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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和3年8月31日(火)

 今朝の閣議におきまして,法務省案件はございませんでした。
 続きまして,私から2件報告がございます。
 まず1件目として,令和4年度予算概算要求につきまして,本日,法務省から財務省に概算要求を行います。
 令和4年度予算の概算要求における重点事項は,次に申し上げるとおりです。
 明日,いよいよデジタル庁が発足しますが,ポストコロナにおける我が国の成長の原動力であるデジタル改革,経済社会構造の転換を加速するための法務行政のデジタル化・IT化の推進,誰一人取り残さない包摂的な社会の実現に向けた取組の充実強化,ポストコロナの持続的な成長のための法的基盤の強化,安全で安心な暮らしの実現のための取組の充実強化であります。
 これらの重点事項を含む各種施策を実現するため,一般会計として総額8,470億円,東日本大震災復興特別会計として総額2億円を計上いたしました。
 これらは,全て,法の支配の貫徹された社会,多様性と包摂性のある「誰一人取り残さない」社会の実現のために必要な喫緊の重要施策であります。
 これらの施策を実現するため,必要な予算と定員の確保に努めてまいる所存です。
 次に2件目として,SIB事業についてです。
 この度,「ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)による非行少年への学習支援事業」につきまして,8月26日に受託事業者と契約を締結し,事業を開始することとなりました。
 本事業は,少年院在院者が出院後の学習を希望した場合,在院中に学習支援計画を策定した上で,出院後最長1年間の継続的な学習支援を実施するものです。
 本事業では,3団体からなる共同事業体が受託者となっておりまして,「株式会社公文教育研究会」が中心となって学習教材等を提供し,「株式会社キズキ」と「一般社団法人もふもふネット」が困難を抱えた子どもや若者の支援の実績をいかして,学習・生活支援を担うという形で,それぞれの強みをいかして取組を進めていただく予定です。
 また,本事業のSIBのスキームでは,受託者である共同事業体が ,「株式会社日本政策投資銀行」,「株式会社三井住友銀行」,「株式会社CAMPFIRE」の3つの調達元から,それぞれ異なる形で資金の提供を受けることが予定されています。
 本事業は,国が主体となってSIBを活用する初めての事業であり,かつ,再犯防止分野でSIBを活用する初めての取組です。
 また,今回のSIB事業は,まさに,マルチステークホルダー・パートナーシップの推進というSDGsの理念を体現した取組です。
 法務省としても,これらの皆様としっかり連携し,本事業による学習支援,ひいては再犯防止の成果を上げることができるよう,努めてまいります。
 その上で,京都コングレスの成果展開に当たり,本事業の成果を,我が国における再犯防止分野の知見の一つとして,諸外国にも積極的に発信・共有してまいる所存です。

SIBを活用した学習支援事業に関する質疑について

【記者】
 大臣から御紹介のありましたSIBを活用した非行少年への学習支援事業について,お伺いします。改めて,大臣はこの事業の意義をどのように考えるのかという点と,大臣は少年に関する現状の再犯防止についてはどのように認識をされていて,今回の新たな取組によってこうした状況がどのように変わるとお考えでしょうか。その点についてお聞かせください。

【大臣】
 先ほども申し上げましたが,本事業は,国が主体となってSIBを活用する初めての事業です。また,再犯防止分野でSIBを活用する我が国で初めての取組ということであり,大変期待を寄せられている事業であると認識しております。
 再犯防止の現状と課題について,今一度認識していかなければならないと思っております事柄は,これまで再犯防止については,保護司の皆様を始めとする様々なステークホルダーの御協力をいただきながら力強く推進してまいりました。
 今後も,息の長い支援を継続的に実現していくためには,NPOや民間企業等との連携,これは大変重要なネットワークであり,さらに,民間資金を活用した民間協力者の活動基盤の整備が課題となっていると認識しております。
 本事業では,受託者である共同事業体を構成する各社が,それぞれの強みをいかし,少年院仮退院後の少年に対し,一貫してシームレスに,民間のノウハウを活用した質の高い支援を提供することが期待されるところです。
 また,本事業のSIBのスキームにおきましては,先ほど申し上げたように,3つの異なる資金提供者が,受託者である共同事業体に対し,事業の成果に連動した多様な方法により資金を提供するスキームになる予定であります。
 これは,再犯防止分野において,民間資金の提供を呼び込んでいく上で非常に大きな意義があるとも考えているところです。正にSDGsの取組の大きな要素,ゴール17でありますが,マルチステークホルダーをしっかりと活用して,課題解決,社会的問題の解決を果たすことを実践するモデル事業ですので,成果をしっかりと上げることができるよう,努力を更に重ねてまいりたいと思っております。

