法制審議会 民法(成年後見等関係)部会 第23回会議 議事録 第1 日 時  令和7年7月22日(火)自 午後1時30分                     至 午後4時36分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  参考人からの意見聴取 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山野目部会長 遠隔で参加する方の中にまだお見えになっていない方がおられますけれども、定刻でございますから始めます。ただいまより法制審議会民法(成年後見等関係)部会の第23回会議を始めます。   本日も皆様におかれましては御多用の中、御出席を賜りまして誠にありがとうございます。   前回会議の後、委員の異動がございました。事務当局から御紹介を差し上げます。 ○波多野幹事 前回会議の後、沖野委員が委員を退任されましたので御報告いたします。また、法務省民事局の人事異動に伴いまして、法務省民事局長であった竹内努が委員を退任しております。なお、次回会議に向けて手続を進めることを予定しておりますけれども、竹内努の後任の松井信憲法務省民事局長が委員に就任予定でございます。また、委員として参加しておりました法務省大臣官房審議官の内野宗揮が当省司法法制部長となったことに伴いまして、委員を退任することになり、これまで幹事として参加しておりました民事法制管理官であった竹林俊憲が法務省大臣官房審議官となったことに伴いまして、委員に就任する予定でございます。また、笹井朋昭が民事法制管理官になったことに伴いまして、幹事に就任する予定でございます。 ○山野目部会長 ただいま御紹介を差し上げました中、竹林審議官におかれては次回以降は委員として会議に参加されることになります。これまで幹事としてお世話になってまいりました。この際、改めて竹林審議官から自己紹介をお願いいたします。 (幹事等の自己紹介につき省略) ○山野目部会長 どうぞよろしくお願いいたします。   続きまして、会議の出欠の状況についてお知らせを致します。本日は内野委員、櫻田委員、上山委員及び佐保委員、海老名幹事及び杉山幹事が欠席であると伺っています。   本日の審議に入ります前に、配布資料と本日の進行についての説明を事務当局から差し上げます。 ○波多野幹事 本日はヒアリングのみを予定しておりまして、部会資料の配布をしておりません。参考人から御提供いただきました資料を配布しております。順に御説明いたしますと、石井参考人から「意見書」と題する資料を含め4点の資料を、宮内参考人から「提案・要望」と題する資料を含めて5点の資料を、森𦚰参考人から「意見書」と題する資料を、山縣参考人から「意思決定が困難な人の医療における課題」と題する資料を提供いただいておりまして、配布しております。   本日の進行でございますが、2組の方にヒアリングに御対応いただくために御出席をお願いしております。お話をお聞きする順に団体、お名前を申し上げますと、まず、後見制度と家族の会の関係として、後見制度と家族の会代表の石井靖子様、一般社団法人後見の杜代表の宮内康二様、森谷・森𦚰法律事務所弁護士、森𦚰淳一様。次に、国立研究開発法人国立成育医療研究センター成育こどもシンクタンク副所長、山縣然太朗様でございます。   ヒアリングの進め方でございますが、まず、後見制度と家族の会の関係で3名の参考人から20分程度で御意見を述べていただき、その後、質疑応答を行う進行でお願いしたいと存じます。その後、国立研究開発法人国立成育医療研究センター成育こどもシンクタンク副所長、山縣様から20分程度で御意見を述べていただき、その後、質疑応答を行う進行でお願いしたいと存じます。 ○山野目部会長 後見制度と家族の会からのヒアリングに入ることにいたします。   この際、私から、参考人としてお出ましを頂きました石井靖子様、宮内康二様、森𦚰淳一様に一言申し上げます。   本当に暑い中、法制審議会にお出ましを頂きまして誠にありがとうございます。また、大変充実した資料を事前に御用意を頂きまして、本日御提供いただきました。この点も深く御礼を申し上げます。御案内のとおり、この部会におきましては成年後見制度について必要な見直しを行うための調査審議を進めてまいりました。本日、お三方におかれましては忌憚のない御意見をおっしゃっていただき、私どもとして拝聴し、今後の調査審議にいかしてまいりたいと考えます。何とぞよろしくお願い申し上げます。   進め方として、先ほど御案内いたしましたとおりでございます。石井参考人、宮内参考人、森𦚰参考人から、この順序でお話を伺い、お三方からお話を伺った後、合わせて委員、幹事、関係官からの質疑応答の時間を設ける予定でございます。   それでは早速、石井参考人、お話をなさってくださるようにお願いいたします。 ○石井参考人 後見制度と家族の会の代表をしております石井靖子と申します。よろしくお願いいたします。着席させていただきます。   本日は後見制度利用者の代表といたしまして、利用者の思いを伝えるために参りました。会員の皆様の中には93歳になられる元被後見人という方もおられます。後見制度に対する意見には、後見を使わせる側と使う側、つまり使わせられる側の2種類の意見があると思います。後見を使わせる側は、後見を使いなさい、使わせなさい、利権擁護のためなのだから。それは弱者からすると、時にパターナリズムになることがあります。   被後見人になることで家族共々、後見人という力を持った他人によって支配下に置かれるという構図が現れます。皆様は、他人の支配下に置かれる生活を想像することができますか。見ず知らずの人に通帳やお金を預けることができますか。そして、預けたお金の状況について全く説明がないことを受け入れられますか。家族に対して、あなたには教える義務はないと言われても、何も感じませんか。後見制度の利用者は毎日、毎秒、恐怖と怒りと諦めの道がずっと続いている、精神的に追い詰められる生活を送っています。   そして、弁護士、司法書士など職業後見人は、後見の邪魔をする、お金を狙っているなどとありもしないことを家裁へ報告し、家族、親族は悪者だという印象操作を行います。私たちは裁判のプロに勝てるはずがありません。家族、親族はそのまま悪人認定です。家族がいくら裁判所に説明しても、裁判官は、私は後見人を信じていますのでと言い、何も対応してくれません。何か言いたいなら上申書を書くようにと。しかし、書いても何も変わりません。裁判所は中立ではありません。職業後見人を守ることに必死です。このように裁判所との関わりは、本人に寄り添うといった家族のつながりとか福祉とは全く掛け離れた状況になってしまいます。   当初は私も、まさか成年後見制度がここまで怖い制度とは思っていませんでした。現在はネット上で情報を得ることができるので、一般の家族は後見を使わないという選択ができます。実際に家族の申立ての利用は減少しています。不動産売却など、どうしても後見制度を使わなければいけない場合、弁護士が付いたらどうしようと不安を感じながら申立てをし、弁護士などの後見人が付くと、はずれのくじを引いてしまった気持ちと、ああ、あのネットニュースで知った恐ろしい日々が自分の身にも起こるのかと不安があふれ出すというような制度です。後見を使っている皆様からは、後見制度のせいで毎日苦しい、気が狂いそうだ、絶対に裁判を起こして後見人を訴えてやるといった怒りと悲しみの声が家族会に届いています。これは御本人、家族が成年後見制度や職業後見人によって生きていく時間を削られ、苦しいものにさせられている訴えなのです。   現在、中間試案が発表されていますが、後見する側の弁護士や家庭裁判所に都合のよい内容ばかりで、現在利用者が苦しんでいる原因を改善しようという視点がないように思います。御本人とずっと一緒に生きていた家族、親族が、後見開始の審判が決定した瞬間から、御本人は家族でなくなったように切り離され、家族は部外者として、何も知ることができなくなります。   令和7年5月、衆議院会館にて議員向け成年後見制度勉強会を開催いたしました。30名以上の国会議員及び地方議員の皆様に御参加いただき、成年後見制度の利用者側の実情をお話しいたしました。その際、会場では、利用者の声なくして法改正なしというお言葉を頂きました。職業後見人に強制的に施設に入れられ、家族に会えない、どこにいるのかも教えてもらえない実態を御存じでしょうか。これが利用者が叫ぶ恐怖の職業後見人の実態です。横領以外なら何をやってもいい、どうせ本人は訴えられないのだからと考えているのだと思います。秋には、会員の事案を漫画でまとめた成年後見制度残酷物語が発刊されます。皆様には是非こちらを読んでいただきたいと思います。現状を把握せずに何を改善するのかという疑問があります。まずは利用者の私たちから、後見制度の何が駄目なのか、なぜ利用したくないのかを聴いていただき、法改正によって、利用者の誰一人も不幸にしない、利用者第一の成年後見制度になることを希望いたします。   以上です。ありがとうございました。 ○山野目部会長 どうもありがとうございました。   宮内参考人、お願いいたします。 ○宮内参考人 後見の杜の宮内と申します。よろしくお願いします。   早速ですが、今ほど家族会の石井さんがおっしゃったように、後見される側の実情がまとまったものはないと思っていますので、まず、成年後見制度利用者満足度調査、この実施を提案いたします。調査対象は、使ったからこそ、使い終わったからこそ分かるという点があると思うので、35万人もう終わっている人がいます。今使っている方々が25万人います。さらに、親族として後見人をやっている方、親族以外の人が後見している方ということで、4カテゴリーになると思いますので、このターゲットに向けて調査をお願いしたい。   主なテーマは、やはり後見人や監督人の業務評価ということになると思います。今回、後見市場規模を試算してみたのですけれども、ざっと1,500億円ぐらいなのです。1,500億円払って被後見人になった人がどれぐらいのサービスとか恩恵を受けているのかという、費用対効果の観点から調べるべきと思います。あと、リアルなエピソードを拾った方がいいので、なるべくオープンな聴き方、自由記述をされるとよろしいと思います。なお、後見を取り消した後にどのようなサポートを受けているのか、受けていないのかというのも今後の運用には資すると思いますので、取消し後の調査、これも提案いたします。私は、後見人の報酬調査が行われたと思うのですけれども、そのときに最高裁に、後見される側の調査はしないのかと電話をしたのですけれども、国の委員会でやれと言われればやるということでしたので、是非よろしくお願いします。   以上が一つ目の提案で、二つ目が苦情対応です。まず、家庭裁判所は苦情は受け付けない、これはそうだと思います。社会福祉協議会で対応できる内容ではないと、これもそう思います、難しいですから。個別に弁護士さんを頼んでも、なかなか後見が付いた案件は引き受けてくれないということで、行き場がない。利用促進というアクセルばかりでブレーキがないと、本当に非常に危険な、暴走してしまいますよね。ということで、成年後見制度の苦情を受け付けて解決の支援をする機関を作っていただきたいと思います。   そこで働く人のイメージなのですけれども、後見する人は駄目です。やはり身内に対する苦情ですから、おざなりになりやすいと。家裁も駄目ですね、家裁の業務についての意見、苦情もありますので。あと、自治体も駄目です、首長申立てについての不満、不平もあるからです。しかし、実施主体は公的なところがいいと思いますので、都道府県が実施主体になるのがいいのかなと思っています。さらに、一次相談とかは後見制度を使ったことがある人、一般の方がいいかなと思います。あるいは、市民後見人養成講座を受講したけれどもなかなか役割がない方がたくさんいらっしゃいますので、こういう方々の活用の場としてもいいと思います。私は6年ほど前に業界紙で後見の品質チェック、仕組みについて提案しております。また、これまで12年ほどで2,000件ぐらいのトラブルに対応してきていますので、大体トラブルの類型、原因、事前事後対策もおよそまとめていますので、必要があればお声掛けいただければ情報提供いたします。   三つ目の提案ですが、いわゆる身上配慮という後見の特徴的な概念と実務だと思いますが、およそ自分なりにやっていますという方々が多いです。でも、果たしてその能力がそもそもあるのかというのは非常に疑問でございます。そもそも難しいです、認知症の人とか知的障害とか精神障害の人のお金に対する本音を聞き出すなんていうのは、もう至難のわざか、ほぼ無理だと思うのです。でも、それこそが後見のメインのテーマですから、しっかりやっていきたいと思います。また、こういうことは言ってほしくないというのがあるのですけれども、認知症だし障害があるのだから身上配慮も何もないだろうと、意味がないのだという専門職の人がいるのですけれども、こういう発言をした人はもう、非常によくないと思います。海外を見ますと、確か去年かおととしカリフォルニア州で、いわゆる身上配慮義務違反的な行為をした人に5万ドルの罰金というふうなルールができたと思いますので、日本でもきっとできると思いますから、ガイドラインで収まることなく罰則規定を設けていただきたいという、以上が三つの提案です。   あと二つ、要望なのですけれども、家族は身上監護、弁護士さんは財産管理というのがあるわけですけれども、これ自体がどうなのかと思いますが、ある弁護士さんは書面で、身上監護人の仕事は本人と話をする程度だと明記をしています。他方、東京家裁にいらっしゃった片岡先生は書面で、施設への支払いと書いています。お金がないのに何で払えるのだということなのですよね。仮に身上監護後見人に一定の財産管理権がなかったら、契約してきても、財産管理後見人がそこは駄目だと言ったら、もう仕事にならない、施設も迷惑すると思うのです。あと銀行もおかしくて、身上監護後見人が行っても残高さえ教えてくれません、財産管理後見人に聞けばいいだろうと、ところが財産管理後見人が教えてくれないから銀行に聞いているわけですから、こういうふうに親族に身上監護権だけあげておけばいいということでは全く仕事ができませんので、また、幾らあるか分からなかったら医療介護計画は立てられませんから、何らかの方法で身上監護後見人に財産管理権があるのだということを明記していただきたいと思っています。   最後に、後見の統計なのですけれども、今回いろいろなグラフを作って提示していますけれども、解説は割愛して、何となく全体として、自分で決める任意後見よりも、ややもすれば後見する側がしやすい国選後見、法定後見ですね、に偏っている方向にあるなと、しかも意図的に、と思っています。今回の法改正でこのグラフがどういうふうに変わっていくのかというのは注視していきたいと思いますが、分析に必要な項目がないのです。例えば、審判前の本人調査とかその他、あってもいいものがないので、是非今後はそういう具体的な項目を取って公表していただいて、誰もが運用を評価できるようにしていただきたいと思っております。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   森𦚰参考人、どうぞよろしくお願いいたします。 ○森𦚰参考人 先ほど宮内さんから、後見事件をやる弁護士がほとんどいないということをおっしゃいましたが、そのとおりみたいで、そういうのを、宮内さんの紹介もあって、いろいろ引き受けさせられて、本当に大変な思いをしていますが、何で引き受けないかというと、やはり相手が弁護士後見人だということで、弁護士は弁護士を訴えにくいということと、負けることも御存じなのかもしれませんが、私は裁判官をずっとやっていたので、しがらみがないので、弁護士を相手に結構訴訟をしているのですが、本当に全敗しているので、もう疲れ切っています。   くだらないことを言っていますが、余り時間がないと思いますので、ざっくり言いますと、私は西岡清一郎さんという方が広島高裁の長官に来られたときに、家裁のエキスパートであること皆さん御存じだと思うのですが、西岡さんに直接聞いたことがあるのです。裁判所内部で職員が非常に苦労していたので、何でこんな制度を作ってしまったのですかと言ったら、西岡さんほどの方が、こんなことになると思わなかったと言われたのです。だから、もうそのときに私は確信しました、これは制度設計自体が間違っているのだろうなと。そういうことで、裁判所の中にいたときから私は後見制度についていろいろ疑問があって、苦労もしたのですが、それはもう意見書に書かせていただきました。   