法制審議会 刑事法(再審関係)部会 第7回会議 議事録 第1 日 時  令和7年9月22日(月)   自 午後1時30分                        至 午後5時11分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  1 審議          ・「弁護人による援助」          ・「再審請求の審理に関するその他の手続規定」          ・「再審請求に係る決定に対する不服申立期間」         2 その他 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○今井幹事 ただいまから、法制審議会・刑事法(再審関係)部会第7回会議を開催いたします。 ○大澤部会長 本日は、御多忙のところ御出席くださり、誠にありがとうございます。   本日、寺田関係官は、オンライン形式により出席されています。また、川出委員は、オンライン形式により出席される予定ですが、所用のため遅れての出席と承っております。   それでは、まず、事務当局から、本日お配りした資料について説明してもらいます。 ○今井幹事 本日は、鴨志田委員御提出の資料として、「刑事再審弁護活動に対する援助に関する規程」、「死刑再審弁護活動に対する援助に関する規則」、「死刑再審以外の刑事再審弁護活動に対する援助に関する規則」、「受継に関する問題点」と題する資料をお配りしています。 ○大澤部会長 本日お配りした資料につきまして、御意見、御質問等がございましたら、挙手の上、どの資料に関するものであるかを明らかにした上で、御発言をお願いします。 ○鴨志田委員 本日提出した資料のうち「受継に関する問題点」という1枚ものの資料について、補足をさせていただきたいと存じます。   この表の中の大崎事件について、タイトルの部分に「被害者の甥による再審請求の経過」と書いてあるものですから、被害者の甥がどうして再審請求ができるのだという疑問を持たれた方がいらっしゃったとお聞きしております。説明不足で大変申し訳ございません。この事件は、主犯とされた方のほかに3人の共犯とされた方がいらっしゃいまして、その3人のうちの死体遺棄だけに関与していた者が「被害者の甥」に当たります。ですから、この「被害者の甥」というのは「有罪の言渡しを受けた者」本人として、第1次再審のときに再審請求を行っておりました。この方は請求審の途中で亡くなられ、正に受継に関する問題に関わる経過をたどっているということで、ここに記させていただいた次第です。この方につきましては、前回の会議の資料として「再審請求権者の範囲」の問題のところでも資料を出させていただきましたが、その中の大崎事件の項で「A」、「B」、「C」、「D」という形で表記をさせていただいている、その「D」に当たる方だということも併せて申し上げておきたいと思います。 ○大澤部会長 ほかに、資料につきまして何か御発言はございますでしょうか。   よろしいですか。それでは、早速、諮問事項の審議に入ってまいりたいと存じます。   本日は「論点整理(案)」「7 弁護人による援助」から審議を行い、「8 再審請求の審理に関するその他の手続規定」についての審議を行った後、進行の便宜上、「10 再審請求に係る決定に対する不服申立期間」についての審議を行うこととし、「9 再審請求又は再審開始決定があった場合の刑の執行停止」の論点については次回以降の会議で審議を行うという進め方にさせていただきたいと存じます。そのような進め方とさせていただくことにつきまして、よろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 それでは、まず「論点整理(案)」「7」のうち、「(1)再審請求審又はその準備段階における国選弁護制度を創設するか」について審議を行いたいと思います。この事項につきましては、おおむね25分間、午後2時ちょうどまでを目途に審議を行いたいと思います。御意見等がある方は挙手をお願いします。 ○田岡幹事 日弁連は、日弁連改正案440条の2項から7項として、再審請求審及びその準備段階における国選弁護人制度の創設を提案しておりますので、まず、その趣旨を御説明させていただきます。   刑事訴訟法は、再審請求の方式について定めを置いておりませんが、刑訴規則283条は、再審の請求をするには、その趣意書に原判決の謄本、証拠書類及び証拠物を添えて管轄裁判所に差し出さなければならないと定めておりますので、再審請求をしようとする者は、刑訴法435条各号の再審事由に該当する事実上及び法律上の主張を構成して趣意書を作成する必要があります。また、刑訴法435条6号の再審事由を主張するという場合には、新証拠となり得る証拠を収集し、これを趣意書に添付するのが原則であります。しかし、有罪判決の言渡しを受けた者は法的な知識が十分でない者が多いことに加えて、身体を拘束されている者、つまり受刑者又は死刑確定者が多いと言えますから、独力でこれらの活動を行うことは困難であります。   刑事訴訟法440条1項は弁護人選任権を定めておりますが、再審請求段階では国選弁護人制度はありませんので、貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときには弁護人の援助が受けられないということになりかねません。そこで、実質的に弁護人選任権を保障し、弁護人の援助を受ける権利を保障するためには、国選弁護制度を設ける必要があります。 さらに、身体を拘束されている者が保管記録や再審保存記録並びに裁判所不提出記録や証拠品の閲覧・謄写をする場面に関して言えば、特にその必要性が高いと言えるかと思います。つまり、身体を拘束されている者、すなわち受刑者又は死刑確定者がこれらの記録を閲覧・謄写しようとしますと、検察庁に自ら出向かなければなりませんが、そのようなことは現実には不可能でありますので、裁判所不提出記録や証拠品の閲覧・謄写をするには弁護人に依頼するしかありません。そもそも通常審の規律を見ますと、弁護人は訴訟記録や証拠物の閲覧・謄写権が認められておりますが、被告人は弁護人がいないときに限り公判調書の閲覧ができるにすぎないとされておりますし、公判前整理手続等に付された事件では弁護人の選任が必要的とされており、弁護人は開示証拠、つまり検察官から開示された証拠を閲覧・謄写できますが、被告人は閲覧ができるにすぎないとされております。さらに、被害者等の個人特定事項の秘匿措置が採られた事件では、被告人本人には被害者等の個人特定事項は知らされず、弁護人に対して被害者等の個人特定事項を知る機会を与えた上で、被告人に知らせてはならない旨の条件を付し又は被告人に知らせる時期若しくは方法を指定することができるとされております。   このように、通常審においても弁護人の存在が証拠開示や裁判所の訴訟記録の閲覧の際に前提とされているわけでございまして、再審請求審及びその準備段階においても裁判所不提出記録や証拠品の閲覧・謄写を円滑に実施しようとすれば、弁護人の存在が不可欠と言えます。第1回会議でも指摘しましたが、諮問事項第129号に「再審請求審における検察官の保管する裁判所不提出記録の弁護人による閲覧及び謄写に関する規律」と、正しく「弁護人による」という文言がありますのは、これは証拠開示、すなわち裁判所不提出記録の閲覧・謄写を制度化しようとすれば弁護人の存在が不可欠であるということを正しく御理解いただいたからこそ、このような諮問事項になっているものと理解しております。   諸外国の制度を見ますと、鴨志田委員提出資料の「諸外国の有罪確定後救済制度」の10番に整理されておりますが、ドイツでは1974年改正により、再審手続及びその申立て準備段階における国選弁護制度があると認識しております。フランスは資料に記載がありませんが、再審手続における国選弁護制度があると理解しております。また、アメリカは資料に記載がありませんが、死刑判決の無効又は取消しを求める場合について、その準備段階、つまり人身保護請求などの段階においても公的弁護制度があると認識しております。イギリス、カナダなどCCRC方式をとる国では、CCRCが申立ての支援をしたり、又は法律扶助協会、リーガルエイドエージェンシーの運営する法律扶助を利用することもできると理解しております。   その上で、日弁連が、鴨志田委員提出資料として提出しています刑事再審弁護活動に対する援助に関する規程と規則を制定いたしましたので、補足して御説明いたします。   日弁連は、徳島ラジオ商殺し事件以来、人権擁護活動の一環といたしまして再審請求の支援に取り組み、これまで36件の再審事件を支援し、死刑確定事件5件を含む20件で無罪判決が確定しておりますが、いかんせん支援の件数が限られているという限界がございました。そこで、日弁連は、令和5年12月8日臨時総会におきまして、この度配布しております「刑事再審弁護活動に対する援助に関する規程」を可決いたしまして、えん罪被害者救済のために刑事再審弁護活動を行う弁護士を対象に、その活動に対して援助金、実質的には弁護士費用を支給する、また実費を支給する、こういった援助制度を創設いたしました。その後、理事会におきまして、「死刑再審弁護活動に対する援助に関する規則」と「死刑再審以外の刑事再審弁護活動に対する援助に関する規則」の二つを制定いたしまして、令和6年4月1日から再審請求に取り組む弁護士に対して、援助金、実質的には弁護士費用と実費を援助するという制度を開始しております。   具体的な援助の内容は、規則を御覧いただきたいのですが、例えば弁護士1名の場合は22万円、2名の場合は44万円、3名の場合は66万円とされておりまして、弁護士1人当たりの実質的な報酬を22万円と考えております。また、費用は原則2万円ですけれども、2万円を超える疎明があれば上限5万円まで、通訳等は上限20万円まで、医師その他専門家による意見書作成費は上限30万円までを援助する仕組みとなっております。なお、こうした制度を設けましたのは、本来は国費によって国選弁護制度が創設されるべきであるけれども、現時点では国選弁護制度が存在しないので、将来的に国費による国選弁護制度を目指すために、日弁連ができることとして、このような援助制度を設けるという趣旨のものであると位置付けられておりますので、再審法改正によって国選弁護制度ができれば、これを発展的に解消するということが想定されているものでございます。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○宇藤委員 私からは、日本弁護士連合会改正案第440条第3項と第5項について質問をさせていただきます。   まず、第3項についてですが、死刑の言渡しを受けた者について再審の請求がされた場合において、再審請求をした者に弁護人がないときは、死刑の言渡しを受けた者が死亡している場合を除いて、一律に裁判所の職権で弁護人を付さなければならないというものになっております。仮にこの規定を前提としますと、死刑の言渡しを受けた者が再審請求をした場合、一律に必要的なものとして国選弁護人が付されることになります。死刑の言渡しを受けた者が再審請求をする場合には、より手厚い弁護が保障されるべきであるというお考えの下に提案されたものであるということは理解しますし、先ほどの田岡幹事からの説明からもよく分かりました。   しかしながら、現在の案のままであるとすれば、例えば、弁護人を選任するだけの資力がある場合や、再審請求が容れられないことが一見明白である場合、また、再審請求者が弁護人の選任を希望していない場合であっても、必ず国選弁護人が付されなければならないということになります。この点は、先ほど田岡幹事からも説明のあった日本弁護士連合会改正案の趣旨からすると、少なくともそのような者まで一律に救済を図ろうとするのは合理的でないと思われます。また、現在の国選弁護制度を眺める限り、なお詰めた検討が必要ではないだろうかと考えるところです。捜査段階を含めて、国選弁護人制度についての我が国の立法を眺めてみても、死刑という特定の刑罰を受けるという区切りで先のように一律に国選弁護人を付すること、また、必要的弁護の要否を判断したものはいまだありません。したがって、ただ死刑の言渡しを受けたことをもって日本弁護士連合会改正案のような制度を創設することには若干飛躍があるものと考えます。   次に、日本弁護士連合会改正案第440条第5項についてでございます。ここでは死刑の言渡しを受けた者について再審の請求をしようとする場合において、貧困等の理由により弁護人の選任をすることができないときは、請求により一律に再審請求の準備のために弁護人を付さなければならないとされております。仮にこの改正案を前提としますと、再審請求の準備さえあれば、必要な資力要件を満たす限りで一律に国選弁護人が付されるということになります。つまり、日本弁護士連合会改正案第440条第4項第1号や第2号に関わるような基準を満たすことも必要ありません。しかしながら、そうすると、例えば、再審請求の理由としておよそ通らないことが明らかな主張をしようとする場合にも、請求の準備であるとの理由で、国選弁護を必要としなければならないということになります。第4項との関係では手厚く保障されるべきものには含まれないとされた事例であるはずですが、死刑の言渡しを受けたことをもって区別されているということになりますが、ここのところがやや理由がはっきりしないのではないかと思います。その点について、意見書を読んでも余りよく分かりませんので、説明を頂けますと幸いです。 ○大澤部会長 御質問がありましたので、田岡幹事、お答えいただけますでしょうか。 ○田岡幹事 先ほど宇藤委員から御質問がありました点ですが、確かに、日弁連改正案は死刑と死刑以外の場合を区別しております。また、今回提出した鴨志田委員提出資料の規程及び規則でも、死刑の再審と死刑以外の再審を分けております。その理由は、「死刑再審弁護活動に対する援助に関する規則」の第1条に目的が書かれておりますけれども、「死刑判決が確定した者に対する権利擁護の緊急性及び刑罰としての不可逆性に鑑み」となっておりまして、死刑の場合には執行されますと取り返しが付かないという点で、ほかの刑罰とは異なる性質を有するものでありますから、死刑の再審に限っては特に弁護人を付する必要性が高いと考えたために、別立てにしているということでございます。   通常審は、まだ死刑が確定した段階ではありませんので、死刑が執行されるというおそれはないわけですけれども、確定後、再審を請求しようとする者にとりましては、いつ死刑が執行されるとも限らないという状態に置かれているわけですから、確定後の再審請求段階においては死刑と死刑以外の場合を区別することには合理性があるのではないかと考えております。 ○大澤部会長 ほかに御発言のある方は挙手をお願いします。 ○成瀬幹事 私は、まず議論の前提として、現行刑事訴訟法上の制度について確認しておきたいと思います。   被告人については、貧困等の事由により弁護人を選任することができないときは、その請求により国選弁護人が付されるほか、一定の場合には裁判所の職権により国選弁護人を付すことができるとされ、さらに、一定の事件を審理する場合には弁護人がなければ開廷できないとされています。   また、被疑者についても、勾留状が発せられている場合において、貧困等の事由により弁護人を選任することができないときは、その請求により国選弁護人が付されるほか、一定の場合には裁判官の職権により国選弁護人を付すことができるとされています。   このように、現行刑事訴訟法において、被告人と被疑者は、公費の負担で弁護人の援助を受けながら、防御活動又はその準備を行うための機会が十分に与えられています。   他方、再審手続は、こうした弁護人による援助を含む十分な手続保障と三審制の下で確定した有罪判決について、例外的に、なお事実認定の不当などがあった場合に、これを是正するための非常救済手続です。実務の運用状況を見ても、第1回会議の配布資料2の統計資料第4表及び第7表によれば、有罪判決の言渡しを受けた本人側が行った再審請求の大部分について再審請求棄却決定がされており、裁判所において事実の取調べを要するような本格的な審理が必要となる事件はごく一部にとどまっていることがうかがわれます。   このような再審手続の位置付けや再審請求審の実情に照らすと、再審請求をした者について、通常審における被告人・被疑者と同様に、公費の負担で弁護人を付す必要性が大きいとまで言うことは困難であると思います。   また、先ほど述べた再審請求審の実情に加え、同一の理由によるものでない限り何度でも再審請求をすることができ、実際に、同一の者が繰り返し再審請求を行う例も見られることからすれば、再審請求をした者に公費の負担で弁護人を付すことは、公費支出の適正という観点から、その相当性にも疑問があるように思われます。   なお、日本弁護士連合会改正案の第440条第2項ただし書では、再審請求審における国選弁護制度を適用する対象から、「再審の請求が不適法であるとき又は再審の請求に理由がないことが明らかなとき」を除外することとしていますが、このような限定をしたとしても、再審請求として一応の形式を整えさえすれば、国選弁護制度の対象となり、資力要件を満たす限り、個別の事情を問わず、一律に国選弁護人を付さなければならないこととなると考えられますので、やはり相当性に疑問が残ります。   以上のことからすれば、御提案のような仕組みとするとしても、再審請求審における国選弁護制度を設けることについては、慎重な検討が必要であると考えます。   なお、先ほどの田岡幹事の御発言の中で、刑事訴訟法第40条第1項との関係で国選弁護制度が必要であるという趣旨の御指摘もございましたので、その点について一言申し述べます。   田岡幹事が指摘されたように、同法第40条第1項においては、弁護人にのみ訴訟に関する書類及び証拠物の閲覧・謄写の権利が認められています。これは、被告人については書類の破棄その他の不法行為を行うおそれが極めて大きいと考えられる一方で、弁護人についてはそのようなおそれが一般的には生じないと考えられたためであり、合理性のある規律だと思います。   そして、この規律を再審請求審に適用すると、再審請求者には、検察官が裁判所に提出した公判不提出記録を閲覧・謄写する権利が認められないということになります。そのことを前提とした上で、弁護人のいない再審請求者が公判不提出記録について意見を述べる機会をどのように確保するかについては、更に検討してみたいと思います。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○後藤委員 まず、再審請求審における国選弁護人の関係ですが、中川参考人もおっしゃっておられたように、再審請求事件の中には法で定める再審理由のないことが明らかなもの、また、同一の理由に基づく請求を繰り返すもの、さらに、刑事訴訟規則所定の書類の添付がないものが多く含まれております。田岡幹事の御発言によれば、現状、手続違背で再審請求が棄却となっているものについて、国選弁護人が付いていれば手続を履践できたものがあるのではないかということでした。そのような可能性があること自体は否定しません。しかし、そうだとすると、逆に全ての者に弁護人を付す必要があるということになるのではないでしょうか。国の費用でそこまで弁護人を付すべきかについては、様々な御意見があろうかと思われます。また、再審請求準備段階における国選弁護人につきましては、事件係属前で再審請求の具体的理由も明らかでない中、裁判官が国選弁護人の必要性を判断することは一層困難でありますから、より問題は深刻になるものと思われます。 ○江口委員 今、再審請求準備段階における国選弁護人の話が出ましたので、付加して意見を申し上げます。   日本弁護士連合会改正案の第440条第4項には、第1号から第3号の要件を全て満たすときは再審請求準備のために弁護人を付さなければならないとされておりますが、実際にこれを判断する立場としてこれらの要件を考えた場合、その判断がかなり難しくなるのではないかと考えているところです。   具体的に申しますと、例えば、第1号の要件は「発見」という文言を用いていることからしますと、裁判官が、確定判決について、弁護人がいれば再審請求の理由を発見できる蓋然性があるかの判断を求められているように読めます。そうだとしますと、弁護人を付すかどうかの要件として、裁判官は、何が再審請求理由となるかも全く不明な段階で、再審請求理由があるものとすることができる事実や証拠を発見できる蓋然性を判断せねばならないということになり、かなり広範な内容についての判断が求められることとなります。また、その判断内容は、実質的には裁判官に確定判決について再審請求理由の萌芽となるようなものを探すことを求めるものともいえ、極めてその判断は困難なものとなるように思われます。結果としまして、再審請求に関する判断を複雑化・長期化させかねないものかと思われます。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○鴨志田委員 第4回の会議でも述べましたけれども、法は、再審開始要件としての新証拠の発見と提出義務を再審請求人の側に課している一方、請求人において最初から明白性のある証拠を出すということは極めて難しいのが現状です。このことは、第4回会議で平城委員が提出した司法研修所の共同研究の中でも、複数の現役の裁判官が指摘しているところでございます。一方、多くの事件で再審請求又は再審公判の段階で初めて捜査機関から開示された証拠が明白な新証拠として再審開始となった事例が現にございます。公判不提出記録や証拠の中に明白な新証拠が存在することが立法事実として明らかになっている以上、これらの証拠にアクセスする権利は、再審請求審の本質ともいうべき部分であると考えます。   現実には、刑務所で受刑中の、又は死刑囚として拘置されている再審請求人にとって、そのような再審請求の死命を制するともいうべき資料、証拠にアクセスすることは、現実的には弁護士の援助がなければ不可能だと思います。