売買春に係る規制の在り方検討会 (第2回) 第1 日 時  令和8年4月7日(火)   自 午前10時00分                       至 午後 0時01分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  1 ヒアリング         2 その他 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○栗原参事官 ただ今から、売買春に係る規制の在り方検討会の第2回会議を開催いたします。 ○北川座長 本日は、皆様、御多用中のところ、御出席くださり、誠にありがとうございます。   本日、吉田審議官は、公務のため御欠席と伺っております。   それでは、まず、事務当局から、本日お配りした資料についての御説明を頂きます。 ○栗原参事官 本日は、ヒアリング関係の資料として、ヒアリング出席者名簿、ヒアリング出席者の説明資料をお配りしております。 ○北川座長 それでは、議事に入りたいと思います。   第1回会議で申し上げたとおり、本日は、ヒアリングを行うこととします。   本検討会のヒアリングについては、第1回会議における委員の皆様の御意見を踏まえて検討した結果、売買春に係る規制に関する実情等について様々な立場の方々からお話を伺い、今後の検討を充実したものとするため、本日と次回会議の2回に分けて行うのが適当ではないかと考えております。その上で、本日のヒアリングの対象者については、委員の皆様の御意見を踏まえ、私の方で、ヒアリング出席者名簿に記載されている2組5名の方々を選定いたしました。ヒアリングについては、先ほど申し上げましたように、本日と次回会議の2回に分けて実施することとし、また、本日は、出席者名簿に記載の方々からヒアリングを行うことでよろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○北川座長 ありがとうございます。本日の進行としては、ヒアリング出席者名簿に記載の順に、1組ずつ、20分程度お話を伺った後に、15分程度質疑応答の時間を設けるという流れで進めさせていただきます。   それでは、始めたいと思います。1組目の方は、「NPO法人ぱっぷす」の金尻カズナ様、内田絵梨様、岡恵様、そして、A様です。   なお、A様におかれましては、プライバシー保護等の観点から、本日のヒアリングには匿名で御出席いただいております。   座長を務めております北川です。本日は、御多用中のところ、ヒアリングに御協力いただき、誠にありがとうございます。   まず、「NPO法人ぱっぷす」の皆様から20分程度お話を伺い、その後、15分程度、委員の方から質問があれば御回答いただきたいと思います。   それでは、どうぞお願いいたします。 ○内田氏 本日は、このような機会を頂きまして、誠にありがとうございます。「NPO法人ぱっぷす」です。売春防止法の改正を御検討いただくに当たり、まずは、「ぱっぷす」が日々現場で見ている現実と、そこから見えてくる課題について御説明させていただきます。なお、本日お配りした資料にはプライバシー情報が含まれておりますので、ヒアリング資料の一部の記載及び別紙資料については非公表としていただければと思います。   まず、喫緊の課題としてお伝えしたいのが、訪日外国人による買春の増加です。売買春をめぐる問題は、これまで国内の問題として捉えがちでしたが、現在は、SNSや動画配信の影響もあり、国境を越えて広がる社会課題になってきていると感じております。   別紙資料を御覧いただけますでしょうか。この資料の現場の写真や記録にあるとおり、大久保公園周辺では外国人観光客による買春行為が日常的に見られている状況です。「ぱっぷす」では、年間約150日、週3回の頻度で歌舞伎町を巡回しておりまして、主に10代から20代の女性に声を掛けながら関係性を築き、相談支援や夜間の居場所の提供などを行っております。その活動の中で、買春者が日常的に女性に声を掛ける様子や、外国人観光客が翻訳アプリを使って交渉し、ホテルに入っていく姿、また、大久保パークを目的とした観光ツアーも組まれている実態を確認しております。   さらに、「TACHINBO」や「Okubo Park」といった言葉がSNSで拡散されており、日本では路上で女性と交渉すれば性行為ができる、あるいは実質的に容認されているかのような誤った認識が今広まっています。実際には、売買春は売春防止法によって禁止されており、勧誘等には罰則がありますが、現場では買春者が処罰されないことがほとんどです。そのため、国外から見たときに、お金を払えば性行為ができる場所という誤ったイメージが強化されてしまっていると、現場としては感じています。その結果、需要が流入し、現場の状況が更に悪化してしまうという循環が生まれています。   では、なぜこのような状況が生まれているのか。私たちは、その背景に、売る側と買う側の非対称性があると考えております。   まず、売る側の女性たちの置かれている状況です。ヒアリング資料の4ページ以下に、事例を書いています。私たちが現場で出会う方の多くは10代後半から20代前半で、中には未成年の方もいらっしゃいます。虐待、貧困、家庭環境の不安さ、ホストクラブの売掛金、孤立、精神的な不調など、複数の困難を抱えているケースがほとんどです。話を聞いていくと、自分で選んだというよりも、その時点でほかに現実的な選択肢がなかった状況に置かれていたことが見えていくことが多くあります。安心して眠る場所がない、今日の食事がない、そういった切迫した状況の中で、その場を乗り切るための手段として性を売らざるを得ないという現実があります。   一方で、買う側はどうかといいますと、ヒアリング資料の6ページにあるとおり、そもそも安定した収入や住まいを持ち、生活基盤が確保されている場合が多く、その上、「幾ら?」「ホテル行かない?」と条件を提示して、応じなければ別の相手を探すこともできます。一見すると合意に基づく取引に見えるような関係だったとしても、実際には、売る側と買う側とでは、選択肢の幅や立場に大きな差があります。その場で応じなければ今日の寝る場所がないという状況の中での合意は、決して対等なものとはいえないと感じています。   そして、この関係性には法的な非対称性もあります。現行の制度では、売る側の女性が取締りの対象として前面に出やすい一方で、買う側の男性が法的に責任を問われる可能性は極めて低いです。この構造が、結果として需要を支えて、問題を繰り返し生み出していると考えています。   具体的な事例として、ヒアリング資料8ページの「1-7」の事例Aを御覧ください。この方は、虐待を受けて育ち、家を出ざるを得ず、住所や身分証もない状態で生活基盤を失い、性を売らざるを得ない状況に置かれておりました。そんな中、ホストから売上や生活を管理される、同棲営業というものをかけられて、ホストクラブに多大な支払いを続けるようになります。そして、最終的に客待ち行為で逮捕されてしまいました。一方で、その構造を作っていたホストや関係者については処罰が確認されておりません。同じ構造の中にいながら、より脆弱な立場の人だけが問題の主体として表に出てしまう、そういった偏りがあると感じています。   ヒアリング資料6ページの「1-5」の事例5を御覧ください。家庭内の虐待から逃げて歌舞伎町に来たものの、所持金はほとんどなく、安心して眠れる場所もない状況でした。その時声を掛けてきた男性から、「御飯食べさせてあげるよ。お金あげるよ。」と言われて、ホテルに行くことになります。