法制審議会 刑事法(再審関係)部会 第13回会議 議事録 第1 日 時  令和7年12月16日(火)   自 午前 9時32分                         至 午後 0時56分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  1 審議          ・「再審請求の審理に関するその他の手続規定」          ・「再審請求審における検察官の保管する裁判所不提出記録の弁護人によ           る閲覧・謄写」                2 その他 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○今井幹事 ただいまから法制審議会刑事法(再審関係)部会の第13回会議を開催いたします。 ○大澤部会長 本日も、いつものことではございますが、御多忙のところ御出席くださりまして誠にありがとうございます。   本日ですが、後藤委員、井上関係官、寺田関係官はオンライン形式により出席されています。なお、玉本幹事は所用のため遅れての出席となります。   それでは、本日の議事に入りたいと思います。二巡目の議論を含めまして、これまでの議論の状況を踏まえて、事務当局に本日の配布資料20「今後の議論のための検討資料」を作成してもらい、事前に配布させていただきました。資料につきましては様々な御意見があろうかと思いますし、田岡幹事、村山委員、鴨志田委員から期日間において、例えば、配布資料20の「第1」の「1」の「B案」は日本弁護士連合会改正案であり、現時点の意見とは異なる、配布資料20の「第1」の「3」から「5」までや「第4」の「2」については、少なくとも、このような規律を設けないという案も記載すべきである、配布資料20の「第4」の「4」については、意見聴取と審理終結日を区別すべきであるなどといった御議論、御指摘も頂いているところでございます。このような様々な受け止め方があるということについては十分理解するところでございますが、この資料は飽くまで三巡目の議論に資するためのある種のツールとして、私の責任の下、事務当局において作成したものであり、もとより今後の議論を制約する趣旨ではなく、資料に盛り込まれていない論点、項目についても別途御議論いただく時間を設けたいと考えております。その際には、後に事務当局からも御紹介があると思いますが、本日、田岡幹事から提出された資料等もお手元に置き、適宜参照するなどしながら御議論いただけたらと思っているところでございます。   そのことを前提に、本日はこれらの資料に沿いまして三巡目の議論をお願いしたいと思いますが、それに先立ちまして、事務当局から、本日お配りした資料について説明をしてもらいます。なお、配布資料20につきましては、まずは全体的な説明をしてもらい、個別の論点に関する説明については、各論点の議論の冒頭にしてもらうこととしたいと思います。   それでは、事務当局から説明をお願いします。 ○今井幹事 本日は配布資料20をお配りしております。配布資料20は、これまでの御議論を踏まえ、今後の三巡目の御議論に資するための資料として、部会長の御指示の下、事務当局において作成したものです。   「論点整理(案)」に記載された論点・項目のうち、諮問において例示された論点に係る規律の在り方に直接関連するものについては、当部会における中心的な検討課題として引き続き十分な御議論を頂く必要があると考えられることから、配布資料に記載しております。その他の論点・項目につきましては、これまでの御議論を踏まえ、今後、検討課題を克服して法整備を行う方向で意見を集約することが現実的に困難であると考えられるものにつきましては配布資料に記載していない一方で、それ以外のものは配布資料に記載しております。   その上で、このようにして配布資料に記載した論点・項目のうち、諮問において例示された論点に係る規律の在り方に直接関連するものであり、当部会における中心的な検討課題として、引き続き、十分な御議論を頂く必要があると考えられるもの、これまでの御議論を踏まえますと、現時点で一つの案をお示しすることは困難であり、法整備の要否、当否や規律の在り方等について更に御議論いただく必要があると考えられるものにつきましては、複数の案をお示しさせていただき、その他のものについては、これまでの御議論の状況を踏まえまして一つの案をお示しさせていただいております。   そして、配布資料に記載した項目のうち、複数の案を示したものにつきましては、これまでの御議論を踏まえ、検討課題を記載しております。また、これまでの御議論を踏まえ、法整備を求める答申がなされた場合に法律案の立案を担当することとなる法務当局として、更に詰めて御議論を行っていただくべき事項があると考えられる項目につきましても、検討課題を記載しております。   この配布資料は、当部会における御議論を踏まえ、今後の三巡目の御議論に資するための資料として作成させていただいたものでございまして、まずはこの資料に沿って御議論いただきたいと考えておりますが、他方で、飽くまでも検討資料でございまして、もとより議論の方向性を定めるものではなく、ここに記載していない論点・項目や検討課題についての議論を制約しようとするものではございません。   また、本日は配布資料20のほか、田岡幹事提出資料、鴨志田委員提出資料並びに鴨志田委員、村山委員及び田岡幹事の3名の連名による提出資料をお配りしております。具体的には、田岡幹事からは「「今後の議論のための検討資料」について」と「二巡目の議論を踏まえた、意見の集約に向けた試案」を、鴨志田委員からは「「再審における証拠開示に関する実例集」の提出について」を、鴨志田委員、村山委員及び田岡幹事の3名からは「今後の議論のための検討資料に関する私達3名の意見」を御提出いただいております。   本日お配りした資料についての総論的な御説明は以上となります。 ○大澤部会長 本日お配りした資料について、この段階で御意見、御質問等がございましたら、挙手の上、どの資料に関する御意見、御質問等であるかを明らかにしていただいて、御発言をお願いしたいと思います。   なお、個別の論点に対する御質問につきましては、各論点の議論の冒頭において事務当局から各論点に関する資料の記載について説明していただきますので、その説明の後に御発言いただくこととし、この場においては資料全体に関わる総論的な御質問に限って御発言いただければと存じます。   まず、鴨志田委員から事前に、日本弁護士連合会委員・幹事3名連名の委員提出資料について発言の機会を頂きたい旨の御連絡を頂いておりますので、鴨志田委員、御発言をお願いいたします。 ○鴨志田委員 本日配布された資料である「今後の議論のための検討資料」、そして、本部会の進行の在り方等について、本日、私どもの3名の連名で意見書を提出させていただいたという立場から、この場で一言発言をさせていただきたいと思います。   事の起こりは、複数のマスコミから「12月5日の午後5時30分より法務省が事前のレクを行うことになったのだが」という問い合わせが私ども委員の方に来ました。それによれば、既に午後3時30分頃には司法記者クラブにたたき台案と題する文書も送られているということでした。私たち委員、幹事に法務省からメールでたたき台案―今日では「今後の議論のための検討資料」というタイトルに変わっておりますが、そのことについては後に述べます―が送られたのは17時31分でした。記者レクの開始時刻とほぼ同じ時刻です。法務省が部会の構成員である私たち委員、幹事よりも先にマスコミに資料を送り事前レクを行うというのは、異常な事態だと思います。そして、送られたたたき台案については時期的、手続的、内容的に看過し難い重大な疑義、問題点があると考えます。   まず、このたたき台案が前回12月2日の会議から僅か3日後に送られてきたことです。2日に行われた第12回会議については、その時点で議事録の素案すら示されていない段階でした。ということは、既に2日の会議直後ないしはその前にこの資料が出来上がっていたとしか考えられません。このことから、たたき台案は部会での議論を反映して作成されたものではなく、事務当局が二巡目の議論終了前から準備をしていたということがうかがえます。また、これまで14項目の「論点整理(案)」を議論してきたにもかかわらず、たたき台案では7項目になっています。議論が尽くされていないにもかかわらず項目全体が落ちているものや、項目内の小項目の幾つかが落とされているものもある一方、二巡目の議論で意見の一致を見ていないのに囲み枠の中に「A案」、「B案」の併記すらなく一つの案が示されているものや、議論では全く使われていなかった用語や制度の記載もあります。このような取捨選択がされたことについて、部会の構成員である私たちにたたき台案の作成プロセスにおいて事前に何らの説明もされていません。   本部会の前に行われた事前の打合せにおいて事務当局から、今回落としたのは検討課題を乗り越えられていないと判断したものである、飽くまでたたき台であり、ここから落ちている論点や項目を議論しないという趣旨ではないという説明があり、本日も先ほど同趣旨の説明がされておりましたが、このような取捨選択や試案の内容となっている理由というところには、なお説明としては不十分であり、余りに恣意的な内容であると考えます。   しかも、我々3名連名での意見書や、本日の田岡幹事提出資料である「「今後の議論のための検討資料」について」を提出したことで、私たちがたたき台案を了承できないとの立場に立っているということを知った事務当局から、昨日19時過ぎに送付された正式資料においては、たたき台案を「今後の議論のための検討資料」と名前を変え、この資料はこれまでの法制審議会刑事法(再審関係)部会の議論を踏まえ、今後の三巡目の議論に資するため、事務当局において部会長の了承の下に作成したものであるとの注記が付けられました。しかし、資料の内容には何らの変更もない以上、この資料を前提として三巡目の議論を行うことを了承するわけにはいかないと考えています。   また、本部会の議事進行等についても一言述べたいと思います。本部会の進行は私たちから見れば、結論を急ぐ余り拙速との批判を免れないものと考えます。本来本部会においては、再審事件の実情を把握し、現状における問題点、世論が再審に関して法改正が必要だと強く主張している理由を具体的に把握する必要があります。しかし、本部会の現状は、私たちがこれまでの議論の中で示してきた立法事実を軽視あるいは無視し、このような法案ができたら具体的事例における適用の結果がどのようなものとなるかについてのシミュレーションを行うこともしていません。そのような再審事件の実情に対する理解を得ることのないまま議論が急ピッチで進んでいると言わざるを得ないと思います。   本部会に託された諮問では、近時の刑事再審手続をめぐる諸事情に鑑み、同手続が非常救済手続として適切に機能することを確保する観点から、刑事再審手続に関する規律の在り方を検討するよう求められています。これは、現在の再審制度が適切に機能しておらず、えん罪被害の救済を実効的に図ることができていないという社会の認識を反映したものであります。今般示された「今後の議論のための検討資料」は、その負託にこたえる内容になっているでしょうか。   また、本部会における議論に深刻な懸念を示す刑事法研究者、元裁判官の声明や意見書が出されても、当初は机上配布資料にさえせず、本日ようやく机上配布資料となったようですけれども、私が第12回会議でその意見書を引用した発言を行った際には事務当局から発言を制限されました。これらの声明や意見書における本部会の研究者委員、裁判官委員の発言が必ずしも刑事法研究者や裁判官の意見を代表するものではないという指摘に対して真摯に耳を傾けようとしていないことの表れだと考えます。多くの刑事法学者、法曹関係者、そして袴田さんの事件や福井女子中学生殺害事件の経過を報道で知るに至った一般国民が、本部会の答申がどのようなものになるか、かたずをのんで見守っています。本部会が、本部会の委員、幹事の一人一人が今一度立ち止まって、再審制度の見直しが必要と考えられるに至った原因は何だったのか、その原点に立ち返り、そこから議論することを強く望んでいます。   以上、三巡目の議論開始に当たって私から意見を述べた次第です。 ○大澤部会長 この段階で事務当局、何かお答えになることはありますか。 ○今井幹事 何点かお答えさせていただければと思います。まず、先ほどお話にありました配布資料20でございますけれども、飽くまでも前回の会議における御議論も含めまして、これまでの議論も踏まえて、先ほど御説明した整理の仕方に沿って作成させていただいたものでございまして、前回の会議の前から既に出来上がっていたとか、そういう類いのものではございません。また、この配布資料のタイトル、表題のところと注記のところにつきましては、流れといたしましては、田岡幹事と私の方で少し期日間で調整させていただいて、そのような記載になったものでございます。   あと、前回の会議で鴨志田委員から学者4名の意見書のところを引用されて御発言された際に、事務当局からの説明の趣旨が少し誤解を招くものであって、それで制止されたというような御発言がございましたけれども、既に鴨志田委員には御説明させていただきましたが、そのような趣旨ではなく、机上配布資料になっておらず、お手元にないので、言及された範囲を参照に議論いただきたいということをお伝えするという趣旨ではございましたけれども、重ねて今後そのような誤解がないように留意したいと思っております。もとより委員提出資料や机上配布資料となっていない皆様に共有いただいた資料につきましても、御議論の際に引用等を頂くことは制止されるものではございませんので、その旨、改めて御了解いただければと思います。 ○田岡幹事 先ほど今井幹事から、配布資料20の名称変更の経緯について御説明がありました。私が今井幹事に求めた結果、名称変更及び注記が記載されるに至った経緯がありますので、配布資料20の名称変更の経緯とその位置付けを踏まえた上で、事務当局とこの部会の役割分担、並びに事務当局の権限の在り方について意見を申し上げたいと思います。   先ほど鴨志田委員からも発言がありましたとおり、12月2日の第12回会議、つまり前回会議において、「4」の再審開始事由と「7」の弁護人による援助について審議が行われました。私は日弁連改正案とは異なる修正案を提案したものですから、前回会議終了後、今井幹事に試案をまとめた書面を出す予定であるということを伝えておりました。そして、12月4日、つまり2日後の朝に試案を出したいということを伝えましたところ、緊急にミーティングが開かれまして、今井幹事から、実は既に資料はできており、部会長の承認をもらっているところであるという説明がございました。私は、まだ試案を出していないのに、どうして既に資料ができているのでしょうかとお尋ねしましたが、私が個人として試案を出すのは構わないのだけれども、既に事務当局が作った資料はできているので、盛り込むことはできないと、前回会議の僅か2日後の朝にそのような御説明がありました。そして、12月5日、つまり前回会議の3日後の午後にはマスコミに資料が配布され、これが三巡目の議論のたたき台であると説明されたと、このような経緯であったと認識しております。   このような経緯からしますと、このたたき台案、現在では検討資料という名称に変更されたものは、前回会議の時点では既に出来上がっていたのではないかと思われます。なぜかといいますと、「4」の再審開始事由と「7」の弁護による援助が、全く盛り込まれていないからです。前回会議の僅か2日後には既に完成しており、そして、前回会議において議論したことが全く盛り込まれていないということは、前回会議の時点では、既にこれらを取り上げるつもりがなかったと考えざるを得ないのではないでしょうか。   このような疑問がありましたことから、今井幹事に対して、このたたき台案というものは誰が作成したもので、なぜ論点が落ちているのでしょうかと説明を求めましたところ、これは事務当局が部会長の了承を得て作成したものであると言われましたので、では、事務当局にはどのような権限があるのでしょうかと。私は事務当局はこの部会の審議を補佐する立場なのかと思っておりましたので、二巡目の議論を取りまとめる限度であれば全く反対する趣旨ではないのですが、先ほどの今井幹事の説明にありましたように、検討課題を克服できていないと判断して論点を取り上げないこととするというのは、実質的にこの部会の審議を仕切っているようなものですから、それはさすがに事務当局の権限を逸脱しているのではないでしょうかと申し上げました。その上で、これは二巡目の議論を取りまとめたものとは認められないので、これを前提に三巡目の議論を進めることは了承しかねる、もしこれをたたき台案として三巡目の議論を進めるというのであれば、これは飽くまで事務当局の案であって、この部会における委員、幹事の了承を終えたものではないということを明確にしていただきたいということをお伝えしました。その結果、名称がたたき台案から検討資料に変更され、1枚目に注記として、事務当局が部会長の了承の下に作成したものであるということが記載されるに至ったという経緯であったと認識しております。   このような経緯を踏まえますと、事務当局と本部会の役割及びそれぞれがどこまでの権限を持っているのかということを明確にしておかないと、あたかもこの部会が事務当局案を単に承認するだけの「お飾り」のような位置付けになってしまっているのではないかという疑念を持たれかねず、ひいては本部会の公正性、中立性及び専門性に疑義を持たれかねないのではないかと危惧します。この部会の審議には国民が注視しているからこそ、事務当局には、この部会の中立性、公正性及び専門性に十分な配慮を払った上で、本部会の委員、幹事の了承を得て、慎重に審議を進めていただきたいと思います。 ○吉田(雅)幹事 今御指摘があった点のうち、まず、前回会議が終わった時点で本日お配りした配布資料20が出来上がっていたのではないかという点については、強く否定しておきます。そういうものではございません。我々の作業の実態を認識された上でおっしゃっているとは思えません。私を含め、深夜労働をいとわずに、時間を惜しんで、寝る時間も惜しんで作業をしております。委員・幹事の皆さんに時間的に厳しい中で御議論をお願いしていることについては申し訳なく思いますし、是非御協力いただきたいと思っておりますけれども、そのようにお願いしている立場としては、できる限り準備に当てる時間を確保したいと考えております。これが、例えば資料を会議の前日とか2日前にお送りしたのでは、今度は準備不足であるという御批判を受けることになるだろうと思います。そういうことがないように、できる限り迅速に、円滑に準備をしていただけるように我々も時間を惜しんで作業をしております。   作業の具体的な仕方について申し上げることは差し控えますけれども、二巡目の議論をただ漫然と聞いているわけではなくて、その中でどういう意見が出て、それに対してどういう反論がなされ、更なる反論があったのかなかったのか、そこに合理性があるのか、理論的根拠があるのか、実務上対応できるのかといったことを常に考えながら議論を聞いております。それを踏まえた上で、二巡目の議論が全て終わった段階で、それまでの議論を整理し、精査し、今後の議論に資するような資料を迅速に作りたいということで、先ほど申し上げたように時間を惜しんで作業しているものでございますので、是非そこは御理解いただきたいと思います。   それから、事務当局の権限について御指摘がございましたけれども、我々事務当局は議論を整理して皆さんの議論に資するということが仕事でございます。議論を一定の方向に持って行くということを権限としているものではございません。