法制審議会 民法(成年後見等関係)部会 第27回会議 議事録 第1 日 時  令和7年10月28日(火)自 午後1時15分                      至 午後6時08分 第2 場 所  法務省地下1階 大会議室 第3 議 題  民法(成年後見等関係)等の改正に関する要綱案の取りまとめに向けた検討(4) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山野目部会長 法制審議会民法(成年後見等関係)部会の第27回会議を始めます。   御多用の中、御出席を賜りまして誠にありがとうございます。   前回の部会会議の後、委員の交代がありました。事務当局から御紹介を差し上げます。 ○波多野幹事 前回の部会後、委員の交代がございましたので御紹介いたします。前回の部会後、佐保委員が退任されまして、林委員が就任されております。林委員は本日は所用による御欠席と伺っております。 ○山野目部会長 本日の出欠状況について御案内を致します。ただいまお話を差し上げました林委員のほか、本日は櫻田委員、家原幹事、海老名幹事、山下幹事及び米田幹事が欠席でいらっしゃいます。林委員におかれては、新任でいらっしゃいますから、次回会議に出席いただく際に一言御挨拶を頂きたいと考えております。   本日の審議に入ります前に、配布資料の説明を事務当局から差し上げます。 ○山田関係官 それでは、本日の配布資料について御説明いたします。   本日は新たな部会資料として部会資料25を配布しております。資料の内容については後ほどの御審議の中で事務当局から御説明差し上げます。また、参考資料16として「「民法(成年後見等関係等)の改正に関する中間試案」に対して寄せられた意見の概要」をお配りしております。これは、本日の御議論の際の参考としていただく趣旨で、中間試案に寄せられた意見について、中間試案に対する意見全体についての概要をまとめたものです。   本日の配布資料については以上です。 ○山野目部会長 本日の審議に進みます。   まず、部会資料25の第1、保護者に関する検討事項について御審議をお願いいたします。部会資料25で申しますと44ページまでの部分であります。この部分について、部会資料について事務当局から説明を差し上げます。 ○山田関係官 部会資料25の第1について御説明いたします。   まず、1ページ目、1において、保護者の解任(交代)等について記載しています。(1)では、本人の利益のため特に必要があることとの新たな解任事由を設けることについて、(2)では、現行の解任事由は欠格事由とする現行の規律を維持しつつ、新たな解任事由は欠格事由としないことについて検討することを提示しています。新たな解任事由との関係では、9ページに記載した点を中心に、新たな解任事由で想定される本人の利益のため特に必要があることとはどういった場面かについて御議論いただきたいと思います。   また、13ページの2以下では、保護者の職務及び義務について記載しています。13ページの(1)では、本人の意思の尊重及び身上の配慮について記載しています。現行の意思尊重、身上配慮の規律を②に記載しており、その前の①において、適切な方法で本人の意思を把握することに努めなければならない旨の規律を設けることについて検討することを提示しています。   また、18ページの(2)では、財産の調査及び目録の作成等について、24ページの(3)では、成年後見人による郵便物等の管理について、それぞれ法定後見制度の枠組みにおいてどのような規律を設けるのかとの関係で整理をしています。   さらに、32ページの(4)では、成年被後見人の居住用不動産処分についての許可等については、現行法の規律を維持することを提示しています。   続いて、37ページの3では、本人の死亡後の成年後見人の権限、死後事務等について記載しています。死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結について、現行法とは異なり、法定後見制度の保護者が当該契約の締結をすることができるものとすることについて検討することを提示しており、それ以外の事務については、事理識能力を欠く常況にある者についての保護の仕組みを設けるかどうかで場合分けをして整理をしています。 ○山野目部会長 説明を差し上げた部分について御意見を頂きます。いかがでしょうか。 ○小澤委員 まず、部会資料1ページの第1の1、保護者の解任(交代)等については、解任事由、欠格事由のいずれも御提案のとおりの規律とすることに賛成を致します。その上で、9ページに御例示いただいた具体例については(ア)、(イ)、(ウ)のいずれのケースも、まずは家庭裁判所が専門職である保護者とコミュニケーションをとり、辞任による円満な交代を促すといった現行法と同様の方法による交代を試みるべきと考えますが、それでも交代が進まない場合には解任を検討するということになると考えています。   次に、部会資料37ページの3、本人の死亡後の成年後見人の権限(死後事務等)については、(1)について提案に賛成を致します。(2)については、(1)と関連しますが、火葬等の契約は締結すれば終了するものではなく、火葬等の費用の支払いが必要になります。現在、成年後見人が火葬等の許可を得て火葬等を行う場合、後見人自身が契約者となって火葬の契約を締結していることがほとんどでありますが、本人の財産から費用を支出できないと支払いができないか、後見人自身が立て替えるということになって、事実上火葬等を行うことが困難になっています。保佐や補助のような許可が得られないケースでは、やむを得ず事務管理や応急処分義務と解釈をして火葬等の事務を行っていますが、火葬等の契約は費用の支払いまで行って事務が完了するものであって、保護者が安心して事務を行うことができるようにするため、この支払いや、そのための金融機関からの払出しが可能となる規律は必要だと考えています。   また、医療費や施設利用費などの生前の債務についても、事理弁識能力を欠く常況にある者についての保護の規律を設けない場合において、それらの権限に関する規律を設けないとすると、保護者としては保護の終了直前に発生した債務の支払いがしづらくなって、福祉関係者などの信頼を損なうことになるのではないかとも危惧をしています。この点について、応急処分義務等の別の規律で対応ができるのであれば問題はありませんけれども、できれば何らかの形で権限を明らかにしていただきたいと考えています。 ○根本幹事 まず、解任と交代のところについてだけ先に申し上げたいと思います。解任、交代の今回の部会資料でお書きいただいているものの問題というのは、欠格事由とするべきものが何であるのかということについての法制上の価値判断を明確にする議論整理することがよいのではないかと思っております。その観点で、不正行為ですとか不行跡が欠格事由になるということは明確でよいと思いますけれども、その他の任務に適さない事由があるという規定については、これは平成11年の立法担当においても、後見人の権限濫用、管理が不適当であること、任務懈怠などを指すとされています。このうち、例えば権限濫用の議論については、後見人の権限行為ではあるが善管注意義務違反の問題であると位置付けられると思いますので、その善管注意義務違反が損害賠償責任を生じさせるとしても、直ちに解任事由とするかどうかについては、法的効果の違いから再考することが可能であると考えています。   仮にその他の任務に適さない事由というのを欠格事由とは結び付かない解任事由と欠格事由と結び付く解任事由、いずれにも位置付けるということになりますと、結果的にはその他の任務に適さない事由の概念が不明確になることにもなりますし、運用上の混乱を生じさせるものであるとも言えると思います。欠格事由とするべきものが何であるのかということを再度確認をした上で、欠格事由としないことで、その欠格事由となる対象を明確にするべきではないかと思います。   その他の任務に適さないということについては、元々、特に身上保護についての当不当は家庭裁判所の判断になじまないと裁判所もこれまで考えられてきたところだと思いますので、解任事由とすることは適当だとは思われませんし、財産管理の当不当と身上保護の当不当というのは密接に関連している場合も非常に多いです。例えば、後見人が付いていながら水道が止まってしまうというようなことがあった場合に、それは水道料金の支払いという意味では財産管理上の問題だと思いますけれども、御本人の生活状況を的確に把握できていないという意味においては身上保護の当不当の問題ということにもなるのだろうと思いますので、本人の利益事由を欠格事由と結び付かない解任事由にするのであれば、本人の利益事由とその他の任務に適さない事由の一部は、表裏の関係にあるとも言えますので、その他の任命に適さない事由については欠格事由と結び付かない解任事由と整理をされるのが望ましいと思います。 ○佐久間委員 根本幹事がおっしゃった件なのですけれども、9ページの「本人の利益のために特に必要があること」という新たな解任事由を設けた上で、中身はどうかということと関連するのですが、根本幹事がおっしゃったことはある面ではそのとおりだと思うのですけれども、ただ、極めて著しい善管注意義務違反があったときに、そのような人は今後後見というかどうか分かりませんが、どの人についての保護者にもなるべきでないと判断される場合と、そうでない場合が確かにあり得ると思うのです。そのうち、そうでない場合につきましては、当該本人の利益のために特に必要があることの方に位置付けて、それをもって解任すればよいと考えますので、根本幹事もおっしゃいましたが、後見の事務に適しない事由の中には欠格事由とするものも含まれているはずだということを前提に、私は原案を支持いたします。 ○青木委員 解任事由と欠格事由についてですけれども、9ページで整理していただきました「本人の利益のため特に必要があるとき」というものの主な整理としては、(ア)、(イ)、(ウ)でおおむね想定しているものが含まれているのではないかと考えます。その上で、欠格事由と従来の解任事由との関係のうち、「その他の任務に適さない事由」との関係についてなのですけれども、家庭裁判所は法施行当時とは異なりまして、現在は身上配慮の点や意思尊重の観点から、本人の身上保護義務について見逃し難い問題があった場合には、後見人の裁量の逸脱・濫用があるとする考え方が多くの家裁に浸透してきていると聞いておるところです。   そうなりますと、合理的な理由がなく本人と面談をしない場合とか、支援者からの連絡に応じない場合とか、支援者から求められてもケース会議に出席しないといった場合も、それが直ちに全て解任事由になるわけではないわけですけれども、合理的な理由がないということが認められた場合には裁量の逸脱となって義務違反となり、その中の一部については解任事由にも該当するということが、今後、より広まってくると考えられるところです。   そうなりますと、その場合には、おそらく「その他の任務に適さない事由」に該当するものとして解任事由を検討するということになると思いますが、財産管理に不正があったり、財産の管理を客観的に見て怠ったといえる場合と違いまして、その判断には幅があるものとも考えられるものですから、欠格事由と連動していることによって、解任事由の該当性を狭く、厳しく認定をするという傾向になるのではないかということを懸念するところです。これまでの実務運用でも、解任事由というのはそういう点から慎重に考えられたと思います。   これについては、佐久間委員からも御指摘があったように、9ページの(ウ)との関係でそのような事案吸収して解任していくという考え方も十分にあると思いまして、最終的には運用の工夫なのだとは思いますけれども、一方で、義務違反はないけれども(ウ)に該当するような場合ということもあるわけでして、本人への利益、不利益で見る新しい解任事由の判断要素と、義務違反で見る従来の解任事由の判断要素というのが整合するとは限らない面もあると考えますと、従来の解任事由においても、「その他の任務に適さない事由」については欠格事由としないということも十分にあり得るのではないかと考えております。ここは家庭裁判所の実務感覚も大事なところだと思います。   それから、これは後で家事手続法の見直しところでも議論されるのだと思いますけれども、解任の審判のときに、市町村長や福祉関係機関に原則として意見を求めるというパブリック・コメントがあったという御記載がありますが、意見を求めることが相当かどうかは、事案によりますし、必ずしも市町村その他の福祉機関その事案について事情を把握しているものではないということから考えますと、原則として、というのは少し厳しすぎるという考え方だと思います。市町村としても十分に実質的な回答が可能な事案について、家裁の必要に応じて照会をかけるという規律として位置付けていただくのがいいのではないかと思っています。   続きまして、本人の意思尊重に関する義務のところにつきましては、今回、「意思」を「意向」とすることでどうかという提案がございます。これにつきましては、意向の中には内心的効果意思を有する、法律行為を有効とする意思能力としての意思も含み、それに加えて、さらに外縁の広い本人の選好とか希望とかを含めた意向というものとして定義するという提案のようですが、従来から、必ずしも意思能力までは十分でなくても本人の選好等を含めた意向を尊重しようという流れの中で後見事務に関する意思決定支援のガイドラインも位置付けられてきたことからすれば、意向という言葉でまとめていただくことは十分にあり得ることかなと思っています。   一方で、どんな人でも意思能力がある可能性がある存在として意思決定支援をしながらできるだけ意思を認めていこうという理念から言うと、むしろ「意思」というものを大事にしないといけないということもあります。そういった趣旨を「意向」の解釈上はっきり位置付けることができるのであれば、意向ということで幅広く、御本人さんの選好も含めた、必ずしも意思能力における意思とはいえないことも含めて大事にしていこうということにはつながると思ったところです。   それから、858条の規律を、本人への情報提供と意思の把握という過程を詳しくしていただくことに加えて、取消権の行使に当たっては、別に規律を設けるべきであるという意見も申し上げているところです。これについて資料では、重複をするのではないかとまとめていただいているのですが、ここで念頭においている取消権の行使の場面としては、本人の意思を尊重するのだけれども、それでも本人の意思に反してでも取消しをしないと保護がはかれない場合があると、それは本人の財産等に重大な影響を及ぼすので本人の意に反してもどうしても守らないといけないという観点から取り消す必要がある場合があるということを想定しておりまして、その場合には、本人に重大な影響が及ぶ場合などに限るという取消権行使への具体的な制限を保護者に課した方がいいということですので、必ずしも858条の一般原則に含まれるものではないと考えています。   それから、死後の事務処理につきましては、先ほど小澤委員からもお話がありましたとおり、火葬等の費用を葬儀会社への債務として支払わなければならないということがあることに加えまして、生前の代理権限として、医療や介護費用、家賃等の支払いを行っていた、そういう権限を持っていた者に関しては、応急処分事務だけではなく、亡くなった後も従来持っていた権限の延長線上で支払いを認めるということであれば、死後の方が過重な権限を与えることになるということにはならないと考えます一方、ニーズは非常に高いということもありますので、その範囲に限って認めるということは可能なのではないかと思いますので、引き続き検討を頂きたいと思っております。 ○遠藤幹事 保護者の解任の関係で、先ほど根本幹事、佐久間委員、青木委員からそれぞれ御発言を頂いたところに関連をして、裁判所の実務感覚というところも踏まえてお話を申し上げます。   まず前提として、先ほど青木委員からも御紹介を頂きましたが、家庭裁判所においては第二期計画において期待されたところを受けて、身上保護事務の監督に関する考え方の整理が進んできたところですが、その中では、保護者が本人の意思の尊重や心身の状態等に配慮すべき義務があるということを前提に、本人との関係の構築、維持の観点や、チームの一員としてほかの支援者と連携して事務を遂行するといった観点から監督の視点を整理し、合理的な理由なく長期間にわたって本人と面談をせず、かつ周囲の支援者とも連絡を取れていないような事案や、ほかの支援者からの連絡に応じず、合理的な理由なくケース会議にも参加しないなど、周囲の支援者と連携をとっていないような事案については、およそ意思の尊重や生活状況等への配慮に欠けるとして、後見人等の事務遂行に当たって認められる裁量の逸脱、濫用があると判断され得ると、こうした点については全国の家庭裁判所においておおむね共通の認識が得られているところであり、対外的にもこのような基本的な姿勢については御紹介をしているところです。また、こうした考えは、恐らく見直し後も引き続き維持されていくのだろうと思っております。   その上で、このような考え方と今回解任について御提案を頂いているところとの違いを見ると、新たな規定を根拠とする解任の判断をした場合は、その効果として欠格事由とはしないという点のほか、特に部会資料9ページ5行目の(ア)以下にて、保護者としての権限行使に不適切な点がなくとも、結果として支援者や御本人と適切な関係を築くことができず、客観的に見て御本人に不利益が生ずるに至った場合には保護者を解任し得ることとなるといった点が裁判所の目線から見ると新たな部分ということになるのではないかと思われるところです。   この点について裁判所としてどう考えていくかということですが、前提として、これまでの考え方と新たな規定との関係については、先ほど御議論があったように義務違反や不利益の大きさの程度によって使い分けるというような形で実務運用の中で整理するという考え方も、また、法定後見の任務に適さない事由があるときについても新たな事由と合わせて欠格事由としないという考えもあると思われますので、ここについては引き続き御議論を頂ければと思っているところではございます。裁判所としては、保護者の柔軟な交代を推進するといった趣旨を適切に踏まえつつ、他方で、特に帰責性のない保護者を解任し得るという点については、先ほど小澤委員からも御紹介がありましたような家裁の後見監督の実務の運用からすれば、実際に解任にまで至る場合というのは必ずしも多くないと思われるところでもありますが、いずれにせよ、法定後見制度の安定的な運用という観点も加味した上で、事案に応じた適切な運用の在り方を検討していくことになるのではないかと考えているところです。 ○上山委員 私からは、13ページの保護者の義務に関して2点、25ページの郵便物の管理について1点、簡潔に発言したいと思います。   まず、13ページの保護者の義務についてですが、現在の御提案の中で、本人意思尊重義務に相当する意思の文言について、この説明の中では意向という文言に変更する方向での検討がされているかと思います。私は意向への変更という形で御検討いただくことに賛成です。   保護者の義務についての2点目ですけれども、2(1)①で示されている御本人への情報提供と御本人の陳述聴取を通じた御本人の意向の把握に関する義務について、私は単に努力義務にとどめるのではなく、むしろ法律上の義務として位置付けてもよいのではないかと考えます。これまでの審議会での議論を踏まえても、この義務の内容は保護者に全く新たに特別な行動を要求するという趣旨のものではなくて、むしろ現行の858条の解釈の一つとして具体化できるものにすぎないように思われます。したがいまして、これを仮に法律上の義務としても、保護者に過重な負担を新たに課すとはいえないのではないかと感じます。また、ここで挙げられているような保護者の行動については、本人の心身の状態に応じてという一定の制限の下で求められているわけですし、元々この義務が持つ手段債務という性質を考えると、こうした義務を法律上の義務として課したことによって保護者の裁量の余地が不当に制約されることには必ずしもつながらないのではないかと考えます。   次に、25ページの郵便物の管理に関してですが、これは1点、事務局にお尋ねした上で、そのお答えに応じてコメントをしたいと存じます。まず、お尋ねですけれども、現行法上の成年後見人に限定的に860条の2によって認められている郵便物の管理に関する権限の性質というものが、本来は民法上の代理権の対象となる権限ではなくて、この860条の2によって特別に認められた権限にすぎないという整理をされておられるのか。つまり、言い換えますと、仮に今回の改正によって860条の2の郵便物の管理に関する規定が全面的に削除された場合に、新制度の運用の下でこの権限を裁判所が保護者に個別的な代理権として付与することは認められないという御理解であるかを確認させていただければと思います。 ○山野目部会長 事務当局から資料説明の意図の説明を差し上げます。 ○山田関係官 今、上山委員がおっしゃった現行の民法の860条の2との関係ですが、仮に860条の2がなくなった後に裁判所が個別に860条の2のような嘱託の審判をしたときにどうなるのかという御質問と理解しました。この点について、民法860条の2というのは郵便法等との関係での規律であると考えられますので、裁判所による代理権付与の審判があったからといって、直ちに現行法の回送の仕組みが発動されることにならないかと思います。 ○山野目部会長 上山委員、お続けください。 ○上山委員 今の事務局の整理はよく分かりました。そして、その整理自体については特段私の方で異論があるということではございません。ただ、仮にそうした改正がなされたらという前提での議論にすぎませんけれども、やはり民法の外で何らかの法的な手当てをしておくことも検討する必要があるのではないかと感じました。と申しますのも、今回の法制審の審議対象にはならないことは承知しておりますが、実際に御本人の事理弁識能力が欠ける常況にある人に対して支援を行っていく場合に、郵便物の転送などについて実務的ニーズは依然として残るように思われるからです。何よりこの問題は、憲法上の通信の秘密や、重要な人格的利益である本人のプライバシーに関わるものですので、単にこの取扱いを当事者の実務的な対応に委ねるというのは好ましくないと思いますので、一定の明確な法的根拠に基づく課題解消の道を民法の外で何らか準備することが必要ではないかと感じました。 ○山野目部会長 御意見を頂きました。 ○根本幹事 先ほどの佐久間委員からの御指摘との関係で2点申し上げます。   一つは、委員がおっしゃられた著しい義務違反というのは確かにあり得ると思います。ただ、それは委員御自身もおっしゃっておられたようにケース・バイ・ケースというところがあるかと思っておりまして、現行の家裁の運用においても、家裁の選任の権限の裁量によって選任しないということはもちろんありますので、そういう意味で法制上の欠格事由とまでするのか、運用上そういった著しい義務違反があって、例えば、かつて交代という意味での欠格事由と結び付かない解任をされた方であるということは家庭裁判所も承知をされた上で、その上で改めて選任をするかどうかという形で、法制上の欠格事由と結び付けないからといって必ず次に選任されるというわけではないという、運用に委ねていくという整理もできるのではないかとは思っています。   あわせて、仮にその他の任務に適さない事由というのを欠格事由に結び付く場合と結び付かない場合両方があり得ると位置付けた場合に、その手続の慎重さを設けていくのか。つまり、欠格事由と結び付くということは、それは別に選任されることが当該後見人、保護者の利益だというところまでは思いませんけれども、やはり手続としては欠格事由と結び付く場合と結び付かない場合で家庭裁判所の慎重になる度合いというのは当然変わってくると思うのですが、その手続がどちらの手続になるのかというのが手続保障的にはっきりしない中で、欠格事由になるのかならないのかというのが結論が出るまで分からないということはやはり望ましくないと思いますので、ここは法制上の位置付けとしては欠格事由と結び付かない事由であるとして、その他任務に適さない事由というのを位置付けるという方がやはり望ましいのではないかと思います。 ○竹内委員 今、根本幹事から意見がありました欠格事由の部分ですが、私も根本幹事の意見に賛成です。新たな解任事由とその他任務に適さない事由というのは重なる部分が恐らくある。そうなってきますと、振り分ければいいといえばそうなのではありますが、裁判所の振り分けによって余りにも効果、つまり欠格になるかどうか、が違いすぎるとなりますと、欠格事由とすることには慎重であるべきなのではないかと思った次第です。 ○星野委員 3点あります。まず、今の欠格事由のところですが、提案について賛成をしています。そして、9ページのところの例示といいますか、こういう状況というところで、この内容についても特に異論はなく、加えてくださいという意味ではないのですが、現場の中で少し感じていることをお話しします。今こういった新しい考え方がない中でも、家庭裁判所の工夫によって追加選任をされるようなケースが増えてきているように思っています。その際に、本来であればもう辞任を促したいところという追加選任の場合に、なかなか従前の保護者が辞任に至らないようなケースがございます。これは決して(ア)から(ウ)に該当するところはあるのですけれども、明確ではないなかで複数でずっと動いていくようなケース、こういった場合も新たな解任というような考え方があるのかなと思っています。   それから、2点目なのですけれども、13ページです。保護者の職務と義務のところの、本人の意思の尊重と身上の配慮の(1)①です。これは福祉関係者として法律用語で整理されているということで承知はしておりますけれども、「情報の提供をする」、それはそのとおりでいいのですが、その者の事務に関する「陳述を聴取する」という言葉についてです。これはこの言葉を使うことについていろいろ意見を言っても変えることは難しいのは承知の上で、ただ意見として申し上げておきたいというところが、この「陳述を聴取する」という言葉が非常に違和感といいますか、そういう言葉ではない形で表現できないものかと思います。