法制審議会 会社法制 (株式・株主総会等関係)部会 第9回会議 議事録 第1 日 時  令和7年12月24日(水)    自 午後0時59分                          至 午後6時03分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  株主総会の在り方に関する規律の見直しに関する論点の検討(二読)(2)、 企業統治の在り方に関する規律の見直しに関する論点及びその他の論点の検討(二読) 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○神作部会長 予定した時刻となりましたので、ただいまから法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会の第9回会議を開会いたします。   本日も皆様、御多忙の中、御出席を頂きまして誠にありがとうございます。   本日もウェブ会議の方法を併用して議事を進めることとさせていただきます。初めに、事務当局からウェブ会議に関する注意事項の御案内をお願いいたします。 ○宇野幹事 事務当局より御説明を差し上げます。   ウェブ会議を通じて御参加されている皆様につきましては、御発言される際を除きマイク機能をオフにしていただきますよう御協力をお願いいたします。御質問がある場合や審議において御発言される場合は、画面に表示されている手を挙げるの機能をお使いください。指名がされましたら、マイクをオンにして御発言ください。御発言が終わりましたらマイクをオフにし、また画面の挙手ボタンを再度押して、挙手を下げていただきますようお願いいたします。   なお、御発言の際はお名前をおっしゃってから御発言されるようお願いいたします。会議室にお集まりの方々におかれましても、ウェブ会議の方法で出席されている皆様にはこちらの様子が伝わりにくいために、お名前をおっしゃってからの御発言に御協力いただきますようよろしくお願いいたします。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。   本日の会議の出欠についてでございますけれども、本日は家原幹事が御欠席と伺っております。   次に、本日の審議に入ります前に事務当局から配付資料についての御説明を頂きます。よろしくお願いいたします。 ○宇野幹事 配付資料について御確認いただきたいと思います。   まず、部会資料9「企業統治の在り方に関する規律の見直しに関する論点の検討(二読)」がございます。こちらにつきましては、後ほど審議の中で事務当局から御説明をさせていただきます。   次に、参考資料22「経団連 事業報告等と有価証券報告書の一体開示及び一本化に関する調査 結果概要」は仁分委員から御提出があったものでございます。この資料につきましては、後ほど仁分委員に御説明を頂きます。   また、参考資料23「企業統治の在り方に関する論点(二読)について」は、経済産業省の鮫島幹事から御提出があったものでございます。この資料につきましては、後ほど鮫島幹事に御説明を頂きます。   また、参考人提供資料「指名委員会等設置会社における指名委員会の権限の見直しに関する意見」は、本日参考人としてお越しいただきました一般社団法人日本取締協会の淡輪様、太田様から御提出があったものでございます。後ほど淡輪様、太田様に御説明を頂ければと思います。   配付資料の御紹介は以上でございます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。   それでは、早速本日の審議に入りたいと存じます。   まずは、前回の部会におきまして時間切れで積み残しとなっておりました部会資料8の「第3 その他」について意見交換をしていただきたいと存じます。具体的には、会社法第316条第2項の調査者制度、それから株主総会の招集手続等に関する検査役の選任の申立権者、以上の2点につきまして御意見を頂戴できればと存じます。いかがでしょうか。 ○臼井委員 2項調査者について申し上げます。   現状、2項調査者について様々な問題点があるということは、これまでの議論の中での御指摘のとおりであると思っておりまして、具体的には選任プロセス、動議による選任が可能である、機密情報の外部流出や不正利用につながりかねないという問題点があることは認識してございます。   一方で、足下の状況を見ますと、取締役会の独立性が必ずしも現状確立されていない日本においては、会社による調査が行われた場合に、それが恣意的となり、十分なものとならないケースが今後も想定されます。近年でも、2項調査者が調査を行うことにより、様々な見方はあると思いますが、一定の効果を上げた例があるとも考えております。いざというときに、独立性を保った調査が行われるということは、株主の権利を守る上で大きな意味を持つとともに、ガバナンスの信頼性の担保において一定の役割を果たすと考えます。   こうした点を踏まえまして、制度の廃止というよりは、現状の問題点を改善した上で、残す方向に賛同いたします。具体的には、選任基準の明確化と開示、裁判所の関与強化、開示の対象を制限するといった方法で制度の安全性、透明性を高めていくような方法で御対応いただければと思っております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○内田委員 2項調査者については、私も同じように考えておりまして、廃止というよりは制約する、規制するという方向で考えたいと思っています。   本来は、監査役会とか特別委員会が期待通りに機能していれば、この制度自体は不要だと思っています。ただ、現実的には監督と執行が完全に分離しているわけではなく、社外取締役が果たすべき役割とか責務とか、そこも明確になっていなくて、少しぐらついているというような状況だと思っております。そういう意味では特別委員会が恣意的とみなされるケースがまだ多々あるという印象でして、特に株主提案等々の対抗手段として活用されていると疑われるようなケースもあって、制度自体はそれなりに意味があると思っております。   そういった中で、「動議による選出の禁止」というのが一つ挙がっていると思いますが、これについてはそもそも株主総会当日の動議一般について慎重なスタンスで考えております。一般的に総会当日の修正動議というのは、私どもというか、機関投資家は否定的であって、なかなか対処に困ると考えておりますので、慎重なスタンスを採っています。   それから、候補者に関する情報開示の規律については、内容、実際の事例を考えますと、候補者の適格性よりは、調査が必要かどうかというところが懸案事項というか、議題になるのだと思いますので、それが賛否に大きく影響するということであります。ですから、制度面ではむしろ候補者の適格性をしっかり検証する必要がより強く求められると思います。一定の事項を定めた上で取締役会、株主に通知する義務を設定するということも必要になるかと思います。取締役会と株主双方に候補者に関する情報を開示することは必要だという立場を採っております。   機密情報の外部流出については、これも内容を見ると、役員と同等の義務や責務を課してもいいと思っております。余り厳しすぎて期待される役割を果たさなくなるという弊害もあるとは思いますが、ただ、一方で社外取締役と同様の役割をきちんと果たしてもらいたいという意味では、役員と同等の責務や責任を課してしかるべきと考えます。   あと調査報告書に記載される事項についても、これは一定の制約は設けるべきだとは思いますが、内容については特別委員会が実施し公表する調査についてそもそも疑義があるというのが背景にあると思いますので、余り規則を厳しくしすぎてもよくないと思います。極力その辺については制限すべきではなく、調査した結果は原則そのまま開示すべきだと考えております。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。 ○齊藤委員 2点申し述べさせていただきます。   まず、第1点目は「1 調査者の制度」についてでございますけれども、前回の会議でも御指摘があった機密情報の管理について同様な懸念を持っておりまして、御提案いただいている内容はその点について御配慮いただいていることも承知しておりますけれども、調査役の制度を廃止して、検査役と監査役に発展的に解消していくこともあり得る方向の一つではないかと思われます。   調査者制度と検査役制度の違いの一つは人選の在り方にあるのではないかと思われますところ、裁判所の人選の在り方や検査役選任の要件の見直しなどをしていくことで、現在、調査者制度に期待されている機能を果たせる制度にしていく余地もあるのではないかと考えます。   次に2でございますが、こちらについてはこれまでのところ余り御意見がなかったようにもお見受けするのですけれども、この御提案の潜在的なニーズがあるとすれば、それは会社の代表者でもなく、大株主でもないけれども、役員を務めている人が株主総会の運営について客観的な記録を残したいと考える場合ではないかと思われます。このようなニーズが仮に潜在的にあるとすれば、それを汲み取ることができるのは恐らく弁護士会の方々ぐらいではないかと思われますところ、弁護士会の方々が必要であるとおっしゃっておられるのであれば、中間試案に載せて幅広く現状に関する御意見を聴いてみる必要があるのではないかと思われる次第でございます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○久保田委員 私も2項調査者制度の見直しについて発言させていただきます。   部会資料に記載されている提案は、濫用の危険に対処しながら、制度の利用を過度に抑制しないようなものになっていまして、その意味でバランスのとれたものであると思います。ただ、私が少し気になっていますのは、機密情報の外部流出、不正利用のおそれに対処するためには、2項調査者がアクセスできる情報、それ自体を合理的な形で制限する必要があるのではないかという点です。といいますのも、2項調査者が一旦情報を入手してしまうと、外部流出や不正利用を防止するのは事実上困難であると考えられるからです。   問題は、具体的にどのようにして情報のアクセス、それ自体を制限するかです。まず考えられるのは、部会資料では2項調査者の選任に当たり、株主に対して調査目的を明らかにすべきことが提案されていますので、そのことを前提に、調査目的による制限を課すことです。これは第4回会議で齊藤委員や松井(智)委員が示唆されたアイデアです。   ただし、調査目的として抽象的な目的が掲げられますと、情報へのアクセスは何ら制限されないことになります。そこで、前回の会議において相澤関係官が示唆されたとおり、一つは会社法第358条の検査役の場合のように、「不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があることを疑うに足りる事由」がある場合に限って、その調査をすることを認めるといった形で調査目的を制限するか、これは会社法第358条の検査役調査との統合につながり得る提案になるものだと思いますが、こうした形で制限するか、あるいは、それだと制限が厳しすぎるということであれば、会社が、調査者がアクセスできる情報の範囲を判断できる程度に具体的な調査目的を要求することも考えられるかと思います。   このうち、仮に後者のような制限を採用する場合は、それを明文で規定するのは難しいかもしれませんので、例えば立法の解説の中で、そのような具体的な調査目的が必要であるという解釈を示していただくことによって対応することでもよいのではないかと考えています。この点、例えば会計帳簿等の閲覧等請求については、株主は閲覧請求の理由を明らかにすべき旨の規定が置かれていますが、その請求理由は、閲覧させるべき会計帳簿等の範囲を会社が認識することができる程度に具体的に示す必要があると一般に解されていますので、少し場面は異なりますけれども、同様の解釈を採る余地はあるのではないかと考えています。   今私が申し上げましたようなアクセス制限の対象になる情報は機密情報に限られないわけですけれども、追加的に、すなわち仮に調査目的にかなう情報であったとしても、機密情報については、それへのアクセスを制限することも考えられるかと思います。ただし、これを広く認めますと、調査の実効性が確保できないおそれが小さくありませんので、前回の会議で藤田委員が示唆されたように、機密情報については会社に対して裁判所の許可を得て、調査拒絶する権利を認めるといった形にすることが望ましいであろうと考えています。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。ほかに御意見、御発言ございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは先に進みたいと思います。   本日の部会資料9の審議に入りたいと思います。初めに、事務当局から部会資料9についての御説明をお願いいたします。 ○相澤関係官 部会資料9について御説明いたします。   部会資料9は、企業統治の在り方に関する規律の見直しに関する論点及びその他の論点について2回目の各論的な検討を行うものです。   まず1ページ目の第1では「指名委員会等設置会社制度の見直し」を取り上げております。   「1 検討の方向性」については、一読の御議論では、モニタリング・モデルをより強く指向する会社のための機関形態として位置付ける観点からの見直しとして、やや大きな観点からの制度の見直しについても議論していただきましたが、監査役会設置会社や監査等委員会設置会社も含めて機関設計の全体的な見直しを中長期的に議論していくべきであるとの意見があったことも踏まえて、今般の指名委員会等設置会社制度の見直しに当たっては、モニタリング・モデルをより強く指向する会社のための機関形態への移行を促すという観点からではなく、現時点で具体的な支障や不都合が生じている点に限定してその是正をするための見直しを検討することを御提案しております。   2ページ目の「2 指名委員会等の権限の見直し」については、取締役会全体で取締役の過半数が社外取締役である場合には、取締役の選任及び解任に関する議案の内容についての指名委員会の決定の内容を取締役会の決議により変更することができる旨の規律を設けることに関して、これを正当化するに足りる具体的な支障や不都合が生じているか、この後実施されるヒアリングも踏まえて御検討いただきたく存じます。   また、報酬委員会についても同様の規律を設けることについて問題提起をしております。   さらに、3ページ目の「3 監査委員会の権限等の見直し」については、一読での御議論を踏まえて、(1)として、執行役を兼ねている取締役及び業務執行取締役は、監査委員会の議事録の閲覧等をすることができないものとすること、また、(2)として、株主総会の決議によって取締役を選任するに際して、各委員会の委員に選定されることが予定されている取締役については、その旨を株主総会参考書類に記載しなければならないものとすることについて御提案しております。   さらに、(2)については、事前の開示のみならず、事後の開示が重要であるとの御意見や、監査委員を解職された者や辞任した者に意見陳述権を与えるべきとの御意見があったことを踏まえて注記をしております。注記の①は、監査委員が任期の途中で解職された場合も含むことを想定しておりますが、この点も含めて御意見を頂けますと幸いです。   次に、6ページ目の第2では「役員等の責任に関する規律の見直し」を取り上げております。   「1 責任限定契約制度の見直し」については、一読での御議論を踏まえまして、業務執行取締役等である取締役及び執行役に責任限定契約の締結を認めることとした上で、利益相反取引によって生じた責任は責任限定契約による限定の対象外とすることを提案しております。このような見直しをすることの許容性が認められるかどうか、また責任の限定の対象外とする利益相反取引の範囲をどのように考えるべきかといった点について御意見を頂ければと思います。   他方で、10ページ目の「2 株主代表訴訟制度の見直し」については、一読での御議論を踏まえまして、見直しを行わないことを提案しております。   最後に、10ページ目の第3では「有価証券報告書の総会前開示の進展を踏まえた規律の見直し」として二つの検討事項を掲げております。   一つ目は、一読で株主総会の開催時期が有価証券報告書の総会前開示の実現に関する根本的な問題であるとの意見が多くあったことを踏まえ、株主総会の開催時期に関連する規律の見直しを検討するものです。株主総会の開催時期の変更をしやすくする観点で何らかの見直しができないか、アイデアなどを頂ければと思います。   二つ目の13ページ目以下の「事業報告等及び有価証券報告書の開示の合理化」では、上場会社が電子提供措置開始日までに事業報告等の開示事項の全てを記載した有価証券報告書を提出した場合には事業報告等を作成しなくてもよいものとする、いわゆる一本化についてどのように考えるかとの問題提起をしております。有価証券報告書に事業報告等固有の開示事項の記載が求められるため、このような見直しは法的概念の整理にとどまるようにも思われ、開示の負担軽減の効果があるかなどについて御意見を伺えればと思います。   なお、13ページ目の(注2)の会計監査人が金商法に基づく監査をした場合には、会社法に基づく会計監査人の監査をしなくともよいものとするという点ですが、会社法に基づく会計監査人の監査に関する規律を適用しないこととするわけではなく、金商法に基づく監査を会社法に基づく会計監査人の監査とみなして会社法の規律を適用することを想定しています。例えば、監査役による監査は、金商法に基づく公認会計士又は監査法人による監査の方法や結果の相当性などについて行われることを想定しております。   部会資料9の御説明は以上です。 ○神作部会長 御説明、どうもありがとうございました。   それでは、部会資料9につきまして、三つのセクションに分けて御議論を頂きたいと存じます。   まずは、部会資料9の「第1 指名委員会等設置会社制度の見直し」について意見交換をしていただきますけれども、この論点に関しましては、意見交換に先立ってヒアリングを実施したいと存じます。ヒアリングに御対応いただくため、本日参考人をお招きしております。私から御紹介させていただきます。   一般社団法人日本取締役協会コーポレート・ガバナンス委員会の委員長であられ、また三井化学株式会社取締役会長の淡輪敏様、一般社団法人日本取締役協会コーポレート・ガバナンス委員会副委員長でいらっしゃり、西村あさひ法律事務所・外国法共同事業弁護士の太田洋様でございます。   淡輪様と太田様におかれましては、大変御多忙な中、資料を御準備いただき、また本日、本部会に御来賓いただきまして誠にありがとうございます。お二人からお話を伺い、今後の当部会の調査審議にいかしてまいりたいと存じますので、本日は何とぞよろしくお願いいたします。   ヒアリングの進め方でございますけれども、初めに淡輪様と太田様から御説明を頂戴し、その後、質疑応答の時間を設けさせていただく予定でおります。   質疑応答の後、御説明及び質疑応答の内容も踏まえて、委員及び幹事の皆様におかれまして、「第1 指名委員会等設置会社制度の見直し」について意見交換をしていただくという順序で進めてまいりたいと考えております。   それでは、早速でございますけれども、淡輪様と太田様、御説明をどうぞよろしくお願いいたします。 ○太田参考人 本日はこのような機会を頂きまして、誠にありがとうございます。ただいま御紹介いただきました日本取締役協会のコーポレート・ガバナンス委員会の副委員長である太田でございます。   私の方から、まず、参考人提供資料として配付されております「指名委員会等設置会社における指名委員会の権限の見直しに関する意見」を基に、一通り参考人である日本取締役協会としての意見を申し上げさせていただきまして、その後に、補足として淡輪委員長の方からお話をさせていただければと思いますので、よろしくお願い申し上げます。   それでは、早速、私の方から参考人提供資料に基づきお話をさせていただきたいと思います。   日本取締役協会は2001年に創立された、指名委員会等設置会社を始め、コーポレートガバナンスへの関心の高い企業、経営者、社外取締役等々から構成された団体でございます。その中で私は、コーポレート・ガバナンス委員会の副委員長を務めておりますが、日本取締役協会では昨年の6月に閣議決定をされました「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024年改訂版」において「指名委員会等設置会社制度の運用実態の検証と改善検討を含め、継続して進める」とされたことを受けまして、昨年9月に、本日出席しておりますコーポレート・ガバナンス委員会の委員長である淡輪会長を座長として研究会を立ち上げまして、「指名委員会等設置会社制度の改善に関する提言」というものを本年1月27日付けで公表しているところでございます。   本日は、この指名委員会等設置会社制度の改善を必要とする立法事実があるか否かについて参考人として意見を述べよということでございますので、会社法制部会での審議の参考に供すべく、実務上のニーズですとか制度改正の必要性等に関して日本取締役協会の意見を申し述べさせていただければと思います。   参考人提供資料でいいますと、2ページ目のところでございます。この後、基本的に指名委員会等設置会社制度の制度改善を必要とするような立法事実の有無に基本的に絞った形でお話をさせていただきたいと思います。   まず最初の点は、指名委員会等設置会社制度が導入されました平成14年商法改正当時からの非常に大きな社会的な変化の点についてでございます。   現行の指名委員会等設置会社制度は、平成14年商法改正で導入された当時から基本的構造はほとんど変わっておりません。その特徴としては、指名委員会は株主総会に提出する取締役の選任・解任に関する会社提案議案の内容を決定する権限を有し、その権限については取締役会から独立して自律的に行使をする、したがって、指名委員会の決定は取締役会全体の決議をもってしても覆すことはできないとの立て付けになっているところでございます。   ただ、これは立法当時の担当参事官である始関参事官が書かれたQ&Aなどによりますと、このような立て付けとされているのは、平成14年当時、社外取締役の適任者は極めて限られており、実際に選任している企業もほとんどなかったというような、当時の我が国の実情を踏まえた上で、そのような状況の中でも社外取締役が過半数を占める取締役会と同等の監督機能を有しているような、いわゆるモニタリング・モデルに基づく取締役会を実現することができるようにするために、このような立て付けになっていると承知をしているところでございます。   そのために、コーポレート・ガバナンスの中核領域である指名・報酬・監査という三つの領域については、いわゆる必置3委員会を設置した上で、必置3委員会が行った決定については取締役会においても覆すことができないということにして、比較的少数の社外取締役(最低2名)を構成員としながらも、実質的には社外取締役が過半数を占める取締役会と同等の監督機能を有する取締役会を実現することができるということを意図したものであるということでございます。   その意味では、この時点でのある種の立法事実というのは、社外取締役の数が非常に限られていたという中で、こういったモニタリング・モデル型の機関設計を可能にするために、やや特殊といいますか、後で申し上げますけれども、米英独仏などと比較をしても特殊な各委員会の権限が非常に強いガバナンスの機関設計になっているということであると承知をしております。   しかしながら、御高承のとおり、2015年におけるコーポレートガバナンス・コードの制定と、その後の2回にわたる改訂を経て、現状では、そもそも社外取締役の数も非常に増加しておりまして、さらに、例えば取締役会の過半数を独立社外取締役が占めている上場会社というのは、平成14年当時はほぼ皆無に等しかったわけでございますけれども、今や東証プライム市場の上場会社の4分の1超は取締役会の過半数が独立社外取締役でございますし、JPX400に限れば、上場会社の32.6%の会社が独立社外取締役が過半数になっています。このような状況は平成14年商法改正当時とは全く異なるものでございまして、そもそも平成14年商法改正当時の段階では、社外取締役が過半数を占めるような取締役会はほぼないという状況を前提にした上で、各委員会の権限を非常に強い形にするような機関設計が採られていたわけでございますけれども、社外取締役が取締役会の過半数を占めるような上場会社の数も相当程度増加するに至った現在では、平成14年商法改正当時の前提はもはや妥当していないものと考えております。したがいまして、指名委員会に取締役会においても覆すことができないような決定をする権限を付与しなければいけない必然性がもはや失われているということではないかと思っているところでございます。   元々モニタリング・モデルでは取締役会が監督機能を果たすというのが本来の在り方でございますし、平成14年商法改正当時もそのこと自体は認識されていたことでございますので、取締役会の過半数が社外取締役である場合には、そのような本来の姿に立ち返って、最終的な決定を取締役会がするという形にすることには相応の合理性があるのではないかと思っております。   この点、比較法的にも御高承のとおり、アメリカはNYSEの上場規則で指名委員会に決定権限を付与するか、勧告・推薦の権限にとどめるかを選択できることになっていますが、私の承知する限り、大半の上場会社は基本的には指名委員会には勧告・推薦の権限しかないということになっていますし、イギリス、ドイツ、フランスではそれぞれガバナンス・コードによって、取締役会ないしはドイツでは監査役会の中に指名委員会を置くということが推奨されているわけでございますけれども、英独仏いずれの国においても指名委員会の権限というのは、飽くまで、いわゆる推薦・勧告の権限に限られているというのが実情であるかと思っております。   そのような実情を踏まえますと、我が国でも少なくとも取締役会の過半数が独立社外取締役である場合には、これら米英独仏諸国と同様の在り方が可能になるような形、すなわち本日の部会資料に出てきているような社外取締役が過半数である場合には、指名委員会の決定を覆すこともできるというような形にすることに相応の合理性があるのではないかと思っております。   2点目は、もう少し具体的に、現行制度において生じている不都合が実際にあるのかどうかという立法事実に関して申し上げたいと思います。   現状、皆さん御高承のとおり、2002年に指名委員会等設置会社制度が導入され、それから平成26年会社法改正、これは2014年ですけれども、これにより監査等委員会設置会社制度が導入されたわけでございますけれども、現状では、東証プライム市場に限りますと監査等委員会設置会社の数は全体の48.0%と、半数に迫る割合を占めているわけでございますけれども、指名委員会等設置会社の数は全体の5%にとどまっているわけでございます。ある意味で、後からできた監査等委員会設置会社の方がより使われていると、こういう状況にあるわけでございます。   次の4ページ目ですけれども、もとより、私どもとしても会社法に定める三つの機関設計のうち、いずれの機関設計を採用するかについては、会社の規模、業種、事業特性、取り巻く環境、目指すコーポレートガバナンスの在り方を踏まえて、各社が自社に最適と考えるものを自由に選択すべきであると考えてございます。