売買春に係る規制の在り方検討会 (第6回) 第1 日 時  令和8年7月3日(金)   自 午後1時00分                       至 午後3時52分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  1 ヒアリング         2 警察における売買春の取締り及び防止に向けた取組について         3 論点についての議論 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○栗原参事官 ただ今から、売買春に係る規制の在り方検討会の第6回会議を開催いたします。 ○北川座長 本日は、皆様御多用中のところ、御出席くださり、誠にありがとうございます。   本日、星委員におかれましては、所用のため途中で退席される予定と伺っております。   まず、議事に入る前に、前回会議以降、委員の異動がありましたので、御紹介させていただきます。保坂啓介氏が委員を退任され、新たに、大門雅弘氏が委員となられました。   大門委員、簡単で結構ですので、自己紹介をお願いいたします。 ○大門委員 警察庁生活安全局保安課長の大門と申します。前任の保坂に続きまして、売春関連事犯の取締りを所掌する観点から参加をさせていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。 ○北川座長 大門委員、ありがとうございました。   次に、事務当局から、本日お配りした資料について説明をしていただきます。 ○栗原参事官 本日は、ヒアリング出席者名簿、ヒアリング出席者の説明資料、大門委員提出の資料をお配りしております。 ○北川座長 それでは、議事に入りたいと思います。   前回会議において、「勧誘等に対する規制の在り方」についての議論の中で、勧誘等に対する規制の在り方について検討するに当たっては、路上売春が特に問題となっている地域の方々や、売春防止法第5条違反事件の取締りを行う立場にある警察の方から、売買春をめぐる近時の実情等について更に知見を伺うことが有益と考えられるといった御意見が、複数の委員から述べられました。   そこで、こうした御意見を踏まえて私の方で検討し、本日は、各論点について二巡目の議論に入るに先立ちまして、ただ今申し上げた点に関して知見を有する方々からお話を伺うこととしたいと思います。具体的には、ヒアリング出席者名簿記載の新宿区の御担当者の方から、新宿区における売買春の現状と対策について、また、警察庁の大門委員から、警察における売買春の取締り及び防止に向けた取組について、それぞれ御説明いただきたいと考えております。本日は、各論点についての議論に先立って、これらの方々からお話を伺うということでよろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○北川座長 ありがとうございます。本日の進行としては、まず、新宿区の御担当者の方から15分程度お話を伺った後、10分程度質疑応答の時間を設け、次に、大門委員から、同様に、15分程度お話を伺った後、10分程度質疑応答の時間を設けるという流れで進めさせていただきます。そして、その後、10分程度休憩を取った上で、「論点整理」に記載の各論点について、二巡目の議論を行っていただきたいと考えております。   それでは、ヒアリングを始めたいと思います。   まず、新宿区危機管理担当の金子修様、浅見英之様からお話を伺いたいと思います。   座長を務めております、北川でございます。本日は、御多用中のところ、ヒアリングに御協力いただき、誠にありがとうございます。   それでは、金子様、浅見様、どうぞよろしくお願いいたします。 ○金子氏 ただ今御紹介いただきました、新宿区危機管理担当部長の金子と申します。本日は、このような機会を頂きまして、大変ありがとうございます。新宿区における売買春の現状と対策について、御説明いたします。本日お配りしている資料については、保安上の観点等から非公表としていただきたい部分がありますので、御配慮いただければと思います。   新宿区では、売買春の問題は、地域の安全・安心、さらには、まちのイメージにも関わる重要な課題と捉えています。また、近年、メディアやSNS等で大きく取り上げられ、社会問題としての認識が広がっています。本日は、歴史を踏まえ、現状、対策、課題について説明いたします。 (スライド2枚目)   本日の説明は、五つの項目で構成しております。一つ目に、歌舞伎町地区における街娼の歴史、二つ目に、コロナ禍以降の歌舞伎町の現状、三つ目に、新宿区の対策、四つ目に、課題、最後に、地元町会の声と新宿区の意見について、という流れです。特に、現状と課題の部分については、近年大きく変化している点を中心に御説明いたします。 (スライド4枚目)   まず、歌舞伎町地区における街娼の歴史です。売買春の問題は決して新しいものではなく、歌舞伎町周辺における街娼に関しては、戦後の混乱期、古く言えば、内藤新宿ができたときからの飯盛女からの時代もございますが、本日は、戦後からのお話をさせていただきたいと思います。歌舞伎町周辺における街娼は、戦後混乱期において、闇市とともに自然発生的に広がったと言われています。その後、昭和31年に売春防止法が成立し、公娼制度は廃止されましたが、街娼は完全になくなることはなく、地下化・分散化しながら存続してきました。高度経済成長期には、新宿が日本を代表する歓楽街として発展し、人の流入とともに、街娼も一定規模で存在し続ける状況になったと言われています。平成に入り、インターネットの普及、さらにスマートフォンやSNSの普及により、客探しの手法は大きく変化しました。従来の路上型から、インターネットを活用した形へ移行し、一時的には見えにくい問題となりました。しかし、令和に入り、特にコロナ禍を契機として、再び路上での形態が顕在化している点が、現在の状況の大きな特徴です。 (スライド6枚目)   次に、コロナ禍以降の歌舞伎町の現状です。こちらの図で示しているのは、歌舞伎町二丁目において街娼による売買春が確認されている主なエリアです。左上の「43」と記載されている大久保公園の周辺の路上、ピンクでハッチングされている部分ですが、こちらが中心で、現在でも一定数の街娼が集まる状況が見られます。また、近年では、大久保公園周辺の我々のパトロール活動等により、近隣のホテル街、黄色くハッチングされている部分ですが、そちらのホテル街の路上や出入口付近で客待ちをするようになり、分散化している傾向があります。 (スライド7枚目)   古くから歌舞伎町周辺の街娼は存在していましたが、近年は、コロナ禍を契機に増加傾向にあり、その主体が若年の日本人女性に変化していると指摘されています。背景には、複合的な要因が考えられます。例えば、ホストクラブとの関係、家庭環境の問題、経済的困窮、さらにはSNSによる情報拡散などです。特に、SNSによって情報が拡散されることで、結果として、大久保公園周辺が広く「客待ちの場所」として認知されるようになりました。 (スライド8枚目)   さらに、この情報は国内にとどまらず、海外にも広く拡散しています。その結果、買春や見物を目的とした外国人観光客が増加し、一種の観光的スポットとして扱われるようにもなっています。これにより、新たな問題も発生しています。言語の違いによる金銭トラブル、詐欺、窃盗など、従来と異なるリスクが顕在化しています。また、いわゆるトー横キッズの問題とも絡み、青少年問題としての側面も目立つようになっています。 (スライド9枚目)   更に深刻な点として、未成年者が犯罪に巻き込まれるケースも確認されています。成人男性が未成年に売春を指示するような事案や、若年層のグループに成人が関与するケースなど、第三者による介入が見られるようになっています。これは単なる風紀の問題ではなく、犯罪や人身搾取の観点からも重大な課題です。 (スライド10枚目)   このような状況を受け、地域からは不安の声が寄せられています。例えば、大久保公園周辺で勤務する病院関係者や会社員の方から、「通勤の際、歩いているだけで街娼と間違われて声を掛けられるので、何度も不快な思いをした」などの声や、地元住民や来街者から、「安心して通行できない」、「公衆の面前で、客待ちや買春の声掛け、交渉が行われていて、まちの風紀が大きく乱れたと感じる」といった声が寄せられました。 (スライド11枚目)   また、地域のイメージ悪化も深刻です。買春を目的とした外国人観光客の増加に伴い、地元住民からは、「日本人だけでなく、街娼目当ての外国人観光者がたくさん訪れていて、歌舞伎町や新宿全体のイメージの悪化がとても残念だ」という声も上がっています。さらに、このような治安の悪化や風紀の乱れにより、「この地域が単純な売春だけでなく、他の犯罪の温床にならないかとても心配だ」という不安の声も上がっています。 (スライド12枚目)   こうした問題に対し、区や警察等の関係機関や地元町会がパトロール活動等の対策を強化していますが、効果は一時的にとどまる傾向があります。一例として、昨年8月に、警視庁による大久保公園周辺の徹底したパトロールと集中取締りにより、同公園周辺の街娼は一時的に減少したものの、新たに近隣のホテル街へ分散するなど、対策と再発を繰り返している状況にあり、問題の解決には至っていません。 (スライド14枚目)   ここからは、新宿区の主な対策について説明いたします。初めに、官民合同パトロールです。地元町会、警視庁、東京都と連携し、合同パトロールを実施しています。スピーカーによる広報や声掛け活動を通じて、迷惑行為の防止及び違反行為の抑止を図っています。 (スライド15枚目)   続いて、広報活動の内容についてです。広報活動では、日本語及び英語を用い、周辺住民や施設利用者への配慮を呼び掛けるとともに、買春行為が法律で禁止されていること、また、金銭トラブル等のリスクについて注意喚起を行っています。また、外国人来訪者にも伝わるよう、多言語対応の工夫も行っています。 (スライド16枚目)   続いて、委託警備員によるパトロールです。小型スピーカーを用いた巡回及び声掛けを実施しています。継続的な巡回により、一定の抑止効果が確認されています。 (スライド17枚目)   続いて、青色防犯パトロール車両による広報巡回です。車両スピーカーを活用した広報活動を実施しています。令和8年度からは活動時間を拡大し、より広範な抑止を図っています。 (スライド18枚目)   続いて、防犯カメラの設置です。新宿区では、防犯カメラを設置し、公園利用者及び通行者の安全確保や、犯罪・迷惑行為の抑止を図っています。カメラの存在自体も、心理的な抑止力として機能しています。 (スライド19枚目)   続いて、注意喚起看板等の設置です。周辺地域に横断幕や立て看板を設置し、来訪者に対して迷惑行為の防止及び法令遵守を呼び掛けています。視覚的な情報発信により、注意喚起を強化しています。 (スライド20枚目)   続いて、ホテルへの協力要請です。区と警視庁が連携し、歌舞伎町のホテルに対して、児童買春や売春行為が疑われる利用があった場合の通報について、協力を要請しています。こうした取組を複数回実施し、関係事業者との連携強化を図っています。 (スライド22枚目)   これらの対策は一定の効果を上げられているものの、次に説明する課題が明らかになっています。   課題の一つ目は、対策の効果が一時的である点です。パトロール中は減少するものの、終了後には再び戻る傾向があり、警察の取締りや補導後も一定期間で戻ってきてしまう傾向があります。また、待ち合わせだと主張される場合、強い指導が難しいという限界もあります。 (スライド23枚目)   さらに、課題として制度面の問題があります。買春の勧誘行為自体には明確な罰則がなく、抑止に限界がある状況です。