これからの刑事手続に関する研究会 (第1回) 第1 日 時  令和7年12月19日(金)    自 午前10時00分                          至 午前10時55分 第2 場 所  中央合同庁舎第6号館A棟5階会議室 第3 議 題  1 座長及び委員の自己紹介         2 議事の公開等について         3 研究の進め方について         4 その他 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○小倉参事官 ただいまから、これからの刑事手続に関する研究会の第1回会議を開催いたします。 ○川出座長 本日は皆様、御多用中のところ御出席くださり、誠にありがとうございます。   本研究会の座長を務めさせていただく川出でございます。どうぞよろしくお願いいたします。   本日、笹倉委員は欠席されております。   まず、本研究会の開催に当たりまして、法務省佐藤刑事局長から御挨拶を頂きます。 ○佐藤刑事局長 法務省刑事局長の佐藤と申します。   これからの刑事手続に関する研究会の開催に当たり、一言御挨拶申し上げます。   委員の皆様におかれましては、御多用中のところ、本研究会に御参加いただき、誠にありがとうございます。   本研究会は、令和7年7月に公表された「改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会」の取りまとめ結果を踏まえ、法務省における今後の各種制度の検討の参考とするため、刑事手続の在り方について、基礎的知見を幅広く収集するとともに、意見交換を行っていただくために開催することとしたものであります。   刑事手続については、近年、平成28年の刑事訴訟法等の一部改正により、取調べの録音・録画制度や合意制度等が導入されるなどし、その後も累次にわたり改正が行われ、運用におきましても様々な取組が行われてきたところですが、引き続き刑事司法がその役割を十分に果たせるよう、本研究会において、多様な知見を幅広く収集するとともに、委員の皆様方に専門的見地から様々な御意見を交わしていただくことは、大きな意義を有するものと考えております。   法務省としては、本研究会が充実したものとなるよう努めてまいりますので、委員の皆様方には、自由闊達な御議論をしていただきたいと考えております。  どうぞよろしくお願いいたします。 ○川出座長 佐藤刑事局長は公務のため、ここで退席されます。              (佐藤刑事局長退席)   本日は、研究会の第1回目ですので、皆様方に簡単に自己紹介をしていただきたいと思います。   最初に、私から一言御挨拶と自己紹介をさせていただきます。   座長を仰せつかりました東京大学の川出でございます。大学では刑事訴訟法と刑事政策を教えております。本研究会においては、非常に大きなテーマを扱うことになります。皆様の御協力を得て、何とか良い成果を出していきたいと思いますので、御協力をよろしくお願いいたします。   では、委員の皆様から自己紹介を頂きたいと思います。お名前と御所属、御専門等の自己紹介を簡潔にお願いいたします。   では、小川委員から、着席順にお願いいたします。 ○小川委員 早稲田大学の小川と申します。大学では刑事訴訟法を担当しております。よろしくお願いいたします。 ○河津委員 弁護士の河津博史と申します。日本弁護士連合会の刑事調査室の室長を務めております。よろしくお願いいたします。 ○中山委員 警察庁刑事局刑事企画課長の中山と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○平出委員 裁判官をしております平出喜一と申します。東京地裁の刑事部の所長代行をしております。よろしくお願いいたします。 ○吉田委員 法務省大臣官房審議官の吉田でございます。よろしくお願いいたします。 ○宮木委員 名古屋大学の宮木でございます。大学では刑事訴訟法を担当しております。よろしくお願いいたします。 ○西廣委員 弁護士の西廣陽子と申します。犯罪被害者の支援に携わってまいりました。よろしくお願いいたします。 ○鈴木委員 東京高等検察庁公安部検事の鈴木と申します。よろしくお願いいたします。 ○川瀬委員 最高裁刑事局第一課長をしております川瀬と申します。在り方協議会に引き続いての参加となります。どうぞよろしくお願いいたします。 ○川出座長 ありがとうございました。   続きまして、事務当局の出席者にも自己紹介をお願いします。 ○玉本刑事法制管理官 法務省刑事局で刑事法制管理官を務めております玉本と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○小倉参事官 法務省刑事局で参事官を務めております小倉と申します。よろしくお願いいたします。 ○川出座長 続きまして、本研究会の趣旨について、事務当局から説明をお願いいたします。 ○小倉参事官 本研究会の趣旨について御説明いたします。   本研究会は、先ほど刑事局長も申し上げたように、「改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会」の取りまとめ結果を踏まえて開催することとしたものです。   すなわち、この取りまとめにおいては、平成28年改正法により導入又は改正された規定については、一部に事実認識や評価が分かれるところもあるものの、全体としては、運用それ自体には、おおむね問題はないと評価することができるとされた一方で、同改正法の趣旨である「証拠の収集方法の適正化・多様化」は、十分に達成されている状況にあるとは言えず、「公判審理の充実化」についても、なお懸念すべき点が残る状況にある、引き続き、刑事司法がその機能を適切に発揮できるよう、犯罪情勢等も踏まえつつ、制度・運用の両面について不断の検討を行い、必要な措置を講じることが求められるとされたところです。   