法制審議会 民法(成年後見等関係)部会 第22回会議 議事録 第1 日 時  令和7年7月8日(火)自 午後1時28分                    至 午後5時54分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  1 法定後見制度に関する補充的検討         2 任意後見制度に関する補充的検討 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山野目部会長 いまだ定刻となっておりませんが、会場にお見えの委員、幹事も遠隔で御参加の委員、幹事も皆様おそろいであるという報告を受けました。そこで、ただいまより法制審議会民法(成年後見等関係)部会の第22回会議を開きます。   本日も御多用の中、御出席を賜りまして誠にありがとうございます。   前回部会会議の後、幹事の交代がありましたから、事務当局から紹介を差し上げます。 ○波多野幹事 前回の部会の後に幹事の交代がございましたので、御報告を致します。   小林幹事が退任されまして、海老名英治幹事が就任されました。また、遠坂幹事が退任されまして、野村晋幹事が就任されました。羽野幹事が退任されまして、米田隆史幹事が就任されました。また、火宮幹事が退任されまして、占部亮幹事が就任されました。また、本日より金融庁から川口英輔関係官が出席されます。 ○山野目部会長 それでは、新しく御参加いただくことになった皆さんに簡単な自己紹介をお願いいたします。  (委員等の自己紹介につき省略) ○山野目部会長 どうぞよろしくお願いいたします。   委員、幹事の出欠について御案内を差し上げます。本日は沖野委員、上山委員、櫻田委員、佐保委員及び竹内努委員、また加毛幹事、海老名幹事、杉山幹事及び山下幹事が御欠席でいらっしゃいます。   本日の審議に入ります前に、配布資料の説明を事務当局から差し上げます。 ○柿部関係官 本日は新たな部会資料として部会資料20及び21を配布しております。資料の内容につきましては、後ほどの御審議の中で事務当局から御説明差し上げます。また、根本幹事より「任意後見改正検討(案)」と題する資料を提出いただいており、事前に配布しております。 ○山野目部会長 お話がありましたとおり、根本幹事から任意後見制度の見直しに関する具体的な提案をまとめた書面の準備を頂きました。ありがとうございます。この資料につきましては、部会資料20の審議を終えて、その後、部会資料21についての審議をお願いする際に、根本幹事からあらましの説明をお願いしたいと考えますが、そのような進め方でよろしゅうございますか。   ありがとうございます。   それでは、本日の審議に進みます。   部会資料20の第1の部分について審議をお願いすることにいたします。この部分につきまして事務当局から説明を差し上げます。 ○小松原関係官 部会資料20の「第1 民法第13条第1項各号の内容」について御説明いたします。   これまでの部会において、民法第13条第1項の行為の見直しを検討する必要があり、その見直しの観点について本人の財産上の不利益を回避するとの観点をより進めていく必要があるのではないかとの意見がありました。また、具体的な見直しの内容について、民法第13条第1項の行為に福祉サービス契約等、本人の日常生活の維持に必要な行為を加えていくことなどが提案されました。中間試案第1の1(1)乙2案では、本人が取り消すことができるものとする法律行為から、現行民法第9条ただし書の日用品の購入その他日常生活に関する行為を除くものとしているところ、民法第13条第1項各号の規定を見直すとした場合に、日用品の購入その他日常生活に関する行為の内容も踏まえつつ、具体的にどのような内容とすることが考えられるかについて御議論をいただければと思います。   なお、本題は主として乙2案において問題となる論点ではございますが、(前注)に記載のとおり、本資料は法定後見制度に関する補充的検討を目的とするものです。現在、中間試案についてパブリック・コメントの手続が行われているところであり、中間試案で示した案について特定の案を勧めるという意図はございません。 ○山野目部会長 説明を差し上げた部分につきまして委員、幹事の皆様から御自由に御発言を頂きます。いかがでしょうか。 ○小澤委員 民法13条1項各号については、各号の内容について、文言も含め一定の見直しは必要だと考えておりますが、実務においては取消権として必要な権限と代理権として必要な権限というのは異なっております。したがいまして、保護者の同意を要する行為としては、重要な財産の処分を中心に、現行の規律の文言などの見直しを中心に検討すればよいと考えますが、中間試案第1-1(1)の乙2案の保護Bで示されているような保護者に付与する基本代理権の規律としても位置付けるのであれば、部会資料20の2ページの2で記載されているような福祉施設の入所契約の締結などの行為も追加していく必要はあると考えますし、一方で不動産の処分や建物の新築、贈与といった行為は削除する必要があると考えておりますので、民法第13条第1項各号の規律を取消権と代理権の双方に共通して適用することが相当かどうかを含め、その位置付けを整理して検討することが必要だと考えています。   なお、乙2案の保護Bにおいて現行の民法第9条ただし書と同様の規定を設けるということであれば、民法第13条第1項各号に該当し取消権によって保護される行為と、民法第13条第1項各号に該当せず、かつ日用品の購入その他日常生活に関する行為にも該当しない行為の法的位置付けについても、更に検討が必要ではないかと考えております。 ○野村(真)幹事 まず、甲案の保佐類型における民法第13条第1項の位置付けと、乙2案の保護Bにおける第13条第1項の位置付けは異なるものだと考えます。現行の民法第13条第1項は、事理弁識能力が不十分な人が自ら行った行為を取り消すことができるとする規律です。このため、部会資料15に記載があるとおり、第13条第1項は本人の基本財産を保全するため重要な財産上の行為を規定しているものです。よって、甲案においては本人の自己決定を尊重するため、どこまで同意権、取消権を付与するのかを検討する必要があります。   一方、これに対して乙2案の保護Bは、事理弁識能力を欠く常況にある人に対して適用されますが、このような人が行った法律行為はおよそ意思無能力が推定されるため、事実上は無効になると思われます。この結果として、本人が行った第13条第1項の行為という重要な財産上の行為は取り消すことができる、それ以外の行為は無効になるという制度設計になるように思われます。そうすると、是非はあるかと思いますが、「日用品の購入その他日常生活に関する行為」に限らず、同意権・取消権が付与された行為以外は取り消すことができないと定めておくことに意義があるのではないかと考えます。   また、乙2案では、民法13条1項を保護Bの代理権の規律として用いることも提案されていますが、代理権として必要なのは一定の預貯金の管理、定期的な収入の受領及び費用の支払い、行政機関への申請や届出、福祉サービス契約、施設への入退所や病院への入退院といった本人を保護するために積極的に行動する権限です。保護Bは事理弁識能力を欠く常況にある者が対象ですので、現行の民法第13条第1項の本人の基本財産を保全する権限は代理権としては大きすぎるように思われます。保護Bの代理権の規律としては、民法第13条第1項とは別の規律を設ける必要があるのではないかという意見がリーガルサポート内でありました。一方で、保護Bというのはある程度抽象的に保護の必要性を判断することになって、保護をある程度パッケージ化して利用できるようにしていくことが求められていると思われますので、結果的に第13条第1項の範囲の代理権は必要となるのではないかという意見もありました。   民法第9条ただし書については、成年被後見人であっても自身で有効に行える「日用品の購入その他日常生活に関する行為」を明確にすることができれば、判断能力が不十分であるが後見制度を利用していない人が、少なくとも単独で有効に行える行為を明確にすることにつながって、後見制度の利用を終了した場合の規律として重要になってくると思います。最終的には本人の置かれた状況次第ということになって、民法の条文で明確化を図ることは難しいと考えますが、この範囲の具体化が必要になるのではないかと思います。 ○竹内(裕)委員 ただいまの小澤委員と野村真美幹事の意見に賛成です。乙2案の保護Bは、同意行為と代理権とが同じ民法13条1項の規律になっておりますけれども、同意行為と代理権は質が違うものと思われますので、代理権については御本人に必要なものとして、例えばこの法制審の会議19回で参考資料9で配布された代理行為目録、このようなものを参考に少し構成をし直すといいますか、考える必要があるのではないかと思います。 ○佐久間委員 甲案と乙2案とでは13条1項の規定の持つ意味が異なるというのは、正にそのとおりであると思います。乙2案のことはひとまず置くことにして、甲案を前提といたしますと、2ページの15行目以下に書き加えられているような行為について、本人がした場合に取消し可能とするのは、これはおよそ適当ではないと私は思います。乙2案を採った場合におきましても、意思能力が基本的にはないというのはそのとおりなのですけれども、飽くまで意思能力のある状態で行われた場合ということを前提といたしますと、これらの行為は、17行目にあるとおり、本人の日常生活の維持に必要な行為ということからすると、「日常生活に関する行為」の一つであるとも位置付けることができるのではないかと思います。ですので、乙2案を採る場合であっても、これを加えることは、取消しの対象としても適当ではないように私は思います。意思無能力である場合はもう一緒ですけれども、そうでない場合を考えると、適当ではないように思います。   それから、少し飛びまして6ページに、「日用品の購入その他日常生活に関する行為」と13条1項に列挙された行為との関係が述べられており、部会資料の立場というわけではないかもしれませんけれども、「日常生活に関する行為」というのは、そもそも13条1項に規定する行為の範囲に含まれないこととなるようにも思われるという記述がございます。しかし、例えばですけれども、今でも、保佐の場合ですけれども、孫に少額のお小遣いを上げるとか、冠婚葬祭の際に儀礼的な範囲で金銭を持って行くというのか、正式には何というのか知りませんが、そのようなことは贈与又は贈与類似の行為だとは思うのですけれども、これは「日常生活に関する行為」にあたり取消しの対象にされていないのではないかと思います。そうすると、13条1項のリストと「日常生活に関する行為」が相反するということは、やはりないのではないかと思います。   また、現実にワークしているかと言われると、違うとは思いますけれども、例えば預金の引き出しも形式的に言えば元本の領収に当たるとは思うのですけれども、日常の生活費というか通常の生活に充てるための預金の引き出しは、金融機関がそれを判断できるかどうかは棚上げしますけれども、法の立場からすると、やはりこれも「日常生活に関する行為」として、取消し可能なものとはされていないと私は理解しています。そのことは今後も同様に維持されていいのではないかと思っているところです。   そうすると、部会資料に正にそう書かれているのですが、次に預金の払戻しに関しまして、一体13条1項の列挙行為に当たるのか、そうでないのかということに関しては、23行目にあるとおり相対的にしか定まらない、もうこれはそのとおりだし、やむを得ないし、むしろそれでいいのではないかと思っています。その上で工夫として、例えばですけれども、毎月最低生活費に当たる額の引き出しまでは認めるというのをあえて入れる、新たに設けるということは考えられるかなと思います。ただ、法律の条文にすることについては、それでもいいかなと思うのですけれども、そもそも金融機関のシステムにおいてそれに対応できるのかというのは大問題だと思いますし、さらには、相続のときの預金の引き出しと違って上限額をばちっと定められるわけではないことと、複数の金融機関に預金口座があるときには、それぞれ累積させるとすごい額になることもあるし、ここで述べられているようなキャッシュレス決済は、一つ一つは少額でも、これは本当にすごい額になってしまうかもしれないということを考えると、少し現実的ではないかな、だから今のままかなと思っています。   それから、乙2案の場合に同意権と代理権の性質は違うではないか、したがって権限の範囲を一致させるのはおかしいではないかという御意見があり、それ自体はそのとおりではあると思います。ただ、何度も繰り返し申し上げておりますけれども、保護者に取消権を認めるということになりますと、結局本人はその行為についてはおよそ確定的に有効に行為をする道を断たれるということになるのですね。その行為について必要だったらいちいち裁判所に権限付与を申し立てればよいという制度設計が、私はよくないと思っておりまして、重要な行為であるということは間違いがないのだから、重要な行為について、人によって何時どの行為をすべきことになるかというのは様々であるけれども、その行為をいざしよう、すべきだということになったときに、できない状態だというのはよろしくないという発想から、一致させておくことが望ましいと私は考えております。   ちなみに、冒頭に少し戻りますけれども、福祉サービスの利用などについては、も乙2案の立場を採って、私のように同意権の範囲と代理権の範囲を一致させることを考えたといたしましても、これを13条1項のリストに加えずとも、これらについては必要だったら取消権は付与しないけれども代理権は与える、それは別途与えるということは封じられるわけではないので、それで対応すればいいのではないかと考えております。 ○根本幹事 私からは今の佐久間委員の御発言にも関係して、3点申し上げたいと思います。一つ目は、事理弁識能力を欠く常況であるということの具体例として、日常の買物が自分ではできず誰かに代わってやっていただくような必要がある方と言われますが、ただ、事理弁識能力を欠くイコール9条ただし書について全て意思無能力であると、完全にイコールかというと、内容的にも多少違いがあるというお立場もあり得るところではないかと思います。意思無能力というのは時的な基準で見れば変わるというところもあるかと思いますので、事理弁識能力を欠く常況というのは、飽くまでもそれが判断された時点でのことを言っているだけということになりますから、意思無能力と完全に一致すると言ってよいのかというところは疑義があると思っています。そのことを前提に議論はされるべきではないかと思います。   二つ目は、佐久間委員からもありましたが、例えば部会資料20の2ページの15行目の福祉サービスの関係ですとか入所についても、例えば多額の一時金を伴う入所契約等もあれば、介護保険制度の単位の中でのヘルパーさんの利用というものもあります。相対的にという側面もあるかもしれませんし、ここには様々な財産的な意味が多義的なものが含まれているということになりますので、一くくりに議論されるものではないとは思います。   支援という観点から言えば、日常的な9条ただし書の関係で入ってくるものもあるでしょうけれども、逆に消費者被害等とのことを考慮すれば、、代理権でも入るべきかもしれませんが、13条のカタログで同意権、取消権にも入ってくるべきだと思います。同様のことは携帯電話ですとか通信販売等の行為についても、日常的な側面もありますが、他方でいろいろな機能が多様化している、特に携帯電話等の利用については付加的なサービスが付されているところもあると思いますので、例えば携帯電話についても公共料金の支払いに含まれるという捉え方もできるのかもしれませんが、他方で機能性などを重視するのであれば、消費者被害等とのバランスから、日常的な行為ではないと考えるべきだという側面もあると思います。両方に配慮して規律を考えていかなければいけないと思います。   3点目は、6ページの預貯金の払戻しとの関係ですが、相対的にしか定まらないということは、私もそのとおりだと思います。理論的なところは、佐久間委員がおっしゃられたところに私も賛成をしますけれども、実務的にどう落としていくのかということを考えた場合に、まず条文の中で、日用品の取引に関する預貯金の払出しというのは9条ただし書のところにも含まれ得るのだということは、定めることに意義はあると思っていまして、あとは金融実務との調整になりますが、例えば御本人や預金者からの申出をベースに相対的な金額の額というのを定めていくということを、今後金融界とも御相談をしていくということがあってよいのではないかと思っております。 ○青木委員 先ほど小澤委員、野村真美幹事、そして竹内裕美委員等からお話があった、同意権としての目録と代理権の目録は別ではないかということについて、私も同様の意見です。   その上で、取引の相手方との関係を考えますと、やはり代理権目録に相当するもの、つまり、代理権を類型的に与えるとしても、どのような代理権であるかが個別に明確になっていないと、取引をする相手方は実務的に判断に迷うという問題があると思います。今の13条1項のそれぞれに該当する代理権ですよと言われても、銀行あるいは一般の店舗が取引しようとしている事項が、それに含まれるのかということが判然としないということにもなる場合があると思います。したがって、やはり代理権に関する類型的な付与をするという乙2案の場合には、13条1項とは別に、明確な代理権についての項目を法律上規定できるかどうかということを検討することが必要になるのではないかと思います。   竹内裕美委員からも御指摘のあった参考資料9が、現在の保佐や補助の代理権目録として使われているものですけれども、こういった目録に基づき代理権が指定されてあれば、取引の相手方は今行おうとしている取引がそれに該当するかどうかは概ね確認できるわけです。この目録は、2000年改正当初からあったものではなく、実務的な必要性の中で実績に照らして目録の項目が整備、追加されてきたものであります。そこで、この目録にある各事項を代理権として付与することになることを、規定することが法文上可能なのかどうかということも含めて、検討する必要があるのではないかと思います。そうでないとすると、結局のところ、類型的に代理権を付与するのだといっても、参考資料9のような目録に基づいて必要な代理権を本人さんの必要に合わせて付与するだけということにもなりかねないわけであり、それは乙1案と異ならないという懸念があるので、そこは13条1項とは別の難しさがあるなと感じているところです。   それから、13条1項を前に議論した際に、、私が、最近の電子決済手続についても使いすぎを抑制するための同意権付与の必要性が高まっています、ということを申し上げましたので、資料20では、そのことも含めて記載いただいています。電子決済取引の中には、一つ一つの行為を見れば、日用品の購入というのも多いですし、いわゆる日常生活上の行為に該当するものも多数含まれています。ただ、それが積み重なることによってご本人さんの生活全体を成り立たないようになるという実情に着目して、問題になっていると申し上げてきたわけです。こういったことは、電子決済取引だけではなくて、テレビとかインターネットによるショップでの購入という場合でも言えることでして、1個1個の商品を見ると、数千円までの商品ですが、それを月に20件とか30件とか注文される方があり、そうすると月にそれだけで10万円や20万円の出費となりまして、ご本人さんの月の年金収入をはるかに超えることがあって、それを何とか抑制したいということがあるわけです。けれども、これも日常生活上の取引と区別ができるのかという同じような問題をはらむと思っています。これを更に進めて考えますと、こうした困った事態というのは、成年後見の同意権・取消権によって防ぐことができる問題なのか、そうした問題はもう少し別の観点から、見守りも含めて使いすぎないための支援をするという方向で考えないといけないことかということでもあります。したがって、全ての事態を、13条1項の項目として取り込み、同意権・取消権の付与によって解決を目指すことが果たして可能か、適切かということも含めて考えざるを得ないのではないかと、前に発言をした後でいろいろ考え直していることを申し上げておきます。 ○佐久間委員 13条1項の行為について今、青木委員がおっしゃったことに関して、現在の参考資料9に示された代理権目録のようなものを否定しているわけではなくて、あれでチェックして代理権を与えるということと、13条1項の列挙行為について代理権があるということは、両立し得ないわけではないと思います。具体的にチェックしている項目については、疑いなく代理権があると相手方は安心することができるし、そのチェックが仮に漏れていたとしても、そこは相手方がリスクをとればいいわけで、13条1項の列挙行為に当たるのであれば代理権はあるという扱いが法的にはされるということになるだけのことであって、13条1項の行為のみによって代理権の範囲を決め切りましょうというわけではないということを、もう一度念のために申し上げておきます。 ○山野目部会長 佐久間委員から、部会参考資料9を用いて物事を考えていく可能性はあり得るという御発言を頂戴するのを待っておりました。それを受けて、更に少し委員、幹事に御議論をお願いしたいと考えている事項もございます。   その前に、佐野委員が御発言をお求めになっておられますから、お願いします。 ○佐野委員 先ほど預貯金の払戻しのところについて、佐久間委員や根本幹事から言及いただいていた部分がありましたので、発言させていただきます。   今おっしゃっていただきましたとおり、少額の出金であれば日用品、日常生活に係る取引とみなすという考え方については賛成いたします。ただ、口座銀行の中で一定期間に一定額の出金まで認めるといった金額の管理については、ぱっと今考えるだけでシステム対応が必要になりそうという部分と、佐久間委員もおっしゃっていただいたとおり、各銀行全部累計で幾らまでといった管理は少し難しいといった点もありますので、そこの金額管理という方向性にするのであれば、その仕組みづくりというところも皆様のお知恵も頂きつつ考えていきたいと思っておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   委員、幹事の皆様方から、お諮りしている第1の部分について様々な有益な御意見をお出しいただき、ありがとうございました、本日はこのくらいですねというふうにするわけにはいかなくて、法定後見の基本的な制度編成が新しくどういうふうになってくるかということを秋口に見定めてから、本日お諮りしているような事項についても法制的に細密な検討を続けていかなければいけないわけでありまして、本日ここに時間を割くことができるというチャンスは貴重でございます。そう考えますと、委員、幹事にもしお考えがあればということでありますけれども、今少し御議論を頂きたいと考えます。私の方から3点ほど申し上げます。   一つ目は、ひとまず13条1項のリストを基にして事務当局が検討したものをお出ししております。その役割、存在意義というようなことについて本日、委員、幹事から示唆に富む御発言を頂きました。何分にも13条1項のリストは原型が作られた時期が明治でありまして、その後に何回かの手直しはありますけれども、基本的な骨格を維持して今日に至っております。