ただ、自由に選択ができるようにするために、ある種、それぞれの選択肢の中で不都合な点があれば、自由な選択、フラットな選択ができないという形になっておりますので、仮にそれぞれの機関設計について何か改善すべき点があれば、それを改善した上でフラットな選択ができるようにすべきではないかと思っているところであるわけでございますけれども、現状、指名委員会等設置会社の数が導入から20年以上経過しても、なお東証プライム市場の中の5%にとどまっている、すなわち、10年以上後にできた監査等委員会設置会社の方はかなり広く選択されているにもかかわらず、指名委員会等設置会社の数がこのような状況になっているというのは、現行の指名委員会等設置会社への移行を躊躇・断念させる要因となっている制度的な課題が存在しているということを強くうかがわせるものではないかと思っております。   この点に関しまして、非公表の机上配付資料とさせていただいておりますけれども、日本取締役協会の会員企業、これは指名委員会等設置会社だけでなく、監査等委員会設置会社ですとか監査役会設置会社も含めて実施をいたしましたアンケート調査によれば、まず、そもそも指名委員会等設置会社への移行を検討した経験がある監査等委員会設置会社や監査役会設置会社である正会員から、取締役会においても指名委員会の決定を覆すことができないといった指名委員会の権限の強さですとか、必置3委員会の権限が法定されていて制度設計の自由度が欠けるということを理由に、指名委員会等設置会社への移行を実際に断念したという意見がございましたし、また、この指名委員会の権限の強さに対しての不安が払拭された場合等には、指名委員会等設置会社への移行を検討するという意見も実際にアンケートの中で出されているところでございます。   また、既に指名委員会等設置会社に移行した会員企業からも、取締役会が最終決定を行うのがモニタリング・モデルとしての自然な姿であるという意見ですとか、取締役会の過半数が社外取締役である場合には、取締役会の決議によって指名委員会の権限を発議・勧告のみとし、最終決定は取締役会とすることを可能とする制度は望ましいという意見も、実際にあったところでございます。   脚注の12に極めて初期に指名委員会等設置会社に移行したオリックスの当時の社長、また取締役協会の前会長である宮内義彦氏のインタビューの内容を載せさせていただいておりますけれども、その中で宮内氏も今の指名委員会等設置会社制度について、「三つの委員会が絶対的な権限を握る『スーパー委員会』になっていて、恐ろしくて移行できないという状態です」と、「本来在るべき姿は、委員会が推薦して、決定は取締役会ですることです」というような指摘を実際にされているわけで、これは指名委員会等設置会社制度に既に移行している会社の中からも、現行制度の使いにくさ、問題点というものが現実に認識されているということの証左であると思っております。   参考人提供資料の5ページ目でございますけれども、このように指名委員会の権限が強すぎること等を理由に、指名委員会等設置会社に移行することを躊躇・断念した会社は現に存在しており、かつ指名委員会等設置会社に既に移行した会社の中にも、指名委員会の権限を見直すべきではないかという問題意識を持っている上場会社が実際に存在するということは明白な立法事実ではないかと思っております。   2番目に、「指名委員会に関する問題事例の存在」でございます。これは幾つか、非公表の机上配付資料とさせていただいていますけれども、報道されている事例だけでも、少人数の取締役で構成される指名委員会の中で一部の指名委員である取締役が自らの権限を自己の保身のために行使するなどして、経営トップの人事権を恣意的に掌握して、特定の経営陣を排除するといったような事例ですとか、指名委員会(特に指名委員会の委員長)が、指名委員会として決定した経営陣の人事が結果的に失敗で、選んだCEOを更迭するような事態になったにもかかわらず、指名委員会のメンバーは何ら責任をとらないどころか、指名委員会の内規を改正するなどして、事実上、自らの取締役としての任期を延長すると、ある意味で自分の任期を自らが決定しているというようにしてしまっているといった問題事例が散見されるところでございます。   これらは、実際に生じた問題事例の中でも広く報道がされたものを御紹介しているだけでございまして、私が実務家として関与している中の様々な上場会社を拝見していても、例えば社長が指名委員会の委員をお友達で固めるということによって、取締役会の多数が、さすがに社長を取締役から外すべきだと判断していたとしても、逆に社長を取締役から外すべきだと考えている他の取締役はいつでも指名委員会によって取締役から解任されるというような状況に置かれているという事例も、実務上見聞きしているところでございます。   このような問題事例は、指名委員会が、その権限の範囲内では取締役会においても覆すことができない専決的な決定権限を有しており、指名委員会がその権限を恣意的に行使しようとした際に、歯止めが効かないといったところに起因するものであると考えております。要は、指名委員会については牽制が効かない構造になっていると。   これらの問題事例が上場会社の経営者の中で、指名委員会等設置会社に移行するということを躊躇・断念させる大きな要因になっているものと感じているところでございまして、このような問題事例が存在するということ自体、制度改善を必要とする明白な立法事実なのではないかと思っております。   次のページへまいります。   会社法制部会の第5回会議の議事録を拝見いたしますと、権限見直しの必要性に疑問を呈する意見として、現行の制度であっても、取締役全員を指名委員会の委員とすることで、取締役会の決定をもって指名委員会の決定とすることが可能であるですとか、それから指名委員会の決定のみを変更するのではなく、指名委員会の委員を解職すれば足りるのではないかといった御意見、それから取締役会の過半数が社外取締役であるような場合でも、取締役会が指名委員会の決定を変更することができるということが常に良いとは言えないのではないかといった御指摘がされているところでございます。   これらについて実務の立場から意見を申し述べさせていただきますと、まず、最初の1点目の取締役全員を指名委員会の委員とすればいいのではないかという御指摘については、理論的にはそのとおりであるわけですが、率直に申し上げて、そのような対応は、実務上全くワークせず、非現実的であると言わざるを得ないと思っております。仮にこのような対応によって指名委員会等設置会社における指名委員会の権限についての問題を解消することが現実にできて、これが実務上ワークするということであれば、そのような方策を採っている上場会社があってしかるべきですが、現実にはそのような指名委員会等設置会社は1社もないと承知をしております。   また、取締役全員が指名委員会の委員として活動するということになると、特に報酬委員会や監査委員会の委員を務める委員の取締役の負担が過度に大きくなるといった問題もございますし、また取締役の選解任といった機微な人事に関する事項を取締役会の事務局など従業員の方も同席しているような場で、取締役会全体で社内取締役を含めて議論するということは不適切であるということは明白ではないかと思っております。   この点、そのような機微な問題について、例えば次のCEOをどうするかといったようなものについては、任意の諮問委員会などを置いて、そこで議論すれば対処できるのではないかといった御意見も議事録で拝見いたしましたが、これが外から見てどのように見えるかということでございまして、上場会社である以上、常に機関投資家を始めとする株主の目にさらされているわけですが、取締役会全体を指名委員会にした上で、そのような任意の諮問委員会、これは、権限は法定されておらず、法的な規律がないものであるところ、この任意の諮問委員会がCEOの選任の議論や決定を代替するというような形態を仮に採用した場合には、外から見ると、ある種、指名委員会の権限を実質的に骨抜きにしているようにしか見えないと思います。要するに、法定の指名委員会を事実上、任意の諮問委員会に代替をしているというようにしか見えないという点で、かかる選択肢は、非常に採りにくいと思いますし、また、このような諮問委員会を置いた場合に、これに法的規律が全くなく、発議権すら保障されていないという状況が果たしてガバナンスにとっていいのかどうかというと、甚だ疑問であると考えているところでございます。   それから、2点目の指名委員会の決定のみを変更するのではなくて、指名委員会の委員を変更すれば足りるのではないかということも論理的には御指摘のとおりでございますけれども、そもそも指名委員会等設置会社における社外取締役の人数は現状、統計的には約6人でございまして、指名委員でない社外取締役は既に報酬委員ないし監査委員を務めているわけなので、その業務負荷ですとか引継ぎの場合に引継ぎの手間、負担などを考えると、現実的にはなかなか指名委員会の委員を交代するという選択を採ることは難しいと考えられますし、それはさておくとしても、取締役会が指名委員会の決定を変更する必要があると考えた場合、これは大体、現実的には指名委員会が決定した取締役候補者の全員が不適切だから替えろということが起こることは余り考えられないのでございまして、大体、取締役候補者の中の1名、2名が問題であるというような状況が多いかと思いますけれども、そのような指名委員会が決定した1名、2名の取締役候補者が不適切であるという場合に、その決定を覆すにとどまらず、指名委員会の委員まで解職して交代させるということは、明らかに「牛刀をもって鶏を割く」というような手段であって、やりすぎの感が非常に強いと思います。そのため、実際にこのようなことを行った場合には、レピュテーションの問題ですとか、お家騒動的な印象を与えかねないことに照らすと、実務の観点からは事実上不可能と言わざるを得ないかなと思っております。   また、最後の御指摘、要は指名委員会の決定よりも取締役会の決定が正しいと言えない場合もあるのではないかということも全く御指摘のとおりであるわけですが、そもそもこのような指名委員会の決定を取締役会が覆すことができるという構造にした方がいいというのは、実際に覆すことを想定しているというよりは、そのような、いざとなった場合には伝家の宝刀があるということで、指名委員会に牽制が効くということを意図したものであると考えているわけでございます。実際に指名委員会が行った決定を取締役会が覆す場合には、レピュテーションの問題ですとか、お家騒動的な印象を与えかねないということに鑑みると、実際に取締役会の決定を覆す事態が頻々と起きるかというと、上場会社でそのような事態が頻々と起きるとは余り思えません。すなわち、これは覆すこと自体に目的があるというよりは、指名委員会の決定を変更することができるという権限を取締役会が最終的に持っているということによって、指名委員会の権限が恣意的に行使されることに対する歯止め、牽制として機能するということが意図されているのであろうと思っているところでございまして、この懸念も実際上、余り問題になることはないのではないかと思っております。   現に米英独仏でも指名委員会の権限は勧告・推薦にとどまるというようになっているわけでございますけれども、取締役会が指名委員会の決定を覆して、あえて指名委員会と違う決定をしたというような事例は余り報道等で聞きませんし、実際にそのようなことが余り起こるようなものではないということを示しているのではないかと思います。   最後になりますけれども、このように指名委員会等設置会社の中からも、指名委員会の権限が強すぎることなどについて改善を求める声が現に上がっており、また、それがある種、問題となって指名委員会等設置会社への移行を断念するという会社も実際にあるということですとか、この制度の導入から20年以上が経過しても、指名委員会等設置会社の数が少なく、少数にとどまっていること自体、ある種、今の指名委員会等設置会社制度に使いにくさがあるということの証左であるということ等々からすれば、指名委員会の権限を見直すべき立法事実が現実に存在することは明らかではないかと思っております。   最後にまとめますと、監査役会設置会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社の三つの機関設計、これが等価なものとして、各社がそれぞれの規模や目指すコーポレートガバナンスの在り方を踏まえて最適と考える機関設計をフラットに選択することを可能とするためにも、もし今、指名委員会等設置会社制度への移行を躊躇・断念させるような要因となっている制度的課題があるのであれば、これを是非改善していただきたいと思う次第でございます。   最後に一言、今回、報酬委員会の在り方については特に日本取締役協会として意見を述べてございませんが、報酬委員会については報酬委員会が暴走するということの問題事例が発生しにくいということに由来しているのだろうと思います。報酬委員会の方は、実際に報酬を決める際に、自らの報酬をお手盛りするというような人は、余り現実にはいないということでございますし、市場のピアグループの報酬などをベースにして決定をしているということがあるので、そもそも構造上、報酬委員会が暴走するといったような事例は発生しにくいと思っております。   もちろん、NYSEの上場規則では、報酬委員会についても基本的には勧告権限しか持っていないので、報酬委員会についても指名委員会と並びの手当てをするということは理屈の上では十分に考えられると思いますが、実務上のニーズとしては、少なくとも報酬委員会の方については余り制度の改善をしなければならないような明白な立法事実はないと考えているところでございます。   私の方からは以上でございます。 ○淡輪参考人 参考人として出席させていただいております日本取締役協会のコーポレート・ガバナンス委員会の委員長の淡輪と申します。   意見書については今太田副委員長から説明があったとおりでございますが、私、昨年9月に立ち上げた指名委員会等設置会社制度の改善に関する研究会、これの座長をやった関係で本日参っておりますので、今の説明に少し、実際の経営を担う立場としてどう思うかという部分で補足をしたいと思います。   研究会の中でもいろいろな議論がございましたが、こういう機関設計、3形態、これはそもそも論を考えるべき時期にあるのではないかというような御意見も出てまいりました。ただ、それは今はそれぞれの選択で企業規模であったり目指す方向であったり、それによって自由に選べるという中で、先ほど説明があったような指名委員会等設置会社だけが非常に少数派にとどまっている、移行がほとんど起こりにくくなっているという、この構造問題をきちんと解決できれば解決して、その上である時間経過の中で機関設計の3形態、そもそも論に入っていくべきではないかということで指名委員会等設置会社の見直しに集中してかかるということで研究会を進めてきたわけでございます。   それで、何で指名委員会等設置会社への移行が起こりにくいかというのは、アンケート含め、私自身も経営者同士で意見交換する中で、様々聞いております。多少デフォルメされている部分もあるんですが、実際に起こったある会社、複数社ですけれども、そこで指名委員会がある権限を逸脱したわけではないが、権限をうまく使って、かなり暴走に近いことが起こってしまった。それを残念ながら制御できなかったというインパクトが非常に強いというのが挙げられると思っております。   CEOの選解任という非常にデリケートな話でございますので、もっと指名委員会の委員の幅を広げて、社内外全員でやったらどうかとの御指摘もありましたが、それには非常に適さないものであり、指名委員会はそのような事項を審議する場であると思っております。実際に運営していて、指名委員会の審議内容を取締役会にある程度報告するわけですが、もちろん、プロセスはある程度は説明しますけれども、個別名称等は一切表に出せないという、そんなデリケートなところを扱うわけですから、そういう大人数で議論する、討議するような場ではそもそもないということがベースにあると思っております。   経営者の中で移行を検討する会社も多数あるわけですけれども、余り表に出さない場合でも、指名委員会の権限が強すぎることに対する懸念、それはCEOの選解任に関して、例えば現CEOの声がほとんど反映されにくいとか、そういった懸念をしている部分もあろうかとは思います。   ですから、今、現実には指名委員会の構成というのは、社内であっても、CEOを含まないところで社内外で構成されるというケースも多いわけですから、なおかつ権限が非常に強くて、取締役会でもコントロールできないというようなことは非常に懸念される。   もちろん、暴走事例、幾つかはあるんですが、大半のところはスムーズにコントロールされている。それは指名委員会の委員長の人選であったり、指名委員の構成であったりと、そういった属人的な要件もあろうかと思いますが、人選次第でそういうことが起こり得るというのが最大の懸念材料であると、そんなふうに思っております。   それから、報酬委員会の問題についてでございます。これは太田副委員長からありましたように、比較的標準化されたと言ったら語弊がありますが、あるデータベースがそろっておりまして、企業規模、売上げであったり業績であったり、そういう規模でピアグループを構成して、どういう位置にいるか、各年度の業績がどうであるかというようなところで、もちろん幅はあるんですけれども、ある幅の中で決めていくという、標準化された中でやっておりますので、恣意性はそれほど高くないということは言えると思います。   あと個別に各企業が独自で決める要素というのは固定報酬と、それから業績連動給与、賞与と、それからストック・オプション、株式付与、こういった比率をどうするか、ストック・オプションの中身をどうするかという内容の部分については各社それぞれ独自性はあるわけですけれども、水準そのものについてはかなり制限されるというか、抑制された運用という中にとどまっているということですので、報酬委員会は指名委員会とはちょっと違う性質を持っているということで御理解いただければと、そんなふうに思っております。   私からは以上でございます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。   それでは、ここで質疑応答の時間を設けたいと存じます。   ただいま頂戴いたしました淡輪様及び太田様からの御説明につきまして御質問のある方は、挙手をしてお知らせいただければと思います。いかがでしょうか。 ○松中幹事 参考人の先生方、どうもありがとうございました。   問題事例を共有いただいたかと思います。暴走に近い場面と、それから資料の5ページ2(2)にあるような事例ということで、特に社長が指名委員会を身内で固めるような場合というのは、私自身、少数派に決定権限を与えることの問題を示す場面だとは思います。こうした事例で現実に指名委員を交代させているのでしょうか。あるいは、少なくとも交代させるべきだとお考えでしょうか。この辺りを教えていただければと思います。 ○太田参考人 指名委員会の委員として一旦選任した人を、法令違反などがあれば解職するというのは、これはもう世間的にも十分説明が付くかと思いますけれども、例えば、お友達をひいきしたとか、そのような法令違反ではない、でも不当といいますか、指名委員会の本来の在り方とはかけ離れたような行動をされた場合に、その委員の方を実際上、法令違反でもないのに解職するというのは現実的には極めて難しいので、そういった状況で指名委員を解職したという事例は、実務上は余り聞いたことがないというところでございます。 ○淡輪参考人 あり得るとすると、指名委員会の委員長とトップ、普通はCEOですが、CEOが結び付いて動いたときに恣意的な人事が起こるリスクというのはあると思いますし、そういう事例を若干知っておりますので、起こり得るということですが、普通はよっぽどの理由付けがない限りは難しいということが言えると思います。 ○松中幹事 ありがとうございます。今のような、社長のお友達が来て身内をひいきするような、これは場合によっては任務懈怠にも当たるような行為であるにもかかわらず交代はさせないというのがなかなかのみ込みづらいように思います。もしかしたら、ひいきと言っているものの頃合いについて私の理解が間違っており、もっともっと軽いものなのかもしれないですが、どうしてこれを交代させないんだろうかというのはちょっと引っ掛かるところです。 ○太田参考人 ある意味でそのような傾向を持つ方を、指名委員になり得る存在である社外取締役として選任すること自体が本来は問題だろうと思うのですけれども、実は世間的に見ていても、今は独立性基準を設定しているので、機関投資家の皆様も独立性についてはきちんと判断をされていると思いますけれども、アメリカでもそうですが、お友達かどうかというのは開示されないですし、実際にお友達であることを理由に、明確に犯罪者をCEOにしたら、それは任務懈怠だと思いますけれども、この人とこの人を比べて明らかに能力が高い人ではなくて、能力が低いお友達を選びましたというときに、それが任務懈怠だと立証できるかというと現実にはなかなか難しいので、指名委員を交代させるとの判断までいくというのは極めて難しいということなのかなと思っております。 ○松中幹事 ありがとうございます。 ○神作部会長 ほかに御質問がございましたら、どうぞ。 ○北村委員 本日は貴重なプレゼンテーションを頂き、誠にありがとうございます。   私からは、机上配付資料であるアンケート調査の結果も含めてお伺いしたいと思います。   指名委員会等設置会社に関するアンケートでは、指名委員会の役割としまして、法定の権限以外に、例えばCEOの選定、執行役の選定、あるいは各委員の候補者の選定、さらにはサクセッションプランの作成などにも関与する、という回答が記述されております。先ほど参考人提供資料の5ページ辺りで太田先生より御説明いただきましたけれども、このような問題は機微に触れる事柄だから少人数でまずは検討する、ということがあるのだと思います。このアンケートによりますと、指名委員会がこれらの権限を持っていると答えた企業がかなり多いことが見て取れます。私は、元々は、指名委員会制度とは、執行役を監督する立場にある取締役の候補者を、執行役から独立した指名委員会が決定するところに意味があると理解しておりましたけれども、そのような理解は古い考え方であって、現在は取締役候補者とともにサクセッションプランまで含めて、人事について広く関わってゆく委員会になっていると理解した方が、実情に合っていると考えられるでしょうか。 ○太田参考人 私は平成14年商法改正当時に法務省の局付だったわけですけれども、当時の振り返りをしますと、全体的な世論の受け止めというのは、要はガバナンスの中の重要な事項である指名・報酬・監査については各委員会が決めます、各委員会は社外取締役が過半数ですという形の制度を用意しましたという打ち出しであって、世の中にもそう捉えられていたと思っております。それを受けて、先生御指摘のとおり、法律上の権限は確かに会社提案の取締役の選解任の議案の内容を決定することに限られているわけですけれども、実務の受け止めとしては、およそハイランクの役員の人事については指名委員会が取り扱うものだという認識がある程度生まれたというものだと思っております。   加えて、実際、上場会社で指名委員会の委員になられるような方というのは、かなり著名な企業の会長経験者、社長経験者というような、かなり重たい人がなっているので、そうすると、そこに人事に関して全体的に聞きましょうというようなことになって、本来の平成14年商法改正当時に立て付けられた指名委員会と取締役会の権限バランスからすると、各委員会の委員はどうするかですとか、執行役はどうするかは、取締役会全体が決めて、指名委員会が決めるのは飽くまで取締役を誰にするかということに限られていたわけですけれども、全体的な受け止めとしては、むしろそこも含めて人事全体を指名委員会が取りあえず審議するという形に受け止められているがゆえに、より指名委員会の暴走事例みたいなものが起きやすい認識ないし捉え方が広がっていると思っております。   なので、御質問にお答えすると、世間の認識ないし捉え方としては、持株会社体制を採っている会社の場合には主要事業子会社の役員人事も指名委員会が審議をしているというようなところもあるくらいですので、このように人事全般について指名委員会で審議するとの認識ないし捉え方が現実には存在しているということかと思っております。 ○淡輪参考人 補足をよろしいですか。現実論から申し上げますと、取締役だけの人事という分離した形ではなかなか機能が果たしにくいということがあろうと思います。例えば、CEOのサクセッションプランを作るときに、これは社内の幹部・役員からずっと持ち上がってくるというステップを踏むわけですから、審議していく場合には、そこの候補群含めて審議していくことになると。当然、執行役員の人事にも関与せざるを得ないし、ある幹部人事トータルを掌握しておかないと、そういうCEOの選解任というのが非常に難しくなるという立て付けがあろうかと思っておりますので、現実にはどういう機関設計を採ろうとも、そこでの指名諮問委員会というところの在り方というのは、ほとんどそれを含んで議論しているというのが今の現実だと、そんなふうに思っております。 ○北村委員 ありがとうございます。そうであれば、指名委員会に暴走されると非常に大きな影響が出るということも含めて理解いたしました。ありがとうございました。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。 ○内田委員 三つございまして、一つはアンケートについて、実態がどうなっているかについてお聞きしたい点があります。指名委員会の権限が強すぎることが弊害になっているということでしたが、逆に指名委員会自体の現在の在り方を積極的に評価する事業会社はほとんどないという理解でよろしいでしょうか。つまり、この現在の指名委員会の制度があるから指名委員会等設置会社の形態を採っており、仮に取締役会で上書きできるようになった場合にはその魅力が失われてしまう、この形態を選択している動機がなくなると考えている事業会社はほとんどないということでしょうか。さらには現制度をニュートラルと考えている経営者もほとんどいなくて、障害、弊害だと考えている経営者が太宗を占めるという理解でよろしいのかという点を一つ確認させてください。   それから、もう一つは情報開示の在り方です。仮に取締役会と指名委員会の意見が違ったときに、株主はそれをどうやって知って判断するかという情報開示の在り方についてどう考えていらっしゃるのか。双方に意見や考え方の乖離や齟齬が生じた場合、内容を詳細に開示すべきだと思いますし、理由を含めて広く開示して議論すべきだというふうに考えます。特に、総会においてそれを実施すべきだと考えますが、そういう仕組みは担保されるのかという点です。   それから、最後に今議論があった点で、基本的に指名委員会は取締役を選任するところで、執行役は入っていないと理解していましたが、実務上は入っており、実際に議論されているということであれば、これをきっかけに指名委員会の権限として明確に、取締役だけではなくて、執行役の人事も含めて定めていったらいいと思います。指名委員会の決定が取締役会で上書きされることが可能とすれば、指名委員会に現状に合わせて取締役と執行役の人事についての指名権を明確に定めていくということです。   それと、これは私の認識が違っているかもしれませんが、報酬委員会は、確か取締役と執行役ともに報酬を定めるというように認識していたので、その意味では指名委員会と報酬委員会も同列に考えて、対象も一緒に合わせて、権限も整理して、同じような形で運用していくということも考えられると思います。その辺りについては、先ほど太田先生と淡輪様からは、そもそも報酬と指名自体の意味付けがかなり違っているとのお話がありました。