先ほど申し上げたように、当部会での議論を聞きながら、理論的な根拠や問題点が示されたとして、それに対してどのような反論がなされたのかを整理し、把握しながら、今後の議論としてどういうものが資料として適切かということを考え、最終的な取りまとめに向かうにふさわしい資料を作っていきたいということで作業しております。もちろん、その過程では部会長にも御相談しながら作っているということでございますので、我々が議論を何かリードしているとか、一定の方向に持って行こうとしているということではないということは御理解いただきたいと思います。 ○村山委員 まず、今日は小田急線が20分以上遅れてしまいまして遅参したことをお詫びします。   まず、私はたたき台という書面を頂いたときに、正直言って驚きました。これを拝見して、法務省はこういう答申を出したいのだなというのをこういうふうに並べたのかなという、これが率直な私の感想です。特にスクリーニングの点や、証拠開示の点や、項目として落とされている点などがありまして、こういったものについてはもう三巡目では問題にしないのだという対応なのかと思いました。今の幹事さんの説明によると、そうではないのだということなのですけれども、やはり書面の与える影響というのは大きいと思うのです。ましてや、マスコミにこれを流したと。これまで期日の点を含めて、事前に配布された資料については外部に漏らさないようにということで、しばしば注意喚起を私たちは受けていました。それであるのに、なぜ幹事の方が事前にこういう資料をマスコミに渡しているのか、これも私は非常に理解できませんでした。   私どもは、議論の中で聞いていていただければお分かりいただけると思うのですけれども、日弁連の案にこだわっているわけではありません。もちろん私どもは個人として参加しておりまして、それぞれの考えに基づいて意見を述べているところであります。そういう意味では日弁連の案とは違う形の意見を述べていますし、また、この審議会の席上の議論で、やはりそれはなかなか現状では難しいなと判断したものについては、意見も変えております。そういう意味では誠実に議論し、積み上げようとしてきたつもりであります。もちろん対立している議論をしなければならない、これは恐らく最後まで行っても対立するだろうという論点もございますけれども、それはそれでお互いの論拠を示して議論をするという態度で臨みたいと思っていましたし、臨んできたつもりです。   ところが、このようなたたき台、現状では「今後の議論のための検討資料」と名前は変わっていますけれども、内容が変わっているわけではありません。また、昨日、非常に夜にメールを頂いたりしておりまして、資料も差し替えと。これは、私ども弁護士委員が今回のたたき台については非常に不満を持っているということを事前の打合せで申し上げました。それを考慮されて、名前を変えよう、それから誤解のないようにしようと注意書きを添えた、そういうことなのだろうと思います。それはそれでよかったと思いますけれども、実際の中身は全く変わっていません。そういう意味では、吉田幹事は今までの議論を精査して整理されたと言いますけれども、それはそうなのでしょうけれども、やはり一定の方向性を持った形でまとめられているのではないかという懸念を私は否定できません。そういう意味で、この検討資料については修正されるべきだと思います。もちろん全部ではありませんけれども、項目によって落とされている部分を復活する、若しくはまとめ方について二巡目までの議論でそういう議論はしていないのに、なぜこういうまとめ方をされているのか、これは個別論点のところで述べてもらうということで部会長の指示がありましたので、これ以上は申し上げませんが、本来的にはこの検討資料については修正されるべきだと私は思っています。 ○吉田(雅)幹事 今、村山委員からの御指摘の中で、マスコミに流したという表現があって、我々が不当に情報を漏えいしたかのような印象を与える言葉が使われたと思うのですが、そういうものではなくて、我々としては、議事録は事後的に公表するわけですけれども、会議そのものは公開されていないことを前提として、行政機関で行われている審議会について説明責任を果たすという観点から、マスコミに対し、一定のルールの下で資料を渡し、会議当日まで内容は明らかにしないということで説明しているものでございます。それは、当部会に限ったことではございません。他の刑事法部会においても基本的に行われていることでありますので、何か情報を漏えいしたというようなことではないということは申し上げておきたいと思います。   また、資料について修正がなされるべきだという御発言がございました。それは正にこれから御議論いただきたいことでございます。本日お配りした資料は、飽くまでたたき台、議論のための検討資料、素材でありますので、内容的にどこか不備があるということであれば御意見をおっしゃっていただいて、それに対する御意見が更にあるのかないのかということで、当部会において検討していっていただければと思っております。 ○大澤部会長 他に御意見はございますでしょうか。 ○鴨志田委員 今の点ですけれども、別に情報漏えいとかそういうことを言っているわけではなくて、なぜ構成員である私たちよりも先にマスコミに提供するのですかと、それはどう考えてもおかしいですよねということを言っているのです。もしそのような説明責任うんぬんということをおっしゃるのであれば、これまで、国会議員を始め様々な立場の方々から、この部会の議事を公開すべきである、少なくとも別室傍聴を認めるべきであるという申入れがあったにもかかわらず、ルールがこうなっているからという理由で、それであれば親会を開かせるとか、いろいろ方法はあるにもかかわらず、そこには一切応じないでおいて、この事務当局が作った資料を先に説明責任と称してマスコミに提供して事前のレクを行うという対応自体が非常に私はゆがんでいると思います。私たちより先にマスコミに提供することに何らかの正当性があるというのであれば、おっしゃってください。 ○吉田(雅)幹事 会議に当たっては、資料を委員・幹事の皆さんに事前にお配りして検討を願うわけですが、具体的には申し上げませんけれども、これまでに、そうした事前にお配りした資料の情報が一部のマスコミに流れるといったことがあったりしまして、我々としては、そういうことがありますと一部のマスコミが特定の方向に向けた報道をしたりして、誤解を招くおそれもあるというようなことも考えざるを得ないというところでございます。そうしたことも含めて、どのタイミングでマスコミに資料を渡して説明するか、また委員・幹事の皆様に資料を渡すかを考えながら、対応しているということでございます。 ○村山委員 要はそのタイミングがなぜあの時期だと判断したのかということなのです。この問題は実際の再審制度をどうしようかという中身の問題ではないので、私もそれほど時間を使うのはよくないという自覚はあります。しかし、なぜあのタイミングで記者を集めてレクをするのか。ほかの法制審の部会でも、そういう場でもやっていることだというのは、私は全然抗弁になっていないと思います。むしろ、そういうことを法制審というのはやっている場なのですかというのに驚きを覚える。一方では渡したものについて、配布された資料については実際の審議会の当日まではということでいろいろ言われていて、守っているわけですから、それを幹事さんの方から記者を集めて事前レクをするというのは、これは本当にどういう意図なのですかと。単に説明するだけだったら今までと同じように、事後のレクで配るということで今までやってきているわけですから、問題ないと私は思います。先ほど言ったように、この問題についてそれほど時間を使いたくないというのは、私もそう思っているわけですけれども、この点だけははっきりと指摘せざるを得ないと私は思っています。 ○大澤部会長 三巡目に入るという、一つの節目に当たる時期の資料ということで、いろいろな注目を集める資料だということも踏まえての御対応だったのだろうとは理解しております。第二巡目に入る以前に、ここに出る資料が「試案」という捉え方をされて報道されたということもありましたので、そのことも踏まえた中で、どう対応するのがよいのかということで御判断されたことと理解しております。この点について、更に御発言がありますでしょうか。 ○田岡幹事 本日、資料を提出しておりますので、補足説明させてください。配布資料20について、私の提出資料①「「今後の議論のための検討資料」について」を提出しております。先ほど今井幹事から論点が取捨選択された理由について、事務当局において検討課題が克服されていないと判断されたという御説明がございました。ただ、それはそれといたしまして、この部会において議論すること自体を制約しようとする趣旨ではないという御説明がございました。   私といたしましては、「第1」の「2」に書いておりますように、削除された項目のうち、少なくとも、「1」「(3)」、「1」「(5)」、「1」「(6)」、「4」「(1)」、「7」「(1)」、「8」「(2)」及び「8」「(9)」、これらは残っている項目と密接に関連する項目でございまして、どれか一つを採用してほかのものを採用しないということをすると制度全体として不都合が生じるのではないかと考えているものですから、これらの項目については三巡目においても法制化に向けた検討を行っていただきたいと考えております。   また、「3」に書いておりますように、仮にですけれども、三巡目の議論を行った結果、本部会においては残念ながら意見の一致を見るに至らなかったという場合であっても、単にその項目を削除して終わりということではなくて、今後引き続き検討を行った上で、更なる改正が必要と判断される時期においては改正を妨げないという意味において、継続審議事項として、取りまとめに付記することを御検討いただきたいと考えております。  また、「4」に書いておりますように、最高裁判所規則、法務省令又は法務大臣訓令の改正若しくは依命通知の発出等によって、運用の改善ができるのではないかと思われる事項、これは「14」の被害者通知制度も含みますけれども、こういったものは法制事項ではありませんので本部会の所管外かもしれませんが、再審法制度全般を見たときには運用の改善もまた必要であろうと考えられますので、取りまとめに付記することを御検討いただきたいと考えております。 ○大澤部会長 田岡幹事が最後に言われた点については、今後の議論の中で詰めていくことになるのだろうと考えております。 ○今井幹事 今の田岡幹事からの御意見に対して、事務当局からお答えさせていただきます。   まず、田岡幹事提出資料の「第1」の「2」の記載の御意見のところに関しましては、先ほども御意見のあった「1」「(3)再審請求の準備段階における閲覧・謄写に関する規律を設けるか」、「1」「(5)裁判所不提出記録・証拠物の保存・管理に関する規律を設けるか」、そして「1」「(6)証拠物の証拠価値の保全・鑑定に関する規律を設けるか」に関しましては、本日御議論いただく予定となっております配布資料20「第1」の「検討課題」「(2)その他」の中で御議論いただきたいと思っております。また、「4」「(1)刑事訴訟法第435条第6号の規定を改めるか」や、「7」「(1)再審請求審又はその準備段階における国選弁護制度を創設するか」、「8」「(2)期日指定に関する規律を設けるか」及び「8」「(9)審理を公開することとするか」についての御意見も賜りましたけれども、これにつきましても次回の会議において御議論いただくことを考えておりますので、そうした中で御議論いただければと考えております。   また、「第1」の「3」及び「第1」の「4」の御意見、御提案につきましては、当部会における今後の取りまとめの在り方に関するものでございまして、先ほど部会長からもお話がございましたが、その段階で当部会において御議論いただくべき事柄であると考えておりますので、御意見として承りたいと思っております。 ○大澤部会長 その上で、この検討資料につきまして、これでは議論できないという御意見、あるいは修正が必要だという御意見もございましたが、資料の性質については私からも申し上げましたし、事務当局からも御説明があったと思いますが、そういう趣旨のものとして、この枠組みに従って議論を進めるということについて御了承いただくことということはできないでしょうか。 ○鴨志田委員 議論が空転するということは望ましいことではないと私も思います。ただ、やはりこの間の余りにも早すぎる議論のスピード、そして、それになかなか準備がついていかない、これは事務当局がワーク・ライフ・バランス的なお話をされていましたけれども、事務当局も含め私たちも、前回からたった2週間で、この案が示されてからも10日程度で、先ほど申し上げた立法事実などを踏まえて、例えば今日私が資料で提出した実際に証拠開示がなされたケース、について、今回の案に示されている規定を盛り込んだときにどうなっていくのかというような緻密な検討が準備としてできないという状態なのです。正直申し上げて、このようなペースで議論がこの後も進められるということは、そのような十分な立法事実を踏まえた審議や、実際の規定が設けられた後の実務の運用におけるシミュレーションなどが未了のまま、言わば生煮えの状態で答申がまとめられていくということで、これは本当に根本的な問題だと思います。今回のたたき台案改め検討資料ですけれども、これ自体がどうという以上に、そういう拙速な議論の中でこういうものが十分に説明もされずに出てくるし、そしてまた、ではこれでいいですねということで、これで議論がまた始まっていくということは、何かそういう問題が全然解決しないまま曖昧にされて進められていくと思わざるを得ません。   今日の今日、この検討資料を訂正してくれと言っても、それは無理でしょうから、本日予定されているものをこの先議論していくということについては、私は了承せざるを得ないと思っています。ただ、今私が申し上げたことも踏まえて、今後この検討資料を次の議論に向けて改訂するとか、今後の議事のスケジュールをどうするかというところは、是非とも期日間に御検討いただきたいと思います。それをお約束いただけるのであれば、私はこれから先の議論も進めていただいて構わないと思います。 ○大澤部会長 拙速という御批判もございましたけれども、諮問をされた法務大臣ができる限り早期の答申を期待するということを述べられており、当部会における調査審議に掛けることができる時間にも限りがあるという認識は、委員・幹事の間に御共有いただけていると理解しておりましたが、その中にも温度差があったということなのかもしれません。私自身は、掛けられる時間に限度がある中で一体どこまでのコンセンサスを作ってやっていけるのか、そのために必要な議論を尽くせるよう努力することが自らの務めであると理解しております。私の思っているところとして申し上げさせていただいて、それでは本日の分の予定している議事につきまして、検討資料の性格については先ほど来御説明しているとおりのものとして御理解いただいた上で、議論に入らせていただくということでよろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 ありがとうございます。それでは、諮問事項の審議に入りたいと思います。   本日は配布資料20「今後の議論のための検討資料」のうち「第4 再審請求の審理に関するその他の手続規定」の「1 再審の請求の方式」、「2 再審の請求についての調査手続」及び「3 再審請求審における事実の取調べ」、「第1 再審請求審における検察官の保管する裁判所不提出記録の弁護人による閲覧・謄写」、「第5 再審請求又は再審開始決定があった場合の刑の執行停止」並びに「第6 再審請求に係る決定に対する不服申立期間」、ここまでを申し上げた順に審議を行う予定としておりました。多分そこまでは進めないであろうと思いますが、今の順番に従いまして、できるところまで審議を行うこととし、次回会議において、配布資料20に記載した残りの論点のほか、配布資料20に記載していない論点、項目について審議を行うこととしたいと思います。まず、そのような進め方をすることにつきまして、改めて、よろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 ありがとうございます。それでは早速、「第4 再審請求の審理に関するその他の手続規定」のうち「1 再審の請求の方式」、「2 再審の請求についての調査手続」、「3 再審請求審における事実の取調べ」及び「検討課題」として記載されております「(1)」について審議を行いたいと思います。   まず、事務当局から、配布資料20のうち、これらの項目に関する部分について説明をしてもらいます。 ○今井幹事 配布資料20の5ページ目を御覧ください。枠内の「1 再審の請求の方式」におきましては、これまでの御議論を踏まえまして、再審の請求をするには、その理由を記載した書面を裁判所に差し出さなければならないこと、及びその書面には証拠書類又は証拠物及び原判決の裁判書の謄本を添えなければならないことを記載しております。   「2 再審の請求についての調査手続」につきましては、これまでの御議論を踏まえまして、再審の請求を受けた裁判所は、遅滞なく、その請求について調査しなければならないものとし、調査をした裁判所は、再審の請求が法令上の方式に違反したものであると認めるときなどや再審の請求が理由のないものであると認めるときは再審の請求を棄却する決定を、再審の請求が理由のあるものであると認める場合には再審開始の決定を、それ以外の場合には審判を開始する旨の決定をすることなどを記載しております。   「3 再審請求審における事実の取調べ」につきましては、これまでの御議論を踏まえ、再審の請求を受けた裁判所は、審判開始決定をした後でなければ、事実の取調べをすることができないこと、及び再審の請求をした者、弁護人又は検察官は、審判開始決定をした裁判所に対し、事実の取調べを請求することができることを記載しております。   枠外の「検討課題」につきましては、これまでの御議論を踏まえ、更に議論を行うことが考えられる事項を記載しております。   なお、いわゆるスクリーニングを可能とする規律の案のうち、「裁判所は、再審請求が法令上の方式に違反する場合や明らかに刑事訴訟法第435条第6号に規定する事由に該当しない場合には、再審請求を棄却する決定をするものとし、ただし、相当な期間を定めた上で補正を命ずることができるものとする」という、いわゆる二巡目の検討課題ペーパーである配布資料13の「第8」「1 本格的な審理を要しない事案について、迅速な処理を可能とする規律を設けるか」の「B案」でございますが、これにつきましてはこれまでの御議論におきまして、そのような規律とすべきであるとの御意見が示された一方で、再審請求に係る基本的な資料の確認、検討を終えた段階で、再審請求事由の有無についての審理に入らずに終局決定をすべき事案と、再審請求事由の有無についての審理をした上で終局決定をすべき事案を選別し、後者の事案についてのみ審理を行う仕組み、すなわち二巡目の議論の配布資料13における「A案」を設けるべきであるとの御意見も示されております。   そして、「A案」及び「B案」の両案につきましては、これまでの御議論におきまして、現行の運用を明確化するにすぎないものであるとして規律を設ける必要性に疑問を呈する御意見も示されましたところ、「A案」につきましては、スクリーニングの規律と連動させる形で、再審請求事由の有無についての審理を要すると判断された事案についてのみ、再審請求事由の有無についての事実の取調べを行うことを可能としたり、事実の取調べの請求権を付与することとしたりする仕組みとすることが考えられまして、そのような仕組みとするのであれば、現行の運用を明確化するにとどまらないものとなり、より再審請求手続の円滑化、迅速化に資する旨の御意見が示された一方で、「B案」につきましては、現行の運用を明確化するにすぎない旨の御意見に対する反論は示されなかったものと認識しております。