そこで、今般、法務省において、今後の各種制度の検討に当たっての参考とさせていただくため、「取調べの録音・録画の対象範囲の拡大を含む制度改正や運用の見直し、その他刑事手続における新たな制度の導入」に関する「新たな検討の場」として、本研究会を開催することとなりました。   法務省としては、本研究会における幅広い知見の収集や充実した御議論のために尽力してまいりますので、委員の皆様におかれましては、このような本研究会の趣旨を踏まえ、幅広い観点から、忌憚のない御意見を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。 ○川出座長 続きまして、配布資料について、事務当局から説明をお願いいたします。 ○小倉参事官 配布資料について、御説明いたします。   本日は、配布資料1をお配りしております。   配布資料1は、令和7年7月に公表された「改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会」の「取りまとめ報告書」であり、取調べの録音・録画制度の導入をはじめとする同協議会における検討事項についての議論の結果が記載されております。   配布資料1の32ページから33ページに、先ほどの本研究会の趣旨の御説明の中で引用した内容が記載されております。   配布資料についての御説明は、以上です。 ○川出座長 ただいま、本研究会の趣旨や配布資料について説明がありましたが、これらの点について御質問はございますでしょうか。   特にご質問はないようですので、次に、議事録の取扱いを含め、議事の公開の方針についてお諮りいたします。   本研究会については、忌憚のない意見交換を行っていただくため会議自体は公開しませんが、発言者を明らかにした逐語の議事録を作成し、その議事録を法務省のホームページにおいて公表するとともに、本会議で用いた資料も法務省のホームページにおいて公表することを原則としたいと思います。   その上で、プライバシーに関わる内容のものなど、公表することが適切でない議事内容や資料がございましたら、その都度、皆様にお諮りさせていただいた上で、例外的に非公表の扱いとしたいと思います。   このような方針でよろしいでしょうか。 ○河津委員 本研究会は「改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会」の取りまとめを受けた制度改正等の具体的な検討を行う場であり、専門的な見地からの議論が想定されることや、自由で率直な意見交換を確保する必要性があることは理解しております。他方で、申し上げるまでもないことですが、刑事手続の在り方は国民の権利自由の保障と深く関わるものであり、議論の透明性を確保する必要性も大きいと考えます。  平成28年改正法の内容を審議した「法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会」や、改正法の施行状況を共有し検討課題を整理した「改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会」には、一般有識者の委員、構成員が参加し、法律家とは異なる視点を提供するなどして重要な役割を果たされました。議事の公開とは別の問題となりますが、私はこの研究会にも、例えばある程度予備知識を有する報道機関の関係者など、一般有識者の参加を求めるべきであると考えます。昨日、事務当局より、「法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会」の一般有識者委員であった5名の方が法務大臣及び当研究会委員各位に宛てた要請文書を共有いただきました。その中でも、この研究会に非専門家が参加していないことについて失望が表明されるとともに、検討状況等が遅滞なく国民に公開し、国民の意見を広く聴き、検討に反映することが求められています。   いずれにしても、一般有識者委員の参加がないまま研究会をスタートする以上、国民に対する議論の透明性を確保する必要性は一段と大きいと思われます。このことから、報道機関から要請があったときには、報道機関に公開された場で議論をすることも積極的に検討すべきであると考えます。   議事録については公開に賛成しますが、「改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会」においては、議事録の公開までに時間がかかり、国民に対して議論の経過が適時に開示されているとはいえない状況もありました。当研究会においては、速やかに議事録が公表されるようお取り計らいいただきたいと存じます。 ○川出座長 議事録につきましては、御要望に沿うように、可能な限り迅速に公表することとしたいと思います。   それから、報道機関から要請があった場合には、本研究会の会議をその都度公開すべきであるという御意見がございましたが、この点につきまして御意見のある方はいらっしゃいますでしょうか。 ○鈴木委員 今後の各種制度の検討の参考とするため、刑事手続の在り方について基礎的な知見を幅広く収集するとともに意見交換を行うのが本研究会の趣旨と存じます。そうした本研究会の趣旨からしますと、忌憚のない意見交換が行われることが大変重要かと思います。   その上で、この会議場にいる方々だけでなく、報道機関がその議論の内容をリアルタイムで全て把握し得る状況になるということですと、例えば、捜査上の秘密にわたる事項、あるいは関係者のプライバシーにわたる事項など、外部への公表の可否を慎重に検討する必要がある事項に言及することを避けざるを得ないこととなり、率直な意見交換を行うことが難しくなるのではないかという点を強く懸念しています。  そのため、報道機関に対して会議そのものを公開することについては、慎重であるべきではないかと考えております。 ○川出座長 ほかに御意見のある方はいらっしゃいますでしょうか。 ○吉田委員 仮に、メディアから要請があった場合には会議を公開するということになりますと、要請があれば毎回公開ということになり得るわけですが、その場合に懸念される点は、今、鈴木委員から発言があったとおりではないかと思います。専門家としての議論を行う場合には、事件の中身だったり、具体的に捜査上どのような支障が生じているかということをある程度つまびらかにして議論しないと意味がない場面が今後出てくるだろうと思いますが、それらをメディアが全て聞いているとなりますと、発言をちゅうちょせざるを得ない場面が出てくると思います。   議事録を速やかに公表して国民の皆様に供すべきというのはおっしゃるとおりだと思いますが、会議の公開についてはやはり慎重に考えるべきではないかと考えております。 ○川出座長 報道機関に対する会議の公開は慎重であるべきだという御意見がありました。会議を公開すると、関係者のプライバシーに関わる事項などが報道機関に対して明らかになってしまい、それを避けようとすると発言を控えることにならざるを得ないというのは、そのとおりだと思います。本研究会において自由濶達な意見交換を行うためには、各委員が忌憚なく発言できることが重要だと思いますので、会議の公開については、先ほど私から御提案したとおりにさせていただきたいと思うのですが、それでよろしいでしょうか。 ○河津委員 御懸念のあることは理解しましたが、今後の研究会の進め方によっては公開に支障がない場面もあるかと思いますので、先ほど申し上げたとおり、報道機関から要請があったときは、その都度、御検討、お諮りいただければと思います。 ○川出座長 公開したとしても支障がないような議事内容であることが明らかな場合はということですね。そのような場合には別途検討するということで、基本的には会議の公開はしないという方針にさせていただきたいと思います。 ○玉本刑事法制管理官 議事録の公表について御要望がありました。もとより事務当局としても、できる限り速やかな公表ができるように努めていきたいと思いますが、議事録の作成プロセスにおいては、皆様に確認していただくという手続もございますので、御協力をよろしくお願いいたします。 ○川出座長 それでは、議論に進みたいと思います。まず、本研究会で取り上げるべき事項及び会議の進め方について、事務当局で何かお考えがあれば、お伺いしたいと思います。 ○小倉参事官 本研究会で取り上げるべき事項や会議の進め方につきましては、もとより本研究会においてお決めいただくべき事柄ですが、座長からお尋ねいただきましたので、事務当局の立場から申し上げたいと存じます。   まず、本研究会で取り上げるべき事項に関しましては、先ほど申し上げました在り方協議会の取りまとめ結果において、取調べの録音・録画について、対象範囲の拡大を含む制度改正や運用の見直しに特に言及がなされていることから、これを取り上げることが考えられるところです。   そして、取調べの録音・録画を検討事項として取り上げる場合は、同取りまとめ結果において、取調べの録音・録画の運用状況等を注視することが重要であるとされていることから、これに関するデータを踏まえて、意見交換を行っていただくことが考えられると思います。   また、在り方協議会においては、被疑者・被告人が否認・黙秘する事案の増加及びこれに伴う諸問題に対処するための方策の一つとして、いわゆる自己負罪型合意制度や有罪答弁制度を検討すること自体に大きな異論は見られなかったことから、本研究会において、これらを取り上げることも考えられるところです。   そのほか、在り方協議会においては、外部の方々のヒアリングは実施されていないことから、今後の刑事手続の在り方について幅広く知見を収集するという観点からは、様々な立場の方々からヒアリングを行い、幅広く意見を聴取することも考えられるところです。 ○川出座長 ただいまの事務当局からの発言も踏まえ、皆様から、本研究会で取り上げるべき事項やヒアリングの実施を含む今後の議論の進め方について、御意見を頂ければと思います。   まず、本日欠席されている笹倉委員から、今申し上げた点につきまして御意見が記載されたメモを頂いておりますので、事務当局から笹倉委員の御意見を読み上げていただきたいと思います。 ○小倉参事官 代読いたします。   「1 量的把握、システム思考」。刑事手続に関するこれまでの議論は、ややもすると、個別特定の事案、あるいは、それぞれの論者が想定する一定の態様・類型の事案群に着目した質的把握に偏る傾向がありました。無論そのようなミクロの視点から考察することも大事です。しかし、これからの刑事手続の制度設計をしようとする以上、マクロの視点を獲得するための量的把握も必要です。この点において、松尾浩也教授がかつて指摘したシステム思考の必要性や意義が、この際、改めて認識されるべきです。   手続の実態に関する共通認識の形成が依然として困難であることは否めません。そもそも刑事手続は訴追者と非訴追者の対立構造を前提としていますから、一般論として言えば、立場によって見方が分かれることそれ自体は、むしろ自然なことです。しかし、前提が共有されないままそれぞれの立場からの主張が言いっ放しになってしまうと、生産的な議論にはなりません。本研究会では、手続の実態に関する共通認識の形成のための努力をすべきであろうと思います。   「2 取調べの実情把握」。これまでの刑事手続の基本的な有り様が、取調べ中心主義に依拠する精密司法であったことに大方の異論はないであろうと思います。そうである以上、これからの刑事手続を論ずる本研究会においては、取調べの在り方を主要な研究対象とすべきであると考えます。取調べにおいて黙秘する被疑者が顕著に増加していると聞きます。もしそうであるならば、取調べと供述調書への依存によって成り立ってきた日本の刑事手続は、今度こそ立ち行かなくなるおそれがあります。