。   先ほど途中で、御発言の御希望があるのにもかかわらず休憩に入ってしまいましたけれども、「第1 バーチャル株主総会及びバーチャル社債権者集会」についての意見交換を続けたいと存じます。御発言のある方は挙手を願います。 ○白井幹事 既に他の委員・幹事から問題意識や論点が示された箇所につきましては、時間が押していると思いますので、私の意見は差し控えさせていただければと思いますが、1点だけ、これまでに示された議論とはやや別の点につきまして、意見を述べさせていただきます。部会資料6ページの「2 バーチャルオンリー株主総会を実施する際の手続等」に関しまして、同資料では招集の決定事項及び招集の通知事項に次の事項を加えたらどうかという御提案があり、その中で、③として、株主が書面投票や電子投票をした場合において、当該株主が株主総会の議事における情報の送受信に用いる通信の方法を使用したときにおける当該議決権の行使の効力の取扱いを定めるという規定がありまして、この規定は、従来の対面型の株主総会では用意されていなかった規定だと思われますので、興味深く拝読いたしました。   先ほどの森委員の御発言の中でも触れられていたように記憶しておりますけれども、確かにバーチャルオンリー株主総会では、出席と傍聴の区別というのが対面型の株主総会の場合と比べても難しいという問題はあり得るように思いまして、すなわち、総会当日に現れた株主の意思やその意思の表れである個々の態様を見て、出席と傍聴のどちらなのかを会社側が区別するということが、実際にはオンライン上でしか当該株主と接することができないわけですので、より難しいという問題があるように思います。そうしますと、部会資料で今回取り上げられていますように、会社の側で株主総会の招集に当たり一律のルールを決めておくことを可能にするというのは、とりわけバーチャルオンリー株主総会の場合には、一定の合理性が認められるかもしれないとは思いました。   もっとも、部会資料にありますように「通信の方法を使用した場合」、つまりバーチャルオンリー株主総会にアクセスした場合に、会社が事前の議決権行使の効力の取扱いを一律に定めることができるという形で規定を設けることには、個人的には少し疑問に感じています。例えば、通信の方法を使用した場合であっても事前の議決権行使は有効のままである(傍聴したものと一律に取扱う)という形で会社が③の事項の決定をしたとしますと、株主が通信の方法を使用して当日の株主総会の議論を聞き、その議論の状況を踏まえて事前の議決権行使の時点とは意見を変えることができなくなってしまうということになりそうでして、バーチャルオンリー株主総会では、会社が③の事項を決定することによりそのような選択肢を株主から奪うことが可能になるということが、果たして適切といえるかどうかという点でやや疑問を感じているところです。   その一方で、以上とは逆に、会社が③の事項として、通信の方法を使用した場合には事前の議決権行使は一律に全て無効とするという取扱いを定めたとしますと、そのような取扱いが株主に十分には周知されない場合には、または株主の理解不足によってかかる取扱いが正しく理解されなかった場合には、せっかくオンラインで気軽にアクセスできるのだから試しにアクセスしてみようという株主が多数現れ、しかもその多くが自分は傍聴しているだけだと勘違いしてしまいますと、定足数を欠く又は棄権票が大幅に増えるという事態が起こりやすくなる可能性があるように思います。こうした株主の議決権は、仮にアクセスしただけでは会社法上の「出席」ではないとしますと、事前の議決権行使が無効である以上欠席扱いとなり、またアクセスにより「出席」に当たるとすれば、棄権票として扱われることになりそうだからです。さらには、株主が法人である場合の法人内部における権限の委嘱関係次第では、株主総会のやり取りを聴いてみたいと希望する法人株主の従業員に当日の議決権行使の権限までは与えられていない場合も考えられるところ、以上の取扱いの定めは、傍聴のディスインセンティブになりかねないという問題もあり得るかもしれません。   そうしますと、集計に多少時間が掛かることになるのかもしれませんが、仮に今回規定を用意するのであれば、「通信の方法を使用した場合」に事前の議決権行使の効力の取扱いを定めるというタイプの規定を用意するよりも、バーチャルオンリー株主総会において、当日オンラインでアクセスした株主が実際に議決権を行使した場合に、それを事前の議決権行使よりも優先させるとともに、仮にアクセスしても議決権を行使しなかった場合には事前の議決権行使を有効のままとするという取扱いの規定を用意するくらいの方が、適当ではないだろうかという感想を持ちました。 ○神作部会長 御意見どうもありがとうございました。 ○加藤幹事 私からは3点、意見を述べます。   第1点目は、セーフハーバールールについてです。セーフハーバールールを設けること自体については賛成いたします。ただ、先ほどの北村委員と行岡幹事の御意見と重なる部分があるかもしれませんが、本日の資料の29ページ以下で挙げられている①から⑨の事例の多くにおいて、株式会社が通信障害を認識した後にどのような対応をとったのかということは余り重視されていない点が気になりました。通信障害が生じたことを認識した後、会社がどのような対応をとるべきか、どのような対応をとれば事後的に決議の効力が否定されなくなるかが明らかになっていることが重要ではないかと思いました。   2点目は、部会資料3の11ページの5、その他の規律についてです。会社が招集する定時株主総会などにおいて、会社がバーチャルオンリー株主総会の形で招集をしたのに対し、場所の定めのある株主総会の開催請求権を認めるということでは、バーチャルオンリー株主総会を認めるという趣旨に反すると考えます。ただし、バーチャルオンリー株主総会については機関投資家の間でも評価が分かれていることに注意する必要があると思います。むしろ、場所の定めのある株主総会の開催請求権は、会社が招集する株主総会ではなくて、会社法297条に基づき少数株主が株主総会の招集を請求する場合に認める必要があるかが問題となり得るように思われます。少数株主が株主総会の招集を請求したとしても、それに応じて株主総会を開催する場合には、株主自身は招集権者になりません。この場合、少数株主は場所の定めのある株主総会の招集まで請求できるとするのか、それとも、株主は株主総会の招集だけを請求できるのであって、開催形態については会社が判断できるという規律になるのかが問題となり得るように思います。   3点目は、バーチャル社債権者集会についてです。バーチャル社債権者集会を導入する際には、資料の16ページで言及されております社債株式などの振替に関する法律86条の見直しが必要であると思います。この点は賛成でございます。ただ、この見直しの方向として、86条の証明書の提示をデジタル化すれば足りるのかを考える必要があると思います。現在は、1週間前に提示をし、かつ当日も提示をするという規律になっていると思います。つまり、2回証明書を提示するということが要求されております。こういった証明書の提示を単にデジタル化すれば、合理的なバーチャルオンリー社債権者集会の実務を形成できるのかを考える必要があるのではないでしょうか。バーチャルオンリー社債権者集会を開催する際に用いられるであろうシステムなどを踏まえて、どのような見直しが86条について望ましいかを考える必要があると思います。更に申し上げますと、この86条のデジタル化を、バーチャルオンリー社債権者集会の開催にひもづけるのではなく、場所の定めのある社債権者集会の場合にも認めるべきであるようにも思います。86条の見直しの範囲についても考える必要があるのではないかということです。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○藤田委員 私からも何点か申し上げたいと思います。まず、進め方の点なのですけれども、バーチャルオンリー型株主総会という制度を導入することを前提に議論することに賛成します。また、まずバーチャルオンリー型について制度を考え、ハイブリッド型については、規律するかどうかも含めて後で考えるという手順で検討することに賛成です。ハイブリッドは更に複雑ですので、バーチャルオンリーの場合の整理ができた後で、どこが応用できるかを詰めるという形で議論した方がいいと思います。多分、応用可能なのは決議取消しの特則辺りかと思うのですが、準用できるルールはそれほどたくさんはないと思っています。   実務感覚ではハイブリッドとバーチャルオンリーを連続で捉えるのかもしれないのですが、ハイブリッドは現在も自由も行うことが可能ですし、対面参加の機会を保障しているので、対面参加の機会が保障されているにもかかわらずあえてオンラインで参加しているという、余り強い言葉で言いたくないですけれども、やや自己責任のところがあることを前提にルールを考えることができるので、およそ対面参加の機会がない開催方式の場合の厳しいルールがそのままは妥当しないのは、むしろ自然だと思います。例えば、実施要件のところで挙がっているいろいろな要件は、ハイブリッド型を実施するための要件としては不適切だと思います。だから、バイブリッド型とバーチャルオンリー型で揃えられるところはできるだけ揃えようという方向の議論は、下手すると現在よりもハイブリッド型を規制することにつながりかねないということは、よく留意する必要があります。バーチャルオンリー型の規律を一切応用するなとまでいうつもりではないのですけれども、もう少し先の段階で考えればいい話だと思います。   次に、何を議論するか、逆に何を議論しなくていいかということも多少考えた方がいいかもしれません。例えば、森委員が指摘された事前に行った書面投票がログインしたことで直ちに無効になったらおかしいのではないかという話は、重要な論点ではあるのですけれども、これはバーチャルオンリー型ではないハイブリッド出席型の株主総会ですでに問題となっており、かつ、ある程度議論が進んで解決の方向が見えている論点だと思います。まず、対面の場合ですら現在は現場に行ったら直ちに書面投票が失効するのではなく、そこで傍聴という選択肢をとることで、書面投票は失効しない形で、現場にいることが認めらるという扱いは、実務的にも定着してきていると思います。それを前提にするなら、バーチャルオンリー株主総会における一番簡単な解決は、投票できない「傍聴」というログイン方法をシステムで認めることでしょう。また仮にシステム上そういうことをやらない場合、ログインしてバーチャル総会を聞いていても、投票のときにログアウトしていれば、それはその議案との関係では出席としては扱われずに、それで書面投票も生きているという扱いにできるという考え方―確か経産省のハイブリッドバーチャル株主総会実施ガイドでもそのようなことが書かれていたと思います―が、有力だと思います。つまりこの問題については、解決の仕方はもうおおむね合意があって、基本的にはシステムの対応でテクニカルに解決でき、そうではない場合も考え方は相当整理されています。したがって、今回あえてバーチャルオンリー型についての規律と関係させて何かやらなければいけないような話ではなく、そういう問題を混在させて議論しないということも重要だと思います。   ちなみに解釈論としては、白井幹事と同じで、バーチャルオンリー株主総会の場合、特定の議案について現に議決権を行使した人のみが当該議案との関係での出席者と扱うという考え方が成り立ち得ると考えていますが、そもそもこんな解釈に依拠する以前にシステムの組み方で解決できる話です。そうやって解決できる問題を、バーチャル総会の本質だとか、バーチャルオンリー株主総会がどこまで対面と同じかみたいな角度から、大上段に議論して、論点を拡散させないことが肝心で、何を最低手当てしなければいけないかということについてしっかり留意して議論すべきだと思います。   個別の論点についていうと、まず実施要件については、私も他の多くの人と同じで、定款なしというのはかなり難しいと思います。論理的にはあり得ないとまでは言えないですし、そういうことを認める国があることも知っていますけれども、少なくとも自然災害やパンデミックの対応ということもあるからという理由で定款を不要とすべきであるというのは、少し筋がおかしい議論だと思います。