法制審議会 会社法制 (株式・株主総会等関係)部会 第4回会議 議事録 第1 日 時  令和7年7月30日(水)    自 午後 1時02分                         至 午後 5時55分 第2 場 所  法務省地下1階 大会議室 第3 議 題  株主総会の在り方に関する規律の見直しに関する論点の検討(1)、(2) 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○神作部会長 それでは、ただいまから法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会の第4回会議を開催いたします。   本日も皆様、大変御多忙の中、御出席また御参加いただきまして誠にありがとうございます。   本日もウェブ会議の方法を併用して議事を進めることといたします。初めに、事務局からウェブ会議に関する注意事項を御案内いただきます。よろしくお願いいたします。 ○宇野幹事 事務当局より御案内を差し上げます。ウェブ会議を通じて御参加されている皆様につきましては、御発言される際を除きマイク機能をオフにしていただきますよう御協力をお願いいたします。御質問がある場合や、審議において御発言される場合は、画面に表示されている手を挙げるの機能をお使いください。指名がされましたら、マイクをオンにして御発言ください。御発言が終わりましたらマイクをオフにし、また、画面の挙手ボタンを再度押して挙手を下げていただきますようお願いいたします。   なお、御発言の際はお名前をおっしゃってから発言されるようお願いいたします。会議室にお集まりの方々におかれましても、ウェブ会議の方法で出席されている皆様にはこちらの会議室の様子が伝わりにくいため、お名前をおっしゃってからの御発言に御協力いただきますよう、よろしくお願いいたします。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。   本日の会議の出欠についてでございますけれども、本日は家原幹事及び行岡幹事が御欠席と伺っております。   次に、前回の部会会議の後、委員、幹事及び関係官の交代がございましたので、事務当局から御案内を頂きます。お願いいたします。 ○宇野幹事 まず、経済産業省の人事異動に伴いまして、中西友昭幹事に替わり鮫島大幸産業組織課長が幹事に就任されました。また、金融庁の人事異動に伴いまして、野崎彰幹事に替わり小長谷章人企業開示課長が幹事に就任されました。また、法務省におきましても人事異動がございまして、竹内努委員に替わり松井信憲民事局長が委員に、内野宗揮委員に替わり竹林俊憲官房審議官が委員に、竹林幹事に替わり笹井朋昭民事法制管理官が幹事に就任されるとともに、新たに遠藤隆局付が関係官に就任いたしました。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。   ただいま御紹介申し上げたとおりでございますけれども、鮫島幹事、小長谷幹事、松井委員、竹林委員、笹井幹事、遠藤関係官におかれましてはそれぞれ一言、自己紹介、御挨拶をお願いできればと存じます。よろしくお願いいたします。 (委員等の自己紹介につき省略) ○神作部会長 次に、本日の審議に入る前に、事務局から配付資料についての御説明を頂きます。お願いいたします。 ○宇野幹事 配付資料について御確認いただきたいと思います。   まず、部会資料4「株主総会の在り方に関する規律の見直しに関する論点の検討(2)」がございます。こちらについては、後ほど審議の中で事務当局から御説明させていただきます。   次に、参考資料10「昭和56年当時と現在の投資単位について」は青委員から、参考資料11「株主総会の在り方に関する論点について②」は経済産業省の鮫島幹事から、参考資料12「株主総会前の情報開示に関する要望」及び参考資料13「「有価証券報告書の株主総会前開示」アンケート結果」は仁分委員から、参考資料14「総会検査役の申立適格(306条)取締役、監査役、執行役に申立適格を認める必要がある事例」は、豊田委員及び矢野幹事から、それぞれ御提出があったものでございます。これらの資料につきましては、後ほどそれぞれ御提出いただいた委員、幹事の皆様から御説明いただきたいと思います。   配付資料の御紹介は以上でございます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。   それでは早速、本日の審議に入りたいと存じます。   まずは、前回の部会において積み残しとなっておりました部会資料3の「第3 株主総会のデジタル化に関するその他の検討事項」について意見交換をしていただきたいと思います。前回の部会の後半はやや駆け足となりましたので、部会資料3の「第3 株主総会のデジタル化に関するその他の検討事項」だけではなく、「第2 実質株主確認制度」につきましても、前回、時間の制約上御発言をお控えいただいていたというようなことがございましたら、本日是非おっしゃっていただければと思います。なお、御発言を制限する意図ではございませんけれども、本日も議題が多く予定されておりますことから、可能な範囲で簡潔にまとめていただきますと幸いに存じます。   それでは、御意見のある方は挙手をお願いいたします。是非御発言ください。 ○藤田委員 それでは、今、部会長からお話がありましたので、第2の実質株主のところもあわせて若干、意見を申し上げたいと思います。  前回会合では、実質株主制度についてA案とC案を併用することを支持する声が比較的多かったように記憶しております。私も基本的にそのような考え方を支持したいということを付け加えさせていただければと思います。理由は単純で、会社と株主の対話の促進のため実質株主を把握したいという要望と、水面下でいつの間にか支配権の取得が進んでしまうことに対する懸念とは、二者択一の関係にあるわけではなくて、しかもどちらも理解できる問題です。ただ、性格はかなり違いますので、一つの制度で両方の目的にふさわしい制度設計をするのは難しいかもしれないから、そうなると目的に応じて別々の立て付けで作った方がよいということです。   仮にA案、C案を併用するとすれば、両者で開示させるべき実質株主の範囲は必ずしも同じである必要はありません。現在はA案からC案いずれも指図権者という概念で、共通に範囲を画するような形で提案されていますけれども、A案、C案の併用で行くとすれば、それぞれの目的にとって適切な範囲を検討すればいいように思います。   A案の開示対象については、名義株主は指図権者まで本当に把握できるのかといった懸念といいますか実務上の問題点が指摘されました。そういったことを踏まえながら、実効性のある開示範囲を検討していただければと思います。   C案については、金商法上の大量保有報告に準じたような範囲にすべきではないかという感触を示されたと思いますし、私もそう思います。例えば共同保有者のようなものも合算すべきなのだと思いますし、そうなってくると、そもそも「実質株主」の開示なのかということも分からないので、呼び方としても適切ではないかもしれませんが、ただ、実質的な内容としてはそういう形で検討すればいいと思います。   ただ、大量保有報告と別に異なった内容の情報を会社に対して報告する義務を課すと、不要に煩雑になるおそれがありますので、相互乗り入れ型規制というのでしょうか、今でも公開会社における募集株式の発行の場合の公告に代えて、金商法上の開示規制に基づく開示をすれば公告があったとみなすという制度が会社法第201条第5項に定められていますが、それに似たような工夫は可能で、そういった形で不要な負担が増えないように適切に工夫していただければと思います。乗り入れ型の規制にして、開示の範囲もできるだけそろえる、少なくとも大量保有の方が広いようにして、大量保有報告をすることで会社法上の義務を果たしたことになるという形にする。ただし、飽くまで会社法上の会社に対する報告義務なので、違反の効果としては議決権の行使制限などが自然に導かれるという立て付けで検討を続けていただければと思います。   次に、第3のところですけれども、書面交付請求制度については、元々私は令和元年改正のときからあまり賛成していませんでした。配付された資料を見ますと、数は少ないものの一定の範囲で書面交付請求が行われているというデータが載っていますが、このうちどれだけが趣旨に沿った形で書面交付請求しているかはよく分からないと思っています。本来書面交付請求という制度は、電子提供措置に対応できず、そのままでは総会関係資料にアクセスできない株主を救済するためのはずなのですが、現在書面交付請求している人の中には、インターネットアクセスできるけれども念のために書類が欲しい、プリントアウトするのが面倒くさいから書類が欲しいという人も含まれているかもしれず、そういう人は本来はこの制度の予定した利用者かどうか疑問もあります。そういう便益は仮に存在するとしても、強行法的に守らなければならないようなものとは違います。今日の会議に来る前にある証券代行のウェブサイトを見たのですが、そこには書面交付請求の仕方の説明と、オンラインの書面交付請求郵送申込みフォームなるボタンがあって、オンラインではがきを送ってくださいと請求をしたらはがきが送られてくるので、はがきを返送してくださいと書いてありました。しかし、少なくともこの方法ではがきの送付を請求してくる株主は本来の想定されたユーザーとは違うだろうと思いますし、かつそういう人も相当数いるのではないかという気がしています。   書面交付請求を廃止するというと、情報化社会に取り残された弱者を切り捨てるかのような批判を耳にすることがあるのですが、そういう誇張した議論をすべきではないと思っています。インターネットが利用できないと投資から排除されるとか、投資家が一切情報から遮断されるという話ではなくて、今まで黙っていれば紙で郵送されてきた資料に含まれていた情報について投資家側で何らかのアクションをとらないといけなくなるという話で、その場合の手間や費用が人によって差があるかもしれないという話です。年に一度、それなりの時間的余裕を持って招集通知が送られてきたときに、自分自身はインターネットを使わないにしても、身近な人なり自分が口座を持っている証券会社の担当者に頼むなり、いろいろな方法でプリントアウトを取得するということすらおよそできないという人がどの程度いるかという問題だと思います。そういう観点から、そもそも私は令和元年のときからこの制度には消極的だったのですけれども、それは今でも変わりません。  なお、時折コロナによって情報化社会が進んだから状況が変わったということが言われますが、それはそれほど大きなことではないと思っています。つまり、ここ数年で大きく進んだのはスマホなどをすでに利用している人の使い方が主であって、およそスマホもパソコンも一切触れなかった人がここ数年で触るようになったかというとよく分からない気がします。書面交付請求で本来保護しようとしているのは、そういう人たちなので、その行動が変わったかが決め手で、もともとデジタル機器を使っている人の変化はあまり関係ありません。もしここ数年で何か社会的状況が変わったから制度を変えるのだと主張するのであれば、もう少しそれに即したデータをそろえないといけないと思います。ただ、コロナによる世の中の変化とは関係なく、いずれにせよ書面交付請求の廃止には、私は賛成です。   書面による議決権行使の見直しについては、電子投票か書面投票かいずれかを保障すればいいというのが一番徹底していますが、そこまで行けるかについては私はまだ慎重です。株主総会関係資料については、人に頼んで入手するということも比較的容易だとしても、他人のデバイスを使って投票するということになると、かなり微妙ですし、会場に行けば投票できるから問題ないという割り切りは、少しやはり乱暴かなという気もしますので、この点については何らかの措置はあった方がいいようには思います。   招集通知の電子化は、株主名簿の任意的な記載事項として、メールアドレスを要求することは、よいと思いますし、それが書いてあればそれに送るということにしてもいいと思いますが、資料にも書いてあるとおり、メールアドレスを登録してくれなければ全然進まないので、事態はさして改善しないかもしれません。ただ、この点についてはできるのはこの程度だと思いますし、はがき1枚の通知については、費用という点で絶対にこれをなくさなければいけないほど深刻な問題になっているか疑問に思っておりますので、この程度の対処でよいのかもしれません。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○石井委員 第3、株主総会のデジタル化に関するその他の検討事項について、今お話もございましたが、今後、個人株主の裾野が更に広がってくることを踏まえて、企業側と株主の双方にメリットのあるデジタル活用を積極的に推進していくことに賛成です。   書面交付請求制度の見直しにつきましては、第1回でも申し上げましたが、企業サイドとしては負担軽減の観点から、廃止の方向で是非見直し頂きたいです。前回御提示いただいた書面交付請求率0.45%という数値は弊社での実感とぴったり一致し、かなり低いという認識です。企業も催告を出していないので、この低い請求率がずっと続くものと思います。また、前回もお話があったと思うのですけれども、書面交付請求をされた方の中にも、やはりオンライントレードなどのインターネットを利用可能と思われる方が相当程度存在するということから、これはデジタル化が相当程度進んだという評価をしてもいいのではないかと考えています。ただし、制度としてまだ3年ということもあるということで、唐突感があるという御意見もあることは承知しておりますので、例えば3年のような猶予期間を設け、それを周知した上で経過期間後に廃止という方向でいいのではないかと考えています。   書面による議決権行使の見直しについても是非進めていただきたいです。各種統計値からみても見直しに全く異存ございません。前回御意見がありましたようにバーチャルオンリー株主総会のデジタルデバイド対策の要件として書面投票は残す必要があるということになるかと思いますので、即完全電子投票化というような移行は非常に難しいとは思うのですけれども、電子投票とその利便性を対外的に促していくという意味でも、今後の検討の余地はあると考えています。   3番目の株主総会の招集の電磁的方法による通知についての見直しですが、こちらも招集通知の電子化拡大・促進のため、見直しを検討していくことに賛成です。株主にとっても速報性の面からのメリットが大きいと思います。ただ、住所と違い、メールアドレスというのは変更頻度が高く、変更があった場合の未到達リスクがあるので、実務上の工夫が何らか必要かと思いますが、是非検討していただきたいと思っています。   その他、実務的な観点で申し上げますと、これは会社法上の論点ではないのですけれども、総会終了後の決議書面や配当金計算書といった事後の書類の電子化も一気通貫で可能となるような実務上の仕組みを考えていただくのがよいのではないかと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○久保田委員 株主総会の招集の電磁的方法による通知の見直しについてだけ、少しコメントをさせていただきます。   私は基本的な考え方として、取り分け上場会社については電磁的方法による招集通知を普及させるということが望ましいという考え方に強く共感いたします。そのような考え方に基づき、将来的には株主の同意の有無にかかわらずメールアドレスを株主名簿記載事項の必要的記載事項とした上で、口座管理機関が強制的に株主のメールアドレスを収集し、そのメールアドレスを証券保管振替機構が総株主通知などを通じて当該株主の全ての保有銘柄の会社に伝達するというような仕組みの構築を目指すのが望ましいと思います。そして、そうした仕組みの構築に向けた言わば第一歩として、資料の28ページに提案されていますように、株主の同意がある場合には株主名簿記載事項に株主が利用するメールアドレスを追加することとし、同意があった株主に対しては当該メールアドレス宛てに招集通知を発することができる仕組みを導入することに賛成いたします。   なお、この点については、前回の会議で藤井委員から御指摘がありましたように、上場会社については口座管理機関が株主の同意を得た上でメールアドレスを収集し、そのメールアドレスを証券保管振替機構が総株主通知などを通じて当該株主の全ての保有銘柄の会社に伝達するという仕組みを構築することができるのであれば、これは現在におけるように各会社が個別に株主の同意を得るという仕組みとは少なからず異なりますので、電磁的方法による招集通知の普及に資するであろうと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○小長谷幹事 書面交付請求制度についてコメントをさせていただきます。   前回の部会で藤井委員から御紹介があった点かと思いますけれども、直近の書面交付請求率は0.45%とかなり低水準になっているところでございます。また、同じく前回部会で経済産業省の中西前幹事から御紹介があった点かと存じておりますが、実際にはデジタルデバイドとは言い難い株主が請求しているものも相応にあると推測されまして、このことは、やはり電子提供措置に対応できない方を救済するという制度の趣旨に実態が沿っていないことを示唆しているのかなと考えております。金融庁の施策でございます有報の総会前開示に向けた環境整備の取組との関係でも、有報と会社法上の計算書類等を一体開示する場合において書面交付請求制度への対応が支障となり得るという声が聞こえているところでございます。部会資料3で御紹介いただいております年齢階層別のインターネット利用率の調査結果ですとか、あるいはコロナ禍を経ての社会のデジタル化への対応状況等々を踏まえますと、やはり制度を廃止する方向で検討することが金融庁としても望ましいのではないかと考えております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○齊藤委員 私も書面交付請求制度につきまして、藤田委員がおっしゃったことに賛成いたします。さらに付け加えたい点といたしましては、コロナ禍前後で状況が変わった、デジタル化が推進されたということもあろうかと存じますが、この数年で、紙で資料を手にすることは、さまざまなコストを伴うぜいたくなものだという認識も広がったのではないかと思われまして、そのような点も踏まえて、デジタルで受領し得る資料を書面でもらうというサービスを享受するには、追加的な手数料・手間が必要となるという認識を株主も共有することを前提に、制度を設計していくことがよいのではないかと思います。   書面交付請求制度を仮に廃止したといたしましても、既に御指摘があったと存じますが、書面で手にする道がなくなるわけではなく、身近な人の手を借りて手元でプリントアウトすることはでき、またこのようなニーズが非常に大きいということであれば、口座管理機関が有料でサポートを提供するということも期待できるわけで、市場に任せる方が真のニーズとのマッチングもうまくいくのではないかと思われます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。   第3回の資料、特に第2、第3のテーマについて追加、補足の御発言がございましたら、前回御発言いただいた方でも、もし補足等がございましたら、どうぞ御発言ください。 ○森委員 書面交付請求制度についてだけコメントをさせていただきます。こちらは今後の議論において、一定の猶予期間を設けてという議論も出てくるかと思いますが、実際に法改正が施行されるまでには相当な期間があると思いますので、それがある意味、周知期間的なところにもなると考え、基本的に法律上はすぐにやめるという方向で、是非議論できればと思っております。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。   ほかに御意見はございますでしょうか。部会資料3については、よろしゅうございますか。   それでは、次に部会資料4の審議に入りたいと存じます。初めに、事務局から部会資料4についての御説明をお願いいたします。 ○宇野幹事 部会資料4について御説明させていただきます。   部会資料4は、法務大臣の諮問事項に掲げられた三つの大きなテーマのうちの二つ目、株主総会の在り方に関する規律の見直しに関して、前回の(1)に引き続き、(2)として更に検討を行うものでございます。   まず、1ページ目の第1では「「会議体」としての株主総会に関する規律の見直し」を検討事項として掲げております。冒頭に総論的な問題提起をさせていただきまして、2ページ目の1番では「事前の議決権の行使により株主総会の決議があったものとみなす制度」として、議論のためのたたき台の規律案を記載させていただいております。   3ページから4ページ目に記載したような上場会社における株主総会の実態を踏まえまして、大まかに言えば、定款の定めがあることを前提として、株主総会の招集に際して定められた一定の時までに事前の議決権の行使がされた結果、株主総会の決議の要件を満たす場合には、会議体としての株主総会を開催しなくとも株主総会の決議があったものとする制度としておりまして、便宜上、事前確定型決議と呼称しております。なお、このような制度につきましては、その創設自体に対する否定的な考え方もあり得ますことから、5ページ目ではそのような考え方について記載をさせていただくとともに、参考として比較法の情報を注記させていただいております。   5ページ目以下では、事前確定型決議の要件を説明しておりますけれども、事前確定型決議を認める場合には株主権が縮小するという側面があるということは否定できないとも思われますため、定款の定めを要件とするほか、事前確定型決議に対する株主の同意を要件とするなどしております。   また、8ページ目以下では、事前確定型決議の手続を説明しておりますけれども、事前確定型決議によることを招集の決定・通知事項とすることなどに加えて、現状でも株主の質問が広く行われていることを踏まえて、事前確定型決議が利用される場合の取締役等の説明義務を新たに設けるということとしております。   本文では、そのほかには審議に代替する措置を不要としておりますけれども、この点についてどのように考えるかも検討する必要があると考えてございます。   なお、10ページ目の5番のとおり、報告事項についても、本文と同様に同趣旨の規律を設けるということが考えられますため、その旨を注記をさせていただいております。   そして、11ページ目の7では、事前確定型決議以外の見直しの方向性として、本文の案とは異なる二つの方向性を記載しております。   一つ目でございますけれども、株主総会の招集をすることなく書面又は電磁的記録による同意の意思表示に基づく多数決によりまして株主総会の決議があったものとみなす制度でございまして、便宜上こちらは多数決型書面決議と呼称しております。実務上は多数決による決議が成立しない可能性がありますことから、その場合には株主総会の開催が求められると思われますため、多数決型書面決議を認める必要性は大きくないようにも思われるところですけれども、実務上の必要性であるとか利用のしやすさなどを踏まえて、事前確定型決議又は多数決型書面決議のいずれの方向性を目指すことが適当かについても検討する必要があるものと考えられます。   なお、二つ目の方向性は、12ページ目に記載させていただきましたとおり、事前の議決権の行使により決議の成立に必要な賛成が得られている場合には、株主総会の議事における瑕疵は株主総会の決議取消事由とならないものとするという方向性でございます。   次に、12ページ目の2番では、「書面決議制度の見直し」を検討事項として掲げております。非上場会社におきましては書面決議制度が活用されておりますけれども、例えば、株主のうち1名に連絡が取れないなどの理由で、少数の株主の同意を得ることができず、この制度を利用することができない事例があることから、株主総会決議を必要とする行為を機動的に進めるために、株主総会の書面決議制度の要件を緩和することについて検討するべきであるとの御意見がございました。   この点につきましては、株主のうち1名に連絡が取れないなどの理由で少数の株主の同意を得ることができないという問題点から考えますと、例えば、取締役が株主の全員に対して提案をした上で、総株主の議決権の例えば10分の9以上の議決権を有する株主が提案に同意をし、かつ、その他の株主の反対が全くない場合には、株主の全員の同意があることと同等と考えられるとして、書面決議を認めることなどが考えられるところでございます。   次に、13ページ目の3番では、「キャッシュ・アウトの手続の見直し」を検討事項として掲げております。時間的、手続的コストを低減させるという観点から、特別支配株主の株式等売渡請求における特別支配株主となるために必要な議決権保有割合を10分の9から3分の2に引き下げることや、複数の株主の議決権を合算して議決権保有割合を算定することなど、キャッシュ・アウトの手続の見直しについて検討するべきであるとの指摘がございます。議決権保有割合を下げるということにつきましては、略式手続との整合性、株式の併合の場合に要求される株主総会によるコントロールが及ばなくなることなどの当否が問題となると考えられます。また、複数の株主の議決権を合算するということについては、株式等売渡請求が単独株主となることを認める制度であることとの整合性等が問題となると考えられるところでございます。   次に、15ページ目の第2では、「株主提案権に関する規律の見直し」を検討事項として掲げております。現行法上、株主提案権の行使要件として300個以上の議決権という絶対的基準が設けられておりますけれども、この点につきましては昨今、投資単位の引下げの重要性が高まる中で、その見直しを検討するべきであるとの意見があるところでございます。また、株主提案権の濫用的な行使の解消を目的として議決権数の要件の撤廃や引上げを行うことは、慎重に検討するべきであるものの、株主提案権の制度が導入された昭和56年当時の投資単位と現在の投資単位とを比較して、投資単位の引下げの状況に応じて議決権数の要件の引上げを検討することが考えられるとの御意見もございます。参考資料10によれば、平均的な投資単位の額が下がっておりまして、この資料については、後ほど青委員に御説明を頂ければと思っております。   このほか、300個以上という議決権数の要件を一律に引き上げることの検討に加えて、株式会社が定款の定めによりまして議決権数の要件を引き上げることができる旨の規律を設けることについても検討するべきであるとの指摘もあるところでございます。   これらを踏まえまして、取締役会設置会社における株主提案権の行使要件のうちの300個以上という議決権数の要件の見直しについて、どのように考えるかとの問題提起をしております。   また、17ページ目の2番では、「株主総会の日の8週間前まで」という株主提案権の行使期限について、19ページ目の3番では、業務執行事項に係る定款の変更に関する議案の提出を制限することについて、それぞれ書かせていただいているところでございます。   最後、19ページ目の「第3 その他」では、二つの検討事項を掲げております。   一つ目は、会社法316条2項に規定する調査者制度の見直しについてでございます。いわゆる2項調査者でございますけれども、これにつきましては会社法358条に規定する業務の執行に関する検査役とは異なりまして、裁判所が選任するものではないために、提案株主からの独立性・中立性が確保されておらず、会社の機密情報が不必要に外部に流出し、又は不正に利用されるなどの濫用のおそれがあるとの指摘がございます。もっとも2項調査者が選任された事例として知られているものは限定的でございまして、実際に選任された2項調査者によって濫用的な調査が行われた事例があるのかは必ずしも明らかではございません。