事務当局といたしましては、こうした議論状況を踏まえ、配布資料には「A案」をベースとした記載をさせていただいたものでございますが、先ほどからの繰り返しになりますが、必要に応じて更にこの点について御議論いただければと考えております。 ○大澤部会長 これらの項目につきましては相互に関連しますことから、まとめて審議を行いたいと思います。御意見あるいは御質問等がある方は挙手の上、御発言をお願いいたします。 ○田岡幹事 私は、いわゆるスクリーニング規定を設けること自体について、反対ではありませんけれども、第11回会議でも江口委員や村山委員から御指摘がありましたとおり、このスクリーニング規定の対象とならなかった事件、つまり審判開始決定がなされた事件について、どのような法的効果が認められるかということをまず議論した上で、それとの関係で、どのような事件が対象になるのかという具体的なイメージを共有しないと、このスクリーニング規定の持つ意味、又はその趣旨が明確にならないのではないでしょうか。   例えば、このスクリーニング規定の対象にならなかった事件、つまり審判開始決定がなされた事件については、意見聴取の対象とする、事実調べ及び証拠開示を可能にするといったことのほかに、除斥・忌避もこれに連動させるとか、不服申立ての可否あるいは不服申立ての期間もこれに連動させるということも考えられるように思われます。このようにどのような法的効果が認められるのかが分からないと、どのような事件が対象になるかの具体的なイメージが共有できないように思われますので、抽象的にこのスクリーニング規定を設けるかどうかということを議論しても余り生産的ではないように思われます。   更に敷衍しますと、例えばですけれども、期日等の手続規定を設けることとした上で、期日を開催することを義務付けるというのでしたら、そのような期日等の手続規定を適用する対象事件を限定するためにスクリーニング規定を設ける意味があると思われますが、期日を開催するかどうかは裁量であるというのであれば、あえてスクリーニング規定を設ける意味はありません。また、事実の取調べ及び証拠開示についても、そのようなことを義務付けるというのであれば、その対象事件を限定するためにスクリーニング規定を設ける意味があると思われますが、裁量であるというのであれば、江口委員が指摘されたとおり、現在でも事実の取調べを行わずに棄却決定をすることはできるのですから、スクリーニング規定を設ける意味はないということになってしまいます。  そうしますと、このスクリーニング規定の対象とならなかった事件、つまり審判開始決定の対象となった事件について、どのような法的効果が認められるのか、逆に、スクリーニング規定の対象となった事件については、どのような手続が省略されることになるのかということを、まず確認すべきではないでしょうか。   その上で、検討資料の「第4」の「4」を見ますと、事務当局案は、スクリーニング規定の対象となる事件については、刑訴規則286条の意見聴取を省略するという趣旨であると、また、「第4」の「3」の事実調べ及び「第1」の「1」の証拠開示を行わないという趣旨であると理解しましたので、まずは意見聴取の必要性について、意見を申し上げたいと思います。   現在の実務では、刑訴規則286条の意見聴取は、再審請求が不適法な場合であったとしても義務付けられている、つまり意見聴取を行わなければならないとされていると理解しております。例えば、藤野英一裁判官の判例タイムズ97号22ページでも「現在の実務も積極説に従っているようである」とされた上で、27ページの註5に臼井滋夫検事、大阪高検の元検事長ですけれども、の論文が引用されておりまして、「請求の理由の内寄を検討しなければ法令上の方式に違反するかどうか、あるいは請求権の消滅後になされたものであるかどうか判断できない場合もあり、且つまた実質的に再審の理由が存在するにもかかわらず、その方式が不備であることの故を以て直ちに不適法として棄却することは、再審制度の存在理由に沿わない結果をも招来することとなるので、このような場合再審請求の方式の不備を追完補正させるうえにおいて再審請求権者の意見を聴くことには実益がある」と記載されております。そうしますと、あえて、意見聴取を省略する必要性は、少なくとも立法事実として、示されていないように思われます。   したがいまして、事務当局案は、この意見聴取を省略するということをお考えなのかどうかということも含めて、このスクリーニング規定の対象となった事件について、どのような手続が省略されることになるのかということを確認すべきではないかと思われます。 ○大澤部会長 他に御意見はございますでしょうか。 ○鴨志田委員 スクリーニング規定を設けるかどうかという話に至ったいきさつは、第11回会議でも発言をしましたけれども、再審の証拠開示に関する詳細な規定やフルスペックの手続規定を全ての再審事件に当てはめると、裁判所全体の審理が非常に重くなり煩雑になると、そういうところから、いわゆる箸にも棒にも掛からない再審事件はそのような手続に乗せないために、ふるいに掛けるというようなところから議論が始まったものと承知しています。つまり、このスクリーニングというのは、単に審理を迅速化するということに資するという目的ではなくて、限られた人的資源の下で本格的な審理を要する事件について充実した審理を行うために設けるべきであるという、審理の充実化というところが大きな目的であったはずです。しかし、この間の議論では迅速化の方だけが強調され、ともすると拙速な棄却を招いてしまうというようなことになりかねない規定になってきているように思います。   この間、スクリーニング規定を設ける前提として、再審の準備段階で一定の証拠を閲覧することができるという規定や、そのための弁護人の援助が不可欠であるということを繰り返し申し上げてきました。しかし、先ほど来申し上げたとおり、これらの論点は今回の検討資料からは丸ごと落ちています。この調査手続というのは、ドイツの適法性審査手続に類するものであるという指摘も、もしかするとあるかもしれませんけれども、ドイツの場合には御承知のとおり証跡記録という証拠にはならなかったものも含めた再審請求の準備段階での開示、また、その段階での国選弁護制度があるという前提に立った上で適法性の審査、更に理由審査と進んでいくということで、それと比較した場合、今回の案は、もしこのまま再審の準備段階の証拠開示や弁護人の援助が全く入らない状態でこれだけが手続として条文化されるということになると、再審請求人の手足を縛った上で、しかもその先は証拠開示にも事実調べにも行き着かせないという制度になるということですから、これはもはや再審制度の目的を大きく逸脱するものとなってしまうと大変危惧しております。   また、先ほど田岡幹事の指摘にもあったように、スクリーニングを通った後にどのような手続規定がはまるのかということについて十分な検討がされず、議論も尽くされていないように思います。仮に証拠開示規定がこれまでの議論の中で多数の御意見として挙がっていた、請求理由と関連する、6号再審の場合には新証拠とそれに基づく主張に関するものに証拠開示の範囲が限定されるということになったり、期日の指定、また請求人の意見陳述や審理の公開、こういったものが入らない状態で仮にスクリーニング規定を設けるとすると、一体何のためにスクリーニング規定をするのか分からないという話になってしまうのではないかと思います。結局そうなると、迅速に棄却をするということを促進するだけのスクリーニング規定になってしまうのではないでしょうか。   また、先ほども申し上げたところですけれども、個別具体的な事例について、この規定でスクリーニングで落とされるのはどんなものなのか、落とされないのはどんなものなのかというシミュレーションが具体的にされないと、なかなかこの規定ぶりだけではイメージが湧かないというところも指摘できるのではないかと思います。 ○大澤部会長 どういう手続とつながってくるのかという点は、今お二人が言われたとおり大事なところで、それはここで御議論いただくことなのだろうと思います。それとともに、スクリーニングの以前の段階で一体どこまでの調査をするのかということも併せて大事なことで、ここで御議論いただくことなのかと思います。従前と一つ違うのは、ここで審判の開始を決定するということ自体のもつ意味というのも、私はあるのではないかと思います。当の裁判所が、これは審判開始しますよというわけですから、そこからきちんと当事者との間でお話をしていきましょうねというようなことにもつながっていく部分があるのではないかという気もいたします。   ほかに御発言があれば、お願いいたします。 ○成瀬幹事 私は、「第4」の「2」の調査手続を設けることに賛成の立場から意見を申し上げます。   「第4」の「2」の調査手続は、裁判所は、まずは再審請求に係る基本的な資料の確認・検討をすることとし、これを終えた段階で、再審請求事由の有無についての審理を要さずに終局決定をすべき事案については、終局決定をし、再審請求事由の有無についての審理をした上で終局決定すべき事案については、審判開始決定をした上で審理を行うこととするものであって、部会長がおっしゃったように、再審請求審における手続に段階を設けて審理の運営について一定の指針を示すという意味で、合理的な案であると考えています。   この案は私が従前から申し上げているものですが、先ほど鴨志田委員から、この規律では迅速に棄却決定がなされるだけではないかという御指摘を頂きました。しかし、私の意図はそのようなものではありません。調査手続を経て審判開始決定がなされた事件については、再審請求者・弁護人の手続保障に配慮して、事実取調べの請求権を付与し、裁判所不提出記録の閲覧・謄写につながる証拠の提出命令も請求できるようにする、また、審理の終結日等も指定した上で意見聴取を必ず行い、万が一、再審請求者が亡くなられた場合には手続の受継も認めて、充実した審理が行われることを目指しています。それゆえ、この調査手続は、事件のスクリーニングを行って、審理が必要と判断された事件については充実した審理が行われるようにすることも意図した制度であると理解しています。   また、田岡幹事からは、この調査手続においても意見聴取は必要ではないかという御指摘を頂きましたが、田岡幹事が出された事例は、裁判所が再審請求者に対して補正を促したものと理解できます。以前も申し上げたように、調査手続の過程で、裁判所が請求の方式に不備があると考えた場合、再審請求者に対して補正を促すことは何ら妨げられないので、今後も、運用において、補正の促しは行われるであろうと想定しております。   ところで、田岡幹事が本日提出して下さった資料②では、本格的な審理を要しない事案について迅速な処理を可能とする規律として、日本弁護士連合会改正案第445条第1項が提案されています。同項を見ますと、「再審の請求がされたときは、裁判長は、速やかに、再審請求手続期日を定めなければならない。但し、再審の請求が不適法であるとき又は再審の請求に理由がないことが明らかなときは、この限りでない」と規定しています。   これまでの会議における御意見や先ほどの鴨志田委員の御意見を踏まえると、この規定は、再審の請求が不適法である場合や再審請求の理由が明らかにない場合には期日等の手続規定を適用しないことにより、その対象事件を限定する規律であり、そのような場合に再審の請求を棄却することとする規律ではないと理解しています。  しかしながら、裁判所が補正の促しをした後でもなお再審の請求が法令上の方式に違反したものであると判断した場合や、裁判所が再審の請求に理由がないことは明らかであるという心証形成をした場合には、その後に行われる手続は想定し難いところです。このような場合に、裁判所が再審の請求を棄却することができないものとすることは、かえって再審請求手続を遅滞させ、非効率なものとするように思われます。 ○酒巻委員 ただいまの成瀬幹事の発言とほとんど重複するのですが、私も配布資料20の「第4」の「2」に賛成する立場で、まとめて意見を申し上げたいと思います。   成瀬幹事がおっしゃったとおり、この配布資料20の「第4」の「2」は、裁判所が手続の段階に応じて行うべきことを法律上明確化するものであり、正に裁判所による再審請求審の運営に一定の指針を与えるという合理的なものでありますし、先ほど鴨志田委員の発言にあったとおり、審理の充実という方向でも、制度それ自体としては合理的なものであると思います。それ自体としては、再審を請求する者に従来とは異なる何らかの不利益を課すものでは全くないだろうと私は考えております。   例えば、配布資料20の「第4」の「3」「(1)」を踏まえますと、「第4」の「2」「(2)」の「ウ」の審判開始決定がなされる前においては、事実の取調べをすることはできないとされておりまして、結局「スクリーニング」を突破できずに再審の請求を棄却する決定がなされた事案については、再審請求事由の有無についての事実の取調べはなされないということになります。しかし、現行の運用においても、再審請求事由の有無についての審理を要せずに、法令上の方式違反等の形式的な事由によって再審請求を棄却する決定がなされるような事案につきましては、再審請求事由の有無についての事実の取調べは行われていないと考えられるところであり、ここはこれまでと何ら異なるところはありません。   さらに、先ほど成瀬幹事が「補正」という事項に言及されましたが、これまでに議論があったとおり、主張の補正に関する規律が設けられていない現行法の下でも、裁判実務においては当然、裁判所が職権で補正を促すということは何ら否定されていないので、例えば配布資料の「第4」の「2」のように、補正に関する規律がここには明文化されていませんけれども、そうであっても裁判所が必要に応じて補正を促すという実務運用が特段変更されることにはならないと考えられます。   以上のことから、配布資料20の「第4」の「2」のスクリーニングと皆さんがおっしゃっている規律自体は、現行の運用に比べて再審請求者に実質的な不利益を課すことになるものではないというのが私の考えでございます。   他方で、田岡幹事が御提案の日本弁護士連合会改正案の第445条第1項は、先ほどの成瀬幹事の御発言にあったとおり、再審請求手続の円滑化や迅速化に直ちにつながるものとはいえないと思います。これまでの御議論におきましては、「法令上の方式違反等の補正が可能な場合には、裁判所が補正を命じることができるとする規定を設けるべきである」という意見もあったところですが、補正に関する明文の規定を設けることにつきましては、先ほど申し上げたとおり、そもそも規定のない現行法の下においても裁判実務において補正を促すということは全く否定されていない中で、補正に関する規律をあえて設けることの必要性については疑問があるほか、現行法には補正に関する明文の規律がないのに、あえてそういう規律を設けることにしますと、裁判所は何か積極的に補正を職権で促すことが求められるといったような解釈を招く懸念があります。逆に、現行法の下でいろいろな手続上の局面・時機において、明文規定がなくても補正は行われているわけですけれども、そういう場面について、ここだけ条文があってほかに条文がないと、ほかのところでは補正が否定されるというような誤った反対解釈を招くおそれもあります。これは細かいことでありますけれども、補正についての条文はなくても、今までどおりできるのであるから、特段設ける必要はないし、かえって有害な反作用のおそれもあるのではないかというのが私の意見です。   総じてこの「第4」の「2」というスクリーニングシステムは、再審請求者に対して特段の不利益を作り出すようなことはなく、むしろ手続の合理化・円滑化・充実のために妥当なものだろうというのが結論です。 ○村山委員 ただいまの酒巻委員、成瀬幹事の御意見を拝聴したところなのですけれども、この規定は現行よりも再審請求人に不利に働くということは私は明らかだと思います。そのことをこれから述べます。   まず、日弁連の案ですけれども、これは棄却とは書いていないので棄却できないではないかと成瀬幹事がおっしゃっていますけれども、それは誤解です。当然棄却できるのです。ただ、棄却しなければいけないと書いていないというだけなのです。実際は棄却しています。   スクリーニングが必要だというのは、私もそのとおりなのですけれども、「(2)」「ア」のところで、職権調査で調査手続というのは、まず、判断資料をどこまで見るのかという問題があるのです。当初、スクリーニングの議論というのは、基本的には再審請求書を見て、その書面と、それから添付された資料を見て、これはもう再審請求としては成立していないということが分かるような事案については、その後の重い手続には入らなくてもいいのではないかという発想で考えていたわけなのです。   ところがこの規定は、「(2)」で行きますと「ア」から「ウ」に定める決定をしなければならないとなってしまうと、これは裁判所は義務的にどれかにはめなければいけないのですよね。その中でも「(エ)」というのがありまして、「(ウ)」に掲げるもののほか、再審の請求に理由がないものであると認めるときというのが入っております。ではどういう資料でこれを判断するのですかというと、恐らく再審請求書と、添えられた新証拠と、それから取り寄せた確定記録、そういうもので判断すると思うのですが、その資料で判断したら理由があるという判断になるという再審請求事件は基本的に検察官請求だけです。そうなると、結局「(エ)」で全部落とされてしまいまして、事実の取調べに入る前に、本来開始になって無罪になるような事件でもスクリーニングに掛かってしまうと思います。例えば、袴田事件の第1次再審請求審なんかは、必ずこれに引っ掛かってしまいます。実際に開始決定が出て無罪になった事件が振り落とされないかというのをシミュレーションしたら、結構私はこれは振り落とされてしまうと思うのです。そういう意味で、しなければならないとして裁判所に決定を迫るという規定にして、どれかにはめなさいと言ったら、それはその時点で判断するわけですから、理由があるとはいえないということになれば、結局「(エ)」になってしまって、速やかな棄却決定が量産されるということになると思います。   そういう意味で、成瀬幹事が手続の段階をきちんと整えて充実した審理をしたいという意図はともかく、実際にこの規定を使ったら速やかな棄却決定を増産する、しかもえん罪救済という再審の目的は達成できないという形の法律が出来上がってしまうということは、私はかなり明らかだと思います。ですからこの発想自体のスクリーニング自体は否定しませんけれども、判断資料の問題と、こういう決定をしなければならないという縛りを掛けた上で、こういった項目、さらには「(エ)」を入れるということの弊害は極めて大きいということは、私ははっきりと申し上げることができると思います。 ○玉本幹事 今、配布資料20の「第4」の「2」「(2)」「ア」「(エ)」の、「再審の請求が理由のないものであると認めるとき」の内容について御発言がありましたので、資料を作成した事務当局として、どのようなイメージで作成したのかというところについて御説明させていただきたいと思います。   まず、「2」「(2)」「ア」「(エ)」につきましては、調査として基礎的な資料を確認、検討するのみで再審の請求の理由がないと容易に判断できた場合を意味すると、そういった趣旨で記載しているところです。具体的にどういった事案がこの「(エ)」に該当するかについては、個別の事案ごとに具体的な事実関係、証拠関係を踏まえて判断されるべきものですので、一概にお答えすることはなかなか難しいところですが、現行法の下におきましても、裁判所において事実の取調べをするか否かを検討するまでもなく再審の請求に理由がないものであると容易に判断されて請求が棄却されているという事案は存在するであろうと考えられるところでして、そのような事案がこの「(エ)」に該当することになるということを想定して記載したところです。   