実際は市民団体などの支援があって初めて弁護士につながるというような事例が多く、再審請求をしようとしても、そもそもどうやって弁護士にたどり着けるのかというようなレベルで再審請求を断念する、また、結局、本人として全く知識もスキルもない中で、先ほど来おっしゃっているような、一見すると理由がない、同じことを繰り返し述べている、要件を満たしていないというようなレベルの再審請求にとどまらざるを得ない請求人がいることも事実だと思います。そのような中で、特に次の論点で出てくる本格的な審理を要しない事案について迅速審理を可能とする、これは簡単に言うとスクリーニングということだと思いますけれども、このスクリーニングという制度を入れるということを考えたとき、取り分けこの国選弁護制度、また、再審の準備段階での証拠へのアクセスということは避けては通れない問題になると思います。   この点、第4回会議で、川出委員は、この再審の準備段階における証拠開示ということについて、「その主体が仮に再審請求をしようとする者ということになると、要は有罪の言渡しを受けた者が全て当てはまってしまう、そのような主体に準備段階で証拠開示を認めるというのはいかがなものか」という趣旨の御発言もありました。しかし、一方で、その閲覧や謄写の必要性を判断するに当たって準備段階で弁護士が関与するという形をとれば、再審準備段階での証拠閲覧が可能な事件か否か、また、それが必要な事件かどうかということについても、弁護士による一定の判断ということができようかと思います。そのことが、その後の手続の適正な進行ということにもつながってくるのではないかと思います。   ここからは私見になりますが、再審準備段階で証拠や資料を閲覧・謄写するというところだけでも弁護士が関与するというニーズは非常に高いと思われますので、例えば台湾では、再審については弁護人という形をとらずに代理人という制度になっているのですけれども、そのような弁護士の関与の在り方というものを考えてみるというのも一つの方法ではないかと思う次第です。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○池田委員 私からは、再審請求の準備段階における国選弁護制度の創設について意見を申し上げたいと思います。   既に成瀬幹事から御指摘があったように、再審請求審における国選弁護制度を設けること自体に必要性・相当性の観点から慎重な検討が必要であるということが考えられますところ、請求の準備段階というのは、それ以前の段階ですので、その必要性・相当性をより一層慎重に検討する必要があるのだろうと考えております。   日本弁護士連合会改正案では、先ほど江口委員、後藤委員からも御指摘がありましたけれども、「事実又は証拠を発見できる蓋然性があること」とか、あるいは、「事実関係又は法律関係が複雑なため、弁護人の協力が必要であること」という要件が規定されています。ただ、既に御指摘のあったように、再審請求の前の段階では再審請求者の主張が判明していない上に、再審請求事由の該当性を証明する証拠の提出もない段階ですので、それらの要件の該当性を判断するための手掛かりがなく、判断が困難と言わざるを得ないのではないかと思われます。また、その点を措くとしましても、これらの要件の意義そのものが必ずしも明確ではないことから、個々の裁判体の解釈に委ねられて、安定的な運用が難しく、判断が大きく分かれ得ることとなって、弁護人選任の公平性を欠く事態が生じるおそれもあると考えられます。   以上のことからしますと、再審請求の準備段階における国選弁護制度を設けることについては慎重な検討が必要であると考えられます。   また、死刑の言渡しを受けた者については、更に広範に一律の選任を予定するものがあるわけですが、既に宇藤委員から御指摘があったように、主張の内容や準備状況の如何を問わず、資力要件さえ満たせば選任が認められるという、余りに広範な選任を認める規定になっていることの合理性には疑問の余地があるのではないかと私も考えております。 ○大澤部会長 おおむね予定した時間枠には来ておりますけれども、更に御発言を御希望の方はおられますでしょうか。 ○村山委員 国選弁護人、確かに広範にすぎると、どうしてこういった請求人にまで付ける必要があったのかという事例が生じ得るということは、私も多分そういうことが起きるのだろうと思っています。ただ、逆に言えば、弁護人が付いていないで再審開始になった例というのがあるのでしょうか。逆に言うと、請求人本人で請求したという事例で本当に開始にまで至るという例は、私の知っている限り、ないのですけれども、それだけ難しい。証拠を提出しなさいと言われても、アクセスが全然できないわけですよね、現に受刑中であれば。そういうことからすると、何らかの形で弁護人の援助を受けられなければ、どんなにその後の手続にきちんと進めば開始になるような請求人であっても、実際はその開始のゴールまでたどり着けない、そういう事実があることは間違いないと思います。   ですから、そこの点で、どういう形にするかというのは、確かに日弁連の案で、死刑の場合は非常に広範でありますし、それから準備段階の要件というのは、確かに分からないではないかと言われれば、その後に書いてある要件というのは、ほとんどうのみにするかしないと付けられないということにもなりかねないという意味で、多少そういうところでは私自身は疑問がないわけではないのですけれども、一切必要がないのだと言って切ってしまうということについては非常に疑問があるということだけは申し上げたいと思います。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますか。時間枠を超えておりますので、なるべく簡潔にお願いします。 ○田岡幹事 先ほど村山委員からも、本人請求で果たして再審開始が認められた事例はあるのかという話がありました。御承知のとおり、財田川事件の第2次再審請求審は、御本人が裁判所に宛てた書簡を契機に再審手続が開始され、裁判所から照会状を送ったところ、それに対する回答をもって再審の申立てがあったと扱った事件であります。第2次再審請求審の決定は、無罪を訴えている請求人に対し、事実取調べの間、弁護人の関与もなかったことを考慮して、十数年にわたる審理を行ったが、力及ばず遂に真相解明というにはほど遠いことに終わった次第であるとして再審請求を棄却しました。その結果どうなったかといいますと、再審請求審で裁判長を務めた方が特別抗告審では弁護人となって、自ら再審請求を遂行するということが起きました。つまり、国選弁護制度がないために弁護人がなくて、真相解明できないということの責任を感じた裁判官自らが弁護人を買って出るといったことまで起こったわけでございます。その結果、歴史的な財田川決定が生まれました。   さて、その上で、準備段階の国選弁護制度でありますけれども、準備段階で弁護人がいないとどうなるかということを想像していただきたいのですが、先ほども言いましたように、御本人が再審請求という形でお手紙のようなものを出してきたとしても、それだけでは当然不適法なものである場合もありますし、再審理由の有無が判然としない場合もあるわけですから、裁判所としても取扱いに非常に困ったことになります。証拠開示、いわゆる裁判所不提出記録の閲覧・謄写を受けて初めて適法な再審理由が構成されるということになりますと、結局のところ、再審請求審がスムーズに始まらないということになります。本来であれば、再審請求段階で新証拠を添付して請求すべきものであるのに、御本人が裁判所不提出記録を閲覧・謄写できないために、御本人請求の書類が届いた後に弁護人を選任して、裁判所不提出記録の閲覧・謄写を認めて、その上で、改めて再審理由を構成して審理がようやく始まると、こういった経過をたどることになると想像されます。   本来であれば、再審請求前に弁護人を選任して、裁判所不提出記録の閲覧・謄写を認めた上で、不適法なものや明らかに理由がないものはむしろ再審請求前に思いとどまるべきでありまして、そういった弁護人のスクリーニングを経て、なお再審理由があると判断されたもののみが再審請求されて、再審請求手続に乗るというのが望ましい在り方ではないかと考えます。 ○大澤部会長 まだ御意見等のある方もおられるかとも思いますが、時間も限られておりますので、この事項についての審議はひとまずここまでということにさせていただきたいと存じますが、よろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 それでは、次に「論点整理(案)」「7」のうち「(2)再審請求審又はその準備段階における弁護人等との接見交通に関する規律を設けるか」について審議を行いたいと思います。この事項につきましては、おおむね20分間、午後2時25分までを目途に審議を行いたいと思います。御意見等がある方は挙手をお願いします。 ○田岡幹事 日弁連は、日弁連改正案440条8項において、刑訴法39条を準用するという提案をしておりますので、この趣旨について御説明をいたします。   御承知のとおり、刑訴法39条は、身体の拘束を受けている被告人又は被疑者について、弁護人又は弁護人になろうとする者との接見、書類若しくは物の授受を行う権利を保障しているわけでありますけれども、主体が被告人又は被疑者となっておりまして、再審請求人や再審請求をしようとする者、すなわち再審請求の準備段階における被収容者と弁護人又は弁護人になろうとする者との接見及び書類の授受に関して、秘密交通権の保障が及ばないと解釈をされております。そのため、受刑者は刑事収容施設法112条や137条、死刑確定者は刑事収容施設法の121条や139条などによって、面会や書類の授受、つまり信書の発受が規律されているために、自由に秘密に弁護人又は弁護人になろうとする者と連絡を取ることができないという状況に置かれております。再審請求人には弁護人選任権が保障されておりまして、再審請求するに当たっては弁護人の援助を受けることが不可欠でありますが、その弁護人に依頼する最初の段階である信書の発信についてすら、弁護人を依頼しようとしても信書の発信が差し止められてしまったり、あるいは面会をしようとしてもその面会に立会人が付いてしまったりしますと、実質的には弁護人依頼権あるいは弁護の援助を受ける権利が保障されていないのと同じでありますから、秘密交通権の保障が認められるべきであります。   まず面会、すなわち接見に関して言いますと、死刑確定者の場合に特に問題になるわけですが、刑事収容施設法121条は原則として立会いをするとしておりまして、例外的に正当な利益がある場合に立会いを省略することができるとしております。平成25年12月10日の最高裁判所第三小法廷判決は、死刑確定者又は再審請求弁護人が再審請求に向けた打合せをするために秘密面会の申出をした場合に、刑事施設長がこれを許さないとした措置について、特段の事情がない限り、裁量権の範囲を逸脱、濫用して違法という判断を示しました。これは、刑事収容施設法121条ただし書の正当な利益の保護のために適当と認める事情があって相当と認める場合に当たるという判断であります。   しかし、この特段の事情という文言があるために、現実の運用がどうなっているかと言いますと、例えば、東京地裁平成30年9月19日判決は、弁護人に対する信書の発信不許可処分や面会不許可処分についての国家賠償請求事件と、再審請求事件の打合せを目的とする弁護士との面会について、刑事収容施設法121条に基づき職員を立ち会わせたということについて、さらに、行政事件訴訟法37条の5第2項に基づく仮の差止めの決定までなされたのに、その効力が生じていることを知らずに、東京拘置所長がそれに従わず職員を立ち会わせたことが重大な過失があるとして違法とされた事例であります。こうした事例があることに鑑みますと、秘密交通権の保障が及ばないという解釈を維持したままでは、死刑確定者が弁護人又は弁護人となろうとする者との面会を実施することが困難でありますので、秘密交通権の保障を及ぼす必要があると言えます。   更に問題となりますのが信書の発信であります。こちらは、刑事収容施設法139条の1項2号の訴訟の遂行その他法律上、業務上の重要な利害に関する業務処理のための信書の発信は許可するとされておりますが、ちょうど先週の金曜日、9月19日に報道がありましたので、皆様御承知かもしれませんが、大阪高裁が寝屋川中1男女殺害事件において、死刑確定者が弁護士に宛てて再審請求の弁護人を務めてほしいなどと書いた書簡を発信しようとしたところ、その部分を削除又は黒塗りされた措置について、違法として賠償が認められた事例がございます。そのために、弁護士は、死刑確定者が再審請求を希望していることを知らなかったということでございます。   このように、死刑確定者が再審請求しようとしましても、再審請求の弁護人を務めてほしいといった信書の発信すら検閲された上に削除又は黒塗りされ、その上、仮に弁護士との面会が実現したとしても、なお立会いが付くといった状況では、弁護人選任権や弁護人の援助を受ける権利が実質的には保障されていないのと同じであるということが言えますので、通常審における被疑者・被告人と弁護人又は弁護人になろうとする者との接見及び書類の授受と同様に秘密交通権の保障を及ぼす必要があるものと考えます。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○池田委員 この点に関しては、先ほど田岡幹事から平成25年12月10日の最高裁判決への言及があった上で、しかし、運用においては十分な規律がなされていないという御意見があったと承知しております。そこで、私の意見を述べる前提として、事務当局に伺いたいことがあります。   再審請求をした又はしようとする受刑者あるいは死刑確定者と弁護人又は弁護人となろうとする者との再審請求審又はその準備段階における刑事施設での面会への立会い等は、平成25年12月10日最高裁判決を踏まえた運用となっているのか、具体的にどのような運用がなされているのか、お伺いできればと思います。 ○今井幹事 ただいまの池田委員の御質問にお答えいたします。矯正当局によれば、御指摘の点につきましては、次のとおりであると承知しております。   受刑者・死刑確定者の面会への刑事施設職員の立会い等につきましては、刑事収容施設法第112条及び第121条が規定しており、再審請求をした又はしようとする受刑者・死刑確定者と弁護人又は弁護人となろうとする者との再審請求審又はその準備段階における面会への立会い等についても、これらの規定により規律されますところ、その解釈、運用としましては、平成25年12月10日最高裁判決を踏まえた上で、法務大臣訓令である「被収容者の外部交通に関する訓令」、法務省矯正局長依命通達である「被収容者の外部交通に関する訓令の運用について」、法務省矯正局成人矯正課長通知である「死刑確定者と再審請求に係る弁護士との面会における立会い等について」にのっとり、適切に行われていると承知しております。   具体的に申し上げますと、まず、再審請求をした又はしようとする死刑確定者と弁護人又は弁護人となろうとする者との再審請求審又はその準備段階における刑事施設での面会につきましては、先ほど申し上げた最高裁判決を踏まえ、かつ、法務大臣訓令等にのっとり、再審請求に係る弁護人選任届が示されていること、又は弁護人選任届が示されていない場合であっても死刑確定者が弁護人に選任しようとする意向を有していることが明らかであること、再審請求に関する面会の申出であること、死刑確定者から刑事施設職員の立会い等のない面会の申出がなされていること、又は弁護人から刑事施設職員の立会い等のない面会の申出がなされている場合であって、死刑確定者が刑事施設職員の立会い等を求めているといった事情がないこと、刑事施設職員の立会い等を省略することにより刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれが認められ、又は死刑確定者の心情の安定を把握する必要性が高いと認められるなどの特段の事情がないことといった条件を満たす場合には、当該面会への刑事施設職員の立会い等は行わないという運用が行われていると承知しております。   また、再審請求をした又はしようとする受刑者と弁護人又は弁護人となろうとする者との再審請求審又はその準備段階における刑事施設での面会につきましても、先ほど申し上げました最高裁判決や法務大臣訓令等の趣旨を踏まえた運用が行われているものと承知しております。 ○池田委員 ただいまのお答えを踏まえて私の意見を申し上げたいと思います。   既に御指摘があるように、刑事収容施設法第112条は、受刑者の面会について、刑事施設の長は、必要があると認める場合には職員に立会い等をさせることができるとした上で、例外的に、自己が受けた処遇に関し弁護士と面会する場合等には、刑事施設の規律及び秩序の維持を害する結果を生ずるおそれがあると認めるべき特別の事情がある場合を除き、立会い等をさせることができない旨を規定しております。また、同法第121条は、死刑確定者の面会について、刑事施設の長は、職員に立会い等をさせるものとした上で、例外的に死刑確定者の訴訟の準備その他の正当な利益の保護のため立会い等をさせないことを適当とする事情がある場合において、相当と認めるときは、立会い等をさせない旨を規定しています。   これらの刑事収容施設法の面会に関する規定は、受刑者・死刑確定者については、その収容目的に照らし、外部交通が必要かつ合理的な範囲内で制限されることを前提に、受刑者・死刑確定者の面会について、一般に刑事施設の規律及び秩序を害する行為や逃走その他収容目的を阻害する行為を防止するとともに、面会の状況から知られることとなる事情を受刑者や死刑確定者に対する適切な処遇の実施の資料とする必要がある上、特に、死刑確定者は、自己の死を待つという特殊な状況にあり、容易に、極めて大きい精神的苦悩等に陥ることがあると考えられることから、その心情やこれに影響を与える事情を把握する必要性が大きいため、面会に立会いを設ける必要性が大きいと考えられる一方で、受刑者及び死刑確定者共に、プライバシーにわたる事項など面会の際の発言内容を刑事施設の職員に知られない利益もあると考えられ、特に、受刑者が自己が受けた処分に関して救済を求めるために弁護士と面会する場合等には、職員に内容を知られない利益に配慮すべき必要性が大きいと考えることを考慮したものと考えられます。   その上で、先ほどから指摘がある平成25年12月10日の最高裁判決は、死刑確定者又は再審請求弁護人が再審請求に向けた打合せをするために秘密面会の申出をした場合に、これを許さない刑事施設の長の措置は、秘密面会により刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあると認められ、又は死刑受刑者の面会についての意向を踏まえ、その心情の安定を把握する必要性が高いと認められるなどの特段の事情がない限り、裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用して死刑確定者の秘密面会をする利益を侵害するだけではなく、再審請求弁護人の固有の秘密面会をする利益をも侵害するものとして、国家賠償法第1条第1項の適用上違法となると判示をしております。   この判決に加えて、刑事訴訟法第440条が再審請求をする者に弁護人選任権を保障している趣旨に鑑みると、同判決の趣旨は、再審請求をした又はしようとする受刑者と弁護人又は弁護人となろうとする者との面会についても妥当し、そうした面会については、「自己が受けた処遇に関し」弁護士と面会する場合と同様に、刑事施設の長は、特別の事情がある場合を除いて、職員に内容を知られない秘密面会の利益を保護すべき職務上の法的義務を負うものと解されます。   以上のことを踏まえますと、先ほど言及した刑事収容施設法第112条、第121条は、それ自体として、既に受刑者・死刑確定者の面会について、それらの者の利益と刑事施設の規律・秩序の維持の要請等の双方を考慮した上で、適切な範囲で秘密面会を認める合理的な内容の規律となっているものと思われます。また、先ほどの事務当局のお答えによりますと、一般に、再審請求をした又はしようとする受刑者又は死刑確定者と弁護人又は弁護人となろうとする者との刑事施設での面会について、刑事施設の職員の立会い等を行うか否かについて、運用上も、平成25年判決の趣旨が適切に配慮されて取り扱われているものと理解することが可能であると考えます。したがって、これに加えて、別途、再審請求をした又はしようとする受刑者・死刑確定者の面会に関する規律を設ける必要性は認められないと考えられます。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○成瀬幹事 今、池田委員が述べられたとおり、刑事収容施設法第112条及び第121条は、刑事施設の長が、再審請求をした又はしようとする受刑者・死刑確定者と弁護人又は弁護人となろうとする者との秘密面会の利益を十分に尊重しつつ、他方で、刑事施設の規律及び秩序の維持、矯正処遇の適切な実施、死刑確定者の心情把握の必要性をも考慮した上で、面会に立会い等をさせるか否かを適切に判断することを可能にする規律となっており、私も合理的であると考えます。   これに対して、先ほどの田岡幹事の御提案、すなわち、再審請求審及びその準備段階に刑事訴訟法第39条第1項をそのまま準用するという御提案は、受刑者又は死刑確定者が再審請求をするか、又は、その準備をしていると主張するだけで、刑事施設の規律及び秩序の維持、受刑者の矯正処遇の適切な実施、死刑確定者の心情把握の観点から支障があるとしても、一律に弁護人又は弁護人となろうとする者との秘密面会を認めるものであり、刑事施設の規律・秩序の維持の要請や処遇上の必要性をおよそ考慮しないものとなっています。   それゆえ、御提案のような規律を設けることは、受刑者・死刑確定者の秘密面会の利益を十分に尊重しつつ、他方で、秘密面会によって生じ得る施設上・処遇上の支障をも考慮して秘密面会の許否を決することとしている刑事収容施設法の考え方や、池田委員や田岡幹事から御紹介があった平成25年最高裁判例の趣旨と整合せず、相当でないと考えます。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○村山委員 平成25年の判例を踏まえてやっているということであれば、なぜ先ほど田岡幹事が紹介したような事例が起きるのでしょうか。