法制審議会 刑事法(再審関係)部会 第8回会議 議事録 第1 日 時  令和7年10月14日(火)   自 午前 9時30分                         至 午前11時40分 第2 場 所  中央合同庁舎第6号館A棟5階会議室 第3 議 題  1 審議          ・「再審請求又は再審開始決定があった場合の刑の執行停止」          ・「再審請求審又は再審公判における被害者参加」          ・「再審請求審において取り調べられた証拠の再審公判における取扱い」          ・「再審請求手続に関する費用補償制度」          ・「その他」         2 その他 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○今井幹事 ただいまから法制審議会刑事法(再審関係)部会の第8回会議を開催いたします。 ○大澤部会長 本日は御多忙のところ御出席くださり誠にありがとうございます。   本日は酒巻委員、小島幹事、寺田関係官はオンライン形式により出席されています。なお、酒巻委員は所用のため途中で退出され、平城委員は遅れて出席の御予定と承っております。また、江口委員、井上関係官は御欠席でございます。   それではこれから議事に入りたいと思いますが、それに先立ちまして、恒例のことではございますが、一言だけお願いさせていただきたいと思います。前回の会議におきましては、関連する事項についてまとめて御議論していただいたということもあり、やむを得ない側面もございましたが、御発言の内容がかなり長いものとなることがあったように思われます。これまでも繰り返しお願いしているところでございますが、委員、幹事の皆様におかれましては、できる限り御発言をコンパクトにまとめていただきますよう改めて御理解、御協力を賜りたく存じます。また、これまでの会議におきましては、御発言に当たりまして条文の内容をかなり丁寧に引用していただいたり、あるいは当部会において実施したヒアリングの内容を詳細に引用していただくということもございましたが、条文につきましては条項の番号を御指摘していただいたり、またヒアリングにつきましては概略を御紹介していただくということでも目的は十分達せられるように思いますので、コンパクトな御発言に努めていただく一環として御配慮いただければ有難く存じます。どうかよろしくお願いいたします。   それでは、まず事務当局から本日お配りした資料について説明をしてもらいます。 ○今井幹事 本日は、山本委員御提出の資料といたしまして「再審事件における犯罪被害者の制度」と題する資料をお配りしています。   本日お配りした資料の御説明は以上です。 ○大澤部会長 本日お配りした資料につきまして御意見、御質問等がございましたら挙手の上、御発言いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 それでは、諮問事項の審議に入ってまいりたいと思います。   本日は「論点整理(案)」の「9」「再審請求又は再審開始決定があった場合の刑の執行停止」について審議を行った後、「11」「再審請求審又は再審公判における被害者参加」及び「14」「その他」、具体的には「再審請求に関する事項を被害者等通知制度の対象とするか」が挙がっておりますが、これらについて関連する事項としてまとめて審議を行い、その後「12」「再審請求審において取り調べられた証拠の再審公判における取扱い」について、次いで「13」「再審請求手続に関する費用補償制度」について、順次審議を行うこととしたいと思います。そのような進め方とさせていただくということでよろしゅうございますでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 それでは、まず「論点整理(案)」「9」について審議を行いたいと思いますが、この「9」につきましては、「(1)」として、「再審請求があった場合の刑の執行停止に関する規定を改めるか」、「(2)」として、「再審開始決定があった場合の刑の執行停止に関する規定を改めるか」の二つが挙がっておりますけれども、両者は関連する事項でありますことから、まとめて審議を行うこととしたいと思います。この点につきましても進め方として、それでよろしゅうございますでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 ありがとうございます。それでは、これらの事項につきましてはおおむね25分間、午前10時頃までを目途に審議を行いたいと思います。御意見等がある方は挙手をお願いいたします。 ○鴨志田委員 「9」の「(1)」と「(2)」の両方について、まとめてということでしたので、先ほど発言時間が長くならないようにというお話はありましたが、2点についてお話をさせていただくということで、この点は御理解を頂きたいと思います。   まず、「(1)」について、「再審請求があった場合の刑の執行停止に関する規定を改めるか」という点に関しては、日弁連案の442条に沿って意見を申し上げたいと思います。結論といたしましては、再審請求があった場合の刑の執行停止について、現行法では検察官のみが権限を有しておりますところ、裁判所にも職権による刑の執行停止の権限を認めることとし、再審請求人等も裁判所に対し刑の執行停止を請求できることとすべきであるという点が1点目、それから、刑の執行停止の中には死刑確定者に対する拘置の執行停止も含まれることを明文化すべきであるという点が2点目、3点目といたしまして、現行法において再審請求段階での刑の執行停止は裁量的でありますが、死刑確定者による再審請求がされた場合には必要的に刑の執行を停止すべきである、ただ、拘置の執行停止については裁量的とすべきであると規定をしております。   理由についてですけれども、まず1点目に関して、「改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会」において、宮崎委員、当時の宮崎構成員は、司法作用である裁判と行政作用である執行とを分離した上で、「行政権を担う検察官に刑の執行を指揮する権限を与えている、その上で刑事訴訟法は検察官に対し、刑の指揮権限の一環として、例えば442条ただし書等において刑の執行を停止する権限を与える一方、裁判所に対しては、再審開始決定があった場合に限って例外的に執行停止の権限を認めることとしています」と発言していらっしゃいますが、刑の執行は司法判断を前提とする以上、法が裁判所に刑の執行停止についての権限規定を設けることを例外視する必要はないと考えます。ドイツ刑訴法においても360条1項で、再審請求によって判決の執行は妨げられないとした上で、第2項においては、裁判所は執行の停止や中断を命じることができるとしております。   それから、拘置の執行停止の件ですけれども、御承知のとおり免田事件では昭和56年6月5日、熊本地裁八代支部から、拘置は刑の執行の一部とは解し難いという見解が示され、弁護人による拘置の執行停止の請求は認められませんでした。この見解は財田川事件でも踏襲されましたが、松山事件においては、仙台地裁が昭和59年3月6日付けで、刑法第11条2項の拘置は固有の意味の刑ではないが、死刑(絞首)の前置手続として広く死刑の執行手続の一環をなすと見られ、刑訴法448条2項にいう刑にはこれが含まれると解することが十分可能であることなどを理由に、刑の執行停止には刑法11条1項の死刑の執行の停止のみならず同条2項の拘置の執行を停止するということも含まれると解するのが相当であるとした上で、その上で拘置と死刑の執行は行刑上可分であり、拘置の執行を停止する場合にはその旨の明示の決定が必要であるとの見解を示しております。そして、2014年3月27日の静岡地裁決定において、袴田巖さんに対し、死刑の執行停止のみならず拘置の執行停止も決定され、同決定は2018年6月の東京高裁がした再審開始決定の取消しの際も維持され、その後も維持されたことから、判例は既に刑の執行停止には拘置の執行停止も含まれるとの見解に立っていると考えられます。とはいえ学説上は諸説あることから、日弁連案では刑及び拘置の執行停止と明文化することにした次第です。   さらに、死刑事件については請求時において刑の執行停止を必要的とすることについてですけれども、1999年に1例存在した再審請求中の死刑執行案件は、2017年以降、増加しています。同年の7月と12月に死刑が執行された4人のうち3人が、また、2018年に死刑が執行された13人のうちの10人が再審請求中でございました。しかし、再審請求中の死刑執行というのは、誤判からの現実的救済を受ける機会を永久に奪うという点において再審請求権を侵害する違法なものであると考えられます。   特に、第6回会議で私が提出した資料で紹介をしました菊池事件においては、1962年9月13日に第3次請求審で再審請求が棄却された翌日に、元被告人の死刑が執行されております。この死刑執行命令書の許諾印は、再審請求が棄却される2日前の同月11日付けであり、再審請求中の死刑執行ということができます。この事件では、後に特別法廷での審理が憲法違反であると指摘されていることも含め、えん罪の可能性がないとはいえないことは明らかです。しかし、元被告人は請求棄却決定に対して即時抗告を申し立てる機会を永久に奪われたわけです。   このことにつきましては、国際人権規約委員会が、再審請求中の死刑執行は自由権規約第6条に抵触するとの立場から、3度にわたり勧告を発しています。例えば2022年の第7回日本定期報告審査に係る総括所見では、パラグラフ21のCとして、「死刑囚の再審請求や恩赦に執行停止効を持たせ、死刑囚の精神的健康状態を独立したメカニズムで審査し、再審請求に関する死刑囚とその弁護士との全ての面会の厳格な秘密性を保障するなど、死刑事件についての必要的で効果的な再審査のシステムを確立すること」が勧告され、さらに、一般的意見36号のパラグラフ46では、「死刑の執行は、確定判決に基づき、かつ刑を言い渡された者全ての私法上の不服申立て手続を利用する機会が与えられ、更に検察官又は裁判所による監督的審査及び公的又は私的恩赦の請願の検討を含む、利用可能なすべての非司法的救済手段が解決された後にのみ行うことができる」と指摘されています。もっとも大阪地方裁判所の判決では、今年の5月14日ですけれども、再審請求中の死刑執行は違法ではないと判断されています。しかし、死刑制度を存置する以上、不可逆的刑罰である死刑が言い渡された事件について、死刑執行により本人による誤判是正の機会を永久に奪うということは、国際法上も日本国憲法上も許されないというべきであると考えます。   続きまして、今度は再審開始決定があった場合の刑の執行停止に関する規定についてですが、こちらについては日弁連案の448条で、再審開始の決定をしたときには決定で刑の執行を停止しなければならないという、まず、第2項に義務規定を置いています。1項は現行法どおりですけれども、第2項として、再審開始の決定をしたときには、決定で刑の執行を停止しなければならない、ただし、再審開始の決定が確定判決の罪となるべき事実の一部についてなされたときは執行停止をしないことができるという規定を加えた上で、第3項といたしまして、死刑の言渡しを受けた者について再審開始の決定をしたときには、裁判所は拘置の執行を停止しなければならない、ただし、いわゆる量刑再審の場合には拘置の執行停止をしないことができると規定をしています。   この点につきましては、立法事実からの補強をしておきたいと思います。死刑4再審といわれた事件のうち免田事件、松山事件、島田事件の各事件では、再審開始決定が確定した段階、つまり決定の主文において、死刑の執行停止も決定されています。財田川事件では、再審開始決定には死刑の執行停止についての決定はされていません。これらの事件は全て再審無罪判決の言い渡された日に拘置の執行停止がされて、当時の被告人らは釈放されています。   これらを再審開始決定から釈放までに至る期間として見た場合に、免田さんの事件では3年10か月が経過しています。財田川事件では再審開始決定から釈放までに4年9か月掛かっています。松山事件では4年7か月、島田事件では2年7か月掛かっています。無罪を言い渡すべき蓋然性が既に生じているにもかかわらず、これほど長い年月、身体拘束が継続しているということ自体が著しく正義に反すると言わざるを得ないと考えます。また、名張事件では2005年4月5日に第7次再審における再審開始決定の主文で死刑の執行停止も決定されています。しかし、拘置の執行停止はされていませんでした。第7次再審はその後、紆余曲折を経て再審請求が棄却され、元被告人の奥西勝さんは第9次再審の途中である2015年10月に八王子医療刑務所で獄死されています。仮に袴田巖さんのように開始決定と同時に釈放されていれば、適時適切な治療により生命を長らえた可能性も否定できないと考えるところです。そして、袴田さんの事件においては、2014年3月27日の再審開始決定の際に死刑及び拘置の執行停止がされています。当時、袴田さんの健康状態はかなり悪く、釈放の10か月後には入院し手術を受けなければならなかったという状態であったということは、第2回のヒアリングで間参考人から説明があったところです。