法制審議会 会社法制 (株式・株主総会等関係)部会 第8回会議 議事録 第1 日 時  令和7年11月19日(水)    自 午後0時57分                          至 午後6時04分 第2 場 所  法務省7階 共用会議室6・7 第3 議 題  株主総会の在り方に関する規律の見直しに関する論点の検討(二読)(1)、(2) 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○神作部会長 ただいまから法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会の第8回会議を開催いたします。   本日も皆様、御多忙の中、御出席いただき誠にありがとうございます。   本日もウェブ会議の方法を併用して議事を進めてまいりたいと存じます。初めに、事務当局からウェブ会議に関する注意事項を御案内いただきます。よろしくお願いいたします。 ○宇野幹事 事務当局より御説明を差し上げます。   ウェブ会議を通じて御参加されている皆様につきましては、御発言される際を除きマイク機能をオフにしていただきますよう御協力をお願いいたします。御質問がある場合や審議において御発言される場合は、画面に表示されている手を挙げるの機能をお使いください。指名がされましたら、マイクをオンにして御発言ください。御発言が終わりましたらマイクをオフにし、また、画面の挙手ボタンを再度押して、挙手を下げていただきますようお願いいたします。   なお、御発言の際はお名前をおっしゃってから発言されるようお願いいたします。会議室にお集まりの皆様におかれましても、ウェブ会議の方法で出席されている皆様にはこちらの会議室の様子が伝わりにくいため、お名前をおっしゃってからの御発言に御協力いただきますようよろしくお願いいたします。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。   本日の会議の出欠についてでございますけれども、本日は仁分委員と家原幹事が御欠席と伺っております。   続きまして、本日の審議に入る前に事務当局から配付資料の御説明を頂きます。よろしくお願いいたします。 ○宇野幹事 配付資料について御確認いただきたいと思います。   まず、部会資料8「株主総会の在り方に関する規律の見直しに関する論点の検討(二読)(2)」がございます。こちらについては、後ほど審議の中で事務当局から御説明をさせていただきます。   次に、参考資料20「経団連 株主提案権の行使期限に関する実態調査 結果概要」は仁分委員から御提出があったものでございます。本日、仁分委員は御欠席でございますが、御説明文を預かっておりますので、後ほど事務当局から読み上げさせていただきます。また、参考資料21「株主総会の在り方に関する論点(二読)(2)について」は、経済産業省の鮫島幹事から御提出があったものでございます。この資料につきましては、後ほど鮫島幹事に御説明いただきます。   配付資料の御紹介は以上でございます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。   それでは、本日の審議に入りたいと存じます。まずは、前回の部会において積み残しとなっておりました部会資料7の第3「株主総会のデジタル化に関するその他の検討事項」について意見交換をしていただきたいと思います。いかがでしょうか。 ○藤田委員 前回、時間の関係で意見を申し上げなかったので、部会資料7の第3について意見を申し上げます。   部会資料7の第3の1の書面交付請求については、現在提示のA案、B案を中間試案で問うということに異存はありません。この部会の多くの意見は書面交付請求権の廃止、つまりA案を志向していたように思いますが、これはデジタルデバイドの問題に関する実質的な政策変更である以上、その是非は明示的に公に意見を聴くべきだと思うので、B案も併記することが必要だと考えております。   A案の「一定の移行期間を設けた上で、」という括弧書きについては、若干御意見があったと記憶しておりますが、これも残していいと思っております。移行期間が要らないという意見もあったとは思うのですが、改正法の施行時期次第では、施行直後の総会といったことが起きる可能性もないわけではありませんので、一応括弧書きの記載は残しておいた方がいいと思います。   ただ、はっきりさせたいのは、これは飽くまでルール変更についての周知期間という意味での移行期間なのであって、更なるデジタル化の進展を期待したり、それを見極めるための期間ではない、したがって移行期間を設けるとしても大変短いものを想定しているということです。例えば、施行直後の総会は少なくとも1回は元のルールでやるとか、そのような移行期間を想定しているイメージだということ、つまり何年も実施を遅らせるようなことがこの移行期間で含意されているわけではないことは、説明の中ではっきりさせていただいた方がいいように思います。   2の書面投票の点ですけれども、これもA案、B案、両案併記ということでいいと思います。バーチャルオンリー総会の場合のデジタルデバイド対策としての書面投票にはこの規律が影響しないということは、資料の35ページに書いてはあるのですが、この点はひょっとしたら(注)などで格上げして強調しておいた方がいいかもしれないと思います。実質としては、電磁的方法による議決権の行使に対応できない人も議決権が行使できなくなるわけではない、議場における議決権行使――代理行使も含めてですけれども――をしなくてはならなくなるという意味で、今よりは不便になるということが許されるか否かという問題であることを正面から問うという形でパブリック・コメントに掛けることでいいと思います。   3のメールアドレスの件ですけれども、提案自体はこれで構わないのですが、当該株主が当該メールアドレス等の提供を承諾する際に、メールアドレスを通知したことが今後、株式の発行会社からの通知は専らそのメールアドレスによる通知になるということが何らかの形で株主に分かるような状況にする必要がないかといったことが気になります。現在の記載ですと、連絡をする際に必要となる情報と書いてあるので、そこに今の点が含意されているのかもしれませんが、デジタルデバイドの話と別に、複数のメールアドレスを持っている場合に、今後会社からの連絡は全て届け出たところに来るのだということを知っていれば、それを前提にメールアドレスも選んだりするでしょうから、この辺りが株主に伝わるようにした方がいいようには思います。そういうことを厳格に要求する結果、説明しなかったら届けられたメールアドレスに通知しても全部取消事由になるなどとなったら困るのですけれども、メールアドレスを通知すれば今後の連絡は全てそこに来るということも知ってもらうというニーズがあること自体は確かだと思います。恐らくそういうことは自発的に知らせる場合が多いと思うのですけれども、不必要に不安定な状況にならないようにしながら、メールアドレスを通知することの意味を株主に周知させるようなルールが作れないかどうかは今後の検討事項かと思います。これが入ると、このルールを一層受け入れやすくなるとは思いますので、可能な範囲で検討いただければと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○青委員 まず、書面交付請求の方からですけれども、中間試案前の段階で恐縮なのですけれども、70歳以上のデジタルデバイドの株主がどれぐらいの株式を保有しているのか、その保有状況を踏まえた上でお考えいただくのがよいのかなと思ってございます。   デジタルデバイドの株主は確かに減ってきているとはいえ、いまだに一定の規模は存在しており、保振が公表している年齢別の保有金額の分布状況を見ますと、保有金額全体が約180兆円あって、そのうちの70歳代が約41兆円、それから80歳以上が約33兆円ということで、金額ベースで言えば全体の4割程度を70歳以上の株主が保有している状況になっています。そのうちデジタルデバイドの株主がどれぐらいいるのかというところを総務省のインターネット利用率の方から単純計算してみると、70歳以上のデジタルデバイドの株主の保有金額が34兆円程度で、大体全体の2割弱ぐらいになります。今後デジタルデバイドの株主が減っていくとは思われるのですけれども、必ずしも簡単に無視できる数字ではないように思っております。   もちろん電子化が進展しており、今後も進展していくべきという状況でございますので、会社が個々のデジタルデバイドの株主に対応するために過大な労力やコストを掛けるというのは望ましくないと思いますので、紙をなくしていく方向性は問題ないと思います。もっとも、現在紙が負担と思いながらもフルセットデリバリーしている会社がかなりあるという実態もあり、完全に紙をなくしても全く問題がないという段階にはまだ至っていないような感じはあると思います。前回の資料で、身近な者や口座を保有している証券会社の担当者に依頼すれば資料にアクセスできるのではないかと記載いただいていますが、現実にそれが本当に可能かどうかは、やや疑問もあるところだと思っております。   今後の対応としては、電子化が進展する中で、原則電子化を進め、紙の方は会社の実務負担を考慮しても無理のない範囲に限って入手の機会を確保できればよいというぐらいのレベル感がよいのではないでしょうか。例えば、電磁的に総会資料を入手できない株主については、株主自身が費用を負担するのであれば、会社が実務上可能な範囲で紙を送るような努力規定を設けるとか、あるいはコンビニなどで有償でプリントできるような機会を設けるとか、何らかの形でデジタルデバイドの株主が入手しやすい仕組みがあれば一番よいと思いますし、そのような仕組みを制度的に用意することが難しいとしても、まずは実務慣行を作り上げていくことが必要になってくるのではないかと思います。書面による議決権行使に関しましても、基本的には同様の考えを持ってございます。   最後にメールアドレスに関しましては、デジタルデバイドの株主には対応できないという形になると思いますので、メールアドレスを持っている株主が登録するという形を前提にするなら、基本的には異論はないところでございます。ただ、導入時に混乱を招きかねないところがありますので、その位置付けや方針を十分に考えた上で、丁寧に周知していくということが重要ではないかと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。もし御意見が特段ございませんでしたら、先に進みたいと思います。   それでは、部会資料8の審議に入りたいと存じます。初めに、事務当局から部会資料8についての御説明をお願いいたします。 ○吉田関係官 部会資料8について御説明申し上げます。部会資料8は、株主総会の在り方に関する規律の見直しに関する論点の(2)について、2回目の各論的な検討を行うものです。   まず、1ページ目の第1では、「「会議体」としての株主総会に関する規律の見直し」を取り上げております。1の「事前の議決権の行使がされた場合における株主総会の決議の合理化」については、一読での御議論を踏まえ、株主総会を全く開催しないとする制度の導入までは時期尚早と考えた上で、事前の議決権の行使により株主総会の決議の成立が事実上確定しているにもかかわらず、当日の議事運営次第で株主総会の決議取消事由が生じ得るという問題への対応を検討することとしています。   その具体的な対応方法としては、A案とB案の2案を掲げています。A案は、一読における事前確定型決議を修正したもので、事前の議決権の行使がされた結果、株主総会の決議の要件を満たす場合には株主総会の決議があったものとみなすこととしつつ、他方で株主総会の開催自体は必須とし、株主総会における株主の質問に対する説明や報告事項の報告は必要とする制度を設けるものです。B案は、事前の議決権の行使がされた結果、株主総会の決議の要件を満たす場合には、株主総会の決議取消事由を限定するというものですが、B案では、現行法の裁量棄却制度との整合性を含めて、このような場合に株主総会の決議取消事由を限定してよい理由や許容性について検討する必要があります。   6ページ目以下の2の「書面決議制度の見直し」については、一読で賛成の御意見が多かった案について具体化した規律を提案しています。このような規律を設けた場合の論点として、8ページ目以下の補足説明の3に記載しましたとおり、決議の成立時点と株主の異議の関係をどのように考えるかという問題があり、この点についても御意見を頂ければと存じます。   9ページ目以下の3の「キャッシュ・アウトの手続の見直し」については、一読での御議論を踏まえまして、公開買付けを前置して行われるキャッシュ・アウトに限定して、特別支配株主となるために必要な議決権保有割合を10分の9から3分の2に引き下げることについて問題提起をしています。制度の許容性という観点では、キャッシュ・アウトによる金銭の交付時期が遅れることにより公開買付けに強圧性が生ずるという弊害が是正されるという株主の利益と、株主総会における審議の場が確保されるという株主の利益とで、いずれを優先するべきかを検討する必要があると考えられます。また、制度趣旨をキャッシュ・アウトによる金銭の交付時期が遅れることにより公開買付けに強圧性が生ずるという弊害を是正する点に求めるとすれば、類型的に強圧性が認められるような公開買付けについては適用対象外とするべきであるとも考えられ、そのような観点から必要な要件を検討することが考えられます。また、更にマジョリティ・オブ・マイノリティ条件が設定された公開買付けに限定することなども考えられるところ、どのような要件を設けるべきかについても御意見を頂ければと思います。   次に、14ページ目の第2では、「株主提案権に関する規律の見直し」を取り上げております。1の「株主提案権の議決権数の要件の見直し」については、一読での御議論を踏まえまして、議決権数の要件を廃止するというA案と、300個という議決権数の要件を一定の個数まで引き上げるというB案の2案を掲げています。また、一読においては議決権数の要件は定款自治に委ねることも考えられるとの指摘があったことを踏まえ、注記をしております。これらの案について、定款によって少数株主要件を厳格化することの許容性も含めて、改めて御意見を頂戴できればと存じます。   17ページ目以下の2の「株主提案権の行使期限の見直し」については、一読において、実務上生じている負担の具体的内容や具体的なスケジュールに照らしてどのような不都合が生じているかについて、資料やデータに基づき明らかにする必要があるとの意見が多数ございました。この実務上生じている負担の具体的内容に関して、仁分委員から参考資料20を御提出いただきましたので、その内容を踏まえて、現行法の下において行使期限の見直しを正当化するに足りる不都合が現に生じているかについてどのように考えるか、御意見を頂ければと思います。   18ページ目の3の「業務執行事項に係る定款の変更に関する議案の提出の制限」については、一読における御議論を踏まえまして、このような見直しはしないことを御提案しております。   最後に、19ページ目の第3では、「その他」として二つの検討事項を掲げております。   一つ目の「会社法第316条第2項に規定する調査者制度の見直し」では、一読での御議論を踏まえまして、2項調査者制度を維持することを前提としつつ、制度への懸念に関する対応として、動議による選任の禁止、株主総会に先立って株主に提供される情報に関する規律の新設、特別背任罪の主体に2項調査者を加えることの3点を提案しております。これらの対応の適否やその他の見直しの要否につきまして御意見を頂ければと存じます。   二つ目の「株主総会の招集手続等に関する検査役の選任の申立権者の見直し」では、一読での御議論を踏まえまして、やや消極的な問題提起をしております。   部会資料8の御説明は以上です。 ○神作部会長 御説明どうもありがとうございました。それでは、部会資料8につきまして三つのセクションに分けて御議論を頂きたいと存じます。   まずは、部会資料8の第1「「会議体」としての株主総会に関する規律の見直し」に関して意見交換をしていただきます。   初めに、本日御欠席の仁分委員から事前に御意見を頂戴しておりますので、事務当局に代読していただきます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○吉田関係官 仁分委員からの御意見を代読させていただきます。   事前の議決権行使がされた場合における株主総会の決議の合理化に関して、事前の議決権の行使により決議があったものとみなすA案を支持いたします。   まず、B案について意見を述べます。決議取消事由を限定するB案では、事前の議決権行使により多数の賛成票が得られている場合であっても、株主総会当日に採決を行わない限り決議が成立しないと考えられます。そうすると、会社は、結局、株主総会当日に議案の審議・採決を行わなければならず、その準備を含め、会社の負担が大きくなります。また、何らかの理由で、株主総会当日に採決ができなかった場合には、事前の議決権行使により多数の賛成票が得られていたとしても、決議が成立しないことになってしまいます。さらに、B案の場合、株主総会当日に、株主が議案の修正動議を提出することが可能となることから、修正動議の対応の負担も発生することになります。また、B案では、「決議の方法の著しい不公正」は決議取消事由から除外されないため、事前の議決権行使により多数の賛成票が得られたとしてもなお、「決議の方法の著しい不公正」を理由に決議取消訴訟を提起されるリスクが残ることになります。例えば、修正動議の取扱いに瑕疵があった場合、「決議の方法の著しい不公正」に該当し得るとされています。また、説明義務違反についても、その態様によっては、「決議の方法の著しい不公正」に該当するという見解があります。したがって、B案においては、会社は、結局、決議取消訴訟を提起されるリスクのある状態で株主総会を運営せざるを得ないことになり、会社の負担は軽減されないことになります。そこで、B案ではなく、A案のように、事前の議決権行使により多数の賛成票が得られている場合には、事前に決議が成立する制度としていただきたく存じます。  ただし、A案について、定款の定めを要件とする必要はないと考えます。第4回の部会での御提案とは異なり、今回のA案では、必ず株主総会を開催することとなっており、株主総会において株主が質問を行う権利も保障されております。現行と比べて、株主の権利が直ちに縮小することにはならないと考えます。また、A案においては、定款の定めを要件とせずとも、株主は、事前に決議を成立させるかどうかを選択することが可能です。多数の株主が、株主総会当日の審議を踏まえて決議を成立させることを希望せず、事前に議決権を行使した場合に初めて、事前に決議が成立することになります。したがって、A案においては、定款の定めを要件としなくても、株主総会当日の審議を踏まえた決議をするか否かについて、株主の意思が適切に反映されることになります。なお、今申し上げたとおり、多数の株主が事前に決議を成立させるという意思表示、すなわち、事前の議決権行使をした場合に初めて、事前に決議が成立することになりますので、株主総会の決議があったものとみなすことそれ自体について、別途、株主の同意を得る制度にする必要もないと考えます。  また、部会資料8の1ページに、(注)として、「株主総会の目的である事項に係る議案を否決する旨の決議や、株主総会の目的である事項のうち株主総会に報告すべき事項に関する報告については、同趣旨の規律を設けないことを想定している。」との記載がございますが、議案を否決する決議についても、同様の規律、すなわち、事前の議決権行使により、多数の反対の議決権行使がなされた場合には、事前に否決の決議が成立する旨の規律を設けていただきたく存じます。上場会社の株主総会においては、株主提案議案について、事前に多数の反対の議決権行使がなされ、株主総会の前日までに株主提案議案の否決が事実上確定しているケースが大半ですが、議案を可決する決議のみ事前に成立し、議案を否決する決議は事前に成立しないということになりますと、上場会社は、結局、株主総会当日に、株主提案議案について審議・採決を行わなければならず、その準備を含め、上場会社の負担が大きくなります。なお、規律の適用対象となる会社の範囲については、上場会社に限るべきであると考えます。  次に、6ページの2書面決議制度について、見直しを行うことに賛成します。なお、部会資料では、「通知を発した日から1週間以内に異議を述べた株主がないこと」を要件としていますが、一人でも株主が反対すれば決議が成立しないことになり、制度の活用は進まないことが懸念されます。異議を述べた株主が総株主の議決権の一定割合を超えない限り、決議が有効となるよう要件を見直すべきだと考えます。異議を述べることができる期間については、会社の意思決定の機動性を確保する観点から、機関設計等にかかわらず、「1週間以内」とすべきであると考えます。  決議の成立時点と株主の異議の関係については、部会資料8の8ページの①のとおり、「(1)及び(2)の要件を満たした時に株主総会の決議があったものとみなされ、株主から異議があったことは株主総会の決議取消事由となるにとどまる」という考え方に賛成します。株主総会に報告すべき事項の報告についても同様の規律を設けることに賛成します。社債権者集会に関しても、「議決権者の全員の同意によりその決議があったものとみなす制度」を見直すことに賛成します。  最後に、9ページの3キャッシュ・アウトの手続の見直しについても、企業には、M&Aをできる限り速やかに完了させたいというニーズがあるため、特別支配株主の株式等売渡請求における「特別支配株主」となるために必要な議決権保有割合を10分の9から3分の2に引き下げることに賛成します。「特別支配株主」に関し、複数の株主の議決権を合算して議決権保有割合を算定することについて、実務上のニーズがありますので、仮に今回の改正では見直しを行わないとなったとしても、今後も引き続き見直しを検討していくべきであると考えます。  以上です。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。   それでは、部会資料8の第1について意見交換をさせていただきます。御意見のある方は挙手をお願いします。 ○鮫島幹事 参考資料21に沿って3点、御説明申し上げます。   まず、参考資料21の1.株主総会の決議の合理化でございます。事前の議決権行使によって帰すうが決している場合でも決議取消しの訴えのリスクを負いながら議事運営を行うことにより、慎重に対応せざるを得ない結果、結局は株主との率直かつ建設的な対話が後退してしまう面もあり、改正が必要だと考えてございます。B案につきましては、先ほど仁分委員からもございましたとおり、結局決議取消しの訴えのリスクを排斥できないということであれば、慎重に対応せざるを得ず、率直かつ建設的な株主との対話が促進されないおそれが残ってしまうと考えてございます。A案につきましても、定款の定めを要件とするというところについては、総議決権の過半数が賛成しているといった場合には、少なくとも議決権を有する株主は当日の株主権を放棄する意思を有しているとも考えられますし、実際に株主総会は開催いたしますし、質問権もございます。したがって、定款の定めを要件としないことも不合理ではないと考えてございます。もし、A案において定款の定めを要件とする場合には、A案、B案いずれも認めることが考えられると考えてございます。   2点目が、次の2ページ目の書面決議でございます。書面決議制度は、増資、組織再編等々の成長戦略を機動的に実行ならしめ、「稼ぐ力」の強化にもつながる意義があると考えてございます。また、緊急の資金調達が必要となる場合など緊急性のある事態は想定されまして、要件緩和には実務上のニーズもあると考えてございます。また、異議については、一人でも異議を述べた場合には成立しないということであれば、結局は機動的な意思決定の重大な阻害要因になると、現実的には活用し難い制度となってしまうおそれがあると考えてございます。一定割合、例えば5%以上の株主が異議を述べた場合に限定することも一案かと考えてございます。また、決議成立の時点に関しましては、機動的な成長戦略を実行する観点から10分の9以上の議決権を有する株主が同意の意思表示をした時点をもって成立時点とすることが合理的かと考えてございます。   最後に、キャッシュ・アウトの手続でございます。キャッシュ・アウト手続の効率化、合理化により、事業ポートフォリオの再編、業界再編を促し、「稼ぐ力」を強化することができるといった意義があると考えてございます。株式等売渡請求権を持つ特別支配株主の要件の緩和が望ましいと考えてございます。また、強圧性の弊害を回避するということも重要だと考えてございますが、実際には非常に複雑なストラクチャーもございまして、そういったものについて逐一、きめ細かな整備をすることは必ずしも容易でないと考えられますので、適用範囲を上場会社に限定することにとどめる方が明確かつ簡便ではないかと考えてございます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○久保田委員 まず、1の事前の議決権の行使がされた場合における株主総会の決議の合理化についてです。今回の部会資料ではA案とB案が併記されていますので、中間試案においても同様に併記することが予定されているものと思います。そのこと自体に反対はないのですけれども、前提問題として私が気になっていますのは、A案とB案とでは実現しようとするものは実質的に同一であり、ただそのための制度の立て方が違うにすぎないのか、それとも実現しようとしていること自体が違うのかという点です。   仮にA案とB案が実現しようとしているものが実質的に同一であり、したがって株主に及ぼす実質的な影響も同一であるならば、定款の定めの要否や招集通知への記載の要否といった実施要件ないし手続規制はそろえた方がよいと考えています。逆に言えば、A案とB案とで実質的に実現しようとするものが同一であるにもかかわらず制度の立て付けが違うというだけで定款の定めの要否や招集通知への記載の要否といった実施要件ないし手続規制が変わってくるということであれば、余り合理的ではないように思います。これに対し、A案とB案とで実現しようとしていることが実質的にも異なるものであれば、その違いのゆえに株主に及ぼす影響の大きさも変わる可能性がありますので、そうした影響の大きさに応じて必要な手続を変えるということはあり得るということになります。   このように、A案とB案とで実現しようとするものが実質的に同一なのか、あるいは同一にすべきかが問題になるわけですけれども、部会資料を拝見する限りでは、会議体としての株主総会が必要とされるということは同じですし、取締役の説明義務違反が決議取消事由にならないということも同一です。   これに対し、A案だと決議方法の著しい不公正という取消事由が生じる余地はないのに対し、B案だと部会資料にも記載されているとおり、決議方法の著しい不公正という取消事由が生じるとする余地もあるわけですけれども、そのようにすることが実質的に見てどれほどの意味を持つのかというのがよく分からないところがあります。それにもかかわらず、決議方法の著しい不公正という取消事由が生じる余地があると、決議取消しのリスクを減じるというこの制度の趣旨を十分に実現できないことになるかと思いますので、決議方法の著しい不公正という取消事由は生じないとすることが望ましいと思います。   あとは、株主総会の場で株主が実質的な動議を出せるかどうかについて、A案だと出せないことは明らかですけれども、B案だと出せるとすることもできそうですので、この点に違いを設けることはあり得ます。ただし、個人的には実質的な動議は出せないとした方が会社としては使いやすいと思います。また、上場会社では、株主総会の場で実質的な動議が出され、それが可決されるということは余り想定し難いということもありますので、実質的な動議を出せるとしても実際上余り意味がないように思っています。   このように考えますと、A案とB案とで実現しようとするものに違いを設けることはあり得るものの、むしろ違いを設けないようにした方がよいと思いますので、仮にそうなりますと、A案とB案とで実施要件や手続規制もそろえた方がよいということになってきます。そして、株主への実質的な影響を考えると、私は定款の定めや招集通知への記載は要求した方がよいと考えています。   定款の定めについては、会社によっては定款変更議案が可決されないおそれがあるかもしれないという意見が出されるかもしれませんけれども、定款変更議案が可決されないような場合、すなわち相当割合の株主が反対しているような場合にまで今回の制度の利用を認めることは望ましくないと思います。そうなりますと、A案だけでなくB案の下でも定款の定めや招集通知の記載を要求した方がよいということになりますが、B案の下でそのような手続を要求するのは制度の立て付けとして少し難しいといいますか、制度として分かりにくいものになるように思いますので、その意味でA案の方が望ましいという感触を持っています。   ただ、それはともかく、私が最も申し上げたいことは、まずはA案とB案とで実現しようとするものが同一なのか、あるいは同一にすべきかという点を検討すべきであり、それをして初めてA案とB案の実施要件や手続をどうするかが定まる、そしてその後にA案とB案のいずれが望ましいかも定まるという検討順序にすべきだということです。