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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和3年7月20日(火)

 今朝の閣議におきまして,法務省案件はございませんでした。
 続きまして,私から2件報告をいたします。
 まず,1件目として,静岡県熱海市への刑事施設職員の派遣について申し上げます。
 本年7月3日に,静岡県熱海市で発生しました大規模土石流による災害からの復旧のため,いわゆるプッシュ型支援といたしまして,熱海市に支援を申し入れ,同月18日から,矯正局特別機動警備隊19名を派遣しています。
 派遣隊員は,熱海市及び熱海警察署と連携して,熱海市伊豆山地区の捜索活動エリア近辺の交通規制及び立入制限区域の規制などの支援活動を実施しています。
 法務省といたしましては,引き続き,自治体や関係機関との連携のもと,被災地域の一日も早い復旧の一助となるよう,支援活動を進めてまいります。
 2件目でありますが,我が国で出生した無国籍の子について,緊急に調査をいたしましたので報告いたします。
 出入国在留管理庁では,過去5年間に我が国で出生した無国籍の子,約300人のデータをサンプルとして抽出し,国籍取得状況等について,調査・確認を行いました。
 その結果,無国籍となった主な理由は,国籍を立証する資料が不足していたこと,駐日大使館等での手続のみでは国籍取得が完了せず,本国の国籍・市民権担当行政機関での手続が必要であったことであると判明しました。
 また,国籍取得状況について確認した結果,約8割の方は,駐日大使館や本国の行政機関での手続の完了などにより,国籍が確定しており,また,年齢が上がるに従って無国籍状態の方の割合が減少していく実態も明らかになりました。
 これらの結果を踏まえまして,出入国在留管理庁では,FRESC等の相談窓口や在留諸手続の窓口におきまして,国籍取得の手続が未了となっている外国人の方を認知した際には,駐日大使館等への届出を適切に行えるよう案内するなど,より丁寧な説明を行うこととしました。
 出入国在留管理庁におきましては,外国人が無国籍であることを理由として不利益を被ることのない取扱いを行っており,その他の行政サービスについても,外国人が無国籍を理由に不利益を被ることのないよう関係機関と連携して対応するとともに,FRESC等の相談窓口や入管法上の取扱いについて,積極的な広報等を行ってまいりたいと考えております。

「黒い雨」訴訟に関する質疑について

【記者】
 「黒い雨」訴訟についてお尋ねします。
 原爆投下直後に降った「黒い雨」を浴びた原告84人が被爆者認定を求めた訴訟で,広島高裁は7月14日の判決で84人全員を被爆者と認定しました。被告は広島県や広島市ですが,国も補助参加しており,県と市からは厚生労働大臣に上告しないことを認めてほしいとの要請もありました。
 国関連の訴訟を所管する法務大臣として,判決の受け止めや今後の対応を教えてください。

【大臣】
 御指摘の「黒い雨」訴訟につき,先日(7月14日),広島高裁において,国側の控訴を棄却する判決が言い渡されたことは承知しております。
 今回の判決については,国側の主張が認められなかったものと受け止めております。
 今後につきましては,判決の内容を十分に精査し,関係省庁並びに広島県及び広島市と協議の上,適切に対応してまいりたいと考えております。

五輪における水際対策に関する質疑について

【記者】
 五輪に関連してお聞きします。五輪まであと3日ということですけれども,9万人を超える選手団や大会関係者が入国してくる中で,政府が進めている水際対策,これが十分機能していなく,バブル方式も様々な場面で崩壊していることが,各種報道で次々と明らかになっております。
 先週,水際対策で安全・安心な大会を開催していくという,大臣の発言があったと思いますが,選手団やスタッフ,大会関係者61人が感染し,五輪のバスの運転手らも発熱するなど,安全・安心な大会となっていないことが指摘されています。
 大臣はこの状況下でも,安全・安心な大会は可能だと本気で思っているのか,その根拠は何なのか,お聞かせください。

