売買春に係る規制の在り方検討会 (第5回) 第1 日 時  令和8年6月10日(水)   自 午後1時12分                        至 午後3時00分 第2 場 所  中央合同庁舎第6号館A棟15階会議室 第3 議 題  1 論点についての議論          (1)勧誘等に対する規制の在り方            ・売春の相手方となる者による勧誘等に係る処罰規定について            ・売春目的での勧誘等に係る処罰規定(売春防止法第5条)について          (2)法定刑         2 その他 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○栗原参事官 ただ今から、売買春に係る規制の在り方検討会の第5回会議を開催いたします。 ○北川座長 本日は、皆様御多用中のところ、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。   本日、古川委員におかれましては所用のため御欠席されています。また、吉田審議官におかれましても公務のため御欠席と伺っております。   本日は、事務当局からの新たな配布資料はありませんが、御欠席された古川委員から意見書が提出されていますので、お配りしております。   それでは、議事に入りたいと思います。   本日は、前回会議で申し上げたとおり、「論点整理」に記載されている論点のうち、「3 勧誘等に対する規制の在り方」と「4 法定刑」について、ただ今申し上げた順に御議論いただきたいと考えておりますが、そのような進め方でよろしいでしょうか。              (一同異議なし)   ありがとうございます。御異議がないということで、そのようにさせていただきます。   まず、「勧誘等に対する規制の在り方」について、御議論いただきたいと思います。   この論点につきましては、まず、「売春の相手方となる者による勧誘等に係る処罰規定について」の御議論をしていただいた後、「売春目的での勧誘等に係る処罰規定(売春防止法第5条)について」の御議論を行っていただきたいと思います。この両者の問題については密接不可分ではあると思いますので、交通整理といたしまして、まずは、買春目的での勧誘等に係る処罰規定の新設ということを考えるに当たっての御意見を頂戴することとしますが、その中で、売春目的での勧誘等に係る現行法の規制の在り方に関する御意見を頂いてもいいかと思います。   なお、古川委員からは、この点につきましても御意見を頂戴しておりますので、先に御紹介させていただきます。       【古川委員提出の意見書のうち「論点3」部分が読み上げられた。】   それでは、皆様から、まず、売春の相手方となる者による勧誘等に係る処罰規定について、御意見を頂戴したいと思います。 ○星委員 あらかじめ共有しておいていただいた方がいいかなと思うこととして、古川委員の御意見にもあったように、現行法では、売る側の勧誘は処罰対象とされている一方で、買う側の勧誘は処罰対象とされていないわけですが、現行法において売春そのものは処罰の対象にせずに、売春目的での勧誘を処罰の対象にされている根拠と、買う側の勧誘が処罰の対象となっていない理由について、もし分かれば、事務当局にお伺いしたいと思います。 ○栗原参事官 今、星委員からお尋ねのあったことのうち、1点目についてですが、売春防止法第5条に規定する行為は、売春行為そのものの違法性に着目したものというよりも、社会の風紀を乱し、公衆に迷惑を及ぼすものであることから、処罰対象とされているものと承知しています。   2点目についてですが、売春防止法が、売春の相手方となる者において自己を相手方として売春をするよう勧誘する行為などについて罰則を設けていない理由について、同法制定時の国会審議等によりましても、その理由は必ずしも明らかではなく、確たることを申し上げるのは困難ではありますが、同法制定当時の社会情勢などに照らし、罰則を設けて規制する必要性までは認め難いと考えられたためではないかと思われるところです。 ○北川座長 ありがとうございます。保護法益については、売春する側の勧誘を取り締まることについては、それが社会の風紀を乱し、公衆の迷惑になるということがあっての規制ということで、文献には、売春防止法の制定当時は街角に立って売春の勧誘をする人も多く、特に取り締まる必要性が多かった、常習として売春する人を減らす目的があったなどという記載もありますが、そういう行為がまさに社会の風紀を乱しているといったその当時の社会の意識との関係で、規制の対象になったのかなと思います。もう一つは、困難女性支援法が立ち上がる前までは、そういう婦人を補導するという目的のために売春防止法第5条が使われていたのかなという感じもいたしました。逆に、買う側の方が処罰されていないのはなぜなのかという点は、文献等にもはっきりとは書かれていないということですね。   ただ、重要なのは、事務当局からの御説明にもあったとおり、当時の社会の情勢を踏まえて現行法のような規制がされることになったということかなと思いますので、近時の情勢を踏まえたらどうなのかを考えていかなければいけないということを再認識いたしました。   ただ今の事務当局の説明も踏まえまして、皆さんの御意見を頂戴したいと思います。いかがでしょうか。 ○星委員 現在の視点から見ると、売る側の勧誘だけが処罰されて、買う側の勧誘が処罰されていないのはなぜなのかという疑問が生ずるわけですが、売春防止法の制定当時は議論すらなかったということであれば、それが当たり前だと思われていた状況が恐らくあったのだろうと思います。ところが、現在においては、そうしたアンバランスがあるのはなぜなのかという声が出てきているわけで、それは一部の方々が言っているというよりも、恐らく社会全体の認識としても説得力を持つという状況があって、こういう検討会になっているのかなということを考えますと、北川座長がおっしゃられた社会情勢というのが、昭和20年代、30年代と今とで同じかというと、多分違うということを考えなければいけないのだろうなと思います。ですから、そういう意味では、古川委員がおっしゃられるように、買う側について、今のまま、勧誘行為の処罰規定がなくていいのかというところは考えなければいけないのではないかと思います。   ではその処罰根拠をどう考えるかというと、売春防止法は、売買春そのものは処罰の対象にはせず、その外側の規制として勧誘を処罰しているということからすると、売る側による勧誘の対向犯としての買う側による勧誘の処罰ということは、十分あり得る話なのかなと思います。   