確かに指名は相当重くて、会社全体が全て替わるということもあり得ますので、位置付けは違うと思いますが、制度設計としては同じに考えて、同じような形態ということも考えられると思いました。その辺りは実務から見てどうお考えになられるかを教えてください。 ○淡輪参考人 まず、指名委員会等設置会社についての評価ということですが、これはどこを目指すかということだと思うんです。ですから、モニタリングボード、執行と経営監督の分離というところを指向するならば、指名委員会等設置会社に移行していくという選択を採っていくんだろうなと。実際、私どもも今は監査役会設置会社であるわけで、移行を検討するわけですが、そういうモニタリングボードを指向する上では監査役会設置会社というのは限度があるということで、会社法等で大きな重要事項の決定は取締役会が決するということになっています。どうしても執行と監督の分離というのは構造上できないということ。   そういう意味で移行していきたいという検討をしているところは多数あるのは私も知っておりますが、そこでブレーキがかかっているのは委員会の権限の強さ、特に指名委員会の権限の強さというところであると思っております。指名委員会の決定を取締役会が覆し得るとしても、それほど使えない、使いにくい、それは情報開示のところでもおっしゃいましたように、どう開示するかということも含めて、非常に会社内の混乱を露呈するような話になりかねないというブレーキはかかると思うんです。ですから、これはセーフティーネットというか、最後は取締役会で覆し得るというような形で、そこの暴走リスクがある程度コントロールできるということであれば、移行する会社というのは増えてくるのではないかなというふうには推察しております。   それから、取締役と執行役の人事の人事権という問題ですが、実際は執行役の人事というのは執行側が責任をもって指名委員会なり諮問委員会に提示するというベースがございますので、そういう意味で一緒に議論するといっても、おのずとそこは区分があるということです。   報酬の場合には、報酬は全体系を一緒に議論しないと議論にならないので、取締役の報酬をどう付加するかとか、役付の役に属する給与はどうするのかとか、トータルの議論で在るべき話なんで、そこは立て付けがちょっと違うと思います。   情報開示については、太田様から。 ○太田参考人 御質問3点について、一応補足させていただきます。   1点目のアンケートの内容についての御質問なのですが、御質問に端的にお答えするとすれば、今、指名委員会等設置会社に移行して特に問題なく、うまく運用されているというようにお感じの会社の方がむしろ多数派だと思いますが、そのような会社は今は特に問題を感じていないので、たとえ今回の制度改善がなされて、社外取締役が過半数であれば指名委員会の決定をひっくり返せるようになるよと言われても、何か魅力が失われるということではなくて、そのような事態は起きないだろうねということで、それはそのまま済むと思います。   実際、少数の問題事例があるがゆえに、その懸念を強く持っている会社も指名委員会等設置会社の中にございますし、今は他の機関設計を採っておられる会社からすると、問題事例が生じた場合の怖さが非常に甚大に感じられるので、この制度改善は非常に求められるところなのかなと思っております。   アンケートについては以上のとおりです。   2点目の指名委員会の決定を取締役会の決定で覆すというような事態が起きた場合の情報開示の在り方ですけれども、これは日本取締役協会の研究会で提言を出したときに、提言の中で、そのような場合、つまり指名委員会の決定が取締役会で変更された場合には指名委員会に株主総会での意見陳述権を認めるということで、株主に対しては、少なくとも、指名委員会は違う意見であって、このような理由であったということを開示するという形にした方がいいのではないかという提言をさせていただいておりまして、その意味ではそれが適切なのではないかなと思っております。要するに、全くの密室で変更されましたということではなくて、株主にその情報は伝えるということが筋ではないかと思っている次第です。   3点目の、取締役会で覆せるのであれば、執行役の人事についても決定権を指名委員会に与えてもいいのではないかというお話ですが、結局、問題は指名委員会と取締役会の間の権限バランスの話でございまして、日本のある種、特殊なところは、米英独仏はむしろ委員会は基本的に任意の存在なので、制度設計が柔軟かつ自由にできるわけですけれども、日本は平成14年商法改正当時の世の中の状況的な制約があって、法律上の制度として委員会ができているので、法律上の権限として執行役の選解任の権限まで与えるということになると指名委員会側の力がより強くなるという形で権限バランスの天秤が傾くという問題もございますし、淡輪委員長が御指摘されていたとおり、結局のところ、指名委員会も年に例えば10回とか開催するわけにはいきませんので、年に数回開くという中では、取締役として誰を選ぶのがベストかというところで相当の審議時間を使っているのが、私が見聞きする範囲でも実情だと思っております。そうすると執行役をどうするかというところまではとても手が回らないといいますか、取締役をどうするか決めた後に、取締役会全体で執行役について執行側が出してきたものを議論するという形に現状ならざるを得ないと思いますし、今のバランスは今のバランスでそれなりに意味があるかなと思っております。 ○神作部会長 ほかに御質問はございますか。 ○加藤幹事 太田先生、淡輪様、御説明ありがとうございました。   北村委員の御質問と関係するのですけれども、指名委員会の法律上の権限と実際の権限を比較した場合に、実際の権限の方が広いということは確かにそうだなと改めて思いました。   そこで御質問なのですが、指名委員会の実際上の権限の中で法律上の権限を超える部分についても取締役会は覆せないというようなことが、例えば取締役会の決議などの中で定められているのでしょうか。   また、机上配付資料として共有いただいた事例は、いずれもCEO、恐らく代表執行役の解任の事例かと思うのですけれども、執行役の選解任について最終的な決定権限は取締役会にあると会社法は定めています。御共有していただいた事例が指名委員会における社外取締役の暴走の一つの事例だと理解する場合、取締役会は何をしていたのかが問題となります。つまり、最終的な決定権限を持っている取締役会が機能していなかったのはなぜなのかということも是非教えていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○淡輪参考人 まずCEOの解任事例というところで御指摘がありました、そのときに取締役会は何をしていたかということでございます。   CEOというのは、取締役に普通はなっている、執行役員からいきなりCEOというケースもないことはないんですが、ほとんどの場合、取締役であると思います。特に解任の場合には、取締役であるという前提がございますので、そこで指名委員会が解任という判断をして、それが取締役会で議論されないままに株主総会に上程されるという流れの中でこういうことが起こるということで、今の立て付けの中で指名委員会が決めたことに対して取締役会がいきなり反対をするというのは現実の中でも相当難しいのではないかという気がしますし、今の立て付けでそういうバックグラウンドがあるわけですから、そういう意味ではなかなか取締役会が手を付けるというのは難しかったのではないかという気がします。   特に具体的な事例を挙げますと、一つの会社の場合、指名委員会の委員長が突出して権限を持ってしまったというのが我々から見てもよく見える景色でございまして、そのときに、その方はよくマスコミにも出て、どういう形で選んだか、いかにすばらしい人選だったかとか、そういうことを言っておられたという事実関係もありまして、自らそういうことを誇っておられたという中でもありますので、その中で新しく選ばれたCEOが指名委員会の委員長に対して最初はなかなか物は言いづらかっただろうなというのが容易に考えられますので、完全な権力構造の転換がそういうことで起こってしまって生じた事例かなと、そんなふうに感じております。 ○太田参考人 加藤幹事の御質問2点に補足で御説明させていただきます。   まず1点目の御質問は、例えば指名委員会の実情、審議事項の実情が今のようになっているとして、例えば取締役会規則とかで取締役会決議をもってしても指名委員会の判断を覆せないというようになっているのかという御質問でございましたけれども、さすがに私もいろいろな会社の取締役会規則、指名委員会等設置会社の取締役会規則とか指名委員会規則とかをレビューすることは多々あるのですけれども、皆さん法律はきちんと分かっておられるので、取締役会規則において指名委員会の決定に口を出せないというような規定にはなってはおりません。そのため、その意味で法的には取締役会において覆せるということになっている、少なくとも執行役の選解任についてはそうなっているというように承知しています。   ただ、それにもかかわらず、実質上、指名委員会で審議した事項がそのまま取締役会に報告されて、それが取締役会で決定されてしまう実態になっているのはどうしてかというと、一つには、指名委員になられている方には、先ほど申しましたとおり、大企業の経営トップ経験者のような方が非常に多いので、指名委員会に入っている社外取締役の方々がおっしゃることは、それだけでそもそも相当重みがあるので、取締役会としてはある種そのような方々が審議して、こうだと言うのであれば、それに依拠できるであろうというような意識が働くという点が挙げられると思います。   もう一つとしては、恐らく私の感覚では、実務では何となく執行役の人事についても指名委員会が決定権を実質的に持っているんだというように誤解しておられる方も、法律の専門家ではない社外取締役の中には結構いらっしゃるので、実際そのような形になっているということかと思います。   2点目の御質問は、確かにおっしゃるとおり、問題事例として挙げられる机上配付資料の報道されているケースなどでは、実際、代表執行役の解任なので、取締役会で解任すればよかったのではないかというのはおっしゃるとおりですけれども、代表執行役は基本的に取締役にもなっているわけですが、代表執行役、経営トップについてはちょっと性質が違うと思っております。といいますのは、そもそも指名委員会が取締役の構成をどうするかというのを決めるときには、トップが誰だから、トップの方がこのような性格、このような資質、このようなスキルを持っているから、他の社内取締役や社外取締役のバランスはこう在るべきだよねという、要するに経営トップの人を取締役として想定した場合に、その人を想定した上での一つのチームとして取締役を決める、このチームを今回は株主総会に取締役候補として出そうというような形で決まっているのが実情なので、そうすると代表執行役は確かに執行役の一員ではありますけれども、代表執行役である取締役については重みが違うというか、指名委員会の判断は尊重してしかるべきだという意識が恐らく、通常の執行役の場合よりもかなり強いのだと思いますので、そこを例えば指名委員会が動かないのに取締役会全体である種オーバーライドするように動くというのは相当やりにくい。法的な権限はあるのですが、取締役の一員でもあるので、なかなかその辺りはやりにくいということで、これらの事例のときに取締役会が動いていなかったのは、そのような理由によるものかなとは思います。 ○神作部会長 ほかに御質問、御意見はございますでしょうか。 ○青委員 本日は御説明をありがとうございます。   私からは3点伺いたい点がございまして、まず1点目について、指名委員会が決定したことをその後どうするかというお話がございますけれども、そもそもその前の指名委員会の選任の段階や指名委員会の運営の方法について、より適切にワークするための見直しとして考えるべき点がないかどうか、御見解を頂戴できますでしょうか。   それから、2点目について、先ほど取締役会に事務局や社内取締役がいる中でセンシティブなことについては議論がしづらいというお話がございましたけれども、指名委員会で決定したことを取締役会で仮に覆すかどうかという話になったときに、必要な情報も全部提供された上で、取締役会の中できちんと議論されるという前提ということでよろしいかどうか、お考えを伺えますでしょうか。   3点目が報酬委員会についてでございますけれども、現状の日本企業の報酬体系からすると、余り問題事例は出ていないというお話はございましたけれども、今後ダイナミックな報酬体系などを個別に判断するという事例が増えていく可能性はあると考えられますので、そうした場合に備えて報酬委員会についても、指名委員会と同様に取締役会が最終的な判断をすることができる余地を残すという仕組みにすることも十分考えられるかと思います。そうした場合に何か問題が起こり得るのかどうかについてお聞かせいただけますでしょうか。 ○太田参考人 なかなかいずれも難しい問題かと思いますが、1点目についてはいろいろな工夫はあり得ると思っているのですが、一つは、先ほど加藤幹事も御指摘された点などの、ある種の世の中の認識ないし捉え方を少し変えるための広報活動というのは必要なのだろうなと思っております。私も今回、日本取締役協会のコーポレート・ガバナンス委員会で提言をまとめる際に、平成14年商法改正当時の立案担当者の解説なども見たのですけれども、もちろん法律の範囲内で書いてあるわけなのですが、これらの事項、例えば執行役の決定とかについて指名委員会が審議して何か言った場合に、それを取締役会が権限を法的に持っているから覆せるんですよということを注意的に明記した文献はないのです。それは立案担当者のみならず、当時の文献とかを見てもないのです。ただ、実務は割とそのような感じで、全体の認識ないし捉え方は広がっているので、今の実務の認識ないし捉え方を前提にして、その実務の認識ないし捉え方にはちょっと誤解が入っているということを含めた丁寧な解説などは必要なのだろうなと思います。   2点目の機微に触れる問題なのでということですけれども、最もセンシティブなのは次のCEOをどうするかです。CEOも結局のところ、多くの会社では、これは任意で設置されている指名委員会もそうですけれども、何か事故があったときの緊急登板用の次のCEOの方と、緊急登板用ではない、普通に任期を全うされた場合の次のCEOの方と分けて議論をされて、しかも日本の場合には外から経営者を連れてくるというのはなかなか人材の厚みがない中で難しいので、社内の方が候補の中心にならざるを得ません。そうすると、非常にセンシティブな問題なので、出席人数も極めて減らして、陪席者も限定する。極端に言うと、人事担当の執行役員ぐらいしか陪席しないというようなこともあるので、センシティビティに対する配慮というのは相当程度必要なんだろうなと思います。取締役会全体が指名委員会として機能するとは余り思えないというのは、そういったところから申し上げたところでございます。   最後の報酬について、完全に個人的意見ですが、報酬は取締役会全体で覆せるようにした方がいいと思っています。日本取締役協会の中でもこの点について深く議論したことはないのですが、個人的意見としてはそのような制度にしてもいいとは思っています。なぜかといいますと、委員会同士の権限の調整が必要となる場合があって、典型的にはクローバックですけれども、クローバックに関する法律上の権限について、恐らく最後はCEOに既に払った報酬を取り戻すというものであるため、デフォルトルールとしては報酬委員会に権限があるのだと思うのですけれども、それでもクローバックを発動することになったときに不祥事があったと認定するかどうかですとか、その重み付けとしてどれくらいのインパクトがあるから全額をクローバックさせるべきなのか半額なのかですとか、そのような問題というのは実は監査委員会にも関係してくる部分もありますので、そうすると、そのような問題が起きたときに各委員会の間でどちらに権限があるのかということで、結構お見合いになって調整が難しいような場合も実例としては聞いております。そのため、そのような場合は最後は取締役会全体で決めるというデフォルトルールが定まっていれば、委員会同士の間でどうするかとなったときの最終調整機能が取締役会全体にあるということは明確化されるので、覆せるようになった場合には、そのような問題を解消できるという効果はあるのだろうなと思っています。多分、取締役会で覆せるというような制度設計とした場合でも特段の弊害は生じないと思いますし、そのような制度であった方が便利だという事例はあるのではないかなとは思っております。 ○淡輪参考人 2点目の御質問の趣旨は、そういう非常にセンシティブな話題を取り扱うという中できちんとした情報提供なりということができるのかという部分だろうと思います。   現実には陪席者というのは私どもの場合は一人だけ、人事担当役員に限って、彼のところに全情報を集めさせて提供できるようにという形でやっております。ですから、そういう意味で相当機密性を高めることと、情報提供がおろそかになるということは必ずしも言えないのではないかなという気がします。   それから、報酬についてはダイナミックな変更とか、そういうものが逆に起こりにくいのではないかという御懸念かと思います。ただ、これはその意思決定のところで、例えばもう欧米並みのレベルまでとかという話があった場合にどういう判断を下していくかというのは、それこそものすごいセンシティブな話になるわけでございまして、正にそういう権限は報酬委員会だけで持ち得るかどうかという視点で見ると、それは取締役会なりというところになると思います。そして、これは株主総会に直結していく話でございますので、そういういろいろなリスク管理も含めて考えるべきことかなという気がいたします。 ○青委員 2点目の質問は、指名委員会の決定を取締役会が覆す場合に、きちんと取締役会がワークするのか、きちんと議論が行われるのか、それから情報の遮断がきちんとされるのかという点でして、情報の遮断に関しては非常によく分かりました。ありがとうございます。実際の取締役会の中に社内取締役の方々もそれなりに入っていただく場合、今のCEOに関して取締役会できちんと議論が行われることがきちんとされて、適切な判断を行えることが十分期待できるのかどうかについて、御見解を伺えればと存じます。 ○太田参考人 今の御質問は取締役会全体を指名委員会にした場合の話ということでしょうか。 ○青委員 指名委員会で決定したことについて、取締役会でその後それを覆す場合にはどういう議論がなされるかといった意味でございます。 ○太田参考人 その場合には、恐らく機微な話ではあるものの、先ほど申しましたとおり、実際にその人は不適格なのではないかという議論が起こり得るのは一人、二人の話なのだろうと思うので、その一人、二人の話であれば、恐らく取締役会が問題だと考えた場合に、その一人、二人に限定した情報であれば、それはきちんと提供した上で議論することは十分担保できるのではないかなと思います。要するに、候補のロングリストがあり、その候補全員について議論しますということではなくて、恐らくそのような形のショートリストの中で、この人ではなくてこの人の方がというレベルであれば、取締役会全体の中でも、社内の方がいる中でも議論はできるということかなとは思います。   例えば、その方が社内の方である場合には、別の社内取締役が、その人の下の人からの評判みたいなのもインプットできたりもするでしょうし、実務上は多分可能なのではないかなと思っております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○行岡幹事 淡輪様、太田先生におかれましては、本日は分かりやすい御説明を頂き、ありがとうございました。私からは大きく2点御質問を申し上げたいと思います。   1点目は、少し前提的な質問になってしまうのですけれども、今回の御提案の問題意識についてです。すなわち、現状、多くの上場会社が監査役会設置会社、又は監査等委員会設置会社を選択していて、指名委員会等設置会社を設置する会社は少ないということですが、この現状の何が問題なのかということでございます。すなわち、先ほどの太田先生のプレゼンテーションの中で機関設計は会社の事情に応じてフラットな選択ができるようにすべきで、それぞれ等価で在るべきだという御説明を頂きまして、それは理念としてはそのとおりだなとも思うのですけれども、他方で、余り利用されない制度があってはいけないということではないわけで、それ自体はさほど強い規範的な根拠にはならないようにも思われます。実際、例えば監査等委員会設置会社であれば、取締役会の過半数が独立社外取締役であればモニタリング・モデル的な運用をすることができるはずなので、現状の法制度が上場会社がモニタリング・モデルに移行することに対して著しい障害になっているとまでは評価できないのではないかとも感じている次第でございます。すなわち何が言いたいかといいますと、今般の御提案は、大半の上場会社が監査役会設置会社と監査等委員会設置会社を選択しているという現状が必ずしも望ましくないという評価を前提にしているように思われたのですが、それは具体的に何が問題ということなのか。つまり、逆に言いますと、仮に制度的要因によって指名委員会等設置会社が選択しにくいという状況が仮にあるとして、それが具体的にどのような意味で問題であると認識されているのかということについてお考えをお聞かせいただければということです。すなわち、これは今回の御提案の問題のステークの大きさを評価する上での前提としてお伺いしたいという、そういう御質問ということになります。   2点目ですけれども、先ほど松中幹事から、今回御指摘いただいている様々な問題というのは、指名委員会の委員の交代で対応できないものなのかという御趣旨の御質問があったかと思います。私も事前に資料を拝見していたときには同様の疑問を抱いていまして、指名委員会が自己の保身のために行動、権限を行使しているとか、社長のお友達で固められているといった場合には委員を適切に交代させることが取締役会として求められるのではないかと考えていましたし、また、委員を交代させることが「牛刀をもって鶏を割く」手段であって、やりすぎの感が強いという御指摘についても、仮に指名委員会の委員が本当に暴走しているとか、あるいはそれに近い状態にあると言えるのであれば、やりすぎという評価は当たらないのではないかとも事前には思っていたところでございました。   ただ、本日の御説明で、淡輪様、太田先生から、法令違反のようなものがあれば解職の説明が付くけれども、明らかな任務懈怠とは言えないような微妙な場合には解職をするというのはなかなか難しいというような御説明があって、なるほど、そういう考え方もあるのかとも思ったところです。   ただ、そのようなことであるとすれば、仮に今般の御提案が制度化されて、指名委員会の決定を取締役会で覆せるというふうになったときに、本当に伝家の宝刀が抜かれるということはあるのだろうかという疑問が出てまいりました。それはどういうことかといいますと、資料の6ページの真ん中辺りの強調されている箇所の二つ目の強調されている固まりで、「取締役の選解任等という機微な人事に関する事項を…社内取締役を含む取締役全員で議論することが不適切であることは明白である」とされておりまして、このような考え方を前提としますと、取締役会が指名委員会の決定を覆すに当たっても、人事の機微に関する事項について十分議論した上でその決定をすることは難しいのではないかとも思われまして、そうであるとすれば、指名委員会の決定を取締役会で覆すということも、そういった機微にわたる重要な情報を考慮せずに判断することを迫られるということとなって、なかなか実際上難しいのではないかとも思われるのです。そうすると、伝家の宝刀を法制度によって用意したところで、本当に伝家の宝刀を抜くということができるのかどうか。これはできないのだとすると、制度を用意したところで、牽制の機能としても余り役に立たないということにもなりかねないように思われましたため、この制度を用意することで、実質的に実務がどう変わるのかという点についての見通しをお聞かせいただきたいということです。   個人的には、この問題は結局、委員を交代させることで対応することによってしか実質的には対応できないのではないかという気もしているものですから、御感触をお聞かせいただければということでございます。 ○太田参考人 1点目の御質問は極めてお答えしにくいのですけれども、まず余り利用されない制度があってもいいではないかということで、それは理屈の上ではおっしゃるとおりかと思うのですが、問題意識としては、指名委員会等設置会社にある制度的課題のために全体としての結果の選択が歪んでいるのだと思っています。端的に言うと、例えばJPX400やJPX100の会社では、監査等委員会設置会社を選択している会社の中で、このような問題があるので指名委員会等設置会社には移行できていないというような会社が相当数あるように思っています。そのため、そこの問題点が解消されれば指名委員会等設置会社に移行するはずだった会社が、移行していないということになっていると思います。指名委員会等設置会社制度が全然使われなくてもいいではないかというところからすると、それ自体は別にそれでもいいではないかというのはあるかもしれませんが、フラットに選択した場合に、その制度選択が歪んでいるというのは1点あります。   あともう1点、私どもとしては三つの機関設計は等価だと思っていますけれども、海外機関投資家中心に、指名委員会等設置会社の方がいいのではないかというような株主の声もある中で、このように指名委員会等設置会社が少ないことについて何か課題があるのであれば、そこを改善すれば海外機関投資家が指名委員会等設置会社の方がいいと思っているニーズに合致することに結果的にはなり得るので、そのような観点からすると、別に使われなくてもいいではないかということでは必ずしもないのではないかなというようには思っております。   2点目の解職問題ですけれども、まず二つの論点があると思っておりまして、一つは先ほどの法令違反などがない場合には解職が難しいということと関係するのですけれども、結局のところ人事の機微に触れる話なので、解職する場合の説明を対外的に極めてしにくいということがあります。要するに、指名委員会のこの人は友達だから、この人を取締役候補者に推しているけれども、取締役会全体としては不適切だと思った場合に、その話をそのまま平場で解職の理由として出せるかという話でございまして、それは指名委員の解職の話なのか、そうではなく単にその取締役候補者の人が不適切という話であれば、不適切な取締役候補者の人を適切な人に替えるということで本来十分なはずで、指名委員会の委員として、その取締役候補者の人の選択についてはミスをしているかもしれないけれども、そうであるからといって指名委員会の委員としてはおよそ全く不適切というわけではないということもあると思います。例えば取締役候補者を9人選ぶとして、9人のパッケージのうち1人だけ問題ある人を選んでいるときに、お友達だから選んだとの点では問題は問題なのですけれども、指名委員会の委員を解職するほどなのかという話があって、そこは「牛刀をもって鶏を割く」の話があって、オーバーキルなのではないかなと思っております。   それから、実現可能性のところですけれども、これは実例で申し上げないと分かりにくいのだと思いますが、指名委員会の委員長が外から社長を連れてきたものの、その社長が社内でも求心力がなくて結構駄目で、長年、指名委員会の委員長と指名委員会を一緒にやっていることから余り指名委員会の委員長に楯突きたくないなと思っている指名委員である取締役以外の取締役は、ちょっとこの社長は駄目なのではないかと思っている状況があるとします。