法制審議会 第203回会議 議事録 第1 日 時  令和7年9月18日(木)   自 午後2時02分                        至 午後2時40分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  (1)民法(遺言関係)部会における審議経過に関する報告について  (2)民法(成年後見等関係)部会における審議経過に関する報告について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○神渡司法法制課長 ただいまから、法制審議会第203回会議を開催いたします。   本日は、委員19名のうち、会議場における出席委員16名、ウェブ会議システムによる出席委員2名、計18名に御出席いただいておりますので、法制審議会令第7条に定められた定足数を満たしていることを御報告申し上げます。   開催に当たりまして、はじめに、法務大臣挨拶がございます。 ○鈴木法務大臣 法務大臣の鈴木馨祐でございます。会議の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。   委員及び幹事の皆様方におかれましては、大変御多用中のところ御出席を賜り、誠にありがとうございます。   本日は、部会からの報告案件が2件ございます。   まず、民法(遺言関係)部会におきましては、本年7月に中間試案が取りまとめられ、本年7月29日からパブリック・コメントの手続が行われているところでございます。その結果も踏まえ、更なる調査審議が進められるものと伺っております。   また、民法(成年後見等関係)部会におきましても、本年6月に中間試案が取りまとめられ、本年8月25日にパブリック・コメントの手続を終了したところでございます。その結果も踏まえ、更なる調査審議が進められるものと伺っております。   本日は、これまでの各部会の審議経過につきまして、小粥太郎部会長代理、山野目章夫部会長からそれぞれ御報告がございますので、委員の皆様方から御意見を伺いたいと考えております。   それでは、これらの議題について御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。 ○神渡司法法制課長 ここで報道関係者が退出いたしますので、しばらくお待ちください。           (報道関係者退室) ○神渡司法法制課長 まず事務局から、会議に当たっての留意事項を御案内いたします。   ウェブ会議システムにより御出席の委員におかれましては、御出席されていることを確認させていただくため、会議中は常にカメラをオンにしていただきますようお願いいたします。また、本日の会議は、ペーパーレス化により、タブレット端末による資料配布となっております。操作方法等につきまして御不明な点がある場合には、事務局に適宜お知らせください。   では、内野関係官、お願いいたします。 ○内野関係官 司法法制部長の内野でございます。どうぞよろしくお願いします。   本年9月17日をもちまして、前会長の大村敦志委員が退任されましたので、委員の皆様の互選に基づき法務大臣が指名するという方法によりまして、新会長を選任する必要がございます。   新会長選任までの間、仮議長を選出すべきかとは存じますが、特に御異議がございませんでしたら、私が進行を務めさせていただきたいと存じますが、よろしいでしょうか。   ありがとうございます。御異議もないようでございますので、それでは、私が仮議長を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。   まず、互選の手続に入ります前に、前回の会議以降、本日までの間における委員及び幹事の異動につきまして御紹介いたします。   詳細はお手元にお配りしております異動表のとおりでございますけれども、新たに就任された委員及び幹事が本日出席されておられますので、御紹介いたします。   早稲田大学法学学術院教授の山野目章夫委員が御就任されました。山野目委員、一言御挨拶をお願いいたします。 ○山野目委員 早稲田大学の山野目と申します。民法を専門にしております。どうぞよろしくお願いいたします。 ○内野関係官 続きまして、第二東京弁護士会弁護士の早稲田祐美子委員が御就任されました。早稲田委員、一言御挨拶をお願いいたします。 ○早稲田委員 第二東京弁護士会に所属しております弁護士の早稲田と申します。よろしくお願いいたします。 ○内野関係官 続きまして、最高裁判所事務総局総務局長の清藤健一幹事が御就任されました。清藤幹事、一言御挨拶をお願いいたします。 ○清藤幹事 最高裁の総務局長でございます清藤と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○内野関係官 続きまして、法務省刑事局長の佐藤淳幹事が御就任されました。