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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和2年12月25日(金)

 今朝の閣議において,法務省案件はございませんでした。
 続いて,私から4件御報告がございます。
 まず1件目は,京都コングレスについてです。
 今週月曜日12月21日に官邸で開催されました第9回SDGs推進本部会合において,「SDGsアクションプラン2021」が決定され,その中の重要な取組といたしまして,京都コングレスの開催とフォローアップが位置付けられました。
 SDGsのターゲットイヤーである2030年までの10年間は,SDGs達成のための取組のスピードを速め,規模を拡大する「行動の10年(Decade of Action)」とされております。
 法務省は,「司法外交」を推進することで,法の支配の確立に力を尽くし,SDGs達成に貢献してまいります。
 その最初のマイルストーンが,SDGs採択後初のコングレスとして開催される京都コングレスであります。
 京都コングレスでは,ポストコロナの時代に,「法の支配」を基盤とした「誰一人取り残さない社会」を実現する上で刑事司法が果たすべき役割等について議論し,国連及び加盟国の中長期的な指針となる京都宣言を採択いたします。これにより,SDGsの達成に向けた第一歩を力強く踏み出したいと考えています。
 先日,各国の閣僚に対して,私から京都コングレスへの招待状をお出しいたしました。また,世界に向けたメッセージを英語でホームページに掲載したところです。
 京都コングレスは,コロナ禍において初の大規模国連会議であります。その開催に当たりましては,主催者である国連や関係省庁と協議し,オンライン・テレビ会議システムを活用して,来場での御参加とオンラインでの御参加を組み合わせたハイブリッド方式での開催を予定しています。
 感染症対策に万全を期し,安全・安心に会議を開催するため,関係省庁や国連と連携しつつ,準備業務を更に加速させていく所存です。
 次に2件目は,「法務・検察行政刷新会議」についてです。
 昨日12月24日でありますが,法務・検察行政刷新会議の鎌田座長から,会議における議論の内容を取りまとめた報告書の提出を受けました。
 法務・検察行政刷新会議は,国民から信頼される法務・検察行政の在り方について御検討をいただくため,森前大臣が立ち上げられ,私が引継ぎを受けた会議です。
 構成員の方々には,多角的な観点から,熱心に御議論をいただいたものと認識しておりまして,鎌田座長を始めとする皆様の御尽力に対しまして心から敬意を表するとともに,感謝を申し上げる次第であります。
 提出いただきました報告書には,3つの検討の柱,すなわち,検察官の倫理,未来志向での法務行政の透明化,我が国の刑事手続について国際的な理解が得られるようにするための方策,こうした柱に沿いまして,構成員の間で方向性として意見が一致した事項に加えまして,構成員間で意見の隔たりがあった事項につきましても,今後の法務・検察における検討の素材となり得る様々な御意見を盛り込んでいただいたものと聞いております。
 様々な分野の知見を有する外部有識者の方々から幅広い御意見をいただきましたことは,今後の法務・検察における検討をより一層活発なものにする観点から,大変有益であると考えています。
 私は,厳しい声も法務・検察に対する期待と愛情のあらわれと考えておりまして,報告書の内容を真摯に受け止め,法務・検察として,国民の皆様からより一層信頼を得るためどのような具体的取組をすべきかにつきまして,速やかに検討いたします。そして,来年1月には方向性を定めまして,その内容を御報告させていただきたいと考えています。
 続いて3件目は,「在留カード等読取アプリ」のリリースについてです。
 出入国在留管理庁は,在留カードと特別永住者証明書のICチップデータを読み取るアプリケーションを開発しました。
 このアプリにつきましては,スマートフォンやパソコンで利用可能であり,本日から同庁のホームページなどにおきまして順次無料配布いたします。
 このアプリの利用により,在留カード等のICチップ内に保存されている身分事項や顔写真等の情報と券面の記載を見比べることが可能となり,極めて容易にかつ確実に偽変造の有無を確認できるようになります。
 出入国在留管理庁では,これまでも,券面の偽変造防止対策や在留カード等番号失効情報照会の運用等,様々な偽変造在留カード対策を講じてまいりました。
 これらに加え,外国人を雇用する事業主の皆様などにこのアプリを広く御利用いただくことによりまして,偽変造在留カード対策をより一層進めていきたいと考えています。
 出入国在留管理庁におきましては,今後,事業主の皆様にこのアプリを広く利用していただくための様々な取組を行っていきたいと考えており,例えば,先日発足しましたFRESC(フレスク)の関係機関等とも連携し,各種セミナーや説明会等のイベントにおいて,このアプリを御紹介する予定です。
 なお,出入国在留管理庁では,このアプリの操作方法や,偽変造在留カードを券面で確認する方法について紹介する映像を制作中であります。来月中に,同庁ホームページなどでこれを公開することを予定しています。
 最後に,法務省関連の新型コロナウイルス感染症の感染状況について申し上げます。
 12月18日金曜日の会見後からこれまでに,職員について,東京法務局1名,広島保護観察所1名,東京拘置所3名,水戸地方検察庁2名,東京地方検察庁1名,岡崎医療刑務所1名,計9名の感染が判明しました。詳細は既に公表されているとおりです。
 なお,被収容者の感染判明はございませんでした。