要は、これまでもお話がありましたとおり、保護者だけではなく保護者を含めたチーム全体で本人の思いを聴くということになるかと思います、それが適切な方法ということなのだと思いますが、「陳述を聴取する」という言葉が、適切な表現とならないかと感じるところがありますということが2点目です。努力義務という、努めなければならないというよりは、その義務があるというところについては、私も賛成であります。   最後なのですけれども、死後事務の37、38ページのところです。必要があるときに家庭裁判所の許可を得て、できるものとする、これについては全く異論はございません。今現状がそのような流れになっているからです。ただ、気になるところが、応急処分以外の規律を設けることが必要だということはそのとおりだと思うのですが、裁判所の許可を得なければできないことになるのか、必要があるときはできるものとするというところが維持されるのか、そこは気になっているところです。 ○河村委員 私も、13ページのところなのですけれども、質問が一つあります。今、上山委員ですとか星野委員の意見を聴いて、かなり元気付けられたところもありまして、私も努力義務であるということについて思うところがあります。まず、少し法律用語について教えていただきたいのですけれども、今2(1)①のところが努めなければならないとなっているわけですけれども、これはその読み方として、適切な方法によって意思を把握するようにしてもいいし、しなくてもいいと一般的にはとれるのか、それとも、把握するようにトライすること、働き掛けること自体は義務であって、ただ、把握できるとは限らないということをもって努めなければならないとなっているのかを、少し私なりに悩みながら読んでおりまして、場合によってはやはり、まれには把握できないケースがあるからこうなっていて、ただ、そこまでの働き掛けや、私としては最大限努力するということを読み取れるような法律になってほしいのですけれども、まず、どちらなのかを教えていただけますでしょうか。法律としては、トライしてもいいし、しなくてもいいと読み取れるのかどうかということです。 ○山野目部会長 資料説明を事務当局から説明を差し上げます。 ○山田関係官 河村委員がおっしゃった努力義務とされているところについて、しなくてもよいと読めてしまうのではないかという点についてです。資料作成者の意図としては、しなくてもよいということではなくて、しなければならない、と考えています。事務に関する意思を最大限努力して把握するようにしなければならない、と考えています。一方で、先ほど河村委員がおっしゃったように、御本人の状況に応じて、把握できない場合もあると思います。また、本人の状況により、例えば、意思疎通が容易にできる人、容易にできない人がいらっしゃると思いますので、その状況に応じて適切な方法というのは変わってくるかと思います。このような趣旨で、しなければならないとしてしまうと、本人の意向、意思を把握する手段について、むしろ保護者の裁量を狭めてしまうのではないかと考え、努めなければならないと記載をしています。 ○山野目部会長 河村委員、お続けください。 ○河村委員 今のお答えは非常に心強いものではありますが、この言葉だけが法律の中に残ったときに本当に、最大限努力することはしなければならないと読めるのかどうかが若干私としては心配な部分があります。もし書けるならば、最大限の努力をもって把握するようにすること自体は義務で、把握しなければいけないと言い切るものではないというようなものになればいいのかなと、私なりには現実と照らし合わせて思っているのですけれども、何人かの委員がおっしゃったように、事務当局のお答えを聞いてもなお、本当にこの法律の言葉だけが世の中に残ったときにそうなるのかどうかを今気にしているという状況でございます。 ○山野目部会長 今、河村委員が関心を抱いている事項は、また後で御議論いただきたいと考えます。   今、差し当たり加毛幹事に御発言をお願いします。 ○加毛幹事 話が変わってしまうのですけれども、37ページから38ページの3(1)「本人の死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結」について発言をしたいと思います。事務局資料では「保護者は、本人が死亡した場合において、必要があるときは、本人の相続人の意思に反することが明らかなときを除き、相続人が相続財産を管理することができるに至るまで、家庭裁判所の許可を得て、死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結をすることができるものとする」という立法提案がされていますが、これは、民法873条の2を引き継ぐものであると思います。しかし、41ページ12行目から14行目に説明されているとおり、火葬・埋葬に関する契約の締結は、成年後見人が成年被後見人の生存中に有していた権限を前提にするその他の死後事務とは性質の異なるものであると考えられます。そのことを前提として、そもそも民法873条の2第3号については、従前の学説において、死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結が相続財産の保存に必要な行為として例示されることに批判が向けられています。今回の御提案は、火葬・埋葬に関する契約の締結を、成年後見制度から切り離した形で、公衆衛生等の観点から必要とされる権限であると位置付けているように思われますので、「相続人が相続財産を管理することができるに至るまで」というような要件は不要なのではないでしょうか。「相続人が相続財産を管理することができるに至るまで」という要件は、民法873条の2第3号が、火葬・埋葬に関する契約の締結を相続財産の保存に必要な行為の例示として掲げていることを前提として理解されるものであり、しかし、その前提に対する批判を踏まえて、そこを適切に区別する形で新しい規律を設けるのであれば、現在の873条の2の要件に引きずられない要件立てをすることが望ましいように思います。   以上は要件面に関する話ですが、効果面につきましては、先ほどの小澤委員の御指摘にも関連しますが、火葬・埋葬に関する契約の締結の時点では、本人は亡くなっているので、保護者は相続財産に対して権利行使をするものと考えられます。この権利行使は、民法861条2項を根拠として可能なのではないかと思うのですが、小澤委員のお話によれば難しいのかもしれません。その認識が適切であるのかよく分からないのですけれども、いずれにせよ、死体の火葬又は埋葬の契約の締結については、その時点では本人は亡くなっていますので、相続財産に対する権利行使を認める規定を設けることが考えられます。類似の規定として、遺言執行に関する民法1021条が存在し、「遺言の執行に関する費用は、相続財産の負担とする」と定められています。これと類似の規定を設けることは考えられないのだろうかと思いました。   また、死体の火葬・埋葬に関する契約の締結が公衆衛生等の公益目的の実現のための権限であるとすると、その費用の請求権について、先取特権などの権利が認められないのかについても併せて検討すべきように思います。民法306条1項は、葬儀の費用について先取特権を認めていますが、火葬・埋葬にかかる費用についても同様に考えることができるのかを明らかにすべきように思われるところです。 ○山野目部会長 加毛幹事のお話について、山田関係官から今何かおありだったら、御発言ありますか。特によろしいですか。 ○根本幹事 死後事務の点について、星野委員ですとか加毛幹事がおっしゃられた効果との関係で、私も申し上げておきたいと思います。   まず、星野委員もおっしゃられましたけれども、今回の改正があっても従前の事務管理構成ということでできるのだということは、これは要綱説明等でも明らかにされるべきだろうと思います。それは、円滑化法ができた際にも議員立法のなさった先生方がそのような説明をされていることで実務に混乱が生じなかったということがございますので、今回の改正の趣旨を明らかにするという意味でも、説明において明確にするべきだと思います。同様の観点から、死亡時に有している代理権に基づいて保存行為として支払いないし出金権限があるということについても、これも同様に確認がされるべきだと思います。   その上で、加毛幹事がおっしゃっていただきましたように、今度は火葬した場合には当然その費用が発生し、その出金権限があるのかということについては、これは従前の事務管理や保存行為の議論とは別に、対金融機関との関係では出金権限があるのかどうかということは明確にするべきだと思いますので、相続財産から出金する権限が、理論的には火葬の契約に付随するものとして権限があるということになるのかもしれませんが、対金融機関との関係では出金権限があるということまで法制上明確に規律されているということが必要ではなかろうかと思います。 ○野村(真)幹事 実務上の観点から2点、述べさせていただきます。   まず、保護者の解任の9ページの(ウ)の新しい解任事由ですが、チーム支援をしている場合は、後任者についても受任者調整を行った上で解任の申立てを行うことが想定されますので、後任者の見込みが全くない場合というのは余り想定されないと思います。ただ、余りに困難な事案の場合は後任者がなかなか決まらないことはあるかと思います。そういった場合に、後任の候補者なしに解任を申し立てた場合、家庭裁判所が推薦依頼を各専門職団体へ行うことになりますが、それでも候補者が見付からない場合は、現在の保護者を解任すると本人の保護に欠けるかと思いますので、「本人の利益のために特に必要」とはいえないのではないかと思います。   あともう1点は、37ページ以下の死後事務についてですが、御提案の内容には基本的には賛成なのですが、先ほど根本幹事もおっしゃったように、契約だけをして、銀行からの払戻し行為とか振込送金などができないとなると、保護者は契約をしたけれども支払えないという事態が想定されますので、その点に関する規律は設けていただけたらと思います。 ○山城幹事 少し前後いたしますけれども、大きく分けて二つの点について御発言申し上げます。   1点は、部会資料の第1の2(1)①に当たりますけれども、本人の意思の尊重及び身上の配慮に関する点です。細かくは二つございまして、1点は、先ほど来、上山委員から御発言があり、また、河村委員からの御発言に対して山田関係官から御回答があった点に関わります。山田関係官から御回答がありましたとおり、意思を把握するような行為をしてもしなくてもよいという趣旨ではなく、しなければならないという趣旨を含んでいるということでしたら、やはり努力義務という形にはせず、一定の法的な義務があると明示することが望ましいのではないかと思います。とは申しましても、これはある意味では定式化の問題でもあり、意思を把握するという結果の実現は不確実ですから、それに関しては努めるというにとどめるほかないということかと思います。ただ、上山委員からも御指摘がありましたとおり、努めるように行為をすること自体は義務なのであれば、例えば委任契約に関する644条に準じるような形で、委任事務を処理する義務を負うという文言にならった定式を用いるですとか、山田関係官からの御説明の趣旨が明らかになるような定式を工夫していくことが重要ではなかろうかと考えました。これが1点目でございます。   2点目につきましては、少し観点が変わりますけれども、今般改正で見込まれている方向性といたしましては、包括的に代理や取消権、同意権を授権するのではなく、事務を区切って授権することが想定されますので、複数の保護者が異なる事務を担当するという状況も生じ得るかと思います。そういったときに保護者間で一定の情報の共有ですとか、あるいは照会をすることができるのか、あるいはすべきであるのかといったことについても一定の態度が示されていることが望ましいのではないかと感じます。   部会資料13ページ①の提案ですと、その他の適切な方法によって本人の意思を把握するように努めるというところにその趣旨を読み込むことになるのかと思いますが、そのように理解してよいかは不明瞭であるように感じられますし、また、問合せに応じて回答してよいかという点に関しましては、職務の遂行中に本人のプライバシーに関する情報を把握した、それを第三者であるところの他の保護者に開示してよいのかといった問題もあるかと思いますので、一定の規律を設けて取扱いが明確化されることが望ましいのではないかと感じます。   大きく分けまして二つ目の点に関わりますのは、既に上山委員から御発言がありましたけれども、郵便物の取扱いです。現行法上は成年後見人が包括的な権限を有しているわけですが、それにもかかわらず特に授権が必要な行為を定めたのが860条の2であると考えますと、改正後も、郵便物の転送や開披は通常の事務として保護者に担当させることができず、860条の2に相当する規定がなければ、それらはできないということになるのではなかろうかと思います。他の論点での態度決定に応じてこの規定を完全に削除してしまうことになりますと、郵便物の転送や開披ができなくなる可能性もありそうですが、それでよいかについては検討が必要ではなかろうかと、上山委員と同様に感じています。 ○山野目部会長 ほかにいかがでしょうか。   第1で保護者に関する検討事項としてお諮りしている幾つかの点につきまして、委員、幹事から、大きく眺めれば、部会資料において提案ないし示唆している方向に賛同の御意見を頂いてまいりました。なお、しかし次の検討の機会に向けてもう少し検討を深めておくべき点があるようにも見受けられます。いずれもそうであるという側面ももちろんありますけれども、大きく取り上げますと3点、本人の意思尊重義務、それから死後事務、それから解任事由、これらについて若干委員、幹事から本日お気付きの点は更に伺っておきたいと考えます。   まず、本人の意思尊重義務につきまして星野委員に対するお尋ねから始めます。陳述の聴取という表現に違和感をもつという御発言がありましたけれども、どのような趣旨でしょうか。 ○星野委員 適切な表現ができなかったのですが、違和感という言葉は少し違うかもしれません。ふだん聞き慣れない言葉であることと、陳述の聴取というのが何か尋問のような、これはすごく本当に素朴な感覚なのですが、そういうものをやはり感じてしまいます。それで、今回のこの趣旨、意思を尊重することの努力義務ではない、努めなければならないというところにおいては、本人の思いを聴くといいますか、聴くというのは耳で聞くだけではないのですが、そういうことに対する表現として、もちろんこれはもう法律の中でいろいろなところで使われている用語ということも分かってはいるのですが、この部分においては、より分かりやすい、今もずっとお話がほかのところでありましたけれども、もちろん尋問ではないのは分かるのですけれども、もっとそういう平たい言葉はないのかという素朴な意見でございます。 ○山野目部会長 星野委員がおっしゃったとおり、ここの陳述を聴取するという文言は思いを聴くという意味です。意思決定支援をどのようにするかということについて、社会福祉士の皆さんなどを中心にいろいろな本が今、出されていたり、ウェブサイト上でも様々な案内が出されていたりして、本人の話をじっくり聴く、傾聴するという言葉が用いられています。それらの福祉の世界において用いられている表現を民事法制上の法文の表現にして、こういうふうになります。世界が異なれば言語が異なるということについて、引き続き御理解を頂くことがかないますれば有り難く存じます。   その上で、把握しなければならない、をめぐって複数の委員、幹事からお話を頂きました。河村委員からきれいに整理していただいたとおりでありまして、把握のためのアクションは必ずしなければいけないと考えられる。把握のためのアクションを何もしないということは明らかにここで定めている保護者に対して課される義務の違反であると、この帰結については御発言いただいた委員、幹事は、解決の中味そのものについては異論をお話しにならなかった、そこは一致しているようにお見受けしました。その上で、把握の結果という意味に把握という言葉が受け取られる側面があるということになってまいりますと、本人の心身の状態によっては、把握のアクションはしなければならなくて、したとしても把握の結果を獲得することは困難であるという事例がある、そういう事例があるということも恐らく委員、幹事の間において御異論がなかったところであろうと感じます。この把握の結果まで求める趣旨ではない、ということも併せて、これから用意する法文において伝えなければいけないものでありまして、ここまでの委員、幹事の御意見を集約いたしますと、構想される法文は二つのことを伝えることが理想であろうと考えます。一つは、把握のためのアクションは必ずしなければならない、把握の結果を必ず獲得するということまでは求められない、把握の結果の獲得がなかったということが直ちに機械的に保護者の義務違反になるというものではないということも伝わることが望ましい。これらを両立させる方向で工夫をしていくことがよろしいと思われます。   山城幹事にお尋ねです。委任の善管事務の規定を参考にして工夫の余地ありとおっしゃって、案文のようなものをお言葉として頂いたようにも感じますが、少し私の理解が足りない部分がありまして、どのようなイメージの法文にここをしていくというお話であるか、いささか重ねてお教えを頂くことがかないますでしょうか。 ○山城幹事 私にも定まった提案があるわけではございませんが、644条に関して申しますと、委任事務を処理する義務を負うという形で結ばれています。委任事務は、委任の本旨として、事務を処理した結果どのようなことが実現されるかについての一定の期待があり、その実現のために行われるものかと思いますが、644条では、結果の実現については言及しない形で、事務を処理すること自体について義務を定めています。ここでも、意思を把握するという結果に触れることなく、学理的には探求するというような言葉が使われたりするわけですが、把握に努める行為自体を動詞として立てた上で、それをする義務を負うという定式化をするということも一案としては考えられるかと感じます。 ○山野目部会長 そうしますと、把握する義務を負うといったような法文イメージが考えられるということになりますか。 ○山城幹事 把握という語義の理解によるところもありますが、それも考えられるところではなかろうかと感じます。 ○山野目部会長 分かりました。今、お二人の委員、幹事にお声掛けをした論点につきまして、何か補足で御発言を受け承っておくことがありますれば承ります。いかがでしょうか。 ○波多野幹事 今、意思尊重義務のところで御議論いただいておりまして、引き続きこちらの方もよりよい表現ぶりがないかを検討していきたいと思っていたところでございますが、部会資料で提示をさせていただいておりますイメージとしましては、今の858条の本文、1項だけの本文ですが、この部分を2項の方に回し、その1項として、意思を尊重するという前段階として、この把握するのだということを規定していくということが、この間この部会で議論いただいたことかと思っておりまして、それを表現しようとしたものでございます。   その関係で行きますと、ここは少しまたいろいろ御意見いただきたいのですが、今取りあえずの①の部分だけを取り出して何か義務違反があるというようなものなのかというところが少し、こちらも理解がまだできていないところがありまして、議論の推移としましては、今の858条の意思を尊重しなければならないということの義務、こういう大きな義務があるところのプロセスとして、こういう把握をすることに努めるのだということを表すべきではないかというようなお話があったのかと思っておりまして、プロセスが大事ですので、考えにくいのですが、たまたま本人の意思と合っていて尊重したことになっているけれども、途中経過として把握はうまくできていなかったということもあり得るかもしれない。それが本当にいいのかどうかは別としてですが、そのときにその把握をしていないということを取り上げて、義務違反ですということを取り上げようということが求められているという規律なのかどうかも含めて、いろいろなケースがあり得るのかと思いまして、先ほど河村委員がおっしゃったように、努めたけれども把握できないケースもあるでしょうし、プロセスを経ていないけれども、やった行為は本人の意思を尊重されていたというケースもあるかもしれないということもありますと、①だけを独立の義務のような形で書くのがいいのかどうかというところも含めて、少し御意見を頂ければと思った次第でございます。 ○山野目部会長 今、波多野幹事から問題提起があった事項は、お気付きのことがあれば、また御発言をお求めください。 ○常岡委員 今のところの②の方なのですけれども、確認をさせていただきたいのですが、①で本人の意思を把握できた場合に、②で、その把握した意思は尊重することで足りていて、仮に本人の心身の状態とか生活の状況に配慮することと把握した本人の意思がバッティングしたようなときにはどう考えたらいいのかという点は、少し疑問を持っていました。先ほど上山委員のおっしゃったところからすると、本人の意思を把握して、それは、ただ、尊重をすることでよい、しかし、それが、実際の御本人の心身の状態や生活の状況に配慮して、本人の意思よりも優先すべき事情がある、状況があるというときは、そちらに従って判断すれば、保護者としては、いわゆる善管注意義務というか、この858条の、条名が変わるかもしれませんけれども、義務には反しないという理解であるという整理でよろしいでしょうか。 ○山田関係官 今の常岡委員の御発言は、本人の意思の尊重と心身の状態及び生活の状況に配慮とが違う方向に向いたときに、どのように調整するかという点と理解しました。この点に関する資料作成者の理解としては、現行の民法858条の意思尊重義務等がいわゆる善管注意義務の内容を敷衍し、明確にしたものと整理されると考えていますので、最終的には善管注意義務違反があるかとの点で検討することになるのではないかと考えています。具体的に申し上げると、本人の状況によって、例えば保護者が行おうとしている事務が本人の心身の状態及び生活に非常に重要な影響を与えるものである場合には、そちらが優先するような場合もあると思いますし、一方で意思を尊重することが求められる場合もあるかと思います。この点は事案ごとに異なってくるのではないかと理解しています。   それに関連して、先ほど根本幹事が取消権の行使のところでおっしゃっていた点についてです。取消権の行使について本人の意思に必ずしも沿わない形での行使が求められる場合もあるのではないか、ただ、あったとしても要件について厳しくする必要があるのではないかという御発言がありました。この点についても、最終的には善管注意義務違反との関係で整理されるのではないかと考えています。本人の意思の尊重、心身の状態及び生活の状況の配慮というのはいずれも重要ですが、それを調整した上で善管注意義務違反かどうかというところが保護者の行動原理として求められることになるのかなと理解しています。 ○山野目部会長 常岡委員、お続けください。 ○常岡委員 説明をいただき、整理としては理解しました。ということはケース・バイ・ケースで実際の事案に応じてその都度、善管注意義務違反かどうかということが保護者については判断されるということになるだろうと思うのですが、それで、保護者としてはどういう行動をすれば、自分の行為は民法で求められている善管注意義務に違反しないのかという、一つの行為規範としてという点になると思うのですけれども、それも条文で書くのはやはりここまでということで、あとは個別の判断にならざるを得ないという理解でよろしいでしょうか。分かりました、ありがとうございます。 ○山野目部会長 ②の「かつ」の前と後が方向として衝突したときの考え方は今、常岡委員に整理していただいたとおり、善管注意義務の精神を背景として総合的判断を事例ごとに行うという整理ではないでしょうか。そこは常岡委員に整理していただいたとおりでありまして、その上で①と②の関係について、先ほどまで議論が続いていました。 ○加毛幹事 ①に戻りまして、「努めなければならない」という表現をめぐって議論がされていますが、私はこの資料を拝読した際に、これは努力義務を定めるものであると理解していました。その意味するところとして、先ほど上山委員が法的義務と努力義務という対置を示されたのと恐らく同じ理解だと思いますけれども、努力義務の場合、その義務違反が直ちに損害賠償義務などの効果を導かないことになります。例えば、消費者契約法に関しては、近時の改正において3条1項に努力義務が追加されています。それらの義務は、その違反が直ちに事業者に損害賠償責任を課すわけではないものの、重要な事項であるので努力義務として法律上明文の規定をもって定められたものと考えられます。それでは努力義務がいかなる法的効果を有するのかといえば、それは必ずしも明らかではないものの、例えば、義務からの逸脱が大きい場合には損害賠償義務が生じることになると理解しています。今回の御提案も、そのような努力義務であると理解していました。   ただ、直前の議論のうち、波多野幹事の御発言の前までの議論において示された考え方は、私が理解する努力義務とは異なる性質の義務として①が想定されているようであり、そうであれば「努めなければならない」という表現は、法律家に誤解を与えないよう、避けた方が良いのではないかと思います。   他方、波多野幹事の御発言は、①が独立して義務違反を構成するものではないとのお考えを示されたように理解しました。他方、プロセスが大事であると強調された点は、①の義務が消費者契約法3条1項の定める努力義務とも異なる性質を有することを示唆しているようにも思われます。そうだとすると、やはり「努めなければならない」という表現を避けた方が良いのかもしれません。そしてプロセスの重要性を強調するのであれば、①と②を一緒にする形で規定を設けることが考えられるようにも思われます。②が本体であり、②の内容を充実させるような形で、①で書かれているような要素を法文上書き込むという解決というのもあり得るのではないかと思います。あるいは波多野幹事の御発言はそのような方向性を示唆されているのかもしれないと思った次第です。 ○山野目部会長 よく分かりました。 ○佐久間委員 今の点なのですけれども、私は、山田関係官もおっしゃったことですけれども、善管注意義務というのを負っていて、その内容というのですかね、善管注意義務を尽くすに当たって標準的というか、しなければならない内容としてこういうことがありますよということを明らかにしているのが858条だと思っています。