法制審議会 刑事法(再審関係)部会 第5回会議 議事録 第1 日 時  令和7年8月7日(木)   自 午後2時00分                       至 午後4時50分 第2 場 所  中央合同庁舎第6号館A棟7階会議室 第3 議 題  1 審議          ・「再審請求審における検察官の保管する裁判所不提出記録の弁護人によ           る閲覧・謄写」          ・「再審開始決定に対する不服申立て」          ・「再審請求審における裁判官の除斥・忌避」                  2 その他 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○今井幹事 ただいまから、法制審議会・刑事法(再審関係)部会第5回会議を開催いたします。 ○大澤部会長 本日は御多忙のところ、また日中の非常に暑いさなかでございますけれども、皆様御出席くださり誠にありがとうございます。   本日、寺田関係官はオンライン形式により出席されておられます。また、成瀬幹事につきましては所用のため遅れての出席となります。   議事に入る前に、前回の会議以降、委員、幹事の異動がありましたので、御紹介をさせていただきます。まず、森本宏氏が委員を退任され、新たに佐藤淳氏が委員となられました。また、中野浩一氏が幹事を退任され、新たに今井誠氏が幹事となられました。   佐藤委員、今井幹事の順に簡単に自己紹介をお願いしたいと存じます。 ○佐藤委員 7月17日付けで法務省刑事局長となりました佐藤淳と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○今井幹事 法務省刑事局刑事法制管理官室の刑事法制企画官を務めております今井と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○大澤部会長 早速、これから議事に入りたいと思いますが、冒頭に一言述べさせていただきます。   前回の会議におきまして議事進行への御協力をお願いしたところですが、皆様の御協力によりまして前回の会議は大変円滑に進行することができました。誠にありがとうございました。委員・幹事の皆様におかれましては、御発言に当たりましては前回お願いしたところを一つの目安として、引き続き円滑かつ充実した議事の進行に御理解と御協力を賜りたく存じます。どうぞよろしくお願いいたします。   次に、事務当局から本日お配りした資料について説明をしてもらいます。 ○今井幹事 本日は、配布資料6をお配りしています。配布資料6は、有罪判決を受けた本人等の再審請求に基づく再審開始決定に対する検察官の不服申立て状況等を法務省刑事局において保管中の行政文書に基づきまとめたものです。   また、鴨志田委員提出資料として「福井女子中学生殺人事件の概要と再審手続に関する問題点」と題する資料、「検察官抗告の状況」と題する資料、「前審関与に関する事例」と題する資料をお配りしています。そのほかに、鴨志田委員から御要望のあった季刊刑事弁護123号掲載の「再審事件にみる証拠の保管・開示の問題」と題する論文の写しを机上配布しています。   本日お配りした資料の御説明は以上となります。 ○大澤部会長 本日お配りした資料につきまして何か御意見、御質問等がございましたら挙手の上、御発言をお願いしたく存じます。どの資料に関するものであるのかということを最初に明らかにした上で御発言をお願いいたします。 ○鴨志田委員 私の方から提出させていただきました「福井女子中学生殺人事件の概要と再審手続に関する問題点」という資料につきまして、少し補足をさせていただきたいと存じます。   こちらの資料なのですけれども、既に再審無罪になった5事件について、同様の資料を前回の会議において提出をさせていただいているところでございます。この福井事件に関しましては、前回の会議の段階ではまだ無罪判決が出ておらず、そのような事情から資料にすることを見送られたという経緯がございます。今般、御承知のとおり再審無罪判決が確定いたしましたので、今回の資料に加えていただいたということになります。   その関係で、実はこれは前回の論点でいうと「1」「(1)再審請求審における閲覧・謄写に関する規律を設けるか」というところに関する立法事実をお示しするための資料ということになるということを申し添えておきたいと思います。同判決におきましては、通常審の一審の段階で判明していた事実に関する捜査報告書がその段階で提出されずに、第2次再審になって初めてその捜査報告書が開示され、それが明白な新証拠の一つと認められて再審開始、再審無罪になった事情がございます。   そのことについて判決は、確定審検察官は、被告人から正しい事実関係を前提とした主張・立証の機会を奪い、裁判所にも動かし難い事実について真実と異なる心証を抱かせたまま判決をさせるなど、不利益な事実を隠そうとする不公正な意図があったと言われても仕方ない訴訟活動に及んでいる、確定審検察官がこの誤りを適切に是正していれば、そもそも再審請求以前に確定審において原審の無罪判決が確定していた可能性も十分に考えられるのであって、上記のような確定審検察官の訴訟活動に対しては、その公益の代表者としての職責に照らし、率直に言って失望を禁じ得ないという判示がされています。   このように確定審の段階で提出されていなかった証拠がその後、再審請求手続の段階で開示されることによって真実が明らかになるという、この事件の経緯こそ、正にそもそも確定審で提出されるべきだった証拠が出ていない場合があり得ることから、再審請求段階での証拠開示ルールを定めなければ真実に近づけないということを示す立法事実であるということを、本来であれば前回の議論で御説明をすべき点だったので、あえて今、補足説明をさせていただいた次第です。 ○大澤部会長 ほかにいかがでございましょうか。   よろしいですか。それでは、諮問事項の審議の方に入りたいと存じます。   本日は、「論点整理(案)」の「1」「(5)裁判所不提出記録・証拠物の保存・管理に関する規律を設けるか」から審議を行いたいと思います。この事項につきましてはおおむね25分、午後2時35分までを目途に審議を行います。御意見等がある方は挙手をお願いいたします。 ○田岡幹事 先ほども鴨志田委員から指摘がありましたように、再審請求手続が、その機能を適切に果たし真相を解明し無辜を救済するためには、裁判所不提出記録及び証拠物の閲覧・謄写、いわゆる証拠開示が不可欠であります。ただ、裁判所不提出記録及び証拠物が適切に保管・保存されていなければ、そもそも閲覧・謄写をすることができません。したがいまして、裁判所不提出記録及び証拠物が適正に保管・保存されること、また、警察の手元にある未送致証拠が検察官に全て送致されること、これを担保することによって、裁判所不提出記録及び証拠物の閲覧・謄写、すなわち証拠開示が適切に機能するということができます。   第2回会議のヒアリングにおいて、袴田事件の弁護人だった間弁護士は、5点の衣類のカラーフィルム写真のネガフィルムと、取調べ録音テープの23巻について、いずれも無罪を根拠付ける重要証拠であるのに、事件から何十年もたって見付からないまま警察署内で眠っている、こんな状況も許されていいはずはありませんと発言していました。これらは、一旦検察官が不存在と回答したのに、後に捜査の結果、見付かったとして開示された未送致証拠です。ところが、鹿児島県警が2023年10月に内部文書において「再審や国家賠償請求等において、廃棄せずに保管していた捜査書類やその写しは組織的にプラスになることはありません!!」と書いて、未送致証拠を廃棄するように命じていたことが判明しております。こうした事態を防ぐためには、保管・保存の規定を設ける必要性は高いと考えます。   その上で、現在、刑事確定訴訟記録法には保管記録と再審保存記録の保管・保存の規定はございますが、裁判所不提出記録及び証拠物・証拠品に関しては法律上の根拠規定がございません。いずれも法務大臣訓令である記録事務規程及び証拠品事務規程によって保管・保存されているものと認識をしております。そうしますと、これらに法的な根拠を与えるために、裁判所不提出記録については、保管記録及び再審保存記録と同様に保管・保存の規定を設けるとすることが考えられます。また、証拠物についても、保管記録及び再審保存記録と同様に保管・保存の期間を定めて、保管・保存することが考えられます。   もっとも、証拠物のうち、還付の対象となるものについては、所有者等の権利との調整が必要になりますので、所有者等の意見を聴いた上で保管・保存するということが考えられます。この点、証拠品事務規程には、国庫に帰属したものについては保管するという規定はありますが、還付の対象となるものについては原則として還付することとされておりますので、新たに規定を設ける必要性は高いと考えております。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○鴨志田委員 田岡幹事の説明に補足する形で、私の方から立法事実について少し補足をしたいと思います。   本日、机上配布資料として提出させていただきました季刊刑事弁護掲載の論文(「再審事件にみる証拠の保管・開示の問題」季刊刑事弁護123号36~43頁)、こちらの方に具体的な事例について詳しく述べてございますので、是非お読みいただきたいと思うのですが、この中に、警察における記録や証拠の保管状況についての検察官の把握が不十分であったために、一度は不存在と回答した証拠が後になって開示された事例、これは先ほど田岡幹事の指摘された袴田事件だけではなく、大崎事件や日野町事件にもこういったケースが見られます。このような事例が現に存在するということが、まず一つです。   加えて、保存や管理の問題に関連して、警察が検察に送致をしていなかった証拠の存在が再審請求又は再審公判段階で判明し、これが開示されたことで再審開始、再審無罪を導いた事例、これは再審無罪が確定した袴田事件、湖東記念病院事件、再審開始決定がされている日野町事件といったケースがございます。これらの事例では最終的に証拠は開示されましたが、その開示のタイミングがバラバラで五月雨式になってしまったということで、再審請求人の主張や争点の形成を困難にし、これが審理の長期化を招いたということがいえます。したがって、警察が収集、作成した記録証拠を検察官が全て把握、管理する規律の必要性というものを示していると思います。   この点、去る7月17日に大津地裁で判決が言い渡され、被告滋賀県との関係では既に原告勝訴の判決が確定した湖東記念病院事件の国家賠償請求訴訟判決においては、「警察官が捜査によって収集した証拠資料については、検察官において被疑者につき公訴を提起するかどうかを適切に判断するために全て検察官に送致されることが前提とされているものと解するのが相当である」と判示し、「証拠内容の信用性やその必要性判断は、公訴の提起をするか否かを検討するに当たって検察官において独占的に行われるべきものであり、警察の判断においてこれを送致しないとの判断をすることは刑訴法上想定されておらず、許されない」とした上で、滋賀県警が再審公判段階に至るまで多数の証拠を検察官に送致していなかったことを国家賠償法1条に照らし違法であると判断をしています。   したがって、再審制度がえん罪被害救済のための最後のセーフティーネットとして機能するためには、証拠開示の前提として、裁判所不提出記録、証拠物の保管・管理に関する規律、それから、警察の収集した記録・証拠の全てを漏れなく検察官に送致することを担保するという規律の整備が必要であると考えております。 ○大澤部会長 ほかにいかがでございましょうか。 ○村山委員 私は実際の自分の経験を踏まえて発言をしたいと思います。   私は袴田事件を一時期担当させていただいたことがあります。そして、その中で5点の衣類のカラー写真のネガの存在が問題になりました。ネガは存在しないと検察官がいうので、存在しないとして手続を進めました。ところが、即時抗告審の報道を見て私は目を疑いました。実際はネガがあったということで、出てきたということなのです。私はその検察官がうそをついたとは思っていません。しかし、自らの意に沿わない決定といいますか、開始決定に対して抗告しているわけですから、不服なわけですね、そういう決定が出たら必死に探して、出てきたのではないかと思いました。では原審ではどうだったのかというと、有罪、無罪が掛かっている、しかも、袴田事件の場合は、人一人の命が掛かっているのです。そういうときに一生懸命探さないで、自分の意に沿わない決定が出たら、これを覆すために必死に探したら出てきましたということなのだろうと推測しています。こういう構造で、ほかの事件でも出てきている証拠もあるのではないかと思います。こういうこと自体は、私は職業倫理の上でも非常に問題だと思っています。   ただ、そういってみても、実際に管理がきちんとできていなければ、同じように検察官は対応するのでしょうから、やはり法律によって、警察官が警察の方で保管している証拠も含めて、検察官が全部管理をして、どこにどういう証拠があるのかというのをきちんと監督・管理する必要があると思います。特に証拠物は、これは非代替性の高いものが多いと思います。この証拠物が消失・散逸してしまったら再現不可能です。その中に請求人の無罪を示すような証拠があったとすれば、その証拠はずっと出てこずに、えん罪救済につながらないという大変な事態に陥ってしまいます。そういう意味でも、この規定は必ず設ける必要がありますし、それも法律というレベルで規定する必要があると考えています。   技術的な問題として、保存の期間とかそういう問題はあります。これは田岡幹事も規定の問題を含めて発言されていたところですので、あえて重複の意見は申し上げませんけれども、合理的にやればいいと思いますし、また、管理の仕方についても、実際に余り手間を掛けずにきちんと管理できるような方法というのを考え出す必要があると思いますし、今はデジタル情報で管理をすればそれほど難しい話ではないのではないかと思います。そういう点では、検察官や警察官が実際に管理しておられるわけですから、そういった検察・警察の立場から、この問題についてどういうふうに管理するのが合理的かというような御提案を頂きたいと、私はそう思います。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○池田委員 村山委員からも御指摘があったところですけれども、議論の前提として、現状、証拠物であるとか裁判所不提出記録について、検察庁や警察において具体的にどのように保管されているのかという実情を知っておく必要があろうかと思います。そこで、検察と警察の委員の方に御質問させていただければと思います。 ○大澤部会長 いかがでございましょうか。 ○谷委員 警察における証拠品や書類等の管理について申し上げます。今日いろいろ御発言がありましたけれども、近年の再審無罪事件におきまして、警察に保管されていた書類や証拠物が再審における新証拠として採用された事例があったということは私どもも承知しておりますし、過去に警察におけるそういったものの保管・管理が不適切とされた事例があったことについては警察も大変重く受け止めているところです。こうした過去の事例も踏まえて、警察におきましては捜査資料や証拠物件に関する保管・管理については日々改善に向けた取組を進めてきているところでございます。   基本的には、警察におきましては捜査の結果作成され、あるいは得られた捜査資料や証拠物件のうち犯罪事実の有無や事案の解明のために必要なものについては、刑事訴訟法等の関係法令に基づき検察官に送致しておりますし、送致すべきものであると考えております。明らかに事件と関係ないものですとか、あるいは関係する捜査資料の中でも、例えば捜査資料の内容を印字等した書面を送致して警察において原本を保管しているもの、今日御発言もありましたネガですとか、最近はSDカードなどがございますけれども、こういったものについては通常は送致せずに、捜査資料として警察において保管・管理を行っておりますけれども、現在は犯罪捜査規範あるいはその細目を定めます通達などの内部規範において、こういったものが散逸したり、ある場所が分からなくなったりしないように、厳格な管理をすることとしております。