この事例が示しているのは、やり取りされているのが単なる性行為ではなくて、生きていくために必要なものと引き換えにした関係であるということです。つまり、需要の側は、選択の自由に対価を払っているというよりも、ほかに選択肢のない状況に置かれた人、すなわち脆弱性に対してお金を提示して、関係を成立させています。   この非対称性は、取締りや相談をする場面でも見られます。ヒアリング資料9ページの事例Cを御覧ください。例えば、大久保公園周辺では、警察が来ると、女性たちは一斉に、捕まると思って走ってその場から逃げるんですね。一方で、買っている男性たちはその場合に笑いながらとどまって、時には彼女たちが走って逃げる様子を撮影して、SNSにアップしたりすることもあります。このように、同じ場所にいても、逃げる側と残れる側が明確に分かれているんです。また、事例Dのように、暴力や脅しなどの被害があっても、女性側は、自分が捕まるかもしれないという不安から警察に相談できないケースも多々あります。実際に、怖くて相談できなかったという声を何度も聞いてきました。その結果、被害が表に出ず、支援にもつながらず、同じ環境にとどまり続けるという状況が繰り返されています。   以上を踏まえますと、この問題は、個人の選択や意思の問題というよりも、需要の側に対する抑止が十分ではない制度の構造の中で再生産されている社会問題だと考えています。現在の制度は、脆弱な立場にある女性を可視化し、取締りの対象としやすい一方で、そのような脆弱性につけ込んで成立している買う側に十分な抑止が働いているとはいえません。その結果、売る側のみが摘発や報道、生活基盤の喪失といった不利益を受け、買う側は大きな法的・社会的責任を問われることなく、何度でも何度でも買い続けることが可能になります。こうした構造を踏まえた上で、売春防止法の改正について御提案させていただきたいと考えております。 ○金尻氏 社会的基盤を持つ側が、基盤を持てないほど脆弱な立場に置かれた人の性を買うという構造に問題があります。買う側の需要があり、仲介者はそれをつなぎ、そして、売る側の貧困や虐待、孤立が利用される。このような構造を変えない限り性的搾取はなくなりません。今必要なのは、脆弱な立場にある人を更に罰するのではなくて、その人たちを支援につなぎ、需要と搾取の構造の側の責任をきちんと問うことです。   では、この構造をどう変えていくのか、具体的な法改正の立て付けと、これからの道筋に関する提言について御説明します。「ぱっぷす」では、以下の5つの柱に基づく法改正を提案したいと考えております。ヒアリング資料の18ページを御覧ください。   第1に、法の目的又は保護法益の転換です。現行法の「善良な風俗の維持」から、「個人の人格的自由の尊重」及び「脆弱な立場にある者に対する搾取の防止」へと保護法益を再定義していかなければいけません。対価を支払って他者の性を買う行為は、相手の人格を手段化するものであって、それ自体が人格的利益の侵害と考えます。令和5年の不同意性交等罪などの刑法改正により、人としての尊厳と人格を中核とする法体系へと大きく前進しました。売春防止法も、この流れに合わせる必要があると考えています。保護法益を転換しない限り、個別条文を幾ら修正しても、法全体の方向性は変わりません。   第2に、「売春をする行為」の非犯罪化と支援への転換です。第5条の売春目的での勧誘罪は、廃止又は大幅な縮減をして、福祉的な支援に接続することを原則とします。ただし、他者の生活の平穏や人格的利益を具体的に侵害するような働き掛けがある場合に限って規制を残しておきます。   第3は、本提言の核心である、買春行為に対する刑事規制の導入です。まず、買春の勧誘行為、すなわち、路上やSNSでの声掛けには罰金刑などを科し、再犯は加重します。さらに、買春行為については、搾取性や侵害性の高い、「脆弱性利用型」、「若年者対象型」、「優越的地位・支配利用型」といった加重類型には刑事罰を科します。こうやって2層構造にすることで、いわゆる比例原則にも沿っていくことができます。   第4に、性の売買を媒介・管理する行為や、債務によって性売買を強いる行為に対する罰則の強化が必要だと考えます。   第5に、法の名称を「売春・買春防止法」又は「性売買防止法」などに改正することで、買う側も法の対象であるということを示していく必要があると考えます。   ただ、ヒアリング資料19ページの「3-4」にも書いているとおり、率直に申し上げると、全面的な目的規定の改正、あるいは、保護法益のいきなりの転換は、国民的な議論を要するところで、議論が膠着するおそれもあると私たちは感じています。ただし、フランスの2016年法などの先例もありますし、また、女性支援新法も、矯正から支援への転換を図るものであり、そういった形で法技術的なモデルは既に存在しています。   その上で、被害救済に直結する部分から段階的に積み上げるアプローチをしていく必要があると思います。まずは買春の勧誘行為の処罰化です。御承知のとおり、第5条は売る側の勧誘のみを処罰していますが、買う側の勧誘を処罰することは法技術的にも十分可能だと考えていますし、それが需要の最初の抑止力となると考えています。   また、ヒアリング資料26ページにあるように、懸念として、刑法のいわゆる謙抑性に関しての考え方があります。刑罰は最後の手段であるべきだという考え方、いわゆる謙抑性が持ち出されることが十分想定されると思います。しかし、売春防止法は、70年間、罰則以外の方法で需要の抑制を試みて、いずれも功を奏しなかったわけです。日本の法体系は、既に、例えば売血など対価が伴う身体的な取引は、同意があっても認めないという立場を採っています。ただ性だけがその例外とされ続ける合理的な理由はないと考えています。実際、路上で歩いていると、どこの国か分からない方が、私にも、「ヘイ、ベイビー、ハウマッチ?」と言って売春を持ち掛けてきます。今、この国の在り方が問われているのではないかと感じています。   そもそも現行法では、第5条で、売る側の勧誘には罰則が定められています。被害を受ける側には罰則を定めておきながら、加害する側には罰則を定めることに慎重であるというのは、違うと思います。問われるのは、罰則を使うか使わないかではなくて、その方向性が正しいかどうかということです。ヒアリング資料には、改正の詳細な条文イメージや、想定される懸念の検討、海外の具体的な立法事例などもまとめておりますので、御参照ください。   売春防止法は、制定からちょうど70年です。大久保公園における性の売買は、今、1回当たり1万5,000円なんですね。米ドルでいうと93ドルで、海外の相場の半分なんです。日本は100ドルで女の子が買えて、おつりが戻ってくる国と見られているわけです。現場で見る買春者は、もちろん日本人の方もいらっしゃいますが、欧米であったり、アジアであったり、中東、アフリカ、あらゆる地域の人たちが来ています。世界中から需要が流れ込もうとしているところなんです。これは観光の問題ではなくて、この国の主権と尊厳の問題であると感じています。このまま何もしなければ、手遅れになってしまいます。既に手遅れになりかけている。国際社会に向けても、日本が本気で向き合っているという姿勢を法律の形で示す必要があると考えております。 ○A氏 私自身、14歳の時から性を売らざるを得ない状況で生きていました。私が性売買に入ったきっかけは、SNSで知り合った男性から、「お金をあげるから。」と声を掛けられたことでした。当時の私は、親からの全ての虐待、学校でのいじめを経験し、初めて言葉にできた思いは、「死にたい。」でした。父親からの性的虐待もありましたし、お小遣いもなく、親の機嫌がいいときにしか御飯を食べられない日々。