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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和2年11月24日(火)

 今朝の閣議において,法務省案件として,「令和元年度再犯の防止等に関する施策」が閣議決定されるとともに,「令和2年版犯罪白書」が配布されました。
 続いて,私から1件御報告がございます。
 本日,「令和元年度再犯の防止等に関する施策」,いわゆる「令和2年版再犯防止推進白書」を閣議決定するとともに,「令和2年版犯罪白書」についても閣議において配布いたしましたので,御報告いたします。
 まず,再犯防止推進白書は,本年で3回目の年次報告であり,再犯防止推進計画に掲げられた115の施策に関し,令和元年度末までに政府が講じた取組や,再犯防止施策に関する指標の最新データを掲載しています。
 政府においては,刑務所出所者が,出所後2年以内に再び刑務所に入る割合を,平成24年当時の20%程度から,10年後の令和3年までに16%以下にすることを目標として取組を進めてきました。この割合は,近年着実に低下し,直近では16.1%と目標達成まであと僅かとなりました。
 また,特集では,「地方に広がる再犯防止施策」を取り上げ,地方公共団体がそれぞれの地域の実情等を踏まえて実施している再犯防止に関する取組を紹介しています。
 なお,本白書では,各章の冒頭ページと来年1月に発刊予定の市販版の表紙に,少年院在院者等が制作した絵画作品等を掲載しています。改善更生に向けて努力する少年らの作品に触れていただくことで,国民の皆様にとって,再犯防止に関する関心と理解を深めるきっかけになることを期待しております。
 次に,犯罪白書についてですが,最近の犯罪情勢を見ますと,刑法犯の認知件数は,令和元年も減少し,平成30年に続き,戦後最少を更新しました。
 しかし,個別に見ると,強制性交等の認知件数や児童虐待に係る事件の検挙件数が近年増加しており,傷害・暴行等の粗暴犯の認知件数も高止まりの状況にあります。
 薬物犯罪については,大麻取締法違反の検挙人員が急増している上,覚醒剤取締法違反の出所受刑者の5年以内再入率は他の犯罪と比較して高い状況にあります。
 このように,薬物犯罪対策や薬物事犯者の再犯防止は,いまだ課題として存在しています。
 そこで,今回の犯罪白書では,「薬物犯罪」を特集テーマとして取り上げました。
 本特集では,薬物犯罪の動向,薬物事犯者の処遇や再犯の状況等を概観・分析するとともに,薬物事犯者に関する調査を行い,その実態や特徴を検証しました。
 法務省としましては,これらの白書の内容を活用しながら,犯罪者の改善更生・再犯防止のため,より一層効果的な施策を検討・実施していきたいと考えております。
 また,広く国民の皆様においても,近時の犯罪情勢や犯罪者処遇の実情等についての理解を深める資料として,これらの白書を利用していただければ幸いです。

再犯防止推進白書に関する質疑について

【記者】
 大臣の冒頭の御発言でもありましたように,再犯防止推進白書では,出所後2年以内に再び刑務所に入る,いわゆる2年以内再入率の最新値が16.1%となっており,目標値の16%に近づきました。そのことへの大臣の評価をお聞かせください。
 また,内訳を見ると満期釈放者の再入率は依然24.2%となっているなど課題も見られます。こうした課題への今後の法務省としての対応策へのお考えもお聞かせください。

【大臣】
 まず,1点目の御質問でございますが,先ほど申し上げたとおり,政府目標であります出所受刑者の2年以内再入率は,近年着実に低下しており,直近では16.1%となっているところであります。
 これは,政府が,地方公共団体や民間協力者の方々と一丸となって,再犯防止の取組を積極的に進めてきた成果であると考えております。
 2点目の御質問の満期釈放者対策でありますが,この満期釈放者の2年以内再入率については,減少傾向にはあるものの,直近でも24.2%と,仮釈放者の10.4%と比べて2倍以上高い状況にあるわけです。
 そのため,満期釈放者対策は,大変重要な課題でございます。令和元年12月に犯罪対策閣僚会議で「再犯防止推進計画加速化プラン」が決定されたところでありますが,その中でも,満期釈放者対策は,より重点的に取り組むべき課題の一つとされたところであります。
 現在,法務省におきましては,この加速化プランに基づきまして,地方更生保護委員会の保護観察官が刑事施設に駐在するなどし,生活環境の調整を充実強化して出所後の帰住先の確保に努めた上,仮釈放を積極的に運用すること,満期釈放者に対する受け皿等の確保のための,居住支援法人と連携した具体的な支援方策の検討,また,更生保護施設を退所した者に対する継続的な相談支援など,満期釈放者に対する受入れや相談支援等の充実についての検討といった取組を進めているところであります。
 法務省といたしましては,今後とも,地方公共団体や民間協力者の方々との連携を一層深めることにより,満期釈放者対策を始めとした,再犯防止に向けた取組を推進してまいりたいと考えております。