金融機関における預貯金の取引の発達や社会福祉の進展というようなことは明治の民法を法文として作る際には全く考慮されていないか、ほとんど考慮されていないものでありました。そういう歴史的な経過の問題に加えて、13条1項リストの役割ということを考えますと、既に委員、幹事からお話を頂いておりますとおり、これは基本的には保佐人の同意を得なければ取り消される事項を列挙しているものでありまして、同意権、取消権の文脈からリスト化されて掲げているものでございます。しかしながら、保護Bの構想ないしこれと類似のようなものを考えるとすれば、そこで言っている広範な代理権を与えるというものの広範というものがどういうものですかということが法制上用意されていなければいけないわけでありまして、そこで望まれているリストは、取消権、同意権の対象となる事項というよりは、基本趣旨は飽くまでも代理権限の行使が個別の審判、裁判行為を待たずに可能になるというもののリストは何ですかという代理権付与の範囲の文脈で、適切なリストが用意されていなければなりません。   もちろん佐久間委員がおっしゃったように、その二つの観点は、しかし検討していけば相当程度まで表裏一体の関係で、それほど異なるものを考える必要がないかもしれませんという観点もございます。その一方で委員、幹事のお話を伺っていると、しかしそこの役割といいますか意義の違いは、やはり見捨てることができない注意点であるということもあるかもしれないわけでありまして、その観点から13条1項の現在のリストのみならず、青木委員の言葉を用いて申せば、現実の実務で使って、言わば叩き上げで出来上がってきた資料が部会参考資料9であるわけでありまして、そのような実務性のある、あるいは現代性のあるリストというものも参考にしながら、この種のリストを考えるならば、今後、法制化を視野に置いて、もう1回その作業を改めてし続けていくということが求められるかもしれません。そういうふうな作業の必要性を感じさせる御議論だったと承りましたし、その観点から更に何かお話があれば、本日の段階で承っておきたいと思います。これが1点目です。   それから、2点目は福祉サービスのことですけれども、現在の13条1項リストには、福祉に関して何かするということがうかがえるようなものがないという観点からの御発言が幾つかありました。お話を伺っていると、しかし、何らか福祉的な、というもののイメージが必ずしも一致していないように感じられます。入所契約は確かに福祉の場面ですが、お金が大きく動きます。その半面、お金が動くわけではないし、本人にとって日常的に毎日あるわけでもないけれども、生活の節目、節目においては大事なものですよというようなものがそれなりにあります。日常生活自立支援事業のような福祉サービスを受ける契約が社会福祉法に現在、既に概念として存在していて、ああいうものを13条1項ないしそれに当たるリストの中でどういうふうに受け止めていくかという点は、現在段階においてはっきりいたしません。そういう言わばもう少し経常的な福祉との関係で、福祉サービスを受ける契約は私法上の法律行為でありますけれども、それに関連して、それ自体は行政手続かもしれませんけれども、密接に福祉サービスを受けるという営みと関係するものは、高齢者、障害者の日々の暮らしでたくさんあります。介護保険の申請、要介護認定の申請とか更新、福祉障害サービスの受給申請、障害者手帳の更新、年金の受給申請、これらをこれまでも保護者に当たる人が事実上又は法律上の権限に基づいてしてきた側面がありますけれども、しかし、単なる事実上のものにしないで、新しい法制の下においては何らかの手掛かりが置かれていることが望ましいと感じます。この方面について、もう少し私たちは踏み込んだ検討をしていかなければならないようにも感じます。これが2点目です。   それから、3点目は預貯金の取引のことでありまして、部会資料においては現行の9条ただし書の日常生活に関する行為という概念と13条1項の方の元本の領収との関係がはっきりしないという指摘を差し上げたところでございまして、つまるところ相対的な関係で理解するしかないかもしれないと部会資料に書いたところから、皆さんから結局は相対的とここに書いてあるとおりですねとおっしゃっていただきましたけれども、それは事態の観察としてはそのとおりでありまして、部会資料の記述に賛成していただいて有り難いですけれども、現場はそうですねでは済まない問題でありましょう。佐野委員からも実務の実際のところを今お話しいただいたとおりでありますし、この二つの概念が相対的であるという観察で済まされる局面ばかりではありません。佐久間委員がお挙げになった例で述べますと、冠婚葬祭に持って行くお金とか、孫その他親族にあげるお小遣いのところは相対的だと観察できるかもしれませんねというお話は、それはそのとおりだと思いますが、あれらは贈与の効力がもし疑義があるとすれば、してしまった後から判決裁判所によって無効であるかどうかということが問われるだけでありまして、言わば裁判規範のレベルで相対的ですねということを認識しながらすればいい話ですね。   ところが、もう一つ佐久間委員がお挙げになった預貯金の取引の方は、後から裁判所が振り返って評価的な操作をして有効とか無効とかということをして済む話ではなくて、その手前で金融機関の窓口に行って、これは孫にお小遣いを上げるから引き出したいのです、日常生活に関する事項ですと頑張ってみても、金融機関の方から見ると、日常だ、孫だと叫べば払戻しに応ずるというわけにはいかないのでありまして、というやり取りがされて、今までは本人を代表するという規定があったということを念頭に置いて、成年後見人を設けて、連れてきてくださいという実務で済ませてくることができたというか、そこに依存してきましたけれども、これからはそれでは済まないかもしれません。そうすると預貯金の取引について裁判規範的なルールではなくて現場が回るような行為規範的なルールを何か考えていかないと、このまま行ったら高齢化社会と障害者福祉の大いなる前進を達成すべき社会の、現代人の生活の根幹を成している預貯金の取引が現場で大きな混乱を惹き起こすということになりかねませんから、それは本日お出ししているこの論点との関係でのみ済まされることであるか、あるいはここで議論することがいいことであるかどうか分かりませんけれども、しかしここで議論をお願いしたことをきっかけに、今の問題意識の観点は、相対的だからいいではないですかという観察で済ますわけにはいかなくて、そこも今日の段階でお話を伺った上で、更に次の機会に御議論を頂くための部会資料を用意しておかなければならないと考えます。これが3点目でございます。   委員、幹事のたくさんの大事なお話を伺って、感じたところを申し上げてみましたけれども、皆さんから今の話の周辺について何かお気付きのことがあったら、この機会に伺っておきたいと思います。いかがでしょうか。 ○星野委員 このことについてはなかなか発言が難しいなと実は思っていたところがありました。まず、社会福祉士が受任している中で多く行われている業務としては、今お話があったようないわゆる日常的な契約行為、もちろん当然今、費用が掛かりますから、費用の支払いも含めた契約行為にはなりますけれど、それから、最も多いと思っているのは行政手続です。こちらについて少し会の中でも議論をしたのですが、これは後見人がやらなければいけない、後見人しかできないことなのかという議論がありましたときに、むしろ後見人が日常的な行政手続などにおいては、支援者が本人の意思に沿いながら支援するという形を目指すことの方が、本人にとってはより豊かな生活とか人との関係性などが構築できるだろうということが言われます。いわゆる行政手続を遅滞なくやってほしいというようなニーズで後見制度申立てをするというケースが少なくないなと思う中では、2番目のところに当たるところなのですが、これを13条1項の中に入れるというのは私としては非常に違和感があります。   例えば入所契約も、先ほどお話があった有料ホームなど一時金が非常に掛かるようなところは、入所契約の前に定期預金の解約であったり、預貯金の引き出しであったりという法律的な行為も出てくるので、そこの前にもちろん本人の意思確認などがあるのですけれども、そこは一緒にならないようなイメージがありましたのと、それから、金融機関の預貯金の取引のことで、限度額というか上限を決めたり、目的を明確にするというところは、確かにルール化することは難しいし、金融機関との取引の中でそういう仕組みができるかというのは疑問があるのも事実です。   ただ、現実に今、後見類型の方や保佐類型の方、補助の方は当然なのですが、御自身で一定程度のお金のやり取りを自分で行っている、そのときに金融機関とその方だけか何か決めているというやり方よりも、やはりそこで全体のお金の出入りを見る役割という人は、この制度を使おうが使わないであろうが、必要なのかなと思います。それが今までは後見制度しかなかったわけですが、それを何か別の仕組みということを考えていくというのが社会福祉の方で必要なのかなと感じました。   すみません、直接の内容とは違うかもしれませんが、以上です。 ○山野目部会長 福祉の実際の観点から御指摘いただいて、ありがとうございました。   引き続き、いかがでしょうか。 ○竹内(裕)委員 先ほど部会長がおっしゃった2番目の点で、福祉サービスとか介護、あとは行政関係のサービスを受けることも含まれ得ると思うのですが、そこでくくりとして、例えば役務提供契約というような文言を、13条1項を再構成するときに、そういった文言を使える余地はないのだろうかと考えました。 ○山野目部会長 先ほど、社会福祉法の中にある福祉サービス契約の概念とこちらとのつながりについては、法制化するかどうかはともかくとして検討の準備をしておく必要があるというお話を差し上げたところと通底するお話を今、竹内裕美委員から頂きました。 ○根本幹事 私からは2点です。まずは介護ですとか福祉の申請のところですけれども、先ほど星野委員からもありましたが、一つは、民法に規定をしてしまうということの法制上の問題と、もう一つは実務上の問題というのが二つあるように理解をしております。法制上の問題は、私法公法二分論がいいかどうかともかく、民法に書くことができるのかということはもちろんあると思いますが、それとともに、申請行為を例えば施設契約ですとか、若しくは介護契約を結ぶ付随的なものと解釈をするのか、それともやはり行政規定の中で何らか設けるべきだという議論になるのかなと思いますけれども、実務的なところは、先ほど星野委員がおっしゃられたように、書いてしまうということによって、後見人の役割、ないし後見人だけの役割だという誤ったメッセージにならないようにするということは必要ではないかと思っています。現在の実務は、後見人がやる場合もあれば、支援者や自治体のワーカーさんに御対応いただいているケースもあり、両方の余地を残しておくということがよいのではないかと思っています。   それから、預貯金の払戻しの関係ですけれども、御本人の生活水準というのはそれぞれ御本人ごとに違うということの中で、先ほど本人の申出ということを申し上げたのは、決めていくのは他者ではなくて御本人ということをベースに、実務にどう落としていくのかというところにおいては考えていくべきだとは思いますし、もう一つは、先ほど星野委員が、例えば預金者と銀行と、あとそれ以外の方というところを交えて考えていくものだというのは、実態としては私もそのように理解をしますが、他方で窓口の取引においてできるだけ、御本人が能力がおありになるのであれば本人取引を広く認めていくということを前提として、現行においても保佐補助で本人が本来できるにもかかわらず保佐人や補助人が同行しないと本人取引を認められない場面が実務として起こっているというところもありますので、本人取引をできるだけ尊重する、若しくはきちんと担保していくということを前提に、ここは考えていくべきではないかと思っています。 ○佐久間委員 竹内裕美委員がおっしゃった役務提供というのを加えるというのは私も賛成ですけれども、今のところ、私の理解が間違っているかもしれませんが、比較的大きな財産が動くというか財産的な利益、不利益が生ずる取引は、13条1項3号の「重要な財産に関する権利の得喪」で読んでいるのではないかと思うのです。この「財産に関する権利の得喪」には当然、債権の得喪も含まれるので。もしこの理解が間違っていなかったら、この条文では「不動産」が最初に出てくるので、何となく物権かなというふうな感じがしてしまうのをどう和らげるかということかなと思っています。和らげるというか、いろいろなものが入ってくることを分かりやすくすると。   次に申し上げることと違って、これに関してはこのラインですよという明確な線を引くこと、これより高額になると適用があり、それを下回っていると適用はありませんなんていうことはできないと思うのですけれども、この3号に当たる行為について、役務提供もそうだと思いますし、先ほど根本幹事がおっしゃった、アプリを使うとかというのだって入ってき得る、そういう現代的な取引を前提に何か工夫できたらいいかなと思っています。これが1点目です。   2点目は、預金取引に関しまして、日常必要な金銭のやり取りをすることについて、本人が独立してできるようにする必要性は大変高いと思っています。でも、その必要性を実現するには結局、金融機関にあるお金の出し入れ、出す方ですかね、出す行為が行われた場合に、それは無効ですという主張によって金融機関が困ることがないようにするとともに、本人がする取引全部を見たときに、やはり本人の保護が必要でしたねというようなことにならないようにすることが大事なのではないかと思います。   そうすると、行為能力の問題ではないことになってしまいますけれども、例えば預貯金口座でいうと、幾つもの金融機関にある各口座についてある程度まで自由に処分できることになると、先ほど申しましたけれども、累積的には相当なことになってしまいますので、民法の話ではないだろうということは重々承知しつつですけれども、特定口座について一定の金額までしか入らない、上限を設けるような特定口座ができるのであれば、その口座からの出金については行為能力の制限は関係ない、場合によっては意思無能力の主張もさせない、金融機関にとってはその口座から出ていく分については無効の主張を食らうことはないし、その口座の限られた金額については本人が何に使おうが、どうぞどうぞと法的にはなるという、そういう仕組みぐらいしか考えられないのではないかと思っています。 ○山野目部会長 先端的な地域福祉の現場はそうしています。福祉の在り方というものは地域によって異なりますから一概に述べてもいけませんが、福祉の機関とサポーターと本人が相談し、大きな銀行はなかなかこれは御協力いただけなくて、大抵、〇〇信用金庫が御理解を頂きましたとなって、うちでケアする方は地元の〇〇信用金庫に口座を開いてください、今までなかったら設けてください、ほかの口座はもう動かさないことにし、ここの口座を動かすときにはサポーターと一緒に来てくだされば当金庫として対応しますよという了解をあらかじめ何回も会議を開いて調整して進めるというスキームでしているところがありますけれども、ただし、それはお話ししたように、地域によってそのようなすごく進んでしているところがありますというにとどまり、全国的な広がりになっていない上に、関係者の理解、調整を調達するのにものすごく労力を要しますから、そこをもう少し仕組みを調えて応援していかなければならないでしょうね。   ほかにいかがでしょうか。先ほど青木委員はお手を途中まで挙げて……。どうぞお話しください。 ○青木委員 福祉サービスあるいは、少し星野委員からもあった行政手続との関係ですけれども、福祉サービスも本当に御指摘のように多様で、特に有料老人ホーム等であれば月2、30万円とかを毎月払った上に、場合によっては一時金的なことも含めてありますので、私法上の契約であるとともに、重要な財産に関わるものでもあるというのはそうだと思います。けれども一方で、部会長も御指摘いただいたように、その契約締結後のもろもろの細かな、必ずしも財産上の変動とは別のところでも、様々な援助が必要になるということはそのとおりだと思います。   そうした権限については、民法で定めるだけではなくて、各福祉行政ごとの法制で手続を定めるという考え方もあるかもしれません。ただ、一方で参考資料9の代理権目録を見れば、具体的な私法上の契約に付随するものとして様々な行政的な申請手続についても代理権を付与することを選択できるということで実務的には整理して運用してきたところであり、必ずしも福祉行政手続そのものに関する代理権を付与してきているわけではなく、入所契約や病院の入院契約その他に付随させるものとして整理をしてきているということです。今後も、そういう整理の仕方で代理権を位置付けることは十分にあり得るのではないかと思いますし、星野委員が言われたように、その部分を必ずしも後見人に委ねなくても、ほかの方々で支援できる場合にはそこに委ねつつ、重要なところだけを後見人が支援をするという役割分担も実務的には十分可能ですので、私法上の契約と付随する範囲でどういう代理権を想定するかというような整理が望ましいのではないかと思います。年金の申請とか生活保護の申請についても、参考資料9を見ますと、定期的な収入に関する事務の一環として位置付けていたり、定期的な支出に関する事務の一環として整理をしていただいています。   それからもう1点、金融機関との関係で言いますと、元本の領収が13条1項1号にある関係で、保佐の場合に、本人さんに十分に普通預金などの取引ができる判断能力があったとしても、保佐の届出時に、今後は本人は取引しません、保佐人しか取引しません、とわざわざ誓約をさせた上で取引をしている実情がありますが、これは、金融機関からしますと、やはり元本の領収というものが何なのかということがファジーな中で、本人さんの取引について、同意がなかったとして取消されることのリスクがあるからという判断での対応・管理となっている銀行もあります。やはりこの元本の領収という規定自体は、より射程範囲を明瞭なものにして、普通預金は本人が出金できるようにすることも含めて、必ず見直しが必要であるということを実務的に感じていると申し上げたいと思います。 ○小松原関係官 先ほど来皆様から、代理権としてパッケージで置いておいた方がいいものと、また取消権として与えておいた方がいいものは別と考えられることが必要であるという方向性の御意見をいただいているところでございますが、代理権としては参考資料9にあるようなものが、例えばということで御提案いただいております。他方、取消権としてパッケージがあった方が望ましいと思われる具体の内容といいますものにつき、何か具体の御意見をいただけると非常に有り難いところなのでございますが、いかがでございましょうか。 ○山野目部会長 今お声掛けがあった点について、今のこの段階で御意見があったら伺っておきますし、また他の機会でもよろしいですけれども、いかがでしょうか。 ○根本幹事 御質問いただいたところにも関係しますが、特に典型的には、いわゆる消費者被害といわれるものに当たるものを、仮に何らか同意権、取消権との関係でパッケージを考えるということであれば、考え方のベースになるのではないかとは思います。   それから、今の点とも関係しますが、例えば、竹内裕美委員からもありました役務提供も非常に広いので、佐久間委員からも話がありましたけれども、例えば今の3号の中に立法担当から言わせれば、入っているということになるわけですけれども、先ほどの日常取引と同じように役務提供でも非常に広い、かつ、入所といっても特養の入所なのか、それとも一時金が相当高額な入所なのかによっても契約の性質は変わってくると思いますので、仮に役務提供を今の3号からくくり出していくにせよ、裸の役務提供ではなくて、文言として、重要な財産に関する役務提供など制限を加えた上での規定になっていくということが想定されるのではないかと思っております。 ○山野目部会長 今の点、ほかにいかがでしょうか。 ○佐久間委員 取消しによる保護というのは結局、根本幹事が最初におっしゃったのもそれに当たるのだと思いますが、本人がした取引によって本人が財産的不利益を被ることをいかにして防ぐかということにあるのだと思うのです。そうすると、大分前に一度申し上げたことあるのですが、本人がどのような行為をするかというのは正直、事前に予測することは、ある程度はできるかもしれないけれども、かちっとすることはできない。そうすると、本人の利益保護に軸足を置く以上は、本人に大きな不利益を生ずるものはなるべく広く取消しの対象にしておくべきだと考えられ、全部漏れなくしようと思ったらほかのものが入ってきて、今のように包括的に全ての行為について取消し可能ですということが一番分かりやすい解決なのですけれども、それだと甲案を採ればいいとなると思うのですが、甲案ではないということになった場合にはどう制限するということになり、そうすると、こうですね、ああですねという出し入れが非常に大変なので、13条1項のリストを利用することが便宜なのではないかと、私はその程度の整理だと思っています。   13条1項のリストからこれも落とそう、あれも落とそうというのは、それはやろうと思えばできるのかもしれないけれども、もしその落とした行為を本人がしてしまって大きな不利益になりますねというときに、取り消せなくていいのかということが問題になる。意思無能力の無効だと言えれば簡単なのですけれども、そういう争いに行く前に、その行為の本人に対する効力は否定することができるようにしておくことが適当なのではないかと思っています。   その観点から根本幹事は、消費者被害に当たるようなものはとおっしゃって、それはよく分かるのですけれども、このリストの中には親族間で行われる行為で他の親族によって害されるというものもあり、これを消費者被害と同じようなものですねという整理をするのはなかなか難しいので、乙2案のような考え方を採るのであれば相当広く取消しの対象にすることは否定的に捉えられるべきことではないと思っています。繰り返しになりますが、乙2案のような発想を採るのであれば、取消しの対象となる行為をなるべく絞ろうというのは漏れが出てきて怖いと思っています。 ○竹内(裕)委員 13条を眺めていて、代理権とは違うとは感じたのですが、取消権のパッケージという問いに対しては、ではどれを削れるかと考えていった場合、なかなか見当たらなかったのですよね。やはり今、佐久間委員がおっしゃったように、取消の場合は何が起こるか分からないものですから、絞るという発想は難しく、むしろ同意行為目録に関しては13条1項はうまくできているといいますか、表現ぶりは少し古いのですけれども、内容的には網羅されて、よいのではないかというような印象を持っています。 ○山野目部会長 小松原関係官、よろしいですか。 ○小松原関係官 ありがとうございます。 ○山野目部会長 今お諮りしている点について、ほかにいかがでしょうか。   そうしましたならば、部会資料20の第1の部分について委員、幹事からお話を伺いました。次回の検討に向けて3点ほど申し上げておきます。   1点目は、13条1項のリストに類似するものを今後法制上もし考えていく場面があるとすると、取消権と関連させるか代理権と関連させるかをはじめとして、その意義、機能について考え込んでいく必要がありますし、併せて部会参考資料9のようなものをも視野に置いて検討を深める必要があるのではないかという御議論を頂きました。今後における作業の参考にいたします。   