そのような事態に対処するための処方箋を書く、あるいは、処方箋を書く前提となる知見を収集することに、私たちはまずもって取り組むべきでしょう。そこで、その前提として、我が国の供述証拠の収集をめぐる現在の状況を的確に把握するための調査を行うことを提案いたします。   「3 システムの質的把握」。量的把握の努力が必要だからといって、質的把握が不要になるわけではありません。立場の相違を越えて「質」についても前提をある程度共有すべく、本研究会の構成員全員で取調べそのものを観察し、「質」に関する共通の前提を形成する機会を設けていただきたい。それによって、まずは、量的に多数を占める態様の取調べ、あるいは典型的な取調べの「質」を把握し、それを想定しつつ制度設計をし、その上で、少数ながらも実際に生起する病理現象・異常事態に対処し得る方策を検討するという仕分けをすることが可能になるものと期待されます。   また、これからの刑事手続の有り様を論ずるために、諸外国との比較を行うとすれば、捜査・公判における事実解明の在り方について「量」だけではなく、「質」の把握が必要とされると思います。  例えば、刑事裁判における犯罪事実の認定について合理的な疑いを挟む余地のない証明、確信を要することは諸外国と共通であると説かれるものの、その内実が内外で一致しているのかは実は定かではありません。   そこで、事実関係や争点がほぼ共通する事案について、それぞれの国でどのような捜査が行われ、どのような証拠が集められ、どのような公判立証がされているのかについての質的把握を行うことを提案します。   「4 ヒアリングの実施」。自己負罪型合意制度、有罪答弁制度、被告人の証人適格、さらには起訴水準の見直しも、これからの刑事手続を考える際には、議論の対象の候補であろうと思います。また、事実審理と量刑審理のいわゆる手続二分論は、かつて盛んに論じられ、裁判員制度導入の際にそれが再び脚光を浴びたものの、結局、現在も両者を分離しない手続が維持されています。そのことの当否や将来に向けた変更の可能性を検討することも考えられます。もっとも、このような制度の導入ないし運用の変更は、これまでの刑事司法制度の在り方を大きく変更するものとなり得るところ、司法がその機能を十全に果たすためには、国民からの幅広い支持と理解を得て、その国民的基盤が確立され、維持されることが不可欠です。そこで、これからの刑事手続の在り方を論ずるに当たっては、刑事司法という国家的な制度を設営し、その費用を負担し、その便益を享受する最大のステークホルダーである国民一般の意見を把握することが必要です。そのような見地から、広くヒアリングを行うことも一考に値すると思います。 ○川出座長 今の笹倉委員の御意見も踏まえまして、御意見のある方は挙手の上、御発言をお願いいたします。 ○河津委員 まず、取り上げるべき事項について意見を申し上げます。平成28年改正刑訴法は、国会の附帯決議でも確認されているように、度重なるえん罪事件への反省を踏まえて重ねられた議論に基づくものでした。このことは本研究会における議論においても常に念頭に置かれる必要があると考えます。   「法制審議会新時代の刑事司法特別部会」の取りまとめは、対象事件を限定して取調べの録音・録画制度の創設を提言したものでしたが、一般有識者委員5名がこれに賛成したのは、一定期間経過後に見直しを行い、あるべき姿を目指すことを条件としたものでした。そして、改正法の施行後に設置された「改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会」の取りまとめでは、近時においても違法、不当な取調べが行われていることが共通認識とされ、平成28年改正法の趣旨は十分に達成されている状況にあるとはいえないことを確認した上で、取調べの録音・録画の対象範囲の拡大を含む制度改正や運用の見直し、その他刑事手続における新たな制度の導入について具体的な検討を行うことが求められています。こうした経緯を踏まえますと、まず、取調べの録音・録画の対象範囲の拡大の制度改正について速やかに検討し、結論を得ることが必要と考えます。先ほど言及しました5名の一般有識者委員の要請文書の中でも、取調べ録音・録画義務の対象を全ての事件の全ての取調べに拡大する制度改正が求められています。   次に、自己負罪型の合意制度及び有罪答弁制度については、これからの刑事手続の在り方として検討することが必要であると私も考えます。ただ、ここでも度重なるえん罪事件への反省が出発点であることは確認されるべきです。「改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会」の取りまとめでも、これらの制度は平成28年改正の趣旨を一層推し進めるとともに、身柄拘束の在り方や取調べにおける黙秘権保障の在り方、取調べへの弁護人の立会い、証拠開示の在り方などについて指摘される課題への対処という観点からアプローチできる可能性があるものとして位置付けられています。   また、5名の一般有識者委員の要請文書の中でも、被疑者取調べの制度改革、保釈及び証拠開示について検討することが強く要望されています。御承知のとおり近年、身体拘束が深刻な人権侵害を招いた事例が明らかになっており、保釈の運用に対する社会的批判が高まっています。証拠開示についても、著しい手続の遅延を招いているなど、現行手続の課題が明らかになっています。現在、再審請求審における証拠開示制度の議論が進められていますが、えん罪を事前に防止するために必要である通常審の証拠開示制度の議論が取り残されるべきではないと思われます。度重なるえん罪事件への反省が改正法の出発点である以上、これらの制度、すなわち取調べ、身体拘束及び証拠開示については、正面から取り上げるべき課題として位置付ける必要があると考えます。 ○川出座長 ほかの方、いかがでしょうか。 ○鈴木委員 検察における取調べについての実感を申し上げますと、近時、黙秘する被疑者がますます増加している状況です。