ですので、資料の範囲というのはまた論点としてあろうかと思いますけれども、基礎的な資料を確認、検討するのみで再審の請求の理由がないと容易に判断できるという場合は、実際上は明らかに請求の理由がない場合に限られることになるとイメージしているところです。他方で、「明らかに」ということを条文上の要件として設けることにつきましては、現行の刑事訴訟法第447条第1項において、「再審の請求が理由のないときは、決定でこれを棄却しなければならない」と規定されていることとの整合性などの課題があると考えたため、この配布資料20においては記載していないところですが、必要に応じて御議論いただければと思います。 ○村山委員 今ほど玉本幹事から丁寧な御説明を頂きましたけれども、そのようにこの条文が読めますか。「明らかに」とか「容易に」とかと書いていないですよ。整合性のことをおっしゃるのであれば、これはスクリーニング規定ですから、「明らかに」とか「容易に」とかというのが入って、どこがおかしいのでしょうか。最終的には理由がないということはそうなのですけれども、この段階でこういう何も限定のない、理由のないということになったら、裁判官としては、その段階で限られた資料の中でぎりぎりと調査していって、どこかに振り分けなければいけないわけですから、そして、どうしても振り分けが付かないという場合のみ審判開始決定ですか、そちらを選ぶというのが補充的に残っているわけですけれども、しなければならないという定めをした上で、どれか判別してみなさいと言われたら、それは裁判官はその時点で最大限判断して、こちらのルートになるということを蓋然的に判断するわけですよね。再審請求自体がそもそも蓋然的判断で、そうしたら理由がないという方向に流れるということは容易に推察できます。   そういう意味で、今ほどの玉本幹事の御説明だと、少しイメージしているのが違うのだと、違うのであれば違うような条文に改めない限り、これは方向性を間違った条文として理解されてしまうという可能性は私は高いと思います。 ○田岡幹事 先ほど成瀬幹事から、審判開始決定がなされた事件は手続保障に配慮して充実した審理がなされることになる、という御説明がありました。  しかし、刑訴規則286条の意見聴取は現在でも義務的に行われているものでありまして、事務当局案は、むしろ、これを省略するためにスクリーニング規定を設けるのだと理解できますので、スクリーニング規定を置いて審判開始決定がなされた事件について意見聴取をすることとしても、現在より充実した審理がなされることにはなりません。また、事実の取調べ及び記録の取寄せは現在でも刑訴法445条又は刑訴法43条によりできるのに、事務当局案は、それを審判開始決定が出るまではできないとするのですから、手続保障がなされることにはなりませんし、充実した審理がなされることにもなりません。  とすれば、審判開始決定が出た事件については、例えばですけれども、事実の取調べ及び記録の取寄せを義務付けるとか、期日の開催を義務付けるというように、手続保障に配慮した充実し審理がなされるようにする手続規定を設けることを前提に、それに適さない事件を振り分けるものとしなければ、スクリーニング規定を設ける意味がないと思います。   その上で、事務当局案では、スクリーニング規定の対象となる事件、つまり再審請求棄却決定をすることが義務付けられる場合、具体的には「2」「(2)」「ア」の「(ア)」から「(エ)」について、特に「(ア)」と「(エ)」について、意見を申し上げます。  「(ア)」は方式違反ですけれども、第11回会議でも指摘しましたが、東京高等裁判所昭和30年9月1日決定は、再審請求の趣意書に証拠書類が添付されていなくても、それを具体的に列挙し、その所在を明示して裁判所に取寄せを求めている場合には刑訴規則283条の趣旨に反しないとして、このような請求も適法であると認めたものでございます。また、逐条実務刑事訴訟法には、「本条6号に基づく請求につき、新証拠の性質上本人が入手して提出することが難しいため、裁判所に証拠の取り寄せや証人尋問、あるいは証拠開示を求める形でなされた請求も、その提出がないことを理由に一律に不適法とすべきではない」と記載されております。したがいまして、この方式違反の意義について、必ずしも証拠書類及び証拠物が添付されていることを必要としないということを、確認しておく必要があるのではないかと思います。   また、「(エ)」については、村山委員が指摘されたとおり、少なくとも、「明らかに」又は「容易に」という限定する文言がないと、書面審査により再審請求に理由がないと認められたものを迅速に棄却するだけの規定になってしまい、スクリーニングの目的を越えて、ほとんどの事件が棄却されてしまうことになってしまうのではないかという危惧がぬぐえません。そもそも、第7回会議における成瀬幹事の発言によれば、スクリーニング規定を設けることを御提案されました趣旨は、「配布資料2の第6表に出てくる法令上の方式違反の事案や主張自体失当の事案などを最初にスクリーニングする」規定を設けるという話でありました。また、第11回会議における池田委員発言でも、「法令上の方式違反である場合や請求権消滅後の請求あるいは主張自体失当の場合など、請求が容れられないことが一見明白な再審の請求」という表現を用いておりました。そうすると、御提案の趣旨と「(エ)」の文言の間には、明らかに齟齬があるのではないでしょうか。少なくとも「明らかに」又は「容易に」という限定する文言がないと、ほとんどの事件が「ウ」の審判開始決定に進めなくなってしまうのではないかという危惧がございます。   その上で、「調査」の意義について、どのように考えるかということが検討課題に掲げられておりますので、判断資料の範囲について、私が疑問に思うところを申し上げます。  まず、成瀬幹事は、再審請求の趣意書とそれに添付された証拠書類及び証拠物に加えて、確定記録を取り寄せるとおっしゃっておられましたので、全件、確定記録を取り寄せるのか。つまり趣意書と添付書類だけを見て方式違反等を理由に棄却できるのではないか、あるいは請求権が消滅しているのではないかと考えられた場合に、刑訴法446条により棄却していた事例もあったのではないかと思われますが、そういうことはせずに、全件、確定記録を取り寄せるのか。この点については、第11回会議において、鴨志田委員から、確定記録を取り寄せてしまうと実質判断になってしまうので、もはやスクリーニングとはいえないのではないかという疑問が提起されていたかと思います。   また、確定記録には証拠物は含まれないのですけれども、証拠物が原審、つまり確定審において取り調べられていた場合に、これを取り寄せるのかどうか。控訴審の場合には、刑訴規則235条は訴訟記録及び証拠物を送付すると書かれておりまして、証拠物を送付することが予定されているのですが、再審請求審の場合には確定記録に限定するのか、それとも証拠物も取り寄せるのか。この点について、私は、第9回会議において、裁判所不提出記録及び証拠物の保管・保存の論点に関し、証拠品事務規程には還付対象証拠物の保管・保存の規律がないので、還付対象証拠物は判決が確定すると所有者等に還付されてしまうために証拠がなくなってしまうおそれがあるので、還付対象証拠物についても保管・保存の規律を設けるべきではないかという指摘をしたのですけれども、事務当局案では、削除されています。訴訟物は取り調べないということを前提にしておられるのでしょうか。   また、累次の再審請求の場合に過去の再審請求の趣意書及び新証拠は取り寄せるのか。過去の再審請求の趣意書を見ないと、刑訴法447条2項の同一理由の判断ができませんので、調査手続において刑訴規則447条2項の判断をするのであれば、確定記録だけでは足りず、過去の再審請求の趣意書を取り寄せることが必要になると思われます。   また、刑訴法435条6号の総合評価の対象となる他の全証拠には、原判決、つまり確定判決の有罪認定の根拠となった証拠だけではなくて、過去の再審請求事件において提出された新証拠も含まれると理解されているのですから、累次の再審請求の場合には、過去の再審請求の証拠まで取り寄せなければ、総合評価ができません。   さらに、刑訴法435条6号の新規性の判断をするためには、過去の累次再審請求における再審請求事件でどのような証拠が新証拠として提出されていたのかが分からないと、趣意書に添付されている証拠書類及び証拠物に新規性が認められるかどうかの判断ができませんから、やはり、過去の再審請求の証拠まで取り寄せる必要があると思われます。  そうしますと、累次の再審請求の場合には、過去の再審請求の趣旨書及び証拠書類、さらには証拠物まで取り寄せないと、調査ができないということになってしまいますが、これはもはや調査というよりも、事実の取調べではないでしょうか。本来、スクリーニング規定は形式審査により一見明らかに請求がない請求を排除するためのものであると認識しておりますが、仮にこのようなものまで取り調べることとしますと、調査手続が肥大化してしまい、もはや実質判断になってしまうのではないかと思われます。   したがいまして、調査手続において、どこまでのものを判断資料とすることを想定しているのかをまず御説明いただいた上で、先ほど申し上げたようなものまで取り調べるのであればもはやスクリーニングとはいえず、実質判断になってしまうのではないかという疑問について、どのようにお考えになるのか、御説明いただければと思います。 ○玉本幹事 まず、調査の範囲の前に方式違反の点について御発言を頂きましたので、その点についてですが、東京高等裁判所の昭和30年の決定に言及いただきましたけれども、配布資料20の「2」「(2)」「ア」「(ア)」の「法令上の方式に違反したものであると認めるとき」の記載については、現行法あるいは現行の刑事訴訟規則の解釈を変更する趣旨ではありません。   それから、「調査」の意義については、正に「検討課題」としているところでして、御議論いただきたいところですけれども、事務当局としては、裁判所がこの「調査」として行い得る範囲は、スクリーニングの目的、つまり再審請求事由の有無についての審理をした上で終局決定をすべき事案を早期にかつ的確に選別するという目的を達成するために必要な限度の基礎的な資料の収集や、収集した資料の確認、検討に限られるというイメージで作成しているところです。また、「調査」としてでき得ることを全てやり尽くさなければいけないのか、それが義務になるのかということについては、恐らくそうではないのだろうという想定で資料を作成したところでございます。   また、累次の再審請求がされている場合の過去の再審請求事件の記録等についても御指摘いただきましたけれども、終結した再審請求の事件の記録については、検察庁に戻って検察官の保管記録となると理解しておりますので、検察庁で保管している記録を取り寄せるという場合には、そこに入ってくるのであろうという想定でこの資料を作っているところです。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○鴨志田委員 結局、三つ問題があると思うのです。一つは、棄却決定をしなければならないという義務付けになっているというところだと思います。例えば、財田川事件の場合は当初は御本人のお手紙だったわけなので、恐らく「ア」「(ア)」とか「(ウ)」に該当してしまうと思います。しかし、この事件では裁判所の裁量で釈明を求めて、それに対する回答が新証拠という扱いになって、最終的に再審無罪になりました。だから、要は「棄却することができる」という形であれば、このように裁判所がこれはやはり何か必要があるぞということを考えたときには、その先の手続に進めるのですけれども、ここに該当するということをもって棄却しなければならないということになったら、もうその先はないということなので、まず「ア」「(ア)」から「(エ)」に該当する場合に必ず棄却しなければならないと言っているところが大きな問題ということになると思います。   二つ目は、やはり「(エ)」です。要は「(ア)」とか「(ウ)」というところは、方式違反ですし、また、各号該当性が明らかにないということで、しかも「明らかな」という文言がここは入っていますから。いわゆる私たちがイメージしているスクリーニングというのは、ここまででほとんど切れるものだと思うのです。それにプラス「(エ)」があるから、ではどこまで調べるのという話になって、先ほど田岡幹事が御指摘されたような、確定記録もですか、証拠物もですか、累次の再審の場合には新規性を見るために累次の再審の記録もですかということになると、例えば、袴田さんの事件の場合は第2次再審の段階で確定記録と累次の再審の記録がダンボール10箱分あったとお聞きしています。ではそれを調査段階で調べるのですかということになってきてしまうので、要は「(エ)」の部分があるがゆえに、その調査資料の範囲もどんどん広がってしまうという問題があるということなので、「(エ)」が存在するということをやはり根本的に、明らかにとかいうことを入れる以前に、これを入れてしまうから広がるという関係にあるのではないかということを指摘させていただきたいと思います。   最後に、これは結局、決定なので、恐らくスクリーニングではじかれたものは三行半で棄却決定ということになって、多分ほとんど理由も示されないということになると思うのです。そうすると、不服申立ての規定があるのですけれども、即時抗告できるといっても、一体何を理由に即時抗告していいのかということが分からないという状態になります。   ですから、結局この3点をまとめてしまうと、即時抗告をすることができるという規定があるということは、必ずしもこれだけで迅速化につながるという話にもなり得ないのではないかと思うわけでして、結局のところ、本当にこの調査手続というものがスクリーニングの規定として機能するためには、やはり限りなくライトな、誰が見ても形式的なところで切れるというような要件にし、調査の資料としては、提出された再審請求、いわゆる趣意書と、添付されている新証拠、そして確定判決の謄本、こういったところで明らかに切れるものを切ると、それ以外の確定記録を見ないと分からないこととか、累次の再審の記録を見ないと分からないことというのは、要はそれは実質審理につながっていく、事実の取調べにつながっていくわけですから、もうそれは一旦審判開始決定をして、あとは事実の取調べの要否の問題として検討すると、このような整理の仕方しかこのスクリーニングというのは機能し得ないと私は思います。 ○村山委員 やはり「(エ)」なのですけれども、これは作られた方はどういうことをイメージしているのですか。私が読んだときには、例えば同一理由による請求だというやつとか、それから、証拠は添付されているのだけれども実際に前にも出している証拠で、確定審で出ていて、間違って新規性がないとかというようなことを言っているのかなと思ったのですけれども、それはやはり記録とかを調査しないと、それから同一理由かどうかというのは、その前の再審請求とかを見なければいけないということになるのだろうと思うのですけれども、それ以上に何か理由がないという判断として想定されているというものがあるのでしょうか。それを少し伺いたいと思ったのですけれども。「(エ)」の想定しているものというのは一体どういうものなのかということなのですけれども。 ○大澤部会長 玉本幹事、お答えになられますか。 ○玉本幹事 先ほど申し上げたとおり、具体的なケースというのは、正に個別の判断になるので、一概にお答えすることは困難であると考えておりますけれども、現行法の下においても、事実の取調べをするか否かを検討するまでもなく理由がないと容易に判断されて棄却されている事案というものは存在するであろうということでして、そういった事案がこれに該当することになると想定したところです。 ○村山委員 非類型的なものについてもこれに入るという理解なのですね。例えば、請求が同一とか新規性がないとかというような類型に立てられるということではなくて、それ以外であっても、実質的な中身の問題であっても、明らかに理由がないというものが含まれるのだという理解でしょうか。 ○玉本幹事 御指摘のとおりです。 ○村山委員 それはそうなのですけれども、同一理由かどうかは中身を見ないと分からないですよね、添付されていないとかというのはすぐ分かるのですけれども。少しその違いがあるかなと思って聞いたのですけれども。そういう趣旨だというのは理解しました。 ○平城委員 少しやはりイメージが持ちづらいところもあるのかなと思っていまして、前々回の会議で私の方からも申し上げましたとおり、まず、申立書と新規の証拠らしいものが付いている、こういうものが来たときには、そこを読み解くところから始まるわけでございます。言っていることがすぐ分かればいいのですけれども、言っていることが少し分からないということもあり、また、付いている資料がどういう意味があるのかというのは必ずしも明確ではないこともあります。その場合に、もう1回どういうことですかとお聴きすることもありますし、場合によっては検察官に求意見という形で見ていただくこともあるかもしれませんし、やはり記録を取り寄せて、自分たちで検討するということはあるかもしれないです。その見る範囲としては、確定記録全部をしっかりと見る場合もあるのかもしれないですけれども、まず、前回どういう請求していたかを確認し、前と同じ証拠が付いているということになれば、これは新規の証拠ではないということが分かるということもあったりします。   今申し上げたのは同一理由とか、若しくは新規性があるかという観点での調査ということになりますけれども、恐らく明らかに理由がないものの一パターンとして、例えば、実例に基づかない一例になりますけれども、自分が昨日寝て、起きたら思い出したという本人の陳述書が付いているというような場合に、これが新規ではないかというと、今までなかったからというところで新規性は否定しづらい。ただ、中身を見ていったときに、これは明らかに無罪等を言い渡す理由にはならないだろうということで明白性がないということで切ることもないわけではないだろうと思ったりはします。その程度のものを私としてはこの「第4」の「2」でスクリーニングの対象として考えられているのかなとイメージをしておりました。   仮に審判開始決定されても、その後に事実の取調べは絶対にしなければいけないのかというと、そこもそうでもないのかなと思ったりしています。確実に理由があるとか理由がないとかということが明確に言えなくて、もしかしたら何か信用性を調べていったらどちらに転ぶか分からないなというものも含めて審判開始決定をさせていただいて、ただ、やってみて主張を聴いてみると、そこまでの重要な事実の取調べ、複雑な事実の取調べは必要ないなと思って、場合によっては棄却若しくは場合によっては開始、こういう判断がされることもあるのではないかと思ったりはしております。   ですので、私の方では、今、事務当局がお話しいただいたことは、そのようなイメージのスクリーニング規定と思って解釈しておりまして、そうだとすると、村山委員ともそれほど変わらないのかなという認識で、私はいたところでございます。 ○大澤部会長 調査のイメージということでお話を頂きましたが、ほかにこの調査の関係で御発言がございますか。 ○池田委員 私は配布資料20の「第4」の「2」に賛成の立場で、「検討課題」「(1)」の今も御議論がありました調査の意義について、制度の趣旨を踏まえたところで考えられるところを述べたいと思います。   