また、問題の背景が、生活困窮、家庭問題、ホスト関連など幅広いため、単一の対策では難しく、治安・福祉・青少年対策を一体的に進める必要があります。 (スライド25枚目)   最後に、地元町会の声と新宿区の意見をお伝えします。まず、街娼問題に関する風紀の乱れやイメージ悪化を食い止めるため、地道にパトロール活動を継続している地元町会からの声です。「何年もパトロール活動を続けて、声掛けや注意をしているが、あまり効果がなく、いつまでも問題が解決しない」、「パトロール活動の効果を上げるためにも、街娼や買春しようとする者に対して、もっと抑止力のある法整備を行ってもらいたい」との声を頂いています。   続いて、新宿区の意見です。これまで御説明した現状と課題を踏まえ、新宿区としても、現状に即した、より実効性がある制度対応が必要であり、買春の勧誘行為等の罰則化を含めた法整備を要望したいと考えております。   本日の説明が今後の政策検討の一助となればと幸いです。 ○北川座長 ありがとうございました。   それでは、委員の皆様から、御質問をお伺いしたいと思います。御質問のある方はいらっしゃいますでしょうか。 ○大橋委員 本日は、貴重なお話をどうもありがとうございました。今聞かせていただいたお話によりますと、かなり徹底した対策をとっておられるような印象を受けましたが、それでもなかなか効果が一時的なものにとどまると理解いたしました。効果が一時的だということなのですが、それは、例えば、取締りや対策を行うと一時的に人が減るのだけれども、また元に戻ってくるという実感がおありなのか、また、たくさん人が集まる場所が移動していくといったことなのかというところを教えていただければと思います。それから、もちろん規制が必要だというお考えを理解した上でのことなのですが、なかなか対策が効果に結び付かない要因として、地理的な要因、つまり、大都市の大きな歓楽街の近くにそれなりに大きなホテル街がある、深夜まで人の出入りがある、こういった環境も大きな要因になっているのではないかと思うのですが、そのあたりの実感についてもお聞かせいただければと思います。 ○浅見氏 新宿区危機管理担当部安全・安心対策担当副参事の浅見と申します。よろしくお願いいたします。   まず、効果が一時的にとどまるという点についてですが、実際にパトロールをすると一時的にその場を離れることはよくあるのですが、パトロールをしている者がいなくなると、またすぐ戻ってきてしまいます。また、パトロールを地元町会の方と一緒にやっていて、注意をしても、「待ち合わせをしているだけ。」といった主張をしてずっとそこから動かない女性もたくさんいます。そのような場合は、私たちがその場にとどまってしばらく駐留警戒していると諦めて移動したりすることもあります。このようにパトロールしているときはそれなりに対策ができても、我々も24時間張り付いていることができませんので、いたちごっこが続いているという状況です。   また、これは警察の所管だと思うのですが、補導又は検挙をしても、しばらくすると戻ってくる。特に、未成年の方で、補導をして保護者の元に帰したり、児童相談所を通じて保護者の元に帰したりしても、しばらくするとまた歌舞伎町に来てしまうという実態があるようです。都内の方もいますが、地方の方も同じぐらいいると聞いています。全国から少年少女が歌舞伎町を目指して集まってきていて、保護して自宅に帰しても、しばらくするとまた歌舞伎町に戻ってきてしまうといったことを繰り返しているような状況があると聞いております。   2点目についても、委員御指摘のとおり、歌舞伎町という大きな繁華街で、ホテル街もあるということもあり、環境的な要因も非常に大きいのが実情だと思っております。 ○櫻井委員 今日はお話ありがとうございました。活動としましては、指導やパトロールといったことをされているというお話をお伺いしましたが、福祉や支援につなげるといった活動も行っておられるのか、もし行っておられるとすれば、なかなかうまく福祉や支援につながらないとか、そういった課題があるのであればお聞かせいただければと思います。 ○浅見氏 まず、現状としては、福祉の方と一緒にパトロールに行くことは基本的にないのですが、話を聞いて、福祉につなげられるような場合があれば、できるだけつなげられるようにしたいと考えています。ただ、警察で検挙された際の報道などを見ますと、生活困窮という福祉的な面よりも、ホストとか、いわゆる推し活でお金を使っていて、そもそも福祉で支援するような状況でないような方もたくさんいらっしゃるのではないかなと思っています。また、未成年に関しましても、児童相談所等を通じて自宅にお帰ししていますけれども、なかなか家庭環境の問題というのも簡単に解決しないことが多いのではないかと実感はしております。 ○大沢委員 今日はありがとうございます。パトロールなどの活動をされているときに、いわゆる買う側、多くは男性で、また、外国人観光客の方も多いということですが、そういう方へのアプローチは積極的にされているのか、また、例えば、それに対して効果がなかなかない、あるいは手応えがあるのかといったところを教えていただければと思います。 ○浅見氏 いわゆる買う側の男性に対しても、特に、大久保公園周辺で立ち止まっているような方にお声掛けをしています。素直に応じていただける方もいますし、何か理由を付けて、「待ち合わせしているだけだ。」とか言う方もいらっしゃいます。一時的にいなくなっても、我々の姿がなくなると、また戻ったりということの繰り返しです。特に、買春の勧誘行為等に罰則がないということが知られているため、注意をしてもなかなか響かないといいますか、そういったところは非常にもどかしく感じているところです。 ○北川座長 ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。なければ、これで終了とさせていただきます。   金子様、浅見様、本日は、貴重なお話を頂戴いたしまして、誠にありがとうございました。お話しいただいた内容につきましては、今後の検討に役立ててまいりたいと思います。   それでは、次に、大門委員からお話を伺いたいと思います。大門委員、どうぞよろしくお願いいたします。 ○大門委員 私からは、警察における売買春の取締り及び防止に向けた取組についてお話をさせていただきます。   第5回会議において、路上での客待ち行為やインターネットを利用した誘引行為の取締りの実情について、警察から説明をしてほしいという御意見があったと聞いております。また、これまでの会議でのヒアリングにおいても、警察から支援センターへの支援を必要とする女性の引継ぎであるとか、悪質ホストクラブ問題を含む売春をする女性を生み出す構造的問題といったことへの言及もあったことから、売買春の実態や取締りの実情と今後の課題に加え、売買春をめぐる問題に対する警察の取組を紹介させていただき、この会議の検討の一助となればと思っております。   資料の1枚目を御覧ください。まず、令和7年中の売春防止法違反の検挙状況ですが、検挙件数は347件で、うち200件が売春防止法第5条違反、すなわち勧誘等による検挙となっております。この200件のうち、インターネットを利用せず、路上で客待ち等をする事犯が135件、インターネットを利用して出会い系サイトやSNS、電子掲示板等を通じて誘引等をする事犯が65件となっております。   客待ちの事犯は、売春防止法第5条第3号の「売春をする目的で、」「公衆の目に触れるような方法で客待ちをし」という規定を適用して取り締まるのが一般的です。こうした事犯は、円グラフにあるとおり、その大多数が東京都又は大阪府で発生しており、東京都であれば新宿区、大阪府であれば北区といったように、いわゆる繁華街、歓楽街の中でもラブホテルが密集するような地域において、夕方から夜間にかけて多くの客待ちをする女性が佇立している実態があります。客待ちをする女性に対して男性側が声掛けをするわけですが、「ちょっと遊べる?」などと声を掛けて、女性が応じるようであれば、価格や避妊の有無等の交渉が行われ、交渉が成立すると2人で連れ立ってラブホテルに入っていくというような状況です。日本人に限らず、外国人の男性も、スマホの翻訳アプリを使用して声掛けや価格交渉をすることもあると聞いております。   こうした客待ちをする女性は、新宿区からの話にもあったとおり、警察官が姿を現すといずれかに立ち去り、しばらくするとまた戻ってくるという状況にあります。女性側も警察を警戒しており、検挙された女性の中には、「客待ちは違法であるという認識は持っているので、私服警官である可能性のない、外国人や高齢の日本人男性のみを相手に売春をしている。」という供述をする人もいると聞いております。   検挙された客待ちの8割が東京都の事案ですが、警視庁においては、大久保公園周辺で客待ちをしていたとして売春防止法違反により検挙された女性の属性等の分析を行っており、その分析によりますと、令和7年中に検挙された女性112人に関して、飽くまで捜査員による聞き取りに基づくものですが、まず、年齢については、20代が約7割となっておりまして、20歳から24歳が51人で全体の46%、25歳から29歳が26人で全体の23%、続いて、30歳代が16人で全体の14%となっております。職業については、約7割が性風俗店勤務の経験者、具体的には、元性風俗店従業員が56人で全体の50%、現職の性風俗店従業員が23人で全体の20%となっており、性風俗店勤務の経験のない無職の方や会社員、大学生などの「その他」が続くという状況です。動機については、多い順に、ホストクラブ等の遊興費が48人で全体の43%、アイドル応援費用やブランド品購入費用といった趣味等の遊興費が21人で全体の19%となっており、生活困窮と答えた者は3人で全体の3%となっております。   職業に関しては、性風俗店の従業員やその経験者が多い状況ですが、検挙された女性の供述として、客待ちをしていた理由について、「性風俗店と異なって全てが自分の稼ぎになる。」といったものや、「自分の嫌な客には応じなくてよいため。」といったものもあります。   遊興費を稼ぎたいという女性の中には、「どうせ捕まってもすぐ出られる。」、「複数回捕まってもどうせ罰金2万円でしょう。」といったことを言っている者もおり、実際に検挙された女性の中でも、検挙されても釈放されるという認識や、法定刑が低いという認識を持っている人がいるような印象があります。   こういった女性もいる一方で、実際に困難な問題を抱えて、売春以外の選択肢がなく、支援を必要とすると考えられる女性もいらっしゃいますので、そういった方については、警察としても、支援の必要性や女性側の希望の有無を踏まえ、自治体の福祉事務所に引き継ぐなどの支援を実施しています。   資料には記載していない点として、路上の客待ちに関する捜査状況について簡単に御説明したいと思います。具体的な捜査手法を明らかにすることはできないのですが、例えば、ラブホテル街で佇立する女性が男性に声を掛けられて、一緒にラブホテルへ向かおうとする状況を捜査員が確認した後、男性遊客から聴取をするなどして、どういう状況で女性が客待ちをしていたのか、また、その遊客の方が相手方を売春婦と認めるような状況であったかといった供述を得るなどし、当該女性が客待ちをしていた事実を疎明するといったものがあります。   第5回会議において、入江委員から、令和7年10月の東京地裁の無罪判決の紹介があったかと思います。この判決でも売春目的について言及されていますが、この事例は、被告人も売春目的があったことを認めていたものの、判決では、被告人の行為について、「外形上、売春目的があることが、その服装、行為の場所、時刻等と相まって不特定の一般人に明らかになるような挙動が行われておらず、被告人が、公衆の目に触れるような方法で客待ちをしたと認めることはできない」と判断されたものです。