佐藤幹事、一言御挨拶をお願いいたします。 ○佐藤幹事 法務省刑事局長の佐藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○内野関係官 続きまして、法務省民事局長の松井信憲幹事が御就任されました。松井幹事、一言御挨拶をお願いいたします。 ○松井幹事 松井でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○内野関係官 それでは、会長の選任の手続に入らせていただきます。   法制審議会令第4条第2項で、会長は審議会の委員の互選に基づき法務大臣が指名すると規定されておりますので、皆様には会長の互選をお願いしたいと存じます。   まず、御意見ございましたら、御発言をお願いいたします。 ○酒巻委員 酒巻でございます。   これまでの法制審議会委員としての御経歴からも、それから、私が長らく存じ上げている法律学の学識、御見識、そしてお人柄からいたしましても、佐伯仁志委員が会長にふさわしいと存じますので、推薦させていただきたいと思います。 ○内野関係官 ありがとうございます。   ほかに御意見はございますでしょうか。 ○山元委員 山元でございます。   ただいま酒巻委員がお話しされましたように、私も次期の会長には佐伯仁志委員が適任であると考えております。 ○内野関係官 ありがとうございます。   ただいま2名の委員から佐伯委員を御推薦いただきましたけれども、ほかに御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは、ほかに御意見がございませんようですので、会長には佐伯委員が互選されたということでよろしいでしょうか。   ありがとうございます。   それでは、ただいまの議事のとおり、会長には佐伯委員が互選されましたので、法務大臣に会長の御指名をお願いしたいと存じます。 ○鈴木法務大臣 どうもありがとうございます。   それでは、ただいま互選されました佐伯仁志委員を会長に指名いたします。どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○内野関係官 それでは、私の議事進行はここまでとさせていただきます。御協力どうもありがとうございました。 ○神渡司法法制課長 誠に恐縮ではございますが、大臣は公務のためここで退席させていただきます。 ○鈴木法務大臣 どうぞよろしくお願い申し上げます。           (法務大臣退室) ○神渡司法法制課長 それでは佐伯委員、恐縮でございますが、会長席へお移りいただけますでしょうか。 ○佐伯会長 一言御挨拶申し上げます。   ただいま御指名をいただきました佐伯でございます。微力ではございますが、皆様の御協力をいただき、職責を果たしてまいりたいと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。   それでは、法制審議会令第4条第4項で、会長に事故があるときは、あらかじめ会長の指名する委員がその職務を代行すると規定されておりますので、会長代理を指名させていただきたいと思います。   長期にわたり法制審議会で御活躍をいただいております、山本和彦委員を指名させていただきます。   山本委員、どうぞよろしくお願いいたします。 ○山本委員 よろしくお願いいたします。 ○佐伯会長 それでは、本日の議題に入りたいと思います。   先ほどの法務大臣挨拶にもございましたように、現在調査審議中の部会から、その審議状況等を報告していただきたいと思います。   本日は、民法(遺言関係)部会の部会長代理である小粥太郎臨時委員にお越しいただいているほか、民法(成年後見等関係)部会の部会長である山野目章夫委員も御出席ですので、各部会における審議状況等を御報告いただいた後、委員の皆様から御質問等をお伺いしたいと存じます。   なお、今回の議題の内容に鑑みまして、民事局の齊藤参事官、波多野参事官に関係官として審議に参加していただきたいと考えておりますが、よろしいでしょうか。   御異議もないようですので、齊藤参事官、波多野参事官に関係官として審議に参加していただくことといたします。   それでは、まず小粥部会長代理、報告者席まで御移動をお願いいたします。   それでは、民法(遺言関係)部会の御報告をお願いいたします。 ○小粥部会長代理 民法(遺言関係)部会の部会長代理を務めております小粥と申します。どうぞよろしくお願いいたします。   本日は大村部会長が所用により出席することができないため、私から民法(遺言関係)部会の中間報告といたしまして、部会におけるこれまでの調査審議の状況及び中間試案の概要について御報告させていただきます。   