売買春に係る規制の在り方検討会 (第1回) 第1 日 時  令和8年3月24日(火)   自 午後2時02分                        至 午後2時55分 第2 場 所  中央合同庁舎第6号館A棟1階会議室 第3 議 題  1 座長及び委員の自己紹介         2 議事の公開等について         3 検討の進め方等について         4 その他 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○栗原参事官 ただ今から、売買春に係る規制の在り方検討会の第1回会議を開催いたします。 ○北川座長 本日は、皆様、御多用中のところ、御出席くださり、誠にありがとうございます。   本検討会の座長を務めさせていただきます、早稲田大学の北川と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。   まず、本検討会の開催に当たりまして、事務当局から御挨拶があります。 ○栗木課長 法務省刑事局公安課長の栗木でございます。本日、刑事局長が出席予定でしたが、公務のため出席がかなわなかったことから、局長に代わりまして、売買春に係る規制の在り方検討会の開催に当たりまして、一言御挨拶申し上げます。   委員の皆様方におかれましては、御多用中のところ、本検討会に御参加いただき、誠にありがとうございます。   我が国においては、かねて、関係府省庁間で連携しながら、売買春への対策を推進してきましたが、近時、路上等における売買春の勧誘行為等が社会的な問題として指摘され、そうした状況への適切な対処を求める声が上がっているところです。今般、こうした状況を含め、近時の社会情勢等を踏まえた売買春に係る規制の在り方について、幅広い知見等に基づいて御議論いただくため、本検討会を開催することといたしました。   法務省としましては、本検討会が充実したものとなるよう努めてまいりますので、委員の皆様方には、それぞれの御知見をいかし、幅広い観点から、忌憚のない御意見を頂戴できればと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。 ○北川座長 本日は、検討会の第1回目でございますので、委員の皆様方に簡単に自己紹介をお願いしたいと思います。お名前と御所属、御専門などの自己紹介を簡潔にお願いしたいと存じます。   まず、法務省会場に御参集の委員の方々に、委員名簿の順に自己紹介をお願いいたします。 ○入江委員 東京地方検察庁刑事部副部長の入江淳子と申します。現在、刑事部で風紀を担当しております。皆様の御意見を聞かせていただくのを大変楽しみにしております。よろしくお願いいたします。 ○大沢委員 宮城テレビ放送の大沢と申します。私は、宮城テレビ放送に行く前にはずっと読売新聞で記者をやっておりまして、司法や教育の担当をさせていただいたものですから、皆さんとしっかり御議論させていただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○大橋委員 弁護士の大橋でございます。東京弁護士会に所属しております。弁護士業務として刑事弁護事件を取り扱っているほか、日弁連で刑事司法制度の運用等について研究などをしております。よろしくお願いいたします。 ○川崎委員 同志社大学法学部教授の川崎と申します。専攻は、刑法及び刑事政策です。今回御一緒させていただくことになりましたので、しっかり勉強して、お役に立てればと思っております。よろしくお願いいたします。 ○櫻井委員 追手門学院大学心理学部の櫻井鼓と申します。私の専攻は、犯罪心理学で、トラウマが専門になります。よろしくお願いします。 ○佐藤委員 成蹊大学法学部で刑法を教えております、佐藤陽子と申します。専門のテーマとしましては、被害者の承諾や性犯罪などを中心に扱っております。どうぞよろしくお願いいたします。 ○保坂委員 警察庁生活安全局保安課長の保坂啓介と申します。警察庁において、売春関係事犯の取締りに関する業務を担当しております。本日はよろしくお願いいたします。 ○星委員 東京都立大学法学部の星と申します。私も、専攻は刑事法でございます。今回、このような機会を頂きまして、私なりに勉強させていただいて、少しでも貢献させていただければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。 ○北川座長 ありがとうございました。   次に、オンラインで御参加の薄井委員、古川委員、自己紹介をお願いいたします。 ○薄井委員 静岡地裁沼津支部の裁判官の薄井と申します。刑事裁判を担当しております。どうぞよろしくお願いいたします。 ○古川委員 名古屋大学大学院法学研究科の古川と申します。刑法学を専門としております。どうぞよろしくお願いします。 ○北川座長 ありがとうございました。   続きまして、事務当局の出席者にも自己紹介をお願いしたいと存じます。 ○栗木課長 改めまして、法務省刑事局公安課長の栗木でございます。事務当局としてしっかり努めてまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 ○栗原参事官 法務省刑事局公安課参事官の栗原でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○北川座長 ありがとうございました。   なお、本日、吉田審議官は、公務のため御欠席と伺っております。   また、本検討会には、オブザーバーとして、内閣府男女共同参画局男女間暴力対策課及び厚生労働省社会・援護局地域福祉課の方々にも御出席いただいております。   次に、議事録の取扱いを含めまして、議事の公開の方針についてお諮りいたします。   本検討会については、会議自体は公開しませんが、発言者を明らかにした逐語の議事録を作成し、その議事録を法務省のホームページにおいて公表するとともに、本会議で用いた資料も法務省のホームページにおいて公表することを原則としたいと思います。その上で、プライバシーに関わる内容のものなど公表することが適切でない議事内容や資料がございましたら、その都度、皆様にお諮りさせていただいた上で、例外的に非公表の扱いとしたいと思います。   このような方針でよろしいでしょうか。              (一同了承) ○北川座長 ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。   続きまして、本検討会の趣旨について、事務当局から説明をお願いいたします。 ○栗原参事官 本検討会の趣旨について御説明いたします。   先ほど事務当局からの御挨拶でも申し上げたとおり、近時、路上等における売買春の勧誘行為等が社会的な問題として指摘され、そうした状況への適切な対処を求める声が上がっております。こうした御指摘のうち、国会において言及されたものとして、例えば、売春防止法は昭和31年の制定以来、実質的な見直しがされておらず、現下の社会情勢を踏まえた抜本的な見直しを行うべきではないかといったものや、買春そのものや買春目的での勧誘などに係る罰則を新設すべきではないかといったものがございます。   法務省としては、これらの点も踏まえ、売買春に係る規制の在り方について、委員の皆様から幅広く忌憚のない御意見を賜りたいと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。 ○北川座長 次に、配布資料について、事務当局から御説明をお願いいたします。 ○栗原参事官 配布資料について御説明いたします。   配布資料1は、「参照条文」であり、売春防止法の規定を記載したものです。   配布資料2は、「売春防止法違反事件の受理・処理状況等」であり、令和4年から令和6年までの売春防止法違反事件の検察庁における受理・処理の人員と内訳を、適用法条ごとに計上したものです。   配布資料3は、「諸外国における売買春に係る規制の概要」であり、令和8年3月時点の米国、カナダ、英国、ドイツ、フランス、オランダ、ベルギー、スウェーデン及び韓国の関連規定に基づき、各国において処罰の対象とされている行為や法定刑についてまとめた資料です。   配布資料4は、「売春防止法の制定・主要な改正の経緯等」であり、昭和31年に売春防止法が成立するまでの経緯やその後の売春防止法の改正の概要についてまとめたものです。 ○北川座長 ただ今、事務当局から、本検討会の趣旨や配布資料について御説明がありましたが、御質問はございますでしょうか。   よろしいでしょうか。それでは、意見交換に進みたいと思います。   本日は、第1回目の会議ですので、皆様から、今後の検討に向けた総論的な御意見を頂戴したいと思います。具体的には、検討の進め方や検討すべき論点などについて御発言いただければと思います。   御意見のある方は、挙手の上、御発言をお願いいたします。 ○佐藤委員 とりわけ検討すべき論点等の話ではなくて、抽象的な話になるのですが、議論すべきこととの関係では、検討すべき条文の保護法益や処罰根拠について十分留意して検討を進めていく必要があるのではないかと思っているところです。   現行の売春防止法第1条は、「売春が人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良の風俗をみだすものであることに鑑み、売春を助長する行為等を処罰することによって、売買春の防止を図ることを目的とする。」と規定していますが、売春者の尊厳を保護することと社会の風俗を保護することというのは、必ずしも常に方向性として一致していないように思われます。もちろん、ここでいう売春者の尊厳というのは、現在売春行為をしている、まさにその売春者の尊厳ではなく、抽象的、一般的な、もっと言うと、将来的な売春者も含むと考えれば、売買春を認めるような風潮を禁止することが、将来的な売春者の尊厳の保護につながりますので、限りなく売春者の尊厳保護が社会風俗の保護と重なるものになると思います。