法制審議会 民法(成年後見等関係)部会 第33回会議 議事録 第1 日 時  令和8年1月27日(火)自 午後1時33分                     至 午後3時53分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  民法(成年後見等関係)等の改正に関する要綱案(案) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山野目部会長 法制審議会民法(成年後見等関係)部会の第33回会議を始めます。   本日も御多用の中、御出席を賜りまして誠にありがとうございます。   本日は佐久間委員及び櫻田委員並びに海老名幹事、野村晋及び山下幹事が欠席であると伺っています。   配布資料の説明を事務当局から差し上げます。 ○波多野幹事 配布資料について説明いたします。   本日は部会資料として34-1から34-3までをお送りしております。部会資料34-1として「民法等(成年後見等関係)の改正に関する要綱案(案)(2)」と題する資料、34-2としまして「民法等(成年後見等関係)の改正に関する要綱案(案)(2)(説明付き)」と題する資料、34-3といたしまして「要綱案の範囲に含まれない点に関する事項等(前回等の部会で出された意見)」と題する資料を配布しております。   資料の内容、特に34-2につきましては、後ほど御審議の中で事務当局から御説明を差し上げますけれども、御審議に先立ちまして若干の御説明を致します。部会資料34-1は、本日の会議で御審議を経た後でございますが、最終的にこの部会で要綱案として取りまとめの対象となる部分の案を提示しているものでございます。部会資料34-2は、部会資料34-1の本文、(注)、いわゆるゴシック部分に主に部会資料33からの変更部分について説明を付したものでございまして、本文及び(注)のゴシック部分に下線を引いている箇所は、基本的には部会資料33から変更した箇所でございます。部会資料34-3は、要綱案の範囲に含まれない点に関する事項等について前回の部会等で頂いた御意見を記載したものでございます。 ○山野目部会長 本日の審議に入ります。   あらかじめの御案内を差し上げます。初めに、部会資料34-2を用いて御議論をお願いいたします。部会資料34-2は、説明の文章が付されているものでございます。この御議論を頂いた後、部会資料34-1を用いて要綱案の取りまとめについてお諮りをすることにいたします。   前回会議において予告を致しましたけれども、取りまとめのお諮りをする前に、御発言を御希望の委員、幹事から、要綱案の範囲に含まれないことも含めて御発言いただくことを妨げないという前提で、成年後見制度の今後の課題などにつきまして御発言を頂いた後、要綱案の取りまとめについてお諮りをすることにいたします。また、部会資料34-3は、要綱案の範囲に含まれない点について、前回会議において御議論を頂いたものを事務当局において整理して資料として調えたものでございます。その内容からしまして、部会資料34-3につきましては特段のお諮りをするものではございませんけれども、これに関連する事項、観点につきましても、必要に応じて御発言の中で触れてくださいますようお願いいたします。   事務当局から部会資料34-2につきまして資料説明を差し上げます。 ○波多野幹事 部会資料34-2について説明いたします。部会資料34-2は、ゴシック体について部会資料33からの変更箇所に下線を引き、部会資料33からの変更の有無について説明を付しております。   まず、1ページ目の第1の1の法定後見制度に関する補助の開始の要件及び効果等の項目についてでございますが、変更箇所が数点ございまして、まず、1ページ目の5行目からの(前注)におきまして、分かりやすさの観点から、前回法定後見制度と記載されていたところを成年後見と修正をしており、27行目に請求が抜けている旨の御指摘があったことを踏まえ、請求を加える修正をしております。   次に、2ページ目18行目では、前回の御指摘を踏まえまして、居住建物としておりましたものを、民法のほかの部分の規定ぶりに合わせて居住の用に供する建物に修正しており、また、4ページ目12行目(後注)では、民法20条の規律の見直しの内容について明確にしております。そのほか形式的な修正を数箇所しているところがございます。   説明部分の4ページから8ページまでにおきましては、今御説明いたしました修正部分に関する説明を記載しているほか、前回会議において御議論いただきました特定補助人を付する処分の審判の規律に関して、必要があると認めるときを、特に必要があると認めるときに修正することが考えられるとの御意見に関して、必要性の要件における必要性の性質や要同意事項を定める審判や代理権を付与する旨の審判における必要性の要件との関係を踏まえ、修正をせずに、必要があると認めるときとの表現を維持していることについての説明を加えております。   次に、9ページの3行目からの(前注)では、冒頭のところと一緒ですが、分かりやすさの観点から法定後見制度との記載を成年後見との記載に修正をしております。そこから14ページまでは、形式的な修正以外は修正しておりません。15ページ23行目では、意思表示の受領の特別代理人の選任の取消しについて、請求権者に本人や表意者を加える趣旨で、利害関係人との文言を加える修正をしております。   次に、17ページの33行目では、任意後見監督人が欠けた場合の任意後見監督人の選任の請求権者に、法定後見制度との併存を可能にしたことを踏まえ、補助人、補助監督人を加える修正をしております。そこから22ページまで、形式な修正以外の修正はしておりません。   23ページの36行目では、補助監督人の解任の審判の即時抗告について、同じページの33行目の補助人の解任の審判の即時抗告と同様に、即時抗告の対象から今回新たに設ける解任事由による解任の場合を除くという修正をしております。それ以後は修正はございません。 ○山野目部会長 部会資料34-2についての御議論をお願いすることにいたします。   既に御案内を差し上げておりますとおり、本日は前回会議で頂戴した御意見を踏まえ、要綱案の案をお示ししております。令和6年4月から調査審議を開始し、本日の会議で33回の開催となるこの部会であり、本日の会議におきましては要綱案の取りまとめに向けた最終的な御審議を頂きたいと考えますから、何とぞよろしくお願い申し上げます。最終的にこの部会において取りまとめるものは、ゴシック部分で示しております要綱案のみでございますから、基本的にはゴシック部分について御審議を頂きたいと望みます。それでは、御意見を頂戴してまいります。いかがでしょうか。   小澤委員をこれから指名します。最後までこの慣行が変わらなかったことはちょっとした、うれしいというか、こういうことで参りましたねということで、小澤委員にお声掛けをします。 ○小澤委員 分かりました。ありがとうございます。   まずもって、今回の成年後見制度の改正に当たって多岐にわたる論点を整理いただき、要綱案としてまとめていただいた山野目部会長及び事務局の皆様に深く御礼を申し上げます。私といたしましては今回御提示いただいた要綱案に異論はありません。   その上で、部会資料34-3の要綱案の範囲に含まれない点に関する事項について、2点だけ意見を述べさせていただければと思います。1点は、法改正に伴う経過的な措置についてですが、新たな解任事由に関する事項、死後事務に関する事項、年1回の報告義務や補助人への情報提供義務などについては、今回の見直しの趣旨を考慮しますと、現行制度の利用者についても可能な範囲で新たな制度が適用されるよう御検討いただきたいと考えています。また、成年後見登記についてですが、法定後見と任意後見が並存することに伴って、それぞれの登記がひもづけられて、分かりやすくなるように御検討いただきたいと考えています。 ○山野目部会長 御意見を頂きました。   引き続き部会資料34-2について御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○上山委員 ありがとうございます。私からは部会資料34-2の1ページ、第1、法定後見制度の(前注)につきまして1点、修正の御提案を申し上げたいと思います。   (前注)3行目の、成年後見との関係では同法859条の規律を削除するという御提案になっていますけれども、私の理解ではこの規律削除の趣旨は859条第1項の包括代理権の削除の点にあると理解しています。現行の859条第2項につきましては、現行法制でも876条の5第1項で保佐に、876条の10第1項で補助にも準用されているということもありまして、新しい制度の下でもこの規律の維持は十分に可能ではないかと考える次第です。したがいまして、修正の御提案としては、同法第859条第1項の規律を削除するものとする、と修正するのがよろしいのではないかと思います。 ○山野目部会長 ただいま上山委員から頂きましたところの、859条とあるのを859条1項と改めるという提案につきまして、法制上の準備を進めている事務当局の意見もこの後尋ねたいと考えますが、委員、幹事からただいまの観点について御意見がありますれば承ります。いかがでしょうか。   特になければ、事務当局からお願いします。 ○波多野幹事 御指摘ありがとうございます。ここでの意図していたものは今、上山委員から言っていただきましたように、いわゆる包括代理権の859条1項の規律が成年後見ではなくなりますということを示そうと思っていたものでございまして、859条2項の824条ただし書を準用しているという部分までなくなるということを意図していたわけではございませんので、御指摘のとおりかと考えております。 ○山野目部会長 前回会議におきましても、ここの話題となっております(前注)の読み方といいますか趣旨についてお話を差し上げました。少し粗いタッチで文章を書いているところでありますけれども、しかしこの種の文章はこのような仕方で今までも提示してきたという経過がございまして、今のままでも委員、幹事が考えているところと異なるというものではないと理解しています。一般に向けて、これから各方面においてこの要綱案を読んでもらうに当たっては、そうは申しましても、なるべく分かりやすい文章になっていて誤解が少ないものであることが望まれるであろうと思われます。   委員、幹事から特段の御意見をお出しいただいていないようであります。お諮りいたします。要綱案(案)の冒頭、第1の(前注)のところにあります「第859条」を「第859条第1項」と改めた上で、この後、議事を進めたいと考えますが、この提案で進めてよろしゅうございますか。   よろしいですか。ありがとうございます。では、その件はそのように取り扱うということにいたします。   そのほか、引き続きの御意見を承ります。   重ねてお声掛けをします。ほかに御意見はございませんでしょうか。御案内しておりますとおり、部会資料34-1として並行して要綱案の案をお示ししているところでありまして、改めてお尋ねを致しますけれども、もう一度要綱案の案を見返していただいて、御意見がおありでありますれば承ります。いかがでしょうか。   よろしゅうございますか。それでは、要綱案の取りまとめに進むことにいたします。議決の手続に進む前に、本日を含め33回に及ぶこれまでの部会における調査審議を顧みて、委員、幹事からそれぞれお一言ずついただきたいと考えます。   初めに委員の方、原則として五十音順に、あらかじめ申出を頂いていた皆さんについて指名を差し上げます。続きまして幹事の方、五十音順で、あらかじめ申出を頂いていた方に指名を差し上げます。その上で、お申出のあるなしにかかわらず、新しく御発言をお望みになったり、あるいは補足の御発言を重ねてお望みになるような方からのお話を伺うという、この順番でお声掛けをしてまいります。   委員の御発言を五十音順で指名をし、お願いすることにいたします。   青木佳史委員、お願いします。 ○青木委員 私は、本部会での最後の発言として、これまでの審議の経過を振り返った所感を申し上げたいと思います。   成年後見制度の見直しについては、2022年6月の商事法務研究会の「成年後見制度の在り方研究会」から約3年半にわたり、新しい在るべき制度について様々な方々とたくさんの意見交換をしてまいりました。このことを振り返りますと、今日ここにこの要綱案が整い、一つの大きなステップを踏み出すことができたことに深い感慨を抱いております。   今回の見直しは、約25年間の実務運用の中で利用者の立場から様々に提起されてきた課題にいかに応えうるかということであったと思います。終わらない後見、広すぎる後見、制約される後見、そして代わらない後見。この四つの問いかけにいかに応えることができるのか、様々な観点から模索を続けてきたと思います。適切な時機に必要な範囲と期間利用することができる柔軟な制度に作り変えよう、こうして議論を進めてきました。   