売買春に係る規制の在り方検討会 (第3回) 第1 日 時  令和8年4月23日(木)   自 午前 9時58分                        至 午前11時58分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  1 ヒアリング         2 その他 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○栗原参事官 ただ今から、売買春に係る規制の在り方検討会の第3回会議を開催いたします。 ○北川座長 本日は、皆様御多用中のところ、御出席くださり、誠にありがとうございます。   本日、櫻井委員は、所用のため御欠席と伺っております。また、吉田審議官は、第1回会議及び前回会議を御欠席されていたため、御挨拶をお願いします。 ○吉田審議官 法務省大臣官房審議官の吉田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○北川座長 それでは、まず、事務当局から、本日お配りした資料について説明をしてもらいます。 ○栗原参事官 本日は、ヒアリング関係の資料として、ヒアリング出席者名簿、ヒアリング出席者の説明資料をお配りしております。 ○北川座長 それでは、議事に入りたいと思います。   前回会議で申し上げたとおり、本日は、ヒアリングを行うこととします。本日のヒアリング対象者については、委員の皆様の御意見を踏まえ、私の方で、ヒアリング出席者名簿に記載されている2名の方々を選定いたしました。また、本日はこれらの方々からのヒアリングに先立ち、本検討会にオブザーバーとして御参加いただいている、厚生労働省社会・援護局地域福祉課の御担当者から、「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」の概要や施行状況について御説明いただきたいと考えております。本日は、これらの方々からお話を伺うということでよろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○北川座長 ありがとうございます。それでは、本日の進行としては、まず、厚生労働省社会・援護局地域福祉課の御担当者から10分程度お話を伺った後、10分程度質疑応答の時間を設け、その後、ヒアリング出席者名簿に記載の順に、お一方ずつ、20分程度お話を伺った後、15分程度質疑応答の時間を設けるという流れで進めさせていただきます。   それでは、始めたいと思います。  まず、厚生労働省社会・援護局地域福祉課女性支援室長の中村彩子様から、お話を伺いたいと思います。   中村様、よろしくお願いいたします。 ○中村氏 本日は、御説明の機会を頂きまして、ありがとうございます。厚生労働省社会・援護局地域福祉課女性支援室の中村と申します。どうぞよろしくお願いいたします。   私の方からは、令和4年に売春防止法から女性の支援に関する部分を一部切り離して、法律の目的を、売春をするおそれのある女性の保護更生から、女性の福祉の向上へと改めて、新たに制定された「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」、いわゆる女性支援新法について、その制定の経緯と概要、同法に基づく支援の状況について御説明します。   まず、説明資料の1ページです。そもそも、なぜ女性だけを支援する法律が必要なのかという点について、改めて確認させていただきたいと思います。我々もよく、「なぜ女性だけを支援するのか。男性も様々な困難を抱えているではないか。」という御指摘を頂きます。この御指摘は、全くそのとおりなのですが、説明資料に記載しているのは、この法律が制定される際の検討会の取りまとめで触れられている記載です。そこに、「女性は、男性に比べ、性差に起因して社会的に様々な困難な問題に直面する場面が多い。」「このことによって、心身面及び社会的な面で複合的な課題を抱えることが多い。」と記載されています。この「性差に起因して社会的に様々な困難な問題に直面する場面が多い。」というのは、例えば、性被害であれば、被害者のおよそ9割以上が女性であるといったこと、それから、DV相談に関しても、およそ8割が女性であるといったことがあります。また、男女の賃金格差についても、男性に比べて女性は7割程度にとどまるという数字もあります。これらは統計的な数字ですが、女性に関して、そこに表れているような状況から生じる困難が、人生に様々な影響を与えているという方がかなり多くいるということが分かってきたということであり、女性の方が、女性だけがというよりは、男性に関する問題よりも先に、女性に関する問題が明らかになってきたということではないかと考えています。   説明資料に書いてある、心身面及び社会的な面で女性が抱える「複合的な課題」とは何かということですが、例えば、性暴力の被害者については、PTSDを発症する方がかなり多いということが言われており、その具体的な症状としてよく知られているものには、フラッシュバックとか、記憶が脱落してしまうといった症状がありますが、より問題が深いと思われるのは、売買春の場で起きたものも含めて、性暴力が女性の精神に深い傷を残すところだと考えています。具体的には、自己肯定感を喪失してしまうこと、また、人が信じられず親密な関係が作れないといったことによって、例えば、自傷行為をする方とか、アルコールや薬物などの依存症に陥る方もかなりいます。また、不特定多数の方と性的な関係を持つなどの自己破壊的な行動をとることも影響の一つと考えられておりますが、こういったことだけではなく、そこから更に次の不幸につながってしまうといったことで、課題が非常に複合的かつ複雑になってくるという問題があります。ここからの回復には非常に長い時間と専門的かつ継続的な支援が必要になるということから、この問題がクローズアップされてきたという背景があります。   こうした女性が抱える「複合的な困難」について、模式的に示したものが説明資料2ページです。説明資料2ページの上半分の部分に、現在直面している「見える困難」と書いてありますが、そこに書いてある様々な要因が相互につながり合っています。どれかの困難にはまると、別の困難にまたつかまりやすくなってしまうといったことも指摘されています。また、同ページの下半分の部分に、水面下の「見えない困難」と書いてありますが、現在の「見える困難」を抱える方の中には、過去の様々な逆境的な経験がある方が多くいるということも明らかになってきています。これらも、それぞれの要因がつながり合っているということです。   このため、女性支援においては、例えば、DV被害から逃げるといったこととか、生活困窮とか、家族の虐待によって帰れる家がないといった、現在の「見える困難」に対処するだけではなくて、過去の見えない傷が背景にあるということもきちんと把握した上で、中長期的な支援、例えば、トラウマやPTSDからの回復につながる支援であったり、知的障害や発達障害などの背景があるといったことも考慮して、いかにスムーズに地域生活に溶け込んでいけるかについての伴走支援などが必要になります。非常に時間がかかるものであり、高い専門性も必要とされるものですが、これができなければ、更に次の世代、子供の世代にも困難が連鎖して再生産されるということがあるので、ここは本当に欠かせない支援というか、我々が一番やらなければいけないことだと考えています。   こうした前提を踏まえて、女性支援新法に基づいて現在行っている支援の概要を説明します。説明資料3ページになります。法律上の義務として、現在、各都道府県に、「女性相談支援センター」が設置されています。また、市町村の福祉事務所等にも「女性相談支援員」が置かれており、女性からの相談を受け付けています。このうち、緊急的な保護が必要な方については、「女性相談支援センター」の「一時保護所」で保護し、また、中長期的な支援が必要な方については、「女性自立支援施設」というところに入所して頂いて、生活上の支援も含めて、様々な支援を行っていくことが公的支援の主な流れとなっています。   もちろん、支援が必要な方は、いきなり「女性相談支援センター」につながるとも限らないので、例えば、市町村の福祉事務所とか、生活困窮者向けの窓口など、様々な福祉の窓口、それから警察も含めて、幅広くキャッチしていくことが必要になります。こうした様々な機関と連携しながら、各自治体で息の長い支援を行うことが女性支援の大事なところであると思っています。   続いて、説明資料4ページでは、これまでの婦人保護、女性支援に関する歴史について列挙しています。まず、昭和31年に売春防止法が制定された当初から、先ほど申し上げたような公的支援の枠組み、当時は「婦人相談所」と呼ばれていた、現在の「女性相談支援センター」の相談窓口に当たるものとか、「一時保護所」、長期入所の施設というものがありました。支援の大枠自体は、現在も変わっていませんが、売春防止法の制定当初は、売春をするおそれのある女子だけが、法律上、支援の対象として位置付けられていました。ただ、売春防止法が制定された後のかなり早い段階から、その背景には、例えば、知的障害を有する方が多いことであったり、生活困窮とか家族関係の問題などがあることは分かっていたことから、これまで売春防止法の枠の中で、それらにも対処してきたという経緯があります。   