侮辱罪の施行状況に関する刑事検討会 (第1回) 第1 日 時  令和7年9月12日(金)     自 午後2時02分                          至 午後2時38分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  1 座長及び委員の自己紹介         2 議事の公開等について         3 検討の進め方等について         4 その他 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○猪股参事官 ただいまから、侮辱罪の施行状況に関する刑事検討会の第1回会議を開催いたします。 ○橋爪座長 本日は、皆様御多用中のところ御出席いただきまして、誠にありがとうございます。本検討会の座長を務めさせていただきます橋爪と申します。東京大学で刑法を担当しております。どうぞよろしくお願い申し上げます。   まず、本検討会の開催に当たりまして、法務省佐藤刑事局長から御挨拶を頂きます。 ○佐藤刑事局長 法務省刑事局長の佐藤と申します。「侮辱罪の施行状況に関する刑事検討会」の開催に当たりまして、一言御挨拶申し上げます。   委員の皆様方におかれましては、御多用中のところ、本検討会に参加いただき、誠にありがとうございます。   御承知のとおり、令和4年に侮辱罪について改正が行われました。これは、特にインターネット上における誹謗中傷が社会問題化したことを契機といたしまして、誹謗中傷全般に対する非難が高まるとともに、これを抑止すべきとの国民の意識が高まったことを踏まえまして、侮辱罪について厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示し、これを抑止するために、侮辱罪の法定刑を引き上げたものでした。   改正法の附則では、施行後3年経過後に、政府において、侮辱罪の規定の施行の状況について検証を行うことが求められております。   これを踏まえまして、侮辱罪の規定の施行の状況について検証を行うとともに、更なる刑事上の措置の要否等につきまして御議論いただくため、この度、本検討会を開催することとした次第です。   法務省としては、本検討会が充実したものとなるよう努めてまいりますので、委員の皆様方におかれましては、それぞれの御知見を生かし、幅広い観点から、忌憚のない御意見を頂戴できればと考えております。   どうかよろしくお願いいたします。 ○橋爪座長 ありがとうございました。佐藤局長は公務のため、ここで退席されます。             (佐藤刑事局長退室) ○橋爪座長 本日は、検討会の第1回目でございますので、委員の皆様方に簡単に自己紹介をお願いしたく存じます。お名前と御所属、御専門等の自己紹介を簡潔にお願いいたします。   まず、法務省会場に御参集の委員の皆様方に、委員名簿の順番に赤羽委員から自己紹介をお願いいたします。 ○赤羽委員 最高検察庁検事の赤羽と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○笹倉委員 慶應義塾大学の笹倉と申します。法科大学院で刑事訴訟法を担当しております。よろしくお願いいたします。 ○佐藤委員 慶應義塾大学の佐藤と申します。法学部で刑法を担当しております。よろしくお願いいたします。 ○柴田委員 弁護士の柴田でございます。日本弁護士連合会の犯罪被害者支援委員会と東京弁護士会の犯罪被害者支援委員会の方に所属しております。よろしくお願いします。 ○嶋矢委員 神戸大学で刑法を担当しております嶋矢と申します。よろしくお願いいたします。 ○田山委員 早稲田大学の田山と申します。法学部で刑法を担当しております。よろしくお願いいたします。 ○趙委員 弁護士の趙と申します。私は日本弁護士連合会で刑事調査室の嘱託という業務とともに、日々刑事被告人の弁護活動を中心に弁護士活動をやっております。よろしくお願いします。 ○長戸委員 産経新聞で論説委員を務めております長戸と申します。よろしくお願いいたします。司法、法務分野を担当しております。 ○山本委員 警察庁刑事局捜査第一課長の山本と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○橋爪座長 ありがとうございました。   次に、オンラインで御参加の内藤委員、自己紹介をお願いいたします。 ○内藤委員 福岡高等裁判所の裁判官の内藤です。よろしくお願いします。 ○橋爪座長 ありがとうございました。   続きまして、事務当局の皆様方にも、自己紹介をお願いいたします。 ○吉田官房審議官 法務省の官房審議官の吉田と申します。よろしくお願いいたします。 ○玉本刑事法制管理官 法務省刑事局で刑事法制管理官を務めております玉本と申します。よろしくお願いいたします。 ○猪股参事官 法務省刑事局参事官の猪股と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○橋爪座長 皆様、よろしくお願い申し上げます。   次に、議事録の取扱いを含めまして、議事の公開の方針につきまして、お諮り申し上げます。   本検討会につきましては、会議自体は公開しませんが、発言者を明らかにした逐語の議事録を作成し、その議事録を法務省のホームページにおいて公表するとともに、本会議で用いた資料も法務省のホームページにおいて公表することを原則としたいと存じます。その上で、プライバシーに関わる内容のものなど公表することが適切ではない議事内容や資料がございましたら、その都度、皆様にお諮りさせていただいた上で、例外的に非公表の扱いとしたいと考えております。   このような方針でよろしいでしょうか。             (一同異議なし) ○橋爪座長 ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。   続きまして、本検討会の趣旨につきまして、事務当局から説明をお願いいたします。 ○猪股参事官 本検討会の趣旨について、御説明いたします。   先ほど刑事局長も申し上げたように、刑法第231条の侮辱罪の規定については、令和4年の刑法等一部改正法により法定刑が引き上げられたところ、同法附則第3項において、施行後3年を経過したときは、政府において、侮辱罪の規定の施行の状況について、「インターネット上の誹謗中傷に適切に対処することができているかどうか、表現の自由その他の自由に対する不当な制約になっていないかどうか等の観点から外部有識者を交えて検証を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」とされています。本検討会は、これを踏まえ、侮辱罪の規定の施行の状況について検証を行うとともに、更なる刑事上の措置の要否等について御議論いただくため、開催することとしたものです。   誹謗中傷に関しては、同法に関する衆議院及び参議院の両法務委員会における附帯決議等において、プラットフォーム事業者に係る発信者情報開示制度や民事訴訟における損害賠償の在り方等についても検討することが求められておりますが、本検討会は、同法附則第3項を踏まえて開催するものであることから、侮辱罪の施行状況について、刑事法の観点からの御検討をお願いしたいと考えております。   どうぞよろしくお願いいたします。 ○橋爪座長 ありがとうございます。   続きまして、配布資料につきましても、御説明をお願いいたします。 ○猪股参事官 配布資料について、御説明いたします。   配布資料1ですが、これは令和4年に成立した刑法等の一部を改正する法律による改正後の刑法第231条と改正法の附則第3項の条文です。   同項は政府に対し、改正後の刑法第231条の規定の施行の状況について、同条の規定がインターネット上の誹謗中傷に適切に対処することができているかどうか、表現の自由その他の自由に対する不当な制約になっていないかどうか等の観点から検証を行うことなどを求めています。   配布資料2は、改正法に対する衆議院及び参議院の両法務委員会における附帯決議を抜粋して整理したものであり、「インターネット上の匿名での誹謗中傷による侮辱罪に関し、被疑者の特定に係る被害者の負担を軽減すること」、「損害賠償命令の対象事件を拡大するなど、適正な被害回復のための方策を速やかに検討すること」、「侮辱罪の処罰範囲に変更はないこと及び侮辱罪による現行犯逮捕が可能な場合は実際上は想定されないとする政府統一見解を捜査機関に周知徹底すること」、「侮辱罪による私人逮捕は刑事責任が問われること等を広く国民に周知・広報すること」、「侮辱罪に係る公共の利害に関する場合の特例の創設について検討すること」などが求められています。   続きまして、資料3は、ただいま御説明した附則の規定や附帯決議を踏まえ、現時点において本検討会で御議論いただくことが考えられる事項について、事務当局において整理したものです。   資料4は、改正後の侮辱罪の事件処理状況に関する資料です。いずれも、事務当局において調査し、作成したものです。   1枚目と2枚目は、改正後の侮辱罪の処理状況及び科刑状況をまとめたものです。   まず、1枚目は、改正法の施行日である令和4年7月7日以降に犯行に及び、令和7年6月30日までに侮辱罪のみで検察庁において終局処分がなされた延べ667人につき、インターネット事案305人と非インターネット事案362人のそれぞれの処理状況を円グラフにしたものです。