法制審議会 刑事法(再審関係)部会 第16回会議 議事録 第1 日 時  令和8年1月20日(火)   自 午前 9時29分                        至 午後 1時00分 第2 場 所  中央合同庁舎第6号館A棟1階会議室 第3 議 題  1 審議          ・「再審請求審における証拠の提出命令等」 ・「再審請求審・再審公判における裁判官の除斥」 ・「再審の請求についての調査手続・審判手続等」 ・「刑の執行停止時期の明確化と死刑確定者の拘置の停止」 ・「再審の請求に係る決定に対する即時抗告等の提起期間の延長」          ・「再審請求手続に関する費用補償」         2 その他 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○今井幹事 ただいまから法制審議会刑事法(再審関係)部会の第16回会議を開催いたします。 ○大澤部会長 本日は御多忙のところ御出席くださり誠にありがとうございます。   本日、酒巻委員、井上関係官、寺田関係官はオンライン形式により出席されています。なお、酒巻委員は所用のため途中で退席される御予定です。また、重松委員は欠席されています。   それでは、本日の議事に入りたいと思います。前回会議で皆様に御了承いただきましたとおり、これまでの議論を踏まえて事務当局に配布資料21「試案」を作成してもらいましたので、本日はこの資料に基づき、取りまとめに向けた議論を進めてまいりたいと存じます。   なお、この資料は四巡目の取りまとめに向けた議論に資するために、私の責任の下、事務当局において作成したものであり、もとより今後の議論を制約する趣旨ではなく、「試案」に盛り込まれていない論点についても別途御議論いただく時間を設けたいと考えております。   それでは、まず、事務当局から本日お配りした資料について説明をしてもらいます。なお、配布資料21につきましては、まずは全体的な説明をしてもらい、個別の論点に関する説明については各論点の議論の冒頭に説明をしてもらうこととしたいと思います。それでは、お願いします。 ○今井幹事 本日は配布資料21をお配りしています。配布資料21は、これまでの御議論を踏まえ、四巡目の取りまとめに向けた御議論に資するための資料として、部会長の御指示の下、事務当局において作成した「試案」です。   1ページ目には、「第1」として「議論の経過」、「第2」として「調査審議の結果」、「第3」として「附帯事項」と記載しています。2ページ目以降には、「試案」の別添資料として「要綱(骨子)案」を添付しています。   この「要綱(骨子)案」には、これまでの御議論を踏まえ、当部会において法整備を行うことについて認識の共有が得られたものや、検討課題を克服して法整備を行う方向で意見集約を図り得ると考えられたものについて、特定の案を記載する形でお示ししています。他方で、その他の論点・項目につきましては、これまでの御議論を踏まえ、今後検討課題を克服して法整備を行う方向で意見を集約することは現実的に困難であると考えられたことから、「要綱(骨子)案」には記載しておりません。   配布資料20の「今後の議論のための検討資料」からの主な変更点といたしましては、配布資料20の「第2 再審開始決定に対する不服申立て」について、これまでの御議論を踏まえ、「要綱(骨子)案」には記載していないこととしております。もっとも先ほど部会長からも御説明があったとおり、この「要綱(骨子)案」は、当部会におけるこれまでの御議論を踏まえ、四巡目の取りまとめに向けた御議論に資するための資料として作成したものでございまして、もとよりここに記載していない論点・項目等についての議論を制約しようとするものではありません。   なお、第3の「附帯事項」の内容につきましては「【P】」、ペンディングとしており、どのような記載を盛り込むかにつきましては、委員・幹事の皆様で御議論いただきたいと思います。   また、鴨志田委員、村山委員及び田岡幹事の3名の連名による「法務省事務当局作成の『試案』に対する私達3名の意見」、「法務省事務当局試案に対する修正案」及び「『第3 附帯事項』に記載すべきこと」と題する資料をお配りしております。   本日お配りした資料についての総論的な御説明は以上です。 ○大澤部会長 それでは、本日お配りした資料について、この段階で御質問、御意見等がございましたら挙手の上、どの資料に関する御質問等であるかを明らかにしていただいてから御発言をお願いしたいと存じます。なお、個別の論点に対する御質問等につきましては各論点の議論の際に御発言いただくこととし、この場においては資料全体に関わる総論的な事項に限って御発言いただければと存じます。   それでは、御発言がある方は挙手をお願いいたします。 ○鴨志田委員 前回の会議後に、ただいま御説明のあった法務省事務当局からの「試案」が示されたことを受け、委員の鴨志田、村山、幹事の田岡の3名の連名による3点の資料、「法務省事務当局作成の「試案」に対する私達3名の意見」と題する意見書、「法務省事務当局試案に対する修正案」、そして「『第3 附帯事項』に記載すべきこと」、この3点の資料を提出しているところでございます。このうち「法務省事務当局作成の「試案」に対する私達3名の意見」と題する意見書について、委員・幹事の皆様方に共有されたのが昨日の17時14分ということで、少し遅い時間でしたので、その内容について、この意見書に沿う形で私の方から意見を述べさせていただきたいと存じます。   まず、意見の趣旨ですけれども、私たちは法務省事務当局が作成した「試案」に反対し、えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟が取りまとめ、第217回国会に提出された刑事訴訟法の一部を改正する法律案(衆法61号)を改めて支持するものです。   当部会における議論の取りまとめについては、議員立法案の提出理由にある「再審制度によってえん罪の被害者を適正かつ迅速に救済し、その基本的人権の保障を全うする」観点に立ち返り、議員立法案を踏まえ、これに私達の意見を付加した「法務省事務当局試案に対する修正案」に即した修正がなされるべきと考えております。   その理由ですけれども、この「法務省事務当局試案」は、三巡目の議論のために法務省事務当局が作成しマスコミに公表した「今後の議論のための検討資料」と題する第13回会議での配布資料とほとんど同じ内容です。ただ、両論併記になっていた論点のうち、再審請求審における検察官の保管する裁判所不提出記録の弁護人による閲覧、再審請求審における裁判官の除斥・忌避及び再審請求手続に関する費用補償制度については、一方の案を削除したという形になっています。また、再審開始決定に対する不服申立てについては、項目自体が削除されています。三巡目の議論において私たち日弁連推薦の委員・幹事が求めた意見は全く採用されていません。再審請求の準備段階における証拠の閲覧・謄写に関する規律、再審請求審及びその準備段階における国選弁護制度及び弁護人等との接見交通に関する規律など、証拠開示や調査手続の前提となる制度についても全く取り入れられていません。また、今回の諮問第129号において検討対象として明示的に列挙された再審開始決定に対する不服申立てに関する規律については、「法務省事務当局試案」には一切盛り込まれていません。   私たちが第13回会議で提出した意見書や、田岡幹事の発言でお示ししたこれまでの議論を適切に反映したものとはなっていないばかりか、えん罪被害者の救済に逆行し、再審法の改悪になりかねない、この部会が事務当局案を単に承認するだけのお飾りのような位置付けになってしまっている、本部会の公正性、中立性及び専門性に疑義を持たれかねないという疑義、懸念が現実化したと言わざるを得ません。   なお、「法務省事務当局試案」の具体的な問題点については、この後の議論の中で田岡幹事が私どもの提出した「法務省事務当局試案に対する修正案」に基づいて詳細を述べることになると存じます。ですので、ここではその内容については省略いたしますが、この「法務省事務当局試案」の内容は、調査手続で多くの事件について証拠開示も事実取調べもせずに迅速に棄却し、審判開始決定が出ても、期日の指定や請求人の主張についての意見陳述や審理の公開は保障されず、証拠開示の範囲は限定され、開示された証拠の目的外使用は禁止されて支援や世論の醸成に繋げることができず、ようやく再審開始決定に至っても、検察官の抗告を許し、再審開始決定に関与した裁判官は再審公判には関われないという、再審無罪にたどり着けないような六つの障壁を設けているというものです。   このような「法務省事務当局試案」の内容は、袴田事件を始めとする近年のえん罪無罪事例の示す立法事実を無視し、これまでの議論を適切に反映したものとなっていないばかりか、えん罪被害者の救済に逆行し、再審法の改悪になりかねないものです。なぜこのような立法事実を無視し、諮問の趣旨に反して、再審開始決定及び再審無罪判決を出せないように制限し、迅速に再審請求を棄却する再審法の改悪案が作成されたのかと考えるとき、私たちは当部会の議事運営を法務省事務当局が主導していること自体に問題があることを指摘せざるを得ません。   そもそも法務省は、これまで再審制度の見直しに極めて消極的でした。平成28年改正刑事訴訟法の附則第9条第3項により、速やかに再審請求審における証拠開示について検討を行うこととされたのに、その検討のために設置された協議会、幹事会は非公開とされ、2021年までの間に協議会は1回、幹事会は18回開催されましたが、再審請求審における証拠開示について実質的な議論が行われたのは僅か4回にすぎず、議論の取りまとめすら行われませんでした。   ところが、2024年3月に超党派の国会議員によるえん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟が設立され、同年末には加入議員が全国会議員の過半数に達し、議員立法による法案も取りまとめられました。このように正に議員連盟が法案を提出しようとするタイミングで、諮問第129号による諮問がなされ、同年3月の法制審議会総会において当部会の設置が決まりました。この部会には、えん罪被害の当事者も、いわゆる一般有識者の委員もいません。このような人選は法務省事務当局によるものです。委員及び幹事のうち5名は法務省刑事局の職員及び検事であり、法務省刑事局の職員も検事としての身分を有しています。 ○大澤部会長 この意見書は確かに受け取って、皆さん基本的に読まれていると理解しております。できるだけポイントを絞って御発言いただけるように、時間の制約もございますので、どうか御協力願いたいと思います。 ○鴨志田委員 この後はそれほど長くありません。   三巡目の議論では、法務省事務当局の作成した今後の議論のための検討資料に、日本弁護士連合会推薦の委員・幹事を除き、他の委員・幹事は誰一人として反対の意見を表明していません。もちろん個々人の意見表明であっても、意見が一致するということはあり得るところです。しかし、刑事訴訟法の研究者135名の声明、時事通信が再審を専門に研究する刑事法研究者19名から回答を得たアンケート、元裁判官63名の声明を見れば、当部会の委員・幹事の意見が学会全体を代表するものでも裁判官の総意でもないことは明らかです。   また、この取りまとめに関しては、議事運営のために部会長と法務省事務当局がある程度打合せをすること自体はやむを得ないと考えています。しかし、法務省事務当局が作成した前回の検討資料や今回の「試案」は取りまとめ方が極めて恣意的であり、当部会における議論を取りまとめたものとはいえません。日弁連推薦の委員・幹事の提案は、私たち3名が提案したものに限らず、山本委員が提案したものについても取り入れられていません。   証拠開示については、えん罪被害者である青木惠子参考人、袴田ひで子参考人、弁護人の塩野弁護士、間弁護士に限らず、マスコミの宮下参考人や犯罪被害者遺族の磯谷参考人や、その支援の立場の弁護士である髙橋参考人でさえ、証拠開示は実現されるべきだと発言していたのに、その範囲を限定する案が採用されています。開示証拠の目的外使用や審理の公開についても、真実を明らかにするためには許されてもよいのではないかというマスコミの宮下参考人の意見は無視されています。   再審開始決定に対する不服申立ての禁止、廃止については、えん罪被害者、弁護人の4人が、いずれも禁止されるべきと訴え、犯罪被害者支援の立場の山本委員も、犯罪被害者からすると、無辜の方が有罪判決を受けている場合には、早く再審でその人は犯人でないということを確定してほしいと思っているはずなので、迅速にしてほしいと思いますので、そういった面での検察官の不服申立ては制限していい、片や本当は犯人なのに犯人ではないと主張しているところについても早く確定させてほしいと思っているはずなので、そういう面からも、再審開始決定に対する不服申立ては制限し、公判で決着してもいいと発言しているのに、取り入れられていません。他方、再審請求審に関与した裁判官を再審公判から除斥するという提案、これは「試案」の「第2」の「2」ですが、三巡目において突然、研究者委員・幹事から提案され、これはそのまま今回の「試案」に取り込まれています。   このように、「法務省事務当局試案」は、今までの議論を反映したというよりは、再審請求人や弁護人はもとより改正法のユーザーとなる裁判官からも、再審制度を専門に研究してきた研究者からも、そして国会議員の過半数を占める超党派議連のメンバーからも、犯罪被害者からも、望まれていない案だと思います。今なぜ再審法改正の議論をしているのかということをもう一度お考えいただきたいと思います。それは、現行再審制度の不備によってえん罪被害者が適切に救済されず、また、救済されるにしても膨大な年月を要しているからです。幾多の具体的事件がそれを明確に示しています。それこそが法改正を求める立法事実であり、原点です。   私たちは、えん罪被害者やその弁護人からのヒアリングに加え、個々の事件が示す立法事実も具体的に明らかにするために多くの資料を提出し、意見の中でも度々言及してきました。しかし、当部会においてこれらの立法事実を尊重する意見は少数でした。再審請求事件の現状に大きな問題はないという認識もあいまってか、刑事訴訟法全体のバランス、三審制で確定したことによる法的安定性等の立法事実とは次元の異なる一般論を強調し、結論的には、議員立法案に示された証拠開示手続や検察官の不服申立てを禁止する規定に一貫して反対の立場を表明しました。   このように、「誰のための何のための法改正であるか」が脇に追いやられた議論の帰結として、今般の「法務省事務当局試案」は、えん罪被害者の迅速な救済ではなく、単に迅速に再審請求を棄却することに資するものとなってしまいました。このような「試案」は、法務大臣からの諮問事項である、「近時の刑事再審手続をめぐる諸事情に鑑み、同手続が非常救済手続として適切に機能することを確保する観点から」という部分にも反しているものです。   刑事訴訟法の再審規定は、現行刑法の設定後、今日に至るまで一度も改正されたことはありませんでした。今回の改正は、そこに初めて改革のメスを入れるものなのです。だからこそ、その内容は再審制度の根本に立ち返って、過去の司法判断に過ちが見付かった場合には、その判断によって苦しめられている無辜を確実に、かつ迅速に救済するものでなければならないはずです。間違っても後の世において、「あんな条文になるぐらいなら改正なんかしなければよかった」などと批判されるようなものであってはならないと思います。   私たちは、実際に再審請求事件の審理や判断、弁護活動を通じて再審請求事件の実務を熟知してきました。あるいは通常審における豊富な刑事弁護の経験に基づく刑事手続全体の理論や実務に通じた者として日弁連から委員・幹事に推薦された、その重みを胸にこれまでの議論に真摯に向き合ってきました。この最終段階に来た今日、私たち3名は改めて、議員連盟が真にえん罪被害者の迅速な救済を実現すべく作成し国会に提出した議員立法案を支持することを表明した上で、議員立法案に加えられていないものについては私たちの意見を付加した、今日提出した修正案に基づいて、もう一度取りまとめを再考していただきたいと思います。 ○大澤部会長 それでは、他に御質問・御意見等があればお願いいたします。   田岡幹事。文書は頂いていますので、文書の内容を読み上げるのは極力避けて、ポイントに絞って短くお願いしたいと思います。 ○田岡幹事 文書の内容を読み上げるつもりはございません。短く発言しますので、よろしいでしょうか。   私からは、「法務省事務当局試案に対する修正案」と「『第3 附帯事項』に記載すべきこと」という二つの資料を提出しておりますので、その趣旨を御説明させていただければと思っております。   「法務省事務当局試案に対する修正案」は、鴨志田委員と村山委員と私の3名が、法務省事務当局の「試案」について、このように修正してはどうかという案を整理したものでございます。第13回会議において既に「田岡幹事提出資料②」という「試案」を出しておりましたが、三巡目の議論を踏まえて修正した点もございます。こちらの修正案が現時点における私の意見であると、また、村山委員、鴨志田委員と調整した結果の意見であると御理解をいただければと思います。具体的な内容については、各論点ごとに御説明させていただく予定です。先ほど鴨志田委員が読み上げられた意見書の「第2」に、「法務省事務当局試案」の問題点を6点挙げております。この6点が重要なポイントであると認識しております。   次に、「『第3 附帯事項』に記載すべきこと」は、鴨志田委員と村山委員と私の3名が、附帯事項に記載すべきことを整理したものです。他の部会の前例を見ますと、附帯事項には、いわゆる運用事項と継続的審議事項が記載されることが多いようでございますけれども、「第1」の確認事項には、当部会の議論の中で解釈あるいは運用として実現可能であると確認されたことも念のために確認しておきたい事項を整理しております。   その上で、「第2」の運用事項、つまり運用の改善が図られるべき事項と、「第3」の継続的審議事項、つまり諮問事項の範囲に含まれないため、当部会における調査審議を行う事ができなかったが、他の部会あるいは他の所管部署における継続的な審議が求められる事項を整理しております。   「第4」の附則事項は、もしこの「要綱(骨子)案」が可決されれば、法務省事務当局において法律案が作成されることになると思われますが、法律案には附則が設けられることでしょうから、その際に附則に記載していただきたい事項を整理したものです。   「第1」の確認事項は、確認されるのであればあえて附帯事項に記載する必要はないと思いますので、「第2」と「第3」が中心になると認識しております。   その上で、事務当局に質問がございます。「試案」の「第1」の議論の経過を見ますと、第2段落に「以後、同部会において、計●回の会議を開催して、調査審議を重ね、令和●年●月●日、取りまとめを行った」と記載されております。これは、将来、取りまとめがなされるだろうという趣旨で、こういう案文を作成されたのだろうと思います。先ほど部会長及び今井幹事から、議論を制約する趣旨ではないとおっしゃられましたが、三巡目のたたき台改め検討資料からこの度の試案に至る調査審議の経過を見ますと、この「試案」に研究者の委員・幹事の先生方が賛成されて、ほぼこのとおり可決される可能性が高いのだろうと認識しております。その際に、異論あるいは少数意見があったことは付記されないのだろうかという御質問でございます。   つまり、「取りまとめを行った」と記載されますと、あたかも当部会の全員一致の意見において、この「試案」が採択されたかのような印象を与えかねません。前例を見ますと、確かにこのような記載が多いようではありますけれども、当部会における調査審議の経過を見ますと、取りまとめの際に全員一致とはならず、異論あるいは少数意見があることも予想されるところです。このような部会における調査審議の経過を適切に反映するためには、単に「取りまとめを行った」と記載するのではなくて、異なる意見もあったということを付記していただく方が、法制審議会総会あるいは国会審議の際に参考になるのではないかと考えられますので、御検討いただければと思います。   また、法務省事務当局において、この「取りまとめを行った」という表現に意味があるのであれば、御説明をいただければと思っております。よろしくお願いいたします。 ○大澤部会長 事務当局からお答えになりますか。 ○玉本幹事 事務当局からお答えいたします。これは、これまでの前例等も踏まえてこのように案として記載していたものですが、御指摘がありましたので改めて検討してみたいと思います。 ○大澤部会長 それでは、他に御質問等はございますでしょうか。 ○成瀬幹事 今、田岡幹事から「『第3 附帯事項』に記載すべきこと」という資料について総論的な御説明をいただきました。本日の各論点の議論においては、附帯事項に盛り込むべき内容についても併せて議論していくものと思われますので、今後の検討の視点を提供するという意味も込めて、この段階で、同資料に対する総論的な意見を申し上げたいと思います。   法制審議会は、法制度の在り方について、法務大臣からの諮問に応じて調査審議をし、意見を述べる機関ですから、諮問に対する応答である答申においては、諮問に係る法制度の在り方、すなわち、「要綱(骨子)」を示すことが求められ、かつ、それで足りるものと理解しています。