法制審議会 会社法制 (株式・株主総会等関係)部会 第15回会議 議事録 第1 日 時  令和8年6月24日(水)    自 午後1時00分                         至 午後6時01分 第2 場 所  法務省20階第一会議室 第3 議 題  会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する要綱案の取りまとめに向けた検討(1) 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○神作部会長 予定した時刻が参りましたので、ただいまより法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会の第15回会議を開会いたします。   本日も御多忙の中、御出席いただき大変ありがとうございます。   本日もウェブ会議の方法を併用して議事を進めることとさせていただきます。初めに、事務当局からウェブ会議に関する注意事項について御案内いただきます。よろしくお願いします。 ○宇野幹事 事務当局より御説明を差し上げます。ウェブ会議を通じて御参加されている皆様につきましては、御発言される際を除き、マイク機能をオフにしていただきますよう御協力をお願いいたします。御質問がある場合や審議において御発言される際は、画面に表示されている挙手機能をお使いください。指名がされましたら、マイクをオンにして御発言ください。御発言が終わりましたらマイクをオフにし、また、画面の挙手ボタンを再度押して、挙手を下げていただきますようお願いいたします。   なお、御発言の際はお名前をおっしゃってから発言されるようお願いいたします。会議室にお集まりの皆様におかれましても、ウェブ会議の方法で出席されている皆様にはこちらの会議室の様子が伝わりにくいため、お名前をおっしゃってからの御発言に御協力いただきますよう、よろしくお願いいたします。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。   本日の会議の出欠についてでございますけれども、本日は松井智予委員が御欠席と伺っております。   次に、本日の審議に入ります前に、事務当局から配付資料についての御説明を頂きます。 ○宇野幹事 配付資料について御確認いただきたいと思います。まず、部会資料13「会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する要綱案の取りまとめに向けた検討(1)」及び参考資料30「会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する中間試案に対して寄せられた意見の概要」がございます。こちらにつきましては、後ほど事務当局から御説明をさせていただきます。   また、参考資料31「要綱案の取りまとめに向けた検討(1)について」は、経済産業省の鮫島幹事から御提出があったものでございます。この資料につきましては、後ほど審議の中で鮫島幹事に御説明いただければと思っております。   配付資料の御説明は以上でございます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。   それでは早速、本日の審議に入りたいと存じます。まずは、事務当局から部会資料13及び参考資料30についての御説明をお願いいたします。 ○宇野幹事 まず、参考資料30から先に御説明させていただきます。こちらは、先ほど申し上げた中間試案に対して寄せられた意見の概要をまとめたものでございます。目次の後ろの(前注1)に記載しておりますとおり、中間試案に対しては108の団体と195の個人から御意見をお寄せいただきました。御意見の中には委員、幹事の皆様が所属されている、あるいは関係されている団体からの御意見も含まれてございます。お忙しい中短時間で、かつ詳細に御検討していただき、また、非常に有益な御意見を御提出いただきまして誠にありがとうございます。この場をお借りして厚く御礼を申し上げます。   寄せられた御意見につきましては、(前注3)に記載しておりますとおり、必要に応じて賛成、反対、その他の意見などに私どもで適宜分類をさせていただきまして、意見を寄せられた団体の名称及び個人の人数並びに意見の理由の要旨を記載しております。寄せられた御意見は非常に多岐かつ詳細にわたるものでございまして、また、できるだけ多くの御意見を御紹介させていただきたいということから、意見の要旨をまとめて記載させていただくという形にしております。かなり限られた時間の中で、分量も見ながらまとめたものでございますので、表現ぶりなどというところにつきましては必ずしも十分でない点もあり得るかもしれませんけれども、その点は御容赦いただきますよう、どうぞよろしくお願いいたします。団体の御意見につきましては、参考資料30の最後に別添として付けております意見提出団体とその略称対比表に従って、賛否やその理由の箇所に略称を付せていただいております。フルネームを上げさせていただくと団体名がかなり長くなってしまう団体もございますので、私どもの方で適宜略称を付けさせていただきましたけれども、飽くまでこの資料限りの便宜的な略称ということで御了解いただければと思います。パブリック・コメントの結果につきましては、単純な数だけで判断するといったものではなくて、その内容の合理性でありますとか意見提出者の属性等も踏まえながら、要綱案の取りまとめに向けた今後の審議において参考にさせていただきたいと思っております。   続きまして、部会資料13について御説明を致します。まず、この資料ではパブリック・コメントの結果として、例えばA案に賛成する意見が多数であったなどの紹介をしておりますけれども、この表現の仕方について少し補足して説明をさせていただきます。次のようなルールで記載しております。まず、一方の案を支持する意見の数がもう一方の案を支持する意見の数と比べて2倍以上あったときは、○○が多数であったという表現を使っております。一方の案を支持する意見の方がもう一方の案を支持する意見の数と比べて2倍未満だけれども1.5倍以上の差が開いたというときには、○○が相対的にみると多かったという表現を使っております。一方の案を支持する意見の数がもう一方の案を支持する意見の数と比べて多かったけれども1.5倍の差はないといったときには、○○が相対的にみるとやや多かったという表現を使っております。最後に、支持する意見の数の差が一つか二つしかなかったなどの場合とか、A案、B案といった対立軸が必ずしも明確ではなくて、少数の多様な意見があったといったようなときには、どちらかが多いといったことは明記しないといった形で記載をしております。このときの数の数え方でございますけれども、団体、個人はいずれも1でカウントし、連名で提出された御意見については、提出者として掲げられている団体、個人を1人ずつ1とカウントして数えているという形をとらせていただいております。   中身に入らせていただきますが、1ページ目の第1部では、株式の発行の在り方に関する規律の見直しを取り上げております。「第1 株式の無償交付の対象範囲の見直し」につきましては、中間試案において、結論を得るに当たっては使用人等に無償交付される株式の労働基準法上の賃金該当性について整理が必要であるとされたところですけれども、法務省と厚生労働省でどのような整理が可能かという点について引き続き検討中の状況でございまして、全体について検討中という形にさせていただいております。そのため、株式の無償交付の対象範囲の見直しについて、本日は審議の対象とはせずに、「第2 株式交付制度の見直し」から御審議いただければと存じます。   次に、1ページ目から4ページ目の「第2 株式交付制度の見直し」では、パブリック・コメントやこれまでの審議において特に議論のありました、1の株式交付の対象となる場面の(1)、3の株式交付の手続の(1)において、それぞれ子会社の株式を追加取得する場合を一般的に株式交付の対象とするものとすることについてどのように考えるかとの記載と、上場会社である株式交付親会社の反対株主の株式買取請求権を認めないものとするか否かについて、どのように考えるかとの記載をしております。これらも含めて、第2全体について御審議いただければと思っております。   次に、6ページ目から13ページ目の「第3 現物出資制度の見直し」では、1の検査役の調査の制度の見直しについて中間試案と同様の提案をしているほか、2の不足額塡補責任の見直しについては、現物出資の関係者について、そのほかの取引と異なって特別に重い責任を負わせる合理的な理由はないようにも思われることを踏まえ、現物出資や取締役等の責任について中間試案のA案によることを提案しております。   14ページ目以降の第2部では「株主総会の在り方に関する規律の見直し」を取り上げております。「第1 バーチャル株主総会及びバーチャル社債権者集会」につきましては、パブリック・コメントやこれまでの審議を踏まえて規律を御提案しておりますけれども、パブリック・コメントで指摘が多かった点など、特に議論をするべき事項について補足説明で問題提起をさせていただいております。   具体的には、2のバーチャルオンリー株主総会を実施する際の手続等の保存するべき通信記録等の内容や保存期間、また、3の株主総会の決議の取消しの訴えの特則、いわゆるセーフハーバールールにおける通信障害対策措置の位置付けや、故意・重過失による通信障害の概念の整理、決議に影響を及ぼすものの解釈などについて問題提起をさせていただいております。これらの点を含めまして御意見を頂けますと幸いでございます。   30ページ目から36ページ目の8、振替法第86条に規定する書面制度につきましては、パブリック・コメントや前回のヒアリング、意見聴取の結果も踏まえまして、新しい規律の御提案をさせていただいております。このような規律を設けることの適否などについて御意見を頂ければと思っております。   最後、36ページ目以降の「第2 実質株主確認制度」では、パブリック・コメントやヒアリング、そして、これまでの審議においても特に議論のありました1の株式会社から実質株主を確認する制度の実効性を確保するための規律につきまして、悪質な違反に限ってその対象にするという設計の下に、今回、議決権の停止の制度を加えるということについてどのように考えるか、との問題提起をしております。また、2の株主側から株式会社に対する通知を義務付ける制度における議決権の停止の制度につきましても、善意・無重過失による違反については、追完後3週間の経過により議決権の停止の効力を失わせるということによりまして、悪質ではない違反について救済手段を設ける手当てをしております。これらの点も含めまして、第2全体について御審議いただければと思っております。   簡潔でございますけれども、部会資料13の御説明は以上でございます。 ○神作部会長 御説明どうもありがとうございました。   それでは、部会資料13について、三つのセクションに分けて御議論を頂きたいと存じます。まずは、部会資料13の「第1部 株式の発行の在り方に関する規律の見直し」に関して、第2から第3までまとめて意見交換をしていただきます。御意見のある方は挙手をお願いいたします。いかがでしょうか。 ○久保田委員 まず、株式交付制度の見直しについてから意見を申し上げたいと思います。   1(1)の子会社の株式を追加取得する場合を一般的に株式交付の対象とすることについてです。これまでも繰り返してきましたように、仮にこのような改正をした場合に、個人的に最も問題となると考えられるのは、規制を潜脱しようとして、簡易株式交付に該当するよう株式交付を複数回に分けて実施する事例が現れやすくなることです。上場会社の場合は、そのような規制潜脱行為は考えにくいと思いますけれども、非上場会社の場合は、規制潜脱行為が行われる可能性は小さくないように思います。同様の問題は会社分割の場合にも存在します。しかし、会社分割の場合とは異なり、株式交付の場合は会社の事業や事業に係る資産そのものに変動が生じず、単に他社の株式が取得されるだけですので、先ほど申し上げたような規制潜脱行為をより一層秘密裏に行いやすいと考えられます。そして、そのように規制潜脱行為が秘密裏に行われる場合には、仮に複数回の株式交付の全体を1回の株式交付と見て簡易株式交付該当性を判断するという解釈をとるとしても、株主は事前の差止めをしたり、あるいは株式交付の効力発生日から6か月という出訴期間内に無効の訴えを提起したりする機会が与えられないため、問題が大きいように思います。   そのため、私はこの改正は慎重になった方がよいと考えていますけれども、仮にそうした改正をするのであれば、せめて秘密裏に規制潜脱行為が行われることを防止するため、追加取得の都度、株主に是正措置を講じる機会を与えるため、株主が規制潜脱行為かどうかを判断できるだけの情報を開示させる規制があった方がよいと思いますので、そのような開示規制の新設について御検討いただければ有り難く思います。   次いで、3の上場会社である株式交付親会社の反対株主の株式買取請求権を認めないものとするか否かについてです。この点についても繰り返し、改正には慎重になるべきであると申し上げてきました。その理由は、ほかの組織再編と比べて株主に及ぼす影響が総じて小さいとは言い難いこと及び、株主が市場で株式を売却できるとしても、そのことだけでは不公正なM&A条件からの株主の保護まで代替できないことになるわけですけれども、今回はそれとは少し別の観点から追加的な意見を述べさせていただきます。   すなわち、株式交付の場合にも他の組織再編の場合と同様の株主保護、取り分け不公正なM&A条件が定められた場合における株主の保護が必要であるにもかかわらず、上場会社である株式交付親会社の反対株主の株式買取請求権を認めないとした場合には、不公正なM&A条件が定められた場合における株主の保護が不十分なものとなりますので、論理的には別の形で公正なM&A条件を確保することが必要になります。個人的には、少なくとも救済を求める株主の側はそのような主張をする可能性が小さくないであろうと考えています。   この点に関連して、米国法では一定の上場会社のM&Aについて、市場での株式売却が可能である場合には反対株主の株式買取請求権が制限される一方、構造的な利益相反が認められる取引について信任義務法理に基づく厳格な審査が用意されています。そのため、我が国でも株主がそのような方向での解釈論を主張し、裁判所がそれに対する応答を求められる可能性があるのではないかと考えています。このことは、株式交付の当事会社にとっては、株主側が事前の差止めあるいは事後の無効や取締役等の責任追及の場面において、M&A条件の公正さの審査の厳格化を求める可能性が高まり、そのような主張に基づく紛争が増える可能性があるという意味で、法的リスクが高まる可能性があること、したがって、上場会社の反対株主の株式買取請求権を認めないことにすれば株式交付を行いやすくなるという単純な図式にはならない可能性があるということを意味します。上場会社である株式交付親会社の反対株主の株式買取請求権を認めないとするか否かを検討するに当たっては、私が今申し上げたようなことも十分に意識して検討する必要があると考えております。   次いで、現物出資制度の見直しについてです。まず、2(1)の現物出資者の不足額塡補責任については、今回これまでの部会で私が支持してきました提案を採用していただいていますので、賛成いたします。   他方、(2)取締役等及び証明者の不足額塡補責任についてです。これまでにも意見を述べたことがありますが、私は現行法の規律を維持して、立証責任の転換がされた過失責任のままにした方がよいのではないかと考えています。すなわち、そもそも現物出資が計画される場合は、会社の取締役等と現物出資者との間における交渉を経て、最終的には会社の取締役等又は証明者が現物出資財産の価値評価を行い、取締役等がそれにふさわしい株式の数を決めた上で、現物出資者がそれに同意して現物出資を行うという流れになることが通例であると理解しています。そうだとしますと、仮に現物出資財産の過大評価があった場合に最も責任を問われるべきは、現物出資者に帰責事由が認められるような例外的な場合を除きますと、会社の取締役等又は証明者ということになります。また、会社の取締役等や証明者は、現物出資財産の評価をどのように行ったのかに関する情報を十分に保有しているはずですので、立証責任の転換がされた過失責任を負わせたとしても彼らの責任が過度に重くなるとは考えにくく、したがって、取締役等が社会的に望ましい現物出資を行うことをちゅうちょするといったことを懸念する必要も小さいように思います。   更にそのことに加えて、今回、検査役の調査について株主総会の特別決議による省略を認めることが提案されていますので、そのこととの関係でも、取締役等や証明者の責任を軽減することは避けた方がよいように思います。すなわち、今回、検査役の調査について株主総会の特別決議による省略を認めることが提案されているところ、このような改正が実現しますと、株主が共謀して会社債権者を害するような濫用的な現物出資を行う可能性があることになります。このような濫用的な現物出資については、関係者の責任による規律付けによって対応すべきであるところ、先ほど申し上げましたとおり、責任による規律付けの対象になるべきは取締役等や証明者ですので、その意味でも、彼らの責任については現行法の規律を維持すべきであろうと考えています。   最後に、(後注)の株主総会の特別決議があった場合における不足額塡補責任についてです。先ほど触れましたとおり、株主総会の特別決議があった場合でも、株主が共謀して会社債権者を害するような濫用的な現物出資を行う危険は残るわけです。そして、その点では検査役調査があった場合とは異なることになりますので、検査役調査を経る場合のような特段の規律は設けないものとすることに賛成したいと思います。もちろん、そのように株主の共謀がある場合に取締役の責任が追及されることは考えにくいような気もしますけれども、仮にそうだとしても、だからといって取締役等が責任を負わないとすることを規定する必要はないと考えています。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○鮫島幹事 私からは株式交付制度の見直しについてのみ意見を申し上げます。   子会社株式を追加取得する場合を一般的に株式交付の対象とすることは、日本企業による株式対価M&Aの活性化の観点から適切であると考えてございます。反対株主の株式買取請求権を認めない点につきましては、成長投資の原資となる金銭の流出を防止し、株式対価M&Aの障害を取り除くものであり、適切だと考えております。少なくとも株式交付計画が公表された後に株式を取得した株主に対しては、市場売却の機会とは別に株式買取請求権を認める必要性や相当性は低くなるのではないかと考えてございます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○白井幹事 部会資料2ページの株式交付制度の対象範囲の見直しに関しまして、意見を申し上げさせていただきたいと存じます。   部会資料では、A案を採用する場合には、「株主の利益については組織再編行為に関する規制により保護することができる」とした上で、簡易株式交付を利用した規制の潜脱の危険に対しては「解釈によって対処することが考えられる」と整理していますが、仮にA案を採用するのであれば、単に抽象的な対処の可能性があるというだけでは足りず、解釈によって実効的な対処が可能であることの見通しが立つことがやはり必要ではないかと考えます。こうした観点からは、大きくは次の二つの点で、解釈による対処には限界があるように個人的には感じております。   第1に、部会資料では「規制を潜脱する意図で株式交付を複数回に分けて実施」とありますが、そのことの立証を株主等が行うことは容易ではなく、立証のハードルは高いように思われます。簡易株式交付に当たるためには、交付する対価の額が親会社の純資産額の5分の1を超えなければよいだけですので、追加取得の場面を念頭に置きますと、通常は多くの回数に分ける必要はなく、例えば2回程度に分ける場合であっても、いずれも簡易株式交付の要件を満たすという状態は十分に実現できるのではないかと考えます。規制を潜脱するために一つの株式交付を多数という不自然な回数に分けて行うということをする必要はなく、そうしますと、外形的に見て、部会資料で言うところの「規制を潜脱する意図」を認定することが容易ではない事例というのは現実にはそれなりに現れることが想定されそうです。 また、それぞれの追加取得の間の期間がそれなりに空く、場合によっては年単位の期間が空くという事態も考えられそうです。親会社による子会社株式の取得を通じた支配の強化は、この一時点で実施しなければならない性質のものとは言い難く、数年掛けて徐々に強化することで目的が達せられることも実際には多いのではないかと考えられるからです。 そうしますと、例えば年単位の期間を空けて合計で2回行われた簡易株式交付について、本来はどこかで一度追加取得を行うことが想定されていたものの、株式交付に係る規制を免れる観点、例えば株式買取請求権の行使等を免れる観点で2回に分けたとしても、それぞれの時期に行う何らかのもっともらしい一応の理由が示されてさえいれば、会社内部の検討資料を有するわけではない株主が、部会資料で言うところの「規制を潜脱する意図」で複数回に分けて実施したと立証することのハードルは、やはり高いのではないかと考えます。   次に、第2にということなのですが、規制手段の点に関しても限界があるように思います。部会資料2ページでは、この点に関しまして、「①株式交付の差止請求や②当該法令違反を無効事由とする株式交付無効の訴え等によって株主が保護される」と整理されておりますが、個人的には、いずれも十分に機能する手段であるとは言い難いように感じております。   まず、①の差止めですが、差止手続の時間的制約の問題もさることながら、仮にその問題を乗り越えることができるとしましても、先ほどのように2回に分けてそれぞれ簡易株式交付が行われた事例に関して申しますと、後に実施される簡易株式交付については差止めの可能性はあり得ると言えるわけですが、前に実施された、すなわち既に実施済みの簡易株式交付については、その実施の時点では後に実施される簡易株式交付の存在を株主は知り得ませんので、差し止めるということはできないのではないかと思います。そうしますと、前に実施された簡易株式交付については、効力発生後ということになりますので、そこでの手続違反による瑕疵は①の差止請求権では対処できないということになりそうです。   次に、②の株式交付無効の訴えにつきましては、2回に分けて行われた簡易株式交付のそれぞれに無効事由があると捉えるといたしましても、前に実施された簡易株式交付については6か月間という提訴期間を徒過している可能性は十分に考えられるところでして、徒過するように後に実施される簡易株式交付の情報開示がされるようスケジュールが組まれる可能性も場合によっては考えられるところかと思います。また、仮に前に実施された簡易株式交付についても、提訴期間の問題を何らかの形で乗り越えて、無効の訴えで争えるといたしましても、一定の期間が経過している場合、親会社株式が上場株式であれば、交付された親会社株式が市場で転々流通しますので、誰の手元に何株分があるのかがよく分からなくなっている事態も十分に想定され、会社法第844条の2に基づく処理は現実には困難な場合というのも考えられます。すなわち、親会社による子会社株式の返還による処理が現実には履行困難な状態に陥っているおそれが考えられるということです。この点は、後に実施された簡易株式交付について、無効の訴えが認容されるまでの間にそれなりの期間が経過した場合にも同様に当てはまるかもしれません。   このように、「解釈によって対処することが考えられる」という整理につきましては、現実問題としては、「規制を潜脱する意図」で複数回に分けて実施したことの立証のハードルの高さや規制手段の実効性の点で、やはり限界があるのではないかという印象を個人的には持っておりまして、部会資料にありますように「解釈によって対処することが考えられる」からA案で問題ないと割り切ってしまうことには、慎重であるべきと考えております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○森委員 私からは、反対株主の株式買取請求権についてコメントをしたいと思います。   組織再編等における反対株主の株式買取請求権については、現状、実務的には構造的な問題が生じていると実感をしておりまして、組織再編とかTOBが公表されますと、株価は公表された価格にすぐ収れんしていくと思うのですけれども、そういった状況において、マーケットではある意味、絶対に負けることのないばくちの場が会社法によって提供されているというような状況になっていると感じています。発表された後に、公表された株価辺りで新しく株を買い取れば、最悪でも公表された株価でエグジットできるし、それで株式買取請求を行使するぞということで会社に対して圧力を掛ければ、より価格を上げざるを得ないということが生じていると。ですので、組織再編やTOB一般について、ある意味、投機的株主天国と言われるような状況を作り出しているのが、この株式買取請求権の一つだと思います。   そこのところを考えた場合に、そもそも株式交付という全くキャッシュアウトなく組織再編をしようという制度であるにもかかわらず、株式買取請求権を設けるというのはそもそも避けるべきではないかというのが意見なのですけれども、先ほどの鮫島幹事からもありましたけれども、少なくとも計画が公表された後に新しく取得した株主に対して株式買取請求権を認める必要というのはほぼないのではないかと、それがマーケットを非常にゆがめている、若しくはアクティビスト天国という状況を生じさせているということだと思いますので、できれば株式買取請求権は認めない、若しくは、それがどうしてもその方向で難しいとした場合は、少なくとも株式交付計画が公表された後に株式を新しく取得した株主については株式買取請求権を認めないというのは最低限、何としても入れていただきたいと思っていますし、更に言えば、組織再編なりTOB全般についてそういった規律を入れることも検討すべき状況になってきているのではないかというのを実務としては実感をしているところです。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○仁分委員 私から株式交付に関して2点、コメントさせていただきます。   1点目は、対象となる場面についてでございますけれども、今回の部会資料では中間試案におけるA案を軸に提案されていて、経営戦略に応じた柔軟な追加取得や少額の追加取得を行いたいという実務上のニーズにこたえられますので、賛成させていただきます。   それから、株式交付の手続でございますけれども、上場会社である株式交付親会社の反対株主の株式買取請求権を認めないものとする案が今回の部会資料において再度提案されたことを高く評価させていただいております。ありがとうございます。反対株主の株式買取請求権を認めないことを正当化する説明についても、部会資料13に記載されている考え方に賛成させていただきます。現行のほかの制度における株主保護との比較の観点でも、株主総会の特別決議を経て株式の有利発行が行われた場合、株式発行会社の株主に株式買取請求権は認められていません。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○松中幹事 私は、まず株式交付の買取請求権について申し上げます。   株式買取請求権が組織再編などで与えられている趣旨は、その内容を公正にしていくものであると理解するのが一般的だと思いますが、この趣旨あるいは機能というのは、別に会社の事業や資産に変化が生じるかどうかとは関係のないものです。したがって、キャッシュアウトがあるかどうかというのは率直に言ってどうでもいい問題なので、これは理由にならないというのが第1点目です。   続いて、株式交付について他社の株式の譲受けと同じだという説明がされておりますけれども、もし他社の株式を譲り受けて、では、株式交付では一体何をするのかというと、それに対して新株を発行するわけですね。