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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和3年8月27日(金)

 今朝の閣議におきましては,法務省案件はございませんでした。
 続きまして,私から2件報告がございます。
 1件目は,「子どもの人権110番強化週間」についてです。
 本日から9月2日(木曜日)までの7日間,全国の法務局・地方法務局において,「全国一斉『子どもの人権110番』強化週間」を実施いたします。
 強化週間中は,「子どもの人権110番」による電話相談について,受付時間を延長したり,休日にも相談に応じるなど,相談活動を強化いたします。
 夏休みが終了し,学校が再開するこの時期は,学校での生活に悩みを抱える子どもが不安定な心理状態に置かれています。
 特に今年は新型コロナウイルスの感染が拡大し,家庭環境や地域の状況によっては,子どもの抱える悩みは大きくなりがちです。例年にも増して,子どもの心理の変化をきめ細かく汲み取る必要があります。
 昨年一年間の「子どもの人権110番」における相談件数は1万5603件であり,強化週間の一週間は通常の週の2倍以上となる737件の相談が寄せられたところです。
 強化週間の取組を通じて,こうした子どもたちの不安や悩みごとに寄り添い,しっかりと対応してまいります。
 報道機関の皆様方には,一人でも多くの子どもたちを救うことができるよう,強化週間の周知広報への御協力を是非お願い申し上げます。
 2件目は,法務省関連の新型コロナウイルス感染症の感染状況についてです。
 8月20日(金曜日)の会見後から昨日までの間,職員については,38の官署・施設で計55名の,被収容者については5つの施設で計13名の感染が判明いたしました。
 詳細は既に公表されているとおりです。
 法務省におきましては,引き続き,高い緊張感を持って,各種感染症対策を徹底してまいる所存です。

「工藤会」トップに対する福岡地方裁判所の判決に関する質疑について

【記者】
 「工藤会」の判決についてお伺いします。福岡地裁は24日,一般市民が殺傷された四つの事件で殺人などの罪に問われた特定危険指定暴力団「工藤会」のトップの野村悟被告とナンバー2の田上不美夫被告に対し,それぞれ死刑と無期懲役を言い渡しました。指定暴力団トップへの死刑判決は初とみられますけれども,この判決についての大臣の受け止めをお願いします。
 また,今回の判決では直接証拠ではなく間接証拠の積み上げで判断が示されました。法務・検察としてこの意義をどう考えられますでしょうか。
 また,間接証拠だけに基づく極刑判断に問題はなかったとお考えでしょうか。

【大臣】
 お尋ねの判決が言い渡されたことは承知しております。
 個別事件に係る裁判所の判断について,法務大臣として所感を述べることは,差し控えさせていただきたいと思います。
 国民の安全・安心な生活に対する重大な脅威となる暴力団犯罪は,決して許されるものではありません。検察当局におきまして,引き続き,関係機関と連携し,暴力団犯罪に対して厳正に対処していくものと承知しております。

名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案に関する質疑について

【記者】
 名古屋入管の報告書,スリランカ人女性の関係ですが,2月26日,死ぬ8日前,ベッドへ起き上がらせようとしたができなかったという入管庁の報告書に反して,遺族の方たちは,「起き上がらせようというのでなく服を引っ張るだけだった。」,「報告書の内容は違うんじゃないか。」と指摘しています。
 大臣は,報告書に基づきビデオを見たのかどうか。その結果,報告書にやはり誤記載があると見ているのか,お答えください。
 それから,改革チームが先週発表されましたが,これだけ問題が指摘されているにもかかわらず,入管の部長がトップに立ち,外部の識者等々が全く入らない改革チームとなっています。これは非常に問題ではないでしょうか。見直さないのか。
 あと1点,昨日の野党ヒアリングで,スリランカ人女性を担当されていた看守の女性職員たち,「鼻から牛乳」等々の暴言を吐かれた方が異動になったのかどうか,今現在どういう状態なのか。懲戒処分もないまま,全く入管庁総務課長は明らかにしませんでした。この点について,何人が関わっていたのか,処分しないにしても彼女たちは,今そういう人たちを担当する部署から外れているのかどうか。この点を明確に,短くでいいのでお答えください。

【大臣】
 まず1点目について,御遺族が,ビデオ映像と調査報告書の記載内容との間にそごがあると指摘されているとの御趣旨だと思いますが,出入国在留管理庁によれば,改めて確認を行ったところ,現時点で明らかなそごと言える部分は見当たっていないということです。この件について私自身がどのように対応したかについて,この場でのお答えは差し控えさせていただきたいと思います。
 次に,改革チームについてです。
 今回の事案については,様々な調査を,外部の有識者の方々からの御意見・御指摘をいただきながら,それに基づいて客観的・公正に行ったところです。
 その上で,改革チームについては,出入国在留管理庁内で,実際にその運営に携わる第一線の意見をしっかりと吸収できることが重要であると考えております。このチームの編成について,それが適切かどうかについては,やはり結果をしっかりと見て御判断いただきたい事柄だと思っております。
 もとより,第三者,あるいは関係する様々な専門的立場の方々もおられ,そうした方々からは,これまでも多くの御指摘をいただいてきたところです。その意味では,チームに入っている,いないにかかわらず,外部の方々の声,御意見・御指摘は,しっかりと受け止めるべきだと私は思っておりますし,そのことについては,力を入れてまいりたいと思っております。