席上のお手元には、民1-1「民法(遺言関係)等の改正に関する中間試案」と題する資料、民1-2「民法(遺言関係)等の改正に関する中間試案(概要)」と題するカラー刷りの資料、そして民1-3「民法(遺言関係)等の改正に関する中間試案の補足説明」と題する資料をお配りしております。   本日は時間の関係もございますので、民1-2のカラー刷りの資料を用いて御報告させていただきます。   まず、資料の1枚目を御覧ください。   資料の1枚目の上段のとおり、遺言につきましては、遺言者の真意に基づくものであることを確保し、遺言の偽造や変造を防止するため厳格な方式が定められており、現行制度の下では、全文等を手書きで作成することを要する自筆証書遺言と、公証役場において公証人に作成してもらう公正証書遺言とが主に用いられております。   続いて、中段に進みまして、遺言制度につきましては、高齢化の進展などのため重要性が高まっており、近年のデジタル技術の進展、普及といった状況を踏まえた遺言の方式を検討する必要があるという状況にございます。そのような状況の下、関連する複数の政府方針も掲げられる中で、右側の審議の経過の欄のとおり、民法(遺言関係)部会では、令和6年4月からおおよそ月に1回のペースで調査審議が進められ、本年7月15日に開催された第11回会議において中間試案が取りまとめられました。この中間試案については、同月29日から9月23日までの間、パブリック・コメントの手続が行われているところでございます。   続きまして、中間試案の内容について御説明をいたします。   資料1枚目の一番下の段を御覧ください。   まず、全体像について御紹介いたしますと、左側の欄のとおり、現行の遺言の方式は存続させつつ、これに加えて新たな方式の遺言を創設することを検討するとともに、右側の欄のとおり、現行の普通の方式につきましても、自筆証書遺言等の方式要件を更に緩和することを検討し、また、特別な場面でのみ許される方式の遺言につきましても、選択肢を増やすべく見直しを検討しております。具体的な内容につきましては、資料2枚目以下で御説明を申し上げます。   資料を1枚おめくりいただきまして、2枚目でございます。   普通方式において、新たな方式の遺言を創設することに関しましては、新たな方式として考えられる案を提示しておりますほか、新たな遺言の方式における保管制度の在り方、日付、加除その他の変更、撤回についても併せて検討しております。また、新たな遺言の方式につきましては、現行の方式に加え、遺言の本文をパソコン、スマートフォン等により作成した電磁的記録又はプリントアウト等をした書面による方式を創設するものとし、四つの案を併記しつつ、これらの案のうちいずれか一つ、または複数の案を創設するとの案を提示しております。   まず、甲案でございますが、甲案は、遺言の本文を電磁的記録により作成し、遺言者による全文等の朗読を録音等により記録して遺言する方式を創設する案でございます。公的機関での保管を行わず、遺言者自身が電磁的記録を保管することを前提としております。   このうち、甲1案は、遺言が真意に基づくことを確保するため、証人の立会いを要件とする案、甲2案は、証人の立会いを要せず、これに相当する措置をデジタル技術を活用することにより手当てする案であります。甲2案については、民間事業者の提供するアプリケーションを利用することが想定されております。   これに対し、乙案は、遺言の本文を電磁的記録により作成し、公的機関で保管して遺言する方式を創設する案でございます。   丙案は、乙案とほぼ同様でございますが、遺言の本文を電磁的記録ではなく、プリントアウト等をした書面により作成することとする案でございます。   乙案又は丙案では、保管申請の際に、遺言の全文の朗読等をしなければならないこととし、この朗読等につきまして、公的機関に赴いて行うほか、一定の場合にウェブ会議の利用を可能とすることを想定しております。   また、仮に甲1案や甲2案とともに乙案を採用した場合には、当初は甲1案や甲2案の方式に従って作成した遺言であっても、乙案の方式要件に従って公的機関に保管することにより、乙案の遺言とすることができることを前提としております。   乙案又は丙案を採用した場合における保管制度の在り方につきましては、現行の自筆証書遺言書保管制度の取扱いと同様、遺言者死亡後、相続人等による遺言書の閲覧、証明書の請求を可能とする規律や、相続人等による遺言書の閲覧等があったときに、他の相続人等に通知する規律等を設けるとの考え方を提示しております。   日付につきましては、甲案による遺言の場合には、遺言が完成した日を遺言者が記録することとし、乙案及び丙案による遺言の場合には、遺言が完成した日、すなわち遺言を保管した日を公的機関が記録することとするとの考え方を提示しております。   