法制審議会 刑事法(再審関係)部会 第17回会議 議事録 第1 日 時  令和8年1月28日(水)   自 午前 9時32分                        至 午後 0時41分 第2 場 所  中央合同庁舎第6号館A棟7階会議室 第3 議 題  1 審議 ・「試案〔改訂版〕」 ・「その他(再審開始決定に対する不服申立て、再審開始事由 、弁護人による援助等)」         2 その他 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○今井幹事 ただいまから法制審議会刑事法(再審関係)部会の第17回会議を開催いたします。 ○大澤部会長 本日は御多忙のところ御出席くださり、誠にありがとうございます。   本日、後藤委員、酒巻委員、吉田誠幹事、井上関係官、寺田関係官は、オンライン形式により出席されています。なお、後藤委員は所用のため途中で一旦退席されます。また、重松委員は欠席されています。   それでは、早速本日の議事に入りたいと思います。   前回会議で皆様に御了承いただいたとおり、前回の議論を踏まえて、事務当局において配布資料21「試案」を改訂して、配布資料22「試案〔改訂版〕」を作成してもらいましたので、本日はこの資料に基づき、取りまとめに向けた議論を更に進めてまいりたいと存じます。   まず、事務当局から本日お配りした資料についての説明をお願いいたします。 ○今井幹事 本日は、配布資料22をお配りしています。配布資料22は、これまでの御議論等を踏まえ、部会長の御指示の下、事務当局において配布資料21「試案」を改訂したものです。   配布資料21からの変更点を御説明いたします。   配布資料22の1ページ目を御覧ください。「第3 附帯事項」においては、これまでの御議論や、鴨志田委員・村山委員・田岡幹事提出資料である「『第3 附帯事項』に記載すべきこと」の記載を踏まえ、「1」として、別添の「要綱(骨子)案」に記載している制度の運用に関するもの、「2」として、別添の「要綱(骨子)案」に記載していない事項のうち、引き続き、運用によって対応することが考えられるもの、「3」として、今後の検討に関するものに分けて、附帯事項に盛り込む方向で意見集約を図り得ると考えられるものを、一案として記載しております。   他方で、第16回会議における委員・幹事の御指摘等を踏まえ、当部会の審議の中で確認され、議事録に明確に記載されている事柄などを、念のため確認するにとどまるもの、当部会の審議の中で異なる意見があったにもかかわらず、一方の立場のみに依拠して運用の方向性を記載するもの、今後、まずは関係機関がそれぞれの責任において検討すべき運用の在り方について、現段階で、相当に具体的・詳細な記載をしようとするもの、実務上一般的に確立されているとは必ずしも言えない解釈や取扱いを前提とするもの、一定の事実関係・証拠関係等を前提とした裁判例における取扱い等をその個別具体的な事実関係・証拠関係等を捨象して一般化して記載するもの等につきましては、附帯事項に盛り込むことは相当でないと考えられたことから記載しておりませんが、引き続き、御議論いただければと存じます。   次に、3ページ目以降の別添「要綱(骨子)案」を御覧ください。「第1」、「第2」及び「第4」から「第6」までにつきましては、配布資料21からの変更点はございません。   一方、6ページ目の「第3」の枠内の「4(1)」につきましては、これまでの御議論や、鴨志田委員・村山委員・田岡幹事提出資料である「法務省事務当局試案に対する修正案」の記載を踏まえ、有罪の言渡しを受けた者の法定代理人又は保佐人が再審の請求をした場合にあっては、有罪の言渡しを受けた者の意見も聴かなければならない旨が明らかになるよう記載を変更しています。   また、形式的な点ではありますが、意見聴取の対象について、配布資料21では「再審の請求をした者及び弁護人並びに検察官」と記載していたところ、「4(3)」において、「再審の請求をした者、弁護人及び検察官」と記載しているのに合わせて、同様の記載に変更しております。   配布資料22の御説明は以上となります。   また、鴨志田委員・村山委員・田岡幹事提出資料として「法務省事務当局試案に対する修正案②(追加提案)」と題する資料及び「『第3 附帯事項』に記載すべきこと②(追加提案)」と題する資料のほか、村山委員提出資料として「要綱(骨子)案第3の2の調査手続に関する仮想事例」と題する資料をお配りしています。なお、村山委員提出資料につきましては、本日配布資料22の6ページ目の「第3」の「2 再審の請求についての調査手続」について御議論いただく際に御参照いただければと存じます。   本日お配りした資料の御説明は以上です。 ○大澤部会長 本日お配りした資料のうち、村山委員提出資料につきましては、ただいま事務当局から説明がありましたように、後ほど御議論いただく際に御意見・御質問等を頂ければと存じますが、配布資料22について、この段階で御質問・御意見等がございましたら、挙手の上御発言をお願いしたいと存じます。なお、個別の論点・項目に対する御質問等については、各論点・項目の議論の際に御発言いただくこととし、この場においては、資料全体に関わる総論的な事項がある場合に限って御発言いただければと存じます。それでは御発言ある方ございましたら、挙手をお願いいたします。よろしいでしょうか。             (一同異議なし) ○大澤部会長 それでは、諮問事項の審議に進みたいと思います。   本日はまず、前回会議の積み残しとして、改訂後の配布資料22に記載されていない、配布資料20の「第2 再審開始決定に対する不服申立て」などの論点について審議を行い、次に、配布資料22の別添「要綱(骨子)案」の「第3」の「2 再審の請求についての調査手続」について審議を行い、その後、配布資料22の「第3 附帯事項」について審議を行うこととしたいと思います。各論点・項目についての審議の際には、鴨志田委員、村山委員及び田岡幹事からの提出資料も適宜御参照いただきながら、御議論いただきたいと存じます。   なお、本日の審議においても、御発言の際にはなるべく従前の御発言との重複を避けていただくとともに、配布資料については既に目を通していただいていると存じますので、詳細な引用は避け、できる限り御発言をコンパクトにまとめていただくなどして、効率的な審議に御協力を頂きますよう併せてお願い申し上げます。そのような進め方とさせていただくということでよろしいでしょうか。             (一同異議なし) ○大澤部会長 ありがとうございます。それでは、配布資料22に記載されていない論点として、配布資料20の「第2 再審開始決定に対する不服申立て」について審議を行いたいと思います。その際、附帯事項として取りまとめに盛り込むべき事項についても、必要に応じて御議論いただければと存じます。   それでは、御意見、御質問等がある方は、挙手の上御発言をお願いいたします。 ○小島幹事 再審開始決定に対する検察官の不服申立てについて意見を申し上げます。   この点につきましては、再審公判のところも含めて考えますと、迅速化という点では決着がつきにくい部分があるということでございまして、もし廃止かそうでないかの形でなお議論するということであれば、最終的には第14回会議でもその方向で議論が出ておりましたように、理論的に不合理な制度であるから廃止すべきだということになるのか、あるいは、理論的に合理性のある制度であって存在意義があると考えるかというところに行き着くのだろうと思います。   その意味で、理論的に問題をはらむ仕組みであって、そもそも設けられるべきではなかった、あるいは、設けられた当時とは理論状況が変わっている部分があるため、現在では理論的に問題をはらむ仕組みになってしまっているということであれば、廃止すべきだということになるのだろうと思いますが、私自身はこれまでも申し上げてまいりましたように、この制度が理論的に不合理な制度だとは考えておりません。再審の仕組みを構想する際に想定されていたところと比較して、前提となる部分に変容しているところがあるということ自体は否めないように思いますけれども、それでも、再審の仕組みの中での再審開始決定の位置付けそのものが決定的に変わったとは思われないところでして、その決定自体が信頼できるものであるということをしっかりチェックした上で再審公判に進むという仕組み自体には、現在でもなお合理性があると考えます。   したがいまして、今回の「試案〔改訂版〕」に明記しないという形で示されている、この不服申立てを廃止しないという方向性については賛意を表したいと思います。   ただ1点、第14回会議でも若干触れましたように、不服申立ての段階においても、その手続が迅速に進められる必要性そのものが変わるわけではありませんので、この点、冒頭で附帯事項についての方針をお示しいただいておりますけれども、その方針からすると、もしかしたら難しいのかもしれませんが、もし可能であれば、附帯事項として、その不服申立て後の手続についても、法曹三者の御協力の下で迅速に進められるべきであるということを確認するような内容を盛り込んでいただけないだろうかと思っております。 ○大澤部会長 他に御発言ございますでしょうか。 ○成瀬幹事 これまでの会議において、「再審開始決定が確定すると、公判手続という正式な手続において審理を受ける利益があり、また、多くの場合、刑の執行が停止されるという利益がある」旨の御発言がありました。  しかしながら、現行刑事訴訟法上、無罪判決や保釈許可決定など、被告人の利益となる裁判についても、一般に検察官による不服申立ては認められていますので、再審開始決定が有罪判決を受けた者の利益となることが、なぜ同決定に対する検察官の不服申立てを禁止すべき理由となるのか、理解が困難です。   また、「再審公判という正式な手続において審理を受ける利益がある」との御発言が、仮に再審請求審と再審公判との手続保障の在り方の違いのことを指して述べておられるのだとすれば、既に池田委員からも御指摘があったように、通常審に引き続く形で行われる再審公判と、一旦、通常審の手続を経て有罪が確定した事件について、再度審理をやり直すのにふさわしいものを選別する再審請求審とで、手続保障の在り方が異なるのは当然であって、そのことを理由として、再審開始決定に対する不服申立てを禁止することはできないと考えます。   さらに、そもそも裁判所による刑の執行停止には、再審開始決定が確定することを要しないのであって、仮に再審開始決定が確定すると刑の執行が停止されやすくなるとしても、それは、事実上そうなることが多いというだけの話であり、法的な利益とは言えないでしょう。   それから、これまでの会議において、「再審公判が開始した段階では争点は明らかであり、再審請求審を担当した裁判官が再審開始決定をした場合に、そのまま再審公判に移行するのであるから、手続が非常にスムーズに進む」旨の御発言もありました。  しかし、第15回及び第16回会議において、私だけでなく複数の委員から御指摘があったように、再審開始決定に関与した裁判官については、裁判の公正らしさの確保という除斥の趣旨に照らし、再審公判から除斥されるべきであり、当該裁判官が再審公判を担当するという前提自体が相当でないと考えます。  また、再審開始決定に対して検察官が不服申立てをすることができれば、検察官が主張する再審開始決定の誤りの点も含めて上級審による審査が行われることとなり、最終的に再審開始決定が維持されるとしても、上級審によって真に理由があると認められた範囲で、そうした判断が示されることになると考えられます。   これに対して、仮に再審開始決定に対する不服申立てを禁止した場合には、上級審による審査のプロセスがなくなる結果、これまで再審請求審において尽くされていた審理が再審公判に持ち越されるだけということになりかねないことから、後者の方が手続がスムーズに進むとは限らないように思われます。 ○大澤部会長 更に御発言ございますでしょうか。 ○田岡幹事 私は、この点について修正案を提出しておりますので、御説明いたします。   第16回会議に提出しました「法務省事務当局試案に対する修正案」の6ページ、「第7」に記載したとおりですけれども、私は、第217回国会衆法第61号、つまり議員立法の第450条の2のとおり、検察官の不服申立ては禁止するべきである、あるいは認めるべきではないと考えております。   第14回会議でも申しましたけれども、法律の規定の在り方としては、日弁連改正案と議員立法は異なっております。規定の在り方としては、日弁連改正案のように、刑事訴訟法450条から「第四百四十八条第一項」を削除するという方法もあると思われます。しかし、有罪の言渡しを受けた者に不服申立権を認めるのでなければ、不服申立権者は検察官のみということになるでしょうから、結論的には同じであると理解しております。   第14回会議において、松尾浩也先生の昭和37年3月27日の衆議院法務委員会再審制度調査会小委員会における発言を引用しましたが、松尾先生は、「現行四百五十条の中から四百四十八条一項という規定を削除するということで足りる」と発言されておりました。また、松尾先生は、教科書に、再審開始決定に対する即時抗告が幾つもの著名な事件で、無罪判決を遅らせる結果になったこと、ドイツが1964年の改正で、再審開始決定に対する不服申立てを廃止したことなどから、わが国でも立法論として抗告権を否定すべきだという見解が有力に主張されているとした上で、請求審の審理が6号事由をめぐって全面的に展開されたような場合には即時抗告を控え、再審公判の場で真相解明に努めるのが、少なくても運用として適切だと思われると記載されております。現在のように、無制限に検察官の不服申立てを認めることには問題があるという認識を表明しておられます。   その上で、これまでの議論を振り返りますと、川出委員、宮崎委員など複数の委員から、違法、不当な再審開始決定を是正する必要があることなどから、不服申立てを「一律に」禁止するのは相当でないという御発言がございました。「一律に」ということは、少なくとも不服申立てを認めるべきではない、あるいは認めるべきではなかった事案があるという認識を前提にしていると思われますけれども、法務省事務当局の試案を見ますと、何らの規定を設けず、今後も検察官の裁量に任せて、無制限に不服申立てを認めるという案になっております。現在の運用をそのまま是認するだけであり、著名な再審請求事件において無罪判決を遅らせる結果になったことについて、何らの対策もなされないことになるのではないかと思われます。これでは、諮問の趣旨に沿った答申とは言えません。   先ほど来、不服申立てを禁止する、あるいは認めない理由について、審理の迅速化ということが言われておりますが、繰り返しになりますけれども、私は必ずしも審理の迅速化のためだけに不服申立てを認めるべきでないということを申し上げているわけではありません。確定審において開示されるべき証拠が開示されていなかった結果、判決確定後に証拠が発見された場合には、無罪を言い渡すべき明らかな証拠に当たるか否かの審理に時間をかけるのではなく、速やかに裁判をやり直すべきであると、つまり新たな証拠を加えた上で、有罪・無罪の判断をやり直すべきであるということを申し上げているわけです。   例えば、福井事件においては、第一次再審請求審において再審開始決定がなされたにもかかわらず、検察官が不服申立てをした結果、再審開始決定が一旦取り消されてしまいました。そして、第二次再審請求審において、287点の証拠が開示された結果、その中に無罪を示す証拠が含まれていたことから、再審開始決定が確定しました。このような無罪を示す証拠が確定審において開示されていれば、そもそも有罪判決が確定することはなかったでありましょうし、また、少なくとも第一次再審請求審において開示されていれば再審開始が確定し、再審公判において無罪判決が言い渡されたであろうと思われます。ところが、第一次再審請求審において、無罪を示す証拠が開示されなかった結果、不服申立てによって再審開始決定が取り消されたことが再審無罪判決を遅らせる結果になりました。   私は、このような審理の経過を見ますと、少なくとも第一次再審請求審における検察官の不服申立ては違法、不当なものであって、このような不服申立ては認めるべきではないと思います。確定審において開示されるべき証拠が開示されていなかったのであれば、それが無罪を言い渡すべき明らかな証拠に当たるのか否かの審理に時間をかけるのではなく、速やかに再審公判を開いて、その証拠を加えて、改めて有罪・無罪の判断をやり直すのが再審の本来的な在り方であると思います。有罪・無罪の判断は再審公判において行われるべきであるのに、非公開の再審請求審において、そのような証拠があったとしても、なお有罪なのだという不服申立てを認めて、予測的な判断を繰り返すことは、いたずらに再審公判の開始を遅らせる結果になるのではないかと思われます。   このことは、確定審が裁判員裁判の場合を考えますと、分かりやすいと思います。裁判員裁判において、本来開示されるべき証拠が開示されずに有罪判決が確定した場合に、再審請求審において、裁判官のみによる審査によって、このような証拠があれば無罪になるかもしれない、いや、このような証拠があったとしてもやはり有罪だろうなどという判断を繰り返すよりも、速やかに再審公判を開いて、裁判員が加わった裁判体によって、適正な手続保障の下で、確定審ではこの証拠が出ていなかったんだけれども、この証拠を加えた場合に、果たして皆さん、有罪でしょうか、無罪でしょうかという判断をやり直すのが再審の本来の在り方です。これまでは再審請求審において、事実上有罪・無罪の判断を先取りした判断がなされ、再審公判は、その結果を確認するだけの儀式的な場になってしまっていたように思われますが、確定審が裁判員裁判の場合を考えますと、再審請求審において有罪・無罪の判断に決着を付けようとすることは、刑事裁判に裁判員が関与する意義を失わせるものであり、また、確定審において証拠が開示されていなかったという不正義に目をつぶることになるのではないかと思われます。   第14回会議において宮崎委員から、再審は、通常審における三審制の下で慎重な審理が尽くされた結果である確定有罪判決に対する見直しなのだから、確定判決の法的安定性を著しく害することになるという御発言ありましたが、本来、確定審において開示されるべき証拠が開示されていれば、判決確定後に新証拠が発見されることはなく、再審開始決定がなされることにはなりません。なぜ、判決確定後に新証拠が見つかって再審請求がなされるのかという原因を改めて考えますと、通常審における証拠開示が不十分であったということに尽きるわけです。開示されていなかった証拠があり、新証拠を加えれば確定判決の有罪認定に疑いが生じる蓋然性があるというのであれば、再審請求手続において、検察官の不服申立てを認めて、予測的な判断を繰り返すよりも、速やかに、再審公判を開いて、有罪・無罪の判断をやり直すことが適切であると考えます。 ○大澤部会長 更に御発言ございますでしょうか。 ○宮崎委員 これまでも述べてきたことでありますので簡潔に申し上げますけれども、検察においては、再審開始決定に対して不服申立てをするかどうかについて、個別具体的な事情に応じ、十分かつ慎重な検討を行って対応しており、いたずらに救済を遅らせているものではないことを改めて申し上げておきたいと思います。   その上で、再審開始決定に対する不服申立てを禁止することについては、通常審において、三審制の下で確定した有罪判決について、下級裁判所の1人の裁判官が再審開始を決定すれば、その判断が仮に誤っていたとしても直ちに再審が開始されることとなり、確定判決による法的安定性が著しく害されることとなりかねないのであって、こうした事態を法的に正当化する合理的な理由はいまだ示されていないと考えられます。   