「桜を見る会」に関する質疑について

【記者】
 安倍晋三前首相の後援会が主催した「桜を見る会」の前夜祭をめぐり,公職選挙法違反と政治資金規正法違反の両容疑で告発されていた安倍氏について,東京地検特捜部は24日,いずれの容疑も不起訴処分,嫌疑不十分としました。これについて大臣の受け止めを教えてください。

【大臣】
 御指摘の事案について,検察当局は,昨日12月24日,安倍晋三衆議院議員の公設第一秘書を東京簡裁に略式命令請求するとともに,安倍晋三衆議院議員らを不起訴処分としたものと承知しております。
 個別事件における検察当局の事件処理について,法務大臣として所感を述べることは差し控えさせていただきます。

検察審査会の議決に関する質疑について

【記者】
 東京高検の黒川弘務元検事長が知人の新聞記者らと賭け麻雀をしていた問題で,賭博容疑で告発された黒川氏を不起訴(起訴猶予)とした東京地検の処分に対し,検察審査会は「起訴相当」の議決をしました。大臣の受け止めを教えてください。

【大臣】
 御指摘の事件に関しまして,昨日12月24日,検察審査会が起訴相当の議決をしたことは承知しております。
 個別事件に関する検察審査会の議決につきまして,法務大臣として所感を述べることは差し控えさせていただきます。

京都コングレスに関する質疑について

【記者】
 京都コングレスについてお伺いします。ハイブリッドでの開催ということで,実際に入国される方がいらっしゃるという形になりますが,準備状況とコロナ対策,そして,現在感染が拡大する中での開催の意義を改めて教えてください。

【大臣】
 今日で京都コングレスまで残り72日となりまして,準備業務も最終段階に入っている状況です。
 コロナ禍においての開催ということになりますので,ハイブリッドでの開催も含めまして,万全な体制がとれるよう,更に気を引き締めて取り組んでまいりたいと思っております。
 先ほども申しましたが,京都コングレスの開催に当たりましては,オンライン・テレビ会議システムを活用いたしまして,来場参加とオンライン参加を組み合わせたハイブリッド方式での開催を予定しているところです。
 また,京都コングレスの重要性に鑑み,各国のハイレベルを中心とする必要最小限の方々に限り,海外からの参加を可能とするため,例外的に入国を認め,入国後の自主待機に替わる特別措置を講じる方向で,準備を進めているところであります。
 特別措置に当たりましては,会場における感染症対策の徹底はもちろんのこと,来日参加者用に宿舎を借り上げさせていただきます。また,移動には専用のシャトルバスを御利用いただくなど,来日参加者と開催地京都を始めとする日本の皆様双方に御安心いただけるよう,感染防止策について徹底してまいりたいと思っております。各国のハイレベルに是非とも来場参加していただけるよう,国連や関係省庁,地元京都の自治体と協議を進めている状況でございます。
 新型コロナウイルス感染症の収束につきまして,なかなか先が見通せない状況でありますが,人や物の国際的な流れが分断しているこのタイミングにおきまして,いかに今後の国際協力を進めていくか,その在り方,あるいはポストコロナ時代における法の支配に基づく国際社会の発展につきまして,各国が真剣に議論を行うことには大変大きな意義があると思っているところでございます。
 繰り返しになりますが,京都コングレスは,コロナ禍におきまして初の海外からの参加者を迎えて行う大規模な国際会議となるところです。来年は夏に東京オリンピック・パラリンピック競技大会も控えているところであり,京都コングレスを安全に開催・成功させ,日本のコロナ禍からの着実な立ち上がりと安全性・ホスピタリティを世界にアピールしてまいりたいと考えております。
 先ほど申し上げたように,準備業務も最終段階に入ったというところです。何といってもホスト国として,今後の新型コロナウイルス感染症の感染状況を注視しつつ,関係者の皆様等としっかり連携して,京都コングレスの成功に向けて準備を加速してまいりたいと思っております。