現に寝屋川の死刑確定者の事件は正に今起きていた事件なのですよね。ということは、やはりその趣旨を踏まえたといっても、その徹底の度合いは施設側の解釈によるということで、客観的に見れば不適切な運用がなされているということが現にあったということだと思います。   それからもう1点、先ほど来、25年の判決の趣旨、若しくは成瀬幹事も、秘密面会を一律に認めると、その施設収容上いろいろと不都合が起きるのだとおっしゃっていますけれども、相手は弁護士さんですけれども、一体具体的にどういう不都合が生じるのでしょうか。要するに受刑者・死刑確定者の心情にどういう不安をもたらすようなことが想定されるのでしょうか。要は、そういった理由があるという大まかな危惧だけを述べているだけであって、実際はそういうことは私は起きないのではないかと思います。そういうことを理由に39条1項の適用、準用を否定するというのは、基本的にはありもしない危険を大きく言って、認めないという発想につながっているのではないかと思います。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。   よろしいですか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 それでは、ほぼ予定した時間枠にも来ておりますので、この論点につきましてはここまでということにさせていただき、次に、「論点整理(案)」の「8」に入ります。   この論点につきましては、「(1)本格的な審理を要しない事案について、迅速な処理を可能とする規律を設けるか」について審議を行った後、「(2)期日指定に関する規律を設けるか」、「(3)請求理由についての陳述の機会を付与することとするか」、及び「(6)事実の取調べ後の意見陳述の機会を付与することとするか」については関連する事柄であることから、まとめて審議を行い、その後、「(4)請求理由の追加・変更に関する規律を設けるか」以降について、先行して議論した「(6)」を除いて番号順に審議を行うというような進め方にさせていただきたいと存じます。そのような進め方でよろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 それでは、まず、「論点整理(案)」「8」のうち「(1)本格的な審理を要しない事案について、迅速な処理を可能とする規律を設けるか」について審議を行いたいと思います。この事項につきましては、おおむね20分間、午後2時45分頃までを目途に審議を行いたいと思います。御意見等がある方は挙手をお願いします。 ○成瀬幹事 現行刑事訴訟法において、再審請求審は、通常審と比べて手続規定が少ないところ、これは、再審請求審が既に当事者主義に基づく三審制の手続を経た事件に関する非常救済手段であるとともに、濫請求的な態様のものも多いことから、一律に手続を法定する必要がないことを考慮した結果であるとされています。   もっとも、第4回会議における平城委員提出資料によると、近時、裁判実務においては、再審請求審における手続規定が少ないことがむしろ審理運営上の困難を生じさせている旨の指摘がなされているようです。   このような状況を踏まえると、裁判所が再審請求を受けた際に行うべきことを法律において適切な範囲で定めて、裁判所による審理運営に一定の指針を与えることにより、再審請求手続の円滑化・迅速化を図ることが望ましいと考えます。   その上で、配布資料2の統計資料第6表を見ると、第1回会議において川出委員からも御指摘があったように、再審請求については、実務上、法令上の方式に違反するものや請求権の消滅後にされるもの、再審請求理由の主張がないものや主張自体失当であるものといった、請求が容れられないことが一見して明白なものが相当数を占めていることが分かります。他方で、例えば、身代わり犯人であったことが判明したことを理由として検察官が再審請求をする場合など、理由があることが一見して明白な再審の請求も存在し得ると考えられます。   こうしたことに鑑みると、再審請求手続の円滑化・迅速化を図る観点から、裁判所が再審請求に係る基本的な資料の確認・検討を行った上で、直ちに終局決定をすべき事案と、再審請求事由の有無についての審理を要する事案を、早期に、かつ、的確に選別し、後者の事案について審理を行う仕組みを設けることが考えられるでしょう。   ここからは飽くまで現時点でのイメージですが、例えば、以下のような仕組みを設けることが考えられるのではないでしょうか。   まず、再審請求を受けた裁判所は、再審請求に係る基本的な資料、具体的には、刑事訴訟規則第283条において再審の請求をする際に提出が義務付けられている趣意書並びにそれに添えられた原判決の謄本、証拠書類及び証拠物、そして、原判決の確定記録等を確認・検討する。   その上で、再審請求について、法令上の方式違反である場合、請求権消滅後の請求である場合、主張自体失当である場合、及び、請求に理由がないと認められる場合については、それ以上事実関係や法律関係の検討を要しないことから、その段階で、直ちに再審請求を棄却する決定をする。   他方、これらの書類や記録等の確認・検討によって請求に理由があると認められる場合については、この段階で、直ちに再審開始の決定をする。   そして、これら二つの場合以外については、再審請求に理由があるか否かを判断するために審理を行うこととする。   以上のような仕組みをイメージしています。   その上で、再審請求者、弁護人及び検察官からの意見聴取や再審請求理由についての事実の取調べ等については、再審の手続の円滑化・効率化を図る観点から、再審請求に理由があるか否かを判断するために審理を行う場合、すなわち、先ほど申し上げた仕組みのうち、3番目の場合にのみ行うことができるとすることが考えられます。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○恒光幹事 まず、前提としまして、現在においても不適法な請求又は明らかに理由のない請求につきましては、短い期間で決定で棄却しているところであり、これらの事件の処理に長期間を要しているという事実はないと考えております。また、先日のヒアリングで中川参考人もおっしゃっていたように、方式違背がある場合には直ちに棄却するのではなく、補正を促すという実務の運用がとられているところでございます。そうしますと、例えば、あえて河井私案第8条のような規定を設ける意味や理由につきましては分かりかねるところでありまして、現時点では、意見の言いようがないかなと考えております。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○池田委員 先ほどの成瀬幹事の御発言の中にもありましたけれども、請求の方式についての刑事訴訟規則第283条の規定がありますところ、これに関連して規定を整備するということを提案したいという趣旨で意見を申し上げたいと思います。   この方式については、刑事訴訟規則第283条は、再審請求をするには、その趣意書に原判決の謄本、証拠書類及び証拠物を添えて、これを管轄裁判所に差し出さなければならないということを定めています。ただ、同条にいう「趣意書」には、法の定める再審理由に当たる具体的事実を主張することが必要であると解されているものの、その旨は明文では定められていません。これに対して、同じく趣意書であっても、控訴趣意書や上告趣意書については、刑事訴訟法において裁判所に差し出すことが規定されているほか、それに記載すべき理由や添付書類についても規定されているなど、その方式が法律で規定されています。また、実務上、再審請求のうち相当数のものが法令上の方式違反を理由に棄却されており、その大半は、刑事訴訟規則第283条違反によるものであるとされています。こうしたことからしますと、再審請求に関する手続規定の整備の一環として、この機会に再審請求の方式に関する規律を法律上明確化するということも検討されてよいのではないかと考えております。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○鴨志田委員 今御提案のあった、いわゆるスクリーニング的な規定を設けるということについては、限りある司法資源を本当に充実した審理が必要な事案に投入すべきという意味では異存のないところです。しかし、そのような、言わばふるいに掛けるような前提を設けるということは、本来であれば救済すべき事案がその段階で拾われずに落とされてしまうというリスクが付きものであるということには留意が必要だと思います。先ほど田岡幹事の方から財田川事件の実例が紹介されました。財田川事件があのような経過をたどったということを考えると、当初の申立てというものがいわゆるこのようなスクリーニング制度を設けたときに、ふるいに掛からずに残るのだろうかというところに関しては、非常に心もとないと思っております。   先ほど来述べているとおり、法は、再審請求人に明白な新証拠の提出という極めて重い負担を課しています。そして、その証拠は、しばしば捜査機関の保管する公判不提出記録や証拠物中に存在した事例が明らかになっています。したがって、その新証拠が添付できない、また理由がきちんと述べられないという事例の中には、このような公判不提出記録にアクセスができないまま、自分は無実だということを言いたいがために、弁護人の援助も得られず、やむなくそのような申立てをしている者が入っていると考えるのが普通だと思います。したがって、スクリーニングということを考える場合には、これまでに検討した国選弁護制度や再審請求の準備段階での公判不提出記録、証拠物へのアクセスということがセットで考えられなければならないと思います。片方だけが認められる、認められないという関係ではなくて、この両者を機能的にバランスよく整えていくということが、必要な事件に充実した審理を行うということにもつながっていくのではないかと思います。   それからもう1点、先ほど補正の機会というのが出てきましたけれども、やはり、例えば、証拠の添付がない、それから、よくあるのが確定判決書の謄本の添付がないというところで手続要件に違背するというパターンがありますけれども、取り分け確定判決書の謄本の添付というのが現在のデジタル化された時代の中で要件として絶対必要なのかということも別途考えられると思いますし、少なくとも補正の機会というものは必ず与えられなければならないと思います。この点、台湾の2019年の改正刑訴法の429条に、「ただし原判決の謄本を提出することができないことにつき正当な理由があることを疎明したときは、裁判所に対して再審請求と同時に原判決の謄本を求めることができる」というふうに、再審請求人が判決書の謄本を用意できない場合の救済規定というのが定められています。   最後に、私が提出した河井私案の8条、これがやはりスクリーニングに関する規定ということになるわけですけれども、ここでは、正に「再審の請求が法令上の方式に違反し、又は再審請求の趣意が趣意書の記載並びにこれに添附された書類及び証拠物に照らして明らかに刑事訴訟法第435条第6号に規定する事由に該当しないときは、裁判所は、決定でこれを棄却しなければならない。」としつつ、「ただし、法令上の方式違反が補正できるものであるときは、裁判所は、相当な期間を定めた上で、補正を命じることができる。」とただし書で述べているところでございます。なお、この河井私案については、当初、6号再審の特例という形で作成をした経緯があることから、その範ちゅうとしては、6号再審が想定されているということも付け加えておきたいと思います。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○田岡幹事 先ほど、第1回会議の配布資料2の統計資料に基づいて、再審請求の中には、不適法なものや明らかに理由がないものがあるのではないかという指摘がありました。確かに、第6表-5、例えば、令和5年の223件を見ますと、手続違反が75件ありまして、うち刑訴規則283条違反が56件とされています。この283条違反とされたものは、原判決謄本の添付がないか又は新証拠の添付がないというものですが、新証拠自体は、趣意書に添付しなくても、そういったものがあるということを指摘すれば足りるわけですから、多くは原判決謄本が添付されていないものではないかと想像されます。   しかし、原判決謄本の添付というのはそれほど簡単なことではありません。弁護人が付いていない場合を考えますと、受刑者又は死刑確定者が、郵送等の方法によって、確定裁判所に対し、判決謄本の交付申請をする必要があるわけですが、1枚150円の印紙を貼って出さなければいけないわけですので、判決の枚数が大部にわたる場合には、相当な費用を要するということになります。しかも、第1次再審請求の際に原判決謄本を出すと、第2次再審請求の際にはまた改めて取り直さなければならないということとなっております。先ほど鴨志田委員からも、こういった必要が本当にあるのでしょうかという指摘がありましたが、民事執行手続の場合には、民事裁判のデジタル化に伴いまして、判決の債務名義が電子データで作成されている場合には判決謄本の添付は要しないとされていることなどを踏まえると、そもそも刑事の再審請求の場合に必ず原判決謄本を添付しなければならないという規律が必要なのだろうかという疑問がございます。   その上で、仮にこういった規律を維持するのだとしますと、やはり国選弁護人制度を設けて弁護人による援助を受けられるようにするか、又は刑務所又は裁判所による事実上の援助がなければ、再審請求をすること自体が事実上困難であり、本来再審請求が認められるべき人が認められないといった結果になるのではないかということが危惧されます。   ドイツは、先ほど申しましたように、再審手続や申立て準備段階における国選弁護人制度がありますが、そのほかに、申立てを事務部局によって調書化する手続が刑事訴訟法の366条2項により定められており、御本人の申立ての場合に、裁判所書記官等が御本人から聴き取った内容を調書化する方法による申立てができると伺っております。そして、実際にこのような事務部局による調書化の申立ての方法によって再審請求が認容された事例があると伺っておりますので、必ずしも弁護人が申立書を作成し提出した事例に限らず、本人申立てであっても、適切な助力が得られるのであれば、このように再審請求が認められる場合があるということを示している実例ではないかと思います。   日本の場合には、方式違背の場合には補正を促しているということでありますが、弁護人が付いていない状況の中で補正を促すといっても、御本人が補正に応じられないというケースもあると想像されます。残念ながら、先ほどの例で見ますと、56件が283条違反ということで却下されているということでございますので、こういった方式違背により不適法とされる事例をできる限り減らしていく方向の規定を整備することが、再審請求人の権利を保障することにつながるのではないかと考えます。 ○江口委員 先ほど成瀬幹事がお話しになられた再審の仕組みとして御提言された内容につきましては、実務的な感覚としては、今やっている実務のやり方と大きく変わらないのではないかという感じを受けておるところでありまして、それをあえて規定として設ける必要性があるのかというところについては議論が必要かと考えております。また、ほかの委員・幹事の方から御発言があった内容を踏まえますと、結局、この新しく設ける迅速な処理を可能とする規律を設けて本格的な審理を要せず迅速に処理されることとなる事案というのは、どういう事案がイメージされることになるのか、どういう事案がその対象になるのかにつき、具体的にイメージすることができなくなっているところであります。どのような事案がこれに当たることになるのかというところを少し疑問に思っているところです。 ○大澤部会長 御質問のような形でもありましたけれども、御発言ある方がおられればお願いします。 ○成瀬幹事 先ほどの私の発言は、飽くまで現時点でのイメージを申し上げたものですので、具体的な事案などの詳細については更に検討したいと思います。ただ、研究者の視点から申し上げますと、配布資料2の第6表に出てくる法令上の方式違反の事案や主張自体失当の事案などを最初にスクリーニングする手続は、理論的に十分考えられると思います。 ○平城委員 先ほど委員・幹事の方から御発言いただいたようなところにも絡むのですけれども、やはり裁判官の研究会でも手続規定がなくて分かりづらいという率直な声が聞こえているところではありますので、例えば、訴訟指揮のやりやすさを担保するために一定の規律を設けていただくということは、あり得る選択肢ではないかとは思っております。ただ、お話をお聞きしていると、不適法なものをできるだけ不適法にしないようにして、再審理由があるものを拾い上げるような努力をしなさいと言われているようにも感じます。迅速な手続を設けるということについて、建前上はそうなっているのですけれども、どのような事件を吸い上げていくための規律にするのかということについては、私も少し悩みが多いなと感じているところです。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○鴨志田委員 迅速という言葉が非常に強調されるのですけれども、必要なことは、救うべき人を救うということが真っ先に考えられなければならないということだと思います。ですから、真に救済の必要がある事案について充実した審理の手続ができるようにするために、そのようなものに当たらない事案を落としていく、それが基本的な考え方であろうと思います。ただ、先ほど来、補正の話をしましたのは、そうは言っても本当に形式面でそれほど簡単に切ってしまっていい事案なのかということについては、やはり一定の配慮をしなければならないという趣旨で申し上げているので、大きな視点としては、今申し上げたとおり、真に救済すべき事案にきちんとしたマンパワーを掛けるということをするための選別だということを最後に申し上げておきたいと思います。 ○大澤部会長 おおむね予定の時間が参っておりますけれども、更にこの際ということで御発言がございますか。   よろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 それでは、「(1)」についての議論はこの程度としまして、次に、「論点整理(案)」「8」のうち「(2)期日指定に関する規律を設けるか」、「(3)請求理由についての陳述の機会を付与することとするか」及び「(6)事実の取調べ後の意見陳述の機会を付与することとするか」について、まとめて審議を行いたいと思います。これらの事項につきましては、おおむね25分間、午後3時10分頃までをめどに審議を行いたいと思います。御意見等のある方は挙手をお願いします。 ○村山委員 これから私は手続については総論的なお話をさせていただいて、更に「(2)」以降について意見を述べたいと思います。   まず、現行法の再審の編には手続上の規定がないと言っても過言ではありません。担当裁判官としては、どのような審理をすべきかというのが必ずしも法律上明確になっていないことは明らかです。その結果、裁判官によってその事件の扱い、進行が違ってくるということが起きていますし、手続の遅滞が招かれている、停滞しているという事件も現にあります。この手続の遅滞という場合に、事件の平均審理期間をもって遅滞を論じるというのは不正確だと思います。私は、相当部分は比較的短期間に判断が示される事案ですので、平均を取ればそれほど長くならないのは当たり前なのでありまして、問題は、それ以外の真に事実の取調べ等が行われるべき事案についてどうなのかということを問題にしているわけです。そういう事例を見ますと、通常の刑事裁判よりも長く時間が掛かっている事件が散見されています。   こういった形で、手続がないことがいろいろな問題を生じているわけですけれども、私としてはその視点として三つ考えたいと思っています。一つは審理の充実化、2番目が審理の迅速化、これは審理の停滞を招かないという意味でございます。3番目が審理の公開ということです、透明化。   充実化というのは、裏を返せば、請求人に主体的に審理に関与させるということの必要性を規定としてはっきりさせる、つまり陳述の機会の保障等はこの範ちゅうに入りますし、事実取調べ請求権の請求権を付与するということについても、この審理の充実化に資するものだと思っています。   それから、迅速化の点は、これは、期日の指定というのはいろいろな方向に作用するわけですけれども、期日を指定することによって事件が停滞するというのが防げるということは間違いないと思います。担当裁判官は、多くの事件を担当していますので、自ら担当している事件をバランスよく進めるということに苦心しているわけですけれども、どうしても期日で進行していく事件の方を優先させるというきらいがないではありません。それは、当然、期日が来るわけですから、その期日までに準備をし、また判決を起案するということで進むのが当然だからです。そういう中で、期日指定のない形で再審請求事件が係属していますと、ややもすれば後回しにされるということが起きます。実際問題、袴田事件の第1次請求は静岡地裁で13年、東京高裁で10年、ここだけで23年掛かっています。また、狭山事件については第2次で東京高裁で13年、また、狭山事件というのは第3次というのは東京高裁で2006年に受理した後、2025年という19年経過する中で、ついに請求人である石川さんは亡くなりました。19年掛かっています。こういう時間の長さというのは、通常審ではとても考えられないような期間だと私は思います。そして、これは決して遠い過去の話ではありません。事件は古いかもしれませんけれども、実際に最近起きている事柄であります。そういった点からも、期日のような定めをして、その進行についての予測可能性、さらには、けじめを付けて前へ進めていくということが必要だと思います。そういう意味で、期日指定なり、それから審理の終結日とか決定日を定めるというのは、そういう意味でも有益な制度だろうと思っています。   また、審理の透明化というのは、請求人のみならず、社会から見ても、その事件がどうなっているのか分かるということが必要だということで、これは審理の公開の問題に結び付くと思います。