しかし、そもそもこのような理解でよいのか、あるいは、同法の処罰規定における法益や処罰根拠というのはただ一つのものでなければならないのかについて、改めて考えてみる必要があるのではないかと思っております。そうすることで、真に処罰すべき行為は何か、その法定刑がどうあるべきかについて、より適切に考えられるようになるのではないかと思います。   また、法益や処罰根拠について考える際には、1点、注意すべきことがあるように思います。すなわち、現在の社会状況に見合った売春防止法の在り方を考えることが今回の検討会のテーマだと思うのですが、そうだとすると、議論の際には、売春行為を行う多くが女性であるという実質面を踏まえて、ジェンダー的な視点も意識されるべきだと思われます。その上で、ジェンダー的な視点でも、大きく分けて二つの異なる主張があるということにも注意しなければいけないと思っております。   その二つの視点というのは、第1に、売春する者は圧倒的に社会的な弱者である女性であり、また、性の売買は専ら男性の性的欲望を満たすもので、女性は性を男性に搾取されているのだ、よって、それにふさわしい売春防止法にしなければならないという視点があります。他方で、「女性は常に性に対して受動的で、不特定多数との行為など到底望んでおらず、よって売春をするような女性には何らかの問題があるので国家が保護しなければいけない」という理解こそがジェンダーバイアスに基づくものであって、現行の売春防止法は、当然あるべき女性の性欲を否定し、貞淑な女性像を前提にして、国家による女性の性の管理を認めるものであるという視点がございます。   これは、恐らくどちらか一方が正しいというものではなく、どちらも売買春のある側面を適切に捉えたものであり、いずれも傾聴の価値があり、本検討会においては、いずれの視点も踏まえて検討する必要があるのではないかと考えているところです。 ○櫻井委員 このような貴重な機会に参加させていただき、ありがとうございます。私は、心理士としての立場から、検討すべき論点について申し上げたいと思います。   一つ目が、売買春当事者の実態とケアの必要性についてです。私は、これまで、捜査機関の心理職として、性売買に携わる子供たちの支援を行ってきました。児童期における性売買と成人の売春というのは、法的な枠組みは異なりますが、その背景にある実態は地続きであると痛感しております。彼女らの背景には、家庭内虐待、過去の性暴力被害、あるいは身近なアイドルにつぎ込むなどの居場所を求めた結果としての金銭消費などがあります。共通しておりますのは、大切にされるとは何か、何が暴力なのかという境界線が、苛酷な経験によって曖昧になっているという点です。   実は、この検討会に参加するに当たり、先日、歌舞伎町周辺での民間団体のアウトリーチ活動に参加し、立ちんぼをしている現場の女性たちの声を聞いてまいりました。併せて、女性自立支援施設への訪問も行い、売春の現状について話を伺ってまいりました。   そこで改めて確認したのは、当事者の多くが、知的な障害、発達障害、精神疾患などの特性や困難を抱えているという事実、そして、育ちの中での深刻なトラウマを抱えていて家に居場所がないという実態です。こうした背景を踏まえれば、売春を行う人は、個人的には、処罰される対象ではなくて、本質的にケアと支援の対象であると考えています。買う側が存在することで成立する構造があるのは明らかですから、売る側のみを犯罪者とする現行法の枠組みは、人権擁護の観点から改正されるべきだと考えております。   それから、この背景に関連して、2点目として、実態調査の必要性も挙げたいと思います。先ほどお話をした売春当事者の背景、もちろん、全員が全員だと言うつもりはないのですが、例えば、障害の有無や性暴力の被害歴といったことがある可能性があるということについて、現在、国レベルでの網羅的な統計は不足していると感じています。性の問題は秘匿性が高く、調査の難しさはありますが、適切な配慮に基づいた詳細な実態調査は不可欠だと思います。エビデンスに基づいて当事者が抱える困難を可視化した上で、検討の方向性を定めた方がよいのではないかと感じています。   それから、少し具体的なところに入りますが、売春防止法の「性交」の定義の範囲についても再考が必要と考えています。法律は専門外ですけれども、心理的支援の現場では、性交類似行為であっても性交と同じく深刻なトラウマを負うケースを数多く見てきました。現在の刑法の「性交等」の定義においても、行為の態様による区別は解消されています。性交も性交類似行為も、当事者が受ける身体的・心理的侵襲性は変わりませんので、売買春に係る規制の在り方について検討するに当たっては、少なくとも性交類似行為を含めた検討が必要ではないかと感じています。   最後に補足ですが、「春」という表現についてです。言葉の問題ですが、「売春」という表現が、その背後にある苛酷な実態を覆い隠してしまっているように感じています。