2024年4月から始まったこの部会でも、現行制度を手直しするという発想ではなく、利用者の立場から、そして本人の意思の尊重や、本人の権利制約をできるだけ少なくしていこうという観点から、本人のニーズに基づく在るべき制度の設計という観点で議論を重ねてくることができました。このことは、このような運営に心を砕いていただいた部会長と事務当局の皆さんのお陰だと思います。本当に感謝を申し上げたいと思います。   こうした議論の結果、包括的代理権を廃止するとの決断をし、補助制度に統一することを原則とし、判断能力の程度だけによって制度内容を決めるのではなく、具体的な必要性に基づいて制度を開始し、必要がなくなれば終わることができる制度にするという枠組みを作ることができました。また、これまでの意思決定支援のガイドラインや取組の成果を踏まえ、本人の意思尊重義務については、本人の状況に応じて必要な情報提供など様々な支援の中で本人の意向を把握するようにしなければならないという具体的な手順を示すことになったことで、本人の意向の尊重がより大切にされる指針を示すことにもつながりました。さらには、本人の利益のため特に必要な場合には補助人の交代ができうる仕組みも切り拓きました。こうして、必要に応じて利用し、状況が変われば交代をし、必要がなくなれば終わることができるという柔軟な制度の枠組みが国民に提供されることになりました。これにより、新しい制度が本人の権利擁護のための重要な手段の一つとして、様々な支援策とともにいかされていくことを大いに期待したいと思っています。   ただ、その一方で、部会で最後までその是非が議論となりました特定補助人を付する処分が今回導入されることになります。私は最終的には要綱案の取りまとめについては皆様と結論を同じくするものでありますが、特定補助人を付する処分を取り入れることについては現時点においてもなお疑問があり、反対であります。   まず、特定補助人を付する処分を設ける制度上の必要性が本人のニーズとして果たしてあるのかです。事理弁識能力を欠く常況にあるとされる方については、個別の要同意事項の積み重ねによって本人の保護を図ることが十分可能であると実務上の経験から考えているからです。  また、「何をするか分からない人なので重要な事項全てに取消権を付与していく」という考え方は、「何をするか分からないので精神科病院に入院をしていただきたい、入所施設に入っておいていただきたい」という声を思い起こすものでもあります。また、「事理弁識能力を欠く常況にある者」というのをいかに丁寧に定義し、いかに厳格な認定手続をとろうとも、自ら意思決定をすることができないことが普通のありさまである者ということを社会が評価し、認定するということが果たして許されるのかどうか、支援の環境が整えば自ら意思決定をすることができる可能性がある存在であるという障害者観、人間観と、どうしても相容れないものであるとも思うからです。   そして、今回、特定補助人を付する処分の導入に至った別の理由がありました。それは、今回の見直しの検討が始まる前から課題とされてきたことでありますが、民法の委任や時効、遺言などの諸規定、あるいは人事訴訟などの訴訟手続との関係で、予め意思能力がないことが普通の状況であるという方を認定して、それを制度に組み入れているという諸規定との関係をクリアすることができなかったということにあります。しかしながら、権利条約の批准に伴い欠格条項の撤廃がなされたときから、本来、成年後見制度における判断能力の評価は、それ以外の諸規定における判断能力の評価への転用は見直されるべきであったわけです。それは民法内部であったとしても同様です。各規定の趣旨に従って、別の対応を規律すべきであったわけです。   ところが、それがなされないままこの部会の検討が始まり、様々な分野の研究者の皆さんに参加いただいて検討を重ねましたが、残念ながらこれについて結論を見いだすことができず、特定補助人を付する処分を導入せざるを得なくなったわけです。これは、今回の改正の基本的な方向性である本人の意思の尊重や本人のニーズに基づく見直しという趣旨とは一貫性の欠ける、異なる事情からの修正と言わざるを得ないと思っています。また、こういう修正をしなければ法改正が難しいという我が国の法改正の在り方にも関係しているように思われます。   こうしたことも含め、特定補助人を付する処分、というのは例外的なものであって、限定的に運用されなければならないということは部会の一致した認識であります。しかし、これが現実の運用において本当にそのようになっていくか、またこの処分が本人のニーズに照らして必要なオプションなのか、制度施行から直ちに検証の作業を行っていく必要があると思っています。また、民法やその他の諸規定がそれぞれに求められる意思能力を欠く場合の扱いについては、それぞれの規定の趣旨に従った新たな方策を検討し規律を整え、特定補助人というものを用いないで対応できる見直しを図ることは、法務省としての喫緊の課題であると考えます。   私が、大きく新しい一歩を踏み出そうとしているこの要綱案を前に、特定補助人の処分についてあえて反対意見を申し上げるのは、この要綱案の採否を左右するというためではありません。補助制度の未来に向けたものとして申し上げています。ここで反対意見を述べることが本人の権利擁護のために在るべき今後の制度の未来を切り拓くと思っているからです。   先日、最高裁判所を退官された宇賀克也教授が、退任後のインタビューで、在任中に多数の反対意見を書かれたことについて次のように述べておられます。「裁判官の間で熟議を重ねても最後まで平行線のままのこともある。ただ、その段階でも少数者の権利のために個別意見を述べておくことが大事です。後に反対意見を手掛かりに多角的な議論ができますし、歴史的な視点で見れば、判例の動的な発展にもつながります。」私が今日ここで特定補助人を付する処分の導入について反対を述べているのは、来るべき次の見直しの際に、今回の議論を手掛かりに補助制度の在り方について多角的な議論をしていただき、更なる見直しをしていただくことにつながると信じているからです。   今回の成年後見制度の見直しは、約27年ぶりの大きな見直しとなりました。ただし、この見直しというのは一つの到達点ではあっても、決してゴールではないと思っています。ゴールではない、一つの到達点であって次があるという視点を、私たち国民が共有することが大切だと思います。このことは、障害者権利条約に関する障害者権利委員会が2022年に示された総括所見との関係で今回の要綱案を見直したときにも言えることだと思います。今回、障害者差別が懸念されるとされている制限行為能力制度を撤廃はしませんでした。代理・代行制度を廃止する方向性から検討するということもできませんでした。意思決定支援の仕組みをあらゆる状況に応じた仕組みとして作りましょうということも、できておりません。こうした課題は一度の制度の見直しで達成できるものではないからだと思います。目指すべき理念、目標に向かって不断に運用の検証と見直しをするというPDCAサイクルを繰り返し積み重ねていくことが、成年後見制度についても求められていると思います。今回の改正は、そうした理念に向かっての一つの到達点ではありますが、道の途上でもまたあると思います。新しい補助制度を運用しながら、次の見直しに向けた不断の議論を着実に重ねていくことが大事だと考えています。   今回の見直しで制限行為能力制度を廃止できなかった理由の一つとして、やはり消費者保護法制や民法90条の規定などの本人のための一般的な保護規定の整備が不十分であったことがあると思います。また、代理・代行制度を廃止する方向での議論ができなかったのは、意思決定支援の仕組みというのが我が国ではまだまだ未成熟であり、本人の生活を支える基本的な仕組みとして地域に定着したものになっていないということがあるからだと思います。民法の見直しは、民法の内部で完結させてはなりません。民法以外の法制や制度を着実に前進させることによって、次なる見直しへの展望が見えてくるはずです。   さらに、障害者権利条約との関係では、今回も議論になった事理弁識能力という概念、事理弁識能力を欠く常況にある者という概念、つまり医学的な診断に基づいて属人的な能力評価をするという在り方そのものが、民法の能力論としてこのまま維持していいのか、支援の環境や本人の状態を総合して支援付意思決定というものがあるという考え方を、どのように民法の能力論に反映させるかということも、これから検討すべき大きな課題であると考えています。今回の部会の議論で、これらのことが十分に議論されることにはならなかったと思います。それは、部会の中で十分でなかったということではなくて、我が国の社会全体における認識としていまだ共通のものになっていないということの反映でもあると思っています。その意味では、自律の保障、そしてインクルーシブな社会の実現という理念を、成年後見制度の議論の枠だけではなくて社会の在り方として、更に国民の中で共通の認識にするべく取組を併せて行うことが非常に重要だと思っています。   最後に、改めて今回の部会での見直しの議論がかげがえのないものであったと私が感じる点に感想を述べたいと思います。今回の見直しの議論は、平成11年の議論とは質的に大きく違うものになりました。それは約25年間の実務運用の蓄積に基づく実証的な観点から、また、利用者の立場から具体的なニーズから、議論が提起され深めることができたということにあります。平成11年の際には、ほとんどの人が禁治産も準禁治産も利用したことがありませんし、後見人等を担ったこともない中で、新しい制度の在り方を模索するしかありませんでした。一方、今回はたくさんの利用者と家族がいる、実務を担ってきた専門職や団体がいる、そして支援をしてきた福祉、医療の関係者や市町村等の行政機関や社協の存在がある、その中で制度について十分な経験と多様な意見を持つようになっていました。これらを踏まえて、当事者の皆さんにも参加いただいたこの部会において、実務運用やニーズの実態を踏まえた議論をすることができました。パブリック・コメントにおいてもそうした多数の意見が寄せられました。   研究者の皆さんがそうした実情に真摯に向き合っていただきながら、今回の見直しの方向性と内実を一緒に作り上げることができたということは、本当にかけがえのない貴重な取組になったと思います。こうした議論の場を丁寧にかつ辛抱強く作っていただいた部会長と事務当局の皆さんに改めて感謝と敬意の気持ちを表させていただきたいと思います。これからは、こうした取組を更に進め、新しくできたこの「入れ物」が、地域社会において息づく制度となるように、社会福祉法との一体的改革も進めながら、「中身」作りをしっかりとしていくことができるように、運営体制や基盤整備の課題に取り組み、新しい制度を皆さんと一緒に育てていきたいと思います。   私は、2年間にわたるこの部会の議論に参加できたことに感謝し、いつにも増して長い発言に恐縮ですが、最後の発言を終えたいと思います。ありがとうございました。 ○山野目部会長 青木佳史委員から所感を頂きました。少し先になりますけれども、竹内委員、根本幹事からも御発言の希望のお申出を頂いておりますから、お三人の先生からお話を頂いた後、私からも差し上げるお話がございます。   続けます。小澤委員、お願いします。 ○小澤委員 ありがとうございます。約2年間にわたるこの法制審議会部会に参加する中で、本当に様々な視点からの御意見を拝聴することができました。改めてこの部会に参加させていただいたことに感謝をしております。   令和7年6月10日に公表された令和7年版の高齢社会白書によりますと、我が国の総人口は令和6年10月1日現在で1億2,380万人となっております。このうち65歳以上の人口が3,624万人となって、総人口に占める割合である高齢化率は29.3%となっております。今後しばらくは、総人口が減少する中で65歳以上の方が増加することにより高齢化率は上昇を続け、令和19年には33.3%となり、国民の3人に1人が65歳以上の者になると見込まれております。令和25年以降は、65歳以上の人口が減少に転じても高齢化率は上昇し続け、令和52年には38.7%に達し、国民の2.6人に1人が65歳以上の者になる社会が到来すると推計されています。また、65歳以上の独り暮らしの方は男女ともに増加をしておりますが、令和2年には男性15%、女性22.1%ですが、令和32年には男性が26.1%、女性が29.3%となる見込みとされています。   さらに、65歳以上の人口が増大するに伴って認知症等に罹患される方もまた増加することが予想されています。令和7年に1,035万人、65歳以上人口の28%だった軽度の認知障害を含めた認知症高齢者数などは、令和22年には1,197万人、令和32年には1,217万人となって、65歳以上の人口の31%以上になるというふうな推計がございます。このように事理弁識能力が不十分な方は今後数十年にわたり増え続けることが予想されておりますが、一方でそのような方々を支援していた御家族、御親族の機能は核家族化や少子化の影響により変化をしておりまして、判断能力が不十分な方々を公的に支援する制度はますます重要性を帯びてくるのではないかと考えています。