現行法の第5条には、第1号、第2号、第3号と三つの類型があるわけですが、実態を踏まえつつ、そういった行為の対向関係に当たる買う側の行為を処罰することは、検討に値するかと思います。 ○大橋委員 少し違った意見ということで申し上げます。売る側の規制と買う側の規制は表裏一体と理解しておりますので、売る側の規制の方にも言及することになりますが、御容赦いただければと思います。   まず、勧誘等に関する規制の在り方に関して、ヒアリング等でも度々出てまいりましたが、特に注目されている問題は、路上売春の問題だと認識しております。路上売春の問題自体は、一般的に売買春の需要が大きく増えているとか変わっているという問題というよりは、特定の場所で、非常に公然と売買春の客待ちや条件交渉、勧誘といった行為が行われている、そして、その様子がSNS等で拡散されるといったことに起因して、地域環境が悪化している問題といえるのではないかなと受け止めています。第1回会議で頂いた配布資料2を拝見しても、売春防止法違反の事件数が顕著に増加しているというわけでもないと思いますし、報道を拝見していても、路上売春について非常に継続的に多数のそういった行動が見られるという状況も、東京の大久保公園が非常に大きく報道されていますが、その他に全国各地で頻発しているのかというと、余りそういった印象はございません。大阪の梅田などでもそういった事象があるようには聞いておりますが、路上売春の問題は、そうしたごく限られた場所で起こっていることなのではないかなという認識を持っているところです。   どうしてそうなっているのかということを私なりに考えてみますと、匿名性を持って路上売春ができるような大都市圏にある大規模な繁華街があることが原因で、路上売春を広く行うといったことが起こっているのではないかなと思います。私の弁護士業務の経験上でも、大久保公園周辺で路上売春をしている人の中には、出稼ぎとして地方から出てきた方であるとか、家庭等に場所がない、定住所がないということで、路上売春をしながらホテル暮らしをしているといった方も相当数いるのではないかと思います。大都市圏という環境がそういった行動を生み出している面もあるのではないかなと思うところです。   先ほどもお話がありました売春防止法の保護法益や勧誘行為の処罰根拠に関しては、私の理解では、売春防止法では売春自体は禁止しつつ処罰はされておらず、売買春の当事者以外の人がそれを助長する行為が規制されているのが中心で、同法第5条は売買春の当事者による勧誘行為は規制されているけれども、それは、風紀を乱して公衆に迷惑を及ぼすものであるからだといった説明がされているところかなと思います。そのほか、1958年の團藤重光教授の論文で、売春をしている人の救済のために保護更生の措置を講じるという前提があって勧誘行為を規制しているのだといったことが書かれているかと思いますが、先ほど座長からお話がありましたように、困難女性支援法が施行されている現在では、保護更生の措置を講じるという売春防止法の意味合いはほぼなくなっているような感じがいたしますので、そうすると、現在においては、風紀を乱し、公衆に迷惑を及ぼすものを規制するという考え方になっているのかなと思います。   そうしますと、公衆に著しい迷惑を掛ける行為の排除ということで作られている、いわゆる迷惑行為防止条例の規制の趣旨と余り違いがないのではないかという感じがしております。そうすると、売春防止法で全国一律の規制をすべきなのか、あるいは条例で地域の実情に応じた規制をするのが望ましいのかといったことも考える必要があるかと思います。   公衆に迷惑を及ぼすという点では、路上売春で売る側が客待ちをしている行為と、買う側が路上で条件交渉あるいは勧誘行為をしている行為に何か違いがあるのかというと、私は違いはないのではないかと思います。そうすると、ヒアリングでも出ていた、売る側の客待ち行為だけが処罰の対象になって、買う側は処罰の対象にならないのは不均衡だという声はもっともな指摘ではないかと思っております。この不均衡を解消する方法としては、いずれも処罰の対象とするか、いずれも処罰の対象から外すかという二つが非常に有力な考え方になるのではないかと私としては思っております。   その上で、私の意見ですけれども、これは前回の会議で申し上げましたが、売買春の当事者の行為を刑事的に規制することが、売る側の立場に置かれている人の福祉的支援の妨げになる面があるということ、それから、今問題になっている路上売春の実情からすると、買う側の処罰規定を全国一律に設ける必要があるとまでいえるか疑問があるということを考えますと、いずれの勧誘行為についても売春防止法の規制対象からは外した上で、条例の規制に委ねるのがいいのではないかと思います。   ただ、そうは申しましても、現状、例えば、東京都迷惑行為防止条例を見ますと、売る側の行為については、売春類似行為をするために公衆の目に触れるような方法で客待ちをすることが規制されており、法定刑は50万円以下の罰金又は拘留若しくは科料と定められていますが、買う側の行為については規制がないという状況になっております。なぜ買う側の勧誘行為について規制がないのか、私も全く分からないですし、売春防止法についても分からないということですと、条例の方もなおさら分からないのかなと思うのですが、売春防止法で買う側の勧誘行為を規制の対象にしていないことが影響して、条例でもそういった規制が設けられていないという可能性もあるのではないかと思うところです。   しかしながら、理屈としましては、条例において、買う側の規制を設けることが不可能であるとか、それを妨げるような事情があるということでもないように思いますので、一案といたしましては、売春防止法第5条を削除する過程の中で、条例の規制によって買う側の処罰をすることは妨げないということを、何らかの形で示していくといった方法があり得るのではないかと思います。 ○北川座長 今特に注目されている路上売春の問題が、ある特定の地域特有の状況だということであるのであれば、法律ではなく条例による規制に委ねることも考える必要があるのではないかという御意見でした。皆様、この点についていかがでしょうか。 ○川崎委員 まず、条例についてですけれども、確かにそういったアイデアは検討に値すると私は思います。もっとも、大橋委員の御意見は、現状、路上売春の問題が起きているのが東京あるいは大阪に限られているから、条例で規制することが考えられるということでしたが、売春の問題は、どこであっても同じように起こり得ることが、現状では一部の地域でしか起こっていないということだと思います。