加除その他の変更につきましては、遺言が成立した後、内容を変更する場合には、別の遺言によってしなければならないとする考え方を提示しており、撤回につきましては、甲案による遺言について、故意による遺言の破棄により撤回したものとみなすか否か、乙案及び丙案による遺言について、保管の申請の撤回により遺言を撤回したものとみなすか否かに関して、それぞれ二つの案を提示しております。   資料を1枚おめくりください。資料の3枚目でございます。   中間試案では、資料3枚目の上段のとおり、現行の自筆証書遺言等の方式要件について、更なる緩和をすべきかにつきましても検討しており、自筆証書遺言における自書を要しない範囲につきまして、財産目録について自書を要しないとする現行規定を維持し、自書を要しない範囲を拡大しない方向で検討するとの考え方を提示しております。   これに対し、自筆証書遺言における押印要件並びに秘密証書遺言における遺言者及び証人の押印要件につきましては、押印を不要とする案と、現行規定を維持し押印を引き続き必要とする案とを提示しております。   最後に、下段のとおり、特別方式の遺言に関しては、作成することができる場面についての見直しとして、一般隔絶地遺言につき、現行規定の条文の解釈を明文化すること、船舶遭難者遺言につき、航空機遭難や天災その他避けることのできない事変が発生した場合を含む文言とすることといった考え方を提示しております。   また、死亡危急時遺言及び船舶遭難者遺言については、デジタル技術を活用した新たな遺言の方式を追加する考え方を提示しており、現行規定では証人3人以上、または2人以上の対面での立会いを要するところ、録音及び録画を同時に行う方法により記録することにより、証人1人の立会いで遺言することができるとの案を、複数提示しております。   以上が、民法(遺言関係)部会において取りまとめられた中間試案の概要でございます。民法(遺言関係)部会では、パブリック・コメントの結果も踏まえまして、また皆様の御意見も十分に伺いながら、引き続き調査審議を継続したいと考えております。   私からの御報告は以上でございます。 ○佐伯会長 どうもありがとうございました。   ただいまの小粥部会長代理からの審議経過報告につきまして、御質問、御意見がございましたら、御発言をお願いいたします。 ○芳野委員 芳野でございます。   取りまとめられた、大村部会長、小粥部会長代理をはじめ御関係の皆様に敬意を表したいと存じます。   今回示された新たな遺言の方式は、どの案も証人や保管が要件とされており、遺言者の負担が大きいと考えます。議論の出発点を踏まえ、より簡便にデジタル化できる方式を提案できないか、引き続き御検討をお願いしたいと思います。   以上です。 ○佐伯会長 ありがとうございます。   ほかに御質問、御意見はございませんでしょうか。   それでは、小粥部会長代理、ありがとうございました。引き続き、部会において御審議のほど、よろしくお願いいたします。   続きまして、山野目部会長、報告者席まで御移動をお願いいたします。   それでは、民法(成年後見等関係)部会の御報告をお願いいたします。 ○山野目部会長 民法(成年後見等関係)部会の部会長を務めております山野目から、当部会の中間報告といたしまして、部会におけるこれまでの調査審議の状況及び中間試案の概要について、御報告をいたします。   初めに資料の確認をお願い申し上げます。   席上、皆様のお手元に資料番号民2-1といたしまして「民法(成年後見等関係)等の改正に関する中間試案」と題する資料、同じく資料番号民2-2といたしまして「民法(成年後見等関係)等の改正に関する中間試案(概要)」と題するカラー刷りの資料、さらに資料番号民2-3といたしまして「民法(成年後見等関係)等の改正に関する中間試案の補足説明」と題する資料の、合わせて3点をお配りしてございます。   本日は時間の制約がございますから、民2-2のカラー刷りの資料を用いて御報告を差し上げることにいたします。   民2-2のカラー刷りの資料の1枚目を御覧ください。   最初に簡単に、諮問に至る経緯として、成年後見制度に関する現状及び課題等を御説明いたします。   端的に申しますと、現行の成年後見制度は使いづらいから見直してほしいという利用者の指摘や、国際連合の障害者権利委員会の勧告という国際的な動向を踏まえて、見直しの検討が開始されたものでございます。   現行制度に対する指摘の主なものとして、資料中段に4点記載をいたしました。上から3点が法定後見制度に関するもの、一番下の1点が任意後見制度に関するものでございます。   1点目が「終わらない」問題でございまして、法定後見制度の利用を開始すると、判断能力が回復しない限り、利用をやめることができないとの指摘がされています。   