このように他社の株式を譲り受けて株式を発行するという行為全体を見ると、株式交付以外の手段をとるのであれば、新株発行を行うことになります。確かに買取請求権はないのですけれども、その場合は新株発行の規律があり、差止めの対象にもなるわけです。もしそういう規律が欲しいのであれば、現物出資をやればいいわけです。したがって、そうではないトラックを作るときに、そちらの規律を理由に買取請求権が要らないというのは、変な理由付けだと思います。ここら辺は新株発行の規制あるいは現物出資の規制と組織再編の規制の都合のいいところを貼り合わせたような規律を求めている部分があるのではないかと思っていまして、さすがにそれは理屈として成り立たないだろうと思っています。   それから、全般的に株式買取請求権が弊害といいますか問題のある使い方がなされるということは、価格決定の方法も踏まえると、どうしても生じる可能性はあるわけです。これは、ほかの組織再編について従来議論されてきたところではあります。それで、例えば計画公表後の取得者について買取請求権を認める必要がないという議論があり、学説の評価は分かれているかと思うのですが、個人的には必ずしもそうとは言い切れないと思っています。というのも、もし不公正な価格による計画、買手の場合は高すぎる場合ですけれども、そういう計画が公表された場合には、買手の株価は落ちるわけです。公表された組織再編の条件が不公正だと思っている人にとっては、もし公正な条件であればもっと上がるはずであると思っているわけですから、株価はそれに比べて割安になっている。このときに買って、本来の公正な価格で買えというのは、別に全くおかしな話ではないわけです。ですので、計画公表後の取得者だから必ずしも買取請求権が要らないともいえないように思います。   さはさりながら、ほかの思惑もあって、それが迷惑だというのはよく分かるのですが、もしそこが本当に非常に深刻なのであれば、それは買取請求権に組織再編の公正さの審査とか担保を委ねてしまっている、そこだけに委ねてしまっている現在のM&Aをめぐるルール自体がおかしいというわけでして、むしろ買取請求権ではなくて差止めを、きちんと使えるようにすべきだという従来の議論につなげていくべき話ではないかと思います。したがって、ここで買取請求権が要らないというのであれば、では差止めを実効化するような案をきちんと考えていただきたいということになります。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○内田委員 私も株式交付制度における株式買取請求権について意見を申し上げさせていただきます。   一つは、ここでの整理では合併とか会社分割とは違って、事業資産そのものの変動がないので、株式交付制度というのは単に他社の株式の譲受けであって、株主が替わるだけだという整理がされております。しかし、その場合でも株主には相当な影響があって、合併とか会社分割と同等の影響を与え得るのではないかと思うので、既存株主からみたときにそこのところが他の組織再編行為と比較してどういう形で整理をされていたのか疑問に思うところであり詳しく知りたいところであります。一方で実務上、上場会社が買収対象となる株式交付制度の活用例が余り実績がないということ、つまり上場会社であればTOB規制で制約されることになるので、買収対象は未上場株を中心に規模が小さいケースが多く、少数株主から見るとそれほど利益が毀損されるリスクが大きくないということであれば、例えば株主買取請求権なしの規制でも少数株主の権益がある程度保護されるのであれば、それほど厳格に見なくても良いとも考えられます。仮にそういう整理をされたなら、その背景をもう少し詳細に御説明していただけるとありがたいです。   さらに加えて、投資家から見ると、不意打ちということは避けたいのでありますが、投資を始めた当初時点からみると、子会社や親子関係が替わるというのは不測の事態ですので、大きな変化だと思います。そこで株式買取請求権を権利として行使できないということであれば、不意打ちを受けた状況で権利が守られていないと言えると思います。その意味では、経済産業省の資料にあるように、株式交付計画書が出された後に株主となった投資家にとっては、状況は既知であるので、そういう投資家については保護するには当たらないというのはこの観点では納得できるところがあって、私もそれについては賛成しても良いと思っています。一方でそれ以前から投資していた既存株主の立場からすると想定外の不測の事態は避けたいということと、買取請求権は公正な価格で投資回収する最後の機会なので、そこはやはり株主の権利として保護すべきでないかと思っています。 ○神作部会長 ありがとうございました。御質問が含まれていたと思いますので、事務当局から御回答をお願いします。 ○近藤関係官 内田委員におっしゃっていただいたように、株式交付でも株主への相当の影響があり得る、あるいは、ほかの規律との平仄なども踏まえると買取請求権があるべきだという評価は十分あり得るし、パブリック・コメントやこれまでの御審議でもそういった御指摘があったところです。その一方で、株式の譲受けなどの他の制度と比べると、あるいは会社法のほかの制度との整合性などを踏まえると、株主の影響は相当のものというほどではないという御意見もまたあるところで、そちらの御意見を今回の部会資料には書かせていただきました。その上で、内田委員がおっしゃっていただいたように、投資家の目線などから言うと部会資料に記載した方の評価ではなくてむしろ買取請求権は引き続きあるべきだという評価の方がベターだという意見を含め、この部会で御指摘いただければと思っていたところです。すみません、御回答になっているかどうか分からないですけれども、部会資料の記載内容の当否も含めて御意見を頂きたいと思いながら資料作成をさせていただいておりまして、今、内田委員から正にそのような御意見を頂戴できたのかなと思っております。 ○内田委員 実際に株式交付制度は執行されているので、実際の適用事例なども参考にしながら整理したのか。そこでは既存株主の権益が損なわれる事象は多くは発見されなかったということなのかをお聞きしたいと思います。それとも実際の適用事例や活用方法などは全然そういったことは考慮されていないのか。整理に当たって実際の活用事例や現状での使われ方、少なくとも外観的に見える範囲で、どの程度考慮されたのか教えていただけますか。 ○近藤関係官 実例を何か特定の状況を見て判断したというよりは、この記載のとおり、これまで御意見が出ていたものをベースに記載しております。 ○内田委員 ありがとうございます。 ○神作部会長 よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。 ○加藤幹事 私も上場会社である株式交付親会社の反対株主の株式買取請求権を認めないものとするか否かについて、意見を述べます。   松中幹事と久保田委員の御発言と、ほぼ同趣旨なのですけれども、株式買取請求権は簡易株式交付に該当しない、ある程度規模が大きい場合について問題となるということが前提とされるべきだと思います。その上で、日本法の組織再編における株式買取請求権の機能としては、株式交付を含む組織再編が公正な条件で行われることを確保するということが挙げられます。このような機能は、特に支配株主と従属会社の間で行われる組織再編において特に重要です。ただし、株式交付においては、株式買取請求権が株式交付親会社の株主に対してだけ認められるという点で、ほかの組織再編と異なります。これまでの株式買取請求権の様々な制度整備や解釈論というものは、どちらかといいますと買収における対象会社の株主保護を念頭に置いて議論がされてきました。一方、株式交付親会社は買収の対象会社ではなくて買収者であるといえるのかもしれません。   しかし、従属会社が株式交付親会社となり、同一の支配株主が支配する別の会社を株式交付子会社とする株式交付が行われています。このような場合、従属会社である株式交付親会社の一般株主にとって、現行法上、株式交付が公正な条件で行われたかどうかがどのような仕組みによって確保されているかが問題となります。この場合、株式交付親会社には支配株主が存在するわけですから、株式交付親会社の株主総会決議を経ているというだけでは一般株主の保護としては不十分であると評価できると思います。このような場合にこそ株式買取請求権が重要な役割を果たすということは、少なくとも現在の、株式買取請求権に様々な問題があることも私も承知しておりますけれども、現在の会社法が想定する状況であると思います。株式交付が利用できる範囲を広げれば、グループ内の再編の手段として株式交付が利用される可能性も増します。この場合、そのグループに属する従属会社が株式交付親会社となる場合も増える可能性があるわけでして、むしろ株式交付が利用できる範囲を広げるからこそ、株式交付親会社の株主の保護を改めて考える必要性があるかと思います。したがいまして、現時点において、株式交付親会社の反対株主の株式買取請求権を廃止するということについては、私も慎重な態度が望ましいのではないかと考えております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○矢野幹事 私からは少し全体に述べさせていただきたいと思いますけれども、まず、全体に関してですが、部会資料13を拝見しますとA案、B案でパブコメの結果でどちらが多少多いからこちらだというような趣旨の、そのように見える記載が多分にありまして、適切でないとは感じていました。パブコメの目的自体は、様々な指摘から取り入れられるものを取り入れて、よりよいものにしていくということのはずですので、特に採用しない方の案の反対する理由については可能な限り取り入れて、全体での合致を目指すということが適切な姿勢ではないかと思いました。そのため、今回少なくとも部会資料13については、弁護士会としては大変に不満を持っているということは最初に申し上げたいと思います。   その上で、中身について御意見申し上げます。まず、株式交付ですけれども、1(1)のパブコメのA案を採用するというところについては反対いたします。その理由については久保田委員、白井幹事等がおっしゃったことと全く同じです。差止めや無効ではワークしないと考えておりまして、A案の採用においては、例えば詐害分割のような詐害株式交付の規定が必要ではないかとは思いましたけれども、結局これでも流通してしまった株式は戻せないという点は白井幹事のおっしゃるとおりで、これでもやはり不十分であるだろうと思います。   更に少し付言いたしますと、A案を採用して潜脱として訴えられる可能性がいつでもあるのだということになりますと、実務上は正直、株式交付自体が非常に使いにくい制度になってしまうのではないかということを逆に懸念しております。それなので、その潜脱に関する規定を相当きっちり詰めないと、A案では逆に使い勝手がよくない制度、使い勝手はよくならない結果となってしまうと感じています。   また、通知や公告、開示手続もあるから株主も分かるというような記載も補足説明にあるのですけれども、実際、電子公告とかをされてしまって、ほぼ分からないというようなところも問題であろうとは思います。   また、反対株主の買取請求権をなくすという点につきましても反対いたします。ただ、理由はもうこれまで申し上げたとおりですので、重複いたしますから申し上げません。   次に、現物出資ですけれども、A案、B案に分かれているものの採用の提案については、全て反対いたします。まず、2(1)アのところです。A案の方を採用するということですが、参考資料30を拝見すると、反対する理由の中では、特に通謀の辺りに反対の意見の理由が強いのかなとは感じました。個人的にもそう思います。そもそもA案の場合、著しく不足という要件がまず必要になっていまして、この立証は、やはり著しいというところがあるところから、実務上はかなりハードルが高いのだろうというのは感覚としては持っています。それに加えて通謀だとか虚偽、故意といったものの立証を求めるということになっているので、現実的に立証はほぼ不可能と言っているという条文ではないかと感じました。他の法制度の責任と比較しても、著しく立証の難易度が高い状況で、更にこれプラスアルファというのは、逆に高すぎる立証を求めていて不当ではないかと感じています。A案をベースにするのであれば、著しくを立証すれば、逆に通謀がないとか、故意・重過失がないということを反証するといった形で転換するということであれば、まあ考えられるのかなと思いましたけれども、両方、全ての立証を求めるというのは過度な内容だと考えます。   次に、イですけれども、A案と、A案とB案併用がほぼ拮抗しているのではないかとは思いました。特にこの部分はパブコメでは、A案といずれか、又は双方という聴き方ではなくて、そこは双方はわざわざ外した上で、いずれかと記載したにもかかわらず、弁護士会に限らない団体からも併用案を支持する意見が出ているという事実については、やはり重く見るべきであろうと考えます。従前も述べたとおり、令和2年改正以降の民法の規定からしますと、むしろその解釈の方が自然であろうとは弁護士的には考えます。   (2)についても、パブコメではB案が多数としながらA案となっておりますけれども、やはりこちらもB案をベースにすべきであろうと考えます。理由は先ほどと同じでして、著しくの立証に加えて過失までということになると、かなり立証のハードルが高いということになりまして、他の責任との平仄等を考えましても、重い責任を負わせる必要がないというのはそのとおりだろうと思いますけれども、逆に不当に軽くしすぎているということになっていると感じまして、その点については反対いたします。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○青委員 まず、部会資料13の2ページの28行目以下に記載の、規制を潜脱する意図で数回に分けて実施するという場合につきましては、先ほども御意見がございましたように、解釈により対処することが考えられますが、やはりこの潜脱する意図の有無は、仮にそのような意図があったとしても分かりづらいということになるかと思います。したがいまして、この点について何らかの解決を図るとすれば、客観的な判断要素に着目し、客観的に何を捉えるのかというところに応じた仕組みを考える方が安定的な運用につながるのではないかと思います。   次に反対株主の株式買取請求権のところでございますが、これまでの御意見と全く同じでございまして、対価が不公正な場合の救済は、売却さえできれば足りるという話ではなくて、やはり価格が大きく下落することによる損害が一番懸念される点でございます。このような価格下落リスクは、株式交付であっても十分に生じ得ると思われますので、株式買取請求権の趣旨として、株価下落による損害という側面も考えられるのではないかと思います。   また、加藤幹事からもございましたように、子会社株式の追加取得が広くできるようになるということで考えますと、グループ内の再編も行われやすくなり、少数株主の権利保護に関するリスクも高まるおそれがございますので、これらを考慮していくと、株式買取請求権をなくす方向感については慎重に考えるべきだと思います。   一方で、公表後に株式を取得した株主につきましては、買取請求権を認める必要がないという御意見がございましたけれども、この点については十分に検討する必要はあるものの、状況が分かっている上で株式を取得していることから、通常の場合に比べれば、買取請求権を設ける必要性が低いという評価もあり得ると思います。他方で、株価下落リスクの観点から買取請求権の行使を認めないとする考え方も、根底には同様の発想があると理解いたしました。   それから、仮に株式買取請求権を廃止する場合であっても、本来得られるべき利益が得られなくなったことにより株主が被る損失について、会社が何らかの形で補塡するような仕組みを代替的に設けることが、少なくとも必要になってくるということではないかと思います。そうでなければ、本来株主が被るべきではない損失を株主に負わせることになり得ますので、その点については十分に考慮する必要があるのではないかと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○松尾幹事 私からも、株式交付親会社の反対株主について買取請求権を認めないこととすることについて意見を申し上げます。   これがなかなか難しいということは、既に久保田委員、松中幹事がおっしゃったとおりかと思いまして、取り分け株式交付についてのみ反対株主の買取請求権を外すというようなことをなかなか正当化するような理論というのは難しいといえるかと思います。その中で、補足説明のところには株式交付制度の政策的な重要性という言葉が出てきておりまして、これについて特に反対株主の買取請求を外す理由として政策的な重要性を挙げるのであれば、やはり現在、株式交付制度が使われていないのは反対株主の買取請求があるからだということをもう少し裏付ける必要があるのではないかと思います。確かに買取請求を外すということについてパブコメで賛成の御意見を述べていらっしゃる方は多数おられるのですけれども、どちらかというと抽象的に、そういうものはない方がやりやすいとか、そういうところにとどまっていて、買取請求があるので、やりたいのだけれどもできないのですという意見は、1件そうではないかと思われるというような意見がありましたけれども、余り強く出ていないように思います。要するに私が懸念しているのは、本当に株式交付のニーズはあるのですかということで、買取請求が障害になっているからといって外してみたものの、これが利用されないというのでは、何のための改正だったのかということになってしまいかねませんので、もし政策的な重要性ということで株式交付制度についてのみ何か特別な規律を設けるということにするのであれば、もう少しその裏付けとなるような情報といいますか、立法事実を重ねる必要があるのではないかと思いました。 ○神作部会長 ありがとうございます。今この場で、買取請求権が株式交付制度を利用する障害になっているというような実例についてお話しいただける方はいらっしゃいますでしょうか。   よろしいでしょうか。また別途、そのような例がありましたら教えていただければと思います。 ○臼井委員 株式交付制度に入る前に、今回、パブリック・コメント後の最初の部会ということで、1点申し上げます。   冒頭に宇野幹事から、意見の多寡の基準について御説明いただきまして、ありがとうございました。今回の見直しはともすれば株主権の制限につながる内容が多い中で、パブリック・コメントで提出された意見の数を判断材料の一つとするのは、是非慎重にお願いできればと考えております。運用会社は、日本においては会社法というより金商法を意識する機会の方が多いように考えておりまして、上場会社の皆様のように社内に会社法のプロがたくさんいて、常にウオッチして、意見を申し述べられるという体制では必ずしもございません。また、今や東証の時価総額の3割超を保有する海外の投資家は、そもそも日本の会社法に関して余り馴染みがないと思います。基本的なスタンスとして、資本市場に関わる法制度については、能動的に関わるというよりも、法制度が適切に整備されている市場においてはリスクプレミアムが下がる、すなわち投資しやすい市場だと判断するという冷徹なスタンスを持っています。ですので、意見は賛成か反対かと実際聞かれれば反対だけれども、能動的に意見を出すというよりも、制度変更の結果を受けて投資をしないことにつながり得るという点を、パブリック・コメントの判断において御考慮いただけると有り難いと思います。加えまして、前回の参考人の御指摘にもございましたが、是非海外も含めた対外的な説明と理解の醸成を、関係省庁とも連携して図っていただけると有り難く思います。すみません、少し検討の内容からは違うところですが、よろしくお願いいたします。   株式交付ですが、企業買収全般について、企業価値向上に向けた原則とプロセスが整備された上で、成長に向けたリスクテイクが大いに行われるということを投資家としても望んでおります。株式交付に限らず買収の在り方については今、経済産業省の方で公正な買収の在り方に関する研究会での議論が行われていて、私どもも注目しているところです。買収対象企業の経営陣が企業価値の向上策をどのように真摯に検討していくのかといった点について、日本の上場企業においては取締役会の独立性や機能が十分ではない中で、プロセスの公正性と、株主利益の保護を図っていくのが大きな課題だと考えています。   株式交付を今回見直す目的として、M&Aの手段として多く活用されてほしい、子会社関係の整理や成長投資に向けて柔軟に活用されてほしいということは私どもとしても同意見ですので、安定性に欠けるので実際活用されないというのは望ましい帰結ではないと考えます。   そういった観点から買取請求権について考えてみますと、まずM&Aにおける活用を阻害しているのではないかという点について、株式交付は株式が対価になるため希薄化を伴いますが、経済的な実質はM&Aや成長投資といった資本配分に関する判断と同じものであり、現金による買収や設備投資であっても類似の企業価値のリスクは生じ得るということが言えるかと思います。こうした考えからすると、株式交付という手法を用いる場合に限って買取請求権を会社株主に認めるというのは、そこまで特別に扱わなくてもいいのではないかとも考えられます。   もう一つの懸念は株主間の公平性です。買取請求権は全株主に自動的に一律の救済を与えるものではなく、能動的に請求した株主のみが利用できる、したがって、株主間の取扱いの非対称性や戦術的な利用の余地を生じさせる可能性があるということが懸念かと思います。そうした中で、どう既存株主の保護をしていくのかということを考えますと、プロセスにおけるガバナンスをしっかりと担保することが重要と考えます。一定以上の希薄化や、支配株主や関連当事者が関与するような取引について、独立社外取締役を中心とする特別委員会や第三者算定、フェアネスオピニオン、十分な開示等といったプロセスをきっちりと決めていただくことで、退出権を買取請求権によって保護するというよりは、手続全体の公正性、ガバナンスを重視したプロセス設計が行われることがいいのではないかと考えます。   今回、三つの見直しの柱のうち企業統治のところは限定的な見直しに収まる可能性が高いわけですが、冒頭に申し上げたとおり、取締役会の独立性と機能が十分であれば、細かい部分まで一律に法律で定めるよりも、取締役会の裁量に任せることで株主権利の保護ができるのではないかと感じられる場面もございます。例えば、バーチャルオンリー総会や従業員への株式交付についても、取締役会が株主の利益を代表して適切に判断してくれるのであれば、我々としては問題とは考えません。そういった意味でも、企業統治の強化は非常に重要な論点ですので、是非併せて御考慮いただければと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○藤井委員 私からは、株式交付制度の見直しにつきまして、1と2につきまして簡単に意見を申し述べさせていただければと思います。   まず、1の株式の交付の対象となる場面につきましては、今回の御提案内容に賛成をさせていただければと思います。また、2の株式交付の対象となる会社というところなのですけれども、持株会社や外国会社を子会社にすることに追加することについては賛成させていただければと思いますけれども、1点だけ実務的な観点で、外国会社を子会社とする場合には、日本株を外国子会社の株主に交付することになりますので、日本株を受け入れられる口座管理機関やカストディアンの設定等、私ども含めてなのですけれども、仲介機関等の協力がこの制度を実現していくためには不可欠と考えておりまして、その実務構築には一定の期間を要するものとは考えておりますので、その点だけ付言をさせていただければと思います。 ○神作部会長 どうも御指摘ありがとうございます。 ○豊田委員 日弁連の意見につきましては、先ほど矢野幹事がお話しいたしましたので、そのとおりでございますので、若干の補足だけをさせていただきます。   まず、株式交付の反対株主の買取請求権につきまして、私も実務を行っておりまして、濫用的な買取請求権があるということは感じるところは多々ございます。ただ、やはり制度としてこれをなくすることにつきましては、上場会社では市場で売ればよいという点についても株価下落等の話がありますし、必ずしもその制度自体が不要ということは言いにくいのではないかと考えているところでございます。   それから、株式交付における子会社の追加取得と、現物出資における関係者の責任について、ガバナンスが利いている大企業が他社を子会社化したり、現物出資を行いたいという場合に便利にすることについては、もちろん視点としては大事でございますが、ただ、弁護士としていろいろな病理的な案件も扱っている経験からすると、やはり上場企業であってもそれほどガバナンスの利いていない企業も多々あり、そういう会社で詐欺的な現物出資が使われる可能性はかなりあると考えられますので、それを前提にしていただくということが必要なのではないかと考えている次第です。現物出資規制の潜脱のために株式交付における追加取得が使われる可能性もあるのではないかと考えております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○田中委員 今回の提案は、パブリック・コメント前に私が支持した意見を取り入れてくださったものが多いので、ほとんどのものに関して異論はありません。議論になっている株式交付に関して述べさせていただきます。   まず、子会社株式の買い増しに関しては、私もB案にすると、どのような要件の下にそれを可能にするのかについて明確なルールがないように思えまして、一般的に買い増しを許容するA案でいいと思います。ただ、やはり濫用防止のための規制が必要かなと思っています。この点については、株式交付をする会社に規制を潜脱する意図があるかどうかを問題にするなどして、解釈によって濫用に対処するというだけではなくて、やはり一定期間内に行われた株式交付については当然に合算して、簡易要件を満たすかどうかを判断するような明文の規定が必要であると思います。それによって、きちんとした目的を持って株式交付をする行為を余り阻害することなく、濫用を抑えることができるのではないかと思いまして、こういった規定の整備を是非考えていただければと思います。   それから、株式買取請求についてなのですが、私も、株式買取請求を否定するという改正については慎重に考えた方がいいと思っています。現行法上、株式交付について、現物出資規制に服することなくこれを行うことができるとされているのは、組織再編の手続規制に従うからであって、その規制の中には反対株主の株式買取請求も当然含まれていると考えています。特に今回、株式交付の範囲を広げる改正が提案されている一方で、反対株主の株式買取請求をなくすというのは、どうしても整合性がとれないと思います。また、組織再編の中でも株式交付については、親会社株主の利益に与える影響は小さいという考え方につきましても、他社を子会社化するということは、小さい会社を吸収合併することと比べても影響は小さいとは必ずしもいえないように思います。現行の日本の会社法は、多種多様な組織再編を認めており、それについて株主の利益に与える影響は、簡易組織再編に当たるかどうかで決めるという形で割り切っておりますので、こういうルールを変更することは慎重であるべきではないかと思います。   それから、組織再編の計画公表後に株式を取得し、株式買取請求権を行使するという行為が近年問題視されており、そういった類いの行為については制約すべきという意見もあるかと思います。しかし、まず、そのような買取り後の株式買取請求が目立っているのは、基本的には非公開化取引における対象会社の株式についてだと思っておりまして、株式交付親会社側、つまり買収者側の株式についてそのようなことが行われているということは私は認識しておりません。