法制審議会 会社法制 (株式・株主総会等関係)部会 第10回会議 議事録 第1 日 時  令和8年1月28日(水)    自 午後1時00分                         至 午後5時18分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  企業統治の在り方に関する規律の見直しに関する論点及びその他の論点の検討(二読)、会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する論点の補充的な検討 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○神作部会長 ただいまから法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会の第10回会議を開会いたします。   本日も御多忙の中、大勢の皆様に御出席いただきまして誠にありがとうございます。   本日もウェブ会議の方法を併用して議事を進めることといたします。初めに、事務当局からウェブ会議に関する注意事項の御案内を頂きます。よろしくお願いいたします。 ○宇野幹事 事務当局より御説明を差し上げます。ウェブ会議を通じて御参加されている皆様につきましては、御発言される際を除き、マイク機能をオフにしていただきますよう、御協力をお願いいたします。御質問がある場合や審議において御発言される場合は、画面に表示されている挙手機能をお使いください。指名がされましたら、マイクをオンにして御発言ください。御発言が終わりましたら、マイクをオフにし、また、画面の挙手ボタンを再度押して、挙手を下げていただきますようお願いいたします。なお、御発言の際はお名前をおっしゃってから発言されるようお願いいたします。会議室にお集まりの方々におかれましても、ウェブ会議の方法で出席されている皆様にはこちらの会議室の様子が伝わりにくいため、お名前をおっしゃってからの御発言に御協力いただきますよう、よろしくお願いいたします。 ○神作部会長 御説明どうもありがとうございました。   本日の会議の出欠について申し上げます。本日は、家原幹事が御欠席と伺っております。   続きまして、本日の審議に入ります前に、事務当局から配付資料の御説明を頂きます。よろしくお願いします。 ○宇野幹事 配付資料について御確認いただきたいと思います。   まず、部会資料10「会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する論点の補充的な検討」及び参考資料24「「実質株主確認制度整備に向けた実務者検討会」第3回会合におけるメンバー等の意見等のポイント」がございます。こちらにつきましては、後ほど審議の中で事務当局から御説明をさせていただきます。   参考資料25「事業報告等及び有価証券報告書の開示の合理化について」は、金融庁の小長谷幹事から御提出があったものでございます。この資料につきましては、後ほど小長谷幹事に御説明いただきます。また、参考資料26「補充的な検討に関する論点について」は、経済産業省の鮫島幹事から御提出があったものでございます。この資料につきましては、後ほど鮫島幹事に御説明いただきます。   なお、前回の部会において積み残しとなった部会資料9の「第3 有価証券報告書の総会前開示の進展を踏まえた規律の見直し」に関する資料として、前回も配付させていただきました部会資料9、参考資料22及び23も配付をしております。   配付資料の紹介は以上でございます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。   それでは早速、本日の審議に入りたいと存じます。初めに、前回の部会において積み残しとなった部会資料9「第3 有価証券報告書の総会前開示の進展を踏まえた規律の見直し」について意見交換を頂きたいと存じます。まず、仁分委員から前回御提出いただいておりました参考資料22について御説明と御意見を頂きたいと存じます。   仁分委員、どうぞよろしくお願いいたします。 ○仁分委員 まず、参考資料22について御説明させていただきます。   経団連は、事業報告等と有価証券報告書の一体開示及び一本化に関する調査を実施いたしました。本調査は、経団連の経済法規委員会企画部会等に参加する103社を対象に実施したものであり、43社から44件の回答がありました。実施期間は2025年12月2日から12月9日までの1週間です。   まず、参考資料22の2ページのQ1では、現行法下でも可能である「一体開示」について、部会資料9の14ページでも示されている参考図のBの事項を有価証券報告書の開示事項としてAに含める見直しをすることで開示業務の負担は軽減すると考えるかを調査しました。なお、スケジュールに由来する負担については考慮しないという前提で回答を得ております。「開示業務の負担は軽減する」と回答したのは21件、「負担は増加する」と回答したのは6件、「軽減も増加もしない」と回答したのは15件と、開示業務の負担は軽減すると考える回答が比較的多い結果となりました。   次に、3ページのQ2では、部会資料9の13ページ、2で提案されている、事業報告等及び有価証券報告書の「一本化」によって開示業務の負担は軽減すると考えるかを調査しました。こちらもスケジュールに由来する負担については考慮しないという前提で回答を得ています。「開示業務の負担は軽減する」と回答したのは29件、「増加する」と回答したのは4件、「軽減も増加もしない」と回答したのは11件と、こちらも開示業務の負担は軽減すると考える回答が多い結果となりました。   そして、この二つの問いで回答を得た開示業務の負担増減について、4ページのQ3では、増減度合いがどの程度と考えるかを調査しました。Q1の場合は平均4.6、Q2の場合は平均3.8となり、Q2の「一本化」の方が、より開示業務の負担軽減につながると考えている企業が多い結果となりました。   また、5ページではQ4として、「一本化」に併せた会計監査の一元化について実務及び費用の観点で負担軽減となりそうか調査しました。その結果、「「一本化」により従来の会社法監査における意見形成プロセスが不要となることは、係るプロセスにおける監査作業・対応が不要となるほか、経営者確認書・監査報告書等に関して会計監査人・監査役等との相互確認を一本化でき、社内外のコミュニケーションの効率化につながる」、「開示書類が複数あることによる転記・整合性検証作業が削減されることは、係る作業における工数の削減、書類間の不整合が生じるリスクの回避にもつながる」などの理由により、実務及び費用の観点で負担軽減になる可能性があるとの回答が多くありました。   他方で、「有価証券報告書における開示項目全体の合理化が実現されず、それに伴い監査対象範囲が整理されないままでは負担はあまり変わらない」、「会社法監査と金商法監査が不可分な領域が大半であり、会社法固有部分の費用は限定的である」といった、負担は余り変わらないとする回答もあり、その他としては、負担増への懸念や留意すべき事項を指摘する意見もありました。   最後に、「一体開示」、「一本化」のいずれの場合であっても、併せて株主総会の日程を後ろ倒ししない場合には、有価証券報告書の作成、提出時期が早まることが想定されます。この点について、6ページのQ5で、実務上の負担感、課題、あるいは早期作成、提出を実現するために必要なことについて調査しました。その結果、現状の株主総会の日程のまま株主総会の3週間前に有価証券報告書を開示することは実務上非常に困難である、今の体制では不可能であるという回答が多数でした。   また、株主総会の後ろ倒しが難しい理由として、「有価証券報告書の株主総会前開示についての投資家ニーズが必ずしも存在していないにもかかわらず、大きな負担をかけて株主総会日程を変えることへのちゅうちょがある」、「会社法の改正や一般株主の理解等も調整した上での株主総会の実施時期の変更については法令改正、定款変更により実務的な対応はできると思うが、日本における慣行についての株主理解はすぐには進まないと思われ、相応の周知期間などが無ければ会社側に対応負担が生じるリスクがあると考えている」、「6月下旬の株主総会を前提とし、7月1日に全社的な人事異動を行っていることから、株主総会を後ろ倒しするかは年間の人事サイクル、事業サイクルとも関係する問題となり、総合的な検討が必要になる」といった意見がありました。   早期作成・提出を実現するために必要なこととしては、有価証券報告書の開示内容の見直し、スリム化を望む意見が多くありました。早期作成・提出のためには、株主総会準備の負担軽減も必要であり、そのためには事前の議決権の行使により株主総会の決議があったものとみなす制度の創設や、株主提案の議決権300個要件の廃止、株主提案権の期限の見直し等が不可欠であるとの意見もありました。   以上の調査結果を踏まえまして、部会資料9について意見を申し上げさせていただきます。まず、会社法第124条第2項に定める基準日から権利の行使までの3か月という期間の短縮につきましては、部会資料9の11ページに記載のとおり、定時株主総会の基準日の変更を事実上強制的に迫るものであり、多くの上場会社の実務に甚大な影響を及ぼすことになる上、定時株主総会における議決権以外の株主権に関する基準日の実務にも多大な影響を生じると考えられるため、強く反対いたします。   また、部会資料9の11ページに有価証券報告書の総会前開示、取り分け最も望ましいとされる定時株主総会の3週間以上前の有価証券報告書の提出の実現のためには、株主総会の開催時期の後ろ倒しを検討しなければならない旨の意見が記載されていますが、その大前提として、第5回部会でも申し上げましたとおり、有価証券報告書を株主総会前に開示する意義や必要性について具体的に示していただく必要があると考えます。   第4回部会で提出させていただきました参考資料13、「「有価証券報告書の株主総会前開示」アンケート結果」にも示されているとおり、多くの投資家は有価証券報告書を株主総会前に開示することを求めていないと認識しております。株主総会の開催時期の後ろ倒しが難しい理由が多くある中、株主総会の開催時期を後ろ倒ししてまで有価証券報告書の総会前開示を求める投資家のニーズがある状況なのかを正確に把握した上で、慎重に検討する必要があると考えます。   それから、事業報告等及び有価証券報告書の開示の合理化に関してでございますけれども、参考資料22の調査結果でお示ししましたとおり、開示書類の一本化や(注2)に記載されている会計監査の一元化については、企業の業務負担の総量の削減につながると考えますので、選択肢の一つとして、これらの規律を設けることには賛成いたします。また併せて、一本化において提出される有価証券報告書につきましては、会社法に基づく監査役等の監査を不要としていただきたく存じます。   加えて、繰り返しとなりますけれども、有価証券報告書の早期作成・提出の実現のためには、有価証券報告書における開示内容の見直しやスリム化、株主総会準備の負担軽減、更には事業報告等や有価証券報告書以外の開示も含めた開示全体の見直しなど、制度横断的な環境整備を引き続き御検討いただきたく存じます。   さらに、一本化を機に開示書類に関する法的責任の合理化、すなわち事業報告等や有価証券報告書に虚偽記載等があった場合の会社及び役員等の責任について、事業報告等に関する規律を基本としたものに一元化することについても引き続き御検討いただきたく存じます。金融庁から提出いただいた参考資料25においても、こうした制度横断的な環境整備の重要性が指摘されており、法務省と金融庁で共同して検討を進めていただきたく存じます。 ○神作部会長 アンケートを実施していただき、また、その結果を御披露いただき、大変ありがとうございました。   それでは、部会資料9の第3について意見交換をさせていただきたいと存じます。御意見のある方は挙手をお願いいたします。 ○小長谷幹事 事前に参考資料25として金融庁の意見を提出させていただきましたので、その概要を御説明させていただきます。   今回この参考資料を提出させていただいた出発点として、部会資料9におきまして、現行法の下でも一体開示が可能であることとの関係で、一本化と一体開示とは法的概念の整理にとどまるようにも思われるとの指摘がございます。まず、部会資料9の13ページ本文にございます、有価証券報告書を提出した場合には事業報告等を作成しなくともよいものとすることとは、一本化書類としての有価証券報告書を提出した場合に、事業報告等の作成、開示義務を法的に残すのではなくて、会社法上一旦消滅させることを意味しているものと理解しております。その上で、事業報告等に関する会社法の規定について、その趣旨等に照らしまして、一本化された書類としての有価証券報告書のうち事業報告等に相当する部分に適用すべきと考えられるものについては、会社法上、個別に特則を置くなどの手当てをすることが想定されているのではないかと理解しております。   そこで、事業報告等に関する会社法の規定について見てまいりますと、その一つとして、会計監査人の監査、いわゆる会社法監査というものがございます。釈迦に説法ではございますが、有価証券報告書の方につきましては金商法監査がございまして、金商法監査と会社法監査というものは、いずれも職業的専門家によって財務書類の信頼性を確保するという趣旨においては異なるところはないものと承知しております。加えまして、参考資料25①から③というところに記載いたしましたとおり、まず①として、書類を一本化したにもかかわらず引き続き会社法監査と金商法監査という二元化した監査を求めるのは、会計監査の重複部分を残すこととなり合理性を欠くと考えられること、また、②として、見掛け上一つの財務書類を作成、開示する場合に、会計監査を法的概念として二つ併存したままにしておくと、制度の立て付けとして適当でない事態が生じ得ること、また、③として、現行法下における監査日程及び手順の制約の解消に伴う監査実務の効率化が期待できることといった理由から、会社法監査の規定は一本化書類としての有価証券報告書には適用しないこととして、会計監査の一元化を図ることが適当ではないかと考えております。   なお、現行法下において金商法監査を会社法上の会計監査人が行うことは求められておりません。会計監査の一元化に当たり、この点が障害となるのであれば、一本化の要件として、金商法監査を会計監査人が行ったことを会社法上規定することが考えられるかと思います。   このように会計監査の一元化を一本化に併せて導入することで、一本化と一体開示とは法的概念の整理にとどまるのではとの指摘を克服できるのではないかと考えている次第でございます。 ○神作部会長 貴重な御指摘をどうもありがとうございました。 ○石井委員 上場会社の立場から意見を述べさせていただきます。   最初に、株主総会の開催時期に関連する規律の見直しについてですが、先ほど仁分委員からも御紹介いただきましたとおり、有価証券報告書の総会前開示、特に3週間以上前の提出を実現するために、総会の開催時期を後倒しにするには、前提として、その必要性と重要性について企業と株主双方の理解及び意識醸成が必要ではないかと思っております。   今回、総会前開示を後押しいただくという観点からバーチャルオンリー株主総会の定款要件緩和策等を提案いただいていますが、企業では決算日を基準日とした総会開催が長年において定着しています。6月末開催をベースに7月1日付けで企業グループ全体の人員配置等を行っている企業も多いことや、仮に7月実施ですと第1四半期業績の開示実務と重複すること、8月ですと夏季休暇にかぶることから、実務のやりにくさが懸念され、後倒しにはそれらも考慮した総合的な判断がどうしても必要になると考えております。したがいまして、開催時期の後倒しも選択肢の一つとしては当然あると思いますが、総会後倒しが難しいと判断した企業にとっても早期開示を促していけるような方策を御検討いただきたいと考えております。   それを踏まえますと、2番の事業報告等及び有価証券報告書の合理化を進めていただくニーズは、総会前開示という前提にかかわらず、強いと考えております。今回、事業報告等に特有の開示事項Bを有価証券報告書の開示事項に含めた上で一本化開示ということで提起いただいておりますが、記載内容を一本化した書類を目指す方向性は開示実務の合理化、投資家の利便化向上に資するものであるため、異存ありません。   ただし、更に総会前開示を後押しするという点を考慮しますと、十分ではなく、同時に開示情報自体の合理化、スリム化が必要になると思います。サステナビリティ情報など、SSBJ基準適用、保証の義務化、注記など開示項目の多い国際会計基準導入企業の増加、また、将来的には英文開示の要請といったこともあり得ることから、更なる開示実務の負担の増加が想定されますので、例えば、開示事項Aのうち単体決算開示の廃止などを進めることや、会社法の範ちゅうではございませんが、開示事項CのうちAと類似性のある事項の統一化、C独自事項のスリム化、統合報告書やコーポレートガバナンス報告書等他の開示書類の参照も可能とすることなども併せて検討いただきたいと思っております。   また、総会前開示の更なる前倒しを進めるという前提では、一本化書類の分割開示を認めて、開示事項Cのうち議決権行使に当たって議案の賛否に関する合理的判断に客観的に必要な情報を特定し、現行の事業報告等の情報に含めた上で総会前開示とし、その他の情報については総会開示も可能とするような選択肢も検討いただきたいと思っております。それによって、総会後倒し、あるいは現行スケジュールでフルスペック開示、現行スケジュールで分割開示など、各企業の実態、経営資源に応じた開示メニューを選択できるような方向性が望ましいのではないかと考えております。さらに、開示実務工数自体を創出するという観点からは、今御検討いただいております総会資料の書面交付請求制度の見直し、株主提案の議決権要件の見直し、事前の議決権の行使により株主総会の決議があったものとみなす制度の創設なども併せて進めていただきたいと考えております。   書類の一本化による会計監査一元化も、これまで会社法、金商法各プロセスで行われていた監査手続の合理化や双方のコミュニケーション工数の削減も期待できますので、是非これについては検討いただきたいと思います。ただ、早期開示という点から見ますと、財務諸表には詳細な注記事項など有価証券報告書特有の開示項目も多いため、こちらも開示事項のスリム化が課題になるものと思います。また、有価証券報告書と同時に提出される金商法の内部統制報告書監査の扱いについても留意が必要と思われ、より効率的な監査を施行いただくなど、関係機関との調整も併せてお願いしたいと思っております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○久保田委員 有価証券報告書の総会前開示、それも株主総会の3週間前での開示が望ましいかどうかについては、仁分委員や石井委員のお話では、必ずしも自明ではなく再検証が必要であるということのようですけれども、仮に望ましいとした場合において、これを実現するためには株主総会の開催スケジュールの見直しが必要であることについては、本部会でもおおよそ意見の一致を見ているように思います。そこで、私はそのような株主総会の開催スケジュールの見直しをどのようにして実現するかという観点から意見を述べさせていただきます。   この点について最大の問題は、上場会社にそのような見直しをするインセンティブがないことであると思いますので、そうしたインセンティブを付与するような規律を設けることが望ましいという趣旨で、今回の第9回の部会資料では幾つかの規律を提案していただいているものと理解しています。しかし、私もよいアイデアがない状況にありまして、それにもかかわらずこのような指摘をするのは心苦しいのですけれども、有価証券報告書の総会前開示が行われる場合について、バーチャルオンリー株主総会に係る定款の定めを不要にするとか、取締役等が株主総会における説明義務を負わないとするといった提案は、正当化が必ずしも容易でない一方、上場会社へのインセンティブ付与という面でも効果は限定的であると思います。   恐らく最も効果的なのは、第5回会議で松尾幹事が提案されたように、基準日から権利行使までの期間の短縮をすることであると思います。こうした提案には共感するところも小さくないのですけれども、その一方で、本来的には株主への情報提供や議決権行使を全て電磁的方法で行うようになれば期間の大幅な短縮が可能になるなど、株主の情報提供や議決権行使の方法とも関連付けて検討すべき問題であると考えられますし、そもそも現実問題として、先ほど仁分委員から強い反対が示されたことをみても、この提案の実現のハードルは高いのではないかと考えています。   このように考えますと、今更ですけれども、一周回って私が思いますのは、上場会社について事業報告等と有価証券報告書の一本化を可能とすることによって開示書類作成の負担を軽減するとともに会計監査の一元化の実現を可能にすることが、実は上場会社に株主総会の開催スケジュールの見直しのインセンティブを与えるための最も現実的な対応ではないかということです。なぜなら、そのように一本化された開示書類を作成する場合において、開示書類の作成の負担も監査の負担も小さくなるということになれば、上場会社の中には、そうした一本化された開示書類を作成して株主総会に提出することにしたいと考えて、ただし、そのためには株主総会スケジュールの後倒しも必要になりますので、そうした後倒しも行おうとする会社が出てくるのではないかと期待されるからです。   もっとも、実際にそのように一本化された開示書類について、取り分け作成の負担の軽減を実現するためには、先ほど仁分委員も言及されましたように、事業報告等と有価証券報告書の開示事項の相違点についての対応、言い換えれば開示事項の共通化を徹底して行うことが不可欠ですので、ここが最大のポイントになるかと思います。開示事項の共通化は現実的には、事業報告等の記載事項のうち有価証券報告書の記載事項でないもの、図でいうとBの部分について、その記載が本当に必要なものであるか否かを再吟味した上で、記載が必要だということになれば、それを有価証券報告書の記載事項に追加するという形で行われることになろうかと思います。そのため、むしろこれは金融庁にお願いすべきことかもしれませんけれども、是非事業報告等と有価証券報告書の開示事項の共通化を徹底して行っていただきたいと思っています。   この点については、ただでさえ有価証券報告書の記載事項が増加している状況で、更に記載事項を追加することに対する反対論もあると思います。しかし、以前に田中委員もおっしゃっていたと思いますが、株主の権利行使にとって必要な情報であるため事業報告の記載事項とされているものは、投資家の投資判断にとっても必要な情報であり、有価証券報告書の記載事項にされてよいものであることが多いと考えられますので、その意味でも是非御検討いただければ有り難く思います。   一本化された開示書類については、監査役等の監査の在り方も問題になります。この点については、監査役等の監査を不要とするのではなく、むしろ監査役監査の方法を工夫する、すなわち一本化された開示書類のうち外部監査や外部保証のある部分については、監査役等は外部監査、外部保証の相当性について判断すればよく、自ら監査する必要があるのはそれ以外の部分に限ることにするといった対応の方がよいのではないかと思います。次いで、計算書類、事業報告は取締役会決議による承認の対象になっていますので、それとの関係も問題になります。ただし、本来的には有価証券報告書についても取締役会の承認事項にすべきものであると考えられますので、一本化された開示書類の全体を取締役会の承認の対象にすべきであろうと思います。   そうすると、残るのは会社法第429条第2項に基づく役員等の責任の対象となる開示書類をどうするかという問題です。この役員等の責任の在り方それ自体を見直すことも考えられるかもしれませんが、無理が少ないのは、会社法に特則規定を設けて責任の対象を現行法と同様の範囲に限定することであろうと思います。そうした特則規定の文言については工夫が必要になると思いますが、特則規定によって責任の対象を現行法と同様の範囲に限定することは可能なのではないかと考えています。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○豊田委員 部会資料の9の3、有価証券報告書の総会前開示の進展を踏まえた規律の見直しについて意見を申し上げます。   