少し抽象的な意見も含まれていますけれども、1についての意見は以上のとおりです。   次いで、2の書面決議制度の見直しについてです。提案された案ですと、90%の議決権の賛成があればよいとされています。しかしその一方で、一人でも異議を述べた株主がいるときは書面決議ができないとされており、言わば消極的な形ではありますが依然として株主全員の同意は要求されていると見ることができますので、その意味で制度設計の思想を現行の制度から根本的に変えるものではないと理解することもできます。そのため、少数株主保護のための規定を整備することなく見直しをしたとしても問題は小さいと考えています。逆に、この点を変えることによって制度設計の思想を大きく変えるのであれば、何か別の手当てが必要になるのではないかと思います。   部会資料の8ページで問題とされています決議の成立時点と株主の異議の関係については、②の株主の異議申述期間が経過した時点において要件を満たす場合に限って株主総会の決議があったものとみなされるという考え方の方がよいと思います。それには、まず制度の立て付けとして、そのような考え方の方が素直といいますか、分かりやすいということがあります。また、仮に①の考え方を採った場合でも、株主の全員が積極的に同意したときは別ですけれども、そうでないときは実際上、会社は株主の異議申述期間が経過するまでは異議が出ることを恐れて株主総会決議を実行できないと思いますので、その意味で機動的な意思決定の趣旨との関係では、①の考え方を採る場合と②の考え方を採る場合とでは大差ないと考えられます。そうであれば、分かりやすさを重視して②の考え方を採る方がよいのではないかと思っています。   最後に、3のキャッシュ・アウト手続の見直しについてです。特別支配株主になるために必要な議決権保有割合の引下げについては、第4回の部会で私は賛成意見を述べた上で、略式組織再編についても同様の見直しをした方がよいのではないかと申し上げました。これは、上場会社であれ非上場会社であれ、株主総会決議が確実に成立することが分かっている場合において、株主総会決議を要求することが少数株主の保護に資するということは通常は考え難い、そうであればこうした見直しはメリットの方がはるかに大きいと考えたからです。   しかし、その後、第4回の会議で内田委員から、主に上場会社の場合を想定したお話だと思いますが、株主総会で少数株主が反対意見を述べることができるということが経営者の行動に影響を及ぼし得るのであり、その意味で相当程度の抑止力になり得るため、特別支配株主になるために必要な議決権保有割合の引下げについては慎重になるべきであるという御意見が出されました。それを受けて私も少し考えを改めまして、こうした投資家の方々の御意見は尊重した方がよいのではないかと思った次第です。そして、そのような観点からしますと、特別支配株主になるために必要な議決権保有割合の引下げについては、対象を、公開買付け前置型のいわゆる2段階買収の場合に限定するだけでは足りないということになろうかと思います。なぜなら、先ほどの内田委員の御意見はいわゆる2段階買収の場合にも当てはまる、すなわち、そのような場合にも株主総会で少数株主が反対意見を述べることができることには意味があるという御意見であると理解されるからです。   これに対し、MoM条件を満たす公開買付けが前置される場合だけを対象として見直しをするのであれば、少し話は変わってきます。そのような場合は少数株主の保護は十分に図られているため、株主総会で反対意見を述べる機会を与える必要が小さいと考えられる上に、そのような場合に限って見直しをすることにより、実際上MoM条件を満たす公開買付けが行われやすくなることが期待できるからです。   この点に関連して、部会資料にはMoM条件を設定することが常に望ましいとはいえない旨の記載があります。それは確かにそのとおりだと思うのですけれども、MoM条件を満たす公開買付けが前置される場合に限って特別支配株主になるために必要な議決権保有割合の引下げをするときは、別にMoM条件の設定が義務付けられるわけではなく、会社がMoM条件を設定するかどうかを選択できることになります。そして、会社がMoM条件を設定することが望ましいと考える場合に限ってMoM条件が設定されることになるであろうと想定されますので、そうであれば別に問題はないのではないかと思います。   もちろんこのような見直しをした場合に、実際にMoM条件を設定しようとする会社がどれだけ増えるのかはよく分からないところがありますし、規定も複雑になりそうだという問題もありますので、その意味で見直しの実益がどれほどあるかは検討した方がよいとは思います。ただし、制度の立て付けとしておよそ妥当ではないとまではいえないように思いますので、中間試案においても、(注)でもよいかもしれませんけれども、MoM条件を満たした公開買付けが前置される場合に限って特別支配株主になるために必要な議決権保有割合の引下げをするという案、これは前回、田中委員が提案された案だと記憶していますが、こういう案を記載していただいてよいのではないかと考えております。   なお、(2)の特別支配株主について複数の株主の議決権を合算するということについては、規定の整備が必要になるにもかかわらず、実際上規定の整備は相当に困難ではないかと思っていますので、見直しをしないことについて異論はありません。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○森委員 私は現在の形骸化した株主総会の運営を合理化する観点から、事前の議決権行使による決議確定制度について、制度として導入するということに異論はありません。この点については、定款変更を必要とするかどうかがポイントだと思っております。まず、株主にとって、事前に行使した議決権を株主総会当日に変更できるという権利はそれなりに重要なものだと私は考えております。株主は、株主総会の招集通知が届きますと、日を待たずにすぐに返送する人が多いと思いますが、期限ぎりぎりに出そうという方も、郵便事情ですとか土日とかを考えると、1週間前には投函するということになると思います。一方で、議決権行使書面の返送後に会社の不正行為が発覚したり、若しくは自然災害等によって会社に重大な影響が起こるというようなことも可能性としてはゼロではありません。もちろん会社に郵送した議決権行使について撤回するということも考えられますけれども、撤回する手続自体が大変ですし、実際に株主総会に出席して役員の話を聞いてみたいと考える株主もいると思います。そうすると、株主総会運営合理化の観点とはいえ、そのような株主の権利を奪うことに繋がる事前決議確定制度を導入する前提として、株主総会による定款変更を必要とするという判断はある程度合理性があるものと考えております。ただし、株主にとって株主総会当日に意見を変えることができる権利を放棄するという積極的なインセンティブはほぼありませんので、この事前決議確定制度の定款変更議案が株主総会で通ることはほぼないだろうと思っております。そうすると、会社法を改正したところでほとんど意味がないということにもなりかねないということを思っております。ただ、いずれにしろこの制度の導入自体に反対するものではありませんし、仮にパブリック・コメント等で定款変更は不要だという意見が強かった場合に、定款変更を不要として導入することに反対するというものでもありません。   次に、B案ですけれども、事前の議決権行使によって決議要件を満たした場合に、総会決議が法令や定款に違反したところで取消事由にならないという、こういった規律を会社法上どう規定するのだろうという素朴な疑問があることに加えて、決議の方法が法令や定款に違反してもいいという間違ったメッセージになりかねないのではないかという心配が少しあります。また、先ほど言いましたように、株主が当日に意見を変更できる権利を奪うにもかかわらず定款変更なくこのB案を入れるということについても疑問があるところであります。   これらに加えて、部会資料6ページにC案的なものとして、議長の宣言による株主総会の決議の成立という案が記載されていて、これは前回私が提案したものを取り入れていただこうとしたものだと思うのですが、私が提案したものとは異なっています。私が主張したかったのは、要件として、事前の議決権行使により当該議案について議決権行使することができる全ての株主が出席した場合における株主総会の決議の要件を満たし(ここまではA案と同じ)、かつ、株主総会開始時の出席者による議決権行使によっても株主総会の決議の結果が変わらないことが確認できた場合において、株主総会の議長がその旨を宣言したときは、当該議案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなすという規定を置いて、議長が株主総会の冒頭に決議の成立を宣言できるようにするというものであります。株主総会においては、来場した株主の議決権を入場票のバーコードでカウントすること等により、株主総会時点においてどれだけの議決権数を持った株主が参加しているかということを確認することが可能です。そうすると、株主総会開会と同時に議決権数をカウントして、仮に当日の出席者全員が反対したとしても明らかに決議要件を満たすと確認できた場合は、株主が株主総会当日に意見を変更できるという権利を確保した上で決議の成立を確認し、その後は業績報告や質疑応答、株主とのエンゲージメントに株主総会の時間を使うことができることになります。一方で、議決権行使が賛否拮抗している場合ですとか株数総会当日に大株主が参加した場合はこの制度を使えないことになりますけれども、それはむしろ当たり前で、株主総会当日にしっかりと議論してもらうということになるだけのことだと思いますし、実際上は90%以上の会社においては議長宣言方式が使えることになると思いますので、株主総会の運営が大幅に効率化されることになり、株主総会がより活発に株主とのエンゲージメントの場として機能することになると思います。   なお、部会資料6ページでは、現行法下でも議長による冒頭宣言方式が可能であるという見解もあり、また、説明義務違反の論点も残るのではないかという指摘もありますけれども、現行法下では実際上、説明義務違反のリスクを考えて、冒頭決議を行っている会社はほぼありません。会社法において明確に冒頭決議方式を位置付ける意義は非常に大きいと考えていますし、この規定が定められた場合に、説明義務違反による決議取消しリスクが出てくることはほぼ考えられないと個人的には思っていますけれども、どうしてもそのリスクが残るのではないかという指摘がある場合は、先ほど提案した冒頭決議方式の条項の中に、例えば、株主総会の議長がその旨宣言したときは、第314条の規定にかかわらず当該議案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなすという規定を置いて、説明義務と決議の関係を明確化することも考えられるのではないかと考えています。   このC案というべきものは、定款変更を必要とせずに現状の株主総会を合理化し、より活発なものに機能させることにつながるものであって、社会効率的にも極めて意義があると思っておりますので、是非とも中間試案の中に一案として取り入れていただけないかということが私の希望です。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○白井幹事 2点ほど意見を述べさせていただければと思います。まず第1に、部会資料の1ページですけれども、事前の議決権行使がされた場合における株主総会の決議の合理化に関しましては、私も第4回の会議で意見を述べさせていただいたのですが、今回より具体的な案としてA案とB案が示されましたところ、仮にB案で行く場合に、部会資料1ページの一番下の行にありますように、株主総会の決議の方法が法令又は定款に違反したことは株主総会の決議取消事由とならないという整理でよいかについては、私も議論の余地があるように感じております。先ほどの決議方法の著しい不公正についても同様に扱うべきとする久保田委員の御意見も踏まえまして、決議方法の瑕疵というくくりで捉えて少し考えてみたのですが、例えば事前の書面投票のプロセスや集計に問題がある場合というのも、これは久保田委員の御懸念とは逆の方向の懸念ということになるのかもしれませんが、決議の方法の瑕疵であって決議取消事由には当たらないということになりかねないように思います。例えばモリテックス事件(東京地判平成19年12月6日判タ1258号69頁)では、決議の方法が法令に違反すると判断されたわけですけれども、今のB案の内容では、同事件のように総会日よりも前に生じている法的な問題も決議取消事由に当たらないという扱いになりそうです。そういった扱いは恐らくは想定されておらず、B案を採用する場合には、総会当日の議場における議事運営に何らかの瑕疵があっても決議取消事由にはならない、ということを表現されたかったのではないかと思うのですが、決議方法の瑕疵というくくりでそのことを必要十分に表現できているかどうかは、慎重に確認する必要があるように思いました。その点で、B案は技術的な意味でも実現のハードルは少し高いのかもしれません。   次に2点目ですが、3のキャッシュ・アウト手続の見直しに関しまして、株式等売渡請求の議決権保有割合の引下げに反対する意見として、株主総会は少数株主の意見表明の場として重要であるといったことなどが紹介されておりまして、私もこうした意見に賛成いたします。その上でなのですけれども、少数株主の意見表明の場として重要であるということに加えて、キャッシュ・アウトの帰すうが明らかである場合であっても、日本では対価に不満を持つ株主は後に価格決定を申し立てることで救済を得ようとするわけですが、株主総会の場における株主による質問の機会を奪うということは、現状と比較して、価格決定の場面における証拠の偏在の問題を軽減し得る手段の一つを閉ざしてしまうことになりかねないようにも感じております。すなわち、交付された資料を読むだけではよく分からない点や、当該資料において明記されてはいないものの前提とされている内容が何なのかという点、当該資料における記述に矛盾の可能性や記述相互の不整合の可能性が認められる点などにつきまして、株主総会の場で取締役に対して具体的に質問をし、取締役から一定の回答を得るということは、後の価格決定の場面で株主が手続の不公正さ等を疎明していく上で一つの有力な手掛かりとなり得るように思われます。キャッシュ・アウトの場面では、現状は、価格決定の手続が株主にとって事実上はほぼ唯一の救済手段となっていると解し得るところ、日本の価格決定の場面では会社の側に必要な証拠が偏在しており、株主による証拠へのアクセスが容易ではないという点が、株主が実際に救済を得る上で大きなハードルとなっているように見受けられます。にもかかわらず、株式等売渡請求の議決権保有割合の引下げにより、現状と比較して、株主総会の場で取締役に対して質問する機会の多くが失われてしまうようになるということは、価格決定を通じた救済の可能性も考慮すれば、株主の利益保護という観点からは、単なる意見表明の場を失うということを超えた不利益もあり得るように思われまして、そのような株主の不利益を、キャッシュ・アウトによる金銭の交付時期が多少早まるというメリットがあるから問題はないと割り切ってよいかどうか、個人的には疑問の余地があると感じているところではあります。   また、ここで議論されている金銭の交付時期のみに基づく公開買付けの強圧性の問題は、私は正直に申しますとそれほど深刻な問題だとは考えていないのですが、もしもそれが深刻な問題なのだとしたら、それこそ金商法の改正によって、全部買付義務が課される場面などを対象に追加応募期間(追加買付期間)の設定を要求することで問題に対応するという選択肢もあり得るわけでして、むしろその方が株主に与えるデメリットは小さい形で対応できるようにも思われます。   それ以外にも、これは第4回の会議で松中幹事が指摘されたことでございますが、買収者が公開買付けで9割の取得を目指すインセンティブがなくなってしまうということが与えるであろう影響、例えば公開買付価格が下がるのではないかといった懸念も捨て切れないところでありまして、株式等売渡請求の議決権保有割合の引下げが株主に与える影響については、個人的にはもう少し慎重に見極める必要があるように感じております。そのため、公開買付けを前置するという形で場面を限定した今回の提案だけでは、もちろん中間試案で諮ること自体には異存ないのですが、個人的にはそれを実現することにはやや抵抗感がございます。これに対し、マジョリティ・オブ・マイノリティ条件の設定を要件とする案については別で、これを中間試案で別案として示した方がよいのではないかという点は、久保田委員と私は同意見でございます。久保田委員も御指摘のとおり、この案をベースにするのであれば、少数株主の利益保護の仕組みを現状よりも充実させることを促すことが可能になるからです。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○北村委員 私からは、1の事前の議決権の行使がされた場合における株主総会の決議の合理化と2の書面決議制度について、若干コメントさせていただきたいと思います。   まず、A案とB案が1ページで併記されております。私も、久保田委員がおっしゃったように、これらを対立するような提案として併記することはあまり適切ではないと思いました。というのは、A案とB案は両立し得ないものではなく、A案は定款の定めを要求した上で事前の議決権行使により議案を可決するに足りる賛成があった場合には決議が成立したものとみなすことを招集通知に明示するという制度でありまして、B案はそういうことがなく、現状と同じように株主総会の招集を行ったところ事前の議決権行使により決議が成立する場合には決議取消事由を制限するという制度です。私は、A案を中心にし、B案は格下げして(注)で提示するというやり方でいいのではないかという感触を持っています。   ということで、A案を中心にコメントさせていただきます。第4回の会議の後、私も上場会社の株主総会担当者と何度か意見交換をさせていただきましたけれども、先ほど鮫島幹事がおっしゃったのと同じで、株主総会をすること自体には不賛成ではなく、ただ、建設的な対話に力を入れたいのに株主総会を適正に実施することに注力してしまうのが問題だという御意見がほとんどでした。  A案のような制度を設けるという前提で、個別の論点ですけれども、まず第1に、定款の定めを要求することについて、株主は、当日の審議を踏まえて議決権を行使する、あるいは、事前に議決権行使をしたけれども当日出席してそれを撤回する、という現在行うことができる議決権行使の方法をとることができなくなるわけで、やはりこれは株主権を制限していると言わざるを得ないので、定款の定めは必要になると思います。この制度を実際に利用するのは、それぞれの議題、議案について経営陣と株主の間に対立がなく、事前の議決権行使だけで決議が成立すると予想される場合ですので、この制度を採用するかどうかは、招集の都度、取締役が判断するということでよろしいと思います。   A案は事前に決議が成立した場合でも株主総会は開催し、成立したことを取締役は株主総会で報告するということになっておりますので、第4回会議で事前確定型決議のときに問題となっていました、株主に株主総会を開催するかどうかを通知するために行使期限を早めに設定するという問題はなくなったと理解しています。   第2に、4ページの27行目の対象となる株式会社ですけれども、私は上場会社に限らず、書面投票、電子投票を採用する会社全てを対象とすべきだと思います。上場会社でなくても事前の議決権行使によって決議が成立するとみなすメリットというのは考えられると思っております。   第3に、4ページの10行目辺りに、事前の決議成立の制度は否決する決議を対象としないと述べられております。しかし、私は事前の反対の議決権行使により当該議案について議決権を行使することができる全ての株主が出席した場合でも、否決が明らかになっているのであれば、事前に否決したと扱ってよいと思います。4ページの10行目に、否決決議は決議取消しの訴えの対象にならないという最高裁判決があるからという理由が述べられていますけれども、事前に決議が成立するという制度は決議取消事由が生じ得るという問題だけに対処するということではないと思います。つまり、事前に結果が分かっているのに株主総会で審議、採決をする必要があるのかということも議論の出発点としていたと思います。また、否決決議が決議取消事由にならないということは、否決決議については決議取消しの訴え以外の方法でその効力を争うことができるということを意味しているといえますので、事前の議決権行使の結果否決されたという制度を含むものとしても別に問題はないと思います。   特に、株主提案権の見直しの論点で業務執行事項に係る定款変更提案を制限するのは難しいということが18ページに書かれていますが、そうであれば尚更、定款変更の株主提案は事前の議決権行使により3分の1以上が反対すれば否決が確実になるので、否決決議も対象にしてはどうかと思っております。   第4に、A案は事前に決議が成立しているので、株主総会の議事運営に瑕疵があっても決議取消事由にはならないということを前提にしておりますけれども、そのことは本文1ページのゴシックの部分に明示しておいた方が分かりやすいのではないかと思います。4ページ19行目では、事前に決議が成立していても会社法第314条が適用されるとなっていますが、その違反は決議取消事由にならないということを明らかにしておく必要があります。私は、第314条が適用されるというよりも、決議が成立したとみなされる場合は第314条の適用はなく、会議体の一般原則で質問権が発生するという昭和56年改正前のようにしてもいいかなと思っています。   関連いたしますが、A案で事前に決議が成立している場合には、会社法第304条に従って実質的動議を提出することはできないということを前提に考えられているようですけれども、実際にこのことが1ページのゴシックの部分から読み取れるかは少し疑問です。どういうことかというと、会社提案と両立しない株主提案であれば、会社提案が可決されると、第304条に基づいて実質的動議を提出しても、自動的に否決ということでよいかと思います。しかし、例えば議題が取締役選任の件で、会社提案の候補者3人が事前に可決されたものとみなされても、選任する取締役の人数が決まっていないのであれば、株主が議場で1人追加で候補者にしたいと言ったときどうするのか。あるいは、剰余金配当の件が議題で、会社提案が1株100円の配当である場合、私は疑問ですけれども、実務では株主は追加配当としてたとえばプラス50円の配当提案を出すことができるという扱いがされているようで、もしそれを前提とするなら、会社提案で100円の配当が事前に可決されたとしても、株主が第304条に基づき追加配当提案を提出した場合、議場でこれを採決しなければいけないことになりそうです。   それも含めて、定款の定めが必要と申し上げたのは、事前の議決権行使で決議が成立するものとみなされると、原則として第304条は適用されないことになって、ただ、事前に決議が成立したとしても第304条が適用されるものとすることを定款で定めることは、今回導入する制度の緩和となりますので、それも定款自治の問題とすることができる、ということです。   次に、6ページの2の書面決議制度の見直しです。これは現行の会社法第319条第1項の要件を若干緩和するというのが本来の趣旨であって、決議の迅速性を強調すべきではないと思っております。すなわち、本来株主全員の同意でやるべきところ、一部の株主に連絡が付きにくいという場合に若干要件を緩和するということで、一人の株主でも異議を述べれば書面決議は成立しないという制度です。だから、定款の定めも要らないわけです。   決議があったものとみなされる時期について、8ページから9ページの①、②があるのですけれども、私も久保田委員がおっしゃったように、これは②にしないと筋が通らないと思っております。これは、異議があれば決議が成立しないという制度のはずです。つまり、この制度は株主総会そのものを開催しなくていいとすることに意味があるわけでありまして、迅速性を強調して異議申述期間経過前に決議が成立するというのは不適切であると思っています。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○松中幹事 会議体としての株主総会について、第1の1ですけれども、ここはA案、B案と出ていて、いろいろと制度の中身を見ていくと細かいところも気になるのですが、まず一番大きな違いとして恐らく問うべきなのは、株主総会を意思決定の場として位置付けるかどうかだと考えられます。A案は、明らかに株主総会では物を決めませんという案だと思います。B案は、決めることは前提としつつ、しかし取消事由から一部のものを外していくというもので、第4回のときに藤田委員から説明できるのかという御指摘があって、私もずっとそれが頭に引っ掛かっております。その意味ではA案の方がすっきりするかと思います。問い方としては、そういうコンセプトの制度を作ってよいのかをまず問うべきなのではないかと思います。その上で、どのように作っていくかということであろうかと思います。   それで、もしB案のようなものを入れるのであれば、これは位置付けを落としてもいいという御意見があり、私もそうかもしれないと思っていますが、例えば裁量棄却について現実には瑕疵の重大性が必ずしも重視されないような場合もあるということを踏まえて、この裁量棄却を類型的に拡大していくようなものであると、こんな感じの説明なのかなと思います。ただ、それが本当にいいのかと言われると、私も自信はありません。   A案を想定した場合にあり得る実質的な懸念は、恐らく株主構成が固定した会社で常に決議が通る上に、極端に言えば質問に全く回答しなくても全然構わないということになってしまうことかと思います。現実に上場会社でそうした対応をするところがたくさんあるとは全く思っていませんが、しかし、例えば創業家と安定株主で過半数を握っているような会社で、株主との対話を含むガバナンスに問題を抱えているというところはないわけではないと思います。会社法第314条を含む総会の規律に違反すると多数の株主が賛成していても決議が取り消されるのだという脅しがあることで、決議の成立が確実でも対話をせざるを得なくなっているわけですが、そうした脅しがなくなるわけです。ただ、こういう規律のコストというのは真っ当に対話をしている会社が負担しているわけでして、総会の規律を通じた対話の機会の設定というのが当然のものではないとは思います。さらに、総会の規律だけが手段でもないわけです。そういう意味で、株主との対話、コミュニケーションの確保がほかの形の規律で行えるのだ、行えばいいのだと割り切るのであれば、A案のようなコンセプトに基づく制度を採用すべきであり、この場合はB案のようなものよりもA案の方がすっきりしていると私は思います。   その上で、少し細かいところですが、A案の場合は、積極的な説明義務を要する議案をどのようにするのかというのが少し問題になろうかと思います。現在、例えば株式併合では同法第180条第4項で「株式併合をすることを必要とする理由」を総会の場で説明するように求めつつ、会社法施行規則第85条の3第1号では、参考書類に株式併合を「行う理由」を書かせています。ここは微妙にずれているのですけれども、書面投票を行うような会社の場合、本来は参考書類で必要とする理由まで説明させた方がいいのではないかと思いますので、ここも併せて変える必要があるかと思います。現実には参考書類でも説明されているとは思います。   それで、否決については、確かに可決する決議がないことと否決を厳密に区別していないので、いろいろな問題が出るかと思うのですけれども、その総会で決議が可決されなかったことを確定させるということは可能であると思いますので、否決についても、事前に確定するという扱いをしてもよいのではないかと私も思っています。   続いて、書面決議についてですが、現在の提案の考え方は全株主の同意がある場合という考え方を維持しつつ、実質的にこれと同視できる場合を拡大しているだけであると、だから一人でも異議があるというのが見えてきたらアウト、見えないところで反対していてもそれはいいのだと、こういうものだと思っています。その上で、異議の扱いですが、7ページの現在の提案の書き方では、異議が述べられたときは決議があったものとみなすという規定が適用されないこととなりますので、この決議があったとみなす規定が適用されないのであれば、決議はないことになるはずであります。したがって、既に北村委員からも先ほど御指摘がありましたが、異議の扱いは8ページから9ページの①ではなく②にしないと現在の提案との関係でも筋が通らないのではないかと思います。   これは単に決議の成立の時点の問題、あるいは書き方の問題だけではなく、取消事由にする①のような扱い方をするのであれば当然、決議取消訴訟の提訴期間の制限が掛かってくるわけですが、②のように成立していないと考えるのであれば不存在になるのでずっと争える、こちらの方が重要なのではないかと思います。その上で、実質論としても②のような扱いの方が私も望ましいと思っております。もちろん提案する段階では両方の考え方があるのだというのでもいいのかもしれないとは思います。   