非公開化取引の場合は、やはり対象会社株主に不利益を与える可能性もあるということで、学説の議論も盛んに行われており、株式買取請求についても裁判所の審査を比較的に厳格にしなければならないという考え方が学説上は有力なのですけれども、親会社側の株式についてはそういった議論もありません。そこで、現実的には、親会社株主が反対株主として株式買取請求をしても、かなり長いこと裁判で争った結果として、結局、効力発生日における市場株価しか得られないということになるので、一般的には反対株主にとっては「負け」ということになる、裁判に時間と費用が掛かって効力発生日における市場株価しか得られないですから、通常は負けと認識されるのではないかと思いますので、それほど濫用的にこういったことが起こるということは私は認識しておりません。もしそういったケースがあるとすれば、それは現行法でも株式交換については起きているはずなので、そういった事例があれば教えていただきたいと思うのですけれども、私の認識している限りでは、そういったことが頻繁に起こっているともいえないのではないかと思います。   それから、より一般的に、計画公表後に株式を取得して反対株主の株式買取請求をするという行為がなぜ起きているかいうと、やはり、M&A取引の価格が必ずしも十分なものではないので、裁判で争えばより高い価格が得られるだろうという見通しの下に行われているかと思います。そして、そういう見通しのもとに行われる行為が本当によくない行為であるかと考えますと、日本の現在の非公開化取引においては、利害関係のあるM&A取引であっても少数株主の過半数の承認を要求しないとか、支配権移転の取引であっても必ずしもマーケットチェックを行った上で買収額を決めるわけではないとか、諸外国の感覚かするとかなり不十分に思われるような手続によってM&A価格が決められていて、それへの反対という意味合いもあると思います。ですので、計画公表後に株式取得を一義的に悪いとか、抑圧すべきだとも言えないと思っています。したがって、そういったものも含めて株式買取請求を制限するということは慎重であるべきかと思います。   それから最後に、現物出資の規制に関してなのですけれども、御意見がありましたので、少し私の考えを述べておきますと、例えば通常の売買契約であれば、物の売主は、自分が売ったものが買主の予想外に安いものだったからといって、それで後で責任を課されるということはないわけであります。著しく安い価格で売っても、基本的にはそういうことはないわけです。   それからもう一つ、取締役の責任についても、会社のために物を買った取締役は、たとえその物の価値が著しく低いものであったとしても、取締役の側で無過失を立証しなければ責任が認められるというものではありません。やはり善管注意義務の違反が立証されないと責任は問われないわけです。現行の会社法上、現物出資による責任というのは、実際に一般の取引よりも厳しい責任が課されているわけです。その是非はともかくとして、少なくとも、今回提案されている案のとおりに会社法が改正されても、一般の取引類型に比べて規制が軽すぎるようなことにはならない。元々現物出資については、現行法では一般よりも厳しい規制が課されていて、それを一般の取引に近付けるというのが今回の改正の趣旨だと理解しております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○齊藤委員 株式交付につきまして、追加取得一般に広げるかという問題については、簡易株式交付による潜脱や不公正発行のおそれへの対応、それから法的安全性への要請に応えられているのであれば、広げることでよいと思います。今回の改正で、株式交付についてのみ株式買取請求権の廃止をするべきではないことにつきましては、既に出されている意見に付け加える点はございません。   今まで出ていなかった点ですが、持分会社を対象とする場合についてパブリック・コメントで御指摘のあった内容として、無限責任社員の地位を引き継ぐことになる場合については債権者異議手続を廃止するべきではないという御意見がありまして、確かに、債権者保護手続を廃止するために使ったロジックは、この場合をカバーしておりませんので、検討する必要があるのではないかと思いました。   次に、現物出資規制なのですけれども、パブリック・コメントで出された意見には、出資の目的物の過大評価によって会社の財産規模についての誤った信頼が形成されること、また、それに伴う消費者への影響ということを懸念する意見がありました。資本金につきましては各種行政規制において会社の規模を表すための基準になっていることもございますので、会社関係者の間の申合せでそれでいいとして積み上げられてよいものでもなく、濫用的な現物出資が行われないような仕組みが十分に働いているかという観点で、もう一度内容を検証する必要があるのではないかと思っております。   場合を分けて考える必要があるのではないかと思いまして、ガバナンスがきちんと働いている公開会社で透明性が確保されているような場面においては、第三者の評価などを得て適切な評価がなされることが期待できると思いますので、会社法上の規律を通じた適正な評価の保障という要請は後退するかと思いますけれども、先ほど豊田委員の御指摘にあったようなガバナンスが余り利いていないような会社における、特に不公正発行の危険が高いような場面と、閉鎖的な会社における支配株主、大株主などによる現物出資を通じた株式の取得、あるいは会社の規模を大きく見せるというようなことへの対処が今回の規律で十分に図られているかということについては、特に慎重に検討する必要があるのではないかと思っております。   ここで重要と考えられるのは、関係者の責任ではないかと思われまして、矢野幹事から、現在の状況ではまだ十分ではないというような御意見があったところで、私もどう判断するべきか、引き続き御意見を伺いたいとは思うのですけれども、特に閉鎖的な会社で異を唱える少数株主がいるような場面においては、任務懈怠責任や会社法第429条の責任などの実務を踏まえると、おかしいことが行われている場合には異を唱える人が出てくるのではないかと思われまして、情報の非対称性というものも大会社、上場会社などの場合に比べて相対的に低いように思いますので、事態を修正するメカニズムも働くのではないかと思われるところで、一応問題提起はしましたが、現在の御提案でよいのではないかと考えているところでございます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○久保田委員 先ほど齊藤委員が言及された株式交付の債権者保護手続の件ですけれども、あれは実は慶應義塾大学の中で検討会を行っている中で、持分会社を子会社化するときに、持分会社の無限責任社員の地位を株式交付親会社が引き継ぐという場合は、それ以前の債務についても責任を負いますので、債権者に対する影響が小さいとはいえないのではないかという意見が出まして、それをパブリック・コメントに当たっての慶應義塾大学の意見の中に記載した次第です。私もその点は是非検討していただきたいと思っています。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○藤田委員 それでは、私からも第1部のうち、株式交付の対象範囲の見直しと現物出資規制について、若干コメントさせていただければと思います。ただ、今回はパブコメ後の最初の回で、最終的な検討が始まるタイミングでもあり、各論点に入る前に、一般論として1点だけ留意していただきたいと思う点がありますので、申し上げておきたいと思います。   これは今から申し上げる論点に限った話ではないのですけれども、法制審議会の部会の場でいろいろ議論して、いろいろな立場の間のぎりぎりの妥協として得られた結果が要綱になり、法律になるわけですけれども、それは将来の改正においては、既に成立した現行法として議論の出発点、制度の整合性を考える際の基準点となります。したがって、現実社会に影響を及ぼす立法をする以上、現在のニーズを取り入れる必要は当然あるのですけれども、余り理屈がないその場での妥協とか、あるいは当該ニーズとは厳密に対応しない一般性の高い理由付けを伴う改正をしますと、将来の改正においては、それを出発点として更なる改正がなされ、元々の制度の前提が大きく崩れていくことになります。会社法改正にはかなり長い間関与してきましたけれども、そういう例は一つや二つではありません。もちろん一日も早くなくなった方がいい望ましくないルールもあり得ますので、必要な改正をすることにちゅうちょすべきではないのですが、局所的な目的を達成するためにその場その場の思いつきのような理由付けで法改正をしてしまうことにはやはり慎重になるべきだと思います。それは、この法制審議会の部会の果たすべき一つの責任だと思っております。   そういう観点からすると、第2の3(1)の株式買取請求権などは、かなり深刻な問題がある議論がされているという印象を持っています。スタートアップ企業などで株式交付を用いた買収が行われた後、現金が流出するおそれがあるのが望ましくないという問題意識自体は全く分からないわけではありません。ただ、ここで、株式買取請求権は与えるべきではないという際に言われる株式買取請求権の弊害や、それを制限する理屈は、他の組織再編の場合を含め、株式買取請求権に一般的に妥当するものばかりです。上場株式だったら反対株主は株式を売却できるとか、金銭流出が成長投資を妨げるといったことは、多かれ少なかれ他の組織再編にも当てはまりますし、また、株式交付だけ株主への影響が類型的に特に小さいと言えるのであれば、改正の射程はそこまでとなるのですが、そうとも言えない。だから、仮にここで株式交付について株式買取請求権を認めないという立法をしてしまいますと、組織再編について買取請求権を認めるか否かというのは、局所的なその場での個別ニーズを踏まえた政策判断に過ぎないというのが現行法の基本的な考え方だということになり、それを前提に今後、個別のニーズが主張され、それに基づいた改正がなされてくる可能性が出てきます。これは、アクティビスト対策を目的に会社法や金商法を改正すべきであるという声が一部で非常に強く上がっている現在、決して抽象的な可能性にとどまるものではないと思います。   つまり、株式交付について株式買取請求権を撤廃するという議論をする際には、我々は株式交付制度の利用を容易にするためにどうしたらいいかという次元にとどまらないような話を潜在的に議論しているのだということを深刻に認識すべきではないかと思います。スタートアップの促進のために政策的にどうしても株式交付について株式買取請求権を排除したいから、スタートアップ企業等を対象とした特別法で対処するというのであれば、そのような政策の是非はともかく、少なくとも将来的な影響ということは深刻に考えずに済みます。しかし、会社法として一般的にそういうルールを作るというのであれば、そうすることの意味を慎重に考えた上で、それでもやらなければいけないことなのかを考える必要があります。   これに対して、株式交付を離れて他の組織再編を含めて株式買取請求権の内容を合理化するというのであれば、それはまた別問題で、この部会にふさわしいテーマなのかもしれません。例えば、取得時期による株式買取請求権の制約という提案は、そういう観点から議論する余地はあります。ただ、この提案は既に平成26年改正のときに議論されており、その際には採用は見送られました。その代わり、平成26年改正では、会社が自分が公正と考える価格を価格決定前に支払うという制度が導入されました。それまでは買取請求から価格決定までの間の法定利息を当然に取ることができたために、弊害が非常に目立ったことから、会社が公正な価格を提示し、実際にそれが公正だったら一円も追加しなくていいという制度が導入され、本当の意味での機会主義的行動がかなりの程度抑止されたとされています。   私も過去調べたことがあるのですが、少なくとも公表されている裁判例で、会社が当初言っていた条件以上の価格を買取請求で認めたという例というのは極めて少数で、それはいずれも手続に大きな瑕疵があったようなケースに限定されると思います。したがって、きちんと価格決定で最後まで行けば、手続的によほど変なことをやっていない限り、追加的な金銭は本来得られないような制度になっており、しかも利息の話も問題なくなりましたので、それにもかかわらず、アクティビストが買取請求してきたら高く払うということがあるとすると、それはどういうことでそれをしているのだろうということが気になります。したがって、どのぐらいこれが深刻な問題として起きているのかということ自体検証しないといけないと思います。むしろ、買取請求権があるということで、子会社再編とかMBOといった潜在的に利益相反が問題となる取引について、公正な取引条件を設定させる抑止力になっているという面もあるので、買取請求権一般について制約することについても、いろいろ考えた方がいい点はあります。ただ、繰り返しですが、株式取得時期に関する制約ぐらいでしたら、株式買取請求権制度の改善という観点から、いろいろ議論する余地もあり、実際本当にどのぐらいの濫用的なものがあり、かつ濫用的な場合に取得時が計画公表後というのがどのぐらいあるかという、そのデータ次第では、改正を考えてもいいのかもしれません。   なお、アメリカの一部の州法に倣って、上場会社については買取請求権を廃止するといった議論をされる方が時々いらっしゃるのですが、アメリカ法と比較するのであれば、既にどなたかおっしゃったかもしれませんが、やはり正確にすべきです。アメリカのある州では買取請求権の内容や適用範囲は極めて限定的なのですけれども、我が国の買取請求権が果たしている機能は、多数株主の少数株主に対する信任義務とかとクラスアクションとの組合せで達成される可能性があります。そういう面を無視して日本法には何ら手当てしないまま、上場会社では外国では認められていないのに、日本では認められているから問題だといったような議論をしてしまうと、MBOや子会社の再編に与える影響というのは甚大だと思っています。 そういう理由から、株式交付との関係で株式買取請求権を廃止すべきではないとこれまでも申し上げてきたとおりで、全体的な見直しについては考えてもいいと考えており、ここで掲げられている提案については、直ちに賛成できるわけではないと考えています。   株式交付の適用範囲で、無限定に子会社株式の買い増しに使えるということについては、1株買い増すのも組織再編ですかという観点から、抵抗がないわけではないのですが、将来への悪影響という点からは、組織再編概念というのは恣意的に何とでも作れるようになるということはあるものの、比較的抽象的な懸念にとどまるので、およそ支持できないものではないかもしれません。ただ、簡易要件を利用した脱法についての手当てはこのままでいいのか、少なくともここで書かれている御説明は十分ではないのではないかというのは、多くの委員の言われているとおりだと思います。簡易要件を満たす程度に分割して連続して取得するというのが典型的な脱法ですけれども、これは何回も繰り返して初めてその意図が明らかになるという性格なので、最初の株式交付は止められませんし、事後的に効力を争うにしても、ある程度期間を空けられれば争えなくなってしまう。したがって、余り実効的な規制ができないという問題があります。抽象的には、意図的に分割して要件をかいくぐるようなものは脱法だと言えるのですけれども、そのような一般論を掲げたところで余りエンフォースしようがないというのは多くの方が言われたとおりだと思います。余りいい規制手法ではないとは思いますが、例えば、一定期間内に簡易要件を利用して一定割合以上、一定回数以上繰り返すようなものは、いっそ形式的に禁止するとか、そのぐらいのことをしないと意味のある規制にはならない。脱法を実効的に抑えることができなくても仕方ないと割り切るか、もう少し意味のある規則を加えるかは、もう少し検討していただければと思います。   第3の現物出資の2の不足額塡補責任ですが、これは非常に難しいと思います。財産の評価の基準時については、ここで書かれているとおりでいいと思うのですが、難しいのは引受人の責任で、実際、ここは意見がかなり分かれています。現在の提案は、乱暴に言うと、要するに会社をだますような形で安い財産を高く現物出資した場合に限定して責任が発生するというもので、この提案には恐らく二つの異なる発想がその背後にあると思います。一つは、自分の財産を誤った場合に出資者が高い金銭の追加出資を求められるというのは酷だという一種の実質論といいますか同情論です。もう一つは、普通の売買であれば自分のものを高く売ることは、詐欺的な場合でなければ基本的には許されているはずで、現物出資についても、そのような一般的な取引法にできるだけ近付けるべきだという話で、こちらはもう少し制度的な理屈の問題です。前者のかわいそうだという実質論にはかなり共感するのですが、後者については少し慎重な議論が必要な気もします。つまり一般の取引に近付けるべきかということについては、安い出資で不当に多数の株式を有する社員となるということについて、組織法的には制限があるというのが従来の法制の前提でしょう。そういう発想を有してない会社法も世の中にはありますので、取引と同じだというのは理論的に誤りだとは思わないのですけれども、大陸法系の国の会社法は出資財産の価値に見合わない株式数の増加には制限があるべきだと考えているのではないかと思います。   そういう意味では正直、迷ってはいるのですが、今の改正案は、現行法の発想を大きく変える点で、そこまで行っていいのかなというちゅうちょはあります。そうだとすると、一部の委員がおっしゃるように、現行法のように株式引受人の責任を無過失にする必要はないとは思いますけれども、せめて通常の過失責任、つまり財産の評価について注意を尽くし適切な額を伝えるという義務を果たさなかった場合には責任があるという程度にするのが自然かなという気はしています。   ただ、そういうルールにしますと、高い金銭の追加出資をさせられるリスクは残ります。以前の部会の会議で株式数を減らすことで調整するという案を出したのは、それに対応するという趣旨だったのですが、それがいろいろな理由で駄目だというのであれば、例えば、不足額塡補責任を金銭債務として課すと、そういう責任を負わせることは認めた上で、ただ、そういう責任を負った株式引受人が差額について金銭の支払に代えて、言わば代物弁済として、持っている株式を自発的に無償で返却するという余地は認めるという形で責任を果たしたことにするという形をとるのであれば、現在の立て付けを余り変えない形で実質的な金銭追加の負担は緩和するということになります。そのような履行の仕方を認めた上で金銭的な責任を課すのであれば責任が重すぎるというのはある程度緩和できるので、普通の過失責任ぐらいにし、現在の提案ほど厳格な主観的要件を要求しないということも考えられると思います。この点はまだ迷っているところはあるのですけれども、今の私の立場はそういうところです。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○森委員 実務的なところで、実例があったかどうかみたいな御質問もありましたので、1点だけ過去の経験上のことをお伝えしたいと思うのですけれども、グローバルに大きなM&Aを株式対価でやろうという案件があったのですが、やはりこの株式買取請求権があるということで、株式対価M&Aを進めようとすると一体幾らキャッシュアウトが出るか分からないという非常に不安定な取引になるということで、非常に大きなM&Aだったのですけれども、結局それは株式対価M&Aはその方向ではできませんでした。そういった事例があって、それはそういうことになったということも知れ渡っていますので、要は株式対価M&Aは今の会社法上、使い物にならないというのが実務で広がっているというのが実際のところなのです。   ですので、藤田委員がおっしゃるように、株式買取請求を一般的にこの場合だけ、株式対価M&Aだけ株式の買取請求をなくすというのは理屈上もどうかというところはおっしゃるとおりなので、簡単ではないと思いますけれども、実務的にはそういった見方がされている。一方で成長投資とか、いろいろなことを議論しているときに、GAFAといった海外の会社が株式対価M&Aでどんどん大きくなっているというのも実際のところでありまして、日本ではそれが使えていないというのも現状であるという現状を認識した上で、どういったことができるかというのは是非考えていただきたいと。先ほど申し上げましたけれども、少なくともこういった組織再編が公表された後に買ってきて、それによってどんどんと何をやるか分からないという状況に置かれるというリスクを抱えた形でこういったプロジェクトを進めなければいけないというのは非常に不安定だということは、是非とも認識をしていきたいと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○齊藤委員 先ほどの藤田委員の御指摘の株式の無償譲渡による調整についてですが、あり得る選択肢ではありますが、課題があるといたしますと、既に効力が生じている資本金の額の増加の調整をどうするかというところでございまして、パブリック・コメントの中にもそういう御指摘があったように思いますけれども、株主間の利害調整は株式数でしつつ、会社が有する債権は消滅してしまい、過大評価につき財産上の塡補がされないのであれば、資本金の額を減額する方法があるのかどうかを検討した上で、それができるということであれば、そのような解決法もあるのではないかと思われます。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。   ほかに御発言はございますでしょうか。第1セクションについては、よろしいでしょうか。   お話を伺っておりまして、株式交付の対象となる場面については、子会社株式の追加取得を一般的に株式交付の対象にするということを支持する見解が多かったように思いますけれども、濫用的な利用への対策について更に検討を深める必要があるという御指摘が多くなされたと思います。A案に反対の意見の中にも、仮にA案を採用するのであれば3(1)の論点である株式買取請求権を存置することが必須であるという御意見、条件付きというのでしょうか、株式買取請求権は存続させるという条件の下で、中間試案におけるA案、本日御提示された案を受け入れる意見が多かったと思います。また、3(1)の株式買取請求権については、パブコメの御意見等を踏まえてもなお、撤廃することは慎重に考えるべきだという御意見が多かったと思います。第3の現物出資規制については、現行の規制を緩和すべきであるという方向においては意見が一致していると思いますけれども、どこまで緩和すべきかということについては、依然として意見の対立と申しますか分布があるように思います。事務局におかれましては、本日の議論、それからパブコメの結果等も更に深く分析していただき、次の御提案に備えていただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。   それでは、続いて第2セクションに移らせていただきます。部会資料13の第2部の「第1 バーチャル株主総会及びバーチャル社債権者集会」についてでございます。この点について御意見のある方は挙手等でお知らせいただければと思います。いかがでしょうか。 ○北村委員 私からは、株主総会の決議の取消しの特則の部分について、2点ほど述べたいと思います。   まず、20ページのところですけれども、対策措置を使用となっていたのを用意と文言を変えられたということで、その変更の具体的な影響が22ページの28行目以下ということになります。28行目以下では、用意と変えたことによって、通信障害の対策を講じていたけれども、それを使わなくて通信障害がそのまま続いたという場合に、通信障害が生じたことについては悪意重過失がないのだからセーフハーバールールが適用されるという説明になっています。私はこれにはかなり違和感があります。というのは、用意していた対策を故意又は重過失により使わないということは、結局用意していなかったのと変わらないように思えるからです。つまり、用意していた対策を故意又は重過失により使用しなかった、それによって通信障害が生じたままにしておくということは、法的評価としては、通信障害対策を講じていなかった、あるいは故意又は重過失により通信障害を生じさせたということになるのではないでしょうか。結局その措置を使っていれば通信障害にならなかったのだから、そのように理解するのが自然であると思います。   整理いたしますと、事前に通信障害に備えて代替手段を用意していたとし、実際にメインの通信手段において通信障害が生じた場合に、故意又は重大な過失により代替手段を使用しなかったために通信障害が継続したということであれば、株式会社の故意又は重大な過失によって通信障害が生じた場合に該当して、セーフハーバールールは適用されないということになるという理解が適切だと思っております。   2点目は、部会資料の23ページの4行目の3、決議に影響を及ぼすものの解釈のところです。ここで例示されている事例というのは、試案の別紙の(2)、(3)の事例と同じで、引き続き検討を要するとされているところです。これはなかなか難しいのですが、現時点で私は次のように考えてはどうかと思います。まず、セーフハーバーという性質上、出席できなかった株主の影響力等は考慮すべきではなく、客観的数字のみで判断すべきであると思います。すなわち、出席者プラス通信障害により出席できなかった株主の議決権を分母にし、賛成した株主の議決権を分子として算定して、普通決議なら過半数となるかどうかで判断すべきで、そこで過半数になっていれば影響がなかったということになります。部会資料の例では、10人の株主がそれぞれ一つの議決権を有していて、通信障害により10人中4人が出席できなくなり、出席した6人の中、6人全員が賛成して可決されたという場合は、通信障害がなければ出席できた4人が出席して反対しても過半数が賛成となり、通信障害は決議に影響を及ぼさなかったと考えてよいと思います。しかし、6人中4人の賛成だけであれば、通信障害で出席できなかった人の帰すうにより結果が変わった可能性があるわけですから、これは影響があったと考えるべきと思います。部会資料では、通信障害により出席できなかった株主の意向はどうだったのかなども考慮して決議に影響したかどうかを判断するということなども示唆されていますが、出席できなかった株主の意向などを、事後的に確認することは適切でないと思います。   実際にこのような例が生じるのはバーチャルオンリー型の株主総会ではなくて、ハイブリッド出席型のバーチャル株主総会だと思います。バーチャルオンリーであれば、通信障害が生じると株主全員が出席できなくなるということが想定されるためです。つまり、ハイブリッド出席型バーチャル株主総会で通信障害が生じた場合に、リアル出席株主だけで採決を行った場合にセーフハーバールールが適用されるか、これが問題になるのだろうと思います。   あと、一つ悩ましいのは、事前の議決権行使があった場合にどうするかということです。この点も詰めておく必要があると思います。仮に部会資料13の17ページの2(1)ウ、これはバーチャルオンリー株主総会をする場合の取扱いなのですけれども、事前の議決権行使をした株主がバーチャル出席をするためにログインした時点で事前の議決権行使は無効となる、こういう扱いをすると決めていたとすると、事前の議決権行使をした株主がバーチャル出席のためにログインしたのだけれども、議事の途中で通信障害が生じて採決に参加できなかったという場合は、事前の議決権行使は一旦ログインしたのだから無効ということになるはずです。一方で、そのような取扱いとして、事前の議決権行使をした株主がバーチャル出席して議決権行使をした時点で事前の議決権行使は無効となると扱いを決めていた場合、つまり、バーチャル株主総会にログインした段階ではまだ事前の議決権行使は生きていると扱う場合に、議事の途中で通信障害が生じて、その者が採決に加われなかったということになると、事前の議決権行使は有効ということになると思います。事前の議決権行使を行った株主がバーチャル出席しようとしたのだけれども、初めから通信障害が生じていて出席できなかったという場合であれば、いずれの場合にも事前の議決権行使は有効ということになります。