まず、1の株主総会の開催時期に関連する規律の見直しにつきましては、有価証券報告書の総会前開示は株主への情報開示に資するという観点から、一定の意義があると考えますが、資料にも御記載のとおり、基準日期間を3か月から短縮するということにつきましては実務上の影響が非常に大きいため、少なくとも短期間での対応を迫るようなものであることは避けるべきと考えております。   次に、(2)の考えられる見直しで記載されている、バーチャルオンリー総会に定款の定めを不要とすることや、取締役等の説明義務を負わないこととするといったことでのインセンティブ付けにつきましては、必ずしも目的との関連性が高いとも思われず、株主の権利という観点からも、賛成はなかなかできないと考えております。他方で、会社法の対応ということで妙案がございませんけれども、例えば、実務ガイドライン等で総会基準日を会計年度末でなくする場合のモデルプランや、その場合のQ&Aを作成するなどで実務の対応を促すということも考えられるように思います。   次に、2の事業報告等及び有価証券報告書の開示の合理化につきまして申し上げます。14ページの図のBをCの中に入れ込むような形、及び一定の内容の整理をして一本化をするということには賛成いたします。他方で、事業報告につきましては各社で株主に分かりやすくするような工夫が様々されておりまして、ある意味、一定の自由度をもって作成されているのに対しまして、有価証券報告書につきましては、多くの会社の傾向としては、府令の様式の記載に基づき、その形式的なところを踏まえた上で様式を埋めているといった印象がございます。   この点、改正を行った際に、現在の府令の開示の様式に14ページのBの部分を加えていくといった方法でございますと、現在分かりやすく各社で工夫している事業報告が株主にとって分かりにくいものに変化してしまうのではないかということが懸念されます。有価証券報告書全体について、量が多いというだけでも読みにくいと感じる個人株主も多いと思います。そこで、一本化を行うにしても、その際の工夫として、一部、現在の事業報告の記載事項と類似の事項については、例えば冒頭に記載し、それ以外の事項をその後に記載するといった現在の事業報告に関する各社の自由な工夫を引き継げるような形での一本化が行われる方策を探っていただけるとよいのではないかと考えております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○青委員 まず、総会前開示につきましては、これまでも御指摘があったとおり、グローバルな投資家からは、総会の3週間前までの開示が期待されているところです。その実現方法として、総会開催時期を後倒しすることにより対応するのか、あるいは書類の開示時期を前倒しすることにより対応するのか、様々な選択肢が考えられると思います。3週間前という期間の意義や、スケジュールを移行する際に生じ得るコストについても、意見があるところでございますので、その辺りについて丁寧に議論を行い、最終的には様々な投資家から広く支持が得られる在り方を目指しつつ、企業の実務負荷も念頭に置きながら、金商法および会社法の双方において、検討を進めていくということが期待されるところではないかと思います。   また、仮に総会の時期を後倒しにする場合に、現状の基準日制度などの仕組みについても、現状のままで運用することが適切かどうかは検討する余地があると思います。これまでの議論にもございましたように、決算期末から総会までの期間を3か月弱とすることでよいのかどうか、あるいは基準日から総会までの期間を短縮すべきではないかといった点、更にシステム面への影響、株主提案権に関する期間の定めをどう考えるのかといった点を総合的に考えていくということが必要になってくるのだと思います。他方で、これらの見直しを一挙に行うのは、困難であると思いますので、現実的な対応としては、早期の開示をできるだけ行いやすくするための実務負荷の軽減等を講じていくことが当面の現実的な方向ではないかと思います。   具体的な方法として、現状でも有報と事報の記載事項について、可能な限り調整する取組が進められているものと承知しておりまして、今後はそれに加えて、有報と事報を一つの書類として提出できるようにする仕組みを考えていくことが重要だと考えております。一つの書類として作成するということであれば、作成主体にとっては、より簡便な方法で書類作成を行うことが可能となり、監査手続についても一定の軽減が見込まれるものと思います。また、最も重視すべきは書類を利用するユーザーの視点であり、その観点からも、二つの書類に分かれているよりも一つの書類として会社の状況が網羅されているほうが、内容を把握しやすくなると考えられます。できる限りそのような方向で、前向きに検討していくことが重要であると思います。   次に、書類を一つにする場合の制度設計として、二つの書類を実務上は一体として同時に提出するのにとどめる、いわゆる一体化として考えるべきなのか、あるいはそもそもの法的な位置付けを改めて、一つの書類として法令上一本化するのか、それから、監査を一元化するかどうかといった点が検討事項かと思いますけれども、まず、監査について申し上げますと、会社法と金商法の双方で提出義務を課しつつ、飽くまで別個の書類として扱ういわゆる一体化という考えでは、概念上は別々の書類なので、それぞれに対して個別の監査が必要になるという方向感かと思います。その場合、やはり似て非なる書類について二度監査を行うということになりますので、監査の負担増が懸念されるほか、開示のスケジュールにも相応の影響が生じると考えられます。したがって、できる限り監査に関する実務負担を少なくしていくということを考えますと、一つの書類を作成し、その一つの書類に対して1回の監査を行うことが可能となるよう、法律上も一つの書類として整備することは志向されてしかるべきではないかと思います。   それから、作成者の観点からも、一体化であれば会社法と金商法という2つの法律に規定されることになりますが、一本化していくのであれば、二つの書類であったものの調整が行われて開示事項が1つに集約され、一つの法令に全てが書かれるということになると思います。そうであれば、やはり作成者側にとっても一本化される方が利便性が高いと思われます。   株主や投資家に必要な情報提供をすることが両方の書類の本旨だと思いますので、やはり書類の読み手の視点を一番重視すべきではないかと思います。一つの書類として作成された場合、利用者にとっては、ここは事業報告としての記載で、ここは有価証券報告書としての記載であろうと区分して読まれるより、やはり全体を一つのものとして読むというのが自然だと思いますし、どの部分が金商法に基づいて、どの部分が会社法に基づいているのかみたいなことを区別するのは難しく、そもそもそのような区別を読み手に求めること自体適当ではないと思われますので、一本化する方向がよいのではないかと思います。   もちろん一本化のための法制度が整備されるまでの間は、実務上の工夫として現行の法概念を維持したまま一体化していくということだと思いますけれども、飽くまでそれは過渡的のものと考えるべきで、将来的に法改正を行うことを前提に置くのであれば、やはり一つの書類なので法令上も一本化して、実態に合った分かりやすい法制度にすることが望ましいのではないかと思います。監査報告書につきましても、一つの書類に二つの監査報告書が付いていても、その意味するところをきちんと理解できるかは、なかなか期待しづらいかと思いますし、監査自体の位置付けも極めて理解しづらいものになってしまうのではないかは危惧されるところです。利用者が一つの書類全体を見て会社のことを把握しようとする実態を踏まえると、監査についても両者を区別しなくてよいようにするのが適切ではないかと思われます。こうした観点からも、一本化の方がより望ましいということになるのではないかと思います。   補足的な論点ではありますが、書類を一本化して監査も一元化するというような方策をとった場合に、一本化された書類を会社法及び金商法の下でどのように位置付け、何をどのように定めるかについて、やはり整理する必要があると思います。事報に関する会社法上の作成、開示義務は一旦消滅させて、その内容を金商法で定めるようにすることも考えられますし、サンクションに関しては、例えば金商法上の虚偽記載について、投資家はその書類全体を見ることになりますので、参考図のBの部分も含めて、書類全体が金商法上の虚偽記載の対象になり得るものとして捉えたうえで、その重要性に応じて具体的なサンクションを検討することも一つの在り方ではないかと思います。他方で、違反に対して会社法上の効果を何らか生じさせる必要がある場合には、必要に応じて会社法の方で特別な扱いをしていくということが一つの考え方ではないかと思われます。   そのように考えていくと、2つの書類を別々に作成する場合と、一本化する場合とで、法的効果等に一定の差異が生じる可能性があると思いますが、そこはやはりユーザー目線で見て現実の利用に即した制度にするという観点で、若干の差異をある程度許容せざるを得ないものとするといった発想で考えていくことが適切ではないかと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○臼井委員 まず、1の株主総会の開催時期についてです。現状の、3月末決算企業が6月の最終週に集中して総会を開催するという、言わば我が国独自の慣例は見直す方向で検討いただければと考えております。時期が集中することによる様々な弊害があり、株主の立場からは、エンゲージメントも含め議案検討に割ける時間とリソースが限定されてしまう、タイミングが重なることで総会そのものへの参加が難しくなるといったように、スチュワードシップを発揮する上での明確な弊害になっていると考えます。議決権基準日を見直すことで、総会開催時期の柔軟化、分散化を行っていただくことを強く希望いたします。具体的な開催時期としては、3月末決算であれば9月末程度までの期間を想定できればと考えております。   これに伴って、議決権それから配当基準日の見直し、変更が起こり、投資家、運用会社サイドにおいても配当未収金の計上等といったインパクトが想定されますが、こちらについては対応可能な範囲であると私どもの方では考えております。議決権基準日と配当基準日がずれた場合でも、運用会社の実務の観点からは大きなイシューとはならないと考えておりまして、基準日を見直すことで総会開催時期の集中の改善を図っていくという方向での検討をお願いしたいと思います。   また、有価証券報告書につきましては、総会前3週間以前の開示を是非実現していただきたいと思います。有価証券報告書は様々な開示の中でも、継続的な法定開示として最も重要な位置付けでありまして、私どもとしても非常によく見ている資料でございます。運用プロセスにおいて重要な参照資料であることに加え、十分な情報に基づいた個別議案の検討、必要に応じて発行体との対話の内容も踏まえて議決権を行使するためにも重要なリソースであるということで、できれば、時価総額の大きな会社であれば米国のSECルール同様に、決算後60日以内をめどに出していただけると有り難いと思っております。   一方で、資料の12ページ記載の案、バーチャルオンリー株主総会における定款の定めを不要とする、また株主総会における説明義務を負わないとする案には違和感がございます。バーチャルオンリー株主総会については、しっかりと定款の定めを必要とした上、また、株主総会においては事前開示の有無にかかわらず実質的な質疑がしっかりと行われるべきであると考えます。   それから、事業報告等及び有価証券報告書の開示の合理化でございますが、一本化した上で監査の一元化によって効率化を図ることに賛成を致します。2026年度からサステナビリティ情報の開示も始まりますが、開示内容等についてはディスクロージャーワーキンググループ等において議論が進められていると承知しておりまして、こちらの場などで継続的な検討、それから効率化を進めていただければと考えております。   繰り返しになりますが、株主総会開催日を分散し、バーチャルオンリー株主総会の導入、併用も含めた上で、幅広い株主の参加を容易とし、開催3週間以上前の有価証券報告書開示と開示内容の効率化によって充実した情報及び十分な対話を基に議案の検討、それから議決権行使が行われるということが日本のコーポレートガバナンスの改善において非常に重要なことであると考えております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○松中幹事 まず、基準日制度との関係では、今回、あるいは将来的な改正においても、現在の制度、実務をどこまで変えるのかというところが一つのポイントになっているように思われます。有価証券報告書を総会前に開示させる、そのためには後倒しが必要だ、だから基準日を変えれば後倒しになるだろう、これは非常に説得的ではある一方で、そのためだけに基準日を変えるのかというと、最終的な目的に対して変えるものがやや大きく、影響も大きいようにも感じます。他方で、臼井委員が御指摘された集中開催であるとか、その辺りを含む総会の実務全般を変えるのであれば、当然、基準日制度も問題になってくるかと思います。更には基準日制度自体、3か月で本当にいいのかという問題が少し部会資料でも指摘されています。これは議決権行使一般ということになると思うのですが、それも含めて変えるべきだということであれば、必ずしも有価証券報告書の総会前開示とは関係なく、変えるべきだということになるのだと思います。   その上で、もう少し細かい話として、総会前開示を促すためのインセンティブ付けの提案ですが、既に御指摘があるとおり、私もこれは少し無理があるのではないかと思っています。現在の提案は、全般的に、総会の一定期間前に有価証券報告書を開示すると、株主総会の機能の一部あるいはそのためのルールの一部を代替できるのだということが言えなければいけないように思います。ところが、バーチャルオンリー総会について定款で定めるのは、これはバーチャルオンリーだと議事運営等が変わるリスクがある、だから株主の承認を得ておくということだと思うのですが、それは有価証券報告書をある程度前に出したからといって、だからどうなるのかという問題で、余りつながっていない。情報開示が十分だから定款の定めが不要になるというロジックにはならないように思います。   もう一つは、説明義務との関係ですが、まず、有価証券報告書の記載事項について、それを総会前の一定期間に開示している、だからあえて説明しなくてもいいのだ、これは成り立つかもしれないと思いますし、どちらかというと解釈問題のようにも思います。他方で、そこに記載されていない事項についても説明義務がなくなるというのは、全く説明が付かない話ですので、後者も含めてというのであれば、それは幾ら何でも無理ではないかと思います。   総じてインセンティブの設定については、何らかのものが必要だというのは理解できるのですが、もし本来は議決権行使に必要な情報が残念ながら議決権行使までに出ていない、だから出してもらうという話であれば、インセンティブを付けるような問題ではなく、必要なのだから出してくださいというだけの問題かと思います。他方で、有価証券報告書の総会前開示では相当な実務上の負担も生じるため、それに応じたインセンティブを設定するのであれば、どちらかというと負担を軽減するインセンティブを設定すべきであって、ルールを緩和する話ではないのかなと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○藤井委員 この件につきましては、私ども信託銀行で主に上場会社の株主総会や開示等の御支援をさせていただいている立場として、発言をさせていただければと思います。   1点目の株主総会の開催時期に関する規律の見直しにつきましては、多くの委員からありましたとおり、基準日から権利行使までの期間を短縮することにつきましては、経済界に与える影響もかなり甚大であることでございますので、先ほど松中幹事からもございましたが、有価証券報告書を早期提出するという目的のためだけにこれを行うということには反対したいと思っております。   先ほど久保田委員からもございましたとおり、今回御提案のありましたバーチャルオンリー総会について、定款変更なく実施ができるとか、総会の説明義務を免除するといった話でございますけれども、こちらにつきましても私も企業サイドがそれをインセンティブと捉えるのか疑問であると思っております。   後倒しというところの議論もございますけれども、先ほど臼井委員から、投資家実務においては基準日と配当の基準日がずれることによる大きな問題はないといった御発言がありましたけれども、例えば個人投資家を視野に入れますと、事業年度末と配当基準日、議決権基準日というものをそれぞれ把握する必要が出てまいりますし、配当に関する株主提案等があった場合、更に複雑化する可能性もあると考えておりますので、こういった株主側の混乱ということを招くおそれもございますので、ここのところはよく考える必要があると感じているところでございます。   2点目の開示の合理化というところでございます。こちらも多くの委員からございましたとおり、一本化というものを行うことに関しましては、開示書類の整理という観点で強く賛成させていただければと思っております。これも皆様からございますとおり、ただBの部分を減らすだけでは現状の日程で行うのは困難と、アンケートでも触れられているとおりでありますので、やはり抜本的な記載事項の見直しというのが必須なのかなと考えております。   これは前回も少し発言をさせていただいたのですけれども、やはり現在の議論は有価証券報告書を3週間前に開示するということが非常に目的化されておりまして、株主が議決権の判断に要する資料をできるだけ早期に提供するということが本来の趣旨と理解しておりますけれども、そのための情報が今、有報の記載事項とされているものの本当に内容全てなのか、その一部であるのか、企業側が、事業報告等で議決権行使の判断のために必要な情報として任意開示をかなり進めてきている中で、本当にそれが足りていないのかというところを、その議論をせずに、ただ3週間前を要請するというところには非常に違和感を覚えるところでございます。   例えばということで、私どもの調べではあるのですけれども、実際に有価証券報告書の記載事項とされております任意の指名報酬委員会の活動状況とか、あとは中長期の計画とかサステナビリティの取組が招集通知に記載されているかを調べてみたのですけれども、例えば中長期計画についてはプライム上場企業の5割弱の企業で、サステナビリティの取組についても4割強の企業で、既に招集通知において任意開示がされているというような状況で、投資家の皆さんも御覧になっているのではないかとは思っているところでございます。先ほども申し上げたとおり、一本化自体は書類の整理という観点で是非進めていただきたいのですけれども、やはり多くの企業が今、電子提供制度の下、定時株主総会の3週間前よりも更に早く招集通知を開示しているという実務がある中で、招集通知で足りない情報を追加する方法が本来的な趣旨にはかなうものなのかなとは考えているところでございます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○内田委員 まず、有報の早期開示については、本邦機関投資家は現行制度に慣れているので、現状の実務対応という意味ではニーズがないというような回答になるのかと思います。欧米を見ると、あるいは外国人投資家の主張を聴くと、有報の早期開示の必要性は至極もっともだと思います。総会前に有報、つまり年次報告書を見て判断したいというニーズとか考えは合理的だと思います。むしろ米欧においては総会の日時の方が柔軟に運用されていますので、もちろん日本の株主総会と米欧の株主総会の経営における位置付けが違うということがあって、日本の場合は総会で決めることが非常に重要な経営判断で、経営の執行を左右するような拘束力が強い性格であることを考慮した上で、グローバル視野で見ても有報の早期開示というのはごく真っ当な要請だと私自身は思っています。   その中で、日本の実務の上で投資家としてどう考えているかということですが、やはり有報にある情報として重視しているのは経営課題に対する記載です。対処する経営課題、それから取締役会の活動状況、加えて何回も指摘されているように政策保有株、キャッシュフロー計算書、それから、これはファンドマネジャーとかアナリストが特によく指摘するところですが、注記等の記載情報には非常に重要な情報が入っており、これは場合によっては非常に価値がある情報だと思います。あとはKAM(キーオーディットマター)が重要な情報だと思います。議決権行使の立場として、こういった情報が総会の3週間前に取得できたときに業務がどう変わるかというと、まずは、一括でそれらの情報が取れるということであります。現状はいろいろなところから情報をかき集めて議決権行使に必要なデータを集計、作成していますが、それに伴う確認作業という負担が大きくて、またこのデータとか情報がオーソライズされたものかの会社側への確認、それからこれらは任意開示だったりするので定義であるとかフォーミュラの照会、確認であったりします。その内容を細かく開示しているところはいいですが、そうではない場合はいちいち内容についての確認もしており、こういったところに時間を割いております。おそらく有価証券報告書が3週間前に一斉開示となれば、そういった負担は軽減されて時間的にも効率的になると思います。それがどの程度かというと、現状相当程度その作業に忙殺されており、有報が総会前に事前開示なれば、かなりの負担、時間が省力化されると御理解いただいていいのかと思います。   それから、議決権行使については昨今、形式的であるとか、基準どおりの行使であるとかいろいろな方面から批判されていますが、エンゲージメントを踏まえた議決権行使というのは多くの運用会社が進めていることです。要はバックワードではなくてフォワードルッキングで事業会社の取組だったり、経営変革を見ていきましょうということだと思います。その意味では、先ほど挙げさせていただいた会社が対処すべき課題やKAMの記載はある意味、議決権行使においても重要な情報になります。現状はスキルマトリックスなどを活用しながら、そういった対応ができているかを対話で確認していますが、今申し上げたような事例などはエンゲージメントと議決権行使の一体運営という中で有用な情報になるのかと思います。確かに、現状実務では有報の早期開示はそれほどニーズはないという声が運用会社などからは上がっていますが、少し長いタームでみると、やはり相当程度のメリットはあると思います。   それから、部会資料にあるところの有報の総会前開示をすることのインセンティブとして例外的にバーチャルオンリー株主総会の定款の定めを不要とするという点につきまして、一考に値するというか、私自身はインセンティブとして考えて良いと思います。おそらく有報の開示により発行体の開示に伴う説明負担も相当減ってくると予想されますので、インセンティブとして付加しなくても、実際にそのような行動になっているとも思いますが、明確なメリットを提示していくことも意味あることのように思います。   それから、少し付け加えると、アナリスト、ファンドマネジャーも現状、有報がないので調査活動している部分もあるということです。早期開示によって有報が手元にあれば会社への取材や対話の内容も変わってくると思います。俗によく言われるのですが、有報が出てもファンドマネジャー、アナリストはそれほど丹念には見ないと言われていますが、もちろん見る方もいらっしゃるとは思いますが、それほど見ないというのは、その前段階で取材とかヒアリングを通して、その内容についてはほぼ情報として取得しているためであります。余り重要視していないという声が投資家サイドから時々出てくるのですが、そういった問題も解消されると思います。   それから、株主総会の時期についての柔軟運用、つまり後倒しにするということですが、先ほど臼井委員からもありましたが、少し現在の総会のスケジュール感というのは違和感があって、全体感としてはこれを解消したいと思っているところであります。例えば議決権基準日の変更、それから取締役会への配当授権、これに関する定款変更等の議案については、投資家の方も柔軟に応じるべきだと思います。制度としてサポートできるのであれば、その点は適切に柔軟に運用できる形にすることで株主総会の時期を柔軟に運用することができると思っております。   特に、今まで議論になった配当授権については、やはり問題だと思っておりまして、投信であれば配当未収金が発生したり、それによってファンドの決算が遅れたり、それで受益者への配当還元が遅れる懸念があったり、配当については多大な影響が予想されます。