もっとも、そのことが今の表現ぶりでは必ずしも十分とは言いかねる面があるので、どう充実させていくかということがずっと議論されてきたのだと私は思っていました。本日の御提案もその延長上にあると理解しており、今日の13ページからの2(1)の、これを義務と呼んでも別にいいとは思うのですけれども、この義務違反をもって何かサンクションがあるというようなことは私はおよそ想定していませんでした。あるのは善管注意義務違反としてのサンクションというか、扱いだけだと思っていました。   それとの関係で、別にこのままでもいいかなと思ったので特に意見は申し上げなかったのですけれども、①と②のように区別して二つ並べることが本当に必要なのだろうかというのを思っておりまして、現在のところは意思の尊重と生活状況等の配慮にあるところ、意思の尊重の内容を敷衍するというか、意思の尊重をするということにはこういうことが通常求められるのですよというようなことを明らかにしようとするのが①だと理解しております。一文が長くなるので、どうかなとは思いつつも、858条のような一文の形で、この「意思を尊重し」の前に、努めとかというのを挿入するのはどうかと思っています。   すごく失礼なのですけれども、「なければならない」という文言では駄目だというのが実はよく理解できません。「何々しなければならない」というのは義務なので、もしこのような形で置いて今のようないろいろな御意見が出てくるのだったら、例えば、「努め」までで読点を打って、「その方法により把握した本人の意思を尊重し、かつ」何とか何とか「配慮しなければならない。」というふうに、ならないは1回だけにする方がいいのではないかと思いました。 ○山野目部会長 少しお待ちください、久保野委員がお手をお挙げになっています。 ○久保野委員 ありがとうございます。「努め」のところではないのですけれども、よろしいですか。陳述の聴取に遡ってしまいます。 ○山野目部会長 陳述の聴取、どうぞ。 ○久保野委員 「陳述の聴取」という用語につきまして、先ほど整理が済んだところではあるのですけれども、裁判手続ですとか行政に関わる手続で使われている印象が強く、そのような手続以外の場面について、陳述の聴取という語がどのくらい法律で使われているのかということが少し気になりました。恐らく、違和感というようなことで御指摘があるのはそのような点に関わっているのだろうと思います。その上で、言い換えるとしたらということが御提案できるといいのですけれども、まだそれは見付けることができていないというので申し訳ありません。   ただ、意見ですとか意向の聴取ということですと、恐らくほかの箇所との重複などの関係があって難しいのかなとは思うのですけれども、なお別の表現に置き換える可能性ですとか、更に考えますと、「その他の適切な方法」の前にこの陳述を聴取とあえて入れていることの意味といったことも考えながら、もう少し検討してもよいのかと思いました。中途半端な発言で申し訳ありませんが、以上です。 ○山野目部会長 久保野委員に御相談でございます。事務当局においてなお、従来の法制の例を調べてもらうということはやぶさかではありませんけれども、恐らく見通しとして、聴取のところは改めようがなであろうと感じます。つまり、これを聴くということです。久保野委員自身がおっしゃったように、意見を聴くと述べると狭すぎて、説明を聴くのでもないですよね、説明を聴く場面もあるかもしれないのですけれども、そうでない事例もあって、これは、要するに星野委員にお声掛けしたように、本人のお話を聴くものであって、それを法律の世界では、例えば民事訴訟の判決手続においても、本人が弁論においていろいろなことを述べますけれども、あれは全部、その陳述があったときはと扱っており、法律概念として整理すると、意見、説明、質問、問合せ、希望その他いろいろなものを何か言語に発したものを全部、陳述と呼んできました。ここに陳述の聴取と入れる所以です。   加えて悩みは、陳述の聴取という福祉関係者が抵抗感を抱くかもしれないような言葉ならば削ってしまえというお考えもあるかもしれないですけれども、いきなり適当な方法と出ると、例示がなくて、何が適当な方法であるかが示唆されていない文章になります。そういうことをいろいろ、ここを全部悩んだ上で、事務当局は陳述の聴取その他の方法と書いており、何となく法律家がいつも使っているからこれにしておこうとしてしたものではないという、その背景に、とてつもない苦労があるということは、久保野委員においては先刻御理解いただいていると理解しておりますけれども、そのことを改めて、久保野委員にというよりは委員、幹事に申し上げた上で、事務当局の方において、もう一度その必要なところを見直すということをしてもらえるだろうと期待します。ありがとうございました。   会場の方に移ります。根本幹事、次に山城幹事に行きます。 ○根本幹事 努めの規定のところに戻りますけれども、私も加毛幹事や佐久間委員の御意見に賛成でして、元々この①というのは、②の前段である意思尊重義務のプロセスを定めたものであるということになりますので、分けてしまって今日先生方から御意見いただいたような形になるのであれば、やはり一本化した方がよいと私も思います。   その上で、意思尊重義務と身上配慮義務の関係性については常岡委員と山田関係官の整理のとおりだと理解をしますし、効果についても、従前の858条における効果である善管注意義務違反を構成するということも変わらないとは思います。ただ、意思尊重義務なり、若しくはこのプロセスに何らか違反をするようなことがあったときに、欠格事由と結び付かない交代事由になるということは、それはあり得るのだろうと思いますので、善管注意義務がもちろん直接の858条の効果にはなると思いますが、欠格事由と結び付かない交代には、効果として及ぶということは、それはあり得るだろうという想定になるのだと思います。 ○山城幹事 やや前言を翻す形の発言になりますが、部会資料の第1の2(1)で、①と②の関係につきまして、①を手段として②の生活状況等への配慮という関係にあるとの整理が示されました。私も賛成いたしますし、これを一文にまとめるという考え方もあり得るところかとは思います。   その上で申し上げたいのは、先ほど644条の定式等を参照して文言化することも考えられるかと申し上げましたが、佐久間委員から御整理があったとおり、後見人の義務の根拠規定は869条が準用する664条であって、その義務内容を858条に照らして明らかにするという構造になっているのだと思います。そうだといたしますと、波多野幹事から御指摘がありましたような、①に関する義務に違反しただけで一定の責任等が生じるのかという問題は、根本的には②についても存在するのだろうと思います。このことを考えますと、644条の文言を参照して①に書かれているような内容を明確化するということは、体系的にみて適切ではないだろうと考えました。例えば、意思を確認しなければならないですとか、そういった書き方は考えられるところかもしれません。   もう1点は、こちらは原案の御作成に当たって御苦心されたことを重々理解した上で、久保野委員から御指摘がありました、陳述を聴取するという点に関しまして、思想としては、本人と協議するですとか、そういった文言を使うことも考えられるかもしれないと感じました。協議という言葉は、法令用語辞典の類では、相手方に対し必要な説明を十分に行い、相手方の意見を聞いた上で一定のことを行う場合に用いられるとされます。意思が陳述というような形で表明されることではなく、本人との間で話合いをすることが重要なのだといった趣旨が正面に出る方がよいのではないかと感じますので、原案に反対する趣旨ではないことを留保しつつ、思い付くこととして申し添えます。 ○佐久間委員 858条の見直しについて、私は一文にすることに本当は賛成ではないということを申し上げておきたく存じます。もしかすると私が一文にすることに積極的と思われたらまずいな、と思いまして。一文が長くなると何のことか分からなくなるので、この「努めなければならない」という文言の心はどういうことかということをきっちり確認をしておいた上で、この原案が私はいいと思っています。その上で、現行法では、869条が善管注意義務を定める644条を準用していて、858条の方が前にあるのですけれども、869条のこの位置のままというのは今後は、どうなるか分からないけれども、このままでいいのかどうかというのが問題になり得るのではないかと思います。   今は、成年後見人について、後見人ということで未成年後見人と一緒に規定できていますけれども、今後は成年後見人とは呼ばないことに多分なるでしょうし、類型を仮に全く分けないとなると、全くもって全然違うということになるので、善管注意義務の規定の準用にするのか書き起こすのかも含めて、それとの並びを少し考えていただいて、858条の見直しは、分かりにくくなるとよくないので、できれば私は原案の方向、二つ分けることにしつつ、その条文の並びによっても、規定の趣旨が分かりやすくなるような努力をしていただけると、全部丸投げで申し訳ないですけれども、いいかなと思います。 ○山野目部会長 後段におっしゃったことは法制整理に関わる事項ですら、心得た上で処することにいたします。前段でおっしゃった事項は、今更そういうことを言われても困るので、佐久間委員がおっしゃったから、みんな一文にする方向で意見をおっしゃり始めました。 ○佐久間委員 「なければならない」という文言では不十分だと議論が巻き起こるぐらいだったら一文にしたらいいと申し上げたつもりでして、そういうことが起こらないように説明をしておいて、このままの方がいいというのが元々の私の意見です。 ○山野目部会長 真意は今、理解しました。 ○青木委員 私もこの①と②については、分けて規定する方がいいのではないかと思っています。この規定に関する議論というのは、元々、858条には、本人の意思の尊重義務と身上配慮義務の二つがあって、それは善管注意義務を具体化したものであるとされており、そのため、それは後見人の善管注意義務における広範な裁量の中にあるという位置付けにおいて、この25年間実務でやってきたものについて、先ほど議論がありましたように、それでは、結局は、後見人が、善管注意義務としてバランスをとればいいのですよね、とされてきた中で、実際には本人の意思尊重が十分には慮れずに身上配慮義務の保護の側面が前面に出たということを振り返って、やはり本人の意思尊重義務というのは、具体的に本人に情報を提供して、きちんと本人の意思を把握して、その意思が把握できたのであれば、まずはそれを尊重した上で職務を行うのであり、その他の本人の利益との関係で最終的にはバランスをとることも必要ですね、という、本人の意思尊重義務をいかに前面に出すかということが、今回の見直しの大きな課題であり動機付けであったと思います。   そうなりますと、それ自体だけで義務違反を構成するものでないとしても、まずは1項で具体的な取り組むべき過程を示し、それをきちんとやった上で、把握できた本人の意思を尊重することは義務ですと、ということを2項で示す、という立て付けにすることによって、今回の改正の趣旨、意図が明確に示されるということになると思います。努力義務か努力義務ではないかという表現上の誤解が生じるという加毛幹事などの御指摘はそのとおりかもしれませんが、それはそれとして解釈論や運用において手当てをしていくということではないかと思っております。 ○山野目部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○星野委員 波多野幹事が先ほどおっしゃった、結果として本人の意思だったというような話があったと思うのですが、そこのところというのは今、青木委員が言ったことと私も同じような感覚を持っているのですが、結果が本人の意思に沿っていたということの判断というのは、やはり本人の意思を確認しているというプロセスがなければ、それは結果につながらないと思うのです。ですから、常岡委員と山田関係官のやり取りの中でもありましたが、先に保護的な要素は当然出てきてしまったとしても、それでも本人の意思を尊重するという規定があれば、その結果でよしではなくて、その結果になったプロセスをもう一度きちんと見る義務があるということにもつながると考えます。そういう意味では、意思決定支援の後見事務のガイドラインを作ったときにもこの議論をしたなというのを少し思い起こしているのですが、やはりプロセスを重視するというところは、結論が先に来たような事象があったとしても、それで終わりにしないということだと思っているので、そういう意味では私も今、青木委員が言われたような、この二つはつながっているように見えるのですけれども、やはり少し違うレベルというところでは、二つ出ていてもいいのかなと思います。 ○山野目部会長 ほかにいかがでしょうか。ほかに御発言がなければ、今お諮りした点について私から二つのことを申し上げた上で、次の論議の機会に向けて改めて部会資料を作成して御覧いただくということにいたします。   1点目でありますけれども、何人かの法律家の先生がおっしゃられたように、努めなければならないという今のままの表現であったとしても、これが法的に典型的には訓示的な意味しかなくて何の効果もないという規定であると理解されるはずはないのでありまして、これは把握のためのアクションは必ずしてもらわなければいけないということを伝える趣旨の法文であると理解することができるはずのものでありますが、繰り返し努めなければいけないという表現に引っ掛かりを感ずるという御発言がこの場においても出、あるいは社会一般からもそういう声があるかもしれないということの背景には、今般の成年後見制度改革に対して常に社会一般から向けられているある種の疑念がありまして、改革が微温的で保守的なものに終わるのではないか、法文として示されるものが恐らく現在のものと余り変わらないような運用を可能とするような内容のものになって後退していくのではないかという疑惑の眼にさらされています。そういう背景がありますから、どうしても努めなければいけないという表現に対して抵抗感を抱く向きがおありであろうと事態の経緯を推測いたします。   もう1点は、論理の問題でありますけれども、②のところに、①の方法により把握した意思を尊重し、とあります。この尊重し、のところは、尊重し、の後が平仮名一文字、「し」になっていますけれども、文章の構造として、尊重しなければならない、に続くものでありまして、ここは尊重するよう努めなければならないではありません。本人の意思を把握して尊重すること自体は紛れもなく留保のない義務であります。本人に対して何らその意思把握のアクションを講じなかった保護者の態度というものは、①の方法により把握した本人の意思なるものがそもそも存在しない、分からない、しかもそれは保護者に対し、君は知ろうともしなかったということになりますから、この意思を尊重する義務を全く果たしていないということになるものでありまして、文章の構造から言って、①、②を併せて読めば、尊重のために意思把握の動きを全然しなかった保護者の行動が義務違反に問われることは明らかです。その上で、今私が申し上げたことを明解に伝えるためには、検討の必要がありますけれども、一文にする行き方も一つの方法かもしれません。一文にすると長い文章になります。日本語の先生がよく御注意をくださるように、なるべく文は短く切って、というふうなお話もありますけれども、私はあの日本語の先生の注意を余り信じていなくて、状況によっては、我々が学術論文を書いていて感ずる機会がありますけれども、長い文章にした方がきちんと伝わることという場面がしばしばあります。ただし、長い文章にするときには注意をしなければいけないという警句は確かであります。   今、政治的な経過の背景分析と、それから、ここに示されている文章の論理的な解明について、参考となるガイドを差し上げました。しかし今日、委員、幹事から多岐にわたる有益な御意見を頂きましたから、次回に向けて部会資料を調製していくことにいたします。   続きまして、死後事務について若干の議論がもしありますれば、更に伺っておきたいと考えます。私の見るところ、まず二つ申し上げますけれども、一つは、死体は、遺骨は明らかですし、恐らく死体についても被相続人の相続財産の一部を構成するであろうと思われて、ただし誰が相続をするか、それからその処分をどうするかについては公法的な規制があって特殊な制約を受けている動産であろうと思います。その上で、その埋葬・火葬の処理をする契約というものは、従前どおり事務管理の法理などの支援を得て、最終的には相続人に費用を支弁させるという方向で整理をしていくという解決そのものについては、大きな抵抗感は人々が抱かないのではないかと感じますから、そういう規律が明瞭になる方向でここで案文を調えていくということがあってよいかもしれません。この点について、更に委員、幹事の御意見を伺います。   それからもう一つは、仮にそのような事務を明文の規定によって又は事務管理の法理を背景として保護者ないし関係の人がすることができて、そのための費用の出捐も付随の事務としてすることが許されると理論面で整理をしたとしても、金融機関の窓口に行って、それに用いますから被相続人の口座からお金を出してくださいということを求めると、それは実体法の理屈として仮に正しいとしても、金融機関は応じないだろうと思います。金融機関は何らかのきっかけで被相続人の死亡という事実を認知した場合には、909条の2の規定が許容する場合を除いては払戻しに応じないでありましょうから、そうすると事務的に話を進める上で、そこで隘路が生じてしまうことになります。ここについても、何か規定を用意するかどうかはともかくとして、本日段階でお気付きのことは委員、幹事におかれて御発言いただいておくことが有益であると感じます。この死後事務の点について補足の御発言があれば承ります。いかがでしょうか。   今日お出しいただいたような御意見を踏まえて、引き続き次回に向けて部会資料を調製するということでよろしゅうございますか。それでは、死後事務についてそのように、また検討を深めていくことにいたします。   もう一つお諮りしておくことがございます。この議論をお願いした後で久保委員、花俣委員にこの順番でお声掛けをすることにいたします。新たな解任事由を設けるかということについて、もし重ねての御発言があれば、とお諮りを致します。先ほど来、既に御意見は頂いていて、中味を理解しているところでありますけれども、少し分かりにくくなってきている部分がありまして、私の方から二つ、現実に起こりそうなことというもののお問い掛けを致しますから、それらを題材として、新しく提案されている解任事由の在り方、取り分け従来からある任務に適しない事由、それからもう一つ、本人の利益のために特に必要であることという解任事由のそれぞれの適用関係についてお考えのところをお述べいただくことができれば、頂戴しておきたいと考えます。   一つは、保護者になった人が本人に会いに行こうとしない、あるいはチーム支援の場で参画してくださいと求められても参画しない、こういう態度を取り続ける保護者がいると、これをどうするかという局面を題材として御提示申し上げます。もう一つは、保護者になった人が本人のところに会いに行くということもしているし、チーム支援の場でもコミュニケーションをとろうとしてチーム会議などにも参加したりしているけれども、どうしても、会いに行って会っている本人と合わなくて、本人が単に合わなくて何か嫌だと述べているだけではなくて、あの人がやってくると非常に精神がダメージを受ける、時々そういう実例があるようです。施設のお医者さんの診断で、あの人に会わせると心の不調が著しく生ずるから面会を止めます、裁判所が選任した保護者ですけれども、面会を止めますという医師の所見が示されて、来ないでくださいというふうな処置がとられるというふうな事態に至ると、こういう局面を保護者の交代の関係ではどういうルールで扱ったらいいであろうかという二つの事例を題材にして、委員、幹事がそれぞれおっしゃったところを当てはめるとどうなるかというお話を、もしかなうならば頂戴しておきたいと考えますけれども、いかがでしょうか。 ○佐久間委員 私は、現在の条文は取りあえずそのまま置いておいて、新たに提案されている「本人の利益のために特に必要があること」というのを、任務に適しない事由に当たらなくても当該事務処理をその人に続けさせることが本人のために適当でないというときには、全部それを解任事由として認めるというような理解をしておりますので、今、部会長がおっしゃった二つの場合のうち後者については、それは解任にまで至らないことはあるかもしれませんが、新たな事由によってしか解任はされないということになると思います。前者の方の本人に全く関わろうとしない、チームの協議等にも無関心でという場合については、どちらもあり得るのかなと思っております。ただ、私が先ほど申し上げたのは、適性としてどんな人についてもおよそ関わらせるべきではないというほどのものだと裁判所が判断したならば、任務に適しない事由があると認め欠格事由とするけれども、会いに行かないとか非協力的だというのは様々な事情があり得ると思いますので、そこまでの判断には至らないということでありましたならば、新たな「本人の利益のために特に必要がある」という事由に当たるということで解任をし、欠格事由とはしないという処理になるのではないかと私は思っておりました。 ○山野目部会長 佐久間委員の整理はそうであろうと思って聴いていました。明快に伺いましたけれども、ほかの幹事、幹事がおっしゃった内容が、どうなっていくであろうかという興味がありました。 ○根本幹事 整理としては、佐久間委員がおっしゃったのと同じで、心の不調が生じていらっしゃるケースであれば、これは新事由である本人の利益事由のみに該当し、前者の会いに行かない、チーム参画しないということについては、これは任務に適さない事由があり、かつ本人事由、いずれにも該当するという整理だと思うのですが、もし事例に少し付け加えさせていただくとして、佐久間委員が想定されている、例えば会いに行かない、チーム参画しないというのが著しい義務違反になるのはどういう場合かということを私なり想定をしますと、例えば、会いに行かない、チーム参画しないだけではなくて、支援者に暴言を吐く、会いに来てほしいということ何度連絡しても無視するのみならず暴言を吐いたり、場合によっては家庭裁判所から指導が入ったとしても家裁の指導に対して全く従わないという、何なら家裁に反論の文書を送り付けることをなさるということになると、それは佐久間委員がおっしゃる著しいということに当たり得るのだと思います。先ほど申し上げましたように、そういう方については欠格事由とするのではなくて、運用上、家庭裁判所がこの方は選びませんという、法制上の欠格事由にせずに運用上、選任権限のところで判断をしていただくということで足りるということになるのではないかということで整理をしています。 ○山野目部会長 今のところが、佐久間委員のお考えですと、全部が常にかどうか分からないけれども欠格事由に当たることが大いにあり得る。根本幹事は、法制上欠格事由とするルールを設けずに、裁判所の運用に期待して、結局は行き着くところは同じですけれども、再び保護者に任命されることはまずないだろうという結果を確保しようとする、そこの相違だと整理することができますね。分かりました。   ほかにいかがでしょうか。 ○星野委員 現状を考えますと、もちろん今はこの制度が新しくなっていないので解任と辞任だけなのですが、社会福祉士として、私は東京なので東京の実態になってしまいますが、少し印象が偏っているかと思うのですが発言します。状況が適切ではないというか、本人にとって不利益が生じている、例えば横領の疑いのような財産管理の不清明もありながらも、なかなか解任という判断がされていない実態をすごく感じております。要はどうするかというと、受任者の状況を裁判所に報告したりとか、中核機関などとも連携しているのですけれども、家庭裁判所からは当該会員に辞任を促すことまでもされずに、追加選任という形になるのです。そういう状況を見ていますと、今の実情が全国そうだということではないとしても、私の周りに割とそういうことが多いと見ているとしますと、なかなか欠格事由につながるような解任というのが、本当にもう非常に重篤にならないとなされなくなりつつある中で、今この改正議論をしている中では、恐らくそこを裁判所の見解としては、後で裁判所の御意見もあるかもしれないですが、やはり個別事案ごとに見ているという言い方をよくされます。候補者、後見人になっている受任者がもう全体的に駄目というよりは、やはり個別の案件で見ていますということをよく言われますので、それは今の議論している欠格事由につながることではないのか、つながらないまでも新たな事由による解任をするということができてくると大分違ってくると思っています。このような事案の中で考えると、やはり状況によって個別に異なるということなので、なかなか全部を明確に規律するのは難しいような印象を持っています。 ○山野目部会長 状況によって異なりますが、状況によって異なるでは法制が組めませんから、任に適しない事由の場合には欠格事由にし、本人のために必要がある場合は欠格事由にしない、どちらも解任ですよという整理をするか、そうでないような運用に期待する部分があるかというところをこれから深めていかなければいけないものでありまして、星野委員が今おっしゃったことは、一旦議論していただいたときにも既に伺っていることですけれども、それをもう少し深めていかなければいけないと今お問合せをしております。 ○星野委員 今の整理では、運用になるのではないかという意見です。 ○山野目部会長 分かりました。   ほかにいかがでしょうか。そこはひとまずそういうことを伺っておけばよろしいですか。 ○久保野委員 また戻ってしまって申し訳ないのですけれども、先ほど死後事務について、火葬等について部会長からおまとめいただいて、次につなげるということでまとめていただいたのですけれども、まとめていただいた内容と、途中で加毛幹事が御発言なさったこととの関係が少し気になり、確認させていただきたい次第です。   といいますのは、加毛幹事の御意見は、社会政策的な要請がある火葬等の事務という点に力点を置いて、そのようなものとして考えるとすると、相続人との関係等について規律する現在の要件について考えてみる必要があるという方向性だったと思います。