警察としても、売春防止法第4条の、「この法律の適用にあたつては、国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならない」という規定を重んじており、客待ちなのか、そうでない待ち合わせなのかが区別ができるように、できる限り必要な疎明を行っています。   次に、インターネットを利用して誘引等する事犯は、売春防止法第5条第3号の「売春をする目的で、」「広告その他これに類似する方法により人を売春の相手方となるように誘引すること」という規定を適用して取り締まるのが一般的です。具体的な文言としては、例えば、「今日夜19時頃、○○付近でお会いできる方メール下さい。」や「ゴムありで希望は別2.5~」といったもの、これは避妊具着用の上でホテル代と別で対償が2.5万円以上であればオーケーですよというような意思表示ですが、こういった文言が書き込まれているのを捉えて捜査を行っています。その捜査に当たっては、警察によるサイバーパトロールのほか、警察庁が運用し、一般のインターネット利用者等から違法情報の通報を受理できる、インターネットホットラインセンターへの通報が端緒となることもございます。   次に、資料の1枚目に戻っていただきまして、地域社会との連携・環境の整備についてお話をさせていただきます。先ほど申し上げたとおり、客待ちの事犯は、東京都と大阪府が多い状況ですが、警視庁においては、新宿区や町会との合同パトロールを実施したり、環境整備等々を行っております。また、大阪府警察については、第5回会議で言及があった、北区の「イエローロード」などの取組を行っております。これは、大阪の梅田駅近くのラブホテル街の一角で客待ちをする女性が増え、地域住民等からも治安環境改善を求める要望が上がっていたことなどを受け、大阪府警察と大阪市、町会、防犯協会等が協働し、路面への黄色い塗装や海の生き物のイラストの設置等、売春が行われにくいような取組を行ったものです。   次に、客待ちをしている女性に対する、検挙した後の支援についてですが、警察においては、留め置いた女性に対して面談を実施し、支援の必要性や希望の有無を確認の上、自治体の福祉事務所に引き継ぐなどの支援を実施しているほか、この希望の有無にかかわらず、こういった関係機関があるんだよということの案内も含めて、各種支援機関の連絡先等が記載されたリーフレットを配布しています。   次に、資料の2枚目を御覧ください。悪質ホストクラブ対策について説明させていただきます。先ほど申し上げたとおり、動機としては、ホストクラブ等の遊興費への充当と回答した女性が多いわけですが、警察においては、先ほど申し上げた事前の防止策と事後の支援策に加え、売春をする女性を生み出す構造的問題にも取り組む必要があるだろうということで、悪質ホストクラブ対策や、背後関係に着目した売春関係事犯の取締りに注力しております。   悪質ホストクラブ問題については、ホストクラブに通う女性が売掛金等の名目で多額の債務を負担させられて、性風俗店等で稼動させられるという実態があり、こうした問題を受けて、令和7年11月に施行された、風営適正化法の改正を行いました。具体的には、ホストクラブ等の接待飲食営業を営む者に関し、客の恋愛感情等につけ込んだ飲食等の要求等の行為を遵守事項として規定したり、威迫や誘惑による料金の支払い等のための、海外売春も含む売春や性風俗店への勤務、アダルトビデオ出演等の要求等の行為を禁止事項として規定するなどの改正を行ったものです。   警察としましては、こうした改正について広報・啓発を行うとともに、悪質ホストクラブ問題が、ホストだけでなくスカウトグループや性風俗店が関与していることから、売春防止法を含む様々な法令を駆使して、悪質ホストクラブに関連した収益構造の実態解明・取締りや、背後関係に着目した売春関係事犯の取締り等を推進しているところです。   資料の3枚目を御覧ください。検挙事例を二つ紹介させていただきます。一つ目は、改正風営適正化法を適用した検挙事例で、ホストクラブ従業員である被疑者の男性が、女性客に対し、売春により金銭を得てホストクラブでシャンパンを入れれば被疑者と性交ができるかもしれないといった甘言を用いて、売春をすることによって金銭を得ることを要求するメッセージを送信した事例です。もう一つは、大久保公園周辺で客待ちをしていた女性を検挙したところ、捜査の過程で、この女性がいずれかの者から指示を受けて客待ちをしていたことが判明したことから、所要の捜査を行い、売春をするよう指示をしていた、当該女性が勤務していたガールズバーの店長らを売春防止法違反で検挙した事例です。   このように、警察としては、売買春の防止のため、取締りはもちろんのことですが、パトロールや環境整備といった事前の防止策のほか、福祉事務所への引継ぎといった事後の支援策、悪質ホストクラブ対策や背後関係に着目した構造的な問題への対応などの観点から幅広く取り組んでいる状況です。 ○北川座長 大門委員、ありがとうございました。   それでは、委員の皆様から御質問をお伺いしたいと思いますが、御質問のある方はいらっしゃいますでしょうか。 ○大橋委員 警察の取組の実情について御教示いただきまして、どうもありがとうございました。売春防止法第5条の検挙状況について、インターネット利用なしの場合は、場所的な内訳として東京都と大阪府で合計95%であるとお示しいただいております。これに対して、インターネット利用ありの場合については、先ほどの話ですと、待ち合わせ場所を指定して売春の勧誘をするといった事案が典型だということですが、こちらについては地域的な要因があるのかないのかを教えていただければと思います。 ○篠崎室長 警察庁生活安全局保安課風俗環境対策室長の篠崎と申します。   インターネットの利用がある場合については、東京都と大阪府に限らず、ほかの地域でも検挙があるという状況です。 ○薄井委員 貴重なお話ありがとうございます。構造的な問題に対応するため、背後関係に着目した売春関係事犯の取締りに注力されているということだったのですが、背景にある犯罪を摘発するに当たって、街娼として街に立っている方も売春防止法第5条違反で検挙される立場にあるということがどう影響しているのか、つまり、それが背景の犯罪を検挙するきっかけになっているのか、あるいは、自分自身が被疑者になる立場にあるということでそれが顕在化しにくくなっている面があるのかといったことについて、何かお感じになるところがあれば教えていただければと思います。 ○篠崎室長 御指摘のように、売春防止法第5条違反での検挙をきっかけとして、背後に組織的なものがある、あるいは、先ほど御説明差し上げたように、ホストから売掛金の返済を迫られて売春に至っているという状況が判明することもあります。 ○大門委員 補足いたしますと、先ほど御説明した二つの事例のうちの二つ目の方が、まさに客待ちをしていた女性からの検挙を端緒として管理売春の捜査にまで至ったという例ですが、検挙された女性側としてはなかなか供述しにくい状況もあるわけですけれども、捜査の過程でお話をしていただけるような形になったこともあって背後関係を把握できた事例です。もっとも、薄井委員がおっしゃるとおり、なかなか全ての方がお話してくれるわけでもないですし、事例によって様々あるかなとは思います。 ○古川委員 御教示ありがとうございました。インターネット利用による勧誘等に関し、利用されている出会い系サイトや何らかのアプリの運営者について、幇助犯等の刑事責任を追及する可能性や実例がありましたら、お聞かせいただければと存じます。 ○篠崎室長 多くのインターネット利用の売春事案について、使われているサイトですとかSNSというものは一般的なものも多く含まれておりまして、必ずしも売春だけを専門的にやっているものではないものも多いのですが、中には売春に特化した掲示板が作られていることもあり、そういったものについては、勧誘等の幇助での取締りも行っています。 ○大沢委員 今日は貴重なお話ありがとうございます。インターネットを利用した勧誘等について、例えば、女性が、先ほどのような具体的な文言を書き込んだ場合に、それに応じた人を検挙することは捜査実務上可能なのでしょうか。 ○大門委員 売春防止法第5条は売春をしようとする者が捜査対象ですので、基本的には、書き込んだ側を捜査することになります。もっとも、何らかの別の犯罪が見え隠れすれば、当然それを捜査対象とすることはあるかと思います。他方で、売春をしようとする女性本人が本当に書いているのかという問題はありまして、例えば、書いている人は男性で、その男性が女性を管理し、客が取れれば、つまり、売春の相手方が見つかれば、「おまえ、行ってこい。」と言って売春をしに行かせるような場合については、第6条の周旋として捜査することもありますので、警察としては、よく実情を見ながら適用する罪名を考えているという状況です。 ○佐藤委員 今日は貴重なお話をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。インターネット利用ありの場合についての質問なのですが、例えば、「どこかで遊ぼう。」と声を掛けて、交渉がそこから始まって、ホテル代とは別で対償は幾らなどのやり取りがあった場合、「売春の相手方となるように誘引」したことに該当し得る行為は、最初に「遊ぼう。」と声を掛けたことだけになりますか、それとも、幾らでという金額を言うことも「誘引」になり得るのでしょうか。 ○篠崎室長 インターネット利用ありの場合は、「広告その他これに類似する方法により人を売春の相手方となるように誘引すること」と規定する売春防止法第5条第3号の事案として検挙することが多いのですが、そうした事案は、インターネット上に、不特定又は多数の相手方に見られるような形で、売春者側が、先ほど申し上げたような文言を掲載していることをもってこの要件に該当していると認定しています。 ○佐藤委員 例えば、買春者側が「遊ぼう。」とか「幾らで。」と声を掛けた後に、売春者側が、「いいですよ。」あるいは「3万円ならいいですよ。」と応じるのは、同号の「誘引」には該当しないという理解でよいですか。 ○篠崎室長 そうですね。不特定又は多数の相手方という限定がありますので、例えば、一対一のやり取りになった場合には、一般的には同号の「誘引」には該当しないと解されていると承知しております。 ○北川座長 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは、これで終了とさせていただきます。大門委員、御質問に御対応いただきました篠崎様、ありがとうございました。   それでは、開会から時間が経過しましたので、ここで10分ほど休憩したいと思います。再開は、午後2時10分とさせていただきます。              (休憩) ○北川座長 それでは、会議を再開いたします。   次に、各論点について二巡目の議論を行うこととしたいと思います。本日は、「論点整理」の「1 売春の定義」から始めて、「論点整理」に記載の順に各論点について御議論をいただき、時間が限られている中ではありますが、切りのいいところまで議論を進めていきたいと考えております。本日は、そのような進め方とさせていただくことでよろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○北川座長 ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。   一巡目の議論では、各論点に関し、現行の売春防止法における規制の在り方を見直すべきか否か、また、見直すこととする場合に考え得る方向性・検討課題などについて御議論いただきました。