カルロス・ゴーン被告人の逃亡に関する質疑について

【記者】
 カルロス・ゴーン被告人の逃亡から間もなく1年となりますが,そのことに関する大臣の御所感と,改めて,今後法務省としてどのように取り組まれていくかお聞かせください。

【大臣】
 ゴーン被告人は,裁判所の保釈条件に違反して我が国から逃亡し,刑事裁判そのものから逃避したものでございます。
 これは,どの国の制度の下でありましても許されない行為と認識しており,申すまでもございませんが,ゴーン被告人は,我が国の裁判所において裁判を受けるべきと考えております。
 今後の取組の詳細をお答えすることについては差し控えさせていただきますが,いずれにせよ,当省といたしましては,引き続き,外交当局と情報共有しながら,関係国・関係機関等ともしっかりと連携し,でき得る限りの措置を講じてまいりたいと考えております。

川口市長の要望に関する質疑について

【記者】
 一昨日12月23日ですが,埼玉県川口市の奥ノ木市長が大臣にお会いして,仮放免中のトルコ国籍の外国人,主に難民申請中のクルド人が大半だと思うのですが,その方の就労許可や健康保険の適用など,国の責任で公的な生活支援を求める要望書を提出し,そのことが報道されました。
 トルコ国籍のクルド人の方たちについて,20年以上難民申請が続いているのですが,一人も難民認定されていない状況です。
 多くのクルド人とその家族には,仮放免状態で,コロナ禍の中で在留資格のある親族や日本人支援者からの経済的支援を受けることもできないということで,生活困窮に陥っている方がいます。
 これは,クルド人コミュニティに限ったことではなくて,仮放免中の難民申請者全体に言えることなのですが,就労もできず,居住地の地方自治体の公的サービスを受けることもできない,生活困窮の状態にあるということは今までも何回も質問させていただいたのですが,民間のNGO団体がいろいろ緊急支援等をしてきましたが,それも限界だと思います。
 今回,川口市長からこういった要請を受けて,仮放免者の緊急支援対策の必要性を大臣は感じたのかどうかということ,そしてその要望内容に対して,どのような緊急対策をこの年末年始にやるべきだとお考えでしょうか。

【大臣】
 一昨日12月23日,埼玉県川口市の奥ノ木市長が法務大臣室にお見えになり,市長から,仮放免中の外国人の生活維持に関する要望書を受け取らせていただきました。また,川口市内の外国人の様々な状況につきましても,限られた時間でございましたが,貴重な報告を頂くことができました。
 私からは,御要望及び御説明に対しまして,心から感謝を申し上げ,改めて制度や運用の改善に向けて検討を進めている状況についても報告させていただいたところです。
 今回御要望がございました点も含めまして,仮放免中の外国人をめぐる様々な御指摘・御意見については,かねてから,私としても重要な問題として受け止めさせていただいております。
 現在行っております入管法改正案の検討におきましても,仮放免の状態が長期化する外国人が生じている状況を解消することにつきましては優先課題の一つとして位置付けておりまして,速やかに立案作業を進めてまいる所存でございます。
 御指摘の困窮する外国人の方々への対応ということでありますが,出入国在留管理庁におきまして,仮放免中の外国人が生活に困窮するなどの問題がある場合につきましては,所轄の地方官署等に御連絡・御相談いただきまして,個別にきめ細やかな対応をとることとしているところであります。
 また,仮放免中の外国人を含めまして,コロナ禍の下で問題を抱えている外国人の方々につきましては,所轄の地方出入国在留管理局,又は外国人在留支援センター(FRESC:フレスク),これは無料の電話相談を受け付けているところでありますので,こちらに御相談を是非していただきたいと思っております。
 なお,コロナ禍において,外国人が直面する問題につきましては,現在,政府全体として,必要な情報を収集した上で対応方針について検討を行っており,法務省といたしましても,関係省庁と連携しながら,積極的に取り組んでまいりたいと思っております。
 年末年始のこの時期,それぞれ困難を抱えている外国人の方々には是非御相談いただいて,そしてしっかりときめ細やかに対応してまいりたいと思っておりますので,先ほど申し上げたところに,詳細は様々なチャンネルで御覧いただけると思いますが,是非御相談をしていただきたいと思っております。