最後にキャッシュ・アウトについてですが、私も白井幹事がおっしゃっていただいたとおり、第1段階目の公開買付けの価格に影響する可能性というのが一番の問題であると思っています。そのことへの対応として、必ずしも閾値の引下げときれいに対応しているわけではありませんが、機能的にはMoMの入った公開買付けであればそれでいいのだという割り切りをすることはあり得るのではないかと思います。9割をストレートに取れた公開買付け、あるいは公開買付けでなくてもいいのですが、9割を素直に取っている場合、それからMoM付きで3分の2を取った場合、この場合は短い時間でキャッシュ・アウトができるようにする、そうでない場合は従来の株式併合のように少し時間を掛けてやらなければいけないと、こういう分け方は必ずしもおかしなものではないと思います。   その上で、もう少し大きな問題を見ると、現状、MBO等について相当問題が指摘されている中で、第1段階目の公開買付けの価格を引き下げることにつながるような改正をしてよいのだろうかという問題はあろうかと思います。もし3分の2まで引き下げて、キャッシュ・アウトは全部3分の2でできるのだ、これは政策的にはあり得ると思うのですけれども、それをするのであれば、その前に特別委員会であるとかMoMの設定であるとか、こうした公正性担保措置をきちんとやるものが当たり前になって、そこについて株主から文句が出ない状況になって初めてやるべきことではないかと思っております。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。 ○小長谷幹事 まず、1の事前の議決権の行使がされた場合における株主総会の決議の合理化についてでございますが、9月末に金融庁において海外機関投資家の団体と意見交換をする機会がございまして、一読目の部会資料で示されたたたき台を前提に意見を聴いてみました。概要だけ御紹介しますと、総会は単なる決議のみの場ではなく、株主からの質問や、それに対する経営陣の回答といった議論が行われることに意味があって、特に少数株主にとっては、たとえ自らの議決権行使のとおりの結果にならなくても重要な意味のある場であるとか、あるいは議決権行使に当たっては単なる賛成、反対の2択ではなくて、総会において経営陣の説明や質疑を経た上での条件付き賛成とする場合もあるため、総会は開催される必要があるといった御意見がございまして、基本的には新しい制度を設ける必要性を疑問に思うとの懸念の声が上げられておりました。  金融庁としましても、企業と投資家との建設的な対話の場として会議体としての株主総会には一定の重要性があると考えておりまして、7月の第4回会議において私から発言させていただきましたとおり、まずはバーチャルオンリー総会などステップを踏んで検討を進めていくのが望ましいのではないかと考えております。   今回の部会資料はA案、B案、いずれも会議体としての株主総会は開催されることとされておりますけれども、A案につきましては、部会資料に記載されておりますとおり、株主総会よりも前の時点で決議が成立していることとなりまして、株主が総会当日の審議を踏まえて議決権の行使をすることができなくなりますので、先ほど御紹介した投資家の懸念の声に全て応えるものにはなっていないのかなと考えております。したがいまして、今回の法改正で新しい制度を設けるのであれば、当日の審議を踏まえて議決権行使が可能となるB案という選択肢の方が適当なのではないかと考える次第でございます。   次に、キャッシュ・アウトの方でございますが、こちらは大きく3点コメントをさせていただきます。   まず1点目でございますが、部会資料で御提案されている案は、買収者が公開買付けにより議決権の3分の2以上10分の9未満を取得した場合には、キャッシュ・アウトのために総会決議が必要であることに伴って金銭交付時期が遅れることとなって、1段階目のTOBに一種の強圧性をもたらすという弊害を是正するためのものと御説明いただいております。   この点についてなのですけれども、強圧性という言葉が多義的なものと理解しておりまして、この文脈での強圧性というのは、1段階目の公開買付けと2段階目のキャッシュ・アウトとの間に時間的な間隔があることによって、より早い現金化を望む株主が1段階目の公開買付けに応募するインセンティブを有してしまうというものだと理解しております。したがって、総会決議の要否にかかわらず、買収が2段階になっていること自体から生じている強圧性だと思いますので、仮にこの案の導入によって公開買付けとキャッシュ・アウトとの間隔が短くなった場合、部会資料8の11ページの8行目辺りに強圧性が排除されるとありますけれども、排除されるのではなく、飽くまで低減されるということにとどまると考えております。そうしたことも踏まえて、株主総会における審議の場が確保されるという株主の利益との比較衡量をする必要があるのかなと考えております。   次に、2点目なのですけれども、部会資料の11ページの24行目以降にございます、類型的に強圧性が排除されていると評価することができる公開買付けの例としまして、まず①公開買付届出書に公開買付けが成立し議決権の3分の2以上を有することとなった場合にはキャッシュ・アウトを行うことが明記されていること、また③としまして、公開買付け後にキャッシュ・アウトを行う際に少数株主に交付される金銭の価格が公開買付価格に比べて不利益なものでない場合が挙げられております。   この点についてなのですけれども、本文(1)の規律を設ける趣旨の文脈での強圧性とは、先ほど申し上げたとおり、時間的な間隔があることに由来する強圧性と理解しております。他方で今申し上げた①や③は、価格が異なることに由来する強圧性を低減させるための措置と考えられますので、(1)の規律を設ける趣旨に照らして異なる意味を有するものであるということには留意が必要かなと考えております。   また、非公開化を前提とする公開買付けに係る公開買付届出書におきましては、いわゆる2段階買収に関する事項として公開買付け後に実施されるスクイーズ・アウト手続の内容が記載されることが一般的でございまして、当局としても、公開買付けとスクイーズ・アウト手続を一連の取引と捉えまして、公開買付けに関する規制の違反の有無について確認をしております。そして、スクイーズ・アウト手続における価格が公開買付価格を下回る旨が公開買付届出書に記載されることが予定される場合には、株主が公開買付けに応募するインセンティブが生じまして、価格面での強圧性が生じてしまうこととなりますので、そのような一連の取引を行うことのないように公開買付届出書の事前審査の段階で留意しているところでございます。   このように、開示実務の実態としまして、非公開化を前提とする公開買付けにおきましては、部会資料でいうところの類型的に強圧性が低減されていると評価することができるもののみが行われていることに照らしますと、ここでの適用対象の限定のための要件として①や③といった要件を設けることが適当かどうかということについては、少し検討を要するのではないかと考えております。   最後、3点目でございますが、先ほど来先生方からも御指摘のあった、マジョリティ・オブ・マイノリティの条件が設定された公開買付けに限定することについてなのですけれども、部会資料の中では、常にマジョリティ・オブ・マイノリティ条件を設定することが望ましいとまでは言うことが困難との指摘に留意すべきとされております。ただ、この指摘はM&Aにおける公正性担保措置として設定することの要否について言及したものと理解しておりまして、マジョリティ・オブ・マイノリティ条件を設定している事例に限って今回のキャッシュ・アウトの要件を緩和するということは、会社法上の立法論としてはあり得るのではないかと考えているところでございます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○内田委員 まず、会議体としての株主総会ということですが、私はA案に賛成です。事前に決議が確定していて、その後、取締役と株主の対話の場を設けるということであり、加えて決議取消事由に当たらないということであれば、形式にこだわることなく実質的な株主総会における議論ができると思います。発行体から見ても確実に負担軽減になるので、良い方向だと思います。   定款の定めについては、やはり定款の定めを設けるべきと思います。これはいろいろな先生から御指摘があったように、例えば株主動議ができなくなるとか、株主総会に出席していろいろ意見を聞いて議決権を行使したい株主にとっては株主権の縮小とも取られるので、やはり一旦定款で定めるという手続をとるべきと思っております。   それから、B案につきましては、議決権行使を株主総会まで行使を留保できる、ぎりぎりまで引っ張ることができるというのは、機関投資家にとって一つのオプションというか権利だと思いますので、それだけで見るとA案のように決議が事前に確定されてしまうということはマイナスとも言えますが、一方で修正動議はA案であれば制限されるということなので、その両方のバランスで見ると、A案で良いと判断できます。つまり、ある意味、総会において当日に修正動議が出るということは事前行使した機関投資家にとっては大きなリスクであるので、それがないということであれば、ある一定期日前に議決権を確定させるということはそれほど問題ではないと思っています。それが会議体としての株主総会についてです。   それから、キャッシュ・アウトについては、これは久保田先生がおっしゃっていたように、やはり会議体、つまり総会を開くことは、意見表明、発言の場としては非常に重要だと思っております。意見を表明するだけではなくて、総会における賛同のプロセスが入ってくることで、買収者がスキームの全体像を考えるときに、当然その牽制力というか、そこも意識した形態になると思います。ディールを成功させるには、多くの株主の同意を得るということはTOB、MBOについては必須条件だと思います。このプロセスは買収者から見てもプレッシャーというか牽制力になり得ると思います。   そして特に少数株主の権益の保護が重要だと思います。少数株主というのは支配株主でないその他大勢の一般株主のことを言いますが、その利益を守るというのは非常に重要だと思います。加えて、昨今のMBO、TOBのプロセスにおいて物議を醸したり、疑義を抱かれるという議案も少なくない中で、特別支配株主の定義の閾値を下げるというのは全体の方向性としては逆行しているということにもなりかねないと思います。ここは理屈の問題ではなく、疑われたり懐疑的に見られることを避けるべきで、方向性としても閾値を9割から下げることについては慎重に考えるべきと思います。   最近の事例を見るに、低水準のプレミアム価格やプロセス自体にも嫌疑が掛かっているという事例もあり、スキーム自体が非常に複雑化している中で、その説明をきちんとすることがなかなか難しくなってきており、ここではそういった意味でキャッシュ・アウトの閾値引下げには慎重であるべきと思います。   それから、マジョリティ・オブ・マイノリティについては、この制度をきちんと整備するのであれば閾値引下げも考え得るとは思いますが、全体としてMoMを強制するというのは難しいということは理解しています。しかし、現状MoM導入が難しいのは結局、TOBに応募できないパッシブ投資家が多いということが問題だと言われていますが、一方で浮動株が少ないということによって生じることでもあって、浮動株が少ない状況を誰がもたらしたかというと大株主、親会社がもたらしたとも言えると思います。その責任はやはり大株主にもあると思いますので、それを少数株主に責任を求めるのは少しおかしいと思いますし、MoMだけでなく、マーケットチェックを義務付けるとか独立性の高い第三者委員会を設置するという形態で、一般株主の権益をきちんと守るというスタンスを法制面でも示すということが重要だと思っております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○松尾幹事 私からは1の事前の議決権行使がされた場合における株主総会の決議の合理化について1点申し上げます。   私は第1回の会議でB案の元になるような意見を申し上げたのですけれども、その際は事前の確定型決議というのは総会は開かないという前提の御提案であったところ、開催しないことにするというのはハードルが高いのではないかということを申し上げました。今回はA案、B案ともに役員が出席義務を負う会議自体は開催するということを前提にした御提案となっておりますので、そのことを前提に、実務からの要望の大きい、当日の議事進行については決議取消事由が生じないようにしてほしいと、そのリスクを極力除いてほしいというニーズに応えるという点から見ますと、A案の方が優れているといいますか、B案のような方法で完全に決議取消しリスクを除去するのは難しいということが今回の御説明でよく分かったということでございます。A案については実質的に総会、会議は開くものの、いわゆる意思決定はしない、審議の場としての機能はもう持たせないということになるかと思いますので、これまで多くの方がおっしゃったように、定款に定めることは必須であると思います。   その上で、何人かの委員の方からお話があったように、B案もオプション的に残すというようなことで問うてみるのもあり得ることではないかということでしたので、少しB案について考えておりましたことを申しますと、私はB案の元になるような意見を申し上げたときは、イギリスの上場会社に関する会社法の規律を参考にしました。イギリスの規律は、当日の議事進行プロセスについては当日に異議を申し立てよと、それについて議長が適切に対応した場合には、もはや事後、当日の議事進行については決議の効力を争うことはできないということを定めておりまして、ただし、その場合も議長の議事進行として、異議あらば異議述べよと言って異議を述べさせる、そのプロセス自体に詐欺的ですとか不正なものがある場合は除くということになっています。そのようなことをイメージして、当日の議事進行に関することについては決議取消事由から除けないものかということを考えておりました。ただ、裁量棄却との関係ですとか、そういったことからすると、難しいかなというのが今回の御説明でよく分かりました。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○豊田委員 1と2について述べさせていただきたいと思います。   まず1について、前回は総会は全く開催しなくてもよくなるような案でございましたが、総会自体は開催し、そこで株主との対話を行うという形になったということで、今回の案の方がよいと考えております。A案とB案が示されておりまして、取消事由ではなくするというB案の考えもあり得るとは思うものの、現在のB案につきましては、説明にも御記載のとおり、開催された株主総会において事前の行使とは異なる議決権行使をすることも可能である中で、事前の議決権行使のみで取消事由の有無を決めることが適切かは問題となるように思います。   次に、A案は、会社にとって決議取消しの訴えを提起されることは、軽微な瑕疵で裁量棄却になることが明らかなものであっても、会社にとってその対応には多大な労力とコストが掛かるという意味では、決議が成立してから総会を迎えられるという点は、そのような訴えのリスクをなくせるというメリットはあるように思われます。他方で、その裏返しではありますけれども、そのようなリスクのない総会においては、会社法第314条の株主の質問への説明義務について、きちんと説明責任を果たさなければ訴えられる可能性があるという緊張感が緩む方向に働くことは否めません。特に、不祥事があった場合など、株主との間で緊張関係の生じる場面においては説明義務が果たされないおそれが大きくなってくると思います。   そのような方向での改正につきまして、コーポレートガバナンス・コード原則1の2において、上場会社が株主総会が株主との建設的な対話の場であることを認識すべきであるとされていることとの関係で逆行しているのではないかという意見が日弁連内でございました。取消しのリスクがない方が議事運営が過度に慎重にならず、株主との率直かつ建設的な対話が促進されるという御意見もあると承知しておりますが、この制度を利用する会社が様々であろうということ、また、通常の場合のみならず不祥事等、適切な説明がなされにくい場面もあり得るということを考えますと、説明義務についても少し配慮した形の方がよいのではないかと考えております。具体的な案でなく申し訳ございませんが、1については以上でございます。   次に、2の書面決議制度につきまして、株主総会の成立時を1週間の異議期間の前にすると、異議を述べた場合に取り消されて法律関係が不安定になるため、もしこの制度がそのような形で実現した場合には、実際には一部の所在不明といった場合にのみ有用ということになりそうですけれども、それであっても早期の決議のニーズが大きいということでしたら、特に反対ということではないということを申し上げたいと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○矢野幹事 まず、1についてですけれども、A案でもB案でも全体的に制度の立て付けの整合性がとれていないと感じているということと、目的に対して過剰な対応だとは感じております。現状では、相当整理していただかないとなかなか賛成と言えるのはないのかなというのが正直な感想でございまして、パブリック・コメントではC案として、変更しないという案も入れていただきたいとは思っております。   現状のA案、B案について申し上げたいと思いますけれども、報告や質疑を行うということは補足説明に書かれてはおりますけれども、先ほど松中幹事もおっしゃったとおり、質問を一切受け付けないということも可とする制度ということになりますから、その辺りは補足説明でしっかり書いていただかないと誤解を招くかなと思ってはおります。ただ、そうした実質的に質問を受け付けない制度ということ、特にA案では多数決でそれを決めるということですから、ほかの株主の質問権を奪う制度、これが許されるかという話は、会議体の原則という話ではなくて、むしろどういった場合にそれでも多数決の正当性が保持できるのかという観点から検討しなければならない問題だろうと思いました。具体的には、どういった手続を経ることで多数派はその正当性を主張できるのか、逆に少数派にとっては、どういった手続を経ることで自らの多数決の結果について責任を負わなければならないのかという観点から、許される手続の限界はどこかということを考えなければいけないと思います。   この点に関して、はっきりした文献等がなかなか見付からなかったのですけれども、憲法学の分野で東北大学の柳瀬良幹教授が書かれた昭和29年発刊の「憲法と地方自治」という書籍内の多数決の拘束力という論文で論じられているものがありました。この論文では、平たく申し上げると、その根拠として討論の手続が必須であるということが論じられています。この論文を会社法に当てはめますと、討論は質問権と説明義務ということですから、これらの権限行使を適切に保障するということが多数派にとっても少数にとっても必要だということになるかと思います。この解釈自体は会社法の現行法の規定にも非常に整合的ですし、他の我が国の法制度とも非常に整合的な内容になっているのかなとは感じておりますので、構成員が自らの権利を放棄するのは自由ですけれども、他者が持つ権利を奪うということができるのかどうかというのは、それは多数決の自己否定ということになるから、できないのではないかというのが私の考えです。そのため、A案でもB案でも、そうしたことを運用上許容する制度というのはよろしくない、多数決の自己否定であると考えます。特にA案は、定款変更ということになるので、その自治の範囲を超えているのではないかというのが正直な感想です。   私自身、様々な立場で株主総会に出ておりますけれども、その中で、これはいかがなものかと思う権利行使も実情としては見ることは見ます。ただ、全体としてはそれはごく少数の例外であって、ほとんどの株主さんはルールを守って適切な質問をしているということは実情としては感じております。株主総会の場で話すのも建設的な対話の一つですから、そうしたことを無駄だというような発想ではなくて、より建設的な対話を促進するという方向で考えていただきたいと思っております。諸外国との比較で見ても、株主の権利の保障がより後退している国と捉えられないかというのは非常に心配です。   その点を少し置いておいて、補足説明の中身について少しお話ししたいと思うこともありましたので、お話しします。まず、A案で決議の成立時点は行使期限経過時とするということがあるのですけれども、総会で報告したときとかいう形にしておかないと、例えば取締役の選任が前日の午後5時になってしまう、時の経過になってしまうのではないかと思いまして、そういったところとの整合性をとれているのかなというのが少し気になりました。あと、B案については、例えば招集通知が漏れていましたといったような法令違反も決議取消しとならないような内容になっていまして、説明義務とも何の関係もないものも全部オーケーとしてしまうことは、やはり少しおかしいのかなと思います。   A案、B案、これは共通なのかもしれないですけれども、説明義務自体は報告事項にもありまして、それと決議取消しとの関係というところも整合性が本当に取れているのかとは少々気にはなっていまして、これはもしかしたら2とも関係しているのかもしれないのですけれども、総会の目的である事項という条文の立て付けが、その範囲が条文ごとに少し違っているような気がしていまして、その辺りとの関係性も整理しながら決める必要があるのかなとは思いました。   また、少し別の話ですが、A案、B案とは別に、仮にですけれども、改正の方向性を考えるとしますと、B案のような包括的なものではなくて、時間や場所、制約の中で合理的な範囲で討論の機会を与えた場合には決議取消しに該当しないといったような定めを置くとか、あとは過去の裁判例を明文化したような形、過去にもいろいろこういった改正はあったかと思いますけれども、そういったような改正をする、あとは、単純に会社法第314条、説明義務のところに合理的な範囲でといった言葉を加えるということも考えられるかなと思ってはいます。   今更で少し難しいのですけれども、昭和56年改正で質問権の裏返しということで今回、説明義務が入っているという理解なのですけれども、実際はこの50年余りの実務で考えると、感覚的に見ると、裏返しにしたはずなのですけれども、義務の方が少し広くなってしまったかなというような感じもありまして、もしかしたら条文に質問権と書いた方が全体としては楽になるかもしれないという思いもあります。   1は以上ですが、2の点について少し述べたいと思います。2も基本路線としては同じように質問権の関係から考えるべきであろうと思っておりまして、今回の案は、1週間前に送って異議がなければよいという形なので、その上で異議があったときは株主総会を開催するという立て付けであれば、異議を出さないことで開催の省略については黙示的に同意したと、つまり質問権を放棄したということは言えるので、一応可であろうとは考えます。逆に、8ページ目から9ページ目ぐらいの①のところですかね、決議取消事由にするというのは少し理屈が立たないのかなとは思いました。この制度自体は非公開会社に限るといったような形がよいのかと思いますけれども、昨今の郵便事情からすると、1週間で本当に届くのかとか、同意や異議を出す時間があるのかとか、その辺りが少々気になるというところはあります。   あと、そもそも論として1週間が待てない事案というのは、前も申し上げたとおり、私は経験したことがありませんので、この制度だったら結局、1週間後に開けばいいだけなので、どこまで必要なのかというのは少々疑問はあります。緊急の資金調達とかの場合というのは、1週間以上前から資金ショートするのは分かっていることが普通でしょうし、急に明日お金がものすごく要りますから株主総会が絶対必要ですというのはなかなかないのかなと正直思っておりまして、そうした事例が、単純に手続を忘れていたというミス以外のものでどの程度あるのかというのは、私個人としては気にはなっているというところです。   あと、この点も前回申し上げましたけれども、所在不明株主の問題というのは、複数の法制度の横断的な対応や国や関連団体の対応も必要なところであると認識しておりますから、ここに御出席の関連団体の皆様においても是非対応を御検討いただきたいということは切なる願いとして持っております。   あともう一つ、社債権者集会の点についても記載がありまして、これは内容的には同様の制度を入れるのはあり得るのかなと思いますけれども、社債権者集会自体がそれほど頻繁に開催されるものでもないということと、ウェブ併用等もできるという現状がありますので、株主総会以上に導入のインセンティブは低いのかなという思いはあります。   あと、3については、中身はなかなか悩ましいかなと思いましたけれども、この内容でパブリック・コメントに付すということには異存ありません。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○行岡幹事 私からは大きく二つの項目について意見を申し上げたいと思います。   一つ目の項目は1でありまして、北村委員、松中幹事がおっしゃったように、基本的に私はA案をベースに考える方向性に賛成しております。その前提で、1点コメントといいますか意見を申し上げたいと思います。それは、事前の議決権行使の期限までの期間中に株主が一度、事前の議決権行使をしたのだけれども、その後、翻意して撤回ないし変更したくなったときのことを手当てしておく必要はないかという点でございます。すなわち現在の実務においては、事前の書面投票や電子投票の撤回については基本的に会社側の任意の対応に委ねられているのだと理解していますが、そのような実務は、総会当日に出席をすれば事前の議決権行使が無効になるという現行法の制度の立て付けを前提としているのだと思います。   今このA案のように、事前の議決権行使のみによって決議が確定的に成立するという制度を採用する場合には、先ほど申し上げたとおり、一度事前の議決権行使をした株主が期限までの間に翻意した場合に、その事前の議決権行使を撤回ないし変更する機会を制度的に確保しておくことが望ましいのではないかと思います。具体的には、招集決定における決定事項として、株主が期限までに事前の議決権行使を撤回する方法を定めるといった内容の規定を施行規則に置くということがよいのではないかと考えています。ただ、以上を申し上げた上で、電子投票についてはともかく、書面投票については実務上そのような対応をすることが難しいということももしかしたらあるかもしれないので、実務的に無理のない範囲で御検討いただければと考えています。   次に二つ目の項目です。資料9ページの15行目、先ほど矢野幹事からも言及がありました社債権者集会に関するところで、少し長くなってしまうのですけれども、大きく3点コメントさせてください。株主総会の議題から少し離れたところで大変恐縮なのですけれども、第4回の会合に急な体調不良で出席できなかったという事情がありましたために、この機会に意見を申し上げることを御容赦いただければと思います。大きく3点申し上げます。   まず1点目ですが、社債権者集会は株主総会以上に会議体という形をとる意義は乏しいのではないか、それゆえ単なる意思決定の仕組みとして純化するという考え方になじみやすいのではないかと考えています。また、社債権者集会は、例えばコベナンツ違反に対応するといった場面のように、機動的に意思決定を行う必要性が類型的に高い場面での利用も想定されるのではないかと思います。このような観点から、社債権者集会については、発想を大胆に切り替えまして、多数決による書面決議の制度を正面から導入することも検討に値するのではないかと思います。具体的な制度設計のイメージは次のとおりです。   すなわち、提案者の側で議決権行使の参考となる情報を事前に公表して社債権者に提供した上で、一定の議決権行使の期限を定めて、その期限までに行使された書面投票ないし電子投票によって所定の決議要件が満たされた場合には決議が成立したものとみなす、という制度です。これと株主総会に関する今回の1のA案との違いは、初めから会議体の開催を予定していないということにあります。また、2の株主総会の書面決議との違いは、90%という高いハードルを課さないで通常の決議要件で足りるとすることでございます。このように株主総会とはかなり異なる考え方にかじを切ることになるのですけれども、社債権者集会についてはそのような整理もあり得るのではないかと考えています。   ちなみに、この書面決議の決議要件をどうするかは難しい問題でありまして、慎重な考慮を要するところだと思います。大ざっぱには大きく二つの考え方があり得て、一つは、実際に行使された議決権数を分母として、多数決が成立したかどうかを見る方法、もう一つは、総議決権数を基準として多数決が成立したかどうかを見る方法です。もちろん、ほかの考え方もあり得ると思いますけれども、大きくこの二つがあり得るかと思います。会社法、現行法は、集会による決議について基本的に前者の考え方、つまり行使された議決権を分母とする考え方を採用しているので、書面決議制度を導入する場合も同じ考え方でよいという考え方もあり得るかとは思いますが、ただ、この考え方を採る場合には、書面決議の提案者がごく少数の社債権者だけにアプローチをして賛成多数を確保するといった運用がなされるおそれもありまして、その意味では後者の考え方、つまり総議決権数をベースにする考え方の方がベターであるとも言えるかと思います。