現在は、配当授権については、確かに一部反対する向きはありますが、だんだん変わってきていまして、取締役会の配当授権については機関投資家も良しとする向きも増えてきております。もちろん条件付きで、例えば剰余金処分が適切に行われているとか、モニタリングボードの社外取締役が配当金についてチェックしているとか条件付きではありますが、配当授権を許容するような方向になっています。配当支払について対応できるのであれば、株主総会も柔軟に運用すること、つまり後ずらしということも十分あり得ると思います。   そこについて、投資家が一番懸念することは、株主の権利が確定する基準日と株主総会がずれることで、間隔が余りに空いてしまうと、その間の経営責任を誰が取るのかという問題が生じます。特に、日本の株主総会は重要な決議をする場でもありますので、経営執行への影響を懸念する向きは非常に強いと思います。それについては一言加えさせていただきたいと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○松尾幹事 私は第5回会議でのときに基準日のことを申し上げたので、その関係で少し意見を申し上げます。先ほど松中幹事がおっしゃったように、有価証券報告書の総会前の開示との関係のみで基準日の規律を変更するというのは、かなり無理があるというのはおっしゃるとおりかと思います。もう少し株主総会全体のことを眺めた上で、基準日に関する現在の規律の変更が必要かどうかということを検討する必要があるというのもおっしゃるとおりかと思いまして、そういう観点から、ほかに何か考えるべきことはないのかということについて一言申し上げます。やはり現在、株主総会をプロセスで捉えて、議決権行使というのは言わばそれ以前の対話、エンゲージメントの集約といいますか、到達点として捉えるという考え方が強くなっていることからしますと、対話の間に起きた株主の持株数の増減というのは本来、議決権の行使に反映されてしかるべきだと思います。それが3か月前の時点から増減なしということですと、対話の意味も減じられてしまうのではないかということがあります。   現に実質株主の確認のところで、いつの時点の株式保有情報を出せばいいのかという問題がここで議論されたときに、一方で基準日時点でよいだろうという御意見があったのに対して、基準日時点だと古いという御意見が、これはどちらかというと企業の側から出ておったようにも思います。それはやはりどこかで、できるだけ総会に近い時点、議決権行使に近い時点の保有数を知った方がいい、それが議決権行使に反映された方がいいという考え方があるのではないかと考えております。そういう意味で、議決権の基準日から行使まで3か月空けてよいという規律の合理性は、かなり怪しくなっているということはいえるのではないかと思います。もっとも、現行の規制も3か月空けなければならないというのではなくて、3か月までなら空けてよいという規律ですので、自発的に短くする分には全く障害のない規律になっております。そういうことからしますと、まずは自発的な取組に委ねるということもあり得るかと思います。   それから、もう一つ別の観点で、有価証券報告書の総会前開示を促すインセンティブ付けのために何かできないかというところですが、事前確定型の決議の要件として、総会前に有価証券報告書を開示しているということを加えるというのはあり得るのではないかと思いました。つまり、事前の議決権行使が有価証券報告書の開示によって充実した情報の下で行われるというのであれば、それに基づく議決権行使を信頼して事前に確定させてよいと、これなら理論的には説明が付くかなと考えました。一方で、ただでさえ総会前の事前確定型の決議の要件が厳しすぎるという御意見があるところで、より厳しくしてしまうと、せっかく作っても使われない制度になるのではないかという懸念もあるところかと思いますので、飽くまで参考意見として申し上げます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○齊藤委員 2点、発言させていただきます。   まず1点目ですが、有価証券報告書の提出前倒しそれ自体を目的化すべきでないという御指摘はそのとおりとは思いまして、会社法からの関心としては、株主総会の前に必要な情報が株主に提供され、それを十分に吟味する時間が確保されていることが大事ではないかと思っております。投資家サイドの委員から、有価証券報告書の早期開示を望む御意見がこの場でも繰り返し表明されてきているのは、現行法制のもとでは、有価証券報告書が重要な情報源であるという認識があるのではないかと思われます。   余り出てこない観点なのですけれども、また、産業界から提出前倒しに対するプレッシャーに反対する意見は出ているのですけれども、実際に企業の現場で株主総会関係書類の作成に関わる作業に携わっている人たちの中には、期末から定時株主総会のスケジュールがもう少し緩やかであったらと思っておられる方もそれなりにいらっしゃるのではないか、日々追われるように4月から6月を送るのは、そろそろ限界が来ているように思われます。しかし、このような作業に実際に関わっておられる方々は中間管理職などであることも多いでしょうから、基準日の変更などを言い出せない、あるいはそのようなことは経営者に進言し、説得できる立場でないのではないのでしょうか。しかも、既に御指摘があるように決算スケジュールの大幅な変更が、人事や配当のスケジュールにも影響してくるなどということになれば、一経理担当者が言い出せるような話ではないのではないかと思われるのです。上司から、経営者を説得し、外部の関係者も説得しないとそのようなことはできないのです、と言われれば、諦めざるを得ないのではないかと。でも、企業間に横並び意識があるとすれば、有価証券報告書の総会前開示が求められることになったので、仕方ないから、わが社も株主総会開催のスケジュールを見直しましょうと、経営者に言い出せるような環境を作り出すことで、見直しもしやすくなるのではないか、と感じているところでございます。   第2点目ですが、開示内容の整理に関する点ですけれども、有価証券報告書との関係について議論がされるときに、非上場会社のことが置き去りにされがちなのですけれども、事業報告の内容は非上場会社における株主、関係者にとって重要な情報源ですので、事業報告において、サステナビリティ情報等の非財務情報の開示が整備されないままであることが気になっております。会社法の事業報告が、それ自体として一応十分な内容を備えた完結した情報源となっているのかという観点も置き去りにしないでいただきたいと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○田中委員 既に複数の委員から指摘があったことが多いのですけれども、私の考えを幾つか述べさせていただきます。   まず、金商法関係の有価証券報告書と会社法関係の事業報告等の書類の一本化を可能にする法制度に賛成します。やはり書類が2通あるということになると、仮に両者の記載内容が共通化するという意味で一体化したとしても、そもそもそれらの書類間で平仄が取れているかの確認を一つとっても、負担が余計になることは否定できませんし、また投資家としても、本当にその二つの書類の記載が同じものであるかということをチェックしなければいけませんので、一体化と一本化との間には差異があり、一体化ができるとしても、一本化を正面から認めることに意義があると思います。   ただ、その場合、一本化した書類については、現在の会社法監査に相当する監査が必要で、会計監査については金商法監査で代替できるとしても、監査役・監査等委員会・監査委員会による監査は省略できず、監査の日程がどうしても必要になってきます。そうしますと、現在の総会開催日程では、監査について相当に、他の上場会社にも優先して監査の資源を割ける会社を除けば、現在の開催日程の下では、一本化した書類を株主総会の招集通知発送までに用意することは困難です。したがって、やはり総会開催日程の後倒しということを是非御検討いただきたいと思います。これが1点目です。   それから、2点目の基準日についてですが、基準日の効力を2か月に短縮するということは、現実的には企業にとって開催日程の後倒しを強制するのと同じことですので、企業の十分な理解がなしに実現できる改正ではなく、私自身もそれをここで積極的に主張するものではありません。ただ、これもどなたかから既に御指摘があったことですけれども、基準日を現在3か月程度取っているというのは、開催日程の関係を抜きにしても、やはり問題のあることであると思います。   私はこの問題について2000年代に論文を書き、諸外国の情勢を調査したりもしました。その中で最も顕著なルールはイギリスのルールで、イギリスは、議決権行使の基準日が総会開催日の2日前です。このように基準日の効力を非常に短くしている理由は、総会の開催日程とは直接関係はなく、要するに、総会日において株主である者は、会社経営についてリスクを負っているのだから、にもかかわらず議決権がないというのはおかしいし、また逆に、総会日までに既に株式を売却してしまって会社経営についてリスクを負っていない者が株主として総会の意思決定に関与するのもおかしいと、そういう原則論なのです。   現在の日本の実務は、この原則論に照らしてもやはり問題なしとはしないわけでして、さらに、先ほど松尾幹事が言われたように、日本の株主総会は、法律上、総会の意思決定権限が広いだけではなくて、例えば買収防衛策の承認など、法定決議事項でなくても裁判所の法解釈により株主総会の決議が重視されているものもあります。このような株主総会の決議について、総会日において株式を持っている株主が、基準日である3か月前は株式を持っていなかったという理由で議決権を行使できず、逆に、3か月ぐらいも前に株式を売ってしまった者が議決権行使できるということ自体が、やはり問題なしとしないと思います。このような観点からも、是非、基準日を総会日にできるだけ近付けることが必要で、そのためにはやはり開催の後倒しがどうしても必要になります。これをすぐに法制度によって強制するということまで私は求めるわけではありませんけれども、是非そういった形で関係者の意識をそちらの方向になるべく持って行くようにしていただきたいと思います。   先ほど臼井委員や内田委員が言われたことからしても、投資家は現在の日本の総会開催について問題なしとしているわけではなく、むしろ私が2000年代に調査したころに指摘されていた問題が現在も続いている、例えば、開催日程が非常にタイトなので議案について十分調査できない、議論できないというようなことは、この20年間ほとんど変わっていないという気がいたします。有価証券報告書の早期開示の論点を抜きにしても、株主総会の開催日程の問題はずっと残っていると思いまして、是非このことの解決に向けて努力していただきたいと思います。   最後に、有価証券報告書の早期開示を実現するためのインセンティブの付与に関してです。御提案にありますような株主総会における説明義務の免除につきましては、そもそも説明義務が問題になるのは、株主総会参考書類の記載事項が多いと思いまして、それについて、有価証券報告書を早期開示したからといって説明義務がなくていいというのは、少し違うのではないかと私も思います。   そういう意味では、インセンティブ付与のために法制上何ができるかは難しい問題ですが、一つの案としては、これは以前にもお話ししたことですが、指名委員会等設置会社以外の会社についても執行役制度の導入を認めることは、総会開催日程との関係でも一定の意義があるように思います。日本の場合、3月決算の会社では役員の改選が7月1日になりますが、これが後倒しになることが総会開催日程の後倒しに対する一つのハードルになると言われることがあります。これが諸外国ですと、株主総会は、決算日の6か月後ぐらいに開かれていますが、誰もそれを問題にしていないのは、一つには経営者が必ずしも取締役でないので、経営者の交代時期と取締役の交代時期が異なってよいものと考えられているということがあるように思います。これも法律で変えたからといってすぐに意識が変わるものではないと思いますけれども、日本の場合、根底に経営者の交代は取締役の交代であるという意識があり、そのことから、総会の開催日程を遅らせることはすなわち経営者の交代をそれだけ遅らせることを強制することであるという意識が、ある種の常識のようになっているように思えます。そういった常識をある程度相対化するためにも、執行役制度の導入は是非、御検討いただきたいと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。   ほかに御質問、御意見等はございますでしょうか。   よろしいでしょうか。それでは、続きまして部会資料10の審議に入りたいと存じます。初めに、事務当局から部会資料10についての御説明をお願いいたします。 ○相澤関係官 部会資料10について御説明いたします。部会資料10は、会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する論点の補充的な検討を行うものです。   まず、1ページ目の第1では、実質株主確認制度について、中間試案の取りまとめに向けて特に検討が必要と思われる項目に絞って取り上げております。   1の株式会社から実質株主を確認する制度については、第7回会議において御提示した基本的な枠組み、すなわちEU第2次株主権利指令を相当程度参考にしつつ、株式会社から名義株主である仲介機関に対して情報の提供を請求できることとした上で、当該仲介機関の背後に更に仲介機関がある場合には、最終の仲介機関に至るまで当該請求を順次転送しつつ、最終の仲介機関に至るまでの各仲介機関が自身が保有する情報を株式会社に対して提供することにより実質株主を確認する仕組みを念頭に置いた上で、第7回会議において、更に整理する必要があるとの御意見を頂いた項目として、制度の趣旨と制度の実効性を確保するための規律、実質株主側の権利、費用負担についてそれぞれ取り上げております。   ここで、参考資料24についても御説明いたします。こちらは第7回会議において御提示した、株式会社から実質株主を確認する制度の基本的な枠組みに関する実務的な論点について、実質株主確認制度整備に向けた実務者検討会に当省から検討を依頼し、検討会において投資家、仲介機関、発行会社等の実務関係者から寄せられた意見を全国銀行協会にて取りまとめていただいたものです。制度の基本的な枠組みにつきましては、今回の部会においては検討事項として取り上げておりませんが、今後の中間試案の取りまとめに向けた検討の中で参考にしていただければと思います。   部会資料10の説明に戻りまして、4ページ目の2の株主側から株式会社に対する通知を義務付ける制度について、こちらは第7回会議の御議論を踏まえて規律案をアップデートしています。資料作成段階では、特に6ページ目、補足説明3の違反者に対する事前通知の意義及び7ページ目、補足説明4の株主総会の決議の取消しの可能性をどのように整理するべきかが悩ましかったところですので、この点を含めまして御意見を頂けますと幸いです。   次に、8ページ目の第2では、社債権者集会の書面決議制度の見直しを取り上げております。第8回会議で頂いた御意見を踏まえ、社債権者集会の書面決議制度について、社債権者の全員の同意がなくとも決議を可能とすることを提案しており、具体的には、議決権を行使した議決権者の議決権の総額を分母とする多数決による決議を認めるA案と、全議決権者の議決権の総額を分母とする多数決による決議を認めるB案を掲げております。株主総会については、これを全く開催しないで多数決で決議する制度を創設するのは時期尚早であるとの意見が多数あったところですが、社債権者集会についてはこれを可能とすることの許容性も含めて、御意見を伺えればと存じます。   簡単ですが、部会資料10の御説明は以上です。 ○神作部会長 御説明どうもありがとうございました。   それでは、部会資料10について、二つのセクションに分けて御議論を頂きたいと存じます。まずは、部会資料10「第1 実質株主確認制度」に関して御議論を頂きたいと思います。御意見のある方は挙手を頂きますようお願いします。 ○鮫島幹事 それではお手元、部会参考資料26につきまして御説明申し上げます。   まず、会社から実質株主を確認する制度の趣旨でございます。この趣旨につきましては、建設的な対話の促進に加えまして、実質株主の属性・情報を会社が把握できるようにすることもこの制度趣旨に含まれるべきと考えてございます。なぜならば、実質株主の情報は、特に会社の支配権に関わるような重要事項を議決する株主総会においては、株主が適切に意思決定するために重要な情報だと考えてございますし、また、株主総会決議の公正性を担保するためにも必要な情報と考えられるからということでございます。また、会社が実質株主を把握することは、日本企業の経済安全保障の確保にもつながることになると考えてございます。また、欧州の実質株主確認制度も、会社の意思決定に影響を与え得る株主を知る権利と解されてございまして、その欧州の制度とも整合的と考えてございます。   さらに、このように趣旨を解することは、株主側から会社に対する通知を義務付ける制度とも整合的と考えてございます。すなわち、部会資料においては、株主側から会社に対する通知を義務付ける制度の趣旨につきましては、実質的な決定権限を有する者の存否及びその属性は、株主が重要な意思決定を公正に行うために重要な情報であり、これを会社及び他の株主にも開示させる必要があると書いてございます。また、部会資料には、通知義務に違反した場合には他の株主の利益を害する、株主総会の意思決定をゆがめるおそれがあるから議決権を停止する、と書かれているところでございます。   この制度を実際に活用するためには、会社から実質株主を確認する制度で会社が実質株主を確認できていなければ、通知義務の違反を把握することは困難でございますし、また、通知義務の違反が確認された場合であっても、通知義務の違反者が保有する株式を会社が特定できないと考えてございます。また、過料の制裁があったとしても、実質株主が、仲介機関の守秘義務を解除することはなかなか想定し難いと考えてございます。   以上申し上げたように、会社から実質株主を確認する制度は、株主側から会社に対する通知を義務付ける制度の前提・基礎をなす制度と考えてございます。したがいまして、会社から実質株主を確認する制度においては、実質株主の属性に関する情報を会社が把握できるようにすることも制度趣旨に含まれていると考えられるということでございます。   次の2ページに移っていただきますと、今申し上げたこと、このような趣旨に基づきまして、実際に想定される制度の運用実態についてでございます。まず、①、下の三角の図でいえば青い部分でございますが、会社から実質株主を確認する制度により、実質株主の情報を把握するということでございます。その上で、②、下の三角の図でいえば赤い部分、実質株主の会社に対する通知義務でございますが、この通知義務の範囲に入る場合、部会資料では株券等保有割合5%超とされてございますが、こういった実質株主については、他の株主が意思決定を行うために当然に重要性が高い情報でございますので、実質株主側から会社及び他の株主にも開示をしなければならず、また、通知義務の範囲に入らない場合、部会資料では株券等保有割合5%以下の場合でございますが、この場合には、株主総会招集請求権や株主提案権等々の行使状況を踏まえて、他の株主が意思決定を行うために重要性が高い情報であるかどうかを会社側が判断し、重要性が高いと判断した場合には、会社側から他の株主に対して実質株主を開示する、という形で会社から実質株主を確認する制度と株主側から会社に対する通知を義務付ける制度を、一連の制度として捉えるべきと考えてございます。   以上を踏まえまして、会社から実質株主を確認する制度の趣旨は、実質株主の属性が、株主総会において株主が重要な意思決定を行うために重要な情報となり得るため、会社が実質株主を把握する必要があるということも制度趣旨に含まれるべきと考えてございますし、したがいまして、違反があった場合には他の株主の利益を害し得るものであり、議決権行使により株主総会の意思決定をゆがめ得るおそれも踏まえると、違反した場合には議決権を停止できるべきと考えてございます。実質的な観点からしても、海外投資家に対して過料の制裁が適用されることは現実的には困難であることからも、新たに設けられる制度の実効性を確保するためには、海外投資家を含む違反者の議決権を停止できることが必要と考えてございます。   続いて、実質株主を代理人とすることを禁止する旨の定款の定めの制限ということでございますが、これについてはあえて規定を設ける必要性は低く、現行の実務上の対応に委ねれば十分だと考えてございますし、また、実質的にも自己の名義で1株購入すれば代理出席できることになりますので、この規定をあえて設ける立法事実もないのではないかと考えてございます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○久保田委員 私は、上場会社における実質株主確認制度の最大のニーズは会社支配に関する情報の把握にあると理解していますので、これまでの部会では、まずはそうしたニーズになるべくこたえることができる制度の創設を目指すべきであると考えまして、その観点から意見を申し上げてきました。また、それには現在のようにいわゆるウルフパック戦略がとりやすい状況が続きますと、場合によっては会社支配権取得のためのウルフパック戦略の可能性があるというだけでアクティビストに対する対抗要件が許容されることにもなりかねず、そうなるとアクティビストの社会的に望ましい活動までが抑制されかねないという懸念を持っていたという事情もあります。そのため、先ほどの鮫島幹事の御提案には共感するところが少なくないわけです。   ただし、同時にということですけれども、少なくとも今回の改正に関しましては、取り分け投資家の委員の方々の御意見を伺っていまして、会社支配権の獲得を目的としない投資家が大半である状況において、そのような投資家に過度な負担を掛けることなく株式会社から実質株主を確認する制度という形で、会社支配に関する情報の把握を可能にするような制度を創設することが難しいということをよく理解いたしました。したがって、まだ考えが若干揺れているところがございますが、今回の改正に関しては、会社支配に関する情報の把握は2の株主側から株式会社に対する通知を義務付ける制度の方に委ねることにして、1の株式会社から実質株主を確認する制度については、今回の部会資料で提案されていますように、その制度趣旨を株式会社と株主との間の建設的な対話の促進とすることに賛成したいと思います。   なお、そのような観点からしますと、先ほどの鮫島幹事の御提案は、中長期的にはこういう制度の創設は十分にあり得るとは思いますけれども、現時点ではどの実質株主に情報を提供させるか、取り分け通知義務の範囲に入らない実質株主のうちどの実質株主に対して情報提供させるかについて、会社に広い裁量権、判断権があることが前提にされるように見えるところ、仮にそうなりますと、実質株主の方が争う、異議を述べることも難しいということになりそうであります。また、実質株主は会社に情報を提供するだけでなく、ほかの株主にも情報開示をしなければなりませんので、その意味で投資家、取り分け会社支配権の獲得を目的としない投資家にとっての負担が大きすぎるのではないかという懸念を持っています。   そのことを前提にしますと、少なくとも今回の改正に関してはということですけれども、これまで繰り返し指摘されていますとおり、EU第2次株主権利指令に基づく一般的な実務と同様のものであれば、会社支配権の獲得を目的としない投資家にとっての負担も小さいと考えられますので、現在のEUにおける一般的な実務に合わせることが、まずは第1段階としては望ましいと考えられます。そして、そのようにすれば、支配権争いが生じている場合は別かもしれませんけれども、そうでない場合は外国の機関投資家としても情報を出さないということは考えにくいと思いますので、制裁は過料でよいのではないかと思います。また、最終的に会社に提供されるべき情報は、これは定義がなかなか難しいかもしれませんけれども、基本的には最終の仲介機関に登録されている顧客に関する情報ということになろうかと思います。その場合は、かかる顧客の背後に実質的な指図権者が存在する可能性は残るわけですけれども、最終仲介機関がそうした実質的な指図権者に関する情報を把握できていないことが少なくないと考えられますので、投資家に過度の負担を掛けないようにするという観点から現実的に可能なのは、最終仲介機関に対し把握できている限りでの情報を提供させるというところにとどまるのではないかと思います。   