二巡目の議論では、議論を更に深めていく必要がございますので、一巡目の議論を踏まえつつ、御意見を頂戴したいと考えております。   それでは、まず、「売春の定義」について御議論いただきたいと思います。   一巡目の議論においては、売春防止法第2条の「売春」の定義を改め、性交以外の行為も対象とすべきかという点について、複数の御意見を頂きました。頂いた御意見としては、「肛門性交、口腔性交及び膣又は肛門への身体の一部や物の挿入は、身体的・心理的侵襲性において性交と本質的な差異はないことなどを踏まえると、これらの行為も「売春」の対象行為に含めるべきである。」とか、「これらの行為の全てを「売春」の対象行為とすることが困難である場合、身体への侵襲性や性感染症のリスクが相対的に大きいと指摘されている肛門性交のみを「売春」の対象行為に新たに加えることが考えられる。」という御意見があった一方で、「挿入行為の身体的・心理的侵襲性や性感染症のリスクといった観点は、性的自由・性的自己決定権を保護法益とする刑法の不同意性交等罪や感染症予防を目的とする法制度によって対処されるべきものであり、売春防止法における保護の対象とは異なるものである」とか、「性的行為はプライバシー性の高い領域の行為であり、また、不特定の者と金銭の授受を伴う性交類似行為を行うことに対する道徳的な考え方や価値判断については様々なものがある中で、法律による規制をもって公権力が介入することには慎重であるべきである」とか、「性交以外の行為を売春の対象に含めることとした場合、性風俗産業従事者に大きな影響を与えるおそれがあり、また、売春をする者に対する福祉的な支援が妨げられるなどの懸念がある」ことなどから、「売春」の定義を改めることについては慎重な検討が必要であるという御意見がありました。   二巡目の議論においては、ただ今申し上げたような一巡目の議論を踏まえて、更に御議論いただきたいと思います。それでは、御意見のある方は、御発言をお願いします。 ○櫻井委員 私は、一巡目の議論で、「売春」に性交類似行為を含める、もしそれができなければ、肛門性交を含めることで一つのステップを踏んではどうかという意見を申し上げました。その際に、他の委員の方々からは、「売春」の定義は拡大すべきではないという御意見が大半で、いわゆる風適法との整合性など実務上の課題があるということを私自身も理解いたしました。   しかし、改めて考えたところ、私自身も心理士業務の中で経験しましたし、またメディアなどでも目にするところではありますけれども、売春においてかなり危険な行為も行われているのが事実ではないかと思っています。人の尊厳の観点に立ったときに、現行法の膣性交に限定した定義には論理的な矛盾があるように私には思えます。諸外国の規制を見渡しても、売春の定義を膣性交のみに限定し続けている例は日本のほかにはないように思いました。これを維持するという結論に至ることが必至というよりは、むしろ現状に合わせるために理由を付けたということになりはしないかということも懸念しています。   私が一巡目の議論で申し上げた法成立当時の逐条解説には、性交類似行為について、実態は必ずしも明らかではないが、我が国においてはそれは必ずしも多くなく、したがってその害毒も大きくはないと思われるという説明をされている箇所があります。仮に、今の時代に売春防止法を立ち上げようということになった場合、果たして「売春」の定義を膣性交のみに限定するだろうかという疑問もございます。多様な性被害の実態や男性間の売買春、LGBTQプラスをはじめとするジェンダー平等の視点がある現代において、そのような限定的アプローチを私たちは採るのだろうかという疑問があります。   性行為はプライバシー性の高い領域で、そこに公権力が介入することについて慎重であるべきということについては、私も納得しているところでもあるのですが、この点について、そうしますと、海外では法律上どのように整理されて、売春に性交類似行為も含むような法律の立て付けとすることが可能になっているかということをもし御存じであれば、御教示いただきたいと思っています。 ○川崎委員 私は、一巡目で、「売春」の定義に性交類似行為を含めることには慎重であるべきだという意見を申し上げ、そのときにも言及したつもりですが、櫻井委員が御指摘のような人の尊厳への配慮という点については、売春防止法という一つの法だけでするというよりは、法体系全体の中でそれが欠けているところがあるかどうかという点で考えれば、ある程度はなされているということを前提に、では、売春防止法で重ねて、あるいは売春防止法のみでどこまでやるのか、また、それがもたらすマイナス面をどう考えるのかという点についてまで考慮すべきだと考えます。そうすると、先ほど櫻井委員もおっしゃったように、性行為はプライバシー性の高い領域の問題ですので、国が介入することについては慎重であるべきだと思います。   もう一つは、社会の性風俗を乱すという観点から、「売春」として規制する範囲をどこまで広げるのかということについて、社会のコンセンサスが十分あるのかというと、私は、そこまでのコンセンサスにまでは至っていないのではないかということも、一巡目の議論で申し上げました。   櫻井委員がおっしゃったように、海外ではどのように整理されているのかというのは確かに一つの視点ではありますが、ただ今私の申し上げたことと重ねると、海外について見る場合にも、法体系全体の中でどのように整理されているのかということを検討する必要があるかと思います。売春防止法に当たるようなよく似た法令が海外にあって、そこでは売春の定義を膣性交以外に広げているということだけをもって、日本と違うという比較をするのでは不十分かなと思います。 ○大橋委員 売春防止法は、売買春そのものは処罰しないで、その助長行為を規制しつつ、売春側の保護更生を図るものとして制定され、その後、困難女性支援法の制定によって、そうした女性に対して福祉的な支援を充実させる制度的基盤が整備されたという経緯を踏まえますと、私の基本的な意見としては、管理売春や周旋といった搾取的な行為については刑事規制で対応するのに対して、売買春の当事者については、売春側の支援を通じて背景にある課題を解消していくことで、問題を減らしていくのが望ましいと考えております。   こういった考え方を前提にすると、売買春の対象を広げて、搾取的な行為についての規制を厳しくしていくということはあり得なくはないのではないかと思うところではあります。実際、ニューヨーク州では、膣性交に限らない性的な行為を対象とした売買春そのものが刑事規制の対象になっているという実情もございます。   しかしながら、売春防止法が制定されて随分長い期間がたっている中で、処罰の対象を大きく広げる可能性のある立法をしようとする場合、そうした規制が必要とされていることを示す相応の具体的な事実が必要になるのではないかと思います。この検討会のヒアリングでも、路上売春を中心に様々な問題がたくさん出てまいりましたが、それを踏まえても、売買春の範囲自体を拡大することが今非常に必要とされているという状況までは見受けられないのではないかと思います。そういったことを踏まえて、「売春」の定義を拡大する必要までは示されていないのではないかということをこれまでにも申し上げてきたところでして、今もそのように思っています。 ○古川委員 禁止される売買春の対象行為についてですが、私は、今の大橋委員のお考えと重なる面がありますが、直ちに拡張すべきだと結論付けることに対しては消極の意見でございます。先ほど川崎委員からも、法制度全体を見てという御指摘があったかと存じますが、それとも関連して、とりわけ風適法の在り方を根本的に見直すような議論を経ないうちは、現在違法とはされていない職業選択を、あなたたちの選択は誤っていると大上段に決め付けることにもなりかねませんので、そこまで言うのであれば、よほど確固たる根拠をもって臨む必要があるかと思います。   肛門性交に限って売買春の対象行為を拡張することを考えても、自己の肛門に挿入してもらう性的サービスもあるようであり、そう簡単に違法のレッテルは貼れないように思います。もちろん櫻井委員も繰り返し強調されていたとおり、拡張の可能性というのは立法当初から検討課題であったことは事実であり、拡張してはならないと結論付けることもまた妥当でないと思いますが、第4回会議で星委員、佐藤委員からも御発言がありましたが、対象行為を児童買春や不同意性交等と同様に考えることは、法の目的が異なるため、必然的には根拠付けられないという面があります。刑法第177条に規定されている「性交等」について、同意がなければ同条で重罪とされ、同意があっても売買禁止であるとする理屈は全く不可能ではないとは思いますが、それを今押し通すのは難しいかなと思います。   いささか生煮えな物言いをしましたが、本日のヒアリングでも訴えられていた現下の喫緊に対処すべき問題を直視するとき、これは第4回会議で大橋委員が指摘されていたことと重なりますが、優先的に検討すべき事項が「売春」の定義を拡張的に改めることにあるとはいい難く、今は膣性交の売買禁止にとどめるという意見です。第4回会議で川崎委員が指摘なさっていましたが、将来的に、いわゆる性風俗産業は社会悪として撲滅を目指すべきだという議論が熟した段階に至れば、「売春」の定義を改め、風適法の在り方の見直しも断行していくべきですが、現段階では性急にすぎると考えています。 ○大沢委員 「売春」の定義に関しては、第4回会議で、私は、身体への侵襲性が高いという観点からは肛門性交までは拡大することも考えられ得るのではないかという趣旨のことを申し上げました。一方で、第4回会議や本日の議論を聞かせていただきますと、各委員から指摘されたとおり、「売春」の定義を性交に限定する現行の売春防止法の存在を前提に風営法が存在していること、それから、定義を拡大するということは、現在の風営法で許容されている行為を違法な行為にする、つまり白を黒に塗り替えることにもつながることであり、そういったことを行うにはその明確な根拠や社会全体のコンセンサスが必要になることなどを踏まえると、現状はそこまでの状況には至っていないのではないかなと感じます。   「売春」の定義の見直しは、社会情勢や国民意識の変化を見ながら、今後も検討課題として残ると私は思っています。ただ、少なくとも現時点で見直すかどうかというと、そこまでのところには至っていないのではないかと今は感じています。 ○佐藤委員 海外の状況というお話がありました。私はドイツ法を比較法の対象にしていますのでその視点でお話しさせていただきますと、ドイツ法は、基本的には、規制されていた時代においては、その対象は全ての性的行為ということになっておりました。他方で、現行法の規制を変えるときには、現状がどうかはすごく大事だと思います。つまり、昔からずっと性的サービス全般を規制対象としていた国と、今まで性交しか対象として規定していなかった国とでは状況が異なり、後者において、いきなり対象を性的サービス全般に広げましょうと、適法なものを違法にするという方向に転換する際には、すごく慎重な検討が要されるのではないかと思います。   他方で、売春防止法において、「売春」の対象を性交だけにとどめていることには根拠がないと思っているのは私も同じでして、婚外の性交が特別に悪いものであるとか、妊娠の可能性があるからとか、そういう理由に基づく可能性がもしあるのだとすると、それは非常に時代遅れな法律であると考えますので、対象を広げる余地はあろうかと思います。   ただ、管見の限り、そういうことを考慮したような資料を目にしたことがありません。