これは株主総会の1のA案に近い発想だと思います。しかし、この場合は、書面決議を試みたけれども決議要件に届かず失敗したということにもなりやすくなりますので、そうすると、せっかく制度を作ったけれども実際には使われない制度になるといったことも懸念されます。要するにここは難しい問題があるということで、仮に今申し上げたような制度を導入していただける場合には、以上の点についてどう考えるかを詰める必要があると思います。   次に2点目でございます。仮にこのような多数決による書面決議の制度を導入する場合には、これを法律上当然に適用するのか、それとも社債要綱の定めに委ねるのかという問題が出てくると思います。バーチャル社債権者集会の文脈で申し上げたとおり、私は基本的には全ての社債に一律に適用するのではなくて、選択の余地を認めることが適切であると考えています。この意見は変わらないのですけれども、従来私が申し上げてきた意見を少しだけ修正させていただきたいと思っています。それはどういうことかといいますと、これまでは社債要綱で定めた場合に限って新しい制度を適用するという言わばオプトイン方式の考え方を前提に議論してきたわけですけれども、逆の考え方もあり得る、すなわちオプトアウト方式、原則として新制度を適用するのだけれども、社債要綱で別段の定めがある場合には適用しないといった仕組みも考えられるのではないかと思います。このような仕組みであれば選択の余地を認めることができますし、むしろ、マジョリタリアン・デフォルトの考え方からはむしろこの方が合理的かもしれないと考えている次第です。この点で従来の意見を少し修正させていただきます。   その上で、3点目なのですけれども、このようにオプトアウト方式を採用する場合には、従来の会合でバーチャル社債権者集会に関して仁分委員から御意見が寄せられていた、既発債にも新制度を適用する余地がないかという、そのようなニーズにもこたえる余地が出てくるかもしれないと考えています。この点については、まず前提として、基本的な考え方について少し私の意見を申し上げますと、社債については法制度が変わったから当然に新しい制度が既発債にも適用されると考えることには慎重であるべきであると私は考えていまして、個々の規定ごとに経過措置の要否を検討するべきであると考えています。社債権者集会の制度というのは、社債の内容変更等に関する意思決定の在り方にそれなりに大きな影響を与え得るものですので、当然に既発債にも改正法が適用されると考えることには私としてはちゅうちょを覚えるということでございます。ただ、ここは考え方が分かれ得るところですので、今回提案されているような内容であれば経過措置なしで当然に適用してよいという考え方もあり得るかもしれないとは思います。   それを申し上げた上で、もし私のように慎重な立場をとって、当然には改正法を適用できないという考え方をとるとしても、一定の手続要件の下で既発債にも新制度を適用する、そのような経過措置を定めるということは考えられるのではないかと思います。例えばですけれども、原則として既発債にも新制度を適用する、これをベースラインとしつつ、ただし改正法の附則が定める一定の期限までに総議決権数の10%の社債を有する社債権者から異議があった場合には、新制度を適用することについて社債権者集会の決議を要する、というような形での経過措置を設けることは考えられるのではないかと思います。もちろんこのようなアイデアに対しては、そもそも経過措置が必要かどうかという話と、このような方法が経過措置として適切かという話、あるいは法制上可能かどうかという話など、いろいろ課題はあろうかと思いますけれども、検討には値するのではないかと思い、一つのアイデアとして申し上げた次第です。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。これまで必ずしも十分に議論がなかった社債権者集会について、具体的かつ詳細な御意見をありがとうございました。 ○田中委員 まず、事前の議決権の行使がされた場合についてですけれども、私は以前からA案でいいのではないかと考えておりました。かつ、A案を提唱している企業は決して会議体を開きたくないのではないであろうと、会議体はむしろ開いて、それこそ経営者は直接株主の前で話したいし、株主の質問も受け付ける意思はあるのだけれども、ただ、現在のように、説明義務が課された上で、違反については決議取消しの可能性もあるという制度の下では、どうしても回答が形式的なものになってしまう。あるいは動議、特に実質的動議に対し、必ず対応しなければならなくなります。そのような、必ずしも総会の意思決定にとっても、また、株主が会社のことを知るという目的にも必ずしも役立たない形で株主総会が開催されていると、そういった問題意識を実務家が持つというのは理由があるのではないかと思いまして、A案に賛成していたわけです。   今回、A案について、会議体を開くのだということがはっきりしましたので、私としてはA案に賛成したいと思います。ただ、やはりこの辺りの問題については、投資家も様々な意見があると思いますが、少なくとも一部の投資家・株主と、今私が言ったような、企業で総会実務を担当している人の間で考え方に少しずれがあって、投資家・株主の中には、やはり法的な義務を伴う形で総会の審議をすることが重要であるとと考える人もいるように思われます。そのような投資家も説得して納得を得た上で行うという点では、定款変更を必要とするという考え方はよいのではないかと思っております。   なお、会議体に関する株主の権利、具体的には質問権とか動議をする権利といったものについては、私は、そもそも株主総会を会議体として開くかどうかを義務付けるか自体が立法政策の問題だと考えておりますので、質問権や動議の権利といった会議体に関する権利が、定款によっても奪い得ないような権利であるとは私は考えておりません。A案のような制度も立法としては十分あり得ると思います。   その上で今回、B案というのが出てきましたが、これは、何人かの委員、幹事が既に言われたことですが、A案とB案はかなり想定している目的が変わってくると思っています。つまり、B案のもとでは、現行法のもとでの株主総会の審議に係る義務は結局全て残るということになります。したがって、取締役は、もちろん株主の質問を受け付けなければならないですし、動議にも対応しなければならないですし、そういう質疑と動議を受け付けた上で、採決をしなければならないことになると思います。B案は飽くまで取消事由から除外するというだけですので、取締役は法令遵守義務がある以上、これらのことは全て従前どおりにしなければならないことになると思います。ただ、それを決議取消しというプレッシャーから解放された形で行うということについては一定の意味があると思っておりまして、そういう意味では私はB案というのも提案する価値はあるのではないかと思います。この場合、A案とB案は必ずしも択一的なものではないので、A案に賛成か反対か、B案に賛成か反対かという形で、両方に賛成するということも理論上はあり得るような形にするのがよいと思っています。   その上で、A案についてもB案についても、それらの提案が本当に想定していることが、現在の案には十分に包含されていないという指摘がありました。私もそのとおりだと思っていまして、例えばA案については、決議があったものとみなすというだけだと、北村委員がおっしゃったように、株主が(追加的な議案の)動議をすることは必ずしも排除されなくなってしまいます。A案は、そういう動議をできなくすることを想定しているはずですので、会社法第304条の適用を排除するとか、そういう形の規定が必要になるかと思います。それから、B案についても、一般的に決議方法の法令違反又は定款違反による決議取消事由とならないとするのは、少し規定として広すぎ、飽くまで当日の審議における瑕疵が決議取消事由にならないという趣旨であることを明確にする必要があると思います。   ここまでは恐らく大方の合意があると思うのですけれども、本日の審議で、実質的な問題点として浮上してきたこととして、特にB案に関して、事前の議決権行使によって決議成立の要件を満たすというだけでは、B案のルールを適用する要件として足りないのではないか、なぜなら、事前に議決権行使をした株主が当日総会に出席し、議案への賛否を変える可能性があるからという御意見がありました。私も、やはりそこはそのとおりではないかと思いまして、特に、このままB案どおりに法改正した場合には、総会当日に出席した株主のかなりの部分が事前の議決権行使とは賛否を変え、その結果として決議の結果が僅差になってしまったようなときも、およそ決議取消事由になり得ないようなことになってしまいます。本来、B案を適用するためには、事前の議決権行使で決議成立の要件を満たしており、かつ、当日総会に出席した株主の議決権行使によって決議の結果が変わることはなかったということまで言える必要があるように思います。   ただ、この点は、考えてみますと、実はA案についても言える問題のようにも思えます。もしそうだとすれば、その点でもますます、このままA案で行くのであれば定款変更は必須なのではないかという感じもします。ともあれこの問題については、A案・B案のどちらについても、総会当日会場に出てきた株主の議決権行使についてどう考えるかという点について、果たして現在の提案のままでいいかどうかを考える必要があると思います。株主が総会に出席する場合でも、実際には、会社提案に対して特に異議はなく、むしろ会社のほうで頼んで、手続的動議が出てきたときにそれに対応してもらうために総会に主席してもらっているというケースが現在は多いと思います。そのようなケースでは、株主は実質的に、会社提案に対して賛成で確定しているわけですので、そのような株主が仮に当日議案に反対したとすれば決議の結果が変わり得るからといって、A案やB案のルールの適用が排除されてしまうとすればやはりおかしいように思えます。そのように考えますと、実はこの問題は意外と複雑であるように思いまして、もしこの問題に対処しようとするなら、総会に出席した株主に対し、事前の議決権行使を変えようという意思ではないのだということを何らかの形で表明させるとか、そういうルールを作る必要があるのかもしれません。私も、実は本日の会合まで、こういう問題があることを意識していませんでしたので、よく分からないのですけれども、この辺りは少し再度議論する余地はあるのではないかと思いました。   最後に、キャッシュ・アウトなのですが、私の意見を取り上げてくださってありがとうございます。私も公開買付けを前置した上で、株式等売渡請求をすることができる特別支配株主の要件を緩和する案がいいと思っております。そうすることで、現在一般的に行われている2段階買収の実務に伴う問題を緩和できるいうことも期待しておりました。   先ほど小長谷幹事がおっしゃいましたように、確かにキャッシュ・アウトの時期が遅れるかどうかということは総会を開くかどうかとは一応独立の問題で、総会を開かなくてもキャッシュ・アウトの時期が遅れることもあり得るし、総会も非常に速やかに開けば、それほど遅れないことはあり得ます。しかし、やはり実務上は、総会を開くとなれば基準日を設定して招集通知も発送しなければならない以上、キャッシュ・アウトの実現時期には遅れが生じることが否定できないと思います。私が承知している限り、アメリカでは2段階買収において、2段階目のショート・フォーム・マージャー(株主総会の決議によらないキャッシュ・アウト)は、本当に公開買付期間満了の翌日とか、そのぐらいのスケジュール感で行っていると認識しています。我が国でも、総会決議を開かなければそういう対応をとることは、手続上工夫することで十分可能だと理解しており、そういう方向を目指した方がいいように思います。   その上で、今回の案では補足説明で触れられていますけれども、2段階買収を公正な手続で行っている場合にのみ、キャッシュ・アウト要件の緩和を認めるという、ある種のセーフハーバーのようなルールを設けることにより、2段階買収の手続の公正を図っていくという方向性があり得ると考えます。具体的に言えば、まず、2段階買収の2段階目の価格は、1段階目の公開買付価格を下回らないことを約束して公開買付けを行っていること、これは現在も行われていることなので当然ですけれども、その上で、1段階目の公開買付けの成立条件としてMoM要件を付けているということです。これは飽くまで、2段階目のキャッシュ・アウトを株主総会によらずに行うというオプションを利用するための要件として、MoM要件を課すということです。現在の実務においてMoM要件を付けると公開買付けの成立が危ぶまれることがある、しかもそれは、必ずしも買収者側の事情によるのではなくて、例えば公開買付けに応募しないパッシブ投資家の存在によってMoM条件を付けたくても付けられないという場合もあるとうかがっています。ただ、そういう場合はこの制度を利用しなければいいというだけでありますので、オプションとして考えるならMoMをオプション利用の要件にすることは十分考えられると思います。   なお、MoMを付けることが常に望ましいとは限らないという御意見は、確かにそのとおりかと思います。しかし、やはりMoMというのは、特に支配株主による非公開化取引において、少数株主の利益を守るためには有効な制度であると考えます。キャッシュ・アウト制度の歴史の長い米国、特にデラウェア州などと比べると、支配株主が行う非公開化取引について、MoMを付けるかどうかについて、日米ではかなり違いがあります。現在、アメリカ(特にデラウェア州)では、付けることがむしろ一般的になっていると認識しています。本制度を、そういう方向に持って行くための手段として位置付けるなら、必ずしもそれは少数株主に不利益な制度にはならないのではないかと思います。   なお、何人かの委員、幹事の方から、株主が株主総会で質問をすることにより、その後の株式の価格決定手続において株主が利用できるような有益な情報が得られる可能性がある、そういうことに期待して、株主総会を開かせることには意味があるという御意見がありました。私は、もちろんそういう可能性が全くないとは申しませんけれども、余りないのではないかと思います。というのは、企業は基本的に、公開買付けをするときに情報開示をしているので、株主総会で株主から質問されたとしても、その開示情報を繰り返すのが一般的な対応になると思います。もしもそのような企業の説明の仕方に問題があるとすれば、それは、そもそも元々の(公開買付けにおける)情報開示に問題があるのであって、そのことは、株式の価格決定手続の中で、取引が公正な手続によって行われていないことを示唆する情報という形で主張できます。公開買付け時点の情報開示に問題があるなら、それは株主総会の説明によっても治癒されるようなものではありません。もちろん株主総会が無意味であるとは言いませんけれども、それが株主の救済手段として非常に重要だから、あえて時間を掛けてでも株主総会を開催させる意味があるというふうには必ずしもならないのではないかと思っています。   ただ、もちろんこの点は異論があるかとも思いますので、この案をパブリック・コメントに掛けるのはいいと思うのですけれども、その際には是非、今申し上げたようなMoM要件を公開買付けに付していることを条件にするという案も明示した上で、掛けていただきたいと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○臼井委員 まず、会議体としての株主総会について申し上げます。   投資家から見た株主総会の位置付けについて、そもそものところを少しお話しさせていただきます。株主総会は、会社が資金の出し手である株主に対して業績、経営戦略、リスク、取締役会の実行状況について説明責任を果たす、欠かすことのできない年に一度の機会であり、議決の場としてだけではなく、説明責任、監督、ガバナンス、透明性を確認する場として非常に重要だと考えております。社外取締役を含む取締役が直接、株主、特に少数株主の声を聴く限られた場の一つでもあり、通常私どものような運用会社は株主総会の会場に直接出席することは多くないものの、その場における会社からの説明、株主との質疑、併せて最終的な議案成立等については、投資先企業の状況を見極めるための重要な情報として捉えております。また、株主総会において行われた議論が会社に対する問題提起となって、企業統治を始めとする改善につながった例は国内外において存在すると考えております。   投資家にとって、毎年の議決権行使と株主総会の質疑内容、議決結果というのは、継続的な企業評価及び投資判断プロセスの中の一つのステップでありまして、事前の議決権行使で賛成しているから総会の開催はどうでもいいということにはならないというところを申し上げたいと思います。   次に、事前成立型導入によりどういうことが起きるのかということを考えてみますと、現状、日本株の保有比率を見ると外国人が3割強、それから政策保有、金融機関、事業法人等による持合株ですが、これが2割強というところですので、合計するとこれだけでも過半数を超えてくるというところであります。基本的に政策保有の株主は会社側議案に対して賛成行使をすると想定されるのに加えて、外国人株主は、物理的に総会に参加することが非常に困難でありますので、事前に行使をするということを考えますと、会社提案に反対でない限りは、これらの2主体の事前行使のみで事前決議が成立するケースも多いだろうということが想定されます。こうした保有状況はセクターによってもばらつきがあるわけですけれども、外国人保有比率の高いセクター、それから政策保有比率の高いセクター、親子上場の企業等においては、事前決議の成立が常態化してくる可能性が非常に高いと考えられます。   そうした中で、投資家としてどういう方向性が望ましいかというところですけれども、部会資料のA案とB案について、まずA案については、株主総会を対話の場として活用したいという趣旨は賛同できる一方で、単なる形式的な報告、質疑の場となりかねないということ、それから、当日までの突発的な変化や総会での審議を踏まえての議決権行使の変更ができなくなるという、言わば株主利益の喪失可能性を踏まえますと、株主が定款変更に賛同するハードルは非常に高いのではないかと考えます。一方でB案においては、決議方法が著しく不公正な場合においては取消事由となる一方で、それ以外については基本的に取消事由とならないという点が、運営や質疑の空洞化につながりかねないと懸念しており、どちらもコーポレートガバナンスの後退につながるリスクがあるのではないかと思っております。   質疑が形骸化しないよう、会社と株主の間のコミュニケーションが行われるだけにとどまらず、緊張感を持って質問権、説明義務を明確化して、企業価値向上につなげていくような追加的な措置があるといいと考えております。例えばですけれども、ウェブ等による事前の議案説明と株主からの質問、それに対する会社からの回答といったプロセスを経て事前の議決権行使をするという仕組みが導入できれば、これは現状のプラクティスに対しては議論の実効性確保という観点から改善につながりますので、こうしたことがA案に含まれてくるのであれば、一考に値するような案になってくるのではないかと思います。弊社の米国及び欧州にいる運用者と意見交換をしてみても、株主総会をやらないということに対する否定的な反応は非常に大きく、これは先ほど小長谷幹事がおっしゃったところと重なる部分でございます。一方で、日本企業の総会運営における言わば非常なストレス、形式的な取消しリスクに関する疲労感については、対応していく必要があると考えます。こうした点を踏まえますと、決議取消しのリスクを総会の実効性及びガバナンスの実効性という観点から改めて整理していただき、セーフハーバー的な考え方も取り入れながら会社側の運営負担を軽減していただくこと、加えてバーチャル総会の導入拡大、開催日の分散といった方策も併せながら、真正面から株主総会の実効性向上に取り組んでいただくのが望ましいと考えております。   それから、キャッシュ・アウトについて申し上げます。特別支配株主に必要な保有比率を3分の2に引き下げることについては、慎重な見方をしたいと考えております。これまで御意見が出されたところではありますけれども、総会における議論で反対意見が予想されることが最初の条件の一定の改善につながっている例もあるということに加えまして、全体感として、日本市場におけるこうした買収やM&Aのフェアネスは、ガバナンスの観点からも、海外投資家の大きな注目点の一つであります。PBR1倍割れ、すなわち解散価値以下で評価されている企業がまだプライムで4割強あるという、非常にバリュエーションの低い日本市場において、安いものが少し上がっただけで市場から退出しかねないというところは、日本の株式市場におけるプライシング機能の信任そのものに関わりかねないと考えます。今は割安だけれども、きちんとこれはプロセスが働いて修正されて高くなるのだと、そのような期待を持てるような、少数株主保護を考えた制度にしていただければと考えております。   既に議論されているところではありますけれども、MoMや独立性を担保した特別委員会の導入ということも、これは今ソフトローで入れてくださっていますが、ハードローに入れ込むことで強制力を持たせるような形にできればと思います。各種指針を始めガイドラインが、直近では2023年にも整備をされて進んでいるところではありますけれども、様々なTOB、MBOの事例を見ますと、少数株主の利益が十分に考慮されないケースが非常に多いというところは率直な実感として持っておりますので、しっかりとした整備を期待したいというところでございます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。   まだ議論の途中ではございますけれども、3時を過ぎておりますので、ここで15分ほど休憩をしていただき、3時25分を過ぎた辺りでまたお戻りいただければと思います。   それでは、ここで休憩を入れさせていただきます。           (休     憩) ○神作部会長 それでは、引き続き議論をしたいと思います。   部会資料の8の第1、株主総会の在り方に関する規律の見直しにつきまして引き続き御議論を頂きたいと存じます。 ○加藤幹事 キャッシュ・アウトの手続の見直しについて意見を述べます。   制度整備の方向性については賛成いたしますが、制度整備の目的を1段階目の公開買付けと2段階目のキャッシュ・アウトの間隔が空くことによって生じる強圧性の排除という形で狭く解することに再検討の余地があるように思われます。公開買付けなどの買収手法の強圧性の排除は、買収手続の公正さの一要素であり、仮に2段階買収の2段階目において株主総会を省略したとしても買収手続全体の公正さは確保されているとの評価が可能な制度にするべきであると考えます。ただし、このような評価というのは買収者の属性や買収者と対象会社の関係によって異なるように思われます。これまでの審議の中で制度整備に慎重な意見は、親子会社間で行われるキャッシュ・アウトを念頭に置いていたように思われます。確かにこのようなキャッシュ・アウトでは、公開買付けの段階でキャッシュ・アウトが行われること自体は確定している場合もあり得るため、そもそも1段階目の公開買付けと2段階目のキャッシュ・アウトの間隔が空いていることにより生じる強圧性がどの程度存在するのか、そのような間隔が短くなることが手続の公正さの確保につながるのか懸念があります。   このような懸念は、制度を利用できる対象をマジョリティ・オブ・マイノリティ条件が設定された公開買付けに限定するということである程度は解消できますので、私はマジョリティ・オブ・マイノリティが設定された場合に限るという案に賛成したいと思います。もちろんキャッシュ・アウト自体は親子会社間のキャッシュ・アウト以外の目的でも使われますが、この場合にはマジョリティ・オブ・マイノリティを要求したとしても制度の利用が著しく困難になるというような事態にならないと思います。特に問題がある親子会社間のキャッシュ・アウトの問題に対処すべきという観点からは、制度の利用自体をマジョリティ・オブ・マイノリティ条件が設定された公開買付けに限定するということを案の方で明示するということが望ましいのではないかと考えます。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。 ○青委員 まず、1の事前の議決権行使がされた場合における総会決議の合理化についてコメントさせていただきます。   ほかの方も言っていらっしゃったように、前回の案と比べて、総会を開催して議論するとか質問をする場を作っていただくという形にA案、B案ともになっておりますので、この点は両方採り得るものでないかと思うところでございます。その上で、まずは見直しの目的についてなのですけれども、総会当日の議事運営の負担解消に過度に偏った形で説明をしてしまいますと、やはり株主や投資家側から見たときに、どうしても日本の会社が対話を避けようとしているとか、後ろ向きに考えているとか、そういったニュアンスがかなり強く見えるところがあるかと思います。総会を緊張感のある対話の場として、コミュニケーションの更なる促進を図るということが目的で、それに本当に向かっていくという中身になるのであれば、一定の見直しが可能といった考え方のほうが、全体から見れば適切ではないかと思います。   その上でA案、B案のどちらが望ましいかは、どちらもあり得ると思うのですけれども、B案をベースにする方が現状に近い形になりますし、気になっているところが決議取消しの可能性にあるとすれば、個々の取消事由について精査して、問題になるようなところを除外するような見直しができれば、現状の会議体をできるだけ活かす形になりますので、そちらの方がより望ましいのではないかとは思われます。一方、A案にする場合、先ほどから懸念が出ておりますように、会議体として十分なやり取りができることを確保するのが非常に重要だと思います。そういう意味では、規定上どこまで書くのかが難しいところがあり、なかなかいい案が出てくるというわけではないのですけれども、やはり見直しの目的をしっかりと示して、そこを踏まえた実務環境を整備することが最低限必要ではないかと思うところです。   それから、次に3のキャッシュ・アウトの手続の見直しでございますけれども、まず、2段階買収の2段階目で総会を要すると強圧性が生じるというところに関しましては、絶対的に認められないレベルというよりは、時期のずれにより生じる問題にとどまると思いますので、バランスの問題として、強圧性の解消される程度と他の手続ができなくなる程度とのバランスをよく見て考えていくということが必要ではないかと思うところです。   その上で、全体から行けば、現状はこれまでも御指摘がありましたようにMBOの価格が安すぎるという御指摘がかなり出てきている状況で、それについての十分な説明がされていないですとか、法廷で十分に争うのがなかなか難しいという声も出てきている状況を考えますと、やはり価格により良い影響を与えるのを促すような形での見直しが大事ではないかと思います。海外との比較についても、英、仏、独は9割必要で、アメリカは9割に満たなくてもいいけれども、一般的にMoMを採用するような実務になっていることを踏まえると、やはり日本の現状が比較的厳しくないと見られがちな中、更に総会も不要にするという仕組みにすることにはかなり慎重であるべきと思われます。やはり他の方も言っていらしたような、マジョリティ・オブ・マイノリティ条件を入れるという方法も一つあると思いますし、誰がマイノリティに入るのかというところの認識が難しいということであれば、3分の2を他の閾値に代替するような方法があるかもしれませんし、その辺りについて、いずれにせよ価格に対する信頼度が高まるような形で何らか検討を進められないかといったアプローチが望ましいのではないかと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○藤井委員 私からは1のみ意見を述べさせていただければと思います。既に多くの委員から出ている意見と少し重複するところもあろうかと思いますが、御容赦いただければと思います。   今回御提案されたA案、B案につきましては、A案を支持したいと考えております。これも皆様の御認識があられるところかとは思いますが、上場会社の株主総会において、株主総会白書によると修正動議が実際に提出された企業というのは全体の1%程度でありまして、また、私が承知しているところでございますけれども、本年その修正動議が実際に可決した企業というのは5社程度で、中には企業側の都合というものもあると認識をしております。また、審議の方法も、95%を超える会社が拍手による採決というのを行っておりまして、大部分の会社が当日出席株主全員の賛否を確認することなく、問題なく議案の可決というのはできていると理解をしております。その上で、今回のB案につきましては、やはり動議の提出等が可能になるというところが一つあろうかと思っておりまして、そうなると今企業側から指摘されているシナリオの作成とか入念なリハーサルみたいなものが一定程度必要になるということでございますので、余り負担軽減には寄与せず効果は限定的と考えております。