一方、条例というのは、基本的には、各自治体において、特性のある、全国的ではない問題について対応するために、立法的な手段をとるというのが、あるべき形かと思います。例えば、今も東京などにしか証券取引所はないわけですけれども、では金融商品取引法によって行われている規制を条例でするかというと、私はそうはならないと思います。実態としてそうであるという問題と、法令で扱うかどうかという問題は、ちょっと違うかなと思います。   ですから、売春の問題については、法律の規制によって全国的なこととして対応すべきだと思うのですが、前提として、売る側だけではなくて買う側についても処罰の対象にするかという点については、私も、保護法益を、風俗を乱したことなどに求めるのであれば、それを乱した、すなわち、保護法益を侵害したといえるのは売る側だけではなくて買う側が勧誘した場合も同じだと思いますので、保護法益を侵害するような類型の行為として、それは当然、法益を保護するために処罰の対象にしてしかるべきと思います。 ○大沢委員 私は法律の専門家ではないので、一般人の感覚みたいなところになってしまうのですが、現行の売春防止法では、売る側の勧誘行為のみが処罰されて買う側の勧誘行為が処罰されないという不均衡があることが今回の見直しの議論の発端になったと理解しています。   私は、第2回会議のヒアリングで、路上での売買春をめぐって、支援団体の方が、女性を買おうと声を掛けてくる行為が今は余りにも堂々とし過ぎていると、そういう現状をおっしゃっていたのが非常に印象に残っています。ですから、特に新宿、大久保公園周辺などで、外国人観光客の方をはじめとする買春側の勧誘行為を野放しにしないためにも、買う側の勧誘行為については売る側と同様に罰則規定を設けて、現行法上の不均衡を是正する必要があるのだろうなと素朴に思うところです。   先ほど大橋委員がおっしゃったとおり、不均衡を是正するという観点では、売る側の勧誘行為も処罰しない、要するに、売る側も買う側も両方とも処罰せず、売春防止法第5条の売春勧誘罪そのものを廃止するといった御意見もあることは承知しています。ただ、特に一般的な感覚から言うと、それをもししてしまうと、今行われているような立ちんぼを容認してしまう、あるいは、外国人観光客らが女性を買いあさる行為にお墨付きを与えてしまうような、誤ったメッセージを発出することになってしまうのではないかと私としては思っている次第です。   それから、売春防止法第5条の規制には、社会の風紀を害して一般市民に迷惑を及ぼすものは駄目ですよという趣旨が込められているということだと思うのですが、実際に路上売買春が行われている地域の人は、少なからずいろいろな影響を受けているのだと思います。記事を検索してみたところ、例えば、大阪では、地元住民の方が道路を黄色に塗って、イエローロードみたいなものを作って、客待ちしづらい環境を自ら作っていらっしゃると、そういう努力をされているという事例なども読んだりしたところです。ですから、同条の規制の在り方を考えるに当たっては、公衆への迷惑という観点は忘れてはいけないと思っていまして、そういう地域の方々も当事者の一人ではないかと私は思うので、できればそうした方々が現状をどう御覧になっていて、例えば、法律とか、あるいは条例なのか、どういったものを希望されているのかといった御意見を、何かしらの形で聴いてみるのも大事かなと思います。 ○北川座長 ありがとうございます。今後の検討に当たっての視点ということで、周辺の環境、風紀をどれぐらい乱しているのか、迷惑を掛けているのかということに関して、地域の方々などの御意見をお伺いしたいという御提言を頂戴しました。   ほかに御意見いかがでしょうか。 ○櫻井委員 私も、買春する側の行為について処罰をするという意見に賛同しています。この法律の保護法益は社会の風紀を乱すといったことにあるということですが、私は法律の専門家ではありませんので、売買春の行為に焦点を当てて意見を述べたいと思います。   需要と供給の原理を考えると、買春者がいるから売春者が生まれるというのは自明のことだと考えています。これまでも議論されてきたように、買春者の多くは男性であり、そして、売春者の多くは困窮している女性であって、両者の間に権力格差があることは明らかだと思っています。現行の売春防止法ですと、結果として弱者である売春側のみの行為が罰せられる形になっており、買春側の勧誘等の行為について、処罰規定を新設するのが、社会の動きを見ていても妥当な流れだと考えます。   この点に関して、単純売買春を含め、売買春に関する行為について完全に非犯罪化すべきという意見が存在していることについても、私なりに考えてみました。犯罪化の是非につきましては、双方向の調査がありますが、買春者処罰を導入したスウェーデン政府の報告書や、法規制とセックスワーカーの健康の関係性に関するメタ分析を行った海外論文などを当たってみました。スウェーデン政府の報告書は、路上売春が半減して、しかし、だからといってインターネットを介した売春の増加につながったという証拠もない、なので、売春は全体として増加していないと結論づけられていようかと思います。他方で、後者のレビュー論文の方は、犯罪化することでセックスワーカーの安全や健康のリスクが高くなるということが指摘されておりまして、今のところ、こういった両方の調査を比較しても、どのように規制すべきかは決着がついていないと思いました。ですので、今どちらかに決めなければいけないということであるなら、私は、日本の社会がどういうふうに人権の在り方を選択するのかという点を重視すべきではないかと考えています。   そうした場合に、私は、買春行為も含めた全面的な非犯罪化にかじを切ることには賛同できないと感じました。ヒアリングの際に、売春の当事者に近いSWASHの方が、セックスワークは構造的な問題もはらんでいて、自分たちとしても勧めているわけではなく、ハームリダクションの視点を重視しているとおっしゃっていたのが印象に残っています。長期的な視点に立ったときに、非処罰化すると、結果として、より多くの弱者を巻き込む構造的リスクにつながっていくのではないかと感じています。ですので、私は、全面的な非犯罪化には否定的な立場で、むしろ買春は人の尊厳を害することで、買春者の需要によって売春が生み出されていることは確かなので、買春者が処罰される仕組みに移行することが自然な流れかなと考えています。 ○川崎委員 古川委員や星委員が、勧誘等の行為の対向犯としての性質について言及されていますが、対向犯というと、一方が勧誘した場合に、相手方がその勧誘に応じることだと思うのですけれども、売る側が勧誘する行為と、買う側が勧誘する行為は、対向犯の問題ではなくて、それぞれが犯罪の端緒を開いているわけですよね。その上で、現行法では片方が勧誘した場合だけを処罰の対象にしていることを問題と考えている。買う側の処罰を提案することと、まさに対向犯という言葉を使われているように、売る側から声を掛けられて、現に買う人がいるのに、その買う方の行為は野放しなのかという問題提起をすることとは別の問題ではないかと思います。   私は、保護法益の観点からは、この両方について手当てをしないと、今起こっている問題には対処できないのではないかと思います。買う側も処罰の対象にすることを検討する場合は、誰が端緒だったかを判断して端緒を開いた人だけを処罰するということになると、立って客待ちをしている人に声を掛けた場合であっても、買う側が、向こうが目で誘ってきたんだと弁解すれば、「幾らでどう。」と最初に声を掛けたとしても、それは勧誘に応じた行為であって「勧誘」ではないから処罰の対象にならないというのでは、おかしいですし、あるいは、せっかく犯罪を新設しても規制としてうまく機能しなくなってしまいかねないのではないかと思います。その意味では、買う側が勧誘した場合だけでなく、いずれが勧誘行為をした場合であっても、それに応じる行為によって、両当事者が合意したことによって、現に風紀を乱したといえるのであれば、応じる行為についても規制の対象にすることを検討することが必要なのではないかと思います。 ○北川座長 買う側の行為を規制するということを前提にして、どういった行為の類型を具体的に規制するかを考えるに当たっては、現行法の第5条に対応する形で勧誘する行為に着目するだけではなくて、勧誘に応ずる行為によって社会の風紀を乱すということを考えれば、そうした行為まで規制しないといけないという観点からの御意見ということでよろしいでしょうか。 ○川崎委員 そもそも、売る側の勧誘等だけを処罰するのは不均衡であって、買う側も処罰すべきだという今回の問題提起のときに想定されているのは、買う側が声を掛ける事案のほか、売る側が声を掛け、買う側がそれに応じた場合も規制すべきだということも含まれているのではないかと思います。ですので、この点についても少なくとも検討をした方がいいと思います。 ○佐藤委員 先ほど大橋委員から、条例による規制とすべきという非常に興味深い御意見がありましたが、この点について、2点懸念事項があります。   1点目は、大橋委員の御意見は、今問題が起きているのが一定の場所に限られているから条例で対応すればいいという御趣旨もあったと思うのですが、いわゆる淫行条例、青少年保護育成条例のときに、地方による差があったときがありました。具体的に言いますと、A県に淫行処罰の規定がない時代がありまして、その時代に、インターネット上で、淫行したければA県に行けばいいというような情報が蔓延したことがございました。結局、条例規制になると、規制されていない場所に人が移動するという状況になるのではないかという懸念があります。   2点目は、大橋委員自身も御指摘されたとおり、一律の規制でなくていいということになると、売春のみを処罰する条例というのも生じ得て、この検討会で議論したことが意味をなさなくなってしまう可能性があることです。もちろん地方で検討される場合においてはここでの議論も参考にして結論を出してくださるとは思うのですが、もしもそうならず、売春のみを処罰するとなったときに、何かちょっと心に引っ掛かるものがあります。すなわち、こういう規制をしたいという一つのイメージがあるのであれば、それぞれの地方に任せずに国法で定めることが一つのやり方なのではないかと考えています。   次に、川崎委員が先ほどおっしゃっていた行為態様の関係ですが、私も、少なくとも売春防止法第5条の売春目的での行為が買春目的で行われる類型については、風紀の乱し方とか公衆への迷惑の掛け具合に全然違いがないので、処罰しない理由はないと思っております。そうすると、先ほど川崎委員や古川委員の御提案くださった類型、すなわち、現行法第5条の行為類型を買春側で考えたものと、品定めのためにうろうろする行為も、社会の風紀を乱して公衆に迷惑を及ぼしていますから、処罰してもいいのかなと思っております。   また、川崎委員が先ほどおっしゃっていた、売春者に勧誘された者が応じただけという行為を処罰していいのかについては、例えば、売春者から声を掛けられて、「いいですね。」と言うだけで処罰するのは、行為態様がかなり受け身的で消極的であることに鑑みれば処罰の価値がないと考える余地もあろうかと思います。しかし、一方で、このような行為は、公然と勧誘された売春に需要があることを公に示す側面もあり、それにより公然の売春勧誘を助長すると説明できるのではないかと思います。そうすると、公然の場所で勧誘に応じる行為は、公然の売春勧誘、あるいは買春勧誘の助長行為であると説明でき、辛うじて処罰できるのではないかなと考えているところでございます。ただし、1点問題があるとすれば、売春側についても、買春側からの勧誘に応じただけの者に同じ理屈が適用されることになるのではないかということです。 ○入江委員 行為態様について、現行法の第5条の行為を買春側に改めたような行為を処罰すべきだという御意見がありましたので、その点に関して実務上の観点から1点申し上げます。   現行の売春防止法第5条第3号に売春目的での客待ち行為が規定されておりますが、売春の相手方となる者について、これと同じような行為を処罰対象として規定する場合には、実務上、その行為への該当性判断がなかなか難しいのではないかと思い、懸念しております。   売春防止法第5条第3号においては、条文上、「公衆の目に触れるような方法で客待ちをし、」と規定されております。それが具体的にどういう行為を意味するかといいますと、裁判例においては、売春をしようとする者が自らの挙動によって売春の意思があることを表示しながら、公共の場所においてうろつき又は佇立するなどして相手方の申込みを待つ行為をいい、外形上売春目的があることが、その服装、行為の場所、時刻等と相まって不特定の一般人に明らかになるような挙動を伴うものであることが必要とされております。   今申し上げたのは、私が第1回会議で御紹介した無罪判決である、東京地裁令和7年10月24日判決の中で述べられている言い回しですが、それ以前から大阪高裁や東京高裁でも同様の裁判例が存在し、単に売春目的で公共の場所をうろついたり、あるいは立ち止まって相手方の誘いを待つだけでは客待ちとしては足りないと判断されております。