それから2点目としては、福祉サービスについて様々な観点からの御注意も頂いたところでありまして、これも今後の検討に活かしてまいりたいと存じます。恐れている点は、確かに委員、幹事から御指摘があったように、介護保険の申請であるとか障害者手帳の更新であるとかというものは私法上の法律行為ではありませんから、当該介護保険法や障害者手帳の事務に関する法制を所管している部局において、こういう人が本人のほかには手続をすることができますよと明確にルール化しておくことが一番しっくりするなりゆきであることはは確かです。今までは本人を代表するという規定が民法にあったから、ほかの法制を与かっているところもあの規定に頼ってしまっていた部分があって、だから、これはある意味での転用問題なのですね。このまま行くと、そちらでルールを明確化する扱いが本来ですねといっても、そちらの作業が必ずしもスピーディーに進まないと、民法の方も、こちらは民法から書くことではありませんねということになって、先々新しい制度の下でいろいろなところから問われたときに、結局、介護保険の申請や障害者手帳の更新は誰の役割ですかと尋ねられて、政府の関係者がみんな顔を合わせて、うちではないよ、そちらだよね、こちらも検討していないよという状態になる、これが最悪ですね。そうならないように頑張りましょう。誰に向けて頑張ろうと呼び掛けをしているかよく分かりませんけれども、この局面にある皆さんが、与えられた時間の範囲内で、社会の現場が戸惑わないような答えを準備していかなければなりません。   それから、3点目の金融機関の預貯金の取引の問題については、論点の在りかが明らかになりましたし、何か新しい仕組みをとにかく考えていかなければならないだろうということは、皆さんの御発言からよく理解することができるところです。佐野委員からは、仕組みを考えていく必要がありますねという勇気付けられる力強い御発言も頂きましたから、本当にこれはその衝にある方皆さんが額を寄せて、秋以降、本格的に検討を深めていただきたいと望みます。   部会資料20の第1の部分についての御議論を頂きました。引き続き、部会資料20の第2の部分について審議をお願いすることにいたします。この部分について事務当局から資料の説明を差し上げます。 ○山田関係官 部会資料20の6ページ以下、「第2 法定後見制度における保護者の代理権消滅と相手方の保護」について御説明いたします。   これまでの部会において、法定後見制度の見直しによって保護者の代理権が消滅する場面が現行法より増え得る保護制度とすることを踏まえ、保護者の代理権が消滅したにもかかわらず、その保護者であった者が代理人として取引をした場合のその相手方の保護について整理する必要があるとの意見がありました。そこで、保護者の代理権の消滅と相手方の保護との関係について御議論をお願いしたいと考えています。   問題となる場面としては、9ページ以下の(1)、(2)で記載しましたとおり、代理権の消滅に関する登記がされるまでの間に当該保護者であった者が取引をする場面、登記がされた後に当該保護者であった者が取引をする場面が想定されます。このような場面それぞれについて、保護者であった者が取引をした場合において、その相手方の保護の検討が求められる状況、その状況に関し相手方の保護について新たな規律を設ける必要性、新たな規律を設ける必要性があるとすれば、その要件、本人の利益等との関係でその規律の正当化根拠等について御議論いただければと思います。 ○山野目部会長 ただいま説明を差し上げた部分につきまして、御意見を頂戴いたします。 ○小澤委員 この問題は現在でも理論上は、成年後見制度の利用が本人の死亡若しくは本人の死亡以外の事由で終了したり、保護者が交代したりする場面は相当数あるものの、実務ではほとんど問題になっていなかったように感じています。確かに法定後見の終了などの規律の見直しによって更にそのような場面が増えることは想定されますし、不動産取引の場面で保護者であった者が代理して行うということで3か月の有効期限内の後見登記事項証明書が提出されれば、その取引を止めることが現実には難しいことなどに鑑みると、取引の相手方を保護する何らかの規律が必要とも思えます。しかし、制度の見直しの後に、保護者であった者が本人や後任の保護者などに財産を引き継ぐ際に問題となるような取引を行う事例が増えることになるのか、取引の場面での運用も含めて考えていくことになると思いますので、今の時点で現行の規律を見直す必要はないのではないかという意見を持っています。 ○根本幹事 私からは2点あります。一つは、部会資料の10ページの16行目から19行目に、取引時に登記事項証明書の確認を求めればという旨の記載があるところですが、実務の観点から申し上げますと、このような形で仮に考えていくということを前提といたしますと、取引の相手方においても非常に過大な負担を課すということになりますし、本人や、若しくはその保護者の側にも非常に取引コストという意味で過大な負担を強いるということになりますので、仮に記載されているような考え方であるのだとすれば、何らか手立てを講じる必要があるのではないかと強く思うところです。   そこにおいて二つの考え方が採り得るのではないかと思っておりまして、一つは、これは従前の112条の議論とも関係するところですが、本人に帰責性を見いだすことがよいのかどうかということが従前の112条の議論の関係ではあったかと承知しています。ここに、本人側の帰責性というような形で、取引の相手方との関係では本人だけではなくて保護者の帰責性も含めて観念していくことができないかというものです。実際はそれを本人に負担をさせるというのは、内部的といいますか保護者との関係では御本人にとっては酷だということになるのだろうと思いますので、取引の相手方との関係で本人側の帰責性と観念して、その上で本人と保護者との関係において内部的には、保護者の責任という形の規律を考えていくという方向性が一つあるのではないかと思います。   もう一つは、どの取引の相手方にも妥当するということはなかなか申し上げにくいのですが、特に預金の払戻し等の金融取引との関係でということであれば、例えば表明保証の考え方を採用していくということもあり得ると思います。つまり、届出のときにある種その保護者に表明保証を当該取引の相手方との関係でさせていき、その範囲において取引の相手方が保護されるとするものです。この表明保証について、個々の取引約款や取引契約の中において定めるということはもちろん自由なわけですが、取引の相手方から見れば、その表明保証の条項自体の効力等が後で何らか争われるというようなことになっては、実効性に欠けるということになるだろうと思いますので、法制化を検討するということがあってもいいのではないかとは思っております。   先ほどの一つ目の議論とも関係しますが、佐久間委員から、例えば特定の口座を指定するというやり方が一つ目の議論との関係でもありましたけれども、それに表明保証を付けていくということであれば、金融実務との対応においても十分検討に値することになるのではないかと考えております。 ○野村(真)幹事 リーガルサポート内部でも検討いたしましたが、この問題に関しては現行の制度でも想定されることであって、今後、後見が終了するケースが増えることのみを理由に相手方の保護を加重する必要はないのではないかという意見や、制度趣旨に鑑みても代理権消滅後の取引について本人に効果帰属を認めるのは酷であるという意見がありました。また、取引の相手方に終了に関する届出等をすることで取引の安全を図れないかという意見もありました。例えば、制度終了後の本人あるいは本人の支援者から、主に継続取引が想定されている相手方に対して制度終了の通知をすることで、リスクを低減してはどうかという意見がありました。ほかにも、保護者に対して終了の通知の義務を課すことで、通知を怠った保護者の帰責性をより明確化してはどうかという意見もありました。   一方で、取引の相手方全てに終了の通知をすることは現実的ではないので、結局は相手方の保護に関する新たな規律が必要になるのではないかという指摘や、申立時に本人の同意がある場面においては、民法第112条の適用や任意後見と同様の保護を相手方に与えてもよいのではないかという意見もありました。 ○佐久間委員 今もある問題だというのは、形式的には今もある問題だとは思いますけれども、今ある問題の中で今後の、確定してはいませんけれども、変更された後の終了の規律と関連するとすると、恐らく補助類型の代理権についてのみだろうと思います。そもそも補助は余り使われていないというのが現状なので、圧倒的に数が違ってくるおそれがあります。ですので、今ある問題だからいいではないかということは、私は言えないというか、結論としては規律が変わらないということはあり得ると思いますけれども、やはりそれは出発点としてよくないのではないかと思っています。   これが大前提で、その上で、まず申し上げたいのは、任意後見と法定後見がそれほど違うのかというところに私は疑問を持っているということです。9ページの6行目以下に任意後見の場合についての記述があり、それと法定後見との間の区別は合理的な区別であるとされていると述べられており、そのように言われているのは間違いないと思います。ただ、本人の状況を考えると、これは余りにも形式的な整理なのではないかと私は感じています。   任意後見も結局、法定後見に代わる制度で、法定後見を使うか任意後見を使うかという選択的な制度だということは多分間違いないと思うのですが、そうすると仮に任意後見人の代理権が消滅した場合に、その旨の登記申請を本人側からしなさいということにはなっていますが、本人自身が登記申請することが通常だと考えられているのか、あるいは期待されているのかというと、私はそうではないのではないかと思います。形式的には本人側がする、本人の自由ですねということになっているけれども、能力回復のときを除けば、結局のところ本人以外の者がする、それがされなかった場合は本人が不利益を負うと整理されているだけなのではないかと思います。   また、ごく短い期間だろうとは思いますけれども、任意後見の場合であっても、申請がされた後、実際に登記の記録に反映されるまでにはタイムラグがあるはずで、その間に無権代理行為が行われたと仮にいたしますと、これはやはり任意後見契約法11条の適用があるのではないかと思います。さらには、これは議論があるかもしませんが、そのようなときに限らず、任意後見終了後の元任意後見人が引き続き代理人として行為をした場合には112条の適用もある、というのが現在の一般的理解なのではないかと思うのです。そうすると、最初に申しましたように本人の状況がそれほど違うのかというか、同じではないかということからすると、法定後見の場合も任意後見の場合と同様に考えることが筋ではないかと思っています。   筋ではないかということからすると、任意後見の方も今の法定後見に合わせましょうというのも一つの選択肢なのですけれども、もう一つの選択肢としては、現在の任意後見の場合と同程度の相手方保護を法定後見の終了についても考えることがあり得ると思っています。特に、そのようにしておきませんと、結局任意後見を使う方が本人にとって不利益が大きいかもしれないということになり、任意後見の利用を避ける理由の一つにもなりかねない。これから終了がどんどんあり得ますということになったとしたら、その心配が強くなると思いますので、規律を合わせることが適当ではないかと思います。   10ページの3行目に、本人には言わば帰責事由がないのだから、本人に責任を負わせる規律になると本人にとって酷とも考えられるとあります。これもそうなのだとも思うのですが、それを言うと、先ほどの繰り返しですけれども、任意後見の本人にだって実質を考えると非常に酷なことになっているわけで、法定後見の場合だけ特別ですねということにはならないのではないかと思います。   そうだとして、では任意後見の方も相手方の保護をやめましょうとするかは少し置いておくことにして、任意後見と同程度の相手方保護を法定後見の場合にも考えるときに、10ページの8行目ですかね、正当化根拠は何かということを考えなければいけないということなのですけれども、一つには、これは先ほどどなたかがおっしゃったことだと思いますけれども、制度利用は本人の意思に基づくか本人の利益のためにされるものなので、制度利用に当然に伴う危険は本人が負担することがあってしかるべきだという考え方は、昔から言われていることでもあり、やはりなお一定程度は妥当するのではないかと思います。そうすると、少なくとも登記がされるまでの間は、代理権の消滅を善意の第三者に対抗することができないという規律は考えられていいのではないかと思っているところです。   また、少し繰り返しになるのですけれども、先ほど根本さんから御指摘のあった同じページの16行目からのところで、相手方が登記事項証明書を取ればうんぬんというところも、これも任意後見の場合だって全く同じのはずなので、やはり合わせた方がいいのではないかと思います。   ここまでは、まず、任意後見契約法11条に当たるような規定を設けることは考えられるのではないかということを申し上げた上で、次に、任意後見と法定後見とで本人保護の必要性は実質的に変わらないという、その認識自体が争いはあり得るとは思いますけれども、そのような認識に立ちますと、112条の適用の可否についても大きく異なることは、それ自体としては適当でないことになるのではないかと思っています。任意後見の場合にも112条は適用されないとするか、あるいは法定後見のうち少なくとも今でいう保佐と補助については、これは代理権の付与について本人の請求又は同意が不可欠なわけですから、本人自身が代理権を付与する、授与するということではないにせよ、本人は代理権の発生、付与に関与していることは間違いがない、家庭裁判所を通じて代理権を付与させていると見ることも可能だと思われますので、112条の適用の可能性を考えることは十分できるのではないかと、それ自体としては思っています。   そうすると、112条全体をいじるというのは、これはほかの法定代理、特に未成年者の法定代理も含めることになり適当ではない面があると思うのですけれども、今後の類型によってこの区別はできないことになるかもしれませんが、保佐、補助の類型、もし乙2案を採れば保護Aの場合で本人の同意を得て保護者に代理権を付与するという場合については、他の法定代理権とは明らかに異なる特徴を持っている代理権付与の在り方ですので、この場合にだけは112条を適用するのか、同じような規定を設けるという可能性もないことはないかなと思っています。そうすることこそがむしろ、本人に不利益な形にはなりますけれども、今回の改正の理念である本人意思の尊重とか事理弁識能力が不十分とはいえない者と基本的に同じとする扱いを広げようという考え方と平仄が合うのではないかと思っています。   ただ、1点すごく問題があるなと思うところもありまして、それは、少し飛びますけれども、商法にある支配人について退任登記がされた後は、判例では、学説には異論もあるようですけれども、112条の適用はないとされております。仮に法定後見の終了後の場面で112条を適用する、あるいは112条に類するような規定を設けるとなると、それとの平仄がとれないということにはなると思います。そうすると、この場面では、少しここで問われていることとは違うかもしれませんが、実は任意後見の場合だって終了後に112条が当然適用されますねというのはおかしいのではないか、この種のものについては登記のみによって、登記の記録あるいは公示によって、登記の対抗力で処理するということが適切なのではないかと思っています。 ○佐野委員 取引の相手方の保護に関する規律は設けていただきたいと考えております。まず、9ページ以降の検討の方に記載いただいている代理権の消滅に関する登記が記録されるまでの間に保護者であった者が取引をする場面においても、(2)の代理権の消滅に関する登記が記録された後に保護者であった者が取引をする場面においても、利用者の利便性を鑑みました銀行の一般的な現行の運用を考えますと、取引の相手方としては代理権の消滅を事実上把握することができません。仮に把握できていない状態で無権限者で取引を行った場合について、銀行取引の預貯金の払戻しというところに特化して言いますと、部会資料の10ページの最後の3行のところに記載いただいているとおり、民法478条により免責を受けられるのではないかと考えておりますが、この点については認識相違があれば、お聞かせいただきますと有り難いと考えております。   銀行の預貯金の払戻し以外の場面について考えた場合に、佐久間委員などもおっしゃっていただいたとおり、保護者が無権限者である可能性であるとか事案が今後増えると考えた場合には、取引の相手方の保護に関する規律がないときには、取引の相手方は保護者による手続の都度、登記事項証明書を確認して、権限の有無とか範囲の確認を必要とする運用とすることと考えられます。つまり、取引の相手方の保護をする規律を設けないとなった場合には、銀行手続においては無効リスクであるとか二重払いのリスクを限りなく下げるために、保護者による本人の日常の取引の都度、登記事項証明書を確認するということになります。   具体的には、キャッシュカードを用いたATMの利用であるとかインターネットバンキングといった非対面の取引については、登記事項証明書の確認ができないことから、銀行としては全件、窓口の受付に変更させていただくこととなりますし、その窓口においては、部会資料の10ページの16行目以降に書いていただいているのと少し関連するのですけれども、手続の直前、つまり同日に取得した登記事項証明書を毎度提示いただかないと取引に応じられないということになると考えています。こうなってしまうと、保護者の方にとってはかなり大きな負担になると思いますので、保護を受ける本人にとっても大きな不利益につながると思っております。なので、成年後見制度をより柔軟な運用を目指す動きを目指している本改正の趣旨とは少しずれてしまう事態につながってしまうかなと考えております。   先ほど少し根本幹事からもお話しいただいた部分にもつながるのですけれども、事理弁識能力が回復せずとも必要性等の要件によって法定後見が終わるという新たな法定後見制度の実現に当たりまして、仮にどうしても保護の規律が設けられないとした場合に、今申し上げた毎度最新の登記事項証明書の提示を依頼するといった運用のほかには、各金融機関が預金規定等の約款で法定後見の契約内容に関する届出事項に取消しとか変更があったときに速やかに届け出るということを定めるということが考えられまして、実際に今そのような定めを置いている金融機関もあります。この定めについての有効性に関しては、平成22年12月8日の東京高裁の判決でも認められているものと承知しておりますので、この手当てをすることで金融機関として免責を受けるといえるかどうかというところについても、先生方から御意見を頂けますと有り難いと考えております。 ○山野目部会長 佐野委員から、民法478条の適用関係その他、委員、幹事の意見を聴きたいという問題提起を頂いた部分がありますから、その部分については委員、幹事から御意見のある方は御発言ください。   半面におきまして、佐野委員にいささか確かめたいことがありまして、お話の中に何回か、取引の相手方の保護に関する規律は設けてもらわないと困りますという意見が登場いたします。取引の相手方の保護に関する規律を考えなくてはいけないから本日の部会会議が設けられており、そのこと自体は多分否定する方はいませんけれども、取引の相手方の保護に関する規律と佐野委員がおっしゃっているものの中味は何でしょうか。それは何か規定を設けて、取引の相手方は保護されると書くのでしょうか。その内容を伺った上で、その適否とか課題、問題点を検討していくことになりますから、何か現時点でお話しいただけることがあったら承っておきたいと考えます。 ○佐野委員 具体的にどういう内容というものは今はないのですが、参考となると考えているのは任意後見契約法の11条に当たるものかと考えております。 ○山野目部会長 承りました。それでは、佐野委員のお話を伺った上で、委員、幹事からお問い掛けのあった部分も含めて御自由に、何かお考えになったことがあったらお話しください。いかがでしょうか。 ○青木委員 確かに必要性が解消することによる終了が増えるというのはそうですけれども、現在においても死亡若しくはご本人さんの判断能力の回復による取消しというのは想定されていまして、それにもかかわらず、これについて特段取引の相手方の保護のための規定を置いていないということは、判断能力が回復して取消となった場合は、本人が自分で取引できるとなった場合は、その本人を保護しており、それを知らなかった相手方の保護は優先しないとしており、取引の相手方との関係ではそういうバランスでよろしいというのが現行法の規律ではあると思っています。   そうしますと、必要性の解消による終了の場合にも、そうした現行法のバランスを崩して、取引の相手方の保護を図ることにするのはなぜかということが必ずしも明らかではないと思っています。本人が必要性が解消して代理権や同意権も要らないと、本人の自らの判断に基づく取引に復するということの判断が裁判所において終了したわけですから、それは判断能力が回復して本人が取引できるようになった場合と同様のバランスシートでいい、とならないだろうかという基本的な問い掛けになります。加えて、必要性が解消して終了する事情の中には、本人が自らできるようになったということだけではなくて、本人さんに何らかの支援という環境が整備されたために、本人とその支援の環境において適切に取引の相手方のことを配慮した取引ができるようになるということだとも思いますので、そういった観点からも、基本的なバランスシートを変える必要があるのか、と思っているところです。   それから、金融機関の取引というのは、社会経済上の取引一般の中では特殊で、証券会社もそうかもしれませんが、日常的な取引行為が反復継続される可能性が非常に高い取引でもありますので、そういった特質に照らしやはり民法478条との関係での議論をしっかりしていただくことにして、一般的な取引の相手方の保護という議論については、銀行取引を念頭にして議論されますと、基本的な制度設計が難しくなるのではないかということも危惧します。   一般的な取引は、多くの場合は一回的なものが多くて、その都度確認をしながら取引を進めるということが十分に可能なものが多かろうと思います。福祉サービスや賃貸借契約というのは必ずしも一回性のあるものではなく継続的なものですが、そこに求められる権限付与の有無についての確認作業というのは、金融機関や証券会社ほどリスクを伴うものにはならないとも考えます。そうしますと、やはり金融機関等は区別して、民法478条の問題として議論していただくことでどうかと考えているということになります。 ○根本幹事 2点です。一つは、法定後見についてですが、まず改正の前後で、私としてはやはり立法事実としての利益状況は違うと理解をしておりまして、今、青木委員からもありましたが、今の法定後見は、死亡は別だと思いますし、基本的には能力が回復されて終了ということが予定をされていて、そうなると御本人が能力を回復されていることを前提として、酷かどうかということが判断されるべきだという視点に立っていたのに対し、今回の改正では、必ずしも能力の回復ではなくて必要性消滅ということが終了事由になってくるということになりますと、それが本人にとって酷かどうかという利益状況は改正前後で大きく違うのではないかというのが、まず私の考えている前提です。   