一方で、A案の方が前日には決議の採否が決定しているということで、非常に実務的にもクリアでありますし、本制度を創設するに当たっての元々の問題意識の解決と、株主と会社との対話を後退させない、更に言いますと、より建設的な対話を行うことができるということで、非常にバランスのとれた案と考えております。   最後になりますが、こちらも既に何名かの委員の方から出ておりますが、(注)にあるような議案を否決するケースにつきましては、例えば泡沫的な株主提案の否決等のみを、これだけ当日採決を行うという必要はないと考えておりますので、こちらの否決のケースも本規律に設けるべきだと私も考えております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○石井委員 私からは1番と2番についてコメントいたします。   まず、1番ですが、前回の部会の議論を踏まえ、株主総会の開催自体は省略せずに必須開催という前提で、今回、A案とB案を提示いただいています。当初の株主総会自体を開催しないという選択肢も、例えば自社で総会を開催している会社、あるいは検討中のバーチャルオンリー株主総会実施会社では、テクニカル的には考えられなくもないと思うのですが、制度設計が複雑だということ、かなり不安定な運用になり、活用する会社もかなり限られてしまうということ、株主サイドの理解も当然得られにくいものと思います。よって、総会当日の形式的手続を省略し、極めて少数の株主からの質問、動議に対応するための決議取消しリスクから解放された総会運営の合理化という、今回の検討の方向性に賛成いたします。この合理化によって、総会運営に掛ける労力の効率化が期待でき、将来的には各社の特色をいかした任意かつ柔軟なコミュニケーションの場ともなり得ると思っています。今回の提示案につきましては、A案を支持したいと考えています。やはりB案では決議行為自体が株主総会の議事に残る以上、その決議方法によっては決議取消しの訴えがなされるリスクも排除できず、企業にとっては活用しづらいのではないかと考えています。   それから、3(1)の規律の概要にある定款要件につきましては、各委員の皆様の御意見を伺っていましても、非常に議論が分かれるものと思います。株主数の多い上場会社は、通年ベースで国内外を含め各株主との対話や、任意か法定かを問わず情報開示や広報活動での対話を実施しています。そこで得た情報に加え、株主総会資料を通して事前の議決権を行使するケースが大多数であること、さらに、招集通知にて、事前の議決権行使によって総会の決議があったものとみなすことを認識した上で議決権を行使する以上、株主権の大幅な縮小につながるとまでは言えないと思うので、あえて定款の定めを要件としなくてもよいと考えます。ただ、相対的に、株主数の少ない非上場会社について考えますと、平常時に株主にインプットされる情報レベルも当然違ってくるでしょうし、そのレベルによっては、当日の審議を踏まえた議決権行使の重要性が高いケースもあると考えられ、上場会社とは状況が異なる部分もあると思います。そうなると、やはり株主権の縮小というケースも考えられるものですから、事前に定款の定めを要件とするのが望ましいという考えも非常によく理解できます。商工会議所の一部の会員企業にもヒアリングを行いましたが、どちらかといえば書面決議制度見直しの方が関心が高く、積極的なニーズが余り見られませんでした。ただ、相応の規模がある、事前の議決権行使がされる非上場会社についても範囲に含めていただくということは検討されてもよいと考えているので、定款要件について、中間試案では、両論併記で意見を募っていただくということも御検討いただきたいと考えています。その他の要件につきましては、特に異存はありません。   それから、2番の書面決議の件ですが、今回の要件緩和に賛成いたします。規模の小さい非上場会社にとっては、株主総会実務の合理化や意思決定の早期化に寄与しますし、先ほど申し上げましたように、非上場である商工会議所の会員企業にとっても本見直しについては一定のニーズがあると思っています。また、上場会社にとっても、例えば、一部所在不明である他の株主が存在している非上場子会社でも活用できるものと思っています。ただ、そもそもこの制度を利用しようとする会社は、あらかじめ議案決議が確実視され、かつ、その株主構成が所在不明株主であるとか、経産省の資料を拝見すると、一部海外も含めたファンドといった、明らかに連絡を取るのが困難な株主が存在しているという限定的なケースしか選択されないと思いますので、機動的な意思決定の実現という観点から規律設計をしていただけると有り難いと思います。機動的な意思決定という観点からは、株主の意思表明期間につきましては、極力短い1週間程度に設定いただくのがよいと考えています。それから、みなし決議のタイミングですが、こちらは議論はあるかと思いますが、10分の9以上の同意の意思表示があった時点とすることが合理的ではないかと考えています。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○齊藤委員 まず1につきましては、B案については少し整理が要るかもしれませんけれども、A案とB案をパブリック・コメントに付すことには異存ございません。ただ、株主総会の審議とそれに対する経営者の向き合い方について、投資家には非常に重視している方が多いようにお見受けいたします。A案であれB案であれ、法制化するのは慎重であるべきであるという御意見もあろうかと思いますので、パブリック・コメントに付すに当たっては、A案かB案のいずれかしか選択肢がないかのような誤解を生まないように、どちらも採用しないという選択肢もあるということが分かるようにしていただくべきではないかと思います。   また、私自身は、森委員の御意見、C案あるいは冒頭決議案と呼ばれているものを追加することにも賛成でございます。補足説明においては、C案そのものではないと森委員から御指摘があったところでございますけれども、仮に冒頭決議を実現したとしても決議取消しのリスクを排除できないから、設ける意味が乏しいという解説があるのですけれども、立法提案としては、そういう解釈を生じさせないように工夫をすることを検討することになるのだろうと思います。仮に、実質的にも、冒頭で決議要件が満たされていたとしても、その後の審議の運営に問題があるために、決議結果に影響を与えないものであったとしても、重大な瑕疵があったとして取消しを認めざるを得ない場合があるという政策判断なり価値判断のもとで、冒頭決議案を排除するのであれば、審議の機会さえ与えないA案やB案も取り上げるべきでないように思います。A案、B案を取り上げるということは、そもそも審議に意味が見い出されない場合があることを正面から認めるということですので、その後のあり得べき審議の経過は、C案を排除すべき理由にはならないように思われました。松尾幹事が御指摘になったことにも関連いたしますが、異議がでない形で一旦議事が終了した後は、議事運営や質問対応については原則として取消事由にしないというような形で取消しのリスクを排除する扱いは、合理的な会議体運営の実現にもかなうようにも思いますので、1に関連する立法が行われなかったとしても、そのような方向性は、今後も考えていく価値があるのではないかと思いました。   次に、2でございますけれども、これについてもパブリック・コメントに付すことには異存ございませんが、矢野幹事がおっしゃったこととも重なりますけれども、本来は、所在不明株主の管理に係る制度の合理化も併せて検討していくべきではないかと思います。不動産についてはそのような政策が進められておりますが、株主権についても迅速に整理するニーズはあるのではないかと思います。議論の深化のために少しだけコメントさせていただきますと、御提案の制度では、10分の9に含まれない株主がなぜ同意の意思表示をしなかったのかの事由を区別していないので、所在不明株主がいるために機動的な決定ができないという課題の解決を越える提案となっているように思われました。異議申述権制度はございますものの、決議に積極的に反対である10分の1未満の少数株主の地位を相対的には弱めるものでございまして、また、通知が届かなかった株主の保護が十分かも考えていかなければならないのではないかと思われます。例えば、所在不明株主がいる場合には10分の9でもいいとするなど、使える場面を限定し、所在不明株主が存在することを示す書類を、登記事項については登記の添付書類にすることなども考えていく余地があるのではないかと思いました。   次に、3につきましては既に多くの御意見があるところでございまして、私から追加で申し上げる意見はないのですけれども、議論を伺っておりますと、株主総会の開催が要求されるためにキャッシュの交付が遅れることが強圧性を生むという理由付けよりも、対価が適切に設定されることが保障される場合を要件化できるのかが問題であり、仮に要件化できるのであれば、迅速な実現を図るという観点で一定の場合に株主総会の省略を認める制度として検討していくのが合理的ではないかと思いました。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○藤田委員 1については、今日ここに来るまでは、A案を支持するけれども現在のA案、B案の併記で意見を聴くことには強いては反対しませんと言おうと思っていたのですが、これまでの議論を伺っていると、私の予想に反してB案の支持が少なく、A案に好意的な意見の方が、圧倒的に多かったように思います。そうなると、むしろ中間試案の本体ではA案だけ載せて、その上で、A案の具体的な内容についてはいろいろ議論があり得ると思うので、そういう点をもう少し整理して、意見が分かれていることは説明で書き、B案についてもやはり説明で書くというやり方にした方がいいかと思い始めています。つまり、B案はむしろ本体から落とす方がいいのではないかということです。   一応その理由を申し上げますが、B案は事前の議決権行使で多数が確保された後は、その後の総会で起きることによって決議の成立に影響が出ることをできるだけ排除したいというのが動機で、そういう意味ではできるだけA案に近い結果を実現したい案なのだと思っています。そのような観点からは、B案は実は効果が不徹底――取消しリスクが残る問題とか、動議の対応が必要だとかということもあり、実際そういう理由からB案に反対される方もありましたけれども、私が一番気になっているのは、B案は考え方が理屈として説明できるかということです。このことは前回も申し上げましたけれども、そこが一番気になります。一つは部会資料の説明にもありますように裁量棄却制度との整合性の問題です。正確には、裁量棄却制度の要件それ自体の問題というよりは、同制度から示唆されている考え方として、現行法は、決議に瑕疵があっても、結果さえ変わらないものであれば決議は有効ですという考え方は採らないということははっきりしています。また、少なくとも理論的な可能性としては、書面投票がなされても、その後総会に出席すればそれは撤回された扱いになりますので、ここで書かれている要件だけ満たせば本当の意味で決議の結論が確定するとも論理的には言えないことを考えると、B案の割切り方は理屈としてはかなり説明が難しいと思います。   誤解のないように言っておきますと、会議体としての総会の決議がすごく重要で意味があるからそれを軽視するのは良くないと言いたいわけではありません。上場会社で会議体による決定にこだわることの意味については私はむしろ懐疑的です。ただ、A案ですと会議体による総会決議は一定の場合、要らないと言っているわけですが、そうするための要件をいろいろ設定していて、そういう法制なら考える余地はあると思うのですが、B案は会議体としての株主総会には全く手を付けないまま開催までしておきながら、書面決議になってしまう可能性を事前に示すこともなく、事実上書面投票で集まった票数だけ数えて、事実上それで有効に決議がされているとするのに近い提案になっています。たとえ著しく不公正な場合は決議が取り消せるにしても、そのような制度は、先ほど申し上げた点で、問題があると思っています。そういう意味でA案の方が、一見複雑に見え、また事前の議決権行使だけで決議が成立するとしている点で一見過激に見えるのですけれども、実質においてはこちらの方が穏当で筋も通っていると思います。  次に、A案とB案を併記するかということですが、確かに両者は論理的には両立します。しかし、A案を支持する最大の理由が今申し上げた点にある、つまりB案のような便宜的なルールを作ることには説明が付かないから事前の議決権行使だけで決議が成立する要件をきちんと考えることで要件をクリアしようというのがA案を支持する理由だとすれば、そういう要件を一切要求しないで、多少弱いとはいえ似た効果を達成しようとするB案は問題点が大きく、併案とするのも余り望ましくないように思っています。C案については、逆に併記してもそれほど問題が、A案との緊張関係は比較的ないと思いますので、そちらの方がまだ考えられるように思います。   最後に、A案をベースに意見を問う場合にも、いろいろ少なくとも説明では書いた方が良いと思われることがいくつかあると思います。今まで指摘がありましたので、若干その点についても付言しておきたいと思います。まずA案の下で事後的に行われる株主総会ですが、その総会で現に質問されたにもかかわらず適切に答えないと、決議取消事由にはならないが説明義務違反にはなる、つまり当日の説明義務自体は残っているのではないかと思います。現行法の下でも、報告事項についての質問について答えないと、決議取消しの効果はないけれども義務違反になる、したがって最悪の場合は、例えば会社法第429条の責任とか不法行為による責任が生じる可能性――損害が何かという面倒な問題はあるのですが――は、抽象的にはあり得るということだと思いますが、それはこの制度を導入しても同じだと思います。だから、A案により書面投票により決議が成立したとしても説明義務自体がなくなるわけではない、ただ、その違反の効果が変わるとした方がいいように思います。   次に、定款変更の要否についても、重要な検討事項ですので、説明で書くかオプションとして本文に上げるかはともかく、記載した方がいいと思います。私も定款は必要だと考えますが、検討事項としては挙げる必要があるとは思います。  否決決議を対象とするという話は、かなり細部の設計ではあるのですけれども、A案を支持する人の中に、事前の議決権行使で株主提案が否決された場合に、後で開催される総会で再度それを取り上げ決議しなければいけないと考える人はいないと思います。すなわち可決、否決の効果は既に生じており、再度決議することは不要とすることがこの提案の骨子だと思うので、それをどういう法律構成あるいは条文文言で表現するかは事務局にお任せしますけれども、そのこともはっきりさせ、また、狙いとしては今申し上げたことであることを説明では書くべきだと思います。A案の下で当日動議を出せなくするということについても、もしそれが意図されているのであれば――多くの方はそういう理解の上でA案に賛成していると思いますけれども――、明確な手当てが必要かもしれません。  これらの要素をどこまで提案本体に書き込むか、あるいは説明で書くかも含めて、具体的なやり方は事務局にお任せしたいと思いますけれども、以上のような点を整理した上でむしろA案を問うとすれば、B案は載せないということでもいいと思い始めております。   書面決議の見直しについては、パブリック・コメントに諮る内容はこれで基本的にいいと思います。そして多くの方と同じように、この案を採る場合は、異議の申立期間である1週間経過後に決議の効果が確定するというのが自然だと思いますし、パブリック・コメントにはその前提で意見を聴く方がいいと思います。仮に成立時期を前倒ししても、異議があったことが当然に取消事由になるというのであれば、安定性を欠くことは同じですので、機動性の確保のための解決にならないし、理屈としても説明が難しいと思います。ただ、それだと機動的な意思決定の関係でおよそ問題なのだというなら、より根本的に異議を言う余地もなく確定するということが可能かということの検討になり、そうなると次元の異なる内容の提案になります。取りあえず現行の案について、決議の効力の発生は申立期間後に確定する整理で問うて、およそそれだとニーズを満たさないかということについて、取り分けこういう制度が欲しいというスタートアップ企業などの意見を聴いていただければと思います。   社債権者集会も、これはニーズも含めて、適切な関係者によく聴いてほしいと思います。私の感触では、むしろ社債権者集会についてはニーズがより大きい可能性があります。現にそういうことを聞いたことはありますし、また行岡幹事の指摘のとおり、会議体によらない多数決になじむ面もあると思います。株主総会から出発すると会議体ではない多数決による意思決定というと非常に特異なことのように思うかもしれませんが、投資家の意思決定としては決して違和感があるものではないわけです。信託における信託受益者についてはそういう意思決定方法ができますし、投資法人でもそういう制度はあります。したがって、ここで提案されている程度のものを社債について導入することは当然として、さらに、行岡幹事の言われたような、もっと徹底したところまで行くことすら考えられるかと思いますので、差し当たりは、ニーズについて――特に最近、コベナンツの改定などでニーズが出てきているとも聞きますので――、適切な関係者に意見を聴いていただければと思います。   キャッシュ・アウトについても簡単に申し上げます。まずは、この案で意見を問うことに賛成です。2段階買収は株式併合のための総会決議を要求すると、臨時総会の招集などに伴って一定の期間が必要となるというのは確かです。これまでの例だと多分2か月ぐらいは掛かるということになりそうで、1段階目の公開買付けに応じないと何か月かは現金化が遅れるという一定の不利益は生じることになります。それによって一定の強圧性が、弱いものかもしれませんが、生じる可能性はあり、その限りで積極的な弊害があるから、略式再編の方は取り上げなくても、こちらだけ取り上げるというのは一応理屈としてはあり得るので、こういった案を提示するのは意味があると思います。   その上で、現在の提案本体だと、公開買付けが結果的に総株主の3分の2以上の議決権を取得した場合ということしか挙がっていませんが、1段階目の公開買付けや適用場面一般について、もう少し適切に要件を限定して、望ましい2段階買収についてだけ適用されるということを確保することは十分考えられると思います。差し当たり11ページに①、②、③とあります。③の要件は、すでに御指摘があったように、1段階目と2段階目の価格の差から来る強圧性を防止するためのもので、この制度で対処しようとする強圧性とは違うのは確かです。この制度では、それよりもっと弱い強圧性に対処していることになります。ただ、そもそも価格の差から生じる強圧性も排除しないような買収に対して、更に弱い強圧性をケアする必要などさらさらありませんので、そのような買収を本制度の適用外にするというのは論理的だと思います。したがって、③の要件は当然満たさなければいけないと思います。それに加えて、更にMoMを始め公正性担保措置を要求するか、どの措置を要求するかは、この制度の利用可能性を通じて2段階買収の利用の在り方を変えていくといった要素にもつながってきますので、どういうオプションがあるかということを説明の方で整理しておいていただけないでしょうか。また、そこでの要求の仕方次第では、単に時間が掛かることの強圧性の対処というよりは、2段階目で簡易な方法を利用するというオプションと抱き合わせで一定の措置を要求することによって、少しでもキャッシュ・アウトの公正さの確保につなげるという効果も、あまり強いものではないかも知れませんが期待できるかもしれません。ただ、それをどの程度目指すかというのは政策判断ですので、その点を検討するための整理をしていただければと思います。   最後に、総会における質問の機会が価格決定について重要だという見解については、私も田中委員と同じで、総会決議に本当にそういうものが期待できるのか疑問に思っており、あまり現実性がない議論だという印象を持っております。まず、過去、価格決定事件で総会において質疑が行われ、それを通じて裁判において意味がある情報が取れた事例がどのぐらいあるか疑問ですし、そもそも一般株主が質問して有益な情報を得るといったシナリオそのものが正直よく分かりません。情報の偏在を問題視するというのであれば、そして私もこの点は実際に問題だと思いますが、それは現行法のように90%議決権を取得して行われるキャッシュ・アウトでも同じですし、投資家が本当に証拠が欲しいのなら、取締役会議事録の徴求だとか、更には特別委員会の検討に関する情報開示の促進、証拠へのアクセスといったことで対応すべきだと思います。キャッシュ・アウトの価格に関わる情報を取れる可能性がひょっとしたらあるかもしれないという理由で総会の決議を維持するというのは、実際には期待もできない利益を掲げて、不必要な手続を要求する対応だという気がします。繰り返しになりますが、キャッシュ・アウト価格との関係でも、むしろこの制度を導入した上で、その適用条件として公正性担保措置などを入れるというような形で、少しでも適切な価格とする誘因を与えるメリットの方がはるかに意味があり、この案に反対するというのは、それを主張される人の考えていることとはむしろ逆方向に働くのではないかと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。それでは、次の議題に移らせていただきます。   部会資料8の「第2 株主提案権に関する規律の見直し」でございます。本日御欠席の仁分委員から事前に参考資料20についての御説明と御意見を頂戴しておりますので、こちらについても事務当局に代読をしていただきたいと思います。 ○吉田関係官 仁分委員から部会資料8の2についての御意見、こちらは参考資料20についての御説明も含みますけれども、こちらを代読させていただきます。   株主提案権の議決権数の要件の見直しについて、議決権数の要件を廃止するものとするA案を支持いたします。部会資料8の14ページに記載されている調査研究でも示されているとおり、議決権保有比率が1%未満の株主、すなわち議決権300個要件のみを満たす株主による株主提案については、可決の可能性が明らかに低いものとなっています。そのような可決可能性の乏しい株主提案であっても、実際に株主提案権が行使されると、会社において非常に大きな負担が発生します。このように、現行法の下では300個要件があることから、可決の可能性が明らかに低い株主提案の対応のために会社において非常に大きな負担が発生しています。このような状況は株主共同の利益に資するとは言い難いと考えます。また、第4回の部会でも申し上げたとおり、株主が議決権を300個有することの意味は会社によって全く異なりますので、会社の規模や種類を問わず一律議決権を300個有していれば株主提案権を行使できるという規律は、法制度として合理性を有するとは言えません。   また、300個要件があると、同じ会社であっても株式分割や株式併合を行っただけで株主提案権を行使できる株主の範囲が変わることになってしまいます。これらの問題点は、議決権の個数を要件とする限り、要件を一定数引き上げたとしても是正されません。B案のように一定の個数の定めが残ることは、現状の問題の繰り返しや先送りにすぎず、根本的な解決にはなっていないと考えます。さらに、そもそもB案については合理的な根拠に基づいて一定の個数を定めることが難しいと考えます。なお、部会資料8の15ページに、議決権保有比率1%未満の株主による提案が可決された事例が1件あることを踏まえると、議決権数の要件を廃止すべきでないとの考え方が記載されていますが、同15ページの9行目にも記載がありますように、当該調査研究によれば、議決権保有比率1%未満の株主による提案が可決された事例は1,317件中僅か1件にすぎません。しかも、当該意見については取締役会も株主提案に賛成したという特殊な事例でございます。したがって、議決権保有比率1%未満の株主による提案が可決された事例が1件あるという点は、個数要件を維持すべき理由にはならないと考えます。   次に、17ページの2、株主提案権の行使期限の見直しについて意見を述べます。参考資料20のとおり、経団連は株主提案権の行使期限の見直しに関する実態調査を実施いたしました。本調査は、経団連の経済法規委員会企画部会及び会社法制検討ワーキンググループに参加する53社を対象に実施しました。回答は26社から得られ、回答率は49.2%でした。実施期間は2025年10月31日から11月7日までの1週間です。参考資料20の1ページの調査要旨に記載のとおり、株主提案権が行使された場合、会社にとって特にスケジュール上の負担が大きいのが株主総会の招集決定の取締役会までの期間です。会社は株主提案を受領した後、招集決定の取締役会までに株主提案に対する取締役会の意見を検討、作成する必要があるからです。そこで、本調査では当該期間における会社の実務的負荷を把握することを目的として、株主提案権の行使期限から取締役会開催までの具体的な日数や、当該期間に行った株主提案対応の具体的な業務の内容、その負担等について調査を実施いたしました。2ページのQ1では、2025年に開催された定時株主総会を対象として、三つの項目について日数を調査しました。まず、①株主提案権の行使期限の翌日から株主総会の招集決定の取締役会の開催日までの営業日日数について調査したところ、回答があった26社の平均は10.7日でした。中には招集決定の取締役会までの営業日日数が5日や6日しかない企業もありました。なお、招集決定の取締役会の開催日は、後ほど御説明する招集通知の印刷スケジュールも踏まえて決定しており、招集決定の取締役会の開催日を大幅に後ろ倒しすることは困難です。   次に、②株主提案権の行使期限の翌日から株主提案に対する取締役会の意見の社外役員への事前説明開始日の前日までの営業日日数について調査いたしました。株主提案に対する取締役会の意見については実務上、招集決定の取締役会よりも前に社外役員への事前説明を行うケースが多く、実際上それまでに取締役会の意見の内容を固める必要があることから、事前説明開始日の前日までの営業日日数を調査対象としたものです。2025年の株主総会で実際に株主提案があった企業10社を対象に集計したところ、当該日数の平均は僅か2.3日に過ぎませんでした。   さらに、3ページのとおり、③株主提案権の行使期限の翌日から株主提案に対する取締役会の意見を含む株主総会の招集通知の印刷校了日の前日までの営業日日数を調査いたしました。株主提案に対する取締役会の意見を含む株主総会資料は、遅くともその印刷の校了までに内容を確定させる必要があることから、印刷校了日の前日までの営業日日数を調査対象としたものです。株主提案があった10社について、当該日数の平均は10.8日でした。なお、印刷の校了日は招集通知の印刷や封入等に要する工期を踏まえて設定することになりますので、校了日を後ろ倒しすることは通常困難です。また、印刷の校了日の前日までの営業日日数が10.8日ということは、当然のことながら印刷原稿を入校するまでの期間は更に短いことになり、会社はそれまでに取締役会の意見を含む印刷原稿を作成しなければならないことになります。   次に、招集決定の取締役会までに対応しなければならない具体的な業務については、4ページのQ2の質問及び回答の要旨を御参照ください。Q2の質問の中で列挙しているとおり、株主提案があった場合、会社は株主提案の要件の確認、提案理由が会社法施行規則で定められた文字数を超えている場合の対応、取締役会の意見の検討、作成、招集通知印刷原稿の入稿、校閲、取締役会の意見のプレスリリースの作成、招集決定の取締役会に向けた取締役会資料の作成、社外役員への事前説明といった対応を行わなければならないほか、回答の要旨のとおり、株主提案議案及び取締役会意見等の英訳、株主提案議案の賛成率シミュレーションの実施などの対応も行うことになります。   7ページのQ3では、株主提案に対する取締役会の意見の検討、作成に当たってのスケジュール上のネックについて、2025年を含む過去数年間に株主提案があった企業を対象に自由記述形式で回答を得ました。通常の総会準備等の業務がある中で、それに追加して取締役会の意見の検討を行うことになり、業務が過度に集中し、時間が足りない、社外役員への事前説明の開始日の前日が事実上の期限となる中、株主提案受領後の少ない営業日の中でアドバイザーとの打合せを設定し、社内役員の事前の了解を得なければならず、スケジュール制約が非常に厳しい、僅か数日で取締役会の意見を取りまとめなければならないケースがあるなどの指摘がありました。   11ページのQ4では、現行の制度におけるスケジュール上の負担や理由、望ましい行使期限について自由記述形式で回答を得ました。多くの企業から、現行の行使期限では対応期間が短く、負担が大きいとの回答が寄せられました。望ましい行使期限については、株主総会開催日を基準とする場合、10から12週間前とするのが望ましいとの意見が多くあったほか、定時株主総会における株主提案については、議決権行使基準日を基準に行使期限を設定する制度に改めた上で、議決権行使基準日から1から2週間以内を行使期限とすることが望ましいとの意見がありました。このように、株主総会の日の8週間前までという現行の行使期限を前提とした場合、スケジュールが非常にタイトとなっており、上場会社にとって極めて大きな負担となっています。   