また、第14回会議において申し上げたように、一たび再審開始決定がなされると、仮にこれが誤っていたとしても、その誤りが放置されたまま直ちに再審が開始されるという事態は、犯罪被害者や御遺族の方々にとって到底受け入れられるものではないと考えられます。   したがって、再審開始決定に対する不服申立てを禁止することは相当でないと考えます。 ○大澤部会長 それでは、鴨志田委員、先ほど手が挙がりましたでしょうか。 ○鴨志田委員 先ほどの田岡幹事の御意見に補足する形になりますけれども、検察官の不服申立てを禁止することについて、理論的に整合しないとか、不服申立て全体の立て付けの在り方との関係でも問題だというような様々な意見ありましたけれども、やはり根本は、そもそも職権主義の再審請求手続の下で、検察官に当事者性がないということを出発点とすべきです。当事者ではない検察官がなぜ不服申立てができるのかということについては、その公益の代表者性に根拠を求めるというのが大勢であろうかと思います。   しかし、福井事件の第一次再審では、検察官が、後に第二次再審で開示された無罪方向の証拠を隠したまま再審開始決定に対して異議申立てをして、その結果として、再審開始決定が取り消されて第一次再審は終結し、第二次再審になってその隠されていた証拠が出てきたことで、再審無罪に至るまでに14年が掛かったということが、客観的な事実として判明しているわけです。   過去にこの会議の中で、再審開始決定が取り消されて請求棄却決定が確定した場合には、確定したのが棄却決定である以上、当該再審請求に関する限り、つまり、その時点での訴訟状態あるいは事実関係及び証拠関係を前提とする限りは、棄却決定が正しくて開始決定は誤りであったと、訴訟法上は評価するほかはないという御発言があったと記憶しています。しかし、福井事件の場合は、今申し上げたとおり、本来であれば確定審で出されるべき証拠が出なかったことによって、第一次の再審開始決定が取り消されて棄却したということが、事後的には分かっているわけです。今、私たちが検討しているのは立法論なわけで、その当時、訴訟法的に正しかったかどうかということ以上に、このような事実があったから、正に公益の代表者性にもとるような形での検察官の不服申立ては、やはり認めるべきではないのではないかということを検討すべきだと思います。   また、今し方も宮崎委員から、検察官は抗告をするかどうかを慎重に検討して、個別の事案に応じて抗告する、しないを決めているというお話がありましたけれども、福井事件だけではなくて、例えば松橋事件では、地裁の開始決定に対して検察官は即時抗告をし、高裁でもこの再審開始が維持されました。その高裁が維持した再審開始決定に対して、検察官は更に特別抗告を重ねたわけですが、特別抗告を申し立てた後には、補充意見書等を提出することもなく、何らの主張もせずに、8か月後には簡単に棄却されて再審開始が確定しました。さらに、その再審開始決定が確定した後に再審公判に進むわけですけれども、全く有罪を争うことなく1回で結審して終わっています。最終的にこのような経過をたどったということからしても、少なくとも特別抗告する必要があったのかということは、大いに疑問なわけです。   先ほど田岡幹事もおっしゃったように、一律に抗告を禁止するということについては問題があるとか、賛成できないという言い方をされた方々がいらっしゃる中で、やはり今のような公益の代表者性という観点から、到底是認することができないような抗告がなされているという現実がある以上は、やはりそのような公益の代表者性にもとる抗告については、抗告権自体を認めない。仮に抗告権を残すとしても、そこはやはり運用上自粛をする、控えていくというようなことが、更に検討されるべきではないかと思います。これを、今回の試案で項目ごと全て削ってしまうということは、私たちから見ればこれは非常に乱暴でありまして、今のような観点から更に議論すべきではないかと思います。 ○大澤部会長 御趣旨をちょっと確認したいと思いますが、公益の代表者性にもとるような、そのような抗告権の行使は抑制すべきであるということなのか、過去に問題と見られるような事例があったことで、検察官は公益の代表者性を既に失ってしまっているとおっしゃられているのか、どちらでしょうか。 ○鴨志田委員 もちろん、既に公益の代表者とは言えないような検察官の抗告が多く行われていることを前提に、そもそも検察官の抗告を全面的に廃止すべきであるというのが、私どもの意見です。ただ、今申し上げたのは、この試案が一律に、検察官の抗告禁止を全く認めないという形で、その項目ごと落とされているということに対して、まだまだ議論の必要性があるのではないかという文脈で申し上げたということです。 ○大澤部会長 分かりました。   それでは、更に御発言ございますでしょうか。 ○村山委員 何点か今まで発言したことと重複する部分もありますので、簡潔にしたいと思います。一つは理論的な問題として、当事者でない検察がなぜ不服申立てできるのかという問題については、これは、実際に少年法や家事事件手続法などを例に挙げて、検察官が不服申立てができるのは必ずしも普通ではないんだということは、御理解いただけたと思います。少なくとも私は、理屈の問題からいくと、検察官の不服申立権を認めるかどうかというのは、論理必然ではないということは明らかになったと思います。   そうなると、政策的にどうなるかという話になる、政策的に考えると、やはり今の検察官の不服申立てがどういう実態を呈しているのかというところは念頭に置いて、政策論をせざるを得ないと思います。簡潔に言うと、検察官は適切に行使しているとおっしゃっていますけれども、本当にそうなんでしょうかという実態がある、これは間違いないと思います。そういうことを考えると、不服申立て手続を禁止して、速やかに再審公判に移行すると考える方が自然ではないでしょうか。   また、成瀬幹事は、必ずしも、禁止してもそれほどメリットはないのではないかという趣旨の御発言をされましたけれども、そうではないと思います。例えば執行停止、請求審の原審で執行停止をかけても、即時抗告審でその執行停止を取り消すということも実際起きているわけです。また、再審公判のときに除斥になるかどうか、これは、再審請求審に関与した裁判官を一律に除斥するというのは、私は反対の立場ですが、仮に除斥されたとしても、争点としてはかなり再審請求審で明確になっているわけですから、審理が迅速に進むということは間違いないと思うんです。そういう意味で、メリットはあります。   現状では、再審請求審が非常に肥大化していまして、ここで徹底的に審理を尽くすということで、先ほど田岡幹事も言及されましたけれども、再審公判が再審請求審の確認の場になっていて、比較的短期間で終わっているのは事実です。それが本当に再審制度の在り方として良いのでしょうか。本来的には、再審公判でもう一度審理をやり直す、そのやり直すかどうかの前さばきとしての再審請求審だという位置付けだったはずです。そう考えると、現状の再審請求審の在り方が、そもそも本来の制度運用とは違った形になっていると思われます。これを正すためには、やはり検察官の不服申立てを禁止するということが必要だと思っています。   また、この部会の議論の中でも先ほど来出ているように、一律に禁止するのはどうかという御発言が、何人かの委員の方からあったと記憶しています。今回の試案は一律に禁止しないと、要するに、不服申立てを従前どおり全面的に認めるという案ということになっていると思いますので、本当にそれが今までの議論の集約として正しい集約なのかどうか自体についても、私は疑問を持っています。そういう意味で、再度その不服申立ての禁止の問題というのは、法務大臣の諮問にも入っていた事項ですので、もう一度この点について試案に盛り込むべきだと思っています。 ○大澤部会長 他に御発言ございますでしょうか。 ○池田委員 ただいま、検察官は公益の代表者として再審請求審に関する以上、当然に不服申立権が認められることにはならないという御指摘がありました。しかし、既に当部会において繰り返し指摘されておりますように、再審請求手続においては、再審開始決定が再度の公判を開くという重大な効力を持つことから、慎重な判断が必要となることに鑑み、公益の代表者たる検察官に違法、不当な再審開始決定の是正を求めることも含めて関与させることにより、判断の適正を担保しようとしたものであると考えられますので、再審請求審における検察官の立場を理由として、検察官の不服申立ての権限を否定することはできないと考えます。   先ほど村山委員は、他の制度においては当然に抗告が認められているわけではないとおっしゃられましたけれども、それぞれの手続の趣旨に鑑みて、検察官の権限の在り方というものは検討されるべきでありまして、再審請求審との関係では先ほど述べたような理由があると考えております。また、鴨志田委員からは、実態として不適切な不服申立てがなされているという御指摘がありましたが、権限の濫用のおそれがあるということと、そうであるから権限を一律に否定すべきだということは、直ちにはつながらないと考えております。   加えて、田岡幹事から、松尾浩也先生の御発言を引用されてドイツについて言及がありましたので、併せて申し上げます。松尾先生の御趣旨は、運用を抑制的にということでドイツの例に言及されたものと思われますけれども、これまでこの点についても既に複数回にわたって御指摘がありますように、我が国と刑事手続の構造等が異なるドイツの法制度の一部のみを切り取って議論することは適切ではありませんし、ドイツに関しては、通常審においても重大事件の場合の無罪判決については事実認定の誤りを理由とする上訴はできないとされているなど、上訴制度の在り方が我が国と異なりますので、ドイツにおいて再審開始決定に対する不服申立てが禁止されているからといって、我が国においても同様に禁止すべきということにはならないと考えております。   加えて、第10回会議において川出委員から御指摘があったように、1960年代に旧西ドイツにおいて再審開始決定に対する不服申立てを禁止する改正がなされた際、再審手続の二段階構造との整合性を含む理論的な課題について、十分な検討がなされたとは言い難いことなども踏まえると、ドイツに立法例があるから、当部会で指摘されている理論的な課題が克服できるというものでもないと考えております。   以上述べたように、これまでの議論において、検察官による不服申立ての禁止に対しては数多くの問題点が指摘されておりまして、今後議論を重ねたとしても、それらを克服することは極めて困難であると思われます。   他方で、日本弁護士連合会の委員・幹事から御提出のあった「『第3 附帯事項』に記載すべきこと」の「第2」の「2」に示されております、再審開始決定に対する不服申立ては禁止されるべきであるが、仮にこれを認めるとしても、刑事訴訟法第435条第6号の明白性が争点となる事件については、検察官の不服申立ては抑制的になされるべきであるとの御意見について、併せて意見を申し上げます。   再審開始決定に対する不服申立ての在り方に対しては、確かに社会的にも関心が高い問題であり、それが適切に運用されているかどうかについても、様々な見解が示されているところです。もちろん、検察官が不服申立てをするか否かを判断するに当たり、慎重かつ十分な検討をしないまま不服申立てをするようなことがあってはならないのは当然のことであり、このこと自体は当部会の委員・幹事においても異論がないところではないかと思われます。もっとも、御提案のように検察官の不服申立ては抑制的になされるべきとすることについては、これまでの御意見等も踏まえると、再審開始の結論に誤りがあると判断した場合であっても、不服申立てを控えるべきという趣旨であると考えられるわけですけれども、そうした形で再審開始決定に対する不服申立てを運用上制限することの合理的な理由は、当部会において示されているとは思われません。したがって、御提案の内容をそのまま附帯事項に盛り込むようなことには、反対せざるを得ないものと考えております。 ○大澤部会長 更に御発言ございますでしょうか。 ○川出委員 ただいま池田委員から御指摘のあった最後の部分については、この文言を見るかぎり、刑事訴訟法第435条第6号の明白性が争点となった事件においては、検察官が再審開始の結論に誤りがあると判断した場合であっても、不服申立てを控えるべきという趣旨であると読めますので、私も、これをそのまま附帯事項に盛り込むのは相当でないと思います。   他方で、現状がどうであるかについては認識が分かれていますが、検察官の再審開始決定に対する不服申立てが機械的・画一的になされてはならないこと自体は異論のないところだと思いますので、もし附帯事項に盛り込むのであれば、その点を確認するような内容、例えば、検察官の不服申立てが慎重かつ十分な検討に基づいて行われるべきであるといった内容を盛り込むということであればあり得ると思いますが、御提案のような内容を附帯事項に盛り込むことは、妥当でないと思います。   その上で、この論点の言わば出発点とでも言うべき再審請求審における審理の長期化という問題については、第14回会議において酒巻委員から御指摘がありましたように、手続に関与する裁判所、弁護人及び検察官が、それぞれの役割を果たすことによって解決されるべき事柄であると思います。そして、審理期間をいたずらに長期化させないためには、検察官が再審開始決定に対する不服申立てについて、慎重かつ十分な検討を行うことが重要なのはもちろんですが、それだけではなく、既に一定の取組が始められていると承知しておりますけれども、手続を主宰する裁判所においても、審理の迅速化方策の在り方について、例えば研究会を開くなどして知見を共有しながら、運用の改善を図ることが重要であると考えられます。また、検察官及び弁護人においても、可能な限り円滑かつ迅速な審理が実現できるように、裁判所による審理の運営にできる限り協力することが望ましいと考えられますので、こういった点についても、附帯事項に盛り込むということを検討すべきではないかと思います。 ○大澤部会長 附帯事項の点も含めて御発言いただいていますけれども、更に御発言ございますでしょうか。 ○田岡幹事 先ほど川出委員から、附帯事項に検察官が慎重かつ十分な検討を行うべきことを明記してはどうかという提案ありましたが、検察官は現在でも慎重かつ十分な検討を行った上で不服申立てをするか否かを判断していると、少なくとも主観的にはそういう認識を持っておられるのだろうと思います。しかし、それは、客観的には必ずしも正しい不服申立てではなかったと、つまり、福井事件では、検察官は、第一次再審請求手続において不服申立てをした結果、再審開始決定が確かに取り消されましたけれども、それは、後から振り返ってみると、無罪を言い渡すべき証拠を隠した不服申立てであって、違法、不当な不服申立てというべきものであったということが問題の所在であると理解しております。   したがって、検察官の裁量に委ねることを前提に、慎重かつ十分な検討を行いましょうというだけではやはり不十分でありまして、規制を設けなければ、今後も、福井事件のような、違法、不当な不服申立てが繰り返されることは避けられないのだろうと思います。   鴨志田委員がおっしゃられたような、例えば松橋事件や東京電力女性社員殺害事件における異議の申立て、即時抗告などのように、単に再審開始決定の確定を送らせるためだけになされたとしか思えない不服申立てもあります。このような不服申立ては、少なくとも不当であったという認識がないままに、附帯事項に慎重かつ十分な検討をしましょうと記載するだけでは、今後も、不当な不服申立てがなされるおそれは否定できないと思います。   加えて1点申し上げますと、第14回会議において、酒巻委員から、再審開始決定が不服申立てによって取り消されたような事案では、仮に不服申立を認めずに再審公判に移行したとしても、その時点の証拠関係の下では、再び有罪判決が言い渡される可能性も高かったのではないかという御指摘がありました。しかし、私の理解では、再審開始決定がなされますと、改めて再審公判が開かれるわけですが、その時点の証拠関係の下で有罪・無罪の判断がなされるわけではなく、改めて証拠開示がなされるのだろうと理解しております。実際に、湖東事件では、再審公判において、再審請求審では開示されなかったような証拠、無罪を示す捜査報告書が開示されました。つまり、再審請求審では再審請求と関連する証拠しか開示されないとしても、再審公判に移行すれば、改めて有罪・無罪の判断をするわけですから、その判断のために必要な証拠が開示されることになるはずです。仮に当時は公判前整理手続の制度がなかったとしても、現在の公判前整理手続と同様に類型証拠開示や主張関連証拠開示の考え方に従って証拠開示が行われれば、再審請求審では開示されなかった証拠が再審公判で開示されるということが当然に予想されるわけです。   福井事件では、仮に第一次再審請求審の再審開始決定が確定し、再審公判に移行していれば、第二次再審請求において開示された287点の証拠は、再審公判で開示されることになりますので、無罪判決が言い渡される可能性が高かったのではないかと私は考えます。  何より、再審請求審において、有罪、無罪の判断に決着をつけようとしますと、本来の再審請求審の役割を超えることになるのではないでしょうか。再審請求審は、飽くまで再審開始事由の存否を判断するものであり、有罪・無罪の実体判断をすることは予定されておりません。無罪を言い渡すべき明らかな証拠に当たるか否かは、飽くまで予測的判断にとどまります。検察官が確定審において開示すべき証拠を開示しておらず、その証拠を加えると、確定判決の有罪認定に合理的な疑いが生じる蓋然性があるというのであれば、速やかに再審公判を開いて、有罪・無罪の判断をやり直すべきです。裁判員裁判であれば、裁判員が加わった裁判体において、適正な手続の下で、改めて有罪・無罪の判断をやり直すべきです。それが、再審の趣旨、目的に沿った本来の在り方であると私は考えます。   被害者の磯谷参考人が、終わらない裁判に人生を奪われることになり、司法に対する信頼が薄らぐという御発言をしておられました。被害者やその御遺族のお気持ちは理解しますけれども、なぜこのようなことが起きているかという原因を考えていただきたいと思います。本来、確定審において必要な証拠を開示していれば、確定後に無罪を言い渡すべき明らかな証拠が発見されることはないはずです。検察官が確定審において証拠開示をしていなかったために、確定後に無罪を言い渡すべき明らかな証拠が発見されたので、裁判をやり直さなければならなくなっているのです。決して再審請求人がそのようなことを望んでいたわけではございません。証拠が開示されなかった原因は、検察官だけの責任ではなく、弁護人が証拠開示請求を十分していなかったということもあるのかもしれませんが、法曹三者の責任において、本来確定審において開示されるべき証拠が開示されていなかったのであれば、再審公判を開いて、有罪・無罪の判断をやり直すことが、司法に対する信頼を確保するために必要なことではないかと考えております。 ○大澤部会長 更に御発言ありますでしょうか。よろしいでしょうか。             (一同異議なし) ○大澤部会長 ありがとうございます。   次に、配布資料22に記載されていないその他の論点について、まとめて審議を行いたいと思います。その際、附帯事項として取りまとめに盛り込むべき事項についても、必要に応じて御議論いただければと存じます。