法制審議会 第204回会議 議事録 第1 日 時  令和8年2月12日(木)   自 午後2時02分                        至 午後4時04分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  (1)遺言制度の見直しに関する諮問第125号について  (2)成年後見制度の見直しに関する諮問第126号について  (3)自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律の一部改正に関する諮    問第128号について  (4)刑事再審手続の在り方に関する諮問第129号について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○神渡司法法制課長 ただいまから、法制審議会第204回会議を開催いたします。   本日は、委員19名及び議事に関係のある臨時委員3名の合計22名のうち、会議場における出席委員20名、ウェブ会議システムによる出席委員1名、計21名に御出席いただいておりますので、法制審議会令第7条に定められた定足数を満たしていることを御報告申し上げます。   初めに、本会議の開催に当たりまして法務大臣挨拶がございます。 ○平口法務大臣 会議の開催に当たり、一言御挨拶を申し上げます。   委員及び幹事の皆様におかれては、御多用中のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。   本日は御審議をお願いする事項が四つございます。いずれも本日、調査審議の結果が報告されるものと承知しております。   まず、議題の第1は、遺言制度の見直しに関する諮問第125号について、第2は、成年後見制度の見直しに関する諮問第126号についてでございます。これらは、いずれも令和6年2月に諮問したもので、同年4月以降、調査審議が行われてきたものと承知しております。遺言制度につきましては、高齢化の進展やデジタル技術の進展・普及等の社会情勢を踏まえて、国民にとってより利用しやすいものにする必要がございます。また、成年後見制度につきましても、高齢化の進展等によるニーズの増加や多様化を踏まえ、本人の権利利益の擁護を図りつつ、そのニーズに対応した利用しやすいものにする必要がございます。   次に、議題の第3は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律の一部改正に関する諮問第128号についてでございます。こちらは、令和7年2月に諮問したもので、同年3月以降、調査審議が行われてきたものと承知しております。危険・悪質な運転による死傷事犯への対処は、喫緊の課題であり、適切な対応が求められております。   そして、議題の第4は、刑事再審手続の在り方に関する諮問第129号についてでございます。こちらは、令和7年3月に諮問したもので、同年4月以降、調査審議が行われてきたものと承知しております。再審制度については、近時、一部の再審請求事件につき審理の長期化が指摘されているほか、再審手続についての明文規定が乏しいため適切な運用に困難が生じているなどの指摘がされており、再審手続が非常救済手続として適切に機能することを確保する必要がございます。   いずれの諮問につきましても、所要の法整備を早急に行う必要がございます。委員の皆様には、これら4件の議題について、御審議の上、できる限り速やかに答申をいただけますよう、お願い申し上げます。   それでは、御審議をよろしくお願い申し上げます。 ○神渡司法法制課長 法務大臣は公務のため、ここで退席させていただきます。           (法務大臣退室) ○神渡司法法制課長 ここで報道関係者が退室いたしますので、しばらくお待ちください。           (報道関係者退室) ○神渡司法法制課長 まず、事務局から会議に当たりましての留意事項を御案内いたします。ウェブ会議システムにより御出席の委員におかれましては、御出席されていることを確認させていただくため、会議中は常にカメラをオンにしていただきますようお願いいたします。また、本日の会議はペーパーレス化によりタブレット端末による資料配布となっております。操作方法等について御不明の点がある場合は、事務局に適宜お知らせください。   では、佐伯会長、お願いいたします。 ○佐伯会長 佐伯でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。   まず、審議に先立ちまして関係官の出席についてお諮りいたします。今回の議題の内容に鑑みて、民事局の齊藤参事官、波多野参事官に関係官として審議に参加していただきたいと考えておりますが、よろしいでしょうか。   御異議もないようですので、お二方に関係官として審議に参加していただくことといたします。   それでは、本日の議題に入りたいと思います。先ほどの法務大臣御挨拶にもございましたように、本日は議題が四つございます。   まず、遺言制度の見直しに関する諮問第125号について御審議をお願いしたいと存じます。   それでは、民法(遺言関係)部会における審議の経過及び結果につきまして、同部会の部会長を務められました大村敦志臨時委員から御報告をいただきたいと存じます。大村部会長、報告者席まで御移動ください。   それでは、お願いいたします。 ○大村部会長 民法(遺言関係)部会の部会長の大村でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。   この部会では、法務大臣から令和6年2月に諮問を受けた諮問第125号について約2年にわたり調査審議を重ね、本年1月20日に開催された第17回会議において「民法(遺言関係)等の改正に関する要綱案」を決定いたしました。本日は、その概要等について御説明、御報告をさせていただきます。   遺言制度の見直しに関する諮問第125号は、「情報通信技術の進展及び普及等の社会情勢に鑑み、遺言制度を国民にとってより一層利用しやすいものとする観点から、遺言者が電子的な手段を用いて作成することのできる新たな遺言の方式に関する規律を整備することを中心として、遺言制度の見直しを行う必要があると思われるので、その要綱を示されたい」というものでありました。   この諮問を受けて、民法(遺言関係)部会では令和6年4月に調査審議を開始し、令和7年7月には中間試案を取りまとめました。この中間試案につきましては、令和7年9月までの間パブリック・コメントの手続が行われております。これに加えまして、令和7年9月までの間に、デジタル技術及び海外法制に関する専門的知見を得るため、また、障害者団体の方から直接御意見を伺うために、合計4回にわたりそれぞれ参考人ヒアリングを実施しております。そして、これらの結果も踏まえまして更に調査審議を行い、最終的な意見の調整を進め、先月20日に部会長を除く出席委員12名全員の賛成によって要綱案を決定するに至っております。   要綱案の概要を説明させていただきます。なお、本要綱案では、証書や遺言書という文言には書面と、それから電磁的記録の双方が含まれるということを前提としております。   まず、「第1 普通の方式におけるデジタル技術を活用した新たな遺言の方式等に関する規律」の部分では、冒頭の1において、保管証書遺言という新たな遺言の方式を設けることとしております。本部会では、高齢化の進展やデジタル技術の進展・普及による手書きの機会の減少など、国民の生活様式の変化等に対応するという観点から、録音及び録画を活用しつつ証人の立会いを要するとする方式、あるいは民間事業者が提供するアプリケーションを利用する方式についても検討いたしました。しかし、これらの方式については、偽造、変造や紛失等のリスクを懸念する指摘のほか、金融機関等において円滑に遺言を執行することが難しいのではないかとの指摘があったことなどから、いずれも採用するには至りませんでした。   保管証書遺言については、手書きではなくパソコン等を用いて作成することができること、遺言者が電磁的記録とプリントアウトなどした書面のいずれを遺言書とするかを選択することができること、遺言者が遺言書保管官の前で遺言の全文を口述すること、法務局で保管されることによって遺言が効力を生ずることなどが特徴となっております。パソコン等を用い電磁的記録をもって遺言を作成することについては、偽造、変造や紛失等のおそれが高まるのではないか、遺言者の真意に基づくことの担保が後退するのではないかといった指摘もございました。これらの指摘に対応するため、保管証書遺言では遺言書保管官による本人確認及び遺言者による遺言の全文の口述等を要件とすることにより偽造を防止し、遺言が真意に基づくことの担保を図るとともに、法務局での保管を要するものとすることにより変造や紛失等のおそれを防止することとしております。その上で、公的機関における手続を要することが遺言者の負担となるのではないかとの指摘があり得るところから、相当と認める場合にウェブ会議を利用した本人確認や全文の口述等を認めることとしております。   続いて、4ページの2の部分では、保管証書遺言書の保管制度について、現行の自筆証書遺言書保管制度の仕組みを踏まえ、保管証書遺言書等の閲覧請求、相続人等による遺言書情報証明書の交付請求等の手続を定めるほか、遺言者の死後、一定の場合に相続人等に対して、保管証書遺言書を保管している旨を通知する規律を設けることとした上で、家庭裁判所における検認手続を不要とすることにより相続開始後の手続の負担を軽減することとしております。保管証書遺言では、相続人等に対する通知や証明書の交付等の仕組みにより遺言を円滑に執行することが可能となります。   次に、5ページの3では、遺言者が遺言書保管官に対し、いつでも保管証書遺言書の保管の申請を撤回することができるものとするなど、撤回に関する規律を設けることとしております。   6ページの「第2 自筆証書遺言の方式要件に関する規律」及び「第3 秘密証書遺言の方式要件に関する規律」、この部分では、コロナ禍を契機に行政手続や民間の商取引等において押印を不要とする場面が増え、押印をめぐる慣行ないし法意識に変容が生じつつあることなどを踏まえ、自筆証書遺言及び秘密証書遺言における押印要件を廃止することとしております。   「第4 特別の方式の遺言の方式要件に関する規律」では、非常に限定された場面でのみ作成が認められる死亡危急時遺言及び船舶遭難者遺言について、録音・録画等を活用した新たな方式を設けるなどすることにしております。   まず、1では、死亡危急時遺言すら作成することができない場合に例外的に認められる船舶遭難者遺言について、天災等から生じた重大かつ急迫の危難を避けることが困難な場所にあって死亡の危急に迫った者についても口頭で遺言をすることを認めることとし、規律を合理的なものとしております。   続いて、2(1)では、まず、現行の方式については、遺言者等による押印要件を廃止することとしております。その上で(2)では、死亡危急時遺言における新たな方式として、遺言の作成状況を録音・録画する場合には証人の人数要件を一人以上で足りるものとして、緩和することとしております。   