法制審議会の総会の下に設置されている当部会としては、そのような「要綱(骨子)」の案を作成することが任務ということになります。   調査審議の結果、諮問事項に関して特に参考となる事項があるという場合には、それを「附帯事項」として答申に盛り込むこともあり得ますが、飽くまで「要綱(骨子)」に「附帯」するものですから、そこに盛り込む内容は、特に必要性の高いものに限られるべきでしょう。   こうした観点から、「附帯事項」に関する御提案について精査してまいりましたので、以下、具体的な例を挙げつつ申し上げます。   まず、「第1」の「1」「(4)」の記載のように、当部会の審議の中で確認され、議事録に明確に記載されている事柄などを、念のため確認するにとどまるものは、附帯事項として記載する必要性が乏しいと思います。この点については、田岡幹事も同趣旨のことを述べておられました。   また、「第2」の「1」「(4)」や「第2」の「3」「(5)」の二つ目の丸の記載のように、今後、まずは関係機関がそれぞれの責任において検討すべき制度運用の在り方について、当部会の本来の任務でないにもかかわらず、「附帯事項」の名の下に、当部会が、具体的かつ詳細な注文を付けるようなことも相当でないように思われます。   さらに、それ以前の問題として、御提案の中には、例えば、「第2」の「1」「(1)」の一つ目の丸の記載のように、実務上一般的に確立されているとは必ずしもいえない解釈や取扱いを前提とするものや、「第1」の「3」「(1)」の一つ目の丸の記載のように、一定の事実関係を前提とした裁判例における取扱いをその個別具体的な事実関係を捨象して一般化して記載するもの、「第2」の「3」「(5)」の一つ目の丸の記載のように、当部会における議論の中で異なる意見があったにもかかわらず、一方の立場のみに依拠して運用の方向性を記載するものなど、適当でない内容のものも散見されました。   このような記載を当部会の取りまとめに盛り込むことは、「附帯事項」としてであっても相当でないと考えます。   以上、「附帯事項」に関する今後の検討の視点として、委員・幹事の皆様の御参考になれば幸いです。 ○大澤部会長 それでは、他に御質問等はございますでしょうか。 ○川出委員 私は、先ほど鴨志田委員から御説明がありました「法務省事務局作成の『試案』に対する私達3名の意見」と題する書面について、意見を申し上げたいと思います。   意見書では、事務当局によって作成された「今後の議論のための検討資料」や「試案」に対して、取りまとめ方が極めて恣意的であり、日弁連委員・幹事の提案が全て取り入れられておらず、当部会における議論を取りまとめたものとはいえない旨の指摘がなされています。しかし、例えば「試案」においても、再審請求手続に関する費用補償の制度の創設など、日弁連委員・幹事の意見、提案が取り入れられているものもありますので、それとは逆に、「試案」に取り上げられなかった意見や提案は、これまでの議論において、それらについての問題点や検討課題が指摘されたにもかかわらず、それに対する有効な反論や解決策が示されなかったものだと考えられます。そうであるにもかかわらず、自らが主張する意見、提案が取り上げられていないということをもって、「試案」を諮問の趣旨に反したもの又は逸脱したものであるとか、極めて恣意的であるなどと評価するのは、余りに一方的であると思います。   さらに、意見書では事務当局と部会長及び研究者委員・幹事が結託して議員立法を否定し、検察庁の希望する試案を通すために活動しているかのような指摘もなされております。元々、日弁連の委員・幹事の皆さんは本部会の研究者委員・幹事の人選自体が不適当であるという認識を持っていらっしゃるようですので、このような評価になるのだろうと思いますが、私自身は、本部会で示された日弁連委員・幹事の意見、提案については、一研究者としてその都度真摯に考え、賛成すべき点は賛成し、また、理論的に問題があると考えた点はそのように意見を述べてきたつもりですし、他の研究者委員・幹事も同じであると思います。研究者委員・幹事を含めて、これまで各委員・幹事は厳しいスケジュールの中でよりよい制度を作るために、立場は異なるものの、それぞれ刑事法分野の専門家として真摯に議論を重ねてきたものと考えております。そうであるにもかかわらず、この段階に及んで、この場の議論に参加してこられた日弁連委員・幹事の方からこのような意見書が出されたということについては本当に残念に思います。 ○大澤部会長 更に御質問等はございますか。   日弁連委員から非常に厳しい御発言もありましたところです。部会長としてはこれまで可能な限り公正かつ丁寧な議事運営に努めてきたつもりであり、皆様にはそれぞれ立場は異なっているとしても真摯に意見を交わしていただき、非常にタイトなスケジュールの下であるにもかかわらず充実した御議論が行われてきたと理解しておりましたので、今回意見書に記載されている、特に一部の表現に見られるような評価を受けたということは誠に遺憾であり、大変残念だという気持ちを禁じ得ません。いずれにしても、引き続き最後の取りまとめに向けて力を尽くしてまいる所存でございますので、力及ばないところもございますが、皆様におかれては引き続き議事運営に御協力をいただきたいと思います。   それでは、諮問事項の審議に入ってまいりたいと思います。本日は、まず配布資料21「試案」の別添「要綱(骨子)案」に沿って、「第1 再審請求審における証拠の提出命令等」から「第6 再審請求手続に関する費用補償」までの各論点について審議を行い、その後、「試案」に記載されていない論点について審議を行うこととしたいと思います。また、これらの審議の際には、附帯事項として取りまとめに盛り込むべき事項についても必要に応じて御議論いただければと存じます。各論点についての審議の際には、鴨志田委員、村山委員及び田岡幹事からの提出資料も適宜参照いただきながら御議論いただきたいと存じます。   なお、本日の審議においては、ただいま申し上げた審議を一巡したいと考えておりますので、御発言の際にはなるべく従前の御発言との重複を避け、できる限り御発言をコンパクトにまとめていただくなどして、効率的な審議に御協力いただきますよう併せてお願い申し上げます。文書として出されているものは基本的に拝見しているということだと思いますので、その辺りについても御配慮の上で御発言願えたらと思います。そのような進め方とさせていただくということでよいでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 それでは早速、「第1 再審請求審における証拠の提出命令等」について審議を行いたいと思います。まず、事務当局から配布資料21のうち、この論点に関する部分について説明をしてもらいます。お願いします。 ○今井幹事 配布資料21の2ページ目を御覧ください。配布資料20からの主な変更点を御説明いたします。まず、枠内の「1」につきましては、これまでの御議論を踏まえ、配布資料20に記載してあった「B案」、つまり「『A案』に加えて一定の類型に該当する証拠も対象とするものとする」案を削除するとともに、「(3)」として、証拠の提出を命じる決定又は命令を求める請求を却下する決定に対して即時抗告をすることができるものとすることなどを記載しております。   枠内の「2」につきましては、「1」「(3)」に即時抗告に関する規律を記載したことに伴いまして、「(4)」として、刑事訴訟法第316条の27第3項に倣って、証拠又は一覧表の提示命令に関する規律が即時抗告審について準用されることを記載しております。   また、枠内の「3」につきまして、これまでの議論を踏まえ、刑事訴訟法第40条第1項等の「訴訟に関する書類」に、刑事確定訴訟記録法第2条第1項に規定する「刑事被告事件に係る訴訟の記録」が含まれることを明確化する旨を記載しております。 ○大澤部会長 それでは、この論点について審議を行いたいと思います。その際、先ほど申し上げたとおり、併せて「試案」に記載のない「第1」に関する項目についても必要に応じて御議論をいただければと思います。   それでは、御意見、御質問等がある方は挙手の上、御発言をお願いいたします。 ○田岡幹事 私は、先ほど提出しました修正案に基づきまして、「第1」の「1」の証拠の提出命令に対する意見を申し上げたいと思います。あわせて、意見書の3ページの裁判所不提出記録の閲覧・謄写(いわゆる証拠開示)の項目も御参照いただければと思います。   修正案の1ページ以下を御覧ください。私どもの意見は、議員立法第444条の4及び444条の5のとおり修正すべきであるというものです。議員立法と法務省事務当局試案の相違点は、主に3点であると認識しております。1点目は、直接開示型なのか裁判所提出型なのか、更に言えば、直接開示型の余地を残すのか裁判所提出型のみに限定するのかという点、2点目に、必要性及び相当性を考慮して相当と認めるときという要件を積極的要件とするのか、消極的要件とするのかという点、3点目に、裁量による証拠開示命令あるいは証拠提出命令の余地を残すのか残さないのかという点です。   1点目は、直接開示型にするか、裁判所提出型にするかという点です。元々、私は、証拠を裁判所に提出することとしても、それを再審請求人や弁護人が閲覧・謄写することが保障されるのであれば、裁判所提出型でも構わないという意見を申し上げておりました。そのことは、現在でも変わってはおりません。ただ、法務省事務当局試案を見ますと、裁判所提出型とされたために、開示の必要性が「再審の請求についての裁判をするために提出を受けることの必要性」という文言になっております。そうすると、これは裁判所が裁判をするために必要があるときに証拠の提出を命じることができるという規定であり、本来の証拠開示とは異なるのではないかという疑問がございます。   つまり、裁判所が裁判をするために必要があれば証拠の提出を命じることができるというのは、言わば当然のことでありまして、単なる事実の取調べに過ぎません。結果的に裁判所に提出された証拠は弁護人が閲覧・謄写できることにはなりますが、本来、証拠開示というのは、確定判決の事実認定に合理的な疑いがあるのかないのかを判断するためには、必要性があるかどうかがはっきりしない証拠も含めて、幅広く証拠の開示を受ける必要があり、再審請求人や弁護人が開示を受けた証拠を検討するためのものであり、その上で、必要があればそのような証拠を裁判所に提出するという、そのような性格を持ったものでございます。   そうだとしますと、裁判所が裁判のために必要性のある証拠ではなくて、再審請求人や弁護人が確定判決の事実認定に合理的な疑いが残らないかどうかの判断をするために必要な証拠を開示しなければいけないわけです。であれば、再審請求人にとっての開示の必要性という文言にしなければ、裁判所が必要性があると判断しない限り証拠の提出を命じることにならず、再審請求人や弁護人が証拠にアクセスできないということになりかねません。   この点、第13回会議において、恒光幹事が、自動車や生体試料といったものについては、それ自体を提出させる必要性があると裁判所が判断することは考えづらく、と発言されておりましたが、確かに裁判所にとっては必要がないかもしれませんけれども、再審請求人や弁護人にとっては必要がある場合があるわけです。例えば、自動車を見た上で、痕跡がないかどうかということを確認し、その上で、必要があれば、このような鑑定をしてはどうでしょうかとか、このような検証をしてはどうでしょうかと裁判所に請求をしていくわけです。もし鑑定や検証をする必要性があることが分かっているのであれば、最初から鑑定や検証を請求すれば足りるわけですけれども、どのようなことをするかを検討するために再審請求人や弁護人が閲覧する必要があるわけです。しかし、裁判所が証拠物を取り寄せてくれなければ、再審請求人や弁護人はアクセスできないということになりかねません。したがって、裁判所提出型に限定せず、直接開示の余地を残すべきであると思います。   少なくとも、附帯事項案の1ページの確認事項に記載しましたように、従来の実務において認められてきた証拠開示の命令、勧告や任意開示の運用を否定する趣旨でないのだとすれば、任意開示の場合には直接開示の運用を否定する趣旨ではないということを確認していただきたいと思います。さもなければ、事実上、裁判所がボトルネックになってしまって、再審請求人や弁護人の証拠に対するアクセスが否定されるということになりかねない、これが正に再審法の改悪になるのではないかと懸念されるところでございます。   2点目は、「(1)」の必要性及び相当性の要件を積極要件とするか、消極要件とするかという点です。仮に再審請求理由との関連性があれば当然に開示されるということであれば、第15回会議において仮想事例を用いた検討により、新証拠の立証命題に直接関連する証拠に限らず、他の間接事実に関連する証拠にも関連性があるということが確認されましたので、関連性の範囲は広がり得ると思うのですけれども、法務省事務当局の「試案」では、関連性があれば当然に開示されるとは書かれておらず、必要性及び相当性を考慮して相当と認めるときに開示を命じるとなっております。そうしますと、必要性を疎明しなければならないということになりますが、再審請求人や弁護人は、証拠の内容が分かりませんから必要性を疎明することは困難です。その結果、無実を示す証拠があるにもかかわらず、必要性を疎明することができないために開示されないということになりかねません。   相当性の方は、検察官が弊害を疎明するのでしょうから、弊害を考慮して不開示とすべき場合が残るとは思うのですけれども、必要性については再審請求人や弁護人が疎明しなければならないとされておりますので、必要性を疎明できない限り開示を受けられないということになってしまうと、従来の実務運用において認められてきた証拠開示、例えば袴田事件における600点近い証拠開示、福井事件における287点の証拠開示が実現しなくなってしまうおそれがあるように思われます。   したがいまして、必要性及び相当性を考慮して相当と認めるときという要件は、積極的要件ではなくて、議員立法のように消極的要件にすべきではないかと考えます。   3点目は、「(2)」の裁量による証拠開示命令を設けるかどうかという点です。議員立法は、444条の4の規定とは別に、444条の5の規定を設けることを提案しており、裁判所が再審請求人等に対する開示の必要性の程度並びに開示によって生じるおそれのある弊害の内容及び程度を考慮して相当と認めるときは証拠の開示を命じることができるとしております。これは、元々、証拠の提出あるいは証拠の開示が事実の取調べの一態様であるというのであれば、刑事訴訟法43条あるいは445条によって、裁判所は、必要があれば、証拠の提出あるいは開示を命じ得るということは当然のことであると理解しております。ただ、裁判所の裁量に委ねていると、開示されるべき証拠が開示されない、いわゆる再審格差の問題が生じることから、適正な運用を担保するために、444条の4は、一定の範囲の証拠は義務的に証拠を開示させることとして、証拠開示の範囲を明確にするというものであると理解しております。   そうだとすると、義務的な証拠開示の対象にならない証拠であっても、裁判所は、裁量によって、証拠の開示を命じる権限があるはずです。仮に義務的な証拠開示の対象にならない証拠は、証拠の開示を命じる権限がないということになりますと、義務的な証拠開示の対象にならない証拠を任意に開示するよう勧告することもできなくなってしまうのではないかというおそれがあります。これは裁判所の裁量を奪うものになりかねないのではないでしょうか。裁判所としても、必要性及び相当性があることがはっきりしていれば証拠の開示あるいは証拠の提出を命じるでしょうけれども、どちらか分からないというような場合も現実にはあるわけです。正直、判断が付かないのだけれども、例えば類型証拠開示の対象になるような客観的な証拠であって、開示による弊害がほとんど考えられないものは、任意に開示すべきではないですかと検察官に勧告して、それでも応じない場合には証拠提出命令を出しますよというようなことができないと、検察官が任意開示に応じなければ終わりということになってしまいますので、これでは証拠開示が機能しないおそれがあるのではないかと思われます。したがいまして、裁量による証拠開示命令あるいは証拠提出命令という制度を設けるべきであると考えております。 ○大澤部会長 それでは、ほかに御意見等はございますでしょうか。 ○成瀬幹事 田岡幹事から、試案と修正案の3つの相違点について御説明いただきました。私は、そのうちの1点目と2点目について意見を申し上げます。   まず1点目ですが、修正案においては、裁判所が、一定の証拠について、検察官に対し、弁護人への直接開示を命じるものとされています。しかしながら、制度の枠組みとしては、これまでの議論において繰り返し指摘されているとおり、裁判所が、審理に必要と考える証拠について、検察官に命じて裁判所に提出させる枠組みとすることが再審請求審の審理の構造と整合的であり、他方で、制度の枠組みを御提案のようにすることは、当事者追行主義的な発想に基づくものであって、再審請求審の構造と整合しないところ、これまでに、この検討課題を克服する説明はなされていないと思います。   よって、私は、「試案」に記載されているとおり、裁判所が、一定の証拠について、検察官に対し、裁判所への提出を命じる仕組みとすべきであると考えます。   なお、先ほど田岡幹事から、少なくとも任意開示の場合には、直接開示の運用も認めてほしいという趣旨の御発言がありましたが、これまでの議論で繰り返し指摘されてきたように、証拠の提出命令に関する法整備を行うことは、従前の実務において行われてきた裁判所による証拠の提出・開示の勧告や検察官による任意の証拠の提出・開示を否定するものではありませんので、それらの今後の運用の在り方については、証拠の提出命令が創設された後、個別の事案に応じて、検討されるべきものと考えます。   次に2点目ですが、「試案」は、裁判所が、必要性と弊害を考慮した上で相当と認めるときに証拠の提出を命じるという規律であるのに対し、修正案は、裁判所が、必要性と弊害を考慮して相当でないと認めた場合だけ証拠の提出を命じない、言い換えれば、積極的に「相当でない」と認められない限りは証拠の提出を命じるという規律になっています。仮に、修正案のような仕組みとする場合には、通常審における証拠開示制度と比較して原則と例外が逆転し、再審請求審においては、裁判所は、通常審よりも緩やかな要件の下で証拠の提出を命じなければならないこととなり、弁護人は、通常審よりも幅広い証拠について閲覧・謄写ができる制度となります。   しかしながら、そのような制度の在り方は、第13回会議において宮崎委員も述べておられたように、再審請求手続が、十分な手続保障と三審制の下で確定した有罪判決について、なお事実認定の不当等がある場合にこれを是正する非常救済手続であると位置付けられていることと整合しないと考えられ、この点についての合理的な説明は十分になされていません。   よって、御提案のような仕組みとすることは相当でなく、やはり「試案」に記載されているとおり、再審請求理由との関連性が認められる証拠について、必要性と弊害の双方を考慮し、相当と認める場合に提出を命ずる仕組みとすべきであると考えます。   なお、田岡幹事から、再審請求者や弁護人が、証拠の内容が分からない状況で必要性を疎明することは難しいという御指摘もありましたが、この点については以前の会議において部会長から御示唆があったように、通常審における証拠開示制度の下でも、被告人や弁護人は証拠の内容が分からない状況で証拠開示の必要性を疎明していますので、両者の状況が質的に異なるわけではないと思います。裁判所は、再審請求者や弁護人が証拠の内容が分からない状況で必要性の疎明をしていることも意識しつつ、必要性と弊害の双方を考慮して、証拠の提出を命じるか否かについて判断するものと考えます。 ○大澤部会長 それでは、更に御発言はございますでしょうか。 ○川出委員 私は、修正案の「第1」の「1」「(2)」について意見を申し上げたいと思います。「第1」の「1」「(2)」においては、昨年の通常国会に提出された議員立法案に盛り込まれている規定を参考として、「第1」の「1」「(1)」とは別に、裁判所が開示の必要性と開示による弊害を考慮して相当と認めるときは、職権で検察官保管証拠等の開示を命ずることができるとする規定を設けるべきとする提案がなされております。私自身は「試案」に記載された証拠の提出命令制度を設けることに賛成ですので、その立場から、同制度に加えて御提案のような規定を設けることについて意見を申し上げたいと思います。   まず、修正案の「第1」の「1」「(1)」の規定は、再審請求人、弁護人への直接の開示を定めたものである点などにおいて、「試案」に記載された証拠の提出命令制度とは異なりますが、再審の請求の理由に関連すると認められる証拠を対象としている点においては「試案」の制度と共通しております。そうしますと、同制度の対象となる再審の請求の理由に関連すると認められる証拠については、裁判所に提出されたものを閲覧・謄写することによって弁護人はその目的を達成することができるわけですから、それに加えて御提案のような規定を設けることの意味は、「試案」に記載された証拠の提出命令制度によっては提出を命ずることができない証拠、具体的には再審請求理由との関連性があるとは認められない証拠を命令の対象とすることにあるということになります。   しかし、これまでの会議において何度も指摘されていますように、再審請求審の審判対象は再審請求人が主張する再審請求理由の有無であり、裁判所による事実の取調べもその判断のために行われるものです。