密室で行われる性売買は、時に命の危険と隣り合わせです。私の支援経験の中でも、売春の行為中の暴力で命を落としたという方がおられました。裸になって危険と隣り合わせで行われる行為を「春」と表現し続けてよいのか、実態に即した、より人間の尊厳を重視した言葉選びが必要ではないかと考えております。 ○星委員 先ほど事務当局からの御説明にもありましたように、昭和31年に売春防止法が制定されてから実質的な見直しがされていないというのは周知のとおりなのですが、少なくとも、文献から分かる範囲では、制定当時には、人身売買があり、その延長として売春防止法が制定されたという観点が強かったのかなと思います。現在でも、先日報道されたタイ人少女の事案のように、人身売買自体が全くなくなっているわけではないと思うのですが、社会状況が変化した中で、果たして人身売買のような問題だけの状況になっているのだろうかということは考えていかなければいけないと思います。その一つの表れが路上での客待ちなどの話であったり、あるいは、ジェンダーの観点からはどう考えていくべきなのか、すなわち、処罰の対象と考えるのか、保護の対象と考えるのかのウエートが違ってきているという面もあるのかなと思っております。そうしたことが、現在、国会でも指摘されるような状況になったのかなと思います。   先ほど、実態調査が不足していて、国レベルでの調査もできていないのではないかという御指摘があり、確かに私もそういった調査を拝見したことはありません。ただ、本検討会において、限られた時間で今からそういった調査を実施するのは到底難しい話です。ただ、限られた範囲ではあるかもしれませんが、関係団体等、様々なお立場から関与されている方々がいらっしゃるわけですので、そういった方々から、現在の売買春をめぐる実情を的確に把握できるような形でヒアリングをさせていただいて、何が問題になっているのかを、より実践面でといいますか実質面で把握した上で議論していかないと、社会で今求められていることと本検討会の議論の方向性を擦り合わせることが難しくなってしまうのではないかと感じております。 ○入江委員 私からは、実務家からの意見という形で申し上げます。検察官としては、いわゆる売買春に関する事案においても、個別の事案ごとに、十分に捜査を尽くして必要な証拠を収集した上で、起訴か不起訴かの判断を行っており、また、公判でも十分な立証が尽くされるように日々努めているところです。もっとも、具体的な事案の捜査や公判活動に当たっては、誰のどのような行為を対象としてどのように規制するかという規制の在り方や、捜査方法を含めた様々な事情から、適切かつ十分な立証活動が難しい場合もあるのが現実です。   例えば、昨年、売春目的での勧誘等、すなわち、売春防止法第5条の罪、具体的には客待ちの事実によって起訴された者について、被告人も弁護人も客待ちをしていたこと自体は認めていたものの、外形上、売春目的があることが不特定の一般人に明らかになるような挙動が伴われておらず、公衆の目に触れるような方法で客待ちをしたと認めることはできないと判示されて、無罪が言い渡された事案がございました。この事案においては、被告人が逮捕される前に、いわゆる買春客であると思われる男性が、客待ちをしていた被告人に声をかけていたので、売春目的があることが不特定の一般人に明らかになるような被告人の挙動が何らかあったとも思われるところでしたが、こうした事案においてそのような挙動を立証することの難しさの一つとして、現状、買春しようとする側の挙動や事情に関する証拠収集を十分に行うことが難しいということも関係しているかと思っております。   現場での法律等の運用を担う検察官としては、本検討会において、売買春をめぐる実態を把握し、その実情により即した処分が可能となるような規制の在り方について議論がなされることを期待しております。そして、今後の議論に当たっては、必要に応じて、検察官の立場から、捜査・公判の経験を踏まえて意見を述べさせていただくことで、充実した議論に貢献できたら幸いに存じます。 ○大橋委員 私からは、配布資料3でお示しいただいた諸外国の制度比較の関係で、調べたところに基づいて意見を申し上げたいと思います。   この資料を拝見するだけでも、売買春の規制の在り方はかなり各国によって違いがあるということがいえると思います。1枚目の「○」、「×」の表を見ると、買春側と売春側のいずれも犯罪化されている国として米国と韓国が挙げられていて、いずれも犯罪化されていない国としてドイツとオランダが挙げられています。また、その中間的な立場として、日本と逆に、売春側が犯罪化されずに買春側が犯罪化されている国としてフランスとスウェーデンが挙げられるといったように、かなり多様な状況になっていると理解をいたしました。   調べたところによりますと、スウェーデンは1999年からこういった法制度に移行して、フランスは2016年からこういった制度に移行しているということで、割と最近にこういった変化を導入しているようです。