その上で、佐久間委員から御指摘がありました法定後見と任意後見の違いというところについても、一つは、法定後見における終了手続において、本人がどの程度関与できるのかということが、今後詰めた議論になってくるかと思います。それが、いわゆる平成11年改正時の立法担当官が考えていた任意後見と法定後見の違いというところについて、一つは、法定後見の方では代理権の開始のところについて本人の同意を要件と必ずしもしていないというところに違いがあるのだというところに着目されているのかと思いますけれども、今回の改正においては、特に終了の場面で任意後見と法定後見それぞれにおいて本人が手続的にどのように関与するということが担保されていくのかによって、そこは変わってくると思います。もう一つは、これはどこまでそこが想定されていたか分かりませんけれども、現行の実務を前提とすれば、基本的には今は任意後見が終了したとしても、御本人が引き続き保護の状態があるとすれば、法定後見への移行が前提とされた形で任意後見を終了させていくというのが実務の状況かと承知をしていますので、後続の法定後見があるのだから、そこで任意後見が終了したという登記を後続の法定後見人がするということは十分想定されるのだと思いますが、今後は必ずしもそういうことになるわけではありません。法定後見の必要性がなければ任意後見を終了して、そこで終了するということもあると思います。このこととのバランスも、任意後見と法定後見の比較という意味では、見なければいけないのではないかと思います。 ○青木委員 1点だけ少し補足しますけれども、先ほど私が申し上げたのは、本人が判断能力を回復して自分で取引ができるようになった場合については、本人の利益を保護して、取引の安全を特に保護してこなかったけれども、今回は、必要性は解消したことにより終了するが、なお本人の判断能力は回復したわけではなく不十分かもしれないという場面になるわけですから、本人の保護という従来のバランスシートが取引の相手方の保護に傾くことにはならないのではないかという趣旨で発言をさせていただきました。 ○星野委員 2点ほど申し上げたいと思います。いわゆる契約の継続性というところで言うと、福祉サービスというのは結構継続性の高い契約だと思うのですが、意外と、後見制度を使っていない場合は契約者がもう存在していないということがずっと発見されていないということが福祉の現場ではよく起こっています。契約者が存在しなくなっていても入所契約はずっと継続しているということです。サービスは契約によって利用することができるのですけれども、契約を続けていくことの必要性というのは、実は契約行為だけではなくて、いろいろな関係者の中で継続の必要性というのがモニタリングされているというのが実情だと思うのです。そのときに、今の相手方の保護ということで言ったときに、特に福祉サービスにおいては、契約者がいなくなっているということが分かったときに、どうするということが結構日常的に多いものですので、ただ、本人がその契約を続けていくことの必要性というのは別のところでしっかり見られていると思いますから、保護というものをどこまで考えるかというのは、福祉の立場で言うと、それほど現状と変わらないのではないかというのが一つの考えとしてあります。   ただ、もう一方で、金融機関もそうなのですが、代理権があるかどうかということの問題ですね、登記のところなのですけれども、これは現状でも登記事項証明書というものを見せて自分の身分を証明するわけですが、これが結局、今だんだん半年から3か月以内というように相手方から求められる登記事項証明書の有効期間がどんどん狭まってきて、先ほどの佐野幹事の御発言からも、もしそういうことになるとしたら、今までできていたことができなくなるような可能性もあるような御指摘があって、全然これは民法の話ではないことをあえて承知して発言しているのですけれども、登記事項証明書というものが今、書面によるやり取りになっていますが、こういったものを今後、もし登記の内容の変更が今よりは多くなるということであるとしたら、書面による提示ということで行くのか、それとも別のやり方を考える必要があるかというのは、民法の改正の話ではなくて、そういうことも議論しておく必要があるのではないかと考えます。デジタル化がいろいろ進んでいる中で、書面で登記事項証明を取得するというところでの本人の経済的負担も今結構掛かっています。年間何回も取る必要が生じていますので。そういうようなことも含めて、身分の証明というところについての仕組みというところが今のままでいいのかというのも、今回このところでは少し感じたところなので、発言いたしました。 ○山野目部会長 星野委員が二つおっしゃったうちの前の方は承りました。後ろの方について、いささか確かめます。後見登記の内容を知るための、現在の仕組みでと後見登記に係る登記事項証明書について今、星野委員は、書面かデジタルかとおっしゃいましたけれども、伺っていると、おっしゃろうとしている観点は書面かデジタルかではなく、それも手順としては関わりがありますけれども、むしろ誰がアプローチすることができるかというところに問題の本質があるのではありませんか。 ○星野委員 そうですね、ただ、自分が権限を持っているということを証明するときのやり方として、今は書面を提示するわけなので、それを書面ではないやり方でできるということは考えられないのかなというのを感じていることなので、アプローチを誰がするということはあまり考えていない発言でした。 ○山野目部会長 では、保護者がデータで取ったものを取引の相手方に見せるという進め方は、今はしていないけれども、それをしてくれという提言になりますか。 ○星野委員 データという言い方が適切かわかりませんが、いわゆる書面ではなくていうことですね。 ○山野目部会長 はい。 ○星野委員 端的に言うと、そういうことです。つまり金融機関なども、あなたは今、権限があるのですかということを、変更があったら登記事項証明書を出してくださいということを定款に載せることで免責になるのではというような話があったのですが、それももちろん一つの方法だと思うのですが、今自分が取引をしている代理権があるのだということを、書面ではなくデータで、で示すことができればかなり負担が軽減されるのではないでしょうか。先々そういうことも検討していく必要はあるのではないかという主旨です。   もう一つ言うと、後見制度が終了して、本人が取引をする場合ばかりではなくて、ほかの支援の在り方で本人と金融機関との間に入るというか、支援をする方が出てきたときに、先ほど野村真美幹事のお話では、終わるときに終了するということの告知をするという話もあったのですが、逆に引き継ぐというか、引き継いだ方が自分がそれを引き継いだということを告知するということもどこかで規定しておくという方法もあるのではないでしょうか。これは成年後見だけではなくて、別の仕組みにつながった場合もですが。   最後の方は少し余計なことを言いましたけれども、すみません。 ○山野目部会長 最後の方は余計なことなのですね。 ○星野委員 余計というか、今の質問の主旨から外れたという意味です。 ○山野目部会長 それは余計なことというか、意味のあることをおっしゃったのですけれども、ここでおっしゃられても余計なことであるかもしれません。それは厚生労働省の方で企画立案の途上にある、定型的にはいわゆる新日常生活自立支援事業においてこれまでサポーターと言われてきた人が権限を引き継いだり、あるいはサポーターが交代する場面で、そのことを典型的には日常的な取引のある金融機関にどういう手順で伝達するかという論点は、ここの議論を見ながらではありますけれども、それこそあちらで考えてもらわないといけませんから、法制審議会が口出しして決まることではありません。ですから、そのような観点から申せば余計なことですけれども、ただし、星野委員に余計なことをおっしゃっていただかないと、多分、世の中はそこに気が付かないまま話が進んでいってしまいますから、大事な余計なことを今おっしゃっていただいたと感じます。どうもありがとうございます。   引き続き御議論を承ります。 ○根本幹事 今の星野委員からの御発言に関係して一つのアイデアということで聞いていただければと思います。星野委員が言われたように、今はわざわざ法務局から登記事項証明書を取り寄せて、郵送なり若しくは窓口交付を受けて、それを持参するという運用になっていますので、それを、例えばQRコードで交付を頂いて、金融機関の窓口でQRコードを読み取るとPDFの登記事項証明書が表示されるということになれば、非常に利便性が高まるのではないかと思います。他方で部会長がおっしゃられた、そこにアクセスできる権限を誰が持っているのかという点については、それは保護者であり、若しくは本人であるというところになるのではないかとは考えています。 ○山野目部会長 ありがとうございます。 ○河村委員 今のやり取りのことについてコメントしたいと思います。先ほど銀行の佐野委員が発言されたときに感じたことなのですが、ここでの議論ではないのかもしれないと思いその時は挙手しませんでした。星野委員の発言をお聞きして、私もコメントを言わせていただこうと思います。   佐野委員が銀行のお立場から、これからはカードを使うこともできなくなるかもしれないし、インターネットバンキングもできなくなるかもしれないしというようなことをおっしゃったときに、私は非常に違和感を感じました。国を挙げてデジタル化と言っている時代です。基本的にここの場はとても難しい、どちらもあり得るというような、いろいろな場面を考えなければいけないことを議論していると認識しています。しかしこの件に関しては証明ができるかできないかの話ですよね。それほどあれこれ何か慮らなければいけないこともないわけで、私が考えましたことは、部会長がおっしゃったアクセスのことも飛び越えてといいますか、すごく将来の話かもしれませんけれども、結局、登記というのはある瞬間からステータスが変わるということだと思いますし、結局その瞬間のステータスが見られるデジタル的な仕組みができればいいのではと思いました。あるいは今審理中ですとか、その前はこういうステータスで、審理期間があって、現時点で代理権はあります、ありませんのステータスになるだけなので、このような一番デジタルに適していることを国を挙げてやっていけば、今いろいろなところで不都合が生じていることも、単純なことに関しては、デジタル的なことで解決していくということは大いに考えられるのではないかと思いました。 ○山野目部会長 河村委員から大切な観点をお話しいただきまして、ありがとうございました。どうしてもいろいろ知っている人、法律家が議論し始めると、どんどん話が細かくなっていきますから、今のように簡単なことではないですかとおっしゃっていただけると、目が覚めた思いがいたします。   目が覚めたついでに、河村委員のおっしゃったところを踏まえて、どうなっているかということを申し上げると、恐らく新しい制度がどうなるかがまだ見えてきていませんから、今後必ずそうなるということを断定することができる人はいませんけれども、あらましのイメージがこうなっていくかもしれないというところを現在の状況から想像すると、こういうことですよね。保護が終了したり、個別の単発の代理権をもう与えないことにしたりするというようなことは、それは裁判所が決めるということは、もうこれまでの了解事項になっていますから、権限がなくなるという審判がされます。審判がされると、家庭裁判所の裁判所書記官が登記官に対して嘱託をします。東京法務局に宛てて、権限がなくなるという登記をしてくれという嘱託をします。その嘱託のところが郵送でされたり電子的にされたりというところは、いろいろな工夫を今も進められていますし、これからも進められていくでしょう。受け取った東京法務局の登記官や職員の方が、それを見て審査をします。そこはコンピューターが自動的にしてくれるとか、というわけにはいきません。人間の目で見て、登記をして大丈夫かという点を審査して、それを登記記録に反映する登記実行をします。その間、少し隙間の時間が生じます。その隙間の時間が生じて、登記がやがて改められますが、改まった瞬間に世の中の人がみんな分かるかというと、そうではなくて、本人や保護者、関係者も、登記が改まった状態は、それを想定して登記事項証明書を徴求しないと証明することができませんし、取引の相手方はそのデータに直接アクセスすることはできないという状況になっています。特段の制度を工夫しなければ、こういう形でなっていくだろうと思われますから、それでいろいろ節目、節目の場面で困りましたねという話を先ほどから皆さんしていますが、河村委員が、いやそれは空の上から神様が眺めていれば今の流れは全部見えるはずであり、途中で何か難しい話があるという議論をしているのではないですから、分かるようにしたらいいではないですかとおっしゃられれば、申し上げたように、それは目が覚めるような思いで、そのとおりでありまして、そこに近づけていくのにどうしたらよいかということを引き続き悩んでいただきたいと、この部会資料を出した機会ですから、もう少し委員、幹事にお話があれば承っておきたいと考えます。   青木委員がおっしゃったように、恐らく預貯金の取引とそれ以外の取引とでかなり状況が異なるでしょう。対極にある取引が不動産の取引で、自宅を売却しますというような一回性の高い取引については、相手方がその取引のときに今までどおり後見登記事項証明書を出してくださいと求めることでそれほど大きな困難は多分ないとも感じられます。何か特別な事情がない限り、それを待っていると取引が渋滞して大変に困ったことになるというような場面は余り想像することができません。もしそうだとすると、佐久間委員が御提言になったように、現行の11条を参考にしながら、もしかしたら法定後見の方についても類似のことを考えるとか、112条の例外を考えるとかという法制上の措置は引き続き検討していくことになりますけれども、本質は登記事項証明書を取ってくださいということで、それほど大きな不便はないと思われますけれども、銀行取引全部というのではなくて預貯金の取引に関しては、本人の日常生活そのものと性格づけてよいものですから、それをその度にいちいち、昨日もお見えになりましたけれども、昨日から今日の間に代理権消滅の審判と消滅の登記嘱託がされていないでしょうねという点を毎日、金融機関の窓口で確かめなければいけないということになるとすると困るという問題は解決していかないといけません。ここは本当に解決していかなければいけないと思います。   佐野委員から、皆さん、ここで民法478条をどう考えていますかというお問合せがありましたから、そこは法律家の先生方は御意見があるときにはおっしゃっていただきたく望みます。ただし、そこも少し心配である点は、例えばここにいる法律家の方がみんな478条の適用で解決することができますとおっしゃってくれればそれで安心だという話になるかというと、そうではなくて、無過失が要件とされておりますから、取引の相手方になる金融機関は普通、善意であると思われますけれども、どこまでしたら無過失であると扱ってもらえますか、それはやはり窓口で毎回都度、後見登記に係る登記事項証明書を確かめなかったら過失がありますねということにされてしまうとすると、それは478条の適用がありますと言われてみても大した意味はないということになり、その辺のところを明確にしますということにしていかなければならないとすると、無過失の解釈、運用はこうしますと法制審議会で決めて、それで決まりということではなく、それは放っておけば判例の蓄積を待たないと決まらないことですから、判例の蓄積を待つ暇がないとすれば、何か法制上の措置が必要になってくるでしょう。   問題の構図は委員、幹事のお話の積み重ねで、だんだんこういうふうになってきていると思われます。引き続き御議論を頂きたいと考えておりまして、竹内裕美委員からお話を伺った上で、更に委員、幹事のお話を伺っていきます。 ○竹内(裕)委員 すみません、少し時機に後れているのかもしれませんが、議論をと思いまして、2点です。   まず、112条に関して類似の取引保護規定を考えるのかということについて、私はどちらかというと賛成でして、その理由は、代理権付与のときに本人関与があるからです。これまでの成年後見であれば、部会資料9ページのように、法定後見と任意後見とは違いがあると言い切れたのかもしれませんが、今考えている新しい法定後見だと、御本人の意思尊重、御本人の関与というところがまず最初のスタートのところであると、そして終了の場面でも、御本人の請求により、必要性がなくなったということで終了する場合には、終了の場面でも御本人が関与されているということで、そこは御本人側の帰責と言っていいのかですが、取引の相手方の保護を優先すべき正当化根拠があるのではないかと思います。ただ、終了については、御本人以外の方が請求する場合、その場合には御本人の同意が不要であるという議論もありますし、また裁判所が職権で終了させる場面もありますので、それらとの関係はやや問題になるのかなといったところです。   2点目は、これは先ほど星野委員がおっしゃっていたデジタルであるとか、証明をどうするかとかその辺りのことです。これは裁判所に負担を求める意見なのかもしれませんが、利害関係人として家庭裁判所に相続放棄の受理証明を出していただくことがあるのです。利害関係を疎明すれば、出していただけるのですけれども、これは家事事件手続法の47条に根拠があります。今後、よりデジタル化や裁判所の仕組みが進んでいって、それが登記の仕組みとどちらが先に進むかということではあるのですけれども、そういった家事事件手続法の47条の手続で、より早くより簡単に裁判所の審判の結果が分かる資料が取得できるのであれば、そういった方法もあり得るのではないのかと思った次第です。 ○佐野委員 今まで御議論いただいたところで発言させていただきます。478条の考え方のところに関しては、青木委員とかもおっしゃっていただいたとおりで、少し銀行に特化したところもあるかと思うので、この議論自体、銀行取引とその他の取引で分けた方がいいかもというところも理解しました。あと、部会長からもおっしゃっていただいたとおり、478条で保護され切れる範囲というのはどこかというところも少し議論の余地があるところかなと思いますので、そこも引き続きお願いできればと思います。   先ほど、どのような取引の相手方を保護する規律をイメージしているかと御質問を頂いたときに、任意後見の11条と申し上げたのですけれども、その点、言葉足らずな部分がありましたので、少し補足させていただきますと、ここも従前から話に出ております112条の項目のような形で、法定後見も含めた形で112条が適用されるといったような形の規律があると有り難いと考えております。   最後に、登記事項がデジタルであればというところのお話を頂いておるのですけれども、ここについては、もちろん登記の証明書を出して持ってきていただくという手間が大分格段楽になるのかなとは思いつつも、必ず登記を見るようにしようという運用にせざるを得ないように、保護の規律がなかった場合には、結局デジタルであっても、ATMとかインターネットバンキングといった非対面の取引では、その都度それを確認することができないので、結局窓口の取引に限定するといった運用もあり得てしまうのかなと考えておりますので、少しそこの考え方もありつつ、保護の規律を設けるという方向で検討いただきたい、それは112条とかを含めた方向で考えていただきたいと思っております。 ○佐久間委員 112条に関してと、少し違うというか、関連することなのですけれども、私は先ほど商法9条1項の扱いなどを考えると、112条を何らかの形で用いることは難しいのではないかと申し上げました。ただ、状況が違うところはあることはありまして、商業登記の場合は誰だってアクセスできるので、取引相手は心配だったら自分でアクセスして状況を把握しろと、取引相手について商人側は全部把握するなんていうことは難しいので、周知を商人側にさせるということも現実的でない、したがって112条の適用はないというのが多分一般的な理解なのではないかと思います。   これに対して、今問題となっている法定後見の終了の場面では、商人側が周知することは難しいというのは、本人にとってはイコールで置き換えることはできるのですけれども、どなたか、複数の方がおっしゃったかもしれませんが、取引終了するとか退任するときは、その退任する人がなのですかね、通知をせよと、そういう義務を課すべきだとおっしゃった、それは一つあるとは思うのですけれども、その義務が履行されなかったときに本人の不利益にできるかという問題があり、そこが非常に悩ましい点だと思います。それを、しかし、先ほど申しましたけれども、本人の意思に基づいたり、本人の利益のために制度利用が開始したのだから、そこは当然内包している危険だから、本人の不利益にということはあり得るかもしれないと。   もう一つは、何といっても登記事項証明書は本人を経由してしか相手方は取得できないので、登記がされたとしても、相手方としては他人任せでしか代理権消滅の事実を知ることができないという状況になってしまう。証明書の有効期限が切れたら、その後もう一遍出してもらえというのは言えるかもしれませんが、その間は難しいということがあるので、そういう状況を考えると、112条のような相手方保護も、商業登記に関する規律はあるけれども、考えられるのかなという気はしています。気はしますが、繰り返しになりますけれども、112条一般を変えるというのは絶対やっては駄目だと思います。この部会のできる範囲を超えることになりますので。だから、112条の今までの一般的な規律とはこの場面は異なるのだということをうまく切り出せるならば、その限りで特別の規律を設けることが考えられるかなと思います。 ○山野目部会長 佐久間委員の御発言を受けて、差し当たり私から二つ申し上げます。一つは、商業登記の効力の規定は、佐久間委員に適切にお気付きいただいて御指摘のとおり、登記情報にアプローチできる人の範囲が異なりますから、多分あそこは法制的に乗り越えられるのだろうと私個人は見ていました。今、同じ趣旨のことをおっしゃっていただきました。   それからもう1点は、もちろん112条そのものを改正しようという話は絶対あり得ないとは申しませんけれども、なかなかないだろうと思います。未成年後見の方その他に変な波及効果を及ぼしてはいけませんし、債権法改正をもう1回リターンマッチをこの部会でやりますというようなことをしてはいけませんから、法制的な検討を経ないと分かりませんけれども、恐らく大いにありそうである行き方は、こちらの方で用意するどこかの個別の規定で、民法112条の規定にかかわらず何々というような文言のイメージのものを考案していくことであるかもしれないとも今のところ感じますけれども、引き続き検討してまいりましょう。   引き続き伺います。いかがでしょうか。   もう少ししましたら、事務当局にもう一度お声掛けをした上で花俣委員、久保委員にこの順番でお声掛けをすることにします。   その前に、竹内裕美委員に少し教えていただきたい点ですけれども、家事事件手続法47条で書記官に問合せをするというのはよいアイデアであるというか、面白いアイデアであると感じましたとともに、現場感覚で御感触を教えていただきたい点として、登記の嘱託を早くして、と裁判所の現場と、それからもう一つは、東京法務局の仕事をもう少し合理化して、なるべく登記事項証明書を迅速に目にすることができるような状態にしましょうという進め方と、この47条で問合せをして裁判所の事務職員の人に対応してもらう手順と、一つはこちらから見たときのリズムでどちらが近道であろうかということが問われてよいかもしれませんし、それから、裁判所の現場に余り負荷をかけたくないという観点もあります。