費用の負担については、今回の部会資料で提案されていますとおり、制度を利用する会社に負担させるべきであると思います。仮に仲介機関が負担することになりますと、実質的には全ての機関投資家が負担するというのに等しいことになりますが、それは余り合理的ではないと思います。ただし、制度を利用する会社に費用を負担させる場合でも、可能であれば、その費用の上限を定めることにより相当な範囲内での費用負担に抑えるようにした方がよいのではないかと思います。なぜなら、そのようにすれば、仲介機関としては余り高額な費用負担を生じさせないような効率的なシステムを構築するインセンティブが与えられることになるからです。逆に言えば、会社の費用負担の上限が定められない場合は、仲介機関としては高額の費用負担を生じさせるような非効率なシステムでも問題ないということになりますので、効率的なシステムを構築しようとしないのではないかという懸念が残ることになります。   なお、実質株主の権利について、部会資料1ページの本文(1)に記載されているような、定款の定めは効力を有しないとすることによって実質株主の株主総会への参加を可能とすることに賛成いたします。こうした手当ては穏当なものであり、実務上も比較的受け入れやすいのではないかと思います。   次いで、2の株主側から株式会社に対する通知を義務付ける制度についてです。まず、部会資料の5ページから6ページに掛けて記載されている制度の趣旨及び通知義務の範囲及び立て付けについては異存ありません。また、会社による違反者に対する事前通知の趣旨については、部会資料6ページで紹介されているような二つの趣旨、すなわち被疑違反者の手続保障という趣旨と、軽微な違反の場合にまで議決権停止の効力を及ぼさないよう会社に判断権を与えるという趣旨の両方が含まれると見てよいように思います。   その上で、一つ目の被疑違反者の手続保障と関連することですけれども、会社が違反者に対して事前通知をして違反者に争う機会を与えたけれども、違反者が争わないまま株主総会の開催日を迎えたため会社が違反者に議決権行使をさせなかった場合は、成立した株主総会決議について決議方法の法令違反という取消事由は認められないことになると思います。他方で、決議方法の著しい不公正という取消事由が認められる余地は完全には否定できないわけですけれども、会社が違反者に対して事前通知をして違反者に争う機会を与えたのだけれども、違反者が争わなかった場合は、特別な事情がない限り決議方法の著しい不公正も認められないことになり、その結果、決議が取り消されることもないと理解されますので、その意味で、事前通知の制度によって被疑違反者の手続保障を図ることは会社にとってもプラスに働くのではないかと考えられます。   ところで、今回の部会資料では他の株主にも事前通知権限を与えるべきかという問題提起がされていますけれども、これは部会資料に記載されている理由から、ほかの株主に事前通知権限を与えることは避けた方がよいと思います。そうすると、例えば大量保有報告規制の重大な違反をした者が存在するのだけれども、その者が現経営陣に友好的な者であるなどの理由から、会社があえて事前通知をせず議決権行使を認めるといった事例も生じ得るわけです。しかし、これは次の論点に関係することですが、そのような場合は他の株主は事後的に株主総会決議取消訴訟を提起できるとすれば、それで足りるのであり、事前通知権限まで与える必要は小さいのではないかと思っています。   最後に、株主総会決議の取消しの可能性についてです。これは第7回部会でも申し上げましたとおり、制度の実効性を確保する観点から、大量保有報告規制の違反者が議決権行使をして株主総会決議を成立させたことが事後的に明らかになった場合は、当該決議の取消しを主張できるようにすることが望ましいと思います。これは、今回のようにA案が比較的小さい制度になるといった場合は余計に、取消しの可能性を残すべきであろうと思います。   この点について、今回の提案では大量保有報告規制の違反は同時に株主の会社法上の通知義務の違反にも該当することがより明らかな形にされています。そうすると、大量保有報告規制の違反者が株主総会で議決権行使をした場合、その違反者には会社法上の通知義務の違反も認められることになりますので、決議方法の著しい不公正という取消事由が認められるとする考え方がより支持されやすくなったといえます。また、大量保有報告規制の軽微な違反があるにすぎない場合は、違反者が議決権行使をしたとしても決議取消しの対象にすべきでないと考えられるわけですけれども、裁判所は決議方法の著しい不公正という取消事由が認められるかを判断するに当たって、大量保有報告規制の違反の態様や程度も考慮することが可能ですし、実際にも考慮するに違いないと考えられますので、大量保有報告規制の軽微な違反があるにすぎないのに決議が取り消されるという事態は心配しなくてよいように思います。   さらに、被疑違反者の手続保障という点についても、第7回部会で松中幹事が指摘されていましたとおり、被疑違反者が取締役を交代させて会社支配権を取得している場合は、会社が被疑違反者の主張を代弁できるわけですし、そうでない場合は被疑違反者である株主が決議取消訴訟の被告会社側に補助参加をすることができると解されますので、それで被疑違反者の手続保障として特に問題はないのではないかと思います。   なお、取消事由となる通知義務違反としては、会社が事前に議決権を停止することが困難であったものが中心になると思いますけれども、先ほど申し上げたこととの関係で、必ずしもそれに限るべきではないと思います。  そうしますと結局のところ、このように大量保有報告規制の違反者が株主総会で議決権を行使して決議を成立させた場合に、その決議の取消しの可能性を肯定することについては、その必要性が強い一方で実質的な問題は見当たりませんので、決議取消しの可能性を肯定すべきであろうと考えています。 ○神作部会長 ありがとうございました。 ○北村委員 実質株主確認制度につきましては、1で株式会社から実質株主を確認する制度、2で株主側から株式会社に対する通知を大量保有報告制度に乗っかって義務付ける制度、という分け方をする規律が提示され、第1の方はその趣旨を建設的な対話の促進と整理されています。これについては先ほど鮫島幹事さらに久保田委員から、様々な考え方が指摘されましたけれども、私の方からは今回の整理を前提に部会資料のゴシックのところ、そして補足説明のところについて幾つか意見を述べさせていただきたいと思います。   まず、1(1)は、株主総会における議決権行使の代理人資格を議決権を有する株主名簿上の株主に限定するという定款の定めがあることを想定した上で提示されていると思うのですが、現在の解釈におきましても、名義株主の背後に実質株主がいる場合には、その実質株主を名義株主の議決権行使の代理人にすることは当該定款の趣旨に反しないという有力な見解があります。このことを考慮して(1)があるのだろうと思います。   そして、コーポレートガバナンス・コード補充原則1-2⑤では、この有力な考え方を前提として、信託銀行等の名義で株式を保有する機関投資家等が株主総会において信託銀行等に代わって自らの議決権の行使等を行うことをあらかじめ希望することに対応するため、上場会社は信託銀行等と協議しつつ検討を行うとなっております。これを受けて、全国株懇連合会の「グローバルな機関投資家等の株主総会への出席に関するガイドライン」におきましても、実質株主、同ガイドラインではグローバルな機関投資家となっておりますが、が株主総会に出席する方法が示されており、そのうちの一つとして実質株主が名義株主の代理人として出席する方法が提示されています。こういう流れからすると、(1)はそれなりに説得力があるような感想を持ちます。   ただ、(1)は、名義株主が、株式会社から実質株主を確認する制度に基づき上場会社に提供された指図権者を代理人として議決権行使をする場合、という限定をしております。補足説明では、そのように解する理由として、判例の立場等を紹介しながら、実質株主が代理人になったとしても指図権を有しているのだから、株主総会を攪乱するおそれはないからである、と述べられています。そうであれば、上場会社がこの制度を使って情報提供を求め情報提供された実質株主だけに(1)が適用されるという根拠としては弱いように思えます。つまり、(1)は、実質株主全体ではなくて、上場会社から実質株主を確認する制度に基づく場合だけ定款の定めによっても当該実質株主が代理人になることを排除できないという定めになってしまっているわけです。もちろんこのような定めを設けることによって、実質株主確認をしたときに情報提供をしておけば、その実質株主は代理人資格制限の定款の定めがあっても代理人になれるということでこの制度の利用を促しているのかもしれませんけれども、実質株主は攪乱するおそれがないということなら全ての実質株主を対象にしなければならないのではないかと思いました。   二つ目に、1人の名義株主の下に指図権者が複数いた場合にどうするのかという問題があります。現在の会社法第310条第5項では、会社は代理人の数を制限できることになっており、多くの会社は1人に制限していると思います。これに関して、投資信託及び投資法人に関する法律10条2項では、指図権者が複数いることを前提に、投資信託財産として有する株式に係る議決権の行使については会社法第310条第5項の適用を排除する、となっております。もし実質株主確認制度を導入するのであれば、投信法第10条第2項のような規定を会社法の中に設ける必要があるのではないか、つまり、第310条第5項に、実質株主確認制度に基づき通知された実質株主についてはこの規定は適用されないといった規制が必要かと思いました。   費用につきまして、ゴシックで掲げたような規定を設ける、あるいは中間試案でこれを提示することに全く異存はございません。費用の上限を定めるということについて、会社法には権利を行使する者が費用を負担するという規定は幾つかあるわけですけれども、恐らく上限を定めている例はないと思います。費用が不合理に高額である場合については個別に対応すべきであり、会社法に上限を定めるということは技術的にも実際的にも難しいのではないかという意見を持っております。   2は株主側から会社に対する通知を義務付ける制度です。部会資料では5ページになりますけれども、ゴシックの(1)では、大量保有者になれば会社及びその株主に情報提供するとあり、(2)で金商法の規定による内閣総理大臣への提出をもってこれに代えることができるとなっています。(1)は大量保有報告を会社法上の制度にするための規律だと思いますが、恐らく(1)の義務を果たしても(2)の金商法上の提出はしなければならないですよね。その逆、つまり会社法上の義務を果たせば内閣総理大臣に提出しなくていいというルールは、当然ないという前提かと思いますので、大量保有報告を会社法上の義務にしても、結局のところは金商法上の報告を行うということになるのだろうと思っております。   (3)について、違反被疑者に対して、議決権停止の通知をする制度と決議取消しの問題をどう考えるかです。私の考えでは、大量保有報告そのものは株主総会の招集手続でも決議方法でもなくて、単に大量保有者になれば開示しなければならないという義務です。その違反は、事前通知権限が行使されたことによって株主総会の招集手続に関係してくると整理するのではないかと思っております。大量保有報告が会社法上の義務になったとしても、会社上の義務が全て株主総会に関連するものではないので、これを株主総会の招集手続に関連させるのが事前通知かなと考えております。もちろん事後的に、大量保有報告義務違反があった者がいて、その者が議決権行使してゆがんだ決議がされたときにどうするのかという問題はあるわけですけれども、それは大量保有報告違反の場合だけの問題なのかどうかも含めて、もう少し整理する必要があるかと思いました。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○仁分委員 まず、株式会社から実質株主を確認する制度について、その趣旨を「株式会社と株主との間の建設的な対話の促進」とのみ整理するのではなく、「支配に関する重要な情報の把握」も含めて整理した上で、部会資料3のB案のように、制度の実効性を確保するための規律として議決権の停止の制裁を設けるべきであると考えます。実質株主は自らがどの会社の株主であるかを把握できる一方で、会社側は実質株主を把握することができないことから、現行制度の下では会社の支配に関する重要な情報についての非対称性が存在しています。本制度はこうした非対称性を是正するためのものであり、また、会社に情報を提供したからといって実質株主に対話に応じる義務を生じさせるものでもないことから、本制度の趣旨を「対話の促進」とのみ整理する必要はないと考えます。その上で、これまでの部会においても申し上げてきたとおり、株式会社から実質株主を確認する制度を実効性のある形で導入するためには、過料による制裁では抑止力として不十分であると考えます。取り分け海外の名義株主や指図権者に制裁を科すことが困難です。このような点を踏まえて、議決権の停止による制裁を認めることが適切であると考えます。   また、株主側から株式会社に対する通知を義務付ける制度において、違反者が名義株主でない場合には、議決権の停止を行うに当たって当該違反者が保有する株式の名義株主を特定する必要が生じ、そのためにも株式会社から実質株主を確認する制度が必要となります。したがって、株式会社から実質株主を確認する制度の実効性が確保されなければ、株主側から株式会社に対する通知を義務付ける制度も十分に機能しないことが見込まれます。以上から、中間試案では、株式会社から実質株主を確認する制度について、部会資料3のB案のように、議決権の停止による制裁を設ける案も含めて意見を募集していただきたく存じます。   また、今回の見直しにおいて、仮に最終的に過料による制裁のみを設ける方向で整理されることとなった場合であっても、ただいま申し上げたような趣旨を踏まえ、議決権の停止による制裁を設けることを将来的な検討項目として残しておくことが重要であると考えます。   部会資料10の3ページの実質株主の権利を設ける必要性ですけれども、部会資料に記載のとおり、実質株主に会社法上の新たな権利を認める必要はないと考えます。また、制度の趣旨を「支配に関する重要な情報の把握」も含めて整理した場合には、そもそも実質株主に会社法上の新たな権利を付与するという議論は生じないと考えます。   実質株主による株主総会への出席等につきましては、株式会社から実質株主を確認する制度を通じて把握した指図権者について、定款の定めにかかわらず、名義株主の代理人として株主総会に出席し、議決権を行使することを認めなければならない旨の規律を設けることに反対いたします。本制度に基づき実質株主の情報が提供されたとしても、その情報の正確性を会社側で担保することは困難であり、そのような者の株主総会への出席を当然に予定することは企業の実務に大きな負担を与えるおそれがあります。また、現状、実質株主の株主総会への出席については傍聴を認めるにとどめ、代理人として株主総会に出席し議決権を行使することまでは認めない上場会社が多数を占めます。本制度を通じて把握した実質株主について株主総会への代理出席を認めなければならないとすると、そのような上場会社においては一部の実質株主のみ代理出席が認められることになり、実質株主によって代理出席の取扱いに差異が生じてしまうことになりますので、企業の実務に混乱を生じさせるおそれがあります。ひいては本制度の利用をちゅうちょすることにもなりかねません。実質株主が株主総会への出席を希望するのであれば、名義株主となることで足り、あえて会社法で代理人の範囲に関する定款自治を制限する必要性は認められないと考えます。   費用負担に関しましては、株式会社から実質株主を確認する制度に基づく情報の提供又は通知に要する費用ということでありますが、国際的な水準を踏まえつつ、適正な基準に沿った費用の分担の在り方を検討すべきであると考えます。   次に、株主側から株式会社に対する通知を義務付ける制度に関してでございますが、まず、通知義務の範囲につきましては、現行の大量保有報告制度の対象である議決権保有割合が5%超の場合のみならず、議決権保有割合が3%以上や1%以上の場合であっても支配権争いの場面において影響力を有することが想定されます。中間試案では通知義務の範囲を議決権保有割合の3%以上又は1%以上とする案も含めて意見を募集していただきたく存じます。   違反者に対する事前通知に関しまして、事前通知をするか否か、すなわち議決権を停止させるか否かについて、会社の裁量を認める制度とすることに賛成いたします。議決権を停止する必要がないと会社が判断した場合にまで議決権の停止の効果を生じさせる必要はないと考えられます。また、実際上、大量保有・変更報告書の提出義務違反があったか否かを発行会社が判断することは難しいケースが多いと考えられますので、違反があった場合に必ず議決権を停止させなければならないとすると会社の実務負担が非常に大きくなることが懸念されます。   次に、他の株主に事前通知権限を与えるか否かという点につきましては、議決権を停止する必要がないと会社が判断した場合にまで他の株主の判断で議決権を停止させるべきではないこと、また、部会資料10の7ページに記載のとおり、他の株主に事前通知権限を与えると株主総会の安定的な運営に支障を来すおそれがあることから、他の株主には事前通知権限を与えない制度とすべきであると考えます。   最後に、通知義務に違反した株主が議決権を行使したことを株主総会の決議の取消事由とすることにつきましては、会社提案の議案が原案どおりに可決された場合にまで会社の意向に反して株主の通知義務の違反を理由に決議が取り消されることのないような制度にしていただきたく存じます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○松中幹事 まず、第1の1については、現段階で制度の趣旨を明確にしておくということが必要であろうと思います。というのも、その後の様々な各論的な問題というのは制度の趣旨にひもづいている部分が多いからであります。これを早く決めないと、ずっと複雑に分岐したまま議論しなければいけないということになると思いますので、早い段階で決めた方がいいかと思います。   その上で、現在提案されている対話の促進というものに私は賛成であります。やはり支配に関する情報を集めるために仲介機関に場合によっては多大な負担を課すというのは正当化しづらいですし、仲介機関の方々がそれでいいとおっしゃるなら、まあいいのかもしれないですけれども、そうでない現状では少し難しいのではないかと思っております。   その上で、定款による代理人資格の制限についてですが、これについても私は御提案に賛成したいと思います。まず、現状、本人に相当するのが名義株主で代理人に当たるのが実質株主ということになるわけですけれども、実態としてはちょうど逆でありまして、名義株主が実質株主に指図を受けるという関係になっているわけです。その指図を出す側が形式上、代理人として出てくるわけですから、本当にそういう権限、指図権限を持っている者であるのならば、株主ではない者による攪乱という判例で言われてきた問題は生じないわけです。さらに、仲介機関から実質株主であるということで通知され、その情報の真偽を疑うような特殊な事情がない場合であれば、会社もこの人が指図権者だというのは分かっていることになるわけで、それにもかかわらず代理人として出席することを拒むのは信義則にも違反するのではないかと思われます。その意味で、これは規定がなくても解釈上こうならざるを得ないのではないかと思いますので、賛成しようが反対しようが、ある意味、結論は変わらないのかもしれないですが、しかし明確化するために規定を置いておくというのはいいことであろうと思っております。   次に、第1の2についてですが、趣旨としては、一定以上の大株主が誰であってどのような目的を持っているのかというのが他の株主の議決権行使に影響するという考えに立っているように思います。これは防衛策の発動であるとか株主提案がなされている場面であればイメージしやすいわけですが、他方で会社側の提案しか出ていなくて、特に反対のキャンペーンもなされているわけではないような場合に、ほかの株主の議決権行使にどのように影響するのかというのは、やや見えづらい部分があるかと思います。別にだからおかしいというわけではないのですが、議決権行使一般に当てはまるのかというと、よく分からないように思います。実は本当は大量保有報告制度も似たような部分があると思っているのですが、議決権行使を停止する場合、よりそのことが明確になってくるかと思います。その上で、会社が(3)の通知をしない場合には特に議決権停止の効力が生じないというのは、余りこのような誰が株主なのかといった情報が議決権行使に影響しないような場合には、議決権停止のような大きな効果を生じさせないようにしているのだという説明ができるのではないかと思います。その意味で言うと、(3)のような会社の通知を定め、ある程度裁量を与えるような形というのが適切なのだろうと思います。   ただ、これは「ある程度」でありまして、選ばれる側が選ぶ株主のうち誰が議決権行使をしていいのかを自由に選べるというのは、到底そんなことはあり得ないはずであります。ですので、この場合、すなわち会社は違反者をある程度把握しているのだけれどもあえて通知をしなかった場合についても、更に株主による会社に対する提出というのが全くなくて会社が把握できない場合についても、いずれも決議方法の法令違反ではなく著しく不公正な場合として決議取消しの余地を設けるのがよいのではないかと思います。これは明文規定が必要であるかどうかは分かりませんが、いずれも個別判断ができるようにした方がいいのではないかと考えております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○内田委員 これは投資家としての確認というか、改めて強調したい点ですが、名義株主が指図権者を代理人として議決権を行使することを一律に禁止する旨の定款の定めは無効とするということは実質株主にも権利を与えるということを確認させていただきたいと思います。少なくとも実質株主が代理人として総会に出席することを認めるべきだと思いますし、その上で実務上混乱をきたす場合もあるのであれば、仲介機関あるいは会社が認める指図権者、実質株主に限定して代理人として認めるというようなことがあってしかるべきかと思います。   それから、費用負担については、基本的には欧州のSRDⅡに倣ってということであれば、原則発行体負担だと思います。受益者負担ということで、ベネフィットを受ける人が負担すべきであると思います。例えば、一部では投資家の方から問合せすることもあるかと聞いていますので、その場合は投資家の方が負担するようなことになるかと思います。プラットフォームを作って、そこで負担を分け合うということも考え得ると思います。その場合は相応負担ということになると思いますが、やはり一定の規律を設けて、余り過度な負担にならないような制度設計が必要だと思います。それが費用負担についてです。   それから、C案についてですが、これは大量保有報告制度に準ずる制度ということで、前回も少し議論したところでありますが、立法趣旨を対話の促進ということで限定するのであれば、前回議論があった、例えば報告義務の閾値の問題も現在の5%から下げていくということは考えなくていいと思います。公表する投資家の負担を考えると、現行制度に準じた方向で進めていくのが良いと思います。対話の促進と会社の支配権にまつわる情報は、二律背反する概念ではなくて包含する概念だと思います。広く対話の促進ということで、支配権を含めた全体を緩やかに包含する意味だと捉えられますので、対話の促進という趣旨で良いかと思います。   一方で、大量保有報告制度については保有者概念というのが統一していないところがあって、重複して申請することもあるので、やはりC案では開示情報に齟齬が生じる可能性もあります。その意味でA案とC案を併存させた形での運用が一番望ましいと思います。また、大量保有報告制度ではみなし共同保有者という概念があって、一律にみなし共同者とみなされると、それはそれでグローバルカストディアンなどから見るとメリットもあるのでしょうが、ただ、日本の発行体から見るとそれでは不十分だということもあるかと思います。発行体が自ら問い合わせて確認した情報を株主による通知義務で得た情報で補足してもらうことも可能であろうと思います。