また、7ページの(3)では、船舶遭難者遺言における新たな方式として、証人一人以上の立会いをもって口頭で遺言し、その状況を録音・録画する方式と、さらに、証人の立会いを要しない方式として、口頭で遺言する状況を録音・録画し、その記録を特定の者に送信する方式の二つを設けることとしております。特に、船舶遭難者遺言の新たな方式については、遺言者が切迫した状況に置かれていると想定されることを考慮した作成方法を認めるものとなっております。   そして、8ページの3では、これらの新たな遺言の方式を追加することに伴い、相続人の欠格事由、普通の方式による遺言の規定の準用等の関連する規律を整備することとしております。   最後に、9ページの「第5 その他」では、まず、1において、現行の成年被後見人の遺言について、成年後見制度の見直しや保管証書遺言の創設等に伴う規律の整備をすることとしております。   続いて、10ページの2では、単身高齢者等が増加し、入所している高齢者施設等への遺贈が行われる事例が増えているとの指摘があることなどを踏まえ、受遺者がその被用者又は役員を通じて遺言の内容に不当な影響を及ぼすことを防止する観点から、証人等の欠格事由について、現行の欠格事由である受遺者に加えて、その被用者及び役員を追加することとしております。   3では、その他所要の整備を行うこととしており、例えば、現行の自筆証書遺言書保管制度についても、今般創設する保管証書遺言書の保管に関する手続と同様に、ウェブ会議の方法による手続利用を認めることなどが想定されております。   民法(遺言関係)部会の御報告は以上のとおりでございます。よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。 ○佐伯会長 御報告どうもありがとうございました。   それでは、ただいまの御報告及び要綱案の全般的な点につきまして御質問及び御意見を承りたいと思います。   御質問と御意見を分けまして、まず、御質問がございましたら承りたいと思いますが、いかがでしょうか。   よろしいでしょうか。それでは、御意見を承りたいと思います。 ○芳野委員 ありがとうございます。芳野でございます。取りまとめられた大村部会長を始め御関係の皆様に敬意を表したいと思います。この度取りまとめられた要綱案について、特に異論はございません。社会のデジタル化の進展を踏まえ、現行の自筆証書遺言と同程度の信頼性が確保される遺言を簡便に作成できるような新たな方式を設けることができたと受け止めております。   その上で、1点申し上げたいと思います。今回の検討においては、デジタル技術の活用に伴うメリット、デメリットや現時点での事務的制約などを慎重に検討し、取りまとめられたものと考えます。法が施行された後、保管証書遺言を始め今回導入される遺言方式について、国民に対し丁寧に周知いただくとともに、船舶遭難者遺言に導入される新たな方式の運用状況や、デジタル技術、情報通信技術の進展などの状況の変化に応じて、遺言制度が国民にとってより一層利用しやすいものとなるよう、時機を見て改めて検討いただけるようお願いいたします。 ○佐伯会長 ありがとうございます。御意見として承ります。   ほかに御意見はおありでしょうか。 ○早稲田委員 私も、今回の遺言制度の見直しは、遺言制度を更に使いやすくするという点から、デジタル機器の普及に伴う現在に合ったもので、高く評価できると思っております。   なお、付け加えてですが、特別の方式の遺言の方式要件に関する規律中、死亡危急時遺言におけるデジタル技術を活用した新たな遺言の方式についてでございますが、遺言作成状況を録音・録画することにより、証人一人以上の立会いで遺言を作成することが可能な方式を追加し、また、ウェブ会議を利用した証人の立会いが可能だということでございます。死亡危急時遺言は、通常の遺言に比べれば数はそれほど多くはございませんが、死亡危急という緊急時に作成されるものであることから、その真正性、真意性が十分担保できるよう、運用に当たっては御留意いただきたいと思っております。 ○佐伯会長 どうもありがとうございます。御意見として承ります。   ほかに御意見はおありでしょうか。   よろしいでしょうか。それでは、議論が尽きたということで、原案につきまして採決に移りたいと存じますが、御異議ございませんでしょうか。   特に御異議もないようでございますので、そのように取り計らわせていただきます。   諮問第125号につきまして、民法(遺言関係)部会から報告されました要綱案のとおり答申することに賛成の方は、挙手をお願いいたします。ウェブ会議システムにより出席されている委員につきましては、賛成の方は画面上で見えるように挙手していただくか、挙手機能ボタンを押していただくようにお願いいたします。それでは、よろしくお願いいたします。           (賛成者挙手) ○佐伯会長 事務局において票読みをお願いいたします。   手を下ろしていただいて結構でございます。   反対の方は挙手をお願いいたします。           (反対者挙手) ○佐伯会長 よろしいですね。   それでは、事務局において採決の結果の報告をお願いいたします。 ○神渡司法法制課長 採決の結果を御報告申し上げます。   議長及び部会長を除くただいまの出席委員数は17名でございますところ、全ての委員が御賛成ということでございました。 ○佐伯会長 採決の結果、全員賛成でございましたので、民法(遺言関係)部会から報告されました要綱案は、原案のとおり議決されたものと認めます。   議決されました要綱案につきましては会議終了後、法務大臣に対して答申することといたします。   大村部会長におかれましては、多岐にわたる論点につきまして調査審議をしていただきました。どうもありがとうございました。   次に、成年後見制度の見直しに関する諮問第126号について御審議をお願いいたします。   それでは、民法(成年後見等関係)部会における審議の経過及び結果につきまして、同部会の部会長を務められました山野目章夫委員から御報告をいただきたいと存じます。報告者席まで御移動をお願いいたします。   それでは、よろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 民法(成年後見等関係)部会の部会長を務めました山野目でございます。この部会におきましては、諮問第126号について約2年間にわたり調査審議を重ね、本年1月27日に民法(成年後見等関係)等の改正に関する要綱案を決定いたしました。本日は、その御報告を差し上げます。   諮問第126号は、高齢化の進展など成年後見制度をめぐる諸事情に鑑み、成年後見制度を利用する本人の尊厳にふさわしい生活の継続や、その権利利益の擁護等をより一層図る観点から、成年後見制度の見直しを行う必要があると思われるので、その要綱を示されたいというものです。   この部会におきましては、令和6年4月に調査審議を開始し、令和7年6月に中間試案を取りまとめ、その内容につきましては昨年9月の第203回会議において報告を差し上げました。中間試案につきましては、令和7年6月から同年8月までの間パブリック・コメントの手続が行われ、個人、団体を合わせ約310件の意見が寄せられました。また、部会におきましては計5回の会議を充て、当事者団体、障害者支援団体など様々な立場の方においでいただき、ヒアリングを実施しました。これらの結果も踏まえ、更に調査審議をし、先月27日、全会一致で要綱案を決定するに至ったものです。   要綱案の内容の御説明を差し上げます。項目番号の順番に御説明を差し上げることを原則としますが、時間の制約がありますから適宜に要点を絞って説明を差し上げることにいたします。   配布資料民2を御覧ください。まず、法定後見制度の見直しについて説明いたします。中間試案の説明の際には、後見や保佐は判断能力が回復しない限り「終わらない問題」や、成年後見人は包括的な取消権や代理権が付与される、「広すぎる問題」があるとの指摘を紹介いたしました。要綱案の1ページからの「第1 法定後見制度」の1ページから5ページまでの項目においては、これらの指摘に対応する見直しがされています。   まず、1ページからの1において、後見及び保佐の制度を廃止し、これまで後見の対象であった事理弁識能力を欠く常況にある者や、保佐の対象であった事理弁識能力が著しく不十分である者を含め、事理弁識能力が不十分である者全てを補助の制度の対象とすることとしています。補助の制度は、本人の保護の必要性を要件とし、特定の行為について個別に補助人に代理権を付与したり、補助人の同意を要することとしたりする制度ですから、本人にとって必要な範囲で制度を利用することにより、これによって「広すぎる問題」に対応しています。もっとも、本人が事理弁識能力を欠く常況にある者である場合については、重要な財産行為を一括し、それらを取り消すことができる権限を有する特定補助人を付する旨の審判という特則的な仕組みを選択することができることとしています。また、補助開始の審判などの請求権者について、本人が公正証書で指定することができることとしています。   そして、4ページからの2では、家庭裁判所が特定の行為についての補助人に対する代理権の付与の審判や補助人の同意を要する旨の審判、特定補助人を付する旨の審判による保護の必要がなくなったと認められるときに、本人の事理弁識能力が回復していない場合であっても、これらの審判を取り消すことができることとしており、これによって「終わらない問題」に対応しております。   また、中間試案の説明を差し上げた際には、成年後見人などの交代が実現しないという「変えられない問題」があるとの指摘を紹介いたしました。「変えられない問題」の前提として、本人に合った補助人を選任する必要があり、そのためには本人の意見が重要です。そこで、5ページの3では、家庭裁判所が補助人の選任時に考慮すべき要素の冒頭に本人の意見を規定し、本人の意見が重要な考慮要素であることを明確化することとしています。そして、5ページからの4では(1)の三といたしまして、「解任事由に本人の利益のため特に必要があるとき」を追加し、「変えられない問題」に対応しています。   さらに、6ページの5では、補助人が適切な方法により本人の意向を把握するようにしなければならないことを明確化することとしています。6ページの6では、補助人が行った事務の内容等が報酬の考慮要素であることを明確化することとしています。6ページの7では、補助人は毎年1回、一定の時期に本人の状況等を家庭裁判所に報告しなければならないこととしています。7ページからの8では、特定補助人に目録の作成義務があることなどの規定を整備することとしています。8ページの9では、補助人が本人の死体の火葬、埋葬に関する契約の締結、本人が死亡した当時の権限の範囲内での相続財産の保存に必要な行為をすることができることとしています。   続きまして、8ページからの「第2 法定後見制度の本人等に関する民法の規定」では、特定補助人を付する旨の審判がされた本人に関し、時効の完成猶予などの民法の規定について、現行法の成年被後見人の場合や後見開始の審判を受けた場合に関する規定と同様の規定を設けることとしています。   9ページからの「第3 意思表示の受領能力等」では、意思表示の相手方が事理弁識能力を欠く常況にあり、その者のために意思表示を受ける者がない場合において、意思表示の受領のための特別の代理人を選任する仕組みを整備することとしています。   