その後、説明資料4ページに書いているとおり、平成12年にストーカー規制法のストーカーの被害者、平成13年にはDV防止法のDV被害者、それから人身取引の被害者などを順次支援の対象に加えながら、その他の困難を抱える女性についても、売春防止法の枠組みの中で、支援してきましたが、売春防止法の「保護更生」という名の下で、きめ細かい支援を行っていくことにはかなり限界があるということが、長らく指摘されてきた中で、昨今、特に、売春も含めて、若年女性の抱える問題等がクローズアップされてきたことを契機として、令和4年に売春防止法の一部を切り出して、新たに、女性の福祉の向上を目的として、性暴力被害や生活困窮など、売春に限らず、様々な困難を抱える女性への支援を行う法律として、この女性支援新法が制定されたという経緯です。   続いて、女性支援新法の概要についてですが、説明資料5ページに書いてあります。同ページの右側に書いてある売春防止法第3章の「補導処分」という、売春をした女性を補導して婦人補導院に入れるといった規定等を廃止して、第4章の「保護更生」の部分を切り出し、新たに、理念から大幅に見直して新法として制定されました。   この法律のポイントとしては、大きく3点あります。まずは、法律の目的・理念の部分です。売春防止法における「保護更生」から、女性の福祉の向上、人権の尊重といったことが法律の大目的として規定されています。また、2点目としては、困難な問題を抱える女性の支援に必要な施策を講じることを、国や地方公共団体の責務として明確化し、地域の中で回復を支援するという形にしています。3点目としては、民間団体との連携という部分です。支援の重要なパートナーとして、官民が協働して、女性への切れ目ない支援を行うことを法律上位置付けたもので、民間団体への財政的な支援についても規定しています。   続いて、法律の施行状況について、説明資料6ページに書いてあります。こちらは、「女性相談支援センター」と市町村等に置かれている福祉事務所等で受けているような「女性相談支援員」への相談状況です。電話とかSNSとか来所も含めて、全てのトータルの数ですが、令和5年度に66万7,000件ほど、令和6年度もほぼ同数の相談件数があり、支援のニーズは高まっているのが現状だと思います。   説明資料7ページには、具体的な相談内容を記載してあります。これは「女性相談支援センター」や「女性相談支援員」が受け付けた来所相談の内容となっています。全体を見ていただくと、現状、およそ55.0%を暴力被害によるものが占めています。これだけを見ると、夫等からの暴力、DVに関するものが政策の主としてあるように見えますが、このグラフにあるのは、飽くまで主訴であり、相談時に最も前面に出ていたものがたまたまこれだったということです。実際には、主訴に至る複合的な要因、先ほど申し上げたような幼少時の虐待や障害、それから性被害などを抱えている方が多くいるものと考えられます。   次に、説明資料8ページは、「女性自立支援施設入所者の心身の状況」です。こちらを見ると、入所者のうち、およそ6割以上の女性が何らかの障害や病気を抱えていることが分かると思います。中でも、精神障害者保健福祉手帳を保持している方の割合が、ここ10年ほどでかなり大きく増えていることが分かります。また、統計には出ていませんが、個々の施設の方に聞くと、過去に性被害や売春経験のある入所者の方もかなり多くいるとのことであり、中長期的な支援が必要だということが分かると思います。   最後に、本法の柱の一つとなっている民間団体による支援に関して、予算事業の御説明をします。これは、説明資料9ページに書いてある「官民協働等女性支援事業」というものであり、我々が、民間団体に対する支援の柱としている事業です。具体的には、例えば、夜の繁華街などでアウトリーチをするような場合とか、SNS相談等で対象者を把握するといった支援の一番最初のところから、家に帰れない女性に関して居場所を提供したり、自立に向けた生活再建等の支援を行うなど、入口から出口まで、官民が協働して、切れ目のない支援を行うことを目的としているものです。この事業の民間団体に対する支援対象となる活動も年々拡充をしており、今年度からは、ステップハウスにおいて自立を目指す女性に対して行う、資格取得や就職活動のための費用等の補助にも拡大しているところです。本事業の実施自治体や団体数も増加してきてはいますが、特に地方部など、まだまだ支援が足りない部分も多くあります。我々としては、こうした民間団体との協働も進めながら、売春している女性も含めて、支援が必要な女性に確実に支援が届けられる体制づくりを進めていきたいと考えています。   私からの説明は以上です。 ○北川座長 ありがとうございました。   それでは、委員の皆様から、御質問をお伺いしたいと思います。御質問のある方はいらっしゃいますか。  まず、私の方から1点、質問したいことがあります。説明資料3ページの「女性支援事業の概要」には、女性支援新法の下での「女性相談支援センター」の紹介があります。そこに、「女性相談支援センター」は、50か所ほどあり、各都道府県に1か所、場合によっては、複数あるところもあるという記載がありますが、「※」のところで、「配偶者暴力相談支援センターとしての位置づけあり」と書いてあります。確かに、今の御説明で、新法になってからは、幅広く困難女性を支援している状況がよく分かりました。DVの方の相談も多いし、それに対する支援が必要だということも分かったのですが、各都道府県設置の「女性相談支援センター」が「配偶者暴力相談支援センター」として位置付けられるということは、逆に言えば、売春のおそれのある女性については、ここでは対応しないのか、あるいは対応するのか、どちらの位置付けになっているのか教えていただければと思います。 ○中村氏 この配暴センターを兼ねて設置している「女性相談支援センター」においても、売春をされる方も含めて、相談を受け付けています。 ○川崎委員 貴重な情報提供を頂きましてありがとうございました。本当に分かりやすい説明でした。分かればで結構なのですが、説明資料8ページの「女性自立支援施設」の入所者の件なのですが、年齢の分布であるとか、精神障害者保健福祉手帳保持者の障害の種類についての詳細な情報はお持ちでしょうか。 ○中村氏 自立支援施設の入所者に関して、今、手元に年代のデータがないので、申し訳ありませんが、そこはお答えが今できない状況です。それから、精神障害者保健福祉手帳の保持に関して、統計上、具体的な障害の内容までは確認できていません。説明資料8ページで示しているのは、飽くまで、精神障害者保健福祉手帳を保持している方の割合の数字です。 ○川崎委員 精神障害ですから、当然、認知症も入っていると理解してよいのですよね。 ○中村参考人 はい、御指摘のとおりです。 ○古川委員 支援事業のいわば出口として、「自立」が掲げられていますが、一度は自立まで達したとしても、また相談や支援を要することもあり得ると思います。そのような継続性とか、繰り返しといったことは、事業全体として、どのような現状にあると把握されていますか。分かる範囲で教えていただければと思います。 ○中村氏 まず、一度公的な支援につながったとしても、その後の自立といっても、例えば、また似たような状況に本人が戻ってしまったりだとか、なかなか地域で定着できないではないかというところに関しては、全く御指摘のとおりであり、我々としても、「アフターフォロー」と呼んでいる支援をする必要があると考えております。   具体的には、例えば、「女性自立支援施設」を退所する際に、ステップハウスのようなところで実際に1人で暮らすための生活訓練みたいなことをしたり、支援員が一緒に付添いをしながら徐々に自立に向けて進めていくということもやっているのですが、それでも退所した後も地域でなかなか定着ができない精神的に不安定な方等も多く、また以前と同じように、例えば歌舞伎町などに戻ってしまう方もいるので、そういったところも含めて、例えば、施設の対象者に対しては「アフターフォロー」という形で定期的に連絡を取ったり、又は施設の方にまた時々来ていただいてお話を聴いたりといったことは実施しています。また、民間団体においても、同様に、一度支援の手を離れた方でもその後の生活が安定しなくてまた戻ってきてしまうという方はいますので、説明資料の最後の9ページに「アフターケア」と書いてありますが、「官民協働等女性支援事業」では、そういった方に対する「アフターフォロー」についても、予算措置を行い、事業の支援対象にしているところです。   ただ、我々は、こういった事業を大事だと思って進めてはおりますが、どうしても全ての女性に対して、公的支援又は民間団体の支援が終わった後、十分にフォローができているかというと、それぞれの女性の状態は日々変わることもあり、かなり限界があります。特に、例えば、歌舞伎町に立っているような女の子でいえば、精神的に不安定な方が多く、どんなに支援をしても、またホストのところに戻ってしまうという方はかなり多くいるので、我々としても、公的な支援機関と民間団体が一緒に協力しながら、なるべく本人の状態をきめ細かく確認をしていくといった継続的な支援は欠かせないと思っています。 ○保坂委員 御説明ありがとうございました。1点御質問させてください。女性支援新法が成立・施行され、従来、売春防止法の「保護更生」の枠組みに規定されていた制度が女性支援新法に移行したと理解しているのですが、制度が移行した際に、売春防止法の「保護更生」の対象とされていた女性の方はどれくらいいたのでしょうか。 ○中村氏 法律が施行される段階で、売春をしていた方がどれくらいいたかについての正確なデータはありませんが、御参考になると思われる数字としては、例えば、説明資料7ページにある、今、「女性相談支援センター」の方に寄せられている来所相談のうち、売春を主訴として相談をされる方がどれくらいいるのかというところで言いますと、実は、決して多くはありません。令和6年度で9,400件ほどの来所相談がありましたが、この中で売春を主訴として相談をされた方は19人ほどであり、数字自体はすごく小さいです。   