先ほどから玉本幹事からも御説明がありましたけれども、この再審請求についての調査手続は、再審請求手続の円滑化、迅速化のために、再審請求事由の有無についての審理をせずに終局決定をすべき事案と、再審請求事由の有無についての審議をした上で終局決定をすべき事案を早期にかつ的確に選別するためのものであると考えられるところ、裁判所がそのための調査として行うことができるのは、それらの目的を達成するために必要な限度で資料収集や収集した資料の確認、検討を行うことであると考えられます。   そのような活動として具体的に考えられるところを挙げるとすれば、まずは再審請求者から提出される「第4」の「1」「(1)」の理由を記載した書面並びにこれに添付された証拠書類又は証拠物及び原判決の裁判書の謄本の確認、検討を行うことは、調査として行うことのできるものとする必要があると考えます。また、再審の請求は原判決に係る確定記録の内容を前提としてなされるものであることから、「第4」の「1」「(1)」の書面の内容を的確に理解し、再審請求事由の有無についての審理を要する事案か否かを的確に選別するために、原判決に係る確定記録を検察官から取り寄せて、その確認、検討を行うことも調査に当たると思われます。   といいますのも、原判決に係る確定記録は再審請求事由の有無について判断する上で出発点となる記録であり、これを確認、検討しなければ再審請求事由の有無についての事実の取調べ等の審理を要する事案か否かを適切に選別することができないと思われます。にもかかわらず、仮に原判決に係る確定記録の確認、検討を調査の段階では行うことができず、審判の段階に至って初めて行い得るものとすれば、再審請求事由の有無についての審理を要する事案か否かを早期にかつ的確に選別することができなくなり、調査手続が機能しないものとなることとなりかねず、相当でないと考えます。   以上に加えて、再審の請求の適法性について判断をするに当たって必要な資料の収集や、その確認、検討を行うことについても、再審請求事由の有無についての審理を要する事案か否かを的確に選別する上で必要になりますので、調査として行い得るものと考えるところです。他方で、以上述べた範囲を越えて資料の収集等をすることは、再審請求事由の有無についての審理を行う審判開始決定後の手続において事実の取調べとして行うべきことですので、調査には含まれないと考えるのが相当と思われます。 ○村山委員 実情的に、記録の取り寄せってそれほど早く来ませんよ。時間が掛かるのです、検察庁から借り出すというのは。それをやったらすごく時間が掛かると私は思います。これを言うのが私に有利になるかどうか分からないですけれども、実際にやっていたところを見ると、やはり最初に請求書と新証拠を見て、結構早い段階で私は意見、規則286条かな、これを検察官に掛けていました。同一理由だとかいうのは、その検察官の意見書に書いてあるので、手掛かりで、そういう観点で判断しやすいというのがあって、むしろそちらの方がずっと早いのですよ、実際にやっていたときには。そういう意味で、確定記録を取り寄せてと、確定記録は段ボール何個もあるというのを取り寄せて、どこをどう読むかと、それを始めたら事実審理をする前にうんと時間が掛かってしまうのですよ。明らかに理由がないというのを判断するためにそれほど時間を掛けるかと。   確かに平城委員が言われたような事例というのは、私もないわけではないので、新規証拠だと言われれば新規証拠なのですけれども、いや、これはなというのは確かにあることは事実です。ですから、そういうのは早期に棄却決定になっているのは間違いないと思うのですけれども、それがためにこのような規定を作るのが本当に有益なのかという。すごく流動的なのですよ。だから、確定記録を取り寄せて調査するので、その結果どうしてもこの決定をしなければいけないという、そういう縛りを掛ける方が、皆さんがよく言う硬直した審理になってしまうのではないでしょうか。もう少し流動的にするためには、判断資料を極めて限定を掛けて、その中から読み取れるもの、要するに請求理由が再審事由の主張になっていないものとかという明らかなものだけを振り分けするという、そういう程度の振り分けにしておく方が実際の審理としては裁判官はやりやすいということは間違いないと思うのです。   そういう意味で、確定記録を何としても最初の段階で調べたいと成瀬幹事はお思いかもしれないけれども、これをやったら本当に大変ですよ。そういう意味で実際的ではないと私は思いますし、そういう流動的な事態に対応するためには、こういうかちっとした規定を作るというのが私は本来的にはよくないと思っています。 ○田岡幹事 先ほど池田委員から「調査」の意義について、再審請求の趣意書とそれに添付された証拠書類及び証拠物、原判決の謄本、確定記録の取り寄せまでが調査であり、それを越えるものは事実の取調べであるという御説明がありました。累次の再審請求における過去の再審請求事件の記録は、先ほどの玉本幹事の御説明ですと、確定記録と一体となるものとして取り寄せられるという理解を前提にしておられるのだとは思いますが、それを越えるものが事実の取調べであるとしますと、例えば身代わり犯人事例における真犯人の刑事記録の取り寄せは、事実の取調べに当たるという理解でよろしいのでしょうか。  つまり、真犯人の刑事記録を検察官が保管している場合に検察官が提出すれば新証拠ということになるでしょうけれども、検察官が保管しているとは限りません。藤野英一裁判官の判例タイムズ103号9ページには、「原判決確定後に真犯人が検挙され、その有罪判決が確定した場合にあたるときは、真犯人に関する訴訟記録を取り寄せて調査資料とするを通例としている」と記載されており、趣意書の例が掲載されております。真犯人の刑事記録の取り寄せが事実の取調べだとしますと、審判開始決定をしないと真犯人の刑事記録は取り寄せられないということになると思われますが、そうすると、第7回会議において、成瀬幹事が想定しておられた「身代わり犯人であったことが判明したことを理由として検察官が再審請求をする場合など、理由があることが一見して明白な再審の請求」に当たる場合、つまり「2」「(2)」「イ」の場合がなくなってしまうのではないでしょうか。もしかしたら真犯人の有罪判決の判決謄本だけで再審開始決定を出すということを想定しておられるのかもしれませんが、私は、真犯人の刑事記録を確認した上で再審開始決定を出すのだろうと認識しておりましたので、これが事実の取調べだとしますと、調査手続で再審開始決定をする場合はなくなってしまうのではないかと疑問に思いました。 ○吉田(雅)幹事 今の御指摘について、例えば、道路交通法違反、速度超過で有罪になっていた事件があって、その事件に関して検挙に使われた測定機器に誤りがあったことが事後的に明白になったという場合には、その点についての新証拠を添付して再審請求をするということはあり得るだろうと思います。その場合には、新証拠と確定記録を併せて見ることで「第4」の「2」「(2)」「イ」に当たることが判断され得る場合はあるのではないかと考えております。 ○成瀬幹事 ここまでの議論を踏まえて、3点申し上げたいと思います。   まず、1点目として、裁判所が調査の段階で確認・検討できる資料の範囲については、基本的に池田委員がおっしゃった範囲になると思います。具体的には、再審請求者が提出した趣意書、新証拠として出される証拠書類又は証拠物、原判決の裁判書の謄本、検察官から取り寄せた確定記録になろうかと思います。ただし、村山委員の先ほどの御指摘とは異なり、私は、調査段階において確定記録の確認・検討が常に必要になるとは考えておりません。  先ほど平城委員が御説明下さったように、再審請求を受けた裁判所は、まずは再審請求者が提出した資料を確認・検討するのだと思います。もっとも、裁判所が趣意書を読んだだけではその趣旨をよく理解できないこともありますので、その場合には、検察官から取り寄せた確定記録も参照しながら趣意書が述べている内容を理解していくことになると想定しています。それゆえ、裁判所が常に確定記録を確認・検討しなければ、請求棄却決定・再審開始決定・審判開始決定の三つのうちのどれかを選べないということではないだろうと考えています。他方で、調査手続において確定記録を確認・検討することは一切許されないという規律にしてしまうと、池田委員が先ほどおっしゃったような弊害が生じますので、「調査」として、検察官から確定記録を取り寄せ、確認・検討することもできると理解しておくことが適切だと思います。   次に、2点目として、「(2)」「ア」「(エ)」について、私が元々想定していたのは、先ほど玉本幹事が補足説明をされ、また平城委員が具体例を挙げて説明されたように、裁判所が基礎的な資料を確認・検討した段階で請求に理由がないと容易に判断できる場合です。それゆえ、実際の運用においては、明らかに請求の理由がない場合だけが「ア」「(エ)」に該当すると考えておりました。ところが、法制上の整合性を考慮した結果、「ア」の「(ウ)」には「明らかに」という文言がある一方で「(エ)」にはありませんので、私が申し上げたニュアンスがこの文言からは読み取れないという村山委員・鴨志田委員・田岡幹事の御批判はごもっともであるように思われます。法制上の整合性を意識しつつも、もう少し文言に工夫ができないかという点は、ぜひ事務当局に検討をお願いしたいと思います。   それから、3点目として、請求棄却決定をしなければならないという規律になっていることについても批判的な御意見が示されました。しかし、先ほど申し上げたように、この調査手続は、再審請求審の手続に段階を設けることを意図した制度であるところ、請求棄却決定をすることもできるという規律では、手続段階を区別することができません。それゆえ、裁判所には、基本的な資料の確認・検討を終えた段階で調査を打ち切って、請求棄却決定・再審開始決定・審判開始決定のどれかを選んでいただく必要があるわけですが、先ほど申し上げたように、「ア」「(エ)」に該当するのは、実際上、明らかに請求の理由がない場合だけですので、それ以外の場合には、基本的に「ウ」の審判開始決定が選択される、そのような形でこの調査手続は運用されるものと想定しております。 ○大澤部会長 調査については大体よろしゅうございますか。あとは手続が何の効果に結び付くかという話もありましたけれども、そこの点について何か御発言がございますか。 ○吉田(雅)幹事 資料の構成ということで御説明しますと、審判開始決定があったことを要素の一つとしているものとして、例えば、配布資料20の1ページ目の証拠の提出命令がございます。ここでは、審判開始決定をした裁判所は、証拠の提出を命ずるものとするとしておりまして、審判開始決定があったことが一つの要件となっております。   また、今ほど御議論いただいていた「第4」に関しても、「3」において、事実の取調べについては審判開始決定をした後でなければすることができない、あるいは、事実の取調べの請求は審判開始決定をした裁判所にするという形で、審判開始決定の存在が前提となっております。それから、「4」においても、審判開始決定をした裁判所は、意見を聴くとともに審理終結日を定めるという形で、審判開始決定の存在が前提となっています。また、「5」も審理終結を前提とした上での決定日の定めということになっておりまして、この審理終結日自体が今申し上げたように審判開始決定の存在を前提としておりますので、ここも関連しているということでございます。最後に、「6」の手続の受継においても、審判開始決定の存在を前提として記載しております。 ○大澤部会長 ありがとうございます。検討資料がどんな作りになっているかということは今御説明いただいたところだと思います。 ○田岡幹事 吉田幹事からの御説明では、「第6」の不服申立期間については説明がありませんでしたが、審判開始決定後の不服申立期間が14日になるということであれば、審判開始決定と関連しているのではないでしょうか。 ○吉田(雅)幹事 説明を漏らして失礼しました。御指摘のとおりです。 ○大澤部会長 この点について更に御意見はございますでしょうか。   よろしいでしょうか。この点は、手続のほかの作りのところで、関連して出てくることになるのかもしれないとは思っているところでございます。              (一同異議なし) ○大澤部会長 ありがとうございます。この段階としては、最初の「第4」の「1」、「2」、「3」につきましてはここまでということにさせていただきたいと思います。   少し長くなっていますので、ここで5分間の休憩とさせていただきたいと思います。              (休     憩) ○大澤部会長 次に「第1 再審請求審における検察官の保管する裁判所不提出記録の弁護人による閲覧・謄写」について審議を行いたいと思います。   まず、事務当局から配布資料20のうち「第1 再審請求審における検察官の保管する裁判所不提出記録の弁護人による閲覧・謄写」に関する部分について説明をしてもらいます。 ○今井幹事 配布資料20の1ページ目を御覧ください。枠内の「1」におきましては、「証拠の提出命令」に関する規律を記載しておりまして、これまでの御議論を踏まえて、通常審における主張関連証拠の証拠開示について規定する刑事訴訟法第316条の20第1項の規定を参考にして、裁判所は、再審の請求の理由に関連すると認められる証拠について、一定の要件の下で検察官に対して、証拠の提出を命ずるものとすることを記載しております。また、その対象となる証拠の範囲につきましては、これまでの議論を踏まえまして「A案」と「B案」を併記させていただいております。   「2」には、「証拠又はその一覧表の提示命令」に関する規律について、これまでの御議論を踏まえつつ、通常審における証拠又はその一覧表について規定する刑事訴訟法第316条の27第1項及び第2項の規定を参考に記載しております。   「3」には、「複製等の適正管理」に関する規律について、「4」には、「複製等の目的外使用の禁止」に関する規律について、「5」には、「目的外使用の罪」に関する規律について、それぞれ、これまでの御議論を踏まえつつ、通常審におけるこれらの規律を参考にして記載しております。   枠外の「検討課題」には、これまでの御議論を踏まえまして、更に議論を行うことが考えられる事項を記載しております。   なお、「再審請求の準備段階における閲覧・謄写に関する規律を設けるか」、「裁判所不提出記録・証拠物の保存・管理に関する規律を設けるか」及び「証拠物の証拠価値の保全・鑑定に関する規律を設けるか」につきましては、いずれもこれまでの御議論において、そのような規律を設けるべきであるとの御意見が示されました一方で、規律を設けることの必要性・相当性に強い疑問が呈されているところでございまして、そこで指摘された理論上・実務上の課題が克服されておらず、そうした状況を踏まえると、今後、検討課題を克服して法整備を行う方向で意見を集約することも現実的に困難であると考えられたことから、配布資料には記載しておりませんが、必要に応じて、先ほど申し上げたところで更に御議論いただければと考えております。 ○大澤部会長 配布資料20の「第1」全体について御説明を頂きましたが、配布資料20の枠内、「1 証拠の提出命令」、「2 証拠又はその一覧表の提示命令」及び「検討課題」「(1)」に記載の課題につきましては、これらは相互に関連いたしますことから、まずこれらをまとめて審議を行いたいと思います。   御意見、御質問等がある方は挙手の上、御発言をお願いします。 ○田岡幹事 本日、私の提出資料②「二巡目の議論を踏まえた、意見の集約に向けた試案」を提出しておりますので、補足説明させていただきます。「1」「(1)」再審請求審における裁判所不提出記録の閲覧・謄写、いわゆる証拠開示については、私は、議員立法(衆法第61号)の第444条の4、第444条の5及び第444条の6に賛成します。  二巡目の議論では、「A案」と「B案」という形で整理され、「B案」は「A案」に加えて、一定の類型に該当する証拠も対象とする案であると整理されておりました。しかし、二巡目の議論でも申し上げましたけれども、私は必ずしも再審請求理由と無関係な証拠を開示せよと求めているわけでありませんので、そのような意味での「B案」にはこだわっておりません。誤解を招くようであれば、撤回いたします。  むしろ、証拠開示の範囲について、「再審の請求の理由に関連すると認められる」という文言の意義をどのように解釈するのか、及びこれが義務規定なのか権限規定なのかということが重要な問題であると考えております。また、証拠開示の方法として、裁判所提出型とするのか直接開示型とするのか、あるいはいずれの選択も可能とするのかが重要な問題であると考えております。   敷衍して説明いたします。まず、提出資料②は、直接開示型とするとしておりますが、これは議員立法に従ったものでありまして、私は直接開示型でも裁判所提出型でも、どちらでもよいとは考えておりますが、少なくとも直接開示型を否定し、裁判所提出型のみに限定する理由はないと考えております。例えば、提出資料②にも記載しておりますとおり、逐条実務刑事訴訟法にも「裁判所による証拠の取寄せ手続によって証拠閲覧・収集の目的が達せられる場合もあろうが、証拠開示手続によることも差し支えない」と記載されております。実務運用として、裁判所に提出させる場合もあれば直接開示させる場合もあり、それにより合理的な運営が図られているというのであれば、そのような裁判所の権限をあえて否定し、裁判所提出型のみに限定する合理性はないと考えます。   具体的に問題が生じる事例として、証拠物の場合があります。例えば自動車などの大型の証拠物、生体試料などのように冷凍保管保存しなければいけないもののほか、段ボール100箱の押収物が未分類の状態のまま保管されている場合に、どの段ボール箱に目的の証拠物があるかが分からない場合があります。また、デジタルデータのように、検察官が操作をしてくれないと閲覧できない証拠物もあります。このような場合、通常審の段階では、実務運用上は、弁護人が検察庁に出向きまして、検察官に操作してもらうなどして閲覧謄写させてもらい、その中から必要なものを選んで裁判所に提出しているのが実情です。   仮に裁判所提出型になりますと、先ほどのような自動車や生体試料、段ボール100箱、デジタルデータの記録媒体などを裁判所に持ち込んだ上で、閲覧謄写することになるのだろうと想像するのですが、裁判所に保管、保存の設備がない場合もあるでしょうし、再生機器がないために再生できない場合もあるでしょうから、閲覧・謄写が円滑に実施できない場合があるだろうという運用可能性についての疑義がございます。このような場合には検察庁に保管したままで、弁護人に閲覧謄写の機会を与えるという方が合理的ではないでしょうか。あえて裁判所提出型に限定する合理性はないと考えます。   その上で、義務規定なのか権限規定なのかについては、第9回会議でも、いずれの趣旨であるかが明確ではないという指摘を致しましたが、これはやはり義務規定としなければ、証拠提出命令の制度を設ける意味がありません。成瀬幹事が常々おっしゃっておられますように記録の取り寄せが事実の取調べだとしますと、裁判所は、刑訴法445条及び43条により記録の取り寄せができることは当然であり、現在でもそのような権限があると理解されているのですから、わざわざ新たに規定を設ける意味がありません。逆に、新たに規定を設けて、証拠開示命令を発することができる要件を定めると、裁判所の権限を制限する趣旨であるとも受け止められかねません。先ほどのような事実の調査手続を設けるのであれば、審判開始決定がなされた事件については、一定の範囲の証拠の提出を命じなければならないという義務規定にしなければ、再審請求人にとって必要な証拠が開示されることになりませんので、このような規定を設ける意味がありません。   その上で、証拠開示の範囲につきましては、私は、先ほど申しましたとおり再審請求理由と無関係な証拠の開示を求めているわけではありませんので、「再審の請求の理由と関連すると認められる」という文言でもよろしいのではないかと思います。