一方、株主提案権の行使期限を8週間前より数週間程度前倒ししても、株主が株主提案権を行使するか否かや、その具体的内容を検討、判断するための材料に実質的に違いはないと考えられます。決算情報についても、多くの会社では株主総会の8週間前までに決算発表はなされないため、株主提案権の行使期限を前倒ししても、株主が行使期限の時点で有している決算情報に違いは生じません。したがって、株主提案権の行使期限を8週間前より数週間程度前倒ししても株主が不利益を被ることはないと考えられます。   以上のとおり、株主提案権の行使期限について、現行法の下において、その見直しを正当化するに足りる不都合が現に生じておりますので、是非前倒しをしていただきたく存じます。具体的な行使期限については、現行の規定に倣い、例えば株主総会の日の12週間前という形で前倒しすることのほか、定時株主総会における株主提案については議決権行使基準日から1週間以内といった規律にすることが考えられます。株主は定時株主総会の8週間前の時点では定時株主総会の開催日を正確に知ることができないのが通常であるため、現行法の下では株主は株主提案権の具体的な行使期限を明確に把握することができません。この点、定時株主総会の株主提案権の行使期限を議決権行使基準日から1週間以内とすれば、行使期限を明確に把握することができるようになるため、株主にとってもメリットがあると考えます。   なお、本日の部会は私は諸般の事情により欠席いたしますが、ただいま御説明した参考資料20につきまして質問等を頂きましたら、次回の部会で回答させていただきます。   最後に、部会資料8、18ページの3、業務執行事項に係る定款の変更に関する議案の提出を制限することについて意見を述べます。取締役会設置会社の業務執行は本来、取締役会が決定すべきものであり、定款変更の形をとることにより業務執行事項に関し無制限に株主提案が行われている現行の実務について、企業としては非常に大きな問題意識を持っています。そのため、中間試案の時点では、見直しをすることも含めた両論併記としていただきたく存じます。   なお、何が業務執行事項に当たるかは必ずしも明確ではないという指摘に関しては、例えば、株主提案により提案することができる定款変更の範囲を法定の定款記載事項に限定することなども考えられます。  以上です。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。   それでは、部会資料8の第2について御意見のある方は御発言をお願いします。 ○鮫島幹事 参考資料21の3ページに沿って御説明いたします。3点でございます。   (1)が議決権数の要件でございます。現行の議決権の数300個を基準として要件を設定する場合には、仁分委員からもございましたとおり、会社によって株主提案を行える株主の議決権割合が大きく変動することになります。特に近年、投資単位の引下げに伴いまして、提案を行うために必要となる議決権割合は減少してございますので、極めて少数の割合しか保有していない株主、例えば議決権割合0.01%の株主が提案を行うことによりまして、他の株主が賛同する可能性が極めて低い提案であるにもかかわらず多大なコストを企業が負担し、総会における審議時間も一定費やされてしまい、株主共同の利益に反するような状況も生じていると考えてございます。   株主提案権が制定された当時とは異なりまして、現在では総会の場以外においても年間を通じて企業と株主との対話、コミュニケーションの機会は増加していると考えてございます。また、SNS等が発達した現代におきましては、株主提案権を行使せずとも株主相互間のコミュニケーションも容易であると考えてございます。以上を踏まえまして、実現可能性が極めて低い提案から株主共同の利益を保護する必要性を重視しまして、少なくとも上場会社におきましてはA案のように議決権数の要件を撤廃することが望ましいと考えてございます。   また、株主提案権や臨時株主総会の招集請求権の議決権割合要件につきましても、イギリスやドイツと比べて日本は低く設定されていることに鑑みまして、議決権割合要件を引き上げることも検討に値すると考えてございます。加えて、経済界からは6か月の継続保有要件につきましても引上げを要望する声があることを御紹介したいと考えております。   (2)が行使期限でございます。やはり株主にとって明確な日が起算日とされることが望ましいと考えてございます。先ほど御説明がございました実態調査によりますと、株主提案権が行使された場合には、非常にタイトなスケジュールの中で取締役会の意見の検討、Q&Aの作成、投資家とのディスカッション、株主提案や取締役会意見の英訳、リーガルチェック、提案した株主の属性の確認等々、非常に多岐にわたる実務があり、企業の検討時間の観点からは大きな負担になっていると考えてございます。このような企業の対応事項を踏まえますと、行使期限を前倒しすることにより、企業価値向上の観点から検討する時間の確保や、株主との建設的な対話を実施する時間の確保につながりますので、企業価値の向上や株主共同の利益にもつながるのではないかと考えてございます。   以上の観点から、議決権行使の基準日から1週間又は2週間以内を行使期限とすることが望ましいのではないか、株主にとっても明確ではないかと考えてございます。   最後に、(3)は業務執行事項に係る定款変更に関する議案でございます。日本においては業務執行事項に係る定款変更議案を株主提案することや、業務執行事項を総会決議事項に追加する定款変更議案が株主提案されている事例がございます。しかしながら、その株主自身は会社に対する善管注意義務等を負っていない、実態としても株主は日々の業務執行にまで通じていないと考えてございますので、株主総会は業務執行に関して決定する場としては適切ではないと考えてございます。企業価値の向上のために会社を運営するためには、日々不確実な経営環境においてもリスクをとって成長投資できるよう、経営を株主から委ねられた経営者が取締役会の関与の下で日々の業務執行をすることが不可欠と考えてございます。そのため、少なくとも上場会社においては業務執行に関する定款変更議案や、業務執行事項を総会決議事項に追加する旨の定款変更議案を制限することも議論すべきではないかと考えてございます。   第4回会議におきましては、業務執行事項の範囲が不明確であり、過度に広範に解釈されて株主提案が不当に拒否されることの懸念が示されたということでございます。しかしながら、業務執行であるか否かにつきましては日々の経営を監督している取締役会自身が判断可能と思われますし、また、実際には市場に対する説明責任やレピテーションリスク、過料による制裁等を考慮すれば、実務的には、業務執行事項であることが明確である場合に限って拒否し、不明確であれば保守的に株主総会に念のため上程することが想定されると考えられるということでございます。取締役会が業務執行に関する知見に基づきまして迅速に決定することは、企業価値の向上につながり、株主の利益にもつながると考えてございます。   ドイツやフランスのように、アメリカのSECのような機関が存在せずとも、業務執行事項に関する株主提案権を制限する立法例もございます。これらに鑑みまして、例えば、政府において「業務執行事項」に関するガイドラインを、有識者の知見を活用したり過去の事例も分析して策定・公表すること、及び/又は、社外取締役が過半数を占める取締役会や社外役員3名以上で構成される委員会等、すなわち経営者から独立して監視できると認められる機関が業務執行事項に該当するか否かを判断するプロセスを規定することで、不当に広範に解釈する弊害を回避するといった工夫を講じた上で、業務執行事項については取締役会で決定し、株主提案の定款変更議案を制限することも検討に値するのではないかと考えてございます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○久保田委員 まず、株主提案権の議決権数要件の見直しについては、令和元年改正に関する経緯を踏まえると、慎重に検討したことが明らかになるような進め方をした方がよいと思いますので、その意味で中間試案においてはA案とB案を併記する形でパブリック・コメントに付するのが望ましいと考えています。また、(注)の提案も是非残していただきたいと思っています。   ただ、少し気になっていますのは、中間試案における(注)の提案の書き方のことです。すなわち、部会資料の17ページに説明がありますとおり、(注)の提案は、A案やB案を代替する形での立法も考えられれば、A案とB案とを併用する形での立法も考えられます。具体的には、代替型の立法としては、仮にA案とB案の採用がいずれも難しいとして一律の廃止や引上げを行わないということになった場合でも、例えば、各会社が定款に定めを置けば議決権数要件の引上げを行うことができるとする立法が考えられます。他方、併用型の立法としても様々なバリエーションがあり得ますが、例えばB案を採用して一律に議決権数要件を引き上げる、ただし、その引上げ幅は保守的にやや控え目なものにした上で、各会社が定款に定めを置けば、もう少し引上げ幅を大きくすることができるといった立法が考えられるところです。そして、今私が挙げたようなタイプの立法であれば、少数株主権の行使要件を制限するというよりは、むしろ各会社が行使要件を自社の株式の売買単位の大きさに応じた適切な水準に設定することを認めるものであるという説明ができますので、比較的受け入れられやすいのではないかと考えています。このように(注)の提案は様々な形での立法が可能なものであり、立法の仕方によっても検討すべき点が変わってきますので、できれば中間試案では、立法の仕方の具体例なども示すことにより、様々な形での立法が可能であることをより分かりやすくなるような書き方をしていただければ、よりよいのではないかと思っています。   次いで、株主提案権の行使期限の見直しについてです。第4回部会での御意見をお聞きしていますと、会社の側だけでなく投資家の側も株主提案権をめぐるスケジュールがタイトであり、十分な検討が難しいという認識では一致していたように思います。そのため、株主提案権の行使期限の見直しをすることには相応の合理性が認められると思います。また、見直しの際には、これまでもお話に出てきましたように、株主提案をしようとする株主にとって行使期限が分かりやすいものになるよう、議決権行使基準日を起算日とした行使期限にすることが望ましいと思います。   ただし同時に、こうした株主提案権の行使期限の見直しだけでは株主提案権をめぐるスケジュールがタイトであるという問題には十分に対応できないのではないかと思います。なぜなら、行使期限の見直しをすれば、確かに会社側には検討の余裕ができるわけですけれども、他方で投資家の側にとっては、提案株主が委任状勧誘をするような場合は別ですけれども、そうでない場合は招集通知を受け取るまでは株主提案の内容を知ることができないため、招集通知の発送時期を前倒ししないと、結局検討のための時間的余裕は十分に確保できないことになるからです。もちろん投資家にとって検討の時間的余裕が小さいというのは、株主提案に限られた話ではなく会社提案についても同様なのですが、いずれにせよ、この時間的余裕を確保するためには招集期間を長くすることが必要になるかと思います。   このような問題状況に照らすと、第4回部会でも申し上げましたとおり、現在の株主総会の開催スケジュールの見直しと関連付けた形で議論することが望ましいと思います。この点については、かねてより株主総会の開催スケジュールを見直すべきであるという意見が少なからず見られる上に、この部会でも有価証券報告書の株主総会前の提出との関係でそのような意見が出されているところです。そのため、中間試案においても、補足説明のところでも構わないと思いますので、そのような問題提起がされていることにも触れていただくと、より充実した意見集約が可能になるのではないかと思っています。   最後に、業務執行事項に係る定款変更議案の提出の制限については、これまでも申し上げてきましたとおり、見直しをしないことに賛成いたします。先ほど鮫島幹事から、業務執行事項とそうでない事項とをどのように切り分けるかについて様々な方法を御提案いただき、大変参考になりました。ただし、いずれの御提案によっても、やはり業務執行事項とそうでない事項をうまく切り分けるのは難しいように思いますので、業務執行事項に係る定款変更議案の提出を制限すると、実務に無用な混乱ないし紛争を生じさせる可能性が大きいのではないかと危惧しています。   この点に関して、確か以前の部会で藤田委員からお話があったと思いますけれども、近時はサステナビリティ事項が株主提案の対象になることが少なくないところ、取り分けサステナビリティ事項については、それが業務執行事項に当たるかの判断が相当に難しいということもあります。ただし他方で、株主としても業務執行事項について定款の定めを設けることが機動的かつ柔軟な経営判断を阻害し得るという認識を持っていることが多いのではないかと思います。だからこそ実際、業務執行事項について定款変更議案という形で行われる株主提案は、多くの株主の支持を集めることができていないわけです。   そこでということですけれども、もしここでの議論の目的が機動的かつ柔軟な経営判断を阻害し得るような株主提案を減らすことにあるのであれば、むしろ株主の勧告的提案を認めることによって対応する方がよいのではないかと思います。勧告的提案でしたら、取締役会はそれに拘束されず、最終的な経営判断権限は取締役会に残されますので、機動的かつ柔軟な経営判断が困難になるという問題は生じにくいといえます。また、株主提案をする株主としても、業務執行事項のような事項については勧告的提案という形で株主提案をする方が問題が少なく、他の株主の賛成を得やすくなると考えられるため、定款変更議案の提案という形ではなく勧告的提案という形で株主提案を行うことになると予想されるからです。この点、イギリスでも株主提案の対象は基本的に制限されていないわけですけれども、業務執行事項のような事項については多くは勧告的提案として提案されているということが言われています。そのため、もし中間試案において、この問題を取り上げるということでしたら、(注)や補足説明の中でも構いませんので、今私が申し上げたような意見についても言及いただくことを御検討いただければ有り難く思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○北村委員 1と2について少し意見を申し上げます。   まず、1の株主提案権の議決権数の要件の見直しです。これは過去の会社法制部会でも俎上にはありながら、最終的に要綱に含まれなかったという経緯をたどりました。もっとも、第4回会議でも話題になっておりましたように、この制度ができた昭和56年とは投資単位が異なっていることと、現状の300個要件があることによって、例えば株式分割による投資単位の引下げがちゅうちょされる可能性がある、といった近時の状況を踏まえますと、14ページの第2の1の提案を中間試案に含めるということについては賛成いたします。   (注)にありますように、定款の定めによる個数要件の排除や引上げを認めるということですけれども、会社法は、少数株主権については要件を定めてそれを緩和するのは認めていますが、重くするのを認めていないので、それとの整合性が少し気になります。もっとも(注)においてそれを提示すること自体には特に反対はいたしません。   一方で、300個要件があることが投資単位の引下げをちゅうちょさせる要因になっているというのであれば、一つのアイデアですけれども、例えば株式分割をした場合に分割割合に応じて個数要件を引き上げることを定款で定めることができるものとし、その定款変更は取締役会決議によりすることができるものとすることが考えられます。会社法には株式分割あるいは単元株式数の引下げの場合は取締役会決議で定款変更ができるという規定が既にありますので、投資単位引下げの場合に限定して取締役会による個数要件の引上げを認めるということもあり得るのではないかと思います。   2の行使期限の見直しについてです。参考資料20と21を読ませていただきまして、8週間前を前倒しするニーズは理解しました。株主には提案権行使時点で株主総会の日がわからないということを前提とすると、株主総会の日の前何週間という定め方をするよりは、基準日から一定期間内という定め方をすることにも合理性があるように思っております。特に、臨時株主総会で監査手続がないときは、基準日から短期間で株主総会が開かれる場合があるわけですので、基準日を基準にするということも一つの案としてあり得ると思っております。   そのように考えますと、17ページのゴシックの部分は、正当化するに足りる不都合が現に生じているかという聴き方なのですけれども、これを述べた上で、8週間前を更に前倒しする、あるいは基準日から何週間とするという具体的な案が出されていた方が、中間試案に対するパブリック・コメントについても建設的な意見が出やすいのではないか、と思っています。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○松中幹事 まず、株主提案についてですが、現在のA案、B案という提案の仕方に基本的に賛成であります。敢えて言えばB案の方の議決権数のところで、複数のオプションを提示していただいた方がいいかなと思います。1,000、2,000ぐらいですかね。そのくらいの選択肢があった方が規制強化の程度というのも見えやすいかなと思います。   もう一つ、A案の方で議決権数基準をなくしてしまう場合については、これは制度の趣旨が変わり得るということが書かれているわけですが、どう変わるかも考えなくてはいけないということを明記した方がいいのかもしれません。私は個人的には賛成なのですけれども、そのくらい重い改正になるということを明示した方がいいのかもしれないと思います。   現在の制度で考えられているコミュニケーションというのは、意見を株主が発表して知らせること自体に意味を置いているわけです。全然可決されなくてもいいですし、それから取締役会が出す会社提案に対応したものでも何でもなくてもいい、とにかく思っていることを出して知らせる、それで決議をする、こういうコミュニケーションなわけです。これを変えるとなると、例えば知らせること自体は目的ではなくて、実際に可決する可能性がある程度存在するような意見を出させるのを目的とするのか、そこまで行かなくても、取締役らの行動を変える意見を出すといったことを目的とするのか、どのように考えるかによって制度設計が変わってくると思います。この制度の趣旨を変えるのであれば、現行制度ではとにかく言えればいいのだからという部分があるので、例えば付議しない場合の扱いなんかも、非常に言い方は悪いですけれども、軽い扱いしか受けていないわけですが、ここら辺も本当は変えなくてはいけないので、その意味でも大きな改正になるであろうと思います。   その上で、恐らく主に想定されているのは現在の趣旨を変えないような改正かなと思います。その場合であれば、可決可能性という点に注目するのは慎重にすべきではないかと思います。というのも、今の制度は別に可決可能性を全く問題にしていないからです。ただ、可決可能性を考慮しないのであっても、支持の多寡は問題にすべきだと思います。実際、今回紹介されている研究も、可決可能性というよりも支持の多さ、少なさを問題にしているはずです。可決されなくても30%ぐらい支持を得るものというのは取締役の行動を変える可能性がありますので、そこは1%の支持しか得られないという提案とは全然意味が違うだろうと思います。   続きまして、B案を前提にした上で定款による要件の引上げが可能かについては、これは正当化できると思っているのですが、理由付けは慎重にする必要があると思っています。まず、そもそも定款でこうしたことが正当化できるのかについては、確かに数値上の要件を株主にとってより厳しくすることはないわけですが、しかし、例えば会社法第342条第1項は累積投票について定款で排除できるとしております。これは、少数派の権利を定款で、行使要件を厳しくするのではなくて、思い切りなくしてしまっているわけで、そうである以上、より弱い制約というのも可能であろうと思います。   ただ、多くの権利で当たり前のようにこんなことができるわけではありませんので、株主提案以外には波及しない理由付けが必要であろうと思います。そのようなものとして、久保田委員も指摘されていましたけれども、議決権数基準が存在することとの関係で定款自治が必要である、このような説明をする必要があるのではないかと思います。具体的には、株主提案権というのは権利行使をしやすくするために、現行の制度でも、あるいは想定される改正でも、議決権数基準を設定しているところ、この議決権数基準というのは議決権や持株の割合とは違って、会社によってインパクトが異なる、だから会社ごとの対応を可能にする必要があり、定款自治が必要になる。そして、上限を法律で定めていれば少数株主の権利も過度に制約されることはない。このような説明をすれば、議決権数基準を採用していないほかの権利には一切波及しないであろうと思います。   行使期限については、どこに正当化事由を求めるのかという問題があるかと思うのですが、現在生じているもろもろの負担をもちろん見る必要があるのですが、それとともに、電子化や早期発送など、要は終わりの部分が事実上繰り上げられてきたのがこの間の動きです。しかし8週間は変わっていない、そうすると昔の8週間と今の8週間はやはり違うのではないのかとは思います。少なくとも2週間程度は、特段対応が大変だからというところではなく、むしろ実質的に期限が繰り上げられているのだから、その部分は延ばしてあげてもいいという議論が成り立つように思います。   最後に、業務執行事項ですけれども、これは趣旨というか理念的には分かるのですが、しかしやはり難しいだろうと思います。まず、日本の会社法というのは株主が決めることと株主が提案するイニシアチブをとることの所在というのをかなり一致させているわけです。決められることは基本的に株主が決めるためのイニシアチブをとれるというふうになっています。アメリカはここは相当ずれているのです。およそ定款で業務執行事項の制約ができないようにしようという提案ではない限り、それをずらすことになってしまいます。   例えば、一定の投資はしてはいけないのだというようなことを定款で定めるのは勝手なわけです。しかし、取締役会の提案がないとできないようにするというのがこの業務執行事項についての株主提案の制限ということになるわけですが、ここの部分がずれるというのは日本の会社法の中で余りないわけです。より実質的な問題としては、やはりこれは久保田委員がおっしゃったとおり、勧告的な提案をできるようにするということが本質的な解決ではないかと思います。というのも、現実に勧告的提案ができないから定款変更が流用されているわけでして、この流用をまずどうにかするのが一番大事なわけです。   勧告的決議については、実は決定権限とイニシアチブの部分がずれている珍しい部分でして、株主が決めるのだけれども提案できない。これは恐らく防衛策の問題を受けて、やや特定の場面だけを念頭に置いてより強化されてしまった部分があるのではないかと思いますが、ここを正すのがまずは大事なのではないかと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。 ○内田委員 まず、株主提案権に関する規律の見直しでは、A案、B案を併記してパブコメに掛けることに問題ないと思います。所感として、A案の議決権数の要件を廃止するのは相当大きなことだと思います。部会資料では7割ぐらいがはじかれるということですが、近年の状況を踏まえると、もっと数字が大きくなり、件数ベースでは8割減くらいになると思います。それ自体が悪いと言っているわけではありませんが、影響が大きいということだと思います。それから、日本の運用会社からの株主提案も増えていて、中小型の運用会社が特定の銘柄を数十億保有して株主提案するというケースもあって、そういった運用会社が株主提案のリストから全部なくなるということだと思います。内外の投資家からは株主提案数が大幅に削減されたという見え方になるので、そこまでやるのかというところは慎重に考えるべきと個人的には思います。ですから、300個議決権数の要件が問題だというのは一致した考え方だと思いますので、それの閾値を引き上げることは必要だと思いますが、完全になくしてしまうというと、ガバナンスの上でかなり大きな事象になるとの懸念があります。   それから、株主提案権の行使期限については、これは私も前回において投資家として検討するスケジュールがタイトであって、延ばしてもらえばやりやすくなるということは申し上げたと思います。10週間とかいうお話をしたかと思いますが、それ自体は発行体が求めている水準と実際には合っていますが、多くの方が指摘されたように、株主総会日基準だと、総会の期日が確定していないと、8週間がいいのか9週間がいいのかというところは正直言ってかなり曖昧というか、はっきりしないところがあります。あと、株主提案が幾つか重なっている中で、その他の条件が変わることで審議する内容や状況も変わってくると思います。これは発行体も同様だと思いますが、その意味で、基準日を定めて、そこから決めていくというのが一案だと思います。現時点でどの程度の期間が適当だというのはなかなか言いづらいと思っていまして、それについては伸ばすのがいいとは言い切れない部分があると思います。この辺については、基準日を定めて期限を確定するのが肝要ではありますが、さらには総会の招集通知が来ないとそもそも検討もできないと思いますので、それも合わせて、ではトータルでどのくらいがいいのかははっきり言えないと思います。   それから、業務執行事項に係る定款変更の提案議案については、機関投資家も議決権行使基準を持っていまして、基本的には業務執行を制約する定款変更には賛成していないと思います。我々の場合も当該案件の賛成率は高くはない状況ですので、そこは投資家が判断すべき事項だと思います。制約についてどこで線を切るかというのは難しい問題でして、複合的な要因も絡み合ってきますので、どこまでがバインディング(拘束的)でどこまでがそうではないかというのは決められないだろうと思います。   昨今で定款変更に関する賛成率がわずかに上がってきたのは、気候変動関連などサステナビリティ提案が増えてきたことによって、その動きを後押しする意味合いもあって、定款変更の議案においても賛成率が上がってきた局面は確かにありますが、今年を見るとその傾向は鎮静化してきて、全般的に定款変更における賛成率が下がってきています。そこはやはり最終的には投資家が判断すべき事項であると思いますので、ここに制限を入れることは、私は慎重に考えるべきと思っております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○田中委員 三つの論点それぞれについてお話ししたいことがありますが、初めに述べておきたいこととして、これはこの提案だけではなくて、今回議論されている全ての論点について言えることですが、やはり外からどう見えるかということも考えなければいけないかなと思います。株主提案権を制限する方法として、今回の提案は皆、それぞれに合理的な理由があると思いますし、私も賛成したいものが多いのです。ただ、やはりこういった提案がまとめてされたとき、特に投資家株主は、株主権の行使によって企業が困っているので法律で権利を制限してしまおうとしているという、単純にそういうシナリオの中に位置付けられてしまって、日本企業に対する評価がネガティブな方向に行く可能性はやはり考える必要はあるかなと思います。   その点も踏まえて言えば、まず、株式提案権の議決権数の要件見直しについて、正に内田委員が先ほどおっしゃったとおり、保有する議決権の個数に基づく株主提案権を全く撤廃してしまうと、端的に株主提案数は現状から激減しますので、それが日本企業の評価にもたらす影響ということも考えていく必要があるかと思います。他方で、例えばですけれども、一定の法律上の制限の下で、株主提案に必要な議決権の個数について定款による引上げを認めることは考えられます。その制限は個数というよりは、むしろかなり低く設定された保有比率を上限にし、この上限の範囲内で個数要件の引上げを認めるといったものは考えられると思います。少数株主権であってもそれが無制限に行使されると、他の株主が提案議案の検討に必要な時間を取られるなど、他の株主の利益に影響を与えることが当然考えられますので、少数株主権として会社法が与えた権利であるからといって、定款で制限したり要件を引き上げたりすることをはタブーだと考える必要はないと思います。先ほども少し御意見がありましたけれども、例えばアメリカ法だと、日本で少数株主権として保障されている権利でも定款によって制限できることが多く、例えば株主総会招集請求権などは、定款で排除することも可能です。少数株主まで含めてできますので、その辺りは立法政策であって、様々なものが考えられるかなとは思っています。   それから、300個という個数要件が、ある会社においてどの程度の株主に株主提案権を認めることになるのかは、各会社で全く異なるわけですので、法が一律に個数の形で株主提案権の要件を決めることにはやはり合理性がないように思えます。