ただ、売春の背景を持っている方が全くいないかというと、例えば、ホストにはまって売掛金のために売春をさせられているという女性がセンターに相談に来た場合に、訴えの内容が借金を何とかしたいということであれば、説明資料7ページの「生活困窮」に割り振られることもあり、帰れる家がないということであれば、「帰住先なし」に分類されることもありますので、決して、現状、センターや自治体の方に寄せられる相談の中で、売春をしたことがない方からの相談ばかりではないということです。主訴として明確に表に表れている数は余り多くありませんが、お話を聞いていくと、過去に性暴力の被害に遭ったとか、売春をしていたといった背景がある方もいると聞いておりますので、法律が変わるタイミングでも、そのような方は多くいたと思いますし、現状でも、引き続きいると考えています。 ○北川座長 ほかにはございませんでしょうか。   それでは、なければこれで終了とさせていただきます。中村様、ありがとうございました。  それでは、次に、東京都女性相談支援センター所長の髙岸聡子様からお話を伺いたいと思います。   改めまして、座長を務めております北川です。本日は、御多用中のところ、ヒアリングに御協力いただき、誠にありがとうございます。まず、髙岸様から20分程度お話を伺い、その後、15分程度、委員の方から質問があれば御回答いただきたいと思います。   それでは、どうぞよろしくお願いいたします。 ○髙岸氏 皆様、こんにちは。東京都女性相談支援センター所長の髙岸でございます。本日は、「東京都女性相談支援センターにおける困難な問題を抱える女性への支援の状況等について」というテーマでお話をさせていただきます。   (スライド2枚目)  まず、当センターの根拠法令等についてです。当センターは、東京都が定めた条例に基づき設置されていますが、その根拠法令は、先ほど厚生労働省からも御説明がありましたとおり、「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」です。この法律をこの後説明の中では「女性支援法」とさせていただきたいと思いますが、これ以外に、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」、すなわち、いわゆるDV防止法や、「ストーカー行為等の規制等に関する法律」、さらには、「人身取引対策行動計画」においても、女性相談支援センターが行う業務や支援について規定されていますので、業務の中で対応しているという状況です。 (スライド3枚目)   「女性支援法」においては、「女性相談支援センター」、「女性相談支援員」、「女性自立支援施設」という3つの支援の枠組みが定められていますが、それぞれの都内の状況について、本日の説明の前提となるので、御説明したいと思います。   「女性相談支援センター」は、各都道府県必置とされており、全都道府県に設置されていますが、東京都では圏域を分けて、本所と支所の2か所設置されています。「女性相談支援員」は、都道府県では必置ですので、全都道府県に置かれていますが、基礎的自治体である区市町村では、置くよう努めるという努力義務となっており、全国的には、設置されていない自治体も多く見られますが、東京都では、全ての区市に「女性相談支援員」が配置されていますので、支援をするに当たりましては、都の「女性相談支援センター」と区市の「女性相談支援員」が連携協力して女性を支援する体制がとられています。「女性自立支援施設」については、東京都内には5か所の施設がそれぞれ社会福祉法人立で設置されています。 (スライド4枚目)   「東京都女性相談支援センター」の設置組織についてですが、東京都内には、「センター本所」と「多摩支所」の2つのセンターが設置されています。スライドのクリーム色の部分が女性への直接相談や支援を担う部門ですが、本所の方では「保護担当」という部門が設置されており、これが「一時保護所」の機能を持っています。   一時保護は、センターの「一時保護所」で直接実施するほか、「一時保護委託施設」への委託によっても実施しています。「一時保護委託施設」は入所型の施設のほか、シェルター専門の施設などがあります。「一時保護所」や「一時保護委託施設」については、DV被害者等のシェルター、加害者の方から逃れて避難する場所という機能を有しておりますので、所在地は秘匿ということになっています。そのため、当センターも所在地秘匿という扱いになっていることを御承知おきいただきたいと思います。 (スライド5枚目)   「東京都女性相談支援センター」の業務内容についてです。各都道府県共通するものではありますが、説明させていただきます。まず、相談業務については、電話相談、来所や出張相談のほか、東京都ではLINE相談を実施しています。  スライド5枚目の下に書いてある「医学的・心理学支援」とは、医師、精神科医師、看護師などの医療職による心身の健康に関する医学的相談、それから心理職員による心理学的相談などのことです。御本人の意向も踏まえながら、心理アセスメントや心理的支援などを実施しているところです。   「一時保護業務」については、緊急の保護を要する女性の方の保護を行っており、365日24時間体制で受入れを行っております。  このほか、「女性自立支援施設」への入所措置決定や、「女性相談支援員」等の支援者向け研修の実施、関係機関との連絡調整等を行っています。  また、「東京都女性相談支援センター」は、DV防止法に基づく「配偶者暴力相談支援センター」としても位置付けられているので、その機能として、例えば、保護命令の手続を執りたい方への情報提供等の支援や、証明書の発行といった業務を行っています。 (スライド6枚目)   ここからは相談支援の実績について御説明します。スライド6枚目のグラフは、相談件数全体の状況について、DV防止法が施行された平成13年度以降の推移をグラフにしたものです。電話と来所等を合わせた相談受付件数全体が折れ線グラフであり、目盛りはスライド右側の目盛りであるところ、右肩上がりの増加傾向となっています。特に、令和4年度から折れ線グラフが急上昇していますが、令和4年7月から電話相談を一部委託することにより受付時間や曜日を拡大したところ、件数が1万件増となり、現在は4万件台の対応状況となっています。このうち、DVを主訴とする相談がスライド下の棒グラフであり、目盛りは左側の目盛りであるところ、令和6年度は2,970件で全体の6.7%という状況でした。 (スライド7枚目)   こちらは、一時保護の実績を示したものです。一時保護を利用された女性本人については、「単身」、つまり、女性御本人のみでの御利用が337件、お子さんを連れて母子で利用された女性の方が139件、合計476件ありました。「同伴児童等」、つまり、女性と一緒に一時保護を利用された児童等が220件ありましたので、合計696件の利用となっています。1日平均の保護人数は、都内全体で35.2人という状況であり、1人平均、一時保護される期間の日数は19日でした。 (スライド8枚目)   こちらは、一時保護となった理由の主訴を示したものであり、一番主立った理由を挙げて統計をとっています。DVが最も多く、半数以上を占めておりますが、これに親や子供からの暴力とか親族からの暴力、また、交際相手からの暴力などの暴力関係を主訴とするものをまとめると、約7割が暴力被害による利用となっています。そのほか、居所なし、つまり、住まいを失って住む場所がないなどを主訴とする一時保護も毎年20%を超える状況となっています。 (スライド9枚目)   こちらは、一時保護利用者の年代別の状況を示したものです。令和6年度の女性本人の年齢別の分布は、スライド左側の円グラフのとおりであり、20歳代が32.8%、30歳代が25%と20代、30代の方の利用が多くなっており、最高年齢が91歳、最年少は18歳でした。スライド右側の円グラフは同伴児童等の年齢であり、こちらは乳幼児が多い状況で、小学生までの比較的低年齢のお子さんが9割を占めるという状況であり、これは例年同じ状況です。 (スライド10枚目)   こちらは、一時保護を利用された後の退所先の状況を示したものです。「社会福祉施設等」や「女性自立支援施設」と書いてあるところが施設への入所となりますが、こういった施設に入所をされる方が半数強の54.8%となっており、「帰宅」や「帰郷」等がこれに次いで多く、18.6%という状況になっています。 (スライド11枚目)   ここからは、一時保護の支援の流れや関係機関との連携等について御説明したいと思います。まず、一時保護は、対象となるかどうかを確認しながら実施することになります。一時保護の対象者は、「緊急に保護をすることが必要と認められる女性」であり、これは、このスライドに挙げたような状況に該当する方とされており、また、その女性がお子さん等を同伴される場合は、その同伴された方も保護の対象となります。   一時保護の対象者のまず1番目が、「困難な問題を抱える女性」です。困難な問題にはいろいろあり、生活困窮者、性暴力・性犯罪等の被害者、家族関係が破綻して御家族と一緒に暮らせないなど、様々な問題を抱える女性の方が対象となります。それから、DV防止法上のDV被害者の方、人身取引の被害者の方、ストーカー行為の被害者の方などが一時保護の対象者とされております。  一時保護の利用期間は概ね2週間とされていますが、2週間経ったらすぐに退所するという仕組みにはなっておらず、必要な期間御利用いただけるということで対応しており、一人平均の保護日数は、先ほど申し上げたとおり、令和6年度は19日という状況でした。いずれの場合も、緊急性があって、なおかつ御本人自身が一時保護を希望していることが大前提になります。