また、ここには挙げられておりませんが、ニュージーランドでは2003年に売買春いずれも非犯罪化する動きがあるといったことから、同じ売買春という問題でありながら、かなり各国によって違いがある状況になっているといえるかと思います。先ほど来、御意見が出ておりますように、私も、日本の実情を踏まえて議論することが適切ではないかと思いますが、日本での実情を評価するに当たって、こうした外国での売買春の取扱いがどういった考えに基づいて行われているのか、また、各国それぞれ実証研究などもあるようですので、それについてどういった評価がされているのかというところも、ある程度参考にしていくことが望ましいのではないかと考えます。   その上で、国際機関がどういった見解を持っているのかを調べてみたところでは、様々な意見が出ていますが、国連関係の機関では、どちらかというと犯罪化することについて問題があるというスタンスが多いように理解をしております。私が把握しているところを若干具体的に申し上げますと、OHCHR、すなわち、国連人権高等弁務官事務所、WHO、すなわち、世界保健機関、それから、UNAIDS、すなわち、国連合同エイズ計画では、売買春行為を犯罪化することによって、買春客の処罰を免れる目的で、売買春行為や勧誘行為がなかなか目につきにくい形で行われるようになっていく傾向がある、そうすると、そういう支援を必要としている売春を行うような女性が、医療機関や支援機関、警察などにつながりにくくなるといったおそれがあることなどが指摘されています。   様々な観点から意見を集約して議論していくことが大事だと思いますけれども、こういった視点も加味しながら検討していくことが適切なのではないかと思う次第です。 ○大沢委員 私は、売買春の規制の在り方を検討するに当たって、最優先すべきは、多くは被害者が女性ということだと思いますので、女性の尊厳を守ることが一番大事で、それに資する法制度を考えていく必要があるのではないかと思っております。   昭和30年代の売春防止法制定当時と現在とでは、社会情勢や経済状況が大きく変わっていると思います。特に、最近は人権尊重への取組は社会全体に求められており、個人の尊厳を損なういかなる行為をも許さないということが企業の社会的責務になっているのだと思います。そういったことを踏まえた観点から、売春防止法の各規定の法定刑が適正なのかどうかということは考えてみる必要があると思っておりまして、例えば、女性を売春させることで利益を得ようとする者に科す刑として、現状のものが軽過ぎるということはないのか、また、罰金の金額は罪の重さに見合うものになっているのかは、ぜひ論点としていただければと思っております。   それから、既にお話が出ていますが、売春防止法第5条で、勧誘行為について、売春側、そのほとんどが女性だと思いますけれども、女性のみを処罰対象として、買春側、男性側に罰則がないというのは、どう見ても不均衡で、国民の理解は得られないのではないかなと思っております。配布資料3に記載されている諸外国の例を見ても、こういった形の規制になっているのは日本以外には見当たらなかったので、日本独特なのではないかと思っておりまして、この辺も検討すべきなのではないかと思っています。   それと、私も、売買春の規制の在り方をめぐっては、様々な意見があると思っておりますので、ヒアリングでそうした意見を聴くことが大事だと思っております。   具体的には、大橋委員がおっしゃっていたように、諸外国の事例は議論をやる上で大変参考になると思いますので、ぜひ知りたいと思っています。規制の在り方にはそれぞれ一長一短があると思いますし、また、規制を導入したことで当該国にどんな効果、あるいは逆に社会への影響とか副作用みたいなものがあったのかどうかは知りたいと思っておりまして、ヒアリングなどを通じてそういった知見を得ることができれば幸いです。   また、何より当事者の実情を知ることが大事だと思っております。売春の勧誘のために路上に立たざるを得ない方がいらっしゃると思うのですが、そういった方にはどんな事情、背景があるのかについて、困難な境遇に置かれた女性の支援に携わっている方々からお話を聴くことができれば、売春を防止して女性の尊厳を守る法制度を考えていく上で有効なのではないかと思っております。 ○川崎委員 ここまでの皆様の御意見の中でも、「買春」のことを「かいしゅん」と言ったり、「ばいしゅん」と言ったりされています。これから議論をしていくに当たって、呼び方のコンセンサスをとっておいた方がいいかなと思います。具体的には、売春と買春の両方であれば「売買春」、買春については、本検討会では「かいしゅん」という言い方をするということで、コンセンサスをとっておいた方がいいのかなと思います。   その上で、先ほど来、皆様の御意見にもあるように、ものすごく本質的なところからこの問題を見つめ直す必要があるのだろうという御指摘は、なるほどそのとおりだと思います。