また、取調べを受けること自体を拒否する被疑者も増えています。取調べによって被疑者から供述を得ることがますます困難になっているのが実情です。検察官は、事案の真相を明らかにするため、犯罪行為の客観面だけではなく、故意や動機などの主観面についても証拠を収集し、立証することが求められています。しかし、これらを供述以外の証拠を用いて間接事実の積み重ねによって立証するにも限度があります。   また、捜査の実情としては、被疑者などの供述がなくても合理的な疑いを超える程度の立証が可能であるといえるほど十分な客観証拠を収集できる事件は、実は必ずしも多くありません。特に、共犯者が多数存在するような組織犯罪においては、処罰の必要性が高い上位者の犯行への関与を立証するに当たっては、共犯者の供述が重要な意味を持つことも多くあります。   どこまで捜査の実情をお伝えしていいのか悩ましいなと思いながらお話しさせていただきますと、組織犯罪、特に最近問題になっていますいわゆる「トクリュウ」などに関しましては、もう当たり前のように秘匿アプリを使っています。しかも、そもそもスマホやパソコンを押収できても、パスワードが分からず開けることができないことも多くあります。そうすると、我々は僅かに見つけることができたそういった客観証拠を基に立証していくことになりますが、客観証拠の中に故意や動機に関するものがべたっと書かれていることは極めてまれです。そうすると、そのメッセージの中にある意味内容が何なのかを明らかにしていく際には、どうしても共犯者の供述が不可欠になっていくという例が少なくありません。現在、特殊詐欺などの事案でも、いわゆる受け子、出し子などの検挙は比較的進んでいるのですが、中位者あるいは上位者の検挙となると非常にうまくいかずに、被害が広がっていっている状況をじくじたる思いで見ております。そういったのが捜査をしていての実感です。   取調べをめぐる状況が非常に厳しくなっている中で、引き続き事案の真相を明らかにして、刑罰権の適正な行使を実現するためには、取調べによる供述の獲得が困難な現状に対応するための刑事手続の在り方を真剣に、本当に真剣に検討する必要があるのではないかと強く思っています。こうした実情を踏まえますと、私としては、在り方協議会の取りまとめの報告書においても触れられている自己負罪型合意制度であったり、あるいは有罪答弁制度などの新たな制度について、本研究会において、幅広く知見を収集し、意見交換を積極的に、闊達に行っていくことに大きな意義があると思っています。   また、会議の進め方につきましても、刑事手続の在り方について幅広く知見を収集するというこの研究会の趣旨や、在り方協議会においては外部の方々を対象としたヒアリングが実施されていないことからしますと、外部の方々のヒアリングを実施することによって、刑事手続の在り方について、様々な立場からの意見を聴くことは大変有意義であると私も考えております。本研究会において幅広いヒアリングが実施されることには私も賛成です。 ○川出座長 ほかには、いかがでしょうか。 ○宮木委員 事前に配布していただきました「発足するこれからの刑事手続に関する研究会についての要請」を拝見しまして、現状で考えているところをコメントさせていただきます。今までに出てきたところとは極力重ならないようにいたします。   まず、運用状況の評価ないし検証についてです。この点は、現状や実態を把握する上で不可欠となるわけですが、その分析が常に一定の方向性ないし帰結を導くわけではない事項もございます。他方で、例えば、協議合意制度は運用状況の評価自体が実施件数から直ちにできるものではない典型例だと思われますし、そもそも目指すべき制度の在り方や、かじ取りの方向性から改めて検討することも必要であると考えています。   2点目の「国民への情報開示と国民の声の反映」につきましては、他の委員の方々からもお話がありましたように、ゲストスピーカーをお招きして、議論の視点や素材を得ていくことは真のニーズや課題を発見する上で非常に意義のあることだと考えております。   3点目の「改正の方向性」につきましては、まず、平成28年改正法附則第9条第1項に関係する取調べの録音・録画制度の改革について述べさせていただきます。この点に関しましては、録音・録画義務の対象の拡大の要否、当否に加えて、その帰結を前提にしても残される課題を抽出した上で、比較法的知見を参照しながら、取調べ自体のパラダイム転換の要否、当否も含めて課題への対応策を議論し、日本に適合する制度設計を構築していくことが必要になると考えております。この点は、同附則第9条第2項の弁護人による援助の充実化とも関係する事項です。   続けて、保釈に関してです。同附則第9条第2項関係になりますが、特に、黙秘ないし否認事件との関係で指摘されている判断基準や考慮事情の明確化のほか、起訴前保釈あるいは身体拘束と保釈との中間的処分の要否、当否を検討していくべきではないかと考えております。   そして、同じく同附則第9条第2項関係になりますが、証拠開示の拡充につきましては、先ほど他の委員の方からも御指摘がありましたように、通常審における証拠開示の在り方について、公判前整理手続との関係を含めて見直しの必要性が指摘されておりますし、私も同様に考えているところがあります。この点は、再審に関する法制審議会の証拠開示をめぐる議論の反射効として、より一層浮かび上がった視点、すなわち、通常審段階での証拠開示の在り方、ひいては通常審の在り方そのものに関して精緻な検討を行い、現行の仕組みを精査すべきとの示唆と受け止めております。   次に、それ以外の事項につきまして、「改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会」による「取りまとめ報告書」との関係でコメントさせていただきます。まず、取引的手法についてです。