弁護士になってからは本当に、裁判所から見ていたのでは全然分からなかった非常に大きな、後見人の横暴といってもいいかもしれませんが、人権侵害といってもいいかもしれませんが、そういうことがあることを知って、びっくりしました。それで、その後、後見制度をなくすわけにいかないので、在るべき後見制度は何だろうかとずっと考え続けてきて、書いたのがこの意見書の二つの提案で、これがいいかどうか分かりませんが、我妻さんの親族法を読むと、戦前の旧民法から現民法になったときに、親族会がなくなって、それで家裁がその役割を果たさないといかんと、しかし、家裁の今の陣容では無理だということをはっきり書いています。我妻さんも親族会のことを評価はしていないのですけれども、家裁では無理だとはっきり書いていますよね。だから、どうしたらいいのかといろいろ考えた末が私の意見書の意見です。こんなふうになるとは思いませんけれども、私の到達点と御理解ください。   それから、私、意見書に書かなかったことを述べたいと書きましたが、まず1点目は、私も身近に事件に関わったのですが、弁護士の横領です。弁護士が多額の金額を預かることはあるのですが、大体依頼者の金ですので、依頼者という目がありますので、いずれは依頼者に返さないといけない金ばかりなので、それほど横領しようという危険を冒すという気持ちが起こらないのですが、これは被後見人が死ぬまで多額の金を預かり続けるということがあるので、少しそのインセンティブが働くのと同時に、もう一つ言いたいのは、実は過払金バブルのことは御存じだと思うのですけれども、あの頃は弁護士1人が1億円ぐらい稼ぐのが当たり前だったのです。売上げ1億円になると、やはりどんどん経費も上がっていって、それで、経費を下げるのは難しいですよね、当時1億円稼いだ方でも、平成の終わりぐらいでもう過払金バブルははじけて、今はもう2、3千万円、せいぜいそのぐらいが町弁の普通の収入だと思うのですが、つまり売上げが3分の1になってしまった。しかし経費は削れませんよね、相当収入を上げていたので税金も掛かってきます。そうすると、税金の差押えをされている弁護士も私、知っていますけれども、収入よりも経費の方が上になってしまうとどうなるかというと、破産して弁護士資格をなくして路頭に迷うか、目の前の金に手を付けるか、その二者択一になるわけです。弁護士も弱い人間ですから、後者に走ってしまう方がたくさんいらっしゃるのは当然のことではないかと。つまり、個人の弁護士にあんな多額の金を預けることは絶対にやってはいけないことだと思うのです。なので私は、できるだけ推定相続人全員に後見人をやってもらい、もめ事は親族間でもめてもらうか、あるいは、監査人が毎年監査するような法人にそういう後見制度を任せるべきではないかというふうな意見を述べたわけです。   それから、最後にもう1点だけ言っておきます。いろいろ書きましたけれども、後見人が被後見人に渡す生活費が1か月10万円というスタンダードが、なぜなのか分からないけれども、皆さんそうなのです。いろいろ書きましたけれども、資産家の方々ですので、そんなのでやっていけるはずがないのです。だから、何でそうなのかなと思って、実はある後見をやっている弁護士に、その方の仕事ぶりは多少分かったので、余り私の親しい弁護士ではないのですが、あなたは後見開始申立人の代理人みたいな仕事をしていないかと聞いたことがあるのです。そうしたら、そうだというのです。えっと僕は思ったのですが、後見開始申立ての代理人的な行為をしていると。意見書に書きましたけれども、後見申立てが、相続争いの前哨戦になっている例が多いですよね。それで、親御さんの近くにいて面倒を見ていた方を、後見申立てによって、その親から離すのですが、そういう後見を申し立てる別の兄弟というのは、大体、親御さんの近くにいる親御さんにかわいがられたお子さんというのに対して恨みを持っています。ひょっとしたら親にも恨みを持っているかもしれません。そういう恨みを晴らすために、後見人にこうしろ、ああしろと言って、こういう事態が起こっているのではないかというのが私の仮説なのですけれども、本当に言ってみれば幾らでも問題があるのですが、そういうこともあるのではないかと。やはり抜本的な何か解決をしてくださらないと、私が本当に身がもたないぐらい事件がありますので、できるだけお断りしていますけれども、何とかしていただきたいと貴部会にお願いしたい次第です。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   お三方の参考人におかれましては、資料も調えて御提出を頂き、また今し方、意義あるお話を頂戴することがかないました。どうもありがとうございました。   それでは、これからの時間におきまして、委員、幹事、関係官からお尋ねなどの発言をもらうことにしたいと考えます。いかがでしょうか。 ○小澤委員 貴重なお話をありがとうございました。私から1点、森𦚰先生にお伺いしたいのですが、意見書を拝見させていただきました。御意見の中で、日本もドイツの世話法のような仕組みとしてもよいのではないかという御指摘があったかと存じますが、意見書3ページで、中間試案でというところの、いわゆる乙2案と同じような、後見と補助の2類型を支持しておられるように拝見をしました。その理由、特に現行の後見類型相当の類型を残しておく必要性を感じておられる理由について、もう少し詳しく御教示いただけると。 ○森𦚰参考人 意見書に書きましたとおり、今、被後見人になられる方が非常に多くて、本来なるべき方でない方が被後見人になっている。立法当時は、私も聞いたのですけれども、被後見人になる方は植物状態かそれに近い方だけだと。で、そのような方だと完全に意思を表示できないわけですから、やはり誰かが代理をせざるを得ない。しかし、意思を明らかにできる方は補助でいい、保佐でいい、そういう補助人あるいは世話人ですね。つまり、当然御存じだと思いますけれども、国連の委員会からも指摘されているように、そういう権利能力をなくすなんていうことは、権利能力というか、行為能力というか、なくすということは考えられないので、そういうごく一部の植物状態、あるいはもうそれに近い方だけが被後見人になって、それ以外の方はみんな保佐ないし補助的な方でいいのではないかと、私は中間試案を見ていないので、ごめんなさい、そういうのが私の考えです。 ○小澤委員 ありがとうございました。 ○山野目部会長 よろしいですか。   引き続き伺います。 ○青木委員 今日はお話をありがとうございました。石井参考人に少しお伺いしたいと思うのですけれども、成年後見制度利用促進第2期基本計画では、後見人に関する苦情について次のように書いています。「後見人等に関する苦情等には、後見人等の不適切、不適正な職務に関するものだけではなく、後見人等が本人や親族等や支援者の意向等に沿わないことへの不満、本人・親族等が成年後見制度・実務への十分な理解がないこと、本人や支援者とのコミュニケーション不足によって生じる意見の食い違いなど様々なものがある。」と。したがって、その苦情については御本人さんや親族さんの意見も十分に聴いた上で、一方、支援者であったり後見人さんの意見もよく聴いた上で、しっかりと対応する必要があると、基本計画の中ではそういう趣旨の指摘がありまして、私も立場上。弁護士会に来る苦情とか中核機関に来る苦情などをいろいろお伺いする機会がありまして、やはり両方からの意見を聴かないと、どこでどのようにずれが生じているのかということがいろいろだなと感じています。   後見人に問題があることももちろんあります。しかし一方で、御本人さんや御親族さんに対する十分なコミュニケーションがとれていないことによることもあるだろうし、親族さん同士で対立をされていることによることもあるだろうし、いろいろな要因があるということを実感しています。今回資料2で配っていただいた事例は、会員や非会員の皆さんからの訴えなり苦情というものをまとめていただいているのだと思いますけれども、石井さんが全ての件のお話を聴いておられるということですので、石井さんとしては、いろいろな面からお話をしっかり聴いた上で、一つ一つ解決に当たる必要があるとお感じになっていますでしょうか。普段相談を聴いておられての石井さんとしての御感想なり御意見というのがあれば、教えていただければと思います。 ○石井参考人 今言っていただきましたように、家族会への相談とか後見に関する苦情は全て私が電話、それから直接お会いしてお話を聴いています。私たち家族会は、後見のトラブルに実際に巻き込まれたという方が会員ほとんどでおられるので、後見を解決するプロではないです。ですので、苦情が来ましても、私の方ではデータをまとめる、それから私の拙い知識で、こういうふうにすればいいのではないかとお話しします。ですが、もし苦情窓口があるのであれば、家族会は存在しなくてもいいと思います。ですが、これだけお電話で問合せがあるということは、苦情窓口が機能していない。   意見書にも書いたのですけれども、一応、省庁側の皆様は苦情窓口をいろいろな中核機関に置いてあると言われるのですが、それを信じて皆さん、行政とかいろいろなところに苦情を訴えに行くのですが、何度も書いてありますけれども、後見制度を使ったからしようがないですよとか、何も解決になっていない。どこに行っても駄目です、裁判所に行っても、親を連れ去られてしまった、弁護士後見人が会わせてくれない、それを伝えても裁判官は、私は後見人を信じていますからで終わります。親が連れ去られて、もうこちら、家族側は必死なのです。体が悪いことも何も聴いてもらえない、そのまま連れ去られたとか、いろいろな方がいらして、本当に皆さん精神的に追い詰められて、少し吃音になったりとか、もう生きている心地がしない、生気がないというような感じのお話の方がたくさんおられます。ですので、今聴いていただいたことを、私たちは、何度も言いますが、解決窓口ではありません。だから、ここに解決できない方の意見がたくさん集まって、それを今日お届けに来ましたので、逆に、どういう解決窓口を置いていただけるかというのを知りたいと思います。 ○青木委員 ありがとうございました。 ○竹内委員 今日はお話しいただきましてありがとうございます。私は、まず宮内様に教えていただきたいのですが、先ほどお話の中で調査をということがございました。その中で、取消し後のサポートということについても調査をしてはどうかとおっしゃっていただいたと思うのですが、宮内様がこれまで御経験の中で、取消し後のサポートにおいて、これはよいサポートだったと評価できるものであるとか、ここはもう少し改善をすべきではないかと、そのように思われたものがございましたら御共有いただければと思いまして、御質問いたしました。よろしくお願いいたします。 ○宮内参考人 親族がいれば、親族がやればいいという感じ、また、できていますね。親族がいない場合ですよね。後見が取り消されたとしても保佐程度、保佐が取り消されても補助程度の方はいらっしゃるわけなのです。そういう場合には二つ、三つありまして、自分で選びたいということなので、任意後見を知り合いとやってもらって、早速発効させると、監督人が付いてもしようがないよねというのが一つのパターンです。もう一つは、いわゆる社協の日常生活自立支援事業、比較的リーズナブルで十分ですよね、不動産売却とかないですから、なので福祉の方で1回1,500円ぐらい、月2回で3,000円も出せば、後見などの10分の1で同じ効果が得られるということかなと思います。その程度はよくありますけれども、ほかにいろいろ、金融商品に付け替えるだとか、NPOとかに頼むとかありますけれども、以上かなと思います。 ○竹内委員 具体的に教えていただきまして、ありがとうございました。 ○山野目部会長 後見が終わった後どうするかという点は、これから中間試案に基づいての検討を進める際にも重要な観点、論点になってまいります。どうもありがとうございます。 ○根本幹事 今日は先ほどから御意見いただきましてありがとうございます。宮内参考人、石井参考人にそれぞれお伺いできればと思います。   宮内参考人にお伺いをさせていただきたいのは、今回御提案を頂きました身上保護義務違反に罰則を設けるという点に関しまして、先ほどカリフォルニアの事例なども御紹介を頂きましたけれども、罰則ということになれば、罪刑法定主義等との観点から、どういった基準にするのがよいのか、若しくはそのための判断材料をどのように収集していけばいいのかというところも検討しなければいけないということになろうかと思います。この点について、宮内参考人においてお考えがございましたら、教えていただければと思っております。   石井参考人にお伺いをさせていただきたいのは、事例をたくさん御紹介を頂いているかと思います。個別の事案について、私は承知をしていない前提でお伺いします。御紹介を頂いている事例の中には、虐待対応と言われるものについての問題点が関係しているものも幾つか含まれているようにお見受けを致しました。それらの事案について、石井参考人のお考えがあれば、虐待を疑われる若しくは虐待認定をされたということを契機に後見人が選任されるという事例につきまして、個別の後見人の虐待対応に問題があるとお考えでいらっしゃるのか、それとも、虐待防止法におけるやむ措置や面会制限などの規律に問題があるとお考えなのか、教えていただければと思います。 ○山野目部会長 宮内参考人の方からお話しいただくことでよいですか。宮内参考人、お願いします。 ○宮内参考人 特に、あるはあるのですけれども、少し難しいことなので、今日ここでは控えさせていただきたいと思います。基準ですよね。結局、個別性があって、生活歴の延長線上、いわゆる継続理論という社会老年学の分野ですよね、これに逸脱している場合もあるだろうし、計画を立てて、それをやっていないとか、プロセス評価にするのか、結果の評価にするのかとか、幾つか手法はあると思うのですが、それはここでは時間がないので控えたいと思います。 ○山野目部会長 根本幹事、今のところはお話を伺ったということでよろしいですか。 ○根本幹事 はい、ありがとうございます。 ○山野目部会長 続きまして、石井参考人に根本幹事からお尋ねがあったところを石井参考人、お願いいたします。 ○石井参考人 本日も弁護士JPニュースというネットで公開されておりました、行政によって親が連れ去られて理由も分からないというような、もうパターンができておりまして、そのパターンにぴたっとはまるようなニュースでありました。皆さんが連れ去りに遭った行政が関わった件につきましては、突然、行政の人たちが5、6人で現れて、ある人はお母様をそのままシーツにくるんで連れて行かれたとか、説明も何もないと、何でそうなったのかというのはお子さん側からすると全く分からない、そのパターンと、あとはお父様、お母様が元気でデイサービスに行っている間に、帰ってこないので連絡してみたら、行政職員が来てお母さんを連れて行ったというようなパターンがあります。   そもそも虐待を疑われたという内容を皆さん、私は虐待なんかしていないという方が、もう100%です。最近いろいろ御相談いただいた方の中には、例えばお母様が、その方はおばあさまなのですけれども、おばあさまが少し体調が悪いから今日はデイサービスを休みたい、少し週に3回は多いから休みたいと、それをお孫さんの女性が伝えたと。そうすると、おばあさまを連れて行かれるのですけれども、そのときに経済虐待と言われたと言っておりました。ある方は、サリンの事件のせいで聴覚障害を持たれた方が、うまく発音ができないということで、お母様に対して行政の方が、包括の方でしょうか、余りいい対応ではなかったので、その方が声が出ないのに怒って、これでは困りますというのを言いたかったのに、もうぎゃあぎゃあという感じだったと、危険人物と認定されたと、その方がお母様を包まれて連れて行かれたと。今もう精神的に追い詰められて、吐き気も止まらない、母のことばかり考えて、奥様も亡くなられているので、独り身でもう唯一の肉親だったのに、連れて行かれたということで、お一人でもいろいろ活動されている方です。このようなパターンがたくさんあります。   なぜ行政が関わるかということなのですが、今、国から中核機関に成年後見制度利用促進ということで旗振りされています。御存じのように、認知症の方や障害者の方の人口の中の割合ですね、もう1,000万近いのではないかと言われている中でも、制度を使っている人数は何十万と、2、30万と、国の方は使わせたいということでしょうか。そうすると、上から使わせるために促進の連絡が来れば、もう区や市は一生懸命弱者を見付けます。その中で、会議はあるのだと思いますが、全て皆さん虐待だと言われて。