養育費に係るモデル事業の実施に関する質疑について

【記者】
 概算要求について伺います。概算要求の中で,養育費の不払いなど離婚後の子どもの養育をめぐる課題の解消に向けて,昨年に引き続きではありますが,モデル事業を実施する費用が計上されています。
 こうした課題の現状とモデル事業の内容,そして期待する効果を教えてください。

【大臣】
 令和4年度予算の概算要求におきまして,養育費の不払い解消に向けて,自治体における効果的な支援の在り方を探るため,モデル事業の実施を通じた調査研究委託事業に係る予算を要求しております。
 このモデル事業ですが,具体的に申し上げますと,複数の地方公共団体と連携し,離婚を考えておられる方々を対象として,養育費の確保のために必要な法的情報を提供するガイダンス等を実施すること,そして,離婚届の提出時に養育費の取決めの有無を確認することなどにより,その取決めの促進・確保を図ること,さらに,離婚後に養育費の不払いが生じた場合の法的対応についての情報提供など,各ステージにおける施策・支援について,一体的に取り組んでいくことを考えているところです。
 期待される効果についての御質問もありましたが,このモデル事業の実施を通じた調査研究委託の結果については,法制審議会家族法制部会における調査審議の資料として活用されることが期待されます。
 また,公的支援等を所管する府省による今後の施策立案においても,この調査結果が適切に活用されるよう,関係府省との連携・協力をしっかりと進めてまいりたいと考えています。

名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案等に関する質疑について

【記者】
 先週,在留許可を申請しているすい臓がんのペルー人の男性が,大阪出入国在留管理局に収容中だったのですけれども,去年5月に仮放免をされまして,現状,がんを患ってすい臓がんだったということで,退去強制令書が出ているのですけれども,御家族の方々,御本人も,強く,病気の治療を受けられるように,在留資格を付与してほしいということを言っています。この点についてどう対応するかという点。
 それからスリランカ人女性の件ですけれども,第三者,有識者一覧の中にいる元高裁判事の方なのですが,かつて2014年,千葉地裁が出した中学生に対する強姦罪で,1審の4年6か月の実刑判決を無罪にするという判断を下しておりました。
 それから,IOM職員,匿名になっているのですが,調べたところ,法務省から委託事業を行っていまして,帰国支援で1100万円の予算がついているという状況でした。大臣,このことは知らなかったのではないかと思うのですが,特にIOMに関しては利益相反関係に当たるような方を有識者として法務省が指名していたこと,これをどう受け止めるかという点。
 それともう1点,2月15日の尿検査の結果が中間報告で出されなかったことが意図的ではないかという批判が出ています。取材をしたところ,「電子カルテではなかったのだが,カルテと検査結果はフォルダを分けていた。他の検査結果は全て出ていたのだが,なぜか,その2月15日の重要な尿検査の結果だけは,複写を忘れていた。」と職員が言っていたということです。非常に重要な2月15日の結果,受け止めていなかったことが問題視されていますが,これも複写をし忘れていたから中間報告には出せなかったというこの話自体,大臣として,疑問を含めて,どういうふうに受け止められているか,それをお願いいたします。

【大臣】
 まず,ペルー人の方に関する御質問ですが,個別の事案でございますので,お答えについては差し控えさせていただきたいと思います。
 一般論として申し上げますが,退去強制令書の発付処分を受けた者につきましても,その後の事情変更を理由に,在留特別許可をすることがございます。
 その場合,在留特別許可の許否の判断は,個々の事案ごとに,在留希望の理由や家族関係,素行,当該外国人の病状等,諸般の事情を総合的に勘案して適切に判断するということ,これがルール,原則でございます。
 詳細につきましては,出入国在留管理庁にお尋ねいただきたいと思います。
 2点目ですが,有識者について,個別の言及がありました点については,お答えを差し控えさせていただきたいと思います。
 有識者の方々には,専門的な知見に基づき,それぞれ公正な判断をしていただいた状況と考えているところです。

【記者】
 利益相反関係は問題ないという御認識でよろしいでしょうか。

【大臣】
 今回の案件について,しっかりと,専門的立場から,公正に判断していただいたことが極めて重要な点であると,私は受け止めているところです。
 3点目ですが,調査報告書について御指摘のありました点は,中間報告後の更なる調査の中で発見され,記載するに至ったものです。
 今回の調査に当たり,関係者の皆様からの聴取や入手可能な関係記録を精査して詳細な事実関係を確認した上での報告ですので,調査報告書には確認できた事実が網羅されていると理解しております。