A案とC案の仕組みを両方使いながら実質株主に関する情報を取得していくということもあり得ると思います。そういった方向も、つまりA案とC案を併用したミックス型をパブコメで問うこともあって良いと思います。   それから、経産省の鮫島さんから安全保障の概念という説明がありまして、安全保障の観点で実質株主確認制度ということを考えていく場合には、これは一元的、継続的に捕捉していくということが将来的に必要になってくるということであります。上場会社だけに限らず、やはり非公開会社についても対象に入れていくということも考えていかないと、その目的に関しては充足できないと思いますので、これも検討課題であると思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。第1の1(1)について、確認事項があったかと思いますけれども、今の時点で事務局から何か御回答はありますでしょうか。 ○相澤関係官 必ずしも御趣旨を酌み切れなかったかもしれませんが、先ほどの確認の御趣旨としては、部会資料第1の1(1)のような形で実質株主側、指図権者側について代理権を認めるという方向性が、投資家様の立場としても望ましいと、そういう御意見と承ってよろしいでしょうか。 ○内田委員 はい、確認かつ強調したい点として申し上げさせていただきました。 ○相澤関係官 承知いたしました。 ○神作部会長 ほかに御質問、御意見はございませんか。 ○藤井委員 私からはまず、1の会社から実質株主を確認する制度につきまして、この制度趣旨として、株式会社と株主との間の建設的な対話の促進ということには賛成させていただきたいと思います。その上で、今回新しく実質株主の権利というところがクローズアップされておりますけれども、この実質株主による総会出席について、先ほど北村委員からガイドラインの御紹介もありましたけれども、2025年度の全株懇調査の報告書によりますと、実質株主から実際に総会の出席要求があった会社というのは1.5%、21社と非常に少数であることからも、利用されるケースというのはもしかしたら限定的ではないのかというところでございまして、実情として実質株主の多くがこの権利というのを行使して、それによるメリットを享受できる制度となるかどうかは、疑問かなと考えております。   続きまして、費用負担でございます。私どもが把握している限りにおいてということになりますが、欧州では一部の仲介機関が高額な請求を行うようなケースもあり、発行会社はその高額な費用負担を避けるために、ある程度高い閾値を設定して、一定株数以上の名義株主に対してのみこの請求を行わざるを得ないようなケースもあると承知をしております。そうなりますと回答情報の網羅性が失われることや、費用面で本制度を利用する会社が限定的になるということも想定されるため、欧州等の国際的な現状を鑑みて、その費用面の在り方というのは今後検討していく必要があると考えております。   続きまして、実質株主から会社に対する通知を義務付ける制度、2のところでございますが、こちらの(1)から(3)、いずれの規律にも私どもは賛成させていただきたいと考えております。少し補足になりますけれども、会社側から実質株主を確認する制度と実質株主側から通知する制度、この両制度が創設された場合、発行会社は大量保有報告制度の違反というところについて、違反者の議決権を停止するために会社側から実質株主を確認する制度を使って情報収集をするということが想定されると思います。つまり、違反者である実質株主の名義をいわゆるA案の仕組みで把握をして、実際に議決権の停止措置を行うということがイメージとして想定されるかと思います。実際にその場合、議決権停止というところが実効性がある形で実現ができるよう、今後ということになりますけれども、会社が実質株主を確認する制度、A案の制度内容において、違反者がしっかり特定、推定できるような実質株主の情報の範囲等を検討していくことが必要になってくると考えております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○白井幹事 部会資料の第1の1につきましては、今回部会資料で御提案の内容に私自身としては賛成の立場で、特にコメント等はないのですけれども、部会資料4ページ以下の第1の2につきましては、御提案の内容につき若干気になった点もありまして、それに関連していくつか意見を述べさせていただければと存じます。   まず、部会資料の第1の2では、その(3)で会社から違反者への事前の通知という仕組みが用意されておりまして、補足説明では事前の通知の意義が2点挙げられておりますけれども、中でも仮処分手続において争う機会の確保という点は非常に重要であると考えておりまして、このような事前の通知の仕組みというのは必要だろうと考えております。部会資料第1の2(3)では、虚偽記載や不記載につきましては、重要な事項についてのものであることが要件になっておりますし、また、今般の金商法(政令・内閣府令を含む)の改正により、例えば大量保有報告書等の保有目的欄に重要提案行為等を予定している場合にはその内容をできるだけ具体的に書くことが求められましたが、その記載の十分性をめぐって株主と会社との間で意見が対立することも予想されるところ、仮にそれが重要な事項についての不記載等となりますと議決権停止につながりますので、会社の一方的評価で済ませるのではなく、事前に裁判所で争う機会を与える必要があるように思われます。更に言えば、同じく今般の金商法の改正で、株券等保有割合が10%を超えることとなる株券等の取得目的を有する場合にはその時点で特例報告制度を利用できなくなりましたので、それではいつの時点で株主がかかる取得目的を有したのか、その評価に基づき当該株主に大量保有報告書等の提出義務違反があるといえるのかにつきましては、今後は株主と会社との間で争いになる可能性があるように思われます。議決権停止の制度は、使われ方次第では、会社側にとって望ましくない株主を排除するための手段として濫用されるかもしれないという危険があるところ、部会資料第1の2(3)の要件に該当するとか否かに関してはグレーゾーンも少なくなく、株主と会社との間で深刻な見解の対立が生じ得ることを踏まえれば、事前の通知の仕組みを設けて仮処分手続で争う機会を確保することは重要だと考えております。   その上で、2点目として、部会資料の5ページの第1の2(3)の要件を見たのですけれども、虚偽記載と不記載につきましては該当事項の重要性という形で一定の縛りが掛かっている一方で、大量保有報告と変更報告書の提出義務違反につきましては、金商法上の提出義務があるにもかかわらず提出していなければ、議決権停止とならざるを得ない作りになっているようです。確かに事前の通知を受けて仮処分手続において争えるのですけれども、争ったとしても、今の部会資料第1の2(3)の要件からすれば、金商法上の提出義務があるにもかかわらず提出していなければ、後は会社が事前の通知を送りさえすれば要件を満たしますので、裁判所において議決権停止が是認されるということにならざるを得ないように思われます。もっとも、大量保有報告書につきましてはそれでよいのかもしれませんが、変更報告書につきましては、大量保有報告書に記載すべき内容に係る変更について政令及び内閣府令で掲げられているものを除き変更報告書の提出が必要になりますので、会社支配に与える影響という点で軽微な内容、例えば共同保有者を含む株券等の保有者の名称や所在地、法人である場合の代表者の変更といった提出者の同一性等を明らかにするための事項につきましても、変更報告書の提出義務の発生原因になっている点には留意が必要であるいえそうです。もちろん、今般の金商法の改正では以上の点について、国内において変更内容が周知されている場合には、変更報告書の提出を不要とする扱いになったのですけれども、そのことは逆に言いますと、例えば海外の機関投資家などであって日本国内で変更内容の周知を失念していた者につきましては、やはり変更報告書の提出事由になるように思われます。部会資料の補足説明で書かれておりますように、違反者以外の株主にとって不意打ちで株主総会における意思決定をゆがめるおそれがあることが議決権停止の重要な根拠であるとしますと、そのような事態を引き起こすとは到底いえないような事由に基づく変更報告書の提出義務の発生の場合についてまで、会社がそのような記載と実体の不一致を見つけ出して通知をしさえすれば議決権停止になりかねないことについては疑問があり、特に変更報告書の提出義務違反に関しましては、議決権停止の要件につき何らかの形で制度趣旨に沿った限定を加えるなど、少し手当てが必要かもしれないという印象を持ちました。   次に、3点目として、これは意見というよりも単なる頭の整理だけの問題ではあるのですけれども、部会資料第1の2(3)の内容を前提としますと、事前の通知を受けて議決権停止につき争っている株主との関係では、部会資料では例えば3週間とありますが、そうしますとこの3週間の間に議決権停止に関する裁判所の仮処分を通じた判断が示されたところで、当該株主には議決権があるのかないのかということが決定するということになりそうです。その場合、仮処分を通じて議決権の有無を争っている株主に対する招集通知の扱いはどうしたらいいのかという点は、念のため問題の所在を確認しておき、今後可能であれば例えば立案担当者の解説等で軽く触れていただくなどしてもよいのかもしれないという気がいたしました。   もし何の手当てもしないのであれば、会社としては当該株主は「議決権を行使することができない株主」に当たると考えているわけですので、会社法第299条第1項に基づく招集通知は不要であるという扱いにもなりそうなのですけれども、仮に3週間の間に裁判所が本件では議決権を停止することはできないと判断した場合には、そのような判断が総会の直前に示されたとしても、会社が招集通知不要の扱いをしていたときは当該株主に対して招集通知をまだ送っていないという評価にならざるを得ないように思われます。そうしますと、招集通知漏れ若しくは、招集通知は裁判所の判断を受けて急いで送ったけれども2週間という期間が不足するという問題が生じ、このことが理屈上は総会における手続面の瑕疵と評価され得るという事態は想定されそうです。もちろん会社としては、そうした事態を想定し、議決権停止に関する事前の通知を送った株主に対しても、総会の招集通知を送付するという対応をすればよい話であって、恐らく実務ではそういう対応をしていくのだろうと推察するのですけれども、そのような対応をするのであれば、会社が総会の招集通知を議決権停止について争っている株主に対しても後から送るということが、当該株主の議決権行使を会社として認めるという意図に基づく対応ではないと整理することにつき、念のため認識を確認しておいてもよいかもしれないと感じた次第です。すなわち、議決権停止の事前の通知を送った後で同じ株主に対して総会の招集通知を送るということになりますと、穿った見方をすれば、会社としては当該株主の議決権行使を後から認めたといえるのではないかというような議論にもなりかねないと思いましたので、そういう意図に基づく対応ではなく、万が一今後裁判所で株主の議決権行使が認められてしまうと招集通知に関する瑕疵が生じかねないことから、そうせざるを得ないのであって、招集通知の送付という対応から当該株主の議決権の有無に関する会社の意図を読み解くことは適切ではないと整理できるように思いまして、頭の整理として述べさせていただきました。   最後に4点目として、株主総会決議の取消しの可能性の部分についてですけれども、部会資料の7ページで、「通知義務を会社法上の通知義務と規定することにより、その通知義務違反が株主総会の決議の取消事由(著しく不公正な決議方法)になり得る」という説明が書かれておりまして、この点につきまして、質問といいますか念のため確認させていただきたい件がございます。具体的には、会社法上の通知義務と規定したことにより当該義務違反が総会決議の取消事由になり得るという記述の意味について、その背後にある意図をもう少し詳しく教えていただければと存じます。   といいますのも、会社法上の通知義務という位置付けになることで、私自身の認識としましては、部会資料の補足説明5ページから6ページのイで書かれておりますように、違反者以外の株主にとって不意打ちで株主総会における意思決定をゆがめるおそれがあるという事態について、会社法としては明確に問題意識を持っているということが確認できたということはいえると思います。そうすると、通知義務違反により株主総会における意思決定をゆがめるおそれがあると評価できるようなケースで、総会決議の取消しは認めやすくなり、補足説明の括弧の中で書かれております決議方法の著しい不公正という議論がしやすくなるという説明は可能であると思っていたのですけれども、それを超えて一般に、会社法上の通知義務として規定されたのだから、義務違反になる行為については会社法上の総会決議の取消事由になる可能性を当然に高めるという説明であると仮にすれば、それにはやや問題があり得るようにも感じております。取り分け、先ほど述べましたように、経営に対する影響のない又は小さい情報の不備につきましては、今の部会資料第1の2(3)の内容を前提とすれば会社法上の通知義務違反とはなり得るけれども、少なくとも総会決議の取消事由とする必要性というのはないように思われまして、久保田委員が先ほど、決議方法の著しい不公正という枠組みに紐付けて取消事由にならないという説明が可能であるとおっしゃっいまして、私もそのような理解に賛同いたしますけれども、そこの部分をもう少しロジックとして確認するという意味では、会社法上の通知義務として規定することで当該義務違反が総会決議の取消事由となり得るという補足説明の記述の背後にある考え方につきまして、補足説明の記述が一部分だけ切り取られて独り歩きしないようにするという意味でも、もう少しお考えをうかがうことができればありがたいと感じた次第です。以上です。長くなりまして恐縮です。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。最後の点については、この資料の考え方といいますか、作り方について御説明いただけますでしょうか。 ○相澤関係官 基本的には御理解いただいていたとおりでして、会社法上の義務にしたから、当然その違反は全て取消事由になるのだというようなことを申し上げるつもりはなく、やはりその義務の性質に照らして、どういう場合が取消事由になるのかを考えていく必要があると考えております。その義務違反の実質論としては、先ほど御指摘いただいたような、決議の公正さをゆがめるというようなところを経由した説明になると思っておるのですけれども、実質的な内容としてはそういうものであるとしても、二読のときに複数頂いた御意見の中で、その違反があった義務が金商法上の義務だけなのか、会社法上の義務なのかということによって、少なくともこれまでの議論としては、金商法上の義務に違反したからといって直ちに取消事由を構成するものではないというこれまでの会社法及び金商法をめぐる議論がございますので、形式的なところかもしれませんが、そういった面でも意味があるという程度の趣旨で、ここでは記載させていただいております。 ○白井幹事 御回答ありがとうございました。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○青委員 まず、1の会社から株主を確認する制度の方でございますけれども、その趣旨につきましては、当初から議論してきたような建設的な対話の促進というものに置くことが適当ではないかと思います。支配に関する情報の把握につきましては、基本的には大量保有報告制度を活用する2の株主からの通知の制度で一定程度対応可能だと思いますし、閾値の高低について検討の余地があるとすれば、そちらの検討に委ねる方が現実的ではないかと思われます。   1の制度につきましては、対話自体は義務ではないということもございますし、支配に関する情報について押しなべて全ての株式についてしっかり把握して報告するということが現実的にどの程度可能なのか、あるいは実務上の負担の程度や諸外国との比較も考えていきますと、全株式を対象としていくのはなかなか難しいところがあるのではないかと思います。飽くまでまず第一歩目の制度整備でございますので、その趣旨を対話の促進に限定して設計していくことでよいのではないかと思われます。   一方、先ほども少し議論がありましたように、2の制度で議決権停止を行うために会社から株主を確認する仕組みがやはり必要だということであれば、そうした状況を把握するために、特定の場合に詳細な情報を取れるような付加的な仕組みを設けることも考えられますが、いずれにしても、そのような確認を一般的に行えるとするのは難しいのではないかと思います。   実質株主の権利についてですけれども、基本的には建設的な対話の促進という趣旨を前提に考えますと、制度によって把握できた実質的な株主について、対話はするけれども総会には出席させないというのはなかなか違和感があるところでございますので、把握した指図権者の総会出席を認められるようにするということには違和感がないところでございます。把握した指図権者について、いつまで出席を認めるようにするのかについては、例えば、判明した後の総会までとか、何らか一定のリミットを設けることが必要かどうかは、大枠が決まった後で詰めていくのがよいのかと思いました。   それから、費用負担に関しましては、基本的には書いていただいているような形で、会社の方で対話相手を探すための制度を作って、それを利用することを考えますと、原則として会社が費用を負担するのが自然であると思います。ただし、具体的にどの程度の額を負担すべきか、あるいは費用の全部を会社が負担すべきかどうかについては、悩ましいところはあると思いますので、実務上想定されるフレームワークを踏まえながら決めていくといった段取りが必要になってくるかと思います。   いずれにせよ、建設的な対話を実効的に進められるようにするため、上場会社が利用しやすい環境を整備するという観点は忘れないということが大事ではないかと思われます。例えば、基準日については、基本的に全社が利用し、年1回程度は通常使われることが想定されるということを念頭に置いて、イニシャルコストを全上場会社で広く負担するような仕組みもあるかもしれません。どれぐらいの頻度で確認可能かにもよりますけれども、年に複数回利用する会社については、追加的な負担を求めるといったことも考えられるかもしれませんが、いずれにせよ、そこは追って詳細の議論を進めていけばよいかと思います。   次に、2の株主側から通知する制度についてでございますけれども、基本的に大量保有報告制度と同じ範囲の情報を確認するということでおそらく問題はないのではないかと思われますし、実効性の観点からも、大量保有報告書に関する仕組みがある前提でうまくワークするものと思われますので、会社法の方においてだけ対象範囲を変えるのは、現実的には難しいのではないかと思います。   提出方法につきましては、恐らくエディネットによって大量保有報告書を提出するという金商法ルートを基本とすることが想定されているものと理解しておりますけれども、部会資料の案だけを見ると、そうでない方法もあり得ると読める構成になっていると思います。あえてそのような方法を認める必要もないのではないかという気もいたしまして、提出方法につきましてもエディネット経由の方式を求めるといったことを明確にすることも考えられると思います。そうしないと金商法ルート以外で提出されたときに具体的にどう取り扱うか、結構詰めないと難しいところが出てくるのではないかと思います。   次に、制度趣旨や違反の効果についてですけれども、現行の記載案では、個別の株主総会における議決が適切に行われることを念頭に置かれておりますけれども、その総会に限定して考えることでよいかは検討の余地があるかと思います。特定の総会の時点に限らず、大量保有報告が期中もきちんと開示されることを確保することが、会社にとっても重要であるので、総会の議決の適正に着目しすぎてしまうと、大量保有に関する情報を適切に全て報告してもらうという制度全体の方向性から少し焦点がずれてしまうのではないかは気になったところです。   例えば、株式がどのような割合で保有されるのかというのは重要な情報であって、その情報を投資家に対して迅速に提供することで市場の公正性、透明性を高め、投資家保護を図るというのが金商法における大量保有報告の趣旨として言われているところだと思いますけれども、会社法においても、そうした株式の保有状況に関する情報は、株式会社の状況や運営を把握する上での基本的な情報で、株主全体の利益に資する極めて重要な情報だと考えられるので、両者共通の趣旨が妥当するといった基軸で考えていくこともできるのではないかと思われます。   そのように捉えた場合、情報開示は株主共同の利益に資するものと考えられることから、議決権の停止だけを考えるべきなのか、あるいは株主の共益権に関わる問題としてより広く捉えるべきかどうかというところも、最終的に制度を固める前に検討する余地があるのではないかと思われまして、例えば株主提案権や株主総会の招集請求権も視野に入れるべきかは一つの論点になり得るかもしれないと思ったところです。いずれにしても、基本的には大量保有報告の制度趣旨を出発点にしつつ、会社法における株主権についても同様の考え方をベースにしながら、一定の制限を加え得る仕組みを検討していくのがよいのではないかと思います。   その上で、いくつか具体的な論点について申し上げます。大量保有の情報開示が行われた場合にその名義株主をどのように特定するのかは、これまでも議論になっているとおり、慎重に考える必要があるかと思います。それから、総会前に事前に権利行使を止めるという場合と、総会後に事後的に決議を取り消す場合とで、具体的な手続にどのような差が生じるのかについては、より詳細な検討が必要になるかと思います。また、大量保有報告義務違反に関して、証券取引等監視委員会の判断が会社法上のサンクションにどのように影響し得るか、両者の関係性についても念頭に置いた方がよいかと思います。   大量保有報告では、例えば株式を保有することになってから5営業日以内に報告する一般的な報告と、機関投資家を対象にして月に数回報告すればよい特例報告という二つの仕組みがございますけれども、その二つに応じた差異を設けるべきかどうかは、今後詳細を詰めていく際の検討事項になるかと思います。   総会前に議決権を止めるという仕組みにつきましては、会社自らの判断で権利行使を拒めるということであれば、やはり懸念は出てくるところはあると思いますので、場合によっては裁判所に対して違法な状況の可能性が高いのではないかといったようなことを一定程度疎明するような仕組みを入れるかというのも、考え得るのではないかと思います。   それから、不手際等により軽微なミスをした場合の取扱いについて、金商法上、一般的な報告と、機関投資家が日常反復的に対話を行って、なおかつ支配権取得目的がないような場合である特例報告が区別されている点を踏まえると、どこまでしっかりと把握する必要があるのかという度合いが、状況によって変わってくるというところがあるかと思います。例えば、特例報告が適用できる場合については、故意または重過失により提出義務を怠った場合を除けば、議決権制限について抑制的に考えるという方向感も、ミスをしないために過度なコストを掛けることを防止するためには有効ではないかとは思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○豊田委員 実質株主確認制度について意見を申し上げます。   第1の1と2の区分につきましては、これまで様々な議論をしてきた経緯を踏まえてこのようなまとめになっていると考えておりまして、方向としてこのように分けて、趣旨についても異なるとするという案を中間試案として出す御提案をされていると思います。  1の趣旨の対話が重要であるという点は、そのとおりだと思っております。   他方で、他の委員、幹事からも御発言がありましたとおり、1の仲介機関を通じて実質株主を知るということについて、2の大量保有報告制度違反と同様の違反を知るための重要な手段であるという考え方もございまして、また、実際に過料のみでは、主に情報収集が必要な海外の実質株主に関してはサンクションとして余り意味がないという状況があるということも事実ではございますので、中間試案の段階で落とすのではなく、別途の項目でなく、1の(注)などでもよいかとは思っておりますが、そのような考え方について、また、議決権停止についても記載して意見を聴くことについて御検討いただいてもよいのではないかと考えております。   