【記者】
 各地方入管局やFRESC(フレスク)ですとか,あるいは地方団体に相談してくださいということなのですが,それでも対処しきれないということで,昨日の奥ノ木市長の申入れもあったと思います。
 要するに,健康保険の問題にしても,それから就労不許可にしても,やはり国の入管制度がそういうふうになっているからできないのだと。だから,そこをまず改善してほしいという要望だったと思います。
 あるいは,仮放免の中には技能実習生などもたくさん,在留期限が切れて仮放免の状態で,帰国もできないし就労もできない,在留資格がある人でも日本語の壁があるのでなかなかアルバイト,資格外就労を見つけることができない,そういった状況で,民間のお寺とかそういうところに駆け込んでいる方がたくさんいらっしゃいます。
 国として,法改正を待つのでなく,臨時にきちっと今打てる対策を打つべきだと思うのですが,それについては大臣はどのように考えていらっしゃるのでしょうか。

【大臣】
 今,御指摘いただきましたように,様々なプラットフォームで皆さん相談したり,また支援を行っていらっしゃるという状況でありますが,コロナ禍によりまして仕事を失うなどの困難な状況に至った技能実習生や留学生については,出入国在留管理庁におきまして,在留資格に関する特例措置や,再就職先に関するマッチング支援などの様々な支援を実施しているところであります。
 是非御相談いただいて,一人一人のケースについて,きめ細かく対応してまいりたいと思っておりますので,その点について触れさせていただきたいと思います。
 また,退去強制処分を受けて仮放免中の状態にある外国人の方々もいらっしゃいます。処分に従い早期に帰国していただくことが何よりも重要でございますが,航空便の状況等によりまして,なかなか帰国が困難な方々も多いというのが実態であります。
 そのことを受け,出入国在留管理庁におきましては,関係省庁とも連携しながら,関係国と調整した上で,国費による送還を積極的に実施するなど,こうした外国人の方々の速やかな帰国のために必要な取組に力を尽くしているという状況でございます。
 また,先ほど申し上げたところではありますが,仮放免中の外国人の方々が生活に困窮するなどの問題がある場合におきましては,所轄の地方官署等に御連絡・御相談いただきたいと思っております。個別にきめ細やかな対応をするということでございますので,先ほど申し上げた帰国のための支援も含めまして,御相談に対応させていただきたいと思っております。仮放免中の外国人の方々,留学生の方々や技能実習生の方々,コロナ禍の中で困難を抱えている方々におきまして,関係する地方自治体,支援団体の方々,また地方出入国在留管理局,あるいはFRESC(フレスク)におきまして,そうした相談にしっかりと対応するよう今動いているところでありますので,是非御連絡いただきたいと思っております。

【記者】
 今,大臣がおっしゃったようなことが,やはり現実的にきちっと対応できていないので,奥ノ木市長も緊急に申入れをしたということだと思うのですが,それに対するお答えにはなっていないと思うのですが。
 実際,在留資格の問題,在留特別許可の問題なども関わってくると思いますし,仮放免中の就労許可,それから公的支援を地方自治体から受けることができる,そういった具体的な対応が必要だと思うのですが,そういったことに対して取り組むお考えは大臣はないということでしょうか。今の考えを聞いていると,全く今の状況でいいというふうにしか受け取れないのですが,いかがでしょうか。

【大臣】
 奥ノ木川口市長から現実,実態についてお話を伺いました。
 その要望事項の中には,仮放免者が市中において最低限の生活維持ができるように,例えば,複数人によって仮放免者の身元を保証する仕組みの導入などの就労を可能とする制度を構築していただきたい,また,生活維持が困難な仮放免者につきまして,入国管理制度の一環として,健康保険その他の行政サービスについて,国の責任において適否を判断していただきたいと,こういう御要請がございました。
 今,申し上げたのは,困難なコロナ禍の中での対応ということで,まず御相談いただくというのが大事だというふうに申し上げたところであります。
 奥ノ木川口市長からの要望につきましては,これは出入国在留管理制度全体の検討の中で,今,様々な提言を織り込みながら,仮放免の在り方もその検討対象としているということでございまして,これについてはしっかりと検討してまいりたいと思っております。「明日やれ」というわけにはまいりませんので,こういったこともしっかりと受け止めさせていただきながら,また,各自治体における取組についても,川口市以外の広範な部分につきまして意見を聴取しながら対応してきたところでありますが,そうした取組については,更に力を入れてまいりたいと思っているところであります。
(以上)