このような状況で、株主もそのように思っているという場合は、取締役会全体で指名委員会の決定を覆すということが制度的にできるのであれば覆せるのだと思うのですけれども、それはある意味で人事の機微に関する事項であるという話ではなくて、ある種、客観的に見て、例えば今の経営トップの方を指名委員会が推している理由に何らかのバイアスがかかっている場合に、バイアスがかかっていない人から見るとおかしいという状況はあり得るので、そのような場合には指名委員会の決定を覆すというのは現実的にあり得るのだろうと思います。   これは内容について全部お話することに制約がある中で御説明しにくいのですが、要するに実際にこの権限が発動されることはほとんどないとは思うものの、いざというときの安全弁としてそのような権限が取締役会にあるという場合には、その権限が行使されると指名委員会の委員長として恥なので、そこまでは押し通さずに適切なところで妥協するかというメカニズムが働くと思うので、このような伝家の宝刀を用意しておくこと自体については指名委員会に対する牽制としてのある種の手段として有効なのではないかなとは思います。 ○淡輪参考人 一部補足させていただきますと、最初の質問で、3形態ある中で指名委員会等設置会社の選択率が異常に低い。それはそれでいいのではないかという御指摘でございます。   少し私見を交えて言いますと、私どもは監査役会設置会社でありまして、先ほど申し上げたように、モニタリング・モデルに移行するには監査役会設置会社ではなかなか難しいという部分があるわけで、そうすると監査等委員会設置会社か指名委員会等設置会社ということになるわけですが、監査等委員会設置会社は、これはこれでまた立て付け上で監査等委員会がありまして、指名委員会と報酬委員会は任意なんです。ですから、監査等委員会との関係でどういう機能を持ち、何の決定権を持つのかというのが少し曖昧になっている部分が逆にあると思うんです。ですから、そういう中ではモニタリング・モデルにいくには指名委員会等設置会社という選択肢を採りたい中で、先ほど来議論されているような指名委員会の暴走と申しますか、ちょっと権限が強すぎるという懸念があります。指名委員会の決定を覆す取締役会の権限が実際に使われるかどうかという議論が先ほどからありましたが、相当のことが起こらないと、これは説明責任が果たせないのでできないとは思うんですが、それができるということが担保されるというのはセーフティーネットという部分でも随分違うような気がします。   委員の交代という問題が一番センシティブかなという気がします。何故、委員を任期途中で交代させるのかという説明責任、理由付けがよほど明確でないと委員の途中交代というのは非常に難易度が高いのではないかと、そんなふうに思っております。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。 ○矢野幹事 今日は貴重なお話をありがとうございました。私からは2点ほどお伺いしたいことがあります。   先ほどの行岡幹事の質問の続きみたいになるかとも思いますけれども、仮に今回御提案の改正がなされたとしたら、指名委員会等設置会社に移行する会社は実際どれぐらい出るというように予想されていらっしゃるのかというところをお聞かせいただければと思います。   10年ぐらいのスパンとかだと、監査等委員会も今10年ぐらいたっているかと思いますので、それぐらいのスパンでどれぐらい移行していくのかということをお聞かせいただきたいと思います。これが一つ目。   二つ目は、仮にこの改正がなされたとした場合といたしますけれども、特に監査役会設置会社にとって指名委員会等設置会社に移行するメリットはどういったところにあるのかというところをもう少し詳しくお聞かせいただければと思いました。既に社外取が過半数の会社だったとしても、委員会型に移行するとなると、それなりに費用や労力が掛かるというところですから、それを超えるメリットがないとなかなか移行しづらいのが現状かなと思いまして、その辺りのメリットをお聞かせいただければと思います。 ○淡輪参考人 この見直しをした場合に移行がどれぐらい起こるかということについて、これを定量的に、これぐらいは起こるのではないかということを言うのはちょっと難しいんですが、指名委員会等設置会社は今のデータで全上場会社の2.5%程度でしかないわけで、やはりそれぞれの企業、特に規模の大きな企業は、ある程度モニタリングボードを指向していこうというインセンティブは強いように思っておりますし、実際私どももそうでございますけれども、そういう中である一定の比率、少なくても二桁パーセントぐらいまでの移行は十分考えられるのではないかというふうには感じております。   ただ、今現実に起こっているのは監査役会設置会社から監査等委員会設置会社への移行という部分でかなり動いておりますので、その辺が、では監査等委員会設置会社から指名委員会等設置会社に移行が起こるのかどうかというのは、監査等委員会設置会社、さきほど私が申し上げたような監査等委員会の立て付けの問題について、どれぐらい問題を感じるかということによるかと思います。   それから、2点目の移行のメリットについては、これは先ほどから申し上げているように、モニタリングボードを指向するという中では、一番明確にモニタリングボード型の設計になっているのは指名委員会等設置会社であるのは間違いないと思っております。ただ、必ずしも皆さんが監査役会設置会社の不具合を強く感じておられるかどうか、実際に執行と監督の分離が会社法上しにくく、最高意思決定機関として投資であったりいろいろなことに取締役会決議が必要になるという部分、執行側との分離が非常にしにくいというのは現実あるわけですけれども、それがどれぐらい不具合と感じておられるかどうかということもあろうかと思いますので、これもちょっと一概にメリットという言葉で表現するわけにはいかないと思いますが、少なくともモニタリングボードを指向する上では、それはもう制度上の違いというのは明確であると、そんなふうに感じております。 ○太田参考人 制度改正がなされればどれくらい移行するのかというのは推測の問題なので、明言しづらいのですが、先ほどから申し上げているところから自ずと御理解いただけるかと思いますけれども、指名委員会等設置会社というのは指名委員会を構成するメンバー、特に社外取締役としていかに優れた資質を有する方を集められるかに依存しているところがあるので、どちらかというと、いわゆる大企業の方が使いやすい制度なのだろうと思います。   その意味でいうと、例えば、先ほども申しましたけれども、JPX400ですとか、JPX100の会社の中でも、現在、JPX400では監査等委員会設置会社が150社ありますし、JPX100の会社では監査等委員会設置会社が26社あるわけですけれども、この中の一定数は、指名委員会等設置会社制度の現状のような問題点を懸念して、あえて指名委員会等設置会社には移行せず、監査等委員会設置会社の形態を選択しているのではないかなと思いますので、この中から一定の数の会社は、制度改善がなされれば指名委員会等設置会社に移行するということはあり得るのだろうと思います。   他方、監査役会設置会社の方は、これは委員会型と少しモデルが違っておりますし、監査役会設置会社は監査役会設置会社で固有のメリットといいますか、ガバナンスに優れた点もあるかと思います。今、監査役会設置会社である会社は割と多くの会社が監査役会設置会社に長年親しんでいるし、このような制度で不具合はないのではないかということで監査役会設置会社の形態を採られている会社は多いと思うので、その会社があえて指名委員会等設置会社に一気に移行するのかというと、なくはないと思いますが、制度改善がなされたからといって監査役会設置会社が雪崩を打って指名委員会等設置会社の方に移行するかというと、それはそうではないとは思います。   というところでお答えになっておりますでしょうか。 ○矢野幹事 ありがとうございました。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。 ○田中委員 この度は大変詳細な御説明を頂き、ありがとうございます。部会の中で、本当に指名委員会等設置会社において指摘されているような不都合があるのかと、ちょっと懐疑的な意見もかなり出ていたところだったので、今回こういう場で御説明いただいたのは大変良かったと思っています。御説明を聞いて、私も改めてフラットな立場で考えてみたいと思っております。   その関係で三つほど御質問があります。一つは、机上配付資料のアンケートについてですが、ちょっと回答数が少ないのではないかと思えまして、立法のニーズがどのぐらいあるかということを考えなければならないものですから、このアンケートは、どのくらいの会社に送付していて、回答率はどのぐらいだったのかというのを御説明いただければと思います。   それからアンケートを読んでいたときに、回答の中で指名委員会等設置会社に移行するのをためらう要因として、「委員会の権限が強すぎる」という意見は確かにあるんですけれども、それと並んで、「社外取締役に指名などの権限を与えることに抵抗がある」という意見もあります。後者の意見は、恐らく、取締役会本体がまだ社外取締役過半数ではない会社において、社外取締役が過半数になっている組織に取締役の選任議案の決定権限を与えることに抵抗があるという意味だと思います。そうだとしますと、後者のような意見は、今回御要望になっているような、取締役会本体が社外取締役過半数になっているときに指名委員会に権限を与えないようにしてほしいという趣旨では必ずしもなくて、単に社外取締役の権限が強すぎるから移行していないという、そういう意見ではないかと思います。アンケート調査で出た意見を事後的に解釈するのは難しいかもしれませんが、今回の御要望のような、取締役会の過半数を社外取締役にすることはもう決めていて、でもその取締役の中の少数派である指名委員会に取締役の指名権限を与えることに抵抗があると言っている企業がどのぐらいあるのかについて、もしお分かりなら教えていただきたいというのが第1点目です。   それから第2点目なんですけれども、これが御説明いただいても、まだもう少し分からないでいるところなんですが、取締役全員を指名委員にすることが本当に難しいのかということです。特に外から見て説明し難いという御説明がありましたけれども、日本の会社法は、指名委員会等設置会社においては、指名委員会が取締役の選任議案を提案する権限を持っている。しかし、当社は取締役の選任議案については取締役全員で決めることが望ましいと思う。したがって、指名委員会の委員については取締役全員がなりますと言っておいて、他方でCEOの選定計画などは、これは機微に触れることですから、任意の指名諮問委員会を作りますと。ここには社外取締役だけで、ごく少数の委員だけで組織しますというふうに情報開示したとして、これは本当に理解されないのかなということなんです。これはちょっと先生にお聞きするよりは、むしろ投資家・株主に聞いた方がいいのかもしれないんですけれども、もしこれが本当に理解し難いと考えられているというような事情があったら是非教えていただきたいと思います。   そのことに関係してお伺いしたのは、むしろ現在の指名委員会等設置会社の実務に少し問題があるのではないかということです。つまり、本来、指名委員会の権限ではなくて、指名諮問委員会の権限というふうに法律上は整理されるべきものが、ちょっとファジーにみんな指名委員会の権限とされているために、取締役会において取締役の選任議案の決定だけではなくて、代表執行役の選定・解職とか、果ては後継者の選定計画とか、これみんな指名委員会の権限だとみなされているとすると、むしろ法律上非常に問題で、それらのことは本来取締役会の職務ですから、取締役全員で決めなければならないわけで、そのことを考えますと、二つの組織は分離した方がいいのではないかとも思います。今回御要望の改正は実現するか分かりませんが、実現するしないにかかわらず、指名委員会の権限はきちんと分けて、メンバーがたとえ同じであっても違う組織なんですよというふうにはっきりさせた方がいいのではないかという、そういうふうにも思ったものですからお伺いさせていただきました。   それから3番目ですが、これはほとんど行岡幹事が質問されたことと同じですけれども、今こういう議論がなぜ起こっているかというと、日本において上場会社が採り得るガバナンス形態としてフォーマルな形態が三つもあること自体がちょっと多すぎるのではないかという意見も一方ではあるので、ちょっと乱暴な言い方をすれば整理した方がいいのではないかという考え方もある中で、指名委員会等設置会社の中に更にオプションを作るということは更に複雑化するので、その点でちょっとあり得べき方向性とは逆になっているのではないかという意見を持っている人もいるのではないかと思います。それに対する、最もあり得る最も重要な反論は、指名委員会等設置会社は、他の会社形態、特に監査等委員会設置会社とかにない利点があるので、それへの移行が今回指摘された問題によって妨げられるのはおかしいというのが最も重要な反論になると思います。ただ、そういう利点が本当にあるのかという点が、ちょっと御説明を頂いてもまだよく分からなかったところです。現在、指名委員会の権限が強すぎるので困ると考えている会社の多くは、監査等委員会設置会社になっていて、それでそれほど問題点を感じていないから余りそういう問題について何か外に言わない会社もあるのではないかなと思います。特に、これは太田先生がおっしゃったとおり、諸外国を見ると、指名委員会と報酬委員会は基本的には諮問権限しか持っていないことが多いと思います。本体の取締役会は最終決定権限を持っていて、モニタリングボードへの移行というのは本体の取締役会に社外取締役ができるだけ過半数を持つというのが標準形のように思うので、それが標準形だとすると、現在の監査等委員会設置会社は、――コーポレートガバナンス・コードの勧告に従って指名諮問委員会と報酬諮問委員会を入れているとすると――正に標準形に近いのではないかとも思えます。そうではなくて、指名委員会等設置会社に利点がある、少なくともこのオプションをきちんと温存して、相当多数の上場会社にそちらに移行するように促した方がいいと考える何か積極的な理由があれば、是非御説明いただければと思います。 ○太田参考人 まず1点目の御質問のアンケートの点でございますけれども、アンケートの冒頭に書いてございますとおり、日本取締役協会の法人会員に対してアンケートを発出しています。回答が少ないのではないかというのは、おっしゃるとおりだと思っていて、冒頭に記載しておりますとおり、指名委員会等設置会社の10社、監査役会設置会社の24社、監査等委員会設置会社の14社から回答を得ており、全体で48社ということなので、やや少なめということではあると思います。   ただ、これはある意味で、アンケートを国勢調査のように、ある種の法的強制力があるものとして実施しているわけではなく、皆さんお忙しい中で御回答を頂いているので、ある種、問題意識を常日頃から持っておられる方が御回答されているという性質があるのと、このアンケートは社長が直接回答を書かれているわけではなくて、事務方が回答しているわけですけれども、事務方がその辺りについて社長など経営トップがどう考えているかというのを十分把握していない場合には回答してこないということもあるかと思うので、その辺りは日本取締役協会の中で経営トップの方などが集まる幹事会などでの議論も含めて御紹介をしているというように御理解いただければと思っております。   2点目の取締役全員を指名委員会にすることが本当に現実的でないのかということですけれども、要は株主からのリテラシーに依存するという意味ではおっしゃるとおりだと思うのですが、見え方として非常に不自然に見えることは否めないと思っております。要するに、取締役全員を指名委員にするというような選択をするのは、指名委員会等設置会社に移行する初年度であると思うのですけれども、そのような会社がどのような説明を対外的にすることになるかというと、指名委員会等設置会社に移行します、それでも指名委員会は取締役全員で構成します、そして、それとは別に任意の諮問委員会を設置しますという打ち出しになるわけで、そうすると普通の投資家から見ると、指名委員会等設置会社に移行すると言っておきながら、指名委員会の実質的な役割は法的な規律がない諮問委員会がやるということになるのだと見えます。そうすると、「なんちゃって指名委員会等設置会社」なのではないかというように普通の投資家から受け取られるリスクは相当程度あると思っております。要は指名委員会等設置会社と名乗っていて、法的には確かにそうであるのだけれども、なぜか任意の諮問委員会があって、そこで機微に触れる事項を審議しているということになると、指名委員会等設置会社と名乗っているけれども、ある種、潜脱というか、脱法的な行為をしているように映ってしまうのだろうなと思います。そのため、フラットに更地からそれぞれの機関設計を選択することができる状況であればともかく、現に指名委員会等設置会社制度というものがある中で、さきほどの取締役全員を指名委員にするというような選択をするのは現実問題としては極めて難しいというか、株主から理解を得られるとは余り思われないのではないだろうかと思っております。この点については、機関投資家の委員の方も含めて、御意見を是非お伺いできればと思っております。   それから、3点目の問題でございまして、オプションが増えすぎることの問題はおっしゃるとおりだと思っておりまして、また、田中委員がおっしゃられた後段のところの、今の指名委員会の実務そのものに、ある種、誤解に基づくいろいろな問題があるので、そこを改善すべきなのではないかというのは全くおっしゃるとおりかなと思っております。   一方で、積極的に何か指名委員会等設置会社の方に利点があると言えるのかということでございますが、先ほど淡輪委員長がおっしゃられたとおり、監査等委員会設置会社についても固有の問題は恐らくあるんだろうとは思っていて、というのは淡輪委員長が御指摘されていたとおり、そもそも監査等委員会設置会社で任意の指名委員会や任意の報酬委員会を置いた場合に、監査等委員会そのものにも監査等委員でない取締役の指名・報酬についての株主総会における意見陳述権があるので、権限の重複問題が生じ、そこら辺がバランスが悪いという話と、あとは監査等委員会設置会社で任意の指名委員会・報酬委員会を置いた場合、それらの委員会については法的な規律が及んでいるわけではないので、どのような制度設計でもできるということで、現実にも任意の指名委員会・報酬委員会については、どのようなことを審議して、どのようなことを決めるかという点について広いスペクトラムがあると承知をしています。   そのような意味では、ある種、法的な根拠のある形で置かれた指名委員会・報酬委員会の方が透明性が高いよねという考え方は当然にあろうかと思いますし、監査等委員会設置会社と指名委員会等設置会社とを比較して、それぞれに良いところもあるし、それぞれに問題もあるので、今、指名委員会等設置会社を選択することに躊躇する何らかの要因があるとすれば、そこの部分の制度改正をするということはあり得るんだろうなと思っています。   問題は、やはり平成14年商法改正で、今から過去に戻って平成14年商法改正をやり直すことができれば、きれいな制度を一から作れるということになるかもしれませんけれども、平成14年商法改正のときは当時の時代状況に応じて、あのような形で制度設計をして、今、それが厳然としてある中で、その立て付けの中で何か問題があるとすれば、そこについてマイナーチェンジをするというのは、それほど不合理な話ではないのではないかなと考えている次第でございます。 ○淡輪参考人 田中委員から御指摘のあった指名委員会の指名と諮問の機能を使い分けたら機密性の高い指名のところをクリアできるのではないかという御意見ですが、これは実際の運用ということをイメージしますと、年間の委員会の開催回数というのは大体2か月に1回とか、そんな程度であるとすると、その中の回数で、このときは指名に関わる話だから一般の諮問の方は外れてくださいという運用がどうなのかなと、実態として機能するのかなという気がしないでもないんです。それだったら、指名という部分-まあ、諮問機能ももちろん含めていいんですけれども、委員は限定して運用した方が現実論に近いのではないかと、そんな気がします。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。指名委員全員が取締役を兼ねる点について、投資家側に何か御意見、御発言はございますか。投資家サイドから、もしよろしければ御発言ください。 ○内田委員 私も指名委員会は別建てというか、別に設置した方がいいと思います。理由は、二つありまして、一つは現状を考えると、仮に社外取締役が過半だとしても取締役会におけるCEOの権限が極めて強いケースもあると思います。半数近くは社内取締役で、強い権限を持ったCEOが中心になって運営しているガバナンス体制が一般的だと思います。基本的には指名とは、現CEOが最適なのか、CEOは再任すべきかを議論し、評価すること、そして決定することが、主な仕事だと思います。そういう意味で、仮にCEOが議論の席を外れて取締役会で議論するといっても、相当に権限の強いCEOが取締役会をコントロール、統制している中で、そこを適正に評価できるのかという点については投資家は懐疑的に見ていると思います。   形式的に、例えば当該議案の議論からは外れるとか、社外取締役が過半であるからといって、その影響力とか統制力とか、そういったものを考えると、CEOは絶大な権限を持っていると思っていますので、そこに対しての懸念があるのだと思います。   それともう一つは、指名に関しては高い専門性が求められるという特徴があると思います。秘匿性とか、機微情報という問題もあり、加えて検討する開催回数が限られるなどもあって、そういった制約の中でCEOの再任、それから新任CEOの選任、あるいはサクセッションプランを議論するに当たっては、非常に高い専門性とそこに集中して議論することが必要だと思います。投資家から見ると、指名委員会の機能とか役割は残るだろうし、仮にその機能を取締役会に任せるとしても、類似した同様の機能を持った任意の委員会を作らないと運営上は回らないと見ています。そういった意味でも現況の指名委員会は、形態は変えるにしても、実質的にはその機能を残した方がいいと思います。つまり取締役会で完全にそれを代替できるかというと、それについては投資家からは見えにくくなり難しいだろうと考えます。 ○臼井委員 田中委員の御指摘に対する太田先生の御回答の中で、指名委員会等設置会社であるのだけれども指名委員会は取締役全員で構成され、それとは別に任意の諮問委員会を設けてトップ人事についてはそこで検討するというやり方は、投資家に対する説明が相当難しいのではないかという御指摘がございましたが、同様の実感を持っております。   私どもとしましては、上場会社、特に一定以上の規模を持つ上場会社についてはモニタリング・モデル、すなわち指名委員会等設置会社が、今議論されているように委員会の権限をはじめとしたいろいろな問題はあるにせよ、基本的には望ましいと考えております。その理由は、法的な位置付けを持った指名・報酬・監査の各委員会が独立性、専門性を持った中で機能しており、株主に対してきちんと説明ができるプロセスを踏んでいるというところを重視しているためです。また、諸外国の制度との平仄を考えた場合に、例えば米国であればこの委員会は取締役会の下部組織でありますので、厳密な立て付けとしては異なってきますが、大枠のメカニズム、すなわち専門性を持ち責任が明確化された委員会がプロセスを主導するというメカニズムを共通のものとして投資家、特に海外の投資家は理解しているケースが多いと思います。こうした大枠の制度から外れていくに従って理解するのが非常に難しくなっていくという問題はあるのだろうと思います。   現状で機関設計が三つ存在しており、それぞれがどう違うのかという点を完全には理解していない投資家も恐らく存在すると考えられる中で、さらに、これは指名委員会等設置会社なのだけれども、任意の諮問委員会があってというような説明をしようとすると、かなり混乱させてしまう恐れがあるのではないかと思われます。制度設計のさらに先にある、企業価値に関するより本質的な議論にたどり着く前に、こうした説明をしなくてはならないとなると、限られた時間やリソースを割いて行われる対話においては実質的な障害となってしまうリスクが大きいのではないかと考えますので、制度の立て付けとしてはシンプルな形、分かりやすい形にしていただくということが重要なのではないかという実感でございます。 ○神作部会長 大変ありがとうございました。 ○豊田委員 本日は非常に詳細な分かりやすい御説明を頂きまして、ありがとうございます。   平成14年の制度制定時からの変化を踏まえて理論的な話を頂きまして、その納得感はありますが、他方で、田中委員もおっしゃいました、オプションが増えすぎるのはどうなのかという懸念もあると思っておりまして、その観点からは、問題事例にきちんと対処できるのかという点も踏まえながら、制度改正の必要性を考えていかなければならないと思っているところです。   それを踏まえまして、問題事例をお話しいただき、その後質疑応答でお話を伺ったところですと、現在の指名委員会の実態として、法的な権限以上に様々なことを決定する権限を事実上持っており、それらの権限については、指名委員がどのような方かということで、例えば元経営者であるとか、そういうことで、本来、法的には取締役会で覆せるようなことであっても、実態としては、覆すことはできにくいというお話があったと思います。   そうであるとすると、今回、本来の指名委員会の決定事項についても、法的には覆せることとしても、なかなか抑止力としてもワークしない可能性があるのではないかと思います。抑止力としては、今、指名委員自体を替えるというのはなかなか難しいというお話もありましたけれども、それより若干弱めの伝家の宝刀ということかもしれませんが、それが抑止力として本当にワークするのかなという懸念を持っておりますが、その辺りの感触についてお伺いできればと思います。よろしくお願いいたします。 ○太田参考人 まず、豊田委員が最後におっしゃっておられた点ですけれども、結局、要は今でも指名委員会の委員を解職するということによる抑止力というものはあり得るわけですけれども、それにもかかわらず問題事例が生じているということは、現在の制度の下での解職という抑止力は、抑止力たり得ていないということかと思っています。   なぜ抑止力たり得ていないと言えるかというと、要するに余りにもその結果が甚大であるということで、「牛刀をもって鶏を割く」というような表現を使いましたけれども、オーバーキルの側面が強すぎて、そこまではやれないということがあると思っております。指名委員会が出してきた取締役候補のうち1人、2人について問題があることから、指名委員会の決定を覆したいだけであるのに、ある者を指名委員から外すというのは余りにもやりすぎ感があるので、今の豊田委員の言葉を使うと、効果が強すぎるからこそ抜けないというか、効果が少し弱い方がもう少し抜きやすいという、罰金ではなく課徴金のようなものなのだと思います。また、刑事罰と行政罰の違いのようなものかなと思いますけれども、ある意味でその側面があるがゆえに、指名委員会の決定を覆すという形で対応できるということであれば、現実的な抑止力として機能するのではないかと思っております。要は暴走している指名委員会の委員がいるとして、その指名委員がさすがに自分を首にまでできないだろうと思っていたとしても、指名委員会の決定をひっくり返されるというのは現実感があるかなというように理解してもらえれば、牽制力は働くということかと思います。   