国連人権理事会恣意的拘禁作業部会の意見書に関する質疑について

【記者】
 今回,国連の恣意的拘禁作業部会が,我が国におけるカルロス・ゴーン被告人に対する措置が恣意的拘禁に当たる旨の意見書を発表しました。これに関して大臣の御所見をお願いいたします。

【大臣】
 御指摘の意見書が公表されたことについては承知しているところでございます。
 我が国の刑事司法制度でありますが,個人の基本的人権を保障しつつ,事案の真相を明らかにするために適正な手続を定めて適切に運用されており,そのような制度の下で行われたゴーン被告人に対する我が国の措置は,恣意的拘禁に該当しないと考えております。
 それにもかかわらず,今般,我が国の刑事司法制度を理解せず,ゴーン被告人側の一方的な主張のみに依拠した,明らかな事実誤認に基づく意見書が公表されたことは極めて遺憾であり,到底受け入れることができません。
 そのため,政府として,同作業部会に対し,異議申立てを行ったところでございます。
 今後も可能な範囲で同作業部会に情報提供を行い,事実誤認を正していくところでございます。

入管法改正等に関する質疑について

【記者】
 刑事手続における恣意的拘禁に対する国連の恣意的拘禁作業部会の問題について今質問がありましたが,同様に入管制度については,10月に恣意的拘禁作業部会が,日本政府に対して意見書を出しています。
 それで,今国会でも11月17日に,伊波洋一議員がこの件について質問されたのですが,そのときに髙嶋入管庁次長が国内法令に基づく適切・適正な手続で恣意的拘禁に当たらないと考えると答弁されました。作業部会からは,収容期限の上限設定や,収容における司法審査の導入などについても法改正が必要だといったような言及もあるわけですが,それについては国会での答弁はありませんでした。
 退去強制手続の在り方そのものが,かなり古い,1951年に公布・施行された出入国管理令から基本的に変わっていませんが,そういった状況の中で,入管行政独自の裁量に基づく退去強制手続の運用を適正であり,恣意的ではないと主張し続ける理由は一体何なのかということと,これについて,入管法の改正に当たってどのように反映させていくべきなのか,検討委員会のようなものが必要なのかどうかということについて,大臣の見解をお聞かせください。

【大臣】
 まず,御指摘の答弁におきまして,出入国在留管理庁次長は,御指摘の意見書の対象とされた各収容は法令に基づく適正な手続として行っているもので,これまで,政府として作業部会に対し,恣意的拘禁には該当しないと説明してきている旨述べたものであると承知しております。
 また,現在,出入国在留管理庁におきまして,意見書の内容について,精査・検討を行っているところであると承知しておりまして,私といたしましても,国会で答弁をしたとおり,今回の意見書の内容について十分に精査をした上で,関係省庁と連携しながら適切に対応してまいりたいと考えているところでございます。
 現在,出入国在留管理庁におきまして,「収容・送還に関する専門部会」の御提言を踏まえた入管法改正について必要な検討を行っているところでございます。長期収容等の問題に関する様々な御意見がございますが,そうした御意見にも耳を傾けながら,これからの我が国にふさわしい出入国在留管理制度の実現に向けまして,しっかりと検討を進めてまいりたいと考えております。

【記者】
 今の点ですが,退去強制手続の在り方そのものが,正に朝鮮戦争時の1951年に公布・施行された出入国管理令とほとんど変わっていないという状況があります。これからの時代とおっしゃいますが,これだけ世界中で難民の移動が激しくなっている時代に,国際人権法を尊重するという,そういった観点がやはり新たに必要だと思うのですが,そういった点については,今回の入管法改正,特に退去強制手続に反映する必要があると大臣はお考えでしょうか。

【大臣】
 先ほども申し上げたところでありますが,退去強制手続の対象となった外国人の収容等につきましては,入管法に基づいて適切に実施されているということでありまして,個別の事情を考慮して相当である場合には,一時的に収容を解除する仮放免の措置を執るなどしているところでございます。
 我が国におきましては,人権に十分に配慮しつつ,適正な手続のもとで適切に運用するということで,収容等を行っているところですので,その意味で,これからも適切に対応してまいりたいと思っております。
 また,先ほど申し上げたとおり,出入国在留管理庁におきまして,「収容・送還に関する専門部会」からの御提言をいただきました。入管法改正に当たりましては,この御提言にしっかりと検討を加えながら,また,様々な御意見に耳を傾けながら,これからの日本の国にふさわしい形で出入国在留管理制度の実現に向けて取り組んでまいりたいということを改めて申し上げたいと思います。
(以上)