そこで、まずは実際に濫用のおそれが生じているのかを検討し、濫用のおそれがあるのであれば、そのリスクごとに何らかの対応をとる必要があるのかを検討していくという検討の手順を御提案させていただいております。   二つ目は、22ページ目以下の株主総会の招集手続等に関する検査役の選任の申立権者の見直しについてでございます。会社法上、いわゆる総会検査役につきまして、その選任の申立権者は会社及び総株主の議決権の100分の1以上の議決権を有する株主とされております。この点について第1回会議では、株主総会の決議の取消しの訴えを提起する場合に備えて証拠を保全するために、株主総会の決議の取消しの訴えを提起することができる取締役及び執行役並びに監査役を総会検査役の選任の申出権者に加えるべきであるとの御指摘があったところでございます。この点につきましては、まずはこれらの者が総会検査役の選任の申立権者でないことによって実際にどのような問題が生じているのかを確認する必要があると考えております。   駆け足ございましたけれども、部会資料4の説明は以上でございます。 ○神作部会長 御説明どうもありがとうございました。   続きまして、参考資料10につきまして青委員から御説明をお願いいたします。 ○青委員 部会参考資料10について御説明をさせていただければと思います。   第1回の部会で、投資単位の引下げも踏まえた株主提案権の見直しに関する御意見もございましたところ、法務省様から御依頼を頂戴しまして、議論の参考としていただけるよう、株主提案権が導入された昭和56年当時の投資単位と、現在の投資単位の状況をお示しする資料を東証にて作成しております。   まず、昭和56年当時の東証市場第一部における投資単位につきましては、平均で約41万円となっております。こちらは当時の市場第一部の単純平均株価に売買単位を乗じて算出しておりまして、当時は売買単位が七つあったのですけれども、便宜的に1,000株とみなして計算しています。若干ずれはあるかもしれませんけれども、基本的に大きな隔たりはないと考えてございます。なお、市場第二部についても同じように算出しておりますが、市場第一部と大きくは変わらない状況でございます。これに対し、直近のプライム市場の平均的な投資単位は約28万円となっておりまして、昭和56年当時よりも投資単位が下がっていることが御理解いただけるかと思います。   両時点の300個要件については、それぞれ水色の囲み右側のところでございますけれども、現在の投資単位が昭和56年当時と同額になるように計算してみますと、投資単位441個分の額に相当するという計算が一応成り立つかなと思われるところです。   投資単位を昭和56年当時の額面金額ではなく、企業物価指数や消費者物価指数を基に調整したり、あるいは直近の投資単位について全ての内国株式の平均的な投資単位をベースにすれば、600個とか800個という形で投資単位の差はある程度大きくなり得るところ、資料では441個という一番堅い見方をお示ししております。   また、東証では、少額投資に関しまして上場企業の検討の一助になるよう、個人投資家が求める投資単位の水準ということで、10万円程度という水準を一つの目線として上場会社の方々にお示ししております。今後の投資単位の水準がどうなっていくか、まだ分からないところはございますけれども、投資単位が更に引き下がる可能性も考え得るところかと思っているところです。   ひとまず現状のファクトとして御紹介させていただきました。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。   続きまして、参考資料11につきまして鮫島幹事から御説明をお願いいたします。 ○鮫島幹事 参考資料11につきまして、経産省の提出資料につきまして御説明申し上げます。経産省からは、会社法制度の本来の目的であります企業の成長を目指した資金調達とか事業運営、これを促していく、すなわち成長投資の促進という観点から4点、御説明いたします。   まず一つ目が株主総会の在り方、1.の(1)でございます。企業と株主のコミュニケーション、これは株主総会の当日のみならず年間を通じた対話活動において果たされていると認識してございますが、ただ、一部の株主のために膨大な費用、労力が掛かっているという声が上がってございます。経産省が開催した「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンス研究会でも、株主総会当日の参加者の議決権総数が1%にすぎないような状況でも膨大な費用、労力を掛けて総会の準備を強いられているといった声が実際に提出されているところでございまして、こうした非効率を解消して、そういった労力を日々の株主とのコミュニケーションに振り向けて、その質を向上させていく、これが建設的、実効的なエンゲージメント、成長戦略の実行の後押しをする、そういった対話を促進する上で重要だと考えてございます。   具体的にどのような対応がいいかというのは、今後更に検討を深めていくことが望ましいということではございますが、次の2ページにございますとおり、個人株主を含む株主とのコミュニケーションを株主総会の外でもやっていくことも考えられるということでございます。   二つ目が、株主提案権でございます。この株主提案権につきましては、適切に行使されれば、よりふさわしい取締役の選任につながる、それによって経営の規律、緊張感も高まるということで、「稼ぐ力」の強化につながる可能性があると考えてはございますが、一方で多大な対応コストも発生する、それによって通常の事業活動や他の株主との対話の妨げにもなり得るという両面があろうかと考えてございます。賛成率が低いような提案であっても多大なコストが掛かり、コミュニケーションに時間と労力を割くことを妨げられているという事例があるという指摘もございます。具体的にどのようにするかということは、今後の御検討次第だと思ってございますが、株主提案の実態を踏まえて、提案権の要件の検討がこれから深まることを期待したいと考えてございます。   次の3ページ目が3点目の論点で、書面決議ということでございます。4ページ目にございますとおり、特に非上場会社におきましては、意思決定を迅速、効率的に行う手段として書面決議制度が活用されてはございますが、先ほど御説明があったように、誰かに連絡が付かないということで書面決議が利用できない事例もございます。スタートアップ企業とかスピード感が強く求められる事業において、なかなか1名に連絡が取れないということで利用できないという指摘がございます。これにつきまして、成長戦略の実行を機動的に進める観点から、非上場会社の書面決議の要件の在り方を今後、議論、検討していくことは有意義と考えてございます。   最後に、4ページ下にあるキャッシュ・アウトでございます。M&Aはもちろん市場、顧客、ノウハウ、技術、こういったことを獲得することで、これも「稼ぐ力」を強化する有用な手段であると考えてございますが、そのキャッシュ・アウトの手続を効率化、合理化することは、これも有効だと考えてございます。どのようにするかということで、先ほど御説明があった、例えば議決権の要件を90%以上から3分の2以上に引き下げる等々、これについても議論、検討することが有効だと考えてございます。詳細につきましては、この資料にございますとおりでございます。 ○神作部会長 御説明どうもありがとうございました。   続きまして、参考資料12及び13につきまして、仁分委員から御説明をお願いいたします。 ○仁分委員 今回提出させていただきました資料2点のうち参考資料12「株主総会前の情報開示に関する要望」を中心に御説明させていただきます。   本年3月28日の金融担当大臣からの要請を受けまして、2025年3月決算期では有価証券報告書の定時株主総会前の開示を行った企業が前期よりも著しく増加しております。一方、参考資料13としてお配りしております経団連の調査結果では、有価証券報告書の株主総会前開示につきましては、上場会社の実務上の負担が大きいことに加えまして、開示時期の前倒しには一定の限界があることが示されております。また、有価証券報告書を株主総会前に開示する意義や必要性については、効果の検証を含めて、十分に議論を尽くす必要がございます。   仮に株主総会前の情報開示の充実に向けた取組を進めるのであれば、株主の議決権行使に当たって真に必要となる情報の提供と、上場会社の実務負担を軽減する観点から、会社法と金商法の双方に関係する開示書類の在り方や当該開示書類に関する責任、監査、株主総会の在り方の見直しも含めた制度横断的な環境整備が求められます。   具体的には、「企業情報開示に関する制度の整備」及び「決算、監査及び株主総会準備の効率化」に関して、会社法の規定の見直しを御検討いただければと思っております。詳細は2ページ以降に記載のとおりですが、ここでは時間の関係もありますので、説明は割愛させていただきます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。   続きまして、参考資料14につきまして、豊田委員及び矢野幹事から御説明をお願いいたします。 ○豊田委員 総会検査役の申立権者について取り上げていただき、また説明の機会を与えてくださいまして、ありがとうございます。   部会資料4の第3の2で御記載いただいておりますように、会社法第306条の総会検査役については、100分の1以上の議決権を有する株主と会社に申立権が認められております。この点、役員を申立権者にするという提案のためには一定の立法事実が必要であるということですので、どのような具体的な場合に必要とされるのかという事例について、参考資料14で幾つか挙げさせていただきました。具体例といいましても、検査役の申立権自体が現在ないため、なかなか判例といった形で挙げることが困難であることから、このような事例が考えられるというものになっております。   簡単に申し上げますと、まず第1点目につきましては、株主と経営陣の利益相反があるような場合です。このような場合において、株主が総会検査役の申立てをしようとしても、特に上場企業などでは、100分の1というハードルでもかなり高いので、申立てが困難である場合が少なくありません。例として挙げさせていただきました第三者割当の場合でも、10分の1以上の株主が反対であるとしても、これらの株主がまとまって検査役の申立てをするということは困難でありますし、高額の報酬といった場合でも同様です。また、こちらには記載しておりませんが、総会決議により役員の責任を免責するといったような場合も同様であると考えます。   第2に、計算書類について会計監査人が無限定で意見を付さず、監査役も承認しないような場合において、取締役が総会にかけようとするような場合には、監査役に申立権を認める必要があると考えます。   第3に、役員間に対立的な状況がある場合です。これについては、解任決議の後に解任決議の取消しの訴えが提起されている事案も実際にあり、そのような訴えの提起に当たっては、取消しの訴えを提起する側の役員に総会検査役の申立権を認める必要性が高いと考えます。この点につきましては、解任された役員の個人の保身に使われる可能性がないとは言い切れませんが、他方で不祥事等があった場合に、役員がこれを追及する役員を解任するということもあり得るところであり、反対する役員を除いて株主総会を進行させる場合なども考えられますので、解任対象となる取締役や監査役以外の中立的な検査役による調査を求めることの意義があると考えております。 ○神作部会長 御説明どうもありがとうございました。   それでは、部会資料4につきまして、三つのセクションに分けて御議論を頂きたいと存じます。   まずは、部会資料4の「第1 「会議体」としての株主総会に関する規律の見直し」に関して、御意見をおっしゃっていただきたいと思います。どうぞ、御意見のある方は挙手をお願いいたします。また、オンラインで御参加の方も、どうぞ発言の意思を示してください。いかがでしょうか。 ○久保田委員 まず最初に、事前の議決権行使により株主総会の決議があったものとみなす制度の趣旨について確認したいと思います。   この制度の下では、各会社が事前の議決権行使の行使期限である一定の時をいつ設定するかによっても若干変わりますけれども、基本的には会議体としての株主総会の開催予定日に近い時期にならないと、その会議体としての株主総会の開催の要否が完全に確定しないのではないかと思います。   そのことを前提にしますと、当初こういう制度を創設すべきだというときに、会場の確保、想定問答の作成やリハーサルの負担が大きいため、そうした事前準備等の負担を減らすようにしてほしいということも言われていましたけれども、今回の制度は、直前にならないと会議体としての株主総会の開催の要否が完全に確定しない以上、結局は万が一の場合に備えて相当程度の事前準備等をせざるを得ないと考えられますので、事前準備等の負担を減らしてほしいというニーズには必ずしも十分にこたえるものにはなっていないのではないかと思います。そのため、今回の制度の趣旨というのは、主として会議体としての株主総会を開催せずに済むことを可能にすることによって、事後的に株主総会決議が取り消されるリスクを減らすことが可能になるという点にあると理解することになろうかと思います。   仮にそうだとしますと、これは第1回の会議で松尾幹事がおっしゃっていたアイデアだと思いますけれども、部会資料12ページに記載されているような株主総会の決議取消事由の見直しによる対応でも同様の趣旨は実現できますので、こうした対応でもよいということになるかと思います。そして、こうした対応と、今回提案されていますような事前の議決権の行使により株主総会の決議があったものとみなす制度のいずれを選択するかについては、それらでは会議体としての株主総会の開催が必須かどうかという違いがありますので、その点をどのように評価するかということが一つのポイントになりますし、更に加えて、どちらの方が具体的な制度を作りやすいか、また、それとも関係しますけれども、どちらの方が関係者にとって分かりやすい制度にできるかといった点も重要なポイントになるのではないかと思います。ただし、これらの点は、まずは事前の議決権の行使により株主総会の決議があったものとみなす制度の概要が決まらないと、なかなか意見を申し上げることが難しいものですから、まずは今回提案されている制度について幾つかコメントさせていただこうと思います。   まず、今回の制度について、部会資料の2ページから3ページでは①から⑥までの規律を設けることが提案されております。このうち①と③以外、すなわち②及び④から⑥については、私は異存がありません。他方、③の規律というのは、会議体としての株主総会以外の場において株主が質問をし、取締役等から説明を受ける機会を与えようとするものであって、こうした制度、それ自体はあり得るものであろうと思います。ただし、部会資料を見ますと、株主が質問できるのは事前の議決権行使の行使期限である一定の時までであり、この質問に対して取締役等から説明がされるのはこの行使期限よりも後であることが想定されているようにも見えるわけです。しかし、仮にそうなりますと、説明を受けてから議決権行使をしたいという株主がいる場合には、そうした株主のニーズにはこたえることができないということになろうかと思います。確かに実際上は、議決権行使とは無関係に取締役等から説明を受けたいという株主もいるわけですけれども、そうした株主には会社が任意でそのような機会を設けて対応すべきものであるように思います。   他方、会社法が定める取締役等の説明義務というのは、飽くまで株主の議決権行使のためのものであると理解されますので、説明を受けてから議決権行使をしたいという株主のニーズにこたえるものであることが望ましいと思います。そこで、もしこうした形での説明義務を会社法で規定するのであれば、事前の議決権行使の行使期限よりも前の時点で説明が行われ、その説明を受けてから株主が事前の議決権行使をすることができるような制度にすることが望ましいと思います。   これに対し、仮にそうした制度にすることが現実的には難しい、例えば、時期を早めることはスケジュール的に難しいということであれば、恐らくそのような理由で今回のような提案になっているのではないかと推測しますけれども、仮にそうであれば、こうした形での説明義務を定めることの意味は乏しいと思いますので、事前の議決権行使をする株主に対する情報提供というのは株主総会参考書類で提供される情報で足りるのであるという考え方、これは現行法でとられている考え方であり、相応の合理性がある考え方であると思いますので、こうした考え方に基づき、会議体としての株主総会以外の場における説明義務の制度は設けないとした上で、あとは各会社の任意の対応に委ねる、例えば、事前の議決権行使によって株主総会決議があったものとみなされた場合でも、任意の株主総会を開催して株主からの質問に対応することなどが考えられますけれども、そうした各会社の任意の対応に委ねることでもよいのではないかという気がしております。   次いで、①の規律についてです。①の規律については、定款の定めを要求するという点も含めて基本的に賛成なのですが、ただ、事前確定型決議に対する同意というものについては、あまり強い意見ではないのですが、定款の定めを要求する以上は、必ずしもこういう同意は要求しなくてもよいのかなという気もしています。   これは一つには、事前に議決権行使しながら株主総会の場で質問を行使するなどして翻意することというのが実際上どれほどあるのかというのが私は疑わしいように思いますし、仮にあったとしてもごく少数ではないかと考えられますので、そうであれば、事前の議決権行使をしたいが事前確定型決議は認められないという株主の意向を尊重する必要も全くないとまでは言いませんが、小さいのではないかということがございます。また、事前確定型決議に対する同意を要求すると、個人株主の中には、そうした同意を与えることに意味なくちゅうちょする株主が出てくる可能性もあるのではないか、また、万が一のオプションとして、株主総会の場で質問権を行使するなどして翻意するという選択肢を残そうとして、同意を与えないという株主も出てくる可能性もあるのではないかという気がしています。これが杞憂であればよいのですが、仮に杞憂でないとしますと、今回の制度が適用される場合というのは更に限定的なものになって、制度を創設する意味も小さくなりかねません。そこで、定款の定めを要件とする以上は、事前確定型決議に対する同意は要求しなくてもよいのではないかと考えております。   その他についても1点だけコメントさせていただきます。決議の対象となる議案を限定すべきかどうかという点については、私はどのような議案であれ、上場会社では会議体としての株主総会の審議によって決議の結果が変わるということは基本的には考えにくいのではないかとみていますので、特に議案を限定する必要はないのではないかと思います。ただし、緊迫した支配権争いがあるような例外的な場合は、上場会社であっても会議体としての株主総会の審議によって決議の結果が変わるということはあり得ますので、そのような場合のために少数株主の株主総会の開催請求権を認めることはあり得るのではないかと思います。ただし、その場合は少数株主の議決権割合要件は、例えば10%など相当程度高いものに限定しても問題はないと思いますし、また、事前確定型決議を導入した趣旨を損なわないようにするためにも、そのように高い議決権割合要件を設けるべきであろうと考えています。   次いで、書面決議制度の見直しについてです。資料では単に株主の全員の同意の要件を緩和することの当否だけが問われていますが、比較法的にみると、イギリス会社法は私会社、日本の非公開会社が比較的近いと思いますが、私会社について株主総会の開催の負担を減らすという観点から、従来は書面決議について株主全員の同意を要求していたのを改めて、普通決議と特別決議のそれぞれについて、決議要件を満たした書面決議があれば株主総会決議としての効力を有するとした上で、書面決議の制度について、どのような情報をどのような形で株主に提供させるか、いつまでに株主が賛成の意思表示をする必要があるかといった細かい点も含めて、詳細な規定を置いております。そこで、こうしたイギリス会社法上の書面決議の制度を参考にしながら、これと同様の制度を日本の会社法に導入することは十分にあり得るだろうと思います。   この点について部会資料13ページでは、株主総会の決議事項の決定が株主総会の招集に要する期間の分遅れることで重大な支障が生じるような緊急性のある事例は通常想定し難いため、書面決議の制度を設ける必要は薄いのではないかという指摘が紹介されています。こうした指摘は、確かにそのとおりだと思う一方で、実際にベンチャー企業では書面決議を行いやすくしてほしいというニーズが少なくないと聞いています。この理由がどこにあるのかというのは、必ずしも私は把握しておらず、あるいはベンチャーキャピタルが投資している会社の数が多く、いちいち会議体としての株主総会に参加するのが煩雑だといったような理由があるのかもしれませんけれども、ベンチャー企業等で書面決議を行いやすくすることにつき、仮に合理的なニーズというものがあるのであれば、それに応えることは検討してよいのではないかと思います。また、閉鎖的な会社の中には定時株主総会をきちんと開催していない会社も少なくないようですので、そうした会社のためにも、先ほど申し上げましたように、イギリス会社法などを参考にしながら少数株主が害されないような手続をきちんと整備するということが前提条件になるかと思いますが、書面決議を広く認めることによって株主総会の開催の負担を減らし、取締役の選任など株主総会で決議すべき事項についてなるべく実際に決議が行われるようにすることには相応の合理性があるのではないかと思っています。   最後、キャッシュ・アウト手続の見直しについてです。こちらについては、部会資料に記載されていますような理由から、特別支配株主の株式等売渡請求における特別支配株主になるために必要な議決権保有割合を10分の9から3分の2に引き下げることに賛成いたします。また、そうした見直しをする場合は、略式組織再編の場合についても同様の見直しをすべきであろうと思います。   この点について部会資料では、現行法上は議決権保有割合が10分の9に至らない場合におけるキャッシュ・アウトに際しては株主総会の決議が必要とされており、この場合には株主総会によるコントロールを及ぼすものとしているという考え方もあり得るとされています。しかし、株主総会決議が確実に成立することが分かっている場合において、株主総会決議を要求することが少数株主の保護に資するというのは通常は考え難いのではないかと思っています。   他方、複数の株主の議決権を合算して議決権保有割合を算定することについては、確かにこうした法制度もあり得るとは思います。ただし、こういう法制度にする場合は、複数の株主のうちどの株主がどの株式を取得するのかをどのように確定するのか、またそれとの関係で、少数株主が対価に不満があるときにどの株主に対して価格決定の申立てをするのかなど、規定を整備する必要があろうかと思います。こうした規定の整備がうまくできるのであればよいのですが、いろいろ詰めなくてはいけないことが多そうでして、直感的には規定の整備はそう容易ではないような気がしております。 ○神作部会長 ありがとうございました。 ○北村委員 まず、事前の議決権行使により株主総会の決議があったとみなす制度についてコメントと一部質問をさせていただきます。昭和56年に書面投票制度が世界に先駆けて導入されたとき、理論的には会議体なしに株主総会決議ができる制度になっているという指摘がされました。今回御提案されているのは、それの発展形と理解することができます。株主の保護と会社の便益のバランスがとれた制度ができるのであればこういう制度を導入することが考えられるというスタンスで、検討すればよいと思っております。   事前確定型決議と呼ばれているものについて、定款で定めるのは事前確定型決議をすることができるということで、事前に決議が成立するかどうか分からないのであれば、定款には定めているけれども事前確定型決議の方法はとらず、事前に決議が成立する自信があるときは事前確定型決議をとるということを取締役、取締役会が判断するという制度だと思います。そして、久保田委員の御意見に賛成ですけれども、定款の定めがあるのであれば、事前確定型決議をすることの同意というのは要らないと考えるべきだと思います。   2ページの③の質問については、私も久保田委員と同じような印象を持ちました。これは株主総会における議決権行使に資するための質問をするということではなく、それ以外の質問、そして説明というものと理解しております。これに関して1点、御質問ですけれども、そのような理解でいいということを確認するとともに、もし事前確定型決議をするということを招集事項の決定時に定め、そのための手続を進めていったところ株主から③の質問がされた場合において、結果として事前確定型決議が成立せず株主総会を開かなければならなくなったときに、③の質問は第314条の質問とは別のものであって、株主総会の場で説明しなくてもよいという位置付けになるのかどうかを、制度設計の段階でもしそこまで考えておられるのだったら、お答えいただければと存じます。   7ページの下から4行目以下にあります(4)その他の要件でございます。これについて、株主総会で決議するときに、例えば有利発行や株式併合や取締役の報酬の改定など、その都度、株主総会で取締役が説明しなければいけないという規制がある場合がありますが、恐らくこれは株主総会参考書類での説明で代えることができると思います。会計参与や監査役等の選任、解任、辞任についての意見表明、あるいは辞任した監査役等の意見表明については、これは決議事項ではないので、これをどうするのかについては、なお詰めなければいけないと思っております。   3ページの(注)ですけれども、議案を否決する決議についても同様にするということは株主提案についてニーズがあると思いますので、それでいいと思うのですが、報告事項についてどうするのかということについては少し検討が必要かと思います。そもそも事前確定型決議というのは、株主総会という会議体によって決議をすることを要しないということを目的とする制度なのか、そもそも定時株主総会も含めて株主総会というものをおよそ開かない、報告もしないという制度を目指しているのかというのを明らかにしておく必要があろうかと思います。   事前確定型決議が成立しますとその後は株主総会決議取消しのおそれはないという前提で定時株主総会を開いて報告事項を報告する、つまり年に1回ぐらいは株主と経営陣が株主総会という形で対話するという機会すらなくしてしまいたいという制度を目指すのかどうかがポイントになると思います。私は、株主総会決議が取り消されるというリスクがなければ年に1回ぐらいはそのような機会があってよいと思っています。臨時総会であれば、報告事項がなければ全く株主総会を開かないということも可能ということになります。対象となる会社の範囲ですが、特に上場会社に限る必要はなく、書面投票、電子投票を行う会社であれば、認めてよいと思っております。   11ページの多数決型書面決議ですが、これは株主総会の招集をしないという以外は事前確定型決議と同じ手続が必要とされています。これについては書面決議制度の見直しで対応すべきであって、事前確定型決議と書面決議の中間形態のようなものを創設するのは、制度が複雑になって、あまり適切でないという印象を持っております。   次に、2の書面決議制度の見直しです。現行の第319条により、書面決議については議決権を有する株主全員の同意が要件になっていますが、それを若干緩和するという改正に賛成でございます。本来書面決議ができるような状況にあるのに所在不明の株主が1名程度いる場合に対処する制度として、見直しが合理的だと思います。   