次に、2につきまして、大量保有報告書の義務を会社法の義務違反と構成して、その違反について議決権を有しないものとする方向性に賛成いたします。その上で、幾つかの検討すべき点があると考えております。   まず1点目として、いつの時点の違反を問題にするかという点でございます。今回の案では、会社が違反者に対して議決権を有しない旨の通知をするということが前提となっておりますが、それはいつの違反を問題として通知すべきかということです。大量保有報告の制度は、一定の時点の株式保有の割合を基準として報告義務が発生しますが、例えば3月1日には報告義務があったけれども、その後売却して5%未満となり、基準日である3月末には報告義務違反状態ではないといったような場合、または、基準日である3月末日時点では5%未満だったけれども、その後、買い増して、株主総会時点では5%以上である者についてどのように考えるかといったことです。これに関しては、本制度を株主総会での議決権行使を制限するかという点を中心に考える制度と整理すれば、問題となる株主総会の議決権の基準日時点のみを問題とすることもあり得ると考えており、そうしますと、今申し上げた二つの例のいずれについても議決権を停止しないことになるかと思います。ただ、この点については、先ほど青委員からもあった特例報告との関係等もあると思いますので、検討が必要かと思っております。   2点目として、会社から違反者に対する通知を行うということにつきまして、会社が違反者のうち議決権を行使できる者とできない者とを選べる制度と考えるかどうかという点でございまして、この点、会社のみならず他の株主にとっても、一定の議決権を有する株主の情報が重要だという点を強調しますと、その違反者については議決権を行使できないこととすべきだということになり、例えば、交渉をして、会社提案に賛成すると分かったというような理由で、会社が違反者のうち一定の株主についてのみ議決権行使を認めることは問題なのではないかということでございます。先ほどからもお話が出ていましたように、著しく不公正と整理するという考え方もあると思います。他方で、説明に書いてございます他の株主の通知権というのは、制度を複雑にしますので、なかなか難しいのではないかと思います。   3点目として、会社が必ずしも違反者が有している全ての株式を把握できないという点をどう考えるべきかということでございます。例えば、違反者Aがいるとして、名義株主Bの背後で6%、名義株主Cの背後で2%の実質株主であるが、会社は名義株主Bについてのみ把握していて、会社が6%分の株式の議決権を停止し、名義株主Cの2%分については議決権を行使させてしまった場合に、違反者基準で考えるとすると手続違反になるのかという点です。その辺りについても検討が必要かと存じます。   次に、4点目として、違反者に対して追完するまで議決権を停止するというような提案がなされておりますけれども、この追完とはどういう意味かという点でございます。例えば、ある基準日の時点で違反していた場合に、その時点についての大量保有報告又は変更報告について、その時点の状況に即した報告を出すことが追完ということなのか、またはその後変動があった場合、それを含めて翌年の株主総会の基準日時点での状態について問題なく報告されていれば問題ないと考えるのかといったことが検討に値するかと思います。また、通知をして議決権を行使してからの一定期間を、例えば3週間としている趣旨につきましては、意見の相違があった場合に、その間に決着を付けるという趣旨だと思いますけれども、この期間と比べると、追完してから例えば1年とかぎ括弧付きで書いてございますけれども、追完の期間が意見の相違についての解決の時間だとすれば、この期間の差、1年というのは若干長すぎるのではないかとも考えられるかと存じます。   最後に、5点目といたしまして、(1)で会社に対する通知義務という形で定め、(2)で金商法に基づく大量保有報告等の提出でこれに代えることができると御提案されておりますが、仮に実質株主が会社にのみ5%以上保有する旨の通知をして、大量保有報告書を提出しなかった場合、先ほどの青委員の御懸念とも関連するかもしれませんけれども、これは当然、金商法違反にはなるとは思いますけれども、会社法との関係では要件を満たすということで、議決権の停止はないということでよいのかという点につきましても、御指摘させていただきたいと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○森委員 実質株主確認制度についてのコメントですが、今回この論点がされている背景、実務のニーズをもう一度よく踏まえた議論を是非していただきたいと思っております。もともと5%の大量保有の状況を把握するだけでは不十分だというところから議論がスタートしていると考えていますが、グローバルにはインターミディアリーによる株式保有が増えてきていて、なかなか実質株主が分からなくなってきているという実態の中で、EUがこの点について先行して制度を導入し、株主権利指令を作っているというのが実態だと思います。会社からしてみても、1株単位で実質株主を把握したいといったニーズを持っているわけでもないので、そこのところのニーズをきちんと把握した上で制度設計をしないと、全株主を把握しようとして、そのためにはという議論をすると、大きな風呂敷を広げたけれども結局ほとんど機能しないような制度になるということになりかねないのではないかと懸念しております。   それは、いわゆる第1の案がそれになりかねないと心配しているから主張しているのですけれども、やはりサンクションに関して過料によって株主の対話の促進を促すという制度を作っても、この過料が適用される状況というのは私はなかなかイメージが湧きません。インターミディアリーの人は実質株主は誰ですかと聞けば義務を果たしたことになると思うので、その人は過料の制裁にならないでしょうし、実質株主として聞かれた人が答えなかったとしても、海外の人には過料の制裁は及ばないので、海外投資家には何の制裁もありませんという制度を作ることになると思うので、そういう制度を作ったところで本当に実質株主の把握ができるのかということをすごく懸念をしております。   ですので、やはり本当の意味で必要性があるような制度という意味では、EUが先行して導入した制度も十分参考になるかと思いますので、例えば0.5%の議決権を持つような株主について把握するという制度の位置付けで、議決権停止という切り口について、現段階で落とすことなく、是非中間試案の段階ではB案として是非とも残していただきたいと思っております。それが本当の意味での実務のニーズでもあると思いますので、そのニーズは是非とも酌み取って、選択肢としては残していただきたいというのが私の意見です。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○加藤幹事 私からは、部会資料4ページの株主側から株式会社に対する通知を義務付ける制度について2点、意見を述べます。   1点目は(3)の事前通知の意味についてです。この事前通知の意味については、白井幹事がおっしゃったように、大量保有報告書や変更報告書の提出義務に違反があったのかどうかということを確定するための手続としての意味が大きいと思います。それとともに、これも白井幹事がおっしゃったこととほぼ同じなのですけれども、制度趣旨として挙げられている5ページから6ページの内容を考えますと、あらゆる大量保有報告書や変更報告書の提出義務の違反の場合に当然に議決権を停止させることがよいのかということも、検討の余地があり得ると思います。ですから、事前通知とこの3週間の間に、一旦会社側と株主との間でやり取り、ないしは裁判所の判断を介在させることによって、制度趣旨に沿った形でこの制度が使われるということを確保する、そういった役割を、この事前通知と一定期間経過後の議決権停止に期待するという考え方もあるのではないかと思います。   2点目は、こちらは青委員と豊田委員の御指摘とも関連するのですけれども、金商法に基づくエンフォースメントとの関係です。部会資料では、金商法に基づくエンフォースメントがまだ行われていない段階で会社法に基づくエンフォースメントが先行するといった状況を念頭に置いているかと思います。このような場合が多いように思いますけれども、金商法に基づくエンフォースメントについても強化するということが今進められております。そうしますと、場合によっては金商法に基づく、例えば課徴金納付命令が出され、それを投資家が受け入れているという状況が先にある場合もあり得ます。そういった場合にこの手続がどのように適用されるのか。例えば、事前通知をして3週間待たないと議決権停止の効果が発生しないということになるのかなどが問題となり得るような気がいたします。ですから、具体的な制度設計を考える際には、金商法に基づくエンフォースメントとの整合性も考えながら、規定の具体的な内容を考えていく必要があるのではないかと思いました。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○臼井委員 1の株式会社から実質株主を確認する制度でございますが、(1)のところで、実質株主が総会に出席できる制度は是非整備をしていただきたいと思います。投資家との対話の活性化等々の観点から重要であるということに加えて、コーポレートガバナンス・コードにおいても当初から推奨されているところ、実務における対応整備が望まれると考えます。先ほど北村委員が御指摘になったところでございますが、株式会社から実質株主を確認する制度に基づき情報が提供されたというただし書についてはなくした上で、飽くまでも実質株主であることが分かるのであれば、それはきちんと総会に出席できるというような立て付けにしていただくことが望ましいのではないかと考えます。   それから、(2)の費用負担についてですけれども、実質株主確認に要する費用は当該確認を請求する上場会社が負担するということを原則として明確化していただきたいと考えます。実質株主を確認したいというニーズは上場会社発のものであり、これによって発生するコストは上場に関連するコストの一環として整理されるべきであろうと考えております。また、今回の制度において参照している欧州のSRDⅡにおいても、基本的には発行体に請求すると整理されているとともに、米国のNOBO制度についても同様の実務であると承知をしていますので、こういった各国の制度と平仄を取るような形にしていただければと考えます。   それから、2点目の株主側から株式会社に対する通知を義務付ける制度でございますが、こちらは御提案のとおり、金商法に基本的に沿った規定とすることで異議はありません。それから、少し議論になっています事前通知の意義、それから権限についてですけれども、事前通知については総会運営の安定の観点からも必要ではないかと考えます。その権限については、他の株主というよりは取締役会の決定としていただきたいと思います。これは議決権の停止に関する決定が経営側の恣意的な判断ではなくて、制度の趣旨として株主共同の利益のためであるという立て付けに沿えば、経営陣がこの株主はいいのだけれどもこの株主は駄目だというような決定をするのではなく、飽くまでも株主の付託を受けている取締役会において決定をするべきと考えます。加えて、先ほどから御議論になっているところではございますが、決議取消しをどのように織り込むのかというところを踏まえて、恣意的ではない、ある程度平等性のある議決権停止の措置ができるような形で今後整理していければいいのではないかと考えます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○田中委員 まず、実質株主が代理人として議決権行使をすることを認めるという制度は、是非導入していただきたいと思います。日本の場合、名義株主だけが株主であって、いわゆる実質株主は株主でないという原則に加えて、更に定款で、株主ではない者は代理人として株主総会で議決権行使することも認めないというやり方でやってきているわけですけれども、他の主要国の法制や総会実務と比較して、やはり実質株主軽視の批判を受けても仕方のない側面はあると考えております。今回特に、実質株主を会社側から知る制度を設けておきながら、会社が指図権者として把握した者が代理人として総会へ出席することを認めないというのは非常に偏頗的であり、公平の観点からも支持し難いものですので、このような制度を設けることは必要であると思います。   その上で、この制度の適用範囲は、会社が実質株主の調査をしたことで判明した指図権者に限られるのかという問題があります。この問題については、私自身は、現行法の解釈としても、指図権を持っている者は株主権について自分自身の意思で行使できるわけですから、この指図権者が代理人として株主総会に出席しても、それは株主としての意思に従って株主権を行使することになるはずです。したがって、代理人の範囲を株主に制限する定款規定の趣旨は、株主総会が株主以外の第三者によって攪乱されることを防止することにあるとする最高裁判例に照らしても、指図権者が代理人となって総会に出席することについては定款規定の趣旨は及ばず、その出席を会社は拒めないと私は考えております。   もっとも、このような解釈は必ずしも実務に受け入れられておらず、現在は、指図権者が株主総会に出席することを認める場合であっても、それは飽くまで傍聴人としての参加であって、質問権や議決権の行使は認めない会社の方が多いと認識しております。本来はこのような実務自体が変わってほしいと私は思っておりますけれども、そのための一つのきっかけとして、少なくとも、会社の側で指図権者を調査しておきながら、判明した指図権者について株主総会における議決権の代理行使を認めないということは許されないという制度を設けることは意義があると思います。重要な点は、このような立法的措置をしたとしても、会社の側で指図権者の調査をしなかった場合に指図権者が代理人として株主総会に出席することを会社は認めなくてはならないかという問題は、引き続き解釈問題であって、今回の立法は、会社の側で指図権者の調査をした場合にのみ指図権者に株主総会における代理人としての出席を認めるという趣旨ではないということをはっきりさせる必要があると思います。その点をはっきりさせるのであれば、本来は、指図権者の範囲を会社の調査で判明した者に限定をしない方がいいと思うのですけれども、そうした限定付き立法することにも私は賛成したいと思います。   それから、2番目の費用負担については、既に多くの委員、幹事の方が言われているとおり、やはり費用については発行会社負担ですると、そうしないとなかなか仲介機関の協力は得られないと思っております。   最後に、大量保有報告制度の違反者の議決権停止制度についてです。提案されている制度は、議決権の停止のためには、会社が違反者に対して事前に議決権を有しないものとする旨の通知を要求するというものですが、こういうものは基本的に必要だと思っております。幾つかの国では、株主が通知義務に違反した場合には当然に議決権停止するというような制度をとっている国もあるようでありますけれども、大量保有報告制度の違反というのは必ずしも不当な目的で行われているわけではなくて、多数のファンドを抱えている機関投資家がその全てについて株式保有を把握できないために制度違反が生じてしまうというケースもあり、発行会社としても他の株主も、別にその株主が会社支配をゆがめたとは考えていないこともままあると思います。従って、会社の側でこういう通知をしたときに限って議決権を停止すると、それを原則とするということは適切だと思います。   その上で、例えば、会社の支配をもくろむ者が、意図的に、複数の名義に分散して多くの株式を取得して、そして株主総会で抜き打ち的に議決権を行使して株主提案を成立させたような場合には、会社において本来するはずであった議決権を有しない旨の通知をする機会を奪ったということから、決議の方法が著しく不公正であると評価して、決議取消事由を認めるという解釈がとれるのではないかと思います。それ以外どういう場合に決議の取消しが認められるか、例えば、会社の側で恣意的に議決権を有する者と有しない者を選別したというケースがそれに当たるかにつきましては、恣意的であるというのはどういう意味であるかというのは少し難しい問題があると思っています。一般的には会社は、会社にとって敵対的であると判断される者の議決権を停止するという形になると思います。そのときに、例えば同じ株主総会において、国際的に活動している機関投資家が5%の大量保有報告制度に違反していたからといって、それについて議決権行使を認めたとしても、必ずしも恣意的ということはないのではないかと思います。このように、恣意的かどうかの判断はかなり難しい面があると思っています。これについては、事前に立法で、このような場合が恣意的であるといった特定することは困難であるように思えまして、この点については明文の規定を設けず、解釈に委ねるというのが現実的な対応ではないかと思っております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○行岡幹事 私からは2点、申し上げたいと思います。   一つ目は、資料の1(1)の規律に関してです。私はこの御提案は基本的に合理的な方向性を示すものだと思いますし、また、先ほど田中委員や松中幹事がおっしゃったように、現行法を前提としても、解釈によって実質的に同様の結論をとるべきであると個人的には考えています。しかしながら、立法によってこれを明文化することには、積極的に反対するわけではないのですけれども、少しちゅうちょを覚えるところがございます。   一つ目の理由は、立法による手当ての必要性がどれほど強いものであるのかが必ずしも明らかでないように思われることです。この制度の利用が想定される実質株主というのは、典型的には機関投資家だと思いますけれども、機関投資家が会議体としての株主総会に代理人として出席して議決権を行使するというニーズがどれほどあるのか、少し疑問を持っています。といいますのも、実際上、機関投資家は電子投票なり書面投票なりで事前に議決権行使をすることが通常であって、先ほど藤井委員から統計情報の御紹介がありましたように、株主総会当日に代理人として出席して議場で議決権を行使したいというニーズは必ずしも大きくないのではないかと思われるためです。もちろんいわゆる賛否拮抗総会では、当日の議論を聞いた上で賛否の決定をしたいというニーズが生じることもあり得ないわけではないと思いますけれども、そのような例外的な場合のために立法的な手当てが必要かは、なおも検討を要するのではないかと思います。   二つ目の理由は、この規律が思わぬ副作用をもたらさないかということが懸念されます。どういうことかといいますと、本提案は、先ほど来も議論に出ていることですけれども、この制度で確認された実質株主についてだけこのような明文規定を置くということなのですけれども、いささか抽象的な懸念にはなりますが、それが反対解釈されるおそれがないかということが気になっています。先ほど来、北村委員や田中委員がおっしゃったことと関連するのですけれども、かかる明文規定の反対解釈として、本提案によって確認された実質株主でない者が議決権の代理行使をすることについて、それを否定するような解釈ないし運用が一部で行われる可能性も一概には否定することができないように思われます。もちろん私は個人的にはそのような解釈は合理的ではないと考えますけれども、しかしながら、そのような反対解釈の条文上の手掛かりを作ってしまうということでよいのかという点が少し気になっているということでございます。   少しまとめますと、冒頭に申し上げましたとおり、この提案の言いたいことは理解できますし、現行法の解釈論としてそのように解すべきだと思いますけれども、立法で手当てする必要があるといえるほどの事情があるのかどうか、また、立法することで思わぬ副作用のおそれがないかは少し慎重に検討した方がよいのではないかという気がしております。以上が大きく1点目の発言です。   2点目は2の話で、少し細かいことになるのですけれども、気になったことを申し上げたいと思います。一部疑問というか事務局への御質問にわたる部分もあるかもしれません。2(1)のところで、会社法上の義務としては、大量保有・変更報告書を上場会社及びその株主に提出しなければならないという規律になっていますが、ここで株主に提出するというのが、どのような手続を想定しているのかが必ずしもよく分からないと思いました。というのも、もちろん制度の実際の運用としては、(2)の金商法に基づく提出をもって代えることを想定しているので、(1)の提出が実際に行われることは余り想定していないのだと思いますけれども、制度の建前としては(1)が原則的なルールであって、(2)はそれに代わる代替的な手段という位置付けになっているので、原則ルールとしての会社法の提出手続が明らかである必要があると思います。   なので、これを明らかにしていただきたいということなのですが、私自身このような質問を申し上げるのは非常に心苦しいところがありまして、というのも、このような御提案がなされている背景には、金商法と会社法の分断といいますか、金商法違反に対して会社法上の効果を与えることが法制上難しいのではないかという、それ自体必ずしも合理性が明らかではない理由からこのような御提案をしていただいているという事情がございますので、このようなことをお伺いするのは心苦しいのですが、しかしそうであるからこそ、会社法だけでスタンドアローンで機能し得る制度を整えておく必要があろうかと思いますので、お伺いする次第です。   ちなみに個人的に私がどう考えているかといいますと、会社と株主に提出するという規定ぶりだと、具体的な手続の設計が難しいかもしれないので、代替案として、提出先は会社にした上で、会社が株主の閲覧に供するという制度でも良いのではないか、この制度の趣旨はそれで十分全うできるのではないかと考えております。もし現時点で株主への提出手続について具体的なお考えがあれば、教えていただければと思います。 ○神作部会長 1点御質問があったかと思います。よろしくお願いいたします。 ○相澤関係官 今回の資料を書いた趣旨としては、制度趣旨のところで株主の利益も考えるのであれば、やはり提出先、情報の共有先としては株主も含める必要があるだろうというのが出発点と考えております。実際にはこれはエディネット、金商法に基づく開示を想定しているわけですが、正に御指摘いただいたとおり、会社法としてもスタンドアローンで義務を設けるのであれば、その方法は考えなくてはいけないとは思っております。現状、何か回答案があるわけではないですけれども、まず、保有者が、上場会社と同じように株主にも提出しなければならないとすると、それが5日以内という期間の中でどういう方法が実際上機能する方法としてあり得るのかというのは非常に難しいと思っておりまして、なので、これも御示唆いただいたように、提出先は会社に限定した上で会社から株主に提供する、閲覧できるようにするというような仕組みも含めて今後検討していかなければいけないところだと思っております。 ○行岡幹事 ありがとうございました。 ○神作部会長 ありがとうございます。   まだ複数御意見があるようですが、4時を超えてしまっております。議論の途中ではございますけれども、ここで少し休憩を挟ませていただき、18分後ぐらいから再開したいと思います。休憩をお取りください。           (休     憩) ○神作部会長 それでは、予定の次時刻より少し早いのですけれども、皆様お戻りのようでございますので、議論を再開したいと存じます。   部会資料10「第1 実質株主確認制度」について、引き続き意見交換をさせていただきたいと思います。御意見のある方は、どうぞ御発言ください。 ○矢野幹事 ほかの先生と重複しない範囲で、少しだけお話しさせていただければと思います。   この立て付け全体については、若干思うところもないわけではないですけれども、全体的には穏当な解決を図れているというものだと思いますので、この方向に賛成したいと思います。その上で若干なのですけれども、まず、実質株主が代理人として出席する場合の点で、この制度を通じて把握した指図権者となっているのですけれども、実質株主の方はこの制度を通じて把握されたというのはどうやったら分かるのだろうかという疑問はありまして、逆に把握できるような方法が必要なのではないかと思ってはおります。逆に株主側から申し出た場合、これはほかの委員、幹事の先生方から御指摘があった点の裏返しみたいなものかもしれないですけれども、例えば2の大量保有報告で報告した場合だと、確認制度は使っていないけれども会社は把握しているということはあるのですけれども、そうした場合にどうなるのだろうか、そうした場合も拒絶できないと書いておく必要はないのかといった疑問も出てはおります。   