これは同附則第9条第2項関係になりますが、適正手続の保障やえん罪の防止の重要性は強調しても強調しすぎることはないところですが、加えて3点の検討の方向性が必要ではないかと現状では考えております。   1点目は、法ないし手続の予測機能との関係です。これは関与者や関係者のニーズにも関わりますが、取引の結果としての法的帰結の予測可能性をどのように確保していくのかという点です。この視点は、制度が利用されていくか否かにおいて重要なポイントなのではないかと考えております。   2点目は、協力者の確保の関係です。より具体的には、協力者等の保護をどのように確保していくのかという点になります。これは同附則第9条第3項関係にある証人等の刑事手続外における保護に係る措置の話になるわけですが、証人保護プログラム(WPP)についても併せて検討が必要になると考えております。証人保護プログラムは、協議合意制度の立法過程においても指摘されておりますように、日本の戸籍制度を踏まえますと、必要となる議論は刑事法領域にとどまるものではありません。ただ、協力者の確保との関係で課題があることを前提にしますと、確かに個人の刑の減軽や事実上の免除がインセンティブになる場合もあるとは思いますが、一方で、対象となる犯罪類型にも関わりますが、組織からの離脱や家族とのリスタートこそが、強い、あるいは唯一のインセンティブになる場合もあると考えられるからです。   3点目は、日本型のアレイメント制度の要否、当否についてです。制度のもつ懸念事項や配慮すべき事項等は先ほどの取引的手法と同じですが、そのためにも現実問題として人的リソースの有効活用も視野に入れた刑事司法システムを構築していかないと、なかなかうまく機能していかないのではないかとも考えております。ですから、自己負罪型の協議合意制度の導入の要否、当否に加えて、有罪答弁制度の要否、当否の検討も積極的に行っていくことが必要ではないかと思います。   そして最後に、同附則第9条第2項、第3項関係になりますが、犯罪被害者等の保護の拡充も理論的整合性を図りながら実証的分析に基づく検討が必要となると考えています。長くなりましたが、以上です。 ○川出座長 ほかの方はいかがですか。 ○中山委員 「改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会」の「取りまとめ報告書」においては、取調べの録音・録画の対象範囲の拡大を含む制度改正や運用の見直しに係る検討について言及がなされていますが、取調べの録音・録画につきましては、任意性の立証等に資する反面、被疑者の供述が得られにくくなるといった弊害も認められるところです。そのため、法律上、取調べの録音・録画を義務付ける対象範囲を拡大することについては慎重な検討が必要であると考えています。   他方で、警察においては、録音・録画の制度対象事件の取調べのほか、精神に障害を有する被疑者に係る取調べについて録音・録画を行うよう努めているところですが、それら以外の取調べにつきましても、録音・録画の必要性がその弊害を上回ると判断される場合には、録音・録画を実施することができるものとしており、警察庁としても、都道府県警察に対し、これら制度対象事件等以外の録音・録画についても実施の必要性の判断が適切になされるよう、きめ細やかに指導を行っているところです。   ところで、捜査においては、客観的証拠の収集が重要であることは言うまでもありませんが、供述により初めて客観証拠の発見が可能となる事件や、そもそも客観証拠に乏しく、供述そのものが高い証拠価値を有する事件も存在するなど、取調べの真相解明機能はなお重要であると考えております。その上で、仮に、これからの刑事手続を検討する方向性として、取調べ及び供述調書への依存度が下がる方向で検討がなされていくこととなれば、取調べによる証拠収集が現在と比べて困難となることを前提に、取調べ以外の手法により事案の真相解明のための証拠が収集できるよう、新たな捜査手法を導入することが不可欠でございますし、そもそも客観的証拠が乏しい事件が少なからずあることを踏まえれば、例えば、「法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会」においては、黙秘による不利益な推認の制度化についての言及がありましたが、そういった犯罪の立証の在り方自体についても根本的に見直すことを検討することまで必要になるのではないかと考えています。   また、先ほど鈴木委員からも御発言がありましたが、近年、匿名・流動型犯罪グループによる犯罪が国民の生命、財産を直接に脅かす治安上の大きな脅威となっています。詐欺や強盗等を例にその犯行の構図を申し上げますと、指示役等の中核的人物がリクルーター等を介してSNS等により実行犯を募集し、匿名性の高い通信手段を利用して遠隔で実行犯に指示を与えながら詐欺や強盗等の犯罪を敢行する、これにより何の落ち度もない国民が詐欺等によって貴重な財産を奪われ、また、強盗によって重傷を負ったり、時に殺害されるなど、無差別的に国民が深刻な犯罪の被害に遭うという憂慮すべき状態にあります。   これらは匿名性の高い通信手段を使用するなどしているため、その中核的人物の特定は容易ではなく、さらに、同グループにおいては裏切り者に対する報復をほのめかすなど、検挙した実行犯から上位被疑者の情報を得ることは容易ではありません。また、たとえ強盗事件の実行犯を検挙しても、指示役等は別の実行犯を使って次の犯行計画を実行に移し、被害者を略取監禁して現金を奪おうとするなどしています。迅速に上位被疑者や他の実行犯を割り出すことによって、これらを阻止して被害の拡大を防ぐ必要がありますが、このような組織実態や犯行ツールが大きな障壁となっています。また、匿名・流動型犯罪グループは詐欺や強盗に限らず、風俗スカウトをはじめ様々な違法ビジネスを行っており、このような犯罪から国民を守るため、その対策は喫緊の課題です。   