10ページからの「第4 任意後見制度」の1から3まででは、必要な定義の見直しをすること、代理権の範囲を含めて契約の変更を可能とすること、任意後見人となるべき者の順位付けを可能とすることなどの見直しをしています。11ページからの4では、家庭裁判所が明らかに任意後見監督人による監督の必要がないと認めるときは、任意後見監督人を選任せず、家庭裁判所が直接に任意後見人を監督することを許容する規定を設けるなどしています。12ページの5では、任意後見人と補助人の並存を許容するために、所要の規定を削除することとし、12ページの6から7では、補助の制度と同様の規定を設けることや、規定の明確化をすることとしています。また、13ページの8では、任意後見契約の一部解除を可能とすることとしています。   13ページからの「第5 成年後見制度に関する家事審判の手続」の1では、特定補助人を付する旨の審判をするには、原則として鑑定を必要としつつ、例外として医師二人以上の意見を聴いて、明らかにその必要がないと認める場合において、鑑定をすることなく審判をすることができるなどしています。14ページからの2では、家庭裁判所が一定の範囲の審判をする場合において、本人の状況を把握していると思われる市町村長その他適当な者に対し、必要な事項に関する意見を求めることができることとしています。15ページからの3では、現行の保全処分に加え、補助人が財産の目録を提出するまでの間、補助人の職務を停止するなどの保全処分の規定を新設しています。16ページからの4の即時抗告では、一つ挙げますと、補助開始の申立てを却下する審判の申立人が即時抗告をすることができることとしています。また、法制的な観点から、取り消すことのできる行為の定めの審判も即時抗告の対象としています。17ページからの5では、任意後見監督人の解任の審判事件について、本人を意見聴取の対象に追加することとしています。   18ページからの「第6 補助開始の審判を受けた者等に関する手続法の規定」では、後見及び保佐の制度を廃止し、基本において補助の制度に一元化しつつ、事理弁識能力を欠く常況にある者について特定補助人の仕組みを設けることに伴い、民事訴訟における訴訟能力、証言拒絶、人事訴訟における訴訟能力、手続法上の特別代理人に関する規定について、必要な見直しをすることとしています。   最後に、20ページの「第7 その他」では、後見登記等に関する法律の規定その他の所要の規定を整備することとしています。   民法(成年後見等関係)部会の報告は以上のとおりです。よろしく御審議を賜りますようお願い申し上げます。 ○佐伯会長 御報告どうもありがとうございました。   それでは、ただいまの御報告及び要綱案の全般的な点につきまして、御質問及び御意見を承りたいと思います。   御質問と御意見を分けまして、まず、御質問がございましたら承りたいと思いますが、いかがでしょうか。   よろしいでしょうか。それでは、御意見を承りたいと思います。 ○芳野委員 芳野でございます。取りまとめられた山野目部会長を始め御関係の皆様に敬意を表したいと思います。成年後見制度の見直しに関する要綱案について、特に異論はございません。保護を必要とする本人の意思を尊重して、必要な範囲、必要な期間に限定して利用できる柔軟な制度へと見直されることは、意義あるものと受け止めます。今後、必要な期間だけ利用できる仕組みに見直されれば、特に身寄りのない高齢者の方においては、後見終了後、福祉の支援につながるケースが増えていきます。政府には、地域の福祉・介護分野における人材確保と体制強化、そのための財源確保にもしっかり取り組んでいただきたいと思います。 ○佐伯会長 ありがとうございます。御意見として承ります。   ほかには。 ○河村委員 私は検討した部会の委員でございまして、長く熱心な議論に参加させていただきました。その立場からコメントを述べさせていただきます。   今回の成年後見の見直しは、国連の障害者権利委員会が2022年の総括所見で、後見人が代行して判断決定をする日本の成年後見制度の廃止を勧告したということ、すなわち、認知症の人を含む障害者の自己決定権を重視する制度への転換が求められたことが大きなきっかけであったと理解しています。また、現行の制度利用者からは、法定後見が一度制度を利用したら事実上生涯利用を終えることができない、その中で本人の権利が制約され続けること、後見人を替えたいと希望してもかなわないことなどの声が上がっていました。それらのことから見直しが始まったものです。2024年から始まったこの部会では、このような改正の求めに応えられるよう、真摯な議論が重ねられました。   こうした議論の結果、包括的な代理権という規定を廃止して補助の制度に統一し、具体的な必要性に基づいて制度を開始し、必要がなくなれば終わることができる、また、本人との相性がどうしても合わないなどの理由から補助人を交代することもできるという柔軟な制度として要綱案が取りまとめられました。本人の意思尊重義務については、本人の状況に応じて、必要な情報提供など様々な支援の中で本人の意向を把握するようにしなければならないとされ、そのようにして把握した意向を尊重するという規定になりました。大きな一歩だと考えます。   ただ、意向を把握するようにしなければならないと法律に書かれても、意向を酌み取る側、把握する側の能力、技術、意思決定支援ができる環境、それらいかんで本人の意向が酌み取られない、存在しないかのようになってしまうことも懸念しております。今回の法律の文言が、意向を把握するようにしなければならないとなることは大きな前進だと思いますが、これが現場でいかされていくことが重要であって、福祉など他の制度との連携で、社会全体が本人の権利を最後まで尊重できるよう整備されていくことを強く願います。   1点、今回の部会の議論の中で、特定補助人という仕組みについては、最後までその導入の是非が議論となり、私自身、部会では反対の意見を挙げておりました。事理弁識能力を欠く常況にある、ないという線引きは本当に必要なのか、その線引きは御本人が被害に遭わないように保護する必要という観点とうまく合致しているのか、どこかで本人の権利侵害が生まれないのか、特定補助の仕組みを入れなくても、補助の仕組みの柔軟な運用で、むしろ多様な本人に対して個々のケースに柔軟に対応できるのではないかという意見が部会でも出されましたし、私自身もそう考えております。   特定補助の仕組みを入れることをやむなしとする視点としては、民法の他の規定との連続性、整合性といった問題も存在しましたし、また、消費者被害を防ぐという点では、消費者法の制度の側で、認知症の人など消費者のぜい弱性を利用するような契約を規制する規定の整備に至っていないということもあります。ただ、悪質商法から市民を守ることは、本人の権利を制限することによってではなく、悪質な事業者の行為を規制することによってなされるべきだと消費者団体として私は考えております。   今回、部会の議論は本当に真摯なものであり、多くの異なる立場の委員、関係者が議論を重ねてきました。今後の課題も残しながらではありますけれども、柔軟な制度に生まれ変わる後見制度の今後に大きな期待を込めて、今回の要綱案に私は賛成いたします。今後、福祉や消費者法など他の制度の整備を含め、社会全体で本人の権利を尊重しながら支援する制度を作り上げていき、必要に応じて法律の見直しをしていくことを求めたいと思います。   最後に付け加えさせてください。個人的なことになりますが、私は重度の認知症である母の成年後見をした経験があります。その経験から、現行の成年後見の制度は、本人の財産を減らさないこと、それだけを後見人は求められていると強く感じたものです。つまり、被後見人が残された人生を豊かに過ごすためのクオリティー・オブ・ライフの向上よりも、財産を保全することを優先する発想に基づいていたということです。人はそれぞれ個性があり、大事にするもの、心地よいと感じる環境、衣食住、全てにその人なりの価値観があり、それは認知症が進んでもずっと確かに存在するものだと思います。   今回、意向の把握、尊重という運用が進むこと、また、制度自体を必要な範囲、期間で利用するという方向に考え方を変えたことで、制度の中でも、また制度の外でも、本人のその人らしい人間性が尊重され、その人の財産がその人にとっての幸せな生涯のためにいかされる、それが実現される社会になることを強く望んでいます。法が成立し、施行された後、その運用状況、取り分け特定補助の仕組みに関して、本人のニーズに合っているのか、本人のクオリティライフという観点からどのような影響があるか検証し、それに基づいて必要な見直しがなされるよう重ねて希望いたします。 ○佐伯会長 ありがとうございます。部会から御苦労さまでした。御意見として承りたいと思います。   ほかに御意見はおありでしょうか。 ○酒巻委員 刑事法の研究をしております酒巻でございます。この度の法定後見制度の見直しによりまして民法上、成年後見及び保佐が廃止され、補助に一元化されるということになるわけですけれども、刑事の基本法である刑事訴訟法等にはこれらの制度を前提とした規定が多数設けられております。具体的には、被疑者・被告人等の権利利益の保護を図る観点から、それらの者について選任されている成年後見人や保佐人等に一定の権限を付与するなどとする規定があり、このほか証言拒絶あるいは除斥事由について規定するに当たっても法定後見制度が前提とされております。法務省におかれましては、これらの刑事法の関係規定の改正につきましても、法定後見制度の見直しの趣旨を踏まえた上で適切に対応していただきたいと考えております。 ○佐伯会長 ありがとうございます。ただいまの御意見に対しまして、事務局から何かありますでしょうか。 ○佐藤幹事 法務省刑事局長の佐藤でございます。ただいま酒巻委員から御意見をいただきましたとおり、刑事訴訟法等の規定の改正につきましても、今般の法定後見制度の見直しの趣旨を踏まえまして適切に対応してまいりたいと考えているところでございます。 ○佐伯会長 ほかに御意見はございますでしょうか。 ○早稲田委員 今回の成年後見制度の見直しにつきましては、先ほど来、委員の御発言にありますように、本人の自己決定権を尊重して、必要な範囲で制度利用を可能とする、必要以上の制限を防止する、そして事理弁識能力が回復していない場合でも制度利用の必要がなくなったと家庭裁判所が認めるときは制度利用を終了可能とするということについては、高く評価できるものと思っております。   他方、今後この成年後見制度が充実して効果があるように使えるようにするためには、関連法制や諸制度の整備が重要になってくると思います。また、専門職が持続的に期待された役割を果たすための報酬制度の抜本的な見直し、必要性に応じた柔軟な運用を可能とする家庭裁判所の人員拡充等の制度の基盤整備と財源の確保、それから地域との連携等について、今後とも充実した整備がされることを望んでおります。 ○佐伯会長 どうもありがとうございます。御意見として承ります。   ほかに御意見はおありでしょうか。   それでは、原案につきまして採決に移りたいと存じますが、御異議はございますでしょうか。   特に御異議もないようでございますので、そのように取り計らわせていただきます。   