次に、2の議決権停止に関してのところですけれども、現在の案だと非常に属人的なものとなっていて、時的限界もないので、例えば10年前に違反があったということを把握しておくと、いつか議決権停止ができるかもしれないということになってしまうようには見えますので、それは少しおかしいと思いますから、何か手当てが必要かと思います。   議決権停止そのものに関連してですけれども、議決権停止だけだと株主総会に出席して質問をする権利があるのかないのかという疑問や、先ほど幾つか御指摘がありました共益権関係の話だとか、そういったものも含めて補足説明に特に書かれていないので、この辺りも今後議論していく必要があるのかと思います。   あと、2(1)、(2)の関係のところで、エディネットでやらないで(1)だけする意義というものなのですけれども、例えばなのですけれども、会社が通知を出したとした後に、私は金商法違反ではないと思っていると、これから争うわけですけれども、負けたときのためにというか、そのために一旦会社と株主だけに出しますということも理論上は不可能ではないと思いますから、そうしたことを可とするのかしないのか、そうすると敗訴したときに追完するまでの停止の期間が若干短くなるという効果があるので、そうしたものがいいのか悪いのかとか、そういったところを含めて、(1)だけやるときの方法というものを考える必要があるかと思いました。   この辺は弁護士会の中でも全体的にいろいろ検討したのですけれども、検討していくと、やはりいろいろ細かい疑問が出てきたところでもありまして、パブリック・コメントでは広く意見を聴いて、疑問点が明らかになるようにしていただければいいかと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○齊藤委員 まず、実質株主の確認制度の趣旨についてでございますけれども、確かに本日も御議論にあった経済安全保障や、経営陣から見て潜在的に敵対関係になりそうな株主を知ることにつきましては、英国やフランスのように、そのような趣旨も含めて制度設計をしている例もございますので、例はないわけではないと思いますし、日本ではそのようなニーズもあるように思います。しかしながら、現在提案されている制度の立て付けとしては、上場会社において株主のアイデンティティを十分確認できない、仲介機関等を通じて投資している株主の把握にとどまっているもので、対話を目的としていると説明するのが整合的ではないかと思います。もしも経済安全保障などを正面から趣旨として取り込んでいくのであれば、非公開会社も含めて全ての会社を対象としつつ、しかしながら経済安全保障上重要である会社とそうでない会社はあるわけので、その区別を外為法なども見ながら、もう少しきめ細やかな議論をしていくべきではないかと思います。   実質株主が議決権を代理行使できるようにするための改正につきましては、今後の解釈にもたらす意義という問題があることを、今日の御議論を聞いて承知いたしました。議決権代理行使の資格を株主に限定する定款規定の合理性は、今日の上場会社では余り説明が付かなくなってきており、適用範囲を狭めていく方に実務も動いていくべきなのではないかという問題意識を持っておりまして、立法をするのであれ、見送るのであれ、そのような方向に資する選択がとられるように願っております。   費用負担につきましては、会社負担にするというのが筋は通っているとは思います。もっとも、この場合の費用というのがどのように決まるかが分からないので、藤井委員が御指摘になったように、相場を知らない日本の企業の足元を見て高額な請求がまかり通るようなことがもしあるのであれば、そういう実情も踏まえて、きめ細やかに、負担に関する議論をする必要があるかもしれないと思いました。   次に、大株主の通知義務なのですけれども、会社からの通知の意義につきましては、私も手続保障がメインであると思っておりまして、ドイツのように議決権が即時に停止するという制度に対する現地における立法的な批判の一つも、手続保障が十分でないという点にもあることにも鑑み、そのような問題に対応するものとして評価したいと思っております。他方、副次的に、軽微なものについて、これは軽微な違反だと会社が判断できるだけの十分な材料を持ち合わせているのかという問題はあるように思うのですけれども、仮にそのように会社が判断し得る場合に、軽微な違反については議決権を停止しなくてもいい、という裁量を会社に認める余地はあるように思っておりますが、恣意的な取扱いはしてはならないのは、会社法上の当然の要請としてあると思います。大量保有報告書の当局によるエンフォースメントにつきましても、今後はめり張りを付けていくという方向が示されておりますので、それと足並みもそろうのではないかと思います。   次に、意図的な報告違反で、しかも会社から通知の機会がなかった場合の取扱いなのですけれども、このうちの特に重大なものにつきましては議決権停止の帰結を認めないと、大量保有報告書制度のエンフォースメントとしてこの制裁を認める意義が半減してしまうのではないかと思います。立法上の手当ての立て付けを不公正な決議方法という解釈論に委ねるという考え方もあるように思いますけれども、例えば、会社法第831条第1項第4号などとして、故意又は重大な過失によりこの義務に違反した者の議決権行使により決議が成立した場合を挙げるなどのように対応する余地もあるのではないかと思います。本日の御議論で、議案の内容や議決権のボリュームごとに取扱いを調整することを要するかもしれないとも思われました。ただ、それを解釈論に丸投げするとかえって、取消しが難しくなるようにも思われました。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○藤田委員 まず、実質株主確認制度について、会社から確認する制度は会社と株主の間の建設的な対話の促進のためとして、会社支配に影響のある実質株主の把握という方は株主からの会社への通知を義務付けるという制度でカバーするという二本立ての構成にするということに賛成です。また、前者には過料、後者には議決権の制限という効果に結び付けるという基本的な枠組みも賛成です。ここまでは、これまでの部会も示されてきたことなので、それを改めて、そういう形で中間試案に諮ることでいいと思っております。   その上で今回新しく加わっているのが、まず前者についての1の(1)、(2)といった規律を入れるかということです。ここで書かれている内容は、会社と株主の間の建設的な対話の促進のための実質株主確認の権利だと位置付ける場合には、比較的自然に出てくる帰結だと思います。ただ、(1)について異論があるとすれば、これはもう何度もいろいろな方がおっしゃったと思いますが、この規定を置いたことの反対解釈として、代理人資格について定款による制限をめぐるルールが、それが固定化してしまうのではないか、取り分け、このような定款に基づく議決権行使の制限について、最近下級審裁判例で若干揺れがあるかのようにも思える現象に何か影響を与えてしまうのではないかということです。これをどこまで深刻に捉えるかによって、このような規定を置くことへの賛否について意見が分かれるかもしれません。   これは理論的にどちらが正しいという種類の問題ではなくて、今言ったような懸念を各人がどのように評価するかということ次第だと思うので、そういう意味で、論理的にどうあるべきだということは申し上げられませんけれども、印象だけ言うと、私はどちらかというと楽観的なほうです。つまり、この規定を置いた趣旨は、仮に定款規定に従って議決権代理行使を拒める場合があるとしても、少なくとも実質株主確認制度によって情報提供させて判明した指図権者については、そういう権利は行使できないということを明らかにする、そもそも定款によって議決権の代理行使を制限できるのはどのような場合かというのはここでの提案とは何の関係もない話で、仮に拒める場合があるとしても、こういう制約をかぶりますよと言っているだけだという趣旨を、例えば法制審の議論中で明示的に残し、立案担当者の解説でも述べれば、それを平然と無視した解釈で押し切るリスクがどれだけ高いか疑問で、かなり抑制できるのではないかと思うからです。法改正との関係での法制審や立案担当者の過大評価と思われるかもしれませんけれども、この問題については、どちらかというとそういう感触を持っております。むしろ、こういう反対解釈が出るリスクと、こういう規定を置かずに解釈に委ねた場合に定款規定を根拠に実質株主の確認によって指図権者を把握した会社が指図権者の代理行使を拒絶するリスクとを比べると、後者の方が大きいと思います。そもそもこういう指図権者が現に代理行使するかどうかというのは置いておくとして、仮に代理行使してきたときに、それを拒むリスクの方が、この規定の反対解釈のリスクより現実的だという印象を持っていて、そういう意味で、こういう規定を置くことについて楽観的なスタンスです。   (2)の費用の範囲については、確かに伺っていると何か歯止めが必要という気もします。どういう角度から歯止めを掛ければいいかはよく分からないので、意見を申し上げられませんけれども、その点は更なる検討事項として留意しておいていただければと思います。   その次に、2の株主から会社に通知を義務付ける制度ですが、これは前回の提案と違って、会社法上の義務ということを明示的に書いた上で通知義務化した上で、金商法上の大量保有報告でこれに代えることができるという立て付けにしてくださったことは、よかったと思います。基本的にそういうものとして中間試案に諮るという方向でいいと思います。こういう会社法上の義務違反と結び付けると議決権停止につながりやすいということにはなると思います。解釈がよく分からないところとして、義務を怠って事前通知がなされないという場合に、決議時点で通知義務違反が判明していないから、会社から停止するということは通知できないわけですけれども、そういう状況で議決権行使がされた場合に、事後的に株主総会決議の取消事由が認められるかということです。   解釈論としては会社法第831条第1項第1号の株主総会の決議の方法が著しく不公正なときに該当するかということですが、結論としてこれは当たり得る、取り分け今のような立て付けにすることで、会社法上課せられた義務を怠って会社が議決権停止する機会を奪ったという形になれば、当たり得ると私自身は考えます。ただ、この点を明文で規定するのはやはり技術的にかなり難しいという印象を持っております。立法した方が確実に意図を達成できることは分かるのですけれども、具体的にうまく書けるか、取り分け要件、例えば一定以上の重要な違反でないといけないかとか、あるいは主観的要件も必要かもしれないということについて、事前に形式的に書き切るのは難しいかなと思うので、ここは解釈に委ねざるを得ないと思います。ただ、今言ったような状況が決議の効力に影響があり得るという辺りまでは、この部会である程度認識が共有できているとすれば、それに基づいて立案担当者解説などで明示的に書いていただくことである程度は解釈の指針を与えられるかと思います。最終的にどの程度の違反があった場合に決議取消しになるかは結局、個別判断に委ねざるを得ない面があるので、解釈論に委ねる面が残るのは仕方ないかなというふうな気がしております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。ほかに御意見、御発言はございますでしょうか。よろしいでしょうか。   「第1 実質株主確認制度」につきましては、特に休憩前の御議論におきまして、会社の側から実質株主を確認する制度、ルールに違反した場合の法的効果について、議決権の停止、あるいは議決権の制限というのを復活と申しますか、そのような選択肢も入れて中間試案に掲載すべきであるとの御意見が相当数あったように思います。これを一つの案にするのか、あるいは(注)に記載するのかということは、事務当局に御判断いただきたいと思います。この点について見直しといいますか、御検討していただくことはできますでしょうか。そのような方向で検討していただければと思いますけれども。 ○宇野幹事 確かに前半の方の御議論で、そのようなお考えを支持される方々が一定数おられたのは事実だろうと思いますので、本文に掲げるほどの支持があったかというと、支持の中にも濃淡があったかと思いますので、今の段階では注記にするかなという感触は持っておりますけれども、いずれにせよ意見を公募する前提として何らか残しておきたいというのは、部会長の御趣旨は承知しましたので、またたたき台のときにゴシック体の中に含める形で書かせていただいて、御意見を伺いたいと思っております。 ○神作部会長 よろしくお願いいたします。どうもありがとうございます。   それでは、続きまして第2の論点に移らせていただきます。第2は社債権者集会の書面決議制度の見直しについてでございます。この論点につきまして、御意見のある方は挙手等で発言の意思をお示しください。 ○鮫島幹事 部会参考資料26の3ページ目の2.につきまして御説明申し上げます。社債権者集会の書面決議制度の見直しの必要性・ニーズでございます。社債は、大規模な設備投資やM&Aにおける買収資金のリファイナンス手段として用いられることが多く、社債市場を活性させることは、企業の成長投資に向けた多様な資金調達手段を確保することにつながり、かつ、中長期的な企業価値向上の観点からも重要な意義を有すると考えてございます。なお、2025年における国内企業の社債発行額は約16兆円と過去最高を記録してございまして、社債発行企業の裾野も広がりを見せているということでございます。近時は、社債市場の更なる活性化に向けまして、社債発行企業に一定の義務や制約、例えばチェンジオブコントロール条項などのコベナンツが付与された社債を発行する例が増えておりまして、こういったコベナンツ付与を推進することは、社債権者保護を充実させ、投資家層の拡充にもつながると期待されているということでございます。   発行企業がコベナンツの内容に抵触した場合については、強制的な措置として期限の利益喪失が生じ得るものではございますが、抵触しても発行体の財務健全性に影響がない場合もあり得るため、その際には社債権者の集団としての意思決定を迅速に行いまして、社債の償還を求めるか、その支払を猶予するかを直ちに確認する必要があるところです。しかしながら、コベナンツ抵触時に支払を猶予することは、多くのケースにおいて社債権者集会の決議が必要と解されてございまして、実際の社債権者集会を開催するのに相応の時間が掛かり、迅速な対応が困難になってございます。   4ページにございますとおり、そのほかにも社債権者集会の決議が必要なケースは、社債要項の内容を変更する場合であるとか、発行企業の財務が悪化し、迅速に債権保全や回収の判断をする必要がある場合など、緊急性が特に高いものが多いという状況でございます。先ほど申し上げたとおり、社債市場の活性化を実現する上では、可及的速やかに、迅速に社債権者の意思決定を行うための環境整備に向けた制度の見直しが重要であると考えてございます。   (2)は、多数決による書面決議制度の許容性でございます。実際に社債権者集会が開催された案件の中には、社債権者の大多数が事前に議決権を行使したため、決議の大勢が事前に決まっていたものや、当日の出席者が0名若しくは数名にとどまったケースも複数ありまして、更には議決権自体を行使しない社債権者も一定数おります。また、社債権者集会の決議事項は金銭債権である社債の帰すうに関する事項でありまして、集会の場で理念や価値観も含めて議論を尽くすべき対象ではありませんので、会議体をわざわざ開催して議論する必要は高くないと考えてございまして、したがいまして、多数決による書面決議制度を導入することに支障はなく、許容性もあると考えてございます。   なお、部会資料にあるA案とB案につきましては、A案の方が、決議事項に対する関心が低い社債権者が一定数いる場合においても対応できる内容となってございますので、合理的な意思結集の観点からはA案の方が望ましいと考えてございます。A案においても、社債権者への配慮がなされてございますし、少数社債権者の権利保護を不当に損なうものではないと考えてございます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○松中幹事 まず、許容性について、私も基本的に御提案のような考えを支持したいと思います。社債権者集会は、集会といっていますけれども、そもそも会議で物を決めるというところに重点があるわけではなくて、既に本来は決まっている社債権者の権利を多数決によって全員分変更できるようにすると、これが多分一番大事なところだと思います。それによって集合行為問題を解決する、こういう仕組みですので、会議体かどうかというのはその次の話なのだろうと思うわけです。まず多数決を可能にする、そのための意思決定の仕組みとしていろいろあって、今は取りあえず会議体が選択されているというだけですので、11ページのように、意思決定の方法は別の話だと位置付けるのが適切かと思います。   株主総会、株式と比べた場合は、株式の場合はエクイティとして権利がそもそも確定しておらず、その内容自体も株主の集合的な判断を通じて決めていくものになるわけです。論理必然的に、だから会議体だとなるわけではありませんけれども、社債権者集会、社債と比べると、決議の内容も多様である上に意見交換とか提案などの必要性も高まっていくので、デフォルトとして会議体にしておくというのはある程度合理性があるのかと思います。その意味で、この二つを必ずしもパラレルに考えなければいけないということはないのだろうと思っています。   続いて、A案とB案ですが、これは似ているようで実はかなり違う制度なのではないかと思っています。ですので、二つとも同時に提案して実現してもいいし、支持の状況によって片方だけでもいいと、こういう関係にあるものではないかと思っています。A案は、広く分散している社債権者がいる場合に、書面による多数決を可能にするというものであるのに対して、B案は、より少数の社債権者だけがいるような場合、あるいはもう少し数が多くても、大きな割合を持った社債権者が合意をしているような場合に、迅速に物を決めていくというものかと思います。別に両方あっても全然おかしくないと思いますので、二つ並べるような形にすればいいかなと考えております。   ただ、B案の場合でも、振替社債の場合に振替法86条の証明書の提示を求めるのであれば、提案の通知と参考書類の交付から同意期限までの間の期間に制約が出てきてしまいますので、もしB案の迅速な意思決定というのを貫徹するのであれば、ここの部分も併せて手当てが必要かと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○行岡幹事 この御提案に関しましては、私が第8回の会議で申し上げたことを取り上げていただきましたことに、まず感謝を申し上げます。その上で、大きく3点、意見を申し上げます。   まず1点目は、このような制度の許容性についてです。基本的には資料の11ページでお示しいただいたとおり、あるいは先ほど鮫島幹事に御説明いただいたとおりで、社債権者集会における決議事項は金銭債権である社債の権利行使や条件変更等に関する事項であって、取締役の選解任や組織再編等の会社の経営に関する事項を扱う株主総会の決議事項とは性質が異なるといえますので、株主総会と比べても会議体で行う必要性が低いといえるのではないかと考えています。   また、ここからは私の個人的な意見が入りますけれども、そもそも社債権者集会の制度というのは、社債の権利行使や条件変更等について、社債権者の合理的無関心であるとか、あるいはフリーライダーの問題を克服して集団的な意思決定を可能とすることにこそ、その制度としてのコアの存在意義があると考えておりまして、先ほど松中幹事がおっしゃったように、会議体という形にこだわる必要性は乏しいと考えています。もちろん事業再生の場面など、十分な討議を経てリストラクチャリング案を練り上げることが重要な場面というものも想定されるのですけれども、そのような場合には、既に議案が固まっていることが前提の社債権者集会の当日に議論するのでは既に遅いのでありまして、むしろその前の段階で、銀行その他の利害関係者も含む形でリストラクチャリングのパッケージを協議、交渉するということがむしろ重要であるというべきであって、社債権者集会という場での討議を重視する理由にはならないと考えます。   以上から、仮に株主総会において会議体を重視する立場をとるとしても、社債権者集会については必ずしも同じように考える必要はないと考えます。   2点目ですけれども、A案とB案の関係といいますか、どう中間試案をまとめるかについてです。今回の御提案は、資料12ページで整理していただいているように、A案は現行法上の手続的な規律を基本的に維持しながら、会議体としての社債権者集会の開催に伴う時間と費用の低減を可能とする、そういう御提案であるのに対して、B案は会議体の時間、費用の低減に加えて、法定の検討期間を不要とすることで社債権者の迅速な意思結集を可能とするというもので、先ほど松中幹事がおっしゃったように、かなり異なる性質の提案がなされているのだと思います。   私としては、結論から言いますと、会社法上の制度として少し複雑なものになってしまうというデメリットはあるものの、先ほど松中幹事が御示唆されたように、これらいずれのタイプの多数決型書面決議も利用できるような形で、つまりA案とB案両方を実現することも可とする形で中間試案をまとめることが望ましいのではないかと思います。なぜならば、A案とB案にはそれぞれ独自の存在意義があって、具体的な状況に応じて適宜使い分けることが有用だと考えられるためです。取り分けこのB案というのは、かなり大胆というか、現行法の手続保障の規律を一部適用しないという形の提案になっているのですけれども、このような提案によって、法定の検討期間を待たずに迅速な意思結集ができるようになれば、例えばですけれども、金融機関や大口社債権者などの主要な債権者の間で事業再生計画が協議されて、一定の合理的なリストラクチャリング案が策定されたという場合に、最後の多数決による意思結集を迅速に行うといったニーズに応えることもできると考えられますので、一定の合理性があるのではないかと考えています。   以上が2点目で、3点目、最後ですけれども、ただ、そうはいってもB案については、法定の検討期間が確保されないことで、社債権者が十分に熟慮した上で議決権を行使することができないのではないかと、そのようなおそれないし懸念が指摘されるかもしれません。確かにこれはそのようなおそれがあると思うのですけれども、時間や情報が足りないと考える社債権者は、積極的に賛成の議決権を行使しなければ、このB案の下では反対したのと同じように扱われるので、さほど深刻な問題にはならないだろうとの見方も十分にあり得るのではないかと考えています。   さはさりながら、それでもなお懸念があり得るとすれば、例えば、極めて短期間でリストラクチャリング案への賛否を問われて、決議が成立しないと会社がデフォルトするとか、あるいは倒産するなどと迫られて、議案に賛成するしかないような形で強い圧力が掛けられるような運用がなされるおそれも全くあり得ないわけではないと思います。このようなおそれについてどう評価するかについては、意見が分かれ得るところだと思いますので、委員、幹事の皆様からの御意見、あるいはパブコメで寄せられる御意見を踏まえて手続保障の要否を更に検討することが考えられると思います。差し当たりこのような懸念に対処する観点から思い付く中間的な解決としては、例えば、募集事項の定めとして、B案における最低熟慮期間を定めるものとするといった対応も考えられるかもしれないと考えています。   いずれにせよ、中間試案の段階ではA案、B案、両方併記する形で、かつ両方を採用することもあり得るという方向で整理してはどうかと考えています。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○久保田委員 先ほど鮫島幹事から社債に関する現在の実務の状況をお教えいただいて、とても参考になったわけですけれども、もう少し詳しい実務の状況が分からないとなかなか確定的なことが申し上げにくいため、できれば今後のいつかの部会において実務の方々の御意見をお伺いすることができればと思っています。そのため、現時点では暫定的な意見ということになりますけれども、意見を申し上げたいと思います。   まず、社債権者集会の場合は会議体が必ずしも必要ないということについては、先ほど松中幹事と行岡幹事がおっしゃったとおりだと思います。