今日のニュースでも載っていました、高齢者の方は少し腕に当たっただけで青あざができると、子供さんが病院に連れて行ったら、そのあざを見たら裏に行って、そういうものがあったら行政に連絡するようにというお達しが来ているらしいのですが、医師が連絡して、虐待の疑いだと、そこから始まります。お母様が御自分で自転車に乗って転んで、病院に連れて行った、そうしたら虐待を疑われたという方もいらっしゃいます。   その後なのですが、例えば虐待があるのであれば、会議で虐待認定ということであれば、そういう書類を子供たちに見せて、虐待認定だから措置で保護しますというような話があればいいのですが、そんなものは全く誰も、皆さんは書面を見たことがありません。突然やってきて、連れて行くと。こんなことが起こっているということは、もう本当に末端のことなので国の機関の皆さんも御存じないかもしれませんが、皆さんそれで泣いておられます。本当に虐待であるならば書面を見せてくださいと言うのですが、もうそれ以降は、あなたとは話をしない、あなたに教える権利はないということを子供さんに言うのです。もうそういうのを、高齢者の何とか課とか、いろいろ区市町村で変わりますけれども、高齢者に関わる行政の、よく課長とか名前が出てきますが、そういう方が全く一切子供に何も言いません。子供たちは一生懸命、市長に言いたい、区長に言いたいとか、議員に言いたいとかというのはいろいろ動くのですが、全く会えません。   私たちの会員の中では、お母様が亡くなってお骨になって帰ってきて、もう全く会えなかった、連れて行かれて4、5年ですが、一度だけ厳重態勢で面会できたという方がいらっしゃって、亡くなられてお骨で帰ってきたと。こんなことが日本で起こっているのかと、もう本当に信じられない。私は日本が大好きですけれども、こんなことが起こっているということを、末端のことです、本当に。一件一件見ませんとおっしゃる気持ちも分かりますが、これが現在起こっていることです。私に、例えば、でも後見を使って助かっている人がいるのでしょうということ、では助かっている人がいればこうやって死ぬ思いをする人がいてもいいのかということを聞き返したい。だから、私が最後に言いたかったのは、誰一人として後見で不幸になる人がいない、そういう制度を求めて今日、皆様に聞いていただきたくて来ました。 ○山野目部会長 根本幹事、いかがですか。 ○根本幹事 私からは大丈夫です。 ○山野目部会長 森𦚰参考人、ずっと話したいという表情でいらっしゃいました。どうぞお話ください。 ○森𦚰参考人 石井さんが最後におっしゃった事件は今、私が国と区と施設と後見人を相手に訴訟している事件だと思うのですが、私は全然知らなかったのですけれども、この事件に関わるようになって少し勉強を始めているのですけれども、高齢者虐待防止法9条というのがありまして、それで、こちらから言えば連れ去りをされるのですけれども、生命身体に対する侵害の緊急性がある場合に限ってああいう9条を適用できると私は読めるのですけれども、実際には全然そうではないのです。大体、母と娘なのですよ。母と娘というのは大体、私もいろいろ事件を抱えていますけれども、もめるのです。もめてぎゃあぎゃあやると、それだけで連れ去られるということが多くて、高齢者虐待防止法9条は地公体が間違って解釈しているか、児童に関しては今度裁判所の手続が入ったようですけれども、高齢者虐待防止法にも、裁判所も完全に信用できるわけではありませんが、すくなくともそういう手続が絶対に必要ではないかと。つまり、そういう司法手続を経た上で隔離する、そういう手続を、この民法部会には関係ないかもしれませんけれども、是非それは入れるべきだと、私は事件をやっていて思っています。 ○山野目部会長 厚生労働省の関係官もこの会議で、会場にはいませんけれども、遠隔で参加していますから、もちろんおっしゃった事項は法務省主務の法律のものではありませんけれども、問題が連続している側面がありますから、お話は運用の一端をお話しいただいたものとして聴いていると思います。ありがとうございます。 ○森𦚰参考人 ありがとうございます。 ○山野目部会長 引き続き委員、幹事からお話を伺います。 ○星野委員 本日はどうもありがとうございます。私からは宮内参考人に是非教えてほしいと思っています。利用者の満足度調査、これは本当に非常に大事だと思っています。今の部会の中でも、見直しをしていくということがとても重要だというふうに議論していると認識しています。そこで、少し教えてほしいのですが、利用者さんというのは、もちろん高齢者の方であったり、障害がある御本人さんで、その方たちがこの制度を利用してどう思われたかとか、どうだったかということが、なかなか私たちが受け止めにくい状況があって、御親族がいらっしゃる方は御親族の御意見、あるいは支援者、関係者の方の御意見というのもあるとは思うのですが、御本人のお気持ちとか意向というのはどんなふうに満足度調査というようなことでできるのかというところを、是非宮内さんの方のお考えがあれば教えていただきたいと思って御質問しました。よろしくお願いします。 ○宮内参考人 笑顔とか、主観的満足度ですよね、来てくれたとか。よく来てくれたと、こんなふうにやられる人もいますし、そういう態度で大体。それは、でも、主観的なものですよ。客観的には、だから、申し上げたように費用対効果ですよね、これは評価できるわけだから。満足度調査の手法というのは是非、私は考えて独自でやってみようと思っていますけれども、国の方でも是非考えていただければと思います。 ○山野目部会長 星野委員、お続けください。 ○星野委員 大丈夫です。ありがとうございます。 ○佐久間委員 本日は貴重なお話を伺いました。ありがとうございました。宮内参考人に伺いたいことがございます。まず、森𦚰参考人がおっしゃったのと同様に、中身が全く同じかどうかはともかくとして、後見人等になるのは親族が望ましいとお考えかというのが1点です。その上で、親族が望ましいという場合には特に、になるのですけれども、御提案の2番と3番、このとおりになったら設置されるセンター、そして設けられる罰則規定は、親族後見人についても同じように適用するというお考えかどうか、この点を伺いたく存じます。よろしくお願いいたします。 ○宮内参考人 およそ親族が好ましいとは思っています。人事と費用というのは連動しますので、弁護士さんだと有料になりますけれども、本来、後見というのは家族が無料でやるものだと思っています。ただ、中には悪い親族もいます。その場合には家庭裁判所が監督すれば足りるわけで、このような苦情受付解決支援センターは要らないのかもしれません。私が申し上げているのは、業務上横領ならお巡りさんが捕まえてくれるとか、著しい損害賠償があれば民事で行けるのですけれども、会えないとか、不適切な施設に入れているとか、いわゆる民事、刑事でさばけない、しかしそれはおかしいだろうという泣き寝入りしている部分が大半にあると思うので、そこを酌み取って改善するところがあった方がいいと思っています。あと、身上配慮義務的なことについても、親が認知症になったから、昔の恨み返しだという方もいらっしゃいますので、それはまた駄目だよということで監督人を付す程度でいいだろうし、親族でも親族相盗例は適用しないわけですから、身上配慮義務違反の罰則は科してもいいと、むしろ科すべきだと思います。 ○山野目部会長 佐久間委員、よろしいですか。   引き続き伺います。関係官の皆さんも御遠慮なく。 ○野村(真)幹事 本日はありがとうございます。森𦚰参考人と石井参考人へ質問させていただきます。   まず、森𦚰参考人の意見書の御意見は、主に家庭裁判所における後見等関係事件の取扱いについての御指摘であったかと思います。家庭裁判所の取扱いや考え方が変われば、現行法の規律を前提にしても、成年後見制度はある程度は使いやすいものになっていくようにも思われます。実際、現行の成年後見制度の下で約25年間の実務のうち最近10年間は家庭裁判所の考え方も随分変わったと感じておりまして、成年後見制度は少しずつでありますが、利用者にとって利用しやすいものに変わってきているのではないかと思います。例えば、意見書の15ページに記載されている孫の入学祝いのケースなどは、本人の意思決定支援という観点からは現在の運用では認められる場合もあるのではないかと思います。森𦚰参考人から御覧になって、家庭裁判所やそれに対する最高裁判所の指示が変わっただけでは、つまり運用だけでは改善が難しい現行の成年後見制度、民法の規定の改善すべき点がありましたら御指摘いただければと思います。   以上が森𦚰参考人に対する質問になりますが、続いて石井参考人に対する質問ですが、3点ございます。先ほど、いろいろなトラブルの事例を聴いていらっしゃるということで、特に解決機関ではないというお話だったかと思うのですけれども、石井参考人が関わられたトラブルの事例で、解決された事例というのはございましたでしょうか。解決された事例と解決されなかった事例の違いはどこにあるとお考えでしょうか。   2点目ですが、頂いている意見書からは、後見人と家族とが十分にコミュニケーションがとれない場面があることがうかがえますが、そのような場面において家族側にどのような支援が必要だと思われますでしょうか。先ほど、苦情解決受付支援センターのお話がありましたが、そこに至るまででも、家族にどのような支援があったらよいと思われますでしょうか。   最後の質問になりますが、家族の在り方も変化しており、家族の力を当然のものと考えると家族に過剰な負担を強いることになることも考えられます。例えば、高齢者の介護が典型的で、かつては家族の仕事でしたけれども、現在は介護保険制度の下、介護の社会化が進んでいるかと思います。そこで、十分に支援できる家族がいない方について、介護保険制度のように家族以外の支援として成年後見制度は必要だとお考えでしょうか。また、不動産売却や、家族と本人が共に相続人となる遺産分割協議など、第三者の後見人が必要となる場面もあるかと思いますが、どのような後見人であれば家族としても受け入れることができるとお考えでしょうか。 ○山野目部会長 そうしましたら、お尋ねで挙げられた順番で、森𦚰参考人の方からお話を伺ってよろしいですか。 ○森𦚰参考人 私は後見の事務をやっていたのは平成13年から17年かな、の伊賀支部だけで、あと福山支部で1件だけ、御存じかどうか分かりませんが、唯一かどうか知りませんが、国賠を認めた広島高裁の事件だけ私が担当して、もう後見人を叱咤激励して国賠を取ったのですが、それだけですので、最近の家庭裁判所の後見事務に関しては全く知りません。その間はもう高裁とか刑事とかやっていましたので。   なので、この100万円が、今はいいよと言うのかもしれませんが、例えば(1)のコンビニエンスストアを建てて節税対策したいというのは、そこまでは家裁もオーケーは言わないのではないかと思うし、何よりも弁護士後見人、専門家後見人を付けると、やはり裁判所の指導というのは行き届いていないのではないかと私は思います、事件を見ていますと。専門家後見人である弁護士にお任せしているので、裁判所はあとは知らんという態度でいるのではないかと。それはもう臆測と言われれば憶測かもしれませんが、そう思っていますので、やはりいかに家裁が変わろうと、現在のような弁護士後見人を選任している限りにおいては同様の問題は生じ得ると私は思っています。コンビニエンスストアのことなんかは、親族が、推定共同相続人がみんなでやろうと言ったらやれるわけで、それを弁護士がやろうとは、多分は危険があるので、言わないと思うのですよね。そういう意味で、ほぼ親族が、推定相続人らが後見人をやるというのが私の至った結論であります。よろしいでしょうか。 ○山野目部会長 野村真美幹事、ここまではよろしいですか。 ○野村(真)幹事 ありがとうございます。それ以外にも、運用では改善が難しい、制度自体の、民法の規定の改善すべき点はございますでしょうか。 ○森𦚰参考人 私が提案しているように、やはり後見はもう、植物状態の方に限るというふうに、今は実務が違いますのでね、そうなるように完全に変えていただきたい。それで、あとはもう国連の委員会の指摘もありますように、完全な代理権、本人が何もできないような状態になるのは絶対おかしいので、それを改正していただきたいと、その2点ですね、大きいのは。 ○山野目部会長 西岡長官とお話をなさったのは、支部のお勤めのときですか。 ○森𦚰参考人 そうなのです。見てみたら、私が福山支部に行ったときに、なぜかしら、私は寺田長官とも個人的に話したことがあって、割とずけずけ話しに行くのですけれども、そういうときに直接お話ししたときにそういうことをおっしゃったので、びっくりしました。西岡さんのことを悪く言う方は誰もいないので、あの西岡さんがと、私はびっくりしました。 ○山野目部会長 いろいろ有益な話をしてくださいますよね。 ○森𦚰参考人 本当にいい方です。 ○山野目部会長 石井参考人にお声掛けをします。質問が3点にわたっていて、たくさんございますから、途中で野村真美幹事の方にまた補足してもらったり、私の方からもまた申し添えたりいたしますから、どうぞお気軽に3点にわたってお話しいただきたいと望みます。どうぞ御自由にお話しください。 ○石井参考人 ありがとうございます。まず最初に、トラブルが解決した事例と解決しない事例、どこに何の差があるかという内容の御質問だったと思います。もう本当に様々な後見に関わるいろいろなパターンのトラブルがあります。私も9年間トラブルに巻き込まれているのですけれども、全力で、相手が弁護士、それから施設、本人を出さないということで、あっという間に意思のある私の親族に後見人を付けまして被後見人にしました。そこからはもう、後見人が会わせたらいけないと言っていますからとか施設が言って、誰と一緒に行っても会うことができないという何年間も過ごしています。   解決したか、しないかというのは、本当に唯一、そちらに座っておられる宮内さんがずっと老年学を学んでおられたことと、後見のことをずっと研究していらっしゃる、指導もされているということで、いろいろなことで全国の困っている方を助けておられると思いますので、事例としては宮内さんの方がよく御存じかと思います。   解決した人も会員にはおられますけれども、解決していない方、ずっと苦しんでいる方がほとんどです。違いは何かというと、分かりません。私たち一般人が、結局は法を知っている弁護士に対して闘いを挑むという形になるので、弁護士が相手と聞くと、先ほど話が出ましたが、こちらに付いてくれる弁護士もいません。私も何十人も弁護士を訪ねて事案の説明をしたりとかしていても、急に立ち上がって、僕にはできませんと言って席を外す弁護士とか、まあまあという感じで話が終わったりとか、真剣に聴いてくれるという弁護士は本当に、森𦚰弁護士お一人でした。本当にそうです。   弁護士に相談したのは私1人で延べ25人で、ほかにももう何十人も皆さん、闘うために、親に付いた後見人と話をするために、向こうが第三者を立ててこいというようなことを挑んできますので、もうここは皆さんのイメージの、弱い方を後ろ盾で助けるというような制度ではないです。本当に弁護士対家族の闘いで、私たちは一般人としては、後見人というのは後ろ盾して弱い人を助けるというイメージがあって、それが後見制度だというイメージを皆さん、最初は持ったと思いますけれども、ですけれど実際は、お金の管理だとか、もう一つ、財産管理と身上監護、身上監護というのはその人に寄り添っていろいろしてあげるのではないかというイメージを持って、でも、蓋を開けてみたら、入所とかの契約のサインができると言われて、皆さん、えっ、身上監護ってそうなのですかと。広島の福山支部の弁護士会の、そういう後見の勉強をする会に私、行ったのですけれども、司会されている女性の方も、皆さん、身上監護が一番大切と思いますよね、寄り添っていきますのでと言われて、びっくりしたことがあったのですが、だから、全然そのワードでミスリードされていること、まずそこがスタートということもたくさんありました。すみません、話が少し変わったのですけれども。   そういう、弁護士に対して一般人が挑むというのが全くもう難しい。例えば、弁護士と対立している家族が行政に相談に行ったとしても、行政の一職員、ある課が弁護士に対して、これ気を付けてくださいと言えるはずがないです。だから何も解決しないと。もう弁護士後見人至上主義、司法書士の皆さんもおられますけれども、その人が言うことが全部正しい、裁判所もそれを認めている、だから私たちはとにかくそれに従う、我慢する、泣いてもどこにも、誰も聴いてくれないという状況があるので、今、質問いただきました、解決できた事案、何の差があるかというのは、宮内さんがお話ししてくださると思います。   