具体的には、13ページの13行目の括弧書きの「例えば」というところにありますように、取締役又は株主が株主全員に提案し、総株主の議決権の10分の9以上の議決権を有する株主が同意し、かつ株主から反対が出なかった場合に、書面決議を認めるとすることが考えられます。これは319条の要件を若干緩和するもので、株主が1名でも反対すれば書面決議できないので、この緩和措置のための定款の定めも要らないと思います。第320条の報告の省略についても同様に考えることができると思っております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。御質問が含まれていたかと思います。説明義務に関連して、事務局からもしお答えがございましたら、お願いいたします。 ○宇野幹事 北村委員から頂いた御質問も含めて、資料作成の経緯を少し補足させていただければと思っております。   今回のたたき台の規律①から⑥までを検討するときに考えていたのは、現行の規定からの差分、今できることができなくなることについての手当てをどのように考えるかというところで、一つは、事前確定型決議が成立して実際に総会が開かれないということになると、総会の場における質問というのはもうできないことになるわけですので、それに対応するものが何か必要なのではないか。実際には、北村委員あるいは久保田委員おっしゃったように、事前に質問がされ、回答がされ、それを踏まえた議決権行使がされるということが理想であると思うのですけれども、事前の段階で、例えばある時期までに質問の期限を区切り、その回答を受けて、今回書かせていただいた「一定の時」までに議決権を行使するというのが、なかなか実務上は難しかろうというところもあり、質問をできるのは一定の時まで、そして、回答はある意味、決議が成立した後にされるので、結果としては、両委員がおっしゃられたように、その回答を受けて議決権を行使することができるという立て付けにはなっていない、そこは実務の方の意見も伺いながら、議決権行使のための質問の機会というものとして組めるのであれば、それはその道も考えていきたいと思いますけれども、こういうふうに規律を御提案した趣旨は、1つはそこにございました。もう1点の差分は、同意という言葉が少し分かりづらかったかもしれませんけれども、現行法では、教室設例かもしれませんけれども、事前の議決権の行使をしたとしても、当日までの間に例えば何か大きな不祥事などがあれば、議決権の行使内容を最終的には当日株主総会の会場に行って変えられるということが今、保障されている。それができなくなるだろうと、事前確定型決議が成立してしまったら、もう自分の投票の賛否を変えることができないという状況ですので、自分の事前の議決権行使した賛否を変えませんという意思が含まれていないと、なかなか正当化できないのではないかと考えて、そういう意味で、事前のこの議決権の行使の内容は今後変えませんというものが一定数たまらないと、それは今との差分で言うと、なかなか新たな制度を正当化することができないのではないかと考えて、原案としては作成した次第です。 ○神作部会長 北村委員、よろしゅうございますか。   ありがとうございます。 ○仁分委員 本件は非常に関心の高い論点でございますので、少し発言も長くなってしまうと思いますけれども、御容赦いただければと思います。   まず、総論といたしまして、「事前の議決権の行使により株主総会の決議があったものとみなす制度」の創設を検討することに賛成いたします。しかし、今回御提案いただいた制度の要件と手続はあまりにも厳しく、企業がこの制度を利用することは実務上困難であると考えております。企業にとってより使いやすい制度としていただく観点から意見を申し上げたいと思います。   まず、部会資料3ページの問題の所在のところに関してでございますけれども、上場会社の株主総会におきましては、事前の議決権行使により株主総会の前日までに議案の決議の成立が事実上確定しているケースが大半であるのが実態であります。しかしながら現行法の下では、そのような場合でも株主総会当日に決議が成立することになるため、当日の議事運営次第では、説明義務違反、動議の取扱いの瑕疵、審議不十分などの決議取消事由が生じ得ることになります。そのため、上場会社は決議取消事由が発生しないよう、多大な時間と労力、費用を掛けて詳細かつ多岐にわたる想定問答の作成、動議など様々なケースを想定した議事運営シナリオの作成、リハーサル等による当日の所作の確認等の事前準備を入念に行わざるを得ず、株主総会当日も慎重な議事運営を行うことに注力せざるを得ません。これらは上場会社にとって極めて大きな負担となっております。また、株主総会で説明した内容が結果的に誤りであることが判明した場合にも決議取消事由になり得ることから、決議取消しリスクのある現行制度の下では株主総会における説明内容が当たり障りのないものになるなど、株主とのコミュニケーションが後退する面があるとの指摘もございます。   私が所属する日本製鉄株式会社におきましては、過去に、保有する議決権数が1個のみの株主から何年にもわたって株主総会決議取消訴訟が提起されたことがございます。当該株主は事前に膨大な分量の質問書を会社に送付した上、株主総会当日に複数の質問をするとともに、議案の修正動議、議長不信任動議、審議方法や採決方法に関する動議などの各種動議を提出し、後日、決議取消訴訟を提起してきました。決議取消訴訟では決議取消事由として、説明義務違反、動議の取扱いの瑕疵、審議不十分、議事運営の不公正などが主張されました。いずれの訴訟も当社が勝訴いたしましたが、株主総会当日の運営について何か間違えたら決議が取り消されてしまうかもしれないという懸念があり、株主総会に向け膨大な時間と労力を掛けて事前準備等をせざるを得ませんでした。また、実際に決議取消訴訟が提起された後、それに対応すること自体も会社にとっては大きな負担でありました。そして、このような株主総会前及び株主総会後の対応には相応のコストが発生するため、会社のみならず他の株主の利益をも損なう結果につながるものでありました。そのような事例が現に存在することに照らしても、決議取消しリスクは現状、無視できない重要なリスクとなっております。   御提案の「事前の議決権の行使により株主総会の決議があったものとみなす制度」が創設され、株主総会の開催前に決議を成立することができるようになれば、決議取消しのリスクがない状態で株主総会当日を迎えることができますので、上場会社の負担が大きく軽減されることになります。また、その場合、株主との間で過度に慎重になることなく柔軟で自由なコミュニケーションをとることが可能になりますので、会社と株主の建設的かつ実効的な対話が促進されることにつながり、会社だけでなく株主全体にとっても望ましいと考えます。是非そのような制度を実現していただきたく存じます。   5ページの「事前確定型決議の要件」に関してですけれども、定款の定めは不要であるべきと考えております。前提といたしまして、上場会社においては株主の人数が数万人から数十万人に上ることが多く、株主総会当日に会議体として意思決定を行うこと自体がおよそ現実的ではなく、実際には議決権の大部分は事前に行使されております。一方で近年、上場会社は株主総会参考書類、事業報告、有価証券報告書などの法定開示に加えまして、適時開示や統合報告書、ウェブサイトでの情報提供なども含めまして、日頃から様々な形で情報開示に取り組んでおります。そのため、株主総会当日の取締役の説明がなくとも、株主が議決権を行使するために必要な情報は既に十分に開示されており、それを基に議決権が行使されていると考えます。そもそも株主総会当日に、これまで開示されてこなかった全く新たな情報がごく一部の出席株主に対してのみ提供されることは、フェア・ディスクロージャーの観点から適切ではありませんし、実際にもそのような事態は想定し難いように思われますので、株主総会当日の会議体における審議を過度に重視すべきではないと考えております。   その上で、御提案の制度においては、株主は、議決権の事前行使により決議を事前に成立させるか、それとも会議体を開催した上で決議を成立させるかを選択することができます。すなわち一定以上の株主が会議体における審議を経た上で議決をしたいと考えた場合には、事前の議決権行使をしないことにより会議体による審議、議決を行う途が確保されております。その中で、多数の株主が会議体における審議や議決を希望せず、事前に議決権を行使した場合に初めて事前確定型決議が成立することになりますので、定款の定めがなくとも、事前に決議を成立させることについて株主意思が反映されることになると考えます。   「(3)事前確定型決議に対する同意」につきましても、これを要件とすべきではないと考えております。株主の立場からは、事前に議決権を行使することそれ自体とは別に、事前に決議を成立させることについて同意することの意味を明確に区別して理解することは困難であると思われますので、事前確定型決議に対する同意を要件としますと、大きな混乱を招きかねないと考えます。株主としては、会議体における審議を経た上で決議を成立させることを希望する場合、事前の議決権行使をしなければよいわけですので、あえて事前確定型決議に対する同意を独立の要件とする必要はないと考えます。そもそも事前の議決権行使をする株主は、会議体における審議を経ずに議決権行使をしても構わないと考えている株主ですから、「事前の議決権の行使をしたいが事前確定決議は認められない」と考える株主は通常、想定されないと考えます。   「(4)その他の要件」に関しまして、対象となる決議を限定する必要はないと考えております。   続きまして、「3 事前確定型決議の手続」のうち「(3)株主総会における質問、動議、その他の審議に代替する措置」について申し上げます。行使期限までに特定の事項について説明を求められたときは、当該事項について必要な説明の内容を株主に通知するか、又は説明の内容について電子提供措置をとらなければならないと9ページにございますけれども、こういった規律は設けるべきではないと考えております。株主からの事前の質問の全部について説明しなければならないというのは、会社の実務負担が非常に大きいと考えております。先ほど説明した当社の過去の例のように、株主から膨大な分量の質問書が送付されてくるケースもございます。また、このような規律を設けますと、株主は株主総会の場ではなくテキスト等により質問することが可能になりますので、質問することについての心理的なハードルが低くなるほか、質問をすれば必ず回答してもらえるという期待が生じるため、一般の株主からも会社が対応し切れないほどの多数の質問がなされることが懸念されます。さらに、取締役等が株主総会の場で口頭で説明するのではなく、書面又は電子提供措置により説明内容を開示しなければならないことになりますと、説明内容の文案の作成に当たって、より慎重な検討が必要になり、その点でも会社の負担が増大すると考えます。   先ほども申し上げましたように、上場会社は法定開示も含めて、日頃から様々な形で情報開示に取り組んでおります。そのため、上場会社においてはこのような規律を設けずとも、株主に対する必要な情報の開示は既に十分になされていると考えております。その中で、多数の株主が株主総会当日の説明を聞かずに決議を成立させてよいと判断し、事前の議決権行使をした結果、事前確定型決議が成立した場合において、決議成立後に株主による質問の機会を確保する必要があるのか、疑問があります。   仮に事前確定型決議が成立した場合でも株主による質問の機会を確保する必要があるということであれば、会社の選択により、当日、任意的な集会ではなく、法的な意味での株主総会、すなわち「報告事項を報告し、質疑応答をするためだけの株主総会」を開催することもできるようにしていただき、当該株主総会で株主からの質問に回答すれば足りるという制度にしていただきたいと存じます。なお、その場合、仮に株主総会当日に説明義務違反があっても、決議成立後の事情であるため、決議取消事由にはならないと解釈されますので、その点を明確にしていただきたく存じます。   「4 少数株主の株主総会の開催請求権」につきましては、認めるべきではないと考えます。そのような少数株主権を認めますと、事前確定型決議を導入した趣旨が損なわれると懸念いたします。また、株主としては会議体における審議を経た上で決議を成立させることを希望する場合、事前の議決権行使をしなければよいと考えられますので、株主総会の開催請求権のような権利を認める必要はないと考えます。   「5 報告事項について」につきましては、決議事項と同様の規律を設けることに賛成いたしますが、こちらについても定款の定めや株主の同意の意思表示を要件とすべきではないと考えます。報告事項につきましては本来、会議体の場で報告を行う必要は乏しく、定款の定めや株主の同意の意思表示がないと報告したものとみなされないというのでは、要件として過重であると考えます。また、先ほども申し上げましたように、会社の選択により、当日、「報告事項を報告し質疑応答をするためだけの株主総会」を開催することもできるような制度にしていただきたく存じます。   「7 事前確定型決議以外の見直しの方向性」の「(1)多数決型書面決議」につきましては、最初から会議体を開催しない前提で書面投票又は電子投票により採決する制度が実現可能であるならば、是非前向きに御検討いただきたく存じます。ただし、その場合であっても定款の定めを要件とすべきではなく、また、株主からの質問への対応などで企業に過度な負担が生じることがないような制度設計を御検討いただきたく存じます。   7(2)ですけれども、「事前の議決権の行使により株主総会の決議があったものとみなす制度」を創設するのと併せて、「株主総会当日の議事の瑕疵は決議取消事由とならないものとする改正」を行うことについても、前向きに御検討いただきたく存じます。   それから、「2 書面決議制度の見直し」に関してでございますけれども、こちらも見直しに向けて検討を進めていただくべきであると考えております。スタートアップ企業を含めまして非公開会社では一部の株主と連絡が取れない場合に機動的な意思決定が行えないという問題があり、書面決議制度の要件の見直しには一定のニーズがございます。   それから、「3 キャッシュ・アウトの手続の見直し」に関してですけれども、企業にはM&Aをできる限り速やかに完了させたいというニーズがございます。キャッシュ・アウトのみならず、吸収合併や株式交換も含めて、子会社の組織再編全般につきまして、親会社が単独で又は他の株主と合わせて子会社の総株主の議決権の3分の2以上の議決権を保有しており、株主総会の決議結果が事前に明らかである場合には、当該株主総会の決議を省略できる制度にしていただきたく存じます。   長くなりましたけれども、以上でございます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○内田委員 まず、会議体としての株主総会について、株主総会を開催しないことを認めるということは、既に事前投票によって決議のすう勢が決定しているということが問題の本質であること、それと同じような意味ですが、したがって株主総会が形骸化してきているという懸念と、さらに言えば懸念ではとどまらず、そういうことは強く思っているところであります。   ただ、一方でこれが実現した場合のリスクで言うと、特に外国人投資家からは株主権の縮小という指摘を受ける可能性があると思いますし、ガバナンスの後退として見られる可能性も高いと思っております。欧米の事例なども説明していただいていますが、これを見ても、株主総会を開催しないということが先行して浸透しているようには見えないですし、特に日本においては、まだガバナンス改革の道半ば、始まったばかりという段階で、この制度を入れるのは少し時期早尚ではないかと考えております。   別の視点で言いますと、久保田委員がおっしゃったように、実際問題としてこの部会資料の案で考えるとほぼ最後まで総会を開催しないということは確定しないと思いますので、発行体の事務負担としてはあまり減らないのではないかという懸念があります。想定問答集などの準備負担がこれによって大きく軽減しない可能性が高いと思います。早い段階で確実に総会を実施しないということが分かれば別ですが、こうした準備は当然1か月かそれ以前から始めているケースが多いと思いますので、早期に開催しないことが確定しない限り事務負担はあまり変わらないといえるかと思います。   また、機関投資家から見ると、大勢が決まった時点で票がまとまってしまうと、実際にその後の投票がきちんと行われるかどうか、つまり真剣に投票が行われるかどうかというところが見えにくくなります。そして賛成率の変化という経営者に対するメッセージが伝わりにくくなる点が懸念されます。御存じのように、経営者への賛成率というのは非常に重要な指標になっていますので、その意味でも懸念が残るかと思います。   それを踏まえて、ではどうしたらいいのかというところですが、前回でバーチャルオンリー株主総会の議論があったと思いますが、まずそこを問題なく定着させた後に、会議体としての株主総会を考えていくというのが順番として良いかと思います。バーチャルオンリー株主総会が物理的な場所の制約を取り払うことだと考えると、今回の議論はある意味、それに加え時間的な制約を取り払うことだと思います。したがって、段階を追って進めていくのがいいのではないかと思います。   最後に、現行の株主総会は、株主総会決議と意見聴取が一緒に行われている点が、事務的な負担となっており、特に発行体からみて負担になっていると思います。そこで意見聴取の部分は切り離して考えても良いかと思っています。株主の意見を聴いたり、投資家への説明は非常に重要だと思いますが、ただ、それらは必ずしも株主総会と同時期、同じ場所で実施する必要はないかと思います。株主の意見を発議したり、表明したりする場所として別枠で設けることは、より進めていくべきではないでしょうか。例えば個人株主向けの説明会であったり、SRミーティングを積極的に実施することで、そうした役割を担うことができるのではないかと思っております。   次に、書面決議制度の見直しについては、書面決議を可能とする要件を、実質的に株主全員の同意があるような場合に緩和していく方向で進めるべきだと思っています。   それと、キャッシュ・アウトについては、10分の9に満たない場合には株主総会決議が必要とされますが、これは少数株主の意見表明の場として非常に重要だと思っております。買収者にとっても、ここで反対意見が出ることは一定程度の抑止力につながっていると思います。全株主の賛同を得るということに買収者がこだわるケースも多く見られますので、そういう意味で一定の抑止力があると思います。   加えて、日本の場合だと2段階TOBが認められておりますので、キャッシュ・アウトの時点で、少数株主から見ると、初めから支配株主がいる状況ではなく、途中からその状況に追い込まれているケースもあります。その場合、投資家にとって支配株主を中心とした株主構成というのが既知というわけではないのです。途中からそういう状況に追い込まれるということであれば、そこについては少数株主の保護という観点が必要だと思います。その意味で、キャッシュアウト直前のTOB、第1段階のTOBでMOM要件を課すというのは検討に値すると思います。その場合は、併せて取締役、特に社外取締役の責務とか責任というところを明確に定めて、求められる責任を果たしてもらうというところが少数株主保護にとって重要な要件だと思います。逆に、MOM要件を満たさないTOBでキャッシュ・アウトするということになると、やはり少数株主の意見表明の機会が確保されないという意味でキャッシュアウト要件の緩和見直しは慎重に考えるべきと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○青委員 まず、一つ目の会議体の方からでございますけれども、やはり一番解決すべきと考えられるポイントは決議取消事由のところで、株主のほぼ全員が賛成と言っている場合に、若干の瑕疵があることをもって争いが生じたり、決議取消しという方向に進むこと自体は健全ではないと考えられます。多くの株主の意思に沿ったものであるかを重視しつつ、必要な制度設計を考えていくのがよいのではないかと思われるところです。   また、総会のための手間暇をいかに割くのかというところに関しましては、場所の手配などはバーチャルオンリー総会が導入されることで相応の解決はできるように思いますけれども、総会での議論自体を避けていくというのは少し引きすぎというか、株主を過度に軽視するような形になってしまうことが懸念されるように思います。決議取消しが絡まない形での質疑を求めるという形であれば、想定問答の作り方にもよりますけれども、普段から考えていてしかるべきQAを作るという意味では、過度な準備ではないように思われますので、そういった負担であればある程度許容されてもいいのではないかといった基本観を持っているところでございます。   また、会議体としての総会を開催し、そこで審議して決議してきたというのがこれまでの総会の運営の仕方であったことを踏まえると、従来の考え方を基本としながら無駄を避けていくような方向感で考えていくことがよいと思われ、一定の簡易的な方法を許容しつつも、できる限り従来の株主の発言機会などを維持していくのがよいのではないかと思われるところです。   定款の定めと決議対象の範囲に関してですが、これまで総会に出席して行使できてきた質問や動議といった株主権を大きく変えることになるので、株主の意思を問うという観点から、定款の定めというのは必要ではないかと思うところでございます。   もっとも、定款で定めておけば全ての決議事項について事前に決することできるとしてよいかについては、慎重な議論が必要だと思われます。総会で株主による取締役に対する監視を機能させるということであれば、一定の議案については引き続き総会の場での決議の対象とするといったように、何らか対象を限定する必要がないかについても、諸外国の事情や考え方も踏まえた上で、丁寧に議論していくということが1点あり得るかと思われるところです。   それから、事前確定的な意思表示の取扱いについては、総会に出席すれば、事前の議決権行使と異なる賛否を示すことができるという現状の制度を尊重しながら考える必要があるのではないかと思います。すなわち、株主が事前に議決権行使したら一切前言撤回できないという形に一律にしてしまうのは、直前の事情変化等を踏まえて行使したい株主がいるかもしれないことを考えると、望ましくないと思われるところがございますので、単なる事前の議決権行使の意思表示だけではなく、事前の行使をその後変更しないということを株主の方もできる限りきちんと認識した上で明確に示すことも必要だと思われます。その上で、同意の取り方などを工夫しつつ対応できればよいのではないかと思います。   そのような観点から考えると、資料の一定の時までに確定的な意思表示をしてもらうという案は、事前の議決権行使を翻意する可能性がある株主に配慮されている点でよいのでないかと思います。資料上クリアでないのですけれども、従前の株主権行使により近付ける観点からは、一旦事前の議決権行使をしても、その後一定の時までは自由に賛否を変えられるという立て付けも引き続き必要ではないかと思われます。   また、8ページの上の方で会計監査人の解任の場面の意見陳述権をどう取り扱うかというところの御指摘がありますけれども、ここに関しましては株主の財産権に関わるものであり、監査がしっかり行われているのかを株主がチェックできる機会としても機能しているということではないかと思われますので、株主が総会で意見をしっかり聴ける機会を設けることが必要でないかと思われるところです。   次に、質問権に関しまして、原案のようにコミュニケーションを軸にすることも一つのやり方かと思います。どのような軸にするにせよ、総会の招集通知で十分に必要な説明がされることが重要になってくると思いますので、そのような説明が事前に十分なされていれば、必ずしも企業側の質問に対する回答を総会までに行わなければならないという構成にしなくてもよいのではないかと思われます。   あと、コミュニケーションに関しては、質問権を設けるのも一つあり得るかもしれませんけれども、先ほどからも出ておりますとおり、決議取消しとは関係のない形での株主総会、あるいは株主に対する説明会といった柔軟な形で開催し、報告や質疑を受け付けることも、あり得る方法ではないかと思われるところです。むしろそうすることによって株主とのコミュニケーションをより図ることができ、決議取消しのリスクを減らすことと両立できるのではないかと思われます。   それから、キャッシュ・アウトのところでございますけれども、まず、総会を開催しない場合については、売渡請求権で10分の9の割合を求めている現行の規定は尊重されてしかるべきではないかと思われるところです。一方的にキャッシュ・アウトするというのは、株主に対する影響がかなり大きいということでございますので、10分の9という割合自体、本来合理的な側面が十分にあるのではないかと思われるところです。   総会を開催する場合であれば、3分の2の割合でのキャッシュ・アウトが株式併合等で許容されているわけでございますけれども、そこはぎりぎりあるとしても、それが本当に合理的かどうかは本来、十分に考えてしかるべきかと思われ、軽々に株式併合が3分の2だからという理由で全て3分の2に合わせていくということには、少し疑問の余地もあるように思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○小長谷幹事 事前の議決権の行使により決議があったとみなす制度について、1点コメントを申し上げたいと思います。   前回の部会で私の前任の野崎から御紹介した点と少し重複してしまうかと思いますけれども、今年の6月に金融庁で開催した会議体におきまして、機関投資家の国際団体の方の御発言として、株主総会は企業の説明責任にとって重要なメカニズムの一つでありまして、株主が対面で出席できないことは、議場において直接取締役や経営陣と自由に質疑をするという株主の権利を制限することにつながる、少数株主にとってはそのような権利は特に重要なものであるといった御趣旨の発言があったところでございます。この意見はバーチャルオンリー株主総会の文脈で出されたものでございまして、部会資料4で御提案いただいている新制度について言及したものではないのですけれども、会議体としての株主総会の重要性を強調する発言の趣旨からしますと、やはりこの新制度の創設については一層慎重な御意見が海外投資家からは出てくるのかなと想定しているところでございます。したがいまして、この点については海外投資家の声というものも丁寧に拾っていく必要があるかなと思っておりまして、金融庁といたしましても協力をさせていただきたいと思っております。そういった声を可能な限り拾いまして、後日御紹介する機会などを頂ければと思っております。   本制度を導入することによりまして企業の実務負担が緩和され得るということは、もちろん理解するのですけれども、バーチャルオンリー株主総会の論点と同様に、企業と投資家との間の建設的な対話を促進するという流れに沿った形で議論、検討を進めることが望ましいと考えておりますし、先ほど来、ほかの委員の先生方から出ている、例えばバーチャルオンリー総会などステップを踏んで検討を進めていくべきではないかといった御意見に共感するところでございます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○臼井委員 まず、会議体としての株主総会の規律の見直しについて意見を述べさせていただきます。   株主総会の手続を実効化、合理化し、そのリソースを建設的な対話に振り向けていくという方向性には賛成いたします。一方で株主総会の事前確定型決議の導入については、特にコーポレートガバナンスの観点から慎重に対応すべきと考えます。