【記者】
 女性職員の状況について,看守の女性職員の方たちが現状どうなっているのか,また,関わった人数が,報告書で全く発表されていません。

【大臣】
 御指摘の女性職員も含めてですが,現場の中で活動してきた職員らについて,様々な状況についての報告,また本人らの反省といったことを含め,しっかりとヒアリングをし,その上で,個々の職員の職責を問うこととはされなかったものと考えております。
 もっとも,人権意識に欠ける不適切な発言があったことは事実であり,出入国在留管理庁では,これらの職員に対して,被収容者の命を預かっていることを自覚し,人権に十分配慮した適切な職務遂行を徹底するよう,上司から注意・指導を行ったものと承知をしております。
 私は,今回の調査報告書で指摘された改善策の中の非常に重要な要素は,そこであると思っております。
 職員の一人一人が意識をしっかり持つということ,これは極めて重要であると思っております。
 改善策を踏まえた職員の意識改革については,徹底して進めていくことが重要であると考えており,前回も申し上げましたが,その意味で,プロジェクトチームの位置付けは,非常に重要であると思っているところです。

【記者】
 注意・指導は当たり前なのですが,異動になっているのか,いないのか。今のお答えですと,現状まだ入管で働いているという受け止めでよいのですか。同じ職場にいるということでしょうか。

【大臣】
 個別の職員の状況につきましては,事柄の性質上,私からお答えすることは差し控えさせていただきます。

【記者】
 名古屋入管で亡くなったスリランカ人女性の行政文書開示と,撮影動画の開示に関して2点質問させていただきます。
 まず,厚生労働省が医師法で「診療情報の提供等に関する指針」というのを定めています。その中で「遺族に対する診療情報の提供」ということで,「医療従事者等は,患者が死亡した際には遅滞なく,遺族に対して,死亡に至るまでの診療経過,死亡原因等についての診療情報を提供しなければならない」と,これには遺族の法定代理人も含んでいます。このようにしているのですが,名古屋入管のスリランカ人女性の死亡のケースで,黒塗りの行政文書開示しかしない理由は何なのか。この医師法との関係でお答えください。
 それと,入管収容施設では,今回のスリランカ人女性の動静を撮影した監視カメラ映像以外にも,入管職員自らが「制圧」と称する際や,無理矢理に強制送還する際などに入管職員自身がビデオ撮影しているというケースもあります。それが裁判で書証として提出されたりもしていますけれども,そのビデオを撮影したり保管をする法的な根拠は何で,一体何の目的で撮影し,動画を保管しているのでしょうか。
 行政監視が目的であれば,国会議員にも開示する必要があると思うのですが,スリランカ人女性の遺族や代理人,国会議員などに開示しないと,一部である2時間分は人道上の配慮ということで開示されましたけれども,全面開示は拒否されている,その法的根拠について示してください。人道上の配慮だけでは全然説明になっていないと思うのでよろしくお願いします。

【大臣】
 まず1点目についてですが,名古屋出入国在留管理局における本件死亡事案に係る行政文書の開示請求につきましては,看守勤務日誌等の診療情報に関連しない文書も多くその対象とされており,出入国在留管理庁では,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(情報公開法)第5条において,不開示情報とされている同条第1号の個人に関する情報,同条第4号の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある情報等に当たる部分を除き開示決定をするなど,処分の決定時点で,同法に従って適切に対応したものと報告を受けているところです。
 御指摘の指針については,インフォームド・コンセントの理念等を踏まえ,厚生労働省が医療従事者等に対し,診療情報の提供に当たっての留意事項等を示した指針であり,法の規定に優先して適用されるものではないと承知しております。
 ビデオ映像に関する2点目の御質問についてですが,出入国在留管理庁では,被収容者の処遇や健康管理に関する関係法令の規定を踏まえ,「退去強制手続における制止措置等の際のビデオ撮影要領」におきまして,法令の規定による有形力の行使を行う場合は,これが適正に行われたことを立証する証拠資料とするためにビデオ撮影を行うこととしているところです。
 また,これとは別に,通達におきまして,容態観察のために被収容者を単独室等に移したときは,動静の把握を的確に行うためモニター監視を行うこととしているところです。
 今回のビデオの撮影は,今申し上げた2つのうちの後者の通達に基づいて撮影されたものということです。
 このような容態観察のために撮影したビデオ映像の開示につきましては,仮に訴訟手続となった場合には,訴訟手続に関する法令に従って対応することとなっております。
 また,情報公開請求がされた場合には,情報公開法の規定に基づき対応することとなるところです。
 被収容者が映っているビデオ映像につきましては,情報公開請求に対しても,基本的に不開示情報として取り扱っているものです。また,今回のビデオ映像については,調査報告書が公表された現在におきましても,なお保安上の問題に加え,亡くなられた方の名誉・尊厳の観点からの問題もあります。
 今回,御遺族に対しましては,人道上の配慮から特別の措置としてビデオ映像を御覧いただくこととしたところですが,これらの問題を踏まえますと,代理人の弁護士の方を含め,御遺族以外の方々にビデオ映像を開示することは,適当でないと考えているところです。
 また,国会における対応につきましては,これらのことを前提に,国会の御判断も踏まえつつ,適切に対応してまいりたいと思っているところです。

