法制審議会 刑事法(再審関係)部会 第14回会議 議事録 第1 日 時  令和7年12月23日(火)   自 午後 1時30分                         至 午後 6時09分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  1 審議          ・「再審請求審における検察官の保管する裁判所不提出記録の弁護人によ           る閲覧・謄写」          ・「再審請求又は再審開始決定があった場合の刑の執行停止」          ・「再審請求に係る決定に対する不服申立期間」          ・「再審開始決定に対する不服申立て」          ・「再審請求の審理に関するその他の手続規定」          ・「再審請求手続に関する費用補償制度」          ・「その他(再審開始事由)」         2 その他 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○今井幹事 ただいまから、法制審議会刑事法(再審関係)部会の第14回会議を開催いたします。 ○大澤部会長 いつものことながら、本日も御多忙のところ御出席くださり、誠にありがとうございます。   本日、寺田関係官はオンライン形式により出席されています。また、後藤委員はオンライン形式により出席される予定ですが、所用のため遅れての出席となります。なお、佐藤委員は所用のため途中で退出されると承っております。   本日は、特に新たな配布資料はございませんので、早速、諮問事項の審議に入ってまいりたいと思います。本日も前回の会議でお配りした配布資料20に沿って、また、前回、田岡幹事から提出されました資料であります「二巡目の議論を踏まえた、意見の集約に向けた試案」も参考にしつつ、審議を行うこととしたいと思います。   順番でございますが、まず前回の積み残しとなっておりますところから議論を開始するということで、「第1 再審請求審における検察官の保管する裁判所不提出記録の弁護人による閲覧・謄写」のうち「3 複製等の適正管理」から「5 目的外使用の罪」まで及び「検討課題(2) その他」について審議を行い、その後、順次、「第5 再審請求又は再審開始決定があった場合の刑の執行停止」、「第6 再審請求に係る決定に対する不服申立期間」、「第2 再審開始決定に対する不服申立て」と進んだ後、「第4 再審請求の審理に関するその他の手続規定」のうち、まだ御議論いただいていない「4 再審の請求についての意見聴取並びに審理を終結する日の指定及びその通知」から「6 手続の受継」まで及び「検討課題(2) その他」、そして「第7 再審請求手続に関する費用補償制度」について審議を行い、その上で、配布資料20に記載していない論点・項目として、論点整理(案)「4 再審開始事由」及び「7 弁護人による援助」について審議を行うこととしたいと思います。  少し分かりづらい御説明になりましたが、そのような進め方とさせていただくことでよろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 ありがとうございます。それでは、まず、配布資料20の「第1 再審請求審における検察官の保管する裁判所不提出記録の弁護人による閲覧・謄写」の枠内の「3  複製等の適正管理」から「5 目的外使用の罪」までについて審議を行いたいと思います。資料の説明は前回既に済んでおりますので、本日は繰り返しません。  これらの項目については相互に関連しますことから、まとめて審議を行いたいと思います。それでは、御意見・御質問等がある方は挙手の上、御発言をお願いいたします。 ○田岡幹事 私は、「田岡幹事提出資料②」3ページ以下に書きましたとおり、裁判所提出型とするのであれば、目的外使用の禁止の規定及び罰則の規定を設ける必要はないと考えておりますので、第10回会議における他の委員、幹事の皆様の御意見を踏まえまして、その趣旨を改めて御説明したいと思います。  まず、大前提といたしまして、弁護人が検察官から開示された証拠を謄写した場合に、謄写記録に被害者など関係者の名誉・プライバシーに関わる情報が含まれている場合がございます。このような場合に被害者等の関係者の名誉・プライバシーを保護しなければならない、また、それが外部に流出することがあってはならないということは当然のことです。そのこと自体については、全く異存はございません。ただ、これは、民事、家事、行政手続のほか、刑事事件に被害者等の委託弁護士として関与する場合であったとしても同様であり、関係者の名誉・プライバシーを保護する必要は再審請求人の弁護人になる場合に限られるわけではございません。日弁連の職務基本規程第18条及び弁護士情報セキュリティ規程によれば、弁護士は取得した情報を適切に管理する責任を負っておりますので、刑事訴訟法281条の3の規定を待つまでもなく、謄写した記録を適正に管理しなければならない、また、それを目的外に使用してはならないということは、当然のことです。第10回会議において成瀬幹事から、再審請求審において目的外使用が禁止されないのは通常審との整合性がないという御指摘を頂きました。  しかし、繰り返し指摘しておりますとおり、通常審においても、裁判所が関連事件の記録を取り寄せることはございますし、また、民事訴訟においても、文書送付嘱託や文書提出命令によって刑事裁判所又は検察官が保管する証拠を取り寄せる場合もございます。さらに、被害者等の委託弁護士として、刑事事件の記録を謄写することもございます。しかし、このような場合には、目的外使用禁止の規定及び罰則の規定はございません。   例えば、犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律第3条第1項によると、被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士は訴訟記録の謄写ができますが、第2項により「使用目的を制限し、その他適当と認める条件を付す」ことができるとされており、第3項には、閲覧又は謄写により知り得た事項を用いるに当たり、「不当に関係人の名誉若しくは生活の平穏を害し、又は捜査若しくは公判に支障が生じさせることのないように注意しなければならない」という規定が置かれるにとどまっております。  被害者等の委託弁護士として謄写した記録については個別的に目的外使用が禁止されるにとどまり、かつ、罰則の規定がないにもかかわらず、再審請求人の弁護人として謄写した場合には、一律に目的外使用が禁止され、かつ、罰則の規定を設けるという案には、整合性がありません。   もとより、被害者等の関係者の名誉・プライバシーを保護する必要があるということ自体を否定しているわけでありません。ただ、そのためであれば、少年審判規則7条を参考に、閲覧・謄写を許可する際に、その使用目的を制限したり、あるいは、条件を付したり、知らせる時期若しくは方法を指定するなどの措置によって弊害を防止することは可能であり、一律に目的外使用を禁止する必要はございません。また、このような規律の在り方は、再審請求手続と同様に職権主義の手続である少年保護事件と整合的であるといえます。そうすると、これらの規律に加えて、再審請求人及び弁護人に対してのみ、目的外使用禁止の規定及び罰則の規定を設ける合理性はないと考えております。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○鴨志田委員 田岡幹事の御意見に全面的に賛同するものなのですが、それに少し補足して申し上げたいと思います。   この間、12月12日付で司法情報公開研究会という有識者団体が法務大臣宛てに申入書を発出し、マスコミでもかなり大きく報じられています。前回の配布資料、これは机上配布ではなくて委員、幹事にそれぞれメール添付で送られるという形で資料として送られたものの中にこの申入書が入っております。その中に申入れの趣旨として、一つは、「再審請求手続きにおいて検察官が開示した証拠の目的外使用(開示証拠の目的外使用)禁止を定めないように求める」という記載とともに、もう一つ、「目的外使用の禁止の是非を審議するに当たっては、公共的議論、報道に関する関係者や有識者の意見を聴き、尊重するよう求める」ということが加えられています。   この部会でも第2回のヒアリングにおいて、マスコミ関係者の宮下参考人が、審理の公開ということについて言及をしておりますので、既にマスコミ関係者、報道関係者にとって、この規定の帰すうが非常に重要になってくる、報道の自由等に照らして問題になってくるということは認識としては共有されているかと思いますが、それに加えて、この申入れの理由の中で、この部会では再審制度について再審請求人とか事件関係者とか裁判所とか、また訴訟当事者やそれに関係する人の観点という、どちらかというと内部的な観点から議論を積み重ねてきたわけですけれども、この目的外使用についてはその影響を受ける主体がそれ以外の外側にも存在するということに目を向ける必要性があるということを指摘しています。つまり、それは主権者たる国民であり市民である、市民がその裁判についての知る権利や論評する表現の自由に関わってくる問題であると、こういう観点から、この問題を検討するに当たっては、そういった視点からの関係者、有識者の意見を聴く、そしてまた尊重するということも必要なのではないかという指摘がされています。この部会も議論が進んできていますので、なかなか具体的な場を設けるということは難しいかもしれませんけれども、このような意見が出されているということは、やはり裁判の透明化、公開ということが裁判の健全化に影響する、資するものであるということの大きなモメントになっているということの表れだと思います。   一つ懸念があるのが、今回の検討資料「第1」の「4」「(2)」のところに、通常審の場合と同じように、違反した場合の措置についての考慮事項ということで幾つかが挙がっているのですけれども、「当該複製等に係る証拠が公判期日において取り調べられたものであるかどうか」という文言が入っています。これは通常審の規定からそのまま来ていると思うのですけれども、再審請求手続は非公開の手続ですので、これを考慮に入れる場面というのが、少なくとも改正がされず現状のままであれば、あり得ない、このことが通常審と平仄を合わせるということの前提を欠いていると思います。通常の裁判であれば公開の法廷で証拠が取り調べられるというところがあるので、目的外使用禁止規定があったとしても、一般の人たちやマスコミが開示証拠を見ることができる機会が残されているわけですけれども、再審請求手続の中において現状ではその機会がないということは、同じような規定をはめるということについての正当性に疑義が生じるものと思います。 ○山本委員 第3回のヒアリングにおいても磯谷参考人が、証拠の開示による被害者のプライバシー侵害や名誉毀損への憂慮を強く指摘されており、先ほど鴨志田先生が御指摘していた12月15日にメールで送付されたもう一個の資料ですけれども、事件で殺害された被害者の御遺族である加藤氏ほかが作成して提出された意見書においてもプライバシー侵害の強い懸念が指摘されています。そのため、今後の被害者の捜査への協力の確保のためにも目的外使用の禁止を含めた規制が必要だと思います。この点、マスコミへの公開は一般に伝播する範囲も広くなると考えられるため、目的外使用に当たると考えています。仮にこれが許されるとすれば、開示の際の相当性の判断にも影響し、かえって開示の範囲が狭まる可能性があるとも考えられる点からも、マスコミへの公開を含む目的外使用の禁止は必要だと考えています。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○川出委員 私も、今回、新たに証拠の提出命令の制度を設ける以上は、関係者の名誉・プライバシー等を保護するとともに提出命令の適正な運用を確保するために、検討資料「第1」の「3」から「5」に記載されたような証拠の複製等の適正管理、目的外使用の禁止等に関する規律を設けるべきであると思います。   先ほど田岡幹事から、証拠の提出命令について裁判所提出型を採るのであれば、目的外使用禁止規定を設ける必要はなく、裁判所が弁護人に閲覧・謄写の許可をする際に条件を付したり、閲覧・謄写を禁止したりすることによって弊害を防止するという措置をとるべきである旨の意見が示されました。しかし、既に指摘がなされていますように、弁護人による目的外使用を防止する措置として、提出された証拠について閲覧・謄写自体を許可しないということまで可能としますと、裁判所が検察官から提出を受けた証拠であっても弁護人が閲覧・謄写できないという事態が生じ得ることになりますので、それは手続保障上問題があり相当でないと考えられます。   また、これも既に指摘されているところですが、仮に目的外使用禁止規定を設けないこととした場合、同じ事件を扱う刑事手続である通常審及び再審公判における検察官開示証拠を弁護人が謄写した場合には目的外使用が禁止されるのに対して、再審請求審における検察官提出証拠を謄写した場合には目的外使用が禁止されないということになるわけですけれども、謄写された証拠に係る関係者の名誉・プライバシーの保護等を図る必要性は変わらないわけですから、両手続について異なる取扱いをすることに合理性を見いだすことは困難であろうと思います。   これに対しては、先ほど鴨志田委員からも御意見がありましたように、再審請求審は非公開の手続で行われており、マスコミ等が事実の取調べを法廷で傍聴することはできないので、その機会がある通常審とは異なる扱いをする理由があるという指摘もなされています。しかし、そもそも、通常審における弁護人への証拠の開示も、今回設けようとしている裁判所への提出命令によって提出された証拠の弁護人による閲覧・謄写も、その証拠の内容を広く一般に知らしめることを目的として含んではいませんので、そうだとすれば、審理が公開されているか、それとも非公開であるかということを、両手続において異なる扱いをすることの理由とするのは妥当でないと思います。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○成瀬幹事 川出委員が最後に指摘された点について、私も補足的に意見を申し上げたいと思います。   先ほど鴨志田委員から、再審請求審は、通常審と異なって、非公開の手続で行われており、マスコミや一般市民が事実の取調べを法廷で傍聴することができず、報道の機会や意見表明の機会がなくなることを理由として、目的外使用の禁止に関する規律を設けることに反対する旨の御意見が述べられました。  しかしながら、目的外使用の禁止の対象となる証拠は、飽くまでも、検察官が裁判所に提出した証拠に限られる上、例えば、その概要を口頭で伝達するなどの行為は「複製等」の「提示」には当たらないとされていること等からすると、再審請求審についてマスコミ等の報道の機会が激減するとの御指摘は当たらないと思います。 また、公開の法廷で手続が行われる通常審においても、傍聴人に対して、検察官が開示した全ての証拠の内容がつまびらかにされるわけではなく、ましてや、証拠の写しが渡されることもありませんから、再審請求審の手続が非公開であるからといって、通常審と異なり、証拠の目的外使用を認めるべきということにはならないと考えます。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○田岡幹事 誤解がないように申し上げますが、私どもは、証拠を目的外に使用したいということを主張しているわけではございません。再審請求人及び弁護人としては目的内であると考えて使用したのだけれども、それが目的外使用であると疑われて処罰されることを恐れるが余り、萎縮効果が生じるということが問題であると考えております。  例えば、再審請求手続において、期日が開かれた後に報告集会を開いて、再審請求人の家族や支援者などに本日の期日ではこのようなことがありましたと報告をすることがございます。また、証拠開示を受けた場合に、再審請求人の家族や支援者などに、開示を受けた証拠の中に、例えば袴田事件の5点の衣類の写真がありましたという報告をすることがございます。その結果、再審請求人の家族や支援者から、みそ漬け実験をしてみましょうという提案がなされるということがございます。これは正に再審請求手続の準備のために証拠を使用しているのですから、目的内であると我々は考えるわけです。  また、第2回会議のヒアリングにおいて、東住吉事件では、マスコミの方が協力してくださって、燃焼実験をすることができたというお話が塩野参考人からございました。これは結果的にマスコミの方が支援者となって、再審請求手続に協力してくれたということだと思いますけれども、このようなことも目的内であると我々は考えるわけです。  ところが、目的外使用禁止及び罰則の規定が設けられますと、袴田事件の5点の衣類の写真を支援者に提示することや、マスコミの協力を得て燃焼実験を行うことは目的外使用なのではないかと疑われ、もしかしたら処罰されるかもしれないということになりますので、当然、支援者やマスコミは協力することに消極的になるし、報道も差し控えることになるでしょう。このように萎縮効果が生じる結果、再審請求手続における弁護活動が制約されてしまうということを強く懸念するわけです。   このような場合は、再審請求の準備のために使用しているのだから、当然、目的内であるということが確認できればよいのですけれども、先ほどの成瀬幹事の御説明でも、証拠の「概要」を「口頭」で伝達するのは目的外使用には当たらないという説明にとどまっており、「証拠」そのものを「提示」することは許されないことを前提にしておられるようです。それでは、袴田事件における5点の衣類の写真を支援者やマスコミに示すことは、目的外使用に当たってしまうのではないでしょうか。そうなると、再審無罪判決が確定するまでは、つまり再審公判が開かれて、証拠が公開の法廷で取り調べられて、無罪判決が確定して、確定記録の閲覧・謄写が可能になるまでは、5点の衣類の写真を支援者やマスコミに提示することはできないことになります。もし無罪判決が確定しなければ永遠に日の目を見ることはなくなってしまうということになりかねません。これは余りに不当です。  被害者等の関係者の名誉・プライバシーの保護の必要性と、そのような弊害のおそれがないと考えられる証拠を正当な弁護活動のために用いることの必要性とのバランスを図った規定としなければ、目的外使用禁止及び罰則の規定を設けることによって、再審請求手続における正当な弁護活動が制約されてしまうという懸念はやはり残ると思われます。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○池田委員 これまでの議論の中で罰則を設けることに消極の御意見もありましたので、私の意見を申し上げたいと思います。   現行刑事訴訟法において、被告人又は被告人であった者及び弁護人又は弁護人であった者について、通常審において開示された証拠の複製等の目的外使用が禁じられ、このうち被告人等については目的外使用の禁止規定が設けられたとしても、それだけではその遵守を期待することはできず、刑罰以外の実効性担保措置が存在しないことから、目的外使用一般について罰則が設けられたとされています。これに対して弁護人等については、懲戒処分により裏打ちされた高い職業倫理を有することから、被告人等の場合のように目的外使用一般についての罰則は設けないとされた一方で、対価として財産上の利益等を得る目的で開示証拠の複製等を交付等することはあり得ないこととはいえず、また、対価として利益を得る目的での目的外使用は動機において悪質であり、関係者の名誉・プライバシーの侵害等の弊害を更に拡大させる危険性が高く、行為の違法性が大きいといえることから、対価として財産上の利益等を得る目的で開示証拠の複製等を使用することについて罰則が設けられたとされています。   そして、以上述べたような趣旨は通常審のみに当てはまるものではなく、再審請求審で謄写された証拠の複製等にも等しく妥当すると考えられますので、再審請求審において謄写された証拠についても、現行の目的外使用の禁止に対する罰則と同様の罰則を設けることが必要であり、かつ相当であると考えております。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○村山委員 この目的外使用の禁止、そして罰則が付くという関係で、やはりマスコミの関係者や支援者の方々の意見を聴くと、非常に反対が強いことを私は実感しています。というのは、やはり再審事件に通常審とは少し違う側面があるというのは事実だと思うのです。再審請求事件で実際に開始になり無罪になった事件というのは多くの場合、支援者が支援をする、その支援者が、経済的な面もありますし、また実際にどういう再審の活動をするかという点でも弁護人と一緒に議論をするというような場面がたくさんあるようです。そういった方々が、やはりこの目的外使用禁止が掛かってしまうと、弁護士さんはいいかもしれない、確かに罰則の場合に条件が付されていますので。ただ、弁護士さんでない人はどうなのかというと、やはり問題が総じてあると思うのです。実際に弁護士さんのいるときに示された証拠、それは目的内だということになるのでしょうけれども、その支援者が更に別の方に支援を呼び掛ける、若しくはこういう事件なのですよということを説明するというときにそれを使うと、やはり目的外使用禁止がかぶってくるし、場合によっては罰則が適用されると。これやはり当然、萎縮するということになると思うのです。そこのところが非常に大きな問題だと言われています。   それから、マスコミの関係者から見ると、やはり再審事件というのは公判事件に比べると見えにくい。どういう証拠で何を議論しているのかというのが非常に見えにくい。そのときに弁護団が、例えば記者会見をする、報告集会をやるといったときに、どういう新証拠があるのかとか開示証拠があるのかということを示すことが、何よりもマスコミにとっては、その事件がどういうものでどういう審理をやっているかを知る一番の手掛かりになると、これも間違いないことだと思います。そういった点を封じてしまうということは果たしてどうなのかということです。   通常審との関係では多少その辺の違いがあるということと、もっと言うと、通常審でこのような規定が入っているということ自体が極めて不自由だというのは、実際に弁護士の間ではそのような意見が強く、例えば民事訴訟を起こす場合でもいちいちこれに引っ掛かってしまうというようなことも報告されています。ですから、元々通常審の規定すらもそういう疑問が呈されているものを、この再審に入れるかどうかというのは、やはり慎重に考える必要があるのではないかと思いますし、証拠開示という形で私どもも表現していますけれども、今までのこの審議会の流れで行きますと、裁判所提出型にするのだという御意見の方が多い。裁判所提出型であるとすれば、やはり少年審判的な運用、これは田岡幹事が冒頭発言されましたような、そういう運用で十分可能なのではないかと。現にそのようにやっているわけですよね。そういう意味で、どうして少年審判のような形ではなくて目的外使用を一律に禁止し、場合によっては罰則が付くのだという形に、一足飛びにそういう形にしなければいけないのかというのは、私は更に理屈の上でも疑問があります。そういう意味で、適正管理するのは当然なのですけれども、禁止規定を殊更設け、更に罰則を付けるということについては私は反対です。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。よろしいでしょうか。              (一同異議なし) 〇大澤部会長 それではこの論点についてはこの程度ということにさせていただきまして、次に、配布資料20の「第1」の「検討課題」「(2) その他」に関わるものとして、配布資料20に記載のない「第1」に関する論点・項目であります「論点整理(案)」の「1」の「(3) 再審請求の準備段階における閲覧・謄写に関する規律を設けるか」、「(5) 裁判所不提出記録・証拠物の保存・管理に関する規律を設けるか」、「(6) 証拠物の証拠価値の保全・鑑定に関する規律を設けるか」について審議を行いたいと思います。その際、田岡幹事提出資料の御提案も踏まえつつ御議論を頂ければと存じます。それでは、御意見・御質問等がある方は挙手の上、御発言をお願いいたします。 ○田岡幹事 まず、「(3)」の準備段階における裁判所不提出記録の閲覧・謄写について発言いたします。   「田岡幹事提出資料②」3ページ以下に記載しましたとおり、私は、記録事務規程第23条及び24条と同様の規定を設けることを前提に、保管検察官は、刑事確定訴訟記録法の第3条2項に規定する者から請求があったときは裁判所不提出記録を閲覧させるものとする旨の規定、また、証拠物又は証拠品を閲覧させるものとする旨の規定を設けることを提案致します。もちろん、これは、裁判所不提出記録及び証拠物を全部閲覧及び謄写させなければいけないという趣旨の提案ではありません。保管検察官の裁量を認めても構わないのですけれども、閲覧及び謄写の根拠規定を設けるという趣旨の提案でございます。   敷衍して説明いたしますと、第9回会議でも申し上げましたが、裁判所提出記録及び証拠物の閲覧・謄写については、刑事確定訴訟記録法及び刑事訴訟法に規定はございませんが、事務当局にも確認しましたが、刑事訴訟法47条ただし書による保管検察官の裁量に委ねられており、その裁量によって閲覧・謄写すること自体は何ら禁止されているものではないと認識しております。実際に松橋事件のように保管検察官の裁量によって証拠物の閲覧・謄写が実現した結果、それが新証拠となって再審開始決定に至った事件があると認識しております。  宮崎委員からも、一般論として申し上げれば、再審請求のための裁判所不提出記録及び証拠物の閲覧・謄写については、刑事訴訟法47条の趣旨を踏まえ、個別事案に応じ保管検察官において適切に対応していると説明されております。   なお、被害者等の場合には平成20年11月19日の法務省刑事局長通知によりまして、客観的な証拠については、原則として閲覧・謄写を認める運用になっていると認識しております。   ただ、現実には、松橋事件以外には、再審請求の準備段階において閲覧・謄写が許可された実例をほとんど聞いたことがありません。その理由を考えますと、刑事訴訟法47条の文言が「公判の開廷前」となっており、不起訴事件記録を念頭に置いた規定であるために、裁判所不提出記録が刑事訴訟法47条ただし書による閲覧・謄写の対象に含まれることが分かりにくいということがあると思われます。また、刑事確定訴訟記録法には裁判所不提出記録及び証拠物の閲覧・謄写の規律はございませんし、記録事務規程及び証拠品事務規程にもそれらの閲覧・謄写の規定はございませんので、そもそも閲覧・謄写が可能であるかどうかがはっきりしないということに原因があるように思われます。  