今回導入しようとしている裁判所への証拠提出命令制度は、その事実の取調べの一内容であるわけですから、その対象となる証拠は再審請求理由に関連すると認められる証拠に限定されるのが論理的な帰結であって、再審請求理由と関連性のない証拠の提出を裁判所が命じるという制度は、再審請求審の審判対象からは説明が付かないものだと思います。   これまでの会議において、裁判所が再審請求理由との関連性を厳密に問うことなく幅広く裁判所不提出記録の開示を検察官に勧告し、それが開示された結果、その中から新証拠が見付かって再審開始決定につながった事例が数多くあるという紹介がなされましたので、御提案の規定は、そのような運用を制度化しようというものなのかもしれません。しかし、新証拠を発見するために証拠開示を命じるという制度は再審請求審の審判対象からは説明が付きませんし、実質的に見ても、裁判所不提出記録の中に新証拠に当たるものがあるかもしれないので、それを請求人、弁護人が見たいという要請は、再審請求をする前の段階から存在するものですので、再審請求がなされたら突然その開示を裁判所が命じることができるようになるというのは説明が困難です。個別の事案において、その必要性があるというのであれば、その実現は、これまでと同様に、裁判所が検察官に対し事実上開示を促すという形で行われるべきものであって、御提案のように検察官に一定の行為を義務付ける命令制度を創設するというのは合理的な説明ができないと思います。 ○大澤部会長 更に御意見等はございますでしょうか。 ○池田委員 私も修正案「第1」の「1」「(2)」の制度について意見を申し上げます。   ただいまの川出委員の御意見に私も賛成であり、「試案」に記載された証拠の提出命令制度に加えて御提案のような規定を設けることとした場合、論理的には再審請求理由との関連性があるとは認められない、又は提出を命ずることが相当であるとは認められない証拠を対象とした規定とならざるを得ないと考えられるところ、そうした規定を設けることは不相当であると考えます。   これまでの議論にもありましたし、先ほど田岡幹事の御説明の中にもありましたけれども、御提案の趣旨は、請求の理由と証拠との間の関連性が認められるかどうかの判断に迷いが残るような場合に備えて、提出命令を可能としておくというところにあるように思われます。しかしながら、制度として要件を定めておきながら、その要件該当性の判断に迷いが残る場合に備えて、要件のない裁量規定を設けることは、制度として要件を定めることを無意味なものとすることに等しく、正当化される余地は見いだし難いように思われます。   その上で、これまでも成瀬幹事や川出委員から御指摘があったように、御懸念のような事態は正に運用によって対応すべき事柄であると考えます。今般、証拠の提出命令制度を設けることによって、裁判所が個別の事案に応じ、検察官に対して証拠の提出を促したり、検察官が任意に証拠を提出したりするといった従来の実務運用を否定する趣旨は含まれておりませんので、制度導入後もこれまでと変わらない運用がなされることで、従来と変わらない範囲で証拠が提出されることとなるものと考えられます。 ○大澤部会長 それでは、更に御発言はございますでしょうか。 ○村山委員 今ほど、裁量による証拠開示の点について、理論的になかなかそれは難しいのではないかという御意見を頂きました。ただ、実際問題、職権主義構造ということは皆さん、異論はないと思うので、そうなると、職権主義で裁判所の方がやはり提出が必要だという判断に至った場合に、それができないという形になるのはいかがなものかという気がします。確かに関連性の問題というのは、今議論している中で、請求理由との関連というのは重要だというのは事実なのですけれども、私もそのとおりだと思いますが、池田委員も言われたように、その関連性というのが非常に微妙な場合とか、それから、場合によっては弁護人の方が提出する証拠や弁護人の請求理由が必ずしも十全ではないという場合に、その理由とどこまで関連しているのかというのをはっきりと疎明できていないという場合に、裁判所としてはどうしたらいいのかというのは当然迷うわけです。実際にこういう証拠があるだろうし、非常に重要な意味を持っているだろうというのが分かった場合に、裁判所として、その証拠を提出させることができないというのは、やはり問題ではないかと思います。   今ほど、今までの実務の運用、例えば、勧告によって任意開示を促すのは否定されないのだというのは、これはそういう形で運用するというのはもちろん考えるという必要があると思うのですけれども、しかし、今般命令制度ができるということになりますと、今までは命令制度がはっきりしていなかったがために勧告というのが非常に重みを持っていたわけですが、今般は命令と勧告というのが質的に違うものとして規定されるということになると思いますので、検察官としては、それは命令なのですか、勧告なのですかという話になって、これは勧告ですということになったら、そうであれば応じることはできませんという場面が今までよりも多くなるのではないかという気がいたします。そういう場合に備えると、やはり命じることができるという規定はどうしても必要になるのではないかと思っている次第です。   これは実情として、審理をやってみるとそういう非常に強い衝動に駆られるといいますか、請求理由が必ずしもきちんと届いていないという場合であっても、ここの証拠が非常に問題になりそうだということが分かった場合にどうするかという問題があります。今まではある程度類型証拠開示的な発想を入れて、補充的にそういう主張との関係が必ずしもはっきりとしていなくても勧告を出していたと思うのです。それが今後できなくなるというのは、職権主義として再審請求事件に向き合っている裁判官としては非常に不自由なことになるのではないかという気がいたします。そういう意味で、この裁量による余地というのは、補充的なものになるとは思うのですけれども、残す必要があると思っています。   それから、先ほど成瀬幹事が、これは違う点で、田岡幹事の整理で行くと2点目の点なのですけれども、成瀬幹事は、通常審と比べて非常に幅が広くなるのではないかと。それは主張関連という形で考えると、そうなる可能性はあるのですけれども、やはりこれまで再三日弁連の委員の方で主張していたことなのですけれども、通常審の場合、やはり類型証拠開示というのがありまして、それが広範に類型証拠開示によって提出される、開示されるという実態がありますので、それとの比較で考えると、通常審よりも幅が広くなるということは私はないと思うのです。そういう意味で、幅が広くなりすぎるではないかという議論は当たっていないと思っています。 ○大澤部会長 頂いた修正案の中の「第1」の「1」の部分について、主として御議論いただいていますけれども、ほかの部分も含めて「第1」を議論しないといけないということで。 ○田岡幹事 申し訳ありませんが、「第1」の「1」の裁量による証拠提出命令の制度は重要な論点であり、こだわっているものですから、もう一言発言させてください。   例えば、「試案」のような裁判所に提出させる制度とは別に、再審請求人に直接開示させる制度を設けるということは考えられないのでしょうか。私の修正案では「(1)」に再審請求理由と関連する証拠の開示の制度がございますが、法務省の「試案」でも、同じように再審請求理由と関連すると認められる証拠の提出命令の制度がございます。ただ、先ほど述べましたように、法務省の「試案」では、裁判所が裁判をするために必要があると認められる証拠しか提出させることができません。裁判所としては、裁判所に提出させる必要はないけれども、再審請求人には開示させる必要がある場合、つまり、再審請求人が再審請求理由を的確に構成し直したり、新証拠の明白性の主張立証の準備をよくなし得ると考えられる場合には、手続指揮権に基づいて、検察官に対し、再審請求人に対する直接の開示を命じる必要性があるという場合はあると思うのです。裁判所に提出させる方法に限定すると、裁判所は自動車を保管できませんとか、ダンボール100箱を持ってこられても困りますとか、また、閲覧場所は「裁判所において」となっていますので、裁判所で見てもらわないと困りますなどというように、事実上、裁判所がボトルネックになるわけです。   裁判所としては、関連性はないとはいえないのだけれどもあるとも認められないという場合、あるいは関連性はあるのだけれども裁判所に提出させる必要性があるとまでは認められない場合でも、再審請求人が見たいとおっしゃっておられるのであれば、検察官、それは見せてあげたらどうですか、という場合はあると思うのです。それを、なぜ任意の勧告であればできるのに、命令として発することはできないのかという問題だと思うのです。   私は、勧告及び任意開示という従来の実務運用を否定する趣旨ではないというのであれば、裁判所が検察官に対して再審請求人に開示しなさいという命令を発して、再審請求人に直接開示させるという制度も再審請求の構造と矛盾するものではなくて、手続指揮権の行使として十分になし得ることであると思われます。先ほど成瀬幹事は、検察官と弁護人で考えていただくことであると発言しておられましたが、検察官が弁護人に直接開示する従来の実務運用を否定する趣旨ではないというのであれば、そのような運用を法制化して、修正案の「(2)」のような裁量による証拠開示命令の規定、つまり、裁判所が検察官に対し、再審請求をした者に対する開示を命ずることができるという規定を別途置くことも可能なのではないでしょうか。   これは、再審請求理由との関連性が認められる証拠を裁判所に提出させる制度とは異なり、再審請求人に対する開示の必要性及び相当性が認められる証拠を直接開示させる制度になりますので、両者は異なる趣旨・目的を持った制度として、併存させることは可能なのではないかと思いました。 ○大澤部会長 事実の取調べではなくて、手続の円滑な進行のための指揮権の行使だという説明をされるということですか。 ○田岡幹事 そうなのです。 ○大澤部会長 御発言は他にございますでしょうか。 ○成瀬幹事 先ほど村山委員から御指摘いただいた点について、私の発言の趣旨を改めて説明させていただきます。   村山委員がおっしゃるとおり、今回は、類型証拠開示のような規定は設けないわけですが、通常審の証拠開示制度においては、類型証拠開示・主張関連証拠開示のいずれであっても、必要性と弊害を考慮して、相当と認めるときに、証拠の開示をしなければならないという規定になっています。これに対して、修正案では、必要性と弊害を考慮して、積極的に「相当でない」と認められない限りは、証拠の開示を命じなければならないという規定になっていますので、その点で原則と例外が逆転しており、相当でないということを申し上げました。 ○大澤部会長 それでは、ほかに御発言はございますか。   もしよろしければ、「第1」の「2」以下の部分についても、御発言があればお受けしたいと存じますが、いかがでございましょうか。 ○田岡幹事 「第1」の「2」以下についても修正案を提出しておりますので、恐縮ではございますが、御説明させていただきます。2ページを御覧ください。   まず、「2」の証拠又はその一覧表の提示命令そのものについては、反対する趣旨ではございません。これは議員立法の444条の6にも、同様の規定がございます。問題は、実務上しばしば問題になります、証拠の存否そのものが争われるケースでございます。通常審において弁護人を務める立場が多い私の経験では、証拠の存否が争われた場合には、証拠開示の手続が円滑に進まず、非常に困った事態になることが多いと感じています。つまり、検察官は、これが再審請求理由と関連する証拠です、あるいは裁判所が指定した範囲に属する証拠ですと言って、その証拠そのものを提示したり、あるいは標目一覧表を提出するのですけれども、本当にそれが全部なのでしょうか、ほかに証拠はないのでしょうか、また、警察の未送致証拠はないのでしょうかという形で争われますと、いつまでたっても証拠開示をめぐる紛争が解決できないために、審理が長期化してしまいます。   そこで、議員立法444条の4は、裁判所の証拠開示命令の判断に資するために、送致書類等目録を対象とするということを提案しております。私は、これは実務運用の工夫として、過去の再審請求事件においても認められた実例がございますので、証拠開示をめぐる紛争を解決するために有益な制度になり得るのではないかと考えております。別途、このような制度を設けるのであれば、標目一覧表に記載する証拠の範囲は、検察官保管証拠で、かつ裁判所の指定する範囲に属するものに限定したとしても、支障はないのではないかという趣旨で、証拠及びその一覧表の提示命令には反対しませんが、それとは別に、送致書類等目録を対象にしてはどうかと考えております。   また、「3」の証拠の閲覧・謄写については、刑事訴訟法40条に確定記録が含まれることを明確化することには異存はありませんが、裁判所不提出記録及び証拠の閲覧・謄写は刑事訴訟法40条を根拠にすると、幾つかの問題があると理解しております。具体的にどのような問題が生じるかといいますと、一つは、再審請求人に閲覧権が認められていないために、弁護士がいない再審請求人は裁判所に提出された証拠を見ることができないという問題です。これは非常に大きな問題だと思います。もう一つは、「裁判所において」と書かれているために、裁判所不提出記録又は証拠物を閲覧するときには、裁判所に証拠を移動させた上で、裁判所で閲覧しなければいけないという問題です。このように、刑事訴訟法40条を根拠に、再審請求人・弁護人による閲覧・謄写、いわゆる証拠開示を実現しようとすると、実務的には、様々な問題が生じると理解しております。   私は、刑事訴訟法40条と別に閲覧・謄写の規定を置いた方がよろしいのではないかと思いますけれども、仮に刑事訴訟法40条を根拠に運用していくというのであれば、少なくとも「裁判所において」の意味は、物理的に裁判所に限る趣旨ではなく、裁判所が検察官等に命じて証拠を保管させている場合には、その証拠の保管場所、つまり検察庁において閲覧・謄写することができるという運用にしないと、例えば自動車や生体試料、ダンボール100箱を開示する場合を考えますと、裁判所にはそのような証拠を保管する場所もなければ設備もありませんので、裁判所が提出を命じないということになってしまい、再審請求人・弁護人は閲覧できないという結果になってしまうのではないかと思います。   また、再審請求人が証拠を閲覧できないという問題は、例えば少年審判規則7条2項は付添人は閲覧することができると規定していますが、これとは別に1項があり、裁判所の許可があれば少年や保護者が閲覧することができないわけではないと思われます。これに対し、刑事訴訟法40条は被告人を除外しており、49条で公判調書のみ閲覧権を認めております。これは、通常審の場合には、被告人は、事前に検察官から開示を受けており、かつ、証拠調べの際には期日に出席していることから、証拠の内容を知っているはずであるという前提があるのだと思うのですけれども、再審の場合にはそのような前提はありませんので、再審請求人にも閲覧権を認めるべきではないかと思います。   仮に再審請求人に閲覧させると書類の破棄をするおそれがあるというのであれば、裁判所の許可を条件としてもよろしいでしょうし、また、謄写についても、例えば謄写業者に依頼することを条件にすれば、今後は書類も電子データ化されていくことになるのでしょうから、電子データ化したものをプリントアウトすることとすれば、書類の廃棄をするというおそれはないと思われます。いずれにしても、再審請求人が証拠を閲覧する手段を設けないと、弁護人がいない限り証拠を閲覧することができないということでは、証拠開示ということはできず、やはり不備があるといわざるを得ないのではないかと思います。   したがいまして、「裁判所において」という文言が、物理的に裁判所に限定されないことを明確にしていただくこと、また、再審請求人に閲覧することができる手段を考えていただくこと、これは国選弁護制度を設ければよいわけですけれども、それを設けないのであれば、別の手段を考えていただくことが必要になるのではないかと考えております。 ○大澤部会長 何か他に御発言はございますでしょうか。 ○宇藤委員 ただいまの田岡幹事の御説明にありました、「2」の送致書類等目録の取扱いについて意見を述べさせていただきます。   この御提案については、今般の本部会における議論の詰まり方から見て、取りまとめをするのは困難と考えております。その一方で、少なくとも将来的にはなお検討の余地があろうかと思われます。修正案では送致書類等目録とされておりますが、今時検討の文脈からすれば、むしろ現行刑事訴訟法第316条の14第2項に示される、検察官が保管する証拠の一覧表に相当するものを念頭に置きながら整理するのが適切であろうと思われます。また、検討の前提として、再審請求がなされたという段階ではなく、審判開始決定を前提とすることは必要だと思われます。   刑事訴訟法第316条の14第2項は御承知のとおり、すでに導入されていた公判前整理手続のもとでの通常審における証拠開示の運用を踏まえて、平成28年法改正において追加されたものでございます。今時の法整備が、仮に「要綱(骨子)案」に基づいてなされるとして、その下での運用等を踏まえた上で、再審請求審における証拠の閲覧・謄写であるということの特性をも鑑みて、相応の規定を設けるべきかどうか、将来的な課題として位置付けるということはあろうかと思います。 ○大澤部会長 他に御発言はございますでしょうか。 ○川出委員 私も、同じく「第1」の「2」について意見を申し上げたいと思います。   これまでの議論においても御意見があったとおり、裁判所が再審請求理由との関連性を問わず、検察官に命じて、送致書類等目録を提出させる仕組みとすることは、再審請求理由の有無を審理対象とする再審請求審における審理の在り方とも整合しません。したがって、証拠提出命令の対象に送致書類等目録を含めるのは妥当でないと考えます。    加えて、送致書類等目録の取扱いに関連して、修正案の「第1」の「1」「(1)」についても意見を申し上げたいと思います。   「第1」の「1」「(1)」では、裁判所が、検察官に、再審請求者又は弁護人に対して再審請求理由に関連すると認められる証拠に加えて送致書類等目録の開示を命じる仕組みが提案されています。しかし、再審請求審においては職権主義の下、裁判所が再審開始事由の存否を判断するために主体的に事実の取調べを行うこととされております。こうした再審請求審における審理構造からしますと、これまでの議論において意見があったとおり、「試案」に記載されているように、裁判所が審理に必要と認めた証拠について裁判所に提出させることとした上で、裁判所がその判断をするに当たって必要があると認めるときに、検察官に命じて、証拠の標目の一覧表を裁判所に提出させることとするということが再審請求審の審理構造に整合しており、かつそれで足りると考えられます。   さらに、この御提案に関連して、第9回会議において鴨志田委員から、検察官がどのような証拠を保管しているのかが分からなければ主張を組み立てることができないから、証拠の一覧表あるいは送致書類等目録を開示する仕組みとすべきであるという意見が示されております。しかし、送致書類等目録を見た上で主張を組み立てるというのは、実質において、それを手掛かりに新証拠となるものを発見しようとするものにほかならないように思います。しかし、先ほども申し上げましたが、検察官が裁判所に対して証拠を提出する制度であればもちろんのこと、仮に弁護人に対して証拠を開示するという制度であったとしても、再審請求審の審判対象を考えれば、再審請求審における証拠の開示は新証拠の発見のためになされるものではありませんので、主張を構成するために送致書類等目録を開示させるという制度も成り立たないと思います。 ○大澤部会長 「要綱(骨子)案」だと、さらに「4」、「5」、「6」といったような項目もございますが。 ○池田委員 私からは、修正案の「3」「(2)」について意見を申し上げます。   先ほど田岡幹事からの御説明にもありましたけれども、御提案は、裁判所が「試案」に記載された証拠の提出命令制度によって、検察官に自動車等の証拠物の提出を命じ、それを庁舎外で保管させるような場合において、弁護人が当該証拠物をその保管場所において閲覧・謄写できることとしようとするものであると理解いたしました。しかしながら、この点については第13回会議において恒光幹事も述べられていたとおり、裁判所が提出を命じ、庁舎外で保管させている証拠物についても、少なくとも裁判所に移動させれば刑事訴訟法第40条第1項による閲覧・謄写の対象となりますし、個別の事案に応じて、当該証拠物をその保管場所において閲覧・謄写するといった運用が否定されるものではないと考えられますので、御提案のような規定をあえて設ける必要性には疑問があります。   しかも、裁判所に限られないの意味するところが必ずしも明らかではありませんけれども、御提案が仮に弁護人に対して裁判所以外の保管場所での閲覧・謄写を権利として認め、弁護人から求められた場合にはそれに応じなければならないものとする趣旨だとすると、証拠物の保管場所には様々な場所があり得、人的・物的体制等の観点から、証拠物の毀損等を確実に防止しつつ円滑に閲覧・謄写を実施するのに適さない場所もあると考えられるにもかかわらず、そこでの閲覧・謄写を一律に許さなければならないことにもなりかねず、相当でないと思われます。