それでは、御意見・御質問等がある方は、挙手の上御発言をお願いいたします。 ○田岡幹事 修正案を提出しておりますので、補足説明させてください。   第16回会議に提出しました「法務省事務当局試案に対する修正案」の6ページ、「第8」の「再審開始事由」、7ページ、「第9」の「弁護人による援助」。この二つの項目について、まず補足説明をさせてください。   第15回会議において説明しておりますので、簡単に申しますが、まず、「第8」の「1」の刑事訴訟法435条6号の点については、前回の試案から文言を改めております。ただ、趣旨は変更しておりません。従前どおり白鳥・財田川決定の趣旨を、解釈上争いのない限度で、明確にする趣旨の提案でございます。   第14回会議において宮崎委員から、「その認定を覆すに足りる蓋然性」の文言に特段の意味がないという解釈が実務上固まっているとまでは言い切れないという発言がありました。私は、そうであれば蓋然性があるときと書けばよいのではないかと申し上げました。これに対し、吉田幹事から、法令を作る場合に使える用語が一定程度限られていることから、必ずしもこの最高裁判所の判示の文言をそのまま使えばよいというものではないという御指摘がありました。私は、それ自体は正当な御指摘であると思っておりますので、最高裁判所の判示をどのような文言にすれば正しく表現できるかということは、正にこの部会において御検討いただくべきことであると思っております。問題は、現在の文言の方がよいのか、それとも現在の文言を改める方がよいのかということであり、私は現在の文言では、新証拠と旧証拠の総合評価という白鳥・財田川決定の趣旨が読み取れませんので、少なくとも、現在の文言には問題があるのではないかと考えております。   第15回会議において、仮想事例を用いた証拠開示のシミュレーションを行いましたが、その際には、必ずしも新証拠の立証命題に関連する情報に限られずに、他の間接事実、旧証拠に関連する証拠も開示の対象となり得る、関連性が認められ得るという結論になりました。これは、再審の請求の理由が、必ずしも新証拠を孤立評価するわけではなくて、新証拠と旧証拠を総合評価するということが前提になっているから、そのような結論になったのだと理解しております。ところが、刑事訴訟法435条6号の文言を素直に読むとそのようには読めないものですから、私は新証拠と旧証拠の総合評価をするという趣旨を明確にするために、知恵を絞る必要があるのではないかと考えております。   また、必要的減軽事由を加える提案については、第14回会議では御賛同が得られませんでしたが、現在の文言でも強盗殺人罪ではなく強盗致死罪であるという場合には、同一の構成要件、同一の法定刑でも「軽い罪」に当たる可能性があるという裁判例がございますし、心神耗弱の場合にも、最高裁判所の判例はありますけれども、下級審裁判所の中には、これが「軽い罪」に当たる、特に確定判決が死刑の場合には「軽い罪」に当たる可能性が否定できないという趣旨の判断をしたものがございます。少なくとも解釈論として、共同正犯ではなく幇助であるという場合には「軽い罪」に当たるという解釈の余地は残されているように思われます。ただ、現在の文言では明確ではありませんので、この際、刑の必要的減軽事由を刑事訴訟法435条6号に取り組むのがよいのではないかと思います。   公訴の棄却については、第14回会議において、様々な場合があるという御指摘、また、免訴とは異なるという御指摘がありました。しかし、第14回会議でも申しましたように、ロシア人おとり捜査事件が、刑事訴訟法435条7号、437条により再審開始を認めたのは、虚偽公文書作成罪が成立するという事情があったからであり、これがなければ再審開始にならなかったということを考えますと、私は、刑事訴訟法435条6号の現在の文言では救済できない事例があるということは、否定できないように思われます。   なお、菊池事件につきましては、本日午後に再審開始決定又は棄却決定の判断がなされると伺っております。本日の会議には間に合いませんでしたが、次回の会議において、再審請求審の判断を踏まえて、改めて検討していただければと考えております。   「第8」の「2」の手続の憲法違反の点は、原判決の手続という表現に改めました。飽くまで原判決の憲法違反ではなくて、原判決の手続違反を再審開始事由とする趣旨であるということを明確にしております。先ほど申し上げたとおり菊池事件の判決が本日午後にあると伺っておりますので、次回の会議において、検討していただければと考えております。   「第8」の「3」の刑事訴訟法437条の点は、証拠不十分による不起訴処分の場合に確定判決に代わる証明を認める趣旨ですが、少なくとも起訴猶予処分の場合は、刑事訴訟法437条ただし書には当たらないということは確認しておきたいと思います。ロシア人おとり捜査事件の即時抗告決定は、起訴猶予による不起訴処分の場合には、刑事訴訟法437条ただし書の証拠がないという理由によって確定判決を得ることができないときに当たらないことは言うまでもないと判示しております。また、検察審査会における起訴議決制度も起訴猶予の場合には機能しませんので、不起訴処分の理由が証拠不十分又は嫌疑なしの場合と起訴猶予の場合では事情が異なります。そうしますと、刑事訴訟法437条ただし書によって否定されることがあるのは、証拠不十分又は嫌疑なしによる不起訴処分の場合であって、少なくとも起訴猶予処分の場合は当たらないということはいえると思います。   次に、7ページの「第9 弁護人による援助」です。国選弁護制度については、私は、少なくとも職権による国選弁護制度は設けるべきなのではないかと考えております。修正案では、従来どおり日弁連改正案に従った提案をしておりますけれども、原則として弁護人を付すということにすると、公費の負担の適正性に疑問が生じるというのであれば、裁判所が必要と認めた場合のみ付すということにしてもよいと思います。少なくとも、国選弁護人を付す必要性、相当性がある場合はあると考えております。  何より、裁判所不提出記録の閲覧・謄写が必要になる場合です。法務省事務当局の試案によれば、裁判所が検察官に対し証拠の提出を命じて、これを裁判所に提出させたとしても、再審請求人は刑事訴訟法40条による閲覧・謄写ができません。これでは、証拠の提出命令は、単に裁判所が事実調べのために必要があれば、証拠の提出を命じることができる制度にすぎないということになり、証拠開示と呼ぶに値しないと思います。再審請求人がその内容を知ることができなければ、その内容を踏まえて意見の陳述をすることもできません。   成瀬幹事及び池田委員は、第9回会議において、裁判所が判断の基礎とする証拠について、弁護人がそれを閲覧・謄写することができないという事態は、手続保障上問題があるという趣旨の御発言をされていましたが、弁護人がいない再審請求人は正にそのような事態になるわけです。つまり、裁判所が判断の基礎となる証拠であるにもかかわらず、再審請求人はそれを閲覧することができませんので、その内容を知ることもできなければ、その内容を踏まえた意見を言うこともできません。これでは、再審請求人の手続保障として問題があると、そのように考えておりますので、国選弁護制度は必要であると考えます。   なお、直ちに国選弁護制度を設けることが難しいというのであれば、私は、本日、追加提案をしておりますので、併せて、御検討いただきたいと思います。「法務省事務当局試案に対する修正案②(追加提案)」の「第1」の「3」の「(3)」です。刑事訴訟法第四編に、「再審の請求をした者は、裁判所の許可を得て、裁判所において、訴訟に関する記録及び証拠物を閲覧することができる」旨の規定を設けてはどうかという提案をしております。これは、要するに刑事訴訟法40条が被告人に閲覧権を認めていない趣旨は、書類の破棄の恐れがあるからであると理解されておりますが、少なくとも裁判所の許可を要件とすれば、そのような弊害は防止できるのではないかという趣旨です。また、刑事訴訟規則301条によって、閲覧の際に裁判所が措置を採ることもできるとされていますので、適切な措置を採れば弊害は防止できるのではないかと思います。それでもなお書類が破棄されるおそれがあるというのでしたら、「第1」の「3」の「(4)」のように、検察官は、再審の請求を受けた裁判所に証拠を提出するとき、その写しを提出させることとしまして、その写しを閲覧させることとすれば、再審請求人がその写しを破棄したとしても原本は破棄されませんので、弊害は防止し得ると思います。このように、再審請求人の閲覧権を認めながら、かつ、弊害を防止することは可能ではないかと考えております。   併せて、「第3 附帯事項に記載すべきこと②(追加提案)」においても、運用事項として、同様の提案をしております。「第2」の「1」の「(3)」、「3」の「(2)」及び「(3)」です。これは要するに、検察官が事実取調べの請求書や意見書を提出するときには謄本を提出する、また、証拠を提出するときには写しを提出するという規定を設け、かつ、裁判所はその謄本又は写しを弁護人・再審請求人に交付するという規定を設けるという趣旨の提案です。これにより、弁護人がいる場合には弁護人が謄写費用を負担しなくても再審請求人は証拠の内容を把握することができることになります。国選弁護人制度がないために謄写費用が自己負担になるわけですが、それだけでも、何十万、何百万という負担になる場合がありますので、写しを提出していただくこととすれば、謄写費用の負担がなくなるのではないかと考えました。また、弁護士がいない場合には、再審請求人に写しを閲覧させることをすれば、再審請求人は写しの内容を見て、証拠の内容を把握することができると考えました。せめて、これを運用事項として盛り込んでいただければ、再審請求人の証拠の閲覧権が保障されることになるのではないかと考えております。 ○大澤部会長 再審開始事由の点と弁護人による援助の点について御発言を頂きました。まず、再審開始事由のところで御発言あれば承りたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○川出委員 ただいま、田岡幹事から御説明があったうちの再審開始事由に関する部分について意見を申し上げたいと思います。まず、刑事訴訟法第435条第6号を、「新たな証拠が発見され、それ単独で、又は他の全証拠と総合して判断したときに」という文言に変えるという御提案についてですが、田岡幹事から、以前にも、これは白鳥・財田川決定の判示の趣旨を解釈上争いのない限度で明確にするものであること、具体的には、明白性の判断が新旧両証拠の総合評価によるものであることを示すものにとどまり、総合評価の方法について一定の立場を取ることを意図するものではないという御説明がありました。田岡幹事の御意図はそうであると思うのですが、ただ、これまでの議論において既に指摘がなされていますように、白鳥・財田川決定以後の最高裁判所の判例には、ここでいう総合評価の対象となる旧証拠の範囲について、より限定的な判示を行っているものもあります。   例えば、最高裁判所平成10年10月21日のいわゆるマルヨ無線事件特別抗告審の決定では、新証拠とその立証命題に関連する他の全証拠とを総合的に評価し、新証拠が確定判決における事実認定について合理的な疑いを抱かせ、その認定を覆すに足る蓋然性のある証拠であるか否かを判断すべきであるという判示がなされています。   こういった判例もある状況の下で、文言上、総合評価の対象となる旧証拠に限定が付されていない白鳥・財田川決定の判示をそのまま条文化するということになりますと、それは旧証拠の全面的再評価を前提とする立場に依拠したものであるとの解釈を招くおそれがあることは否定し難いと思います。したがって、御提案のような形で法整備を行うことは、やはり妥当ではないと考えます。   それからもう1点、必要的な刑の減軽事由がある場合を再審開始事由に加えるという点ですけれども、御提案のような規律を設けることについては、これまでの会議において、刑の必要的減軽事由の存否は多種多様な事実に基づいて判断されるところ、そのうち何らかの事実に誤認があったと主張すれば、再審請求をすること自体は可能となる上に、誤認があったと主張する事実を変えて繰り返し再審請求することも可能となるため、再審請求が増加し、再審請求審における迅速な事件処理に支障を生じさせることになりかねず、相当でないという指摘ですとか、あるいは、必要的減軽事由に限らず、量刑上決定的な意味を持つ重要な情状事実は多くあると考えられるところ、必要的減軽事由に該当する事実誤認に限って再審開始事由とするのは、制度上不均衡であるというような指摘があり、こういった課題がまだ解決されていないと考えられますので、この点についても、御提案のような新たな再審開始事由を設けることは相当でないと考えます。 ○大澤部会長 他に御発言ございますでしょうか。 ○池田委員 私は、先ほど田岡幹事から御説明いただいた「第8」の「1」の再審事由について意見を申し上げます。   御提案の中には、刑事訴訟法第435条第6号の再審開始事由に、公訴を棄却すべきときを追加すべき旨の御提案があり、この御提案について、本日補足がありましたけれども、これまでの議論において、立法事実が存在すると言えるのか定かでないという指摘や、再審と非常上告の制度のすみ分けを無に帰することとなりかねないという指摘、また、同条第6号において、免訴を言い渡すべき証拠を発見したときが再審開始事由されていることを踏まえても、両者の性質は異なり、公訴を棄却すべきときを同号の再審開始事由として追加することは、現行の再審開始事由との整合性に問題があるとの指摘がされておりまして、これらの課題は克服されていないと考えます。   次に、「第8」の「2」において、「原判決の手続に判決に影響及ぼすべき憲法違反があって、原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるとき」を再審開始事由とすべきである、このような御提案については、これまでの議論において、現行刑事訴訟法上の再審開始事由が裁判の不当な蒸し返しを防ぐという観点から、有罪判決の確定後に事情の変更があったことを要求していることと整合しないとの指摘や、審判手続の法令違反については、本来非常上告で対処すべきであるとの指摘があり、これらの課題は解消されていないと思われます。   加えて、「第8」の「3」において、刑事訴訟法第437条ただし書の文言を、「但し、公訴が提起された場合において、証拠がないという理由によって確定判決を得ることができないときは、この限りでない」と改めるべきである、との御意見が示されました。先ほど、起訴猶予と証拠不十分、嫌疑なしとは区別されるべきだというお考えもお示しになられましたが、御提案の中では、その趣旨が読み取れないようにも思われます。   加えて、これもこれまでの議論で指摘されてきましたけれども、不起訴処分とされた場合については、検察審査会の審査申立て等の制度を利用して確定判決を得ることができるため、刑事訴訟法第437条の趣旨が妥当しないのではないかなどの疑問が呈されておりまして、指摘されている検討課題を克服して法整備を行う方向で意見を取りまとめることは困難であると言わざるを得ないように思われます。 ○大澤部会長 更に御発言ございますでしょうか。   それでは、もう一つ田岡幹事から御説明いただいた弁護人による援助の点ですが、こちらについてはいかがでしょうか。御発言のある方、お願いいたします。 ○恒光幹事 附帯事項の話に関連するところで、ただいま田岡幹事から、今回追加提案のあった「『第3 附帯事項』に記載すべきこと②(追加提案)」の「1」の「(3)」について御意見がありましたけれども、この点についてと、ただいまの論点とは少しずれますけれども、同じくこの御提案の「3(2)」、「(3)」についても、併せてこの場で意見を述べさせていただきたいと思います。   この御提案では、一定の事項について、刑事訴訟規則において新たな規定を設けるべきとされております。しかし、これらの規定が必要というのであれば、本来、法律によって規定すべきでございまして、理論的又は実務的な課題を克服できないといった理由から法律によって規定できなかったものは、規則によって規定することも困難であると考えております。また、御提案の中には、手続の細目にわたる事項も含まれておりますけれども、これらの点について、当部会において十分議論が尽くされたという認識もございません。そもそも、憲法で定める最高裁判所の規則制定権は、一般に裁判所の自律性を保障するために認められたものと解されております。行政機関である法務省の諮問機関である法制審議会が、法律の要綱案において規則委任事項として定めるのであれば当然分かりますけれども、それとは別に、附帯事項として新たに刑事訴訟規則を定めるべきとした場合に、裁判所としてどのように受け止めればよいか分かりません。司法の独立を保障した憲法の趣旨に反し、法制審議会の役割を超えているようにも思われます。   以上の理由から、先ほど申し上げた点について、附帯事項として記載することには強く反対いたします。 ○大澤部会長 それでは、更に御発言ございますでしょうか。 ○成瀬幹事 鴨志田委員・村山委員・田岡幹事共同提出の「法務省事務当局試案に対する修正案」の「第9」の「1」において、再審の請求が不適法であるとき又は再審の請求に理由がないことが明らかなときを除き、再審請求者の請求により、国選弁護人を付さなければならないこととすべきとの提案がなされており、この御提案は、「試案〔改訂版〕」の「第3」の「2」に記載された調査手続を設けることに反対の立場からなされているものと理解しました。   私は、「試案〔改訂版〕」に記載されたとおり、調査手続を設けることに賛成の立場ですので、仮に御提案のような趣旨の規定を設けるとすれば、審判開始決定があった場合において、再審請求者が貧困等により弁護人を選任することができないときは、裁判所は、その請求により弁護人を付さなければならないという規定になると思います。  もっとも、裁判所は、調査手続の段階において、再審請求が法令上の方式に違反したものである、あるいは、再審請求に理由がないことが明らかであるなどといった心証を抱かない限り、審判開始決定をすることとなるのであって、そうした事案の中には、第13回会議や第15回会議において平城委員や池田委員が述べられていたとおり、審判開始決定をしたものの、本格的な審理を要しない事案も一定程度含まれることになると考えられます。  そうであるとすると、第15回会議において池田委員も述べておられたように、審判開始決定があったからといって、通常審の段階と同程度に弁護人を付す必要性が高いとまでいうことは困難であり、その相当性についても疑問が残らざるを得ません。   田岡幹事は、この問題点を意識された上で、裁判所が職権で国選弁護人を付す制度も提案されました。この御提案は、少年法第22条の3第2項に規定されている裁量的国選付添人制度を参考にしたものと思われます。元々の御提案のように、審判開始決定がなされた事件について一律に国選弁護人を付すのではなく、それらの事件のうち、証拠提出命令等を活用して本格的な審理を行う必要性が認められる事件に限って、裁判所が裁量で国選弁護人を付すこととすれば、先ほどの問題点を克服できるという御趣旨であると理解しました。   もっとも、今回の再審法改正が仮に実現した場合に、その後の実務運用がどうなっていくかは、現段階では分かりません。すなわち、再審請求の件数がどの程度増えるのか、また、審判開始決定の件数がどの程度になるのかといったことが分からない状況において、国費により国選弁護人を付すことの相当性を判断することは、裁判所による事件選別が行われることを前提としても、やはり困難と言わざるを得ません。  