母親からは、「産まなきゃよかった。」と言われていました。   そのSNSで声を掛けてくれた買春者が、私を初めて見つけてくれたと思い、すごい助けに見えました。14歳の時から夜の街をさまよい、時には非常階段で寝たこともありました。家の鍵も持っていなかったので、物理的にも家に帰れず、困り果てたときは110番をして家に帰っていました。その際、警察から、「何があったの?」という一言もありませんでした。私は、買春者から声を掛けられ、買われることでしか、今日寝る場所を確保できなかったのです。親に暴力を振るわれるより、体目的だと分かっている買春者がましに見えました。そんな私を児童相談所は非行少女として扱いました。その後、私は約10年間、性売買を経験しました。抜け出すこともすごく大変でしたし、性暴力被害のトラウマの再演だったと今なら分かります。   私が今、買春処罰を求めるのは、私がかつて経験した実態と2026年の今が余りにも同じだからです。買われることは全ての女性に対する暴力であり、搾取です。「ぱっぷす」では150日、歌舞伎町でアウトリーチを実施しました。見てきたのは、買春者が堂々と女性に声を掛け、時には外国人観光客が翻訳アプリを使って女性に声を掛け、ホテルに入っていく姿です。外国人観光客に殴られ、あざだらけになった20代前半の女性。買春者とのトラブルに巻き込まれ、「見て、爪折られた。」と血まみれの指を見せる10代後半の女性。「殴られて交番に行ったけれども、警察はやる気なさそうで、こっちも売春しているから諦めた。」と言った20代前半の女性。「親が厳しくてバイトできなくて、でも進学したくて、調べて来たのがここだった。」と言った10代半ばの女性。「調子乗ってる、捕まらないから。女の子って泣き寝入りするしかないじゃん、何されても。」と言った10代後半の女性。これらは半年以内、中には先週聞いた声も含まれています。   こうした声からも分かるように、買春は必ず暴力とセットです。買う側はお金を払い、性暴力を振るっているのです。その上に、身体的暴力や性行為の撮影、性的動画の拡散という更なる加害をしています。お金を払ったことで、自分の中で性暴力加害をなかったことにしています。SNSや町の中にあるカフェ、路上で女性に声を掛ける性風俗へのあっせん、ホストやメンズ地下アイドル、コンセプトカフェの推し、AV、自分は直接買わないが、女性を性を売らざるを得ない状況に追い込む業者たち。現行法の場合、女性は買春者から暴力を振るわれても警察へ通報はできません。これは自己責任ではないのです。買春処罰が日本で導入されることで、買春の現場での暴力が可視化されると思っています。   自分で選んだと言う方もいます。私もかつてはそうでした。でも、そうではありません。女性たちのほとんどは、親からの虐待や性暴力被害、学校でのいじめ、貧困などを経験し、生きるために性を売らざるを得ない状況に追い込まれています。しかし、児童の場合は非行、18歳以上の場合は逮捕という形で、更に女性たちを追い詰めています。その中で更に不自然だと思うのは、児童買春に対しては処罰がありますが、買春に処罰がないことです。性売買は年齢では区切れません。女性支援新法が施行され、更生保護から、支援・女性の人権尊重へ目的が変わりました。その次の段階として、ぜひ買春処罰を実現してください。 ○北川座長 ありがとうございました。   それでは、次に委員の皆様から、御質問をお伺いしたいと思います。御質問のある方はいらっしゃいますか。 ○大橋委員 本日は、貴重なお話をお聞かせいただきまして、どうもありがとうございました。政策提言として挙げておられる、性を売らざるを得ない側を支援の対象とするというところについて、御質問させていただきます。   本日のお話と、ヒアリング資料の7ページを拝見しますと、「ぱっぷす」さんの方でされていることは、居場所の提供、精神的な支援、就労の支援、金銭管理といった包括的な福祉的な支援と受け止めております。その上で、ヒアリング資料の20ページ、21ページを拝見しますと、当事者の状況と意思に応じて様々な支援の在り方があるといったことが書かれています。先ほど、なかなか抜け出せないという実態があるといったお話もありましたが、一般的に、福祉的な支援は、当事者が支援を求めないと実現できないところがあろうかと思います。そういった観点で、どういった事柄が支援を難しくする要素になっているのか、また、一般的に、どういったところに支援のゴールを設定されているのかという点についてお聞かせいただければと思います。 ○岡氏 「ぱっぷす」はソーシャルワーカーの団体ですから、まず、アウトリーチで知り合った女性、それから、カフェもありますので、そこに来た女性で、今日帰るところがない女性に対してシェルターを提供しています。シェルターの目的は、行政につながっていない、行政につながることができずにきた方たちが行政につながることができる、そして、地域で自立した生活を送れるようになるための準備をする場所という位置付けです。利用者さんの背景に大きく共通していると思うのが、皆、「昼」と「夜」とを分けて話すのですが、「昼」で何かしらの排斥、排除された経験をしていることです。それには、虐待であったり、いじめであったり、障害であったり、そういった生きづらさから、なかなか人とコミュニケーションをとることが難しいという背景があって、行政につながるというのは、自分を排他し、排除した「昼」に戻るということなんです。彼女たちにとって、行政というのは「昼」の人たちで、過去に、その「昼」の人たちから排斥されて、「夜」に立っているんですね。なので、また、自分をこの場所に立たせた人たちのところに戻るというのは、三日三晩でできるような話ではないんです。まずは社会にも居場所があることを知ってもらうところから始まるんです。行政につながって助けを求めてもいいんだということを知ってもらうところから始まります。   しかし、過去の暴力などの経験や、警察に捕まって自分は犯罪者として見られているという考えから、自分は助けを求めるに値しない、自分は「昼」では価値がないという意識が作られている方もとても多く見ています。その一方で、「夜」では、君は体を売ることでしか価値はないんだ、ここで体を売ることもできない、ここで価値も認められないお前は、「昼」に行ってもそんな仕事なんかできるわけないだろうと、そういうふうに扱われているんです。なので、シェルターに来ても、やはり自分はここでは駄目だと言って、「夜」にまた戻る、そしてまたシェルターに戻ってくるということの繰り返しなんです。本当にDV支援と近しいところがあります。そこから、例えば警察や市役所、区役所に同行する中で、「昼」の人と関われるという経験を重ねていって、その経験の獲得から、徐々に、たどっていくところは人それぞれですが、例えば、精神障害のある方でしたらグループホームであったり、無料低額宿泊所につないで、そこからどのように地域で自立した生活を送れるか、そういう支援を行っています。   逮捕された経験のある方ですと、自分は「昼」の人からすると犯罪者であって雇ってもらえない存在、という考えが作られてしまっています。警察も、逮捕された時点で家がないと分かっているのに、捕まえた後、そのまままた歌舞伎町の路上に放つということの繰り返しになっています。ヒアリング資料に具体的にいろいろ事例を書いていますが、支援の現場はそういった状況です。   先ほど、コミュニケーションをとるのが難しいというお話もしましたが、就労するにしても、生活保護を受給しに行くにも、そのための資料が難しいという方はとても多いです。行政の職員の方と話すのも難しいという方もとても多くいます。