また、こうしたものについては捜査幹部において、その保管の必要性がなくなった場合の確実な廃棄・消去などについても判断をすると、組織的な判断を徹底するという形にしているところでございます。   このようにして、保管しているものにつきましては平素から検察官と連携して対応しておりますので、警察で保管している捜査資料や証拠物件について検察官から求めがあった場合など、必要な場合には速やかに情報を提供するとともに、検察官に送致をできるようにということで、組織的な対応を行っているという状況でございます。 ○宮崎委員 検察庁における裁判所不提出記録や証拠品の保管等については、法務大臣訓令である記録事務規程や証拠品事務規程において規定されております。具体的には、まず、裁判所不提出記録については、記録事務規程第23条において、「当該記録に係る裁判書以外の保管記録又は再審保存記録の保管又は保存に従う」と規定されています。したがって、刑事確定訴訟記録法の規定に基づき、保管記録を再審保存記録として保存している場合には、これに対応する裁判所不提出記録についても当該再審保存記録の保存期間と同期間保存することとなります。   刑事確定訴訟記録法第3条第2項により、再審の請求をしようとする者等は、保管検察官に対し、保管記録を再審保存記録として保存することを請求することができ、保管検察官が再審保存記録として保存すれば、裁判所不提出記録も同期間保存することになります。そして、再審保存記録の保存請求に対して、保管検察官が保存しないこととした場合、その処分に不服がある場合には、刑事確定訴訟記録法第8条により、保管検察官が所属する検察庁の対応する裁判所にその処分の取消し又は変更を請求することができ、裁判所がこれを認めた場合には、保管検察官は再審保存記録として保存し、かつ裁判所不提出記録も同期間保存することとなります。   次に、証拠品については、証拠品事務規程第88条から同規程第90条までにおいて再審請求事件の証拠品の保管等について規定されています。具体的には、同規程第88条第1項は、「検察官は、再審の請求があった場合において、原判決に係る被告事件の証拠品で、没収の裁判、所有権放棄又は刑訴第499条第3項の規定により国庫に帰属したもの」、つまり還付の対象外の証拠品があるときは、「再審の請求に対する裁判が確定するまでこれを保管する」旨を規定し、同規程第89条第1項は、「検察官は、再審の請求が行われることが予測されるときは」、これらの還付の対象外の「証拠品を期間を定めて保管する」旨を規定し、同規程第90条第1項は、「検察官は、再審開始の決定が確定したときは、第88条第1項の規定により保管している証拠品を再審の裁判が確定するまで保管する」旨を規定しています。   検察庁においては、これらの記録事務規程や証拠品事務規程に基づいて、裁判所不提出記録や証拠品を適切に保管しております。 ○池田委員 御説明いただいたところによりますと、まず検察においては、再審事件に関する裁判所不提出記録や証拠品その他の資料の保管等について、法務大臣訓令あるいは刑事確定訴訟記録法の規定によって既に一定程度の規律があるとのことでしたし、警察におかれましても、犯罪捜査規範その他の通達ということでしたけれども、事件に関する資料を適切に管理するという旨の一定の規律が存在するということでした。これらの既に存在する規律が適切に機能するということが重要であると考えますと、これに加えて新たな法律を設けるということの必要性には、疑問とする余地もあるのではないかとも思われるところです。   加えて、規定の内容につきまして、田岡幹事からも先ほど御指摘があった、元々の所有者の利益も考慮すべきだということに関して申し上げます。現行刑事訴訟法は第124条第1項で、留置の必要がないものについて被告事件の終結を待たずに還付しなければならないという規定を置いているわけですけれども、日本弁護士連合会改正案の中では、訴訟の終結後6か月間の保管を義務付けるという規定が御提案されています。ただ、訴訟の終結前は必要がなくなれば返さなければならないものを、終結するとその必要の有無にかかわらず一律に保管しなければならないとすることは、一貫性がない、あるいは所有者の権利を不当に制約するものなので、田岡幹事も、元々の所有者の意見を聴くべきだという御指摘もされておられましたけれども、その辺りも考慮しながら検討していくべきだと考えております。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○田岡幹事 先ほど宮崎委員から、証拠物・証拠品のうち国庫に帰属した還付対象外の証拠品についての保管・保存については御説明がございましたが、逆に還付の対象となる証拠品について、再審請求が予測される場合に保管・保存する運用になっているのかいないのか、また、その根拠となる規定があるのかないのかということが分かれば教えていただきたいのですが、いかがでしょうか。 ○大澤部会長 宮崎委員、御発言がございますか。 ○宮崎委員 一般的な規定は今すぐに思い出せないですけれども、仮に再審請求が見込まれる段階で、そういう証拠品があったという場合で、かつ還付対象外の証拠品について保管するということになるのであれば、一般的には、それ以外の還付対象のものについても同様に考えるという運用になっているものと思います。その根拠規定があったかどうかというのは、すぐに今出てこないです。 ○大澤部会長 また正確にお答えいただけるようでしたら、どこかのタイミングで御発言いただけたらと思います。   ほかにいかがでございましょうか。 ○江口委員 証拠物の保管・管理に関しまして、一つ申し上げたいと思います。刑事訴訟法上、裁判所や捜査機関が押収したものについては、これを押収を受けた方に還付し、または贓物である場合には被害者の方に還付しなければならないこととなっているかと思います。日々、事件の審理において接しますこれらの証拠物の中には、例えば、亡くなられた被害者の御遺族が被害者の方の遺品として、なるべく早い返還を望まれるだろうと思われるものもございます。証拠物の保管・管理の規律の要否を考えるに当たりましては、還付を原則とする刑事訴訟法の規定との整合性でありますとか、また、被害者の方やその御遺族のお気持ちなどについてもどのように向き合うのかという視点・観点も必要かと思われます。   山本委員の方から証拠物の保管・管理に関する規律について、被害者の方やその御遺族からの視点・観点として配慮すべき点といったものがございましたら、教えていただきますと、より議論が深まるかと思っているところでございます。 ○大澤部会長 山本委員、発言されますか。 ○山本委員 押収されたものがいつ返ってくるのですかというのは、確かに訴訟のときとかでも、審理中とかですね、御遺族から聞いたことがありますので、その点の配慮はやはり必要かと思います。 ○大澤部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○鴨志田委員 先ほど谷委員の方から、現在においては捜査で収集した書類や証拠については、犯罪事実に関係するものに関しては全て検察庁の方にお送りしていると、そういう扱いになっていますというお話を頂いたところです。ただ、先ほど御紹介をした湖東記念病院事件の国家賠償請求訴訟においては、滋賀県警がなぜ大津地検に送致しなかったのかということを尋問で問われた際に、担当していた警察官が、その書類は不正確な内容であったり重複する内容であったりする書類や、未完成な書類、メモ的な書類であって、犯罪事実の有無や事案の解明に必要なものとは判断できないものについて送致しなかったと証言をしていました。これに対して、裁判所は、証拠内容の信用性判断やその必要性の判断は、公訴の提起を検討するかに当たって検察官において独占的に行われるべきものである、警察の判断においてこれを送致しないという判断をすることは刑訴法上、想定されていないという趣旨の判示をしました。「犯罪事実に関係するものに関しては」ということになると、その判断に際して、それが関係するものかどうかということについての警察段階での判断、取捨選択というものが出てきてしまうのではないかというところを危惧するところでございます。   そのような観点からも、やはり疑義が生じないようにするためには、記録や証拠の作成・収集の都度、記録をする形での目録の作成といったようなものを警察段階で義務付けて、刑訴法246条によって、この目録についても検察庁に送致されることを前提に、その目録についてその後、通常審、再審請求審の各段階において、どのような要件で弁護人に閲覧・謄写を認めるかといった、そのような検討がされるべきではないかと考えるところです。そうすれば、少なくとも現在のように、送致されるものだけについて目録に記載されるという形よりは漏れが防げるのではないかと思う次第です。日弁連案の196条の2と246条の2項も、今申し上げたような趣旨での改正案の御提示であるということを申し添えておきたいと思います。 ○山本委員 先ほどはとっさだったので申し上げ忘れましたが、先ほど、審理中にいつ返ってくるのだという話を聞いたことがあると申し上げましたけれども、被害者としては他方で真実の犯人を重く処罰してほしいという気持ちもありますので、審理のために必要ですということで御説明すれば御理解していただけますし、例えば再審が問題となっていて、真犯人が別にいるのではないかという話になれば、またそこを説明すると御理解いただけるかもしれません。 ○谷委員 鴨志田委員から送致についての御発言がありましたので、少し実務的なことを申し上げさせていただきたいと思います。   警察は第一次捜査機関でございますので、例えば殺人事件が起きますと、事案の真相が全く分からない段階から極めて膨大な作業をいたします。結果的に非常に重要だった証拠が送致されていなかった事案が過去にあったということについては、我々は反省しなければいけないと思っていますし、こういうものはしっかり送っていくということを徹底したいと考えていますけれども、例えば、事例として適切かどうか分かりませんが、捜査の中では、例えば身元不明の御遺体が発見された被疑事件がございましたら、警察はその被害者の身元を特定するために本当に多くの個人情報を収集いたします。この身元が科学的に特定された後は、収集された情報というのは全て事件と何の関係もない個人情報になってしまうわけでありまして、こういったものから本当に事件と関係するものまで、本当にいろいろな濃度のものがあるわけでございます。警察として関係ありそうなものは送るというのは当然ですけれども、どこかに警察においても判断がないと、恐らく送致という行為についてもなかなか実務的には難しいことになってしまうのではないかとは考えるところでございます。 ○宮崎委員 裁判所不提出記録や証拠品につきましては、法務大臣訓令である記録事務規程や証拠品事務規程に基づいて適切に保管されておりまして、新たな規定を設ける必要はないと考えております。   先ほど、田岡幹事から還付対象の証拠品に関する言及がございました。池田委員から御指摘があったとおり、日本弁護士連合会改正案の第444条の2第2項ただし書で、還付対象の証拠品につきまして、訴訟の終結後6か月間保管するということになっていたり、あるいは前回の会議における鴨志田委員提出資料によりますと、記録と同じ保管期間になるということでありますけれども、還付の対象となる証拠品は、事件記録と異なり、還付すべき所有者等が存在していまして、全ての事件において終結後一律に6か月間なりの保管期間を義務付けることは、所有者等の権利を不当に制限するものであって合理性がない上に、場所の確保や費用等の観点からも実施が困難ではないかと思われるところでございます。 ○大澤部会長 更に御発言のある方は挙手をお願いしたいと存じますが、いかがでしょう。   おおむねこの論点については、一巡目としては議論が尽きたということでよろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 次に、「論点整理(案)」「1」「(6)証拠物の証拠価値の保全・鑑定に関する規律を設けるか」について審議を行いたいと存じます。この事項につきましてはおおむね20分間、午後2時55分頃までを目途に審議を行いたいと思います。御意見等がある方は挙手をお願いいたします。 ○鴨志田委員 私の方からは、まず、証拠物の証拠価値の保全・鑑定に関する規律を設ける必要性を示す立法事実についてお示ししたいと思います。   DNA鑑定等の対象となる生体試料については、それが全量消費されたり、ずさんな保存状況により劣化したりするリスクが高く、鑑定試料が失われてしまった場合には、鑑定さえできていれば確実に明らかとなったはずの事実が永遠に解明不能となるという取り返しの付かない事態をもたらします。私が今日提出させていただいた机上配布資料である論文に詳細は記載しておりますけれども、DNA鑑定が再審開始、再審無罪を導いた事例のうち、足利事件では、再審請求段階でDNA鑑定試料となる被害女児の半袖下着の保存状態が悪く、このままではDNAの再鑑定ができなくなるということを危惧した弁護団が、半袖下着をマイナス80度に冷凍して保管するようにという趣旨の証拠保全を求め、これを受けた裁判所が半袖下着を押収し、これを自治医科大学の法医学教室に保管させると、これは刑訴法の99条3項、当時は2項だったのですけれども、これに基づいた決定を行っております。   また、東京電力女性社員殺害事件において、裁判所は弁護団の求めに応じ、DNA鑑定の対象物となり得るものの有無と保管状況を明確にするよう検察官に促しました。調査の結果、検察官が被害女性の膣内容物が発見された旨を報告したため、弁護団はDNA鑑定請求を行いました。これに対して裁判所は、検察庁においてDNA鑑定を行い、その分析結果を開示するよう強く勧告し、これを受けて行われた鑑定によって、被害者の膣内容物と現場に落ちていた第三者の陰毛のDNAが一致し、元被告人のゴビンダさんを犯人とすることに合理的な疑いが生じたということで再審開始、再審無罪につながりました。   現状では証拠物の適正な保管を義務付ける法律はなく、証拠品事務規程には保全の努力義務というのは定められておりますけれども、保管を明確に義務付ける法律というものはございません。この点について、再審請求審における裁判所の権限を明確に定めた規定といったものもないので、上記のような適切な訴訟指揮が必ず行われるという制度的保障はされていないというべきです。   そこで、生体証拠等代替性のない証拠資料について、再試可能性の確保の観点から、証拠価値の保全や鑑定の実施等、裁判所に一定の権限行使を可能とする規定を設けるべきであると考えます。規定の在り方につきましては、日弁連案の445条の12、私が提出したいわゆる河井私案の22条に記載されているとおり、再審請求人等の申立てにより又は職権で裁判所に保管、鑑定、結果の保管を命ずることができるとする規定を設けるべきであると考えます。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○池田委員 ただ今の、鴨志田委員の御説明の中でも言及されていた日本弁護士連合会改正案の第445条の12の内容について、御説明をいただける方に御説明をいただければと思うところがあります。すなわち、鑑定実施の要件は、「証拠価値を保全するために必要があると認めるとき」とされているわけですけれども、そこでの必要性が、再審請求者の主張する再審請求理由と証拠との関連性を踏まえて判断することを想定しているのか、それとも再審請求理由の内容にかかわらず判断することを想定しているのかということです。御教示をいただけますよう、どうぞよろしくお願いいたします。 ○大澤部会長 今の御質問の点ですが、どなたかお答えいただけますでしょうか。 ○田岡幹事 日弁連案の445条の12又は鴨志田委員提出資料の条文案22条は、いずれもその要件として、「その証拠価値を保全するため必要があると認めるときは」としております。