つまり、6号再審以外の場合については、全ての証拠を類型的に開示させる必要ないわけですし、6号再審の場合であっても犯人性が争われる場合とそれ以外の場合では、開示が必要な証拠の範囲は変わってくるでしょう。犯人性が争われる事件では事実上開示される証拠の範囲は広くなるでしょうし、犯人性以外が争点となる事件では争点に関連したものになるでしょう。このように証拠開示の範囲は、当然再審請求理由を踏まえた判断になるのだと思います。   ただ、江口委員や後藤委員がおっしゃっておられる「新証拠及びそれに基づく主張」の範囲が明確でないために、新証拠に関連しない証拠は開示されないということになるのであれば、これまで実務上開示されてきた証拠が開示されなくなってしまうのではないか、袴田事件や福井事件において開示されたような証拠が開示されなくなってしまうのではないかという危惧がございます。それでは、法の改悪になりかねません。  そこで、「再審の請求の理由と関連すると認められる」という文言の解釈については、議連の要望書のとおり、およそ関連しないものを除く趣旨にすぎず、再審請求理由に直接、間接に関連すると認められるのであれば広くその対象とし得るものとすると、このように解釈するのが相当であると考えております。このような解釈を前提とすれば、事実上これまで類型証拠開示の形で請求して開示されてきたものも「再審の請求の理由に関連すると認められる」証拠として開示されることになるのだろうと認識しております。そうであれば、類型証拠開示の規定を置かなくても、差し支えはないと考えます。   ただ、類型証拠開示の規定は、一定の類型に該当する証拠は必要性が高く、かつ弊害が少ないと考えられたために、このような証拠は開示することが争点を整理し、主張の促進をさせるためには望ましいと考えられたために設けられたものであり、通常審では、典型的な類型証拠開示の対象になる証拠は任意開示されることが一般的であると認識しております。再審請求審においても、例えば門野裁判官の論文や今井裁判官の判例時報2060号の論文によれば、実務上、類型証拠開示の規定を手掛かりに運用していると書かれていますので、類型証拠開示の規定が参考にならないということではなくて、類型証拠開示の対象となるような証拠、つまり証拠物、検証調書、鑑定書などは、類型的に証拠価値が高く、かつ、弊害も考えにくいという意味において、必要性及び相当性の判断に当たっては当然参考にされることはあるのだろうと思います。ただ、再審請求理由と無関係な証拠の開示を求めているわけではないという意味で、「B案」ではないということでございます。 ○大澤部会長 他に御発言はございますでしょうか。 ○江口委員 私はこれまでお示しいただいた「A案」に近い立場をとってきたものでございまして、「A案」に賛成するものですが、「A案」によった場合に実際にどのような運用が想定されるのかという、「A案」でいう関連性について意見を申し上げたいと思います。   そもそもこの証拠の提出命令が検討されるに至った経緯につきましては、明文規定のない中、裁判所が訴訟指揮として証拠開示を命令ないし勧告してきたという実情を踏まえまして、これを明文で規律しようとしたものと理解しております。そして、これまでの実務では、第9回会議で後藤委員が述べられましたように、新証拠及び請求人の主張を丁寧に吟味し、無辜の救済という再審制度の趣旨を踏まえて、正に必要と思われる証拠を提出、開示させてきたところでございます。このようなこれまでの実務の運用よりも狭まるような規律とするような規定を設けるべきという考えの委員、幹事の方はいらっしゃらないかと思われ、そういう意味ではこの点については意見が一致しているところかと思われます。   しかしながら今、田岡幹事の方からもお話が少しございましたが、その具体的な規律の在り方について議論するに当たり、証拠提出命令の範囲を再審請求理由と関連する証拠を対象とするか、これに加えて一定の類型に該当する証拠も対象とするのかという点のみに議論が集中してきたことについては、議論の在り方として違和感を覚えていたところでございます。更に申しますと、再審請求理由との関連性としてどの程度のものが求められるのかについての議論を十分にしないまま、それぞれが考える関連性の程度を前提として議論が進んでいるため、証拠提出命令制度の具体的内容についての議論が余りかみ合っていないのではないかと感じていたところでございます。もちろん議論を深めるために、より具体的な形で今回の検討資料が提出されたのだと理解しておりますけれども、再審請求理由の関連性として我々の理解が共通している部分はどこなのか、どこが違っているのかをまずは明らかにすることが必要であると思われまして、そのためには具体的な仮説事例等を基にした議論が必要であると思っております。   また加えまして、この検討資料には提示命令に関する規定についても示されておりまして、証拠提出命令制度におきましては、この提示命令の規定を利用して、裁判所が証拠の内容を見て関連性を判断するということになるかと思います。ただ、仮にですが、この提示命令の対象となる証拠の範囲を広範なものと考えますと、大量の証拠の中身を裁判所だけが閲読した上で、裁判所が再審請求理由との関連性、さらには再審請求の理由の有無を判断するということにもなり得るかと思われます。しかし、そのような再審請求審の審理及び判断の在り方が望ましいかについては議論があろうかと思います。そうしますと、この提示命令制度の対象となる証拠の範囲についても、やはり具体的な仮説事例等を基にした議論が必要であると考えているところでございます。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○成瀬幹事 まず、記録の閲覧・謄写の在り方として、先ほど田岡幹事から、直接開示型を否定する理由はないのではないかという御指摘を頂きました。しかしながら、これまでの会議でも申し上げているとおり、再審請求審は、職権主義の下、裁判所が再審開始事由の存否を判断するために必要な事実の取調べを主体的に行うものとされていることからすれば、裁判所は、審理に必要と考えた証拠について、検察官に命じて裁判所に提出させる仕組みとすることが再審請求審における審理の構造と整合的です。   田岡幹事がおっしゃるように、これまでの裁判実務においては、裁判所が検察官に命じて、一定の証拠を弁護人に開示させた上、弁護人において証拠を取捨選択し、それを裁判所の判断資料とするという運用が一部で行われていたようですが、このような運用は、まさに当事者追行主義的な発想に基づくものと言わざるを得ません。新たに創設する制度の在り方としては、再審請求審の構造と整合している裁判所提出型にすべきであろうと思います。   次に、「検討課題」の「再審の請求の理由に関連する」の意義については、既に第9回会議において意見を述べましたが、改めて私の考えを申し上げたいと思います。   再審請求審は、再審請求者が再審請求理由を主張し、裁判所がその判断をする手続であることからすれば、「再審の請求の理由」とは、まずは、再審請求に当たり、再審請求を根拠付けるものとしてなされる事実関係及び証拠関係に基づく主張をいうものと考えられます。  その上で、現在の刑事裁判実務においては、再審請求審の第一審において、一定の範囲で再審請求理由の追加・変更を行うことができるとされており、例えば、再審請求後、裁判所に新たに提出された証拠に基づいて再審請求者が再審請求理由を追加・変更したような場合には、その追加・変更された再審請求理由も「A案」のいう「再審の請求の理由」に当たり得ると考えられ、それと関連する証拠についても、証拠の提出命令の対象となり得ると考えられます。  具体的にどの範囲の証拠を提出命令の対象とするかについては、個々の事案に応じ、裁判所が判断されるものですが、「再審の請求の理由に関連する」証拠の範囲は、再審請求当初の段階で固定されるものではなく、審理の経過によって広がりを持ち得ることを改めて確認しておきたいと思います。 ○村山委員 まず、提出型なのか開示型なのかということで、私個人は提出型でもいいかなと思っているところなのですけれども、先ほど田岡幹事が言われた証拠物を裁判所に提出した場合はどうするのですかね、例えば生体試料とか。これは裁判所にそういう保管する装置はないと思うのですよ、通常の地裁とかだと。そういう場合を考えると、やはり安全弁的には、そのような直接開示型のことも命じるということにしておかないと、実際上の不便が生じるということは否定できないのではないかと思います。確かに書証の類いは、証拠書類の関係は裁判所に提出するということもそれほど大きな不便というのは実際上、不便ではないのかなとは思いますけれども、それが1点です。   それから、義務規定、権限規定というのは、例えば「A案」の方というのは、これは実際、義務なのでしょうか、権限なのでしょうか、そこを明らかにしていただきたいと思うのです。やはり私は、開示が義務的になる場合と、それから裁判所の裁量による場合と、2段階で構成しておく必要があるのではないかと考えています。特に関連性の問題というのは、一体どこまで関連するのかというのはどうも今までの議論ではコンセンサスがあるかどうかというのは非常に疑問だと思うのです。   従前から事例でお答えいただきたいとお願いしているのですけれども、例えば袴田事件の第1次で、5点の衣類の一つであるズボンがはけなかったという、それが縮んだからだとなっているわけですけれども、縮まないのだという生地の関係での鑑定意見というのを新証拠で出していたと。ほかにも出していたのですけれども、5点の衣類の関係ではそういうのが一つ、有力な証拠として出していたわけですけれども、そのときに5点の衣類のカラー写真が開示の対象になるのかというと、関連するという範囲の中に入ってくるのでしょうか。   もう一つ、これは仮設の事例ですけれども、犯人性を争っている再審請求というのはたくさんあります。そのときに、目撃者の供述が違うのだといって、目撃者が後日、弁護人に、実はこういうことだったのだということで、本当は違っているのだという供述調書を持ってくるという場合はあるのです。そういったときに現場痕跡の遺留しているものについての鑑定結果とか、そういうものは入るのでしょうか。新証拠としては供述の弾劾なのですけれども、これは関連するという中に入っているのかどうか、この辺もやはり具体的にそのお考えを伺いたいと思います。   それから、3点目は裁量的な開示の問題なのですけれども、元裁判官が声明を発したというのは既に資料としてお配りいただいていると思うのですけれども、最近現役の裁判官から私に結構メッセージを頂いています。その中に長文のお手紙を頂いている方がいまして、その方は現役の高裁の部総括で実際に再審請求事件をやっておられた方です。そういう方が証拠開示について、少なくとも法制審議会の多数意見に対してはやはり疑問を禁じ得ないと、「A案」のように限定してしまいますと、えん罪からの救済という非常救済の再審手続の理念を実現することが難しくなってしまうと冒頭、書き出しで述べておられまして、どうも法制審議会の多数意見は外海のことまで思いを致さずに湾内だけの議論にとどまっているというきらいを禁じ得ないと、別の言い方をすれば大義を捨てて小義を遂げようとするものといえるでしょうかと。これは、法的安定性を取るという小さな正義よりも、えん罪からの救済という人権保障はもとより裁判の誤りを正す、ひいては国民の信頼を確保するという大きな正義を実現する方が大切だと、こういう意見を述べておられます。実際に証拠開示の関係で大義を実現するためには、仮に「A案」のような限定をするとしても、証拠開示について裁判所の裁量を残すようにしていただかなくてはなりません、少なくとも裁量権を奪って現場の裁判官の手足を縛るようなことはしてほしくないと、これは担当裁判官の真摯な願いであり、それだけは何とか守ってほしいと、こういう手紙を寄せていただいて、実際にその手紙の中には、私にこの審議会の場で発言してほしいと、発言して構わないと、そういうことまで書いてあるのです。実際に現場の裁判官の何人もそういうことを言っているのです、担当したことのある裁判官は。   そういうことから考えますと、頭の中で確かに新証拠と関連する証拠だとおっしゃっていますけれども、その関連性の外縁というのは一体どこまであるのかという、その問題と同時に、担当裁判官の裁量によって、その範囲からはみ出ているかもしれないけれども実際には審理をしている裁判官が必要だと思ったものについて開示を命じることができないと、やはり真実発見はできないのではないかという危惧をしている裁判官がたくさんおられるということだけは事実ですので、申し上げたいと思います。 ○大澤部会長 「証拠の提出命令を裁判所の裁量によるものとするか、それとも義務とするか」という部分については、事務当局、いかがでしょうか。 ○玉本幹事 配布資料20では差し当たり、いわゆる証拠開示命令について規定している現行刑事訴訟法第316条の26条第1項も参考にして、義務規定の趣旨で、提出を命ずるものとすると記載しているところですが、この点についてはこれまで必ずしも十分な御議論がなかったところですので、答申を頂いた場合に法律案の立案を担当することとなる法務当局としても、是非詰めた御議論を行っていただきたいと考えております。 ○川出委員 ただ今の、証拠の提出命令を裁判所の裁量によるものとするか、それとも義務とするかという点について、意見を申し上げたいと思います。「A案」のように、裁判所が証拠の提出を受ける必要性と提出を受けた場合の弊害を考慮した上で相当と認めるときに、検察官に対して証拠の提出を命ずるという仕組みとした場合、裁判所がそれを相当と認めたにもかかわらず提出を命ずるか否かについて更に裁判所に裁量を認める合理的な理由は見いだし難いと思いますし、証拠の提出命令というのが事実の取調べの一方法であるとすれば、この要件が満たされているにもかかわらず裁判所が提出を命じない場合、それは審理不尽にもなり得ると思います。したがって、検討資料の「A案」のような規律を設ける場合には、請求による場合又は職権による場合のいずれであっても、裁判所は証拠の提出を相当と認める場合には証拠の提出を命じなければならないという義務規定とするべきだろうと思います。   それから、もう1点、田岡幹事と村山委員から御指摘のあった、弁護人への直接開示型を否定する理由はないのではないかという点についても意見を申し上げます。確かに、これまで実際の再審請求事件において、裁判所が検察官に対して、弁護人に直接開示するように勧告した事例があることはそのとおりなのですが、これは飽くまで制度が存在しない状況の下での運用にとどまります。今回新たに制度を設けようとしているわけですので、その在り方を検討するに当たっては、第8回会議で酒巻委員から御意見がありましたように、十分な理論的根拠を持ち、かつ再審請求の構造等とも整合するかという観点から、制度の内容を検討すべきであろうと思います。実務の運用としてこれまで弁護人に開示することを裁判所が勧告した事例があるということは、それを制度化する理由としては不十分であり、そのための十分な理論的根拠が示される必要があると思います。   その関係で、先ほど生体試料などについて裁判所に提出した場合に保管をどうするのかという御指摘がありました。確かにそのような事実上の問題は起きてくるかと思いますけれども、それは、裁判所にそうした証拠が提出された場合に、その保管について実務上どう対処するかという話であって、直接開示型を認めるべきか直接の理由にはならないと思います。 ○酒巻委員 少し戻りますが、田岡幹事や村山委員の御発言等に「関連する」という文言の意味内容について、「関連する」という言葉を使うことによってこれまでよりも対象範囲を限定することになるのだという批判が示されていました。しかし、私はそのような限定する趣旨で「関連する」という言葉が使われているとは全く思いませんので、これについて私の考えを申し上げます。また、先ほど江口委員、村山委員からも具体的な事例についての言及がありましたので、こういう場合はどうなるのか考えた一例を申し上げたいと思います。   まず、「関連する」という文言は、事務当局説明にもありましたとおり、通常審における刑事訴訟法第316条の20のいわゆる「主張関連証拠ないし争点関連証拠開示」という制度の条文の文言を使ったものだろうと思います。そこでの「関連する」というのは、事実上の主張の場合、その存在や不存在の証明に「資する」、すなわち役立つ、意味がある、そういう趣意・内容ということでこの条文は作られており、また、「主張との関連性」というのは具体的なものでなければならないと解されています。このことは「再審請求理由との関連性」の判断に当たっても、あるいは解釈についても、参考にされてよいと思われます。   その上で、刑事訴訟法第435条第6号の「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」に該当するか否かの判断は、最高裁判例によれば、新証拠と旧証拠の総合評価によることとされている。例えば、新証拠によって確定判決を支える一部の旧証拠の証明力が減殺されたことによって、裁判所が他の旧証拠を再評価するために当該他の旧証拠の信用性・証明力に関する証拠、資料が必要であると、すなわちその判断のために「資する」と考える場合があり得ます。そういう場合に、当該他の旧証拠の証明力に関する証拠については、これも含めて新旧証拠の総合評価が行われて再審請求者が主張する再審請求理由についての判断がなされ得るということになるわけですから、そのために、そういう場合には「再審請求理由と関連する証拠」であると認められることになると思います。   今申し上げたことをもう少し具体的に、何か例がないかと考えたのですが、例えば通常審において、AとBの犯行目撃証言が相互に信用性を補強し合っていて、それぞれ信用性が肯定されて、被告人が犯人であるという事実認定がされたものの、再審請求審において、実は通常審における目撃証言は虚偽であった旨をA本人御自身が供述したというような事例を考えてみますと、再審請求審においてこのA自身による供述等が新証拠として提出され、AとBの目撃証言は信用できない、だから犯人ではない旨主張がされているような場合において、新証拠によってAの目撃証言の信用性が減殺されたときは、裁判所がBの目撃証言の信用性を正に再評価するために、その信用性に関する証拠として、例えば捜査段階でBがどんな供述をしていたかという供述調書とか、あるいはBの供述内容が記載されている捜査報告書があれば、あればそういうものについても提出を命ずるというような場面が考えられるでしょう。   今のは全く一例ですけれども、このように再審請求理由と関連する証拠という文言の及ぶ範囲につきましては、主張が具体的にどのようなものであるかということ、審理の経過や段階によって広がりを持ちうるいうのが私の理解です。この言葉を使うことによって、再審請求者の御主張に役に立つ、資する証拠・資料が出てくることが封じられるとか限定されるようなことはない。むしろ相当に広がりがあるものだと考えています。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○鴨志田委員 まず、提出をどちらにするかという、裁判所提出型か直接開示型かというところについて、職権主義を前提とする以上、裁判所提出型になるべきだという御意見がありましたが、先ほどのDNA鑑定試料とか車をどうするのだという、そういう具体的な場面を考えたときに、職権主義だから必ず裁判所に提出ということが果たしてどうなのかと思います。もちろん基本的な立て付けはそうであったとしても、裁判所が正に職権で、DNAの鑑定試料であれば何々大学の法医学研究室のマイナス50度の保管庫に保管せよという形で、職権でそのようなことを命じられる、これは保管・管理の問題と少し連動していくかもしれませんが、開示のさせ方の一態様としてこのようなことを職権で命じるということが、正に職権主義だからこそ裁判所の裁量で認められるべきではないかと思います。   