そうであれば、根拠規定を設ければよいわけですので、保管検察官は、請求があったときには、裁判所不提出記録又は押収物を閲覧させるものとする旨の規定を設ければよいのだろうと思います。閲覧・謄写の許可の判断は保管検察官の合理的な裁量によることになりますが、裁量の逸脱、濫用があったときには違法となり得ると考えられます。   なお、宮崎委員から、なぜ確定すると証拠開示の範囲が広がるのか、そのような制度は不合理だという御指摘がございました。ただ、既に申し上げておりますけれども、通常審において開示済みの証拠は、裁判所不提出記録であっても既に開示済みなのですから、開示の範囲が広がるわけではありません。従来開示されていたものが確定後であっても開示されるというだけのことでございます。  また、通常審において開示されなかった証拠のうち、確定後であっても開示すべきものというものはあるのではないかと思います。例えば、布川事件や松橋事件では国家賠償請求訴訟におきまして、検察官が証拠を開示しなかったことについて国家賠償法上違法とする判決が確定しております。また、福井事件の再審開始決定及び再審無罪判決では、「確定審検察官の訴訟活動は、公益を代表する検察官としてあるまじき、不誠実で罪深い不正の所為といわざるを得ず、適正手続確保の観点からして、到底容認することはできない。」と判示されております。  これを踏まえて、名古屋高検の次席検事は、令和7年8月4日に管内の検察庁の次席検事に対しまして通知を発出しておりますが、その中でも、「証拠に反する事実を主張したり、誤った事実関係を前提としたまま公判を遂行させることなどあってはならないのは言うまでもなく、検察官としては、従前の主張や証拠に誤りがあることが判明したならば、速やかにそれを撤回し、必要に応じて裁判所や弁護人に経緯の説明や関係証拠の開示を行うなど適切な是正措置を行う必要があります」と記載されております。   このような開示義務は、判決が確定するとなくなるのでしょうかというのが、私の疑問です。判決確定後であっても、確定審の認定と矛盾する証拠が存在することを検察官が認識し、それを開示すれば再審無罪につながり、もしかしたら真犯人が捕まるかもしれないという事態、通常審における検察官の訴訟活動が国家賠償法上も違法と評価され得る事態が生じた場合に、それを認識しながら開示義務がないというのは私には考えられないことでございます。仮に判決確定後であっても、検察官は確定判決の事実認定に影響する証拠を発見したのであれば、当然、元被告人・再審請求人又は弁護人に対して、実はこのような証拠がございましたということを率直に認めた上で、説明する義務があるのではないでしょうか。仮にこのような証拠が通常審において開示されていなかったのであれば、それは開示されていなかったことの方が問題でありまして、たまたま開示されていなかったからといって、判決が確定すれば開示義務がなくなるということではないのだろうと思います。   したがいまして、このような証拠につきましては、判決確定後であっても、再審請求人又は弁護人から請求があった場合には、開示する義務があると考えております。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○宮崎委員 第9回会議において田岡幹事から、犯罪被害者については単に事件のことを知りたいという理由であっても裁判所不提出記録である客観的証拠の閲覧・謄写が広く許可されていることから、これと同様に再審の請求をしようとする者による閲覧・謄写も広く認められるべきであるという趣旨の御意見が示されました。ただいまも同様の言及があったかと思います。   検察におきましては、不起訴事件記録、裁判所不提出記録の閲覧・謄写について、刑事訴訟法第47条の趣旨を踏まえて対応することとしているところであります。   まず、犯罪被害者は、言われなき被害を受けた事件の当事者でありますから、被害を受けた事件の内容を知りたいと希望するのは当然であり、犯罪被害者等基本法において「その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利」を有すると定められているほか、いわゆる付随措置法により、裁判所の公判記録の閲覧・謄写についても、理由が正当でない場合や相当でない場合を除き、閲覧・謄写が認められているとおり、事件の内容を知る利益が法律上保護されているものであります。その上で、田岡幹事御指摘の通達は、不起訴事件記録を対象とするものであるところ、これは、被害を受けた事件が不起訴処分とされると、犯罪被害者は事件に関する記録を公判記録として閲覧・謄写することができず、その事件の内容を知ることができなくなってしまうことから、不起訴事件記録の閲覧請求がなされた場合に必要かつ相当な範囲でこれを認めるという弾力的な運用をすることとしたものであります。   他方、有罪の言渡しを受けた者については、通常審において証拠の開示を含め十分な手続保障がなされ、三審制の下で慎重な審理を経てもなお合理的な疑いを容れない程度の証明があるとして有罪判決の言渡しを受けた者であり、再審請求の準備段階においては、いまだ再審請求すらしていない者であります。  このような両者が置かれている立場の違い等に鑑みれば、犯罪被害者から不起訴事件記録の閲覧請求がなされた場合と、有罪の言渡しを受けた者等の再審の請求をしようとする者から裁判所不提出記録の閲覧・謄写の請求がなされた場合とで、運用上の取扱いが異なることは何ら不合理なものではないと考えています。   また、これまでも申し上げているとおり、いまだ再審請求がなされていない再審請求の準備段階においては、再審請求の理由すら不明であり、どのような具体的な必要性から裁判所不提出記録の閲覧・謄写を求めているのかが明らかではないため、検察官としては、個別の事案に応じてケース・バイ・ケースで閲覧・謄写の許否を判断せざるを得ないのであり、閲覧・謄写を認めるべき証拠の範囲をあらかじめ類型的・具体的に示すことは困難と言わざるを得ないと考えます。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○成瀬幹事 先ほど田岡幹事から、刑事訴訟法第47条ただし書では、条文の文言上、再審請求の準備段階において保管検察官の裁量により裁判所不提出記録の閲覧・謄写を許すことができることが必ずしも明らかではないので、明確な根拠規定を設けるべきであるという御意見が示されました。  しかしながら、先ほど田岡幹事自身が言及され、宮崎委員も発言されたように、現在、検察実務においては、この刑事訴訟法第47条ただし書のもとで、保管検察官の裁量により、再審請求の準備段階においても裁判所不提出記録の閲覧・謄写を許すことができると理解されており、事務当局も同様の理解を示しておられますので、根拠規定を設けるだけであれば、その必要性は乏しいと思われます。   仮に田岡幹事の御提案を踏まえて何らかの規定を設けるのであれば、単に根拠規定を設けるだけでなく、どの範囲で裁判所不提出記録の閲覧・謄写ができるかという点について具体的な要件を定める必要があると思われますが、先ほど宮崎委員から御指摘がありましたように、再審請求の準備段階においては、どのような理由で再審の請求をしようとしているかが不明であるため、その段階で閲覧・謄写を認めるべき証拠の範囲を適切に画定して要件を設けることは難しく、やはり刑事訴訟法第47条の趣旨を踏まえて、個別の事案ごとに、証拠を保管している検察官において判断せざるを得ないように思われます。   よって、単に根拠規定を置くのであればその必要性は乏しく、仮に具体的な要件などを定めようとすると困難な課題が生じますので、田岡幹事の御提案は相当でないと考えます。 ○大澤部会長 ほかにございますでしょうか。 ○鴨志田委員 少し別の観点になりますけれども、前回、「第4」の「2」の「調査手続」という、要するに再審の請求を受けた裁判所がいわゆるスクリーニングの手続をとるという形で、法令上の形式を満たしていなかったり、再審の請求理由が明らかに法に定める事由に該当しないというときには棄却をしなければならないという形で、この段階で速やかに棄却をされると、そういう手続を入れるべきであるという提案が出て、これに沿った議論をされています。   この手続を導入することを前提にすると、やはり弁護人の付いていないケース、例えば受刑者等が、自分はやっていないから再審をしたいというときに、何もできないのではないかと思うのです。再審請求の準備段階で証拠にアクセスすることができない。例えば閲覧・謄写と言っても受刑者本人では無理なので、弁護人を付けて弁護人に見に行ってもらいたくても、弁護人を選任することもできないということになると、無実で本当に自分はやっていないから再審を請求したいと思っても、戦うためのグローブも与えられずセコンドも付けないままプロボクシングのリンクにいきなり上げられて、一発でノックアウトされて終わるというような話になってしまうのではないかと思います。   再審請求の準備段階で証拠開示を認めるということが手続的に極めて困難を伴っているということは、これまでたくさんの委員、幹事の方が御指摘された点について、そのとおりだろうと思うところもあります。例えば、証拠の範囲であったり、それから再審を請求しようとする者というのは結局有罪判決を受けた者と同じではないかというような御指摘もあって、それは確かにそのとおりだと思う部分もあります。しかし一方において、これから調査手続というものがもし入るのであれば、その調査手続によってふるいに掛けられてしまって真に救われるべき人が救われないという状況を、可能な限りそのようなリスクを回避するための手続的な手当てというのは、やはり必要なのだろうと思います。ですから、調査手続を入れるのであれば、その前段階で、ある程度証拠にアクセスできることとか、それから専門家、弁護士の援助を受けるということが決められなければ、そことのバランスの関係で問題があるのではないかということを、前回の議論を受けて強く思っています。   例えば、この部会の諮問事項の枠の中には入らないかもしれませんけれども、前回の議論で田岡幹事が提案をしたとおり、再審の準備段階ではいわゆるリーガルエイド、法律扶助のような形で弁護士を付けることも考えられるのではないかと思います。弁護人としての弁護活動をする前の段階で、単に証拠にアクセスをし、そしてそれを閲覧・謄写をし、情報を受刑者等に提供するという段階での弁護士の活動というのは別途想定できるのではないか、それは再審請求を行うに当たっての材料を与えるという観点で、またその限度でそのような弁護士の活動というのを想定すると、これは刑事弁護とは異なるので、別途法律扶助の対象にもなってくるのではないかと思います。   法律扶助の対象になるということが何を意味するかというと、そこでスクリーニングができるということです。法律扶助には審査がありますから、全く箸にも棒にも掛からないような訴えはそこではじくこともできる。弁護士が付くことによって、先ほどの証拠の範囲とか、再審請求しようとする者というところが無限定に広がる問題を、むしろ弁護士がそこに関与するということで、ある程度制限をすることができるのではないかと思います。   いずれにしても、調査手続という大きな手続が入ってくるということを前提にしたときに、再審請求しようとする者に何らの武器も援助も与えないというのは、やはりあってはならないと、これだけは申し上げておきたいと思います。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○池田委員 再審請求の準備段階における閲覧・謄写に関する規律を設けるべきかどうかということについて意見を申し上げます。   かねて議論の対象となってまいりました日本弁護士連合会改正案第444条の5のような規律を設けることについては、宮崎委員から既に御指摘があったように、刑事訴訟法第47条の趣旨を踏まえて、保管している検察官において個別の事案に応じ適切に対応していることから、規律を設けることの必要性自体について疑問が呈されております。その上、通常審で開示の対象とならない証拠物を閲覧・謄写の対象とすることは、通常審の証拠開示制度などとの整合性から問題がある、あるいは、通常審で開示の対象とされた証拠であっても、改めてこれを閲覧・謄写させることの相当性について慎重に判断すべき場合もあり得ることから、閲覧・謄写を一律に認める取扱いとすることは相当でない、といった様々な課題が指摘されており、その克服は容易ではないと思われます。   さらに、今般、田岡幹事から御提案されている試案ですけれども、再審の請求をしようとする者又は弁護人から請求があったときは、一律に裁判所不提出記録及び証拠物を開示しなければならないとするものとするのは、日本弁護士連合会改正案第444条の5よりも幅広い証拠を開示の対象とするものであって、先ほど指摘したこれまでの議論の内容に鑑みますと、より問題が大きいものとなっていると言わざるを得ないように思われます。こうした議論状況によりますと、御提案のような法整備を行う方向で意見を集約することは困難であると考えております。 ○大澤部会長 更にございますでしょうか。 ○田岡幹事 恐縮ですが、閲覧及び謄写を保管検察官の裁量に委ねた場合に、本当に無実を示す証拠が裁量により開示されるのかという点だけは、確認させてください。  鴨志田委員からも御指摘がありましたが、仮に調査手続の規定を設けて、方式違反の場合には迅速に棄却するという規定を設けるのであれば、再審請求の準備段階における証拠開示を認めないと、再審請求人は新証拠を提出することができない限り、証拠開示が命じられることはなく、迅速に棄却されることになりかねません。  例えば、佐賀県警において、DNA型鑑定の不正があり、科捜研の技術職員が鑑定書を偽造していたことが判明したということが報じられています。元被告人が、自分の刑事事件のDNA型鑑定は偽造であることは間違いないと思われるので、再審請求をしたいと考えたとします。この場合、科捜研の技術職員はまだ有罪判決を受けていないために、確定判決が得られていないとしますと、刑事訴訟法435条6号、若しくは、同条1号及び同法437条により、証拠が偽造であるということを証明する必要があるわけです。   それでは、新証拠又は確定判決に代わる証明の証拠があるのかと言われると、手元にあるのはそれこそ新聞記事ぐらいしかありませんので、DNA型鑑定が偽造であることを証明しようとすれば、DNA型鑑定の資料を開示するように求める以外に方法はないのではないでしょうか。元被告人が検察官に対し、DNA型鑑定が偽造されたと報じられているので、自分の刑事事件のDNA型鑑定の資料を開示してくださいと申請すれば開示されるというのでしたら、それを添付して再審請求ができると思うのですが、これが開示されないとしますと、元被告人の手元には新証拠はございませんし、確定判決に代わる証明もできないわけですから、再審請求ができないということになるのではないでしょうか。   通常審では開示されなかった証拠が判決確定後に開示されるのはおかしいと言われますけれども、DNA型鑑定の不正が明らかになったのは判決確定後なのです。判決確定後にDNA型鑑定が偽造であるということが明らかになったから、再審請求をしようとしているわけです。通常審で開示されない証拠がなぜ開示されるのかといえば、それは判決確定後に再審開始事由が明らかになったからです。このような証拠は、検察官に開示義務を負わせないと、本当にDNA型鑑定が偽造であり再審開始事由がある場合でも、再審請求ができなくなってしまうのではないでしょうか、ということをお考えいただきたいと思います。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。   準備段階の開示の話にほぼ集中していたと思いますけれども、ほかにもここで併せて議論することになっております論点・項目がございます。それらの点も含めて、いかがでございましょうか。 ○田岡幹事 「論点整理(案)」の「1」の「(5)」と「(6)」の証拠物の保存・保管に関する規律、及び証拠物の証拠価値の保全と鑑定に関する規律について、試案を出しておりますので御説明いたします。   まず、「田岡幹事提出資料②」3ページ以下のとおり、裁判所不提出記録については記録事務規程23条及び24条に保存・保管の規定がございますが、内規にすぎませんので、これを刑事確定訴訟記録法、刑事訴訟法でもいいのですけれども、法律に明記するということを提案しております。証拠物又は証拠品については、還付対象の証拠物と還付対象外の証拠物に分かれます。還付対象外の証拠物については証拠品事務規程89条に規定がありますが、内規にすぎませんので、これを刑事訴訟法に明記することを提案しております。   問題になりますのは還付対象の証拠物をどうするかということでございます。第10回会議でも申し上げましたが、例えば確定判決において有罪認定の根拠となった証拠物であっても、還付の対象となるものに関しましては、刑事訴訟法123条1項で、留置の必要がないものは、事件の終結を待たないで決定で還付するとされているために、還付されてしまいますと、確定判決の証拠がなくなってしまうおそれがあります。しかし、再審請求が予測される場合には、当然、検察官においても、判決確定後もなお保管・保存の必要があると思われますし、再審請求人においても、保管・保存してもらいたいと思うのが通常であります。被害者にとっても、その方がいいという場合は当然あり得るわけです。このような場合、つまり還付対象証拠物についても、還付対象外の証拠物と同様に、判決確定後になお保管・保存する規律を設ける必要性はあると考えております。   また、証拠価値の保全及び鑑定につきましては、日弁連改正案445条の12の規定を設けることを提案しております。証拠品事務規程の第2条に類似の規定がありますが、これは努力義務であり、内規にすぎませんから、法律に規定するという趣旨の提案です。  その上で、第10回会議において、池田委員及び恒光幹事から、DNA型鑑定を命じる旨の請求があったとしても、それが再審請求理由と関連性がない場合には、そもそも鑑定の必要性の判断ができないといった御指摘がありました。これは、前回会議の証拠開示と同じ話になりますが、再審請求理由とおよそ関連性がないのに、DNA型鑑定をせよということであれば、それは確かに必要性の判断はできないでしょう。  しかし、これは、再審請求理由との関連性をどう考えるかという問題だと思います。例えば、私は犯人ではないと主張して新証拠を提出しているのだけれども、その新証拠だけでは犯人でないことが明白であるとはいえないために、明白性の判断のためには、確定判決の証拠構造を前提にすると、検察官が保管する鑑定試料を事実の取調べとして裁判所に提出させて取り調べたり、あるいはそれを利用したDNA型鑑定を実施する必要性が認められる場合があり得ると思われます。  なお、このような場合には、裁判所が自ら事実の取調べとしてDNA型鑑定を実施することができるというのは成瀬幹事が第10回会議で指摘されたとおりなのですけれども、それだけではなく、鑑定試料の存否及び保管状況を報告させたり、検察官において保管させた上で鑑定を実施させるということも当然あり得ることです。この場合には、裁判所に証拠を出させる必要はないわけですので、検察官に対して、鑑定試料となり得る保管証拠の存否とその保管状況を明らかにさせた上で、検察官に対して、その保管を命じた上で、DNA型鑑定を実施してくださいと命じる必要があるわけです。  ただ、事実の取調べとしてどこまでできるのかは明確ではありませんので、証拠の存否及び保管状況を明らかにさせたり、DNA型鑑定が実施できるという規律があった方が、実務的には、それを手掛かりにしてDNA型鑑定が実施できるようになるのではないかと思われます。規定を設けなくても事実の取調べとしてできますとおっしゃられるのでしたら、それはそれでもよいかと思いますので、「田岡幹事提出資料②」には記載しておりませんが、現行法上明確でないように思われましたので、付け加えさせていただきました。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○池田委員 ただいま田岡幹事から、裁判所不提出記録や証拠物の保存・管理に関する規律を法律に設けるべきという御意見の提示がありました。このうち、まず裁判所不提出記録及び国庫に帰属した証拠物については、これまでも御議論があったとおり、規律を設ける必要性について、訓令は行政機関の職員にとって義務規範として当然に遵守されるべきものであることから、それが法律になることによってどれだけの差異が生じることとなるか判然としないこと、検察、警察における裁判所不提出記録、証拠物の適正な保存・管理のためには、法務大臣訓令等や国家公安委員会規則等の規律が機能することが重要であり、これらとは別に法律に規律を設ける必要性には疑問があるといった指摘がされているところです。   次に、還付対象の証拠物の保管を義務付けることについては、本日の田岡幹事の御提案を前提にしても、これまでの議論にあったように、判決の確定によって還付すべきこととなった証拠物について、所有者等の意見聴取手続を履践するだけで検察官のみの判断によって強制的に保管を継続することが可能となるという意味において、差押えと同様の効果を生じさせることとなることは変わらないと考えられ、所有者等の権利制約を正当化できるかについては疑問が残るところです。   また、その保管期間については、田岡幹事の本日の御提案は、還付対象証拠物の対象として、刑事訴訟法に証拠品事務規程第88条ないし第90条と同様の規定を定めた上で、日弁連改正案444条の3のように、再審保存の手続、刑事確定訴訟記録法第3条と同様の規定を設けるというものであり、その意味するところは、再審の請求が行われることが予測されるときは、還付対象の証拠物を、期間を定めて保管することとし、その保管期間を延長することができることとし、さらに、再審の手続のための保存の必要があると認めるときは、その保管期間満了後も保存することとするものであることと理解いたしました。しかし、国庫帰属証拠物や刑事確定訴訟記録法の保管記録については、保管対象物の権利者に対する権利の制約について考える必要がないのに対して、還付対象の証拠物については、所有者等の権利制約を正当化するための十分な根拠が必要であることから、国庫帰属証拠物や刑事確定訴訟記録法の保管記録と同列に考えて、証拠品事務規程第89条等や刑事確定訴訟記録法第3条に類似した規律を設けることは相当でないと考えます。   また、これまでにも議論があったとおり、再審の請求は同一の理由によるものでない限り何度でもすることができ、棄却されたとしても再び再審の請求がなされる可能性があり続けることから、御提案の規律を設けた場合、将来の再審請求に備えて半永久的に還付対象の証拠物の保管を継続することにもなりかねず、所有者等の権利を不当に制限するものであって相当でないと考えられます。   以上を踏まえますと、本日の田岡幹事の御提案を前提にしても、検討課題を克服して法整備を行う方向で意見を集約することは困難であると言わざるを得ないものと考えております。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○村山委員 今ほどの池田委員の御発言で、訓令等で定めてあるから十分だということなのですけれども、その訓令は従前からあったにもかかわらずいろいろな不祥事があったということも事実ですので、やはりそういう点を踏まえて、法律で規定する必要があるということを我々は主張しているということです。   それから、証拠物について所有者の権利関係の問題、これは確かに重要な問題ですし、難しい法規制になるという可能性はあるのですけれども、例えば東電社員事件を思い出していただくと、あれは実際にそういう鑑定対象になるような試料があるかないかというのを裁判所が検察官に問うて、調べたら、ありますと、その次に今度、裁判所は、もしそういうものがあるのだったら検察官の方で鑑定したらどうですかという話で、鑑定したと思うのです。その鑑定結果が決定的な証拠として犯人性について大きな影響を与えた。そういう事例を考えてみますと、確かに鑑定対象物の証拠物の保存というのは必要なのですけれども、やはり一定の形で鑑定ができるようになった場合に鑑定するというところが大事なのだろうと思うのです。そのようにすれば、半永久的にということは取れる可能性があるのではないかと思います。科学技術が進歩すればまた別の鑑定が出るのだということはあるのかもしれませんけれども、実際に鑑定結果が出て、東電の場合は、もうそれで疑いがない、別人だということがはっきりしたと、そういうことで法曹三者、皆が納得したということだったと思うのです。そういうことを考えてみると、必ずしも半永久的にはならないということは当然あり得ると思います。   生体試料その他については非常に保管の仕方も難しいし、いつまでなのかというのは、先ほど池田委員が言われたように、どんどん延ばせば半永久的ではないかという話は、そのようにもなりかねないのですけれども、実際はそうはならないのではないかと私は思うのです。そういう意味で、失われてしまうと証拠価値の高い証拠が獲得できないという大きなダメージがあるということは間違いないので、そこの点で、やはり調整規定を作るという、現に警察官は適正に保管しているとおっしゃっているわけですから、それを現実の法律の形に落とし込んで、検察官の裁量だけということではないような形にした方が、より適切な再審請求の審理に資すると私は考えます。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。   よろしいでしょうか。              (一同異議なし) 〇大澤部会長 それでは、この論点についてはここまでということにさせていただきまして、先に進ませていただきます。   次に、配布資料20の「第5 再審請求又は再審開始決定があった場合の刑の執行停止」について審議を行いたいと思います。まず、事務当局からこの点に関する部分について説明をしてもらいます。 ○今井幹事 配布資料20の7ページ目を御覧ください。  枠内の「1」では、これまでの御議論を踏まえ、現行刑事訴訟法第442条ただし書の「再審の請求についての裁判」との文言を改め、検察官は、「再審の判決が確定するまで」、刑の執行を停止することができることを明記することを記載しています。  「2」には、これまでの御議論を踏まえ、裁判所及び検察官は、死刑の執行を停止したときは、刑法第11条第2項の規定による拘置を停止することができることを記載しています。   なお、再審請求があった場合に、裁判所が刑の執行や拘置を停止することができるとする規定につきましては、これまでの御議論において、そのような規定を設けるべきであるという御意見が示された一方で、規定を設けることの必要性・相当性に強い疑問が呈されているところでもありまして、そこで指摘された理論上や実務上の課題等が克服されておらず、そうした状況を踏まえますと、今後、検討課題を克服して法整備を行う方向で意見を集約することが現実的には困難であると考えられたことから、配布資料には記載しておりませんが、必要に応じ、その点につきましても更に御議論いただきたいと思います。 ○大澤部会長 それでは、この論点について審議を行いたいと思います。その際、必要に応じて田岡幹事提出資料も御参照いただきながら御議論いただければと存じます。御質問・御意見等がある方は挙手の上、御発言をお願いいたします。 ○村山委員 私は、今ほど今井幹事から説明があった開始決定前の裁判所による執行停止の規定、これは是非とも必要だと考えています。これは、特に死刑のことを念頭に皆さん議論されているかと思うのですけれども、回復できない損害であるということはもう言うまでもありません。死刑判決が確定しているのだから間違いないのだということは誰も言えないと思うのです。現に5人の死刑確定囚が無罪になっているわけですから。万が一に死刑執行した後に再審開始になったらどうなのでしょうか。現に執行後の再審事件も係属しております。審理中です。   これは再審請求人にとって是非とも必要な規制であるということは言うまでもないのですけれども、私は法務省や法務大臣をも守る規定だと思っています。というのは、被害者の方々や御遺族の方々の意向を尊重すれば、確定した死刑囚について再審請求があったからといって検察官が自らその執行を停止するというのは、実際は難しいと思うのです。現に法務大臣も、再審請求中であっても死刑の執行というのはないとはいえないということはもう明らかにされています。ところが、実際に死刑執行した後に開始決定が出たとなるとどういうことになるのか。これは執行した方の法務省なり法務大臣に批判が集中するということは目に見えています。   ここで本当に検察官が自分で執行を止められるのでしょうか。やはり確定した事件だということで、しかも再審請求に対して反対の立場をとっている検察官が、本当にこれは後々取り返しが付かないことになるかもしれないから止めておこうという判断になるのでしょうか。そういう意味でも安全弁として、裁判所が職権によって執行を停止できるという規定を作っておくことは、是非とも必要ではないかと思います。   確かに死刑の事件で再審請求があれば止めるという考え方もあるのですけれども、それは死刑確定者が再審請求さえすれば執行が止まるという法制度を作るものだという御批判を浴びたので、そこは確かにそれはそうだと思うので、そこまで主張するつもりは現状では全くないのですけれども、やはり裁判所が職権で止められるということに何ら不都合はないと思いますし、これは行政事件を考えてみても、行政事件訴訟法で執行停止というのは現に法律上規定されていまして、これも実際に使われている規定です。ですから、行刑の執行権は検察官にあるのだと言ってみたところで、裁判所も止められないということにはならないと考えています。そういう意味で、議題の中には挙がっていないのですけれども、是非とも考慮すべき点ではないかと思っております。 ○田岡幹事 村山委員から、再審請求があった場合の裁判所による刑の執行停止について御意見がございましたが、私の意見も申し上げたいと思います。   私の意見は、村山委員と同じですけれども、「田岡幹事提出資料②」9ページ以下のとおり、再審請求があった場合に、再審請求の理由について疎明があり、かつ、刑の執行により償うことができない損害を生じるおそれにつき疎明があったときに、裁判所が請求により又は職権で、決定により、刑及び拘置の執行を停止することができる旨の規定を設けるというものでございまして、従前提案しておりました、死刑事件の場合に必要的に執行を停止するということにはこだわっておりません。また、開始決定があった場合に必要的に刑の執行を停止するということにもこだわっておりません。   第8回会議において、成瀬幹事から、現在の刑事訴訟法は、執行権限は行政権たる検察官又は法務大臣に委ねるのが原則的な立場であるという御指摘がございました。しかし、先ほど村山委員からも御指摘がありましたが、行政事件訴訟法第25条は、処分の取消しの訴えがあった場合において、「処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき」は執行停止をすることができるという規定を置いております。行政訴訟の場合には執行停止をすることができるわけですので、同じく行政権である検察官による刑の執行の場合には執行停止ができないことには疑問がございます。   刑事訴訟法442条ただし書の趣旨は、検察官には刑の執行権限はありますけれども、その刑を決めたのは裁判所でございますので、本来、検察官には裁量によって刑の執行の停止をする権限がないということから、裁量によって刑の執行を停止する権限があるということを定めなければ、行政処分と異なり、検察官による刑の執行停止ができないということにあると理解しております。行政処分の場合は、行政機関は任意に撤回できるわけですけれども、検察官はそのようなことはできませんので、検察官の裁量による刑の執行ができるという権限を定めたのだと理解しております。そうだとしますと、それとは別に、裁判所の判断によって刑の執行停止を命じることができる旨の規定を置くことは、何ら矛盾しません。実際、ドイツはそのような規定になっていると理解しております。   また、第8回会議及び第11回会議においても指摘しましたが、大阪高裁昭和44年6月9日決定によりますと、再審の開始の見込みが顕著であるなどの場合には、検察官が刑の執行の停止をしないという裁量処分が著しく不当なものとして、その裁量を逸脱する場合には不適法な処分であるとして刑事訴訟法502条の異議の申立てができるとされております。他の委員、幹事の方がこの刑事訴訟法502条の異議の申立てを認めるのか認めないのか、分からないですけれども、仮にこの判例と同じように刑事訴訟法502条の異議の申立てを認めるというのであれば、これは実質的には裁判所の判断によって刑の執行停止を認めるのと異ならない結果になると考えられます。そうだとしますと、再審請求審を管轄裁判所としない刑事訴訟法502条の異議の申立てによって刑の執行の停止の判断をするというのは、私は合理的な考え方ではないと思われます。むしろ再審請求審にこの判断権限を帰属させることが正しいのではないかと考えております。反対される方はこの刑事訴訟法502条の異議の申立てを認めるのか認めないのか、認めるというのであればなぜ執行停止の判断はできないのに刑事訴訟法502条の異議の申立てであればその判断ができると考えるのか、その点について御意見を頂きたいと思っております。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○江口委員 刑及び拘置の執行を停止すべきか否かを判断することとなる裁判官の立場から意見を申し上げますと、田岡幹事御提案の試案にあります「再審の請求の理由について疎明」があったときというのは、どのような心証に至った場合を指すのかが判然とせず、規定として曖昧であると言わざるを得ないかと考えております。  例えば、いわゆる6号再審の場合ですと、確定判決における事実認定につき合理的な疑いを抱かせ、その認定を覆すに足りる蓋然性のある証拠を新たに発見したことにつき疎明があったときということになるかと思いますが、具体的にどのような心証に至れば刑及び拘置の執行を停止することとなるかは不明と思われます。   「疎明」という概念を用いておりますので、他の刑事訴訟法の規定同様に、一応確からしいという推測ができれば刑及び拘置の執行を停止するということをお考えなのかもしれません。しかし、第8回会議で成瀬幹事が御指摘されていたように、司法権を担う裁判所が刑及び拘置の執行を停止する権限を担うのは例外的な場面に限定すべきでありまして、従前実務において理解されている内容の疎明があった程度で裁判所が刑及び拘置の執行を停止することができるとしてよいのかについては慎重な検討が必要かと思います。  また、もし仮に一般にいう疎明の程度を超えて、再審請求に理由があることについてより十分な心証を得られた場合に刑及び拘置の執行を停止するということをお考えなのであれば、そのような心証と再審開始決定の心証との違い、区別を明確なものとして判断するのは相当に困難かと思います。   更に申し上げますと、現在いわゆるスクリーニング規定についての議論がされておりますが、もし田岡幹事の試案を併せて導入しますと、裁判所は再審請求審における審理において、当該事案について審判開始決定をするか、刑及び拘置の執行を停止すべきか、さらには再審開始の決定をするかという三つの点につきまして、再審の請求に理由があるかという同一事項についての判断という枠組みの中で、それぞれの規定ごとにグラデーションの付いた心証形成が求められるということになります。ただ、その判断は容易なものではなく、第8回会議で後藤委員からも御指摘がありましたが、やはり再審請求審の判断が極めて複雑化、長期化するように思われます。したがいまして、田岡幹事の御提案の試案については慎重な検討が必要であると考えているところでございます。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○池田委員 裁判所が職権で刑の執行を停止することができることとする規定を置くべきだという御議論が先ほど村山委員と田岡幹事からありましたので、その点について意見を申し上げます。   ただいま江口委員が指摘されたことと重なりますけれども、田岡幹事の御提案の中にある要件の一つである、「再審の請求の理由について疎明」という文言からは、裁判所においてどの程度の心証に達していることを求めるものであるかが明らかではないように思われます。また、それとは別の要件として、「刑の執行により償うことができない損害が生ずるおそれがあることの疎明があったときは」としているのですけれども、これについてもどのような場合に満たされ、どのような場合に満たされないと裁判所が判断することとなるのかもその文言からは不明であり、裁判所が再審の請求について決定をする前に刑の執行を停止するかどうかを適切に判断することは困難であるという指摘はいまだ克服されていないと思われます。そもそも請求人はなお、確定判決による刑の執行を受けるべき立場にあります。にもかかわらず、再審開始決定がなされていない段階においても刑の執行停止が幅広く認められるものとすることにこの規定を設ける趣旨があるのだとすれば、そのような考え方自体が相当ではないと考えられます。   先ほど、異議の申立てについてどう思うのかということをおっしゃったわけですけれども、考えてみましたところ、御提示があった裁判例の判断は、裁量の逸脱ということが明らかな場面を想定していたのではないかと思われるのですが、それと田岡幹事がおっしゃるところが必ずしも重なり合わないような気もしておりまして、一般的な権限としてこのような規定を設けることの正当化に直ちに資するものであるかどうかには疑問があるところです。こうした議論状況によりますと、御提案のような法整備を行う方向で意見を取りまとめることは依然、困難であると言わざるを得ないように思われます。 ○村山委員 今ほど何人かの方から、広範なと、広範に執行を停止するというような規定を設けるという言われ方をしたのですけれども、私どもはそういう広範だとは思っていないのです。疎明があり、かつというのが二重に掛かるわけですから、広範とは考えておりません。疎明がどういうものなのか分からないではないかと江口委員から言われたのですけれども、そうですかね。行政事件訴訟法だって裁判官は執行停止の判断をしているわけですよね。それは疎明と証明は違う、再審の場合の開始決定の心証とはどの程度のものかというのはもちろん議論の余地があるし、一定程度、白鳥決定で明らかになっていると思うのですけれども、この疎明というのはそれよりも低いという意味で使っていることは明らかだと思うのです。だけれども、確からしいという心証を得るという意味で使っているわけですから、それほど実際に判断するときに区別が付かないなどということはありませんし、疎明なのか開始決定に至るのか、その判断に迷って審理が長期化するなどということは、私はないと思います。   また、停止決定の時期は、申立てした、請求したときに判断しろということではなくて、時期的に申立時にすぐやるという縛りをかけるというつもりはなくて、開始決定の前であっても職権で停止ができるという規定を設けておくことが重要だと言っているのでありまして、それは実際に再審請求の審理をしていく中で、これは執行停止をかけておくべきではないかと裁判所が判断する時期が当然あるのですよね。開始決定に至るまでには当然、心証が形成されていくわけですから、どこかの段階で開始という心証になるのですけれども、その前の段階で、例えば死刑であったら、これは止めておいた方がいいのではないかという心証になるというのは当然あり得ます。そのために審理すべき事項が増えるかといったら、増えません、だから長期化もしません。そういう意味で、こういう規定を作ることの弊害というのはないと思います。要は、どの程度たくさんこれで止まるのかというところを懸念されているのかもしれませんけれども、必ずしも私はそれほど広範だとは思っておりませんので、その点は誤解のないように発言しておきたいと思います。 ○吉田(雅)幹事 先ほど田岡幹事から行政事件訴訟法第25条第2項による執行停止について言及がありました。田岡幹事は御存じの上でおっしゃっているのだと思うのですけれども、同項の執行停止の申立てがあった場合には、内閣総理大臣が裁判所に対して異議を述べることができるということが行政事件訴訟法第27条第1項で規定されており、その異議があったときは裁判所は執行停止をすることができないということが同条第4項で規定されております。つまり、司法権が行政権に常に優越するという形にはこの法律上はなっていないということでございます。念のため申し上げます。 ○田岡幹事 吉田幹事が御指摘されたことは、そのとおりです。その上で、江口委員及び池田委員の発言について、意見を申し上げます。  刑事訴訟法442条ただし書によると検察官には執行停止権限があるとされていますが、ここには特段の要件が書かれていません。先ほどから、裁判所は刑の執行停止の判断をすることが難しいとおっしゃるのですけれども、では検察官は適切な判断をなし得るといえるのでしょうか。何の要件も書かれていないのに、なぜ、検察官は、裁量的な判断によって刑の執行を停止するかしないかの判断が適切になし得るとお考えなのかということが私には理解できませんでした。  むしろ、刑事訴訟法442条ただし書に規定はあるのだけれども、その要件が明確でないために、現実には検察官が無罪であると認めた場合以外には刑の執行を停止しないということになってしまっているのではないでしょうか。裁判所としては、これは再審開始決定が出る蓋然性が相当高いという心証を既に持っていて、仮に死刑が執行されてしまうと取り返しがつかないのではないかと思われるのに、検察官としては刑の執行停止をしませんという場合に、裁判所としては、いや、それでは死刑が執行されたら取り返しが付かないから、一旦死刑の執行は停止しませんかと、拘置の執行は停止しなくてもいいのですが、死刑の執行は停止しませんかという場合に、この規定の意味があるわけでございます。  決して広範に刑の執行の停止を命じようとしているわけではございません。裁判所においても、再審開始決定が出る蓋然性が相当高いという場合で、かつ、死刑の場合のように刑が執行されてしまうと取り返しが付かない場合には、検察官の裁量による執行停止が期待できない場合に限って、裁判所が補充的に刑の執行の停止を命じることができるという規定を設ける意味があるのだと私は考えております。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。   「田岡幹事提出資料②」の「9」「?再審請求があった場合の刑の執行停止に関する規定を改めるか」という部分について、ここまで御議論いただいておりますけれども、検討資料「第5」の方の枠囲み部分については、特に御議論はございませんか。   よろしいでしょうか。特に御異論もないということで理解してよろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 それでは、この論点につきましてはこの程度ということにさせていただきまして、次に、配布資料20の「第6 再審請求に係る決定に対する不服申立期間」について審議を行いたいと思います。この点につきましても、まず事務当局からその点に関する部分について説明をしてもらいます。 ○今井幹事 配布資料20の8ページ目を御覧ください。  枠内の「1」には、再審請求に係る一定の決定に対する不服申立期間を14日に延長することを記載しており、具体的には、「第4 再審請求の審理に関するその他の手続」の「2」「(2)」「ウ」の審判開始決定がされた後に刑事訴訟法第447条第1項の決定、すなわち、「再審の請求が理由のないとき」に該当するとしてなされた再審請求棄却決定又は同法第448条第1項の決定、すなわち、「再審の請求が理由のあるとき」に該当するとしてなされた再審開始決定に対する即時抗告の期間を14日とすることを記載しています。   「2」には、「1」記載の決定に係る抗告裁判所の決定に対する刑事訴訟法第433条第1項の抗告、すなわち、特別抗告の提起期間を14日とすることを記載しています。  不服申立期間の延長の対象については、これまでの御議論におきまして、一律に14日とすべきである旨の御意見が示された一方で、審理が複雑なものとなったり、決定書が長大となったりするという不服申立期間を延長する趣旨が妥当しない事案については、延長の対象から除外することが考えられる旨の意見も示されたところでございます。  そのため、配布資料においては、延長の対象とすることについて特段の異論が見られなかったものを対象として記載していますが、必要に応じ、更に御議論をいただきたいと思います。   なお、「(注)」にあるとおり、「1」及び「2」の規律を設けた場合、高等裁判所がした「1」記載の決定に対する異議の申立ての提起期間及びその異議の申立てに係る高等裁判所の決定に対する特別抗告の提起期間も14日となります。 ○大澤部会長 それでは、この論点について審議を行いたいと思います。御意見・御質問等がある方は挙手の上、御発言をお願いします。   田岡幹事の御提案もありますので、田岡幹事からお願いします。 ○田岡幹事 私は、「田岡幹事提出資料②」9ページのとおり、一律に14日、つまり調査手続において審判開始決定が出た場合、審判開始決定が出なかった場合のいずれについても、14日とするが合理的であると考えます。  そもそも調査手続や審判開始決定の制度を設けること自体について疑問があることは前回発言したとおりですので、ここでは仮に調査手続や審判開始決定の制度を設けるとした場合に、調査手続における再審棄却決定の場合と、審判開始決定が出た場合の再審棄却決定の場合とで、不服申立ての期間をあえて異なるものとする合理的な理由があるかということが問題であると理解しています。   仮に調査手続によって再審請求の理由がないとされたために審判開始決定をせずに再審棄却決定となった場合であっても、それに対する不服申立ての機会を保障しなくてよいということにはなりません。現在、日本郵便が土曜日配達を休止したり、配達日数の繰下げを実施しているために、皆様も御存じだと思いますが、従前であれば発送した翌日には郵便物が到達していたのに、2日あるいは3日を要することがごく普通になっております。例えば、破産法における簡易配当の通常到達すべきであったとき、これをみなし到達日といいますが、これは、従来は3日程度あればよかったのですけれども、現在は5日又は1週間程度とするのが普通でありまして、裁判所によって運用は異なりますけれども、決して発送した翌日に届くということを前提に法は運用されておりません。   そうしますと、例えば再審棄却決定を受け取った翌日に即時抗告申立書を発送したのに、到達に3日掛かりますと、即時抗告期間を徒過してしまいまして、即時抗告権を失うことになりかねないというおそれがございます。再審棄却決定というのは、通常の即時抗告の場面と比べると、手続保障を手厚くする必要がある場面ですので、一律に14日とすることが合理的であると思います。また、審判開始決定を経ずに再審請求棄却となる場合は、決定日の予告がなされませんので、ある日突然決定書が届くということを考えますと、尚更3日では短いということから、14日とするのが合理的であると思います。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○川出委員 これまでも意見が出ておりますように、請求が容れられないことが一見明白な再審の請求ですとか、逆に、理由があることが一見明白な再審の請求については、審理が複雑なものになったり、決定書が長大となったりすることは想定し難いので、そもそも不服申立期間を延長する趣旨が妥当しません。そのことからすれば、検討資料の「第4」の「2」のスクリーニングの規律を設けるとした場合は、同「2」「(2)」の「ア」や「イ」といった再審請求理由についての本格的な審理をすることなくスクリーニングの手続のみで終局決定に至った事案については、不服申立期間を延長する必要性は乏しいと考えられます。   また、そういった事案も不服申立期間を延長する対象に含めるということになりますと、それは、本格的な審理を要しない事案について迅速な処理を可能とするスクリーニングの趣旨や、再審請求手続の迅速化の要請との整合性という観点からも、問題があるだろうと思います。したがって、再審請求理由についての本格的な審理を要することなくスクリーニングの手続のみで終局決定に至った事案についても不服申立期間を延長することについては、先ほど田岡幹事から実際上の必要性についての御指摘がありましたけれども、そのことも踏まえて、慎重に検討する必要があると思います。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○村山委員 申立書を書くときに3日か14日かはすごく大きいと思うのですけれども、それほど3日と14日で迅速審理に関係するかというと、私はしないと思うのです。かえって二つの期間を設ける方が煩瑣であり、そのどちらかを取り違えるというような問題と、あと郵便事情などを考える、この場合は到達主義で行くと到達しないということが起きてしまうと非常に問題かなと思うので、その辺のことを考えると、確かに理屈は川出委員の言うことはおっしゃるとおりだと思うのですけれども、それほどぎりぎりやらなくてもいいのではないかという程度の問題として、二つの期間を設けずに14日ということでやった方が安定的な運用になると私は思います。 ○大澤部会長 ただ、3日というのは即時抗告期間一般に当てはまることではあるということですね。 ○村山委員 そうですね。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○村山委員 1点、言い忘れてしまったのですけれども、スクリーニングにかかるような申立てというのは本人申立てが結構あるのではないかという気がするのです。そういう意味でも、3日と14日が二つあって混同してしまうとか、それから郵送の事情とかいうのを考えると、確かに一般的に即時抗告は3日だとおっしゃるのはそのとおりなのですけれども、この場合に14日に延ばすのと延ばさないのを二つに分ける必要は少ないと思います。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○田岡幹事 もし異なる期間にするのであれば、不服申立て先と不服申立期間を教示する必要があるのではないでしょうか。例えば行政処分の場合は、行政不服審査法82条により、行政庁は不服申立て先と不服申立期間を教示する義務がございます。刑事裁判の場合にはなぜかそれがありません。控訴の場合には、刑訴規則220条により、裁判長が、口頭で、控訴をする場合は当裁判所宛てに高等裁判所宛ての控訴申立書を差し出すようになどと教示していますけれども、再審棄却決定は書面によりなされますので、是非ともその際には、この度の不服申立期間は3日であって当裁判所に高等裁判所宛ての抗告申立書を差し出すようになどという教示をしないと、うっかり徒過する人がかなり出てくると思います。  先ほど村山委員がおっしゃられたように、再審請求は本人申立てが相当あると思われますので、きちんと権利が保障される制度にしないと、郵便事情によって到達しなかったために権利を失う人が出てきますので、私は一律14日がよいと思いますが、もし仮に3日にするのでしたら、不服申立て先及び不服申立期間の教示を義務付けるべきだと思います。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。   この論点については、この程度ということでよろしいでしょうか。              (一同異議なし) 〇大澤部会長 ありがとうございます。   次に配布資料20の「第2 再審開始決定に対する不服申立て」について審議を行いたいと思います。まず、事務当局からその点に関する検討資料について説明をしてもらいます。 ○今井幹事 配布資料20の3ページ目を御覧ください。  「第2 再審開始決定に対する不服申立て」に関しましては、これまでの御議論において、再審開始決定に対する不服申立てを禁止すべきであるとの御意見が示された一方で、その必要性・相当性に強い疑問が呈されているところですが、諮問におきまして例示された論点に係る規律の在り方に直接関連するものであり、当部会における中心的な検討課題として、引き続き、十分な御議論を頂く必要があると考えられましたことから、「A案」と「B案」を併記しております。  枠外の「検討課題」には、二巡目の議論の際の配布資料である「論点に関する検討課題等」と同じ事項を記載しております。 ○大澤部会長 それでは、この論点について審議を行いたいと思います。御意見・御質問等がある方は挙手の上、御発言をお願いします。 ○鴨志田委員 私は「A案」に賛成をするということなのですけれども、今回も「検討課題」として五つの項目が挙がっています。既に、「(1)」についてはもう言うまでもないと思っておりますけれども、この抗告制度が存在することによって、袴田さんの事件では開始決定から確定までに9年、福井女子中学生殺害事件では13年、免田事件では24年4か月掛かっている、もうこの事実だけでも、検察官の抗告によってえん罪被害者の迅速な救済が妨げられている、だから抗告禁止は必要であるということは十分言い得ているのではないかと思います。   それ以外の「(2)」から「(5)」についても、例えば二段階構造をとっているからといって双方に必ず不服申立て制度を設けなければならないという、そのような必然性がそれほどあるのだろうかということについては疑問を呈してきましたし、また、実際に二段階構造をとっているドイツでは再審請求審における開始決定の抗告制度は1964年に廃止をされていることも指摘しましたと。