御利用に当たっては、基本は、まず区市の「女性相談支援員」に御相談していただき、「女性相談支援センター」は、そこからの依頼により対応するのですが、役所が開いていない夜間休日については、警察署からの依頼により一時保護の入所に対応するという仕組みになっています。 (スライド12枚目)   こちらは、一時保護の入所から退所までの流れを示したものです。困難な問題を抱えて保護を希望する女性は、平日日中であれば、区市の福祉事務所等に配置されている「女性相談支援員」に御相談いただき、そこでいろいろ御相談、聞き取りをして、保護の必要ありと判断した場合には、「女性相談支援センター」に一時保護の依頼が入るという仕組みになっています。休日・夜間については、警察の方に御相談いただいて、そこで事情を聴き取り、保護が必要という場合は、同様に、「女性相談支援センター」に一時保護依頼の連絡が入ることになっています。   一時保護を実施している間に、医学的支援、心理学的支援、日常生活の支援、同伴児童の支援等を行います。一時保護の入所中についても、最初に関わった区市の「女性相談支援員」の方に一緒に相談に関わっていただき、退所に向けて、例えば、生活保護の申請が今後必要になるとか、何らかの福祉施策の利用が必要だという場合には、「女性相談支援員」が該当区市の方で利用の手続を行っています。そうして、一時保護の対象者御本人の意向等も踏まえて、施設へ、帰郷へ、あるいはアパート転宅等々へ退所先を決定していくことになっています。 (スライド13枚目)   利用者支援における関係機関との連携の状況についてです。まず、区市の福祉事務所や「女性相談支援員」は、例えば、一時保護であれば、入所前から退所後まで引き続き連携しながら支援を行います。女性御自身が自分で支援を求めたいという場合には、区市の窓口で御相談いただくことになります。警察については、休日・夜間の相談受付から一時保護所までの移送に関わるほか、DV被害者の保護の場合については、安全確保等の役割を担っています。   売買春に関わった女性については、現在では、かつてのように、警察で売春防止法第5条違反で逮捕されて、そこから即座に一時保護をするという仕組みではありませんが、警察で逮捕・勾留された方が、その後、福祉につなぐ必要があると判断された場合には、警察において、区市の女性支援の担当や福祉事務所等を案内したり、あるいは実際に連れていってつなぐという対応をしているところです。   児童相談所や子供家庭支援センターにおいては、お子さんを連れた母子ケースなどの場合に、必要に応じて入所中から面接等を行ったり、あるいは、退所後の、地域での生活に向けた地域での見守り体制を作るなどの連携を行っているところです。  また、その他、ケースの状況に応じて、裁判所、弁護士や法テラス、出入国在留管理庁や大使館等とも連携を取って支援を行っています。 (スライド14枚目)   次に、民間団体と連携・協働した支援についてです。先ほど厚生労働省からも御説明があったところですが、若い世代の方はなかなか公的な相談機関につながりにくいという状況があり、民間のノウハウを生かして支援を要する女性を早期に発見して支援につないでいく仕組みが有効ですので、東京都では「女性相談支援センター」に担当部署を設置して、若い女性の方の支援に取り組む民間団体と連携・協働して支援を行う体制を採っています。   昨年までは、東京都では、「若年被害女性等支援事業」として民間団体への補助を行っていましたが、今年度からは、「官民協働等女性支援事業」として実施することになっています。民間団体に定期巡回訪問を行い、個別に相談に対応したりして、民間団体と協働して支援をしています。     「東京都女性相談支援センター」における女性支援の実情についての私からの説明は以上ですが、私たち支援機関が対応している女性の方は、場合によっては、生育の過程から、幼い頃から、様々な困難な経験を積み重ねてきている場合も多く、心身に非常に傷を負っておられます。暴力被害や生活困窮、病気や妊娠出産などを契機に支援対象となって私たちの前に現れるという方々ばかりです。支援の現場では、お一人お一人に寄り添った支援をすることに努めておりますが、こうした傷ついて支援を要する女性の実情や支援の必要性について、是非、関係機関の皆様の御理解、御協力をお願いしたいと存じます。   私からは以上です。御清聴ありがとうございました。 ○北川座長 どうもありがとうございました。   それでは、委員の皆様から、御質問をお伺いしたいと思います。御質問のある方はいらっしゃいますか。 ○大橋委員 本日は貴重なお話どうもありがとうございました。今ほどのお話をお聞きしておりますと、住まいがないとか、妊娠出産したといった場合に、その背景に売春がある場合があるということだとお聞きしました。お話からしますと、そういった問題を持っておられる方には、若年の方も相当多いのではないかと感じましたが、スライドの9枚目を拝見しますと、一時保護利用者には18歳未満の方はおられないという記載がございます。これは、恐らく児童相談所の方で対応しているからということなのではないかと思うのですが、そういう理解で合っているのかどうかということと、仮にそうだとすれば、児童相談所との具体的な連携とか、振り分けといったやり方について御教示いただければと思います。 ○髙岸氏 まず、風俗関係のお仕事をされていても、必ずしも売買春をされているとは限りませんので、そういうことで、先ほどの説明は御理解いただければと思います。   御質問については、まず、私どもも、18歳未満の方を保護することはあり、スライド9枚目にはゼロと書いてあるのですが、18歳未満の方の場合には児童相談所の方が本来対応されますので、児童相談所の方からの依頼・委託により一時保護の対応をするという受入れを行っており、18歳未満の方は、必ず児童相談所との連携の下での保護となるのですが、実績的には、令和6年度はゼロとなっています。しかし、年度によっては、18歳未満の方、妊婦の方で非常に若い方で、中学生でも妊娠される方もおり、そういう方について、児童相談所では対応が難しいという場合には、「女性相談支援センター」で対応しています。   それから、スライド9枚目には、18歳以上の方でも若い方、18から19歳の方について、36人という数字が書いてありますが、これらの方々が、全て家出をしてきたとか、性的な問題、風俗とかということではなく、単に親からの暴力から逃れてきて、どこにも頼るところがないということで区の方につながって支援を受けられる方もいますので、必ずしも若い方が性的問題の方が多いということではありません。 ○佐藤委員 本日は、貴重な情報をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。私は、スライドの14ページの夜間のアウトリーチ活動に非常に興味を持ちました。アウトリーチ活動は、多分、声掛けをされるのだと思うのですが、どういう方を対象に、どれくらいの人数に声掛けをして、そのうち支援センターを頼ってくださる方がどれくらいいるのかというのはお分かりになりますでしょうか。 ○髙岸氏 このアウトリーチ支援自体は東京都の女性相談支援センターが主体的に行っているものではなく、東京都の補助を受けた民間団体が事業の一環として実施しており、アウトリーチの方からつながってきた女性の方の支援を一緒に行うということをしています。   この内容は、民間団体のスタッフが、例えば大久保公園界隈なども対象に入りますが、深夜の繁華街等を巡回して、家に帰れずにいる若い女性の方などに対して、何か困っていることがないかについて声掛けをして尋ねるなどし、そこから何か支援が必要な方、例えば、「今日泊まるところがない。」とか、「どこにも行くところがないんだ。」という方が、パパ活とかそういう方に行ってしまうのではなくて支援につながるように声掛けからの相談を行うという取組です。件数については、今、手持ちで持ってきておりません。 ○入江委員 今日は、貴重なお話をどうもありがとうございます。私から聞きたいのが、一時保護のキャパシティーというか、1日あるいは一度に受け入れられる人数が最大どれくらいなのか、また、稼働率というか、一時保護の施設が、常にいっぱいいっぱいの状態なのか、それとも空きがあるような状況なのかを教えていただければと思います。 ○髙岸氏 一時保護の枠数については、余り外には出していない数字となっており、直営のセンターの「一時保護所」の方はセンターの居室の中にあるだけの枠数ということにはなりますが、これ以外に、10か所の施設を「一時保護委託先」として確保しており、必ず空けて準備をしておく部屋と空いていたら利用できる部屋をそれぞれの委託先においてもたくさん確保することにより、一時保護が必要な方のニーズに対応できるようにしています。 ○大沢委員 本日は、貴重なお話をありがとうございました。関係機関との連携もよくとられているということがよく分かったのですが、捜査機関との連携、例えば、「立ちんぼ」等によって警察に摘発された女性が、処分保留等によって釈放される際に、この相談支援センター、一時保護あるいは民間支援団体につなげるような体制というのは、恒常的なものとして組まれているのか、それとも現場の判断でその都度やっている状況なのかを伺いたいのと、もしそうした体制を構築するとしたらどんなことが必要とお考えになっているかについて、お話を伺えればと思います。 ○髙岸氏 逮捕・勾留をするのは警察の方になりますので、私からは、警察はこういうふうに御対応されているのかなと相談機関の方で思っていることをお伝えすることになりますが、東京都内の特定の警察署、例えば、歌舞伎町で摘発をされても必ずしも新宿警察署ではなく、いろいろな警察署の方が同じように御対応されているようです。