そういう方たちが路上で買春者と交渉ができるでしょうか。実際は、暴力を受けるほかないんです。それが今の法体系が作ってしまっている現状であると、支援の現場では思っています。 ○大橋委員 先ほどのお話の中でも、非常に若年の方、未成年者の方も性売買の当事者になっておられるというお話があったかと思います。制度の立て付けとしては、児童だと、児童買春の被害児童ということになったり、児童相談所の保護の対象ということになっているかと思います。   そこでお尋ねしたいのですが、児童買春の規制があるにもかかわらず、未成年者が性売買をすることは現実には余り支障がないのか、あるいは児童買春を行った者が検挙されているような例があるのか。検挙された場合には、捜査協力が当事者の方の負担になっていないのか、また、検挙を契機に児童相談所に保護されることを当事者の方はどう受け止めておられるのかといったあたりの実情について、お聞かせいただければと思います。 ○A氏 私の場合は、実は、児童買春等禁止法で、相手が逮捕されかけたものの、不起訴になってしまったという現実があります。児童相談所は、御存じの方もいらっしゃると思いますが、ゼロ歳児とか乳幼児の対応や児童虐待の対応で手一杯になっていて、性売買をしている女性に対しては、トラウマケアとかではなく更生という観点で見てしまいます。私の場合も、15歳から18歳までの間に4回児童相談所に保護されましたが、全て非行という形で保護をされて、児童自立支援施設にも入所しました。なので、私自身も、児童相談所は敵だ、この人たちは話を聞いてくれないと思っていました。ケースワーカーも、最初のインテークの時点で、「何で家出するの?」と聞いてくれたんですが、私は言葉を持っていないので、「いや、父親がああいうことするから。」と言ったものの、「ああいうことって何?」と言われてしまって、それ以上言葉が出なかった。暴力が日常的にあると、それが当たり前だと思っていて、父親は暴力を振るうものだと思っているので、それを言葉にできないという実態があります。今関わっている子たちも、児童相談所に保護されたとしても当日に帰ってきたり、児童相談所に絶対に行きたくないという感じです。髪の黒染めが強要されたり、外に出られない、スマホが使えないといった現状があるので、児童相談所は当事者からすると頼りにできないと思っているのかなと思います。 ○内田氏 児童の方で、児童相談所による保護につながるというケースもあるにはあります。警察の方も、児童を保護しようという思いでいろいろな方に声を掛けてくださっているというのはあるんですが、ただ、先ほど岡からお話しさせていただきましたし、事例1から4を見ていただいても分かるかなと思いますが、彼女たちも、「昼」の世界、つまり、学校や家庭の中で、いろいろな排斥経験があると思います。児童相談所につながっても、全てが敵のように見えてしまって、逃げ出してしまうんですね。人はいろいろな経験をして学ぶ生き物だとは思っているんですが、実際、児童相談所は、保護した小学生、中学生のお子さんが歌舞伎町の子だと分かると、1日で親元にリリースしてしまうという現状もあります。 ○櫻井委員 今日は、貴重なお話をありがとうございました。私自身もこれまで支援に携わってきて、性を売る人たちは、例えば、トラウマを抱えているとか、経済的な困窮があると本当に感じています。その上で、あえてお聞きしたいのですが、他方で、アウトリーチ活動の中で、例えば、自律的に性を売る仕事をしている方たちに出会うことはあるのでしょうか。 ○岡氏 「自律的に」というのはどういう意味でしょうか。 ○櫻井委員 例えば、トラウマによってとか、経済的な困窮があってという理由ではなくて、あえてこの仕事を選んでいるということです。そこの境目ってすごく難しいとは思うのですが。 ○金尻氏 お答えできる範囲でお答えいたします。確かにいらっしゃいますが、コミュニケーションが取れない方など、社会から見ると非常に生きづらさを抱えている方でもあります。そうした方々について、「それを自ら選んでいるのか」という点は、私は非常に難しい問題だと感じています。形式上は選択しているように見える場合でも、実際には選択肢が極めて限られている状況になっていることが多いのではないかと思います。 ○岡氏 例えば、自分は選んでこれをしているんだと言う方はいらっしゃるんですが、どうしてそれを選んでやっているのかについて、その方が何と言ったかというと、「初めて性的に見てもらえた。初めて女性として見てもらえた。」と言ったんです。どういうことかというと、その方は、私たちとつながってから初めて精神科の病院を受診することができて、そこで療育手帳を得たんですが、それまでは普通の学校に通っていたけれども、話すことがとても難しい方で、学校ではずっと障害者と言われていたそうです。自分で言葉をうまく話せないから、わっと攻撃的に言ってしまうんです。それで、それまで行政ともなかなかつながることができませんでした。親御さんは、障害者を産みやがってと家族から言われるのが怖くて病院に連れて行けなかったそうです。生涯を通してずっと障害者とか気持ち悪いとかと言われて、風俗店に行って初めて女として見られた、買春者にお金で買われることによって、自分は初めて女として見られたと話していました。   確かに、その方は、「私は自分で選んでこれを職業としてやっている。」という言い方をしました。ただ、その人は言葉ではそう言っているけれども、私は、その生きづらさのある方に「障害者」と言い、差別の言葉を使ってきた社会が、その方の、「自分はここでしかプロフェッショナルとして生きていけない。ここでじゃないと人として見てもらえないからプロフェッショナルでやっている。」という言葉をそのままうのみにして受け取ってはいけない、そういった社会であってはいけないと思っています。   なので、先ほど金尻からもあったように、相談者の中には、確かに、今はこれをプロフェッショナルとしてやっている、仕事としてやっているという人はいますが、それを言わせてしまっている社会の問題性について、この検討会に参加されている方たちに知ってもらいたいという思いがあります。 ○古川委員 性的搾取抑止に向けた貴団体の基本理念についてお伺いします。性売買防止が将来目標であると言われていたことからすると、性交、すなわち、売買春に限らず、性を商品と見る価値観に抵抗し、買う行為を規制していくことが貴団体の理念であると拝察しますが、性交以外の性の売買を法がどのように扱っていくべきかについて、お考えがありましたら伺えればと存じます。 ○金尻氏 「ぱっぷす」は被害者支援を行っている団体なので、被害者の声から、結局使える制度がないよねということを集めた結果が、本日の御提案のような形になっています。相談支援をしていて、たくさん、本当にもう100件、200件も話を伺っていると、何でこうなっているんだろうとすごく絶望的になってしまい、やはり法律が足りていないとつい感じてしまうわけなんですが、「ぱっぷす」は、とにかく被害をなくしていきたいという思いであって、どちらかというと、性交に伴う様々な人権侵害や社会的なコストをなぜか女性側が全て支払っている現状があることについておかしいと思っているというところがあります。   どこまでいいのか、例えば、性交類似行為はいいのかとか、オーラルセックスはオーケーなのかとか、いろいろ議論があって、もちろんそれぞれ人権侵害性はありますが、特に身体への侵襲性が高いもの、つまり、妊娠をするリスクのある仕事は他にまずないわけですし、性感染症に罹患する仕事も、医療関係などの正当性がある場合以外ではまずないので、そういった観点で、性交と肛門性交というのがボーダーとして国としてのコンセンサスがとれるところではないかなと私は考えております。