その理由として、これまでの裁判例は、内心の売春目的が明らかになるような挙動がない限り、外形上は単なる待ち合わせ等と何ら変わることがなく、いまだ社会の善良な風俗を乱すものとは認められないということであったり、売春エリアと広く紹介された場所の周辺地域に女性が一人でたたずんでいたことをもって売春目的を不特定の一般人に明らかにする挙動を伴ったと評価されるのであれば、本来は適法なはずの通行行為や佇立行為をも萎縮させ、女性一人の行動を著しく制約するおそれがあるなどということを指摘しております。そして、実務上は、このような裁判例で判示されている内容を踏まえ、客待ちの該当性を判断しています。   以上を前提に、これを売春の相手方となる者について考えますと、売春の相手方となる者については、自己を相手方として売春を申し込む立場ですから、そのような申込みに至る前に、外形上、売春の相手方となる目的があるということを表示する必要がないため、売春の相手方となる目的の者と、そうでない者とを見分ける挙動というものがなかなか想定し難いと考えております。そして、例えば、現行法の客待ちに対応する行為として、自己を相手方として売春をする者を物色して徘回し又はたたずむ行為を想定するとして、そのような行為と、単に売春者が佇立している路地を歩いて通り過ぎる行為や、そのような路地付近で待ち合わせのためにたたずむ行為等を見分けることは、実務上極めて困難なのではないかと考えます。   なお、売春防止法第6条の周旋目的での勧誘等に係る処罰規定においては、同条第2項各号で、第5条各号の規定にほぼ対応する形で周旋をするための準備行為を規制しているのですが、第6条第2項第3号においては、第5条第3号の客待ちと同様の行為が処罰対象とされていません。その理由は、外形上、周旋する者のそのような行為を一般人の待ち合わせなどと区別して見分けることが事実上極めて困難であることによるとされているところであり、売春の相手方になる者についても同じ議論が妥当するのではないかと思料します。 ○北川座長 ほかにはよろしいでしょうか。   それでは、本日の「売春の相手方となる者による勧誘等に係る処罰規定について」の議論は、ひとまずこの程度とさせていただきます。次に、現行法第5条の売春目的での勧誘等に係る処罰規定についての議論に入っていきたいと思います。   この点につきまして、御意見を頂戴したいと思いますが、いかがでしょうか。 ○大橋委員 先ほど意見を申し上げましたが、私としましては、売春目的での勧誘等に係る処罰規定の関係でも、売春防止法第5条による処罰ではなくて、条例に委ねるのがいいのではないかなと思っています。   これについて、先ほど、佐藤委員から、各地の規制に委ねると、規制の厳しいところから緩いところに人々が移動していくのではないかといった御指摘があったかと思います。それが起こるとしたらどんな場合なのかなということを考えてみたのですが、例えば、買う側が処罰される規定がある地域では客がつかないので、売る立場の人たちがその地域外に移動するということは確かにあるのかなと思いました。ただ、例えば、東京では難しいので近隣のB県でやりましょうということは確かにあり得るかなという感じがするのですが、先ほどお話があったように、A県では規制がないということがあったとして、今の路上売春の実情からすると、新宿にいるたくさんの人が大量にA県に移動していくということは、私としては余り現実に起こらないのではないかなと感じるところです。これは想像の域を出ませんので、私の個人的な価値観かも分かりませんが、そのような印象を持ったところです。私の認識としては、今問題になっている路上売春は、特に大都市圏で起こっており、それにも相応の理由や背景事情があってのことではないかという認識を持っていることを前提に、条例に委ねるのがいいという意見を申し上げたということを付け加えておきたいと思います。 ○星委員 まず、条例に関しては、私は、以前A県に住んでいたことがあるのですが、実際、A県でも問題になっていなかったわけではなくて、特に新幹線ができてからは、淫行をする目的でわざわざそちらに行くという事象はやはりあったように思います。また、いわゆる淫行処罰条例、青少年保護育成条例の趣旨は、地域の若い人を地域で守っていく地域事象の問題ということで、条例によっているところがあると思います。これに対して、売春防止法の場合には、これとは問題が異なり、主な対象は成人女性でもありますし、それがどこで行われたのかというのは、いわば土地管轄の問題であって、本質の問題ではないのかなと思います。   次に、売る側の勧誘につきましては、現行法とは逆転させて、買う側の勧誘だけを処罰対象とする国もあるようですし、あるいは両方廃止という御意見もあるところで、それは十分承知をしています。また、ぱっぷすさんからは、売る側は保護の対象なのだから、処罰の対象から外してもらえないだろうかといった御意見もあったかと思います。それは一理ある話で、売る側にはいろいろな方がいらっしゃって、保護の対象として考えなければいけない人がかなり占めているというのは事実だろうと思うのですが、その点は、困難女性支援法で対象にされているところであるわけです。   一方で、売春防止法第5条に関しては、社会の風紀を乱す、公衆に迷惑、影響を及ぼすというところが処罰根拠ということであれば、売る側の方が保護の対象であるということと、社会の風紀を乱さないでもらいたいというところは、分けて考える必要があるのかなと思います。そうしますと、売る側の勧誘を処罰の対象から除外することが直ちに適切な選択肢なのかというと、私はちゅうちょを感じるところがございます。   また、売春防止法制定当時の資料には、第5条の売る側勧誘について、将来的には今後創設される保安処分に委ねるという方向での議論をしているといった指摘もあり、保安処分の是非はともかくとして、処罰するというよりは、刑事司法が介入して福祉につないでいくきっかけとしての処罰規定という面があるのだと思います。それが処罰規定の在り方としていいのかという問題はあるのですが、ストーカー規制法の処罰というのも、どちらかといえば警察が介入するための契機としての処罰規定という機能があるわけですよね。そうしますと、現行法第5条は処罰規定ではあるものの、現実の運用としては、起訴猶予という形で対応しつつ対象者の支援につなげていく、そのために警察が果たしている役割は大きいといえますし、この問題については、福祉につないでいくということも含めて考える必要があるのではないかと思います。   