過去の文献をみる限り、例えば、婚外の性交は認められませんよ、害悪ですよみたいなことではなく、非常に困窮している社会の中で体を売っている若い方たちがいる、この現状を何とかしたいという発想がまずあって、そのときに、肛門性交などはそこまで広がっているか分からないので、取りあえず性交を規制対象にするということになり、それによって、売春防止法と風営法が横並びで走るという日本の状況ができたのではないかと思います。このように考えると、日本の現状を維持するための説明になっているのではないかという御指摘はそのとおりだと思うのですが、現状を変えることがとても大変であるということも考えなければいけないかなと思っています。そうすると、やはり売春防止法第3条の定義を広げるのはとてもリスクが高いのかなと考えています。もっとも、同法上の条文によって、搾取性が強いとか限りなく性犯罪に近いようなものについては定義を拡張することも選択肢としてはあり得るのではないかと思っています。 ○北川座長 ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは、本日の「売春の定義」についての議論は、ひとまずこの程度とさせていただきます。   次に、「論点整理」の「2 売春及びその相手方となる行為に対する規制の在り方」について御議論いただきたいと思います。   一巡目の議論においては、売春行為を処罰対象とすることについては、売春をする者の中には、刑罰ではなく、保護や支援の対象とすべき者がいることなどを踏まえると、慎重であるべきという点で、おおむね異論はなかったかと存じます。また、売春の相手方となる行為を処罰対象とすることについては、成人による同意に基づく性交について、その同意を無効とすることの理論的な正当化は困難であり、刑罰をもって公権力が介入することには慎重であるべきである、また、売買春についての道徳的な考え方や価値判断には様々なものがあり、売春をする者は一律に保護の対象で、売春の相手方になる者は一律にその搾取者であると考えることは困難である、さらに、売春の相手方となる行為を一律に処罰の対象とした場合、売買春行為の地下化によって、売春をする側のリスクが高まったり、福祉的な支援が妨げられるおそれがあるなどの懸念があることなどから、慎重な検討が必要であるという点で、おおむね異論はなかったかと思います。その上で、「売春をする者の障害や困窮などの脆弱性を利用して売春の相手方となる行為については処罰の対象とすべきである。」という御意見がありましたが、これについては、「脆弱性を利用して売春の相手方となる行為が不同意性交等罪に該当する場合には同罪を適用することによって対処することが可能である。」、「それ以外の場合についてそうした類型を設けることも考えられるものの、売春の相手方が、売春をする側の脆弱性を認識していたことの立証は困難ではないか。」といった御意見がありました。   二巡目においては、ただ今申し上げた一巡目の議論を踏まえて、更に御議論いただきたいと思います。それでは、御意見のある方は、御発言をお願いいたします。 ○櫻井委員 私は、一巡目の議論で、脆弱性につけ込んだ買春行為について処罰規定を設けてはどうかという意見を申し上げました。売春者には、経済的困窮や知的な障害といった脆弱性が一定程度認められるということは、ヒアリングで、ぱっぷすさんもおっしゃっていましたし、東京都女性相談支援センターからのお話もありましたし、この検討会の委員の間でもある程度認識は一致していると受け止めております。もちろん全てのケースで、売春者に深刻な脆弱性があるとは言いませんが、こうした問題意識は無視できないのではないかとも感じています。実際に、売春の現場で、余りにもひどい、これは虐待なのではないかと感じられるケースがあるというのは声が上がってきているわけですよね。こうした声があるにもかかわらず、必要な人には支援や福祉の充実をするという受皿の方の充実だけでよいのかという疑問は残っています。刑法の方で捕捉が可能ということもあるのかも分かりませんけれども、刑法で捕捉できないケースという意味で申し上げます。   もちろん、他方の意見もあって、売春をすることを自ら選んでいると主張するケースがあることや、私自身も時折SNSを見ていますが、性産業従事者で自ら顔も出して発信している方がおられるということは承知しています。たとえ脆弱性がある人であっても、自らその道を選んでいるとされたり、結果的に自らを傷付ける行為と理解されるような事態であっても、他害ではないとされる点にこの問題の難しさがあると感じています。   ですので、このように両方の意見がある中で、売春者の脆弱性をどう拾い上げていったらよいのかと考えたときに、私は、折衷案として、一律に買春者を罰するということでなくても、悪質性の高いものに限定して処罰することを検討するということは、一般の感覚としてそれほど外れていないのではないかと考えています。   一巡目の議論のときに、佐藤委員から、売春防止法第7条にそれが該当するかもしれないというお話もいただいたかと思います。同条を見ますと、欺くとか、困惑させるとか、親族関係による影響力の利用というのがありますので、ここに何か、売春者の脆弱性という観点からそれを利用した悪質性の高い類型を捉えるものを追加することができないかと思っています。ただ、第1回会議の配布資料2の「売春防止法違反事件の受理・処理状況等」を見たところ、第7条の適用件数は相対的に少ないようですが、現在声が上がってきている、問題となっているような類型を、現行法では捕捉できていないのか、あるいは以前御指摘いただいたように、条文を作ったとしても立証困難で実用的ではないものになっているのかというのは、私自身は判断しかねるところではあります。 ○佐藤委員 一巡目の議論で、刑法の不同意性交等罪について話したことに関係するのですが、同法第177条の不同意性交等罪の規定で引用されている、不同意わいせつ罪に係る同法第176条第1項には、第2号に心身の障害、第7号に虐待に起因する心理的反応、第8号に経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益憂慮の規定があるところ、改正の際には、これらの要素には程度問題があることが意識されています。例えば、心身の障害にもレベルが様々ありますが、刑法第177条の不同意性交等罪に該当するのはどのようなレベルかというと、同条第1項の柱書に要件が存在しまして、「同意しない意思を形成し、表明し、若しくは全うすることが困難な状態」といえる程度ということになります。刑法上の不同意性交等罪は、先ほど申し上げた第176条第1項各号の要件と、第177条第1項の柱書の要件の二つによって適切な処罰範囲を導いているということができるかと思います。   売春防止法で類似の規定を作れればと私も思うわけですが、その際には、刑法第177条の柱書の要件には至らないのだけれども問題が認められるような程度を示す文言が必要になってきて、これを特定するのがかなり困難な作業になり、しかし、これを特定することができない限りは、類似の規定の創設はかなり難しいと思っているところです。   また、程度を示す文言を特定できたとしても、刑法では、第177条の場合は性交等、第176条の場合はわいせつ行為が、その要件に該当すれば常に許されなくなりますが、今議論している問題の場合は、売春だけが許されなくなるパターンを規定しないといけないという問題が別個生じてくると考えます。そうすると、刑法第177条をアレンジして何とか処罰規定を作るというのはもしかしたら難しいのかなと思い、悩んでいるところです。 ○川崎委員 私も、恐らく佐藤委員の御意見と趣旨はほぼ一緒だと思いますが、櫻井委員が御指摘のような深刻な状況について否定するものではありません。   ただ、それを規制する場合に売春防止法の中ですべきかということについては、佐藤委員からもありましたように、売春については、金銭の授受等あるいはその約束をしている場合という限定がありますので、今おっしゃったような問題が現に起こっているのが売春の場面だということと、守るべき状況がどういう場合かというのがやや合致しないのではないかと思います。それを売春防止法の中で規定してしまうというのは、逆に不都合を生じる可能性も否定できないのではないかという意味で、この問題が深刻でないという意味ではなくて、売春防止法の中で対応すべきものかについてはネガティブであるところです。 ○大橋委員 売買春が行われる場合、売る側に様々な課題を抱えている人が多いという実情があるのだと思いますが、その程度は様々あるものと思っております。本日の大門委員からのお話では、ホストやアイドルにお金を使いたいという動機で行われる場合がかなりの比率を占めているというお話もありましたが、そういう動機であれば支援の必要がないのかというと、必ずしもそうは言えないのではないかと思っております。一般論ですが、「依存症」と呼ばれるようなものは、必ずしも御本人の意思や性格の問題に限らず起こることで、適切な相談、治療、支援によって回復していく性質のものだと言われているかと思います。そうしますと、どこまでが許容されない買春行為なのかという線引きは、確かに難しいのかなと思います。   これまでにもこの検討会でお話が出てきましたが、国際的には、その線の引き方として、買う側だけを処罰する「北欧モデル」と呼ばれるものが一つの考え方として示されていて、第5回会議で、櫻井委員から、こういったポリシーが、売春の需要抑制や市場縮小に一定の効果があるという研究があるといった御紹介もあったところかと思います。これはこれで一つの立場だと思うのですが、他方で、これまで申し上げてきたとおり、国際的な議論では、そういった刑事規制が地下化や支援アクセスの低下を招くおそれもあるといったことも示されていることなども考えますと、私としては、当事者の支援に重点を置くべきであると思います。そうすると、買う側だけを処罰するということであっても、そうしたアクセスを妨げる要因になり得るので、望ましくないのではないかという意見を申し上げてきたところです。 ○古川委員 私も、買春行為自体の処罰は、限定的であっても容易ではないのではないかという考えを持っています。第4回会議で多くの委員から御指摘があったところかと思いますが、現行法の、売春行為や買春行為自体は罰しないで、それらを直接・間接に助長したり、やっていいことだという方向に公衆を流れさせるおそれのある行為を罰するという基本設計は維持するに値すると思います。   櫻井委員が強く懸念されている、心身の脆弱性に付け込むとか、優越的地位に乗じるとか、心理的に支配するなどの手段的状況下の性交は、本来、純然たる性犯罪として刑法第177条が適用されてしかるべきではないかと思いますし、もしその適用に不足があるのであれば、川崎委員が指摘されていたように、売春防止法の問題というよりは刑法における性犯罪規定の問題として、より積極的な適用なり、法の改正なりを議論していくのが筋ではないかと思います。買春の罪を新設してその限度で罰するというのでは、かえって被害の過小評価になるのではないかとも危惧するところです。   なお、この際、刑法第177条との関連で付け加えますと、売春防止法第7条の困惑等による売春は、不同意性交等に達しない手段が想定されており、かつ、売春をさせたことにより既遂に達する罪です。そのため、佐藤委員がおっしゃっていたように、売春の相手方となった者を罰する規定を置く余地もあるという特徴を持ってはいます。ただ、それも買春行為自体の処罰であることには変わりがありませんから、性犯罪に当たらない性交を取締りの対象にしてよいのかという問題が先行するように思います。今は基本設計を覆す段階にないと考えますと、局所的な買春直罰というのも正当化が難しいのではないかというのが私の考えるところでございます。 ○大沢委員 売買春の行為そのものに罰則を科すことに関しては、私も、第4回会議で発言したとおり、慎重であるべきだという考えを今も持っています。   