また、それに当たっては、売る側の立場の人たちの人権を尊重することが非常に大事だという御指摘もそのとおりだと思うのですが、例えば、非犯罪化するという意見、逆に買う側も全て処罰すべきだという意見は、いずれも、売る側の人権を軽視するというよりは、それぞれの立場から尊重したらどうなるかという考え方の違いによって結論が両極端になっているということですので、そういう意味ではなかなか難しい問題だなと思っております。一つの問題について、どちらかの立場からの結論を出すのは容易ではないだろうと認識しています。   そうした中で、少なくとも今回検討すべき必要があると考える点について幾つか申し上げます。   まず、本検討会は、昨年8月に公表された「第6次男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え方(素案)」の中に、その問題意識は既に示されていたと承知していますが、より直接的には、昨年の11月11日の衆議院の予算委員会での首相の答弁及びその場での法務大臣への指示が、立上げの契機になったと理解しております。この答弁の基になった質問は、売春防止法第5条の勧誘等の罪が、売る側のみを処罰していて、買う側の処罰をしない点に疑問を呈されたものだったという点からしますと、少なくとも第5条については、今後どうあるべきかという検討が必要なのだろうと思っております。   また、法定刑についても、特に、第5条の罪がそうなのですが、罰金刑の多額が2万円となっております。配布資料4に経緯が書いてあるとおり、これは、平成3年の罰金等臨時措置法の改正によって引き上げられたものですが、現在では、罰金刑の上限が2万円というと、恐らく、業法などで届出を怠った場合に係る罰則において散見されるものの、余り見かけないものだと思います。法定刑は、犯罪の重さを表すものであって、法定刑をこのままにしておくことが、意図しないメッセージとして社会の中で理解されるということは十分あり得ることですし、あるいは、捜査機関等においては、犯罪の重さに応じて人的な資源を投入することにもなるでしょうから、十分な捜査等を行うに当たっての一つの足かせにもなりかねないということも考えられますので、そういう意味では、この点についてもしっかり検討する必要があるのだろうと思います。 ○保坂委員 先ほどの自己紹介では、売春関係事犯の取締りを担当していると申し上げましたが、警察では、取締りだけではなく、取り扱った案件の中で、困難な問題を抱えたり支援を要すると思われる方の関係機関への積極的な取り次ぎも行っております。また、女性に売春などの稼働を余儀なくさせるような悪質ホストクラブの問題についても、取締りを行ったりしているところです。   警察としては、引き続き関係機関と連携しながら対応していきたいと思いますが、先ほど来御意見があるように、本検討会においては、ヒアリング等を行っていただいて、現場の実情に即した対応について議論していければと思っております。   また、警察では、事件の捜査だけではなく、売買春が行われているような地域におけるパトロール等を行っており、犯罪の発生の事前抑止にも努めているところですので、今後、様々な観点で議論に参画できればと考えております。 ○薄井委員 裁判所としましては、何が処罰対象になるのかについては明確にしておかなければならないということがございます。先ほどほかの委員の御意見にもあったように、今後、処罰の範囲が論点になったときには、例えば、処罰の対象となるのが性交なのか性交類似行為なのかや、仮に、性交類似行為も対象とする場合に、それがどこまでの行為を含むのかといったところもきちんと考えていかなければならないと思いました。   また、現状を把握するのが非常に大事だと私も思いますので、関係するいろいろな方から様々な知見を得るためにヒアリングをすることは本当に大事なことだと思っております。 ○古川委員 多くの委員の一致する御指摘として、総論的な話としては、売春防止法の目的と、法律上採られている規制の方法や在り方との間にいささかアンビバレントさが残ったまま現在に至っているといったところが、今般改めて検討を要する課題として浮上してきたものと理解しています。   売春防止法の目的は、一言で言えば売買春をなくしていきたいという点にあるのだろうと思いますし、多くの人たちの常識的な感覚として、売買春が良いものではないということは、恐らく社会通念としては共有されているものと思います。もっとも、難しいのは、これが終局的には性を商品にするのは適切ではないといった個人個人の良心やモラルに帰着するという点であり、刑罰を使ってどのような規制をするのが適切かは、恐らく立法の時点でも大いに悩まれたところかと推測します。他方で、この法の目的は、売春する立場になった人を保護していきたい、立ち直りを支援していきたいというように、規制と保護がセットになった、そういう政策的な考え方に立脚しているということは、法の設計上明らかであろうかと思います。