【記者】
 スリランカ人女性の件ですが,ビデオの残りの閲覧については,遺族が代理人の立会いがないと,もうこれ以上見ることはできないというふうにおっしゃっています。
 それは,あまりのショックにあの映像を見ておう吐したことと,その後も映像がフラッシュバックのようによみがえって夜も寝られないというふうな状況が続いています。このことは入管庁にも伝えられています。
 大臣は人道上の配慮から映像を開示したというふうなことをおっしゃっていますけど,人道上本当に配慮しているのであれば,代理人の立会いを認めるべきではないかというふうに考えますが,このまま立会いを認めなければ,大臣がおっしゃった丁寧に説明をしていくというふうな責任も果たせないままですけれども,どのようになさるおつもりなのか。
 保安上の理由を挙げていますけれども,閲覧から2週間経ちましたが,その後,映像を開示したことで,保安上の問題というものが何か生じたことがあるのか,併せて2点,お聞かせください。

【大臣】
 今回コロナ禍の中で来日され,そしてお姉様のことについて,どのようなことで今のような状態になったのかについて,御遺族の大変切実な声を私も伺わせていただきました。
 変わり果てたお姉様の御遺体と対面されたということもあり,御遺族の心情を踏まえた特別の人道上の対応をすべきではないかと考え,今回,御遺族にビデオ映像を御覧いただくことにしたところです。
 保安上の問題等がある中で開示をするということで,今現在,御遺族の方に御覧いただくことは排除しないこととしましたが,2点目の御質問にも関わるところですが,あくまで亡くなられた方の状態を御遺族以外の方を含めて閲覧していただくことは,適当ではないと考えているところです。
 御遺族にビデオ映像を御覧いただくときには,通訳をしっかりと付けて事前に映像の内容を御説明するなど,その心情に十分に配慮した対応を行っているものと承知をしておりますが,御遺族の心理的な状況等も考え,そのような対応上の配慮については,通訳の方法や配慮の仕方を含めた十分な対応が必要ではないかと思っているところです。

国後島から来たとして保護されたロシア人男性に関する質疑について

【記者】
 話題が変わりますけれども,今月19日に北方領土の国後島から来たとして保護されたロシア人男性の処分についてお聞きします。
 北方四島は日本固有の領土という前提で見れば,男性は日本国内を移動しただけとも言えますけれども,一方で男性が日本への亡命を求めているともされています。
 政府として,男性は難民に該当するとして一時庇護のための上陸を許可するのか,若しくはロシアに送還するなど別の対応になるのか,処遇についてお聞かせください。

【大臣】
 ただいまの御質問ですが,個別の事案であり,その対応状況についてのお答えは差し控えさせていただきたいと思います。
 また,難民申請についても言及がございましたが,この点も個別の事案についてのお答えは差し控えさせていただきたいと思います。
 一般論として申し上げると,我が国では,難民認定申請がなされた場合には,申請者ごとに,その申請内容を審査した上で,難民条約の定義に基づき,難民と認定すべきものを適切に認定することが基本であり,全ての案件について,そのような姿勢で臨むことを基本としております。

人事に関する質疑について

【記者】
 27日の閣議で検察・法務省の幹部人事を決めまして,名古屋高検の検事長に大塲亮太郎仙台高検検事長や,法務次官に髙嶋智光官房長を充てる人事を決めております。
 この件に関して大臣のお考えや期待などがあれば教えていただきたいです。

【大臣】
 9月3日付けで辻法務事務次官が交代となります。
 辻裕教事務次官は,平成31年1月に事務次官に就任されてから約2年7か月間にわたりまして,大臣を補佐して様々な法務行政の課題に取り組んできたものと承知しております。
 髙嶋智光官房長は,人権擁護局長や出入国在留管理庁次長,官房長等を歴任するなど,大変豊富な行政経験を有しており,適材適所の観点から事務次官に起用したものです。
 引き続き,新しい体制の下でも,職員一丸となって,法務行政の直面する様々な課題にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
(以上)