これはマスコミ関係の参考人の方もそういった点について言及されていたかと思います。そういった手続をなぜ設けなければいけないのか、手続規定がどうして必要なのかという、そういう観点に立った上で、「(2)」の期日指定の規律を設ける必要があるというのは、今申し上げたとおりです。   これは、日弁連の意見では2か月という形になっていますけれども、2か月というのは技術的な期間の問題でして、それが絶対だとは私は思っていませんけれども、しかるべき時期に取りあえず一度期日を指定して、その期日の中でどういった審理を行うべきかということを裁判所と請求人の側である程度打合せをする、そういうことが必要だと思います。また、請求理由についての陳述の機会、さらには事実取調べでの陳述の機会というのは、これは、審理充実の観点から、請求人の主体的な関与を認める規定であります。こういった規定がないがために、自ら意見を述べたいと切望している請求人も、今まではそういう機会がないままに終わっていました。多くの場合は書面による意見聴取だけで終わっていて、実際に法廷等で意見を述べるということは基本的には余りなかったと思います。そういう意味でもこういった手続保障が必要だと思います。   また、期日指定の期日というのは決定手続ですので、公判期日のような期日という意味ではないのですけれども、公開の法廷による期日というのを原則とすべきだと考えています。この期日指定については、例えば、当事者の立会いの問題、これは、請求人本人が現に受刑中であるとか死刑確定者である場合には、その立会いについては困難な問題が生じ得るとも考えられますけれども、例えば、昨今成立したデジタル化法案による現実の出頭を要しない形での出頭という、デジタルの方法による出頭なども考えられてもいいのではないかと思います。そういう意味では、余りにも矯正若しくは裁判所の方に大きな負担を強いるような方法をとらなくてもやれる方法を追求すべきではないかと思っています。   陳述の機会その他については、本人が陳述する場合もあるでしょうし、場合によっては弁護人が代わりに陳述するということもあってもいいかなとは思っています。これは基本的には陳述する側の選択肢の問題だろうと思っています。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○鴨志田委員 私の方からは、この論点に係る立法事実と、それから日弁連の意見書及び河井私案の内容について、少し補足をさせていただきたいと思います。   袴田事件については、ただいま村山委員からもお話がありましたが、第2回のヒアリングで間参考人が、第1次再審請求審における第1回の期日がいつ開かれたかということに言及していました。覚えておられると思います。第1回の打合せ期日が開催されたのは、再審請求から約3年7か月後です。第2回は、その第1回から約2年3か月後、第3回は、その第2回から2年3か月後、つまり3回目の期日までに8年掛かっているということです。また、先般再審無罪になりました福井女子中学生殺人事件でも、第1次再審における第1回の打合せ期日は再審請求から2年半後でした。この事件、御承知のとおり第2次再審で再審開始決定が確定して、再審無罪になっていますけれども、この第2次再審の審理期間全体がほぼ同じ2年ということで、第1次再審の1回目の期日が入るのにいかに時間が掛かったかということがお分かりいただけると思います。   このように期日の指定にとてつもなく時間が空いてしまうというのも問題ですが、逆に、弁護人が繰り返し打合せ期日の開催を求めても、裁判所がこれに応じないまま、一度の期日も開かれないまま決定に至った事件、これは先ほどの論点で言及のあったスクリーニングの対象になるような事件ではなく、日弁連が支援しているような本格的な事件の中にも、一度も期日が開かれない、弁護人が求めても期日が開かれずに、ある日、郵便で決定を送ってきた事件というのが相当数ございます。具体的には、例えば名張事件の第10次請求審であったり、豊川事件の再審請求審などがその例ということが言えます。どのように審理を行うかとか、審理のスケジュールをどうするかというのは、期日を開かなければ始まらないと思います。正にこの、期日を設けるかどうかすら裁判所の裁量に委ねられていることが、証拠開示や事実の取調べの全般にわたっての再審格差の原因となっているというべきだと思います。   そこで、日弁連案や河井私案では、再審請求の審理は原則として再審請求手続期日を開いて行うこととしました。ただし、再審請求が不適法であるときや理由がないことが明らかなときには、速やかに書面審理で棄却をするということもできるという規定ぶりにしています。初回の期日については、日弁連案も河井私案も、原則として再審請求がされてから2か月以内の日としています。これは絶対ということではなく、村山委員も先ほどおっしゃっていましたけれども、ただ、いつまでも開かれないと先ほどのような事例を招いてしまうということになりますので、やはり審理の迅速化という観点から、目安として入れています。また、期日を指定した場合には関係者に通知をすることも定めています。   このような期日の指定や期限を定めるということについては、職権主義なのだから裁判所の裁量に委ねるべきだという見解も当然予想されるところではございます。しかし、先ほど来、村山委員も強調されているように、審理の迅速化・充実化のためには期日指定は不可欠です。そして、審理の迅速化という観点からは、第1回期日を早期に設けることも必要です。この点、先ほどの本格的審理を行うべき事件を選別するためのスクリーニング規定を設けるということになれば、正にスクリーニングを経た事件については早期に期日を入れるという流れにすることが可能となるのではないかと思います。   なお、再審請求手続期日には、再審請求をした者、有罪の言渡しを受けた者及び弁護人は、これは、再審請求を行った当事者ですから、請求権の内実として当然に期日に出席する権利を有すると考えておりますが、再審請求手続は職権主義であり、当事者と裁判所の二者構造であることから、検察官は、裁判所が審理に必要と判断したときに、公益の代表者として手続に関与させるべきという観点から、裁判所が必要と認めたときに限り出席できる旨、日弁連案、河井私案では規定をさせていただきました。   この点については、さきの通常国会に提出され衆議院において継続審議となっている刑事訴訟法の一部を改正する法律案においても、再審の請求を受けた裁判所は、再審請求人等の申立てにより又は職権で、再審の請求の手続を行う期日を指定し、又はこれを変更することができるとの条文案を提示する一方、これは衆法444条の2の第1項なのですけれども、同じ条文の第2項において、前項の期日には検察官を出席させることができると規定して、検察官の出席は裁判所の裁量に委ねるという形で規定されていることも御紹介をしておきます。また、再審請求手続期日に関しては、当然のことながら、期日調書の作成、また裁判所の手続指揮権、また、受命裁判官による手続といった規定も必要であると考えて、入れております。   それから、期日の中で行われるべき請求理由についての陳述の機会を授与する、また事実の取調べ後の意見陳述の機会を付与するという点、論点整理案「8」の「(3)」と「(6)」に関しても、日弁連意見書、また河井私案において、そのような機会を与えなければならないとの規定を入れています。前者の、請求理由についての意見陳述は、正に再審請求人の権利そのものの内実として、その主張を明確にし、審理の充実化を図るということに資するものだと考えています。また、同じような観点から、事実の取調べを行った後で、再審請求をした者や有罪の言渡しを受けた者、弁護人に対して、その事実の取調べの結果に基づいた意見を陳述する機会も保障するというのが日弁連案445条の14、それから河井私案の25条になっています。後者に関しては、検察官に対しては、先ほど申し上げた職権主義の下における検察官の役割に鑑み、これは権利として認めるという形ではなく、裁判所が、新たな証拠の明白性判断に資するために必要な限度で検察官に意見の陳述をさせることができるという規定ぶりにしています。さらに、再審請求人への手続保障の観点から、この二つの意見陳述については、いずれも公開の法廷で行わなければならないという規定も併せて入れているところでございます。   この点、台湾の2019年の刑訴法改正でも同じように、原則開廷、すなわち公開の法廷でこれらの手続を行うということを明文化しているということも併せて申し上げておきたいと思います。台湾では、最高裁の幾つかの決定によって、単にそこに呼び出されて出頭するという権利ではなく、記録や証拠の開示を受け、裁判所に対して意見を表明し、また、その意見表明に対して裁判所に実質的な応答を義務付けるという形で、手続に関与する主体的な権利を再審請求人に与えています。   最後になりますけれども、このことに関しては、第2回の会議で、青木惠子参考人、再審無罪となった御本人がこのように述べております。「えん罪犠牲者のことを御自身のことと捉えていただき、真剣に考えて、証拠開示、検察官の抗告の禁止、再審開始後の刑の執行停止、再審の三者協議への当事者本人の立会いを再審法改正の内容に入れていきたいです、上記の内容は再審法には欠かせません、えん罪犠牲者が平等に裁判を受けられる権利としてこのような権利を認めてほしい。」このようにおっしゃっておられたことを、もう一度記憶喚起という形で紹介しておきたいと思います。 ○大澤部会長 ほかに御意見はございますでしょうか。 ○江口委員 日本弁護士連合会改正案におきまして、再審の請求がされたときから2か月以内の日に期日指定しなければならないと規定されていることについて、一言申し上げます。   刑事訴訟法上、公判期日や公判前整理手続期日についても、期日をいつまでに開かなければならないという規定はございません。それにもかかわらず、再審請求審についてのみ、2か月以内に期日を開かなければならないという規定を設けることは、刑事訴訟法全体を通覧したときに整合性がとれないのではないかと考えております。   また、この期日という名の下に行われる手続が具体的にどのようなことを行うものかが明らかではなく、したがって、この期日という名の下に行われる手続を2か月以内に開く、若しくは、ほかの委員からお話がありましたように、なるべく早期に開くといった規定を設ける適否・要否についても議論することが難しいというのが正直な感想です。   通常第一審の第1回公判期日では、例えば、否認事件ですと、冒頭手続や同意調書の取調べまでの手続が行われることが多いかと思います。したがって、第1回公判期日を指定するタイミングも、これらの手続を行う準備ができたときということになりますので、その開かれる期日の時点というのはある程度判断することも可能ですし、イメージすることも可能かと思います。しかしながら、再審請求審におきましては最初の期日で行うべき定型的な手続が想定できません。したがって、いつ頃この最初の期日を開くのが相当かも分からないということになるかと思います。   仮に、日本弁護士連合会改正案が最初の期日で行われることとして、ほかの委員からも御発言がありましたように、例えば、公判前整理手続期日における争点整理や審理計画の策定といったものを想定しているのであれば、期日を内容のあるものにするためには、再審請求後、検察官が、速やかに意見書を提出するとともに、裁判所の求めに応じて確定記録を速やかに送付し、裁判所においては、請求書と検察官の意見書の内容を踏まえながら確定判決の証拠構造や新証拠の位置付けを検討しておく必要がございます。しかし、意見書の提出や確定記録の取り寄せだけでも一定程度時間を要します。それにもかかわらず、一律に再審請求がされてから2か月以内に期日を開くというのは、余りに硬直的ですし、準備が間に合わずに期日が空転することも十分に考えられ、何のために期日を開いたのかということにもなるように思われます。また、なるべく早期に期日を開くというお話もございましたが、このなるべく早期にというものも事案によって異なってくるのではないかと考えているところです。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○田岡幹事 私は、この期日指定の問題は、迅速化とともに当事者の手続保障の観点から重要な意義を有すると考えておりますので、日弁連改正案の趣旨を敷衍して、また、私個人の意見を付け加えて申し上げたいと思います。   再審請求人が期日において行うべき主要な行為は、意見陳述と事実取調べへの立会いであると考えられます。つまり、再審請求人に意見陳述権と事実取調べ立会権を保障することによって、再審手続で何が行われているのかということを明らかにするとともに、再審請求人がその審理の内容を把握し、適切に意見を陳述し、また、事実の取調べを請求することを可能にする、そのための手続保障の制度的担保が期日であると考えております。   最初に申しました意見陳述権というのは、日弁連改正案でいうと445条の6、再審請求理由の陳述、これは控訴審で言えば控訴趣意書の陳述に相当するものと理解しております。また、事実取調べの結果に基づく意見の陳述が日弁連改正案445条の14、これは控訴審で言えば証拠調べの結果に基づく弁論に相当するものと理解しております。これらが当事者の意見陳述権であります。   もう一つの事実取調べへの立会権というのは、日弁連改正案445条の8第1項、再審を請求した者及び弁護人は、事実の取調べに立ち会い、証人の尋問の場合にはその証人を尋問することができるというものです。これによって裁判所がどのような事実を取り調べたかが再審請求人に明らかになり、再審請求人としてはその内容を把握した上で、必要に応じて裁判所に提出された記録を閲覧・謄写し、それを踏まえた意見の陳述が可能になるという意義がございます。   現在、再審実務を見ますと、事実の取調べは、刑事訴訟法43条、刑事訴訟規則33条の事実の取調べとして行われているために、事実取調べの方法には特に制限がないとされており、必ずしも期日において取り調べられるわけではなくて、裁判所が職権によって取り調べる、またその取り調べた結果が必ずしも当事者に告知される仕組みとなっておらず、更には証拠決定も行われませんので、当事者からすれば、どのような証拠がいつ取り調べられたのか、又は取り調べられていないのかということが明らかになりません。   例えば、第4回会議で、保管記録や再審保存記録を取り寄せた場合に当事者、つまり再審請求人に刑訴法40条に基づく閲覧・謄写権があるのかという点についても、これは現状では閲覧・謄写の対象に必ずしもなっておらず、保管検察官に別途閲覧・謄写請求しなければならない、裁判所としては保管検察官から借り受けているにすぎないから、閲覧・謄写の対象にならないという発言がありましたが、そうであれば、その借り受けた記録というのは事実取調べの対象になったのか否か、判断の基礎となっているのか否かが明確ではありません。もちろん確定記録であれば、通常審において取調べ済みでありますから、それを改めて取り調べる必要はないと思いますけれども、裁判所不提出記録や証拠品を裁判所が取り寄せた場合に、それが当然に事実取調べされたことになるのか、又は事実取調べの準備行為であって改めて取調べを行う必要があるのか、そういったことが明確ではありません。日弁連支援事件を見ても、証拠等関係カードが作成され証拠番号が付された事例と、証拠等関係カードが作成されず証拠番号が付されない事例がありまして、当事者からすれば、事実取調べをした範囲が明確ではないといった問題がございます。   実際に榎井村事件では、高松高等裁判所が高松高等検察庁から弁護人に秘密裏にかつ非公式に事件発生当時の捜査報告書等多数を含む「昭和21年度重要犯罪捜査報告綴」などと題する資料と、その一部写しの提出を受けて、その写しを事実取調べした上で証拠調べを終結しようとしたことが発覚したとして、弁護人が裁判官の忌避の申立てをしたが、高松高等裁判所は、憲法の規定する適正手続、防御権、弁護権の保障及び公平な裁判の保障について判断しないまま、忌避理由に該当しないということで忌避申立てを却下したとされております。日弁連はこれに対し、平成3年12月10日に会長声明を発表して、適正手続保障の観点から問題であるということを指摘しております。   このように考えますと、事実取調べが行われた場合に、当事者が事実取調べが行われた証拠の範囲を把握するためには、事実取調べに対する立会権を保障することが必要であるとともに、当事者が事実調べの結果を踏まえた意見の陳述を可能にするためには、当事者に記録の閲覧・謄写権を保障する必要があるものと考えます。   この点、参考になりますのは、職権主義の手続であり、かつ、決定手続に相当すると理解されている家事審判の規定です。家事事件手続法68条1項は、家庭裁判所は、別表第2事件につきまして、「申立てが不適法であるとき又は申立てに理由がないことが明らかなときを除き、当事者の陳述を聴かなければならない」とした上で、2項において、当事者の「陳述の聴取は、当事者の申出があるときは、審問の期日においてしなければならない」と規定しております。立案担当者によると、これは、裁判官に直接陳述することを望む当事者のために、当事者に審問申出権を認めたものと説明されております。さらに、69条は、別表第2事件について、「裁判所が審問の期日を開いて当事者の陳述を聴くことにより事実の調査をするときは、他の当事者は、当該期日に立ち会うことができる」として、他の当事者の立会権を認めております。これは、審問の結果を記録化したものを閲覧・謄写するだけでは手続保障として不十分であり、陳述する当事者の様子を把握することができる状況において審問することが重要であることを考慮したものであると説明されております。   さらに、家事事件手続法63条は、家庭裁判所が「事実の調査をした場合において、その結果が当事者による家事審判の手続の追行に重要な変更を生じ得るものと認めるときは、これを当事者及び利害関係人に通知しなければならない」とし、さらに、70条は、家庭裁判所は、「事実の調査をしたときは、特に必要がないと認める場合を除き、その旨を当事者及び利害関係人に通知しなければならない」と規定しております。立案担当者によると、これにより、当事者は、記録の閲覧等を行い、裁判所が収集した判断の基礎となる資料を確認するとともに、必要かつ適切な主張・反論をする機会が保障されることになると説明されております。   刑事再審は、家事審判とは異なりますけれども、職権主義による決定手続という意味では類似する面があります。職権主義であるからといって当事者の知らないところで証拠を調べてもよいということにはなりません。当事者から意見の陳述を直接聴いた上で、事実の取調べへの立会権を保障し、記録の閲覧・謄写権を保障することによって、当事者に適切な主張・反論の機会を保障することが必要であると考えますので、家事事件手続法の規律などを参考に、期日に関する規定を設ける必要があるものと考えております。 ○大澤部会長 予定した時間の枠を超えておりますけれども、まだ御発言が尽きていないようですので、更に御発言を頂戴したいと思います。御発言のある方は、お願いします。 ○江口委員 日本弁護士連合会改正案におきましては、再審請求者と弁護人に、最初に行われる再審請求手続期日において、再審請求の理由について陳述する機会を与え、また、事実の取調べ後に意見陳述の機会が与えられることになっておりますので、この点について発言をさせていただきます。   現在の制度におきましても、刑事訴訟規則第286条におきまして意見の聴取という規定がございまして、個別具体的な事案の特性に応じて、まずは検察官に求意見をし、その意見に対して請求人に求意見をする方法を採ったり、事実の取調べが行われた場合には、その結果を踏まえて意見を述べる機会を与えるなどということを実務において行っております。仮に、日本弁護士連合会改正案における意見陳述というものが、この現行制度における意見聴取と内容的に同じものを想定しているのであれば、現行制度で行っている意見聴取を公開の法廷において期日という名の下に行われる手続で行うという点にのみ立法することの意味を見いだすということになりますので、そうだとすれば、この論点は、後ほど議論される公開などの論点に収斂するように思われます。   さらに、最初に行われる再審請求手続期日に与えられる、再審請求理由について陳述する機会というものにつきまして、陳述される意見の具体的な内容が明らかでないと考えております。もし、これが刑事訴訟規則第286条により提出される意見書や再審請求書と同じものを陳述するのであれば、これは、既に裁判官が内容を把握しておりますので、改めて手続を設ける必要はないかと考えております。また、再審請求書や刑事訴訟規則第286条により提出される意見書と同内容ではない内容を陳述するのであれば、その陳述の法的性質、それが再審請求の理由を補充・追加するものなのか、事実の取調べなのかなどが問題となるように考えております。また、事実取調べ後に陳述の機会を与えるかどうかですけれども、既に述べたように、刑事訴訟規則第286条の規定によっても十分に必要な意見聴取は可能かと考えておりますので、このような規定を設けることが合理的な事件処理の観点から相当と言えるかについても疑問がございます。 ○大澤部会長 更に御発言のある方はおられますか。 ○後藤委員 再審請求事件の中には、請求書、提出された証拠、確定記録を確認するだけで心証を取ることができる事案というのが相当数存在すると思います。そのような事案についてまで全て期日を開かなければならないとすると、かえって迅速な処理というものを後退させる結果になるのではないかという懸念がございます。また、裁判官の研究会で示された意見の中にも、事件を最もよく知っている弁護人から事情を伺うことが争点把握のために有益な事案があるという紹介があります。これは、事実上の打合せとして実施されているものも含まれていると思います。このような場をもって法律上の期日と言えるのかどうかと言われると、やや違和感を覚えるところでございます。法律上の期日については、事案に応じて柔軟に指定できるようにしておくことがよろしいのではないかと感じるところです。