友達がいるから家はないけれども大丈夫という方はそうでもないのだと思いますが、身寄りのない方、身を寄せるところがなくて困っている、お金もなくて、住む場所もなくて、体も疲れていて、もう「立ちんぼ」をやりたくないという方がいる場合には、必ず福祉の方につないでくれていると思います。警察からの福祉へのつなぎの連絡は比較的入ってきておりますので、特定の警察署がその場の状況だけで対応されているとか、特定の警察官の方だけが対応されているということではなくて、警察として対応されているものと考えています。 ○薄井委員 本日は、大変貴重なお話をありがとうございました。若い子には、支援につながることが、すごくハードルが高い状況があるのだと思うのですが、先ほどの話でも、民間団体と連携して、なるべく支援につながりやすいように活動をされているということでしたが、実際にそういった活動でつながってくる人は増えている状況にあるのかといった現状をお聞かせ願えればと思います。 ○髙岸氏 民間団体の方では、アウトリーチで声を掛けるだけではなくて、立ち寄る場所と泊まれる機能を持つ場所の両方の意味での「居場所」といったところで若い女性が立ち寄りやすい環境を作りながら、そこから声を掛けて、相談するように促したりという働きかけをしてくれていますので、これまで役所に行くことは敷居が高いと感じていた女性の方や、役所の閉まっている時間帯にいろいろ活動されている女性の方についても、これまでにはなかったような早期発見、早期の支援につなぐという取組ができ始めているのではないかと思います。   また、現在では、先ほど一時保護の実績の話でも触れたように、18歳、19歳の方で、何か困ったことや、嫌なことがあって地方から上京されてくる方も含めて、経済的搾取、教育的な虐待、身体虐待等を受けて家族の下にもういられずに逃げてくる若い女性の方について、東京都内においては、仮にそういう方が福祉事務所の方に御相談に来られたとしても、きちんと受け止めて支援をしていくようになっています。以前はそういった若い方までは余り支援はされていなかったのかもしれませんが、最近こういう未成年の方の保護というのも出てきておりますので、そういった若い女性の支援の方に少しシフトしてきているところもあるのではないかと感じております。数字ですぐ分析して、一方向にどんどん増えるということではありませんが、現場もそういう前提で動いていると考えております。 ○古川委員 支援センターにおける退所後の支援に関して、例えば、いわゆる夜の仕事等が要因となって困難な状況に立ち至った女性が相談に訪れた場合に、出口支援、例えば、退所後の就労支援等において、どういう悩みどころがあるかを可能な範囲で聞ければと思います。具体的には、例えば、同じような仕事を続けていきたいという考えを持つ方もいるかもしれませんが、それが困難な状況の要因の一つになっている可能性もあることからすると、相談に乗って伴走しようとするときにはいろいろと悩みどころもあるのではないかと拝察いたします。そういったことから、可能な範囲で、現場ではどういったところに就労支援等の悩みどころがあるか、教えていただければと存じます。 ○髙岸氏 現在、私どもは、「こういう方向がいいですよ。」ということで進路、退所先の方向性について、御本人に強制することはできません。まずは、御本人様がどうしたいのか、どう生きたいのかという御本人の意向の尊重が大前提になりますので、「どうしますか。」とお聴きします。ただ、保護を受けられた時点では、心身ともに疲れ果てていたり、本当は通院治療が必要なのに医療にうまくつながっていなかったり、就労する前の段階のいろいろ課題がある場合も多くありますので、健康を回復していただくことや、必要な治療があれば医療をきちんと受けていただくことを、早ければ一時保護期間中にも開始しますし、次のところに移ってから開始をする場合もありますが、そういったことを福祉の女性相談支援員と一緒に支援しているところです。   もう結構お元気で、すぐ働けそうということであれば、一旦は、先ほどのスライド12枚目に「宿所提供施設」という名称で載っていたような、何らかの施設に移った後、そこで働いてお金を少しためてアパートに移られるということも可能ですが、心身にいろいろとダメージを負われていて、少し回復を丁寧にしながら支援も丁寧に見ていくことが必要だという方の場合には、「女性自立支援施設」という入所施設もあります。「女性自立支援施設」入所のための費用などはかからず、同施設では就労支援もするので、「女性自立支援施設の方への入所をされてはいかがですか。」とお勧めして、御本人も了解されれば、そちらの方に入所した上で、必要な通院等をしたり、もう少し支援活動をしたりしながら、そこから可能な範囲で、アルバイトから始めて働き、お金をためたら退所していくということもあります。そういったところで一時保護の後も長期的な支援が必要な方については、この女性支援の枠組みの中で対応しつつ、そこまで丁寧でなくても大丈夫という方については、他の福祉施策を使って対応しています。このように、「女性自立支援施設」の方は、就労支援等も一緒にやりますので、丁寧な支援が必要な方にはとても有効な施設だと思っております。 ○北川座長 他にございませんでしょうか。なければ、これで終了とさせていただきます。   髙岸様、本日は、貴重なお話を頂戴いたしまして、誠にありがとうございました。お話しいただいた内容につきましては、今後の検討に役立ててまいりたいと思います。  それでは、次に、グラディアトル法律事務所代表弁護士の若林翔様からお話を伺いたいと思います。   座長を務めております、北川です。本日は、御多用中のところ、ヒアリングに御協力いただき、誠にありがとうございます。まず、若林様から20分程度お話を伺い、その後、15分程度、委員の方から質問があれば御回答いただきたいと思います。それでは、よろしくお願いいたします。 ○若林氏 グラディアトル法律事務所の弁護士の若林と申します。よろしくお願いいたします。著書で「歌舞伎町弁護士」という本を書いており、ナイトビジネス、キャバクラ、ホスト、風俗、それからスカウトとかAVも含めて、そういった案件を数多く扱っています。弊所の累計の相談件数は、約5万件ぐらいはあり、顧問先の店舗数、これは法人数ではなくて店舗数なのですが、累計で1,000店舗くらいは顧問弁護士をしてきました。   風俗店や、店のキャストから、直接お話を伺うことがありますし、ホストとの兼ね合いでトラブルになっているキャスト側から依頼を受けることもあれば、逆にホスト側から依頼を受けてそういった方と交渉することもありますので、そうした中で見てきた実態や現実についてお話しさせていただければと思います。また、本日の検討会に出席するに当たり、風俗店の経営者の方や働いている女性たちからも、どういった現状なのかを聴いてきましたので、そういった生の声についても届けさせていただければと思います。 (スライド2枚目)   本日の流れとしては、まず、売春防止法の改正、買春の処罰化といったことによって、性風俗産業にどのような影響が出るのか、その影響の大きさについて、次に、幾つかあると思われる売春防止法の改正の方法として、どういう方法を採ったときにどのような影響が生じるのかについて、さらに、改正を押し進めたい人の意見の根幹には、女性の性的な搾取などがあると思うので、それに対して当の女性たちがどう思っているのかについてお話しさせていただいた上で、スライド2枚目の「4」として書いてある地下化のリスクについて、「5」として書いてある美人局の増大のリスクについて、「6」として書いてある処罰範囲の曖昧さについて、「7」として書いてある今回の議論のきっかけになっている事件等についての事実認識には誤りがあるのではないかというところについて、「8」として書いてある「不均衡論」についてお話しさせていただいた上で、「9」として書いてある他の法律での対応も可能なのではないかということについて、「10」として書いてある私の思う結論について、それぞれお話しさせていただければと思います。 (スライド3枚目)   スライド3枚目の「1」についてです。そもそも、売春防止法が改正された場合に影響が生じる可能性のある「性風俗産業」というものが、どの程度の規模なのかについて、まず、風営法上、性風俗産業というのは許可制ではなく届出制であるところ、令和6年の届出件数が3万3,890件あります。そこから推計すると、約215万人の女性が性風俗店で働いていると推計されます。この数字に関しては、正確なものではないのですが、大手風俗ポータルサイトに掲載されている店舗数が5,785店舗、そのサイトに掲載されている女性数が約37万4,000人であり、この2つの数から推計すると約215万人の女性が働いているのではないかと推計されます。もちろん、届出を出していない店で働いていたり、料亭とかエステという形態をとっているところは届出も出しておらず、ポータルサイトにも載っていないこともあるので、実際の働いている女性の数は、これよりも多い可能性もあるかなと思います。   市場規模についても、幾つかの研究データがあるのですが、2兆円から5兆円くらいの市場規模があると言われています。いずれにしても、性風俗産業は、ものすごく大きな産業であり、働いている人たちもものすごくたくさんいます。さらに、性風俗産業の周辺には、広告代理店や広告会社、不動産関係の会社といったものもあり、そこで働いている方もたくさんいるので、性風俗産業の周辺も含めてかなり大きな市場であって、働いている方たちがたくさんいるというところは御理解いただければと思います。 (スライド4枚目)   その上で、どういう改正をした場合にどういう影響があるかということについてです。売春防止法の改正の論点としては、ざっと考えて3つあると考えています。一つは、「立ちんぼ」など売春防止法の勧誘罪に対応する部分について、買春側のみを処罰対象とするというのがあると思います。