それから、オプションが増えすぎる問題ですけれども、結局のところ、この問題は、究極的には機関設計が日本では法律で定められているところにあると思っていまして、米英独仏を見ると、基本的にアメリカは上場規則ですし、英独仏はガバナンスコードで各委員会の権限などが定められているわけなので、日本の実情よりも実はバリエーションはもっと多いと思っております。   日本の場合にはこれが会社法で規定されていて、法律を外れることができないため、そもそもバリエーション自体が付けられないということがあるので、もし、全部を法律事項から外して東証規則で決めましょうということになれば、大枠として三つの機関設計があるけれども、その中で自由に設計できるみたいな形ができると思います。ただ、今は会社法というハード・ローで規律されているがゆえに、逆にある意味でバリエーションはむしろ諸外国に比べると減っていると思っていまして、例えば、アメリカでは、一例を申しますとCEOの再任拒否というか解職についてはむしろ報酬委員会が権限を持っていたりする例が半分ぐらい実務上あると言われています。日本の場合にはこの権限を法律で決めているという制約があるので、その中でバリエーションがある程度増えるというのは、ガバナンスコードや東証規則といったソフト・ローで規律をしていない以上は、やむを得ない側面があるのではないかなと思っています。 ○豊田委員 伝家の宝刀は重すぎると使えなくて、少し軽い方が使えるというようなお話だったと思いますが、現在、法的には覆せることも実際覆せていないような実態があるということを先ほど申し上げており、そうすると、現在持っているさらに軽い伝家の宝刀も使えていないような状況があるのではないかと思います。そういう点についての御感触をお伺いしたいと思います。 ○太田参考人 それは、要するに法律上、指名委員会の法定の権限事項でないことについてということですよね。 ○豊田委員 おっしゃるとおりです。 ○太田参考人 そこはおっしゃるとおり、実務の認識ないし捉え方の問題だと思うので、今回の法制審議会での議論などを通じて実務の今の認識ないし捉え方が変わっていけば、そこは対応できてくるということになるのかなと思っております。 ○豊田委員 ありがとうございます。 ○淡輪参考人 取締役会で指名委員会の決定をオーバーライドできるという部分で見ると、本来、実際に問題が起きたところの事例で見ておりますと、指名委員である社外取締役の中の牽制が効いていないという、ちょっと特殊なあれかも分かりませんけれども、指名委員会の委員長が相当強い権限を持ってしまって、ほかの社外取締役が口を出せなくなる。構成としては社内取締役は1人しか入っていなかったということで、委員長の主導でいろいろなことが起きてしまった。周りはもう手出しできないという状態の中で、混乱がある期間続いてしまったという事例ですので、ではそういう例が頻発するかというと、必ずしもそんなことはないとは思いますが、もしそうなったときに、取締役会の決議で覆せるという部分というのは相当大きな抑止力にはなり得るとは思いますが、それを使うというためには社内外の混乱というか、そういうものも含めて相当考えないと実際にはできないことかなとは思いますが、そういうレアなケースでセーフティーネットという部分で機能させられるのではないかという期待感が強いということは申し上げておきたいと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。   ほかに御質問、御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは、ヒアリングは以上とさせていただきます。改めまして、淡輪様、太田様におかれましては本日貴重な御報告および御対応を頂き、誠にありがとうございました。   予定した時刻をかなり過ぎてしまいましたので、ここで15分ほど休憩を挟みたいと思います。その後、ただいま頂きました日本取締役協会からの御説明及び質疑応答の内容も踏まえて、部会資料9の第1について意見交換をしたいと存じます。   それでは、15分間、休憩を挟んでいただければと思います。           (休     憩) ○神作部会長 予定の時間より少し早いのですけれども、皆様お戻りでいらっしゃいますので、再開したいと思います。   先ほど頂きました日本取締役協会様からの御説明及び質疑応答を踏まえて、部会資料9の「第1 指名委員会等設置会社制度の見直し」について御意見を頂ければと存じます。御発言の御希望の方、挙手等で意思を示していただければと存じます。 ○鮫島幹事 それでは、経済産業省からは部会参考資料23に沿って御説明申し上げます。   指名委員会等設置会社制度を含む機関設計に関する見直しは、まず企業が自律的に機関設計の在り方を選択できることが大前提でございます。また、企業の実際のニーズを踏まえて、企業の本来の目的に沿って検討を進める必要があると考えてございます。   企業の本来の目的は、「稼ぐ力」を強化して、収益を上げることでございますが、そのためには、経営陣がリスクもある成長投資ができるように、取締役会が経営陣に業務執行の権限を委ねて、リスクテイクを後押しした上で、その後、取締役会が経営の成果を厳格に評価をして、経営陣の人事や報酬に反映させる、そういう企業統治の在り方が有効だと考えてございます。   これは経済産業省が公表した「『稼ぐ力』を強化する取締役会5原則」でも提言したところでございまして、この原則に照らしますと、取締役の過半数が社外取締役である会社に関しましては、指名委員会等設置会社について、役員人事だけに限定した、しかも複雑な内容の特例を設けるのではなく、経営陣が業務執行を行い、それを取締役会が監督するという、本来の在り方を正面から認めるような新たな機関設計を検討してもよいのではないかと考えてございます。   ただし、新たな機関設計につきましては、株主総会と取締役会の権限分配の在り方であるとか、株主権の在り方等との関連性についても意識することが重要でございまして、それらを含めて、総合的かつ中長期的な検討が必要だと考えてございます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○松中幹事 この問題については、いろいろ今回、参考人の御報告で理解ができた部分もあり、ただ疑問が残る部分もあるという感じでございます。   まず、実態として割と人事全体を指名委員会が審議すると受け止められていて、法定の権限より実質的に広い権限を持ってしまっているため、影響が大きい。さらに、人選の面でも、指名委員として存在感のある人を選んでいるということで首にもしにくいという、こういう現状で、法定の権限を縮小することでパーセプション自体を変えるんだという、こういうことかと思います。ただ、これは本当に法律を変えることでやるべきなのかというのは、まだ疑問が残るところです。   指名委員の交代というところとの関係で見てみますと、指名委員を選定、解職するのは取締役会の権限であるとともに責任でもあるわけです。その権限行使を控えた上で個別の判断だけを覆せるようにしたい。必ずしもそれ自体、理屈として間違っているわけではないんですが、どうも異様に指名委員の交代に対するハードルが高いようで、これは意地悪な見方をすると、指名委員を交代させて目立つことを防ぎたい、こういう願望もあるように思われます。ただ、指名委員会による判断を個別に覆しておいて、取締役としての任期が来たら不再任にするという、こういう形で困った指名委員を片付け、取締役会による当初の指名委員の人選であるとか、その後の監督権限の行使に問題があったことに正面から向き合わないようにしたいかのようにも感じられる。もちろん、そうではない部分もあるとは思うんですけれども、皮肉な見方をすると今のように見えるわけで、こうしたニーズが正当であるとは到底思えないという部分があります。   したがって、あり得る権限分配であると思うんですけれども、正しいニーズがあるんだというのは、ちょっと現状では難しいのではないかなと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○仁分委員 まず、指名委員会等設置会社について、モニタリング・モデルをより強く指向する会社のための機関形態として位置付ける見直しを行わないことに賛成いたします。   経団連の会社法制検討ワーキンググループにおいては、指名委員会等設置会社のみならず、監査等委員会設置会社及び監査役会設置会社を含め、いずれの機関形態を採用する企業からも見直しを求める意見は特に出されておらず、このような見直しを行うことは不要と考えます。   指名委員会等設置会社において取締役会全体で取締役の過半数が社外取締役である場合には、取締役の選任及び解任に関する議案の内容についての指名委員会の決定の内容を取締役会の決議により変更することができる旨の規律を設けることについて、部会資料9の2ページで問題提起されているとおり、現時点でこれを正当化するに足りる具体的な支障や不都合が生じているかが重要な検討事項であると考えます。   この点につきまして、日本取締役協会様から御説明いただいたところではありますけれども、私どもも経団連の経済法規委員会企画部会や会社法制検討ワーキンググループの所属企業に意見を聞きましたので、御紹介させていただきたいと思います。   指名委員会等設置会社からは、「指名委員会の決定内容を覆したいというようなケースは過去には生じていないものの、指名委員会を社外取締役だけで構成することにした際、現行制度に対する違和感や懸念する意見があった」といった意見が出された一方で、見直しは不要であるとの意見が多数寄せられました。具体的には、「現行制度における不都合や違和感はない」、「現行制度の下でも同様の手当てが可能であることから特段見直しの必要性はない」、「指名委員会の委員は取締役会が選任するものであり、取締役会が指名委員会の決定を変更できないとしても指名委員会の委員を変更することは可能であるため、現行制度で特段問題はない」といった意見が出されました。   また、指名委員会の権限の見直しが行われた場合の影響や懸念点に関し、「影響や懸念点は特にない」といった意見が出された一方で、懸念点を指摘する多数の意見が寄せられました。具体的には、「指名委員会の権限が曖昧になるおそれがある」、「指名委員会を完全社外化している会社では、その意義が失われる可能性がある」、「指名委員会の独立性と指名の実効性の双方の低下が懸念される」、「取締役会とは別の少人数の委員会で実効的な審議を行うこととしている、現状の役割分担が阻害され、無用の混乱や手間が生じ得る」、「指名委員会の決定を取締役会で変更できる場合、実務上は取締役会で変更しないことを確認し記録に残すため、取締役会決議を取得することが想定されることから実務上の負担が増える」といった意見が出されました。   監査等委員会設置会社からも、「指名委員会等設置会社の肝である法定の委員会による選解任権が一定要件下で機能しなくなるため、指名委員会等設置会社を選択する意義が薄れる懸念がある」、「指名委員会の権限の問題が支障となり、指名委員会等設置会社を選択することがためらわれているという事情はない」、「指名委員会等設置会社以外の機関設計によっても取締役の過半数を社外取締役とすることで、モニタリング・モデル型の役員指名を実現可能である」といった意見が出されました。   監査役会設置会社からも、「取締役会が指名委員会の決定を覆すということは取締役会が指名委員会の判断に信頼を置けない状況を示すものであり、実務上は容易でないことが推測される。かかる権限の見直しが行われたことのみをもって、将来的に指名委員会等設置会社を選択しやすくなるものでもないと考える」、「現行制度による不都合や違和感はなく、見直しの内容についても取締役会と委員会の構成員を同じにするなどの実運用で工夫の余地はあるように思われ、特段の必要性は感じない」といった意見が出されました。   こうした企業の意見を踏まえながら、指名委員会等の権限の見直しについては慎重な検討を要すものと考えます。中間試案では、指名委員会等の権限の見直しをしないものとする案も含めて意見を募集していただきたく存じます。   報酬委員会にも同様の規律を設けることにつきましては、経団連の会社法制検討ワーキンググループの所属企業からは、そのような見直しを求める意見は寄せられておらず、不要と考えます。   それから、監査委員会の権限等について第5回の会議でも申し上げましたとおり、指名委員会等設置会社の取締役のうち執行役を兼ねている取締役及び業務執行取締役は監査委員会の議事録の閲覧又は謄写をすることができないとする見直しは、行うべきでないと考えます。   また、株主総会の決議によって取締役の選任をするのに際して、指名委員会、監査委員会及び報酬委員会の委員に選定されることが予定されている取締役について、その旨を株主総会参考書類に記載しなければならないとする見直しは不要であると考えます。   常勤の監査委員を選定しない場合に、常勤の補助者の設置を義務付ける規律を設けないことに賛成いたします。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○久保田委員 まず「1 検討の方向性」については、部会資料で示された方向性に賛成したいと思います。個人的には、モニタリング・モデルをより強く指向する会社のための機関形態としての見直しについては、実現可能であれば行った方がよいとは思っています。しかし、部会での議論を伺っている限りでは、どのような見直しをするかについて意見が少なからず分かれているように思います。すなわち、見直しをするに当たって取締役会が、社外取締役が過半数を占める独立性の高い取締役会であることを出発点とすべきであることについては比較的意見が一致していたように思いますけれども、見直しの具体的な方法として、指名委員会等設置会社の見直しという方法によるのか、あるいは監査等委員会設置会社の見直しの方法によるのか、それとも新しい制度を作るという方法によるのかといった点や、具体的にどこまで会社法で手当てをすべきかといった点については意見の集約ができていない状況にあると理解しています。   このような状況では、こういった見直しについては中長期的な課題と整理することが現実的な対応であると思います。   ただし、中長期的な課題と言っていますと、いつまでたっても実現しないおそれがありますので、今後の検討の材料を集める観点から、中長期的な課題として整理することの当否のほか、私が先ほど触れましたような特にポイントとなると思われる点について、中間試案に記載した上で各界の意見を募るといったことぐらいは行ってもよいのではないかと思っています。   次いで、「指名委員会の権限の見直し」についてです。   第5回会議で申し上げましたとおり、ここで提案されている見直しというのは、現行法を前提にしますと理屈が通っていると思いますので、もし現実のニーズがあるのであれば見直しをすることはあり得るのではないかと思っています。   そうしますと、問題は現実のニーズがどれほどあるかです。この点について個人的には、先ほど太田先生と淡輪様からの説明を頂戴した上で、取り分け加藤幹事や豊田委員からの代表執行役であるCEOの解任事例など、取締役会に法的権限がある事例に関する質問への御回答を拝聴していまして、どうも問題の本質は人事に関する法的権限の所在以外のところにあるような気もしまして疑問が残るところもあった一方、なるほどと思うところもありましたし、比較法的に見ても奇異な提案とは言えませんので、中間試案でも具体的な提案という形で取り上げることも考えられるのではないかと思います。   ただし、他方で先ほどの「1 検討の方向性」とも関連しますけれども、田中委員もおっしゃったように、今回立法上の手当てをすると制度が複雑化してしまうということもあり、よほど強いニーズがない限りは、むしろ中長期的にモニタリング・モデルをより強く指向する会社のための機関形態としての見直しをする中で検討すべき課題であると位置付けることにも相応の合理性があるように思います。   その場合は現実のニーズがどれほど強いのかをより慎重に見極める必要があるということになりますので、部会資料で提案されているように、現実のニーズについて問うような取り上げ方もあり得ると思っています。歯切れの悪い言い方になってしまいますけれども、私としては現時点ではいずれの方向もあり得るところであり、いずれの方向がより良いとも決し難いと思っています。   次いで、「監査委員会の権限等の見直し」についてです。   まず、1の監査委員会の議事録の閲覧等をできる者の制限について、部会資料の提案に賛成いたします。   また、(2)の委員会の委員に選定されることが予定されている取締役について、その旨を株主総会参考書類に記載しなければならないとすることにも賛成いたします。   その上で、(注)として①と②の内容を記載することにも賛成なのですが、幾つか書き方について検討いただいた方がよいような気がしています。   まず①についてですけれども、事業報告に記載することが必要になる場合というのは、各委員会の委員に選定予定の取締役として株主総会参考書類に記載された者以外が各委員会の委員に選定された場合だけではなく、任期中に委員が交代させられた場合、例えば監査委員に選定予定であった者が、一旦監査委員に選定されたけれども、その後監査委員を解職されたような場合が考えられます。そして、委員の地位の独立性という観点からは、むしろ後者の場合の方が重要になるわけですけれども、部会資料からは後者の場合が含まれることが必ずしも明らかではありませんので、後者の場合が含まれることが明らかになるような書き方をしていただいた方がよいのではないかと思っています。   次に、これも細かいことですけれども、(2)の提案の対象には、監査委員会の委員だけではなく、指名委員会や報酬委員会の委員も含まれている一方で、(注)の②の意見陳述権の対象は監査委員に限定されています。こうした違いは意図的なものだと思いますので、その理由についても何らかの説明があった方がよいのではないかと思っています。   一つの説明の仕方としては(2)の提案が基本になっており、そのことを前提に追加的に意見陳述権を与えることまで必要になるのは監査委員だけであろうという説明が考えられるかと思います。他方、(2)については、地位の独立性の確保に加えて、選任議案への賛否の判断を行う株主に対する情報提供の観点もあって、監査委員だけでなく、指名委員会の委員や報酬委員会の委員も含まれているという説明もできるかと思います。   ただし、これらの点については、むしろ対象となる委員を別にするのではなく、そろえるべきであるという意見もあり得るかもしれませんので、対象となる委員を別にした提案をすることについては、説明を付した上でパブリックコメントに付するというのがよいのではないかと思っています。   ところで、部会資料の4ページから5ページにかけて、会社法第411条第3項によれば、監査委員である取締役に対して他の委員が出席を要請し、監査委員会における検討状況などを質問することは制度上可能であることについても手当てが必要かという問題提起がされています。これは第5回会議で白井幹事がされた、監査委員会の位置付けを再検討すべきではないかという大きな問題提起の一部であると理解しています。   白井幹事の問題提起は、中長期的な課題にすべき抜本的な見直しにつながる重要な問題提起であると思いますけれども、他方で、少なくとも会社法第411条第3項に関しては解釈による対応が可能なのではないかと思います。すなわち、監査委員の職務の中心は飽くまで執行役等の職務執行の監査にありますので、監査の独立性や実効性を確保する観点から、ほかの委員会に対する説明を拒むことが望ましいときは説明を拒むことができるし、場合によっては、むしろ拒まなくてはならないというふうに解することができます。   また、そうした解釈の妥当性は、今回の改正によって監査委員会の議事録の閲覧等を制限することによって、より明らかなものになると考えられますので、会社法第411条第3項については必ずしも立法上の手当てをしなくてもよいのではないかと考えています。   最後に、「3 その他」についてです。   私はこれまで、指名委員会等設置会社においては常勤の監査委員又は常勤の補助者のいずれか一方を置かれていると考えていたのですけれども、第5回会議における田中委員の御発言を伺っていますと、必ずしもそうではないということでありました。仮にそうだとしますと、常勤の監査委員と常勤の補助者のいずれも置かないことに余り合理性はないと思いますので、いずれかの設置を一律に義務付けてもよいのではないかと思います。   これに対しては、内部監査部門等の連携等の状況によっては、常勤の監査委員と常勤の補助者の両者が置かれていないときでも、いずれかが置かれているときと同等レベルの監査が可能である場合もあり得るという意見があろうかと思います。しかし、常にそうであるとは限りませんので、せめて常勤の監査委員を置かない指名委員会等設置会社においては、常勤の補助者の設置が必要かどうかについて監査委員会に判断させるといった手当てがされてもよいのではないかと思います。   そのため、中間試案においても、常勤の監査委員がいない会社について特に規律を設けないという提案に加えて、常勤の補助者を一律に義務付けるという提案及び常勤の補助者の賛否について監査委員会に決定権を与えるという提案を記載していただいた上でパブリックコメントに付していただいてもよいのではないかと考えています。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○臼井委員 まず「検討の方向性」について申し上げます。   上場会社についてはモニタリング・モデル、特に指名・報酬・監査の各委員会が独立性と専門性を持ってしっかりと機能する指名委員会等設置会社制度を良くしていく方向で検討を進めていただきたいと考えております。上場会社の機関設計における現状の課題としましては、今議論になっております指名委員会等設置会社の使いにくさという局地的な問題に加えて、全般的な問題としては取締役会による監督の弱さ、特に創業家やワンマン長期政権といった経営者に対する監督の弱さ、また今回の直接的な検討対象とはなっておりませんが、諸外国との比較においては取締役のフィデューシャリー・デューティ、株主に対する信認義務について明確化されていないという点が課題であると考えております。これによって起きている弊害としまして、目撃しておりますのは、創業家、それから長期政権の経営者等が稼ぐ力の向上や企業価値の創造よりも、経営の掌握そのものを優先し、結果的に株主利益を毀損するというようなケースです。独立社外取締役が過半でないことなどを背景に、こうした経営者を適切に監督できていないことが大きな要因であると考えます。   社外取締役であっても創業者や経営と親しい人物が長期にわたって就任することで、言わばお友達ボードという形で適切なガバナンスが利いていないようなケースもございます。   リターンの低い投資、現預金の積み上がり、政策保有株式、収益性の低いノンコア事業の放置等に起因して資本効率が低いままであるということが、大きな部分はやはりガバナンスの不全に起因すると考えておりまして、改善は待ったなしという感触を持っております。   今回、事務局を始めとした皆様の御努力で、時間的制約もある中で少しでも前進を図る、どうしても必要な部分に変更を絞る必要があるというところは大変感謝しており、理解するところではございますが、上場企業のガバナンス、加えて機関設計の改善というテーマは、中長期的な対応で足りるというよりは、相応に差し迫った課題なのではないかというのが我々の認識でございます。   先ほど久保田委員からの御指摘にもございましたが、モニタリング・モデルの志向、それから特に取締役会の独立性の改善ということについては、今後の方向性として是非パブリックコメントにも付記していただければ有り難いと考えます。   それから、「2 指名委員会等の権限の見直し」についてです。   指名委員会については社外取締役過半であれば取締役会が最終決定を行える、オーバーライドを行えることに賛成いたします。その中では指名・報酬・監査の各委員会が独立性を持った形で機能することが非常に重要になりますので、取締役会によるオーバーライドがなされた場合には、それについて株主への開示、例えば総会における陳述の機会を与えるなど、透明性の確保をしていただきたいと考えます。   それから、報酬委員会についてですけれども、指名委員会のニーズとは異なり、取締役会に広く開示して最終決定を行わせるというニーズは現状それほど大きくないのではと考えます。目指す姿としては、現状の開示は報酬の全体枠を基本とした開示にとどまっていますが、方向性としては個別の開示を進め、その責任と業績、それから報酬の連動性を明確化することに加えて、いわゆるセイ・オン・ペイ、株主総会の勧告的決議によって株主が意見表明できるような、こうした制度の導入に向けた整備を望みたいと考えます。ただ、これは喫緊の課題というよりは、中期的な検討でよいのかなと考えております。   それから最後に、「監査委員会の権限等の見直し」でございますが、これまでの御議論のとおり、ほかの二つの機関設計に比べてやや劣っていると思われる指名委員会等設置会社における監査委員会の独立性・実効性を強化するための手当てに賛同いたします。特に監査委員会の議事録閲覧については執行を兼ねている取締役、業務執行取締役はできないという方向に賛成をいたします。   また、各委員会の委員の選定予定について株主総会の参考資料に記載することに賛成をいたします。これは選任議案の賛否の判断を株主が判断するに当たっても非常に有益な情報であるということです。   また、監査委員の途中辞職、解職等があった場合には、株主総会における意見陳述権を付与していただくということに賛成をいたします。   また、常勤の問題ですけれども、監査委員の中に常勤者がいないという場合は、常勤で監査を補助する者を置くという規定の方向性について、実効性の観点から望ましいと考えます。   やはり適切な機関設計、特に取締役会の独立性の確保というのが日本の資本市場の機能発揮、株主の利益、株主の付託を受けて経営の監督を行う取締役の実効性発揮のために非常に重要であると考えますので、是非積極的な検討をお願いしたいと考えます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○森委員 私からは指名委員会の権限についてコメントをしたいと思います。   部会資料の2ページにおいて、指名委員会の権限見直しのニーズがどこまであるのか不明であるといった記載もございます。私は現在、会社法が企業側のニーズを反映できておらず、ほとんどの会社は暴走リスクがある指名委員会等設置会社を選択せずに監査等委員会設置会社、若しくは監査役会設置会社を選択した上で、任意の機関として指名・報酬委員会を設置しているだけであって、すなわち、ほとんどの会社がリスクのある指名委員会等設置会社制度を見限っているということが実態ではないかと思っています。これは、指名委員会等設置会社がモニタリング・モデルとしてほとんど機能していないということだと思います。   このように機能しない制度、リスクがある制度があってもいいのではないかというコメントもございましたけれども、会社法が用意したために、指名委員会等設置会社を選択した会社が既に96社あるわけでありまして、そのような会社はそういったリスクが顕在化しないように、指名委員等の社外取締役の選任について大変な労力を払っています。加えて、暗黙のうちに生じてしまっているのではないかというふうに個人的に懸念しているのは、指名委員として任命する社外取締役について、なるべく大胆な意見を言わないような人であり、かつ会社の意見に従ってくれそうな人を指名委員に選任しようというインセンティブが内々に働いてしまうリスクがあるのではないかということを懸念しています。   