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○成瀬幹事 まず、「8」の「(2)」の期日指定に関する論点ですが、日本弁護士連合会改正案や河井私案においては、一律に、審理当初の一定の期間内に期日を定めなければならないという規定になっています。しかし、そのような規定を設けてしまうと、江口委員がおっしゃっておられたように、かえって手続が硬直的なものとなり、期日が空転するなどの問題がありますので、このような規定は不相当であると考えています。   また、鴨志田委員が言及された、衆議院において継続審議となっている刑事訴訟法の一部を改正する法律案の第444条の2第1項は、再審請求人等の申立てにより又は職権で、期日を指定することができるという規定ですが、この規定にも課題があると考えます。   刑事訴訟法第273条第1項によれば、通常審においては、裁判長が公判期日を定めなければならないとされており、訴訟当事者に期日指定の申立権は認められていません。そのため、この法律案のように、再審請求審において、再審請求人等に期日指定の申立権を認める規定を設けるとすると、刑事訴訟法全体としての規律の整合性が問題となるように思います。   先ほど後藤委員から御指摘があったように、現行法の下においても、再審請求を受けた裁判所は、職権により、必要に応じて、進行協議や事実の取調べ等のために期日を開くことができますので、単に期日を指定・変更することができる旨の規律を法律上設けることについては、その必要性にも疑問があります。   次に、「8」の「(3)」の請求理由を陳述する機会に関する論点について申し上げます。職権主義の下、審理の進め方を事案に応じて柔軟に決することを可能とすべき再審請求手続においては、再審の請求理由を的確に把握するためにいかなる方法を採るかは、審理の主宰者である裁判所の判断により決すべき事柄であると考えられます。現行法の下においても、裁判所が必要と判断した場合には、裁量により、再審請求者又は弁護人に対し、再審の請求理由や争点について陳述させることは可能です。   これに対し、日本弁護士連合会改正案の第445条の6のように、再審請求の理由について陳述する機会を一律に与えなければならないという規定を設けることは、かえって手続を硬直化させることにつながりますので、その必要性・相当性について慎重な検討が必要であると考えます。   さらに、「8」の「(6)」の事実取調べ後の意見陳述の機会に関する論点についても申し上げます。現行の刑事訴訟規則第286条において、裁判所は、「再審の請求について決定をする場合には、請求をした者及びその相手方の意見を聴かなければならない」とされています。江口委員は、刑事訴訟規則にこの規定があるので、あえて法律上の規定を設ける必要はないとの御意見でしたが、再審請求について決定をする場合に意見聴取を行うことは、裁判所が再審請求事由の有無を慎重に判断する上で重要な意義を有すると考えられますので、再審請求の審理に関する手続規定の整備の一環として、意見聴取に関する規律を法律上明確化することも検討に値すると思います。   ただし、先ほど鴨志田委員がこの意見陳述を公開法廷で行う意義を強調しておられたことから拝察するに、鴨志田委員の御提案は、一律に口頭で意見を陳述する機会を与えなければならないという趣旨であるようにも思われます。仮にそのような御趣旨であれば、それは、裁判所に硬直的な対応を強いるものと言わざるを得ません。   先ほど申し上げたように、再審請求手続の進め方は、審理の主宰者である裁判所の判断により柔軟に決すべきであり、再審請求についての決定に先立つ意見聴取についても、口頭によらなければならない事案ばかりではなく、書面によってすれば足りる事案も相当数あると思われます。したがって、一律に口頭によってしなければならないとすることについては、必要性・相当性の観点から慎重に検討する必要があると考えます。   なお、先ほど論点「8」の「(1)」において、スクリーニングの仕組みの創設を提案させていただきましたが、スクリーニング手続において直ちに終局決定をすべきと判断された事案についてまで、意見聴取を行った後でなければ再審請求棄却又は再審開始の決定ができないこととすると、かえって、円滑かつ迅速な進行が阻害されるおそれがあります。よって、直ちに終局決定をすべき事案については、審理の迅速化の観点から、意見聴取をするか否かを裁判所の裁量に委ねることとしてもよいのではないかと考えています。   先ほど論点「8」の「(1)」の議論において、江口委員から、仮にスクリーニングの仕組みを創設したとしても、現在の実務運用とほとんど変わらないという御指摘をいただきましたが、意見聴取を裁量的にするのであれば、現在の実務よりも更に早く判断できるようになるという実益が生じるように思います。また、平城委員からは、スクリーニングの仕組みは、不適法なものをできるだけ不適法にしないよう丁寧に扱うべきと言っているように聞こえるという御指摘もいただきました。私の説明が不十分だったのだと思いますが、私が提案しているスクリーニングの仕組みは、御指摘のような一定の方向付けをするための制度ではありません。裁判実務においても、再審請求審における手続規定が少ないことから審理運営上の困難が生じているという指摘があることを踏まえ、もしかしたら、現在行われている裁判実務とほとんど変わらないのかもしれませんが、そのような実務運用を制度的に確実なものとする趣旨で、スクリーニングの仕組みを提案させていただいた次第です。   田岡幹事からは、事実取調べへの立会権に関する御提案もありましたが、少し長くなりましたので、この点については、論点「8」の「(5)」で改めて申し上げたいと思います。 ○大澤部会長 延長した時間の枠も更に超過しようというところでありますが、御発言よろしいですか。 ○池田委員 私は、「(6)」の事実の取調べ後の意見陳述の機会について意見を申し上げたいと思います。   先ほどの鴨志田委員の御説明の中にも表れておりましたけれども、日本弁護士連合会改正案の第445条の14は、第1項で、請求人にその陳述の機会を与えるとする一方で、第2項で、検察官との関係では、裁判所の判断で、新たな証拠の証明力の判断に資するために必要な限度で検察官に意見を陳述させることができるとしており、その立場を違えております。これは、期日への出席にも同様に当てはまることかと思いますが、その御説明の中で、あるいは、日本弁護士連合会改正案の理由説明の中にもありますが、検察官は、公益の代表者として、職権主義構造である再審請求手続で行われる審理に協力すべき立場にすぎないという理解があるものという説明がされています。   確かに、検察官は、公益の代表者として、裁判所に法の正当な適用を請求するという権限を持つとともに、それが義務であるとされているわけですけれども、他方で、現行の再審制度における検察官の役割を見ますと、再審請求権を持っておりますし、再審請求について決定をする場合には検察官の意見を聴かなければならないとされておりますほか、再審請求に対する決定についての不服申立権も認められております。つまり、現行法上は、検察官が公益の代表者であるということと、検察官が再審請求手続に主体的・能動的に関与するということは矛盾しないものとして制度が構築されており、これは、再審請求審が三審制の下で確定した有罪判決について、なお事実認定の不当などがあった場合にこれを是正する非常救済手段であって、慎重な判断が必要となることに鑑み、公益の代表者たる検察官を関与させることにより判断の適正を担保しようとしたものであることによるものと考えられます。   以上を踏まえますと、意見陳述の機会を設けることについても、再審請求者及び弁護人から意見を聴取することとするのであれば、検察官からも公益の代表者としての立場から意見を聴取するとすることが合理的であって、御提案のように検察官からの意見陳述の機会を限定する理由はなく、相当ではないと考えております。 ○大澤部会長 予定した時間枠を大きく超えましたが、更に御発言がある方は、コンパクトにお願いします。 ○村山委員 期日の意味なのですけれども、当事者から見ると、要するに、裁判所は一体今何をしてくれているのかというのが分からないのですよね、何かないと。先ほど後藤委員は、打合せとか協議でやるということなのですけれども、必ずしもそういうふうにやっていない裁判体があるので、いきなり決定が来るというようなことも起きているわけです。そういう意味では、期日を開くことによって、裁判所が一体今どういう状況にあるのかというのが当事者が分かる、請求人が分かる、それに応じて、例えば、請求の理由についてどうかとか、証拠開示申立てについてどのように考えているのか、更に申立書を出さなければいけないか、そういうことも考えるよすがにできるという意味で、期日の意味があると思います。また、江口委員は、期日に1回に非常に充実したものをやろうと思っておられるようなのですけれども、それほど固く考えなくていいのではないかと思うのです。請求理由を陳述させる、そして、今後どのように進むのかというようなこと辺りを議論するというだけでも、十分期日の意味があると、私は思っています。 ○大澤部会長 それでは、この枠はこの程度でよろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 まだ御意見等のある方もおられるかもしれませんが、ここまでということにさせていただきたいと存じます。   それでは、開会からかなり時間が経過しましたので、ここで、35分まで休憩ということにさせていただきたいと存じます。              (休     憩) ○大澤部会長 それでは、再開させていただきます。   次に、「論点整理(案)」「8」のうち「(4)請求理由の追加・変更に関する規律を設けるか」について審議を行いたいと思います。この事項につきましては、おおむね15分間、午後3時50分を目途に審議を行いたいと思います。御意見等がある方は挙手をお願いします。 ○田岡幹事 日弁連改正案441条の2について、趣旨を説明いたします。   現行刑事訴訟法には再審請求の方式に関する規定はございませんが、先ほど申しましたように、規則283条によって趣意書を提出するとされております。実際の事件を見ますと、趣意書を出して再審請求を行うわけですが、その後に、裁判所不提出記録又は証拠品が開示されるなどした結果、新たな証拠に基づいた再審理由というものを追加する、あるいは、変更するといった事例がございます。ところが、この再審理由の追加・変更に関しては、現行刑事訴訟法には規定がなく、判例についても分かれていると認識しております。   例えば、白鳥事件の特別抗告決定の判示の中には、「再審請求受理裁判所は、再審請求の理由の有無を判断するにあたり、再審請求者の主張する事実に拘束され、原裁判所も右再審請求受理裁判所の判断の当否について審査することができるにとどまる」といった判示があります。また、狭山事件の第2次再審請求特別抗告決定においても、「再審事由として追加的に異議審で主張する趣旨であるとすれば、再審請求審の決定の当否を事後的に審査する異議審の性格にかんがみ、不適法といわざるを得ない」などとして、飽くまで原決定の説示は、前者の趣旨というのは、異議申立ての趣旨を補充する趣旨という意味でしか斟酌できないといった判示をしたものがあります。   しかし、他方で、財田川事件の第2次再審請求審特別抗告決定、いわゆる財田川決定の中では、原決定が元々これは1号あるいは2号に当たらないという判断を示したのに対して、これは実質的には435条6号の再審開始事由を主張する趣旨であると考えて、原決定には再審理由として435条6号に該当する事由があると解すべきであるのに、これを看過した審理不尽の違法があるとして、原決定及び原々決定を取り消して差し戻しています。その上で、差戻決定は、当審において追加主張されたものや、当審において従前の主張が整理され、証拠が追加されたもの、さらには、実質的には435条6号の事由の主張と解し得るものなど類別した上で、435条6号の再審開始事由があるとして再審開始を認めており、裁判所の方が、当初、再審請求人が主張していなかった再審理由を認めて開始したものがあります。同様に、先日も言及したロシア人おとり捜査事件、札幌高裁平成28年10月26日判決も、請求人は、飽くまで435条6号の事由があると主張し、原決定もそれを認めたのに対し、即時抗告決定は、訴訟法上の事実認定の瑕疵につながる新証拠は6号が想定しているとは言い難いとして、6号に基づく再審開始を否定しながら、他方で、7号と437条による確定判決に代わる証明を認めて、再審請求人が主張すらしていない再審理由に基づく再審開始を認めております。   このように、判例は分かれているように思われまして、再審請求人が主張した再審理由に必ずしも拘束されていない判断を示したものがあります。再審請求の裁判所あるいは抗告裁判所は再審請求人の主張に拘束されず、再審理由の追加・変更ができるのであれば、請求人が再審理由の追加・変更することを認めないのは不合理であります。仮に、このような追加・変更は認められないことといたしますとどうなるかと考えますと、請求審段階はもちろん抗告審や特別抗告審段階であっても、別途新たな再審請求をしなければならないことになりまして、例えば、第1次再審請求中に新たな再審理由が見付かった場合に、同時に第2次再審請求を行うことになりますと、同一事件に関する再審請求が二重に係属することになりまして、審理の混乱をもたらすことになりかねません。仮に、両者が全く別個の再審理由であるというのであればともかく、実質的には再審理由の判断のために必要な証拠関係や主張関係が重なり合うことが少なくありません。   現状では、裁判所不提出記録や証拠品の閲覧・謄写、いわゆる証拠開示が認められた結果、改めて再審理由を追加・変更するということが多いわけですので、このような場合には、開示された証拠は当初の再審請求、例えば6号に関連するものとして開示されたのだけれども、その証拠を見る限り、新たに1号や2号に当たる別の再審理由を構成するということが考えられるということにすぎないわけですから、当初の再審理由と関連するものでありまして、別途新たな再審請求をしなければならないとするのは不合理であります。   例えば、袴田事件のように、抗告審段階で新たに5点の衣類のカラーのネガフィルムや録音テープが開示された事例がありますけれども、抗告審において、弁護人は、従来の6号に加えて1号、2号、7号の再審理由を追加いたしました。これについて、即時抗告決定は、原審で主張されていなかった再審事由については、事後審である抗告審の性格と相容れず不適法であると判示しているわけですけれども、原審段階で開示されていなかったものについて抗告審段階で新たに開示されたから、その開示された証拠に基づき再審理由を追加しているのに、それが認められないということになりますと、別途新たな再審請求を起こさざるを得ないことになり、訴訟経済に反し、迅速な救済の機会を失わせるものと言わざるを得ないと思います。したがって、このような場合には、抗告審段階であっても、再審理由の追加・変更を認めることが合理的であると考えます。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○江口委員 再審理由の追加につきまして、実務家の観点から御意見を申し上げます。   実務におきましても、再審請求書の例えば「補充書」などと題する書面が提出されるなどして再審請求の理由が追加されることがないわけではございません。このような場合、実務では、再審請求の回数に制限がないことから、再審請求理由の追加を認めなければ新たな再審請求がされることになるだけであるため、訴訟経済や迅速な事案解決の観点から、追加された再審請求の理由についても判断をしているというのが実際かと思います。ただ、反面、請求理由の追加・変更を無制限に受け入れてしまいますと、再審請求審の審理を長期化させてしまうという場合もあるかと思います。   また、抗告審や特別抗告審につきましては事後審とされていることから、本来、再審請求理由の追加・変更は許されないと考えられます。実際にも、抗告審や特別抗告審において、原決定を踏まえて新証拠が更に提出され、新たな再審請求理由が主張されることもありますが、この主張に応えようとしますと、本来は事後審とされる抗告審や特別抗告審が続審的なものとなってしまいますし、再審請求審が確定するまでに時間を要する一つの原因にもなっている場合もあるかと思われます。   以上のような実務の現状からしますと、再審請求の追加・変更を無制限に、また、抗告審・特別抗告審においても認めるというのは慎重に考えるべきかと思われます。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○成瀬幹事 先ほど田岡幹事が指摘されたように、現行刑事訴訟法上、再審請求審における請求理由の追加・変更、すなわち、再審請求を根拠付けるものとしてなされる事実関係及び証拠関係に基づく主張の追加・変更をすることができる旨の明文規定はないものの、これを禁止する規定も存しないことからすると、少なくとも、合理的な範囲内において再審請求理由の追加・変更をすることは可能であると考えられます。江口委員が述べられたように、実務の運用においても、再審請求審において請求理由の追加・変更は、一定の範囲で行われているようです。   したがって、再審請求審において、あえて請求理由の追加・変更をすることができる旨の明文規定を設ける必要性があるのかという点については、検討を要すると思います。   他方、日本弁護士連合会改正案第441条の2第2項第2文では、上訴審、すなわち、抗告審・異議審においても再審請求理由を追加・変更することができるという規定が提案されており、田岡幹事からも、袴田巌さんの事件を例にして、上訴審における追加・変更を認めるべきという御提案がありました。もっとも、田岡幹事が自ら引用された白鳥事件の最高裁判例によれば、上訴審で請求理由を追加・変更することは、再審請求審の決定の当否を事後的に審査するという上訴審の性格に鑑み、不適法とされています。   よって、御提案のような規定を設けることには、上訴審が事後審であることとの関係で、理論的に困難な課題があると考えます。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○宮崎委員 請求理由の追加・変更については、事実関係を変更しないまま証拠を若干追加するだけであって、それまでに積み重ねられた手続への影響が小さいと考えられるものだけでなく、審理に長期間を要した後に事実関係及び証拠関係を全く別のものに変更するなど、それまでに積み重ねられた手続を反故にすると考えられるものなども想定され得ます。実際、第4回会議の平城委員提出資料においても、再審請求事件の中には、裁判所の迅速な判断を求めるというよりも、審理の中で主張立証を尽くすことに意義を見いだしているケースなどもあるとの指摘がなされています。こうしたことからすると、請求理由の追加・変更については、一定の場合にこれを制限できるものとすることが適当であり、日本弁護士連合会改正案のように、何らの制限もなく請求理由の追加・変更をすることができることとする規定を設けることについては、再審請求審の第一審の係属中に限ったとしても、その当否が問題となると考えられます。また、御提案の内容自体の当否は措くとしても、そもそも、現行法の下において、請求理由の追加・変更やその制限の具体的な在り方について議論の蓄積がなく、定まった実務上の運用や見解がない中で、特定の立場に立って明文の規定を設けることには慎重であるべきと考えられます。 ○大澤部会長 更に御発言がございますでしょうか。   よろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 おおむね予定した時間も来ておりますので、「(4)」の論点についてはここまでということにしまして、次に、「論点整理(案)」「8」のうち「(5)事実の取調べについての請求権を付与することとするか」について審議を行いたいと思います。この事項については、おおむね15分間、午後4時5分を目途に審議を行いたいと思います。御発言のある方は挙手をお願いします。 ○成瀬幹事 現行の刑事訴訟法上、再審請求審において、裁判所は、第43条第3項により、必要がある場合には事実の取調べをすることができるところ、事実の取調べをするか、するとしてどのような活動をするかなどは、裁判所の裁量に委ねられており、再審請求者、弁護人及び検察官にその請求権は認められていません。再審請求者、弁護人及び検察官が裁判所に職権発動の申立てを行うことは可能であるものの、裁判所に応答義務はないため、裁判所としては、事実の取調べをしないと判断した場合であっても、その旨の判断を示す必要はないというのが現行法の規律です。   しかし、再審請求を受けた裁判所が再審の請求理由について事実の取調べをするか否かは、再審請求の当否の判断を左右し得る重大な事項であり、第4回会議で川出委員が述べておられたように、事実の取調べをするか否かについて迅速かつ明確に判断が示されることは、再審請求者、弁護人及び検察官において、当該判断に対する検討とその後の対応を適時適切に行うことが可能となり、手続の円滑かつ迅速な進行に資するとともに、裁判所の審理の進行に対する信頼を確保することにもつながると考えられます。   また、再審請求審においては、職権主義の下、裁判所が手続進行についての主導権を持つものの、現行制度上も、審理の開始は再審請求者の請求によるとされ、再審請求について決定をする場合には、再審請求者、弁護人及び検察官の意見を聴かなければならないとされていることなどからすると、再審請求者、弁護人及び検察官に事実取調べの請求権を認めて裁判所に応答義務を課したとしても、再審請求審の構造と相容れないとは言えないでしょう。   よって、事実の取調べの請求権を再審請求者、弁護人及び検察官に付与することは、十分検討に値すると考えます。   その上で、休憩の前に、田岡幹事から、再審請求者等に事実の取調べへの立会権を認めるべきという御提案がありましたので、その点についても意見を申し上げます。   