もう裁判所は今後人員が無尽蔵ではありません。私はこの間全然別件で、家庭裁判所ではなくて地方裁判所の事件ですけれども、するべき登記をしていないではないかという問合せをしたのに対して、異動になったばかりで忙しくてできなかったのですということになっていた事案を耳にしました。法令の規定であるから早くしてくれませんかというやり取りがあったという経過を聴きましたけれども、やはり人間が構成している組織ですから、いろいろ手許が忙しく、あれこれ言ったときに、どちらが一番言われた方も気持ちよく、かつこちらもゲットするものをゲットできるかという観点は考え込んでおく必要ありそうな気がします。どういうものでしょうか。 ○竹内(裕)委員 これまでも、家事事件手続法47条が使えるのではないかとは思っていたのですけれども、裁判所の負担ということを考えると、どのタイミングで申し上げるべきなのか考えていました。また、申し上げたとしても、無体なことなのかと私の方でも悩みがあるところでした。私は先ほど申し上げましたとおり、利害関係人、つまり債権者の立場で相続人の相続放棄受理証明を出していただくことしかやったことはありませんが、裁判所からは、比較的早く出していただいているので、2、3週間かけて嘱託して登記をして、戻ってきて、となるよりは早いのではないかと考えた次第です。利害関係人からも請求でき、早く審判を知ることができるのではないかという問題意識から、このタイミングで発言をさせていただきました。もっとも、デジタル化がそれぞれの部署でどこまで進んでいくのかに関わりますので、確実にどちらが優れているということまで言うのは難しいのかもしれません。 ○山野目部会長 よく分かりました。また何かお気付きのことがあったらお教えください。ありがとうございます。 ○山田関係官 部会資料20の10ページ16行目以下の記載に関して、登記事項証明書の確認を常に求めると負担だとの御意見についてお聞きしたいと思います。この点について、例えば、不動産取引であれば毎回求めることはできるかもしれないけれども、一方で継続的取引であれば毎回求めることは少し酷なのではないか、との話もありました。継続的取引の場合に関し、確かに、毎回求めることは難しいかもしれないとも思われます。しかしながら、そうであることを理由として、何も確認しなくてもよいのか、それとも何らかの機会に確認する必要が出てくるのかという点について、悩ましく思われます。この点に関して、皆様の御意見をお聞きできればと思います。よろしくお願いします。 ○山野目部会長 取り分け一回的な取引でない継続的な取引について、登記事項にアプローチすることの頻度、リズムのような観点からのお問合せがありました。 ○根本幹事 二つあります。一つは竹内裕美委員からあった47条の関係です。基本的には放棄の場面とは別で、後見の場面で見れば、そもそも登記事項証明書が取れる方というのは制約がありますから、そこは47条でも同じであって、どちらが早いかということとの関係で言えば、登記事項は飽くまでも終了が確定した場面で取れるものだと思いますけれども、確定証明とセットで取らなければいけないということにもなってくるのだと思います。終了の審判の抗告手続をどう考えていくかということはあると思いますけれども、登記事項として考えていくべきではないかというのが私の意見です。   それから、山田関係官からお尋ねのところです。結局、頻度をどう考えるかということになってしまうと、法令上、3か月でいいですとか半年でいいですということには結局ならず、解釈の問題ということになってしまうので、基本的には継続的な取引であっても、最初の届出と終了の場面という二つの時点以外では、提出を求められる必要はないという前提で取引の相手方が保護される規定を設けないと、3か月ならいいとか1か月ならいいという議論にはならず、毎回出してくださいという話になってしまって、これは取引の相手方にとっても保護者や本人にとっても非常に多大なコストを負担することになるのではないかと思います。 ○山野目部会長 普通3か月なのではないですか。というのは、大抵の証明の現場での取扱いは3か月以内のものを持ってくればオーケーですという場面が多いですよね。どうですか。 ○根本幹事 一律にそうなっているというわけではないと思いますので、取引の現場ですとか、若しくは個々の取引相手ごとに、法務局や公的なところは別ですけれども、個々の取引行為においては、3か月おきに求められるということになっていないかと思います。 ○山野目部会長 それはもちろんそうです。少し御感触をお伺いしたにとどまります。ありがとうございます。 ○星野委員 私も少し今の根本幹事と重なるところがあるのですが、3か月というのは多分、初めての契約をするときには3か月以内のものを求められますが、取引が一旦始まると、金融機関もそうですけれども、その都度求められるということはないので、この議論というのはいわゆる見直しの話とも重なる話だと思っていて、結局、後見制度が継続していくとか代理権限の付与が継続するというところは、必ず見直しというプロセスがあることで生じるはずなので、今までの議論を聞いていてすごく私が疑問に思っているのは、こういうことが何か日常的に起こってくるということではなくて、やはりそういう変化が出てくるということは、裁判所が当然審判を下ろすわけなので、そのタイミングで、例えば報告をするということは必要かなと思うのです。   私が今言いたかったのが、竹内裕美委員がおっしゃっていたところと根本幹事と同じなのですけれども、今後見人に権限が発生するのは登記が家裁から嘱託されてからではなくて、また、登記事項証明書が取得できてからでもなくて、裁判所の審判が下りて確定してからだと思います。ですから、登記まで一定期間の時間が掛かるけれども、確定すれば登記事項証明書ではなく、審判書と確定証明を提示することで、権限はもうありますということを、すごく急いでいる場合は相手方に伝えて事務を行うわけです。それは、先ほど河村委員がおっしゃっていた、今審理中ですとか、もう審判は下りていますけれども登記がまだですから今、登記の準備中ですとか、そういうことが分かることが必要だろうということにつながる話だと思っています。   それで、期間についてなのですが、今申し上げたように、その都度ということではないし、期間を何か月とか1年とか決めるということではないのですけれども、考えられるのは、これは見直しの議論の中でどういう話になるかにもよるのですが、私は常々、社会福祉士会としては、定期的な報告、定期報告というのは今の定期報告と違うというのは分かっていますが、1年に1回家庭裁判所に報告をするときに合わせて、継続するのか、継続はもう必要ないのかというところを後見人側が報告をする、そのタイミングによって、いろいろ変化が出てきたときに合わせて、1年の間で何か変わっていませんかということを確認されるというのがよいと話し合っています。1年というのは今、定期報告が1年になっているので、そういう期間というのは考えられるのかなという感覚はありますが、それは民法の中に規定されるものでは多分ないと思いますし、取引相手方が求めてくるということも当然あると思いますので、あなたには今権限があるのですかというのを相手方が確認するということもあると思います。 ○山田関係官 今の点に関連してお聞きします。継続的取引について、先ほど根本幹事は、最初と最後のところを確認するということをおっしゃっていました。それは、継続的取引をする場面においては、取引の相手方としては最初の場面において登記事項証明書を確認すれば、基本的に何か出されない限りは権限があると信用して取引をしてもよいということでしょうか。 ○根本幹事 それだけでは恐らく取引の相手方としては不十分だとお考えになると思いますので、現行では、届出の最初の場面でそういった届出が出される限り、終了の何らかの届出を出さない限りは免責されるという形の何らかの条項を一般的には入れておられると思います。そのこと自体を、112条で終了した後の話になってしまうので、規定が必要だという理解だと思います。継続的な取引期間中は当然その免責の規約なり規定の効力というのは有効だと理解できると思いますし、責任があるとすれば当然、御本人ではなくて当該届出を出している保護者に責任があるということで構成されているという理解でおります。 ○山田関係官 この議論の問題状況としては、保護者の代理権が消滅したにもかかわらず、保護者がその届出をしなかったときと思われます。この場合において、保護者が届出をしなかったということの責任を、本人に負わせることができるということなのでしょうか。 ○根本幹事 そういう議論だという理解をしています。先ほど申し上げたように、ただ、それが本人に帰責をさせるということが酷だとしても、本人側と申し上げたのは、保護者は保護者でなくなっていますので、保護者に帰責させる明文の規定が、新たに112条の法定代理の適用がないという前提で言えば、必要なのではないかと思います。それによって、例えば銀行が典型例かもしれませんけれども、銀行がその都度、規定がないと、いつ終了したか分からないという不安感に襲われることになります。規定として設ける必要があるのではないかと私自身は思っています。結果的に、10ページの16行目以降のところに記載されているような実務にならないようにするということが、今回の改正との関係では必要ではないかという問題意識です。 ○山野目部会長 山田関係官に続けて御発言をお願いした方がよいであろうと考えますから、お願いしますけれども、少し解説を致しますと、山田関係官が多分、御用事で離席されている間ぐらいのタイミングであったと思いますが、根本幹事が、まず、本人というよりは本人側という概念を話し始めました。これが本日の議論のある種、起爆剤になっていますけれども、代理権のあるなしに関連して表見法理をいたずらに働かせると本人の利益が害されるという議論が割と伝統的にはされてきたけれども、しかし細密に考えてみると、代理権の発生や、場合によっては消滅について、本人の同意や本人の請求を契機として動かしていくという制度は今でもあるし、これから更にそういうふうな発想を採り入れていく仕組みが働く局面は大きくなるのではないか、そのような情勢をにらみながら、本人が広い意味での成年後見制度を用いると踏み出したときに関しては、それによって相手方が受けるかもしれない不利益を本人に帰するということにする行き方がそれほどおかしいでしょうか、という問題提起です。本人自体がおかしな取引行為をしたわけではなくて、権限を踏み越える行為をした者が保護者ないし保護者であった者であるけれども、それは本人の側がしたことであるとして本人に帰するということがそれほどおかしなことであるとは考えないという発想を視野に置いて、今後の議論は進められていくべきではないでしょうかという問題提起があり、それに理由があるかもしれないという御発言もあったけれども、引き続き丁寧に考えていきましょうというところが委員、幹事の趨勢であったように見受けしますが、いずれにしてもそういうふうな観点もにらみながら考えていかなければならないというところの議論を今日頂きました。   話がそんなふうになっていますけれども、しかし、その上で更に山田関係官のお手許において、部会資料20の後半の部分を今後、深掘りしていかなければなりませんから、お尋ねになりたいことは引き続きお尋ねいただくことがよろしいと考えます。 ○山田関係官 今、部会長にまとめていただいたところで私の問題意識は大体解消したところです。最後に、根本幹事にもう1点お聞きしたいことがあります。本人側というところですけれども、今回問題になってくるのは、保護者が権限を越えてした行為の不利益を誰が最終的に負担するのかというところの問題かと思っています。最終的には保護者であった人が負うべきかと思われるところですが、例えば、保護者が無資力であった場合に、そのことをどのように取引の相手方と本人との間で調整するかというところが問題なのかなと思っています。この点に関し、本人に保護者の責任を負わせることはどういった観点で考えればいいのかというところについてお考えがあれば教えていただけないでしょうか。 ○山野目部会長 今、根本幹事に発言を求めようと考えていますけれども、山田関係官にそこをお話しすること少し申し忘れていましたから、話を補足しますと、根本幹事からの御発言では、もちろん本人側という概念を駆使して本人に不利益を帰せしめるのもやむなしという扱いをする場面は、取引の相手方との関係であって、本人と保護者の間は、いわば内部の関係ですから、内部の関係においてはもちろんいけないことをした者が保護者に決まっていて、本人が最終的にその不利益を負わせられるということではなくて、内部の関係においてはもちろん、恐らく債務不履行責任ないしそれ類似の責任ですが、それを本人が保護者に追及していく法律上の余地は否定されないというか、それは当然のことですということもおっしゃっていただきました。その上で今、山田関係官から更に恐らく観点として追加されたところは、法律論は多分常識で言ってそうであるけれども、保護者が無資力であるようなことだってあるではないですかというようなことも視野に含めながら、どう考えますかという更なるお尋ねがあったと思いますから、根本幹事の現在の考えをお話しください。 ○根本幹事 部会長から御説明いただいた内容だと思っております。取引の相手方としては、仮に本人が無資力ということであれば、当然保護者に対して請求できるということになるのだろうと思います。逆もしかりで、取引の相手方との関係という意味で見れば、結局その保護者が無資力であったリスクがあった場合に、それを取引の相手方が負うのか、若しくは本人が負うのかということで言えば、そこは取引の相手方との関係では本人が負うということになるのではないかと思います。 ○山野目部会長 保護者が弁護士や司法書士であれば、賠償責任保険に入っていて、そこから出捐されますが、しかし得てしてこの種のことをするのは懲戒の制度もある弁護士や司法書士ではなくて、むしろ親族が保護者になる事例であり、その人は賠償責任保険に多分入っていませんから、そこは山田関係官と根本幹事のやり取りで明らかになったこととして、本人側という思想というか観点は、意義のある問題提起を頂いたとともに、考えていかなくてはならない課題の一つが今浮き彫りになったというなりゆきでしょうかね。   それでは、花俣委員にお声掛けをします。部会資料20についての審議を一通り進めてまいりました。ここまでの話をお聞きになって、どのような点でも結構ですから、御随意にお話を頂ければと思います。 ○花俣委員 ありがとうございます。ふだんの議論にも増して、今日は難しいお話を一生懸命聞かせていただきました。今ほどの課題については、各先生方の御意見を聞いて、ようやく整理がついたような気がしています。全く関係ない観点なのですが、取引の相手方と保護者の間でよろしくないことが起きたときに、取引の相手方である銀行が苦慮されるということもよく理解ができました。ただ、世の中にはオレオレ詐欺などもあり、それを防ぐために最近はキャッシュカードの一日あたりの利用額について、年齢などによっても限度額を設定できるとか、環境が変わっていって社会が変わっていくと、それぞれが、その都度、様々な工夫を重ねておられるのだろうと思っています。民法上ではなかなか難しくても、実務を担当する、向き合う人たち同士でいろいろな工夫を重ね、そういう視点に立って物事が当事者の意見も聴きながら進められることが理想かと思いました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。おっしゃられたように、法律も適切に調えていく一方で、それで十分でないところは実務の方々に悩んでいただかなければなりません。励ましを頂いたとおり進めてまいろうと存じます。ありがとうございます。   久保委員、お願いします。 ○久保委員 花俣委員もおっしゃっていただいたのですけれども、私たちが使いやすくしようと思えば思うほど、いろいろなところにいろいろなしわ寄せといいますか、御苦労していただかないと駄目なところがたくさんあるのだなということを、本当に皆さんの御議論を聞いていて、私たちがああしてほしい、こうしてほしいと言いすぎてしまったかしらと思うぐらいに、本当に御苦労をお掛けして申し訳ないなと思っていますけれども、本当に、でも、いろいろなところにこうして波及した問題点がたくさん出てくるということが、民法だからこそだなということを改めて今感じているところでございますけれども、特に知的障害で言いますと、本人自身がもしそういうことがあっても責任を負って何かできるというのがないから後見人を使っているわけですので、その辺のところが悩ましいといえば悩ましい、私たちがお願いしているからこういうことがいろいろ起こってくるのですけれども、でも、起こってきたことに対して本人が責任をなかなか持ちにくいという状況があるので、周りの方に悩んでいただき、そして御苦労いただくことが多く出てくるのだろうというふうなことが、今の御議論を伺っていて本当に身に染みて分かったという気がしております。   でも、社会では善人ばかりではありませんので、本人さんを守っていくためには、やはりどうしてもこの使い勝手のいい後見制度というのが必要だということは、本人のためにも強くそのことを思いますので、みんなが使えるような、使いやすい後見制度になればいいなという漠然とした思いではありますけれども、いろいろと御議論を頂いていることに感謝し、また申し訳なくも思いますけれども、いい制度にしていただけたら有り難いなと思っております。感想のようなことで申し訳ありません。 ○山野目部会長 久保委員に是非強調して申し上げておきたい話がございまして、ここでしている政策形成の趣旨は、これからますます報道関係や国会などにおいて説明する際にも誤解がないように注意していかなければならない点ですけれども、決して高齢者や障害者という特定の方面の人たちの利益のためにしている政策形成ではありません。もちろん直接的にはそうかもしれませんけれども、その方々が暮らしやすくなっていくことは、その方々を支える人たちや、更にそれを取り巻く広く社会の全世代、全体の人たちにとって社会が暮らしやすくなっていく一つの工夫のしどころなわけでありまして、決して特定の人のための政策をしているものではないということは折々に強調していかなければなりません。決して私たちに言いすぎたかなというようなことをおっしゃっていただく必要は全くありませんから、引き続きここでの検討を見守っていただいて、御意見を頂きたいと望みます。ありがとうございました。 ○久保委員 ありがとうございます。 ○山野目部会長 とっくに休憩しなくてはいけない時間が過ぎていましたから、ここで休憩をお願いすることにします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開いたします。   部会資料21の審議に進みます。部会資料21の全体につきまして、事務当局から資料の説明を差し上げます。 ○木田関係官 部会資料21について御説明いたします。   任意後見制度の検討事項のうち任意後見人と成年後見人等の権限の調整の規律、任意後見契約の一部の解除及び当事者の合意による事務の委託の追加、任意後見契約の一部の発効、予備的な任意後見受任者、任意後見の終了事由、任意後見の監督の在り方について、特定の考え方を採用した場合の要件や手続に関して技術的な整理を試みたものでございます。要件や手続等について、具体的なニーズや登記等の関係なども踏まえて御審議をお願いしたいと考えております。   なお、現在中間試案についてパブリック・コメントの手続が行われているところであります。本資料は中間試案で示した案について特定の案を勧める意図はございません。 ○山野目部会長 御説明を差し上げた部会資料21について御意見を承りますと声を掛けると、小澤委員がお話しになるかもしれないですけれども、その前に、根本幹事から提出していただいた意見書のお話を頂きましょう。小澤委員におかれては、少しお待ちいただけますか。また、根本幹事のお話に続いて、皆さんにお声掛けをしていく中で、久保野委員におかれましては御退出なされる前に、部会資料21の全体をお諮りしていますから、全体についてお気付きのことがあったら、御遠慮なく早めの時期に御発言を頂ければとお願いいたします。   根本幹事、お願いします。 ○根本幹事 御配慮いただいて恐縮なのですが、部会資料に沿って適宜触れさせていただくような形で御紹介できればとは思っております。小澤委員や久保野委員に御発言いただいた後で結構でございます。 ○山野目部会長 部会資料21についての皆さんの発言のお声掛けを致します。いかがでしょうか。 ○小澤委員 まず、部会資料21の3の任意後見登記の一部の解除及び当事者の合意による事務の委託の追加、4の任意後見契約の一部の発効、5の予備的な任意後見受任者については、いずれも後見登記でいかに分かりやすく公示するかが重要だと考えております。そのため、任意後見契約の一部解除や事務の追加は、例えば信託の登記における信託目録の変更登記手続を参考にして、変更部分には下線が引かれ、新たな変更事項は末尾に追加登記されるといった変更登記によって公示することができれば分かりやすいのではないかと考えております。これらは公正証書の変更という取扱いを可能とするために、公証人法を改正せずとも後見登記法を改正することで足りるのではないかと考えています。例えば、現行の後見登記法では変更の登記事項が限定されているところ、代理権の範囲についてはその対象となっていないため、代理権の範囲についても変更の登記事項の対象とすることで、先述の信託登記の変更登記と同様の取扱いができるのではないかと思いました。   また、部会資料8ページからの5、予備的な任意後見受任者については、予備的受任者の事務の開始の要件としては、主たる受任者に事故のあるとき又は主たる受任者が欠けたときなどと規律すればよいのではないかと考えます。   部会資料12ページからの7、任意後見監督の在り方については、第20回部会で提案をさせていただきましたとおり、任意後見監督事務の在り方を見直し、私的自治を可能な限り尊重することで制度を利用しやすくしていくために、行政の認可・認証等により一定の資格付けを受けた法人又は個人が任意後見監督人となる場合に、特例的な仕組みを導入してはどうかと考えています。   例えば、以下のような仕組みも検討をしています。まず、本人、任意後見受任者、そして認可・認証などを受けた任意後見監督人候補者の3者を当事者とする任意後見契約を公正証書で締結し、その契約の中で、任意後見事務に加えて、発効後の監督内容や報酬なども含む言わば任意後見計画のようなものを策定することを可能としてはどうかと思います。そして、任意後見発効の際には、任意後見監督人の選任申立てと併せて、この任意後見計画についても家庭裁判所に認可を申し立て、認可された計画に基づいて任意後見及び監督が実施される仕組みとするようなものを想定しています。なお、家庭裁判所が任意後見計画を認可しない場合には、従来どおりの枠組みに基づく任意後見が発効する構造となります。   