他方で、先ほどのおまとめは、むしろ遺体が相続財産に入る、あるいは少なくとも遺体に関わる様々な権限を相続人が持つというのが基本的な理解だという整理の下で進めていくという御整理だったかとも思います。その両者の考え方の関係をどのように整理して進めていくということかについて、確認をさせていただいてよろしいでしょうか。もし理解不足でしたら申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 久保野委員におかれては、審議の状況をよく御覧いただいての今、お問合せであると理解を致しました。先ほど私はこういう御案内を差し上げました。相続財産に含まれるものについて、一般的な相続法の規律では、もちろん相続人が随意に処分することができる財産であって、相続によって承継取得することが認められるというのが民法の当然の原則であるということが控えている中で、しかし承継取得される財産の中には、その帰属や処分の方法について特殊な公法的規律による制約、束縛を受けるものがあるから、その関係に十分留意し、ここでの規律を考案していかなければならないという側面もあるでしょうという御案内を差し上げました。そこで申し上げている公法的な規律が特殊な仕方で課せられるということの含意は、先ほどそのように明言はいたしませんでしたけれども、加毛幹事が御注意いただいたように、加毛幹事のお言葉で言うと公衆衛生上の見地ですけれども、公衆衛生上の見地からルールに従ってしてくださいということを要請している部分があり、そこを強調して見ていかなければいけないとおっしゃっている部分と相当程度範囲において重なるものであるという認識で、先ほど御案内を差し上げた次第です。 ○久保野委員 そうすると、遺体の法的な位置付けについても、古い裁判例があるなど、一定の見解等があると思いますけれども、必ずしも何かを固定的に前提としているわけではないというふうに、まず、今の御説明を受け止め、理解いたしました。その上で、私は個人的には先ほどの加毛幹事の御指摘に共感するところがございましたために、今このように遡って発言させていただきましたけれども、加毛幹事はその上で、社会的な必要性等を踏まえて手当てを広げていく方向を具体的に御提案なさり、しかし、そのときに、本来民法の中に置く通常の考え方とは異なる面があるということをしっかり踏まえた上で、丁寧に具体化することをお示しになったと思います。   そして、私も社会的な必要性の高さが何度も議論されている事柄ですので、今更民法で手当てすることはむしろ控えた方がいいとまで申すつもりはございませんけれども、他方で、40ページにその他の意見として書かれておりますとおり、本来、成年後見制度の中で手当てするのがよろしい事項なのかということも問題になり得るような論点ではあると思っているので、その点は申し上げさせていただきます。その上で、規定を設ける際に、そのような、公法的な考慮や規律との関係が問題になる事柄であるということを十分意識した規定の在り方を検討していくことが必要だろうという点について、重ねてになりますが、確認の御発言をさせていただきました。ありがとうございます。 ○山野目部会長 久保野委員に御案内ないし御相談がございます。2点申し上げます。1点目は、久保野委員、それから先立って加毛幹事がおっしゃったことは異論のないところでありまして、もちろん受け止めて民事法制上の規律を考案していく、この方針を先ほど申し上げたつもりですし、委員、幹事の間においても御異論がないところであろうと理解しております。もう1点は、そうは申しましても、社会的、公法的なとおっしゃる部分は大事ですけれども、この部会のテーブルで考えていく幅に限界があります。本当は墓地埋葬、行旅不明者等に関する法制を一括して両にらみをしながら全面的に見直して改正することがいいですけれども、そういう作業の検討が可能なステージになっていません。その状況で我々は、しかし当面、成年後見制度の規律の中に全くそのことを知らんぷりしましたという規律にするわけにはいきませんから、ぎりぎりの考案を深めていくということになります。これはなかなか苦労の多い話になってまいりますから、引き続き久保野委員にもこの苦労についてお知恵、御教示を頂戴することがかないますれば有り難く存じます。どうもありがとうございます。   今の点について、ほかにいかがでしょうか。 ○山田関係官 死後事務に関し、先ほど加毛幹事がおっしゃった内容で少しお聞きしたい点があります。死体の埋葬・火葬の契約の締結について、今のゴシック部分については、相続人が相続財産を管理することができるに至るまでという時期的な制約を設けています。これについては現行の民法873条の2の柱書きを参考にしています。ただ、先ほど加毛幹事が御指摘のとおり、死体の埋葬・火葬の契約の締結については、本人の生前の権限との関係でその他の死後事務とは性質の異なるものであるということを、部会資料の中で整理しています。そして、現行法における時期的な制約をここに持ち込むことについて相当ではないのではないか、との御指摘もありました。ただ一方で、本人の死体の埋葬・火葬をすべき人が出てきたにもかかわらず保護者がこの契約を締結することができるというのは相当性を有するか、と悩むところもあります。もしこの点について加毛幹事のお考え等ありましたら、お聞きできればと思います。よろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 加毛幹事、お願いします。 ○加毛幹事 まず、先ほどの私の発言につきましては、久保野委員に適切におまとめいただいたものと思います。そのうえで、山野目部会長に議論を挑むつもりはないのですけれども、遺体や遺骨の所有権が誰にあるのかについては様々な議論が存在するところです。私の理解では、遺骨の所有権が相続人に帰属するとした大審院時代の判決があるところ、それは家督相続制度を前提としたものであり、家督相続が廃止された戦後の民法のもとでは、相続人の中の誰に帰属するのかが問題になります。それゆえ、遺骨や遺体は相続財産ではないというのが私の議論の出発点にありました。そこで、火葬・埋葬に関する契約の締結に関して、相続人が相続財産を管理することができるか否かは基準にはならないのではないかと考えていたわけです。   他方、山田関係官がおっしゃったように、おそらくは相続人なのだろうと思いますが、死体の火葬又は埋葬に関する契約を締結することが期待される者が登場した場合であれば、保護者ではなく、その者が契約を締結すべきであると私も考えます。ただ、そのことを適切に法律の条文において明らかにできるのかが、私にはよく分かりません。そうだとすると、結局、「家庭裁判所の許可を得て」という要件だけを設けて、家庭裁判所に適切に判断してもらうことにせざるをえないのではないかということを、先ほど発言した際には考えていました。ただ、山田関係官が指摘されたように、この点について適切な要件立てができるのであれば、それは結構なことだと思います。 ○山野目部会長 加毛幹事に議論を吹っ掛けられて、私は太刀打ちする余地はありませんから、それは御免被りたいものですけれども、加毛幹事がおっしゃったとおりでありまして、死体や遺骨の帰属関係についての判例及び民法学説上の複雑な経緯をここで解き明かし、それを受け止めることになって、更に法文上表現するなりゆきが荷が重いと感じて、先ほどの整理を差し上げました。そうすると、細かく議論をしていくと、相続人または、もう一つ付け加えるとすれば祭祀承継者若しくは更にそのうちの誰かに帰属し、その人が埋葬の契約等を可能になるまで、と、学者が論文を書くとすると、そういう細密極まりない表現になっていって、その表現をしながら当該論述をしている学者の従来学説上の特定の立場を採用した上で記述をしていくであろうと思われますが、学術論文であればそれでよろしいというか、望まれるところであるとして、法文に表現していくときに、一方においては保護者が期間の終期の定めなくこの埋葬等の契約をすることができるというものにすることに安定感が見いだされない半面において、誰が埋葬等の契約をするまで、と考えるかという点を規律上表現しようとしてやり始めると、今お話ししたような判例及び民法学説上の複雑な議論に付き合わなければいけなくなりますから、従来法制例に倣って、相続人がすることができるまで、と書いておいた上で、しかしその相続人がするまでということについては判例の変遷等を考慮した上で適切な解釈が更に補われていくという文言辺りにする工夫が安定感があるかもしれないといった辺りを着地点として想定しながら、先ほど概括的なまとめを差し上げ、また、山田関係官から細部について今、意見のお尋ねを差し上げたところであります。   今、加毛幹事と山田関係官に意見交換をしていただいたことによって、どのような検討を進めなければいけないかは明らかになったと感じられますから、少し解決の出口をどのようにしたらいいかは悩ましくて、スマートな解決の出口に達しないかもしれませんけれども、次回に向けての部会資料の調製において事務当局において悩んでもらえるだろうと思いますから、またそれを踏まえて御教示を頂きたいと望みます。   加毛幹事からお続けになることがあれば、どうぞ。 ○加毛幹事 特段付け加えることはございません。ただ今、山野目部会長がおっしゃったことに、私は全く賛成です。また、その前におっしゃった、この部会の審議対象との関係で、どこまでの法律を作ることができるのかという視点は非常に重要であると思います。最初の私の発言は、その点を考慮することなく、自由に考えたところを申し上げたところがありますので、不適切な発言であったかもしれないと思ったということを申し添えます。 ○山野目部会長 全然不適切ではなくて、本来在るべき理念を示していただきました。どうもありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   それでは、久保委員、お願いします。 ○久保委員 いつもながら結構難しい話だなと思ってお聞きしておりますけれども、一つ教えていただきたいのですけれども、本人の、ここでいう事理弁識能力上の意思が確認できない人、障害が重くてという感じで、親が後見人の場合です。教えていただきたいのですけれども、本人の死亡後の遺体の処理ですね、葬儀、火葬、埋葬というような順番でやっていきますけれども、それを行うことは、まず、家庭裁判所の許可が必要になるのですかということを教えていただきたいのと、それを行うときに費用が発生しますので、その費用は、本人の遺産としてお金が残っていた場合、そのお金を使って支払いをしていくというのも家庭裁判所の許可を得てからでないとできないですかということを、まず教えていただきたいです。いかがなのでしょうか、それは。 ○山野目部会長 事務当局から資料作成の意図の御案内を差し上げます。 ○波多野幹事 今の久保委員の御発言の意図が把握できているか分かりませんが、親として葬儀をされる、ないし火葬されるというときには、別に後見制度を通してそういうことをやっているわけではないという整理の下、葬儀に向けての手続をされているという理解なのかなと思っておりましたので、特に家庭裁判所の許可が要るということにはならないのではないかと受け止めたところでございます。費用につきましては、恐らく葬儀費用ないしは埋葬の費用をどう負担するか、これはまた難しい問題があるところかと思いますので、その議論によるところかなと思ったところでございます。 ○山野目部会長 久保委員、お続けください。 ○久保委員 もう一つは、事後報告では駄目ですかということを少し聞きたかったのですけれども、次々と物事が進んでいきますから、本人の持っていたお金で支払いをして、家庭裁判所に報告という形では駄目なのでしょうかというのも一緒に聞きたかったなと思っているのですけれども、それはいかがでしょうか。 ○波多野幹事 恐らく今後、見直し後の法定後見制度ですと、どのような代理権が与えられているのかということとの関連で、どのような報告をする必要があるのかということは変わってくるのかなと思っておりまして、それとの関係で必要な報告を適時にしていただくということになるのだろうと思います。先ほど申し上げました、親の方が先にお子様が亡くなられてしまって、その葬儀をするという場面で、その葬儀費用を誰が負担するかというのは、なかなか多分それも一義的にこうだと言いにくい問題かなという気もいたしますので、それを踏まえて、その財産をどのように最後処理されたかというのを報告されるということになるのかなと思っております。 ○久保委員 分かりました。あとは、解任とか交代とかのところなのですけれども、きちんとやっていただく方は、前から私が申し上げている、ただ本人とうまが合わないといいますか、別にその後見人の方が全然悪くもないし、いい人なのですけれども、本人がその人を嫌っていてというのはよく私も聞くのです。その方が会いに行かれると、もう会おうとしない、少し機嫌が悪くなってパニックを起こす人もいるみたいなこともあるのです。そういう方には、親の気持ちとしては交代していただくというのに近い感じかなと思いますけれども、全然会いに行ってくれないとかチームに参画しないとかいう方は、親の気持ちとしては解任に近いような感じかなという感じでお話を聞いておりました。   たまたま昨日、岡山県へ講演に行っていたのですけれども、一人の方が私の話が終わってから来られまして、専門職の方が金銭管理をしていただいていて、自分は身上の方を、二人で後見人をやっているというような感じですけれども、年に1回電話を掛けてくるだけで全く何もしてくれないと、それなのに費用を払い続けているということで、専門職の方と、後見人同士会ったら必ずけんかして帰ってくるみたいな話を聞かされまして、こういう議論をしているのに、いまだにそういう専門職の後見人の方もおられるのだなということもありまして、どちらか、解任がいいのか交代がいいのかというのはよく分からないですけれども、うまが合わない方が解任というのは申し訳ないという気持ちも親としてはありまして、少し言葉の使い分けができないかなということを感じているところです。   ただ、どうしてもやはり本人と出会う最初が大事ですので、そこをうまく本人との意思疎通を図るためにやっていただけるということが、私としては望みたいなと思っているところです。私たちの障害のある子供たちというか本人たちは、本当に成年後見制度が必要なのです。必要なのだけれども、まだ今の制度では使えないと思っている方が、親として、たくさんおられますので、是非寄り添う後見人であっていただきたいと思いますし、そういう方に解任というのも少しきつい言い方だなというのを感じながら今、聞いていたところで、感想でございますけれども、以上でございます。 ○山野目部会長 久保委員に御案内を差し上げます。解任という言葉の耳に触る度合いについてお話を頂きました感覚は、よく理解をすることができます。本当は交代の裁判をするとか、あるいは「改」という字を用い、そちらの字を用いた改任の裁判をすると言った方がよいかもしれませんけれども、交代の方は法制上なじみにくいという側面が強うございます。それから、交代、改任を通じて、多くの場合においてチーム支援などを通じて次の候補者という人が見えてきているとは思いますけれども、手続として必ずそれが必要であるということになりますと、それはそれでまた様々な法律技術的な問題とか実態運用上の課題とかが生じますから、法制上の整理としては「解」という字を用いた解任で行かざるを得ないであろうと見通しております。ただし、気持ちとしては、恐らくこれから設けることになるであろう本人の利益のために特に必要があるときの解任は、言わば保護者に対して解任、見方によっては御苦労さまでしたという解任ですし、不正行為の場合においては解任、しかりおくという解任でありまして、同じく解任という漢字2文字が出ますけれども、それにくっついてくる挨拶の言葉は相当異なってくる、今後そのような法制になるときには世の中にも説明してまいりますし、御理解いただければ有り難いとも考えますし、引き続き見守っていただきたいと望みます。どうもありがとうございます。 ○久保委員 ありがとうございます。 ○花俣委員 これまでの議論を聞いていて、事務方の皆さんの資料作成の御苦労に感謝いたしつつ、さぞかし大変な日々だろうと拝察しております。今までの議論の中の本人の意思の尊重、13ページの1(1)①の議論が、尽くされたと思っています。河村委員の議論の投げ掛けから、様々な先生方の非常に深い丁寧な議論を頂いたところだと受け止めました。   これに関しては、①と②を合体させるという御提案もあったかと思うのですが、私も重厚な議論の場で、努めなければならないという文言を専門の先生方が深く深く議論されているのに対して、ほかの省庁で努力義務というのは実に簡単にいろいろなところに出てくるのです。それと比較すると、同じ努力義務でも重さが全然、民法上にうたわれるときは違うのだということをよく理解することができました。できれば、上山委員がおっしゃったように、なるべく義務に近いものになればいいとも思っていますし、①と②を合体させるという方法は好ましいものではないかと感じました。   それから、死後事務に関しては、もちろん法律上、詳細を詰めなければならないということのようですが、これもやはり他の省庁でも身寄り問題ということが非常に大きなテーマで掲げられていて、なおかつ終身サポート事業者、民間の事業者の参入がいろいろな資料の中に上がってきています。また、ケアマネジャーのシャドーワークについても、大きな課題としてテーマに挙がっています。ケアマネのシャドーワークの中にも、この死後事務に関してというのが項目として上がっていたりします。それもまたこの場の議論と比較して、実に軽々しい扱いのなっているように感じました。このぐらい丁寧な議論が積み重ねられれば、今社会問題になっている身寄りのない方たちの、権利擁護を含めた、その人らしく最期まで生きられる、そういったことについて国として何ができるのかということを真剣に捉えていただけるようになるのではと思い、この場の議論を、聞いてくださっているか聞いていてくださらないか分からないのですけれども、少しは見習ってほしいなと、そんなことを感じました。   あともう一つ、解任事由については、当会からも僅かばかりの中間試案に関する意見を出させていただきました。ここに整理していただいたとおり、本人や関係者との適切な関係が築けない、結果として御本人に適切な支援がなされない場合でも、現行法ではなかなか解任、後退ということにはならないので、欠格事由には至らないけれども御本人にとって適切とはいえない状況がある場合に対応する解任事由を設けていただければ大変有り難いところです。   山野目部会長が整理していただいた、会わない、行かない、チームにも参加しないというのはもう明らかに不適切だと思うのですが、本人にも会いに行く、あるいは中核機関のいろいろな会議体やチーム支援の場にもきちんと出ておられるのだけれども、どうやっても御本人とそりが合わない、俗にいう相性が悪いという場合に、この部分をどうしていくのかというのはすごく難しいと思うのです。どうしても合わない人にずっとサポートを受けるというのも、難易度が高いでしょうし、かといってそれを理由に解任していくと、果てしなく解任事由という範囲が広がってしまわないかなということも少し気になっています。私は訪問介護員の実働をしていたことがあるのですが、認知症の人と向き合ったとき、相性だけはどうにもならないと確信していましたので、ここの部分が余り拡大解釈されると、欠格条項には至らないけれども解任事由として挙げるというのもハードルが高くなるような、そんな気もいたしました。いずれにしても、ただ、御本人にとって合わない人に寄り添ってもらうということは事実上、非常にお互いにとって不幸なことなので、そうならないようであるべきだとは思うのですけれども、他方で今言ったように解任事由の範ちゅうが広がりすぎるのも心配だというようなことを感じた次第です。   ここまでの論点についてはそんな感想を持ちました。 ○山野目部会長 花俣委員のお言葉で、努めなければいけないという文言をめぐる議論に耳を傾けてくださった御様子を理解いたしました。ほかの府省ないしほかの府省の審議会がなさっていることについての論評は、私としては立場上控えることにいたしまして、その代わりに、法令の文章を作る際の言葉の用い方について1点、ガイドを御参考までに差し上げておきます。   実は道路交通法などが典型ですけれども、法令の文言に、しなければならない、してはならないという文言が用いられている場合であっても、お巡りさんに叱られるというサンクションを除いては効果が全くない規定も法令の中には結構あります。半面、今日御議論いただいたように、努めなければならないという表現になっていても、必ずではないけれども状況によっては損害賠償責任が生じたり、努めなかったことについての行政上の監督処分が発動されたりするような規定もございます。したがって、努めなければならない、しなければならないの文言の選択は、一応参考になる部分はありますけれども、決定的なものではありません。道路交通法の、しなければならない、してはならないは目立ったサンクションがありませんから、しばしばそこに書いてあるルールは交通道徳という概念で理解されます。しかし、ここで議論している意思尊重義務は、単なる道徳にするつもりがないということはもう委員、幹事が御議論いただいて明白なことでありまして、法的義務に仕上げて、その理解を伝達するための法文を今後工夫していくことになります。引き続き見守ってくださるようにお願いいたします。どうもありがとうございました。   45分まで休憩とし、休憩後の再開に際して、加毛幹事に御案内を差し上げておきますけれども、御都合により早めの退席が予定されている加毛幹事に、この後の資料全般についてお気付きのことがおありでありますれば簡単にお話しいただいた上で、通常どおりの進行に戻したいと考えますから、加毛幹事の方において何か御準備を頂ければ有り難いと存じます。   45分まで休憩にいたします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開いたします。休憩前の続きといたしまして、部会資料25の第2の1、法定後見の本人の相手方の催告権から、同じく部会資料25、第2の6、成年被後見人の遺言までにつきまして御審議をお願いいたします。申し上げた部分は部会資料25の44ページから69ページになります。事務当局から資料の説明を差し上げます。 ○山田関係官 部会資料25の第2の1から6までについて御説明いたします。   まず、44ページの1では、法定後見の本人の相手方の催告権について整理をしています。催告権に関しては、取消権及び追認権の規律を現行法の規律から見直す場合には、その見直しに併せて御議論いただくことが適当と思われます。そのため、現行法の取消権、追認権の規律を維持する場合の追認権の考え方を確認しており、次回の取消権及び追認権の規律に関する議論の際に併せて御議論いただくことを考えております。   また、45ページの2では、本人の詐術について記載しており、現行法の規律を維持することを提示しています。   また、46ページの3(1)では、意思表示の受領能力について事理弁識能力を欠く常況にある者についての保護の規律を設けるかどうかで場合分けをして整理をしています。   49ページの(2)では、意思表示を受領する権限を有する者を選任する仕組みについて記載しており、意思表示の相手方が事理弁識能力を欠く常況にある者である場合において、表意者の請求により特別代理人を選任することができ、その特別代理人はその意思表示を受ける権限と、必要があると認めるときは法定後見の開始の申立てができる権限を有することについて検討することを提示しています。   さらに、55ページの4では、成年後見人と時効の完成猶予について、59ページの5では、受任者が法定後見制度を利用したことと委任の終了事由等について、66ページの成年被後見人の遺言について、それぞれ記載しており、事理弁識能力を欠く常況にある者についての保護の規律を設けるかどうかで場合分けをして整備をしています。 ○山野目部会長 ただいま説明を差し上げた部分につきまして御意見を承ります。 ○小澤委員 ありがとうございます。部会資料49ページの3(2)、意思表示を受領する権限を有する者を選任する仕組みの②の意思表示を受領することができる権限については、仮にこのような制度を設けるとしても、特別代理人の選任の請求があった表意者以外からの包括的な意思表示受領権限を有するのではなく、飽くまで請求があった表意者との間での意思表示の受領権限とすべきではないかと考えています。表意者の立場からはこのような規定が必要であることは理解できますし、有用であるとも思います。一方、実務において選任された特別代理人の責任や義務、報酬など、引き続き検討すべき課題があるようにも感じています。具体的には、特別代理人としての善管注意義務を果たすためには法定後見の申立てを行う必要性があるかの判断を特別代理人が行わなければならず、また、専門職が特別代理人に就任した場合は、本人や親族との関係性も希薄な中、本人情報シートや診断書を取得することだけでも大きな困難を伴うと考えられ、民事訴訟法上の特別代理人よりも事務処理の難易度は高く、一定の報酬を必要とするような業務にもなるとも考えられます。 ○加毛幹事 49ページの34行目から始まる、意思表示を受領する権限を有する者を選任する仕組みについてです。このような制度を設けることは悪いことではないと思うのですが、それをどのように説明するのかについて、もう少し検討が必要であるように思われます。というのも、このような仕組みを設けることは、本人に意思表示を受領してもらう必要性がある場合に、本人の同意によることなく表意者である相手方がミニマルな権限を有する保護者を選任するという制度を新設することを意味します。しかし、そのような考慮が意思表示の受領のところだけで問題となるのかについて、説明が求められるのではないかと思われます。   例えば51ページ6行目には「法定後見の開始の申立権者に取引の相手方を含めないとする場合にこのような仕組みが必要である」と書かれていますが、取引相手方を申立権者に含めないのであれば、ミニマルな権限であるにせよ、本人の同意なくある種の保護者を選任する制度を設けることが、なぜ正当化されるのかが問題となります。