加えて、刑事訴訟法第40条第1項を改正するという場合には、再審請求事件に限らず一般の刑事事件についても同様の事態が生じることとなり、問題はなお大きいと考えます。したがって、御提案のような規定を設けることについては相当でもないと考えております。 ○大澤部会長 他にございますか。 ○田岡幹事 まず、池田委員がおっしゃられた点は、刑事訴訟法40条の解釈として裁判所という物理的な場所に限定されないということが確認されるのであれば、「『第3 附帯事項』に記載すべきこと」の2ページに書いておりますけれども、法改正をする必要まではないと思います。特に証拠書類の場合は、原則として裁判所がふさわしいと思います。問題になりますのは証拠物の場合です。証拠物の場合には、証拠物の特性に応じて適切な場所に保管されているのでしょうから、保管場所において閲覧することが適切と判断される場合には、裁判所の裁量によって、保管場所における閲覧を許可するという運用が担保されるのであれば、法改正までは必要ないと思いますので、要綱案に盛り込む必要はないと考えております。   次に、宇藤委員から、将来的な課題としては、刑事訴訟法316条の14の第2項の証拠一覧表を設けることも検討の余地があるという発言がございました。これは大変よい御提案であると思います。是非将来的な課題と言わず、現在でも検討していただければよいのではないかと思います。特に、証拠書類よりも証拠物の場合に重要です。証拠書類は標目しか書かれませんので、捜査報告書と書かれておりましても何のことだか分かりません。証拠物は、その内容がきちんと書かれますので、それを見れば無罪を言い渡すべき新証拠になるのではないかとか、DNA型鑑定の鑑定資料になり得るのではないかということが分かる場合があるのです。例えば、東京電力女性社員殺害事件における現場遺留物は、当初、検察官は、再審請求理由との関連性、必要性がないとして、その存否自体を明らかにしなかったわけですが、裁判所が熱心に勧告された結果、実は現場遺留物を押収していましたということを明らかにしたことから、DNA型鑑定を実施することになりました。   このような現場遺留物が存在すること自体を秘匿する利益というのが一体何なのか、私には分かりませんけれども、犯人性が争われている事件において、現場遺留物は重要な証拠です。また、捜査機関に押収されている場合には、代替性がありません。本来、現場にあれば誰もがアクセスできたはずであるのに、捜査機関が押収したために再審請求人がアクセスできなくなっているのです。捜査機関が押収した現場遺留物について、その存否自体を明らかにしないというのは、裁判所が再審請求理由について裁判をするために必要な証拠を隠しているに等しく、不当なことであると思われますので、現場遺留物を押収しているのであれば、せめてその一覧表は裁判所に対しても明らかにさせるべきであるし、また、再審請求人に対しても明らかにさせるべきではないかと思います。このように証拠物の一覧表は、再審請求人が現場遺留物のDNA型鑑定を実施してもらえば私は犯人でないことが明らかになると主張している場合には、非常に役立ち得るものでございます。   最後に、川出委員から、そもそも新証拠の発見を目的とした証拠開示というのはできないという御指摘がありましたけれども、再審請求人が一応新証拠を出していて、それに基づき犯人性を争っている場合に、現場遺留物のDNA型鑑定さえ実施してもらえば私は犯人でないことが明らかになると主張している場合に、DNA型鑑定の実施を命じることは許されないのでしょうか。DNA型鑑定を実施するための現場遺留物はどこにあるかといえば検察官が保管しているのですから、現場遺留物が開示されなければDNA型鑑定を実施することができません。DNA型鑑定の実施を求めることは、新証拠の発見を目的とするものではなくて、DNA型鑑定という新証拠の申し出だと理解しますので、その判断をするために、鑑定資料となり得る現場遺留物の有無及び保管状況を明らかにさせることは必要なことであると考えております。 ○大澤部会長 ほかの「第1」の論点もございますけれども。 ○鴨志田委員 送致書類目録を開示すべきでないというところや、その前の段階でも、再審請求で、関連性のない証拠を求めることが新証拠の発見を目的とするものであって、それが制度上全く想定されていないというような御意見がありましたけれども、何もないところから新証拠を探すためだけの目的で再審請求をするというよりは、多くの再審事件は、例えば関係者の目撃供述の信用性が非常に問題であるということで再審請求するときには、一応それを弾劾する新証拠を携えて請求をするわけです。けれども、その目撃者の初期供述が確実にあるはずだということがほかの証拠から推認されるにもかかわらず、それが出てこなかったり、証拠開示がされても個別にぱらぱらと出てくるのでなかなかその全容がつかめない、こういう場面こそが、正に送致書類目録などの、いわゆる証拠リストが出てくることの意味がある場面なのです。   現に福井事件では、第1次再審では95点しか証拠が開示されず、第2次再審になって287点もの証拠が開示されて、明白性のある新証拠と認定されたのは、全て第2次再審での開示証拠でした。福井事件の第1次再審の開始決定から第2次再審での再審開始確定までに13年掛かったということを考えると、やはり送致書類目録、もちろん316の14のような証拠の一覧表というものが将来的に検討されるということは、それ以上に私は重要なことだと思いますけれども、五月雨式に証拠が出てくることによって更に審理の迅速化が妨げられるし、五月雨式に証拠が出てくるからこそなかなか的確な主張を再審請求人の側で組み立てられないという立法事実への対策として、その証拠の全体像を把握するために、どのような証拠があるのかと、それが開示の対象になるかどうかというところはその後の判断でいいわけですから、リストというものが先にやはり出てくるということの意味というのは非常に大きいと思います。そういう観点で御検討いただきたいと思っています。 ○大澤部会長 この論点については、よろしいでしょうか。公判前整理手続が導入されて、証拠の一覧表が公判前整理手続を経由した事件については開示されるようになったわけですが、それ以前の事件についてはそういう手続がなかったということで、そこの落差をどう埋めるかということにもなってくるのだと思います。その辺りは、新しい手続ができていることも踏まえた柔軟な運用として、任意でどれだけやっていけるか、それぞれの立場で知恵を絞っていただく余地もあるのではないかという感じもいたしました。要綱の「4」、「5」、「6」のところについて、もし御発言があれば、コンパクトに。 ○田岡幹事 発言を許可いただきありがとうございます。意見書の4ページの「3」の目的外使用禁止、修正案の2ページの「第1」の「4」、「5」、「6」、「『第3 附帯事項』に記載すべきこと」の4ページの「第2」の運用事項の「1」「(2)」、8ページ以下の「第3」の継続的審議事項の「1」が関連しますので、御参照ください。   目的外使用禁止に関しましては、何度も申し上げておりますけれども、そもそも通常審の目的外使用禁止及びその罰則の規定が過剰な規制となっているために、本来、弁護活動や防御活動という正当な目的のために利用する場合であっても、それが目的外使用禁止に抵触するのではないかという疑いが持たれるために、正当な活動が制約されているという問題がございます。また、そのほかにも、調査・報道や教育・研究、誤判原因の究明及び誤判防止策の検討、国家賠償請求訴訟等の民事訴訟のための利用などの正当な目的のために利用したい場合でも、刑事訴訟法の47条ただし書や民事訴訟法220条1項4号ホの除外事由があるために、刑事記録が利用できないという問題がございます。   したがって、本来、通常審における目的外使用禁止の規定の在り方も含めて、改正が検討されるべきではないかと思っております。「『第3 附帯事項』に記載すべきこと」の8ページ、「第3」の継続的審議事項に書いておりますとおり、通常審における目的外使用禁止の規定の運用状況を検証し、改正の要否及び規定の在り方について御検討いただきたいところです。   その上で、仮に通常審の規定をそのまま再審に適用するということであれば、再審の場合には非公開の手続であり、また、現実に、支援者による支援活動が再審開始決定及び再審無罪判決に大きく寄与しているという実態がありますので、このような規定を設けますと、再審開始決定及び再審無罪になることが非常に難しくなるという現実的な弊害があるということは、是非とも御理解をいただきたいと思います。   袴田事件の5点の衣類の写真、福井事件における夜のヒットスタジオの放映日に関する捜査報告書などの証拠がテレビや新聞などに掲載されることもありますが、それによってどれほどの弊害が生じているというのか、私には分かりません。しかし、少なくともこれらの証拠が開示されることによって、多くの方々が袴田事件や福井事件ではこのような審理が行われていたのかと、また、このような証拠が開示されなかったのかということを知ることができ、その結果、国民が再審請求事件に関心を寄せるとともに、検察官の訴訟活動はやはり問題ではないかという声が上がったので、法務大臣から諮問がなされ、再審法の改正が議論されることになったのだと理解しております。これが利用できませんと、国民の関心は低いままであり、再審法の改正が議論されることもなかったのではないでしょうか。少なくとも再審にこの規定をそのまま適用することは、私は問題があると考えておりますので、通常審における規定の在り方も含めて御検討いただければと思います。   なお、皆様も御存じかもしれませんが、新聞協会は、1月16日に再審制度の見直しに関する見解を発表しておりまして、目的外使用禁止の規定を設けることに反対であるとおっしゃっておられますので、是非皆様には御理解をいただきたいと思います。 ○大澤部会長 それでは、何か御意見等はございますでしょうか。 ○成瀬幹事 ただいま田岡幹事から、「再審請求審は非公開の手続で行われており、マスコミ等が事実の取調べを法廷で傍聴することができず、その結果、報道の機会が少なくなり、ひいては、一般市民が再審請求事件について知ることも困難になることから、目的外使用の禁止に関する規律を設けることに反対する」旨の御意見が述べられました。   こうした御意見は、通常審の手続は公開されており、取り調べられた証拠の内容が広く一般に知らされることとなるため、目的外使用の禁止の規律を設けてもよいのに対し、再審請求審の手続は非公開であり、手続の公開を通じて、取り調べられた証拠の内容が広く一般に知らされることがないため、目的外使用の禁止の規律を設けることは相当でないという趣旨であると思われます。   しかしながら、通常審における証拠開示制度や「試案」における証拠の提出命令制度は、飽くまでも、被告事件や再審請求事件の審理のためのものであり、証拠の内容を広く一般に知らせることを目的に含むものではありません。   第14回会議において田岡幹事も述べておられたように、そもそも、開示又は提出された証拠については、関係者の名誉・プライバシーを保護する必要性等から、本来の目的以外に使用すべきでないのであって、このことは、通常審においても再審請求審においても当然のことであり、通常審における目的外使用禁止の規定は、そのことを法律上明らかにしたものです。   再審請求審の審理が非公開であるからといって、目的外使用禁止の趣旨である関係者の名誉・プライバシーを保護する必要性等が否定されるものではなく、再審請求審においても、通常審と同様に目的外使用の禁止の規律を設ける必要性・相当性が認められます。   よって、私は、「試案」のような目的外使用の禁止に関する規律を設けるべきであると考えます。   なお、第14回会議でも指摘させていただいたように、目的外使用の禁止の対象となる証拠は、飽くまでも、検察官が裁判所に提出した証拠に限られる上、例えば、その証拠の概要を口頭で伝達するなどの行為は、「複製等」の「提示」には当たらないとされていることなどからすると、再審請求審についてマスコミ等の報道の機会が激減するという御指摘は当たらないと思います。 ○大澤部会長 それでは、更に御発言はございますでしょうか。 ○村山委員 今ほど成瀬幹事からの御意見を頂きましたけれども、私たちは元々、通常審の規定自体にも問題があるという立場ですので、再審請求審だけに限って発言しているわけではないというのを、まず御理解いただきたいと思います。その上で、再審請求の場合は一層問題が大きいということを申し上げている。それは確かに証拠の利用の本来の範囲ではないのではないかということをおっしゃっていますけれども、やはり証拠というのは実際に支援者とかそういう方に示した場合、非常に大きな力になることは間違いないのです。また、実際に多くの再審事件は、マスコミ報道等があって支援がないと現実に開始決定まで至らないという実情もあります。こういうのを正当な理由ではないのだということに切り捨てていいのでしょうか。また、概要を報告するというようなことは許されるという、これは当然なのですけれども、やはり写真等のインパクトというのは非常に大きくて、マスコミはそういうことでこの規定の創設には反対をしているところです。それは、先ほど田岡幹事が新聞協会の対応を発言の中で引用されましたけれども、マスコミの方からは非常に大きな、この規定に対する反発、反対というのが聞かれているところです。また、宮下参考人もそのようにおっしゃっていたと思うのですけれども、そういうことを無視して、軽視するという言葉かもしれませんけれども、あえてここで、通常審が入っているのだからここも一緒だという形で押し切るという、そこまでの本当に合理性があるのかということを我々は問題にしているつもりです。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○田岡幹事 まず、私どもは、被害者等の関係者の名誉やプライバシーを保護すべき必要性があることは全く異存ございません。これまでの会議でも繰り返し発言しておりますように、職務基本規程及び日弁連の会規によって、当然守らなければならないルールはございます。「『第3 附帯事項』に記載すべきこと」の4ページにも書きましたように、弁護士は、日弁連の会規「開示証拠の複製等の交付等に関する規程」に従って、謄写した記録を、被告人あるいは再審請求人に交付する際には当然注意を与えますし、第三者に交付する場合には注意を与えた上で、更に回収する等の措置をとっているということでございます。   他方で、通常審でも、弁護人以外の者が閲覧・謄写した場合には、このような規定は設けられておりません。例えば、犯罪被害者が閲覧・謄写した場合には、全ての証拠について目的外使用が禁止されるとはなっておりませんし、また、それに違反しても処罰されることにはなっておりません。先ほどの刑事訴訟法40条も同じですけれども、被告人及び弁護人は悪いことをするという性悪説に立っており、犯罪被害者はそういうことはしないという性善説に立っているために、過剰な制約になっているように思われます。   また、国家賠償請求訴訟等の民事訴訟の実態を見ましても、弁護人が証拠を出すことは目的外使用禁止になるから許されないと言いながら、検察官は、捜査報告者や供述調書などの証拠をどんどん出してきます。その中には被害者等の関係者の名誉やプライバシーに関わる情報がたくさん含まれているのに、検察官の方は、ほとんど無制限に出しているわけです。また、捜査機関がマスコミ等に報道発表する場合にも、証拠物を展示するなどしておられますけれども、あれも目的外使用ではないのかと私達は思うわけです。しかし、同じことを被告人や弁護人がすれば処罰されるのに、犯罪被害者や検察官がすれば許されるというのは、これはどう考えてもアンバランスであります。   被害者等の関係者の名誉やプライバシーを守りつつ、他方で、正当な目的のための利用、弁護活動や防護活動のための利用は認めていくということが適切であると考えますので、是非とも、この問題は通常審も含めて、改正の要否及び規定の在り方を御検討いただきたいと思っております。   その上で、裁判所不提出記録・証拠物の保管・保存、閲覧・謄写、証拠価値の保全・鑑定についても、修正案を御提案しておりますので、御説明をさせていただきます。修正案の2ページ以下、「第1」の「7」、「8」、「9」になります。また、「『第3 附帯事項』に記載すべきこと」の5ページ、「第2」の「1」「(4)」「(5)」、9ページの「第3」の「2」に記載しております。   まず、修正案「第1」の「7」の裁判所不提出記録・証拠物の保管・保存については、検察官は、証拠品事務規程・記録事務規程に従って、裁判所不提出記録・証拠物を保管・保存しているということであり、また、その保管・保存の期間は確定記録に従って保管・保存しているということは理解しております。従いまして、証拠品事務規程・記録事務規程が改悪されなければ、現実には、裁判所不提出記録・証拠物がなくなるということはないのだろうと思います。また、還付対象証拠物についても、所有者の同意が得られる限りは還付を差し控える運用をしておられるということであれば、その運用を証拠品事務規程等明記していただくなど、そのような運用を担保していただくこととすれば、裁判所が取り調べた証拠物が還付されてしまうというようなことはないと思われます。保管検察官において適切に御判断いただいたり、証拠品事務規程の改正を御検討いただけるということであれば、要綱案に盛り込む必要まではないのだろうと考えております。   その上で、修正案「第1」の「8」裁判所不提出記録・証拠物の閲覧・謄写については、先ほど川出委員から、新証拠の発見を目的とした証拠開示はできないという御指摘がありましたけれども、そうであれば、尚更、この再審請求の準備段階における裁判所の不提出記録の閲覧・謄写、つまり証拠開示というものが重要になってくるのだろうと思います。そもそも、再審請求人は自分が犯人でないことを知っています。当然のことですけれども、忘れられがちなことなので、敢えて申し上げます。酒巻委員は神様しか知らないとおっしゃられましたけれども、真犯人と再審請求人は真実を知っています。再審請求人が犯人でなければ、私は犯人ではないということは当然知っているのです。犯人ではないから私は犯人ではないと言っているのに、証拠がないから有罪にされてしまったので、再審の請求をしているのです。無罪になるためには新証拠を提出しなければならないので、困っていらっしゃるのです。検察官に証拠を開示させれば自分の無罪が証明できるはずである、検察官が押収している証拠の中には必ず私の無罪を示す証拠があるはずであると信じて、証拠開示を求めているわけです。   DNA型鑑定をしてくださいというのは、DNA鑑定をすれば私が犯人ではないことが明らかになると思っているから、DNA型鑑定を請求するわけです。もし本当に犯人だったらそんなことをするはずがありません。犯人であることが明らかになるだけだからです。だから、なぜDNA型鑑定を実施しないのかと私は疑問に思うのです。DNA型鑑定を実施すれば、犯人であるか犯人ではないかが分かるわけです。真実が明らかになるわけです。それなのに、検察官が証拠を独占しているのをいいことにDNA型鑑定に反対するというのは、再審請求人にとってみれば真実の発見を妨げている行為にしか見えないわけです。   検察官は、公益の代表者であるというのであれば、その保管している証拠について、再審請求人から、私は再審請求をしたいので、新証拠を発見するためにその証拠を見せて欲しい、あるいは、DNA型鑑定を実施させて欲しいという申し出があった場合には、刑事訴訟法47条ただし書の規定があるわけですので、この規定に従って、裁判所不提出記録・証拠物を閲覧・謄写させる、必要に応じて鑑定を実施するべきではないかと思います。   この度、福井事件を踏まえて、名古屋高検の次席検事が管内の地検に対し、令和7年8月4日に「いわゆる福井女子中学生殺人事件の再審判決について」と題す通知を発出されましたけれども、「検察官としては、従前の主張や証拠に誤りがあると判明したならば速やかにそれを撤回し、必要に応じて裁判所や弁護人に経緯の説明や関係証拠の開示を行うなど適切な是正措置を行う必要がある」と書かれているわけですから、有罪判決が確定したとしても、もし本当にそのような証拠があることが判明したのであれば、検察官は公益の代表者なのですから、再審請求人となり得る立場の人に対して、実はこのような証拠がありましたということを正直に説明されるべきではないでしょうか。その上で、それでもなお有罪であると信じるのであれば、有罪であるという御主張されればよいと思うのです。私は、従前の主張や証拠に誤りがあることが判明したのに証拠を隠したまま開示しないということがよろしくないと思っておりまして、再審請求の準備段階であったとしても、刑事訴訟法47条ただし書によって、開示すべきではないかと考えております。 ○大澤部会長 それでは、御発言はございますでしょうか。 ○川出委員 修正案の「第1」の「8」についてですが、これに関しては、まず、第9回会議において宮崎委員から、一般論として、再審請求のための裁判所不提出記録及び証拠物の閲覧・謄写については、刑事訴訟法第47条の趣旨を踏まえて、保管している検察官において、個別の事案に応じ適切に対応している旨の説明がなされており、現にその閲覧・謄写が認められた事例もあると承知しております。「第1」の「8」の御提案の意図が、仮にこういった運用を明確化することにあるというのであれば、現に検察実務において運用で行っていることを法律に規定するというだけのことになりますので、その必要性は乏しいと思います。   