売春行為も買春行為も罰則は設けられてはいないのだけれども、売春防止法という法律の中で明確に違法な行為として禁止されているのだということについては、教育現場などでしっかりと教えていく必要があるのではないかという気持ちを、私は強く持っています。この検討会の議論ののりを越えることかもしれないのですが、例えば、保健体育などで行われる性教育や、法制度の知識を伝える法教育などで、売買春、特に売春が心身に深い傷を与えるかもしれないということや、場合によっては相手から危害を加えられたり犯罪に巻き込まれたりする危険があるんだといったことを子供たちにしっかり伝えていくことが大事なのではないかと強く思っています。 ○北川座長 いかがでしょうか、この点につきまして、ほかに更に御意見があれば御発言いただければと思いますけれども、よろしいでしょうか。   それでは、本日の「売春及びその相手方となる行為に対する規制の在り方」についての議論は、ひとまずこの程度とさせていただきたいと思います。   それでは、次に、「論点整理」の「3 勧誘等に対する規制の在り方」について御議論いただきたいと思います。この論点については、前回会議と同様に、まず、「売春の相手方となる者による勧誘等に係る処罰規定について」の御議論を行っていただいた後、「売春目的での勧誘等に係る処罰規定について」の御議論、つまり、現行法第5条の売春目的での勧誘等に係る処罰規定を見直すべきかについての御議論を行っていただきたいと思います。   まず、売春の相手方となる者による勧誘等に係る処罰規定についてですが、この点に関する一巡目の議論を整理しておきますと、売春防止法第5条では、同条各号に規定された売春目的での勧誘等が、社会の風紀を乱し、公衆に迷惑を及ぼすものであることから処罰対象とされているということを前提に、現在の売買春をめぐる社会情勢等を踏まえると、売春の相手方となる者による勧誘等についても、社会の風紀を乱し、公衆に迷惑を及ぼすという点では売春目的での勧誘等と異ならないことなどから、何らかの規制を設けるべきであるという点ではおおむね異論はなかったかと思います。   その上で、その規制の方法について、「路上売春の問題は特定の地域で生じているという実情からすると、法律によって全国一律の規制とするのではなく、条例による地域の実情に応じた規制に委ねるのがいいのではないか。」という御意見があった一方で、「売買春に関する問題は、現在特段問題になっていない地域においても起こり得るものであることなどを踏まえると、国の法律による規制で対応すべきものである。」とか、「条例による規制とした場合、インターネット上の勧誘等に適切に対処することができるのかについて疑問がある。」といった御意見がありました。   また、具体的な規制の在り方については、「売春目的での勧誘等に係る現行法第5条各号に規定された行為と同様の行為を処罰対象とすることが考えられる。」といった御意見があったほか、「売春の相手方となる者による勧誘等に対する規制として十分なものとする観点からは、売春者からの勧誘に応じる行為や、売春者を品定めする目的で路上を徘回する行為などについても処罰対象とすることを検討することが考えられる。」といった御意見もあった一方で、「実務的な観点からは、徘回行為等を処罰対象として規定した場合、売春の相手方となる目的を有する者とそうした目的を有しない者とを客観的な挙動によって区別して立証することは事実上極めて困難と考えられる。」といった御意見もありました。   二巡目の議論においては、ただ今申し上げた一巡目の議論を踏まえて、更に御議論いただければと思います。それでは、御意見のある方は、御発言をお願いします。 ○大橋委員 私は、一巡目の議論において、勧誘の規制については、各地の実情に委ねて、条例で規制することが望ましいのではないかという意見を申し上げました。その際に様々な御批判を頂戴した内容と、本日のヒアリング等の内容を踏まえていろいろ考えたところを改めて申し上げたいと思います。   まず、現在この検討会の焦点になっている路上売春の問題については、やはり地域性のある問題ではないかという印象は変わらず持っているところです。本日のヒアリングでのお話も、大都市の歓楽街で、大きなホテル街があって、匿名性があって、深夜に至るまで人の流れがあるといったような環境要因があるので、全国から人が集まってくるといったものであったといえるのではないかと思います。そういったことからしますと、この路上売春の問題は、全国の様々な地域で蔓延している問題というよりは、特定の地域がホットスポット化しているという表現がふさわしいのではないかと思っております。「ホットスポット化」と申しますのは、特定の地域がほかの地域と比べて顕著に特異的に路上売春が行われる頻度が高くなっているのではないかということです。その結果として、特に全国から集中しているということもあって、路上での客待ち、条件交渉、見物客あるいはインターネット上の発信による外国人観光客の来訪ですとか、そういった様々な要素が重なって、地域環境に非常に大きな問題が生じているという整理ができると思うのですが、こういった地域的な現象について全国一律の規制が必要なのかは慎重な検討が必要ではないかと思います。   その上で、他方で、SNSでの勧誘行為というのは、確かに質の違うところがあるのかなと思います。売春防止法の立て付けとしては、規制対象は、広告その他の方法で誘引することとされており、恐らく売春防止法制定当時は広告というと町の中に埋まっているものであったかと思うのですが、現在ではインターネットを通じてなされるものもその広告に含まれるということで、確かに、文言上、「広告」からこれを除外する理由はないと思われ、法制定当時は想定されていなかった行為にまで規制が及んでいるという実情があるのかなと思います。これは、公衆に対する迷惑行為といえばそうなのでしょうけれども、町の景観や雰囲気を害するというよりは、インターネット空間での迷惑行為といったような位置付けになろうかと思います。規制の性質がちょっと違うものになっているのではないかと思います。本日の大門委員からのお話には、インターネット上の書き込みを見た人が通報してくる場合があるといったことや、現実には誰が書き込んでいるのかが分からないので実は周旋である場合もあるという話がありましたけれども、実務上周旋と区別がつかないということで検挙されている実情もあると理解いたしました。   こういった規制を残す必要があるのかどうかも一つの問題だとは思っております。売買春そのものを処罰しないでその助長行為を処罰する、特に搾取性の高いものを処罰することは必要だと思うものの、勧誘行為は、売買春の当事者が行うものとして、売買春そのものと連続する性質があろうかと思いますので、必ずしも勧誘行為の処罰を維持するかどうかも一つの問題であるとは思います。ただ、その点はちょっと置いて、路上での売春の勧誘など各地の実情に応じた規制が必要ではないかと思われる類型と、そういった地域性がない類型とが混在している状況にあって、各地の実情に応じた規制を基本的に条例に委ねるとするならば、例えば、現行の売春防止法では売買春が禁じられた上で、その他の行為が規制されて処罰の対象とされていますが、これを改めて、禁止するけれども規制がない範囲を少し広げ、売買春とその勧誘行為は禁止するということを法で示した上で、一部の行為については必要に応じて処罰規定を残して、その他については条例の規制に委ねると定めることも考えられるのではないかと思います。 ○川崎委員 大橋委員に質問させていただきたいのですが、今の御意見は、売春防止法の第5条だけを削除した上で、同条第3号については場合によっては売春防止法に少し残して、他の部分を規制が必要な地域の条例に任せるということですか。 ○大橋委員 はい、そうですね。具体的な条文との対応で申し上げますと、考えられるのは、例えば、売春防止法第5条第3号の後段は残してその他を削除する、その上で、売春防止法第3条で規定されている、売買春は禁止するといった内容について、売買春及びその勧誘行為は法が許すものではないということを何らかの方法で明示するという立て付けが考えられるのではないかと思います。 ○川崎委員 そこまでして条例の規制に委ねなければいけないほど、今までしてきた、法律で規制することをやめないといけない一番の理由は何なのですか。 ○大橋委員 まず、私の基本的に申し上げたいことは、買う側の勧誘行為が非常に問題になっている実情があることは理解しているのですが、それについては全国のあらゆるところで起きている問題ではないのではないか、そうすると、買う側の勧誘行為の規制を、全国一律で新たに設けることは余り望ましくないのではないかということです。それに併せて、売春防止法では売る側だけ勧誘行為の処罰規定が設けられていますが、これについて、売る側の処罰があって買う側の処罰がないのは不均衡だという御意見もありますので、いずれもなくすかいずれも設けるかのどちらかがふさわしいのではないかということを申し上げてまいりました。買う側の規制を条例に委ねることになれば、売る側の規制も条例に委ねるというのがバランスがとれるのではないかということを申し上げている次第です。 ○川崎委員 御意見の趣旨は分かりました。その上で、これは前回会議でも申し上げたことですが、大橋委員は、今、路上での売買春が問題になっている地域において条例を作ればこの問題は収まるのだ、特定の地域で条例を作ったとしても、そんなに簡単に条例のない都道府県には移らないと思うとおっしゃっていましたが、たらればの話なので分からないものの、果たしてこんな交通の便のいい国で、例えば、東京都で禁止されたからといって神奈川県や埼玉県に問題が移らないと絶対言えるのかというとそうとも言えないのではないかと思います。問題が移ったら、そのときにその地域でまた条例を作ったらいいではないかということだとすると、それも少し違うのではないかと思います。大橋委員は、この問題は特定の地域で起こっている問題だとおっしゃいますが、法律で全国的に規制できるようにしておけば、実際に検挙されるのは現にその問題が起こっているところだけで、ほかのところに適用されることを懸念する必要もないわけですよね。この問題は本当にその地域しか起こり得ない問題なのかというと、今はその地域でしか起こっていないだけであって、全国で起こり得る問題だというのが私の認識で、そこが恐らく大橋委員の認識とは違うところだと思うのですが、そういう問題については、基本的に法律によって全国一律に規制をすべきではないかと思います。 ○佐藤委員 私も、川崎委員に同意しているところなのですが、あらゆる場所で違法であるときの話と、ほとんどの場所で違法なのだけれどもある場所では適法であるときの話は、必ずしも同じように考えることはできないのではないかと思います。スウェーデンでは買う側の規制がされていますが、統計を見ると、近隣の他国で売買春が増えている状況にあるようです。この点は他国が調査していないので正確には分からないらしいのですが、もしかしたらスウェーデンから人が流れていることもあり得るようです。そうすると、全国的に禁止されている中で歓楽街に集まっている状況と、適法な場所がある場合にそこに行かないかというのは、イコールにして考えられないと思うので、やはり全国一律で規制しておいた方が効率的ではないかと思っています。 ○古川委員 今のトピックに関しては、大橋委員の言われる、地域的な問題だと見て条例に委ねるという発想も論理としては不可能ではないにしても、そうしたもぐら叩き的な手法になると実効を欠くおそれがあるのではないかという、川崎委員、佐藤委員の御見解に同調いたします。   