意思表示の受領に固有の正当化の根拠があるのかについて議論する必要があるのではないかと思います。   仮にこの制度が新設されたとすると、意思表示をしようとする者は、その相手方が意思能力に欠け、事後的に意思表示の到達という効果を否定されるおそれがあると判断した場合には、家庭裁判所に対し、相手方が事理弁識能力を欠く常況にあることを確認してもらうという形で、この制度を利用することになるように思います。相手方が事理弁識能力を欠く常況にないことを理由として申立てが棄却されれば、表意者はそれで安心して意思表示をすることになるように思います。他方、相手方が事理弁識能力を欠く常況にあるとして、審判が下されれば、保護者が選任されて、その保護者に対して意思表示をすることになります。このような制度は、意思能力の欠如に対処するためのものであるという性格を有するように思われます。そうしますと、同じような問題は他の場面でも生じるのではないかと思います。例えば、銀行が、意思能力に疑いのある預金者に預金を払い戻してよいのか、預金者の振込指図に従って振込みを行ってよいのか判断に迷うという事例が想定されます。そのような場合に対応する制度は設けず、意思表示の受領についてのみ、新たな仕組みを設けることをどのように説明するのかが、今後の制度運用の観点からも重要になるのではないかと考えています。   次に、55ページ27行目から始まる、成年被後見人と時効の完成猶予についてです。家庭裁判所により事理弁識能力を欠く常況にある者と認定されるという制度を採用しない場合には、民法158条1項及び2項を共に規律を削除することが提案されています。この点にこだわっているのは私だけなのかもしれないのですが、民法158条1項と2項は、やはり趣旨が異なる規定なのではないかと思います。   そのことを申し上げた上で、まず、事務局資料については、もう少し説明を付け加えるべきではないかと思います。民法第4編に存在する民法832条を準用する一連の規定、すなわち、民法875条、876条の5第3項、876条の10の第2項については、成年後見制度の改正に関係なく維持されることが前提とされているのだろうと思います。そうしますと、後見に関して本人が保護者に対して有することになった債権については、その起算点が保護者の権限消滅の時点まで先送りされることになります。そのことを前提として、民法158条2項の削除が問題になるという点を明確にしておく必要があるのではないかと思います。   そのうえで、民法第4編の規定が維持されるということであれば、民法158条2項を削除することは、後見に関連しない本人の保護者に対する権利について、時効の完成猶予を認めないことを意味します。しかし、やはり本人と保護者の関係をそれほどドライに割り切れるものなのかに疑問がありまして、民法158条1項は削除するとしても、2項については本人と保護者との間に、支配関係とまでは言わないとしても、ある種の依存関係があるのために、本人が保護者に対して権利を行使しがたいという場面は想定されるのではないかと思います。それゆえ、この規定は維持すべきではないかと考えていることを申し上げたいと思います。 ○根本幹事 時効の完成猶予について、元々158条が被保佐人や被補助人を外している趣旨というのは、一つは自ら裁判上の請求ができること、もう一つは、後見類型の場合には民事訴訟法31条の訴訟能力者ではないということについてが元々の平成11年改正当時の立法担当官の考え方だろうと思われます。   そこから行きますと、②についてはこの後の議論になりますので、民訴法31条についてどのように考えるか、若しくは特代で対応するのか、訴訟無能力者であるかどうかということについてどのように考えるのかということの整理と標準を合わせていくということでよいのではないかと思うのですが、問題は①の自ら裁判上の請求ができないということについて保護しなくてよいのかということになるかと思います。   これまでの部会の議論においても、例えば佐久間委員などからも繰り返し御指摘がありますが、問題の本質は、制度を利用していない事理弁識能力を欠く常況にある方との均衡をどう図るかということではないかと思います。その点を考えていくに際して、先ほど加毛幹事からも1項と2項は分けて考えるべきではないかという御指摘があり、私もそのように思いますので、もう少し申し上げたいと思うのですが、1項については、例えば平成26年3月14日の最判の調査官解説においても、事理弁識能力を欠く常況にある者について、権利行使が困難であり時効の停止を認めるべき実質的な理由は同様であるという価値判断を示した上で、では後見制度を利用していないとしても類推適用がされる要件はどのようなものなのかということを検討するに際して、取引の安全の要請を後見制度に代わって満たし得る一定の条件が必要であるという考え方を示した上で、時効を援用しようとする者の予見可能性を不当に奪うものではないかどうかという基準から、具体的には申立てがあったことや後見相当の審判が事後に出ているなど、事実の有無及び時期が形式的、画一的に確定し得る事実であって、時効を援用をしようとする者にとっても時効を停止すること及び停止する期間について予見することが一定程度可能であるかという、この予見可能性への配慮が欠けることがないかどうかを検討されていると承知をしています。   このような視点に基づきますと、部会資料にもありますが、同意能力の有無というところについては、時効を援用しようとする者にとっては事実の有無及び時期が形式的、画一的に確定し得る事実ではあると思いますが、予見することが可能かと言われると、それはなかなか難しい、困難ではないかと思いますので、1項については部会資料の整理のとおりということでよいのではないかと思います。   他方で、先ほど加毛幹事からもありましたが、2項については、これは予見可能性が問題にならないわけではないと思いますが、同意能力の有無等についても、時効を援用しようとする者にとって時効を停止することないしはその期間についても予見することは十分可能なのだろうと思うのです。そのように考えると、ここは1項は難しいと思いますが、2項については同意能力の有無ということでなお区別するということが可能なのではないかと思います。 ○野村(真)幹事 先ほど小澤委員からのお話もありましたが、49ページ以下の意思表示を受領する権限を有する者の選任について、実務の観点から幾つか気になる点がございますので、意見を述べさせていただきます。   まず1点目ですが、本人が事理弁識能力を欠く常況にあることを要件とすると、一般的にはその者は意思無能力者であると考えられますので、この制度を利用した場合は、意思表示を受領した後の対応は、支援を受けても本人は対応する余地がなくて、必ず成年後見制度を利用することになりはしないかという点です。実際は本人とその支援チームで十分に対応が可能である可能性がある事項であったとしても、支援をちゅうちょして、成年後見制度を利用せざるを得なくなるようにも思われます。   2点目ですが、選任された特別代理人がそれまでの本人の状況を全く把握していない場合は、受領した意思表示に対応するのは難しく、さらに、成年後見制度の利用まで検討することについては、意思表示の内容によってはかなり短期間で対応せざるを得ない中、困難な状況も想定されますが、特別代理人はどのような責任を負うのかという点です。これは特別代理人の担い手の確保の観点からも気になる点です。   それから3点目として、この制度を利用するのは一般的には債権者等だと思いますが、債権者等が診断書を手配することはできないと思いますので、申立て後にどのように本人が事理弁識能力を欠く常況にあることを確認するのか、全て鑑定を要することになるのかという点です。   4点目ですが、特別代理人の報酬を誰が負担するのか、本人の負担になるのか、それとも、表意者のための制度でもあるので申立人の負担になるのかという点です。 ○佐久間委員 158条2項は、総体財産を管理しているということが背景にあるはずでありまして、それを今回、特定の権限しか有しない人まで含めるということになると、財産管理権を必ずしも全然有していないというか、例えば特定の不動産の売却等についてだけ権限を有している人が、ほかに貸金をしているというようなときに、この規定を全面的に適用するというのは、一つは、加毛幹事がおっしゃったような、保護すべき立場にあるのではないかというようなことについて、本当にそうなのかということが疑問になります。   例えば、不動産の取引について補助をするという場合に、本人の他の財産についてまで配慮をするというのは、全体を見ながら当該事務をしなければいけないというのはそのとおりだと思うのですけれども、自らの利益を犠牲にしてということまで認めるのが適当なのかということが一つあります。もう一つは、「行為能力者となったとき」というのが、成年被後見人の場合は今までだったらドラスティックに変わっていたところ、同意による保護の場合の話ですけれども、新たな制度では単に要同意事項がなくなったという、それだけのことでも「行為能力者となった」場合にあたるはずですから、全然状況が違うのではないかと思います。   さらに、後任の人が就職したなんていうことを恐らく待つわけにはいかないので、なるべく本人を保護した方がいいという気持ちは分かりますけれども、158条2項が前提としている状況とは大分違うのだということを申し上げた上で、その保護は本人の自律を図ろうという思想と本当に相容れるのだろうかということを、理念的には疑問に思います。非常に厳しいことを言うようではありますけれども、そういったところまで含めて本人の自律を尊重しようということなのではないかと思いますから、一定の態度決定を制度全体についてした場合でありますけれども、その場合について158条2項だけを存置しようというのは適切ではないと思います。   これは一部は、何回か前に加毛幹事とやり取りをした際に、159条を持ち出して、保護者と本人との関係をどのように見るかということについて必ずしも共通理解はないのではないかとそのときに申し上げたと思うのですが、そのことを繰り返しただけのことです。ただ、今お二人から意見が出ましたので、私は賛成できないということを申し上げておきたいと思います。 ○根本幹事 佐久間委員の今の御意見も十分に理解できるところではあるのですが、ただ、やはり今回の改正の理念からしたとしても、158条2項が想定している、このままの想定ではいけないというところもそのとおりではありまして、その点についてはこの後少し申し上げますが、かなり特殊な人間関係といいますか、利害関係にある状況であるとはいえるのだろうと思っておりますので、その点について切り出して規律するということは、改正の理念との関係で整合しないということでは必ずしもないのではないかと思うというのが一つです。   それからもう一つは、では佐久間委員言われたようなところでどう対象を絞り込んでいくのかということになるかと思うのですが、先生から頂いている御指摘の2点のところについて、例えば、もちろん対象とされていない、要するに代理権を有していない事項にまで及ぶということではないとは思いますし、前提としては代理権があればよいという意味ではなくて、いわゆる同意がなされずに代理権が付与されている場合という前提になりますが、かつ、いわゆる始期といいますかスタートの時期については、当該代理権の付与が取り消されてからというような始期にそこは内容を変えた上で、なお規定を設ける必要がないのかどうかということではなかろうかと思っています。 ○山野目部会長 今の点でもよろしいですし、ほかの点も含めて、いかがでしょうか。 ○加毛幹事 まず、私は、佐久間委員のお考えが一貫したものであると理解していることを申し上げたいと思います。そのうえで、佐久間委員が整理してくださったとおり、保護者と本人の関係をどのように理解すべきかという点で評価が分かれているのだと思います。もう少し踏み込んだことを申し上げるとすれば、先ほど根本幹事は私の考え方を支持してくださったのですが、おそらく私は、根本幹事よりもドラスティックな意見を持っているのだろうと思います。   というのも、私が危惧しているのは、後見の開始によって、本人が保護者に対する権利を行使することの期待可能性が低くなるのではないかということです。もっとも、この点については、私が成年後見の実態を把握していないための杞憂に過ぎず、本人は適切に保護者に対して権利行使できる立場にあるのが実情なのかもしれません。あるいは佐久間委員が強調されたように、本人が保護者に対して適切に権利行使をするよう、本人の自立を促していくことが、法のあるべき姿であるという理解もあるかもしれません。そのような理解によれば、民法158条2項は削除すべきであるということになるのだと思いますし、更に言えば、第4編の関連規定も不要であるということにつながるようにも思われます。ただ、そのような考え方は、理念として理解できるのですけれども、本当にそのように割り切ってしまって大丈夫なのかが、どうしても私には不安に思われるのです。   そのため、根本幹事がおっしゃったように、保護者の代理権に関連する権利に限って、時効の完成猶予の規定を残すというよりは、私は、保護者の代理権に関係ない権利についても規定を残すべきではないかと考えています。本人が保護者に対して依存する関係が生じ、権利行使を遠慮してしまうおそれがあるのではないかということを危惧しており、後見を利用している間は時効が完成しないものとするのが良いのではないかと考えているということになります。 ○山野目部会長 そうなのですよね、論理的には佐久間説と加毛説と根本説と三つありますね。イメージしているルールが3通りあって、同じではありません。理念の面から述べると、加毛幹事が、加毛幹事個人の思想というよりは現行民法の全体から読み取ったある種の原則的見地と、佐久間委員がおっしゃる理念とが、言わば向かい合っているという状態になっていますね。議論を整理するとそういうことになりますが、これは政策論でしょうかね、どちらも一概に間違っているとは言えないですけれども、態度は決めていかなければなりません。とっぴな話ですけれども、夫婦の間の関係なんかと比べてどうですかね。あれは別に一方が他方を保護する関係でもなければ、一方が他方の上位に立っているわけでもないですけれども、夫婦である間は訴訟しにくいよねということはあるでしょう。ですから、訴訟しにくいとか権利行使がしにくいという状況がいろいろあると思われますが、現在の民法の規定は、その中のあるものは取り上げ、ほかのものは必ずしも網羅的には取り上げていない状況で今、我々が新しい制度を作ろうとして、そこをどうするか悩んでいるという途上でしょうかね。   その点でも結構ですし、ほかの点でも結構ですけれども、ほかの委員、幹事の御意見を伺っていきます。 ○久保野委員 ありがとうございます。今の158条2項の点ですけれども、前回の議論のときに159条の趣旨と絡めて議論があったということで、159条については必ずしも支配関係ということを背景としての規定との見方だけで説明されるわけではなく、今、部会長から御説明がございましたとおり、どのような関係の場合に通常の権利行使が期待できないかという評価の観点から、このような規定が設けられているという見方があるのだと思います。159条についてそのように支配という観点とは異なる見方を採り、では、ほかの関係ではどうかといったときに、例えばドイツ法では、より広い、後見の関係や世話の関係や保護の関係を含めて、同様の趣旨の規定があるようでございまして、加毛幹事のような見方による規定の可能性は十分にあるのかなと思っております。ただ、158条2項が元々後見類型だけを抜き出しているというところをどう考えるかというのが、今度そちらの方向を採った場合には、整理が必要になってくるところなのかと思います。 ○山野目部会長 引き続き伺います。 ○佐久間委員 もし久保野委員がおっしゃった支配の関係というのが、私が言ったことになっているのだったら、私は支配の関係とはまず言っていません。夫婦については特別の関係で、例えば、このようなドライな経済上の権利行使をしなければいけないようなことになったら夫婦関係にひびが入るとかうんぬんということも考慮されて、ということを申し上げたということを、まずお伝えしておきます。その上で、そのときにも申し上げたのですけれども、なかなかドライに権利行使するのはこの関係上難しいよねというのがどこまで広がるかということは、大変いろいろな場合があって抜き出すのが困難ではないか。そうであるところ、現在の158条2項は、未成年者と成年被後見人に限って、もし159条と類することだと考えた場合ですけれども、取り出しているところ、現行法の規定においてそのような特別の規定が設けられていない他の、同意を得てすることになった被補助人とか被保佐人についてもこの規定を及ぼすというのは、ある意味では大きく思想を転換することになる。その転換が、そこが先ほど申し上げたのですけれども、今回の改正の理念と整合するのか疑問であるということです。今、一から規定を作るというのであれば、158条2項に相当するものを加毛幹事がおっしゃったような形で作るということはあり得ると思うのですけれども、久保野委員がおっしゃったとおり、この2項が成年被後見人を対象としてわざわざ切り出しているところを変えていこうとするのであれば、その基礎は何かということが問題になり、にわかには賛成できないと思っています。 ○山野目部会長 今、佐久間委員に最初におっしゃっていただいたことを御指摘いただくと、つらいですよね。もうこの段階になってくると、部会の要綱案の後を見据えて法律案の立案の作業が視野に入ってきて、政府全体で検討していかなくてはいけない、そういう視野が広がってきていて、現在の補助について、ない規律を踏み出してここのところを広げようということをしてくれと求められると、加毛幹事や根本幹事のおっしゃるとおり考え方、思想としては十分にあり得る話ですけれども、従来法制から一歩踏み出すのですねというところは正直少し辛く、お役所じみたことを申し上げて恐れ入りますけれども、辛いということをお伝えしておきます。   引き続き御議論をお願いいたします。 ○山城幹事 部会長から御整理いただきましたとおり、佐久間委員、加毛幹事、根本幹事の御見解は、それぞれ違った狙いがあると私も感じておりまして、私自身は佐久間委員のお考えに共感するところがございます。その上で、根本幹事が想定されている事例がどういうケースなのかを少しお伺いしたいと思いまして、御質問のような意味合いで発言をお願いしております。   と申しますのは、代理権の対象となっている事柄について時効の取扱いを区別するというお話だったかと思うのですけれども、例えば、Aが本人でBが保護者であるときに、AがBに対して持っている債権がここでは想定されるのだと思うのですが、それを行使することについてBに代理権が与えられるケースがどれぐらい想定されるのでしょうか。つまり、自分自身に対して持っている債権を行使するために保護者が選任されるということがあり得るのかということなのですけれども、その点をどのようにお考えかをお聞きしたいということです。 ○根本幹事 もちろん後見類型ではなくなりますので、包括的な付与が代理権としてされているわけではないとは思いますが、ただ、例えば、ほかの方とか通常の業者なども含めてお金の貸し借りの関係があるような方であれば、そういった負債の調査ないし若しくは御本人が持っている当該物に対しての支払い請求権の行使として、個別のこの方ということではない形で代理権が付与されているという状況はあり得ると思うのです。その状況の中で、その方についての代理権、要するに自分に対しての代理権行使をするのかということになってしまうので、それは特殊な状況に置かれているということになるのではないかと思います。加毛幹事は確かにその代理権に限られない関係性があるというおっしゃられ方でしたが、私はその代理権を付与されている限りにおいては、やはり相反関係といいますか利害関係が請求権行使との関係では生じているという場面は想定できるのだろうと思うのです。 ○山野目部会長 山城幹事、お続けください。 ○山城幹事 ありがとうございました。何となく分かった感じもしますけれども、それは、特別代理人を選任すれば権利を行使することができるような関係を想定されているのでしょうか。 ○根本幹事 はい、そうです。特代が選任されれば、もちろんそれで解決をすると思うのですが、では特代選任を誰が申し立ててくれるのかということではないかと思います。もちろん当該債権があるということが家庭裁判所との関係でも明らかになっていれば、そもそもその代理権行使についてその方を代理人に選任しないとか、特代という話に至ると思うのですが、仮にですけれども、クローズな関係の中でしかその債権債務関係が明らかでない場合には、時効の点についてもクローズな関係でしかその状況は明らかになっていないということはあり得るのだと思います。 ○山野目部会長 根本幹事の御意見はひとまず理解することができました。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。今の点でも、ほかの点でもよろしいです。 ○青木委員 少し今の点からは離れてしまいますが、1から6について申し上げておきたいところをお話ししたいと思います。   最初の取引の相手方からの催告権につきましては、これまでにもお話していますけれども、仮に追認となっては本人にとって具合が悪いというときには、元々同意権が付与されていた人について同意権付与を取消して終わろうという審査の際に、それ以前に同意をえずに本人が行為をしたものがあるかを確認した上で終了するわけですし、終了するとということは周囲の見守り等の環境が一定整った上で終了するわけですので、その終了した後に、もし取消しをする必要がある行為が発覚した場合には、周囲の支援者が改めて本人に取消権を行使させる支援をしたり、取消権に関する代理権を第三者に付与するなどの対応をすることができる場合がほとんどであると思いますので、削除していただいて不都合がないのではないかと考えています。   意思表示の受領能力につきましては、こうした表意者を保護するための制度というのを置くことについては賛成をしますけれども、先ほど野村真美幹事からもありましたが、具体的に受領能力を付与された特別代理人の権限がどこまでのものかということを明確にしていただいた上で、それに関する費用の負担とか、家庭裁判所なのか、地方裁判所なのか、それをどういう仕組みで選任していくのかという実務的な点は、我々が弁護士として選任されることも多くなると思われることから、実務的な整備というのが、費用面や選任に当たっての権限の特定等について関心があるということになります。その中でも、一番気になりましたのは、やはり特別代理人を法定後見の申立権者とすることなのですけれども、もちろん申立権者ですから義務ではないので、必要があるときだけ申立てをすればいいということかもしれませんが、実際には意思表示を受領するという職務だけを与えられた者が、法定後見の利用についての必要性を把握する場合というのはどういう場合なのかというのが1点と、仮に必要性を把握したとして、申立てのためにしなければいけない調査や手続の準備というのは、意思表示を受領をする事務とは比較にならないほど多くのものになりますが、その負担に見合うだけの費用負担がなされるのか、その場合の予納金の額などを考えていきますと、また法定後見の申立て事務まで想定される職務だということになりますと、担い手はどのような条件でそれを引き受けることができるのだろうか、など様々な疑問が生じます。それは翻って、そのまま表意者の方が申立てをするに当たって負担する費用等にも関わってくることにもなります。そう考えますと、法定後見の申立権者とすることが、この新しい制度を動かす上で適切なのかということがあると思います。ここで想定されているのは、相手方は表意をした法律行為に関して、意思表示を受領するだけではなくその後の権利義務関係について対応する必要があるということなのだと思いますけれども、それについては、意思表示の受領者側である本人にとって対応する利益がある、必要があるとなった場合には、現在申立権者となっている範囲の方々に情報提供を行い、申立てを促す役割に留めることで十分ではないかと思っています。   それから、委任の点については、もし規定を削除した場合には、委任者の方で受任者の状態を把握した上で解任等をしないといけなくなってしまったり、法定代理人については選任した裁判所の方でその情報を得るということによって適切な対応をするということになりますが、委任関係につきましては、もともと委任者が受任者をコントロールするのが基本であるとともに、契約等の中でそういった受任者が後見制度を利用した場合には速やかに報告をする報告義務を契約の中に盛り込むなどを一般的なものとするとか、法定代理についても代理人選任に際してはそういった場合には裁判所に速やかに報告するようにするということを指示する等によって、後見制度を利用したという情報が委任者側、選任者側に速やかに来るような工夫をするということが必要ではないかと考えているところです。 ○山野目部会長 ほかにいかがでしょうか。   あらかじめ御案内しますけれども、この部分については久保委員、花俣委員に対して強いて御発言のお願いはいたしません。もちろん発言を頂く権利はあるわけでありまして、御発言なされたいことがある際には、ほかの委員、幹事と同じように手を挙げてお申出をくださるようにお願いいたします。   引き続き御意見を承ります。   ないようでしたら、1点だけ少し議論を深めておいた方がよいと感じます。意思表示を受領する権限を有する者の選任の規律でございますけれども、小澤委員及び野村真美幹事から種々心配な点があるという課題を述べていただいて、それは論点の整理を頂いたという意味で有益であると感じますとともに、それらが課題として認識されるとしても、この種の制度を置かないという選択にはなかなか赴かないだろうとも感じます。加毛幹事からは、理論的な説明を調えてほしいという御注意がありましたから、そのことは進めてまいりますけれども、概括的に申し上げれば、市民社会における市民相互間の私法的な法律関係の円滑を期するという高次の要請から特別に設けられる制度として、どうしても必要であうと思われます。   