さらに、上訴制度という全体の観点から見ても、そもそもそれは立法政策上の問題であるということも言えますし、再審開始決定というのは再審公判の前の中間的な判断であるということからすると、中間的な判断には抗告を原則として認めないというのがそもそも法の建前であるということ、また、法的安定性の観点から考えても、三審制によって確定をしたということを過度に重視すべきではない状況で再審請求がされ、実際に再審開始決定が出ているということからすると、また、検察官はその後においても再審公判で十分に有罪が争えるというところからしても、ここで抗告を認めるということの十分な理由にはなっていないと思います。また、迅速化方策という観点でも、再審公判が主戦場になった方が、手続規定が十分にある、公開の原則も働いているということで、例えば、第1回の期日までに3年4か月も掛かっているような再審請求審に比べたら、当然、再審公判の審理が充実化したとしても全体としての迅速化につながるというようなことを申し上げてきました。   ただ、今回は何よりも、国民も、それから専門家である刑事法研究者も、また実際に再審の審理に携わっている裁判官、元裁判官も、検察官の不服申立ては禁止すべきだということを相次いで発表している、表明しているという、そこに耳を傾けるべきであるという立場から申し上げたいと思います。   そもそも検察官は、再審請求手続では当事者という地位を有していないわけですから、当事者ではない者に抗告権が認められているという事態そのものが実は例外的な扱いなのではないかという観点から、私どもは再審開始決定に対する抗告の禁止ではなくて、むしろ廃止ではないかということを表明しておきたいと思います。その上で、先ほど申し上げたとおり、まず、時事通信が、この10年間に再審に関する学術論文を書いた研究者が23人いらっしゃるそうですけれども、その23人の中の19人から回答を得るというアンケート調査を行っています。その結果によれば、再審開始決定への検察官の不服申立てを禁じた改正案、これは議員立法で提出されているものですけれども、これに19名全員が賛成をしているということです。これ以外の項目においては全員が賛成という意見はないのです。この再審開始決定の検察官の不服申立てを禁じた議員立法による法改正案への賛否というところだけが全員、19名賛成という回答をしています。   また、先ほど申し上げたとおり、研究者の声明、これは135名の研究者が発出した声明の中で、例えば袴田事件のように再審開始決定を取り消した決定が後に上級審で破棄されて再審開始決定に至ったケースが少なくないことや、免田事件や福井女子中学生殺害事件など再審開始決定の取消しが確定したけれども後日の請求で開始された事例も存在しているという立法事実を挙げながら、このようなことや、死刑再審事件の無罪になった5事件でも全て検察官抗告を経験しているということなどにも照らして、検察官が十分かつ慎重な検討を行って対応してきたと評価することはできない、すなわちもはや検察官の裁量に委ねて済ますという問題ではないと、何らの立法的手当てもしないというのは到底正当化されないと、こういう声明で意見を表明しております。   これらは全て前回の机上配布資料という形になっていると認識しておりますけれども、研究者4名による意見書においても、6号再審の場合には特に、再審開始決定をした裁判所が実際は実体判断に近い判断をしている、そして、その当否について実体判断を更に行う場としては、公開性、手続保障、証拠法則を備えた再審公判こそがふさわしいと意見を述べられていますし、元裁判官63名の声明においても、再審開始決定は再審が開始されるだけの中間的な決定であり、検察官は再審公判で有罪の主張立証ができる上、当事者ではないのに不服申立権を認めることは上訴制度一般と整合しない、そして、検察官抗告を禁止すべきとの意見は、この不服申立てによってえん罪被害救済が長期化し、えん罪被害者に回復し難い苦難を与えているという現状、立法事実に根差している、これに反対する意見はこのような現状に目をつむるものであり、これでは全く現状の改善につながらないという意見を表明しています。また、昨日になりますけれども、12月22日付東京新聞の朝刊に掲載された宇賀克也元最高裁判事のインタビュー記事の中で、宇賀氏が、一旦再審開始決定が出ても検察官の不服申立てによって長引いている、再審開始決定は無罪判決とは違う、検察官は不服があれば再審公判の場で有罪立証すればよいという意見を明確に述べられています。   そして、このような世論や専門家や元実務家の意見も取り入れた上で多くのヒアリング等を行って議員立法で提出された法案、衆法61号の中では、この再審開始決定に対する検察官の不服申立ては例外なく禁止という形をとっています。私は先ほど廃止と言いましたけれども、この議員立法の場合は禁止の規定という形で入っています。ただ、趣旨は同じでありまして、もはやどの角度から見ても、どのような意見を踏まえても、この再審開始決定に対する検察の不服申立ては廃止せざるを得ないという状況に今至っていると考えています。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○小島幹事 私は、これまでも申し上げてまいりましたように、「B案」が適切だと考える立場から意見を申し上げます。   まず、第1ラウンド及び第2ラウンドの議論の際に申し上げました点ですけれども、再審開始決定も再審請求を棄却する決定も判断事項が同一であって裁判の性質は共通する以上、片方についてだけ不服申立てを禁止するというのは理論的には難しいのでないかという点、それから、再審に係る規定全体を眺めた場合に、そこで想定されているとみられる段階的構造の中での再審開始決定の位置付け、重みに照らして、再審開始決定を単なる通過点であるとか、その前さばきとして捉えるのは果たして整合的なのか疑問があるといったような点は、特に変更はございません。   その上で2点だけ、第2ラウンドの際に申し上げそびれたことをなるべく簡潔に述べさせていただきたいと思います。まず、関係資料で紹介がございました諸外国における取扱い、先ほどドイツのお話も出ておりましたけれども、私の方からは特にアメリカにおける取扱いについて少しだけ補足をさせていただきたいと思います。   アメリカの場合は元々二重の危険の発想を下敷きにして、その伝統的な考え方として、検察官上訴全体に対してやや消極的な考え方というのが存在しているところでございます。そのことも反映して、州によっては検察官による不服申立てを明示的に許容する法律の規定がなければ、それは認めないという取扱いをしているところがあります。そういう取扱いをしている州の中で、恐らくここでの文脈ではニュートライアルを認める裁判というのが資料では想定されていたのではないかと思いますけれども、そのニュートライアルを認める裁判に対しての検察官の不服申立てを許容する規定を設けていない州もあるというのは御紹介のとおりかと存じます。それとは別に、いわゆる終局裁判ルール、ファイナルジャッジメントルール、つまり、終局的な解決を含まない裁判に対しては不服申立てを認めないというルールの下で、そのニュートライアルを認める裁判は終局裁判ではないので検察官の不服申立てを認めないという取扱いをしている州もあるというのも、御紹介のとおりかと存じます。ただ、前者の方につきましては、元々その下敷きになっている検察官上訴に対する基本的なイメージ、見方というのがアメリカと日本とでは違うように思いますし、後者のファイナルジャッジメントルールにつきましては元々片面的に機能するものではありませんので、ニュートライアルを求めた側にも等しく妥当するものであるのではないかということでございまして、そうである以上は、この場で主張されているような片面的に検察官の側だけ不服申立てを認めないというところには直ちにはつながらないのではないかと考えております。   それと、もう1点なのですけれども、これは今回の諮問との関係での基本的なスタンスに関係するところかと思いますけれども、私自身は本当に再審の仕組みないし骨組みそのものに重大な問題があるということなのだろうかというところについて、少し疑問を持っているところでございます。今般明らかになりました複数のえん罪事件で問題となったのは、再審の仕組みないし骨組みそのものというよりは、むしろ再審であるとかそれが機能するための前提となる仕組みが適切に使われなかったことなのではないかと考えておりまして、そのような発想からいたしますと、基本的にはどのように再審の仕組みを本来在るべき姿で機能させるか、そのためにどういう規律が求められるのかということを検討することが大事なのではないかと思っているところです。   こうした基本的なスタンスとの関係で申しますと、今回の議論の中で検察官の不服申立てのところだけ、単純に今ある仕組みを禁止ないし廃止するか否かという形で問題が立てられているということ自体にやや違和感を覚えているところでございます。例えば、今回の諮問につながった複数のえん罪発覚事案の手続の中で、もし再審開始決定に対する検察官の不服申立てについて、その各層における判断が迅速に示されていたとしても、ここまでこの点は問題視されていたということになるのでしょうか。もしそこまでではなかったかもしれないということなのであれば、不服申立て自体は認めた上で、それに対する判断が出るまでの過程を迅速化して、二段階構造の中で一定の重みを持つものとして想定されている再審開始決定そのものについて、それが信頼できるものかどうかというのを迅速に、かつきっちりとチェックした上で再審公判に向かう、そういう流れを担保するための方策というのを検討対象に据えてもおかしくないのではないかと考えております。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○宇藤委員 この論点について、私も「B案」を支持いたします。この点については本部会会議でも何度か意見を申し上げましたが、今一度意見を述べさせていただきたいと思います。   まず、全体として再審手続の迅速化に不服申立ての禁止がどの程度資するものかという点についての疑問でございます。これまでの会議において、仮に不服申立てを禁止したとしても再審開始決定後、再審公判において争うことができるという旨の指摘が何度かなされておりました。しかしこれだと、当然のことですが、これまで再審請求審において争われ不服申立ての対象となってきた事柄がそのまま再審公判に持ち越されるだけですから、再審公判の審理が長期化して、全体として再審手続の迅速化が図られるかは定かではありません。また、現在の再審請求審と再審公判が二段階構造となっており、かつ、請求審においては再審開始事由として掲げられる各事項の有無が訴訟物とされているのですから、再審請求審と再審公判とでは訴訟物そのものが異なります。そのように理解される限りは、再審公判が行われることをもって不服申立てを禁止する理由にもなりません。   また、検察官の不服申立て禁止の御提案の前提には、再審公判という透明性の高い手続の下で検察官はきっちり争うべきであり、非公開である再審請求審に多くを委ねるべきではないという御判断があったものと存じます。先ほどの鴨志田委員の御発言もそのような趣旨を含むものがあったかと思います。また、再審請求審の審理それ自体を公開の下に置こうとするのもそのような判断の表れであろうと思います。それも尊重すべき一案であると存じます。ただ、現行法の下での不服申立ての制度は上訴全体の制度設計にも関連性を有しております。したがって、仮に御提案のような禁止を求めるということであれば、今回の諮問を越えたかなり大掛かりな議論が本来必要であるはずであり、部分的な議論はそれ自体として本来厳しいと言わざるを得ないと考えております。そのことは別にしても、不服申立ての禁止を手段として再審手続全体の透明化を図るという方向性には疑問があります。   私自身は、現行法が再審手続を二段構造とすることを採用し、通常審を通じて有罪として一度確定していたところ、その確定状態を解消し、再度公判を行うという考え方から出発している以上、再審請求審における開始決定には一定の重みがあり、再審公判を開始することが確定したからには相応の判断がなされるべきであると考えております。つまり、せっかく確定状態が解消して再審が開始しても、なお再審公判で激しく争われるということが否定できず、その結果として有罪判決が繰り返し確定するというのは制度設計上適切さを欠いており、このことを看過するということはなかなか難しいと考えております。   以上のことから、本会議での検討において検察官の不服申立てを禁止するという「A案」には賛同しかねます。むしろ、先ほど小島幹事から御発言のありましたように、現在の現行法制度を前提とした上で立法的な手当てを図るというのが、今回の諮問に対する検討の方向性としてはより適切であろうかと思います。 ○重松委員 警察は再審開始決定に対する申立ての当事者ではありませんけれども、犯罪被害者に寄り添う立場にあるという観点から、一言だけ申し上げたいと思います。   これまで不服申立てによって再審開始決定が覆されたという例も相応にあると承知をしております。仮にそのような場合に不服申立てが認められなかったとすれば、その後の再審公判において是正をされていたとしても、犯罪被害者においては無用な精神的負担が一定期間生じていたと容易に推察されると考えておりまして、再審開始決定に対する不服申立ての在り方につきましては、そのような観点も踏まえた議論が必要かと考えております。 ○川出委員 私は「B案」に賛成する立場から、「検討課題」の「(2)」と「(3)」に関して改めて意見を申し上げたいと思います。   先ほど鴨志田委員から、再審開始決定は中間決定あるいは中間的判断であるので不服申立てを認める必要はないという意見が述べられました。これまでも本会議において同様の指摘が繰り返しなされていますが、そもそも何をもって中間決定というかについて統一的な理解があるわけではありませんので、ある決定に対する不服申立てを認めるべき必要性があるかどうかは、それが中間決定にあたるかどうかということよりも、問題となっている決定ごとにその内容を踏まえて考えるべきことであろうと思います。この観点から、これまで本会議で不服申立てが認められていない中間決定として挙げられているものについて、同じことが再審開始決定について妥当するのかということを考えてみますと、これまで挙げられている具体例としては付審判決定と少年法第55条による家庭裁判所への移送決定があります。   このうち付審判決定については、以前に申し上げましたように、その実質は公訴の提起であり、その後の被告事件の公判と審理対象が大部分重なるために、独立に不服申立てを認める必要性は乏しいのに対して、再審開始決定についてはそれが妥当しないこと、また、付審判決定と再審開始決定とではそれによって生じる効果に違いがあり、既に有罪判決が確定している事件について再度の公判を開くという重大な効果を有する再審開始決定に対しては、独立に不服申立てを認める必要性が高いといった点で、両決定には差異があります。したがって、付審判決定に対する不服申立てが認められていないことは、再審開始決定に対する不服申立てを禁止する理由にはなり得ないと思います。   また、少年法第55条による家庭裁判所への移送決定については、確かに、不服申立てが認められない理由の一つとして、それが中間決定であることが挙げられています。移送決定が中間決定だというのは、それが事件を地裁から家裁に移送するだけのもので、終局的な処分を言い渡しているわけではないことを意味していますが、しかし、同決定は少年が刑事処分を言い渡されなくなるという大きな効果を持つものですので、先の意味で中間決定であるということだけで不服申立てを認めない理由になるかには疑問もあります。この移送決定に対しては、検察官だけでなく少年側からも不服を申し立てることができないとされていることから考えれば、その実質的な理由は、不服申立てを否定した高裁判例が述べているように、少年法が保護処分優先主義を採っているため、保護処分を相当とする判断に対して刑事処分が相当であるという理由で不服申立てを認めることは妥当でないという点にあると考えられます。この理由は当然のことながら再審開始決定には妥当しませんので、少年法第55条による家庭裁判所への移送決定に対する不服申立てが認められていないことも、再審開始決定に対する不服申立てを禁止する理由にはなり得ないと思います。   さらに、再審開始決定に対する不服申立てを認めるべきでない根拠として、訴訟手続に関し判決前にした決定に対して即時抗告をすることができないとする刑事訴訟法第420条第1項の規定も挙げられていました。訴訟手続に関し判決前にした決定は、終局裁判ではなく、その手続の進行過程で付随して生起する事項についての中間的裁判であるといわれますが、それに対して独立の不服申立てを認めない理由は、その不当・違法が終局裁判に影響する限り、終局裁判を待って、それに対する上訴の手続内で救済を認めれば足りるという点にあります。つまり、終局裁判に対する上訴の中でその点についての不服を申し立てることができるということが前提となっているわけです。これに対して、再審開始決定に対する検察官の即時抗告を禁止する場合には、再審公判で再審開始決定の適否を争うことは想定されていませんので、そうだとすれば、刑事訴訟法第420条第1項も再審開始決定に対する不服申立てを禁止する理由にはならないと思います。 ○山本委員 私自身としてはまだ決めかねているのですけれども、先ほどの重松委員と同様、被害者の意見としては、さきに引用した12月15日にメール添付で送付された加藤氏ほかの意見書では、この点について、御遺族の立場から、検察官の不服申立ての禁止に反対である旨の意見が示されています。また、第10回会議において検察官の不服申立ての禁止に関し、これまで再審公判で無罪判決等に対して検察官の上訴した事案はないということでしたが、仮に再審請求審において検察官の抗告が禁止された場合にも同様の扱いとなるとすれば不当な無罪判決がなされてしまわないかという危惧を指摘する意見がありましたので、指摘しておきます。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○村山委員 この点については、これまでも何度か発言をさせていただいたところで、再論になってしまうということは御容赦いただきたいのですが、まず、二段階だからできるのだという議論について、これは私も以前に申し上げたように、判断している内容としてどうかという点で、結局一番問題の大きい6号再審の明白性の点については、基本的には請求審と再審公判では同じような事柄について同じような証拠調べを行う、そういう意味では、少なくとも川出委員とはその点は多分共通認識だったのかなと思っていたのは勘違いだったのでしょうか。確かにほかの事由がどうかと言われると、そういう点は確かに再審公判で、この証拠が偽造かどうかというのを正面から問われるということではないと思うのですが、しかしそうは言っても実際に再審公判の中で問題になることは間違いないと思うのです。そういう意味で、全く違うことになりますよということにはならないと思います。   あともう一つは、被害者の方の御意見は非常に重く受け止めるべきものだとは思うのですが、やはり再審請求をする側にとってみると、救済が大幅に遅れるということ自体が非常に耐え難い苦痛だということだと思います。ここは価値的に正面から対立する両方の利益だということで、そのように考えざるを得ないかなと私は思っているのですけれども、その場合に、ではどちらを優先すべきかという話になると思うのです。被害者の方や御遺族の方は、間違った判断で処罰を受けている人がいるとすれば、それは早期に正してもらいたいのだという意見も強く持っておられるはずなのです。そういう意向というのは、早期に再審公判を開いて決着を付けるべきだという文脈で捉えることは十分可能だと私は思っています。そのような御説明で被害者の方々の中にも納得されている方も実際はおられるのです。そういう意味で、価値対立が大きいのは知っていますけれども、どちらを優先すべきかといったら、やはり再審法の理念というのはえん罪救済の目的なのですから、そちらを優先すべきだというのは、最終的にはそちらに傾くのではないかと、傾くべきだと思っております。 ○後藤委員 第5回会議でも申し上げましたが、判決といいますのは三審制の下で当事者双方が攻撃・防御を尽くし、慎重な審理を重ねた上での判断であります。第5回会議や第10回会議では、再審開始決定が中間的な判断であること、検察官は再審公判で争う機会があることなどから、再審開始決定に対する検察官による不服申立てを禁止すべきであるという御意見があったと認識しておりますが、私としては、決して中間的な判断という姿勢で再審請求事件を処理してきたわけではありませんし、そのような姿勢が相当であるとも思いません。再審開始決定というのは、先ほど述べたようなプロセスを経て判決が確定したにもかかわらず裁判をやり直すという重大な効果を有するものですので、これにつきましても上訴制度の下、慎重に審理を重ね、その適正さを確保するのが相当であると考えます。   もちろん、無辜の救済に至るまでの請求審、抗告審が著しく長期化してしまった事例があることは承知しておりますが、これにつきましては、本来は手続を主宰する裁判所が適切な時期に事件を処理すべきであるという責任をきちんと果たすべき問題であると考えております。検察官の抗告を禁止するという手段に結び付けることについては慎重に考える必要があるのではないでしょうか。 ○宮崎委員 これまでも申し上げてきましたとおり、再審開始決定に対する不服申立てを一律に禁止することは、通常審において三審制の下で慎重な審理が尽くされた結果である確定有罪判決について、下級裁判所の一人の裁判官が再審開始を決定すれば、その判断が仮に誤っていたとしても直ちに再審開始となる仕組みとすることを意味し、通常審における慎重な審理が無意味なものとなりかねず、確定判決による法的安定性を著しく害するものであって、相当でありません。   特に、被害者がいる事件に関して言えば、被害者の方々は、有罪判決が確定するまでに、捜査機関による事情聴取や公開の法廷における証人尋問などによって多大な身体的、精神的負担を強いられていることが少なくありません。そうした被害者の方々の御協力、御尽力によりようやく有罪判決が確定した事案であっても、ひとたび再審開始決定がなされた場合には、仮にこれが誤っていたとしても是正の余地が一切なく、直ちに再審開始となる仕組みとすることは、第3回会議において磯谷参考人が述べられたように、正に被害者を「終わらない裁判」に巻き込むものであって、到底被害者の方々に受け入れられるものではないと考えられます。   再審開始決定が誤ったものであった場合には、再審公判において再び有罪判決が言い渡されることも十分に想定されるところ、被害者にとってみれば、ようやく確定した有罪判決なのに、誤った判断で再審が開始されてしまい、再審公判でも無罪が争われた挙げ句、ようやく再び有罪判決に至るということになりますが、その間、被害者に身体的、精神的負担を負わせるだけということにもなりかねず、特に性犯罪の事案においては、被害者に刑事手続の過程で負う二次被害やプライバシー侵害による三次被害を再発させるだけということにもなりかねないのであって、制度としてこうした事態を容認することには問題があります。   また、山本委員から言及がありましたが、既に当部会の委員、幹事の皆様にも事務当局から共有があったところでありますが、先日、殺人など7件の事件の犯罪被害者遺族の方々から法務大臣に対して提出された意見書には、一部抜粋させていただきますが、「判決がどうなるか心配で、心身ともに疲れ果てました。」「時間をかけて慎重に審理がなされ、その結果、ようやく判決が確定したものだと思っています。このような過程を辿った裁判が、もしもう一度行われるとしたなら、また同じ苦しみを味わわなければなりません。」「真犯人の有罪判決が確定したにもかかわらず、それを覆されてしまうことも耐えられることではありません。」などという御遺族の切実な声がつづられていたものと承知しています。   また、同様に、犯罪被害者支援に携わる弁護士団体から法務大臣に対して提出された意見書にも、再審開始決定に対する検察官の不服申立ての禁止に反対する旨の意見が表明されていたものと承知しています。  こうした犯罪被害者や御遺族の方々から寄せられている声についても、十分に考慮されるべきであります。  したがって、再審開始決定に対する不服申立てを禁止することは相当でないと考えます。 ○成瀬幹事 私は、「B案」に賛成する立場から意見を申し上げます。  第10回会議において、「A案」を支持される村山委員や鴨志田委員から、検察官が公益の代表者として関与することとされている少年審判や人事訴訟においては、裁判所の終局判断に対する検察官の不服申立権は認められていない旨の御発言や、職権主義の下で裁判所によってなされた再審開始決定を尊重し、直ちに再審公判に移行すべきである旨の御発言がありました。   しかし、第10回会議において池田委員から御指摘があったとおり、検察官の関与の在り方は、それぞれの手続の目的や性質に照らして決せられるべきであるところ、再審請求手続は、そもそも少年審判や人事訴訟とは目的や性質を異にする手続です。  その上で、再審請求手続においては、再審開始決定が再度の公判を開くという重大な効力を持つことから、慎重な判断が必要となることに鑑み、公益の代表者たる検察官に、違法・不当な再審開始決定の是正を求めることも含めて関与させることにより判断の適正を担保しようとしたものであると考えられることから、再審請求審における検察官の立場を理由として、検察官の不服申立ての権限を否定することはできません。  また、再審請求審において裁判所に広範な裁量が認められているのは、手続進行の方法についてであって、再審開始事由の有無の判断についてではありませんから、裁判所の広範な裁量を理由として検察官の不服申立てを禁止することもできません。   以上のことから、再審開始決定に対する不服申立てを禁止することは相当でないと考えます。 ○田岡幹事 私は、再審開始決定に対する不服申立ては認めないのがよいと考えています。「田岡幹事提出資料②」4ページのとおり、議員立法450条の2に賛成します。なお、文言としては、議員立法450条の2と日弁連改正案450条は異なりますけれども、有罪判決の言渡しを受けた者の不服申立権を認めるのでない限りは、いずれにしても再審開始決定に対する不服申立ては認めるべきではないということを意味することになると理解しております。   その上で、まず「(1)」の不服申立てを禁止する、私の理解では不服申立てを認めないこととする必要性ということになりますが、これについて考えますと、そもそも、問題の立て方が、再審開始決定に対する不服申立てを禁止する必要性があるのかということではなく、これを認める必要性があるのかということなのではないかと理解しております。