何か特殊なニーズがある場合にのみ定款の定めなくてできるという法制にしろというのではなくて、およそ無条件にできるようにして、非常事態の時には対応できるようにしたいという提案だと思うのですけれども、定款変更に株主の承認が得られない、つまり株主が嫌だと言っている会社、あるいはあえて株主の賛成を取ろうともしない会社が、取締役会の一存でこれをやれるという制度というのは導入が難しい気がします。   逆に、定款を要求しないということは、投資家の声を受けて、あえて対面でやることを選択しますということについて会社がコミットメントができなくなるということでもあります。そういう意味で、選択肢を狭めているという面もあることには留意してもらいたいと思います。本当に機関投資家の反対があるというのであれば、なおさら株主の声を少しでも反映させようという選択肢をなくさせるという提案になっているということは、一応慎重になる必要があるかと思います。   次に実施要件を欠いた場合の扱いについては、いろいろ議論はあったのですけれども、目指すところは一致しているわけです。実施要件を欠いたけれどもたまたま通信障害等の問題が起きなかったという場合に、結論として決議が取り消せると考えている人は一人もいないと思います。だから、あとはこれは法的にどう整理し達成するのが一番無難かというだけの問題です。そういう意味では説明の仕方だけの問題なのです。完全に適法な総会ですと言いたいのであれば、(2)①から③は実施要件から落として、セーフハーバーの適用要件にするということになるのでしょう。確かにそうすると一番きれいに解決できるように見えるのですけれども、通信障害についての対策等を全く欠いているバーチャルオンリー株主総会を法的に何の問題もないと評価すべきかというと違和感がないわけではありません。少なくとも産競法で事前確認の要件とされているのを、実施要件から格下げするという意味合いの立法にもなりかねないというのは多少抵抗があります。   仮に一般的な実施要件として残すとすれば、選択肢は二つで、たとえ実施要件を欠いていても通信障害等が顕在化しない限りはその決議との関係では取消事由に当たらないというふうな立法をするか、それとも裁量棄却解釈で対応するかです。後者は、抽象的には確かに法令違反があるかもしれないけれども、実際に問題が起きなかった以上は、少なくとも当該決議との関係ではその違反は重大ではないという解釈です。おそらく、この解釈に異論を唱える人は多くないと思いますし、それで対応できるかもしれません。法令違反という評価が残ってしまうことが嫌かもしれないですが、決議の効力が取り消されるわけではないのに、実施要件を満たさないまま実施したことについて違法と言われるのが嫌だというのは、違和感があります。だから、裁量棄却は不安が残るというのは気持ちとしては分かるのですけれども、通信障害対策等は一切とらなくても実際に問題さえ起きなければ法的には何も問題ないと言い切る制度にするのがいいかというと躊躇を覚えます。したがって、選択肢としては裁量棄却の解釈、そうでなければ決議取消事由の明文化かなと思っています。   「議事に係る情報を、相互に、かつ即時に提供することができる」という要件は、非常に多くの方が議論されていますが、この要件への賛否というより、これが何を意味しているのかということだけはこの場での認識の共有が必要な気がします。そして、内容的には余りそごがなかったような気がしますが、共有された認識を何らかの形で、少なくとも法制審の部会の中では言語化しておく必要があると思います。補足説明にもあるとおり、即時という言葉であっても送受信の多少のタイムラグを直ちに問題視する趣旨ではないことは、皆さんも異論はなかったですし、それはそうだと思います。そして、この点に関連して、「即時」という文言がどうしても引っ掛かるのだったら、あるいは文言を直す必要があるのかもしれません。   ただ、タイムラグ以外のところがむしろ私は気になっています。すなわち議事に係る情報というのは何を意味しているのか、何が伝わらなければいけないのかというところの方がむしろ心配です。例えば、他の株主の反応とか、あるいは他の株主と会社側のやり取りみたいなものが無制限にこの言葉で入ってくるとすれば、そして多少タイムラグを伴ってもいいからそういうことがそのままの形で伝わらなければいけないのだという発想があるとすれば、非常に問題のある要件だと思います。そもそもオンライン参加の場合には、いかなる優れたシステムをとっても最初から実現しようがないようなことまで含まれるようなことがないことだけは確認する必要があると思います。   その際には、対面で現に行われている現象がそのままの形でバーチャル空間で再現されない限り駄目なのだという発想でバーチャルオンリー株主総会の在るべき姿というのを語ってはいけないという発想を踏まえた上で、相互性・即時性という要件を解釈する、場合によっては要件もより適切な文言に変えるということをしないと、不安が残るのはよく分かります。少なくとも、具体的にどういうことを要求する意図かをもう少し言語化して共有する必要があると思います。   デジタルデバイド対策は、書かれていることには私は異論はなくて、書面投票を認めれば要請を満たしているということでいいと思うのですが、問題はそこではなくて、仮に電子提供措置との関係で書面交付請求を廃止したら、このまま(3)の措置は残すのかということが気になります。書面交付請求は先に議論されることなので、今は踏み込みませんけれども、書面交付請求を廃止するというのは、デジタルデバイドの問題について一定の政策判断をすることになるので、少なくとも潜在的にはここにも影響はあり得ることに留意すべきだと思います。   手続との関係では、記録の保存と株主のアクセスについては、さすがに何の規律もないのはまずいと思います。これが気になるということは分かるのですけれども、この点はきっちり考えることを前提に、およそ記録の保存をしなくてもよい、何ら法的に義務はないとするのはさすがにまずい。例えば、通信状況を含め、全くデータがない状態を作り出して、それがゆえに事後的には争いようもないような状況を作り出しても何も問題ないというのは、さすがに維持できないと思います。ただ、少し細かいことを言うと、最初から記録も取らないで手続を進めるのは著しく不公正な決議方法に当たるという解釈はあり得ると思うのですが、きちんと記録を取ったけれども、決議の後で全部記録を消してしまったというのは、決議の方法の法令違反で読めないかもしれないので、解釈で何とか押し切るのかもしれませんが、この辺はもう少し考え方を詰める必要はあるのだと思います。   セーフハーバーについては多くの方が言われたとおりで、ここで書かれている整理で基本的にいいと思います。文言も私は基本的に今の提案でいいと思っていますが、どういう瑕疵に対してどういう対処をする条文なのかということを言語化しておく必要があるような気がします。意図しているのはバーチャル型株主総会によって不可避に生じるようなリスクで、かつ、それが実施者にコントロールできないような事情については、それが仮に顕在化したとしても当然に取消事由にはなりませんという発想だと思います。だから、およそ実施要件を満たさないような形でバーチャルオンリー株主総会をやった場合であれば、仮に通信障害のリスクが顕在化し決議に参加できない人が出たりすれば、当然セーフハーバーの範囲外になりますし、通信障害があっても簡単に対応できることをしないでそのまま放置したというようなケース、別紙の⑧のケースですけれども、これは対象外になると思います。   もう一つ大切なのは、セーフハーバーが何を救済しているかなのですけれども、セーフハーバーは通信障害で参加できなかったことを直ちに瑕疵とは扱わないという意味であって、通信障害があった人は積極的に参加しているとみなすという救済ではないと思います。これに関係するのは、先ほど行岡幹事から指摘があった定足数の扱いの話です。定足数の話が別紙に書かれているのは、混乱していると思います。これは最初からセーフハーバーの範囲外の話なのだと思うからです。つまり、事前の議決権行使の数が足りず、バーチャルオンリー総会へのログインの数を合わせてもも足りないという場合、定足数というのはその性質上、事情の如何を問わず参加しなかった人は参入できないはずなので、セーフハーバールールにより定足数が欠けていないと扱うのであれば、通信障害があった人は決議に参加したとみなすことを意味します。これはセーフハーバーの効果として想定されていない扱いをしようとしていることになります。このルールによる救済の対象をきっちり精査する必要があるような気がします。   なお決議の不存在のような場合に加えて、それは著しく不公正な方法による場合も、表現として気になるところはあるけれども、セーフハーバー・ルールの適用外として、その中身についてできるだけ意識を共有していくような議論をしていくという形で整理していくということになるのだと思います。決議取消事由にとどまる限りは、全て効力を争えないというのは、さすがに少し行きすぎのような気がしますので、著しく不公正な手続による場合の扱いについては多少柔軟さを残しつつ、余り広がらないように、何を著しく不公正と考えるかをもう少し詰める、これは条文としてではなくて発想として詰めていくという作業をしていけばいいのだと思います。   社債権者集会は、これについても基本的にこういう制度を認めていいと思うのですが、決議不認可事由については、恐らく733条1項1号の特則を設けることになるのでしょう。非訟であることに加え、確かに争い方は違ってきますし、厳密な証明責任をどう考えるかという問題はあるのかもしれませんが、実態としては決議取消事由の特則に合わせたような規律を入れておくことは意味があると思いますので、基本的にその方向で検討すればいいと思っております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。   それでは、「第2 実質株主確認制度」についての意見交換に移りたいと存じます。   部会資料3の第2でございますけれども、まず、本日御欠席の冨田委員から事前に御意見を頂戴しておりますので、事務当局に代読していただきます。よろしくお願いいたします。 ○宇野幹事 冨田委員からの御意見を代読させていただきます。   実質株主確認制度に関する論点について、1点コメントを申し上げます。株式買収により実質的な経営者の交代が生じた場合、その影響は経営面だけでなく従業員、労働者に及ぶことが少なくありません。そのため従業員、労働者保護の観点からも、制度の趣旨は補足説明3の株式会社の支配に関する重要な情報把握及び開示が望ましいと考えます。また、制度の基本的な枠組みについては、A案では制度の趣旨を十分に果たすことは難しいので、B案又はC案が望ましいと考えます。 ○神作部会長 ありがとうございました。 ○松中幹事 17ページから18ページに書かれている経営判断における重要な判断材料の収集による株主の共同の利益の保護というところですが、これについては、まず、ここで出てくるようなものが経営判断だといえるのかというのは、経営判断に相当するようなものであるのかというのは、よく分からない部分があります。場面を想定すると、これは言葉だけの問題であれば別にこだわるようなものでもないのですけれども、ここで想定している場面というのは、支配権争いであるとか、おかしな株主が近付いてきている可能性があるとかいったもので、ダイレクトに株主の利益に影響するようなものであるわけです。ですので、少し場面が違うのではないかと思います。用語の問題だけであればいいわけですが、しかし、ここで生じ得る利益相反であるとか濫用の懸念というのも実際、余り説明が見られないものになっていますので、捉え方自体が内容にも影響しているのではないかと思うところであります。   もう一つ気になったのは、濫用の可能性とかとの関係で、議決権行使の制限がされそうな場合に、その対象になっている株主がどのように争うことになるのかがよく分からない。