法律ではなくて条例で対応することも可能だという大橋委員の考え方の背景には、恐らく勧誘等については、迷惑行為という性質が本質的な処罰根拠ではないかと捉え、いわゆる迷惑行為防止条例の範疇で対応すればいいのではないかという考え方があり、そういった考え方も論理的にはあり得るかと思います。ですが、この点については迷惑行為の範疇で捉えること自体が適切ではないのではないかと思っています。   すなわち、先ほど大沢委員から御指摘があった、売春防止法第3条で売春及び買春が禁止されていることを国全体に知らせる必要があるということについては、恐らくどなたも一致して共感するところかと思いますが、そうした状況下で、勧誘等をすることは、売春や買春をやってもいいのではないかという風潮をもたらしかねませんので、そうした重大な社会的弊害があるということが、処罰根拠として見落とせないところかと思います。そして、それは決して地域ごとに判断すればいいという問題ではなくて、国全体の考え方として、そうした風潮が伸長する芽は何としてもつみたいと考えるのが法政策として妥当ではないかと思います。   そのため、結論としては、法律で勧誘等を処罰することが妥当であると考えています。 ○櫻井委員 私は、古川委員の御意見に賛同するところです。この検討会が立ち上がった契機は、路上売春の深刻化ということもありますが、売春者だけを処罰するのは不平等なのではないか、買春者を処罰すべきであるという世論の高まりがあったということもあると思います。後者については、風紀の問題というよりは、人としての尊厳という観点もあるかと思います。もしこれを迷惑行為防止条例の枠組みで対応することになりますと、実務上の取締りや処罰は可能であろうと推測はしますけれども、何か一本通った筋に欠けるといいますか、売買春の問題を捉えるこの国の視点や理念といったものが矮小化してしまうような気がしまして、私は、法律として残しておくべきではないかと考えます。 ○大沢委員 私も、売春の相手方による勧誘行為に対して罰則規定を設けるべきだという意見に変わりはありません。それは、本日のヒアリングで新宿区の方々から実際の話を聞いて、その必要性を強く感じたところです。周辺の病院の方が通勤の際に歩いているだけで売春行為の声を掛けられるというのは、もはや私の感覚とすると実害と言ってよくて、明確に一般市民に迷惑を及ぼしている状況に陥っているのではないかと思います。   売春防止法第5条第3号の勧誘行為の罰則を設けた趣旨が、社会の風紀を害し、一般市民に迷惑を及ぼすものを取り締まるということであることを踏まえれば、買春目的で、主に男性だと思いますけれども、女性を物色する行為とか徘回する行為について、罰則を設けて取り締まるべきではないかと、市民感覚としては感じます。一方で、普通に路地を歩いている人が罪に問われるようなことはあってはいけないと思いますので、法律に落とし込む際に、該当行為をどの程度明確にするのかは簡単な作業ではないのかなということも改めて感じています。   また、本日の大門委員のお話にあったようなインターネットを利用した事案に関して、例えば、女性側からの売春の勧誘がインターネット上であった場合、それに応じる行為も処罰する必要があるという観点もあると思いますが、では実際にどういう行為を捕捉できるのかといった点はなかなか難しいところもあるのかもしれないとは思っていて、法律に落とし込む際には、そういう課題もあるのかなと感じています。 ○北川座長 今、大沢委員から、特に買春側の規制をするとした場合に対象とすべき行為態様について言及がありましたが、この点について、いかがでしょうか。 ○古川委員 処罰規定を創設するとすればどういう観点から規定を作っていくのかということについて、私の考えを若干敷衍して申したいと思います。   まず、先ほども少し発言いたしましたが、勧誘等のもたらす社会的弊害、つまり売春や買春をやってもいいという風潮にしてしまうおそれは、売春目的での勧誘者によってのみ作り出されるわけではなく、相手方あってのものですから、売春の相手方となる者の関与を刑法的評価の外に置くのは不当であるということから、売春の相手方となる者による勧誘等に係る処罰規定を創設することに賛成という出発点を持っています。   ただし、この点に関して更に検討を深めるべきこととして、第5回会議で川崎委員が御指摘になったように、相手方の対向的な関与といっても幅があり、上は積極的な慫慂、下は単なる応諾まであり得るわけですし、また、相手が言い出したことだなどという弁解をどう封じるかも考えておく必要があるといった検討課題がございます。この点について、結論から申しますと、私の考えは、売春防止法第5条各号に対応させるのが合理的であろうというものです。単なる応諾は、売春を持ち掛けられた者が首を縦に振っただけで売春の勧誘等として罰し得るとは考えられていないことからすれば、単なる応諾が当罰的な対向行為であるとは認め難いと思います。他方で、第5条第3号の客待ちに相当する路上での物色や品定めといった、言うなれば待ち受ける行為、あるいは、売春者を求めてうろつく行為は、周旋してもらう目的の場合も含めて処罰対象にしておかないと、自分が先に声を掛けたのではないといった言い逃れの道を残すことになると危惧しています。   第5回会議で入江委員から御指摘のあったように、売春防止法第6条第2項第3号では客待ちは処罰対象とされていませんが、それは、もちろん外形上判断しにくいというのもありますが、同条第1項では経緯はどうあれ周旋がなされるに至った場合が処罰対象とされていますし、また、同条第2項第1号の勧誘については、判例上、買春しようとする者が先に声を掛けた事実があっても、周旋に必要な値段の話等をすれば、それが勧誘行為だと解されていることから、さして不都合がないという側面もあろうかと思います。   他方で、売春防止法第5条第3号の客待ちは、相手に責任を押し付けることを防ぐ意味があると考えられます。客待ちの立証が容易でない場合があるというのも第5回会議で入江委員が指摘されたとおりではありますが、本当にただ立っていて、あるいは歩いていて、一方的に売春を持ち掛けられた疑いが残るのであれば、不可罰となるのは当然のことです。被告人の前後の行動や、立っていた、あるいはうろついていた場所的状況等をよく観察し、勧誘されるためにそこにいたとしか認められないような事実を立証する必要がありますが、そうした立証が困難であるという理由で、規定上、処罰対象から除いてしまうのは、うろつくだけなら許されるというメッセージを発してしまうことにもなりかねず、危険ではないかと思います。   このような理由で、売春の相手方となる者による勧誘等として処罰対象とする行為については、売春防止法第5条各号に対応させるのが合理的だと考えます。 ○川崎委員 この検討会が立ち上げられた契機として、男女の不平等という点が国会やそれ以外の場面でも様々に指摘されてきたことがあると思いますが、そうした指摘で言われる不平等というのが、声を掛けるのが売春側、つまり女性の場合の勧誘は処罰されるのに、買春側、つまり男性が声を掛けた場合は処罰されないという点だけを指すのか、それとも、女性が声を掛けてそれに男性が応じた場合に売春の契約が成り立つにもかかわらず、声を掛けた女性の側だけが取締りの対象になるのはおかしいではないかという意味もあったのかということについては、人によって理解が異なっていたのではないのかと思いますので、私自身は応諾行為を必ず処罰しないといけないと思っているわけではないですが、応諾行為も含めて、どこまでを処罰対象とすべきかを検討しておかないといけないのではないかと思います。   それから、本日のヒアリングでの御説明を踏まえて考えても、古川委員からも御指摘がありましたが、私も、もし買春側は勧誘行為だけを処罰対象にするという形にすると、男性の方が待っていて女性が声を掛けた場合に、単に声を掛けられるのを待っている買春側については規制の対象にならず、処罰の間隙が生じ得るのではないかと感じておりました。ですので、売春防止法第5条と全く同じかどうかは検討が必要だと思うものの、売春側あるいは買春側の片方だけが処罰されることを回避するためにはどうしたらいいのかということを検討することが重要ではないかと思っております。 ○古川委員 先ほどの意見に若干補足いたしますと、もう一つ私が気にしていた点としては、買春目的での勧誘だけではなくて、周旋してもらう目的であっても同様であるとしておかないと、当罰性があることは明らかなのに弁解の仕方次第で処罰から漏れてしまうという不合理が発生しかねないということです。ですので、周旋してもらう目的であっても同様であるというところは意見として付け加えておきたいと存じます。 ○佐藤委員 川崎委員と古川委員から、売春をする者からの勧誘に応じる行為と、自己を相手方とする売春の周旋を公然と依頼する行為についての処罰規定について話が出たと思います。これらの行為が、社会の風紀を乱して公衆に迷惑を及ぼし、売買春の風潮を助長するという点においては、私も賛成しているところです。   他方で、これは前回も少し申し上げたのですけれども、売春者側の処罰範囲を現行法よりも広げたくないという気持ちがあります。仮に、売春する者からの勧誘に応じる行為と自己を相手方とする売春の周旋を公然と依頼する行為が処罰対象とされることになれば、買春をする者からの勧誘に応じる行為と、売春の相手方の周旋を公然と依頼する行為についても、同じ理屈で、処罰していいと思われてしまうのではないかということをすごく憂慮しています。例えば、売春者側がこれらの行為を行った場合は責任阻却あるいは責任減少のような形で多少処罰が緩和されるのであれば、買春者側の処罰範囲の拡張についてはぜひと言いたいところなのですが、それが導入されない状況で売春者側の処罰範囲も広がってしまうのは、社会の現状から考えると阻止したいなというジレンマがあるところです。 ○古川委員 佐藤委員の御指摘は大変重要な点であり、私が申し上げた点の見落としを的確に指摘していただいたものと理解しています。私としては、佐藤委員が危惧されているような、売る側からの公然の周旋依頼という犯罪類型が新たに作られることは適切ではないし、そのようなことを意図して考えを申したわけではないということを答えておきたいと存じます。理論的にそういうことを担保できるのかというところが佐藤委員の懸念される点かと思いますが、様々な考え方はあり得ると思うものの、買う側の勧誘行為よりも、売る側の勧誘行為の方が、刑法風に言うと責任が軽いのではないかと考えることは十分可能であろうかと思いますので、買う側の勧誘については言い逃れを許さないために処罰範囲を広くしたとしても、売る側の勧誘等についてはそこまでする必要はないと考えて、買う側と同じように拡張することはしないという議論も十分可能だと思います。 ○北川座長 ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、本日の「売春の相手方となる者による勧誘等に係る処罰規定について」の議論は、ひとまずこの程度とさせていただきます。   次に、「売春目的での勧誘等に係る処罰規定について」ですが、この点に関しても、一巡目の議論の整理を紹介させていただきますと、まず、「売春をする者には支援を要する者が多いことを踏まえると、売春をする者を処罰する必要性があるかは疑問であり、基本的には、売春防止法第5条を廃止するのがよいのではないか。」という御意見があった一方で、「売春をする者の中には保護の対象とすべき者が多くいるとは思われるものの、売春防止法第5条の保護法益を前提とすると、売春をする者による勧誘等について、社会の風紀を乱し、公衆に迷惑を及ぼすという法益侵害がないと考えることは困難である」とか、「売春をする者の中には自らの意思で行う者も一定数いることを否定できないことからすると、そうした者も含めて売春をする者を一律に保護の対象と考えて処罰対象から除外することは困難である」ことなどから、売春防止法第5条を維持することが適当であるといった意見がありました。   