これらの死刑再審事件の実情は、再審開始決定により死刑の執行のみならず拘置の執行停止も義務付ける規定の必要性を物語っているといえます。   一方で、死刑再審以外の事件でも再審開始決定による刑の執行停止を義務付けるべきと考えます。この会議の中でヒアリングのあった東住吉事件では、2012年3月に請求審の開始決定の後、請求人の職権発動の促しによって同年3月29日に刑の執行停止の決定がされました。しかし、検察官の不服申立てにより同年4月2日に刑の執行停止の取消し決定がされ、請求人らは受刑を継続することを余儀なくされました。2015年10月23日、大阪高裁は検察官の即時抗告棄却決定の際に刑の執行停止を決定し、検察官の異議申立ても棄却されて、同月26日に請求人らは釈放されましたが、当初の刑の執行停止決定から3年7か月が経過しています。このことについてはヒアリングで青木参考人も、「もう私のようにつらい思いは誰にもしてほしくない」と訴えておられましたし、塩野参考人も、新たな証拠によって合理的な疑いが生じたということで再審を開始して刑の執行停止を認めた以上、原則として最終的な結論が出るまでこれを維持してほしいと指摘をされているところです。ということで、このような事態を生じさせないためにも再審開始決定による刑の執行停止を義務付けるべきと考えます。 ○大澤部会長 10分を超える御発言だったと思いますので、もう少しコンパクトにすることにお努めいただければと思います。途中で御発言を制限するということはしたくないと思っておりますので、是非御協力をお願いしたいと思います。   ほかに御発言のある方はどうぞお願いいたします。 ○田岡幹事 私は鴨志田委員の意見に賛成を致します。   その上で、「(1)」の「再審請求があった場合の刑の執行停止に関する規律を改めるか」についてですが、先ほど鴨志田委員からも発言がありましたとおり、現行法442条は検察官の権限としているわけですが、裁判所の権限とするのが合理的であると考えます。現行法上、検察官は、検察官以外が再審請求人になっている場合には、再審請求理由を争う立場にありますので、刑の執行停止をすることが現実には期待し難いところがございます。仮に検察官が刑の執行停止をしなかった場合に、これを争う措置があるかと考えますと、現行法上は502条の刑の執行に対する異議の申立て制度がございます。   この点に関して、大阪高裁昭和44年6月9日決定は、有罪の確定判決について明らかに再審が開始されることの見込みが顕著であり、諸般の事情から刑の執行を差し控えた方が妥当と認められる場合にまで刑の執行を行うことは、刑事裁判における実体的真実発見の要請と裁判の具体的法的安定性との間の調和を生み出そうとする再審制度の本旨を無視し、受刑者に回復することの困難な不利益を与え、刑罰権の適正な実現を図ろうとする法の趣旨にも反するとして、結論的にはこれが不適法な処分としての性格を帯有するに至るので、異議の申立てができる場合があることを認めております。   ただ、この場合の管轄裁判所がどこになるかといいますと、「言渡しをした裁判所」となっておりまして、必ずしも再審請求審や即時抗告審と同じ裁判所になるとは限らないという問題がございます。本来、再審請求手続が係属しているのであれば、受訴裁判所である再審請求審や抗告裁判所がその裁量によって刑の執行停止を命じる制度とするのが合理的であると考えます。実際に、先ほど鴨志田委員からも発言がありましたように、ドイツは、裁判所は執行の猶予や中断を命じることができるという規定があると認識しておりますので、このような立法例が参考になるものと思います。   次に、「(2)」の「再審開始決定があった場合の刑の執行停止に関する規定を改めるか」についてでございますが、これは再審開始決定の効力、つまり確定判決の執行力が失われると考えるべきかどうかという問題であると理解しております。我が国と同じように再審請求審と再審公判の二段階手続を採用しているドイツでは、再審開始決定により確定判決の内容的確定力、執行力は阻止され、刑の執行は違法になるという解釈が通説、判例であると理解しております。ドイツでは再審公判において確定判決を維持する又は取り消すという判断をすることになっておりますが、我が国の刑事訴訟法451条は、更に審判をしなければならないと規定するのみでありまして、確定判決を維持する又は取り消すという判断をすることが予定されておりません。そうだとすると、再審開始決定によって、少なくとも確定判決の執行力は効力を失っていると考えるべきではないかと考えます。   先ほども引用しました大阪高裁の決定が、明らかに再審が開始されることの見込みが顕著である場合には刑の執行を停止しない処分が不適法になる場合があると判示していることなどに照らしましても、再審開始決定がなされたときには、刑事裁判における実体的真実発見の要請と裁判の具体的法的安定性の調和を生み出そうとする再審制度の本旨や、受刑者に回復することの困難な不利益を与え刑罰権の適正な実現を図ろうとする法の趣旨に反するといえますので、もはや刑の執行は許されず、必要的に刑の執行を停止すべきであると考えます。 ○大澤部会長 更に御発言を受けたいと思います。いかがでございましょうか。 ○成瀬幹事 私は、論点「9」の「(1)」について意見を申し上げます。   現行刑事訴訟法上の刑の執行停止に関する規定を見てみますと、第479条、第480条、第482条、第442条ただし書は、いずれも検察官又は法務大臣に刑の執行停止の権限を与えており、再審開始決定があった場合に限って、例外的に第448条第2項が裁判所に刑の執行停止の権限を認めています。これらの規定の趣旨は、以下のように考えられます。   そもそも、裁判の執行については、第472条により、行政権を担う検察官がこれを指揮する立場にあり、死刑については、第475条第1項により、法務大臣がその執行を命令する立場にあることから、刑の執行指揮権限の一環として、検察官又は法務大臣に刑の執行を停止する権限を与える。もっとも、再審開始決定があった場合については、確定判決の事実認定が覆り、その効力が失われる蓋然性が高まったこととなり、刑の執行を継続することが正義に反する場合もあり得るため、再審公判において被告人の有罪を主張・立証することもあり得る検察官にのみその権限を与えることとしたのでは、刑の執行停止に関する判断の公平さに疑いが生じ得ることから、例外的に裁判所にもその権限を認める。このように、行政権を担う検察官等と司法権を担う裁判所とで刑の執行停止に関する権限を分担させることが現行法の趣旨であると考えられます。   このような理解を前提に、鴨志田委員及び田岡幹事の御提案について考えてみますと、再審請求があったにすぎない段階においては、再審請求の前後で何らの事情変更も生じていないところ、そのような段階で裁判所に刑の執行や刑法第11条第2項による拘置を停止する権限を付与する規定を設けることは、原則として行政権を担う検察官等に刑の執行停止の権限を与え、司法権を担う裁判所がその権限を担う場面を例外的としている現行刑事訴訟法の諸規定及びその趣旨との整合性を欠くものといえます。   また、あえて御提案のような規定を設けなくとも、裁判所において、再審請求に理由があるとの心証を抱くに至ったのであれば、その時点で、直ちに再審開始決定をした上で、刑の執行や拘置の停止を決定することができるので、特段の不都合は生じないように思われます。   よって、御提案のような規定を設けることは、相当でないと考えます。 ○大澤部会長 更に御発言のある方は、いかがでしょうか。 ○宮崎委員 「(1)」に関しまして、死刑確定者について再審請求がされた場合に裁判所が一律に刑の執行を停止しなければならないとする旨の規定を設けるとの御提案については、そのような規定を設けた場合、再審請求に理由のないことが明らかなときであっても再審請求が繰り返される限り刑の執行をなし得ないこととなり、再審請求者に刑の執行停止の権限を与えるに等しいものです。死刑制度を存置している現行法において、死刑判決が確定しているのに再審請求をしさえすればこれが永久に執行できないというのでは、刑事裁判の実現を期することができなくなってしまうという問題があると考えられます。   さらに、第3回会議のヒアリングで磯谷参考人が、「遺族は死刑執行によって一つの区切りを付けて、前を向いて歩いていきます」と述べておられたことからも明らかなとおり、御提案のような規定を設けるとすると、被害者遺族にとって受け入れ難い結果をもたらし、ひいては国民の刑事裁判に対する信頼を失わせることとなるのではないかと考えられます。したがって、御提案のような規定を設けることは相当でないと考えられます。 ○大澤部会長 更に御発言がございますでしょうか。 ○後藤委員 刑事訴訟法上、刑及び拘置の執行に法的責任を負うのは検察官であるとされていると思います。仮に日本弁護士連合会改正案の第442条第2項のような制度とすると、裁判所が再審請求についての判断を下す前に、自ら刑及び拘置の執行について判断を下すということになろうかと思います。このことは刑事訴訟法全体との整合性に疑問を抱かせます。   また、実務上想定される問題点について述べさせていただきたいと思います。そもそもどのような場合に執行停止をするかの基準が明らかではありません。再審理由については軽い罪を認めるべき場合も含まれており、そのような理由が主張されて再審請求があった場合を想定しますと、確定判決の刑期、軽い罪についての処断刑の範囲、想定される量刑、執行済みの期間など、多数の不確定要素を検討することになるのではないでしょうか。さらに、再審請求に理由があると判断される蓋然性も判断要素として加味するとすると、裁判所はこれらの点を請求書、意見書、確定記録等の内容を検討して判断することとなるように思われます。しかし、その判断内容が再審請求に理由があるかの判断と、どのような、またどの程度の違いがあるのかが明らかでないと思われます。さらに、刑及び拘置の執行を停止するかは、再審請求審における審理の比較的初期の段階ですることが想定されているとしますと、再審請求審の判断が複雑化、長期化するように思われます。したがいまして、この点については慎重に検討すべきと考えます。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○池田委員 私からは「(2)」の「再審開始決定があった場合の刑の執行停止に関する規定を改めるか」について意見を申し上げます。   再審開始決定があった場合でも、それにより確定判決の効力が当然に失われるわけではないというのが一般的な理解であり、刑の執行や刑法第11条第2項による拘置が停止されていない被収容者である自由刑の受刑者又は死刑確定者は、この場合も依然として確定判決による刑の執行等を受けるべき立場にあります。また、再審開始決定が確定した場合であっても、改めて再審公判において犯罪事実の存否の審判が行われ、その結果、有罪判決が言い渡されることもあり得ることに鑑みますと、刑の執行のため被収容者の身柄を保全すべき必要性がなくなるものでもありません。   そのため、刑の執行や拘置の停止をするか否かは、手続が再審開始決定から再審の判決の確定までのどの段階にあり、今後どのような審理が予想されるかという点や、再審開始決定の判断構造、事案の重大性、被収容者の身柄保全の必要性等を総合的に考慮して判断する必要がある事柄といえますので、裁判所が事案ごとにそれらの事情を踏まえて判断すべきものであって、また、そうすることで事案に即した柔軟かつ適切な取扱いが期待できるものと思われます。したがって、御提案のように再審開始決定をした場合に刑の執行や拘置の停止をしなければならないとすることは相当ではないと考えます。   併せて付言いたしますと、執行の取消しに対して不服が申し立てられて、更に取消しがあったという事例について、先ほど鴨志田委員から御指摘があったところですけれども、その刑の執行や拘置の停止決定の判断、それ自体も慎重になされるべきでありまして、その適正を確保する必要性はなお高いと考えられますので、刑の執行や拘置の停止決定に対する不服申立てを禁止することも相当でないと考えます。 ○大澤部会長 一応時間の枠は来ておりますけれども、更に御発言があればお受けしたいと思いますが、いかがでございましょうか。 ○川出委員 別の問題について2点、意見を申し上げたいと思います。   1点目は、最初に鴨志田委員から御指摘がありました死刑確定者の拘置の停止についてです。自由刑と異なり、死刑についてはその執行を停止したとしても拘置が停止されない限り身柄拘束が継続されることになります。「死刑の言渡しを受けた者は、その執行に至るまで刑事施設に拘置する」と定めている刑法第11条第2項の文言からも、厳密に言えば、拘置は死刑という刑の執行には含まれませんが、これも鴨志田委員から御指摘があったとおり、実務上は、刑事訴訟法第448条第2項によって、死刑の執行とともに拘置の執行を停止することができるという解釈がとられており、実際に拘置を停止した事例も幾つか存在しております。実質的に見ても、第448条第2項の趣旨が、再審開始決定がされたことにより確定判決に基づく刑の執行が不都合となる蓋然性が高まり、これを継続することが正義に反する場合があることから刑の執行を停止するという点にあるのだとすれば、少なくとも、例えばDNA型鑑定等によって死刑確定者が犯人でないことが客観的に明らかになった場合などにおいて、拘置を停止することができず、身柄拘束を継続しなければならないというのは明らかに不当であると思います。   