事後に決議取消しなどで争うというのははっきりしているわけですが、事前に議決権を行使させろというのをどういうふうに争うのかというのが問題になるかと思います。例えば、名義株主や、その指図権者が、これ以上指図権者はいないと回答しているのだけれども、会社はこれは虚偽だと、もう一人後ろにいるだろうと言っている場合ですね。こういう場合には議決権行使の制限がされることが想定されるわけですが、ここで名義株主などが議決権行使の制限を回避するにはどうしたらいいのかということであります。支配権争いの場面も想定するのであれば、やはり事前に争う手法を明確にしておかなければ濫用の可能性は払拭できないと思います。これとの関係では、21ページで、余りこういう方向性を現実に考えているわけではないのかなとは思うのですが、会社から実質株主であると合理的に認められる者に対して直接確認するような場合に、間違った相手に確認したと株主側は思っているような場合ですね、この場合、特に争う方法がないと大変問題になるだろうと思います。   続いて、C案についてですが、いろいろ考えてみると、制度というか趣旨としては非常に分かりやすい部分があると思うのですが、他方でいろいろな問題もあると思うところです。例えば、取得後求められている一定期間内に株主が情報を提出しないまま売却して再取得をしましたという場合にどういうふうに考えるのかです。再取得からまた一定期間が始まると考えるのであれば、一旦売却したら、基準日ぎりぎりまで何度でも期間を先延ばしできるのですよね。さすがにそれはないです、最初の取得時からカウントしますとなると、一旦情報を提出しないまま売却すると、その後二度と議決権行使できなくなってしまう可能性もあるので、そうなると今度は④のブラケット内の直近のというのが必須になってくる、これが入るのと入らないので全然違うものになってしまうということで、非常に分かりやすいのですけれども、かなり細かく詰めないといけないところがあるという印象です。   最後に、今回は対象となる会社の範囲はまだ限定しない、そういう議論をするフェーズではないというだけの話なのかもしれないですけれども、B案、C案を採るのであれば、やはり非上場会社は対象にすべきではないだろうと考えています。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○臼井委員 まず、実質株主確認制度の趣旨についてもう少し明確化の議論が必要と考えております。資料の趣旨のところに3点、建設的な対話、株主共同の利益、会社の支配に関する重要な情報と述べてくださっておりますけれども、特に1点目の建設的な対話という点については、投資家の実務としては既に上場会社との対話において、おおよその保有比率や目的等を共有しながら会社側とコミュニケーションを行おうとしております。一方で、これを開示したからといって常に建設的な対話につながるわけではない、例えば面談の機会が適切に確保されない等というケースもあり、アクティブ投資を行う運用会社の立場から見て、建設的な対話に対して実質株主確認制度の追加的なベネフィットがどれくらいあるのかというところには、やや懐疑的な見方をしております。一方で上場会社から見た場合に、実質株主を把握したいというニーズがあるのは非常に理解するところですので、このニーズの明確化、頻度、どれくらいの保有比率までを対象にするのかといったところをきちんと議論する必要があると考えております。   2点目に、投資家の立場から見た実質株主確認制度に関する懸念や、配慮すべきと考える点について申し上げます。1点目の建設的な対話のところに関連しますが、実質株主確認制度が建設的な対話を妨げないような形の制度になってほしいと考えております。例えば、既存株主のみを対象とした、言わば後ろ向きなIRや対話にとどまる、また保有比率の低い株主、若しくは現状株式を保有していない投資家がコーポレートアクセスにおいて後回しとならないような設計が望ましいと考えます。上場企業においては現在、継続的なガバナンスの強化や建設的な対話への取組が進んでいるところであり、株主総会における議決権行使に向けた対応というだけではなくて、継続的かつ双方向の対話を既存株主及び潜在的な投資家と引き続き行っていただくことが中長期的な企業価値の向上につながると考えております。これを踏まえると、コーポレートガバナンス・コードなのか、若しくはハードローなのか、この辺は議論が必要になるところかと思いますが、何らかのガイドラインが必要なのではないかと考えております。   加えて海外との平仄ですが、海外投資家から日本市場を見たときに、実質株主確認制度の観点から、手続や対応義務といった点で追加的な対応コストが掛かることで投資が敬遠されたり、資金調達や資本市場の発展の妨げとならないよう、海外の主要株式市場とのバランスを意識したような制度設計をしていただけると良いと考えております。   3点目として、細かい実務的なポイントでございますが、実効性を確保するための規律についてA、B、C案と今出していただいている中では、A案が適当ではないかと考えております。B案については、議決権行使の制限ということですけれども、これはケースによっては物言う株主、好ましくないと会社側が見なす株主を排除するような事態につながりかねないこと、それからC案については、事業報告への記載等と書いていますけれども、保有に関するこうした情報が一般投資家に対してミスリードとなりかねないといったところで違和感がございます。いずれにしましても、海外の投資家も含めて実効性が担保されるということが重要と考えますので、この辺りを考慮しながら議論していければ良いと考えております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。   ○久保田委員 まず、制度の趣旨についてです。資料では三つの考え方が記載されています。この三つの考え方は、必ずしも互いに排斥し合うものではないと思いますけれども、これまでも申し上げてきましたとおり、支配権争いの場合も想定した、そういう制度にすることが望ましいと思いますので、①から③のいずれかということであれば②、経営判断という言い方がいいのかという問題提起が松中幹事からありまして、確かにその点は再検討の余地がありますけれども、②を中心に据えるのがよいかと思います。ただし今回、制度の基本的な枠組みとして、新しくC案という案が出てきまして、確かにこのC案も取り入れて制度を設計するということも選択肢になり得るのではないかと考えています。そして、そうなりますと③も制度趣旨に含めるということもあり得るのではないかと思います。この点については、また後ほど意見を申し上げたいと思います。   そこで、制度の基本的な枠組みのところに入りまして、まず、制度の適用対象となる株式会社の範囲については、実質株主確認制度のニーズが特に大きいのは上場会社であると思います。また、私は情報の提供を怠った者への制裁としては議決権の停止があった方がよいと考えていますところ、確かに非上場会社の場合はそうした制裁が濫用されるおそれが小さくないということもありますので、制度の適用対象となる株式会社は上場会社に限定してよいのではないかと考えています。もちろん非上場会社にも全くニーズがないとは思いませんので、非上場会社を対象に含めることに強く反対するわけではありません。ただし、非上場会社の場合は上場会社の場合と異なる考慮が少なからず必要になりますので、少なくとも議論の仕方としては、まずは上場会社だけを対象とした制度とすることを前提に議論し、それである程度概要が固まってから、非上場会社にまで対象を広げるかということを検討するのがよいのではないかと思います。   その上で、まず実質株主の意義については、私はこれまで、名義株主等を通じて現実的に捕捉できるのは、資料で提案されているような、信託契約に基づく議決権行使の指図権者ぐらいまでではないかと考えてきたわけですけれども、他方で、これは会社法制研究会での田中委員の御指摘であったと思いますが、実質株主の範囲をそのような指図権者に限ってしまうと、素性のよく分からない会社が実質株主として開示されて、それで終わりということになりかねないため、大量保有報告制度における共同保有者、実質共同保有者に加えてみなし共同保有者も含まれるわけですが、こういった者にまで実質株主の意義を広げないと意味がある制度にはならないという御指摘がありまして、大変ごもっともな指摘だと思っていました。ただし、そこまで実質株主の意義を広げることになりますと、繰り返しになりますが、名義株主等に情報提供義務を課すという方法で本当に効果的に情報を収集できるのかがよく分からないところがありますし、また、全ての名義株主に対してこうした実質株主の情報提供を求めるのは負担が大きすぎるという問題も生じ得ると思います。   ところが、今回新しく出てきた案ですけれども、C案のように、5%など一定割合を超える議決権を有する実質株主に対して会社への情報提供を求めるという案でしたら、先ほど触れましたような実質株主の意義を拡大するときの問題というのも生じにくいであろうと思います。そして、これまで私は、A案とB案ですと、A案だと実効性に欠けるのでB案をベースにすべきであると申し上げてきましたけれども、今回新たにC案を拝見しまして、このC案をベースにすることを前提に、実質株主の意義の拡大について検討することも選択肢になり得るのではないかと思うようになっています。   もちろんC案には、松中幹事が指摘されたように、詰めるべき点が多く残っているとは思います。また、C案を採用する場合は、言わば大量保有報告制度が金商法と会社法の両者に設けられるに近いような形になってしまいますので、重複感が拭えないところですし、さらに、両制度で微妙な違いなどがありますと、それはそれで分かりにくい上に実務上の負担が大きくなりすぎるという問題も生じますので、このような問題をどこまで緩和することができるか、どのような調整が可能かというのが一つの大きなポイントになるような気がしています。   また、そのこととは別に、もう1点、私が検討の余地があると思いますのは、資料ではA案、B案、C案という三つがそれぞれ対立する案であるかのように記載されていますが、本当にそれはそうなのかということであります。これは、丸投げする形の発言になって恐縮ですけれども、B案とC案は工夫すれば併存するということがあり得るのではないか、B案とC案の両者をベースにしながら制度設計をするということも可能ではないかという気がしていまして、仮にそうであれば、そのような検討をしていただければ有り難いと思っている次第です。そして、そのようにする場合には、一定の実質株主、資料では特定実質株主というネーミングになっていますけれども、これについての情報を開示することも選択肢になり得るのではないかと思います。それとの関係で、制度趣旨についても、やはり中心になるのは②だと思いますけれども、それに加えて③というのも制度趣旨に含めることも検討に値するであろうと思っています。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。 ○齊藤委員 実質株主制度の意義と制裁の在り方について、コメントさせていただきます。   実質株主確認制度に関する議論の契機の一つは、欧州の株主権指令における実質株主確認制度の創設と運用の開始にあると思われます。ただ、欧州の株主権指令は、実務で無記名株式が使われるという事情があるために、発行会社から株主の同一性を確認することが元々難しいところで、発行会社から株主にアプローチをする道筋を付けるところに意義があったように思われまして、株主権指令においても情報提供されるべきなのは株主に関する情報であり、フランスにおいては証券の帰属者、ドイツでも株主となっております。各国の法により株主とされる者が定まるとして、その者の背後で指図権を持っている者に関する情報入手のための制度という捉え方は必ずしもされていないように思います。   したがいまして、現在御提案いただいている文言をそのまま実現いたしますと、欧州で実現されている制度とは少し異なるものになってくるのではないかと思われました。