これは再審請求後に裁判所が判断するものであることから、当然再審理由を踏まえて判断することになるのだろうとは思いますけれども、ただ、DNA鑑定に関して言いますと、諸外国での立法例として、アメリカのイノセンスプロテクション法や台湾におけるDNA鑑定条例があり、これらが必要性の判断の際に参考になるのではないかと思います。   私もそれほど詳しいわけではありませんが、例えば、アメリカのイノセンスプロテクション法では、これまでにDNA鑑定が実施されていなかったこと、又は実施されているのだけれども従前の検査方法と比べると実質的に証明力の高いDNA鑑定を求めていること、鑑定試料が検察官の管理下にあり、それが適切に保存、保管されていること、求めているDNA鑑定の手法が科学的に合理的であること、犯人性を争っているといったことなどの要件を満たす場合には、鑑定試料を保存する必要性があり、また、その鑑定資料を用いたDNA鑑定を実施する必要性があると考えられていると理解しております。また、台湾のDNA鑑定条例もおおむね同じ要件であると理解しておりまして、鑑定請求の対象となる証拠物や検体が政府機関に保管されていること、当該証拠物又は検体についてこれまでDNA鑑定が実施されていないか、又は実施されたことがあるが現在では新たな鑑定方法があること、請求する鑑定法が科学的に合理的を有することなどの要件を満たす場合には、DNA鑑定の必要性があると考えられていると理解しております。 ○池田委員 最初の御回答の中では、再審請求の理由を踏まえて必要性を判断することになるのではないかという御指摘がありました。そうだとしますと、現行の規定の下でも、再審の請求を受けた裁判所は、必要があるときは、再審の請求の理由について、事実の取調べを行うことができるとされておりまして、鑑定を実施するということについては根拠規定があるように思われます。そのため更に、例えば検察官に保管を命じたり、あるいは鑑定の実施を命じたりするというような迂遠な方法をとる必要はなく、裁判所が自ら実施すれば足りるのではないかと思われます。   また、仮にその判断が難しいということで、理由から離れて幅広に鑑定を実施するという趣旨だとすると、今度はその請求を受けた裁判所として、鑑定の実施の要否を判断することに困難が生じてくるのではないかと思われますし、再審請求手続の構造とも整合しなくなるのではないかという懸念がございます。   例えば、DNA鑑定の例を挙げてくださっておりますけれども、何のDNAを鑑定するかというのは、申立人の主張、例えば、犯人が着用していたと思われる衣服は申立人のものではないなどといった主張を踏まえて、当該衣服に付着した微物のDNA鑑定を実施するという必要が生じてくるという形で、審判対象との関係において必要性を判断されることになるのであって、そのような手掛かりのないまま要否を判断することはできないのではないかと思われます。だからといって、その必要性をおよそ問題としないということは、御提案の規定の文言上は想定されていないと思いますので、そのような立場をとるのではないだろうと思います。 ○田岡幹事 先ほど池田委員から受けた御指摘を踏まえて、発言をしたいと思います。   基本的には犯人性が争われる事件においては、犯人と被告の同一性を判断するためにはDNA鑑定などの異同識別の手法が有用である、つまり必要性があるということは否定し難いのではないかと思います。DNA鑑定をした結果、仮にですけれども、犯人が遺留したと思われる物から被告人のDNA型と一致するDNA型が検出されれば、被告人が犯人であるということが明確になりますし、逆にそれが一致しないということになれば、被告人が犯人ではない可能性が高まるわけです。そうだとすれば、DNA鑑定をするかしないかの判断に時間を掛ける必要はありません。犯罪又は裁判の当時DNA鑑定が実施されていなかったり、又は当時はより精度の低い鑑定手法しかなかったけれども、現在ではより高い精度の鑑定手法があるというのであれば、それによって真実が明らかになるわけですから、DNA鑑定を実施することをちゅうちょする必要はないのではないかと思います。   その上で、必要性の判断の在り方ですけれども、普通、犯人でない人は、「私は犯人ではありません」ということしか言えないわけでして、犯人が遺留したとされる物がどれだけ収集されていて、現在警察や検察が何をどれだけ保管しているかということを知らないのが通常であります。実際に先ほど例に挙がった足利事件や東京電力女性社員殺害事件でも、そもそも何を保管しているのかが分からなかったために、弁護人はその保管しているものをまず明らかにしてくださいということを求めています。また、その保管している証拠物を開示させるのに時間が掛かってしまい、その間適切に保管・保存されていなかったためにDNA鑑定が実施できない状態になるのではないかと危惧されたため、裁判所から適切に保管・保存してくださいということを求めています。   したがいまして、DNA鑑定を可能にするためには、まずはその証拠物が適切に保管・保存されていること、そして、それが請求人に開示されることが前提になります。その上で、請求人としては、「私は犯人ではありません」と主張しているわけですから、そういうものがあるのでしたら、私のDNA型とその遺留物のDNA型鑑定の異同識別を実施してもらいたいと、当時は実施されていなかったり、あるいは実施されていたけれども現在より精度が低い鑑定手法だったので、現在の最先端の精度の鑑定手法で実施してもらいたいと、そのような主張をすれば、通常は必要性が認められるのではないかと考えます。 ○村山委員 私も今の田岡幹事の意見に賛成です。要するに、通常審の段階でDNA鑑定の結果が出ているような場合に、特に問題になるというのは、DNA鑑定の方法とか精度の問題として問題になるということはあると思いますけれども、実際に再審で問題になるのは、通常審では出ていない証拠物についてのDNA鑑定だということだと思います。そうである以上、再審の場合、事件性の問題と犯人性の問題と両方あるわけですけれども、犯人性の争いで無罪を主張しているという事例の方が多いと認識していますので、これはDNA鑑定は犯人識別という意味では非常に有効な方法であることは間違いないのです。一応、イノセンスプロジェクトでは1992年からの30年の間で522件もえん罪救済になっているという、これは数字として私はびっくりするぐらいの数字なのですけれども、年間、522で30だから20件ぐらいですか、というぐらいDNA鑑定でえん罪が救済されているという実績があります。   もちろん日本で同じようになるとは私も予想はしていませんけれども、実際に有用性は否定できないということである以上、規定を設ける必要がある、その規定を設ける必要があるというのは、やはり請求人の側に請求権を認めると。今は事実の取調べでできるというのは、正に池田委員がおっしゃったとおりなのですけれども、請求人の側に請求権を認めて、そして裁判所が判断する、若しくは裁判所が審理をする中で、これはやはりやるべきだ、やった方がいいとなったら職権でできるという、そういう条文の立て付けにした方がいいのではないかという趣旨で、こういった条文を作るべきだと考えます。 ○吉田(雅)幹事 御発言の御趣旨を確認させていただきたいのですが、刑事事件で押収される証拠物は非常に大量にわたることもあると思います。犯行の前後にわたって、いろいろな場面に存在した物を差し押さえるということもあり得るわけで、DNA型鑑定の対象となり得る証拠というのも、これまた当然大量に、また多種多様なものがあり得ると思いますけれども、そうした中で、先ほど池田委員がおっしゃった問題意識を踏まえたときに、裁判所がそうした多種多様な証拠物の中からどのような基準でDNA型鑑定を行うべきものか否かを選別・判断することを想定しておっしゃっているのかということを教えていただければと思います。 ○村山委員 それは、実際にどこにどういう証拠があったのかというのが分かれば、裁判所はその判断は当然付くと私は理解しています。確かにいろいろなものを押収しているというのはそのとおりですけれども、現場とは全く関係ないところで何かの関係で押収したものが、それがDNA鑑定の対象になるかと言われれば、よほど特殊な関係がなければ対象にならないでしょうし、また、請求人の側が主張しているという内容についても、ある程度これを加味して考えるということにはなるのだろうと思います。そういう意味で、鑑定の対象となる証拠物がどのようなものがあるのか、どういうところでどういう形で発見されたのか分かれば、それについてDNA鑑定する必要性があるかないかは裁判所は当然、判断ができると思っています。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○江口委員 今お話があったところにつき、その必要性の判断を何との関係で判断するのかについてですが、これは再審の審判対象が何であるのかと関係し、例えば刑事訴訟法第435条第6号を再審事由とするのであれば、新証拠の恐らくは明白性との関係が問題となってくるかと思われます。そうすると、新証拠との関係におきましてその必要性が判断されるということになるかと思うのですが、今頂いている御意見ですと、余りにも一般的な事件そのものについてのお話が出ているような気がしております。必要性の判断をするための要件の明確性は、どのような形の規定がされるのかの検討において、実際に判断をする裁判所にとっても極めて重要な問題であると思っております。 ○大澤部会長 ほかにございますか。   余り私から発言するのもよろしくないかと思いますが、私も趣旨がよく分からないところがございまして、確認させていただきたいと思います。先ほど田岡幹事が、何が保管されているか分からない、もし分かったならば鑑定の必要性は分かるだろうという趣旨のことを述べられ、同じ趣旨のことは村山委員も言われたと思いますが、そういう段階で、何かきちんと保管してくださいというときに、どういう形で保管を裁判所としては命じるのでしょうか。その場合に何の保管を命じるのですか。 ○田岡幹事 まずは、どのような証拠物を保管しているかということを明らかにさせることが大前提だと思います。日弁連の案で言えば、証拠一覧表という形で保管している証拠物の一覧表を出させるわけですが、それ以外の方法、例えば送致書類目録であっても構いませんけれども、まずは何があるのかということが分からないと、保管・保存の必要性やその鑑定の必要性が判断できませんので、現在、検察官はどれだけの証拠物を保管しているのですかと、それを明らかにさせることが必要になります。その上で、その証拠価値を保全するために、現在、どのような状態で保存されているのですか、つまり冷凍庫に保存されているのですか、それとも常温保存なのですかということを確認いたしまして、鑑定の必要性があるようでしたら、常温保存ではまずいから冷凍で保存してくださいとか、あるいは現時点で鑑定が実施できるようであれば鑑定を実施しましょうというふうに話が進んでいくのだと思います。したがいまして、まずはどのような証拠物を保管しているかということとその保存状況を把握することが必要なのだろうと思います。 ○大澤部会長 それが分かったならば、裁判所としてはできるでしょうというのが池田委員の御発言だったと思いますが、その間に保管をきちんとさせるとか、あるいは相手方に鑑定をさせる、そういう選択肢があるべきで、それを法律として定めるべきだというのが御提案だと、そういう理解でよろしいですか。 ○田岡幹事 これは本来、通常審の段階からそうすべきものだとは思うのです。DNA鑑定の鑑定試料となるような生体資料に関しては、通常の証拠物とは異なり冷凍保存すると、現在はそうなっているのだろうとは思いますけれども、当然そうあってしかるべきです。また、鴨志田委員がおっしゃられたように、どのような証拠物があるかは、通常審の段階から、証拠物の目録を作成するなどして管理しておくべきものだと思います。ただ、現在はそうなっていないので、やむを得ませんから、再審請求手続の段階で、犯人ではないという理由で再審請求がなされたのであれば、DNA鑑定が新証拠の明白性を判断する重要な証拠になり得るのですから、その段階で、証拠物の一覧表を出させる、あるいは送致書類目録を出させて、どのような証拠物があるかを把握し、その保存状況を確認した上で、こうした規定に基づいてDNA鑑定の要否を判断していきましょうということです。   先ほど江口委員から、まずは新証拠を出さないといけないのではないですかというお話がありましたけれども、実際には、DNA鑑定をしてみればそれが新証拠になるという事件もたくさんあるわけです。確かに全く何もない状態では再審請求手続は始まりませんが、何か新証拠が一応出ているという場合で、かつDNA鑑定をすれば再審理由の有無がより確実に判明するという場合には、DNA鑑定をすることによって決着が付けられるのですから、再審請求手続の円滑な進行に資するものと考えます。 ○大澤部会長 更にこの枠につきまして御発言はございますでしょうか。 ○宮崎委員 鑑定につきましては、池田委員の御発言にもあったとおり、再審請求手続の構造との整合性など、問題があるのではないかと思うところです。   また、証拠品の保管に関して申し添えますと、法務大臣訓令である証拠品事務規程第2条で、「証拠品を取り扱う者は、証拠品が刑事裁判の重要な証明資料であることにかんがみ、常におう盛な責任感をもって、紛失し、滅失し、毀損し、又は変質する等しないように注意し、その証拠価値の保全に努めなければならない」と規定されておりまして、裁判所に命じられるまでもなく、保管検察官や証拠品担当事務官としては、この規定にのっとって適切に証拠品を保管しているところでございます。したがって、検察官に対してその適切な方法による保管を命じる旨の新たな規定も設ける必要はないと考えております。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○村山委員 今ほど宮崎委員から、適切に保管しているということなのですけれども、本当に適切に保管していない例があるから言っているのだと思うのです。生体試料の場合は時間的経過によってどんどん劣化していって、時間が経過した後に鑑定しても鑑定結果として有意な情報が得られないということが十分想定されますので、そういう意味では保存に十分気を付けなければいけない。単に保管しているだけではなくて、その証拠価値を損なわないような保管というのが必要だということで、こういう条文が必要だということと、あとDNA鑑定というのが非常に客観的、中立的な有力な証拠方法であるということは、これは誰しも否定できないと思うのです。そういう意味で、やはり犯人性の争いになっていて、現場に遺留されているものだとすれば、基本的には生体試料であるということが分かったらDNA鑑定をするということが決して無駄ではない、逆に言えば必要性が高いと考えるべきではないでしょうか。実際にそういう形でえん罪救済になっていると、これは先ほど言ったアメリカの例ですけれども、大変多くの例がそういうDNA鑑定の結果、判明しているわけですから、その事実はやはり否定できないと思うのです。そういう発想で規定を設けるべきだということを申し上げていますし、また、請求人側の請求権として認めるべきだということも主張しているつもりであります。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○鴨志田委員 もう田岡幹事や村山委員の方から具体的に詳細に説明をしていただいているので、1点だけなのですけれども、そもそも事実の取調べができるという規定では裁判所の判断にばらつきが出てしまうということも非常に大きな問題があると思います。実際に証拠をきちんと保管をし、適切に管理をし、そういうことが全てうまくいっているのであれば、こういう問題にはならないわけですけれども、現に保存もきちんとしていないし、それまで裁判所が適切に訴訟指揮をしていなかったからこそ問題が生じていて、これがルール化されなければ、やる裁判官はやってくれるけれども、やらない裁判官はやらないということで真実が明らかにならないと、そういう以前から言われている再審格差の問題にもつながるものであると。