一つの割り切り方として、以上のような考え方で影響があったかどうかを判断するということはあり得るかと思います。   もう1点、事務局にお伺いしたいのですけれども、以上の議論は通信障害が生じた場合に、誰がシステムへのアクセスを試みたかを会社は把握できるということを想定していると思います。これは本当に技術的に可能なのか、通信障害が生じて誰がアクセスしようとしたか分からないという事態というのはおよそ生じないと理解してよいのでしょうか。この点は、セーフハーバールール該当性についての立証の点でも気になるところです。この点、実際どうなのかというのを御存じでしたら、お伺いしたいと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。最後に御質問があったかと思いますが、事務局から御回答をお願いいたします。 ○吉田関係官 ログインを試みた株主を会社側が把握できるかということですけれども、これも使用するシステムによっても違うのかもしれませんが、例えば、一般的なウェブ会議システムであれば、システムへのアクセスを試みた記録というのはもしかしたら残らないのかもしれません。一方で、例えば上場会社で使われるような、専門業者が提供するバーチャルオンリー株主総会の専用システムのようなものの場合には、そのシステム上、何か記録が残るのかもしれません。この辺りは、もし委員、幹事の皆様の中で御知見があられる方がいらっしゃいましたら、御指摘いただけると有り難いと思っております。 ○神作部会長 どなたか教えてくださる方はいらっしゃいますでしょうか。 ○藤井委員 今の御質問の件なのですけれども、弊社におきましても、主に上場会社様に御委託いただきましてバーチャルオンリー、ハイブリッドのバーチャル総会、つまり議決権行使もできるシステムというのを、ある程度しっかりしたものを構えていると自負はさせていただいているのですけれども、御指摘の点に関しては、通信障害が起きたときにログインを試みた株主までの把握というのはできないというようなものだと理解をしております。よって、一般的に少し難しいということにはなろうかなとは推測しているのですけれども、他の会社が構えているようなシステムまでは把握はしていないので、飽くまで弊社のケースと御理解いただければと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。ほかに、この点について御発言はございますでしょうか。北村委員、いかがでしょうか、何か追加の御発言はございますか。 ○北村委員 特にございません。今のお話をお伺いし、システムにアクセスしたことを把握できない可能性があることを踏まえて、セーフハーバールールの適用・不適用の立証について、更に検討しなければいけないと思いました。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○久保田委員 私は部会資料23ページの、決議に影響を及ぼすものの解釈について意見を述べさせていただきます。先ほどの北村委員の御発言と重なるところもあると思います。   部会資料では、株主総会決議の取消しを求める者に対して、通信障害により株主総会の決議の方法が法令又は定款に違反した事実が実際に決議に影響を及ぼしたことを立証すべきであるという考え方がとられています。ただし、こうした考え方には少し問題があるように思います。一つ目の問題は、そのような立証は相当に困難であると考えられることです。この点について、部会資料で挙げられている例では、出席できなかった者が仮に出席したならば反対の議決権を行使したであろうことまで立証することが要求されるわけですけれども、こうした立証が可能であるというのはごく例外的な場合に限られるように思います。さりとて、会社側に決議に影響を及ぼさないことの立証責任を課すと、この立証も相当難しいですので、セーフハーバールールの適用範囲はかなり狭くなってしまって、やはり妥当でないと思います。   第2に、これまでの部会の議論では、定足数要件を満たさなかった場合はセーフハーバールールの適用対象外にすることでおおよそ意見が一致していたように思います。ただし、定足数要件を満たさなかった場合でも実際に決議の結果に影響を及ぼすとは限らず、理論上は決議の結果に影響を及ぼさないこともあり得ると思います。そうすると、定足数要件を満たさなかった場合も、株主総会の決議の取消しを求める者が実際に決議の結果に影響を及ぼすことを立証することが求められることになるところ、その立証は相当に困難ですので、結局定足数要件を満たさなかった場合の多くもセーフハーバールールの適用対象外であることになりかねないように思います。   それでは、これら二つの問題についてどのように対応すべきかということですけれども、今のところ考え付く方法は三つです。その第1は、決議に影響を及ぼすというのは、決議に影響を及ぼす可能性があるという意味であると考えることです。これは、先ほど北村委員がおっしゃった考え方と基本的に同じなのではないかと思うのですけれども、こういった考え方であれば立証はそう難しくないと思いますし、定足数要件を満たさなかった場合もこれに当たることも明らかであると思います。   第2に、これに類似する方法として、決議への影響ではなく、むしろ違反した事実の重大さに着目してセーフハーバールールの適用対象を画するという方法も考えられるかと思います。違反した事実の重大さでしたら、立証はそう難しくないと思いますし、定足数要件を満たさなかった場合は違反の事実が重大であるということは明らかですので、常にセーフハーバールールの適用対象外にすることが可能になります。   ただし、これら二つの方法ですと、いずれにせよセーフハーバールールの適用範囲は必ずしも十分に明確にならないという問題があります。そこで、その点を重視するのでしたら、第3の方法として、まず、定足数要件を満たさなかった場合については、それがセーフハーバールールの適用対象外であるということを明文で規定する一方で、その他の場合については現在の案を維持した上で、株主総会決議の取消しを求める者が立証できるほどに決議の結果への影響が明らかである場合に限ってセーフハーバールールの適用対象外にするという方法もあり得なくはないように思います。この第3の方法による場合は事実上、セーフハーバールールの適用範囲は比較的分かりやすいものになりますので、その点ではよいのですけれども、セーフハーバールールの適用範囲がかなり拡大してしまいますので、本当にそれでよいのか、かえってそうなると投資家の方が警戒して定款変更議案が可決されないといった可能性も出てくると思いますので、この点をどう考えるかということが問題になろうかと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○松中幹事 まず一つ目は、バーチャル株主総会のセーフハーバールールのところで、私も北村委員が最初に御指摘されたように、22ページのところで出ている、電話回線を用意したのだけれども使わなかった場合と、用意しなかった場合、これが本当にどちらが悪いのかと言われるとよく分からないように思いますし、更にややこしいことを申し上げると、使わないことを予定して用意したら一体どのように評価されるのか全然分からないということになろうかと思います。   それで、もう少し抽象的なことを考えてみますと、ここでセーフハーバールールというのは、会社が一定の合理的な通信障害に対処するような努力をしていれば取消事由にはしないという発想だとは思います。この合理的な努力の内容を今の案では時間的に分けているわけですね、総会前と後で。そのようにしているのですけれども、その分け方はどうしても恣意的というか、境界が分からない部分が出てくるというのが問題の構造かなと思います。分けた結果、どちらでもいいのだというのであれば、別にどちらに当たるか気にしなくてもいいのですけれども、必ずしもそうではないのが、立証責任の所在との関係です。合理的に必要と認められる範囲内において通信障害対策措置をとったことというのは、セーフハーバールールの適用を主張する側が証明しなくてはいけなくて、故意・重過失によって通信障害が生じたことというのは、株主側というか、セーフハーバールールが適用されず、取消事由になると主張する方が証明しなければいけないわけです。そうすると、どちらに当たるかによって立証責任が変わってくるので、むしろどちらに立証責任を負わせるべきなのかという観点から区分けをした方がよいのではないかと思います。   その意味で言うと、開催前と開催した後という分け方は、さほどおかしなものとまでは言えないようにも思います。というのも、準備の段階のことは会社しか分からないと言えます。その後起きたことというのは、会社の方が分かるとも言える一方で、今回の提案全体を見ると、議事運営の公正性を担保するための記録の保存であるとか、そういった措置は一定程度とられていますので、株主でも証明できないとまでは言えないので、それは株主に頑張ってくださいと整理している、このように一応言えるのかなとは思います。もちろん、これも絶対のものだとは言えないとは思っています。   続いて、バーチャル社債権者集会もこの場で申し上げた方がいいわけですよね。30ページの振替法第86条書面に代わる電磁的な証明書についてですが、基本的な設計は非常によいものだと私は思っています。他方で、今回の証明記録と提供記録という二本立てで行く場合、どうして1週間前と当日と両方に証明記録を出さなければいけないのかというのが分からなくなるように思います。当初、私は当日の部分が面倒だから要らないのではないかと思っていたのですけれども、逆も言えるようにも思いまして、当日は要るけれども1週間前は要らないという制度でも構わない可能性もありまして、いずれにしろ本当に2回要るのだろうかというのが疑問で出てくるところであります。   もう一つ、細かい疑問としては、従来紙の証明書の場合、1週間前に証明書を預かってしまうということもあったかと思うのですが、それと同様のことはできるのだろうかという点です。今回提案されている制度の下では、提供記録を出さないという扱いになるかと思うのですけれども、こういうことはできるのか、できるにしても条件を定めるのか、例えば募集事項に書いた場合とか、いろいろなことがあり得ると思うのですけれども、それができるのかどうかというのは明確にした方がいいのかなと思います。この部分をいきなり規制強化をする必要があるのかというのも必ずしも明確ではないことであります。   それから、あとはこれは更に技術的な話なのですけれども、仮に2回証明記録を出さなければいけないとして、この証明記録は同じものである必要があるのかというのが少し気になりました。どういうことかと申しますと、まず、1億円の社債を持っている者が証明記録Aをもらって、その時点で1週間前の提示をする、その後、提供記録をもらって、1億円のうち3,000万円だけ売る、提供記録をもらってしまったので、改めて7,000万円分について証明記録Bをもらって、このBを当日提示した。これはAとBで違うけれども、これでよいのでしょうか。駄目という理由もないような気もしますし、他方で従来、あるいは文言上明らかではないのですけれども、この証明記録を2回提示するとしたら同じものというのが暗黙のうちに想定されているような気もしましたので、問題提起をするまでです。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。 ○鮫島幹事 バーチャルオンリー株主総会の要件につきましては、なるべく多くの株主が株主総会に出席できるというメリットに鑑みると、定款の定めを要件とすることに疑問は残りますが、仮に定款の定めを要件とする場合には、少なくとも自然災害であるとか不可抗力の場合においては、従業員が自然災害の中で物理的に対応することを余儀なくされるような事態を回避すべく、例外的に定款の定めもなくバーチャルオンリー株主総会を開催できるようにするのが望ましいと考えております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○仁分委員 まず、バーチャルオンリー株主総会の実施要件に関して、(1)の規律として定款の定めを要件とするものとされていますけれども、定款の定めは不要とすべきであると考えております。リアル株主総会について定款の定めを不要とし、バーチャルオンリー株主総会に限って定款の定めを求めるのは、リアルが原則、バーチャルオンリーは例外であるという考え方を前提とするものであり、適切ではないと考えます。仮に定款の定めを要件とするのであれば、今、鮫島幹事がおっしゃった御意見と同様でありまして、感染症の拡大や大規模災害など不測の事態が発生した場合には、例外的に定款の定めがなくともバーチャルオンリー株主総会を開催できる旨の規定を設けることを要望いたします。このような不測の事態が生じた場合には、企業、株主双方の関係者の安全や健康を脅かす懸念がありますので、公共の福祉の観点から、定款変更のための株主の承認がなくてもバーチャルオンリー株主総会の開催を可能とすべきと考えます。   次に、バーチャルオンリー株主総会の手続に関して、まず、通信記録等の保存期間について、株主総会の日から2年間とされていますけれども、サイバーセキュリティの対応の重要性が高まっている中、個人情報が含まれることになる通信記録等の保存については会社の負担が大きいこと、株主総会の決議取消しの訴えの提訴期間は3か月であること、他の訴訟等との関係でも通常、翌年の株主総会まで通信記録等を保存していれば十分であると考えられることから、より短い期間としていただきたく存じます。それから、保存すべき通信記録等の具体的内容につきましては、(注)で挙げられている①から④は、いずれも物理的な場所における株主総会においては他の株主が把握できない情報である上に、特に④の「その他株式会社と株主との間のやり取り」については、その範囲が不明確であることから、必要最小限のものにとどめていただきたく存じます。また、株主による通信記録等の閲覧又は謄写に関する規律を設ける必要はないと考えます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○矢野幹事 こちらの点についても幾つか発言させていただきたいと思います。   この点につきましては、元々非上場企業を対象とするかどうかという論点がありましたけれども、この点は非上場企業も対象とするというところで今回も維持されていますので、制度の立て付けの検討に当たっては、まずは非上場企業での利用を想定して考えていただいた方がよろしいのかなと思ってはいます。その上で上場企業の特則ということは十分に検討に値するのかなと思いますけれども、この点に限らず、全会社対象の論点については、非上場企業での利用ということを考えた上での御検討を是非お願いしたいと思います。   その上でなのですけれども、一つは記録の保存期間の関係です。今回2年と御提案いただいておりますけれども、非上場企業を前提に考えたときは、2年では少し足らないのかなとは感じているところです。特に株主総会決議の無効、不存在での争いになったときに困るというところが大きいのかと思います。私も細かく調べ切っていないのですけれども、令和の判決だけ見ても、総会日から提訴まで2年以上経過していて無効あるいは不存在が認容されている事例も複数件見付かりましたので、決して非上場企業においてはレアなものではないとは認識しています。特に非上場企業の場合、定款変更して取締役の任期を10年にして、それが10年後ぐらいに争われるというものが最長だと思いますけれども、そうした例があり得ることからすると10年は決して長すぎるわけではないとは思っております。ただ、今の例は少ないと思いますけれども、よく見られる例だと、取締役会設置会社の監査役の任期が4年ですから、その辺りは見据えた期間にしないといけないのかなということは感じてはいます。   ついでに保存期間つながりで、社債権者集会の保存期間も意見を述べたいと思いますけれども、こちらも2年と御提案いただいたところですが、こちらはもっとはっきりと、短いと思いました。元々裁判所の認可を受けたからといって権利変更の確定効が生じるわけではないので、例えばですけれども、デフォルト後に減免の決議を受けた後に、3、4年たってから、その決議は無効だから満額払えという裁判は恐らく可能なはずです。それを考えると、その債権が時効になるぐらいの期間、決議から5年とかだと思いますけれども、それぐらいはしておかないと、まずいのかなとは思いました。ただ、この点に関しては少し別の考慮要素としまして、裁判所の認可を受けなければならないということになっていますから、認可を受けるときに裁判所に必ずデータを提出するということが大前提、実務となるということであれば、事件記録の保存として裁判所で5年間保存してくれるようになるのではないかというような気はしています。そうすると招集権者の保存期間は短くてもいいのかなという気もしておりまして、この点は、ただ、今後のデジタル化との関係も含めて、細かいところが分かりませんので、少し事務局でもお調べいただいて、改めて御検討いただければとは思います。   その他の点ですけれども、4の延期続行の関係で、(注)の引き続き検討は消えていまして、この点は引き続き検討するというのがありましたので、引き続き検討してほしいということで賛成だという意見が複数来たということかと思いますので、元々具体的に提案がなかったところですから、賛成意見が複数来ている以上は、何かしら検討していただきたいとは思います。今回パブコメの中ではウェブサイト掲載という意見もあったかと思いますので、それも十分に考慮に値するとは思いますし、ほかにも、例えばですけれども、事前に延期続行したときは、ここで告知すると決めたものについては招集通知に記載するだとか、少なくとも周知に努めなければいけないといった程度の条文は置いておくということは検討に値するのかと思っています。   あと、5の場所の定めのある株主総会の開催請求権については、設ける形としていただきたいとは思っております。細かいところですけれども、今回補足説明の3で、少数株主権的なものとして定款の定めを置くということも解釈上可能であるということが記載されているのですけれども、そうしますと、5の表題のゴシックのところは、認めないではなくて、認める規定を設けないという記載なのかなと。認めないとなっていると、定款変更しても認めないという趣旨かと思ったので、そこは最低限、直していただく必要があるのかなと思ってはいます。   あと、この点は特に反対する意見が複数出ていたかと思いますけれども、やはりチェリーピッキングを含めた適切な議事運営がされないおそれがあると、それがバーチャルオンリーの場合は相対的に高くなるということの懸念ではないかと思っておりまして、やはり設けない場合でも、それに対してどのように対応するのかということをきちんと回答を出す必要があるのかとは思います。特に会社法第297条の招集の場合には、こうした議事運営がなされる可能性は相対的に高いと考えられますし、議長不信任が通って議長交代が発生するということも相対的にはやはり多いのかなとは思います。そうすると、スムーズな交代ができないということも考えられるわけで、やはり一定程度の範囲では、場所の定めができるということを株主側から請求できるということも必要なのではないかとは考えています。   次、6でその他のところでハイブリッドの関係のところがあるかと思いますが、こちらも保存期間はやはり必要なのではないかとは思っております。この点はもう一度申し上げたいと思っています。書かないということで、ハイブリッドだと会社としてはそれを保存しなくていいのだと解釈をしてしまって、後になってから、しまったということになる事態は、やはり発生としては避けたいと思います。特に非上場企業では、ハイブリッドでの利用というのは比較的多く考えられるのかなと思っておりまして、そのときに法の義務となっていれば、弁護士等がいなくても何らかの形で知って会計帳簿のように残すということをしてくれるかもしれないですけれども、何も書いていないと、恐らく保存しないということになって、後でトラブルが生じた後に、ありませんということになって会社を守ることができない、ということは避けたいと思います。   次、最後です。7、社債権者集会関係なのですけれども、こちらは保存期間以外のところだと、ハイブリッドに関する定めも要るのかなと思いましたので、この点だけ別途御検討いただければと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○加藤幹事 私からは、バーチャル株主総会の議事における通信履歴及び通信内容の保存などについて、2点意見を述べます。   まず、保存期間についてです。通信履歴などの保存が関係各所にどれくらいの負担を掛けるかということを考えざるを得ないと思います。その点で気になりましたのは、実際に、例えば上場会社においてはバーチャルオンリー株主総会については株主名簿管理人とか証券代行の方のシステムを使うことが多いと思います。そうしますと、まずはそのシステムにデータが保存されると思います。その後、そのデータを株式会社の方に提供するということではなくて、証券代行の方で保存してもらうということが可能なのかどうかということが一つ、どれぐらい負担なのかということが気になりました。   もう1点は、通信記録などの閲覧又は謄写の意味です。閲覧についてはイメージできるのですけれども、通信記録などの謄写というのはどういう意味なのかということです。つまり、紙などであれば謄写はイメージしやすいのですけれども、例えば動画の謄写というのはどういうものなのかということです。もしかしたらこれはほかの法律においてもデジタルデータの謄写の意味が確立しているのかもしれないですけれども、この謄写とはどういう意味なのかということを共有した上で、この点に関する議論を進める必要があると思いました。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○臼井委員 バーチャルオンリー株主総会について、定款の定めを必要とするという方向に賛成いたします。こうした方向にしていただき、ありがとうございます。先ほど御指摘のありました、天変地異や感染症拡大の場合に例外的に利用できるということに反対するものではございませんが、飽くまでも例外的な措置としていただくのがいいのではないかと思います。バーチャルオンリーにしても問題ないと考えるのか、個別に判断した上で、定款変更に関する議決権行使を通じて表明したいと考えます。   もう一点、場所の定めのある株主総会の開催請求権について、24ページの下の四角囲みの(注1)のところですけれども、株主が開催要求した場合の特別株主総会は、リアル開催できるようにしていただきたいと思っております。利益相反や不祥事の疑いなど、リアル開催の意義が大きい、バーチャルにしてしまうと質疑のチェリーピッキングのリスクが大きいケースがあると思いますので、こうしたケースについてはリアル開催ができるような仕組みにしていただけると有り難いと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○藤井委員 私からは、1の定款の定めのところと、あとは通信記録の保存につきまして発言をさせていただければと思います。   実施要件の定款の定めのところにつきましては、パブコメ結果を踏まえた今回の帰結というところには一定の理解はするものの、こちらは仁分委員と同じ意見ではあるのですけれども、やはり定款が求められるということになりますと、この制度の活用というのは進まない可能性が高くなるということは、この場でも付言させていただければと思います。   二つ目、保存することが求められる通信記録等の内容につきましても、こちらも仁分委員と全く同じ意見なのですけれども、やはり今御提案されております①から④につきましては、いずれもリアルの株主総会においてほかの株主が把握できるような情報ではないと思っておりますので、本当に記録すべき内容かということは今一度検証が必要かなと思っておりますし、特に④のほかの株主とのやり取りとかチャットの内容、そういったところまでは個人情報等の関係でも不要だと考えております。   あと、先ほど加藤幹事から御示唆がございました、上場会社については私どものような証券代行機関にバーチャル株主総会の運営を委託しているということが多いのではないかというのは、それは御指摘のとおりかと思っておりまして、私どもといたしましては、保存義務が上場会社にございますので、法令にのっとった対応というのはしていく必要があるという一方で、やはりそれが長期間になると、上場会社から御要請があれば、それをまた提供しないといけないというような状況にはなりますので、それだけシステムのキャパシティも含めて、構える必要はあるのかなと初期的には感じているところではあるのですけれども、深くは考察ができておりませんので、追加的に何かあれば、また報告させていただければと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○石井委員 今までも意見がございましたが、バーチャルオンリー総会の定款の定めにつきましては、パブコメの意見にもありましたように、上場会社に所属する者としては、デジタルツールが普及した環境下では、BCPの面からも、バーチャルオンリー総会をリアル総会と同列の位置付けとしていただくのがよいこと、それから、大多数の株主にとっても相応のメリットがあることから、定款規定は不要でよいのではないかと考えております。議事進行や発言機会の付与等の面において、恣意的に会社に有利な議事運営がされる可能性があるということも理解できますが、今回、手続として規律される通信記録等の保存措置も一定程度担保されるのであるならば、リスクも極めて限定的になるのではないかと考えております。デジタルデバイド対策については異論ございません。それから情報伝達の即時性、双方向性確保につきましても、中小企業にとって過度の負担とならないこと、具体的な内容や解釈の明確化を前提に、異論ございません。それから、通信記録の保存についても、非上場会社も対象に含めるということである以上、作成、保存については過度な負担とならないよう必要最小限の設計にとどめていただくことを強くお願いしたいと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○森委員 バーチャルオンリーにつきまして、実施要件について意見を述べたいと思います。バーチャルオンリー、これからの長い目で見たときに、やはり一般的になっていくような世界になってくると思うので、それを見据えた法改正がどうあるべきかという議論をすべきだと思うのですけれども、これを定款を要件とした場合、多分定款の定めとして、自然災害等がある場合はバーチャルオンリーが開催できるというような定款の規定になっていくのではないかと、それは定款変更賛成されるけれども、一般的なバーチャルオンリーの定款変更だと多分、機関投資家の方が反対すると思うので、定款変更が成立しないという方向になっていくような気がいたします。そうだとすると、結局のところ機関投資家の方も自然災害等のときにはバーチャルオンリーがあってもいいという御認識だとお伺いもしていますし、そういった状況の場合はそもそも定款変更なく開催できる、ただし一般的にやろうとする場合は定款変更が必要というようなアプローチで要件とすることが、非常に長い目で見た場合に一番合理的なのではないかと思っておりますし、自然災害等がある場合に定款変更を要件としてバーチャルオンリーが開催できるということを決めても、いざ自然災害が起こったときにはもう定款変更が間に合わないと思うので、そういったことも踏まえて考えると、一般的にやろうとすると定款変更が必要だけれども、開催できないやむを得ない事情がある場合にはバーチャルオンリーが開催できるというような方向で会社法の改正を考えるのがいいのではないかと考えております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○久保田委員 私は、先ほど少し話題になった、部会資料18ページの保存することが求められる通信記録等の具体的な内容のうちの④の、その他株式会社と株主の間のやり取りのことについて、細かいことなのですけれども、少し発言させていただこうと思います。   