【大臣】
 法務省は,水際に係る業務を担っているところでございまして,CIQの中の一つの大変重要な要素として,先日13日も羽田空港の視察に行ってまいりました。様々な安全・安心な対策については,関係省庁がしっかりと連携をしながら,選手,そして大会関係者の皆様と一般の方々との間のバブルによる仕分けも含めて視察したところでございます。
 これまでにも申し上げてきたところではございますが,あらゆるシナリオに備えた対応体制が執られているかどうかが非常に重要だと考えておりまして,その意味で,そうしたことが十分にできるように,現場の中でも高い緊張感,更にレベルアップしながら対応してほしいという指示を強めてきたところでございます。
 今御指摘がございましたが,開催までカウントダウンが近づいてきているということでありますし,また,関係者の方の入国につきましても,人数が私が視察に行った開催10日前よりも増えているということでありますので,そういう意味で,緊張感の中で,厳格な審査をしていただきたい,さらに,テロの未然防止という大きな課題も抱えているところでありますので,そういったことについても,着実に実施するように指示をしてきたところでございます。
 関係省庁としっかりと連携をして取り組んでいくということが非常に大事だと思っておりまして,出入国審査の実施におきましても,全体の連携の中で,しっかりと対応していくということが肝要であると考えております。

無国籍の子に係る調査に関する質疑について

【記者】
 無国籍の問題について伺います。大臣のお言葉があってこのような調査がされたことを,関係者は非常にありがたいと思っていると思うのですが,まず過去5年間の調査で,将来的に減っていく可能性があるにせよ,2割以上の子どもが無国籍の状態が続いている,この春の時点で2割以上が無国籍が続いているこの状況をどういうふうに御覧になったでしょうか。

【大臣】
 今回の調査でございますが,かねてから私も無国籍の問題ということについて,高い関心を持って取り組んでまいりまして,この問題につきましては,出入国在留管理庁に対しまして,具体的なケースをしっかりとカテゴライズしながら,それぞれの原因について,しっかりと分析して対応するようにということで,あらかじめ指示をしたところであります。
 なるべく早い時期にその結果を出してほしいということで,今日このような形で発表させていただいたところでございまして,国籍の取得についての手続については,先ほど申し上げたとおり,様々な原因がございます。そうした状況を,まず理解していただくことが極めて大事でありますし,また,国籍があるかどうかについて,FRESC等の窓口におきまして積極的な把握をしていくことも大事であると考えております。
 早い時期に発表し,情報提供をすること,そして問題の原因が本国の状況による場合もあるということでありますので,早く支援につないで,しっかりと国籍を取得していただくことが大事であると考えております。それでも条件の中で,国籍を取得できないという方は残るわけでございますが,その方々につきましても,国内で生活していらっしゃる以上は,在留カード等の問題もありますので,無国籍状態であったとしても,先ほど申し上げましたとおり,様々な行政サービスをしっかりと受けられるようにということについて,徹底をしていくことが必要ではないかと考えております。

【記者】
 無国籍の問題の関連で,行政職員の方の対応が不十分であるという問題についてです。
 行政職員の方,例えば入管庁ですとか法務局,市役所などで,無国籍の問題が十分に周知されていないという問題だけではなく,そもそも無国籍者というのが法的根拠がないという状況があるから行政職員の対応が不十分になりがちなのではないかという指摘があります。
 入管法でも,国籍法でも,法務省が所管している法律で,無国籍ということの定義がそれぞれ違っているという問題が背景にあると思います。
 政府のこれまでの答弁では,それぞれ目的が異なっているから,それぞれそのままでいいんだという答弁がなされてきたと思うのですけれども,今回なさった調査のように無国籍者を減らしていくということが目的となった場合には,やはり無国籍者を定義して,それを減らしていくために対応が必要になってくるのではないかと思うのですが,そういった無国籍者を定義して,これを法律で位置付けていくということは,日本にとって今後必要になってくると思うのですが,大臣いかがでしょうか。

【大臣】
 国籍というのは,各国それぞれの国籍法というのがありまして,それに従いまして決定されるということが通常であります。父母やその国籍が不明であり,また資料がないということから無国籍状態にあるという,そういうケースが増えていると,報道でそうした指摘もございました。
 それぞれ一人一人が御自分の国籍,つまり国ということを特定していくということが,様々な意味で非常に重要であると私自身は認識をしております。
 仮に外国人の方でない日本人が海外でということについても,同じことであると思っております。国籍を取得するということについては,手続上の様々な課題があることを,今回の調査において,カテゴリー別の分類をした上で,初めて明らかにさせていただきました。
 これに伴いまして,情報が周知されているかどうか,あるいは自分がそのことについてあまり意識をしていないけれども,窓口に行ったらそういう指摘をされたと,こうした積極的な,ある意味では把握ということについては,これは実は日本人の無戸籍問題,私が関わってきた問題と非常によく似ていると認識をしております。いろいろな窓口に来たときに,そのことの事実はどうなのかということを知らないと,そのための手続にも乗れないわけでありますので,そういったことの一連の流れをしっかり作っていくということが大事であると思っております。
 また,御指摘の法律の点もございますけれども,何といっても今のフレームワークの中の問題,課題について,しっかりと対応しながら,この問題の先行きについて,無国籍であるからといって,つまり,国籍取得の手続を試みた上で,なおかつ無国籍の状態にある方については,行政サービスについて差がないようにしていくというのは当然のことでありますので,そういったことも含めて対応してまいりたいと考えております。