そして、世界の中でも高い高齢化率である我が国におけるこの制度の在り方は、他の諸外国の参考にもなると考えておりますので、その点からも今回の制度の見直しは大変重要で意義深いものと考えています。   今後は要綱案に基づいて法制化し、国会で審議されることになると承知しておりますが、この法律が早期に成立し、成年後見制度がより利用しやすく、本人の御意向がより反映される制度となることを望むとともに、今後、新たな成年後見制度に対応した質の高い専門職として養成と供給ができるように、我々も会員の研修と指導及び連絡に努めるとともに、全国にあまねく存在する私たちが専門職後見人としての関与にとどまらず、新しい制度に基づく適切な申立てへの関わりや中核機関への関与及び支援も含め、様々な場面で新しい制度に積極的に関わっていくことによって、この制度が適切に運用され、全国各地の国民の皆様や家庭裁判所の負担も軽減されるよう、これからも頑張っていきたいと思っています。これまで本当にありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 小澤委員から所感を頂きました。   この後、しばらく先になりますが野村幹事からも御発言のお申出がありますから、両先生のお話を伺った後で、私からも差し上げるお話がございます。   続けて発言をお願いいたします。上山委員、お願いします。 ○上山委員 ありがとうございます。今回の要綱案による改正の成否は、ひとえに特定補助の例外的運用の徹底に掛かっていると思います。仮に特定補助の要件である必要性が十分に機能せず、現行制度上の後見類型と同じように事案の7割を特定補助が占めるような事態となれば、改正の意義は大きく失われてしまいます。たとえそこまでは行かなくとも、特定補助の割合が大きくなれば、実質的には一元化の皮をかぶった後見、補助の2類型化に陥り、新しい制度の理念が不当にゆがめられてしまうことになるでしょう。だから、私たちは確かめなければなりません。例えば、施行から3年ほどを目安にフォローアップ調査を行い、特に必要性の要件と本人の同意の要件が適切に運用されているかを確認するとともに、同時期に導入される新しい第2種社会福祉事業との連携が有効に機能しているかを評価することが望ましいと思います。   その人にふさわしい支援と保護の個別的な設定という理想からすれば、今回の改正はその途上にあるものにすぎません。この理想への道を妨げたものは、ある程度以上に判断能力が低下している人にはある程度まとまった形で行為能力を制限する画一的な保護が取引相手のためだけではなく本人のためにも必要であるという認識であり、これを単なる偏見として切り捨てることができない今の私たちの社会の有り様なのであろうと思います。   しかし、既に現在、知的障害のある人が約109万人、精神障害のある人が約615万人、これと統計的に重複するかもしれませんが、認知症のある人が約443万人、軽度認知障害のある人が約559万人を超えていると見込まれています。日本の人口構成を考えれば、何らかの事情で判断能力が不十分な人が社会に占める割合は今後更に増えていくはずです。そうである以上、私たちの社会は日常生活のそこかしこで判断能力が不十分な人が共に暮らしていることをごく当たり前のこととして受け止める強靱さを培っていく必要があるように思います。こうした社会の構えが整ったときにこそ、私たちは今回の法改正の更に先へと進むことができるのではないでしょうか。後世の人が振り返ったとき、あのときの部会は勇者ヒンメルではなかったけれども、しかし、南の勇者であったのだと、そう評価してもらえることを心から願っています。ありがとうございます。 ○山野目部会長 上山委員から御所感を頂きました。河村委員、お願いいたします。 ○河村委員 ありがとうございます。すばらしい演説が続いているので、私は少し気後れしているところがあるのですけれども、これまでずっと私なりの言葉で述べてきましたので、この機会を頂いて、今回の改正について申し述べたいと思います。   まずは、今回の見直しは障害者権利委員会の勧告などから始まったと感じていますので、その観点を大事にしながら議論に臨んできたつもりです。それで今回、意向の尊重、身上の配慮というところに、適切な方法によってその事務に関する意向を把握するようにしなければならないと書き込まれて、そのように把握した意向を尊重するということになったことは、よかったと思っております。また、今回の見直しに当たって現行制度で問題とされていた、一度始まると終われないということですとか、後見人の交代を望んでも事実上できないというようなことについて、その点が解決できる方向で改正案となったこともよかったと考えております。   特定補助人のところに関しましては、私は反対意見を申してきましたし、今でも完全にその意見が消えたわけではないですけれども、今回の案全体に関しては合意するとして、世の中に出していきたいと考えています。この特定補助人の制度に関しましては、本人の権限を制限しないという観点から、抑制的に例外的に使われるべきだと、部会の中ではそのように捉えられているとまとめられていますけれども、そういう方向に行くように運用を見守らなければいけないと思っております。   特定補助人についての議論の中で、悪質で詐欺的な消費者被害から本人を守るためにも必要というような点が挙げられていたと思います。そこに関しましては、悪質商法などの消費者被害からの保護という点では、本人の権利を抑制することによってではなくて、悪質な事業者を規制することによって被害をなくすべきだと私は心の底から考えております。しかも、この制度を使う人だけが守られるようではいけませんので、一般の消費者が悪質な商法から守られるように、判断力が不十分であることなどに付け込まれて契約させられるというようなことについては規制されるような方向に、このスコープ外のことですけれども、消費者団体として意見を挙げていきたいと思いますし、そういう制度整備と重ね合わせてこの制度が使われていくということを望んでいます。   本人の意向の尊重、意向を把握して尊重するということですけれども、今回、文言が変わったことはとても大きな第一歩だと思いますけれども、文言が変わっただけで補助人の方の把握する能力が格段に上がるとかということは、私はそうそうないと考えておりますので、どこまで行っても、補助人となった人だけではなくて家族ですとか福祉の関係者などと、とにかくコミュニケーションを密にして、本人がどのような人であるのかということを酌み取っていくという努力なしには、この文言の改正は生きてこないと考えています。しかも、制度利用が終われるように、また必要に基づいてというふうに作ったわけですから、制度から抜けていくたくさんの判断力不十分な方が存在するということは、今までの委員の方々のご意見でも指摘されていたと思います。それを考えると、やはり福祉の制度、あるいは先ほど申し上げた消費者保護法制などとあいまって、社会で高齢者が、あるいは高齢者ではないにしても判断力不十分な方たちが、幸せに生きていくことができる社会というのを、縦割りにならずに、様々な省庁横断的な視点を持って制度を作っていかなければならないなと思っています。   私はこの場に、本人の家族の立場、私も母の後見人をしておりましたから、その視点で、または私ではなくてどこかの知らない専門職が母の後見人になっていたらどうだったのかなと想像しながら、母の晩年のことを思い返しながら、意見を言ってきた面は実はたくさんあります。そして何よりも、私を含め全ての人たちがこれから行く道として、自分自身が本人の立場でどうあってほしいのか、どうすれば単に金銭的不利益を被らないというだけではない、人間らしくて、その人らしくて、個性が尊重される幸せな人生を、しかも晩年を送れるかという観点を大事にして、私なりの意見を述べてきたつもりです。   今後の運用の中で、今回の改正の中身が、この長い議論の中で望んだ方向で使われているのか、活かされているのかということを注視していきたいですし、何よりも一番気になるのは本人といわれている人たちがどう感じるかなのですが、この制度の宿命として、声なき声になってしまう気がするんですね。何よりも大切な本人の声というのが聴き取りにくい、どうだったのか、亡くなっていってしまう人もいる、そこが本当に気になるところでございます。どういう方法があるのか分かりませんけれども、今後の調査のお話とかも前回のときに出てきましたが、あらゆる方法で、特に本人といわれる人たちの観点から声を集めていくことができるかということを考えていただきたいと思っております。   拙い意見ばかり申し上げてきましたけれども、ここでの議論はいろいろ立場が違ってもとても真摯なものでありましたし、私としてもとても勉強になりました。部会長はじめ委員、関係者の皆様に、そして事務方の方々に感謝申し上げたいと思います。ありがとうございました。 ○山野目部会長 河村委員のお話を伺いながら、書物を1冊思い起こしました。河南勝という人が書いた本でありまして、『あきれるほど待つ――障害のある人の「本人主体」「意思決定支援」』(2025年)という本でございます。この著者の方は知的障害のある人に大学教育の門戸を開く新しい試みの事業を進めている方です(同書10頁参照)。河村委員の非常な御尽力によって、そして河村委員の問題提起を受け止めた委員、幹事の総意によって、858条の規定は大きく装いを改めようとしています。しかしながら、ただいま河村委員がおっしゃったように、法律の文言を変えただけで全国のそれぞれの事案において行われている意思決定支援の状況が一挙に変わるというものではありません。装いを新たにしようとしていく858条の精神がどれほど浸透していくかということについては、この河南勝氏の著した「あきれるほど待つ」という本が説いて訴え掛けている意思決定支援の大事なところ、勘所のようなものを広く多くの人たちが共有するようになったときに初めて、その法の精神は活きるものでありましょう。そのために、私たちも含めて、これから社会全体がしていかなければならない事柄が大変たくさんあるということを、ただいまの河村委員の御所感が確認してくださいました。   続けて指名を差し上げます。久保委員、お願いいたします。 ○久保委員 ありがとうございます。本当にこの2年間、皆様にいろいろとお力添えいただいて、私たちが安心できる、少しでも寄り添えるような後見制度にしていこうと努力していただいたことに感謝申し上げたいと思っています。全国各地で大きく格差がない状況の下、障害のある人たちが地域で安心して暮らしていくために、まだ、その申請だとかそういうことをしやすい状況になっていくのかなということを少し心配をしております。また、分かりやすい広報とか啓発が大事だろうと、これから大事になってくるのだろうなとも思っております。   同じく意思決定支援の普及啓発も速やかに進めなければならないなと思っております。昨日、私は兵庫県の川西市で講演を行ってまいりました。成年後見の大きな見直しに、本当にたくさんの方が喜びの声を寄せていただきました。その参加者からそういう発言がたくさんあったわけですけれども、この喜びを絵に描いた餅にしないためにも、各地での地域権利擁護が確実に施行されることが重要になってくると思っております。育成会としましては、全国に組織を有する当事者団体として、そして成年後見制度を本当の意味で必要とする障害者の団体として、この改正が整い、施行されることを、皆が有効に使うために、団体としても更に皆で努力をしていきたいと考えております。   私たち育成会は、少し話は横にそれますけれども、約74年前に発足をしています。その準備段階も含めますと、戦後5年後ぐらいからこの活動を始めてきたわけでございます。発足当時、差別や偏見とか、そういうことが本当に激しかった時代に、福祉サービスも何もないような、そんな社会の中でやむにやまれず活動が始まって、今日まで時代に合わせて変更したり変化をしたりしながら、やり方を変えていったりしながら今日までに至っているわけでございます。   少し言いすぎかもしれませんけれども、現在までの成年後見制度を利用されている方は、やむにやまれない状況の中で利用しておられる方が大変多くおられます。昨日もそのような声をたくさんお聞かせいただきました。今すぐ何とかならんのかというような話もお聞かせいただきましたけれども、今回の成年後見制度の改正が時代に合わせた大きな一歩となって、皆さんが救われる、そんな仲間が大勢できることを期待したいと思って、最後まで必要と思うときには意見を述べていきたいと思っております。   今日までの2年間、大変お世話になりました。一番最初の内閣府から始まっていますけれども、内閣府でピンポイントで使えるという言い方は私はしなかったのです。お食事所に入るとお品書きがあるから、私はこれとこれを食べたいというふうに選べるように、そのお品書きのような成年後見になってほしいということを内閣府のときに言いましたら、周囲の人が、それは無理だねとあっさりと言われた記憶がございます。