その一方で、裁判所が死刑の執行を停止した場合に、第448条第2項の規定により拘置を停止することができるかということは、その文言からは必ずしも明らかではありませんし、過去の裁判例の中には、拘置は刑の執行ではないということから、拘置の停止決定をすることができる旨の明文規定がない以上、裁判所はそのような決定をすることができない旨判示したものもあります。こういった解釈上の疑義を解消する観点から、裁判所は刑事訴訟法第448条第2項により、死刑の執行を停止した場合には拘置を停止することができるということを明文化することを検討すべきであると思います。そして、このことは検察官が刑の執行を停止することができる旨を定める刑事訴訟法第442条ただし書についても同様に当てはまりますので、これについても同様に、検察官が同条ただし書によって刑の執行を停止した場合には拘置を停止することができるということを明文化することも同時に検討すべきであると考えます。   もう1点は、今申し上げた刑事訴訟法第442条ただし書に基づく検察官による刑の執行の停止時期に関する意見です。同条ただし書は、検察官が再審の請求についての裁判があるまで刑の執行を停止することができる旨を定めています。これは、再審請求が認容される蓋然性があり、刑の執行により被収容者が回復困難な不利益を被るおそれがあるときは、刑の執行が相当性を失うことになり得るという考慮に基づく規定であると解されます。本規定の趣旨がその点にあるとしますと、そのことは再審請求がなされ再審開始決定がなされるまでの間だけではなく、その後、再審公判における判決が確定するまでの間においても同様に妥当しますし、むしろ再審開始決定がなされた後の方がより一層妥当するとも考えられます。恐らくはそうした理由から、実務上も「再審の請求についての裁判があるまで」の意義について、再審公判における判決が確定するまでとする解釈に基づく運用がなされていると承知しております。もっとも、そういった解釈に対しては再審の請求についての裁判があるまでという条文の文言との乖離があるとの指摘もなされていまして、そのこと自体は否定し難いところです。したがって、こういった解釈上の疑義を解消する観点から、検察官による刑の執行や拘置の停止は、再審公判における判決が確定するまですることができるということを法文上明確化すべきではないかと思います。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○村山委員 私は請求時において裁判所が裁量で執行を停止するということがやはり必要な場合があると思うのです。要するに、検察官が請求時にできるというのはいいのですけれども、検察官請求なら当然止めると思うのですけれども、検察官請求でない場合は、検察官がその執行停止をするというのはまず考え難いと思います。しかし、現実には開始になって無罪になっている事例というのはそこそこありますので、そういった場合に裁判所がその請求書を見た段階で、これは止めた方がいいのではないかという判断をするということは当然あり得るのではないかと、それがやはり条文上できないというのは非常に問題だろうと思っています。   また、死刑の場合は、確かに請求だけで死刑が止まるということになると、何回も繰り返すと死刑確定者が執行停止権限を持つことになるのではないかという宮崎委員の発言というのは、私は確かに実務的にそういう問題が生じ得るとは思うのですけれども、ただ、現に執行されてしまった場合のリスクを考える、つまり、執行された後に誤判だ、再審が始まるということが、例えば、実際に執行された後に請求人が現れて、実際は再審が開始したとなっても、これはもう取り返しが付かないということになりますので、やはりその点は何らかの形で考慮すべきではないかと思っている次第です。   もう一つ、開始決定とともにというのは、やはり開始決定によって合理的な疑いが生じるという蓋然性が生じた以上、それ以上刑の執行自体を継続するということが正義に反するということは間違いないのではないかと思います。確かに開始決定が確定力とか執行力を破るのかという理論的な問題についてはいろいろな見解があって、必ずしもドイツ法だ、どうだこうだといっても、日本では通説的な理解ではそうなっていないとは私も承知していますので、その辺の議論は当然整理が必要だと思いますが、現実問題として、やはり刑を継続するということ自体に、いいか悪いかと言えば、やはり止めるのが筋だろうと思っています。 ○大澤部会長 少し枠を延長して御議論いただきましたけれども、そろそろ頃合いという感じもいたしますが、いかがでしょうか。更にこの際という御発言がございますでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 それでは、この段階としては論点「9」につきましてはこの程度ということにさせていただきたいと思います。   次に、「論点整理(案)」の「11」「再審請求審又は再審公判における被害者参加」及び「14」「その他」に挙げられております「再審請求に関する事項を被害者等通知制度の対象とするか」について審議を行いたいと思います。これらの事項についてはおおむね25分間、午前10時35分頃までを目途に審議を行いたいと思います。   御意見等がある方は挙手をお願いいたします。 ○山本委員 元々犯罪被害者は検察官から起訴、不起訴の処分結果や刑事裁判の結果が伝えられることはありませんでした。平成9年11月に起きた世田谷の小学2年生がダンプカーにはねられて亡くなった事件の御遺族の方は、運転手の逮捕から2か月後に公判期日を検事に確認したところ、不起訴処分ということが伝えられました。その後の運動によって、検察官の被害者等通知制度が平成11年に開始しています。その後、被害者が自分が被害を受けた事件の刑事裁判に参加する被害者参加制度が平成20年12月から始まっています。このような制度が設けられたのは、制度化しなければ被害者が自分の事件についての情報を得られず、また、その事件の手続に関与することができないという前提がありました。   これらを前提に、今回の再審における被害者に関する論点として3点が挙げられましたが、結論としては、1点目について再審請求の被害者参加については、期日への参加と検察官の説明義務、2点目の再審公判の被害者参加については、平成20年12月1日より以前の事件についての被害者参加の拡大、3点目の再審請求に関する被害者等通知制度については、再審請求を被害者等通知制度の対象とするということを求めたいと考えています。   まず、「11」の「(1)」の再審請求審における被害者参加ですけれども、被害者参加については、今日提出した資料の「11」の「(1)」のところに挙げられている五つの点について被害者は行うことができます。ただ、再審請求審においては公判期日が開かれないため、そのまま被害者参加制度を導入することはできないと考えています。ただ、この会議で議論されてきた論点において、例えば再審請求審に期日が設けられるのであれば、その期日に出席したい被害者は公判期日の出席のように出席することができるというような制度が必要だと考えています。また、その期日が公開されるのであれば、その期日に出席の意思がある被害者の出席を認める必要は、より高くなると考えています。これらが認められないとしても、被害者が再審請求に関してマスコミ報道やマスコミの取材で知るのではなく、司法関係者から推移について説明を受ける機会が必要だと考えます。その説明を裁判所が行うことはなさそうですし、言わば相手方たる弁護人が行うことも考えられないため、検察官から説明を受けるということが必要だと考えます。   次に、「(2)」の再審公判における被害者参加ですけれども、現行法上、被害者参加制度が実施された平成20年12月1日以前に起訴された事件、また、同日以前に確定した事件についての再審公判は被害者参加することができません。しかし、被害者参加については起訴された時期によって区別する必要や相当性はなく、この平成20年12月1日は裁判員制度の前ですから、これとも関係ないと考えていますので、法体系上も問題ないと考えています。そうであれば、再審公判における被害者参加に関する規定を改めて、起訴日を問わず再審公判には被害者参加することができるというふうに改めるべきと考えます。   最後、「14」のところですけれども、被害者等通知制度は被害者が自分の事件の推移を知る重要な制度であって、これがなければ、報道されなければ自分が関係した事件の経緯をたどることができません。現在、被害者等通知制度に再審請求が含まれていないため、再審請求について通知することができません。しかし、先ほど述べたとおり、自分の事件について経緯を把握したいと考える被害者がそのすべを得る必要があるため、希望する被害者は、マスコミ報道で知るのではなく、被害者等通知制度を利用して把握することができるようにすべきと考えます。   今回の論点の3点ですけれども、飽くまで希望する被害者が利用することができる制度とすべきであって、被害者に利用する意思を確認した上で実施されるべきものとする必要があります。この点、具体的な制度を考えると、「11(2)」の被害者参加は、参加の申出を待てばよくて、「11(1)」の再審請求審に対する参加についても、被害者参加を参考とする以上、同様に被害者からの申出をもって対応すればよいと考えています。問題は「14」の通知制度ですけれども、これについては遡って適用しないと、現実には再審請求審や再審公判の参加の利用ができないため、遡って利用できるようにする必要があって、被害者の申出があれば再審請求に関する通知を受けることができるようにすべきと考えます。   ただ、遡って全ての被害者に改めて確認することは不可能ですので、それこそ被害者が被害を忘れたいにもかかわらず被害を思い出させたり、現行の保護観察所からの通知のように、通常の封筒に差出人を個人名、親展として発出したとしても、差出人の住所が霞が関1の1の1、6のA4とかになっているのですが、そうなっていると法務省のA棟からの発出と分かるため、家族に秘匿している被害を知られてしまうおそれがあります。そのため、検察官主導で行う通知制度の利用確認は改正後から行うしかなく、改正前の被害者は申出をすれば再審請求に関する通知を受けることができるとすべきだと思いますが、この点については、ほかによい方法がないか引き続き検討したいと考えております。   ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○宇藤委員 私からは、「11」の「(1)再審請求審における被害者参加を認めることとするか」について意見を述べさせていただきます。   この点について結論を申しますと、私はこの制度を設けるということについては疑問があります。現行法の被害者参加制度における被害者参加人は訴訟当事者ではありません。訴訟当事者は飽くまでも検察官であり、被害者参加人は、この検察官との間で密接にコミュニケーションを持ちつつ訴訟活動をする存在として位置付けられるということになります。このような位置付けである以上、職権主義の下に構成される再審請求審については、通常審と異なって検察官は訴訟当事者ではなく、検察官が全般に関与するとは限りません。仮に現行制度の枠組みを前提に考えるならば、少なくとも被害者参加人が検察官とは別個独立に訴訟に参加するということは考えられないでしょうし、また、逆にこのような参加機会を被害者に認めるということになれば、現行法とはかなり立て付けの違うものになるだろうと思います。   先ほどの山本委員の御発言を伺いますと、再審請求審の手続にも期日制度が設けられた場合であることが前提となっているとも理解できますので、期日に検察官が出席するのが必須であるのであれば、場合によっては違う考え方ができるのかもしれません。ただ、そのことを踏まえてみても、実質的に見てやはり疑問があります。例えば、第6号の再審事由のように、再審公判開始をめぐって新規かつ明白な証拠が存在し確定審の判断に合理的な疑いがあり得るかを判断するという場面において、被害者参加人が参加するというのがどのような意義があるのかというのかが先ほどの御説明では分かりません。もし事件の行方を知るということが大事ということであれば、被害者への通知をどのように図るかという検討をすれば足りるのではないかと考える次第です。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○池田委員 私からも「(1)」の再審請求審における被害者参加について意見を申し上げます。   再審の手続への参加を希望する被害者の方の最大の関心事は、有罪の言渡しを受けた者の刑事責任の存否等にあると思われるわけですけれども、この点についての審判は、再審開始決定が確定した後の再審の公判手続において行われるのであって、再審請求審はその前段階の手続にとどまります。また、被害者は再審の公判手続においては、被害者参加人となれば公判期日に出席した上で証人尋問や被告人質問、あるいは事実又は法律の適用についての意見の陳述のほか、検察官の権限行使に関する意見申述をすることも認められています。