よって、裁判所が職権で国選弁護人を付す制度であっても、少なくとも現段階で検討課題を克服し意見集約を図ることは困難であると考えます。   そもそも、田岡幹事が国選弁護制度にこだわっておられるのは、先ほども御指摘いただいたように、弁護人を選任していない再審請求者が、事実取調べの対象となる証拠の内容を把握できないという問題意識からであると思われます。私も、その問題意識には共感しますが、この点については、裁判所が個別の事案に応じて適切に対応することが望ましいと考えています。   先ほど、田岡幹事は、刑事訴訟法第40条の規定に加えて、「再審の請求をした者は、裁判所の許可を受けて、裁判所において、訴訟に関する記録及び証拠物を閲覧することができる」という規定を設けるべきという提案をされました。私は、通常審の規律との整合性という観点から、御提案のような規定を設けること自体は困難であると考えていますが、現行法においても、裁判所が、裁量によって、再審請求者に訴訟に関する書類等の閲覧を認めることが禁じられているわけではありませんので、事案に応じて、そのような対応をする余地はあると考えています。あるいは、以前の会議でも申し上げましたが、裁判所が、事実取調べをした結果の概要を再審請求者に連絡するといった対応も考えられます。  いずれにせよ、裁判所の適切な配慮によって、田岡幹事の問題意識に応えることが望まれます。 ○大澤部会長 更に御発言ございますでしょうか。 ○宮崎委員 日本弁護士連合会委員・幹事御提出の「法務省事務当局試案に対する修正案②(追加提案)」、「第1」の「3(4)」において、検察官は、再審の請求を受けた裁判所に証拠を提出するときは、その写しを提出しなければならない旨の規定を設けるべきであるとの御提案と、「『第3 附帯事項』に記載すべきこと②(追加提案)」の「第2」、「1(3)」において、同様の内容を刑事訴訟規則に規定するよう附帯事項に記載するということの御提案がありました。   御提案は、以前に鴨志田委員から御指摘のありました、検察官が裁判所に証拠を提出する場合に、その写しを裁判所に提出し、裁判所が当該写しを弁護人に交付することが多いという事実認識を前提とし、これを制度化しようとするものであると思われます。しかしながら、個別の事案で検察官がそうした便宜を図った例があることは否定しませんが、そのような運用が定着しているものではありませんし、これまでの会議でも指摘されているとおり、運用上の対応の事例があるからといって、これを制度化する理由になるものではないと考えます。   そもそも検察官が裁判所に提出した証拠は、弁護人が自らの費用で刑事訴訟法第40条第1項に基づいて閲覧・謄写すべきものであり、この弁護人の謄写の負担に代えて、検察官に一律に写しを作成、提出しなければならない義務を負わせることになりますけれども、そのような合理的理由は見当たりませんし、御提案のような規定を設けることは、通常審において検察官が証拠を裁判所に提出するに当たり、当該証拠の写しを裁判所に提出することとはされていないこととの整合性を欠くものであると考えます。   したがって、御提案のような規定を設けることは相当でないと考えられます。 ○大澤部会長 更に御発言ございますでしょうか。 ○田岡幹事 皆様から御意見いただきましたので、補足説明させていただきます。   まず、恒光幹事から、最高裁判所規則は最高裁判所が規則制定権に基づいて規定するものだから、法律事項にないことを規則に定めるのはおかしいという御指摘がありました。しかし、私の提案は、飽くまで法律に規定を設けた上で、さらに最高裁判所規則にもそれに対応する規定を設けるという立て付けになっております。例えば、修正案②(追加提案)の「第1」の「3」「(4)」に証拠の写しを提出する旨の規定、「第3」の「3」「(2)の3」に刑訴法299条と同様に、証人尋問等の請求の場合には、あらかじめその氏名及び住居を知る機会を与える、証拠書類又は証拠物の取調べを請求する場合には、あらかじめ相手方にこれを閲覧する機会を与える、その上で、事実の取調べの決定をするについては、再審の請求をした者又は弁護人及び検察官の意見を聞かなければならないという規定を設けることを前提にしますと、当然、検察官が事実調べの請求書の謄本及び証拠の写しを裁判所に提出するか、あるいは裁判所の責任において、その写しを再審請求人又は弁護人に交付することが必要になります。このような規定を設けることを前提に、「『第3 附帯事項』に記載すべきこと②(追加提案)」の「第2」の「1」「(3)」、「3」「(2)」及び「(3)」の規則事項を提案しているという趣旨でございます。   また、宮崎委員から、通常審では検察官が裁判所に証拠を提出する場合に、写しを提出することとはされていないという御指摘がありました。しかし、通常審は、検察官が証拠書類を請求する際には、あらかじめ、閲覧の機会を与える、弁護人には閲覧かつ謄写の機会を与えるとされております。このような規定があるから、弁護人は検察庁において証拠の閲覧・謄写をすることができます。ところが、試案では、検察官が再審請求人・弁護人に直接開示をするかどうかは飽くまで運用事項になっておりまして、法的に保障されたものではありませんので、弁護人が検察庁において閲覧・謄写ができないとなりますと、裁判所において閲覧・謄写するしかなくなるわけです。弁護人がいる場合には裁判所において閲覧・謄写はできますけれども、弁護人がいない場合は閲覧・謄写できないという問題があります。このように再審請求審では、通常審と異なり、検察庁における閲覧・謄写ができないという違いがありますので、裁判所における閲覧権を規定するか、又は検察官が証拠の写しを提出することとしてはどうかという提案をしているのでございます。   なお、試案には、「第3」の「3」「(2)」に、検察官は事実取調べの請求をすることができるという規定がありますが、その際に、再審請求人及び弁護人又は検察官の意見を聴くという規定がありません。また、事実の取調べの決定をするという規定もありません。事実取調べですから、決定という形式は必要ないとおっしゃるのかもしれませんが、事実の取調べの請求権を認めるのであれば、決定をするべきだろうと思います。決定をするのであれば、やはり意見を聴くべきだろうと思います。意見を聴くのだとすれば、例えば証人尋問であれば、その氏名及び住居を知らせる機会がないと、意見を言うこともできませんし、証拠書類についても、幾ら証拠能力が必要ないとは言っても、その証拠の内容を知ることができなければ、やはり意見を言うことができません。そうすると、試案のように、事実調べを請求することができるということだけを規定するだけでは不十分であり、決定をするについては再審請求人及び弁護人又は検察官の意見を聴くということを規定しなければいけないのではないかと思います。また、その際には、証人尋問であれば、あらかじめ、その氏名、住居を知る機会を与えるとか、証拠書類であれば、あらかじめ、それを閲覧する機会を与えるという規定を設けなければ、意見を言うことはできませんので、このままでは手続保障として問題があるということを言わざるを得ないのだろうと思います。 ○大澤部会長 帰結のところだけ伺いたいのですが、田岡幹事の御提案のようなことにした場合に、要するに、裁判所の事実の取調べで、刑事訴訟法第40条で閲覧・謄写するというのと、この同法第299条類似の規定、チャンネルを使って閲覧・謄写するのと、両者のすみ分けはどうなるのでしょうか。 ○田岡幹事 刑事訴訟法40条は、証拠を裁判所に提出した後の話だと思います。私たちは、まず、証拠を請求する段階で、あらかじめ、それを見せてもらいたいということから、刑事訴訟法299条類似の規定を提案しております。 ○大澤部会長 そこで見れば、刑事訴訟法第40条はもう働かなくなるという御趣旨でしょうか。 ○田岡幹事 おっしゃるとおりです。ですから、通常審では、裁判所において閲覧・謄写することはほとんどないわけですよね。再審請求審でも、刑事訴訟法299条類似の規定ができれば、検察庁において閲覧・謄写ができますので、あらためて、刑事訴訟法40条に基づき、裁判所において閲覧・謄写する必要はなくなるのだろうと思います。 ○大澤部会長 分かりました。   更に御発言ございますでしょうか。 ○池田委員 「法務省事務当局試案に対する修正案」の「第9」の「1」に関連して、本日田岡幹事から、「法務省事務当局試案に対する修正案②(追加提案)」の「第1」の「3(3)」と「(4)」に言及がありました。この点について、私の意見を申し上げます。   通常審において、刑事訴訟法第40条第1項の規定で被告人に閲覧の機会が与えられておりませんのは、田岡幹事御指摘があったとおりですけれども、被告人の訴訟に関する書類の閲覧・謄写を認めると、破棄その他の不法行為をするおそれがあることから、刑事訴訟法第40条第1項は弁護人のみが訴訟に関する書類等を閲覧・謄写することができるとされており、被告人については、通常審では裁判所の許可の有無にかかわらず、訴訟に関する書類と一般について閲覧権が認められておりません。そのため、御提案のような規定を設けることは、こうした通常審の規律との整合性を欠くものであって、相当でないと考えます。加えて、「法務省事務当局試案に対する修正案②(追加提案)」の「第1」の「3(4)」において、検察官は、再審の請求を受けた裁判所に証拠を提出するときは、その写しを提出しなければならない旨の規定を設けるべきであるという点についても、通常審における規律との整合性を欠くものであって相当でないと考えます。   もとより、先ほど成瀬幹事から御指摘があったとおり、再審請求者による訴訟に関する書類等の閲覧については、刑事訴訟法上禁止されているものではなく、裁判所がその裁量により、これを認めることが否定されるものではないと考えられますので、個別の事案に応じて適切に対応すべき事柄であると考えております。 ○大澤部会長 更に御発言ございますでしょうか。 ○江口委員 前回の部会におきまして、鴨志田委員・村山委員・田岡幹事から提出されました「法務省事務当局試案に対する修正案」、「第3」の「3(3)」の囲みの中の「(5)」において、裁判所は、事実の取調べをした場合には、これを再審請求者、弁護人及び検察官に通知しなければならないという規定を設けるべきであるとの意見が記載されてございます。この点について意見を申し上げさせていただきます。   この規定は、家事事件手続法第63条あるいは第70条を参照したものと思われますが、これらの規定の趣旨は、事実の調査が職権でのみ行われるところ、その結果が当事者にとって重要であるから、申立人とその相手方に閲覧・謄写の機会を与え、反論の機会を保障する点にあると考えられます。  しかし、今般の「試案〔改訂版〕」におきましては、第14回会議で池田委員の御発言にもありましたように、事実の取調べについては再審請求者、弁護人、検察官に請求権が付与されており、裁判所はそれに応ずる応答義務を負うこととなっております。そうしますと、何を事実の取調べの対象にしたかにつきましては、当然に再審請求者、弁護人あるいは検察官は知り得ることとなりますので、家事事件手続法で想定している場面とは異なります。   また、「試案〔改訂版〕」では、職権による事実の取調べを行うことも想定されておりますが、「試案〔改訂版〕」では、証拠の提出命令が義務規定として設けられており、弁護人は提出された証拠を閲覧・謄写することができますし、審理終結日の通知が行われることとなれば、職権で取り調べられたものも含め、その閲覧・謄写の機会を逸することはございません。加えて、再審請求者、弁護人、検察官に事実取調べの請求権が認められておりますので、「試案〔改訂版〕」の制度を前提とすれば、裁判所が職権により事実の取調べを行うという場面は少なくなりますし、それが再審請求者、弁護人、検察官の知らないうちに行われ審理終結を迎えるという場面は、ほぼ考えられないと言ってもいいぐらいに、かなり限定的なものとなることが予想されます。  それにもかかわらず、裁判所が事実の取調べをした場合につき、一律に通知の規定を設けるというのは、家事事件手続法とは、事実の取調べ後に、その対象となった証拠等の閲覧・謄写の機会を確保する必要性に大きな差異があることも踏まえますと、その必要性に疑問があり、裁判所に過重な手続の負担を求めるものと言わざるを得ないかと思います。   なお、仮に鴨志田委員・村山委員・田岡幹事の御提案が、事実の取調べをした証拠の内容についてまで告知を求めるものであるとすれば、裁判所において不正確な要約をしたとの批判を免れるために、証拠の内容をできる限り忠実に告知せざるを得ないかと思いますが、それは結局のところ、裁判所が再審請求者のために証拠の謄写をするのと実質的に同じこととなりますので、刑事訴訟法全体の建て付けからは疑問が残るところでございます。 ○大澤部会長 更に御発言ございますでしょうか。 ○村山委員 弁護人の援助の件について発言したいと思います。   私たちは、そもそも請求準備段階から弁護人が付される必要があるのではないかという主張をしているわけですけれども、この点はさておくとして、現在この部会で整備しようとしている内容自体で問題だというのが、開示命令で開示された証拠、これ、弁護人がいない場合には結局請求人が謄写できないという事態が生じるという点です。これをどういうふうに手当てをするのか。また、例えば刑務所に入っている、施設に入っている請求人の場合に、事実取調べに立ち会わせるのかというと、現状では立ち会っていない場合が多い。その事実取調べの結果をどういうふうに伝えるのか、最終的に意見を聞くとなった場合に、どういう事実の取調べがなされたかを全く知らないで意見が言えるのかという、そういう問題はやはり切実な問題だと思います。ですから、ここの点をどういうふうに手当てするかというのは、やはり工夫をしなければならないということは、私は明らかだと思います。その一つの方法が、私は、裁判所が裁量によって弁護人を付するという道が残されるべきだと思っています。   この裁量によってというのは、確かに成瀬幹事が、審判開始決定が出たら一律になんですかという意見を述べておられるわけですが、私は、その点は、こだわらないと。要するに、開始決定が出たら全部というところまでは言わなくて、その開始決定が出た中で、実際に取調べに移行しなければならないという場合には、やはり何らかの手当てが必要ではないかということを、最低限そこは申し上げたいと思います。   もし、それでも駄目だという場合には、そういう場合にどういう事実の取調べがなされたのかと、若しくは開示によってどういう証拠書類が提出されているのかというのを、本人が分かるような手だてが必要だ。その一つの便法と言ってはいけないのかもしれませんけれども、検察官が写しを提出すると。これは、現にそういうふうに行われている事例があることは間違いないです。確かに、宮崎委員が言うように、全件そういうふうにやっているという認識ではございませんけれども、かなりの事件でそういうふうにやっていただいていますので、それは、そういうような事情もあることを踏まえると、そういった形の手続保障というのは必要ではないか、これは、是非とも皆さんにお考えいただきたいと思います。 ○田岡幹事 まず、池田委員から、通常審では被告人の閲覧権が認められていないこととの整合性を欠くという御指摘ありましたが、通常審は、ほとんどの場合に弁護人がいます。国選弁護制度がありますので、弁護人はいないということ自体がほとんどあり得ません。また、公判期日において証拠調べが行われる場合には、被告人は公判期日に出席しておりますので、証拠書類であれば朗読、証拠物であれば展示、証人尋問では在廷していることによって、その内容を把握することができます。   ところが、再審請求審では、再審請求人・弁護人が知らないうちに、職権又は検察官請求によって証拠が取り調べられるという事態があることから、問題になっているわけでありまして、通常審とは問題状況が全く異なると私は思います。   また、成瀬幹事及び池田委員から、刑事訴訟法40条の規定がなくても、裁判所は裁量によって再審請求人に証拠を閲覧させることができるのだとおっしゃられましたが、本当にそのようなことが行われているのだろうかという疑問がございます。私は、通常審においても裁量による閲覧ということが行われているのか知りませんけれども、再審請求事件において裁量による閲覧をさせた事例というのが本当にあるのでしょうか。また、少なくとも、受刑者の場合には、裁量による閲覧はできないわけですので、現実的な提案とは思われません。江口委員は、家事審判法の63条、70条のような事実等の取調べの通知を義務付けることは適切でないという発言をされておりますことから、ましてやその証拠を閲覧させるというようなことは想定されていないように思われます。成瀬幹事及び池田委員の御発言は、裁判所の認識とも異なっているように思われます。   江口委員の発言について申しますと、家事事件手続法63条、70条は事実の取調べをした場合に通知を義務付けております。もちろん全部ではなくて重要なものということにはなりますが、この規定によって、家事審判手続であれば、当事者は事実の取調べをしたということを知り得ることになりますので、その後に閲覧権が保障されることとあいまって、事実の取調べを踏まえた意見の陳述する機会が保障されているということができます。   ところが、法務省事務当局の試案を見ますと、事実の取調べを請求することができるという規定しかなくて、これに応答する裁判、つまり決定はなされるのでしょうけれども、例えば、決定をするについては意見を聴くという規定さえないのですから、例えば、検察官が証拠を取り調べてくださいという事実取調べの請求があった場合に、再審請求人はその証拠の内容どころか、請求があったことすら知らされない可能性もあるわけです。裁判所が取調べる場合には決定はなされるのでしょうけれども、再審請求人が、それは一体どんな証拠なんですか、見せてくださいと言っても、見せてもらえないわけですよね。果たしてこれで再審請求人の手続保障として十分なのでしょうか。私には考えられないことです。  再審請求人が自分は無罪だと主張して新証拠を提出している場合に、検察官がそれに対して、いや、こんな証拠もありますと主張して別の証拠を提出しても、その証拠の内容を見せなくていいというのは、やはり手続保障として不十分であるし、そのような審理の仕方では、再審請求人の納得は到底得られないのではないでしょうか。   このように考えますと、国選弁護制度を設けるのがよいと私は思いますが、仮に国選弁護制度を設けないのであれば、やはり裁判所が手続保障を図る必要があると考えます。少なくとも職権又は検察官請求の事実の取調べの場合には、再審請求人に意見を聴くとした上で、意見を聴く際には、少なくとも意見を言える程度に証拠の内容を通知した上で、このような事実の取調べの請求があったけれども意見はありますかと聴かなければいけないし、事実の取調べの決定をしたのであれば、このような取調べをしましたということを通知しなければ、事実の取調べの結果を踏まえた意見の陳述はできませんので、再審請求人の手続保障としては極めて不十分なものにならざるを得ないと思います。 ○大澤部会長 この弁護人の援助、あるいはそれに関係する論点について、更に御発言ございますでしょうか。 ○鴨志田委員 今回の会議に先立って、各方面からの要望書等が共有されていると思います。そのうち冤罪犠牲者の会、これは冤罪の被害を受けている、ないしはその御家族の団体が発出した声明です。そこに、実際に獄中から再審請求を求めている人のお手紙が引用されています。   