諮問第126号につきまして、民法(成年後見等関係)部会から報告されました要綱案のとおり答申することに賛成の方は、挙手をお願いいたします。ウェブ会議システムにより出席されている委員につきましては、画面上で見えるように挙手していただくか、挙手機能ボタンを押していただくようにお願いいたします。           (賛成者挙手) ○佐伯会長 票読みはよろしいですか。手を下ろしていただいて結構です。   反対の方は、挙手をお願いいたします。           (反対者挙手) ○佐伯会長 それでは、採決の結果の報告をお願いいたします。 ○神渡司法法制課長 採決の結果を御報告申し上げます。   議長及び部会長を除くただいまの出席委員数は16名でございますところ、全ての委員が御賛成ということでございました。 ○佐伯会長 採決の結果、全員賛成でございましたので、民法(成年後見等関係)部会から報告されました要綱案は、原案のとおり議決されたものと認めます。   議決されました要綱案につきましては会議終了後、法務大臣に対して答申することといたします。   山野目部会長におかれましては、多岐にわたる論点につきまして調査審議をしていただきました。ありがとうございました。   次に、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律の一部改正に関する諮問第128号について御審議をお願いしたいと存じます。   それでは、刑事法(危険運転による死傷事犯関係)部会における審議の経過及び結果につきまして、同部会の部会長を務められました今井猛嘉臨時委員から御報告いただきたいと存じます。今井部会長、報告者席まで御移動をお願いいたします。   それでは、よろしくお願いいたします。 ○今井部会長 ただいま御紹介いただきました今井でございます。刑事法(危険運転による死傷事犯関係)部会の部会長を務めました。私から、部会における審議の経過及び結果を御報告申し上げます。   諮問第128号は、「自動車運転による死傷事犯の実情等に鑑み、事案の実態に即した対処をするため、左記の事項に関して早急に法整備を行う必要があると思われるので、その要綱を示されたい。」というものでした。   本諮問については、令和7年2月10日に開催された法制審議会第201回会議において、まず部会において検討させる旨の決定がなされ、この決定を受けて、刑事法(危険運転による死傷事犯関係)部会が設けられました。   部会においては、令和7年3月31日から同年12月25日までの間に8回にわたって調査審議を行いました。部会においては、諮問に先立って法務省で開催された「自動車運転による死傷事犯に係る罰則に関する検討会」において示された検討結果が共有された上で、各諮問事項に関し、委員・幹事から様々な意見が述べられ、それらを踏まえて具体的な法整備に向けた議論のたたき台を作成するなどして議論を重ねました。また、飲酒が自動車の運転に必要な能力に与える影響や高速度運転の危険性等について専門家のヒアリングを実施したほか、期日外に、ドリフト走行についての視察を実施いたしました。そして、そうした議論に基づき、三つの諮問事項に関し、「要綱(骨子)案」を作成し、更に詰めの議論を行った結果、賛成多数により、本日配布資料の「刑1」としてお配りしている「要綱(骨子)」のとおり法整備を行うことが相当であるとの結論に達しました。   それでは、部会における審議の概要について「要綱(骨子)」に沿って御報告いたします。「要綱(骨子)」の「一」は、自動車運転死傷処罰法、すなわち自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律の第2条の危険運転致死傷罪の構成要件を改めるものです。   まず、「一」の「1」は、現行の自動車運転死傷処罰法第2条第1号の「アルコール…の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為」との要件について、個人差を問わずに一律にそうした状態に該当すると評価できる体内アルコール濃度を数値基準として定め、明確化するものです。具体的には、「アルコール影響正常運転困難状態」、すなわち、「身体に血液1ミリリットルにつき1.0ミリグラム又は呼気1リットルにつき0.5ミリグラム以上にアルコールを保有する状態その他アルコールの影響により正常な運転が困難な状態」で自動車を走行させる行為と規定することとしています。   部会の議論においては、個人差を問わずに一律に「正常な運転が困難な状態」に該当すると評価できる体内アルコール濃度の数値基準を設けることについて、相当かつ可能であるとの意見が大勢でした。その上で、具体的な数値については、体内アルコール濃度が呼気1リットルにつき0.25ミリグラム又は0.3ミリグラム以上であれば「正常な運転が困難な状態」といえるのではないかといった意見も述べられたところでございますが、こうした意見に対しましては、危険運転致死傷罪として処罰すべき実質的危険性・悪質性を有する行為を対象として捉えるとの考え方を前提に、判例の解釈やヒアリングで示された科学的知見を踏まえますと、一律に「正常な運転が困難な状態」と評価できる体内アルコール濃度の数値は、呼気1リットルにつき0.5ミリグラムであると考えられるといった意見が述べられました。そして、こうした議論を踏まえると、少なくとも呼気1リットルにつき0.5ミリグラム以上にアルコールを保有する状態であれば、一律に「正常な運転が困難な状態」と評価できることについては、幅広い意見の一致が見られると考えられたことから、「要綱(骨子)」の「一」の「1」のような形で取りまとめられるに至ったものでございます。   次に、「一」の「2」は、高速度運転について、道路や交通の状況に応じて重大な交通の危険を回避することが著しく困難となるという危険性を捉える類型を新たに設けた上で、その速度以上の速度での運転行為であれば、道路や交通の状況を問わずに一律にそうした危険性が認められるといえる速度を数値基準として定めるものでございます。具体的には、最高速度が60キロメートル毎時を超える場合は最高速度を60キロメートル毎時超える速度、最高速度が60キロメートル毎時以下である場合は最高速度を50キロメートル毎時超える速度以上の高速度その他道路及び交通の状況に応じて重大な交通の危険を回避することが著しく困難な高速度で自動車を運転する行為を自動車運転死傷処罰法第2条の危険運転致死傷罪の対象として規定することとしています。   部会の議論においては、最高速度は、各道路の安全性確保以外の要素をも考慮して定められていることがあり得ることなどに照らすと、最高速度に応じて数値基準を定め、それ以上の速度で運転する行為を一律に危険運転致死傷罪の対象とすることは適当ではないといった意見も述べられましたが、こうした意見に対しましては、ヒアリングで示された科学的知見を参考としつつ、社会通念等をも踏まえ、道路や交通の状況に応じて重大な交通の危険を回避することが著しく困難な高速度であると一律に評価できる速度の数値基準を最高速度に応じて設けることは相当かつ可能であるとの意見が大勢でした。   その上で、具体的な数値については、一般的な認識に照らすと、最高速度を30キロメートル毎時や40キロメートル毎時超える速度であっても危険運転致死傷罪として処罰すべき危険性や悪質性が十分認められるから、より低い速度を数値基準とすべきであるといった意見も述べられたものの、こうした意見に対しては、道路や交通の状況は様々であり、この数値基準はその速度以上の速度で運転する行為を一律に危険運転致死傷罪とするものであることを踏まえると、より低い速度を数値基準とした場合、危険運転致死傷罪として処罰すべき危険性・悪質性があるとは言い難いものが含まれ得るのではないかといった意見が述べられました。そして、こうした議論を踏まえますと、少なくとも「要綱(骨子)」の「一」の「2」の「イ又はロ」に定める速度以上の速度の場合、道路や交通の状況に応じて重大な交通の危険を回避することが著しく困難な高速度であると一律に評価できることについては、幅広い意見の一致が見られると考えられましたことから、「要綱(骨子)」の「一」の「2」のような形で取りまとめられるに至ったものでございます。   次に、「一」の「3」は、ドリフト走行やウイリー走行など、タイヤを滑らせ又は浮かせることにより、その進行を制御することが困難な状態にさせる行為を危険運転致死傷罪の対象として追加するものです。具体的には、「殊更にタイヤを滑らせ又は浮かせることにより、その進行を制御することが困難な状態にさせて、自動車を走行させる行為」を新たに規定することとしています。   部会の議論においては、タイヤを滑らせ又は浮かせることにより、自車の進行を制御することが困難な状態にさせる行為について、危険運転致死傷罪として処罰すべき危険性・悪質性を有する行為に処罰範囲を適切に限定した上で、新たな類型として同罪の対象とすることが適切であるといった意見が大勢でございました。その上で、処罰範囲を適切に限定する観点からは、「殊更に」との要件を規定することが適当であると考えられたことから、「要綱(骨子)」の「一」の「3」のような形で取りまとめられるに至ったものです。   最後に、「二」は、自動車運転死傷処罰法第3条の構成要件を改めるものです。これは、同法第2条に体内アルコール濃度についての数値基準を設けることとする場合には、「正常な運転が困難な状態」との同一の文言が規定されている同法第3条第1項についても、同法第2条と同様の数値基準を設けることが相当であるとの観点から、その要件を、「アルコール影響正常運転困難状態」と改めるものであります。   以上の「要綱(骨子)」について一括して採決に付したところ、部会長である私を除く出席委員12名のうち賛成11名、反対1名の賛成多数により、「要綱(骨子)」のとおりの法整備を行うべきであるとの結論に至りました。   以上のような審議に基づき、諮問第128号については、「要綱(骨子)」のように法整備を行うことが相当である旨の決定がなされたものでございます。   以上で、部会における審議の経過及び結果の御報告を終わります。御審議のほど、何とぞよろしくお願い申し上げます。 ○佐伯会長 御報告ありがとうございました。   それでは、ただいまの御報告及び要綱案の全般的な点につきまして、御質問及び御意見を承りたいと思います。   御質問と御意見を分けまして、まず、御質問がございましたら承りたいと思います。いかがでしょうか。   よろしいでしょうか。それでは、続いて御意見を承りたいと思います。 ○早稲田委員 今回の危険運転致死傷罪の類型の見直しにつきましては、悪質、危険な運転によって被害を被った被害者の方々の声を踏まえたものであり、一定の基準を設けた本要綱案は、その一つの成果であると理解しております。他方で、高速度類型の数値基準については、危険運転致死傷罪として処罰すべき危険性、悪質性を伴わない運転行為が処罰対象に取り込まれるおそれがある内容となっているのではないかという疑義がございます。危険運転致死傷罪は、故意犯である傷害罪、傷害致死罪に匹敵する危険性、悪質性を有する行為を処罰対象とするものであり、危険運転致死傷罪として処罰すべき実質的危険性、悪質性を伴わない行為までがその処罰対象に含まれるような改正は適切ではございません。   