しかし、だんだんそのことに近付いてきていて、私がたくさん、こんなふうになったらいいなと思っていたことが現実のものになってきているということは大変うれしく思っているところでございます。部会長を始め委員の皆様に感謝申し上げます。どうもありがとうございました。 ○山野目部会長 久保委員の画面に映るように、今カメラにコースターをかざしております。コースター、上にグラスとかコップを載せるものでありますけれども、お目に留めていただくことがかないますでしょうか。これは全国手をつなぐ育成会連合会の2024年10月12日の全国大会秋田大会の折に頂いたものです。秋田の指定障害者支援施設「小又の里」の方が、そこで作られたものであるということで下さいました。毎回のこの部会の会議は当然のことながら、大変重うございますから、私は、いつも会議の日は帰宅しますと、このコースターの上にしかるべきものを載せ、英気を養った上で、よし、またやるぞと気持ちを新しくすることができました。おっしゃったようにお品書きのように改めていこうという成年後見制度改革が法律の次元においては実を結んだ後にあっても、果たしてそれが知的障害者の皆さんにとって、おっしゃられた言葉を繰り返しますと、喜びとして受け止められるか、それとも絵に描いたものにとどまってしまうことになるのかという点は、これからの運用次第であります。キーワードもおっしゃっていただいて、地域における権利擁護支援が全体として首尾よく動いていくかということにその帰趨がかかっていると感じます。新しい制度の実施が始まった後、全国手をつなぐ育成会連合会にも折々に種々御相談しなければならないことが多いと存じます。新しい制度の適切な運用に向けて引き続き御尽力方、どうぞよろしくお願い申し上げます。 続きまして、久保野委員に御所感をお願いします。 ○久保野委員 ありがとうございます。久保野でございます。最終回にオンラインで失礼いたします。   今までの皆様のお話を伺いながら、10年以上前に自閉症に関係する親御さんとの関係で研修で成年後見についてお話をした際に、関係する方々から見えている制度と、私が民法研究者として見ている制度に大きなギャップを感じて戸惑ったことを思い出しておりました。この度、法務省が事務局としておまとめをなさりつつ、厚生労働省ご担当の検討と並行する形で、同省の関係の方々に御出席いただきながら、高齢者だけではない様々な関係する方を念頭に置いて、このような改正が実現したことを大変意義深く感じております。全体について何かを申し上げるということは私にはうまくできないというところがありまして、今後の課題に関わることについて大きく2点、細かく言うとそれぞれ2点、申し上げたいと思います。   一つは、前回にも少し御質問させていただいたのですけれども、34-2の資料の9ページのところに、今後、民法第4編が第5章未成年後見、第6章補助という形になるという姿が示されております。このように変わってゆく民法第4編、親族編というものがどのようなものとして捉えられていくべきかを検討していくことが今後の課題になるのだと思っております。第6章については、途中でも議論が出ましたけれども、民法の総則に置かれるべきものなのかということが課題となるのだと思いますし、他方で親族編になお置く意味が改めて問われ、検討されることが期待されるのだと思いますし、第5章未成年後見につきましては、このような内容と表題になることによって、第4章親権との関連がより目立つこととなり、第4章とまとめて捉えられる傾向が強まるのだろうと思います。そして、未成年者に関わる章としてまとめることもできそうですが、この法制審での議論の途中でユーストランディションが話題になりまして、ユーストランディションの観点も入れて、どのように考えていくのかということが今後の課題となり、そして、次の改正も視野に入れながら検討される課題になるのだろうと考えております。以上が大きい第1点です。   もう1点は、余り細かいお話はここではふさわしくないとは思うのですけれども、ただ、問題となる場面や事項に即しての検討を深めていく余地があるのだと思っております。2点だけ、民法の中の一つの例で申しますと、同じ資料の14ページに遺言の973条がございますけれども、この条文につきまして審議の途中で部会長からこのような条文を事理を弁識する能力のない者といった形で対象を絞って存置しておくのではなく、より一般的に広げていくことが検討されてもよいという御示唆がありながら、今回はそこまでは及ぶことができなかったわけですけれども、遺言という問題について、より使いやすく、あるいは様々な方が安心して使えるようにしていく方策ということを考えてもよいという課題が積極的な意味で提示されているのだと受け止めております。   もう一つの例としまして、医療行為につきましては最終的には要綱案に入らなかったわけです。これが課題であることはこの会議で問題意識が共有されつつも、私の理解としましては、誰が同意権者かといったような発想で議論をするのがもはや適当ではないと今日では考えられており、チームでプロセスを経て医療行為について検討していくという傾向が生じているという認識の下で、今回の制度改正の中に盛り込むことは適当ではないと判断されたものと思います。医療の場面という、重要な、本来対処が必要な場面について、医療の特性に応じた在り方を、具体的に、プロセスやチームでの判断の在り方を具体化していく方向で検討していくことは大事な課題として存在しているのだろうと思います。   課題についてのお話に限っての発言になってしまって申し訳ございませんけれども、以上でございます。関係の皆様に感謝申し上げていることは言うまでもございません。どうもありがとうございました。 ○山野目部会長 久保野委員が提供してくださった論点のリストが議事録にとどめられて、これからいろいろな機会に参照されるに違いありません。   続けて指名を差し上げます。佐野委員、お願いします。 ○佐野委員 全国銀行協会という立場で、部会では金融取引に関連する論点について発言させていただき、特に第28回の部会においては、本改正に伴い金融機関が考える本人による預金の払戻しが行えなくなる懸念について資料提供させていただきました。要綱案は本日をもって取りまとめということでございますが、今後、法案が成立し施行するまでにおいては、新たな預金商品の検討であったり、改正内容に即した銀行実務のアップデートなどが必要だと考えております。引き続き銀行界としても制度改正の対応については積極的な検討が必要だと思っておりますので、関係者の皆様とは法制審の終了後も密に連携を取らせていただき、変わらぬお力添えを頂ければ有り難く存じます。   少し具体的な話となり恐縮ではございますが、今後検討すべき課題として3点発言させていただきます。1点目は、今も申し上げたものになりますが、法定後見終了後の銀行取引の出口の一つである特定預金商品については、内容や活用方法は引き続き関係者間で検討していきたいと考えます。また、その前段となりますこうした預金の利用場面であるとか要否を含めて、銀行取引に限らず、法定後見が終了した方、御本人がどのような生活を送ることになるのかについて、関係省庁を含めた関係者間で検討、協議される場というのが必要だと考えております。   2点目は、制度利用が終了しまして補助人の代理権が消滅したことを取引の相手方である銀行などの金融機関が認識する方法に関してです。部会の資料上、補助人等が制度利用の必要がなくなったことをもって補助開始の審判等の取消しの審判などを行う場合には、補助人などがその疎明資料として継続的な取引状況を記した資料を申立ての添付等することが想定されておりまして、取引の相手方はその状況について連絡を受けることにおいて、その代理権等が消滅する可能性について認識するといったことが期待されていると理解しております。このような運用でありますと、銀行などの立場としましてはそれ以降、都度の取引において登記事項の証明書などを通じて取引の権限確認を行う必要があり、これが制度を利用する方の立場にとっても金融機関の立場にとっても、双方の負担となるという点についてはこれまで部会でも申し上げてきております。そのため、今後運用面での調整になると理解しておりますが、家庭裁判所であるとか補助人の方から必ず金融機関に対して通知を出すようにするといったように、取引の都度、確認のために最新の登記情報の提示を補助人などに求めるような必要が生じないよう、関係者間での調整が必要だと考えております。   3点目については、法定後見と任意後見の併存が認められるといったことによって生じる権限調整に係る運用についてです。任意後見人と補助人、任意後見監督人との話合いであるとか、必要に応じての任意後見契約の解除といった方法で権限調整を図るといったところで検討いただきました。こちらについて適切に運用されるということを希望しております。   御参加の関係者の皆様の御助言によって銀行取引に関して整理できたものが多々ありまして、大変感謝しております。誠にありがとうございました。 ○山野目部会長 要綱案で考えられている方向が法律となる際には、その施行までの準備期間におきまして、佐野委員が下さったお言葉を繰り返しますと、関係者が協議をする場を設けて鋭意、時間を用い、速やかに金融機関が関わる取引について困難を取り除いていくための新しいスキームの検討をはじめとする準備が強く望まれるところでございます。是非そこの場で中心になっていただくということを期待申し上げつつ、全国銀行協会の皆様におかれまして引き続き御尽力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。   竹内委員、お願いいたします。 ○竹内委員 今日で審議を終えまして、今後の課題は、新しい法律、これを実務の現場でどう運用するか、育てていくかということだと考えています。   まず第1に、必要があると認めるとき、必要がなくなったと認めるときをどのように解釈して、どのような基準で運用するかです。この文言は本人の権利を守るために、また過度な介入を避けるためにも中心的な概念です。ですが、判断基準や運用にばらつきが生じるおそれもあります。制度への信頼を確保するためには、安定的かつ公平な運用を確保することが課題であると考えます。例えば、判断に当たって考慮すべき要素を明確化して、実務の運用を蓄積するという工夫を要すると考えます。   そして第2に、事理を弁識する能力が不十分な方の同意、また、意思を表示することができない、をどのように捉えるかという課題があります。何をどのように理解すれば同意であるのか、御本人の意思をどう読み取ってどう尊重していくのか、同意、意思表示の具体的な対象ごとに検討する必要があると思います。この点については福祉、医療、法律という異なる分野が重なる部分でもありまして、それら専門的知見をつなぐことが不可欠であると考えています。   そして第3に、個別の代理権や同意権の付与が円滑に行われるかどうかです。広すぎる授権というのは本人の権利を過度に制限するおそれがありますが、適宜に付与されなければ本人の生活上のニーズに迅速に対応できず、権利利益を擁護することができません。そこで、実務がそのバランスを保って無理なく運用することが課題です。例えば、申立て書式を明確化する、支援者間を連携する、情報提供の在り方について工夫が必要であると考えています。   また、特定補助人を付する処分の審判の運用についても課題です。確かに部会では例外的に運用される規律であるということで議論をされてきましたが、ここで例外だということだけで思考を止めるのではなくて、どのような状況では必要性が生じるのかという方向性からも、実務を通じて丁寧に観察して、その役割を検討していくことが求められるものと考えています。   そして最後に、新しい法律ができようとしているわけですから、現時点において一定の価値観だけによって評価をしたり、運用を決めたりしてはならないと考えます。本人、家族、支援者、福祉・医療専門職、取引の相手方、実務家、そして裁判所、様々な登場人物が存在しており、それぞれに役割や視点があります。社会は常に変化しておりまして、法によって社会が形作られると同時に、法というものは社会の変化を受け止める器です。実務で丁寧に運用して、その経験から学び、必要に応じて柔軟に運用を改善していく、その繰り返しによって意義ある制度が育っていくと考えます。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   常岡委員、お願いします。 ○常岡委員 私も令和4年の商事法務研究会の成年後見制度の在り方に関する研究会から参加して、本部会まで継続的に成年後見法の改正の議論に携わることができ、非常に有意義で貴重な経験をさせて頂きましたし、また非常に責任の重い仕事であったと感じております。   先ほどからもお話の中で出ましたけれども、高齢化率が間もなく30%を超えるという超高齢社会であり、また50歳時未婚率が依然として上昇傾向にあるというこの日本の現状を考えたときに、法律の中で家族という概念に依拠できる場面が縮小しつつあって、社会福祉や地域の包括ケアシステムなどに重点が移っていく必要があるという、そういう問題意識は非常に大きいということを、この部会の各回の会議の中で改めて認識することになったと思っております。