鴨志田委員が指摘されたとおり、本来検察官は再審請求手続の当事者ではありません。二面手続であれば、むしろ不服申立権を有しないのが原則でありまして、公益の代表者として関与する以上、当然に不服申立権が認められるということにはなりません。先ほど成瀬幹事から御説明がありましたが、人事訴訟法23条の検察官関与の場合には、控訴権は認められていないわけですし、少年法22条の2による検察官関与の場合にも、少年法32条により検察官の抗告権は認められておりません。   ちなみに、川出委員の少年法の教科書にも、「検察官に抗告権を認めることに対して、①それによって手続が長期化することになるため少年の健全育成という観点から望ましくない、②審判の協力者にすぎない検察官が家庭裁判所の決定に対して不服申立てができるのは理論的に矛盾している、という理由で反対論が有力であったためである」と説明されております。これらの理由付けは、再審請求手続においても当てはまると思われます。再審請求手続が長期化することは無辜の救済という再審請求手続の目的に反することになるわけですから望ましくないことでありますし、審判の協力者にすぎない検察官が再審請求審の決定に対して不服申立てをできるというのは理論的に矛盾しているのではないかという説明ができると思われます。   そうすると、私の理解では、これは再審請求手続の構造から理論的に不服申立てができるとかできないということが決まるような問題ではなくて、再審開始決定に対する不服申立てを認める方がよいのか、認めない方がよいのかという、正に政策的な判断でありまして、不服申立てを認める必要性と、それを認めることによる弊害とを考慮した上で、政策的に決められるべき問題なのだと理解しています。   その上で、本部会に参加しておられる裁判官及び研究者の皆様は「B案」に賛成ということでありますが、当部会に届いております裁判官63名の声明、研究者132名の声明、研究者4名の声明・意見書、また、布川事件弁護団の意見書、湖東事件弁護団の意見書、袴田事件弁護団の意見書、松橋事件弁護団の意見書など各種再審弁護団の意見書は、全て、検察官の不服申立ては認めるべきでないという意見です。そうしますと、裁判官及び研究者の中にも不服申立権を認めるべきでないという意見が相当数あることがうかがわれます。  また、当部会に届いております地方議会・首長の意見書、各種団体の意見書のほか、在り方協議会における足立構成員の御発言、超党派議連が法案として提出している議員立法、第217回国会衆法61号が検察官の開始決定に対する不服申立てを禁止していることからすれば、むしろ、民意としては、検察官の不服申立権を認めるべきでないという意見が圧倒的に多いと認識をしております。このような立法事実を踏まえれば、検察官の不服申立権を認める必要性がないことは明らかではないでしょうか。   ちなみに、松尾浩也先生は昭和37年3月27日の衆議院法務委員会再審制度調査小委員会において、「再審を開始する決定に対して、検察官の側から不服を申し立てることは禁ぜられるべきだという御意見につきましては、私も同感でありまして、むしろ、現在の上訴制度で検察官からも上訴が認められていること自体、若干の問題を含んでおります。」とした上で、「少なくとも再審につきましては、ある裁判所が再審を行うべきだという判断をしたのを、次の裁判所がくつがえすということは、決して当を得ていないように思われます。」という御発言もされております。この部会に参加しておられる研究者の皆様は「B案」に賛成なのですが、それは必ずしも研究者の全員を代表しているわけではないでしょうし、また、実務家・国民の意見を反映しているわけでもないように思われました。   次に、「(2)」の「再審手続の二段階構造との整合性」を考えますと、川出委員から第10回会議において、中間的な判断ということの意味は、最終的な判断対象と中間的な判断対象が重なっているために、最終的な判断において実質的に中間的な判断についても審査がなされるので、上訴で争うことができるということから、中間的な判断に対しては独立して上訴を認める必要がないという趣旨であるという御説明がありました。私もそれはそうなのかなと思っております。   ただ、川出委員も認めておられるように、少なくとも刑訴法435条6号の証拠の明白性の判断については判断対象が実質的に重なっているわけですので、最終的な判断である再審公判の判決において実質的に再審開始事由についても判断がなされるので、上訴で争うことができるということから、再審開始決定に対しては独立して不服申立てを認める必要性がないという意味での中間的な判断に当たるということになるのではないでしょうか。  確かに6号以外の再審開始事由や、6号の中でも新規性の判断については、判断対象は重なりませんけれども、現実には、裁判所が6号以外の再審開始事由や新規性の判断を誤ることは想定し難い事態であります。調査手続の際に検察官の意見聴取を省略すればそういうことが起こり得るかもしれませんが、検察官の意見聴取を義務付ければ検察官は再審開始事由の存否や新規性について誤った回答をすることは考えにくいわけですので、裁判所がその判断を誤るということは考えにくく、現実には6号の明白性以外の判断の誤りを理由として検察官から抗告がなされることは想定し難い事態であると思います。川出委員は、対象事例がどのぐらい存在するかは議論する上で考えるべきではないとおっしゃられるのですけれども、現実にあり得ない場合に理論的な問題があることを理由に、現実にあり得る場合に不服申立てを認めるという結論を導くのは、前述のとおりの立法事実を無視するものであって、結論においてやはり不当な結果になるのではないでしょうか。   また、成瀬幹事から第10回会議において、例えば再審請求権を有しない者によって再審請求がなされた場合、方式違反の場合に再審開始決定がなされた場合には、こうした事態が不当であることは明らかであるという御指摘がありました。しかし、これも、先ほど申しましたとおり、調査手続において検察官の意見聴取を適切に行えば、このような再審請求権を有しない者による再審請求や方式違反を看過した再審開始決定がなされることはおよそ考え難いことであると思われます。ただ、仮にこういうことがあった場合に、本当に不服申立を認めないことが不当であることが明らかだと言えるのでしょうか。   例えば、方式違反の場合は、新証拠が添付されていなかったり、確定判決の謄本が添付されていないという事態であると思われます。しかし、客観的には再審開始事由が存在すると認められる場合にまで、方式違反を理由に再審請求を棄却しなければならないということになるのでしょうか。このような場合は、検察官は意見聴取に対して異議を述べると思われますが、検察官が異議を述べず、裁判所が方式違反を看過して再審開始決定をしたのであれば方式違反の瑕疵は治癒されると考えることも可能ですから、方式違反の場合には再審開始決定を是正しなければならないというほどの強い違法があるとは思えません。また、再審請求権者でない者が再審請求をした場合についても、客観的に再審開始事由が認められるのであれば、検察官が異議を述べず、裁判所がそれを看過して再審開始決定をした場合に、その違法を是正しなければ不当であるとはいえないと思われます。   したがいまして、誤った再審開始決定と先ほどから言われておりますが、このような方式違反や再審請求権者でない者による請求の場合であっても、必ずしも是正しなければ不当であるというほどの問題があるとは思われず、結局は6号の明白性判断の場合に検察官の不服申立てを認めるか認めないかということが問題なのだろうと理解しております。   最後に、確定判決による法的安定性を尊重する必要があるということが先ほどから言われておりますけれども、再審開始決定がなされるのは極めてまれでありまして、当然、再審請求審においても相当慎重な審理を行った上で、これは無罪を言い渡さなければならない場合であるというような心証に至った場合に初めて再審開始決定がなされているわけでありまして、決して検察官の不服申立てを禁止したからといって安易に再審開始決定がなされるとは当然考え難いところです。   また、被害者やその御遺族の御意見はよく理解できるところではありますが、なぜ再審請求がなされるかと言えば、現実には、検察官が通常審において開示すべき証拠を開示していなかった事例がほとんどです。つまり通常審において開示されるべき証拠が開示されていれば判決確定後に新証拠が発見されることはほとんど考えられないことですが、現実には通常審において開示されるべき証拠が開示されていなかった結果、検察官の手元に無罪を言い渡すべき新証拠があり、それが判決確定後に開示されるから再審請求がなされるわけであり、また、再審開始決定がなされるわけです。本来、通常審において、このような証拠を開示していれば、再審請求するまでもなく無罪判決が確定しているはずであり、再審請求をするような事態は生じないわけです。その意味では、検察官は、通常審において無罪を言い渡すべき証拠を開示せずに不当に有罪判決を確定させておきながら、なお再審開始決定に対して不服申立てをすることを認める必要性があるのでしょうか。本来、検察官が、通常審において開示されるべき証拠を開示していなかったことが判明したのであれば、速やかに裁判をやり直すべきなのではないか、ということであります。   本来、通常審において無罪を言い渡すべき証拠は迅速に開示すべきでありますし、また、再審請求審においても迅速に開示すべきでありますが、少なくともそのような証拠が開示されていなかったことが判決確定後に明らかになったのであれば、速やかに再審開始決定をして、再審公判において、そのような新たに発見された新証拠を踏まえて、有罪・無罪の判断をやり直すことが、適正手続の保障と真実の発見に資するわけですし、また、犯罪被害者にとっても真犯人を逮捕してもらうことにつながるわけですので、必要なことであり、また、適切なことであると考えております。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○池田委員 私は「検討課題」の「(5)」について意見を申し上げたいと思います。不服申立てを禁止すれば直ちに迅速化するのかということは、既にこれまでにも御指摘がされており、特に村山委員からだったと思いますけれども、再審公判における審理の進め方はスケジュール的に期日管理がなされて進むことなどから、早期に再審公判に移行することとした方が、手続が迅速化すると、そういう意味で請求審の判断は一回的に終わらせるべきなのだという御指摘があったと承知しております。   しかし、再審請求審における迅速な審理の進行を目的とするのであれば、これも小島幹事から御指摘があったことですが、端的に再審請求審の手続の迅速化方策を検討するというのが筋であって、再審開始決定に対する不服申立てを禁止するというのは、目的との関係では明らかに過剰な手段である上、既に「B案」に賛成の立場から指摘されてきたように、多くの検討課題が示されていることからも明らかなとおり、理論的にも、また実際上も、多くの弊害をはらむものだと考えております。しかも、特に宇藤委員から御指摘があったと思いますが、そもそも再審開始決定に対する不服申立てを禁止して直ちに再審公判に移行することにより、再審手続全体が迅速化するか否かは明らかではなく、少なくとも再審請求審段階で審級ごとに判断が分かれ得るような複雑困難な事案において、即時抗告審、特別抗告審で審理するよりも再審公判に移行した方が、迅速に審理が進むことを明らかにする実証的なデータは存在しないと思われます。   以上のとおり、再審手続の迅速化を図る目的で、再審公判への早期の移行を実現するための手段として再審開始決定に対する検察官の不服申立てを一律に禁止するというのは、目的を達成するための手段としての合理性に大きな疑問が残る以上、相当でないと言わざるを得ないものと考えております。 ○村山委員 迅速化の問題については、少し議論が擦れ違っていると思うのですけれども、私は迅速化だけで言っているわけではないのです。これはお分かりいただいていると思いますけれども、やはり公判手続という正式な手続によって審理を受けるという利益がある。それから、開始決定が確定しますと多くの場合、執行停止の問題があって、執行停止がかかれば、少なくとも刑の執行を受けないという請求人の利益があるわけです。実際に抗告された場合に執行停止をかけても、抗告審の方で取り消してしまうということも現に起きています。ここは違いが生じると思うのです。   あと、迅速化するかどうかは実証的な研究がないとおっしゃいますけれども、迅速化しなくて非常に遅滞したという実例はたくさんあるのではないでしょうか。それは今までもお示ししたとおりなのです。もう年単位、何十年単位で遅滞している。一つの第何次請求審が何年掛かっていると、そういうのはお示ししたはずです。つまり、否定的な事例というのはたくさんお示ししています。しかも再審公判、要するに公判手続でこれほど時間が掛かるなどということはまずありません。   そういう点を念頭に置いて再審公判というものを設計すると、争点はもう明らかなのです。再審請求審、特に6号再審のことを念頭に置いて私は発言していますけれども、実際に争点は明らかになっておりまして、通常の刑事公判手続のように争点確定手続の公判前整理手続のようなことはほとんどやらなくてもいいという状態になっています。あとは審理計画、要は立証をどうしますかというところをきちんと整理して話をして、そして進めていく。特に、私は再審請求審と再審公判は一体的なものとして設計されていると考えていますので、再審請求審を担当した裁判官が開始決定をした場合、そのまま再審公判に移行します。ですから、手続としては非常にスムーズに進むと思うのです。そうすれば、うんと早くなることは明らかだと思います。   この点、再審公判になって有罪になる場合が生じるではないかとおっしゃいますが、確かにそうです。そういうリスクはあります。請求人にとっては、再審開始になっても再審公判でまた有罪になるということはあり得ます。だけれども、これはやり直しの裁判である以上、仕方がないということであります。現に今まで、ではそういう形で再審公判になって覆って有罪になった例があるかと法務省に伺ったら、不見当だというお話で、それが今後出たとしても、それはそれで構わないという立場ですので。しかし、そのために遅滞させるということが正当化されるのかということが問題だということだと思います。   あと、再審開始に対する不服申立てを廃止するということなのですけれども、幾つかの検討課題が示されているとおっしゃいますけれども、この検討課題は、逆に言えば、今どうして検察官がこういう形で不服申立てができるのですかという、そちらの問題に私は関連していると思うのです。それは各論点についてそれぞれの鴨志田委員や田岡幹事が述べたことに重複して申し上げることはしませんけれども、そもそもどうして検察官が不服申立てができるのかという原理論的に考えても、違うでしょうと。確かに成瀬幹事が、それぞれのシチュエーションに応じて不服申立てを認めるかどうかを考えると、それはそれでいいですよ。それはいいのですけれども、この場合に原則として認めるのが当然なのだ、だから禁止なのだという議論は既に通用しないのではないかということを申し上げていますし、そのほかの論点についてもこれまで述べたとおりであります。以上によって、私は「A案」のように禁止すべきだと思っています。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○鴨志田委員 これまでもそうですけれども、今回も、三審制の下で慎重に審理をして確定したものを一人の裁判官の開始決定で覆すということは三審制を軽視するものであるという御意見が出されたように思いますが、現にその三審制で慎重に審理して有罪が確定したというところに、そもそも問題が生じている事例があって、それが再審開始、再審無罪に至っているということはそろそろ認識を共有していただきたいと思うのです。   福井事件では確定審段階、確定一審段階から存在していた証拠が検察官の下で隠されたまま有罪主張が繰り返された結果、一旦、一審では無罪だった判決が高裁で逆転有罪になり、これだけだと確定審検察官の問題だったよねという話で終わるわけですけれども、第1次再審でも再審開始決定が出ているにもかかわらず、その証拠が開示されないまま、更に検察官は異議申立てを行って、その再審開始決定は取り消され、第2次再審になってようやくその証拠が出てきたことで、今回は一発で再審開始が決定し、確定もし、再審無罪に至ると、こういうケースがありながら、三審制の下で慎重に審理を尽くした重みを重視して、その後13年間えん罪を晴らせずにいたその人の人生というようなところに全く思いが至らないというのは、私は一人の人間として、どうなのだろうと、正直、許せないという気持ちでいます。   もっともここは、そういう感情を吐露する場ではないと思いますので、もう少し理論的な話をしますけれども、先ほど宇藤委員から、これは再審開始決定に対する検察官の抗告という問題を越えて、上訴制度全体にわたるような議論をしなければならないような話であって、諮問を越えた大掛かりな議論になると、ここだけを検討すればいいのではないというような御意見が示された一方で、川出委員や成瀬幹事からは、中間的な判断で抗告が認められていないものが幾つかあるけれども、それは問題となっている決定ごとに抗告を認めるかどうかを検討すべきであるという意見が他方で出されているわけです。目的や性質ごとに状況を異にするから個別に検討すればいいというのであれば、上訴制度全体を俯瞰して見るという形ではなくて、この問題は正にこの部会で検討すればいいだけの話ではないかと思います。   最後に、犯罪被害者の心情ということがいろいろな方から言われていますけれども、私は犯罪被害者側の弁護士を務めたことも何度もあります。犯罪被害者が置かれている過酷な状況というのは、そこに寄り添うという形で理解しています。それは、何の落ち度もないのに、ある日突然犯罪に巻き込まれ、メディアスクラムに晒され、プライバシーや名誉をずたずたにされ、長い裁判で苦しめられるというようなものだと思います。しかし、それはえん罪被害者やその家族も同じではないでしょうか。ある日突然、無実なのに犯人扱いされ、犯人視報道され、メディアスクラムで家族の人生もめちゃめちゃにされる。その救済が検察官の抗告によって長引いている。先ほど言った9年とか13年とか24年とかいうレベルで長引いている。そのような場に晒されているえん罪被害者やその家族に対して、犯罪被害者が「私たちの名誉やプライバシーがずたずたにされるから、だから検察官の抗告によって長期間再審開始が確定しなくても、それは我慢をするべきである」と言うことができるのでしょうか。むしろ一緒に、早く再審公判に進んで、無罪を決めて、えん罪被害者がきちんと無罪になった後で、本来憎むべき真犯人をきちんと見付けようと、そういう話になるのではないでしょうか。犯罪被害者やその遺族とえん罪被害者やその家族を対立構造にしている責任は、私たち司法に携わる者にもあると思っています。その点をよくよくお考えいただきたいと思います。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○酒巻委員 この場におられる上訴制度を含む刑事訴訟法全体に関して優れた見識を有する研究者の先生方の意見を聴き、またこれに反対する弁護士委員・幹事の方々の意見も伺ってきましたが、私は、検察官の上訴をどうするかという論点について、「A案」のような規律を設ける上での課題がいまだ解消されていないと考えます。多くの方の発言とかなり重なりますが、幾つかのことを申し上げたいと思います。   まず、再審請求審における審理の長期化の問題が指摘されていますが、ごく一部の極めて例外的な事件を除けば、合理的な期間内に処理されていると見ることができますので、再審開始決定に対する不服申立てを一律に禁止するという尋常でない極端な方法を講じてまで再審請求審の審理期間を短縮する必要性は示されていないと考えます。   再審請求審の審理期間につきましては、例えば、世間の耳目を集める再審請求事件の内容が極めて重大、複雑なものであればあるほど、記録の分量も大部となり、裁判所・弁護人・検察官がそれぞれ記録を精査、検討した上で対応するために相応の時間を要すると思われますし、また、鑑定が必要になればその鑑定自体に相応の時間を要するということもあると思います。このように再審請求審の審理期間に影響を与える要因は事案によって様々であって、しかも不可避的に生じる要因もある中で、再審請求審をどこまで迅速化することができるかという目標については、手続に関与する裁判所・弁護人・検察官のそれぞれの運用上の取組・工夫によるところが大変大きいのだと理解しています。何か検察官上訴を禁ずるというような特定の制度を設けたからといって、それだけで手続が迅速化するということは考え難いように思います。   結局のところこの問題については、審理期間がいたずらに長期化しないように全ての関与者が、裁判所・弁護人・検察官が、手続運用においてそれぞれの役割を誠実に果たしていただく、そういうことによって解決されるべき事柄だろうと私は考えておりまして、再審開始決定に対する不服申立てを一律に禁止するなどという極端な方法によって解決されるべき事柄ではないと考えます。以上は研究者の先生方がこれまでに発言されたことと共通するところです。   なお、当部会においては、「検察官の不服申立てによって再審開始決定が取り消されたことにより、最初に再審開始決定がされてから最終的に再審開始が確定するまでに長期間を要した事案が現に存在するのであるから、再審開始決定に対する不服申立てを禁止する必要性が認められる」、そういう御趣旨の御発言がありました。しかし、再審開始決定が検察官の不服申立てによって取り消されたような事案においては、仮に同決定に対する不服申立てを認めず直ちに再審公判に移行したとしても、その時点での証拠関係の下では、再び有罪判決が言い渡されて確定した可能性も高いという見方も十分可能であるように思います。再審開始決定に対する不服申立てが、それ自体として再審無罪の確定を遅らせ、迅速な救済を妨げたと断ずることはできないだろうと考えております。   また、これは理論上の問題ではありますが、当部会においては、「再審開始決定が取り消されて棄却決定が確定した場合であっても、後に、別途再審請求がなされて無罪になることもあり得るから、不服申立てにより再審開始決定が取り消されたことをもって、同開始決定が誤りであったと評価することはできない」旨の御発言がありましたが、これは理論的には正確でないと思われます。   すなわち、再審開始決定が取り消されて再審請求棄却決定が確定した場合には、確定したのが棄却決定である以上、当該再審請求に関する限り、つまり、その時点での訴訟状態、事実関係及び証拠関係を前提とする限りは、棄却決定が正しく、開始決定は誤りであったと訴訟法上は評価するほかはない。もちろん、その後に別途再審請求がなされる場合はありますが、再審請求が棄却された場合、刑事訴訟法第447条第2項の条文にありますとおり、同一の理由によって更に再審請求することはできないため、先の再審請求と後の再審請求とでは事実関係も証拠関係も異なることとなりますし、もとより、後の再審請求についての決定は、飽くまでも後の再審請求について理由があるか否かを判断するものにとどまります。先の再審請求についての開始決定や棄却決定の当否について何ら判断するものではない。理論的にはそういうことになります。   したがいまして、後の再審請求について開始決定が確定した場合であっても、先の再審請求について、確定した棄却決定が誤りであったことになるものではなく、また取り消された開始決定が正しかったことになるものでもありません。神様から見た場合には分かるかもしれないが、分からない実体を前提にして訴訟法上の議論をすると全てがおかしくなりますので、よく分からない実体を前提にした議論をするのは混乱の元になりますから、やめた方がよろしかろうと思います。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。   よろしいでしょうか。              (一同異議なし) 〇大澤部会長 ありがとうございます。この論点につきましてはここまでということにさせていただきたいと存じます。   それでは、ここで10分ほど休憩を取らせていただきたいと思います。              (休    憩) ○大澤部会長 それでは、再開させていただきまして、次に、配布資料20の「第4 再審請求の審理に関するその他の手続規定」のうち「4 再審の請求についての意見聴取並びに審理を終結する日の指定及びその通知」から「6 手続の受継」までについて審議を行いたいと思います。まず、事務当局からこれらに関する部分について説明をしてもらいます。 ○今井幹事 配布資料の5ページ目を御覧ください。枠内の「4」には、これまでの御議論を踏まえまして、審判開始決定をした裁判所は、審理を終結するには、再審の請求について、再審の請求をした者及び弁護人並びに検察官の意見を聴くとともに、審理を終結する日を定めなければならないことなどを記載しております。「5」には、これまでの御議論を踏まえ、裁判所は、審理を終結したときは、速やかに、再審の請求について決定をする日を定めなければならないことなどを記載しております。「6」には、審判開始決定があった場合において、再審の請求をした者が死亡した場合に、他の再審請求権者が再審請求手続を受け継ぐことができることなどを記載しております。   なお、期日指定に関する規律を設けるかや、審理を公開することとするかなどについては、いずれもこれまでの御議論において、そのような規律を設けるべきであるとの御意見が示された一方で、規律を設けることの必要性・相当性に強い疑問が呈されているところでございまして、そこで御指摘された理論上・実務上の問題等が克服されておらず、そうした議論を踏まえますと、今後検討課題を克服して法整備を行う方向で意見を集約することも現実的に困難であると考えられたことから、配布資料には記載しておりませんが、必要に応じて更に御議論いただければと存じます。 ○大澤部会長 配布資料20の「第4」の枠囲みのうちの「4 再審の請求についての意見聴取並びに審理を終結する日の指定及びその通知」及び「5 再審の請求について決定をする日の指定及びその通知」は関連しますことから、まず、これらをまとめて審議を行いたいと思います。「6」と、最後に言われた枠内に書かれていない事柄についての議論の時間は別途設けますので、まずはこの「4」と「5」について御意見を伺いたいと思います。御意見・御質問等がある方は挙手の上、御発言をお願いします。 ○田岡幹事 私は、「4」のうち審理終結日の指定及びその通知と、「5」の決定日の指定及びその通知の規定を設ける旨の御提案については、特に反対はしませんというか、こういう規定を設けることに賛成しますが、「4」の意見の聴取を審判開始決定後に行うものとしていることについて意見を申し上げたいと思います。   既に前回の会議でも発言しましたが、刑訴規則286条の意見聴取は、少なくとも現状では不適法な請求、方式違反等の場合でも必要的に意見聴取を行っているものと認識しております。藤野英一裁判官の判例タイムズ97号でも、実務は積極説に従っていると記載されており、その注6に臼井滋夫元検事長の論文が引用されており、このような意見聴取をしなければ方式違反かどうかということの判断もできないし、また、実質的に再審理由が存在するのであれば、方式違反があるからといって直ちに不適法として棄却することは再審制度の存在理由に沿わないということから、意見聴取は不可欠だと指摘されております。  この度の御提案は、「第4」「2」の調査手続を設けることを前提に、その際の意見聴取は、裁量で行うことまでは否定しないようですが、少なくとも必要的なものとはせずに、審判開始決定をした事件に限って意見聴取を行うという御提案であると思いますが、私は調査手続の際にも、当然、意見聴取は必要的なものとしてなされるべきであると考えます。   ちなみに、仙台高裁昭和48年9月18日決定、判例タイムズ301号131ページ、松山事件の即時抗告決定は、「刑訴規則286条が再審の請求について決定をする際には意見を聴かなければならないと定めた趣旨は、請求の理由の内容を検討するについて、再審請求人や相手方の意見を聴取しなければその理由の有無の判断ができない場合に備えるだけではなくて、再審制度が個々の裁判の事実認定の誤りを是正し有罪の言渡しを受けた者を救済することを目的とするところから、再審請求人の意見を十分酌んだ上で再審請求の理由の有無を判断することが望ましいものとして設けられたものと解すべきであるから、手続の進展に伴い意見を表明し得る機会を与えなければならないとした上で、原審の手続、すなわち事実取調べがいまだ未了であるから事実取調べ後に改めて意見を述べる機会があると期待を抱かせた状態のまま再審棄却決定をしたことについては、刑訴規則286条に定める請求人の意見陳述の機会を奪ったものと言わざるを得ず、訴訟手続の違反は再審制度の存在理由ないし目的に反する手続違反であり、原裁判所はその審理を尽くさず決定をなしたものである」と判示しております。このように手続の進展に伴って意見聴取をすることが不可欠であることから、私は「第4」の「2」の調査手続の段階でも意見聴取をし、更に「第4」の「4」の段階でも意見聴取をするということが適切であると考えます。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○村山委員 ただいまの田岡幹事の発言に私は賛成です。というのは、実際にもそのようにやっていると思われます。確かに審理期間が短い再審請求事件について2回やるということは、まずないかと思いますけれども、そうでない事件は、最初に請求を受理した段階で所要の点検をした後、意見を聴くという手続をやっています。検察官の方の意見は、やはり方式違反であるとか同一理由による請求だというようなことを検察官が意見を述べてきた場合には、そういった点を念頭に置いて調査をしているという状況です。また、請求書自体にはやや意味不明なことが書いてあっても、その意見聴取の中ではそれなりのことを書いてきているという場合には、こういうことなのだということで善解をするというような形で、審理をどうするかを考えるということを行っています。   また、事実の取調べを実際に行った事件はどうするかというと、やはり最後に実際に意見陳述をしてもらっています。検察官の方がするかどうかは検察官の選択なので、検察官が最終的に述べるかどうかというのはまちまちだと思うのですけれども、多くの場合、事実の取調べを行って、弁護人が付いている事件の場合には、最後に最終弁論のような形で意見を述べている場合がほとんどだと思います。そういう意味でも2回、もっとやっているのもあるのかもしれませんけれども、私が承知しているのはその2回ぐらい意見を聴取しているということがあって、後の方だけやればいいというものではないだろうと思っています。特に、請求人側の意見の中で請求書を補足するような内容が書かれている場合がありますので、そういったものを見逃すということは非常に請求人とって不利益なことになると思います。あと、繰り返しになりますけれども、検察官の当初の意見というのは非常に参考になる場合が多かったと認識しています。 ○大澤部会長 調査手続において意見を聴くかということが田岡幹事の方から問題提起されて、そこにどちらかというと賛成する御意見が出ているということかと思いますが、ほかに御意見はございますでしょうか。 ○成瀬幹事 先ほど田岡幹事は、「第4」の「5」の規律に賛成するとおっしゃったのですが、「田岡幹事提出資料②」の8ページでは、日本弁護士連合会改正案第445条の16に賛成すると記載されていますので、念のため、同条後段の規定内容、すなわち、検察官又は法定代理人若しくは保佐人が再審請求をしている場合には、有罪の言渡しを受けた者にも決定日を通知しなければならないという御提案について、私の意見を簡潔に申し上げます。   これまで御議論があったように、検察官又は法定代理人若しくは保佐人が再審請求をしている場合において、当該有罪の言渡しを受けた者は、再審請求についての決定に対し不服申立てをすることができないこと、また、意見聴取の対象となるにすぎず、手続に主体的に関与することが予定されていないことから、御提案のような規律を設ける必要性に強い疑問が呈されています。  こうした議論状況に鑑みれば、御提案のような法整備を行う方向で意見を取りまとめることは困難であると考えます。 ○大澤部会長 ほかに御意見はございますでしょうか。   今、枠囲みの中のお話が出ましたので、枠囲みの中の「4」番、「5」番につきまして御議論があれば伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○池田委員 田岡幹事の配布資料の同じ部分で日本弁護士連合会改正案第445条の16に賛成するという記述がございますので、その点について意見を申し上げたいと思います。   こちらは決定する日を定め、決定日の1か月前までに通知しなければならないという案が設けられているわけですけれども、こちらの検討資料の方にありますように、決定日が通知されるより前に審理終結日が通知されるという取扱いとなっておりますので、事実上その時点から決定に先駆けて不服申立てを想定した準備を行うことは可能となりますし、不服申立て期間も延長するという中で、更に御提案のような規律まで設けなければならない必要性はないのではないかと思っております。   これまでの議論で述べたことの繰り返しになりますけれども、御提案のような規律を置くことは、再審請求手続の円滑かつ迅速な進行を阻害するおそれがあることから相当でなく、そのような規律としなくとも裁判所は事案に応じて適切な決定日を定めることになると思われますので、このような規律は必要ではなく、かつ相当でもないと考えます。 ○大澤部会長 更にこの枠組み「4」、「5」の範囲で御意見はございますでしょうか。   今お二人から御発言がございましたが、田岡幹事は特によろしいでしょうか。 ○田岡幹事 私は、成瀬幹事及び池田委員が御指摘された点に強く拘っているわけではありません。日弁連改正案に賛成すると書いたために、そのような御意見が出たのかなと思っておりますが、大事なことは審理終結日の決定とその通知、また、決定日の決定とその通知がなされることでして、決定日の決定が十分な余裕を持ってなされるのでしたら、私としては反対しませんし、また、有罪の言渡しを受けた者に通知をしなくても、その者に不服申立権がないのでしたら特に支障はないのではないかと、私個人はそう考えております。 ○大澤部会長 分かりました。それから、調査手続の中で意見を聴取するかというお話ですが、後の方では「論点整理(案)」の「8」の「(2)期日指定に関する規律を設けるか」とか、「(3)請求理由についての陳述の機会を付与することとするか」、「(6)事実の取調べ後の意見陳述の機会を付与することとするか」、「(9)審理を公開することとするか」、これは全部後の方の議論のくくりに入っているのですが、調査手続のお話というのは、請求理由についての陳述の機会を付与するかという論点とは区別されますか。 ○田岡幹事 私はそもそも調査手続という制度が必要なのか、また相当なのかについて、御説明を受けても納得できていないところがあるのですけれども、仮に調査手続の制度を前提とするのでしたら、調査手続の段階で、期日を開いて意見陳述をする必要はないのだろうと思います。書面による意見聴取でも足りるのではないかと思います。ただ、審判開始決定がなされたのでしたら、それは本格的な審理を要する事案なのでしょうから、その際の意見聴取に当たっては期日を開く、つまり口頭弁論を経なければならないものとした上で、期日において再審請求理由の陳述の機会を与えるという規律にするのがよろしいのではないかと思っております。その意味で、調査手続における意見聴取と審判開始決定がなされた後における意見の陳述とは区別できるのではないかと思っておりますし、その趣旨ないし目的も異なるのではないかと考えております。 ○大澤部会長 それでは、御意見がここで出ましたので、調査手続における意見聴取ということについてはここで議論しておきたいと思いますが、この点について更に御意見がある方があれば承りたいと存じます。 ○田岡幹事 実務上は意見聴取を必要的にやっていると思われます。刑訴規則286条がある以上、不適法である、つまり方式違反や請求権消滅の場合であっても、直ちに再審棄却決定をしているわけではないと認識しております。多くの場合、村山委員が言われたように、検察官に意見聴取しますと、検察官がこれは方式違反であるとか請求権消滅であるという答えが返ってくるので、裁判所も、なるほどそうなのだなと考えて、補正を命じたり、補正ができない場合に再審棄却決定をするというように手続が進んでいるのだろうと思うのです。これを任意的なものとする必要性、つまり立法事実がどこにあるのか、私はよく分かりません。意見聴取をして返してもらうだけですので、さほどの時間を要するとは思われません。ですので、これをあえて任意的なものとしたいということであれば、なぜ、それを省略する必要があるのか、その立法事実を教えていただきたいと思います。 ○大澤部会長 事務当局、答えられますか。 ○玉本幹事 御指摘の点については、スクリーニングにおける意見聴取については裁量的なものとすることが考えられるとの御提案があったところです。また、この点は、補正の論点とも関連するように思われまして、スクリーニングにおける補正の規律の在り方については議論があったところですが、仮に補正の求めを必要的なものとしないのであれば、意見聴取についても一律のものとはしないという考え方もあろうかと思います。いずれにしても、更に御議論をいただければと思います。 ○田岡幹事 再審請求人に対する意見聴取と検察官に対する意見聴取は、私は全く意味が異なると思っております。確かに再審請求人は趣意書を出していますので、趣意書を出している人に更にまた意見を聴くのは不要な場合もあるのではないかと思います。補正を命じる必要がない場合は別に意見聴取しなくてもいいということがあり得るのかなと想像します。ただ、検察官への意見聴取を省略する必要は理解できません。幾ら方式違反や請求権消滅の場合でも、検察官の意見を聴いて判断する方が、誤りがなくなるだろうと思います。特に、先ほど不服申立ての議論の際に成瀬幹事が指摘されたような方式違反等による誤った再審開始決定がなされるおそれがあるというのでしたら、そういう事態が起こらないようにするためにも、検察官の意見聴取は必要的に行うべきなのではないかと思います。 ○大澤部会長 それは運用の話ではなくて、法律上マストとしてということですか。 ○田岡幹事 そうです。私には、意見聴取を省略したいというニーズが分からなかったので、検察官に意見聴取することすら省略して、迅速に再審棄却決定したい場合というのは、どういう場合を想定されているのかなと思った次第です。 ○村山委員 刑訴規則の286条では、「再審の請求について決定をする場合には」と書いてあるので、私は調査手続の規定に基本的に反対している立場なのですけれども、仮にそうなったときであっても、最初の段階で棄却しなければいけないという事件に割り振られたとしても、この意見聴取の手続は必要になるのではないかと考えていたのですけれども、それも外すという提案なのでしょうか。この中で、なぜこちらの方だけ意見聴取するとなっているのかという、そこの種明かしなのですけれども、そういう理解でよろしいのでしょうか。 ○玉本幹事 事務当局としては、意見聴取を必要的なものとする事案はスクリーニングを乗り越えたものに限るということも考えられるのではないかという御提案がありましたので、それを踏まえて、資料を作成したところです。 ○村山委員 そうすると、286条の「決定をする場合には」という規定は、場合によってはこれをしなくてもいい場合もあるということですか。 ○玉本幹事 加えて申し上げますと、前回、スクリーニングで棄却される事案についてどういうイメージなのかという議論があり、基本的な資料を確認するだけで棄却すべきものであることが容易に判断できるような事案を想定していると申し上げましたけれども、それを前提にしますと、スクリーニングでの意見聴取についても一律に、法律上必要とするかどうかには議論があるのかなと考えております。 ○村山委員 そういう意見だとすると、286条の手続を履践しない事件を作るということには私は反対したいと思います。やはりこの手続は必要だと思っています。補正かどうかはともかく、確かに請求している人間にもう1回意見を聴くというのは無駄な場合も多いのですけれども、意見聴取の方に詳しく書いてくる人もいるのですよ。それで、こういうことなのかと分かるので、要するに、補正といえるかどうか少し微妙ではあるのですけれども、意見を踏まえるとこういうことを言っているのだという理解が可能というのもないわけではないので、そういう場合はどうかというのと、あと、検察官の意見は非常に有益だというのはもう間違いない話なので、そこで、それをなぜ端折るのかというのがよく理解できません。 ○大澤部会長 御議論いただくべきテーマということなのかと思いますが、更に御発言があれば承りたいと存じますが、いかがでしょうか。 ○平城委員 刑事訴訟規則の話が出ていますので、少しむずがゆい思いをしながらお聞きしていました。刑事訴訟規則の規律というのは、不適法として棄却する事案みたいなものも対象に入り得るとは思うのですけれども、そこがターゲットのメインかというと、そうではなくということで、恐らく全体をくくっているような規律だろうと思われます。   その上で、実務上はどう作業しているかというと、規則上聴かなければいけないということになっていますから、当事者の意見を聴くことが多いと思います。村山委員がおっしゃったように、検察官の意見が非常に有益なこともありまして、検察官がおっしゃっていたことを、例えば確定記録を見ながら、そのとおりだと思ったりすることもあると思われます。他方で、田岡幹事がおっしゃっていたように、請求人にも意見の聴取をしなければいけないことになっていますので、これを改めてする必要があるかどうかというところで一つ悩みを生じている裁判官はいるのかなと想像したりします。村山委員がおっしゃっていたシチュエーションは、検察官から意見が返ってきて、これについてまた請求人に意見を聴くという手続を経ることによって、当初は不適法な申立てのように思えたけれども、その意味を理解することができたということもあったりもするので、非常に有益に機能していることもあると、多分こういうことなのだと思われます。   法律上の議論としては、裁判所に対して義務付けるというのを規律として設けるのかという議論だと思っていまして、恐らく事務当局は、スクリーニングを経たような、ある意味きちんとした審理をしなければいけない場合は意見を聴かなければいけないのだけれども、その前のものについては義務付けまでは必要ないのではないかという御趣旨でこの資料を作成されたものと理解しております。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。   今の御意見も踏まえて、もう少し練り上げるということになるのかと思いますが、よろしいでしょうか。              (一同異議なし) 〇大澤部会長 ありがとうございます。次に、配布資料20の「第4」の、これも枠囲みの中の話でございます。「6 手続の受継」について審議を行いたいと思います。この点につきまして御意見・御質問等がある方は挙手の上、御発言をお願いします。 ○池田委員 受継について、「田岡幹事提出資料②」について田岡幹事に御質問させていただきたいと思っております。   提出資料の8ページの「(7)」のところに受継の期間についての記述があり、「6か月より短い期間とすることが考えられる」、その括弧内に「1か月よりは長い期間にすることが考えられる」と書いてあるわけですけれども、具体的にはどの程度の期間をお考えなのか、根拠と併せて御説明を頂ければ幸いです。 ○大澤部会長 田岡幹事、よろしいですか。 ○田岡幹事 まず前提として、御提案のような「第4」の「6」のような手続の受継の規定を設けることには賛成します。私は、日弁連改正案の439条の2、家事事件手続法の45条の規定も参考になると考えております。   その上で、具体的な受継の期間は、日弁連改正案は6か月としていますが、確かに再審請求人が死亡していることがはっきりしている場合でも6か月待たないと棄却決定ができないというのは長すぎるかなと思う一方で、1か月ですと、第11回会議でも指摘しましたが、弁護人が気付いたときにはもう1か月経過していたといった事態が生じて受継が困難になりかねないことから、3か月程度がよいのではないかと考えております。  通常審のように、1か月ごとの期日が入っていれば、再審請求人が死亡していることに気が付かないことはないかなと思うのですけれども、現状では、再審請求手続には期日がありませんので、例えば、半年に1回しか三者協議が開かれない場合には、再審請求人と連絡を取ったら死亡していたという事態があり得ることになりますので、再審請求手続には期日がないということを踏まえると、感覚的には、3か月程度は必要なのではないかと考えております。 ○池田委員 ありがとうございました。専ら実務上連絡が付かないことがあるということを踏まえての3か月程度というお考えと承知いたしました。他方でこの御説明によりますと、例えば第13回会議において成瀬幹事から紹介があった刑事補償請求手続の受継の申立期間と同等以上の期間、2か月とされていますけれども、同等以上の期間としている合理的な理由は十分に示されていないのではないかと思われるところです。   おっしゃるとおり、再審請求手続では期日が定期的に開かれないので、再審請求者が死亡しても弁護人や他の再審請求者が気付きにくいとか、あるいは手続を受継する再審請求権者を探し出すのに時間が掛かるということもあろうかと思うのですけれども、そうした事態への対応としては、定期的に再審請求者と連絡を取り合う、あるいは、あらかじめ有罪の言渡しを受けた者の親族の連絡先を把握しておくなどといった実務的な対応も考えられるように思われます。   そして、これまで述べられてきたとおり、受継の申立期間を検討する上では、再審請求者の死亡後に受継の申立てがされて手続が引き継がれるのか、受継の申立てがされずに手続が確定的に終了するのかが決まらない状態が長期間継続し、手続が長期化することは、再審請求手続の円滑化・迅速化の観点から受継を認める趣旨に反することになるといったことや、他の再審請求権者は期間の制限なく別途自ら再審請求をすることが可能であることを十分に考慮する必要があり、また、他の手続における受継の申立期間とのバランスも考慮しますと、受継の申立期間を1か月とすることについては十分に合理性があると考えております。 ○大澤部会長 受継についてほかに御発言はございますでしょうか。 ○鴨志田委員 私も3か月は必要だという立場から意見を申し上げます。対象者の探索そのものにももちろん時間が掛かります。前もって探しておけという話なのですけれども、やはり現実にはなかなか親族まで把握するというのは難しい場面もあります。それにプラスして、対象者が見付かりましたという後に、その人が再審請求者に該当するということを疎明するためには戸籍謄本等の取り寄せをしなければならないということになります。ほとんどの場合そうだと思いますけれども、既に弁護人が付いている場合は、弁護士が職務上請求で取り寄せるのですけれども、それであっても役場によっては、それだけでそのやり取りに1か月ぐらい掛かるケースがままあります。これは経験的な事実なので、そういうことを考えると、やはり1か月とされてしまうと相当きついなというのが偽らざる実感です。そのような理由で3か月ということを申し上げたのですけれども、そのような事情をある程度具体的に考慮していただきたいということは、申し上げておきたいと思います。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。よろしいでしょうか。              (一同異議なし) 〇大澤部会長 ありがとうございます。受継に関してはここまでということにさせていただきまして、次に、配布資料20の「第4」の「検討課題」「(2)その他」として、配布資料20に記載のない「第4」に関する論点・項目、具体的には、「論点整理(案)」の「8」の「(2)期日指定に関する規律を設けるか」、「(3)請求理由についての陳述の機会を付与することとするか」、「(6)事実の取調べ後の意見陳述の機会を付与することとするか」、「(9)審理を公開することとするか」について審議を行いたいと思います。この点について御意見・御質問等がある方は挙手の上、御発言を願います。 ○田岡幹事 私は、「田岡幹事提出資料②」7ページ以下で、期日等の手続規定について、日弁連改正案とは異なる案を提案しておりますので、その趣旨を説明させてください。   まず、刑訴規則286条の規律をどうするかというのが先ほどから話題に出ておりますが、調査手続を設けるかどうかはともかくといたしまして、少なくとも方式違反や明らかに再審請求理由がない場合を除いては、意見の聴取をしなければならないとした上で、その意見の聴取は口頭弁論を経なければならないとすることによって、公開法廷で開かれる期日における意見聴取の手続を義務付けるべきであると考えております。これは刑訴法349条の2第2項の刑の執行猶予の取消手続を参考にしたものでありますが、再審請求手続では弁護人が選任されていない場合も相当数あると思われますので、必ずしも書面による意見聴取が効率的になされない場合もあると思われます。再審請求人から書面が出てきてもその趣旨が判然としない場合に書面による意見聴取を繰り返すよりは、むしろ期日において直接再審請求人本人の訴えを聴くことによって、再審請求人が求めている再審請求理由を的確に把握することができるでしょうし、不明な点があれば、裁判所は釈明を求めることもできるでしょうから、このような手続は期日において行うということにするのが適切であると考えております。   なお、刑訴法349条の2の第2項は請求があったときに限定しておりまして、刑訴規則222条の7で口頭弁論請求権の告知を義務付けているわけですが、再審請求をしている以上は当然、口頭弁論の請求をしているとみなしてよいだろうということから、請求があった場合に限らず、口頭弁論を経なければならないとすればよいのではないかと考えております。ただ、もし例外的に、再審の請求はするけれども口頭弁論まで請求しないという場合があるようでしたら、請求を要件としてもかまわないとは思っております。   その上で、日弁連改正案445条の2第2項のように再審請求人の期日出席権、また、日弁連改正案445条の8のように、事実取調べの立会権、これは期日において事実調べをすれば当然に立ち会うことができるということになるかと思いますが、このような規定を設けることによって、再審請求人が期日で行われる手続を把握することができ、事実取調べの結果を把握することができますから、適切に主張立証する機会が与えられることになると考えております。   また、第12回会議において、成瀬幹事が、平成12年1月11日の東京高裁決定を引用されまして、裁判所が再審請求者に意見陳述の機会を与えるに当たり、事実取調べの結果を記載した書面を送付したという事例を紹介されておりました。私はこのように事実取調べをした場合に再審請求人に聴取結果を告知する、あるいは通知すること自体は大変よいことではないかと思っております。そのため、裁判所は事実取調べをした場合には、これを再審請求人、弁護人及び検察官に通知しなければならない旨の規定を設けて、これは家事事件手続法の63条や70条を参考にしたものでありますが、事実取調べをした場合には、その結果を通知することを義務付けるという御提案をしております。   なお、先ほどの期日で行う事実調べと、このような期日外で行われる事実調べの違いは、書証のようなものは必ずしも期日で全部取り調べなくてもよいとしますと、取調べをした場合には通知する必要があるということになりますが、証人尋問や鑑定、検証などのように期日で行うべき重要な事実調べについては、再審請求人は期日において事実調べに立ち会うことができれば、それを直接見ることができますので、あらためて、通知する必要はないという違いがあるものと理解しております。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○村山委員 私は、「論点整理(案)」の「8」の「(2)期日指定に関する規律を設けるか」という点で、私自身は期日指定をするということが非常に重要だと理解しております。これが枠の中に取り上げられていないということに少し残念だという気持ちもあるわけですけれども、やはり期日指定をして、どういう形で期日指定をするかというのももちろん問題があるのですけれども、再審請求を受けた裁判所が請求人の請求を受け、又は職権によって期日を一定期間に指定すると、その期日には再審請求人、弁護人、それから検察官は立ち会うことができると、こういうような趣旨の規定を作るべきだと思っています。   これは先ほど来、迅速化の問題で、検察官の不服申立てを禁止すればそれで即迅速化につながるとはいえないでしょうという反論を受けて、正にそのとおりです、それは認めます。迅速化を阻むもう一つの要因が、やはり請求審自体の審理の遅滞。その審理の遅滞はどこから来るかというと、やはり期日指定がなされないままに何か月も、場合によっては何年も経過していると、それがやはり遅滞の大きな原因になっていることはもう間違いないと思うのです。