誤解があるかもしれませんけれども、欧州で行われている制度を我が国で実現するとすれば、我が国においては名義株主に株式を預けている機関投資家などの情報へのアクセスを認めるという程度の制度にとどまるのではないかと、もちろんその制度が他の機能を事実上果たすことまでは否定されないわけですけれども、制度としてはそういうものにとどまるのではないかとは思われます。   今回の創設する制度の趣旨に、積極的に、経営判断に必要な、特に企業買収局面における情報の透明化とか、あるいは、株主の背後にいる実質的な決定権者の情報を把握するというようなことまで求めるとすれば、新しい要素を付け加えることになろうと思われます。   以前の会議で発言した内容の繰り返しにはなりますけれども、この制度の本来の趣旨は建設的な株主との対話と捉えるべきであって、買収局面における透明化などは本来、大量保有報告制度に委ねるべき問題ではないかと思われます。現在の大量保有報告制度では十分でないという理解の下に、その制度の機能の一部を会社法に取り込んで、会社法上のエンフォースメントと結び付けるという趣旨の立法を積極的に行うべきなのかという点が一つの焦点になってくると思われますが、私は、現在のところまだ定見はなく、ほかの方々のご意見を引き続きお聞きしたいと考えております。   仮に大量保有報告制度の代替措置を会社法に求めるということになりますと、現在御提案の指図権者のみならず、実質的な共同保有者などに広げていかないと、その制度趣旨が達成されないように思われます。また、会社の事実上の支配権の所在に関する重要な情報の把握ということまで入れますと、上場会社だけではなくて非公開会社においてもニーズがあるかもしれないとも思われるところでございます。   このような整理の下で制度趣旨と制裁の組合せについて考えましたときに、大量保有報告制度の代替措置や支配に関する情報の透明化というところまで広げるのであれば、支配権に関わる株主権を停止することと結び付けるのがよいように思われます一方、対話の促進にとどまるのであれば、過料程度が適切ではないかと思われます。ただ、イギリスやフランスの例もございますところ、建設的な対話の促進という目的であっても株主権停止に結び付ける実益があるといたしますと、例えば、域外適用との関係で、名義株主と実質株主との間の契約に日本の会社法の規律がどこまで優先し得るかにつき争いがあるような場合におきましても、背後にいる指図権者と名義株主との間で情報提供に関する同意があれば、名義株主にさえ法適用が及べば、事実上、制度が機能し得るように思われますところ、株主権停止という制裁のリスクがあることを通じて、背後にいる指図権者の同意を引き出しやすいというようなことはあるのではないかと思いました。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。 ○松尾幹事 私も基本的には今、齊藤委員がおっしゃったことと同じように考えておりますが、具体的な制度設計のところでやや異なる考えを持っております。   まず、齊藤委員がおっしゃったように、現在の欧州の株主権指令に基づく実務としましては、基本的にはカストディアンの背後にいる指図権を持つ人を把握するということだと思いますので、建設的な対話の促進ということであれば、その範囲で十分であると思います。そうであるとすると、基本的には名義株主になっている仲介機関を通して情報を出してもらうような仕組みを構築し、会社法は情報を出さない者に過料を科すという形でその実効性を確保するということで十分ではないかと思います。   それに加えて、会社に対して支配的影響を及ぼす者の素性を知りたい、株主との関係でもそれを知らせるべきであるということを言うのであれば、それは3の趣旨と結び付けて、C案のような制度を作るということになるかと思います。久保田委員がおっしゃったように、これらは必ずしも互いに排斥するものではないと思いますので、欧州で現在行われているような実務を前提に、それを可能とする①の趣旨とA案を結び付けたような制度と、③の趣旨とC案のような制度を別途作るということでよろしいのではないかと考えております。   C案についての問題点につきましては、私も松中幹事と同じような考えを持っております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○仁分委員 実質株主確認制度を実効性のある形で導入することを強く要望しております。上場会社におきましては株主との対話のために、株主総会前も含めまして、定期的に実質株主を把握したいというニーズ、それから、投資家から対話の要請や重要な提案を受けたときなど、実質株主を迅速かつ正確に把握したいというニーズがございます。また、例えば同意なき買収ですとか、実態が不明な複数の者による株式の取得などによって株主共同の利益が損なわれるおそれがある場合、会社は株主共同の利益を守るための対応をとる必要がございますので、そのような事態を未然に防止するためにも、平時から迅速かつ正確に実質株主を把握したいというニーズがございます。   上場会社が活用しております民間企業による実質株主判明調査は、一定の時間とコストを要するほか、正確性や網羅性に限界がございます。欧米各国では既に会社が実質株主を確認するための制度が導入されておりますので、日本におきましても実質株主確認制度を是非導入していただきたいと存じます。   基本的な制度の枠組みに関してでございますけれども、非上場の公開会社ですとか非公開会社において本制度を利用したいというニーズは確認できておりません。また、非公開会社では株式の譲渡に取締役会等の承認を要しますので、本制度へのニーズが高いとは考えにくいところであります。したがいまして、まずは上場企業が利用することを前提に制度を検討すべきであると考えます。   実質株主の範囲についてですけれども、議決権の行使について指図を行うことができる権限を有する者だけでは不十分であると考えております。例えば、アセットオーナーが議決権行使の基準を定めていない場合でも、事後的に議決権行使結果を批判したり、事前に抽象的な意向を示したりすることで、アセットマネジャーの議決権行使に重大な影響を与える可能性がございます。そのため、アセットマネジャーがアセットオーナーに対して議決権行使について同意を得ている場合や報告を行っている場合などにも、会社がアセットオーナーの情報を取得できるようにすべきであると考えます。   それから、実質株主に関する情報の範囲ですけれども、部会資料3の21ページ(3)で挙げていただいている情報は、いずれも会社にとって必須であると考えております。それに加えまして、会社と株主の対話の促進や株主共同の利益の保護などの目的に照らして考えますと、海外の仕組みも参考にしながら、株式の保有目的や保有期間、共同保有者の情報なども含めまして、株主に一通りの情報提供を求めることも考えられます。さらに、当該実質株主が他の名義株主を通じても株式を保有している場合には、当該他の名義株主に関する情報や、当該他の名義株主を通じて保有する株式数についても確認できる仕組みにしていただきたいと存じます。   それから、実質株主を把握する仕組みに関してでございますけれども、会社側のみならず名義株主や指図権者にとっても負担を抑え、迅速かつ正確に実質株主を把握できる仕組みの構築が求められます。もし仮に会社が個々の指図権者に対して個別に照会するような仕組みとなる場合、事務手続が煩雑になり、利用しにくい制度になるおそれがございます。このような実質株主確認のシステムや実務のあり方につきましては、本日資料の御紹介を頂きましたけれども、全国銀行協会を中心に関係団体が実務者検討会を立ち上げて議論を進めております。当部会におきましても、実務者検討会の議論も踏まえながら制度の在り方を御検討いただきたいと存じます。   それから、実効性を確保するための規律でございますけれども、A案からC案のうちB案を支持いたします。情報提供の実効性を確保するためには、過料のみでは抑止力として不十分であり、また、海外の名義株主や指図権者に制裁を科すことは困難でございますので、B案のように議決権行使の制限を認めるべきであると考えます。その上で、議決権行使の制限の要件として、株主共同の利益を著しく害するなどといった実体要件を設けるべきではないと考えます。このような要件を設けますと、どのような場合に議決権が停止され得るかが不明確となります。その結果、実質株主の確認作業を円滑に行うことが難しくなり、また、株主共同の利益を著しく害するという要件を満たしていないにもかかわらず議決権行使を制限すると、株主総会の決議取消事由となってしまうため、会社が議決権行使の制限を躊躇することにもなり、制度の実効性が著しく低下すると懸念されます。   なお、名義株主が単なる事務処理の誤りによって正確な情報を回答できなかった場合にまで過料や議決権停止の制裁を科すべきかについては、慎重に御検討いただきたいと存じます。そのような場合にまで制裁を科されるのであれば、実務上、実質株主確認の手続が過度に厳格になることや、情報確認のコストが高くなることで、かえって利用しにくい制度となってしまうおそれがあると考えます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○藤井委員 実質株主確認制度につきましては、私ども信託銀行におきましては、株主名簿管理人、先ほど来、証券代行機関という言葉も使っておりますけれども、としての立場並びに名義株主としての国内管理信託銀行、事務当局からの資料の参考図ですと資産管理銀行と示されているものになりますけれども、これら二つの立場から発言をさせていただければと考えております。   まず、制度の趣旨というところでございますけれども、今回、新しい制度を作るということになりますので、安定的な実務運用というものを考慮いたしますと、私どもといたしましては①の対話の促進というところを目的とした制度整備を行うべきと考えております。対話の促進というところを目的とする場合、実務運用といたしましては、日本における株主名簿作成の実務に合わせまして、基準日ベースで確認を行うような制度設計とすることが合理的と考えております。具体的には、株主名簿が作成され名義株主が確定する、一般的には本決算、中間基準日において、つまり半期ごとに企業が権利を行使できるような制度というのをイメージしております。本日も御説明がありました6月11日に開催された実務者検討会においても、参加メンバーからは基準日ベースとした実務構築をイメージした御発言が多かったと認識しているところでございます。   他方で、株主共同の利益の保護といったところを想定した場面、同意なき買収とか支配権争いといったところになろうかと思いますけれども、企業様にとってのいわゆる有事における活用というのが想定され、特定の企業が基準日以外の時点において、情報の取得に非常に急を要して、さらに一定の短期間に高頻度の請求を行うといったことが想定されるかと考えております。このような場面までを想定すると、先ほど申し上げた対話の推進のために基準日ベースで把握する場合、いわゆる平時における対応と比較いたしますと、実務を構築、運用する難易度が相応に高くなると考えております。また、私どもは日頃実質株主判明調査というのも業務として行っているのですけれども、その利用目的については、もちろん有事の場合というのはあるということは承知しているのですけれども、大部分の企業においては平時の投資家との対話のためや、有事に備えた実質株主の把握といったことが目的だと承知をしております。これらの背景から、株主共同利益の保護という趣旨を否定するものではないのですけれども、実務構築の難易度の高さや想定される利用場面等も踏まえても、まずは対話促進の趣旨をベースに制度構築を始めることが現実的ではないかと考えております。   その上で、制度の基本的な枠組みについてになりますが、先ほど申し上げた制度趣旨との関係からは、私どもはA案を支持するということになりますが、仮にB、C案が採用され、違反者に対して議決権行使の停止というものが認められる場合、実務の懸念といたしましては、株主名簿の確定から招集通知の発送といった実質1か月半程度の中で、本制度に伴う違反者の特定、排除を行うことが果たしてできるのか。