このように、被害者は再審の公判手続に参加することなどが可能とされることで、刑事裁判の推移や結果を見守り、これに適切に関与したいとの心情は、まずはそれが十分に配慮されているものと考えられます。   その上で、再審請求審における被害者参加を認めることについては、ただいま宇藤委員からも御指摘があったように、制度設計上の課題が少なくないものと考えられます。例えば、手続の構造に関わるものとして、現行の被害者参加制度においても被害者参加人は検察官や弁護人といった訴訟当事者と同じように訴訟行為を行うことができるわけではなく、一定の訴訟行為を一定の制約の下で行い得るにとどまっています。具体的には、被害者が被告事件の手続への参加、証人尋問や被告人質問、事実又は法律の適用についての意見陳述をするためには、検察官にその旨の申出をしなければならず、検察官が意見を付してその申出を裁判所に通知して、裁判所の許可を受ける必要があります。そのほか、証人尋問は一般情状に関する事項についての証人の供述の証明力を争うために必要な事項についてのみすることができるとされていますし、被告人質問は被害者参加人が刑事訴訟法上の規定による意見の陳述をするために必要があると認められる場合にのみすることができるとされています。   被害者参加人のこうした位置付けは、通常審の訴訟構造、すなわち検察官が訴因を設定して事実に関する主張立証を行う一方で、被告人・弁護人がこれに対する防御を行い、これらを踏まえて公正中立な裁判所が判断を行うという基本的構造を維持しつつ、その範囲内で被害者が刑事裁判に参加することを認めることとされたことによるものです。その際、被害者参加人による権限行使は、検察官との間で密接なコミュニケーションを保ちつつ行われることが想定されており、つまり、被害者参加人による訴訟行為は検察官が公判審理の全過程に関与することを前提としているものと考えられます。これに対し、再審請求審は通常審とは異なり、制度上検察官が審理の全過程に必ず関与するとは限らないのであって、それでは被害者参加を可能とする上で前提となるともいうべき基本的な条件が整わないと考えられます。   また、再審請求審は刑事責任の存否等について判断する公判手続を開始するか否かを決定する手続であって、手続における中間的な一段階に位置付けられるという意味では、検察官による公訴の提起の手続、裁判所による付審判請求手続、検察審査会による審査手続と同様のものであると言えます。そして、これらの手続については被害者参加の仕組みは設けられておりません。そのため、再審請求審についてのみ被害者参加を認めることとすることは、刑事手続全体としての規律の整合性という観点からも慎重に検討する必要があると考えております。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○後藤委員 私も「11」の「(1)」について若干発言させていただきます。   被害者参加制度の在り方については、ただいま宇藤委員、池田委員の方から御説明があったとおりと思っております。再審請求審で審判対象としているのは、無罪を言い渡すべき明らかな証拠の有無といったものであって、情状面については審理の対象とならないものと現時点ではなっております。仮に被害者参加が認められたとしても、行うことができる活動というのは極めて限られるのではないかと思われます。したがいまして、再審請求審において被害者参加制度を導入することは慎重に考えるべきだと思います。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○成瀬幹事 私は、論点「11」の「(2)」、すなわち、「被害者参加制度が設けられる前に判決が確定した刑事被告事件の再審の公判手続についても被害者参加を認めるべき」という山本委員の御提案について、意見を申し上げたいと思います。   被害者参加制度は、犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律により設けられたものであり、同法附則第3条第1項が規定する経過措置により、同法の施行の際、現に係属していた事件については、その通常審及び再審の公判手続において被害者参加が認められておらず、同法の施行前に判決が確定した事件については、その再審の公判手続において被害者参加が認められていません。   このように、一定の事件の公判手続について被害者参加制度の適用対象外とする経過措置が設けられたのは、第1に、同法の施行の際、現に係属していた事件の通常審及び再審の公判手続については、被害者等が参加することが想定されない状態で手続が開始されて進行していることから、被害者等の参加を認めることにより、既に進行している手続に混乱が生じるおそれがあること、第2に、同法の施行前に判決が確定した事件の再審の公判手続については、通常審の公判手続と再審の公判手続とは一つの刑事被告事件として一体として見るべきものであること、によるものと説明されています。   こうした経過措置は、政策的判断として一定の合理性を有するものと考えられますので、これを改め、現在、被害者参加制度の適用対象外とされている事件の再審の公判手続について新たに被害者参加を認めることとする場合には、積極的な立法事実が必要となるように思われます。   また、仮に、こうした事件の再審の公判手続における被害者参加を認めることとすると、こうした事件のうち、これまで再審の公判手続が行われたものについては被害者参加が認められてこなかった一方で、今後、再審の公判手続が行われるものについては被害者参加が認められることとなるところ、被害者参加を認めるべき必要性・有用性の点で、前者の手続と後者の手続との間に違いを見いだすことはできず、被害者等の間で公平性の問題を生じさせるおそれもあるように思われます。   以上の点に鑑みると、現行法上、被害者参加制度の適用対象外とされている事件の再審の公判手続における被害者参加を新たに認めることについては、慎重に検討する必要があると考えます。 ○大澤部会長 更に御発言がございますでしょうか。 ○川出委員 私は、論点「14」の「再審請求に関する事項を被害者等通知制度の対象とするか」という点について、意見を申し上げたいと思います。   被害者等通知制度は、今まで話題となっていました被害者参加制度とは違って、法律上の制度ではなく検察実務における運用上の措置として行われているものです。そこで、意見を申し上げる前提として、被害者等通知制度について再審請求がなされた場合も含めて具体的にどのような運用が行われているのか、御説明いただけないでしょうか。 ○大澤部会長 宮崎委員、御発言いただけますか。 ○宮崎委員 現在、検察実務におきましては、検察の活動等について被害者を始めとする国民の理解を得るとともに、刑事司法の適正かつ円滑な運用に資するため、法律上の制度ではないものの、運用上、被害者等通知制度を設けて、被害者等の権利利益の尊重に努めています。   被害者等通知制度においては、検察官又は検察事務官が被害者、その親族又はこれに準ずる者の取調べ等を実施したときは、通知の希望の有無を確認し、希望する者に対して、事件の処理結果、公判期日、刑事裁判の結果を通知することとされています。また、検察官等が被害者等の取調べ等を実施しないときでも、被害者が死亡した事件又はこれに準ずる重大事件については、通知の希望の有無の確認が困難な場合を除き、被害者等に通知の希望の有無を確認し、希望する者に対して、事件の処理結果、公判期日、刑事裁判の結果を通知することとされています。   そして、再審公判については現在も被害者等通知制度の対象とされている上、担当検察官等において、個々の事案に応じ、再審公判における検察官の主張・立証の内容に関する説明を行うなどしているところであります。また、再審請求審については被害者等通知制度の対象とはされていないものの、被害者等の方々の御意向も踏まえつつ、担当検察官等において、個々の事案に応じ、再審請求審における審理の経過等に関する説明を行うなどしているところであります。   このように、現在の検察実務においては、再審請求審についても個々の事案に応じ必要な説明を行うなどして、被害者等の権利利益の尊重に努めているところであります。それを超えて再審請求に関する事項を一律に被害者等通知制度の対象とすることについては、再審請求は不適法であるものや主張自体失当とされるものなどが相当数存在する一方で、本格的な審理が必要となるものはごく一部であることからすれば、その必要性に疑問がある上、再審請求は有罪判決確定後、長期間が経過してからなされることもあり、被害者等の方々が確定審の段階において通知を希望していても、再審請求審の段階においてその希望を持ち続けているか不明である場合もあると考えられ、それにもかかわらず一律に通知することとした場合、被害者等の方々の生活状況等によっては、その心情の安定等を乱し、かえって権利利益を害することともなりかねません。したがって、再審請求に関する事項を一律に被害者等通知制度の対象とすることについては、その必要性・相当性について慎重に検討する必要があると考えていますが、いずれにせよ、検察としては引き続き、被害者等の方々の意向等も踏まえつつ、個々の事案に応じて適切に対応してまいりたいと考えています。 ○大澤部会長 引き続き川出委員お願いします。 ○川出委員 法制審議会は法務大臣の諮問に応じて民事法、刑事法、その他法務に関する基本的な事項について調査審議するという機関であり、基本的には法制度の在り方を議論する場であると理解しております。山本委員の御提案の趣旨は、被害者の権利利益の保護という観点から十分理解できるものですけれども、法制審議会の役割に照らしますと、被害者等通知制度の在り方についてはこの部会において結論を出すべき性質の事柄ではないように思います。   その上で、宮崎委員のお答えによれば、再審請求に関する事項については、被害者等通知制度の対象とはされていないものの、被害者の方にいっさい何もお伝えしないというわけではなくて、被害者の方の御意向を踏まえつつ、担当検察官において個々の事案に応じて必要な説明を行うなどして適切に対応しているとのことでした。こういった運用が被害者の方々に伝わっていないのであれば、それを周知することも含めて、引き続き検察実務における適切な運用が行われるということを期待したいと思います。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。   この段階としては、尽きたということでよろしゅうございますでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 それでは、「11」と「14」に関する議論はここまでということにいたしまして、次に論点整理案「12」「再審請求審において取り調べられた証拠の再審公判における取扱い」、具体的には「再審請求審において取り調べられた証拠の再審公判における取扱いに関する規律を設けることとするか」について審議を行いたいと思います。この事項につきましてはおおむね20分間、午前10時50分頃までを目途に審議を行いたいと思います。   御意見等がある方は挙手をお願いいたします。 ○鴨志田委員 私の方からは、日弁連案の451条の2の条文に基づいて説明をさせていただきたいと思います。   結論としましては、再審請求手続において取り調べられた証拠については、再審公判において訴訟当事者が取り調べないことに異議を述べない限り、当然に取り調べることとすべきであって、その限度で伝聞法則の適用を除外する、また、当事者が再審公判において証拠の証明力を争う権利はこれを保障するというものです。   この点について、立法事実による補強ということで御説明をしたいと思います。再審請求手続における審判対象と再審公判におけるそれとは、もとより異なっております。とはいえ、特に6号再審では、新証拠の明白性判断は新旧証拠の総合評価による確定判決の有罪認定の吟味であって、再審公判における有罪・無罪の判断と実質的に重なる部分も多くございます。しかも、本格的な再審請求事件においては再審請求審の審理が重厚化しており、そこで検察官にも反論の機会を与えつつ取り調べられた証拠について再審公判で厳格に証拠法則を適用し、全て一から取り調べ直すことは審理の重複になり、請求人に対する過重な負担と審理の長期化をもたらすと考えられます。   袴田事件においては第2次再審において、再審開始決定後9年もの長きにわたり検察官は抗告審の中で主張立証を行ってきました。具体的には、差戻し後の即時抗告審だけでも1年2か月にわたって、みそ漬けになった5点の衣類の血痕に赤みが残るかという論点について2年3か月にわたり実験を行い、証人尋問などの事実調べを行っています。それにもかかわらず、検察官は再審公判でも改めて有罪の主張立証を行い、そこで5人の証人尋問が実施され、再審公判にも1年7か月が費やされました。この点、最も根本的な問題は、再審開始決定に対する検察官の不服申立てが認められて審理が長期化しているという点なのですが、再審請求審において検察官が関与して事実調べが行われた証拠については、再審公判でも当然に取り調べることとすべきであると考えます。   また、徳島ラジオ商殺し事件では、検察官は再審請求段階で行った証人尋問、これは検察官が当然反対尋問を行ったものになりますが、これに係る証人尋問調書、請求審段階で検察官が作成した警察官の供述録取書などをことごとく不同意とし、再審公判において、これらを全て改めて証人として調べるということになれば数年単位を要するという可能性もございました。