後見人のコミュニケーションをとるために、家族にどのような支援が必要ですかとありますが、もう後見人が弁護士となった時点で、助けようがない状況になります。全部後見人が正しいですから。だから、嫌な施設に入れると言っても、いや、私たちはこの近くでここに入れたいのですと言っても、後見人が決めてしまうと、もうそちらに行かなければいけないということです。子供がその場にいても、後見人が言うことが正しいので、子供さんの意見が、家で看ると言っても親御さんを連れて行かれたと、連れて行っている間に弁護士後見人が家を売ると、そこに同居している、まだ息子さんがそこに住んでいるのに、家を売るという審判というのでしょうか、裁判所から許可が出たと、出ていけと。その方も障害を持っておられて、すごく大変な思いされているのに、障害者の団体に言っても、裁判所に言っても、誰も聴いてくれない。結局その方は家を追い出されて、2日間、野宿したと言われていました。これが実態です。動物など、お母様が飼われていた猫については、後見人は特に気にしませんから、もう野良猫のようになって死んでしまったとその息子さんが言われていました。だから、コミュニケーションをどうやってとるかと、とる方法があるのでしたら、こちらが教えていただきたいぐらいの感じです。   3番の、介護は社会で看ようということですね。でも、社会で看てくれるとしても、やはりお母様やお父様が帰れる場所というのは家庭だと思います。私は東京に13年住んでいて、田舎の広島に戻って、うちはもう昔からの家なので、長男がいて何とかと。そんな古い考えがあるわけないと思われるかもしれませんけれども、核家族ではない家族もたくさんおられるし、家を大切にするという考え、広島だけではなくて全国、そういう考えを持っておられる方はたくさんおられます。そういう方がお父さんお母さんを介護するといったら、おうちで看る方がたくさんおられます。少し休みが欲しいから、デイサービスに行ったりショートステイに行ったりとかしてもらうというのはありますが、やはり最後、戻るところは家族だと思います。   その家族がやはり本人のことを分かっていて、お母さんはケーキが好きだから買って食べさせてあげようとか、家裁にいろいろな書類を出すからプリンターを買って、お母さん専用で使うように家に設置するねとか、そうしたら、そこを弁護士後見人が判断するのですね、ケーキなんか食べなくていい、そろそろヘアサロン、美容室へ連れて行ってあげたいと言ったら、ヘアサロンなんか行かなくてもいい。よく世の中でバズるというのですが、九州の方のテレビ局が、そういう後見が付いた方の御家族の取材をしたニュースが動画で出ているのですが、何百万人も見ています。その方は本当に、ケーキを食べさせてあげたいと言ったら、ケーキを食べて治るのかと弁護士後見人に言われたというのが、もうネットに出ています。本当にそういうことを言うのです。だって、言ってもそれは別に犯罪でもないですし、書いて私たちが出しても、そんな小さいことで何の裁判を起こせるのですかということですよね。だから、何もできないだろうということで、本当に好き勝手なことをされているのです。   だから、私、ごめんなさい、意地悪を言って、法務省の方でお父様、お母様に後見を使っていらっしゃる方がいたら、その意見を聴いていただければいいのではないかと思います。家族がなれたらもう本当にハッピーで、よかったとですね言いたいのですが、やはり家族がなれていない方がたくさんおられますので、だからそこの、何でしょう、宝くじというか、申立てしないと、家族がなると申立てしてもなれない、そういう方もたくさんいらして、私が曖昧にたくさんいるというのをどのぐらいですかと聞いてくだされば、それは法務省の家庭局に数字があると思いますので、家族がなりたいと申立てしたのに弁護士が付いたという事例の数を教えていただければと思います。   あと何かありますでしょうか、ごめんなさい。 ○山野目部会長 野村真美幹事、何かありますか。 ○野村(真)幹事 ないです。ありがとうございます。 ○山野目部会長 宮内参考人、今のお話の補足があったらどうぞ。 ○宮内参考人 解決、例えば残高を知りたい被後見人がいて、それを言えているのに後見人が見せない、見せる義務がないという場合には、残高を知ることですよね、見ることですよね。それは大体、家庭裁判所に連絡すると、すぐ見せてくれます。結局、家裁を通すというパターンがありますかね。あと、施設に夫婦で一緒に住みたいのに住ませない、それで家裁に言って、そうすると、いいですよと。国家後見だと思いますよね、国がまるで後見人になって、後見人は履行補助者のようにしか見えないことが多いのです。もっと自立していただきたいと、国のせい、家裁のせいにしないようにしてほしいというのがあります。あと解決策としては後見取消し、取り消すことで家族だけでできる。一番人気は取消しです。次は増員、追加です。専門職だけのところに親族の増員をして、親族が後見人になって複数になるか、後見人弁護士さんとか司法書士さんが辞任すると、これなら別に、報告義務あるけれども、まあいいよねというようなことですかね。いろいろなのがあるのですけれども。   あと、コミュニケーションですけれども、コミュニケーションをとらない専門職が圧倒的に悪いわけだから、そういう人たちとどうやって話せばいいですか、なんていうことをこちらが提案するべきではなくて、是非士業さんの人たち、やはり家裁との勉強会をやったり、障害は何だろうというのをやっていますけれども、是非被後見人の方々との座談会とかをやって、どういうところが自分たちがよしとされているのか、悪しとされているのか、そういうのを、やはり主役は被後見人だと思うのです。後見というのはすばらしい概念だと思う。本人に代わって、あるいは本人と一緒に経済活動をさせるわけだから、これは人間がすべきことですからね。是非コミュニケーションは士業の方からとってほしい。 ○波多野幹事 1点、資料の確認をさせていただきたい点がございまして、石井参考人からお出しいただいた資料2にいろいろな事例が書いていただいているところでございます。この事例が、タイトルは後見制度トラブル事案となっているところでございますけれども、全て法定後見が始まっている事案と理解をしていいのか、若しくはそうでない事案も入っているのか、そこについて少し教えていただければと思います。 ○石井参考人 後見人が付いて起こった連れ去りとか面会妨害もありますし、もう一つのパターンとしましては、行政が親御さんを連れ去りして会わせない状態にした後、子供が知らない間に後見申立て、首長申立てが起こり後見人が付いたと、後見人は引き続き家族に挨拶といいますか連絡も何もしてこないという関わり方、このパターンがあると思います。 ○波多野幹事 念のため確認でございますが、この事案全てについて、いずれかのタイミングで後見が開始しているものという理解でございましょうか。 ○石井参考人 はい。ごめんなさい、1点、江東区の方は、これから後見が付くであろうという。もう付きましたか。お母様が連れ去りに遭って、代理人になった弁護士だと思うのですけれども、全く会わせない、これはもう後見に流れるだろうということを娘さんが言っておられます。おうちをその代理人になった弁護士が9,300万円でもう売ってしまったということで、親にも全く会わせてもらえないという状況になっています。 ○波多野幹事 続いて事務当局から御質問して恐縮ですが、宮内参考人に教えていただきたいのですが、提案の2番目の成年後見制度苦情受付解決支援センターということの中の解決というものについては、具体的にはどういうものが解決というイメージになるのかについて、教えていただければと思います。 ○宮内参考人 先ほどの野村真美幹事と同じことかなと思うのですけれども、残高を知りたければ知らせる、一緒に住みたいというなら住む、不動産を売らないでとなったら売らないようにするとか、遺産分割を早くやってなら早くするとか、医療を受けたいのだったら受けてもらうとか。本人の主訴があれば、それが愚行でなければ、それを実現すればいいだけだし、そういう主訴がなければ、こちらの方でしかるべきだろうということをやればよくて、そうなっていない状態が乖離なわけですから、それは個々の事案、だから、パターン化しようとしない方がいいと思うのです。ケアマネージメントとかではないので、医療のクリティカルパスではないですから、一件一件違うので、もう少し細部を見て機能的に考えた方がよくて、思想とかガイドラインから、個別のケースには落ちませんから、それは類型化していますので、トラブルの原因とか解決策とか、どういうのがあるか、それはまた機会があれば提案したいと思いますけれども。 ○山野目部会長 よろしいですか。   引き続き委員、幹事、関係官からのお話を伺います。いかがでしょうか。   石井参考人にお尋ねをします。漫画を秋にお出しになるという話は、もうだんだん準備は進んでいて、秋口に出るというふうな御予定ですか。 ○石井参考人 はい。私たちの事案を聴いてくださったかなり有名な漫画家さんなのですけれども、第3章ぐらいまであるのです、3事案でしょうか、もう2事案まで出来上がっていまして今、3件目の内容の下書きが上がってきています。 ○山野目部会長 本日、石井参考人にお話しいただいたところが議事録の形で法務省のウェブサイトに掲げられることも、御苦労になっておられることを世の中に知らせるのに有意義ですけれども、それと同時に、おっしゃったような漫画であるとか小説であるとか、こういうものが状況によっては統計調査などよりも非常に社会に対しては広報力があって、広く世の中の人が知るきっかけになるかもしれませんから、それを進め、お出来になりましたら見せていただければ有り難いと思います。ありがとうございます。   引き続き委員、幹事のお話を伺います。いかがでしょうか。 ○河村委員 ありがとうございます。   石井さんのお話を伺って、思った以上に問題が起きているということを、現場の声、当事者の方たちの声として知ることができました。私自身は家族として、娘として成年後見人になったことがあるのですけれども、職業的な後見の方が親族が付いたとか、そういう経験を持っていません。   ここの部会でずっと議論をしてきて、私が常々感じてていることというのは、結局のところ、後見制度というのを全くなくすことはもちろんできないのだとしましたら、どういう判断が合理的かとか正しいかではなくて、本人がどう思っているのかが全てではないかということです。本人の幸せとか本人の喜びとか、快不快でいえば快を感じながら生きていくということです。今日聞いたご報告は、少しショッキングなことばかりでびっくりしたのですが、弁護士さんが後見人の事例をお話し頂きました。弁護士さんにもいろいろな方がいらっしゃる、今日お聞きしたエピソードのような方ばかりではないというのはもちろん分かっていますが、それでも私は常々思っていたのですが、弁護士さんは法律の専門家ですけれども、認知症の方や障害者の方の本当の気持ちを酌み取るとか、丁寧に読み取るとかいうことのスキルが長けているということでその職に就いているわけではないと思うので、ご本人の気持ちを読み取るとか酌み取るということにスキルのある人と、弁護士さんのような専門職の後見人さんとが、例えばチーム的にやるという方法はないのかと考えてきました。弁護士さんや司法書士さんが、認知症や障害のある人の気持ちを汲み取ることに特に長けている職業というわけではないのに、またそこが一番大事なところなのに、そのような専門職の方に任せていれば御本人のためになることをするという建て付けになっていることが気になっていました。石井さんへの質問ですが、家族がベストだというお話は宮内参考人からも出ていますけれども、そういう、本人の気持ちを極力酌み取るようなチームを作るときに、職業というか資格というか、こういう人ならいいのではないかとか、いやそんな人は一概に言えるようなものはありませんねということなのか、やはり家族なのか、その辺の御見解があれば、お聞かせいただきたいと思います。 ○山野目部会長 石井参考人におかれては、今のお話を踏まえて自由にお感じになったことをお話しいただければと思います。よろしくお願いします。 ○石井参考人 ただいまの意見を頂いて、すごく私はうれしく思いました。やはり本人に一番大切なものというのは、これからあと何年残されているか分からない時間を、家族と過ごしたいとか、好きなところに行きたいとか、好きなものを食べたいとか、その思いを一番分かっている近い人が理解してあげて、その思いをかなえさせてあげられる、そういうところが職業後見人と違う家族の関わりだと思っています。家族がいるのであれば、もう家族が後見人に。今一番問題になっているのは、家族がなりたいと思って家族が後見人で申立てをしても、急に弁護士が付くと。それは、1,000万円までは家族だけれども1,100万円になったら弁護士を付けるからねと家裁に言われた方とかがいます。お金のその100万の差って何ですかと私、聞かれたのですけれども、いや、分かりません、とにかく財産が多いというだけで弁護士に頼むという、それほど家族って信用がないのかと思いました。   すみません、話が少し変わりますけれども。結局は弁護士さんも職業ですので、その本人がどうであろうかではなくて、契約を取ったから月々幾ら入るし、何か特別なことをしたらボーナスでお金入るしというような、ビジネスの一つとしてしか見ていない、これはもう明らかに言えると思います。皆さんがよく言われるのは、3年使っているけれども一度も会いに来たことがないとか、そういう話もよく聞きます。寄り添っているのは家族です。繰り返しになりますけれども、家族がいたら100%、もう家族でいいと思います。例えば、兄弟げんかしていたとしても、兄弟げんかは後見にかかわらずに兄弟げんかして決めればいいと思います。もう全部国に、裁判所に提出して、裁判所経由で書面でけんかしたりとかではなくて、もう家族の中で、家族が寄り添うでいいと思います。   あとは、ほかに家族がいない方はどうすればいいのかという話がありますけれども、もちろん法的なことを必要なときは弁護士に頼むとか、あるかもしれないですけれども、やはりその本人に近く、話を聴いてあげられるような、福祉の思いを持った方が一番ベストではないかと思います。今、後見制度は財産管理制度と私は言い換えているのですけれども、とにかく財産を守る、使わさないで貯める、自分の報酬のためにキープしておくというような状況だと思いますので、そうではなくて、本人の気持ちを聴いてあげて動けるというのがいいのではないかと思います。   会員の、先ほど言いました93歳の方なのですが、こちらは私たちが宮内さんとサポートして、後見の取消しで一般の方に戻りました。その間は無能力者として、被後見人として全て弁護士に取り上げられ、息子さんも知的障害で同時に後見を付けられたという方なのですけれども、後見を外すために鑑定に私が同席したのです。先生は、その方はもう93歳なのですけれども、岡山大学で農学部で勉強されて、教鞭をとっていらしたこともあるという方なのですけれども、話をずっと聴いてくださって、こんなにしっかり話される方、私は補助と鑑定しますと言われて、石井さん、よく見てさしあげてくださいねと最後に言ってくださいました。私たちからしたら、後見を付ける側ってもう敵のように見えるのですけれども、その先生はすごく優しく言ってくださって、後見が無事外れたと。   すごくつらい思いをした御本人に誰も謝罪はないのです。家裁に電話したときも、もう事務的なことだけですね。でも、御本人は被後見人になっている8か月、どうなるのだろうと思ってすごく不安で、お年ですから実印ってすごく大切、それも取り上げられるとか、お金を全然持つことができないとか、すごく悩んでおられました。外れました。外れた後、知的障害のある息子さんと、その当時89歳でしょうか、どうやって生活していくか。お金の管理ができない、お金はもちろん御本人は持ってお買物はできるのですけれども、支払いの請求書が来たらできないとかというのがあるのです。それで、できたら私、石井に頼みたいと言ってくださったので、私は今、任意後見を結んで、その方の生活支援をしています。すごく信頼くださっています。   一番いいなと思ったのが、例えば病院に行くときは、もちろん私は必ず同席するのですけれども、病状の話を私が聞けます。週に1回、訪問看護の方が来られます。状況を私に教えてくださいます。年末年始、ヘルパーさんのお仕事が止まってしまって食事がないから、ではその間ショートステイにしましょうかとか、相談を私にしてくださいます。