【記者】
 事実上の無国籍,無国籍と在留カード上書いていなくて,フィリピンと書かれているような人たちは今回の調査対象にはなりませんでした。
 こういった問題を,入管庁,法務省としてやっていくとするならば,そこの最初の段階で,お母さんの国籍をそのまま書くのではなくて,無国籍と認定して,子どもの国籍が確認された段階で,フィリピンだったりタイとか書くべきなのではないかと思うのですが,最初の段階で母親の国籍が書かれることで気付けないというケースも出てきています。
 こうした問題というのは,運用で改善できるところではないかと思うのですが,その点いかがでしょうか。

【大臣】
 今回は300の事例について,5年間という期間での調査でありましたが,この間に,約8割の方々に国籍を取得していただくことができました。
 実際に無国籍状態であると自分が認識する前の段階,それから認識した後の手続,いろいろなフェーズがございますので,今のような御指摘も含めまして,国籍をしっかりと取得していただく手続に乗っていただくことができるように,また,不利益が生じないようにすること,これは在留カードの記載にかかわらずということでございまして,実質的な国籍の特定の有無,こうしたことについて,意をしっかり尽くしていくように現場にも指示をしているところでありますので,今回の結果をしっかりと生かしきっていきたいと思っております。

名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案に関する質疑について

【記者】
 名古屋入管のスリランカ人女性死亡事件の最終報告のことで伺います。スリランカ人女性のケースは,DV被害者の可能性があったにもかかわらず長期間収容されたり,監視カメラ付きの狭い単独室に隔離収容されたり,病院に同行した入管職員の判断で適切な医療を受けられなかったりという事実があったと思います。
 それは最終報告書で明らかにされると思うのですが,このスリランカ人女性のケースにかかわらず,入管法の退去強制手続の費用や入管の裁量に基づいた第三者の審査,司法判断が関与しない形での収容ということが,非常に問題が多いということで,国連の人権機関「拷問禁止委員会」や「人権規約委員会」,「人種差別撤廃委員会」,そして昨年の「恣意的拘禁作業部会」などから,再三に渡り入管法そのものが国際人権法に違反するのではないかということで,見直しを求める勧告が相次いで出されています。
 こういったことが再三,国際社会でも,国内の弁護士会等からも指摘されてきているわけですけれども,このスリランカ人女性のケースも恣意的拘禁の可能性が極めて高いのではないかと考えられます。
 大臣は,先の恣意的拘禁作業部会の指摘に対して,「国内法の手続に従い適正に対処している。」と答えるだけで,入管法の退去強制手続が国際人権基準に反していて見直しが必要であることを決して認めようとしませんでした。
 そういうことで,今回のスリランカ人女性死亡事件の最終報告書の目的にも関係していると思うのですけれども,真相究明や再発防止の大前提として,この間,入管行政に対して出され続けてきた国連からの人権勧告や弁護士会からの意見書などを踏まえた上での最終報告なのか,あるいは最終報告が出された上でそういったことも検証されるのか。先ほど,東京五輪の開催も僅かとおっしゃったのですけれども,日本の人権感覚が世界から問われていると思いますが,大臣の考えをお聞かせください。