だから、事実の取調べという規定があればいいということではなくて、具体的な定めをするべきであると、それをすることが迅速な判断にもつながっていくということを最後に申し上げておきたいと思います。 ○大澤部会長 それでは、この枠はこの程度にさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 次に「論点整理(案)」の「2」「再審開始決定に対する不服申立てを禁止するか」について、審議を行います。この事項につきましてはおおむね50分間、午後3時55分を目途に審議を行いたいと思います。それでは、御意見等がある方は挙手をお願いいたします。 ○小島幹事 この点に関しましては2点、気になっている点がございまして、一つは、意見ということなのですが、再審請求がなされた場合に、その請求を棄却する決定と再審の開始を認める決定というのは、いずれも再審開始事由があるかどうかという点についての判断を示す裁判であって、一方ではそれがあるとは認められないという判断をして、他方ではそれがあると認められるという判断をしているということかと思います。そうしますと、この両者はその判断の帰結は異なりますけれども、少なくともその裁判の性質としては共通するということになるのではないかということでございます。そうした再審開始事由があるかないかについて判断をするという性質の裁判については、不服申立てを認めるという仕組み自体に合理性があるということであれば、再審請求棄却の決定に対しても再審開始の決定に対しても等しく不服申立てを認めるというのが、少なくともこの観点からは理論的な帰結になるのではないかと考えているところでございます。   それから、もう1点ですけれども、これは第2回会議で参考人の宮下様からも提示されていた問題意識なのですが、再審開始決定が出てから再審公判の判決が出るまでの期間というくくりで考えたときに、再審開始決定に対する検察官の不服申立てを禁止するということで本当に実効的にその期間の短縮化が図れるのかという点でございます。この点につきましては、正にその意見聴取の際に、そうした疑問に答える形で村山委員の方から、再審公判ということになれば期日で進んでいくので、不服申立てがされているという状況よりも審理が早く進むことが期待できるのだという趣旨の御説明があったかと思います。それをお聞きしまして、私も確かに一方において、そういうことなのかと思った次第でございますが、他方において、検察の側で不服申立てのところを飛ばして再審公判の段階で本格的に争うということになった場合は、そこのところは相当程度時間を掛けて審理することにならざるを得ないのではないかという印象も拭えないでいるということでございます。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○鴨志田委員 今、小島幹事の方から頂いた二つの点については、立法事実に関する私の意見を申し上げた後に、それぞれ述べさせていただければと思いますので、まずは立法事実の関係の方からお話をさせていただきたいと思います。   まず、私どもの方が今回提出資料とさせていただいた「検察官抗告の状況」というA4縦の資料を御覧いただきたいと思います。これは、過去に再審開始決定がされた日弁連の支援事件19件のうち、検察官が抗告を行わなかった事件というのが2件だけであるということを示しています。また、検察官が抗告した17件のうち、現時点で再審公判、再審無罪に至らなかった事件は3件のみでございます。検察官の不服申立てによって審理が長期化し、えん罪被害者の人生における掛け替えのない時間を長期にわたって奪ってきたということは、これは厳然たる事実であるといわざるを得ないと思います。袴田事件では、第2回のヒアリングでもありましたが、検察官の即時抗告によって再審開始からその確定までに9年を要しています。その後、再審公判で更に1年7か月を要しております。   先ほど御紹介をした福井女子中学生殺人事件、これは事務当局の配布資料6でいうと11番の事件が福井女子中学生殺人事件であると認識をしているのですが、この資料では第2次再審の経過だけが記載されているので、不服申立てが行われていない事例のように見えてしまいます。けれども、この事件は第1次再審で2011年に出された再審開始決定が検察官の異議申立てによって取り消され、第2次再審で再び開始決定が出るまでには13年を要しているということを申しておきたいと思います。この事件では、第2次再審で無罪を言い渡すべき明らかな証拠と認定をされた証拠は、全てこの第2次再審段階で初めて開示された証拠であるという状況がございます。ということは、検察官は第1次再審段階ではこれらの証拠を開示しないまま異議を申し立てて、再審開始決定の取消しを求めていたということになります。   また、私の提出した資料でそれぞれの事件の概要についてお示しをした、今日お出しした福井事件を含めると6事件ございますけれども、これらの6事件、またヒアリングの対象となった2事件、合計8事件ということになりますが、この8事件の中で検察官の不服申立てによる手続の長期化が指摘された事件は、そのうちの6件に及びます。布川事件や松橋事件では、検察官は再審開始の判断をした地裁、高裁のいずれの決定にも抗告を重ねています。いわゆる死刑4再審をはじめ再審無罪事例が相次いだ1980年代においては、検察官が地裁、高裁の開始判断に抗告を重ねたというケースはございませんでした。もっとも、免田事件では、1956年8月に出された第3次請求審の開始決定が検察官の即時抗告申立てによって取り消されて、このときは最高裁でも請求棄却に終わっていますが、その後、第6次即時抗告審の再審開始決定が1980年12月に確定しています。この間、実に24年4か月を要しているところです。このような事実から、再審開始決定に対する検察官の抗告というものは禁止をすべきであると考える次第です。   この規定の在り方に関してですけれども、現行法では刑訴法450条に第448条第1項の決定というものが列挙されて、これが再審開始決定でありますので、この規定があることを根拠に再審開始決定に対する即時抗告が認められております。そこで、日弁連案や河井私案では、再審の決定に対して即時抗告ができる場合を定めている刑訴法450条の文言から第448条第1項を除外し、かつ再審開始決定に対しては、抗告のできない決定に対してだけすることのできる、―憲法違反、判例違反がある場合に限られてはおりますけれども―このような場合に認められる特別抗告、刑訴法433条、これについても再審の開始決定については適用除外とすることで、再審開始決定に対する全ての不服申立てを禁止するという趣旨で規定を立てています。一方、議員立法による改正案、衆法61号では、即時抗告に代わる異議申立て、刑訴法428条2項、特別抗告433条1項を禁止した上で、即時抗告の対象にもならないという規定ぶりになっています。どちらも同じ趣旨ではありますが、個人的には衆法61条の方が端的で分かりやすい文言になっているかと考えるところでございます。   以上、私の意見なのですけれども、先ほどの小島幹事からの御指摘に対して申し上げたいと思います。再審を認める決定、認めない決定、どちらについても、その請求事由について判断されたということなわけなので、この両方に対して不服申立てができるということが相当なのではないかと、これは第3回のヒアリングにおいて田辺参考人が、上訴制度の在り方としての整合性にも疑義が生じているではないかという指摘をしたことと共通するものと認識をしております。ただ、再審請求手続はそもそも職権主義構造の下で、再審請求人がした請求に対して裁判所が判断をするという二者構造になっています。検察官は、したがって、再審請求手続では当事者性は認められていません。このため、そもそも対等な当事者であることを前提に双方に不服申立てを認めるという前提を欠いていると考えます。   また、検察官の抗告権の根拠を公益の代表者性に求めるという見解も多く語られているところではございます。しかし、憲法39条の二重の危険禁止の保障によって不利益再審が廃止され、再審制度の対象が利益再審のみとなったこと、要は無辜の救済だけが再審の目的という、ある種片面的な制度になったということで、そこに公益の代表者として関与する検察官のすべきことは、この制度目的の実現のために裁判所の職権行使に協力をするということであって、裁判所の開始決定、裁判所が職権で行った再審開始の判断に対して、通常審段階と同じように有罪を主張して抵抗するということではないものと思います。   何よりも、この再審開始決定に対して不服があったとしても、これは再審公判の段階で是正を求めて有罪の主張をすることも検察官はできますし、いわゆる様々な手続保障の定められた公開の法廷で行われる再審公判でそのような主張をしていただくことの方が公正な裁判につながるということからも、再審開始決定の方にだけ抗告を認めないという立場をとるということが、必ずしも上訴審の在り方として整合性に疑義が生じるとは考えられないと思います。   それからもう一つ、期間の問題です。確かに再審請求審のところで開始決定に抗告の規定がなくなったときには、その分、再審公判の方で時間を要するのではないかというような指摘は、田辺参考人からもあったところではございます。しかし、公開の法廷で、今申し上げたとおり、直接主義や口頭主義で被告人の権利が保障されて適正手続が担保されている再審公判での審理の結果、そこで有罪判決がされる、また、これに対して被告人側から控訴、上告をするといったような案件、また、無罪判決に対して検察官が上訴するという案件が増加したとしても、それは手続保障のある法廷の中で行われる再審公判という手続の中でそのような主張や反論や上訴が行われるということは、むしろやむを得ないことであると思います。職権主義の下で裁判所の広範な裁量を許している非公開の手続で、審理の進め方について裁判体ごとのばらつきも現に生じている再審請求手続に実質的な有罪、無罪の判断を委ねているという現状よりは、制度の運用としてははるかに健全であると考えます。   現実問題として、例えば再審無罪となった袴田事件や福井女子中学生殺人事件でさえ、袴田事件の第1次請求では、申立てから第1回の進行協議期日が開かれるまでに3年7か月を要したと第2回のヒアリングの際に間参考人がおっしゃっておりましたし、福井女子中学生事件も第1次再審では申立てから2年5か月が経過してからようやく第1回の打合せ期日が開催されています。仮に再審請求手続で繰り広げられていた攻防が再審公判にそのまま持ち込まれたとしても、全体としての審理期間が短縮されるということは明らかではないかと考える次第です。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○宇藤委員 小島幹事と鴨志田委員の御発言に関連して発言します。再審開始決定に対する不服申立てを禁止すべきかという論点がどのような経緯で議論されてきたかにつき、その中心としてあるのは、再審手続全体の迅速化である、ということが先ほども繰り返されておりました。鴨志田委員からは、再審開始決定があった後、不服申立てがあり、そのせいで開始までかなりの時間が費やされている、という趣旨の説明がございました。ただ、今のお話を聞いてもなお、再審開始決定に対する不服申立てを禁止するだけでは迅速化を実現するという効果があるということには疑問がございます。   恐らく迅速化に資するとの発想の前提にあるのは、再審開始決定が確定し、その後の再審公判が比較的短期間のうちに、かつ無罪判決に至るという現在の運用状況があるものと推測いたします。ただ、このような運用状況は条文により論理必然のものであるということではございません。開始決定に対する不服申立てを禁止するならば、これまで不服申立てとして主張されてきた内容が再審公判にその主張の場を移すだけになることも考え得るものではないかと思われます。そうした場合に、再審公判は現在よりも比較的長期にわたるものとなり、かつ、場合によっては無罪判決に至る可能性も減少するかもしれません。   先ほどの鴨志田委員の説明では、公開主義あるいは手続の保障ということをもってよしとするということでありました。ただ、そうであれば、恐らくこれは結論として無罪判決となり得るということも前提とするものかなと思いながら伺いましたが、その点を含めるとすれば、この議論というのは恐らく迅速化という点でおさえきることができるものではなく、かなり大きな議論をしなければならない、そのような話ではないかと思われます。以上のように、再審手続全体のバランスを考えますと、少なくとも迅速化という観点だけで検察官による不服申立ての禁止を語るということは難しいのではないかと思われます。   また、その点を別としても、そのほかの理由が恐らくは考えられると思うのですが、再審手続の在り方は上訴制度全体と独立して論じることはそもそも難しいところがございます。この点については第1回会議で私も発言させていただいたところです。さらに、目的が違えば不服申立ての建て付けも再度別の観点から議論するということはもちろん必要になってまいりますので、今回の検討対象のような一律禁止は現段階では難しく、慎重に検討すべき課題ではないかと考えております。 ○村山委員 私は裁判官をやっていた若い頃は、開始決定に対して不服申立てできるのは当然だと考えたのですけれども、その後いろいろ考えたら、これは禁止しなければいけないという考えに至っております。その理由をお話しすると同時に、今ほど小島幹事や宇藤委員から出された疑問に対して、私なりの意見を述べてみたいということであります。   まず、検察官の不服申立ては簡単に言うと、必要性がなくて弊害が大きいということだと思います。先ほど小島幹事は、再審開始事由の有無についての判断だから両方向で不服申立てができないといけないのではないかという御意見がありました。確かに請求人にとっては、不服申立てできないと困るのです。なぜかといえば、同一の理由では請求できないのです。したがって、その理由で再審請求にこだわらなければいけないという必然性があるのです。ところが検察官はどうかというと、確かに訴訟物は違うとおっしゃいますが、再審請求審でやっている審理と再審公判で検察官が有罪立証にこだわった場合の審理と、基本的には同じことをやっているのではないでしょうか。理屈の上では確かに訴訟物は違うかもしれないけれども、実際にやっている審理は一緒です。ということは、検察官が6回チャレンジできるのです。請求審、即時抗告審、特別抗告審とやって、それでも開始決定が確定したら再審公判で控訴、上告ができる。理屈の上では同じような審理をするという、そういうテーマで6回チャレンジができるということになります。本当にこれが必要なのでしょうか。   この点、確かにいろいろ異論があるとは思いますけれども、付審判請求の決定が一つ参考になると言われています。これは審判請求の付審判決定に対しては、不服申立てはできません。なぜかといえば、それは公判で決着を付ければいいことなのだということで、認められていない。逆に、棄却の決定に対しては不服申立てができるという構造になっています。これは現在の実務でも異論のないところだと思います。そういう意味で、開始決定に対する不服申立ての規律もこれと同じように考えるということは十分可能だと思うのです。なぜかといえば、再審公判で明らかにすればいいからだということです。   次に、弊害が大きいということです。期間の問題は確かにあります。再審請求段階の期間を短くするというのが眼目だと宇藤委員がおっしゃったかと思いますけれども、そうではなくて、我々が言っているのはえん罪救済を早くしましょうという、迅速化という意味であります。もちろん再審公判で無罪が出るばかりではありません。有罪の判決が出るということも当然あります。しかし、全体として見た場合にえん罪救済が迅速化することは間違いないと私は思っています。なぜならば、確かに再審公判は即時抗告、特別抗告を経なければ今よりも長い審理になると思います。