その意味で、個数要件は、保有比率の形で決められている他の少数株主権の要件と比較しても、引上げを含めた定款自治を認めることには合理性を認めやすいと考えております。以上が1点目です。   2点目の、提案権の行使期限についてですが、私は行使期限をもう少し前倒しすることは十分考慮に値すると思います。私も以前に、株主によって多数の議案が提案され、会社はそれらの多くについて法令違反を理由に上程を拒否したところ、それに対して提案株主が裁判で争ったという事例について相談を受けたことがあります。そうした紛争事例では、裁判の審理期間はあまりにタイトであり、無理に無理を重ねているという印象を持ちました。そのように、株主提案の許否について裁判上の争いになった場合、現行法における期間の短さの問題は明確になりますが、たとえ裁判に行かなくても、株主提案に対して取締役会としてどういう対応をとるかを決める上でも、現在の期間は相当にタイトであると思います。   それと、現在の株主総会の招集スケジュールを前提にすれば、タイトとはいってもそれなりに期間はあるように見えますが、それはやはり、日本の株主総会は、元々招集期間が非常に短く、上場会社でも総会の3週間前ぐらいに招集通知を発送していることが多い。これはやはり、国際的に見ると非常に招集期間が短いわけで、そういう総会実務を前提として、現行法の行使期限でも何とか対応が間に合っているということだと思います。この点は、本当は招集期間を、3週間といわずもっと長くしてほしいわけで、その点を考えても、行使期限について見直すことは検討してよいとないかと思います。   ただ、その際に、先程来、議決権行使の基準日を行使期限算定の基準にしたらいいのではないかという意見がかなり出ましたが、それでうまくいくように見えるのは、現在の実務ではどの会社も決算期を基準日にしているからに過ぎません。私としては、このような実務を本当は見直してほしい、本来は、議決権行使の基準日は株主総会の開催日にできるだけ近い時期に設定するほうがよいはずです。そのように、決算期を基準日にするという現在の慣行が改まった場合、議決権行使の基準日を株主提案権の行使期限算定の基準にすることの意味合いが変わってきますので、少しそういうところも含めて考えた方がいいと思います。   個人的には、デフォルトルールとしてはもう少しだけ行使期限の前倒しを認めた上で、会社が招集通知発送日を事前に開示した上、その発送日から何週間前に株主提案権を行使してくださいということを認める制度にすればよいと思います。会社が株主提案に対応することがどれだけ大変であるかは、結局のところ、招集通知発送日のどれだけ前に提案権が行使されたかによると思います。また、他の株主も、株主提案の内容は早く見たいはずですから、会社に対し、招集通知を早く発送する、招集期間を長くとるインセンティブを与えるような制度にしたらどうかと思います。これはジャストアイデアですけれども、余裕があれば御検討されると有り難いです。   それから、3番目の業務執行事項に係る定款変更に関する議案の提出の制限についてです。これは以前の会合でも申し上げましたけれども、慎重に考えた方がいいと思います。先ほど内田委員もおっしゃったように、例えばサステナビリティ事項についての株主提案は、一時はかなり賛成率が高かったですが、あれも業務執行事項かと言われると微妙で、業務執行事項と考えてもおかしくありません。そのように、投資家株主として賛成できる、検討に値すると考える提案であっても、法的に、つまり裁判所が判定できるような形で業務執行事項の意義を画定しようとすると、業務執行事項に含まれてしまう可能性があります。そのように、株主にとって定款に入れることが検討に値すると考えられる事項と、法律上業務執行事項といえる事項との間には、ずれが生じる恐れがあると思います。   なお、業務執行事項かどうかについては、取締役会の判断を尊重するという意見もありました。しかし、やはり株主提案というのは、それまで取締役会が行ってこなかったことについて、行うべきだと株主が思っているから提案するわけです。他方で取締役会は、それは行う必要がない、あるいは行うべきでないと思うからこれまで行ってこなかったのでしょう。従って、株主提案については、基本的に取締役会は反対であるのが常態であると考えられます。そうしますと、ある提案が業務執行事項であるかどうかを取締役会の裁量判断に任せるということは、株主提案に反対する取締役会に株主提案を許すかどうかの裁量を与えるということになるわけで、取締役会には一種の利益相反があり、その裁量判断に信頼が置けるかは疑問です。また、株主提案の現状を見る限り、定款変更議案という形で提案させ、その採否を株主の判断に任せるというルールのもとで大きな不都合が生じているようには見えない。つまり、純粋に業務執行マターと見られる提案についてはやはり株主の賛成率は低いようですので、今回も見直しをしないということでいいのではないかと考えております。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。 ○森委員 株主提案権につきましては、仁分委員からもありましたけれども、昭和56年当時とは状況が随分変わってきておりますので、基本的には1%未満の株主の提案が可決された事例は会社が結果的に賛成した1件を除いて皆無であるという点等も踏まえて、株主共同の利益ですとか社会的コストを考えた場合に、個数要件は廃止するのが望ましいと考えております。   一方で、個数要件をなくすことが簡単ではないという現実も理解しております。そういったことも踏まえて、実務の実態を再度お伝えしたいと思います。例えば、株主から自分を取締役にしろという提案、社名を変更しろという提案があったり、定款変更の名前を借りて業務執行事項に関する提案があったりと、そういったことが往々にして行われておりますが、そういった提案があるたびに、その提案株主に対して株主総会の場で提案理由を説明する機会を与えないといけないので、その提案株主が延々と演説をするということも少なくありません。提案されているものは事前の議決権行使で否決されることが目に見えている場合がほとんどですが、そういった実態について会社側としては大変な問題意識、ストレスを感じているというのが実態であります。   そういった実態がある中で、今回、法制審議会において株主総会の在り方が議論されるということに対して、経済界は大変な期待を持っております。そのように社会全体が注目しているという状況において、仮に、少し戻って恐縮ですけれども、株主総会の決議について、先ほどの事前確定決議制度でA案が採用されて定款変更が要件になると、まず定款変更はできないでしょうから、結果的に実態は変わらず、さらに株主提案の要件も引き上げられないとなると、法制審議会でいろいろ議論はされたけれども、結果的に実務的には何も変わらなかったということになりかねないということを非常に危惧しております。そういう意味からも個人的にはC案を是非ともやってもらいたいと思うのですけれども、それはともかくとして、株主提案権については、選択肢としては両論併記のような形で、要件引上げも含めて提示していただきたいと思っています。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。 ○加藤幹事 私からは株主提案権の行使期限の見直しについて意見を述べます。   私も参考資料20、21の御説明や、松中幹事が御指摘されたように、株主提案権の行使期限以外の制度の改正の状況などを踏まえますと、株主提案権の行使期限の見直しは検討に値すると考えます。さらに、株主提案権の行使期限が不明確であるということについての見直しも併せて行うことによって、バランスのとれた見直しになるのではないかと思います。   ただ、株主提案権の行使期限の起算点については、私も田中委員と同じ懸念を持っております。基準日を基準とする考え方をするということは、現在の実務のスケジュールを是認するということになり、久保田委員が懸念されたように、現在の株主総会の実務の見直しの動きを制約する効果をもたらすからです。そのため、この基準日、少なくとも現在の実務を前提とする3月31日末日を議決権行使の基準日とする場合を固定化するような制度は、できれば避けた方がいいと思います。   その上で、ではどうすればいいかということがあるわけですけれども、一つは田中委員がおっしゃるように招集通知の発送期日を明らかにするということもありますし、更にもう一つ、そもそも株主総会の開催日はいつ決まるのかということが個人的には興味があります。つまり、現在は会場を押さえる必要があるわけですから、少なくとも招集通知を発送する、電子提供措置の期限よりも相当前に会場は押さえているのではないでしょうか。そうすると、株主総会の開催日自体についてはより早い時期に株主に開示することができるのではないかと思っております。そうであれば、電子提供措置の開始前に株主総会の開催日の開示を求める仕組みを設ければ、現在の株主総会の開催日を基準とする行使期限の定め方でも一応機能する可能性はあり、その8週間を少し長くするという方向で制度を整備することも考えられるのではないかと思いました。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○青委員 これまでの皆さんの御意見とほぼ同じところが大半なのですけれども、まず株主提案権に関しましては、やはり個数の基準をなくすとなると、従来の株主提案権に対する考え方を大きく変えることになることを、まずしっかりと認識した上でお考えいただくことが大変重要だろうと思います。そうすると、なかなか個数基準の廃止も考えづらい点が出てくるのではないかとは思います。そもそも、廃止まで仮に視野に入れていくのだとすると、やはり会議体として、今回の見直し導入後の総会実務の様子を見るですとか、あるいは総会と取締役会、経営陣との関係性や位置付けについて、やはり掘り下げた議論が必要になってくるのではないかと思います。   一方で個数自体をどうするかにつきましては、やはり将来の変化を含めた株価水準の変化を踏まえ、考えていくことでよいのかなと思いますので、必要な水準感が以前と比べてどうかというところを念頭に置きながら、個数を増やしていく方向感は十分あり得るのではないかと思います。その上で、1株当たりの価値を分割等によってかなり絞ることも当然できるわけですので、そこについて支障がでないように、一定の金額なのかパーセントなのか、あるいは分割した会社だけということになるかもしれませんし、何らかの形で法律で一定の上限を決めて、その中で定款で選択できるという方向もよいのではないかと思います。   株主提案権の行使期限の見直しにつきましては、基本的には株主提案がかなり増えているという面もございますし、その対応というのが、特に形式的な提案から、十分な検討や議論をしなければいけないより実質的な提案が増えていることを考えれば、実質的な意味で前倒しする方向で議論するのは適切ではないかと思います。ただ、現状の実務を余り前提としすぎないようにすべきであり、例えば印刷物については本当は必要がないけれども、用意しているという実務を過度に前面に押し出して、現状が大変だからといった立論よりは、内容的な面で十分な議論をするべき時間の確保という観点から考えた方がよいのではないかと思います。   また、いつまでに提案することが必要かにつきましては、御指摘のとおり、特定性がないのはやはりよくないということだと思ってございます。基準日は現状では3月末とする企業が多くございますけれども、やはりエンプティボーティングなどを考えますと、総会の少し前を基準日にする方が理想的ではありますので、そうした余地を狭めないという意識はやはり大変重要ではないかと思っています。どう定めればいいのかは、いろいろな考え方があるので難しいところですけれども、今まで出てきたようなこともそうでしょうし、あと、基準日公告を要する場合には、公告のときにはさすがに決まっているのではないかということで、飽くまで予定ということでしょうけれども、その公告の中で何らか総会の日か招集の日かそういうものを示していただくとか、あるいは定時総会であれば期末日を基準にして、一定の日までは提案の提出が可能であるというような形で定める方法もあるかもしれません。この辺りは実際の実務でどのように回しているのかも含め検討していくのがよいのではないかと思います。   それから、業務執行事項に係る定款変更議案の提出を制限するかにつきましては、何が業務執行にあたるかが必ずしも明確ではなく、現状でなかなかそこに踏み込むのは難しいところがありますので、先ほどから出ておりますような勧告的決議をうまく使うことも十分に検討の余地があるのではないかと思います。やはり勧告的決議の方が同意は得られやすいという面はありますので、仮に導入するのであれば、その後にその運用状況を見た上で、業務執行を幅広く考えるのか、あるいはもっと狭く考えるのかを考える余地が出てくるのではないかと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○藤井委員 まず、株主提案権の個数要件の見直しにつきましては、A案を支持したいと考えております。個数は、会社によってインパクトが異なるものでございますので、1%要件のみで十分と考えております。   続きまして、株主提案権の行使期限の見直しでございます。仁分委員の御提出資料と重複する部分があろうかと思うのですけれども、私ども証券代行機関から見る発行会社の実情として、以下のような観点があると考えております。   まず、上場会社ということでございますけれども、3週間前までの電子提供措置といったものが今、求められている中で、やはり株主に十分な議案精査の時間を確保するために、事実上は4週間前に電子提供措置を開始している会社も相応にあると認識しております。実際に株主総会白書を見ますと、上場企業の2割程度が、4週間以上前に開示しているといったところでございますし、機関投資家の比率が高いと言われるような時価総額が5,000億円を超えるような大きな企業でございますと、半数を超える企業が4週間以上前に開示をしているというのが実務の実情としてあると思います。事前にいろいろな関係機関とスケジュールを調整しているということもありますし、株主提案が出ているか出ていないかということでそのスケジュールを変えるという判断もなかなかしにくいのかなと考えておりますし、むしろ株主提案がある場合には、株主が議案の検討時間をより一層確保できるよう時間を与える必要があると理解をしております。   スケジュール面のところも仁分委員の資料からも具体的な日数というものが出ていたかと思うのですけれども、私どもが承知している限りにおいても、やはり招集通知の発送というものから起算しますと、発送の1、2週間前には発送する業者に納品、株主数が多ければ多いほど早く納品を求められるといったところも実情としてはありますし、納品の1週間ぐらい前にはもう原稿は確定しないといけないと、さらに、株主提案が出るとなりますと株主提案用の議決権行使書面もふだんとは違うものを用意しないといけないということで、それも発注から納品まで一般的には1週間程度掛かると認識はしておりまして、更に提案の内容によっては発送形態も異なるとか、いろいろなことが変わり得るといったところが一つあるのかなと捉えておりまして、これらのスケジュールから、実質的には多くの企業において2、3週間程度で行使要件の確認、提案内容の確認、提案者との折衝、取締役会意見の作成、電子提供措置への反映を行っていると認識をしておりますので、かなりぎりぎりのスケジュールというところでございます。   加えまして、日本企業のガバナンス向上が進展し、社外取締役の人数も増加している中で、取締役会意見の集約というものにも従前以上に時間を掛けて行っているということがあると認識しておりますし、さらに、上場企業では任意の指名委員会の設置が一般化している中で、例えば役員選任議案が株主提案として出た場合には、更に候補者との面談や委員会での審議にも時間は掛かっていると承知しております。実際に株主提案が出た際には、やはり提案内容を真摯かつ多角的に検討して、その結果をより早く株主に伝え、対話を行うということは、必要ですけれども、今現状なかなかできていないといったところでございますので、この見直しというのは株主との対話促進という観点でも必要なものと考えております。   先ほど来、案として出ております株主からの分かりやすさの観点で基準日を起算する制度に改める点については、一つの考えとしてあり得ると私も捉えておりまして、具体的な日数は様々な御意見があるところではあるかと思うのですけれども、イメージとしては、基準日から1、2週間程度と考えております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○矢野幹事 まず、こちらについて1、2、3とありまして、2と3は見直さない方向ということなのですけれども、今のお話を聞いていると今後変わり得る可能性もあるかなと思いましたので、最初にパブコメで聴くときの方向性についてお話しできればと思っております。こちらを見直す方向ということであれば、3は少し違う方向性ですけれども、いずれも基本的には令和元年改正でも議論しているところなので、見直さないという案も併用した上で聴いた方がよろしいのかなと思ってはいます。その点をまず、申し上げたいです。   その上で1について申し上げますが、まず、A案の廃止については、私個人的には反対です。ただ、パブコメで聴くということには反対いたしません。B案については、仮に1,000個ということだとすると、平均でいうと4,000万円だったものが1億3,000万円超ということになって、一気に富裕層対象だということになって、より批判が強いのかなと思いまして、かなり懸念を持っています。前回資料の諸外国の例を見ても8,000万円程度の数字が出ていたかと思いますから、それよりも更に1.5倍ということになって、諸外国の目から見ても株主の権利を著しく後退させていないかという懸念はあります。逆に、個数としては500個なら分かるかなというところはあります。あと、(注)にありました定款で定めるところについては、少し明確性に欠くと、各社対応ということになって、なかなか株主側から分かりにくいというところがあるので、そうしたことはしない方がいいかなと個人的には思います。   あと、必ずしもこだわるものではないのですけれども、この論点は金額基準があった方が公平性を担保していると考えておりまして、それは前回申し上げたとおりですけれども、例えばですけれども、富裕層という批判ということであれば、上場企業については個数を一定程度増やした上での個数か金額基準、金額でいうと提案権行使日の前日の株価を基準とかになると思いますけれども、その基準で法務省令で定めた金額のいずれか低い方といった形にすれば、富裕層だけであるという批判は回避できるかなと思いました。   次に2についてですけれども、こちらは記載の内容で異存はありません。この点は令和元年改正でも議論はされていまして、むしろ電子化が進んでいるということで印刷期限はなくなっていくという方向がこれからも進んでいくというのが元来の在り方だと思いますから、印刷期限の問題から、より早く、というのは少し議論の立て方として、やはり私もおかしいかなと思います。ただ、改正をもしするとすれば、前回申し上げましたとおり、いつが総会の日か分からないというところがありますので、それを明確になるように改める形がよろしいかと思ってはいるのですけれども、今日話が出ました基準日を基準にするという問題は、実は前回、令和元年改正のときにも、少なくとも弁護士会の中では議論したという認識は私はありまして、そのときにも実務上なかなか難しいという問題点があって、今記憶になくて、その中身を御紹介できないのですけれども、ということで、なかなか意見を申し上げられなかったということがあるかと思います。ここは基準日を基準にするという案が出るときには、もう少し何か申し上げたいと思います。   3についても、特にこの内容については異存ありませんが、業務執行の点についてはやはりなかなか定義付けるのは非常に難しい、これも前回の令和元年改正のときに社外取締役の業務執行の、条文上、業務執行取締役というのはあるのですけれども、業務執行の定義がないというところがあって、前回も定義化できるかということは検討されたかと思うのですけれども、なかなか定義は難しい、逆に定義してしまうと、かえって実務上問題があるところが幾つかあるということがあって、なかなかできなかったという認識はありますので、やはりここも非常に難しいとは感じています。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○臼井委員 株主提案の議決権数の要件の見直しについて、A案に賛成いたします。見せ方については先ほどから御議論があるところでございますが、個数要件については廃止で異論ございません。保有比率、保有個数の少ない株主については、株主提案というよりは、通常のSR、それから株主総会での議論の場というところで拾い上げていくのが本来かなと考えます。   それから、行使期限の見直しでございますが、こちらは株主総会日との相対ではなく絶対的な基準日とすべきという御意見に賛同いたします。電子提供措置等もある中で、既存のスケジュールにこだわりすぎないようにというところにも賛同いたします。一方で、先ほど招集通知書、電子提供について4週間程度前に開示する会社もかなり増えてきているという御意見もございましたが、6月末に株主総会を開催される会社が非常に多いところを踏まえますと、投資家サイドも十分な検討をする時間を確保する必要があるという観点から、株主総会の開催タイミングの分散の必要性は非常に高く、株主提案権の行使期限の検討と併せて全体的な観点から議論していく必要があると考えております。   3番目の業務執行に関しては、見直しなしという方向性で異論ございません。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。 ○齊藤委員 まず、1につきましては、この方向でパブリック・コメントに付すということでよろしいのではないかと思います。ただ、定款自治の在り方や金額基準の合理性などについても意見が出てくる可能性がございますので、そのような御提案もあったというようなことを補足説明で書いていただくようなこともあり得るのではないかと思います。   次に、提案権の行使期限の話でございますけれども、仁分委員の御意見なども伺い、確かに令和元年改正に伴いまして電子提供措置が始まったことで株主総会関係書類の開示時期が前倒しになったので、その点は考慮してもよいのではないかとも思われました。令和元年改正において3週間前になったのは、印刷などの期間が要らなくなるからであって、前倒しではないという理解であったと思いますので、どのくらい実質的に前倒しになったのかについては議論の余地はあろうかと思いますけれども、藤井委員の御意見にも、実質的な前倒しの努力をしている会社が多くあるということがございましたので、電子提供措置が開始されたことに伴い、招集通知の早期発送の努力をしている企業が増えていることを加味して多少長くするというようなことは、起算点の考え方につき大きな変更をしなくても、あり得るのではないかという気がしてまいりました。   ただ、それを超えて、個別の会社の発送期限に応じて、行使期限を設定するようなことは、難しいように思われました。むしろ複数の委員、幹事から御意見がありましたように、定時株主総会の開催スケジュールの見直しが実現した先に、行使期限の前倒しがあるように思いまして、特に定時株主総会については、決算についての情報が投資家に届けられ、それを見て、現経営陣に信任を引き続き与えてもよいのかを投資家が検討し、必要に応じて提案権を行使するというようなスケジュールが望ましいように思われます。そして、定時株主総会の開催時期が後ろ倒しになった暁には、基準日は総会の開催日になるべく近い形にして、エンプティボーティングも防止するというような全体像の中で、提案権の合理的な行使期限はどこかを検討していくというのが筋なのではないかと思いました。定時株主総会の招集の準備が企業にとって非常に大変なことはよく分かったのですが、そこまで大変なのに開催期日の後ろ倒しを検討しないことの合理性のほうがむしろ問われる時期に来ているのではないかと思われます。   次に、業務執行事項を対象外にすることについてですが、しばしばドイツ、フランスの例が挙がるのですけれども、少なくともドイツは株主総会と取締役の権限分配について、日本とは異なる考え方を採っておりまして、業務執行は取締役に専属することが法文で明記されており、専属する範囲について現地においてはそれなりの共通の理解があるところで、提案権の対象にできないとされているということではないかと思います。これに対して、日本では、何が業務執行事項なのかについての共通の理解が形成されるとはいえないように思いますので、直接参考にすることは難しいように思います。フランスについては不案内なのですが、フランスにおいても、権限分配の一般論として、業務執行事項は取締役会に専属するという理解を前提に、総会の決議事項にできないという建て付けになっているのではないかと思いまして、もしそうでしたら、フランスも余り参考にならないのではないかと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。 ○藤田委員 まず、株主提案権ですけれども、現在の形、A案、B案を提示するのに賛成です。より明示的に言うなら、A案、B案だけを問うという形にすることに賛成です。本部会での大多数の意見は、現在の300個要件には批判的です。そういうことなら現状維持は選択肢として掲げずに、こういう形で問うということでよいと思います。現状維持という考え方があることを説明で書くことは反対はしませんが、選択肢として挙げることはないと思います。たとえ法制審では通っても、国会審議でどうなるか分からないのがこの論点ですけれども、この部会での大多数の意見がそういう方向なのであれば、法制審からする提案として、またその前提として中間試案に問う問い方としては、それでよいと思います。   なお表記の問題ですけれども、(注)の書き方が確かに分かりにくいかもしれません。A案と定款の組合せは、個数基準による提案権はないけれども、会社が自発的に上げることはできますという意味なのですが、B案と定款の組合せは、法律の規定より高い個数を要求することを認めるということで、性格が全く逆ですので、むしろ各案に別々に(注)を付けた方がいいのかもしれません。ただ、それは表記の問題ですし、また、少数株主要件の引上げの定款変更も、およそ論理的に不可能ということもないと思うので、その点も含めて提案として書いていただければと思います。   行使期限の見直しは、どこまで必要性があるかについてよく分かりませんので、現段階で賛否は控えたいと思うのですが、これは必要性を理解できないとか延長の必要がないという趣旨で言っているのではなくて、どのぐらい厳しいスケジュールになってどのぐらいの前倒しが必要かというところについて確信を持てないというだけですので、そこはオープンだという意味です。しかし、期間を延ばすこと自体の是非はともかく、基準日から一定の期間という形での改正については、やはり考えなければいけないことがいろいろあると思います。既に御指摘があったところですけれども、基準日から何日という形にすると、いつまでに提案しないといけないかについては明確になるのですけれども、別の問題を引き起こすからです。繰り返しになりますけれども、そういう案の下で想定されているスケジュール感は基準日の有効な期間のうちできるだけ後ろの方で総会が開催され、かつ、想定している基準日は決算期末であるということでしょう。それは決算期末に基準日を設定せずに、かつ総会の開催日と基準日の間隔をできるだけ短くしようという、現在強く言われているような方向性とは完全に逆行する可能性があるし、仮に総会の開催日と基準日が短くなるようなことが起きると、今度は提案株主が委任状勧誘などを行う期間が実質的に相当短くなるおそれも出てきます。もちろん取締役会の反対意見の作成、通知の時間を考えると、事実上ある程度抑止力が働くのかもしれませんけれども、少なくとも可能性としてはそういうことが起きるかもしれません。基準日から起算した要件を定めるというやり方は、それによって解決される提案株主の不確実性よりはるかに大きな問題を引き起こす気がするので、この問題への対応については別の方法を考える方がいいと思います。   業務執行事項は、もう余り申し上げることはありません。提案として取り上げないことに賛成です。繰り返しになりますが、発想は理解できないわけではないですけれども、うまくエンフォースできないということに尽きます。なお株主提案を取り上げないことについては意味のあるサンクションを掛けにくいということもあるので、保守的な運用がなされることは余り保証されないと思っていることも付言しておきます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。   ほかに御発言はございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは、最後の第3セクションに移らせていただきます。部会資料8の「第3 その他」についてでございます。   