今回の資料では触れられてはおりませんけれども、例えば、特に議決権停止するのに当たって裁判所への申立て等、一定の手続を必要とする場合については、そのフィジビリティーについても少し懸念を抱いているというところでございます。   また、一方で裁判所等、第三者の介在がない場合で、先ほど来、意見として出ていたかと思うのですけれども、議決権行使の権利の濫用に疑義があるような場合に、私ども株主名簿管理人といたしましては、企業の指示に従い、そのまま株主の権利を制限するといった事務を行っていいのか、受託者責任等もある中で非常に迷うところでございまして、事務遂行上の判断に窮することがないような制度設計というのは要望したいと考えているところでございます。   次に、適用対象となる株式会社の範囲につきましては、私も先ほど仁分委員がおっしゃっていただいたとおり、ニーズ面で上場会社で限定されることがいいのかなと思っておりますし、先ほど来申し上げている実務運用を行う上でも上場会社に限定することが望ましいかなと考えております。   また、実質株主の意義につきましては、松尾幹事からもありましたとおり、名義株主が対話の対象として適切ではない、参考図にあるような管理信託銀行名義や外国法人名義のカストディアンと、その裏側にいる者と定義するのがよいのかなと考えております。   最後に、その他の論点として、主に名義株主側の懸念事項について発言をさせていただければと思います。名義株主である資産管理信託銀行におきましては、委託者やその運用代理人と結ぶ信託契約や事務協定の定めに基づき、議決権行使の指図権者というものは回答できますが、一方で委託者と運用代理人間で個別に指図権に関する取決めが行われている場合には、その内容までは承知していないといった事情もあり、これらも踏まえて、検討は必要なのかなと考えております。   また、罰則のところにつきましても、こちらも6月11日の実務者検討会においても複数の意見が出ておりましたが、先ほど仁分委員からもおっしゃっていただいたとおり、名義株主の単なる事務処理の誤りによっても過料が科されるというのは、非常に厳しいと思っているところでございまして、この点は少し懸念をしているところでございます。資産管理銀行側の主張としては、業務遂行上、意図的、恣意的に情報提供を行わなかったりとか、あとは虚偽の報告を行うという理由はなく、A案を押しながら、この点は非常に悩ましいと私どもも考えている部分ではあるのですけれども、A案になりますと違反者と制裁の対象がアンマッチになるといったことは非常に懸念をしております。少なくとも事務処理の誤りや名義株主の帰責によらないような場合はこの罰則の対象とならないよう、罰則が適用される場面をもう少し限定ができないか、もしA案を採用するとなった場合に、更なる検討をお願いできればと考えているところでございます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。   ○北村委員 私からは、実効性確保についてコメントしたいと思います。実質株主確認制度の趣旨について、建設的対話なのか支配に関する重要な情報の開示なのかというのは、議論があると思いますが、建設的対話が趣旨であれば、実効性確保はA案かB案、趣旨が支配に関するものなのであればC案ということになりそうで、C案の場合でも、実効性確保として議決権停止まで行くべきかどうかはまた検討の余地があり得るかと思います。私は会社法制研究会のときから、制裁は過料だけでいいのではないかという主張をしておりまして、それでは実効性確保として不十分という御意見が多かったわけでございます。   議決権停止というのは、イギリス、フランスで行われており、それが実際にワークしているということは承知しておりますけれども、日本と同じような株主総会決議取消制度がある国でどうなっているのかというのを少し調査した上で考えた方がいいかなと思っております。といいますのは、先ほど藤井委員がおっしゃったこととも関係しますけれども、議決権停止すべきなのにしなかった、あるいはしなくていいのにしてしまったという場合にどうなるのかということがどうも引っ掛かっております。議決権停止以外の制裁、過料プラス何かというのであれば、例えば剰余金配当を停止するとか、ほかの株主権で考えることはできるのかなとも思っております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○内田委員 まず、この制度趣旨については、三つ挙がっていますが、それぞれが当てはまると思います。特に制度の基本的な枠組みで挙がっているB案、C案は、基本的に支配権に関わること、株主共同の利益の保護に関連することだと思いますので、ともに同列に扱ってもいいと思います。   そこを踏まえて制度設計について議論しないと、制裁の問題にも関わってきますので、話が進まないのではないか思います。その上で欧州・イギリスの制度に倣い、発行体が名義株主に問い合わせて直接実質株主を確認するというのが基本だと思います。問題になるのは、情報照会先がカストディアンにとどまるかどうかという点だと思います。カストディアンが把握している情報、いわゆる信託契約に基づく議決権の実務協定にまつわるところの、いわゆる実質株主を開示するという程度であれば十分だと思うのですけれども、議論はあるとは思いますが、情報をずっと遡ってアセットマネジャーとかまで詳細を問い合わせることになると、これは非常に事が複雑になってくると思います。   先ほども少し指摘がありましたが、委託者と運用代理人、運用会社との契約は複雑な場合もあって、個別契約、投資一任勘定ですので、様々であって、指図権をアセットオーナーが持っていたり、運用会社が持っていたり、その中間みたいなものも含めて、実際には指図権者を特定するには定性判断を要する部分があるということになります。恣意的な部分もあって、指図は具体的にしていないが、対話や報告の中でこうすべきだというようなガイドライン的なものを示したりすることまで含めて、そういうことをアセットマネジャーや運用会社に求めるとなると、実務上の煩雑さというのは相当程度になるということです。そもそもカストディアンの段階で名寄せをしなければいけない、つまり国や地域別で、それを銘柄ごとに整理して集計するとなると、おそらく共有プラットフォームを作ることになるのだと思うのですけれども、更に加えて運用会社の方で、それをいちいち照会した内容について、それがどういう形で指図権者につながるかというところを調べて報告するとなると、相当な負担と時間が掛かるということだと思います。特に、定性判断を要する部分については、統一性もなくバラバラで、さらに制裁に話が及んでくると、その結果として議決権停止ということになるので、さすがにそこで大きなハレーションが生じると思うのです。   そして、制度趣旨を踏まえてB案、C案を考えると、基本的には支配権争奪とか会社の支配権にまつわる問題なので、ある程度迅速性というか、年に1回とか2回とかの頻度で済む話ではなくて、期限が限定されたり短い期間で報告しなければいけないということだと思いますので、それにも合致しないですし、調査結果が本当にそうなのか運用会社でさえ多分よく分からない部分が残るのだと思うのです。つまり、いわゆる実質株主は特定できても、真の指図権者というのは、やはり最後まで正確には分からない部分は残ると思いますし、ないしは徹底的に調べれば最終的には判明することができても、すごく時間とコストが掛かるということです。それから、それに制裁を加えるとなると、違反した投資家を特定するのも難しいと思います。どこの口座でどこのカストディアンが持っているというのを瞬時に特定できないと、罰則の効力もすぐには及ばないということになると思います。   ですから、基本的には現在実施されているイギリスや欧州の制度をベースにしながら、カストディアンが保持している情報をベースに実質株主を把握する段階に留めておくというのが、まずは基本原則というか、この制度がうまくいく機能していくための要件だと思います。その意味では、株の保有状況がグローバルに展開していることを考えるとグローバルカストディアン、サブカストディアンとのハレーションを避けて、今ある制度をまずは導入していった方が確実であろうと考えます。ですから、そこの制度設計をもう少し詰めて考えないと制裁措置に対する議論もできないと思いますし、アセットマネジャーに発行体各社から問合せがあったときには、そこへの対応等も踏まえて考えないといけないと思います。   あと、B案について、もし欧州の制度に倣うのであれば、実際に制裁として議決権停止が組み込まれていますし、実際は余り発動されていないようですけれども、そういう制裁というのは、余程のことでなければ発動されないと思います。つまり、提供する情報がカストディアンベースであればですね、そこで過誤や虚偽の報告はほとんど生じないと思いますし、その点でもB案が機能すると思います。   C案については、非常に難しいとの印象です。あり得る話だと思いますし、発行体のニーズに合致しているというところではありますが、これも提供する期間にもよりますが、正確に、いわゆる共同保有者ベースでの持分を開示するとなると、それなりにハードルがあって、トレーディングのポジションも合算して正確に報告しなければいけないとなると、システム面の手当てやある程度の時間というのも必要になると思います。かえって、本当に必要だと思われる適正な開示がオペレーションとしてうまく回らないリスクも出てくると思います。もちろん閾値がどの辺りに置かれるのかというところも重要であり、例えば大量保有報告制度の5%より低いところになったときには、頻繁に報告しなければいけないということになりかねないので、運用会社に対する事務的なコスト負担や情報開示に対する抵抗感は相当程度になると懸念するところであります。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○森委員 実質株主確認についてニーズがあるということは理解しておりまして、何らかの規律を入れたいという思いはございます。一方で、仮に会社法を改正した結果がA案ということになると、これは意味ある改正なのかという議論が出るような気がしますし、片やB案につきましては、実務上のハードルは相当高いと思っておりますので、かなり難しい議論になっていくかなと思っております。更に言いますと、実質株主を把握するという観点で言いますと、1株単位で全部の実質株主を把握するニーズというのが本当にどこまであるのかということもありますので、何らかの閾値を考えるというアプローチがあってもいいのではないかと思っております。そういった観点を踏まえますと、私としてはC案をベースにして、これにA案をミックスするような、そういったアプローチの考え方もあってもいいのではないかと思っております。   この際に参考にすべき条項が、会社法297条の臨時株主総会の招集権などを参考にすべきだと思っておりまして、3%以上の議決権を有する株主については、例えば定款変更ですとか取締役の解任を目指して臨時株主総会の招集ができるという権利を持っており、3%以上を持つと非常に強大な権利を持つわけでして、そのような保有状況にある株主としてどういった株主がいるのかということは、株式会社及び他の株主からしても非常に重大な関心事だと思うのです。そういった観点から言いますと、3%以上の持分を持つようなった株主については実質株主としての申出をさせるというアプローチは合理的であり、かつ発想としてもおかしくないのかなと思っております。したがって、大量保有報告の5%基準ではなくて、3%基準で考えるということもいいのではないかと思っております。   ただ、一方で臨時株主総会の招集という非常に強大な権限を3%の保有株主に認めていいのかというそもそも論もあると思いますので、仮に臨時株主総会の招集権を引き上げるのであれば、それに合わせて考えてもいいのかなと、そういった考えでおります。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○青委員 まず、制度の趣旨につきまして、従来は建設的な対話の促進というところから議論が出発していたという認識でございまして、対話の相手を探すという観点から、議決権を基本的には有している人とか、あるいはカストディアンの背後にどういう人がいるのかを把握するのには、一定の意味があるということだと思います。