二巡目の議論におきましては、ただ今申し上げたような一巡目の議論を踏まえ、更に御議論いただきたいと思います。それでは、御意見のある方は、御発言をお願いします。一巡目の議論の確認という意味でも、同じ意見を頂戴してもよろしいかと思います。 ○櫻井委員 私は、一巡目の議論において、売春防止法第5条は廃止してもいいのではないかと申し上げました。その理由としては、この検討会でも認識が一致しているように、売春をする者には支援が必要であるというところがあろうかと思います。現行法下では、第5条があることによって、補導されて、そこから支援につながるという意図もあるのかなと考えるところではありますが、犯罪者とする必要があるのかというところはやはり疑問を持っております。違法であるとしたとしても罰則まで必要なのだろうかと考えておりますので、私は、売春防止法第5条は廃止してもよいのではないかと思っています。 ○大橋委員 先ほど、売春の相手方となる者による勧誘等に係る処罰規定に関して既に意見を申し上げたところですが、若干補足させていただきますと、私も、売春防止法第5条は廃止してもいいのではないかと思っているところです。その理由としては、ただ今櫻井委員がおっしゃったことと同様で、売る側の立場の方には様々な問題を抱えている方が多く、そういった方々に必要なものは支援であり、支援を通じて売買春を減らしていくという考え方からすると、支援につながる要素ばかりではないと思われる処罰規定を必ずしも設ける必要はないのではないかというところです。   ただ、ちょっと悩ましいのは、現在、勧誘行為が処罰されているのは、その行為が公衆の面前で行われて、町の雰囲気やまちづくりに迷惑を及ぼすからということだと思いますが、それは買う側であっても売る側であっても変わらないように思いますので、売る側だけ処罰をなくすことには問題があるのではないかということも踏まえて、売る側についても買う側についても、法律で処罰するのではなくて条例に委ねるということが一案としてあり得るのではないかと申し上げた次第です。   条例に委ねると、処罰の間隙を縫って、問題がいろいろな所に移動するのではないかという御意見もあり、それもそうかもしれないのですが、私としては、現状起こっている問題が、大都市圏にいろいろな所から集まってきてホットスポット化しているという問題だとしますと、その場所で対応すれば大きな問題は解消されていくのではないか、また、その他の地域でも実情に応じて規制するということにすれば、ホットスポット化する要因があるところでは規制がきちんと整備されるのではないかと思っています。 ○北川座長 ただ今の櫻井委員と大橋委員の御意見は、売春防止法第5条は廃止すべきであるという御意見かと思いますが、同条を存置すべきであるというお考えの委員の方から御意見を賜っておきたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○川崎委員 前回会議で申し上げたことから付け加えることはほぼないのですが、櫻井委員や大橋委員が御指摘のように、保護が必要な人がいることについては否定はしませんが、逆に言うと、全員が保護が必要な方であるとおっしゃっているわけでもないと思いますので、個別の対応が柔軟になされることが必要だと思います。他方で、売春防止法第5条の保護法益が、社会の風紀を乱しているといったことにあることからすると、処罰規定を一律になくしてしまうということは、そうした保護の対象でない人たちも処罰しないということを選択することになりますので、売春防止法第5条の処罰規定は残した上で、その運用に当たって、それぞれに必要な対応を柔軟にしていくことが模索されるべきだと思います。 ○古川委員 私も、川崎委員と同じ考え方です。大橋委員が言われたように地域的な問題だというアプローチも論理的にはあり得るけれども、この問題は国全体の問題であり、売買春の勧誘等をしてはいけないということは国全体のルールとしてわきまえることが望ましいというのは先ほども発言したとおりです。   売春防止法第5条廃止論の背景にあるのが、売春をせざるを得ない立場に追い込まれた者を罰することに対する疑問があるという点も理解できるところですし、それ自体は理由のある意見だとも思う反面、第5回会議で星委員や佐藤委員も発言されていましたが、勧誘等の違法性を否定する理由までは見当たりませんし、だからこそ、背後の共犯者等の処罰も同条があることによって可能であるということに鑑みれば、同条を削除してしまうのはまずいのではないかと思います。   ただ、そうは言っても、売春者の置かれた状況に配慮すべき要請もまた、決して否定できないところです。犯罪論的には、第5回会議で佐藤委員の御指摘にあった責任減少とか責任阻却といったことも考えられますが、先ほど川崎委員も触れておられたように、類型的に一律に寛恕すべき対象であるとは限らない以上、例えば、任意的な刑の減免を書き足すとしても、象徴的な意味合いを持たせることはともかく、刑の減免の基準を明文化するのは難しいように思います。そうしますと、現実的には、非犯罪化することよりも、第5回会議での星委員の御指摘にもあったように、まずは捜査機関において支援につなげることが重要であり、そのラインの強化が優先課題であると考えます。 ○大沢委員 私も、前回会議と意見は変わらず、売春防止法第5条をなくしてしまうことには抵抗を覚えています。同条をなくすことは、社会に対する誤ったメッセージになってしまうのではないかというのが一番気になるところです。本日の大門委員の御説明にもあったとおり、検挙された女性の中には、どうせ捕まってもすぐ出られるとか、どうせ罰金2万円だからといった受け止め方があるという現状を考えると、教育現場で売買春というのはいけないことなのだという売春防止法の趣旨がしっかりと教育されているのであればまだしも、今現在はそうではない以上、売春防止法第5条をなくしてしまうことは誤ったメッセージになってしまうのではないかと危惧します。ですので、同条は残す方がいいのではないかと思っています。   いろいろと困難な背景がある女性がいらっしゃることも重々承知していますが、その点については、古川委員もおっしゃったとおり、そういった方を確実に福祉につなげるという運用体制の充実を図ることを目指していくべきではないかと思っています。 ○北川座長 ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは、本日の「売春目的での勧誘等に係る処罰規定について」の御議論は、ひとまずこの程度とさせていただきます。   本日は、「論点整理」記載の論点のうち、「1 売春の定義」、「2 売春及びその相手方となる行為に対する規制の在り方」、「3 勧誘等に対する規制の在り方」について二巡目の議論を行っていただきました。次回会議においては、本日に引き続き、残りの論点である「4 法定刑」について二巡目の議論を行いたいと思いますが、もし、この段階で、本日議論がなされた論点に関して補足又は確認をしておいた方がいい点があるとお考えの方や、あるいは、「論点整理」に記載された論点以外の項目で、次回会議において検討すべきと思われるものについての御意見がある方がいらっしゃいましたら、この機会に御発言いただければと考えますが、いかがでしょうか。 ○川崎委員 この検討会のヒアリングでも議論の中でも、何度も、保護や支援の話が出てきています。困難女性支援法ができたことによって、売春防止法からは売春者保護の観点が外れてしまっているものの、ヒアリングでの御説明の半分ぐらいは保護に関するものであったように思いますし、その点を考えても重要な問題だと思います。もちろん、この検討会では売春防止法の改正について議論しているわけですけれども、売買春に関する問題状況についての対応という意味では、また売春防止法上の規定に戻すとかいう意味ではありませんが、保護の観点があってもいいのではないかと思います。現状、売る側の方の保護が十分にできているのかというと、本日の大門委員の話にもありましたが、パンフレットを渡すところまでしかできていない。つまり、現行の売春防止法では、パターナリスティックに本人の意思を踏まえずに支援につなげるということができなくなっているわけですよね。困難女性支援法ができる前は本人の意思とはかかわらず補導処分につなげるということができていたわけですから、そういう意味では、保護との接点が逆に弱くなってしまっていると思います。この点について、それが悪いとは言いませんが、そうなってしまっていることを踏まえて、この法律で何かを規定するわけではないとは思いますが、保護を十分に届けることを考えた方がいいのではないのかという言及は、この検討会においてもあってしかるべきかなと思います。 ○櫻井委員 ここまでこの検討会の議論に参加させていただきまして、改めてこの法律の目的とは何かを考えさせられています。その点に関して、2点、私の方から申し上げたいことがあります。一つ目に、現行の売春防止法の第1条では、「売春が人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良の風俗をみだすもの」とされていて、それぞれが並列的に並べられています。確かに、本日のヒアリングで新宿区の現状などをお聞きしたところ、風紀の問題は当然あると私も思っています。インターネット上でも同様だと思っています。ただ、この法律が根幹に捉えるべき問題は何だろうと思ったときに、私は、やはり、売買春が人の尊厳を傷付ける行為であるという点ではないかという感じを持っています。   二つ目は、法律名にも関わるところですが、現行法の第1条の「売春は、」というのは、「買春は、」でなくていいのかという疑問も持っています。法律制定当時の説明を見ると、売春行為の反社会性を明確にするという説明がされており、法律の目的のところを読むと、売春を行う者は悪であるという含みがあるように、私には思えてしまいます。なので、ここはせめて、買春という需要側に要因があるということを示さなくてもよいのかという議論が必要ではないかと感じています。 ○北川座長 ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   ありがとうございます。それでは、本日予定していた議論はこれで終了となります。   先ほど申し上げたとおり、次回会議においては、本日に引き続き、二巡目の議論を行いたいと思います。   本日予定していた議事につきましては、これで終了いたしました。   本日の会議の議事につきまして、これまでと同様に、原則的な方針としては、発言者名を明らかにした議事録を作成するとともに、説明資料等についても公表することとさせていただきたいと存じます。もっとも、御発言内容を改めて確認し、ヒアリング対象者も含めて発言者の御意向も伺った上で、非公表とすべき御発言や資料がある場合には、該当部分を非公表としたいと考えております。それらの具体的な範囲や議事録上の記載方法等については、発言者との調整もありますので、座長である私に御一任いただけますでしょうか。              (一同異議なし) ○北川座長 ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。   本日の会議はここまでとしたいと思います。   次回予定について、事務当局から説明をお願いいたします。 ○栗原参事官 次回の第7回会議は、令和8年7月16日木曜日午前9時30分からを予定しております。詳細につきましては、別途御案内申し上げます。 ○北川座長 本日はこれにて閉会といたします。どうもありがとうございました。 -了-