そのような規定が一切ないと、もう杓子定規に裁判所に全部出させるということになってしまいかねないわけですから、やはり訴訟指揮に基づいてこのような措置がとれるのだということを、裁判所提出型を前提とするにしても、入れるということは検討に値するのではないかと思います。また、それは決して職権主義と矛盾するという話にはならない、正に裁判所が職権でそのような必要性を認めて何がしかの措置を命じるということになるので、そういう柔軟な対応を可能とするような条項を付加するということは検討いただけるのではないかと思います。   それから、義務か権限かというところですが、玉本幹事や川出委員の御説明で、やはりこのような必要性を認めた場合には、命ずるものとするというのは義務付け規定以外には考えられないのではないかという御指摘がありまして、そうであれば、もちろん私たちは義務付け規定にすべきだという立場ですから、それであればそのようにはっきり分かるような条文の書きぶりにしていただきたいということを申し上げておきます。ただ、1点、ここは議員立法で提出されている法案との比較というところでもう一度検討いただきたいのが、請求人若しくは弁護人の請求によって証拠開示を命ずるという局面の場合には、これまでお話があるように、再審請求人の主張と提出している新証拠に全く関連性がないというものについての証拠開示を命じるということは、やはり想定しにくいと思います。ですから、請求人、弁護人の請求によって裁判所が証拠開示命令を義務付けられるという局面の場合には、その関連性の範囲についてなにがしかの関連性というものが出てくるということは、これは否定のしようがないと思っています。   一方で、「裁判所の職権で」というところについて、今ここに書かれているような関連性―その範囲は措くとしても―の縛りを掛けるというのは、これまで裁判所が自らが判断のために見たいと思った証拠を幅広く裁量で、職権で開示させてきたという再審請求の審理の実情からすると、なお慎重な検討が必要なのではないかと思います。特に、議員立法による法案を見ていただくと分かるのですけれども、請求人の請求による証拠開示を命じるという義務付け規定の後に、裁判所は必要と認めるときに証拠を取り寄せることができるとする権限規定という形で、2段階の規定を置いているのです。こちらの2段目の方には開示の範囲について制限が掛かっていないということになっていますので、ここについては、その制限をはめるということがどうなのかということは再度お考えを頂きたいと思っています。   それから、関連性の話になりますけれども、先ほど成瀬幹事から、最初は提出した新証拠と、それに基づく主張というところに紐づいてくるような、それで実際開示されてみて、更にそこから請求人が新たな主張をし、主張を追加する形で、またそれに関連する証拠がというような形で広がっていくので、関連性ということは必ずしも開示の範囲を狭めるということにはならないという御指摘を受けました。そもそもこの新証拠とそれに関連する主張に限定されるという話として私たちが批判をした大元は、中川参考人の意見だったかと存じます。これは皆さん御記憶されていると思います。中川参考人ははっきり、新証拠とそれに基づく主張に限定されるべきであるという御意見を参考人としておっしゃり、私がそれに対して、そうだとすると福井事件のように、当初弁護人が新証拠として供述心理鑑定とルミノール実験報告書しか出していなかったときに、「夜のヒットスタジオ」の放映日に関する捜査報告書のような証拠は出てこないということになる、要するに再審無罪になった事例の、無罪の決め手となった証拠が開示されなくなるのではないかということを質問したところ、そのような事例があるということは承知していますけれども、現行刑訴法の規定ということで考えたら、そのような規定が設けられないのは致し方のないことであるというような発言をされていました。その後の議論でも、今の中川参考人の御意見に近い趣旨の発言は現実にあったと私は記憶しています。今すぐに議事録のこのページと示せないですけれども、あったことは間違いないと思っています。なので、そこに限られるという意見であれば、これやはり反対せざるを得ないと考えます。   一方、成瀬幹事のおっしゃったような形で証拠開示の範囲が広がっていくというのは、先ほどの手続規定に戻るのですけれども、それなりにきちんとやはり期日が開かれて、当事者の主張なり意見なりをきちんと聴くという手続が担保されて初めて可能になってくるということだと思うのです。多くの再審事件ではそのような期日が開かれないまま、証拠が開示されたとしても本当に限定的なもので、そのような主張の追加というようなことに対する新たな訴訟指揮がないまま、棄却決定というような形になっているものも少なくないので、やはり主張が広がっていくというようなところでの証拠開示の可能性ということをおっしゃるのであれば、やはりそれが担保されるような手続規定というものが、翻って考えられるべきではないかと思います。   それから、酒巻委員の方から、これは実は開示の範囲を幅広く、正に判断に資するものとして捉えることができるのだという御指摘がありまして、本当にそうであれば全く問題はないと思うわけなのですけれども、これに関しては、先ほど江口委員がおっしゃったように、具体的な事例に基づくシミュレーションというものをしなければ、この関連性の範囲というのは、やはりなかなかここのメンバーの中でも共通認識されていないのではないかと思います。   例えば、DNA鑑定の信用性ということがメインの主張として争われていて、そのDNA鑑定の信用性を減殺する新証拠というものが出されている、その段階で元々行われたDNA鑑定、旧証拠の信用性に関連する証拠は当然開示の対象になるだろうと思います。しかし、そのような場合にDNA鑑定の信用性がそれらの新証拠や開示証拠によって減殺されたとしても、新旧証拠の総合評価の場面ではそこと関連のない別の旧証拠に信用性があり、それだけで有罪立証が成り立つのだから、再審請求を棄却するという形で決定がされることもままあります。そうだとすると、最終的な再審開始決定になるかどうかの判断をするに当たって、他の旧証拠に関しても、例えば犯人性が争われているような事案であれば、その犯人性と関連して他の証拠の信用性も問題になるということになり、そのような旧証拠に関連するものが開示の対象にならなければ、請求人がその論点について攻撃、防御が尽くせぬまま、その別の旧証拠の信用性が高く評価されて有罪が維持されるということにもなりかねないので、関連性という問題を考えるときにはこのようなシミュレーションをしていくということがやはり必要であろうと考えます。   今日、私は資料を出させていただきました。鴨志田の資料として、これまでの実際の事件の中での証拠開示の実例を集めた資料です。これは2019年に日弁連が出した「再審における証拠開示の法制化を求める意見書」の実例集として添付でされたものです。ですから、これはもともと2019年段階で作成されたものでしたので、今回少し書きぶりを改めたところもありますが、これらを調べるのに私たちは4年掛けています。4年掛けて、それぞれの再審事件の期日調書であったり弁護人の主張、また、そこから決定にどのようにつながったかというようなものに関する決定書等の書面も検討した上で、4年掛けてこの実例集を作っているのです。ですから、実際に立法事実を見て、それが「A案」のような規定になったことで、ここに書かれている開示証拠について再審理由と関連性があると認められ、開示されるかどうか、といった検討は、1週間とか2週間とかではできるはずがないのです。是非、全部をやれとは言いませんけれども、この関連性の検討をするに当たって共通認識を持つためにも、先ほど江口委員におっしゃっていただいたように、具体的なシミュレーションということはきちんと時間を取ってやるべきであるということを、強く申し上げたいと思います。 ○池田委員 これまで意見をおっしゃられたそれぞれの論点について、意見を申し上げます。   まず、直接開示型なのか裁判所提出型なのかということについて、裁判所に管理能力がないので、当事者に開示すべき場合を残すべきだという議論がありました。ただ、川出委員から既に御指摘があったように、これは法的な提出先をどちらにするかという議論であって、事実の問題としてどこで管理するかということによって左右される問題ではないと理解しております。その上で、職権主義的な訴訟構造に整合的な制度として、裁判所提出型をとすることにはなお理由があると考えております。   次に、これまで村山委員あるいは鴨志田委員から、裁量で裁判所が必要かつ相当と認めるときに職権で証拠開示の決定をすることができる、裁量権限を設ける旨の規律が必要だという御指摘がありました。鴨志田委員の御指摘にもありましたように、これは衆議院において継続審議となっている刑事訴訟法の一部を改正する法律案の中にも含まれているところと承知しております。しかしながら、このように再審請求理由との関連性を問わず、裁判所が職権で証拠の提出、開示を命じることができるとすることは、これまでも繰り返し申し上げているとおり、原判決の当否そのものを再評価し直そうとする発想に基づくものであって、こうした考え方は刑事訴訟法第435条第6号の明白性の判断に関する近時の最高裁判例の考え方や、裁判所は再審請求者の主張する事実に拘束され、職権で主張されていない再審請求理由に関する事実の取調べを行うことは許されないといった再審請求審における審理の在り方と整合しないと考えられます。また、その点を置くとしても、このような規定を置けば、要件が無限定で裁判所に自由な裁量を与えるものとなっているため、各裁判所において判断が大きく分かれ得ることが想定され、実務における安定的な運用を図ることが困難となると考えられます。これまでの酒巻委員、成瀬幹事の御指摘に従って関連性の意義を捉えるならば、それは相当の広がりを持つ概念と位置付けられる以上、そのような弊害がある、あるいは構造と整合しない規定をあえて設けることの実益については疑問が残るところです。   なお、先ほど最近の最高裁判例ということを申し上げました。前回会議において鴨志田委員から、証拠の提出命令の対象となる証拠の範囲についての私の発言と、刑事訴訟法第435条第6号の明白性の判断方法についての私の発言について、判例の理解が一貫していないという御意見が示されました。もっとも前回会議において成瀬幹事からも御発言がありましたが、近時の最高裁の判例、具体的に申し上げますと、マルヨ無線事件特別抗告審決定、大崎事件第3次特別抗告審決定、飯塚事件特別抗告審決定においては、新証拠とその立証命題に共通する旧証拠について再評価を行うべきであるとの見解と整合的であると考えられる判示をしておりまして、常に旧証拠を全て再評価することは求められていないと承知しております。これを踏まえて、私は有罪判決の認定の根拠となった旧証拠と関連する証拠について広く証拠の提出命令の対象とすることは、少なくともこれらの最高裁判例の考え方と整合しないと考え、その問題点を指摘したものであり、先ほどの発言もそのような理解に基づくものです。 ○恒光幹事 何人かの委員の方から、生体試料や自動車のお話がありましたので、議論の前提として、この点に関する裁判所の取扱い等について御説明したいと思います。   まず、凶器等の一定の証拠物につきましては、裁判所において提出命令の必要性があると判断し、裁判所に提出させて裁判所が領置する可能性はあり得るところです。その場合、刑事訴訟法第40条に基づき、弁護人が裁判所で閲覧することは当然可能かと思います。一方、自動車や生体試料といったものにつきましては、それ自体を提出させる必要性があると裁判所が判断することは考えづらく、必要があれば検証したり、あるいは鑑定を命ずることで証拠化すると思われますので、実務上これらを裁判所に提出させる事態は余り想定できません。   万が一それらを裁判所に提出させる必要があるとなった場合には、先ほど保管能力というお話がありましたけれども、これらを裁判所が保管することは実際問題として難しいため、検察庁に返還するか、領置するとしても刑事訴訟法第121条第1項で第三者に保管させることになるかと思います。その場合でも、裁判所の提出命令に基づいて提出させた以上、刑事訴訟法第40条に基づいて閲覧等をさせることは理論上可能だとは思われますが、同条は「裁判所において」という場所の制限が掛かっておりますので、同条を根拠とする限り、検察庁や別の保管場所から一旦裁判所に持ってきてもらう必要があるのではないかと考えております。 ○大澤部会長 更にございますでしょうか。 ○宇藤委員 先ほどから議論が出ております「A案」、「B案」という点については、「A案」を基調とすべきではないかと考えております。この点について既に委員・幹事から支持、又は積極的に支持するわけではないけれどこれでもよいという見解が示されておりますので、私があらためて言葉を重ねる必要はないかと思います。また、関連性をどの程度の範囲のものを念頭に置くかは実務の運用に任せるのが適切であり、法的整備との関係では現在示されているようなものでよいのではないでしょうか。シミュレーションが重要である旨の御指摘が鴨志田委員からありましたが、当然のことであり、非常に貴重な御指摘であると考えております。   その上で、取りまとめに際しての意見を述べさせていただきます。刑事訴訟法第40条が今回の議論の起点となっております。この表題でも閲覧・謄写となっておりますのは、第40条が前提となっておるということでございます。私ども専門家にとって、その点はよく分かります。ただ、これが再審手続における“証拠開示”に関連するということは、法文を見ただけでは明瞭であるというわけにはいかないと思います。そのような点を踏まえ、取りまとめに際しては、現行法の整合性の中でどのような選択をしてこのように至ったのかということを明らかにする、あるいは運用の明確化を図るため、第40条との関係でこう整備したのであるという旨を明らかにする、また第40条で足らざるところがあるとすれば、第40条を補完するような規定も、法整備との関係で必要ではないかと考えます。 ○田岡幹事 先ほど、玉本幹事から、「A案」は義務規定の趣旨であると御説明がございました。また、川出委員からも、義務の規定と考えるべきであるという御発言がございました。私は、それであれば「A案」のような規定を設けることには合理性があると思います。  ただ、義務の規定だとしますと、当然、前提として、裁判所に権限、裁量があるはずです。つまり、裁判所には、証拠の提出を命じる権限、裁量があるということを前提に、一定の証拠についての義務付けをする趣旨であると理解できます。成瀬幹事も従前から、記録の取り寄せというのは事実の取調べそのものであるという理解を前提に、刑訴法445条又は刑訴法43条によって事実の取調べとして記録の取り寄せができるという理解を前提にしていたと思われます。そうだとすれば、刑訴法445条及び刑訴法43条には要件の限定がないわけですから、裁判所は、必要があれば、事実の取調べとして証拠を取り寄せることができるとした上で、一定の証拠については証拠を取り寄せなければならないということを義務付けをしたと理解すべきなのではないでしょうか。あえて、裁判所の権限、裁量による証拠の取り寄せの余地を否定する意味が、私には理解ができませんでした。   次に、直接開示型か裁判所提出型かについて、池田委員から、法的な提出先と事実の問題として管理するところがどこになるかは別の問題であるという指摘がありました。私は、事実の問題として、弁護人が検察庁において閲覧謄写することができるのであれば、そのような整理でも構わないかと思います。つまり、法的には裁判所に提出されたのだけれども、裁判所が第三者に命じて保管させる、あるいは検察官に命じて保管させるとした上で、弁護人に閲覧謄写の機会を与えたり、それを利用して鑑定することの可否について判断し得ることとすれば、弁護人が証拠にアクセスすることができることになりますので、そのような運用ができるのであれば、どちらでもかまわないと思います。   ただ、例えば段ボールが100箱あって、その中に無罪を示すファイルが1冊あるという場合に、裁判所提出型を前提とすると、先ほどから江口委員もおっしゃっておられますように、提示命令の対象となる証拠は裁判所しか見られないということになりますので、裁判所が段ボール100箱の中から1冊のファイルを探すのは大変な労力であろうと思われます。裁判所としては再審請求人・弁護人に探してもらった方が合理的だろうし、検察官としても検察庁に保管している証拠を見せることに差し支えがないという場合もあるでしょうから、このような場合には、必ずしも段ボール100箱を裁判所に持って行く必要はないだろうと思われます。刑訴法40条は「裁判所において」となっているというのですけれども、やはり閲覧場所の限定が掛かっているのは不合理でありまして、検察庁において閲覧謄写することに差し支えがないという場合には、わざわざ段ボール100箱を裁判所に移送しなければならないこととする合理性はないのではないかと思います。   その上で、私の提出資料②の2ページに書いてあることですけれども、提出を命じる証拠の範囲について、確認させてください。証拠提出命令となる証拠の範囲が、検察官保管証拠に限られるのかどうかという問題があるかと思います。そもそも再審請求手続に立会している検察官といわゆる保管検察官が一致するとは限りませんので、検察官が証拠を保管しているという場合に、保管検察官が保管している証拠をいうのか、それともそうではなくて再審請求手続に関与している検察官が保管している証拠をいうのかが、明確ではないように思われます。通常審においても、最高裁判所平成19年12月25日決定及び平成20年6月25日決定では、証拠開示命令の対象となる証拠には、捜査の過程で作成され公務員が職務上現に保管し、かつ検察官において入手が容易なものは証拠開示命令の対象に含まれると解釈されており、必ずしも検察官保管証拠に限定されないという解釈がとられていると認識しています。そうだとすれば、再審請求審における証拠提出命令についても、再審請求手続に関与する検察官が保管検察官あるいは警察から取り寄せて開示するという仕組みを前提としないと、開示される証拠の範囲が不当に狭くなって、警察にある未送致証拠が証拠開示命令の対象から漏れてしまうのではないかという危惧がございます。   また、それとの関係で、「2」の一覧表の提示命令の「(1)」の提示命令の対象は証拠の範囲について限定がないように見えますが、「(2)」の標目一覧表の対象は「その保管する証拠」という文言が使われております。仮に「その保管する証拠」に警察が保管している未送致証拠が含まれないという趣旨だとしますと、標目一覧表が提示されたとしても、警察の未送致証拠が記載されないことになりまして、適切に証拠開示を命じ得ることとならないのではないかという疑問がございますので、証拠提出命令の対象となる証拠の範囲は検察官保管証拠に限られないということを明確にする必要があると考えております。 ○大澤部会長 今の点、御発言になりますか。 ○玉本幹事 まず、この提出命令の対象となる証拠の範囲についてですけれども、通常審の証拠開示制度の下でも、御指摘がありましたように最高裁判例によって、検察官が保管する証拠以外の証拠であっても、事件捜査の過程で作成され又は入手した書面等であって公務員が職務上現に保管し、かつ検察官において入手が容易なものについては、開示命令を発し得ると解釈されているところです。その点は通常審でも明文化はされていないところですけれども、この資料に記載している提出命令についても同様の理解を前提に資料を作成しているところです。   