御本人にもします。私が今、プラットフォームの役割で、全然裁判所は関わっていないのですけれども、皆さんが全部、確認で連絡くださるのです。私が横並びで御本人に連絡しながら、通帳もお預かりしていますけれども、定期的にお見せして、この前これが入ったので、これを払ってとお話もします。今すごくいい感じで生活していただいていて、ケアマネの方も私と横並びです。ケアマネさんが、すごくいい形で御本人のことをサポートできていますと言ってくださるので、皆さん、周りで動かれる方は、福祉的にはやってあげたい、でも支払いがどうなるか分からないというところがすごく不安だと思うのですけれども、そこのちょっとしたサポートをできる方、私もそんなに、すごく優しくて福祉が、とかというような仕事ではないのですけれども、そういう寄り添える気持ちがある人がそばにいれば、1人で不安なら2人でチームでも3人でも、横並びで御本人のことを聴きながら、プラットフォームになって、いろいろな専門の方がその方に専門のところを助けてあげられるということを積み重ねていったら、全然、裁判所で裁判沙汰のような内容で福祉を考えなくてもいいのではないかというのは私自身が体験しています。   だから、本当はそうなったらいいなと思いながら、いつも思っているのですけれども、やはり裁判所が関わると、もう裁判ですね、後見制度って裁判沙汰で、一般人にはもうつらいものというイメージなので、本当に御本人のことを考えるのであれば、別に裁判所を通さなくても、例えば市役所で登録した方が後見人で、家族がいなかったら、そういうところに登録している方がチームで見てあげるとか、何かいろいろなわざはあるのではないかなと思って、いつも考えています。   でも、今言っていただいてすごく、法的な専門家の方がイコール福祉のところをカバーできるのではないという御意見を頂いたのはすごく、御理解いただいたところでうれしかったです。ありがとうございました。 ○山野目部会長 河村委員、お続けになることがおありでしょうか。 ○河村委員 ありません。ありがとうございました。 ○山野目部会長 今の河村委員と石井参考人のやり取りの余韻が、すてきですね。宮内参考人、何かありますか、どうぞお話しください。 ○宮内参考人 余韻を壊すかもしれないのですけれども、私は大学の教員時代に厚労省の科研費というので主任研究者として、後見人が何をやっているか、そして幾らもらっているかという実証研究をしたのです。親族後見人が何をどうやっているか、弁護士さんその他が何をどうやっているか、社会福祉協議会が法人として何をどうやっているか、そして幾らもらっているかというのをやったのですけれども、大したことはないですよね。基本的には施設への支払い、だって、年とって車を買うとかないですから、すごく静かな売買ですよね、基本的に。だから、それをきちんとやってくれればいいだけで、所詮後見人というのかな、できる範囲が狭いし、悪くなければいい程度のサービス業だと思うのです。あとは常識的な人柄ぐらいが備わっていればよくて、チームである必要は私は全くないと。不動産が100個とかある人はいませんから、大体1個しかないですから。   ですから、余り後見人というものに過度な、スーパーマンかのような、何でもかなえてくれるのだ、みたいな偶像はやめて、業務をきちんと分析して、それだけきちんとやってくれればいいと、悪くなければいいというような評価手法でいいのだろうと思います。ついては、こういう資格のある人がいいということは、もうないです。本人に一番、近似性と私はよく授業でやっていますけれども、本人に一番近い感覚を持って行為ができる人が本人の後見のプロであって、それ以外はないのだと常に思っています。 ○山野目部会長 毎日不動産を売る本人という、そういう人は、いないのですよね。 ○宮内参考人 いないです、1個だから、相場で売れればいいだけですから。 ○山野目部会長 だから、ずっと後見がべったり続いている仕組みでよいかということを、この部会の調査審議もかなり関心を払っています。ありがとうございます。   委員、幹事、関係官からのお話がおありでしたら、引き続き伺います。いかがでしょうか。   よろしいですか。そうしましたら、3人の参考人の皆さんから貴重なお話を伺いました。私からお声掛けをして、最後にお一言ずつ頂戴したいと考えます。宮内参考人、森𦚰参考人、石井参考人の順番でお声掛けを致します。   宮内参考人からは今日、多岐にわたる様々な提案を含むお話を頂きました。お話の中に国選後見という言葉と国家後見という言葉が出てきて、記憶に残ります。必ずしも良いニュアンスだけではなくて、いろいろな語感を含む意味合いでお話しいただいた言葉であろうと感じます。その他、たくさん有益な点のお話を伺いました。宮内参考人から、今日話してみて、改めて述べたいことを簡潔にまとめのような形で何かお話として頂くことがありますれば、頂戴いたします。 ○宮内参考人 首長申立てなのですけれども、資料にありますように、50家裁の分析をすると、一番多い釧路と一番少ない旭川で実に4倍の格差があるのです。同じ北海道でそれほど後見ニーズが違うのかなと、そんなことはないです。ですから、どうも後見というのは住民のニーズではなくて、そこにいる、場合によっては士業の後見人の方と首長の関係とか、あるいは不動産業者、その関係に尽きるのかなと思っていまして、しかし行政というのは強いパワーを持っていますので、首長申立ての適正化、補完的なはずですから。促進法というのは、私は首長申立て促進法だと思っていますので、あれが出てきてから本当に場が乱れていると思っていますので、少し控えてもらえたらなというのを思っています。 ○山野目部会長 御趣旨は理解することができました。ありがとうございます。   森𦚰参考人にお声掛けを致します。明治民法が全部悪かったかというと、そうも言えなくて、お言葉に出た親族会とか、あるいは戦前に存在した隠居という制度は、見方によっては今日、成年後見制度が担わされている部分を、親族といいますか家族が引き受けていた機能というものの表われでもあろうと感ずる側面がございます。そうは申しましても、今我々は明治民法に戻るわけにはまいりません。これは森𦚰参考人も、よく御存じでいらっしゃることでありましょう。そのような状況の中で、今の民法が定めている成年後見制度をこれから良い方向に改めていくための検討をすべく、この部会において調査審議を重ねてまいりました。本日は森𦚰参考人の弁護士としての御経験も踏まえ、貴重なお話をたくさん頂くことができました。最後にお言葉がおありでしたら、頂きたいと望みます。 ○森𦚰参考人 全国の弁護士から叩かれるかもしれませんが、実はしょっちゅう、顧客を増やすためのホームページを作りませんかとか、そういう営業の電話が、1月に3本、4本掛かってきます。弁護士を増やしたせいかもしれませんが、仕事がない弁護士がたくさんいるのだろうと思います。私が対峙した成年後見人弁護士は、成年後見ばかりやっている方が結構いるのです。それで、そういう方はやはり正にビジネス、金もうけなのです。先ほどボーナスと出ましたが、家を売ったらぼんと入りますし、財産が多ければ多いほど月々も入るものが多いので。   後見制度が入ったときというのは介護保険と同時期だったですよね。だから、やはり、書きましたように、厚労省が引き受けて、身近におられる方はケアマネみたいな方がこういう仕事を本来すべきだったのだろうと、そこから僕はボタンの掛け違いが生じている。とにかく財産管理だけすれば、禁治産制度と同じだというふうな感覚を当事の立法者が持っていたのではないかと思うのです。ところが全然違ったと。それが西岡さんがおっしゃったようなことにつながるのだと思うのですけれども、やはりそのボタンの掛け違いを、今更ボタンを掛け直すことはできないので、何とかこういう、先ほどの話もありましたけれども、この仕事は弁護士がやるべき仕事ではないと私は本当に思います。 ○山野目部会長 直近の社会福祉法改正に附則がありまして、見直しをすることとされていました。その見直しが求められているリズムと、ちょうどここで検討している民法の改正の調査審議の目途が、一所懸命すれば、それほどずれない仕方で話を進めていくことができると予想します。今、森𦚰参考人におっしゃっていただいたような観点が、民法においても社会福祉法においても、これから法制の検討をしていくに当たって、改めて想い起こしながら関係者が検討していかなければならないことです。どうもありがとうございます。   石井参考人が今日、最初にお話をし始めていただいたときに、パターナリズムという言葉が出てきて、それはそうであろうと感じましたとともに、お話しいただいた内容はとてもパターナリズムという、それとして価値がないわけではない、そういう理念的な概念だけで済まされるような話ではなくて、どちらかというとその後でお話しいただいた中に出てきた支配という言葉がむしろふさわしいような、石井参考人のお立場から見ていて認識された実態を御紹介を頂きました。お話を聴いていながら、改めて憲法に人身の自由を保障する規定があるということを強くイメージして想い起こさせるようなお話の数々であったと感じます。石井参考人のように受け止めておられる方が、石井参考人と一緒に活動していらっしゃる皆さんと共に、たくさんおられるということを忘れないようにしながら、これから、この会議に与えられている時間はそれほど多くありませんけれども、鋭意、調査審議を進めてまいりたいと決意を新しくしております。もう一度、石井参考人からお話を頂ければ有り難いと存じます。お願いいたします。 ○石井参考人 今日はお話を聴いていただいて、大変感謝しています。私たち一般国民から見ましたら、現場の私たちがそういう目に遭っていることというのは、やはり法律に関わっている上の方の決め事をされている皆様からは本当にたった1個の事案で、一つずつ聴く気はないとか、皆さんも、例えば厚労省とかに直接電話した会員さんが聴く気はないとか言われたりとか、でも、それが日本国民の多くの人に起こっていることだということを考えていただいて、何でこういうことになっているのかというそもそもの原因を取り除く、みんなが幸せに暮らせるような、高齢になった母親とか父親に最後の時間を幸せに、他人の支配なく普通の生活を送っていただけるようになってほしいと思っています。民法改正までまだ少し時間がありますけれども、実際に事実、今困っている人たちというのはたくさんいますので、本当にもう今すぐ弁護士後見人を全部解任とかになったら、すごく助かる人が本当たくさんいると思います。ごめんなさい、少し過激でしたけれども。でも、本当に今日はこちらに来させていただいて感謝しています。波多野参事官、ありがとうございました。皆様、ありがとうございました。 ○山野目部会長 どうもありがとうございました。参考人のお三方から大変意義あるお話をたくさん伺うことができました。改めて3人の参考人の皆様に御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。   委員、幹事、関係官の皆さんにおかれましても、熱心に御発言を頂きありがとうございます。ややお疲れでいらっしゃるかもしれません。休憩を設けることにいたします。どうぞお休みください。           (休     憩) ○山野目部会長 再開いたします。   続きまして、国立研究開発法人国立成育医療研究センター成育こどもシンクタンクの副所長でいらっしゃる山縣然太朗様からヒアリングをすることにいたします。この際、山縣然太朗様に一言申し上げます。   山縣参考人におかれましては、本日は誠に、本当に暑い中というべきでしょうけれども、こんな陽気の中、お運びを頂きましてありがとうございますということを申し上げますとともに、入念な資料の御準備も頂きまして、この会議で掲げる画面の用意など、いろいろ事前にも御尽力を頂きました。私個人は久しぶりに山縣先生にお会いし想い出すことといえば、何といっても厚生労働省の身寄りのない人たちの医療と介護のガイドラインを作成する際に大変なリーダーシップをおとりなった記憶が鮮烈でございます。本日また有意義なお話を伺うことができることをまことにうれしく思います。どうぞよろしくお願いいたします。   それでは、初めに山縣参考人からお話を伺い、その後、委員、幹事からのお尋ねなどの発言を頂くことにいたします。   山縣参考人、どうぞよろしくお願いいたします。 ○山縣参考人 どうも、皆さんこんにちは。今日はこのような重要な場にお呼びいただきましてありがとうございます。   今、山野目部会長がお話しになったように、身寄りのない人、それから医療同意ができない人に関して、どういうふうに医療の現場では行ったらいいのかという、そういうガイドラインとか、それから事例集を研究班の中で検討した者であります。さらに、今年6月に、高齢者等終身サポート事業者の医療との関わり方を発出いたしました。身寄りがない人の場合には身元保証人を求められるケースが多くて、これは2018年、17年の医療機関における調査を行ったときに、8%の医療機関で身元保証人がいないと入院できないとかということが少し表に出まして、これはもう医師応招義務違反だということで、すぐに医政局から、それだけを理由にということはないようにということで、実は医療の現場というのはこういった問題に関しては必ずしも、標準的なものがあるようでない状況です。その辺りのところをお話ししながら、ただ、実際に医療の現場で同意というのがどういう形になっているのかということについてお話をしたいと思います。   20分ということでございますので、駆け足になりますが、今日は身寄りがない人の医療の在り方、医療同意に関する研究の概要、医療の同意を考えたときの生命倫理の4原則、それから、医療同意というのがどういうふうに変遷してきたのか、そして取得の現状と取組に関しましてお話を致します。かなり委員の皆さんには釈迦に説法の点が多々ございますが、確認という意味でお話をさせていただきます。   私どもは2017年度からの研究班で、身寄りのない人の医療及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドラインというのを出しまして、これが医政局の総務課から課長通知として発出ました。これまでこういったものがないために様々な課題があったということであります。これだけではなかなか具体的な事例に対して対応できないものがあるということで、その後、事例集を出しております。今年になりまして、高齢者等終身サポート事業者向けへの、医療の意向表明文書というのをどういうふうに取り扱っているかということについての関わり方というものを研究班で出しております。   研究班は私を代表に、高齢者の医療を専門にする田宮菜々子先生、それから、武藤香織先生は医療社会学の御専門で、今回コロナでも倫理の問題で活躍された方であります。篠原先生、それから、橋本有生先生は山野目先生のお弟子さんだと思いますが、本当にこの法律のところでは橋本先生にお世話になっているところです。それから、健康科学大の山﨑さやか先生、秋山先生、地元の弁護士の方、それから、今回これを作るに当たっては、やはりメディカルソーシャルワーカーの協会の皆様方に本当にお世話になりました。それから、こういった問題というのはやはり地方で現実問題としてございまして、既に半田市では我々がこういったガイドラインを出す前にかなり具体的なものを出されていまして、それを参考にしたものであります。   背景としては、成年後見制度の利用促進、それから、身元保証と高齢者サポート事業に関する消費者問題についての建議というのがございまして、こういった問題を解決するための研究班として位置付けられました。   ガイドラインでは、まず、身寄りがなく医療に係る意思決定が困難な人への対応方法について、実際の医療現場での対応方法から抽出されたベストプラクティスを示しました。2番目としては、全ての医療機関で全ての医療従事者によって実行可能であると考えられる標準的な対応方法を示しました。3番目に、判断能力の程度、それから、家族関係がどのような状態であっても誰もが適切な医療を受けられるように、本人の意思を尊重する医療の仕組みの枠組みという方向性を示しております。   これに当たって医療機関で調査を行ったものでありますが、成年後見人の業務に関してあまり知られておらず、医療行為の同意が成年後見制度の中での成年後見人の役割であると答えている方が40%いたということでありました。