それを防ぐためには、期日を指定して、では何をするのだということで異論が出ていましたけれども、裁判所が全部記録を検討した上で期日を指定するという、そこまで要請するつもりはないので、要は請求人の側が何を問題にしたいのかというのを口頭で説明し、また、事実の取調べとしてどういうことを考えているのか、さらには証拠開示、証拠の提出ですかね、そういうものについてどういったものに重点を置いているのかというのを話し合うということだけでも十分実が上がると思うのです。そこで実際に話合いをすれば、その後も審理の予測、では次の期日までに何をしますかという話になるので、当然審理としても継続していく。何もしないで期間が空いてしまうということを避けることができると思います。そういう意味で期日を設けることのメリットというのは非常にあると思うのです。   期日を設けると硬直化するのではないかという御意見があるのですけれども、私はその硬直化という意味がよく分からなくて、確かに非常に短い期間で拘束を掛けると大変だというのは、それは私も従前から認めているところなのでありまして、そういうところでは、例えば速やかにとかいうような文言が適切だということであれば、それは適切なのかもしれませんけれども、とにかく義務的に期日を開くということにして、そして集まるということが重要だと思っています。   その際に公開にするかどうか、それから、特に受刑者の場合の立会いをどうするかという難しい問題があるのは承知していますが、やはり期日というからには、いろいろなバリエーションがあっていいと思うのですけれども、今、田岡幹事が話されたように、公開の法廷で意見陳述の機会だということであれば、それは当然期日指定も、その公開の法廷で期日指定をするというふうにならざるを得ないと私は思っています。そういう意味で、期日指定に関連する問題というのは付随していろいろあるというのは承知していますけれども、その点について一切何も設けないで、今までどおりでいいのだということになれば、結局は審理の遅滞、請求審自体が遅れているという問題の一つの大きな原因になっている部分は改善されないのではないかと。要するに、法曹三者が気合いを入れてやればいいのだという精神論だけでは、とてもそういうものは乗り越えられないと思いますので、制度化する必要があると思っています。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○鴨志田委員 田岡幹事、村山委員に賛同する立場なのですけれども、これもやはり「第4」の「2」の調査手続との関係性ということを考える必要があると思います。調査手続というのは、要するに理由のない再審請求を迅速に棄却するところに主眼があると私は思っておりません。そのようなスクリーニングを通った本格的に審理の必要な事件にいかに充実した手続規定をはめるかというところの、いわゆる審理の充実化というところに資する制度でなければならないというべきです。そういう観点で考えると、今の「第4」に挙がっている、事実の取調べができるということとか、意見聴取と審理終結日の指定といったところだけではやはり不十分であって、意見の聴取にしても、先ほど来あるように、まずはどういった主張なのかということを請求人、また検察官に確認をするという意味での意見聴取と、事実取調べをした後で、最終的な弁論に相当するような意見陳述というのは、少なくとも調査手続を経た後のものには、この二段階での意見聴取が不可欠だと思います。   また、やはり審理の公開、また期日を設定するということも当然に必要だろうと思います。最近は裁判員時代になって、いわゆる意見の陳述というところも、弁護団の付いているような事件については法廷でパワーポイント等を用いたプレゼンテーションの形でやるということがかなり一般化していると認識をしておりますので、そういう意味でも期日を設けることが有用です。もとより手続のすべてについて公開するという必要がないということは以前から申し上げているとおりで、少なくとも意見陳述、それから新証拠に関連する重要な鑑定について証人尋問を行うというような場面は、以前も申し上げたとおり、現状でも法廷に施錠した状態の法廷で尋問をやっていますので、そんなことをするぐらいだったら、やはりこれは公開すべきではないでしょうか。  また、今の公開の話は、先ほどの目的外使用禁止規定とも関係すると思います。やはり審理の透明性ということを考える意味でも必要だと思いますし、また、本格的な事件に充実した審理、手続保障を与えるという観点からも、このような二段階の意見陳述、重要な事実調べの公開、その前提として、そのような審理計画をきちんとスムーズに進めていくためには、やはり期日がどうしても必要であると思います。いきなり事実取調べ請求をして、そこで集まってというよりは、当初から主張を確認し、どのような審理計画で進むか、いつの段階で証人尋問をやるのかということを決めるためにも、期日という概念で進行していくということがなお有用だと思いますので、このような審理の充実化という観点からの手続規定を入れていただきたいと思います。   また、この期日という問題に関しては、議員立法で提出されている衆法61号、これはやはり議員立法ということもあって、余り細かな手続規定は盛り込まれていないのですが、今までの調査やヒアリングなどで期日というものはとても重要だということに国会議員が共感したので、この期日の規定だけは入っています。裁判所は期日を設けることができるということと、訴訟指揮権が裁判長にあるということと、それから期日調書を作るという、この3点だけなのですけれども、これを見ても、やはり期日から物事が始まるということが共通認識になっているのではないかと思う次第です。 ○大澤部会長 少し確認のために事務当局に伺いたいのですが、枠囲みの中の「4」番ですが、審理を終結するには、再審の請求について意見を聴くというのが今回出していただいた検討資料ですけれども、ここでの意見を聴くというのは、最終弁論的なイメージなのでしょうか。 ○玉本幹事 御指摘のとおり、最終弁論的なものというイメージで作成したところです。 ○大澤部会長 更に御発言があればお受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○池田委員 このテーマに関しては、「田岡幹事提出資料②」の7ページの下の方に、意見聴取の義務付けとともに口頭弁論を経なければならない旨、事実取調べへの立会権を保障する旨、事実取調べの請求権を付与することとすること、事実取調べを実施したときは通知することとして、その際に審理の公開についても併せて言及があったように思います。その後、村山委員から期日への出席権を保障するということについての言及もありました。そこで、私からは以上の全体について意見を申し上げたいと思います。   まず、再審の請求後にその理由についての陳述の機会の付与を義務付けることについては、これまでの議論において度々指摘されているとおり、再審の請求理由を的確に把握するために適した場合もあるでしょうけれども、いかなる方法をとるかは審理の主宰者である裁判所の判断により柔軟に決すべき事柄であり、現在でも裁判所の裁量により請求理由を陳述させることができるほか、裁判所は再審請求をする際に差し出される趣意書により再審の請求理由を把握することができることからすると、一律にそれについての陳述の機会の付与を義務付ける必要はないというべきであり、他方で、かえって手続の硬直化を招きかねず、相当でないと考えます。   また、事実の取調べ後の意見陳述を口頭弁論で行わなければならない旨の規定を設けることについても、意見聴取のためにいかなる方法をとるかについては裁判所の判断で柔軟に決すべきであって、法廷において口頭で行うまでの必要はなく、書面によってすれば足りる事案も相当数あると思われることから、ここでもかえって手続の硬直化を招き、相当でないと思われます。   期日の出席権についても、再審請求者及び有罪の言渡しを受けた者の中には刑事施設に収容されている者も多いことを踏まえますと、その者を出席させるための日程調整に時間を要するなど、円滑に期日を指定することが困難となり審理が長期化するといった事態を招きかねず、ひいては裁判所が必要な期日指定をちゅうちょするようになることも懸念されます。こうしたことからすれば、再審請求者及び有罪の言渡しを受けた者に期日への出席権を一律に認めることは相当でないと考えます。   加えて、検察官又は有罪の言渡しを受けた者の法定代理人及び保佐人が再審請求をしている場合には、有罪の言渡しを受けた者自身は再審の請求をしていないわけですので、手続に関与すべき必要性が必ずしも高いとはいえないことから、期日への出席権を認めなければならないこととする必要性については特に疑問が残るところです。   結局のところ、期日に再審請求者等を出席させるか否かについては、職権主義の下、手続進行について主導権を持つ裁判所が個別の事案に即して適切に対応すべき事柄であって、期日への出席権を認めることについては、なお課題が多いと考えております。   事実取調べへの立会権についても、事実の取調べには様々な態様のものがあると考えられ、中には再審請求者等の立会いが想定し難いものもある上、一律に立会権を認めることとすれば、刑事施設に収容されている再審請求者を立ち会わせるための日程調整に時間を要するなどし、円滑な事実の取調べの実施が困難となるなどの弊害が大きいと思われます。   先ほど田岡幹事の発言の中で、証人尋問・検証・鑑定について立会いを認めてはどうかという趣旨の御発言があったと記憶しております。ただ、これについても一律に立会権を認めるということをお考えであるとすれば、なお課題が大きいのではないかと思われます。これまでの議論からすると、事実の取調べはいわゆるスクリーニングの規定を突破した後になされることとなるわけですけれども、この段階では法令上の方式違反や再審請求に理由のないことが明らかなものなどが棄却されるにすぎないと考えられます。その上で、現在の再審請求事件の実情として指摘されているところに照らせば、仮にスクリーニングを突破した事案であっても再審開始決定がなされる蓋然性が高いものばかりではなく、つまり再審請求が棄却されるような事案が相当数含まれてくるものと思われます。そうであるとすると、証人尋問や検証、鑑定を実施する場合であっても、その重要性の程度は個別の再審請求事件における事実関係や証拠関係によって異なり得ると考えられます。そうであるにもかかわらず、それらの事実の取調べについて一律に立会権を認めることとするのは、通常審で十分な手続保障を経た後に下されて確定した有罪判決を是正する非常救済手続である再審請求審における手続保障としては過剰なものと言わざるを得ないのではないかと思われます。   その上でこの場合も、結局のところは、再審請求者を事実の取調べに立ち会わせるか否かについては、職権主義が採られている再審請求審において手続進行の主導権を持つ裁判所が個別の事情に照らして適切に判断することにより解決されるべきであって、立会権を認めることについてはなお課題が解消されていないものと思われます。   事実の取調べをした場合の通知の規定を設けることについても御指摘がありました。事実の取調べについては、請求権が認められることとなれば、同請求に対する裁判所の決定がされることになるわけで、その場合は再審請求者等に告知されることになると考えられます。これに加えて事実の取調べをした場合における通知まで一律に義務付けることには過剰な面があることは否めないように思われます。また、職権により事実の取調べをする場合もあると思われますけれども、例えば、再審請求審の審理中に有罪の言渡しを受けた者が婚姻して氏が変わったため、変更後の同人の氏を確認するために戸籍謄本を取り寄せる場合など、再審請求者自身の話ですので、その再審請求者等に通知をする必要性が乏しいものもあると考えられます。こうしたことも考えますと、事実の取調べをした場合に再審請求者等に一律に通知しなければならない旨の規定を設けることについては慎重であるべきであると考えます。   最後に、審理の公開について併せて意見を申し上げます。先ほど申し上げたように意見聴取は口頭弁論を経なければならないとすること自体が相当でないと考えておりますけれども、田岡幹事の御意見は、口頭弁論を経るということは、これが公開されるということが前提の御意見と理解しております。その上で、これまでも議論がありましたが、審理の公開を義務付けることの必要性・相当性については、再審請求審において一般的に不適正な運用が行われていて、手続の公開を義務付けることによって裁判所の職権行使を国民の監視下に置かなければならないことを示すほどの立法事実は提示されていないという指摘があることや、再審請求審の審理が公開されることとなると、報道等によって被害者等の名誉・プライバシーや生活の平穏が害されるおそれが高まることとなるなどの弊害があるという御指摘がされているところであって、これらの検討課題を克服して御提案の法整備を行う方向で意見を集約することは困難ではないかと思われます。   今般挙げられている刑事訴訟法第349条の2は、刑の執行猶予の取消しの手続に関する規定ですけれども、決定手続の審理について、憲法上の要請でなくても公開を義務付ける規定は存在するから、刑事訴訟法全体としての整合性は問題とならない、あるいは再審請求手続は再審請求者の重大な利害に関する重要な手続であるから、刑の執行猶予の取消しの手続と同様に審理の公開を義務付けるべきであるという御意見も述べられたところです。もっとも、刑の執行猶予の取消しの手続は、刑事訴訟法上は口頭弁論を経なければならないとされているのみであって、口頭弁論を公開して行うことについては刑事訴訟規則によって定められています。その上で、これまでの議論においても指摘されているとおり、刑事訴訟法には、憲法上の要請でないのに決定手続の審理について公開を義務付ける規定は存在しないと考えられます。また、刑の執行猶予の取消しの請求がなされた者は、執行猶予が取り消され刑事施設に収容されるという不利益を受ける可能性のある立場に置かれているのに対して、再審請求者は再審請求手続において新たに刑罰という不利益を受ける可能性がある立場にはないということからしますと、審理の公開の在り方について両者の取扱いが異なるとしても、整合性を欠くものではないと考えます。 ○大澤部会長 多数の点について御意見いただきました。   更に御発言はございますでしょうか。 ○江口委員 確かにこれまでの再審請求審の判断が相当長期化してしまった事例があることは承知しておりまして、先ほど後藤委員からも御発言がありましたが、私自身といたしましては、これに対して、手続を主宰する裁判所が適切な時期に事件を処理すべきであるという責任をきちんと果たすべきであったと考えております。  そのためにも、これまでの議論でも委員・幹事の皆様から御発言がありましたが、個々の事案の具体的な事情等を踏まえて、裁判所がスケジュール感を持つとともに、適切な時期に、例えば当事者と協議等をするなどして手続を進めていくことが必要な場合があると考えております。  ただ、そのような協議等を期日として行わなければならないということになりますと、既に成瀬幹事からも御指摘がありましたように、手続が硬直化し、かえって審理の迅速化を妨げるように思います。   この点につきまして、御参考になるか分かりませんが、現在の実務におきまして、当事者と争点や証拠の整理をする手続として行われているものとして公判前整理手続がございます。この手続は期日を定めることもできますが、実際には全ての手続について逐一期日を指定しながら進行することはほとんどなく、多くの事件では手続を期日ではなく打合せという形で行っております。これは、公判前整理手続を、その内容を充実させつつ、円滑かつ迅速に進めることを可能とするための実務の工夫の一つかと思います。このことは手続の円滑かつ迅速な進行の実現が、期日の指定とは連動していないことの一つの表れであるように思われます。   また、期日の指定につきましては、審理の充実化の観点からも必要であるとの御指摘もありましたが、この点につきましては、第11回会議で成瀬幹事が御指摘されたとおり、手続の内容の充実化の実現と、手続を期日によって行わなければならないかは別の問題であると考えております。  したがいまして、期日に関する規定を設けることにつきましては慎重に検討すべきと思われます。   また、審理の公開につきまして、私の意見としましては第7回会議で述べたとおりでございまして、第11回会議配布資料13の「第8」にまとめられているような問題や弊害があり、規律を設ける必要性・相当性のいずれについても疑問がございます。これまでの議論を踏まえましても、刑事訴訟法全体としての規律の整合性の問題を乗り越えることは難しく、審理の公開についての規律を設けることにつきましても慎重に検討すべきと思われます。 ○大澤部会長 更に御意見はございますでしょうか。 ○宇藤委員 私からも審理の公開の点について意見を述べさせていただきたいと思います。   私は、この会議で繰り返し、審理を公開することについては反対の意見を述べさせていただきました。その趣旨は、先ほど池田委員が御発言になられたところ、あるいは江口委員が御発言になられたところと重なりますが、期日をどうするかということはともかくとして、裁判所の判断で一定の期日を設けて、その下での手続を公開するということは現在の法律の下でも行われていることでございます。そういったところを踏まえますと、一律に審理を公開する規律を設けるべき立法事実があるのかということについて疑問を持っております。   また、田岡幹事が御指摘のように、刑事訴訟法第349条の2第2項では、確かに請求に基づいて審理が公開されるということが定められております。御承知のとおり当該規定というのは刑法第26条の2第2号、また刑法第27条の5第2号の規定に係るものであって、事実問題について争いが生じ、執行猶予の取消しの当否の判断に困難が伴うことが予想されることが、請求に基づく公開を定める理由として指摘されており、その限りでは、田岡幹事が御指摘のところと恐らく重なり合うのだろうとは思います。しかし、当該手続の公開というのが、執行猶予取消しという不利益処分に係るものであり、かつそれが裁量的な判断によるものであるであるということを前提としているという点で、再審請求審の場合とはやや前提が異なると思います。したがって、刑事訴訟法第349条の2第2項を引き合いに出して、請求に基づいて審理の公開を義務付けるべしという御提案については、賛成しかねます。 ○田岡幹事 国選弁護人制度を設けて、弁護人がいる状態になるのであれば、まだいいのかもしれませんけれども、仮に国選弁護制度が設けられず、弁護士がいない場合を考えますと、審判開始決定がなされた場合には、裁判所は職権で証拠開示命令又は証拠提出命令を出して、事実の取調べをするのだろうと思いますが、その証拠の内容を再審請求人が知り得ないということになりますので、再審請求人が、その証拠を踏まえて、意見を陳述する機会がなくなってしまいます。  ですから、少なくとも証拠の提出を命じたり、事実の取調べをした場合には、その結果を再審請求人に知る機会を与える必要があると思うのです。具体的には、事実の取調べをしたのであれば、その結果を通知するか、又は期日に立ち会うことができることとするか、いずれかが必要なのだろうと思います。再審請求人が期日に出席できない場合は、今般成立しました刑事手続のIT化の中で、ビデオリンク方式による出頭という手続規定が設けられておりますので、現実に期日に出頭が難しい刑事施設に収容されている者についても、ビデオリンク方式による出頭ということが検討されるべきではないかと思います。   また、期日とすることの意味に、期日調書が作られることがあります。そうしますと、刑事訴訟法49条は、弁護人がいない被告人の公判調書の閲覧権を定めておりまして、被告人が読むことができないとき、目が見えないときは公判調書の朗読を求めることができるとされております。再審請求手続の期日調書が公判調書に含まれるのかどうかという問題はありますが、仮に公判調書に当たるとしますと、被告人にその閲覧権というものが認められますので、期日において行われている手続を把握することができます。例えば、通常審でも、打合せの場合には、打合せ調書を作るか作らないかということは裁判所の裁量になっており、公判前整理手続期日と異なり、期日調書が作られません。被告人が立ち会っていない期日において行われた事実の取調べの内容を知り得ないというのは、やはりこれは手続保障的に問題があるのではないでしょうか。   成瀬幹事は、事実取調べが行われた場合に再審請求人に通知したことはあるから、そのような運用がなされるのであれば、再審請求人は意見を言うことができるとおっしゃられたのですけれども、そのような運用が確保されませんと、再審請求人が全く知らないところで事実の取調べが行われ、それに基づいて再審開始決定をするか否かの判断がなされることになってしまいますので、これはやはり手続保障として不十分であると思います。   また、期日の公開の可否について、先ほど宇藤委員から、現行法でも公開はできるのだとおっしゃられたのですが、公開された事例は極めてまれでございまして、日産サニー事件の証人尋問のほかには、公開された事例はないと思われます。被害者の中には公開されないことを望む場合もあれば、むしろ公開してもらい、私たちにも傍聴させてほしいと希望する場合も当然あると思われます。そのような場合には、被害者のプライバシーに配慮して、被害者特定事項秘匿決定の制度がありますので、再審請求手続にも同様の制度を設けて、被害者のプライバシーに配慮することは可能です。被害者の中には、公開することを希望する者もいると思われるのに、あたかも被害者は一律に非公開を望んでいるかのような前提に立つことはできないと思われます。   この場合に、裁判所の裁量に委ねるのでは公開の可否の判断が適切になされないおそれがあることから、少なくとも重要な手続に関しては公開で行うべきであるという規定を設けるべきです。さもなければ、先ほどから出ている目的外使用禁止の規定との関係では、無罪を言い渡すべき明らかな証拠があるとされているのに、その証拠を被害者やマスコミを含めた世の中の人は誰も知らないままに再審開始決定がなされたとしますと、逆にどんな証拠があって再審開始決定をしたのだと、裁判所はおかしいではないかというような批判が起こりかねなくて、かえって混乱するように思われるのです。裁判所に対する信頼が落ちかねませんので、きちんと大事なことは公開の手続の中で行うことによって、被害者の納得も得られるでしょうし、国民の信頼も高まると考えます。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。   よろしいでしょうか。              (一同異議なし) 〇大澤部会長 ありがとうございます。この論点につきましてはここまでということにして、次に、配布資料20の「第7 再審請求手続に関する費用補償制度」について審議を行いたいと思います。まず、事務当局からその点に関する部分について説明をしてもらいます。 ○今井幹事 配布資料20の9ページ目を御覧ください。「第7 再審請求手続に関する費用補償制度」に関しましては、これまでの御議論において、規律を設けるべきであるとの御意見が示された一方で、規律を設けることの要否・当否についてなお十分な整理が必要である旨の御意見も示されたことを踏まえまして、更に御議論いただく必要があると考えられましたことから、「A案」と「B案」を併記しております。   枠外の「検討課題」には、これまでの御議論を踏まえて更に議論を行うことが考えられる事項を記載しておりまして、規律を設ける必要性・相当性のほか、「A案」のような規律を設けるとした場合の具体的な規律の在り方につきましても御議論いただきたいと思います。 ○大澤部会長 それでは、この論点について審議を行いたいと思います。御意見・御質問等がある方は挙手の上、御発言をお願いいたします。 ○田岡幹事 私は、「田岡幹事提出資料②」10ページのとおり、費用補償の対象とすることに賛成です。「A案」を支持する立場からの意見を申し上げます。   既に第11回会議でも申し上げておりますけれども、費用補償の制度に関しましては、昭和53年7月18日の最高裁決定の調査官解説でも、将来立法政策を検討する際に参考になると思われるとされております。また、衆議院法務委員会の附帯決議、昭和63年4月1日や参議院法務委員会の附帯決議、昭和63年4月28日でも、更に調査検討すべきとされております。   その上で、第11回会議において池田委員から、少なくとも現時点では再審請求人が出頭することを義務付けられている期日は存在しませんという御指摘がございました。私は期日を設けた方がよいとは思いますが、仮に期日がなくても、現在でも上告審はほとんどの事件では期日は開かれませんけれども、国選弁護人の報酬自体は算定可能であるとされており、法テラスが国選弁護人報酬約款に基づいて、適切に、旅費、日当はほとんどの場合には発生しないのですけれども、弁護人の報酬を算定しております。また、実費についても謄写費用が発生すれば謄写費用を支払っているわけです。したがって、期日がないから費用補償の範囲が明確でないとはいえず、少なくとも上告審の国選弁護報酬及び実費と同じように算定することはできるだろうと思います。   また、成瀬幹事から、再審開始決定に至らなかった再審手続のみに要した費用は対象とすべきでないという御指摘がございました。これは確かにそのとおりかなと思います。ただ、結果的に第1次再審請求では再審開始決定に至らなかったけれども、その後、第2次再審請求によって再審開始に至った場合に、第1次再審請求に提出された新証拠が第2次再審請求の際にも新証拠として取り調べられ、更に再審公判においても取り調べられたといった場合を想定しますと、新証拠の作成あるいは収集に掛かる費用がおよそ補償の対象外になるということではないのだろうと思っております。結果的にその後の再審請求において利用された結果、再審公判において再審無罪になったのでしたら、それを含めて、適正な費用補償の額を算定するということになるのだろうとは考えております。 ○大澤部会長 ほかに御意見はございますでしょうか。 ○池田委員 先ほど田岡幹事から御指摘があったように、私は第11回会議において、現時点で再審請求手続においては法律上出頭を義務付けられている手続は存在しないことと、再審請求手続に要した費用については捜査段階における費用と同様、定型化し難いことなどから補償の対象とされなかった経緯があることを指摘いたしまして、再審請求手続に要した費用を補償の対象とすることの可否あるいは当否に関しては、なお十分な整理が必要である旨を発言しております。これらの点について、これまでの議論も踏まえて私なりに整理したところを申し上げたいと思います。   