本日御欠席の仁分委員から、「その他」につきましても事前に御意見を頂戴しておりますので、事務当局から代読していただきます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○吉田関係官 仁分委員からの御意見を代読させていただきます。   部会資料8で示されている提案は、2項調査者制度を直ちに廃止するまでの濫用のおそれが具体化しているとは言い難いとして、2項調査者制度を維持することを前提としています。しかし、部会資料8の20ページ11行目にあるように、株主総会で選任され業務監査権限を有する監査役等に加えて2項調査者の選任を認めることは、ガバナンスに混乱をもたらし得るほか、2項調査者制度を維持する必要性の議論が不十分であり、中間試案の時点では廃止する案も含めて意見を募集していただきたいと考えます。  以上です。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○松中幹事 調査役についてですが、基本的には賛成でありまして、明らかにすべき情報のうち利害関係の部分、特に提案株主と調査者の利害関係について、より明らかに具体的にどういうものが入るのかを示すべきではないかと思います。例えば、顧問弁護士になっている人を提案するような場合に、これが利害関係に当たるのかどうか、これは解釈とか説明のところでいいとは思うのですけれども、少し明示した方がいいのかなと思います。 ○鮫島幹事 参考資料21の6ページ目でございます。2項調査者制度は廃止すべきという意見でございます。2項調査者が調査できる対象、方法についての明確な規定がなく、提案株主からの独立性、中立性も担保されておらず、このために一部の株主が会社が保有する業務、財産に関する非公開、秘密情報等にも直接アクセスし得るということが懸念されてございます。そうなると、株主が日本企業が管理、保有しているノウハウ、機微技術等にもアクセスできる可能性は排除できず、企業の「稼ぐ力」の源泉を損なわせるばかりか、我が国の経済安全保障上の懸念も生じ得ると考えてございます。株主が会社の情報にアクセスする際には、役員または裁判所の関与を得て慎重に対応すべきと考えてございます。株主は監査役等に関する選解任権限の行使や、検査役選任の申立てによりまして、会社に対する業務調査は実現できると考えてございます。諸外国においても、この2項調査者に類似する制度はないと考えてございまして、2項調査者制度は廃止することが望ましいと考えてございます。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。 ○豊田委員 私は第3の2につきまして、株主総会の招集手続等に関する検査役の選任の申立権者の見直しにつきまして、こちらは見直しをしないものということでどうかという提案になっており、元々日弁連からの要望というのが元になっているため、再度日弁連内でも議論いたしましたけれども、論点として是非残していただきたいということですので、少々述べさせていただきます。   補足説明に記載いただいている①から③は、理由を提出させていただいたものに対応していると思いますが、まず①につきましては、100分の1の株主の権利が認められているということですけれども、例えば高額の役員報酬を決議する場合などにおいて、反対の株主が存在するけれども分散しているといった場合に、総会までの時間がない中で100分の1の株主をまとめて検査役選任の申立てをするというのは困難であると考えられます。このような場合に、少数株主保護のために、例えば社外取締役が検査役選任の申立てを行うということも想定されますので、役員個人が申立てを行うことを認める必要があると考えます。   ②につきましては、監査役が総会検査役の機能を果たし得るという御説明がありますが、総会検査役の主な役割として証拠保全機能というのがございまして、監査役が自ら監査を行って資料を作成した場合と、裁判所に選任された検査役が調査報告書を作成するという場合に、その訴訟における証拠として果たす役割というのは大きく異なると考えております。また、通常、総会検査役は補助者を使って複数で調査をする場合が多いと理解しておりますが、監査役の場合、使用人等の補助者というのも使うことはあり得るとしても、実際の場面におきましては、総会検査役やその補助者と同様の調査を行おうとしても、他の役員と対立しているような場合は阻止される可能性も高いと考えております。   ③は、解任の決議があったような場合であり、解任される役員の保身の目的に使われる可能性がないとは確かに言い切れないとは思いますが、例えば不祥事等が起こって、それを摘発した者が解任されるといったような場合に、その役員の立場というのはかなり弱いことが多く、総会の場で検査役の解任事由の説明等を行う場合の記録を行う必要性は高いと考えております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○矢野幹事 2のところで豊田委員の意見に1点だけ補足させてください。補足説明のところに濫用のおそれについて書いてありますけれども、今の実務で申し上げますと、申立人側から検査役の費用を予納しなければならないとなっておりまして、検査役の費用はそこから支払われまして、後に会社に求償するという実務になっております。それなので、最後は会社が負担するとはいっても、実際はそれなりにお金がないと申立てすらできないというのが現状の実務かと思います。その実務ですので、濫用のおそれを考える必要は正直、ほぼないかなという認識ではおります。実際、株主申立てが多いという現状かと思いますけれども、そこで濫用的な申立てというのは、まあないのであろうと認識しておりますけれども、逆に一度会社の役員なった人が申し立てるとなると濫用のおそれがあるというのは少し言いすぎなのかなと思っておりますので、少し現状の実務を御紹介できればと思いまして、補足させていただきました。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○森委員 私からは会社法第316条第2項の調査者制度についてコメントをさせていただきます。   2項調査者制度は極めて問題がある制度で、今回の案は濫用防止措置等の要件を個別に検討するというアプローチになっておりますけれども、私としては他の制度との統合も含めて、廃止することを抜本的に検討すべきであると考えております。その理由として、三つの論点を挙げたいと思います。   一つ目の論点は、会社のガバナンスの観点です。日本では会社の業務に関する業務調査権限は、一つは株主総会で選任される監査役、監査委員、監査等委員という監査担当役員に充てられておりまして、それに加えて、株主のイニシアチブによって選定される会社法第358条の業務財産検査役に既に付与されております。そのようなガバナンスで成り立っている状況において、それに屋上屋を加えてオールマイティに業務財産調査権限を行使できる2項調査者を更に置く制度的な必要性は認められないと思いますし、会社のガバナンス体系を破壊する存在になると思っております。監査担当役員は、そもそも株主が選任しているわけですので、株主は不満があれば監査担当役員を解任若しくは新たに追加選任すればいいということですし、少数株主には業務財産検査役の選任申立権もあります。それらに加えて、無制限に会社の全ての内部情報にアクセスできて、その情報の利用や管理について何ら制約を受けることがないという調査者及び株主が、マネジメントないしボードの外側にいるというのは、会社のデータガバナンス体制として極めて深刻な状況だと認識しております。   二つ目の論点は、株主による会社情報へのアクセスに関する規律という観点です。株主は会社法第371条による取締役会議事録の閲覧ですとか、同法第433条の会計帳簿閲覧請求など、会社情報へのアクセスについて規律が定められております。それにもかかわらず、株主が自分たちの決定によって調査者を選任し、その規律を実質的に完全に無視することができるということになっておりますので、これは極めて不合理な状況ではないかと考えています。   三つ目の論点は情報の取扱いという論点です。本制度ができた昭和25年当時においては、業務や財産を調査するということになりますと、多分会社が用意した書面を必死になってめくるということが想定されていたのだと思いますけれども、現在ではコンピューターで会社のメインサーバーにアクセスすれば会社のデータは全て持っていけます。そういう意味で、調査という言葉の持つ意味が昭和25年と現在では全く異なってきていると思いますので、会社法がそれに追い付いていないというのが実態ではないかと思っています。実際、2項調査者制度が使われた某会社の事例では、雑誌情報で読んだだけですけれども、会社のパソコン及び役員の携帯電話が全て調べられまして、フォレンジックによって削除されたデータの復元までされているということです。これがどれほど深刻な状況であるかというのは、例えば、ある日突然、皆さんのところに守秘義務を負わない第三者がやってきて、自分のパソコンと携帯電話のデータを全部持っていかれて、さらにフォレンジックで削除していたものまで復元され、それらのデータがどう取り扱われるかも分かりませんという状況に置かれるということを想像していただけますと、それがいかに深刻な状況かということがお分かり頂けると思います。仮に金融機関が2項調査者制度の対象になった場合、個人の信用情報ですとか企業の与信判断情報が全て入手できることになります。さらに、取得された情報については、会社に明確な損害を与えない限り、そのデータがどう利用され、管理され、処分されるのかということについて何ら制限がありません。技術がある企業ですとか、例えば国防情報を持っている企業であれば、調査者は国防情報に触れることもできることになります。   濫用があるかどうかどうかというところですけれども、例えば株主から、PBRが低い会社に対して、こんなPBRが低い状況というのは会社の業務運営ないし財産の管理上の問題があり調査が必要であるというような提案がされたとすると、これは株主総会で通る可能性もあると思うのです。更に言いますと、不正の「おそれ」ということも含めて、いろいろな提案のやり方が考えられ、やる気になれば会社の情報を丸ごと持って行くことができるという状況になると思いますので、これは非常に深刻な状況だと思っています。更に言えば、情報を抜き取られてそれを海外に持って行かれたとしても、これは多分分からないと思うのです。そういう深刻な状況の中で、上場会社の3割はもう外国人株主ですし、政府系の外国のファンドもあるという状況を踏まえると、この条項というのは本当に国家経済安全保障上極めて深刻な条項だと認識しております。   以上の点から、本条項の見直し案については廃止若しくは同法第358条への統合を提示すべきだと考えておりますけれども、仮にそれに加えて濫用防止措置等を講じるB案をどうしても提示する必要があるということであるとした場合は、その要件として、同条の定める不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があるときはといった要件も加えるべきだと思いますし、それに加えて、監査役等で確認できないといった緊急を要するときはとか、そういった加重要件も加えるべきではないかと思っています。さらに、情報の取扱いに関する規律ですとか裁判所の関与も定めなければ、本当に深刻な事態になりかねない条項だと思っておりますので、今回改正をしないと将来に大変な禍根を残すという心配をしております。   最後に、部会資料に2項調査者制度については濫用のおそれが具体化していないという記載がありますけれども、実際にあった事案において、先ほど言いましたようにパソコン及び携帯電話が全部フォレンジックを掛けられたということだけでも、個人的には濫用があったのではないかと思っておりますし、それに加えて別の事例でも、株主の方から2項調査者の申立てをするという通告を受けて、機密情報等もあってだと思いますけれども、どうしてもそれは避けなければならないような会社の事情があったので、株主と交渉をして一定の対応をとることによってそれを思いとどまらせたという事例も出てきておりますので、大変深刻な状況であり、濫用のおそれが具体化しているとはいえないという記載はミスリーディングだと思っております。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。 ○藤田委員 会社法第316条第2項については、以前も申し上げたかもしれませんが、沿革からすると、存在根拠自体に相当疑問があるものであることは否めないと思います。これが導入されたのは、昭和25年改正によって監査役の業務監査権限がなくなったことの代償として少数株主に調査権を与えるという趣旨だったので、そもそも昭和49年商法改正によって監査役の業務監査権限が復活したときに見直しをしてもよかったのかもしれません。だから、廃止すべきだという意見も、体系的な観点からは理解できないわけではなく、廃止案を選択肢に掲げてもいいかもしれませんし、少なくとも今申し上げたような沿革の話は、問題の所在として言及していただいた方がいいかもしれません。   ただ、近年、これが実際に使われた著名な例があらわれ、それを受け、この制度の存在意義についてネガティブな受け止め方ばかりではないように見受けられる中、しかも今回の改正はどちらかというと株主の権利を制限する方向の提案が多い中で、調査者制度を廃止するというのが難しいとすれば、せめて何らかの制約を加えようというのが、現在の提案の発想だと思います。そういう意味では、調査者制度の合理化、より厳格な規制の仕方という提案を原則とするということでよいと思います。   会社法第316条第2項の提案は、これまでもいろいろなことを申し上げましたけれども、その多くが取り入れられていて、その点は有り難く思います。書かれている提案それ自体は、現行法の改正として意味があるものばかりだと思いますし、これらの是非について中間試案で聴いていただければと思いますが、やはり今後検討していただきたいのは、23ページで書かれている、調査者の得た情報を直ちに株主に通知していいかという問題です。余り広く知られていないかもしれませんが、調査者の調査権限は非常に広く強力です。例えば、銀行法第23条は銀行秘密の保持の観点から株主の帳簿閲覧権の対象外とされています。ところが、調査者による帳簿閲覧は一切制限されないというのが実務の解釈のようで、法務省の方のお書きの『実務相談株式会社法4』という本の中で明確にそう書かれています。理屈は、個々の株主による情報収集ではなくて総会で選任された者による調査なので、取締役などの会社の機関に準ずるということから、そういう違いが出てくるのだと思いますが、そういう強力な権限が濫用された場合は取り返しが付かない事態にもなるわけです。もちろん過半数の株主の支持を得ているということは、買収して取締役を入れ替えられてしまえば情報を全部取られるのだから同じだと言われるかもしれませんが、買収提案だと株主も慎重に判断するところ、ガバナンスの改善のために調査が必要ですという提案のされ方をすると、余り深く考えずに支持が集まってしまうというおそれがあるかもしれません。実際これが問題となっている例が、有名な事件以外にも、あると聞いています。その結果、特定の株主が秘密情報を事実上得ることができるおそれがあるということは杞憂ではないような気がしております。この制度と関連して、経済安全保障上の懸念が持たれるのも理解できる気がします。   そうすると、現在の提案のように2項調査者を特別背任罪の主体に加えることは当然で、やるべきだと思いますが、それだけでよいかは検討する必要があります。例えば、一定の情報については裁判所の許可を得て調査拒絶する権利を認めるとか、いろいろな案が考えられると思いますけれども、そういった点をもう少し詰めて、何か新たに盛り込んでいくようなことが必要なのではないかと思っております。   2の方については、私としては現段階では特に意見を申し上げられるようなことはありません。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○北村委員 第4回会議において、私は、2項調査者制度は長く使われることがなく最近ようやく使われ出したところ、この制度をネガティブに考えるのはどうかという意見を申し上げました。しかし、その後いろいろ御意見を頂き、今日も廃止というのも提案の中に入れてはどうかという御意見がございましたので、この制度の修正に加えて廃止についても検討し、パブリックコメントに付すということはあり得ると思います。   その上で、部会資料に述べられている点についてコメントをさせていただきます。  まず、(1)の動議により2項調査者を選任できないものとすることは、第4回でも申し上げたことでもあり、賛成します。   次に、(2)アの①、②、③を株主が通知することは必要なことだと思いますが、④の報酬については、報酬を株主総会で決めるという前提になっているようですけれども、この点は選任とは別の問題ですので、①から③と同列にするのは適切ではないと思います。報酬についてはなお検討とすべきではないかと思っております。   (注2)では、株式会社が2項調査者の選任に関する議案を株主総会に提出する場合とあり、これは、2項調査者の選任を目的として株主が会社法第297条に基づいて招集請求あるいは裁判所の許可を得て招集する場合に、会社の方が2項調査者の選任議案を出せることが前提になっているようです。確かに現行法では会社が2項調査者の候補者を出すということは禁止されていませんが、株主が候補者を提案しているときに会社が対立候補者を出していいのかというのは少し検討の余地があるかなと思います。   現在、株主提案については取締役会の意見を株主総会参考書類に記載することができるのですけれども、2項調査者の選任についても取締役会の意見を株主総会参考書類に載せるというのは大きな意味があると思います。また、2項調査者を選任する場合の株主総会決議の定足数も3分の1未満には引き下げることができないという取締役選任の場合と同じような要件を定めるということも、検討してよいと思っております。   最後に、濫用防止措置についてですが、2項調査者を特別背任罪の主体に加えるのは、賛成です。会社と2項調査者との関係は準委任関係なので、問題が起こった場合、取締役は2項調査者に対する責任追及をちゅうちょしないだろうと思っていたのですけれども、仮に損害賠償では取り返しがつかないことも起こり得るということでしたら、これについてもう少し検討が必要かと思っております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○久保田委員 私は、意見というのではなく事務局に教えていただきたいことがありまして発言させていただきます。それは調査者制度の見直しについてですけれども、部会資料では株主に提供すべき情報として調査の目的である事項が掲げられています。これについては、どれほど具体的な情報を提供すべきかの制限を付すことが想定されているのか、それとも、そうした制限は付さずに抽象的な調査目的、例えば先ほどのガバナンス上の調査のためといった抽象的な調査目的を提供することも許され、そうした場合は調査者がアクセスできる情報の範囲についても制限は事実上掛からないということになろうかと思いますけれども、そのことの当否を含めて、調査者を選任する株主総会の判断に委ねるということが想定されているのかという点です。この点について、調査者制度を残す場合について第4回会議で齊藤委員や松井委員が示唆されたように、可能であれば調査目的によって調査者がアクセスできる情報が制限されるということがあれば大分問題は緩和されるように思いますので、そのために個人的には、ある程度調査目的について具体的な目的にするということを求めることが望ましいと思います。ただし、他方でそれを会社法や会社法施行規則の規定文言に落とし込むのは難しいような気もしていまして、この点について現時点で事務局がお考えをお持ちでしたら、お教えいただければ有り難いというのが一つ目の質問です。   二つ目は、2のところでして、これは豊田委員と矢野幹事に御質問なのですけれども、必要性について説明していただいて、大変参考になったのですけれども、今頂戴した御説明はやや抽象的な御説明だったように感じます。そこでお伺いしたいのですけれども、実際に取締役等が検査役の選任の申立てをしたいということを強く望んでいたというような状況が具体的に生じていたとか、あるいはそういう申立てができることになっていればいろいろな事件、事案の展開が大きく変わったとか、そういう具体的な事案が生じていたということはあるのでしょうか。また、仮に具体的な事案が生じていたとした場合に、最近そういう事案はどれぐらいの数あったのかということをもし御存じであれば、お教えいただければ大変有り難いと思います。 ○神作部会長 まず、調査者制度につきましては法務省の事務当局に、また、2の検査役の選任の申立権者につきましては、豊田委員若しくは矢野幹事にお答えいただければと思います。 ○相澤関係官 2項調査者の調査の目的である事項の具体性につきましては、まず現状お示ししている規律案としては、明文による具体的な制限までは設けていないものですけれども、そのこと自体を否定する趣旨ではなく、その点を含めて御意見を伺いたいと思っております。一方で、具体的に明文で具体性を制限するということになると、例えば会社法第358条の検査役の「不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があることを疑うに足りる事由」というような形で調査事由を一定の事由に制限することは考えられますが、そのような方法ではなくより直接的に目的事項の具体性を明文で規律できるのかというのは、御指摘いただいたとおり正に悩ましいところだと思っておりまして、その意味で明文に書き切れるのか、あるいは一定の解釈をこの部会の中でも議論していくのかというのは、両論あり得るのかなと思っているところでございます。   さらに、関連して、現状の規律案としては招集に際して調査目的を明らかにする義務だけを書いておりまして、それによって具体的な調査範囲の中身もその目的に限定されるのかについて、明文の規律を設ける御提案はしていないのですが、このような形で調査目的を明らかにして招集すれば、そのことにより調査範囲が調査目的との関係で限定されることが明らかになると考えるのか、あるいは更に踏み込んで明文で調査範囲がその調査目的に限定されるというような規律まで必要なのかという点を含めて、今後更に検討していきたいと思っております。 ○神作部会長 よろしいでしょうか。それでは、申立権者の方につきまして、豊田委員からお願いできますか。 ○豊田委員 具体的な例というところで、今の段階で役員自体に申立権がないというところですので、実際に申立権があればこうしていたというような事例については、個人的には把握はしていないところでございますが、弁護士会の中では、必要だというような意見が多いというところでございます。 ○神作部会長 矢野幹事から何か補足等ございますか。 ○矢野幹事 余り詳しくは申し上げられないのですが、③の事例、いわゆる解任事例に関しては、具体的には私も経験はあります。ただ、もちろん申立権がないのでできないということと、先ほどお話ししたお金の問題というのがありまして、二重でできないということがあることはあります。ただ、件数としてはすごく少ないのは事実です。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。 ○田中委員 調査者については、もちろん調査者が権限を濫用すると非常に会社に損害を与えるおそれがあります。ただ、この点は前回もお話ししたと思いますが、株主総会の多数決というのは、取締役を全取っ替えすることすら可能であるわけで、それだけ重いものだと思います。もちろん株主の多数派が判断を誤るということはあるのですけれども、それは取締役の選任決議でも判断を誤ることがあるわけですので、株主総会の決議による場合にも濫用のおそれがあるからといって直ちに調査者制度自体を廃止するというのは、理由付けとして弱いように思います。   それから、近時話題になった調査者の選任事例に関して申しますと、これはもちろん評価が分かれるところでしょうが、やはり、会社が企業統治に関わる相当重要な問題点を隠していた、そしてそれが、会社主導の調査では必ずしも明らかになっていなかったところが、調査者の調査によって明るみに出たという評価も可能であると思います。もちろん、だからといって現行の調査者制度に問題がないということではなく、何らかの法制度上の対応は必要と思います。そのように考える理由としては、私が株主の立場ですと、何らかの問題について調査させる目的で調査者を選ぶのはいいのだけれども、その調査者が権限を濫用しないことについて十分な保障がないと、調査者選任議案に賛成できないということもあるように思います。もちろん不合理な株主によって不合理に調査者が選任されてしまうという可能性も考えるべきですが、それとは別の視点として、合理的に調査者制度を利用するかどうか判断したい株主のためにも、この制度についてある程度の規制をしたほうがいいと思っています。   その点で言いますと、今回提案された制度改正はいずれも合理的だと思うのですけれども、それに加えて、やはり裁判所の関与というものもあった方がいいと思います。今の日本の調査者制度に似ている制度は、資料にもあったように、ドイツにありますが、これは裁判所の関与を前提とする制度と理解しています。特に、調査者が調査結果について公表することについて、裁判所が一定の関与を行い、調査報告書のこの部分については公表してはならないという形の関与は考えられると思います。そのように、裁判所が公表の可否を判断する場合、その判断をどういう手続によって行うべきかという問題がありますが、基本的には会社と調査者の双方の言い分を聞いた上で、裁判所が公表の許否を判断する制度が考えられると思います。それから、先ほど藤田委員がおっしゃった点として、調査者が調査をする過程においても何らかの制限を会社が掛けることを可能にする仕組みもあってよいと思います。この点については、現行法の下でも、調査者選任議案では、調査の対象を記載しているところ、そのように調査の対象を規定した以上は、調査対象と無関係な事項については調査者はそもそも調査する権限はないと解されるように思います。従って、会社が調査の範囲外であるということを理由に、調査者の調査を拒むことは現行法の解釈としても可能であると思いますが、調査の対象外であるなどの一定の事由がある場合は会社は調査を拒むことができるものとした上で、その事由があるかどうかを裁判所が判断するものとする制度を明文で規定することは考えられると思います。   今回の審議で、非常に強い廃止論が出ましたので、今回の提案だけでパブリックコメントに諮るという形にはしにくいと思われ、廃止論も併せて提案するということでいいと思うのですけれども、私個人としては制度を合理化した上で存続させるという選択肢を是非追求してほしいと思います。 ○神作部会長 ありがとうございました。   ドイツ法は、会社法第358条に統合する案に近い法制であると思います。ただし、株主が選ぶ場合には要件がなくて、裁判所が選ぶ場合には要件が課されているといった違いはありますけれども、いずれのルートを経るにせよ選任された場合には裁判所が深く関与することになると思います。2項調査者の制度について、もし廃止案を出すとすると、それとともにたとえば会社法第358条に統合する案というのも一つ、有力な選択肢になるのかなと思いました。   本日も、大変充実した御議論を頂きましたけれども、お約束の時間となりましたので、第3の「その他」の残りについては次回の冒頭に取り扱うということとさせていただきたいと存じます。それでは、次回の議事日程等について事務当局から御説明をお願いいたします。 ○宇野幹事 次回の日程は12月24日水曜日、午後1時から午後5時30分までを予定しております。場所は法務省地下1階の大会議室でございます。次回は、企業統治の在り方に関する検討事項等について第二読目の御議論を頂きたいと考えております。 ○神作部会長 宇野参事官から御説明がありましたとおり、次回の12月24日の部会では、企業統治の在り方に関する検討事項について第二読目の御議論を頂きたいと考えております。   ここで一つ、皆様方にお諮りしたいことがございます。企業統治の在り方に関する検討事項のうち、指名委員会等設置会社制度の見直しのテーマについては、第5回の会議におきまして、法改正が必要となる立法事実があるのかどうか、その検証が必要であるという御意見を頂戴いたしました。そこで、この指名委員会等設置会社制度の改善に関する提言を公表されておられる一般社団法人日本取締役協会の皆様を次回の部会において参考人としてお呼びし、立法事実の有無等に関してヒアリングを実施してはどうかと考えております。具体的には、日本取締役協会の皆様から指名委員会等設置会社制度の見直しの必要性に関する御説明を頂き、その後、質疑応答するということを考えております。このような御提案につきまして、お認めいただけますでしょうか。   ありがとうございます。それでは、そのように御準備させていただきます。   それでは、法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会の第8回会議を閉会にさせていただきます。本日も大変熱心な御議論を頂き誠にありがとうございました。お疲れさまでした。 ―了―