確かに会社と株主の間のやり取りの中には、およそ作成、保存をさせる意味のないような情報も少なからず含まれる可能性はあるのですけれども、一方で株主の発言の中には、これは質問か、あるいは動議なのか、それとも違うのかの判別に悩むようなものも少なからずあるように思いまして、このときに④があると、取りあえずそこに入れておけば保存義務を果たしたということになって、実務上、意外にこれは使いやすいのではないのかという気がしています。しかも、この情報が莫大なデータになるのでしたら保存の負担は大きいと思いますけれども、恐らくそんな量にはならないのではないのかという気がしていまして、このように考えると、質問、動議に当たるような可能性がありそうなものも全て含めて保存し、それによってチェリーピッキングの疑念というのを完全に払拭するという意味で④も入れるというのは、会社にとってもそれほど悪い話ではないのではないかと考えています。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○青委員 まず、天災地変に関しましては、他の委員からも御意見がございますように、定款の定めがなくてもバーチャルオンリー株主総会を実施できる方が、非常時の対応が可能になる点で優れているのではないかと考えます。それ以外の一般の場合についてでございますけれども、定款の定めがうまく機能するのであれば、御提示いただいている案でよいかと思うところでございます。一方で、定款の定めを実際には置けないという話になってしまいますと、技術的にバーチャルオンリーが可能であって、会社側も適切な運営が可能であるにもかかわらず、投資家サイドが将来問題のある総会での運営への不信感によって、なかなかゴーサインが出せないという形になるのも、それはそれで余り望ましい姿とは言い難いように思われます。その辺りの妥協点といいますか、合理的な落としどころがあると一番よいのではないかと感じているところでございます。   そのように考えた場合、投資家の方にも様々なタイプの方がいらっしゃるかと思いますが、常に一律にリアルの総会が必要とお考えになるのか、それとも、例えば賛否が拮抗するような場合や、重大な不祥事が生じてしっかりとした議論の必要性が高い場合などにリアルの総会が必要であると考えておられるのかは異なると思います。もし後者であるということであれば、中間試案の(注1)において記載いただいているように、一定の場合に株主から場所の定めのある株主総会の招集を請求できる余地を認めることや、今後導入に関して検討されている事前確定型決議で、賛否が拮抗して事前確定型決議を利用できないような議案に限ってリアルの総会を求めることができるようにすることも、バーチャルオンリーを進めるのであれば、検討の余地があるのではないかと思いました。ただ、その場合でも、やはり総会を急に開催すること自体が会社にとっては相当の負担になることは事実でございますので、何人の株主が来ても収容できるような会場を確保することが現実的に難しいといった点についての解決策も並行して検討しなければ、なかなか実現は難しいのではないかと思います。そうした点がクリアできるのであれば、一つの選択肢として検討することもあり得るのではないかと思ったところです。   次に、18ページに記載の、保存する対象範囲に関する点でございます。②の質問や動議のところと④の会社と株主の間のやり取りのところの区別がなかなか付きづらく、区別の仕方によってはいわゆるチェリーピッキングではないかというように疑念を持たれる可能性があるということだと思います。そう考えると、チャットであれば基本的にテキストデータで保存できることを踏まえ、④のチャットでのやり取りも含めるということは考え得るのではないかと思います。いずれにしても、②と④の区別が本当に明確に付けられるのかというところを考えますと、いずれかに該当すれば保存するという考え方、すなわち②と④を厳密に区別しなくて済む仕組みの方が、システム面での過度の負担とならないのであれば、現実的な保存方法ではないかと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○矢野幹事 2回目になって恐縮なのですが、事務局に対して質問というか、伺いたいところがありまして、今の保存の範囲の話なのですけれども、①から④とありますけれども、例えばですけれども、ウェブ会議で今していますというところで残すものとしては、例えば録画のボタンを押す、あとはチャット欄の保存をすると、それで基本的には足りていて、①から④は私はそれでクリアできているのではないかと思ってはいるのですけれども、そうではないものが含まれているというところがあるのであれば、教えていただければと思ったのですけれども。 ○神作部会長 事務局からお願いいたします。 ○吉田関係官 事務局としても同じ理解でございまして、一般的なウェブ会議システムを使うような場合は、録画ボタンを押して、終わったら停止して、それを残しておけばいいということを想定しておりました。 ○矢野幹事 その際なのですけれども、例えば①はこれだ、②はこれだと分けることまでは、想定は全然していないということでいいですね。 ○吉田関係官 はい、御理解のとおりです。 ○矢野幹事 ありがとうございます。 ○神作部会長 御質問ありがとうございました。 ○松中幹事 私も2回目で大変恐縮です。まず、定款規定についてなのですが、やはり株主総会の根本的な在り方という、バーチャルオンリーの規定を入れたらバーチャルだけというのが可能になり、少なくとも現状からは根本的なやり方の変更になるわけで、そこについて株主が何も言えないというのは少し変な話ではあろうと思います。定款でないといけないのかというのは、本当はいろいろあり得ると思うのですけれども、株主意思の表れとして今の案では、定款規定が必要だということになっているのだろうと思います。もし定款規定も何もなく、招集権者が裁量的にリアルでもバーチャルオンリーでも何でも選べるとなると、例えばバーチャルオンリーでやっているときに、多くの株主が、もうこれは駄目だ、次回は対面にしたいということを感じて、それで株主提案をしたとしても、それは適法な提案ではなくなってしまうわけでして、そういう在り方が本当にいいのかと言われると疑問がある。その意味で、定款規定が必要だというのはよく理解できるところです。   もう1点、非上場会社にも適用されることを考慮しなければいけないという御指摘があって、私も全くそのとおりだと思います。ただ、これは、だからといって通信記録の保存などを軽くしていく方向に働くかというと、そうでもないように思います。というのも、決議無効とか不存在というのは、言ってみると上場会社では余り起きない話なわけで、これが起きるのは、むしろ非上場会社なわけです。だからこそ通信記録の保存期間は少し長くしなければいけない。10年は少し長すぎるとは思うのですけれども、今回出ている2年ぐらいにはしなければいけないというのは非常に現実的な話かと思います。むしろ、これは非上場会社を対象にするからこそなのだと考えられると思います。逆に言えば、非上場会社でもこういう一定のリスクを伴うようなものを使うのであれば、通信記録の保存ぐらい、先ほどのやり取りのとおりでしたらそれほど重いものではありませんので、そのくらいのことはしてほしい。これが重すぎるというのであれば、それは諦めてくださいというのが一つの割り切りなのではないかと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。   第2セクションについて、まだ議論の途中ではありますけれども、開始から既に2時間半たっておりますので、ここで15分ほど休憩を挟みたいと思います。           (休     憩) ○神作部会長 それでは、皆様お戻りのようですので、再開いたします。   バーチャル株主総会及びバーチャル社債権者集会について、引き続き意見交換をいただきたいと思います。御発言の御希望がございましたらどうぞお知らせください。 ○行岡幹事 資料30ページの振替法第86条証明書に関する点についてコメントを申し上げます。   今回御提案いただいた内容は、第14回会合において参考人、みずほ銀行さんが提案された内容をベースに具体的な制度案を提示していただいたものと理解しています。今回この提案を頂くに当たって、この振替法第86条証明書を電子化するという前提で、大きく二つの論点を検討してくださったものと思います。一つ目は、権利の二重行使を防ぐための仕組み、すなわち現行の振替法第86条第4項に相当するような振替の停止の制度を維持するのかどうか、そして二つ目は、仮に維持するとして、それを具体的にどのように実現するのかという問題です。今回の御提案は、一つ目の点については電子化した後も振替停止の制度を維持することを前提として、二つ目の具体的な仕組みについて、社債発行会社側からの提供記録の提供という仕組みによって、振替の停止を解除する仕組みを提案していただいたものと理解いたしました。   これは、前回みずほ銀行さんが説明してくださった現行法下における実務、すなわち発行会社側が社債権者から事前に提示された振替法第86条証明書を預かっておいて、債権者集会が終了したら返却するという実務を言わば電子的な形で制度化するものであると理解いたしました。私としては、基本的な方向性としては、この御提案は実務に過度な負担を生じさせない合理的な制度設計をしていただいたものだと言えるのではないかと考えております。   ただし、松中幹事が指摘されたように、まだ詰めるべき点がいろいろとあるように思います。例えば、証明記録の対象となった社債の一部だけを譲渡して、その残りを当日議決権行使したいというようなニーズが仮にあり得るとして、そういったことをできるようにするのか、仮にできるようにする場合にどのような仕組みをとるのかといったことは、実務的な観点から詰める必要があると思います。このことは、この制度の立て付けとして、証明記録と提供記録の対応関係を制度として確保するのかどうかといった制度の作り方とも関連する問題であろうと思います。また、松中幹事がおっしゃったように、1週間前に提示すれば当日の提示は不要ではないかという問題も、このような制度の細部の設計によって結論が変わってき得る、そういう性質の話ではないかと思います。このように、方向性としてはよさそうなのですけれども、まだまだ詰めの問題が残っているような気がいたしますので、引き続き関係各所の意見を聴いていただきながら検討していただければと思います。   1点だけ具体的な論点に触れますと、松中幹事がおっしゃった、会社が提供記録を出さないという運用ができるとすべきかどうかという点については、できないものとすべきではないか、つまり、会社側としては提供記録の請求を受けた場合にはこれを拒めないとすべきではないかと思います。恐らく今の実務も、社債権者集会の1週間前に預かっていた振替法第86条証明書を社債権者集会の前に返してくれと社債権者に言われたら、会社側はこれを返しているのではないかと思うのですが、その点についての実務の運用について私は自信がありませんので、そのような理解でよいかは確認を要するところかと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。 ○田中委員 バーチャル総会に関しまして、既に議論されている点について2点ほど意見を述べさせていただきます。   まず、定款の定めに関してですけれども、これも以前から申し上げていることですけれども、やはり定款を要求すると株主の反対があって実現できないから定款の定めなしに実現できるようにするという考え方は、基本的に違和感を持っておりまして、バーチャルオンリー総会は、やはり株主総会でありますので、株主が反対しているにもかかわらずバーチャルオンリー総会をするというのは基本的に間違っていると思っております。この部会での議論次第では、定型的に見てそのケースでは当然バーチャルオンリー総会が必要であると考えられるようなケース、具体的には天災などで物理的に開けないケースでは定款の定めなく開催できるということは一つの選択肢ではありますけれども、それを超えて定款の定めなしにバーチャルオンリー総会を開催するというのは、私は反対であります。   アメリカのバーチャルオンリー総会は音声だけであるということが多いようで、投資家にははっきりネガティブに捉えられていると思います。これは、日本ではそういった印象を払拭していくような実務ができてくる可能性はあると思うのですけれども、しかし、それはやはり実際にそういった実績を重ねて投資家の理解を得るように努めるべきでありまして、初めから定款の定めなくできるようにするということは、基本的にやるべきではないのではないかと思っています。ここでの部会でも一律に反対ではなく、企業のガバナンス構造を考えながら賛否を判断したいという御意見でしたので、そういった考え方に反対する理由もないかなと思っています。   それから、最後の決議取消事由のセーフハーバーについてなのですが、私も北村委員が最初におっしゃったことに賛成でして、やはりここで出てきている通信障害対策措置をとったかということと故意又は重大な過失によって通信障害を生じたことの切り分けは、正直に申しまして違和感がありまして、やはり通信障害が生じた場合の代替手段として電話回線を用意していればセーフハーバーを満たしていて、通信障害が発生したときに電話回線を使用しなかった場合にはセーフハーバーが適用されるというのは、一般人の感覚からも乖離していると思いまして、電話回線を用意していても実際に使用しなかったら、それは当然、通信障害対策措置として合理的に必要な措置をとっていなかったと判断するべきだと思います。このセーフハーバールールは、元々通信障害対策措置として合理的に必要な措置として法務省令で定める措置をとっていれば、基本的には通信障害が会社の故意又は重過失で生じたということはないように思われるのだけれども、ただ、立法段階で起こり得る状況を全部想定することは不可能なので、場合によっては、形式的にセーフハーバールールの適用はあるけれども、しかし会社に悪意又は重過失があると言わざるを得ないようなケースもあり得るということから、こういった規定をとっていると考えれば、合理的な通信障害対策措置をとっていたけれども、故意又は重過失で通信障害がされたということを事前に無理に特定しなくても、この規定どおりでいいのではないかという感じを持っております。   それから、最後の決議への影響の立証責任は、非常に難しい問題だと思っておりまして、私は通信障害対策として合理的な措置をとっていたのであれば、かつ会社に故意・重過失がないのであれば、決議への影響の部分は株主に証明責任を課すということでいいのではないかと思っているのですけれども、ここは議論の余地があるかもしれませんので、種々の事例を想定して、もう少し考えてみたいと思います。今のところ現在の提案でよいと思っております。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。 ○藤田委員 それでは、私の方からも、株主総会の在り方について若干コメントさせていただきます。基本的には多くは現在の提案のとおりでよいと考えており、また既にいろいろ意見も出ましたし、若干気になる点だけについて、コメントしたいと思います。   一番大きなところは、3で書かれた取消しの訴えの特則のところで、これは既に何名もの委員が言われたのと同じ違和感を持っています。試案で書かれていた「使用」という語を「用意」と変えたことの帰結で、具体的には通信障害のための対策、例えば代替的な回線を用意してバーチャル総会に臨んでいたが、会社が誤って代替回線に切り替えることをしなかったために、一部の株主が議決権行使できなかったというケースをどう考えるかという話です。部会資料13は、こういうケースであっても、事前にきちんと対策は用意したからセーフハーバーの適用はあります、ただし会社法第831条第1項第1号の著しく不公正な方法による決議だとなる可能性もあって、取消しの可能性が全く排除されるわけではありませんと説明しているわけですが、ただ、著しく不公正な方法の要件で取り消すのは、少なくともこの条文の普通の素直な解釈による限り、意図的に通信障害を利用して特定の株主が議決権行使できないことを幸いとして可決させたといったような主観的な要件がかなり強調される形で適用される可能性が高いと思います。つまり、うっかり使用させなかった、通信障害に対する対策を具体的に履行しなかったということだけだと、著しく不公正とされない可能性が少なからずあると思います。しかし、実質としては、事後的な対応を誤ったことについて悪意・重過失があれば、セーフハーバーは適用されない、取消事由となるというふうな方向で規律すべきではないかと思っています。実際、多くの委員はそういう意見をとられたと思います。   法技術的にそれをどうやって達成するかは、これまでも議論がありましたけれども、いろいろな方法が考えられます。元々の中間試案のように「使用」という文言に戻して、それが総会実施中における対策の実施も含むのだということをはっきりさせる、曖昧だというのであれば、その方向で明らかにさせるということも考えられますし、あるいは、より大きな修正になりますけれども、悪意・重過失の対象は通信障害が生じたことではなくて、決議取消事由の発生についての悪意・重過失だとすることも考えられます。このように、いろいろ技術的には考えられるのですが、実質としては、きちんとした形で通信障害対策を実施しなかったことについての悪意・重過失がないことというのがセーフハーバーの要件となるような形にすべきではないかと思っています。   現在の提案に対する具体的な修正になるところはこれだけなのですが、考え方とか解釈について、明らかにした方がいい点もありそうなので、若干コメントします。まずセーフハーバールールの適用範囲に関する決議への影響という要件ですが、これはもちろん条文上内容を明らかにするというのは少し難しいと思いますし、条文としてはこの書き方になると思います。これが曖昧だと指摘された方が少なからずいたと思うのですけれども、基本的な考え方は割とはっきりしていると思います。つまり、従来、現在の裁量棄却の適用において考えられているような発想がここでも適用される、つまり抽象的に考えるということになると思います。裁量棄却の適用の際には、たとえば招集通知漏れがあって総会に参加できない株主が出たというケースについて、仮にその株主が参加したら賛成しただろうかといったことは一切勘案せずに、単純に議決権だけ見て、その議決権行使次第で結論が変わったかどうかという抽象的な可能性で判断します。セーフハーバールールの適用範囲についても同じ発想であり、決議の結果が変わることへの抽象的な可能性で考えるのだと思います。   ただ、議論を伺っていて、直前で田中委員も言われたのですが、セーフハーバーに該当するから取消事由がないということについての証明責任は誰が負うかということと、具体的に何を立証したら、決議への影響の有無を立証したことになるのかは、多少考える必要があると思います。条文でどこまで書けるかはともかく、考え方を整理しておく必要があるような気がします。まず現在の提案が証明責任をどう考えているか、よく分からないところがあるのですが、私は一般論としてはセーフハーバーの適用を主張する会社側が主張立証するということにしてもよいのではないかと思います。少なくとも通信障害対策の実施をしていたことの証明責任は負うべきだと思いますけれども、決議への影響も会社側に主張立証させた方がよい気がします。株主側は通信記録等の閲覧謄写が可能だから、株主が調べれば分かると言われるかもしれませんが、通信障害が生じた場合、その影響が出なかった範囲が十分に把握できないようなシステムを使えば、この要件が立証できなくなりますので、セーフハーバーの要件が立証できなくなるような形でしか記録が残らないような状態にしておいたことのリスクを株主側に負わせるのはやはりおかしいと思います。一般論としても、決議取消事由それ自体は取消しを請求する側が主張立証すべきですけれども、セーフハーバーは飽くまで特則なので、その要件は必ずしも決議取消請求する側が全部ないことを立証しなければいけないということにはならないのだと思います。   ただ、会社側が決議への影響との関係で証明しなければならない内容が何かということも考える必要があります。少なくとも通信障害でその時点でログインしていた株主のうち何人がアクセスできなくなったか、その結果、それをカウントしたら決議に抽象的に影響があったかということまで言えればもう十分で、システム障害時にログインしていなかったけれどもシステム障害後に新たにログインしようとした人がどれだけいるかみたいなことは、カウントしないと割り切っていいと思います。このことは、仮に会社に証明責任を課さずに取消請求権者に証明責任を課すとすれば、一層強い理由でそう解釈しなければいけないと思います。この点だけは解釈できないというのであれば、何らかの条文上の対処をした方がいいかもしれませんが、私自身は、この点も含めて解釈で対応できるとは考えています。ただ基本的な証明責任と、何を立証すれば決議への影響が立証されたことになるのかということについては、もう一度この場で詰めた方がいいと思います。   そのほかもいろいろ解釈で問題が生じる余地はあります。北村委員から事前の議決権行使があった場合に通信障害があったらどうなるかといった問題が議論されていました。事前の議決権行使は、その場合に有効になるかといったことです。これも条文で手当てする話ではなくて解釈に委ねられるべき問題なので、この場でどこまで議論すべきか少し迷うのですが、考え方の基本線は、共有できた方がいいかもしれません。仮に最初にログインした瞬間に出席となると考えるとすれば―――対面の総会については議場に入ったら出席だと従来考えていたとすれば、それに一番近いのはそういう発想なのですが―――、ログインの時点で事前の議決権行使書は失効して、そうすると、通信障害で議決権を行使できなかった場合には事前の議決権行使が復活するのかといった、そんな問題を考えなければいけないことになります。これに対して、有力な学説は、少なくともバーチャル総会については出席概念は議案ごとに、現に採決する瞬間にログイン状態が継続しているか、維持されているかどうかで判断する―――これはログで後で検証できるので、それほど難しくないはずですが―――と考えているようで、そのように考えていいのであれば、採決までの間に通信障害が生じて落ちたら、その議案との関係では出席がない、したがって事前の議決権行使は生きるという形になります。この辺はバーチャル総会における出席概念、更に言うと対面の場合ですら出席というのは部屋に入ったら出席なのか、議案の採決のときにいたことが出席なのかという点をめぐって議論の余地はありますし、立法で対応するというよりは、適切な結論を導き得る解釈が一定以上合理的に可能であることさえ確認できればいいということだと思いますが、例えば今言ったような解釈が可能かといったことが確認できれば、条文上手当てしなければいけないということではないと思います。   最後に、バーチャル総会の実施に定款変更は要求するとしつつ、自然災害、有事その他不可抗力による場合には例外的に定款の規定は不要だという妥協は、考え方としては分からないわけではありません。ただ、これを提案して条文で手当てするというのであれば、どういうケースを念頭に置いているかは外縁をはっきりさせて、それが反映する形の条文として提案してほしいと思います。例えば、総会直前に総会会場が倒壊して、およそ誰もその地域で寄り付ける人がいないというケースだとか、あるいは戦争・内乱状態になっておよそ総会があり得ないような状況であれば異論はないのでしょうが、台風が接近して一部の株主あるいは多くの株主が外に出たくないというのがこれに当たるのかといったことも想定されているかどうかよく分かりません。これは株式会社の話ではないのですが、先日の台風で、私が理事をしている複数の財団の理事会が急に対面から全面オンラインに切り替わったのですけれども、例えばそういうケースもカバーする提案なのか、それとも、およそ対面はもとよりハイブリッドの実施も不可能であるという状態になった場合だけを想定しているのかという辺りが、この提案の下でよく分からないところがあります。緊急時はハイブリッドにしつつ、できるだけオンラインで参加してくださいと呼び掛けることは、既にコロナの時期に認められてきた実務であり、同様のことは、緊急時は今後も認められると思いますが、それだと対応できない場合をカバーするのだとすれば、対面はもとよりハイブリットも実施がおよそ不可能だという場合のみをカバーするということになりそうです。それだけではなく、対面の開催自体は十分可能だが、多くの株主にとって不便になりそうだからといったものまでカバーするのかという辺りが、よく分からない。「感染症や大規模災害等のやむを得ない事由がある場合」というだけでは、不可抗力による事象で何ができないことが要件なのかがはっきりせず、この点を具体的に明らかにしないと合意を得られないと思うので、そこまで明らかにした上で提案していただけるなら、その内容次第では、会社法で規定することが望ましいのか、あるいはコロナのときのような緊急措置のような対応で足りるかということが具体的に議論できるようになると思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○豊田委員 記録の保管と、開催請求権について簡単に述べさせていただきます。   まず、記録の保管について、総会の決議取消し等のみではなく、取締役の善管注意義務違反等にかかる訴訟が関係する可能性もございますので、2年だと若干短いという気がしております。10年は長いかもしれませんが、提訴までの期間や文書提出命令に関するやり取りの期間を考えると、5年程度は必要ではないかという感覚を実務的には持っております。他方で会社の負担というところも考えなければなりませんが、小規模の会社につきましてZoom等を使った場合には録画で済むといったような事務局の説明もございましたけれども、その保存が2回分でも5回分でも、それほど大きな差はないのではないかと思います。他方、大企業で特別なシステムを使うような場合は、少し事情は違うと思います。先ほど藤井委員の方から、どの程度の保存の負担があるかというのは現時点で分からないというような御発言もございましたけれども、特別なシステムを使う場合は、それをそのまま録画、動画等で残すのではなく、必要な情報についてワードやエクセル的なものにまとめた上で保存することも可能ではないかと思いますので、そういう工夫をして、やはりある程度の期間は保存したほうがよいのではないかと思っております。   次に、開催請求権について、会社の経営権の移動が問題となるような場面につきましては、やはりバーチャルオンリー総会とリアルとでは運営権の強さにかなり大きな違いがあるということから、相当高い割合での少数株主権でもよいので認めた方がよいのではないかと考えております。ただ、皆さんの御意見ということでなかなか難しいということであれば、25ページの3の定款の定めを検討していただきたいと考えております。定款の定めにより開催請求権を認めることが可能であることを明確にしていただくとよいのではないかと思っております。定款変更につきまして、先ほどは定款変更を認めない株主が多いので、定款規定が必要だと導入が進まないというような意見もございましたけれども、実際に本当に必要な場面においては開催請求権ができるという内容の定款規定になっていれば、バーチャルオンリーの利便性とも併せて、株主が賛成する可能性があると思いますし、解釈なのかもしれませんが、明確にする必要があると思っております。 ○神作部会長 ありがとうございました。   ほかに御意見、御質問等はございますでしょうか。   よろしいでしょうか。バーチャル株主総会とバーチャル社債権者集会につきましては、中間試案を踏襲した部分については、先ほどの定款の定めの要否を含めて、大体御支持を頂いたものと思いますけれども、今回は中間試案からそもそも変わっているというところがございます。振替法第86条証明書の部分と、それから、先ほどの用意という文言に変更した部分です。