次に、証拠の一覧表については、検察官が保管する証拠の一覧表ということで限定が掛かっていますが、これは、現行法の通常審の規定においても同様であり、それについては警察等、他の機関において保管する証拠については、検察官は責任を伴って一覧表を作成する立場にないということで、理由があると考えておりますので、ここも現行法の通常審における規定と同様の理解で資料も作成しているというところです。 ○大澤部会長 よろしいでしょうか。ほかに御発言ございますでしょうか。   田岡幹事が言われた、箱の資料の中に一つだけファイルがあるというときに、裁判所は事実の取調べとしてそれを調べるのだったら、こういう証拠といって特定して出させるのではないですか。 ○田岡幹事 こういう証拠という特定の仕方で、検察官が発見してくれればいいのですけれども、検察官が押収した段ボール100箱を未分類のまま保管しているケースでは、特定のファイルが発見できない場合があると思うのです。探しましたが、見当たりませんでした、というような場合ですね。このような場合には、裁判所が段ボール100箱の提示命令をかけて、特定のファイルを探さないと行けないということにもなりかねません。 ○大澤部会長 裁判所も事実を調べたいというときに、未提出証拠ですから、こういう類型のこういうものという、多分ある程度の概括的なもののくくりをした上で、こういうものを出してくださいと言うのではないかと、いわば類型証拠開示みたいな考え方で出すことを命じるのではないかと、それで出てくるものは絞られるのかなと、私はそんなイメージで考えていました。 ○田岡幹事 例えば、何年何月何日に作成された会計帳簿と特定しても、それが見当たりませんという場合もあるように思われます。検察官としても、段ボール100箱のどこにあるかを探すのは大変なので、この中にあるというのであれば探してもらってかまいませんという場合もあるだろうと思います。裁判所としても、あるのかないのかがはっきりしないという場合に、裁判所が提示命令をかけるよりも、弁護人に見てもらって、あるならある、ないならないという方が早く解決するのではないかと思います。 ○大澤部会長 ありがとうございます。 ○村山委員 開示の範囲の点なのですけれども、従前から申し上げているのですけれども、先ほど言った、自分は犯人ではないという争い方をしていて、その目撃者の供述を弾劾する証拠を出していると、請求理由には自分は犯人ではないということは明らかに書いてありまして、その中には現場痕跡の証拠が確定審では出ていないとかということも仮に書いてあったとした場合に、そういう場合は現場の痕跡から派生した証拠も含めて開示の対象になるとお考えなのかどうかです、特に「A案」を主張されている方が。これがやはり大きな問題でして、実際に先ほど高裁の裁判長のお手紙を一部御披露しましたけれども、そういうものが封じられてしまうのではないかという危惧感なのです。要するに、犯人ではないと言って、現場にいなかったと言っているわけですから、新証拠としては確かに供述の弾劾なのですけれども、現場痕跡に関係する証拠についての開示がなされないと実際にはなかなか真実が解明できないという場合に、裁判官が、目撃供述ではないから現場痕跡の関係の証拠は開示を命じることができないのだということにしてしまうのでしょうか。ですから、そこは関連するという中に入るのかどうかというのと、入らないということだとすると、裁量的なものを認める必要性が非常に高い。しかも、本来は職権主義だとおっしゃるのですから、元々裁判所はできていいはずなのです。それをなぜ「A案」の方は限定しようとするのか。請求理由と無関係なことなんかは当然、裁判官は証拠開示を命じるということはないと思うのです。   そこをはっきりしていただかないと、これはもう現場の裁判側からそういう疑問をたくさん私も受けていて、それは発言者に聞いてみないと分かりませんと答えているわけで、是非とも答えていただきたいと思います。江口委員も言われたように、そこを曖昧にした形にしているから、コンセンサスがないという形になって、結構議論がかみ合っていないと思われているのかもしれないですけれども、非常に重要な問題だと思うので、実際に条文を作るときにどういう事態が想定されるかというシミュレーションを考えないで条文を作るなんていうことはあり得ないと思うのです。そういう意味で、「A案」を言っている方は是非、具体的な事例についてどうなるかというのを結論をお示しいただいた上で、再度私も考えたいと思いますので、是非お願いします。 ○吉田(雅)幹事 今の御発言にあったケースの前提を教えていただきたいのですけれども、今おっしゃった再審請求をした人が犯人でないと主張されているというケースでは、旧証拠としてどのようなものがあって、新証拠としてどのようなものが提出されてきたという想定なのでしょうか。 ○村山委員 旧証拠としては、現場の例えば検証調書とかがある、それから目撃者の供述があるという前提です。新証拠としては目撃者の、例えば二人いたとした場合に、一人の方が、いや、実際は自分は見ていなかったという供述をしたと、それが新証拠ですという形で、請求理由としては、自分は犯人ではないし現場にも行っていないと、ついては見たと言っている証人は後日、それは見ていないと言っているという形で再審請求をした場合というのを想定していただければいいかと思います。 ○吉田(雅)幹事 先ほど酒巻委員がおっしゃったケースと似ているような印象を受けたのですけれども、例えば、目撃証人がA・Bの二人いて、それぞれ支え合っている場合に、Aの証言の証明力を減殺するものとして新証拠が出てきたとすると、Aの証明力が減殺されればその影響がBの証明力にも及び、ひいてはそれ以外の証拠との総合評価になっていく、そのときに、今おっしゃった検証調書の証明力にも波及していくというようなことで、先ほど酒巻委員がおっしゃったことと同様の理解になるのかなと思ったのですけれども、それでは足りないという御指摘なのでしょうか。 ○村山委員 要は、そこで現場の検証調書上に書いてある現場の痕跡の、例えば血液型若しくはDNA型の鑑定をしているかどうか、その関係の資料まで及びますかということ。 ○吉田(雅)幹事 酒巻委員の先ほどの御発言は、そういう場面も含めて関連性を認め得ると、常にではないでしょうけれども、認められる場合はあるということだと理解しましたけれども、いずれにせよ、そこは御議論いただければと思います。 ○酒巻委員 資する、役立つというのが「関連する」という言葉の意味内容である。これは現在示されている案のモデルになった主張関連証拠開示の意味内容について先ほど御説明したとおりです。個別事案の主張の具体性、再評価対象となる証拠の性質等を踏まえたその解釈、適用ということになるだろうと思います。 ○大澤部会長 成瀬幹事、御意見ございますか。 ○成瀬幹事 先ほど田岡幹事から、証拠の提出命令が事実の取調べの一方法であるならば、裁判所が元々持っていた裁量権限を縛ることは適切でないので、村山委員や鴨志田委員が提案されているように、「A案」の提出命令を義務付ける規定とは独立に、裁量で提出命令を出すことができる旨の規定を別途設けるべきという御提案がございました。まずは、この点について、私の意見を申し上げます。   現行刑事訴訟法において、事実の取調べは、裁判官の認識活動一般を指す広い意味で用いられていますので、田岡幹事が何度も引用してくださっているように、私は、概念の整理として、裁判官の認識活動である証拠の提出命令もそれ自体が事実の取調べの一方法であると考えるべきだと思っています。それゆえ、現行法においても、裁判所には、事実の取調べの一方法として、証拠の提出を命じる権限はあるわけですが、検察官に対して証拠の提出を勧告することを超えて、証拠の提出を命じる権限が再審請求審の構造の下で果たしてどこまで認められるかということを考えた場合に、今回の「A案」で想定されている命令権限は、再審請求を受けた裁判所が、再審請求理由に関連すると判断した証拠を対象にしており、先ほど酒巻委員や吉田幹事からの御説明にあったように、審理の経過に応じて関連性の範囲が広がっていくことまで考慮しますと、再審請求審の構造の下で裁判所に認められる提出命令権限は、基本的に「A案」で尽くされているように思われます。   それにもかかわらず、更にもう一つ、2段階目において、裁判所は裁量で証拠の提出を命じることができるという規定を設けるとすると、先ほど池田委員がおっしゃったように、要件が無限定となり、裁判所による判断の安定性を損なうおそれがあります。「A案」における再審請求理由との関連性の意義について、さらに詰めて検討する必要があるという御指摘は理解いたしますが、制度としては、現在、裁判所が有している証拠提出命令の全権限を義務化した上で明文化するのが「A案」であり、これのみとすることが適切であると考えます。   次に、「検討課題」の最後にある「即時抗告権を認めることとするか」という点について意見を申し上げます。  私は、第9回会議において、裁判所が事実の取調べについてした決定に対して手続関与者に逐一即時抗告を認めることは相当でないと述べた上で、その趣旨は、事実の取調べの一方法である証拠の提出命令にも妥当し得るように思われるという発言をしました。   もっとも、証拠の提出命令については、それが専ら検察官が保管する裁判所不提出記録を対象とするものである点で、類型的に、その他の事実の取調べとは異なる事情があり、そのことを踏まえて更に検討したところ、証拠の提出を命ずる決定又は証拠の提出命令の請求を却下する決定に対しては、その他の事実の取調べについての決定と区別して、特に即時抗告を認めることが必要かつ相当であると考えるに至りました。   すなわち、証拠の提出命令の対象である裁判所不提出記録は、捜査機関が事案の真相解明に向けて幅広く収集した証拠の一部であり、その中には、検察官が通常審において有罪立証に用いた証拠の信用性・証明力等に関わる証拠が含まれている場合もあることから、他の証拠に比して、類型的に、再審請求者等の主張に追加・変更をもたらす証拠が含まれている可能性が高いと考えられます。  したがって、裁判所が検察官に対して、裁判所不提出記録の提出を命ずるか否か、命ずるとしてどの範囲で提出を命ずることとするかは、再審請求者等の主張の在り方に大きく影響し得るものであり、ひいては、裁判所の判断対象にも重大な影響を及ぼし得るものであるといえます。   そのため、証拠の提出を命ずる決定又は証拠の提出命令の請求を却下する決定について、その是正を再審請求に対する終局決定に対しての上訴によることとした場合、上訴審において、証拠の提出命令について第一審と異なる判断が示されたときに、証拠の提出を命じ又は命じないことを前提として行われた第一審の手続を大幅にやり直さなければならなくなるおそれがあることから、再審請求審における円滑な審理を促進する観点からは、第一審の段階で、証拠の提出命令に係る不当な決定を是正する機会を付与することが適当であると考えます。   第9回会議の時点では、まだ定見がありませんでしたので、検察官については、証拠の保管者の立場から即時抗告を認める可能性にも言及しましたが、ただいま申し上げたことを踏まえると、証拠の保管者としての立場から検察官に即時抗告を認めるべきか否かを検討するまでもなく、証拠の提出を命ずる決定又は証拠の提出命令の請求を却下する決定に対しては、即時抗告を認めることが相当であると考えます。 ○大澤部会長 さらに御発言いかがでしょうか。 ○村山委員 裁量的な開示命令を否定する議論については、私は非常に疑問がありますし、反対します。これはもう現場の裁判官からそう言われているので、私としても頑張らざるを得ないと思っています。というのは、義務的な規定で関連性といっても、関連性を判断するのは検察官なのですよ。だから、検察官の方でこの程度が関連しているということで判断されて出されたら、それ以上出てこないのです。そういった場合に裁判所が、いや、もっとあるはずだと思って言っても、関連するのはここまでですと言われたら、そこでおしまいなのです。そのときに、こういう関係の証拠という形で裁判所がある程度特定した形で開示を命じるということができないということになってしまうと、大変再審請求審を審理している裁判官にとっては困る事態が生じるというのが一つです。   それからもう一つは、自ら裁量権というのが本来あったものを義務化した形で作るというときに、どうしてその裁量権の方を失わせるという議論になるのかが、これは理屈の問題で、よく理解できないのです。それをやると裁判所の判断が分かれてしまう、不安定になると、それから、それやると四審化になるのではないかと。だけれども、実際に再審請求審を担当している裁判官は、再審請求理由を念頭に確定記録を検討しているはずなので、そういう議論になるということ自体が私は非常に理解に苦しんでおります。そういう意味でも、裁量的な規定というのをなくすということは、理屈の上でも、また実際上の問題としても、大きな問題を生じると思います。   また、もう一つ言いたいのは、関連証拠で積み重ねていけばどんどん出てくるではないかと言われています。でも、実際は違います。新証拠はある日突然出てくるのです。それは、弁護人がこういうのがあるのではないかと一杯主張はしているのです。ところが、それは出てきた関連証拠に基づいて言っているのではないのです。多分こういうものがあるはずだということで元々言っているのです、最初から。それがある日突然出てくるので、関連証拠が出てきて、その関連、関連で行けば今と同じように出てくるのだというのは、実際の今の再審請求審の証拠開示の在り方を見れば、そうではないのです。私もよく分かりませんけれども、検察庁さんがある日突然方針を変えたり、出しますよと言うから、ぽんと出てくるという、そういう事態なのです。その辺は主張関連で追っていけば出てきますよと、確かに理屈の上では私もそう思いたいのですけれども、実際はそうではありません。最初からずっと開示請求をしていた、その証拠を、新証拠と結び付いていないのだけれども、どこかの時点で出てきて、それが開始の原因となり無罪の証拠になっているという現実があります。こういった点も踏まえて、是非お考えいただきたいと思います。 ○宮崎委員 第4回会議及び第9回会議においても申し上げたとおりですが、提出命令に応じて証拠を提出した結果、被害者等関係者の名誉、プライバシー等が侵害された場合、その後に名誉、プライバシー侵害等がなかった状態に戻すことは不可能であるため、証拠の提出を命じる決定に対しては、即時抗告を認めることが不可欠であります。  例えば、性犯罪で有罪判決を受けた者が再審請求をしている事案において、必要性が乏しいにもかかわらず、被害女性と知人男性との交友関係等に関する情報が記載・記録された証拠の提出が命じられて、請求人側に閲覧・謄写され、それらの情報が、意図的でなかったとしてもインターネット上に流出してしまったような場合、当該情報の内容によっては、被害女性はその名誉、プライバシー等が著しく侵害されるおそれがあります。こうした名誉、プライバシー等の侵害については、ひとたび生じてしまうと、事後的にそれがなかった状態に戻すことは不可能であるため、被害女性は生涯にわたって名誉、プライバシーを侵害されたまま生活しなければならないといったおそれも生じ得ます。したがって、裁判所への証拠の提出を命じる決定に対して、即時抗告を認めることが不可欠であると考えます。  また、具体的な要件の在り方について、併せて意見を申し上げます。検察官が保管する証拠の中には関係者の名誉、プライバシー等に関わる情報が含まれていることが多いため、通常審における証拠開示制度においては、開示の必要性の程度と弊害の内容、程度を考慮し、相当と認める場合に限って、被告人、弁護人に対して証拠を開示しなければならないこととされています。   これに対して、田岡幹事の今回出された試案によれば、積極的に「相当でない」と認められない限り証拠の提出を命ずる規律とする御提案だと思いますけれども、「相当である」か否かが必ずしも明らかでない場合においても証拠の提出を命ずることとなりかねないため、通常審においては、開示の必要性の程度が名誉、プライバシー侵害等の弊害の程度を下回り、相当と認められないとして開示されなかった証拠についても、再審請求審においては「相当でない」とまではいえないとして閲覧・謄写の対象となり得ることとなります。  しかしながら、通常審と再審請求審とで関係者の名誉、プライバシー等を保護する必要性に何ら変わりはないにもかかわらず、このように、原則と例外を逆転させて、通常審よりも幅広い証拠が閲覧・謄写の対象となり得るとすることは相当でない上、再審請求審が、十分な手続保障と三審制の下で確定した有罪判決について、なお事実認定の不当などがあった場合にこれを是正する非常救済手続であることとも整合しないと考えられます。   そもそも御提案の前提は、事件発生から年月が経過している再審請求審の段階においては、通常審の段階に比して証拠の閲覧・謄写によって生じる弊害のおそれは低減しているとの発想に基づいているものと思われます。しかしながら、再審請求審の段階になったからといって、名誉、プライバシー等が侵害されるおそれが一律に、あるいは類型的に減少しているものではありません。また、第3回会議において田辺参考人も述べられていたとおり、関係者に関する事情の中には、事件発生から長い年月が経過しているからこそ今更知られたくないものもあると考えられます。   以上を踏まえると、第4回会議においても申し上げたとおり、再審請求審における証拠の提出命令の規律を設ける場合には、必要性と弊害の双方を考慮し、相当と認める場合に提出を命ずる規律とすべきであります。 ○大澤部会長 本日はこの辺りまでということでよろしゅうございますでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 ありがとうございます。一応、本日は「第1 再審請求審における検察官の保管する裁判所不提出記録の弁護人による閲覧・謄写」というところまで審議をしたということで、次回は配布資料20に沿う形で、記載した論点のうち本日議論ができなかったものについて審議を行うほか、配布資料20に記載のないものについて、最後に「その他」として時間枠を設けて審議を行う、そのようなことにしたいと思いますが、具体的な中身につきましては更に期日間に詰めて、なるべく早めに御案内するということにさせていただきたいと思います。   本日の会議における御発言の中で、特に公開に適さない内容にわたるものはなかったように理解しておりますが、しかし様々な御発言もございましたので、非公開とすべき部分があるかどうかにつきましてはなお精査をさせていただいた上で、そのような部分がある場合には、御発言なさった方の御意向なども確認した上、該当部分について非公開とする等、適宜の処理をさせていただきたいと思います。それらの具体的な範囲や議事録上の記載方法等につきましては、部会長である私に御一任いただきたいと思います。他方で、本日の配布資料につきましては特に公開に適さない内容にわたるものはなかったと思われますので、公開することとしたいと思います。以上のような取扱いとさせていただくということでよろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 ありがとうございます。   それでは、次回の日程について事務当局から説明をお願いいたします。 ○今井幹事 次回の第14回会議につきましては、令和7年12月23日午後1時30分からを予定しております。   また、現在皆様に予定を確保していただいている令和8年1月6日があるかと思いますけれども、この状況を考えますと、そこでも御議論いただく可能性があるかと思いますので、引き続き確保の方はよろしくお願いいたします。詳細につきましては、別途御案内申し上げます。 ○大澤部会長 本日は大変お疲れ様でございました。これにて閉会といたします。どうもありがとうございました。 -了-