事実の取調べの方法としては、証人尋問、鑑定、押収、捜索、検証、通訳、翻訳のほか、再審請求者や参考人の審尋、別件訴訟記録の取寄せ、公務所・公私の団体に対する照会等があるとされています。この中には、そもそも、再審請求者等を立ち会わせること自体、想定し難いものもある上、立ち会わせることが考えられるものについても、実際に立ち会わせる必要があるか、立ち会わせるとして誰を立ち会わせることとするかは、個々の事案において異なり得るため、職権主義の下、再審請求審の手続進行について主導権を持つ裁判所が個別事案ごとに判断すべき事柄であるといえます。   また、再審請求者が受刑者や死刑確定者として刑事施設に収容されている場合に、これらの者を外部に押送することについては、保安上のリスクのほか、処遇への影響や死刑確定者の心情の安定確保の要請等も考慮する必要があります。   そうすると、再審請求者、弁護人及び有罪の言渡しを受けた者に対して、一律に事実の取調べへの立会権を認めることについては、大きな課題があると言えます。他方で、仮に立会権を認めなくても、現行法上、裁判所は、裁量により、必要に応じて、再審請求者等や検察官に立会いや尋問をさせることができるとされていることから、特段の不都合は生じないように思われます。   よって、再審請求者等に対し、事実の取調べへの立会権を認めることについては、慎重な検討が必要であると考えます。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○田岡幹事 日弁連は、445条の7及び8に事実取調べ請求権の規定を設けるべきであるという提案をしておりますので、その趣旨を説明するとともに、また、成瀬幹事の先ほどの疑問についても答えられる範囲でお答えしたいと思います。   先ほど成瀬幹事からも御説明がありましたように、現在、再審請求審は、刑事訴訟法43条、刑事訴訟規則33条の事実の取調べとして事実の取調べを行っているわけですけれども、その取調べの方法に特に制限がないとされていることから、必ずしも取り調べた証拠が判明しなかったり、取り調べた結果が当事者に開示されずに当事者の閲覧・謄写権が保障されないといったことのほか、当事者に請求権が認められておらず、裁判所の応答義務、つまり証拠決定のような制度がないために、当事者が請求した証拠がそもそも事実取調べの対象になったのかどうかすら明らかではないといった問題がございます。再審請求をする者は、再審理由を裏付けるものとして事実の取調べを請求しているものであり、その取調べがなされたか否かについては重大な関心を持っておりますので、再審請求人に少なくとも事実取調べの請求権を設けるべきです。   この点、先ほども同じ職権主義の決定手続であるとして御紹介した家事事件手続法は、家事審判について、「家庭裁判所は、職権で事実の調査をし、かつ、申立てにより又は職権で、必要と認める証拠調べをしなければならない」と規定をしており、当事者の事実の調査又は証拠調べの申立権を認めています。立案担当者によりますと、家事事件手続においては職権探知主義が採用されているわけですが、新法は、職権探知主義を維持しつつ、当事者に裁判資料の収集の場面における主体的役割を与えるため、証拠調べについて新たに当事者に申立権を認めることにしたと説明されております。   なお、56条2項には、「当事者は、適切かつ迅速な審理及び審判の実現のため、事実の調査及び証拠調べに協力するものとする」という規定が置かれておりますが、これは立案担当者解説によりますと、職権探知主義が妥当する家事事件手続においても、職権による裁判資料の収集には限界があり、実際には、当事者の協力を待たなければ真実の解明が困難となる場合や、当事者による資料の収集及び提出を期待する方が合理的な場合も多く存するとされておりまして、やはり当事者が最もその再審の結果に切実な利害関係を有しており、再審の請求をしている当事者なわけですから、その事実取調べの請求権を設けた上で、それに対する裁判所の応答義務を課すということが適切であると考えられます。   なお、先ほど成瀬幹事から、立会権を認めることについて、必ずしもその必要がないのではないかという御指摘がありましたけれども、先ほども引用した家事事件手続法でも、68条の2項で、当事者の申出があるときに必ず審問を開いて当事者の陳述の聴取をすることとされており、他方の当事者はその期日に立ち会うことができるとして立会権を保障しているわけです。これは、審問の結果を記録したものを閲覧・謄写するだけでは手続保障として不十分であるという考え方に基づくものでありまして、再審請求人に事実取調べの結果を認識させ、それに基づいた必要適切な主張あるいは反論の機会を与えるものです。   成瀬幹事から、裁判所は裁量により再審請求人等に立会いや尋問をさせることができるから、特段不合理は生じていないのではないかという指摘がありましたが、先ほど榎井村事件の事例を紹介しましたように、裁判所が秘密裏にかつ非公式に裁判所不提出記録を取り寄せて事実の取調べをしたといった事例が実際にありますので、事実の取調べをした場合には、再審請求人や弁護人に立会権を保障するか、少なくとも再審請求人や弁護人にその事実取調べを行った旨を通知した上で、記録の閲覧・謄写の機会を与えるといった規定がないと、当事者の手続保障として不十分であると考えます。 ○大澤部会長 更に御意見はございますでしょうか。 ○江口委員 再審請求者や弁護人に事実の取調べの請求権を認めるということは、再審請求人や弁護人が裁判所に証拠を提出しようとする場合には、基本的にはまず事実の取調べを請求し、裁判所は、その採否を判断し、証拠として採用されたもののみ再審請求の資料にするということになるかと思います。現行制度下で行っている再審請求審では、関連性の吟味すら十分になされないまま、幅広く証拠提出が行われている事案も見受けられますが、中川参考人もおっしゃっていたように、一般に、裁判所は、例えば、陳述書のようなものも含め、これらの受取を拒否などすることなく、提出されたものを受け取り、その内容を検討した上で、すなわち、取調べをした上で、再審請求の判断を行っているところです。   これに対し、日本弁護士連合会改正案では、現行制度であれば裁判所が当然に受け取ったものについて、証拠の採否という判断で、逐一再審請求審の判断に必要かどうかを判断することになるかと思われます。そういたしますと、事実の取調べ請求を認めるか否かが再審請求審における重要な争点となり得ることが容易に推察され、しかも、その判断は、再審請求に理由があるかの判断とも密接に関連することになると思われることからしますと、再審請求審を現行制度よりも複雑なものとすることになるように思われます。   また、例えば、人証の取調べにつきましても、事実の取調べについて、最終的に裁判所において必要性を判断し、必要性がある事実の取調べのみをするという規定になるのであれば、中川参考人がおっしゃっていた現在の実務と大きく変わるところはありませんので、現在の実務の運用に照らし、こうした規定を設ける必要がどこまであるのかということについては疑問が残るところです。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○酒巻委員 仮に、事実の取調べの請求権を認めた場合、裁判所は、請求権があれば、それについて決定をしなければならなくなる、そうなると、その先に、その決定に対して不服申立てができるのかという問題が出てくるのですけれども、この点についてどのようにお考えなのでしょうか。事実の取調べ請求権を認めるのがよいという御意見の方にお伺いしたいと思います。 ○大澤部会長 どなたか御発言のある方はおられますでしょうか。 ○田岡幹事 では、私の方から御説明したいと思います。   当事者に事実取調べ請求権を認めるということは、それに対して裁判所が証拠決定のような形で決定を行うということになるかと思います。ただ、証拠能力等が要求されているわけではありませんので、その必要性・相当性を判断した上で、採否を決定をするということになるのだろうと思います。それに対する不服申立ては、当然、異議の申立てということになるかと思いますけれども、中間的な判断である証拠決定に対する不服申立てでありますので、即時抗告等が認められるわけではなくて、最終的には再審棄却決定に対する不服申立て、すなわち、即時抗告や異議の中で、争うということになるのかと思います。 ○酒巻委員 ありがとうございました。私は、立法政策として、裁判所の決定に対する即時抗告等の不服申立ては認めないとすることが妥当と考えます。 ○鴨志田委員 今の点について補足、実務的な実際の事例として御説明をさせていただきたいと思います。   現行法では、この証人尋問、事実調べ請求に対する裁判所の応答義務がないということで、例えば、請求人・弁護人が鑑定人の証人尋問を請求しても、全く応答もされないまま棄却決定がされるということが実際にございます。このような事例において、即時抗告の申立てにおいて、必要な事実取調べを行っていないということを不服申立ての理由の一つとして主張したことがございます。これについては、即時抗告審で鑑定人の尋問が行われるということになり、結果として結論は棄却だったわけですけれども、抗告審においてきちんと証拠調べをし、鑑定人の尋問も行ったことで、請求審の瑕疵が治癒されているというような判示がありました。このようなケースがあるということからすると、やはり請求権を認め、応答義務を課し、それが尽くされていない場合には抗告の理由として審理の対象になっていくことで、適正な手続保障が担保されると考えておりますので、先ほど来、村山委員もおっしゃっていた再審請求人の手続保障、それが審理の充実につながるという観点からは、再審請求人からの請求を法的に認め、裁判所に応答義務を課し、更にそれが上訴の理由になっていくというような道筋を付けるということが是非とも必要ではないかと思います。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○村山委員 こういった問題について、どうも現在の実務と結局同じではないかという議論がなされているように思うのですけれども、私は、違うと思っています。やはりこういう形で規定を設けた以上、裁判所は応答義務がある、裁判所はこういうことをやらなければいけない義務があるという形にした方が、それに対して、請求人側が、裁判所の応答に対してその次にどういうことを考えるかというのは違いがありますし、また、裁判所は、はっきりと、途中の判断なのですけれども、判断を示すということについて、やはり裁判所なりに、その時点、その時点で判断を示していくということが、けじめが付いて、その先に進むステップとして重要な意味があると思っていますので、現在の実務で、そういった手続を経なくてもやっているのではないかというのは、私は、結論としては、大分違うものが出来上がるのではないかと思っています。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○池田委員 事実取調べの請求権について、日本弁護士連合会改正案の文言を見ると、請求権を持つ者が再審の請求をした者若しくは弁護人となっており、検察官についての言及がないのですけれども、これは、請求権はないということであるのかということと、そうされている理由について御説明を頂けないかと思っております。 ○鴨志田委員 これは、先ほどの事実取調べ後の意見陳述のときにお話をしたのと同じ理由です。再審請求というのは、再審請求人の請求に対して裁判所が職権で開始するかしないかを判断するという二者構造、職権主義の手続になっています。その中で、裁判所が必要に応じて検察官から意見を徴求する、また、検察官の主張している事実に基づいた、例えば、鑑定人について尋問の決定をするというようなことが実際にあるわけですけれども、それを検察官の事実の取調べ請求権という形で構成するということには、職権主義との間でそごが生じると思います。飽くまでも裁判所が必要と認めたときに検察官の意見を聴くということはあっても、それは検察官に事実調べ請求権を与えるということとは違うと理解をして、そのような規定ぶりにしているということです。 ○池田委員 御説明いただきましてありがとうございました。私の意見も先ほど述べたところと繰り返しになるのですけれども、検察官が職権主義的な手続に公益の代表者として関与するということは、手続に主体的・能動的に関与するということとは矛盾しないと考えております。そうであるとしますと、再審請求者と弁護人に事実の取調べの請求権を認めることとするのであれば、検察官には、同じ請求権を認めないこととする理由はないと考えられますので、その限りで、御提案は相当ではないと考えております。 ○大澤部会長 おおむね予定した時間を過ぎておりますけれども、なおこの際ということで御発言がございますでしょうか。   よろしいですか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 それでは、この枠の議論はここまでということにさせていただき、次は「論点整理(案)」「8」のうち「(7)手続の受継を認めることとするか」について審議を行いたいと思います。この事項については、おおむね20分間、4時25分頃までを目途に審議を行いたいと思います。御意見等がある方は挙手をお願いします。 ○田岡幹事 日弁連は、日弁連改正案439条の2において、手続の受継を認める規律を設けるべきであるという御提案をしておりますので、その趣旨を御説明いたします。   現行刑事訴訟法の規律を見ますと、再審請求前に仮に有罪判決の言渡しを受けた者が死亡している場合には、その配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹が再審請求人になることができるとする刑訴法439条1項4号の規律がございますので、それらの親族が再審請求人なることによって再審請求手続を進め、再審開始決定があれば、再審公判が開かれることとなっております。   また、再審開始決定後にその再審請求人が死亡した場合、有罪判決の言渡しを受けた本人が死亡した場合を考えますと、これは、現行刑事訴訟法に既に規律がありまして、451条の2項が、刑訴法339条1項4号の規定は前項の審判にこれを適用しないとし、2号が、有罪の言渡しを受けた者が再審の判決がある前に死亡した場合、そして3項が、前項の場合に被告人の出頭がなくても審判をすることができる、ただし、弁護人が出頭しなければ開廷することができないとされておりますので、再審開始決定後に再審請求人が死亡したとしても訴訟手続が当然に終了することにはならず、弁護人が選任されている限り再審判決を言い渡すことができると、つまり、訴訟条件と被告人の出頭義務を免除しているということになります。なお、旧法事件に関して言えば、横浜事件の第3次再審請求審の特別抗告審、最高裁第二小法廷平成20年3月14日判決が、上告審まで進んだ段階で再審請求人が死亡した場合において、再審の審判手続は終了しないと判示したものがございます。   このように、再審請求前に死亡した場合と再審開始決定後に死亡した場合については手当てがなされておりますが、再審請求後、再審開始決定の確定前に死亡した場合は手当てがありませんので、この場合にどうなるのかという問題意識がございます。   現在の再審実務は、この場合には手続は当然に終了すると理解されております。元々旧刑事訴訟法には、513条に不利益再審の場合に被告人であった者が死亡すれば再審手続が終了するという規定があったわけですけれども、不利益再審の場合には、有罪判決を言い渡す者がなくなりますので、刑罰を科すことができませんから、合理性のある規定かと思いますが、利益再審の場合には、そもそも再審請求権者が本人に限られているわけではなく、親族も名誉回復のために再審請求権者となり得ることを定めているわけですから、このような場合に、再審請求権者となり得るほかの者、つまり親族等が受継することができないのは非常に不合理であります。   特に、その死亡が死刑執行によりなされた場合などを考えますと、再審請求人本人が再審請求をなし、裁判所としても再審開始理由があるかもしれないと考えていたところ、突如として再審請求中に死刑執行がなされたために再審請求人が死亡して、再審請求手続が終了するといった事態を考えますと、極めて不合理です。このような場合には、改めて親族が再審請求をしなければならなくなるわけです。本来、死刑の執行停止の規定を設けるべきだと思いますが、現在は規定がないので、死刑執行によって再審請求手続を終了させることができてしまうという極めて正義に反する事態があり得ることになってしまいます。   ここでまた家事事件手続法を参照いたしますと、家事事件手続法44条1項は、当事者が死亡した場合に、法令による手続を続行する資格のある者は、その手続を受け継がなければならないとするとともに、同法45条1項が、法令上により手続を続行する資格がある者がいないときは、当該家事審判の申立てをすることができる者がその手続を受け継ぐことができると定めているわけです。これは具体的にどういう場面を言うかといいますと、例えば、遺産分割の場合に、当事者が亡くなると相続人が当然に受け継ぐということで、法令により手続を続行する資格のある者が受け継ぐことになるわけですが、例えば成年後見の申立てのような場面を考えますと、当然にその申立人を誰かが相続するという関係にないことから、手続が終了しそうに思えるのですけれども、このような場合にも手続を終了させて、なお必要があれば再申立てによる手続をやり直すことは、家事事件の迅速処理、紛争早期解決の観点から相当でないとされたために、ほかの申立権者が受け継ぐことができる、具体的には、成年後見で言いますと、配偶者や四親等親族、市町村長や検察官も申立権者でありますので、これらの者が申立てを受継することができるとした上で、その受継は本人の死亡から1か月以内にしなければならないと定めたものとされております。これは、要するに、民事訴訟における訴訟承継等とは異なりまして、家事審判手続において他の申立権者による受継というものが現実に認められているわけですから、刑事再審においても他の申立権者が受継することとした方が訴訟経済に資するとともに、紛争の迅速解決、刑事再審の場合で言えば無辜の迅速な救済につながるものと考えます。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○鴨志田委員 私の方からは、立法事実を補足するという形で意見を述べたいと思います。本日私の名前で提出をさせていただいた「受継に関する問題点」という一覧表の資料がございます。こちらを御覧いただきたいと思うのですが、現時点までにおいて、再審請求中に御本人が亡くなったことで手続が当然終了という形になった著名な事件というのが、この徳島ラジオ商、名張、大崎、狭山の各事件です。これらの事件では、請求人本人が申し立てた再審請求手続は、本人の死亡によって当然終了という形になり、その後、死後再審として遺族が改めて再審を申し立てるという形をとっているものがほとんどです。   唯一の例外は徳島ラジオ商事件で、この事件では、請求人の存命中から、かなり容体が危ないということで、親族が申立てを別途しておいて、二つの事件が一時期併存するという形をとっておりました。御本人が亡くなってから、御遺族の方の進めていた事件の方に、事実上、本人が申し立てていた事件の記録が引き継がれるという形がとられたことで、第5次請求という本人が申し立てていた請求手続は無に帰さずに済んだのですけれども、杓子定規にやれば、ここで一旦リセットという形になった危険も十分にあった事件でした。   これらの事件で、御本人の亡くなった後に親族が改めて再審を申し立てた名張、大崎、狭山といったケースでも、再審請求中に亡くなっているので、新証拠に対する判断はされていないという評価がされた事件については、事実上、新しく申し立てた御遺族の再審で、従前の本人の新証拠等が引き継がれるという扱いになっていることはあります。ただ、そうは言っても、例えば、狭山事件を見ていただくと分かるのですけれども、この事件は、先ほど村山委員からも紹介があったとおり、第3次再審請求というのが申立てから19年経過して、まだ請求審が係属している途中で御本人が亡くなりました。進行協議は64回に及び、その間、270点を超える新証拠が提出されていた中で、御本人が亡くなって事件が終結し、直後に御遺族、奥様が再審請求をしたのですけれども、やはり形式としては、新たに新証拠を提出して新たな再審申立てをするということで、これらの270点を超える新証拠についても、全て別途新しくコピーをとったりするような膨大な労力を経て、新たな再審請求が申し立てられるという状況になっています。事実上同一事件でありながら、これほどの多大な労力と時間を要するというのは、やはり憲法の保障する迅速な裁判を受ける権利にも実質的に反する事態だと思います。   そこで、一般論として、先ほど田岡幹事からもあったように、請求人本人が手続の係属中に死亡した場合には、再審請求権を持つ親族に対する手続の受継を認めていくべきです。そして、実はこの資料に挙げた事件は全て本人申立ての段階から弁護人が長く関わっている事件ばかりです。このような場合には審理を継続することに支障がなく、再審開始決定がされれば本人の死後であってもそのまま再審公判を開くことができるのでありますから、弁護人が付いている場合には、そもそも手続を終結させずに、決定に至るまで審理を続けるという形をとるべきではないかと考える次第です。日弁連案で439条の2の第2項で、受継の申立てがない場合には審理は終結するけれども、弁護人が選任されているときはこの限りでないという規定にしているのは、そのような意味があるところでございます。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○江口委員 日本弁護士連合会改正案では、第439条第1項第3号ないし第5号に定める者が再審請求手続を受け継ぐことができるとされております。仮に、現行の第439条の規定を前提としたとしても、日本弁護士連合会改正案では、規定上は、複数の者が再審請求手続の受継が可能ということになるかと思われます。そうしますと、複数の者がそれぞれに再審請求手続を受け継ぐ旨の申立てをすることも考えられますが、この場合に裁判所が誰を再審請求手続を受継した者として扱えばよいのか、日本弁護士連合会改正案では明らかではないように思われます。