また、取締役全員を指名委員に選任したらいいではないかという議論もありましたけれども、指名委員会では、CEO選任や社外取締役のサクセッションも含めて、かなり長期的な視点で議論をしており、こういった長期的な視点でどの取締役がどういったタイミングで交代していくかということも含めて指名委員会の中で議論していくにあたって、取締役の退任のタイミングも含めて、取締役会全体で議論をするというのは現実的ではありませんし、議論する内容も、何度も出ていましたけれども、極めて守秘性の高い内容なので、少人数で議論するということが適した委員会だと思いますので、取締役全員を指名委員にすれば済むというのは、ちょっと実務からはかけ離れた議論だなというふうに聞いておりました。   それから、本日、日本取締役協会の方からいろいろな指摘もありましたけれども、そこでは指摘されていなかった実務的な支障について少し触れたいと思います。   日本では株主代表訴訟を容易に提起できるという、海外と比較してもかなり特異な状況になっていますけれども、その結果、社外取締役は常に株主代表訴訟リスクにさらされているという状況です。したがって、仮にCEOが暴走して会社の経営がおかしくなってしまったというような状況では、社外取締役も一緒に株主代表訴訟の対象に容易になり得るということなんですけれども、そういったことを踏まえますと、誰がCEOになるかということは、社外取締役にとっても極めて重要な事項となります。   一方で現在は、指名委員会等設置会社においてCEO等の選任は、指名委員に就任していない社外取締役に対して完全にブラックボックスで実施できる状況なので、その人からしてみると、誰がCEOになるか、若しくは取締役になるかということについて意見も言えないし、賛否も言えないし、そもそも社内の人間がCEOに就任するとしても会ったこともない人がCEOになっていくというふうなことが起こりうるような制度になっているということになってしまっています。このように、指名委員に就任していない社外取締役の人の立場を考えると、かなりいびつな制度だというのは、もう一度認識してもいいのではないかなと思います。   そういった状況ですので、抜本的なモニタリング・モデルの在り方等々の改正にはならないかもしれませんけれども、現在の状況を、使わないなら使わないで放置していいというものではないのではないかというのが私の意見であります。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○矢野幹事 こちらについて、順番に意見を申し上げたいと思います。   1の点は、まずやむを得ない方向かなというようには考えましたけれども、中長期的な課題としては検討していってほしいと思いましたので、先ほど久保田委員がおっしゃったような形でパブコメで意見を募るというのはやってほしいと私も思いました。   次に2ですけれども、社外取締役が過半数の場合の規律については、個人的には改正までする必要性は乏しいかなと考えています。ただ、弁護士会内でもこれに賛成する意見もあるということはお伝えしておきたいと思います。   個人的に必要性が乏しいと考える理由は、仮に改正された場合でも指名委員会等設置会社に移行する会社はほとんど出ないのではないかなと思ったのが率直な感想としてあったかなということになります。結構なコストをかけて移行するということはなかなかしないのかなというように思いました。そうすると、現状、社外過半数の指名委員会等設置会社がひっくり返せるようになっただけということになりまして、そうすると監督と執行の分離ができていないというマイナスのイメージだけを持たれてしまうという結果になってしまうと感じました。   今回の机上配付資料のアンケート結果も拝見しますと、実態調査の指名委員会等設置会社の中の回答の最後にも、監督と執行の分離の考えが根付いていないという意見が出ていましたけれども、私もそうなんだろうなというところが一番感じたところです。   参考人提供資料の脚注の12については問題点の指摘があるということで共有いただいておりますけれども、こちらのものも読む限りは、監督と執行の分離がされているということを大前提として議論しているという内容だというようには理解しました。監督と執行が今分離されていないから分離しない方向に向くというのは制度趣旨に沿わないのではないかというのが個人的な見解です。   次に3ですが、こちらは(1)、(2)、(注)の規律を設ける方向でよいとは考えていますけれども、幾つか申し上げたいことがあります。   (1)の閲覧できない取締役の範囲については、これでよさそうだなとは個人的には思っていますけれども、例えば社外取締役以外を禁止するというのも規律としては一応あり得るのかなとも思ったところでして、この点、パブコメの方ではもう少し広く意見を聴けた方がいいかなと思いましたので、補足説明で終わりではなくて、例えば(注)の方に一言入れておくとか、そういった工夫をしてはどうかと思いました。   あと、これは質問なんですけれども、本文中に業務執行取締役というのがありまして、これは監査委員会だから、基本的に業務執行取締役はいないのではないかという質問も実はありまして、これは恐らく会社法第416条に基づいて、法律の規定とかに基づいて業務を執行したときは業務執行取締役になるという規律のことを言っているのかなと思ったんですけれども、それで合っているかどうか一応確認させていただければとは思ってはいます。   あと補足説明の3、常勤の補助者の点もあってもいいというように私も思っていますので、こちらも本文中に記載して意見を問うと。本文太字ではなく、太字というか、本文の本文ではなくても、場合によっては(注)とか、そういった形で意見を問うという形でいいのかなというように思っています。 ○神作部会長 1件御質問があったかと思いますので、事務当局から御回答をお願いします。 ○吉田関係官 会社法の定義の中で具体的にいうと、会社法第2条第15号イのところで業務執行取締役の定義がなされていますけれども、その中に「業務を執行したその他の取締役」、これも業務執行取締役に含まれるというふうになっていて、御指摘のとおり、指名委員会等設置会社の取締役は基本的には業務執行はできないのですが、業務を執行してしまった取締役については、定義上業務執行取締役に該当し、そのような取締役も議事録の閲覧等をすることができない者に含める趣旨でこの本文に入れています。 ○矢野幹事 分かりました。同じ理解をしていましたので、大丈夫です。ありがとうございます。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。 ○北村委員 私からは、2と3についてコメントをしたいと思います。   2についてですが、社外取締役が取締役の過半数いる場合は、取締役会で指名委員会の決定の内容を変更できるという提案をパブリックコメントに載せることについて、賛成いたします。   そのような改正提案を正当化するに足りる具体的な支障、不都合が生じているかということについては、本日参考人の方々から貴重な御説明を頂いたところです。その中で、現在の指名委員会は取締役の選解任の議案を決定するとともに、執行役、CEOの選解任の案の決定、あるいはサクセッションプランの案の決定、そういった事柄を一つのパッケージとして人事全般について検討し決定している、という御報告がありました。これらのうち取締役の選解任議案以外は取締役会で覆すことができるはずですけれども、指名委員会に大物が多いこともあって実際には取締役会として指名委員会の決定を覆すことは難しい、という御指摘もありました。大物に対してものが言えないという事情は法的な問題ではないと思いますけれども、あえて法的な問題があるとすれば、指名委員会の決定を覆す意見を出した取締役について、任期1年の満了の後、当該取締役を再任するかどうかの議案を決定するのは指名委員会で、現行法上その決定を取締役会は覆せないことになっており、結局、取締役の地位を指名委員会が握っているというところで暴走を許してしまうという現状があるのではないかということを、参考人の方々の御意見を拝聴しながら思ったところです。   そうしますと、根本は指名委員会が決定した取締役選解任議案を取締役会が覆せないというところにあるのではないか、という見方もできることになりますので、取締役の過半数が社外取締役であれば、指名委員会が決定した取締役選解任議案を取締役会が変更できるという提案を、パブリックコメントに付すということに賛成したいと思っております。   もっとも、いろいろな御意見が出ましたので、部会としては、その提言とともに、現状を変えないという考え方との両論併記がよいという気がいたしております。   次に3のところです。3の(1)については賛成いたします。(2)については第5回会議で、私もこのような意見を述べさせていただいて、それを採用していただいて、ありがたく存じております。このような情報は、株主が指名委員会等設置会社の取締役選任についての議案を判断するために必要な情報と考えられます。(注)について、すなわち株主総会参考書類に記載されていたことと、実際の委員選定が異なっている場合の開示についてですが、株主はこの候補者は選任されればこの委員になると思って選任に賛成したはずですので、実際にはその委員に選定されなかった、あるいは別の人が当該委員に選定されたということは株主に開示すべきですから、このような事情の事業報告における開示について賛成いたします。仮に、株主総会参考書類において、ある候補者について指名委員会のメンバーにするつもりがないのに指名委員に選定する予定であるという記述がされたのであれば、株主総会参考書類自体が虚偽ということですので、場合によっては決議取消事由になりますが、(注)のところで想定されているのはそういうことではないと理解しております。   先ほど久保田委員がおっしゃった解職の件ですが、現行規定で、事業報告では会社役員の地位・担当、あるいは会社役員に関する重要な事項が事業報告記載事項になっております。恐らく、指名委員の解職というのは、実例がほとんどないのかなと思いますけれども、委員の解職の開示は現行法でも対応はできているということにはなろうかと思います。ただ、この(注)のような規律を設ける、あるいは(2)のような規律を設けるのであれば、事業報告にもその旨明文化するということには意味があると思っております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○内田委員 まず第1に、今回、機関設計について見直しが進まなかったというか、棚上げされたように受け取ったんですが、そこについては強い懸念を持っているということであります。確かにモニタリングボードはかなりの勢いで進展しており、それがガバナンス上、内外の投資家から評価されているという現状があります。モニタリングボードと機関設計とは直接関係ないということで、権限移譲とか監督と執行の分離とか、これは各機関設計、どの形態でも進め得ることだと思いますが、受け取られ方によってはモニタリングボードへの移行ないしはガバナンス改革、この動きの停滞ないしは棚上げというふうに取られかねないので、これについては注意して、パブコメとかにおいても発信や説明していくことが重要だと思います。明確にその流れを止めることではないことを明示すべきだと思います。   それから、2番目の指名委員会の見直しについて、これは私も合理的だと思います。取締役の過半数が社外取締役で占められる会社については取締役会に最終決定を委ねることに違和感はなく、取締役会が指名委員会の決定を覆せるようにするのは理にかなっていると思います。ただ、一方で覆す場合には情報発信、特に総会における情報開示、説明が必須だと思います。そこでの投資家への開示や説明は欠くことはできないと思います。   それと、指名委員会と報酬委員会の在り方なんですけれども、特に報酬委員会についても、パブコメでこのような形で出した方がいいと思っています。報酬委員会も指名委員会と同じように改定し、権限を与えていいのではないかと思います。つまり、報酬委員会が決めた内容についても覆す、上書きすることを取締役会の権限として認めるという案についても広く意見を諮った方がいいと思います。   指名委員会と報酬委員会を特に分ける必要はないと思っています。確かに対象となると、指名委員会については取締役であるということは、先ほど淡輪様からお聞きした内容を踏まえると合理的と考えます。つまり、取締役の選任は指名委員会が持つんですけれども、執行役については取締役会が持つというのは合理的と思います。一方で、報酬委員会は現在は、取締役と執行役双方を総合的に報酬設計しているということで、それは現状追認している形だと思いますが、そこを整理するような形で、どこを対象にするのか、どこまで権限があるのかというのは法律上も整理した方がいいと思います。結論として、同じように報酬委員会についても上書きの権限を認めるということがあっても良いと私自身は考えているところでございます。   それから、「3 監査委員会の見直し」についてですが、ここについては議事録の閲覧権について、これも執行を兼ねている人間かどうかという軸ではなくて、社外取か、社外取ではないかという軸で意見を諮った方がいいと思います。   前回も申し上げましたが、執行を兼ねていない社内取締役は執行と非公式な影響力を行使できる対象となり得ると思います。元社長であったり、創業家であったりしますので、その意味では社内取締役というのは執行に近い人がかなり多いので、その意味では閲覧を認めない取締役の対象として含めるべきと思います。ですから、ここは社外取締役かそうでないかという軸で線を引いた方が明確だ思います。そういった選択肢もパブコメに提案していただいて、意見を諮ればよいと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○田中委員 指名委員会等設置会社に関しましては、今回の会合で指名委員会の決定を取締役会で覆すことも認めるべきという意見が相当出た以上、この意見についてもパブリックコメントに付すのがよいと思います。   その上で、せっかくパブコメに付すのであれば、もう少し選択肢もあってもいいのではないかという趣旨で申し上げますと、これは第1の1のところで、モニタリング・モデルをより強く指向する会社のための機関形態についての見直しは今後の課題とされていますが、せっかくパブコメに付すのであれば、この見直しについても意見を問うてもいいように思います。これは飽くまでも選択肢ですけれども、指名委員会等設置会社については取締役会の過半数を社外取締役にすることを義務付けてはどうかと思います。その上で、指名委員会と報酬委員会の権限については、これを諮問型にするのか、決定型にするのかは定款で決めることができるとするのはいかがかと思います。   取締役会を社外過半数にした上で委員会を諮問型にするのは、アメリカの上場会社に典型的なガバナンス形態であって、投資家にとってみると最も分かりやすくなるのではないかと思うわけです。先ほど来、指名委員会について議論されていましたが、報酬に関しても報酬委員会だけで決めることができるという制度が良い制度なのかも議論の余地はあるかなと思いまして、それも選択肢の一つとしてパブコメに付すこともあってもいいと思います。   その上で、モニタリング・モデルを指向するという観点から指名委員会の権限をもっと拡張してもいいのではないかと。今回の議論で明らかになったのは、指名委員会の権限として投資家が期待している部分は、取締役の選任議案の決定もさることながら、経営トップの選定、さらには経営トップの候補者の選定というところにあるわけですから、そういうものも含めて定款に定めることによって、指名委員会の権限にすることができるといったことも選択肢にするのもいいように思います。   なお、委員会を諮問型の形にした場合でも、指名委員会の決定を取締役会が覆したような場合には、そのことを事業報告なりで開示させる形にするのがよいと思います。   それから、国際的にいえば、指名委員会と報酬委員会はむしろ全員が独立社外取締役であることが多いので、委員の構成についてはもう少し厳しくしてもいいのではないかとか、指名委員会等設置会社こそモニタリング・モデルを指向する会社だということを明らかにするのであれば、そのくらいして初めて意味があるようにも思えます。現在の制度は恐らく中途半端であって、指名委員会等設置会社になったとしても、投資家に対してモニタリング・モデル志向の会社だというシグナルを送る機能は弱いのではないかと思います。これは第1の1の中長期的な見直しに食い込んでいく話ではありますが、ういう制度もあった方がいいのではないかと思います。   今回ご要望のあった、社外取締役が過半数であるときは指名委員会の決定を取締役が覆すことを認めるという案に対しては、指名委員会の権限をどうするかについて、どうしても現経営陣の意向が働いてしまうのではないかという部分で疑問を感じます。せっかく指名委員会等設置会社について制度改革するのであれば、この会社がモニタリング・モデルを指向する会社であることを明確に要求するような改革にしてもいいのではないかと。このような要求をしても、現在も、少なくとも上場会社である指名委員会等設置会社は、大半が社外取締役過半数になってきていると思いますので、それほど無理な要求ではないのではないようにも思います。これはパブリックコメントに付す選択肢の一つでいいのですが、指名委員会等設置会社については過半数の社外取締役選任を義務付ける案も考えられると思いました。   それから、最後に3のことについてが、今私が言った意見が取り入れられるか分からないので、もし、指名委員会等設置会社に社外取締役過半数の選任を義務付けないのであれば、是非、監査委員会の権限等の見直しについては実現してほしいです。ほかの会社形態、監査役会設置会社や監査等委員会設置会社に比べ、監査委員会の独立性には疑問があると思っておりまして、少なくとも議事録の閲覧に関しては、執行役は閲覧できないことにしていただきたいです。   この点については内田委員もおっしゃったように、ほかの選択肢もあり得るところで、元々この提案の趣旨は、監査役会や監査等委員会の議事録については監査の担当の役員しか見られないはずなので、その並びで言えば、執行役を兼ねているか、いないかにかかわらず、監査委員でない取締役については自由に閲覧できないというふうにするのが本来は筋であるように思います。   そのようにすると、監査委員会が、取締役会の監督を受けない存在になってしまうという問題があるとすれば、執行役を兼ねてない取締役の過半数の要求があれば議事録を見ることができるとか、そのような例外を設けてもいいのかもしれませんけれども、内田委員がおっしゃったように、執行役が閲覧できないようにすれば問題がなくなるかというと、そうでもない可能性もありますので、そういった選択肢も考慮していただきたいです。   それから、取締役の選任に際して、各委員会の委員への選定予定を記載させるとにも賛成ですし、それから注記に関しても、このような記載をさせることを是非御提案いただければと思っております。細かく言えば、先ほど久保田委員がおっしゃったことでもあると思うんですが、株主総会参考書類に記載された者以外の者が委員となる場合だけでなくて、記載された者が委員とならない場合も、その理由を開示させた方がいいように思います。要は予定と違うことをした場合にはその理由を開示させ、株主に情報を伝えるような形にした方がいいと思います。   それから、(注)の②については、私もこれも監査役や監査等委員との並びで、任期途中に解職、地位を失った者については一定の意見を述べる権利を認めるべきだと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○青委員 まず、指名委員会等設置会社の見直しについて述べたいと思います。   現状の指名委員会等設置会社の在り方に関して問題があるということで本日お話を頂戴したところでございますけれども、それに関してパブリックコメントに付すこと自体は考え得るのではないかと思います。ただ、その場合に指名委員会と報酬委員会に本質的な違いがあるという理由はむしろないというところを考慮する必要があると考えてございまして、両方同じような仕組みにするのか、あるいは少なくとも報酬委員会についても同様の見直しが考えられるというように触れていただく方が、後の出来上がりの形として、両者に本質的な違いがない点について説明が付きやすくなるのではないかと思われます。   それから、見直し後の姿を考えてみた場合に、取締役会が業務執行を担当している方々に対してしっかりと監督するというところを確保することが、方向感として非常に重要だと考えます。今回の取締役協会のお話を踏まえてパブコメに付すとしても、取締役会の監督権限が十分にワークしているということが大前提になるということを示していかないと、かえって委員会という制度がせっかくあって、社外取締役中心にワークさせていこうという状況から、むしろそうではない方向に権限を戻していくようなイメージに見えかねないのではないかというところは十分に考慮する必要があると思います。   その上で、中長期の課題として、今後の全体のスキームを考えていくべきではないかというお話を触れていただいてございますけれども、先ほどからも出てございます中長期というよりも、できる限り速やかに議論を重ねていくような継続的に検討していく課題として、株主総会、取締役会、取締役、執行役、委員会などの関係性について、権限分配も丁寧に考えながら、できる限り取締役会が中心になって、きちんと執行サイドを監督する形のワークのさせ方をどうすればいいのかというところを早めに考えていくようなことを進めていけるのが一番良いのではないかと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。 ○豊田委員 「2 指名委員会の権限の見直し」について、制定時と現在ではコーポレートガバナンスをめぐる状況が異なっているため、変更する場合の方向性については納得できる点があるというのは先ほど申し上げたとおりでございます。   また、先ほども申し上げた、制度が複雑になってしまうという懸念に関して、先ほど指名委員会等設置会社に移行する会社がどれくらいあるかという御質問に対して、改正すればかなりの会社が指名委員会等設置会社に移行する可能性があるというお話がございました。取締役会のうち社外取締役が過半数であることを前提とした変更によって、かなり多くの会社が指名委員会等設置会社に移行するということであれば、先ほど田中委員がおっしゃったように、それを一つの形態とする、要するに指名委員会等設置会社においては社外取締役は過半数とするということを定めても、それほど問題はないのかもしれないという印象を持ちました。   そうであれば、1で全体的な見直しをしないというふうに、中間試案において記載してしまうというよりは、複数の選択肢という形で示してもよいのではないかと思いました。特に海外の投資家含めた投資家の方の御意見を伺っていて、ガバナンスの改革が中長期的というよりは、もっと喫緊の課題であるというようなお話もございましたので、その辺りを考えると、もう少し踏み込むこともあり得るのかなと考えた次第でございます。   「3 監査委員会の権限等の見直し」については、この方向性に賛成しております。   ただ(1)について、内田委員もおっしゃっていたように、議事録の閲覧謄写ができない者を執行役を兼ねている取締役及び業務執行取締役にするのか、社外でない取締役にするのかという点につきましては、前回でも意見が出ていましたように、やはり執行役とツーカーといいますか、仲の良い、業務執行を行っていない取締役もいると思いますので、その影響を勘案した上で判断すべきと思っております。   (2)につきましては、前回出ましたように、委員を選定する取締役は株主総会で選ばれた取締役であるという点はあるものの、他方で、監査役の独立性という観点を考えると、どの取締役がどの委員になるということを株主総会参考書類に記載しておくという点につき、(注)も含めて賛成です。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○松井(智)委員 まず1の点につきましては、中長期的課題とするという方向性については理解をいたしましたけれども、見直しを全く考えずに短期的な改正について議論をするのか、そこを目指しながら現在短期的にすべきことを考えるのかによって方向性というのが変わってくると思いますので、特に2の点と関係するかと思いますので、全く見直ししないというような否定的なトーンで書くというよりは、久保田委員が提案してくださったように、一定の見直しの選択肢を中間試案で示すなどして前向きなトーン、中長期的にはこういった方向を目指すのだというトーンを出すということは一つ考えられるのではないかと思いました。   2、取締役会決議によって指名委員会の議論を変更できるという改正について、本日の御議論を伺っていて感じたこととしては、幹事、委員、皆様質問されていたこととして、結局2点ありまして、一つはこの変更によってガバナンスが実質的に改善するのかどうかということで、もう一つはこのように複雑化した点について投資家がどう見るのか、それから中長期的な会社の、会社法の設計の点で負のレガシーとして残らないかという、この2点だと思いました。   一つ目のガバナンスの改善についてなんですけれども、私が分からなかったのは、社長が特定の仲良しの委員を指名いたしまして、その人が中立性に問題があるけれども居座られてしまうという場合に解職ができない、解職するとレピュテーションリスクがあるからだということだとしますと、取締役会に案が出てきた委員会の案が覆されたという事実自体もレピュテーションリスクになってしまうのではないかと。覆すということを取締役会でむしろ提案すると再任されないということがあるのだとすると、結局、取締役会でも議論ができないのではないかという、また、それから、これがあるからといって指名委員会になりたいという会社は余りないのではないかという反論もございましたので、その効果というのがよく分からないというところが結局のインスピレーションでございます。ただ、それだけであれば、特にパブコメに付すか付さないかという点について、付さないという強い理由にはならないのかなと思いました。   他方で、もう一つの問題として、先ほどの指名委員会等設置会社を多くの会社が選ばないといけないのかという点について、法制度自体の評価にどういう影響を及ぼすのかということがあるかと思いました。どなたか委員の御意見として、指名委員会の暴走が心配だから見限られているのではないかというお話がございましたけれども、社外取締役の意見を結局取り上げないことができるから自由に意見を言わせるというのであれば、これは監査役設置会社の指向する方向に近い気がいたしますし、社外取締役の言うことが重要になるからおとなしい人を選ぶというのも、何か運用として正しい方向性ではないような気がいたしますし、また社外取締役が指名委員になれなくて頼りない位置に置かれるというのであれば、むしろ社外取締役が全員入った取締役会というのを作って、ここで決議するという運用の方が何か望ましいような気がするので、そういう意味ではこの制度を変えるというよりは、様々なところでサジェスチョンされているような運用で何とかできるのではないかと。この点、法制度全体を変更して、委員会の権限を弱めた制度というのを作って、今困っている少数の、少数かどうか分かりませんが、会社を含めてみんなが一斉に、委員会の権限を縮小しましたというメッセージを日本法として出すということ自体が、今これを大変な思いをして運用している会社にとっていいのかどうかという問題になってくるのではないかと思ったところであります。   