同時に、そのことによって法における家族の役割が不要となるのか、あるいは大きく変質してしまっていて、もはや別の形にならなければならないのかという点については、更に精査することが必要であるとも考えています。   民法は家族というものを私法の中で規律し、一定の家族関係に法的効果を与えるという制度を設計して、そのことによって、家族に国が不当に介入することを防ぐという役割を果たしてきた面もあるのですけれども、そのようなあり方が見直しを迫られつつあるということは、成年後見の場面でもそうですし、それから、それと関連する未成年後見や未成年者の親権の場面でも同様かとは思います。ただ、「機能している家族」と、それから、「家族が機能しない場面」とはフェーズが異なる問題であるだろうと思います。そして、機能している家族について、私法の一般法である民法がどのような規律を設けるのか、それがどの段階まで可能で、どこからより社会法的な視点に移行していく必要があるのかという点については、引き続き研究を続けていく必要があると思います。   その一つの場面としまして、今回の成年後見制度の改正で、民法の後見の章については、明確に成年後見に関する規定はそこから除き、未成年後見を内容とした規定ぶりとするという扱いがされることになりました。このことは一つ象徴的でもありまして、今回の直接の法改正の対象とはなりませんでしたけれども、未成年後見制度と成年者の補助制度へのトランジションの問題、そして、それと密接に関わるであろう、先ほど久保野委員も触れられましたが、親権の法的効果と求められる制度の具体的なあり方については、民法における家族とその機能という観点から今後も課題の一つとして研究を進めていかなければならないと思っています。それは私自身もそうですし、それから民法の研究者全体としてもそのような課題がある、ということを今回の諸議論を通じて認識いたしました。   それと関連しまして付け加えるとすれば、制限行為能力者制度についても、未成年者の扱いと、それから今回の改正後も成年者についても制限行為能力者となる者があるということに結果としてなりましたけれども、成年で対象になる方々と同様に考えていいのか、それとも、行為能力制度において未成年者と成年者を制限行為能力者という同一のカテゴリーで括るのではなく、やはりそこには別意の考え方が必要ではないかということも併せて、今後の課題として検討しなければならないということを現在感じているところであります。   簡単ですけれども、私からは以上になります。 ○山野目部会長 常岡委員から、書面にして意見書も提出いただいた経緯があり(第28回会議、常岡委員提出資料)、今後の立法の検討において、ただいま仰せいただいたことを含めて、大いに参考にしていかなければなりません。御所感を頂きました。   引き続き、花俣委員にお願いします。 ○花俣委員 2016年4月に公布された成年後見制度利用促進法より、振り返れば長い時間を掛けて、本部会では深い議論が重ねられ、本日ここに要綱案が取りまとめられますことを大変感慨深く受け止めております。   テクニカルな法律に関する議論は、現行制度さながらに市井の人である私どもには重くて理解が難しかったというのも本音であります。今も電話相談には、この制度をネットで調べると非常に極端な事例がヒットして、これらを読んでいくと、怖くてこの制度をとても使う気にはなれないといった相談もございます。現行制度のデメリットが強調されてきた背景には、制度そのものへの理解不足、それは利用者のみならず法定後見の受任者の解釈や運用面でのひずみがあったのではないかと考えます。先ほどより要綱案における様々な課題について青木委員、上山委員始め各委員の皆様から様々な御指摘があり、利用者の立場から表出すべきことを代わって御意見として述べてくださったと受け止めています。   とはいえ、当初よりの願いであった、いわゆる終われる後見の姿が見えたことには安堵いたしつつ、今後この度の法改正における議論の趣旨が正しく理解され、示された終われる後見、本人の意思、意向の尊重が運用面でしっかりと深化、浸透し、私たち抜きで私たちのことを決めないでという障害を持つ方の切実な声に真摯に向き合った制度運用となりますことを願っております。あわせて、他の関係省庁においても、民法改正に呼応した新たな仕組みとして、他の持続可能な権利擁護支援ネットワーク作りや社会福祉法改正に伴う第2種社会福祉事業の創設などについても、新法施行までにその実装に向けた取組がなお一層期待されることに期待しています。   2019年に、認知症の人も家族も安心して暮らせるための要望書を当会では発出しています。その中にある認知症本人の権利擁護については、どのような病態の時期であっても認知症の人は意思表示をしている、そのことを理解し、その人らしい生き方ができることを支える体制、制度を作ることを要望し、例えば、家族が知らない間に外出し事故に遭ったことについて、その責任と損害賠償を求めた一審判決を出したJR東海事故裁判や、認知症と知らず不安定な状態の母を制止し、死に至り、介護家族が傷害致死罪で3年間拘留された佐保さん事件でも明らかになったように、特に司法関係者の認知症介護についての理解は他の業界よりかなり課題があるのではないかと感じています。金融や交通機関など、認知症の人が安全に安心して自分らしく生きていくため、社会生活で関係する機関が認知症を勉強してほしいということも併せて要望しております。   今後、私たちに新しい民法が施行されるまでの間、何ができるのか、何をすべきなのかということを考えて、少しでも制度が身近なものとして捉えられるように、広報、啓発といった活動に私たちなりに努めていきたいと思っております。皆様、本当にお疲れさまでございました。そして、ありがとうございました。 ○山野目部会長 事理弁識能力を欠く常況、これは平成11年に改正された民法の下での成年後見制度においては中心的な役割を持つ概念の一つであったことでありましょう。この概念に託された役割といったものを考えますと、当時からの経緯に即して改めて見てみますれば、もっともな部分もあったと感じられます。それとともに、花俣委員が再々御注意なさってきたように、この概念の働きそのもの、あるいはこの概念をめぐる人々の受け止め、印象などについては問題の多い側面も多々ございました。今般考えられている改革の中におきましては、事理弁識能力を欠く常況という概念はかなり警戒して注意をして用いなければならない概念であるということが、ここまでのこの部会における調査審議の経緯に照らして明らかになりました。しかし、それを今後運用されていく制度の中で、果たしてそのような心掛けで現実の事案が運用されていくことになるかどうかということは、私たちも含め社会の各方面の努力によることです。そうした努力が多く実を結んだ暁には、第30回会議において青木委員が、最終的には事理弁識能力を欠く常況という概念、思考と、単に事理弁識能力が不十分な状況という概念、思考との間に相対化が図られなければならないと述べた、その姿に達することができると思われます。そのようになるかどうかということは、これからのいろいろな人々の努力によると申し上げたとおりではないか、そして花俣委員も今強調していただいたとおりではないかと感じます。また引き続き花俣委員にも御助力いただきたいですし、一所懸命やってまいりましょう。   林委員、お願いします。 ○林委員 ありがとうございます。まず冒頭、長い間、議論をお取りまとめいただきました山野目部会長始め事務局の皆様、また関係の委員、幹事の皆様に敬意と感謝を申し上げたいと思います。本当に熱心で真摯な御議論に接することができ、参加することができて、有り難い経験だと思っております。   成年後見制度は、先ほど来ありますように、今後は本人の意思を尊重し、必要な範囲で必要な期間使える制度へと変わることとなります。必要とする多くの人に利用していただくためにも、新しい制度の内容については、あらゆる機会を利用して広く分かりやすく周知広報いただきたいと考えています。私ども労働組合としても、できることは協力してまいりたいと考えています。   以前にも発言させていただきましたけれども、新しい制度が適切に機能していくためには家庭裁判所の人員拡充が必要であると考えていることは、重ねて申し上げたいと思っています。また、今後成年後見制度が有期的に使えるようになれば、補助終了後は頼れる身寄りのない高齢者の方などは地域で支援をするケースも増えていくのだろうと思っています。次の国会には社会福祉法の改正法案も提出される予定となっておりますが、地域で支える仕組みも整備をされていくのだろうと思いますけれども、仕組みができても支える人材がいなければ機能しません。厚生労働省には地域福祉に関わる体制強化、予算の確保をしっかりお願いしたいと思っています。更に言えば、介護など福祉の現場を担う労働者の人材確保も喫緊の課題となっています。処遇改善は行われていますが、全産業平均から見れば見劣りするため、人材がなかなか集まりません。賃上げや職場環境改善などは私どもも取り組んでおりますけれども、現場を支える人材を増やすために、介護や福祉の現場の処遇改善と環境改善が必要であることは強調しておきたいと思います。   繰り返しですが、よい制度ができても、それを担う人材がいなければ意味がありません。今後は関係各所、協力連携の下、実効性ある形で新たな制度が定着していくことを期待しております。この部会で議論されたことが実現しているのかについては、議論に関わった者としても、連合の立場からも注視をしてまいります。新制度だけではなく、関連する様々な制度も含め、当事者のニーズや思いにうまく合っていないような事態が生じたとするならば、それぞれ今後見直していくことも重要と考えていることを申し上げて、発言としたいと思います。ありがとうございました。 ○山野目部会長 働く方々の立場を念頭に置いて、今後もここで議論されたことについて各方面に啓発などをしていきたいという今、力強いお話を頂きました。おっしゃったような介護労働の現場ということについても関心を持って、労働組合のお立場で今後、幅広く各方面にお話をなさっていただきたいと望みますとともに、併せて林委員のお取組に今後に向けてお願いしたいこととしては、決してここで行われている成年後見制度改革がシルバー民主主義ではないという観点にも人々の注意を喚起していただければ有り難いと感じます。現役の働く人たちは様々な辛苦、労苦の下で働いているという現在の社会状況であります。親の世代について用いられる成年後見制度が合理的なものとして調えられていなければ、現役の働き手の世代に対して不当な、あるいは過剰な負荷となっていくことになります。そのようにして親を抱えて働いている人たち、あるいは障害者の身近にあってなお働いている人たちの中には、有期の労働契約を結んで働いている人たちや、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の適用の下で働いている特定受託事業者のような人たちもおられます。そういう方々のことも含めて、全世代のための改革として今般、成年後見制度改革が広く社会に受け止めていってもらわなければならないと感じます。そういう方面についても引き続きお力添えを頂ければ大変有り難いと感じます。   続いて、星野委員、お願いいたします。 ○星野委員 今回の法制審議会に参加させていただいたことで、改めて日々の実務について捉え直す機会を頂き、実践現場においては社会福祉士のみならず関係機関の皆様と話し合う貴重な時間を持てたことに、まず、改めて感謝申し上げます。   思い起こせば、在り方研究会の報告書の取りまとめの中に、社会福祉の分野における具体的方策自体は直接の民法改正の対象ではないとされながらも、非常に強いつながりがあるのだということが多くの委員から述べられたということが報告書の中に記載され、そこからこの法制審議会がスタートしたことが非常に大きなことだったと思います。そして、この部会では全ての委員の方が他人事ではなく自分事として向き合い、本日の結果に結び付いたということを大きな感動を持って今、受け止めさせていただいております。しかしながら、まだ残された課題は多いと考えます。この改正法案が施行されるとき、又は施行されるまでの間に何をなすべきか、3点申し上げたいと思っております。   まず、1点目です。この法改正の議論に参加した一委員として、どのような思いでこの議論がなされてきたのかを伝え、その趣旨にのっとった運用となるように努めたいというのがまず一番大きな思いです。この部会の中では、前の禁治産制度からの法改正のときにおける議論で既に類型を設けないという考え方も提示されていたということを学び、それが25年経過し、多くの実践を踏まえてようやくそのことが実現しようとしている、それは、この制度を利用する本人を主体として見たときに、その本人の判断能力の程度で振り分ける制度ではなく、その本人が望む支援を受けることができるような法体制にするということが、先の2000年の民法改正に向けた議論のときからも検討されてきていたにもかかわらず、今ようやく実現しようとしている時代の流れを大きな変革と受け止めているからです。