このような昨今の組織犯罪情勢や、今後、組織犯罪の犯行態様が更に巧妙化することも想定されることを踏まえれば、犯罪を立証して犯人に対する適切な科刑を実現するという観点はもとより、国民の生命、財産を守るため、迅速に首謀者等の中核的人物を特定して、連続する犯行を抑止するためにも、これまで、特に組織犯罪対策に係る手法として、いわゆる証人保護プログラムや会話傍受といった手法が検討の俎上に上っていたところでありますが、これら以外の捜査手法も含め、幅広く検討する必要があると考えています。   以上、これからの刑事手続における捜査手法等について申し上げましたが、警察においては、私どもの責務である国民の安全・安心な生活を確保するという観点からも、この研究会における議論に参画してまいりたいと考えています。 ○川出座長 ほかには、いかがですか。 ○河津委員 ヒアリングとデータについて意見を申し上げます。国民の意見を聴き、これを制度改正等の具体的な検討に反映させるために、ヒアリングを行うことについては私も賛成いたします。度重なるえん罪事件への反省が出発点である以上、「法制審議会新時代の刑事司法特別部会」の一般有識者委員や、平成28年改正後に発生したえん罪事件であるプレサンス事件や大川原化工機事件の当事者をヒアリングの対象とすべきであると考えます。   データにつきましては、これからの刑事手続の在り方を研究するに当たり、客観的なデータに基づいて現状を分析することは非常に重要であると私も考えます。「法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会」の取りまとめでも、取調べの録音・録画制度について、客観的なデータに基づき、幅広い観点からの分析評価を行うことが重要であると指摘されていました。ただ、「改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会」では、例えば、検察における在宅被疑者の取調べの録音・録画の実施状況の統計や、合意制度の利用状況に関する統計について、何度お願いしても御提供いただけないということがございました。   統計情報を御準備いただくことは事務当局に御負担をおかけするものであり、運用状況の統計を取得するためには関係機関の御協力も頂かなければいけないことは承知をしております。ただ、これからの刑事手続について前向きな研究を進めるために、その内容が各機関の御意見に沿うものであるかどうかにかかわらず、客観的なデータを御提供いただけるよう御協力をお願いしたいと存じます。 ○川出座長 ほかはいかがですか。 ○吉田委員 当研究会における検討に当たって留意すべきではないかと考えている視点と今後の検討の進め方について、意見を申し上げたいと思います。念のためですが、所属している組織の意見として申し上げるのではなく、一委員としての問題意識を申し上げたいと思います。   最近、被疑者の否認・黙秘、あるいは取調べ拒否等の増加によって供述獲得の困難化が進んでいることについては、先ほど鈴木委員から御指摘があったとおりだろうと思います。この傾向は、今後更に進んでいく可能性があると思います。その上で、例えば、取調べの録音・録画制度の対象を拡大するとしますと、そうした供述獲得の困難化の傾向に拍車がかかっていく可能性は高いだろうと思います。また、被疑者取調べへの弁護人の立会いを制度化することになりますと、間違いなく供述獲得は一層困難になるだろうと思います。   その一方で、これまた鈴木委員が御指摘になったように、供述がなければ解明できない事実関係が存在する事案は現にありますし、今後もなくならないだろうと思います。そうした状況を前提としたときに、取調べが持つ供述獲得の機能を低下させる一方で、それに代替する手段を考えないとすると、捜査が持つ事案解明機能が低下するだけになってしまって、刑事司法制度全体で見たときには、今までのような機能・役割を果たせないということになってしまうという危惧を持っております。   その意味で、今後を見据えた場合、まず、そうした代わりのものを考えていくことは不可欠なのではないかと思います。ただ、取調べに完全に代替する手段があるかというと、必ずしもそうではないのではないかとも思います。先ほど鈴木委員が指摘されたいわゆる「トクリュウ」のケースなどでは、供述以外にSNSなどでやり取りされている中身の意味を解明する手段はなかなか思いつかないところでもありまして、供述獲得が困難化すれば、多かれ少なかれ、捜査が持つ事案の解明機能は低下していくことにならざるを得ないのではないかとも思います。   その場合、例えば、身柄事件で20日間勾留したとして、その勾留満期を迎えたときに、それまでの捜査でどこまで事案が解明できているかという事案の解明度は、もしかすると今よりも低下するのではないかとも危惧しております。そして、その場合に、現在と同じ訴追基準というか、有罪の確信を持って起訴できる場合でないと起訴しないという運用を維持するとすると、もしかしたら不起訴が増えていくことになるかもしれませんが、それが本当に国民の望むことなのかと考えると、それは違うのではないかとも思います。   この訴追基準の在り方は、検察が運用上検討すべき事柄ですが、供述獲得手段を制約することに伴って、そうした影響が及んでいく可能性はあるだろうと思います。そうすると、結局、裁判所で決着をつけるということにせざるを得ない事案が一定数生じてくるのではないかと思います。そうして裁判所に係属する事件の数が増える、しかも、いろいろと争いのある事件が増えるということになりますと、そのための対応策が必要になると思います。   その一つとして、自己負罪型の合意制度、例えば、アメリカの答弁取引のような制度の導入について検討することはあってよいだろうと思います。私の乏しい知識を前提として恐縮ですが、アメリカの答弁取引も歴史的にはそうした事件処理の効率化、事件数が多いことを踏まえた上での効率化という観点から、徐々に行われるようになってきたと理解しておりまして、それと同じようなことが検討される必要が出てくるのではないかとも思います。