まず1点目ですが、これも今、田岡幹事から御指摘があったところと重なりますが、通常審においても控訴審・上告審については被告人の出頭が義務付けられておりませんが、現行刑事訴訟法上、これらの上訴審への出頭に要した費用について、それが義務によるものか否かにかかわらず補償の範囲に含まれるとされていることを踏まえますと、再審請求手続に関する費用補償の規律を設けるに当たり、同手続において法律上出頭を義務付けられている手続が存在しないことは必ずしも支障になるものではないと考えました。   また、二つ目の点に関しましては、先ほど述べたとおり、再審請求手続においても再審請求者が証人尋問等の事実の取調べのために裁判所等に出頭した費用など定型化できる費用もあり得ると考えられることや、捜査段階における費用については類型的に無罪判決に結び付いた費用とは言い難い一方、少なくとも再審開始決定に至った再審請求手続に要した費用については類型的に無罪判決に結び付いた費用と評価し得ることなどから、捜査段階における費用と区別することができるものと考えます。その上で、刑事訴訟法上、確定判決を覆し無罪判決を得るためには再審請求手続を経なければならないことからすれば、再審公判において無罪判決が言い渡されて確定した場合、その前提となった再審請求手続に要した費用については、無罪判決を得るためにその請求をすることを余儀なくされたことによって受けた財産上の損害として合理的な範囲で補償することが現行の費用補償制度の趣旨である公平の精神にかなうと考えられます。   以上のことからすると、再審により無罪の判決が確定した事件について、一定の範囲で再審の請求の手続に要した費用を補償することは十分に考えられるところではないかと思われます。その場合の規律の在り方については、現行の費用補償制度と同様に、自らが遂行する手続に要した費用を、当該費用を負担した者に対して補償することとするのが相当であり、再審の請求をした者に対して、その再審請求手続に要した費用を補償することとすることが考えられます。もっとも当該費用が生じたことについて再審請求者に重大な落ち度があった場合にまで常に補償しなければならないとするのは行きすぎであり、公平の理念にも反するため、現行の刑事訴訟法第188条の2第1項ただし書と同様に、再審請求者の責めに帰するべき事由によって生じた費用については補償しないことができることとすることが考えられることも併せて指摘させていただきます。 ○成瀬幹事 私は、これまでの議論を踏まえ、「A案」に賛成する立場から、「検討課題」「(2)規律の在り方」について意見を申し上げます。   まず、現行の費用補償制度においては、「無罪の判決が確定したとき」に、その裁判に要した費用の補償をすることとされているところ、その趣旨は、被告人に対して無罪判決が言い渡されて確定した場合には、その者が応訴を余儀なくされたことによって受けた財産上の損害を国の責任で補償するのが衡平の精神にかなうからであるとされています。  この趣旨は、再審請求手続に要した費用を補償する規律を設ける場合においても妥当すると考えられることから、現行の費用補償制度と同様に、「無罪の判決が確定したとき」に補償することとするのが相当であると考えられます。   これに対して、「田岡幹事提出資料②」の10ページでは、日本弁護士連合会改正案第188条の7に賛成すると記載されており、同条第1項を見ると、「再審開始の決定が確定したとき」に補償をすることとされていますが、これまでの議論において御意見があったとおり、再審開始決定が確定しただけでは、再審公判において有罪判決が言い渡され確定する可能性があり、先ほど申し上げた趣旨が妥当しませんので、この点の御提案は相当でないと考えます。   また、補償する費用の範囲については、これまでの議論において御意見があったとおり、再審請求者等が審判の手続に出頭したか否かは、裁判所において容易に知ることができ、出頭に要した費用についても相当程度客観的に算定することが可能であると考えられることや、再審請求手続における弁護人であった者に対する報酬についても、弁護人の訴訟活動の程度、審判の手続への出頭回数等を考慮要素として、一定の支給基準を定めるなどして、客観的に相当な額を算定することは可能であると考えられることなどから、現行の刑事訴訟法第188条の6第1項に倣って、再審請求者又はその弁護人であった者が当該再審の請求に係る審判の手続に出頭するために要した旅費・日当・宿泊料及び弁護人であった者に対する報酬について、補償の対象とすることが考えられます。   他方で、これまでの議論において御意見があったとおり、証拠書類又は証拠物の収集等に要した費用は、現行刑事訴訟法上、公判手続についても補償の対象とはされておらず、弁護人であった者に対する報酬の額を決定する際の一事情として考慮されていることから、証拠書類又は証拠物の収集等に要した費用を再審請求手続における費用補償の対象とすることは相当でないと考えます。   さらに、再審請求手続における審判の手続に、訴訟活動として合理的と認められる範囲を超えて多数の弁護人が同時に出頭する場合もあり得るところ、その全ての弁護人の出頭費用を補償の対象とすることは、不必要に過大な費用を支出した者を優遇するなどの不公平な結果となりかねず、費用補償制度の趣旨に反する事態となり得ます。  そこで、刑事訴訟法第188条の6第2項に倣って、弁護人であった者の旅費・日当・宿泊料を一部の弁護人に係るものに限ることができることとすることが考えられます。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○鴨志田委員 先ほど田岡幹事からも言及がありましたが、再審無罪というゴールに直結した再審請求の部分の費用だけが保障されるべきという御意見を今、成瀬幹事がおっしゃったと思うのですけれども、ただ、具体的に考えたときに、例えば、第1次再審の途中で再審請求人が亡くなって、それでいわゆる終結決定がされて終わった事件で、その後、それは最終的な判断を踏まえていないので、そのときの新証拠というのはそのまま遺族が受け継いだ第2次再審でも新証拠として使うことができるのですけれども、その新証拠が後に再審開始に資する新証拠として認められたような場合に、終結決定で終わった再審請求については新証拠の作成そのものは費用補償の対象には含まれず、弁護人の報酬の中で考慮されるという話でした。でも、第1次再審のときに鑑定人尋問を行って、そこに弁護人も出頭しているというような場合には、その費用が含まれないというのは果たしてどうなのだろうかというような問題を少し考える必要があるのかなということと、同じく、累次の再審にわたる場合に、前の再審で新証拠として提出されたものは、後の再審では新証拠にはなり得ませんけれども、いわゆる総合評価の段階での新旧全証拠の全証拠には含まれるというのがマルヨ無線事件の判例により確立された解釈なので、過去の新証拠がプラスに評価された場合に、そこをどう考慮するのかという問題はなお残るような気がするということで、再審無罪に直結した再審請求だけが費用補償の対象になるというところについては多少、その辺りの事情も考慮する必要があるのではないかと思う次第です。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。   よろしいでしょうか。              (一同異議なし) 〇大澤部会長 ありがとうございます。この論点についてはこの程度ということにいたしまして、あと一つだけ進ませていただきたいと思います。次に、配布資料20に記載していない論点・項目として、「論点整理(案)」の「4 再審開始事由」について審議を行いたいと思います。まず、「論点整理(案)」「4」の「(1)刑事訴訟法第435条第6号の規定を改めるか」及び「(2)死刑判決について、量刑等に関する事実誤認を再審開始事由とするか」について審議を行いたいと思います。御意見・御質問等がある方は挙手の上、御発言をお願いいたします。 ○田岡幹事 私は、第12回会議において日弁連改正案とは異なる案を提案しましたが、この度、「田岡幹事提出資料②」の4ページ以下に提案内容を整理いたしましたので、その趣旨を御説明させていただきます。   まず、4(1)刑事訴訟法第435条第6号の規定を改めることについて、御説明します。元々、この提案は、白鳥・財田川決定の判示の趣旨を解釈上争いのない限度で明確にする趣旨でありまして、再審開始事由を緩和又は拡大する趣旨では全くございません。具体的な文言としては、新たな証拠が発見され、それ単独で、又は他の全証拠と総合したときに、有罪の言渡しを受けた者に対して無罪等を渡すべきとき、と改めることを御提案しております。無罪以外にも、免訴、刑の免除、軽い罪などがありますけれども、一番重要なものは無罪ということですから、要するに、新たな証拠単独で、又は新たな証拠と他の全証拠を総合して判断したときに、有罪の言渡しを受けた者に対して無罪を言い渡すべきときと、このように改めることによって、総合評価説あるいは再評価説ということが明確になると考えております。   第12回会議において、宮崎委員から、白鳥・財田川決定は判例変更されておらず、その後、近時の最高裁決定において、「その認定を覆すに足りる蓋然性」という文言が引用されていることからすると、この文言に意味があるのかないのか、まだ固まっていないのではないかという御指摘がございました。  しかし、マルヨ無線事件の特別抗告決定を見ますと、「確定判決の事実認定について合理的な疑いを抱かせ」の後に、「その認定を覆すに足りる蓋然性のある証拠」というフレーズが続いているわけですが、事実認定について合理的な疑いがあるのに、なおその認定を覆すに足りる蓋然性がないとされる場合が本当にあるのでしょうか。通常審であれば、無罪になり得るにもかかわらず、なおその認定を覆すに足りる蓋然性はないとして再審開始決定をしない場合というのは、私は考えられないように思われます。ここで蓋然性という文言が使われているのは、再審請求手続というのは飽くまで再審開始事由の有無を判断する手続であり、有罪・無罪の実体判断をすることが予定されていないことから、予測的判断にならざるを得ませんので、蓋然性という文言が使われているのだと理解しております。   被害者の団体の方から、日弁連の改正案が再審請求理由の緩和をする趣旨であると誤解されているのも、結局、現在の6号の文言が分かりにくいからでありまして、6号の文言それ自体を見ると、無罪を言い渡すべき「明らかな証拠」と書いてあるのだから、「明らかな」がなくなると再審開始事由が緩和されるではないかという批判を受けているわけですが、それは全くの誤解であります。こういう誤解が生じること自体が、現在の6号の文言が判例を正しく反映したものになっていないということなのではないかと思います。   その上で、なお、この蓋然性の文言には意味があるとおっしゃられるのであれば、例えば、新たな証拠が発見され、それ単独で、又は他の全証拠を総合して判断したときに、有罪の言渡しを受けた者に対して、無罪等を言い渡すべき蓋然性があるとき、あるいは、確定判決における事実認定につき合理的な疑いを抱かせ、その認定を覆すに足りる蓋然性があるときと書けば、白鳥・財田川決定の文言どおりになります。これでもなお反対されるというのであれば、私には理解できません。判決をそのまま書くことになぜそこまで反対されるのか、私は理解ができません。これは飽くまで白鳥・財田川決定の文言をどう表現するかという問題であると理解しておりますので、御検討をお願いいたします。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○池田委員 ただいまの田岡幹事の御提案について意見を申し上げます。御提案の趣旨は、今ありましたように白鳥決定・財田川決定における証拠の明白性の意義に関する解釈を明確化することにあると御説明がされています。しかしながら、両決定が重要な判例であることは当然でありますけれども、その後の最高裁判例においては、これまでの議論において指摘されてきたとおり、判例変更を伴うことなく、新証拠と立証命題を共通にする旧証拠について再評価を行うべきであるとの見解と整合的であると考えられる判示もされているところであり、にもかかわらず、両決定後に蓄積されてきた両決定の実務上の理解についての現在の到達点ともいうべき近年の最高裁判例の判示ではなく、それ以前の両決定の判示を特に明確化する法整備をすることの理由については、なお説明の余地が残るのではないかと思われるところです。   また、これまで御議論があったところでもあるのですが、この御提案については、総合評価の対象となる旧証拠に限定が付されていないことから、田岡幹事は誤解とおっしゃいますけれども、旧証拠の全面的再評価を前提とする立場に依拠して刑事訴訟法第435条第6号を改正したものであるという解釈を招くおそれがあることは否定し難いところであり、そうした観点からも相当ではないと考えます。 ○大澤部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。 ○宮崎委員 田岡幹事から御提案されている、刑事訴訟法第435条第6号の文言を「新たな証拠が発見され、それ単独で、又は他の全証拠と総合して判断したときに、有罪の言渡しを受けた者に対して無罪等を言い渡すべきとき」に改めて、同号から「明らかな」との文言を削除することについて意見を申し上げます。   田岡幹事の御発言を踏まえると、「田岡幹事提出資料②」の御提案も、白鳥決定・財田川決定の判示した証拠の明白性の意義のうち、「その認定を覆すに足りる蓋然性」の要件は予測的判断であることを示しているだけで、事実上意味はないという立場を前提にしたものであると理解されます。   しかしながら、第12回会議において指摘したとおり、証拠の明白性の意義について、両決定がどのような趣旨から「その認定を覆すに足りる蓋然性」と判示したのかは明らかではなく、やはりこの文言について特段の意味はないという解釈が実務的に固まっているとまでは言い切れないことから、御提案のような改正には賛成しかねるところであります。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○田岡幹事 先ほど私は、それなら「蓋然性があるとき」と書けばよろしいのではないかと申し上げたのですけれども、それでもなお反対されるのでしょうか。 ○吉田(雅)幹事 御質問に直接お答えするものではないかもしれませんが、法令を作る場合に使える用語というのは一定程度限られておりまして、最高裁判所の判示の中に現れた文言であるから、それをそのまま法令用語として使えるというものでもなくて、実際にその最高裁判所の判示の文脈等に照らしたときに、その意味合いを法文上どう表現し得るのかというのは、技術的には相応に大きな問題となりますので、そういう意味で、最高裁判所の判示をそのまま書けないのかということについては、ただ今申し上げたようなことも問題となるということを申し上げておきたいと思います。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。   御議論いただきたい問題として、刑事訴訟法第435条第6号の規定を改めるかと、もう1つ、これと密接に関連しているかもしれませんけれども、死刑判決について量刑等に関する事実誤認を再審開始事由とするかと二つがあって、後者の議論もさせていただきたいと思いますが、まず第6号の文言については、御発言はよろしいでしょうか。   それでは、死刑事件の量刑事情に関する部分でございますけれども、田岡幹事から御説明お願いします。 ○田岡幹事 4(2)について、御説明します。これは、表題は「死刑判決について、量刑等に関する事実誤認を再審開始事由とするか」となっておりますが、もはやそういう提案ではなくなっておりまして、第12回会議で申し上げましたとおり、死刑に限らず、刑の必要的減軽事由、具体的には心神耗弱、従犯、身代金目的略取等の公訴提起前釈放、及び中止未遂でも刑の免除に至らず、刑の減軽にとどまる場合、これらの事実の誤認を認めるべき新たな証拠が発見された場合を再審開始事由とすることを提案いたします。 ○大澤部会長 この点につきまして御発言はございますでしょうか。 ○成瀬幹事 今、田岡幹事が御説明くださったように、今回の御提案は、刑事訴訟法第435条第6号の再審開始事由に「必要的な刑の減軽」という文言を加えて、刑の必要的減軽事由を認めるべき証拠を新たに発見したときを再審開始事由とするものであると理解しております。   しかしながら、刑の必要的減軽事由の存否は多種多様な事実に基づいて判断されるところ、そのうちの何らかの事実に誤認があったと主張すれば、再審請求をすること自体は可能となります。   例えば、確定判決で共同正犯が認定された事件において、従犯に当たるとして再審請求をしようとする場合、共同正犯に当たるか従犯に当たるかは、犯行に至る経緯、犯行時の役割、報酬の分配状況等、多種多様な事実を総合的に評価して判断されていると考えられるところ、御提案によれば、これらの事実に誤認があったと主張すれば再審請求をすることが可能となり、しかも、誤認があったと主張する事実を変えて、繰り返し再審請求をすることも可能となりかねないように思われます。  また、心神耗弱を主張して再審請求をしようとする場合も、責任能力の有無は、動機や犯行態様はもとより、被告人の生育歴、病歴、生活状況等、多種多様な事実を総合的に評価して判断するものであり、先ほどの従犯の主張をする場合と同様に、繰り返し再審請求をすることが可能となりかねないと思われます。   しかも、田岡幹事の御提案は、死刑の言渡しを受けた事件に限らず、有罪の言渡しを受けた全ての事件を対象とするというものですから、再審請求が大幅に増加し、再審請求審における迅速な事件処理に支障を生じさせることになりかねません。  よって、御提案のような法改正を行うことの相当性には疑問が残ります。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○村山委員 確かに必要的減軽事由の判断には総合判断をするべき場合が多いというのはおっしゃるとおりだと思うのですけれども、やはり新たな証拠を提出しなければいけないということになっていて、その新たな証拠が出せるかどうかというところでやはり問題があると思うのです。何でもかんでもできる訳ではなく、違いますと言っているだけでは再審請求にならないわけですから。ですから、例えば心神耗弱であれば、犯行当時に精神科にかかっていた事実が分かるような新証拠、こういうものを提出するとか、こういう具体的な証拠が提出されて初めて必要的減軽事由の主張に沿う新証拠を提出したということになるのだと思います。仮に、総合判断による事実認定に誤認があるということで主張してきても、新証拠が付いてこなければ結局は簡単にスクリーニングですか、請求があったとしてもそちらの方で処理されることになるのではないかと思います。   さらに言うと、6号の中には原判決において認められた罪より軽い罪を認めるべきというのが入っているわけですよね。だから、これは、有罪は有罪なのですけれども罪が軽くなる場合だというのが規定されていて、そうすると必要的減軽事由の場合は、やはり処断刑の範囲が明らかに異なってきますので、認められた罪より軽い罪というのとかなり類似してくるのではないかと思うのです。こういうときに再審を認めないというのはいかがなものかと。   一番極限的な場合を言えば、やはり死刑事件で心神耗弱の可能性が相当あるという証拠を出したときに、現状では再審請求が認められないという形になっていると思うのですけれども、本当にそれでいいのかということについては大いに異論があるところでありまして、せめてそのようなことを考えると、必要的に処断刑の範囲が変わるものについては6号の再審事由を認めるべきだというのが田岡幹事の提案だと私は理解していまして、賛成であります。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○池田委員 田岡幹事の御提案は表題と異なって、死刑事件に限ったものではないということが読み取れますので、そのような理解に基づいて意見を申し上げたいと思います。   必要的減軽事由に限らず、量刑上決定的な意味を持つ重要な情状事実は多くあると思われるにもかかわらず必要的減軽事由に該当する事実誤認に限って再審開始事由とすることは制度として不均衡をもたらすものであって、相当でないと思われます。具体的に申し上げますと、保険金を得るために老いた親を殺害したと認定された殺人事件で長期の拘禁刑の言渡しを受けた者が、犯行は介護疲れによる衝動的なものであったと主張して再審請求をしたいと考えた場合、その主張が認められれば、その宣告刑は大きく変わり得ると思われるものの、その請求はこの提案によってもできない一方で、執行猶予付きの拘禁刑が言い渡された殺人未遂事件で有罪の言渡しを受けた者が、殺人が未遂に終わった事由について、傷害未遂ではなく、被害者に対する憐憫の情から犯行を途中でやめた中止未遂であったと主張して再審の請求をしたいと考えた場合、そのような主張が認められたとしてもその宣告刑は大きく変わらないと思われるにもかかわらず、その請求をすること自体はできるということになりますが、判断に与える影響の大小と考慮の可否が逆転した関係に立っているように思われ、不均衡があることは否定し難いと言わざるを得ません。この点について説明の余地がなお残っており、問題点が解消されていないものと思われます。   その上で、このような不均衡を解消するためには結局のところ、再審開始事由として必要的減軽事由に関する事実誤認のほか、量刑に関する事実誤認も含めることとするしかないと思われるのですが、そのような制度設計は、私もこれまで申し上げてきたところにもありますが、多くの再審請求を呼び起こすこととなりかねず、村山委員から御指摘がありましたスクリーニングを設けるとしても、必要以上に確定判決の当否が争われる事態をもたらすという点において不合理であって、また、再審請求審における迅速な事件処理に支障を生じさせることとなりかねないといった課題があり、いずれにしても相当ではないと考えております。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○田岡幹事 先ほど池田委員から再審請求が増えるという趣旨の御指摘がありましたけれども、既に刑事訴訟法435条6号には「軽い罪」が入っていますよね。例えば、殺人未遂が傷害であるとか、危険運転が過失運転致死であるという場合には、現行法でも再審開始事由になります。では、そのような再審請求がたくさん来ているかというと、そのような話は聞いたことがありません。「軽い罪」に当たるとする再審請求は、現実にはほとんどないのではないでしょうか。  必要的減軽事由というのは処断刑に関わるものですから、単なる量刑事情とは異なります。例えば、共同正犯と幇助では、これは実体法の理解としても本当に同じ犯罪類型といえるのかどうかも議論があり得るところであり、共同正犯と幇助は犯罪類型が異なるのだという理解に立てば、「軽い罪」に準じて考えることができると思います。   また、他の量刑事情と区別する理由があるのかと言われると、そもそも「軽い罪を認めるべき」ときという規定自体の合理性も問題になるわけでして、どこで線引きをするかという問題であると理解しております。「軽い罪」というのは、要するに法定刑を基準にしているわけですが、この度の提案は処断刑を基準にしているというものです。客観的に明確になる線引きをしようとすると、法定刑や処断刑によって区別するしかないものですから、一般的に量刑事由を全て再審開始事由に取り込むのではなくて、処断刑に影響を与える刑の必要的減軽事由に限るという提案自体は、私は合理的なものと思いますし、また、濫訴的な請求が増えるとは思いませんが、仮に増えるとすれば、先ほどから出ているスクリーニング規定によって迅速に棄却することとすれば弊害もないものと考えます。 ○大澤部会長 更に御発言はございますか。 ○村山委員 今ほどの田岡幹事の御発言とかぶると思うのですけれども、確かに池田委員の言われたような事例というのは、考え出せばそういうものもあるではないかという話だと思うのです。しかし、一般的にはそんなことはないですよ。やはり必要的減軽事由かどうかというのはかなり大きな問題で、総合評価の量刑論とは一線を画すと思います。また、濫訴の点ですが、事実誤認や量刑不当を争って最高裁までいったとしても、その上で、再審を更に請求するというのは、する人はしていますよ。だから、そういう意味で濫訴が増えるということにはならなくて、やはり必要的減軽という形で処断刑の範囲がはっきりと変わるということを捉えて問題にすべきだというのが、この間のこの審議会での議論を経た上での私の意見です。一般的な量刑論で、量刑事実の事実誤認もやはり事実誤認で扱うべきだという議論をしていた部分もあるのですけれども、それはやはり、再審としてはなかなか難しいということを自覚したからこそ、今は、そういったことは主張しておりません。現実に刑が変わってくる可能性が高いというものに限って、やはり問題にすべきだという主張をしているというところは御理解いただきたいと思っています。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。   よろしいでしょうか。              (一同異議なし) 〇大澤部会長 ありがとうございます。それでは、先ほど申し上げましたように、ここまでということにさせていただきたいと思います。   以上で本日の審議は終了ということにさせていただきたいと存じます。   次回は、配布資料20に記載した論点のうち、本日までに議論できなかったものについて審議を行いますほか、「その他」として、配布資料20に記載のないものについても審議を行うこととしたいと思います。   本日の会議における御発言の中で、特に公開に適さない内容にわたるものはなかったと理解しておりますが、非公開とすべき部分があるかどうかにつきましては、議事録ができた段階で精査した上で、そのような部分がある場合には、御発言なさった方の御意向なども確認した上で該当部分を非公開とする等、適宜の処理をさせていただきたいと思います。他方で、配布資料については、本日新たに公開すべきものはないですね。以上のような取扱いとさせていただくということでよろしいでしょうか。              (一同異議なし) 〇大澤部会長 ありがとうございます。そのようにさせていただきます。   次回の日程につきまして事務当局から説明をお願いいたします。 ○今井幹事 次回の第15回会議につきましては令和8年1月6日午前9時30分からを予定しております。詳細につきましては、別途御案内申し上げます。 ○大澤部会長 1月6日ということで、大変皆様には御負担をお掛けしますが、どうかよろしくお願いいたします。今日が年内最後ということになりますけれども、長時間にわたり熱心な御議論を頂きまして、ありがとうございました。   本日はこれにて閉会といたします。どうぞ皆様、よいお年をお迎えください。 -了-