その際の実務的な進め方としては、青木佳史委員に整理していただいたとおりでございまして、表意者の側が予納金の金額等を含めて申立てをする家庭裁判所と十分な協議をした上で、意思表示を受領してもらった後どのような展開が想定されるかということを費用その他の面を含めて見通した上で、この仕組みを用いてもらうことになると想像します。一般論としてそこまでしか述べることができなくて、この意思表示なるものの性質等、事案の個性にもよることですから、一般的には述べることができず、ただし、概してこの権限を有する者がたやすく善管注意義務違反に問われるような運用は考えられないし、好ましくないといったようなところまで、ここでの審議においては確認しておくということではないでしょうか。   なお、当面、部会資料でお出ししている提案の趣旨は、この局面で事理弁識能力を欠く常況にあるかどうかの裁判所の認定判断は、家庭裁判所の通常の事実調査及び一般の証拠方法により行われるということを想定しております。医師2人が必要であるとかいうような規律は考えておりませんから、そのような自由な証明の制度の下で、青木佳史委員がおっしゃったような、予納金やその後の展開等も裁判所が事案の個性を見て処してもらえることではないかという整理が考えられるところでございますけれども、なおお気付きの点があれば、この点について補足的に御意見を伺いますけれども、いかがでしょうか。 ○佐野委員 今のお話のところではないのですが、66ページ以降の成年後見人の遺言のところに関して申し上げさせていただきます。   66ページのゴシック体の部分に御記載いただいておりますとおり、事理弁識能力を欠く常況と認定される仕組みとなる場合は、現行の規律を維持するという点に関しては賛成でございます。また、事理弁識能力を欠く常況と認定がなく、現行法の遺言の規律を削除したとしても、67ページの14行目から17行目に記載いただいておりますように、後の紛争を防ぐために、民法第973条で定めがある医師の立会いに関する考え方というのは残していただきたいと考えます。   過去の部会でも申し上げさせていただきましたが、現行の規律におきましても、自筆証書遺言に基づく相続時の預金の払出しに伴いまして、遺言者は遺言を作成した時点で認知症の診断を受けていたので意思無能力だった、ゆえに遺言は無効である、よって遺言に基づく受遺者への支払いをしないでほしいといった主張とか要請が受遺者以外の相続人から銀行に対してなされるという事態は多々あり、対応に苦慮するということも多々発生しております。   現在、金融機関におきまして、成年被後見人の自筆証書遺言については、民法第973条の考え方があることによってトラブル発生の懸念が小さくなっており、これに基づく相続時の預金の払出しを円滑に行うといったことが可能となっております。民法973条が条文として削除されて、かつ同条の考え方自体も残らないといった場合には、法定後見制度の利用者であるとか、利用を終了した方の自筆証書遺言に関して、相続人とのトラブル懸念が大きくなったとして、その遺言に基づく受遺者の預金払出し請求を拒むべきと判断してしまう金融機関も出てき得ると考えております。その結果、法定後見制度利用者が遺言をしづらい状況につながってしまうこともあり得ると考えております。   よって、取引の相手方である金融機関といたしましては、事理弁識能力を欠く常況の認定がある仕組みとなる場合は、この規律を維持して、事理弁識能力を欠く常況の認定がないことにひもづいて973条を削除しますという方針になったとしても、この考え方を残して周知するといった、67ページの14行目以降のところに記載いただいているような形としていただけると有り難いと考えております。   あと1点、先ほど冒頭、加毛幹事から、意思表示の受領のところに関して金融機関の取引に関しても懸念があるのではないかと御発言いただいた部分に関して、ここのところはこちらで本当に懸念があるのないのというところを検討できていなかった部分でありますので、一度、中でも検討したいと考えております。 ○山野目部会長 御意見を頂きありがとうございました。   ほかにありませんでしょうか。そうしましたら、ただいま部会資料25の第2の部分の、若干残っておりますけれども、1から6までについて御意見をお出しいただきました。私の方から4点御案内をしておきます。   1番の催告権でお諮りしているところについては、御意見を頂きました。実は次回会議において、同意権と取消権の関係について更なる御審議をお願いいたします。そこでの帰すうによって、この催告に関する規律との関係について、なお再びその整合性を検討しておく必要がありますから、併せて次回審議の御様子を拝見した上で検討を深めていくことにいたします。   2点目は、158条2項について本日意見交換があったとおりでございますから、この点については再度、次回の議論の機会に向けて検討を深めていただけるよう、部会資料を改めて調製することにいたします。   3点目、委任ないし代理の終了に関しては、お出ししている提案ないし示唆について特段の御意見は頂いておりません。委任の関係は、実は民法の規定が準用されて会社のガバナンスに与える影響が実質的にありますから、そちらの方にも目配りしながら事務当局においても検討を深めていく所存でございます。   4点目でありますけれども、遺言につきましては、本日頂いた御議論はそれを踏まえて検討を深めることにいたしますとともに、この部会と併行して、法制審議会の異なる部会におきましては遺言の電子的な作成を可能とするための方策の検討が進められております。この部会の審議は審議として進めていただくことでよろしいものでありますけれども、最終的に法制化する際には、遺言の方の検討に係る法律案提出の時期との前後関係がどうなるか分かりませんけれども、調整が必要な場合には、所要の調整を経た上で法律案としての体裁について遺漏のないよう調えていかなければいけないというふうに、事務当局の方において作業してくださるものと期待いたします。   以上、4点を御案内した上で、その先に進むことにいたします。残された部分ですね、部会資料25の第2の7、訴訟能力から後の部分、部会資料25の最後の部分までになります。ページで申しますと部会資料25の69ページから最終ページまでの部分についてお諮りを致します。この部分について、事務当局から資料説明を差し上げます。 ○柿部関係官 部会資料25の69ページの7では、法定後見の本人の民事訴訟における訴訟能力等について記載しており、(1)では、民事訴訟法第31条に規定する成年被後見人の訴訟能力の規律に関して、事理弁識能力を欠く常況にある者についての保護の規律を設けるかどうかによって場合分けをして整理をしています。(2)では、民事訴訟法第32条の訴訟行為について、保護者の同意を要する者の訴訟行為の規律に関して、現行法の規律を維持することについて検討することを提示しています。   76ページの8では、法定後見の本人の人事訴訟における訴訟能力等について、中間試案に対するパブリック・コメントにおいて寄せられた意見等を踏まえ、法定後見制度において事理弁識能力を欠く常況にある者についての保護の規律を設ける場合と設けない場合のそれぞれについて整理しております。   81ページの9では、手続法上の特別代理人について記載しております。(1)及び(2)では、先ほどのお話と同様の観点から整理しておりますが、(3)では、法定後見制度において事理弁識能力を欠く常況にある者についての保護の規律を設けた場合に、意思無能力者側からの特別代理人の選任申立てが許容されるという現行法の解釈、運用を踏まえ、そのような解釈、運用を明文化することについて審議いただくために記載しております。なお、この点は中間試案では取り上げておりませんでしたが、解釈や運用上は認められているものであり、家事事件手続法や非訟事件手続法において明文上定められていることを踏まえ、検討を提示したものです。   86ページの27行目から、第3の1では、家事審判手続について記載しています。28行目の(1)においては、法定後見制度における精神の状況に関する鑑定及び意見の聴取について、法定後見制度において事理弁識能力を欠く常況にある者についての保護の規律を設ける場合には、原則として鑑定を要し、例外として、2人以上の医師の意見を聴き、明らかに必要がないと認めるときには鑑定を不要とするということについて審議いただきたいと考えております。   そのほか、92ページの5行目からは事実の調査及び証拠調べについて、94ページの14行目からは保全処分について整理しております。また、96ページの18行目から、法定後見制度における陳述の聴取について、中間試案では取り上げておりませんでしたが、パブリック・コメントにおいて寄せられた意見等を踏まえ、現行法において本人から陳述の聴取をしなければならないとはされていない一定の審判についても、本人から陳述の聴取をしなければならないとすることについて審議いただきたく、整理しております。   99ページ6行目からは、任意後見制度に関する家事事件手続について整理しております。101ページ31行目からは、身体障害により意思疎通が著しく困難である者について、法定後見制度、任意後見制度の利用に関する規律について、規律を設けないものとすることについて検討を提示しております。また、105ページ7行目からは、成年後見登記の制度について整理しております。 ○山野目部会長 説明を差し上げた部分について御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○小澤委員 部会資料の81ページの9、手続法上の特別代理人については、本人が被告となる(1)、(2)の場合に特別代理人制度が必要だとは考えますが、本人が原告となる(3)の場合については、保護者の権限が不足しているのであれば必要性に基づいて権限を付与すればよく、また、保護者が欠けているのであれば職権で保護者を追加選任すればよいと考えますので、特別代理人制度を利用するほどの緊急性や必要性がなく、不要ではないかとも考えますが、このような特別代理人が認められても実務上不都合はないと思われますので、反対するものではございません。   部会資料86ページの第3の1、成年後見制度に関する家事審判の手続についての検討事項等の(1)については、例外として記載されている2人以上の医師の意見を聴かなければならないという規定を設けたとしても、むしろ鑑定が形骸化するのではないかと危惧をしています。同じ本人情報シートに基づいて診断する以上、結果はそれほど変わらないのではないかとも考えています。   (4)法定後見制度における陳述の聴取のアについては、必要性に応じた権限の追加や取消しのケースが多くなれば陳述を聴取する家庭裁判所の負担が増える点は気になりますが、本人意思を重視することは今回の改正の方向性に沿ったものだと考えますので、賛成をします。ただ、イの解任の審判については、新しい解任事由による解任時に本人の陳述を聴取することに異論はありませんけれども、私たちの検討の中で、不正行為による解任の場合まで本人の陳述を聴かなければならないとする必要があるのかは疑問があるという意見もありました。   (5)の任意後見制度における家事審判手続のウの予備的な任意後見受任者の規律を設ける場合の①については、予備的な受任者が反対しても、申立ての必要があり本人が申立てを望んでいる以上、主たる受任者としては申立てを行うこととなるので、意見を聴取する実益はないと考えています。ただ、任意後見契約が発効したことは予備的受任者にも大きな影響がありますので、その情報を伝えるため、予備的受任者に通知する旨の規律を設ける必要はあるのではないかと考えています。   ②については、任意後見契約が三面契約でなされるのかなどの契約内容にもよりますが、主たる受任者との任意後見契約の解除により予備的受任者との任意後見契約も解除されるようなケースであれば、即時抗告権を認める必要はあると考えますが、一方で、主たる受任者との任意後見契約が解除されても予備的受任者との任意後見契約はそのまま残る場合には、即時抗告権を認める必要はないのではないかと考えています。 〇加毛幹事 105ページ7行目「3」の「その他」のところで、「成年後見登記制度について所要の整備を行う」という提案がされているのですが、そこで行われる整備の内容について、こういったことが考えられないだろうかということを申し上げたいと思います。本人の必要性に基づいて個別的に行為能力の制限を認めることになった場合、行為能力が制限されていないことの証明書について、全般的に行為能力が制限されていないことを証明する証明書だけではなく、一定の法律行為については行為能力の制限がないということを証明する証明書を発行するという制度は考えられないでしょうか。   例えば、ある者が不動産取引について行為能力が制限されている場合に、金融取引との関係で取引相手方から行為能力の制限がないことの証明を求められるという事例を想定すると、現在の証明書では、不動産取引について行為能力が制限されていることが金融取引の相手方に分かってしまうことになります。そのような証明書は使いにくいように思われ、また、取引相手方もその提示を求めがたいとすれば、証明書を利用して取引を行うことが難しくなるのではないかと思います。そこで、対象を特定するような形で行為能力の制限がないことを証明する証明書を発行する制度を作ることができないだろうかということを申し上げておきたいと思います。 ○山野目部会長 御意見を頂きました。   青木哲幹事や杉山幹事から御意見がおありの際は、どうぞ御遠慮なく御発言をください。この後に発言を頂く委員や幹事にとっても参考にしていただく部分が大きいだろうと考えます。 ○青木幹事 部会資料69ページ7のところ、民事訴訟における訴訟能力等ですが、ゴシックの(2)について、本人が被告として訴えられる場合の本人の保護に関しては、前回意見を申し上げました。それと関連して、訴訟行為について保護者の同意を要する旨の審判がされた場合に、相手方の提起した訴えに応訴するには保護者の同意を要しないという点について、この規律に事理弁識能力を欠く常況にある者も含まれてくるということになるのであれば、訴訟行為について一般的にその保護者に対して代理権を付与する旨の審判をするということができることを前提に、保護者にその代理権を付与する旨の審判がされている場合には、保護者に対して訴訟行為をすることができるわけですので、現行の民事訴訟法32条1項の規律の理解とは異なると思いますが、本人ではなくて保護者に対して訴状の送達などの訴訟行為をすべきいう規律は考えられるのではないかと思います。   それから二つ目で、部会資料76ページ以下の8の人事訴訟における訴訟能力等についてです。夫婦とか親子とかといった家族法上の地位に関するいわゆる身分行為ですけれども、これは本人の意思に基づくべきであって、代理には親しまないとされているわけですが、訴訟においても本人の意思に基づかない、本人以外の者という意味での他人の訴訟追行の結果により本人に身分関係の変化が生じてよいのかという問題があるかと思います。他方で、本人が意思能力を欠く常況にあるという場合には、客観的には離婚とか離縁とかといった身分関係の変動が必要な状態にあっても、それを訴えにより実現することができない、あるいは、相手方の方が訴えにより実現する必要があるという場合もそうですけれども、それを実現することができないということになるので、本人以外の他人が訴訟追行することを認めるべき場合もあるように思います。恐らくそこで重要なのは、どのような者の訴訟追行の結果であればそれを本人の身分関係に及ぼしてよいのかということではないかと思います。   この意味では、最高裁の昭和33年7月25日の判決が、訴訟限りの代理人に訴訟追行させることは適当ではなく、後見監督人又は後見人のような本人のための常時機関として本人の病気療養その他財産上、一身上全般の看護をその任務とする者に訴訟追行させるのが適当であると判示しているのが重要ではないかと考えております。このような観点からすると、本人の親族などが保護者として訴訟追行するということは適当な場合もあるように思いますが、他方で保護者であっても遺産分割とか不動産の売却とかといった事務のために選任されたような保護者がたまたまいるということで、その者が離婚訴訟についても訴訟追行するというのが適当なのかというと、そうではないような場合もあるのかなと考えております。そうすると、人事訴訟のために適した保護者が選任されているかどうかというところが重要になってくるのではないかと考えております。   それから、部会資料81ページの9の特別代理人の選任についてです。(1)、(2)の相手方からの選任の場面において、特別代理人の選任につき事理弁識能力を欠く常況にある者という要件を定めるということについては、例えば意思能力を欠く者を被告として訴えを提起したという場合に、裁判所が被告が意思能力を欠いていると判断して、それに応じて原告が被告について特別代理人の選任を申し立てたという場合に、しかし今度は特別代理人の選任の申立てについては、意思能力は欠いているけれども事理弁識能力を欠く常況にあるとまではいえないというような理由で却下されて、結局訴えについては、訴状の送達を受けるとか応訴をするということについて意思能力を欠いているという理由で却下がされるということがあると、相手方としては本人に対して訴訟を進めることができないということになってしまいます。   そこで、要件としては事理弁識能力を欠く常況にあるとはいえないような場合であっても、訴状の送達を受けて応訴をするということについて意思能力を欠いているという状態にあれば、特別代理の選任申立てを認めるべきではないかとも考えております。意思能力を欠く状態が一時的であれば、その回復を待つべきだということも考えられるわけですけれども、回復を待つことができるとか、本人の側の申立てで代理権付与の審判が期待できるような場合には、遅滞のため損害を受けるおそれがあることの要件の方で申立てを却下することもできるのではないかと思います。   それから、同じ9(3)の訴訟能力を欠く側の申立てによる選任については、それを認める必要があるのかという問題はあるのですけれども、民事訴訟法は民事保全法とか民事執行法などにも準用されているので、遅滞のために損害が生ずるということで訴訟能力を欠く側の申立てで、急ぎ法定後見の手続によらずに特別代理人の選任を要するという場合はあるのではないかと考えております。 ○山野目部会長 どうもありがとうございます。   杉山幹事にお声掛けをします。何か御意見があれば承りますけれども、いかがでしょうか。 ○杉山幹事 実体法がまだ未確定な状態なので、議論するのはなかなか難しいと思いますが、まず訴訟能力に関しては、基本的に提案されたように現行の訴訟法を維持するといいますか、特に保護規律があるときには、法定代理人によらなければならないという規律は維持をした方がいいと思っております。また、そうでなかった場合の解釈上の無効という構成も維持をした方がいいと思っております。これは恐らく既に説明や議論がされたと思うのですけれども、訴訟手続の場合には安定性が求められますので、有効か無効かよく分からない状態で手続が積み重なり終盤で覆されるということは避けるのが望ましいので、これまでどおりでよいかと思います。ただ、だからといって本人保護にならないかというと、そうではなくて、現行法でも民訴法34条で補正命令と追認が認められており、この規定は維持されるということですので、取消権がある場合とほぼ同じような帰結になるのではないかと思っております。   これが一般的な点になりまして、次に特別代理人ですが、こちらも、実体法上の保護といいますか代理が必要な場合がどれぐらいあるのかとか、どれぐらい適切な時期にそのような者が選任されているのかによって、使われる場面はかなり違ってくるのではと思いますが、個人的には今までどおりこの制度を置く必要があるとは思っております。ただ、これも既に議論がされたかもしれませんが、実際には民訴法35条も規定の文言よりはかなり広く準用がされてきて、ここで提案された(3)のような場合とか、あるいは事理弁識能力を欠くのだけれども成年後見の審判がされていない場合でも、かなり広く準用がされてきており、それをどれぐらい立法化するかの話であろうとは理解をしております。   逆に、今回議論の結果入らなかった、保護の開始のような審判ですかね、そういうものがされていないときに、明文の規定を置かないとして、準用の余地も排除するのか、その辺りは解釈に委ねられるのかというのは問題として残っているかと思います。原則としては家裁で適当な人を選任するというのが望ましく、また選任に当たっても適当な医学的見地を使いながら、また、必要性等を審理して判断するのが望ましいところ、特別代理人は飽くまでも受訴裁判所が緊急時に選任するものでありますので、余り多くは期待できないというところもあり、例えば鑑定とかをして慎重に判断することまで想定していないと理解をして思います。そのため。これを使わなければいけない状態を避けて、本来の家裁での代理人の選任がよりスムーズにできるようにしつつ、特別代理人も例外的に要件も含めて制限的に形で残しておくのは意味があると思っております。   先ほど人訴の話も青木幹事から出たと思いますが、私も事理弁識能力を欠く者が人事訴訟で訴えるとか訴えを提起されたりするための制度を設ける必要性があると思いますが、特別代理はなじまないので保護者の制度を使っていくことになるかと思います。従来であれば成年後見人は包括的代理権が与えられているので、結局その人を選任して、全ての財産に関する行為について代理権があるので、人事関係についても訴訟を追行することができるという説明は成り立ちやすかったかもしれないのですが、個別に代理権を与えるとなると、誰が適任なのかとか、あるいは身分関係により関連するような、誰が適当なのか、どの事件について代理権がある人が望ましいのかというのは、やはり少し考える必要があると思っております。   最後ですが、医学的見地をどう反映するかという点で、鑑定の制度についてでありますが、これも部会の最初の方で申し上げたかもしれませんが、現在の家事事件手続法を制定する際に、鑑定まで要るか要らないかという議論があり、その結果本人の行為能力を制限するような強い効力のある審判をするに当たっては、慎重な判断をすべきであるとして、最終的に鑑定が必要であるとされたので、実務上実際には使われていないことや、鑑定が使いにくいということは理解はしているのですが、他方で、実務上使われていないので不要とするとか、そういう方向に安易に流れていくことにはやや危機感を感じております。今後この分野での医学的知見が発展していく可能性があることなどを考えますと、中立な専門家の意見、医学的知見を考慮して審判をしていくことは、より必要になっていくと思います。   とはいえ、若干の懸念が、今後審判が増えて鑑定の負担が増えていく可能性があることですが、恐らく現行の家事事件手続法119条2項などにあるように、取り消す場合には鑑定までは要らないといった形で、もう少し鑑定が必要な場面は整理していくことができると思いますし、鑑定制度自体を見直すということも必要であるとは思います。他方で、医師の中立性とか能力面の点で問題のある診断が出てくることがあるとすると、裁判官の自由心証だけで評価するのはなかなか難しく、鑑定に代わりにはなりにくいと思います。提案にあるように、医師2名の意見があれば信頼はできると思いつつも、それで足りるのか、どういう医師を選任するのかなど、別途考える問題はありそうですが、現行法のような原則、例外を維持していくということは適当であろうかと思います。 ○山野目部会長 民事訴訟法のお2人の先生方におかれては、いつも実体法の規律が明確に定まり切っていない中で御意見を、御意見をと、急かすようにお願いするような格好になりまして、本日もそのような流れになってしまいました。誠に御迷惑をお掛けしております。本日頂いた知見も踏まえまして、この後さすがに実体法の規律がだんだん姿が見えてくるであろうと考えますから、そうした折々に重ねて御意見をお尋ねしてまいりますから、引き続きお付き合いくださるようにお願いいたします。   ただいまの御意見なども参考にしながら、ほかの委員、幹事の御意見を伺います。 ○佐久間委員 2点あります。1点は人事訴訟に関して、青木幹事にも伺いたいことがあるのですが、私の聞き間違いでなければ、現行制度から大きく変わった場合に、人事訴訟に適した保護者が選任されているかどうかがポイントではないかとおっしゃったと思います。全部仮の話ですけれども、事理弁識能力を欠く常況にある者について、全面的ではないけれども取消権を保護者に付与し、保存行為について代理権を与え、というような制度ができた場合に、その人を今の成年後見人と同様に見ることについて問題はないか、というのが1点です。   私はこれに問題があるというなら、もうどうしようもないかなと思っているのですけれども、2点目は、そういう制度を採ってもそのような保護者が選任されていない場合、あるいはそうではない、全くもって個別の権限の付与だけの制度にした場合に、おっしゃる人事訴訟に適した保護者というのはどういう人をイメージすればよいのか。例えばですけれども、以前に保護Bといっていた制度が設けられたとしたら、取消しの保護とかは場合によれば必要はないのだけれども、訴訟に対応させるのに適した人を生み出すために、というとおかしな言い方ですけれども、何とかするために保護Bに当たる審判を受けよということが望ましいのかどうか。あるいは、制度全体について乙1案を採った場合に、個別の代理権を付与する、あるいは権限を付与する、同意権なんかは要らないかもしれませんが、代理権を付与するというときに、人事訴訟のためだけの代理人に誰か適任の人を選ぶことで十分なのか。イメージされているところですけれども、何らか財産管理系統についても、この種の権限があった方が望ましいというようなことがあるのかということを、すみません、大分無茶振りしていることは分かるのですけれども、教えていただきたいということが1点です。もう1点あるのですけれども、全然違うことなので、先にお願いします。 ○山野目部会長 それでは、無茶振りで恐縮です。青木哲幹事、お願いします。 ○青木幹事 ありがとうございます。