もちろん、殺人事件をはじめ、被害者・遺族が存在する事件でそれを国民が受け入れるかという問題もまたあると思いますので、そうした観点からの検討も必要だろうと思います。   また、自己負罪型の合意制度を検討するに当たっては、前提として、いわゆる手続二分論、すなわち、事実認定のプロセスと量刑のプロセスを分けることについても検討が必要になるかもしれませんし、有罪答弁制度、すなわち、有罪答弁をしたらそれ以上立証を要しないというような制度についても検討が必要になるかもしれません。アメリカを見てみますと、答弁取引が多用されているわけですが、アメリカでは、陪審で有罪になった場合と答弁取引で有罪になった場合とで量刑に格段の差があるというのも事実として存在すると思います。それが取引を促進するインセンティブとして機能している面もあるのではないかと思います。そうしますと、自己負罪型の合意制度を導入する場合には、もしかしたらそれと同様の仕組みを考えないといけないかもしれませんが、それは刑法の量刑理論とも関わってきますし、また、裁判所における量刑の運用にも関わっていきますので、一筋縄では行かないとは思います。しかし、そうした問題を避けて通ることはできないのではないかと思います。   仮に、今申し上げたような方向に進んでいくとしますと、つまり、現在ほどの事案の解明ができないまま裁判所で決着をつける事件が増えていった場合ですが、今よりも無罪判決が増えていく可能性は否定できないような気もします。現在の運用について、有罪率が高過ぎると問題視する立場からすれば、これは歓迎すべきこととなるのかもしれませんが、その一方で、無罪判決が出ること自体を問題視する立場もありますので、そうした逆の立場から受け入れられるのかという観点からの検討も必要になるだろうと思います。   また、有罪答弁によって事件を処理する場合には、事件の背景や動機などが解明されないまま終わる可能性もそれなりにあるだろうと思います。今の日本では、否認のまま有罪になりますと、真相は闇の中というような報道がなされることがままありますが、それが国民の意識をどこまで正確に反映しているかは分かりませんけれども、真相解明への国民の期待があることは事実ではないかと思いますし、そうだとしますと、事件の背景などがこれまでよりも解明されなくなっていくことが国民に受け入れられるのかということもまた問題になるだろうと思います。   るる申し上げましたが、要するに何を言いたいかといいますと、供述獲得が難しくなる、あるいはできなくなるということは、単に証拠収集方法の問題であるにとどまらず、刑事手続の在り方そのものに影響を及ぼし得る問題だということです。今私が申し上げたのは、飽くまで例えばの話ですし、一つの試論にすぎませんが、ただ、手続全体に波及する可能性があるということを念頭に置いて、広い視野を持って議論していくべき事柄ではないかと思っております。   そして、そこでは国民が刑事司法に何を求めているのかという観点からの検討も不可欠だろうと思います。そのような観点から、今後ここで検討を進めていくに当たっては、国民が刑事司法に何を期待し求めているかを把握することが重要ではないかと思っております。刑事司法制度は国民のために存在すべきものですので、それによって利益を受ける国民の意見・考えを広く聴くべきではないかと思います。そのような観点から、広くヒアリングを行う必要があるのではないかと思っております。   また、検討に当たって外国法制を参考にすることもあってよいと思いますが、その場合、個々の制度を部分的に取り出して議論しても意味はないと思います。それぞれの制度は他の制度と関連しながら機能を果たしておりますし、刑事司法制度全体として見たときに、真相解明という観点からどのような機能が果たされているのか、どのような犯罪情勢の下に構築されているのか、その国の国民が刑事司法に一体何を期待し求めているのか、それにどのように応えられているのかといった視点を抜きに比較しても意味はないだろうと思います。そのような意味で、外国法制を参照する際は、制度全体を見て議論していくことが必要だと思います。もし、外国法制に関する知見をこの場で共有できるのであれば、是非そのような観点を踏まえた検討が必要だろうと思っております。 ○川出座長 皆様から、今後のこの会議において検討すべき事項、またその検討の視点、それからヒアリングの実施を含めた会の進め方について、幅広い意見を頂きました。   その上で、今後の会議の進め方や、第2回会議の議事につきましては、本日皆様から頂いた御意見を踏まえて、私の方で決定し、期日間に皆様にお知らせすることにしたいと思います。そういうことでよろしいでしょうか。 ○玉本刑事法制管理官 河津委員からヒアリングの具体的な対象者についての御意見がありました。  ヒアリングの対象者につきましては、本日の御意見も踏まえ、座長と相談させていただきたいと思いますが、期日間において追加の御意見等がございましたら、事務当局に適宜の方法でお伝えいただければと思います。 ○川出座長 それでは、方針としましては、先ほど申し上げたようなことにさせていただきたいと思います。   本日予定した議事につきましては、これで終了いたしました。   次回の日程については、調整の上、なるべく早く確定させて、事務当局を通じて皆様にお知らせしたいと思います。   本日の会議の議事につきましては、特に公表に適さない内容に当たるものはなかったと思われますので、発言者名を明らかにした議事録を公表することにさせていただきたいと思います。また、配布資料についても公開することにしたいと思いますが、そのような取扱いでよろしいでしょうか。              (一同異議なし)   それでは、そのようにさせていただきたいと思います。   本日はこれにて閉会といたします。どうもありがとうございました。 -了-