振替法第86条証明書の方の提案については、もう少し検討すべきところはあるけれども前に進めるべきだという意見がありました。もっとも、そもそも御発言がそれほど多くなかったとは思いますけれども、発言いただいた方からは、振替法第86条証明書についての今回の御提案は方向性としては適切だということで、更に検討を進めていければと思います。それに対し、「使用」を「用意」という文言に変更したことについては、むしろ御発言いただいた方の多くは、違和感があるという御感触だったと思います。この点について、もし今回の提案を支持するとか、賛成であるというような御意見がございましたら、おっしゃっていただければと思いますけれども、いかがでしょうか。   特に御発言はございませんか。具体的には、資料の20ページの通信障害対策措置の定義のところが、使用から用意という文言に変更されておりますけれども、この点について更なる御意見がございましたら、御発言いただければと思います。   特によろしいでしょうか。それでは、先に進ませていただきたいと思います。最後、第3セクションでございますけれども、実質株主確認制度について意見交換をしていただきます。御意見のある方は御発言をお願いします。 ○鮫島幹事 それでは、恐縮ですが経済産業省から提出した部会参考資料31の2ページを御覧いただければ幸いでございます。   まず、会社から実質株主を確認する制度についてでございます。部会第15回の参考人の御意見であるとかEUやイギリス等の制度や実務も参考にしますと、仲介機関であるとか実質株主が発行会社に必要な情報を効率的に提供できる、機能する会社法の制度とすることが、重要だと考えてございます。その観点からは、少なくとも重要提案行為を含めて、会社に対話を求める実質株主に対しては、会社からの要求があれば、指図権を持つファンド等を識別できる情報を会社に提供する義務を負うようにすれば、仲介機関も実質株主も実効的かつ効率的な対応が可能であると考えてございます。   違反者の議決権を停止できる措置は、実際に発動するかとは別に、その存在自体が適切な情報提供への規律にもなると考えてございますし、海外への過料を課す現実性に鑑みますと、議決権停止措置の導入は必要だと考えてございます。少なくとも実質株主が自ら誤った情報を発行会社や仲介機関に提供した場合には、議決権停止の対象となり得ることは当然だと考えてございます。なお、議決権停止の故意・重過失要件については、違反が故意・重過失によるものであるかを発行会社側が把握することは極めて困難でございますので、違反者側に善意・無重過失の立証責任を負わせることも一案かと考えてございます。   次に、実質株主による株主総会への代理出席や議決権の代理行使につきまして、企業の実務負担や総会実務への影響を考慮して、慎重に議論すべきと考えてございます。例えば、特に賛否が拮抗しているようなケースでは、仲介機関が議決権を不統一行使しているような場合には、議決権の集計作業に混乱が生じる懸念があると認識してございます。   最後に、株主側から会社に対する通知を義務付ける制度につきましては、みなし共同保有者に関する事項に起因する違反を議決権停止の対象外とするのは適切ではないと考えてございます。令和6年金融商品取引法改正において、共同保有者の認定に係る立証の困難性の問題を解決すべく、みなし共同保有者が拡充されているところであり、また、議決権停止通知を受けてから約1週間以内に追完することにより議決権停止を免れることもできるため対象外とする必要性も低いと考えてございます。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。 ○仁分委員 少し長くなりますけれども、御容赦いただければと思います。   まず、株式会社から実質株主を確認する制度でございますけれども、今回の部会資料において、過料に加えて議決権の停止措置を設けることが提案されていることを高く評価させていただいております。感謝申し上げます。過料では制裁の実効性の確保が難しいことは、今回の部会資料でも説明されており、また、我々も従前から指摘させていただいているとおりでございますので、議決権停止措置を設けることで制度を設計していただきたく存じます。   指図権者の定義についてでございますけれども、本文1(1)アにおいて、「当該権限を有する者がその権限の全てを第三者に委任している場合には、その委任を受けた者に限る」という限定を設けないこととすることに賛成いたします。他方、本文(1)カにおいて、「故意又は重大な過失により」とありますが、株主側に故意又は重過失があったか否かを会社側が把握するのは困難であります。議決権停止の要件を満たさないのに議決権の行使を認めなかった場合、株主総会の決議取消事由になり得ますので、議決権停止の要件は会社側が明確に判断できるものにしていただきたく存じます。例えば、会社が請求したにもかかわらず株主から期限までに全く情報提供がなされなかったようなケースでは、故意・重過失の有無にかかわらず議決権停止の対象とすべきであると考えます。また、議決権停止通知がなされた後、議決権停止の効力が生じるまでの期間内に株主側で追完や差止め等の措置がとられなかった場合には、株主総会の決議取消事由とならないという整理を示していただきたく存じます。それから、議決権停止通知をしたときから議決権の停止の効力が生ずるまでの期間について、「1か月」では長いので、3週間としていただきたく存じます。   さらに、本文(1)ケについてですけれども、議決権停止通知の決定に当たり「取締役会の決議」を不要としていただきたく存じます。上場会社においては急遽取締役会を開催することは通常、困難でありますので、議決権停止通知の決定について取締役会の決議を要することになりますと、例えば株主総会の直前に株主の違反があったような場合には、議決権を停止することができない可能性がございます。   また、本文(1)エで費用負担について言及されており、法務省令に委任することが提案されていますけれども、提供すべき情報の内容や請求がなされる頻度の観点からは、機関投資家側に大きな負担が生じることは想定しにくいため、企業側が高額な費用を請求されるべきではないと考えます。実質株主確認制度を利用することを企業側にちゅうちょさせるほど高額な金額が設定されることがないよう、法務省令を制定する段階で丁寧な検討をしていただきたく存じます。   次に、実質株主による株主総会の代理出席及び議決権の代理行使に関してでございますけれども、こうした規律を設けることに反対いたします。このような規律を設けた場合に、実質株主の情報の正確性の確認や、名義株主と実質株主の双方による議決権の行使の防止などのために上場会社において極めて大きな負担が生じます。例えば、実質株主が事前連絡なく株主総会当日に来場し代理出席をしようとした場合、その場で指図権者か否か等を確認し、代理出席を認めるかどうかを判断しなければなりません。しかしながら、当日の限られた時間の中で的確に確認・判断を行うことは極めて困難です。しかも、指図権者ではない者に代理出席を認めれば、株主総会の決議取消事由になり得ますし、反対に指図権者の代理出席を拒否しても決議取消事由となり得ます。このように、いずれの場合も決議取消しリスクがある中で指図権者か否か等の確認を行い、代理出席を認めるかどうか判断をしなければならない上場会社の負担は極めて大きくなります。   さらに、代理出席を認めた場合には、名義株主による賛成票と反対票をどのように修正するかなどの議決権集計にも混乱が生じ、株主総会の円滑な運営ができなくなることが懸念されます。株主総会を適正に開催する観点から、名義株主が権利を行使するという大原則を崩すべきではないと考えます。この論点につきましては、経団連ワーキンググループの中で、特に懸念する声が多かったということは申し添えさせていただきます。   それから、株主側から株式会社に対する通知を義務付ける制度でございますけれども、本文(6)イにおいて、善意・無重過失による違反について記載されていますけれども、株式会社から実質株主を確認する制度において申し上げたのと同様、株主側に故意又は重過失があったか否かを会社側が把握するのは困難であります。議決権停止の要件を満たさないのに議決権の行使を認めなかった場合、株主総会の決議取消事由となり得ますので、議決権停止の要件を会社側が明確に判断できる制度としていただきたく存じます。加えて、議決権停止通知がなされた後、議決権停止の効力が生じるまでの期間内に株主側で追完や差止め等の措置がとられなかった場合には、株主総会の決議取消事由とならないという整理を示していただきたく存じます。また、議決権停止通知をしたときから議決権の停止の効力が生ずるまでの期間について、こちらも「1か月」では長いので、3週間としていただきたく存じます。   本文(6)ウにおいて、みなし共同保有者に関する事項に起因する違反を一律に議決権停止措置の対象外としておりますけれども、当該違反についても金商法の大量保有変更報告書に関する規定の違反であることに変わりはありません。みなし共同保有者に関する事項に起因する違反についても、会社側から指摘があれば、それを適時に追完すれば議決権停止を逃れることができる点で、ほかの違反と同様でありますので、当該違反のみを議決権停止の対象から除外すべきではないと考えます。   また、本文(8)において、議決権停止通知の決定には「取締役会の決議」を要するものとされていますが、株式会社から実質株主を確認する制度において申し上げたのと同様の理由で、取締役会の決議を不要としていただきたく存じます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○森委員 私からは、実質株主による株主総会の代理出席の論点について、少し御説明したいと思います。実務的な観点から御説明をしたいと思いますけれども、これまでも実務でお話ししたとおり、株主総会の当日出席した株主については、事前の議決権行使があっても一旦白紙に戻すというのが実務でありまして、それでないとなかなか対応できない形になっていますので、そうやっております。   そうすると、経産省さんの資料を見ながらの方が分かりやすいかもしれませんけれども、仲介機関の方で、例えばですけれども、100万株の議決権行使をしていて、実は実質株主がそのバックにたくさんいるわけですけれども、60万株が賛成票を投じていました、20万株が反対票を投じていました、20万株は議決権をそもそも行使していませんでしたというような状況だったとして、実質株主が当日突然来た場合に、この人は本当に実質株主かどうかという確認もそうですけれども、どういう議決権行使をしていたのかというのが分からないと、もう集計することは不可能になります。ですので、実務として、実質株主であれば普通に出席できますよというのは、実務的には回らないので、もしもそういう方向にするのであれば、慎重にいろいろな手続を定める必要があると思っておりまして、例えばですけれども、当然、代理出席する場合は委任状を取得して代理出席してくださいという前提を置くべきだと思いますし、加えて、実質的には議決権当日行使に近いような形になると思いますので、総会出席する場合は3日前には通知をしてくれというようなことも言ってもおかしくないような話だと思いますので、そういったことも含めて、仮に代理出席を認める方向に進むのであれば、手続をしっかりと決めないと株主総会の実務が全く回らないというところは、是非御理解いただきたいということをお伝えしたいと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○矢野幹事 最初に事務局に質問を二つぐらいさせていただきたいのですけれども、よろしいでしょうか。   議決権停止の関係、通知の関係のところなのですけれども、部会資料の37ページと49ページのところで、37ページのカの下から3行目が、した日から1か月となっていて、した日となっているのですけれども、49ページの(5)の5行目の方は、したときから1か月となっていて、日とときで少し表記が違っているのですけれども、これは何か御趣旨として違いがあるのかというのを教えていただければと思いまして、した日かなと思ったのですけれども、違うのでしょうか。これが一つ目です。 ○神作部会長 それでは御回答をお願いいたします。 ○相澤関係官 この点は意図的なものではなく、ずれてしまっているところですので、適宜表現は調整したいと思います。 ○矢野幹事 分かりました。 ○神作部会長 御指摘ありがとうございます。二つ目の御質問をどうぞ。 ○矢野幹事 二つ目は、同じ停止関係なのですけれども、1の方も2の方も、大ざっぱに言うと通知して1か月たつと停止してしまうけれども、1週間以内に追完すれば戻りますよと、そのような立て付けかと思いますけれども、通知はどういった方法で送られるということを想定していて、その通知が届いてミスに気が付いたとして、本当に実務上1週間以内で追完が間に合うという設計になっているのかというところについて教えていただければと思いまして、その通知がシステム上で送られるのかとか、郵便で送られるのかによって違うのかなと思ったりとか、郵便だと、特に着くまで時間が掛かって、海外とかだと、着いた瞬間にもう1週間たってしまっていて、追完なんて絶対できないよということも考えられるのかなと思いまして、そうすると、関係機関とのヒアリングとかも含めて制度設計しないとなかなか難しいのかなと思いまして、今回の御提案に際して、そのヒアリング等も含めて、追完が実務上可能だということでこの御提案がされているのかというところをお聞かせいただければと思います。 ○神作部会長 この点についても御回答をお願いいたします。 ○相澤関係官 会社から確認する制度と株主から通知する制度のいずれにおいても問題となる点かと思いますので、それぞれ御説明させていただきます。   まず、分かりやすいのが株主側から通知をする制度だと思いますけれども、こちらは現在、金商法上の大量保有報告制度と同様の義務を想定しておりますので、そもそもの提出期限というのは事象が発生してから5営業日以内となりまして、そうすると基本的に土日を入れても1週間ということで、対応可能な期間であると考えております。   一方で、会社から確認する制度につきましては、これは御指摘のとおり、まだ制度がシステムで対応できるのかどうかを含めて不透明なところがございますので、今後、実務の意見も聴きながら検討しなければいけないところですが、これまでの議論では、今回の資料の39ページの(注3)と(注4)に記載をしたとおり、これまでの議論で出ている回答期限あるいは転送期限というのは、翌営業日であるとか3営業日以内、あるいは7日以内といった点が中心となっておりまして、この点も踏まえると、7日というのは基本的に対応できる期間としてお考えの方が多いのではないかと思っております。 ○矢野幹事 すみません、そこは返す方で、その点はそうだろうなと思ったのですけれども、通知したときからとか、日から1週間とかなので、これは到達主義を想定されているのですか。到達してから1週間以内に戻せばいいということだったら、何ということもないのですけれども、したときで発信ベースとなると、着いた瞬間にもう1週間過ぎているということはあり得ると思うのですけれども、どちらを想定されているものなのでしょうか。 ○相澤関係官 すみません、そこは到達主義を念頭に置いておりました。 ○矢野幹事 ありがとうございます。 ○神作部会長 他に御意見はございますでしょうか。 ○内田委員 実質株主の代理人出席についてコメントさせていただきます。今回の実質株主確認制度は、株主に負担を強いる制度だと理解しております。その中で、それに見合う権利が認められるべきだと思いますので、その一歩として、少なくとも代理人として株主総会への出席が認められるということは、まず大きな一歩だと思います。さはさりながら、株主総会を混乱させることがないように、つまり手続上、当日の混乱が起きないような手当ては必要だと考えます。その中で何らかの規律、例えば一定日数前に申請することが株主総会への出席の要件とするとか、それは当然考慮すべきことでそのような対応はすべきだと思います。実際に実質株主がどの程度出席するかも、またこれも不確実であり、よく分からないところであります。実際にオペレーションをやってみないと分からないところではありますし、飽くまでも現在では正式には総会への出席も発言や発議、議決権行使も実質的には許されていなくて、例えば一定の手続をとらないとなかなか株主総会に出席できないという不都合もあると思いますので、そこはまずは改善していくことになるかと思います。ここから認めていくと、今後はそのほかの株主権にも広がっていく可能性もあるので、在るべき姿として評価できると思います。   次に、株主側から会社に対する通知を義務付ける制度において、みなし共同保有者に関する事項に起因する違反を、議決権の停止の対象外とするのは適切ではないとの指摘がありますが、ここについてはむしろ対象外としないと難しいことになると考えております。善意・無重過失により誤認しているのであれば、議決権停止通知を受けてから約1週間以内に追完することにより議決権の停止を免れることができることがその理由として挙げられていますが、そもそもグローバルカストディーは多数の国やエリアにわたって投資資産を管理しており、事務過誤であったり、そうでないものについてもミスが生じ得る可能性はあって、何らかの事務過誤や報告の不手際をもってして議決権を停止するということになればそこについての認識は大きく違うので反発や軋轢を生むと思うのです。議決権停止について、どうして株主の重要な権利である議決権を停止されなければならないのかと正直なところ思っており、一律に罰則が課されることには相当な考え方のギャップがあると考えてよいと思います。   先ほど臼井委員が指摘したように、全体の法の安定性とか法整備を進める上で外国人投資家の認識については配慮すべきだと考えます。私は全体としては議決権停止自体はやむを得ない、実際は制度としてあり得る施策であるとは思っていますが、それでも故意・重過失が明らかであったり、ウルフパックが明確な場合とか、かなり限られた事案に限定して適用されるべきだと考えています。そうでないと、まずは、何かの規制強化だと思われてしまう時点で、その法改正はマイナス効果だと思います。議決権停止は制度自体として抑止力とか牽制力が期待できますし、導入しておけば何か問題が生じたときには議決権を停止できるという意味で、制度として行使できるようにしておくことは有効だと思うのです。ただし、みなし共同保有になると、実際にオペレーションにおいてどのような問題があるのか、やはりうまく機能するのか自信もないですし、実際ミスが起きるとか過誤や遅延が生じることはあり得る話です。それを、何か議決権停止に直結すると疑われたり、疑念を持たれるという時点で、あまりよろしくないと考えます。そこは十分に配慮して、慎重に考えた方がいいと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○藤井委員 私からは今回まず、株式会社から実質株主を確認する制度においてサンクションとして追加された議決権停止につきましては、こちらを入れること自体には反対はしないものの、少し制度趣旨とのバランスや、後ほど議決権停止の、これまでもこの部会の中で少し発言はさせていただいておりましたけれども、実務的なフィージビリティーといったところは論点になるのかなと考えておりまして、先ほどもありましたけれども、例えば場面を限定するとか、そういったところの配慮は必要なのかなと考えております。   あと、今回仲介機関の定義というところで、まだ十分に検討ができているということではないのですけれども、検討いただきたい事項としては、改めてなのですけれども、発行会社や私どものような株主名簿管理人が株主名簿上確認可能なものというのは何かといったところを改めて御紹介をさせていただきますと、株主名簿上確認可能なのは、例えば外国法人の場合ですと、その外国法人の名称及び住所、あと株数、そしてその常任代理人の名称及び住所というような形になっておりまして、外国法人の名称といったところ、例えば有価証券報告書とか事業報告等で大株主の状況とかを見ていただきますと、名称を見ただけで、ステートストリートバンクアンドトラスト50何とかとか番号が付いているような、そういった名称があるかと思うのですけれども、そちらについては、グローバルカストディアンがステートストリート信託銀行なのかなといったところは推定はできるのですけれども、特定までは難しいと思っておりまして、本当に確実なものとして特定できるのは、常任代理人のみになると考えております。常任代理人であれば、日本国内の例えば銀行名とか証券会社名とか、そういったものが書いておりますので、それが特定可能といったところを、この仲介機関との定義との関係でどう考えるかといったところは、一つ検討していく必要があるのかなと考えておりまして、こちらは付言をさせていただきました。   加えまして、こちらは法務省令に委任されるというところではあろうかと思うのですけれども、実質株主の情報の範囲として今御提案されているものに加えまして、スムーズに情報授受をするためには、実質株主を特定するようなキー情報みたいなものも必要になってくるのかなと考えておりますので、こちらはその他法務省令で定める事項といったところを検討する際に、ひとつ念頭に入れていただければと考えております。   あと、先ほど来話題になっております実質株主の株主総会の出席のところにつきましては、私も、本人確認等がその場で必要になって総会が混乱するといったところは同じ意見を持っておりまして、例えばなのですけれども、先ほど森委員からも少し御提案があったと思いますが、実質株主の急な出席を認めない事前通告制度のルールを作るとか、総会出席を認めるとしても一定のルール化というのは必要かなと考えております。   最後になのですけれども、冒頭申し上げました議決権停止の実務上のフィージビリティーに関して論点となると思っていることにつきまして、お話をさせていただければと思います。今回、会社側から確認する制度と大量保有報告違反、両方について議決権停止ということが入ることが御提案されておりまして、これはどちらかということではないのですけれども、そもそも議決権停止をすることに対して、違反者が特に実質株主であった場合、その議決権を停止するためには、その実質株主に対応する名義株主の氏名、住所、議決権の個数、一番大事なのは議決権の行使の内容を発行会社又は株主名簿管理人が正確に把握することができないと、最終的に議決権停止、減算処理ができないのかなと考えております。ただ、実質株主の議決権行使につきましては、一般的にはプラットフォーム等を使いまして実質株主が直接議決権行使を行うと承知をしておりまして、参考人でもいらっしゃった実務者検討会の中でも、グローバルカストディアンやサブカストディアンの方は指図権者ごと、実質株主ごとの議決権行使内容を把握していないようなケースもあると聞いております。   そうなりますと、特に株主総会直前に議決権停止通知というのを行った場合については、恐らく違反した実質株主の議決行使そのものをシステム上止めるというのが非常に難しい状況になるのかなと考えておりまして、今回部会資料の中にも、仲介機関に指図権者の議決権行使状況を上場会社に通知しなければいけないという義務というところが言及はされているのですけれども、その義務があったとしても、議決権行使が既に違反者ができるような状態になってしまっておりますので、議決権行使期限までは違反者がどういう議決権行使行動をするかというのは分からないというような状況になりますので、議決権行使期限、一般的には株主総会の前日の夕刻5時とか5時半とかに設定される企業が多いのかなと思っているのですけれども、そこから株主総会の当日までの間に、違反する議決権停止をしたい相手、実質株主の行使の内容を議案ごとに、そもそも議決権行使をしたのか、議案ごとに賛成なのか反対なのかということを、正確な情報を発行会社又は株主名簿管理人が受領できるような仕組みというのを構築する必要がありますので、かなり短い期間の中でそちらの実務が回るかといったところは、我々もいろいろ今検討しているところではあるのですけれども、検証が必要と考えております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○臼井委員 実質株主確認制度のうち、株式会社から実質株主を確認する制度について、今回新たに議決権の停止が案として入っておりますけれども、対話を促進するという目的に対して、ペナルティーとして議決権停止が課されるというのは、理解が難しいのではないかと考えます。効力を持たせるための枠組みとして議決権停止が必要であるということは理解いたしますが、こうした悪質性が懸念されるケース、例えば問合せに答えないとか、ウルフパック戦略を使う、突然に重要提案を行ってくるといったケースは、一般的な運用会社の多くには当てはまらないと認識しております。にもかかわらず、こうしたことを一律に議決権停止の対象としてしまうと、大多数の悪質ではない株主や仲介機関に対して、相応の負担、それから議決権停止という株主権の根幹に関わる部分のリスクが負わされる、一方で制度導入による株主側のメリットというのはほぼないということだと思います。運用プロセスとして、対話が必要であり行いたいと考えている運用主体ばかりではないという御指摘が、先日の参考人招致のときに国際銀行協会の方からもございましたが、そもそも対話を目的としない運用会社もあるにもかかわらず、対話を拒否したから議決権停止されるというのも、少しおかしな話かなと思います。また、仲介機関のところで故意・重大な過失による間違いがあった場合に、過失を犯した主体ではない指図権者がペナルティーを負うというのも、違和感があります。一方で、株主側が対話をしたい場合に、この制度において身元を明らかにして、会社側に対話を要求して断られたらペナルティーがあるのかというと、ないことになっていて、設計としてはやや整合性がとりにくいのかなと考えております。   では実効性を保つ形でどうするのかということを考えてみますと、先ほどの鮫島幹事からの御提案を踏まえると、抑止措置として議決権停止を入れるのであれば、対象について建設的な対話は除いた上で、重要提案行為をしてきた株主に限定し、それらについて実質株主を識別できるような情報を会社側からカストディアンに請求いただく。それによって、提案してきた株主は誰なのかという情報を把握できるような仕組みにすれば、ほとんどの、通常のプロセスを踏んでいる運用会社は対象外とした上で、本来事業会社の皆様が懸念されているようなところへの対応ができるのではないかと考えます。こちらの御提案ですと、建設的な対話と重要提案を両方含めて、対話を求める株主に対して識別情報を請求できるとなっておりますが、これは少し範囲が広すぎると感じます。アクティブ運用の会社では対話を運用プロセスの重要な枠組みの一つとして置いている会社もあり、そこについてペナルティを伴う義務が付与されるのは好ましくないからです。   私どものような大多数の運用会社は、通常、支配に関わったり重要提案を日常的に行うということは想定していません。ですので、こうした重要行為を行った株主に対して、そういった提案行為をするのであれば素性を明らかにするべきで、明らかにしないのであれば議決権行使はできないという制度にすることが、納得性が高いのではないかと考えます。そうすると、この制度の目的というのは、現状うたわれている対話ではなくて、支配に関する情報の取得とすることが収まりがいいとも考えます。   会社から実質株主を確認する制度をこのように整理した上で、株主から会社に通知する制度、大量保有・変更報告書の違反に起因する議決権停止は、なくしていただきたいと思います。特例報告の適用の有無にかかわらず、みなし共同保有に起因するエラーなど、ミスも起きやすいところです。事務的なエラーが議決権の停止につながり得るとなると、かなりの注意やコストを払って対応しなくてはいけないということになり、非常に大きい負担につながりますし、そもそも上場会社の皆様が懸念されていることへの有効な対策にはそれほどならないのではないかと考えます。   改めまして、ウルフパック等の懸念があるということは十分に理解いたしますが、基本的に議決権行使しかしないような株主に負担を負わせる正当性は低いのではないかと考えます。