この場合については、性風俗産業に対する影響は限定的なのではないかと考えています。性風俗産業の方というのは、「立ちんぼ」がどうこうという話ではなく、届出をした上で、店舗で営業をしているとか、デリバリーヘルスの営業をしている方に対する影響はそこまで大きくはないのではないかと考えています。   次に、スライド4枚目の真ん中の「②」というのが、広く売買春を処罰する改正をするものであり、北欧モデルと言われるものもある、そもそも売買春自体が犯罪であるという改正をするパターンです。この場合、性風俗店に関して、かなり大きな影響があります。特に、性行為が前提となっているような類型の性風俗店に関しては、大きな影響があるのではないかというところです。   それに加えて、さらに、「売春」の定義を性交類似行為まで拡大して、金銭を伴う性交類似行為を禁止するという規定にする場合には、性風俗産業は、ほとんど全滅するのではないかと思います。そうなると、そこで働いている人たちは失業してしまう。さらに、そのかなり大きな市場規模が大きく破壊されてしまって、経済的なダメージもかなり大きいのではないかと考えています。   その上で、3つの論点について、現状を踏まえた視点として、後から出てくる「不均衡論」といったところを考えるのであれば、売春防止法第5条の勧誘罪を廃止することが最善であり、それが難しくても、風俗産業に与える影響を考えれば、現行法をそのまま維持することが良いのではないかと考えています。やむを得ず、売春防止法の改正をする部分があったとしても、「立ちんぼ」という部分、つまり、売春防止法第5条の勧誘罪に対応する、買春側の行為のみを処罰対象とするという改正であれば、ダメージは少なくなるのではないかと考えています。 (スライド5枚目)   買春の犯罪化をした場合、どのような影響が与えられるかについて、そもそも買春を犯罪化したいと考える根拠は、女性を守ることだと思うんですね。ただ、その守るはずの女性たちが、どういう理由で性風俗産業で働いているかというと、厚生労働省関係の研究データから引用させていただいたところでは、一番多いのが生活費のため、2番目が借金のため、それから貯金のためであり、お金に関する動機が圧倒的に多い。働く動機としてお金のためという動機が多い性風俗産業に従事する人たちが、結局、売春防止法の改正によって失業してしまうとか、収入が減ってしまう。そもそもお金が必要で性風俗産業で働いているにもかかわらず、その仕事を奪ってしまうということが生じるのではないかが一番の懸念点です。   その影響については、スライドの「案③」の「売春」の定義を性交類似行為まで拡大する場合であれば、壊滅的でかなり大きく、性交類似行為まで含まないとしても、「案②」の広く売買春を処罰する場合には、影響は甚大であろうと思います。「案①」の「立ちんぼ」からの買春のみを処罰する場合は影響は限定的ではあるのですが、萎縮効果といったところから、風俗店に行く客が減ってしまうことも考えられるので、少なからず影響はあるのではないかと思います。   実際、同じようなことがAV新法制定の際にも起きており、そもそもAV新法はAV女優を守るために作っていたのですが、結果的には、実際に働いていたAV女優の方々からは、「仕事を奪われてしまった。」、「収入が減ってしまった。」といった声がかなり多く上がっていたというのが実状です。今回、売春防止法を改正するということになれば、AV女優の場合よりも更に大きな規模で、性風俗で働いている方たちからそういった声が上がり、実際にその方たちが生活に困ることになってしまうといったリスクがあるのではないかと考えています。働く人たちへの経済的なダメージという点プラス、性風俗産業はかなり大きな市場規模なので、そこに対する経済的なダメージという点でもかなり大きいのではないかと考えられます。 (スライド6枚目)   次に、女性の自己決定権についてです。買春の犯罪化、処罰規定を設ける趣旨として、買春が性的搾取だからであるとか、そもそも性風俗店で働くことや売春をすることに真の同意はないのだという考え方が前提とされており、そのような女性を助けるために、買春を犯罪化する改正が必要なのだという話なのですが、性風俗店で働いたり売春をする女性に対して、自律的に同意する判断ができないのではないかという考え方をすること自体が女性の自己決定権に対する侵害という側面があるのではないか、レッテルを貼っているのではないかという見方はあるところです。   実態として、先ほどのスライド5枚目の基となった厚生労働省の調査でも、性風俗店で働く動機として、「興味があった」、「この仕事が好き」、「経験してみたかった」といった積極的な動機が挙がっています。それから、実際に私の方で聴取した話として、「自由に使えるお金を増やしたい。」、「ブランド物が欲しい。」、「良いところに住みたい。」、「居酒屋より楽に稼げる。」といった話がありましたし、また、もっとリアルな話として、「『東京カレンダー』に出てくるような生活とか『インスタグラム』で見ていたような生活をしたいと思って上京してきた。しかし、普通の昼の仕事ではそんなお金は稼げない。だから夜の仕事をしているんだ。」という話も聞いています。それから、「親や将来の旦那さんに頼らず自分の力で稼いで生活をしたい。」と言っている方もいました。   また、先ほどの買春は性的搾取であるとか、性風俗店で働くことや売春をすることに真の同意がないという考え方に対しては、「『かわいそう。』と言われることがむかつく。」、「主語をでかくするな。」という言葉があったり、既婚者で風俗店で働いている方で、「M男君をいじめるのが楽しい。だから結婚しても風俗店で働く方が楽しいから続けている。」と言う方もいました。  それから、昨今は女性用風俗もはやってきており、女性側が逆に男性を買うといった産業も増えてきています。そういった点から、真の同意はないとか性的搾取であるという考え方は、実態から掛け離れているのではないかというのが生の声です。   また、昨今、ユーチューブ、TikTok、インスタグラム等のSNSでは、性風俗店で働いている人たちについても、「顔出し」をしてSNSを始める人が増えています。「顔出し」をすることで集客したり、ファンを広げて自己実現したりしていますが、性的に搾取されている、真の同意がないという状況なのであれば、SNSにおいてそういった行為をすることはなかなかあり得ないのではないかなと感じます。   無店舗型性風俗特殊営業を営む性風俗店の事業者や従業者を持続化給付金等の支給対象から除外することが平等権に反するかどうかが争われた持続化給付金不支給事件の最高裁判決における裁判官の反対意見の中で、持続化給付金等を不支給とすることは、性風俗店やそこで働いている人たちが一般の人よりも劣位に置かれているという評価、印象の固定化をもたらすという趣旨の意見が出されており、今回、売春防止法を改正して買春の犯罪化がなされることとなれば、同じように劣位に置かれることになるのではないか、結局、買春の犯罪化が差別を助長してしまうことになるのではないかといったところは懸念されるべきことだと思います。実際に風俗店で働いている人たちの言葉としても、「昼働いている人たちは差別的だから嫌だ。」とか、「差別的なことを言われるけれども、夜の人は差別しないから、夜で働いている方が快適だ。」という言葉も聞きました。 (スライド7枚目)   ここまでのところは本質的なところであり、ここからは付随する話にはなります。その一つが地下化のリスクについてです。もし売買春を犯罪化することになれば、地下化していくのではないかと考えられます。そもそも、犯罪にしたとしても売春や買春は、決してなくなることはないと思います。欲求に基づくものであり、他国の例を見ても、完全になくなっている例はないと思います。それでは、買春を犯罪化するとどうなるのかについて、スライド7枚目の「地下化リスク」のところに書いてあるように、まずは反社会的勢力による売春組織の台頭があり得るのではないかと考えており、その場合、禁止されている18歳未満の少女が売春をさせられる対象になることが増えるリスクもあるのではないかと考えています。   それから、同じスライドの「2」に書いてある「海外出稼ぎ売春の急増」については、昨今本当に問題になっております。なぜこれが起こっているかについては、日本で働くよりも海外で売春をした方が稼げるからという根本的な動機があるからだと思います。「海外出稼ぎ売春」によって、関係なく普通に旅行している女性が入国できなくなったり、日本の評価が下がるといった国益的な問題もある一方で、「海外出稼ぎ売春」は、危険なんですよね。これも実際にそういうところで働く方から聞いた話なのですが、とある国のとある売春宿では、売春行為と違法薬物がセットになっており、それが大前提とされている店もある。また、エージェントを通さずに王族から直属で来る案件があるらしく、そういった案件は非常に過激なものもあり危険なものもあるらしいです。また、その地域が治安が悪いなど、売春宿自体が危険であるというよりも、地域の売春宿に行くため夜に出歩き、そのまま行方不明になってしまったといった話もあり、「海外出稼ぎ売春」の危険性はかなり大きいと思います。日本において、売買春を犯罪化するという話になれば、より「海外出稼ぎ売春」は増えていくのではないかと考えられ、かなり危険なのではないかと思います。   次に、同じスライドの「3」に書いてある、「警察へ助けを求められなくなる」という点についてです。これは北欧モデルの国でもあった話だと思うのですが、今、実際にある問題として、違法か否かがグレーゾーンのメンズエステという、性風俗店ではなく、エステ店の体裁で営まれている業態があり、そのようなメンズエステにおいて、例えば、女性が盗撮被害に遭ったときに、女性も店もなかなか警察に行きたがらないというケースがあります。