「これから再審をするために、検察が保管している証拠の閲覧・謄写をしようと思っても自分ではできない、弁護士に頼んでやってもらわないといけないが、お金がものすごく掛かる、仮に謄写ができたとしても、刑務所の規則で領置できる私物の量が制限されていて、裁判資料を手元に置けない、刑訴法281条の4があるから、書面を支援者や家族に宅下げして保管すらできないから、結局廃棄させられる」ということです。この最後の部分は、目的外使用禁止規定を支援者や家族への宅下げというところに適用するという、刑務所の対応の問題でもあると思うのですが、これが現実だと思うんですよね。   刑務所では手元に置ける私物の量に制限があるから、記録や証拠を仮に閲覧・謄写できたとしても、本人だけでは検討することもできないという、これは本当に切実な訴えで、ここではもう再審の準備段階は取りあえず措くとして、審判開始決定後の国選弁護制度という話になっていますけれども、そもそも論として、やはり弁護人の援助がないということが、どれほど再審請求を難しくしているのかということについては、ここの所轄ではないものについてはなかなか附帯事項にも入れられないというお話もありましたけれども、こういう現実がある中で、弁護人の援助が得られなければ、調査手続によって本当に簡単に棄却されてしまうというリスクも当然ありますし、弁護士の付かない再審請求人が、獄中では何もできない、記録の検討すらできないというところに全く手当てをしないまま、この法改正が進んでいくということがどうなのかということも、今一度お考えいただきたいと思いました。 ○成瀬幹事 私は、「法務省事務当局試案に対する修正案②(追加提案)」の「第3」の「3」「(2)の3」について意見を申し上げます。  田岡幹事の御説明によれば、この御提案は、「第1」の「3(3)」の御提案と同様に、弁護人を選任していない再審請求者が、証人の情報や証拠の内容を把握できるようにする趣旨のようです。そうだとすれば、御提案のうち、刑事訴訟法第299条第1項に倣って、再審請求者や弁護人が、相手方に対し、証人の氏名・住所を知る機会を与え、証拠書類・証拠物を閲覧する機会を与えなければならないという規律を設ける必要性はありません。むしろ、そのような義務を検察官に課すことこそが重要だと思われます。資料の記載では、「検察官」という文字が取消し線で消されていますが、この部分こそが重要でしょう。   また、次の段落において、刑事訴訟法第299条第2項に倣って、「裁判所が職権で事実の取調べの決定をするについては、再審の請求をした者又は弁護人及び検察官の意見を聴かなければならない」という規定を設けることが提案されています。その御趣旨は、裁判所が、意見聴取に際して、再審請求者に対し、職権で取り調べようとする証拠の内容を明らかにするよう求める点にあると思われます。   しかしながら、刑事訴訟法第299条は、当事者主義を採っている通常審において、検察官が公訴事実を立証し、被告人・弁護人がそれに対する反証を行うという対審構造の下、両当事者に対し、相手方が取調べを請求しようとしている証拠や裁判所が職権で取り調べようとしている証拠について、あらかじめ証拠能力や証明力について防御の準備を整える機会を与えるという趣旨の規定です。  これに対して、職権主義を採っている再審請求審は、再審請求者が主張する再審請求理由の有無を裁判所が主体となって審理する二面構造であり、通常審とは手続構造を異にすることから、同法第299条のような規律を設ける前提を欠いています。  よって、御提案のような規律を設けることは相当でないと考えます。   先ほども申し上げましたが、弁護人を選任していない再審請求者が、事実の取調べの対象となる証拠の内容を把握できるようにするには、裁判所が個別の事案に応じて適切に対応することが望まれるということを、再度、強調しておきたいと思います。 ○大澤部会長 更に御発言ございますでしょうか。 ○田岡幹事 試案に盛り込まれていない事項の中で、期日指定に関する規律については、まだ説明しておりませんでしたので、説明させてください。  「法務省事務当局試案に対する修正案」の5ページ、「第3」の「7」、また、「『第3 附帯事項』に記載すべきこと」の6ページの「第2」の「3」「(2)」及び7ページの「(5)」です。  私は、期日指定に関する規律が試案に盛り込まれなかったことは非常に残念です。議員立法は、444条の2及び3において、裁判長が期日を指定することができるという規定を設けることを前提に、その期日には検察官を出席させることができる、また、その期日を再審請求人、弁護人及び検察官に通知しなければならない、そして、その期日は裁判長が手続を指揮する、その期日における手続については、期日調書を作成しなければならないという規定を設けることとしております。これだけでも、実務的には非常に大きな手掛かりになると思います。   私が聞いているところですと、再審請求事件において、裁判所が三者協議を開きたいと言っても、検察官が出席しないという問題があると聞いております。裁判所が再審請求事件の円滑な進行のために、まず三者協議をして共通認識を持ちましょうと言って検察官に呼びかけても、検察官は出席したくありませんというと強制できないんですね。証拠開示についても、附帯事項に任意開示の運用は否定しませんと書いても、弁護人が検察官に対して任意開示してくださいと求めても検察官は応じませんと、検察官は当事者ではないので、弁護人に応答する義務はありませんという態度をとられたり、裁判所が検察官に対して期日に出席してくださいと求めても、検察官は出席したくないので出席しませんという態度をとられてしまうと、強制ができないんですね。これは非常に大きな問題だと思います。   裁判所は、再審請求事件の円滑な進行のために、検察官に対して、公益の代表者であり、裁判所の裁判に協力する立場にある者として、期日に出席するように求めているのに、出席を義務付けることさえできないのかというのは不都合です。せめて、期日あるいは三者協議をするのであれば、検察官に出席を義務付けて、裁判所と再審請求人・弁護人及び検察官の間で、再審請求理由についての共通の認識を持った上で、例えば証拠開示の勧告をするとか、証拠開示の必要性、相当性ついて疑問があれば釈明を求めるというようにしないと、審理が進みません。検察官は、当事者ではないといっても、試案によれば、事実取調べの請求権もあれば、意見陳述権もあり、更には不服申立権もあるというのですから、実質的には、当事者と変わりません。検察官が進行協議に出席しないと、共通の認識は持つことができませんので、裁判所は、再審請求人と個別に連絡を取り、また、検察官とも個別に連絡を取り、そして、その上で、判断をしなければならないことになりまして、これでは、迅速かつ充実した審理というものは到底望めないと考えます。   したがって、期日指定に関する規律を設けるとともに、運用上は、松尾先生の教科書にありますように、相当の内容を伴っている場合、あるいはその可能性が認められる場合には、口頭による意見陳述、事実の取調べの申出とその立会い、証人に対する質問、証拠調べ結果の意見表明を認めるべきであるし、さらに、請求人が希望するときは、審理を公開して行うことも検討に値するということを、附帯事項に規定していただきたいと考えます。 ○村山委員 期日の点は私も非常にこだわっていた点なので、発言します。   この点が案から落ちたことは本当残念です。期日を設けるということが、実際に再審請求審の審理の円滑化、迅速化を促進するということは間違いないと、私、確信しています。なぜ入らなかったというのはそもそも疑問なんですけれども、それはともかく、やはり期日がなぜ必要かという点で、もうちょっとだけ説明させていただきます。再審請求事件についてもやはり争点整理が必要なんですよね。争点整理をするためには、期日で口頭でやりとりをするというのは非常に有益でして、そのときに、検察官も同席してもらって話をするというのが非常に有益です。併せて証拠整理、証拠開示の関係の議論も進むというのが実情だと思います。期日指定の規定がなく、そういうことがルールとしてできないということは、やはり審理の円滑化、迅速化を阻害する要因になると思います。その結果、非常に、一つの審級で非常に時間掛がかっていると思います。   それゆえに、この期日が非常に必要だと思います。また、期日に検察官が出席しないという事例を聞いて、私はちょっとびっくりしているのですけれども、今まで検察官は、期日に出席しますかと言われたら必ず出席するとおっしゃっていたんだと私認識したんですけれども、そういうふうに期日に出席しない、要するに協力しないという形でその期日が進む、三者協議が進むというのは、私から見ると異常事態ではないかなと思います。そういう意味でも、期日の規定をしっかりと作って、審理の円滑化、迅速化に資するような形にするべきだということを、再度申し上げたいと思います。 ○大澤部会長 更に御発言ございますでしょうか。 ○池田委員 期日については、これまで議論を繰り返してきたところであり、手短に申し上げますけれども、期日にプラスの側面があることは、恐らくそのとおりだろうと思う一方で、その実施を一律に義務付けることが、審理の迅速化・充実化や手続保障につながるとは考えにくいとか、あるいは、かえって手続の硬直化を招くという指摘があったことから、そのような制度を設けることは相当でないと考えております。 ○大澤部会長 その他御発言ございますでしょうか。 ○宇藤委員 田岡幹事の御発言の最後の方で、公開についてのお話がありましたので、その点について意見を述べさせていただきます。   公開については、一律公開を義務付けるような規定を設けるということについては反対であるということを、度々申し上げてまいりましたし、現時点でも変わっておりません。その上で、先ほど田岡幹事の御発言の中に、松尾浩也先生の教科書での指摘についてお話がありました。ただ、松尾先生の教科書における当該部分の記述を読みますと、請求人の希望を前提とする表現になっております。したがって、先ほど田岡幹事が御説明され、制度として現在提案されているものと、松尾先生が書かれた当該部分の記述との整合性について、私は疑問があると思っております。松尾先生の記述を制度に落とし込むべしというならば、正確に検討されるべきであって、仮に、松尾先生の説明に賛成であったとしても、現在のような提案というのは賛成しかねるところでございます。 ○大澤部会長 「その他」ということで、ほかに御発言はございませんでしょうか。 ○山本委員 附帯事項に記載していただきたいと思っているところを述べますが、まず被害者に関する通知制度についてですが、再審請求等についての情報連絡を適切に運用することということをお願いいたしたいと思っています。   あと2点ですが、再審請求審の被害者の記録閲覧、審理の傍聴、検察官からの説明について適切に運用することと、最後に、再審公判への被害者参加について、制度導入以前の事案について適切な関与を確保することということを希望します。 ○大澤部会長 更に御発言ございますでしょうか。よろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 弁護人が付いていない場合に審判開始決定がされて、更に事実の取調べまで進むというような場合について、弁護人が付いていないということを前提にすると、裁判所が一定の後見的な役割を果たしていかなければいけないということは、恐らく皆さんそういう認識であるのかなと思います。ただ、その具体的な中身がどうなるのかというところは、具体的事案次第のところもあり、こうだと決め打ちすることについては、なお御議論があったということかなと思った次第です。   それでは、先へ進ませていただきまして、次に配布資料22の別添「要綱(骨子)案」の「第3」の「2 再審の請求についての調査手続」について、審議を行いたいと思います。   この項目につきましては、村山委員から「要綱(骨子)案第3の2の調査手続に関する仮想事例」を御提出いただきましたので、まず村山委員から御説明を頂きたいと存じます。その際、各ケースにおいて、審判開始決定がされるのはどのような場合だとお考えかなどについても、簡単に御説明を頂ければと存じます。それでは村山委員、お願いいたします。 ○村山委員 まず、こういう具体的な事例の検討に時間を取っていただいたことについては、お礼を申し上げます。   今回は、調査手続のスクリーニングによって審判開始決定に至らずに、請求棄却になるのかどうかという点について議論していただきたいと思っています。私の方で提出した書面の「4」のところで、試案の「第3」の「2」の「(2)」の「ア」の「(ア) 再審の請求が法令上の方式に違反したものであると認めるとき。」、又は「(エ)」「理由がないことが明らかであると認めるとき。」に該当するかどうかという問いであります。当初、明らかかどうかというだけの事例を考えていたのですけれども、考えているうちに、こういう場合は法令上方式違反になるのかどうか、さらには、その際には、例えば調査手続の中で補正を促すということは認められるんだという話だったと思うんですけれども、こういう事例の場合に補正を促すべきかどうか、また、検察官に釈明を求めるかなどについても附随的には問題になるだろうと思っています。   まず、「ケース1」から「4」というのは、前に証拠開示の際に使ったのと同じ状況の問題をケースに挙げています。私としては、これらは理由がないことが明らかにはならないということで、開始決定になるのではないかと考えている次第です。   「5」以下は少しアレンジしていまして、少し分かりにくかった部分もあるかと思いますので、御説明させていただきます。   まず、「ケース5」から「7」というのはいわゆるアリバイの主張です。「5」は証人尋問を求める形、それから、「6」は供述証拠の存在を指摘して開示を求める形ということでして、こういうものが方式違反になるのかどうか。仮にこのままでは方式違反だという場合に、何らかの補正や検察官の釈明を求めるということが必要であるかどうか、これについても御検討いただきたいというのが趣旨でございます。それから、「ケース7」は手紙が新証拠としてあるわけですけれども、内容はAという人に話を聞いてほしいというものであります。ただ、Aというのは一応特定していると考えていただければと思います。例えば、お店の名前が田中というお店だったとすると、その女性の名前も田中だというところまでは分かっているという前提でお考えいただきたいと思います。これは、理由がないことが明らかになるのかどうか、また、実質はAという証人を探してほしいという申出に該当するわけですけれども、これが方式違反になるのかどうかという点についても、御検討いただきたいと思います。   それから、「ケース8」と「9」は理由がないことが明らかと言えるかどうかの問題で、「9」は、これは供述心理鑑定が新証拠です。「8」については陳述書ということで、「8」についてはその趣旨がよく分かるように、一応事案の有罪の根拠となった証拠関係の自白のところでアンダーラインを引きましたけれども、その遺体発見現場で出刃包丁で乙を刺したということで、その犯行場所と、それから遺体の発見現場が同一だという前提にしております。それが、「ケース8」では異なるということになりかねないという証拠として、お考えいただきたいと思います。   それから、「10」は、これは昨今問題になりました佐賀県警の鑑定不正をヒントに作りました。確定審の有罪となった証拠の中にある鑑定書、ここには不正をしたと言われている科捜研の職員の名前で作成されているという前提でお考えいただきたいと思います。なお、後の方で科警研となっていますけれども、これは科捜研の誤記でございます。これは、理由がないことが明らかと言えるのかという問題と、それから新聞記事の切り抜きというものが新証拠になるのかということも、問題になるのかもしれません。   「ケース11」は、これは東電社員殺害事件をヒントに作ったもので、こういう場合に、あの事件の場合は、検察官が鑑定を実施して、その結果が決定的な証拠となって再審開始決定から無罪になったと認識しているわけですけれども、この事案の特徴は、現在の法制を前提にする限り、押収されている現場遺留物の鑑定というのは、再審請求人が請求前にすることはできないと思われます。つまり、こういった形の鑑定が認められなければ、請求人側は一切証拠は提出できないという状況にあるということでお考えいただきたいと思いますし、また、仮にそうではないんだと、代替手段があるんだというのであれば、その点も含めて御教示いただきたいと思います。   「ケース12」というのは、真犯人の存在を明らかにできるかもしれないという状況での証人尋問の請求です。これも、申出というのが手紙でも、請求書自体にそういうふうに書いてあるということで御理解いただいてよろしいかと思います。要は、同房者を聞いてもらえば、真犯人が分かるかもしれないという事実を証人尋問で明らかにしたいという内容の請求があったということでございます。この「ケース11」及び「12」も、これが方式違反になるのか、また補正や検察官に釈明を求める必要があるのかどうかという点についても問題になろうかと思っています。   私がケースを作った意図は以上であります。私としては、何らかの形で検察官の釈明を求める、若しくは補正をすると、必ずしも方式違反、若しくは理由がないことが明らかという形で、直ちに却下する事案にはならないのではないかという意図はありますが、ただ、その濃淡はかなりあると思っていまして、その辺を皆さんどういうふうにお考えなのかということを伺いたいということで、出題をさせていただきました。   一応、私の方のこの事例の提出させていただいた意図は以上でございます。 ○大澤部会長 ありがとうございました。事例も作っていただきまして、ありがとうございます。   それでは、御意見、御質問等がある方は、挙手の上御発言をお願いいたします。いかがでしょうか。 ○江口委員 村山委員には、提出命令の仮想事例に続きまして、再審請求についての調査手続につき仮想事例を作成いただきましてありがとうございます。  最初に「要綱(骨子)案第3の2の調査手続に関する仮想事例」について検討する前提として、この調査手続につきまして、先日、東京地方裁判所と立川支部の部総括裁判官らで議論をしましたので、その概要を御紹介させていただくとともに、私も含めて、現場の裁判官が、この調査手続をどのようなものとして考えているのか、つまりは調査手続の適用のイメージのようなものをお話しさせていただければと思います。   まず、その議論では、調査手続は、重大再審請求事件につき、適切かつ迅速な審理を実現するためにも有益な制度であるという意見がありまして、多くの賛同を得ておりました。  そして、「試案〔改訂版〕」の「第3」の「2(2)ア(エ)」に当たるのはどのような場合かについても議論がされました。その議論におきましては、現在の実務におきましては、例えば、提出された再審請求書と新証拠の内容からだけでも、再審請求には理由がないと強く予想されるような場合でも、決して誤った判断をしてはならないとの考えから、念のため、確定記録を取り寄せて検討し、再審請求理由がないかを判断した上で、再審の請求を棄却する場合も多いかと思いますが、正にこのような場合が「(エ)」に当たるのではないかとの意見があり、多くの賛同を得ておりました。   以上の議論を踏まえまして、私見を申し上げますと、「(エ)」は、飽くまでも、今申し上げたような現在の実務の運用を踏まえまして、恐らくは「ア」「(ア)」ないし「(ウ)」に当たることとなることが強く予想されるけれども、念のために確定記録を取り寄せて検討するような事案につき、適用されることとなるであろうと思っております。   