他方で、御提案の意図が、検察官が再審の請求をしようとする者等から請求があったときは一律に、裁判所不提出記録及び証拠物を閲覧・謄写させなければならないという義務規定を設けることにあるとすれば、そのような規定を設けることについては、通常審で開示の対象とならない証拠を閲覧・謄写の対象とすることは、通常審の証拠開示制度との整合性から問題があるという指摘ですとか、通常審で開示の対象とされた証拠であっても、改めてこれを閲覧・謄写させることの相当性について慎重に判断すべき場合もあり得るので、閲覧・謄写を一律に認める取扱いをすることは相当でないという指摘がなされており、これらの課題を克服するような反論はなされていないと思います。   したがって、いずれの趣旨であるとしても、御提案のような法整備をするということについては必要性、相当性は認められないと思います。 ○成瀬幹事 田岡幹事の御説明によると、「第1」の「7」の裁判所不提出記録・証拠物の保存・保管については、基本的に現在の運用を続けていただきたいという趣旨であると理解しましたが、「法務省事務当局試案に対する修正案」では、3ページに記載された規定を設けるべきという提案がされていますので、その点について、意見を申し上げます。   検察・警察における裁判所不提出記録・証拠物の適正な保存・管理のためには、法務大臣訓令等や国家公安委員会規則等の規律が現場において実効的に機能することが重要であり、これらとは別に、法律において同内容の規律を設ける必要性には疑問があります。   また、還付対象の証拠物については、所有者等の同意が得られる限りで、還付を差し控え、保管・保存を継続する趣旨であると理解しましたが、修正案で提案された規律を前提にすると、当該証拠物の保管期間については、一律に、当該記録に係る裁判書以外の保管記録又は再審保存記録の保管期間と同様の期間、例えば、死刑又は無期拘禁刑に処する裁判に係るものについては50年間、20年を超える有期拘禁刑に処する裁判に係るものについては30年間保管することとし、また、その保管期間は延長することができることとし、さらに、再審の手続のため保存の必要があると認めるときは、その保管期間満了後も保管することになると考えられます。   しかしながら、本来、所有者等に還付すべき証拠物について、一度、所有者等の同意を得たというだけで、これだけ長期間にわたって保管を継続することが果たして正当化できるのかについては、疑問が残ります。   以上のことから、御提案のような法整備を行う方向で意見をとりまとめることは困難であると考えます。 ○宮崎委員 ただいまの成瀬幹事からの御発言に関連しまして、論点整理案の「1」「(5)」に関連して発言いたします。日弁連委員・幹事御提出の「『第3 附帯事項』に記載すべきこと」の「第1」の「1」「(5)」、「第2」の「1」「(4)」の裁判所不提出記録・証拠物の保存・管理に関する記載について意見を申し上げます。   第5回会議及び第10回会議においても申し上げたとおり、再審の請求が予測される場合における国庫に帰属した証拠物の保管については、証拠品事務規程第89条等の規定に基づき適切に対応しており、また、国庫に帰属したもの以外の証拠物の保管については、各検察官が、個々の事案の内容、再審請求の予測の程度、証拠物の内容及び重要性、被押収者の属性等に照らして、必要かつ相当と判断したときは、被押収者に事情を説明し、その同意を得た上で、保管を継続するなど、適切に対応していると承知しています。   「『第3 附帯事項』に記載すべきこと」の「第1」の「1」「(5)」においては、確認事項として、国庫に帰属した証拠物について、「保管検察官は、再審請求が予想される場合には、保管・保存していること(証拠品事務規程第89条)」と記載されていますが、ただいま申し上げたとおり、国庫に帰属した証拠物の保管については同条等の規定に基づき適切に対応しているのでありますから、既に運用していることをあえて確認事項として記載する必要はないと考えます。   また、「『第3 附帯事項』に記載すべきこと」の「第1」の「1」「(5)」においては、確認事項として、「保管検察官は、還付対象証拠物についても、所有者等の同意が得られる限り、還付を差し控える運用をしていること」が記載され、「第2」の「1」「(4)」においては、法務大臣訓令の改正事項として、証拠品事務規程を改正し、そのように運用することを明記することが記載されています。仮にこれらの御提案のように規程を改正すると、先ほど申し上げた事案の内容や証拠物の重要性等の考慮事情を問わず、再審請求との関係で保管を継続する必要性が乏しいものも含め、一切の還付対象証拠物について、所有者等の同意が得られる限り、保管の継続を義務付けられることとなるところ、その前提として、全ての確定事件で、膨大な数量の証拠品ごとに、各所有者等に保管継続に同意するか否かの意思確認をしなければならなくなるという事務負担の観点や、保管場所及び費用等の観点等から困難な面があることは否めないと考えます。   そのため、これらの御提案は、相当でないと考えます。 ○大澤部会長 附帯事項の点も含めて御発言がございましたけれども、ほかに御発言はございますでしょうか。 ○中山幹事 ただいま宮崎委員からお話がありました「『第3 附帯事項』に記載すべきこと」という提出資料に関して、私からも申し上げたいと思います。   この資料の「第2」の運用の改善が図られるべき事項の「1」「(5)」についてでございますけれども、本日の会議の最初の方で成瀬幹事から附帯事項についての位置付けに関する御発言もございましたが、その上で申し上げますと、第10回会議において重松委員より発言があったところでございますが、警察においては、捜査資料や証拠物件の保管・管理について、国家公安委員会規則である犯罪捜査規範のほか、その細目を定める通達により、御指摘の内容も含めて詳細に定めているところでありまして、これらの通達についても規範としての実効性を十分に有するものと考えております。捜査資料や証拠物件の保管・管理の適正な運用の確保に当たっては、警察庁としては引き続き都道府県警察に対して必要な指導を行っていくことが重要であると考えておりまして、改めて犯罪捜査規範に御指摘のような事項を明記する必要性は乏しいと考えております。いずれにいたしましても、適正な運用に今後とも努めてまいりたいと考えております。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○池田委員 先ほど田岡幹事の御説明の中で鑑定についての言及もありましたので、修正案の「第1」の「9」について意見を申し上げたいと思います。   こちらは、証拠価値の保全、鑑定について、裁判所が検察官にこれらを命じ得るという趣旨の規定であり、日本弁護士連合会改正案第445条の12と同様のものと理解しております。しかしながら、このような規定を置くことについては、裁判所が再審請求理由から離れて、検察官に対し、証拠物の保管や鑑定の実施等を命ずることができるとすることを意味するものであって、裁判所は再審開始時の存否を判断するに当たり、再審請求者の主張する事実に拘束され、職権で主張されていない再審請求理由に関する事実の取調べをすることは許されないとされていることとの整合性や、現実的な運用可能性の観点から問題があると考えております。また、これまでの議論において指摘されているとおりですが、証拠物の証拠価値の保全・保管については、法務大臣訓令である証拠品事務規程に規律が存在する中で、これとは別に規律を設けることの必要性に疑問があるほか、証拠物の鑑定についても、刑事訴訟法上、裁判所による事実の取調べに関する規律が存在する中で、検察官に鑑定の実施を命じることができることを明確化するために、これとは別に規律を設けることの必要性には疑問が残るところです。   以上に鑑みると、これらの課題を克服して御提案の法整備を行う方向で意見を集約することは困難であると考えております。 ○大澤部会長 附帯事項も含めて御議論いただくということで、どうしてもこの点だけは発言したいということがあれば承っておきたいと思いますが、いかがでございましょうか。 ○村山委員 今の証拠物の証拠価値の保全、鑑定に関する規律の問題なのですけれども、今ほど池田委員からは、これは請求理由と全く関係なくというような趣旨で御発言になったと思うのですが、そうではなくて、やはり犯人性の問題であれば、冒頭の田岡幹事の発言にあったように、この生体試料を鑑定することによって犯人かどうかが分かるという意味では、全く関連性がないということにはならないと思うのです。提出した新証拠との関係で行くと、それは供述証拠の弾劾の新証拠の場合に、現場の証拠ですから直接的な関連がないと言われればそうかもしれませんけれども、そういう場合ではないというのは当然前提になっていると思います。   そういう意味で、証拠価値を保全するために必要があるというのはそういう文脈で読む必要があると思いますし、また、この鑑定をすることに何か弊害があるのかということを考えますと、やはり弊害はないと思います。そういう意味で、必要性が認められ、かつ弊害がないということであれば当然、裁判所としても鑑定をするという方向に傾くと思いますが、やはりこういう規定をはっきりと設けることによって、そういうことができるのだということを明示する必要がありますし、また、実際にアメリカではイノセンスプロジェクトでDNA鑑定請求権というものが認められておりまして、実際にえん罪が発見される大きな役割を果たしているということも事実ですので、実用性としても非常に高いものだと理解しています。そういう意味で、必要性が高いと考えています。 ○山本委員 証拠については被害者の心情を考慮すべきで、被害者特定事項の秘匿については請求審についても実施していただきたいですし、請求審と再審公判において、改正前の事案についても秘匿事項の実質的な実行をすることを付記すべきだと思っています。 ○大澤部会長 更にどうしてもという御発言があれば、承りたいと存じますが、差し当たりよろしいでしょうか。   それでは、ありがとうございました。   次に、「第2 再審請求審・再審公判における裁判官の除斥」について審議を行いたいと思います。まず、事務当局から配布資料21のうちこの論点に関する部分について説明をしてもらいます。 ○今井幹事 配布資料21の4ページ目を御覧ください。まず、枠内の「1」につきましては、これまでの御議論を踏まえ、通常審において、実体判断、すなわち、犯罪事実の存否に係る心証形成を経てなされる終局裁判に関与した裁判官を再審請求審及び再審公判から除斥することを記載しており、そのような終局裁判として、具体的には刑事訴訟法第333条の刑の言渡しをする判決、刑事訴訟法第334条の刑の免除の判決、刑事訴訟法第336条の無罪判決、これらの判決に係る控訴を破棄理由がないものとして棄却する刑事訴訟法第396条の控訴棄却の判決を記載しています。   次に、枠内の「2」につきましては、これまでの御議論を踏まえ、再審開始の決定が確定した事件について、その開始決定に直接結び付いたいわゆる直近の再審請求手続において、実体判断、すなわち、再審請求事由の有無に係る心証形成を経てなされる終局裁判に関与した裁判官を再審公判から除斥することを記載しており、そのような終局裁判として、具体的には、再審開始の決定のほか、手続的な理由でなく実体的な理由で再審請求又は即時抗告等を棄却する決定を記載しております。   なお、これまでの御議論を踏まえ、裁判の基礎となった取調べのみに関与した裁判官は除斥の対象とはならないものとしております。 ○大澤部会長 それでは、この論点について審議を行いたいと思います。引き続き簡潔な御発言に御協力をいただけたらと思います。御意見、御質問等がある方は挙手の上、御発言をお願いいたします。 ○田岡幹事 私は、修正案の3ページのとおり、「第2」の「1」の場合、原判決に関与した場合は除斥の対象とすべきであると考えますが、文言としては議員立法第20条8号の方がよいと思います。ただ、この点は、法務省事務当局の「試案」と大きな違いはないと思います。大きな違いがあるのは「第2」の「2」の場合、再審請求審に関与した場合を除斥の対象とすべきかどうかの点であり、私はこの場合は除斥の対象とすべきではないと考えますので、「試案」には反対いたします。   そもそも、意見書の6ページにも書きましたけれども、当部会における一巡目、二巡目の議論で、この「第2」の「2」の場面を除斥の対象とすべきだという御意見はおっしゃった方はおられなかったと思います。また、ヒアリングや当部会に届いております要望書、意見書でも、このような場合を除斥の対象とすべきだという御意見は見当たりませんでした。また、過去の再審請求事件において、検察官が、再審開始決定を出した裁判官を忌避すべきである、あるいは回避すべきであるといった御意見を述べたという事例は私は聞いたことがありません。したがいまして、なぜこのような御提案が出てきたのかが、正直、理解し難いというところです。立法事実がないのではないかと思います。   そもそも、現行刑事訴訟法では、再審は再審請求審と再審公判の2段階に分かれておりますが、旧民事訴訟法では1段階構造をとっており、再審開始事由の審査と実体の審査を同時に行っていたわけですから、元々同一の裁判官が担当する一つの手続であるものを2段階に分けているだけであると理解しております。例えば、公判前整理手続と公判手続のように同一の手続を2段階の手続に分ける場合に、その途中で裁判官を交代させるということは考えられません。ドイツや台湾のように2段階構造を採用している国・地域でも、そのような立法例があるということは聞いたことがありません。これは日本独自の御提案なのかなと思いますが、もし諸外国にそのような立法例があるというのであれば御紹介いただきたいと思います。ないのであれば、なぜ日本に限って、そのような立法を御提案されているのか、お聞きしたいと思います。   その上で、「第2」の「1」と「2」の整合性について考えますと、「第2」の「1」の場合は、刑事訴訟法20条7号のうち、前審関与というよりは、破棄差戻しにおける差戻し前の原審関与の場合に類似すると理解しております。つまり、第11回会議において、既に発言しておりますけれども、第20条7号には、「前審の裁判」のほかに「破棄差戻し、若しくは移送された場合における原判決又はこれらの裁判の基礎となる取調べに関与したとき」が挙げられておりまして、確定した原判決に関与した裁判官が再審の請求審及び再審公判に関与しますと、その裁判官は有罪判決を書いているわけですので、過去の判断に固執するおそれが高いと客観的には疑われることから、公平性・公正性を疑われる理由があるので、破棄差戻しの場合の原審関与の場合と同視できると理解しております。   他方で、再審開始決定を出した裁判官は、破棄差戻しの場合の破棄審に類似する立場なのだろうと理解しております。つまり、破棄差戻しされた場合の破棄審の裁判官が差戻審に関与することは刑事訴訟法20条7号には当たらないと理解されております。この場合は、原判決を破棄した以上、破棄判決に拘束されて新たな裁判を行うだけのことですから、破棄審の判断に拘束されることはむしろ当然であり、そのことにより公平性・公正性を疑われる理由はないように思われます。もちろん結果的に、再審開始事由がある場合には再審無罪判決が書かれることが多いわけですが、6号の場合には、無罪等を言い渡すべき明らかな証拠があったから再審開始決定になっているのですから、再審無罪になることが多いのは当然のことです。現実に過去の再審請求事件を見ても、裁判官が交代しても、再審無罪判決になっていると認識しております。そのこと自体は、公平性・公正性が疑われるような事情ではなくて、無罪等を言い渡すべき明らかな証拠があったから再審無罪になったのだというだけのことです。国民は誰も疑問に思っていないのに、なぜこのような提案がなされたのかと疑問に思います。この場合を除斥の対象とすべき立法事実もないし、比較法的な立法例もないように思いますので、「試案」には反対いたします。 ○大澤部会長 それでは、他に御意見等はございますでしょうか。 ○今井幹事 田岡幹事の方から諸外国の制度についてお尋ねがございましたので、事務当局の方からお答え申し上げます。   まず、御指摘の点につきましては、我が国と諸外国とでは刑事手続の構造等が異なり、不公正な判断をするおそれのある裁判官を審理や判断に関与させない仕組みというものも各国の実情によって様々であるため、単純な比較は困難です。   その上であえて申し上げますと、例えば、フランスにおきましては、配布資料4「諸外国の刑事裁判に関する法制度(追補版)」に記載のとおり、再審手続の判断主体は、破棄院に所属する裁判官18名により構成される再審・再審査院であるところ、まず、そのうちの5名の裁判官で構成される予審委員会において、請求を受理できるか否かについての審査が行われ、請求を受理できると判断された場合には、それ以外の13名の裁判官で構成される「裁判体」に事件が付託され、その「裁判体」において、再審請求に理由があるか否かについての審査が行われ、「裁判体」が、再審請求に理由があるとして有罪判決を取り消した場合において、対審による新たな弁論手続を行うことができるときは、原裁判所とは別の同種・同一審級の裁判所に請求人が移送され、移送先で再審公判が行われるものと承知しております。   すなわち、フランスにおきましては、第1段階の判断をする予審委員会の構成員である裁判官は、第2段階で再審請求に理由があるか否かを判断する「裁判体」の構成員になることができず、また、第3段階の再審公判は、第1段階及び第2段階で再審請求について判断をする機関、すなわち、破棄院に所属する裁判官により構成される再審・再審査院とは別個の裁判所において行われるものと承知しております。 ○村山委員 私はこの点は、立法事実が全然存在していないというのは田岡幹事と全く同感です。どうしてこのような発想が出てきたのかということ自体が不思議なのです。もう一つ、私が強調したいのは、実際上の不都合があるということです。日本の裁判所で刑事部が1か部しかない裁判所というのはたくさんありますし、高裁でも支部は1か部ですよね。そうなると、その1か部のところで再審開始、若しくは棄却しても上級審で開始の判断が確定するということになると、同じ裁判所で審理をするということになるわけですけれども、そうなると全員除斥ということになってしまうと、実際に担当する裁判官がいなくなってしまう、要するに刑事部以外の裁判官に頼まなければいけないということにもなりかねません。   例えば、福井事件は実際に、裁判長は異動で替わってはいるのですけれども、ほかの陪席裁判官は同じ方がやっているということになりますし、また、特に再審開始に不服申立てが出ない場合には、直接再審公判に移行してしまいますので、その問題は非常に大きいのです。この提案をされている成瀬幹事は非常に論理的一貫性を保つために、検察官申立ての場合であっても適用される、また、先ほど言ったように、請求審では棄却したけれども上級審で開始になった場合も、その棄却した裁判官も含めて除斥になるのだということになると、かなり広い範囲で除斥になってしまうのですよね。そういう意味で、大きい裁判所ならいいのですけれども、実際にやっている事件を見ても、例えば静岡であるとか、名古屋高裁金沢支部であるとか、大津地裁であるとかということになると、人員に困ってしまう事態が生じるし、検察官申立ての再審開始はそれなりの数あるわけですけれども、これも含めて除斥になるということになると、それほど無視できない数になると思うのです。そういう意味で、私はどうして最高裁はこれで黙っているのかというのは少し心配なのですけれども、実際、裁判所としては困る事態が生じ得ると私は思います。そのために管轄移転とかをやるかというと、それはやればやれることはやれるのですけれども、そこまですることなのでしょうかと。今の再審開始決定を出した裁判官が再審公判をやることについて、社会的に大きな批判が生じているのかというと、私はないと思うのです。ですから、そういう状況なのに、この点を除斥で全部裁判官を除いてしまうのだということ、そこまでの必要性は全くないと思っていますので、そういう意味で反対です。 ○大澤部会長 それでは、他に御発言はございますでしょうか。 ○宮崎委員 田岡幹事から先ほどの御説明の中で、再審開始決定に関与した裁判官が再審公判に関与する場面で、検察官が忌避・回避の申立てを行った例が見当たらないため、その場面を除斥の対象とすることについては立法事実がない旨の御指摘がありましたけれども、一方的な主張にすぎない申立てを行った例があるというだけでは除斥事由を設ける立法事実にならないのでありますから、そもそも申立ての例の有無で立法の必要性を区別するのは不合理であると考えます。   一般国民から見た裁判の公正らしさへの信頼の確保という趣旨を再審にも及ぼして除斥事由を拡充するのであれば、第15回会議で申し上げたとおり、直近の再審請求手続における実体判断に関与した裁判官を再審公判から除斥することとしなければ、改正の趣旨に照らして不十分であると言わざるを得ないと考えます。   したがって、御指摘は当たらないと考えております。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○後藤委員 「試案」の「2」につきましては、「試案」の「1」が規定されるのであれば、同趣旨のものとして規定されるべきであると私も思います。この除斥の規定を設けることになりますと、村山委員がおっしゃられたような問題が生じてくることはやむを得ないと承知しております。