仮に、手続の受継を認めることとするのであれば、今申し上げた点についても何らかの形での対処が必要かと思いますが、再審請求手続を受け継ぐ旨の申立てをした複数の者らの立場や考えが異なるような場合もあり得ることを考えますと、この問題を解決するのに適当な規定を考えるのはなかなか難しいように思っております。   また、日本弁護士連合会改正案の第439条の2の第2項について、今、鴨志田委員から御説明がありましたが、再審請求者本人が死亡した場合でも弁護人という立場が継続するということにつきましては、他の刑事訴訟法の規定との整合性についても検討する必要があるかと考えております。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○池田委員 刑事訴訟法上は、再審請求審の係属中に再審請求者が死亡した場合の帰すうに関する規定は置かれておりませんが、田岡幹事から御指摘があったように、実務上の取扱いとして、判例によって、そのような場合には再審請求手続は当然に終了するとされております。そして、その理由としては、再審請求手続の受継を認める規定が存在しないこと、及び、一般に刑事手続における当事者たる地位は一身専属的なものと解されており、民事訴訟における権利ないし訴訟物の承継に類する観念を認めることができないことなどが挙げられていると承知しております。   他方で、鴨志田委員提出資料にも示されていますとおり、再審請求審の係属中に再審請求者が死亡する事例は一定程度存在しております。そして、このように再審請求者が死亡した場合であっても、他の再審請求権者が再審請求の意思を有している場合については、その者が新たに再審請求をすることができるというだけでなく、それまで係属していた再審請求手続における主張立証等を利用して手続を続行することを認めた方が再審請求手続の円滑化・迅速化に資することとなり得る上、有罪の言渡しを受けた者の名誉回復が必要な場合には、その速やかな実現にも資することとなり得るものと思います。   その再審請求者の範囲としては、刑事訴訟法上、法定代理人及び保佐人や配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹が、有罪の言渡しを受けた者ではないにもかかわらず、これに含まれています。その趣旨は、これらの者は、本人と法律上密接な関係にあり、本人の名誉を含む権利利益に重大な関心を有すると考えられるとともに、本人に対する刑罰権の発動等により類型的に法律上・事実上の影響を受け得る立場にあることから、本人に準ずる立場にある者として本人の利益を保護するために活動することが期待されるところにあると考えられます。   その上で、有罪の言渡しを受けた者又はその者に準ずる立場にある者が再審請求をし、再審請求審の係属中に死亡した場合において、これらの者と同列の者が手続を引き継ぐことは、有罪の言渡しを受けた者の名誉回復のためにその者に代わって訴訟追行するものであることから、判例の指摘を踏まえても、法律上明文を設ければ、そのような取扱いを認めることも許容され得るものと考えられます。   以上のことからしますと、再審請求をした者が死亡したときは、当然に手続を終了することはせずに、他の再審請求権者の申立てにより、その者に手続を受け継がせることとする仕組みを設けることは考えられると思います。他方で、以上述べたことからすると、再審請求権者以外の者は、本人に準ずる立場とはいえませんので、受継することができる者に含めることは相当でないと考えております。 ○川出委員 私も、再審請求者が死亡した場合に手続の受継を認める必要性と合理性があるという池田委員の意見に賛成です。その上で、手続の受継を認める場合には、再審請求者の死亡によって手続が当然には終了しないこととする一方で、手続を進行させることも相当ではありませんので、再審請求者が死亡したときは手続が中断又は停止するという形にする必要があります。   また、手続の受継の方式としては、再審請求者の死亡の日から一定の期間内に他の再審請求権者から申立てがあった場合に、その者に手続を受け継がせるという形になると考えられますが、再審請求者の死亡後に受継の申立てがされて手続が引き継がれるのか、それとも、受継の申立てがなされずに手続が確定的に終了するのかが決まらない状態が長期間継続し、手続が長期化するということになりますと、再審請求手続の円滑化・迅速化の観点から受継を認める趣旨に反しますので、妥当ではありません。再審請求権者は、受継を申し立てずに別途自ら再審請求をするということも可能なわけですから、そのことも踏まえますと、受継を申し立てることができる期間については、比較的短期間のものとすることが相当であると考えます。   この点につき、日本弁護士連合会改正案の第439条の2第1項では、受継を申し立てることができる期間は、再審の請求を行った者が死亡した日から6か月以内とされていますが、このような長期の申立期間を認めるのは、今申し上げました再審請求手続の円滑化・迅速化の観点から問題があるように思います。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○成瀬幹事 先ほどの鴨志田委員の御発言のうち、日本弁護士連合会改正案の第439条の2第2項、すなわち、再審請求者が死亡し、手続を受継する者がいない場合であっても、弁護人が選任されていれば再審請求手続を終結しないものとするという御提案について、簡潔に意見を申し上げます。   御提案のような取扱いを認めるための法律構成として一応考えられるのは、前回会議において、有罪の言渡しを受けた者が死亡等した場合に、その者からあらかじめ指名を受けた者に再審請求権を認めるかという論点について議論した際、私が申し上げた意見と同様になると思います。すなわち、弁護人が再審請求者を代理して再審請求権を行使するものとする代理構成と、弁護人が再審請求者から再審請求権を引き継いで行使するものとする権利承継構成の二つです。   しかしながら、前回会議で申し上げたとおり、いずれの構成についても法的な課題が多いと考えています。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。   ちょうど予定した時間になったところでございますけれども、この論点についてはこの程度でよろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 それでは、次に、「論点整理(案)」「8」のうち「(8)審理の終結及び決定日を告知することとするか」について審議を行いたいと思います。この事項については、おおむね15分間、午後4時40分頃までを目途に審議を行いたいと思います。御意見等がある方は挙手をお願いします。 ○鴨志田委員 この審理の終結と決定日の告知について、立法事実も踏まえて意見を述べたいと思います。   現行法の下で実務上、進行協議期日において裁判所が事実上の審理終結を告知したり、また、期日後に「事務連絡」という文書で審理終結日が通知されるといった様々な方法がとられています。しかし、一方で、何らの通知もないまま審理が終結したかどうかも分からないでいるうちに、突然、郵便で決定書が送達されてくるというケースもかなり多くあります。決定日に関しても、決定日というのは決定書謄本交付日ということになろうかと思いますが、その決定日の1週間ないしは3週間前に裁判所から電話で通知されるというケースが相当数あります。かなり例外的なものとして、日野町事件の第2次請求審では進行協議期日の中で審理の終結が告知され、その際に、期日で4か月後の決定日も告知されたことがありましたが、これは極めて特異なケースで、大体の事件、私ども日弁連が支援している事件では、決定日の1週間から3週間ぐらい前に、裁判所から、事実上、決定日の告知があるというケースが多いと承知しています。一方で、先ほどの審理終結のときにお話ししたように、日弁連の支援事件のような、充実した審理を要求されるような本格的な事件であっても、突然、いきなり、何も前触れもなく郵便で決定書が送達されてくるというケースもあります。   現行刑訴法では、抗告期間が極端に短いこともあり、審理の終結や決定日の告知がないと抗告の準備もままならず、弁護活動にも支障が出るということが非常に大きな負担になっております。したがって、審理の終結日の通知や、1か月程度の期間を置いた決定日の告知というのは、その後の手続を充実・円滑したものにするためにも必要不可欠であると考えます。   なお、日弁連では、先ほどの「8」の「(2)」の論点において、期日を開くということをベースに手続を進めるべきという立場でおりますので、その点に鑑みますと、手続が期日において進行するということになれば、審理の終結宣言も期日において行われることが望ましいのではないかと思います。   なお、家事事件手続法においても、審理の終結日や審判日は定められていて、実務上、事務連絡文書や期日において当事者に通知されるという扱いがされており、このような手続を参考にすることも有意義ではないかと思っているところです。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○江口委員 まず、この問題を検討するに当たりましては、他の刑事訴訟法の規定との整合性を考える必要があると考えております。刑事訴訟法上、決定を出す例としましては、再審の場合以外でも、控訴や上告の棄却決定、抗告・特別抗告等の決定、付審判請求の決定等、様々なものがございますが、そのいずれも審判の終結日や決定日を告知しなければならないとはなっておりません。特に、上告棄却決定は、被告人の刑を最終的に確定させる場面ではありますが、この場合でも、特段、審理の終結日や決定日を告知しなければならないという規定は設けられておりません。そうであるにもかかわらず、再審請求の場面においてのみこのような規律を設けることは、刑事訴訟法全体との整合性の観点から疑問が残るところでございます。   先ほど鴨志田委員から家事事件手続法の関係の御指摘がございました。確かに家事事件手続法ではそのような規定が設けられていることは承知しております。家事事件手続法別表第2に掲げる事件についてのみこのような規律が設けられているわけではございますが、それは、この類型の事件が、各当事者において審理に必要な資料等を保有していることが多いことから、各当事者が自ら審判の基礎となる資料等を提出するための期限を明らかにすることとして、その中で、十分に攻撃・防御を尽くさせようとしたものと考えております。審判の日を定めることとしたのも、これらの事件が言わば訴訟類似の構造であることに基づくものではないかと考えておるところでございます。   他方で、再審請求事件は、職権主義構造をとるものであり、裁判所が再審開始事由の有無の判断に当たって主張立証が足りないと考えれば、適宜釈明を求めることもできます。請求人や検察官に攻撃・防御を尽くさせるために審理終結日を示さなければならないという性質のものでもなく、また相当でもないように思われます。 ○大澤部会長 ほかに御意見のある方はおられますか。 ○田岡幹事 先ほど来、家事事件手続法の規律に言及がありましたので、私の方からもそれを踏まえた意見を申し上げたいと思います。   家事事件手続法の71条が、審理の終結日の告知規定でございまして、「相当の猶予期間を置いて、審理を終結する日を定めなければならない」としております。これは、立案担当者によると、先ほど江口委員がおっしゃられたとおりですが、当事者に裁判資料の提出期限及び審判の基礎となる裁判資料の範囲を明らかにし、十分に攻撃・防御を尽くさせることができるようにするためであるということでございまして、言わばこの期限までに出すべき資料があるのであれば出してくださいということをあらかじめ告知することによって、当事者の手続保障を図る趣旨であると理解されます。また、家事事件手続法72条は、「前条の規定により審理を終結したときは、審判をする日を定めなければならない」となっております。立案担当者によりますと、これは、家庭裁判所が審判する日は、当事者にとって重大な関心事であることから、審判を待つ当事者のために、審判をする日を定めなければならないとしたと規定されております。   刑事再審の場合は、確かに、別表第2事件のように対立当事者構造にあるわけではありませんが、刑事の再審請求をする再審請求人にとっても、もし、これから事実取調べの請求を追加でしようと考えていたのに、ある日突然、再審請求棄却決定がなされますと、出すべき証拠を出す機会を失ってしまうことになりまして、結果として、即時抗告や特別抗告をして、その新たな事実取調べの請求をするということになりかねず、十分な手続保障がなされないだけではなくて、再審請求審の審理が不十分なものになりかねず、結果として審理不尽による違法という問題が生じるように思われます。また、審判日の告知について言いますと、後に議論される不服申立期間が極めて短いこととあいまって、ある日突然、再審棄却決定が送達されますと、その送達を受けた日から3日間あるいは5日間のうちに、弁護人は、再審請求人と面会して、不服申立てをするか否か、また、不服申立ての理由をどのようにするかということを検討し、即時抗告申立書等を起案して、それを裁判所に提出しなければならないわけですが、突然、決定がなされますと不服申立てができないこともあり得るわけですから、不服申立権を保障した趣旨に反するものと考えられます。   なお、このような審理終結日あるいは審判日の告知は、決して家事事件手続法のみの問題でありませんで、例えば、行政不服審査法の中にも37条の審理計画の計画的遂行の中に3項で、審理員は、意見の聴取を行ったときは、遅滞なく審理手続の期日及び場所と審理手続の終結の予定時期を決定し、これらを審理関係人に通知するものとする、当該予定時期を変更したことも同様とするとし、41条で、審理員は、必要な審理を終えたと認めるときは、審理手続を終結するものとする、審理手続を終結したときは、速やかに、審理関係人に対し、審理手続を終結した旨並びに審理員意見書及び事件記録を審査庁に提出する予定時期を通知するものとするなどという規定がありまして、こうした家事事件手続や行政不服審査の手続でさえ定められているものですから、刑事訴訟のように、あるいは刑事再審手続のように、当事者の手続保障がより保障されなければならない手続において、こうした規定を設けることは十分検討に値するのではないかと考えております。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○成瀬幹事 私は、鴨志田委員や田岡幹事から御提案があったように、再審請求審における審理の終結日の指定やその通知、及び、再審請求について決定をする日の指定やその通知に関する規律を設けることは、再審請求審の円滑な進行に資するものであり、検討に値すると考えています。   もっとも、このような規律を設けることにより、再審請求審の審理が硬直化するような事態を招くことは避ける必要があります。そうした観点からは、仮に、先ほど論点「8」の「(1)」で提案させていただいたスクリーニングの仕組み、すなわち、裁判所が再審請求に係る基本的な資料の確認・検討を行った上で、直ちに終局決定をすべき事案と再審請求事由の有無についての審理を要する事案を選別し、後者の事案について審理を行う仕組みを設けるのであれば、前者の事案については、審理終結日や決定日の指定等に関する規律の対象外とすることも考えられるでしょう。   また、日本弁護士連合会改正案の第445条の15、第445条の16及び河井私案の第26条、第27条では、審理の終結日を定めるまでに「相当の猶予期間」を置かなければならず、再審請求について決定をする日をその「1か月前までに」通知しなければならない旨の規定が提案されています。しかし、そのような規定を設けなくとも、裁判所は、事案に応じて、適切な審理終結日や決定日を定めることになると思われる一方、そのような規定を仮に設けた場合、裁判所が柔軟に審理終結日や決定日を定めることができなくなり、かえって手続の円滑かつ迅速な進行が阻害されるおそれを生じ得るように思われます。   よって、審理の終結日を定めるまでに相当の猶予期間を置かなければならないとの規定や、決定日をその1か月前までに通知しなければならないとの規定を設けることについては、いずれも慎重な検討を要すると考えます。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○池田委員 私は、日本弁護士連合会改正案の第445条の16に定められた通知を受ける者の範囲について意見を申し上げたいと思います。   先ほどから田岡幹事、鴨志田委員から御指摘があったように、この決定日の通知は、突然その決定がなされることによって不服申立ての準備に支障を来すという意味で、必要性を支える事情があるとされていますが、そうであるとすると、検察官又は法定代理人若しくは保佐人が再審請求をしている場合には、有罪の言渡しを受けた者は、請求をしていない以上、再審請求についての決定に対し、即時抗告をすることはできないわけですので、有罪の言渡しを受けた者に通知をしなければならないとする必要性がないように思われます。また、検察官又は法定代理人若しくは保佐人が再審請求をしている場合、有罪の言渡しを受けた者は、現行制度上、意見聴取の対象となるにすぎず、手続に主体的に関与することが予定されていませんので、決定日という再審請求審の手続的事項を把握する必要性がないことからも、有罪の言渡しを受けた者に通知をしなければならないとする必要性はないと考えられます。したがって、御提案のように、この場合に、有罪の言渡しを受けた者に対しても決定日を通知しなければならない旨の規定を設けることについては、慎重な検討を要するものと考えております。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○後藤委員 現在の実情を考えますと、重大な再審事件では事実上、決定日、決定予定日を弁護人及び検察官にお伝えしていることが少なくないのではないかと思います。もちろん全てではありませんし、お伝えする時期についてもいろいろあると思います。ただ、このような運用がされているということは、事案に応じて柔軟に裁判所としては対応しているという見方をすることもできるのではないかと思います。再審請求事件については様々なものがありますので、成瀬幹事がおっしゃったスクリーニングというのがうまくいくのかどうか分かりませんけれども、そのような規定を設けずに柔軟に対応できるようにしておいた方がベターではないかと思っております。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○村山委員 私は、この規定を設けることの弊害はないのではないかと思います。今お話しいただいている委員の方のお話を聞いてみても、これが弊害になるとは思えないのです。実際に定めることの有益性というのは、今まで何人かの委員の方が言われたとおりなので、現に今そういうふうにやっているのであれば、それを明文化するだけだとも言えると思います。確かに、期間がどうかという問題もありますし、その通知を受ける範囲かどうかという問題は多少考えなければいけないところがあるというのは、私も意見を伺っていて分かったのですけれども、こういった規定を設けること自体に特に弊害があるとは思いませんので、しかも、これは、予測可能性としては重要な問題だと思っています。特に、不服申立ての関係では非常に重要な問題がありますので、是非ともこういう規定を設けるという必要性は高いと思っています。 ○大澤部会長 おおむね予定した時間を迎えておりますが、この際ということで更に御発言があれば挙手をお願いします。   よろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 それでは、次に、「論点整理(案)」「8」のうち「(9)審理を公開することとするか」について審議を行いたいと思います。この事項につきましては、おおむね15分間、4時55分頃を目途に審議を行いたいと思います。それでは、御意見等がある方は挙手をお願いします。 ○鴨志田委員 審理の公開について意見を述べます。   現行刑訴法では、再審請求手続における審理の在り方は、裁判所の広範な裁量に委ねられていますけれども、裁判所の職権行使が適切に行われなければ、裁判所の判断の公正・適正さが損なわれることにもなります。そこで、再審請求手続への再審請求人の積極的な関与を認めるとともに、裁判所の職権行使の在り方を広く社会の監視下に置くということも必要であり、少なくとも重要な手続は公開して行うということを条文上明記すべきであると考えます。なお、現行法上も公開が禁止されているというわけではなく、公開を要しないとされているだけということです。実際にも、再審請求事件の中で、日産サニー事件、これは福島地裁いわき支部の事件ですけれども、証人尋問が公開の法廷で行われたという実例はございます。   この点については、第2回の会議でもヒアリングでマスコミの宮下参考人もこのように発言をしておられました。「再審請求なので公開の法廷でやらないのは当たり前と捉えてしまっていた部分もあるのですけれども、やはり今こうして改めて考えてみると、長期化する原因が全く分からないと、分からないので検証のしようもないというようになっているなと感じています。袴田さんの事件ほど長期化するケースは少ないとはいえ、これぐらい時間が掛かってしまう事件があるというのは、やはり何か改善しなければならないと思うのですが、最初に申し上げたとおり、何でこんな時間が掛かったのかという素朴な疑問があるわけですね。それで、それがやはり見えないので検証のしようもないと。何か原因が見えてくれば、我々も何か社会に向かって問題提起することもできるとは思うのですけれども、やはりそこが見えないので状況が変わらないということもあるのかなと思っております。したがいまして、法律的なことは私も分かりませんが、裁判が公開されているそもそもの趣旨ということもあると思いますので、手続が見えることによって、やはり国民の批判にも耐え得る審理、そういったものが実現していくのではないかと感じております。」