バリエーションが増えることについて、先ほどのアメリカの法律では、そもそも千差万別であるということを御説明いただいているので、逆に諮問委員会運用にするような細かい工夫をすると投資家の理解が得られないという点に説得力があるのかどうかということも分からなくなりまして、そういう意味では、全体としてはパーセプションの変更を優先するという方が望ましいのではないかという印象に傾いております。その意味で、この提案については改正を行わないという選択肢を含め、あるいはそれを基本線としたことも含め、示す可能性ということについて考えていただけた方がいいかなと思いました。   監査委員については、ここに書かれている点について基本的に賛成いたしますし、また閲覧については田中委員がおっしゃるような独立性をより高めるという方向性も含めて検討するべきではないかと思いました。   補助者については、常勤の監査委員又は補助者が置かれるというのは監査の実効性の点で必要ではないかというふうに、なお考えているところでございます。余り要望がないということではございましたけれども、2線、3線の協力があるとしても、この部門の社員が連絡のためということで兼務しているということであったとしても、とにかく常勤者が全くいないという状況というのはモニタリングが利いていない状況であるように思えますので、少なくとも常勤者若しくは常勤補助者を定め、また置くということの要否について決議するといったような条文を置くことによって、少し法律の側からナッジするということが考えられないだろうかと思っております。   現状、マンパワーの不足から補助者さえも要望できないというような状況が監査委員にあるのだとすれば、監査委員のバーゲニングパワーが非常に少ないのだということだと思いますので、要望したら考えてもらえるというような法制度上の担保というのがあれば良いメッセージになるのではないかと思いました。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○齊藤委員 まず、既に出された御意見に重複いたしますが、1につきまして、モニタリング・モデルにかかる制度全体の抜本的な見直しが行われないとしても、中長期的な課題として考えていただければ有り難く思います。   2、3につきましても木に竹を接ぐような改正で、将来の整理を一層難しくすることは避けるべきではないかと思います。   そこで2、3についてですが、2は国際標準に近い取締役会、委員会制度に向かう改正と言えるのに対して、3は日本的な特色が強い監査等委員会設置会社の方に寄せる改正として、逆を向いているところもございまして、仮に両方を実現するなら、その趣旨をどのように説明するか、このあたりも整合的に整理する必要があるのではないかと思います。   私自身は、1で念頭に置かれている方向とは少し違うのかもしれませんけれども、太田先生から御紹介もあった諸外国の状況に近付けるように、少なくとも上場会社については、ハード・ローとしては、取締役会の構成員の過半数が社外であることを前提に、委員会の設計や権限については取締役会、あるいは田中委員がおっしゃった点を汲めば、株主総会が望むのであれば、株主総会の意向を尊重して、広く柔軟性を認め、具体的な委員会のモデル作りをソフト・ローに委ねていくことが望ましいと思っておりまして、そのような観点と今回の2(1)の指名委員会の改正をすることは親和的なものとして、支持し得ると考えております。むしろ、社外過半数であることが原則であり、社外取締役が過半数でない場合には例外的に指名委員会の決定をファイナルなものにするというように、原則、例外を位置づけるのがよいのではないかと感じております。   (2)の報酬委員会につきましては、既に御意見もございましたように、本来であれば、指名委員会の権限分配と同様に考えていくのが整合的ではございますけれども、現在の日本では、そうはいうものの、社外過半数であっても実質的な取締役会の独立性は必ずしも高くはないところが多いところ、報酬委員会の権限を見直すなら、取締役会から経営者への再一任を禁止することは当然として、会社法第361条のように、あるいはそれに類似するような株主総会の監視ということも考えていかなければならないように思いますので、単に(1)とそろえるという発想では足りないように思われます。そのようなことまで検討しないのであれば、今回は手を付けないということもあり得るのではないかと思います。   3につきまして現在御提案いただいているような内容であれば、日本的な監査役に過度に寄せるというほどでもなく、現在の監査委員、監査委員会の独立性が弱いところを改善する、解消するものにとどまるものとして、2(1)とともに改正を行っても矛盾することはないと思いますので、実現していただくことについて賛成いたします。むしろ、実現していただきたいとも思っております。   以上につきまして、一部の関係者におかれましては、こういった改正が指名委員会等設置会社が望ましいガバナンス形態であるように扱うことになるのではないかという御懸念もあるようでございますけれども、そうではなく、過去の会議でも申し上げましたけれども、現行法の制度上の問題点を解消するものにとどまると理解しております。   ただ、解消するといっても、今日御紹介いただいた暴走を防止すると位置付けるものでも必ずしもないだろうと思います。暴走と評価された理由が、会社の業務執行者が望む方向とは異なる決定がされたという点に求められているのであれば、それは平成14年改正が意図ないし予定していたことが現実になったにとどまるわけでございまして、現在の指名委員会等設置会社の意義は、経営者が取締役の候補者の選任に関する影響力を手放すというコミットメントを公に示す点にあるわけです。ですので、このような経営形態を選んだ際に覚悟すべき展開の一つだったのではないかと思います。   今回、2のような改正をするとして、その意味はどこにあるかといえば、現在の日本においては、日本的な監査役制度の影響を受けた監査等委員会設置会社と、大きすぎる権限を持つ委員会を有する指名委員会等設置会社とのどちらかしか選ぶことができず、国際的に標準的な機関設計であることを市場に対して分かりやすく示すオプションがないので、多少そのような選択に近いものを許すという、その程度の改正ではないかと思っております。   伝家の宝刀が実際に抜かれるかどうかも御議論がありましたが、抜かれる可能性があるかどうかは、改正の要否を検討するに当たり必ずしも決定的であると考える必要はないのではないかと思います。   例えば、取締役会が株主総会に出す提案が株主総会では余り覆されることがないからといって、株主総会にかける必要がないと考えられるわけではないのと同じように、取締役会で覆される可能性が潜在的にでもあれば、実際には、自分の手元で決められる場合から提案者の行動は変わるのでございまして、権限分配が変わるということ、それ自体に、たとえ権限が実際に行使されることがなかったとしても意義があるように思います。   最後に一般論なのですけれども、指名委員会等設置会社に限らず、社外取締役が過半数の会社は日本では増えているのですけれども、それは、決して取締役会の実質的な独立性が高まっていることを意味しないことは、今回の御紹介や御議論から改めて確認できたように思われました。   現実の社外取締役の働きは、社外取締役が出席する取締役会の運営を担う事務局に大きく依存しておりまして、例えばイギリスのセクレタリーのような制度がない我が国において、事務局は、多くの場合、経営者の指揮命令系統の下にございますので、業務執行者にとって都合の悪い情報は社外取締役にはなかなか提供されないでしょうし、会社法に通じた一部の企業法務関係者以外の方にとっては、指名委員会等設置会社の委員会と監査等委員会設置会社等で置かれる任意の委員会の違いや、ハード・ローである会社法の規定とコーポレートガバナンス・コードの規定の違いも必ずしも明らかでないように思われます。お教えいただきました、実務で法が予定していることとは異なったことが行われているのも、その辺りに起因しているのではないかと思います。   ですので、ガバナンスに係る実務関係者皆さんの意識の成熟が今後も進むという期待の下、今回の改正は、今後も長く続くガバナンスの改革の一里塚にすぎないものであって、この改正を行ったから実務が大幅に改善するだろう、あるいはそのような効果が期待できない改正ならする必要がないというような議論をする必要はないのではないかと感じております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○藤田委員 指名委員会等設置会社の問題点は、この制度は元々モニタリング・モデルを日本法の下で実現するために機関構成として導入されたところ、20年以上前に当時の状況を前提に設計したため、かなり特異な制度を作ってしまったことを現在どう考えるかということでしょう。取り分け社外取締役が過半数の取締役会が一定数現れつつある現在、見直してもいい機会ではないかという問題意識です。そういう改正を議論するなら、モニタリング・モデルを指向し、委員会型を採る場合にどんな機関構成を採ることが望ましいか、また26年改正で導入された監査委員会等設置会社とのすみ分けをどうすべきかといったことも踏まえて、指名委員会等設置会社の位置付けをはっきりさせて、在るべき制度を論じるべきはずで、本来そういう議論をするべきだと思いますし、それがなされることを期待していました。そういう前提で、取締役会構成員の過半数が社外者であるような会社を対象に委員会の権限を限定する、あるいは弱めたような、柔軟化したような新たなフォーマットも考えたらどうかということを過去の部会では申し上げました。   今回の提案の1のところを見ると、そういうことは時間的にできないということです。残念ではありますが、無理を言っても仕方ないのだとすれば、それは一応所与の前提として考えさせていただこうと思います。ただ、根本的な見直しはできないということを前提に、具体的な支障や不都合が生じている点に限定して見直しを検討するにしても、今齊藤委員がおっしゃったことですが、将来の改正を想定するとすれば、その方向をゆがめてしまったり、そのときに邪魔になるようなことにはならないような配慮はしておく必要があります。この点は後で触れさせていただきます。   その上で、「2 指名委員会の権限の見直し」については、これも何度も申し上げましたけれども、取締役会自体の独立性が確保されている限り、各委員会の権限、絶対視しなくてもいいということ自体は、発想としては決しておかしくはない、むしろ自然です。ただ、具体的な支障や不都合が生じている点に限定して見直すという方針を採るのだとすれば、委員会の権限を絶対視する必要があるかという形で問い立てるんであれば、具体的な弊害が何かを問うことになります。委員会の権限を絶対視する必然性はないとか、こういう制度は諸外国の法制とも整合性がないとか、そういったことをいくら強調しても、そのような理念的な問題指摘や批判だけでは足りないということになるのでしょう。   そこで現に生じている具体的な弊害としてはどのようなことがあるかということですが、改正提案が対象とするような社外取締役が取締役会の過半数を占める指名委員会等設置会社において指名委員会の人選を覆せないから困っているという事実があるか、社外取締役が過半数を占める指名委員会等設置会社以外の会社において指名委員会の権限ゆえに本来、指名委員会等設置会社になりたいにもかかわらずちゅうちょする会社があるかという問いの両方か、いずれかに対して、積極的にそうだと言えるのであれば弊害があるということになります。   すべての会社を相手に指名委員会等設置会社の指名委員会の決定を覆せないことに不安を覚えるか、そこにちゅうちょを覚えるかと聞かれれば、そうだと答える声は非常に広くありそうだと思いますが、聞くべき相手は、社外取締役が過半数の会社ということでなければ、我々が問題としているニーズとの関係では、答えになりません。社外取締役が過半数ではない会社は、たとえ不満があっても検討している改正の対象になりませんので、そういう会社の不満は解消しませんし、むしろ、そういう会社の不満は、取締役会の独立性を高めるつもりはないけれども、委員会の権限は弱めてくださいという要望ということになってしまいますので、むしろ聞いてはいけない声かもしれません。   指名委員会等設置会社を現実的な選択肢として考えていて、かつ取締役会が過半数だけれども、これゆえになれないというのが相当にあるのであれば、それはゆゆしき問題ですが、そういう声がどれだけあるかは今回のアンケートからよく分かりませんでした。   また、同じように、指名委員会等設置会社の中で不満を感じている会社があるという調査結果も、飽くまで社外取締役が過半数の会社でそういうことが起きているかどうかというのが問われるのですが、そこも余りはっきりしないところがあって、そういう意味だとアンケート調査の結果は、弊害についての直接的な答えになっているのかよく分かりませんでした。   ただ、アンケートに注文を付けるだけでは話が進みませんし、指名委員会が暴走する懸念がありそうだという懸念は理解しているつもりです。例えば社長と指名委員会委員長が結託して、取締役会が全然支持していないような人事が止まらないという事態が、現行制度の下で起きかねないということ自体は理解します。   ただ、本日のヒアリングで具体的な弊害事例として挙げられた例が、このような弊害の適切な例なのか、よくわかりませんでした。別の言い方をすると、今回の改正がなされると救われるようになるか、そういう懸念に対処するために改正が必要だという際に掲げる弊害として、適切なものかどうかが気になりました。   多くの委員・幹事からすでに指摘のあったことの繰り返しになりますけれども、指名委員会が非常に適性に問題のある執行役を選定してしまった場合に辞めさせられないという例は、そもそも現行法の下でも取締役会で覆せる問題なのにやっていないということなので、法制度自体とは関係もない話であり、今回の改正とも直接関係ない話です。指名委員会の法的権限が強すぎるから執行役の解任ができないという弊害を改正の理由として掲げるということは、たとえ指名委員会の法定権限以外の事項であっても指名委員会等設置会社の人事に関しては事実上取締役会が介入しにくくなるという、本来は法制度自体とは直接関係のないはずの弊害をどこまで法改正の理由としてカウントしていいかという疑問を引き起こします。   また、このような場合であれば、そもそも社外取締役が取締役会の過半数を占める会社であるか否かにかかわらず問題のあるCEOは取締役会で解職すべきだと思われるんですけれども、指名委員会が過半数であることを要件とすることで指名委員会の権限を制限することでこの問題に対処しようとすることは、取締役会が過半数ではない指名委員会等設置会社ではこの問題には対処できないという、おかしなシグナルになりかねないのも非常に懸念されます。   長くなるので深入りしませんが、指名委員会委員長が暴走して指名委員会が全く機能していないという弊害についても、本来であればそういう指名委員会のメンバーは取り替えなければいけない話で、それがお家騒動のイメージが出るからできないという話は、後の総会で委員会の委員の案を覆したことが分かって、指名委員会でそういう困った指名委員が意気軒高に演説などをすることでも十分ダメージを受けるような気もするので、本当に今回の提案で対応できることになるのかよく分からないように思います。   以上のとおり、今回、指名委員会の決定が覆せないことから生じる弊害として指摘された実例は、いずれも法改正によって救われるべき対象かどうか疑念を持ちました。私は元々、指名委員会の権限見直し自体にはむしろ前向きだったのですけれども、今日のヒアリングを伺った結果、誤解に基づき指名委員会の権限が過大に認識されている実務への対処として法改正を求めるかのような印象を受けてしまったことで、かえって疑問が出てきて、むしろ元々持っていた改正を支持する意見にちゅうちょを覚え始めたというのが正直なところです。ただ、だからといって、ここで直ちに改正に関する議論をやめろというつもりはなく、現行の指名委員会の権限の弊害として指摘された具体的な内容については、もう一度事務当局で整理し直して、改正の必要性の説明の中で指摘される懸念のうち、今回の改正と無関係に本来取締役会でできる事項と、今回の改正の対処が法的に必要な事項を明確に区別して整理した上で、どの限りで本当にこの改正が意義を持つかということを明示して、今後の議論につなげていただければと思います。世の中で言われている、指名委員会は権限が強すぎるスーパー委員会だから問題があるという話そのままを改正理由にしてしまうと、現行法について誤解に基づく実務を理由にすることで、それを追認する立法になってしまうことを懸念しています。   結論として、いささか妥協的に響くかもしれませんが、本日挙げられた例が適切なものかどうかはともかく、指名委員会の暴走の懸念自身は分からないわけではありませんので、中間試案に2の提案を載せること自体は支持いたします。そしてこれを掲げる場合には、指名委員会の決定を取締役会で修正した場合、後の株主総会における指名委員会委員の意見陳述権を認めるといった、取締役協会の提案にもあったような点も手直しする必要があると思いますので、そういった点も中間試案では入れてほしいと思います。   気になるのは要件で、取締役会の過半数が社外ということで足りるかどうかについても問題としては指摘してほしいと思います。対案を載せろというところまで申し上げるつもりはありませんが、現在の案がそのまま採択されると、社外取締役過半数の取締役会の業務執行者からの独立性についての一定の法的評価をして、その判断の適正さについても一定の積極的評価をして法的効果に結び付けるということを意味します。そして今後の機関内容の検討もその前提で進むことになる可能性があります。一部の委員、例えば内田委員から指摘のあったように、たとえ過半数が社外であっても、CEOが議長を務める取締役会というものの独立性をどう見るかということはいろいろ疑念もあり得ると思います。具体的な要件としても、取締役会のうちの社外取締役の数だけ見ていいかどうかということは問題にする余地があって、例えば指名委員会の決議を変更する決議に参加する者の過半数が社外であることとか、さらには取締役と執行役の兼任がある場合、つまり監督と執行の分離が徹底していない会社について何か別途配慮する必要があるか、例えば兼任している取締役は決議に参加できないというのは一つの対応ですけれども、そんなことを考えるか、あるいは、もうそういったことは割り切って社外取締役過半数でいいかといったことは論点となり得るので、一応検討事項として加えておいていただけないかと思います。   2(2)の報酬委員会については、指名委員会の権限を見直す場合に問題になります。確かに指名委員会との整合性ということだけ言えば、改正のアジェンダになってもいいようにも思えるですが、報酬委員会の決定は単に取締役会との権限分配だけではなくて、株主総会の権限から報酬決定を外すための条件は何かという問いも同時に考えなければいけないことになります。そもそも社外取締役が過半数であるか否かにかかわらず、報酬について株主が声を出せないような制度がいいかということ自身、問題になりうるところです。諸外国では近年むしろ、いかに株主の声を報酬に反映させるかということが重要なアジェンダにもなっています。そうなると、報酬委員会の権限をどうするかということは、株主総会との権限分配含めてむしろ長期的課題として検討した方がよい気がします。見直すなという意味ではないですが、単に指名委員会の権限との整合性だけで結論を出すべきものではないような気がします。   「3 監査委員会の権限等の見直し」は、このまま中間試案に諮ってよいと思います。   そのほか、いろいろな御指摘があった改善点については同時に検討していただくくといいと思うので、補足説明で触れていただければと思いますけれども、3の提案自体は載せていいものだと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。ほかに御発言はございますでしょうか。よろしいでしょうか。   続きまして、第2セクションでございますけれども、部会資料9の「第2 役員等の責任に関する規律の見直し」についての意見交換をしていただきたいと思います。 ○鮫島幹事 部会参考資料23の2.に沿って御説明いたします。   まず責任限定契約制度の見直しでございますが、経営陣が適切なリスクテイクを行うよう、取締役会が経営陣を後押しすることが重要であるという観点から考えれば、業務執行取締役等にも責任限定契約を締結することを認めて、損害賠償責任の額を一定範囲に限定することを認めることは経営陣が適切なリスクテイクを行うために必要不可欠であり、重要な意義を有すると考えてございます。具体的な要件については、経営陣の適切なリスクテイクを阻害、萎縮させることがないよう、明確性の観点から慎重に検討すべきと考えてございます。   また、株主代表訴訟制度の見直しにつきましては、会社が株主から提訴請求があった場合に、その対象となる役員は会社が判断を行うまでは不安定な立場に置かれますし、もし株主代表訴訟が提起された場合には、訴訟対応に追われる等、引き続き大きな負担を強いられることになると考えてございます。この株主代表訴訟の提訴権は、単独株主権でございまして、株主であれば誰でも役員に大きな負担を強いることができるということで、濫用される危険性を内在していると考えてございます。先ほど述べたのと同様に、経営陣の適切なリスクテイクを後押しする観点からは、一定割合の株式保有を提訴要件とするなど、単独株主権から少数株主権に変更することが望ましいと考えてございます。また、アメリカの訴訟委員会制度のように、社外取締役が過半数を占める取締役会であったり、社外役員3名以上で構成される独立性が担保された訴訟委員会などの機関が、株主代表訴訟の継続が会社の利益に反すると判断した場合には、裁判所が当該株主代表訴訟を却下できるような制度も検討に値すると考えてございます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○久保田委員 まず責任限定契約制度の見直しについて、(1)の提案、すなわち株式会社が責任限定契約を締結することができる相手方に業務執行取締役等である取締役及び執行役を加えることに賛成いたします。問題は、どのような場合を責任限定の対象外にすべきかです。この点について、第5回会議で松中幹事、北村委員、行岡幹事とともに、私も構造的な利益相反がある場合については、安易に責任限定を許すべきでない旨の発言をしまして、今回(2)の提案をしていただいたわけです。そのことは大変ありがたく思っていまして、最初に拝見したときは、この規定文言でよいような気もしたのですけれども、その後改めて考えてみたところ、少し気になる点といいますか、検討を要する点が3点ほどあるように思います。   その第1は、今回の規定文言ですと、業務執行取締役が実質的な利益相反取引をした場合は、常に責任限定契約に基づく責任限定の対象外ということになりますが、それでよいのかという点です。すなわち、実質的な利益相反取引をするに当たり、業務執行取締役等が慎重に検討した上で、取引時点では合理的であると考えられる条件で取引を行ったのだけれども、会社に損害が生じた場合というのもあり得えます。その場合には業務執行取締役等に任務懈怠が認められないという見解が有力ですが、解釈に争いがありますので、任務懈怠が認められる可能性もあるところ、そのような場合には責任限定契約に基づく責任限定を許してよいと考えることもできるかと思います。   第2に、今回の規定文言ですと、業務執行取締役等が実質的な利益相反取引は行っていないのだけれども、取引条件の決定に関与するなど、何らかの形で取引に関与している場合は責任限定の対象に含まれることになりますけれども、それでよいのかという点も問題になるかと思います。   第3に、責任限定契約に基づく責任限定の対象外とするのは、本当に(2)のアとイに規定されている場合だけでよいのかも問題になります。例えば、デラウェア州の会社法に規定されているような意図的な不正行為の場合や、認識ある法令違反を含む作為・不作為の場合なども責任限定の対象外にすべきであると考えることもできます。また、ほかにも責任限定の対象外にすべき場合はあり得るかもしれず、それらを全て規定で具体的に書き切ることができるかという問題もあります。   このように考えますと、結論を出すのは時期尚早だと思いますけれども、現時点での個人的な感触として、むしろ規定文言上はこれまでと同じく、業務執行取締役等に悪意・重過失がある場合というのを責任限定の対象外にしておいた方がよいかもしれないという気もしています。   その上で悪意・重過失の有無の判断に当たっては、実質的な利益相反の有無や程度、当該取引への業務執行取締役等の関与の対応などを総合的に考慮すべきであること、あるいは意図的な不正行為の場合や認識ある法令違反を含む作為・不作為の場合も責任限定の対象外にすべきであるとした場合は、それらの場合には悪意・重過失が認められると解されることを、例えば立法解説の中で言及していただくことを通じて明らかにするという対応も考えられるように思います。   「2 株主代表訴訟制度の見直し」については、見直しをしないことにするという部会資料の提案に異存ありません。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○松中幹事 まず前提として、今回の改正がもし実現して、これがアにとどまるか、イも入れるかはともかく、今回の改正が実現して、既に非業務執行取締役等について責任限定契約を締結できる旨の定款規定がある会社が業務執行取締役を責任限定契約の対象に追加するという場合、これは定款変更は必要になるのでしょうか。それとも、そうではなく、もう責任限定についての定款規定はあるんだから、そのまま単に契約を結べばいいということになるんでしょうか。 ○神作部会長 事務当局から前提についてお話しください。 ○相澤関係官 事務当局としては、新たな定款変更が必要になるという想定でおりました。 ○松中幹事 ありがとうございました。そこは合理的な立場だと思いますが、そのことは明らかにしておいた方がいいのかなというのが少し気になったところであります。   その上で、私は何らかの形で利益相反、構造的な利益相反がある場合が排除されるというのを明確にしておくべきではないかなと思います。というのも、株主も、そのような利益相反状況でも責任が限定されるかもしれない、解釈でよっぽど明らかにされていれば別ですけれども、今回新しい問題ですので、それがはっきりせず、もしかしたら、利益相反状況でも責任が相当に限定されるかもしれない、そのような場合に定款変更に賛成してくれるかどうかという問題があろうかと思います。現在、会社法第425条、第426条、なかなか使い勝手がいいわけではないというふうに認識されていると思うんですが、それと同じ問題が出てくるのではないかと思っています。   結局、問題がある場合をきちんと排除できるかどうかというのが、業務執行取締役等を責任限定契約の対象に加えていいかどうかのポイントになる。大きな問題は個人的にはここだけであると思っています。そのやり方として一つは、利益相反の場面をくくり出して、きちんとこの場合には排除されますと明示するやり方が一つ。もう一つは、先ほど久保田委員がおっしゃったようなやり方が一つあるんだろうと思います。ただ、利益相反がある場合について、悪意・重過失の中にどこまで入れていけるのか。これは、もしかしたら従来考えていた悪意・重過失の内容と相当違うことになるのかもしれない。