特に、自動車運転という日常的になされる行為については、一般市民が加害者になり、被害者になり得るものでございます。最高速度が必ずしも各道路の個別具体的な危険性に比例して定められてはいない場合があるということや、道路交通の安全確保以外の理由で規制や変更がなされる道路も存在するというようなことを考えると、そのような最高速度がどの程度超過したかというただ1点をもって例外なく危険運転致死傷罪として処罰する数値基準を設けることには、慎重であるべきと考えております。特に、本年9月1日施行予定の改正道路交通法施行令により、日本全国の多くの道路、生活道路で法定速度が従前の時速60キロから時速30キロに一斉に引き下げられるということは、高速度類型の数値基準を設けることによる市民生活への影響を更に大きくするものでございます。また、高速道路において、例えば追い越しや合流等を行う場合等も、周囲の車両や速度超過の事情等もあいまって、一時的に大幅な速度超過になってしまうということもあり得ることから、このような場合の運転行為の中には危険運転致死傷罪として処罰すべきといえるほどの悪質性を伴わないものも含まれ得ると思います。   仮にこのような数値基準を設ける法改正を行うのであれば、事故の相手方を含む第三者の過失を始めとする運転者に帰責できない事由が認められる場合の刑の軽減又は免除の規定を設けることも併せて検討する必要があると考えております。交通事故の発生原因は複合的でございます。被告人とされる運転者が速度超過をしていたという場合に、相手方運転者を含む第三者も速度超過、信号無視、その他交通法違反があるというケースは決して少なくありません。このような被告人以外の第三者の過失や行為等について、検察官の起訴、不起訴の判断や裁判所の量刑判断の際の一事情として考慮すれば足りるとしてよいかは疑問であり、危険運転致死傷罪の法定刑の重さや自動車運転行為に対する処罰の在り方が多くの市民の関心事であること等に照らせば、法律に明確な減免規定を設けるということについての議論がなされるべきであると考えております。そのため、採決に際しては私は棄権をしたいと思っております。 ○佐伯会長 ありがとうございます。御意見として承りたいと思います。   ほかに御意見はございますでしょうか。   よろしいでしょうか。それでは、原案につきまして採決に移りたいと存じますが、御異議はございますでしょうか。   特に御異議もないようでございますので、そのように取り計らわせていただきます。   諮問第128号につきまして、刑事法(危険運転による死傷事犯関係)部会から報告されました要綱案のとおり答申することに賛成の方は、挙手をお願いいたします。ウェブ会議システムにより出席されている委員につきましては、賛成の方は挙手していただくか、挙手機能ボタンを押していただくようお願いいたします。           (賛成者挙手) ○佐伯会長 票読みをお願いいたします。   手を下ろしてください。   それでは、反対の方は挙手をお願いいたします。           (反対者挙手) ○佐伯会長 それでは、採決の結果を御報告ください。 ○神渡司法法制課長 採決の結果を御報告申し上げます。   議長及び部会長並びに棄権した委員を除くただいまの出席委員数は16名でございますところ、全ての委員が御賛成ということでございました。 ○佐伯会長 採決の結果、棄権の1名を除きまして全員賛成でございましたので、刑事法(危険運転による死傷事犯関係)部会から報告されました要綱案は、原案のとおり議決されたものと認めます。   議決されました要綱案につきましては会議終了後、法務大臣に対して答申することといたします。   今井部会長におかれましては、多岐にわたる論点につきまして調査審議をしていただき、ありがとうございました。   次に、刑事再審手続の在り方に関する諮問第129号について御審議をお願いいたします。   それでは、刑事法(再審関係)部会における審議の経過及び結果につきまして、同部会の部会長を務められました大澤裕臨時委員から御報告いただきたいと存じます。大澤部会長、報告者席まで御移動ください。   それでは、お願いいたします。 ○大澤部会長 御紹介いただきました、刑事法(再審関係)部会の部会長を務めました大澤裕でございます。私から、同部会における審議の経過及び結果を御報告させていただきます。   諮問第129号は、「近時の刑事再審手続をめぐる諸事情に鑑み、同手続が非常救済手続として適切に機能することを確保する観点から、再審請求審における検察官の保管する裁判所不提出記録の弁護人による閲覧及び謄写に関する規律、再審開始決定に対する不服申立てに関する規律、再審請求審における裁判官の除斥及び忌避に関する規律その他の刑事再審手続に関する規律の在り方について御意見を賜りたい。」というものでした。   本諮問につきましては、令和7年3月28日に開催されました法制審議会第202回会議におきまして、まず部会において検討させる旨の決定がなされ、この決定を受けて刑事法(再審関係)部会が設けられたところでございます。   部会におきましては、令和7年4月21日から令和8年2月2日までの間に18回にわたって調査審議を行いました。部会におきましては、委員・幹事から、刑事再審手続に関する規律の在り方につきまして、各諮問事項に即して意見が述べられ、それらを踏まえて具体的な法整備に向けた議論のたたき台を作成するなどいたしまして、制度の内容を具体化しつつ、議論を重ねてまいりました。そして、そうした議論に基づきまして、諮問事項に関し合計六つの項目からなります「要綱(骨子)案」を含む取りまとめに向けた資料を作成いたしまして、更に詰めの議論を行った結果、賛成多数により、本日配布資料としてお配りをしております「諮問第129号に対する答申案」を取りまとめるに至りました。   それでは、答申案の内容について御説明をさせていただきます。答申案は1ページ及び2ページの本文と、それから3ページ以下の別添の「要綱(骨子)」によって構成されております。   まず、1ページの「第2 調査審議の結果」から御説明をいたします。「第2 調査審議の結果」では、刑事再審手続について別添の「要綱(骨子)」記載の法整備を行うべきであるとしてございます。続いて、「要綱(骨子)」について説明をさせていただきます。「要綱(骨子)」の「第1」、これは3ページから4ページにかけてでございますが、「第1」では、再審請求審における証拠の提出命令等の規定を設けるものとなってございます。現行法上、再審請求審におけるいわゆる証拠開示に関する明文規定がございませんため、裁判所の対応がまちまちとなったり、開示をめぐる争いが生じて審理が遅延しているなどといった指摘がなされているところです。そこで、「第1」の「1」から「3」まででございますが、そこにおきまして、裁判所は、再審請求理由に関連する証拠について、一定の要件の下で、検察官に対して、証拠の提出を命じなければならないこととするなどして、証拠の提出命令の要件・効果を明確化し、適切な運用を確保するとともに、審理の円滑・迅速化を図ることとしてございます。   部会におきましては、複数の仮想事例を用いまして、証拠の提出命令の対象となる証拠の範囲についても議論がなされ、「再審請求理由に関連する証拠」の範囲は相当の広がりを持つものであって、現行の運用の下で開示されている証拠の範囲よりも狭まることはないとの認識がおおむね共有されました。   次に、「4」から「6」でございますが、ここの部分では、証拠の目的外使用の禁止に関する規定を設けることとしてございます。目的外使用の禁止に関する規定を設けることにつきましては、一部の委員・幹事から異論が示されましたが、通常審では開示証拠の目的外使用が罰則付きで禁止されており、被害者等の名誉・プライバシーの保護のため再審請求審でも同様とすべきである、あるいは、禁止されるのは検察官が裁判所に提出した証拠の複製等そのものを第三者に交付するなどの行為に限られ、例えば、その概要を口頭で伝達するなどの行為は禁止されるものではありませんから、再審請求審についてマスコミ等の報道の機会が激減するようなことはないなどの意見が大勢を占めましたことから、答申案に盛り込むこととされました。   次に、5ページにまいりまして、「第2」は、再審請求審・再審公判における裁判官の除斥に関する規定を設けるものでございます。現行法上、通常審・再審請求審に関与した裁判官が後の再審手続に関与することは禁じられておらず、手続の公正らしさに対する国民の信頼確保の観点から問題があるといった指摘がなされておりました。そこで、「1」におきまして、通常審で有罪・無罪の判決等に関与した裁判官を再審請求審及び再審公判から除斥するとともに、「2」におきまして、再審開始の決定が確定した事件について、当該再審開始の決定に係る再審の請求についての、これを棄却する決定又は再審開始の決定等に関与した裁判官を再審公判から除斥することとしてございます。   次に、6ページにまいりまして、「第3」は、再審の請求についての調査手続・審判手続等に関する規定を設けるものでございます。現行法上、再審請求審の運営の指針となる規定が乏しいため、事件によっては適切な進行がされず、審理が遅延しているなどといった指摘がなされております。そこで、この「第3」では、裁判所が行うべきことを明確化して、審理の運営に一定の指針を示すことにより、審理の円滑・迅速化を図るとともに、再審請求者等の手続保障を充実化する観点から、関連規定を整備することとしてございます。   まず、「1」及び「2」でございますが、これらは再審の請求の方式や調査手続等に関するものであり、調査手続においては、遅滞なく、基礎的な資料を検討し、審理を要する事案か否かを選別することとしてございます。また、「3」から「6」までは、調査手続において審判開始決定をした後の審判手続等に関するものでございまして、事実の取調べの請求権、意見聴取の機会の付与、審理終結日や決定日の通知等の規定を整備することにより、より充実した手続保障の下で再審開始事由の有無を審理することを可能とするものでございます。   次に、8ページにまいりまして、「第4」は、刑の執行停止に関する規定を整備するものです。現行法上、再審手続において死刑の執行を停止した場合に、拘置も停止できるとの明文規定がございませんことから、その旨を法文上明確化するなどすることとしてございます。   9ページにまいりまして、「第5」は、再審の請求に係る決定に対する不服申立期間を延長するものでございます。現行法上、再審の請求についての決定に対する即時抗告の提起期間は3日、そして特別抗告の提起期間は5日とされておりますところ、審判開始決定後にされた決定に係る即時抗告等の提起期間を14日に延長することとしてございます。   10ページ、「第6」は、再審請求手続に関する費用補償に関する規定を設けるものです。現行法上、再審公判で無罪が確定した場合、通常審・再審公判の費用は補償されますものの再審請求審の費用は補償されないところ、これについても一定の範囲で補償することとするものでございます。   次に、1ページに戻っていただきまして、「第3 附帯事項」について御説明をさせていただきたいと存じます。