これは、マスコミ関係者であると同時に市民としての率直な御意見であろうかと感じました。   なお、先ほども紹介しましたが、台湾の2019年の刑訴法改正においては、429条の2で、それまでは書面審査がほとんどであった再審の審理が、原則開廷ということになり、この開廷とは、公開の法廷による審理を意味するということで、公開の法廷での審理が原則化したという、そのような改正が行われています。   最後に、日弁連案は全ての手続について公開を求めているというわけではなく、例えば、再審請求理由の陳述、事実の取調べ、事実の取調べ後の意見の陳述といった重要な手続について、公開の法廷でこれをしなければならないという旨の規定を設けているということを最後に付言しておきます。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○江口委員 刑事訴訟法上の規定におきまして、公判につきましては、憲法第82条第1項の「対審」に該当することから、当然に公開が要求されるかと思います。それ以外に公開が要求されているものとしては、勾留理由開示制度が挙げられますが、こちらは、憲法第34条後段の要請を受けたものであり、刑事訴訟法上の手続で公開が要求されるものは、いずれも憲法上の要請に基づいているかと思われます。仮に、再審請求において、陳述の機会等の期日を公開するという規定を設ける場合には、憲法上の要請ではない手続に関して、特別に再審請求の場面に関してのみ、法律で公開の規定を設けることになりますが、刑事訴訟法全体を通覧したときに整合的な規定となっているかは慎重に検討する必要があるように思われます。   なお、手続の適正さ・透明性の確保の観点だといたしましても、例えば、上告審におきましては、上告趣意書その他の書類によって上告の申立ての理由がないことが明らかであるときは、弁論を経ないで判決で上告を棄却することができることとなっております。それにもかかわらず、再審請求審においては、陳述の機会につきましては公開の法廷で行うことが義務付けられるというのは、やはり刑事訴訟法全体の整合性がとれないように思われるところでございます。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○宇藤委員 ただいまの江口委員の御発言と重なるところがございますが、私も、公開という点については疑問を持っていることを意見として明らかにさせていただきます。   再審開始の判断というのは、御承知のとおり、現行法では、決定により行われるものであり、口頭弁論に基づいて裁判をする必要はないと規定されております。刑事訴訟法第43条第2項です。日本弁護士連合会改正案は、その例外をなすものではありますが、意見書を読み、ただいまの鴨志田委員の御発言を伺っても、その理由は直ちには定かでないと思います。裁判所の審理の公正を期すために公開が役立ちうるということは、もちろん承知しておりますが、少なくとも現行法の下にあっては、その後に公開の手続を控えているような場合については、必要的なものとして公開は求められておりません。現在でも裁判所の裁量によって事実の取調べを公開することは可能であり、事実の取調べの一部を公開した例もあることは承知しておりますが、再審請求の審判手続は、「裁判の対審及び判決」に含まれるとの解釈は、一般的に支持されるところではありませんので、その点を踏まえて、公開を義務付けるということについては、先に申し上げたとおり疑問がございます。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○後藤委員 再審請求審というのは、当事者対立構造にはなく、また、判決をする場合でもありませんので、憲法第82条が予定している、「裁判の対審及び判決」は公開法廷で行うという要請には当たらないと解されます。そして、再審請求審は、証拠開示や争点整理など公判前整理手続において行われるようなことも行われているものと承知しており、公判前整理手続は、公判準備であることを理由に、基本的には非公開となっていることからしますと、再審請求審の全てについて公開することについては、その必要性や公判前整理手続との整合性の観点からも検討を加える必要があると思います。   また、実務的な観点からしますと、事実の取調べについては、証拠方法の制限が掛かっておらず、柔軟な取調べを行うことが可能であると理解しておりますが、もし公開を義務付けることになりますと、関係者の名誉やプライバシーなどに関する配慮を厳格にしなければならないなど、かえって審理が硬直化し、適時適切な事実取調べを行うことの阻害にならないかという懸念がございます。また、再審請求を考えている者の立場で考えてみたときには、再審請求をすると必ず公開の法廷で審理があるということになります。そうすると、不特定多数の傍聴人が審理を傍聴し、報道機関もその情報を知ることができます。このことが再審請求を考えている者が再審をちゅうちょする理由とならないのかについても、検討を要するように思います。したがって、審理を公開する規定を設けることについては慎重であるべきと考えます。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○村山委員 日弁連の案が、読んでみてそういうふうにお感じになるのかも分からないですけれども、鴨志田委員が先ほど言ったように、何でも公開の法廷でやれという案ではないのですよね。一定の場合は公開の法廷で、と言っているだけで、全て期日は全部公開の法廷だという案ではありません。事実の取調べも全部公開の法廷でやるべきだという案ではないと、私は理解しているところなので、少しそこは誤解があるのかなと思います。そういう意味では、公開の法廷で何でやらなければいけないのかというのは、先ほど鴨志田委員が説明したとおりなので、重複ですからそれ以上申し上げませんけれども、ある程度フレキシブルにやるということは十分可能ではないかと思います。そういう点も含めて、公開の法廷でやるべきこととしてこういうものを日弁連は考えている、例えば、請求の理由について陳述する機会は公開の法廷だというのと、それから、445条の8で、証人尋問、検証、鑑定は、裁判所外で行われるものを除き公開の法廷でしなければならないと、こういう形で規定しているということは御留意いただきたいと思います。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○成瀬幹事 再審請求審における審理のうち、一定の手続については公開しなければならないものとするという鴨志田委員や村山委員の御提案について、意見を申し上げます。   憲法第82条第1項は、「裁判の対審及び判決」は公開の法廷で行うことを規定しているところ、先ほど後藤委員がおっしゃったように、最高裁判例によれば、同条項は、刑事手続については、刑罰権の存否及びその範囲を定める手続について、公開の法廷における対審及び判決によることを定めたものであって、再審請求審の手続はこれに含まれないとされています。   もとより、この判示は、再審請求審における審理を公開してはならないことを意味するものではなく、鴨志田委員が言及されたように、実際に、再審請求審における証人尋問等を公開の法廷で行った例もあると承知しています。   それゆえ、再審請求審における審理の公開についていかなる規律を設けるかは、立法政策の問題であると考えています。   その上で、現在も、裁判所の裁量により再審請求審における審理を公開することができる中で、あえて法律上、再審請求審における審理の一部の公開を義務付けることとするのであれば、そのような法改正をすべき具体的な立法事実が必要であると思われます。   再審請求審で取り扱う事案の中には、法令上の方式に違反するものなど請求が容れられないことが一見して明白な事案や、書面のやり取りによって再審請求についての意見を聴取すれば足りる事案がある一方で、事案が複雑で争点も多く、裁判所、再審請求者、弁護人及び検察官が一堂に会し、主張や争点の整理をしたり、証人尋問等の事実の取調べをすることが必要となる事案もあるなど、実に様々なものがあります。   このような再審請求審の実情に鑑みると、個々の事案の審理の進め方に差が生じることは当然であると考えられるところ、現時点で、一般的に再審請求審において不適正な運用が行われており、その審理の公開を義務付けることにより裁判所の職権行使を国民の監視下に置くべき状況が生じているとまで言えるかどうかについては、慎重な検討が必要でしょう。   また、決定手続には再審請求手続以外にも様々なものがあるところ、現行の刑事訴訟法上、決定手続の審理について公開を義務付ける規定はない中で、再審請求審の審理についてのみ公開を義務付けることについては、先ほど江口委員がおっしゃったように、刑事訴訟法全体としての規律の整合性が問題となり得ると考えます。 ○宮崎委員 第3回会議のヒアリングにおいて田辺参考人から御指摘があったように、被害者等の事件関係者には、事件発生から長い年月を経過したがゆえに今更知られたくないという名誉、プライバシー等に関連する事情もあると考えられます。仮に、再審請求審における審理のうち一定のものの公開を義務付けることとした場合、その審理内容等について、傍聴人に知られるだけでなく、公開しない場合よりも詳細に報道等がなされ、広く世間に知られることとなることが想定され、それにより被害者等の名誉、プライバシーや生活の平穏が害されるおそれが高まることとなります。したがって、再審請求審の審理の公開を義務付ける規定を設けるとの御提案については、慎重に検討する必要があると考えられます。 ○大澤部会長 ほかに御意見はございますでしょうか。   ちょうど予定した時間も迎えておりますが、この論点についてはこの程度ということでよろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 それでは、本日の最後の論点ということになりますが、「論点整理(案)」の「10 再審請求に係る決定に対する不服申立期間」、具体的には、「再審請求に係る決定に対する不服申立期間を延長するか」について審議を行いたいと思います。この事項については、おおむね15分間、午後5時10分頃までを目途に審議を行いたいと思います。御意見等のある方は挙手をお願いします。 ○宮崎委員 現行の刑事訴訟法上、再審請求棄却決定又は再審開始決定に対する即時抗告又はこれに代わる異議申立ての提起期間は3日間、これらの即時抗告等に係る抗告裁判所の決定に対する特別抗告の提起期間は5日間とされており、これらの提起期間内に、申立て理由を記載した申立書を提出するか、申立書とは別に理由書を提出することが必要であると解されています。   再審請求審については、刑事訴訟法第435条第6号の再審請求事由の該当性をめぐり証拠の明白性が争点となる場合が多いところ、そのような再審請求審の審理においては、証拠の明白性を判断するために証人尋問等の事実の取調べが行われるなどして、証拠の量や争点が多くなる場合があり、その結果、審理が複雑なものとなったり決定書が長大となったりすることがあるほか、科学的・専門的見地から鑑定が行われた場合には、鑑定内容やそれに対する評価についての判示の当否について、他の専門家の意見をも踏まえて吟味することも必要となり得ます。   こうした中で、現状では、検察官として、3日又は5日という相当短い期間内に、決定の内容を詳細に分析・検討した上、即時抗告等の理由があるか否かを判断し、即時抗告等を行う場合には、再審請求審の中で取り調べられた証拠の評価や、これと確定審で取り調べられた証拠との総合評価の誤りなどについて検討した上、即時抗告等の理由の全体を記載した書面を作成しています。厳しい時間制限の中でこのような作業を行うことは、第3回会議で田辺参考人が述べられていたとおり、検察官にとって過度な負担になっていると言え、このことは再審請求者・弁護人にとっても同様であると考えます。   そのため、こうした不服申立てに係る手続の期間を延長することが相当であると考えています。 ○大澤部会長 ほかに御意見はございますでしょうか。 ○鴨志田委員 日弁連案でも、再審請求棄却決定に対する不服申立期間については、現在の即時抗告3日、特別抗告5日を延長して、通常審の控訴・上告と同様に14日間と定めるべきであるという意見を出しております。   その理由ですけれども、先ほど申し上げたとおり、再審請求の棄却決定に対する不服申立期間は、即時抗告が3日間、特別抗告が5日間という規定になっていて、しかもその申立書には不服申立ての理由も記載しなければならないということになっています。しかも、先ほどの決定の告知の問題のところでも申し上げましたけれども、ある日突然決定書が送達されてくるというような事案もあるところ、その決定書が再審請求人本人と弁護人の双方に日付を異にして送達されるということがございます。そのような場合、この不服申立期間は請求人に送達された日から起算されるということになっていて、決定書が被収容者である再審請求人に先に送達された場合に、弁護人がその事実を知る前に不服申立期間が起算し、期間内に不服申立てを行うことに非常な困難が生じたという事例も実際にございます。これでは再審請求人の不服申立権が実質的に保障されていないということになります。このような短い期間を何とか回避するために、例えば実務上、再審請求人の方から裁判所に対し、決定の刻限が暦の関係で月曜日になるように、請求審の決定は水曜日に出してください、即時抗告審の決定は月曜日に出してくださいと申し入れるなど、涙ぐましい努力をするような例も実際にあります。   このような実情の中で、例えば、台湾におきましても、先ほど来、何度か御紹介している2019年の台湾改正刑訴法434条2項において、請求人、当該決定を受けた者は前項の決定に不服があるときは、決定の送達を受けた日から10日以内に抗告を提起するという形で、以前は日本と同じ3日と5日だったところを10日間に延長するという立法措置をとっています。   日本におきましては、やはり通常の上訴、それから家事事件手続法といったようなところの例も含めて検討すると、やはり14日間というのが相当ではないかと考える次第です。また、日弁連案は450条3項を新設して、控訴や上告と同様に、申立て時に理由を付すことは必要とせず、抗告後30日以内に趣意書を提出するという上訴の場合と同じ規定にするということも提案をしています。また、やむを得ない事情があったような場合には、請求人や弁護人の申立てや職権で、その期間も延長することができるという4項も設けております。   なお、最後になりますが、日弁連案では再審開始決定に対する検察官の抗告は禁止すべきであるという立場に立っておりますので、以上の意見は再審請求人に対する棄却決定についての意見であるということを念のために申し上げておきます。 ○大澤部会長 ほかに御発言がございますでしょうか。 ○田岡幹事 鴨志田委員からも家事事件手続法に言及がありましたが、補足して発言したいと思います。   家事事件手続法は、審判と審判以外の裁判を区別した上で、審判に対する即時抗告の期間を2週間と定めております。民事訴訟法における即時抗告期間は1週間ですので、家事審判に対する即時抗告期間は2週間と、それより長くなっております。立案担当者の解説によると、これは、旧法時代から家事審判に対する即時抗告期間は2週間なのですが、家事審判の裁判形式が決定と同視されているが、その対象は、家族法に関する実体関係上の重要な事項が多く、実質的には判決事項にも比肩すべきものがあることなどに配慮し、民事訴訟における決定に対する不服申立てよりは、不服申立てをするか否かを慎重に検討することができるように配慮したものと説明されております。刑事再審は、私が考えるところでは、家事事件における重要な事項に比肩すべき、あるいはそれよりも重要な決定であると考えますので、家事事件手続法でさえ2週間としているものを、刑事再審の場合に3日間あるいは5日間にする理由は特にないものと思います。   ちなみにですけれども、家事事件手続法103条は、再審の手続を家事審判について明文化いたしましたが、この再審棄却決定に対する不服申立ては、やはり即時抗告ということになりまして、家事審判の再審の棄却決定に対する即時抗告期間は当然、2週間となります。同様に、非訟事件手続法67条1項も、終局決定に対する即時抗告期間は2週間と定めており、同法83条は、非訟事件の終局決定に対する再審を認めておりますので、この再審棄却決定に対する即時抗告期間も2週間ということになりますから、刑事再審の場合に、3日間あるいは5日間という極端に短い期間にする合理性はないものと考えます。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○成瀬幹事 刑事訴訟法第435条第6号の再審請求事由の該当性が問題となる事案においては、証拠の明白性、すなわち、新証拠が「確定判決における事実認定につき合理的な疑いをいだかせ、その認定を覆すに足りる蓋然性のある証拠」といえるかが争点になる場合が多いところ、その判断は、新証拠と旧証拠とを総合評価して確定判決における事実認定に合理的な疑いが生じるか否かに係るものであり、旧証拠の再評価の範囲が一定程度限定されるとしても、実質的には、通常審における事実認定と類似した性質を有していると言え、審理が複雑なものとなったり、決定書が長大となったりすることがあり得ます。   また、同法第435条第6号以外の再審請求事由の該当性が問題となる事案においても、同法第437条の規定を前提とすれば、確定判決以外の証拠により同法第435条第7号等に規定する事実が証明されたといえるか否かが争点になる場合も想定され、その判断は、通常審における事実認定に係る判断と類似した性質を有し、審理が複雑なものとなったり、決定書が長大となったりすることがあり得ます。   以上のことからすれば、現行法が定める3日又は5日という不服申立期間は、再審請求に係る決定に対する不服申立てを検討する者に過度な負担を強いていると言え、宮崎委員・鴨志田委員・田岡幹事が一致して述べられたように、その不服申立期間を一定程度延長することが適切であると考えます。   他方で、私が確認した限りでは、再審請求に係る決定以外の即時抗告の対象となる決定については、本案の裁判に付随する決定が多く、審理が複雑になったり、決定書が長大になったりすることは想定し難いため、再審請求に係る決定についてのみ不服申立期間を延長することにも合理性があると言えます。   なお、仮に、先ほど論点「8」の「(1)」で提案させていただいたスクリーニングの仕組みを設ける場合には、直ちに終局決定をすべき事案については、今申し上げた不服申立期間を延長する趣旨が妥当しないとして、その対象から除外することも考えられます。 ○川出委員 私も、再審請求に係る決定に対する不服申立期間を延長することについては、合理性が認められると思います。その上で、先ほど鴨志田委員から御説明がありましたように、日本弁護士連合会改正案では、不服申立期間を14日間に延長するとともに、即時抗告の提起後30日以内に、その理由を記載した抗告趣意書を原裁判所に提出しなければならないとして、抗告趣意書の提出期間を別途設けるものとされています。   抗告手続においては、抗告に理由があるときは、抗告裁判所に負担を掛けることなく、原裁判所において迅速に解決・処理するようにするとの観点から、刑事訴訟法第423条第2項によって、原裁判所が自ら抗告の当否を審査する、いわゆる再度の考案の制度が設けられています。この再度の考案を行うためには、抗告の理由が原裁判所に提示される必要があるわけですが、そうしますと、仮に、日本弁護士連合会改正案のように、不服申立期間を延長した上で即時抗告等の理由を記載した書面の提出期間を別途設けるとした場合、原裁判所にその理由が提示される時期がその分だけ遅れることになりますので、これに伴い、再度の考案が行われる時期も遅れるということになります。そして、抗告裁判所は、原裁判所が再度の考案を終えて記録を送付した後に実質的な審理を開始することになりますので、再度の考案の時期が遅れれば、それに伴い、抗告裁判所において実質的な審理を開始する時期も遅れることになります。こういった事態は、再審請求審における審理の迅速化の要請と整合しない面がありますので、不服申立期間を延長した上で理由書の提出期間を別途設けるべきかについては、慎重に検討する必要があると思います。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。   ほぼ予定した時間ということでございますが、この枠についてはこの程度ということでよろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 それでは、本日の審議はここまでとしたいと思います。   次回は、「論点整理(案)」「9 再審請求又は再審開始決定があった場合の刑の執行停止」から、引き続き審議を行うこととしたいと思います。次回会議においてどの項目まで審議を行うかにつきましては、期日間に事務当局を通じてお伝えすることとさせていただきます。   本日の会議における御発言の中で、特に公開に適さない内容にわたるものはなかったと理解しておりますけれども、具体的事件に関する御発言等もありましたので、非公開とすべき部分があるかどうか精査をした上で、そのような部分があるという場合には、御発言なさった方の御意向なども確認した上で、当該部分を非公開にすることを含めて適切な処理をしたいと存じます。それらの具体的な範囲や議事録上の記載方法につきましては、部会長である私に御一任いただくということでよろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 次回の日程につきまして事務当局から説明をお願いします。 ○今井幹事 次回の第8回会議につきましては、令和7年10月14日午前9時30分からを予定しております。また、次々回の第9回会議につきましては、令和7年10月31日金曜日の午前9時30分からを予定しております。詳細につきましては別途、御案内申し上げます。 ○大澤部会長 それでは、本日はこれにて閉会といたします。どうもありがとうございました。 -了-