公判請求、略式命令請求、家庭裁判所送致、不起訴になった事案のそれぞれの人数と割合を示しています。略式命令請求を含め、起訴がされた割合は、インターネット事案については約36%、非インターネット事案については約20%となっています。   次に2枚目は、令和4年7月7日以降に犯行に及び、侮辱罪のみで処断され、令和7年6月30日までに裁判が確定した延べ174人につき、インターネット事案104人と非インターネット事案70人のそれぞれの科刑状況を円グラフにしたものです。1枚目における公判請求と略式命令請求の合計の人数よりも人数が少なくなっていますが、これは令和7年6月30日までに裁判が確定したものに限った資料であることによるものです。   令和4年の改正により、侮辱罪について罰金及び拘禁刑を科すことが可能となりましたが、罰金刑が科された事案は、インターネット事案については約82%、非インターネット事案については約47%となっています。   なお、令和7年6月30日までに侮辱罪のみで刑が確定した事案においては、懲役刑や拘禁刑が科された事案は不見当でしたが、その後、本年8月に、侮辱罪のみで処断され、懲役刑が科されて確定した事案があったものと承知しております。   3枚目は、犯行から検察庁における終局処分までの期間についての資料です。令和4年7月7日以降に犯行に及んだ者のうち、侮辱罪のみで処断され、令和7年6月30日までにその裁判が確定した延べ174人につき、犯行から検察庁における終局処分までの期間を円グラフにしたものです。改正により法定刑が引き上げられたことに伴い、公訴時効期間が1年から3年に延長されたことから、犯行から1年を超えて処理された事案が見られるようになっています。終局処分までの期間が1年を超えた事案は、インターネット事案については約45%、非インターネット事案については約21%となっています。   最後に、配布資料5は、侮辱罪で処罰がなされた事案についての事例集です。令和4年7月7日以降に犯行に及び、侮辱罪のみで処断され、令和7年6月30日までに裁判が確定した合計173件について、各事案の概要と処理区分、裁判結果をお示ししています。なお、先ほどの配布資料4の事案の合計人数とずれがありますが、これはインターネット事案と非インターネット事案が併合罪として処理された事例があるためです。 ○橋爪座長 御説明ありがとうございました。   本日は、更に山本委員からも提出資料がございますので、山本委員におかれましては御説明をお願い申し上げます。 ○山本委員 「警察における取組状況」という資料を御覧ください。   まず、侮辱罪の認知・検挙状況について説明いたします。「1」の「警察における侮辱罪の認知・検挙状況(犯罪統計)」を御覧ください。警察庁で年間を通じて取りまとめている犯罪統計によりますと、過去5年間における侮辱罪の認知件数は、令和2年以降増加傾向にありまして、改正刑法が施行された令和4年には267件と前年に比べ約2倍と増加し、令和6年には更に増加し、393件となっております。なお、令和7年上半期、1月から6月末までですが、これは164件と前年同期に比べ約18%減少しております。侮辱罪の認知件数のうちインターネットを利用したものについて見ますと、同様に増加傾向にございまして、認知件数全体に占める割合は、令和2年以降約50%前後で推移しておりましたが、令和6年には増加して、約57%を占めるようになっております。令和7年上半期につきましては、約50%ということでございます。   侮辱罪の検挙件数につきましては、認知件数と同様、令和2年以降増加傾向にございまして、改正刑法が施行された令和4年には166件と前年に比べ約70%増加しております。令和6年には更に増加し、277件となっております。なお、令和7年上半期は135件と前年同期に比べて約4%減少しているところでございます。侮辱罪の検挙件数のうちインターネットを利用したものについて見ますと、同様に増加傾向にございまして、検挙件数全体に占める割合は令和2年以降、約35%前後で推移しているところでございます。   次に、インターネットを利用した侮辱罪の特徴について説明いたします。「2」の「インターネットを利用した侮辱罪の特徴(調査結果)」を御覧ください。警察庁では、この度、改正刑法施行後の侮辱罪の検挙状況について分析するために、改正刑法が施行された令和4年7月7日以降に発生し本年6月30日までに検挙した事件を対象に、インターネットを利用した場合におけるSNSやサイト等の手段、被害者側から告訴を受理した場合において被害者側が被疑者を特定するための手続をとっていたか否か、被害者の属性、被疑者の身柄の措置状況について調査をいたしました。