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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和3年6月15日(火)

 今朝の閣議においては,法務省案件として,主意書に対する答弁書が1件ありました。
 続きまして,私から1件報告がございます。
 本日,関係閣僚会議において,「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」を改訂いたしました。
 新たな施策のうち,主なものを紹介しますと,まず,共生社会の実現に向けた取組を着実に進めていくため,中長期的な課題や方策等を示した工程表を策定することを盛り込みました。また,新型コロナウイルス感染症への対応として,外国人が多く在籍する教育機関や職場において,簡易キットを活用した積極的な抗原検査や,迅速かつ機動的なPCR検査を実施すること,在留外国人に対し,ワクチン接種の案内を確実に届けるため,出入国在留管理庁と厚生労働省が連携して住居地情報を整備すること,外国人の自発的なワクチン接種を推進するため,外国人在留支援センター(FRESC/フレスク)での多言語相談を積極的に実施することなどを盛り込んでいます。
 法務省としては,引き続き,在留外国人を孤立させることなく,社会を構成する一員として受け入れていくという視点に立ち,総合調整機能を発揮しながら,関係省庁と共に,この対応策に基づいて,着実に取り組んでまいります。

第204回通常国会を振り返っての所感に関する質疑について

【記者】
 通常国会は6月16日に会期末を迎える見通しです。今国会を振り返っての所感をお願いします。

【大臣】
 今国会におきましては,法務省関連法案や法務行政について,長時間にわたり,丁寧かつ熱心に御審議いただきました。提出いたしました5件の法務省関連法案のうち4件,すなわち裁判所職員定員法の一部改正法,少年法等の一部改正法,民法等の一部改正法,相続土地国庫帰属法を成立させていただきました。
 これら成立した法律はいずれも国民生活に直結する重要なものでございまして,今後,施行に向けた準備に万全を期すとともに,適正な運用に努めてまいりたいと考えております。
 入管法等の一部改正法案につきましては,今国会での成立には至っておりませんが,送還忌避や長期収容の解消は,喫緊の課題であり,法務省として,この課題の解決に向け,あらゆる対応を執ってまいりたいと考えております。
 今国会の審議では,法案以外にも,水際対策などの新型コロナウイルス感染症対策,性犯罪・性暴力,不当な差別・偏見などにより,その人権が傷つけられた方々に対する取組,夫婦の離婚等に伴う子どもの養育の在り方や,夫婦の氏の問題などの民事法制における課題,コロナ禍における在留外国人の支援や名古屋出入国在留管理局において被収容者が亡くなられた案件を始めとした出入国在留管理行政における課題など,多岐にわたる法務行政についての御質問を頂きました。
 私は,こうした法務行政の課題につきまして,法務大臣所信や質問に対する答弁を通じまして,私自身が考えていることを率直にお話しさせていただき,真剣に,また丁寧に説明してきたところでございます。
 中でも,名古屋出入国在留管理局におけるスリランカ人女性の死亡事案につきましては,国会審議等で様々な御指摘を頂いており,出入国在留管理庁に対し,頂きました御指摘をしっかりと受け止め,十分な内容の最終報告書をできる限り速やかに取りまとめるために最大限の努力をするよう指示を行っているところでございます。
 現在,出入国在留管理庁におきましても,第三者の方々とともに,調査・検討に全力を挙げているところでございます。
 今国会会期中の本年3月には,京都におきまして,第14回国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)が,来場参加とオンライン参加を組み合わせたハイブリッド型の国際会議として開催され,成功裏に終えることができました。
 具体的には,いずれも過去最多となる152の加盟国から,オンライン参加も含め約5600人の参加登録がございまして,ポストコロナ時代に向けた新たな大規模国際会議の在り方の一例を示すことができました。
 成果文書として採択されました「京都宣言」では,法の支配が,持続可能な開発や「誰一人取り残さない」社会の実現の礎となることが確認され,また,SDGs達成に向けた国連や加盟国による犯罪防止・刑事司法分野における取組の指針が示されたところでございます。
 今後は,国際社会における法の支配の確立を目指す「司法外交」の取組として,京都宣言の実施にリーダーシップを発揮していく所存でございます。
 また,国際機関や各国との連携を強化しつつ,「司法外交」を次のステージに進めてまいりたいと考えております。
 国民生活の安全・安心の実現を使命とする法務行政におきましては,国会閉会後も,その取組を推進していかなくてはなりません。
 国民の皆様の声や実務のニーズ,様々な国民の皆様の期待に応えることができるように,一つ一つの課題に対しまして,迅速かつ着実に取り組んでまいりたいと考えております。