そういう趣旨であれば、例えば、総会の基準日に限るのかは別として、一定の基準日ベースでそういった人を把握していくような仕組みを設けつつ、サンクションとしては、飽くまで対話するかは任意であるという観点からは、余り強いサンクションをかけても意味がなく、従来より対話しやすいツールを作るという方向性かと思うところではございます。   それとは別に、支配権争いのような場面で情報収集をしっかりしていきたいというニーズも分からなくはないのですけれども、その場合、②あるいは③の制度趣旨で考えるということもあり得ると思いますが、支配権争いのときに必要な情報ということで考えると、単に議決権の指図権限で本当に足りるのかとか、あるいは株を持っていなくても貸し株をしている場合のように、引渡請求権を持っている場合も含めて考えていかないと意味がないのではないかとか、様々な点でかなり難しい点があると思います。株主の背後の関係がどうなっているのかを把握すること自体がかなり難しいし、時間も掛かるということは多々あるのではないかと思います。そのように考えると、全ての株主を厳密に直ちに把握するということは、かなり実現可能性が低いのではないかと思われるところですし、特定の争いの場面にだけ使うものについて莫大なコストを使って制度を整えるということになると、理解が得にくいのではないかと思われるところではございます。   実際問題として考えていくと、支配権争いのときについては、大きな影響力を持っている人について把握するということが実際のニーズではないかと思われますので、金商法上の5%ルールのところと必要な情報というのは似通ったり、ほぼ重なったりしているように思います。既存の制度も相当考えられた上での制度ですので、できる限り活用するような形にしつつ、エンフォースメントについては会社法上の議決権行使の問題とうまく関連付けることも一つの考えられる方向としてはあるのではないかと思います。そうではないとすると、なかなかフィジビリティーが難しいのではないかと思われるところです。   それと、議決権ベースということなのか、あるいはその株式に対するコントロール権を持っている人であるかどうかとか、そういったところについて、本当に必要な情報は何かというところについては、海外の事例も含めながら考えていくのがよいと思われるところではございます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○田中委員 私はこの部会に先立つ研究会で、B案のような設計があり得るのではないかと申し上げました。B案は、欧州というよりはイギリスの制度が参考になっているわけですけれども、英国の法制では、会社が調査権を持つ範囲が極めて広くなっていて、会社はB案のようなことを全てできる上に、実質株主が法人であるような場合は、その支配社員までも追跡していけるような制度になっています。しかし、制度の運用実態を見ると、実際に会社がその権利を行使している場面は限られているようですし、また、株主が回答を拒否したときの株主権停止というのも、会社が裁判所に申し立てて初めて行われることなので、会社は必要と判断する場合しか申立てをしないという形で、謙抑的に制度が運用されているのだと思います。それで、イギリスでは長いことその制度が続いているのだと思っています。もしB案を採用した上に、会社は、株主を調べることも義務だし、株主が答えないときに議決権を停止することも義務だとなったら、とてもそんな制度は維持できないと思います。恐らくB案を提案している方も、そういう形で制度を設計することは望んでいないのではないか。議決権停止措置についても、会社が必要と認めるときに初めてその措置を発動できるような制度設計にするべきです。ただ、そのような形でB案を設計するとしても、やはり規定上は、会社は全ての株主に対して、指図権者が誰かを聞く権利があり、違反があれば株主権を停止することも可能という制度になるので、投資家の立場からしますと、潜在的に非常に大きな負担になるのではないか、そういう懸案があることは今日のお話を聞いてよく分かりました。   したがって、私としてはB案も依然として検討の余地があると思うのですけれども、一つの現実的な解決策として、一般的な実質株主の調査制度としては、A案をベースに設計する。その上で、支配権争いがあるような場面で、株式を買い集めているらしい株主の具体的な素性というか正体を、会社やほかの株主が把握できるようにするという目的のために、C案を言わば併用するということにしてはどうか。そして、もしC案にする場合には、会社法と金商法の要件が微妙にずれていると無用に複雑な制度になるので、端的に、C案において会社が情報提供請求権を有する範囲は、大量保有報告制度において開示義務を負う範囲とそろえてしまう。このような制度にした上で、違反に対しては、会社は裁判所に申し立てることで、株主の議決権を停止することができるという制度にする。このようなものを、いわば追加的なオプションとして考えてはどうか。もしC案が実現しなくてもA案を実現する意味はあると思いますので、会社が全ての株主に対して情報提供請求権を有する制度としては、A案をベースに設計し、その上で、C案を、今私が申し上げたような制度として作ることのメリットやデメリットを別途考えていくというのが、今日お話を伺った限りでは、最も現実的な選択肢ではないかと考えます。   その上で、A案のもとでも投資家の負担が大きくなりすぎることのないように、かなり注意深く制度を設計する必要があると思います。特に、会社がいつ何時情報提供請求した場合でも株主は答えなければならないという制度になっていると、やはり負担が大きすぎますので、それを基準日に限定するかはともかく、何らかの形で一定の時期に限るものとし、回答も一定の期間内に回答すればいいということにする。そして、会社の情報提供請求に対して答える側は、飽くまで、自分の直近の人、つまり、自分に対して議決権行使の指図の権限を持っている人についてだけしか答える責任を負わないという、これが大前提になると思います。もちろん、制度の仕組みとしては、名義株主が先回りして最終的な指図権者について情報提供を受けておいて、会社に対してその受けた情報を答えるということは当然できるようにしていた方がよいと思いますが、法律上の要求としては、情報提供請求を受けた側は、飽くまで自分の直近の人についてしか回答する責任を負わないという制度にする必要があるかなと思います。   その上で、C案に関してですが、やはりC案は何らかの形で入れた方がいいと思っています。もちろん、金商法には大量保有報告制度があり、本来は、その制度のもとで実質株主や共同保有者については当然開示しなければならないのですが、必ずしもそうなっていないといいますか、純投資のような名目で複数の投資家の名前で株式を買い集めていって、最後に全体が一つのグループであることが明らかになるようなことがこれまでもあったと認識しております。そのような買い集めに対しては、会社法上、もちろん一定の法的制約のもとではありますが、会社は日本版のポイズンピルといいますか、一定比率以上に株式を買い集める行為に対し、総会決議を取ることを条件に一定の防衛策ないし対抗措置をとることが許容されています。この防衛策の導入や発動を回避するために、複数の投資家の名前で株式を買い集める行為が今後も行われる可能性があります。そのような形で、大量保有報告制度に違反して、株式の20%とか25%とかを買い集めてしまった者については、一度議決権を停止し、株式の売却によってその持株比率をいったん5%まで下げてもらう。それからまた買いに来てもいいのですけれども、とにかく下げてもらうまでは議決権を停止するという制度がやはり必要だと思っています。今回、委員の皆様の意見をうかがって、B案のように制度を大きく設計しようとすると、かえって実現が難しくなると思うに至りましたので、C案というものが出てきたことは非常にいいことだと思います。大量保有報告制度の違反に対する議決権行使の停止措置は、これまでも議論されながら立法化で挫折しているところなので、今回は何とか実現可能な形でルールを作っていただきたいと思っております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○行岡幹事 実質株主の範囲についてコメントをさせていただきたいと思います。   本日の議論を伺っていると、実質株主の範囲について、少なくとも二つの微妙に異なる考え方が出てきているのではないかと感じました。一つは、議決権行使について実質的な決定権限を有する者まで遡って開示させるべきだという考え方で、比較法的には恐らくイギリス法がそのようなものと解釈できる制度になっているのだろうと思います。   これに対し、もう一つの考え方は、どのように表現するのが適切か難しいのですけれども、言わばカストディアンの背後にいる者を開示させるべきだという考え方です。これはどういうことかといいますと、日本においても外国においても、株式の保有形態がカストディアンやノミニーと呼ばれる仲介機関を経由して保有される、英語でインターメディエーティッドセキュリティーズ(intermediated securities)などと称される保有構造が一般的になっている中で、その仲介機関の背後にいる者を開示させる、換言すれば、カストディ・チェーンの先にいる者を開示させるという考え方です。加盟国によっても異なるため一概には言えませんが、EUでは基本的にこのような考え方がとられているのだと理解しています。   このように、そもそも実質株主としてどのような者を想定するのかについては異なる理解があり得るところですので、ある程度議論を整理して目線を合わせていくことが必要なのではないかと思います。   また、ここから先は飽くまで試論なのですけれども、今申し上げた二つの考え方のうち第2に申し上げた考え方、すなわちカストディアンの背後にいる者を開示させるという考え方の場合は、名義株主からカストディ・チェーンを遡って情報を収集するというアプローチが適合的であるのに対して、先ほど申し上げた第1の考え方、すなわち議決権行使について実質的な決定権限を有する者を開示させるという考え方の場合は、かかる実質株主側から開示させるというアプローチ、今回の部会資料でいうとC案のようなアプローチが適合的である、と整理できるのではないかと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。 ○野崎幹事 金融庁の野崎でございます。この実質株主確認制度について、議論の沿革をたどってみますと、2年前の12月に金融庁において公表しました公開買付制度・大量保有報告制度等ワーキング・グループの報告で、実質株主については、大量保有報告制度の適用対象(5%超)となる場合を除き、発行会社や他の株主がこれを把握する制度が存在しないと、こういった問題意識から議論が始められて、進められてきたところと認識してございます。こういった意味で、実質株主の透明性向上というのは、基本的には企業と投資家の対話や相互の信頼関係を醸成するという観点から重要という形で議論が進んできておりまして、そうした観点からは、制度の趣旨というのは、まずは株式会社と株主との間の建設的な対話の促進をベースとして検討していくということが重要なのではないかと考えてございます。   今回、C案について様々御議論があったかと思いますけれども、こちらの閾値の例示として大量保有報告制度と同じ5%という数字が掲げられてございまして、そうだとすると実質株主の透明性向上という観点で得られる効果というのは、制度の設計次第ではあると思うのですけれども、大量保有報告制度と大差ないものとなる可能性が高い一方で、投資家にとっては二重の負担を強いるだけの制度になることが少し懸念されるというところでございます。そうすると、国内外の機関投資家からこのような制度の理解を得るハードルは相当高くなるのではないかということを少し心配しているというところでございます。   