調査結果につきましては、先ほど説明した犯罪統計とは対象期間が異なりますので、数値にずれを生じております。その点、御留意いただくようにお願いいたします。   調査結果によりますと、インターネットを利用した事件295件について、その手段を見ると、Xやインスタグラムといったコミュニティサイトを利用したものが159件と最も多く全体の約54%、次いで、爆サイドットコムや2チャンネル、5チャンネルといった電子掲示板が89件と全体の約30%、次いで、LINE等の通話・通信アプリが12件と全体の約4%を占めているという状況になっております。また、インターネットを利用した事件295件について、被害者側が自ら被疑者を特定するための情報を入手するために、民事訴訟を提起したりプロバイダーに対して投稿者特定請求を行ったりするなどの手続をとっていたか否かを確認したところ、こうした手続をとっていないものが249件と全体の約84%、逆に、手続をとっていたものは46件と全体の約16%という結果でございました。   警察庁では、衆議院及び参議院の法務委員会において、インターネット上の匿名での誹謗中傷による侮辱罪に関し被疑者の特定に係る被害者の負担を軽減することとの附帯決議がなされていることを踏まえまして、改正刑法施行前の令和4年6月に通達を発出するなどして、インターネットを利用した場合における投稿者の特定に関し、警察において捜査を尽くすなど被害者側の負担軽減に配意するよう指示しておりまして、警察からこうした手続をとるよう被害者側に求めることがないようにしております。先ほど説明した被疑者特定のための手続ありの約16%につきましても、警察からこうした手続をとるように求めたものではなく、被害者側が自ら手続をとっていたというものになります。   続いて、侮辱罪の検挙状況の詳細について説明します。「3」の「侮辱罪の検挙状況の詳細(調査結果)」を御覧ください。調査結果によりますと、検挙した事件596件について被害者の属性を見ますと、公務員以外が571件と全体の約96%でした。他方、公務員については25件と全体の約4%となっており、その内訳は国会議員及び地方議会議員が11件と全体の約2%、その他公務員が14件と、これもまた全体の約2%となっております。なお、首長はございませんでした。公務員が被害者となった事件については、詳細は差し控えますけれども、「ばか」とか「あほ」等と、他人に対する軽蔑を表示して公然と人を侮辱したものがほとんどとなっております。   また、検挙した被疑者538人について身柄の措置状況を見ると、身柄不拘束が520人と全体の約97%、通常逮捕が18人と全体の約3%でありました。なお、現行犯逮捕した事例はなく、警察においては、いわゆる政府統一見解を踏まえた適正な運用を行っていると考えております。 ○橋爪座長 ありがとうございました。   ここまで、本検討会の趣旨や配布資料につきまして御説明いただきましたけれども、何か御質問はございますでしょうか。 ○柴田委員 先ほど御説明いただいた認知件数には、警察に相談に行ったけれども被害届を出していない案件は入っていないんですよね。 ○山本委員 認知というのは、侮辱罪は親告罪ですので、告訴を受理したとか、その前段階の被害届を受理したというものをカウントしております。相談は、まだ被害者の方が出すか出さないか迷っているというのもありますので、カウントしておりません。 ○柴田委員 被害届又は告訴状まで提出したものの件数ということですよね。 ○山本委員 はい、そうです。 ○柴田委員 ありがとうございます。 ○橋爪座長 ほか、いかがでございましょうか。   御質問につきましては、よろしいでしょうか。             (一同異議なし) ○橋爪座長 それでは、議論に進みたいと存じます。   まず、今後の議論の進め方につきまして、事務当局の方で何かお考えがありましたら、この機会にまずお伺いしておきたいと存じます。 ○猪股参事官 本検討会における議論の進め方については、もとより本検討会においてお決めいただくべき事柄ですが、座長からお尋ねいただきましたので、議事の整理等を担う事務当局の立場から申し上げます。   本検討会における検討事項に関しては、令和4年の刑法等一部改正法の附則の規定や、その国会審議の際の衆・参両院の法務委員会における附帯決議等を踏まえたときに差し当たり考えられるものを配布資料3においてお示ししておりますが、今後、御議論を行っていただくに当たっては、まず、この点について御意見等があればお伺いできると有り難く存じます。   また、ただいま申し上げた検討事項の整理とも関係しますが、幅広い観点から御検討いただく上では、次回以降、なるべく早い段階でヒアリングを行うことが有益なのではないかと思われます。