それはそれで構わないんだという考えもあるのかもしれないんですけれども、少なくとも従来考えていたことの延長でそのままいけない内容だと考えています。   もう一つ、利益相反が僅かでもあれば、では全て責任限定できないのかというと、恐らくそうはならないと思います。軽度な利益相反であるとか、久保田委員がおっしゃった一つ目の例などは、そもそも任務懈怠がないんだということで、責任限定の対象になるかどうか以前の問題で、責任がないというふうに対処するべき問題のようにも思っています。   その上で、もしイを入れないというふうにすると取り分け問題になりそうなのが、会社法第356条の延長で全く捕捉できない部分です。取り分け支配株主や親会社に関する行為とか、あるいは取締役自身の利益相反を考えたとしても、MBOが頓挫したような場合に、かつ重過失とまでは言えないような行為、それから、利益相反はあるんだけれども、利益相反取引とは認識されていない、取締役に対する新株発行のようなものです。こうしたものが全部責任限定の対象になる可能性が出てくる。これは結構問題なのではないかなと思います。そうしたものを全部悪意・重過失で捕捉できるか、共に問題になろうかと思っています。   あとは細かいことなんですが、イを入れるとしたら、利益が実質的に相反する取引という、何らかの「取引」に限定してしまうよりも、「行為」にしないと変に狭くなるのかなというところがあります。もう一つは、部会資料9の9頁に挙がっている取引は飽くまで例示なので、ここに挙がっているものが全てというわけではありませんし、書き尽くすことはできないと思うのですが、余り会社法第356条第1項の延長線上だけで考えない方がいいのかなと思っています。今は会社法第356条第1項各号の類推適用ができそうな場面を挙げているかと思うんですけれども、そうすると、支配株主関係とか全部なくなってしまいますので、それとは別に、これまで問題になってきた利益相反のありそうな場合というのを考えるべきなのではないかなと考えています。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○北村委員 1の責任限定契約の見直しについてコメントします。責任限定契約の対象者に業務執行取締役や執行役を含めるということについては、第5回会議で申し上げましたとおり、その方向性に賛成いたします。問題は業務執行取締役等または執行役の責任限定契約の対象となる責任から何を除くかですけれども、第5回会議では悪意・重過失を除くだけでは足りないのではないかということが議論され、私は、会社法第356条第1項各号の取引についての責任は対象から除くべきである、仮にその取引について取締役会の承認があったとしても、その取引を行ったことについて会社法第423条第1項の責任が発生したとすれば、それについては責任限定契約の対象外とすべきという意見を申し上げました。   イについては、実質的に利益が相反する取引とするか、先ほど松中幹事のおっしゃったように取引に限定せずに行為とするかという選択肢がありうるところですが、本来的にはイについても責任限定契約の対象から除くことが望ましいと思っております。ただ、限定契約の対象範囲が曖昧になりますと、責任限定契約の趣旨が損なわれることになりかねないという懸念があります。責任限定契約は、事前に責任の範囲が限定されていることによって適切なリスクテイクができるようになる、というのが趣旨であると考えますと、その対象範囲はある程度明確でなければならないと思います。会社法第356条第1項各号は、解釈で拡大される可能性はありうるとしても、一応既に存在する具体的な条文ということになりますので、対象範囲が明確化します。   部会資料9の9ページの第2段落で、会社法第356条第1項各号に該当するか議論のある取引として㋐から㋔の例が示されています。この中で㋑、㋒、㋓については、私は、解釈として会社法第356条第1項各号の取引に該当しうると思っております。このように、会社法第356条第1項各号の条文解釈で拡大できる範囲の取引を責任限定契約の対象外とすることで、責任限定契約の対象となる責任の範囲をある程度明確化すべきと思っています。   もっとも、パブリックコメントの段階で、本来的に利益相反的な取引ないし行為は、責任限定契約の対象にすべきでないというメッセージを打ち出すということは非常に有益なことと思いますので、パブリックコメントの段階でアとイを並列させるということに異存はございません。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○矢野幹事 まず1につきましては、この提案には反対します。   まず、そもそもこの趣旨ですけれども、攻めの経営のためにといったことで始まっている話かなと一応理解していますけれども、そのために責任限定できる範囲が業務執行全部ということでは範囲として広すぎると考えます。業務執行には、例えばコンプラ対応などのバックオフィス側の執行といったものもありますし、そうした場合に、仮に責任限定があって、ほかの補償とかもあるから本人の負担はゼロだということになると、結局モラルハザードが起きていってコンプラ対応といったものがおろそかになってしまうということを懸念しています。   そもそもなんですけれども、攻めの経営で考えられているというものは、リスクのある取引を行った結果、失敗に終わった場合というのが想定されている事例かと思いますけれども、この場合は経営判断原則や信頼の原則が働くので、そう簡単に取締役の責任が認められるということはないはずだと理解しています。それが不明確ということでしたら、経営判断原則や信頼の原則をきちんと明文化していくというのが最も良い解決かと思います。逆に、これらの原則が働いてもなお責任があるとされる場面となると、故意や重過失があると認定される場合がほとんどではないかと思います。そうすると、結局、責任限定は働かないという理屈になりまして、結局、そうすると攻めの経営と責任限定契約は無関係というのが結論ではないかと正直思っています。   重過失か軽過失かということについては、誰が見ても分かるような明確な線引きがあるというならば、それが積極的な行為をとる際の後押しになるという効果はあるんですけれども、現状の法制度ではそこが非常に曖昧です。我々法律家でも明確に分かるものではありません。そうすると結局、行為時の積極的な行動の後押しになるという効果はないと思います。例えば、車を運転しながら、いちいち自分の運転が重過失なのか、軽過失なのかということは考えたりはしない。それと同じことかなと。運転しながら、教えられたルールに沿っているかとか、過失とならないかといった程度のことは考えるにしても、軽過失で済むだろうから一時停止しないで突っ込んでしまえばいいということはしないはずです。それは法も予定はしていないということですし、逆に法改正によって、軽過失だから突っ込んでいいですよということを、メッセージとして出すというのは、私は誤りではないかなと思います。この規律自体は結果的に救われるというだけの話で、行為時の準則にはならないということを前提に考えるべきです。攻めの経営ができないというのは、こんなところに原因があるわけではないというのが私の考えです。そうしますと、結局この改正を行われたとしましたら、実際に働く場面というのは攻めの経営とは関係がない場面ばかりということになるという理解です。   攻めの経営以外の場面で、こうした場合は軽過失の場合で、責任限定する必要があるという場面があるのであれば、それをきちんとくくり出した上で、その場面に限定するということをきちんと議論して規律を定めるというのが私が適切ではないかと思います。その範囲は私もはっきり分かりませんけれども、非業務執行取締役や社外取締役と同じ義務の範囲というのが大ざっぱなめどなのではないかなと思ってはいます。そういう意味では反対とは申し上げていますけれども、先ほど来、ほかの委員、幹事の先生がおっしゃったことの裏返しの話なのかもしれません。今回、ブラケットが定められているわけですけれども、こうした考えが出てくるというのは、業務執行取締役の場合は責任限定契約を働かせるべきではない場面がありそうではないかという感覚があるからだと思います。成り手がいなくなるとか、そういった大ざっぱな議論で広範な責任限定契約を定めるというのは非常に危ない議論であると理解していますので、きちんとどういった場面で必要かというところを細かく出していただいて、それで検討していただきたいと思います。   もう1点、また前回も申し上げましたとおり、潜脱の要因になっているという点も非常に問題であると理解しています。ただ、この点は業務執行取締役だけではなくて責任限定契約全般に存在する問題であるということなので、別途検討した方がよいかなと思います。現状、責任限定契約がある事例で、まだはっきり分かっているわけではないんですけれども、例えば社外取締役で出身母体の方から報酬等をもらって、当該会社からの報酬はゼロとしている例や、非業務執行取締役で他の関連会社で報酬をもらうといった例など、潜脱ではないかと疑われる実例も存在しているようだという話も若干聞こえてはきました。業務執行取締役の場合だと、執行役員報酬と取締役会報酬を分けるという例はよく見られるところかと思います。今回の例で後者だけということにしてしまうと、規律としては不十分ということになるかと思います。   補足説明の方では、最低責任限度額と定款で定めた金額の高い方とするという記載がありますけれども、わざわざ責任を重くするような定款変更を自発的にする会社などは恐らく限りなくゼロということだと思いますから、ほぼ全社、最低責任限度額となるということは明白で、それで防止策になっているとは思えません。潜脱を防止するのであれば、法で例えば最低責任限度額を何億と定めて、それと6年分の高い方とするとか、何年分というところも、その会社からの金銭報酬だけではなくて、株式報酬や配当、あと役員報酬以外の執行役員等としての報酬、あと子会社などの関連会社からの報酬、配当--まあ、給与があるのかはちょっと分からないですけれども、そういったもの。あと一定の割合以上を有する株主から受領している報酬、給与、配当。これは資産管理会社が株式を保有している例というのを想定していますけれども、そういったものまで捕捉するということが必要なのではないかと思います。特に業務執行取締役の場合は、執行役員部分や他の関連会社でという行動が、ほかの取締役に比べると容易だというところはあるので特に検討する必要がありますけれども、ただ、社外や非業務執行だからそれがないというわけではないというのが今の現状にあるかと思いますので、これらは責任限定契約一般の話であるということで別途議論をしていただきたいと思います。   ただ、1の規律につきましては現状では広すぎると考えますので、反対いたします。   2の内容については賛成いたします。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○仁分委員 株式会社が責任限定契約を締結することができる相手方に業務執行取締役等である取締役及び執行役を加えることについて、賛成いたします。   ただし、部会資料9の6ページの(2)の規律、すなわち利益相反取引等により生じた責任を責任限定の対象外とする規律については設けるべきではないと考えます。会社法第427条第1項により、責任限定契約による責任限定は、取締役が善意でかつ重大な過失がない場合に限って認められており、悪意又は重大な過失がある場合には責任限定の対象外となります。また、会社法第428条第2項により、自己のために直接取引を行った取締役等の責任は責任限定の対象外とされております。これらの規律に加えて、業務執行取締役等である取締役及び執行役についてのみ、会社法第356条第1項各号の競業取引及び利益相反取引による責任全般を一律に責任限定の対象外とする必要はないと考えます。実務において多い利益相反取引は、株式会社の取締役が他の法人の代表者を務めている場合に株式会社が当該法人と取引を行うようなケースですが、そのような場合に取締役会の承認を受けて取引を行い、加えて、取締役が善意でかつ重大な過失がなかったにもかかわらず責任限定の対象とならないとするのは合理的ではないと考えます。   また、6ページのイにつきましては、どのような取引が対象外となるのかという判断が難しく、法的安定性を欠くという問題もあります。   次に「株主代表訴訟制度の見直し」について、部会資料9では「見直しをしないものとすることでどうか」とされておりますが、第5回会議で申し上げましたとおり、提訴請求や株主代表訴訟の提起がなされると、役員に責任がなかったとしても、会社や役員に多大な時間、労力、費用の負担が生じることになりますので、役員や株式会社にそのような負担を強いることになる現行の株主代表訴訟制度には疑問を感じます。中間試案では、見直しを行う案も含めて意見を募集していただきたく存じます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○豊田委員 第2につきましては、役員に対して予想も付かない巨額の賠償金が科せられ得るということについての現実的な問題はあると感じておりますので、何らかの方法で、資料の7ページに記載している①の懸念、すなわち当該会社からの報酬を安く抑えて実質的には、矢野幹事もおっしゃっておりましたけれども、ほかから金銭を得るというような潜脱が容易に行われ得るという点を何か手当てできるのであれば方向性としてはよいのではないかと考えております。ただ、この資料に記載されている、定款で限度額を適切に設定するということは、私もなかなか現実的ではないと思っております。また、配当、他のグループ会社からの報酬などを適切に定められるのかという点については、いろいろな潜脱方法があり得るので、全て網羅するというのはなかなか難しいと思いますけれども、知恵を絞っていただいて、潜脱が実質的に行われ得るという状況を一定程度手当てすることによって、この制度を入れるということに賛成いたします。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○田中委員 第2の「1 責任限定契約制度」についてですけれども、種々議論はあるかと思いますが、私は業務執行取締役等についても責任限定契約を認める方向の見直しを考えていいと思います。   もちろん、業務執行者の責任限定というのは濫用のおそれが強いので、諸外国でも慎重に捉えられていることでありますので、当然賛否両論あってしかるべきであると思います。ただ、こと日本法に関して言いますと、日本では経営判断原則がとられているとはいえ、裁判所は経営判断の内容面まで立ち入ることが一般的であり、その中には裁判所が後知恵的に判断して、結果的に損害が生じているということを重視して、行為時で見ても不合理な判断であったと結論づけているように見える裁判例がないではないと考えております。   また、日本では監視義務違反の責任がかなり問われるところがありまして、これはもちろん、違法な行為をしていることがもう明々白々に分かっているような場合であれば、取締役の責任制限は認めるべきではありませんし、また、そういった場合は、いずれにせよ取締役には悪意があるので責任限定は認められないと思います。しかし、実際の事例では、会社において何か疑わしいことがあって、取締役はそれなりに対処しているんだけれども、しかし、その後に更に違法行為が繰り返されたというようなケースもあり、その中には取締役が監視義務を尽くしたかどうかの微妙なケースもあると認識しております。こうしたケースにおいて、取締役には義務違反が認められず、従って責任は全く負わないとされるか、または義務違反が認められて、義務違反と因果関係のある損害全部について責任を負うかという二者択一というのは、必ずしも取締役の業務執行の適正を図る上で適切なルールとは言えないのではないかと思います。   現行法の下では、悪意や重過失がない業務執行取締役も、過失があると認められれば、損害については原則全体で責任を認められますので、個人である取締役には負担し切れないようなリスクを負わせることになります。私は、個人に過大なリスクを負わせるということ自体が社会的には望ましくないことなのであって、それが社会的に有益なリスクテイクにつながるとか、つながらないとかいうことは、事前の責任制限を認めるために必須の考慮要素ではないと考えております。基本的に個人はリスク回避的なものですから、必要でない責任リスクは負わさないことがそれ自体として望ましいわけです。   私自身は、先ほど言ったように、現在、日本の経営判断原則は、義務違反があるかどうか微妙なケースで取締役に責任を負わせる可能性を現実的に有するものであり、その点で、実際にリスクテイキングに対して萎縮効果を持つ面があると私は思っていますが、仮にその面の問題は小さいとしても、個人である取締役が負担するリスクを軽減するという点だけでも、取締役の責任を一定限度に限定するという政策は支持できると考えております。   それから、矢野幹事が言われたような、様々な形で規制が潜脱されるということについては、まず現行法でも、事後的な責任限定は業務執行取締役等についても認められており、そこでは、責任額の基準となる報酬額について、狭義の取締役の報酬以外の財産的利益も範囲に含めています。このような潜脱防止の規制は、事前の責任制限契約を認める場合にも同じくかけられるはずです。それでも潜脱が防げない部分がもしあるとすれば、それはしかるべく規制を強化し、しかもその規制は、事前の責任限定契約だけでなく、事後の責任限定についても及ぼしていくという形で対処すべきです。逆に言えば、そういう潜脱の危険があるというだけで、責任限定契約を一律認めないということにはならないと思っております。   最後に、責任限定契約の責任の限定の対象外にする取引の範囲についてなんですが、私もここは迷っておりまして、数日前まではアに加えて、イのような取引類型を設けると、どのような取引がこれに入るかが明確でないために、責任限定を認める意義が損なわれるようにも思えて、アの類型に限るということもあり得るかなと思っていました。しかし、先ほどの仁分委員の御発言も勘案してみると、むしろ、イのような取引の方が株主の合理的な意思としても、また社会通念としても責任制限すべきではないと思われるケースを捉えているように思えました。つまり会社法第356条第1項の類型というのは、会社と取締役自身の利益だけでなくて、第三者の利益とも相反するような取引も規制対象になっているため、グループ会社間の取引などが広く入ってしまうということがあります。そういうことを考えると、むしろ端的に、株式会社と取締役との間の利益が相反する取引による責任を責任制限の対象外とすることにし、どのような取引がそれに当たるかは解釈に任せるという、こちらの方があり得るように思いました。   こうした規定は、もちろん限界事例では不明確な場合もあるでしょうが、利益相反のない通常の経営判断や監視義務違反の責任が問われる事例は、この規定の下で責任限定の対象になることは明確です。また、グループ会社間の取引など、取締役個人のポケットにお金が入らないようなケースまで責任限定の対象にしない理由はないと思います。更に言うと、現行法の下でも、会社法第356条第1項第3号は会社と取締役との利益が相反する取引という文言になっており、会社と取締役の利益が相反する取引とは何であるかは、いずれにせよ解釈問題になるわけですので、イのような規定を入れることによって、不明確性が更に増すということでもないようにも思えます。悪意・重過失がある場合に加えて責任限定の例外を設けるというのは、アメリカ法などを参考にしても十分考えられるところで、その場合は、今言ったように、取締役個人の利益相反がある場合を端的に捉えるような規定の方が説得的に思えますので、是非その方向を御検討いただきたいと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○藤田委員 責任限定契約の見直しは、このような案を中間試案に載せること自身は賛成です。ただ、このような改正をした場合の制度趣旨が現在の資料だと明示されていません。制度趣旨についてこの部会の内部でもコンセンサスがないことの表れかもしれませんが、この点を明らかにするようにはしていただきたいと思います。恐らく取締役の種類に応じて責任限定契約に異なった意義が与えられることになると思いますが、非業務執行取締役については従前の考え方を維持するとして、業務執行取締役の場合の意義について何らかの説明を示した上で、中間試案はパブリックコメントに諮ってほしいと思います。   要件については、おおむねこれでいいと思うんですが、確認したい点があります。ここで挙がっている例外事由です。(2)で掲げられているのは、現行法で設けられている悪意・重過失に加えて業務執行取締役の場合にはこれも加えるという趣旨だと私は理解したのですが、そういう趣旨でよろしいでしょうか。さもないと、利益相反取引以外は全て責任限定契約の対象となってしまい、それ以外はあり得ないと思い、そう読んでいます。したがって、悪意・重過失は除かれるので、例えば認識のある法令違反はそちら側の要件で落ちるという理解です。以下そういう前提でコメントさせていただきます。   現在の提案ですけれども、アは確かに広すぎるし、また狭すぎます。広すぎるというのは、すでに御指摘にあったように、第三者のためにする利益相反取引が入ってしまいますと関係会社間取引一般に広がりかねないというのは、確かに懸念として理解できます。他方、自己のためにする利益相反取引に限定するのは幾ら何でも狭すぎるのは、誰でも思うところでしょう。そういう意味では、むしろ今田中委員が言われたように、イの方のようなものを中心にした方がいいかなという気はします。アを書くなという趣旨ではなくて、自己のためにする利益相反取引に限定して言及するだけなら弊害はないのでいいとは思いますけれども、これ以外にも利益相反がある例はいろいろあるからイと併用するということです。   次に、イについては現在の書き方は、取引ということに限定してイを立てているのですが、代表取締役は自分や自分の身内にただ同然の値段で株式を割り当てるような行為は「取引」ではないので全部落ちていいのですかという疑問がでてきます。ここは取引に限定しない形で書けないか検討できないでしょうか。会社法第348条の2第1項に「株式会社と取締役との利益が相反する状況にあるとき」という文言があって、これを基本にするなら、「株式会社と取締役との利益が相反する状況において行われた行為に基づく責任」といったような書き方になると思います。予見可能性が大事だという意見も分かりますが、諸外国の法制をみても、こういう責任限定などの例外について、予見可能性が大事だから具体的な列挙事項に限定するということはさすがにしていません。利益が反する状況での行為といった表現を使ったからと言って予見可能性が損なわれ、何にも契約の効果がないということにはならないと思いますし、こういうルールの性格上、ある程度包括的な限定というのもやむを得ないような気がしています。   「2 代表訴訟」については、特に私は意見はございません。これでいいと思っております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○齊藤委員 既に出た御意見と重なる部分はあるのですけれども、もし利益相反関係がある者について特別な扱いをするということでございましたら、会社法第356条は長年改正もされておらず、古い解釈論とも結び付いておりまして、過不足なく必要な範囲を捉えているとも言えませんし、確かに会社法第423条第3項や第428条においては、同条とひも付けられているのですけれども、このひも付け方が解釈論に混乱を生じさせているところもございますので、第356条とは違う要件立てをしていただければと考えております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○行岡幹事 手短に4点申し上げたいと思います。   まず1点目は資料の7ページで、前回私が申し上げた制度の許容性についての論点を取り上げていただき、整理していただきました。ありがとうございました。ここで示された整理に、私としては異存ございません。   2点目ですけれども、矢野幹事が指摘された悪意・重過失についてです。後知恵的に重過失ありとされるリスクはあるという御指摘だったかと思いまして、これは確かにおっしゃるような懸念は排除できないだろうと思いました。これに対処し得る一つのアイデアとしては、米国のように、たとえ重過失であっても、取締役が忠実かつ誠実に行動していた場合には責任制限を認めるというような制度設計も、理論的には検討に値するかもしれないと思っています。ただ、従来の日本法の考え方からは大きく乖離してしまうアクロバティックな提案であり、法制的に採用することは難しい考え方だろうと思います。   3点目ですけれども、利益相反に関してですが、責任限定契約から利益相反取引をカーブアウトすべきだという御提案に賛成です。さらに、田中委員、藤田委員が指摘されたように、構造的な利益相反性のある取引をどこまで例外の対象とするかは検討の余地があると思います。例えば、松中幹事が指摘された支配株主が関連する取引やMBOのように、会社法第356条では捕捉されないけれども、自己又は第三者の利益の追求によって業務執行者の判断がゆがめられるおそれがある取引や行為によって会社に何らかの損害が生じた場合については、たとえ軽過失であっても責任制限を認めないという考え方が合理的であると思います。その意味で、イのような一般的な文言で適用除外を認めることが望ましいと思いますけれども、北村委員が指摘されたように、文言が抽象的となって概念が不明確になるというデメリットはあるかと思います。   4点目ですけれども、利益相反であれば常に責任限定契約の対象外となるということでよいのか、一定の場合には例外の例外を認めるべきではないかという久保田委員が指摘された問題についてです。私もこの点は前々から気になっておりました。これに対処し得る一つのアイデアとして、例えば、当該取引について利害関係がなく、かつ利害関係のある者から独立の取締役によって承認されたなど、当該取引の利益相反性を解消するような公正な手続がとられた場合には責任制限の対象とすることを認める、というような考え方が理論上はあり得るかもしれないと思います。ただ、先ほどの2点目と同様、これも従来の日本法の考え方からはかなり乖離してしまうので、法制的に難しいだろうと認識しております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。お約束した18時が近付いてまいりましたけれども、御発言を御希望の方はいらっしゃいますでしょうか。よろしいでしょうか。   第3については年明けの二.五読会議の方に回させていただくこととし、本日の会社法制部会はこれにて閉会にしたいと存じます。本日も大変活発な御意見を頂き、誠にありがとうございました。それでは、次回の議事日程等について事務当局から御説明をお願いいたします。 ○宇野幹事 次回の日程は来年1月28日水曜日、午後1時から午後5時30分までを予定しております。場所は法務省地下1階の大会議室でございます。   次回の冒頭に今日の積み残った部分については議論させていただいて、その後二.五読の方の論点を補足的に検討するのが次回で、その次の次々回には中間試案の取りまとめに向けた検討に進めるようにスケジュールを調整していきたいと思っております。よろしくお願いいたします。 ○神作部会長 それでは、法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会の第9回会議を閉会とさせていただきます。本日も大変活発な御議論を頂き、誠にありがとうございました。どうか良いお年をお迎えください。 ―了―