なぜかというと、警察に行くと、風営法違反として、女性や店の人が逮捕されるリスクがあるからです。売買春が犯罪化されることになれば、盗撮や暴行の被害に遭ったとしても、自身の売買春行為が犯罪であるため、逮捕されることなどを恐れて、なかなか警察に助けを求められなくなってしまうのではないかと思います。それから、後ほど話しますが、美人局の被害が今すごく増えており、美人局の被害に遭った方も、結局、自分自身の買春行為が犯罪ということになると、逮捕されることなどを恐れて、なかなか警察に行けないということは生じるのではないかと思います。   同じスライドの「4」のAV新法の話については後ほどお話ししますが、AV新法によって地下化が進んでおり、その構造としては、買春の犯罪化が招く地下化リスクと同じだと考えられることから、スライドに書いております。 (スライド8枚目)   次のスライドには、「北欧モデルの失敗」と書いてあるのですが、ここは私が専門家というわけでもないので、一つの例として挙げております。研究データによれば、インタビューに応じた人の中で、強制されて売春するという方は6%しかいなかったということや、結局、買春を犯罪化することにより、警察を恐れて、より安全でない取引が増えてきているといったことが研究結果に出ております。 (スライド9枚目)   次のスライドは、先ほど話した「AV新法が証明する地下化」についての話です。AV新法によって実際に「適正AV」と言われる大手の会社での出演機会が減りました。なぜかというと、AV新法においては、期間制限に係る規定があり、待機期間の経過を待たなければいけないという構造上の問題があり、また、削除が容易にできる仕組みになったので、大手の会社が新人を余り使わなくなってきたことにより、仕事が減りました。それによって、同じスライドの「2」に書いてあるとおり、「同人AV」と言われる、個人撮影のAVがものすごく増えています。実際に映像送信型の性風俗特殊営業の届出件数が数倍に増えています。ちゃんとした業者は、「同人AV」でも風営法に従って届出を出すのですが、プラットフォームが出せばよいという誤解が広まっているせいで、届出を出していない業者も多いので、「同人AV」の件数が実際の届出件数以上に広がっています。それから、同じスライドの「3」に書いてあるライブチャットもすごく広がっています。海外産の違法なライブチャットが広がっており、ものすごく稼げるらしいので、それをやっている人がすごく増えています。   この「2」、「3」の「同人AV」や「ライブ配信」についても、なるべく適法にやろうという方々もいるのですが、「適正AV」を作成する大手のAV会社と比べると、かなり違法業者が交ざっています。実際に契約書を作らないというレベルではなく、無修正動画を作成するとか、あるいは、「販売しない。」と嘘をついてだましてAVを撮影して販売している人がいます。しかも、その場合に、女性がもらえる金額がすごく安いといったところがあり、今までの大手のAV会社でAVに出ている方が安全だったのではないかと言われています。 (スライド10枚目)   次のスライドは、「美人局・恐喝被害の急増リスク」についてです。美人局については、警視庁管内における2023年の相談件数が1件であったのですが、2024年の相談件数は180件に至り、被害総額は3,700万円になったことを書いてあるのですが、私の体感としては、その程度ではなく、ものすごく多いと感じます。強制性交等罪から不同意性交等罪・不同意わいせつ罪への改正がなされた頃から、美人局の件数が増えてきているという印象です。個人で美人局をしている人もいますし、適法な風俗店で働きながら、女の子が勝手に美人局をしているケースもあります。   その一方で、組織的に美人局をしているのがメンズエステであり、メンズエステでの不同意わいせつ罪を利用した美人局が、今、ものすごく多いです。店側が女の子に指示して、メンズエステに来た客に対し、わざと密着するなどして女の子に触るように誘惑するんですね。それで女の子に触った瞬間に、「それは不同意わいせつ罪だから警察行くか、行かれたくなかったら金払え。」と言って多額のお金を請求する事案が多発しています。既に東京でも各地方でも逮捕事例は出ているのですが、それでもまだまだなくなりません。裏には、元々「ぼったくり」をやっていたグループがいるのではないかと言われています。キャバクラとか「ぼったくりバー」といった夜のお店で「ぼったくり」をするよりも、美人局の方がたくさんお金が取れるんですね。私は、客側からすごくたくさん相談を受けて、返金交渉やブロック交渉をしつつも、美人局をした人を捕まえて欲しいので、客に「警察に行ってください。」と言うのですが、客としては、「自分は触ってしまっているから、不同意わいせつ罪で自分が捕まるリスクが少しでもあるのであれば警察に行きたくない。」ということで、なかなか警察に行ってくれません。このような被害がものすごく増えています。   このような状況において、買春が犯罪となれば、当然、美人局は増えてくると思います。売春側が犯罪で女の子も犯罪だとしても、そもそも組織的にやっているところでは、裏に悪い男の人がついているので、「大丈夫だよ。」と女の子には言いつつ、美人局をさせることが増えるのではないかと思います。実際に、美人局をしているメンズエステの場所について、「どこのマンションだったのですか。」と聞いたら、有名なやくざのマンションの一室でやっていたところもあるので、裏にはそういう人たちがついているのではないかと懸念されます。 (スライド11枚目)   スライド11枚目「6」の「処罰範囲の曖昧さ」についてです。買春を犯罪化する場合、どこまでの行為が犯罪に当たるのか、例えば、パパ活や援助交際、デートクラブ、銀座のクラブやキャバクラ・ホストの枕営業、更には年下の子とデートしたときにタクシー代をあげた場合などについて、それらは売春なのかといったところで処罰範囲がかなり広がるリスクがあります。処罰範囲が広がれば、そこにつけ込まれて美人局が発生したり、逆に、捜査機関の恣意的な摘発といったリスクもあり得ると思います。 (スライド12枚目)   スライド12枚目の「7」の「議論のきっかけ――事実認識の誤り」についてです。今回の議論は、タイ人の少女の方が性的サービスを強要されたことをきっかけに、買う側が処罰されないのはおかしいという話から始まっています。しかし、そもそも12歳が相手であれば不同意性交等罪又は不同意わいせつ罪が成立しますし、児童福祉法等の他の法律による逮捕・摘発が可能です。売春防止法を変えたからといって変わるものではなく、別の法律で対応できる話だと思います。 (スライド13枚目)   それから、「売る側だけが処罰されて買う側は処罰されないのは不均衡だ。」という話がメディアを通じて広く言われています。しかし、一般の方はもちろん、夜の世界で働く人たちも、この構造が勧誘罪のみに妥当するということには誰も気づいていない、あるいは専門家の人以外はほとんど気づいていません。ただの単純な売春行為というのは犯罪だけれども、買春は犯罪ではないのだと誤解しています。そういった誤解の下に、全ての売買春でこの「不均衡論」を前提に議論することはかなり危ない状況だと思います。   こういう前提議論のミスリードは、AV新法制定のときにもありました。AV新法のときは、「民法が改正されて成人年齢が引き下げられることにより、18歳の人が、高校生がAVに出られることになるのはけしからん。女性を守らなければいけない。」という声が大きな世論を形成したのですが、これも前提が誤りであり、そもそも民法改正前から、法律上、18歳の人がAVに出ることは可能でした。それにもかかわらず、民法改正によって急にAVに出られる年齢が変わったかのような話の持っていき方で、前提の誤解を与えられたまま、議論が進められたという背景があるので、国民の人たちも含めて、しっかり前提を理解した上で、議論をしていくことが重要だと思います。 (スライド14枚目)   スライド14枚目の「9」についてです。結局、売春防止法において、買う側の犯罪化をしなかったとしても、そもそも強制があるような売春、あっせんされている売春、ホストから要求された売春については、基本的に既存の法令で対応が可能です。風営法も改正されて、新たに売春要求罪という犯罪も追加されていますので、強制されて売春させられているなど、本当に女性が困るような状況であれば、売春防止法を改正しなくても、他の法律で対応が可能だと考えています。 (スライド15枚目)   最後に、今までの話の結論についてです。スライド15枚目の「結論」に「第一」、「第二」、「第三」、「第四」と書いてあるのですが、「第一」に記載しているとおり、「案②」、「案③」の売春防止法上の売春自体や買春自体、つまり、単純売春や単純買春を処罰すること及び売春防止法の「売春」の範囲を性交類似行為に広げることに関しては反対です。守るべき女性が経済的に困難に陥ってしまったり、その人たちに対する差別が増えてしまったりするといった問題があるからです。私は、現状維持がよいのではないかと思っておりますが、「第三」に書いてあるとおり、「不均衡論」、つまり、売る側と買う側とで処罰が不均衡であるということであれば、売春防止法の勧誘罪を廃止する方がよいのではないかと思っています。   売春防止法の勧誘罪、「立ちんぼ」などがよくないという意見は確かにそのとおりです。大久保公園にずらっと「立ちんぼ」が並んでいて、それを海外の人たちが見て回るとか、動画撮影するとかはよくないと思います。ただ、これを売春防止法の問題とされるから、売る側が、買う側がという話になるのであり、「キャッチ」や「スカウト」と同じように、各都道府県の迷惑防止条例等で対応していけばよいのではないか、その地域の実情を反映させて、条例で決めていけばよいのではないかと思っています。   