日本の上場企業におけるコーポレートガバナンスは、古くはバブル崩壊やその後の金融危機等を経て、直接金融による資金調達の重要性が増すにつれて、社外取締役や監査役制度の導入、更に足元では資本コストや株価を意識した経営への認識強化等、ガバナンスの改善に向けた取組が今、着々と進んでいるところだと認識しております。こうしたガバナンス改革は企業の持続的な成長を支えるとともに、海外投資家が日本の株式市場の魅力に足元で再度注目し始めている重要な要因の一つにもなっております。また、株主総会の形骸化という点に関しては、歴史的な背景、具体的には株式持ち合いや総会の開催日の集中といった要因が大きく影響してきたという点も合わせて考慮すべきではないかと考えております。   こうした中で株主総会の開催義務をなくしてしまうことは、足元のコーポレートガバナンス強化に向けた取組の逆戻りにつながりかねないリスクがあり、段階を踏んだ慎重なアプローチが求められると考えます。もちろんリソースの適切な配分は重要ですので、改善への取組と並行しながら、この後の議論の中で株主提案の在り方や動議・質問の事前提出、さらに開催日の分散といったいろいろな施策により総会の実効性をより高めていくこと、株主との建設的な対話につなげていくことが企業の持続的な成長及び信頼性の向上につながると考えます。その上で、総会運営に関しては運営側の負担軽減、特に、先ほど仁分委員が指摘されたような、言わば悪意を持った一部の株主が株主共同の利益を阻害するような事態をどのように防いでいけるのか、そういった点を考慮しながら制度設計を図ることがよいと考えております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○松中幹事 まず、事前確定型決議を用いることへの株主の同意については、先ほどの御説明も踏まえると、総会があることを前提とした書面投票と、総会がなくなるかもしれず、その意味で総会の段階で撤回することはもはやできない投票というのは、物理的には一つなのだけれども、法的・概念的には違うものなのだから、両方を兼ねさせるためには同意が必要になる、そのような議論に感じられました。それはそれで論理的ではあると思うのですが、そこは制度の作り方次第で、書面投票もたくさん集まったらリアルの総会が要らなくなるという制度にするのであれば、この観点からの同意は要らないのかなと思います。   ただ、実質論としては、こういう制度を定款上採用しているとしても、リアルの総会をやらなければいけない場合がいつなのかという話につながってくるという点で、とても重要な点だと思っています。もしこのような形で株主の同意を求めない制度にするのであれば、やはり実際の会議体としての株主総会の開催請求権みたいなものを何らかの形で定める必要もあろうかと思います。そうでないと、株主の前に経営陣が出てくることを拒否するのかという、外国人投資家などからの懸念にこたえられない制度になってしまうと思います。   そのような開催を求める権利の要件を想定すると、例えば10%という水準はそれなりに高いとも思えます。しかし、部会資料で提案されている同意であれば、例えば、議決権行使率8割の会社で普通決議を経る場合、6割超の人が賛成してくれれば通るわけです。逆に言うと、リアルの総会に持ち込もうと思ったら4割以上の株主が、この事前確定では駄目だと言わなければいけない。つまりこちらの方が、あり得る開催請求権よりも、リアルの総会を求めるハードルが相当高くなるように思います。そういうわけで、様々なあり得る制度から受けるイメージと実際の効果は、ずれる部分も出てくるので、実際にどのような場合にリアルの総会を求めることとなるのかという観点から整理する必要があるのかなと感じました。   もう一つは、既に複数の委員から御指摘があった点ですが、事前確定型の決議をしても実際に総会の用意をするのであるとすると、決議の瑕疵の扱いと機能的に連続的になっていく、これもおっしゃるとおりだと思います。ただ、作り方によっては同じようになっていくのですが、一つ違う点として、事前確定型の方は定款の規定が必要なのだとしたら、その定款の定めをした会社だけの話になるはずです。それに対して、決議の瑕疵自体の扱いを変えるのであれば、全ての会社、少なくとも上場会社全てということになると思います。このため、実は決議の瑕疵の扱いを変える方がインパクトは大きいのではないかと思います。それも踏まえて、そちらの方が適切なのかは議論があり得ると感じられます。   次に、キャッシュ・アウトについてですが、必要な議決権を3分の2にすること自体は特段不合理だとも思わないのですが、ただ、2段階買収を想定すると、現状やはり9割を目指して、それでも駄目なら3分の2と、こういう公開買付けの条件の設定がなされているのではないかと思います。ここで、いずれの手段でも9割が要件ではなくなってしまうと、9割を目指すインセンティブが低下する可能性はあります。もちろん現状でも3分の2でキャッシュ・アウト自体はできるのであって、論理必然という話ではないのですけれども、こういう行動の変化が生じ、結局1段階目の公開買付けの対価が下がる可能性があるわけです。その意味で、ほかの条件次第だというのはそのとおりですが、こういった会社法の規律の対象の外の部分に影響する可能性があるのではないかと思います。   もう一つ、会社法の中の話で気になるところとしては、この提案がもし実現した場合、引き続き株式併合をキャッシュ・アウトの手段として使うことはどのように評価されるのだろうかというところです。現状で別に9割取って株式併合を使ってはいけないわけではないのと同じで、どちらでも好きなように使ってくださいとなるのかもしれません。ただ、もしキャッシュ・アウトの議決権要件を3分の2まで引き下げて、事実上であっても特別支配株主の株式売渡請求に一本化するということになるのであれば、これは株主の権利強化になる部分もあるかと思います。というのも、既に言及されている時間の短縮に加えて、不満のある株主の救済方法として、対価が著しく不当な場合の差止めが利用できるようになりますし、さらに価格決定手続を利用できる株主の範囲、これもそれほど大きな部分ではありませんけれども、やや広がります。もしこちらに一本化するというのであれば、株主の救済という点では、もしかしたらいい部分もあるのかもしれません。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○豊田委員 まず、事前の議決権の行使により株主総会の決議があったものとみなす制度についての提案につきまして、運用によっては上場会社における株主総会の開催が大幅に減少する可能性もありまして、事前準備の大変さはあまり大きく変わらないのではないかという御指摘もありましたけれども、実際には非常に大きな実務的な影響のあり得る提案だと考えております。これにつきまして、導入自体に反対というものではございませんが、次に述べるような点を検討する必要があると考えております。   まず、株主との対話につきましては、ネットでの中継が行われる会社もあるということや、バーチャルオンリー総会の導入の議論におきまして多くの株主の参加ができることが強調されておりますように、一定の議決権割合を保有する株主のみならず個人株主との対話という観点からの、株主との対話の促進の議論があるものと理解しております。この点、今回の御提案については、事前の議決権行使により決議が成立した場合には株主総会を開催しなくてよいということになりますので、現在の上場会社における議案への賛成割合を考えると、かなりの会社において株主総会を実際に開催しないことができるようになり、総会の場での株主との対話が減ってしまうという見方ができると思います。   他方で、実際に議場に来られる一部の株主への質問対応を会場にいる人だけが知ることができるということよりも、決議の前提とはならなくても、広く質問を募ってその回答を全ての株主に公表するということの方が、より株主との対話になるという側面もないわけではないと考えております。ただし、議場における質問は法的な説明義務を負ってその場で回答するということですので、そのような緊張感を持っての対応について、特に事務方ではなく代表取締役や他の経営陣がそれを行う観点から意味がないとは言い切れないと思います。さらに、膨大な想定問の準備が無駄ではないかという意見もあるかと思いますが、確かに担当部署において単に想定問のアップデートをしていくというだけでは大きな意味はないのかもしれませんけれども、代表取締役あるいは担当役員が自身の問題として、事業年度全体を通して株主目線で何か疑問に思われる点がないかという点検、その疑問にどう回答できるのかという観点からのチェックを行うということであれば、意味のないこととも言い切れないと思います。   また、この制度を考える上での一つのキーになると思われる説明義務につきましては、どこまでが説明義務の範囲内なのかという点がより重要になってくると思われます。この点、会社側としては全株主に通知するという性質上、ある程度狭く解する実務となる可能性があり、それが実際の会場における説明義務における議論、ひいては株主との対話に影響するのではないかという懸念を持っております。   ただ、そうは言いながらも、圧倒的多数の事前の賛成の議決権行使があるにもかかわらず、総会当日での不備等により決議取消しのおそれが生じ得るということについての懸念も理解できますので、反対と申し上げるものではなく、以上述べたようなことも踏まえまして、一定の頻度では開催が必要であるとか、事前の決議の成立についての制度は設けた上で、北村委員もおっしゃっていましたけれども、報告や説明についての会議の開催は必要とするといったように、開催しない状態が続くということのないような形にすることも考えられると思います。   次に、書面決議につきまして、全員の賛成が必要という要件の緩和について検討すること自体はよいと思いますが、例えば、その不明者についての先送りにならないかどうかという点では若干の懸念を持っております。   次に、キャッシュ・アウトにつきまして、これは事前のTOB等がない場合についても含んでいるとしますと、あまり事例はないかもしれませんけれども、そういう場合において特別支配株主の売渡請求に必要な議決権保有割合を9割から3分の2に引き上げるということ自体は賛成しにくいと考えております。キャッシュ・アウトの場合の少数株主の利害関係については、幾らもらって退出できるかという金額面が非常に重要だと考えますが、特別支配株主の売渡請求におきましては、株式併合と異なりまして、株主総会の場での議論や、端数株処理について通常行われております裁判所での非訟手続も不要となりますので、3分の2の賛成でそのような手続のみで足りるのかという懸念を持っております。   他方で、この制度が多く使われるTOB後の完全子会社化の場面につきましては、TOB価格が決められる場合に、より高い価格になるような交渉が行われているという実務を踏まえますと、この要件を緩和するということはあり得るのではないかと考えております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○田中委員 まず、事前の議決権行使によって決議が成立したものとみなす制度についてですが、確かこの部会の初回で、このような制度の導入も考えられるのではないかという意見を述べました。それも勘案して今回提案していただいたと思っておりまして、非常に感謝しております。   ただ、少しこの御提案については、既に多くの委員から御指摘があったところなのですけれども、やはり説明義務について、ここで挙げている③の規制というのは、むしろ現在の株主総会の実務よりもずっと厳しい規制を課すようなことになります。確かに現行法でも、株主総会で説明義務はあるわけですけれども、それは株主総会の審議時間内に審議を終わらせるという制約の中で説明義務を履行すればいいと一般的に解されていまして、このように質問が来たら無限定に回答しなければならない義務では全くないので、③のようなルールを課すと、現行法の総会の規制よりもはるかに厳しい規制になってしまって、会議を省略できるというメリットは吹き飛んでしまうのではないかと思っております。   以前に私、公表した論文でも書いたことなのですけれども、上場会社のようにふだんから法定の開示規制を課されている会社ですと、むしろ株主総会参考書類に書いていない事項を株主総会で説明する方が問題を引き起こすことになるので、説明義務によって新たな情報が株主に開示されるということは期待すべきことではないわけであります。また、事前の議決権によって決議の結果が決まっている、大抵の場合にはその説明で決議の結果も左右されないので、現実的には非常に意義の乏しいものなのです。とはいっても、多くの投資家は、必ずしもそうではないだろうと、質問に対する説明を通じて会社の取締役や経営者の考えが分かることもあるというお考えをお持ちの人もいると思います。しかし、それは株主総会で説明義務を課しているからではなくて、経営者が自分の個性をそこで出しているからでありまして、そこで出されている回答に意味があるのは、会社法が株主総会の開催を法律上義務付けているからではないのです。経営者が自分の意思で投資家に意味のあることを答えているからなのです。株主総会で株主あるいは投資家と取締役、経営者のコミュニケーションを図ることは大事であると、多くの会社はそのように思っていると思うのですけれども、法律上総会の開催を義務付け、更に説明義務違反による決議取消しのリスクを課すことによって本当にそれが図られているのかと、今あるコミュニケーションを維持するために本当に法律上のサンクションが必要なのかと、かえって法律上のサンクションがあることで自由な回答や自由なコミュニケーションが妨げられているところがないかということを検証する必要があると思っております。   そういうことも含めて、私としては今回の事前の議決権行使による決議を成立したものとする措置というのを導入した方がいいと考えているのですが、先ほど申し上げたように、③のようなものを導入するのであれば、デメリットの方がかえって大きくなってしまうので、③については是非再考いただきたいと思います。   ほかの点については、既に御意見があったとおりなのですが、①の点については、やはり定款の定めは必要だと思います。元々この問題に関しては、事前の議決権行使によって決議の帰すうが決まっているときに更に会議体を開く必要があるかということは、会社の意思決定の方法に関することで、定款自治に任せていい事柄なのではないかと考えていたためであります。相当多数の株主は、やはりそういう場合でも会議をすることに意味を認めて、会議の開催を要求することはあり得ると思いますので、やはり定款の定めが必要かなと思っています。逆に、定款の定めがあれば、この提案に書いてあるような、議決権の行使において更にその決議があったものとみなすことについての同意まで重ねて要求する必要はないのではないかと考えております。   以上が1番目についてでありまして、2番目の事前の書面による決議については、これはむしろ上場会社よりも非公開会社を念頭に置いたものかと思いますけれども、全員の一致ではなくて、例えば総議決権の9割の積極的同意と残りの株主が積極的に反対していないということをもって決議が成立したものとみなすという、これは上場会社とはまた別の観点だと思いますけれども、非公開会社においては比較的現実的で、また問題の少ない解決策になるのではないかと思っております。   最後に、キャッシュ・アウトに関してなのですが、これも私、以前から申し上げていることなのですが、日本のキャッシュ・アウト制度は、上場会社を対象にしたものについて言いますと、ほとんどの場合、公開買付けをした後でキャッシュ・アウトをするという2段階買収です。これは主には税制がもたらしているゆがみという部分がありまして、それ自体あまり合理的でない部分があるのですが、ただ、事実としてキャッシュ・アウトが2段階買収の方法で行われていることを前提にしますと、2段階目のキャッシュ・アウトの帰すうが分かっているにもかかわらず株主総会決議を要求するということは、キャッシュ・アウトによる金銭の交付時期が遅れてしまうので、1段階目の公開買付けに一種の強圧性をもたらしてしまうという弊害を持っております。この現実的な弊害のことを重視すべきであると考えております。したがって、今回の手続の見直しも、この2段階買収を前提にした弊害の是正という形に限定するようなルールを作ることが考えられます。これは正に先ほど内田委員がおっしゃったことでありまして、公開買付けを前置している場合に限って、株主総会決議の省略を現行法よりも広く認めるということです。   さらに、こういうルールを設ける機会に、公開買付けを望ましい手続によって行っていることを2段階目の株主総会決議を不要とするための条件にすると、具体的には公開買付けにマジョリティーオブマイノリティーに相当する応募があるということを成立条件にすることで、2段階買収の手続を現在よりもより公正な形にすることができるように思います。そうすることで、投資家の中で、株式買取請求権を行使するまでではないのだけれども、やはりこの買収には賛成でないのだという投資家がいる場合には、公開買付けに応募しないという形で意思を示すこともできることになりますし、公開買付けにMOM条件を付すということによって、より強圧性のない形で買収が行われるようになりますので、こういった方法を是非御検討いただきたいと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○森委員 本件は非常に重要な論点だと考えておりますが、決議成立がほぼ見えている中で開かれる形骸化した株主総会、これを決議取消しリスクを負わせながらやることを何とかしたいというニーズと、そもそも株主総会を開かなくてもよいということにしたいというニーズ、これはやはり分けて考えないと、議論が非常に錯綜してしまうのではないかと思っております。後者のニーズまで、取り分け上場会社について後者のニーズにこたえようとすると、まず投資家の同意を得るのは相当難しいと思いますので、定款変更を要件としてその方向に進んでも、結局、法改正をしたけれども効果がないという形で終わってしまうとことになりかねないかなという気がしております。   例えば、現在の実務で言いますと、株主から事前の質問を受け付けている会社はたくさんありまして、その質問に対して、非常に重要なものですとか株主の関心が高いだろうと思うものをピックアップして総会の当日に答える、若しくは、時間的に答え切れなければ一部はホームページで回答するというような運用をやっている会社はたくさんあると思います。そういった運用は非常に合理的だと思うのですけれども、仮に株主からの質問について全て回答することが義務だということを制度的にしてしまうと、非常に大きな懸念があります。株主からの質問が、業績や経営におよそ関係ない質問だという判断をするのは非常に難しいと思われますので、結局ありとあらゆる質問に対して答えないといけないのではないかというような判断が出てくると思うのです。   例えば、コールセンターに電話したけれども30分待たされたと、これは業績に影響しているのではないかと言われたり、そういったことを放置する経営者は経営能力があるのかと、そういった質問が来たときに、そんなことまで答えなくていいよと言えるのかどうかというところまで、究極的にはあると思うのです。そういったことになりますと、膨大な質問に対して回答しない限り決議の成立に向かって行けず、これまでの議論と重なりますけれども、株主からの質問に対する回答をすることが決議成立の前提であるという要件を立てた途端に、およそ現実的ではない制度になるかと思いますので、そういった点も含めて是非とも、事前確定型決議を導入するにしても要件はよく考えた方がいいということと、導入した場合にそれが機能できるようになるのかどうかというのは、投資家の目線なども含めて、よく見ていく必要あるだろうと思っております。   一方で前者のニーズ、形骸化した株主総会で決議取消しリスクをどこまで負わせるのかというようなところについては、是非とも対応すべき論点だと、ニーズだと思っております。これは前回の会議でも述べましたけれども、説明義務とのバランスはあると思うのですが、例えば、事前の議決権行使によって明らかに決議が成立することが見えている状況において、株主総会当日、出席者をカウントすると、その日の出席者が仮に全員反対したとしてもおよそ賛成が覆らないというのは明確に判断可能となります。そういう意味においては、例えばですけれども、会社法第315条の議長の権限のところに、「株主総会の議長は株主総会の開会後、株主による事前の議決権行使の結果等から決議の成立が明らかであると判断した場合、決議の成立を宣することができる」というような規定を置いてしまって、株主総会の冒頭で決議の成立を議長が宣言できれば、それによって決議成立は終わって、その後の株主総会は、正に質疑応答ですとかコミュニケーションの場、若しくは報告事項に費やすことができるということで、決議取消しリスクを負いながらずっと何時間も運営を続けるという必要がなくなってくると思いますので、会社法第314条の説明義務違反のところで何らかの規定を置くのか、若しくは今言った会社法第315条の議長の権限の規定を置くとか、いろいろ考え方はあろうかと思いますけれども、いずれにしろ総会の運営の在り方のところの考えをより深めて議論するというのも非常に大事かなと思っています。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○藤井委員 まず総論といたしまして、会議体としての株主総会の在り方を見直しまして事前確定型決議ということを創設することには賛同させていただきたいと思っております。私ども発行会社の皆様の株主総会実務の御委託を受けている立場といたしましても、先ほど仁分委員の御発言にもあったとおり、事前に総会決議のすう勢が見えているにもかかわらず、決議取消しリスクに関して入念な準備を行っているという現状の実務負担といったところは軽減し、ただ実務負担が軽減されるだけではなく、これにより株主とより建設的な対話というのが実現されるのであれば、それは非常に望ましい制度なのかなと考えております。一方で今回事務当局からお示しいただいている案については、本制度が普及していくのに当たって一部、実務上の懸念や検討する事項というのはあると考えておりまして、これらを中心に3点ほど発言をさせていただければと思います。   まず1点目につきましては、ほかの多くの委員からもございました事前確定型決議に対する同意というところでございまして、ここは特に定款の定めを必要とされるのであれば、この事前確定型決議の都度の同意というものは不要と考えております。一つの懸念としては、上場企業であれば大多数の会社が私ども証券代行機関に議決権行使の賛否の集計を委託いただいているのですけれども、仮に都度の同意が必要となった場合、今回の資料上は必ずしも明らかになっておらず開かれているのかなと理解しているのですけれども、例えば、特に議案ごとに同意が必要とかいった形になってまいりますと、非常に事務処理が煩雑になるかなと思っておりますし、6月に総会が集中する関係もございまして、一定程度大規模なシステムを組んでいるのですけれども、システム改修というのも一定程度必要になるかなと考えております。加えて、こちらもほかの委員からも御発言がありましたとおり、株主にとっても非常に分かりにくいというところにはなりますので、混乱が懸念されると考えております。   2点目につきましては、こちらも資料上、必ずしも明らかにはなっていないと理解しているのですが、決議成立がどのタイミングになるのかというところと思っております。具体的には、決議成立のタイミングが一定の時より前に可決要件を満たしたときにどうなるのかといったところが少し気になっております。仮に、可決要件を満たしたときに決議が成立したとなりますと、これは実務上ワークしないのではないかと懸念をしております。   例えば、普通決議であれば可決要件を満たすとき、50%を超えた時点というところになると思うのですけれども、現状の実務として、発行会社様にそのような情報をタイムリーにお知らせするというような枠組みというのは存在しておりませんので、先ほど申し上げたシステム改修ほどではないかもしれないですけれども、何らかお知らせする手立てみたいなものは考えていかないといけないと思っております。。   更に申し上げますと、前回、私の参考資料でもお示しさせていただいておりますけれども、現状、上場企業の9割弱の会社が電子投票による議決権行使というのも採用している状況で、議決権行使期限まではその賛否というのを変えられるというのが一般的であるかなと考えております。例えばなのですけれども、よくある事例としては、会社提案議案に対して議決権行使助言会社などが反対推奨レポートみたいなものを出した際に、反対株主との対話みたいなものが現状、上場会社であれば行う実務があろうかと思うのですけれども、こういった実務の意味合いとか、あとは臨時報告書における賛成率の開示とか、こういったところも大分変わってくるのではないかと思っておりまして、この辺の整理が必要なのかなと思っております。   最後に3点目ですけれども、これもほかの委員から多く御発言があったところでございますけれども、株主からの質問の受付というところでございまして、参考書類で十分開示されているという前提に立っているのですけれども、もし仮にこの質問受付というのをしていく必要があるとなった場合に、先ほど事務当局でも、決議が成立した後に通知をするといったところは少し実務を配慮したとおっしゃっていただいたかと思うのですけれども、もし仮にこういったことが導入されるのであれば、都度、決議までに開示していくというのは発行会社の負担が非常に重たいのではないかとは考えております。   更に申し上げますと、事前質問権の行使方法が、電話とかメール、お手紙、議決権行使書面に記載するとか、いろいろな方法が考えられるのではないかと考えておりまして、株主がいろいろ会社にアプローチする方法があればあるほど、発行会社の負担というのは増すのかなとも考えておりますので、事前の質問をもし受け付けるとなった場合に、どのようなルートであっても拾い上げないといけなくなると、ここも非常に負担が大きい部分になってくるのではないかと思いますので、合理的な範囲で制限を加えるような、何か手立てが必要になるのかなと感じた次第でございます。   最後になのですけれども、先ほどの議論で書面交付請求については廃止という意見がほとんどであったとは認識しているのですけれども、もし仮に続くということであれば、株主からの質問の回答とか、あと決議結果につきましては書面交付請求制度の対象外とするということも必要なのかなと考えております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○矢野幹事 豊田委員と重複するところもありますので、手短にお話しさせていただければと思います。   第1の点につきましては、まず全般的には、私自身としては消極的な意見を持っているということは申し上げたいと思います。まず最初に事前確定関係、書面決議の前の部分についてお話ししたいと思いますけれども、株主総会の実施に手間も費用も掛かっているということは全く否定するところもありませんけれども、それだからといって株主にとって確実に回答が得られる唯一の場ともいえる株主総会そのものを開催しなくていいとか、場合によっては開催しないのが原則になっていくというのは、少し飛躍しすぎているのかなと考えています。資料記載の諸外国の例を見ましても、そこまで極端な制度を採用している例はないのかなと思いました。それが世界の最先端を行くのだということであればいいのですけれども、そんな感じも印象としては受けておりませんので、やはり少し議論としては飛躍すぎているという結論になっているかと思います。そうした観点から消極的な意見を有しているということでありますけれども、強いて要件を考えるならば、部会資料の2ページのような要件となっていかざるを得ないのかなとは思いました。