「第3 附帯事項」には「1」といたしまして、「要綱(骨子)」記載の制度の運用に関する事項を記載いたしますとともに、1ページの一番最後のところから「2」がございますが、「2」として、「要綱(骨子)」において法整備の対象とされなかった事項のうち引き続き運用によって対応することが考えられる事項を記載しており、例えば「1」の中では、証拠の提出命令についての法整備が行われた後も、個別の事案に応じ、裁判所による証拠の提出・開示の勧告や、検察官による任意の証拠の提出・開示という従来行われてきた実務運用が適切に行われることを期待する、でありますとか、証拠の提出命令の運用に当たっては、命令の要件である関連性等が認められる証拠の範囲が不当に狭くならないよう、その判断が適切に行われることを期待するなどといったことが盛り込まれてございます。また、2ページの下の方になりますが、「3」といたしまして、今後の検討について、施行後、一定期間の運用の実績後に、客観的なデータを踏まえ、その運用の実績に関する正確な認識に基づいて、同手続が非常救済手続として適切に機能しているかについて検討を行うことが望ましいなどとされてございます。   部会におきましては、再審開始決定に対する検察官の不服申立てを禁止するか否かについても、中心的な論点の一つとして議論を重ねました。一部の委員・幹事からは、再審開始決定に対する検察官の不服申立てにより再審請求審が長期化しているのであるから、これを禁止すべきである、あるいは、再審開始決定に誤りがあっても、検察官は再審公判において主張・立証を行うことが可能であり、それで足りるといった意見が示されましたが、これに対しましては、最高裁判所まで慎重な審理が尽くされて有罪判決が確定した事案であっても、下級裁判所の一人の裁判官の判断で確定的に覆せることとなれば、確定判決による法的安定性が著しく害される、あるいは、再審開始決定に対する不服申立てを禁止すると、上級審による審査の機会がなくなるため、裁判所による再審開始の判断の慎重さ・適正さの欠如をもたらすおそれがある、誤った再審開始決定が検察官の不服申立てにより是正された事案が現に存在する中で、これを放置して安易に裁判をやり直すこととすることは、刑事裁判に対する国民の信頼を損なうこととなりかねない、再審請求審における審理の迅速化を目的とするのであれば、端的に再審請求審の手続の迅速化方策を検討するのが筋である、あるいは、再審請求審と再審公判ではそもそも審判対象が異なり、再審公判において再審開始決定の誤りを是正することはできない上、再審開始決定に誤りがあった場合にそれを是正する余地を認めることなく直ちに再審公判を開始しなければならないこととすることは、再審手続の二段階構造と整合しないなどの理由から、反対する意見が相次ぎ、そうした反対意見が大勢を占めましたことから、「要綱(骨子)」には盛り込まれませんでした。   もっとも、こうした議論を踏まえまして、附帯事項には2ページの三つ目の○の部分で、再審開始決定に対する不服申立てについては、検察官において、慎重かつ十分な検討を確実に行った上で適切な対応がなされることが望まれる、また、四つ目の○で、再審請求についての決定に対する不服申立てがあった場合を含め、審理の迅速化方策については、裁判所において、運用の在り方について検討がなされることが望まれ、検察官及び弁護人においても、可能な限り、審理の円滑かつ迅速な遂行に向けた協力がなされることが望まれるなどの記載がされているところでございます。   審理の迅速化という点では、先ほど御説明したとおり、「要綱(骨子)」においても、例えば、調査手続・審判手続といった再審請求審の運営の指針となる規定を新たに設けるなど、審理の長期化を防止し、その円滑化・迅速化を図る規定を整備することとしているところでございます。   以上の「答申案」につきましては、一括して採決に付しましたところ、部会長であります私を除く出席委員13名のうち、賛成10名、反対3名の賛成多数により、「答申案」を取りまとめるに至りました。   以上で部会における審議の経過及び結果の御報告を終わります。よろしく御審議いただきますようお願いいたします。 ○佐伯会長 御報告ありがとうございました。   それでは、ただいまの御報告及び答申案の全般的な点につきまして、御質問及び御意見を承りたいと思います。   御質問と御意見を分けまして、まず、御質問がございましたら承りたいと思います。いかがでしょうか。   よろしいでしょうか。それでは、次に御意見を承りたいと思います。 ○芳野委員 芳野でございます。取りまとめに当たられた大澤部会長を始め御関係の皆様に敬意を表したいと思います。今回、刑事再審手続が非常救済手続として適切に機能することを確保する観点から検討を行うよう諮問がなされました。袴田巖さんの事件が解決までに事件発生から58年、死刑判決確定から44年も要したことから、諮問の目的は、えん罪被害者を確実かつ速やかに救済することにあると理解をしております。その観点から、今回取りまとめられた答申案について2点申し上げたいと思います。   1点目は、証拠の提出命令制度の新設についてです。これまで証拠開示に関する明文規定がなく、裁判所の対応がまちまちであったことを改善するため、裁判所による証拠の提出命令について、要件・効果を法律上明確化することは必要と考えます。しかし、提出命令の要件として、審判開始決定をした裁判所は、再審請求理由に関連する証拠であって提出を受ける必要性の程度、弊害の内容・程度を考慮し、相当と認めるときに限定されたことに対し、えん罪被害者や弁護士、報道関係者のみならず刑事法研究者、現役裁判官、元裁判官からも、再審の門戸を狭めかねないとの懸念が示されたと承知をしております。要綱(骨子)の附帯事項において、「運用に当たっては、関連性・必要性が認められる証拠の範囲が不当に狭くならないよう、その判断が適切に行われることを期待する」とされましたが、附帯事項は法的効力を有するものではないことから、実効性に疑問が残ると指摘せざるを得ません。   2点目は、再審開始決定に対する検察官の抗告禁止見送りについて触れたいと思います。再審開始決定に対する検察による抗告は、えん罪被害者救済までの期間が長期化する大きな要因の一つであるため、禁止すべきと指摘されてきたと承知しておりますが、要綱(骨子)に記載されませんでした。要綱(骨子)の附帯事項において、「再審開始決定に対する不服申立てについては、検察官において、もとより結論ありきではなく、慎重かつ十分な検討を確実に行った上で適切な対応がなされることが望まれる」とされましたが、附帯事項では実効性に疑問が残ります。また、部会審議において検察庁検事の委員が、「検察当局は個別具体的な事項に応じ、再審開始決定に対して不服申立てをするかどうかについて十分かつ慎重な検討を行っていることを改めて申し上げておきたいと思います」と発言していることから、そもそも附帯事項の表現では、現状の運用と何も変わらないことが懸念されます。   えん罪は最も重大な人権侵害の一つです。そのため、えん罪を生まない刑事司法制度や、えん罪が生じてしまった場合にえん罪被害者を確実かつ速やかに救済できる刑事司法制度の確立は、国民が安心して暮らすために不可欠です。今回の諮問とは直接関係ありませんが、3年間に及ぶ協議会、その後の研究会でいまだに検討が継続されている取調べの録音・録画の対象範囲の拡大を含む制度改正や運用の見直しについても、早期に実現するべきと考えます。 ○佐伯会長 ありがとうございます。御意見として承ります。   ほかに御意見はございますでしょうか。 ○古城委員 まず、答申案には非常に多くの附帯事項が付されております。個別事案への適切な対応を運用によって行うということが求められております。ただ、期待する、望まれるとの表現が用いられておりますけれども、これらの附帯事項が期待の表出にとどまることだけではなく、運用に当たって確実に実行されるような手立てを講じることが重要であると考えております。附帯事項には、法的な効力がないということを今、芳野委員もおっしゃいましたけれども、この附帯事項を着実に実施することが重要であるということを特に強調しておきたいと思います。 ○佐伯会長 ありがとうございます。御意見として承ります。   ほかに御意見はございますでしょうか。 ○河村委員 今回の再審法改正について諮問がなされたのは、袴田巖さんに対する再審無罪事件をきっかけに、再審に関する法制の不備によりえん罪被害の救済が困難となっているということが指摘されたことによるものと理解しています。今回出された答申案は、えん罪被害者の救済がこれまで以上に困難になるのではないかとの指摘が、報道を含め様々な方面からなされております。証拠開示を広く認める内容となっていないこと、また、再審開始決定に対する検察官の不服申立てを禁止していない点に問題があるというものです。   袴田事件では、捜査機関による証拠のねつ造が指摘され、福井女子中学生殺害事件では、検察官が無罪につながる証拠の存在を知りながらこれを隠していた事実が再審無罪判決において指摘されています。検察官が保管している証拠の全容は弁護士や再審請求者には分からないわけですから、証拠開示は広く認められるべきだと考えます。再審開始決定に対する検察官抗告により、袴田事件、福井女子中学生殺害事件とも、無罪判決の確定までに更に時間を要したことも指摘されています。この間、刑事法の研究者135名の共同声明や、元裁判官63名の声明でも、検察官の不服申立ては禁止すべきと述べられており、これらの声を無視すべきではないと考えます。   また、全国の地方自治体の約49%に当たる861議会で、限定のない証拠開示と検察官抗告の禁止を含む内容での再審法改正に賛同していること、また、同様の内容での再審法改正を求める首長の意見書も243名に上ると報告されています。そして、衆議院解散前の数字ですけれども、国会議員の過半数を超える議員が加盟する議員連盟が、限定のない証拠開示と検察官抗告の禁止などを内容とする法案を国会に提出した事実もございます。このように、国民の声を代表する議会や国会も、証拠開示を広く認めること、検察官抗告を禁止することに賛同しており、このような改正を実現することでえん罪被害者の速やかな救済を実現することを求めているといえます。えん罪被害者を確実に救済するための再審法改正という原点に立ち返ると、本答申案は多くの国民の声に応える内容となっているとは言えず、不十分と言わざるを得ません。   以上のことから、私は本答申案に反対いたします。 ○佐伯会長 ありがとうございます。御意見として承りました。   ほかにはいかがでしょうか。 ○富所委員 まず、これまで何度も議論を重ね最終案を取りまとめていただいた大澤部会長を始めとする部会の皆様に敬意を表するとともに感謝を申し上げたいと思います。今回の制度改正は、これまで明確な規定がなかった再審に一定のルールを設けるものであり、その点で大きな前進であると考えます。一方で、部会でも多様な意見が出ていますし、課題や懸念も少なくありません。今後は法改正がなされた後は、迅速な審理の実現に向けて適切な運用が行われること、そして、実施から一定期間後は第三者も含めて実施状況を検証し、更なる制度改革にいかすことを強く望みます。以下、個別の点について3点申し上げます。   証拠開示については今回の見直しの焦点だと考えていましたので、提出命令の新設は重要な一歩であると思います。