重要提案行為を行う場合に限った議決権停止のアプローチをとった上で、違反を罰するというよりは、制度を悪質に妨害する行為を抑止するような限定的な手段として設計していただければと考えます。 ○神作部会長 どうもありがとうございます。 ○松中幹事 実質株主の確認制度について、会社側から確認していく場合の案に議決権停止が入ったわけですが、やはりこれは今、臼井委員がおっしゃったとおり、趣旨の部分とうまく合っていないように思います。今回少し趣旨の表現が変わって、直接的な対話だけではなくて、実質株主を含む株主構成を把握した上で、誰といつどのような対話を行うかについて見通しを持った戦略の検討にとって重要な情報であると、43ページにこういう説明が加わっているわけですが、なぜ議決権停止に結び付くのかは少し理解しづらい部分はどうしても残ると思います。   まず、株主構成の把握の方に重点を置くのであれば、これは趣旨に入れないものとした支配に関する重要な情報の把握と結局同じになってしまい、これをこっそり入れているだけであるということになってしまいます。他方で、飽くまで対話を行っていく点が重要なのであれば、やはり対話を強制されるいわれはない、こういう言い方をしてもいいですし、少し見方を変えて、投資スタイルというのは様々なところ、今回問題になっている点には、対話をまともにするつもりはないのだけれども株主権をおかしな使い方をしていくような株主がいて、そこに対して対処したいという部分もあると思うのですけれども、そこに対処するのに、割と受動的な株主にも負担を強制する、一定のリスクを負わせるというのはやりすぎであるということになるかと思います。いずれにしろ、現在提案されている趣旨からは、なかなか議決権停止、しかも理屈の上では、実際にはそれほどないと思うのですけれども、ごく僅かな株式しか持っていない場合でも適用される話ですので、そこまで広範に議決権を停止されるという制度は正当化しづらいように思います。一つの方法としては、今、臼井委員がおっしゃったような形で、議決権停止するような場面を限定する、あるいは、当初出ていたかもしれませんが、もう少し概括的に一定の割合以上の株式を持っているような場合に限定していく、こういうことになっていくのかなと思います。   他方で、今回趣旨に飽くまで支配に関する重要な情報の把握というのを入れなかったのは、実質株主確認制度が野放図に拡大していくことを防ぐ、特に求める情報について仲介機関が持っている情報をそのまま出せばいい、今こういう制度で作っているわけですけれども、そうではなくて、実質的な指図権者は誰なのか、その情報をよこせというふうに野放図に拡大していかないようにする意味があったのかと理解しています。それは仲介機関に負わせる負担としては重すぎますので、維持すべきだと思います。その意味では、対話というのを苦しいのだけれども維持するというのは、よく分かるところであります。ただ、それと議決権停止が余りうまくマッチしていなと感じられます。   今の議決権停止との関係では、もう一つやはり説明が必要になるのは、なぜ仲介機関が誤った内容を通知したら実質株主の権利が最終的に制約されることになるのかが、本当によく分からないという点です。瑕疵が治癒される部分も実質株主の出番は全くないようになっていますので、何でだろうかという疑問は出てくるわけです。   それから、より細かいところですと、大量保有報告違反とそろえている、それのお陰で濫用対策というのは一定程度なされているようには思えるのですが、他方で大量保有報告というのは、今回のような制度を入れるかどうかにかかわらず、法律上一定の株主が必ずやらなければいけない義務であると思います。その場合の違反と、今回新たに実質株主の確認制度で求められた場合に情報提供をしなかったという場合の違反と、本当に同じように扱っていいのだろうかというのは少し疑問が生じるところです。例えば、5%どころかごく僅かな株式しか持っていない株主でも今回の制度の対象になるわけで、その点からも、一旦提案としては並べてみたというだけなのかもしれないですけれども、本当に議決権停止の通知の期間とか、こういったものも全部同じにしていいのかというのは問題になるのではないかと考えています。   もう一つ、今度は細かいところなのですけれども、39ページの(注7)の費用のところです。費用の具体的な規律がどうなるか、法務省令に委任するとなっていますが、48ページのところでは、上限額を法務省令で規定するかのようにも読める説明になっております。ただ、これは実は理屈で正当化するのはそう簡単ではないように思っています。要は、上場会社と仲介機関の間の取引について価格規制をするということですので、当然にやっていいことではないように感じています。さらにいえば、使いやすいように低い価格にする目的で規制するというのは、率直に言って駄目だと思います。むしろ、ここで対処しなければいけないのは、事実上回答を拒否するために非常識な高い費用を請求する、そういう場合はさすがに駄目だろうと思うのですが、上限価格を設定するよりも、そんな費用を設定した場合は、もう回答を拒否したものと扱った方がいいのではないかと思います。いずれにしろ費用の上限の法定というのは、言うほど単純ではないと考えています。   全体をまとめると、やはり今回ここの部分は新しい制度ですので、新しい制度に幾らコストが掛かるのか、やってみないと分からない部分もあります。それから、具体的にどのくらいの期間が必要になるのかというのも、やはり難しい部分がある。特に、議決権行使の停止なんかを入れると仲介機関の側もかなり大きなリスクを負う、もし間違って答えたらお客さんの権利が制約されるということになりますので、そこは慎重にならざるを得ないと思います。そういうのを新しい制度のところにフルセットの効果を入れていくのが本当に正しいのかというのは、よく分からない部分もありますので、慎重に検討する必要があると思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○久保田委員 私も、まず株式会社から実質株主を確認する制度についてから発言させていただきます。   先ほど松中幹事がおっしゃったような趣旨との関係、あるいは藤井委員がおっしゃったような、実際に議決権停止をする場合の手続の話というのはあるのですけれども、取りあえずそれを置いて考えてみますと、私は議決権停止という制裁を用意するというのはそれなりに合理性はあるのではないかと思っています。この点に関連して、国内の実質株主については現在の任意の調査制度でほぼ把握できていると言われる一方、海外の実質株主については必ずしもそうではないと聞いていますので、仮にそうだとしますと、今回の制度の利用価値は海外の実質株主について大きいということになります。ところが、海外の実質株主については過料という制裁だけですと制度の実効性を十分に確保できないということですので、議決権停止を用意するということには合理性があるのではないかと思います。また、今回の提案では非常に慎重に制度が作られていまして、仲介機関による違反によって直ちに議決権が停止されるのではなく、悪質な違反に限って議決権停止の対象にするような制度になっていますので、その意味でも問題は小さいのではないかと思うわけです。   この点、対話をしたくない株主というのもいると思いますけれども、彼らも情報を出せばいいだけのことでして、あえて情報を出さないということに合理的な理由がそれほどあるのかは疑わしいように思います。確かに、中には自分たちが株主であることを発行会社に喧伝されたくないというような方もいるかと思いますけれども、それは発行会社の方でそういうことはさせないような規律を用意すればいいだけでして、発行会社だけが情報を把握するのであれば特に不利益はないであろうと思うわけです。   その上で、私が気になっていますのは、仲介機関に故意・重過失があるのだけれども実質株主に故意・重過失がない場合があり得るとしたら、この場合に議決権停止という制裁が課され実質株主に不利益が生じるというのは問題であると思います。この点は、むしろ実務の方々の御意見を伺いたいところですけれども、恐らく仲介機関は、外国の投資家については現在既に構築されているシステムに従って情報を提供し、国内の投資家は、これからシステムを構築して、そのシステムに基づいて情報を出すことになろうかと思います。そうだとしますと、そのようにシステムに基づいて情報を提供している限り、およそ仲介機関に故意・重過失が認められることは想定しにくいような気がしていまして、そうであれば、この点も余り懸念しなくてよいのではないかと思います。また、それでもなお懸念があるのでしたら、これはシステム上できればということですけれども、何らかの形で実質株主が自ら会社に情報を提供する機会を与えるとか、あるいは実質株主が仲介機関によって提供された情報を修正する機会を与えるといったことは検討に値するように思います。   ただし、以上申し上げたことについては留保条件がありまして、一般の投資家に過度な負担を掛けないことが必要条件であり、そのためには、やはりアからオの規律については、まさに現在の案がそうなっていますように、SRDⅡに基づく実務にそろえるべきであると思います。欧州のSRDⅡに基づく実務にそろえている限りは一般の投資家にもそれほど負担は掛からないと思いますし、外国人投資家についても現在のシステムをそのまま使えばいいだけですので、問題はないのではないかと思っています。   このように外国人投資家については現在既にシステムが構築されているので、それを使えばいいだけですけれども、国内の投資家についてはこれから新たにシステムを作るということになりますと、少なくとも制度の創出段階においてはこうしたシステム構築の負担にも配慮する必要があるかと思います。しかし、この点についても、今回提案されたアからオの規律では、例えば確認の基準時もそうですけれども、システム構築に過度の負担が掛からないような配慮もされていますので、その意味でも問題ないのではないかと考えています。   なお、冒頭に申し上げましたとおり、松中幹事がおっしゃったような趣旨との関係は、何らかの形で整理する必要があると思いますし、藤井委員がおっしゃった議決権停止をするための手続というのは別途考える必要があると思います。   次いで、(2)の実質株主の権利については、これは私は今回提案された内容に賛成いたします。これは投資家の方々から何度も出てきますように、これがないと本当に投資家にとっては何もよいことがないということになりますので、これは必須であろうと思います。もちろん森委員あるいは藤井委員がおっしゃったように、発行会社に対して過度な負担を掛けないようにするための規律というのを別途用意する必要があるのであれば、それは十分に手当てする必要があると思いますけれども、そういう手当てをした上で、実質株主の権利をなるべく認めていくということが重要だと思います。   飽くまでこの実質株主の権利というのは今回、実質株主確認制度の一環として認められるものですので、非常に限定的なものになります。ただ、そうは言っても、限定的とはいえ会社法上、実質株主であることが確認された者については権利行使を認めるべきであるという基本的な考え方が採用されることになりますので、このことの意味は大きいのではないかと思っています。また、このような観点から言いますと、これは中長期的な課題ということになるかもしれませんけれども、議決権だけではなく、前回参考人がおっしゃったような訴訟における原告適格性なども認めていくということを今後は考えていくこともあってよいと思います。これも実際には、保有株式数も明らかにならないと証券訴訟などでは使えないという限界はあるのですが、実質株主については原告適格が認められるという考え方が普及する契機になり得ると思いますので、そういう意味で、小さくない意義があるのではないかと考えています。   次いで、2の株主側から株式会社に対する通知を義務付ける対制度についてです。現在提案されている制度では、違反がある場合は追完をしない限りは議決権が停止されるという立て付けになっています。この点、先ほど来問題になっていますようなみなし共同保有者に関する事項に起因する違反の場合については、みなし共同保有者にだけ帰責事由がある場合もあれば、ウルフパック戦略をとっているように、大量保有者にも帰責事由が認められるという場合もあると思います。これをうまく切り分けることができれば、みなし共同保有者に関する事項に起因する違反の場合についても議決権停止を課するということは可能になりますので、たとえば、先ほどの1のように、違反者に故意・重過失がある場合に議決権停止をすることができるというような立て付けにすることも検討に値するように思います。そのようにすれば、大量保有者には帰責事由がなく、みなし共同保有者にだけ帰責事由があるという場合は議決権停止の対象にならず、逆に、ウルフパック戦略をとっているような場合は、実際上証明できるかという問題は残りますが、大量保有者にも帰責事由が認められる結果、みなし共同保有者の事項に起因する違反の場合も議決権停止の対象にすることが可能になりますので、御検討いただければ有り難いと思っております。   ほかにも2の制度については幾つか追加的に検討すべき点があると思うのですけれども、これ以上話しますと長くなりますので、さしあたり私の発言は以上にさせていただきます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○松尾幹事 私も、会社から株主に実質株主を確認する制度について意見を申し上げます。   既に出ておりますとおり、この制度の目的を対話の促進ということに置くのであれば、議決権停止というサンクションを設けるのはやはり正当化しづらいというのが率直な感想でございます。対話を申し込まれて拒絶しても何らサンクションがないところ、対話のきっかけとなるというか入口となる情報を提供しなかったということが、それはある意味では最も明確な対話の拒否の意思表示だと思うのですけれども、それに議決権停止というサンクションが付いてくるというのは、なかなか説明しづらいというところがあります。   また、先ほど久保田委員がおっしゃったのを伺っていて、久保田委員とはデフォルトというか前提が違っているなと思いまして、私は必ずしも指図権のある実質株主が会社に自分の名前を伝える必要はなくて、会社の方に何かしら実質株主を知る必要性がある場合に限って、その情報を取得できるのだと考えておりましたので、そういう必要がないときに知らせないといけないということ自体、なかなか出てこないのではないかと考えておりました。したがって、久保田委員とは感覚が違うと思いました。   議決権停止というサンクションを正当化するのであれば、支配に関する情報ですとか、パブリック・コメントでも出ておりました、あるいは今回の資料にもありますけれども、何か他の規制、経済安全保障的な規制の遵守のために、例えば、外国の規制当局に自社の株主情報をある程度出さないといけないというようなことがあって、どうしても知る必要があるのだというようなケース、あるいは、先ほど臼井委員がおっしゃった、重要提案行為をしつつ実質株主が分からないというようなケースがあって、それに限るというようなことであれば、その必要性というのは肯定できるかと思いますし、そういう必要性が認められる場合に情報を出さないということに対するサンクションとして、議決権停止というのはある程度理解ができるところであります。   ただ、その必要性のある場合というのが極めて限定的なのではないかと考えているところでして、極めて限定的な場合に議決権を停止するのであれば、会社の側でまず裁判所の許可を得る、という手続の立て付けにすることも考えられるのではないかと思います。つまり、その必要性があるということについて裁判所のお墨付きをもらった場合でなければ議決権停止はできないというような立て付けも、こちらの制度についてはあり得るのではないかと考えました。   それから、もう1点、この制度を通じて実質株主であることの情報を提供した者の株主総会の代理出席を認める制度ですけれども、伺っていてよく分からなかったのは、この人が出てくると総会の際に混乱するという御意見です。この場合、会社にあらかじめ情報を提供した実質株主が出てきて代理人として出席するということであれば、基本的には他の株主、実質株主制度と関係ない株主が代理人を立てるときと同じ手続で済むのではないのかなと。つまり、本人確認的なことと、その代理人資格の確認と、他の代理行使の場合と同じ手続を課せばいいと思うので、指図権があることの確認というようなことは特に必要ないのではないかと思いました。あと、森委員がおっしゃったことですが、事実上、議決権の不統一行使になるというようなことが起こり得るのであれば、その場合は不統一行使に準じた規律を設けるということはあり得ると考えました。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○矢野幹事 まず、1の方を中心に意見を述べさせていただきたいと思います。   こちらは議決権停止が今回出ているというところで、これまでのほかの委員、幹事の先生から御指摘がありましたけれども、これまで議論していたところからある程度大きく変えた内容について、パブコメを経ないで決めるのがいいのかといったところとか、やはり建設的対話の促進といった趣旨から外れているのではないかという根本的疑問は残っていると私も考えます。今回御提案いただいている内容について検討すべきでないとまでは思いませんけれども、そうした趣旨との関係は、これからも慎重に検討する必要があるかなと思います。ただ、範囲としましては、本来はウルフパックを止めるといった、不当なものを止めるといった方向で考えるのが原則的な話でして、あたかも実質株主全員が不当だといったような前提での立て付けは、少し方向性としては違っていると思いますので、必要な範囲で必要なところを止めるといった観点から、やはり御検討いただきたいとは思います。   あと、中身について申し上げたいと思います。中身について申し上げると、1の議決権停止の関係ですけれども、1か月経過のカウント対象が誰なのかがはっきりしないかなと思いました。違反者が名義株主でない場合には、違反者と名義株主に通知するという立て付けになっているかと思いますけれども、そうすると、どちらの通知からカウントするのかというのが分からなかったかなと思います。違反者がいいのか、とはいえ実際議決権が止まるのは名義株主なので、名義株主がいいのかというのは判断が付いてはおりません。   あと、同じように故意・重過失の対象がはっきりしないかなと思ってはいます。分かりやすい例だと、請求が来たのだけれども回答を忘れてしまったというようなケース、これは典型例の一つかなと思いますけれども、この場合は、送っていない以上は故意・重過失ありとして判断するのか、それとも忘れた事情なり、送らなかったという事情の中身を故意・重過失があるのかどうかというところを判断するのかというのが、今の立て付けだとはっきりしないのかなと。これまで御意見を伺っていた中でも、前提が少し違っているようにも感じてはいます。故意・重過失の対象の話は、2の大量保有報告の方も同じ話が、(6)イですかね、善意・無重過失も同じように議論としてあるのかなとは思っておりまして、その辺は久保田委員がおっしゃったことと同じなのかなとは思っています。   もう一つ、こちらは2の方が主としてということになりますが、議決権停止通知について、その内容を明らかにするということが決められているわけですけれども、特に2の大量保有報告義務違反の方は、その内容として確定度が一義的ではないとは思っていまして、単にこれに違反しているとなるのか、具体的にこの条文のこういうことに、条文だけ挙げるのではなくて具体的事実を挙げるのかとか、その辺りがはっきりしないものですから、場合によっては、これは法務省令でということを入れた方がいいのかなとも思ってはいます。そこは御検討いただければと思います。   あと、議決権停止通知の決定に関しても、決定しないことは取締役会決議から外すということは、それは一応理解はできるなとは思っておりますけれども、その結果、その後紛争の解決に関して影響するものではないということは、何らかの形で分かるようにしていただければと。法文で明らかにするのは難しいですけれども、一問一答とかになるかとは思いますが、今回は実情上、補足説明にその点は記載をされているかと思いますけれども、決定しないことが会社の無限定の裁量であるというような形にはならないようにしていただきたいと思っています。   あと、停止そのものについても、やはり裁判所の関与も考える必要があるのかなと思っているところではありますけれども、現実に起こるとしたら、相当のリスクのある決定ということになるので、実際には補足説明にもありますように、仮処分も会社がやる場合でも株主側からでも両方あると思いますけれども、仮処分併用というのは、これはマストになるのだろうとは思いますので、今の提案の内容でもやむを得ないかなとも思ってはいます。ただ、裁判所の関与が不要でいいとまでは考えていないので、何かもう少しいい立て付けがあればとは思っております。   あと、実質株主の出席の点に関しては、今回御提案の方向で差し支えないかなとは思っております。この点について、当日出席の混乱という指摘があったのですけれども、この点は本来は今でも起こり得る話なのではないかとは思っておりまして、単に今、当日持ってくるとかいうことをしていなかったりとか、普通は事前に送った上で、連絡があって傍聴といった形をしているといっただけであって、混乱の可能性があるから改正すべきでないというのは、少し違っているかと思っていますので、行う方向で、今ある問題点があるから整理するということはあり得るかと思います。   その余は、特に意見はありません。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○小長谷幹事 まず、会社から実質株主を確認する制度の方につきまして、2点ほどコメントさせていただきます。   既に御指摘されている点でございますけれども、この実質株主確認制度の議決権停止措置は、基本的に抑止効果を狙ったものと理解しておりますが、仲介機関の違反について何ら関与していない指図権者が実質的な不利益を被り得る仕組みが仲介機関に対する抑止効果として適切に機能するのかという点については、慎重な検討が必要であるように思われます。   第2についてですけれども、御提案の規律では、議決権停止通知は違反者及びその上位仲介機関に対して行われるものとされておりますので、指図権者は、自ら指図した議決権が有効であるのか無効であるのかにつき不明であるままとなるおそれがあるかと思いますし、指図権者が仲介機関に追完を促すこともできないまま、指図権に係る議決権の行使が制限を受けることになると考えられますが、これが適切なのかという点についても検討の余地があるかと考えております。   次に、実質株主から会社に対する通知を義務付ける制度につきましては、みなし共同保有者に係る事項に関する適用除外という点についてコメントさせていただきます。今回の適用除外の御提案の趣旨は、例えば、グループ内の1法人の保有分の集計が遅れることによってグループ全体の保有割合の集計に誤りが生じるといった事務ミスを議決権停止の対象とするのは酷であるから、議決権停止の対象から除こうとする点にあると理解しております。その趣旨を前提としますと、みなし共同保有者の類型のうち、例えば株券等の取得資金を供与した者と当該資金の供与を受けた者との関係ですとか、あるいは株券等の取得を要請した者と当該要請者に譲渡する目的で株券等を取得した者との関係、あるいは、重要提案行為等を要請した者と当該要請に基づいて重要提案行為を実際に行った者の関係などは、グループ内の事務ミスとは関係がないため、適用除外とする必要はないのではないかと考えております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○豊田委員 私からは、株式会社から実質株主を確認する制度のうちの議決権の停止について、少々述べさせていただきます。   これにつきましては、限られた範囲で議決権を停止するという制度になっており、個人的にはあり得るのではないかと思っております。他方で、今まで話がずっと出てきておりましたように、多少言い方を変更しても、最終的には対話を促進するという趣旨と合わないという点については、それはそのとおりだと思っております。この点、会社に対して株主が通知する制度のみでは把握できない情報を把握するという意味で、対話に加えて、ウルフパックの抑止等の意味もこちらの制度にあるということも言えると思いますので、法制審議会の部会でいろいろと整理をしてきたという経緯はございますけれども、こちらの制度についての趣旨というのを少し変更するということも考える余地があるのではないかと思っております。そして、実際に、例えば藤井委員がおっしゃいました実務上の懸念ですとか、小長谷幹事がおっしゃいました仲介機関と実質株主、サンクションを受ける者と行為をする者の違いという点を整理した上で制度として整えていくということは考えていいのではないかと思っております。   また、先ほど臼井委員がおっしゃいました、この範囲を少し制限していくために議決権が大きい場合に限ってはどうかというような御発言につきまして、経営権等の争いがあるような場合には、かなり少数の議決権というのが非常に重要になる場合もございます。ウルフパック戦術を行うようなときは、登場人物が多く各株主の保有株式は少ない場合もございますので、実質株主の議決権が小さいということのみで対象にならないということについては、慎重に考えてもよろしいのではないかと思っております。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○田中委員 今、議論されている論点に関して、私の意見を述べさせていただきます。   まず、実質株主確認制度について議決権停止措置を入れるということで、これは確かに比較法的にはそういった制度があってもおかしくありません。先ほど久保田委員と松尾幹事のやり取りもありましたように、会社が実質株主を知る権利があるかについては比較法的にも確かに立場は分かれていますけれども、イギリスなどは随分前からそういう権利があるという立て付けで制度ができていますし、EU諸国の規制も基本的にはそういった考え方になっていて、国によって違いますけれども、議決権停止措置もとっている国がありますので、おかしくはないかと思います。   ただ一方で、まず一つには、当部会で中間試案をまとめるまでの議論において、実質株主確認制度の違反に対しては議決権停止措置はとらない、その措置をとるのは大量保有報告制度違反の方であるという形で、比較的早い段階でそのようになったために、実質株主確認制度の違反に議決権停止をするとしてもどのような形でそれをするのか、例えば実質株主の手続保障はどうなるのかといった点についてあまり議論しておりません。ですから、議決権停止のための手続に関して相当議論をした上でないと、停止措置を入れるのはなかなか難しいという印象を持っております。   私も、ウルフパックといいますか、実質的には1人ないし一つのグループを構成している投資家が、名義を分散して株式を買い集め、会社の支配権を取りに行くという行為が実際に行われていると認識しています。大量保有報告制度を回避して支配権を取りに行くという行為は実際にも行われており、そういう行為への対処のために、大量保有報告制度違反に対する議決権停止措置は必要だと思います。しかし、そういった行為については、実質株主確認制度では、恐らく会社はそういう行為をする者の正体をあぶり出せないと思うのです。そういう人たちは、最初から名義を分散して株式を買いに来ていますので、実質株主確認制度によって会社が指図権者までたどり着いても、結局、それは名義を分散した人たちのところまでということになり、その人たちが支配権を取得するために一つのグループを作っているといったようなことは、実質株主確認制度によっては判明しないと思います。したがって、実質株主確認制度の違反に対して議決権停止措置を入れたとしても、それは、本当に規制したい行為に対して必ずしも実効的な規制手段にならないように思います。   