以上のような考え方と申しますか、調査手続の適用のイメージを前提として、私の方で、作成いただいた「要綱(骨子)案第3の2の調査手続に関する仮想事例」の検討を試みたところでございます。  しかしながら、まずこのような考え方を前提といたしましても、調査手続におきましては、審判開始決定をしない場合には、再審請求の棄却又は再審開始の決定とするかを判断することになりますことからしますと、それぞれの場合が「試案〔改訂版〕」の「第3」の「2(2)ア」の「(ア)」又は「(エ)」に該当するか否かは、確定判決や確定記録の内容、さらには各ケースに挙げられている証拠の内容によると言わざるを得ないというのが、正直なところでございます。  別の言い方をしますと、確定判決の証拠構造の中で新証拠の証拠価値をどのように判断するかは、裁判体の判断事項そのものになりますし、その前提となる法解釈自体につきましても、裁判体の判断に委ねるべき事項でございます。したがいまして、少なくとも裁判所、裁判官の立場として、何らのただし書も付けずに確定的なものとして、仮想事例のそれぞれのケースについて結論を申し上げることは困難であることを、まず御理解いただければと思います。   その上で、あえて一般論として申し上げることができるとするならば、いずれのケースにおきましても、新証拠とされるものの信用性やその作成経過が問題となって、これが信用できるとするならば、甲の犯人性を認定している確定判決を動揺させ得るものであると考えられます。動揺させることとなる旧証拠がどれほど強く確定判決を支えるものであるかにもよりますが、その信用性等を検討するための審理が必要であると判断されることが少なくないように思っております。   なお1点、「ケース5」、「6」、「11」、「12」では新証拠の添付がございません。これが法令上の方式を充足するものか、一定の証拠請求や証拠提出命令の請求をもって新証拠の添付と同等に扱うのかどうかは、これは検討されている調査手続の適用固有の問題というよりも、従前よりある条文解釈の問題であると思われまして、これについては裁判体の判断によるものと考えているところでございます。   最後に、調査手続の適用のイメージの共有のために、今申し上げた東京地方裁判所の部総括裁判官らの議論で、「(エ)」に当たることとなるのではないかとされた事案を御紹介させていただきます。例えばですが、いわゆる6号再審請求におきまして、新証拠として、請求人本人が確定審で主張したことと同じ内容を記載した陳述書や、他の著名再審事件に関する新聞記事の写しや、確定審で証人尋問が実施された証人の供述調書であって、確定審で開示されていたものが提出され、なおかつ確定審で主張したのと同内容の主張を再審請求理由として主張しているような事案が、これに当たるのではないかとの意見がございまして、多くの賛同を得ておりました。   なお、この議論で出た事例を参考といたしまして、私の方で仮想事例を考えてみますと、例えば「ケース10」では、特定の都道府県警察の科学捜査研究所職員による虚偽のDNA型鑑定の鑑定書作成に関する新聞記事の切り抜きが新証拠とされているかと思いますが、例えば当該事件の鑑定を実施した都道府県警察が、新聞報道された虚偽の鑑定書を作成した都道府県警察とは全く別の警察署で、しかも、鑑定の内容自体も異なるような場合には、全ての事件の鑑定をやり直す必要があるような特別の事情がうかがわれるような場合を除いては、やはり「(エ)」に当たることとなるように思われます。   大変長くなって恐縮でございますが、以上でございます。 ○大澤部会長 それでは、他に御発言ございますでしょうか。 ○成瀬幹事 村山委員には、証拠提出命令の仮想事例に引き続いて、調査手続の仮想事例も作成していただき、感謝申し上げます。ただいまの江口委員の御発言を受けて、私の意見を簡潔に申し上げたいと思います。   江口委員は、御発言の中で、東京地方裁判所と立川支部の部総括裁判官の皆様の御意見についても紹介してくださいました。その中で、現場で再審請求事件を担当しておられる裁判官の皆様が、調査手続は、重大再審請求事件につき、適切かつ迅速な審理を実現するためにも有益な制度であると受け止めてくださっていると知り、調査手続の提案者として、とてもうれしく思いました。   江口委員が御発言の中で強調しておられたように、仮想事例の各ケースが、「試案〔改訂版〕」の「第3」の「2(2)ア」の「(ア)」又は「(エ)」に該当するか否かは、確定判決や確定記録の内容、各ケースに挙げられている新証拠の具体的内容等を踏まえて、個々の裁判体が判断すべき事柄ですので、この場で確定的な結論が出せるようなものではないと理解しています。  そのような限界がありながらも、江口委員が、各ケースの判断の方向性や留意点、さらには、「(エ)」に当たると考えられる具体例についてお話しくださったことにより、調査手続の運用のイメージをつかむことができました。本日の議論も踏まえつつ、今後、裁判所において、この調査手続が適切に運用されることを期待しております。 ○大澤部会長 更に御発言ございますでしょうか。 ○田岡幹事 先ほど江口委員から、東京地方裁判所と立川支部における部総括の議論を御紹介いただきまして、ありがとうございました。江口委員の御説明によると、裁判体による判断であるという留保は付くけれども、いずれも、新証拠は確定判決を動揺させ得るものであるから、信用性を検討するための審理が必要になるのではないかというお話がありました。そうであれば、いずれも、直ちに「(ア)」又は「(エ)」に当たるとして、迅速に棄却されることはなく、審判開始決定がなされることになるという趣旨であると理解しました。そのような解釈が明確になったと言えるか分かりませんけれども、もしそうであれば非常に大きな意味があったと思います。  その上で、私も仮装事例について検討してまいりましたので、特に方式違反の問題を念頭に置きながら、意見を申し上げたいと思います。   「ケース1」から「4」、「8」及び「9」は新証拠が提出されており、それが証拠書類又は証拠物として請求書に添付されていることから、少なくとも「(ア)」の方式違反に当たらないということが明確な場合であると理解しております。  「ケース5」から「7」は、いずれもアリバイを裏付ける女性の供述に関する証拠でありながら、「ケース5」は証人尋問の申出、「ケース6」は未開示の証拠、つまり証拠提出命令であることから、これらが方式違反に当たらないのかという問題があると理解しております。また、「ケース7」は御本人のお手紙ですので、これが証拠書類に当たるとすれば方式違反に当たらないわけですが、実質的に請求書と同じようなものですので、これも方式違反に当たらないのかということが問題になり得ると理解しております。ただ、結論的には、いずれの場合も、方式違反に当たらないと考えるべきではないかと思います。   まず、「ケース5」は、仮に女性の供述が具体的なものであって、女性の尋問を実施することによって、女性の供述を裏付ける証拠が発見されるということもあり得るわけですし、また、女性の供述を踏まえて、他の旧証拠を見直した結果、無罪を示す証拠が実はあったという場合も考えられるわけですから、少なくとも「ケース5」で、女性の尋問を実施せずに再審の請求を棄却するのは、審理不尽と言わざるを得ないのではないかと思います。   問題は、刑訴規則283条及び試案の「第3」の「1」「(2)」には「証拠書類又は証拠物」と書かれていることから、請求書に「証拠書類又は証拠物」が添付されていない場合は方式違反に当たるのではないかということですが、私は、刑事訴訟法435条6号の新証拠は「証拠書類又は証拠物」に限定されるわけではないのですから、証人尋問の申し出であったとしても、直ちに不適法と解する理由はないのではないかと思います。ただ、仮に「証拠書類又は証拠物」は限定列挙であって、証人尋問はこれに当たらないというのであれば、少なくとも再審請求人に補正を命じるべきでありまして、例えば、証拠書類として、弁護人作成の報告書を提出させたり、あるいは「ケース7」のように再審請求人本人のお手紙を提出させるなどして、女性の住所、氏名とともに、供述すると予想される内容を明らかにさせれば、方式違反に当たらなくなる可能性もあります。また、検察官に対して、女性の供述調書はないのですかとか、その所在は把握していないのですかと釈明を求めることによって、「ケース6」のように、未開示の供述調書あるいは捜査報告書がありますということが判明することもあり得ます。このような場合には、請求書に証拠書類が添付されたのと同視し得ることができると思われます。このように請求書に「証拠書類又は証拠物」が添付されていない場合でも、直ちに方式違反とするのではなく、少なくとも再審請求人に補正を命じることによって、証拠書類が提出されれば方式違反に当たらなくなる可能性がありますので、審判開始決定をすることが適切な事案ではないかと考えました。   次に、「ケース10」から「12」です。まず、「ケース10」は、新聞記事の切り抜きは一応証拠書類には当たりますが、類型的に信用性が乏しいのではないかと考えられるおそれがある事例でございます。ただ、新聞記事であったとしても、問題は記事に書かれている内容、事実の方でありまして、この場合は警察発表ということですから、虚偽の鑑定書を作成したという事実があった事実自体は間違いないと思われます。刑事訴訟法435条6号は新証拠の提出を求めておりますが、仮に新証拠がなくても、新事実があれば確定判決の有罪認定に合理的な疑いが生じるという場合には、請求書に添付されている証拠書類そのものは信用性が乏しいとしても、その後の事実調べや証拠提出命令によって新事実が判明する可能性がありますから、刑事訴訟法435条6号の新証拠に当たると、また明白性が認められる可能性あるといえますので、審判開始決定をすることが相当な事案であると考えます。   難しいのは、「ケース11」です。私の理解では、現場遺留物は証拠物ですので、請求書には添付されておりませんが、先ほどの「ケース6」と同様に考えるのであれば、検察官が保管している証拠物の提出を命じる形での再審請求というのは、証拠物の添付と同視し得るといえますので、方式違反には当たらないということができると思います。仮にこれが方式違反に当たるというのであれば、少なくとも、再審請求人に補正を命じるべきでありまして、なぜそのような現場遺留物があるということが分かったのですかという事情について、証拠書類として、弁護人作成の報告書や再審請求人本人のお手紙を提出させれば、少なくとも方式違反には当たらない可能性があります。また、検察官に対して、そのような現場遺留物があるのですかという釈明あるいは意見照会をしたところ、確かにありますというのであれば、請求書に添付されたのと同視し得るといえますので、審判開始決定をした上で、現場遺留物の鑑定の実施に進むのが適切であると考えます。   「ケース12」は、同房者の尋問をしても直ちに新証拠になるわけではなく、その同房者の尋問をすることによって知人、つまり真犯人と思われる人の存在が明らかになって、その真犯人の供述が明らかになれば新証拠に当たるということから、2段階になっているという事案であると理解しております。仮に知人の話が本当だとしますと、真犯人が見つかる可能性がありますので、事実の取調べをせずに、これを直ちに棄却することは、再審請求人にとって不幸なことであるだけでなくて、被害者の御遺族にとっても真犯人が見つかる可能性があるのに、その機会を失うことになるという意味において、不幸なことです。したがって、仮に証人尋問の形での新証拠の提出が方式違反となるのであれば、先ほど同様ですけれども、少なくとも、再審請求人に補正を命じるべきでありまして、証拠書類として、その旨の弁護人作成の報告書又は請求人のお手紙を提出させた上で、検察官に対して、こういう話があるのだけれども本当のところどうなのかと、この点について捜査はなされているのかという釈明又は意見照会をしまして、そういう話は初めて聞きましたと言われれば、少なくとも補充捜査を実施していただく必要があるでしょうし、また、既に捜査をしているのでしたら、それに関連する証拠を取り寄せる必要があるでしょうから、審判開始決定をすることが適切な事案であると思います。   まとめますと、これらのケースはいずれも直ちに「(ア)」の方式違反に当たるとして棄却すべきではなくて、少なくとも再審請求人に補正を命じたり、検察官に釈明又は意見照会をすべきであり、その結果、事実の取調べ又は証拠提出命令の必要性がある場合には、審判開始決定をすることが適切であると考えました。 ○大澤部会長 更に御発言ございますでしょうか。よろしいでしょうか。 ○村山委員 方式違反にしても、理由がないことが明らかにしても、この調査手続の段階で検察官に釈明を求めるということについては皆さんどういうお考えなのか、要するに、補正を命じるというのは、請求に対して補正を命じるわけなんですけれども、むしろ検察官に、未提出記録の中にこういうものがあるかどうかというのを尋ねるというのは、釈明を求めるということになると思うのですけれども、それは必ずしも開示を求めているわけではない。そういうことをやるということは、私は当然許されると理解して、それはきちんとやって、その結果、例えば方式違反では落ちないけれども、釈明をした結果、その理由がないことが明らかという方に回る可能性はあるということは、私は否定はしてはいません。そういうような運用で、検察官に釈明を求めるということ自体は、皆さんは、当然できるんだという理解されているということでよろしいのでしょうか。 ○江口委員 「試案〔改訂版〕」に記載されているこの調査の内容がどこまでの意味を持つかということだと思われますが、今村山委員がおっしゃったような釈明等をするということも、当然に考えられると思っております。 ○成瀬幹事 私も、江口委員と同意見です。「試案〔改訂版〕」の「第3 附帯事項」の「1(2)」の一つ目の丸には、調査手続の運用に当たっては、個別の事案に応じ、検察官の意見を聴取することなど、適切な対応がなされることを期待すると書いてありますので、検察官に対する意見聴取も、事案に応じて、当然なされ得るものと理解しております。 ○村山委員 検察官の意見聴取というのは、その請求自体についての意見という意味だと思いますが、今私が申し上げているのは、新証拠として添付されていないけれども、例えば捜査記録で未提出記録の中に、それに該当するものがあるのですかというなことの釈明を求めるという意味を含めています。それはそれで含まれているという御意見だと伺ってよろしいでしょうか。 ○成瀬幹事 はい。再審請求者が「特定の証拠が公判未提出記録の中にあるはずだ」と主張している場合に、裁判所が、事案に応じて、本当にそのような証拠があるのかを検察官に確認する、まさに釈明を求めることも、先ほど言及した「第3 附帯事項」の「意見聴取」に含まれていると考えます。 ○田岡幹事 打合せや進行協議をすることは想定されていないのでしょうか。つまり、調査手続において、裁判所が検察官に意見聴取をすることは想定されているというのですけれども、再審請求人・弁護人にも同席していただいた上で、本当にそういう証拠はあるのでしょうかと確認するということは調査手続においては行わないということなのか、事案に応じて個別に行うこともあるということなのか、その点はどのようにお考えなのでしょうか。 ○江口委員 今の田岡幹事の御指摘については、調査手続でどこまでの範囲での検討が必要なのかという裁判体の個別具体な判断にもよりますが、恐らくそのような場面もあり得ると思います。 ○大澤部会長 更に御発言ございますでしょうか。よろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 それでは、この点についての審議はここまでということにいたしまして、ここで休憩をとらせていただきたいと思います。              (休    憩) ○大澤部会長 会議を再開したいと思います。   次に配布資料22「試案〔改訂版〕」の「第3 附帯事項」について審議を行いたいと思います。既にここまでの審議の中で、附帯事項について御意見・御発言されているところもございました。更に追加として御発言いただくという趣旨で、御意見を承りたいと思います。御意見・御質問等がある方は、挙手の上御発言をお願いいたします。 ○恒光幹事 今回のこの附帯事項の有様について、前回、村山委員、鴨志田委員、田岡幹事が提出された「『第3 附帯事項』に記載すべきこと」に即して、幾つか意見を申し上げたいと思います。   まず、こちらの「第1 確認事項」につきましては、これまでの部会での議論でも既に各委員からの意見として述べられている点も多く含まれておりますので、また議事録にも残っておりますので、これを改めて附帯事項の中で確認する実益がどれほどあるかというのは、疑問が残るところでございます。   また、この「第1」の「1(1)」の三つ目の丸にある再審請求理由との関連性のお話ですけれども、この点は個々の裁判官が独立して判断すべき事項であって、また、同じ「第2」の「3」や「7」にあるような訴訟指揮にわたる事項も、個々の裁判官の裁量に委ねられるべきものであります。加えて、先ほど山本委員から被害者配慮の在り方として、具体的事項を列挙された上で附帯事項に盛り込むべきとされていたと思いますけれども、これが運用の在り方を定めるものという御趣旨で述べられていたのであれば、同様のことが言えると考えます。裁判事項に関する判断ですとか、訴訟指揮の在り方について、最高裁判所事務総局関係者を含む法制審議会の総意として一定の方向性を示すことは、憲法が定める裁判官の職権行使の独立を害するものと言わざるを得ません。   また、個別に補足しますと、「第2」の「3(4)」について、「試案〔改訂版〕」においては審理終結日を定めるに当たっては、再審請求者又は弁護人及び検察官の意見を聴かなければならないとなっておりますので、実務上はそれらの意見を踏まえて、審理の経過やその後の審理予定等を考慮して適切な日を定めることになると思われますけれども、御提案によりますと審理終結日を定めるには、必ず相当な猶予期間を置いて定めることを要求する内容になっております。しかし、例えば、裁判所から繰り返し主張立証の補充を促していたにもかかわらず、請求人側においてこれに応じないまま時間が経過した事案など、審理の経過等を踏まえれば、必ずしもそのような猶予期間を設ける必要のない事案もあるかと思われますので、御提案のような事項を盛り込むことについては反対いたします。   その他、「第2」の「3(5)」や「4」につきましては、これまでの当部会における議論状況や、先ほど申し上げました規則制定権の性質に照らしましても、これらを附帯事項に盛り込むということについては反対するところでございます。 ○大澤部会長 他に御発言ございますでしょうか。 ○川出委員 私は、答申の在り方や内容につきまして、前回会議における成瀬幹事の御意見の中で示された整理の仕方に賛成いたします。その上で、附帯事項に関して何点か意見を申し上げたいと思います。   まず大前提として、当部会は、法制審議会の総会から諮問事項について調査審議をし、報告することを求められているわけですから、当然のことですけれども、総会に対して示す答申案は、当部会として責任をもって報告できる内容のものである必要があります。こうした観点から、日本弁護士連合会の委員・幹事から前回会議で提出された「『第3 附帯事項』に記載すべきこと」と題する資料の「第3 継続的審議事項」のところで挙げられている事項を見ますと、いずれの事項も刑事再審手続に関する規律の在り方という、諮問事項を超える内容を含むものです。