そのような場合に、再審公判のための裁判体を直ちに構成することができなければ、現行法上の管轄移転の請求によって、検察官の方で適切に管轄移転の請求をしていただく必要があると、その適切な御対応をしていただければいいかと思っております。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○宇藤委員 この点について、「要綱(骨子)案」に示される取りまとめについて賛成をいたします。   この点について鴨志田委員、村山委員、田岡幹事から提出されております意見によりますと、そもそも再審請求審と再審公判は一連の手続であるというところから立論が出発しております。ただ、この点についてはかなり疑問があるということは、これまでの会議の場で何回か指摘をさせていただきましたし、私以外の委員・幹事からも同様の指摘があったものと承知しております。そのようなことからすると、まずこの点から修正案については否定すべきであろうと考えます。また、修正案では再審開始を否定する方向の判断をする裁判官とそれ以外の者とを区別する立論ということになっておりますが、除斥という制度の趣旨を考えますと、少なくとも当然というわけではありません。除斥制度の趣旨は、自らが以前に示した判断に固執するが故に公正な裁判を行うことができないとの類型的なおそれがあるため、司法に対する国民の信頼を損なわないよう、裁判体からその裁判官を取り除くというところにございます。このような趣旨にかなうようなものであれば、現行法の除斥対象を拡大することには妨げがないはずです。   もちろん、先ほどから指摘がありますように、裁判所の人的リソースが許す限りという限定が付きますので、無制限にできるというわけではないでしょうが、裁判官のリソースとしてこれが許されるのだということであれば、除斥制度を「要綱(骨子)案」のようにまとめることについて妨げはないと考えます。 ○成瀬幹事 私は、「第2」の「2」のように、再審開始の決定が確定した事件について、同決定に直接結び付いた直近の再審請求手続に関与した裁判官を再審公判から除斥する規律を設けることに賛成の立場から、意見を申し上げます。   先ほど田岡幹事から、この規律は三巡目の議論で突然出てきた案であるという批判がなされ、鴨志田委員・村山委員も、「『試案』に対する私達3名の意見」の6ページで同趣旨の批判を述べておられます。私は、この部会が始まる前から、除斥の問題について検討を続けてきたのですが、なかなか考えがまとまらず、他の論点の検討作業と並行していたこともあって、具体的な規律案を提示するのが三巡目になってしまいました。その分、四巡目でしっかり議論させていただければと考えております。   さて、「第2」の「2」のような規律を設けることについて、「試案に対する修正案」において反対の意見が示されており、その理由として、田岡幹事は、第15回会議において、検察官請求の場合等、再審開始事由が認められることが一見明白な場合には、再審開始決定をした裁判官が、そのまま再審公判を担当することについて、その公正さを疑う者は誰もいないことや、再審請求審と再審公判とは訴訟物が異なるため、公正らしさに疑念は抱かれないことを挙げておられました。   しかしながら、まず、前者の理由については、再審開始事由が認められることが一見明白な場合には裁判官を除斥しなくてよいとするもののように思われますが、そのように個々の事件ごとに判断が分かれ得る要素を考慮するのは、従来、除斥事由に該当するか否かは形式的・定型的に判断されなければならないと考えられてきたことと整合しないと思います。   次に、後者の理由について申し上げると、訴訟物が異なるのは、通常審に関与した裁判官が再審請求審に関与する場合も同じであり、訴訟物が異なれば判断の公正らしさに問題は生じないという理由から「2」の規律を設けることに反対されるのであれば、逆に、「1」の規律を設けることに賛成することについて説明が困難になると思われます。   「1」の規律は、通常審と再審請求審とで訴訟物が異なることを前提とした上で、それとは別の観点から寄せられる、裁判官の判断の公正らしさへの要請にこたえようとするものであり、「2」の規律についても、それと同様に、再審請求審と再審公判とで訴訟物が異なることを前提とした上で、それとは別の観点から寄せられる、裁判官の判断の公正らしさへの要請にこたえようとするものです。   すなわち、「1」と「2」は、いずれも、前にした判断に係る訴訟物と後にする判断に係る訴訟物が異なることを前提としているものであって、訴訟物が異なれば公正らしさに疑念は生じないと主張されるのであれば、「1」の規律に賛成することはできないはずであり、そのような主張を前提として、「1」には賛成しつつ「2」には反対するというのは、論理的に成り立たないと考えます。   それから、「2」のような規律を設けることに反対する理由について、同じく第15回会議において、村山委員からは、棄却で終結した累次の再審請求審に関与した裁判官を除斥しないこととの均衡が問題になる、鴨志田委員からは、直近の再審請求手続への関与のみを別異に取り扱う説明が不十分である、との御指摘もありました。   しかしながら、第15回会議で既に申し上げたとおり、直近の再審請求手続以外の再審請求手続については、刑事訴訟法上、同一理由による再請求ができないことなどから、直近の再審請求手続とは異なり、再審公判との間で証拠構造が類型的に共通するとはいえないのであって、直近の再審請求手続に関与したことのみを除斥事由とすることには十分な理由があると考えます。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○川出委員 私も「2」のような規律を設けることに賛成です。こうした規律を設けることで、裁判の公正らしさがより一層確保されるということは明らかであると思います。また、除斥というのは、類型的に不公正な裁判をするおそれがある裁判官や一般国民から見てそのおそれを疑わせる裁判官を裁判手続から排除する制度ですので、その範囲を拡大することによって特定の者に不利益が生じるというものではありません。日弁連委員・幹事の意見書の中で、「(2)」のような規律を設ける背景に、少しでも再審無罪判決を出させないようにしたいという思惑があるなどという記載がなされていますけれども、この規律の下では、第一審では棄却された再審請求が即時抗告審で認められ、再審開始決定が確定したという場合には、第一審の請求棄却決定に関与した裁判官も再審公判から除斥されることになりますので、それが特定の方向での判断を誘導するようなものでないことは明らかだと思います。   その上で、先ほど田岡幹事から「2」に反対する理由として挙げられた点についても意見を申し上げたいと思います。まず、公判前整理手続に関与した裁判官が公判から除斥されないのと同様に、この場合も、再審請求審に関与した裁判官を再審公判から除斥する必要はないという点ですが、公判前整理手続は争点及び証拠を整理する手続であることから、裁判官が接するのは基本的には当事者の主張にとどまります。証拠開示の裁定等の機会に証拠の内容に触れる場合はありますが、その場合にも、それによって裁判所が心証を形成するということはありませんので、その点で再審請求手続とは事情が異なります。したがって、公判前整理手続に関与した裁判官が公判から除斥されないからといって、直近の再審請求手続に関与した裁判官を再審公判から除斥する必要はないという結論を導くことはできないと思います。   それからもう1点、田岡幹事からは、通常審に関与した裁判官が再審公判から除斥されるべきという「1」の部分について、この理由は、刑事訴訟法第20条第7号に規定された破棄差戻し等がされた場合における原判決関与と同様に考えることができるからであって、直近の再審請求手続に関与した裁判官が再審公判に関与する場面はそういった関係にないから、それを除斥の対象とすべきではないという旨の御指摘もありました。しかし、刑事訴訟法第20条第7号において、破棄差戻し等がされた場合における原判決関与が除斥事由とされているのは、審級関係の存在を前提として、破棄判決の拘束力(裁判所法第4条)の趣旨に忠実なやり直し審を確保することにあるとされています。そうしますと、再審請求審と再審公判との間に審級関係はありませんし、また、再審開始決定には拘束力も認められていませんので、通常審に関与した裁判官を再審公判から除斥する根拠を破棄差戻し等がされた場合に原判決に関与した裁判官を除斥することとされている刑事訴訟法20条7号と同様に考えることは困難です。それゆえ、そういった理解を前提として、直近の再審請求手続に関与した裁判官が再審公判に関与する場面を除斥の対象とすべきではないという結論を導くこともできないということになると思います。 ○大澤部会長 更に御発言はございますか。 ○鴨志田委員 この裁判官の除斥の問題は、当初は確定有罪判決に関わった裁判官が再審手続で除斥されるかという問題と、累次の再審の前の再審に関わった裁判官が後の再審請求に関与できるかという、当初はこの二つの問題として議論されていたと記憶しています。   後者については議連案でも、また私たち日弁連の委員も、累次の再審請求において前の、例えば第1次の再審請求に関与した裁判官が、その後の第2次とか第3次の再審請求に関われないということになると、やはり裁判所の人的な資源という観点からなかなか手当てが難しいのだという現実的な事情があるということを主な理由として、そこについては対象から外すということに賛成をした経緯があります。そのときも、そもそも累次の再審の場合には前審、後審の関係にない、また、違う新証拠が出されているので、そもそも偏頗な裁判をするということの判断の前提が違うというような意見が出されたことも承知していますけれども、今し方の御議論を聞いていると、訴訟物が異なることを前提に、しかし政策的に国民の目から見て公正らしさを疑わせるような場合には広く除斥の対象とするべきであるということだとすると、元々の、累次の再審で第1次に関わった裁判官が第2次に関わる場合であっても、それぞれの再審理由は同一ではないかもしれませんし、違う新証拠が出ているかもしれませんけれども、最終的な再審開始の判断というのは新旧全証拠を総合評価するわけで、旧証拠も再度見ることになりますし、また、累次の再審で出た新証拠も新証拠としては使えませんけれども、次の再審で総合評価の対象には加えられるという意味では、かなり重なり合いがあるわけです。   現に日野町事件では、第1次請求審で棄却決定をした裁判長が、第2次再審の抗告審で自ら審理をするということになったときに、請求人、弁護人、支援者らから、これは非常に不公正であると批判され、結果的に別の部に割り替えになったというケースがあります。これは正に国民から見て不公正な判断をされる疑わしさが相当程度見られるというようなことから、裁判所が最終的にそのような判断をしたのであって、仮にこの政策的な、また国民の目から見た公正らしさということを言うのであれば、現在の「1」と「2」だけではなくて、累次の再審請求の場合に過去の再審請求に関与した裁判官にも同じ事情はあるのだということを今一度考えるべきなのではないかと思います。 ○大澤部会長 池田委員、お願いします。 ○池田委員 私は「第2」の「2」のような規定を設けることに賛成する立場から意見を申し上げます。理由付けは成瀬幹事が御指摘になったとおりであり、繰り返しません。   これに対して、これまでの議論において鴨志田委員や村山委員から、再審請求審と再審公判が事件番号同一で一つの事件として取り扱われるとか、あるいは弁護人選任の効力が再審公判まで続くので除斥の問題は生じないという御指摘があったところです。このうち事件番号が同一であるという点は、既に川出委員から前回会議で御指摘があったとおりで、事件番号は裁判所がその内部において事務処理の便宜上どのように取り扱うかの問題にすぎず、そこから除斥の要否、当否についての何らかの結論を導き出すことはできないと思われます。また、再審の判決があるまで弁護人の選任の効力が続くとする刑事訴訟法第440条第2項が設けられた趣旨は、再審請求者及び被告人の便宜のためであるとされておりますので、そこから除斥の要否、当否について結論を導き出すことができないのは事件番号の点と同様です。   その上で更に、先ほど、比較法的な状況について事務当局からも御説明があったところでありますけれども、諸外国の制度は議論の参考になるものではあるものの、それにとどまるものでもあり、検討の前提となる刑事手続全体の構造等が異なるにもかかわらず、一部のみを切り取ってそこから直ちに特定の制度を導入することの要否、当否について結論を導くことはできないと考えます。公平な裁判所を確保するための制度的保障としては様々な方策が考えられるところであり、諸外国に同様の除斥制度が設けられているとかいないとかということを決定的な考慮事項として位置付けることには実益がないと考えます。 ○田岡幹事 そもそも、諮問第129号は、「再審請求審における裁判官の除斥及び忌避に関する規律」でしたから、通常審に関与した場合を再審請求審から除斥すべきではないかという諮問だと思うのです。再審請求審に関与した場合を再審公判から除斥するのであれば、諮問事項は再審公判における裁判官の除斥・忌避にしなければいけませんから、「第2」の「2」は、諮問事項の範囲外なのではないでしょうか。つまり、このような規律を設けることは、法務大臣はもとより誰も想定していなかったことであり、研究者の皆様は気になるのかもしれませんけれども、そもそも立法事実を欠くのではないかと思われます。   また、宮崎委員から、申立ての例の有無で立法の必要性を区別するのは不合理であるという御意見がありましたけれども、恐らく現実には検察官が忌避や回避の申立てをした例はないということを前提に、そのような申立てをしていないから、除斥・忌避の対象にしないという理由にならないということをおっしゃりたいのだろうと理解しました。しかし、具体的にどのような場合に公正らしさが疑われるのでしょうか。つまり、再審開始決定を出した裁判官が再審公判を担当して無罪判決が出た事件で、この裁判官は公正らしさが疑わしい、不公正な裁判をしたから無罪判決を出したのだという事例があるのでしょうか。私は聞いたことがありませんし、そのような批判が出ているという話も聞いたことがございません。抽象的に、こういう場合にも公正らしさに疑いが生じるかもしれないから除斥にしましょうとおっしゃっておられるように聞こえるのですけれども、具体的に裁判官の公正らしさに疑いが生じた事例があるのでしたら、教えていただきたいと思います。   諸外国の立法例は、フランスは理解しましたけれども、日本が模範としたドイツは、元々原判決関与の場合に再審請求審・再審公判から除斥するという規律はあるが、再審請求審に関与した場合に再審公判から除籍するという規律はないと理解しております。そもそも、ドイツは再審請求審において破棄自判ができると聞いておりますので、再審開始決定ができると聞いております。そもそも再審というのはそういう制度であり、明らかに再審開始事由がある場合には、再審公判を開くまでもなく再審開始決定ができるという方が迅速に無罪となるべき人を救うことができるのに、わざわざ裁判官を替えて、時間を掛けて、審理をやり直しましょうというのは、迅速化の要請にも反するように思われます。元に戻りますけれども、やはり諮問第129号がそもそも想定していなかった場合を持ち出して、あえて審理が長引く規定を設ける必要性が私には理解ができませんでした。 ○玉本幹事 諮問に関する御指摘がありましたので、事務当局から一言申し上げます。   御指摘のとおり、諮問においては「再審請求審における裁判官の除斥及び忌避に関する規律」という記載がありますが、これは、再審公判における除斥及び忌避について、それを議論の対象からあえて除外するという趣旨を含むものではないと考えております。また、諮問の中には、「その他の刑事再審手続に関する規律の在り方」という包括的な記載もありますので、今議論されている直近の再審請求審に関する規律というのが諮問の範囲外であるとは、事務当局として、考えていないところです。 ○池田委員 今、田岡幹事から除斥の規定を設けることが手続の迅速化を妨げるという御指摘がありましたので、その点について一言申し上げます。   除斥の規定を設けること自体には、確かに迅速化を妨げる点があることは否定できないと思いますけれども、他方でここでの議論は、それよりも裁判の公正らしさを確保するということを重視するがゆえに、そのような規定を置くべきだとの考えによるものです。これまでの議論にもありましたように、「1」の場面と「2」の場面で同じ理由で公正らしさに対する疑いが生じるとされている以上は、「1」の場面で、その場合には迅速さは損なわれてもやむを得ないと考える一方で、「2」の場面では迅速さが優先するのだと考えることは、一貫しないと考えております。 ○大澤部会長 時間は大分延びておりますが、どうしてもという御発言があればお受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 よろしいでしょうか。ありがとうございます。   それで、開始してから大分長くなりましたので、短時間で申し訳ありませんが、休憩を取らせていただきたいと思います。              (休    憩) ○大澤部会長 それでは、再開させていただきたいと思います。   今、「試案」の「第2」のところまで進みましたけれども、「試案」の「第6」のところまでは何とか本日ひとわたりさらいたいと思いますので、今後の進行につきましてもどうか御協力をお願いしたいと思います。   それでは、配布資料21の「第3 再審の請求についての調査手続・審判手続等」について審議を行いたいと思います。まず、事務当局から配布資料21のうち、この論点に関する部分について説明をしてもらいます。 ○今井幹事 配布資料21の5ページ目を御覧ください。配布資料20からの主な変更点を御説明いたします。   枠内の「2」「(2)」「ア」「(エ)」につきましては、三巡目の御議論において、調査手続の段階で再審の請求を棄却する決定がなされるのは、明らかに請求の理由がない場合であることを文言上明確にすべきである旨の御意見が複数示されたことを踏まえまして、事務当局において記載ぶりについて更に検討した結果、刑事訴訟法第408条が、「上告裁判所は、上告趣意書その他の書類によって上告の申立ての理由がないことが明らかであると認めるときは、弁論を経ないで判決で上告を棄却することができる。」と規定していることに倣って、「明らか」という文言を加えることも可能であると考えられたことから、要件を「再審の請求の理由がないことが明らかであると認めるとき」に変更しまして、「2」「(2)」「イ」につきましても同様の変更をしております。 ○大澤部会長 それでは、この論点について審議を行いたいと思います。その際、先ほど申し上げたとおり、併せて「試案」に記載のない「第3」に関する項目についても必要に応じて御議論をいただければと思います。それでは御意見、御質問等がある方は挙手の上、御発言をお願いします。 ○田岡幹事 調査手続、審判手続等を含む手続規定について意見を申し上げます。調査手続に関する意見は、意見書の2ページ「第2」の「1」と、私どもが出した修正案の3ページ以下にございます。   まず、「第3」の「1」の請求の方式については、刑訴規則の283条の規定を明文化するだけということでありましょうから、特段異存はございません。問題は「2」の調査手続等、それと関連して「3」の事実調べ、「4」の意見聴取が審判開始決定をした場合に限定されていることであると考えております。まず、この調査手続については今、2段階の構造になっている再審請求審と再審公判を更に分割して3段階にするもの、つまり調査手続、審判手続、再審公判と3段階になりますので、審判開始決定を受けて、更に再審開始決定を受けて、それに対して検察官は即時抗告や特別抗告することができて、確定して初めて再審公判が開かれるけれども、その裁判官は交代していて、無罪判決が出ても更に控訴、上告ができるという意味では、再審請求人にとっては一体ハードルが幾つあるのかと気が遠くなるような話でございまして、そこまでハードルを高くする必要があるのだろうかと率直に疑問に思います。   もちろんスクリーニングの必要性を否定しているわけではありませんので、方式違反の場合や請求権消滅の場合、主張自体失当の場合などは、私の提案でも、個別に事実の取調べ、証拠提出命令、あるいは証拠開示命令、国選弁護人などの規定のただし書に、このような場合には選任する必要はないという規定を設けております。前回、成瀬幹事や池田委員から、このような規定を設けても迅速に棄却されることにはなりませんという御指摘がありましたが、義務的なものがなければ、職権主義の手続ですので、事実取調べ等を行わずに再審請求を棄却することは現在でもできるわけですし、今後もできると思われますので、このようなスクリーニング規定をあえて置く必要はなく、本当に再審請求に理由がないことが明らかなのでしたら単純に再審請求を棄却すればよいと、その場合に事実の取調べや証拠開示をしないということにすればよいというだけなのではないかと思います。   その上で「2」「(2)」「ア」「(エ)」のスクリーニングの対象となる場合に、再審の請求の理由がないことが明らかであると認めるときと、このような明らかであるという文言入ったこと自体は、よいことではないかと思います。