ただ、ワークしないだろうというところにつきましては、これまで委員、幹事の先生方から御意見があったとおりかというのは私も思います。   そこで、とはいえ負担軽減の趣旨ということであれば、株主総会そのものを開かないということではなくて、具体的な負担の内容を明らかとして、それを軽減する方策を考えていくのがやはり筋であろうとは思います。久保田委員から最初に趣旨の確認等がありましたけれども、それと同じでございまして、その負担の本質的なところが現状少しはっきりしていないかなというところもありますので、その辺りをもう少しはっきりさせて、方策を考えていただきたいと思います。   もう少し具体的に申し上げると、部会資料の12ページ辺りにありますように、決議取消しの要件を整理して、一定の場合には決議取消しにならないといったことを定めるということは十分にあり得るとも思いますし、ほかにも、これまで話は出ていないかと思いますけれども、議案に対する当日の修正動議への対応の負担というのは実務上あり得る話で、当日ひっくり返っている例も確かにありますので、例えばですけれども、議案に対する修正動議は総会の何日か前、一定の日までに会社に通知しなければ行使できないといった形で修正を掛けるといったこともあり得るとは思っています。   この辺りは、まず一旦以上で、次に書面決議関係のところについてお話ししたいと思います。書面決議関係の見直しにつきましては、この見直しは昔から積み上がってきた問題を解消しないまま先送りする制度であると考えていますので、現時点でするのは時期尚早であると考えています。もう少し具体的に申し述べさせていただきますけれども、実務上、所在不明株主の問題などから書面決議ができないという事例は多々ありまして、実際、書面決議制度も所在不明株主制度も私も多く事例としては経験をしているところです。ただ、実際の問題としまして、100%子会社などでなければ定時総会で使うことはほとんどなくて、臨時総会で使うということがほとんどですけれども、少なくとも総会開催までの1週間を待つことができないほどの緊急事態が発生したということは私は経験上、一度もありません。また、実際の実務運用からしましても、連絡が取れる株主さんから書面決議への同意の判子をもらう手間と、株主総会の委任状に判子をもらう手間とでは、さほど違いはないという現状もありますし、場合によっては書面決議をもらうために複数回に分けて説明をしなければならないという場合もありまして、実は1回で済む株主総会の方が楽ということも多々あります。こうした点を考えましても、書面決議制度を見直さないといけないという立法事実は乏しいと考えています。   逆に、緩和することで所在不明株主への対応をより先送りしやすくなってしまうという問題が発生すると考えておりまして、現状人口減少社会に入っている我が国においては、所在不明株主の問題というのは今後ますます増えていくのだろうと思っています。実務上は実はもう結構問題になっているのですけれども、これは別に今発生しているというわけではなくて、過去から発生した問題が先送りになっていて今たまっているという結果であるということも多いのが現状です。こうしたことを考えますと、今必要な施策は、所在不明株主への対応を本腰を入れてやれるような施策を考えていただくということであって書面決議を緩和して先送りをするということではないと考えます。   具体的な施策としましては、所在不明株主を解消するためのすべの法改正の必要性の検討だとか、実務上の処理の改善、あと、特に中小企業に対しては対策のための費用の補助といった面が非常に重要になると考えていますので、そうしたものをまず、関係各所には検討していただきたいと私個人としては考えています。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○松尾幹事 まず第1の点ですけれども、私は第1回の会議で、事前確定型決議との関係で、決議取消事由の整理で足りるのではないかという発言を致しましたけれども、その際は、事前確定型決議の制度により決議が事前に確定した場合には総会は当日開催しないということを前提に申し上げておりました。ところが今日、多数の方から御発言があったように、事前確定型の決議の制度をとったとしてもなお、報告の場ですとか意見陳述の場ですとか、あるいは質疑応答の場として、総会の開催はやはりしないといけないのだということになりますと、私が申し上げた前提は少し違ってきまして、また別の点で考える、比較すべきことが出てくるように思います。   それは一つは、松中幹事から御指摘があったように、定款の定めを必要とするのか、それとも定款の定めがない会社においても一般的に、こういった事前の議決権行使で結果が確定している場合には当日の議事運営に関することは決議の効力に影響しないというような制度を設けるのかという点が違ってくるということです。もう一つは、森委員から御指摘がありましたけれども、会議を開催しないといけないということにするのであれば、事前確定ということにこだわる必要はないので、総会の前日までの議決権行使で決議の成立に必要な議決権行使があった、賛成があったということが確定した場合には、総会の冒頭で決議の成立を宣言し、それ以降のことは決議の効力には影響しないというような整理をするということもできるかと思いますので、そういった形で第1回の会議で申し上げたことを整理をしていただくのがよいように思いました。   それから、8ページの辺りで書いていただいている事前の質問と説明義務のことですけれども、これは事前に出た質問に全て答えないといけないということにしますと、全くワークしないでしょうし、現行ルールよりもかなり重い負担になるという御指摘はごもっともかと思います。一方で事前に質問の内容とそれへの回答が公表される、他の株主にも提供されるというメリットがあるということはこちらに書かれているとおりで、それは否定できないことかと思います。そうすると例えば、会社が任意に事前の質問に答えることにして回答を電子提供したような場合には、当日はその質問については既にウェブサイトで御回答済みですという形で回答したことにできるというようなことにすると、よいところだけ取れるのではないかと。これは事前確定型決議の制度を導入するか否かにかかわらず、できれば株主の質問一般についてそのような制度を設けていただくとよいのではないかと考えておりますが、それは今回の検討の範囲を超えるかもしれませんので、御参考までということでございます。   最後、キャッシュ・アウトについてですけれども、これは田中委員のおっしゃったことを裏からみたようなことを申し上げるのですが、現行のルールは公開買付けの前置を必須としておりませんし、更に言いますと、非公開会社にも適用がある制度として特別支配株主の売渡請求は設計されている。その適用範囲を変えないまま保有株式要件の引下げをし、かつ複数株主の保有部分の合算を認めますと、これはかなり弊害として大きいものもあるのではないかと。例えば、幾つかの株主グループに分かれている非公開会社において株主間で対立が生じたときに多数派が組んで3分の2を押さえて対立する少数派を締め出すというような形でも利用することができる、しかもその場合に決議を必要としないということになりますので、第831条第1項第3号による救済も少数派には残されていないということになってしまいます。もし保有要件の引下げ、あるいは複数株主の保有分の合算を認めるということになるのであれば、やはり適用範囲の見直しということも併せて必要ではないかと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○石井委員 まず、事前の議決権の行使により株主総会の決議があったものとみなす制度について、株主総会が、1クオーターで投入した対応工数やエネルギーに対して、結果的にセレモニー的な場となっているケースというのは残念ながら多いと感じています。ただ一方で、企業としては通年ベースで、海外も含めてIRやSR活動、あと個人株主向け説明会、メーカーであれば工場見学会といったイベントの実施や、デジタルを活用した情報発信など、通年で企業が独自に工夫を凝らして企業広報に組み込んだ形で株主とのコミュニケーションの機会を増やしていることも、実態としてかなり増えてきていると思います。また、開示面から見ても、有価証券報告書や統合報告書など、情報の裾野というのは非常に広がっておりまして、それらはネットを通じて株主も容易にアクセスできる状態になっています。それらを踏まえると、今回この株主総会プロセスの効率化・合理化の方向で、事前の議決権の行使によって株主総会の決議があったものとみなす制度の創設の検討を進めることに賛同いたします。これにより、企業にとって総会の運営手続のバリエーションが広がっていくと思います。例えば、会場を1年前に押さえている会社ではキャンセルができないため、実施するという形になると思います。逆に、自社でバーチャル開催の企業では、やらないという選択も当然あると思います。そういったバリエーションが広がることは、各社の実態に応じた業務効率化だけでなく、効率化により、株主総会に限らない対話促進や手段の多様化につながり、株主利益にも資するものではないかと考えています。   今回の資料でたたき台案を御提示いただいており、具体的な実務上の要件の手続がイメージできて非常に有り難いと思っています。株主総会の効率化、合理化には、やはり株主理解も含めて乗り越えるべき課題も多いと非常に実感した次第です。定款要件は、議論になると思いますが、事前確定型決議は、一定の時までに株主の意思を問い、以降の翻意は認めないという性質のものであるから、資料に記載いただいたように株主権の縮小につながるとも言えるのではないかと思いますので、個人的には、定款の定めをもって株主の同意を通した方がいいと考えています。ただ、それ以降の事前確定型決議に対する同意や決議の対象となる議案の限定、株主質問に対する説明義務などについては、規律は不要ではないかと個人的には考えています。   説明義務の規律化は、逆に質問権のハードルが下がって、企業として効率化・合理化につながらないリスクもあると思います。冒頭申し上げたとおり、企業としては総会前の参考書類も含め、年間を通じて企業通年ベースで、さまざまな情報を相当程度株主に提示していますので、定款要件をもって、規律化不要ということにしていただき、あとは会社の任意対応というレベルでいいのではないかと思っております。   それから、対象となる会社の範囲ですけれども、非上場会社についても、具体的な要望等は確認していないですが、株主総会での決議が事前に見通せることもあると思いますし、特に株主が相当数数多い会社についてもニーズは考えられるということで、間口を広げ、上場・非上場を問わず、書面又は電磁的方法により議決権の行使がされる会社を対象としていただくことでよろしいのではないかと思っています。   次に、書面決議要件の緩和については非上場会社、特に比較的規模の小さい会社を中心に、意思決定の迅速化や間接部門の業務効率化の見地から、ニーズはあるのではないかと考えています。よって要件緩和に賛成いたします。   また、上場会社から見ても、非上場子会社の総会実務等、運営の合理化にもつながる可能性もあるのかなと思っています。ただし、株主と経営陣の距離感が近い会社も当然あると思います。議案によっては後から少数株主の異議等のリスクを防ぐため、定款の定めをもって株主の意思を確認するということはやっておいた方がいいのではないかと考えております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。   まだ議論の途中ではございますけれども、部会資料4の第1につきまして、まだ複数の方が御発言を希望されております。今日は1時から開始しているということもございますので、ここで15分ほど休憩を入れさせていただき、その後、また第1のところから議論を再開したいと思います。           (休     憩) ○神作部会長 それでは、皆様おそろいのようでございますので、再開いたします。   部会資料4「第1 「会議体」としての株主総会に関する規律の見直し」につきまして、意見交換を継続したいと存じます。御意見のある方は挙手、またオンラインで御参加の方は手を挙げる機能等で発言の意思をお知らせください。いかがでしょうか。 ○久保田委員 最初の方で内田委員と臼井委員から御発言があり、機関投資家の方々が会議体としての株主総会を開催しなくてよいということに対して警戒感をお持ちであり、会議体としての株主総会というものを重視されているということがよく分かりまして、大変参考になりました。ただ、御発言をお聞きしていて私が少し分からなかったのが、機関投資家の方々は、決議の結果が確定した後に開催される、株主総会決議が取り消される余地のないような、言わば任意の会議体としての株主総会が開催されればそれでよいのか、それとも従来型の株主総会決議取消しの対象になるような会議体としての株主総会が開催されることが必須なのかということです。そのいずれなのかによって大分今後の議論も変わるのではないかと考えられるため、機関投資家の方々が重視されているのはどの辺なのか、いずれの株主総会の開催が必要であるとお考えなのかについて、もし可能であれば、教えていただければ有り難く思います。 ○神作部会長 ただいま内田委員又は臼井委員に対する御質問があったかと思いますけれども、お答えいただけますでしょうか。 ○臼井委員 投資家の立場としては、企業の、特に経営陣と実のある対話をしたいというニーズがまず、出発点としてございます。そのために、適切な緊張感のある対話の場であることは重要と思っていますが、一方で瑣末な理由で取消事由に該当するような、そういった運営を望んでいるわけではないということを申し上げたいと思います。   そうした中で、株主総会に実際に参加し、その場で経営陣と必要に応じて対話を行える場が残されているということは、株主の権利として非常に重要と思っております。株主総会に限らず、投資家として1年間を通じて建設的な対話を行うために、経営陣との面談も含め投資先企業とのコミュニケーションを図っておりますが、企業によっては面談の機会が適切に提供されず、対話が思うように行えないケースもございます。こうした事情も踏まえますと、やはり株主総会は非常に重要な場であると考えております。 ○久保田委員 ありがとうございます。 ○神作部会長 内田委員から補足等はございますか。 ○内田委員 冒頭に申し上げましたが、基本的な問題意識は久保田委員と同じです。事前投票によって投票のすう勢が決まっているとの事実がある中で、総会が形骸化していることは強く思っています。ただ、それに対して総会を開かないことによるメリットが果たしてそれを上回るのかどうかに確証が持てないということです。一つ申し上げたのは、事務負担は結局のところあまり軽減されないのではないかということです。それから、法務省の部会資料に、事前に投票を決めて確定した場合投票の結果を覆さないというようなチェックボックス方式のような話がありましたが、機関投資家はおそらくそれについてはチェックを入れないだろうと思うのです。総会まで、動議できる権限、オプションを維持しながら、何が起こるか分からないので行使権限は最大限残しておくと思います。これで終わりということにはならないと思います。そうすると、最終的に、事務負担が軽減するとか、投資家がこれでいいという形で決議の決定を終了させることにはならないだろうと考えると、これを導入するメリットが本当にあるのかということが本質的なところであります。加えて、投資家がどう考えるかとか一般的に後退と見られるかという点では、そこは表面的、表層的に捉えられたりするので、総会をなくすというニュースフローだけが独り歩きする弊害も、これは付随的であまり大きな要因ではないのですが、懸念として考えておかなければならないと思います。あくまでも総会をなくすことによって負担が軽減されるメリットが少し見えにくいと思っています。 ○久保田委員 よく分かりました。ありがとうございます。もう少し考えてみたいと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○齊藤委員 既に出た御意見等に屋上屋を架すことになるかもしれませんけれども、私の意見も申し述べさせていただきます。   まず、事前確定型決議につきましては、私の立場は臼井委員と似ているのですが、かつてのように株式持ち合い等によって株主総会が短時間で終わることが当然であった時代とは異なり、広く資本市場から投資を呼び込みたいということでございましたら、広く投資家、株主に、自分たちが経営陣としての地位にあることの正当性を説得し得るような人材が経営を担うことが求められるのではないかと思われまして、そのような幹部育成や経営陣の候補者の探索を阻害しない立法が望ましく、反対のメッセージを発するような改正はするべきではないように思います。   ただ、田中委員の御発言を踏まえますと、これは法定の説明義務の問題というよりも会議体の開催の仕方の問題であるように思われます。株主総会以外の場で、各企業が、様々な株主との対話を進めていることは承知しておりますが、エンゲージメントと株主総会の違いの一つは、後者においては、会社側が出席者を選別することができない、あるいは対話の仕方や伝える内容を相手ごとに変えることができないという点にございまして、エンゲージメントと会議体としての株主総会とは必ずしも、相互に代替し得るようなものではないように思います。   ただ、そのような点に鑑みましても、株主総会の決議の成否に直接影響がないようなことについてまで、必要以上に慎重に、また過剰なコストが掛かっているのであれば、合理的な運営を実現するための制度的な手当てを考えることは意義があるように思われます。もっとも、例えば会場確保のコストや事前準備のコスト削減という点につきましては、既に御指摘もありましたように、事前確定型の決議の制度の導入で実現し得る問題ではないように思われ、むしろバーチャル株主総会の導入に委ねられるべき課題ではないかと思われます。   他方で、事前確定型決議の例はドイツにはないというような御紹介があるのですけれども、バーチャル株主総会の導入の立法論のときに似たような議論は現地でもあったようでございます。バーチャル株主総会の導入に際して、株主総会の在り方自体を見直し、当日は投票だけにしつつ、株主の質問への対応は、事前に行うことを通じてアカウンタビリティーを果たさせるという立法提案もかなり有力に主張されていたようです。実際に最終的に立法で実現したバーチャル株主総会制度は、ドイツでは、かなり対面型に近いものになりましたが、事前確定型の決議のアイデアというのは、ドイツでも全く考えられないものでとはいえないと思われます。   この制度に求めるべきなのは、一部の非合理な行動をする株主の行動への対処ではないかと思われるのですが、それは決議取消制度を少し調整するだけでは足りないのかもしれないとも思われます。というのは、却下事由に該当するような事案であっても、一通り弁論等をしてから判決を下すことになろうと思いますので、裁判のコストが削減されるわけではないかもしれないからです。   現時点での私の意見は、森委員が御指摘になったところと近く、事前の議決権行使と当日の出欠状況を踏まえても決議が成立することが明らかであれば、その会議の冒頭で一括で決議を成立させて、当該議案との関係では説明義務違反の問題は生じさせないようにするのがよいのではないかと思われます。もしかしたら、望ましい運営として、役員の選任議案は別に扱うべきであるということもあるかもしれませんけれども、各論として議論すればよいのではないかと思います。このような一括決議について、事前の情報提供の瑕疵以外は取消事由としないということも明らかにすることなどが考えられるかと思います。このようなケースは、個々の決議につき決議要件を実体的に満たすと言い得るので、現行法の解釈でも認められる余地があるかもしれませんが、立法で明確にした方がやりやすいと思われます。   次に、書面決議の柔軟化でございますが、主に非上場会社などでニーズがあるとは存じますものの、矢野幹事がおっしゃったことと同じような意見を持っております。また、非上場会社におきましては、少数株主の関心や利害関係は上場会社の株主よりも多様で複雑な場合もございますので、経営陣などに対して反対する株主が潜在的にいるところで会議体を全く開催しないのは、たとえそのような株主の持株比率や議決権比率が少なかったとしても慎重に考えるべきではないかと思います。所在不明株主の消極的な同意を確認するという制度があるとすると、多少、効率化に資するかもしれません。   キャッシュ・アウトにつきましては、特別決議でキャッシュ・アウトができる日本の状況は、望ましいものであると私も思っております。欧州では、TOB後のキャッシュ・アウトには9割など圧倒的多数の議決権取得が必要なのですけれども、ETFの増加やアクティビティストの活動により、キャッシュ・アウトの円滑な実現が困難になっていることが問題となっており、必要な議決権比率を下げるべきであるという議論も欧州では強く主張されているのに対して、日本ではそのような問題から免れていると思います。ただ、株主総会開催のコストが下がりますと、もしかしたら株主総会の開催が負担であるという問題はある程度解決するのかもしれませんし、株主総会の開催がなお負担であるために廃止するべきであるということでございましたら、低い賛同しか得られていない場合のキャッシュ・アウトにつきまして、少数株主を締め出すことの正当性を確認する別途の手当てが要るかなと思います。その手当てにつきましてはいろいろな御意見があり得るかと思いますし、私もまた考えたいと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○白井幹事 事前確定型決議について意見を述べさせていただければと思います。まず、部会資料の5ページ目から始まります要件について拝読いたしまして、多くの委員、幹事の先生方と同様に、私もやはり、部会資料6ページに要件として挙げられている(1)の定款の定め及び(2)の決議要件の充足という二つの要件は、事前確定型決議を認めるに当たっては少なくとも満たしている必要があると考えます。そうしますと、(2)の決議要件の充足という要件がある以上は、これも既に何人かの委員・幹事の先生方から御指摘があったところだと思いますが、結局のところ、総会の直前まで総会決議が必要かどうかというのは分からないという制度設計にならざるを得ないと思いますので、そうしますと制度導入に伴う会社の便益としては、総会開催の事務コストの削減という点では、やはり限定的であると考えざるを得ないといえそうです。   そういたしますと、制度導入に伴う最大のメリットとしては、総会当日のやりとり等に起因する総会決議取消しに対する不安を解消できる、というところになってくるかと思いますが、そのようなメリットを享受するために、事前確定型決議という仕組みを大々的に導入するのか、それとも決議取消事由の見直しで対応するのかについては、意見は分かれ得ると思うのですけれども、考え方としてはどちらもあり得るところだと思っています。つまり、事前確定型決議という制度を用意し、総会の物理的な開催は決議要件を満たした場合には直前に不要にできるという仕組みを設けて、併せて決議取消事由の見直しについても検討するというやり方もあると思いますし、また別の考え方としては、現状と同様に、事前に決議要件を充足していても法的な意味での株主総会は物理的に開くこととし、決議の成否につき事前の投票結果と変わらないのであれば決議取消事由のところを緩和するというものが考えられ、制度設計の大きな方向性としては2通りあるといえそうです。この点、どちらの方向性が望ましいかにつきましては、内田委員や臼井委員から御指摘がありましたように、投資家からのガバナンス後退への懸念が強く、中でも海外の機関投資家から総会はやはり物理的に開催した方がよいという意見が強いのであれば、先程も申しましたように総会を不開催とすることの会社の便益は限定的であるように思われますので、事前確定型決議という仕組みは設けずに決議取消事由の見直しだけで対応するというやり方も、選択肢としては十分にあり得るかと思っております。   その上で、いずれにせよ決議取消事由を見直した方がよいのではないかというのは、多くの委員、幹事の先生方の意見だと思うのですけれども、この場合につきましても、決議取消事由を何か限定するという形で仕組みを設けるのか、それとも裁量棄却のところで、取り分け瑕疵の重大性(「その違反する事実が重大でなく」の要件)のところでみなし規定や推定規定を設けるのか、いろいろとやり方はあると思うのですけれども、決議取消事由の見直しにつきましても、制度設計の在り方や方向性というのはいろいろとあり得るところかもしれません。   個人的な意見といたしましては、決議要件を充足している事案であっても総会当日に事前の投票内容を撤回することは現状では可能である以上、総会を物理的に不要にしてよいというところまで思い切ることにはやや躊躇を覚えておりまして、ガバナンスの後退が懸念されるとか、投資家としても年に1回は役員の顔を見て話をする緊張感のある機会が必要だといった意見が強いのであれば、今回は決議取消事由の見直しだけで対応するというやり方も十分に考えられるのではないかと感じた次第です。総会の開催を物理的に不要とする事前確定型決議の制度を導入するとしても、結局のところ、総会当日のやりとり等に起因する総会決議取消しに対する不安を解消するというのがその主なメリットなのだとしたら、総会はやはり物理的に開いた上で決議取消事由の見直しで対応するという考え方にも合理性が認められ、選択肢の一つに含めてもよいのではないかと考えております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○松井(智)委員 私も今回の事前確定型の総会の提案について、特に期限というものが設定されていますので、その意味について少し考えたところを述べたいと思います。   この期限の効果ですが、まず第1に、一定の時までに確定した意思表示を算定し、もしも要件を満たせば法律上のリスクのない事実的な集会のみが開かれるとなる点が一つ目の特徴ではないかと思います。この効果について、実は賛成票が多くてルーティン的な総会の意味があまりないような会社よりも、総会決議の成立が本当に危ぶまれるような会社でどう使われるかという点について、一応思考実験をしておくということが必要ではないかと考えました。   近年の変化として、提案株主も会社も、比較的低コストで株主に強いインパクトのあるメッセージを出しやすくなっていることがあるかと思います。例えば、近年招集通知の発送後、総会前のタイミングで経営者の不祥事などが記事になり、選任否決が見込まれるために取締役候補者が辞退をするというようなことがニュースになったりいたしますけれども、瞬間風速として経営陣の批判や支持が強まった時点で議決権行使が来るように、株主も会社も戦略的に行動するようになってきているのではないかと思います。このようなときに、特定の株主の動向に不安があるという会社は、事前の票の確定ができる制度であれば、不案材料が出される前に早めに期限を設定し、過半数を達成してしまいたい、あるいは現行の電子投票のように一定の時点まで書換えが可能な方式についても、ある程度書換えが制限できるような方法はないかというような形で、一度可決要件を満たしたら決議が成立したとできる運用してしまいたいと考える可能性があり、全体として議決権行使の準備期間を狭める結果になる可能性があるかと思います。この場合、たとえ個別に株主が事前に同意をしていたとしても、この同意の内容が有効だったのかどうかが少し危ぶまれるのではないかと考えました。   