性を商品にするのはやめた方がいいというのは、もちろん教育的にはそのとおりかもしれませんが、いわゆる売春行為を直ちに犯罪化するのではなく、売春を助長する行為を犯罪化するという形で規制をかけ、売春をする立場になった人についてはその先で保護を図っていくという設計が当初の法のもくろみであったのではないかと理解しているところです。   このような考え方からすると、第5条において、売春目的での勧誘等が処罰されており、これは、一般には、売ろうとする行為だけが処罰される規定であるというレッテルが貼られておりますが、正確には、飽くまで売春を助長する行為の中で、第6条以下の罪と比べると相対的に軽い類型として、買うように働き掛ける行為が犯罪化されているわけです。そうしますと、問われるべきことは、勧誘等の助長行為が、売買春を助長するという理由で犯罪化されているのであれば、積極的に買おうと働き掛ける行為がどうして放置されているのかといったことであり、この点が昨今問題提起されているのは大いに的を射ている面があるのではないかと思います。法の目的を考えても、既に複数の委員から意見が出ているように、第5条の罪がいささか片面的といいますかアンバランスな設計になっていないか、不足があるのではないかということは、十分検討すべき事柄になるのではないかと存じます。また、法定刑も併せて検討することは、刑罰規定のバランスという観点からも重要であろうと思います。   ただ、こうした具体的な議論に入る前に、売買春をめぐる問題は、根本的には、とりわけ、性を商品にするのはやめるべきだ、では、その「商品にする」という範囲はどこなのかといったことも含めて、様々な考え方や理念が衝突し合い、一つの正解を出すことが困難であるというのが、この問題の難しいところかと思いますので、様々な意見を持っている人たちからその考え方を聞いたり、現実に保護や立ち直りに関わっている人たちから現実の有り様がどうなっているのかを聞く機会は、ぜひともあってしかるべきであろうと考えております。 ○北川座長 そのほかに御意見はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   皆様、ありがとうございました。委員の皆様から、それぞれの知見を踏まえた様々な貴重な御意見を頂戴しました。今後、皆様の御意見を十分に踏まえた上で、充実した検討を行っていければと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。   それでは、次に、次回以降の検討の進め方について、お諮りしたいと存じます。   先ほどお伺いした委員の皆様の御意見を踏まえますと、充実した議論を行うためには、意見交換に先立って、売買春に係る規制に関する実情等についてヒアリングを行うことが有益であると考えられることから、次回はヒアリングを行うこととしたいと思いますが、いかがでしょうか。              (一同異議なし) ○北川座長 御異議がないようですので、次回はヒアリングを行うことといたします。   ヒアリングの対象者につきましては、本日頂いた御意見も踏まえ、対象者を決定したいと思いますが、先方の御都合等を勘案する必要もございますので、最終的な決定につきましては、座長に一任していただくという形でよろしいでしょうか。              (一同異議なし)   ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。   それでは、本日の御意見を踏まえ、次回会議以降にヒアリングを行い、その後の会議から、そのヒアリングの結果を踏まえて、検討すべき論点等について、一巡目の議論を行っていくこととしたいと存じます。   ヒアリングの対象者が決まりましたら、委員の皆様には、事務当局を通じて御連絡させていただきます。また、検討すべき論点については、まずは、私の方で、本日頂戴した御意見やヒアリングの結果を踏まえて整理し、皆様にお示ししたいと思いますが、よろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○北川座長 ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。   本日予定していた議事につきましては、これで終了いたしました。   次回の日程については、調整の上、なるべく早く確定させ、事務当局を通じて皆様にお知らせさせていただきます。   本日の会議の議事につきましては、特に公表に適さない内容にわたるものはなかったと思われますので、発言者名を明らかにした議事録を作成して公表することとさせていただきたく存じます。また、配布資料についても公表することとしたいと思いますが、そのような取扱いとさせていただくことでよろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○北川座長 ありがとうございます。   それでは、本日はこれにて閉会といたします。どうもありがとうございました。 -了- -34-