ただ、だからといってそれ以外の行為に被害がないかというと、もちろんオーラルセックスの被害も実際あります。とにかく性交や肛門性交による被害が深刻であるという点をフォーカスしていただき、人格的な利益の観点から、何とか救済される方法を考えていただければ有り難いと思っております。 ○星委員 今回、御依頼から非常に短い時間にもかかわらず、これだけの御準備を頂きましたことに、感謝申し上げたいと思います。現在の法体系がおかしいだろうというところは私なりにも理解しているところなのですが、本日のお話は、売る側が処罰の対象とされることで、本来は被害者である方が声を上げづらくなっているという現実もあるから、可能であればそこを逆転させて、買う側に対する規制についてもっと考えるべきではないかというお話だったかと思います。確かにそのとおりだと思うのですが、買う側を処罰することになると、その処罰をいとわないような人たちだけがこの領域に入ってきて、確かに、外国人観光客など面白半分で入ってきているような人たちに対する抑止という面では効果があるのだろうと思いますが、むしろ問題を抱えている人たちの状況が地下に潜ってしまって、例えば、皆様方の活動がしづらくなってしまうことはないのかという点について、もし何かあればお聞かせいただければと思います。 ○金尻氏 地下化についてはヒアリング資料23ページの「4-3-1」に書いていますが、いわゆる地下化する懸念というのは、どの法律でも言えることであって、一つ言えることは、地下化していないから、今深刻な被害が起きているということです。   実は私もセックスワーカーだった時期があって性の売買をしていた当事者でもあったんですが、その時期は、自分でマインドコントロールしながら自己正当化するという力が働くわけなんです。そうすることで自分を保つこともできるし、ワーカーだから頑張らなければと思って、地雷客といって本当にひどいことをする人たちにも耐えながら、これは仕事だからと自分でマインドセットをしていけば、何とかやっていけるんですが、後でどっとトラウマが来るんです。この考え方はトラウマの蓄積装置みたいなものなんですが。   御質問についてですが、地下化に関しては、実際、現在、売春防止法の対象外の分野、例えば、「売り専」、「ニューハーフヘルス」、「ニューハーフ風俗」などといわれている、いわゆる男娼の方とか、性同一性障害の方の風俗店では、深刻な被害があるんです。だから、合法とは言わないけれども、非犯罪化されている分野だって深刻な問題があるんです。だから、私たちとしては、尊厳の問題から変えていきたいと思うんですが、既にもうそういう状況は生じています。ただ、児童買春の問題で言うと、地下化して初めて可視化できるということもあります。   あと、売春も実際に地下化しています。なぜかというと違法なので。売る側は捕まりますよね。だから、地下化しているんですよ。買春者が捕まることで地下化が進むか、私は正直よく分からないし、スウェーデンなどの他国の状況を見ると、地下化が進むということにはならず、需要の抑制の方に強く働いたということもあるので、抑制効果としてはすごくあるのではないかなと考えております。 ○内田氏 買う側を犯罪化するとともに、様々な社会的背景を抱えているような売る側の方による同意は真の同意・選択ではないと考えていますので、売る側を支援につなげていくという、両輪で進めていくのが非常に重要なのではないかと思います。 ○A氏 地下化するという点は、私も言われることがありますが、今が余りにも堂々とし過ぎているという現状があります。私は、アウトリーチに行っている中で、「幾ら?」と聞いてくる人がいるんですが、それってどうなのと思います。また、買春行為が処罰されることによって、社会が買春を許さない、性的搾取を許さないというメッセージにもつながるかなと思っています。 ○北川座長 ほかにはございますでしょうか。よろしいでしょうか。なければ、これで終了とさせていただきたく存じます。   金尻様、内田様、岡様、A様、本日は大変貴重なお話を頂き、誠にありがとうございました。お話しいただいた内容については、今後の検討において役立ててまいりたいと存じます。 ○北川座長 2組目の方は、「SWASH」のげいまきまき様でございます。   座長を務めております北川です。本日は、御多用中のところ、ヒアリングに御協力いただき、誠にありがとうございます。これから、げいまきまき様から20分程度お話を伺い、その後、15分程度、委員の方から質問があれば御回答いただきたいと存じます。   それでは、よろしくお願いいたします。 ○げいまきまき氏 はじめまして、こんにちは。げいまきまきと申します。今日は、本当に貴重な機会を頂きまして、ありがとうございます。   今日は、日本におけるセックスワーカーの実態と必要な支援について、ほかの国の調査結果などを踏まえて報告させていただきます。 (スライド2枚目)   「SWASH」は、セックスワーカー当事者とサポーターで構成されています。 (スライド3枚目)   セックスワーカーへの直接的な支援だけではなくて、行政ですとか、あと厚生労働省の科学研究費での、特に、HIVの対策の研究班への協力を行ったりしています。調査したものを本にしたり、支援者向けの情報を著書にしたりもしています。 (スライド4枚目)   本日の報告の概要としては、まず、セックスワーカーとはどういう人たちなのかを、私どもが実施した調査結果に基づいて説明いたします。次に、海外の先行事例として、買春処罰などの犯罪化と非犯罪化を行った国、双方の調査結果の内容を取りまとめて御報告します。また、このような法律の環境がセックスワーカーにどのように影響するのか、今後どのような支援が有効と考えられるのか、私たちの見解を述べさせていただきます。 (スライド5枚目)   まず、私たちが実施した国内のセックスワーカーの実態調査についてです。実は、20年以上、当事者の実態の把握が必要だと考え、取り組んできたんですけれども、国内では、この分野の調査に公共的な予算が付くことは、HIVに関することに対して以外はほぼない状態です。ですので、なかなか大規模な調査が行われていない現状があり、今のところ限界はありますが、私たちの実態調査も海外のセックスワーカーの実態調査とそれほど離れたものではなく、それなりに実態を把握できていると考えています。セックスワーカーの状況は、コロナ禍以降に大分変化がありました。現在、コロナ禍以降の調査を進めているところですが、その調査結果は本日には間に合いませんでしたので、また後日、中間報告なども送らせていただければと思います。 (スライド6枚目)   最初に、路上や出会い系を使った個人売春を行う人たちの実態についてお話しいたします。個人売春は、実態の把握がすごく難しいのですが、2010年から2013年にかけて3,000人にアンケートなどを行った調査があります。その調査結果としては、個人売春は店舗型でのセックスワークよりも若年層が多いということが指摘できます。 (スライド8枚目)   なぜ個人交渉をしているかといいますと、お店に属して働くことを望まない人が多いんです。それはなぜかといいますと、利点として、自身の都合で時間がより自由に使えるということがあります。あと、「店落ち」、つまりお店の取り分が嫌とか、サービスの内容についての采配を自身でとりやすいといったことがあります。そうした自由度の高さから選んでいる人が多いです。デメリットは、店舗に勤めるよりもリスクが高くなる、個人で全てを交渉しなければならないというリスクが大きいです。