提出命令を出す裁判所の役割が非常に重要になりますので、運用に関しては今回の見直しの趣旨を踏まえまして、必要な証拠開示の範囲が不当に狭まることのないように適切な訴訟指揮をお願いしたいと思います。   次に、検察官による再審開始決定に対する不服申立てですが、今後も制度は維持されるという方向のようです。不服申立ての必要性は慎重の上にも慎重に判断し、申立てをする場合であっても、決して警察、検察当局のメンツのためだと国民から思われないように、十分な説明を尽くしてもらいたいと思っています。   3点目ですが、証拠開示の目的外使用に関する罰則の創設です。これについては日本新聞協会が反対の声明を出していますし、私も報道に携わる立場から大変懸念を抱いております。静岡の一家四人殺害事件の再審請求審では、検察が開示した5点の衣類のカラー写真を弁護側が支援者らに共有して実験が行われ、それが報道もされて、結果的に袴田さんの再審無罪につながりました。こうした情報開示に罰則が設けられれば、再審請求者や弁護士を萎縮させるだけでなく、十分な報道ができなくなりかねません。特に、再審請求審は通常審と異なり非公開で行われています。裁判は非公開、証拠開示には罰則となれば、国民の知る権利への悪影響は看過できないと考えます。証拠が第三者に渡ることによる関係者の名誉毀損やプライバシー侵害を防ぐ必要性は理解いたしますが、それはこれまで報道機関が自らの責任において配慮してきたという経緯があります。罰則は不要であると考え、導入には反対いたします。   最後に、再審では無罪となった元被告に焦点が当てられがちですが、では真犯人は誰なのか、そして遺族の感情はどうなるのかといった問題も残されます。制度の運用上は、遺族が置き去りにされることがないような配慮もお願いしたいと思います。 ○佐伯会長 ありがとうございます。御意見として承ります。   ほかにはいかがでしょうか。 ○早稲田委員 今回の諮問でございますが、いわゆる袴田事件、福井事件などのえん罪事件で再審無罪となるまでに膨大な時間や労力を要したこと、そして、それが再審手続に関する法の不備に起因することが明らかとなったため、これを是正するために行われたはずだと思っております。残念ながら、今回の答申案はそれに応えるものとはいえないと思います。しかも、答申案には今まで以上にえん罪救済を困難にしかねない内容も含まれております。答申案の問題点は幾つかございますが、3点に絞って申し上げます。   第1に、再審の請求についての調査手続、要綱(骨子)第3の2です。要綱(骨子)では、裁判所が再審請求について調査した結果、理由がないことが明らかであるときと認めるときは事実の取調べや証拠の提出命令を行うことができず、再審請求を棄却しなければならないとされております。スクリーニングが必要だというのは私どもも分かります。しかし、最初から十分な新証拠を携えて再審請求ができる場合は少なく、再審請求を行った後に開示された古い新証拠がきっかけとなって再審開始、再審無罪に至る場合が多いのが実情です。このような制度が設けられた場合、再審請求を行う時点で十分な新証拠が準備できなければ証拠開示にたどり着く前に再審請求が棄却されます。これでは今まで以上に救済の門が閉ざされるということになりかねません。   第2に、再審請求審における証拠の提出命令、要綱(骨子)の第1です。要綱(骨子)の内容は、裁判所が再審請求の判断をするために必要かつ相当と認めた証拠の提出を命じなければならないというものです。しかし、裁判所が判断のために必要な証拠の提出を命じることは、職権主義の再審請求手続においては規定するまでもなく当然であって、証拠開示とは異なります。そもそも証拠開示が必要とされるのは、無罪につながる証拠が捜査機関の手元にあることが多く、えん罪被害の救済のためには、これを再審請求人や弁護人に利用させる必要があるからです。したがって、裁判所の判断のために必要な証拠だけでなく、再審請求人や弁護人にとって必要な証拠、すなわち再審請求人や弁護人が主張立証を準備するために必要な証拠が幅広く開示される必要があります。この点で要綱(骨子)は不十分です。   第3に、再審開始決定に関する検察官の不服申立てでございます。これについては、不服申立てに関する規律について意見を求められましたが、今回の要綱(骨子)には盛り込まれませんでした。現状の運用を見ると、検察官はほぼ全ての事件で機械的に不服申立てを行っております。そして、そのことがえん罪被害者の救済を遅らせているということは、いわゆる袴田事件や福井事件を見ても明らかであります。このように検察官の抗告によってえん罪被害者の救済が著しく遅れていることは立法事実として明らかであり、検察官の不服申立ては廃止するのが適切であると思料いたします。   それから、今回の答申案を見ると、極めて多くの附帯事項が設けられております。附帯事項は法律ではございません。これだけの多くの附帯事項が設けられているということは、この要綱(骨子)の規定だけでは適切に運用されないおそれがあるということを意味していると考えております。先ほど来、御意見の発表がありましたように、部会の審議に関しましては、えん罪被害者やその家族のみならず刑事法研究者、元裁判官、さらには全国各地の報道機関からも深刻な懸念が表明されております。今回の答申案についても複数の新聞が社説等で批判的な意見を述べております。   また、国会ではえん罪被害者の再審法改正を早期に実現する議員連盟が、先ほどの衆議院解散前では371名の議員連盟の精力的な活動もあって、昨年の通常国会に議員立法案が提出されました。その提出理由を見ると、再審制度によってえん罪の被害者を適切かつ迅速に救済し、その基本的人権の保障を全うするとあり、えん罪被害者の救済という目的を明確に打ち出しています。そして、内容的にも、証拠開示については再審請求理由におよそ関連しない証拠を除き幅広く開示を命じることとしておりますし、証拠開示事請求の手掛かりが得られるよう、送致書類等目録、いわゆる証拠リストも開示対象とされております。再審開始決定に対する検察官の不服申立てについては、一律に廃止することとしております。これらの点については、答申案よりも議員立法案の方がはるかに優れているといえます。   このように、今回の答申案は内容的に不十分であり、国民の思いからも大きく離れたもので、諮問の趣旨に応えるものとはいえないと思います。したがって、私は本答申案には反対いたします。 ○佐伯会長 ありがとうございます。御意見として承りたいと思います。 ○毛利委員 まず、刑事再審手続の在り方に関する諮問第129号について、充実した審議を経て答申案をまとめられた刑事法(再審関係)部会の委員の方々に敬意を表します。この答申案は、従来法規定が少なく裁判所の運用に任されるところの多かった再審請求審の在り方を大きく改善するものであり、その点で高い評価に値すると私は思います。ただ、私としては諮問事項のうち再審開始決定に対する不服申立てに関する規律について、この不服申立てを認める点で現行を維持する答申案の内容に対しては賛同できない点が残ります。以下、その理由を申し上げます。   再審請求審の証拠調べなどは、通常の刑事裁判とは異なり通常、非公開で行われます。答申案でもこの点に変更は加えられていません。もちろん再審請求審は再審を開始するか否かを判断する段階であり、再審が開始されればその中で公開での公判がなされることになりますから、再審請求審自体を公開で行う必要性は高いわけではありません。また、確定判決がなお完全な効力を有する再審請求の段階で再び公開の法廷で証拠調べを行うことは、関係者に不当な負担を負わせることになりかねません。   しかし、一方で憲法37条1項が被告人の公開裁判を受ける権利を保障し、さらに、憲法82条1項は、裁判の対審及び判決は公開法廷でこれを行うと規定し、同条2項がこの裁判の公開の例外を厳しく限定しているのも周知のとおりです。憲法は、裁判当事者の活動が非当事者である一般市民の批判的な評価にさらされながら行われることによってこそ裁判の公正が確保できるという考え方に立ち、裁判の公開を非常に重視しているといえます。   再審請求審は訴訟手続上の判断ではなく、確定した有罪判決という刑事訴訟の結論そのものを争う非公開手続という特殊性を有しています。そうである以上、私としては再審開始決定に対する検察官からの不服申立てを許容し、非公開の手続のまま上級審の判断を仰ぐ機会を設けるということには疑問を持たざるを得ません。確かに再審開始決定についても慎重な審理のために不服申立ての機会を保障するという考え方はあり得るでしょうが、しかし、不服申立てを受けた裁判所の審理も非公開で行われるわけで、非公開の審理が繰り返されることにより、より公正な判断が確保されるのかどうか、私には確信が持てません。   再審開始決定に対する不服申立てを認めないということにすると、他の決定の場合との体系的整合性を欠くとの指摘もありますが、再審は先ほど申し上げたように非常に特殊な制度であり、他の場合との整合性にこだわる必要性は低いように思います。再審請求審では刑事訴訟法435条などの定める再審開始事由の存否が争われるのであって、再審公判とは審判の対象が異なるのはそのとおりです。しかし、再審開始事由は、それが認められれば確定判決が基礎とした事実認定に深刻な疑義が生じるという趣旨で規定されているのであり、その事由の存否について争いが残るなら、それは当然、再審公判でも争点となるはずですから、再審開始決定自体に対して不服申立ての機会を与える必要性が高いとはいえません。   さらに、抗告審の判断で再審開始決定が覆らなかった場合、それから開始される再審の公判は、この上級審の判断を前提にして行われることになります。たとえ再審開始の指示だとしても、非公開で審理された上級審の判断が公開の法廷でなされる事件の審理に影響を与え得る状況は、むしろ裁判の公正さの確保にとって問題をはらんでいるように思います。   私としては、再審請求に対して再審開始決定がなされれば直ちに同一の裁判所で再審公判に移行することとし、上訴の機会はその判決に対して保障するという制度の方が、裁判の公開を非常に重視している憲法の趣旨に沿うのではないかと考えざるを得ません。誤った再審開始決定に是正の機会が保障されず公開審理が再開されてしまうと、犯罪被害者などが重ねて苦痛を被るとの指摘も無視することはできませんが、しかし裁判官は皆、確定判決の重みを十分理解しているはずであり、今後とも再審開始決定が安易に出されるようになるとは想定できないと思われます。そして、私は既に申し上げたように、再審開始決定に対する不服申立てを認め、非公開の手続を続けることがより公正な帰結につながるのか、疑問を持ちます。   以上述べた理由により、今般示された答申案については部分的に賛同できない点が残ることを申し上げます。 ○佐伯会長 ありがとうございます。御意見として承りたいと思います。   ほかにいかがでしょうか。 ○山本委員 私は民事手続法の研究者ですけれども、その観点から2点、申し上げたいと思います。   第1に、再審手続というのは民事にも存在しますけれども、非常の不服申立手続という位置付けかと思いますので、やはりその手続の迅速性というものは重要なのだろうと思っております。