それから、医療に係る意思決定が困難な人に対して各医療機関でそういった意思決定をするための規定とか手順書はあるかということに関しては、2割弱のところは持っているけれども、5割は持っていない、それから、そういうものがあるかどうかも知らないというところが23.8%あったということで、まだまだこういった問題については、つまり、主治医やそれに関わった人が決めているということになっているところでありました。   それから、入院時に身元保証人を求めている医療機関が6割あり、そのうち8%が、それがないと入院できないとまで答えていたため、先ほどのような医師応召義務のことがございましたが、ただ、身元保証人、これも様々な意味合いのあるもので、必ずしも連帯保証人のようなものではないわけですが、やはり入院費の支払い、緊急連絡先といったところのために求めており、55.8%は医療行為の同意のために身元保証人を求めているという状況でありました。   ガイドラインは、三つのポイントがございます。まず最初に、判断能力の程度や家族関係にかかわらず本人の意思・意向を確認し尊重する原則、2番目に、家族がない人への具体的な対応の明記、そして3番目に、成年後見人等に期待される具体的な役割の明記であります。   この1番のところで、このガイドラインでは、医療現場で混乱の要因であった第三者による医療行為の同意についての考え方を整理し、医療行為の同意は本人の一身専属性が極めて高いという言葉を使って、成年被後見人等の認知症や精神障害、知的障害による判断能力が不十分な人について成年後見人等の第三者が医療に係る意思決定、同意ができるという規定がないということをこのガイドラインに組み込んだものでありまして、第三者によらない本人の意思を尊重する医療の仕組み作りという方向性を示したものであります。   2番目が、家族がいない人に関しては、判断能力や家族や、サービスを受けている状況が違うということで、判断能力が十分な場合、2番目に、判断能力が不十分で成年後見制度を利用している場合、そして判断能力が不十分で成年後見制度を利用していない場合と三つに分けて、それぞれについて医療に関わる関わり方というものを示しております。   3番目に、成年後見人等に期待される具体的な役割を明記するということで、実際の医療現場での行為、成年被後見人の医療行為の同意だとか、同意のサイン、保証人になること、入院中に必要な物品の準備や付添いなどの事実行為というのが成年後見人の業務であると考えられるのか、そうではないのかといったようなことを、適切な関わり方を含めて明記したものであります。   身寄りのない人に対して、医療に係る意思決定が困難なときに、やはり医療機関でそれなりの整備が必要であろうということで、医療ケアチームとか倫理委員会の活用を提案しており、身寄りのない人のマニュアル作成だとか、倫理委員会の設置、体制の整備を行うことが有効であるとしています。ただ、これは救急医療学会でも示されていますが、救命措置を必要とする場合には、まずは命を救うということで、その後でこういった対応をしていくということが、学会の倫理ガイドラインに示されておりますので、それを踏襲しています。   家族等が本人の意思を推定できる、この意思を推定できるということが重要なのですが、その推定意思を尊重して本人にとっての最善の方法をとることを基本にし、推定できないときには、本人にとって何が最善であるかについて、本人に代わる者と家族等との十分な話合いによって、本人にとっての最良の方法をとることを基本とすると。時間の経過、それから心身の状態の変化、医学的評価の変更など、これに応じたプロセスを繰り返すとしています。   3番目に、家族等がいない場合、その家族等の判断を医療ケアチームに委ねる場合には、本人にとっての最善の方法をとることを基本とする。このプロセスにおいて話し合った内容をその都度、文書にまとめておくということを示しました。   成年後見人に関しては、ここにありますように契約の締結、身上保護、本人意思の尊重、その他家族への連絡や緊急連絡先等々、こういったものをやるのであって、決して医療同意へのサインを強要することのないように注意をするということをこのガイドラインの中では示しているところであります。   事例集の作成の研究ですが、ガイドラインが発出されました後に実際にこれが現場でどのように使われているのか、それから、もう少し足りないところはないのかということで、最初の研究班とほぼ同じ研究班でこれを行いました。この中では、先ほどお話ししたような研究の背景がございますが、成年後見制度利用促進基本計画に係るKPI、医療に係る意思決定が困難な人への円滑な医療介護等の提供ということで、このガイドラインに基づく事例集というのを出して、それに対応していこうということでの研究でありました。   ここでも医療機関に対しての調査を行っていますが、身寄りがない人の入院とか医療に係る対応の中で対応が困難となった場合というのは、やはり緊急連絡先に関すること、医療に係る意思決定に関すること、入退院に関すること、ということになっております。やはり入院費用の問題も含めて、医療の現場では身寄りががいないと難しい問題に直面しているということが明らかになりました。   さらに、身寄りがない人の医療に係る意思決定に関して本人の意思が確認できない場合にどんなプロセスをとっているかということについては、医療ケアチームで決定するが45%、それから、カンファレンスに諮る、主治医が決定するの順に多くなっていますが、マニュアルやガイドラインの活用は30%にとどまっておりますし、倫理委員会等々というのはまだまだ整備ができていないというところでございました。   それから、こういったガイドラインというのを活用したかということに関しては、まだ知らないというところや活用していないところが半分以上あり、これに関しては十分な周知をしていかなければいけないということでありました。   これに基づいて、事例集というのを出していくときに、三つのポイント、身寄りのない人の家族への望ましい対応、後でもお話ししますが、身寄りがないと言いながら家族がどこかにいる場合にどういうふうにするのか、それから、個々のケースに関して、法律的懸念事項に対して法律の観点、それから倫理的な事項に関して倫理的観点、そういったものを示すことによって、こういった問題というものの妥当性というのを考えていってほしいと提案しています。   倫理的な問題としては、臨床倫理の四分表を比較的多くの医療機関で使っていると思いますが、まず第1に左上の医学的適応というのがどういうことなのか、それに対して2、患者の意向はどうなのか、そして3番目として、そういった治療を行うことによる家族等の周囲の状況というのはどういうことなのか、経済的な状況等々もありますし、そして最後にQOL、その人にとってこの治療というのがどういうふうな身体的、精神的、社会的な影響を及ぼすのかということを考えていきながら、最終的に最善の方法を示していくということであります。これに対して、これもカンファレンス用のワークシートで、使っているところは少なからずあると思いますが、今のようなことをこういう流れの中で最終的に合意を目指していくと、て議論の見える化ができますし、後から第三者が入ってきたときにもこういったものを使いながら説明できるということになります。   さて、事例を一つだけ御紹介しますが、イレウスという腸閉塞で入院した患者さんが、再発の可能性が高いので人工肛門を付けるということが主治医としては最善だとして提案したのだけれども、本人が拒否をするケースです。見舞いに来るような家族もいないし、本人が十分に理解しているということも分からないときに、本人が嫌だというので、それを尊重して自宅に退院させてもよいのか、こういった問題というのは医療の現場ではよくあるわけですが、この場合にやはり主治医としては、人工肛門を付けずに帰ったときに増悪して緊急入院する可能性があって、さらには死亡した場合に医療機関は責任を問われないのかとか、それから、本人の意思だけで医療を進めてよいなら、仮に家族がいい場合でも本人の意思だけで医療を進めてもよいのかといったような現場の中でのジレンマがございます。   これに対して、こういうケースで本人の治療拒否について法的な問題はどうなのか、基本的には本人に十分に説明を示した上で、本人が意思が明確であれば本人の意思決定を尊重する。ただし、本人と家族の関係を鑑みて、本人の意思決定を尊重した際に、家族に協力を仰ぐ必要があると判断されるケースにおいては、家族への説明は紛争の予防に資するといったようなこともこの中に書いてあります。つまり、どういう状況になることによって、本人だけの問題ではなく周囲の家族や、これは離れていたとしても、そういう人たちにどういう影響があるかということもやはり配慮する必要があることをここで示しております。   倫理的には、やはり本人の意思を尊重するのだけれども、そういったときに病院の人以外の同席もして、その中で説明するのがよいのではないかと。それから、治療の選択は本人の価値観、どのような生活を望むのかということをどのように損なうのか、つまり、本人はどうしてそれが嫌なのか、何が問題だからそれが嫌なのかということもきちんと話してもらう。それから、本人の意思をどのように尊重したか、退院後もいつでも人工肛門増設が可能であることを話して、その都度そういったものを文書にまとめる。医師が推奨する治療を本人が選択しない場合に、家族をその説得に利用するというのは、それは避けることが倫理的である提案しているところであります。つまり、本人の自律性が損なわれなことを、本人が意思決定するときには、重要であるということであります。   さて、最後になりますが、この生命倫理の4原則。釈迦に説法ではありますが、まずは自律の尊重、それから無危害、本人に危害のあることをしない、3番目に善行、本人にとっての利益を優先する、そして4番目にジャスティス、この正義というのはなかなか医療現場では難しい概念でありますが、私たちはこれを公平性と、つまり、例えば今回、新型コロナのワクチンを先進国だけが使って、発展途上国などにないというのは、これはやはり生命倫理条項のジャスティスに劣るといったようなことであります。   さて、この生命倫理の4原則は、ナチスの裁判のニュルンベルク綱領から始まり、アメリカでのタスキギー梅毒研究事件、梅毒に掛かって、それを治療する人としない人を分けて、どうなるかといったような人体実験に近いものをやったと、その反省からナショナル・リサーチ・アクトというのができて、このときにいわゆるIRB、施設内倫理委員会という言葉が使われ、そしてベルモントレポートによって、人を対象とする研究に対する倫理原則とガイドラインというのができております。この中で今の生命倫理の4原則というのが明確に表に出てきたことになります。   さて、私は1980年代に医師になりましたが、ここに書いてあることを本当に現場で踏んできました。御存じのように、医療というのは非常にパターナリスティックで医師主導型の医療であったと、患者さんは専門的なことを知らないので、専門家である医師の言うことを聞いておけばきちんと治るのだという時代から、今の1970年代のアメリカに発祥する生命倫理の4原則を基に患者の権利というものが叫ばれるようになり、そして、インフォームド・コンセントの概念というのがかなり医療の現場の中でも非常に重要視されるようになりました。つまり、本人にしっかりと説明をし、理解してもらった上でその同意を取ると。   余談でありますが、北里大の唄孝一先生の研究班で私は突然、スタンフォードの人を対象とする医学系研究に関する倫理指針を翻訳するように言われて、1992年でしたが、まだ、研究倫理について詳しく知らない頃で、インフォームド・コンセントを説明と同意と訳していたら、君はまだそんなふうに訳しているのかと、叱責されられたことがありますが、今まではもうそんなふうに訳す人はいなくて、インフォームド・コンセントはインフォームド・コンセント、ICといったりすることはありますが、そういったことであります。   こういったインフォームド・コンセントの制度化、様々なガイドライン等に記載されていますし、チーム医療が重要視されるようになり、つまり、医師が治療の決定をすることから、チームで役割を果たしながら患者さん、患者の家族を支援していくと、そういうときに第三者がメンバーに含まれる倫理委員会といったものに諮って、その妥当性のようなものを判断してもらうというような制度も1990年代に確立されてまいりました。   私、80年代に医師になりましたが、その頃は患者さんに対してがんの告知はしていないケースもかなりいました。まず家族に説明する。妻に、御主人はがんと診断されなしたが、どうしましょうかと。本人には言わないでくださいと。本当にそういう医療をやってきましたが、今は人権問題でもありますし、本人がきちんと自分の病態と向き合うことの方が治療効率がよいということが、そういうエビデンスが出てきたので、本人に隠してなんていうことは、それはもうなくなってきました。   近年では患者、家族と対話、つまり説明して理解して同意というICの概念から、きちんとした対話というのが重要視されるようになり、例えばそれをシェアード・ディシジョン・メーキングという言葉、SDMという言葉などで医療の現場では実践されているところであります。   この本人へのインフォームド・コンセントの徹底、もうこれは当たり前なのですが、そうはいっても本人に判断能力がない場合、ここは本当に現場でまだ答えのないところです。判断能力を客観的に評価しようということで、精神科の専門家などに依頼して、昔からありますが長谷川式とか、最近はこのMMSE(Mini-Mental-State-Examination)といった検査で認知症の判断をして、どの程度理解できるのかということを少し客観的に見ながら、御本人の判断能力を判断するなどしています。   ただ、一方で困難なケース、身寄りがない、家族が拒否する、家族の意見が異なる、戸籍だけの家族がいるというときに、家族等という言葉を使いますが、この人は家族等に入るのかといった議論を、例えば臨床倫理コンサルティングチーム、コンサルテーションチームや臨床倫理委員会等で、これは研究の倫理審査とは別の、そういうチームの中で検討していきます。例えば、本当に戸籍上の家族であっても、本人とはもう他人なのでといって全く拒否して、好きにしてくださいという場合はまだいいのですが、医療チームで検討できるので。逆に、何もしないでくださいという判断をされるときに、本当にそれでいいのかということが大きな問題になります。なので、そういった人たち、戸籍だけの家族で、もう20年も30年も交流のない人を家族の意見として取り入れることの妥当性等々をこういうところで見ていくということになります。   それから代諾、この概念は医療機関によってかなり異なると理解しています。どういう人が代理に同意をできる立場の人なのかということについては、私たちはガイドラインの中では、立場や職種ではなく、本人の意思を推定できるかどうかということで判断することがいいのではないかと、だから家族であったとしても推定できない人はいますし、逆に隣に住んでいる方も、よくお話をして、あの人はこういうことを言っていたよとか、ケアマネさんだってそういう人もいるでしょうし、もちろん後見人になっていらっしゃる方もそういう話をしていれば、本人の意思を推定できる人に入るでしょうし、そういったようなことをしっかりと判断することが必要だと考えております。   家族に対して、やはりきちんと説明しなければいけないときというのは、先ほども少しありましたが、例えば治療によって後遺症を残す、そのために家族が介護をしなければいけないときには、本人だけの判断ではやはりないだろうと、そういうときには御家族にもきちんと説明をして、本人と情報を共有してもらうと。もちろん高い治療の場合には、医療の現場では今でも、まだ多分、本人だけではなくて御家族にも、同意という言い方はしませんが、確認という形でそこにサインしていただくということはあると理解をしています。   最後に、カリフォルニアから来た娘症候群というのがありますが、これは正に遠くに住む親戚、知人が後からやってきて、何であのときにこんな治療したのだと言ってくる人がいるということで、アメリカで言われておりますし、これは東海岸ではカリフォルニアですが、西海岸ではシカゴだったり、娘は別に娘でなくていいわけで、日本でも本当にそういうことはよくあります。いろいろなことがもう済んだ後に、遠い親戚がやってきていろいろと意見を言われるというケースです。そういうことに対して、やはりこういうプロセスで御本人の意思をこういう形で反映した結果なのであるということがきちんと言えるような、そういう医療を目指していくということかなと思っております。   