後ほどすすきのでの実態調査報告も紹介いたしますが、スライド7枚目の図を見ていただくと、平均月収が20万から30万円が最も多いとなっており、決して一般的な平均収入に照らしても多額であるとはいえない金額かと思います。それでもなぜ売春をするかというと、一般的な働き方とか福祉では追いつかない環境がそれぞれの背景にはあるのではないかとも推測できます。また、余り知られていないかもしれないですけれども、一般的なお仕事と兼業されている方も少なくないです。 (スライド9枚目)   次に、セックスワーカーの属性のお話をします。年齢や居住形態にはばらつきがあります。決して若年層だけではなく、若年層と、中年世代、高年で、大体3分の1ずつぐらいになるのではないかといわれています。 (スライド10枚目)   次に、働くきっかけについては、多分御想像にあるかと思いますが、「お金のため」というのが一番多いです。「騙された」とか「断れなかった」という強要性があるようなものは、約1.6%という数字が出ています。 (スライド11枚目)   「お金のため」という理由に関しては、すすきのでの実態調査の結果によれば、生活のためとか貯金をしたいとかいうことがあったり、また、シングルマザーの方も少なくありません。 (スライド12枚目)   シングルマザーのことについてお話しいたします。世界的に共通する傾向ですが、性風俗のお仕事をする方にはシングルマザーの割合が多いです。なぜかというと、多くの場合、性風俗店には、そこで働きますよと決まったその日に入れる寮が用意されていることが多く、家具とかも付いていたりします。また、託児所が用意されていたり、提携している保育園があったりして、子供の預け先が働き始めるその日からしっかり確保できるといった環境があります。あと、時間帯も午後から働こうとか、子供が病気だとなったらその日すぐにお休みできるとか、そうした環境もあります。こういったことはなぜできているかというと、お店側、経営側には、女性の参入の壁を低くするために福利厚生を充実させる傾向があるからです。結果的にシングルマザーが働きやすいシステムが出来上がっていくんです。   もちろんセックスワークと福祉は全く別物です。代替できるものではありません。ただ、現状としてセーフティネットの役割になってしまっているということはあるんです。彼女たちがなぜ福祉とつながらないのかについては、私たちが聞き取った範囲では、一般的な会社でのお仕事とかや福祉では賄い切れない部分のお金を得るためにセックスワークを選んでいます。例えば、生活保護の範囲内では難しいお子さんの塾などの教育費を充実させたい、一緒にいる時間を多く作りたい、そういった理由があります。 (スライド13枚目)   次に、セックスワークと尊厳についてです。セックスワーカーは仕事をどう捉えているか。イメージとしては、自分の心も体も切り売りすることだと言われたり、体を売るという表現がよくありますよね。でも、こういった認識が本当であれば、セックスワーカーたちは自分たちの仕事を奴隷であったり、悪徳企業の社員とか、ネガティブなものに捉えていてもおかしくはないんですが、私たちの調査で浮かび上がってきたのは、ケアワーカー的な側面を自覚している人が一番多いということです。性的サービスはもちろんあるんですが、様々な心理的なサービスも提供しているという意識が多いです。 (スライド14枚目)   この調査では、今の仕事はほかの職業に例えると、どんな感じが一番近いですかとの質問に対して、看護師さんですとか、福祉・介護の方のお仕事と似ていると答える方も多いですし、カウンセラーという答えも出ています。なので、お金によって自分の心身を好き勝手に切り売りしているという意識は余りないということが見て取れました。ルールの下で、自分自身の判断で可能な選択・サービス提供を行っているという認識を持っている方が多いのではないかなということが推測できます。 (スライド17枚目)   私たちの取組の現場から見えてきたことは、このように柔軟な勤務とか休暇制度がほかのお仕事でも可能になったら、もっと選択肢が広がるのになということや、自分だけなら別に収入がそんなに多くなくてもいいんだけれども、お子さんや親御さんといった家族など関係性の親密な方のお世話をしたいという心が選択理由になっています。そうした充実したサービスにアクセスしにくいという構造上の問題がある以上は、幾ら法で取り締まっても、セックスワークを続ける人は一定数いるのが現実的な話だと思います。もちろんいろいろな人がいますので、私たちは、本人の希望を聞きながら取り組んでいて、本人が望む場合には、例えば生活保護の申請に同行したり、相談を受けて弁護士さんに一緒に相談に行くといったこともしています。 (スライド18枚目)   次に、ほかの国の取組を紹介いたします。今回は、犯罪化に関してはインドネシア、非犯罪化に関してはニュージーランドを取り上げます。結論から申しますと、多くの調査では、犯罪化は、犯罪化するときの意図に反して売春は減らないということが主張されているデータが多いです。 (スライド19枚目)   まず、インドネシアです。なぜインドネシアを取り上げるかといいますと、この調査が、犯罪化と性感染症感染率の変化を重点的に調査した結果だからです。この研究は、女性のワーカーと男性客に限定したものです。まず、犯罪化によって売春する女性は減ったのかということですが、直後には確かにがくんと減ったんです。でも、5年経過を見ていくと元に戻っています。ただ元に戻ったのではなく、セックスワークを取り巻く環境は非合法なものになっているので、その間に、リスクが大変増えております。 (スライド20枚目)   次に、性感染症については、残念なことに、犯罪化以降5年間でセックスワーカーの感染率は58%の増加が見られました。犯罪化をすると、HIVなど性感染症が増加していくというのは以前から推測されていたんですが、それが裏付けられる結果です。当然の話ですが、性感染症は公衆衛生のことでもあるので、セックスワーカーと利用客だけではなく、それ以外の層にも感染が広がっていっているという現実があります。   インドネシアのほか、先行の導入国での幾つかの調査報告でも、セックスワークとか買春を犯罪化すると、暴力被害や性感染症の感染率が増加するという報告があるんですが、その理由は、客足が遠退くと、収入が減るので、リスクがある要求でもお金のためにのまざるを得なくなるんです。どういったことがリスクが高いかといいますと、例えばコンドームを使わない危険なサービスが増える、そして、スティグマが増えますので、ワーカーが病院とか警察にも行きづらくなるという状況になります。 (スライド21枚目)   次に、フランスです。フランスの調査でも、38%のワーカーが、買春処罰法の導入以前に比べてコンドーム着用率が減ったと答えています。フランスの調査では、88%のセックスワーカーが買春処罰法には反対で、収入が減少したというのが78%、暴力被害が増えたというのが42%、生活面の悪化が63%です。生活面の悪化というのは、買春処罰法の導入以降の環境が悪くなったことによってストレスが増えて、依存症になったりするケースがあります。もちろん犯罪化だけではなく、犯罪化は大体、福祉とか支援とセットになっております。これは本当に大事なことなんです。でも、多くの国の場合、福祉は、申請のハードルが高いとか、金額が不十分であるといった現実があって、十分に機能を果たしているとはいい難い状況にあります。ですので、より稼げる環境をということで、セックスワーカーは、よりリスクの高いほかの国への出稼ぎに行ったりするケースがあります。 (スライド23枚目)   私たちも2024年にフランスで視察を行い、ヒアリングなどの調査も行いました。