そのため、当部会としても、十分な議論・検討はしておらず、意見の一致があるわけではないと思われますので、これを総会に対して責任をもって報告することは困難であると思います。   それから、本日配付された「『第3 附帯事項』に記載すべきこと②(追加提案)」では、「第3 継続的審議事項」のところで、「4 証拠又はその一覧表の提示命令」が挙げられております。これは、諮問事項の枠内のものではあるのですが、検察官が保管する証拠の一覧表を裁判所に提出することの当否に関しては、当部会におけるこれまでの審議の中で、再審請求審の構造と整合しないなどの理由から複数の反対意見が示されているところでして、今後そこで指摘された理論上の検討課題等が克服される見通しがあるというわけでもありませんので、これについても、継続的審議事項として明記することは相当でないと考えます。   他方、「『第3 附帯事項』に記載すべきこと」の「第4 附則事項」の「1」に記載されている点に関しては、刑事再審手続に関する新たな規定が設けられた場合に、それについて、施行後一定期間が経過した後に検討を加える旨を記載すること自体は一考に値するものだと思います。ただ、新たな規定に関して意味のある検討を行うためには、その運用が一定程度蓄積されることが前提となりますが、再審請求の実情に照らすと、その検討を施行後3年が経過した場合に行うというのは、実際問題として現実的でないと考えられますので、3年と記載することは、相当ではないと思います。 ○田岡幹事 まず、私たち3名の意見「『第3 附帯事項』に記載すべきこと」を踏まえて、附帯事項に一定の事項を盛り込んでいただいたことについては感謝申し上げます。ありがとうございました。その上で、附帯事項を更によいものとするために意見を申し上げます。   まず、「第3」の「1」には、「(1)」証拠の提出命令と「(2)」調査手続、審判手続等に関するものしか記載されておりませんが、本日の議論におきまして、試案に盛り込まれていないことについても議論がございました。これは「2」の方に書かれることになるのかもしれませんけれども、例えば、再審開始決定に対する不服申立ては慎重かつ十分な検討を行うべきこと、弁護人による援助は将来的な検討課題であること、裁判所が裁量によって再審請求人に証拠を閲覧させることはできることのほか、手続規定についても、松尾先生の教科書の表現どおりにするかどうかはともかくとして、期日を指定し、請求人が希望する場合に公開することも検討に値すること、このような項目については、「第3」の「1」又は「2」に記載することを検討をしていただきたいと思います。   その上で、まず「第3」の「1」の試案に記載されている制度の運用に関するものについて、意見を申し上げます。「(1)」の証拠の提出命令について、裁判所による証拠開示の勧告又は検察官による任意開示という従来の実務運用が否定されないことが明記されたことはよかったと思います。ただ、この任意開示がいわゆる直接開示型であるということが明記されませんと、検察官が弁護人からの連絡に応じないという問題が残ります。また、検察官は裁判所に提出するということになりますと、繰り返し申し上げておりますとおり、再審請求人は閲覧することができませんので、再審請求人の証拠に対するアクセスを保障することになりません。ですから、少なくとも、任意開示の場合には、裁判所に任意に提出するという方法のほかに、再審請求人・弁護人に直接閲覧・謄写の機会を与える方法によることができると、そのような運用が可能であるということは、明記をしていただきたい。少なくとも、この部会において、確認をしていただきたいと考えます。   また、「1」「(1)」と「(2)」の両方に共通することですけれども、「個別の事案に」という文言、「適切な対応がなされることを期待する」という文言が用いられています。例えば、「(1)」の一つ目の丸、「(2)」の一つ目の丸、また、「2」の一つ目の丸と二つ目の丸に「個別の事案において」という文言が入っております。「(1)」の一つ目の丸について言えば、もちろん個別の事案に応じて証拠の開示の勧告や任意開示をする場合もあれば、しない場合もあるという意味では、個別の事案に応じた適切な対応がなされるべきであるということについては異論はないんですけれども、このような書き方ですと、個別の事案に応じて適切に対応することもあれば、適切に対応しないこともあるかのように読めますので、当然、全ての事案において適切に対応することを前提に、開示をすることもあれば開示をしないこともあると読めるような記載にしていただきたいと思います。そうしないと、あたかも個別の事案においては適切な対応をしなくてもよいと読めると困ると思います。「第3」の「2」の一つ目の丸について言えば、再審請求の準備段階における裁判所不提出記録及び証拠物の閲覧・謄写については、検察官において、刑事訴訟法47条の趣旨を踏まえ、個別の事案により適切な対応がなされることが望まれると記載されているのですが、個別の事案にかかわらず、常に適切な対応がなされるべきではないでしょうか。適切な対応がなされた結果、個別の事案において閲覧・謄写が認められる場合もあれば、認められない場合もあるとは思うのですけれども、適切な対応は常になされるべきではないかと思われましたので、この表現が気になりました。   「3」の今後の検討についても、先ほど3年という期限は短過ぎるという御指摘がありました。私は、余り先にしますと、当部会における議論が引き継がれないことになり、必ずしも十分な検討がなされないことになると困りますので、3年とするのが適切だと思います。その上で、検討の仕方として、「正確な認識に基づいて」と書かれておりますけれども、例えば、法制審議会の新時代における刑事司法特別部会の最終的な取りまとめを見ますと、より踏み込んだ文言になっております。すなわち、録音・録画実施状況や公判における供述の任意性、信用性の立証状況も検討対象で、客観的なデータに基づき幅広い観点から分析評価を行うことが重要である、見直し規定の条文化の際には、検討の時期を具体的に定めた上で、上記の趣旨を適切に盛り込むよう検討すべきであると、このように書かれております。検討を行うにも、客観的な統計や実例が収集されませんと意味のある検討を行うことができません。  したがいまして、是非、一定の期限を明確にしていただきたいということとともに、正確な認識に基づく検討をするためにも、客観的な統計だけではなくて、具体的な事例についても収集をした上で、検討ができるようにしていただきたいと思います。   そして、具体的な事例の検討を行うためにも、目的外使用禁止の規定がありますと、証拠を見ることができませんので、刑事訴訟法47条及び刑事訴訟法の281条の4の規定は見直す必要があると考えます。このような規定がありますと、例えば、再審無罪判決が確定した事件において、誤判の原因を明らかにしたり、その結果を踏まえて再審法の見直しを検討することができなくなってしまいます。見直しの際に具体的な事例の検討を行うために刑事記録にアクセスすることは、必ずしも目的外使用に当たらないということを明確にしないと、結局、証拠を見ずに議論することになってしまいます。録音・録画の議論もそうなっておりますけれども、再審法の議論も証拠を見ずに議論することには限界があると思われますから、目的外使用禁止の規定には例外を設けるべきではないかと、見直しが検討されるべきではないかと思います。 ○玉本幹事 まず、1点目の御指摘で、任意開示が直接開示型を含むものであることを確認したいということでしたけれども、この附帯事項の「第3」の「1」の「(1)」の一つ目の丸では、「証拠の提出・開示」と併記しておりまして、これは直接開示を含み得るという趣旨で、そういうふうに記載しているものですので、そこはそのように御理解いただければと思います。   それと、個別の事案に応じ適切な対応がなされることを期待するというところも多分に表現ぶりの問題かと思いますけれども、仮に「個別の事案に応じ」ということを取ってしまいますと、単に「適切な対応がなされることを期待する」ということになりますので、読みようによっては、全ての事案について、ここに記載されているような対応を採らなければいけないというような読み方もされるという可能性もあるところでございまして、いろいろ考えた上で、このような記載ぶりを提案させていただいているというところでございます。   差し当たり、以上でございます。 ○大澤部会長 他に御発言ございますでしょうか。 ○宇藤委員 私からは、「『第3 附帯事項』に記載すべきこと②(追加提案)」の「第3」の「4」について、発言をさせていただきたいと思います。「第3」の「4」というのは、証拠又は一覧表の提出命令についての御提案ということでございますが、日本弁護士連合会の委員・幹事の方から提案いただいたような形にするという点は、前回会議での私の発言を受けていただいたものだと思われますので、この点について若干意見を述べさせていただきます。   御提案のような形で、具体的な形で附帯事項として盛り込むことについては、私は反対でございます。まず、第16回会議において、私は確かに刑事訴訟法第316条の14第2項に示される「検察官が保管する証拠の一覧表」に相当するものを、検察官が再審請求者やその弁護人に提示するという制度の可能性については、なお検討の余地があるという発言をいたしました。このように考える理由は次のようなものです。まず、通常審での証拠開示制度が既に整備されており、実務上定着している任意開示をも含めて、旧来と比較してかなり広い開示が可能となっております。そのことを踏まえますと、本部会において検討する閲覧・謄写、証拠開示の対象範囲という問題は、既に通常審における証拠開示がかなり充実しているにもかかわらず、なお、再審における証拠開示を検討すべき場合があるとして、どのように対処するかという点に関わっているということになります。   もう少し踏み込んだ言い方をいたしますと、先のように既に整った制度の下でも開示されない場合のなかには、通常審における関係者の技量等の問題を含む個別事案における具体的経緯に由来するものであるということが否定できません。第15回会議において、田岡幹事が同様の趣旨の御発言をされており、私もそのとおりであると思います。   したがいまして、本部会で検討すべき問題もこのようなものを踏まえたものであり、少なくとも、通常審における現行証拠開示制度、またその下における通常の開示範囲を前提とすべきであって、そのような状況を前提としない議論とは区別した検討をすべきものであると認識しております。そして、以上のような筋道で検討する限り、「試案〔改訂版〕」のような形で整備を進めるとしても、なお刑事訴訟法第316条の14第2項のようなリストの取扱いは、検討すべき論点として残り得ると考えた次第でございます。   それでも、御提案に反対する理由は幾つかあります。まず、検討すべきは再審請求審の段階であり、通常審とは段階が異なること、また手続構造が異なることに鑑みますと、おのずと変更すべき点があるはずです。そのため、再審請求審における証拠の閲覧・謄写であることの特性を踏まえた検討が必要であると考えられます。また、仮に、先のような一覧表を作成するとして、そのための作業量を含め、どの程度のリソースが必要であるのかの検討も必要であろうと思われます。したがって、刑事訴訟法第316条の14第2項の一覧表に相当するものを検討するとは言っても、少なくともそのまま持ってくるわけにはいかないと考えております。   刑事訴訟法第316条の14の一覧表の導入の経緯を振り返ってみても、整備された証拠開示制度の下での運用実務を踏まえたものとなっております。今回の再審制度に関する法整備についても、今般の「試案〔改訂版〕」に記載された法整備がされた後、再審請求審の証拠の提出命令制度が運用されていく中で、仮に証拠の一覧表を提出するという運用がなされていくようであれば、それでよしということでありましょうし、そうでなくとも、必要な制度を具体的に検討できる条件が整うだろうと考えられますので、現時点で具体的な制度の立て付け、参照すべき条文を挙げて文書に記載するのは適切ではなく、「試案〔改訂版〕」に示されるような表現で十分であると考えております。 ○江口委員 附帯事項の記載内容ということで、今、証拠提出命令についての議論がされておりますので、併せて、私の方で1点、情報提供させていただければと思っております。   第15回会議におきまして仮想事例を基に、証拠提出命令における関連性の範囲について議論がされたかと思いますが、先ほども申し上げましたように、先日東京地方裁判所と立川支部の部総括裁判官らで、この仮想事例を参照するなどして、証拠提出命令について議論をいたしましたので、その概要を御紹介させていただきます。   まず、一般論となりますが、この証拠提出命令制度の創設につきましては、これまでの実務では、再審請求審におけるいわゆる証拠開示については、根拠規定も明確な判例もない中で、手探りで手続を進めていたが、新たに提出命令制度として明文規定ができることはすばらしいことであり、再審請求審を適切に進行していくのに大きな意義を有するのではないかとの意見があり、多くの賛同を得ておりました。  また、提出命令における関連性につきましては、仮想事例においては確定判決や再審請求理由の具体的な内容が明らかではないため、議論するのが難しい部分はあるにせよ、確定判決の内容と再審請求理由の内容によって、かなり関連性は広がりを持つと考えられ、私が第15回会議で関連性が認められるとした範囲に違和感はないとの意見があり、これも多くの賛同を得ておりました。   さらに、提出命令の規定のほかに、裁量的な提出命令に関する規定を設けることの必要性については、仮にこれを条文として規定するとなると、関連性がない証拠について、裁判所が必要性を認めれば証拠の提出を命ずるという規定となるが、これまで複数の重大再審請求事件に関与してきたが、これまでの実務でも、裁判所が関連性のない証拠について開示を勧告したという事例を見たことがなく、そのような規定が必要であるとも思われないとの意見がございました。また、もし仮に実務において提出されるべき証拠が提出されないといった問題があるとしたならば、それは関連性の解釈をより適正なものとするという方向で解決されるべきであり、裁判所は関連性があってもなくても証拠の提出命令が出せるということになってしまうと、結局証拠の提出命令の範囲がかえってブラックボックス化してしまうのではないかとの意見がございました。   なお、この提出命令制度ができることによって、今、正に附帯事項として議論されることとも関連しますが、実務の運用として、提出命令を出すまでもなく、検察官による積極的な証拠の任意開示がされるようになることが期待されるほか、これまで行われてきた証拠の任意開示の促しや、証拠開示の勧告も、より活発に行われることも予想され、また検察官はこれに誠実に応じることが期待されるので、そのような意味で、従来の実務よりも開示される証拠の範囲は広がるのではないかとの意見がございました。   以上、御紹介させていただきます。 ○大澤部会長 それでは、更に御発言ございますでしょうか。 ○池田委員 日本弁護士連合会の委員・幹事の方々から御提出いただいた「『第3 附帯事項』に記載すべきこと」のうち、「第2」の「7」において、「再審請求審において取り調べられた証拠については、公判手続の更新に準じて、再審公判においても、証拠能力が認められる限り、当事者の請求又は職権により取り調べるべきこと」及び「再審請求審において争う機会があった証拠については、再審公判において、検察官は、証拠とすることに同意するべきであること」を附帯事項に記載すべきとの御提案が示されております。  この点について、一般論として申し上げれば、再審請求審において取り調べられた証拠について、証拠能力が認められる場合には、再審公判においてその取調べが行われることが多いでしょうし、検察官としても、再審請求審において争う機会があった証拠については、再審公判において証拠とすることに同意することも多いと思われます。   もっとも、公判手続における証拠の取調べの必要性は、飽くまで裁判所の合理的裁量により判断されるべき事柄であるところ、御提案は、再審公判の受訴裁判所は、再審請求審において取り調べた証拠について、証拠能力が認められる限り、一律にその取調べを行わなければならないこととするものであって、不合理であると考えます。   また、争点、証拠の位置付けは、再審請求審と再審公判とで異なり得ることから、再審請求審において、あえてその信用性を争うことまではしなかった供述であっても、再審公判において、証人尋問により信用性を吟味することが必要となる場合もあり得ると考えられます。そのため、御提案のように、検察官が再審請求審において争う機会があった証拠について、再審公判で必ず証拠とすることに同意しなければならないとすることは、やはり不合理であると言わざるを得ません。   したがいまして、御提案のような事項を附帯事項に記載することは相当でないと考えます。 ○大澤部会長 更にございますでしょうか。 ○田岡幹事 御意見をいただきましたので、それを踏まえて、補足的に意見を申し上げます。   まず、「第2」の「7」については、確かに再審請求審において取り調べられたとしても、再審公判において必ずしも取り調べる必要はない証拠はあるのでしょうから、そのようなものまで取り調べよという趣旨ではございません。私が問題にしておりますのは、繰り返しになりますけれども、福井事件における夜のヒットスタジオの捜査報告書のように、検察官が同意をしなければ証拠能力が認められない証拠について、再審請求審において、あるいは再審開始決定においては、無罪を言い渡すべき明らかな証拠とされたのに、再審公判においては検察官が不同意という意見を維持しますと、これを取り調べることができなくなるといった現実的な不都合があることから、このような場合には当然同意をすべきではないかということです。また、再審請求審において証人尋問が実施されている場合に、必要もないのに尋問調書を不同意にして、改めて証人尋問の実施を求めるというようなことは当然避けるべきはないかということです。検察官には公益の代表者として適切な訴訟活動が望まれるということを申し上げているということでございます。   併せて、証拠の提出命令について、江口委員から東京地方裁判所の部総括判事の議論を御紹介いただきました。御紹介によれば、関連性の解釈は広がり得るということを前提に、これまで証拠開示の勧告によって開示されてきたような証拠は、関連性の解釈が適切になされれば、これからも開示がされるだろうという認識が示されたということですが、果たして本当にそうなるのかどうかというところが心配なところでございます。袴田事件における600点近い証拠開示や福井事件における287点の証拠開示は、再審請求理由との関連性、必要性を厳格に要求することなく、客観的な証拠については幅広く開示しようという発想に基づいて、裁判所が証拠開示の勧告をし、検察官がこれに応じたというものであったと認識しております。このような従来の証拠開示の運用が、新たに証拠の提出命令の規定が設けられることによって、狭まることがないように、当部会における議論を踏まえて、附帯事項に適切に反映させていただきたいと思います。   また、江口委員から、今後は証拠開示の勧告はより活発になされるだろうとか、検察官はこれに誠実に応じるだろうという御発言がありましたけれども、果たして本当にそうなるのだろうかという懸念がやはりございます。これまで弁護人が検察官に直接連絡を取っても応じなかったり、書面を提出しても受け取らなかったり、期日の出席を求めても出席しなかったりというような問題が現実に生じているという報告を受けております。