その上で、今回はA案とB案が掲げられているわけですけれども、このA案とB案は両立し得るものだと考えられますので、それを前提にすると、私は個人的にB案が認められることには余り問題ないのではないかと思っていまして、むしろ一部の社債権者だけの議決権行使によって決議が成立する可能性のあるA案が認められるかどうかが問題かなと思っています。  そこでA案の許容性を検討してみますと、そもそも社債権者集会の決議事項というのは、鮫島幹事が指摘されたように基本的には金銭債権である社債の帰すうに関する事項ですので、株主総会における株主の場合と比べて、社債権者集会における社債権者の議決権行使に関する選好の違いというのは比較的小さいのではないかと思います。そのため、一部の社債権者、取り分け機関投資家である社債権者だけが議決権を行使して社債権者集会の決議を成立させた場合でも、その一部の社債権者が特殊な者であれば別ですけれども、そうでない限りは社債権者の多くの選好にかなう内容の決議になっている可能性が大きいと考えられますので、結論として、A案を認めても問題は小さいのではないかと考えています。   少し気になっていますのは、書面決議に関する情報の周知のことについてです。振替債又は記名社債の場合は問題ないと思いますけれども、振替債でない無記名社債の場合は公告を通じた情報の周知になりますので、その点に少し不安が残るところです。仮に情報の周知に不安が残る場合は、A案ですと特殊な一部の社債権者だけが議決権行使をして決議を成立させる可能性が比較的大きくなりますので、むしろB案だけを許す方がよいという意見もあり得るかもしれません。ただし、そもそも振替債でない無記名社債というのは余り発行例がないような気がしていまして、そうであれば、やはりA案を認めても問題はないということになろうかと思います。   なお、A案を認めるとした場合にもう1点気になりますのが、書面決議案への同意期間について最長期間を法定する必要はないかという点です。といいますのも、現実には余り想定されないような気もしますけれども、仮に書面決議案への同意期間として非常に長い期間が定められますと、その期間が経過するうちに状況の変化が生じて、社債権者の意思に反した決議が成立する可能性が出てくるように思います。この点に関連してイギリス会社法は、株主総会の書面決議についてですけれども、会社の定款に定められた期間又は書面決議案の開封日から28日間を最長期間と定めた上で、その期間内に書面決議案が可決されないときは書面決議案は失効するということを明文の規定で定めています。こうしたイギリス法を参考にして、書面決議案の同意期間について、最短期間だけでなく最長期間を法定することも検討に値するのではないかと思っております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○矢野幹事 今回の提案自体は、大きな方向性としては賛成を致します。A案、B案については、両建ては複雑になるので、B案を基軸として、より機動的な制度設計ができるようにして、バーチャル化との関係も含めて検討すべきであると考えてはおります。以下、その詳細を述べたいと思うのですけれども、少し話が多岐にわたりまして、かなり長くなると思います。御容赦いただければと思います。個人的な見解で、まだまとまり切っていない部分もかなりあります。   この社債関係は、令和元年改正で社債管理補助者制度というのが導入されまして、弁護士、弁護士法人も有資格者に含まれるようになりました。私は、この補助者は倒産法制に習熟した弁護士が適任だと思っていたところでして、今回、社債権者集会の話がいろいろ出てきてはいたのですけれども、株主総会と平仄をそろえるというところには少々違和感を覚えておりまして、今回の提案の方が個人的にはすっきりしたという思いはあります。その上で、社債権者集会と株主総会とで規律が異なることを許容する根拠は、既に幾つか出ているかと思いますけれども、若干お話しさせていただければと思います。   一つ目は、社債権の場合、金銭債権というよりは皆が全く同じ債権だというところがポイントなのかと思います。全体の利益も個々の利益もそれぞれが一致するという場合が多いものですから、抜け駆けをするという場合を除くと、自己の利益を最大化させるということはイコール全体の利益の最大化であって、全体の利益の最大化イコール個人の利益の最大化でもあるという場合が多いということが一つ、ポイントであるかと思います。一方で株主総会は、株価を高めるという抽象的なレベルでは同じですけれども、時期だとか金額だとかの目線はまちまちですし、ゴールはないということなので、個々の利益の一致点が、全くではないですけれども、限りなくないというところが異なるということかと思います。   もう一つは、社債権者集会の場合、その賛否から生じる結果が書面だけでも分かりやすいということが多いというものの、株主総会ではそうではないという点かと思います。これは、例えば社債権者集会で会社更生の更生計画案への議決権の行使の件が掛かったといった場合ですと、計画案の中身を見れば、自分の権利がどうなるだろうかということは容易に理解ができるのですけれども、株主総会で取締役選任議案が掛かった場合だと、誰が取締役になるかということは分かりますけれども、それによって自分が保有する株の価値がどうなるかということは絶対に分かりません。株主総会の決議事項は不確かな未来の予想の部分というものが大きく、正解がないということから、議論という慎重な過程を経ることによって集団的な意思決定に正当性を付与しているという面が大きいと考えています。その他、社債は株式とは異なり投資単位も大きく、プロの投資家が保有しているということが多いということも、異なる規律を許容する一つの理由となるかと思います。   社債権者集会が必要となる重要な場面は、典型的には債権回収の場面になるかと思います。こうしたときは、やはり一日でも早く決定して回収に着手していくという方が一般的には回収率が上がる、全体の利益にもなるということなので、迅速な意思決定が特に許容される場面かと思います。そうした事情を考えますと、書面決議、私はこれはむしろ倒産法に合わせて書面投票といった方が、関係人集会という集会という用語なので、倒産法の世界との平仄が合うような気がしていますけれども、社債権者集会については書面によって可決させる制度というのも株主総会よりも許容されると理解しています。   一方で、株主総会の方でも若干議論が一緒になっていた面があるのですけれども、書面投票、書面決議という方法への同意と決議内容への同意というのは違う内容ですから、今の議論を書面投票への許容性だけというところに絞って考えると、必ずしも十分なものではないのではないかという疑問は、補足説明のとおりかなとも思っています。なので、議論を経た上で決定したいという要望についても何らかの形でバランスをとって解決する必要があるのかなとは考えています。   その上で、少し中身の話をしたいと思いますけれども、まずA案、B案の話なのですけれども、両建ては少し複雑な制度となるので、余り適切ではないというところがあるのですけれども、なぜB案の方がというのは、どちらかといえばA案においてかなりまずい場合があると考えるからです。具体的には、例えば倒産との関係なのですけれども、会社更生の場合でいいますと第190条で、社債管理者がいる場合は社債権者集会の決議が成立したときは社債権者は自らの権利行使ができないとされていまして、社債権者集会での決議がイコール自らの権利行使の事実上の最終段階となるという場合があります。それがA案の場合だとごく少数だけで決められるということになってしまって、それは少し不適切ではないかと思います。逆に、更生事件全体で考えたときに、場合によっては5分の1の2分の1、約10分の1の債権だけでもしかしたら結論が決められるかもしれない、社債権の割合が51%ぐらいある場合ですけれども、そうした事例だと、ごく少数だけで決められるという結論になってしまって、それは倒産法との関係でも、やはりよろしくないと。他の法制度でたまに社債権者集会というのはやはり出てきますから、その辺との関係を含めて、どういった制度がいいのかというところを検討する必要があるのかなと思います。   また、B案の方がよいと考えている理由はもう一つありまして、B案の方の場合には一度の通知で書面投票と集会の併用ができる可能性があるのかなと思っています。1週間でそろったら、それで可決として、そろわなかったら2週間後に集会を開くといった形で、まとめて1回で通知をするといったイメージです。そうすると、集会の中止の連絡は大変なので、本来はこの場合、2週間後の集会はバーチャルとして、そろっていたら報告だけとか、そういった形でいいとは思いますけれども、B案だとこうした形はとりやすくなるのかと思いました。A案でも不可能ではないのですけれども、より時間が掛かるということになりますから、実際は書面か集会かの択一ということになるのかと思います。そうすると、ここではやはり早期に集団的な意思決定ができるのが望ましいと考えられますから、B案を前提にしながら、併用ができるような形の調整を入れた方がよろしいかと思います。今の併用の点は、先日議論した株主総会の書面決議でも同じことがいえるかと思います。   あと、A案とB案とは少し別な話もしたいと思いますが、まず、提案者に両案とも社債権者が入っているのですけれども、これは招集権を有している場合の社債権者だけでいいのではないかとは思いました。多分、株主総会の株主と合わせたりとか全員同意の決議と合わせているのではないかと思ったのですけれども、この場合は余り必要性がないのかなと思います。飽くまで集会の迅速化だとか、投票で成立を早める方法と位置付けて、招集権がある場合だけの方法ということでよろしいかと思いました。また、書面投票を可とする規律については、招集権者で分けてはどうかとも思っています。   具体的には、社債管理者や社債管理補助者が招集する場合は無条件で書面投票も可とし、それ以外の場合、典型的には発行会社による場合ですけれども、これらは裁判所の許可を経た上で実施できるといったような形にするということはあり得るかと思います。招集権者で区別するのは、社債管理者とか社債管理補助者の場合は、社債権者の代理人的な立場、いわゆる管財人みたいな立場とかと同じですけれども、そのような立場にありますから、この者の判断を尊重するということはできるのではないかと。特に、これらの者が招集する場合には機動的な意思決定が必要となる場合も多いと思いますので、より許容され得ると考えました。一方でそれ以外の者のときは、そこまでの尊重は擬制できないであろうということと、社債権者側にも議論して決したいという要望もあり得るでしょうから、何らかの要件も付加すべきと考えまして、裁判所の許可としてはどうかとは思います。   裁判所の許可としても、どうせその後、認可がありますから、認可の一部、数週間前倒しという面がありますから、裁判所の負担も大きく増えるものではないとは思います。その場合の認可の要件としては、例えば議案の内容や社債権者の属性、具体的な実施予定の方法等から、書面投票の方法をとることが社債権者にとって著しく不利益とはいえない場合とか、そういった感じで少し広目に取っておくというのはあり得るのかと思います。そうした場合、機関投資家がほとんどだというときには、よほどのことがない限りは許可となると。ただ、裁判所の許可まで制度化するのは難しいということでしたら、認可の要件のところで、例えば全員に送ったかとか、集会でなくとも質問の機会を設けたかとか、中身が分かりやすいものだったかとか、そういったところを要件へ何らかの形で足して、あと、異議を述べた者がいなかったかとか、そういったものを見て後見的に見るという方法になるかとは思います。ただ、後で認可だとどうなるか分からないというところがあるので、事前に許可を得てやった方が実施する者の負担は軽くなるかとは思います。   ほかの規律としては、集会開催権みたいなものを認めるかというのもあるのですけれども、そうすると迅速性の観点からは少々問題があるかと思います。こうした形をとれば既発債にも対応できるということと、同じ基準でバーチャルオンリー集会の実施の可否にも対応できるかと思いました。   なお、若干最後に、A案の許容性に関して部会資料では、13ページ目の最後のなお書以下で記載があって、こうした事態は考え難いとは書いてあるのですけれども、私は考えられると思っていまして、ただ、この場合は実際は多分認可されないという運用になりまして、むしろ裁判所が止めてくれるだろうと、裁判所に頑張ってくださいというような感じの記載の方が適切ではないのかと思いました。   あともう1個だけ、すみません。今回の検討内容の対象ではないので、完全に蛇足なのですけれども、社債管理補助者の権限で、債権査定で否認されたときに異議を出す権限がないというのは問題だと思っておりまして、実は現在の実務上、破産の場合で、みなし到達で異議が出せる期間というのは非常に短いものがありまして、確か無記名社債のときだと思いますけれども、社債管理補助者が訴訟遂行できなくても、異議だけでもせめて出せないと、必ず失権してしまうというケースがありまして、そうすると権限がないのは私は個人的には不当だと思っています。ここは完全に蛇足で、すみません。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○臼井委員 社債権者集会の書面決議制度の見直しについて、より機動的な判断ができるような方向に制度を見直すことに賛成を致します。   まず、現状認識でございますが、円建ての社債市場は、その発行残高が、例えば米ドル建てに比べて非常にまだ小さくとどまっているということがありまして、その背景として、流動性やプライシング機能が依然発展途上であるというところがあると思います。具体的な現象としましては、例えばデフォルトにおいては、銀行貸付けについてはある意味、関係者間の意思決定がしやすく、結果的に柔軟な調整が図れるのに対して、社債投資家にとってはこうした仕組みが実質的に存在しないということから、プロセス不全のまま大きな価値毀損に至りやすいというような課題がございます。   また、デフォルトに至る前の段階においても、社債条件の変更、コベナンツの修正や返済条件の調整等が極めて困難であるということから、本来であれば環境や信用力の悪化、軽度の資金繰り悪化の段階で、財務制限条項への一時的な抵触が予想される場合に必要な調整を行うことでソフトランディングを図れるようなケースであっても、こうした調整メカニズムが事実上働いていないために、デフォルト等のハードランディングに向かってしまうという環境があるかと思います。これによって、投資家から見ますと、社債の価値を機動的に見極めながら売買するという市場メカニズムが働きにくく、それに対するプライシング、引受け機能も麻痺しやすいことから、信用力が悪化した場合には早期に売却して、とにかく離脱するのだということが合理的な行動になってしまうというような現状があります。本来、信用力のストレス局面というのは、債券の信用スプレッドが厚くなって投資機会になり得るというところではあるものの、このような市場の現状や長期にわたり得る決議プロセス、裁判所の認可といった不確実性を考慮すると、リスク回避的な行動をとらざるを得ない投資家が多いのではないかと思います。   こうした問題意識を踏まえまして、書面決議による機動的な意思決定、特に、意思表示をした投資家を母数として決定するA案を支持したいと思います。先ほど来、複数の御意見で、A案とB案は並列でもよいのではないかという御指摘がありまして、そのとおりかと思ったのですけれども、広く投資家が持つような社債については、A案を使えることが投資家の立場からは重要であると考えております。決議要件として、会社法第724条第2項に定める重要な事項については閾値を厳しく定めた上で、それ以外については後者の過半数とする点に違和感はございませんが、今、社債市場の在り方については研究会を始め様々なワーキンググループで御議論が行われているところと承知しておりますので、必要に応じて実務に応じた意見を反映していただければと思います。   それから、裁判所の認可なのですけれども、現在A案においては、100%の賛成が得られない限りは裁判所の認可が必要という御提案を頂いておりますが、中期的な方向としては、プロ投資家向けの社債など一定の範囲では裁判所による認可を必要としないような検討もしていただきたいと考えております。裁判所の認可にかかる時間や不確実性が追加されるということが、運用プロセスに対しては大きな負荷になりますので、ここをスキップできるような、より機動的なプロセスを可能とすることで、円建ての社債市場におけるより強靭なプライシングメカニズムの醸成、そして市場の発展につなげていっていただければと考えます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○仁分委員 許容性について、一言申し上げます。部会資料10の11ページにおいて、「会議体の開催が必ずしも重視されないという考え方の当否等が問題となる」として、株主総会との比較が記載されています。今回提案されている多数決型書面決議の規律を設けること自体については賛成いたしますが、多数決型書面決議の規律が設けられた結果、株主総会を全く開催しない制度の創設についての議論が硬直化することは望ましくないと考えます。そのため、許容性の整理については慎重に検討いただけますと幸いであります。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○藤田委員 社債権者集会の書面決議制度の見直しについて、そもそも書面決議を根本的に見直す提案が出ていて、ここで出ているような案を中間試案に載せるということでいいと思います。もう繰り返し言われていることですが、これまで社債権者集会について株主総会の手続的なルールをそのまま適用するような議論をしがちですが、既に指摘のあったように、社債権者集会は、様々な点でかなり株主総会と性格が異なります。会社と社債権者の建設的な対話などといったことは問題になりませんし、経営者の選解任や配当を毎期決めることに対応するような話もないわけです。社債権者集会は、基本的には自分の持っている社債の内容や価値に変更が加えられることを容認できるかどうかの意思を確認するということができればよくて、会議体による決定にこだわる必要性は余りない。株主総会については会議体にこだわることの意味を議論する余地はある、「余地はある」というのは余りにも従来の発想からするとネガティブな言い方にすぎるかもしれませんが、少なくとも議論にはなるのに対して、社債権者集会については会議体であることに意義を余り問題にしなくてもよいと思いますから、今挙がっているような提案が載ること自身は自然だと思います。株主総会のルールとは全然違った発想で書面決議を構想してもよくて、余り安易に総会との平仄を持ち出さない方がいいと思います。   その上で、A案、B案、双方載せて意見を聴くということでも差し当たり結構ですが、この両案は手続の違いと議決権の数え方、両方が異なっていて、相当性格の違うものですので、いずれがよいか、あるいは併用できるかということもあるのですが、確かにA案のように行使された議決権を母数とする方が、少なくとも決議の成立との関係だと使いやすいことは確かだと思います。形式的にコベナンツに触れているようなものを何らか修正するといった変更なら、これでも全然構わないと思うのですけれども、特に使いやすさとして、例えばB案を採るとおよそ使えないようなことになるのかといった辺りは、社債実務に関わる方の意見をもう少し参考にする、ヒアリングする必要があると思います。   その上で、飽くまで感覚的な現在での感触になりますけれども、私はむしろ、これも久保田委員と同じなのですが、むしろB案が認められることは余り異論がなくて、むしろ行使された議決権ベースでの書面決議、若干その場合には手続要件は課されるのでしょうけれども、それが認められるかという方が慎重に検討する必要があるかと思います。例えば、社債の元利金の削減といったことについて、行使された議決権ベースで決められるのかといった辺りは少し気になります。A案でも元利金の減免の場合はさすがに定足数があるのですが、5分の1の定足数ですので、5分の1の半分の1割少しの社債権者の同意があれば社債の券面の9割を免除することができますというものが本当に大丈夫なのかというと、不安がないわけではありません。対面の集会でも同じと言えば同じですが、そちらはハードルが高かったため、事実上問題が顕在化しなかっただけかもしれません。   他方、先ほども言いましたけれども、形式的なコベナンツにヒットした状況を解消するのには、B案の要件というのはさすがに重すぎるような気もします。余り複雑にしすぎない方がよいような気もする上に、どのような権利、どのような決定についてはどう修正するかということをやり出すときりがなくなる気もするのですが、単純に両案の二者択一あるいは両方とも可というふうなやり方以外に、ひょっとすると特定の内容の決定については総議決権ベースの割合という要件、B案的な立て付けも入れるといった、そういう折衷的な組合せも選択肢にはなるのかもしれません。どの権利についてそうだと確信を持って現段階で言えないので、現段階ではA案、B案の両方の意見を聴くということでいいと思うのですけれども、それも選択肢には考える必要があるかもしれません。   なお、念のために確認ですけれども、ここで見直すのは書面決議制度の見直しですが、株主総会についてのバーチャルオンリー総会に対応するような社債権者集会は、もちろん当然導入することは前提だと理解しています。会議体を殊更に重視しなくていいという延長での話で、そういう上での規律の緩和というのは、ここでもそのまま適用していいと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○加藤幹事 私は、部会資料10の15ページ、議決権を行使するための手続について1点、意見を述べます。   16ページの11行目以下では、会社法第735条の2の全員同意型書面決議については、会社法第723条第3項及び振替法第86条は適用されないことが前提とされています。ただし、全員同意型書面決議も議決権者、すなわち議決権を行使することができる社債権者の全員の同意が要件とされています。したがって、全員同意型書面決議においても通常の債権者集会決議と同じく、誰が議決権者であるかを会社が確定する必要があります。したがって、会社法第723条第3項及び振替法第86条は適用されないことを前提とすると、全員同意型書面決議は、無記名社債であっても誰が社債権者であるかを会社が認識しており、かつ、社債が譲渡されることが想定されないような状況においてのみ利用可能な制度であるということになります。仮に多数決型書面決議について会社法第723条第3項及び振替法第86条に相当する規定を設けない場合には、多数決型書面決議が利用できる範囲もおのずと制限されていくように思います。それでよいのかということが問題となります。ただ、振替法第86条自体にも改善の余地がありますので、ただ単に振替法第86条の対象に含めるということではなくて、何か別の形で多数決型書面決議において誰が議決権者であるかを確定できる手続を考えていくことは検討に値するのではないかと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。   よろしいでしょうか。どうもありがとうございます。それでは、本日の審議はこの辺りで終了させていただきたいと思いますけれども、次回の議事日程等について事務当局から御説明をお願いいたします。 ○宇野幹事 次回の日程は、2月25日水曜日、午後1時から午後5時30分までを予定しております。場所は法務省法務総合研修所の第6教室となります。   次回の会議では、これまで御議論いただいた全てのテーマについて中間試案のたたき台を御用意させていただいて、それを一通り御議論いただく予定でございます。会議の終了時刻が5時30分あるいは午後6時をも過ぎてしまう可能性がございますけれども、申し訳ありませんが、御理解いただければ幸いでございます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。次回は中間試案のたたき台を出していただけるということですので、終了時間が遅くなる可能性がありますが、どうか御了承いただければと思います。   それでは、本日も大変活発な御議論を頂きありがとうございました。これをもちまして法制審議会会社法制部会の第10回会合を閉会とさせていただきます。どうもお疲れさまでした。 ―了―