名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案等に関する質疑について

【記者】
 今言ったスリランカ人女性の案件についての最終報告が五輪開催前にできるかという点と,関連で,難民認定を求めていた67歳の中国人男性の方が,糖尿病等を患っていたため,その娘の方が何度も対応を求めていたものの,入管当局が早期に対応せず亡くなったということで,昨年末,その娘の方が損害賠償を求めて,国を提訴していたことが報じられました。
 娘の方は,日本は難民条約の締約国であり,外国人への思いやりがあると思っていたがだまされたんだと訴えておられます。
 スリランカ人女性の案件を始め,入管庁での医療対応の問題が改めて問われ続けていると思いますが,この点,大臣の受け止めをお願いいたします。

【大臣】
 最終報告についての御質問でございますけれども,今回の中間報告以降も様々な御質問・御指摘がございまして,先ほど申し上げましたとおり,第三者の方も交えまして,今最終的な取りまとめの段階にあるところでございます。
 現時点で,取りまとめの時期について確定的なことを申し上げるということはなかなか困難でございますが,先ほど申し上げましたとおり,これは可能な限り速やかに取りまとめるようにということで,重ねて指示をしているところでございます。入管庁においても,その指示にしっかりと応えて対応しようと努力しているところでございます。
 2点目でございますが,お尋ねの報道については承知をしているところでございます。出入国在留管理庁から報告を受けているところでは,入管当局は,亡くなった方に糖尿病等の持病があったために,収容開始の翌日以降,外部の病院にお連れして診療を受けさせるなどし,その後,入院をさせる措置を執ったところ,この方については入院10日目に,病院内で亡くなったということでございます。
 現在訴訟中の案件でございますので,これ以上の詳細につきましては,お答えを差し控えさせていただきたいと思います。

選択的夫婦別氏制度に関する質疑について

【記者】
 選択的夫婦別氏制度についてお伺いします。
 自民党では,別氏制度の導入を推進する議員連盟と導入に慎重な議員連盟の双方が,先日それぞれ中間取りまとめや決議をまとめました。
 上川大臣は,選択的夫婦別氏制度について,以前も国会で「各党での検討を含む,国会での議論,こういったことが充実したものとなるように取組を続けてまいりたい。」との答弁をされていたと思いますが,改めて法務省としての見解をお聞かせください。

【大臣】
 夫婦の氏の問題につきましては,長い間,大きな論点として社会の中でも議論されてきたところでございます。御指摘のように,自民党内におきましても,複数の議員連盟あるいは勉強会等で様々な検討がなされていることについては,これも多くの報道がなされているところでございます。
 夫婦の氏の問題につきましては,国民それぞれが有する家族観や国民感情にも影響を及ぼしうるものであるという意味で,私自身,家族の在り方に関わる問題であると申し上げているところでございます。
 それゆえ,この問題につきましては,国民的な幅広い議論を踏まえ,意見の集約が図られることが望ましいと考えております。
 法務省といたしましては,国会における議論が充実したものとなるように,法制審議会での検討の経過や最近の議論状況等につきまして,積極的に情報提供をするなど,できる限りの協力をしているところでございます。
 こうした協力の取組を続けるとともに,引き続き広報・周知を徹底するなどの環境整備にも努めてまいりたいと思っております。

チャーター機による集団送還等に関する質疑について

【記者】
 2014年12月に,難民不認定の処分の異議申立の却下と同時に,その翌日に,チャーター便でスリランカに強制送還された方がいらっしゃいました。
 その国賠訴訟について,今年の1月13日に,名古屋高裁で,男性の訴えを認める判決が出まして,慰謝料等を国に対して支払えという判決が確定しました。
 このチャーター便の強制送還というのは,2013年から始まって,これまでスリランカ,ベトナム,バングラデシュ,タイ,中国などを送還先として行われてきました。今回の名古屋高裁判決のように,難民不認定の告知の直後に強制送還されたり,他の家族が日本にいるということで行政訴訟準備中に強制送還された入管収容中の方もおり,そういった事態が続いています。
 今回の1月の名古屋高裁判決を受けて,裁判の機会を奪うような強制送還を中止するように,法務省・入管庁は手立てを講じたのかどうかということが1点。
 それから,今対象国を挙げましたけれども,チャーター便による強制送還の対象国というのは,技能実習生や留学生の受入れが多い国なのですが,どのような基準や理由でその対象国を選んでいるのかという点。
 それと,チャーター便で強制送還できる国の出身者だから,入管の長期収容が続いているというケースはないのかどうか。
 この3点について伺います。よろしくお願いします。
 ちなみにこの強制送還のことも,先ほど大臣がおっしゃっていた外国人材についての関係閣僚会議の項目の中に含まれていますので,是非大臣のお答えをよろしくお願いします。