この制度は、専門職が任意後見人となる場合に、その所属団体が任意後見監督人となることを想定したものではありますが、親族などが任意後見人となる事案でも活用できる制度とすることが重要であると考えておりまして、制度的裏付けと財政基盤が確立されれば、関係団体が外部にサービスを展開することも視野に入ると考えています。   任意後見計画に基づく監督では、任意後見人から監督人への報告は計画に定められた範囲に限定され、監督人の責任もその範囲に準じます。家庭裁判所への報告も原則として同様の範囲にとどまりますが、任意後見人の事務に問題が認められた場合には、監督範囲を問わず家庭裁判所への報告と計画認可の取消し及び従来型監督人への移行の申立てが必要となる設計を想定しています。また、急迫の事情がある場合には、監督人による任意後見人の解任の申立ても可能とする仕組みが望まれると考えています。   さらに、任意後見計画は家庭裁判所の認可を受けるものでもあるため、例えば、監督人報酬の額についても、従来のように発効後に家庭裁判所の審判を要するのではなく、計画の認可をもって足りるものと整理することも可能だと考えています。加えて、この任意後見計画には従来の任意後見事務に関する事項だけではなく、医療行為に対する意思表示などを含めることも可能とすれば、制度の柔軟性と対応力が向上し、より多様なニーズにこたえる魅力のある仕組みとなることが期待されるのではないかというふうな意見を持っています。 ○山野目部会長 御意見を承りました。司法書士会の先生方におかれて、かなり時間を割いて入念な検討をしていただいた跡を感じまして、御苦労さまでございます。どうもありがとうございます。   引き続き御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○佐久間委員 細かいことは少し置いておいてと言ったらおかしいのですけれども、一般的に思っていることがございまして、それは今回の資料に限らないのですけれども、一部の解除とか権限の追加とか、いろいろ意見が出ているところで、現行の制度ではこういう仕組みをとればできる、この手続をとればできるというのがほとんどだということが、多分それは間違いではないと思うのですけれども、記されていると思います。   ただ、本当にそういう発想でいいのかということを私は疑問に思っておりまして、例えばですけれども、権限を何か追加したいという場合には、その追加したいと考える権限について新たに契約書を当然作成しなければいけませんけれども、現在のところは新たにやはり開始の審判が要るわけですよね、形式的には。同じ人になるにせよ任意後見監督人もその審判において選ばなければいけないということになると思います。任意後見人の権限を一部入れ替えるということになると、一旦契約全部を無効化してというとおかしいですけれども、解除などをした上で新たに手続をやり直すと。結果的には確かに実現するのですけれども、そういう大掛かりなことをしないと希望する権限の変更をできないということが、結果は同じなのですけれども、外からというか、その制度自体を眺めて、何だかすごく使いにくいなという印象を与えるおそれはないだろうかと思っています。   今回の制度改正は、こういう言葉を使うとおかしいかもしれないけれども、ユーザーフレンドリーなものにしようというのが、法定後見についても含めて、あるのではないかと思っています。普通の人といっても法律を全然知らない人は駄目かもしれませんけれども、契約ってどんな制度だ、契約に基づいてどういうことができるかについてそこそこの知識のある人が、契約なのだからこういうことができそうだ、ああいうこともできそうだということが無理なくできるようにする、手続上の制約は残ると思います、例えば公正証書は要りませんというようなことにはならないとは思っていますけれども、なるべく普通の人が考えることに沿った形の制度が、結果が一緒なのだったら余計に、できた方がいいのではないかと私は思っています。   その上で、ただ、契約の例えば変更という形で多くのことに対応できるのではないかと私は思っていると申し上げているわけですが、契約の変更という形にしたがために、かえってやることが増えて、あるいはすごく手数料も掛かることになって駄目だというのだったらともかくとして、同じことができるのだったら、契約に基づく制度なのだから、契約の当事者及び、後見監督人も利害関係者に入っていると思いますので、後見監督人の同意を基に、裁判所にわざわざ一から手続を持って行かなくてもできるということを志向することが適当ではないかと考えています。この段になってすごく一般的なことを申し上げて悪いなと思うのですけれども、繰り返しますが、この仕組みとこの仕組みを使えば結果は同じですよねということで済ませるのは余りよくないのではないかと思っています。 ○山野目部会長 だんだん議論を深めれば深めるほど複雑な制度で分かりにくくなっていくような心配というものは、中間試案の任意後見のところを見ると、あります。そこをなるべく時間のあるときにこの部会として深掘りしていかなければならないと感じられます。   根本幹事から出していただいた意見書も、佐久間委員と問題意識が異なるところは少なくないかもしれませんけれども、なるべく見通しの良いものとしてロジックを整理していこうとする問題意識がおありなのだろうと思います。根本幹事、どうぞ。 ○根本幹事 いろいろ御配慮いただきました部会長と参事官室に感謝を申し上げます。まず、私の方で今日出させていただいている提出資料の冒頭のところは、正に先ほど佐久間委員から御指摘いただいたところと同じだと思っておりまして、この部会において、任意後見の改正の議論というのは、もちろん法定後見と同じようにユーザーフレンドリーにしていくというところがあるわけですが、任意後見においては、より強く部会の審議として求められていると私自身は理解をしています。利用件数がこれだけ伸び悩んでいる、しかしながら理念としては非常によい制度だとされているという、このギャップをどう限られた時間の中で少しでも促進につなげる法制度にしていくのかということだと思っています。立法事実としては、閣議決定された第2期利用促進基本計画の中でも求められているということも一つとして確認できるのではないかと思っています。   その上で、各論については部会資料21に沿いながら少し意見を申し上げていきたいと思っております。最初の権限の調整の規律のところにつきましては、まず、2ページの24行目辺りのところからありますように、解任ということは、26行目以降のまた以降のところだと思いますが、解任という概念はこの規律との関係では、どちらかというとそぐわないのかなと思っております。むしろ3ページ以降に記載があります一部の停止、一部の解除ということがなじみやすいのかなと思うところでして、かつ、この一部の停止と一部の解除というのは、並列することができる制度ではないかと思っております。   その前提としては、3ページの9行目のところにもありますが、保全処分ではない審判として一部の停止を構成した上で、一部の停止で、少し様子を見る、若しくは法定後見の動向を観察をしていただくようにして、その上で一部解除まで踏み切るかどうかということを段階的に判断していくということがあってもよいのではないかと思います。   そういったこととの関係では、3ページの21行目のところで、任意後見人又は本人からの解除の意思表示ということになっていますが、ここには法定後見人も解除の意思表示ができるということを規律した上で、裁判所の職権による権限の調整はできないということに、そこは形式上はなるのかもしれませんけれども、法定後見人が、代理権に基づいてということかと思いますが、解除の意思表示の主体となり得るとすれば、裁判所も解除の許可というような形で関与することができるという仕組みは考えられるのではないかと思います。   それから、4ページに行きまして4行目から5行目に掛けてです。②の場面について現行の10条の本人の利益のため特に必要があると認めるときという要件設定をするということが考えられるというのは、そのとおりだと思うのですが、少し丁寧に見ますと、現行における本人の利益のために特に必要があると認めるときというのは、飽くまでも法定後見制度か任意後見制度かという、制度を二者択一的に選ぶ、つまり並存しないことを前提としたことを考慮した要件設定ないしは文言ということになりますので、この場面で本人の利益のために特に必要があると認めるときという要件設定をすること自体は私は正しいと思っているのですが、中身は、この場面においては当該権限との関係で規律を見ていくということになりますので、文言自体はそのままかもしれませんけれども、その文言ないしは要件が意味している内容というところについて、現行とは違った理解で落とし込む必要があるのではないかと思っております。   それから、次に5ページ1行目から10行目のところですけれども、佐久間委員もおっしゃっておられましたが、ここに書かれているような方法でできるというのは、それはそのとおりだと思います。他方でそれでは促進がされていないということを踏まえていくと、ここで書かれているような方策は改正後においても引き続きとっていくことはできるけれども、これにとどまらず、以下の提案のような方策もとっていくことができるという、現行の方策と並存させて改正を考えていくべきではないかということを前提に読んだらいいのではないかと思っております。   先ほど小澤委員からもありましたが、登記全般についての問題があります。例えば5ページの20行目のところからの御指摘もそうだと思いますけれども、今後、任意後見が仮に今回御検討いただくような形でいろいろとバリエーションが出てくるとなった場合に、確かに登記が非常に分かりづらくなるということは懸念をされるところですが、そこの一つのアイデアとして申し上げるとすれば、例えば、戸籍ではありませんけれども、現在の代理権の内容若しくは契約の内容が何であるのかという現在事項証明といわれるようなものと、その履歴、例えば代理権等の出し入れが仮にあるのだとすれば、その履歴がどのようになっているのかという履歴事項をお示しするようなもの、それから、場合によっては今後、段階的等になれば、発効している代理権、若しくは発効していない代理権というような形で、その中でも分かれてくるということであれば、それに関する一覧表の、この三つを登記事項証明書としてバリエーションとして設けていくということをすれば、取引の相手方等から見ても比較的理解がしやすい登記事項証明書になるのではないかと思っております。一つの登記事項証明書に全てを書くということではなくて、例えばその3種を組み合わせていくことを登記事項として考えていただくことはできないだろうかと思っています。   続いて、内容に入りますが、追加の場面との関係で申し上げます。5ページの一番最後の35行目のところからになりますけれども、代理権の内容、授権事項等に変更を加えない限り、ということを立法担当は言っているということになるわけですが、なぜ代理権の内容の変更の場合には駄目なのかということが、理由がよく分からないと個人的には思っています。あわせて、6ページの25行目のところからですけれども、公証人法において公正証書の変更という規律が設けられていないこととの関係ということが結局問題になるのであれば、5ページの最後の2行と6ページの25行目のところの整合性をどのように整理するのかということも考えなければいけないのではないかと思ったということです。   続いて、6ページの3行目以降のイの記載のところですが、ここでおっしゃっていただいている現行の規律ということが、5ページの1行目のところの記載との関係でということだと思いますけれども、いわゆる全部を解除して新たに拡張した代理権を含めて契約を締結し直すということとの関係では、一つは、先ほどの佐久間委員からの御指摘と重複するかもしれませんが、一旦解除して全部を作り直すということになると、代理権だけを変更したいのに、本文全部を読み直させられると、しかも変更点がどこなのかがよく分からないということになってしまうのではないかと思います。全部解除で全部を作り直すということではなくて、変更にするということのメリットとしては、一つは、全文を読み直さなくてよいということになりますし、変更点が明らかになるということがメリットとしてあるのではないかと思っています。   他方で、5ページの1行目のところの又は以下の、既存の契約を維持して拡張した代理権のみを付与するという作成パターンについては、これは結局、契約が二つになりますので、各契約ごとに発効させなければいけないということになります。二つの契約相互の関係性が、場合によっては取引の相手方も含めて精査していただかないと分かりづらくなるということもあろうかと思いますので、そういう意味での変更ということが、先ほど申し上げたように、全部解除や全部新規とか、若しくは拡張したところだけを足すという方法自体は残してもいいと思いますけれども、それに加えて、新たに変更ということを設ける意味というのは、今申し上げたようなところになるのではないかと思っています。   それから、6ページの13行目以降のところになります。監督人が選任された、若しくは改正後であれば監督が発効した後に変更を許容するという場面については、具体的なところは、提出させていただいた資料の第3の1(2)のところに三つほどの場面が想定できるのではないかということを申し上げていますので、ここについて先生方からまた御意見を頂いた上で御議論できればと思ったというところになります。   次に7ページの一部発効のところですけれども、一部発効の(3)のアとイという二つの見解を御記載いただいているかと思います。この二つの立場の違いは、一部発効させるニーズや根拠をどのように考えるのかによって、アの立場を採るのかイの立場を採るのかということになるのではないかと思っております。仮に一部発効のニーズについて、本人さんの積極的な意向に基づくものであるとニーズを考えるものだとするのであれば、どちらかというとアの立場に親和性があるのではないかと思っています。つまり、本人が請求するということに限定をした上で、本人以外の方の場合には結局全部発効ですと規律をするということで、ニーズとの関係ではアと親和性があるのかなと思います。   7ページのアの最後の記載、25行目の2行の記載のところについてです。申立てを受けて裁判所が調査官調査等をすると、御本人の状況を調査するということになるかと思いますので、全部発効でいいのか、一部のみという意向がないのか御確認いただくということが、能力的な意味で、よいのではないかと思っています。   それから、次の8ページに行きまして、予備的なところです。下から3行目のところで、当事者に委ねることで問題はないのではないかという御指摘がありますが、ここについて二つのことが指摘できるのではないかと思っております。一つは、結局3者の関係性というものが、確かに予備的受任者の契約をされた時点では維持されているということだと思いますが、任意後見契約は御承知のように発効するまでに相応の期間が経過するということはあり得るわけで、そうしますと、発効までの間に3者の関係性が維持されているとは限らないということが言えると思っています。もう一つは、主位の受任者と予備の受任者の関係性が本人をハブにしているということもままありまして、そうなりますと本人が能力低下されている場面で主位なのか予備なのかということが問題になってくるわけですので、場合によっては、本人さんとの関係は主位の方も予備の方もいいのかもしれませんが、主位の方と予備の方の関係性も同じようによいと言えるかというと、必ずしもそうではないということになります。この2者の間での調整が困難であるという事例は実際にも報告をされているところではありますので当事者に単に委ねることだけではなくて、やはり法定の制度若しくは登記の制度として、予備的な制度を入れていく意義というのはあるのではないかと思います。   その上で、9ページの10行目のところで、死亡していることに加えて職務をすることができないということを加えるということが書かれており、先ほど小澤委員からも事故若しくは欠けたときということの御提案を頂きましたが、それは私も賛成です。一つは、音信不通になってしまっていて、その職務をすることができないことを疎明しようにも、その方と連絡がそもそも取れないということはあり得ますので、欠けたと、若しくは事故等の文言によって音信不通を入れていくという必要はあると思いますし、任意後見制度全体の整合性ということでは、いわゆる10条にあるような本人の利益ということに関する事由というのもここには入ってきてよいのではないかと思っています。   続いて、ウのところの記載との関係で言えば、任意後見監督人について、別々の方より、運用上の問題かもしれませんけれども、従前の任意後見監督人がそのまま選任されるという後者の考え方の方が実務としてはなじみやすいのではないかと思うということになります。   登記の30行目の、予備的受任者の数が多くなるということについては、省令等で上限を決めていただくということがあってよいのではないかと思っています。  続きまして、10ページの終了のところです。終了の規律を設けるかどうかにつきましては、一つは、やはり家庭裁判所ないしは監督人の監督からの解放ということの要素があるかないかということが、単なる委任契約との相違というところではあるのではないかと思っておりまして、その観点で規律を設けるということが必要なのではないかと思います。あわせて、資料でも書かせていただいていますが、例えば、欠けたとき等の裁判所の許可基準との関係でも、終了がどういう場面であるのかということが契約だけに委ねられるということではないのではないかと思うというところになります。   例えばですけれども、11ページの目的達成のところで、12行目のところからありますように、任意後見契約も目的を達成した場合は当然に終了すると考えられるというのは、理論的にはそのとおりだと思うのですが、誰がいつどのように判断するのかというところが、監督の終了ということとの関係では明確にする必要があるのではないかと思います。終了事由として、契約上は当然に終了するわけですけれども、終了の審判は規律を設ける必要があるのだと思いますし、そういった規律を設ける以上は、やはり法定の終了事由というものを一定程度設けた上で、別段の定めではありませんが、契約上の終了事由が更に別途あれば、考慮していくということになるのではないかと思います。   少し戻ります。10ページの有効期間のところについては、契約で定めるということは、任意でできるということは当然のことかと思いますけれども、それ以外に法定の有効期間を設けるということだとしても、そのときに法定後見と同じ期間というのは、やはり少し短いとは思います。仮に設けるとしても、任意後見契約の性質ということからすると、それが例えば20年とか30年で見直しの機会を設けるということはあってもよいのかもしれませんが、少なくとも法定後見と同じ短期間でということは、そもそも法定後見の期間の制度の趣旨と、任意後見の趣旨というのは、違うと考えています。   最後に、13ページでも御指摘があるように、監督との関係で御本人の意向を尊重するという、大きな考え方としては確かにあり得ることかとは思いますが、他方でやはり監督の中立性ということとの関係性も考慮しなければいけないと思われます。もう一つは、家庭裁判所が最後の監督を担っているということが制度として維持される間は、裁判所の監督との関係で、本人の意向ということを尊重することが、家裁の実効的な監督ということに困難を生じさせてしまうのではないかということは、少し懸念があるところだと思います。 ○山野目部会長 久保野委員、御発言ください。 ○久保野委員 私も佐久間委員と同じように、しかし違う方向で、任意後見全体について少し気になっていることを一言申し上げるだけにとどまります。御配慮ありがとうございます。   一方で契約であり合意に基づいて行っていくところに特徴があることは、もちろんですけれども、他方で、本人の保護ということも趣旨になっている、そのバランスをどのようにとっていくかということが問題となる制度であることはもちろん議論の前提になっており、今回の改正で、その軸、バランスの取り方を変えていくことが志向されているのだとは思うのですけれども、今もお話に出ましたが、通常の委任とは異なって、判断力が低下していった後には、当事者によるモニタリングやいろいろな対応というものに限界があるから、そこを補うものを制度として設計している部分がある、具体的には、法定の関与あるいは裁判所の関与があるという仕組みとなっている。このような仕組みとの関係で、契約をベースに考えていくことについてどこまで推し進めるのかについて、少しどうなのかなと思っているということがあるということです。   つまり、その判断力が低下した後の関わり方ということで、発効するまでに期間の経過があるというお話も今出ましたけれども、発効後も長期間続くことを考えたときに、事前に本人が意思で決定しているのだからという論理でどこまで正当化していくのかということについては、単純には考えられないのではないかと思います。監督の在り方を事前に設定しておくことについてもそうだと思いますし、根本幹事の御意見を先にお伺いしたいと先ほど申しましたのも、例えば、期間をあらかじめ定めておくということについて、任意代理であるから、期間を設定すること自体、確かに否定はされないということだとは思いますけれども、しかしその有効期間の設定ということについて、本人保護の観点や、長期間続き得るものについて本人が事前に設定した有効期間をどう考えるかということについて検討が必要だといった辺りのことを見極めながら、契約や合意という観点からどこまで進めていくかということを考える必要があるなと思っております。少しまとまりのない言い方でありますけれども。   そして、この問題意識と関連して、当然これも前提になっていることではありますけれども、法定後見制度の方がより柔軟な在り方に変わっていく中で、任意後見とのすみ分けというのがどうなるかということについて、まだ余り見えていないというところがありまして、引き続き考えていきたいと思っております。   すみません、漠然としたコメントですけれども、以上となります。 ○山野目部会長 どうもありがとうございました。   それでは、ほかの委員、幹事から部会資料21について広く御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○野村(真)幹事 ありがとうございます。部会資料21についてリーガルサポート内部で検討してまいりましたので、御説明いたします。部会資料に沿ってお話しさせていただきます。   まず、1ページの権限の調整の規律ですが、一部の解任ではなくて、一部の停止がいいのではないかという意見です。一部の停止については、二つの場面が部会資料でも設定されていますが、例として、任意後見人が不動産売買契約を代理で契約する場面を想定しますと、任意後見人が高齢等のために高額な不動産売買契約を締結することが相当でないと判断された場合、これは部会資料でいう①の場面ですが、当該代理権を停止して、同代理権を付与した後見人を選任することが考えられます。この場合は、任意後見契約法第8条を参考に「その他その任務に適しない事由があるとき」を要件として、代理権を一部停止させるのがよいのではないかと考えます。続いて、②の場面のように後見人に何らかの問題があるわけでない場合は、私人間で締結された契約を一部といえども停止するためには厳格な根拠を必要とすべきであり、任意後見契約法第10条第1項を参考にして、「本人の利益のために特に必要があると認めるとき」を要件とすることが必要と考えます。   