セックスワーカーは処罰されないといっても、買う利用者側が犯罪化され、法律にそうした側面があるということは、偏見が社会的に増えていくことになりますので、自分の困難な状況を支援につなげたり、警察に行ったりというのがだんだんできなくなっていく、そしてどんどん追い詰められていくという現状を聞き取りました。 (スライド25枚目)   皆さんも耳にしたことがあると思いますが、コロナ禍以降、日本から海外への出稼ぎが増加しているという報道が相次いであったかと思います。それは、収入が減ったワーカーが海外に出て行っていることが推測されます。これについてはまだ国内でもはっきりとした調査は行われていないんですが、先日、オーストラリアのセックスワーカー団体、政策提言なども行っている「スカーレット・アライアンス」という当事者団体から連絡があり、オーストラリアで入国を拒否された157人中86人が日本国籍の若い女性である、一体日本では何が起きているのかという質問がありました。この人たちの全員が出稼ぎであるとは裏付けられていません。ただ、一部そうした流れがあるのかなということは推測できます。私たちは、この問題について、これから調査を検討しております。 (スライド26枚目)   性感染症予防について、私たちは国内でも力を入れて取り組んでおりますので、その懸念についても少し説明させていただきます。コロナ禍の頃に「夜の街」という言葉が出ました。それで、性風俗は感染の温床のように思われて、スティグマが強化されていった結果、利用客が一時的にがくんと減りました。その結果、収入が減って、無理な要求・リスクの高い要求に答えざるを得ないという現状が報告され、そういった相談を当時たくさん受けました。これは、買春処罰法を導入した他国の調査結果と似たようなことが日本のコロナ禍において既に起きていたということです。 (スライド32枚目)   非犯罪化するとセックスワーカーが増加するのではないかということがよく言われますが、そういった調査結果は出ていません。ニュージーランドでは非犯罪化以降もセックスワーカーは増加していないという結果が出ています。セックスワークは非常に向き不向きが大きな職種ですので、犯罪ではないとなったからといって、誰もが、じゃ、やろうかなと思えるものでもない。やはり性的な価値観というのもそれぞれありますし、それほど単純なことではありません。 (スライド33枚目)   非犯罪化するとコンドームの使用率が増加する、そうすると性感染症の感染率も減っていきます。そして、いろいろな采配を自身で取りやすくなりますし、もし何か被害が起こってもちゃんと社会に訴えやすくなります。警察にも言いやすくなりますし、裁判もしやすくなります。   幾つかの調査では、非犯罪化すると、セックスワーカーの90%以上が雇用、法律、健康や安全に対しての権利が増加したと認識しています。また、同じく非犯罪化を導入したベルギーでは、セックスワーカーが労働権を獲得したことで、年金、産休、困った利用客を拒否する権利などを獲得し、搾取と闘うための労働者としての立場を強化できたという結果が出ています。 (スライド36枚目)   時間が限られていますので、私からの報告は以上ですが、まだまだ本当に伝え足りないというのが実感です。実態を知っていただきたいですし、スライド資料の最後に、引用文献を載せていますので、こうしたものも見ていただければと思います。今回の検討の続く間に、セックスワーカー当事者の権利擁護をしている団体のヒアリングも継続していただけたらと思っています。御清聴いただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。 ○北川座長 ありがとうございました。   それでは、委員の皆様から御質問をお伺いしたいと思います。御質問のある方はいらっしゃいますでしょうか。 ○大橋委員 本日は貴重なお話どうもありがとうございました。スライドの3枚目を拝見いたしますと、セックスワークを続けたい人には安全に続けられるようにサポートをする、辞めたい人に辞めるためのサポートをする、そして、店舗や路上でアウトリーチ活動しておられると理解いたしました。   続けたいと思っている方はどういう課題を持っていることが多いのか、辞めたいと思われる人は何が理由なことが多いのかについて、お聞かせいただければと思います。 ○げいまきまき氏 辞めたい人の理由は様々ですが、どれにも共通することとしては、労働としての環境が整っていない職種だということがあります。完全歩合制ですし、何かあったときに労災が使えたりするわけでもない、そういったことから体力面とか気力面で難しい、また、自分の仕事を他人や病院に言って相談することが難しかったりするので、どんどん精神的にもしんどくなったり、そうしたいろいろな要因が複合的に重なって、しんどいとお仕事もなかなかできなかったりするので、当然収入も減ってしまう、そういったことで辞めたいということがあります。   続けたい人からの相談としては、例えば、お店で働いている人が、最初に契約書みたいなものを渡されたんだけれども、小さい字がばあっと書いてあってきっちり読むことが難しいような契約書で、お店を辞めたいと言ったり、ちょっと長めに休んだりすると、その契約書を基に違約金を払えと言われたり、払わないと、初めに提出した住民票などの個人情報を盾に脅されたりしたということがあります。あとは、利用者から盗撮されたけれども、それがなかなか被害として受け取られなかったといったことを相談されることもあります。 ○大橋委員 路上で売春している人に特有の相談内容があれば、教えていただければと思いますが、いかがでしょうか。 ○げいまきまき氏 実は、本当にお恥ずかしいことなんですけれども、路上で働いている人たちの実態を掴むことが一番難しいです。性感染症の郵送検査のキットを無料配布したり、アウトリーチもしているんですけれども、警戒されるので、受け取ってもらえないです。ですので、なかなか相談を聞くところまでできない。ただ、自分が路上で働いているということは言わずに相談されることはあるだろうなというのは推測しています。 ○入江委員 お話ありがとうございます。御主張をよりよく理解したいという趣旨でお聞きします。資料を拝見しますと、売春についても買春についても犯罪としないという御主張だと思われるのですが、いわゆる風紀的な観点からの取締り、すなわち、路上での勧誘や、今問題になっている外国人観光客の問題に対する風紀的な観点からの取締りも一切すべきではないというお立場でしょうか。あるいは、そういう観点からの取締りはあり得るというお立場の場合、どのような規制の仕方が望ましいとお考えでしょうか。 ○げいまきまき氏 私たちは、何の線も引きたくないという考えではなくて、もちろん路上での勧誘などの問題もあると思います。本当に素人考えで恐縮なんですが、例えば、景観条例のようなもので、路上で立っていることに対してアプローチできることはないのかなと思います。   また、大阪にもある、新宿の大久保公園のようなところでも、例えば、警察が取り締まったりすると立ちんぼをしている人は一時的にいなくなるんです。そうなると見えなくなってしまうので、私たちがお知らせとかを持っていったりしても受け取ってもらえないことがほとんどで、こういうのがあるよと渡しに行きたくても、どこに行ったらいいか分からなくなるということがあります。ですので、これは難しいと思うんですが、寄り合いに使えるコミュニティスペースとかがあったりしてもいいのかなと思います。路上にいること以外にも選択肢ができるようなものがあったらいいのかなと思ったりもします。