もっとも、どのような時間軸で株主の意思が形成されることが望ましいのかといういわば選挙の価値観についてでございますが、現時点ではその望ましさというのは、それ自体少しあやふやな部分がございまして、特定の投票期限が示されていれば、結局その直前、最後のタイミングで主張したものが強くなるということで、提案株主も会社もそれを前提に活動するということもあるかもしれず、また、現行の選挙でも事後的に変更不能な事前の投票が許されておりまして、この事前の投票後に政権の支持率が大きく変わるような政策の成果が上がっても再投票が許されていないということを考えると、そういうものだという割り切りもないわけではないかなとは思いますので、この点が決め手になるかということは分からないのですけれども、期限についてはいろいろな当事者の戦略的な行動ということを誘発する可能性を考えながら制度を作る必要はあるかなと思いました。   もし総会の準備についてのコスト削減効果というものが見込めないのであれば、保守的に期限はなるべく長めに取ることとして、松尾幹事がおっしゃっていたかと思いますが、例えば総会前日などに確定ができるかどうかということをチェックする、そこでオーケーであれば総会としての取消しリスクは負担しない集会というものが開かれるというようなミニマムな制度でも、現在提案されているものと実質的な効果はあまり変わらないのではないかと考えました。   また、期限というものは、もう一つ事前の質問とひもづけられていたかと思いますが、これも既にほかの方々もおっしゃっておられたかと思いますが、現在の提案では結局、期限前に質問を聞かずに議決権を行使する者と、質問を見て回答を見るまで議決権行使を控える者というのが出てきて、その期限前の人たちが一定の水準に達していれば集会が法律上の総会になるのかどうかが決まるというふうになっていて、事前質問との関係でも期限の効果というのはあまり意味がないような気がいたしました。   また、できるだけ速やかに回答するということが書かれているのですけれども、これもフェアディスクロージャーがある以上、説明できる内容は一定水準にとどまりますので、例えば、出てきた質問が全部並べて開示されたとしても、ここについては参照してもらいたい箇所として既にディスクローズされている資料のこのページを見てくださいというような回答をする以上に、大したことはもう答えられないのではないかと考え、それ以上の回答はボランティアベースで行うということにとどまるのではないかと思います。出た質問が全部並んでいることによって、例えば特定の質問に選択的に答えないというのはなぜなのかといったような問題は出てくるかもしれませんし、先にそういった回答を定型的にしていると、当日の再度の質問というのは抑制するという効果はあるかと思いますが。こういった点についても別に期限を定めてそれより前に質問をしてもらい速やかに答えるというところに制度的な必要性というのはあまりないような気がいたしまして、そういう意味では、総会という法的なリスクを負担しない集会というものは考え得る一方で、この制度について期限との関係で考え直すということはあり得るかなと考えた次第です。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○藤田委員 もう話は出尽くしているようなところもあるので、重なるところもあるかと思いますが、念のためにお話しさせてください。また、皆さんと意見がやや違うところもあるので、その点も触れたいと思います。   まず大前提ですけれども、株主総会について会議体による意思決定を絶対視する必要はないというのは、私もそういう意見です。株主の多くが現実に集まるというのはフィクションですし、法的に絶対守られなければいけないとは思っていません。問題はどういう形で例外を作るかということで、その際に、理屈がないまま制度を作るのはやはりやめた方がいいだろうということです。また、会議体の要請の方に手を付けないで、取消事由の話だけで実務的な懸念、会議体を要求する建前に対する不満についての懸念に対処するというのも考えられるかもしれないけれども、それはそれでまた、理屈をやはり考える必要はあるのだろうと思います。   最後に、会議体でない意思決定を採用することについて機関投資家などから不満が出そうだろうということは、私もそうではないかとは思います。その場合の対応として、だからおよそ会社法上そういうものは駄目だとして切るのか、それとも、会社法上は絶対駄目とは言わないけれども、それとは別にソフトローなどで上場会社についての在り方として規制していくのがいいかということを考えると、後者もあるのかなと思うので、会議体は絶対に必要だという方向をとらない場合にどこまで緩和できるかということを差し当たりは検討したいと思っております。そういう観点からは、例えばここで提案が上がっている事前確定型決議などというのも検討の俎上には上ってもいいのだと思います。   また、事前確定型決議という制度を考えるのであれば、今の提案は基本的なベースにはなるのだろうとは思います。ただ、いろいろなところに意見が出ましたので、私もそこについてコメントしたいと思います。事前確定型決議を導入するに当たって恐らく重要なのは、あまり強調されなかったのですけれども、株主が現在の書面投票とは違うことをやっているのだということを誤解しないで選択して投票することを確保するという点だと思います。現在の書面投票は事前に投票するけれども、いつでも当日まで撤回できるし、当日出席すればそれが撤回されるというのが前提で、事前確定型決議とは法的な作りが違います。実際に本当に当日までに意見を変える人がどれだけいるのですかというと、それはほとんどいないとは思いますけれども、立て付けはそうなっているし、そういう前提で行動しているということが一応建前なのだと思います。したがって、現在の書面投票制度をそのままの形で維持しながら、事前の賛成が多数になったらあとは決議しなくてよいという作りは、さすがに便宜的すぎ、他人の投票の結果次第で元々の投票の性格が変わるという作りになってしまうことが問題だと思います。だから、伝統的な書面投票と違って、ひょっとしたら当該議決権の行使でファイナルになってしまうかもしれないということを理解の上で投票して、そういう投票のうち賛成票が多数に上ったのだったらそれだけで決議が成立することにしてよいというのが、現在のこの提案の骨子というか一番重要なポイントとなっており、そこがクリアできているのであれば、こういう制度を導入するのも論理的には十分可能なのだと思い、その意味では賛成です。   その上で、いろいろ細かな点になってくるのですが、例えば、要件として挙がっている①の括弧書きで、定款による定めを要求すること自身はいいと思うのですが、その上で株主総会決議があったものとみなすことに同意した株主の投票だけカウントするということが、ここまでの議論では著しく評判が悪いようです。確かに定款の定めがあるのに、改めて同意を要求するのはトゥーマッチな気もしますし、批判も分かるのですが、これを入れたら実際にどうなるかというと、恐らく会社から送付される議決権行使書面の中に、本書面を返送すれば賛成が一定数に上ると決議が成立したものとみなして総会を開催しないまま決議が成立することになることに同意しますという一文を、文章はもう少しきちんとしたものにしなければいけないと思いますけれども、そういう内容の文章を一文入れて、返送させるということになるのではないかと思います。事務局からの御回答でチェックボックスにすると言われましたが、必ずチェックボックスを設けなくてはならないというのではなく、そういう形で賛成しますという一文を入れた用紙を配布することを最低限要求しているだけであれば、要件が極端に加重されるわけではないと思います。また、この一文が入っていればそんなものに賛成するはずないとおっしゃるのであれば、それは株主の誤解・混乱ではなくて、株主がこの制度に納得していないということなので、それで事前確定型決議は成立しなくても仕方ないのだと思います。   だから、この要件は、実質としては、通常の書面投票とは異なりますよという警告といった意味合いを持つようなリマインドを株主にしろということなのだと思います。だから、そういうものとして要件として残してもよいように思うのですが、ただ、どうしても同意という言葉が気になるのであれば、また、同意とすると、必ず株主が積極的に何か記入しなくてはならないことになるというのであれば、別途議決権行使書の記載事項の規律で通常の書面投票とは異なることを明示するという形で、同意を要件から外すというのはあり得るのかもしれません。いずれにせよ、これは株主が自分の投票の性格についてリマインドされた、それを認識して投票することを確保するために、どんな手続を置くのが適当かという角度から考えればいいのだと思います。   ③の質問に対する説明は非常に気になる点です。何点かあるのですが、現在の提案だと決議の成立までに説明する必要はなくて、逆に言うと、説明を受けられないまま決議が成立する事態が生じることになります。それ自体は私は問題ないと思います。それが不満で、説明を聞いてから投票したいのであれば、そもそも事前の議決権を行使しない自由があるのですから、それを放棄して投票するのであれば、それはそれでいいと思います。ただ、多くの方が指摘されたように、役員の説明義務は本来は議決権行使のために必要な説明を行うもの、議決権の行使のために必要な情報を得るための手段として現行法は位置付けて規定されているので、決議の成立の後で説明すればよいという制度にしてしまうと、少なくとも性格が大きく変わります。ここでは説明義務の代わりという位置付けで提案されているようですが、これはむしろ説明義務に対応するものではなくて、決議成立後にされる一種コミュニケーションの話をしているというべきでしょう。だから、説明義務に対応するものとして規定するのはややミスリーディングです。   そうなってくると、そもそもそういうコミュニケーションを法律上の義務として書く必要があるのかという疑問は、それなりに筋の通った疑問だと思いますし、仮にこれを課すとしても、全て書面で回答しろとか、株主に通知しろとかいうのは何か違うような気はします。少なくとも決議成立後に説明あるいはコミュニケーションのためだけの会合、株主説明会なのか株主懇談会なのか、呼び方はいろいろあるでしょうが、そういったものをやるのであれば、そこで質問を取り上げて説明すれば十分だと思います。正確に言うと、事前に質問した人が事後に行われるこの種の会合で現に質問したら答えなければいけないという程度で十分なのだと思いますし、また、現在説明義務について課せられている様々な制約はそのままかぶる形で、その限度で答えればいい、少なくとも現在の説明よりも過重なことは要求しないということです。ただし、既に決議は成立しているので説明のミスは取消事由にならないという意味では気分としては楽という形にすれば十二分だと思います。現在こういう会合、株主説明会みたいなものは禁止されているわけではありませんで、自由に開くことができるのですが、だからそういったものを法定の会合にして、そこで説明すればどうこうという要件は多分書けないと思うのですが、ただ、少なくともそういう説明の仕方を排除しないような形での株主に対する事後的な説明という形にしてもらえればよいと思います。   決議事項は、いろいろ考え方がありますが、議題を限定する必要はないと思います。意見陳述権みたいなものは、会議体としての総会がされない場合の適切な代替手段を設ければいいと思いますし、その後の説明の会合があるのであれば、そこで陳述させればいいですし、その後の会合をしないというのであれば、何らかの形で、これは株主に対して通知するという機会を与えればいいと思います。   少数株主権の株主総会開催請求権、つまり一種の拒否権を定めることは必要はないとは思っていますが、仮に認めるとすればある程度高い要件を設定することになるのだと思います。  代替手段として多数決型書面決議ということが上がっていて、あまり多くの方は取り上げられなかったのですが、論理的には事前確定型決議と両立するので、否定することもないと思います。実際には利用する会社はほとんどないだろうとは思いますが、これを定めることが意味があるとすれば、実際に使われるからというよりは、会議体による意思決定を絶対視せず、会議体ではない多数決を正面から認めているという会社法の姿勢、基本的な発想を示す制度として置くという意味を認めるかどうかということなのだと思います。ただ、これがないと困るとか、逆にこれによって事前確定型決議が要らなくなるとかいうことではないと思います。   取消事由の見直しは多くの委員が支持されているので、発言しにくいのですが、私はかなり抵抗があります。多分、実務の要望をそのまま表現すると、恐らくこういう提案になって、かつ最小限の手当てでよいモデストな提案のようにも見えるという意味で支持があるのだと思うのですが、会議体としての総会は必要ですと言い、会議体としての手続には瑕疵がありますとしながら、かつ取消事由になりませんというのを、どういう論理で説明されるのかが問題になります。何の要件も課さずに、事前に可決に必要な多数が集まっているから取消事由にならないとするのであれば、現行の裁量棄却制度との整理が必要になると思います。裁量棄却を定める会社法第831条第2項は、違反が重大ではなくて、かつ決議に影響を及ぼさないものであるとことが決議が取り消されない要件となっており、後者は今のケースで満たしているのですが、前者との関係で、事前に可決に必要な多数が集まっていれば、事後の会議体での問題はいかなるものも重大にはなり得ませんとするということと同じことになります。事前の議決権行使で結果が分かっていれば類型的に重要な瑕疵にはなり得ませんというのをどうやって説明するかが難しいかもしれません。何らかの要件の絞り込みが要るのかもしれませんし、その辺りは、もしこの方向で行くのだったら、ここで書いているのだけの実質で規定を作れるかどうかは少し慎重に検討した方がいいような気がします。   書面決議制度は、これは量的な変更で原理的な話ではないと思いますので、理論的な難点は比較的小さくて、もし実務的にニーズがあって、もしこの提案で意味があるというのであれば、検討してもいいのだと思います。ただ、この場合に要件を90%するのかどうか、その辺りも含めて、更に検討することはあるかもしれませんが、もし意味があるのであれば、検討してもいいかと思います。   最後のキャッシュ・アウトの見直しは、これも気持ちは分かるのですが、説明が通るような形で制度にする必要があると思います。もし特別支配株主の要件をここで提案のとおり9割から3分の2に下げ、3分の2を保有する株主がいれば総会決議が不要であるということの理屈が、既に3分の2があれば決議成立するに決まっているのだからということに求められるのだとすると、略式再編全てに適用される考え方ということになります。そうなるとキャッシュ・アウトを超えて、ここだけなぜ直すのですかということが制度的に説明が付かなくなってくると思います。私自身は個人的には、略式再編を含めて全部3分の2にするということもあり得ると思っているので、いっそのことそこまで直してしまうなら、それもありだとは思いますが、キャッシュ・アウトだけ手を付けるというのであれば、略式再編に手を付けないこととの間の説明が必要になってくるのだと思います。   田中委員からコメントがありましたけれども、公開買付け前置型キャッシュ・アウトに限定し、かつ2段階目のキャッシュ・アウトが速やかになされる方が、1段階目での強圧性が避けられるから、そういう目的の場合に限って要件を緩和するという形で利用局面を限定するのであれば、まだ説明はできる気はします。その場合に、更にMOMを要求するかとか、また更に細かな追加的な要件を検討する余地はあるかもしれませんが、略式再編に手をつけずキャッシュ・アウトについてだけ制度をするのであれば、このように場面を限定しないと説明は付かないのではないかという印象を持っております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○田中委員 少し議論を聞いていて気になったのですが、事前の議決権行使によって決議が成立したものとみなすための①の要件で、一定の時までに決議が確実に成立する議決権行使がされたという、この「一定の時」というのは、私はここに来るまでは議決権行使の行使期限のことかなと思っていたのですけれども、むしろそうでない、もっと前に設定できるという前提の下に複数の委員が発言されたと思うので、そこを確認したいと思います。現在、上場会社だと議決権の電子行使を認めている会社の方が多いですが、電子行使の場合、一度議決権を行使しても行使期限までは変更できます。なので、その行使期限までのある一定の時に総議決権の過半数の賛成が集まったとしても、その後変更される可能性があるということで、株主もそれを承知の上で議決権行使をしているのではないかと思うので、そこで行使期限より前に定めた一定の時に過半数の賛成が一度得られたということで決議が成立したとみなすようになると、非常にトリッキーな制度になって、それがいいと考える人はあまりいないのではないかと思います。そういう制度になるという理解の下に意見を言われた委員の方が複数いらっしゃったと思うので、そこの辺りを確認させていただきたいのですけれども。 ○神作部会長 ありがとうございます。それでは、宇野幹事からご回答をお願いできますでしょうか。 ○宇野幹事 御質問ありがとうございます。元々この一定の時を議決権の行使期限と一致させるかどうかということについて、提案ではどちらかに決め打ちをして出しているわけではなくて、できるだけ議決権行使期限までに寄せた方が、それまで自分の投票の賛否の変更等ができるという意味で望ましいと思われる一方、実務のニーズがどこまであるのかですけれども、前日とかに一定の時を設けてしまうと、結局、会場も用意しなければいけないですし、恐らくリハーサルなんて終わっているでしょうし、実際の負担というのは恐らくほとんど変わらないというところもあって、一定の時を少し前に持ってくるというニーズがあるのかどうか、それがもしあるのだとすると、ここで一定の時というのを議決権の行使の期限と必ずしも一致させないこともあり得るという意味で、提案としては開いた形で提案していたつもりで、うまく書けていなかったのかもしれませんけれども、提案の趣旨はそういうところでございます。 ○田中委員 これはそれこそ実務をされている方にお聞きしたいところなのですけれども、多分、行使期限よりも多少前に決議の成立を確定させたとしても、そこからキャンセルするとかは無理なので、結局開かなければならないし、こういう形の制度設計にしたのも、やはり集会としては開くということが前提になっていて、ただ、それは法律上必要とされる株主総会ではないので、そこでの審議も任意的なものになるし、例えば動議なども心配しなくて済むと、そういうことかなと思っていて、仮に確実に株主総会を開かなくてもいい制度にするとすれば、書面による株主総会決議というのを認めるというのが提案だったと思うのです。私はそういうのもあり得ると思っているのですけれども、元々それは非常に投資家株主側の抵抗が強いので、この提案であればある程度のメリットも見込めて、実際に集会的なものも開かれるから株主もある程度納得するという形で考えられていたと思うので、行使期限よりも前倒しで決議の成立を認めることで総会が開かれるか開かれないかが変わるようなことが実際にあるのかと、仮にあまりないのだとすると、そういうトリッキーな制度にしない方がいいのではないかと思ったものですから、少しお聞きしました。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。ただいまの田中委員の発言につきまして、実務、取り分け発行会社の側から、具体的なニーズとか、あるいは想定していたようなことがございましたら、御披露いただけると有り難いと思います。いかがでしょうか。 ○仁分委員 弊社の話というふうにお聞きいただければと思いますけれども、弊社であれば6月の下旬に総会を開くわけですけれども、仮に、6月の初旬に総会を開かなくてもいいと決まったからコストが減るのですかというと、さほどではないというのが答えだと思います。もう一つ、そもそも弊社の場合は事前決議、あるいは総会が不要だと確定する、過半数なら過半数が確定するのが、総会を開く前のせいぜい1週間前などでありますので、そういったところから考えても、物理的に会場を押さえるコストが減りますとか、そういったメリットはないとは考えております。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。ほかの方で、今の点に関連して御発言がございますか。 ○北村委員 2ページの⑤で、事前に決議が成立した場合に直ちに株主に通知することになっています。これを書面で通知することになったときのタイミングなのですが、例えば電磁的方法による議決権行使の期限イコールこの一定の時とし、その時を例えば株主総会の前日としていた場合、決議成立の通知が株主総会の日時に間に合わなかったときはどうなるのでしょうか。株主には通知が到達していないが株主総会は開催しない、あるいは少なくとも株主総会の決議はしないことになるという理解でいいのでしょうか。この通知をいつまでにすることを想定されていたのかについて御意見がありましたら、お願いします。 ○神作部会長 宇野幹事からもし御回答がございましたら、お願いいたします。 ○宇野幹事 そのままのお答えになるかどうかあれなのですけれども、事前に考えていたのは、決議が成立する一定の時というのが、例えば大分早い段階で、もう2週間前ぐらいに賛成票が過半になりましたというときには、早く伝えた方がいいだろうというところで、そういう意味で、一定の時というのをあまり直前に持ってきてしまうと、今、北村委員が言われたように、それを伝えることができない、あるいはもう総会に行くために航空券などを取ってしまったのだけれども、直前に伝えられても株主の側も困るということもあるかもしれず、この一定の時というのは、いつまで賛否を変えられるかということとともに、成立したらできるだけ早く伝えた方がいいだろうというのもあって、なかなか時点を決め打ちできなかったというのが率直なところでございまして、今、北村委員が言われたように、本当に前日などに決まって、通知しなければならないという規律になっているとすると、通知が着くのか、株主に対して通知が本当にできるのかというところの問題は、また別途あろうかと思います。すみません、お答えになっていないかもしれませんが。 ○北村委員 まだ詰めなければいけないところがいろいろあるなと思いました。ありがとうございます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。   ほかに御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。   活発な議論を頂きありがとうございました。次の2番目のセッションに移らせていただきます。   部会資料4「第2 株主提案権に関する規律の見直し」についての議論をしていただきたいと存じます。御意見のある方は挙手あるいはオンラインで表示をしていただければと思います。いかがでしょうか。 ○松中幹事 株主提案について申し上げたいと思います。   今回、投資単位のデータを示していただいたわけですが、投資単位を考える際には、平均だけではなく分布を見ることが非常に重要かと思います。例えば、東証の「少額投資の在り方に関する勉強会」報告書(8ページ)を見ると、その中の一番古いデータが1990年で、東証一部では100万円以上の投資単位の会社が70%以上となっておりました。それで、2025年3月末時点のプライムの投資単位の分布を見ますと、最も多いのが10万円以上20万円未満、次が5万円以上10万円未満、その次は5万円未満となっていまして、ここまでで68%です。つまり、20万円以下が68%なのです。先ほどの90年で100万円以上が70%と大体合う割合です。このように典型的な一部上場、プライム上場の企業を想定すると、物価変動は完全に無視して、とても保守的に考えても5分の1以下になっていると見ることができますので、平均を見た場合より相当大きなインパクトがあるように思われます。現実的には投資単位自体がばらついていますので、10分の1程度になっているところも少なからずあるのではないかというのが、分布を見た場合の印象であります。そして、既に御説明もありましたが、近い将来に更に投資単位を引き下げていくのであれば、それを想定した改正をしておく必要もあるのではないかと思います。既に言及のあった個人投資家へのアンケートなどから、10万円を一つの目安にするのであれば、投資単位の変化として想定すべきものは、やはり1.5倍とか2倍程度ではなく、更に大きいもの、最低でも5倍程度になっていくのではないかと思います。   こういうふうに考えていくと、300個要件を維持するとしても―株主、会社のコミュニケーションという趣旨を変えないのであれば―、最低でも1,000個程度にはデフォルトルールを上げる必要があるのではないかと思います。できれば、5倍の1,500個程度まで上げ、これをデフォルトにした上で、更にその2倍の3,000個程度の上限を付けた上で、定款で各社が引き上げられるようにする方がよいと考えています。もちろん具体的な数値はいろいろな意見があろうかと思うのですけれども、切りのいいところで見て1,000、1,500、3,000あたりが考えられるのではないかと思います。   続きまして、行使期限についてなのですが、行使期限の前倒しをしたいというのは非常によく理解できる、取り分け多数の株主提案を受ける会社を想定すると、8週間という期限は少し厳しいだろうというのは非常によく分かるところです。ただ、行使期限後に生じた、あるいは発覚した問題などに対応した株主提案は、どれだけ多くの株主が支持するものであっても全部排除される、こういう効果を持つのが行使期限です。どこかで線を引く必要があるので仕方ないと言えば仕方ないのですけれども、例えば120日のような長い期限にしますと、総会3か月前に発覚した不祥事、決算なんかを踏まえて出てきた不祥事など、これを考慮して取締役の解任を大株主が提案する、これも駄目だということになるわけで、前倒しすればするほど、本当にそれを全部排除するのかという問題は出てきます。全く理屈ではないのですが、一つの感覚的な目安は、3か月ぐらいになるのかなと感じております。ちなみにアメリカは120日が期限ですけれども、そもそも株主提案で取締役の入替えはできないという制度ですので、今のような問題が起きないようになっています。そのため、外国の期限をそのまま日本に持ってくるということも、注意する必要があると思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。 ○仁分委員 議決権300個要件に関してですけれども、是非今回の会社法改正で見直しを実現していただきたいと考えております。ここ数年で上場会社における株主提案の件数は著しく増加しておりまして、それに対応する企業の負担も増大しております。上場会社において、確かに株主提案が可決された事例も幾つかございますけれども、その多くは大株主による提案の事例であったと認識しております。また近年、個人投資家が少額でも投資しやすい環境を整備する観点から、投資単位の引下げが期待されております。しかし、投資単位が引き下げられることで、より少ない投資額で議決権300個要件を満たしやすくなるため、企業は株式分割に対して慎重にならざるを得ない状況であります。   実際に近年、ある会社において株式分割を実施したところ、総株主の議決権の100万分の1を取得するだけで300個要件を満たせるようになりました。こうした極めて僅少な議決権しか保有しない株主による株主提案であっても、会社全体のリソースを割いて、短期間でその適法性や内容等を精査し、取締役会の意見を検討、作成するとともに、会社の費用においてその内容を全株主に周知する必要があり、更には株主提案の審議に株主総会の貴重な時間が割かれることになります。こうしたプロセスは株主共同の利益に資するとは言い難いと考えます。   