御質問に全てお答えできるかどうか分からないですけれども、乙2案のような形で、現行の成年後見の制度のように全般的な権限にわたる保護者が付くという場合は、それは権限の広さという点では問題は少ないように思いますが、ただ、それも改正によって、一時的に選任されて、その事務が終わったら終了するということが想定されるようになると、保護者が本人の人生に長い間関わってきているというわけではないという場合もあると思うので、その点は気になるところではありますが、個別的な権限しか与えられていない者よりは問題が少ないのかなと思います。そうだとすると誰が適任なのかということなのですけれども、私のイメージでは、財産関係の事務を行うのに適した者として想定される者では必ずしもなくて、端的に言えば親族とか、親族でなくても長期間身の回りのお世話をしているとか、そういった人的なつながりのあるような人が適当なのではないかとイメージしております。なので、たまたま不動産の売却とか遺産分割とかということで選ばれた人がそういう人であれば、もちろんいいのですけれども、そうでなければ人事訴訟のためにより適切な人というのを選ぶということも考えられます。また、そもそも保護の制度が開始されていなくて、新たに人事訴訟のために選任するということがあっても、長く近しく関わっているという方がいるのであれば、そういった方も適当でないのではないかと考えております。しかし、なかなかそういったところまで条文に書き込むということは難しいかと思いますが、私のイメージとしてはそのようなところでございます。 ○山野目部会長 佐久間委員、今の点についてお続けになることがあれば、お願いします。 ○佐久間委員 私も実はイメージとしてそうなのかなと思っていたのですけれども、それは人事訴訟について代理に親しまない、特別代理は駄目なのだというのと形式的に区別できるというのはよく分かるのですけれども、逆に言うと、形式的にさえ区別をして、後見制度の方の審判でそのような人を選べば問題は解消するのか、そうでないとしたら、もういっそのこと特別代理人を一定の要件の下で選べるようにすることでは駄目なのか。その辺は全く素人なので、そこが少し疑問に思っていたのですが、何か御示唆いただければと思います。 ○青木幹事 すみません、この点は私自身は余りこだわっていないです。現行のいわゆる訴訟担当だとされているのだと思うのですけれども、当事者として訴訟追行するのか、あるいは代理人として訴訟追行するのかということは余りこだわっていなくて、むしろ誰なのかというところの方が重要なのかなと思っております。民事訴訟法における一般的な理解としては訴訟担当だと考えられていると思いますが、私自身はそこにはこだわっておりません。 ○山野目部会長 一方ではアイデアとしては、民法の成年後見制度の枠内で、既に選任されている保護者に代理権を追加したり、あるいは権限を分掌してもう1人異ななる保護者を選任したりして、いずれにしても民法の成年後見制度上の保護者に離婚訴訟の原告になる場合も被告になる場合も訴訟遂行を期待するというような行き方が当然アイデアとしてはあります。現行法はそうなっているではないかという側面もあるでしょう。   ただし、考えてみますと少し不思議であることは、現行法の成年後見人がそこをできるというのも、離婚訴訟のときに弁論として認諾しますと陳述し調書に記されると認諾離婚が成立すると、そういう話にはならなくて、多分、成年後見人が弁論に行ったときにも、恐らく相手方から訴えられている場合で述べると、ほとんどの場合には婚姻を継続し難い重大な事由の評価根拠事実を並べられて、それに対して不知、不知という陳述を重ねていくことになって、あとは裁判所が事実を職権的によく調べた上で終局判決に向かっていくという進行であろうという気もします。   もう一つアイデアとしてあるかもしれない進め方は、人事訴訟についての特別代理人の制度を設けようというアイデアかもしれなくて、発想としては論理的には二つあるかもしれないですけれども、どちらにしてもそういう場面で訴訟遂行する適任の人を選ぶことができ、その人が適切な行動をしてもらえるような姿にするのにはどうしたらいいかという論点が悩ましいです。   離婚訴訟で被告になる場面というものが目立つかもしれませんけれども、養子縁組無効確認の訴えなどのことを考えますと、原告になる場合も被告になる場合もあるでしょうから、そうすると、こちらから訴訟を起こすときの支援みたいなものも、起訴前の支援から含め、どのようなサポートができるかというような観点も気配りが要ります。   ここの人事訴訟のところは余り決め手がなくて悩ましいとは感じますけれども、この話題について今、御意見がある方は御意見を伺っておきます。 ○常岡委員 今、様々に議論されていたところで先生方がおっしゃったことはそのとおりかと思いますが、現行法が、成年後見人について人事訴訟において本人のために原告適格や被告適格があるとしているのは、先ほど青木幹事が言われたように、常置の機関であるからということが判例での根拠になっていて、それをベースとして考えられています。どちらにしても今度の改正で、保護者であっても常置機関というものでなくなるとしたら、もうあと考えられるのは検察官を持ってくるしかないだろうとも考えられます。特に乙1案を採った場合についての懸念なのですけれども、現在、人事訴訟において検察官が出てくるのは当事者が亡くなった場合ですが、それが、ドラスティックな気がしますけれども、意思無能力状態で訴訟行為ができない方でも、その人が人事訴訟において原告ないし被告になる必要がある場合において、ある意味、公益の代表者ということで、検察官がその人のために訴え又は訴えられることとする、婚姻や縁組関係を解消する必要がある、あるいは認知の訴えの相手方になるということを念頭に置いていますが、人事訴訟に関する現行法を前提とするとしたらそれしかないようにも思われます。けれども、反対に、そういうことになってそれが現実的かどうかというのは、また考慮が必要で、今、当事者の一方や双方が死亡した場合には検察官がという例を出しましたが、民法の成年後見制度を全く変えてしまったときに、成年後見人が人事訴訟の当事者になるという仕組みをなくしてしまって、全て検察官で対応できるかというと、それは現実問題としては難しいということも考えつつ、やはりここは総合的に検討していく必要があると思います。そういう意味では、乙1案を採るか乙2案を採るか、保護Aを採るか保護Bを採るかとも密接に関連してきますけれども、人事訴訟の在り方を考えたときには慎重な考慮が要ると思っています。 ○山野目部会長 人事訴訟に出頭した検察官はしばしば、現場を見ると、不知、不知と陳述を重ねる定番の光景があるわけで、ああいうものを想い起こすと、今、常岡委員がおっしゃったことはその側面について、なるほどという気もいたしますから、そうするとアイデアは二つに限られず、更にあるということかもしれません。 ○佐久間委員 現行法につきまして成年後見人が人事訴訟を追行できるというのは、やはり人事訴訟法第14条があるからだと思うのです。部会長もおっしゃったと思うのですけれども、成年後見人だから当然に、あるいは自然な流れとしてそのような地位に付けるというわけではなく、やはり一種の判断だと思うのです。そうであるところ、仮に乙2案を採り保護Bの選択をされた人であった場合も、何と呼ぶか知りませんが、その保護者が横滑りで第14条に本当に入っていいのかどうかというのは考えなければいけないのではないかと私は思っています。ですから、乙1案と乙2案で分かれるのか、この際、それはどちらにせよ、青木幹事がおっしゃった人事訴訟に適した保護者が選任される道を、もし後見制度の中でやるというのだったら、その場合の申立てとか選任の場面も設けるということが私はよろしいのではないかと思っています。 ○山野目部会長 適切なタイミングで柿部関係官も、どうぞ御意見なく御発言なさってください。   引き続き、今の人事訴訟でもよろしいですし、ほかの点も含めて。 ○佐久間委員 ほかの点も。でも、終わってからでいいです。 ○山野目部会長 そうしたら、人事訴訟のところで何かおありですか。 ○青木委員 被告の場合はもちろんのことですが、原告の立場になる場合でも、やはりどうしても訴訟で人事事項、身分関係を確定することが必要なことがあって、その場合には、代理に親しまない、という基本的な考え方を乗り越えて、訴訟で身分関係を確定させる公益的要請・利益というもののために、何らかの代理人若しくは手続指定人などというものを置かざるを得ないとは思っています。   可能であれば、成年後見制度の代理権目録の中に、訴訟に限ってですが、調停とかその他は全て駄目だけれども、訴訟に限っては人事訴訟の代理権付与ができるとすれば、それは一つの方策で、その際には、先ほど青木幹事からもあったような様々な考慮ができる人を保護者に選ぶということでできるのではないかと思っています。どうしても代理権構成が難しいということであれば、やはり人訴手続上の中で、訴訟能力が欠けると認定した者については、訴訟手続の指定人を選任していただくということで、人訴の一般原則、身分行為の一般原則と切り分けていただけないかと思っています。   あとは、人事訴訟の当事者にふさわしい人の話ですけれども、確かに離婚とか離縁については親族等、御本人のことが全般的に分かる人がふさわしいということがあるかもしれませんけれども、我々が実務的に経験してきた中には、例えば、遺産目当てとか財産目当てで養子縁組みをしたり結婚をしたりする場合について、婚姻無効とか養子縁組無効などをやることがあります。その場合は、本人の財産保護の観点からそういう訴訟をするということもありますので、人事訴訟といっても、事案によって様々な専門的なそれにふさわしい人ということを選任する必要もあるので、特定の属性を持った人という限定をするのではなく、具体的な人訴の事案の中身によって変えていくということになるのではないかと考えています。   そういう意味で、事理弁識能力を欠く常況にある者の規律を設けない場合には、どちらか、どちらでも私は結論としてはいいと思いますけれども、新たな手当てをすることは必要で、できれば、後見制度の中で、人事訴訟の代理権の付与ができるようにしていただくのがいいのかなとは思っています。 ○山野目部会長 何人かの方が親族のようなふさわしい方とおっしゃいますけれども、状況によっては人事訴訟に親族は一番ふさわしくない局面がありますよね。むしろ弁護士の先生に担っていただくような場面の方がふさわしくて、そういう意味では常岡委員の検察官という発想はそれに近いかもしれないですけれども、法定代理人として遂行するというよりは、性格的には職務上代理者としてしてもらうというふうな心構えというか、気持ちですというような事案も少なくないでしょう。青木委員が多様な事案を考慮してくださいというお話は、よく分かりました。   ほかになければ、佐久間委員の残りの御発言のところを続けていただきますけれども、よろしいですか。 ○佐久間委員 99ページの任意後見制度における家事審判手続の、先ほど小澤委員もおっしゃったウのところなのですけれども、おおよそ小澤委員のお考えと一緒なのですけれども、これは予備的な後見受任者というものがどういう実体法上の地位にあるのかと、そもそも予備的な後見受任者が選ばれるときに契約の個数は幾つなのかということについて、両方リンクする話ですけれども、考えをある程度共有しないと結論が出ないのかなと思いました。   私がずっと勝手に思っていましたのは、予備的な後見受任者が選ばれる場合におきましては、本人と受任者何人か、第1の人と予備的な人が、1通の契約書であったとしても、契約としてはそれぞれが別々の契約をしており、予備的な後見受任者というのは停止条件付きの契約をしているだけなのだ、ということでした。それが正しいかどうかは分からなくて、そうではないのだということだとここから先の議論が違ってくるのですけれども、私のように考えるといたしますと、まず、第1順位の人というのかどうか分かりませんが、その人との関係で任意後見監督人選任の審判をする際に、停止条件付きの、単に1番の人が欠けたら出てくるかもしれないという人に意見を聴くということは、およそあり得ないと思います。2番目の者も、私のように考えた場合には、任意後見契約の解除は第1の人については発効しているので、裁判所の許可を得てすることになりますけれども、第2の人については、飽くまで私が先ほど申し上げたように考えたらですけれども、契約はまだ発効していないので、自由に解除できるという考えになり、そうすると即時抗告権も認められないということになると考えています。   ただ、繰り返しますが、これは私はこれまでそう受け取っていたのでということであって、そうではなくて、予備的な後見受任者が選ばれた場合、この予備的な後見受任者には、例えば1番の人が欠けたらあなたの出番が来ますよという以上の働きを期待している、権限あるいは義務ですかね、そういうものがあって初めてこの論点は出てくるのかなと思います。今日やるのかどうかは分かりませんが、予備的な後見受任者の法的地位について、まずは認識を共有しなければいけないのではないかと、それだけの意見です。 ○山野目部会長 予備的後見受任者につきましては、次回会議におきまして新しい部会資料を用意して、今日お届けしていますね、あれについて御審議いただくところで、実体法の規律について、より見通しを高めた上で、改めて手続のことをお諮りしますから、その際に今の佐久間委員の御注意も想い起こしながら検討を深めてまいりたいと考えます。 ○根本幹事 家事手続以降のところで7点あるのですが、少し多いので、今、佐久間委員からあった予備的なところだけ、先に一旦申し上げておきたいと思います。   もちろん実体法上の理解は次回ということですが、仮に佐久間委員のように停止条件付きという法的性質で考えるとしても、本人が同意できる場合は先生がおっしゃるように、出てくる余地はないということでよいと思っているのですが、開始の発効の場面で御本人が同意することができないような場合に、第1順位と第2順位で、要は第1順位を欠いているのだということを第2順位が争う、若しくはそこで当事者関係で順位を含めて何か争いが起きているということは想定できるのではないかと思いまして、その場合には第2順位に意見を聴くということが必要な場面というのもあるのではないかと思っています。それは、第2順位の立場からすれば結局、自分の停止条件が成就しているかどうかを争う余地が全くなくてよいのかという観点での意見です。そうなりますと、即時抗告権についても連動させて、つまり、その意見を聴取した場合は第2順位についても即時抗告権を認めていくということは考えてよいのではないかと思っていますので、そこだけ先に申し上げておきます。 ○山野目部会長 引き続き伺います。根本幹事、たくさんあるなら、どうぞおっしゃってください。 ○根本幹事 家事審判手続の86ページのところからです。まず、鑑定を原則として、例外として医師2名以上のということなのですが、鑑定がよいのか医師2名以上がいいのか、これのどちらがいいのかというのは一長一短で、どちらがよいというのは決め切れないところもあるのではないかとは思っておりまして、そこは、例えば医師が非常に偏在されているような地域などでは、鑑定の方が容易で医師2名の方が大変ということもあるのかもしれませんし、逆に、なかなか鑑定をしていただける先生が見付からなくて、医師2名の方が手続がスムーズに円滑に進むということもあるかと思います。必ずしもどちらが原則でどちらが例外と簡単に割り切れるのかどうかは若干疑問で、そこも含めて選択できるような方法というのも規律としてあり得るのではないかというのが一つです。あわせて、結局、事理弁識能力を欠く常況という類型を仮に設ける場合には、限定的にするという観点からは、できるだけ手続で厳格に見ていくというのは、そのとおりかなとは思います。   その上で、部会資料ですと鑑定の妨害の点が91ページのところで出てくるかと思います。確かに31行目のまた以降のところは、公法上の諸制度で虐待の対応については対応していくというのはそのとおりかなと思いながらも、26行目から30行目に書かれている点については、理念はそのとおりだと思うのですが、実際の実務においてはいわゆる相続の前哨戦が後見の中に持ち込まれていくということは非常に多くありますし、親族との親子における面会が地裁における人格権に基づく仮処分で争われてしまっているケースもあり、そこに後見が絡んで、家庭裁判所としては申立てがあった以上、申立て自体は受けなければいけないということになってしまいますので、その中で実務上非常に苦慮が生じているという実態はあります。   では何をどこまで規律できるのかということはあるのですが、考えられるとすると、鑑定をするということを妨げることがないようにする、禁止するような規律があり得るのではないかというのは、一応従前から申し上げているつもりではいて、具体的には医師や施設側が、施設管理権や医師も囲っている親族の同意がないと自分は意見を書けないのだということをおっしゃられるケースが非常に散見されるので、裁判所がもう少し強い形で鑑定をお願いするという、その方策の規律を設けてはどうかというのは、一応従前から申し上げているつもりではいるので、再度ここで申し上げておきたいと思います。   それから、3点目が92ページの事実の調査及び証拠調べのところです。これはできる規定としていただくということについては賛成をさせていただいた上で、その上で、従前議論として出ていた、いわゆる開始時における本人情報シートをどう位置付けるかのところについては、これは今後、改正後は交代時や更新時、終了時にチーム支援の中での枠組みの中でそれぞれ意見を聴きたいということはあり得ると思いますが、家庭裁判所の運用の中で本人情報シートというものをどのように位置付けるかということが重要であるということは、部会の議論としてあったということはここで再度確認をした上で、法制上の位置付けまでは行わないというのが今の部会資料の整理だと思いますので、その点は議論として落ちたわけではなくて、飽くまでも今度は法改正後の運用協議の中でそこをきちんと議論していく必要があるということは、改めてここで確認できればと思っております。任意後見のところは、今申し上げたとおりだと思います。   最後に登記の関係ですけれども、人単位はなかなか難しいというのが登記部門からの御意見だというところなのかもしれませんが、ただ、やはりひもづけは必要だと思いますので、名寄せ的なものというのはやはり出していただくという方向では引き続き御検討いただきたいとは思っておりますし、そうなった場合の登記事項証明書の請求権者が誰になるのかということを改めて整理をする必要があるとは思います。また次回の資料の中でもう少し御整理いただけるということかもしれませんが、気になったというところになります。 ○山野目部会長 最後の後見登記の点は、再々申し上げておりますとおり、人単位で大幅な再編改修を行うことは不可能です。その上で、根本幹事の今のお言葉で呼ぶと、ひもづけですね、不動産の担保権の登記における共同担保目録と類似の手法で、情報を関連するものを幅広く収集することができるような仕組みを構築することについては見通しが大いにあり得るところですから、その方向で検討してまいります。根本幹事から御注意があったとおり、そのようにして進めていくときの登記事項証明書の交付を請求することができる者については、次回部会資料に向けて、可能な範囲でもう少し検討の密度を高めたものを皆さんにお諮りしていきたいと考えております。どうもありがとうございます。   引き続き伺います。 ○野村(真)幹事 家事審判の手続について意見を申し上げます。まず、86ページの(1)の法定後見制度における精神の状況に関する鑑定及び意見の聴取についてですが、例外として2名以上の医師の意見を聴かなければならないとする規律を設けることには反対意見です。実務上、複数の医師から診断書を取得することは困難な場合があることが想定されますし、先ほど小澤委員からも御発言がありましたが、同一の本人情報シートに基づく診断であれば、結局同じ診断内容となる可能性もあると考えられるためです。   それから、92ページの(2)の事実の調査及び証拠調べについて、市町村長その他適当な者に対して意見を求めることができるとする規律を設けることについては賛成です。現在、地域によっては本人情報シートの作成には関与しない方針をとる福祉関係者もいますので、確認的な規定であっても設ける意義はあると考えられます。   続いて、96ページの(4)の法定後見における陳述の聴取については、アの本人の同意が要件とされる審判についても本人の陳述を聴かなければならないものとすることには賛成します。ただし、「心身の障害によりその者の陳述を聴くことができないとき」については、極めて狭く解釈すべきであると考えます。   続いて、イの解任の審判については、先ほど小澤委員からも御発言がありましたが、リーガルサポートでも、保護者の横領等の不正行為についての解任の場合には、例えば本人から反対の意向が表明された場合、意向そのものの評価の難しさや、関係者間の対立なども懸念されますので、本人の陳述聴取を必要的とすることには消極であるという意見が多かったです。   これに対して、99ページの(5)のアの任意後見における解任の審判については、任意後見は本人との契約に基づいていますので、解任の場面においても本人の意思が尊重されるべきですし、本人が知らない間に解任されるということは違和感がありますので、原則として本人の陳述を聴かなければならないとした上で、心身の障害による場合だけではなく、本人保護のための例外規定を置いてはどうかと考えます。   それから、106ページの登記制度について、所要の整備を行う御提案の内容については賛成ですが、制度改正によって後見人等の交代が容易となり、制度が終われる仕組みになり、権限の範囲の変更が増加するとすれば、取引の相手方から迅速な登記事項証明書の取得、提示が求められる機会が増えることが想定されます。そのため、実務的には証明書の交付場所の拡大、オンライン申請の利用促進のための運用改善、手数料の減額等の登記事項証明書の取得のしやすさについても更なる検討をお願いしたいと思います。 ○青木委員 人訴以外の点について申し上げます。まず、民訴の訴訟能力について、73ページ以降の部分で、事理弁識能力を欠く常況の規律を設けない場合の様々な手続上の不利益があるのではないかとお書きいただいているのですけれども、判断能力が欠けるかもしれない人の訴訟などを経験している実務の経験から言いますと、必ずしもここに書いているような訴訟上の不利益ということは生じません。そもそも事理弁識能力を欠く常況にある者が、応訴して本人訴訟をするというようなことがどれほどあるかということがまずあります。もちろん、送達された後に応訴しないで確定してしまうという不利益はあります。しかしそれはそういう方だけではなくて、訴状送達後、様々な事情で応訴をしない、できなかったという方全般の対応の問題であると考えられます。   もちろん応訴する必要があると周囲が判断すれば、その際に成年後見制度を利用するとか、すでに保護者はついているけれども訴訟代理権が付与されていなければ、それについて追加付与を求めることで十分に対応できることでありますし、そうした申立てと選任までの間、訴訟を中断して待つということについては通常の訴訟ではよくあることでありまして、その間、中断して待った上で訴訟を再開するということについては訴訟当事者も裁判所もやむをえないものと理解した上で実務は運用しているものと考えます。   他方、本人が訴訟をする必要があるという場合には、成年後見制度を利用して代理権を付与するということで対応が十分できますし、事理弁識能力を欠く常況にもかかわらず本人が自ら訴訟する事態もまれにあるかもしれませんけれども、それについては明らかに裁判所としては、書かれている書面や法廷での発言などから疑義を判断できますので、その場合には訴訟能力があるかどうかを中断して判断をするということになりましょうし、成年後見制度の利用を勧めるということもありましょうし、それが難しければ、訴訟手続を本人訴訟としてどう進めるかを判断しながら日々対応されていると思われます。   そういったことも含めて、相手方の利益という点で、たしかに待たされるという不利益もありますけれども、一定の中断の後に訴訟が再開すれば、1期日か2期日程度で、それまでの訴訟行為のやり直しや認否のし直し、ということも対応できますので、大幅な遅延につながるということではありません。以上のことからは、資料に書かれているような不利益というのは、実務上は大きくはなく、このことを前提として、事理弁識能力を欠く常況にある者の規律を設けないことがどうなのかという議論をすることは相当ではないのではないかというのが、実務感覚ということになります。   それから、民事訴訟法上の特別代理人については、被告側としては、今の規定のままではなく、被告に訴訟能力に欠ける状況の場合には特別代理人の選任申立てができると明文化していただくことが必要だと思いますが、ただ、事理弁識能力を欠く常況という先ほどの青木幹事の御指摘もありますが、ここについては、訴訟能力に関する意思能力なのか、あるいは、訴訟能力に関する事理弁識能力というものに基づいて判断をしていただくということができるのではないかと考えているので、ここで必要な要件は、事理弁識能力全般についての認定ではなくて、訴訟能力遂行に関する意思能力若しくは事理弁識能力ということで整理をしていただけないのだろうかと考えています。また、原告になる立場の場合には、基本的には成年後見制度を利用していただいて訴訟行為の代理権付与の上で提訴していただくということでよくて、急ぐ場合には保全処分ということもあり得ますし、原告の立場となる場合に、訴訟法上の特別代理人をあえて設ける必要というのは余りないのではないかと考えているところです。   家事手続法の見直しの関係につきましては、鑑定につきまして、仮に事理弁識能力を欠く常況にある者を認定する制度にする場合には、この25年間の反省を踏まえて、やはり現行実務が、規定上は原則鑑定と言いつつ実際には95%が診断書だけで幅広く認定されてきた実務にくさびを打つ必要があると思いますので、原則鑑定とされているものを、「必須」に近いものにより強めることに加えて、例外を作るとしても医師2人ということが必要ではないかと思います。