その割に、今回提案されている議決権停止制度はオーバーインクルーシブになっていて、故意又は重過失があるとはいえ、名義株主が報告をしない、あるいは虚偽の報告をすると一般的に議決権停止の措置が取られます。そして、手続保障の点がやはり問題です。先ほども御意見がありましたが、指図権者の知らないままに議決権停止されてしまうということも問題ですし、さらに、会社の通知から議決権停止に至る期間が非常に短いと思います。基本的には通知から1か月で議決権停止がされることになり、違反を追完すれば3週間で議決権停止が失効するわけですが、それだと、名義株主が1週間でミスに気付いて訂正までしないと、株主総会までに議決権行使できなくなってしまいます。   しかも、会社の側で一方的に議決権停止ができるものとされています。確かに議決権停止の要件を満たしているかどうかが裁判で争われる場合、名義株主が通知義務に違反したこと、例えば、虚偽の通知をしたということは、会社に立証責任があると解されます。しかし、そうであっても、例えば、株主提案がされた場合に、会社が株主提案に賛成しそうな株主の議決権を停止し、その結果、もしその株主が議決権を行使していれば可決成立していた株主提案が成立しなかった(否決された)という場合には、後で議決権停止措置が違法であったと裁判で判明したとしても、停止された側には有効な救済手段がないように思えます。それと、やはり投資家としては、重過失というのもどういうものであるのか必ずしもはっきりしないので、事務処理ミスははっきりしているのだけれども、しかし現実に意図的ではないというものもあり得ると思いますから、非常に議決権停止が簡単に行われるおそれがあると見られても仕方ないようになっているのではないかと思います。   今回提案された議決権停止制度は、意図的に仲介機関が回答を拒絶したとか、そういう極端な場合に議決権停止の可能性を残すことで仲介機関による報告を促すという意味はあると思うのですけれども、それだけが目的なら、もう少し要件を限定した方がいいと思いますし、また、実際に通知義務の違反があったかどうかとか、故意又は重過失があったかどうかを裁判所が確実に認定しない限りは議決権停止がされないような、そういう手続保障が必要であり、少なくとも現在提案されているような形のままでは導入できないのではないかと私は思いました。そういう点でも慎重な検討が必要だと思います。   それから2番目に、実質株主確認制度によって実質株主と判明した者が代理人として議決権行使をすることについては、従来私は賛成してきましたから、引き続き賛成したいと思います。この点に関しては、現行法の下でも、代理人による議決権を行使するときは代理権を証明する書類の提出が必要です。また、会社は代理権を証明する方法について指定することもできます。「実質株主確認制度の下で指図権者であると判明した」ということは、代理人となれるのは株主に限るという定款の規定にもかかわらず実質株主が代理権を有するための要件ですので、これについても実質株主が証明する必要があります。つまり、自分は実質株主調査制度によって指図権者であると通知された者であるということが、代理権の証明として必要になると解されますので、会社はそういう者であることを書類上確認するための手続をとることができるはずです。私としては、比較的に見れば指図権者は株主総会に出席できるというのがむしろ国際的には標準だと理解しておりますし、また、日本の上場会社の中でも、実質株主に関しては名義株主の代理人として株主総会に出席することを現に認めている会社もあると思います。そういった、現に行われている実務を参考にすることもできると思いますので、是非この制度改正は実現してほしいです。   3番目に、大量保有報告制度違反に対する議決権停止についてです。これについては、先ほど申しましたように、私は、この制度は何らかの形で入れた方がいいと思います。ただ、もう少し株主側に手続保障があるべきだと思います。まず、今回の御提案で、大量保有報告制度の重大な違反であっても、悪意又は重過失がなければ、次の株主総会の一定期間前までに追完すれば議決権行使できるようにしたことは適切であると思います。大量保有報告制度違反であっても、やむを得ないミスが生じるおそれは十分ありますので、こういった形の追完を認めないと、株主の利益保護が十分でないと思います。   その上で、悪意又は重過失に関しては、むしろ会社側に立証させる制度にしてもいいと考えます。今回、みなし共同保有の違反は議決権停止措置の対象から外すという提案がされましたが、これについては、先ほど金融庁から御指摘があったように、みなし共同保有の制度はウルフパックへの対処という側面があるので、その違反を一律に議決権停止措置から外すのはおかしいように思います。むしろ、故意又は重過失の違反であることを議決権停止の要件にし、しかもそれを会社の方側で主張立証しなければならないという形にした方が、本当に取り締まりたい行為をダイレクトに取り締まれるのではないかと思います。確かに、会社にとっての立証の負担はありますが、議決権停止というのは本当に伝家の宝刀のような措置であって、それほど簡単にできるものではないのは当然であると思います。   それからもう一つ、現在提案されている制度では、会社から議決権停止措置をとられた株主が裁判所に訴える場合、1か月以内に裁判で事実が明らかにされて決定が下るということが前提になっているように見えますが、本当にそれができるかは非常に疑わしいと思います。そもそも大量保有報告制度の違反に対し、課徴金の制裁が課されるのが遅いということが、議決権停止措置の制度導入が提案される一つの理由になっていたと思うのですけれども、課徴金が課されるのが遅いのは、慎重に審理をしているからであって、私法上の措置として会社が議決権を停止し、その適否を裁判所が審理するときにはぞんざいな審理でいいというものでもないように思います。その点を考えれば、会社の決定で議決権停止を認めるのではなく、むしろ、会社は裁判所に対して議決権停止を申し立てなければならないという形にして、そして、審理期間中に株主総会が来てしまうときは、もう会社としては議決権を停止する場合としない場合の両方について議決権をカウント裁判の審理中に株主総会の期日が来てしまったときは、会社は、議決権を停止する場合としない場合の両方について議決権をカウントしておき、その後裁判所において、大量保有報告制度の違反が現にあったかどうか、または故意又は重過失であったかを認定し、議決権停止をするかまたはしないかの裁判が確定したら、その裁判に従って、決議の成否が決まるという、そういう制度にしたほうがいいのではないかと思います。今回の提案のように、取りあえず会社の判断で議決権停止をさせ、あとは仮処分又は決議取消しの訴えで争わせるというような形にはしないということです。議決権を停止するという制度は、会社法上、かなり異例の措置だと思うので、株主の手続保障のためにはそのくらいの手続を作った方がいいのではないかと思っております。   最後の意見は、中間試案のときは申し上げなかったことですが、パブリック・コメントでは、議決権停止措置については相当な反対もあったため、それを受けた意見であると御理解いただければと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○青委員 まず、株主側から株式会社への通知を義務付ける制度についてコメントさせていただければと思います。こちらで議決権停止を設けるという形でお考えいただいている点については賛成でございます。その一方で、特例報告の場合に議決権停止をどこまで用いる必要があるのかについては、丁寧に議論していく必要があるのではないかと思います。   それから、事実上、1週間以内に追完をすれば議決権停止を免れることができるという点につきましては、特例報告に関して1週間で対応できるのか、実務が回るのかは実務の状況を確認した上で御判断いただくのがよいのではないかと思います。仮にその運用が難しいということであれば、やはり故意・重過失にフォーカスを当てる方向感の方が、よりワークしやすいという形になるのかなと思うところでございます。   次に、株式会社から実質株主を確認する制度で議決権停止を設ける理由についてです。大量保有報告違反があった場合に、どの株式が違反者に対応する名義分なのかが分かりづらいという問題意識があったものと理解しております。その点については、株主側から通知を義務付ける制度で、どの名義に対応するのかを確認する仕組みを設けることができれば、株式会社側の制度において、どうしても議決権停止を設けなければならない必要性は、一定程度薄まるのではないかと感じております。   みなし共同保有につきましては、状況によるかと思うのですけれども、一概に議決権停止の対象外とすることが本当に適当なのかどうかについては、丁寧に検討する必要があるのではないかと考えております。   また、株式会社から実質株主を確認する制度の趣旨については、既にさまざまな御意見が出ているところですが、特に気になりましたのは、「誰と、いつ、どのような対話を行うかについて見通しをもった戦略を検討する機会を得ることが有用」とか、「戦略の検討に用いられる重要な情報」といったワーディングを拝見すると、どうも建設的な対話を促進するための制度というよりは、建設的な対話をしないための制度に見えるような印象を受けましたので、仮にこのままの内容で進めるとしても、そのあたりの制度趣旨については、やはりしっかりとお考えいただくということを是非お願いできればと思います。   また、この制度において議決権の停止を設けるかどうかについては、悪質性がない場合には事実上議決権停止ができないような仕組みにすることである程度フォローはできているかもしれませんが、趣旨に照らして議決権停止まで設ける必要があるのかどうか、あるいは先ほどの株主側からの通知制度や大量保有報告制度の仕組みを通じて、同様の問題にアプローチできないのかといった点を踏まえ、丁寧に検討を進めていくことが重要ではないかと思います。   先ほども御指摘がありましたように、株式会社から確認する制度でいわゆるウルフパック的な行動をどこまで把握・抑止することができるのか、その実効性については慎重に考える必要があると思います。例えば、確認のタイミングの問題、どの範囲まで何をどのように確認できるのかという問題、その情報を得たとして本当にウルフパック的な行動を防げるのかは既に御指摘がございましたが、この辺りをよく考えて、ウルフパック的な行動への対応には何が必要かというところをもう一度レビューして、制度設計をする方が、実際のニーズに即した対応になるのではないかと考えます。そういう意味では、全ての場面について一律に議決権停止を設ける必要性がどれぐらいあるのかというところも、きちんと確認しながら進めていくことがよいかと思います。   今回の部会資料13では、指図権者に関する規律のところで、議決権行使助言会社の名称が出てくるということを念頭に置いて、一定の工夫をされていらっしゃるかと存じます。ただ、議決権行使助言会社の名前が前面に出てくることについては、やや違和感もございまして、本来の指図権者が誰であるのかを適切に把握できるようにするために、どのような工夫ができるのかという観点で考えた方が、より適切な対応になるのではないかと思います。   次に、確認の基準時に関してでございます。基本的には株主総会の議決権行使の基準日を前提に規律されていらっしゃると思いますが、今後、例えば3月末の基準日から3か月以内の期限近くに総会がありますよというパターンに限らず、議決権行使の基準日の直後に総会を開催するようなパターンで行う、あるいは行いやすくするような制度改正も行われるかもしれないというところを念頭に置きますと、総会の議決権行使基準日という書き方をしなくても、直近の株主名簿の状況といった形で規定していくことも考えられるかもしれません。将来的に基準日の在り方を仮に見直すとしたらその足かせにならないよう工夫する余地はあるのではないかと思います。   最後に代理出席に関してです。指図権者による代理出席を認めるのは十分あり得るのではないかと思いますが、実務の混乱を招かないようにというところは皆さんの御指摘のとおりだと思われますので、代理出席を認める場合の所要の手続的な整備については、是非慎重に検討していただければと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○齊藤委員 まず、株式会社から実質株主を確認する制度につきまして、臼井委員の御指摘もあったところでございますけれども、対話のための制度として議論してきたものにつきまして、議決権停止という制裁はいささか重すぎるように思われます。特にこちらの制度につきましては、持株要件やそれ以外の要件が課されていないので、非常に広範な範囲に制裁が及ぶ可能性があるというところもアンバランスであるように思われまして、慎重に考えるべきではないかと思います。しかも、日本の制度は仲介機関の義務として構成しているところでございまして、それと株主の議決権の停止の関係も説明が必要になるのではないかと思われます。   確かに英国なども参考になるのですけれども、英国におきましては、株主総会において成立しなくても、一定の賛成があったような議案については、会社がその議案内容にかかる具体的な対応をすることがコーポレートガバナンスコードなどにおいても求められており、実務上も、そのような対応が根付いているようで、会社も株主への対話が強制される環境にあるわけですが、日本はそのような状態にあるわけではないので、その辺りのバランスも考えなければならないのではないかと思います。議決権停止を説明するために趣旨を広げていきますと、株主から株式会社への通知を義務付ける制度との趣旨の区別が分かりにくくなるように思われます。例えば大量保有報告書の閾値を下げるなどで対応することも考えられ、そのほうが収まりがよいのではないかと思われます。   現在御提案いただいている内容は、議決権停止がされる場面をかなり限定的に、しかもその手続を重く設計していただいているので、よほどのことでない限り議決権は停止しないものとして、一部の御意見を組み入れる落とし所を狙ったものではないかとは感じているところで、その点はよいように思われますが、制度趣旨とのバランスとしてよいのかは、引き続き慎重に考えるべきではないかと感じております。   実質株主の代理出席の件は、積極的に考えてよいと思われますが、名義株主のどの株式について誰が実質株主として来るのかを事前に会社が知り得るような制度あるいは実務運用ができるようになることを前提に、進めていくべきであると思われます。   次に、株主側からの通知を義務付ける制度でございますけれども、さきほどの制度にかかる御提案も含めて、議決権停止は基本的には抑止効に期待する制度ではないかと思いまして、欧州においても、実際に議決権が停止される事案が頻発しているわけではないと理解しております。しかも、今回の御提案ですと取締役会決議を要求するという重い手続になっており、しかも要件充足の判断を誤れば会社の側にもリーガルリスクがあることに鑑みますと、実際に発動されるのはかなり深刻な事態になったときに限られるのではないかと思われます。   事前に裁判所等を通じて要件の充足を確認するというような実務がないと、なかなか会社としても議決権停止の判断ができないのではないかと思われます。1か月間がそのために十分な期間かということも考慮する必要があると思いまして、実際には、決定の期限までに議決権停止の要件を満たしていることを確実に会社が立証できるだけの証拠方法を持っていない場合には、まずは議決権停止の通知などの措置もとりつつも、当該株主に株主総会で議決権を行使させた上で、議決権が停止している場合とそうでない場合の票を算出し、事後的に検証して、成立させるべき決議は成立する、成立すべきでない決議は成立しないとあらためて宣言し直す、会社が成立したと宣言した決議に異論があれば、議決権停止された者が決議取消しの訴えを起こすという流れになる可能性があります。この場合において、会社が不成立と宣言したものについて争う道がないというのが、問題となるように思われます。   また、決議取消しで争うと、その結果が確定するまでにかなり長い時間が掛かりますが、事前に明らかにする方法がない場合にはそれに頼ることになるので、それでよいのか、という点の検討が必要ではないかと思われました。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○藤田委員 私の方からは第2の1辺りを中心に、若干コメントさせていただきたいと思います。   まず、一番基本的な発想として、会社からの問合せに答えないことについて議決権停止という効果を与えることについて、多くの委員が指摘されたように、会社と株主の対話という目的と整合的か、今なお疑問はありますし、今回の資料は、戦略的な対応という正直よく分からない表現が入っていて、かなり苦しい説明をされているのですが、やはり釈然としない面は残ります。また、会社からの問合せとの関係で議決権停止はないということと併せて、大量保有と連動した株主からの通知義務という会社法上の義務を設けるという、そういう制度の二本立てを構想してきたので、会社側からの照会について答えないことについて議決権停止をするなら、これまでの議論についての重要な前提が変わってくることにもなるという意味で、単なる実効性の強化のために少し工夫しましたという以上の、非常に大きなことを今回提案していることになると思います。その意味でも抵抗がないわけではありません。   ただ、仮に導入するのであれば、議決権停止が生ずるのが過剰にならずに合理的な範囲になることは大前提で、そういう前提で、これまで指摘のあった幾つかの点について個別にコメントしたいと思います。   まず、最初指摘のあった、1(1)カのところに書かれている悪意重過失という要件ですが、正直これはよく分からないところがあって、議決権停止がされた場合の紛争形態は、現行法を前提とすれば、株主が総会決議取消訴訟を起こすことになります。これで足りるかという問題はあるのですけれども、一応現行法だとそうなって、その場合には、株主は自分は議決権行使できるはずなのに行使させなかったから違法であると主張立証することになりますが、一般に取消事由の主張立証は株主側がすべきであるところ、議決権停止の要件の故意・重過失が欠けているという話を誰が証明するかというのは、実はそう自明ではない気がします。正直、私にもよく分からず、混乱しているのですが、これまでの議論では会社が証明責任を負うということを当然の前提で皆さん議論されていたので、以下、一応その前提でお話しします。その場合、現在の制度は基本的には仲介機関は自分の知っていることを答えればいい、知っている情報を出せばいいという作りではありますので、何も通知しない、あるいは誤ったことを伝えた場合に、重過失がないということがどの程度裁判所に認めてもらえるかというと、かなり疑問な気がします。つまり、仮に会社が証明責任を負うとしても、通知しなかった、あるいは誤った情報を伝えたことがはっきり立証できると、それ以上何も証拠が出てこなければ、重過失が事実上推定されているのと同じような状態になるのではないかと思うので、これが殊更に大きな問題だというほどのことはないように思います。   次に、1(1)カのところに書かれた1か月経過したときという要件ですが、こちらはこれ自身が長い、短いということを言うのではなくて、1(1)キの要件と併せて考える話だと思います。つまり、会社から議決権停止の通知をされてから、株主側が情報提供することで議決権停止を防止できるという実質は必ず確保しておかないとまずいと思います。これがないと、情報提供され目的が達成されても、最初からおとなしく従わなければこういうことにならなかったのは自業自得です、そんな悪い株主に対するペナルティーですとでも言わないと、この効果は正当化できず、そうなると反抗的な株主に対するペナルティーといった色彩を帯びる制度になりかねないので、議決権停止制度そのものに強い批判が向けられてもおかしくないことになります。ですから、会社から議決権停止の通知を受けて一定期間内に情報提供すれば議決権停止は防止できるということは確保しておかないといけないと思います。   現在どうなっているかというと、会社からの通知に答えなかったから、会社から議決権停止を通知してから1か月で議決権停止が発生し、違反者による情報提供から議決権停止までの期間が3週間後に解除され、3週間後からは議決権行使できるという形になっているので、要するに、会社から議決権停止と言われて1週間以内に対応すれば議決権停止は防げるという実質になっているわけです。この1週間では足りないのではないかという意見すらあり得るかもしれませんが、少なくとも、これを更に短くするのはあり得ないと思います。1か月の要件を短くすると同時に、この3週間も合わせて短くするという提案なら、まだ検討の余地はあると思うのですが、3週間はそのままで1か月の要件を短くするというのは、会社から通知すれば株主からは対応しようがない形で議決権停止という制度を導入せよと言っているのと同じになり、仮に議決権停止というのをぎりぎりの判断として容認するとしても、余りにも問題がある内容だと言わざるを得ないと思います。   1(1)ケの議決権停止についての決定に取締役会決議を要求することは、これが負担が重いかどうかは私は正直、分からないと思います。仮に情報提供がなかったことが判明する都度、取締役会で決議しなければいけないということを言うと、それは確かに面倒かもしれないのですが、そういう提案なのでしょうか。現在の提案内容を誤解しているかもしれませんが、会社から仲介機関に問い合わせることを決めるときに、もし返事がなければ、あるいはうそを答えてくれば当然議決権停止を求めることをしますという決定を問い合わせる段階ですることが排除されているとは思いませんので、決議の仕方を工夫すれば、それほど不当な負担が増えるという話ではない気がします。   最後に、(2)の確認によって判明した実質株主の代理出席の点ですが、現場での困難ということが一部で非常に強調されましたが、この点についてはおよそ対応が不可能で、それを理由にこの提案そのものを否定できるほどの問題があるのかということ、少なくとも現在生じている面倒以上のことが、それを質的に悪化させるようなことが生じるのかということをきっちり整理した上で考えるべきだと思います。今伺っている範囲だと、いろいろな不都合をランダムに挙げて、導入に反対しているように聞こえます。   例えば、実質株主かどうかの確認の手間ということですが、これは代理出席一般で生じる問題で、現在でも代理株主である代理人に対して委任状と身分を示す書類は当然要求していると思います。どのような書類を証明書として認めるかについても、内規などで限定していることもよく見掛けます。そして、それらも合理的な内容であれば有効だと理解されています。それは今回の提案の下での実質株主の確認でも同様のはずで、むしろ誰が来るか分からない通常の代理人と比べると、この条文経由で来る株主というのは、飽くまで会社が請求して名のり出た株主ということですので、範囲が限定されているわけで、この負担をそこまで強調すべきなのか疑問に思います。   不統一行使に係る話は理解できる面もあって、通常の不統一行使だと、行使する側が何票賛成、何票反対というから、それでいいのですが、実質株主が代理人として議決権行使すると、仲介機関がその代理人分を含めて権利行使するかどうかははっきりしないという問題があるのは、それはそのとおりだと思います。しかし、だからこの制度は導入できないということになるかというと、そうではありません。むしろ仲介機関から実質株主の持っている株式数が明らかにされることを条件に代理行使は拒めないといった形で、この点が明らかにされていることを要件として要求すれば足りる話であり、少し工夫すれば解決できる話だと思います。また、必要があれば仲介機関からの通知に一種の免責的効果、通知されたとおり扱えば議決権の数え間違いということにはならないという扱いを定めればいいということにすることも考えていいかもしれません。   したがって、実質株主による代理行使を合理的に可能にする工夫を一切しないことを前提に、思いつく限りの生じ得る不都合を列挙して、実質株主の代理行使は現実的には実現不可能だとして一切否定するということをすると、そうでなくても批判が少なくない議決権停止制度の導入に対する反発が更に強くなる気がします。この辺りはやはり慎重に、むしろ維持することを前提に、どうすれば合理的な形で制度が導入できるかどうかを検討していただければと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。 ○田中委員 今、藤田委員から立証責任の言及があったので、提案における立証責任の理解について確認したいと思います。私は、事務局による提案の文章はあたかも法律の条文のようなもので、提案の文章が規定している法律効果を主張する側が、その文章における、「これこれの事実があればこれこれの法律効果が生じる」と言っているときの「これこれの事実」を主張立証する責任を負うと理解しています。   例えば、実質株主確認制度の違反に対して会社が議決権停止をするケースについて考えますと、会社がある株主の議決権を停止した上で株主総会の決議を成立させ、それに対して、株主が、会社の議決権停止は違法であったとして決議取消の訴えを提起した場合、名義株主である仲介機関が故意又は重過失で会社に実質株主の情報を提供しなかったということが議決権停止のための要件であり、それは、株主の議決権行使の権利障碍事由ですので、決議取消訴訟においては、会社の側がこの要件について立証しなければならないことになると理解していたのですけれども、それでよろしいのかどうかということです。   外国人を含め、必ずしもそういうことが伝わっていないように思えまして、今の例でも、株主が裁判を起こさなければならないということは、株主が要件を全部主張立証しなければならないことを意味するというという理解に立っているらしい意見を一度ならず伺ったので、もし私の理解で正しいのであれば、そのことを何らかの形で明確にした方がいいように思っております。 ○神作部会長 ありがとうございます。今の点について、事務局から御回答はございますか。 ○相澤関係官 立証責任の分配について事務局としては、今正に田中委員に御説明いただいたとおりの内容で考えておりまして、少し説明が不足していたところもあろうかと思いますので、今後の資料でも明らかにしたいと思います。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。   そろそろ約束の時間になってまいりました。今回、会社の側から実質株主の確認を求めるという制度についても議決権の停止を提案しておりますけれども、御意見を伺った印象ですと、慎重に考えるべきではないかと、少なくとも、もし議決権停止制度を導入するとしてもその範囲を限定したり、手続保障をきちんと検討するという御意見が多かったと思います。こちらについては新提案と申しますか、これまで十分に時間を掛けて議論してきたわけではないと思いますので、今日の議論も参照に、事務局の方で更に御検討していただければと思います。   実質株主確認制度等について御発言の御希望はございますか。もしなければ、今日のところは一通りカバーすべき範囲について御議論をいただいたものとさせていただきたいと思います。   それでは、最後に次回の議事日程等について事務当局から御説明をお願いいたします。 ○宇野幹事 次回の日程でございますけれども、7月22日水曜日の午後1時から午後5時30分までを予定しております。場所は現時点では未定でございますので、改めて御連絡させていただきます。   次回は、今、部会長からもありましたとおり、第2部の株主総会の在り方に関する規律の見直しに関する検討事項の残りのテーマを取り上げて御議論いただきたいと思ってございます。 ○神作部会長 どうもありがとうございました。   それでは、これをもちまして法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会の第15回会議を閉会とさせていただきます。   本日も大変熱心な御議論を頂き誠にありがとうございました。 ―了―