また、当社におきまして過去数年にわたって、議決権の保有比率0.01%未満の株主1名から株主提案を受けたことがございました。この株主は先ほど御説明した決議取消訴訟を提起した株主とは別の方であります。ある年の株主提案として商号の変更という提案がなされましたが、その内容は、当社の商号を「日本製鉄株式会社」から「トピーを支配する日本製鉄株式会社」に改めるというものでありました。このトピーとは、当社の関連会社の略称であります。この内容からして、株主共同の利益に資するような提案とはいえないと思われましたけれども、一方で不適法な株主提案と扱うことは難しいと判断し、株主総会に付議いたしました。結果、賛成率は3%未満で否決されております。   また、別の年には、当該定時株主総会の終結の時をもって退任する取締役を解任するという議案が提案されました。この株主提案につきましては最終的に、権利の濫用であり不適法と判断して取り上げませんでしたが、不適法と判断するまでの間に、対応方針の検討、弁護士会照会等による情報収集、提案株主とのやり取り、弁護士からの意見書の取得などの対応に多大な時間、労力、費用を要しました。また、不適法と判断した後に提案株主が仮処分の申立てをしたため、その対応もせざるを得ず、会社にとって大きな負担となりました。   そもそも株主が議決権を300個有することの意味合いは、当該会社の議決権総数次第で大きく異なりますし、当該会社が上場会社であるか非上場会社であるかによっても全く異なりますので、会社の規模や種類を問わず一律、議決権を300個有していれば株主提案権を有するという制度は合理性を有するとはいえないと考えます。また、議決権300個要件がありますと、同じ会社であっても、株式分割や株式併合を行っただけで株主提案権を行使する株主の範囲が変わることになってしまいます。以上のような観点から、株主提案の議決権300個要件を廃止すべきであると考えます。仮に300個要件を廃止し1%要件のみとすることが難しいのであれば、例えば、定款で定めた場合には1%要件のみとすることを可能にする、あるいは特別決議事項の提案に関しては要件を引き上げる、議決権総数などに比例してより合理的な絶対数要件を定めることなども含めて、前向きに御検討いただきたく存じます。   それから、「2 株主提案権の行使期限の見直し」につきましてですけれども、こちらも見直しを御検討いただきますようお願いいたします。株主総会の日の8週間前までという現行の提案期限ですと、電子提供措置開始日までの限られた期間の中で、株主提案権の行使要件を充足しているか否かの検討、提案株主との調整、提案に対する取締役会の意見の検討、作成などの実務対応を行う必要があり、実務上極めて大きな負担となっております。特に、6月総会の会社の場合、5月のゴールデンウイークを挟むことになるため、これらの実務対応に充てられる期間は実質的には更に短くなります。そこで、株主総会前に株主との対話を十分に行えるようにする観点からも、提案期限を「株主総会の日の12週間前」や、「定時株主総会の基準日の1週間後」などへと前倒しすべきであると考えております。   それから、「3 その他の見直し」に関しましてですけれども、業務執行事項に関する定款変更の株主提案を認めないこととしていただきたく存じます。現在、定款変更議案として提案されている議案の多くは、業務執行事項に関するものであります。しかし、原則として年1回しか開催されない株主総会は、業務執行に関する決定を行うことに適さない機関と考えます。仮に日常的な業務執行事項が定款に定められてしまいますと、当該事項を変更するためには株主総会の特別決議による定款変更が必要となりますので、機動的な柔軟な経営判断が困難となり、ひいては株主の利益を害することにもなることが懸念されます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○矢野幹事 まず、株主提案の300個の見直しについてですけれども、少なくとも1%だけにそろえるのは反対の意見を持っていますけれども、その他の点についてお話ししたいと思います。単純な平均というところで考えますと、実は前回の令和元年改正時にも同じような話がありまして、平均の数字が出ていたかと思います。それとの比較で考えますと、今回の300個の平均投資単位は実は上がっているという数字になっていたのかなと思いますけれども、その一方で、先ほど松中幹事からお話がありましたように、投資単位の分布は下がっているという状況なのだろうと思っています。それなのに平均があまり下がっていないということを考えると、投資単位の引下げをしないで平均を上げている会社さんがやはり一定程度あるのだろうと思っておりまして、そうした意味では、引き下げた会社さんがある意味、損をしているという状況は、個人的にはよろしくないのだろうとは思っています。   そうして考えますと、300個という形だと、恐らく投資単位の幅に上下の幅が出てしまうということが問題なのではないかと思いまして、例えば、部会資料にありますように、ドイツのような形で金額の縛りとかそういったものはあり得るのかなとは思いました。ただ、非上場会社も含む会社法という形で決めるとなりますと、非上場会社を金額で決めるのは非常に難しいので、そうすると個数にならざるを得ないというところがジレンマなのだろうとは思っております。   続けて、行使期限の見直しについてですが、今の8週間前というのは、定時総会の基準日以降ということで考えますと、提案側、会社側、両方にとってかなりぎりぎりのところで、いいところに収まっているというのが正直な感想でして、単に8を例えば10にするといった改正は不要であろうとは思っています。ただ、逆に、今の制度ですと、特に非上場会社の場合、株主提案を受けてから会社側が日程を頑張って繰上げて総会を実施して、8週間前を充足していないという形で切り捨てることができてしまうという問題が実はありまして、そうした問題もありますので、提案株主側から見ますと、はっきりしない総会の日を見越して、少し余裕を持って実際は出しているというのが実例なのではないかと。8よりは、例えば9とか、10だとあれかもしれないですけれども、少し前に出していることが多いのかなとは認識しています。そう考えますと、今の立て付けを前提にして、これ以上早く、8週を法定の期限まで早くするという必要性はないのだろうとは思います。   ただ、こうした問題を考慮しないで、たまたま8週前ぎりぎりに出してくると、駄目でもいいやみたいな感じで出してくる人がいると大変だというニーズとか、そういったものは分からぬでもないというところもありますから、そうした対策として考えるとしますと、例えばですけれども、定時総会の場合は、昨年度の総会の開催日からカウントして何週間前だとか、3末決算の会社だったら6末から計算して10週前だとか、そういった形で提案側にとっても締切りが明確になるというような形で、少し余裕を持って実際は出している提案の、その辺りの日になるような形で変更、改正をするということはあり得るかとは思っています。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○内田委員 株主提案権に関しては見直した方がいいと思っています。300個の議決権数については、東証から説明があったように、投資単位の引下げが十分な理由になると思っています。今後もそういった動きが広がり、株主の裾野を広げていくということになれば、議決権数は増えていくと思いますので、厳格化ないし廃止にとって十分な理由になると思います。   これは前回改正で、議案提案数を10個以下に制限したことは、一定の基準を設けるという意味で、効果や影響とかについては綿密には分析していないのですけれども、ある一定程度、やはり効果があっただろうと推測しています。それを踏まえると、議決権数300個以上へ基準を厳しくすることはあって良いと思います。一方で、定款によって議決権数の要件を引き上げるということは、慎重に考えた方がいいと思います。幾ら株主の意思確認ができたとしても、定款で決めた以上は自由にできるということになると、やはり株主提案権の縮小にもつながりかねないと思います。そこは慎重に考えた方がいいと思っています。   株主提案の行使期限の見直しは、現在は8週間ということになっていますが、これは前倒しについては賛成です。先ほど9とか10とかでは意味がないのではとの御意見がありましたが、大体10週間ぐらいが理想的と思っていまして、幾つか議論が出ましたけれども、議案内容を検討するのにやはり時間がかかるので、これまでもぎりぎりでやってきたのですが、現状では少し厳しくなってきておりて、十分に検討し切れないという事態が起きているということであります。   加えて、協働エンゲージメントの推進という意味では、株主提案については十分に検討して、キャンペーン等に対して意見の表明ということも求められてくると思います。そういったことも踏まえると、僅かではありますが、ゴールデンウイーク前に出そろうという状況が現実となれば理想的と考えています。できればこの辺については、在るべき姿を議論して、前倒しをしていただくと有り難いと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○藤井委員 株主提案権に関する規律の見直しにつきましては、先ほど仁分委員がおっしゃっていただいたことに、三つのテーマともに、私も賛同させていただきたいと思っております。   まず、個数要件のところにつきましては、私どもといたしましても300個要件というのは廃止というのが望ましいかなと考えております。もうほかの委員からも出ておりますけれども、やはり個人が投資しやすい環境整備の一環で、投資単位の引下げというのは非常に今、ホットテーマだと思いますので、そういったところで、本当に僅かな投資額で、実際には可決の可能性もほとんどないような提案が行われるといったところが事実としてあるのかなというのは、私どもとしても認識しているところでございまして、こちらは廃止が望ましいのかなと思います。実際に本年の6月株主総会におきましても、株主提案が可決された事例は私どもの調べでは7社あると認識しておりますけれども、その中でも提案した株主の持株比率が一番低いところでも5%程度、一番高いものですと、もう30%以上の株主が提案しているような状況でございますので、こういった傾向というのは過去から変わっていないと認識をしております。   行使期限のところにつきましても、ほかの皆様からもありましたとおり、見直しをしていただきたいと考えております。ここのところで、資料にあるような令和元年の改正により株主が提案できる議案の数が制限されたことによって、株主提案権の行使の適法性の検討に要する時間を短縮できるようになったという記載がありますが、もちろん数という意味での濫用事例というのは少し抑えられているとは思うのですけれども、私どもが聞く限りにおいては、実務の感覚としては、検討時間が大幅に短縮できるようになったという感覚ではないのかなというところでございます。   あと、業務執行事項につきましては仁分委員の御意見に賛同させていただければと思っております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○久保田委員 ありがとうございます。まず、株主提案権の議決権数要件の見直しについては、これまでの委員の方々の御発言に付け加えることはありません。   株主提案権の行使期限の見直しについてですけれども、個人的には、ここでこの点だけを取り上げて議論するよりは、そもそも現在のような定時株主総会の開催時期でよいのか、もう少し後倒しすべきではないかという、以前から指摘されてきた問題も含めて検討する方がよいと思います。定時株主総会の開催時期の問題は、参考資料13に掲げられている有価証券報告書の株主総会前開示とも関係するということもありますので、それらとも関連付けながら検討するというのが望ましいと考えています。   その他について、先ほど仁分委員と藤井委員から業務執行事項に係る定款変更に関する議案の提出を制限すべきであるという旨の御発言がありました。そこで、この点について意見を述べさせていただきます。会社法制研究会でも申し上げましたけれども、私はこの点については、そもそも本当にその見直しの必要があるのかという点を慎重に検討すべきであると考えています。   また、その点を措いても、部会資料の19ページでも触れられていますとおり、何が業務執行事項に当たるのかというのは必ずしも明確ではありませんので、仮に業務執行事項に係る定款変更に関する議案の提出を制限するという規制を設けた場合に、それをきちんとエンフォースすることはかなり難しいのではないかと考えています。確かに米国ではそのような規制が採用されており、SECが何が業務執行事項に当たるかの方針を示してエンフォースをしていますが、これはSECという専門的な知識と権限のある機関があるから可能であるという事情があるかと思います。しかもそのSECですらエンフォースに苦労している上に、政権の変更があるたびに何が業務執行事項に当たるかの方針も少なからず変わっているということがございます。このことも、繰り返しになりますが、何が業務執行に当たるかが明確でないため、きちんとエンフォースできるようにすることがかなり難しいことを示しているように思います。   また、仮に業務執行事項を株主提案権の対象から除外するとした場合は、同時に、いわゆる勧告的な株主総会決議を求める株主提案、勧告的提案が認められる旨を明文で規定すべきであろうと思います。現在の会社法の下ではこうした勧告的提案は認められないとする解釈が多く、だからこそ機関投資家も定款変更議案を提案するという形で株主提案権を行使せざるを得ないという事情があり、そして、そのことが株主提案権の対象を制限すべきであるという意見につながっているのではないかと思います。このような状況で業務執行事項を株主提案権の対象から除外し、更に勧告的提案は認められないことをそのまま放置することになりますと、我が国では他の先進諸国、イギリスはもちろんアメリカなどと比べても株主の発言権が非常に弱いということになりかねませんので、そのようなことだけは避けるべきであろうと考えています。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○青委員 まず行使期限に関しましては、資料の中で印刷に関する話もありますけれども、具体的にどれぐらいの期間を確保すべきなのか、従来からの8週間前ではなぜ足りなくなるのかというところについて、一定の理屈があれば考え得るといった感じではないかと思います。   また、先程御指摘があったように、総会を起点とした行使期限が事前によく分からないというのは確かなので、工夫の余地はあるかと思います。基準日に関しましても、例えばイギリスのように総会の少し前に基準日を持ってくるような仕組みになってくると、同じような話がでてきてしまうように思うので、慎重な検討を要するように思います。   それから、議決権数の300個要件につきましては、個数要件における提案自体をさせなくするということであれば、考え方が大分変わってくるので、やはり水準の見直しが基本的な議論の出発点かと思っています。個数要件では会社によって事情が異なるなど、限界があるということであれば、提案権の行使ではある程度の投資を求めているということを踏まえ、時価が分かる上場企業に関しては一定の金額基準を設け、非上場については従前どおり個数要件とするのもやむを得ないという形としてあり得るのかなと思うところです。いずれにしても、そういった水準感をどうしていくかが一番重要な話かと思います。   それから、業務執行に係る定款変更を提案権の対象にするかについては、対象とすべきでないという発想はよく分かるところでございますけれども、理屈上は業務執行を外せるという方がストレートに問題解決に近付けられるように思いますので、時間は掛かりますけれども、今後の提案権の在り方を考えた上で検討を重ねていくということが現実的な方向感ではないかと思われるところです。   更に言うと、経済界のニーズ次第かと思いますけれども、濫用的な提案を防ぐために、提案権の行使にあたって何らか心理的なハードルを設けて、株主の共同利益にある程度沿った提案でないと株主側が行使を少しためらうようなアプローチというのも、何かいいアイデアがあればという感じですが、検討できるのかもしれません。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○加藤幹事 私からは行使期限の見直しについて意見を述べます。   行使期限の見直しの要否を考える際には、既に実務の皆様からの御意見もありましたけれども、現に株主提案権への対応について相当負荷が掛かっているということを無視はできないと思います。ただし、もう少し負荷の内容というものを具体的に示していただく必要があるという気もいたします。   そういった観点から若干気になりましたのが、資料の19ページの(注2)で株主提案権の行使期限について各国の状況を紹介していただいている箇所についてです。これは松中幹事の御指摘と重なる部分があるのですけれども、数字だけ見ると多様であることは分かりますが、その背景には、株主提案権が行使された場合に会社がどういう対応をしなければいけないかということが相当各国で異なっている部分もあるのではないかと思います。たとえば、確かに、アメリカでは行使期限は早く到来するのですが、SECによるチェック、会社が株主提案を取り上げなければいけないかどうかをSECが判断する仕組みが組み込まれていることも理由の1つであるように思われます。あと、ご紹介いただいた国の中では、行使期限と株主総会の間が非常に短い国もありますが、そのような仕組みが成り立っている理由が重要であると思います。そのような国の実務と日本の実務の差異についても、部会の審議において、共有できれば良いと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○松尾幹事 議決権数要件の見直しについて、一言申し上げます。   私も少なくとも300個の要件は、廃止した方がよいという考えです。その根拠としては、先ほど来言われております投資単位の引下げの支障になっているということは十分にあり得ると思いますが、やはり私はそもそもこの制度趣旨からして、300個要件というのが今は時代に合わなくなっているのではないかということを申し上げたいと思います。   制度の趣旨としては、先ほど松中幹事がおっしゃったように、会社、株主間のコミュニケーションの手段として、特に個人の株主にもそういった総会でのコミュニケーションの手段、機会を与えるためということで300個の要件が導入されたと理解しております。導入当時の昭和56年と比べますと、会社と株主の間のコミュニケーションの手段というのはかなり豊富になっておりますし、さらに、先ほど申し上げましたけれども、例えば事前に質問をしたことを質問の内容とともに会社の回答を電子提供するというようなことが行われるのであれば、そちらの方がよほど質の高いコミュニケーションを確保できるのではないかと思います。   そもそも決議の成立といいますか、議題とか議案の提案をコミュニケーションの手段として捉えるということにはかなり無理があるように思っております。やはり議案の提出ということである以上は相当程度決議の成立が見込まれる、少なくとも経営陣にとってインパクトのある賛成数が得られるような提案でないと、制度の趣旨というか立て付けに合わないのではないかと思います。そうであれば、やはり入口の行使要件のところももう少し引き上げてもいいのではないか、少なくとも300個というのは廃止してよいのではないかという考えでおります。   このように申しますと、株主の権利を制限するということで反対もあるかと思いますけれども、こちらは共同提案が可能で合算が可能ですので、例えば機関投資家に働き掛けて、その投資家の納得が得られればその人との合算をするという形で、1%であっても満たすことは可能でしょうし、むしろそういった機関投資家の賛同も得られないような提案はその時点で却下といいますか、切り捨てられるという形でスクリーニングが働くことは望ましいのではないかと考えております。是非そのような観点からも見直しをしていただきたいと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○田中委員 株主提案権について意見を述べさせていただきます。まず、行使要件についてですが、少なくとも投資単位の引下げに伴って300個要件の実質的な要件が非常に緩和されているという点については、対応が必要かと思います。やはり議決権の個数を要件にすると、どうしても投資単位を引き下げた上場会社がむしろ株主提案の標的になってしまうということで、インセンティブのゆがみをもたらしてしまうように思いますので、諸外国の法制も参考にして、上場会社については投資額を基準にするというのが恐らくいいのではないかと思います。これに対して非上場会社は金額設定がそもそも困難であるということと、非上場の場合には、行使要件を引き上げたときに少数株主が株式を買い増して対応するということができませんし、また、非上場会社については必ずしも株主提案権の濫用が目立っているとは私は承知していませんので、非上場会社については見直さないということがあり得るかなと思いました。   問題は、それ以上の行使要件の引上げということがあり得るかということなのですが、私はある程度、定款自治を認めてもいいのではないかと思っております。株主提案というのは、提案株主だけの利益だけが問題になるわけではなくて、やはり提案をすればほかの株主も当然、それを検討することが必要になってきますし、会社もその提案の適法性その他について種々の対応が必要になってきますので、会社や他の株主に一定のコストを掛ける面が否定できません。それだけのコストを掛けて、可決される現実的可能性が低い提案をどこまで許容する必要があるのかということが問題になるかと思います。   今回、資料の16ページで株主提案の実績なども出していただいているのですが、学術研究ではもう少し広い期間を取って、保有比率が1%以上の場合と比較したものもありますので、そのようなものも御検討いただきたいと思います。確かに、個々の事例を見れば、もう少しで可決まで行ったものもあるのかもしれませんが、統計をとると明らかに、保有議決権1%未満の株主による提案というのは非常に賛成率も低く、果たして取り上げる価値があるのか疑われるものが多いかと思いますので、一定の制限を設けた上で定款自治を認めるというようなこともあり得るのではないかと思っております。   それから、行使期限についてなのですが、アメリカは総会前120日なので、それに比べると短いということは言えますけれども、アメリカの場合は上場会社だと招集期間を2か月ぐらい取っていることが多くて、株主提案に対するSECの審査もあるのですけれども、それ以前に、そもそも8週間だと招集通知に間に合わないということがあると思います。この辺り、日本では総会担当の方はものすごく頑張っていらっしゃるとは思うのですけれども、それでも、株主総会の招集期間が海外とは比較にならないぐらい短いので、その辺りも本当はお考えいただきたいと思うところではあります。   そのことを考えると、例えばですけれども、デフォルトルールは8週間にするのだけれども、会社が一定期間前に、例えば4か月前とかもう少し前に株主総会の開催時期と招集通知発送日を明示した場合には、そこから一定期間以前に請求権を行使しなければならないようにするとか、そのような形にして、会社に招集期間を長くして、それを事前に投資家株主に伝えるインセンティブを与えるような制度設計にしてみてはいかがかと思います。これはジャストアイデアですけれども、お考えいただければと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○臼井委員 300個以上という議決権数の要件については廃止した上で、実際の水準については改めての議論となると思いますが、株式の保有比率で区切るというのが実務の観点から見ても分かりやすいと思っております。   株主提案権の行使期限については8週間より前にした上で、期限の明確化をすべきではないかと考えます。現在の株主総会の8週間前という区切りですと、総会の具体的な日程が決まっていないというケースも多々あるので、期間そのものを少し延ばした上で、期限が事前に明確に分かるような形がよいのではないかと思っております。  加えて、濫用的な株主提案の防止については、より実質的な企業価値向上につながるような株主提案が出てくるような設計にしていくことが中長期的には望ましいと考えております。弊社はグローバルで議決権行使を行っておりまして、米国においても株主提案に対する議決権行使を行っておりますが、内容のある株主提案、投資家の検討に値するような株主提案が相応にあるという感触を持っております。もちろんSECを始めとして制度が異なるという背景はあるものの、日本においても企業価値向上につながるような株主提案がきちんと出てくることが望ましいと思いますので、そういった方向で制度を整えていければと考えます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○森委員 株主提案権については、これまで濫用されている事例があるのかという議論もあろうかと思うのですけれども、濫用されているかどうかという議論に入っていきますと非常に議論が難しくなってくると思っております。何が適正で、会社にとっての望ましい提案なのかというのは非常に難しい判断を迫られることになると思いますので、濫用的な提案事例があるのかという議論からは離れて、むしろ本件はごく少数の株主と全体株主の利害調整の問題として捉え、少数株主の意見に対してどこまで全株主がコストを払って検討をすべきかという議論の中で見ていくべきだと思っております。そのときに300個が適正かどうかという議論については、是非見直しをすべきだと私も思うのですが、これを仮に金額の議論にしていった場合に、金額の議論で法改正を進めていくと、金持ちにしか株主提案を認めないのかという議論が出てくるリスクがあるのではないかという心配をしておりまして、そちらの議論で行くと改正が頓挫するというリスクはないかなと少し心配をしております。そういった観点も含めると、金額よりも個数ですとか比率の方で議論を進めた方がいいのではないかというのが個人的な意見です。   皆さんがおっしゃるとおり、投資単位の引下げが望まれており、実際に行われておりますので、300個の基準を引き上げて、それなりの比率を持った人の提案を真摯に皆で議論するというのが株主全員の利益にかなうと思いますし、社会的コストとしても適正だと思います。従って、1%基準だけにするのが望ましいのではないかとは思っておりますが、仮にそれが難しいという場合は、少なくとも定款によって個数基準については見直しをできるとしつつ、そのスタートなる基準を、300個ではなくて、1,000個若しくは1,500個に引き上げるなど、いろいろな議論を重ねて、いずれにせよ個数要件はなくすればなくす、なくせなくても定款によってなくすことができるという方向で議論ができればと思っております。   それから、株主提案権の行使期限の見直しですけれども、これについては8週間前という期限は実務的にはタイトだと感じております。実際上、株主提案がなされますと、当該株主とコミュニケーションをしたりエンゲージメントするということもやったりもしていると思います。そういった時間も含めて考えますと、提案する株主との関係においても、それほどタイトな期間でない方がむしろしっかりとコミュニケーションができるというところもあると思いますので、期間をどこにするかというのはなかなか難しいのですけれども、実務的な感覚で言うと、せめてあと2週間くらい延びると、もう少し余裕を持った対応ができるかなと思います。   