【大臣】
 まず,1点目の名古屋高裁の判決につきましては,出入国在留管理庁においても,その判決をも踏まえまして,送還の実施に際しては,手続上の教示・告知を適切に行い,訴訟の提起や弁護士との連絡などの御希望があった場合は,速やかにその機会を与えるなど,適正手続への十分な配慮を徹底することとし,これを実施しているとの報告を受けているところでございます。
 2点目の集団送還の対象国をどのような基準で決定しているのかというお尋ねでございますが,正にそうした点を明らかにした場合には,今後の送還業務に支障を生ずるおそれがあるとの報告を受けているところでございまして,私がお答えすることにつきましても,適当ではないと考えております。
 3点目の長期収容と集団送還との関係についてのお尋ねにつきましては,収容期間は,仮放免の当否などの個々の被収容者の事情により定まるものでございまして,集団送還の実施対象国であるために収容が長期化するという関係があるとはいえないとの報告を受けているところでございます。
 いずれも詳細につきましては,出入国在留管理庁にお尋ねいただきたいと思っております。

特定技能制度の施行後2年の見直しに関する質疑について

【記者】
 入管の関連で話題変わりますが,特定技能制度についてお伺いいたします。
 制度の導入から既に2年が経過しました。改正法では,施行から2年をめどに見直しを検討するとされていますが,現在の見直しの検討状況を教えてください。

【大臣】
 特定技能制度は,本年4月で施行から2年となりました。この1年余りの間に,新型コロナウイルス感染症がございまして,その影響によりまして,海外からの特定技能外国人の受入れについては,相当期間停止しているところでございます。
 今後,感染症による特定技能外国人の受入れへの影響を含めまして,制度の施行状況を把握・分析した上で,様々な方々の意見を伺いながら,特定技能制度の在り方につきましても,総合的に検討を行ってまいりたいと考えております。
 制度が施行されてから2年を経過しているわけでありますが,情報もなかなか少ない中で,分析・検証していくという作業でございますので,しっかりと丁寧に行ってまいりたいと考えております。PDCAをしっかり回すという中で,一番大事なフェーズに入っていると思っておりますので,しっかりと対応してまいりたいと思っております。

在留カード等読取アプリケーションに関する質疑について

【記者】
 先週も質問があったと思いますが,在留カードの読取アプリについてです。このアプリがプライバシーという大変大切な人権に関わるものであるにもかかわらず,一般に無限定に公開されていて,なおかつ間違った使用というか,悪用も含めて,それに対する歯止めが設けられていないのはなぜなのでしょうか。その理由をお聞かせください。
 もう1点,このアプリは一般に無限定に公開して誰でも使えるようにするという形になっていますが,これは一般市民に,外国人の監視やチェックを奨励するものというふうにも映ります。
 これがその運用を正しくするとかしないとか以前の問題として,こういう公開の在り方自体が,外国人への偏見や差別を助長するものというふうに言えます。
 先ほどもお話がありましたけれども,ヘイトスピーチを許さない,あるいは多文化共生社会を目指すということをおっしゃっている大臣が,このアプリのこと,無限定に公開していることについて問題視しないのはなぜなのでしょうか。その理由2点をお聞かせください。

【大臣】
 まずこのアプリでございますが,ICチップ内に記録されている情報を,在留カードと同じ形状で画面に表示するためのものでございまして,正規の在留カードであれば,在留カードそのものの映像が改めてアプリ上にも表示されるにすぎないものでございます。
 また,在留カードの提示におきましては,外国人の明示的な同意が必要でございます。
 本アプリは,在留カードの偽変造の有無を容易に確認することができるものでございまして,カードの偽変造が非常に精巧となっていることへの対策として,不可欠のものとして公開しているものでございます。
 在留カードが個人事業主を含む事業主が外国人の方々を雇用する際,あるいは金融機関や携帯電話事業者が諸取引を行う際など,様々な場面で外国人の本人確認の手段として機能しているということを踏まえますと,このアプリにつきましては,広く利用していただきたいと考えております。
 本アプリは,先ほど申し上げましたとおり,在留カードそのものをアプリ上に表示させるにすぎないものであるとともに,在留カードの提示におきましては,従来と変わることなく,外国人の方々の明示的な同意を必要とするものでございます。
 そのため,2点目の質問に関わるものでありますが,アプリの導入が過度な干渉等をあおっているなどの御指摘は当たらないと考えており,運用する中で,必要な広報,そして周知の在り方についてはしっかりと検討してまいりたいと思っております。
 詳細につきましては,出入国在留管理庁にお問い合わせいただきたいと思っております。
(以上)