しかし、その意味で特定補助という概念が、これまで多くの委員が述べられたように、今後どのように社会の中で使われていくのか、使われていかないのか、次の見直しの議論に向けて検証していくことが必要だという確認が前回の部会でされたことは大変貴重だったと思っております。現在の法改正の議論は、今生活している我々、人々だけではなく、未来の人々の生活に大きく関わることを議論してきたということを今、改めて強く感じています。   2点目です。本人の能力の程度を問題視するのではなくて、支援者による本人への関わり方、方法がどうあったかということが問われるということが民法に明記されたことが、非常に重みがあると感じています。現行の民法858条、身上配慮義務が具体的に何を指し示すのかが文言化されたことは、私たち福祉関係者にとっても最も求めてきたことです。これからはそれが具現化されることが問われます。そのときに必要となるのが、社会福祉法を始めとした社会福祉の在り方、介護現場、医療における意思決定支援の在り方、これらが普及啓発されていくことと併せてでなければ、この概念、理念は実現しないと思います。ますますこの部分において力を尽くしていく必要を感じております。   最後に3点目ですが、今申し上げた意思決定支援とも関わることですけれども、本人の同意というものをどのように捉えるのか、これは竹内委員もおっしゃられたと思います。私の数少ない実践の体験ではありますけれども、本人の同意というものが引き出されているにもかかわらず、補助類型ではなくて保佐、後見という類型の申立てが少なからずなされてきたというこれまでの実態を振り返りますと、なぜそのようになっていたのだろうかということを考えます。あるいは本人が拒否的だという捉え方で能力を低く見積もって、重い類型の申立てを考えてきたという実態などを踏まえますと、これからますます本人の同意というものをどのように受け止めて、そして支援の必要性をどのように判断していくのかというエビデンス、特に福祉関係者にこそ強く求められていくのではないかと感じています。   法律が改正されたとしましても、その法律をどのように受け止めて、どのように取り扱うのか、これがこれから問われてくることであり、今回まとめられた改正法案が社会の中で意識変革を促して、より必要とする本人にとって利用したいと思える制度となって、この制度を利用している人が特別な存在ではないという社会を目指し、利用者個人に向き合っていくこと、地域社会のネットワークの構築に向けて取り組んでいくこと、私がこれから取り組めることには限りはありますけれども、引き続き現場で実践を継続していきたいと考えます。 ○山野目部会長 『社会福祉士になろう!』(2024年)という本があります。梅本政隆さんという方が書いた本です。その本の中にこういう記述があります。「人の生活に関わる以上、私たちは制度の枠組みにとらわれることはありません。必要があればどこにでも顔を出し、いくつもの顔をもつ存在になっていく必要があるのではないでしょうか」(121頁)。この「いくつもの顔を持つ存在」という言葉が、私は読んでいて印象に残りました。社会福祉士とはこういうものだよということを端的に伝えていると感じますし、これまでも成年後見制度の現場において社会福祉士は幾つもの顔を持つ存在であったことでしょう。ここで考えられている改革構想が進んでいく際には、今まで以上に幾つもの顔を持つ存在になっていくであろうという期待を申し上げます。あるとき、あるいは補助人になり、あるいは任意後見人になり、またあるとき、あるいは地域社会のそれぞれの本人に寄り添ってサポートをする役割を担ったり、そしてまた、これらのいずれでもない役割で社会福祉士が関与するという事案もあるにちがいありません。新しい制度の運用を支える重要な一翼として、これからも社会福祉士の皆さんのお力を頼りとしていかなければなりません。どうぞよろしくお願い申し上げます。   委員のお申出で指名を重ねてまいりました。この後、馬渡委員、そして下澤委員を指名申し上げます。   馬渡委員、お願いいたします。 ○馬渡委員 発言の機会を頂きありがとうございます。様々な意見が出る中で、取りまとめに向けて卓越した議事進行をされた山野目部会長に改めて敬意を表しますとともに、御苦労の多かったであろう事務局の皆様にも感謝申し上げます。   今般の見直しの議論は、成年後見制度の大きな転換点につながるものと考えております。民法上の行為制限能力制度の見直しとしても、とても大きなものだと思います。代理権や同意権、取消権といったものが本人に働く保護の面と権利制約の面という二面性を、これまで正面から認識してきたことが余りなかったように感じておりまして、今回の議論はこの二面性について深く考える契機になりました。また、今回の議論は第二期成年後見制度利用促進基本計画を踏まえて、判断能力の不十分な方々の権利擁護の仕組み全体に土俵を広げたときに、成年後見制度にこの権利擁護の仕組み全体の中の主要な機能の一つという位置付けを与えるものと理解しております。反対側から言えば、成年後見制度は権利擁護の全てを担うものではないということにもなります。   今後、本日取りまとめられるであろう要綱案の方向で改正法が成立すれば、裁判所におきましては法の趣旨にのっとった運用に努めていくことになりますが、このような運用を構築していくに当たりましては、ただいま申し上げたような、代理権等が本人にどのようなものとして働くのか、また、これからの我が国の社会において成年後見制度が担うべき役割について、言わば頭をしっかり切り替えて臨む必要があると考えております。そして、今般の見直し後の制度がその趣旨にかなった形で運用されるためには、制度の運用を担う裁判所におきまして、改正法の趣旨を適切に踏まえた合理的な運用を構築すべきことはもちろんですが、それと同時に、専門職の皆様を始め、補助人等として御本人を支援する方々、さらには地域社会において御本人を支える福祉、行政による権利擁護支援の枠組みにおきまして、御本人の置かれた状況やその法的ニーズ、課題、こういったものを適切に把握して、適時に制度の利用や終了に結び付けていただくことが重要であると考えております。   裁判所といたしましては、本部会と並行して議論が進んでいる社会福祉法制の見直しの議論も含め、地域で御本人を支援する環境整備の状況等も注視しながら、本部会における御議論を踏まえた適切な運用の実現に向けて、ここに御参集の皆様を始めとする各方面の方々とも知恵を絞ってまいりたいと考えております。このような大転換点につながるような部会の審議に委員として参加する機会を頂きまして、改めて感謝いたします。ありがとうございました。 ○山野目部会長 馬渡委員から所感を頂きました。   引き続き、下澤委員にお願いいたします。 ○下澤委員 家庭裁判所裁判官の立場から一言コメントさせていただきます。   この度の成年後見制度の見直しに係る改正法が成立しますと、後見事件に係る裁判実務を直接担当する家庭裁判所としましても、見直し後の新たな成年後見制度の運用開始に向けて着実に所要の準備を整えた上で、改正法の施行後は、新たな制度が今回の見直しの趣旨にかなった形で適切に運用されていくよう裁判実務を進めていくことが求められるものと認識しており、現場の裁判官の一人として大変重い責任を感じております。   これまでの議論を通じて、様々な分野や立場から成年後見に関わっておられる委員、幹事を含む多くの皆様から、様々な観点からの貴重な御意見や御指摘などを伺うことができました。家庭裁判所としましては、こうした御意見等をしっかりと受け止めた上で、今後の新たな後見制度の適切かつ合理的な運用を進めてまいりたいと考えております。制度の適切な運用のためには、今回の審議会に関わってこられた方々はもちろんのこと、御本人及びその親族や支援者の皆様、各専門職の皆様、地域の自治体その他の関係機関の皆様など、多くの方々と互いに協力しながら力を合わせていくことが極めて重要であると考えておりますので、引き続き御協力のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。   以上になります。どうもありがとうございました。 ○山野目部会長 下澤委員から御所感を頂きました。   引き続きまして、5人の幹事の方に五十音順で指名を差し上げます。   占部幹事、お願いいたします。 ○占部幹事 成年後見制度の見直しにつきましては、第二期成年後見制度利用促進基本計画における重要政策の一つでございます。本日部会資料として提示されて、この後取りまとめられる要綱案は、成年後見制度について、他の支援による対応の可能性も踏まえて、本人にとって適切な時機に必要な範囲、期間で利用できるようにすべき等とする第二期計画の指摘を踏まえたものと受け止めております。今後は、見直しの趣旨に沿った制度の適切な運用が図られるよう、関係者が連携して必要な対応に取り組んでいくことが極めて重要と考えております。   厚生労働省としては、昨年12月に取りまとめられた社会保障審議会福祉部会における報告書の内容を踏まえ、早急に必要な対応の検討を進めてまいります。その上で申し上げますと、今後は本人を支える地域における司法と福祉の連携体制の構築が重要な課題となると考えております。本人の権利擁護を図るとともに、必要な範囲、期間に応じて後見制度の利用を可能とするためには、福祉・行政等による支援機能と家庭裁判所による成年後見制度の運用・監督機能が適切な役割分担の下、それぞれの役割を果たすとともに、必要に応じて連携することが必要です。このような連携を図るためには、本人を支える地域の関係者が把握している情報が、適時適切に家庭裁判所につながるのみならず、家庭裁判所からも福祉・行政等に対して適時適切な連絡を可能とする、双方向の情報共有の仕組みを整えることが必要になると思います。本人を取り巻く地域の関係者としては、家族、市町村、医療・福祉・介護・金融等の民間事業者、専門職団体、当事者団体、NPO等の多様な公私の関係者・機関が存在しており、御本人を支えるという同じ目的の下、これらの関係者・機関が連携協力してチームとなって本人を支える体制作りが求められています。   厚生労働省においては、これまでも、第二期計画に基づき、地域共生社会の実現という目的に向けて、地域における権利擁護支援のネットワーク作りに取り組んできたところですが、現状では、地域における支援体制の状況については、中核機関の整備状況等からも分かりますとおり、市町村ごとに大きく異なっています。福祉の現場における体制については、多くの事務が行政における自治事務であり、制度の改正によって反射的に整備されるものでは必ずしもないわけですが、今般の見直しの趣旨に則り、地域で生活する方々の安心につなげることができるよう、地方公共団体や関係省庁等とも連携して対応してまいります。委員、幹事、関係官の皆様を始めとして、地域における権利擁護支援のネットワークに関わる方々におかれましても、引き続きお力添えを頂きますようお願いを申し上げます。 ○山野目部会長 厚生労働省からは、少し後になりますけれども、米田幹事からもお話を頂くことを予定しております。   続きまして、遠藤幹事にお声掛けをします。 ○遠藤幹事 ありがとうございます。今般の制度見直しの御議論についての裁判所としての考え方、あるいは今後の課題などについては、先ほど馬渡委員あるいは下澤委員の方からお話のあったとおりでございます。   その上で、今般の見直しの議論の中で家庭裁判所の立場から御意見を申し上げる中で、委員、幹事の皆様から様々な御指摘、御意見を頂戴してまいりました。とりわけ見直し後の制度において核となる必要性の審査の在り方、また、事理弁識能力を欠く常況という概念の整理やその認定判断の在り方などについては、見直し後の制度の運用を考える上での重要な御指摘とともに、裁判所に対しても様々な課題を頂いたものと認識しております。   今後、改正法が成立することになれば、裁判所においても見直し後の制度の運用を検討していくことになりますが、その際には、この御議論を通じて頂いた御指摘を適切に踏まえた形でそういった課題にお応えしていけるよう検討を進めてまいりたいと考えております。それと同時に、見直し後の制度を在るべき形で運用していくためには、これはもう既にこれまでの委員、幹事の皆様の御発言にあるとおりではございますが、裁判所はもちろんのこと、専門職の皆様、御本人を支える御家族の皆様、さらには地域における権利擁護支援のネットワークを支える皆様を始め、成年後見制度に関わる全ての方々が御本人らしい生活の実現に向けて力を合わせていく、こういったことが不可欠であると考えております。今後の運用の検討に当たりましても、皆様から様々な形でお知恵を借り、また議論をさせていただきながら、安定した運用の構築に向けて力を尽くしてまいりたいと考えておりますので、御本人の意思のより一層の尊重という今般の制度見直しの趣旨を踏まえた運用を実現するべく、引き続きの御協力をお願い申し上げたいと思います。