この点、裁判所はこれらのほとんどを証拠物たる書面として採用したり、刑訴法328条を適用したりして事態の打開を図りましたが、請求審段階における証人尋問調書は321条1項1号に準ずるものであり、かつ伝聞例外に当たらないとして証拠能力を否定しました。なお、免田事件では第6次請求段階で、請求審での証人尋問調書は321条2項書面として証拠能力が肯定されています。このように裁判所の適切な訴訟指揮で事態を打開した事例もある一方、訴訟指揮に委ねるだけでは証拠の採否にばらつきが生じるおそれもあるため、立法による解決が必要であると考えるところです。   最後に、布川事件においては、再審段階での証拠開示によって初めて存在が明らかになった目撃者の初期段階の検面調書について、再審公判で検察官がこれを不同意としたことから、事件から43年経過後に、77歳となった当該目撃者の証人尋問が行われています。検察官が自ら作成した検面調書を再審公判において不同意とするということは禁反言の原則に照らしても正義に反することから、このような場合にも伝聞例外によって証拠能力を認めるべきではないかと考えるところです。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○宇藤委員 ただいまの鴨志田委員のお話も聞きまして、私から意見を述べさせていただきます。結論としては、少なくとも当然に証拠能力が与えられるということについては疑問と考えております。   日本弁護士連合会の改正案では、再審請求審において取り調べられた証拠について、再審公判において刑事訴訟法第320条第1項にいう伝聞法則を適用しないこととされています。改正意見書では第451条の2について、再審請求手続では既に実体的な審理がされており、再審請求手続において提出された証拠の事実の取調べの対象となったものは適法な手続を経て裁判所の判断の基礎とされているがゆえに、それまでの審理の結果を尊重して、証拠の取扱いにつき蒸し返しを認めるべきではないという旨が示されています。この点については、先ほどの鴨志田委員の御意見と同じであると思います。ただ、伝聞法則というのは、教科書的になりますけれども、正確な事実認定を確保するための要になる原則の一つでございます。仮に再審請求審において、その事実の認定につき伝聞法則が前提となっているのであれば、その限りにおいて蒸し返しを求めることには意味がありませんので、日本弁護士連合会の改正案には説得力があるものと考えます。   しかしながら、再審請求審における事実認定は一般に自由な証明で足りるとされており、日本弁護士連合会の御提案でもその前提は変わっていないものと拝察いたします。そうであるとすれば、仮に日本弁護士連合会の御提案のように再審請求審において取り調べられた証拠について、再審公判において伝聞法則を適用しないとすると、再審請求審において取り調べられているものの、本来であれば刑事訴訟法第320条第1項により証拠能力が否定される証拠が厳格な証明による事実認定に供されることになりかねず、事実認定の証拠法の考え方にはそぐわないのではないかという疑問が生じます。改正意見書によれば、だからこそ再審公判において証拠の証明力を争う権利を保障することとしたと説明されておりますが、これは証拠能力があるということを前提にして証明力を争う機会ということでございますので、先ほど述べたような疑問を払拭するようなものではありません。したがって、少なくとも当然に証拠能力があるものとして公判では取り扱うという点については疑問となるのではないでしょうか。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○後藤委員 私も以下の点から、この点については慎重であるべきと考えております。   まず、再審請求審は決定手続により確定判決の有罪認定に合理的な疑いを生じさせるか否かを判断するもので、その手続に証拠法則の適用はないと解されているのに対して、再審公判は文字どおり公判手続として公開の法廷において心証を形成し、被告人の有罪・無罪を判決手続により判断するものであり、事実認定に際しては証拠法則に基づく厳格な証明によることが求められているという点で、両者は基本的な目的や性質を異にしております。したがいまして、現状は再審請求審において新規性及び明白性が認められた証拠であっても、再審公判ではその証拠能力が否定され、取り調べられないというケースもあり得ることになります。しかし、このことは再審公判が公判手続である以上、当然のことと考えます。   仮に日本弁護士連合会改正案第451条の2のような規定を設けた場合を想定しますと、確定審の審理中に一般的な弁護活動が行われていれば発見できた証拠に関して、厳格な証拠法則が適用され、確定前の公判においては証拠能力が否定されたにもかかわらず、確定前の弁護活動がおろそかであったため再審請求審において初めて発見されて、その証拠が新証拠となって再審開始決定に至ったような場合には、再審公判において当然に証拠能力が認められるということになります。しかし、このような取扱いは確定前の公判手続における攻撃、防御の重要性を大きく損なうものであり、刑事訴訟法全体として見たときにかなりバランスが悪いように感じます。   また、実務上の観点から見ましても、再審請求審においては関連性の吟味が十分になされないまま幅広く証拠提出を認めてきた場合がありますが、仮にこれらの証拠について再審公判で当然に証拠能力を付与されるとなると、再審請求審における証拠の採否に慎重にならざるを得なくなり、再審請求審の審理長期化を招く一因となるようにも思います。加えて、かなり幅広に提出された多数の証拠がそのまま証拠となると、再審公判の審理について争点や証拠調べが散漫となり、公判中心主義の観点から相当なものとは言い難くなるように思います。   したがいまして、再審請求審において取り調べられた証拠について、再審公判において当然に証拠能力を付与するという規定を設けることに関しては、慎重に検討すべきであると考えます。 ○村山委員 これは非常に悩ましい問題だと私自身も思っているわけですけれども、やはり再審開始になった証拠を再審公判で調べないというのは、一体どういう再審公判の審理になるのかということを考えていただきたいのです。全く対象のない審理をやってしまうのではないかと。要するに、対象が違うとおっしゃいますけれども、実際は請求審でやっている審理の内容と再審公判でやっている審理の内容は、6号再審の場合は基本的にオーバーラップしていると私は認識しています。ですから、そういう意味ではやはり再審請求審において取り調べた証拠、しかも開始決定の原因となっている証拠を取り調べないという形になってしまうのでは再審公判の形にならないだろうと思っている次第です。   より大きく言えば、再審請求審と再審公判の関係性について、より考えなければいけないのだろうと思っています。その原因は、現在は請求審の審理が肥大化して非常に長期間掛かっています。再審公判になると比較的短期間で終わっているわけですけれども、それでも全く同じような証拠調べを繰り返しているという事例があることは事実です。ですから、再審請求審の審理自体をもっとスリムにするという必要が非常に大きいわけですけれども、その上で、再審公判における審理は再審請求審の審理を踏まえた形でするべきだと思います。   確かに証拠法則として、事実の取調べであれば伝聞法則というのがかからない、ところが再審公判だと通常の公判手続ですから証拠法則が違うというのは、それはおっしゃるとおりだと思いますけれども、しかし、再審請求審で、例えば証人尋問を検察官も立ち会った上でやっている、深刻なといいますか、請求自体が認められるかどうかというところで対立の激しい事件は、事実の取調べを行い、しかもその事実の取調べには検察官が立ち会っている場合がほとんどです。こういった場合には、その証人尋問を実際にやっているわけですから、そういった形で証拠調べが行われているものについて調べない、若しくは証拠物について調べないということは、私は再審公判の在り方としては考えられないのではないかと思っています。その一つの方法としては、やはり再審請求審において検察官が立ち会ってその証拠調べに関与した場合には、これは伝聞証拠だということでその証拠能力を検察官が自ら否定するということは、むしろ禁反言原則等により禁止されると考えるべきではないかと思います。   また、再審請求審でたくさんの証拠を調べた場合、再審公判で調べると、これは大変なことになるのではないかという御意見がありました。しかし、現在の実務でどうやっているかというと、全部調べているわけではないのです。再審請求審で調べた中で実際に公判で調べましょうという合意したものだけを再審公判で調べているのが実情でございます。そういう意味では、日弁連案でも451条の2のただし書で、訴訟関係人が取り調べないことに異議のない書面又は物についてはこの限りではないということで、全部取り調べるということを目的にしているわけではありません。必要なものを必要な限度で取り調べる、しかも再審請求審で取り調べたということを無駄にしない、しかし再審公判の実を上げるためには、証明力を検討するための機会は保障するという立て方で条文ができていると理解していますので、そういった形で御理解いただければと思います。そして、320条の伝聞法則の点で、その規定を適用しないという意味は、私は先ほど申し上げたように、再審請求審で実際に関与した以上はその証拠自体の証拠能力を否定するということは許されないのではないかと考えております。 ○池田委員 私も、再審請求審において取り調べられた証拠について、再審公判において刑事訴訟法第320条第1項を適用しないという点について意見を申し上げます。   繰り返し指摘されておりますように、再審公判は確定審における公判と同様に、刑罰権の存否及び範囲を定める事実を認定するものであって、証拠法則に基づく厳格な証明が妥当する一方で、再審請求審においては事実認定について自由な証明で足りるとされております。請求審で取り調べられた証拠を証拠能力の制限なく直ちに取り調べることができる、特に伝聞法則の適用を認めないとすると、伝聞法則の趣旨である事実認定の適正確保、あるいはその事実認定の正確性を損なわないようにするという観点から相当でないと考えられます。   そのことを更に具体的に申し上げますと、日本弁護士連合会の御提案によると、再審請求審において取り調べられた証拠であれば、再審公判において被告人に有利なものに限らず不利なものについても同項が適用されないということになり、例えば、再審請求審において被告人であった者の犯行を目撃したという内容の供述調書が取り調べられていた場合、再審公判においてその供述者の証人尋問を経ることなく、かつ刑事訴訟法第321条以下の伝聞例外の要件を満たさずとも当該供述調書が被告人の犯人性の認定に供されるということになりますが、これが不当であることは明らかではないかと考えます。   したがって、御提案のように再審請求審において取り調べられた証拠について再審公判で刑事訴訟法第320条第1項を適用しないとすることは相当でないと考えます。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○成瀬幹事 再審公判において、当事者は、再審請求審における主張や訴訟活動に拘束されるものではなく、再審請求審と再審公判とで、争点及び証拠関係が異なるということも十分に考えられます。   例えば、再審請求審において、被告人であった者が犯人性を争い、具体的な主張として、「凶器から採取された試料のDNA型が被告人であった者のそれと一致しないこと」と、「犯行の目撃者による犯人識別供述が信用できないこと」という二つの主張をしたところ、前者の主張、すなわち、DNA型に関する主張に係るものとして取り調べられた鑑定書の信用性が否定される一方で、後者の主張、すなわち、犯人識別供述の信用性に関する主張が容れられ、再審開始決定がなされたとします。その後、再審公判に至り、被告人であった者がDNA型に関する主張をせず、犯人識別供述の信用性に関する主張をし、これのみが争点となった場合には、再審請求審において取り調べられたDNA型に関する主張に係る鑑定書等は、再審公判において不必要となるでしょう。この例からも分かるとおり、証拠の取調べの必要性は、その時点における争点及び他の証拠との関係で判断されるべきものです。   この点に鑑みますと、再審請求審において取り調べられた証拠について、その当時とは状況が異なり得る再審公判においても、両当事者が取り調べないことに異議のない場合という例外的な場合を除き、必ず取り調べなければならないという硬直的な規律を設けることは、かえって再審公判の審理を遅延させるリスクを生じさせるように思われます。   よって、鴨志田委員及び村山委員の御提案については、その必要性・相当性について慎重な検討を要すると考えます。 ○村山委員 手短にお話ししますけれども、私はこのただし書というのは非常に活用されるのだろうと思うのです。つまり、再審公判が始まった段階で争点整理するわけですよね。そうすると、請求審で取り調べた証拠の半分とか大部分は必要ないということで取り調べないということも十分あり得る。