長くなりましたが、私からは以上でございます。どうもありがとうございました。 ○山野目部会長 カリフォルニアから来た娘という御話をいただきました。日本の介護の現場では、皆が用いているわけではないでしょうけれども、ほぼ同じような構図で東京から来た長男と言いますよね(毎日新聞2020年9月6日付「滝野隆浩の掃苔記――『東京の長男』の心中は」)。地元で娘が一所懸命に世話していて、大体進み掛けたときに、電話をもらった東京から来た長男がいろいろ堅苦しいことを言って大きくひっくり返すみたいななりゆきを眺めると、すごく考えさせられますよね。山縣参考人、どうもありがとうございました。 ○山縣参考人 ありがとうございました。 ○山野目部会長 委員、幹事からのお尋ねなどのお話を伺います。いかがでしょうか。 ○小澤委員 ありがとうございます。山縣参考人、本当に貴重なお話をありがとうございました。   成年後見の実務に関わっておりますと、医療同意と一口に言いましても、医療行為は身体や生命に与える影響の程度によって様々であり、その内容によって医療側としても後見人等に求めてくる対応が異なってくるものと考えています。ですので、医療行為の内容ごとの医療同意等の在り方についてのガイドラインがあるとよいのではないかと感じることがございます。   そこで、1点目なのですが、身体や命に関わる影響等の程度や医療行為の内容によって、医療同意の在り方はやはり変わってくると思われますでしょうかというのが1点目です。2点目なのですが、医療同意の現状に課題がある中、本人が事理弁識能力を欠く場合は、何らかの要件の下に本人以外に法律で医療同意権を与えるといった考え方もあると思いますが、そのような同意権を与えるとしたら、どのような立場の人に与えることが望ましいと先生は思われますでしょうかという、2点でございます。 ○山縣参考人 ありがとうございます。非常に難解な問題ではあると思いますが、私どもはガイドラインを作っていくときに、それから現場の中で、第1点目、医療の現場では侵襲の度合いという言い方をしますが、それが本人にとって負担が大きいのかどうなのか、結果として命に関わるような問題なのかどうなのかということに関して、医療の現場では様々なことを行うときに、それによる説明の仕方だとかそういったことは当然変わってきます。採血などのときにわざわざ、採血後の健康障害の説明はもう今ほとんどしませんし、一方でやはり心臓の手術などのように手術のリスクが高いときに、御本人だけではなく御家族に一緒に説明をして、そして納得していただくということは、やはり現場ではやっているところであります。   ただし、侵襲の有無によらず、やはり最終的には本人がどういうふうにそれに対して思っているのかということをベースに考えるべきだと思っております。そのためにも、やはり御本人がどうしてそういう判断をなさるのかということをしっかりとコミュニケーションを取りながら、周りも納得する、つまり思想信条だとかそういったようなことを含めて、今、命だけではなくてQOLとかウエルビーイングという言葉で最終的な人の生き方といったものを決めていこうという中にあって、やはり命だけの問題ではないといったようなことも少しずつ皆さんが共有されているのではないかと思っております。   2番目に、本人以外の方の代諾、同意、それは未成年の場合は、これは親の保護がございますので、当然あると思います。それから、認知症の方や知的障害等の方で判断ができない、そういう方の医療にどういう対応をとっていくのかは、先ほど少しお話ししましたが、どのようにその人が生きていきたいのかということは様々な場面で分かってくる人がいれば、その人が医療対しての推定することができるかもしれない。この人はこういうふうに生きたい、こういう医療をやりたいだろうと、そういうことが分かる人がいるのであれば、そういう方は代わりに同意ということもあってもいいのではないかと思っているところであります。 ○山野目部会長 小澤委員、よろしいですか。ありがとうございます。   引き続き承ります。 ○星野委員 山縣参考人、どうも丁寧な御説明をありがとうございます。社会福祉士として後見等実務に関わっておりますが、このガイドラインを医療現場の方と一緒に使わせていただいていることが非常に多いです。二つほど質問をさせていただきたいと思います。   まず、身寄りがないという捉え方、先ほどの御説明でもあったのですが、物理的な御家族のいる、いないだけではなくて、身寄りがあったとしても御本人となかなか関わりがない方も含めてという捉え方でいいのかというのが一つ目の質問です。   もう一つは、判断能力がない場合というところで、精神科医の専門家に依頼とか、いろいろな検査をしたりということでお話があったと思うのですが、今、部会の中では本人の能力の捉え方を、医学的な診断だけではなくて、いわゆる本人の日常生活のことを知っていたりとか、これまでの意思決定支援にどんなふうに関わってきたかという方たちからの、いわゆるご本人の社会的な状況からの情報も得ながら、一緒にそれも含めて考えていく必要があるのではという議論になっているかと思うのですが、例えば、医療の現場での本人の判断能力がどうかというときに、ソーシャルワーカーや、あるいは地域の支援関係者などにそういうところを確認するとか、情報を得るということがあるのかどうか、そこの2点を教えていただきたいと思います。 ○山縣参考人 ありがとうございます。1点目でございますが、身寄りであったとしても、ご本人の現在の意思を推定できるかどうかが重要と思います。2番目については、判断能力というときに、算数は苦手だけれどもナラティブな話は理解できるとか、難しい医学の治療の結果とかは分からないけれども痛いか苦しいかというのは分かるというように様々な理解能力というのがあるのだろうと思います。なので、そういったようなことも含めて、これまで関わっている人たちの意見というのは非常に重要な意見だと思っております。 ○山縣参考人 星野委員、よろしいですか。 ○星野委員 ありがとうございます。 ○山縣参考人 ほかにいかがでしょうか。 ○野村(真)幹事 本日はありがとうございました。3点ほど質問させていただきます。   まず1点目ですが、私は司法書士で専門職後見人なのですが、専門職後見人にとっても本ガイドラインは非常に重要なものと感じております。個人的には、以前に比べて後見人が医師から医療同意を迫られることも減ってきたように思います。本ガイドラインの考え方が浸透してきたのかなと感じているところです。本ガイドラインのより一層の浸透を図るため、今後どのように周知していくのか、何か具体的な方策等があれば御教示いただければと思います。   2点目ですが、本部会では後見人の医療同意権についても議論がされているところですけが、本ガイドラインがより一層周知されて、本ガイドラインに基づいた運用が行われれば、後見人に医療同意権を与える必要まではないようにも思われますが、この点についてどのようにお考えでしょうか。   最後になりますが、スライドの14から15で、本ガイドラインの中で、本人の意思が確認できない場合は関係者や医療、ケアチームの中で慎重な判断を行うことが必要であるとされていて、その中に家族等という表現がありますが、この等には身上保護を行う後見人も含まれて、その役割というのがスライド15ページにあるようにガイドラインとして示されていると理解しております。今議論されていると思うのですが、高齢者等終身サポート事業者について、仮に同様の役割を求めるとした場合に、現状において課題と感じられていることはございますでしょうか。 ○山野目部会長 3点のお尋ね、山縣参考人、お願いします。 ○山縣参考人 ありがとうございます。まず、こういったガイドラインをより一層社会の中に浸透させるかどうかについては、まずは本当にこういうものの考え方でいいのかという、実はこれは必ずしもオーソライズされているとは思っておりませんで、ただ、皆さんがこれを使っていただいていて、現場で多く話を聞くのが、これで混乱が少なくなりましたという話は本当に聞きます。先ほど後見人のお話もありましたが、突然主治医というか病院から電話が来て、例えば、今もう危ないと、誰かが見ないといけないので、連絡先が後見人になっているので来てくれと、いや、今出張していますと、奥さんが夜中に行ってみとっているみたいなことが本当に起きていたわけですが、この辺りのところでこういうガイドラインを示すことによって、いや、そうはしなくていいのですということを主治医の先生等が御理解される場合には、かなりよくなってきていると思いますので、こういったものを浸透させていくことは重要だと思うのですが、ただ、一方でこのガイドラインは、同意とかそういうところは空欄になる可能性がどうしても出てきます。空欄になったときには、それを最終的に決めたプロセスをしっかりと、それを踏まえて医療行為等々を決めていったのだということが分かるということで、取りあえずは皆さん、御理解いただいているようには思うのですが、では、そのプロセスはどこまでやってればいいのかとか、そう考えても、サインが1個あるだけで、そちらの方が圧倒的に分かりやすいわけですし、なので、そういうところというのをやるためにも、まずは国民が、ACP、アドバンスド・ケア・プランニングという、自分はどう生きたいのか、終末でどうしたいのかという意思表示をする社会を作っていく、そういうことが一番大切ではないかと思っています。   在宅医療などでも、前々から在宅医療で関わっている主治医の先生はそういう話をしていくので、本当にいざというときには比較的スムーズに行くのですが、1か月前に在宅の担当医になったばかりの時に急変すると、その対応に現場で非常に困っていることがあって、こういうふうなことをやはり社会の中で、ただ医療行為だけではなくて生き方を含めたACPの考え方というのを、生活の一部と言うと大げさではありますが、そういったものとして捉えて、常にそれについて考えていく社会、自分の意思表示をしていく社会を作ることが、やはりこれを啓発していく上のベースになるのだろうと思います。   2番目、同意権ですが、私はここの部分は不案内で、明確にお話しすることはもちろんできませんが、ただ、先ほどお話ししたように、後見人だからということで後見人の方にすごく負担が掛かってしまうのではないかと。人の生き死にを決めるわけですから、やはり後見人かどうかというよりも、御本人の意思を推定できる方、そういう方なのかどうなのかというのを、カンファレンスや医療チームの中でしっかりとそういう人とコミュニケーションをとりながら判断をして、この人の言っていることは御本人の意思の推定に近いものであろうということ判断していく、そういうプロセスによって、代諾できる人を決めるべきではないかと思っております。   家族等というのも、これも非常に難しい概念でありまして、これは先ほどの2番目の答えと結局は一緒なのですが、ただ、ワクチンの接種というのは本人の同意以外、駄目なのですよね。では、コロナのときにどうだったのかと。現場で非常にそれは困ります。特に高齢者施設やそういった施設の中で、やはりみんなにきちんと防御として打っておいてほしいと、これは周りの人にも影響があるので、そういうときに現場でどういうことをやっているかというと、本人に説明します。少し指が動いたら、これは理解して同意してくれたなとかといって、そういう記録をして、それで同意をしていくわけですが、同意と判断して代筆をすると。だから、意思は本人だけれども、でも、やはりなかなかそういうケースばかりではないときに、私の理解ではコロナのワクチンのときに、本人から、本人等という等が付くことによって、本人の意思を酌み取ったうえで代筆するということを認めたように思います。   なので、その等が付いたときというのは、限りなく本人の意思若しくは家族の意思、若しくは家族であったとしても家族等に逆に入らない人もいるという意味で、この家族等を私たちは入れているつもりでありますが、なのでこの中には、繰り返しになりますが、立場はどうであれ、目的に応じてその目的を達成する、例えば医療同意であればそれを推定できる、そういった方がこの家族等に入るという理解の中で、これを書いているところであります。 ○山野目部会長 予防接種だけは少し別ではないかという議論はこちらでもありまして、医療同意をする役割の全部を議論するということもしていますけれども、予防接種の医療同意に関してはあり得るかもしれませんねという意見もあります。ただし、それは民法に書き込む事項であるか、予防接種の仕組みの方で改めて考えてもらう事項であるかを考え始めると、悩ましいですね。ありがとうございます。 ○山縣参考人 そうですか。ありがとうございます。 ○山野目部会長 野村真美幹事、よろしいですか。 ○野村(真)幹事 はい、ありがとうございます。 ○山野目部会長 引き続き伺います。   皆さんの方から差し当たり出なければ、私から、先ほど星野委員が2点お尋ねになったうちの後ろの方のお尋ねに関連して、山縣参考人の御意見を補足的にお尋ねしておきたいと考えます。この会議においてはこれまで、医療のことも視野にありますけれども、主として法律的な取引、不動産の売却とかそういったものについて、本人の判断能力が失われているような状況でどのような仕組みを用意していったらよいかということをずっと考えてまいりました。従来の法律学の概念では、判断能力が欠ける、ないという観点で、判断能力がある、ないという議論、あるいは不十分であるとかという、そういうふうに割と一直線で、ある、ない、その中間の不十分というような概念で考えてきていたものですけれども、現実のことを考えますと、非常に重い認知症で、もうほとんど本人が意思を表明することができないようになっていればともかくとして、そこに行く手前、軽度認知機能障害から、さらに認知症の軽度の段階でありますと、本人が一人でいて、例えば取引の関係者が訪ねたときに、こういうことを理解できますかと尋ねれば、分からないと答えますが、脇に支援者がいて、不動産を売るということはこういうことですよ、そして、なぜ売るということになるかというと、今こういう様子ですよねというようなことをお話ししていくと、分かってきましたというようなこともあるし、そうでないこともあるのでないかと思われます。従来の法律学の概念で扱ってきた判断能力のある、なし、不十分みたいなお話が、支援というか、本人を取り囲む社会的なコミュニケーションがあるかないか、どう働くかというようなことを余り考慮に入れないで、単線の1次元の量的な概念として測ってきてしまっていたような部分がありまして、そこは反省しなければいけないということを多くの人が言い始めています。   翻って、今日先生からお話しいただいた医療の現場で、途中のお話の中にも、本人が認知症かどうかは精神科医の専門で判断してもらうと、長谷川式を用いるというようなお話が出てきましたけれども、その場面で長谷川式などを用いて、この人は判断できないねということになると、もうおっしゃった最善の意思の推定の方に動いていくか、本人をケアしている人も様々な人がいると思いますけれども、その人たちを呼び、本人に話してもらって、そういう期間というか時間を置きますというようなことをすれば、もしかしたら答えが変わってくるかもしれないときに、どのような手順をとっておられるか、また推奨すべきであると先生がお考えでいらっしゃるかといったような点について、今後のこの会議の検討にも参考になる部分が大きいと予想しますから、補足でお尋ねしますけれども、このような観点についてはいかがなものでしょうか。 ○山縣参考人 ありがとうございます。本当に難しい問題ではあると思いますが、医療の現場では基本的に、実際の医療を実施するときの判断、そのときの御本人の判断というのを一番重んじますので、例えば意思表明文書のようなものがあったり、事前にその人の表明があったとしても、そういうふうにあなたは今まで言っていますけれども、本当に今もそれでいいですかということを聴くと。つまり、認知症の方とか知的障害の方にも、そのときに本当に判断をもう一度きちんと聴いた上でやるということをすると思います。なので、認知症の方も、重度になる前というのはよく、まだらという言い方をしますが、理解できるときとそうでないときがありますし、言っていることが異なることはあるのですが、だからこそ、あらためて、きちんと確認するということを行っていると理解をしています。   こういう場合に、丁寧にというと、医療の現場ですごく負担になるのでと言われることはよくあるのですが、実際には、私の知る限りですが、それなりにきちんと体制を整えて慣れてくると、それほど大変なことをやっているわけではないというのが私の感覚です。