ありがとうございました。 ○山野目部会長 続きまして、根本幹事にお願いします。 ○根本幹事 まず、幹事としてこの改正作業に関わることができましたことに、今でも非常に身が引き締まる思いを感じており、この責任を最後まで果たしていくためには引き続き、運用の在り方ですとか実務の蓄積に励んでまいらねばいけないのだと感じております。   今回の改正について私からは、今後更に検討を続けていかなければいけないという点について、大きく四つのトピック、一つは法制の面、二つは金融の面、三つは運用の面、四つは周知広報の面ということについて、少し細かいところにもなりますけれども、この部会は通過点だと思っておりますので、to Doリスト的なことを申し上げておきたいと思います。   まず、一つ目の法制の面です。今回の民法の改正で、民法自身が内在する悩みを幾つか抱えることになったと思っております。その一つは、既に部会の審議の中でも佐久間委員や加毛幹事などから繰り返し御指摘を頂いている、同意能力の有無によって取消権のみを付与するという規定を設けないこととしたこととの関係で、部会の中でもたくさん悩みがあったところかとは思いますが、この点をどのように民法の理論上の中で整理をしていくのかということは、これは検討しなければいけないことなのだろうと思います。   もう一つは、特定補助に関連した問題です。今まで青木委員始めそれぞれの先生方からも御指摘があったところではありますが、特定補助の検討へ向けた論点としては、私としては五点あるのではないかと思っています。一点は、跳ねると言われるような条項、特に民法内での諸規定をどのように考えていくのかということです。二点は、山下幹事などからも御指摘がありましたけれども、実績をまずはきちんと調査をしていくということ、三点は、この後詳しく申し上げますが、民法以外での保護法理、つまり消費者保護法制などを中心とした枠組みの整備が必要となることです。それから四点として、必要性についての考え方、これが有無であるのか程度があるのか、若しくは特に必要というのは何であるのかということについては、まだ部会では審議が道半ばということかと思っています。それから、五点として、実務上、特に裁判所や我々実務家がということになりますが、個別付与をしていくということについてのスキルを向上させていく必要があるということではないかと思います。   特に民法的な視点で申し上げれば、跳ねるの解消の本質というのは、取引の相手方の予測可能性の担保をどのように確保していくのか、その認定をどうするのか、さらには特定補助において事理弁識能力を欠く常況だけではなくて特定補助の必要性も開始要件ということになっていますので、いわゆる諸規定における類推適用を含めた適用の契機となる条文を削除する許容性というのはどこに出てくるのか引き続き検討していく必要があるのだろうと思います。   少し細かいところになりますが、部会として見守らなければいけない点も念のため申し上げておきますと、経過規定のこと、それから公正証書による申立権者の指定の実際の運用、撤回の方法なども含めた点、それから登記の点については引き続き、部会は本日で終了ということかもしれませんけれども、部会メンバー全員がこの3点については引き続き関心を持っているところではなかろうかと思います。   次に、法制の面で重要な点として、先ほど申し上げました消費者保護法制の問題について少し申し上げておきたいと思います。今回の成年後見制度の改正で、本人の意思決定支援を重視し、行為能力制限を縮減させるという大きな方向性は示されたと思いますが、そのことは、本人の意思とは何であるのかということを各法制において改めて問い直すということでもあり、本人意思を尊重するということは、同時にそれを脅かす存在となる脆弱性ゆえの不当な介入への歯止めを掛けていく、つまり、つけ込み型勧誘の規制強化を図っていくということを志向することでもあるのだと思っています。   一部には、今回の民法改正でつけ込み型勧誘規制を後退させる方向性が示されたのではないかという指摘を耳にすることがありますが、そのようなことを部会として志向したとは少なくとも私は認識しておらず、能力だけによる行為制限を縮減させるのであって、取引の場面で本人の意思決定をゆがめるような、若しくは不当に影響を及ぼすような事業者に対しては、本人意思の尊重を阻害する要因であるとして保護を図る必要があるという消費者保護法制による救済はむしろ強化されるべきであると認識をしております。そのため、本人が不当な被害を受けることがないように消費者保護法制の整備が重要であり、かつ急務であることは強調しても強調しすぎることにはなりません。今後、更に民法において意思尊重の方向性が進むということになれば、消費者保護法制の重要性はますます高まります。不十分なまま消費者保護法制が放置されることのないように強く申し上げておきたいと思います。   それから、法制の関係では、先ほど久保野委員や常岡委員などからも御指摘がありましたが、ユーストランディションの考え方、若しくは会社法、人事訴訟法など、それぞれの専門領域の先生方と後見法が引き続き対話をしていかなければいけない問題というのが残されています。これらに加えて、今回終わることができるようになったことで制度間相互の関係性も問題となってきます。このことで一番大きな影響を受けるのは地域福祉や社会福祉法制ということになると思います。全てを申し上げるとかなりの時間を頂戴してしまうことになりますが、項目だけでも、関係しそうな地域福祉への影響というのを少し書き出してみましたが、それだけでもA4で3枚分ぐらいになってしまいますので、特に自治体の皆さんから不安の声が既に上がっている点について幾つか項目を挙げてみたいと思います。   後見の制度との関係で、まずは申立て前、若しくは開始前のフェーズということになります。相談支援機関は、後見制度が途中で終われるようになるということを念頭にしますと、様々なバリエーションに対応するスキルを向上させる必要があるということになります。具体的には、福祉サービスや生活関係調整を中心としたアセスメントから、財産管理についてもチーム支援を行っていく拡大されたアセスメントが必要になるということだと思います。これについては、我々士業も含めた金融の様々な仕組みの選択肢へのスキルアップというのも必要になるのだと思います。あわせて、受任者調整会議の拡充や申立て支援の拡充というのは引き続き求められるということになりますし、代理権付与が個別化されるということになりますから、首長申立ての実務的な対応力の向上というのも必要となります。また、本人情報シートの内容も含めた検討というのが進められる中での、実際にそれを記入される福祉の現場の方々のスキルの向上というのも必要になりますし、担い手の支援という意味では、引き続き市民後見人養成や法人後見の育成、また、親族後見人候補者の支援というのも引き続き必要になるということかと思います。   次に、制度利用中のフェーズとしては、特に首長申立て事案を中心に、途中で終わる、若しくは交代などが必要になるという観点から、首長申立て事案の追跡フォローということについても課題となってくると思います。特に情報管理の点や、市区町村長の管轄をまたぐような事案、若しくは同じ市区町村内においても担当者が交代していくという引継ぎ、若しくは他の市区町村への情報提供の問題なども顕在化してくると思っています。また、交代や更新の場面を含めて、支援者の立場で意見を求められる場面への対応ということも必要になりますし、苦情対応や円滑な連携強化というのも当然必要になります。交代時に受任者調整会議が利用されていくという場面もあると思いますし、交代の人員としての市民後見人や法人後見の存在ということもあるのだと思います。また、併せて死後事務や高齢者等終身サポート事業との関係性の整理というのも必要になるかと思います。   制度終了時のフェーズとしましては、終了させるか否かについて、本人情報シートの内容を基礎にした活用を終了の場面でも検討し、若しくは首長申立て事案であれば、終了するということでよいのか、代理権等の追加付与の必要はないのかというようなカンファレンスをしていくことについてのサポート、若しくは再度の首長申立てをする事案への対応ということも必要になると思いますし、虐待事案においては虐待対応としての再統合等の事情がどのように判断できているのかということと、終わるということについて家庭裁判所から仮に意見を求められた場合にはどのような対応をしていくのかということを検討し、指針の作成も必要になるのだろうと思います。取消しや終了を念頭に置いた本人、専門職、親族などからの相談対応も必要になってくるのだろうと思います。これらの終わることができるようになるということとの関係では、先ほど複数の先生方からも御指摘があるトリガーとなる後続の手段への接続というのも制度間での調整を要することになります。何より、新たな第2種社会福祉事業の整備とともに、その接続に関する検討も加速させなければなりません。   大きなトピックとしての二つ目、金融の面です。先ほど佐野委員からも御指摘がありましたけれども、接続との観点で金融、特に日常金銭管理に関する預貯金口座の在り方は、利用者にとっても金融機関にとっても対応できる方法でなければなりません。佐野委員提出資料の特定預金商品の検討を進めることは喫緊の課題だと思っておりますし、あわせて届出の問題との関係では、関係書式を金融機関、ユーザー双方から整備をしていくという検討を進めることも必要だと思います。   大きなトピックの三つ目として、運用の点です。任意後見と法定補助について分けて、少し申し上げたいと思いますけれども、法定補助は、先ほどから馬渡委員や遠藤幹事などからも御指摘がありますが、最高裁家庭局を中心に今後検討されることになると思いますけれども、現時点で検討が必要であると思われる項目について申し上げます。一つは、先ほどから複数の先生方からもありますが、必要性の認定方法、それから同意の有無の認定方法、あわせて13条の具体化を含めた代理権目録、同意権目録の内容の見直し、特に財産調査に関する金融機関との擦り合わせを含むというところも重要かと思います。あわせて事理弁識能力を欠く常況の認定方法や、それに伴う鑑定の手引の見直し、運用上の鑑定対象事案の見直し、医師2名の在り方、診断書や本人情報シートの内容、若しくは本人情報シートについては開始時以外の交代や終了の場面での活用方法、それから、家事事件手続法119条の改正に伴う市区町村長に対する意見照会の在り方やその活用方法、また、調査官調査を含めた事実調査の在り方、定期審査の在り方、経過措置への対応、再度の申立ての事案においての迅速な対応のための添付書類の見直しなどが挙げられるのだと思います。任意後見については、日本公証人連合会の先生方と共にということだと思っていますけれども、モデル条項なりモデル文例の見直しという作業も必要になってくるのだろうと思います。   最後に、周知広報の点です。先ほど久保委員からもありましたけれども、関係省庁とこの部会のメンバーが一丸となって、適切にこの改正法の内容や趣旨について広く国民の皆様に御理解を頂く取組というのを進めていかなければいけないと考えております。 ○山野目部会長 青木委員、竹内委員、根本幹事からお話を頂きましたところで、私から弁護士会の先生方にお話を大きく分けて二つ差し上げます。   一つは、今般改革の今後の道筋ということについてであります。現在構想されている方向で進むということになりますと、今般の成年後見制度改革は一つの大きな社会改革という様相を呈してまいります。しばしば大きな社会改革は社会のいろいろなところに波紋を惹き起こし、人々に精神的な負荷を課する部分も大きくございます。革命や戦争に際して大きな社会変動がありますと、それは少なからぬ人々にとって耐え難い負荷になります。今般のような大きな改革になりますと、内容、理念が正しいとしても、それが社会の隅々において受け容れられていくために相当の精力を要することになります。私たちは今、幸いにして革命や戦争の時代を生きているのではなく、民主主義が働いている状況の中でこのような重要な改革を進めていくことになります。福祉の現場で一人一人の本人に向き合う方々お一人お一人に新しい制度を理解してもらわなければなりません。運用に取り組んでいく政府の各方面においても、つかさつかさにおいて法制面の検討も含めて新しい制度の趣旨を理解してもらわなければなりません。青木委員が再々御心配になったような成年後見制度の悪しき転用についても、これから重要な課題として取り組んでいかなければなりません。余り性急にそれを求めるということになりますと、法制の過誤が生ずるということもありえます。所掌する各部門が理解し受け止めた上で、好ましくない転用例がこれからなくなっていくように、我々として関心を辛抱強く払っていかなければならないと考えます。そのような営みの先に、青木委員が強調なさった未来を切り開くという展望が得られてまいりましょうし、竹内委員が心掛けなければいけないと強調していただいた今後の制度運用ということも適切を得ることができると思われます。