せめて検察庁あるいは法務省事務当局において、今後は任意開示の請求があれば、それに誠実に応じますとか、期日に出席するよう求められたら出席しますというような発言があればまだ安心できるんですけれども、これまでそういう発言は、検察庁又は法務省事務当局からなされておりません。せめてそのような発言はなされてもよいのではないかと思いました。 ○大澤部会長 更に御発言ございますでしょうか。 ○成瀬幹事 鴨志田委員・村山委員・田岡幹事共同提出の「『第3 附帯事項』に記載すべきこと」の「第3」の「1」に関連して、前回会議において、村山委員と田岡幹事から、「現行の通常審における目的外使用の禁止が、弊害の有無及び程度を問わず、一律に目的外使用を禁止していることは問題である」旨の御発言がありました。  私は、「試案〔改訂版〕」「第1」の「5」及び「6」に記載された、再審請求審において謄写した証拠の目的外使用の禁止規定を設けることに賛成の立場であり、その前提として、通常審における目的外使用の禁止規定には合理性があると考えていますので、その点について、若干意見を申し上げます。   まず、改めて通常審における目的外使用の禁止規定の趣旨を確認すると、その趣旨は、開示証拠の複製等が開示の本来の目的以外の目的で使用されると、罪証隠滅、証人威迫、関係者の名誉・プライバシーの侵害、国民一般の捜査への協力確保の困難化等の弊害が拡大するおそれが大きいため、開示証拠の複製等が本来の目的のみに使用されることを担保し、証拠開示がされやすい環境を整え、ひいては、証拠開示制度の適正な運用を確保することなどにあるとされています。  その上で、前回の御指摘を踏まえて、「弊害が特に大きい場合に限って目的外使用を禁止する、あるいは、弊害が小さい場合には目的外使用を許容するといった仕組み」を設けることの可否についても検討してみました。   もっとも、先ほど述べたとおり、開示証拠の複製等が目的外に使用されることによって生じる弊害には様々なものが想定されますので、例えば、「供述調書の供述者による同意の有無」などといった形式的・客観的な要件によって、目的外使用の禁止の対象又は対象外とすべき行為を特定することは困難であると考えられます。   そうすると、個々の証拠の内容や使用の対応等に応じた実質的な要件・判断によって、目的外使用の禁止又は対象外とすべき行為の範囲を限定せざるを得ないこととなりますが、そのようにした場合、対象となる行為の範囲が極めて不明確となり、規制としての実効性が確保できないおそれがあります。また、実効性確保の観点からは違反に対して罰則を設けることとせざるを得ないところ、そのような不明確な規律を前提とするとなると、憲法上の要請でもある刑罰法規の明確性の原則との抵触も問題となるでしょう。   そのため、「弊害が特に大きい場合に限って目的外使用を禁止する、あるいは、弊害が小さい場合には目的外使用を許容するといった仕組み」を設けることは相当でなく、現行法のように、一律に目的外使用の禁止の対象とした上で、これに違反した場合の措置については個別の事情を考慮するという仕組みには、十分な合理性があると考えます。 ○大澤部会長 更に御発言ございますでしょうか。 ○川出委員 「『第3 附帯事項』に記載すべきこと」の最後の「第4 附則事項」の「2」のところで、経過措置について、「新法の規定は、この法律の施行の際現に係属している再審及び再審の請求の手続についても、適用とするものとすること」という御提案がなされています。まず事務当局にお尋ねしたいのですが、法改正がなされると、経過措置に関する規定が置かれますけれども、この経過措置というのは、通常どのように検討することになるのでしょうか。 ○玉本幹事 法令の改正に際して設けられる経過措置としましては、一般的には、新旧法令の適用関係に関する規定、従来の法令による行為の効力に関する規定、それから罰則の適用に関する経過的な取扱いに関する規定などがあるとされております。その上で、個々の法律案におきまして、どのような経過措置を設けることとするかは、一般的には法整備の内容が定まった後に、その具体的な法律改正法の規定ぶりを踏まえまして、立法技術的な観点をも考慮して検討することになると考えております。 ○川出委員 ただ今のお答えを踏まえますと、現時点では、まだ法改正の内容が定まっていないわけですから、この段階でどのような経過措置を設けるかについて議論すること自体が、そもそも困難だということになるように思います。そうしますと、御提案のように、経過措置の内容について附帯事項に記載するのは、やはり難しいということになるのではないかと思います。 ○大澤部会長 更に御発言ございますでしょうか。 ○田岡幹事 まず、経過措置については、おっしゃるとおり当部会において試案の内容が固まって、さらに、法制審議会総会において答申が固まって、法律案ができないことには、具体的にどのような内容になるかが確定しませんので、難しいと思います。また、当部会における意見は、私たちが提案している修正案とは異なるものになりそうですので、その内容によっては、必ずしも新法を適用することが適切でない場合もあると思います。例えば目的外使用禁止の規定に対する罰則などというのは、遡及処罰になりかねませんので、新法を適用することはできないのではないかと思います。他方、費用補償などは、新法を適用する方が再審請求人の利益になるわけですし、これを否定する理由もないように思われますので、これは是非新法を適用できるようにしてもらいたいと考えます。   また、成瀬幹事から、目的外使用禁止の規定について、通常審の規定には合理性があるのだという御発言がありました。ただ、本当に通常審の規定には問題がないのでしょうか。先ほど申し上げましたように、例えば取調べの録音・録画の検証についても、在り方協議会において、具体的な事例の検討を行おうとしても、録音・録画記録媒体を見ることができないために、抽象的な議論をしているにとどまっております。先般届きました日本刑法学会の刑法雑誌の中でも、濵田毅先生、つまり元検察官も、髙山巌弁護士も、目的外使用禁止の規定は、取調べの実情を把握して検討を行うために使用する場合には例外規定を設けてもいいのではないかという趣旨の御指摘があったと認識しております。   この度の再審法改正がなされた後においても、具体的の事例の検討は当然なされることになると思われますけれども、証拠の内容を見ずに検討してくださいということでは、本当に適切な検討をなし得るのだろうかという疑問があることを考えますと、目的外使用禁止の規定を見直す必要はないのかどうかについては改めて検討されるべきだと思いますし、併せて刑事訴訟法47条、民事訴訟法220条1項4号ホのような関係する規定を適切に見直すことが検討されるべきだと思います。本来、再審請求の目的のために開示された証拠は再審請求のために使用することが予定されているものですから、それ以外の目的のために使用する場合には、刑事訴訟法47条による閲覧・謄写がより適切になされればよいという考え方もあると思いますし、また、確定後においては刑事確定訴訟記録法による閲覧・謄写、国家賠償請求などの民事訴訟においては民事訴訟法220条1項の解釈などによって解決されるべき問題であるとも考えられますので、今後、証拠の利用に関する包括的な検討が別の組織体においてなされるべきではないかと考えております。 ○大澤部会長 更に御発言ございますでしょうか。 ○成瀬幹事 田岡幹事から、被疑者取調べの録音・録画記録を例にして、目的外使用の禁止の在り方を見直すべきではないかという御指摘をいただきました。  例えば、プレサンス事件の国家賠償請求訴訟において、取調べの録音・録画記録媒体に対する文書提出命令の可否が問題となりましたが、最高裁判所令和6年10月16日決定は、当該事案において録音・録画記録媒体を取り調べる必要性の程度が高いことや、取調べの対象者が民事裁判において当該記録媒体が証拠採用されることに同意していたこと、さらには、対象者本人のプライバシーの保護に最大限配慮されていることや、当該事件の捜査や公判に不当な影響を及ぼすおそれがなく、将来の捜査や公判に及ぼす不当な影響等の弊害が発生することを具体的に想定できないことを総合考慮した上で、最終的に、録音・録画記録媒体に対する文書提出命令を認めています。   この最高裁判所決定からも明らかなように、目的外使用禁止の例外を認める際には、様々な事情を考慮せざるを得ません。よって、規制の実効性を確保するとともに、刑罰法規の明確性をも担保するという観点からは、現行法のように、一律に目的外使用の禁止の対象としておくことに合理性があると考えています。 ○大澤部会長 更に御発言ございますでしょうか。 ○池田委員 附帯事項に記載すべき事柄については、第16回会議において、成瀬幹事が一定の指針を示しておられたところですけれども、そこでも御指摘があったように、日本弁護士連合会の委員・幹事御提出の「『第3 附帯事項』に記載すべきこと」に記載の附帯事項の案を、これら全てを記載のとおり附帯事項に盛り込むということは、本日の議論にも出ておりましたように相当ではないと考えております。   一方で、現在の「試案〔改訂版〕」の「第3 附帯事項」に記載されている事項については、日本弁護士連合会の委員・幹事の御提案の趣旨が盛り込まれたものでもある上、第16回会議において成瀬幹事が指摘されていた観点からも問題がないものと思われます。さらに、これらの記載事項は、これまでの部会の議論状況に照らしても、委員・幹事の間で意見集約を図ることが可能であると思われることから、附帯事項として記載する内容として相当であると考えております。 ○大澤部会長 予定した時間になりつつありますが、更にということがあれば承りたいと存じますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 ありがとうございます。それでは、「第3 附帯事項」についてまで御議論いただきましたので、以上で配布資料22に基づく議論としては、一通りの御意見を頂いたものと認識しております。   その上で、4巡目で議論された論点・項目について、もし追加で御意見等があれば、この機会に、できるだけ簡潔に御発言いただければと存じますが、いかがでしょうか。 ○池田委員 前回の会議で、「試案」の「第5」の不服申立期間の延長について、日本弁護士連合会の委員・幹事から御提案の「法務省事務当局試案に対する修正案」の中で、一定の制約を設ける旨の意見が示されておりますので、念のため補足しておきたいと思います。   これまでの議論においても指摘されておりますように、請求が入れられないことが一見明白な再審の請求や、逆に理由があることが一見明白な再審の請求については、審理が複雑なものとなったり、決定書が長大となったりすることは想定し難く、不服申立期間を延長する趣旨が妥当しないように思われます。そのことからしますと「試案〔改訂版〕」「第3」の「2」の調査手続において終局決定がなされる事案については、不服申立期間を延長する趣旨が妥当しないと考えられますので、「試案〔改訂版〕」「第5」の規律を設けるのが相当であると考えております。   そのほか、本日の議論で論じ残した点が2点あり、指摘させていただきたいと思います。   まず、「法務省事務当局試案に対する修正案」の「第9」の「2」の、弁護人による援助のうち、「再審請求審又はその準備段階における弁護人等との接見交通に関する規律」についてです。この点については、刑事訴訟法第39条第1項及び第2項の規定を準用すべきであるという御意見が示されており、また、これまでに村山委員から、第7回会議において受刑者、死刑確定者と弁護人等との秘密交通権を認めることによって、施設上、収容上の支障が生じるとは考え難く、これらの主張を理由に外部交通を制限することは相当でない旨の御意見を示されております。しかし、第12回会議において成瀬幹事が指摘されていたように、このような面会であっても、秘密面会を認めることにより、施設上、処遇上の支障が生じる場合もあり得ると考えられるところです。   その上で、これまでも繰り返し申し上げているとおり、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律が、受刑者、死刑確定者についてはその収容目的に照らし、外部交通が必要かつ合理的な範囲内で制限されることを前提として、面会や信書の発受に関して合理的な内容の規律を設けていることからすると、別途規律を設ける必要性はない上、御提案のように、刑事施設の規律秩序の維持等およそ考慮しない規律を設けることは相当でもないと考えております。   もう1点、本日の「法務省事務当局試案に対する修正案②(追加提案)」の「第3」の「3」の「(2)の2」について申し上げます。御提案が2案示されておりまして、いずれも一定の要件を満たす場合には、裁判所に事実の取調べを義務付けることとすべき旨の御提案であると理解しております。その上で、2案に共通する問題点を申し上げます。   そもそも現行法の下においても、必要な事実の取調べをしなかった場合には、審理不尽として破棄事由になり得ますので、実質的には、裁判所は再審請求理由の有無を判断するために、必要な事実の取調べをしなければならないこととなっていると考えられるところであり、あえて御提案のような規律を設ける必要性はないものと考えます。また、通常審においても、審判対象について判断するために必要な証拠の取調べをしなければならないことは同様であり、にもかかわらず通常審については御提案のような規律が設けられていない中で、再審請求審についてのみこれを設けることは、刑事手続全体を通じて見たときに不整合を生じるものであり、相当でもないと考えます。   加えて、刑事訴訟法第43条第3項は、決定又は命令をするについて必要がある場合には、事実の取調べをすることができる旨を規定しているわけですけれども、御提案のような規律を設けた場合、再審請求手続以外の決定手続における同項の規定による事実の取調べについて反対解釈が生じ、必要かつ相当な事実の取調べであったとしても、裁判所はこれをしないことも許容され得ると解されかねないおそれもあるかと思います。   したがって、いずれの御提案についても、そのような規律を設けることの必要性及び相当性はないと考えております。 ○大澤部会長 更に御発言ございますでしょうか。 ○田岡幹事 池田委員から指摘があった点について、私の意見を申し上げます。   まず、不服申立期間を異なる期間にするということであれば、前回も発言しましたけれども、「『第3 附帯事項』に記載すべきこと」の7ページ、「第2」の「4」に記載しておりますように、不服申立ての期間とその不服申立てをする裁判所を再審請求した者に通知しなければ、その期間や提出先を誤ったために不服申立ての機会を失うということになりかねません。行政処分でさえ不服申立て先と不服申立て期間の通知を義務付けておりますので、刑事訴訟規則などに適切に規定することによって、不服申立ての機会を逸することがないように適切な配慮がなされるべきであると考えます。   次に、秘密交通権につきましては、確かに面会については最高裁判所の平成25年の決定がありますので、これが適切に運用されていないという問題については、矯正局において御検討いただくことであると理解しております。他方、手紙、信書の発信については、平成25年決定がありませんので、「『第3 附帯事項』に記載すべきこと」の8ページ、「第2」の「5」の二つ目の丸に書きましたように、少なくとも弁護士に宛てて再審請求をお願いしたいといった趣旨が書かれた信書の発信の申出をした場合には、平成25年決定の趣旨を踏まえて、特段の事情がない限りはこれを許可するように、適正な運用が確保されるようにしていただきたいと考えております。   また、事実の取調べにつきまして、「法務省事務当局試案に対する修正案②(追加提案)」の「第3」の「3」の「(2)の2」は、必要性・相当性がある場合は事実の取調べをしなければならないことは当然のことなので、敢えて規定を設ける必要がないという趣旨の御発言がありましたが、そうであれば、当部会において確認されたことから、附帯事項に記載しなくてもよいと思います。私は、第13回会議において、川出委員から、証拠提出命令は事実の取調べの一態様であって、裁判所が必要性・相当性を考慮して相当であると認めたにもかかわらず、証拠の提出を命じないというようなことは、審理不尽になり得るという御発言ありましたので、そうであれば、証拠の提出命令は証拠書類と証拠物だけを対象にしたものですけれども、当然、証人尋問、検証、鑑定といった事実の取調べの場合にも、裁判所が必要性・相当性を考慮して相当と判断した場合には、これを取り調べなければならないということになるはずであると考えて、このような御提案をしているに過ぎません。研究者の先生方はそれは当然のことであるとお考えになるのでしょうけれども、私はその当然のことを確認しておきたいと考えて、御提案したということでございます。 ○大澤部会長 更に御発言ございますでしょうか。よろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 追加の御意見についても承らせていただいたということで、以上で本日予定していた審議は終了いたしました。   本日までの議論を踏まえ、今後の進め方について、皆様にお諮りをさせていただきたいと思います。   当部会では、諮問事項について、これまで本日を含めて合計17回の会議を開催し、4巡にわたる議論を行いました。これまでの議論の状況を踏まえますと、議論は相当熟しつつあり、当部会としての意見を取りまとめる段階に入ってきているように思われます。そこで、部会長であります私の責任の下で、事務当局に、本日の議論を踏まえまして、「試案〔改訂版〕」を更に修正して、取りまとめに向けた資料を作成してもらうこととし、次回はそれに基づいて、採決も視野に入れつつ最終的な詰めの議論を行いたいと思います。そのような方針とすることでよろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 ありがとうございます。それでは、そのように進めさせていただきます。   本日の会議における御発言の中で、特に公開に適さない内容にわたるものはなかったと理解しておりますが、具体的事件に関する御発言などもございましたので、非公開とすべき部分があるかどうかにつきましては精査をした上で、そのような部分がある場合には、御発言なさった方の御意向なども確認し、その上で該当部分を非公開とする等、適切な処理をしたいと思います。それらの具体的な範囲や議事録上の記載方法等につきましては、いつものことでございますが、部会長である私に御一任いただきたいと思います。他方で、本日の配布資料につきましては、特に公開に適さない内容にわたるものはなかったと思われますので、公開することとしたいと思います。以上のような取扱いとさせていただくということでよろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○大澤部会長 ありがとうございます。   それでは、次回の日程について、事務当局から説明をお願いいたします。 ○今井幹事 次回の第18回会議は、令和8年2月2日月曜日午後1時30分からを予定しております。詳細につきましては別途御案内申し上げます。 ○大澤部会長 大変過密スケジュールのところ、最後の最後でもっと過密になるような話で、御負担をかけますが、どうかよろしくお願いをいたします。   それでは、本日はこれにて閉会といたします。どうもありがとうございました。 -了-