やむを得ず、売春防止法を改正するのであれば、同法の勧誘罪の部分に関して、買う側の行為を犯罪化することは、結論としては、あり得るかなと思います。ただ、この場合、「立ちんぼ」だけではなく、ウェブ上の行為であっても適用されるところに注意が必要です。売春防止法第5条は、ウェブ上・ネット上で売春を募集する、あるいは勧誘する行為にも適用され得る規定です。これは風営法改正のときにも同じような問題があったのですが、不当に処罰範囲が広がっていくリスクがあるので、この点は、念頭に置いた上で、議論していただきたいと思います。   以上になります。どうもありがとうございました。 ○北川座長 どうもありがとうございました。   それでは、委員の皆様から、御質問をお伺いしたいと思います。御質問のある方はいらっしゃいますか。 ○保坂委員 示唆に富んだ御説明ありがとうございました。今回、最初に御説明があった累計相談件数は約5万件ということであり、また、性風俗に関する営業者だとか、若しくは従事者の方の相談を受けるという御説明がありました。歌舞伎町を中心に活動しているということでしたが、例えば、それ以外のステークホルダーである地域の住民の方だとか、商店街の方だとかからの御相談は受けているのでしょうか。 ○若林氏 相談という意味では、あまりないです。弁護士なので、何か事件があったときに相談を受けることはありますが、それ以外はあまりありません。ただ、歌舞伎町の商店街の振興組合等とはお付合いがあって、お話しさせてもらったり、お祭りに行かせてもらったりといった交流はあります。 ○保坂委員 もう1点、先ほどのスライドの中で、「グレーゾーン営業」という言葉で何回か書いていたと思います。その中でも、例えば、スライド7枚目「4」の「地下化リスク」で、現在も「グレーゾーン営業」のメンズエステでは、摘発を恐れて盗撮被害を申告しないケースがあるというようなことを御説明いただいたと思うのですが、今の御説明だと、そのメンズエステは、グレーゾーンではなく違法な営業であるような印象も受けたところ、例えば、相談される方なども、違法性を認識された上で御相談をされるものなのでしょうか。 ○若林氏 メンズエステは、どこまでが適法であるかが難しい業態であり、御質問にお答えすることは難しいところがあります。本当に過激な店の経営者の人は違法だと分かってやっているとは思うのですが、働いている人たちは、自分たちは適法だと思って営業している人も多いので、違法性を認識しているかどうかは人によると思います。 ○星委員 大変いろいろなところまで目配せをされているプレゼンテーションを頂きまして、大変勉強になりました。ありがとうございます。   最後に若林先生がおっしゃったのは、「立ちんぼ」がよくないのは確かにそのとおりなので、そこについては、仮に売春勧誘罪を廃止したとしても、条例による手当てが必要だというお話だったかと思うのですが、そこでおっしゃった、「立ちんぼ」がよくないということの趣旨は、見た目がよくないということなのか、あるいは売買春の接点となる形でリアル空間を使うのがよくない、オンライン上であれば、それは問題の本質としては、そういったようなものを生じさせない形であって、その場合は、グレーな状況ではあるものの売買春自体禁止されても処罰されていないことと変わらないと考えているのか、また、海外から、日本では新宿の北の方に行けば女の子を買うことができるということで、先ほど出稼ぎ売春の話があった一方、逆に日本にわざわざ買いに来るというようなことについて、それが日本の評価を落としているのではないか、先ほど国益のお話がありましたけれども、そういったところの問題で、ここはどういうふうに考えるべきなのかを、先生のお考えをお聞かせいただければと思います。 ○若林氏 そもそもの勧誘罪の趣旨を考えると、公衆の目に触れるような場所で、勧誘行為や客待ちをする行為が社会や町の風俗環境を悪化させるというところがメインにあると思いますので、そういった側面からお話しさせていただきました。もちろんその危険性に関しては、オンラインであろうがオフラインであろうが、そこまで変わらないのかなと私は思っています。風営法の客引きの禁止も、店舗の歓楽的な雰囲気が路上にまで行くことが社会的な風俗環境の観点からよろしくないというところが趣旨になっていて、売春防止法の勧誘罪に関しても同じかなと思っており、私自身もそういう見解です。 ○大沢委員 今日はありがとうございました。先ほど先生がおっしゃった「案②」のところで、現在の売春防止法では違法だけれども犯罪化はされていない性行為について犯罪化した場合、性行為をやっているところには影響があるとおっしゃっていたのですが、逆に、現在、売春防止法や風営法の建前をきちんと守って、いわゆる本番行為とは一線を画しているような店舗とか実際の従業員の方にも何らかの影響は出るとお考えでしょうか。 ○若林氏 そこに関しては店舗への影響自体は少ないとは思っています。客に対する萎縮効果といったところで、客の方が店舗の利用を控えてしまうという効果はあり得るかとは思うのですが、今回話を聴いた中でも、本当に法律を守っている店舗の経営者に関しては、「違法なところだけやめてもらえば、うちはもうかるからいいよ。」という趣旨のことを言っている方もいたので、「案②」に関して、完全に法律を守っている店舗への影響は、萎縮的なもの以外、直接的なものはないのかなとは思います。 ○大沢委員 あともう1点、先生がおっしゃった「案③」に関わることについて、例えば、「売春」を性交類似行為全般に広げると影響は大きいというのはすごく分かるのですが、現在「売春」の定義が、性交、いわゆる膣への挿入に限っていることを肛門、口腔というところに限定して広げ、現在のように違法だけれども犯罪ではないという立て付けにした場合についても、かなり現場には影響が出るとお考えでしょうか。 ○若林氏 その場合には影響が出ると思います。肛門性交に関してはそんなに多くはないと思うのですが、口腔性交をする業態の風俗店はものすごくたくさんあります。犯罪化しなかったとしても、その周旋や場所の提供が犯罪化されることになります。もともと今も周旋や場所の提供が犯罪化されており、「売春」を口腔性交に広げると風俗店を経営する人たちのほとんどは、周旋や場所の提供に該当することになってしまうので、その影響は大きいと思います。 ○古川委員 1点だけ伺います。スライド7枚目「4」の「地下化リスク」の第1点目で、反社会的勢力の台頭のリスクについて御意見を述べられていたところで、特に、「18歳未満を使う売春組織が増えるおそれも」あると特記されていることについて、この18歳未満を使う組織というところで特にリスクを強調された理由があれば、どうしてそうなるのかをお聞かせいただければと存じます。 ○若林氏 もちろん強制されて売春するのは問題ですが、一方で、強制されなかったとしても18歳未満の未成年の方は、判断能力が高くない方というところで売春に関与すること自体が、社会的にも当事者にとっても非常によくないことだという考えがあることから、スライドに書いています。そのリスクについて、なぜ増加するかというと、現状でも風営法の届出を出していないような違法業者、「援デリ」と言われるような違法な業者が、未成年を使っていたことで逮捕・摘発されている事例が散見されます。風営法の届出を出して、きっちりやっている業者は、身分証を確認しますし、従業者名簿を作成することもしますので、そのリスクは違法にやっているところよりは低いと考えています。ですので、違法な組織が増えてくると、18歳未満を使うところも増えてくるリスクがあるのではないかということから、スライドに記載させていただきました。 ○北川座長 ありがとうございます。   他にございませんでしょうか。なければ、これで終了とさせていただきたいと思います。   若林様、本日は、貴重なお話を頂きまして、ありがとうございました。お話しいただいた内容につきましては、今後の検討に役立ててまいりたいと思います。   以上で本日のヒアリングは終了となります。   次に、今後の進行についてですが、第1回会議で申し上げたとおり、第1回会議における委員の皆様の御意見や、第2回会議及び本日のヒアリングにおける出席者の御意見等を踏まえ、私の方で検討すべき論点の案を整理し、次回会議においてお示ししたいと思います。その上で、次回以降は、個別の論点について、一巡目の議論を行うこととしたいと思いますが、よろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○北川座長 ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。   本日予定していました議事につきましては、これで終了いたしました。   次回会議の日程については、調整の上、なるべく早く確定させ、事務当局を通じて、皆様にお知らせすることとしたいと思います。   本日の会議の議事につきましては、前回会議と同様に、原則的な方針としては、発言者名を明らかにした議事録を作成するとともに、説明資料等についても公表することとさせていただきたいと思います。もっとも、御発言内容を改めて確認し、ヒアリング出席者の御意向も伺った上で、プライバシー保護等の観点から非公表とすべき御発言等がある場合には、該当部分を非公表としたいと考えております。それらの具体的な範囲や議事録上の記載方法等については、発言者との調整もありますので、座長である私に御一任いただけますでしょうか。              (一同異議なし) ○北川座長 それでは、そのようにさせていただきます。   本日はこれにて閉会といたします。どうもありがとうございました。 -了- -34-