つまり、御本人や家族と何かの折に対話しながらやっていくと。つまり、先ほど医療の現場の医療同意の変遷の中で、最後にシェアード・ディシジョン・メーキングのお話をしましたが、ああいうものというのは正に、本当に説明して同意がという単純なものではなく、御本人がその医療に関してある程度、これが医療従事者としてもいいかもしれないというものもあれば、分からないものもあったりするときに、御本人の生活だとか、これまでの考え方だとか、そういうのをしっかり聴いていきながら、ただ単に医療の物差しだけではないもので決めていくといったようなことをやっていくと。そのためにいろいろな対話が必要で、そのためのツールというのがいろいろできていて、これを全部やるのかと、ガイドラインとかを見ると、思うのですが、慣れてしまえばそうでもないと私なんかは思っておりまして、ただ、それを常に記録していく、看護師が少し回ったときに、その中の一部でもこういう話ができるとかということをしていくことによって、認知症のある人の、そういう調子のいいとき、悪いとき、それからサポートのあるとき、ないときのようなことも含めてきちんと記録していくことで、最後に御本人に判断してもらう、その判断がどうなのかということを一緒に、それまでのものと含めて決めていくという、そういう仕組み作りといいますか、医療の現場での活動ということがなされつつあるのではないかと思っておりますので、医療とかこれまでの物差しとは別のところでの概念というのをやはり入れた形で、医療のディシジョン・メーキングというのも行われつつあるのではないかと思っております。   以上です。答えになっているかどうか分かりませんが。 ○山野目部会長 大変よく分かりました。ありがとうございます。   引き続き伺います。いかがでしょうか。 ○青木委員 今日は先生、ありがとうございました。   このガイドライン、そしてACPもそうですけれども、第三者による決定ではなくて本人による決定を、とにかくプロセスを重要視しながら決めていくのだという視点を明確にしていて、大変すばらしいことだと思っていまして、我々もそれを何とか実務の中に浸透させたいと思っているのですけれども、医療現場での意思決定を本人にしてもらおうと思っても、普段の生活の連続の中で本人に関わっている方が関わった上で、必要な情報を提供したり、本人の意思を把握したりということになりませんと、本人としてもなかなか意思を表明できないというところがあると思いますが、実際には病気で病院に運ばれてきて、そこで医療チームの皆さんとは初めてお会いすることが多いので、どうしても言葉の言い方とか、説明の仕方について、御本人さんに対する分かりやすさとかいうことも含めて言うと難しいものがあると思っているのです。   そういう場合は、普段から生活を共にしている施設の方とか、在宅で支援している福祉事業者の方などが、生活の延長線として、御本人に、医師が今説明したのはこういうことである、今こういう手術をしないといけないと言っているけれども、この手術をすると、こういうことはできるようになるけれども、こういうことはなかなか難しくなるよという内容を、御本人さんに理解できる形でお話しいただくことができると、医療機関としても、インフォームド・コンセントの前提が非常にうまくいくこともあるのではないかと思っております。私も、後見を担当している事案で、聴覚障害で手話でのコミュニケーションで、かつ、知的障害のある方について、お医者さんからの直接の説明だと分からないので、普段からコミュニケーションをとっている施設の職印の皆さんに来ていただき、医師の言っていることを翻訳をしてもらい、それを何回か繰り返すうちに、ようやく手術をするかどうかも本人が決められたという経験があります。そういう関わりが非常に重要だと思っているのですが、医療現場の皆さんには、家族以外で本人に関わる福祉職の皆さんに関わってもらうということに必ずしも積極的でない現場もありまして、家族さんだったらいいですよとか、後見人さんはいいかもしれないれど、施設の方やケアマネさんはどうでしょうかね、と断られることがあるのです。そのあたりがなかなか難しいなと思って、医療と福祉のケアチームがいかに一緒に取り組めるかだと思うのですけれども、医療の現場としては、忙しいとか、そうした機会を調整してみんなに集まってもらうだけでも大変だとか、お医者さんの都合もあるとか、いろいろ壁にはなっていると思うのですけれども、これを各地で進めていくにはどのようにしたらいいのかと思います。後見人の役割というのも、そういう意思決定を支援するに適切な環境を調整したりする役割としては意味があると思いますが、そのようなチーム作りをどう考えたらいいのかというのは、もちろんACPをまだお元気な間からやっていくというのが大事ではあると思いますけれども、なかなかそういう方々だけでもない中で、いざというときの福祉チームと一緒になった関わりをどう作っていけるのか、というのが1点あります。   もう1点は、いわゆる事前指示書とかいうものについてです。プラスの面としては、御本人さんがよく考えられた上で、御自分の意思をうまく言えなくなったときに医師に意思を伝えられるということがありますけれども、それはどうしてもお元気なときの価値観なり、判断なり、知識なりで作りますけれども、いざ自分が病気になり決断するときというのは、またその時とは考えも変わっていきますので、不断に見直していくということがガイドラインでも言われていると思います。それを、例えば、身元保証サービス事業者に事前説明書としてで預けるとか、あるいは任意後見受任者に事前指示書として預けておくという仕組みが、今、一つの方法として考えられていますけれども、果たしてそれで本当に本人さんの意思がしっかりと医師に伝わるものだろうかという危惧もあります。そのことから事前指示書というものに反対する意見もあると思うのです。そこで、この事前指示書の役割をどうお考えになるかということをお伺いします。すみません、長くなりましたけれども、この2点を教えていただければと思います。 ○山縣参考人 ありがとうございます。1番目の問題は、医療現場によって本当に温度差があると思います。何かケースで十分な説明ができていなかったり、そういうことがあると、本当に本人に理解してもらうためにはどうすればいいのだというのを改めて考えて、それを実践していくところもあれば、今までどおりで特に問題なければ、本当に通り一辺倒の説明だったり、それから、誰かに説明しておけばいいような形だったと思うのですけれども、先生が言われるように、本人が理解するとはどういうことなのかというのは、やはり医療現場に限らず、本人の生活とか体験の中でそれと結び付けた形で判断できるということが大切だと私も思っておりますので、今やろうとしていくことが、今までの経験だとか今の生活の中のどういうことに関わりがあるのかといったようなことを説明することが重要で、そのためにはその人の生活というのをやはり理解しておく必要がありますので、第三者としてそこに立ち会ってもらう人は、やはりそういう人、それはもうどんな立場の人でもと思うのですが、入っていただくということが重要だと思います。   家族にというのが、これは結構悩ましいところで、家族がいろいろな意見を持っていますので、医療の現場では窓口を作ってくださいと、逆に家族の場合には、どなたか窓口を作っていただいてその人と連絡を取る。ただし、もちろん家族皆さんと一緒に集まっていただいてそういうお話をするということもありますので、多くの場合にそこまでこじれるケースというのはないので、医療の現場としてそれほど負担かと言われると、そうでもないと私は思っておりますが、ただ、そういう仕組み作りが必要なのだという理解は、やはりしておく必要があると思っております。   それから、2番目の事前指示書ですが、今日はお話ししませんでしたが、昨年の6月に内閣官房等から高齢者等終身サポート事業者ガイドラインというのが出て、事業者としてどういう対応をしなければいけないのかという中に、医療を受ける、医療との関わりの中での中身も入っておりましたが、必ずしも具体的ではない部分があって、そのために私どもも事業者に対して調査をし、その結果を基にして、関わり方というある種のガイドラインをこの6月にやはり医政局から発信させていただいておりますが、そのときに課題として二つありまして、一つは、この事前指示書を条件にして、これがないと契約できませんというところがあって、ACPというのは本来そういうものではないので、そこの考え方というのは少し考えましょうと、ただ、現場としてはそこというのは本当に、いわゆる身元保証人になるに当たっては重要な点なので、そのプロセスということに関しては、これから事業者とも一緒に考えていかなければいけないと思っております。   もう一つは、事前指示書が絶対的なものかというと、決してそうではありませんので、1回で終わりではなく、やはり定期的に、御本人の考えが変わっていないかとか、特に御本人の健康状態が変わったり、それから、身寄りがないと言いながら知人や近くの方との関わりが変わったりすると、それは変わってきますので、きちんとそのような変化をどのようにそこに反映させていくのか、そして、先ほど少しお話ししましたが、それがあったとしても、最後は必ず医療従事者は今どうしますかと聴きますので、それを御本人が言えるときはいいですし、そうでないときには周りとしてそれを推定できるような、そういったことをしていくということなので、先生がおっしゃるように、事前指示書が絶対的なものとして扱うというのは非常に危険で、いつどのような場面でそれが作られたのか、やはりいろいろな同意とか説明も、どんな御本人の状況の中での判断なのかというのはとても大切ですので、そこまで理解された上での事前指示書なのかどうなのかも含めて、やはり丁寧な事前指示書の作成支援というのが必要だというのは、今回の考え方、関わり方の中にも記載はさせていただいておりますが、先生が言われるように、では実際にと言われると、これはこれからだと思っております。ありがとうございます。 ○山野目部会長 ありがとうございます。 ○竹内委員 先生、今日はお話をありがとうございました。私からは1点、質問になります。   例えば、ある医療行為があったとして、御本人が医療同意される場合もあれば、他方、不同意、つまり治療を拒否といいますか、される場合があると思うのです。いずれもそれは御本人の意思ということでは同じだと思うのですけれども、医療同意があった、また医療行為について不同意、本人が拒否している、この二つの間で認定を最終的に医療機関がする場合に、何かそこにプロセスのレベルといいますか、慎重度合いであるとか、丁寧度合いといいますか、同意の場合と不同意の場合とで差異が生じるものであるのか、仮に同意と不同意との間で差異が生じるのだとした場合には、その差を生むのはどこなのか、どういう視点なのか、その辺りを可能な範囲で教えていただけないでしょうか。 ○山縣参考人 ありがとうございます。私の理解では、もう本当に医療の現場からは、外来ぐらいしかやっていないので、離れてはいるのですが、臨床倫理のコンサルティングチームに入っておりますと、一番困るのは、もうこの治療をやらないと命に本当に関わっていく、それを拒否される場合です。そのときに医師として、それを本当に、医師だけではなく医療従事者としてチームとして、それを本当に受け入れられるかというと、これはすごく難しくて、そうすると何とか引き延ばすとか、もういざとなったら、これは私たちの事例集とかでも、先ほどお話ししたように、家族に説得させるのは非倫理的だとか言いながら、そういうときにはもう御家族にお願いするようなことも実際にはあります。本当に命に関わるかどうかのときによって、医療スタッフは本当に難しい選択をしています。   ただ、多くの場合は御本人が苦しくなってくるので、突然亡くなるわけではなくて、苦しくなってくるので、そのときに、やはりあのときにはこう言ったけれどもというふうに御本人のこれまでの意思を翻されるケースというのは決して少なくないと思います。また、医療現場として、これをやれば命がつながるのにというときにカリフォルニアから来た娘症候群のようなことが起きて問題になっていくというようなことがございますので、命に直接関わるような問題に関しては、医療として最善の方法をとるようなケースが多いと思いますし、若しくは何とか別の方法で引き延ばしていくというようなことをしながら、御本人にそのときの最善の治療というものをやってもらうような、そういうふうなことを現場で工夫していると理解しております。 ○竹内委員 どうもありがとうございます。 ○山野目部会長 悩ましいですね。   引き続き伺います。いかがでしょうか。   久保委員や花俣委員も、こちらからお願いはしませんけれども、御遠慮なく、何か医学の先生にお尋ねになることがあれば、御発言を求めてください。   その点も含めて、引き続き、いかがでしょうか。   よろしいようですね。   山縣参考人におかれましては、本日は医療同意、身寄りのない人などを想定した医療の現場におけるコンセンサスの獲得、確保の手順について、大変悩ましい課題がたくさんあるという様子をお教えいただきまして、誠にありがとうございました。   私はNHKのドキュメンタリー番組で重度小児医療の専門の集中医療の現場をつぶさに追った番組を見て、本当にすさまじい状況である現場の様子を知り、いろいろなことを考えさせられました(NHKスペシャル「命を診る/心を診る――小児集中治療室の日々」2025年7月13日放映)。あの場面だって、やはり小児ではありますけれども、本人の最善の利益や意思を推定してやるという原則に従って、苛酷な医療現場で医師の先生方がなさっていらっしゃる様子を見たわけですけれども、そこと共通する部分があるとともに、こちらで扱っている高齢者、障害者、主に成人した人の話になってきますと、小児とはまた異なって、その人のそれまでの人生の蓄積というものがありますから、幾ら認知機能が衰えたとはいっても、やはりその人が何かを思って生きてきたこととか感情とか考えがあるわけでありまして、そこと向かい合いながら医師の先生方が現場で大変苦労していらっしゃる様子を、大筋の理屈としては私どもは理解しているつもりですけれども、今日、先生につぶさに語っていただきまして、悩みは深まるばかりでありまして、ここの会議で検討しているところでどのような成果につなげていったらよいかというのは、更に悩まなければいけないなということを痛感いたしました。そのような意味において大変参考になるお話を頂戴することができました。どうもありがとうございました。 ○山縣参考人 どうもありがとうございました。 ○山野目部会長 本日ヒアリングを2件いたしまして、いずれもそれぞれの参考人から大変意義あるお話を伺うことがかないました。本日の内容の審議はここまででございます。   次回以降の会議につきまして、事務当局から案内を差し上げます。 ○波多野幹事 本日も長時間、どうもありがとうございました。   まず、本日の会議用資料のホームページ掲載について、少し補足して御説明いたします。本日参考人から提出いただいた資料の中には個人名等が記載されている部分があったところでございまして、会議用資料のホームページ掲載につきましては、部会長の判断によりまして、その全部又は一部を掲載しないことができるとされているところでございますので、当部会が制度の見直しについて検討する会議でありまして、個別の事案についての事実を認定して個別の対応を検討するという会議ではないということ等を踏まえまして、個人名等を記載したままホームページに掲載するのかどうかにつきましては、部会長に御判断いただいた上で事務当局において対応したいと考えておりますので、その旨を説明させていただきます。   続きまして、次回の日程でございますが、次回日程は令和7年9月3日水曜日午後1時30分から午後5時30分まで、場所につきましては法務省20階、第1会議室を予定しております。次回もヒアリングを予定しております。現時点では、日本公証人連合会、東京都健康長寿医療センター理事長の秋下医師、信託協会にはヒアリングをお引き受けいただける方向で調整を進めておりまして、その他にもヒアリングを実施することができるかを調整しているところでございます。 ○山野目部会長 ただいま差し上げた御案内の諸点も含めまして、この部会の運営につきまして意見やお尋ねがありますれば承ります。いかがでしょうか。   よろしいでしょうか。それでは、本日もお疲れさまでございました。   これをもちまして法制審議会民法(成年後見等関係)部会の第23回会議を散会といたします。どうもありがとうございました。 -了- -1-