弁護士会の先生方には今後とも助力をお願いしなければならない側面が大きくございます。   もう1点申し上げます。取り分け任意後見制度につきましては、改正される民法や家事事件手続法の法律の規定や、更にそれを補完する法務省令、家事事件手続規則などの法制上の整備ということも重要でありますけれども、その制度の特質上、言わばソフト・ロー(soft law)とでも申しましょうか、当事者が契約にどのような内容を盛り込むのかということについて優良な契約条項の例が人々に広く知られるようになるということが重要であります。言わば良いソフト・ローが形成されるということについて、在野の法曹の中核をなしておられる、これからもお願いしていかなければならない弁護士会におかれまして御尽力を頂きたいと望みます。この観点は、既に根本幹事において御関心を払っていただき、今もお述べいただいたところでございます。いろいろな論点がございますけれども、すぐ思い浮かばされるものとしては、任意後見受任者の申立義務のようなものは法制上、幾つかの限界、難点がありますから、法律など法令に盛り込むということを見送らなければなりませんでしたけれども、このような題材こそ、お話ししているよいソフト・ローの中で何らかの仕方で工夫をして受け止めてもらうことがあればすばらしいと感じます。この方面につきましても弁護士会の先生方の御尽力、大きな御貢献をお願いしてまいらなければなりません。   引き続き指名を差し上げます。野村幹事、お願いします。 ○野村(真)幹事 ありがとうございます。成年後見制度の担い手の立場から、成年後見制度の今後の課題について述べさせていただきます。今回の改正は、本人の意思の尊重、意思決定支援、チーム支援の考え方に基づくものであると思います。今後の課題としましては、成年後見制度の担い手として改正の趣旨をしっかりと理解し、本人が亡くなるまで続く包括的代理権を前提とした執務の在り方やマインドを変えていく必要があると感じております。改正後は、本人に必要があるときに必要な権限についてのみ補助人に与え、必要がなくなったら制度の利用を終了させることが可能となる制度になります。現行の制度においても私たちは意思決定支援やチーム支援を大切にして執務を行っているところですが、より一層本人の意向を把握し、地域で本人を支援するチームの一員として、他のチームの方々と連携して本人の権利擁護に努めることが求められることになります。権利擁護が必要な方を後見人だけではなく地域で支えていくためには、支援の連続性という観点から、地域において本人を支えられる制度、社会資源の充実が求められますし、どの地域に住んでいても等しく権利擁護支援が受けられるような社会にしていく必要があると思います。成年後見制度が大きく変わりますので、改正の趣旨である本人の意思尊重、意思決定支援、チーム支援の重要性が利用者や支援者に伝わるように、実務現場で努めたいと思います。   私が所属するリーガルサポートは、約8,900人の会員が約6万件の事件を受任しており、現在の制度利用者のおよそ4分の1の方がリーガルサポートの会員が後見人等に就任していることや、その制度利用者や地域の支援者との関わりまで含めますと、私たちの役割は非常に重要であると認識しておりますので、会員一丸となって尽力してまいります。今回このような貴重な議論の場にお呼びいただき、共に参加させていただきましたことに感謝申し上げます。ありがとうございました。 ○山野目部会長 小澤委員に加えて、ただいま野村幹事から御所感を頂きました。司法書士のお二人の先生にお話を差し上げます。司法書士会におかれましては、平成11年の民法改正を契機として、司法書士会との密接な連携の下に成年後見リーガルサポートを設立なさり、これまで精力的な活動を重ねてこられました。今般の改革は、先生方のそのようなお取組が一つの成果の節目を迎えたという側面があると感じます。その上で申し上げれば、これまでの成年後見リーガルサポートの活動は、申すまでもなく同職者による相互検証、ピア・アセスメント(peer assessment)としての側面が強うございました。これからもそのよう営みを着実に積み上げていっていただきたいと望みますとともに、これからは今までにも増し様々な社会の多様な人たちが成年後見制度に関わってくることになります。任意後見の制度につきましては、任意後見監督人を設けない任意後見の事案というようなものも想定する要綱案が取りまとめられようとしております。任意後見人への監督や支援といったようなことについて、これまで積み重ねてこられたスキルを更にいかす仕方で、従来のピア・アセスメントに更に加えて、活動の翼を広げて成年後見制度の幅広い充実した運用のために司法書士会が更なる大きな力を発揮してくださることを望みます。   続きまして指名を致します。米田幹事、お願いします。 ○米田幹事 私は障害者の福祉などを担当しておりますが、その立場から、要綱案の取りまとめに当たって発言をいたします。   今回の成年後見制度の見直しにつきましては、これまで厚生労働省の社会保障審議会障害者部会というところでも節目、節目で報告をしてまいりましたが、関係団体の関心は非常に高く、制度改正への期待と不安、双方があるものと受け止めております。このため、今後、見直し内容を障害当事者やその御家族、支援者などに分かりやすく伝えていくということが重要であると考えております。既にほかの委員、幹事の皆様からも御発言があったように、法務省、事務局におかれましては、適切な時期に、なるべく平易な広報、説明資料の作成をお願いできればと存じます。厚生労働省としましても、引き続き関係者に丁寧に説明してまいりたいと考えております。   また、今後は、具体的な運用や支援場面を想定しつつ、権利擁護支援の地域連携ネットワークの在り方について関係機関や省内の関係部局と連携して検討を深めていきたいと考えています。特に、市町村長申立ての運用や担い手の確保、成年後見制度の利用支援などにおいて、支援現場で目詰まりが生じないよう、必要な運用面の対応を検討してまいります。こうしたことを通じて、引き続き障害当事者の権利を守っていくことができるよう取り組んでまいります。どうもありがとうございました。 ○山野目部会長 あらかじめ申出を頂いていた委員、幹事から一言ずつ御所感を頂きました。ほかに御発言を望む委員、幹事がおられるでしょうか。あるいは、既に一度御発言になったけれども言い漏らした内容があるという委員、幹事はおられるでしょうか。いずれもお手を挙げて、おられる場合には発言を求めてくださるようにお願いいたします。   よろしいでしょうか。   これから要綱案についてお諮りをする手続に進みます。遠隔で参加していらっしゃる委員があり、情報通信機器を用いて議事進行をしておりますから、念のため、情報通信機器を用いて出席なさっておられる委員の皆様と適時に意思表明が相互に可能な状態にあることを確認いたしたく考えます。私の声が聴こえていらっしゃる委員は挙手ボタン、画面上にある手の形をしたボタンや、あるいはジェスチャーなどによって、その旨をお知らせくださるようにお願いいたします。マイク・ボタンを通じて直接にお声掛けを頂く仕方でお知らせいただくことも妨げません。事務当局においては、遠隔で出席している委員の全員と随時に意見表明が相互に可能な状態にあることについての確認をお願いいたします。   出席なさっておられる委員の全員と適時に意見表明が相互に可能な状態にあることを確かめました。挙手のボタンを操作されたままの委員は、手を下ろす操作をなさってくださいますようにお願いいたします。   民法等(成年後見等関係)の改正に関する要綱案についてお諮りを致します。この部会における調査審議の結論といたしまして、部会資料34のうち第1の(前注)にある「第859条」を「第859条第1項」と改めた上で、部会資料34-1のとおりとし、これをもって民法等(成年後見等関係)の改正に関する要綱案とすることをお諮りします。よろしいでしょうか。   異論がなくていらっしゃるものとお見受けします。この経過を踏まえまして申し上げます。民法等(成年後見等関係)の改正に関する要綱案を、ただいま申し上げた訂正を1か所添えた上で、部会資料34-1のとおり決定します。   引き続き、事務上の段取りをお諮りいたします。ただいま決定を頂きました要綱案につきまして今後、2月に予定されております法制審議会の総会において答申をするに至るまで推敲を重ねますとともに、その間にも法制的な観点から形式的な表現などの修正があり得るものと存じます。それらの形式的な修正につきましては、事務当局の補佐を受けてこれを進め、文書として調えることを部会長である私に御一任いただきたいと望みます。この点はよろしいでしょうか。   御異論がないものとお見受けしますから、そのように決定いたします。   決定を頂きました要綱案の今後の取扱いにつきまして、事務当局から案内があります。 ○波多野幹事 要綱案をお取りまとめいただきまして、どうもありがとうございます。   今後についてですが、来月に開催される法制審議会の総会におきまして、本日お取りまとめいただきました要綱案を御審議いただく予定でございます。総会におきまして要綱として取りまとめがされますと、その後、法務大臣に答申がされるという流れでございます。答申がされた場合には、その答申に基づき法律案の策定作業を行い、速やかに法案を提出させていただくべく準備をしたいと考えております。 ○山野目部会長 御案内を差し上げました。   この部会の議事を了するに当たり、民事局長でいらっしゃる松井委員から御挨拶があります。 ○松井委員 部会の審議の終了に当たりまして、私から一言お礼の御挨拶を申し上げます。   本日、この部会として要綱案の取りまとめをしていただきました。担当部局の代表者として、委員、幹事の皆様のこれまでの御尽力、御協力に心から感謝を申し上げます。   この部会における審議は、令和6年4月の第1回会議から本日まで計33回に及びました。この間、委員、幹事の皆様におかれましては、成年後見制度の見直しに関する多岐にわたる論点について大変密度の濃い御審議をしていただき、よりよい制度の実現に向けた積極的な問題提起や御提案を頂きました。その結果が、後見及び保佐の制度を廃止し、補助の制度の適用範囲を拡大することによって、利用者が必要とする範囲で制度を利用し、必要がなくなれば制度利用の終了を可能とすること、任意後見制度と補助の制度との関係の見直しによって任意後見制度の活用の範囲を広げることなど、本日お取りまとめいただいた要綱案に結実したものと考えております。   また、この部会の取りまとめ役を担っていただきました山野目章夫部会長におかれましては、豊富な御経験に基づく卓越した御見識と周到なお心配りにより、適切かつ迅速な議事の運営に当たっていただきました。厚く御礼を申し上げます。   成年後見制度については様々な課題の御指摘があり、本日も今後の課題についての御発言がございました。本日お取りまとめいただいた要綱案は、制度上の課題に対して解決を目指すもので、その意義は非常に大きいものと考えております。来月に開催されます法制審議会の総会で要綱が採択され、答申がされましたら、私どもといたしましては法案を速やかに国会に提出するとともに、早期に法律として成立するように全力で尽くしてまいります。委員、幹事の皆様には、今後とも様々な形での御支援、御協力を賜りますよう引き続きよろしくお願い申し上げます。   これまでの皆様の熱心な御審議に重ねて御礼を申し上げまして、私の御挨拶といたします。本当にありがとうございました。 ○山野目部会長 松井委員からお言葉を頂きました。   議事次第にはこの後、部会長挨拶というものがありますけれども、部会長挨拶というものはありません。理由を二つ申し上げます。一つは、内容の面では委員、幹事にお一言ずつおっしゃっていただいたことで、もうこれで、それを超えるものはないという締めくくりのお話が尽きています。私の方から何か挨拶を差し上げようとしても、それはおっしゃったことを何かなぞるにとどまる話にしかなりませんから、そのようなものは要りません。それからもう一つは、政府としての今後の取組も含め、御採択を頂きました要綱案の今後の公式のオフィシャルな側面での位置付けにつきましては、ただいま頂いた民事局長のお話で、これも尽きております。そういうことでありますから、部会長挨拶というものはありません。   この後、閉会の方に向かっていくことになりますけれども、何か委員、幹事の皆様方から特に御発言いただいておくことがありますか、簡単なことのお尋ね等でも結構ですけれども、いかがですか。   よろしゅうございますか。   改めて、皆様に申し上げます。委員、幹事、関係官の皆様、関係する団体のバックアップチームの皆様など、多くの方々の一方ならぬ御尽力をもちまして、ここに至りました。この部会の活動の全てが終わります。   これをもちまして法制審議会民法(成年後見等関係)部会の第33回会議を散会といたします。どうもありがとうございました。 -了-