続きまして、任意後見契約の一部の解除及び事務の委託の追加ですが、任意後見契約は公正証書によるものとされておりますが、任意後見の一部解除と当事者の合意に基づく事務の委託の追加においても公正証書によるものとて、変更内容は公証人の嘱託登記によるべきと考えます。   具体的には、当該任意後見契約の変更を求めていることを明確にするために、登記事項証明書を提出することで既存の任意後見契約を特定して、条項としては委任の内容部分については一部解除又は事務の追加を行う文言と、差し替える代理権目録を追加することとして、報酬等条項の変更については、変更する条文と変更内容を特定して変更することが考えられます。そして、公証人の嘱託により既になされている後見登記に変更公正証書作成の公証人氏名、証書番号及び変更年月日を追記する登記を行うという形で公示すればよいと考えます。既存契約を全面解除して新たに公正証書を作成し直す現行の場合と比較すると、変更部分のみに関する契約書作成であれば、内容や手続が簡素化されて、書類作成費用や作成時間などの負担も軽減できるため、本人や親族にとってより利用しやすい制度になると考えられます。   任意後見監督人が選任された後に代理権を変更することについても許容すべきと考えますが、追加された代理権については、家庭裁判所は旧代理権目録に基づいて任意後見監督人を選任していますので、全体については当然に発効しないと考えられます。追加された代理権について直ちに発効させる場合は、監督人選任後においては、家庭裁判所から変更の許可決定を得て、これを添付し、変更する旨の証書作成を公証人に依頼する形をとるという方法が良いと考えます。これによって、既存契約の監督は変更契約にも及ぶとして、新たに監督人の選任を申し立てる必要はないことになり、利用しやすい制度になるのではないかと思います。   続いて、予備的受任については、契約時に本人、任意後見受任者、予備的な任意後見受任者の全員で合意をする場合は1個の契約であると考えて、登記も数人の任意後見人が共同して代理権を行うべき事務を定めた場合と同様に、後見登記をなすことは可能ではないかと思います。ただ、当初受任者が1名であったものの、例えば年齢の若い親族や専門職などを予備的受任者として追加で契約するというニーズも実際にはあります。このような場合に、一旦先の契約を解除して、委任者、受任者の合意に基づく契約を行うこととすると、手続のハードルが上がってしまうことになります。例えば、後の契約に、既に先の任意後見契約があって、当該契約はその予備としていなされている旨の記載を付記することや、委任者が複数の受任者と契約している場合の目録を別途作成して、その中で順位についても記載するなどの方法を検討する余地もあると考えます。   また、予備的受任者の事務を開始する要件ですが、先順位の受任者の死亡のほか、高齢や病気などの事情により事務を継続できない場合も想定する必要があると考えます。法定後見の監督人の職務について、民法第851条第2号で、「後見人が欠けた場合に、遅滞なくその選任を家庭裁判所に請求すること」とされており、契約発効後はこれに準じて定めることが考えられます。契約発効前については、任意後見監督人選任申立てが後順位の契約についてなされた場合に、申立人において、「後見人が欠けた場合」に相当するという事情説明とともに、死亡の記載のある戸籍や、医師の診断書などの資料を添付して申立てをなすという方法が考えられます。   それから、予備的な受任者が事務を行う場合の監督人の選任についてですが、契約発効後に先順位の後見人が欠けた状態となった場合は、現在選任されている監督人が継続することを原則としつつ、親族から専門職等、属性が変更する場合など、個別な事情において監督人の交代を柔軟に考えていく必要があると考えます。   続いて、任意後見の終了ですが、任意後見については法定後見と異なって、本人が選んだ任意後見人との契約であって、本人が特に期間を希望するような場合を除き、期間を定める必要はないと考えております。   最後に、任意後見の監督の在り方ですが、部会資料の13ページのイの「任意後見監督人となる者との合意」の対象について、専門職が任意後見受任者となる場合には、その専門職が所属する団体等が監督人となることは想定されます。さらに、親族間の任意後見契約についても、その契約作成を支援した専門職や、部会資料にも記載がありますが、認証された団体が監督人候補者として、あらかじめ本人の情報、任意後見受任者の情報、本人と任意後見受任者との関係等を把握して、監督を行う範囲を協議した上で、三面契約の契約当事者として契約を締結することができるような環境が整備されれば、監督人となることも想定できると思います。ただし、このような場合であっても、家庭裁判所が契約に記載された候補者の適格性を判断して監督人に選任することを条件とすることが望ましいと考えます。一方で、任意後見監督人の選任申立てをする際に、監督人を候補者として挙げて本人の意向を示す方法も検討できると考えております。   任意後見制度の趣旨から、監督人としての適格性を維持するとともに、監督主体の継続性が必要であることから、いずれにおいても一定の基準を定めて個人又は団体をあらかじめ認証しておくことは、制度の信頼性を担保するものとなります。認証団体がそれぞれの得意分野、例えば身上保護ですとか地域との連携等を持つ場合は、本人の必要性に応じて選択の幅が広がると考えます。   次に、監督の在り方については、本人が契約において一定の範囲に限定した監督を希望する場合は、監督人はその任意後見契約で本人と合意した範囲で監督を行うものと考えます。家庭裁判所による間接的な監督についても、その範囲に限定されると考えられます。また、その監督人の責任も本人と合意した範囲として、その範囲を登記事項として公示することも考えられます。   ただし、監督人が任意後見人の解任事由を発見した場合には、その監督の範囲外の行為であっても、監督人は家庭裁判所に報告して、家庭裁判所は監督人に任意後見人の事務若しくは本人の財産の状況調査を命じて、その他、監督人の職務について必要な処分を命ずることができるとすることが制度の趣旨に合致すると考えます。   家庭裁判所の関係については、あらかじめ三面契約で監督人候補者を定めている場合は、監督人候補者に欠格事由などがなければ、当該候補者を選任することが原則になると思います。ただし、契約後に事情が変更した場合などには、例外的に家庭裁判所は候補者でない者を選任することが適切な場合もあると考えます。   報酬については、団体等を認証する際に各団体等は適切な監督が行える報酬の目安を定めておくことが望ましく、その範囲で具体的な額については家庭裁判所が定めることが適切と考えます。現状のように、監督人は家庭裁判所に定期報告を行って、その期間の報酬を付与されるといった仕組みでよいと考えます。 ○山野目部会長 リーガルサポートにおいても、活動しておられる先生方で入念な研究をして、今日、御意見をお持ちいただいたものと拝察しました。どうもありがとうございます。   引き続き委員、幹事から御意見を伺ってまいります。いかがでしょうか。   事務当局、木田関係官やそのほかの皆さん、それから後見登記の制度をつかさどっている同じ関係官でも民事局民事第一課の皆さんなども、それぞれ御関心のことや委員、幹事にお尋ねになりたいことについて御発言をお願いしたいと考えます。それでは、御発言をお願いします。 ○望月幹事 本日、登記に関して、どういった登記をすればいいのかということで幾つかアイデアを頂いておりますので、それも踏まえてまた検討させていただきたいとは思っておりますけれども、現行の成年後見登記の中では、例えば代理権の範囲に変更を加える登記としては、現行の保佐・補助類型における代理権の追加等に関する登記がございます。例えばこういったものをベースに任意後見の方でも似たような登記をするというのは、一つ考えられるところかなとも今ふと思ったものですから、こういった観点について、また先生方の御意見も頂ければと思っております。 ○山野目部会長 ありがとうございます。今、望月幹事からお問合せがあった事項についても、この審議が進む中で御発言なさりたいことがあれば伺います。 ○竹内(裕)委員 なかなか範囲が広いので、どこからというところなのですけれども、まず権限調整の部分につきまして、部会資料で行くと3ページになろうかと思いますが、複数の幹事から御意見が出ておりますが、私も一部の停止が納まりがいいのではないかと考えます。その場合、気になったのが、一部の停止ということになりますと、いつまで停止なのかというところでございまして、それは、ある事項が終わったら、というように事項で定める場合もあり得ますが、全件それで済むのだろうか、年数で定めなければならない場合もあり得るのではないのだろうかと、そのような定め方、上限なのか、何であるのかということが気になりました。また、権限を行使したい人の権限を停止させるということで、不服申立ての在り方、こちらも検討の対象になり得るのではないかということが気になった点でございます。   次に、先ほど根本幹事からも言及がありましたが、部会資料の4ページの4行目から6行目で、どういう要件を設定するかというところですが、ここに関しましては、法定後見の方で新しい解任事由を検討するということがございますので、その点と連動してくるべきことではないのかなという印象を受けました。   続いて、3点目といたしましては、事務の変更、追加というところなのですが、柔軟な在り方があればいいということは私も賛同いたします。ただ、根本幹事がお考えくださって、今回も資料でお出しいただいているのですが、根本幹事御提出資料の3ページにあります代理権目録の事務の追加というところです。1、提案内容の(2)で①、②、③と場合分けしてくださっており、②と③は具体的に発効後のことになるのですが、あらかじめ御本人が変更を承諾していれば任意後見人と監督人とでできるであるとか、特段の事情がある場合に限って職権で代理権目録を変更というところにつきましては、元々任意後見というのは御本人の意思が前提でして、そこまで行くと御本人の意思というのが余りに宙に浮いてしまうので、いかがなものかと思われる点です。   次に、段階的発効、一部発効の点でございますが、ここもニーズということで御指摘いただければ、そうなのかなと思う反面、御本人の同意によって一部を発効させるとなりました場合、御本人がしたいと思うことがあるのは分かるのです。御本人ができると思うこと、したいと思うことはあるのですけれども、ただ、それが御本人が実際にできること、取引の相手方に対しても安心して取引できることと果たして一致するのかと。制度の複雑さということに加えて、そこが本当に一致しているのか、それでいいのかというところに問題意識があります。   最後ですが、予備的受任者のところです。根本幹事から御提案いただいているように、遺言執行者の承諾のようにあらかじめ予備的受任者の承諾は必要であろうと、そこはそうだろうと私も思うのですけれども、予備的受任者の発効要件といいますか、部会資料でいうと9ページの10行目から14行目で、先ほど小澤委員や根本幹事からも言及頂いたところですが、この要件として、欠けたときとか、音信不通とか、本人の利益という提案が出てきたと思うのですが、できる限り評価や解釈の余地がない明確な要件でないと、かなり混乱するのではないかという気がいたしました。欠けたときとか、音信不通であると分かりやすいのですが、御本人の利益という評価の概念が出てくると、難しいところがあるのかもしれないと思いました。以上の5点でございます。 ○根本幹事 2点です。一つは、望月関係官から御指摘がありました登記との関係ですが、資料には書いていて、少し先ほど言い漏れたかもしれないと思ったので、申し上げます。法定後見と任意後見が今後並存する可能性があるということになりますので、まず登記については人単位にしていただくということは必須であろうとは考えておりますし、お尋ねいただいたような補助をベースに考えるというのも一つだとは思いますが、法定後見と任意後見で、いわゆる表記の方法の仕方ですとか、その辺りもそろえていただいて、人単位の登記ということで、ここは申し上げておきたいと思います。   竹内裕美委員から御指摘を頂きました点で補足といいますか、申し上げますと、6ページの発効後の変更というところですが、竹内裕美委員がおっしゃるように、御本人の意思というのは当然越えてはならないということだとは思っております。そういう観点で申し上げますと、②のところも、あらかじめ御本人が承諾ないしは予約の意思があることに加えて、少なくとも同意があると、ここは法定後見の議論の中でも、同意能力といわれるようなものと行為能力というのは少し違うということでお話があったかということを前提にしますので、いわゆる任意後見の契約締結能力はないのだけれども同意ができるということに限って、本人意思をできるだけかなえるということで考えられるのではないかという限界点を探ってみてはどうかという提案になります。   ③の職権のところは、具体的な例はその後に書かせていただいていますが、例えば当事者なり、若しくは御本人も予期していなかったような指摘が取引の相手方や、若しくは裁判所等の手続の関係で、されるということが現行の実務上あると承知をしていますので、当事者の合理的な意思、若しくは元々御本人が予定をされていた意思の範ちゅうであるということは、裁判所でそれを前提とした御判断というのを頂けないものかということで書かせていただいたというところになります。引き続き御本人の意思ということとの関係で、どこまで発効後に変更を認めるのかというところについて御議論できればなと思っております。 ○山野目部会長 根本幹事に御発言を頂いた契機を活かして、根本幹事に後見登記の制度の関係で一つ二つ確かめておきたい事項がございます。   1点目は、先ほど御発言なさった際に3種類とおっしゃって、いろいろな新しい登記情報の提供の仕方について改革がされるとよろしいというお話を頂いて、御趣旨は理解いたしますけれども、お話の中にあったもので一つ例を挙げれば、その人について従来どういうふうな代理権の出し入れがあったかというような履歴があって、それが一覧的に御本人の歴史的変遷が分かるようなものが登記事項証明書として1種類出してもらえるといいとおっしゃいましたけれども、そういうものが要る要請はどういうところにありますか。現在の代理権がどういうものについてあるかということを取引の相手方が知ることについて、休憩前に議論があったように、もちろん喫緊の必要があると感じすけれども、その人の言わば歴史を把握したいという観点はどういう趣旨でしょうか。少し心配であるところは、本当にそういう需要があるのだったら事務当局において検討しますけれども、システム改修や法制の変更に相当の労力を割かなければいけません。我が国の登記制度は様々な種類のものがありますけれども、ある事項についての、ずっと変遷を登記事項証明書で出すというのをしたことはありません。不動産登記も商業登記も、登記記録上出ているものは従来の内容も出て、抹消された抵当権とか、よく載っていますけれども、あれは記録事項が過多になるなどして移記や転写をきっかけとして見えなくなっていきますから、必ずしも出さなければいけないわけではありません。履歴みたいなものを出したということではありませんから、そこをしようとすると、これは現場の登記官が手作業で、その判断を交えてしなければいけませんけれども、その負荷を課することに確たる根拠があれば、それはもちろん必要があればして欲しい、と法務省事務当局にお願いしますけれども、人の労力を無駄に使うわけにはいきません。特にこれからはもう法務局の現場は本当に大変ですから、相当の覚悟を持っておっしゃっていることでしょうか。 ○根本幹事 想定をしていましたのは、例えば先ほどの前半の議論とも関係するのではないかと思っているのですが、例えば、当初、預貯金の代理権があったと、途中でそれが終了するということがあって、現行は預貯金の取引の代理権がありませんというような場合に、現行の履歴を取っただけでは、いつ果たしてそれが終了していたのかとか、場合によってはその取引の効力などが取引の相手方との関係で何らか疎明が必要になるというような場合に、いつからいつまで当該代理権をその保護者なり、若しくは任意後見人が有していたのかということが問題になるというケースは、あるのだろうと思うのです必ずしも履歴を全部欲しいかと言われると、そこまでの必要性という意味では、ないのかもしれませんが、せめて期間を特定して、若しくは、この代理権についての履歴が欲しいですということをお願いを申し上げたときに、出していただくということは、事後的な紛争になった場合との関係では、やはり必要があるとは言えるのではないかと思っております。 ○山野目部会長 根本幹事が知見を踏まえお話しいただいた需要ということでお尋ねした点は、理解を致しました。それを実現するのにどういう方策がコスト・パフォーマンスが良いのかは、事務当局の方でも、今日お話を伺いましたから、検討していきます。引き続き御相談をお願いしてまいりましょう。   それから、もう1点、後見登記の関係でお尋ねしたいことがあって、根本幹事の会議での御発言では、つい先ほど、今後は任意後見、法定後見を通じて人単位の後見登記の制度に改めてほしいということをおっしゃいました。書面で頂いた意見書は、人単位とするか、若しくは人単位での名寄せができるようにして登記上、名寄せ帳が開示されるようにならなければならないとお書きいただいていて、書面は2択ですが、発言は1個の意見をおっしゃいました。実はそれは割と実体法の理屈を考えている立場からだけ見ると、気楽にと言ったら失礼ですが、割と気楽に、まあ両方あるねということになりますが、法制の変更とシステム改修を求められる事務当局にとっては、この書面の「若しくは」の前であるか後ろであるかは段違いです。前の方は、絶対不可能とは言わないですけれども、これを本気でやろうとしたら相当の労力と時間と予算要ります。   こういうことを御存じだと思いますけれども、想い起こしていただきたい経過があり、令和3年法律第24号によって、不動産の登記記録について、簡単に言えば名寄せの制度を入れました。相続登記の義務化とか、ほかの部分は早々に施行実施されていきますけれども、名寄せは勇気のある制度で、法制審議会でも、これをしようとするときに私は何度も事務当局に対し、本当にこれはできるのですか、答申に入れたら後に引けなくなりますよとお尋ねして、事務当局が真剣に検討した結果、でも、これをしなければ相続登記の促進ができないから頑張ります、というふうに話が進みました。その代わり、相続登記と同じ時期の実施は、それを法律に書き込んでしまったら到底もたない可能性がありますから、名寄せと若干の事項は施行から5年以内に政令で定める日が実施日で、令和3年の法律であるにもかかわらず、いまだに実施されていません。   人単位のことで後見登記の制度をもし必ず改めなければいけないということになったら、多分それ以上のことを見込まなければいけません。我が国の高齢化社会が登記を含めて新しい成年後見制度を切迫した状況で望んでいるときに、その労力を掛けて時間を待たなければいけないというなりゆきは、それはそれで頭を抱え込むことであります。と同時に、「若しくは」の後ろのところの名寄せにするというアイデアであれば、抵当権の登記の共同担保目録のようなものをヒントにして作っていくことになりますから、できないものではありません。できないものではありませんけれども、これだって多分、事務当局の側から見れば、できないものではありませんとかと簡単に一言で議事録で言ってもらっては困りますという、あれもこれも検討しなければいけません、ということはあるであろうと想像します。けれども、「若しくは」の前のものに比べると、相対的には後ろの方は支障が小さくなってくると思われます。ですから、これは制度を作り込む側で見れば、根本幹事が「若しくは」の前、後、両方考えていらっしゃるか、前の方のみを強く押し出されるかは大きな違いがあり、ここで御意見を承っておきたいと望みますけれども、いかがでございましょうか。 ○根本幹事 最終的には人単位にするべきだとは思っております。ただ、今、部会長から御指摘がありましたように、例えば、同一性も含めて人単位のシステムにするということについてはかなりの御苦労がおありになるのだろうとは思っていまして、ただ、法改正がされれば、並存という制度はその時点から始まるということに仮になり、そのタイムラグの間に混乱が生じるということがあれば、人単位にするまでの間、名寄せという方法でしのいでいくということは、それはあり得るのではないかと、その効果としては同じ効果なのではないかと思うところもありましたので、このような記載にさせていただいたというところです。 ○山野目部会長 根本幹事の、飽くまでも本日時点のということで承りますが、御感触は理解することができましたし、また今日の根本幹事のお話を事務当局においても伺っておりますから、いろいろ悩んでくださるものであろうと期待いたします。ここも引き続き相談してまいりましょう。   もちろん後見登記以外の点につきましても、任意後見全般について委員、幹事の引き続きの御意見を伺います。 ○佐久間委員 後見登記のことなのですけれども、一つは今、部会長がおっしゃったことがすごく気になっていたとともに、登記を人単位にするとか、名寄せをして全部開示できるようにするとか、履歴付きも含めて広く開示するというのは、乙1案に仮になったとして、その発想と整合するのですかね。何となく、権限ごとに審判していってということは、当該必要でない事項についてはほかの人には見せないということが私は含まれているのかなと思っていました。違うのだったら違うでいいのですけれども。というのは、私はむしろ必要な限りでは、履歴まで要るかどうかは置いておきまして、必要な限りではある程度広範に開示をした方がいいということから、たとえ乙1案になっても、何々の審判という名前を付けて、そこに権限をぶら下げて、審判ごとに登記をして開示することがいいのではないかと思っていたのですけれども、確かある段階までは、それがよくないのだというお話があったように思うので、それでいいのかというのを一つ確かめたい。根本さんが乙1案を採られているかどうか知りませんが、確かめたいというのが一つです。   あと、登記関係で気になったこととして、権限の一部の停止というのがかなり評判がいいようなのですけれども、登記はどうするのですかね。停止を記録して、停止という以上は、ある事由があったら当然に復活をするのだと思うのですけれども、当然に復活をしても記録は多分変わらないから、1年後に復活ということが決まっていれば別ですけれども。そうすると、停止を解く審判が必要で、それを記録するということにならざるを得ないから、別に停止という言葉を使うことはよくないとは言いませんが、結局のところその間、権限が事実上消滅しているということと変わりがないのではないかと思うとともに、停止という考え方を支持される方は登記についてどう考えられているのかということが気になりました。   それともう一つ、資料にもあるし、根本さんもおっしゃった目的達成による権限の消滅も、やはり登記に表れないことには、目的が達成されているから同じような行為がされる蓋然性は低くなるのかもしれませんけれども、同種の行為が行われることはあり得て、そうすると登記上は権限のある行為に見えるということになりますので、やはり権限の出し入れが、いずれもですけれども、きちんと裁判所の審判を経て登記に即時に反映されるというような仕組みの下でしか制度は組めないのではないかと私は感じました。   