これによって一見明白に再審請求の理由がないことが明らかな場合に限って、スクリーニング規定により再審の請求が棄却されるのだろうと理解はいたしました。ただ、やはりこの場面がどういう場合なのかということがまだ明確でないように思われます。先ほどの除斥の規定と対照しますと、例えば「第2」の「2」の「ア」には、「第3」の「2」「(2)」「ア」「(エ)」に係る部分に限ると書かれていることからしますと、この「(エ)」の判断をした裁判官は、公正らしさに疑いが残る程度には実体判断を行うことが想定されていると理解できます。つまり、単純に再審請求の趣意書と添付書類だけを見て、これは明らかに再審の請求の理由がないよねという程度の判断であれば、通常、公正らしさに疑いを生じないと思われますが、公正らしさに疑いを生じるという以上は、更に当然、確定記録等も読んだ上で、また累次の再審請求に関する証拠も読んだ上で、ある程度実体判断に近いような再審開始事由についての心証を得たからこそ除斥されるのでしょうから、そのような場合を対象とするのだと考えますと、この「(エ)」の明らかであるという判断が相当重いものになると思われまして、ここで棄却されてしまう事例が相当数あるのではないかということが懸念されます。   特に、刑事訴訟法の446条の決定の方は同一理由による請求が制限されませんけれども、447条の方の決定は、1項によって棄却されると、2項によって同一理由により更に請求することができなくなるという大きな不利益がございます。「(ア)」、「(イ)」の場合は446条で、「(ウ)」の場合はそもそも理由がないわけですので、同一理由による請求ということは考えられないわけで、「(エ)」は同一理由による請求が制限されるという意味で大きな不利益があるというだけではなくて、さらに435条6号の場合には証拠の新規性が否定されるということになりますので、次の再審請求をする場合に、同一理由と、さらに新規性がないという意味では別途、新証拠を用意しなければならないという大きな不利益を受けることになりますから、よほど例外的な場合にしないと、「(エ)」によって棄却されることの不利益が大きくなりすぎるのではないかという印象を持っております。したがって、この調査手続については、「(エ)」が修正されたことを前提としてもなお、私は反対という意見でございます。 ○大澤部会長 それでは、他に御発言はございますでしょうか。 ○池田委員 私は「第3」の「2」の制度を設けることについて賛成の立場から意見を申し上げます。   これまでも議論があったとおり、この調査手続は再審請求審における手続に段階を設け、審理の運営について一定の指針を示すという意味で合理的な制度ですし、調査手続を経て審判開始決定がなされた事件については、事実の取調べの請求権を付与するなど充実した審理をすることを意図するという意味でも、理にかなった制度であると考えております。また、調査手続の段階で再審の請求が棄却される場合、事実の取調べがなされないことになりますが、現行の運用において、法令上の方式違反等の形式的事由により再審請求棄却決定がなされるような事案や、再審請求の理由がないことが明らかであると認められるような事案については、再審請求事由の有無についての事実の取調べがなされていないと考えられることからすると、調査手続を設けたとしても、現行の運用に比して再審請求者に実質的な不利益を課すことになるものではないと考えられます。したがって、再審の請求についての調査手続を設けることには十分な理由があると考えます。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○村山委員 私そもそもこういう規定を設けること自体には反対です。現状でやっていることを明文化するという域を少し越えていると思います。特に問題が大きいのは、「(2)」「ア」「(エ)」ですか、これは明らかだというのが入ったわけですけれども、ではどういう場合が明らかなのかというのは必ずしも明確になっていないと思いますので、本来的には事案、ある程度の事例で、これは明らかなのでしょうかという議論はしなければいけないと思っています。   もう一つは、「(ウ)」が「(ア)」及び「(イ)」に掲げる場合以外の場合というのがあるわけですけれども、簡単に言うと、疑わしきは「(ウ)」になるという理解でいいのかどうかということなのですが、そうでないと非常に問題が大きいと思っています。確かに、明らかが入ったのは前の案に比べればずっとよくなったとは思っていますけれども、なお疑問としてそういうも点を指摘すると同時に、元々こういう規定は要らないのではないかと。実際に証拠開示に進む場合にどういうスクリーニングが必要かというのは、それぞれの規定に書き込むという議連の案ですかね、衆議院に出されている法案、このような形で十分足りていると考えています。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○成瀬幹事 私は、鴨志田委員・村山委員・田岡幹事が共同提出された「『第3 附帯事項』に記載すべきこと」のうち、「3」「(1)再審の請求についての調査手続」に記載されている内容について、簡潔に意見を申し上げます。   本会議の冒頭でも少し申し上げましたが、ここに記載されている内容は、一定の事実関係を前提とした裁判例における取扱いを、その個別具体的な事実関係を捨象して一般化したり、裁判所が個別具体的な事案に応じて検討すべき事柄について、裁判所に一定の対応を強いるものとなっていたりしていると考えられますので、この内容をそのまま附帯事項に記載することは相当でないと考えます。   もとより、「再審の請求についての調査手続」が設けられることになった場合には、同手続が当部会でのこれまでの議論を踏まえて適切に運用されることは重要ですので、そのような趣旨を附帯事項に記載することは考えられると思います。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。   「試案」でいうと「第3」の「1」、「2」のところについて御議論いただきましたが、「6」の受継は少し違う中身かなという気がいたしますので、まず、それ以外の「3」以下の部分につきまして御意見等があれば承りたいと存じますが、いかがでしょうか。 ○田岡幹事 修正案の4ページを御覧ください。「3」「(1)」は、先ほどの調査手続との関係で反対いたしますが、「3」「(2)」は、審判開始決定をした事件に限定している点を除けば、事実の取調べは、現行刑事訴訟法43条及び445条によりできることですので、特に反対するものではありません。   また、「4」、「5」も、審理終結日の指定及びその通知と決定日の指定及びその通知を設けること自体には賛成いたします。ただ、「4」「(1)」の意見聴取については、先ほどの事実の取調べと同様に、審判開始決定をした事件に限定している点は、反対いたします。調査手続においても意見聴取をすべきではないかと思いますし、その意見聴取と審判開始決定後の期日における意見陳述は区別すべきであると思います。   その上で、修正案4ページ、「3」「(3)」事実の取調べの立会権等について、意見を申し上げておりますので、趣旨を説明いたします。まず、国選弁護制度がありませんので、再審請求人に弁護人が選任されていない可能性があるということを前提としなければならないと思います。そうしますと、証拠開示がなされましても、つまり裁判所に証拠が提出されましても、再審請求人はそれを知り得ないということになってしまいます。また、法廷において、証人尋問や検証、鑑定が行われましても、再審請求人はそれに立ち会うことができませんと、その結果を知り得ないということになってしまいます。この場合に、裁判所が後見的な役割を発揮して、証人に対して反対尋問的な尋問をしていただいたり、真実を発見するための検証、鑑定をやっていただいて、それこそ新証拠を裁判所が自ら発見してくださるようなことがあるのでしたら、それはそれでよろしいのですけれども、通常はそういうことは期待し難いように思われます。裁判所としても、幾ら再審請求審が職権主義の手続だといっても、その役割を逸脱して、再審請求人に肩入れするような活動はしづらいのではないかと思われます。そうすると、やはり弁護人がいた方がいいに決まっています。ただ、仮に弁護人がいないということを前提とすると、事実の取調べに立ち会う機会を保障すべきですが、仮に立ち会うことができない場合には、少なくとも、事実調べの結果を再審請求人に通知するという規定を設けることが不可欠であると思います。この点、成瀬幹事は、東京高裁の平成15年1月17日決定は事実の取調べの結果を通知していると御紹介されていましたが、同様の運用が確保されるとは限りませんので、このような運用を義務付けるという規定にするべきではないかと思います。   また、期日の規定が設けられなかったのは大変残念でございます。「7」のとおり、再審の請求がされたときは期日を指定しなければならないと規定するのがよいと思いますが、少なくとも、議員立法444条の2のように、期日を指定することができるとした上で、期日において行われるべきことを規定すべきではないかと思います。例えば、期日は裁判長が指揮をするとか、期日調書を作るといった規定は必要になるでしょう。更に言えば、「3」「(3)」、「(4)」のように、証人尋問、検証、鑑定などは期日において行うとした上で、その期日に再審請求人が希望すれば出席することができるということを保障すべきではないかと思います。もちろん再審請求人の中には受刑者がいるわけですので、オンライン出頭ということも必要にはなるのでしょうけれども、弁護人がいない場合を考えますと、再審請求人が期日に出席することを希望しているのに、期日に出席する機会を与えずに、証人尋問、検証、鑑定を行うということは相当ではないと思われます。   したがいまして、事実の取調べのうち、証人尋問、検証、鑑定は期日で行うこととした上で、再審請求人には期日に出席権を認めて、それに立ち会う機会を保障する、証拠書類及び証拠物の場合には事実の取調べをした結果を再審請求人に通知するという規定を設けることによって、再審請求人に事実調べの結果を認識する機会を与え、それを踏まえた意見陳述の機会を保障すべきであるということが相当であると思います。   なお、審理の公開については様々な御意見がございましたけれども、やはり裁判所の裁量に委ねるということでは、これまで日産サニー事件を除いて、公開された前例がないということからしますと、公開されるということは期待しづらいように思われます。少なくとも、証人尋問等の重要な事実の取調べや意見陳述は公開の法廷で行うことが望ましいことから、特段の事情がない限りは公開すべきであるということを規定に設ける、あるいは運用上確認しておくことが必要ではないかと思います。   この点、「『第3 附帯事項』に記載すべきこと」の6ページ及び7ページに松尾浩也先生の刑事訴訟法の教科書を引用しておりますが、裁判所は、少なくとも相当の内容を伴っている場合、あるいはその可能性が認められる場合は、口頭による意見陳述、事実の取調べの申立てと立会い、証人に対する質問、取調べの結果に対する意見表明等を認めるべきであるし、請求人が希望するときは審理を公開することも検討に値するということをおっしゃっておられます。松尾先生の御意見に耳を傾けて、少なくとも運用上このような配慮がなされませんと、再審請求人の手続保障としては十分とはいえないのではないかと考えております。 ○大澤部会長 それでは、他に御意見等はございますでしょうか。 ○成瀬幹事 「試案に対する修正案」において、「試案」の「第3」の「3」「(1)」の規律を設けることに反対する旨の御意見が示されていますが、私は、この規律を設けることに賛成です。   繰り返し申し上げているように、調査手続を設け、再審請求事由の有無についての審理を要する場合には審判開始決定をすることとするのが合理的であるところ、再審請求事由の有無についての審理を要しない場合には、再審請求事由の有無についての事実の取調べをする必要性がそもそも認められないのですから、審判開始決定をした後でなければ事実の取調べをすることはできないとすることには、十分な合理性があると考えます。   また、「試案に対する修正案」において、「試案」の「第3」の「3」「(2)」の事実の取調べの請求権について、検察官に請求権を認めることに反対する旨の御意見が示されていますが、私は、検察官にも事実の取調べの請求権を認めるべきであると考えます。   これまでも議論があったとおり、検察官については、再審請求権が認められており、再審請求について決定をする場合には検察官の意見を聴かなければならないとされ、再審請求に対する決定についての不服申立権も認められているところ、これは、再審請求審が、三審制の下で確定した有罪判決について、なお事実認定の不当などがあった場合にこれを是正する非常救済手続であり、慎重な判断が必要となることに鑑み、公益の代表者たる検察官を関与させることにより判断の適正を担保しようとしたものであると考えられます。そうであるとすれば、再審請求者及び弁護人に事実の取調べの請求権を認めることとする場合には、検察官にも事実の取調べの請求権を認めることとすべきと考えます。 ○大澤部会長 それでは、更に御発言はございますでしょうか。 ○田岡幹事 ただいまの成瀬幹事の発言に対して、意見を申し上げます。検察官も公益の代表者として手続に関与する以上、事実の取調べ請求権を認めるべきだという御発言がございました。そこまでおっしゃるのであれば、再審請求手続は2面構造ではなくて3面構造であり、検察官は当事者として関与するということなのでしょうから、証拠開示は直接開示型にしたらよろしいのではないでしょうか。検察官が事実の取調べを請求しているのに、証拠は直接見せませんというのは、私には理解ができません。検察官は正に当事者として事実の取調べを請求するのでしょうから、そのような証拠は、当然、再審請求人・弁護人に直接開示すべきなのではないでしょうか。なぜそれを裁判所提出型にして、弁護人は裁判所に提出されたものを閲覧・謄写しなければいけないのでしょうか。私には理解ができません。検察官には不服申立権を認める、さらに事実の取調べの請求権まで認めるというのであれば、再審請求手続は3面構造であり、検察官を当事者とするという趣旨の御提案だと思いますので、証拠開示については直接開示型にされたらいかがかと思いました。 ○成瀬幹事 私は、再審請求審が職権主義の審理構造であることを当然の前提としたうえで、検察官が重要な手続関与者として再審請求審に関与する以上、事実の取調べの請求権も認めるべきであると申し上げています。田岡幹事がおっしゃるような、再審請求審を当事者追行主義の審理構造に改め、検察官を当事者として位置付けるべきという意見ではありませんので、念のため申し上げます。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○池田委員 田岡幹事の御説明の中で、仮に調査手続を設けるとすれば、その場合にも請求人に意見聴取を義務付けるべきであるという御意見がありましたので、その点について意見を申し上げます。   この点についてはこれまでにも議論があったところですが、御指摘のような規律を設けることについては、再審請求者との関係では、裁判所が必要に応じて再審請求書の補正や釈明を促したりすれば足り、一律に意見聴取を義務付けることは必要でもなく相当でもないという指摘があり、また検察官との関係でも、裁判所が必要に応じて意見聴取をすれば足りるところ、再審請求書に添えられた証拠書類又は証拠物が明らかに再審請求理由とは関係しない場合も含めて、一律に意見聴取を義務付けることは必要でもなく相当でもないという指摘がそれぞれなされておりまして、それらの指摘に対する十分な反論はされていないと思われます。したがって、仮に調査手続を設けるとしても、そのような意見聴取を義務付ける旨の規律は必要性、相当性が認められないと考えております。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○川出委員 私は修正案の「第3」の「3」「(3)」に記載されている事実の取調べへの立会いに関する規律について意見を申し上げたいと思います。   この点につきましては、これまでも、様々な態様のものがある事実の取調べの中には、再審請求者等の立会いが想定し難いものもある上に、一律に立会権を認めることとすると、例えば刑事施設に収容されている有罪の言渡しを受けた者を立ち会わせる場合などに、日程調整に時間を要することで円滑な事実の取調べの実施が困難となるといった弊害が生じるとか、十分な手続保障を経て確定した有罪判決を是正する非常救済手続である再審請求審における手続保障としては過剰なものであるという指摘や、検察官又は有罪の言渡しを受けた者の法定代理人及び保佐人が再審請求をしているような場合における有罪の言渡しを受けた者は、自ら再審の請求をしておらず、手続に関与すべき必要性が必ずしも高いとはいえないといった指摘がなされており、それに対する説得的な反論はなされていないと思われます。再審請求者等を事実の取調べに立ち会わせるか否かについては、職権主義がとられている再審請求審において手続進行の主導権を持つ裁判所が、個別の事情に照らして適切に判断することによって解決されるべきものであると考えられますので、御提案のような法整備について必要性、相当性は認められないと思います。   それからもう1点、「(5)」の事実の取調べの通知規定ですけれども、これについても、事実の取調べについて請求権が認められることになれば、その請求に対する裁判所の決定は再審請求者等に告知されることになると考えられるので、事実の取調べをした場合における通知を一律に義務付けることには過剰な面があることが否めないという指摘ですとか、職権により事実の取調べをする場合については再審請求者に通知をする必要に乏しいものもあるといった指摘がなされております。それに対する説得的な反論はなされていないと思われますので、この点についても御提案のような法整備をすることについては必要性、相当性は認められないと考えます。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○村山委員 まず、事実の取調べの立会いとか結果の通知という観点なのですけれども、実際に審判開始決定があった事件については意見聴取をするという、その意見聴取をした段階で、最終的な意見をまとめようとした場合に、事実の取調べでどのようなことが行われているのかというのを知っていることがやはり前提になると思うのです。これは度々言及があるのですけれども、再審請求については弁護人が付いていないという事件も相当数ありまして、そういった場合にどういう形でその事実の取調べの結果をフィードバックするのかというのは非常に大きな問題だと思うのです。   そういう意味で、事実の取調べに対する立会いというのは一つの方法でありますし、また、結果を通知するというのは一つの方法だということで、今、必要的にやってしまうといろいろと問題が生じるのではないかという御意見があって、確かに収容されている方の問題も考えなければいけないわけですけれども、そこはオンラインでというようなことも考えなければいけないし、また、川出委員が言われるように、裁判所の職権でいろいろできるのではないかということは、確かにそれは私もそう思います。仮に義務的な規定がなかったとしても、実際に何かフィードバックするような、そういう手当てをどこかで講じる必要があるというのは間違いないと思いますので、そういう観点から、何か規定を設けるか、若しくは運用事項としてそういった問題についてきちんと、この部会で最終的な結論を取りまとめるときにそういうものを入れるかというのは、どうしても必要ではないかと思っています。   もう1点、期日の観点ですけれども、私は期日指定が非常に重要だということは度々この部会でも申し上げてきました。それは、やはり再審請求事件の円滑かつ迅速な進行に大きく寄与すると思っているからです。最高裁の司法研修所の方で再審についての研究会が昨年と今年行われまして、今年もつい最近行われて、マスコミ報道の限りでございますが、やはり現役の裁判官の中からも、再審請求事件については早く当事者と集まって、そして協議の場を設けるということが必要だというようなことが意見として出ていたという報道に接しました。これは間違いなく現役の裁判官の実感なのですよね。そういう意味で、期日の指定を設けるというのは、やはり現実的にもメリットが非常に大きくて、この指定を設けることによって何か弊害があるのでしょうか。期日指定権は裁判所の裁判長にあるのだということにすれば、やはり一定の合理的な期間の中で期日を設けるという規律にしても、現在の実務の運用を大きく変容させるものでもないし、また、ややもすれば少し迅速な審理という点では問題が残るような、そういう審理をこの規定によって相当少なくすることができると私は考えています。そういう意味で、期日の指定の重要性というのは再度御認識いただいて、何らかの形で規定を、裁判長は速やかに、という程度で結構だと思いますけれども、そういう規定を設ける必要が高いと思っています。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○鴨志田委員 修正案の「3」「(3)」以下なのですけれども、調査手続を言わばスクリーニングとして機能させて、審判開始決定が出た事件についてこれらの事実の取調べ等の規定が置かれるという状況を前提としてお話をしますけれども、このような調査手続を設けることで、真に審理が必要な事件に対して充実した手続保障、審理の機会を与えるということが調査手続の合理性というものの根拠に挙げられていたと思います。