もちろん医師2人も確保するのが大変であるとか、医師2人になったとしても判断は似たようなものになるのではないかという懸念はあるかもしれませんけれども、事理弁識能力を欠く常況にある者の概念についてしっかりとしたガイドラインを作った上で、それについて的確に診断ができる医師2名とすることによって、現状より本来の事理弁識能力を欠く常況にある者の認定をするための担保として意味ができるのではないかと思います。それにより、申立人に手続上の負担が大きくなるということはありますが、それは事理弁識能力を欠く常況にある者という概念を利用する制度を残す以上はやむを得ないことであるという価値判断になると思います。   それから、保全処分については、今回の資料でご整理いただいたとおり、現行制度のままで対応するということでいいのではないかというふうに考えますので、私の従前の意見を修正したいと思っています。   それから、本人の陳述の聴取は、同意を得る場合の手続と本人の陳述の聴取というのは似たような手続になるかとも思うのですけれども、やはり申立準備の際に整えた本人の同意に関する資料だけではなくて、申立てをした後にも本人の同意について何らかの手続で裁判所が確認するということは、本人の意思をより尊重する、同意を原則とする新しい制度においては大事なことだと思いますので、実体的要件とともに手続要件としての本人の陳述というのは必要だろうと考えています。   また、横領による解任のときにまで本人の陳述の機会を付与するのはどうかという御意見もありましたけれども、ここで大事なのは、やはり本人が自らに関わる事柄の手続に絶えず関与するという理念だと思います。自分のことを自分なしでは決められないという意味で言うと、自分の担当していた後見人が横領してしまったということも明確に伝えていただき、仮にそれについて本人が解任に反対したとしても、裁判所としては解任はするわけですけれども、こういう人は後見人にしておくわけにはいかないので裁判所としては解任させてもらいますということも含めて、本人の陳述の機会の中で説明するということは大切なことではないかと思っています。   後見登記につきましては、先ほどのひもづけということの要請にぜひ応えたものを作っていただきたいとともに、従前から言っていますが、現時点において付与されている権限が何であるか、現在の代理権目録、現在の同意権目録、について、現在事項証明書のような形で、時系列にそった登記事項ではなくて、履歴等は除いて、現在の保護者、現在付与されている権限が何であるかということが、取引の相手方に一目してわかるものを作っていただきたいということを申し上げておきたいと思います。 ○山野目部会長 遠藤幹事に御発言をお願いするに先立ち、御案内します。午後6時にはちょうど終わるというわけにはいかないと見通しておりますから、委員、幹事に御迷惑をお掛けしますけれども、可能な範囲で御協力をください。 ○遠藤幹事 直前に青木委員からお話のあったもののうち、事理弁識能力を欠く常況にある者に対する保護の規律を設ける場合に、鑑定に代替するものとして医師2人以上の意見を必要なものとすることについての御提案の関係で、裁判所として考えているところをお話ししたいと思います。  裁判所としても、医師の診断あるいは裁判所の認定に対して様々な御指摘があることは承知しており、そこはしっかり受け止めて、適切に制度を運用していかなければいけないと考えているところではございます。だからこそということになりますが、先ほどの青木委員の御意見にも通ずるところですけれども、そのような規定が目的にかなう形で運用されるためには、裁判所のみならず、診断をする医師の方々を含め、法定後見制度に様々な形で関わる方々の間で、今般の法改正の目指すところのほか、意思決定支援という手法の広まりなどの社会の状況の変化も踏まえて、事理弁識能力を欠く常況にある方の具体例について、部会資料にあるような典型的な方々はもちろんでありますが、その外縁にはどのような状態の方が含まれ得るのかという点も含めて、正しく共有されていくことが肝要ではないかと思っているところです。   その意味では、これまでの部会における議論を通じて、今回の部会資料に御記載いただいているような方々が事理弁識能力を欠く常況にある方の典型的な例であるということは繰り返し確認をされてきたところですが、該当するのはそのような方に尽きるのか、あるいはその外縁にいる方としてどういう状態にある方々が具体的に想定され得るのかといった点について、大変難しい問題ではありますが、改正法成立後の運用の在り方を考える上でも非常に有益なものとなると思いますので、この部会における御議論を通じて可能な限り具体化が進むことが望ましいと考えているところです。こういった点について御教示を頂いたところを裁判所としても受け止め、適切な運用を考えてまいりたいと考えております。 ○山野目部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○星野委員 ありがとうございます。86ページ以降、第3、その他のところで3点意見を申し上げたいと思います。   今も出ておりました手続のときの事理弁識能力を欠く常況にある者を設定する場合の医学的判断のところについては、原則の鑑定以外、例外として2人以上の医師の意見を聴かなければならないこと、これに対して大きな反対意見はないのですが、2人以上というところと、それから医師というところで、少し意見を申し上げたいと思います。これは制度が始まって、2000年に民法改正された新しい成年後見と当時言われたときに、私が実際に知っている事例の中で、どうしても医療機関につながることができなかった方が、医師の診断書ではなく、もちろん鑑定も実施が不可能と思われた方が、行政の保健師による医療の必要性のようなところとか、本人の判断能力のところをレポートして、そこから後見開始の審判が下りたという実例がありました。これは多分、現行制度開始数年後のことなので、今はそういうことはあり得ないのかもしれません。医学的な判断能力の状況の根拠資料は当然必要だと思いますが、やはり今この部会の中で議論されてきた社会的な観点から見た必要性、特に虐待などがある場合は、本人の判断能力の状況だけではなくて環境のところの問題もあると思いますので、そういったところを感じたというのが一つです。うまく伝えられていないと思います。   それから2点目ですが、92ページの法定後見制度に関する事実の調査と証拠調べのところです。これについては賛同の意見ということです。できるということで、市町村長その他適当な者に対して本人の状況の意見を求めることができる、これは必須には当然今の段階ではならないというところは、先ほど野村真美幹事の御意見からもありました本人情報シートなど本人の生活状況についてのアセスメントとかそういった資料を、なかなか積極的に関与できている地域ばかりではないという、それはそのとおりだと思いますので、ここでできるという規定を設けることは大事だと思っています。   最後に、96ページ、解任のところでの本人の陳述の聴取のところです。こちらは裁判手続なので当然、陳述の聴取という言葉については何も違和感等はないので、そこのことではなくて、イのところで、法定後見の保護者及びその監督人の解任の審判について、聴かなければならないというところは確かに少し強いと思いますが、私も先ほど青木委員が言われたとおりで、本人が自身の大事な保護者が替わるというところについて何も知らないで、急に人が替わるということは、これも実は今までもたくさんありまして、そのときに、なぜ今までいた人が関わらなくなったのかということを、本人から後任者である当方に聞かれた経験があります。そのときに裁判所の方からの説明というのも当然ないですし、後任になった後見人から、例えば適切ではないことがあったということもなかなか説明がし難いということは実際に何件か聞いています。そういったところからも、やはりこれは本人の意見を聴取するということは、可能な範囲で必要ではないかと思います。 ○山野目部会長 ほかにいかがでしょうか。   そうしましたらば、柿部関係官から御発言があるかどうかをお尋ねした後、私から4点のガイドを差し上げ、そして最後に花俣委員、そして久保委員の順番でお声掛けをし、特段ないということであれば、ないということでも結構ですし、お気付きのことがあれば自由にお話しいただくというお願いを致しましょう。 ○柿部関係官 すみません、まとめてになりますので、数が多くなるかもしれませんが、区切ってお伺いしたいと思いました。   最初に、76ページの人事訴訟のところです。種々御意見いただきましたし、パブリック・コメントでも、部会資料に記載しましたとおり、意見を頂いているというところでございます。結論的には、欠く常況に客観的にある方が、人事訴訟を提起できない、あるいは提起されないということは避けなければならない、ここは恐らく一致しているのだろうと思っており、あとはどういう規律にするか、制度にするかという問題なのだろうと承知しているところでございます。今日、青木幹事ですとか、あるいは佐久間委員とのやり取り等も踏まえますと、仮に欠く常況なるものを設け、一定の取消権等を持つ保護者がいる場合に、その方が今の成年後見人のような立場を担うということ自体はそれほどおかしくないというようなニュアンスのお話だったように聞きました。他方で、これは検討を要するとは思っておるのですが、人事訴訟の手続内に代理権を付与する規律を設けられるかというのは、代理に親しまないというような考え方をどう説明するのかという問題があるのだろうと思っており、今日の議論を伺っても、更に検討を要する問題だと思ったというところぐらいでございまして、今日の議論をまた検討につなげたいと思っておったところです。   81ページ、手続法のところでございますが、一つ思いましたのは、青木幹事からも御指摘いただきました、意思能力を欠く者というのを対象にするということがあり得るのではないかという御提案があり、また青木委員からも、訴訟遂行能力に関する意思能力というような概念等を頂いたと承知しているところでございます。意思能力を欠くという要件の設定をすることもあり得るのだろうとは思いますが、今のゴシック体の中で欠く常況にある者と設定しておったところを、今更ですが、若干御説明させていただくと、意思能力は恐らく各時点ごとにその行為との関係で見るのだろうと思います。例えば、訴状を送達し、受け取りました、その時点で意思能力があったかどうかということを判断し、仮に、その時点では意思能力を欠いていたと判断され、特別代理人を選任しましょうとなったときでも、選任しましょうと判断された時点では、訴訟能力が認められる状態まで回復しているということもあり得るのだろうと思います。そうすると、特別代理人として一定の訴訟行為をしてもらうということになると、やはり一定の時間的な幅を持ってその方の能力を見ていかなければならないのではないかと考えられ、欠く常況にある者という概念が出てこざるを得ないのではないかと考えております。   あと、これも若干の補足でございますが(3)で書いている訴訟無能力者側からの特別代理人の選任の申立てというところでございまして、今日のお話の中でも、現行法の解釈においては、後見開始の審判を受けていない人であっても判例上及び解釈上、認められていることとの関係です。補足説明に書いておりますとおり、このように改正した場合には、後見開始の審判を受けていない方について、特別代理人の選任の申立てが認められないかというと、そのように考えたわけではございません。その点については引き続き解釈に委ねられるものと理解をしております。   逆にお伺いしたかったのは、このように改正すると、後見開始の審判がされていない者については、特別代理人の選任が認められないというふうな考えになるのではないかといったような、かえってこのように改正することによる弊害がどこまであるかというところを是非お伺いしたかったというところです。今回議論を頂きまして、代理権の付与なのだから対応できるのではないかなどの御意見はそのとおりかと思いますし、特別代理人の選任の要件を満たす事案がどこまであるかという問題はあり、そこはやはり事案に応じて、限られたことになるのかなとも思っておりますが、逆に、このような規律を設けても弊害が特にないということであれば、足並みをそろえるといったイメージで、家事法や非訟事件手続法と合わせる形で改正するということはあり得ると思っておったところです。   96ページの陳述の聴取のところでして、今お話をお伺いしたところでは、(4)アの部分、実体法上同意を要件とされている審判について、本人の陳述を聴かなければならない、これに関しては特に反対意見等はなかったようにお伺いをしたと認識しています。他方、イの解任については一部違う考え方もあり得るのかなと思い、聞いたところもあるかと思っております。少しお伺いだったのは、聴かなければならないので聴きはする、聴いたのだけれども、裁判所としては当然、本人の意見に拘束されることはないわけですから、本人の意思尊重ということも踏まえて、意見を聴かなければならないとしておこう、聴いた後の判断は裁判所の方に任せようということもあり得るかとは思いますし、義務とする規律とせず、裁判所が必要に応じて聴いてもらえばいいではないかと考え、この点については改正しないということも考えられると思います。なのでこの辺りを実際、どういうお考えかお伺いしたいところです。   最後に、99ページ11行目からの代理権の停止の規律を設ける場合の保全処分を設けるかというところは、なかなか今日、お話が出なかったところかと思います。時間の問題もあるかと思いますので、今日全てとは思っておりませんが、仮に代理権の停止という規律を設ける場合には、保全処分ということもあり得るかと思いますので、引き続き御意見を頂戴したいと思っておったところでございます。   すみません、かなりまとめて発言してしまいましたが、私の話につきまして何かお気付きの点ですとか、頂戴できましたらと思っております。 ○山野目部会長 今の柿部関係官のお話の全般について、何かお気付きのことを追加でお話しいただくことを妨げませんし、取り分けお問合せがありましたのは最後の2点でありまして、本人の陳述聴取の在り方について、解任の審判の場合についてどう考えるかというお問合せ、それから、任意後見制度における家事審判手続の中でも、停止の審判をする際に関連して、それを本案とする保全処分ということについてどう考えるかということについて、本日時点で御意見がある際にはこの機会に仰せいただきたく、また、特に御意見がなくても、また次回以降の審議の際におっしゃっていただきたいと望みます。何かおありでしょうか。 ○青木委員 一つ目は先ほど発言しましたので、この御提案のとおりだと思います。   2点目の保全処分ですけれども、任意後見人と並存した上で一部権限を停止するという場合は、任意後見人さんが何か解任をするような不正がある場合とは限らないということを想定しているので、保全処分をしなければならないほど停止を急ぐという事態ではないと考えるのが通常だと思いますので、私の意見としては保全処分までは要らないのではないかと思っておりまして、逆に言うと、保全処分も必要なほど、放っておいたら権限を二重行使して混乱を招くような場合は、やはり任意後見人の適格性に問題があるものとして、解任の前提として解任を本案とする職務執行停止という対応になるのではないかと思っております。 ○根本幹事 今の点について補足ですが、結局のところここは次回、4日の部会の際に恐らく停止の場合の要件と一部解任の場合の要件の整理をしていただくのだと思いますので、その整理の結果が、青木委員が言われた内容になるのか、そうではないということであれば保全処分が必要だという議論になるのだと思います。今日申し上げなかったのは、次回の要件のところが確定したところでということでよいかと思っております。 ○山野目部会長 柿部関係官、お続けになることがおありですか。 ○柿部関係官 ありがとうございました。解任の方の意見聴取につきましては、先ほど青木委員からも改めてお話を頂戴いたしましたところですが、意見聴取しなければならないとしておいて、あとは裁判所の方でその意見を適切に判断するということもあり得るかと思いますし、ならないとしておくことがむしろ弊害があるという御意見まではなかったものと認識しております。 ○山野目部会長 特段の御発言がなければ、私の方から四つお話を差し上げます。1点目は、判決手続における特別代理人の選任の在り方につきまして、本人の側からの請求による選任の可能性について明文の規律を設けるかどうかは、ただいま柿部関係官から案内がありましたとおり、次回の部会資料に向けて整理を重ねていくことにいたします。   2点目でございますけれども、家事審判手続における、取り分け保護開始の審判をするに際しての主として医学的な見地から本人に対して行うことが予定される鑑定等について御議論を頂きました。ここについては、実は本日お諮りしている鑑定ないし関連する医師意見の2名の診断のほかに、遠藤幹事から御注意いただいたとおり、鑑定等自体は手続の問題でありますが、それ以前に事理弁識能力あるいは事理弁識能力を欠く常況とは何かという実体概念の性質理解のところをいずれ議論していただかなければなりません。私の見るところ、平成11年当時の理解をそのまま維持して、今般改革が全く異なる文脈であるにもかかわらず、それを維持して事理弁識能力を欠く常況という概念を理解したり、従前どおりの例を挙げて説明したりするということは甚だ不都合であると感ずる部分がございます。ここは実体問題でございますから、本日これ以上の議論はお願いしませんけれども、またいずれお諮りすることにいたします。   その上で手続問題でありますけれども、鑑定又はそれに代わるものとして位置付けられる医師2名の診断を要するという提案について、大方の御理解を委員、幹事から本日頂戴したように感じます。野村真美幹事から、必ずしも賛成することができないという御意見を頂きました。野村真美幹事に御案内、御相談であり、二つありますけれども、一つは、医師2名としても医師の診断は同じになるでしょうという御議論は、運用によってはそういうことがあるかもしれません。さはさりながら、遺言の場面に関して現在、医師2名という規律が設けられていたり、そのほか幾つかの民法以外の法制の局面においても医師2人というものを挙げて手順を定めていたりする現在の法制上の規律が見受けられるところでございます。それらについての根拠を疑う議論というものは大きくないわけでありまして、それらとの見合いについて引き続きお考えいただければ有り難いと存じます。   加えて、運用の面でのそういう注意とはまた別な問題として、これから組み立てていく法制が事理弁識能力を欠く常況という概念を用いるとしたときに、これはみだりに用いられてよい概念ではないということを、もちろんいろいろな機会に啓発して強調していきますけれども、法文から読み取れることとしても、法制上の姿勢として、ここは厳に抑制的に手順の上でも厳しい手順を定めて認定判断していきますよということが示されていることが必要であると考えられます。第26回会議におきまして私の方から、本人に対する行為能力の制限を講ずる局面において、その要件の充足が丁寧、慎重に認定、判断がされる仕組みを確保し、行為能力が制限される事項の範囲が不当に拡がることのないよう注意を払っていかなければならないということを強調したような経緯がございます。野村真美幹事の御意見は御意見として受け止めますとともに、引き続きリーガルサポートの先生方とも意見交換を重ねてまいりたいと考えますから、どうぞよろしくお願いします。正に青木佳史委員がおっしゃったように、くさびを打ち込んでおくことをきちんと考えないと、今般の法制の全般的な建付けの評価に影響してくる部分がございますから、この点をきちんと考え込んで進めたいと考えているところでございます。これが2点目でございます。   3点目でありますが、陳述の聴取についてです。保護開始の審判をするに際して本人の同意を要するとされる際などをはじめとする局面の陳述の聴取について、先ほども柿部関係官からお声掛けがあって議論を頂いたところでありますけれども、陳述の聴取の方法について本日必ずしも明示に委員、幹事から御議論を頂いておりませんでした。しかし、その方面も留意をしなければならない部分があると考えます。ここも平成11年当時の議論をそのまま受け止めて今後も進めていくということでよろしいかと考えますと、甚だ疑問があります。平成11年当時は、想い起こしてみますと、どちらかというと本人に会って対面で聴取をすることが基本であるという方向が強調されがちでした。これはあの当時の議論としては理由のあることであったろうと思われます。しかしながら、平成11年から今日に至るまでの時が経過して、少なくとも二つほど、一方においてはチーム支援などをはじめとする地域社会福祉の営みの発展がございます。もう一つは、ウェブ会議に代表されるような情報通信技術の発達が見られ、そして感染症蔓延期において私たちはこれを用いて様々なことをするということも現実に経験いたしました。このような社会経済情勢の進展、変化を踏まえて、今後の陳述の聴取の在り方が考えていかれるとよいと感じます。御案内のとおり、陳述の聴取の方法については家事事件手続法においては具体的な規律が設けられてございません。今後とも家事事件手続法において陳述の聴取を要するか要しないかということについての規律は十分な検討を経て置いていくということになると考えますけれども、その方法につきましては今後とも現行の法制の建付けが維持されるであろうと考えますから、今申し上げたようなことを参考として、新しい制度の実施後において裁判所において適切な陳述聴取の在り方を御考案いただければ有り難いと考えます。これが3点目でございます。   4点目、最後でございますけれども、身体障害のある方々が意思疎通が困難であると見られる局面において、何らかの民事法制上の規律が考えられるかということについて、今日までお諮りしてまいりました。御提案申し上げておりますとおり、法定後見につきましても任意後見につきましても、特段の民事法制上の措置は講じないという方向をお示ししているところであり、本日これについて特段の御異論は見受けられませんでしたから、この方向で検討を続けることにいたします。しかしながら、皆様方、記憶が鮮烈でいらっしゃると想像いたしますけれども、この部会の参考人意見聴取においてはろう者の方をお迎えし手話通訳を通じて、様々なこれまで経験してこられた悩み、苦しみのお話を頂いたところであります。あのことにどのように応えていくかということについて議事録に残しておく必要がありますから、一言申し上げます。   確かに身体障害にあるというのみで、たとえ意思疎通に困難があるとしても、本人の判断能力は必然的に損なわれているということにはなりませんから、成年後見制度の規律の中に何らかの民事法制上の規律を置くということにはなりません。しかしながら、参考人意見聴取の際にもそういう実情を伝えてもらったとおり、様々な困難な経緯があることによって、しばしば言語障害や聴覚障害が見られる方々が重複して知的障害や精神障害などで苦しんでおられるという実態があります。これらの方々に成年後見制度の利用が図られるという局面においては、その方々が保護者その他の人たちとの間で意思疎通をするに当たって大変な苦しみ、困難がこれまでもあったし、今後も予想されるところでございます。   想い起こしてみますと、令和4年法律第50号、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律が3条において掲げているところの基本理念、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る手段について、可能な限りその障害の種類及び程度に応じた手段を選択することができるように気配りに配意されなければならない、そして、全ての障害者がその日常生活又は社会生活を営んでいる地域にかかわらず、等しくその必要とする情報を十分に取得し及び利用し並びに円滑に意思疎通を図ることができるようにしなければならず、高度情報通信ネットワークの利用及び情報通信技術の活用を通じ、その必要とする情報を十分に取得し及び利用し並びに円滑に意思疎通を図ることができるようにしなければならないということが政府の施策として謳われているところでございます。もとよりこの施策の推進の中に成年後見制度も置かれるべきでございまして、今般改革が成就した後の成年後見制度の実地の運用におきましては、ただいま私から申し上げたことに十分に留意して運用が進められることを期待するところでございます。以上、私から4点を申し上げました。   お2人の委員にお声掛けを致します。 ○花俣委員 後半の議論に関しましては、特段の意見はございません。本日はどうもありがとうございました。 ○山野目部会長 花俣委員におかれてもお疲れさまでございました。   久保委員は御退席でいらっしゃるようです。また何かあったら事務当局の方にお寄せいただけるものと期待します。   本日、内容にわたる議論をお願いし、ここまで委員、幹事に熱心な御議論を頂きました。次回の部会会議等につきまして事務当局から案内を差し上げます。 ○波多野幹事 本日も長時間にわたって御審議いただきましてありがとうございました。今後の予定について御説明いたします。   次回日程は、令和7年11月4日火曜日午後1時15分から午後6時まで、場所は本大会議室でございます。次回はパブリック・コメント後のこれまでの部会での御議論を踏まえまして、要綱案のたたき台に向けた検討として、中間試案第1の法定後見の開始の要件及び効果等の中の一部を取り上げた資料を作成してお送りしているところでございますし、任意後見制度について取り上げた部会資料を作成してお送りしているというところでございまして、これらの事項について御審議をお願いしたいと存じます。 ○山野目部会長 次回部会資料は本日既にお送りしたところでありまして、二つに分かれていますから、見映えは1個1個は何となく薄いですけれども、足すとほとんど本日と同じ分量がございますから、これを作成してお届けした事務当局の側も大変な労力がありましたが、届けられてこれを読まなければいけない委員、幹事にも大変な御労苦をお願いすることになります。何とぞよろしくお願いします。   ただいまの次回会議の予定等を含めまして委員、幹事か何かありますれば承りますが、いかがでしょうか。   よろしいですか。   それでは、法制審議会民法(成年後見等部関係)部会第27回会議を散会といたします。どうもありがとうございました。 -了-