他方で、大量保有報告制度の実効性確保につきましてはこれまでも様々な御指摘を頂いているところでございまして、先ほど御紹介したワーキング・グループの報告書でも、田中委員から御指摘がございましたように、本来であれば議決権停止制度を設けることが最も効果的という意見も出されたというところでございますけれども、そこでの結論では直ちに制度導入との結論にはならなかったものの、必要に応じ引き続き検討を進めていくことが大事だとされていたというところでございますので、こういった方向感も踏まえて、今回どういうふうにするのかという御議論かなと思ってございます。   金融庁におきましては、制度の実効性確保のために、例えばみなし共同保有者の要件を明確にしていって、複数の投資家による潜脱的な報告書不提出などの市場の公正性を脅かしかねないような事案には適切に対応していくというような制度整備を行ってございます。また、直近の動きとしましては、6月20日に証券取引等監視委員会から金融庁に建議がなされてございまして、特に継続的に株式の買い集めを行う投資者による大量保有報告書の不提出など、想定される利得額と比較して現行の課徴金額の水準が抑止効果として不十分というものについては、適切な対応をするということが問題意識として出されております。本日午前に行われました金融審議会の総会におきましても、金融担当大臣から市場の公正性・透明性に対する投資家の信頼確保等に関する不公正取引規制の強化等に関する検討についての諮問がなされたというところもございますので、こういった大量保有報告制度で足らざる部分、特に実効性確保について足らざる部分については対応を強化していくということで実効性を高めていきたいということでございます。   C案のところは、どのような形で投資家側に映っていくのかというところは、我々もまだヒアリングが具体的にできていませんけれども、少しそういった視点も含めた制度設計というのが重要かなと考えているところでございます。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。 ○矢野幹事 弁護士会の中で意見を聴いたのですけれども、A案からC案、いずれもそれぞれ支持がありまして、現状では何か一つということを申し上げられる状況にはないということはお話しさせていただければと思います。なので、それ以外の点を少しお話ししようかなと思います。   まず今回、資料だと19ページ目、2(1)①アのところで実質株主の定義が入っておりますけれども、これが少々広すぎないか、特に信託契約その他の契約という部分なのですけれども、例えばなのですけれども、株主のAさんとBさんで話合いをして、AさんはBさんと一緒に株主総会に出席して、Bさんが指示するとおりに投票しますという合意をしたとなりますと、この場合、Aさんは名義株主でBさんは実質株主ということになります、という解釈になってしまうのかなと思いまして、ただ、こうした場合を想定しているとはとても思えないということになりますと、定義のところの整理がもう少し必要かなと、特に、17ページの図になるような形で定義を構築するということが必要かと思います。   そして、制度趣旨に関して株主の対話と記載されておりますけれども、残念ながら全ての会社がそういった意識を持っているというわけではないということは御留意いただきたいと思います。特に非上場会社においては、意に沿わない株主はむしろ敵だという発想を持っている会社もそれなりにあるという状況にはありまして、結構売上規模の大きな非上場の公開会社でも、筆頭株主からの話合いの要請にも応じないというような例は実際にもございます。そうした点だとか、あとB案で考えますと、議決権停止という強い効果があるといったことも加味いたしますと、やはり非上場会社においては濫用の危険があると思いますので、上場会社に限定するだとか、仮にB案などを構築する場合には、非上場会社の場合には裁判所の関与を義務付けるだとか、そういった考慮が必要であると考えます。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。 ○松井委員 この改正においては、目的と制度のコストを考える必要があると思います。A案については、コミュニケーションを目的とする制度として作る場合にも、ローラー作戦、あるいは常時株主が突き止められるような、そういう大きな制度というのを作ってしまうと、将来的なサンクコストということも考えられるため、コンパクトな制度が恐らく望ましいだろうと思います。他方で、境界的な事例として、買収を示唆しながら株主提案権を利用するアクティビスト等に関する票読みや買収提案に関する防衛に関してピンポイントで対処をするということを考えた場合には、サンクションを伴った制度が必要なのだろうと思っており、そういう意味ではB案とかC案のサンクションが有効であろうと思いました。   そして、その場合に具体的にどのように株主と会社の間のやり取りが進むのかという点なのですけれども、他の委員の御指摘があった一つの道筋としては、会社が更に背後を見ないと実質株主か分からないと主張して、事前に議決行使を拒絶するという筋道が提示されていたのですけれども、北村委員から御指摘があったように、会社の側は、誤った拒絶をした場合に正当に行使されるべき議決権行使を拒絶してしまったということについて何らかの責任が発生するかもしれないと考えるため、簡単に後ろに実質株主がいるというふうな断定をするということはできないかもしれないと考えております。   その問題を解決するということとの関係でC案というのが出てきて、株主に義務を負わせるという形をとる、これは結構有効なのかなと思ったのですけれども、株主の側が指図権者として5%を超えているということを隠して議決権を行使した後で、議決権の協調パターンなどを見た結果、最終的に指図権者だったのではないかということが分かり、その株主が議決権行使をしてしまった後、発生した決議を巻き戻すということが非常に大変になるということはあり得るのかと思ったところであります。   このようなパターンで紛争が起きるのだと前提した場合、ほかの金商法上の制度、あるいは国際的な制度との調和という問題もあるのは承知の上で、思い付きで述べさせていただきますと、短期決戦で相手方を突き止め、また決議を取って効力を発生させるというタイムスケジュールの部分を少しスローダウンさせるということを考えるというのはどうだろうかと思いました。大量保有報告も追い付いてきますし、会社としても対応がとりやすくなるからです。どこまで実質株主の背後を追い掛けるのかということも、会社法が直接に決めるというよりは、当事者が決めて追い掛ければよいのかなと思いまして、具体的に何を念頭に置いているかと申しますと、株券喪失登録制度のように、株主提案が出た時点で、会社が5%を超えている可能性がある株式というのはこれであるということを指定して、当該株式についての議決権を暫定的に停止をして、一定期間の中で後ろの株主が誰かということを突き止めるという作業をするであるとか、そういった形で少し時間を止めるということをすると、ある程度の期間内に突き止められなかったらリリースでもいいのですけれども、問題というのが少し軽減されるのではないかと思ったところであります。ジャストアイデアですけれども、以上です。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。 ○豊田委員 先ほど矢野幹事も発言していましたけれども、弁護士会の中ではかなり意見が分かれている論点でございます。C案というのが新しく出てきておりまして、実質的な大株主を開示すべきという観点や、他の株主の利益という観点からは、実質株主が誰かというのは重要な情報であるというのは確かだと思っておりますが、ただ、そこでやはり実質的な株主というのは何なのかというのはB案と同様に問題になってくる訳で、B案でもC案でも、議決権の停止という強力な効果を生じさせるという観点では、実質株主の定義が曖昧であると困るということになると思います。他方で、裁判所の判断を必要とするといった議論になりますと、基準日から総会までの間はかなり短い期間であるために、実務的にはなかなか難しいというところを検討する必要があると思います。   そもそも指図権という観点から、何が指図権なのかという点は、先ほど仁分委員も発言されていましたが、なかなか切り分けが難しく、一定の場合のみ指図権を有するとか、実質的に議決権行使に影響を与える者をどういうふうに判断するのかという問題があると思っております。その点からは、明確にするためには、かなり広く定義することになるのかもしれませんが、それが本当にふさわしいのかもを検討しなければならないと思います。   また、先ほどから欧州の制度というのが話に出ておりましたけれども、いわゆるベネフィシャリーオーナーというものと、今検討されている指図権を有する者という概念というのは少し違うと聞いておりまして、日本法としてどう考えるかが検討すべき課題となっておりまして、かなり難しいところではあるものの、やはり明確化という観点は避けて通れないのではないかと思っております。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。     それでは、次の議題に進ませていただきたいと思います。   次は部会資料3の「第3 株主総会のデジタル化に関するその他の検討事項」についてでございますけれども、御意見がございましたら、どうぞ御発言ください。 ○藤井委員 皆様御承知おきのとおり、ここ数年で株主総会関連のデジタル化の進展というのは非常に目覚ましいものである一方で、法制的な観点で企業の負担や社会全体を見てコストになっているような事項というのはあるのかなと考えておりまして、第1回の部会でも発言をさせていただいたという背景でございます。株主総会に限らず、更なるデジタル化の進展というのは今後も予想されるものでございますので、次回改正を待つということではなく、これらを見据えた法改正を早めに行うことが肝要と考えておりまして、以下三つのテーマについて発言をさせていただければと考えております。   まず、書面交付請求制度の見直しにつきましては、現状認識から共有させていただきたいので、私が提出させていただきました参考資料9を御覧いただければと思います。まず、左上の図表①でございますけれども、こちらは電子提供制度の開始から1年経過した2023年9月から直近までの書面交付請求率、これは第1回でも0.45%という数字を発言させていただいたのですけれども、こちらは私の所属企業であります三菱UFJ信託銀行において証券代行業務を受託しております上場会社各社、シェア4割ほど受託させていただいているのですけれども、そちらのデータでございます。各社の議決権を有する株主数を書面交付請求を行った全量の株主数で割ったものでこの書面交付請求率というのを算出しておりまして、これは言わば企業が株主総会ごとに対応しなければならない書面交付請求のストック、比率というものを示していると考えております。こちらを御覧なっていただきますと、制度導入時から比率に大きな変化はないというような状況でございまして、この数字自体は立法時の想定からはかなり低いような数字が出ているのかなと認識しております。   また、左下の図表②でございますけれども、こちらは同じ各社につきまして書面交付株主数の分布について示しているものでございます。先ほど仁分委員からの御説明のアンケート結果ですと1,000名から9,999名が最多という御説明もあったのですけれども、こちらはアンケートが恐らく大企業中心の回答であるものなのかなと認識をしておりまして、当社の調査につきましては中堅中小も含めた上場会社の言わば全体の動向を示しているものと承知をしております。切り方にもよるのですが、11名から50名というところが最多となっておりまして、書面交付請求の株主数が50名以下の会社が全体の7割というような結果になっております。   つまり、これらのデータからも、多くの企業が書面交付請求をした数十名の少数の株主のために複数の書類を用意して、かつ印刷会社等にその書面の印刷を依頼する場合には、十数名みたいなロットではなかなか受け付けてもらえず、数百といった形のロットで発注をするというような形になっており、多くの書面が無駄になっているというような現実もあるのかなと認識をしております。   