ですから、売る側の勧誘を処罰の対象から外すという選択は、繰り返しですが、私としてちゅうちょを感じるところであり、現行法を維持するのが望ましいと思っている次第です。 ○大沢委員 私も、結論から言うと、この部分については現行法のままでいいのではないかと思っています。もちろん、不均衡を是正するという観点を一回外すと、買う側のみを処罰の対象として、売る側を処罰しないという考え方は当然あり得ると思います。その場合は、いわゆる北欧モデルと言われるように、売買春というのは性的搾取、もっと踏み込んで言えば性犯罪であると捉えて、売る側は被害者であって買う側は加害者であるという考え方に立てば、勧誘行為について買う側だけを処罰するといった立て付けをすることもできるのだとは思います。ただ、本検討会のヒアリング等でも指摘があったように、路上で立つ方の中にも、自分の意思で立って勧誘をされている方たちも一定数いるという実情を踏まえますと、そういう人たちまで一律に性犯罪の被害者という位置付けにすることが理解を得られるのかなとは思うところであり、したがって、現行法のままでいいのではないかと思っている次第です。   その場合は、今後、摘発された女性の中で支援が必要な方がかなりいらっしゃるわけで、そういう方を確実に福祉につなげていくということを、この法律の見直しを契機に、もう一度しっかりやっていくべきなのではないかと思っているところです。ヒアリングで、東京都女性相談支援センターの方からは、ちゃんと警察から福祉へのつなぎの連絡が入ってきているというお話がありました。ただ、一方で、民間支援団体の方からは、捕まえた後、そのまままた歌舞伎町の路上に放すということの繰り返しなんだというような御指摘もありました。ですから、今ももちろんシステムとしてはあるのだと思うのですが、全てすくい取っていけるかというと、なかなかそうもいかないという現実があるのだと思います。ですから、もし現行法のまま売る側の処罰規定を存続させる場合には、支援が必要な人を取りこぼすことなく確実に福祉につないでいく体制をこれを機にまたしっかり構築していくということが大事なのではないかと思った次第です。 ○佐藤委員 基本的な私の考えは、先ほど星委員がおっしゃったこととほとんど同じものでして、法益侵害の観点から考えると、売春をする側の勧誘が法益を侵害していないというのは難しいのではないかと思います。他方で、被害者支援をしているぱっぷすの方たちがおっしゃるようなことを何とかこの法制の中で組み入れることができないかといろいろ考えてみて、あり得るとしたら、責任能力の減退とか期待可能性の減少とかいった形での責任阻却かなと思ったところです。   もっとも、責任阻却を認めようとすると、問題は、まず、売春行為をやっている方には責任能力がないとか期待可能性がないことに関する証拠資料が十分にないこと、また、ヒアリングにおいてもお話があったように、売春行為をやっている方の中には、私たちは合理的な選択としてこれを選んでいるんだと考えている人もいる可能性があって、その人たちに、あなたたちには責任能力がないんですよとか、本当は期待可能性がないんですよという形でこちらの評価を押しつけていいのかということで、今かなり悩んでいるところです。ということで、処罰対象としないというのは理論的には難しいのかなと考えているところですが、処罰をしないための可能性としては、責任の問題と考えることで何かできるかもしれないし、できないかもしれないと考えているところです。 ○北川座長 非常に悩ましい問題であるけれども、現行法の第5条の規定を維持しておきながら、非常に困窮を極めている方については、責任阻却と考えて、処罰しない運用が考えられるのではないかという趣旨の御意見であると伺ってよろしいでしょうか。 ○佐藤委員 今の意見としては、個別に判断するというよりは、「売春者」という形で類型化して規定するという意味合いでした。もっとも、確かにおっしゃるように類型的な責任阻却とはせずに、事例ごとに個別に判断するということはあり得ると思いますが、ただ、そうだとすると、処罰規定自体は残らざるを得ないという状況になろうかと思います。 ○櫻井委員 この論点についての意見を述べる前に、先ほど出ていた条例についての意見に関して、私は法律の専門家ではないので分からないものの、現行法第5条は、インターネット上の行為も含むと理解しているのですが、条例にすることによって、規制がより難しくなるということがないのかどうか、条例によっても十分捕捉できるのかどうかという点が疑問として思いました。   その上で、売春側の勧誘等についての意見ですが、私自身は、基本的には、売春の勧誘等については罰則は設けないという意見を持っています。つまり、売春防止法第5条は廃止してはどうかなと考えています。これまでも繰り返し申し上げてきたとおり、売春をする方には、本当に様々な方がおられるということは私も十分認識はしているのですが、困窮や様々な背景から性を売らざるを得ない状況に陥っている方が多いということを考えると、刑事罰を科す必要がそこにあるのだろうかと考えています。ですので、犯罪者として扱うのではなく、支援につなげるという方向を考えてはどうかという意見です。   ただ、周辺行為を含めた売春行為を全て非犯罪化し、買春者のみを処罰対象とした場合に、買春の違法性を悪用した犯罪が横行することも懸念はされるかと考えていますので、もし売春防止法第5条を完全に廃止するということであれば、そうした予期される懸念点について他の法律で対応が可能なのかということは、併せて慎重に検討すべきかと認識しております。 ○大沢委員 売春防止法第5条の規制の在り方が考えられると思うのですが、新たな立法措置をして、それが有効に機能して、例えば、路上から立ちんぼが消えていったということを想定した場合に、そうすると接触の場はどこに行くのかを考えると、先ほどちょっとお話が出ましたが、SNSの方に行くのではないかと想像します。海外の文献などでは、必ずしもSNSを介した売買春が伸びているわけではないというものも御紹介されたところではありますが、今後そうなったときに、SNSを介した接触についてはどういうふうに規制というか、摘発があるのか、その辺がちょっとイメージがつかないところです。例えば、現行法でも第5条第3号を根拠にSNSを介したものを規制することができるのではないかというのが私の理解なのですが、もし可能であれば、例えば、配布資料2で統計的に示されている第5条第3号違反の事件の中でSNSが問題になった事案は実際にあるのかどうかや、実際に接触の舞台がそういったSNSになったときに規制はできるものなのかどうかについて教えていただければ今後の参考になるのかなと思いました。 ○栗原参事官 具体的にどの程度定量的にあるのかというところについては、警察庁から更に詳しいお話を伺えるかもしれませんが、事務当局としてお答えしますと、現行法下においても、インターネットを通じて不特定多数の者が閲覧可能な電子掲示板、SNSなどに売春をする意思があることを表示して誘引した事案について、売春をする目的で「広告その他これに類似する方法により人を売春の相手方となるように誘引すること」という第5条第3号が適用された例があると承知しております。 ○入江委員 勧誘行為の規制の在り方についての皆さんの御意見を聞いていて思ったのですが、現行法第5条の処罰根拠である風紀を乱すといったことも含めて、更に現下の課題とか実態を把握した上で議論することがこの検討会の趣旨にも合致するのではないかと考えました。方法としては、SNSも含めて現在の取締りの実情、要するに、売春防止法第5条違反事件の近時の傾向や検挙状況などについて、できれば一番その現場を分かっていらっしゃる、検挙する立場の警察の方から御説明いただけたら、検討の材料として非常に助かるのかなと思います。また、先ほど大沢委員がおっしゃったとおり、周辺地域の住民の方がどのように影響を受けているのかは外せない観点だと思いますので、路上の売買春の勧誘や客待ちがその地域に及ぼす様々な影響について、その実態を把握している、例えば、地域の自治体関係者や振興団体の方からお話を聞けたら大変参考になるのではないかなと思いました。 ○大橋委員 売春防止法第5条第3号については、「公衆の目に触れるような方法」とか「公共の場所で」という要件が入っておらず、「広告その他これに類似する方法」が規制対象になっていると思うのですが、私の認識だと、同じような行為類型は周旋についての第6条第2項第3号にも入っておりまして、報道で見ていると、こういった広告による誘引行為として実際に検挙されているのは第6条の周旋の方が多く、第5条第3号の罪で検挙されているのはほとんど客待ちなのではないかと理解していたのですが、そうでもないというお話を聞いて、非常に興味深く思っております。確かにそういった実情が分かったら議論の参考になると思いましたので、意見として申し上げます。 ○保坂委員 警察としても、インターネットを介した行為は取締りの対象としております。また、本日の議論では、検挙後の支援へのつなぎがどうなのかという観点や、大阪のイエローロードの話もございましたので、警察で行っている取組、取締りに限らない支援へのつなぎ方や地域との連携した対策などについて、お時間を頂ければ、改めてまとめて御説明できればと考えております。 ○北川座長 ありがとうございます。保坂委員の方で御対応いただけるとのことですので、次回以降、そういう機会を設けることを前向きに検討させていただきたいと思います。   ほかにはいかがですか。よろしいでしょうか。   それでは、「売春目的での勧誘等に係る処罰規定について」の御議論は、ひとまずこの程度とさせていただきたいと存じます。   次に、法定刑についての御議論に移りたいと思いますけれども、法定刑につきましては、現行法の第5条の規定と第6条以下の規定、あるいは両罰規定など様々ありますが、どの規定についてと余り交通整理はしない形で、御自由に発言していただければと思います。   法定刑につきましても古川委員から御意見を頂戴していますので、最初に御紹介させていただきます。        【古川委員提出の意見書のうち「論点4」部分が読み上げられた】   それでは、ただ今の古川委員の御意見を踏まえて、あるいは、皆様の御関心のある規定からということでも、いずれでも構いませんので、御自由に御意見を頂戴できればと思いますが、いかがでしょうか。 ○大沢委員 売春防止法の法定刑は、制定時からほぼ見直されていないと伺っていまして、私は法律の専門家ではないのですが、一般人の感覚からすると、特にその罰金の額が軽過ぎるのではないかと思わざるを得ません。例えば、最も悪質だと思われる第12条の、いわゆる管理売春の罰金刑は30万円以下となっておりますし、第11条の売春を行う場所の提供は10万円以下、第6条の周旋は5万円以下となっています。   単純な比較はもちろんできないということは重々承知しているものの、例えば、昨年の風営法の改正では、目的外営業に対する罰則が強化されて、罰金刑の上限について、個人の場合は200万円から1,000万円、法人の場合は3億円とされています。こういうものと比べると、売春防止法の罰金刑の上限額はいかにも低過ぎるのではないかなと、素人の考えではありますが、感じるところです。売春の防止に取り組む姿勢を示すのであれば、罰金刑の上限額を相応に引き上げて、人を売春させて利益を得ようとする行為は経済的にも割に合わないと思わせるような法体系にする必要があるのではないかと思います。 ○星委員 私も、罰金刑に関して全く同じ感想を持っておりまして、罰金額の上限が2万円というのは、交通反則金でもそれを超える額がある中で、罰金として2万円というのは余りにも低すぎて、機能するものなのかと思います。例えば、道路交通法で罰金刑の上限が2万円の罰則というと何があるかというと、免許証不携帯罪などですが、それと同じでいいということはさすがにないだろうと思うところです。罰金の額自体が、当時と比べて、今の金銭価値に照らすと安くなってしまっているのではないかということももちろんあるわけですが、刑法上の罪の法定刑においても、遺失物横領に定められている10万円以下の罰金など、その辺が刑の上限としては最も低いものになっていますので、売春防止法の罰金刑の上限も見直していかなければいけないだろうと思います。   他方で、古川委員の御意見にありました、自由刑も含めてワンランクの引上げというのは、なかなか難しい問題があるのかもしれません。一番悪質な、第12条の売春をさせる業の自由刑は10年以下の拘禁刑とされていますが、これは売春防止法制定当時、人身売買の関係の罪、例えば、刑法の営利目的等の拐取であるとか、あるいは、これは今闇バイトにも適用されていますけれども、職業安定法の公衆道徳上有害な業務に就かせる職業紹介といったようなものと同じものを定めていることからすると、その上限というのは一つ、リミットとしてはあるのかもしれないと思うところです。   また、買う側の勧誘等の法定刑については、基本的には、私は、社会の風紀を乱す罪と考える以上、買う側が利得を得るとまでいえるかは微妙だと感じてはいるのですが、もし利得的なところがあるのであれば、そうした点も含めて、全体の刑のバランスの中で考えることについては俎上に上げてもいいのかなとは思いました。 ○川崎委員 私も、売春防止法第5条と第6条以下の犯罪について、それから、財産刑、すなわち罰金刑と自由刑、すなわち拘禁刑について、それぞれを分けて考えた方がいいかなと思います。   罰金刑については、第5条と第6条以下のいずれも低いというのは、感覚的にもそう思います。特に、両罰規定に関して、実態として、法人が売春の業を行った検挙例があるのかという点や、自由刑が実際にどの程度言い渡されているのかが分からないので、それらの点も含めて、売春防止法の量刑がどのようなものになっているかということについての資料を出していただけたら有り難いと思います。実態に即した法定刑を考えるという観点からは、例えば、量刑が法定刑の天井に当たっているようであれば、引き上げる合理的な根拠になると思います。もっとも、平成16年に行われた重大犯罪の法定刑の引上げの際には、殺人等について、その量刑が法定刑の天井に当たっていたわけではなかったものの、相対的に引き上げる必要があるということで法定刑が引き上げられたと思いますので、必ず天井に当たっているということがなければ引上げの根拠にならないということではないですが、実態を踏まえて検討することは必要かと思います。   その上で、両罰規定については、風営法上、合法に営業することを認められている業者が、逸脱的に売春を隠れてやっているような事案で、大きな組織としてやっていて収益も大きいといったものがあるようであれば、法人に対して高額の罰金刑を科すというのは観念的にはあり得ることかなと思いますので、両罰規定について、法人等の法定刑を引き上げることは選択肢の一つと思います。   拘禁刑につきましても、星委員がおっしゃるように、立法当時に横並びで参考とされた犯罪の法定刑がどんどん引き上がっているのに、売春防止法の法定刑だけが置き去りにされているということであれば、それは引上げの根拠になると思いますが、私の知る限り、置き去りにされているということはないように思いますし、古川委員の御意見にある「罪の重さに対する社会的評価」というのが何を指しているのかにもよりますけれども、それを根拠に引き上げるのはなかなか難しいかなと思います。ただ、平成17年に刑法に創設された人身売買罪のうち、わいせつ等目的の人身売買は、拘禁刑の上限が10年とされつつ、下限が1年以上とされている点について考慮する必要はないのかが少し気になります。   それから、拘禁刑については、3年以下かどうかは執行猶予が付けられるかどうかが変わってきますし、また、4年以上であれば、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律におけるいわゆるマネー・ロンダリングの対象犯罪になりますので、そうした観点も少し考慮した上で、引上げをすべきかどうかの判断をしてもいいのではないかと思います。わいせつ等目的の人身売買罪の法定刑の下限やマネー・ロンダリングの対象犯罪とすべきかどうかという点は、少なくとも売春防止法が制定されたときには考慮されていない材料かなと思います。 ○佐藤委員 私も、まずは、売春防止法の量刑に関する実態を踏まえる必要があると思っています。   その上で、基本的に、売春防止法上の罪を考えるに当たっては、その保護法益を見て、かつ悪質性も考慮するべきではないかと思っていて、これは法定刑についても同じ話でございます。売春防止法の注釈書等を見ると、第6条以下は、売春を助長する行為その他売春に関係のある行為の中で特に悪質と評価されているものがピックアップされていると言われているのですが、同時に、その搾取性に着目されているという点に特徴があろうかと思います。第6条以下を搾取性という点で見直してみますと、特に第7条の法定刑が低くて驚きます。第8条に、第7条の行為によって利益を得た場合、同条より重く処罰する罰則があるのですが、ただ、第7条自体も、性犯罪に限りなく近いもの、あるいは労働基準法5条で規定されている強制労働に近いような、かなり重い行為類型になっているにもかかわらず、法定刑がちょっと軽いのではないかというのが気になっています。   また、第6条については周旋目的での行為が規定されていますが、周旋によって利益を得た場合の罰則はありません。しかし、単に売春者や買春者の手足となって動いた人と、それによって何らかの利益を得た人というのは、やはり違うのではないかと思い、第7条の加重類型として第8条があるように、第6条にも加重類型があってもいいのではないかと考えているところです。 ○北川座長 ほかに御意見ございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは、本日の「法定刑」についての御議論は、一旦ここまでとさせていただきます。   そのほかに、全体を通して何か御意見や御提案があれば、お伺いしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは、本日予定していた議論はこれにて終了となります。   本日までの議論で、「論点整理」に記載された全ての論点について一巡目の議論が終了しました。次回の会議においては、個別の論点について二巡目の議論を行うこととしたいと思いますが、どのような形で御議論いただくかは、私の方で検討させていただきたいと思います。本日頂いた、追加のヒアリングや量刑に関する資料の御提案についても、どのような対応が可能か、事務当局とも相談をしつつ、検討させていただきたいと思いますので、この点に関しましても私に御一任いただいてよろしいでしょうか。              (一同異議なし)   次回会議について、どのような形で御議論いただくかにつきましては、事務当局を通じて、できるだけ早期に委員の皆様方にお知らせしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。   また、次回会議の日程につきましても、調整の上、なるべく早く確定させて、事務当局を通じて皆様にお知らせしたいと存じます。   本日の会議の議事の公表については、一部、特定地域に関する御発言がございましたので、御発言なさった方の御意向も確認の上、特定できないようにした上で公表するなどしたいと思いますが、その点については、座長である私にお任せいただいてよろしいでしょうか。              (一同異議なし)   それでは、そのようにさせていただきます。本日はこれにて閉会といたします。本日もどうもありがとうございました。 -了- -34-