金融活動作業部会の第4次対日審査報告書に関する質疑について

【記者】
 「金融活動作業部会」(FATF)は8月30日,マネーロンダリングに関し日本を「重点フォローアップ国」に指定する審査結果を発表しました。マネロン対策に関し一層の改善を求める内容です。政府はマネロン・テロ資金供与・拡散金融対策政策会議の設置などを通じ,対策の強化を図る方針です。
 法務省としてテロ資金提供処罰法の改正など,マネロン関連の犯罪の厳罰化に向けた法改正についてどのように取り組む方針かをお伺いします。また,法改正以外では具体的にどのような対応を予定しておりますでしょうか。

【大臣】
 昨日(8月30日)に公表された金融活動作業部会,通称,「FATF(ファトフ)」の第4次対日審査報告書では,日本のマネロン・テロ資金供与対策が成果を上げていると評価されたものと承知しています。
 また,報告書の中では,日本のマネロン・テロ資金供与対策を一層向上させるための様々な勧告がされているところ,そのうち,法務省の施策に関連する主なものを申し上げると,マネロン・テロ資金供与の捜査・訴追の強化や,これらの犯罪の法定刑の引上げに係る組織的犯罪処罰法,テロ資金提供処罰法の改正,実質的支配者情報の透明性向上を含む法人・信託の悪用防止が勧告されたところです。
 御指摘の法改正に関する勧告については,組織的犯罪処罰法やテロ資金提供処罰法について検討し,所要の措置を講じる予定です。
 法改正以外の勧告について,まず,マネロン・テロ資金供与の捜査・訴追の強化等に関する勧告につきましては,重大・複雑なマネロンの更なる捜査・訴追やマネロン事案の起訴率向上,テロ資金供与の捜査・訴追に関する関係省庁連携強化のため,必要な取組を実施する予定です。
 また,実質的支配者情報の透明性向上に関する勧告については,商業登記所が,株式会社が作成した実質的支配者リストについて,その内容を確認した上,当該リストの保管及び写しの交付を行うことを主な内容とする新たな制度を創設する予定です。
 法改正に係る取組及び法改正以外の取組として,今申し上げたような内容を予定しているところです。
 今般の対日審査報告書の公表を契機として,政府が一体となって取組を進めるべく,「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策政策会議」が設置されるとともに,今後3年間にわたる行動計画が策定されたところです。
 公表されたこの行動計画にのっとり,法務省としても,今後も引き続き,関係省庁としっかりと連携をしながら,マネロン・テロ資金供与対策に取り組んでまいりたいと考えています。

無国籍の子の国籍取得に関する質疑について

【記者】
 以前の8月3日の記者会見で,無国籍について,その後のフォローアップについて御発言いただき,「国籍取得に関する状況を把握し,進捗を確認できるよう情報を一元的に管理し,PDCAのサイクルをしっかり回して対応したい。」とおっしゃっていたと思うのですけれども,この一元的な管理ということをどういう部署で担われるのか,どんな情報が対象になるのか,どういうような具体的なイメージがあるのか教えていただけたらと思っているのと同時に,この問題は他省庁にも絡む問題,厚労省ですとか外務省ですとかあると思うのですが,周知や連携の状況がもしあるようであれば教えていただけますでしょうか。

【大臣】
 無国籍の問題につきましては,かねてから非常に高い関心をもって取り組んでまいりました。
 先般,御質問もいただきましたが,私としては,出入国在留管理庁に対し,正確な実態把握に努めること,その情報については一元的に管理すること,更にPDCAサイクルをしっかりと回しながら取り組み,問題の解決を図っていくことを指示しているところです。
 この指示を受け,出入国在留管理庁の在留管理支援部において,出生時に国籍が特定されておらず無国籍と登録され,無国籍の状態にある子,あるいは在留カードには特定の国が記載されているものの,国籍取得の手続が未了のため実際には無国籍となっている子について,定期的にデータを抽出・整理をすること,その後,時間の経過に伴い成長し,また,様々な手続が執られるわけですので,時間の経過に伴う国籍取得手続の推移をしっかりと把握すること,そして,それらを踏まえ,引き続き無国籍となる原因・理由についての分析をしっかりと行うことがPDCAのベースになると考えています。
 いずれも情報を一元的に管理・分析することが極めて重要であり,また,これらの取組の効果を確認した上で,実際にそれを問題解決に反映させていくため,手続過程の中でどのような形で連携を取っていくのか,漏れなく無国籍の問題を発見できるようにしていくのかという視点も必要であり,正に様々な機関と連携をしていく必要があると考えております。
 特に地方官署に対しては,各種申請者が無国籍状態にあることが判明した場合には,駐日大使館や本国の行政機関における手続が極めて重要であるため,その案内をすることなど,窓口における基本的な対応の徹底をしっかりと指示しました。
 無国籍の方々が直面する具体的な問題については,国籍の有無のみならず,それに関わる様々な課題・問題があると思われ,そうした点についても,しっかりと把握していくことが重要ですので,関係機関との連携や周知・広報にも徹底して取り組んでまいりたいと考えています。