ただ、この辺のことについては私たちもまだまだ見識が足りないと思いますので、専門の方々の御意見を頂いたり、どういった事例があるのかということを知りたいなと思います。 ○佐藤委員 本日は、お話を聞かせていただきまして、誠にありがとうございました。インドネシアやフランスといった買春の方の処罰をしている例の中で、不可視化されることのリスクがあること、偏見が深まるという弊害があることを話されていたかと思うのですが、そこでいう不可視化されることのリスクの具体的な内容と、それから、フランス型だと売春者は被害者であるという視点になるかと思うのですが、そこでいう偏見とはどういう種類の偏見なのかについて、お話を聞かせていただければと思います。 ○げいまきまき氏 まず、不可視化されることでのリスクというのは、例えばフランスの場合だと、以前は、路上で交渉を待っているケースが多く、路上で待っていると、人の目があります。人の目があると、無意識に、ちょっとまずいことはできないなという抑止力につながる面がありました。また、路上で等間隔で並んで待っていると、時には、あのお客さんちょっとやばいなとか、あの人危なかったという情報交換もできる横のつながりがあったりするんです。しかし、買春処罰になると、お客さんを捕まらせることが自分の収入が下がることになるので、お客さんと交渉しているところを見られてはまずいということで、例えば森の奥とか、車で人の余りいない港に行って交渉をする。また、ホテルも貸すことができなくなったので、車の中などでサービスを行うことになり、見えないところでどんどんリスクが増えていくということが起こっています。   偏見というのは、男性利用客への偏見というよりも、私たちが聞いたのは、セックスワーカー自身への偏見です。幾らセックスワーカー自身は処罰されないと言われても、利用する人が処罰されるというのは、悪いことをしているのではないかという社会的な価値観につながりやすくなります。その中で、HIVの陽性者のセックスワーカーが病院につながることは難しく、お金も減って、だんだん気力も衰えてしまって、病院に行くことが難しくなり、治療につながらなくなったと聞きました。もともと偏見の多い分野ではありますが、それがより深刻になったと聞きました。 ○星委員 本日は、いろいろと貴重なお話を聞かせていただきまして、ありがとうございました。非犯罪化と、禁止の対象にしているということは一緒なのか、違うのかということをお伺いしたいと思います。売春防止法も、売春自体を禁止はしているわけですが、処罰に関しては、売春を直接処罰するのではなくて、その勧誘行為やあっせん管理といった周辺的なところだけを処罰していますが、本日御報告を頂いた非犯罪化というのは、どの部分の非犯罪化という理解でしょうか。 ○げいまきまき氏 ニュージーランドとかの非犯罪化というのは、売春行為も取り締まられないし、それを取り巻く行為も、それ自体では取り締まられない。ただ、そこに犯罪が起こったときは取締りがあるという感じです。ざっくり言うと、ほかの仕事と同じように、仕事自体が犯罪になることはなく、利用自体が犯罪になることもなく、暴力とかお金を取られるといった問題があったときにそれが犯罪になるという感じです。 ○星委員 ちょっと場面が違うかもしれませんが、マルチ商法も、マルチ商法自体は禁止されていないけれども、マルチ商法に伴う詐欺行為といった不適切な行為があればそこは処罰するということになっており、そういった形が望ましいというイメージでよろしいですか。 ○げいまきまき氏 はい、多分そうだと思います。共通しているものがあるかもしれません。 ○星委員 分かりました。スライドの17枚目の一番下のところに、「搾取やグルーミングのような洗脳状態でセックスワークを強制されている人に対して福祉は必須である。」と書かれていますが、これとの関連で、お考えとしては、グルーミングという行為自体は独立したものとして法的な対応の対象にすべきだと理解してよろしいでしょうか。 ○げいまきまき氏 そうですね。ただ、グルーミングというのもすごく難しいですよね、他人がどう介入するかがとても難しい話だと思います。アディクションの問題とも似ている、共通することがあるのかなと思うんですが、他人からとか社会的に見たときにとても問題の多い行動とか構造であるときでも、本人や親密な二者間での自覚がすごく難しいこととかがありますよね。例えば、「彼氏に言われて援交してきた。そのお金を彼氏にあげているよ。」ということを、すごく屈託なく報告されたりするときに、私たちはもちろん、ちょっと客観的に見て問題だなと思うんですが、それをずばっと「駄目だよ。」と言っても本人になかなか届かないので、そういったときに必要なのは長期的な伴走型の支援とか、相談しやすい支援体制、環境を作ることとかだと思います。私たちも、そうした問題があるときに一緒に協働して、例えば相談に乗って介入するなど、解決、改善に当たって、そういった環境づくりに協力できることがあったら本当に幸いだなと思っています。 ○櫻井委員 お話ありがとうございました。セックスワークを正当な労働として認めるべきだということなのか、あるいは、例えば、国連の関連の報告書を見ても、犯罪化するとAIDSなどが広がってしまうので非犯罪化すべきと書いてあるように私は理解したのですが、そのように、犯罪として処罰をしてしまうとワーカーさんたちが危険になるために、非犯罪化すべきだということなのか、その二つのうちどちらの考えに近くていらっしゃるのでしょうか。 ○げいまきまき氏 私たちの団体は、後者です。どちらかといいますと、ハームリダクション的な、害を減らすという視点を重要視しています。セックスワークを、すごく勧めたりとか、いいよねみたいなことは全く思っていないです。問題は問題として、大きなものがあると思っています、構造的にも。 ○北川座長 他にございませんでしょうか。よろしゅうございますか。それでは、これで終了とさせていただきます。   げいまきまき様、本日は、貴重なお話を頂戴いたしまして、誠にありがとうございました。お話しいただいた内容につきましては、今後の検討に役立ててまいりたいと思います。   以上で、本日のヒアリングは終了となります。   次回の会議では、冒頭で申し上げたとおり、引き続き、売買春に係る規制に関する実情等についてのヒアリングを行うことといたします。ヒアリングの対象者が決まりましたら、委員の皆様方には事務当局を通じて御連絡させていただきます。また、次回会議の日程についても、調整の上、なるべく早く確定させ、事務当局を通じて皆様にお知らせすることとしたいと存じます。   本日予定していた議事につきましては、これで終了いたしました。   本日の会議の議事につきましては、前回会議で確認したとおり、原則的な方針としては、発言者名を明らかにした議事録を作成するとともに、説明資料等についても公表することとさせていただきたいと思います。もっとも、「NPOぱっぷす」様の資料のうち、プライバシーに関わる部分については非公表としてもらいたい旨の御要望がございました。また、それ以外の部分につきましても、御発言や資料の内容を改めて確認し、ヒアリング出席者の御意向も伺った上で、プライバシー保護等の観点から非公表とすべき御発言等がある場合には、該当部分を非公表としたいと考えております。それらの具体的な範囲や議事録上での記載方法等については、御発言者との調整もありますので、座長である私に御一任いただけますでしょうか。              (一同異議なし) ○北川座長 それでは、そのようにさせていただきます。   本日はこれにて閉会といたします。どうもありがとうございました。 -了- -34-