それから、少し違うことを1点だけ申し上げたいのですが、終了に関する規律につきまして、私は別に期間を設ける必要はないというか、必須にする必要はないとは思っているのですけれども、何度か申し上げているとおり、過去の意思に永遠に拘束されるというのは好ましくないと思っておりますので、期間を仮に定めるとしたら、一定期間経過後は比較的自由に契約解除が可能である、場合によっては辞任も可能であるということを志向するのが適当ではないかと思っています。 ○山野目部会長 佐久間委員から二つの異なる種類のことをお話しいただいたうち、登記のことを中心として、そのほかの点も含め、前半でおっしゃっていただいたことは乙1案の趣旨の釈明ですから、御発言を望む委員、幹事のお話を後で伺います。それから、後半でおっしゃっていただいた期間の点は少し悩ましいところがあって、佐久間委員がおっしゃったように、本人が任意後見契約を締結した時の意思、選択に永久に縛られるのでよいかという観点は、真面目に考えておかなければいけません。特に、高齢者が締結した任意後見契約の場合には、平均余命をイメージしながら考える限りは、相対的に見てそれほど長く続かないですけれども、障害者の方の中には、若い頃に締結した任意後見契約で、この人を任意後見受任者に、やがては任意後見人に、と選任したときに、20年、30年という人生が続いていきます。やがてその方との関係がいろいろ変化していったり、それぞれの事情にも変化があったりしたときに、どういうふうになるであろうかという課題を考えてみなければならなくて、ただし、それを法的構成として、期間が例えば最長30年ですと法律上のルールとして設けておくか、何か解除が容易になるような規律を設けておいて柔軟に実現するかというふうなところになってくると、一方ではそういう法的構成の問題があるし、他方では現実としてどういう制度が望ましいかということをよく把握しなくてはいけなくて、両面から少し難しい問題があります。追って久保委員に御発言をお願いする際に、そのほかのことも御意見を承りたいですけれども、久保委員からもアドバイスを頂きたいとも感じます。   それでは、乙1案についてのお尋ねがあった部分について、根本幹事、どうぞ。 ○根本幹事 まず、私個人としては乙1案の立場であるということを申し上げた上で、登記との関係ですが、一つは、御承知のように後見の登記についてはそもそも請求権者がプライバシー保護との関係で制限をされているということになりますので、先ほど申し上げた履歴等については範囲としては限定されることだと思いますし、先ほどの部会長からのお尋ねとの関係で申し上げても、本当に必要な範囲が何なのかということを精査した上で実際の開示なり発行ということが行われていくということだと思います。   開示の範囲については、現在事項の登記事項証明書をどのような形の発行なり項目をイメージしていくのかということはあるとは思いますが、他方で取引の相手方に示すということを考えますと、やはり現在付与されている代理権を、例えばこの代理権のことだけこの取引の相手方に提示するということで、果たして取引の相手方が承知をされるのかという問題はあると思いますので、請求権者が元々制限されているということとの関係で、乙1であっても先ほど申し上げたようなところで問題はないのではないかと考えています。   期間のところはともかく、佐久間委員から御指摘がありましたように、停止のところについては当然、一部の停止がいつ終了したのかということを含めて、停止の終了ということの審判と登記は必要になると思いますし、目的達成に限らず、やはり終了の審判ということ自体は任意後見においても定めていただいて、その上で審判を出すということであれば嘱託登記ということになるかと思いますので、法定後見と標準を合わせていくということになるのではないかと思います。 ○山野目部会長 佐久間委員、いかがでしょうか。その前に青木委員のお話を伺ってから、佐久間委員に、もしお話があったら伺うことにしましょう。 ○青木委員 青木です。乙1案はご本人さんの必要に応じて、ご本人の意思に基づいて、代理権や同意権・取消権を付与するという意味で、本人の意思を尊重するという説ではありますが、そこから、付与された権限について、それをできるだけ第三者に開示しないようにしようという要請は含まれていないと、当初からずっと考えております。本人の意思に基づいて、あるいは具体的な必要性に基づいて付与された各権限については、権限を行使する第三者が、それを取引の相手方に必要な場合には提示する際には、付与された権限全体について開示をするのであり、一部だけ開示をするものではない、と当初から考えております。そうすることによる本人に対する不利益ということもないと思います。   また、権限は、先ほどから議論していますように、福祉サービス契約締結の権限とそれに付随する権限が伴うことが多く、金融機関でも、今や預貯金取引と証券取引というのは密接に関係したものに商品化されていますから、取引の相手方からしても、提示する本人の側が必要だと思うものだけを選択的に提示されるだけでは、実際の取引において支障を生じることもあると思いますので、そういった点からも、現在付与されている権限については全部を提示をするということで問題ないのではないかと考えています。   先ほどの登記事項証明書の履歴との関係で言いますと、私の経験では、保佐の経験で、代理権の付与と削除と追加とを何度か繰り返した履歴のある方がいましたけれども、現在は、登記事項証明を取りますと、その履歴が時間の順番で全て載ってきますので、何ページにもわたるものになっていることもあります。履歴については現在でも当然に記載されていますから、あえて履歴を見せるための登記事項証明書を作ってほしいという要望はする必要がないのではないかと思っています。逆に、現時点における保佐人は誰か、保佐人には現時点ではどんな権限が付与されているのかだけを取引の相手方は通常は知りたいので、むしろ現在事項証明として、履歴は省いて現在の保佐人と権限の一覧性のあるものが出ていただくようにするというのは、今後はそういった後見人等の交代や権限の変動する事例が増えると思いますと、そうした証明書の作成は強く望むところだというのが私の意見になります。 ○山野目部会長 それでは、根本幹事と青木委員のお話を伺った上で、何か佐久間委員においてお続けになることがあれば頂戴します。 ○佐久間委員 今日の話題とは違うので恐縮なのですけれども、それだったら別に何々の審判に権限をぶら下げて登記を出すことにすれば、現在とそれほど変わらない、変わるとしても、法定後見と任意後見の並存があり得るというだけのことになるから、それで駄目なのかなと素朴に思いました。 ○青木委員 それから、申し忘れたのですけれども、任意後見人の権限の一部停止の処理なのですけれども、必ず登記事項にしないといけないかどうかというのは少し検討すべきではないかと考えています。というのは今は、任意後見とは全く違う場面ですけれども、法定後見人について裁判所が職務執行停止というのをして、金融機関には職務執行停止に関する審判を裁判所から送っていただくのです。もちろんその職務執行停止を解除したら、その解除をもう一遍届けていただいていると思います。それと同じように、任意後見人の権限を一部権限を停止した審判についても、それを当該金融機関であったり、証券会社であったり、福祉サービスの利用者の相手方に審判書を送付していただければよくて、必ずしも登記事項にしないといけないかどうかは考えてもいいのではないかと思います。 ○山野目部会長 裁判所から金融機関に直接送ってくれるのですか。 ○青木委員 職務執行停止をした場合にはですね。職務執行停止をした上で、金融機関には出入金停止措置というのをしていただくのですけれども。 ○山野目部会長 それは、その職務執行停止の決定が金融機関の取引あるいは金融機関の名称を特定してされるから、そういうふうになるのですね。 ○青木委員 職務執行停止の決定は、職務全体が執行停止になります。出入金の停止措置は、財産目録に基づき、裁判所が必要だと思われる金融機関に個別に出しますから。 ○山野目部会長 しかし、裁判所は全ての金融機関にその通知をしているのですか。 ○青木委員 それは当該財産目録にある金融機関に。 ○山野目部会長 そうですか。郵券はこちらから出すのですよね。 ○青木委員 郵券は、予納した郵券になるのだと思います。 ○山野目部会長 予納した郵券を使ってもらう。理解しました。 ○佐久間委員 青木委員が御紹介いただいたことは、今の実務ではいいのかもしれませんけれども、恐らくここで考えられている一部の停止というのは、もっと範囲が広くなると思いますし、現に取引をしている人との関係ではそれでいいかもしれませんが、現に取引をしていない人との関係では、登記に表れていなかったら、権限がそのまま生きているように見えてしまうわけですよね。それはやはり無権限の行為のおそれを増すことになるので、余り好ましくないのではないかと思いました。 ○青木委員 ただ、この任意後見人の一部停止が想定される事案というのは、具体的に今、任意後見人とは別に法定後見人が付かないといけない必要性がはっきりしていて、かつ、それを任意後見人が重複して行使すると具合が悪いという場合ですので、その場合の権限行使の取引の相手方の範囲というのは限定されるという想定で議論していましたので、佐久間委員がおっしゃるような不都合がどの程度生じるかというのは、考えられる事例を想定しながら再度検討してみたいと思います。 ○佐久間委員 どのぐらい生じるかというと、それほど生じないようにも思うのですけれども、私が申し上げているのは、権限消滅の場合も同じなのですけれども、結局のところ後見人がよからぬ人であった場合にどうなるかという話なので、こう言っては失礼ですけれども、青木委員のようなまともな人が後見人になっている事例で考えるのはまずくて、例えば、親族で財産を狙っている人が後見人になっている場合だってあり得るわけで、そういったところも目配りして規律を組む必要があるのではないかとずっと私は考えています。 ○山野目部会長 青木委員のようなまともな人というのは、別に失礼でも何でもないと思いますが。青木委員、どうぞ。 ○青木委員 権限の一部停止をする場合というのは、任意後見人さんの資質自体には問題がない場合であるという前提なのですよ。任意後見人さんの資質に問題がある場合は、解任をして、法定後見人とは並存させないということになるのでして、任意後見人も資質は普通の人、法定後見人に新しく選任された人も資質は普通の人なのだけれども、でも任意後見人にその職務をさせることはもう高齢で無理だよねとか、少し複雑な法的・経済的判断が必要だけどそれはよく分からなくなってきているよね、ということで、新たに法定後見人を選任するという場面なので、いい人、悪い人の話ではないというのが想定です。佐久間先生の議論とは、想定場面が大きく異なるということを申し上げておきたいと思います。 ○山野目部会長 議論の射程に若干、一部解任も入ってきているかもしれませんが、一部解任、一部停止などの実体法上の概念の整理も引き続きしなくてはいけないですけれども、それらについての審判の手続や、審判に伴う裁判所の措置、それから後見登記がどうなるかというようなことについて、考え込んで明らかにしていかなければいけないということが明らかになりましたから、事務当局も含めて検討していくことにしましょうか。   一部解任、一部停止のときに、後見登記の事項証明を止めることはできますね。キーロックを掛けてしまって、後見登記を最終的に実行して記入するところまでは登記官は慎重にしなくてはいけないですから、記入には審査に時間が掛かりますけれども、停止、解任の嘱託が来ていますという時点で証明を止めることは可能ですから、そうすると取引の相手方が証明を取ろうとしても、現在、嘱託審査中という取扱い側の答えが法務局から戻ってくれば、この人は何かあるということになって、しばらく取引を待ちましょうという話になってきたりするような扱いという姿は実現可能でしょう。ですから、それは少しまた事務当局に悩んでいただいたところも見ながら、今日の皆さんの議論を続けていただくというくらいの整理で、本日のところはいかがでしょうか、よろしいですか。 ○佐久間委員 今、部会長がおっしゃったのは、一部解任、一部の停止のときに全部止まってしまうということではなくて、一部だけロックが掛けられるということでしょうか。ほかの事項について権限証明が欲しいときに、ロックされていて出てこないというのは、それは不都合なので。よく分からなかったので、一部だけロックできるのだったら、それは何も問題ないと思うのですけれども。 ○山野目部会長 新しい後見登記の事項証明がどうなっていくかのイメージを刻み込んでみないと分かりせんから、何も工夫しなければ、全部止まると思います。ですから、今、佐久間委員がおっしゃったことも宿題ですね、という話として検討を続けていくことになるでしょうか。ありがとうございます。   今の点の続きでもいいですし、ほかの点でも結構です。 ○遠藤幹事 今、後見人の職務執行停止に関するお話がありましたが、職務執行停止等の審判書を裁判所から直接金融機関に送るという実務運用については、当方では承知していないところでございまして、一部停止の制度の設計を考えていくに当たっては、その点も一度留保させていただいた上で、改めて議論をさせていただければと思っているところでございますので、その点だけ1点申し上げさせていただきます。 ○山野目部会長 承知しました。引き続き裁判所にも相談を差し上げてまいります。どうもありがとうございます。 ○木田関係官 根本幹事提出資料の3ページ代理権の事務の追加の部分の1(2)②に関するところで、少しお伺いしたいところがございまして、4ページの2段落目について、本人に契約締結能力がない場合であっても同意能力があり、という記載があるところでございますが、これはもう契約締結能力がない場合しか使えないという理解でいいのかという部分と、この同意能力は何を対象として想定されたのかというところを、まず教えていただきたいと思います。 ○根本幹事 基本的に、任意後見契約の契約締結能力があるのであれば、その上にあります変更ということをしていただければよいのではないかと考えてはおりますので、このような限定を付したということになります。   同意能力については、文字どおり、御本人が当初予定されていた予約があるという前提になりますので、その予約に基づいて任意後見人なり、若しくは任意後見監督人との間で手続を行うということについての同意ということではないかと思っております。 ○木田関係官 そうしますと、同意能力の対象としては、新たにこういう代理権を追加するよということの同意能力ではないという理解なのでしょうか。要するに、この代理権を追加するということができない、契約締結能力がない場合に、この代理権を追加することに同意能力があるという場面があり得るのかというところが分からなかったもので、質問させていただいたところです。 ○根本幹事 木田関係官の御理解のとおりだと思っていますので、同意の内容というのは、任意後見人と任意後見監督人が手続をするということについての同意という理解でおります。 ○木田関係官 その後出てくる家庭裁判所の許可の下で、公証役場においてとあるのですが、そうすると、時系列としては、まず家庭裁判所の許可が必要という理解でよろしいのでしょうか。 ○根本幹事 はい。居住用不動産などもそうかもしれませんけれども、事前に裁判所に案を提示して、許可を頂いて、その許可に基づいて契約手続をしていただくというイメージでおります。 ○木田関係官 細かいですが、家庭裁判所の方は何を判断しているのでしょうか。契約締結能力がないということは家庭裁判所が判断することになるのでしょう。 ○根本幹事 実際のところで家庭裁判所は、契約締結能力がないかどうかまでを審査されるということではないと思っていまして、変更内容が妥当なものであるかということを審査していただくということだと思います。 ○木田関係官 任意後見の監督の在り方の中で、任意後見監督人の範囲を限定した場合の家裁の監督の範囲について、先ほど野村真美幹事からは、家裁の監督の範囲も限定されるというふうな御意見を頂いたと承知していますが、ほかの方からこの部分についてもし御意見があれば、頂戴したいと考えているところでございます。 ○山野目部会長 今、木田関係官からお問い掛けの事項について、御発言があればいただきます。 ○小澤委員 家庭裁判所による間接的な監督の範囲については、監督人との間で合意された内容、例えば、任意後見計画ということを私は申し上げましたが、そういったものが想定されますけれども、裁判所はそれに拘束されるものではないと思っています。本人の重大な利益が脅かされるおそれがあるような場合には、必要な処分を命じ得る仕組みが考えられるように思っています。 ○山野目部会長 任意後見人の解任請求が監督人はできるという想定は、その下でも同じでしょうから、解任請求をする前提の事実の有無は調査しなければいけなくて、その部分はおのずと広がりますね。ほかにいかがでしょうか。事務当局は、ほかによろしいですか。   もう少ししましたら、久保委員、花俣委員の順番でお声掛けをしますけれども、再度お尋ねします。委員、幹事から部会資料21について、まだ述べていない意見があったら承ります。   よろしいですか。それでは、久保委員にお声掛けを致します。お願いいたします。 ○久保委員 今お話を聞いていて、毎度のことですけれども、細かいところまで大変難しいお話があるなと思って聞いておりました。知的障害の場合はおおむね、任意後見であれ法定後見であれ、後見人になっていただいた方とか監督人の方が、一番最初に付いていただいた方はほぼ、本人よりも年齢が高い方が多いかなと想定しますので、そうなりますと、ルールをとても分かりやすく明確にしておいていただかないと、最初のことが分からない人たちが次に引き継いで後見人になっていただくというようなことも発生してくるかなと思いますので、本人自身がそこを明確に説明できるわけでもありませんので、ルールを分かりやすく明確にしていただくということが、本人が、人が替わってもこの制度をうまく利用して安心して暮らせるということにつながっていくのかなと思って、家族自身も、言えば兄弟も本人と年齢が近いわけですし、そして親は先に行きますので、そういう意味では、本人の周りに最初に後見制度を使ったときのことが分かっている人が余りいなくなってしまうということが想定されるかなと思っていますので、その辺のところが少し心配だと思いますので、できるだけルールを分かりやすく明確にしていただきたいというのと、いろいろなところで、この権限はこの人にしてもらうと、私自身がお品書きのようにいろいろ選んで使えるようにしてほしいということをお願いをしておきながら、こういうことを言うのもあれですけれども、要は包括的代理権をなくすということで御議論いただいているかなと思うのですけれども、人がいろいろ替わると本人も全然分からなくなっていってしまいますので、その辺のところが本人にも分かるような、法律としてはそれほど明確に上手にルールみたいなものを書くというのは難しいのかも分かりませんけれどもこれまでの本人の様子や注意点、特長的な後見活動というような制度利用の経過(引継ぎ書的な物)を説明できるような、そんなふうにしていただけないと、だんだん御本人の同意も取りにくくなります。本人自身も年齢を重ねますので、本人の同意自身も取りにくくなっていきますので、どこでどういうふうに任意後見から法定後見に替わっていくのかとか、やめたりというのが上手にできるのかということが、すごく分かりにくいといいますか、そんな感じが少し不安としてありますので、その辺のところが明確になるようにお示しいただけたら有り難いと思っております。 ○山野目部会長 久保委員に今、趣旨をおっしゃっていただいた御注意を承りながら、民事法制としての任意後見が障害者の皆さんにとっても用いていただけるようなものにするための努力を重ねてまいります。あわせて、この政策領域は、民事法制の方もきちんと調えるということをするのと併行して、やはり専門的な法人機関を育成して、障害者福祉に寄り添う、期間が比較的長いスパンで専門的な知見を発揮し助言もする仕組みを工夫していかなければいけなくて、今般、民事法制が調っていくのを見ながら、厚生労働省の障害者福祉の部門とも連携して、各地にそういう専門的な機関を今以上に育成、整備するという観点をなおざりにしてはいけないと考えます。久保委員、どうもありがとうございました。どうぞお体を労ってください。ありがとうございます。 ○久保委員 ありがとうございます。 ○山野目部会長 花俣委員、お願いします。 ○花俣委員 任意後見制度関連については、根本幹事を始め司法書士会、あるいはリーガルサポートの先生方から大変丁寧で具体的な制度への御意見を拝聴させていただきました。ただ、その後の議論を聞いていますと、やはり法文とか、あるいは実務面での課題等々の議論がまだまだたくさんあるのだなということも併せて感じました。   私たちとしては、育成会さんとはまた違って、非常に母数の多い認知症の方、高齢者が主ですが、中でも最近は身寄りなき問題としての権利擁護の必要性がどんどん高まっています。そうした現状がある中で、この任意後見制度の本来のメリットがうまく私たちに伝わってきてほしいと願っていますが、それにはまだまだ時間が掛かるし、議論の深まりが大事ではないかということも併せて感じています。法定後見が変わる中で、任意後見制度の位置付けというのがもう少し明確になることが望まれるとも感じています。 ○山野目部会長 花俣委員から明瞭にまとめていただいたとおり、認知症高齢者との関係でも任意後見の制度を用いるとよいところがあるということを感じてもらえるような制度にしていくべく、努力をしてまいりましょう。引き続き御協力をくださるようお願いいたします。   部会資料21についてお願いした審議を了したという扱いにいたします。   本日用意いたしました部会資料につきましては、ここまでの審議で見渡すことがかないました。委員、幹事の皆様におかれましては、どうもありがとうございました。   次回日程等につきまして、波多野幹事から案内があります。 ○波多野幹事 本日も長時間にわたって御審議いただきましてありがとうございました。   次回日程でございますが、令和7年7月22日午後1時30分から午後5時30分まで、場所は法務省地下1階大会議室を予定しております。この日の会議におきましてはヒアリングの実施を予定しております。ヒアリングですが、後見制度と家族の会の方からお話をお聞きすることを予定しておりまして、後見制度と家族の会代表の石井靖子氏、弁護士の森脇淳一氏、一般社団法人後見の杜代表の宮内康二氏からお話をお聞きすることを予定しております。さらに、医師の関係でもお話をお聞きすることを予定しておりまして、国立研究開発法人国立成育医療研究センター成育こどもシンクタンク副所長、山縣然太朗氏からお話をお聞きすることを予定しております。 ○山野目部会長 ただいま波多野幹事から差し上げた点も含めまして、何かお尋ね、御意見がありますれば承ります。   よろしいでしょうか。ありがとうございました。   それでは、これをもちまして民法(成年後見等関係)部会の第22回会議を散会といたします。どうもありがとうございました。 -了-