2点目が「広すぎる」問題でございまして、成年後見人には包括的な取消権、代理権が付与され、本人の自己決定が必要以上に制限される場合があるとの指摘がされております。   3点目が「変えられない」問題でございまして、成年後見人等の選任後に、本人の状況が変化しても、成年後見人等の交代が実現しないとの指摘がされています。   4点目が任意後見制度に関するものです。この制度は本来、本人の判断能力が低下したときに、任意後見監督人の選任がされて、その監督を受けながら、任意後見人が事務を行う制度ですけれども、本人の判断能力が低下した後も、適切な時機に任意後見監督人の選任申立てがされないといった指摘がされております。   また、先ほど申し上げました障害者権利委員会の勧告につきましては、右下に記載をいたしました。令和4年10月に公表された第1回政府報告に対する総括所見において、民法改正に関する勧告がされているところでございます。   次に、調査審議の状況につきまして御説明をいたします。   資料を1枚おめくりください。   今ほど申し上げました状況を踏まえまして、令和6年2月に法務大臣の諮問及び部会の設置がされたことを受け、同年4月から部会において調査審議を開始し、本年5月までに20回にわたる会議を開催いたしました。そして、本年6月10日に開催された第21回会議において、全会一致で中間試案が取りまとめられました。   この中間試案については、同月25日から8月25日までの2か月間にわたりパブリック・コメントが実施されました。このパブリック・コメントにおきましては、各方面から合わせて300件を超える意見が提出されました。   次に、中間試案の内容につきまして御説明をいたします。   資料を1枚おめくりいただいて、3枚目を御覧ください。   現行制度に対する指摘のうち、制度利用をやめることができないとの指摘と、成年後見人の包括的な代理権等により、本人の自己決定が必要以上に制限されるとの指摘に関しましては、中間試案では主に、法定後見の開始の要件及び効果等、法定後見の終了、法定後見に関する期間という、三つの事項について検討がされています。   まず、法定後見の開始の要件及び効果等については、甲案、乙1案及び乙2案の3案を提案しております。   甲案は、現行の3類型の開始要件を基本的に維持しつつ、後見の対象者は、保佐、補助も利用できるようにするなどの修正を施そうとする案でございます。   乙1案及び乙2案は、いずれも現行の3類型を廃止し、制度利用による保護をする必要性を法定後見の開始の要件として加える案です。このうち、乙1案は、判断能力が不十分である者につき、原則として本人の同意を要件として、本人に必要な特定の事項について、成年後見人等に代理権、取消権を個別に付与するという案です。乙2案は、乙1案をベースとしつつ、乙1案の類型に加え、特に判断能力を欠く常況にある者について、法定された類型の行為を取り消すことができるものとするなどの、パッケージでの保護を用意することとするのですが、成年後見人等に与えられる権限の範囲は、現行の成年後見人の包括的な代理権よりも狭いものとする案です。   次に、法定後見の終了につきましては、開始において必要性を要件とした場合には、判断能力が回復したときでなくても、保護する必要がなくなったときに終了する案を提案しております。そして、必要がなくなった法定後見を終了するために、法定後見に関する期間を設けるかについて検討がされており、三つの案を提示しております。   甲案は期間を設けないこととする案ですが、乙1案及び乙2案は期間を設けることとする案でございます。   続いて、資料を1枚おめくりいただいて、資料4枚目を御覧ください。   成年後見人等の交代が実現しないとの指摘と関連して、本人の意思をより尊重すべきであるという考え方がございます。この考え方は、今回の制度見直しの全体に通じるものでございますが、特に成年後見人等の選任、成年後見人等の解任ないし交代、成年後見人等の職務及び義務という、四つの事項について検討がされております。   まず、成年後見人等の選任については、本人がそのニーズに合った保護を受けるためには、そもそも成年後見人等の選任の際に本人の意見を重視すべきであるとの指摘を踏まえ、そのことを明確にすることを検討する案を提案してございます。また、成年後見人等の解任ないし交代につきましては、交代が容易に実現しないとの指摘に対し、甲案として現行法の解任事由を維持する案、乙案として現行法の解任事由がない場合であっても、本人の利益のために特に必要がある場合を念頭に、新たな解任事由を設ける案を提案しております。   そして、成年後見人等の職務及び義務については、成年後見人等が本人の意思を尊重することの内容を明確にすることを検討する案を提案しております。   