そうだとすると、審判開始決定を経た事件については再審請求人、弁護人に対する手続保障の観点というのは否定できないと思います。現に職権主義をとっている台湾でも、2019年の再審法改正で請求人の事実取調べ請求権を明文で認めています。だから、職権主義だから事実の取調べ請求権というようなものを認める必要がないという関係にはそもそもないのだと思います。   請求人側が事実の取調べを請求するということについて、それは裁判所の裁量によるべきだ、現状では職権主義の下、裁判所の裁量でいろいろやれているではないかと言っても、実際は条文がないからどうしていいか分からない、訴訟指揮もどうやっていいか分からないという裁判官が現場には多数いるわけです。ですから、仮に職権主義との整合性ということを言うのであれば、事実の取調べに対する立会いの申出があった場合には、裁判所は請求人を立ち会わせることができるというような規定を置くだけでも、そのような請求があったときに、裁判所が自らの判断で事実の取調べへの立会い、また尋問といったようなものを職権で認めたのだということになりますし、それは今までもやっているというかもしれませんが、実際は条文がないから格差が生じて、やらない裁判官もいたわけですから、主語を「裁判所は」という形にしてでも、「裁判所は事実の取調べや証人尋問等への立会いを認めることができる」というような形であっても、条文を作ることに意味があると思います。 ○田岡幹事 先ほど川出委員から、事実の取調べにも様々なものがあるから、一律に通知することを義務付ける必要はないという御指摘がありました。ただ、様々なものがあるのは分かるのですけれども、例えば家事事件手続法63条に、事実の調査をした場合において、その結果が当事者による家事審判の手続の遂行に重要な変更を生じ得ると認めるときは通知しなければならないという規定がありますよね。また、家事事件手続法70条に、別表第2事項において、事実の調査をしたときは、特に必要がないと認める場合を除き、その旨を通知しなければならないという規定がありますよね。当然、家事審判でも、申立人や相手方が受刑者の場合もあれば国外にいる場合もあるわけですが、家庭裁判所はそのような場合であっても、申立人や相手方の手続保障の観点から、事実の調査をすれば原則として通知すると規定しているわけです。再審請求審における手続保障が家事審判における手続保障よりも劣っていてもかまわないと考えておられる方がどのぐらいおられるか、私には分からないですけれども、一律に義務付けることが相当でないというのであれば、せめて家事審判と同じように、重要なものは通知を義務付けるべきではないかと思います。   また、同じように、家事事件手続法69条は、事実の調査をするときに他の当事者の立会権を保障しています。68条は、当事者の陳述は申出があるときは審問期日ですると定めています。これまた、家事審判の申立人や相手方が受刑者の場合もあれば国外にいる場合もあるわけですが、家庭裁判所は、そのような場合であっても、直接陳述を聴くことが重要であるという観点から、書面による意見照会ではなくて、口頭による意見陳述の機会を保障しており、また、陳述の聴取は審問期日においてしなければならないと規定しています。また、その場合には他の当事者の立会権を保障するということを規定しています。それにもかかわらず、再審請求手続は家事審判よりも手続保障が劣ってもかまわないとお考えになる方が多いことは非常に残念でございます。   実務の指針にするためにも、原則として、期日における意見陳述、事実の取調べの立会い及び通知は行うべきであるとした上で、例外的にそれが難しい場合には行わなくてもよいという趣旨の規律を設けた方がよろしいのではないかと思います。 ○大澤部会長 あと受継の問題もまだ残っていますけれども。 ○池田委員 修正案の「第7」の項目に関わるもので、「6」の次にあるので受継を挟んでしまうのですけれども、先ほど村山委員から期日指定についての御指摘がありましたので、その点に関連して意見を申し上げます。   ここでは、再審の請求がされたときは、裁判長は速やかに再審請求手続期日を定めなければならないという、期日指定を義務付ける旨の規定が提案されております。しかしながら、これまでも御議論があったとおり、このような規律を設けることについては直ちに審理の迅速化、充実化や手続保障につながるとは考え難いという指摘がなされておりますし、不適法な再審請求や理由がないことが明らかな再審請求を除いたとしても、再審請求の事案には様々なものがあり、期日において行うべき定型的な手続が想定されないことから、期日の指定を一律に義務付けることは手続の硬直化を招くおそれがあるといった弊害がある旨の御指摘などがあり、それらを乗り越えることは容易ではないように思われますので、御提案のような規律を設ける方向で意見を取りまとめることは困難であると考えております。 ○大澤部会長 受継も残っているのですけれどもいかがでしょうか。 ○成瀬幹事 「試案に対する修正案」の「第3」の「6」において、受継の申立期間を3か月とすべきという御提案がなされています。   しかしながら、私が受継の申立期間を1か月とすべきとの意見を述べた際に紹介した、刑事補償請求手続の受継の申立期間である2か月や他の受継の制度の申立期間より長期としていることの合理的な理由は、十分に示されていないように思われます。   再審請求手続では、再審請求者が死亡しても気付きにくい旨や、手続を受継してくれる再審請求権者を探し出すのに時間が掛かる旨の御主張については、第14回会議において池田委員が指摘しておられたように、例えば、定期的に再審請求者と連絡を取り合ったり、あらかじめ有罪の言渡しを受けた者の親族の連絡先を把握しておくなどといった実務的な対応が考えられます。   また、弁護士が受継する者の戸籍謄本を職務上請求の形をとって取り寄せるのに時間を要する旨の御主張についても、同様の事情は他の手続にも当てはまると思われるところ、例えば、家事事件手続法において、受継の申立期間は1か月とされており、それが不合理なものとは考えられていません。   したがって、御指摘のような事情は、いずれも、受継の申立期間を1か月より長期のものとする理由にはならないと考えます。 ○大澤部会長 受継の点はよろしいでしょうか。 ○田岡幹事 修正案5ページで、私は受継の期間を3か月とする提案をしております。成瀬幹事から、刑事補償法の受継の申立期間は2か月であるが、それより長期とする理由は示されていないという御発言がありました。そうであれば、1か月でなく2か月にすればよろしいのではないでしょうか。私は、1か月よりも2か月の方がよいと思いますので、3か月でなく2か月であれば合意できるというのであれば、検討したいと思います。   また、家事事件手続法45条の受継期間は確かに1か月なのですけれども、2項に、裁判所が他の申立権者に受継させることができるという規定があります。つまり、他の申立権者から受継期間内に申立てがなければ受継されないかというとそうではなくて、本人のために必要があれば裁判所から他の申立権者に受継させることができるという規定があるのですね。この規定があることによって、再審請求人及び他の再審請求権者の利益になるように裁判所が後見的な役割を果たすことが期待されているといえますので、単純に、家事事件手続法と同じ1か月あれば足りるということではないのだろうと思いました。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○成瀬幹事 以前申し上げたように、刑事補償請求権は、無罪の裁判が確定した日から3年が経過すると行使することができなくなるため、請求者である無罪の裁判を受けた者の相続人は、死亡した請求者が行っていた手続を受継しない限り、刑事補償の請求をすることができなくなる場合があります。これに対して、再審請求権者は、自ら再審の請求をすることができる期間に制限はなく、受継の申立期間が経過した後も、別途、自ら再審の請求をすることができます。このような差異を踏まえて、再審請求手続の受継の申立期間を1か月とする提案をさせていただきました。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。「第3」のところで、更に言い残しているというようなことがあれば承りたいと存じますが、よろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 ありがとうございます。それでは、次に配布資料21の「第4 刑の執行停止時期の明確化と死刑確定者の拘置の停止」から「第6 再審請求手続に関する費用補償」までについて、ここの部分はまとめて審議を行いたいと思います。まず、事務当局から配布資料21のうちこれらの論点に関する部分について説明をしてもらいます。 ○今井幹事 配布資料21の7ページ目及び8ページ目を御覧ください。「第4」及び「第5」につきましては、配布資料20からの変更点はございません。   次に、9ページ目を御覧ください。「第6」の枠内の「1」の「補償の要件等」には、これまでの御議論を踏まえ、再審開始の決定が確定した事件について無罪の判決が確定したときに、当該再審開始の決定に係る再審の請求をした者に対し、当該再審の請求の手続に要した費用の補償をするものとすることなどを記載しています。   「2」の「補償する費用の範囲」につきましては、これまでの御議論を踏まえ、現行の費用補償制度に倣って、「1」の再審の請求をした者又はその弁護人であった者が当該再審の請求に係る審判の手続に出頭するに要した旅費、日当及び宿泊料並びに弁護人であった者に対する報酬に係るものとすることなどを記載しています。 ○大澤部会長 それでは、これらの論点についてはまとめて審議を行いたいと思います。それでは、御意見、御質問等がある方は挙手の上、御発言をお願いいたします。 ○田岡幹事 おおむね第14回会議において申し上げたことに尽きているかと思いますので、簡潔に説明いたします。   まず、「第4」「1」の刑の執行停止時期の明確化及び「2」の死刑確定者の拘置の停止については、修正案5ページのとおり、賛成します。その上で、修正案「第4」「3」のとおり、裁判所の裁量による刑の執行停止の規定を設けるべきであるというのが提案の趣旨になります。なお、このような規定を設けない場合でも、「『第3 附帯事項』に記載すべきこと」の8ページのとおり、少なくとも、刑事訴訟法502条の刑の執行に対する異議の申立ての対象になり得るということを、確認していただきたいと思います。   次に、「第5」の即時抗告等の提起期間の延長については、私は、修正案の5ページ以下のとおり、一律に14日とすることを提案しております。私は、そもそも、調査手続の規定を設ける必要性がないと思っておりますが、仮に調査手続を設ける場合でも、一律14日がよいと思います。仮に異なる期間を定めるのであれば、第14回会議でも発言しましたが、刑事訴訟規則220条などを参考に、再審の請求を棄却する決定をするときは、不服申立期間及び不服申立書を差し出すべき裁判所を告知しなければならない旨の規定を設けるべきであると思います。「『第3 附帯事項』に記載すべきこと」の7ページのとおり、このようなことは刑訴規則に定めることが適切ではないかと考えております。   「第6」の費用補償については、もとより私達が求めていたことですので賛成しますが、1点質問をさせていただければと思っております。「第6」の「2」に費用補償の範囲として、「審判の手続に出頭するに要した旅費、日当及び宿泊料並びに弁護人であった者に対する報酬に限る」とされております。この「審判の手続に出頭するに要した」という文言は、旅費、日当宿泊料のみに係っていて、弁護人であった者の報酬については限定されないという理解でよいのかどうか、また、その趣旨が、調査手続では、そもそも期日に出頭するということがあり得ないので、旅費、日当宿泊料を対象外にしているという趣旨なのか、修正案6ページは「審判の手続」という文言は削除したらよろしいのではないかという提案になっていますが、この「審判の手続」という文言を入れた趣旨がよく分かりませんでしたので、教えていただければと思います。 ○今井幹事 ただいまの田岡幹事からの御質問に対してお答えいたします。「試案」におきましては御指摘のとおりの記載にしておりますけれども、今、田岡幹事がおっしゃったとおり、弁護人であった者に対する報酬につきましては審判手続に係るものに限定されるものではありません。 ○大澤部会長 それでは、他に御意見等はございますでしょうか。   「第4」、「第5」、「第6」まとめて今、御説明を田岡幹事の方からいただきましたけれども、それぞれ少し違いますので、やはり整理して議論した方がいいような気もします。「第4」につきまして御意見等があれば、まず承りたいと存じます。 ○池田委員 「第4」の「3」の御提案について意見を申し上げます。   これまでの議論からすると、このような御提案の背景には、行政事件訴訟法上、取消訴訟の提起があった場合に、裁判所が行政処分の執行停止をすることができるということを踏まえての御提案であると理解しております。しかしながら、現行の刑事訴訟法は、法務大臣、検察官が刑の執行について権限を有し、その責任を負うこととし、その一環である刑の執行停止についても、検察官等が判断することを原則としているものと考えられます。にもかかわらず、御提案のように、単に再審請求があっただけで裁判所が刑の執行停止をすることができることとすることは、刑の執行停止についてそのような権限や責任を有していない裁判所と検察官等を同列に位置付けるものであって、現行の刑事訴訟法の諸規定と整合性を欠くものと考えます。   また、行政事件訴訟法は行政処分の執行停止について、申立てによりと規定し、裁判所が職権ですることは認めていないほか、内閣総理大臣に行政処分の執行停止に関する絶対的介入権を認めて、裁判所による消極的な判断を示される前の段階で行政機関の判断を優先させているわけですけれども、御提案のような規定は、裁判所が職権で刑の執行停止をすることができることとしている点や、裁判所による再審の請求についての終局的な判断がなされる前の段階で、裁判所の見込みに基づく刑の執行停止の判断を行政機関の判断に優先させることとなる点において、御提案の根拠とされている行政事件訴訟法の諸規定とも整合性を欠くように思われます。したがいまして、御提案のような規定を設けることは相当ではないと考えております。 ○大澤部会長 更に「第4」について御発言はございますでしょうか。 ○川出委員 私も、修正案の「第4」の「3」の部分について意見を申し上げたいと思います。   再審請求があった場合に裁判所が刑の執行等を停止することができるという制度の提案につきましては、これまでの議論において、裁判所は再審開始決定をしたときは刑の執行等を停止することができるのであるから、こうした規定を設ける必要性について疑問があるという指摘ですとか、刑の執行やその停止について、行政権を担う法務大臣、検察官と、司法権を担う裁判所との間で役割を分担させている現行の刑事訴訟法の諸規定との整合性から問題があるという指摘、さらには、裁判所が再審の請求について決定をする前に刑の執行等を停止するかどうかを適切に判断することは困難であって、再審請求審の判断が複雑化するなどの指摘がなされております。これらの指摘に対して説得的な反論はなされていないと思われますので、御提案のような法整備を行う方向で意見を取りまとめることは困難であると考えます。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。   よろしいでしょうか。   それでは、次の「第5」の部分ですけれども、この点については一律に14日とするという修正案が出されておりますが、何か他に御発言はございますでしょうか。   それでは、「第6」、費用補償の点につきまして、何か御発言はございますでしょうか。 ○成瀬幹事 先ほど田岡幹事の方から、「審判の」という文言との関係で、再審請求者や弁護人が調査手続に出頭することがあり得るのかという御質問がありました。この点について、事務当局は見解を示されませんでしたが、私の理解を申し上げておきたいと思います。   この調査手続は、裁判所が、再審請求事由の有無についての審理をせずに終局決定すべき事案と、再審請求事由の有無についての審理をした上で終局決定をすべき事案を、早期に、かつ、的確に選別するために、必要な基礎的資料の収集や収集した資料の確認・検討を行うものであり、そのような調査手続の過程で、再審の請求をした者やその弁護人が手続に出頭してまで訴訟行為をすることは、基本的に考えにくいと思います。   よって、費用補償の規定において、「審判の」という文言を削除する必要はないと考えます。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。 ○田岡幹事 一点だけ修正案にないことを申し上げますけれども、「試案」では、そもそも期日の規定を設けないこととしているわけですが、仮に期日の規定を設けて、再審請求人ではない者、有罪判決の言渡しを受けた本人が期日に出頭した場合に、その費用は補償しなくてよいのでしょうか。つまり、「試案」は再審請求人と弁護人の費用を補償するという規定でございますので、例えば再審請求人が検察官である場合を考えますと、検察官が犯人でないことが判明したので再審請求しました、そのために有罪判決の言渡しを受けた本人が期日に出頭しなければいけませんという場合には、検察官の都合で再審請求がなされたのに、なぜ本人が出頭する費用は補償してもらえないのだろうという疑問が当然生じるように思われました。私は、そのような場合には、有罪判決の言渡しを受けた者にも旅費、日当及び宿泊料の補償をしてもよいのではないかと思いました。 ○玉本幹事 費用補償制度において、再審の請求をしていない有罪の言渡しを受けた者が手続に出頭するために要した旅費等も補償の対象とすべきでないかという御提案ですが、これまでの御議論ではそういった御意見がなかったということと、また、現行の費用補償制度においては、訴訟の当事者として手続に関与した被告人又はその弁護人の旅費等が補償の対象とされており、再審請求手続における費用補償制度を設ける場合にも、自ら再審の請求をした者又はその弁護人の旅費等を補償の対象とするのが整合的ではないかと考えられたことから、「試案」にはそのような記載をしているところです。 ○大澤部会長 更に御発言はございますでしょうか。   よろしいでしょうか。それでは、「試案」の「第6」まで御意見を承ったということで、本日の議事はここまでということにさせていただきたいと思います。   本日、「試案」について様々な御意見をいただきました。そこで、部会長である私の責任の下で、事務当局に本日の御議論を踏まえて「試案」を改訂してもらうこととしたいと思います。その上で、次回はその改訂された「試案」も用いて、本日積み残した事項も含め、更に詰めの議論を行いたいと思います。本日はこの後、「試案」に記載されていない論点について議論するという予定でございましたが、そこの部分が積み残しとなって次回に回り、それと「試案」の改訂のものも含めて、詰めの議論をさせていただきたいということでございます。次回につきまして、そのような方針で進めるということでよろしいでしょうか。 ○鴨志田委員 調査手続について、前に証拠開示のところでやったように、具体的な事例を基に、どのようなものが棄却をする決定の対象に当たるのかということについて検討をするというようなお話をしていたかと思うのですけれども、この点について、1月28日の次の部会で検討するという理解でよろしいのでしょうか。その点の確認をさせていただきたいと思います。 ○玉本幹事 はい、そのような方向で部会長と検討したいと思います。 ○大澤部会長 ほかに、よろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 それでは、進行につきましては御賛同いただけたと理解いたしました。そのような形で今後の審議の準備を進めさせていただきたいと存じます。   本日の会議における御発言の中で、特に公開に適さない内容にわたるものはなかったと理解しておりますが、具体的事件に関する御発言などもございましたので、非公開とすべき部分があるかどうかにつきましては精査した上で、そのような部分がある場合には、御発言なさった方の御意向なども確認した上、当該部分を非公開とする等、適宜の処理をさせていただきたいと思います。それらの具体的な範囲や議事録上の記載方法等につきましては、いつものことでございますが、部会長である私に御一任をいただきたいと思います。他方で、本日の配布資料につきましては特に公開に適さない内容にわたるものはなかったと思われますので、公開することとしたいと思います。以上のような取扱いとさせていただくということでよいでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 ありがとうございます。   それでは、次回の日程につきまして事務当局から説明をお願いいたします。 ○今井幹事 次回の第17回会議につきましては、令和8年1月28日水曜日、午前9時30分からを予定しております。詳細につきましては別途御案内申し上げます。 ○大澤部会長 司会の不手際もございまして、大変長時間にわたってしまいました。本日はこれにて閉会といたします。どうもありがとうございました。 -了-