それから、業務執行事項に関する定款の変更については、一部の委員からも意見がありましたとおり、業務執行事項とは何ぞやという論点がかなり難しい議論を呼ぶと思いますので、むしろ提案の要件の見直しをする方のアプローチがいいのかなと思っています。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○藤田委員 株主提案の要件は、私も一般論としては現行法は相当問題があるとは思っています。取り分け300個要件については、かなり抵抗を持っている一人です。ごく最近の公表された研究だと、1%要件を満たさないけれども300個要件を満たしているという資格でなされた株主提案は、やはり有意に賛成率が低い、通った例はほとんどないというふうな結果が示されているのですが、いずれにしても、かなりこの要件は問題があるのだとは思います。   恐らく昭和56年改正で株主提案権が入ったとき、300個という固定的な株式数を要件にした背景には、かなり特殊な考慮が働いていたのだと思います。当時の文献を読むと、総会屋を排除して一般株主が会場に現れることそれ自体をエンカレッジしなければいけないという強い信念があったようです。しかし、現在株主と会社の対話ということを強調される方々が想定しておられることとは相当乖離がありそうで、やはり株主の参加ということの指す意味も当時の感覚とは相当違っているのではないかという印象を持っております。そういう意味で、昭和56年改正当時の1%基準だけだと個人株主による提案が事実上排除されることになるということを非常に気にした問題意識というのが今なお有効かどうかということ自体にも疑義があり、300個という要件には、個人的にはかなり抵抗があります。   ただ、法改正の実現可能性、―どの段階での実現可能性かはともかく―、を考えると、いきなりこれを削除というのが難しいというのであれば、最低限、昭和56年の見直しの発想そのものを見直すということは言わずに、それは尊重しつつ、投資単位の変化などを反映させる形の調整、―500なのか1,000なのか3,000なのか分かりませんけれども―、それだけはやった方がよいと思います。さらに、定款で自由にある程度変える自由を上限付きで認めるというのもあるかもしれませんけれども、最低限、株主提案に必要な個数を多少、投資単位の変化を反映する形で修正するということはしてもいいのかなと思います。   行使期限は、御要望はよく分かる気もするのですが、ただ、これは具体的なスケジュール感を示した上で何が本当に必要か具体的に示してもらえないと少し議論しにくいかなということがありますので、今の時点では賛否は留保したいと思います。あわせて、これはもう長年言われていながら手が付けられなかった問題なので、法的な対処が可能かどうか分かりませんけれども、いつ開催されるか分からずに、前年の例を基に大体いつか適当に予想して、それに合わせて若干のアローアンスを見て提案するという点も何とかならないかなという気はしています。期限を検討すること自身はいいと思うのですけれども、今の点もあわせて、もう少し具体的なデータを基に議論できればと思います。   最後に業務執行事項に関する提案をできないようにするという議論は、これまで何度もなされてきたと思います。そして、その都度、同じことが言われてきて、今回もそれは変わらないと思います。まず、この提案は、それ自身として必ずしもおかしな発想ではなくて、こういう制限を掛けている国にもありますし、また純粋経営判断事項にどんどん株主が口を挟むことがいいこととは決して思いません。しかし、多くの方が言われているように、業務執行事項というのはあまりにも解釈の余地が広すぎる上に、ごく最近になって、また業務執行事項かどうか、株主が口を挟んでいいかどうかということ自身に価値判断が相当分かれるようなものが出てきていると思います。例えば、原料の調達をどこからするかは典型的な業務執行事項のように思われるかもしれませんけれども、非人道的な労働環境が問題となっている国からの輸入はしないとか、気候温暖化対策のための配慮とか、そういうものが入ってくると、業務執行事項とも言えるのだけれども、相当の持株数を有する機関投資家の提案であっても一切排除できるということで本当にいいのか、少し気にはなるところです。   業務執行事項という要件が解釈の余地があるということは、これを思い切り広く解釈して拒絶するということが予想もされます。そして株主提案権というのは無視された場合の実効性のある救済がないという意味で、悪名の高い制度でもあります。つまり無視された場合、決議取消訴訟等に乗ってこないので、救済が非常にしにくいという問題もあります。ですから、どうもこれをあまり曖昧な要件を課すというのは望ましくない気がして、それは慎重になるべきだと思っています。   最後に、これはどなたかから御指摘がありましたけれども、株主提案権についての外国法の情報は、提案できる事項や提案の個数とか、いろいろなところに違いがあるので、単純に持株要件とか、提案の期限が総会の何週間前とか、そういった要素だけ取り出して比較するのは慎重であるべきです。非常に神経を使って丁寧に調べていただいているのですけれども、読む側の方がそこら辺はよく注意しないといけないと思いました。最後のは完全に感想ですけれども、以上です。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。   ほかに御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは、残された時間で「第3 その他」についての意見交換をしていただきたいと思います。御意見がございましたら、どうぞ御発言ください。 ○北村委員 第3、その他の1です。これは、先ほどの提案権などと比べますと、実務的にはそれほどの問題はないのですけれども、一言コメントしたいと思います。   第316条第2項の調査者制度は長年使われていなくて、近年少し使われる例が出てきたということに過剰に反応する必要はないと思います。例えば、調査者の要件を定めたり、その他、機密情報の外部流出、不正利用のおそれ、確かに理論的にはないわけではないのですけれども、そういうことに対して厳格な規制を設ける必要はないと考えます。もっとも、会社法第309条第5項から動議によって2項調査者を決定できるという部分を外すという改正は必要かと思います。これまでの2項調査者選任の事例は、いずれも少数株主が最初から調査者選任を目的として株主総会の招集請求をしていたと思いますので、2項調査者を動議で選任できるという制度を変更しても規制強化にはならないと思います。検査役の調査の場合は裁判所の選任が根拠になっているわけですが、2項調査者の権限は株主総会の決議が根拠になる以上、その株主総会はやはり慎重な株主総会決議ということにしなければいけないので、そのための規律は必要かと思いますが、それだけでよいのではないかと考えております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○松中幹事 私も2項調査者についてです。まず、少なくとも一部の事例では、会社の調査に対して不満を覚えた株主がこの2項調査者の選任に向けて行動するとか、実際に会社の調査とは異なる結果が報告される、こういう形で使われているわけでして、会社が第三者委員とか各種調査委員会を用いて恣意的な調査を行うことに対する株主のイニシアチブに基づく牽制として機能する可能性というのが現実に示されているわけです。これに対して濫用の懸念というのは、指摘されてはおりますけれども、既に御説明もあったとおり、飽くまで抽象的な懸念でありまして、こちらの方は具体的なものではありません。具体的ではない懸念と具体化している機能とを比べて、どちらを優先すべきかと考えたら、やはり現実に形になっている機能の方かなと思います。その意味で、大きく変える必要がないというのは北村委員の御指摘のとおりかと思います。   2項調査者は、制度的には、裁判所は一切関与しなくて、株主自身が招集した総会で株主の多数決で選任して株主が判断している、だから外在的な制約はあまりないのだという立て付けになっており、基本的には私もこれを変える必要があるとは思いません。ただ、株主が決めるのであれば、そのための情報提供は提案者、招集者にきっちりとさせる必要はあると思っています。例えば、参考書類に記載すべき内容として、調査者の候補を誰にするのか、調査対象をどのように設定するのか、現実には招集請求の段階で、裁判所である程度ここら辺は見られていると思うのですけれども、そういうことをやはりきちんと書き込んだ方がいいのではないかとは思っています。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○仁分委員 私も2項調査者制度についてコメントさせていただきます。今回の改正で見直しを行うべきであると考えております。本制度は調査権限の対象となる事項、調査できる範囲、調査者の義務や責任などについて具体的な規律がなく、調査活動への裁判所の関与もございません。そのため、会社の機密情報が不必要に外部に流出するなど、本制度が濫用されるおそれがある点を強く懸念しております。   そもそも本制度は昭和25年の商法改正で監査役が業務監査権限を有しないものとされたときに、その役割の一部を少数株主に担わせるために導入されたと理解しております。しかし、現行法では株主総会で選任された監査役等が業務監査権限を有しております。それとは別に株主総会で2項調査者の選任を認めることは、屋上屋を架すようなものであり、会社のガバナンスに混乱をもたらし得ると懸念されます。したがって、本制度は単に廃止するか、会社法第358条の検査役制度に統合すべきであると考えます。   仮に2項調査者制度の廃止は困難である場合でも、2項調査者には株主総会で選任される役員と同じ規律を及ぼすべきと考えます。例えば、株主代表訴訟の対象にすること、報酬について役員報酬と同様の手続規制や情報開示の対象とすること及び選任議案について重要な兼職の状況などを開示することが必要であると考えます。また、議場の過半数の賛成のみで調査者が選任されることがないように、動議による選任を認めないことも当然行うべきと考えております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○内田委員 それでは2項調査者について意見を申し上げます。私もこれは議論を踏まえて、見直しを検討したら良いと思います。一つは、この動議が出る場合においては、やはり何らかの強い意思が働いている背景があると思っています。つまり、先ほどから先生方がご指摘されたように、会社側の調査が不満であるとか、あるいはそれを前提に次の展開を考えるというようなことが想定されます。その場合、やはり独立性・中立性が担保されていないということが問題で、機密情報の外部流出とか不正利用について善管注意義務だけで抑制するのは現実的に難しいのではないかと思っています。   もう一つは、やはり機密情報というのは定義付けが難しいところでありまして、公開されてしまうとそれはもう機密情報でなかったり、あるいは株主総会で多数派ということで意見、コンセンサスが醸成されてしまうと、そこに反対することや対抗するのはなかなか難しいということであります。   確かに現状では濫用事例はあまりない状況ですので、それほど懸念はないのかもしれないません。ただ、この制度を考えると、その状況がずっと続くのか分からないと思っていまして、前にこの事案が大手電機会社でありましたが、それ以降はかなり注目されるようになってきて、実際に調査に関する提案というのは増えてきています。現状においては、調査は必要ないという理由で否決されるケースが多いとは思いますが、依然としてこれは徐々に増えてきている状況だと思います。世の中で注目されている議案であれば、そういった監視や抑止も働く思いますので、不正であるとか情報漏えいというのは起こりにくいのかもしれませんが、例えば大手ではなく、あまり衆目を集めない中型以下の企業でこういった事案が起きた場合には、濫用の可能性も否定はできないと思いますので、その辺りも踏まえて、議論はしても良いと思っています。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○田中委員 会社法第316条第2項については、耳目を引き付けるような事案があって、にわかに注目を浴びたと思うのですけれども、あの事件自体の評価も結構分かれているとは思うのですが、私自身はどちらかといえば、松中幹事が先ほど言われたように、会社で第三者委員会等を設置して調査させると、どうしてもお手盛り的な調査に終わるおそれが否定できないので、その際に、株主の多数決による対抗手段として会社法第316条第2項による調査が可能になるということで、むしろこの制度に一定の役割があることが分かった事案なのではないかと私は思っています。そういう点からしても、制度が使われたからこの制度自体をなくそうとか、使えないようにしてしまうというのは私は賛成できないです。   一方で、この制度のもとでは、調査者は株主総会で選ばれるわけですから、会社の役員に近い立場にいるのに、役員であれば及ぶような規律が何もないではないかというのは、確かにうなずける部分もあると思います。役員に対する会社法の規律と一定程度まで同様の規律を及ぼすとか、特に調査者の選任議案の提案に際しては、その経歴や利害関係に関する情報を提案株主に開示させるというような規制はあり得るのではないかと思っております。それから調査者の善管注意義務についても、元々会社との間で委任の関係にあるため善管注意義務はあるのですけれども、会社法上、強行法規として規律するということもあり得るかなと思っています。   もう一つは、この調査の報告に関して現在ほとんど規律がないのですけれども、まず裁判所に報告させて、裁判所が、世の中一般にこれを開示していいかどうかについて一定の関与をする、またその裁判には、会社も利害関係人として参加して、この情報はやはり世の中に公にされては困るのだというようなことを主張する機会を与えるという制度はあってもいいと思います。この制度自体、公になった事件以外はあまり世の中に出てきていないものですから、実際上濫用の危険がどの程度あるのか、正直、私も分かりかねるところがあるのですけれども、確かに現行法では、調査者制度の規律がほとんどないと言ってもいい状況ですから、何らかの規律を設けることは考えられると思います。ただ、制度自体を使えなくするとか、裁判所の選任する検査役と同じような非常に厳しい選任要件を設けるみたいなことはしない方がいいと思います。   それからもう一つは、先ほどもありましたけれども、株主総会当日の動議による選任というのはやめた方がいいと思いますので、株主総会の決議事項と同じように、公開会社では当然、事前に議題を示して招集通知に記載させるというやり方がいいと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○齊藤委員 会社法第316条第2項の調査者につきまして御意見申し上げます。   この制度を残すべきか、それとも検査役制度に統合すべきかにつきましては、まだ態度を決めることができず、検査役調査の方に統合するのであれば、そちらの方の要件の見直しも検討しなければいけないのではないかとは思われます。差し当たって併存させるということにいたしますと、決議に際して、まず株主総会に提供されるべき情報をもう少し増やした方がいいのではないかと思います。今の条文の書きぶりですと、調査者の調査の範囲についてほとんどフリーハンドになっているようにも読めるのですが、例えば第三者委員会による調査が不十分であるというような理由で選ばれるのであれば、調査者の調査権限もその目的の範囲に制約されることになるのではないかと思いまして、その辺りにつきまして、もう少し明確にする必要もあるように思われます。   また、候補者につきまして、特に競業関係がある者については、会社の営業の秘密との関係でも警戒的に考えなければいけないと思いますので、そのような利害関係の有無につきましても明らかにした上で、その人がふさわしい候補者なのかどうかを株主に問うという形にするのが望ましいのではないかと思います。株主の承認が得られれば、それが錦の御旗のようなものとして、株主の信任を得たとして、会社役員と同じだと言う考え方もあり得るかと思いますが、会社役員の地位はすでによく周知されており、その広範な職務に照らして相応しい人物かを株主が判断することが期待される一方、これは想像ですけれども、調査者については、株主総会で、選任の目的として説明されることに多少なりとも正当性があれば、株主は、そのような調査は有益であるとして、比較的安易に賛成してしまうおそれがあると思います。その際に注意すべき点にかかる情報提供や、株主の共同の利益を害するような形で候補者が選ばれるようなことがないような手当てなど、検討する必要があるのではないかと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○森委員 会社法第316条第2項の調査者についてですけれども、こちらはある意味、使われていなかったがために、ずっと放置されてきた条項ではないかと思っておりまして、問題点も含めて気付いていなかったというのが正直なところではないかという気がしております。   実際上、会社の業務及び財産の状況を調査をするという権限というのは極めて重大な権限でありまして、ありとあらゆる情報にアクセスできますし、その者がどういった者であるべきかということはよほどしっかりと検討しなければいけないようなことだと思うのですけれども、今は全くその手当てがないという状況ですので、この規定については、現状そこまで問題が明らかになっていなっていないではないかという御議論はあろうかと思うのですけれども、今回改正を逃してしまって次の会社法改正でということになると相当先になって、その間に大変なリスクをはらんでいるような条項を放置することになりかねないと思いますので、改正自体は私は必須でやるべきではないかと思っております。   その改正の方向性としては、田中委員等がおっしゃるように、いろいろな切り口があると思いますので、役員と同じような規律を入れるですとか、動議を認めないというのは当然だと思いますし、いろいろな切り口があると思うのですが、いずれにしろ改正は必須だという議論に進むべきではないかという私の意見です。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。 ○藤田委員 私もこれは第1回で申し上げたような気がするので、フォローさせていただきますが、改正するにしてもいろいろな方向性はあり得て、例えば検査役の方に統合するという案もあり得るかもしれませんが、差し当たりは2項調査者という制度を残すという前提で、どういうことを考えなければいけないかということを発言させていただければと思います。   現在、規制がなさすぎることに加えて、立て付けが変なところもあるので、最低限そこは直した方がいいとは思います。例えば、北村委員の指摘された、動議という形でいきなり総会で提案して可決をもらうということができるというのはまずいと思います。また、これは株主が招集した総会ではなければいけないかというと、そういう限定は不要だと思います。動議による提案はできないというのであれば、株主が招集した総会でなければいけないと限定することはないと思います。さらに候補者に関する情報をもう少し開示した上で選任議案を出させるという規律も必要だと思います。現在は、極論するとライバル会社の顧問弁護士などでも、その情報を開示しないまま調査者の候補者として提案することもできるわけですけれども、そういう情報はさすがに開示させるべきで、具体的にどこまで何を要求するかというのは詳細を考えなければいけませんけれども、選任の手続の規律というのは合理化する必要はあると思います。   少し前後しますけれども、そもそも見直すべきかという点について否定的な意見がありました。確かにこの制度が一定の機能を果たしているのは確かで、ネガティブな機能ばかりではないと思うので、だから直ちに廃止せよとは思わないのですが、ただ、メリットがある反面、懸念は抽象論だから一切手は付けるべきでないと言い切れるほど安全な制度なのかというと、かなり懸念は持っています。そういう意味では、やはり検討はした方がいいと思います。その上で、検討の仕方ですけれども、よく検査役とのバランス論みたいなことが出されるのですが、あまり適切ではありません。あちらは一部の株主が裁判所に頼んで選んでもらうものであるのに対して、こちらは多数の株主が選んでいるという点で、やはり性格は大きく違い、そのまま対比できません。独立性・中立性といっても、株主の多数が選んでいるのに対して中立性を欠くから規制が必要だという議論というのはあまりいい批判の仕方ではないと思います。他方、そういう形で選ばれ会社の機関として行動しているのにもかかわらず、何も義務が課されていないといったことは、問題点として手当てすべき話だと思います。   機密情報の方は、いろいろな意味で深刻に考えた方がいい論点ではないかと思います。確かに多数の株主が選んでいる、つまりいざとなれば経営者を全部入れ替えられるような要件で選ばれているのだから、何ができてもいいような議論があるかもしれませんが、これはどなたか指摘されたかと思いますけれども、調査が必要だからというと、一般株主はどことなくいいことをしてくれるみたいに思って、あまり認識のないままブランクチェックを与えてしまうことになりかねない。これは選任の手続で規制することも考えられますが、それだけでは足りないのかもしれず、特に手当てすべきだとすれば機密情報の話だと思います。   具体的な案まであるわけではないのですが、いきなり提案した株主に全部情報を流すのではなくて、何かクッション置くということが一番現実的なのかという気がします。裁判所を経由するのもいいかもしれませんし、あるいは監査役に一旦報告させて、監査役が株主に対して情報を出すかどうかをまず決めて、情報を出さないと言ったときに裁判所の判断を介在させる形で開示請求を認めるとか、いろいろ立て付けはあり得ると思うのですけれども、何かクッションを置いて、調査して判明したことがいきなり全部選任を提案した株主に流れることだけは、抑えておいた方がいいような気がします。立て付けはいろいろな議論があるので、ここで決め打ちはしないですけれども、機密情報の話は、現段階で問題が起きていないからといって軽視しない方がいいと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○松井(智)委員 今お話がありましたように、この会社法第316条における調査者というものの基本的な考え方というのは多分、選任のスコープが限定された社外役員のような立場の人ではないかと思います。現在、社外役員自体も、例えば株主提案によって選ばれている社外役員というのは、どちらかというとここで議論している調査者の中立性・独立性、あるいは機密情報の外部流出等を含め、似たような問題を潜在的には持っております。論理的には善管注意義務によって整理できるという説明もありますけれども、もしかすると実務レベルでは、どういった形で資料が提供され、どういう議案、どういう議論にならば参加できるのかということについていろいろ議論をしているところもあるのではないかと思うので、そういう意味では、社外性があるけれども会社の機微情報に触れる人たちについて、まず選任の手続、それから実際の調査のプロセス、それから報告をするに際して出すことができる情報について、同じ観点から議論をするということが必要だろうと思います。   そのように考えた場合、先ほど出てきた、動議では議論ができない理由が問題となります。これは多分、普通の総会プロセスで選任できるかもしれないのだけれども、動議では属性についての開示がないから議論ができないのではないかと考えられます。あるいは事前に不適格としうるような人であるかもしれないからではないか、これは会社法である程度定めることができるのではないかと思いますが現状制限がなく、さらに競業者である可能性もあるのではないか、これも現在会社法で定めていないので、こうした状況ではどのような候補者でも出てくることができるのではないかと思います。したがって、様々なことについて、会社法第358条と一緒の比較というよりは、社外役員と同等程度の権限を持つ人間の選任や資格の確認にどういったプロセスが必要なのかという視点で見るということが重要なのではないかと思いました。また、アクセスできる情報の範囲という点については、先ほどの齊藤委員がおっしゃったように、選任のスコープを決める時点で目的による限定というのが掛かるのではないかという指摘は重要なのではないかと考えております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。   ほかに御意見はございますでしょうか。   たくさんの御意見を頂き、ありがとうございます。2の株主総会の招集手続等に関する検査役の選任の申立権者、こちらについてはあまり意見が出されなかったように思います。もしこの点についてもさらに御意見を頂けましたら、第二読会に進むに当たって大変参考になると存じますので、もし御意見がございましたら、是非御発言ください。   御発言が少ないということは見直しに賛成という御趣旨なのか、反対という御趣旨なのか、是非御意見をおっしゃっていただけると有り難いと思いますが、いかがでしょうか。 ○齊藤委員 確定的な意見ではないのですけれども、現時点では反対するべき理由があまり見当たらないという意味で、検討してもいいのではないかと思います。御指摘のように、取締役や監査役には、会社関係訴訟の原告適格を与えられておりまして、これらの者が、会社を被告として訴えを提起するに当たりまして、会社とは異なる立場で、役員の立場として情報収集を必要とすることはあると思います。日本の株主総会では、その決議が非常に多くの者の利害に関係するにもかかわらず、議事録に客観性を持たせることへの手当ては十分にされていないのですが、例えばドイツなどにおきましては、株主総会に公証人を同席させるというような実務を通じて記録がきちんと残るようにされています。役員が、その善管注意義務を果たす中で、会社の代表者とは異なる立場から、記録を残す必要性を認めた場合に、検査役を利用できるようにする、という対応は考えられるものではないかと思いました。 ○神作部会長 御意見どうもありがとうございました。 ○藤田委員 あまり申し上げることはないのですけれども、今この議題を全部落とすということを支持しているわけではないということだけ申し上げておきたいと思います。齊藤委員も言われましたように、この提案は、法制上は十分あり得るような内容ではあると思うのですが、ただ、同時に22ページの一番下に書いてあるように、そもそもどういう問題が生じていて、どういう利害対立状況を前提にこの制度をどのように使おうとされているのか、現行適用を拡大することで何を実現しようとしているかが少し見えていないため、賛成、反対が言いにくいという状態なので、その辺りを今後明らかにしていただくということをお願いするという形で残す、議論の余地はあるので、今直ちに落とすことまではする必要ないと思っております。 ○神作部会長 貴重な御指摘をありがとうございました。   ほかに御発言はございますでしょうか。   よろしゅうございますか。それでは、そろそろ時間も迫ってきましたので、本日はこの程度にいたしたく存じます。   議会の議事日程等につきまして、事務当局から御説明をお願いいたします。 ○宇野幹事 次回の日程は8月27日水曜日、午後1時から午後5時30分までを予定しております。場所は本日と同じ、ここ法務省地下1階の大会議室でございます。次回は企業統治の在り方に関する検討事項について、新たに部会資料を準備して、第一読目の御議論を頂きたいと考えております。 ○神作部会長 それでは、これにて第4回会議を閉会とさせていただきます。   本日も大変熱心な御議論を頂き、誠にありがとうございました。 ―了―