次に、任意後見制度については、適切な時機に任意後見監督人の選任申立てがされないとの指摘を受け、任意後見人の事務の監督を開始する裁判の申立権者の範囲を広げる検討をすることなどを提案しております。   その他の検討事項といたしまして、成年後見人等の報酬に関する規律がございます。こちらは、成年後見人等の報酬の支払基準が明らかでないとの指摘を踏まえ、家庭裁判所が相当な報酬を判断するに当たって、成年後見人等が行った事務の内容などが考慮要素であることを明確にする案を検討することを提案しております。   以上が、民法(成年後見等関係)部会の調査審議の状況及び部会において取りまとめられた中間試案の概要でございます。民法(成年後見等関係)部会におきましては、パブリック・コメントの結果も踏まえまして、また本日、総会委員の皆様から頂戴する御意見も十分に伺いながら、引き続き調査審議を継続してまいりたいと考えております。   私からの中間報告は以上でございます。 ○佐伯会長 どうもありがとうございました。   ただいまの山野目部会長からの審議経過報告につきまして、御質問、御意見がございましたら、御発言をお願いいたします。 ○芳野委員 芳野でございます。   山野目部会長をはじめ関係者の皆様には、様々な角度から多くの意見があった中、取りまとめていただき感謝を申し上げたいと思います。   本人の判断能力は、症状や周囲の環境などによっても変化し得るものです。引き続き、本人の意思が尊重され、個別の必要性に応じて柔軟な対応ができる枠組みとなるよう、検討を深めていただければと考えております。   以上です。 ○佐伯会長 ありがとうございます。   他に御意見等ございますでしょうか。 ○河村委員 中間試案の段階でございますが、先ほど御説明にもありましたように、国連の障害者権利委員会の勧告にどれだけ応えられるかということが、今回の改正でとても注目されているところです。その観点で、今後要綱を作っていく中で努力が傾けられていかなければならないと思っております。   ただ、毎回部会で法律の専門家の議論を聞かせていただく中で、法律を見直す上で考慮しなければならないことが本当に多々ある中で、どのように障害者権利委員会の勧告に応えていくのかということには、いろいろ難しい問題があるということを私も理解しております。それでも、今回の改正に当たっては、本人の自主性や意思を尊重することを何よりも優先させる、そういう制度に変われるように改正がなされることを望んでおりますし、私も引き続き部会に参加させていただいて、意見を述べていきたいと思います。   コメントでございます。   以上です。 ○佐伯会長 どうもありがとうございます。   ほかに御質問、御意見はございませんでしょうか。   それでは、山野目部会長、どうもありがとうございました。引き続き、部会において御審議のほど、よろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 承りました。 ○佐伯会長 これで本日の予定は終了となりますが、ほかに、この機会に御発言いただけることがございましたら、お願いいたします。   特にございませんでしょうか。   ほかに御発言もないようでございますので、本日はこれで終了といたします。   本日の会議における議事録の公開方法につきましては、議事の内容等に鑑みて、会長の私といたしましては、議事録の発言者名をすべて明らかにして公開することにしたいと思いますが、いかがでしょうか。   それでは、本日の会議における議事録につきましては、議事録の発言者名をすべて明らかにして公開することといたします。   なお、本日の会議の内容につきましては、後日、御発言をいただいた委員等の皆様に議事録等をメール等にて送付させていただき、御発言の内容を確認していただいた上で、法務省のウェブサイトに公開したいと思います。   最後に、事務局から何か事務連絡がございましたらお願いいたします。 ○神渡司法法制課長 事務局でございます。   次回の会議の開催予定について御案内申し上げます。   法制審議会は、2月及び9月に開催するのが通例となっております。次回の開催につきましても、現在のところは令和8年2月に御審議をお願いする予定でございます。具体的な日程につきましては、後日改めて御相談させていただきたいと存じます。   委員、幹事の皆様方におかれましては、御多忙とは存じますが、今後の御予定につき御配意いただけますよう、よろしくお願い申し上げます。 ○佐伯会長 どうもありがとうございました。   それでは、これで本日の会議を終了といたします。   本日はお忙しいところお集まりいただき、熱心な御議論をいただきまして誠にありがとうございました。 -了-