これは現実の裁判でもそうやっているのです。ですから、その点の御懸念は必要ないと思うのです。つまり、争点整理を裁判所が適切に行った場合に、これはもう請求審で調べたけれども再審公判では問題になりませんよねという場合は、取り調べないということに異議がないという形にして、実際には取り調べないという形になるのだろうと思うのです。そういうふうにすると、現実問題としては取り調べるべき証拠は限定されてきますし、また、その中で重要な証拠については証明力について争うという形になるのでしょうから、当然その後の証拠調べをどうするかという話に移行していくのだろうと思いますので、それは再審公判における争点整理の問題で、ある程度整理が付くだろうと私は考えています。 ○大澤部会長 予定した時間をおおむね迎えつつありますが、更に御発言はございますでしょうか。 ○宮崎委員 先ほど成瀬幹事から御指摘があったとおり、公判においてどのような証拠を取り調べるべきかという証拠調べの必要性は、審理の対象である公訴事実の存否をめぐる具体的な争点及び他の証拠との関係で判断されるべきものであるところ、再審開始事由の存否を審理する再審請求審と公訴事実の存否を審理する再審公判とでは審理の対象が異なるのであって、それぞれの審理における争点及び証拠関係が異なることは十分に考えられるところでありますから、再審請求審において取り調べられた証拠であっても再審公判においては取調べの必要性が認められない場合も当然にあり得ます。そうであるにもかかわらず、再審請求審において取り調べられた証拠の全てを再審公判において一律に取り調べなければならないという義務付けをすることは、合理性を欠くものであり、相当でないと考えられます。   また、再審請求審において提出される証拠については、法令上、伝聞法則の適用もなく、関連性・必要性も含めて、提出を認めるべきかどうかを相手方の意見を聴いて裁判所が吟味・判断することともされていないし、実情としても、第4回会議の平城委員提出資料にあるように、再審請求事件の中には、裁判所の迅速な判断を求めるというよりも、審理の中で主張立証を尽くすことに意義を見いだしているケースなどもあるとの指摘がなされ、裁判官の論文においても、再審請求審においては、関連性の吟味すら十分になされないまま、幅広く証拠提出が行われる場合が多いとの指摘がなされています。そうであるにもかかわらず、仮に再審請求審において取り調べられた全ての証拠を再審公判においても取り調べなければならないこととすると、再審公判において、刑事訴訟法第320条第1項により証拠能力が否定されるべき伝聞証拠や関連性・必要性の乏しい証拠の信用性等をめぐって無用な争点を生じるなどして争点を拡散させることとなりかねず、再審公判における審理を不必要に長期化させることにもつながりかねないと考えられます。   したがって、御提案のように、再審請求審において取り調べられた全ての証拠について再審公判において一律に取り調べなければならないこととすることは、相当でないと考えられます。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○宇藤委員 ごく簡単に、ざっくりとしたところをお話しいたします。   先ほど村山委員から、再審公判と再審請求審との関係をどのように考えるか、どのようにイメージするのかというのが大事だというお話がございました。私もその点は非常に大事かなと思っております。これまでのこの審議会の流れで申し上げますと、例えば鴨志田委員あるいは田岡幹事から、再審請求審はすっきり、本番は再審公判ということで考えている、したがって再審公判でひっくり返るということがあっても仕方がない、という制度設計を目指すのだという旨のお話があったかに思います。   そういうお立場であるということは踏まえた上で今回の御提案の部分を拝見いたしますと、これはどちらかというと現在のかなり慎重な再審請求審を前提としており、村山委員の先ほどのお言葉を踏まえますと、肥大化した再審請求審の在り方の肯定を前提として、整理したものであると聞こえてしまいます。確かに村山委員が御指摘のように、実際の運用では争点整理等を活用すると余り懸念はないのかもしれませんが、それでも原則的に、少なくとも伝聞法則が適用されないのだということが当然だと言われてしまいますと、日本弁護士連合会の改正案の全体像が結局どのようなものなのか、当該部分の提案が全体像に合っているのかどうかということについて懸念を持っております。 ○大澤部会長 ほかに御発言のある方がいらっしゃれば、なるべく簡潔にお願いします。 ○田岡幹事 先ほど村山委員、宇藤委員から、再審請求審と再審公判の関係をどう考えるかということが大事だというお話がありました。私は、再審請求審と再審公判の二段階手続を維持するのであれば、再審請求審というのは言わば再審公判の準備手続的な役割、つまり中間的な判断をする役割を担っているのだろうと理解しております。本番である再審公判において、準備段階である再審請求手続において取り調べられた証拠の全てを取り調べる必要はないにしても、少なくとも無罪を言い渡すべき明らかな証拠とされたものを取り調べる必要があることに異論はないと思われます。そうであるにもかかわらず、改めて証人尋問をしなければ証拠能力が付与されないというのは不合理なのではないかという問題意識から、当然に証拠能力を認めるべきという御提案をしていると理解をしております。   書証の場合には、再審請求手続において取り調べられたとしても、反対尋問を経ておりませんので、改めて再審公判で取り調べるのであれば、証人尋問の機会が必要であるということは分からなくはありませんが、証人尋問が実施されている場合には、再審請求手続において検察官が関与し反対尋問まで行っているにもかかわらず、改めて再審公判において検察官が反対尋問をする必要があるのでしょうか。そうなりますと、証人は2回証人尋問を受けることになりまして、当然、1回目の証人尋問においてどのような反対尋問を受けたかといったことは全て分かっているわけですから、言わば予行演習をした上でもう一度証言をするということになります。その結果、新たな弁解が生まれるなど、審理の混乱をもたらしかねず、再審請求手続や再審公判の審理の迅速化の要請にも反することになりますし、真実発見をかえって妨げることにもなりかねないように思われます。このような場合に、刑事訴訟法321条1項1号書面として再審請求手続における尋問調書を取り調べるということは迂遠であって、最初から再審請求手続における証人尋問調書に証拠能力を認めて取り調べることにしてはどうかと思います。   松尾浩也先生の「刑事訴訟法(下)新版補正第二版」にも、再審請求審は再審公判に先行し、これと連続する手続であるから、その審理結果のうち請求人及び相手方に関与の機会が与えられた部分については、公判手続の更新に準じて再審公判に取り入れるべきであろうとされております。もちろんこれは証拠能力のない証拠も取り調べるということを言っているわけではないのですけれども、しかし事実上連続した手続であるということから、再審請求手続において事実調べが行われた場合には、その結果については再審公判においても合理的に利用すべきであるという発想であると理解しております。 ○大澤部会長 この枠につきましてはこの程度とさせていただきたいと存じますが、よろしゅうございますか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 それでは、次に「論点整理(案)」「13」「再審請求手続に関する費用補償制度」、具体的には「再審無罪となった事件について再審請求手続に要した費用を補償することとするか」について審議を行いたいと思います。この事項についてはおおむね25分間、午前11時25分頃までを目途に審議を行いたいと思います。   それでは、御意見等がある方は挙手をお願いいたします。 ○田岡幹事 日弁連改正案188条の7及び8は、再審請求手続に要した費用を費用補償の対象にするということを御提案しておりますので、私からその趣旨を御説明いたします。   現行刑事訴訟法188条の2は、無罪の判決が確定したときは、国は当該事件の被告人であった者に対し、その裁判に要した費用を補償すると規定しておりますが、この裁判に要した費用の意義につきまして、最高裁判所昭和53年7月18日判決は、再審請求手続において要した費用は刑訴法188条の2による補償の対象とならないとしておりますので、現状では再審請求手続において要した費用は対象外、しかし再審公判において要した費用は対象になると、こういったことになっております。   しかし、元々、費用補償制度が創設された趣旨は、無罪の確定判決を受けた者に対し、公訴の提起から裁判の確定に至るまでに要した防御のための費用を補償するということにありまして、裁判の確定というのがここでいう再審公判の無罪判決の確定であるとしますと、再審請求手続はそのために不可欠な手続であります。先ほども申しましたように、再審請求手続において取り調べられた証拠が再審公判でも取り調べられる、利用されることが実態としては非常に多く、再審請求手続は事実上、公判準備機能、再審公判の準備手続の機能を有していると評価できる場合が多いと考えられます。そうしますと、再審開始決定によって無罪判決が確定した場合に、再審請求手続の費用を除外する合理的な理由はありません。   なお、通常審においては国選弁護制度がありまして、被告人が国選弁護人の弁護を受けていた場合に、弁護士費用は訴訟費用として国が負担することになっていることとの均衡から、私選弁護の場合にもその費用を補償するのが合理的であると説明されております。現状では再審請求手続には国選弁護制度はないわけですけれども、既に申し上げておりますとおり、裁判所不提出記録の閲覧謄写のために弁護人が不可欠であることからしますと、再審請求手続における国選弁護人の制度を設ける、また、閲覧謄写の費用の負担の制度を設けるということが考えられますので、仮に再審請求手続における国選弁護制度を創設するのであれば、それとの均衡からも、再審請求手続における費用補償制度を設けることが合理的であると思われます。   なお、付言いたしますと、この問題は今に始まった問題ではなくて、刑事補償法の改正の際に、昭和63年4月1日に刑事補償法の一部を改正する法律案に対する衆議院法務委員会の附帯決議がなされておりまして、第3項で、政府は、再審により無罪の確定判決を受けた者に対し再審請求手続に要した費用を補償する制度について更に調査検討すべきであるとの附帯決議がなされております。昭和63年4月28日の参議院法務委員会の附帯決議でも、おおむね同趣旨の附帯決議がなされております。しかし、私が知る限り、その後現在に至るまで、再審請求手続において要した費用を補償する制度について、政府において更に調査検討がなされたとはうかがわれません。   元々、先ほど引用しました最高裁判所の判例の調査官解説でも、無罪の確定判決を受けた者にとっては、再審請求手続が事実上公判準備的機能を有していたことになるとともに、その手続において最も多くの費用を要しているため、その費用の補償を求めてくることは今後とも十分に予想されるところであるとした上で、この判例は将来費用補償制度に関する立法政策を検討する際に参考になると思われると指摘されておりました。   このような指摘を踏まえて、この度の再審法の改正を全体として考えますと、再審請求手続における国選弁護制度及び裁判所不提出記録の閲覧謄写の制度を設けることと併せて、費用補償の制度を設けるということが合理的であると考えます。   なお、ドイツでは確定判決により終了した手続の再審請求によって生じた費用について費用補償の対象になっていると伺っておりますので、これも参考になるかと思います。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○池田委員 私の意見を述べるに当たって、現行制度の趣旨を確認しておきたいと思います。現行刑事訴訟法においては今、田岡幹事からも御指摘があったように、被告人に対して無罪判決が言い渡されて確定した場合には、その者が応訴を余儀なくされたことによって受けた財産上の損害を国の責任で補償するのが衡平の精神にかなうことに鑑み、立法政策としてその損害相当分を補償することとされています。   現行法上、その補償される費用の範囲については、「被告人若しくは被告人であつた者又はそれらの者の弁護人であつた者が公判準備及び公判期日に出頭するに要した旅費、日当及び宿泊料並びに弁護人であつた者に対する報酬に限る」とされております。他方で、再審請求手続において要した費用はこれに当たらないとされているわけですけれども、それは再審請求手続が被告人であった者の有罪・無罪を直接審理する公判手続の前段階をなすものにすぎないこと、また、当事者主義による対審構造をとっておらず、被告人であった者及び弁護人の出頭する公判期日等はなく、それに応じて補償すべき旅費、日当及び宿泊料も観念し得ないことや、弁護人の報酬等について客観的に相当な額を算定する基準もないことなどから補償の対象とされなかったと承知しております。   以上を踏まえますと、再審請求手続に要した費用を補償の対象とすることの可否あるいは当否については、なお十分に検討することが必要であると考えております。 ○大澤部会長 それでは、ほかに御発言はございますでしょうか。 ○川出委員 私からは、日本弁護士連合会改正案の第188条の7の規定について意見を申し上げたいと思います。   まず、第188条の7第1項では、再審開始決定が確定したときに費用を補償するとされています。しかし、再審開始決定が確定したというだけでは、なお再審公判において有罪判決が言い渡され、それが確定する可能性があります。先ほど池田委員から御発言がありましたように、費用補償制度が設けられた趣旨は、被告人に対して無罪判決が言い渡されて確定した場合には、その者が応訴を余儀なくされたことによって受けた財産上の損害を国の責任で補償するのが衡平の精神にかなうという点にあるとされており、いまだ無罪判決が確定していない以上この趣旨は妥当しませんので、再審開始決定が確定した段階で補償するというのは相当でないと思います。   次に、第188条の7の第5項では、費用補償の対象として、「再審の請求の理由に該当する証拠又は証拠資料を裁判所に提出するために要した費用」が挙げられています。第3回会議の田岡幹事の御発言から推察しますと、これは、例えば実験とか鑑定を含めて証拠書類又は証拠物の収集等に要した費用を意味するものと考えられますが、こういった費用は、現行刑事訴訟法上、通常の公判手続においても補償の対象とはされておらず、弁護人であった者に対する報酬の額を決定する際に考慮されているものですので、再審請求手続についてのみそれと異なる特別な取扱いをすべき理由は見いだし難いと思います。   また、現行の費用補償制度においては、不必要に過大な費用を支出した者を優遇するなどの不公平を回避しつつ簡易迅速な費用補償を実現するために、補償の対象とする費用の範囲を類型化が可能なものに限定した上で、その金額についても平均的な相当額に限定しています。仮に、この日本弁護士連合会改正案のように証拠書類又は証拠物の収集等に要した費用を補償の対象とするとした場合には、補償の範囲が無限定に拡大し、不必要に過大な費用を支出した者を優遇するなどの不公平な結果を生じさせかねないほか、補償すべき費用が多種多様なものとなり補償すべき金額の簡易迅速な算定が困難となるなど、現行の費用補償制度の基本的な考え方に反する事態を招く可能性があります。   このように、通常審における費用補償制度の趣旨やそれとの整合性という観点から、この第5項にありますように証拠書類又は証拠物の収集等に要する費用を独立に補償の対象とするのは適当でないと思います。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○恒光幹事 裁判所として一言だけ申し上げますと、仮に再審請求手続に要した費用を補償するという規定を設けた場合には、補償の範囲を明確にしていただきたいと考えております。再審請求審は累次にわたって繰り返されることもあるかと思いますけれども、例えば第4次請求審で再審開始決定となり、その後再審無罪となった事件の場合に、第1次から第3次請求審に要した費用も全て補償の対象となるのかといった点ですとか、あるいは記録の謄写費用、私的鑑定の費用は現行の刑事訴訟法第188条の6第1項で規定する費用補償の範囲には直接には含まれないと思いますけれども、仮に今回改正するとすればこれらの費用も含むのか、含むとした場合には刑事訴訟法第188条の6第1項の規定との整合性をどのように理解するのかといった点は明確にしておいていただきませんと、実際に算定を行います裁判所といたしましては、どこまでを補償の対象とすればいいのかという判断をすることができなくなってしまうという懸念を持っております。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○成瀬幹事 恒光幹事の御発言の中で、再審開始決定に至らなかった過去の再審請求手続に要した費用をも補償の対象とするか否かについて検討する必要があるという御指摘がございました。そこで、仮に再審請求手続に要した費用を補償の対象とする場合に、御指摘の点をどのように考えるべきかについて、私の意見を申し上げたいと思います。   現行の費用補償制度は、無罪判決を得るまでに要した費用の全額を無差別に補償の対象とすることは、防御に必要な費用か否かの判定が困難である上、不必要に過大な費用を支出した被告人を優遇する不公平な結果になりかねないことなどに鑑み、このような不合理を回避しつつ簡易迅速な補償を実現するため、補償の対象とする費用の範囲を限定しているものと考えられます。   そのことを前提に、再審開始決定に至らなかった再審請求手続について考えてみると、この手続は再審公判における無罪判決に直接結び付いたものではなく、当該手続に要した費用は、類型的に無罪判決を得るために必要な費用とは評価し難い上、このような費用を補償の対象とした場合、当を得ない再審の請求を繰り返した者を優遇する不公平な結果になりかねません。   よって、仮に再審請求手続に要した費用を補償の対象とするとしても、再審開始決定に至らなかった再審請求手続に要した費用まで補償の対象に含めることは、現行の費用補償制度の趣旨に照らし、適当でないと考えます。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○村山委員 確かに現行の費用補償制度との整合性をどう考えるかというのは大きな問題だというのは私も理解しています。そういう意味では、川出委員が言われたように、開始決定が確定したときでいいのかというような問題であるとか、その範囲の問題にはいろいろあるというのは、私自身としてはそういう問題があるというのは認識していますし、それから、何次にもわたった場合にどこまで補償の対象になるかというのは非常に難しい問題だと思うのですが、無罪の確定判決を受けた者については、やはり再審請求審というのは再審公判の準備手続のような形、公判準備のような形になっているというのは調査官解説でも言われているわけですから、そういう意味では補償の必要があるというのは、これはもう争えないのではないかと思っているわけです。   実際どの段階でそういう請求権が発生するのかとか、範囲の問題については、やはりある程度の定型化の問題が必要だと思いますし、それから、現在の制度では裁判所の裁量性といいまして、裁判所がある程度の相当だと認められる金額を定めているわけですけれども、そういった形の決め方ができるようにするという必要は私はあると思うのですけれども、そういった工夫をすればそれほど、どこからどこまでの範囲なのかということで裁判所が非常に算定が難しいということにならないような形で定めるということは可能ではないかと思っている次第です。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○鴨志田委員 範囲が無制限に広がる可能性があるから再審請求審における費用補償を認めるべきではないというのは、非常に短絡的だと思います。定型化できるものも結構あると思うのです。例えば、当否は別として、現在の実際の再審請求審を見ていると、本格的な事案では、かなりの回数にわたって進行協議期日が開かれたり、実際に証人尋問の形で、要は裁判所に出頭して事実調べがされているということは明らかなわけです。また、これらの期日等については事実上、期日調書のようなものが作られていますから、こういったものは定型的に算定することも十分可能なわけです。多くの事件では、再審公判に費やされた期日の日数よりも再審請求審段階での期日の方がはるかに多いと認識しております。このような事実がある中で、一律にこの費用補償を認めるべきではないと結論づけるのは少し短絡的なのではないかと思う次第です。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○田岡幹事 先ほど、池田委員から、再審請求手続が職権主義の手続であり、被告人であった者及び弁護人の出頭する期日がなく、弁護人の報酬等を算定する基準がないことなどから、定型化が難しいのではないかという指摘がありましたが、仮に再審請求手続における国選弁護制度が設けられるということになりますと、当然その国選弁護人の報酬基準というものが定められることになるわけですから、旅費、日当に加えて弁護人であった者の報酬を算定する際には、国選弁護人の報酬基準が参考にされることになるのだろうと思います。そして、現在通常審の費用補償の算定の際には、弁護人であった者の報酬には証拠の収集や私的鑑定の意見書作成費用なども含まれると理解されているわけですから、再審請求手続においても、弁護人であった者の報酬に証拠の収集や私的鑑定の意見書の作成などの費用を読み込むことは十分可能であって、定型化は可能ではないかと思います。   その上で、川出委員から御指摘がありました、日弁連改正案188条の7の5項に、あえて再審請求の理由に該当する証拠又は証拠資料を裁判所に提出するために要した費用を加えている趣旨について考えますと、再審開始事由のうち6号再審に関して言いますと、再審請求人に無罪を言い渡すべき明らかな証拠、つまり新証拠を提出する責任が課せられていることから、この新証拠を提出することが再審請求手続を遂行する上で不可欠な費用であるということから、あえて別途、再審請求の理由に該当する証拠又は証拠資料を裁判所に提出するために要した費用というものを費用補償の範囲として明記したという趣旨であると理解しております。もとよりこのような規定がなくても、弁護人であった者の報酬に含まれ得るものであるとは思いますが、再審請求手続の性格に照らして、これを明記したという趣旨であると理解しております。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。   それでは、「論点整理(案)」の「13」でございますけれども、第1巡目の議論としてはここまでということにさせていただきたいと思います。   以上で、本日予定した議事は全てということになります。   本日の審議をもちまして、1巡目の議論としては一通りの御意見を頂いたものと認識しておりますが、本日までの審議を踏まえ、2巡目の議論の進め方につきまして皆様に御提案をさせていただきたいと思います。   当部会ではこれまで合計8回の会議を重ねてまいりましたが、私の見ますところ、おおむね法整備を行う方向で認識が共有された論点がある一方で、法整備の要否や当否、あるいは具体的な規律の在り方について御意見の隔たりがあった論点もあると思われます。そこで、2巡目の議論におきましては、より議論を深めるため、部会長である私の責任の下で事務当局にお願いしまして、1巡目の議論を踏まえ、それぞれの論点について更なる議論の素材となる資料を作成してもらい、次回以降はそれに基づいた議論を行いたいと思います。また、1巡目の議論も踏まえますと、それぞれの論点に応じて議論すべき内容や議論に要する時間もかなり異なり得ると思われますので、議論の順序につきましても、必ずしも「論点整理(案)」の順にこだわらない形で、私の方で検討し、期日間に事務当局を通じてできるだけ早期に皆様にお知らせすることとしたいと思います。そのような方針で2巡目を進めさせていただくということにつきまして、よろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 それでは、2巡目の議論に向けて何か御意見があれば、承りたいと思います。現時点におきまして、本日途中で退出された酒巻委員から御意見が記載されたメモを預かっております。今後の議論の在り方についてということでございますので、事務当局の方から御披露を願いたいと思います。 ○今井幹事 私の方から読み上げさせていただきます。   「本日の審議をもって1巡目の議論が終了すると思われますので、今後の議論の在り方について、若干、意見を申し上げたいと思います。   1巡目の議論においては、各論点ごとに、規律を設ける必要性についての御意見が示される一方で、規律を設ける上での課題として、それを正当化するに足りる理論的根拠があるか、再審請求審の構造や通常審の制度と整合するか、実務において実際に機能するかといった課題が示されました。その中には解消することが容易でないと思われるものも多く見られましたが、それらは、新たな規律について考える上で避けて通ることのできないものであり、2巡目の議論においては、それらの課題を解消することができるか、十分な理論的根拠を持ち、再審請求審の構造や通常審の制度とも整合し、現実にも機能する仕組みとするためにはどうすべきかについて、検討を深めることが不可欠だと思います。   法制審議会の専門部会たる当部会に求められているのは、そうした観点からの検討であり、この場に参加している我々全員が刑事法の分野の専門家として、それぞれの知見をいかしつつ、知恵を出し合って様々な角度から議論を尽くすことが重要であると考えます。もし仮に、そうした検討をおろそかにし、課題を解消するための方策を見いださないまま再審制度を改正するようなことがあれば、刑事訴訟手続にひずみが生じ、将来に重大な禍根を残すことともなりかねません。2巡目の議論においてはこうした観点から、1巡目の議論を踏まえたかみ合った形での真摯な意見交換がなされ、より検討が深まることを期待したいと思います。」 ○大澤部会長 今、酒巻委員からの御意見をいただきましたけれども、そのほかに今後の議論の在り方についてこの際、御意見等があれば承りたいと存じますが、いかがでしょうか。 ○鴨志田委員 今後の進め方ということとは少しずれるかもしれませんけれども、やはり、そもそもこの再審法改正という問題がどうして注目されるようになり、また、この部会が設置されたのかということに思いを致すときに、やはり実際に現行の再審制度の下でえん罪の救済に極めて長い年月と重い負担を課されて、人生そのものを奪われるような、そういう思いをされた、えん罪被害者、当事者やその家族が存在し、日本の刑事司法制度のもとで、将来においてそのようなことを繰り返していいのかと、そのための制度改革はどのようなものであるべきかということを、元々はそういうところから発した議論であるということを、理論的な整合性とか刑事訴訟全体のバランスというような問題も非常に重要ではございますけれども、そういったことだけではなくて、現にこの法律が運用されることで今後、袴田さんや多くのえん罪被害者のような極めて理不尽な、人生を奪われるようなことが生じないようにすると、そのためにはどうしたらいいかということも是非お考えいただきたいと思います。   その観点から、第2回にヒアリングを実施しましたけれども、あの時点では再審公判の係属中で、その後の7月18日に再審無罪判決が出て、これが確定した福井女子中学生殺害事件、これが現時点で一番新しい再審無罪判決が出た再審事件ということになりますので、この事件関係者に対するヒアリングを、是非2巡目の議論の開始前に入れていただきたいと思っております。この点、是非よろしくお願いしたいと思います。 ○大澤部会長 ただいま鴨志田委員からヒアリングについての御意見が示されましたが、この点について更に御意見等ある方があれば、御発言いただきたいと存じますが、いかがでございましょうか。 ○成瀬幹事 当部会が設置された経緯も踏まえて2巡目以降の議論を進めていくべきという鴨志田委員の御意見については、私も賛同いたします。ただ、福井女子中学生殺人事件の関係者の方のヒアリングをこの段階で新たに実施すべきという御提案については、消極的に考えておりますので、その理由を説明させていただきます。   当部会では、これまで合計8回の会議を重ねてきたところ、1巡目の議論においては、第2回及び第3回に実施されたヒアリングでのお話も含めて、現行の再審制度の問題点等を把握する上で、必要かつ十分な資料が提示されてきたと認識しております。請求人から見た再審手続の実情については、第2回会議において、青木惠子さんと袴田ひで子さんから直接お話を伺うことができ、今、御提案のあった福井女子中学生殺人事件についても、第5回会議において、鴨志田委員が当該事件の概要と再審手続に関する問題点をまとめた資料を提供してくださいました。   改めて申し上げるまでもなく、再審制度の在り方については国民の関心が非常に高く、諮問をした法務大臣からも「できる限り早期の答申を期待する」との御発言がある中で、本部会の調査審議に掛けることができる時間にも、おのずから限度があるように思われます。   これらの点に鑑みますと、今後は1巡目の議論で示された問題点等について検討を深めることが重視されるべきであり、現段階で更なるヒアリングを実施することには消極的にならざるを得ないというのが私の意見です。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○宮崎委員 福井女子中学生殺人事件に関し、元被告人の方等、関係者からヒアリングを実施すべきとの御提案について、意見を申し上げます。   当部会におきましては、成瀬幹事からも御指摘があったように、第2回会議、第3回会議において再審無罪事件の当事者やその弁護人、裁判官・検察官の経験者、被害者遺族、報道関係者からヒアリングを実施しており、再審請求事件についての実務の実情等を把握する上で必要かつ十分な方々からお話を伺ったものと認識しています。また、鴨志田委員からは第5回会議において、「福井女子中学生殺人事件の概要と再審手続に関する問題点」と題する資料を提出していただいており、同資料には、事案の概要等のほか、「再審手続に関する問題点についての意見」も記載されているところ、この御意見は再審無罪事件の当事者やその弁護人の立場から、同事件の問題点を把握する上で必要と考えられる情報を記載していただいたものと認識しています。したがって、再審に関する法制度を検討する上では、これまでに実施したヒアリングに加えて福井女子中学生殺人事件に関し元被告人の方等、関係者からヒアリングを実施する必要はないものと考えます。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○村山委員 私は、まずヒアリングの問題については是非採用していただきたいと思います。といいますのは、やはり再審請求が今非常に注目を浴びているというのは、どうしてこんなに請求人が大きな苦難を背負わなければいけないのか、こんなに時間が掛かるのかという、そこが社会的にも多く知られるようになりまして、マスコミ等も盛んにそういう問題を改善すべきだという論調になっているわけです。   私は1巡目の議論で参加させていただいて少し意外に思ったのは、本当に私たちは反省しているのでしょうかという、こういう現実にしたのは私たちですよね、そういう実務をいかに改善すべきかという議論をする、そういう場だと私は思っていたのに、現状でも大丈夫だという議論は、私ははっきり言ってナンセンスではないかと思うのです。やはり現状でそういう否定的な事実が何個も積み重なっているので、今の現状をどのように変えるべきなのか、それにはどういう問題があるのかということを真摯に受け止めるべきでありまして、そういう意味でもえん罪被害者の方のヒアリングは私は十分とはいえないと思います。   確かに袴田事件と東住吉事件の当事者の方からお話を聴きましたけれども、その時間は私から見れば極めて短時間でした。福井事件については、当時は無罪判決が確定していないということで参考にとどまるという形になったと私は記憶していますけれども、無罪が確定した今、やはりきちんと元被告人の方なり、その弁護人なりに話を聴くというのは、現状がどういうものであるかというのをもう一度私たちが振り返るために必要な、そういうプロセスだと思います。   それから、2巡目の議論は、1巡目は確かにそれぞれの立場からの意見表明が多かったと思いますけれども、もう少し詰めた形で議論をすべきだというのは酒巻委員のおっしゃるとおりだと思います。私も、対立があるかないかという問題と、どういうところで対立しているのかというのを詰めていく、更には工夫によってその対立点を乗り越えるかどうかという議論は1巡目にはほとんどなされていなかったと思いますので、そういった議論も是非させていただきたいと思っています。   それから、全く別の話なのですけれども、私は実は10月8日にいわゆる再審議連という国会議員の方々が再審法を改正するために議連を立ち上げて、そして法案が現に法務委員会で係属しておりまして、まだ閉会していますけれども、国会が開かれれば法務委員会でいつでも審議ができる状況になっています。そういう中で、その議連の総会に私と鴨志田委員が出まして、法務省からも確か玉本幹事が出ておられたと思いますけれども、その場で国会議員の方々が言っていたのは、もっと即時性、もっと早く知らなければいけないということで、どうして傍聴できないのだという話が非常に強く出ておりました。別室傍聴というのができないのかということで、多くの方が、国会議員の方なのですけれども、そういう要望を出していたと思います。   その際、確か玉本幹事も出ておられて、その点については持ち帰って検討するというような御回答をされていたかと思いますが、そういう意味では、現に法案が掛かっていて審議に入るかもしれない、すぐにでも入れる状態になっているにもかかわらず、この法制審でどういう議論をしているのかが分からないというのは非常におかしいのではないかという国会議員の半分怒りに似たような意見があって、私もそれは同感なのです。そういう意味で、確かに法制審議会は非公開だという規定かな、なっていたと思うのですけれども、それがどこでどのように決められているのかという問題と、それから、特別傍聴を認めたという審議会もあったと聞いておりますので、それが手続的にどのような手続が必要なのかということもあるのですけれども、少なくとも議連の方から出ている特別傍聴を求めるということについて、当部会がどういう対応するのかというのは議論すべきだと思いますし、私は何らかの形で特別傍聴を認めるというようなことが必要ではないかと思っております。 ○大澤部会長 ほかにこの際、御発言がございますでしょうか。 ○山本委員 ヒアリングについてですけれども、行ってもそれほど時間を取らないと思いますので、行ったらいいのかなと思っています。 ○田岡幹事 福井事件のヒアリングは、是非実施するべきだと思います。鴨志田委員が作られた1枚の紙を読んで、あれで必要十分だという御意見がありましたが、私には到底そうは思えません。福井事件の再審請求手続がどういったものであったのか、また、再審請求手続においてどのようなプロセスで証拠が開示され、そしてそれが無罪を言い渡すべき新証拠とされたのか、その結果として再審開始決定や再審無罪判決において検察官が証拠を隠したとなぜ断罪されたのか、こうした確定審の問題点、また再審請求手続の問題点というものを改めて確認した上で、こういったえん罪被害が起こらないようにするために、また、えん罪被害者を迅速に救済するために、私たちがどうすればいいのかということを考えることが必要だと思います。   この間、裁判所は、えん罪の原因を究明するといった調査をしたとは聞いておりませんし、検察庁においても福井事件について何らかの反省をしたということも聞いておりませんので、この法制審において、福井事件、もちろん袴田事件もそうですけれども、なぜ、このようなえん罪が繰り返されてきたのか、再審請求手続をどのように改革していけばよいのか、このことをまず共通認識にしなければ、決してその合意に至ることはないのではないでしょうか。ずっと平行線をたどってしまうのではないでしょうか。   そういう意味では、あの資料を見て必要十分ですという御意見は、残念なところがありまして、もっと謙虚に当事者の声に耳を傾けた上で、我々はそのえん罪を防ぐために知恵を絞るべきではないかと考えております。 ○大澤部会長 ほかによろしゅうございますか。   先ほど村山委員の方から、議事公開といいますか傍聴といいますか、そういうお話がございました。禁止の規定があるのではないかというようなお話もございましたけれども、この点については事務当局の方から、まず、どういう定めになっているのか、御説明いただきたいと思います。 ○今井幹事 法制審議会の会議につきましては、法制審議会議事規則第3条及び第7条により、公開しないこととされております。過去に公開した部会があったのではないかということにつきまして、恐らく「新時代の刑事司法制度特別部会」のことをおっしゃっているのだと思われますけれども、「新時代の刑事司法制度特別部会」につきましては、法制審議会総会において、部会における審議に関し、部会の判断により会議を公開するかどうか、公開するとしてその範囲や方法をどのようにするか決することができる旨の決議がなされておりました。しかし、当部会につきましては、法制審議会総会において、「新時代の刑事司法制度特別部会」の場合のように、議事の公開について部会で決することができる旨の決議はなされていないという状況にございます。もっとも、今回御要望がございましたので、部会長とも御相談しつつ検討してみたいと思います。 ○大澤部会長 御説明いただいたような状況ということでございますので、一旦引き取らせていただきたいと存じます。   また、先ほどのヒアリングの御提案もございましたけれども、それぞれの委員、幹事から御発言いただいた御意見も踏まえまして、これも私の方で早急に検討し、できるだけ早期に皆様にお知らせをするということとしたいと思います。   それでは、以上で本日の会議は終了ということになります。本日の会議における御発言の中で特に公開に適しないものはなかったように認識しておりますけれども、しかし、いつものことでございますが、具体的事件に関する御発言などもございましたので、公開に適するかどうか改めて精査をさせていただいた上で、問題があると考えられる場合には、御発言なさった方の御意向なども確認した上で適宜の扱いをさせていただきたいと存じます。その場合の具体的な範囲や議事録上の記載方法等につきましては、御発言なさった方との調整等もございますので、部会長である私に御一任いただくということでよろしゅうございますでしょうか。               (一同異議なし) ○大澤部会長 それでは、以上のような取扱いにさせていただくということにいたしまして、最後に、次回の日程について事務当局から説明をお願いいたします。 ○今井幹事 次回の第9回会議は、令和7年10月31日金曜日、午前9時30分からを予定しております。また、次々回の第10回会議につきましては、令和7年11月11日火曜日、午前9時30分からを予定しております。詳細につきましては別途御案内申し上げます。 ○大澤部会長 それでは、本日はこれにて閉会といたします。どうもありがとうございました。 -了-