また、仁分委員提出のアンケートにおいても、私ども証券代行機関についても触れていただいておりますけれども、株主からの請求の受付や、問合せの対応、企業との日程調整や企業から納品を受けた書面交付用の書面の発送等、私どもにおいても一定のコストというのは掛かっているような状況でございます。以上を踏まえまして、私どもといたしましては、一定の経過期間を設けた上で書面交付請求制度の廃止を行うことに支持をさせていただきたいと考えております。   続きまして、第2、第3のテーマにつきましては、私が第1回のこちらの部会の方で挙げさせていただきましたテーマでございます。書面投票制度の見直しに当たりましては、また同じく参考資料9で現状認識について御説明をさせていただきます。右上の図表③につきましては、上場企業の電子行使、電子投票の採用状況というのを示しておりまして、こちらはコロナ禍等の影響もございまして、ここ5年で急激に導入が進んでいる状況でございます。本年は今週が株主総会のピークの週ということでございますので、まだ集計ができていない状況ではございますけれども、昨年6月末時点での電子行使の採用率というのは上場企業全体で85%というような数字になっております。また、特に個人の株主がどの程度電子投票を行っているかという認識の共有のため、図表④をお示ししているのですけれども、電子投票の採用の伸びと合わせて電子行使による議決権行使の比率というものも伸びておりまして、こちらも同じく昨年の6月末の時点では62%、個人株主であっても約3分の2の株主が電子行使により議決権行使を行っている状況ということでございますので、このデータからも、書面よりも電子行使が一般的になりつつあるというところがうかがえるかなと考えております。   このような状況を踏まえまして、現状の議決権を有する株主が1,000名以上の場合、書面投票が義務付けられていて、実質、上場会社であれば義務付けられているということになりますけれども、デジタル化の更なる進展等も見据えて、電子行使を前提とするような法制度に改めることでいいのではないかと私どもは考えております。   一方で、第1のところでございましたバーチャル株主総会におけるデジタルデバイド株主への措置というところで、選択制ではあるかと思いますが、書面投票といったところが要件の一つとして求められることを踏まえると、完全デジタル化というのは難しいのかなとは考えてはいるのですけれども、ハイブリッド型等であれば電子行使のみでも十分可能なのかなと考えております。   最後に、招集通知の電磁的方法による通知の見直しについて発言させていただきます。事務当局の御説明にもありましたとおり、個別同意が必要がゆえに活用が進んでないと認識をしております。今回、事務当局説明資料においては、株主名簿の記載事項にメールアドレスを追加することについても、株主個別の同意を得る必要がある以上、株主による個別の承諾と負担が変わらないのではないかというような御指摘があるのですけれども、上場会社に限定されますけれども、振替制度に乗っているということでございますので、振替口座簿に住所と同じようにメールアドレスについて任意で記録をして、総株主通知によって株主名簿管理人が通知を受け、株主名簿に記載するというようなスキームを私自身はイメージをしております。このスキームであれば、株主は一度口座管理機関に届出をすれば、今後も含め、保有する全ての銘柄について電磁的方法によって招集通知というのを受け取ることが可能になると考えておりまして、口座管理機関等において、インターネット口座の普及等もある中で、どこまで株主の承諾を取ることができるかというところは検証が必要なのかなとは考えているのですけれども、現状の郵送からメール通知への流れというのが加速度的に広がっていくものではないのかと考えております。   なお、すぐには実現が難しいかとは思うのですけれども、将来的には株主の同意の有無にかかわらず株主名簿記載事項の必要的記載事項というふうな形にする、つまり強制的に取得するといったようなことも制度設計としては考えられるのかなと考えております。   ○神作部会長 どうもありがとうございます。 ○仁分委員 藤井委員の御発言に重なるところが多いと思いますけれども、まず、書面交付請求制度の見直しに関しましては、コロナ禍を契機に行政と民間の双方において様々な書面手続のデジタル化が急速に進展したことを踏まえまして、速やかに廃止すべきであると考えております。   先ほど参考資料8に関して実態調査の結果を御説明させていただきましたけれども、書面交付請求制度を行った株主はごく少数にとどまるという一方で、制度を廃止しない限り企業には一定程度の負担が生じることになりますので、書面交付請求制度を存続させることは適当ではないと考えております。ただし、制度の廃止後も、企業によっては自主的に、希望する株主に対して会社の費用で株主総会資料を書面で交付することも考えられます。その際に株主平等の原則との関係で問題が生じることがないよう、解釈の明確化などを御検討いただけますと幸いであります。   それから、書面による議決権の行使についての見直し、電磁的方法による招集通知発出の要件の見直しですけれども、是非前向きに御検討いただきたいと思います。これらが実現すれば、株主総会プロセスを一気通貫でデジタル化することが可能となり、会社にとっての負担軽減のみならず、株主にとっての利便性向上にも大きく資すると考えております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○矢野幹事 少し逆の意見になるかと思いますけれども、まず、書面交付請求、1のところなのですけれども、弁護士会の中では廃止については時期尚早であるという意見が強いということは申し上げておきたいと思います。現状、まだフルセットデリバリーをされていらっしゃる会社さんも多いという現状から照らしますと、この資料記載の表の数字とフルセットデリバリーとの関係も正直よく分からないというところもありますし、現状、各社いろいろな工夫をされているという中で、今3回目というところで、全部やめるというほどまでの決断ができるという立法事実は集まっていないと考えています。   次に、二つ目、2のところですが、書面による議決権行使の見直しの点は、先ほどの第1のデジタルデバイド対応との整合性を考える必要があると考えています。バーチャルオンリーの場合、デジタルデバイド対応は上場会社は298条1項3号とするというのが一般的になるのかなと思いますけれども、そうしますと議決権行使書面を残すということになります。逆に、電磁的方法によろうということになると出席型とせざるを得ないということになりまして、それぞれの制度が想定している状況とちぐはぐな結果になってしまわないかというのが今の懸念です。そこら辺の整理統合をする必要があるかなと思います。   3番のところはなかなか、今どの程度電子メールを把握されているのかというのが正直分からないというところもありまして、現状で何か申し上げることはありませんけれども、逆に今、電子メールアドレスを持っていないという方もそこそこいる状況でございまして、そうしたところと、この後の社会の進展がどうつながっていくのかというのは個人的に気になっております。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。 ○松中幹事 私から、まず書面交付請求権の廃止については、もちろん賛成でありますので、今すぐ廃止しても構わないと思いますが、ただ、もちろん現実には移行期間みたいなものがあった方がいいと思うのですが、法律上は移行期間を定めない方がいいのではないかと、今すぐ廃止してもいいのだけれども、実務上は実際はこのくらいはまだ残していきましょうねというような縛りでいいのかなと思っています。つまり、やめたいところはすぐやめられるようにすべきであると考えています。   続いて、書面投票と電子投票ですが、どちらかでいいというのは私も賛成であります。むしろ、上場会社の場合では電子投票の方は必ずやりなさい、ぐらいでもいいのかなと思います。というのも、ここ数年の郵便事情を見ていますと、せっかく早期に招集通知を発送していただいても、郵便事情のせいでそれが全部相殺されて、こちらも返すのをすごく早くやらないと届かないという実情になっていまして、電子投票の方が遠隔地の株主が遠隔地にいたまま議決権行使をするという趣旨にはよりかなうほうに、そういう状況になっているかと思います。ですので、少なくともどちらかを選べるようにする。バーチャルオンリーの場合に、書面投票を定めているからデジタルデバイドへの対応はもうそれでいいのだという考え方を採る場合は、その場合は書面投票をやりなさいということ、そういう整理になるのかなとは思うのですが、それはそれで一つのアレンジとして、おかしくはないのかなとは思います。   最後の招集通知の電磁的方法ですが、これはメールを想定して議論するのはもちろん現状の場合、現実的だと思うのですが、ルールを作るのであればメールに限らないような書き方にした方がいいのではないかと思います。現状でも、例えばスマホのアプリを通じてプッシュ通知が来て、それで招集通知を見る、これはメールアドレスは一切関係ないわけですけれども、しかしそういうものも認められるような書き方にしておいた方がいいという、これだけのことであります。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○田中委員 ちょっとお伺いしたいのですけれども、今回の審議予定時間は1時半から5時半になっていましたが、いつもこのように、事前に用意された資料を全て審議するまでは、初めの予定にかかわらず延びていくのでしょうか。 ○神作部会長 宇野幹事からお願いします。 ○宇野幹事 今日一部議論が積み残った事柄があれば、次回引き続き取り扱うということも、まだ一読の段階ですのでできると思います。もし部会長がよろしければ、次回の冒頭に今日できなかった議論を引き続きさせていただくというような形とさせていただきます。あとは、次回以降は1時半から6時とかに元々時間設定をさせていただいた方がいいのかどうか、御相談させていただければと思います。 ○神作部会長 どういたしましょうか。 ○森委員 1時開始にして、5時半に終わるけれども、どうしても延長が必要な場合でも6時以降は絶対やらない、そういう仕切りもあるのかと。 ○神作部会長 御提案いただきありがとうございます。ほかの御提案はございますでしょうか。 ○臼井委員 森委員の御発言に賛成いたします。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。   それでは、次回からは13時開始とし、17時30分終了を目途にするけれども、場合によっては18時まで延長があり得るということで、予測可能性を確保したいと思います。   恐らく第3の議題についても御発言を御希望の方がたくさんいらっしゃると思いますので、先ほど宇野幹事から御発言がありましたように、第3の議題については次回の冒頭で取り上げることとさせていただき、本日はこれにて終了とさせていただきたいと思います。   最後に、事務局の方から何か御発言等がございますでしょうか。 ○宇野幹事 次回、7月30日水曜日の今の変更後で午後1時から午後5時30分までで、最大で午後6時までという形で予定させていただいております。場所は、法務省の地下1階の大会議室、第1回会議と同じ場所でございます。   次回は、今日積み残った論点とともに、また、株主総会の在り方に関する検討(2)ということで、改めて部会資料をほかの論点について作成させていただいた上で御議論いただければと考えています。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。   それでは、法制審議会会社法制部会の第3回会議はこれにて閉会とさせていただきます。   本日も熱心な御議論を賜りまして大変ありがとうございました。どうもお疲れさまでした。 ―了―