アフガニスタン情勢等に関する質疑について

【記者】
 アフガニスタン情勢に関連して質問したいのですが,今カブールから空路で日本に来るということは非常に難しい状況になっていますけれども,これからアフガニスタン,それからパキスタンの国境を越えて,イスラマバードの日本大使館に行って庇護を希望したり,それから,家族の呼び寄せ等で日本から外務省等に相談があるようなケースが出てくると思います。既にそういう動きをされているアフガニスタンの方もいらっしゃいます。
 それに対応して,外務省と今どのような連携を取って,そういった方のアフガニスタンから外に,国境を越えた方の受入れ等について,在外大使館等に何か相談していることがあるのかということが1点。
 それから2001年に,アフガニスタンの難民の方がたくさん日本に来たのですけれども,空港で上陸拒否され,入管で長期収容をされたり,それから,中には日本国内で難民申請したにもかかわらず,今度は警察によって治安テロ対策ということで逮捕勾留されて入管に回されたというケースがたくさんありました。それは非常に問題になったのですが,そういったことが起きないように,今関係省庁とどのような対策を講じていらっしゃるのかについて伺いたいので,よろしくお願いします。
 あともう1点ですが,これはいわゆる難民の緊急避難措置みたいなことになると思うのですけど,ミャンマーの人についても,全く今のところ,仮放免状態の人とか,要するに退去強制令書が一旦出てしまった人とか,難民不認定になった人の対応が,6か月以上の特定活動だと思うのですが,全く進んでいない状態です。
 今個別の事案に鑑みてということで,在留特別許可にしても難民認定にしてもやっていらっしゃると思うのですが,それでは全然緊急対応にならないので,それの対応,それからアフガニスタンの日本に庇護を希望される方,日本に来られたい方の対応について,日本国内のアフガニスタン人にも動きがあるので,その辺の受入れの体制について,今どのような状況なのかお伺いします。

【大臣】
 まず,アフガニスタンについてですが,今,情勢は大変緊迫している状況です。
 現時点におきましては,情勢が大変に流動的であるため,情報収集をしっかりとしていかなければならないということで,それに努めているところです。
 日本に退避を希望し,あるいは日本に退避してきたアフガニスタンの方々については,十分にその置かれた状況,立場を斟酌して対応すべきであり,政府全体として検討していく必要があると考えているところです。
 法務省としましても,今後のアフガニスタンにおける情勢の変化などをしっかりと踏まえながら,関係省庁と緊密に連携した上で,日本に退避してきた方々の人権に最大限配慮しながら,適切に対応してまいりたいと考えています。
 ミャンマーの方々の緊急避難措置については,8月27日時点で,全国で約2,100件を許可していると報告を受けています。
 在留ミャンマー人の方々から難民認定申請がなされた場合については,当該外国人の方が正規在留者であるか非正規在留者であるかにかかわらず,申請者ごとにその申請内容を審査した上で,難民条約の定義に基づき,難民と認定すべき者を適切に認定をすることとしております。
 また,難民認定申請中の方が非正規在留者である場合,在留資格に係る判断は,法令上,難民該当性に係る判断と併せて行うこととされているところです。
 在留特別許可の許否判断は,収容中又は仮放免中にかかわらず,個別の事案ごとに,在留を希望する理由,家族関係,素行,当該外国人の本国情勢等,諸般の事情を総合的に勘案して行うものであり,その許否については,適切に判断してまいりたいと考えています。

自民党総裁選に関する質疑について

【記者】
 9月の自民党総裁選について伺います。総裁選には菅総理が再選の意欲を示す一方,大臣もメンバーである派閥の岸田前政調会長が出馬表明をされました。
 閣内におられる立場だと思いますけれども,自民党総裁選で菅総理を支持されるのか,若しくは岸田さんを支持されるのか,大臣の考えをお聞かせください。

【大臣】
 ただいまの御質問ですが,これは自民党内の事柄であり,私は,今ここで法務大臣として答弁させていただいておりますので,コメントする立場にございません。
(以上)