【大臣】
 今回の名古屋出入国在留管理局の死亡事案でございますが,これに関しましては,出入国在留管理庁に対し,様々な御指摘をいただいたことにつきまして真摯に受け止め,その上で,十分な内容の最終報告書をできる限り速やかに取りまとめるため最大限の努力をするよう指示しており,現在,同庁において,その取りまとめに向けた調査・検討に全力を挙げているものと理解をしているところでございます。
 取りまとめにおきましては,今回の事案の検証を踏まえた様々な必要な改善策が示されることとなるものと考えており,そうした方策を責任を持って迅速・確実に実施していくことが,法務省としての務めであると考えているところでございます。
 御指摘いただきました恣意的拘禁作業部会の意見等に関しましては,これまで私自身が発言をしたとおりではございますが,もちろん,我が国の出入国在留管理制度や運用につきまして,国際社会の理解を得ることが非常に大事なことであると認識しているところでございます。
 引き続き,国際社会の理解を得るための丁寧な説明をしっかりと尽くしてまいりたいと思いますし,国際社会から頂きました御意見につきましても,しっかりと耳を傾けながら,制度や運用が一層適切なものとなるよう不断の改善をしていくことが極めて重要であると認識しておりますので,その中で力を尽くしてまいりたいと思っております。
 特に,送還忌避や長期収容の解消につきましては,これまでも説明してきたところでございますが,出入国在留管理行政にとりましても,今ある課題の中でも喫緊の課題であると認識しているところでございます。この解決に向けては,あらゆる対応を執っていきたいと考えているところでございます。

【記者】
 スリランカ人女性の件ですけれども,7月16日に出入国在留管理庁長官が遺族と面会をして,その席で,遺族側からスリランカ人女性が書き残したメモが示されています。そのメモには,今年の1月28日,亡くなる1か月ほど前ですけれども,スリランカ人女性が,職員から,「あなたは迷惑な人だ。吐く音がうるさいから,他の収容者が寝られないので。」との理由で,単独室に移されたということが書かれております。本来なら,それほどのおう吐があれば直ちに病院に連れて行くというのが当たり前の対処だと思いますけれども,それをしないだけでなく,体調の悪化を放置している自分たちのことを棚に上げて,「迷惑だ。うるさい。」という暴言まで吐いているわけです。
 そうした対応を含めて,大変重大な人権侵害だと思いますけれども,メモに示されていることについて,大臣はどのように受け止めているか,これが1点です。
 2点目は,現在行われている最終報告に向けた調査の中でこうした発言があったことを把握しているか。していなかったら,その後調査をしたのか,また今後するつもりがあるのかということです。

【大臣】
 御質問の1点目ということでありますが,ただいま最終報告に向けまして出入国在留管理庁の方にしっかりとした調査を指示している状況でございます。
 関係する様々な資料,またヒアリング等を実施しながら,最終報告におきましての検証,更にはそれに基づきましての改善ということも含めて指示をしておりまして,出入国在留管理庁における第三者を踏まえた調査の結果をしっかりと待ちたいと思っております。
 調査の過程におきまして,私自身の意見を申し上げることについては,様々な御指摘を踏まえた調査をするようにということで,一連の指示をしている立場でございますので,最終報告を待ちたいと思っております。
 2点目につきましては,最終報告の中でしっかりと,様々な事実関係について明らかにしていくものと考えております。
 私は,調査内容について立ち入ることは,調査の客観性・公正性に支障が出てくると考えており,そのような立場から,最終報告につきましては,客観的,そして中立・公正な第三者の意見を踏まえた調査結果をしっかりとまとめるようにと指示をしておりますので,その結果を待ちたいと思っております。

留学生等の受入れの審査強化に関する質疑について

【記者】
 7月20日付けの読売新聞が留学生の入国審査基準をめぐり,大学が入管庁に留学や研究に関連して資金提供を受けている団体や企業について厳しく報告するように求める運用を今年の春から始めたと報じました。大学から入管庁に新しく報告を求めるような留学生の経歴と,疑わしい人物に対して,入管法に基づきビザ発給拒否などの対応を取るかどうかの考え方を伺います。
 また,大臣としての所見もお聞かせください。

【大臣】
 御質問をいただいた報道の内容は承知しているところでございます。
 我が国は,諸外国の優秀な人材を集めまして,科学技術力の更なる発展を図る観点から,留学生・外国人研究者の積極的な受入れを進めてきているところでございます。
 他方,国際的にも先端技術管理の重要性が高まる中,その流出防止の観点から,留学生・外国人研究者の受入れに当たりましては,大学・研究機関等における内部管理の強化や受入れ時の審査の一層の強化に取り組む必要があると考えているところでございます。
 機微技術の国外流出の防止に関しましては,「統合イノベーション戦略2021」におきましても,関係省庁が連携して対策を推進していくこととされておりまして,出入国在留管理庁において適切に入国・在留審査を実施しているところでございます。
 今後とも,機微技術の国外流出の防止の観点から,的確な審査を実施してまいりたいと考えております。
(以上)