それにより、改正後の侮辱罪をめぐる実情等についてより幅広い知見が得られるのではないかと思われますし、そこで得られる知見が検討事項の策定・整理に資するのではないかと思われます。ヒアリングの対象者としましては、インターネット上の誹謗中傷の被害者、表現の自由に関して御知見のある方、それから、インターネット上の誹謗中傷への対応に御知見のある方などが考えられると思います。   委員の皆様の御意見やヒアリングの結果も踏まえて、本検討会における検討事項を確定し、その上で、各検討事項について順次御議論いただくという進め方が、一つの進め方として考えられるのではないかと思われます。 ○橋爪座長 ありがとうございました。   ただいまの事務当局の御意見を踏まえますと、まずは皆様から、本検討会で取り上げるべき検討事項あるいはヒアリングの実施に関することを含む今後の議論の進め方につきまして、御意見を伺うことが有益ではないかと思われます。また、これらと併せまして、改正後の侮辱罪の施行状況等についての問題意識等につきましても、概括的な形でお伺いできますと、今後の議論にも資するのではないかと思われます。   ただいま申し上げた点のうち、いずれについてでも結構でございますので、御意見等のある方は挙手の上、御発言をお願いいたします。 ○趙委員 今後議論するに当たって、要望を3点させていただきたいと思います。   まず1点目は、先ほどの御報告にあった中で、8月に侮辱罪のみで拘禁刑に処せられた例が1例あったということを口頭で御報告いただきましたけれども、それがどのような事案かという事案の概要等については必要な情報かと思いますので、次回以降、資料として御準備いただきたいというのが1点です。   2点目は、警察の方からの報告の中で、国会議員及び地方議会議員を被害者とする件が認知されている例が数件あったとの報告がありましたけれども、これにつきましても可能な範囲で、どのような言動であるか等について分かる範囲で御説明いただきたいというのが2点目です。   3点目は、この検討会は刑事に関する検討会ということはもちろん承知はしておりますけれども、一方で、更なる刑事上の措置の要否も検討するということからすると、民事上の手続が前回の改正後どうなっているかということは、やはり情報として必要なことではないかというふうに考えています。それに関連しまして、プロバイダー責任制限法の改正がこの間にあったと承知はしておりますけれども、それがどのような改正がなされたかということと、ここは難しいところかもしれませんが、その前後で民事上のこういう発信者情報開示なり何なり、そういう手続が用いられやすくなったのかどうかということについて検討できる何か資料を、もしあれば御用意いただきたいと、この3点について要望させていただきたいと思います。 ○吉田官房審議官 御指摘を踏まえて、どのようなものが用意できるかについて、事務当局において検討させていただきたいと思います。 ○猪股参事官 1点目に御質問いただいた点については、この場でお答えいたします。   先月、懲役刑に処せられた事案というのは、被告人がインターネット掲示板に被害者の実名を明らかにして同人を侮辱する内容の投稿を繰り返したというもので、本年8月に懲役6月、3年間執行猶予の判決が確定したものと承知しております。なお、この判決によりますと、本件被告人は同一の被害者を標的とする犯罪行為により処罰されたことがあるとされております。 ○橋爪座長 ありがとうございます。3点の御要望につき、1点目につきましては、今御回答いただいておりますので、それ以外について、更に事務当局の方で検討をお願いすることになるかと存じます。   それ以外に御発言がございましたら、お願いいたします。 ○柴田委員 先ほど資料等を見させていただきましたけれども、実際の被害の実態がどのように推移しているのかについては、資料としてまだ頂いていないかなと思いますので、特にネット上の被害の件数ですとか、あとは質的なものに関して、両面から検討する資料が頂ければなと思っております。 ○橋爪座長 今「被害の実態」とおっしゃいましたけれども、それは質的な観点と量的な観点からの実態把握ということでしょうか。 ○柴田委員 そうですね、はい。 ○吉田官房審議官 配布資料5として、実際に処理された事件についての事例集をお示ししておりますけれども、それとは違う観点からの資料をという御要望かと理解いたしましたが、もう少し具体的におっしゃっていただけると、対応の可否等を検討できるかと思うのですが、何かイメージを持っていらっしゃいますか。 ○柴田委員 結局、警察に対して被害を届け出たつもりでも相談止まりになっている案件ですとか、警察に相談にも行けない案件というのがあるわけで、インターネット上の被害の相談等を広く受け付けている団体等に、相談件数の推移ですとかそういったものを作成、提出していただくとか、御意見を頂くとかいう形でもいいですし、インターネット上の名誉毀損ですとか誹謗中傷に対しての民事の損害賠償請求等をかなり専門的に扱っている弁護士等に聴くという形でもよろしいかと思いますし、件数的には警察が把握できていない実際の生の被害状況について分かるものが必要だなと思っております。質の方は、実際の被害者や被害を受けて御遺族になってしまった人などのヒアリングで足りるのだとは思っております。 ○橋爪座長 今、委員の御意見を伺っておりますと、具体的な資料というよりも、むしろ被害者の方やインターネット上の被害の相談を受け付けている団体の方から、被害の具体的な状況に関するヒアリングの実施に関する御要望と承りましたが、そのような理解でよろしいでしょうか。 ○柴田委員 インターネット関係を取り扱っている方のヒアリングもそうなんですけれども、それに先立って、資料的なものを出していただければなと思っております。 ○橋爪座長 分かりました。資料の可否につきましては、事務当局と相談したいと存じます。また、今私が申し上げたようなヒアリングの実施の可否につきましても、委員の皆様方の御意見を踏まえて、更に検討したく存じます。   そのほか、御意見はございますか。 ○笹倉委員 検討の進め方について意見がありますので、申し上げます。既に話題になっていますが、事務当局が御提案くださったような、ヒアリングを実施し、その結果をも踏まえつつ、検討事項の策定・整理をするという方針に賛成いたします。この会合の任務は、冒頭で御説明があったとおり、刑事法の観点からの議論をすることであり、この場に集まっている委員の多くも刑事法の専門家であるわけですが、この際、視野を広く取って検討することがこの会合の目的達成にとって必要かつ有益であると存じます。もとより、どのような方からどのようなお話をお伺いすべきかについて、今、この場で即座に確定することはできないと思いますが、おおよその方向性は既に事務当局がお示しくださっており、そのような方向性であれば、視野を広く取った検討の実現に資するところが大きいと存じますので、なるべく早期にヒアリングを実施した上で、その結果をも踏まえつつ、この検討会で議論すべき事項を考えるという御提案に賛成する次第です。 ○橋爪座長 ありがとうございます。   そのほか、御意見や御発言がございましたら、是非よろしくお願いいたします。   よろしいでしょうか。             (一同異議なし) ○橋爪座長 ありがとうございました。   皆様の御意見を伺いまして、今後の議論の進め方といたしましては、まずは侮辱罪をめぐる実情等に関するヒアリングを行った上で、今頂いた御意見やヒアリングの結果を踏まえて本検討会における検討事項を確定し、各検討事項について順次議論を行っていくという進め方にすることについて、おおむね御異論がないように拝察いたしました。   私としましては、次回以降ヒアリングを行った上で、ただいま申し上げたような形で議論を進めていければと考えておりますが、そのような方針でよろしいでしょうか。             (一同異議なし) ○橋爪座長 ありがとうございます。それでは、そのような進め方で進行させていただきます。   ヒアリングの対象者でございますが、これにつきましては、侮辱罪をめぐる問題について十分な御知見を有する方々にお願いしたいと考えておりますが、先方の御都合等も勘案する必要がございますので、本日頂いた御意見を踏まえながら、対象者の選定につきましては、私に御一任いただけますでしょうか。             (一同異議なし) ○橋爪座長 ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。   ヒアリングの対象者が決まりましたら、委員の皆様方には、事務当局を通じて御連絡を差し上げるようにいたします。   本日予定していた議事は、これにつきまして終了いたしました。   次回の日程につきましては、調整の上、なるべく早く確定させ、事務当局を通じて皆様にお知らせすることにしたいと存じます。   本日の会議の議事につきましては、特に公表に適さない内容に当たるものはなかったと思われますので、発言者名を明らかにした議事録を公表することにさせていただきたく存じます。また、配布資料につきましても公開することにしたいと存じますが、そのような取扱いでよろしいでしょうか。             (一同異議なし) ○橋爪座長 ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。   本日は、これで閉会といたします。どうもありがとうございました。 -了-