しかし、即時抗告、特別抗告を経るような期間を要するのでしょうか。つまり、再審公判に移行した段階では、もう争点は明らかなのです。ですから、通常審のような争点確定手続、公判前整理手続のようなことはやらないです。何が争点かというのは、もう再審請求審で当然議論されているはずですから。そうすると、あとは審理計画ということになって、それも期日で進行する。早まると思います。   もう一つは、証拠法制です。今、再審公判で事実の取調べで行った証拠が全部、再審公判で取り調べられるかといえば、それはそうでありません。再審公判では通常の公判手続と同じように伝聞法則が適用されていますので、どちらかが不同意だということになれば書証は基本的には採用されない。現に袴田事件では、色問題ですね、これを請求審と再審公判のときと同じような証人尋問をやっているのです。そういう重複を省くことも当然できます。そういう意味でも迅速化に資するということは間違いないと思います。   もちろん誤った開始決定がないなどというつもりはありません。そもそも再審のルートをきちんと作りましょうと言っているのは、確定判決でさえ間違っているということがあるから言っているので、当然、開始決定だって間違っていることはあると思います。しかし、その是正をその開始決定に対する抗告という形で図るのがいいのかどうかという問題だと考えれば、何もそうする必要はないし、そうすることによる弊害が大きいというのが実情だと思います。   また、もう一つ問題があって、開始決定が出ても確定判決の効力は全く失われることはありません。つまり、執行停止決定がなければ、例えば拘禁刑を受けている方はずっと拘禁刑を受け続けるのです。それに対して、例えば請求審の開始決定に伴って執行停止決定があった場合、検察官は開始決定に対して即時抗告をすると同時に、執行停止決定についても不服申立てをする。思い出していただきたいのですが、青木参考人は開始決定が出て、出られるのだと思って準備をしたと、そうしたら最後の最後になって、あなたは出られませんと言われたと、非常にショックだったということをこのヒアリングの場でもおっしゃっていました。そういうことなのです。そういう意味でも弊害が大きいと思います。私は開始決定は禁止すべきだし、停止決定に対する抗告も禁止すべきであると思っています。   条文としては、衆議院に提出されている法案、これは参考になると思うのですが、これは検察官はと主体を限定しているのですけれども、私は検察官という主体を限定する必要はなくて、限定なしで禁止すればいいのではないかと個人的には思っていますけれども、そういう形で非常にシンプルな形で条文は整うだろうと思います。   最後にもう1点、私が元裁判官だったということから来る感想を申し上げます。裁判官にとって無罪判決を言い渡すよりも再審開始決定を出す方が、よほど心理的なハードルが高いと、これは私自身もそうでしたし、恐らく現役の裁判官もそうだと思います。なぜかと言えば、やはり確定判決があるからです。つまり、再審開始決定はそれなりに慎重な判断をしているというのが実情で、田辺参考人が言われた取消しの事例、これは実は高裁で開始決定なのです。しかも一つは略式事件です。供述が変わったということで、確かに客観証拠ではない。だけれども、そういう場合にそもそも公判廷で証人尋問をやってはいけなかったのでしょうか。それで決着を付けてもよかった事例だと私は思っています。   また、お隣に検察官がいるから余り言いたくないのですけれども、私は現役時代に無罪判決をそれなりに書いているのですけれども、ほとんど控訴されていないです。けれども開始決定は、今のデータを見れば、ほとんど不服申立てをしているではないですか。ということは、田辺参考人は不服申立てを慎重にやっているとおっしゃっていますけれども、実際に慎重にやった即時抗告審で、さしたる立証もせずに終わっている事件もあるわけです。ということは、検察庁としては確定判決を守るためには基本的には開始決定に対しては不服申立てをするのだという力が働いているのだろうと推測せざるを得ません。これは裁判官をやっていたときの肌感覚から言っても、無罪事件を出しても、裁判所の無罪判決を検察庁は非常によく検討していただいている。そして、不満はあるでしょうけれども控訴をしないという態度決定をされている場合も相当数あるにもかかわらず、なぜ再審開始だけこれほどの割合で不服申立てをするのか。むしろしない例は、確定判決が客観的に明らかに間違っている場合だけで、それ以外は不服申立てをしているのだと私は認識しています。つまり、現状における検察官の不服申立ての対応が慎重だという点についても、私は事実として、いかがなものかと思っています。   そういう意味で、必要性もないし弊害も多いし、やはり再審公判で検察官はきちんと争うという道がある以上、そちらできちんと主張・立証していただき、その結果、有罪判決になったとしても、それはそういう制度なのですから、それは致し方のないことだと、開始決定が出たからといって無罪が確約されるものではないと、これは元々制度がそういうものとして予定していたはずです。無罪になることを前提に考えているのではないかという宇藤委員の御指摘がありますけれども、私どもは決してそういう思いでやっているわけではありません。 ○大澤部会長 やや皆さんの発言が長めになっておりますので、最初の私のお願いも思い出していただいて、どうかよろしく御協力をお願いいたします。   ほかに御発言はございますでしょうか。 ○川出委員 再審開始決定に対する不服申立てを禁止することが、手続全体としての迅速化につながるのかについては、意見が分かれますが、少なくとも再審請求手続が迅速化されるという利点があることは確かです。他方で、再審開始決定に対する不服申立てを禁止することで不都合が生じないのかということも考える必要があると思います。   この点については、これまでも幾つかの観点からの指摘がなされていますが、ここでは再審手続の構造という観点から考えてみますと、現行刑事訴訟法における再審手続は、再審開始事由の存否について審理・判断が行われる再審請求審と、再審開始決定があった場合に公訴事実の存否について審理・判断が行われる再審公判という2段階の構造になっています。再審請求審においては、確定判決を経た事件を再度審理するにふさわしい事由があったか否かが判断されて、それが認められた事件のみが選別されて、再審公判が開かれることになります。その意味で、再審請求審において再審事由の有無についての適切な判断の下に再審開始決定がなされていることが、再審公判を開くための前提条件になっています。そのような位置付けにある再審開始決定に誤りがあった場合に、それを是正する余地を一切認めず無条件に再審公判を開始しなければならないとするのは、現行刑事訴訟法の再審手続が2段階構造をとっていることと整合しないように思います。   これに対しては、先ほど村山委員からも御指摘があったように、再審開始決定に対する不服申立てを認めなくても、検察官がそれに対して不服があるのであれば再審公判で改めて有罪を主張して争えばよいから不都合はないという指摘がしばしばなされます。しかし、村山委員もお認めになっていたように、再審請求審と再審公判では審判対象が異なりますので、それでは誤った再審開始決定の是正にはなりません。確かに、刑事訴訟法第435条第6号の新証拠の明白性が問題となる事案では、判例の立場を前提とすると、両者がかなりの部分で重なってきますが、同条第6号以外の再審開始事由、あるいは、同条第6号においても証拠の新規性が問題となる事案では、両者が全く異なることは明らかであろうと思います。   以上の理由から、検察官による不服申立ての運用をどう評価するかという点はともかくとして、再審開始決定に対する不服申立てを禁止し、誤った再審開始決定を是正する余地を一切認めないということには疑問があります。   それからもう1点、これも村山委員が御指摘になった、付審判決定については不服申立てが認められていないこととの関係について意見を申し上げたいと思います。確かにその旨の判断を示した判例がありますが、この判例は、付審判決定の実質は公訴の提起であり、その適否を審査する際にその対象となる事項が付審判決定に基づく被告事件の審理対象と大部分重なるために、あえて独立に不服申立てを認める必要はないとしたものだと考えられます。これに対し、再審請求審と再審公判では、先ほど申し上げましたようにそもそも審理対象が異なりますので、再審開始決定については今申し上げたことは妥当しません。加えて、これから公判を開始させる効果を持つにとどまる付審判決定と確定判決がなされている事件について公判を再開させることになる再審開始決定とでは効果の大きさが異なりますので、その観点からも、独立に不服申立てを認める必要性に違いがあるということができると思います。以上の理由から、付審判決定について不服申立てが認められていないことから、再審開始決定に対する不服申立ても同様に認める必要がないということにはならないと考えます。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○宮崎委員 まず、再審開始決定に対する不服申立ての実情や、検察における運用面の取組について何点か申し上げておきたいと思います。   まず、検察当局は、個別具体的な事情に応じ、再審開始決定に対して不服申立てをするかどうかについて、十分かつ慎重な検討を行って対応していることを改めて申し上げておきたいと思います。その上で、検察においては近時、運用面での取組として、再審開始決定があった場合の不服申立てについて十分かつ慎重な運用を期する制度的な仕組みとして、検事正は検事長の指揮を受けなければならず、検事長は検事総長に指揮の結果を報告しなければならないとしているとともに、再審事件に検察組織全体で対応する体制として、再審事件を担当する検察官への助言・指導を行う再審担当サポート室を最高検察庁に設置し、今年度から高等検察庁にも再審担当サポート室を設置しているなど、個々の再審事件において一層の適切な対応ができるようにしています。   配布資料6のとおり、合計11件の事案のうち8番、10番、11番の3件では、そもそも即時抗告をしておらず、即時抗告又は特別抗告をしたものについても、2番、5番、6番、7番の4件では上級審で再審開始決定が取り消されて再審不開始となっています。さらに、第3回会議のヒアリングにおいては、田辺参考人からも、被害者に働き掛けて作成させた虚偽の陳述書に基づいて再審請求をし、裁判所が被害者の証人尋問すらせず、虚偽を見抜けないまま誤った再審開始決定をし、これに対する検察官の不服申立てによって誤りが是正されたという事案が御紹介されました。これらのことは、検察当局が再審開始決定に対して、もとよりいたずらに不服申立てをしているものではなく、事案に応じて十分かつ慎重な検討を行って対応していること、再審開始決定に誤りがあり是正が必要な事案が現に存在しており、その意味で検察官の不服申立てが適切に機能していることを示すものであり、再審開始決定に対する不服申立ての在り方については、こうした実情も十分に踏まえた検討が必要であると考えています。   その上での意見ですが、再審請求審は三審制の下で確定した有罪判決に対して、これを覆そうとする手続であります。再審開始決定に対する検察官の不服申立てを一律に禁止し、誤った再審開始決定が是正される余地が一切認められないこととなれば、例えば、通常審で最高裁判所まで争われて有罪判決が確定した事案について、仮に簡易裁判所や地方裁判所により誤った再審開始決定がなされた場合であっても、確定判決が覆されることとなり、こうした下級審の誤った判断が放置されたまま再審公判に移行することとなりますが、このような事態となれば、確定判決による法的安定性は著しく害されることとなりかねないと思います。   この点については、第2回会議のヒアリングにおいて、宮下参考人も、三審制をとっている我が国の刑事司法制度の中で、再審開始決定に対する検察官の不服申立てだけを禁止することの整合性について、疑問を呈されていたところです。   また、第3回会議のヒアリングにおいて、磯谷参考人が、安易に再審ができるようになれば、被害者は終わらない裁判に人生を奪われることになり、司法全体に対する信頼性が薄らいでしまうとの意見を述べられたように、誤った再審開始決定が現に存在する中で再審開始決定に対する検察官の不服申立てだけを一律に禁止することは、犯罪被害者やその御遺族の方々をはじめとする国民の理解も到底得られず、刑事裁判に対する国民の信頼を損なうことにもなりかねないと思います。   もとより手続はできる限り迅速に進められるべきことは当然でありますが、再審開始決定に対する検察官の不服申立てを一律に禁止するという極端な手段によって審理期間を短縮しようとすることは不合理であり、適切な方策とは思われません。 ○池田委員 私からも、検察官からの不服申立てを一律に禁止することについて、上訴制度との整合性を踏まえて意見を申し上げます。   刑事訴訟制度は、下級審の判断に誤りがあれば上級審において是正を図るべく上訴の制度を設けており、この全体を通じて刑事手続における判断の適正が実現されるように構成されています。再審開始決定のみ検察官の不服申立てを一律に禁止するとした場合には、誤った再審開始決定に限って上級審における是正の余地が認められないということとなり、さきに述べた構造との間でのみならず、手続全体を通じた判断の適正確保の観点との関係でも不整合が生じます。その結果、通常審で最高裁判所まで争われて有罪が確定した事案について、仮に再審請求審で誤った再審開始決定がなされた場合であっても、その1回の判断の限りをもって再審公判に移行するということになりますが、再審開始決定に限りこうした位置付けを与えることが許されるということには疑問があります。   既に村山委員からも御指摘があったように、判断に誤りがあり得るのは通常審の裁判に限られるわけではないといたしますと、再審請求審との関係でも、再審開始事由がないとの判断には誤りがあり得るけれども、再審開始事由があるとの判断には誤りはあり得ないという前提に立つことはできません。にもかかわらず、前者については是正の機会がある一方で、後者についてその余地を認めないとするのは均衡を欠くように思われます。   加えて、これまで指摘があった、不服申立てを認める必要がないのではないかということについても申し上げます。宮崎委員からも御指摘があったように、即時抗告等を経て再審開始に至らなかったという事案がある以上は、現に誤った再審開始決定がなされており、その是正の必要性があるということは否定し難いように思われますので、この観点からも、検察官による不服申立てを一律に禁止することは、その合理性には疑問があるということになります。   最後に、かなり前の方で鴨志田委員から、公益の代表者であって、その立場に鑑みると不服申立てをする地位を認めることにはならないという御指摘があったように記憶しております。検察官が公益の代表者として再審請求審に関与するというのは、御指摘のとおりですが、他方で検察官の不服申立てがそのことによって当然に否定されるということになるわけではないように思われます。検察官は裁判所に法の正当な適用を請求する職務を担っており、その中には違法又は不当な裁判の是正を求めるということも含まれていると考えられますので、そこには誤った再審開始決定の是正を求めるということも含まれていると考えられます。したがいまして、公益の代表者であることから直ちに不服申立てを行う地位を否定するということにはならないと考えております。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○田岡幹事 私は再審開始決定に対する検察官の不服申立ては禁止すべきであると考えますが、その理由は、単に迅速化のためというよりは、再審請求審が、再審公判の予備判断をする、そういう位置付けになっているからだと考えます。すなわち、先ほど川出委員からも御説明がありましたように、現在の再審請求手続は再審請求審と再審公判の2段階構造をとっており、再審請求審で無罪を言い渡すということは予定されていないのですから、再審請求審の役割というのは、再審公判を開くかどうか、そのための再審理由があるのかないのかということを判断することにあると理解しております。   