取り分け再審請求に係る決定に対する即時抗告審の迅速な審理ということは必要なことなのだろうと思っておりまして、その意味で、今回の附帯事項において指摘されている不服申立て等を含めて裁判所における運用の在り方、迅速化方策についての検討ということについては、是非積極的に取り組んでいただきたいと思いますし、その中で運用における工夫、場合によっては、もしそれが制度化できるようなものがあるとすれば、引き続き制度化についても検討をいただきたいと思います。   第2点は、今回、刑事の再審制度についてかなり詳細な規定が設けられることになったことに鑑みて、これが民事の再審手続に対してどのような影響が及ぶかということについても検討が必要になってくるだろうと思われます。今後、精査が必要かと思いますけれども、先ほどの毛利委員からの御指摘についても、民事についても同様だとする話かなと思いますけれども、1点気になったのは除斥の制度の改正であります。   ここについては時機に後れた質問になって恐縮なのですけれども、もちろん民事においては今回作られるような除斥原因というものは存在しないわけでありますけれども、私の理解では、やはりこの点は民事と刑事の再審事由自体が異なっていること、あるいはその手続の構造が異なっていること等に由来するものであって、今回の提案というのが直ちに民事再審の在り方に影響するものではないのではないかと一応私としては考えておるのですが、この点、もし部会において何らかの御議論があったのか、私のような理解でよいかどうかということについて、もし御教示をいただければと思います。 ○佐伯会長 ありがとうございます。では、事務方からお願いいたします。 ○吉田関係官 今御指摘のありました、今回の答申案における除斥事由の改正が民事訴訟法上の除斥の規律の在り方に影響を及ぼすかという点については、部会においては、影響は及ぼさないという理解で議論がなされたところでございます。   もう少し申し上げますと、「要綱(骨子)」における除斥の規律は、近時、刑事再審手続における裁判の公正さに対して批判や懸念が向けられているという刑事の再審手続に固有の事情を踏まえて、刑事再審手続に限って政策的に導入するものであり、部会の議論においてもその点が確認されたところでございます。さらに、除斥制度及び再審制度については、今御指摘がありましたように、現行法の下でも刑事と民事とでは様々な点で既に異なる規律となっております。したがいまして、再審手続に関して刑事訴訟法上の除斥事由を拡大するからといって、民事訴訟法上の除斥事由も拡大すべきことにはならないと考えられるところでございまして、部会においてもそれが前提とされたところでございます。 ○佐伯会長 よろしいでしょうか。 ○山本委員 ありがとうございました。 ○佐伯会長 ほかに御意見はございますでしょうか。 ○大澤部会長 すみません。いろいろと私どもの部会の批判的な御意見もいただいたところでございますが、御意見をいただく中で一つだけ申し上げたいと思うことがございましたので、申し上げさせていただきたいと思います。   一番皆様方の注目が集まった、検察官からの不服申立ての禁止の点でございます。その点につきまして、部会の中で出た意見を紹介させていただきました際、再審請求審と再審公判ではそもそも審判対象が異なり、再審公判において再審開始決定の誤りを是正することはできないといったような意見があって、やはり再審開始決定については固有の不服申立制度は残すべきだという議論が大勢を占めたということを申し上げました。ただ、顧みますに、審判対象が異なると言っても、なかなか、ぴんとこないところであろうかと思います。手続法学特有の物言いで分かりにくいかなと思っておりましたが、今、毛利委員から御意見をいただく中で、一つ、私としても気付いたことがございました。毛利委員からは先ほど、再審請求審は訴訟手続上の判断ではないという御理解を前提に、そして、確定した有罪判決という刑事訴訟の結論そのものを争うという点では再審公判と共通しているという御認識の下に、御意見を頂戴いたしました。その御意見との対比で申しますと、部会の議論の多数を占めた考え方は、恐らく、再審請求手続における請求審の決定というのは、これは裁判のやり直しを行うかどうかというまさに訴訟手続上の判断であると、それだからこそ、それに続く再審公判の判断の中に解消してしまうことができない独自性を持っているのだと、そういう前提に立ったものだろうと思います。   裁判というのは人が行うものですから、間違いを全くゼロにするということはできません。どんなに手続を重ねてみてもゼロになるとは言い切れません。ただ、そういう中で裁判制度というものを設けて紛争を解決しなければいけないということになれば、どこかで一区切りを付ける必要がある。それが現在の訴訟法の中では三審制度という形で、上訴が2回できて、そこで判断されたことは一区切りをつけましょうということで訴訟制度というものが回っているということであろうかと思います。もちろんそこまでやっても誤ることがあるわけで、誤りがあった場合に備えて今議論していただいている再審手続というものが設けられているということでございます。   ただ、再審手続という形で裁判のやり直しが認められておりますけれども、確定という形での一区切りを過ぎたところでございますので、これは通常審の中での上訴のように当然に不服が申し立てられるということではなくて、やはり一段高い特別のハードルがある。そのハードルをどのくらいに設定するのかという問題はございますけれども、再審請求審というのは、そのハードルを越えたものとして裁判のやり直しを行ってよいのかどうかと、そういう訴訟手続上の判断を行う場ということでございます。確かに、再審請求の大部分を占める刑事訴訟法第435条第6号による再審請求の場合、請求審の判断の中身、すなわち、無罪を言い渡すべき明らかな証拠を新たに発見したときという再審理由を満たすかどうかの判断は、その後の再審公判で行われる有罪・無罪の判断と実質を見る限り相当程度に重なるということはそのとおりで、毛利委員の御発言もそこから導かれたものだと思います。けれども、そこで何をしようとしているのかということで言えば、再審請求審というのは、まずもって、やり直しという特別なステージに移ってよいのかどうかと、そういう訴訟手続上の重要な判断をする場であって、そこでの決定は、有罪・無罪の予備選別ということに尽きない、訴訟手続上の仕組みの中で重い意味を持った判断だということになるわけで、そうすると、再審開始決定の場合、後に再審公判が控えているのだとしても、それに対する独自の不服申立手続というものを全くなくしてしまうということは、理論的に見てやはり難しいのではないかというのが部会の大勢の意見であったということかと思います。   総会の委員ではない私がこのように長く発言するのは不適切であったかもしれませんけれども、部会を代表して参った立場から一言申し上げたくて、発言させていただきました。 ○佐伯会長 ありがとうございます。御意見として承りたいと思います。   ほかに御意見はございますでしょうか。   議論は尽きたということで、よろしいでしょうか。   それでは、原案につきまして採決に移る前に、1点確認をさせていただきたいと思います。先ほど、富所委員あるいは毛利委員から、一部反対であるという御意見をいただきました。一部反対であるという御意見の趣旨でございますけれども、これから行います原案の採決につきまして分割採決を求められる御趣旨でしょうか。それとも、御意見として一部反対であるという御意見でしょうか。もしよろしければ御意向をお伺いできればと思いますが、富所委員、いかがでしょうか。 ○富所委員 趣旨としましては、全体の中で賛成しかねる部分があるということですので、全体としての採決ということであれば、反対をしたいと考えております。 ○佐伯会長 分割採決を求めるものではないということですね。   毛利委員、いかがでしょうか。 ○毛利委員 私も今のように考えておりまして、全体としての採決で反対をしようかと考えておりました。 ○佐伯会長 ありがとうございます。それでは、全体として採決をとらせていただきたいと思います。   原案につきまして採決に移りたいと存じますが、御異議ございませんでしょうか。   よろしいでしょうか。それでは、特に御異議もないようでございますので、そのように取り計らわせていただきます。   諮問第129号につきまして、刑事法(再審関係)部会から報告されました答申案のとおり答申することに賛成の方は、挙手をお願いします。ウェブ会議システムにより出席されている委員につきましては、画面上で見えるように挙手していただくか、挙手機能ボタンを押していただくようお願いいたします。           (賛成者挙手) ○佐伯会長 事務局において票読みをお願いいたします。   では、下ろしていただいて結構です。   それでは、次に反対の方は挙手をお願いいたします。           (反対者挙手) ○佐伯会長 手を下ろしていただいて結構です。   それでは、採決の結果の御報告をお願いいたします。 ○神渡司法法制課長 採決の結果を御報告申し上げます。   議長及び部会長を除くただいまの出席委員数は17名でございますところ、原案に賛成の委員は12名、反対の委員は4名でございました。 ○佐伯会長 採決の結果、賛成者多数でございましたので、刑事法(再審関係)部会から報告されました答申案は、原案のとおり議決されたものと認めます。   議決されました答申案につきましては会議終了後、法務大臣に対して答申することといたします。   大澤部会長におかれましては、多岐にわたる論点につきまして調査審議をしていただきました。ありがとうございました。   これで本日の予定は終了となりますが、ほかにこの機会に御発言いただけることがございましたら、お願いいたします。   よろしいでしょうか。それでは、ほかに御発言もないようでございますので、本日はこれで終了といたします。   本日の会議における議事録の公開方法につきましては、審議の内容等に鑑みて、会長の私といたしましては、議事録の発言者名を全て明らかにして公開することとしたいと思いますが、いかがでしょうか。   御異議ないようですので、本日の会議における議事録につきましては、議事録の発言者名を全て明らかにして公開することといたします。   なお、本日の会議の内容につきましては後日、御発言をいただいた委員等の皆様に議事録等をメール等にて送付させていただき、御発言内容を確認していただいた上で法務省のウェブサイトに公開したいと思います。   最後に、事務局から何か事務連絡がございましたら、お願いいたします。 ○神渡司法法制課長 次回の会議の開催予定について御案内申し上げます。   法制審議会は2月及び9月に開催するのが通例となっております。次回の開催につきましても、現在のところは令和8年9月に御審議をお願いする予定でございますが、具体的な日程につきましては後日改めて御相談させていただきたいと思っております。委員、幹事の皆様方におかれましては御多忙とは存じますが、今後の御予定につき御配意いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。 ○佐伯会長 どうもありがとうございました。   それでは、これで本日の会議を終了いたします。   本日はお忙しいところをお集まりいただき、長時間にわたり熱心な御審議をいただきまして、誠にありがとうございました。 -了-