諸外国の立法例を見ますと、例えばドイツでは1964年、昭和39年に既に再審開始決定に対する検察官の即時抗告は禁止されていると認識しております。もし再審請求審の構造や再審請求審の性格から、検察官の即時抗告は禁止されるべきではないのだというのであれば、なぜドイツでは禁止されているのかと疑問に思います。また、フランスでも破毀院の予審委員会の付託決定に対する不服申立てはできないとされておりますし、イギリスやカナダのようなCCR方式をとる国ではCCRCの付託決定に対する不服申立ては認められておりません。確かにアメリカでは再公判命令に対する上訴は連邦では可能とされておりますが、鴨志田委員提出資料「諸外国の有罪確定後救済制度」の14にありますとおり、州レベルでは分かれており、上訴を認める規定がある州と上訴を認めない規定がある州とがあると認識しております。つまり諸外国では再審請求あるいは確定判決後の救済手続において、改めて公判を開くかどうかの判断をする際に、不服申立てを認めなければその誤りを是正できないとか、また、再審請求手続の構造と矛盾するとは考えられていないのではないかと思われます。この点は当然、諸外国の専門家の先生方もこの部会に参加しておられるわけですので、その整合性について御説明をいただきたいところです。   その上で、再審請求審において決着を付けるのがよいのか、再審公判で決着を付けるのがよいのかということを、通常審で弁護人を務めることが多い弁護士の立場から申し上げますと、やはり再審請求審というのは非公開の手続でありまして、手続規定がございません。当然、一般国民、被害者もそうですけれども、何が行われているのかが分かりません。また、証拠能力のある証拠もない証拠も出されるわけですし、証拠調べの方法についても規定がありませんから、例えば証人尋問といったところで、刑事訴訟規則にのっとった尋問という形で行われるのか、そうでないのかということすら明確ではありません。   田辺参考人が言及された2事例のうち傷害事件の事例は略式命令に対する再審請求であり、三審制における審理どころか第一審における被害者の証人尋問すら実施されていない事例です。再審請求審では、被害者の陳述書が提出されたことから、これを新証拠として再審を開始すべきかどうかが問題となり、最高裁は、陳述書の信用性を判断するために、原審、つまり高裁において被害者の証人尋問と被告人質問を実施すべきだと、その点において審理不尽があると言って原審に差し戻しました。しかし、非公開の法廷において証人尋問をするよりも、むしろ再審公判を開いて、公開の法廷において証人尋問を行って、もし有罪であれば有罪という判決を言い渡し、無罪であれば無罪という判決を言い渡すという方が適正手続の保障と真実の発見に資すると考えられます。再審請求審において新証拠が提出され、確定判決の事実認定に合理的な疑いが生じるというのであれば、むしろ再審公判を開いて、公開の法廷において証拠調べをして決着を付けるべきなのではないでしょうか。   裁判員裁判の対象事件で再審開始決定があったということは今のところ聞いておりませんけれども、仮に裁判員裁判の対象事件において再審開始決定がなされれば、その再審公判の審理は裁判員裁判において行われることになるわけですし、公判前整理手続や期日間整理手続の対象事件であれば、その再審公判においても改めて期日間整理手続に付した上で、証明予定事実・予定主張を明示させて、争点及び証拠の整理を行った上で、審理計画を策定し、それに従った証拠調べが実施されることになるのだろうと思います。また、被害者参加対象事件であれば、被害者は再審公判の手続に参加をして証人尋問、被告人質問をしたり、心情意見陳述をしたり、あるいは事実又は法の適用に関する意見を述べることもできます。このような適正手続が保障された公開の法廷における審理は、証拠法則の適用されない非公開の再審請求手続とは全く異なるものです。   再審請求審と再審公判の2段階構造をとるのであれば、再審公判を開けば自動的に無罪になるということではなくて、むしろ新証拠が提出された以上、改めて再審公判を開いて、適正手続を保障した上で、検察官、弁護人の双方に当事者として主張・立証を闘わせて決着を付ける、裁判員裁判の対象事件であれば裁判員も加わった裁判体において判断をするという方が、適正な判断に資するのではないでしょうか。再審請求審という非公開の手続において証人尋問や被告人質問をしなければ、再審公判を開かないというような形で、決着を付けようとすることは、私には必ずしも国民が望んでいることとは思えません。   改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会の第17回会議で、足立構成員も、検察官には再審公判で開始決定の当否を正々堂々と争うことができます、職権主義の下では検察官は当事者ではなく、予備審査ともいえる請求審の段階で最高裁への特別抗告まで含む抗告権を検察官に認める必要があるのかどうか、無辜の救済を制度趣旨とする以上、疑問でもありますとはっきりおっしゃっておられます。こういった御意見も踏まえた上で、再審開始決定に対する検察官の不服申立てを認める必要があるのかとお考えいただきたいと思います。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○後藤委員 元裁判官ということもありまして、判決を出したという立場から少し意見を述べたいと思います。判決といいますのは、当事者双方が攻撃・防御を尽くした結果の判断であります。したがいまして、その確定力を失わせるのであれば相応に慎重な手続が求められるべきであると考えます。再審開始決定がされる場合においても慎重な審理検討がされていること、これは間違いないと思っておりますけれども、再審開始決定が原判決の確定力を破るという極めて重大な意味を有することを踏まえますと、その判断の相当性については慎重に吟味されるべきものであると考えます。したがいまして、私も再審開始決定に対する不服申立てを一律に禁止することについては慎重であるべきだと考えます。   なお、先ほど村山委員がおっしゃっていたことに個人的な感想を申し上げますと、裁判官として無罪の判決を出すのと再審開始決定を出すのでハードルが違うのではないかという御意見だったと思うのですが、そこは私は裁判官によって違うと思います。いずれについても慎重に判断をして、ハードルは同じだと思っております。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○村山委員 今の後藤委員のお話を聞きまして、やはり後藤委員は立派だなと尊敬をいたします。開始決定も無罪も同じハードルだとおっしゃっていましたので、私もそうでありたかったと反省しております。   それはともかく、川出委員のお言葉ではございますが、2段階だから必ず不服申立てが保障されなければいけないとなるのでしょうか。2段階といっても、やはり中間的なものであることは間違いないですよね。先ほど来、開始決定によって確定判決を覆すとか確定力を失うとおっしゃっている方がおられますけれども、本当にそうなのでしょうか。開始決定で確定判決の効力は失われるのでしょうか。単に再審公判が始まるだけなのではないでしょうか。そういう意味では、やはり中間的なものだと思います。   また、川出委員から、6号だけではないと、ほかのものもあるではないかと、確かにそうです。新規性の問題もあるのではないかと、それは確かに言われてみればそうなのですが、では6号以外の事由で、若しくは新規性で、検察官が抗告したという事例があるのでしょうか。実際問題としては、6号以外に熾烈な争いになる事案というのは余りないと思うのです。そういうことを考えると、余りそういうことを事例に挙げて議論しても、実益としてはどうなのかなという気はいたしております。   もちろん川出委員が言われたように、付審判請求とは違うのではないかというのは、私も先ほど発言したときにシチュエーションが違うのだという前提でお話はしているのですけれども、中間的なものであるという意味合いにおいては、やはり同じようなことを考えてもいいのではないかと思っています。そして、上訴制度一般とおっしゃっていますけれども、上訴制度もやはり制度として、その上訴制度としての問題と、それぞれ個別に上訴を認めるかどうかというところで判断していいはずだと思っていますし、現に諸外国では、田岡幹事の発言にもあったように、有罪判決を見直す手続で再審開始、若しくはCCRCだと委員会の付託方式だと、これは不服申立てできないですよね。つまり、諸外国の例を見れば不服申立てできない例の方が多数派です。現にドイツは1964年という前の東京オリンピックの年に禁止しているという状況でありますので、決して不自然なことではないと思っております。 ○鴨志田委員 先ほど宮崎委員の方から、抗告の検討に当たっては検察庁や検察官が十分かつ慎重に行っていると、今日においては組織的にも、検事正は検事長、そして更に検事総長にも報告をするというような形で、あと再審担当サポート室も作っているというようなお話がありました。しかし、例えば松橋事件という、割と最近、再審無罪になった事件でございますけれども、この事件では地裁の再審開始、高裁の再審開始維持に対して検察官が即時抗告と特別抗告の両方をしたわけですけれども、この事件では、特別抗告が申し立てられて以降、特別抗告審では検察官は一通の意見書も補充意見書も提出せず、再審公判では早々に有罪立証を放棄し、一回結審で無罪判決が確定しております。この事案では、控え目に言っても特別抗告を行う必要がなかったのではないかと考えられるところです。   また、私自身も再審弁護を経験しており、再審開始決定が出た際に、検察官に対して抗告を控えてくれというような要請行動に同行することもあったわけですけれども、その際に必ず、上級庁と相談をして決めますと、今のようなシステムができる前から、必ず上に相談をして協議の上で決めているというお返事を各担当者はされておりましたので、今までもそういう体制の下で、今申し上げた松橋事件のような抗告がされていたのだということについては申し上げておきたいと思います。   それから三審制の下で確定したものを、その抗告を禁止して1回の下級審の開始決定だけで公判に進めるということが、三審制の軽視につながるのではないかという御意見も聞かれました。これは第3回の田辺参考人もそのようにおっしゃっていたと記憶しておりますけれども、三審制ということが、あたかも地裁、高裁、最高裁でそれぞれできちんと慎重な審理がされて、その上で確定したというような、そのようなフィクションに基づいた主張になってはいないかということを指摘しておきたいと思います。   先ほど申し上げたとおり、また村山委員や田岡幹事からも指摘がありましたけれども、開始決定が最高裁で取り消された事件のうちの1件、事務当局の資料の5番の事件ですけれども、この5番の事件はそもそも略式命令です。略式手続の事件ですから、三審制の下で慎重な審理がされた上で確定したと言えるかどうかは甚だ疑問です。逆に、福井女子中学生事件のように、一審が無罪判決だったものが控訴審で逆転有罪となり、これが最高裁でも維持されて、言わば高裁と最高裁の誤った判断で有罪判決が確定したというケースがあります。また、確定審でも証拠隠しや弁護過誤といった様々な理由によって誤判が生じているということが三審制の下でも現に存在しているということは、ここは共通認識としていいのではないかと思います。ですから、確定しているという事実を過度に重視するということは、かえってえん罪からの迅速な救済を目的とする再審制度の理念に反するのではないかと思います。   また、新証拠の発見を契機として確定判決の事実認定を見直すべきかどうかということを事実審裁判所である下級裁判所が行う、この点は次回の管轄裁判所の論点のところでも申し上げるつもりですけれども、事実審がまずはこの新証拠を踏まえた確定判決の有罪認定の見直し、言わば事実認定の部分について判断をするということは、ある意味、整合性があると思います。そのような再審開始決定によって判決の見直しの必要が生じた場合には、再審公判に進んで再度、有罪、無罪の判断を慎重に行って、その場合には最後には法律審である最高裁に上告する道も残す、そういう制度とすることは、何ら確定審の軽視にはならないし、事実審としての一審を重視するという現在の通常審の在り方ともむしろ整合すると思います。   それから、最後になりますけれども、事務当局の配布資料6を基に、誤った再審開始決定が是正された事例が存在するという御意見が出ておりました。事務当局の資料の、再審開始せずと判断をされた事例が4件あるということです。これだけ見ると半分ぐらいの事件は検察官の抗告によって是正されているように見えなくもない、そのような表になっているように思います。しかし、この事件、平成26年以降の行政文書に基づきとありますけれども、判例を見ればすぐに過去のものも遡れる中で、なぜこの範囲に限定したのかということにそもそもの疑問はあるところですけれども、例えば6番と7番の事件、これは大崎事件です。私は関与しているのでよく知っていますけれども、これは同じ事件です。同じ事件について、申立人が2人いるから二つ決定が出ているというものが、2件として数えられています。また、先ほどから何度も申し上げている略式命令だった事件が5番の事件、それから2番の事件、この4件の事件は、全て特別抗告審で再審開始決定が取り消された、つまり最高裁によって取り消された事件ですけれども、全てが最高裁判所第一小法廷に係属していて、ほぼ同じ構成の裁判官が判断をしているという事例でもあります。   そして、何よりも申し上げたいのは、抗告によって再審開始決定が取り消されたということは、それはすなわち誤った再審開始決定なのでしょうかということです。   これは、第3回のヒアリングで髙橋参考人が「逆えん罪」という言葉を使って、あたかもこの再審開始決定が取り消されて再審が認められなかった事件、私どもの提出資料の「検察官抗告の状況」、これは実は在り方協議会でも提出をされていた資料に福井事件の部分を改定したものなのですが、これを踏まえて髙橋参考人は、当時は再審公判に至らなかった事件が4件あったので、四つの事件は逆えん罪であるとおっしゃいました。しかし、その4件の中には福井事件が入っています。何が言いたいかというと、免田事件や福井事件のように、一度再審開始決定が取り消されて棄却で確定した事件の中にも、後に再審開始、再審無罪になった事件はあるということです。検察官の抗告により取り消された再審開始決定を「誤り」とはいえないということです。そして、再審開始決定が取り消されたからといって、イコールえん罪ではないということにはなりませんし、イコール確定有罪判決が正しかったという意味でもないということです。   再審開始決定は飽くまでも予測判断にすぎません。裁判をやり直せば有罪判決が変更される可能性があるという予測判断をした段階で、それを不服申立てをしていつまでも続けていくということが、果たして合理性があるのかどうかということを最後に申し上げておきたいと思います。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○玉本幹事 配布資料6について、補足で説明させていただきたいと思います。   配布資料6は、本人等の再審請求に基づきましていずれかの審級において再審開始決定があった事案であって、法務省刑事局において行政文書として保管中であるものについて、機械的に列挙するという形で作成しております。鴨志田委員から番号11番の殺人事件に関し、第1次再審請求の状況の記載がない旨の御指摘を頂きましたが、その事件については法務省刑事局において保管中の行政文書が存在しないことから、記載していません。資料が恣意的あるいは選択的なものにならないようにするという観点から、保管中の行政文書に基づいて機械的に列挙するという方法で作成したものですので、御理解をいただきたいと思います。 ○山本委員 犯罪被害者からすると、まず、無辜の方が有罪判決を得ている場合には、早く再審でその人は犯人ではないということを確定してほしいと思っているはずなので、迅速にしてほしいと思いますので、そういった面では検察官の不服申立ては制限していいのかなと思っていると思います。片や、本当は犯人なのに犯人ではないということを主張しているところについても、早く確定させてほしいと思っているはずなので、そういった面からも再審開始決定に対する不服申立てを制限して、公判で決着してもいいのかなという思いがあるのかなと思いました。 ○大澤部会長 予定した時間枠を大分オーバーしておりますが、いかがでしょうか。なお、どうしても御発言があるという方おられましたら挙手をいただきたいと存じます。 ○川出委員 時間のないところ申し訳ないのですが、この段階でしかお聞きできないと思いますので、1点質問させていただきたいと思います。これまで、再審手続の迅速化を図るという観点から再審開始決定に対する不服申立てを禁止すべきかどうかを議論してきたわけですが、再審手続の迅速化ということからいえば、再審請求審全体について迅速化を図ることも重要なテーマになるだろうと思います。その関係で、再審開始決定に対する不服申立ての論点とは直接に関係しないことですけれども、平城委員又は恒光幹事にお尋ねしたいことがあります。   平成15年に成立した裁判の迅速化に関する法律においては、その第2条第1項で、第一審の訴訟手続については2年以内のできるだけ短い期間内にこれを終結させ、その他の裁判所における手続についてもそれぞれの手続に応じてできるだけ短い期間内にこれを終局させることを目標とするとされ、また、同法第8条においては、最高裁判所が、裁判所における手続に要した期間の状況、その長期化の原因その他必要な事項についての調査及び分析を通じて検証を行い、その結果を2年ごとに公表するとともに、その結果については、裁判の迅速化を推進するために必要な国の施策の策定及び実施に当たって、適切な活用を図らなければならないとされています。   この検証結果については、2年ごとに「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」が公表されているのですが、その中に再審請求手続に関する記載はなされておりません。そこで、これについてお尋ねしたいのですが、まず1点目として、裁判の迅速化に関する法律第2条第1項にいう「裁判所における手続」には再審請求手続も含まれているのでしょうか。それから2点目として、仮にそれが含まれているとした場合に、検証報告書に再審請求手続に関する記載がなされていないのはなぜなのでしょうか。この2点について御教示いただければと思います。 ○平城委員 今の御質問に対してお答え申し上げます。   裁判の迅速化に関する法律に規定する最高裁判所の検証の対象は、「裁判所における手続」とされておりますので、その内容についての限定はございません。したがいまして、一応可能は可能なのですが、裁判の迅速化に関する法律自体が「第一審の訴訟手続」について、「二年以内のできるだけ短い期間内にこれを終局」させることなどを目標に掲げてございます。したがいまして、基本的には第一審の訴訟手続を対象として、これまで検証を行ってきたというところでございます。   他方で再審請求事件について見ますと、再審請求事件の審理期間につきましては、例えば地方裁判所では令和3年は9.7か月、令和4年は9.2か月、令和5年は8.8か月となってございます。全体として見ますと長期化傾向にあるというわけではございません。確かに報道されるような一部の大型再審事件については審議が長期間に及んでおりますけれども、これらについては全体から見ればごく一部ということになってございます。そういたしますと、仮に再審事件の長期化に関してこの迅速化検証の中で検証を行うとした場合には、このような大型再審事件の検証そのものを行うことになります。個別事件の具体的な審理の当否に踏み込んだ検証とならざるを得ないという側面がございまして、個別の裁判の独立の観点から、最高裁判所としてこれを行うことは困難であるというところでございます。 ○川出委員 最高裁判所が特定の事件における職権行使の適否を検証することになると問題があるというのは、そのとおりだと思うのですが、刑事法(再審関係)部会第1回会議で配布された配布資料2「統計資料」の第8表によると、各年で終局決定がなされた再審請求事件のうち審理期間が2年を超えるものに限って見ても、それなりの件数があります。これらを対象として、個別事件における裁判所の職権行使の適否に踏み込まない形で審理期間の長期化の原因を検証し、それを踏まえて改善につなげていくことが可能なようにも思えますので、それを是非御検討いただければと思います。 ○大澤部会長 今の点はお願いとして伺ったということにして、この枠につきまして、大分予定した時間も超えましたので、この段階としてはここまでということでよろしいでしょうか。              (一同異議なし) 〇大澤部会長 開始してから大分時間も長くなってきましたので、少し休憩の時間を取らせていただきたいと思います。短くて恐縮なのですが、本当にトイレ休憩でしかないかもしれませんが、午後4時15分再開ということで、よろしくお願いいたします。              (休     憩) ○大澤部会長 予定した時間になりましたので、再開をさせていただきます。   次に、「論点整理(案)」「3」「再審請求審における裁判官の除斥・忌避に関する規律を設けるか」、について審議を行いたいと存じます。この事項についてはおおむね20分間、午後4時35分頃までを目途に審議を行いたいと思います。それでは、御意見等のある方は挙手をお願いいたします。 ○江口委員 除斥・忌避の関係につきまして、考えを述べさせていただきます。   除斥・忌避との関係では、二つの場面を考える必要があると思っております。一つ目としましては、確定審と再審請求審との関係、二つ目としましては、第1次再審請求審と第2次再審請求審のように、累次の再審請求がある場合に、一度でも再審請求審に関与した場合に以降の再審請求に関与できなくなるかという点でございます。結論としましては、いずれの場合につきましても規律を設けることには慎重であるべきと私としては考えております。   まず、確定審と再審請求審の関係でございますが、再審請求審は刑事訴訟法第435条第1号から同条第7号までに規定された再審事由の存否を審判対象とした手続でありまして、確定判決における有罪の言渡しの根拠となった事実認定そのものを再評価するものではございません。すなわち再審請求審は、判決が確定して確定力が生じていることを前提として、その確定力を破るに足りる事情や証拠の存否を審査するものです。これに対しまして控訴審や上告審というのは、原則として同一資料を前提とした、いまだ未確定の原判決のレビューでございまして、再審請求審と上告審では、審判対象の点でも、その判断資料の点でも、質的な違いがあると考えております。   更に、少し詳述させていただきますと、まず刑事訴訟法第435条第6号以外の再審事由の存否につきましては、そもそも確定判決の事実認定の評価等とは切り離して判断されるものでございますので、除斥・忌避に関する規律を検討する理由も必要もないものと考えております。また、同条第6号の再審事由につきましても、いわゆる証拠の新規性の判断につきましては、確定判決の事実認定の評価の内容とは必ずしも連動するものではございません。また、いわゆる証拠の明白性の判断につきましても、再審請求審において提出された新証拠の持つ重要性とその立証命題に着目して、それが有機的に関連する確定判決の証拠判断及びその結果の事実認定にどのような影響を及ぼすかについて審査されるものでございまして、そこで再評価される旧証拠の範囲も、新証拠の持つ重要性とその立証命題に照らして、それが影響を及ぼす可能性のある旧証拠の範囲に限定されるものでございます。このように証拠の明白性の判断では、新証拠の存在とその内容が判断の起点や範囲を規定しているものでございまして、確定審でなされた判断とは、審判の対象はもちろん、その判断内容も全く異なるものとなってございます。   以上の点から明らかでございますように、確定審に関与したからといいまして、再審請求審の判断において予断の問題は生じませんし、また判例上も、実際に再審請求がされた確定判決に関与した裁判官は再審請求審から除斥されるものではないとしておるところでございます。   更に付け加えますと、裁判官の除斥の問題は民事訴訟法等にも同様の規定がございます。民事訴訟におきましても、再審の訴えにおいて不服を申し立てられた確定判決の裁判に関与した裁判官が再審の訴えに関与することは前審関与に当たらず、除斥事由とはならないと解されております。仮に刑事に関して除斥の範囲を拡大するということになりますと、これらの関係法令等との整合性を十分に整理する必要があると考えております。   このように考えますと、確定審に関与した裁判官を再審請求審の除斥対象とすることは慎重に検討すべき問題であると考えております。   続きまして、累次の再審請求審相互の関係でございますが、後の再審請求審が前の再審請求審の判断をレビューするわけではございませんので、前審・後審の関係にないことは、まず明らかでございます。また、再審請求審の審判対象は再審事由の存否であって、同一の理由によっては更に再審の請求をすることはできないことからいたしますと、前の再審請求審の判断に関与した裁判官が後の再審請求審に関与することについて、そもそも予断の問題は生じません。したがいまして、累次の再審請求がある場合に、一度でも再審請求審に関与した裁判官を以降の再審請求審の除斥対象とすることにつきましても、慎重に検討すべき問題であると考えております。 ○大澤部会長 このテーマにつきまして、ほかに御発言はございますでしょうか。 ○鴨志田委員 このテーマについては私の方で本日、資料を提出させていただいています。前審関与に関する事例というものになります。時間の関係で一つ一つ紹介することは控えさせていただきますが、実際の再審請求事件において、再審請求を受けた事件を担当する裁判体を構成する裁判官が、再審の請求に係る被告事件、つまり確定審段階の裁判に関与していたり、又は当該事件が累次の請求にわたっている場合の過去の再審請求手続に関与していたことが判明し、回避や配転替えで対応したケースがある一方、このような立場の裁判官がそのまま再審請求手続の審理に実際に関与したケースも存在しております。   後者のケースでは、同一事件に係る被告事件の裁判や過去の再審請求に関与した裁判官に、当該事件の事実認定や証拠構造分析について予断が生じているという懸念を否定することは、やはりできないと思います。また、その懸念は今、江口委員がおっしゃったような、通常審と再審請求審の審判対象が異なっているとか、累次の再審に提出された新証拠がそれぞれ異なっていたとしても、完全に払拭されるものではないと考えます。何よりも、そのような事態が裁判の公正に疑義を生じさせ、国民の司法に対する信頼を損なうことを法によって未然に防ぐ必要性があると考えます。   そこで、再審請求手続においても除斥・忌避の規定を設ける必要があるということで、その規定の在り方についてですが、日弁連案、河井私案ともに、この二つ、確定審段階で関与した裁判官が再審請求に関与するという場合と、累次の再審にわたっている場合の過去の再審請求手続に関与した裁判官が後の再審請求手続に関与するという二つの場合のことですけれども、日弁連案や河井私案は、いずれについても除斥されるという条文になっています。   一方で、議員立法で衆議院に提出されている衆法61条では、確定審段階、つまり当該再審請求事件に係る被告事件に関与していたという場合だけが除斥されるということになっています。この衆法61条の検討過程においては、累次の再審の場合を除斥の対象とすると、同一人物が繰り返し再審請求を行っているケースでは、特に小規模な裁判所については審理を担当する裁判官がいなくなってしまうという事態が危惧されるということで、議員立法で提出した法案については、被告事件に関与した裁判官の再審請求への関与のみを除斥する規定としたという検討過程があったとお聞きしております。   これを踏まえますと、累次の再審における過去の再審請求に関与した裁判官の場合には、忌避や回避の制度で対応するという運用が定着すれば、衆法61条のように、確定審段階、当該再審請求事件にかかる被告事件に関与した裁判官だけを除斥の対象とするという規定でもよいのではないかと考えるに至っております。また、その場合においても、大法廷判決で上告棄却が確定した場合の事件で、後に再審請求をし、それが特別抗告審というような話になった場合には、やはり担当できる裁判官がいなくなるという可能性が生じてしまうということから、上告審が最高裁大法廷に係属した場合についての裁判官も除斥の対象からは除くべきであると考えます。このことについては河井私案の7条2項に同様の趣旨の規定がございますので、こちらが参考になるのではないかと思っております。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○池田委員 今、鴨志田委員から御指摘がありました日本弁護士連合会改正案あるいは河井私案は、「再審の請求及び審判について」、現行刑事訴訟法の「第一編第二章の規定」を準用するということで除斥の規定を準用するとされているのですが、ここで、江口委員あるいは鴨志田委員が既に指摘されているように、前の手続と後の手続の関係というのは区別して考える必要があるのか、ないのかということについて、各案の趣旨についてどなたかにお尋ねできればと思っております。   というのは、その組合せとしては、今話題となっております確定審に関与した裁判官が後の再審請求審に関与する場面と、再審請求審に関与した裁判官が後の再審請求審に関与する場面のほかに、確定審に関与した裁判官が後の再審公判に関与する場面と、再審請求審に関与した裁判官が後の再審公判に関与する場面もあり得ると思われます。請求及び審判と書いてありますので、公判への関与も念頭に置くべきだろうと思います。さらに、最後に言及しました再審請求審に関与した裁判官が後の再審公判に関与する場面については、自己の関与した再審請求審で再審開始決定がなされて、再審公判が行われることとなり、その再審公判に関与する場合と、自己の関与した再審請求審では請求棄却となったものの、その後、再審請求がなされて再審開始決定がなされ、行われることとなった再審公判に関与するという場合の二つがあり得ると思われます。   ここで、刑事訴訟法第1編第2章の規定を再審の請求及び審判について準用するとした各案の規定で、そのうち「前審の裁判」を「当該再審の請求に係る事件の裁判」と読み替えるという規定が置かれているわけですけれども、先ほど申し上げた四つの場面、あるいは最後の一つについては更に二つに分岐するかと思われますけれども、それらの場面のうち具体的にどの場面において除斥されるべきという御提案かということについて、理由とともに御教示いただけますと幸いでございます。 ○大澤部会長 どなたかお答えいただくことができますか。 ○田岡幹事 私が作ったわけではありませんが、事前に検討してまいりましたので、私から説明いたします。   先ほど鴨志田委員から既に説明がありましたが、日弁連案と河井私案と呼ばれております鴨志田委員提出資料の条文案は、元々は1と2の場面のいずれも除斥の対象とする趣旨でございました。つまり、確定審段階、確定審に限らずその確定審の原審も含んだ通常審に関与した裁判官が再審請求審を担当する場面と、累次の再審請求が繰り返されている場合において、第1次再審請求のように過去に再審請求審を担当した裁判官が、抗告審も含みますが、その後の第2次再審請求以降の再審請求審に関与する場面という二つの場面を念頭に置いて、そのいずれも禁止するという趣旨で作られたと聞いております。   ただ、先ほど鴨志田委員から説明がありましたように、衆法61号という議員立法の立案過程において、2番目の場面を対象とすると裁判体を構成することができなくなってしまうという問題があるのではないかという指摘があり、累次の再審請求の場合には再審理由が異なるわけですので、その場合まで除斥の対象とする必要は必ずしもないのではないかと、もちろん事案によって忌避又は回避、若しくは配点替えといった運用によって対応することはこれまでもありましたし、これからもあるのでしょうけれども、除斥の対象としてしまいますと、裁判体を構成できなくなるおそれがあるので、2番目は外そうということになりました。したがって、現在の考えでは1番目の場面のみ、衆法61号の文言でいいますと、「裁判官が再審又は再審の請求の手続について、当該再審若しくは再審の請求に係る被告事件の裁判又はその裁判の基礎となった取調べに関与したとき」を除斥の対象とする趣旨となります。   それ以外の場合をどうするかということについて、厳密な検討がなされているわけではないとは思いますが、確定審に関与した裁判官が再審公判に関与できるかという場面は、衆法61号の文言は「裁判官が再審又は再審の請求の手続について」となっていますので、再審公判に関与することは除斥の対象になる、つまり、確定審段階に関与した裁判官は再審公判を担当することはできなくなる。他方で、再審請求審において開始決定又は棄却決定に関与した裁判官が、その後に開かれる再審公判に関与できないかと言われると、この文言上は除斥の対象にならないということになるかと思います。 ○鴨志田委員 今の最後の点ですけれども、再審請求で開始決定が出た後に再審公判に移行した場合、その再審請求の開始決定によって公判に移行したというような場合は、これは実際は一つの事件として、事件番号もそのまま再審請求段階のものが再審公判の事件番号となり、一つの事件という形で扱われます。弁護人選任の効力も、ここまで効力が続くという形になっています。ですので、再審開始決定に関与した裁判官がその後の再審公判で判断に加わるということは、例えば、松橋事件の再審開始決定に関与した裁判官が再審公判の無罪判決の裁判長だった、それから東電女性社員殺害事件の再審開始決定の裁判長が再審無罪の公判の裁判長もやったという実例もございますので、これについては抵触もしませんし、問題はないと考えています。   一方で、例えば、累次の再審で過去に棄却決定が確定しているものが、例えば、後の再審請求で開始決定になって公判になるときに、棄却した方の過去の再審に関わっていた裁判官をどうするかという問題は生じると思いますが、これは先ほど申し上げたとおり、除斥の対象になるのは確定審に関与した裁判官が再審請求手続や再審公判に関与する場合だけと、今は考えておりますので、先ほどの問題は忌避とか回避の手続の中で検討すべきと整理をするのが相当ではないかと考えております。 ○池田委員 詳細な御説明をいただききまして、どうもありがとうございました。私自身は現時点で具体的な案を持ち合わせているわけではないのですけれども、除斥の規律を設けるとした場合には、司法に対する国民の信頼の確保という観点のほか、これは既に出てきております、裁判所の体制として現実的に対応可能であるかといった観点も考慮して、規定の在り方を検討する必要があると思われます。裁判官が除斥される場面が広くなれば、国民の信頼の確保により資することになり得るとは思われますけれども、他方で実際に運用不可能ということになっては問題があろうかと思います。   その上で、この部会においても既に指摘されているところですけれども、再審請求の中には、法令で要求されている証拠書類等が添付されていないものなど法令上の方式に違反した再審請求も相当数あると指摘をされております。仮にそのような請求を棄却する形式的な判断を行っただけの裁判官に関しては、同一の事件について後にされた再審請求に係る手続を担当したとしても、過去の判断に固執するのではないかとの疑いを抱かれるおそれは小さいと考えるならば、例えば、実質的な判断に関与した場合とそうでない場合とで取扱いを分けるという方法もあり得るように思われますので、そうした観点からの検討も必要となってくるように思われます。 ○後藤委員 元地方裁判所所長としての経験もありますので、少し除斥・忌避の規定を置いた場合に生じると思われる実際上の問題点を御説明しておきたいと思います。   仮に確定審に関与した裁判官や、一度でも再審請求審に関与した裁判官が後の再審請求審との関係で除斥・忌避の原因になると想定してみるとすると、再審請求審につきましては全ての裁判所において取り扱う可能性があります。また、事案の重大性に鑑みて合議体により審理する旨の決定がされることも少なくありませんので、配属されている裁判官の数などから対応が難しくなる庁が出てくる可能性がございます。また、同じ方から再審請求が繰り返されることもあります。その請求の有無やタイミングも読めない中で、再審請求がされた途端に、また、どのような再審請求であっても、当該再審請求1件を担当させるためだけに多くの中小規模庁では人的手当てを行う必要が生じることになってしまいます。人的手当ては、具体的には他庁から裁判官を塡補させるということが想定されますが、急な転勤や度々の出張を求めることとなり、組織としてはもちろん、各勤務地において生活基盤を整えて執務している個々の裁判官がこれに対応することは極めて困難と思われます。さらに、そのために各庁にあらかじめマンパワーを配置するとすれば、それが合理性を有するとは考えられないということをお伝えしておきたいと思います。 ○成瀬幹事 ここまで各委員・幹事の皆様から、再審の手続における裁判官の除斥に関する規律を設けることの当否について、様々な御意見が示されましたが、私は、この論点を検討する前提として、現行法における裁判官の除斥に関する規定の趣旨及び内容を確認しておきたいと思います。   裁判官の除斥について規定する現行刑事訴訟法第20条の趣旨は、事件の審判を行う裁判官が公平・公正でなければならないのは当然のこととして、裁判官が現実には偏頗な心情を持っていなかったとしても、外部の者からその疑いを持たれるような相当な理由がある場合には、当該裁判官を事件の審判に関与させないことが裁判の信頼確保につながる点にあるなどとされています。そして、同法第20条第7号が「前審の裁判」に関与した裁判官を除斥することとしている趣旨は、当該裁判官が前審でなした自らの裁判を後審において扱うこととなった場合、当該裁判官が前審の裁判に固執して自己弁護に陥るおそれがあり、仮にそうなれば、裁判に不服があるときに上訴をして是正を求めることができることとした審級制度と相容れないからであると考えられます。   もっとも、現行刑事訴訟法上、再審の手続に関しては、確定審に関与した裁判官や過去の再審請求審に関与した裁判官は、「前審の裁判」に関与した者ではないとされ、同じ事件の再審請求審や再審公判から除斥されることとはなっておりません。それゆえ、鴨志田委員提出の「前審関与に関する事例」に記載されているように、確定審に関与した裁判官や過去の再審請求審に関与した裁判官が、後の再審請求審に関与する事例も存在します。以上が、現行刑事訴訟法の趣旨及び内容です。   その上で、私の意見を申し上げますと、先ほど鴨志田委員や田岡幹事がおっしゃったように、確定審に関与した裁判官が同一事件の再審請求審や再審公判に関与することとなった場合、実際にはその公正さに問題がないとしても、再審請求者や一般の国民から見たときに、過去の判断に固執するのではないかとの懸念を抱かれるおそれがあることは否定し難いように思われます。   よって、私も、再審の手続に対する信頼確保の観点から、一定の範囲で、裁判官が除斥される範囲を現行刑事訴訟法よりも広げることは十分検討に値すると考えています。 ○大澤部会長 この枠は午後4時35分までと先ほど申し上げましたけれども、まだ御発言もあるように思われますので、もう少しこの枠の議論を続けさせていただくことにさせていただきたいと思います。   更に御発言のある委員・幹事の方。 ○宮崎委員 再審請求審における裁判官の除斥・忌避に関する規律を設けること自体には特段の異論はございません。規律を設けることとした場合、裁判官が過去の自らの判断に固執した偏頗な判断をするのではないかとの疑念を抱かれないようにするという趣旨を踏まえつつ、刑事訴訟法第20条第7号の「前審の裁判」について具体的な裁判の内容は問わないとされていることとの整合性も考慮し、除斥の理由となる過去に関与した裁判の範囲については、再審請求をした側にとって有利なものであったか不利なものであったかを問わない仕組みとするのが相当であると考えます。 ○田岡幹事 諸外国の立法例を見てみますと、鴨志田委員提出資料「諸外国の有罪確定後救済制度」の「8-1」に整理されています。例えばドイツでは、再審を申し立てられた裁判に関与した裁判官は、再審の裁判に関与することはできないという規定があると認識しております。また、フランスでも前審関与、つまり有罪に関する本案判決に関与した裁判官は予備審査委員会及び審理部において裁判官として関与することはできないという規定があると認識しております。特にドイツは日本の再審法、つまり刑事訴訟法第4編の模範となった国でありますので、参考になるのではないかと考えております。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○江口委員 除斥の規定としてどこまで設けるのか、除斥の規律という観点でございますけれども、除斥の対象となりますと当該裁判官の職務執行の資格を絶対的に失わせる効果が生じるというかなり強い効果を生じるものでございます。そのような規定を設けるのかという観点で、考える必要があるかと思っております。   過去の判例におきまして、再審請求がされた確定判決に関与した裁判官は再審請求審から除斥されるものはないとされていることは、先ほど述べたとおりなのですが、そのほかにも、再審に限るものではございませんが、例えば、証拠保全に関与した裁判官がその後の審理に関わること、共犯者の審理に関与した裁判官が別の共犯者の審理に関わること、急速を要する場合に第1回公判期日前の勾留に関する処分をした裁判官がその後の審理に関わること、破棄差戻しの控訴審判決に関与した裁判官が第2次控訴審に関わること、少年法第20条による検察官送致の決定をした裁判官がその後の公判審理に関わること、また、公訴棄却の判決をし又はその判決に至る手続に関与した裁判官が、再起訴後の審理に関わること、これらはいずれも最高裁判所の判例において許容されているところでございます。   以上述べたような過去の判例でありますとか、先ほど申し上げましたような民事訴訟法の規定、またそれに関する判例、そういった各種規定、判例、法解釈と、除斥という規律によって再審への関与を考えることを、整合的に理解するということが本当にできるのかというところは、刑事訴訟法、さらには各種法規範、法規制全体を見通して考えるべきことであると考えております。 ○大澤部会長 更にこのテーマにつきまして御発言はございますでしょうか。 ○村山委員 今までいろいろお話を聞いていて、私は成瀬幹事の意見に比較的近いかなと思っています。確かに除斥になりますと一律に排除されてしまうという非常に強い効果になりまして、そこまでやるのがどこまで必要なのかということです。その一方で国民の信頼、要するに主観的に裁判官としては公平にやるという、みんなそういう心構えでやっているわけですけれども、要するに国民から見てどう見えるかというのは別問題としてあり得ると思いますので、そういう意味では、見直しの対象となる確定審に関与した裁判官は、やはり再審請求審に関わらない方がいいと思います。   逆に、請求審のところでは、実体的な心証形成判断をした場合には、やはりその心証については一定程度影響があるというのは私は否定できないと思うのです。旧証拠も見るということになると、当然その印象というのは残るわけですから。ただ、そうは言っても請求審の内容というのはいろいろあるということ、それから裁判所の人的な体制の問題というのを考えますと、請求審を担当していたから次の請求審で当然に除斥されるというのがいいかというと、そこまでは必要ないのかなと思っています。   現状でも裁判所で回避に近い形で担当裁判官が外れたというケースは実際にあるのです。これは法律上の除斥ということではなくて、やはり国民の信頼を確保するためには、この事件についてかつて実体判断をしたと思われる裁判官だと、また同じような判断をするのではないかという疑いを持たれるということを避けるために、その裁判官が担当から外れたという事例を知っています。そういう意味では、もう少しソフトな解決方法もあるのではないか、裁判所の人的体制との関係で微妙な問題もあるのですけれども、そのような解決方法があり得るというのを含みに入れて、除斥については確定審を担当した裁判官が除斥されるというぐらいでやらないと、なかなか難しいのかなと現状では思っているところです。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○宇藤委員 論点としては、ここまでの各委員、幹事の御発言でほぼ出尽くしていると思います。かつての判例をどうするか、あるいは裁判官を経験された先生方からお話が出てきておりましたように、裁判官のマンパワーをどうするかというような話がございますので、現行法のままでも除斥等の肯定について議論するということは、私自身はあり得べしとは思うのですが、是非とも法律上の規定という形でまとめる方向での議論をしていただきたいと思います。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。   このテーマは一巡目としては御発言が尽きたということでよろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 時間は既に午後4時50分に近付いており、元々予定していた終了時間に近くなっています。本日は、予定としては、この後もう一つ、「論点整理(案)」「4 再審開始事由」のうちの「(1)刑事訴訟法第435条第6号の規定を改めるか」についても一巡目の御議論をいただきたいということで、事前に事務当局を通じお伝えしておりましたが、時間も終了時間に近付いており、今から入りますと議論が中途半端になることも想定されますので、本日は「論点整理(案)」「3」のところまで議論したということで、次回、引き続き「論点整理(案)」「4」から議論するということにさせていただきたいと存じますが、よろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 それでは、本日の審議はここまでということにしたいと思います。   次回は、今申し上げましたように「論点整理(案)」「4」の「(1)刑事訴訟法第435条第6号の規定を改めるか」というところから審議をするということにさせていただきたいと思います。次回会議におきましてどの項目まで審議を行うかにつきましては、期日間に事務当局を通じてお伝えをいたします。   本日の会議における御発言でございますけれども、特に公開に適さないような内容にわたるものはなかったと理解しておりますけれども、具体的事件に関わる御発言等もございましたので、非公開とすべき部分があるかどうか精査をした上、そのような部分があるという場合には、御発言なさった方の御意向なども確認した上で該当部分を非公開にする処理をしたいと存じます。それらの具体的な範囲や議事録上の記載方法につきましては、部会長である私に御一任いただくということでよろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 次回の日程につきまして事務当局から説明をお願いいたします。 ○今井幹事 次回の第6回会議につきましては、令和7年9月5日金曜日の午前9時30分からを予定しております。また、次々回についても申し上げますが、次々回の第7回会議につきましては、令和7年9月22日月曜日の午後からを予定しております。詳細につきましては別途、御案内申し上げます。 ○大澤部会長 本日はこれにて閉会といたします。どうもありがとうございました。 -了-